ToHeart2 SS専用スレ 17

新しい出会いや恋、そして友情に笑い、悲しみ。
すべてが始まり、終わるかもしれない季節。
季節といっしょに何かがやって来る、そんな気がする―――。


ToHeart2のSS専用スレです。
新人作家もどしどし募集中。

※SS投入は割り込み防止の為、出来るだけメモ帳等に書いてから一括投入。
※名前欄には作家名か作品名、もしくは通し番号、また投入が一旦終わるときは分かるように。
※書き込む前にはリロードを。
※割り込まれても泣かない。
※容量が480kを越えたあたりで次スレ立てを。
※一定のレス数を書き込むと投稿規制がかかるので、レス数の多いSSの投下に気づいた人は
　支援してあげて下さい。
※コテハン・作家及び作家の運営するサイトの叩きは禁止。見かけてもスルー。

前スレ
ToHeart2 SS専用スレ 15（実質16）
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1154526119/

関連サイト等は>>2

AQUAPLUS『To Heart2』公式サイト
ttp://www.aquaplus.co.jp/th2/

ToHeart2 スレッド 過去ログ置き場(仮)
ttp://f55.aaa.livedoor.jp/~kuma/toheart2/
本スレや各キャラスレはこちらから。

ToHeart2 SideStory Links
ttp://toheart2.ss-links.net/

各キャラの呼称相関図は
ttp://botan.sakura.ne.jp/~siori/hth/
内のToHeart2呼び方相関図を参照。

ToHeart2 SS の書庫　(スレの全作品保管)
ttp://th2ss.hp.infoseek.co.jp/

※白に対する批判を書き込む人間は荒らしです。スルーしてください。
　荒らしに反応する人も荒らし。

>>1乙必殺カレー

>>1
うぃぅい、乙です〜。
このみんも珊瑚ちゃんもかわいいよ〜。

　

新しい場所って、なんか気分さっぱりする。
よっちちゃるのＳＳ希望。

荒らしは…、あくまで白を荒らしのネタに使ってるだけで本人について知らんのは確実。

⊂⌒ヽ　<^(ﾟwﾟ)ノハヾ^　(⌒⊃
　　＼ ＼ｗ ﾘ(i!ﾟ ヮﾟﾉｖ'`/､ / 　　　
⊂二二二　　・）　･）　ニ二⊃ 　　　　いやっほ〜う　かもりん信者の荒らし最高〜
　　　　＼　＼_ ....／　／ 　　　　　
　　　　　（　　　φ　　　）
　　　　　　ヽ＿,*､＿ノ　　 　　　　 　　　　　　　　
　　　　　　　　　ﾞﾐ;;;;;,_　
　　　　 　　　　　 ミ;;;;;;;;､;:..,,.,,,,,
　　　　　　　　　　　i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
　　　　　　　　　　　　ﾞゞy､､;:..､）　　｝ 　　　　　　　　
　　　　　　　　　 　　　.¨.､,_,,､_,,r_,ノ′ 　　　　
　　　　 　　　　　　/;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
　　　　　　　　　　ﾞ{y､､;:...:,:.:.､;:..:,:.:.　._　　､｝
　　　　　　　　　　　".¨ｰ=v ''‐ .:v､,,､_,r_,ノ′

To heart2の同人作者について語るスレ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1159711716/

あちらのスレだが…、立って早々、実に巧緻かつ精緻な分析が来た。
たしかに白は萌え文製造機ではなく、一人の「作家」なんだよね。
「やっぱりすげー」の一言にすべてが集約されている。
某有名大物作家のペンネームだという噂が出てくるのも頷ける。


12 名前：名無しさんだよもん[sage] 投稿日：2006/10/02(月) 00:33:04 ID:g8bta4cO0
最初に確認するけど、マジスレなんだよな？　ネタスレじゃないよな？

そもそも白詰草ってのは鳩のSSがメインの人間じゃない。
もとはオリジナル小説を書いていた作家で、
作品の質も基本的には二次創作のそれじゃなくオリジナルが念頭に置かれたもの。
読んだ時の妙な違和感はそこに起因するんだと俺は思ってる。
たぶん染み付いてるんだろうな、自分の手癖が。
だから何を書いても東鳩２じゃなく、白詰草の小説でしかなくなってしまう。

技術だけを見れば、すごい高レベルの作家ではあるよ。
草壁さんSSでの、過去と現在の対比から断絶していた間の人物の想いを見せている所とか、
このみSSでの、小さな綻びが次第にこのみの心を苛んで行く描写とか、
その辺の二次創作作家とは比較にならんとすら思う。
視点云々で批判されてるるーこSSにしても、引用を装飾にしながら、
格となるテーマをラストでひっくり返してみせるところはやっぱりすげーと思う。

でも、それだけなんだよな。
感動とか感心とかはあっても、東鳩２ならではの「萌え」がまったくない。
本人が気づいてないのは致命的だが、二次創作とか萌え系創作向きの作家じゃないんだよ。
好きだと公言してるミステリーか、そうじゃなきゃホラー書かせた方が多分モノになる。
少なくとも俺的観点では、オリジナル創作の方がずっと興味深い作品を書いてる。

本人には悪いが、葉鍵板とはきれいさっぱり手を切って、
自分のオリジナル小説に精を出したほうがいいと思うね。

なんでわざわざ別スレまで立ったというのにその話題をこっち持ってくるのか理解に苦しむ

>>11
自分のサイトできもい妄想文垂れ流してるだけの30男が「作家」かw

早くも荒らしが来た（笑

14 名前：名無しさんだよもん[sage] 投稿日：2006/10/02(月) 00:48:59 ID:upQIy5NB0
>>12
すまんがあんたの言ってる技術云々の話はワケがわからんｗ
後半であんた自身が言ってるように、彼が二次創作向きの作家でないってのは同意する。
俺もまったくその通りだと思う。

でも、だからってオリジナル小説を書けばモノになるかって言ったら、全然別の問題じゃないの？
俺は、彼の作品は二次創作だろうがオリジナルだろうが、「掴み」が弱いのが致命的な欠陥だと思う。
なんつーか、全然興味を引かれないんだよね。
それでも二次創作であれば原作のファンが読んでくれるかもしれないが、オリジナルで掴みが弱い
話なんて、断言してもいいが誰も読まないだろ。

あと、文章力の話だけど、正直言ってありゃエロゲライターはだしって感じのレベルだ。
全体的に情緒的、抽象的すぎて、あんなフィーリング文章じゃ作者の脳内世界が読者に伝わらんよ。
具体的な描写をできる技術を土台にして、ああいう文章を書くなら分かるけど、彼はそういう基礎を
すっ飛ばしていきなり応用に手を出してる印象が強い。
そういうのって世間じゃ悪文とか、ポエムとかって呼ばれるんだよ。覚えておいた方がいいぞ。

>>1乙でありますっ！隊長！

>>10のスレだが、「白詰草が自演した」とかわけわからんこと言う荒らしが粘着してて困ってる
何とかしてくれ・・・

>>16
ある意味そういうのを排除するために作ったスレだからな。
どうにもならんと思うぞ。

つーかID:Uj9kG2pr0、その話をこっちに持ってくるなって
何のためにスレ分けたんだよ

おまえガキのころウンコ見つけたら「みてみてー」って言って持ってくるタイプの人間だっただろ

馬鹿は所構わず騒ぐものだしなあ…
いくら自演されても完全スルーでいくしかないぞ、うー

　朝、起こしてくれたのはなんと薫子さんとカスミさん。おまけにこの二人、由真に誘われ、俺の
寝顔をじっくり眺めていたらしい。ったく、男の寝顔なんて何が面白いんだか。
　昨日の夜一人で玲於奈さんの家に行ったタマ姉は、玲於奈さんを連れて帰ってきた。左手には包帯
が巻かれていたけど、その理由をタマ姉は誰にも打ち明けなかった。そしてタマ姉と和解した様子の
玲於奈さんは薫子さんとカスミさんに心から謝り、薫子さんたちはそんな玲於奈さんを抱きしめた。
　翌日の放課後、裏山の神社に俺たちを呼び出した玲於奈さんたちは、九条院に帰ると告げる。
　タマ姉の想いを知り、自分たちの願いはそれを妨げるだけでしかないことも知ってしまった以上、
タマ姉の事はきっぱり諦めると言う玲於奈さん。そのあまりに早い別れを惜しむ優季に薫子さんは、
九条院こそ自分たちにとって大切な場所だからと言い、互いに編み物の腕を磨きましょうと微笑む
薫子さんに、涙目ながら優季も応えた。一方カスミさんは瑠璃ちゃんの耳元に何か囁く。後で聞いて
みると、絵本のことを覚えていたことを感謝されたとのこと。その意味はよく解らなかったけど、
きっとカスミさんにとっては一番嬉しかったことなのだろう。
　別れ際玲於奈さんは、タマ姉と付き合えとは言わないが、中途半端なことだけはするなと、半ば
脅迫めいた台詞で俺を叱りつけた。……そりゃ解ってるけどさぁ。

　玲於奈さんたちがこの町を去った、次の日の朝。
「――３８度５分、ね」
　渡した体温計を確認するタマ姉。
　タマ姉に起こされ、ソファーから立ち上がった俺だが、軽いめまいで身体がぐらついた。倒れたり
はしなかったものの、何だか身体がだるく、それに熱っぽい。もしかしたら風邪を引いたのかもしれ
ないが、まぁ動けないワケじゃなかったので、いつものようにまずは顔でも洗おうかと思ったのだが、
そばにいたタマ姉に異状を察知され、ソファーに座らされて体温計で熱を計っていたのだ。
　しかし、３８度５分か。やっぱ風邪引いたんだな、俺。
「結構あるわね。頭痛とか吐き気は？」

「ないよ」
「そう。まぁとにかく寝ていなさい。それから、今日は学校を休むこと。いいわね」
　う、やっぱ休めってか。
「いやこの程度なら大したことないって、大丈夫だいじょ――」
　立ち上がろうとした俺だったが、
　くるり。
　突然、視界が天井に向いたかと思ったら、背中がソファーにどすんと落ちた。
「駄目よ、寝てなさい」
　どうやらタマ姉に倒されたらしい。毛布を身体に掛けられる。
「うう……」
「朝はお粥にしてあげるわね。食べられる？」
「うん」
「念のため病院にも行っておくのよ。保険証はどこかしら？」
「あ、いや、病院はいいよ。ただの風邪なんだから、寝てりゃ治るって」
「駄目。ちゃんと病院に行って診てもらいなさい。あ、もしかして」
　タマ姉はニンマリと俺の顔を覗き込み、
「タカ坊、注射が怖いの？」
「い、いや、そんなことはないけどさ」
　とは否定するものの、正直言うと注射は苦手だ。あの針がプスッと刺さる痛みは、何度打たれても
慣れるものじゃない。
「そうよね。タカ坊はもう子供じゃないんだから、注射なんて怖くないわよね。
　なら、ちゃんと病院に行くこと。いいわね」
「はい……」
　いつもながら、タマ姉には敵わないなぁ。……観念するしかないか。

　程なく居間にやってきた由真たち、それから朝食をたかりにきたこのみも、俺が風邪を引いたと
知るや、心配そうに気遣ってくれた。それは嬉しいのだけれど……
「わたし、今日は学校休む」
　このみがとんでもないことを言い出した。
「このみ、それは――」
　タマ姉が口を挟むより早く、
「だってタカくん心配だもん。わたし、今日は一日ずっとタカくんの看病する」
　ガッツポーズでキッパリ言い切るこのみ。
「あ、あのさこのみちゃん、ただの風邪なんだからそこまでしなくても……」
　由真が言ってもこのみは首を横に振り、
「氷枕を作ったり、汗をかいたら体を拭いてあげたり、着替えを手伝ってあげたりしなきゃいけない
もん。それに病院だってついていってあげなきゃ」
「い、いやこのみ、俺、病院くらい一人で――」
「ダメ！　タカくん熱で頭がボーッとしてるんだから、一人で歩いてたら車に轢かれちゃうよ！」
　あくまで譲る気はないらしい。……まいったなぁ。
「このみちゃん、心配なのは解りますけど、貴明さん困ってますよ。
　自分のせいでこのみちゃんが学校を休むワケにはいかない。そうですよね、貴明さん」
　このみをたしなめる優季。俺も黙って肯く。全くもって優季の言うとおりだ。風邪くらいで看病だ
なんて大げさにも程が――
「なので、貴明さんの看病は私がしますから」
「ちょっと待てぇー！！」
　光の早さで由真のツッコミ。
「あんたも学生でしょうが！！　どさくさに紛れて何言ってるのよ！？」

「あ、やっぱりバレちゃいました？」
　肩をすくめる優季。
「バレるわよ！」
「うーかべは下心が見え見えだぞ。看病と言いつつ何をするか解ったものではないな」
「わ、私そんなエッチな女の子じゃありません！！」
　るーこに言い返す優季。やけに必死なのが気になったりもする。
「なので、ここはるーが――」
「ストップ！　るーことたかちゃんを二人きりになんか絶対させないかんね！
　なのでぇ、ここは花梨ちゃんが――」
「花梨に看病なんか出来るワケないでしょ！　あんたお粥作れるのお粥！？」
「お粥よりもタマゴサンドだよ！」
「風邪を引いたときはお粥なんです！　花梨さんには任せられません！」
「そうだよ！　やっぱりこのみが――」
　ああ、言い争いが始まってしまった。看病なんかいらないって言ってるのに、って言うかお願い
だから今は静かに寝かせて。
「なら、私が残るわ」
　うわ、タマ姉まで参戦ですか。
「環さんまで！？　環さんだって学生――」
「違うわ」
　タマ姉は胸を張り、
「私は、優等生よ」
「……は？」
「自分で言うのも何だけど、私は成績優秀なの。だから一日くらい休んだって平気よ。
　けどこのみや由真は駄目ね。あと花梨も」

「……」
　タマ姉の言葉にぐうの音も出ないこのみたち。
「わ、私は結構、成績いいですよ！」
「るーにとっては”うー”の学校の成績よりも、うーの身体の方が大事だぞ」
　言い返したのは優季とるーこ。
「ならこのみだって、成績よりもタカくんの方が大事だもん！」
「私もなんよ！」
　ああ、また不毛な言い争いになるのか。と、思いきや、
「ハァ……。これじゃ埒があかないわね。なら、平等に恨みっこなしって事で」
　タマ姉は全員を見回し、
「じゃんけんで決めましょう」

　じゃんけんの結果、俺の看病をすることとなったのは――
「……」
　仏頂面の瑠璃ちゃん。小声で「何でウチが……」とかぼやいているのだが、それならじゃんけんに
参加しなければよかったのに。
「瑠璃ちゃんも成績面では問題あるけど……、決まったものは仕方がないわね。
　それじゃ瑠璃ちゃん、よろしくお願いね。
　タカ坊、ちゃんと病院に行って、お医者様に診てもらうのよ。いいわね」
「ああ、解ってる」
「うう……、タカくん、出来るだけ早く帰ってくるからね」
　ちなみに今日は土曜日なので授業は午前中のみ。どうせ昼頃にはみんな帰ってくるのだ。だから
看病なんていらないって言ってるのに……。
「瑠璃ちゃんの言うことを聞いて、いい子でいるのよ、タ・カ・坊」

支援

　ちなみにコレは由真の台詞。タマ姉の口マネなんかしやがって。
「解ってるよ、さっさと行けさっさと」
　しっしっと手で払う。
「はいはい。じゃ、行ってきまーす」
　他のみんなも口々に「行ってきます」と言い、家を出ていった。
　居間に残ったのは俺と瑠璃ちゃんのみ。ああ、やっと静かになった。これで寝られる――
「貴明、もう着替えとき」
「え、瑠璃ちゃん、何で？」
「貴明、病院行ったことないん？　病院は朝、めっちゃ混むんやで。
　さっさと行って、順番待ちせな」
「順番待ちかぁ……。それならさ、病院は午後にしない？　午後なら多分患者さんも――」
「アホ。今日は土曜日、診察は午前だけや」
　あ、そうなのか。……ハァ、仕方がない。
　俺はだるい身体を起こし、瑠璃ちゃんが用意してくれた服に袖を通した。

　病院へは一人で行けるからと訴えても瑠璃ちゃんは聞く耳を持たず、「任されたから」の一点張り。
観念した俺は、瑠璃ちゃんと一緒に近所の病院へと足を運んだ。
　病院に着いたのは８時を少し過ぎた頃。診察は９時からだと言うのに、待合室には既に何人かの
患者さんがいた。とりあえず受付窓口の診察券入れに、何年かぶりの診察券と保険証を一緒に入れる。
後は待合室の椅子に座って、看護士さんに呼ばれるのを待つだけだ。
　俺たちが待っている間にも患者さんは次々とやってきて、待合室の椅子はほぼ満席となった。確か
に瑠璃ちゃんの言うとおり、早く来たのは正解だったようだ。
　などと考えてるうち、頭がボーッとしてくる。熱が上がったのかも。だるさも前より増している。
あー、家帰って寝たいなぁ。でもここは我慢だ、呼ばれるのを待とう。

　そう言えば、となりの瑠璃ちゃんは……、おや、瑠璃ちゃんが手にしているのは……絵本？
「瑠璃ちゃん、それは？」
「――え、あ、な、なに！？」
　慌てて絵本を隠す瑠璃ちゃん。
「いや、別に隠さなくても」
「うう……」
　赤面しつつも自分の行動の無意味さに気付いたようで、瑠璃ちゃんは絵本の表紙を俺に向ける。
「あ、『きかんしゃ　いえもん』か」
　それは、カスミさんがずっと探していたあの絵本。こんな病院の待合室にもあるなんて、な。
「ウチ……、カスミには『きかんしゃ　いえもん』知ってる言うたけど、覚えてるのは名前くらいで、
話なんて全然覚えてなかったんや。せやから……」
「そっか……」
　瑠璃ちゃんは再び絵本を読み始め、俺も邪魔しちゃ悪いので、とりあえず目を閉じた。

「河野さーん、河野貴明さーん、診察室にお入りくださーい」
　……あ、名前呼ばれた。
　看護士さんの声で目を覚ます。どうやら少し眠っていたようだ。
「じゃあ、呼ばれたから行ってくるね瑠璃ちゃ――あれ？」
　となりを見ると、そこに座っていたはずの瑠璃ちゃんの姿はなく、代わりに杖を持ったお婆ちゃん
が座っていた。
「ああ、妹さんならあちらですよ」
　お婆ちゃんが手で指した先には、柱にもたれかかって絵本を読んでる瑠璃ちゃん。お婆ちゃん、
俺と瑠璃ちゃんが兄妹だと思っているのか。
「妹さん、『お婆ちゃん、ここどうぞ』って、私に席を譲ってくれてくれたんですよ。

　今時珍しい、いいお嬢さんですねぇ。本当に助かりました」
「あ、いいえ、そんな」
　俺にまでぺこぺこと頭を下げるお婆ちゃん。何もしてないのに困っちゃうよ。
「じゃ、じゃあ、呼ばれたんで」
　とりあえず席を立ち、診察室へ。と、その前に。
「瑠璃ちゃん」
　瑠璃ちゃんに声を掛ける。瑠璃ちゃんは絵本から顔を上げ、
「貴明、呼ばれてるで。早よ行かな」
「ああ、解ってる。それより」
　俺はお婆ちゃんの方を見て、
「親切だな、瑠璃ちゃん」
　すると瑠璃ちゃんは途端に顔をしかめて、
「ええから、早よ行き！」
　俺の背中を診察室へとぐいぐい押す。……もしかして、照れてるの？

　お医者さんの診断結果は、やっぱり風邪。
　身体を暖かくしてゆっくり休むこと、消化にいい食べ物を三食しっかり食べること、熱が下がる
までは風呂は控えること、などの注意をされ、後は薬を処方するので一日三回、食後に飲めとのこと。
ちなみに注射はされなかった。思わずホッとしてしまった情けない俺である。
　病院を出て、処方箋の薬を薬屋さんで買って、あとは家に帰るだけ。なのだが、
「……」
　どうも診察前からこっち、瑠璃ちゃんの機嫌が悪い。気になるなぁ。
「あ、あのさ瑠璃ちゃん」
「なに？」

　むすっとした顔でこっちを向く瑠璃ちゃん。
「え、えっと……、な、なんか機嫌悪そうだけど、俺、何かしちゃった？」
　ちょっとビビりながらも尋ねる。一応病人なんだからキックは勘弁して欲しいなーとか思いつつ。
　すると瑠璃ちゃんは下を向き、
「……あのお婆ちゃん」
「え、あのお婆ちゃんがどうかした？」
「ウチのこと……、妹やて……」
　小声だったが、幸いちゃんと聞こえた。そっか、それを気にしてたのか。
「あー、いやほら、それは仕方がないでしょ」
「なんでや！？　ウチが子供っぽい言うんか！？」
「いやそうじゃなくて、何て言うかなぁ……、一緒にいたから兄妹とか夫婦とか」
　その途端、瑠璃ちゃんは真っ赤な顔で、
「ふ、夫婦！？」
　あまり深く考えずに言ったのだが、夫婦って例えはマズかったかな、やっぱ？
「うう〜」
　瑠璃ちゃんはわなわなと震え、そして、
「貴明のお昼、激辛カレーに決定！！」
「えええっ！？　な、何でぇ？」
「激辛カレー食べて、汗いっぱいかけばええ！　そしたら風邪なんか一発で治る！」
「い、いや出来たらもちっと身体に優しい食べ物を……」
「ほな、激辛お粥！　お粥なら消化にええ！　文句ないやろ！」
　げ、激辛お粥って……

　つづく。

どうもです。第７５話です。
>>25さん、支援ありがとうございました。m( __ __ )m

またまたＴＨ２と関係ない話ですが、「うたわれるもの」の最終回で泣きました。｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
（まだ見てない人がいると思うので詳細はナイショ）
あー、早くＰＳ２版出ないかなぁ。

乙

休まず新展開乙
河野さんのタカ坊が風邪引いた……ネギ！ネギ！

白詰草の件見て思ったんだが、フアンもアンチも
まず作品を読んでもらなわいことにはつかないんだよな。

あれだけの数の人に読んでもらってるということは、やっぱりすげえよ。
俺のサイトとは段違いの反響だしな。アンチも人気の一部、とはよく言ったもんだとおもうぜ

隔離スレは変な自演が沸いてて機能してないのでこちらに書かせてもらった。

河野家乙ですー。

うたわれはやったことないんだけど
面白い？
誰かPS2版の購入を検討中の漏れの背中を押してくだされ。

>>33
うん。一言で言おうと思ったがお前はまだ話せば分かりそうだと思うから長く言う。

そういう自演とか自治とか隔離とか全部関係無しに、１個人の話をするのはスレ違いだから。
別にお前が白詰草のことをどう思おうが勝手だが、胸の中に収めてくれ。
スレ違いｽﾏｿ

そして河野家乙。今回は瑠璃にスポットを当てているようで、瑠璃の活躍に期待します。
後エロイ草壁さんｲｲﾖｲｲﾖ

えーと、ＰＳ２版はエロ抜きです

河野家ＧＪ！
これからもＳＳ作家としての憧れであってください。

優等生はないだろうタマ姉。ｗ

>>32
ちょｗｗｗネギはアカンｗｗｗｗ

>>35
OKわかった理解した。
白詰草を批判してる奴はただの荒らしだから、今後もスルーで頼むぜ。

>>40
お願い、あなたが一番スルーできてないことにそろそろ気付いて。

>>41
白詰草の自演にいちいち付き合ってたら身がもたんよ。

今や白の名を口に出す奴は全員荒らしだからｗｗｗｗｗｗ
この状況でノコノコとスレにやってくる白も荒らしだからｗｗｗｗ

>>43
それは行き過ぎなんじゃねえか？
もともと隔離スレを立てたのは白詰草アンチ（＝荒らし）を追い出すためだし。
奴を支持する意見や、建設的な助言なら書いても構わんと思うぜ。

お前ら、みんなあっちで話しろｗ
何のための隔離スレだ
本人はもとより話題を引っ張って雑談する連中も隔離対象だぞ

白支持　 :　1%未満
白消えろ　:　99%以上

確かにこの状況で白批判なんか書いたらスレ埋まっちまうからな
てか向こう行こうぜ

郁乃ちゃんの登下校を再び手伝うようになってから一週間。
タマ姉にからかわれることも、好奇の目に晒されることも少なくなってきた。
言うならば、それが当たり前のことになってしまったのだろう。
……俺としては、お姫さま抱っこが当たり前になってしまったのは
非常に困るところなのだが。何せ恥ずかしいし、俺の心臓にも良くない。
何で最初に手伝ったときにおんぶするという選択肢が思いつかなかったのだろう。
この期に及んで、女の子が苦手なんて言うわけにもいかないし。
ていうか格好悪いからあんまり言いたくない……今更とかいうな。
これでも気にしてるんだ。でも恥ずかしいのは郁乃ちゃんも同じのはず。
と思ったのが二日前。さっそく俺は郁乃ちゃんに
「恥ずかしいから、これからはおんぶにしてもいいかな？」
と聞いたのだが、その返答は
「私だって最初は死ぬほど恥ずかしかったんだから。
あんたも少しは恥ずかしい思いをしなさい」
というものだった。なんで手伝っている俺があんな風に言われなければならないのだろう。

郁乃ちゃん最初は、って言ってたけど、今は恥ずかしくないのだろうか。
俺ごとき男の範疇にも入らないってことなのか？確かに俺は女顔だし情けないけど。
もしそうだとしたらかなりへこむ。だからって面と向かって聞けるわけも無いし。
「あんた、考え事するのが趣味なの？」
……そうだ、今１年生の教室の前で郁乃ちゃんを待ってるんだった。
気が付けば、周りの生徒が俺のことを珍獣を見るような目で見ていた。
確かに、最近ところ構わず考え事をしてる気がする。少し気をつけよう。
「趣味ってわけじゃないけど、考えても答えが出ないことが最近多いんだよ」
おもに郁乃ちゃんがらみでね、とは言わない。言ったら何をされるか分かったもんじゃないし。
「考えても答えが出ないなら、最初から考えなきゃ良いじゃない」
「もしかしたら名案が浮かぶかもしれないだろ。それに、考えもしないで諦めるのは良くない」
「……あんた、意外に真面目だったのね」
意外は余計だ、意外は。いったい俺は郁乃ちゃんにどんな評価をされているのだろうか。
何を言われるか分かったもんじゃないから聞きたくないけどさ。
最悪、対人恐怖症になったり自殺することも考えられる。

「……言葉って残酷だよな」
「いきなり何よ。にしても姉は？今日病院行くから急がないといけないといけないんだけど」
「ああ、小牧さんなら『どうしても外せない用事が出来ちゃったから、悪いんだけど郁乃を病院までお願いしても良いかな？』って言ってたぞ」
普段人を頼ることをほとんどしない小牧が俺を頼ってきたことからも伺えるように、よっぽどの用事なのだろう。何せ郁乃の世話よりも優先したのだから。
「……全く、お人よしなんだから」
「まあ小牧さんに比べたら全然頼りないと思うけど、今日家に帰るまでは責任もって面倒見るから」
「不本意だけど、よろしくお願いするわ」
いちいち不本意なんていわなければ可愛げがあるのに。本当に可愛くない後輩だ。
その後は特に何もなく病院に着いた。これで郁乃ちゃんの用事が終わるのを待って送り届ければ、
無事に役目も終わる。まあ役目ってほど大げさなものでもないが、何かあったら困るし。
それに、郁乃ちゃんとの距離感を掴みきれていないのも辛い。
普通に話してるつもりでも、微妙に間が空いたりするし。ああいう気まずさは勘弁して欲しい。

「あの」
「え、あ。何ですか？」
「小牧郁乃さんの付き添いの方ですよね？」
「えーっと……まあ、はい」
「じゃあ、ちょっとこっちに来てもらえますか？」
そういうと、俺は若い看護婦さんに手を引っ張られるようにして連行された。
「あ、あの」
「郁乃ちゃんの彼氏さんですか？」
「いい、か、彼氏！？ち、違います。普通の友達です」
「普通の友達に、あのお姉さんが付き添いを任せるとは思えないけど？」
そんなに明るい声で同意を求められても……それより、手、手！
「あ、ごめんね。こんなとこ見られたら、郁乃ちゃんに怒られちゃうわね。
郁乃ちゃん、結構独占欲強いみたいだから」
「確かにそういうところありますね。でも俺は彼氏じゃないし、怒られたりしませんよ」

「あら、じゃあ手を繋いだままでもいいのかしら？」
「そ、それはちょっと……」
「うふふ、初心なのね」
その後、目的の場所に着くほんの少しの間だが、看護婦さんにからかわれ続けた。
……何だって俺の周りはこんな人ばかりなのだろう。俺、苛めて光線でも出してるのか？
「はい、着いた。ここで郁乃ちゃんがリハビリしてるから、少し見学していって」
「はぁ」
「じゃ、頑張ってね」
何を頑張るのかさっぱり分からないが、看護婦さんは去っていった。
これで心の平穏は取り戻せそうだ。
「でも見学しろって言ったって……」
俺が見ているのを知ったら、郁乃ちゃんは烈火の如く怒る気がする。
触らぬ神に祟り無し。待合室に戻ろう。
「あら、どこへ行くのかしら？」
引き返したとたん、さっきの看護婦さんに呼び止められた。

……頼むから仕事してください。
「いや、俺が見てるって分かったら郁乃ちゃん怒りそうなんで引き返すそうかと……」
「大丈夫、郁乃ちゃん素直じゃないから怒るかもしれないけど、ただの照れ隠しだから」
「いや、照れるってことは恥ずかしいってことじゃないですか。
人の恥ずかしい姿を見るような趣味は無いんで」
「あら、彼氏だったら見る権利があると思うわ。それに嫌よ嫌よも好きのうちって言うでしょ？」
それは本当に嫌がってる人に、何かを無理やりするときの常套句だと思うのは俺だけだろうか。
「と・に・か・く、早く行って来なさい。今度戻ってきたらただじゃおかないからね！」
「は、はい」
なんでこんなところで知らない看護婦さんに怒られてるんだろう。
俺、何か悪いことをしただろうか。
……ぜんっぜん気が進まないけど、行かないとまた何か言われるだけだし、行くか。
意を決して、郁乃ちゃんがリハビリをしている場所へ入る。

そこには、真剣な顔でリハビリをしている郁乃ちゃんがいた。
「それぐらいにしておこう。あんまり無理をしても意味が無いからね」
「はぁ、はぁ……わ、分かりました」
見たところ、平行棒と松葉杖を使った歩行訓練をしていたようだ。
郁乃ちゃん、ずっと寝たきりで筋肉が無くて歩けないって言ってたな。
俺も一度骨折してリハビリをしたことがあるが、ギプスをしていたのはせいぜい３ヶ月。
確かに大変だったが、郁乃ちゃんほどの苦労はしていないだろう。
「ここのところ本当に真面目にやってるね。このぶんなら近いうちに歩いて登校できるよ」
「本当ですか？」
「ただ、あまり無理はしないこと。いいね？」
「はい」
「しかし、恋をすると人は強くなるね」
「こここ恋！？わ、私恋なんてしてませんよ」
「隠さなくたっていいんだよ。ほら、お相手がそこでじっと見てるよ」

何か話しているようだが、内容は聞こえない。しかし、先生がこっちを指差すと
同時に郁乃ちゃんがこっちを向いてしまった。うわ、すごい真っ赤だ。
「ど、どうしてあんたがここにいるのよ！」
「看護婦さんから、郁乃ちゃんのリハビリを見るように言われて来たんだけど……ごめんね？」
「何で謝るのよ」
「いや、郁乃ちゃんって頑張ってるところとか見られるの好きじゃないタイプだと思って」
「う……べ、別に良いわよ。大方あの強引な岩村さんに無理やり連れてこられたんでしょ」
「まぁ無理やりつれてこられたのは本当だけど、見ちゃったのは俺だから」
「ぐぅ……私が別にいいって言ってるんだからいいわよ」
「しかし、郁乃ちゃんも可愛いところあるね」
「な、何が！？」
「小牧さんに迷惑かけたくないからあんなに真剣なんだろ？俺ちょっと感動しちゃったよ」
「……」
「あれ、郁乃ちゃん？」
その後、家に帰るまで郁乃ちゃんはずっと不機嫌なままだった。
それを雄二やタマ姉、小牧さんに話すと皆にため息をつかれた……俺が何をしたっていうんだ。

第五話です。次回もこれぐらいのペースであげられたらいいなと思います。
何か毎回同じような形で話が進んでるような気がする……次回はもう少し何か、
進展出来るように頑張ります。
感想・ご指摘・批判などございましたらぜひぜひください。
出来れば誹謗中傷は勘弁していただけるとありがたいです。

乙です
いいカンジで話が進んでますな
なんとも煮えきらぬカンジがいかにも貴明で。

河野家お疲れ様、処方された薬に座位薬がありそうだｗ
エッチな草壁さんって良い響きだ。
>>34
東鳩が好きなら楽しめると思う。
>>55
いかにも貴明らしく変わらない所から、どのように変わるかが楽しみです。

>>55
ぱっと見は、ベタな展開なのに読んでて何故かニヤニヤしてきました。
これからも期待していますので頑張ってください。

>>57
http://www2.tokai.or.jp/v-sat/index.html
ここの　夢の続き　の草壁さんは、えっちぃです。

「あはははは、はっ腹痛い、あははは」
「ほっホントだね、あははは」
「いっ今の面白すぎっしょ、あはははは」
「ぷっ……くくく……」

男としては嬉しいけど。心臓には悪すぎる食卓を終えて、テレビをつけたらバラエティ番組やってたので見る事にした。
……が、全員ツボにはまってしまい、ついつい大笑いしながら魅入ってしまった。
約一名は、笑いを我慢してたのか表現し難いのか、押し殺したような笑いだったけど。

「あー、面白かった」
「そうだね、笑い過ぎて喉とお腹痛いよ」
「あたしも、久し振りに笑わせて貰ったッス」
「確かにあれは面白かった。先輩、そろそろ８時です」
「そうだね、そろそろ風呂入ろっか」

確かに、そろそろ風呂に入る時間だよな。
……何か、メシの時の流れからして一緒に入ろうとか言い出しそうだな。
でも、俺の家の浴室は広くは無いし、詰めても３人が良いとこだから心配ないか。

「それじゃ、皆で入るっしょ」
「タカ君の家のお風呂じゃ、詰めて精々三人だよ」
「あら残念、じゃあ余裕持って入りたいし……４人居るから２人ずつで行くっしょ」
「ちょっと待て、何故俺を混ぜる？」
「すみません、タヌキはどうも発情期らしい」
「人聞きの悪い事言うな」

年頃の娘さんの言うシャレじゃないっつーか、シャレのレベルをはるかに超えてますよ。

「それじゃ、ジャンケンで順番決めようよ」
「よし、負けないっしょ」
「うん」
『ジャーンケーン！』

「じゃあ、行ってくるね」
「行ってきます」

……今日は良く女の子と２人っきりになる日だな。
雄二が聞いたら、絶対血の涙流して突っかかる事間違い無しだ。

「それじゃどうする？」
「それじゃ、ゲームやりましょうゲーム。ちゃるもこのみも格ゲーしないから、相手欲しかったんスよ」
「お、良いね。俺もそろそろ新しい相手欲しかったんだよね」
「ふっふっふ、センパ……お兄ちゃんといえど、手加減はしないッス」
「望む所。それと言い難いなら別にセンパイで良いよ」

チエちゃんは俺も得意の格闘ゲームをチョイスし、いざ勝負。

「貰ったッス！　このコンボさえ入れば！！」
「あ、しまった！　……うう、やられた」
「ふぅっ、危なかったっしょ……どうッスかセンパイ」

伊達じゃないと言わんばかりに胸をはるチエちゃん。
確かに、一瞬の油断が勝負の分け目と言わんばかりの拮抗したゲームだった。

「いや〜、参った。強いね」
「センパイも強いッスよ。こんなギリギリの勝負なんて初めてッス」
「はは、実は俺も」

元々そうだけど、結構親しめる子だな。
……考えてみれば、チエちゃんといいミチルちゃんといい、今まで避けてばっかでろくに知りもしないよな俺。

「……」
「？　どうかしましたか、センパイ？」
「いや、ちょっと考え事してただけ」

避けてばかりで良いとは思ってない。
増してや今日は、この子達の良い所がたくさん見つかった。
……今までを悔やんでしまう位に。

「……次何にする？　これの続きでも良いけど」
「えっと……これの続きッス。何かセンパイ、今日はノリ良いッスね」
「今日位はね……ずっと何時もの調子じゃ悪いし、何より良い機会だと思ったから」
「そう思ってくれたなら、今日は来て良かったッス。センパイの女性の苦手意識も治ってくれるなら、一石二鳥っしょ」
「……やっぱ気付いてた？」
「だって３年間避けられてばかりなのに、フォーメーションＡやＢをやってる時は嫌がってる様子が無いッスから」
「ああ、あれね……」

