宮内レミィ(107)、沢渡真琴(052)、久寿川ささら(034)は困惑していた。何しろデイパックの中からロボットが現れたのである。どこぞの男のように言うなら、
「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!『私は支給品を確かめようとしたらなんとロボットが出てきた』
な…何を言ってるのかわからねーと思うが私も何が起こったのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
そもそもどうしてロボットがデイパックに入るんだ、とかどうしてぱんつはいてないんだ、とかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」
とか言う感じである。ともかく、三人が思ったのは「主催者の頭はイカレている」ということだった。
「あのー…お客様? ここはどこでしょうか?」
何が何だかわかっていないように話すロボット、ゆめみ。それはこっちが聞きたいわよ、とは真琴の弁。
「困りました…ものすごく困りました。実を申しますと、わたしは今日からとある方の元へ最新型コンパニオンロボの試験体として送られることになっていたんです。
名前はわたしもまだ存じ上げないのですが、今日大規模なパーティを開かれるということでして、わたしはその披露宴で紹介されるということになっていたのですが…」
こちらが返答する時間も与えないようにまくしたてるゆめみ。話がようやく切れたところでささらが尋ねる。
「あの…質問していいかしら?」
「はい、何でしょう?」
「そのパーティの内容、というのは…」
「はい。わたしもまだ詳しくは知らないのですが、120人もの男女が集まって大いに楽しむ、ということらしいのですが…もしかして、もうパーティは始まってしまっているのでしょうか?
でしたら、わたしはたいへんな粗相をしてしまったということになります…あの、そちらの皆様は、お客様でしょうか?」
不安顔で尋ねるゆめみ。ささら達は顔を見合わせる。
「もしかして、この人…じゃなくてロボットが言ってるのって…」
「イエス、間違いなくこのゲームのことだと思うネ」
「だとしたら…このロボットも、参加者なの?」
ロボットに振り向くや否や、三人で取り囲みじろじろと観察する。
「えっ? あ、あ、あ…あの?」
困惑するゆめみをよそにぺたぺたと触る三人。
「…やっぱり、支給品でも、首輪はついてるみたいね」
「わぁ…キレイな髪の毛〜。あうーっ、うらやましいなぁ」
「マルチとは、チョット型が違うようデス。最新型というのは間違いなさそうネ」
「え、えーと…」
すっかり困り顔のゆめみを一通り観察すると、ささらがゆめみに話しかける。
「すみません、返答が遅くなってしまって。結論から言わせてもらってもいい?」
「あ、はい。わたしは構いません」
「あなたの言う通り、私達はこのパーティの『お客様』には違いないわ。…でも、あなたの想像しているようなパーティとは、全然違うの。このパーティはね、殺人ゲームなの」
殺人ゲームと言われたにも関わらず、ゆめみはきょとんとした表情だった。
「…あの、お客様。申し訳ないのですがわたしの情報データベースにはそのような情報は存在していないのですが…『さつじんげーむ』とはどんなパーティでしょうか」
どうやらまったく知らないようだった。今度は真琴が話す。
「あのね。『バトルロワイアル』っていう小説って、知ってる?」
「あ、はい。それならわたしも存じ上げています。原作は高見広春さんで、過去に映画化もされており、社会に問題を巻き起こした話題作ですね。映画版はR−15指定になっていて…」
「ストップ、ストップ! 話がそれていってるヨ!」
レミィの指摘で、ゆめみの口が止まる。
「あ…申し訳ありません。何分ロボットですので、求められた情報には全てお答えするのがわたしのお仕事ですので…それでそのバトルロワイアルがどうなさったのですか?」
