ToHeart2 SS専用スレ 17

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134SONG OF SASAMORI
3つの醜い肉の塊。
「Vwoん、グぁMrkiグェSズ<MNゲドd」
「BアnKンんzデュGivンゲNrMム'zガジgnt」
「ワvaa、ゴノビ、ゴノビMsTウヴィヴヴヴ」
人間でいったら頭部に当たる箇所から、不愉快な音を発している。
「貴明MダィJヴォヴDyジNグァ」
その、不快な音……奴らの声の中に、俺は自分の名前を聞き取った。
「貴明MSukiiNギーグディヤロ?」
スキーに行こう、と言っているらしい。
不愉快ながら、今では俺も奴らの言葉が大体理解できるようになった。
「わからない」
「ウヴォェー、NァッーNDドヴ、ギゴゥよェェェ」
一番小さな肉塊が抗議の声をあげる。奴らの方は、俺の言葉を苦もなく理解できるらしい。
「考えとくよ。診察の時間だから、これで」
俺は逃げるように席を立った。
この肉塊達は、どうやら俺の友人だったようだ。それも、つい3ヶ月前まで。
それぞれ向坂環、向坂雄二、柚原このみ、という名前も持っている。
だが、そんな事は今の俺にはどうでもいい。俺は奴らと別れて、病院で診察を受けた。
白い筈の病院の壁は、内臓を裏返したようなおぞましい色で脈打っている。
壁だけでなく、天井も、床も。病院だけでなく、道路も、街並みも。
それらの全てからなるべく目を背け、障害物を避ける最低限度の視界で、俺は帰路に就く。
やっと辿り着いた自宅の、ブヨリと気色悪い感触のドアを開ける。

呼び鈴に応えて駆けてくる、この世界で唯一、人間らしい足音。
やってきたのは、この世界で唯一、そしていささか主観的ながら随一の美少女。
聞こえてきたのは、この世界で唯一、まぎれもない人間の声。

「タカちゃん! おかえりなんよ」
「ただいま、笹森」

俺は少女を抱きしめる。暖かく優しい、ヒトの温もり。
今の俺が五感のすべてで肯定し、許容できる唯一の存在。それが笹森だった。