そう……フォーメーションＡとかＢとかって、２人に良く引っ付かれてたっけ。
最初の頃もそうだけど、特に中２位からこの子の発育具合が直に判るレベルになった所為で、すごくきつかった。
当時の本人曰く、スタイルでは学年一を記録したそうです。

「……正直、心臓が破裂しそうだったよ。女の子に２人もくっ付かれるだなんて」
「あはは、でもあれはあたし達なりのスキンシップッスから」
「その割にはあんまり見た事無いような……」
「流石に、誰にでもって訳じゃないっスよ。あたしもちゃるも相手は選びます」
「まあそうだろうね、チエちゃんって友好的な感じであっても軽そうには見えないし」
「はい、これでもガードは固いッスよ」

ガードは固いか……俺の場合って、値しないのか信用されてんのか。
前者って感じだけど、来た時の雰囲気じゃ後者……でも、前者っぽい気もするな。

ガチャッ！

「タカ君、よっち、あがったよ」
「いいお湯加減でした」

さっぱりした感じの２人が、女の子らしいパジャマを纏って立っていた。
……風呂上りの女の子って、やたらと色っぽく見えるよな

「あ、もうそんな時間？　じゃあこれで決着つけようか」
「はい、了解ッス」

相手がガードを交えつつ接近、今までのパターンからして恐らくこちらの隙を見て突撃技をかけるのだろう。
ならその突撃技を出させて、俺の得意の究極技に繋がるコンボで勝負だ。

「さあ、これで決めるッスよ」
「それはどうかな？」

チエちゃんの飛び道具形の技が飛び、ガードした後に足払い……。
それをよけ、チエちゃんが例のパターンの兆候が見えた。
予想通り突撃技を繰り出すが、間一髪で回避。
その隙にダッシュ、そして得意のコンボを繰り出す。

「よし、これなら行ける」
「ああ！」

コンボも滞りなく繋がり、ラストの究極技も入力ミスもなく入る。

「よし、決まった」
「ああ……やられたッス」
「ふぅ……いや〜、ある意味バクチだったけど、何とか勝てたよ」
「まさか読まれるとは思わなかったッスよ。また勝負しましょうね」
「ああ」

機嫌良さそうに、さっさと部屋から出て行ってしまった。
……女の子が苦手……だった筈なのに、自分自身あの雰囲気を求めてる様な気がする。

「タカ君、すっかりよっちと仲良しだね」
「ああ、そうだな。今までを挽回するにはまだ足りないけど」
「どう言う事？　あれ、ちゃるどうして嬉しそうなの？」
「泊まりに来て良かったと思ったから」

……お見通しですか。

と言う訳で、お泊り編風呂パート……つーか、風呂描写はないッスけど。
今のタカ君の段階で一緒には流石に無理があったんで。

新スレになった事で気分一新、改めてがんばろうって気になりますね。
では、改めて未熟者ですがよろしくです。

>>68にはガッカリだ

>68
その無理をなんとかするのが作者の腕だろうが！この未熟者め！



……うそです>68ＧＪです引き続き頑張ってください
>55
相変わらず雰囲気良いっス。どんな流れになっていくのかwktk

>>68
よっちに大期待です。でも、ちゃるが活躍してるSSってほとんど見たこと無いから
ひそかにちゃるにも期待。でも、私はやっぱりよっちのほうが……ｗ

次回作は、貴明に先に風呂入らせて、そこに乱入してくるよっちという展開でお願いします。

風呂パートって名ばかりだけに、かなり不評のようですね。

>>69
ガッカリさせて申し訳ありません

>>70
すみません、期待裏切ってしまい。

>>71
ありがとうございます、よっちちゃるの同士居てくれて嬉しいッス。
……その手があったか、ご意見どうもッス。

と言う訳で、風呂描写無しがかなり不評みたいなんで、次は風呂パート後編って事にします。
まだ段階じゃないから、１８禁はやりません。せいぜい１５禁程度に。
何とかしろと言う意見があるでしょうが、流石にここでやると後々でかなり困りますので。
とりあえずこれで不評は控えていただけると、ありがたいです。

これは真剣でお相手せねばなるまいよｗ

いわゆるGJ
かなり期待してまつyo

よくある展開だと水着風呂だよな
急にあとから入ってタオルだけかと思ったら水着だったといふ。
それはそれでアリだと思うが、
今の段階ではなしで正解だと。

この先も期待します

　スーパーの入り口をくぐると、もう迷いもせずインスタント食品のコーナーに向かう。
一人暮らしもこれだけ長くなると、今更カップラーメンがどこに並んでいるかで迷うこと
もない。
　まあ、栄養が偏るって言うタマ姉やこのみの言っていることもわかるんだけど。
　と言うわけで、今日は栄養のバランスを考えて、この野菜たっぷり塩ラーメンと言うの
を買ってみよう。野菜たっぷりというくらいなんだから、きっと栄養のバランスも良いに
ちがいない。ビタミンＣとか。
　やっぱり、毎日自炊は面倒だし。
　新商品や気に入っているやつなんかを、目に付くたびにかごの中に入れていく。
　これだけあれば、しばらく餓死の心配はないだろう。
　帰り道。
　いつものスーパーで今日の晩御飯のタネを買って帰る。色とりどりの野菜や、たくさん
のスパイス瓶を横目にカップラーメンを買うというのは、正直侘しい気がしないでもない。
　そりゃ、俺だって一人で寂しくカップラーメンをすするよりは、誰かと一緒に楽しく夕
食を囲んだほうが楽しいことくらい知っているんだけど。

「そう毎日毎日、瑠璃ちゃんやイルファさんのご厄介にばかりなるわけにも行かないし」

　ただでさえ、週末には姫百合家に入り浸っている状態が続いているんだ。いくら珊瑚ち
ゃんがお金持ちだって言ったって、そう毎日お世話にばかりなるわけにはいかないし。せ
めて普段の炊事洗濯くらい自分一人でやって見せなきゃ、珊瑚ちゃんたちを心配させてし
まう。
　まあ、それで夕飯がカップラーメンだということには、目を瞑ってもらうとして。
　しかし、こうやってあらためて見てみると色んな野菜があるもんだと思う。定番のジャ
ガイモ、ニンジン、玉ねぎと来て、えーと、パプリカに、タンポポまで売ってるのか。ど
うやって食べるんだ、これ？
　スイカは果物じゃなくて、野菜だよなぁ。カリフラワーとブロッコリーって、どっちが
カリフラワーでどっちがブロッコリーだっけ。

「貴明さん？　貴明さんもお買い物ですか？」

　カリフラワーとブロッコリーを見比べて首を捻っていると、聞き慣れた声に名前を呼ば
れた。
　
「イルファさん？」

　イルファさんも買い物の最中だったみたいだ。手に提げた買い物籠の中には、きっと今
日の夕御飯の材料なんだろう。いろいろな食材が入っている。

「熱心にご覧になられていましたけど、貴明さん、今日は何になさるんですか？」

「え、いや、俺は」

　まさかまたカップラーメンだとは言いづらい。ただでさえイルファさんには、毎日の食
生活のことで注意を受けているんだ。ここでカップラーメンを買っていることがバレでも
したら、本気で珊瑚ちゃんの家まで、御飯を食べに連行されかねない。

「て、適当に、材料でも考えながら」

　苦しい言い訳だけれど、幸いイルファさんは俺の足元に隠した、ラーメンの満載された
籠には気が付かずにいてくれたようだ。
　後はこの隙にここから離れて、イルファさんが帰ってからゆっくり買いなおせば良い。

「イルファさんこそ、今日は何をつくるの？」

「はい、私も実は決まっていなくて。瑠璃様や珊瑚様に喜んでいただける物をお出しした
いのですが、お二人とも何でも良いとおっしゃるばかりで。だからと言ってお二人の好き
な物ばかりを作っていたのでは偏りができますし、それに、お野菜も最近値段が高くなっ
てしまって」

　頬に手をあて、悩むイルファさん。
　そんなイルファさんはまるで

「まるで二人のお母さんみたいだね。うん、きっと良い主婦になれるよ」

「も、もう貴明さん。からかわないでください」

　顔を赤くして、怒るイルファさん。慌てて謝ったけど、笑いながらじゃやっぱり許して
くれないみたいだ。

「ごめんごめん、でも、主婦の人みたいだって思ったのは本当だよ。イルファさん、すご
くしっかりしてるし。だから瑠璃ちゃんだって、家のことイルファさんに任せてるんだと
思うよ」

「もう。ほめてくださるのでしたら、もっと他の言い方をしてくださればよかったのに」

　ようやく、機嫌を直してくれたみたいだ。

「その、例えば・・・良い奥さん、ですとか・・・・・・」

「お詫びと言ったらなんだけどさ、そのか・・・イルファさん、どうかしたの？」

「い、いえ、何も。貴明さんこそ、何か言いかけていたようですけど」

　怒っている訳じゃ無さそうだけど、でもどこか様子がおかしいイルファさん。ちょっと
からかい過ぎたか？　

「あ、うん。籠、重たくない？　代わりに持つけど」

「そう、ですか？　それではお言葉に甘えて、持っていただいてもよろしいでしょうか」

「もちろん。いつもイルファさんにはお世話になっているんだから、もっと甘えてくれたっ
て良いくらいだよ」

「もう。そんなことをおっしゃいますと、私、本気にしてしまいますよ？」

　互いに笑いあいながら、俺はイルファさんから籠を受け取る。
　最近、こうやってイルファさんも俺を頼ってくれるようになってきた。
　メイドロボだからって、全部自分でこなそうとしていたイルファさん。でも、やっぱり
俺にとってイルファさんは家族みたいなものなんだから、手伝えることは手伝いたいし。
イルファさんの方から頼られるとすごく嬉しい。

支援

　イルファさんも、喜んでくれてるだろうか。

「ですが、貴明さん。貴明さんのお買い物はよろしいのですか？」

「ああ、うん。俺の買い物なんて、どうぜカッ

　プラーメンと言いそうになって慌てて口を塞ぐ。だから俺は、イルファさんから今日の
晩御飯の内容をごまかさなきゃいけないって言うのに。

「かっ、簡単な物しか買わないし」

「では、先ほど籠の中に沢山はいってました材料は」

　拙い、見られてた。幸い中身までは気付かれて無かったみたいだけれど。
　イルファさんの表情がどんどん曇っていく。
　視線の先には、カップラーメンが山のように入っている買い物籠。隙を見て試食コーナー
の脇にそれとなく移動させていたのに。

「貴明さん」

　溜息混じりに名前をよばれてしまうと、本当に申し訳ない気持ちで一杯になる。
　イルファさんや瑠璃ちゃんが、本当に俺の健康のこと気遣ってくれていることはわかっ
ているんだ。わかってはいるんだけど、どうしても面倒くさくなっちゃって。

「わかりました。何度言いましてもわかってくださらない貴明さんには、やはり実力を行
使させていただく必要があるようです」

　なんだか怖いイルファさん。
　おもむろに携帯電話を取り出すと、どこかへ電話を。

「あ、珊瑚様ですか。はい、いえ、いまスーパーで貴明さんと」

　電話の先は珊瑚ちゃんのようだ。野菜の棚と精肉コーナーの間に立って、イルファさん
は真剣な面持ちで珊瑚ちゃんと電話で話している。
　逃げ出しちゃ、さすがにまずいよなぁ。

「では。はい。はい、頑張らせていただきます」

　終わったみたいだ。

「それでは貴明さん、参りましょうか」

「ま、参るって、どこに？」

　ああ、イルファさんの、何かを企んでる笑顔だ。
　そういえば確か、あの時、俺を裸に剥いた時のイルファさんもこんな笑顔をしてた。

「もちろん、貴明さんのお家にです。今夜の貴明さんのお夕食は、私がつくらせていただ
きます」

　思わず、スーパーの中だって言うのに大声を上げてしまった。周囲からは注目を受ける
し警備員には睨まれるし、慌てて口を押さえたんだけれど。

「で、でもイルファさん、珊瑚ちゃんたちのご飯の買い物に来てたんじゃ。それで俺の家
にご飯つくりに行っちゃ、まずいんじゃないの？」

「いえ、珊瑚様と瑠璃様のお許しは今いただきましたので。それに珊瑚様から、自分たち
の分まで貴明さんにお食事を作ってあげて欲しいと言っていただきましたから」

　だから貴明さんは、今日は何を食べたいですか？　と言われても。
　こうやってお世話になるのが申し訳なくて、一緒に住むのだって断り続けていたのに。

「貴明さん」

　真剣な表情で、名前を呼ばれる。

「は、はい」

「貴明さんが、珊瑚様、瑠璃様や私たちに迷惑をかけたくない、一人で頑張りたいという
お気持ちは良くわかります。ですが、私たちだって貴明さんのことを心配しているのです
よ？　一緒に生活するのが嫌だとおっしゃるのならせめて、たまにお食事をつくることぐ
らいさせてください」

　真っ直ぐにこっちの目を見て、イルファさんにそう言われてしまった。
　ああ、馬鹿だな、俺って。結局こうやって、みんなに心配させちゃってるんだから。

「じゃあ、お願いしようかな。いや、お願いしたいな、イルファさん。俺、イルファさん
の作ったご飯が食べたいよ」

「はい、ぜひ。喜んで」

　イルファさんは満足そうに微笑むと、頷いてくれた。
　と、

「い、イルファさん！？」

「はい。それでは晩御飯のメニューは何にしましょうか」

　籠を持つ腕とは逆の腕を取ると、しっかりと腕を組んでスーパーの中を俺を連れて歩く
イルファさん。
　家の中でならともかく、こんな人の大勢いるような場所で、しかも夕食の買い物のため
のスーパーで。周囲の視線が全部こっちに集まっているような気がするんだけど、イルファ
さんの方ではそんなことは全く気にならないみたいだ。
　それどころかこっちに体を寄せてくると、嬉しそうに商品の棚を覗いていく。
　まあ、良いか。これくらい、ご飯をつくってくれるお礼だと思えば安いもんだ。
　それにこんな嬉しそうな顔のイルファさんを見られるんなら、少しくらい恥ずかしい思
いをしたってお釣りがくる。
　俺の持つ籠の中にジャガイモと、ニンジンと、お肉と、白滝を入れて。今日の晩御飯は
肉じゃがだそうだ。

「お邪魔いたします」

「そんなに遠慮しなくてもいいよ。ほら、入って入って」

　イルファさんはクスクスと笑い声をあげながら、リビングの方に入って行く。
　結局、スーパーから家に着くまで、ずっと腕は組んだままだった。もう途中から俺も周
りの注目とかが気にならなくなって、素直にイルファさんと家に帰れることを楽しんでい
られた。

「それではすぐに作ってしまいますので、少々お待ちくださいね」

「あ、何か手伝おうか？」

「そうですか？」

　それでは・・・・・・とイルファさんは家のキッチンを見渡して

「それでは、お米をといでいただいてもよろしいですか？」

　と言った。

「それぐらいお安い御用だよ」

　俺がお米をとぐ横で、イルファさんはスーパーで買ってきたものを袋から出す。

「あの、貴明さん。包丁はどちらに」

「あ、そこの扉開けて、うん、そこ」

　イルファさんの使う包丁の音がリビングまで響いてくる。他にも何か手伝うことが無
いか聞いてみたんだけど「後は私に任せてください。きっと貴明さんを満足させられる
肉じゃがを作ってみせますので」と言われてキッチンを追い出されてしまった。
　エプロンをしてキッチンに向かうイルファさんはなんだかとてもウキウキした様子で。
たまに鼻歌まで聞こえてくる。
　これは邪魔しちゃむしろ悪いかな。
　そう思ってソファに座って本でも読みながら待っていたんだけど、どうも中の様子が
おかしい。
　さっきまでイルファさんの忙しく動く音が聞こえてきていたのに、それが止んでしまっ
ている。

「イルファさん、どうかした？」

お、まずさいの作者さんきた！　支援支援

　キッチンの中を覗いてみると、イルファさんが棚を覗いてしゃがみこんでいた。

「あ、はい、それが・・・・・・」

　なんだか言いにくそうにイルファさんは、棚の奥から空になったボトルを取り出して。

「お醤油が、無いんです」

　そういえばこの間、野菜炒めを作るときに使って無くなったんだっけ。

「じゃ、ちょっと行って買ってくるよ」

「あ、それなら私が」

「いいって。それにイルファさんは、そっちのお鍋の方を見ててよ。期待してるからさ」

　そう言うとイルファさんは、顔を赤くして黙ってしまった。

「それじゃあ行ってくるよ。あ、醤油の他になにか買ってくる物ってある？」

「それでは、他にみりんと、お砂糖も」

　いそいでさっき行ったスーパーまで走って行く。
　しかし調味料関係がほとんど無いなんて、普段料理してないことがバレバレだな。
　買うものはすぐに見つかった。どうせ自分じゃそんなに料理なんてしないんだし、一
番小さいパックで良いだろう。
　そんなことよりも、イルファさんが家で待っている。早く、帰ってあげないと。

「あら、タカくんもお買い物？」

　そう思ってスーパーから出ると、後ろから良く知った声に呼び止められた。

「感心感心。カップラーメンばかりじゃなくて、ちゃんと自分で料理しているようね」

「あ、春夏さん。どうも。春夏さんもお買い物ですか？」

「うん、まあね。うちには良く食べるのが二人もいるものだから、お買い物も大変よ」

　そう言う春夏さんのビニール袋には、確かに、このみのやつ一体どれだけ量を食べて
るんだと思うような量の食材が入っている。

「ところでタカくん」

　と、急に声を潜める春夏さん。

「さっき、タカくん、女の人と手を組んで買い物してなかった？」

　ああ、イルファさんと歩いてたの見てたんだ。まあ、この時間にこのあたりを歩いて
たら、見られてても不思議はないけど。
　イルファさんのことを説明すると、このみから噂でも聞いていたんだろう。わりとあっ
さり納得してくれた。

「それで、俺の晩御飯作ってくれるっていうから、一緒に買い物してたんだけど」

「ふーん、そうなんだ。タカくんが自分で料理するために、そのお醤油も買ったわけじゃ
ないのね？」

　あ、そうだ。

「そう言うわけで俺、早くもどらなきゃいけないから。イルファさんが待ってるし。そ
れじゃあ、春夏さん」

「はいはい。早くタカくんの帰りを待つ彼女のところへ帰ってあげなさい。それじゃあ、
頑張るのよ」

　春夏さんの良くわからない励ましの言葉を後ろにしながら、俺は息を切ってイルファ
さんのいる家に帰る。
　遅れてしまった分、少しでも早く帰ってあげないと。きっとイルファさん、待ちくた
びれてしまってるだろう。
　見慣れた屋根が見えてきた。玄関を開けると、野菜を煮る香りと、イルファさんの歌
声。

「ただいま、イルファさん」

「お帰りなさい、貴明さん」



　　　終

支援くださった方、どうもありがとうございました。

まだまだ僕は戦える。

俺もそう思う。乙。

俺もそう思った。乙

沙都子乙

>>94
GJ!
久しぶりにイルファさんメインのSSが見れてよかったです

「ふうっ……」

一息つき、それが響く空間……そう、今俺は湯船の中。
吐く息と一緒に疲労感まで吹っ飛んでしまいそうな感覚が、何とも心地良い。
……僅かに残る良い香りが、ちょっと前までこのみやチエちゃん、ミチルちゃんが使ってたんだと言う事を再認識。
ここで……

「……って、何想像しとんだ俺は！」

いかんいかん、思考が雄二になってた。


「へっきし！！」
「きゃっ！　ちょっと雄二、汚いでしょ！　折角お風呂入ったばかりなのに！」
「わっ悪かったよ……どこかで可愛い子が噂してんのかな？」
「バカな事言ってないで、さっさとお風呂行きなさい」
「へーへー。全く……入るなら姉貴より理奈ちゃんの後風呂の方が良いっての」
「ふーん、まさかそう言う性癖があったなんてね」
「え？　あの、声に出てた？　あ、いや、これはただってちょっと待って！」

……今断末魔が聞こえたような気がしたけど、多分雄二がタマ姉を怒らせたんだろう。
世の中常に、平穏と荒々しさが同居してる物なんだな……。

「……なんと言うか、柚原家の方々が風呂にこだわる理由、この時だけはわかるよな」

そう言えば、入浴剤もこだわりあるらしいし……
金に余裕があったら、いろいろと試すのもいいかもしれない。

「そう言えば、ウチに入浴剤なんかなかったっけな。事前にわかってたら……」

いや、事前にわかってたら来る訳……何か根拠はないけどありそうだな。
というより、何で親友の家がダメになったからって、避けてばっかの奴の所に泊まろうと思ったんだか。

カチャッ！

「ん？」
「どもッスセンパイ♪」
「……どもッス、チエちゃん」

おいコラ、俺は聞いてねーぞ！
さっきのジャンケンって、風呂の順番決めるだけじゃなかったのか？
つーかバスタオル一枚だなんて、ちょっと油断しただけでも下着どころの騒ぎじゃないよ。
しかも胸が思いっきり強調されてるし、普段の服なんて目じゃない位……
待てよ、確かこういう時のパターンって大概……。

「あ、そっかそっか。大抵このパターンって、タオルの下に水着着てる物なんだよな。だからこうも平然としてるんだよね？」
「いえ、水着どころか何も着てないッスよ」
「そうだよね、あはははは……は？」

今……着てないって聞こえたような……
おいおい、雄二じゃあるまいし淫夢見るなんて……って、湯の熱さが否定させてくれやがる！

「あの……冗談だよね？　幾らなんでもそんな……」
「本当だよタカ君」
「……何故？」
「だってあたし達、去年受験シーズンで海なんて行けませんでしたし、まだ４月だから今年の水着なんて買ってないッスよ」
「いや、普通に返されても……」
「そもそも、元はこのみの家でのお泊り会という話。水着が必要にはならない」

>>101
すみません、手違いで順番間違えました。

……幻覚？　それとも夢？
いや、お湯はちょうどいい湯加減だし、外からの心地良い風が感じられるし……。
これって……

「……」
「あれ、どうかしたッスかセンパイ？　あ、もしかしてあたしの身体に魅入って」
「よく見ろタヌキ、これは現状が唐突過ぎて理解できてない様子だ」
「あ、ホントだ」

無理ねーだろ、バスタオル一枚纏っただけの女の子が居て、動揺しないわけあるか。
後ろから顔を出すこのみとミチルちゃんは、先程のパジャマ姿だってのに。
……神様は俺に、童貞を捨てて犯罪者になれとでも言うのですか？

「……ちょっと聞いていい？」
「はい、何なりと」
「何でここに来るの？　しかもさっきパジャマ着てた筈なのにバスタオル一枚で」
「さっきのジャンケンで決まったからです」
「……はい？」
「ですから、センパイとペアと言う事になったあたしが、センパイの背中を流す役を仰せつかった訳ッス」
「うん、このみ残念だったよ……」

おいコラ、俺は聞いてねーぞ！
さっきのジャンケンって、風呂の順番決めるだけじゃなかったのか？
つーかバスタオル一枚だなんて、ちょっと油断しただけでも下着どころの騒ぎじゃないよ。
しかも胸が思いっきり強調されてるし、普段の服なんて目じゃない位……
待てよ、確かこういう時のパターンって大概……。

「あ、そっかそっか。大抵このパターンって、タオルの下に水着着てる物なんだよな。だからこうも平然としてるんだよね？」
「いえ、水着どころか何も着てないッスよ」
「そうだよね、あはははは……は？」

今……着てないって聞こえたような……
おいおい、雄二じゃあるまいし淫夢見るなんて……って、湯の熱さが否定させてくれやがる！

「あの……冗談だよね？　幾らなんでもそんな……」
「本当だよタカ君」
「……何故？」
「だってあたし達、去年受験シーズンで海なんて行けませんでしたし、まだ４月だから今年の水着なんて買ってないッスよ」
「いや、普通に返されても……」
「そもそも、元はこのみの家でのお泊り会という話。水着が必要にはならない」

だよね、元々女同士でのパジャマパーティーって予定だったんだから。
……仕方ない、退く気が無いみたいだし、ここで"何もなければ"いいんだ

「……じゃあ、お願いするよ。もう四の五の言っても無駄そうだから」
「オッケーッス♪　ところでセンパイ、身体はもう洗いました？」
「ん？　ああ、頭がまだだけど」
「じゃあ頭洗います」
「ん、じゃあお願い」
「このみ、私達はトランプでもしよう」
「うん、タカ君ごゆっくり」

出来るかー！！　……とは言えないよな。
さっさとさっき取って貰ったタオルを巻いて、椅子に腰掛ける。

「それじゃ、お願いするよ」
「はっはい、お任せッス」

当然だけど、やっぱり動揺してるみたいだ。

「大丈夫？　何か動揺してるみたいだけど」
「だっ大丈夫ッスよ。ただ男の人とお風呂なんて、お父さん以来ッスからつい……」
「それが普通だって」
「でも嫌じゃないッスよ。それじゃ、お勤めに入るッス」

まあ、本人がああ言ってんだからいっかな。
まず軽く頭を湯で流して、ちょっとの間の後に泡立てる音。
そして細い指が俺の頭に触れ、シャンプーを伸ばし始めた。
髪があまり長くないだけに早く終わり、後はシャカシャカと音を立てて頭髪が始まった。

「センパイの髪って、男性なのにこんなに綺麗でさらさらだなんて、羨ましいッス」
「そうかな？」
「そうッスよ。あたしだってこの髪を保つのに、結構お金と手間かけてるッス」
「そう言えば、このみも洗顔とかシャンプーとかの種類にはこだわってたっけな」
「女の子は常に人に良く見て欲しい物ッスよ、センパイ」
「あはは、勉強になるね」

ん〜、頭髪ってどうしてこう人がやると気持ち良いんだろうな。
このシャカシャカという音といい、チエちゃんの指使いといい、快楽とも言えるな……。
と思ってると、湯を掛けられた。

「あれ、もう終わり？」
「先ずは軽く汚れを落としただけッス。これからが本番ッスよ」

チエちゃんは再びシャンプーの泡を立て始め、俺の髪に手をかけた。
全体に泡を伸ばすと、今度は頭皮を指の腹で軽く洗い始める。
シャカシャカと言う音と、頭のこの指が這い回る感覚……うーん、最高最高♪

「お客様、お痒い所はございませんか？」
「今の所は」
「これ一度言ってみたかったッス」
「あ、それわかる」

他愛のない話をしながら、ゆったりと満喫。
まあ、これなら間違いは……。

ムニュッ

……起きそうです。

「センパイ、何か前屈みになってないッスか？　しかも足が爪先立ちになってるッスよ？」
「いや、何でもない……気にしないで」

我慢だ、我慢……いや、クールダウンだ……
快楽の時間から一転、我慢の地獄に取って代わってしまった。
ああ、でもこの感触クセになりそう……って違うだろ俺のスケベ！

「よし、完了ッス」

そう言って離れて、頭髪完了を告げるお湯が掛けられた。
よかった……何とか治まってくれたし、バレずに済んだ。

「ふぅっ……あ、何かいつも以上にさっぱりした気分」
「やった！　最高評価をもって、第一任務完了ッス♪
「ああ、それじゃ……って第一？」
「はい、次は背中を洗ってラストを締めるッス。こういう所は、人にやってもらった方が綺麗になるッスよ」

……心臓持つかな？

と言う訳で、前回不評だったので急遽予定変更して作った風呂パートです。
今回後編……のつもりが、ちょっと長くなっちゃいそうなんで中篇になりました。
まあ、前回の不評分のお詫びと言う事で。
というより、完全にエロ担当になっちゃってるな、ウチのよっちは。

>>94
イルファＳＳＧＪ！！
メイドロボ３姉妹がよっちちゃるに次いで好きなんで、楽しめました♪

乙、これを待っていた。

>>108
GJ
おっきした

なんでこう神が連続で降臨するかな（*´Д｀）

私は恋をした。



「なあ、愛佳。この本は何処だ?」
「ん?それはね・・・」
暮れなずむ空から射し込む夕焼けの光は、二人だけの司書室を茜色に染める。
「それはね、こっちの棚だよ」
「そうか、サンキュー！」
貴明君が私だけに柔らかく笑ってくれる。
それだけで、今ある二人の世界が確かに感じられて嬉しい。

そう、ここだけが・・・




本を整理しながら横目でもう一度、貴明君の方を見る。
どこに整理すれば良いのかわからず、一冊の本とにらめっこしながら悶々している。
その姿が溜まらなく可愛い。






そろそろ時間かな?
「貴明君・・・お茶にしませんか?」

「ん〜これ、苦いな・・・」
「ハーブティーですよ。独特だけど慣れると美味しいよ〜」
ハーブティーは若葉の匂いがして好きだ。だけど、けっこ苦い。
準備していたお茶受けの飴玉を口に放りこむ。
飴は少しずつ溶けてゆき、甘さが口の中にじわりと広がる。それがまだ口に残る苦さとが混ざり合い中和してくれた。

「ん、やっぱり苦いな」
「気に入らなかった?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけど・・・」
バツの悪い顔をした。それもまた愛おしく感じるのは・・・もう駄目だな・・・

ハーブの爽やかさが時間はゆっくりと流れさせて行く。
外は薄暗くなり、下校時間が刻一刻と迫る。

貴明君は優しい。
最初は、本の整理を大義名分に『異性と慣れるための練習』だった。
そのうち、その優しさに触れているうちに私は・・・

だけど、今は・・・




「ご、ごめん。もう行かなきゃ!」
沈黙を破ったのは貴明君だった。いきなり慌てた声を出す。
理由は何となくわかる・・・

完全下校時間のギリギリ、あと数分すれば放送が鳴るだろう。
「そうですか。後は私がやりますから、どうぞ気にしないで」
こうでも言わないと優しい貴明君の事だ、後片付けまで手伝わせてしまう。
「ワリ、恩に着るよ。じゃ!」



そう言うなり、急いで出ていった。

司書室にはポツン、と私一人が残された。

私は恋をした。



夕焼けも沈みかけ、辺りが赤紫色に染まる。
グラウンドから聞こえてきてた運動部の掛け声も消え、帰る人影もまばらだ。

私は校門の前で、今日はMTV無しで貴明を待っていた。
本当は１人で帰っても良かった。どうせまた明日会える。
だけど、少しでも一緒に居たいし、同じスピードで歩きたい。

だって、私は貴明の恋人だから・・・




遠くから人影が近ずいて来た。でもそれはどんなに離れててでもわかる、それは・・・

「遅い!」
やっぱり貴明だった。
「悪い、悪い・・・」
「彼女をほっとく何て、良い度胸じゃない!」
「いや〜長引いちゃて・・・」
「言い訳は聞きたくない!」
私だけ先に歩き出す。
「先に帰ってても良かったんだぜ？」
「い、良いでしょ。」
貴明も私のそばに来て一緒に歩き出した。

貴明と愛佳が２人きりの司書室で本の整理をしている事ぐらい知っている。
貴明が他の女と仲良くしているのはヤダけど、まあ愛佳だし・・・
愛佳も愛佳で他に頼めそうな人はいないから。


全く、本当にお人好し何だから。

本当に・・・









日もある程度は延びて来たが、まだまだだ。
すでにおぼろげな月明かりが照らしている。
今この街には私と貴明の２人しかいない、そんな錯覚に陥る程、人も音も何もない。

会話も交わさず、ただ歩く。
いつの間にか２人は手を握っていて、そこから伝わる貴明の暖かさが気持ちが良い。
言葉なんて無くても２人の思いがわかる・・・

「ここまでだな・・・」
「うん・・・」
私の家と貴明の家は正反対。何時も途中で別れてしまう。
「それじゃ・・・」
「・・・」
一度握った手を、離したく無い。


「由真・・・」
「貴明・・・」


どちらからともなく抱き合い、キスをする。


息が苦しくなる程に夢中でキスを交わしても、まだ心は満たされず、大きく息を吸いもう一度キスした。

ああ、私は貴明の事が好き何だ・・・大好きなんだ。







だから、それを見てる人がいたなど、気が付くハズも無かった・・・

新人で皆さんを萎えさせか雲民です。

この小説の詳しい説明は自分のホームページにて書かれています

まだ始まりで長々と続くのでご贔屓を

乙＆ＧＪ

長いのは構わない
とりあえず割り込み防止にsageてくれよ
乙

>>118
ToHeart2 SideStory Links の
新着を 己のSS紹介で埋めちゃうのは辞めてくれ

一度に書いたなら、まとめて新着に出してくれ

>>120
ヤベ忘れてた

>>121
はい、すいません

>108
待ってました！という暇もないくらい対応早っ！
やゆよのよっちは凶暴です。（４）のちゃるも可愛いです。引き続きガンガンいこうぜ！です
>118
スクールデイズはやってないので元ネタはわかりませんが今後の展開に期待しまつ

白を中傷してる馬鹿がいるので引き取ってくれないか？
どうせ一人の自演だろうけどすげえ迷惑してる

http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1159711716/

大人しく隔離されてろ
そこから出てくるな

初投稿です。感想よろしくおねがいします。


かもりん　かもりん　かもりんりん
りんりん　かもりん　かもりんりん

※かもりん　かもりん　かわいいんよ
　かもりん　かもりん　素敵なんよ
　
今日も綺麗な　笹森さん
素敵な素敵な　みんなの憧れ
今日も美人だ　キュートだ　素敵だ
りんりん　かもりん　かもりんりん　Wow

※　繰り返し

素敵な髪型　素敵なバスト　かわいい　かわいい　笹森さん
エッチなヒップに　メロメロさ　みんなの憧れ　笹森さん

※　繰り返し

…ひょっとしてこういうのはSSには含まれませんか？
書いてから心配になってきた。

GJ
消えろ

お前のSSってなにかいってみろ。
略さずに。

しょぼいソングじゃね

荒らしはほっとけよ。

Sasamori Song('A`)

過去スレの「なーんでか」の方がまだマシだな。

３つの醜い肉の塊。
「Vwoん、ｸﾞぁMrkiグェSｽﾞ<MNゲドd」
「BｱnKﾝんzデュGivﾝｹﾞNrMﾑ'zガｼﾞgnt」
「ﾜvaa、ｺﾞﾉﾋﾞ、ｺﾞﾉﾋﾞMsTｳｳﾞｨｳﾞｳﾞｳﾞ」
人間でいったら頭部に当たる箇所から、不愉快な音を発している。
「貴明MﾀﾞｨJｳﾞｫｳﾞDyｼﾞNｸﾞｧ」
その、不快な音……奴らの声の中に、俺は自分の名前を聞き取った。
「貴明MSukiiNｷﾞｰｸﾞﾃﾞｨﾔﾛ？」
スキーに行こう、と言っているらしい。
不愉快ながら、今では俺も奴らの言葉が大体理解できるようになった。
「わからない」
「ｳｳﾞｫｪｰ、NｧｯｰNDﾄﾞｳﾞ、ｷﾞｺﾞｩよｪｪｪ」
一番小さな肉塊が抗議の声をあげる。奴らの方は、俺の言葉を苦もなく理解できるらしい。
「考えとくよ。診察の時間だから、これで」
俺は逃げるように席を立った。
この肉塊達は、どうやら俺の友人だったようだ。それも、つい３ヶ月前まで。
それぞれ向坂環、向坂雄二、柚原このみ、という名前も持っている。
だが、そんな事は今の俺にはどうでもいい。俺は奴らと別れて、病院で診察を受けた。
白い筈の病院の壁は、内臓を裏返したようなおぞましい色で脈打っている。
壁だけでなく、天井も、床も。病院だけでなく、道路も、街並みも。
それらの全てからなるべく目を背け、障害物を避ける最低限度の視界で、俺は帰路に就く。
やっと辿り着いた自宅の、ブヨリと気色悪い感触のドアを開ける。

呼び鈴に応えて駆けてくる、この世界で唯一、人間らしい足音。
やってきたのは、この世界で唯一、そしていささか主観的ながら随一の美少女。
聞こえてきたのは、この世界で唯一、まぎれもない人間の声。