「その『バトルロワイアル』が今まさに行われているノ。もちろん、ジョークじゃないヨ」
レミィが真剣な眼差しで答える。ゆめみが驚いたように答えた。
「えっ? あの、お客様。この国におきましては、殺人は犯罪で、ましてや集団による殺し合いというのは…」
「もちろん許されることじゃないけど、でも実際に行われているの。…もう、死人だって出ているかもしれないのよ」
「そ、そんな…そのようなことが…お客様、申し訳ありません。少しお時間を頂いてよろしいでしょうか」
ゆめみはそう言うと、後ろを振り向いて何かを呟き始めた。
「警察への通信…不可能…各通信センターへの救助要請を試行します…通信、不可能…」
ゆめみのすがるような、そんな風にさえ聞こえる事務的な機械音声は、しばらく続いた。
「各センターとの通信、全て不可能…業務モードへの復帰へ移行します」
ゆめみがそう言って、三人に向き直る。
「…お客様。各情報機関との連絡がとれないということが確認できました。したがって、お客様の言っていることは、事実だと判断します。…わたしは、どのようにすればよろしいでしょうか」
コンパニオンロボットだという彼女。人間のために存在する彼女。ここにいる意義を失って、彼女はどう思っているのだろうか。
「えーっと…とりあえず、私達と一緒に行動しない? ロボットだったら、きっと強いと思うし。ね、二人ともいいでしょ?」
真琴がレミィとささらに同意を求める。
「ワタシは全然オッケーだヨ。この子、マルチにそっくりだしネ」
「…敵ではないですから、私も構いません」
「決まり! それじゃ、自己紹介しよっ! 私は真琴。沢渡真琴」
「レミィ・クリストファー・ヘレン・宮内デス。レミィでいいヨ」
「久寿川ささら、といいます。よろしくお願いします」
今までずっと困惑気味だったゆめみの顔が、少しだけほころんだ。
「わたしは、SCR5000Si/FL CAPELII.通称はほしのゆめみと申します。どうか、よろしくお願いいたします」
【時間:午後2時】
【場所:B−05】
久寿川ささら
【所持品:スイッチ(どんなスイッチかは謎。充電器は付属していない)、ほか支給品一式】
【状態:健康】
沢渡真琴
【所持品:日本刀、ほか支給品一式】
【状態:健康】
宮内レミィ
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
ほしのゆめみ
【所持品:なし】
【状態:普通。ささら達と行動を共にする。首輪もつけられている】
【その他:一応レミィの支給品】
【備考】
・真琴の日本刀は吉岡チエのものとは長さ、形状が少し異なる
・ゆめみは大戦前の世界なのでなんの支障もなく普通に活動可能
・ささらのスイッチがどんなスイッチなのかはまだ不明
ダニエル襲撃の前か
やることも特になく、向坂雄二と新城沙織はただただ時間を持て余していた。
訪れる者もいない。
むなしい、自分達ができる最善のことなんて思いつかなかった。
「コレじゃあねー」
「ねー・・・」
ボロボロの大学ノートにフライパン。
わざわざこのゲームに乗る気があったとしても、まず役には立たない代物。
二人は、相変わらず灯台の最上階にて地上の景色を眺めるしかすることがない状態であった。
その時。
「きゃっ!」
「わ、こりゃ強い・・・あ。」
突風が二人を襲う。
高い場所にいたからこそ、その威力は強くなていたようで。
・・・気がついたら、バサバサバサっと宙を舞う大学ノートが雄二の視界に入った。
うっかり手を離してしまったらしいソレは、まっさかさまに落ちていく・・・
「ま、待ってくれ!俺の支給品〜」
「え、雄くん?!」
起こった風から長い髪と短いスカート庇っていたため、事の顛末を見ていない沙織はただ慌てるだけだった。
使いようはなくとも、一応はこれが雄二の武器である。