「タカちゃん！　おかえりなんよ」
「ただいま、笹森」

俺は少女を抱きしめる。暖かく優しい、ヒトの温もり。
今の俺が五感のすべてで肯定し、許容できる唯一の存在。それが笹森だった。

>>134
ＧＪです。萌えました。
花梨SS今後もおねがいします

元ネタ、沙耶の唄。別に火の鳥復活編でもいいけど
Sasamori'sSongを『笹森の唄』にすると、『防人の唄』みたいだな

>>136
OKわかった理解した。
いっしょに笹森さんを盛り上げていこうぜ

黄色はいらない子
ポニテしたらまだよかったのに

ここはSSスレなのでキャラ批判なら他所でやれ

できれば荒らしも他所でやってほしいな.>ID:WpwFp/ks0

「失礼します」
「あら、小牧さん。どうしたの？」
雨の放課後、環と久寿川が生徒会室で仕事をしていると、愛佳が顔を出した。
「部誌を印刷したくて、輪転機を借りたいんですけど、空いてます？」
文芸部では、不定期に部員の作品を冊子にして配布しているが、
他校の文芸部にも配ったりするらしく、毎回結構な部数が出る。
「ええ。滅多に使う人いないもの」
生徒会室の隣にある旧印刷室は、今では教師も殆ど利用していない。
「じゃあ、お借りしますね。１時間くらいで終わると思いますかわきゃっ!?」
床に這っていたコードにつまづいて前のめる少女。
「す、すすすみませんパソコン大丈夫ですかっ！」
「ノートだから平気よ。それより原稿」
「い、いけないってあぁいいです自分で拾いまうぁすみませんすみませんすみませんっ」
勝手に大混乱。
「そんなに謝らなくても。あら？　練習試合の日程って？」
「あ、それは野球部のPTA会のレジュメです。ついでに頼まれました」
「……なんだか、色々混じってない？」
環は拾った原稿の束を愛佳に渡しながら尋ねる。
「ありがとうございます。ええっと、これが図書アンケートでしょ？　これがクラス会のプリントで」
「そっちは、数学の小テスト？」
「あ、廊下で北村先生に会っちゃって、経費節減で１００部以上コピー禁止令が出たとかで」
「テストを生徒に増刷させるなんて何考えてるのかしら」
「予習用のプリントだからいいんだそうです」
「しょうがないわねえ、手伝うわよ」
「あ、いえ、大丈夫ですっ」
パタパタ。手に持ったプリントを団扇のように振って否定する愛佳。
「遠慮しないの」
「え、いや遠慮じゃなくって本当に。ほら、手が汚れますし」
「それは貴方も一緒でしょ？」
「でも、みんなで汚れる必要はないじゃないですか」

「……そういう理由で、原稿が増えたわけね」
「職員室のヤソグラフが壊れたから、みんな大変なんですよぉ」
明るい愛佳に、環はため息ひとつ。
「でも手伝うわ。終わらないと、私たちも帰れないんだから」
「あ゛」
環の言葉は半分嘘で、施錠を任せればいいだけの話。
ただ、言われてしまうと愛佳の方から鍵を貸せとは言いづらい。

印刷室での作業中、愛佳はずっと縮こまっていた。

「すみません。ありがとうございますぅ……」
作業が終わっても、恐縮しきり。
梅雨空の合間から夕暮れの太陽が顔を出し、窓の外は灰６赤３黒１といったところ。
「どういたしまして」
トントンと印刷物を整理しながら、環は応える。

「ところで、タカ坊とは上手くやってる？」
「ひょあっ!?」

「ふふっ、そんなに驚かなくても」
これは久寿川。自分の資料を作り終えて、二人を手伝っていた。
「い、いやそんな、つ、付き合ってるっていってもまだ日が浅いし、デートもまだえっと３回、４回くらいだし、
　ああでも書庫の入れ替えは毎日手伝って貰ってるけど、でもそんな皆さんが思うようなそのあの」
CDコーナーに改設予定の旧書庫だが、棚の入れ替えとCDの置き方で予想以上にスペースを節約できたため、
規模を縮小して書庫部分も残す事になり、愛佳は図書委員に混じって作業に参加している。
「上手く、やってるみたいね」
「おかげさまで……」
ますます小さくなりながらも、嬉しそうにへらっと笑う。
環は、心にもやもやしたものを感じた。
「まったく、タカ坊は私が狙ってたのにな」
そんな事を口走る。

「えぅうぇっ？」
のけぞる目の前の少女。
「い、いやそんなご冗談を」
「あらそう？　どうして？」
追撃。意識的か反射的か、環自身にも判らない。
「そ、それはその、ほら、環先輩くらい美人で頭が良かったら、なにも貴明くんじゃなくても素敵な男性がよりどりみどりいまそかり」
「貴方は？」
「あ、あたしですか？　そんな、私なんて全然、男の人苦手だし、相手にしてくれる人なんて」
謙遜のつもりの発言に、環の目がちょっと細まる。
「それでタカ坊を選んだの？」
「へ？」
「他に相手にしてくれる人がいなくて、タカ坊しか選択肢がなかったから？」
「え、え、え？　あ、う……」
思わぬ展開。
愛佳、狼狽した。

笑って誤魔化したいところだが、環の視線はそれを許さない。
「えぇと、あの、そのぉ」
冷静に考えれば、さっきのは失言だったろうか。
そんな事を思う頭の中は、全然冷静ではいられない。
環は環で、自分でも思いがけず攻撃的な口調になった事を驚きつつ、
振り上げた拳の下ろしどころがない感じ。

「……クスッ」
堪えきれないような笑いで場を救ったのは生徒会長。
「抜き打ちテストね、小牧さん」
「あ……」
ハッとする愛佳。
視線を向けられて、口元に笑みを浮かべる環。
発言者の意図はともかく、これで愛佳は環に試されたことになった。

「えー、こほん」
咳払いひとつ。
「今までどうだったかは、もう判らないですけど」
ちょっと深呼吸。
「今の私には貴明くんが一番だから、選択肢はありません」
胸を張って答えた。
「……はい、百点」
半分呆れたような表情を作って、環の採点。
「えへへ……失礼します」
「お疲れさま、プリント落とさないようにね」
「あ、はいっとっとっと」
ガラガラガラガラ、トン。
愛佳はプリントを抱えて、よろよろと廊下を歩いていった。

「はぁっ」
来訪者が去ると、環は机の上に腕を組み、頬を乗せて溜息をついた。
「向坂さん、今日は行儀悪いのね」
穏やかに笑う久寿川を、机の上から見上げる。
出会った頃はオドオドしてばかりだったのに、人は成長するものだ。
そう、貴明も……
環の脳裏に、助力を求めてきた少年の眼差しが浮かぶ。
「男に、なっちゃったかな」
「え？」
「ん、いや、タカ坊の話よ」
「えっ？　河野君？　そ、それ、は、どうで、しょ、かしら、ね、最近の高校生は。」
環の訂正に、かえって久寿川が混乱する。頬が赤い。
相棒の勘違いに気が付いた環は、体を起こして慌てて補足する。
「あっ、別にそういう意味じゃなくて、まあ、そうかも知れないけど、でもっ……って、何言ってるのかしら、私」
ぽて。再び頬杖。なんとなく転がっていたシャーペンを拾って机を叩く。

「こんなんじゃ、駄目よねぇ」
窓の外では、再び物憂げな雨が降り出していた。

「このような事では、いけませんわ！」
コクコク……。
机を叩いて玲於奈が熱弁。カスミも頷く。
こちらも放課後、他の生徒達が（帰宅部含めて）部活に抜けた空の教室で、環待ちの三人娘。
「あの一件以来、お姉様が私たちの誘いに乗って頂けるようになったのは嬉しいのですけど」
ニコニコ……。
「事あるごとに溜息ばかりつかれて、自信と威厳に満ちあふれたお姉様らしくありません」
コクコク……。
「これというのもあの男の神をも恐れぬ所業、不埒で不実な態度と行動の結果！」
ブンブン……。
「言葉は悪いですが敢えて言いましょう。人間のカスであると！」
パチパチパチ……。
「とはいえ、今更過去の罪状を蒸し返しても仕方ありません」
ウンウン……。
「せめて私達が、お姉様の憂鬱を取り払うお手伝いをしなければならないのです！」
コクッコクッ……。
身振りと聴衆つきの演説、終了。
「過程にも結論にも異論ありませんけど、具体的にどうします？」
薫子の言葉に、
「なにか考えがありまして？」
ジッ……。
逆に期待の目で視線を返す二人。
この三人組で、考えるのは主に薫子の役目だったりする。
「そうですね。こう、パッとストレス解消になるようなもの……お酒？」
「私たちは未成年ですっ！」
フルフル……。
「何故だか１８歳以上ですけどね。他には、体を動かす、というのも」
「それはお姉様の運動神経は素晴らしいですけれど、今は季節が悪いですし」
コクコク……。
「では、カラオケなどいかがでしょう？」

自分で支援w

「ただいま１時間待ちになりますが、よろしいでしょうか？」
「えっ」
「玲於奈、予約していなかったのですか？」
「ごめんなさい。昨日急いでいたので……」
五月晴れの日曜日。＠カラオケボックス。
「意外と混んでるものなのね」
「も、申し訳ありませんお姉様！」
ペコペコ……。
「ううん、気にすることないわ、私もこんなに人が多いとは思わなかったもの」
ちょっとホッとした様子なのは、カラオケボックス初見参の環。
慣れない試みに緊張気味だったので、執行猶予がついた気分なのかも知れない。
「仕方ありません。近くで時間を潰しましょう」
空き待ちの予約を入れた薫子が、続けて提案する。
「せっかくですから、ゲームセンターなどいかがでしょう？」
「げ、ゲーセン？」
時間潰しにも苦手分野を持ち出されて環は動揺。
貴明達の努力により、ゲーセン＝不良の溜まり場という偏見は消えつつあるのだが、
自分から近づこうという気にはならなかったようで、相変わらずブランクは幼少時以来。
「たまには大衆の娯楽を経験なさるのも良いものかと。さ、参りましょう」
ササッ……。
薫子とカスミが、両側から環の腕を取って連行する。
「あ、お待ちになって」
慌てて出口に向かう玲於奈。

「……また道に迷ったんだろ」
「！」
その玲於奈に声を掛けたのは、環に付き合わされた雄二。
もちろん「姉貴の言いなりにはならない」という己の信念に従って果敢に抵抗したのだが、
昨夜は敢えなく１Ｒ２分５８秒KO負け。朝の逃亡劇も失敗して今、ここにいる彼。

「それか、店に入るのに気後れしたか。出しゃばらずに薫子に任せりゃいいのに」
「う、うるさっ……余計なお世話です！」
そっぽを向いて、店を出ようとして、また振り返る。
「行かないんですの？」
「行くよ」
逃げ出すチャンスかな、とも少し思った雄二だが、頼りなさそうな玲於奈の表情に苦笑して答えた。
店を出る。
玲於奈は、ぱたぱたと前方の三人を追いかけるが、追いつく直前で足が止まる。
「そこの通りを曲がった所ですから、５分くらいかと」
「行った事ないんでしょ？　よく場所知ってるわね？」
コクコク……。
「調べましたので」
環の両サイドは、既にカスミと薫子に占拠されている。
玲於奈は三人の左右どちらに並ぼうかウロウロ迷ってから、環達の少し後ろを歩き始めた。
相対位置は、ちょうど雄二と先行チームの真ん中くらい。

なんだか一人にするのも可哀想な気がして、雄二は少し足を速めた。
「！」
ぎょっとした顔で、玲於奈が前方に移動。
失礼な奴。足を緩めて距離を取る。
すると玲於奈は、今度は後ろを伺いながら後方に位置を動かす。

雄二が近づくと、玲於奈も前三人に近づく。
雄二が離れると、玲於奈も退がる。
こうして、ゲームセンターへの道中、玲於奈は環と雄二の中間点を維持し続けた。

子供の頃、ボタンに糸を通してクルクル回し、引っ張ったり戻したりして遊んだ。
糸なのに引っ張った感触がゴムみたいになるのと、
片側を引っ張ってもボタンが両手の中心に位置するのが不思議だった。
名前は、ビュンビュンゴマだったか。
そんな事を、雄二は思った。

ゲームセンターも、なかなか混んでいた。
環達は勇んで足を踏み入れたものの、人と音と雰囲気に圧倒されて店の片隅に追いやられる。
「こ、この辺が一番静かですね」
「ちょっと、煩すぎるわよね」
コクコク……。
人の少ない、古いビデオゲームが並ぶ一角で息をつく。
「この程度でビビってんのか。パチンコ屋はもっとすごウゲゲゲゲゲゲゲ」
「あら、そんな所に出入りした事があるの雄二〜？」
「ありません、ありません。もうぜんっぜんアリマセーン！」
「とりあえず、何かやってみましょうか？」
「で、では私が……」
チャリン。玲於奈が目の前の筐体にコインを入れる。
「……はじまりませんよ？」
「スタートボタンを押せっ！」

ＢＧＭ：『Ｂｏｒｎ ｔｏ ｂｅ ｆｒｅｅ』

「レバーで動かすんですね？　弾にあたらなければいいんでしょう？」
一応、シューティングがなんたるかは知ってるらしい。が、
「え、だ、ダメですわ、こ、こんなにいっぱいっ!?」
ちゅどーん。
「まあ、最初はこんなもんだ」
「よ、良くやったんじゃない？」
「……」
チャリンチャリン。
負けず嫌いの玲於奈は、無言でコインを追加する。
「おっ、さっきよりは上手いじゃん。そこでビーム開放！」
「えっ？　ど、どれ？　これ？」
チャラリラン♪
画面上に新たな自機が出現する。
「それ、２Ｐボタン……」

「っ、あ、当たっちゃうっ！」
思わず右手を２Pレバーに伸ばし、２機を同時操作する玲於奈。
「き、器用な奴」
雄二が本気で感心するくらい良く避ける。
といって、両手でレバーを操作してたら弾が撃てないわけで。
「いやぁ……群がらないでぇ……」
無抵抗で敵の大群に襲われる二匹の黒蠅。
「しょうがねえな」
雄二が参戦しようと玲於奈の隣に座るが、
「ぷぷっ」
ほぼ同時に、環が吹き出した。
それを見た他２名。
「う、ウケてますわよ玲於奈」
ワクワク……。
「頑張りますわ！」
両手でレバーを握り直した。2Pレバー上で交錯した手を引っ込める雄二。
「……手伝ってやる」
「お願いします」
奇妙な二人の共同作業が始まった。
玲於奈が２機を同時操作し、雄二が１Ｐ側のボタンにも手を伸ばして弾を撃つ。
「上から来るぞ！　次、ロケットやり過ごしたら右下に行け！」
実のところ、雄二はこのゲームをかなりやり込んでおり、敵の出現位置をほぼ記憶していた。
玲於奈の方は、妙な所に才能があったもので、なかなか正確にレバーを操作し、
またゲームを知らないが故に素直に雄二の指示を聞いたこともあって、驚くほど順調に攻略を進めていく。

「や、後ろ、後ろはいけませんわ！」
「そいつらは横で倒す！」
「そんな、擦っちゃう……っ、もう、はやくさっきの、白いのたくさん出るヤツしてください！」
「まだ溜まってないんだよ。もうちょっとだけ頑張れ！」
「あっ、そこダメっ、あぁん、早くして〜！」

プレイしてる当人達は、かなり大騒ぎだったけど。

「これで、終わりですか？」
「ああ、クリアだ」
「なんだか、星が真っ二つになったようですけれど？」
「その辺は、深く考えるな」
嵐のような数十分を終えて、玲於奈は放心状態。
雄二はというと、満足感の中に微妙な表情でなんとなく左腕をさすっている。
プレイ中、１Ｐショットボタンを押す左腕は、２Ｐレバーを操作する玲於奈の右腕の下を潜っていたのだが
少女が興奮して画面の方に身を乗り出した時に、何度か柔らかい感触があった。
「腕、痛くでもしました？」
「いや、別に」
まあ、玲於奈は気づいていなかったようだし、その辺は、深く考えないのがお互いのためだろう。

「ゴチャゴチャして良く判らなかったんですけど、最後の猫が可愛かったですね」
コクコク……。
途中で何枚かコインを追加してくれた薫子が呟き、見てるだけだったカスミが頷く。
「そ、そうかしら？　不気味だったと思うけど……」
二人とはセンスの違う環も、
「でも、面白いもの見させてもらったわ。楽しかった」
「お姉様も、なにかおやりになられては」
「私？　い、いいわよこういうの向いてないし」
その言葉に、雄二が思いつく。
「いや、あるぜ、姉貴にピッタリのゲームが」

『大川曲也のマッスルジャッジＭＥＮ』

「あだだだだだだだッ！」
「一体、何を考えているのかしら？」
「ぐがごごごせめて握力だけでも試してみウボァー」
「体を使うゲームですか。こういう系統も色々あるのですね」
薫子が立ち並ぶ機械群を見回していると、
「ふふっ、雄二さん、ちょっとこちらへ」
珍しくスムーズな呼び方で、玲於奈が雄二を手招いた。

「なんだあ？」
カシャッ。
これも珍しく上手い誘導で雄二が筐体の前に立たされた途端、シャッター音が鳴る。
「あら、雄二が映ってる」
遅れてやってきた環が、画面を覗き込む。
「ここを殴ると画面の顔が歪むんだそうです」
画面の手前、垂直に立てられたバーに取り付けられたミットを指さして玲於奈が説明。
「ふーん、面白そうね」
「面白くねえ。そんな事に人の顔を勝手に……」
ドゴッ！！
「・・・」
問答無用の一撃で、雄二の顔が壊滅する。ついでに機械まで壊れそうな勢い。
「「流石お姉様」」
グイッ……。
三人娘は、拍手喝采ガッツポーズ。
「あー、こんな事で誉められても複雑だけど、でも、気分いいわね」
改めて姉の戦闘力に絶句した雄二からは、いつも実物でやってるじゃねえか、というツッコミは出なかった。
「では、私も」
玲於奈が前に出る。グローブをはめると一度後ろに下がり、助走をつけてミットを殴る。
ポム。グーッ。ユラ〜。
やたら軽い音と共に傾いたバーは、完全に倒れる前に手前に戻ってきた。
「あ、あら？」
「……俺がこれを見たのは、お前で二人目だな」
ちなみに一人目は最近話題の小牧愛佳。クラス活動の現地解散帰りに目撃。
「か、薫子もやってごらんなさいな」
「そうですね」
薫子は首を傾げながら機械に歩みよって体を半身にすると、横殴りに腕を叩きつける。
ドン。結構まともな数値。
「こんな所でしょうか？」
「ラリアートは禁止」
初挑戦でいきなり反則技を繰り出すあたり、なかなか良い根性というべきか。

「最後はカスミですわね」
フルフル……。
玲於奈の振りに、カスミは首を横に振る。
「カスミはこういうことには向いてないでしょうから」
「せっかくですから」
薫子が弁護するが、玲於奈はなおも勧める。０ｋｇ仲間を作りたいのだろうか。
「やってみろよ。ほら、憎いヤツの顔でも思い浮かべてさ」
雄二も煽る。画面の元雄二の顔は、環が殴った時点で既に原型を留めていない。
ジッ……。
その言葉を聞いて、視線を機械に固定したカスミ。
しばらく考え込んだ後、誰を想定したのか、おもむろに正面に回って距離を取る。
「おっ、やる気になったのか」
カツカツカツ……。
無表情のまま機械に近づき、グローブもつけずにミットに両手を伸ばした。
トスッ
「鳥栖？」
そのまま一時停止。
スッ……。
何事もなかったように手を戻すカスミ。
妙にスッキリ晴れやかな顔で、環と薫子の元に戻ってくる。
パンチ力の表示は綺麗にゼロ。
というか、バーは微動たりともしていない。
「どうしたんでしょう？」
玲於奈の疑問に、雄二はミットを調べてみる。
中央部分に何かが刺さったような傷痕。裂けたカバーから、白い綿がハミ出していた。

「そ、そろそろ時間だよな」
「戻りましょうかっ」

カラオケボックスへ戻る道。
環の両側はまたもカスミと薫子が占領し、雄二は、今度は玲於奈と並んで歩いた。

以上です。
メタルブラックの開放ビームが白かったかどうかは、もう記憶ないんですけど
ビュンビュンゴマの挙動も。作ってみようと思ったら部屋に糸がなかった

あ、タイトルの」が重なっている。「向坂環の憂鬱」が正しいです。どっちでもいいですが

暗器使いカスミｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!

「あ、その前に湯船に浸かりません？　ちょっと身体冷めちゃったみたいで」

風呂場の中とは言え、換気してるんだから無理ないかな。
それにさっきからチエちゃん、手元しか湯に触れてないんだから。

「あ、そうだね。じゃあちょっと湯船に浸かってなよ、俺は向こう向いてるから」
「いえ、一緒に入りましょう。センパイもそのままじゃ湯冷めするっしょ」
「え？　でも狭いよ。手足曲げないと」
「平気ッス、元はこっちの我侭ッスから」
「そう？　じゃあ……」

俺はタオルを押えながら立つと湯船に入り、そのタオルで目を隠すように巻いてそのまま縛って体育座り

「オッケーだよ」
「はい、了解ッス」

それから、ちょっとの間の後にチエちゃんが湯船に入るような水音
背中に、タオルを羽織ってないチエちゃんの背中が直に重なる。
柔らかな感触と同時に、低い体温が伝わり……少しずつ体温が上がってくるのが感じられた。
視覚が封じられてる今、それがすごく敏感に感じられる。

「あの……もしかして、迷惑でした？」
「そんな事ないけど……でも、現実でこうなって緊張しない奴って居ないと思う」
「そうっスね。こんなナイスバディの美女と一緒にお風呂だなんて」
「そう言うのって、自分で言うと価値下がるよ」
「ありゃ、失敗ッス」

何かこういう状況なのに、まるで普段やる様な会話だな。
親しみ易い人格と言うか、その所為なのかもしれない。
……というか、よく考えれば精神的に疲れる事って３人揃ってる時だけだったし、一人一人ならさして問題は起こらないのかも。
最も、チエちゃんに風呂と言うコンボは３人揃ってる時並だけど……何と言うか、今はすっかり馴染んじゃってます。

「……慣れって怖いな」
「はい？」
「いや、何でもない。今日はやたらと女の子関係で色々とあるなと思って」
「それは、あたし達今までにセンパイとこういう風にいっしょに何かするって全然ないッスから、ついついはしゃいじゃって」
「そっか……それは悪かったね」
「別に気にしなくて良いッス。そろそろ背中洗いましょう」
「ああ、じゃあお願いするよ」

さっきの手順とは逆に、先ずチエちゃんが湯船から出て身支度を整えて貰う。
そしてＯＫが出たら目元のタオルを解いて、腰に巻いて俺も湯船から出た。
先ず軽く湯を掛けた後、スポンジに洗剤を染みこませ泡立てる音。
その後に、背中をスポンジと泡で撫でられるような感触。

「さっきも思ったッスけど、センパイの背中って大きいッスね」
「そう？」
「はい、小さい頃お父さんにおんぶして貰った時を思い出します」
「それ何となくわかる」

おんぶして貰った時って、すごく暖かい感覚だったのは覚えてる。
そっか……もうそう感じられるような年なんだな、俺も。

「……そっか、もう高校生なんだよな」
「え？」
「覚えてる？　まだ中学だった頃、２年になってこのみが入学していつもと変わらない一年が始まると思ったら、君達２人と出会ったよね」
「はい、あの頃はとても緊張したッス。センパイと会うってだけでもそうなのに、あんなちっちゃい友人が中学一年にして彼氏居るのかって驚きも」
「彼氏ね……兄貴だとは思わなかったの？
「だってタカ君って呼んでたし、思春期って恋沙汰が好きな物ッスから」

……そうだよな、昔からタカ君と呼ぶの変わってないし。
というより、子供っぽい所だって全然変わってない。

「あれからずっとこのみって君達二人と一緒に遊ぶ事が多くなって、上手くやれてるって安心したっけな」
「それはモーマンタイッスよ、あたしもちゃるもこのみとは同士って感じが強かったから、邪険に扱うなんて無理も良い所っしょ」
「だよね。でも俺ってずっと君達避けてたっけな」
「あー、でもセンパイって当時からあたし達というより女の子自体苦手って感じが強かったッスから、あんまり気にはしてなかったッスよ」
「自分では隠せてたつもりなんだけどな……」
「でも、その割にはあたし達を無骨に避けてた用な気がするッスけど」
「それ確か、フォーメーションＡだっけ？　それをやられたからだと思う」

だって手を握るだけでもダメなのに、あんな風に抱き付かれるなんて心臓に悪い事この上ない。
だからかな？　この子達と一緒は危険だと認識してしまったのは。

「確かに、センパイにはきつかったかもしれないッスね。すみません」
「まあ良いけどさ、今となっちゃ。あれ以来だよね、俺がチエちゃん達避けるようになったの」
「あはは、自業自得だったんスね」
「いや、俺にも非はあるよ。どっちが悪いなんてないって」
「じゃあ痛み分けって事で」
「そうだね」

当時からじゃ、今の状況なんて想像できなかっただろうな、絶対に。
と言うより、恋人でもない子と風呂だなんて雄二でも想像しない……と思う多分。

「はい、完了ッス。今流しますね」
「ん？　ああ」

ザバッと背中にお湯がかけられ、泡と一緒に垢が流れ去っていった。
しかし、洗った後のサッパリ感は最高だよな。

「うん、サッパリして気持ちいい」
「最終任務も最高評価ッスね♪」

……あれ？　随分アッサリと終わったな。
まあ、何かしらのハプニングがあっても困るけど。

「それじゃあたしはわあ！」

慌てるような声からちょっと間があって、背中に軽い衝撃と同時に

ムニュッ

さっきと食事の時に感じた柔らかさが伝わってきた

……ん？　何かタオルにしてはさっきの様な布地的な感触がない。
……っていうか生物的な感じの柔らかさの様な……これってまさか。

「せっセンパイ！　すみませんッス」
「いっいや、良いよ……あの、まさかと思うけど……」
「はい、バスタオル……落ちてます」

……出来れば間違ってて欲しかったよ！
つまり俺に引っ付いてるのは、一糸纏わぬ状態のチエちゃん。
そして、この一味違う柔らかい感触はつまり……

「はっ早く離れてタオル巻いて！」
「はっはい！　センパイ、こっち見ないで下さいね」
「わっわかったから！」

……まずい、心臓バクバク言ってる。
隔てる布地が無いだけで、こんなにも感触に違いがある物なのか……。
って違う！

「センパイ……もう良いッスよ」
「うっうん」

振り向いた先には、先程のバスタオル一枚のチエちゃん。
俺と同じく、顔を赤くしてたりする。

「えっと……」
「せっセンパイ……その……」
「いや、今のは事故、事故なのわかってるから」
「はっはい……でも、ちょっとラッキーだったかな？」
「え？」
「いえ、何でもないッス。後、このみとちゃるには内緒で」
「それは勿論だよ」

でも、何と言うか……背中にしっかりと焼き付いてるだけに、忘れられそうにないなこれ。
この事が知られたら

『こーのラッキームッツリの恋愛ブルジョワジー野郎が！！　死ね！　死んで詫びろ！！』

とか雄二は突っかかってきそうだな。　
タマ姉は……眠れなくなっちゃいそうだからやめとこう。

波乱に満ちたバスタイムが終わり、俺とチエちゃんは買い置きの水を飲みながら涼む事にした。
……無論、ミチルちゃんとこのみも一緒に。

「よっちどうした？　様子が変だ」
「そっそうかな？　いつも通りっしょ」
「タカ君も何か顔赤いよ」
「風呂上りなんだから当然だって」
「まさか、本日発情期のよっちが先輩を襲った？」
「襲ってない！　それに発情期言うな！」

やっぱり最後はこういうパターンなんだな。

はい、今回で風呂パートは終了です。
今回でウチのよっちは完璧エロ担当になっちゃったような内容ッス。
それはまあさておき、そろそろお泊り編の次を考える段階ですので、何にしようかと模索中
とりあえず次は５月で何かやろうと思ってるんですけど……まあ、それはお楽しみと言う事で。

さていよいよ次は、深夜編です。
何かこのみ分が少ないから、このみメインで何かやろうかな？
お色気部分は……気が向いたら書くかも。
行き当たりバッタリの作家ですが、よろしくです。

乙
さすが淫らなタヌキ
期待を裏切らないぜ！

やはり吉岡さんとこのタヌキは日本一のタヌキだな。

>165
GJ。期待どおりにやってくれるぜ吉岡！そして今度はこのみの巻き返しに期待

ＧＪ　
タヌキうどん食いたい。

ちんこ勃った

タヌキまんじゅうアタックか……
必殺だな。

　玲於奈さんたちの件が解決したので気が緩んだのだろうか。次の日、俺は風邪を引いてしまった。
タマ姉から学校を休むように言われたのは仕方がない。けど、俺の看病に誰か一人が残るなんてのは
いくら何でも大げさだよ。だけど例によって俺の意見はスルーされ、じゃんけんに勝った瑠璃ちゃん
が残ることとなった。
　みんなが学校に行った直後、瑠璃ちゃんに急かされて病院へ。待合室の椅子に瑠璃ちゃんと並んで
腰掛け、瑠璃ちゃんは待合室の本棚で見つけた『きかんしゃ　いえもん』に読みふける。
　座っているうちに寝てしまったようで、看護士さんの呼ぶ声で目を覚ますと、俺の隣には見知らぬ
お婆ちゃんが。瑠璃ちゃんから席を譲ってもらったとのことで、「妹さんのおかげで助かりました」
と俺にまで頭を下げるお婆ちゃん。瑠璃ちゃんはホントに優しいんだなぁ。
　ところが、この「妹」と呼ばれたことが瑠璃ちゃんには気に入らなかったらしい。病院を出ても
機嫌が直らない瑠璃ちゃんをなだめようとするのだけれど、「一緒にいたのだから兄妹か夫婦にでも
見えたんだろ」と言ったのが余計に瑠璃ちゃんの怒りを買い、俺のお昼は激辛お粥だと決定する瑠璃
ちゃん。病気の時くらい優しくしてくれよぅ……。

　家についた。
　歩いている間に熱は更に増したようで、身体全体がカッカしてる。だるさも半端じゃなくて、正直、
真っ直ぐ歩くのすら大変だったくらいだ。
　寝る。とにかく寝る。ソファーを求め、居間へと行こうとする俺だが、
「貴明、ウチのベッドで寝て」
「……え、瑠璃ちゃん、なんで？」
　そう尋ねると、瑠璃ちゃんは恥ずかしげにそっぽを向きながら、
「しゃ、しゃあないやん。病気のときくらいちゃんとしたベッドで寝た方が治りも早いやろうし。
　そ、それに居間はみんな集まるから、貴明、落ち着いて寝てられへんやろ」
　そうか……俺のために……

「ありがとう、瑠璃ちゃん」
「ほ、ホンマはイヤやもん！　ウチが使ってるベッド、貴明臭くなるのイヤやもん！」
「うん、ごめんね、瑠璃ちゃん」
「あぁ、うう……
　え、ええから、さっさと二階行き！」
　俺の背中に回り、階段へと背中をぐいぐい押す瑠璃ちゃん。
　俺は素直に階段を上って瑠璃ちゃんたちの部屋に行き、その後、瑠璃ちゃんが持ってきてくれた
パジャマに着替え、瑠璃ちゃんのベッドに横になった。

　……
「……あきくん……だから……」
　……ん？
「……だよね、たかあきって……」
　……俺のこと？
「わたしタカくんのこと嫌い。だって臆病なんだもん」
　……このみ？
「私もよ。タカ坊には失望したわ」
　……タマ姉？
「たかちゃん、ヘタレだもんねー」
「全くだ。”うー”の風上にも置けない情けなさだぞ」
　……花梨？　るーこ？
「ウチ、貴明みたいな根性なし嫌い〜☆」
「ウチも！　ウチも！」
　……珊瑚ちゃん？　瑠璃ちゃん？

「貴明さんなんかより素敵な男の人なんていくらでもいますよね」
「そうですね。たかあきくん、男のクズですよね」
　……優季？　愛佳？
「はーい！　じゃあみんなの意見がまとまったから、今後たかあきは完全無視ってことで決定！」
　え、なに完全無視って？　何なんだよ由真？
「さんせーい！」
「意義なーし！」
「あたし、たかあきくんとは目も合わせませーん」
「わたしもわたしも！」
　……な、なんだよそれ、ひどいよ。
「これからはあんなヤツのことなんかほっといて、あたしたちだけで楽しく遊ぼうよ！」
「さんせー！」
「じゃあさ、何して遊ぼうか？」
　……ひどいよ、ひどいよ、”ぼく”もなかまにいれてよ。
「鬼ごっこがいいかな？　それとも、かくれんぼがいいかな？」
「るーは、トランプがしたいぞ」
　むししないでよ！　ぼくのこと、なかまはずれにしないでよ！
「なんかうるさいのが一人いるね。だれだっけ？」
「さあ？　なまえなんかおぼえてないよ」
「わたし、このこしらない。しらないことはあそばないほうがいいよ」
「そうだね。このこうるさくてジャマだから、あっちいってあそぼ」
「うん、そうしよ」
　みんな、どこにいっちゃうの？　ぼくもつれていってよ！
　おねがいだよ！　ぼくをひとりにしないでよ！　ぼくもなかまにいれてくれよ！

　おねがいだよ、おねがい……

「貴明？」
　ゆさゆさ。
「……え？」
　身体を揺すられ、目を開けると、白い天井と、左側に瑠璃ちゃんの姿。
　……あ、俺、寝てたんだ。じゃあ今のは、夢、か。
　よ、よかったぁ。なんかすっげえイヤな夢だったな、今の。
「貴明、寝てたん？」
　顔を近づけ、心配そうな瑠璃ちゃん。
「う、うん。寝てたけど？」
「そ、その、なんか怖い夢でも見てたん？」
「……うん。怖い夢だった」
　段々頭の中から薄れつつあるけど、みんなが俺のことをけなし、仲間はずれにする夢だったのは
覚えている。俺は俺で何故かガキみたいに泣いて……あれ？
　ふと、自分の目元に手をやる。けれど俺の顔は既に汗まみれで、俺がホントに泣いていたかどうか
なんて解らない。
　もしかしたら瑠璃ちゃん……。俺は覚悟を決めて、
「瑠璃ちゃん、俺……、もしかして泣いてた？」
　すると瑠璃ちゃんは、
「う、うん」
　と、コクリと肯く。……あっちゃー、俺、泣いてるところを瑠璃ちゃんに見られてたのか。
　恥ずかしくなり、思わず瑠璃ちゃんから目を背ける。すると瑠璃ちゃんは、
「あ、あのな！　熱あるときには怖い夢見るからしゃあないよ！

　う、ウチも熱出したときはゾンビに襲われる夢とか見るもん！
　せやからウチ貴明のこと、格好悪いとか全然思てへんから！　ホンマやで！」
　俺を慰めようと必死で喋る瑠璃ちゃん。それがとても嬉しい。
「ありがとう、瑠璃ちゃん」
　瑠璃ちゃんに向き直り、感謝の言葉。
「え？　あ、うん……」
　瑠璃ちゃんは恥ずかしそうにモジモジするが、
「あ、そうや！　貴明、もしかして熱上がってるんとちゃう？　はい、これ」
　差し出される体温計。俺は素直にそれを受け取った。

　数分後、体温計を瑠璃ちゃんに返すと、
「よ、４０度近くいってるやん！！」
　え、マジ？　俺、見ないで渡しちゃったけど、そんなに熱上がってるのか。
「た、貴明、もらった薬の中に熱冷ましあったよな？」
「う、うん」
　ベッドの傍らに置いた薬の紙袋に手を伸ばそうとする。
「あ、貴明はそのまま寝とき！　ウチがやるから」
　紙袋を取り上げ、中身を確かめる瑠璃ちゃん。
「ええと、熱冷まし…………あった！」
　瑠璃ちゃんは紙袋から一包みの粉薬を取り出し、
「ちょっと待っとき！」
　何故かその粉薬を手に、部屋を飛び出していった。
　そして、数分後。
「貴明、お待たせ」

　部屋に戻ってきた瑠璃ちゃんはお盆を手にしており、お盆の上には水の入ったコップが見える。
「はい、コレ飲んで」
　ベッドの横に腰を下ろした瑠璃ちゃんは、上半身を起こした俺に、コップと一包みの”何か”を
手渡す。これ……さっきの熱冷ましのようだけど、何かで包んで――あ、オブラートだ。
「瑠璃ちゃん、わざわざオブラートに包んできてくれたの？」
「そうや。粉薬飲むときはこうせなアカンやろ？」
　さも当然のようにサラッと言う瑠璃ちゃん。
「いや、俺、そのままでも飲めるけど」
　確かに粉薬は苦かったり変な味だったりだけど、水で流し込めばどうってことはない。オブラート
で包んでもらうなんて小学生以来だよ。
「もしかして、瑠璃ちゃんも珊瑚ちゃんも、粉薬はこうしないと飲めないの？」
　だからと言ってこんな質問をするのはいささかデリカシーに欠けると言うものだが、俺がそれに
気付いたのは質問をした後のこと。
「え……？」
　自分の常識を否定され、最初は理解できないと言った顔の瑠璃ちゃんだったが、やがてその顔は
段々と恥ずかしさで赤くなり、
「う、う、ウチはちゃうもん！　これしないと飲めないの、さんちゃんだけやもん！
　ウチはもう大人やから、こんなんしなくても飲めるもん！
　貴明まだおこちゃまやから、オブラートいるやろ思てしただけやもん〜っ！！」
　ぐあ、大声が頭にキンキン響く。これも熱のせいか。
「ご、ゴメン瑠璃ちゃん。余計なこと言っちゃったね」
　とりあえず薬を飲もうとした俺だったが、瑠璃ちゃんは薬を俺から引ったくり、
「うう〜っ！」
　オブラートの包みを解こうとする。

「え？　ちょ、何も今更オブラートから出さなくても！？」
「貴明オブラートいらんのやろ！　元に戻したるから待っとき！」
「い、いやゴメン！　マジでゴメン！
　いる！　オブラートいるから！　じ、実は俺もオブラートないと粉薬飲めないんだよ！
　る、瑠璃ちゃんの手前、ちょっと格好付けてみたかっただけです！　ホントはオブラートなしじゃ
飲めないんです粉薬！」
　などと謝りつつ、何とか瑠璃ちゃんの手から薬を取り戻し、口にポイ。そして水で一気に流しこむ。
「うう〜……」
　なおも恨みがましそうな目で俺を睨む瑠璃ちゃん。
「いや、ホントにごめんね瑠璃ちゃん。何と言うか、その、強がりたい年頃なもので」
　あははと笑って誤魔化そうとするが、瑠璃ちゃんは俺を睨んだままである。まいったなぁ……と、
　つーっ。
　と、一筋の汗が俺の顔を伝う。改めて確かめると、寝ている間に相当汗をかいたようだ。体中汗
まみれ。シャツが肌に張り付いて、気持ち悪い。
　そんな俺の様子に瑠璃ちゃんも気付いたようで、
「ちょっと待っとき。着替え、持ってくるから」
　そう言って部屋を出ていく瑠璃ちゃん。
　また数分経って戻ってきた瑠璃ちゃんは、片手に俺の着替え、そして片手には何故か洗面器を手に
していた。
「瑠璃ちゃん、それは？」
　洗面器を指差すと、瑠璃ちゃんは、
「汗かいたやろ。身体拭かな」
　あ、確かにそりゃそうだ。洗面器の中には水で浸したタオル。冷たくて気持ちよさそう。きっと
スッキリするだろうな。

「ありがとう瑠璃ちゃん。じゃあそこに置いといてくれる？」
　すると瑠璃ちゃん、当然と言った顔で、
「何言うてるん？　ウチが拭いたげるに決まってるやん」
「……え？」
「ホラ、パジャマ脱がすで」
　瑠璃ちゃんは洗面器を床に置くと、さっさと布団をめくり、俺のパジャマのボタンに手を掛ける。
「ちょ、ちょっと瑠璃ちゃん！？」
「じっとしとき！」
　瑠璃ちゃんの一喝。妙な迫力に身動きが止まる。
　瑠璃ちゃんはボタンを一つ一つ外してゆく。やけに手際がいい。珊瑚ちゃんのお世話で慣れている
からかな？
　全てのボタンを外し終え、パジャマの上着を脱がされる。
「貴明、バンザイ」
　また怒鳴られるのもイヤなので、言うとおりにバンザイ。瑠璃ちゃんは汗がしみまくったシャツに
何のためらいもなく手を掛け、これまた手際よく脱がしてしまう。あっという間に上半身裸にされた
俺。――う、ちょっと寒気を感じるかも。
　だが、ここで瑠璃ちゃんの手が止まる。
「……」
　瑠璃ちゃんの顔がたちまち赤くなる。――あの、もしかして俺の裸のせい？
「瑠璃ちゃん、やっぱ後は俺が――」
「だ、大丈夫やもん！　貴明の裸なんか別に何でもないもん！」
　瑠璃ちゃんは手にしていた俺のシャツを投げ捨てると、今度はパジャマの下に手を、ってちょっと
待て！　瑠璃ちゃんトランクスまで一緒に掴んでるよ！
「る、瑠璃ちゃんストップ！　それはマズイよ、マズイって！！」

支援

　必死で抵抗する俺。だけど瑠璃ちゃんは俺の言葉に耳を貸さず、
「もう貴明！　暴れたらアカン！　ええから大人しくしとき！」
　容赦なく脱がす手に力を込める。
　普段なら少なくとも腕力では瑠璃ちゃんには負けはしないだろう。だけど今の俺は熱のせいか力が
入らず、抵抗も空しく俺のパジャマの下（ｗｉｔｈトランクス）は、ずるり、ずるりと徐々にずり
下がってゆく。そして――

　これも熱のせいなのだろうか。時間の流れが、やけに緩やかに感じられる。
　俺の目に映るのは、瑠璃ちゃんによって脱がされ、勢い余って宙を舞う俺のパジャマの下。そして、
パジャマから分離して宙を舞う、花柄のトランクス。――ハイビスカスが赤いなぁ。
　そして、瑠璃ちゃんの顔。ズボンを脱がそうとしている間、ずっと真剣そのものだった顔は、それ
を成した達成感からか、一瞬笑顔に変わる。だがその目が俺の身体のある一部分を捉えた途端、その
笑顔は歪み、たちまち赤く染まり、そして――

「い、いやぁあああああああああぁぁぁああああああぁぁあああ！！」

「も、もう、おムコに行けない……」
「う、うっさいアホ！　お、男がそんなんでいちいち落ち込むな！！」
　ベッドの上、とりあえず代わりのトランクスをはいたものの、俺の心はもうズタズタのボロボロ。
枕に顔を埋め、あふれる涙を必死で堪え、ふるふると全身が震える。
「だ、大体ウチ、あんなんちゃんと見えなかったもん！　小さくてよく解らなかったもん〜っ！！」
「ぐはぁっ！！」

　つづく。

どうもです。第７６話です。
>>180さん、支援ありがとうございました。m( __ __ )m

熱冷ましが座薬じゃなくてご免なさいｗ

つ「葱｣

>182
坐薬……と書こうとしたら先に言われたw
貴明はもう一人には戻れない身体のようですな
言ってはいけない事を言った瑠璃ちゃんにはそのうち小さくないver.をちゃんと見(ry

>>182
毎度お疲れ様です。
てか、瑠璃ちゃん…男としてのプライドがｗｗ

>坐薬
ここには俺が何人いるんだろうか。

河野家乙、貴明は通常時でも恐ろしいほどに男根！
だと思うのは俺だけ？

河野家の欠点は花梨分が足りないことかな

黄色はいらない子
それよりもイルファさんを出してほしい
まあ後々出てくるだろうけどｗ

ここで意表をついてダニエルがメインキャラ化

私は見てしまった・・・



それは偶然だった。
ワザと彼らの後ろを歩いていた訳では無い。
彼らが未練がましく、ひたすら遅く手を繋ぎながら歩いていたから、追いついてしまったのだ。

遠目から見る彼らは、手を繋ぎながらも遠慮し合う姿は、とても初々しくて・・・羨ましい・・・




そして、別れ道に差し掛かると２人は立ち止まり、そして・・・

キス、

し合っていた・・・



互いが互いを強く抱きしめ合い、息が続かなくなればどちらからともなく離れ、それすらも嫌なのかすぐに再開した・・・



私は、走り出した・・・

この次はボツにしたので書き直したらアップします

これはもしやツッコミ待ちなのか

>>191
笹森会長に対する愛を述べよ。

もう自分のサイトでやってくれと思うのは俺だけか

>>194
…このスレの存在意義がなくなりますね（笑

いや、なくならないだろ、河野家みたいなのだってあるんだから。
自分のサイト持っててSSの詳しい説明もそこでしてるようなら、わざわざSSスレに出張る必要ないじゃんって話（笑

>>196
わざわざサイトを見に行くのが面倒な人だっているでしょう。

サイトまで行くのが面倒だと思うようなSSは、そもそもスレに投下されても読まないんじゃ

NGあぼーんばっかで読めん

>>190
続き待ってますよー

工作してるのが見え見えだが、正直言って良作に埋もれてしまってるので何の問題もない

せっかく内容が良いのに、サイトデザインが見づらくて読まないことあるなぁ。
背景に画像設定したり改行多すぎだったり少なすぎだったり。
薄い灰色背景に黒文字、適度な行間をスタイルシートで設定して欲しいわ。

　薄く湯気の漂うお風呂場で、全身を延ばして、肩までお湯に浸かる。
　それまでの疲れが全部取れるような快感に、日本人に生まれて本当に良かったと思うね。
　珊瑚ちゃんの家のお風呂は特に広いし、湯船に寝そべったってまだ余裕がある。

「はぁー」

　思わず声が漏れた。
　珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんはもう眠ってしまって、聞こえてくる物といえば天井から落ち
てくる水滴の音くらい。イルファさんがまだ起きていて、洗濯物の片付けなんかをやって
いるはずだけど。きっと寝ている二人に気を遣っているのか、家の中は驚くほど静かだ。
　ずるずると、湯船の中に沈んでいく。
　疲れた。
　一日の疲労が、お風呂に入ってドッと出たみたいな気分だ。全身から力を抜いて、ぷか
ぷかと浮力に身を任せてみる。
　ん〜、最高に幸せな気分だ。
　いっそこのまま寝てしまったら気持ちが良いだろうなぁ。でも風邪引くだろうなぁ。イ
ルファさんや瑠璃ちゃんにも怒られるだろうし。
　頭ではそう考えるんだけど、体のほうがなかなかこの誘惑に勝とうとしてくれない。
　お湯の中に浮かんだまま、ぼーっと天井を眺め続ける。
　そろそろ思考にまで湯気がかかってきて、まぶたがだんだんと閉じ始めてきたころ。
　お風呂場の扉が開いて、一瞬湯気がはれる。

「あら？　貴明さん、入られていたんですか」

　タオルで前を隠したイルファさんが、驚いた顔でこちらを見ていた。

「あー、うん。イルファさんも、これから？」

「あ、はい。ですが、貴明さんが入られていたのなら、後にしますが」

「いいよいいよ、そんなに気を使わなくても。それにそんなことすると、風邪引いちゃう
よ」

　イルファさんはクスクスと笑い声をあげると、それではお言葉に甘えまして、と言って
浴槽に歩いてくる。
　浴室に響くイルファさんの素足の音。洗面器にお湯をとると、体に被っていく。流石に
恥ずかしいのか、俺からは後ろを向いて。ゆっくりと体をお湯の中に沈めていくと、小さ
く波ができた。
　俺とイルファさん、それに珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんとも一緒に入れるお風呂だ。二人く
らい余裕で浸かれる。やっぱりお風呂は大きい方が良いよなぁ。
　いや、別に俺が作ったわけじゃないけどさ。

「ですが貴明さんが入ってらしたとは思いませんでした。てっきり、瑠璃様たちとお休み
になられていたのかと」

　イルファさんが入るのは浴槽の向かい側。頭の上に畳んだタオルを乗せているのがなん
とも可愛らしい。どこでこんなこと覚えたんだろう？

「そう？　別にイルファさんを驚かせるつもりはなかったんだけど」

「脱衣かごの中にも、お洋服は入っておりませんでしたし。私、また珊瑚様が明かりを点
けっぱなしにしてしまわれたのかと思って、明日どうやって注意しようか考えていたとこ
ろだったんですから」

　そりゃ、珊瑚ちゃんも無実が証明されて良かった。
　でも俺、じゃあ脱いだ服どこやったっけ？　ああ、そうだ、そのまま洗濯機の中に・・・・・・

「もう、いつも脱いだお洋服は脱衣かごの中に入れてくださいと言ってますのに。後で色
物を分けたりするのも大変なんですよ」

　怒られてしまった。面目ない。

「貴明さんは、もう体は洗ったんですか？」

「いや、まだだけど。でももうちょっと浸かっていたいし、イルファさん先に洗っててく
れていいよ」

「そうですか？」

　メイドロボでものぼせたりするんだろうか？　お湯から上がったイルファさんは、全身
がほんのり赤く染まっていて。普段が日焼け一つない肌、まあ当然だけど、な物だから、
余計体温の上がったその様子に目を引かれてしまう。

「ですが貴明さんこそ、そんなに長くお風呂に入っていて大丈夫ですか？　のぼせてしま
われるのでは」

「うーん」

　自分ではそんなに長く入っている気はしてないんだけどな。確かに頭がぼぉっとするけ
ど、これくらいはお風呂に入ってたら当然だし。

「大丈夫だと思うけど。それに、なかなかこの、気持ちよくてお湯から出たくないと言う
か」

「まあ。貴明さん、まるでお年寄りの方みたいですよ」

　と言われてもなぁ。イルファさんも、そこまで笑わなくったって良いじゃないか。
　床に跳ねるシャワーの音が、お風呂中に響く。
　髪を洗う時はイルファさん、耳飾は外すらしい。普段見ることのないイルファさんの耳
が顕わになって、シャンプー混じりのお湯が耳たぶを伝って落ちていく。
　そこだけじゃない。イルファさんの背中や、うなじなんかにも、同じくシャワーのお湯
は流れていって。
　なんと言うか、色っぽいなぁなんて。
　他にすることもないから見ていた天井の代わりに、シャワーを使うイルファさんを眺め
ていた。

「もう、貴明さん。じっとこちらを見て。どこをご覧になられていたんですか？」

　シャワーを止めると、俺の視線に気が付いたんだろうか。
　いや、そんな見ていたと言うか。そんないやらしいことじゃなくて

「では今度は、貴明さんの番ですね」

「俺の？」

　そう聞き返すと、イルファさんはそれには答えずスポンジを泡立てる。手にそのスポン
ジを持ったまま、イスを目の前に持ってくると、にっこりと微笑んで。

「どうぞ、今度は貴明さんが洗う番ですよ。洗って差し上げますから、どうぞ座ってくだ
さい」

「いや、別にそこまでしてくれなくても、良いよ。もうちょっと浸かってから、自分で洗
うから」

「お風呂が気持ち良いのはわかりますが、貴明さん、このままでは本当にのぼせてしまい
ますよ？　かなり顔も赤くなっていますし」

　そう、なのかな？　そう言われてみれば、少し、頭がふらふらするような、しないよう
な。

「はい。ですからさあ、こちらにいらしてください」

　そう言って手を差し伸べてくるイルファさんに釣られるように、浴槽から立ち上がる。
　イルファさん、前、見えてるよ。

「ここはお風呂なんですから、裸でいるのは当然です」

　そう言う意味じゃないような・・・・・・まあ、いいか。
　ふらふらと歩きながら、イスに座る。イルファさんお言うとおり、少しのぼせ気味みた
いだ。

「では、いきますよ」

　背中のほう、耳元からイルファさんの楽しそうな声が聞こえてくる。
　なんだか変に遠くから聞こえてくるなぁなんて首を傾げていると、背中に泡立ったスポ
ンジの触れる感触が。
　ごしごしと、イルファさんが俺の背中を洗ってくれる。強すぎず弱すぎず、ちょうど良
い力加減で背中をこすられて。あー、気持ち良い。

「貴明さんの背中、大きいです」

「そうかな？」

「はい、瑠璃様や珊瑚様と比べるとやはり大きいですし、逞しくて、素敵です」

　そう──かな？　まあ確かに、瑠璃ちゃんたちと比べれば・・・・・・
　そのままイルファさんになされるがまま、背中の次は腕を取られて、スポンジがこすり
付けられていく。
　このままずっと、こうしていられたら幸せだろうなぁ・・・・・・
　気持ちが良すぎて、なんだか、視界がどんどん、遠くなって。

「貴明さん。それでは次は前を洗いますのでこちらを向いてください」

　イルファさんが俺の名前を呼んで、何かを言っているみたいだ。でもどこか遠くから聞
こえてくるみたいで、何て言っているんだか良く、聞き取れない。
　でもその声がとっても楽しそうだってことはわかって、それなら、まあ、いいや。

「た、貴明さん！？」

　電池の切れた人形みたいにそのまま後ろに倒れていくと、柔らかい物が俺の体を受け止
めてくれた。
　触れたイルファさんの肌は冷たくて、火照った俺の体にはすごく心地良い。柔らかいイ
ルファさんの体に抱かれて、幸せな気分で天井を見上げる。

「貴明さん、大丈夫ですか！？　しっかりしてください！！」

　イルファさんが俺の顔を覗きこんで何かを喋っている。でもだんだんとあたりが暗くな
っていって、イルファさんの顔も天井も、何も見えなくなっていって。
　でも、まあ良いや。こんなにも気持ちが良いんだから。ああ、やっぱりお風呂って最高
だな・・・・・・


　
　　　終

最近風呂ネタばっかりだなぁ。

そろそろ朝晩冷えてきたのが影響……それは東北以北だけかw

ともかく>212乙。>94と同じ人かな？イルファさんは何やらせても無理がないのが強みだね

葉鍵板最萌女王　柏木千鶴から小牧愛佳へ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1159150843/
バ鍵っ子は最萌で葉に負けたのがそんなに悔しいの？
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1160558544/


【第１回優勝者・柏木千鶴】
プロ作家や大手同人作家など多数の神々が支援のために降臨し、
投票スレを震撼させる一方で、狩りＡＡをはじめとするネタ支援でも、
ＡＡ作成の第一人者が支援するなど極めて充実。
葉鍵板らしい「あらゆる要素が詰まったおもちゃ箱」的なイベントを象徴する優勝者となり、
第１回最萌トーナメントを伝説の域にまで高めた。
http://saimoe.s10.xrea.com/

【第２回優勝者・小牧愛佳】
渚（CLANNAD）、観鈴（AIR）、あゆ（Kanon）のオールKeyメインヒロインsを撃破したほか、
同門対決のこのみ、最強支援軍団を擁する理奈など、
強敵しか存在しない「死のロード」を見事に完走。
優勝候補の筆頭と言われた実力を遺憾なく発揮し、王者の風格を見せつけた。
http://www.geocities.jp/pie_tornament/main.html

>>212
ちちまくら。
本番ナシなのに激エロス。

今連載してる物の中で一番楽しみなのって何ですか？

個人的には や・ゆ・よ が楽しみ

最近は楽しみなのばかりだから決められんｗ

>215
『ちちまくら　本番ないのに　激エロス（字余り）』

中一の頃，MMRに影響された花梨は
「べんとらの動きを制したものが全てを制する」という世にも奇天烈な信念の元，
毎日休み時間には体育館でそういった儀式の動きをまねた特訓をしていた。
ほかの生徒はもちろん花梨を怪訝な目で見るが，完全に自己陶酔していた花梨は，心の中で
「フン…ただの人間風情が…」と彼らを見下していた。

ある日，数少ない友人の一人が何に憧れたのか，花梨に弟子入りを志願してきた。
突然師匠となった花梨はテンション上がりまくりで，今まで特訓してきた奇行の全てを彼に伝授した。
「体を細くくねらせろ！グレイのように！」とか
「首を引っ込め体を守れ！ネッシーのように」とか

ここまで書いてもう限界　あとのことは思い出したくもない

>>220
お前邪気眼持ってただろ

>>218
それはいいことだな。かくいう俺はやゆよが一番楽しみだ。

好評だったので第二弾を。


弟子入りした彼は呑み込みが早く、日に日に上達していった。
そしてそんな彼にいつしか花梨は、弟子に対する愛情とは異なった感情が芽生えるのを意識するのだった・・・。
一年後、特訓に耐えぬいた彼は完全に花梨の動きをマスターしたかに見えた。
「べんとら〜」
師匠の花梨は彼に言い放った。「これから最後の特訓を始めルンよ」
「花梨の動きを完全にマスターするためには、あたしと心も身体も一体にシンクロしないとならないんよ。
こ、これから大切な儀式を始めるんよ・・・」
弟子「ちょ、おま、師匠、ななにするんですかっ！」花梨「もぅ、おとなしくするんよっ！」
花梨「んっ、はむ・・んちゅ・・・」
弟子「うぐぅ、し、師匠・・・」
花梨「今は師匠じゃなくて花梨って呼んでほしいんよ」

>>223
どうしたクオリティ落ちすぎだぞ
怠けるな精進しろ

「アンパンマンって怪我したらどうなるんだろう？
おしるこが出てくるのかな？」
「そうだ！！今日アンパンマンショーがあるから確かめてみよう」
アンパンマンショーの直後
アンパンマン役がイスに座っているところに花梨が近づき
家から持ってきた包丁を突き刺す。
運悪くそこは心臓だった。
「アンパンマンも血を流すんだ・・・・」
アンパンマン役はそのまま床に倒れる。
「顔がぬれて力がでないんだ。」
その時バイキンマン役が壁越しに
「オイ次の準備急げよ！！」
と声をかけてきた。花梨はあせった。
「どうしよう。アンパンマンは顔がぬれて力がでないのに。」
「助けなきゃ・・・・・」
花梨はアンパンマン役を刺殺した包丁を持って
バイキンマン役の所へ向かった。

ガチャッ。
ノックも無しに突然開けられたドアのほうを見たバイキンマンは目を見張った。
そこには血だらけの包丁を手に持つ幼い少女が佇んでいた。
突然の現実離れした状況にバイキンマンの頭はパニックになった。
しかし、バイキンマンが一番驚いたのは血だらけの包丁ではなく、少女のこの世のものとは思えない愛らしさだった・・・。
シャイニングイエローに輝く髪、淡いブルーの瞳、ぷにぷにしたほっぺた、
少女の可愛さは今のこの状況以上に現実離れしていた。
花梨「アンパンマン動かなくなっちゃったんよ〜」
少女は包丁を振り回しながら泣きだした。
「お、お嬢ちゃん、そんなもの振り回したら危ないよっ！」

>>225-226
乙です。
続きにも期待。

すごい自作自演ですね。

なんか最近こんな奴多くない？

せめてID変えろよｗ

それにしても花梨の人気は本当にすごいな
東鳩2ではNO.1なんじゃね

とりあえず色んな意味でNo1なのには同意。
225-227みたいなのがいい例だ。

⊂⌒ヽ　<^(ﾟwﾟ)ノハヾ^　(⌒⊃
　　＼ ＼ｗ ﾘ(i!ﾟ ヮﾟﾉｖ'`/､ / 　　　
⊂二二二　　・）　･）　ニ二⊃ 　　　　いやっほ〜う　かもりんの*人気最高〜
　　　　＼　＼_ ....／　／ 　　　　　
　　　　　（　　　φ　　　）
　　　　　　ヽ＿,*､＿ノ　　 　　　　 　　　　　　　　
　　　　　　　　　ﾞﾐ;;;;;,_　
　　　　 　　　　　 ミ;;;;;;;;､;:..,,.,,,,,
　　　　　　　　　　　i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
　　　　　　　　　　　　ﾞゞy､､;:..､）　　｝ 　　　　　　　　
　　　　　　　　　 　　　.¨.､,_,,､_,,r_,ノ′ 　　　　
　　　　 　　　　　　/;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
　　　　　　　　　　ﾞ{y､､;:...:,:.:.､;:..:,:.:.　._　　､｝
　　　　　　　　　　　".¨ｰ=v ''‐ .:v､,,､_,r_,ノ′
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　　　　　　　　 ﾞ{y､､;:...:,:.:.､;､;:.:,:.:.　._　　.､）　　､｝
　　　　　　　　".¨ｰ=v ''‐ .:v､冫_._ .､,_,,､_,,r_,ノ′
　　　　　　　　/i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ﾐﾞ´ﾞ^′.ｿ.ヽ
　　　　　　　　ﾞ{y､､;:..ゞ.:,:.:.､;:.ﾐ.:,:.:.　._υﾟo,,'.､）､｝

花梨が白昼堂々いかにもなDQNに絡まれてるのを見かけた。
花梨は半笑いでなんかぼそぼそ言ってそのたびにDQNがすごんで黙らせてた。
んで、DQNが「いいから黙って金出せよ黄色!!」って言ったら花梨は
「金欲しいなら働くんよバーカ(ﾟwﾟ)」っていきなり態度豹変させて叫ぶと
びっくりしたDQNを押しのけて信じられないスピードで走って逃げてった。

しばらく放心状態だったDQNは我に返ると急いで花梨の後を追ったが、見失ってしまった。
「ちっくしょ〜ぅ！」
苛立つDQN。
そこに運悪く通りがかったのがいいんちょだった。

DQN「おい！そこの茶髪、ちょっとまてよ！」
ｲｲﾝﾁｮ「はぃ？あたしですか？」
DQN「喉乾いたんでジュース飲むから金貸してくれよ」
ｲｲﾝﾁｮ「そ、そんなぁ〜、お金なんて持ってません〜」
いきなり凄むDQNにびびるいいんちょ。
DQN「とんでみろよ」
ｲｲﾝﾁｮ「えっ？」
DQN「ジャンプしてみろって言ってんだよっ！」
ｲｲﾝﾁｮ「ふぇぇ？こ、こうですかぁ？」
『チャリ、チャリ』
いいんちょのポケットから小銭の音が鳴った。

DQN「持ってんじゃんかよ。なに嘘ついてんだよっ！」
ｲｲﾝﾁｮ「こ、これはお昼ご飯を買うお金で・・・」
DQN「一食ぐらい抜いても死にゃしねえよ。とりあえず嘘つきにはお仕置きが必要だな」
ｲｲﾝﾁｮ「はひぃ？」
強引に公園のトイレに連れこまれるいいんちょ。
DQN「ちょうど喉乾いてたし、お前のラヴジュースを飲ませてもらうかな」
ｲｲﾝﾁｮ「ひぎぃ〜っ！」

・・・中略

後には白濁液まみれのいいんちょが放心状態で取り残されていた・・・。

中略の部分だけを書けばよかったのに…

「せまい部屋ですわね」
玲於奈が不平を言う。
室内は、確かに広くはない。
「カラオケボックスなんてこんなもんだ」
「雄二、ここに座りなさい」
環が雄二を引っ張って隣に座らせる。
配列は手前から薫子、カスミ、環、雄二、玲於奈。
「お姉様、どうぞ」
雄二の左から身を乗り出して、玲於奈が環に曲本を渡す。
「え、い、いいわよ、あなたからどうぞ」
右から左に逆戻り。
「いえ、私ごときが先陣を切るなど……」
再度左から右。
「じゃ、じゃあカスミは？」
フルフル……。
「え、私も歌はあまり……」
さらに右右。折り返して左左。
「雄二、最初に歌いなさい」
もうひとつ戻ってきて命令口調。
「なんで俺が」
雄二は、反抗した。いつものように無駄だった。
「しょうがねえ、先陣を切ってやるか」
「なにかこう、景気の良い歌をお願いしますね」
テーブルのリモコンに手を伸ばした時、薫子が耳打ちした。
「よし、まかせろ」
カチャカチャカチャカチャ、ピピピピッ。
「……出ないわよ？」
「少し時間がかかるんだよ」
ジャンチャラッチャ〜♪ジャンチャラッチャ〜♪チャチャチャ〜ラチャッチャッチャ〜ララ〜♪
「Ｊ−Ａ−Ｓ−Ｒ−Ａ−Ｃ−じゃすらっくっ！」
守ろう著作権。

「なんと品のない歌でしょう」
「あんだと」
「確かに元気は良かったですけれど」
「あははは、はぁ」
乾いた笑いの環。
「俺が歌ったんだから、次は姉貴の番だぞ」
ツンツン……。
「え？　ええ……」
カスミにリモコンを差し出され、環は渋々曲目を探す。
「これなら歌えるかな」
ピピピピッ
「どんな歌を選ばれるかで、お姉様の心情が伺えるかも知れません」
ジッ……。
息を潜めて三人娘。

ちゃ〜らっちゃら〜、ちゃ〜らっちゃら〜♪
「男〜と女〜の間〜には〜♪」
暗くて深い川があった。

パチパチパチパチパチパチ……。
「さ、流石お姉様。じょ、情感豊かな素晴らしい歌でございましたわ！」
「つ、次、カスミっ」
「ここはひとつ、心が晴れるような歌をお願いしますね」
ジーッ……。
カスミ、黙考。
コクッ……。
決断。起立。
カチャカチャ……。

「き〜○〜が〜あ〜よ〜●〜は〜♪」
それ、危険。

ペタン……。
礼。着席。
「よ……良く頑張りましたわカスミ」
薫子が頭を撫でた。
「そういや、こいつの声初めて聞いたな俺」
「カスミの歌を聴くのは私たちにとっても貴重な体験ですわ」
「貴重は貴重だろうが……なんとかしろ薫子」
「えーっと、それでは……」

Kaoruko's select：『Brand　New　Heart』

パチパチパチ……。
「なんだか、やっと普通のカラオケになった気がするぜ」
「貴方の最初の選択が悪かったからでしょう？」
「あれは前フリってヤツだ」
「この間の甘味屋で流れていたのを聴きまして」
歌い終えてほっとした表情の薫子。
「甘味屋って先々週の？　それにしては巧かったじゃない？」
「光栄です。実はおとついCDを買って、部屋で練習してました」
やや照れる。環に誉められて嬉しそう。
「で、では私もっ！」
「おーがんばれ」
張り切った玲於奈に気のない声援をして、自分の曲を探していた雄二だが、イントロを聴いて顔を上げた。
ちゃっちゃっちゃ〜らら、らららちゃっちゃっちゃ〜らら〜ら〜♪
「う、緒方理奈」
「これ、雄二の部屋から良く聞こえてる曲ね」
「街でも良く流れてますわ」
コクコク……。
みんなに注目され、玲於奈は張り切って歌い出した。
曲は勿論『SOUND OF DESTINY』

「あ〜い〜と〜い〜う〜」
「ぶっ！」
雄二がウーロン茶吹いた。
「？　こんな歌だったっけ？」
「歌詞はあってるようですけど……」
？？？……。
「（中略）ねむ〜って〜い〜る〜の〜か〜」
Ｐｉ！
「な、なにするんですのっ！」
「なにじゃねえっ！　知らない曲を歌うなっ！」
「い、今から聴いた事がある箇所だったのに」
「それじゃサビだけだろうがっ！」
「そ、それは……」
迫る雄二に押される玲於奈。自覚があるのか抗議の声は小さい。
「下手にも程がある。こんなの緒方理奈に対する冒とグガギグ」
ごがっ。
凄まじい音がして、雄二の姿が眼前から消えた。
「雄二ぃ〜？　人が歌ってる最中に曲を止めるなんて、何を考えているのかしらぁ〜？」
環の声が、普段より１オクターブ低い。
「グェ、いやファンとしてこれは許せなグググググ」
後ろから引き倒され、テーブルに叩きつけられた雄二が呻く。
「あ、あの、お姉様？」
「遠慮する事ないわ、もう一度入れなさい」
「で、でも……」
「聴きたいの。いい声してるわよ玲於奈」
さすがに「上手い」とは言わなかった。
「は、はいっ！　頑張ります」
「なんだか楽しそうですね。私たちも頑張りましょう」
コクコク……。
「頼むから頑張らないでくゲゲゲゲゲ」
テーブルに封印される雄二の顔面。
かくして室内は、三人娘による緒方理奈初見歌唱会場となった。

「んー、楽しかったわね」
「そう言っていただけると、お誘いした甲斐がありました」
ニコニコ……。
「俺は楽しくなかった」
「あら、雄二も最後に歌ったじゃない」
「……あれは男声で歌う歌では、なかったと思いますが」
ラスト１０分。ようやく環から解放された雄二が歌った曲は玲於奈と同じSOD。
「上手かったですけれど、またそのせいで気味の悪さが倍増でしたわね」
「うるせえ。お前が下手すぎるんだ」
「それは認めます」
善悪はともかく、雄二の完璧な歌唱を見せつけられては反論しない玲於奈。
「ですが、練習して置きますから、今度は見ててご覧なさいっ」
「そうですね。では、玲於奈が自信をつけた頃に再度いかがですかお姉様？」
「え？　あ、ええ」
玲於奈の発言を奇貨としてちゃっかり次回の約束を取り付ける薫子。
「そういう事だから頑張って、玲於奈」
「任せてくださいな」
「しかし、雄二様は確かにお上手でしたが、お姉様も素晴らしかったですわ」
「私あの子の歌好きだもの。良く雄二から借りて聴いてたわ」
「？　ＣＤ貸したことなんてねえぞ」
「あら、貴方の部屋は、誰が掃除していると思ってるの」
「げ、勝手に持ち出してたのかよ」
「そうそう、ＣＤのお礼に、ひとつ忠告しておいてあげる」
「なんだよ」
「ベッドの下だとか押入の奥だとか、隠し場所に芸がないわよ」
「……」
絶句する雄二を尻目に、出口に歩き出す環の足取りは軽い。
「久しぶりに明るいお顔を拝見できましたわね」
「次はもっと楽しい集まりにいたしましょう」
コクコク……。
決意を新たにする玲於奈達。雄二はぼやいた。
「カラオケは、当分御免だ……」

１週間後。
「げっつげっつか〜す〜いもくきんきん〜」
このみの調子っぱずれな声が響く。
「元気だなあ」
「元気ねえ」
苦笑いは貴明と環。
「チビッコらしいというか、なんというか」
先週散々な目に遭った雄二だが、
「タマお姉ちゃんとユウ君ばっかりずるい〜」
このみにバレてゴネられて、２週連続同じ部屋。
「ちょっとトイレ行って来る」
廊下に出て、なんとなくドア越しに室内を振り返る。

「次はタマお姉ちゃんの番だよっ」
「私はいいから、このみが歌いなさい」
「え〜っ、ダメだよ〜。てりゃ、曲本アターック」
「こら、ジュースこぼれるぞ」
「わわわっ、ごめんなさ〜い」
このみを中心に、じゃれあう３人。

「……仲のいいこった」
実は貴明が愛佳とつきあい始めてから、４人で遊んだ事はなかった。
一緒に帰る機会も少なくなったし、環が遠慮がちになったせいもある。
雄二も、積極的にどこかへ行こうと提案はしなくなった。
環とこのみの、貴明への想いを知っていたから。
正直、不安を抱えての今日だったのだが、蓋を開けてみればこんなもの。

このみが楽しければ、３人は楽しい。みんなが楽しければ、このみも楽しい。
昔から、この４人はそういう関係だった。
今も、それは変わりない。
これから先のことは、わからないけれど。雄二は、とりあえず安心した。

トイレは、雄二達の部屋のひとつ上のフロアにある。
出すもの出してスッキリ、廊下を戻る。
と、
「お、SODだ」
一室から、雄二にはお馴染みの曲が聞こえてくる。
「大概俺様より下手だけど、時々上手いヤツがいるんだよな」
つい、その部屋の少し前で足を止めたりして。

ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃ〜ら〜ら♪
「（あれ？２番始まってるぞ）」
「……きずついてきずつけ〜ら〜れ〜て♪」
明らかに、慌てて歌い始めている。
物凄く下手なその歌声に、雄二は聞き覚えがあった。

「このヘタクソっ！」
「ひゃあっっっ!?」
思わずドアを開けて暴言を吐く。
乱入者に驚いて反対側の壁に背中を張り付けたのは、赤髪の少女。
「ゆ、雄二、さん？　なんで？」
マイクを胸元で握りしめて、目に涙を溜めている。
「あ、いや、このみ達とちょっとな」
いきなり乱入はまずかった。ちょっと弁解気味に説明する雄二。
「お前らは練習か？　あれ？　他の二人は？」
「今日は私一人です」
部屋の隅から出てきて答える玲於奈。
「一人？　で、カラオケボックス？」
「悪いんですかっ！」
悪くはないが、普通ではなかろう。
「来るべき次回に向けて、歌の練習をしていたのです」
「なにもボックスに来てやらなくても」

「大体なあ、CD聴きながらじゃないと正解がわからないだろ」
「う……実は持ってきたのですけど……」
鞄からシングルCDを取り出す。
「買ったのか。感心感心」
でも未開封。
「カラオケボックスにはCDプレーヤーがないのですね」
「普通はそうだな」
「仕方ないので、歌詞をみながら見よう見まねで」
「そりゃ何回やっても無駄だ」
「やはりそうでしょか……」
玲於奈が肩を落とす。なんとなく不憫になる。
「あのさ、俺達に合流するか？　姉貴も来てるぜ」
「お姉様がっ？」
ぱっと表情が明るくなる。が、首を振った。
「いけません。今の私では、お姉様に聴かせる歌がありません」
意固地な玲於奈。
「ったってなあ……」

ちゃっちゃっちゃ〜らら、らららちゃっちゃっちゃ〜らら〜ら〜♪
曲が終わる。と、すぐに同じ曲が始まる。
ふと入力曲数を見ると、最大曲数まで入力されている。
「それでは私は練習を続けますから。お姉様によろしくお伝えくださいな」
再びマイクを取って歌い出す。
とっても下手。
というか、合ってない。元歌を知らないのだから当然だが。
「……」
雄二は、１分２２秒まで我慢した。
「ええいっ、貸せっ！」
「な、なにするんです!?」
「俺が手本を見せてやるっ！」

「うたいながらゆこう〜、いっつっまで〜もーっ」
後奏Ｆ．ｏｕｔ。
「……やっぱり、気色悪いですわ」
「うるせえ。ともかく、今ので概ねタイミングと音程は合っている筈だ」
「わ、わかりました。やってみます」

特訓が始まった。
「違うっ、そこはララ〜じゃなくてラッラッ♪」
「は、はい」
「そこは歯切れ良く、い・る・の・か・な！」
「指立てないでくださいな気持ち悪いっ！」
「遅いっ、もう２番始まってるっ。やり直しっ！」
「え？えっ？」
「今度は早いっ、チャチャってのが入ってから！」
「あ、すみません」
「１番よりは繋がりを出して、つ、づ、け、ら、れ、る♪」
「は、はいっ！雄二さんっ！」
「雄二ではないっ！　今はお前のコーチだっ！」
「はいっ、コーチっ！」
二人とも、けっこう悪ノリするタイプなのかも知れない。

「いっつっまで〜もーっ」
ちゃっちゃっちゃ〜らら、らららちゃっちゃっちゃ〜らら〜ら〜♪
訓練時間、１時間強。
「ど、どうでした？」
恐る恐る感想を尋ねる玲於奈。
「……うむ、概ね合格」
「本当？」
「ああ、無論まだまだ未熟だが、短時間でよくぞここまで上達した」
「良かった。これでお姉様に……」
安心した玲於奈は、ソファに座り込んで。
そのままへたっと倒れてしまった。

「おいおい」
慌てて玲於奈を支えた雄二。テーブルの上の伝票が目に入る。
「げ、３時間も一人で歌ってやがったのか」
真っ正直といか、馬鹿正直というか、少女の素直さに呆れる。
ともかく頬をぺちぺち叩いて起こす。
「う……あ、あれ？」
「いきなり倒れるな。びびるじゃねえか」
「へ？　わたくし、……ふあっ!?」
目を覚ました玲於奈ｊは、雄二との距離の近さに驚いて飛び下がる。
ごちん。
「っつぅ…」
壁に頭をぶつけて涙目。
「……言っとくが、なにもしてねーぞ」
「当然ですっ」

いつものウーロン茶で暫時休憩。
「今日はここまでにしとけよ」
「はい……ご迷惑をお掛けしました」
ストローくわえて頷くと、赤い前髪が少し揺れる。
「それと、ありがとうございました。熱血コーチ」
「ぶへっ」
雄二は吹き出しかけて、コップから口を離す。
「やめてくれ、あれはその場の勢いだ」
「ふふっ」
玲於奈の笑いは色々種類があって面倒だが、今は屈託のない笑顔。
一瞬見とれて、ついと視線を逸らす雄二。
「あら、ところで、雄二さんはまだよろしいの？」
腕時計に目を落とした玲於奈が、怪訝な顔で尋ねる。
「あ？」
「お姉様達と、一緒ではなかったのですか？」
少し赤かった雄二の頬が、みるみる青ざめる。
「やばい。忘れてた」

「だ、大丈夫ですの？」
「このくらい平気よ。いつもの事だから」
「ユウ君ダイハードだからねー」
「普通は頑丈とかタフとか言うもんじゃないか？」
「はっへはほほをひいひゃひゃって」
建物を出て、環にボコボコにされた雄二を囲んでの会話。
「今回に限っては、私が引き留めてしまったので……」
玲於奈は、ちょっと申し訳なさそう。
「いいのよ。帰る前にお茶して行くけど、一緒に来る？」
「よろしいのですか？」
一瞬、目を輝かせた玲於奈だが、
「……やはり今日は、遠慮しておきます」
視線の先には、このみと談笑する貴明の姿。

「それでは、私は失礼します。休日にお会いできて、嬉しかったです」
「お疲れさま」
踵を返して歩き始めた玲於奈が、よろっとコケる。
「お、おい大丈夫か？」
雄二が慌てて駆け寄る。
「平気ですわ、ちょっと立ちくらみがしただけ」
「ったく、無茶するから」
「……」
二人の様子を見ていた環、
「雄二、玲於奈を家まで送っていきなさい」
唐突に指示を出した。
「へ？　なんで俺」
「貴方が無理させたのでしょう？　男として当然の責務よ」
「べ、別に大したことありませんし、雄二さんのせいでは……」
「駄目よ。ついでにいうなら、私たちを放って置いた罰でもわるわね」
雄二も玲於奈も、無駄な抗議はしなかった。

ガタンゴトン…ガタンゴトン…
「１５分くらいで着きますから」
「ああ」
電車内、いまいち話題がない二人。
「でも、お陰で大分上達した気はしますわ」
「気のせいじゃねえよ。たぶん俺の知り合いの大半より上手い」
「あら、そうですか？」
気分を良くした玲於奈。
「この調子で頑張れば、歌手本人より上手くなるかも知れませんわね」
ちょっとした冗談、のつもりだったのだが。
「……」
「？　雄二さん？」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
雄二の身体から立ち上る、不穏当なオーラ。
「くくくくっ、今、なんだって？」
「えっ？　い、いえ、ほら、緒方理奈ってアイドル歌手なんでしょう？」
「アイドル歌手だから、たいして、上手くないだろうと、言いたいのかな？」
口調が尋常でない。
「い、いえっ、街で聴いた時は上手いと思いましたよ、でも、ＣＤとかってその」
「くくく、録音と加工でどうにでもなると、そう言いたいのかな？」
「そ、そんな事は……」
「くくっ、わかったぜ。反省した」
「はい？」
「そもそも、原曲を聴かせずに教えようとした俺が悪かった」
もぞもぞ。鞄の中から、綺麗に伸ばされた横封筒を取り出して玲於奈に手渡す。
「な、なんですか？」
「次のライブのチケットだ」
「え、えーっと、緒方理奈の？」
「そうだ。ファンクラブ枠だから立見だが、聴いて己の浅はかさを反省するがいい」
「それは……もうしてますけど……」
後悔、先に立たず。
玲於奈の家近くで別れるまで、雄二の緒方理奈賛美は続いたのであった。

以上です。
実はこのためにホワルバやったんだけど、緒方理奈の歌ってSOD１曲だけ？
あと、久しぶりに聴いたけどBrandNewHeartってやっぱ良い歌ですね〜

>>251
花梨の出番は？

>>251
深みに嵌ってゆく2人がたまりませんｗ

　病院から帰り、いつものソファーに横になろうとした俺に瑠璃ちゃんは、自分のベッドを貸すから
そっちで寝ろと言ってくれた。
　その厚意に甘えて、久しぶりにベッドで寝た俺。だけど熱のせいか、すごく怖い夢――このみや
タマ姉たちが俺を仲間はずれにする夢を見てしまう。しかもその夢のせいで俺は寝ながら泣いてた
らしく、その姿を瑠璃ちゃんにずっと見られていた。うう、恥ずかしい……。
　熱は更に悪化し、熱冷ましを飲むことに。苦い粉薬だからとオブラートに包んで持ってきてくれた
瑠璃ちゃん。正直オブラートなんていらないんだけど、瑠璃ちゃんの厚意を考えたら、俺は黙って
飲んでりゃいいのだ。おまけに瑠璃ちゃんたちはいつもこうなの？　だなんて余計な質問するもの
だから、子供扱いされたと思った瑠璃ちゃんはへそを曲げてしまう。ゴメンね瑠璃ちゃん。
　気付くと俺の全身は汗まみれ。瑠璃ちゃんは着替えと体拭き用の濡れタオルを用意してくれたの
だが、着替えと体拭きをするからと俺のパジャマを脱がしにかかった！　抵抗する俺だが熱で力が
入らず、おまけに瑠璃ちゃんときたら脱がさなくていいものまで脱がしてしまって……。
　しかも、しかも瑠璃ちゃん、”小さい”だなんて……ううっ……

　男子の尊厳を粉みじんにうち砕かれた俺はもはや生ける屍。抵抗する気力も無く、瑠璃ちゃんに
全身をタオルで拭かれるがままだった。
「ふぅ……、貴明身体大きいから、さんちゃんほど楽じゃないな」
　そうですか、身体は大きいと言ってくれるんですね。小さい部分もありますけど。
「よし、まぁこんなとこやろ。貴明、パジャマ着せるよ」
　はい、どうぞご自由に。瑠璃ちゃんの指示通りに姿勢を変えたりバンザイしたりして、パジャマを
着せてもらう。
「これでよし、と。
　じゃあ貴明、お昼になったらお粥持ってくるから、それまでちゃんと寝とるんやで。
　そ、それから」

　瑠璃ちゃんは顔を赤らめ、
「さ、さっきのはもう忘れや！　う、ウチも忘れるから」
　そう言って、部屋を出た瑠璃ちゃん。……忘れられるものなら忘れたいです。

　熱冷ましが効いたのか、俺はまた寝入っていた。
　次に目が覚めたのは、いい匂いがしたから。
　目を開けてみると、瑠璃ちゃんがちょうど部屋に入ってきたところ。手にはお盆、その上には湯気
を立たせている土鍋。
「あ、貴明ちょうどよかった。お粥、食べられる？」
　時計を見ると、お昼頃。もうそんな時間か。
「うん。ありがとう」
　ベッドから身を起こそうとするが、
「あ、そのまま寝とき」
　駆け寄ってきた瑠璃ちゃんに止められる。
「寝ながらじゃ食べられないんだけど？」
　そう尋ねると瑠璃ちゃんは、
「そ……その、貴明は病人なんやから、病人は病人らしく寝とったらええんやもん。
　せ、せやけど、寝たままやと食えへんやろ？　せやから、う、ウチが……」
　恥ずかしそうに小声で話していたので、最後の方はよく聞こえなかった。なので、
「え、ウチが、なに？」
　けれど瑠璃ちゃんは何も答えず、俺の横にドカッと座り、土鍋の中のお粥をレンゲで一掬い。それ
をふーふーと冷まし、
「は、はい……、あーん」
　――そう来たか。そう来ましたか。瑠璃ちゃんがここまでするとは思わなかったぞ。

　けどさぁ、これはかなり恥ずかしいぞ。誰が見てるってワケでもないけど、なぁ。
「あ、あのさ瑠璃ちゃん、やっぱ俺自分で――」
「アカン。あーん」
　即座に却下された。おまけにレンゲは俺の口元近くに既にあり、お粥のいい匂いが鼻をくすぐる。
「あ、あーん」
　仕方なく口を開け、お粥を口に入れてもらう。――ちょっと熱いけど、うん、美味しい。
「どう？」
「はふはふ……。うん、激辛じゃないね」
「当たり前やん。あんなの冗談に決まってるやろ」
　むくれる瑠璃ちゃん。あのときはとても冗談には聞こえなかったけどね。
「うん、美味しいよ」
　俺がそう答えると瑠璃ちゃんはまたお粥を掬ってふーふーし、
「あーん」
「あーん」
　二口目。うん、美味しい。
「あ、梅干しも食べな。はい、あーん」
「あーん」
　三口目は梅干しも少し。梅干しの酸味がまた心地いい。
「梅干しすっぱい」
　美味しかったけどわざとこんなことを言ってみたり。瑠璃ちゃんは苦笑して、
「好き嫌い言っちゃアカンで。はい、あーん」
　早くも次のお粥を差し出す瑠璃ちゃん。
「あーん」
　四口目。美味しい。もうこれ以上は数えるのやめた。

「なーなー貴明、お粥美味しい？」
「うん、美味しいよ」
「そうか、なら残さず食べてや。はい、あーん」
「あーん。――はふはふ」
「あ、冷ますの忘れた。貴明、大丈夫？」
「……う、うん、大丈夫。ちょっと熱かったけど、うん、大丈夫」
「ご、ゴメンな。次はちゃんと冷ますから。
　ふー、ふー……、はい、あーん」
「あーん。――うん、ちょうどいい」
「なーなー貴明、瑠璃ちゃんのお粥、そんなに美味しいん？」
「うん、美味しいよ、珊瑚ちゃ――」
　え？
「ほな瑠璃ちゃん、ウチにもあーん」
「はいさんちゃん、あーん。――って、さ、さんちゃん！？」
　気がつくと、瑠璃ちゃんのとなりで口をあーんと開けてる珊瑚ちゃん。い、いつの間に！？
「もしかしてウチがいること、瑠璃ちゃんも貴明も気付いてなかったん？
　そうかー、ウチ、お邪魔虫かー」
　悲しいなー、とか言いつつもちっとも悲しそうじゃない珊瑚ちゃん。
「お、お、お邪魔虫ちゃうよ！　ちゃうけど、そ、その……
　あ、そう風邪！　風邪移ったらアカンからさんちゃん入ったらアカン！」
「えー、でもウチもう入っちゃったよ」
「う……」
　言葉に詰まった瑠璃ちゃんの代わりに、
「さ、珊瑚ちゃんどうしてここに？」

　すると珊瑚ちゃんはキョトンとした顔で、
「貴明が風邪ひいたって聞いたから来たんやけど、ウチ、やっぱりお邪魔虫？」
「あ、いやそんなことないって！　お見舞いありがとうね、珊瑚ちゃん。
　ん？　ってことは、もうみんなも帰ってるの？」
「うん。環たちなら居間におるよ。
　環は寝てる貴明に迷惑かけたらアカン言うてたけど、ウチだけこっそり来ちゃった☆」
　そうか、今日は土曜日だから、そろそろみんなが帰ってもいい時間だものな。
「あとな、愛佳と郁乃、それからちゃるとよっちも来てるよ〜」
　うえ、うるさいのも来てるのかよ。誰とは言わないけど。
　こんこん。
「タカくん、いる？」
　ドアの向こうからこのみの声。
「ああ」
「お邪魔するね」
　ドアを開け、このみが来る。
「あ、こっちのお部屋で寝てたんだね。
　帰ったらソファーにいないから、どうしたのかと思った」
「ああ、瑠璃ちゃんの厚意に甘えてな」
「こ、好意って、別にそんなんちゃうもん！
　そ、ソファーはみんな座るし、貴明寝たまんまやとジャマや思たから、せやから……」
　瑠璃ちゃん、別に誤魔化さなくても。
　そんな瑠璃ちゃんを見たこのみは、瑠璃ちゃんが持っているお粥を見て、
「ふーん、瑠璃ちゃんにお粥食べさせてもらってたんだ」
「ま、まぁな」

「美味しそうやろ、このみ。
　せやけど瑠璃ちゃん、ウチには食べさせてくれへんねん。これは貴明のために作ったから言うて」
「そ、そんなん言うてないもん！　さんちゃんのウソつきぃ！」
　落ち込むマネをする姉に、赤面して慌てる妹。
「うん、でもホントに美味しそう。よかったねタカくん」
「あ、ああ」
　笑顔でそう言うのだけれど、何だろう、このみの機嫌を損ねてしまった気がする……？
　そして、このみは笑顔のまま、
「わたしたちはこれから焼肉食べるんだけどね」
　や、焼肉ですと！？
「えええっ、このみそれマジ！？」
「うん、マジだよ。
　お肉もね、タマお姉ちゃんが奮発していいやつ買ってくれたんだ。カルビとかロースとか。
　ちゃるとよっちとは帰りに偶然会ったんだけど、焼肉食べるって言ったら喜んでついてきたんだ」
　そう言うことだったのか。……まぁ、そりゃ、たかが風邪くらいで見舞いになんか来ないわな。
　しかし、焼肉と聞いては黙っていられないな。
「よし、俺も食う」
「あ、こら貴明！」
　起きあがろうとしたが、瑠璃ちゃんに押さえられてしまった。
「うう〜！　俺も焼肉〜！」
「う〜！　ウチのお粥じゃ物足りない言うんか！？」
「お粥も食べる〜！　焼肉も食べる〜！」
　相変わらず力が入らないが、じたばたと精一杯の抵抗をする。しかし、このみは俺の顔を覗き込み、
「ダメだよタカくん。風邪のときは消化にいいものだけにしておかなきゃ」

「ふ、不公平だ！　理不尽だぁ！！
　大体なんだよタマ姉も！　人が風邪引いたときに焼肉だなんて！　当てつけかよ！？」
　するとこのみは困った顔で、
「あのねタカくん、それは、タカくんが風邪を引いたからだよ。
　そばにいる私たちまで風邪でダウンしないよう、スタミナをつけておこうってタマお姉ちゃんが
言ったの。だから焼肉なんだよ」
「ぐぐ……」
　何となく説得力があるように思えて、言葉に詰まる。
「瑠璃ちゃん、瑠璃ちゃんもお昼まだでしょ？
　タカくんにお粥食べさせるの終わったら、降りてきて一緒に食べようよ」
「え、でもウチ……」
　俺をチラリと見る瑠璃ちゃん。俺に気を遣ってくれているのか。……はぁ。
「いいよ、瑠璃ちゃん」
「貴明？」
「俺のことは気にしないで。瑠璃ちゃんだってちゃんと食べないと、俺の風邪が移っちまうよ。
　もう行っていいよ。後は自分で食べるから」
　そう言ってもう一度起きようとするのだけれど、
「アカン」
　またも瑠璃ちゃんに押さえつけられる。
「貴明はちゃんと寝とき。最後までウチが食べさせたるから」
「う、うん……」
「わーい、瑠璃ちゃんラブラブや〜☆」
「もう、さんちゃんからかわんといて！
　このみ、さんちゃん連れて先に降りてて。終わったらウチも行くから」

支援

「うん、解った。お肉はちゃんととっておくからね。じゃ、珊瑚ちゃん行こう」
　このみに手を引かれ、つまらんなーとか言いつつ珊瑚ちゃんは部屋から出ていった。

　このみたちが部屋を出てから数分後。
　こっちの部屋にまで焼肉のいい匂いが伝わってきて、羨ましいやらムカつくやらの俺。
　とは言え、気を遣って瑠璃ちゃんが「どうしても食べたいなら、ウチが持ってこようか？」なんて
言ってくれたんだけれど、ソレでホントに腹を壊しては余計にみんなの迷惑になる。俺は泣く泣く
首を横に振り、瑠璃ちゃんもそれ以上は勧めなかった。その代わりに瑠璃ちゃん、晩のお粥には玉子
を溶いて入れてくれるとのこと。今から楽しみだなぁ。
　瑠璃ちゃんが部屋を去り、それからしばらくして、食後に飲んだ薬が効いたのかまたもウトウト
していた俺だったが、
　コンコン。
「どうぞ」
「貴明センパイ、お邪魔しまーッス」
　入ってきたのはよっち。
「何か用か？　言っておくけど、焼肉の自慢話ならお断りだぞ」
「いやだなぁセンパイったら。あたしはそんな性悪女じゃないッスよ」
　キシシッと笑いながら近づいてくるよっち。
「あんまり俺に近づかない方がいいぞ。風邪が移るから」
「大丈夫ッスよセンパイ。ナントカは風邪引かないって言うじゃないッスか」
　自分で言うなよ。
「具合はどうッスか貴明センパイ？」
「さっき薬飲んだからな。だいぶ楽に――って、何だソレ？」
　よっちの手には、スーパーのビニール袋。おみやげかな？

「ああこれッスか？　センパイが風邪引いたって聞いたから、いいもの買ってきたんスよ」
　よっちは袋の中に手を入れ、
「じゃーん！」
　取り出したのは……ネギ？
　するとよっちはネギを持ったまま、右手の人差し指を天に掲げ、
「おばあちゃんが言っていた。風邪を引いたらネギを――」
　風邪、ネギ……
「ネギ……ネギ……」
「って、え、貴明センパイ？」
「ネギ……ネギ……ネギ……」
「ちょ、ちょっとどうしたんですかセンパイ、何かヘンですよ？」
「ネギ……ネギ……ネギ、ネギ、ネギ、ネギ、ネギ」
「な、何でネギ連呼するんスかセンパイ！？」
「ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ
ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギタマ姉ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ
ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギそこはネギネギネギネギネギネギネギネギ
ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ
ネギネギネギネギやめてネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ
ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ入ってネギネギネギネギネギ
ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ」
「ひ、ひいいっ！　誰かー！　誰か来てぇぇぇぇ！！
　せ、センパイが、貴明センパイが壊れちゃったッス〜！！」

　つづく。

どうもです。第７６話です。
>>261さん、支援ありがとうございました。m( __ __ )m

はい、ネギお待たせしました！ｗ

狸がネギ背負ってｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

で、ネギを首に巻くといいってオチだと予想。
なんにせよ河野家乙＆貴明哀れ＆瑠璃ｲｲﾖｲｲﾖ

いや、このみがタマ姉の発言を覚えていてよっちに吹き込み
「いやー、お尻から入れると良いっていうから買ってきたんスよ。タ・マ・ネ・ギ！」
というオチに違いない。そうでなければ貴明が羨ましすぎる。ともかく河野家乙

「昔タマ姉にお尻に刺された」オチと予想
いつも乙です

河野家乙
カブトネタで笑ったｗ

舞HiMEのなつき思い出した

花梨関連のSSを書く人が少なくてつまらんな〜

>>268
え？オチもなにも普通に刺されてますけど・・・

恐怖の余り反転した貴明がバーサク…　ってもう既にあったな。

「先輩、コピー、終わりましたよ」
抱えてた、各クラスの人数分の印刷物を、机の上に置く。
「ありがとう、河野さん」
「他に出来る事、何かあります？」
俺は、ふぅ、と一息つくと、聞いてみた。
「ありがとう、でも今は大丈夫よ」
「はい、わかりました。また何かあれば言って下さいね」
「ありがとう、河野さん」
「いえいえ。俺がやりたいだけですから」
俺は笑いながらそう言った。
俺は椅子に座り、しばらくぼうっと辺りを見渡した。
聞こえてくるのは、先輩のキーボードのタッチの音だけ。
――――そんな静かで穏やかな空間。
いつしか俺は、船を漕ぎ初め、まどろみのなかに迷いこんでいた。
意識が曖昧になり、さらに少しすると、夢の世界へ。
視界がはっきりとしないが、生徒会室の机の下の方が見える。
枕がすごい柔らかく、頭を手で優しく撫でられてて気持ちいい。
俺は、おもむろに上を見ると、久寿川先輩のちょっと驚いたような顔が。
最初は理解できなかったが、どうやら俺の頭が久寿川先輩の膝の上にあるらしい。
いわゆる膝枕＋頭ナデナデ。
流石、どんな事でも出来る脳内設定の世界、夢。
つまりそこは、創造主が俺のマイワールド！何を言っても大・丈・夫！！
「先輩の膝枕、最高に気持ち良いです」
普段じゃ言わないような事を言う俺。
夢の中以外でもこうだったら、もう少し違う世界がみれるのかもな。

「そ、そう…」
そういいながら、先輩は顔を赤色に染める。
にしても、妙に現実味の溢れる夢だ。感触まであるなんて。
俺の知らない間に、夢もハイテクになったもんだ。
「久寿川先輩がこんなことしてくれるなんて、マジ嬉しいです」
例えそれが、夢だったとしてもね。
「もう、バカね」
久寿川先輩はさらに顔を赤くし、はにかみながら言った。
こんな夢なら、いつまでも醒めなくていい。
俺は夢の中、密かにそんなことを思っていた。
「このまま、耳掻きまでしてくれたら、ホント最高なのに…」
つい図に乗って、そんな事を言う俺。
「ごめんなさい、耳掻きは持ってきてないの…」
「そんな、気にしないでくださいよ、夢なんだから」
本当に申し訳なさそうに言う先輩に、俺は笑いながら言った。
「夢…？」
久寿川先輩がきょとんとしたように言う。
「ええ、そうで――」
そこで、俺はあることに、ふと気付いた。
――――意識がだんだんはっきりしてきてないか………？
俺は恐る恐る、久寿川先輩に聞く。
「せ、先輩、ちょっと、俺のこと、抓ってみてくれますか？」
顔から冷や汗を浮かべながら、言った。

「ど、どうしたいの？突然…」
「すいません、ちょっと…」
「い、いいの？」
「ええ、お願いします」
久寿川先輩は、さっきまで撫でてた手で、俺の頬を軽く抓る。
やっぱり痛い……。
俺は、血の気が一気に引くのを、感じた。
「河野さん、痛くなかった…？」
先輩は、心配そうに尋ねてくる。
「いえ……そんな……俺が頼んだことですし……」
一応答えてはいるもの、もちろん頭の中で考えている事は違うこと。
ヤベェ、どうしよう………。
このまま気づかないフリするのも悪くないけど、
先輩は俺が起きてると気づいてるみたいだし…。
何で俺は、あんなことを言ってしまったんだ………。
夢がハイテクになんてなるわけないだろーーー！！
自分の言葉を後悔したが、とうとう腹を括った。
「先輩、ごめんなさい！！！！」
俺は先輩の膝から、後ろ髪を引かれる思いと、
計り知れない程の焦りで起き上がると、そのまま顔を床に擦り付けながら土下座。
「こ、河野さん、どうしたいの？そんなこと、しないで？」
先輩は（多分）しゃがみ込み、言う。
「すみません、あまりに先輩の膝枕とナデナデが気持ちよくて、
夢と現実の見境なくしてました！なんか色々言っちゃってすみませんでした！」

額を床に擦りつけながら言う俺に、先輩は慌てて言う。
「河野さんは悪くなんてないわ！あんなことした、私が悪いの！」
「違います！！例えそうでも、悪いのは俺なんです！」
もう無茶苦茶だが、俺はとにかく謝った。
「とりあえず、河野さん、顔をあげて？」
俺は先輩の声に、顔をあげる。すると、笑みを浮かべながらこういった。
「なかったこ――」
そう言いかけた先輩は、いいことを思いついた、とばかりに言い直す。
「二人だけの秘密にしましょう」
「先輩…」
そう、なかったことになんて出来ないのだ。
だったら、二人だけの間でのヒミツに出来事にすればいい。
久寿川先輩の考えが変わったことに、俺はうれしくなって、つい
「は、はい、わかりました！」
と、無駄に大きな声で言ってしまった。
先輩も、ふふ、と笑ってくれた。
そこで俺は、気になったことを思い切って聞いてみた。
「あの…まーりゃん先輩に言われたんですか？」
「ち、違うの…。河野さんが疲れてるみたいだったから…」
てことは、先輩の独断……。
「でも……」
「こ、これも生徒会長の仕事だから」
それ以上言及しなかったが、それ以降、
そればかり気にしてしまったのは言うまでもない。

そして翌日。
「こんにちは」
努めて普段どおりに生徒会室に入る俺。
「こ、こんにちは――」
そんな俺とは対照的に、久寿川先輩は顔を赤くして、少し落ち着きがないようだった。
「どうかしました？」
という俺の問いかけに、先輩は目を瞑って一度深呼吸。
その後に、目を開いてから言った。
「河野さん、今日は持ってきたわ」
さっきよりさらに顔を赤くして言う先輩。
「持ってきた、って何を…？」
久寿川先輩の意味深長な言葉を、理解できない俺。
先輩は、持ってきたものを取り出して、とうとう耳まで真っ赤にして言った。
「耳掻き…。昨日、それもあれば最高って言ってたから――」
そう、俺の発言もなかったことになんて、ならないのだ――――。

えーっと…。
ただ、膝枕ネタが書きたかっただけです。
こんなのささらじゃねーだろっ！って方、スイマセン（´・ω・｀）

これはこれでありだと思います。うん。
で、耳掻きの時には駄目なの？駄目なのね？駄目なんだ……となるわけですね。

いや、なかなかいーんじゃないでしょうか。可愛いお

生徒会長の仕事では、絶対にないと思いますがｗ

あの山火事から数時間後、後始末は消防と警察にまかせ、
二人は(花梨の提案で)学校のシャワーを浴びていた。
ほっと一息つく貴明。
しかし、彼の受難はまだ終わってはいなかった……

始めは花梨の単なる悪戯だった。
貴明はいつも通り花梨に振り回されるだけだった。
しかし、触れ合う肌と肌、目に飛び込んでくる半裸の花梨――

シャワー上がり、月明かりの中の部室。
お湯をあびて、ほんのり上気した肌は、とてもなめらかで、透き通るように綺麗で……
同じシャンプーを使っているはずなのに……それはなんだかとても甘い匂いで……
「たかちゃん」
「あ、えと……」
「お月様だけだよ……見てるの」


そして二人は―――


かもかもりんりん、かもりんりん！！！！(ﾟwﾟ)(ﾟwﾟ)(ﾟwﾟ)(ﾟwﾟ)(ﾟwﾟ)

>>282
笹森会長SSｷﾀｰ
GJです

サブキャラ大躍進が確定されるTH2AD発表記念カキコ
ここで投稿された作品群を越える出来になるのだろうか、果たして不安。

今の葉は予想を斜め下に行くから無理だな。

このスレの住人でシナリオに応募した人っています？
自分はただいま連絡待ちｗｋｔｋ

>>286
笹森会長とこのみん関連。

　　 　　　　　　　　　　　　 ,r=''""ﾞﾞﾞli,
　　　　　　_,､r=＝===､､,,_ ,r!'　 ......::;il!
　　　　 ,r!'ﾞ/　￣　ヽ　　'ヾ;､, ..::::;r!'
　　　 ,i{ﾞ<^(ﾟwﾟ)ノハヾ^, ∵　:l}..::;r!ﾞ
.　　,r!'ﾞ´Ｗﾘ(i!-Д-ﾉｖ'∵､:;;;:....:;l!:;rﾞ ..┏┓┏┳┓
　,rｼﾞ　 ⊂ﾉ:::::　つ　　｀~''=;;:;il!::'li ┏┛┗┻╋┛
. il　....　⊂○::.　ﾉ　　　　.:;ll::::　ﾞli .┗┓┏┓┃
..il'　　 ' ' '‐‐ し'=;;;;;;;:.... .;;il!::　 ,il!...::..:┃┃┃┃　┏┳┳┓
..ll　　　 　　　　　　｀"ﾞ'' l{:::　,,;r'ﾞ　　..┗┛┗┛　┗╋┛┃
..'l!　　　　　　　. . . . . . ::l}::;rll(,.......　　　　　　　.......::;;┗━┛
　'i,　　' ' -===＝＝‐ー《:::il::ﾞヾ;､
　 ﾞi､　　　　　　 　　 　 ::li:il::　ﾞ'ﾞ'＼∧＿∧
　　ﾞli､　　　　　　..........,,ノ;i!:...::,.ヾ（｀(・∀・　)　 　　
　　　`'=､:::::;;､:､==＝''シﾞﾞ'＝=-､､ﾞ＼　　 と）
　　　　 ｀~''''＝=＝''"ﾞ´　　　　　　　 ＼/　/つ　　 　 　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（__/　

今更だが>>279GJ
ささらなら実際にやってくれると信じてる

どうやらはるみはボクッ娘じゃないっぽいな

むしろ俺は、はるみが貴明をどう呼ぶかが気になる。
個人的には「貴明」と呼び捨ても捨てがたいが、ここは「貴明君」を妄想するぜ！！

はるみにだけは・・・はるみにだけは・・・
「くん」付けだけはしてほしくない・・・
呼び捨てかあだなか様がいい・・・

口調はなれなれしいのに様付けで呼ばれると個人的にはすごく萌える

>293
採用

はるみって誰？

はるみ
↓
みるは
↓
ミルファ

つーか、これではるみがミルファじゃなかったら葉の壮大すぎる釣りだな。

ギミックが単純すぎるしあんまりそうやって吹聴するのやめないか？
なんか、自分で気付けよと思う

雑誌で偽名とか書かれた時点で興ざめ
わかってねーなーとかそういう次元じゃねーよあれは

偽名と書いたのはミスリードさせるための罠で本当は長瀬XXXとか来栖川XXXって名前のミルファの元になった人かもしれないぞ！！

なんでわざわざ偽名使うんだとか聞くな

>>299
＞なんでわざわざ偽名使うんだとか聞くな
……長瀬とか来栖川とかにはそう言う事好きそうな人がいっぱい居そうだが。

りんりん　かもりん　かもりんりん！
かも　かも　りん　りん　かもりんりん！
とっても素敵なおちゃめさん！

　　＿ ＿ ＿
　,〈>' ,　 ｀くﾉ　　かもりん　かもりん　かもりんりん♪
<^(ﾟwﾟ)ノハヾ^､ 　
´Ｗﾘ(i!ﾟ ヮﾟﾉｖ'`　りんりん　かもりん　かもりんりん♪
　　 ⊂)卵iつ
　　〜く/_|〉　　　どうしてそんなに可愛いの？　どうしてそんなに素敵なの？♪
　　　　し'ﾉ　　　　
　　　　　　　　　　人気の秘訣はキュートなルックス♪　素敵な素敵なかもりんりん♪


　　　　　　　　　*'``・* 。
　　　　　　　　　|　　　 `*。
　　　　 　　,｡　∩　　　 　* 　
　　　　　　+　　 (ﾟwﾟ)　*｡+ﾟ　　　＜HEY！
　　　　　　`*｡ ヽ、　 つ *ﾟ*
　　　　　　　`・+｡*・' ﾟ⊃ +ﾟ
　　　　　　　☆　　 ∪~ ｡*ﾟ
　 　　　　　　`・+｡*・ ﾟ
　　　　　　　　　　　　　　　　(ﾟwﾟ) 　＿　　　　　かもかもりんりん　かもりんりん♪
　　　　　　　　　　　　　　　　　,〈>' ,　 ｀くﾉ　　
　　　　　　　　　　　　　　　　<^(ﾟwﾟ)ノハヾ^､ (ﾟwﾟ)　　　りんりんかもりん　かもりんりん♪
　　　　　　　　　　　　　　　　´Ｗﾘ(i!ﾟ ヮﾟﾉｖ'`　 (ﾟwﾟ)))　
　　　　　　　　　　　　　　　(((ﾟwﾟ)　(　つ ヽ、 　　　　　　　かもりん　かもりん　可愛いんよ〜♪
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 〉 とノ　i　(ﾟwﾟ))) 　　　　かもりん　かもりん　素敵なんよ〜♪
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（__ノ^（＿）　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｱ　ｱ　ｱ！　アンチに負けるな笹森花梨！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｲ　ｲ　ｲ！　一番人気だ笹森花梨！

会長が顔を歪ませてギターをかき鳴らし、
るーこが眼鏡を掛けて黙々と本を読み、
メイドの格好した草壁さんがお茶を入れて、
菜々子ちゃんと同じ部屋にお泊りして…
会長を軸にバンドメンバー集めるとしたら、貴明が大変そう

花「きれいなそらさん、お願い！」
る「るーこのべーの腕は上の上だ。そう安々とは貸せないぞ」
花「じゃあコレと交換はどう？　じゃじゃーん！　
　　デパ地下１日限定３０個の高級タマゴサンド！」
る「まーか。いいだろう、感謝しろうー、うーかり。るーの腕前を見ても腰を抜かすな」
貴「あー！　それ俺の！？」

珊「それなら家のいっちゃん使うといいでー」
花「ホント！？」
イ「データをダウンロードすれば、リンゴ・スターにだってなれますよ」
貴「でも、本当にいいの？そんなに簡単に」
イ「ええ、その代わり今挑戦している新レシピの味見役になっていただけますか？」
貴「そんなことならおやすい御よ」
イ「オオコウモリの姿焼きと、水牛のふ○りシチューと、食用カブトムシの空揚げと…」
貴「え…」
花「タカちゃん、ファイトなんよ！」

貴「ところで、バンド立ち上げるってことは、
　　笹森さんて楽器演奏できるんだ。知らなかった。」
花「できないよ」
貴「……へ？」
花「大丈夫！　何事もなせばなる！　今から練習なんよ！　ほら、タカちゃんも！」
貴「い、胃薬をををを！！！」

でもＦＤが出ることによって
サブキャラが脚光を浴びるのはいいことだよな
イルミルシル・・・
いくのん・・・
まーりゃん先輩・・・
ちゃる・・・
よっち・・・

あぁあいくのんＳＳが読みたくなってきた

⊂⌒ヽ　<^(ﾟwﾟ)ノハヾ^　(⌒⊃
　　＼ ＼ｗ ﾘ(i!ﾟ ヮﾟﾉｖ'`/､ / 　　　
⊂二二二　　・）　･）　ニ二⊃ 　　　　いやっほ〜う　かもりん最高〜
　　　　＼　＼_ ....／　／ 　　　　　
　　　　　（　　　φ　　　）
　　　　　　ヽ＿,*､＿ノ　　 　　　　 　　　　　　　　
　　　　　　　　　ﾞﾐ;;;;;,_　
　　　　 　　　　　 ミ;;;;;;;;､;:..,,.,,,,,
　　　　　　　　　　　i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
　　　　　　　　　　　　ﾞゞy､､;:..､）　　｝ 　　　　　　　　
　　　　　　　　　 　　　.¨.､,_,,､_,,r_,ノ′ 　　　　
　　　　 　　　　　　/;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
　　　　　　　　　　ﾞ{y､､;:...:,:.:.､;:..:,:.:.　._　　､｝
　　　　　　　　　　　".¨ｰ=v ''‐ .:v､,,､_,r_,ノ′
　　　　　　 　　/;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ﾐﾞ´ﾞ^′..ヽ　
　　　　　　　　 ﾞ{y､､;:...:,:.:.､;､;:.:,:.:.　._　　.､）　　､｝
　　　　　　　　".¨ｰ=v ''‐ .:v､冫_._ .､,_,,､_,,r_,ノ′
　　　　　　　　/i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ﾐﾞ´ﾞ^′.ｿ.ヽ
　　　　　　　　ﾞ{y､､;:..ゞ.:,:.:.､;:.ﾐ.:,:.:.　._υﾟo,,'.､）､｝

（´･ω･）ﾓｸﾞﾓｸﾞﾓｸﾞ

ﾓｸﾞﾓｸﾞﾓｸﾞ（･ω･｀）

>>305
おいしい？

>>303
菜々子がいない件

ていうか１８禁として出るのに奈々子はどう絡んでくるんだ。
後はるみって誰。従姉妹かなんか？

菜々子も出るんだ。チャレンジャーだな。

貴明もついに犯罪者か

>>310
４Pやってて、将来６P確定なのに、何をいまさら。

>>311
はるみだしー、今は不確定じゃね？？
まぁ、姫百合エンディングの「将来」に限定すれば確定かも試練が。

少なくとも俺は個別のがｲｲ!!

ここで図書委員長話を延々とやってくれたら尊敬する。補完というか後日談みたいな話は見てみたいな。

「なーなー貴明。楽しみにしとってなー☆」

「え、何を？」

「内緒や☆」

　昨日の夜から、珊瑚ちゃんの様子がどこかおかしい。今朝だって瑠璃ちゃんに起こさ
れる前から自分で起きてたし。
　今だってどういうことなのかいくら聞いても教えてくれないし。
　瑠璃ちゃんの方を向くと、「知らん」とばかりに肩をすくめられてしまった。

「さあさあ、早く学校に行かないと遅刻してしまいますよ」

　珊瑚ちゃんの様子に首をかしげながらも、イルファさんに促されて慌てて学校に行く
準備を進める。でも本当に、珊瑚ちゃんどうしちゃったんだろう？
　まあ、楽しそうにしてるから悪いことじゃないんだろうけど。

「それじゃあ行ってきます、イルファさん」

「はい、いってらっしゃいませ」

　イルファさんと行ってきますのちゅー。ちょっとだけ、鼻と鼻の先が触れてくすぐっ
たい。
　先に行った珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんを追いかけようとすると、後ろからイルファさん
に呼び止められた。

「何か忘れ物でもあった？」

「いえ。貴明さん。ずぅっと、私たちのこと愛してくださいましね。貴明さんには責任
をとっていただかなくてはならないんですから」

「え、あ、うん、もちろん。イルファさんも、珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも、俺はずっと
大好きでい続けるさ」

　イルファさんは満足そうに微笑むと、ようやく俺を送り出してくれた。
　なんだったんだろうなぁ。
　イルファさんの様子までなんかおかしい。珊瑚ちゃんと一緒に、また何かたくらんで
なければいいんだけど。

「ほう、それでお前はこう言いたい訳だな。『ボク、女の子に囲まれて困っちゃうんで
す』チクショー！　いつもいつもなんでお前ばっかり美味しい思いをしなきゃならんの
だ。地獄に落ちてしまえ」

　朝、いつもの教室でまた雄二が一人で叫んでいる。
　珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんの様子がおかしかったっていう話をしただけなのに。完全に
話をする相手を間違えた。
　でもこのみに相談してもあんまり意味は無さそうだし、タマ姉に話すとまた何を言わ
れるかわかった物じゃないしなぁ。

「『ゆうべはお楽しみでしたね』か！？　珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんだけでも許せんのにメ
イドロボまで手を出しやがって。どこの勇者ご一行様だお前は」

　雄二もその内疲れて黙るだろう。
　まあ、いつものことだ。

「ほら、チャイム鳴ってるぞ。席に着けー」

　教室に入ってきた先生に促されて、騒がしかったクラスも落ち着きを取り戻す。
　雄二は・・・・・・こういう時は素早いな。もう席についてる。

「えー、突然だが、今日は転校生の紹介をする」

　唐突に、先生がそう言った。
　一瞬何のことがわからなかったんだけれど、俺がその意味を理解する頃には、せっか
く静かになった教室がまた再び騒がしくなってしまっていた。

「ほらほら、静かにしろ。家の都合で急に転校が決まったそうだ。慣れない生活で大変
だとおもうから、皆、仲良くしてやるように。入ってきなさい」

　先生が促すと、教室の扉が開いた。
　クラス中が固唾を呑んで扉に注目する。男か、女か、可愛いのか。
　そう言う俺も、十分に興味津々で入り口を眺めていたんだけど。
　最初に見えたのは、足でも、腕でもなくて、制服の胸のところに付いたリボンだった。
　途端、教室が水を打ったように静まり返る。
　誰も一言も口を利かない教室の中を、その子はゆっくりと教壇の前まで歩いていった。
　黒板に大きく名前を書いて。
　なんだか豪快な書き方をするなぁ。黒板の上から下まで、見間違えることの無いくら
い大きな名前が書き込まれている。
　・・・・・・ん？

「“河野　はるみ”と言います。まだ引越ししたてで慣れないことも多いですが、どう
かみんな、よろしくね」

　そう言って、ぺこりと頭を下げた。

「「おおおおお」」

　男女を問わず、教室中から上がる感嘆の声。
　理由は簡単で。

「あれは姉貴か、久寿川会長にも匹敵するな」

　という雄二の呟きが、この時のクラスの気持ちを最もよく現していたんじゃないだろ
うか。
　お陰で、彼女の苗字についてはそれほど注目を浴びていない。転校生が俺と同じ苗字
だなんて、変な気分だな。

「それじゃあ河野は、一番後ろの、あそこの空いている席に座りなさい」

「はい、先生」

　河野さんはうなずくと、こちらに向かって歩いて来た。
　いや、俺のところに来ているんじゃなくて、ただ単にそこの席に行くには俺の横を通
るってだけなんだけど。
　定番の「趣味は？」だとか「どこに住んでるんですかー？」だとか転校生にかけられ
る質問を軽くかわしながら、まあ、これだけ可愛い転校生なら、雄二だけでなく他の連
中が盛り上がるのもわかる気がする。
　横の席の子がした質問に笑顔で答える河野さんを見て、転校生っていうのも大変だなぁ
なんて他人事のように・・・・・・河野さんの顔、どっかで見覚えがあるような。
　どこで、だったかなぁ。つい最近、見てるような気がするんだけれど。
　そう考え込んでいると、いつの間にか河野さんが俺の席の横まで来ていた。

「ねえ、どうかしたの？」

「え？」

　まさか声を掛けられるとは思っていなくて、間の抜けた返事をしてしまう。
　考えてみれば、他のみんなが全員転校生の事を注目している中で、一人だけ首を捻っ
て考え事をしているのは、周囲から浮いていたのかもしれない。

「何か考え事してたみたいだけど。もしかして、私にする質問とか考えてた？」

「あ、そいつもはるみさんと同じで、河野って名前なんですよ。俺？　俺の名前は向坂
雄二。ちゃんと覚えておいてくれよ」

　雄二が後ろで何か喋ってるけど、河野さんはずっと俺のことを見たままだ。

「え、あー、いや。あのさ、河野さん、前にどっかで俺と会ったことなかった？」

　うーん、どこかで見たことがあるのは間違いないと思うんだけど。思い出せそうなの
に思い出せず、喉に刺さった小骨みたいに気持ちが悪い。
　見れば河野さんは何かに耐えるように両手を握り締めて。
　や、ヤバっ。もしかして怒らせた？
　慌てて顔を上げると。
　そこに、俺に抱きついてきた河野さんの顔があった。

「の、のぅわっ！！」

　な、何？　なにごと！？
　教室中に広がる歓声と嬌声と怒号に、俺の叫び声もかき消される。きっとそのうち、
隣のクラスから苦情が来ることは間違いないだろうってくらい。

「貴明、てめぇ何してやがる！！」

「みんな、静かに、静かにー！！」

「こ、河野、えぇっ、それから。河野も、何をしている！　さっさと離れんか！！」

　雄二も委員長も先生も、転校生の寄行に混乱しているみたいだ。

「く、苦し・・・・・・」

　けれど当の河野さんは一向に俺から離れようとはせず、と言うかよりも一層力いっぱ
い抱きついてきているような。

「・・・・・・」

「えっ？」

　河野さんが、俺の耳元でなにかをつぶやく。
　すると、まるで抱きついていたのが嘘みたいに俺から離れていった。

「すいませーん。ちょっと立ちくらみがしちゃって。やっぱりまだ、転校の疲れが残っ
ているみたいです」

　まったく悪びれた様子も無く、河野さんはそう言ってのける。
　あっけにとられて、だれも何も言うことの無い教室の中を、河野さんは悠々とさっき
指定された自分の席に歩いていく。
　何かを思い出すかのようにする先生の咳払いだけが、空しくあたりに響き渡った。

「そ、それでは、全員仲良くしてやるようにな。委員長、号令」

「は、はひっ」

　慌てて立ち上がる小牧さん。
　皆も、なんとなく釈然としない物を感じながらも立ち上がる。
　俺もほとんど呆然としたまま委員長の号令に従って席を立つ。抱きしめられた時に感
じた河野さんの体温が、妙に頬の辺りに残ってる。
　本当に、立ちくらみしただけなんだろうか？　今、河野さんがどんな表情をしている
のか、確認できないのが悔しい。

『貴明、私、帰ってきたよ』

　それに、あの時。河野さんが俺から離れる時、耳元で囁いたあの言葉。
　気のせい、じゃあないと思うんだけど。
　本当に謎だ。
　もちろん、一限の授業に集中なんて、全くすることができなかった。

「走れー！！」

　俺が打ち上げた弾を、向こうのチームのセンターが必死になって走って、キャッチし
ようとする。
　上がる歓声。その努力は報われたみたいで、俺は一塁にたどり着く前にベンチの方に
引っ込んだ。

「よ、お疲れさん」

　グラウンド脇のベンチでは、妙に張り切って素振りをする雄二がいた。

「ここで活躍して『きゃー雄二さん、素敵ー☆』とか言ってもらわないとな。転校初日
の印象っていうのは大切だと思うんだよ」

　聞いてもいないのに、大真面目で解説をする雄二。
　雄二だけじゃない。クラス中の男子が、体育の授業とは思えないくらい張り切ってし
まっている。
　みんな、少しでもあの転校生に良いところを見せたいとでも思っているんだろう。

「ああ、そうか。頑張れよ」

「ハン。彼女のいる奴の余裕のつもりか貴明。だがな見ていろ。はるみちゃんのハート
は俺がゲットしてやるからな。後で吠え面かいて悔しがるがいい！！」

「いや、だから悔しがるも何も。それに、その、俺には珊瑚ちゃんたちがいるし」

「かぁーっっっ！！　聞きましたか奥さん今の貴明君のセリフを。朝いきなり転校して
きたばかりの女の子を押し倒した奴のセリフとは思えませんな！　双子、メイドロボと
来て次は転校生にまで手を出す気か？　この──ケダモノめっ！！」

　雄二の素振りをする速度が更に上がる。
　雄二の中では、朝のあの出来事は俺が河野さんを押し倒したことになっているらしい。
　そういえば、グラウンドのあちこちから殺気のこもった視線が俺のことを見ているよ
うな。
　いくら河野さんが立ちくらみだって説明したところで、彼女が俺に抱きついてきたこ
とは確かだし。今日から、月のない夜は後ろに注意することにしよう。いや、むしろ瑠
璃ちゃんやイルファさんの耳に、このことが入らないことを祈った方が良いか。
　万一二人にこのことが知られたら。
　ご飯抜きくらいじゃ済まないよなぁ、やっぱり。
　でも

花「きれいなそらさん、お願い！」
る「るーこのべーの腕は上の上だ。そう安々とは貸せないぞ」
花「じゃあコレと交換はどう？　じゃじゃーん！　
　　デパ地下１日限定３０個の高級タマゴサンド！」
る「まーか。いいだろう、感謝しろうー、うーかり。るーの腕前を見ても腰を抜かすな」
貴「あー！　それ俺の！？」

珊「それなら家のいっちゃん使うといいでー」
花「ホント！？」
イ「データをダウンロードすれば、リンゴ・スターにだってなれますよ」
貴「でも、本当にいいの？そんなに簡単に」
イ「ええ、その代わり今挑戦している新レシピの味見役になっていただけますか？」
貴「そんなことならおやすい御よ」
イ「オオコウモリの姿焼きと、水牛のふ○りシチューと、食用カブトムシの空揚げと…」
貴「え…」
花「タカちゃん、ファイトなんよ！」

貴「ところで、バンド立ち上げるってことは、
　　笹森さんて楽器演奏できるんだ。知らなかった。」
花「できないよ」
貴「……へ？」
花「大丈夫！　何事もなせばなる！　今から練習なんよ！　ほら、タカちゃんも！」
貴「い、胃薬をををを！！！」

「私、帰ってきたよ、かぁ」

　やっぱり、どこかで会ったことがあるんだろうか？
　見覚えがあるんだから、間違いなくそうなんだろうなぁ。でも、どこで会ったんだっ
け。
　言われたら、すぐに思い出せるような気はするんだけど。
　直接聞いてみようか。
　うん、そうだな。その方が良さそうだ。河野さんは俺のことを知っているみたいだし。
ずっとこっちが忘れたままって言うのも、向こうに悪いだろう。
　よし、そうしよう。

「おい、雄二」

「ぜひっ、ハァ、ハァ・・・・・・あー？」

「チェンジだぞ。早く守備に付けよ」

　肩で息をする雄二を置いて、さっさと自分の守備位置に付く。外野、ライト。ピッチャー
だのサードだの、目立つポジションは別のやつがさっさと取ってしまっている。

　まあ、楽でいいけどね。体育の授業でなんか、滅多に外野までボールが飛んでくるこ
ともないし。
　遠く離れたベースの周囲では、授業の野球とは思えないくらい白熱した試合が展開さ
れているようだ。
　あー、暇だなぁ。
　グラウンドの半分向こう側では、女子がソフトボールをやっている。向こうは向こう
でなかなか盛り上がってるみたいだ。
　その中の一人。どうしても河野さんに目がいってしまう。
　今も彼女は内野を守ってたって言うのに、わざわざ外野の方までボールを追いかけて
いっている。あ、キャッチした。
　盛り上がる女子守備陣たち。河野さんも嬉しそうに、あたりに手を振ったりとったボール
を見せ付けたり──
　瞬間、河野さんと目が合ってしまう。
　慌てて顔をそらすと、向こうが恥ずかしそうにしゃがみこむのが見えた。
　うわ、ずっと眺めてたこと、バレたかな。
　きっと今の俺は、顔中真っ赤にしてしまっていることだろう。いくら暇だからって、
女の子のこと見てたもんだから罰が当たったか。
　転校してきて初日から、河野さんの俺に対する評価は決まってしまったんじゃないだ
ろうか。最悪だ。

そういえば。中学の頃、教師からの評価を良くしたかったのと、ケミカルな雰囲気が格好いいと思い込んで
理科室の手伝いを良くしていた。(といってもゴム栓に穴をあけたり、ビーカーを掃除したりする程度)
でも当時の私は、自分がだんだん子供ながら天才的なミステリの知識を持つすごい奴だと勘違いし始め、
ある日友人を無理やり誘って理科室に忍び込んだ。
そこで適当な物質(っつっても多分ふっとう石とか)を指で触りながら
「へえ…○○先生もなかなか良い物を仕入れて来るんだね。｣
とか言ってたり、 適当な薬品の入った瓶を傾けて
「ははっ。ちょっと調合の具合がおかしいかな。ま、授業用には十分か。」
とかほざいてた。
友人は当然ハァ？って感じ。
それでも私はおかまいなしに「ふん。」とか「ははっ!」とかやってた。
そんで一番奥の戸棚を開けて急に表情を変え、
「!!これは!○○先生!いったい…!なんて物を!何をしようとしてるの!」
って言ってみせた。友人も驚いて「それそんなヤバイの？」って聞いてきた。
私は「こんなの黒の教科書の挿絵でしかみたことないんよ…!それなら、もしかしてこっちの瓶は!?」
って別の瓶を手に取って嗅いだ。そしたら、それはなんか刺激臭を発する化学物質だったらしく、
(手であおいで嗅がなきゃいけない奴)直嗅ぎした私は
「エンッ!!!」って叫んで鼻血を勢いよく噴出しながら倒れ、友人に保健室に運ばれた。
私は助かったが、どうやら私の友人が変な勘違いをしたらしく、
「笹森さんは黒の教科書に乗ってる毒物に感染したんです!!」ってふれまわっていた。
それ以来花梨のあだ名は毒物くんになった。当然もう理科室に行く事は無くなった。

「ライトーっ！！」

　叫ぶ雄二の声に我に返る。慌てて上を見ると、高く上がった球がこっちに向かって真っ
直ぐ流れてくる。
　上手く風に乗っているみたいで、いっこうに落ちてくる気配はなく。まずい、このま
まじゃ頭を越される。女の子に気をとられてバンザイなんて、後でみんなから何を言わ
れるかわかったもんじゃない。
　必死になって後ろに下がる。全力で走らないと、これは間に合いそうにない。見失っ
てしまわないよう、球だけを見ながら予測落下地点に。

「ライト！　貴明、前！　いや、うしろー！！」

　雄二からの掛け声。ええい、こっちはそれどころじゃないって言うのに。後ろ！？

「あ」

「ひゃっ」

　声に釣られて後ろを見ると、目の前に驚いた顔をした女の子がいた。
　さっき目の合ってしまった女の子。河野さんだってわかった時には、ブレーキも掛け
ず彼女の体にぶつかってしまっていた。

「いててててて」

「うううっ」

　転がる視界。ぶつかると思った瞬間、目の前が真っ暗になった。続いて全身を襲う衝
撃。
　しばらくは体も動かせず倒れたままでいると、遠くから俺の名前を呼ぶ声が近づいて
きた。
　いや、きっと河野って呼び捨てなのが俺で、河野さんって言うのが河野さんを呼んで
いるんだろう。まだ、混乱してるな。あっ

「そうだ、河野さん！？」

　急いで起きようとするんだけれど、何かに体をがっちり押さえられているみたいで立
つことができない。顔面に何かを押し付けられているみたいで、今のセリフだってモガ
モガとしか周りには聞こえていないだろう。

「ひゃ、貴明、だめ、くすぐった──」

　必死になって体をよじる。まずはこの、視界を塞いでいる物をどうにかしなきゃ。
　何とか首を動かしていると、しめた。体を押さえている物の力も弱くなっていった。

「っぷはぁーっ！」

　ようやく、体を起こすことができた。酸欠気味の頭に、大量の酸素が送り込まれてい
く。

「河野さん、大丈夫！？」

　まず、ぶつかった河野さんに声を掛ける。かなりの勢いで衝突したし、もし怪我をさ
せていたら。
　けれど、その心配は杞憂で終わってくれたみたいだ。みたところ怪我らしい怪我はし
ていないみたいだ。彼女の心臓の音だって聞こえそうなくらい近くで確認しているんだ
から、間違いない。
　そこで、ようやく気が付いた。
　彼女の両足は、今も俺の肩に架かっている。そして俺の目の前に見えるものは、彼女
のブルマー。
　ちょっとだけ視線を上げると、顔を赤くした河野さんを間近で見ることができた。
　きっと、さっきまで俺のことを押さえつけていたのは彼女のこの、両足だったんだろ
う。どうりで柔らかいと思った。

　じゃあ、俺が顔を押さえつけていたのは・・・・・・
　もう一度視線を落とすと、河野さんの、柔らかい太ももと太ももの間にある、ブルマー。
　もう一度だけ、今度は慌てて視線を上げると、顔を真っ赤にして、今にも何かを叫び
そうな河野さんの顔。

「ち、ちが、ゴメン河野さ──

「貴明の、バカー！！」

　握りこぶしが視界を掠めた時には、もう既に首が別の角度を向いていた。コキャッと
か、聞こえちゃいけない音も聞こえた気がする。

「ちょっ、やだ、貴明。ごめ、やだ起きてよ貴明ってば」

　誰かにガクガクと体を揺すられている気がするけれど。一瞬で、今度は真っ白になっ
た視界の中で、ひどく落ち着いた気持ちで俺は意識を失っていった。

「ご、ゴメン河野さん！！」

　気が付くと同時に、俺はそう叫んでいた。

「・・・・・・あれ？」

　あたりを見回すと、どうも保健室のベッドの上のようだ。あのあと気絶して、ここに
運び込まれたらしい。
　時計は、もう放課後も大分過ぎてしまっていることを教えてくれた。日差しも既に夕
暮れの物だ。
　保険の先生は席を外しているのかもう帰ってしまったのか、保健室には人の気配はな
い。
　ベッドから降りると、少しふらつくのと首が痛いのを除けば、うん、大丈夫そうだ。
　勝手に出て行くのは気が引けるけど、いつまでも寝ているわけにも行かないし。
　制服に着替えて教室に戻る。教室の中には誰も残っていなかったし、もちろん河野さ
んの姿もない。
　直接謝りたかったんだけど。
　明日、顔を会わせる時のことを考えると、自然と気分が暗くなる。いや、会えるのな
ら良いけど、下手をするとこれがショックで明日から学校に来なくなるとか、うわー！！

「あーあ！まさか！留守の間に！泥棒猫が！入り込んで！いたなんて！ねー！」
「まったく！油断も！隙も！ないもんだよ！」
・・ボス！・・・ボスッ！
ここは体育倉庫の中。身動きが出来ないようマットに簀巻きにされた花梨を、
環とこのみは悪鬼のような形相を浮かべ金属バットで殴りつけている。

「がァッ！・・死んじゃうッ・・・ こんなこと、やめてぇっ！」
「は！何いってんだか。先にタカ坊をたらし込んだの、あんたじゃない！このメス犬！淫乱！痴女！」
「まったくだよ、それでいて自分の身だけは可愛いなんて、都合のいいこと言うとは・・・」
「ち、ちがいますっ・・・・・わたしはただサポー・・ｹﾞﾎﾞｫｯ！」
花梨が最後まで言い終える前に、環は花梨の腹を、―先ほどにバケツ３杯分の汚水を
無理矢理飲み込ませ、張り裂けそうに膨れあがってるその腹を―
マットの上から渾身の力で蹴りつけた。
「んぷｯ！」
ぴゅう、と花梨の小さな鼻から鼻水混じりの水が噴き出す。
花梨は顔面を真っ赤にして口内まで吹き上がってきた水を、必死に頬を膨らませ耐える。
しかし、環が膨れあがった腹を踏みつけた足にぐいぐいと体重をかけるとすぐに限界を迎えた。
「ごぼッ！げぼッ・・・！おえええ・・・！」
びしゃびしゃとことりの白い頬を汚して流れる吐瀉物。
それが環が腹を踏むリズムにあわせて噴出す様は、さながら人間ポンプの様であり滑稽極まり無い。
…尤も花梨本人にしてみれば笑い事ではなかった。
肺に水が入り溺死寸前、文字通りの意味で「死ぬ程の苦しみ」という訳だ。

「やだ、きったなーい・・・でも、お似合いだよ？黄色」
「・・・まだ殺さないよ・・・そう簡単に楽にはさせないんだから・・・・・・
　このみ！ペンチとノコギリ！それと・・・バーベキュー用の鉄串を買って来て！」
「ＯＫ！」
環から財布を受け取り一目散に走り去るこのみ。

「んげっ！げほげほ・・・もう・・もうやめてぇぇぇっ！」
涙目になって懇願する花梨の姿を、物陰から、花梨と貴明との関係を密告した愛佳が、
口元を歪め目を輝かせながらじっと見つめていた・・・・。

　わざとじゃない、不幸な事故なんだって説明すればわかってもらえるだろうか。でも
ぶつかったことは事故でも、その後のことは言い訳が聞かないし。
　どうして俺ってばこう女の子に対して破廉恥なことばっかり。珊瑚ちゃんにはちゅー
されちゃったし、イルファさんのトイレは覗いちゃうし。
　あれ、他にも何か、やっちゃいけないことをしていたような気がするんだけど。たし
かまだ珊瑚ちゃんたちと会ったばかりのころだったような、なんだったっけな？
　ＰＣ教室に足を運ぶと、そこには珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんの姿はなくて、パソコンの前
に書置きが一枚。どうも待ちくたびれて先に帰ってしまったらしい。
　一人でトボトボと、校門をくぐる。ああ、あしたどうやって謝ろうか。

「わっ！！」

「うわっ！？」

　突然、校門の陰から女の子が飛び出してくる。あんまりいきなりだった物だから、本
気で心臓がとまるかと思った。
　心臓が、バクバクいっている。

「待ちくたびれちゃった。おそいよー」

　立ちすくむ俺の前で、なぜか河野さんが笑顔で立っていた。

「あれ、河野さん？　帰って、なかったの」

「そんなことよりも、言うことがあるんじゃないのかなぁ？」

「えっ、あっ」

　河野さんは、相変わらず不適な笑顔のまま、俺の目の前で腕を組んだまま動こうとし
ない。
　その格好が変に河野さんに似合っていて。なんとなく、俺も落ち着きを取り戻すこと
ができた。

「河野さん、ごめん。ぶつかっちゃったのは、俺が前をちゃんと見てなかったからだし、
その後の、その、混乱してたからって、河野さんにひどいことしちゃって。謝って許し
てもらえるようなことじゃないかもしれないけど、とにかく、ゴメン」

　俺が頭を下げるのを、満足そうにうなずきながら見ている河野さん。けれど俺のでき
ることと言えば、こうやって頭を下げて謝るくらいしかできないし。

「ねえ、貴明」

「えっ」

「貴明、私に許して欲しい？」

「も、もちろん」

「ふーん、そうなんだー。でもなぁ」

　楽しそうに俺の顔を覗きこんで、そんなことを言う。

「うーん、どっしよっかなぁ。許してあげないでおこうかなぁ」

　そう言って、後ろを向いてしまう。

「初めてなら許してあげたかもしれないけど、貴明、私のあそこ覗いたの、今回で２回
目だしなぁ」

「えっ、いつ！？」

　全く身に覚えのないことを言われ、明らかにうろたえる俺。
　いや、でも、待てよ。本当に覚えが無いか？　似たようなことを、前にやってなかっ
たか？　そういえばさっきも、何か引っかかることが。

「よーし、きーめたっ。貴明は一度ならず二度までも私の大事なところを覗いたから、
許さないことにけってーい。みんなに言いふらしてやろ、貴明は私のことをおもちゃに
したエッチなやつですーって」

　そして、スタスタと坂を下りていってしまおうとする。

「ま、まって、謝るから、ゴメン、言いふらすだなんて」

　そんなことされでもして、珊瑚ちゃんにこのことが知られたら。ああ見えて珊瑚ちゃ
ん、怒ると凄く怖いんだ。
　なんとなく釈然としない物を感じつつ、慌てて河野さんを追いかける。

「俺のできることだったら、何でもするから。だから、ちょっと、待ってー！」

「ほんとぅ？」

　満面の笑みを浮かべて、こちらを振り返る河野さん。
　やばい、やってしまった。

「そっかー、貴明、私のためになんっでも、やってくれるんだー。どーっしよーっかなーっ。
何でもやってくれるって言うんだもん。ちょっとは、考えてあげないとねー」

　特大の地雷を踏んだ気分だ。きっと河野さんの中では、「俺のできること」って言う
一文は、都合よく消されているに違いない。

「お、お手柔らかに、お願いします。河野さん」

「そう、それ！！」

　いきなり俺を指差す。

「その“河野さん”って言うの。じゃあまずは一つ目。私のことは“高坂さん”じゃな
くて“はるみ”って呼ぶこと。いい？」

「え、ええっと、はるみ、さん？」

「ちーがーうー。“さん”はいらないの。は・る・み。いい、はるみだからね」

　と言われても、いきなり女の子の名前を呼び捨てするのはなかなか抵抗が。

「ほーらっ、何でも、してくれるんでしょ。それともやっぱり、言いふらしたほうが」

「わ、わかりました、言います。言わせてください。はるみ。うん、は、る、み」

　もうほとんどヤケで河野さんの名前を呼ぶ。
　でも、そんなことでも河野さんは嬉しかったのか。なんだか感激に体を震わせてるよ。

「うーん、まだまだ愛情が感じられないけど、今日のところはこれで許してあげる。じ
ゃあ、次はね」

「次って、まだ何かあるのかよ」

「当然でしょ。貴明は私の言うことを何っでも、聞いてくれるんだから。一回だけなん
て言ってなかったしね」

　首を傾げて、あれこれと考えている様子の河野さん。
　俺は、まだ日は暮れていないはずなのに、あたりがどんどん暗くなっていく錯覚に襲
われる。

「よーし、決めた」

「な、なんでしょうか？」

「秘密」

「ひみつぅ！？」

「そう、秘密。やっぱり楽しみは後にとっておかないとね。貴明も楽しみでしょ」

　楽しみと言うか、死刑宣告が伸びたというか。まあ少なくとも、はらはらドキドキ
することは間違いないな。

「ねえ、貴明」

「はいはい、なんでしょうはるみ」

もう少し

　坂の途中、河野さんに名前を呼ばれて彼女のことを振り向く。
　そして、心臓を掴まれたような気持ちになった。
　夕暮れ時の、オレンジ色の日の光を浴びた彼女は、なんだかこう、言葉にはしずら
いんだけど。

「あ、貴明もしかして、私を見てドキドキしてる？　してるでしょ。いけないんだー、
浮気しちゃって」

「う、浮気ってなんだよ」

　いや、たしかにこんな女の子と二人でいるところを見られたら、浮気じゃなくったっ
て血を見るハメになりそうではあるけど。

「でも、私相手なら仕方がないっか。ねえねぇ、姉さんと私、どっちが美人だと思う？」

「姉さん？」

　俺が聞いても、はるみは答えてくれない。楽しそうな笑顔を、俺に向けてくれるだ
けだ。
　いつの間にかそばに寄ってきて、そっと、俺の胸に体を寄せてくる。

「私ね、こうやって貴明と一緒にいられるの、凄く楽しみにしていたんだよ。前みた
いに、あんな小さい体じゃなくて。一人の女の子みたいに、貴明に抱きしめてもらえ
ることが」

　はるみの肩に、俺が手を触れると。はるみは嬉しそうに体を預けてくれた。

「貴明」

　はるみの、そのきらきらと色の変わるビーズのような瞳に、どんどん体が吸い寄せ
られていく。
　心のどこかで、何かが必死になって警報を鳴らしているんだけど、体の方が場の雰
囲気に完全にコントロールされてしまっている。
　もう、ちょっと。
　もう少しで、はるみのルージュでも引いたみたいなその唇と触れ合うことが

　ピーッ　ピーッ　ピーッ

　突然なり始める電子音。

「わっ、わわっ」

　もうちょっとで一線を越えそうになっていた俺の体が、それのお陰で我に返ってく
れた。
　聞こえてくるのは河野さんのカバンの中。携帯電話が、勢いよくメール着信音を鳴
らしている。

「姉さん・・・・・・せっかく良いところだったのに邪魔して」

　そのディスプレイを眺めて、河野さんは腹立たしそうに顔をゆがめる。
　本当に、危ないところだった。

「えっと、その、河野さん」

「違う、はるみ！」

「あ、ゴメン、はるみ。えっと、その」

　この場合、俺はなんと言えば良いんだろう？　ゴメン、も変だし、惜しかったね、と
言うのはもっと変だ。

そして中一の頃，MMRに影響された花梨は
「べんとらの動きを制したものが全てを制する」という世にも奇天烈な信念の元，
毎日休み時間には体育館でそういった儀式の動きをまねた特訓をしていた。
ほかの生徒はもちろん花梨を怪訝な目で見るが，完全に自己陶酔していた花梨は，心の中で
「フン…ただの人間風情が…」と彼らを見下していた。

ある日，数少ない友人の一人が何に憧れたのか，花梨に弟子入りを志願してきた。
突然師匠となった花梨はテンション上がりまくりで，今まで特訓してきた奇行の全てを彼に伝授した。
「体を細くくねらせろ！グレイのように！」とか
「首を引っ込め体を守れ！ネッシーのように」とか

ここまで書いてもう限界　あとのことは思い出したくもない

「まあ、いっか。私もこんなその場の雰囲気でっていうのは嬉しくないし。やっぱり
こういうのは、もっと大切にしなきゃね、貴明」

　どう答えるべきか。とりあえず、曖昧にうなずくくらいしか俺にはできなかった。

「いけない、時間になっちゃう」

　腕時計を見た河野さんが、突然そう叫ぶ。

「残念だけど、貴明、今日はここでお別れしなきゃ。それじゃあね、バイバイ、貴明。
またあしたー」

「あ、うん。また明日、こう──じゃなかった。はるみ」

　俺が最後に彼女の名前を呼ぶと、河野さんは顔一杯の笑顔を浮かべて、こちらに
手を振ってくれた。
　ちょうど来ていたバスに乗り込むと、そのまま乗っていってしまう。角を曲がって、
俺の姿が見えなくなるまでずっと、俺のほうを向いて手を振ってくれていたんだけれ
ど。

　一人残されて、俺は今のがなんだったのか、大いに頭を抱えることになる。

「河野さん、やっぱりどこかで会ってるのかなぁ」

　もうちょっとでキスまでするところだったくらいだ。
　頭をひねりながら、今、河野さんがバスに乗った、停留所の前まで来る。

「ああ！」

　思い出した。通りで会ったような気がするわけだ。
　春、ここの停留所で別れたあいつ。
　ロボットの癖に妙に愛嬌のあるやつで、乱暴者の割に憎めない。いっつも、俺の頭
の上から離れようとしなかったあいつ。

「河野さん、雰囲気がクマ吉にそっくりだったんだ」

　喉に刺さった骨が取れたような気分だ。
　俺専用のメイドロボになるんだって言って、胸を３センチ大きくしようとして暴れ
たっていうあいつ。
　そういえば、クマ吉のやつ今どこで何やってんだろうな。
　ああ、そうだ。明日、河野さんに会ったらクマ吉のことを話してやろう。はるみそっ
くりのロボットに、前会ったことがあるって。
　ロボットと一緒にされて、河野さんは怒るだろうか。
　いや、なんとなくだけど。河野さん、凄く喜ぶんじゃないだろうか。
　そんな気がする。



　　　終

支援くださった方、どうもありがとうございました。


ＡＤの発表を受けて、勢いだけで書きました。
わかったのは、とことん自分はメイドロボ好きだということで。
早く続報でないかなぁ。

花梨のSS書いてくれる職人さんほかにいないかなあ

>>353
乙であります。
さすが、このままナンバーワンエロインの座を持っていきそうな
勢いが感じられますなｗ
自分は今オリジナルの創作ばかりで全然ＳＳに手が回せなくて、
やっぱりＳＳもいいなあ。そのうち俺も誰かメインに据えて書きたい。

>>355
自作自演で自画自賛乙であります。

>>353
深夜に長編投下、乙＆ＧＪです！じっくり読ませてもらいました。
早速はるみ来ましたかｗｗｗ　少ない情報をうまく使いこなしてると思いますよ。
ちゃんと「うーん、どっしよっかなぁ。許してあげないでおこうかなぁ」が出てきてニヤリ。
本編でもお股覗きネタで来るかもしれませんねｗ　続報にｗｋｔｋしましょう！
このＳＳｽﾚならではのはるみ続編にも期待します。頑張って下さい！
(細かいですが24/32で“高坂さん”となってるのが残念でした)






あと、ID:v69LiHCF0は氏ね。

8/32は寄行→奇行かな。

>>314-319 >>321-326 >>328-329
>>331-335 >>337-343 >>345-347
>>349 >>351-352

それにしても力作だな、お疲れ様。

>353
速攻の二次創作乙です。まだイメージが無い状態なので書いたもん勝ちですね
ちょっと貴明の順応が早すぎな気はしますが、
30レスちょいで出会いからここまで持っていくとはNewクマ吉は伊達じゃないw

>>353
はるみさんへのワクワク度数が上がりましたよ。
いいねえ。

（　　＾＾）＜花梨SSの感想も頼む

>>361
嫌がらせ乙、大変素晴らしい作品でワタクシ涙が出そうでしたわ。

>>353
はるみGJ
この長さでしっかりまとまってるのも良かった
はるみのオフィシャルでのキャラ確立してないからこそ書ける作品か。書いたもん勝ちとはいえ、質・量ともにナイス
次回作も期待

>>361
マナーも守れん奴にくれてやる感想なぞない

はるみの人GJ

>>361
Fuck you ぶち殺すぞ黄ヲタ

361はNGID指定したので何をかいてるのかわからんが、連投回避に協力乙、でいいのかな？

どうみれば連投回避に見えるんだ

>>365
あの・・・連投回避の意味、知ってる？

>>367
同じスレに連投してると投稿できなくなるので、合いの手をいれて連投できるようにサポートすることじゃないのか？

で、どこが連投回避なのさ

まさか釣ｒ

>>355に対してのレスじゃないの

>>369
作品の感想を求めてるらしき奴に、

作品？　最初の投稿見て荒らしと判断したのでとっととNGIDにいれたよ
だから、何書いてるのか全然わからないけど、362-363を見ると作品の感想を求めてるみたいだが
あんなのは作品でもなんでもねえ

353の作品のの連投規制の回避協力くらいにはなったかもな（実際はその役にも立ってないけど）

というのは皮肉だと思うんだが。

あまりに的外れで皮肉としてすら機能していない件

あの発言を皮肉だと捉えられるのは世界広しといえどお前ぐらいだよ…

ていうかコピペだしな。

連投回避発言の人、粘るなあ
そんなに悔しかったのかな

まぁまぁどうでもいいじゃん。はるみは長さを感じなくて面白かったです！あと感想の対比がおもしれえなｗ

最近めっきり黒ＳＳがなくなったよね
あのこのみに会いたい

と思うのは俺だけですかそうですか

黒このみ、黒愛佳の次は黒ささらだな。

>>378
お前とは気が合いそうだｗ

>>353
GJ！　タイトルを見ずに一話を読んで珊瑚ちゃん妊娠！？とか思ったり(汗

目の前に封筒一枚。
「んー……」
唸っているのは玲於奈。
「どうしましょう……」
眺めているのは雄二から渡されたチケット。
「困りましたわね……」
座っているのは彼女の自室。
ガラステーブルの前に座布団引いて、両手を太股に挟んで女の子座り。
可愛らしく小首を傾げ、

「会場の場所がわかりませんわ」
悩んでいるのは、そんな事だったりする。

「まったく、この略図が簡単すぎるのです！」
八つ当たり。
「これでは、何線に乗ったらいいかわからないではありませんか！」
それはたぶん地図の問題ではない。
そして間違いなく、イベント前夜になって悩むべき事でもない。
「玲於奈ー！　電話よ！」
そこに声が掛かった。

「今忙しいのです！　後にしてくださいな！」
「何言ってるの、向坂のお嬢様からなの、早く出……」
「それを先に言って！」
階段を駆け下りて受話器に飛びつく。
「あ、あのっ、玲於奈ですっ」
「環ですけど、玲於奈？　ごめんなさいね夜分に」
「いえっ、お姉様からのお電話なら例え火の中水の中」
「それじゃ電話機が壊れるわよ」
「はいっ、ごもっともですっ。それで、ご用命の程は」
おかしいのが日本語なのか思考回路なのかは、判断に苦しむところ。

「それがね、ごめんなさい、実は用があるのは私じゃないの」
「えっ？」
「ほら、雄二」
玲於奈の疑問符を受話器の向こうに聞いて、環は耳を離した。
「あ、ああ」
壁によりかかっている雄二に手渡す。
「あー、えーっと、悪い。俺だ」
「雄二さん？　なんです一体？」
口調は、特に冷たくはない。
「この間の件なんだが」
「この間？」
「いや、あー、なんだ？」
「聞いているのは私ですが」
３℃低下。
そんな事は雄二もわかっているのだが。
「〜♪」
和室の入口では環があからさまに聞き耳を立てているわけで。
「鳩通線の、M駅だ」
「はい？」
「たぶん、判らないだろうと思ってな」
「なにをです？」
「いや、だから行き方」
「どこのです？」
「会場」
「なんのですか？」
「だからこの間の件」
「人を馬鹿にしているのですかっ！」
温度急上昇。ってか一気に沸点。
「だああっ！　面倒くせえっ！」
両者共に。
「明日のコンサートっ。連れてってやるから３時に駅に来いっ！」

「意外と女性が多いのですね」
会場前、玲於奈が周囲を見渡して呟いた。
水色のワンピースの上から薄手の長袖カーディガンを羽織った立ち姿は、普段よりもすらっとして見える。
「緒方理奈は、デビュー当初は女性ファンの方が多かったんだぜ」
得意げに雄二。蘊蓄には事欠かない。
「へえ？」
「若いのに歌も態度も完璧すぎて、男には取っつきにくかったらしい」
「そういうものですか。アイドルコンサートというから、もっと違う客層を想像していました」
「どんなのだよ」
「それはもう眼鏡を掛けた、小太りかガリ痩せして、服を外に干さない臭そうな男子で溢れているものと」
「まあ、そういうのも少なくは……」
「おおっ雄二ぃ！」
斜め後方から声。
「……あんなのか？」
「あんなのです。知り合い？」
「残念ながらそうだ。悪いが、ちょっと待っててくれ」

「いやー助かるよ雄二！　Ｓ席なんて取れた事ないから楽しみだなっ！」
「……じゃあな」
雄二は、浮かれるデ○ヲタに手を振って別れた。

「何をしていたのです？」
少し離れて待たされていた玲於奈が怪訝そうに聞いてくる。
「チケットを交換してた」
「チケット？　雄二さんは前の席を取ったのではありませんの？」
ファンクラブ会員枠で優先入手できるチケットは安い席−例えば今回は立ち席−が多い。
玲於奈が貰ったのは雄二の会員枠分で、雄二自身は別にチケットを入手したと聞いていたのだが……
「俺も立ち席に変えたんだよ。今の奴と交換」
「どうしてです？」
「どうしてって……」
昨夜の電話の後の環の詮索の結果、別席がバレて男の心構えを説教された結果、とは言いたくない。
「人混みに放り出したら、また迷子だろうお前は」

「っ〜」
例によって顔が、お湯につけたアルコール温度計よろしく赤く染まる。
早足に入口に向かって歩き出す。
「だから意地張るなっての」
「こんな建物の中で迷子になる訳がないでしょう！」
付いて来るなと半ば駆け足。
「（まあな。並んで入場だし、交通整理も出てるし、本当に迷子になることはねえか）」
雄二はそう思って、無理には追わなかった。

甘かった。

「ちょっと、ご不浄に行こうとしただけで……」
雄二が、別フロアーに迷い込んでオロオロしていた玲於奈を保護したのは入場１５分前。
「トイレはあっちだ。行くなら今のうちに行ってこい」
「はい……べ、別に並んでいるのが判らなかったわけではないのですからねっ！」
「わかったから。ついでに顔も直してこいよ」
「余計なお世話です！」
列を離れた玲於奈が、涙で崩れていた薄化粧を直して戻ってきたのは入場５分前。
それから間もなく、
「開場しまーす。押さないでくださーい！」
入場開始。
比較的整然と、しかし結構な早さで列が会場に飲み込まれていく。
「とっ、と、と」
「おっと」
のめった玲於奈を雄二が支える。
「どうも」
「もうすぐドアだぞ、気を付けろよ」
「なにをです？」
「中に入ると……」
雄二の言葉が終わらないうちに、列が加速した。
分厚い両開きの扉をふたつ、くぐって二人は客席へ。

援護しまつ

入った瞬間、人の列が弾ける。
観客それぞれが、良い場所を目指して動き出す。
といって走ったり押したりはないのだが、慣れない玲於奈にとっては。
「えっ？　ちょっと、どちらに？」
「たぶんこっちが空いてる。ついて来い」
「は、はいっ、っ、きゃっ？」
迷って立ち止まってしまった玲於奈に、後ろからの集団が追いついた。
二人の間に、人の壁ができる。
「玲於奈？」
雄二が後方を探す間もなく、
「ゆ、雄二さんっ!?」
狼狽した声がホールに響いた。
「どこですかっ!?　雄二さんっ！」
「今行くから動くなっ！」
騒いだおかげですぐに再合流できたのだが、かなり注目の的。
「ったく。こんなところで大声出すなっての」
「すみません……」
しおらしくも安心したような表情の玲於奈。雄二も悪い気はしない。
「すみませーん。通りたいんですけど」
「あっ、ごめん」
でも、立ち止まっていると社会の迷惑。
動き出したのも束の間。
「ひゃっ」
また人混みに引っ掛かってはぐれそうになる。
慌てて手を伸ばし、玲於奈の腕をつかむ雄二。
「ほれっ」
自分の方に引き寄せる。
ずるっ。
「きゃっ？」
「へ？」
カーディガンの袖が伸びた。

「あ、わ、悪い」
雄二は反射的に手を放す。
「ま、待ってください」
また離れそうになって、今度は玲於奈の方が雄二の腕を掴む。
爪が突き立った。
「痛てえっ！」
「ご、ごめんなさいっ」
ぱっと手を開く玲於奈。
足を止めずに、二人の腕が交差する。
雄二の左手と、玲於奈の右手が、相手の手首にぶつかって、互いの指先を掠めて。
やがて、しっかり繋がった。
どくん。
手のひらに伝わる温もりに、心臓が一度跳ねる。
雄二はそのまま、振り向かずに歩いた。玲於奈も、俯いて付いていった。

「この辺りは、空いてますのね」
「ちょっと見づらいし、壁に音が反射するしな」
雄二が連れてきたのは、客席後方の一番端。
背中に壁、すぐ頭上にスポットライトの足場があって、やや囲まれた感じになる。
「良くない場所なんですか？」
「大差はねえよ。人混みより落ち着いて聞けるだろ」
「そうですね」
ようやく落ち着いて、玲於奈は乱れた服を直す。
さっき袖を引っ張られたせいで、カーディガンが右肩から脱げていた。
ワンピースの半袖から白い二の腕が覗いて、暗いホール内で一瞬映える。
「なにか？　まだどこか変ですか？」
「いや、別に」
視線を玲於奈から外して、ステージの方に向ける。
ブザーが鳴った。客席のライトが、消えていく。
「始まるぜ」
スポットライトの光群が、ステージに突き刺さった。

「すご……」
１曲目から、玲於奈は圧倒されていた。
「な、言っただろ」
好反応に、にやりと笑う雄二。
ここそとばかりに説教してやろうと目論んでいたのだが、
「……」
あまりに熱心に聴き入る姿に、自分もステージに集中することにする。
「久しぶりだな。こんな後ろで聴くのは」
初めて彼女のコンサートに行った時の衝撃を思い起こす。
ワッ……。
曲が終わっても、隣の玲於奈は拍手もしない。
心を奪われたまま、次の曲を待っている。
今頃になって、新規ファン約１名誕生。
幸せな時間が、過ごせそうだった。

楽しい時間は、あっというまに過ぎた。
「感想は？」
訊くまでもない事を聞いてみる雄二。
「……」
言葉が出ない玲於奈。
切ない曲が多かった第２ステージ以降、ほぼ泣きっぱなしだったので顔はぼろぼろ。
「ハンカチ、いるか？」
「大丈夫、です」
いつぞやの映画館と同じような会話を交わしながら、玲於奈が落ち着くのを待って出口へ向かう。
建物の外は、かなりの混雑。
「ちょっと、出る時間を間違えたかもな。はぐれんなよ」
「失礼な。１日にそう二度も三度も……きゃあっ!?」
「おい！　あっちから車出るらしいぜ！」
「うそうそっ！　本物っ？」
「ちょっと突っ立ってないでよ。邪魔よっ！」
「あっ、ちょっ、貴方達っ、あら？　ゆ、雄二さんっ〜？」
二度あることは、三度あった。

「……一生の不覚ですわね」
人混みから脱出して彷徨った挙げ句、裏手の駐車場で呟く少女。
「此処、どこなんでしょう？」
この調子で生きてきたのなら、玲於奈の一生は何度でもあるのだろう。
とりあえず歩き出した、途端。
横から車。
「きゃ！」
反射的に後ろに飛び退いて、そのまま尻餅。
急停止した車両から、運転手が降りてくる。
「大丈夫かっ！」
「あ、はい」
「すまなかった。でも君も危ないぞ」
玲於奈が立ち上がるのに手を貸しながら、青年が注意する。
「少し、ぼうっとしていまして」
「怪我は、なかった？」
別な声が掛かる。
帽子を深く被って眼鏡を掛けた小柄な人物。
男の子にも見えるが、声は女性のものだ。
「はい。大丈夫です」
「そう、良かった。冬弥君も気を付けてよね」
「判ってる」
「あ、あのっ」
車に戻りかけた相手を、玲於奈が呼び止めた。
「なあに？」
「失礼ですが、ひょっとして、緒方理奈さん？」
玲於奈の言葉に、二人は周囲を見回してから、
「あははっ、バレた？」
小柄な方、緒方理奈が口元を緩めて頷いた。
「そう言ってくれるって事は、貴方は今日のお客様、かしら？」
「はいっ、初めて拝聴させていただきました。素晴らしかったです」
「ありがとう」
コンサート中とはまた違う、柔らかい声。

その時、駐車場に雄二の声が響いた。
「おーい、玲於奈ー、いたらでてこーい、帰るぞー」
脱走した家猫でも探しているような台詞。
「雄二さん？」
玲於奈が軽く手を挙げると、気づいた雄二が駆け寄ってくる。
「な、なにかやったのか？」
「失礼な。ちょっとぶつかりそうになっただけですわ」
「そうか、って、えっ？　緒方理奈、さん？」
声も聞かずに見抜いたのは、ファン歴の長さの賜物か。
理奈は溜息ひとつ付くと、再度周囲を確認して、眼鏡と帽子を外して見せた。
「……この変装って、イケてないのかしら」
「俺はわからなかったけどね」
「冬弥君じゃ参考にならないもの」
ファンの前で芸能人らしからぬ率直な会話をする二人。
そのファン２名の方は、彼女のオーラに圧倒されて言葉が見つからない。
「じゃあ、これで」
「彼女を泣かせちゃ駄目よ。カッコいい彼氏さん」
改めてお辞儀をひとつ、車のエンジンが始動する。
彼女じゃない、とか、泣いたのは歌のせい、とか言う暇はなく、今日の主役は走り去った。
「はぁ……綺麗な方……」
「こんな至近距離で見たのなんて初めてだぜ」
うっとりと呟く玲於奈。雄二も興奮さめやらぬ様子。
とはいえ、暗い駐車場で突っ立っていても仕方ない。
「いかん、もう帰らないと」
「そうですわね。どっちが表ですの？」
「やっぱり迷ってたか。あっちだ。電車の時間やばいからタクシー拾うぞ」
「はい」

駅に向かうタクシーの中で、玲於奈がふと呟いた。
「あら？　来る時もタクシーを使えば、雄二さんに案内していただかなくても良かったのかしら？」
今更だった。

以上です。
この辺のために最近ホワルバやってまして、可愛いかったので理奈出しました
原作後に冬弥が理奈の運転手やるような展開は無いでしょうが、鳩２SSなのでご容赦を
本当は、はるかも出したかったんだけどな（笑）

>385
支援ありがとです。

毎度毎度乙ですー。
台詞が多いので相変わらず読みやすいですね。

>緒方理奈
ゲーム本編でも名前だけは出てきましたけど
こうやってTH2キャラと絡ませるとまた新鮮ですね。

次も今から楽しみにしてます♪

>>391
う〜む、何故にADに玲於奈シナリオがないのかLEAFに小一時間問い詰めたくなる出来だな。
つーか、萌えた。なんか一気に好きになったよ。

GJ!です。

河野家といい、このスレは三人娘の救済に貢献してるな。
ADでハブられただけに貴重だ。

狸が下仁田ねぎをお尻から刺す展開を期待。
http://alic.vegenet.jp/panfu/negi/negi.htm

あ、今日月曜日か

　瑠璃ちゃんに全てを見られてしまった俺。挙げ句”小さい”などと言われては、もう心はズタズタ
のボロ切れ。ええどうぞ、体拭きでも何でもしてくださいな。
　そんな俺を気遣ってか、お昼のお粥は瑠璃ちゃんが食べさせてくれた。普段の瑠璃ちゃんとは別人
のように、お粥をふーふーして食べさせてくれる瑠璃ちゃん。こりゃ風邪も悪くないだなんて思って
いたら、いつの間にか帰ってきた珊瑚ちゃんに冷やかされるし、おまけにこのみからは、俺以外は
これからみんなで焼き肉を食べるのだと教えられる。焼肉なら俺だって食べたいのに、消化によく
ないものは食べちゃダメだってさ。仕方がないので諦める俺。そんな俺に瑠璃ちゃんは、晩のお粥
には卵を溶いて入れてあげると言ってくれた。瑠璃ちゃんありがとう！　楽しみだなぁ。
　お粥を食べた後、ウトウトしていたところにやってきたのはよっち。手にしたビニール袋に入って
いたのはネギでネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ

「どうしたの一体！？」
「ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ」
「タカくんがおかしくなってる！？」
「た、環さん助けてください！　貴明センパイが壊れちゃったッス！！」
「ネギネギネギネギネギネギネギタマ姉ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ」
「な、なんなのコレ！？　たかあき、うつろな目でネギばっか言って！？」
「たかちゃん、しっかりして〜！」
「貴明さんしっかり！　ほら、私を見てください！！」
「ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギそこはネギネギ」
「うータマ、うーは何故ネギを繰り返しているのだ？」
「え！？　ど、どうしてかしら、ねぇ」
「何か知ってるんですか環さん！？　教えてください、どうしてたかあきは――」
「やめてタマ姉ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ」

「あ、貴明今『やめてタマ姉』って言うた」
「もしかして、環が貴明に何かしたんか！？」
「あ、アレは仕方がなかったのよ！　私も本気で信じてたから、その――」
「ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ」
「なんか貴明センパイ、顔、やけに赤くないッスか？」
「……熱、ぶり返したのかも」
「と、とにかくたかあきくんを落ち着かせないと！　環さん、お願いします！」
「お願いしますって言われても……」
「ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ入ってネギネギネギネギネギネギネギ」
「う〜ん、なら、いちかばちか。タカ坊！　タカ坊！」
　ゆさゆさ。
「ネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギネギ」
「タカ坊、いい、ちゃんと聞いて。――”もう、終わったわよ”」
「ネギネギネギネギネギ、ネギ、ネギ……ネギ……ネギ……ネ……ギ……。――アレ、タマ姉？」
「うん、私よ。タマお姉ちゃんよ」
「タマ姉、ネギオワッタノ？」
「ええ、もう終わったわよ、タカ坊」
「ホントニ？　ホントニオワッタノ？」
「ええ、本当よ」
「モウ、シナイ？　アンナコトシナイ？」
「うん、しない。だから安心してお休みなさい」
「ウン、ワカッタ。オヤスミ、タマ姉」
　ばたん。
「ふぅ……。お休み、タカ坊」

　……ん。
　あー、俺また寝てたのか。……あっちー、身体がまた汗まみれだ。
　あれ、俺の横にいるのは……、優季だ。
「あ、目が覚めましたか貴明さん」
「うん。――優季は、いつからそこに？」
「え？」
　何故か優季はすぐには答えず、
「えっと、ついさっきですよ。ホントについさっきです」
「ふぅん」
「あ、あの貴明さん、大丈夫ですか？」
「大丈夫って、熱のこと？　うーん、まだ熱っぽいかな」
「いえ、そうじゃなくて、さっきの……」
「さっき？　何のこと？」
「え、覚えていないんですか？」
　覚えていない？　俺に何かあったのか？
　そう言えば俺、いつ寝てしまったんだろう？　確か、瑠璃ちゃんにお粥を食べさせてもらって、
その後ウトウトして……、アレ？　確かよっちが部屋に……
「そう言えば、よっちが部屋に来て、何かを俺に……、アレは確か、ネ」
「よ、よっちさんは来てませんよ！！　ずっと居間で遊んでました！！」
「うわっ！？」
　いきなり大声をあげる優季。
「そ、そうなんだ。じゃあ夢でも見たかな……？」
「そ、そうですね。夢ですよきっと」

　ニッコリ微笑む優季だが、なーんか、隠し事してる感じだな。
　けど、何故かは解らないけど、あまりそれには触れない方がいいような気がしたので、これ以上は
追求しないことにした。
「じゃあ、ちょっと失礼しますね」
　優季は俺のおでこに手のひらを当て、
「熱は……少し下がったみたいですね。よかった。
　じゃあ、かなり汗をかいたようですし、体を拭いて着替えましょうか」
　何か、イヤな予感……
「あ、あのさ優季。まさかとは思うけど、体を拭くのは――」
　すると優季はニッコリ笑って、
「私がしますよ」
　ぐあ、やっぱそう来たか。けどさっきの悲劇もあるし、なぁ……
「優季、俺だいぶ体の具合もよくなった感じだし、そのくらいは自分で――」
「瑠璃ちゃんにはさせたのに、私にはさせられないんですか？」
　ひ、ひぇぇ、なんか怖いよ優季。
　なので、またもなすがままとなる俺だった。さすがにパンツだけは死守したけどね。

　体拭きと着替えが終わって、またベッドに横になる俺。
「そうだ貴明さん、リンゴ、食べませんか？」
「リンゴ？」
　唐突な優季の質問だが、時計を見ると三時を少し回ったところ。おやつには丁度いい時間だ。
　リンゴも食えないほど弱っちゃいないし、むしろ汗をかきっぱなしで喉が乾いたところ。リンゴは
大歓迎だ。
「うん、食べたい。あと水も飲みたいな」

支援

「じゃあ、ちょっと待っててくださいね」
　そう言って部屋を出た優季だが、大して時間をおかずに戻ってきて、
「お待たせしました」
　優季が持ってきたお盆の上には、水の入ったコップと、透明なお椀に入った……もしかして、
「すりおろしたリンゴ？」
「正解です。風邪を引いたらコレですよね」
　リンゴって言うからてっきり切ったリンゴだと思ってたのに、わざわざすりおろしてくれたのか。
「ゴメンな優季。なんか手間かけさせて」
「全然手間なんかじゃないですよ」
　優季はまた俺の横に腰掛け、
「先にお水を飲みますか？」
「あ、えっと……」
　水もいいけど、せっかくなので、
「じゃ、じゃあ、先にリンゴを食べようかな」
「はい」
　笑顔で答える優季。お椀を手に取り、スプーンで一さじ掬うと、
「はい、あーん」
「ちょっと待ったぁ！！」
　バーン！
「な、何だ！？」
　いきなり部屋に入ってきたのは、花梨、珊瑚ちゃん、それにちゃる。
　三人はずかずかと俺に近づき、
「風邪を引いたらコレだよね、たかちゃん！」
　花梨がずいっと突き出したのは、一缶の缶詰。

「えっと、コレは？」
「モモ缶だよ！　風邪を引いたらモモの缶詰。これは世界の常識だよ！」
「……違う。風邪を引いたらミカンの缶詰」
　ちゃるも負けじと、ミカンの缶詰を突き出す。
「ちゃうよ。風邪引いたらコレ〜」
　ぽーん。どすん。
「ぐえっ！？」
　さ、珊瑚ちゃん、いきなり俺の上にダイブしてきた……
「ちょ、ちょっと何してるんですか珊瑚ちゃん！？」
「パイナポ〜☆」
　布団越しに俺に抱きついた珊瑚ちゃんから意味不明の言葉。パイナポ〜？
　と、珊瑚ちゃんが俺の目の前に缶詰を。……成る程、パイナップルね。
「パイナポーじゃありません！　早く降りなさい！」
「はーい」
　本気で怒っている優季を見て、さすがの珊瑚ちゃんも素直にベッドから降りる。
「で、たかちゃん、やっぱモモ缶だよね？」
「……ミカン」
「パイナポ〜」
「あ、あのさ、フルーツの缶詰はどれも好きだけど、とりあえず今は優季のリンゴがあるから――」
「そうなんだ……」
「……」
「つまらんなー」
　途端、ショボーンとしょぼくれる三人。
「え、えっと……」

「たかちゃん、私たちの缶詰より、優希ちゃんのリンゴの方がいいんだって」
「……残念」
「しゃあないなー。ほな、いらない子なウチらは退場やね」
　がっくり肩を落とし、トボトボと部屋を後にした三人。
　……なんだかなぁ。これじゃ俺が悪いことをしたみたいだよ。

　優季のすり下ろしリンゴはとても美味しかった。
「ごちそうさま」
　全部平らげ、満足な俺。
「お粗末様でした」
　微笑む優季。
「じゃあ私、これ片づけてきますね」
　お椀とコップをお盆に乗せ、優季は部屋から出ていった。
　しーんと静まりかえった室内。耳を澄ますと、下の方から女の子たちの声が聞こえてくる。
　楽しそうだなぁ。何を話しているんだろ？　あ、誰かの笑い声。何か面白いことでもあったのか？
　って、何か盗み聞きしてるみたいでいやらしいな俺。いいや、また寝よ。
　……ダメだ、眠れん。今まで何度も寝ていたせいか、どれだけ待っても眠気はやって来ず、ただ
退屈な時間だけが流れるのみ。下からは相変わらず女の子たちの話し声。うう、眠りたいよぉ。
　こんこん。
「たかちゃん、起きてる？」
　花梨の声だ。
「ああ、起きてる」
「じゃ、おじゃましまーす」
　ドアを開け、部屋に入ってくる花梨。

　退屈だわ眠れないわで困っていたところに来てくれたのはかなり嬉しいかも。ってアレ？　手に
何か持って……あ、さっきの缶詰だ。
「いやー、優希ちゃんの目を盗むのは一苦労だったよ。けど、ミステリの探求者たる笹森花梨だもの、
隠密行動だってこなせるようにならないと、ね」
　成る程、優季に隠れてこっそりモモ缶を持ってきた、と。つまり、
「やっぱ、食べろと？」
「うん！　あ、でも全部は無理だよね。半分は私が食べてあげるから」
　いや、半分もキツイなぁ。せめて四分の一くらいで勘弁してくれないかなぁ。
　などと考えている間に、花梨は手際よく缶を開け、透明なお椀にモモを移す。
「どうせ食べるなら、見栄えがいい方がいいよね」
　フォークでモモの盛りつけを調整する花梨。
「どう、たかちゃん？」
　盛りつけ終わったモモを見せてくれる。半身のモモにもう半分を少し重ねただけの盛りつけ。正直
言って、これを見たから食欲が増すというものじゃないけれど、花梨が盛りつけに気を配ったりして
いるのは、この家で家事をするようになったお陰なんじゃないかと思うと、それを否定するような
ことなど到底言えず――
「うん、美味しそう」
　などと言ってしまう。すると花梨は嬉しそうに顔をほころばせ、
「だよね！　じゃ、ちょっと待っててね」
　と、フォークでモモをせっせと切り分ける。そしてその一切れをフォークに刺して、
「はい、あーん」
　……今、気づいた。瑠璃ちゃん、優季、花梨と立て続けに「あーん」してもらってる俺、かなりの
幸せ者じゃないか。こりゃ学校で『ハーレム河野』呼ばわりされても仕方がないな。
「どうしたのたかちゃん？　ほら口開けて、あーん」

「あ、うん。あーん」
　モモを口に入れてもらう。――うーん、甘くて美味しいなぁ。リンゴを食べていなければ、きっと
もっと美味しく感じただろうに。
「たかちゃん、美味しい？」
　とは言え、そのままの感想など言えるはずもなく、
「うん、美味しいよ」
　とだけ答えてしまう俺。その答えに花梨は満足そうに肯き、
「そっかそっか。なら私も食べてみよっと」
　と言って、モモの一切れを口に運ぶ。
「――うーん、やっぱ美味しいよねー。風邪を引いたらモモ缶に――って、あ！」
　いきなり声を上げる花梨。
「ど、ど、どうしよう〜」
　な、なんだ？　花梨が真っ赤な顔で狼狽えてるぞ？
「ど、どうしたの花梨？」
　そう尋ねると、花梨は何故かフォークを見つめ、
「私とたかちゃん、今、間接キス、しちゃった……」
「……え？」
　い、言われてみれば確かにそうかも。俺と花梨、同じフォークで食べたわけで……
「ど、どうしよう〜。私のファースト間接キス、たかちゃんに奪われちゃったよ〜！
　ファースト間接キスはお嫁に行くまで大事に取っておこうって心に決めていたのに〜！
　もうこうなったら、たかちゃんには責任をとってもらうしかないね！　早速明日にでも結婚――」
「食べさせたのは花梨でしょうが！」

　つづく。

どうもです。第７８話です。
>>401さん、支援ありがとうございました。m( __ __ )m

新作情報を直に見たくて、テックジャイアンを買いました。
アナザーデイズ、今からすっげえ楽しみです！

けど菜々子ちゃんがヒロインって、いいのかなぁ……(^^;

ネギｷﾀ━━(ﾟ∀ﾟ)━━ !!!!!

>407
菜々子ちゃんがヒロインでも、いいんだよ。（夜回り先生風に…言ったら殴られるな確実に）

ネギ連呼の掴みに脊髄反射で笑ってしまった。カタカナ言葉でもタマ姉は漢字なのかｗ
他にも草壁さんのよっちの呼び方は「よっちさん」なのか、だの、
子供の頃親に食べさせて貰ったすりリンゴは美味しかったな、だの、
モモ缶は定番としても病人にパイナップルは刺激が強いんじゃなかろうか、だの、
刺激強いならいっそタマ姉かよっちか草壁さんのパイ(ry

それにしても花梨のSS少ないねえ。
SS作家さんたちも花梨アンチに報復されるのが恐いのかな。

でもささらアンチやいいんちょアンチのほうがタチは悪いよ。
これもひとえに花梨の魅力のおかげなんよ。

>>407
ネギ乙！！
で、その心の傷を癒すのが草壁さんの愛情だったりして。
いいですなあ……

菜々子ちゃんエロはいいのか？

ｲｲﾝﾀﾞﾖ!!

大人になった菜々子とセックスという展開かねぇ
成長した菜々子がエロキャラだったらどうしよう

>>410
というか口調とか考え方が独創的すぎて書きづらいってのがあるな。
キャラクターとしての個性が強すぎて、こっちの創作の余地が無い。
ToHeart2では動かしづらいキャラの筆頭かもしれん。

>>415
なるほど。
決して人気がないわけじゃなくて、キャラが個性的で書きづらいからSSが少ないというわけね。
それだけキャラとしての完成度が高く、創作がしづらいということかもしれない。
あまり完成されすぎたキャラというのも考え物ということか。

基地外にレスするなよ

⊂⌒ヽ　<^(ﾟwﾟ)ノハヾ^　(⌒⊃
　　＼ ＼ｗ ﾘ(i!ﾟ ヮﾟﾉｖ'`/､ / 　　　
⊂二二二　　・）　･）　ニ二⊃ 　　　　いやっほ〜う　かもりん最高〜
　　　　＼　＼_ ....／　／ 　　　　　
　　　　　（　　　φ　　　）
　　　　　　ヽ＿,*､＿ノ　　 　　　　 　　　　　　　　
　　　　　　　　　ﾞﾐ;;;;;,_　
　　　　 　　　　　 ミ;;;;;;;;､;:..,,.,,,,,
　　　　　　　　　　　i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
　　　　　　　　　　　　ﾞゞy､､;:..､）　　｝ 　　　　　　　　
　　　　　　　　　 　　　.¨.､,_,,､_,,r_,ノ′ 　　　　
　　　　 　　　　　　/;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
　　　　　　　　　　ﾞ{y､､;:...:,:.:.､;:..:,:.:.　._　　､｝
　　　　　　　　　　　".¨ｰ=v ''‐ .:v､,,､_,r_,ノ′
　　　　　　 　　/;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ﾐﾞ´ﾞ^′..ヽ　
　　　　　　　　 ﾞ{y､､;:...:,:.:.､;､;:.:,:.:.　._　　.､）　　､｝
　　　　　　　　".¨ｰ=v ''‐ .:v､冫_._ .､,_,,､_,,r_,ノ′
　　　　　　　　/i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ﾐﾞ´ﾞ^′.ｿ.ヽ
　　　　　　　　ﾞ{y､､;:..ゞ.:,:.:.､;:.ﾐ.:,:.:.　._υﾟo,,'.､）､｝

>313
遅レスだが前スレにあったぞ↓
ttp://th2ss.hp.infoseek.co.jp/633.html#title
思い出した。もうひとつあった↓
ttp://th2ss.hp.infoseek.co.jp/543.html#title
他にも図書委員長が登場するSSはあった気もする

……間違えた。>419の下のは図書委員長じゃなくて学級委員長だ。すまん

>419
ありがとう。自分は図書委員長がなかなか好きで､まぁ単に脇キャラカプが好きなだけだが。

ToHeartのファーストシーズンネタで悪いけど
ＦＳのＥＮＤはもちろんタマ姉ＥＮＤだよね？
じゃなかったら自殺するオ俺？

ID:wLEkFC090＝白詰草自演確定キタ━━━━（。Ａ。）━（゜∀゜）━（。Ａ。）━（゜∀゜）━（。Ａ。）━━━━！！！！ 

>>423は荒らしなのでスルーしてくださいね。

93 名前： 名無しさんだよもん 投稿日： 2006/10/26(木) 00:21:44 ID:cTl7vpb/0  
ID:wLEkFC090＝白詰草 ◆Pd9gE38GCU でｶﾞﾁ   
94 名前： 名無しさんだよもん [sage] 投稿日： 2006/10/26(木) 00:23:25 ID:wLEkFC090  
>>93   
彼は最近BBSPINKそのものを開いてないらしいぞ。   
それなのにどうやって書き込むの？   

47 名前： 名無しさんだよもん [sage] 投稿日： 2006/10/26(木) 12:06:15 ID:wLEkFC090  
最近このスレに白詰草さん来てくれてるみたいだね。   
以前あの人がいたころは今より活気のあるスレだった。   
俺も、是非本格復帰してほしいという意見には賛成かな。  

白詰草の自演人生   
ｵﾜﾀ＼(＾o＾)／

正直俺も荒らしは白自身だと思ってるが>>425のどこが証拠になるのか分からん

>>426
＞彼は最近BBSPINKそのものを開いてないらしいぞ。
＞最近このスレに白詰草さん来てくれてるみたいだね。

彼の言動が矛盾してるのはわかるがそれが自演の証拠になるとはいえないんじゃない？

まぁ確かにそうなんだけど、
わざわざ2chでコテを持ち上げる時点で結構グレーゾーンだとは思う。

荒らしの免罪符っつーか、責任転嫁の道具にしてるようにしか見えん

ID:cTl7vpb/0は葉鍵板荒らしまわってる基地外だからスルーが吉。
つい最近も笹森会長関連の重複スレ乱立させて悦に入ってた御仁。

そんなくだらない事でムダにスレ消費するなよ
ウザいなら見なければいいだけだろ？

…うむ。たしかにスルーが一番。
ただ、彼のような荒らしに騙される無垢な子がいるかもしれないから
念のため忠告を入れに参った次第。

>431 名前：名無しさんだよもん [sage] 投稿日：2006/10/26(木) 16:42:05 ID:wLEkFC090
>ID:cTl7vpb/0は葉鍵板荒らしまわってる基地外だからスルーが吉。
>つい最近も笹森会長関連の重複スレ乱立させて悦に入ってた御仁。
>
>433 名前：名無しさんだよもん [sage] 投稿日：2006/10/26(木) 16:48:29 ID:wLEkFC090
>…うむ。たしかにスルーが一番。
>ただ、彼のような荒らしに騙される無垢な子がいるかもしれないから
>念のため忠告を入れに参った次第。

自分の書き込みに自分で相槌…
もう無理しなくていいよ白…

>>434
例え>>431-433が白だとしても>>433の言葉は>>432に対するものだと思うが

まあ黄色信者は>>416みたく意味不明な論理展開するから
何考えてたかなんて分からないからな

てかよく見たらここ同人作者スレじゃなかったのな。スレ違いスマン。

ミルファ、偽名で登場か
ﾜｸﾃｶしてきた

俺はむしろシルファと郁乃に期待してる。ミルファは二次創作でお腹いっぱい

ミルファＳＳは去年の１月の段階で長編が何本も貼られてたっけ
それに引き替え、郁乃、シルファ、菜々子ちゃんや三馬鹿はまだまだ開拓の余地がある

菜々子SSって、アイス屋の菜々子編ぐらいしか見た事がない。

ミルファか〜
キャラの色づけがわかりやすすぎるせいか、誰が書いても似たり寄ったりだったよなあ
HMX-17b研究所なんてHPを立ち上げた人もいたしｗ

新キャラも良いんだけど意外とイルファさんメインが少ないのが…
OVA効果で作られると良いけど

イルファさんは
妄想腹黒百合おねいさんキャラで確立してるし

イルファさんSS、マジで増えると良いなぁ。
最近はＳＳ置き場で良質なＳＳを補給できたからまだいいけど。
その節はお世話になりました。

妄想にふけるのにも限界があるっちゅーねん。

このスレに投下された郁乃ＳＳで面白いのってあった？

そんなに数ないんだから全部読め

と言いたい所だが「ただ心だけが」を薦めておく

個人的には「修学旅行の夜」が好き。漏れの脳内では既に、このみ×いくのん、がデフォ

「ただ心だけが」って雄二×郁乃のだっけ？
アレは良かった

私も海に連れてってもおすすめ

最近更新しないね

イルファさんのSSは良質なのが多いけど
エロ、妄想、策謀部分が誇張され過ぎててイルファさんのもうひとつの魅力である清楚さが欠けてると思う事があるなあ
あとイルファさんの一番はあくまで瑠璃なのに貴明ラブで瑠璃はオマケでみたいになってるのもあるし
ま、百合SSになっちゃうから仕方ないけど

二対の真剣さを物語る瞳の衝突が、今の張り詰めた空気を作り出す。
各々方が待つは、勝利か敗北か……それは、運命だけが知っている。

「このみ、いざ尋常に勝負」
「うん……手加減はしないよ、よっち」

一騎打ち……それが、この状況を語る唯一の表現。
親友と言えど、絶対に譲れない物の為に鬼になる……それが勝負の鉄則である。
今、チエちゃんの手が伸ばされ、運命が切り開かれようとしている。
そして、伸ばされた手が掴むは……

「よし、あたしの勝ちっしょ」
「あ〜！　またビリ〜……」

このみの不動の連敗神話は続く事となった。

第十二回ババ抜き戦績発表。
ちゃる　一位　１２　二位　０　　三位　０　　四位　０
このみ　一位　０　　二位　０　　三位　０　　四位　１２
よっち　一位　０　　二位　０　　三位　１２　四位　０
貴明　　一位　０　　二位　１２　三位　０　　四位　０

見た感じ、誰がどう見てもイカサマとしか思えない結果だが、内容を聞けばそうじゃない。
何せ、普段から寡黙なポーカーフェイス、そして駆け引きに関しては素人とは思えないミチルちゃん。
片や、普段から友好的で感情表現が得意なチエちゃんとこのみ。
俺もそこそこ駆け引きは得意だから、この結果はなるべくしてなった物だ。
蛇足だが、チエちゃんとこのみの差は、単純さでこのみが勝っていたのである。

「ん〜……」
「う〜……」
「む〜……」

満足そうな声と、不満そうな二つの声。
戦績見ればわかると思うけど、声を上げた順番は上から俺を抜かした順位順。
先に言っておくが、この声は戦績による物ではなく……

「ん〜……」
「ミチルちゃん、そろそろ５分」
「はい、ではまた３回後に５分お願いします」
「勝手に順位を決めるなキツネ」
「タカ君椅子はこのみの特別席なのに〜」

こういう事。

現状を簡単に説明するとこう。
風呂上り後のちょっとしたトラブルから一段落した後、チエちゃんがババ抜きをしようと言い出した。
このみにミチルちゃんは勿論、俺も折角なので参加しリビングでテーブル囲う事にしたというのが始まり。
因みに今の状況は……。

「そーだ、ババ抜きで一位になったら下位の人に命令できるって事にしない？」
「え？　ああ、まあ罰ゲームがあるのは面白いし、やってみようか」
「うん、やる気が出た」
「よーし、頑張るでありますよ♪」

と、全員一致で決まったから。
因みに命令ルールは、連続ではなくローテーションで。
つまり、同じ人に何度も続けて命令が出来ないと言う事。
５分の時間制限までで、話はまとまった。

「ふふ、これは命令次第で好き放題できる」
「何気に怖い事言わないでくれないかな？」
「よーっし、ここは頑張る所っしょ」
「柚原このみ、突貫します♪」

そうして始まり、今に至る訳である。

「髪クシャクシャだよ……折角手入れしたのに」
「あたしのお菓子が……」

ちなみにミチルちゃんが下した命令は、このみは計１６分抱き締めて頭ナデナデ。
チエちゃんは今日のお菓子を４つ取られた。

「本当は……ううん、何でもない」
「何？　ちょっとキツネ、今何言いかけた？　今何か言いかけたっしょ！？」
「聞かない方が良いと思う。先輩がいるから、自重しただけ」
「……あの、チエちゃん」
「え、ええ、そうっスね。何か聞くのが怖くなったッス」

俺は計２０分このみ命名タカ君椅子をやらされた。
ちなみにローテはこのみからで、一番最初の命令は『タカ君椅子』の許可。

「……これ、そんなに良いのかな？」
「はい、何度でも座ってみたいです。ごめんこのみ」
「む〜……」

自分の専売特許を取られて、すっかり不満そう。
でも感情表現が得意なのが仇なんだよな、ババ抜きって。
このみはもちろんだけど、チエちゃんも感情隠すのは下手だし。
ミチルちゃんは、普段からの寡黙なポーカーフェイスを武器に王者として君臨中。

「……考えてみれば、結果はやる前から判ってたような気がする」
「そう言えばそうっスね。ちゃるはこういう時だけは、性格が幸いしてるっしょ」
「性格にも一長一短、必ずしもそれで全てが上手くいくと言う事はない」
「ねえ、別のにしようよ。こんな一方的じゃつまらないよ」
「はいはいわかったよ」

と言うよりもババ抜き事自体、既にこのみにとっては貧乏くじ何だと思わざるをえんな。
……まあ、言う通りにしておいてあげよう。

・・・

大富豪、七並べ、神経衰弱、ポーカーとやっては見ましたが……。

「いや〜、極楽極楽ッス♪　このみがやりたがるのわかるっしょ♪」
「そうなのかな？」
「そうです、フォーメーションＡやＢをやってる時と同じ様に和んでしまう」

何とかゲームになりそうなのはポーカーだけ。
表情が読まれても差し支えはないほうだし、イカサマしない限り勝ち続けるのは先ず無理。
……の筈なのに。

「む〜！」

相変わらず、このみは連続最下位記録更新中。
俺、ミチルちゃん、チエちゃんの順位は多少は変わってはいるのに、それだけは不変の掟の様に続いた。

「なんでこのみばっかり……」
「後先考えずにその場の勢いだけでやるからだ」
「むー、即答ひどいよ」
「このみ、それは否定できない」
「うん、誰がどう見ても事実っしょ」
「皆していじめなんて酷いよ〜！」

だって事実なんだから仕方ないだろ。
大富豪は後先考えずに強いカードばかり出して、後の方で惨敗。
七並べはババ抜きと同じで待ち札が表情ですぐわかるし、神経衰弱なんか論外。
ポーカーに至っては、大物狙ってばっかでハマりまくり。
つまり、ゲームに置いて必要不可欠とされる、駆け引きと言う物がまるっきり出来てない。

「……仕方ない。２人共、ちょっと良いかな？」
「はい、構いませんよ」
「あ、あたしもオッケーッス」

このみがまた仲間外れだとごねてる前で、３人で円陣を組む

「予想通りとはいえ、そろそろこのみは限界。これじゃ泣き出すのも時間の問題」
「だね。でも、あれじゃわざと負けようが無いし……」
「ですね。あれじゃ流石にわざと負ける事も出来ないっしょ」
「でさ、俺がちょっとこのみに手解きをする事にするよ。だから、ちょっと手を抜いてくれないかな？」
「そうっスね、あたしもいじめるのは気が引けてましたから」
「練習……それなら良いです」

チエちゃんミチルちゃんの同意を持って、会議は終了。

「もう一回大富豪で良いかな？」
「ええ、構いません」
「あたしもオッケーッス」
「じゃあこのみ、行くぞ」
「え？」
「この回だけは、先輩とこのみは連合として扱う」
「ホント？　やった♪」
「今回だけだ、俺がアドバイスするからその通りに出せよ」
「うん、わかった」

このみが意気込んでる間にミチルちゃんがシャッフルし、配られる。
手札を見ると、絵札が５枚にＡが２枚、２が３枚か……うん、行ける。

「それじゃ、俺が指示するからその通りにやれよ」
「了解であります」

そして、いざスタート。

まずチエちゃんからスタートで、ある程度進むとミチルちゃんが１０を出す。

「じゃあこれを……」
「待て、パスで」

そしてチエちゃんもパスで、振り出しに戻る。

「え、何で！？」
「バカ、こんな所で強いカードを出しまくるからダメなんだよ。今の俺達の手札は確かに強いけど、弾切れ起こしたら意味が無いんだ」
「う〜ん……」
「まあ見てろって」

ミチルちゃんが弱い方のカードを出し、俺達はそれよりちょっと強いカードを出す
それから、俺はある程度カードを見定めると強いカードを出し始める。
そしてジョーカーが出ると。

「よし、ここからはこのみのやりたい様にやれ。ただし、ある程度は弱いカードからな」
「うん」

それから、このみ独特の勢い任せでガンガン行かせた。
流石にこれなら楽勝だ。

あらよっと

「やった♪」
「ほらな」

最後の手札を出し、このみが漸く勝利を納めた。

「じゃあもう大丈夫だな。それじゃ、俺もそろそろゲームに合流する」
「うん、ありがとタカ君」

立とうと足を崩した所で、このみが俺の上に座った。
……あ、そっか、一応ゲームなんだし……って、俺参加してないけど。
……まいっか。

「えへ〜♪」
「早速かよ、まったく」

まるで返り咲いたといわんばかりに、とろける様な笑顔で座るこのみ。
何かすっげえ気持ち良さそうに座ってる。

「……まいっか」

流石に水差す気にもなれず、俺はそのまま大人しく従った。

「このみも勝負師としての一歩を踏み出したか……ならばもう私も全力で行くぞ。手加減は無しだ」
「でっでも、流石に新生このみの初出撃だけに、ちょっとやり難い」
「甘いぞよっち、勝負の世界は常に真剣勝負。先輩後輩、家族親友、その他諸々の絆は関係ない、常に心身ともに全力で戦うのが礼儀」
「わ、ちゃるからオーラが……」

確かミチルちゃんって、所謂テキ屋の娘ってこのみから聞いたっけな。
と言う事は、やっぱりこういうのには……何か、怖い物想像しちゃった。

「では……の前に、熱中していて気付きませんでしたが、そろそろ１０時です」
「え？　あ！　じゃあちょっと中断、そろそろ寝床を準備して戸締りしないと」
「うん、そうだね」

夜はまだまだ長い訳で、ちょっと一時休戦。
……いやいや、とある意味ではなくて、あくまでお泊り会での楽しい時間と言う意味で。

こんばんは、ＳＳスレの住人の方々。
漸く書きあがったので、深夜パート前編出します。

まだまだ序章なので、ここから盛り上げて……いけるかは不安ですが、頑張りたいと思います

アナザーデイズの情報が世に出て、楽しみで仕方ありません
よっちちゃる及びミルファとシルファもそうですが、まーりゃんやいくのんが出るらしいですね
以外と言えば、るーこ編のあの菜々子ちゃんまで出るのは驚きですね。
近い内、や・ゆ・よもメイドロボ３姉妹の参加を考えるかな？

>>459　支援どうもありがとうございます

GJ！！
俺は支援するべきかどうかで悩んでしなかったよorz

メイド3姉妹参加希望！！特にイルファ、シルファを！！

久々にやゆよｷﾀ━(ﾟ∀ﾟ)━!!
よっちちゃる分が枯渇気味だったので補給

クロスオーバーはスレ違いかな？

>462
やゆよ乙。ババ抜きでここまで差が出る４人ｗ
ちゃるは普段からこうやってこのみと一次的接触を試みているのかも……うらやますぃ
山田家がテキ屋ってのは、剛田の記事の「親の仕事がちょっと特殊」から？

>>465
止めておいた方がいい

ごめん、目欄間違えた

「なつやすっみっ♪　なつやすっみっ♪」
「１学期はまだ３日あるんだが」
「もうテストもないし、勝ったも同然だよ〜」
このみ絶好調。
「確かにな、もう誰も授業なんざ真面目に受けデデデデデッ！」
この辺り　いつも進歩の　ない雄二　
「まったく。このみも、１学期をきちんとやり終えてこその夏休みよ」
「う〜ん、そっかなぁ」
判ったような判らないような。

「「お姉様、おはようございます！」」
ペコッ……。
朝の挨拶、三人娘。
「おはよう」
環の応対も慣れたもの。
４＋３の登校風景は、既に日常のなかにある。
「「……」」
ギリギリギリ……。
「……ぶるるっ」
「タカ君どうしたの？　カゼひいた？」
貴明に向く視線の冷たさは、相変わらずだったが。

「それにしても毎日暑いわね。体調に気を付けないと」
「そ、それなんですけれどお姉様」
玲於奈がやや上擦った声で切り込んだ。
「なあに？」
「夏休みに私共、海に行こうと思うのですが、お姉様もいらっしゃいませんか？」
「海？　海水浴？」
「はい。週末は込むでしょうから、来週の月曜日あたりを考えています」
薫子が引き継ぐのが、三人娘の役割分担。

「月曜日、２６日か、特に予定はないけど……」
環が小首を傾げてちょっと考え始めた時、
「ああぁ〜っ！　そうだぁ〜！」
素っ頓狂な声このみ。
「うわっ。急に耳元で騒ぐなよ」
「なんだぁ突然？」
「タカ君、ユウ君、忘れたとは言わせないよ」
「何をだよ」
「来週の月曜日は、７２６事件一周年だよ！」

★７２６事件
１年前の７月２６日、貴明と雄二が二人でウォーターワールドに行った事。
補習で参加できなかったこのみ（当時受験生）は、これを大いに根に持っており、
去る３月１１日には、一生忘れないことを心に誓った、とまで宣言している。

「んなもん覚えてるわけねーだろーが」
「ていうか、このみも忘れてたんじゃ……」
「む〜、今は思い出したよ。とにかく」
握り拳ふたつ。
「わたしこと柚原このみは、タカ君とユウ君に、本件の賠償を要求するものであります！」
「……早い話が、どっかに連れてけと？」
「謝罪はいいのか？」
「連れて行ってくれたら、許すであります！」
「現金だなあ」
「ったく、しょうがねえなこのチビッコは」
苦笑ふたつ。
「なにが仕方ないのか良くわかりませんけど、人の話を持っていかないでいただけます？」
不機嫌玲於奈。
が、薫子の対応は、少し違った。
「それでは、雄二様達もご一緒にいかがでしょう？」

西瓜。大玉。約７ｋｇ。
「炭とコンロも俺が持つのは不公平じゃないか雄二？」
「馬鹿いえ。このクーラーボックス糞重いんだぞ」
荷物持ち二人の会話。
「その程度で弱音を吐かない。男でしょ」
「ふん、まあ姉貴よりは軽いけどな」
姉弟の会話。弟は、姉の両手が塞がっていることを見越している。
「あらそう。このみ、やっていいわよ」
「やた〜。突撃〜♪」
「だああッ！　ぶらさがんじゃねえチビッコがぁ！」

飛び道具で撃墜された雄二の隣では、貴明に寄り添うように少女が一人。
「貴明くん、す、少し持とうか？」
「愛佳じゃなんの役にも立たないからいい」
「うぅぅ、即答〜」
終業式の帰り道で話に巻き込まれた委員長は、慣れない面子にやや居心地が悪そうだ。

環を挟んでバカップルの反対側、
「カスミ、日差しが強いから無理なさらないで」
コクコク……。
「しかし、雄二さんにおチビさん、小牧さんにあの男の相手をさせるとは、見事な作戦ですわ薫子」
「それほどでも。とにかく、後は私達の努力次第。頑張りましょう」
グッ……。
言い出しっぺの三人娘が作戦会議。
「なあに？　こそこそ話？」
気づかれた。
「い、いえっ！　きょ、今日は良い天気だなあとっ！」
玲於奈、芸がない。
「そうね……眩しいくらい」
それでも空を見上げて環。果てしなく高い、夏の雲。
吹き抜ける風に、潮の匂いが混じった。

「うわ〜、う、み、だぁ〜！」
砂浜に続く堤防の上、両手を思いっきり真横に伸ばして。
「およよよっ」
正面からの風によろけるチビッコ。
「落ちんなよ」
「うん、ありがとうユウ君」
背中を支えた雄二に、無邪気な笑顔を見せる。
「あの〜」
二人を見ていた愛佳が貴明をつつく。
「なに？」
「なんだか今、このみちゃんの肩に黒いカラスが留まっている幻覚が……」
「文学の読み過ぎ」

どさどさどさ。
「お、重かったぜ」
「パラソル、倒れないかな？」
「じゃあ、着替えたら一度ここに集合しましょ」
「脱衣所は、あちらですか」
「あまり綺麗ではありませんわね」
コクコク……。

「んしょ、んしょ」
「こ、このみちゃんっ!?」
シートを敷き終えて立ち上がった愛佳が目を丸くする。
なんの目隠しもない砂の上で、このみが服を脱ぎだしたのだ。
藍色のキュロットが外れて、ストンと足首に落ちる。
下からピンク色の生地が覗く。
「ぱ、ぱんつ……じゃない？」
「えへへ〜、ちゃんと下に着てきたですよ」
自慢げに皆を振り返って、このみはブラウスの裾をつまみあげた。

ばさっ。
脱ぎ捨てられたブラウスが宙を舞う。
水着はピンクのワンピース。布面積は結構広め。ぶっちゃけ、お子様水着。
「あれ、あれ、脱げない」
立ったままもどかしそうに腰を折って靴を脱ごうとするこのみ。
薄いお尻はハート形というより逆三角。斜辺の下で太股もぞもぞ。
「うりゃ、とりゃっ！　準備完了〜！」
背筋を伸ばしてバンザイポーズ。ただし、張った胸はほぼ真っ平。
「じゃあ、先に泳いでるね！」
「ちょっと待てっ」
ア○レちゃんよろしく腕を水平に広げて走り出したこのみを、貴明が引き留めた。
「ぐえ。」
水着姿では掴む首根っこがないので、腕を巻き付けてチョークスリーパー。
「けほけほっ。もう、タカ君ひどいよー」
「泳ぐ前に準備体操だろ」
「あ、そっかぁ。おいっちにっ、おいっちにっ」
「チビ助、水着下に着てきたのはいいけど、帰りはどうすんだ？」
「えっ？　……ああっ！」
「大丈夫、私がこのみの着替えも持ってきたわ」
「ありがとうタマお姉ちゃん！」
「お姉様、参りましょう」
クイクイ……。
「そうね、荷物番が……」
「ああ、俺も海パン履いてきたから」
「雄二の着替えは、持ってきてないわよ？」
「当たり前だ」

脱衣所への道すがら、愛佳が隣の貴明に呟いた。
「このみちゃんって、本当に貴明君達の妹みたいだね」
「うーん、タマ姉が帰ってきてから、ますます甘えっ子になったかな」
「なんだか羨ましいなあ〜。……ん？」
恋人の口調に、やや複雑なものを感じ取った貴明は、そっと愛佳の手を引いた。

ほいさ

「あれ？　このみは？」
最初に戻ってきた貴明に、寝ていた雄二は波打ち際を指さす。
「あ〜っ！　タカく〜ん！　はやく〜！」
指さすまでもなかった。
「大声で呼ぶなよ……」
ぼやきながらも、このみの方へ駆け出す貴明。
「後で荷物番交代しろよ〜」
その背中に声をかけて、再び寝っ転がる。
間もなく、
「あら？　このみは？」
環達が戻ってきた。
「あ〜っ！　タマお姉ちゃん！　はやく〜！」
指差すまでもない。
「今行くわ！　ホント、元気なんだから」
腰に手を当てて溜息。
黒に近い濃紺のビキニに包まれた胸が、動きに合わせて揺れた。
「カスミ、ここなら日が当たらないわよ」
ストッ……。
パラソルの影に座ったカスミ。
大人しめの赤のワンピースの上から、長袖のＴシャツを被っている。
「泳がないのか？」
「カスミは体力がありませんから、程々に」
その隣に座った薫子の方は、オレンジのスカート付きワンピ。
「じゃあ、荷物番頼んでいいか？」
「構いませんよ。私もいますので」
頷いて、バッグから日焼け止めを取り出し玲於奈に渡す。
「お姉様、お背中お塗りします」
玲於奈の水着は、水色と青のセパレート。腰に小判のパレオ。
「タマお姉ちゃ〜ん！　は〜や〜く〜！」
「俺が行ってやるからちょっと待ってろ！」
「え〜、ユウ君いらな〜い」
「あんだとこのガキゃ」

「お待たせしましたぁ！」
「見事なまでに、誰も待ってなかったけどな」
「みんな酷いです＞＜」
白いフリルワンピースに身を包んだ愛佳が到着して全員集合。
オイルを塗りおえた環と玲於奈も、遊泳組に合流している。
「お姉様、あそこのブイまで競争しませんか？」
「玲於奈、お前泳げんの？」
「当たり前です！　何故そんな事を聞くのですか！」　
「いや、なんとなく運痴っぽいイメージが。いいんちょ程じゃねえけど」
「私だって泳げますよぉ！」
雄二の勝手な意見に反論する愛佳。
「……犬かきですけど」
しょぼん。
「そういう貴方はどうなんです？」
反撃を試みた玲於奈の頭上を、風に舞ったゲイラカイトが通り過ぎた。
「きゃっ？」
実際は、身をすくめる程の距離ではない。少し離れた海面に着水する。
「うわ〜〜ん！　僕の凧〜！」
砂浜の方で泣き声。小学生くらいの男の子。
「しょうがねえな」
返答の代わりに、雄二が泳ぎ出す。あっという間に、姿が小さくなった。

「おじちゃんありがとう」
「お兄ちゃんだ＃」

「な、なかなか速いですわね」
「まあな。子供の頃からアレの相手をしてるから」
雄二が指さした先。
「こら、このみ！　そっちは遊泳禁止よ！」
「一人で沖に出るな！　また力尽きて溺れるぞ！」
波しぶきをあげて移動する物体。玲於奈と愛佳は、それなりに納得した。

「そろそろお昼の準備ね」
「え〜、まだお腹空かないよ？」
「あれば食うくせに。火を起こす時間があるから、丁度いいだろ」
水からあがってパラソルに戻る遊泳組。
「あ、お昼ですか」
薫子が顔を上げた。膝の上で、カスミが寝入っている。
「カスミ、起きて」
ムク……。
身を起こすカスミ。
寝惚け眼を擦る姿は、普段よりも子供っぽい。
「うーん、男二人に女性六人ねえ」
環が１５秒悩んだ結果。
火起こし班：環・貴明・雄二
食材班：薫子・カスミ・玲於奈・愛佳

「タマお姉ちゃん、このみはどっちなの？」
「あ。えーっと、このみは私と一緒にいなさい」

「まずこうやって薪で火床を作って……」
環とて万能ではない。バーベキューコンロの前で結構悪戦苦闘。
「なかなか点かないもんだね」
「着火剤が足りねえか？」
「これ？　これ？　このみがやる〜♪」
「ちょっと、待ちなさ……」
「てりゃっ！」

どぼどぼどぼ。
「のわーーーーーっっっっっっ！」
激しくも儚い、真昼のキャンプファイヤーであった。

「えーっと、やっぱり向こうを手伝って頂戴」
「はぁい」

トントントントントン……。
やけに手慣れた包丁裁きでリズム良く野菜を切るのはカスミ。
サクッ、サクッ。
堅実に目標を捌いていくのは薫子。
ざくざく。ざくざっ。ぐっ。
どうもやる事が強引な玲於奈。
性格、だろうか。
「わわわ、ととっ、とっ、ふひゅう」
手際は別に悪くないのだが、なんとなく危なっかしくて騒がしい愛佳。
「このみちゃん？　どうしたの？　っとっと」
ジャガイモを転がしながら、柱の陰からちょこん、と顔を覗かせたこのみに声を掛けた。

「タマお姉ちゃんが、こっちを手伝いなさいって」
柱から半カオでこのみ。
貴明や雄二には無敵を誇る元気娘も、このメンバーには気後れしているようだ。
「別に手伝っていただくことはありませんわよ」
だのに、玲於奈は冷たく言い放つ。
「薫子とカスミがいれば十分ですから」
自分を含めないのが少し謙虚、もしくは自覚的というべきか。
「そうなんだ……」
半カオが、３分の１くらいになる。
「じゃ、じゃあさ、このニンジンお願いできるかな？」
「うんっ！」
愛佳のフォローに、ニコニコとナイフを持ったこのみだが。
「むぅっ、うりゃっ？、てやっ？、ったぁ、おろ？」
「あ、あぁぁて手っ、指の危険が危ないよっ！」
「……小牧さんも、自分の手元をご覧になったら？」
「へ？　ふわあぁ！」
薫子の指摘に、かえって手元が狂ったのか、
「痛ッ！」
やっちゃった。

「った〜いぃ〜」
「うわあ、血がどくどく出てるよ！」
「描写しないでぇ〜」
凹む委員長。
「だ、大丈夫ですの？」
「荷物のなかに、絆創膏があった筈ですよ」
トントントントン……。
慌てる玲於奈、冷静に薫子、無反応のカスミ。
「だ、だいじょぶ、大したことないですからっ！」
「大したことなくとも手当はいるでしょう？　このみちゃん、一緒に行ってあげて」
気遣い半分、厄介払い半分。
「すみません〜」
へこへこしながら、愛佳が戦線を離脱した。
トントントントン……。
作業効率は、さほど変わらなかったり。

「タマお姉ちゃん、たいへんたいへん！」
「このみちゃん、大騒ぎするような怪我じゃないから」
「どうしたの？　って小牧さん？」
「愛佳？　……うわ、なにやってんだ！」
貴明がやってきて、愛佳の様子に顔色を変える。
「あはは、ちょっと手元が狂って、ってわ、わ、引っ張らないで、大したこと、な、いっ」
恋人をシートに座らせて、救急箱を取り出す貴明。
愛佳、少し頬を赤くしながら大人しい。
「結構出てるな、血」
「ひゃっ、舐めちゃやだぁ」
ついでとばかりに、多少いちゃいちゃ。

「ほぁ……」
その様子を、このみが見ている。
「このみ、こっちにいらっしゃい」
環は貴明達の方を見ずに、このみに声を掛けた。

「うん」
とととっ、コンロの側にやってくるこのみ。
「わ、火がついてる」
「ふっ、俺様の努力の賜物だ」
「凄いねタマお姉ちゃん！」
「……いいけどな」
いつもの取り扱いに腐った雄二だが、ふと怪訝そうな顔をする。
興味深そうに炭火を見ているこのみが、何度か小首を傾げていたのだ。
「どうした、チビッコ？」
「ううん、なんでもないよ」
否定しつつ、ちらっとパラソルに視線を向ける。
「さっきタカ君と小牧先輩を見てたらね、なんだか、胸のあたりがモヤモヤしたみたいな？」
「……」
なんだったんだろうね。と不思議がるこのみに、雄二が言葉を探していると、
「日差しが強いから立ち眩みでもしたんじゃないかしら？」
横から環が引き取った。
「そっかな」
「それよりも、このみ、これ知ってる？」
「なんだそりゃ？」
「火吹き竹」
どっから持ってきたのか、時代物を取り出す環。
「こうやって使うのよ」
竹筒の先端をコンロに向けて、逆側からふーっと息を吹き込んだ。
昼陽の下で白黒だった炭が、パアッと赤く染まる。
「わ、面白いよ！　このみも！このみもやる〜！」
このみは環から火吹き竹を渡されると、張り切って筒に唇をくっつける。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ！」
吹きすぎ。物凄い勢いで、炭より先にこのみの顔が真っ赤になっていく。
「ふおお、目が、目があ〜」
くるくる回って、砂浜に大の字。
苦笑する環と雄二。
二人とも、まだもう少しだけ、無邪気なこのみを見ていたかったのだ。

以上。2/11と6/11が二つずつありますが当然、間違いです。寝惚けてるな俺。

あ、申し遅れました。>474さん支援ありがとです。次も海水浴。

ＧＪ！
ＡＤには3人娘出ないけどその分も頑張っていただきたい

関係ないが火吹き竹は吹きすぎて頭が痛くなった思い出が

「どうした愛佳?」
「え?なに?」
「今日はまた一段とボケてるぞ」
「え?そんな事無いよ〜」
「棚に片付けた本、全部逆さま」
「え・・・あ!?」






だって、仕方がなじゃない・・・

昨日見てしまった、由真と貴明君のキスシーンが頭の中で幾度と無く繰り返される。
あの十字路が、景色が、空が、二人が・・・あの、由真の憂いを帯びた表情が鮮明に思い出される。

それをまた、幾度由真と自分とを差し替えて妄想した事か・・・



そんな事ばかり思っていると。
貴明君と二人きりの司書室でさらに色々な事を妄想してまったのだ。


貴明君の腕に抱きしめられて、キスされて、貴明君を全身で感じて・・・

「やっぱり何かおかしいぞ、愛佳?」
「え?」
「お茶請けに持ってきた皿、空っぽだぞ」
「え?・・・や!そ!忘れてた!」
「おいおい・・・」
「今持ってくるから」

慌てて戻る。



「あ、あれ?」
棚に閉まっていたお菓子が一つも無い。
そう言えば二人だからか、気づかないうちに沢山食べてしまっていたようだ。

「どうした?」
「ごめんなさい・・・お菓子が無くなってたみたい」
「え?」
貴明君が近づいてきた。
「あ、本当だ・・・」
ヤダ、顔がこんなに近い。
「ワリ、俺のセイかな・・・」
「へ?」
「便乗して一緒に食べてからだろ」
「そ、そ、そんな事無いよ〜」
「嘘つかない!!」
「あう・・・」

やっぱり、貴明君にはわかっちゃうみたい。

「買い足さないと・・・」
そうしないと、貴明でも・・・」
「良いから良いから!で、どこで買うんだ?」
「デパートとかで・・・」
「ふむ」
少し考えて込む貴明君。
「じゃあ日曜日にでも一緒に行くか」
「え!?」

でも、それって、もしかして・・・デート?

「嫌か?」
「嫌、そんな事無いけど・・・由真は・・・」

どうせ、由真とデートの約束をしてるに違いない。

「良いよ、一日くらいわ」
「でも・・・」
「じゃあ、十時に西側の駅でな」
貴明君が私の声を遮る。


良いんだよね・・・


「・・・うん」

貴明君とデート・・・か


だけど、貴明君にとって私は『友達』でしかないのだろう。


それ以上でも以下でも無い・・・


私と『練習』何てしなくても由真と色々な事をしている中に『女性恐怖症』をいつの間にか克服していたみたい。


あれが・・・赤い糸で結ばれた二人なのだろうか・・・


司書室にいる間は

『愛佳』と『貴明君』


でも、ここから一歩出れば

『小牧』と『河野君』


ここどけが・・・


私達は所詮、その程度の関係なのだろう・・・

風邪とか車に跳ねられたりとかレポートとかに巻き込まれてた雲民です

今も病院で通院中です

乱丁がありました

改正しだい書き直します

色々とすいません

「買い足さないと・・・」
そうしないと、遅くまで貴明が此処に居なくなっちゃう・・・
「・・・俺も手伝うよ」
「え?」
「少なからず俺にも非があるだろ」
「でも・・・」
「良いから良いから!で、どこで買うんだ?」
「その、デパートとかで・・・」
「ふむ」
少し考えて込む貴明君。
「じゃあ日曜日にでも一緒に行くか」
「え!?」

でも、それって、もしかして・・・デート?

「嫌か?」
「嫌、そんな事無いけど・・・由真は・・・」

どうせ、由真とデートの約束をしてるに違いない。

「良いよ、一日くらいわ」
「でも・・・」
「じゃあ、十時に西側の駅でな」
貴明君が私の声を遮る。


良いんだよね・・・


「・・・うん」

>488
乙。サイトから転載するならリンクで良い気もするが、プロローグよりは読みやすかった
由真と恋人で愛佳は書庫手伝いのみ、でも愛佳は意識しまくりと。難儀ですなぁ
3の２行目「貴明」呼び捨てと、「一日くらいわ」の「わ」は意図的？まあいいけど

>488
おつおつ。作品自体はいいけど、短めなのがちょっと残念。もっと長い作品に
挑戦されることを期待。貴方の作品の雰囲気はかなり好きです。

しかし、素直になれない女の子との日々、の作者といい交通事故に合われる方が多いスレですね。

みんな草壁さんに会いたかったんだよ。

>>492
そのまま死んだらどうするｗｗｗ

　瑠璃ちゃんのお粥を食べた後でまた眠って、目が覚めると優季が側に。その間に何かあったような
気がするんだけど、思い出せない。と言うか、思い出してはいけない気がする。
　またも汗まみれの俺。汗拭きと着替えは任せてくださいと優季は言うけれど、いい加減そのくらい
は自分でしたい。だけど瑠璃ちゃんを引き合いに出されちゃったら断れないよなぁ。
　着替えの後、すり下ろしたリンゴを持ってきてくれる優季。喜んでさあ食べようと思ったら、そこ
に現れたのは花梨、ちゃる、珊瑚ちゃん。各々、モモ、ミカン、パイナップルの缶詰を俺に食べさせ
ようとするけど、優季のリンゴで充分なので断った。ちょっと悪い気はしたけどね。
　けれど花梨は諦めなかった。しばらくして花梨は再び現れ、モモ缶を食べてとお願いしてくる。
仕方がないので花梨と分けて食べることにしたが、同じフォークで食べていると突然花梨が「間接
キスしちゃった！」となどと言い出す。そりゃ事実だけど、だからと言って結婚しろと言われても。

「――でね、ここから三駅先の町に池があるんだけど、昔そこで全身金色のザリガニが見つかった
ことがあるんだって。突然変異の類だろうってのが生物学者さんの見解で、その後は同じようなのは
一匹も見つかっていないんだけど、私はまだ他にもいるんじゃないかって思うんよねー」
　モモを食べ終わった後、花梨は「退屈だろうから、花梨が話し相手になってあげるね！」と言って
この部屋に残ってくれた。とは言え、さっきから話しているのは花梨ばかりで、話題はいつもの通り
ミステリ関連。俺は聞き役に徹し、時折うんうんと肯く程度。
　けどまぁ、独りぼっちよりははるかにマシだ。今は楽しげに話す花梨の存在がとてもありがたい。
「でね、来週の日曜にでもこの池に行ってみようと思うんだけど、どうかな、たかちゃん？」
「来週の日曜、か。それまでに風邪が治っていたらね」
　すると花梨はむ〜とむくれて、
「治っていたら、じゃなくてちゃんと治すの。一週間もあるんだから治せるでしょ。
　ホントは明日にでも行くつもりだったんよ。たかちゃんが風邪さえ引かなかったら……」
　あら、そうだったのか。いつも通りの勝手な取り決めとは言え、ちょっと悪い気が。

「申し訳ないです、花梨会長」
「素直でよろしい。なら、たかちゃんは頑張って風邪を治すこと！　これ会長命令ね」
「了解」
　俺の返事にうんうんと満足そうに肯く花梨。
「あ、ねぇねぇたかちゃん、せっかくだからまた河野家メンバーズとの合同企画にしちゃおうか？
　前回は集まりが悪かったし、成果も上がらずだったけど、きっと今回は何か見つかるよ。うん、
私の直感がそう告げている！　間違いない！」
　その直感のせいで何度酷い目に遭ったことか。
「それにね、お昼はみんなで作ったお弁当を食べるの！
　池を見ながらみんなで食べるタマゴサンド、美味しいだろうな〜」
　うっとりと天を仰ぐ花梨。どうやら妄想モードに入ったらしい。ってヨダレヨダレ。
　こんこん。
「センパイ、いいッスか？」
　ドアの向こうからよっちの声。
「どうぞ」
　俺がそう答えると、よっちが部屋に――あれ、これって前にもあったような？　既視感ってヤツ？
　だけど部屋にはちゃるも入ってきて……、って、はぁ！？
「あ、あのさ、君たち、その格好なに？」
　何故俺が驚いているのか、説明しなければなるまい。
　この二人、体操着（細かく言うと体操シャツとブルマ）の上にエプロンと、実にマニアックかつ
意味不明な格好で現れたのだ。一体何のつもりだろうか？
「あ、これッスか？」
　よっちはやや恥ずかしげにあははと笑い、
「さっきセンパイに迷惑かけちゃいましたからね、お詫びの印に目の保養をしていただこうかと」

　くるりん、と一回転するよっち。正面からは見えにくいブルマが見えちゃったりで、雄二あたり
だとさぞかし喜びそうな光景ではあるものの、生憎と俺にはそっち方面の趣味はあまりない。
「……センパイが引いてる。やはりタヌキの案は失敗」
「ま、まだまだこれからっしょ！　あんたも回れ、ほら、くるりんって！」
　よっちに言われ、渋々といった感じでちゃるもくるりん。
「いや、あのさ、俺そっち系の趣味はあまり……。
　って言うか、さっきの迷惑って？　……うーん、やっぱよっち、さっき一度来たよな？」
「思い出さなくていいんスよ！　思い出さなくていいッスからセンパイは！！
　ささセンパイ、これ食べてくださいッス」
　誤魔化すように大声を上げたかと思ったら、よっちがちゃると一緒に近づいてくる。よく見ると
その手には透明なお椀。――缶詰ミカンか。
「い、いや、さっきも言ったけど、俺もう腹一杯だし……」
「そんなつれないこと言わないでくださいよセンパイ〜。
　第一、さっきはキツネたちにそう言って断ったクセに、花梨さんのモモは食べてるじゃないッスか。
なのにミカンは食べないなんて不公平ッスよ〜」
　抗議のよっちに、「早いもの勝ちなんよ〜」と勝ち誇る花梨。
「ぐぐぐ……、と、とにかく！」
　よっちはいきなりベッドの端にどすんと座り、
「こんな格好までして来たんだもの、今更後には引けないッスよ！
　何が何でもセンパイには食べてもらいますからね！　ほれ、キツネもさっさと座る！」
「……了解」
　反対側にちゃるがちょんと座る。
「ちょ、ちょっと二人とも……」
　俺の言葉には耳も貸さず、二人は、