特に愛着がある訳ではなくとも、いつか役に立つ時が来ると信じているのだ。
急いで階段を駆け下り、形振りかまわず外に出る。
ノートの落ちる様は見ていたため、回収自体はすぐに終わった。
ポンポンと土ぼこりを払い、パラパラと中身を確認。
「よし、どっかのページが抜けている訳でも無さそうだな。」
あまり乱暴に扱ってしまっては、それこそあっという間にバラバラになってしまいそうな一品である。
これからは大切に扱おうと、ちょっぴり思った。。
「あー、よかったよかった。よし、じゃあ戻ろう」
クルリ。方向転換。
・・・ん?何か、今、視界の隅に映ったような・・・
「Checkmate!!!」
ザックリ。その時、向かって左腹に衝撃が広がった。
瞬間、熱。
熱い、熱い痛み。これは・・・
「いっ・・・な、何だこれっ」
矢。そうとしか言えない。
よく弓道部の女の子が打っている弓矢の矢、それが雄二の横腹に突き刺さっていたのだ。
ガクン、じわっと広がる流血の感触に気を失いそうになりながら、雄二は矢の飛んできた方向を見据える。
「ハンティング成功ネー!弘法は弓を選ばずではなく、弓が弘法を選ぶのネッ」
陽気な台詞の持ち主は、宮内レミィ。
彼女は馴染み深い和弓を手にし、有無を言わさず雄二へとどめを刺した。
その後はスムーズであった。
雄二を追ってきた沙織は、ただ事態が飲み込めぬまま震えるだけで。
「ン〜、これだとハンティングのしがいなさ過ぎネ〜」
それでも一切の容赦は無い、レミィは的確に急所を狙い沙織を沈黙させた。
今はもう動かない二人に刺さった矢、それらは躊躇いなく回収される。
「もったいないオバケが来るヨー。限りあるアイテムは大切に、ネ♪」
そして、その際気づいたのは。
雄二の近くに放られた、一冊の大学ノートであった。
「・・・・・??」
首をかしげながらも手を伸ばすレミィ、パラパラとめくるが、記述は特にない。
そう、最初の内側の、「使い方」以外は。
レミィはしばらく「使い方」を眺めると、「AHAHAHAHA!」と声に出して笑った。
「オウ!まさしくDEATH・NOTEネ。ジャパニーズジョークは意外とシュールネッ!!」
新しいおもちゃを手に入れた子供のように、きゃっきゃっと喜ぶレミィ。
一頻り笑って満足した後、次の獲物を求め移動を再会するのであった。
「MurderGameは始まったばかりネ。これからが楽しみヨーッ!」
335 :
補足:2006/10/03(火) 01:20:31 ID:ucHlvp1T0
宮内レミィ
【時間:1日目午後4時過ぎ】
【場所:I−10(琴ヶ崎灯台)】
【所持品:和弓、矢・残り5本(回収したので)、死神のノート、他支給品一式】
【状態:ゲームに乗っている】
向坂雄二 死亡
新城沙織 死亡
(関連・17)(Aルート希望)
以下の話とは相反する内容になっています。
(沙織&雄二関連)
38・うたがわれるもの
111・世界は見えぬ翼
136・How to use
139・後悔の悲鳴と安堵の号泣
144・無題
146・脱出の鍵穴
(レミィ関連)
123・凄いものが出ちゃいました
127・無題
149・三人から四人へ
336 :
決意と惑い:2006/10/03(火) 02:11:45 ID:9G9DP1g4O
「ここは………氷川村かしら?」
地図を見ながら歩いていた太田香奈子は氷川村と思える村の入り口にめぐり着いた。
周辺をよく調べてみるたら、『氷川村』と書かれた看板があった。
「――つまり、これで地図には誤りはないことがわかったってことね」
そう自分に言い聞かせると、地図をバッグにしまって今度は支給品のサブマシンガンと予備のカートリッジを取り出した。
(――村にはゲームに乗った参加者もいるかもしれないけど、人は結構いそうね…………もしかしたら瑞穂にも会えるかもしれない)
親友である藍原瑞穂の顔が一瞬だけ香奈子の脳裏に浮かんだ。
「それに人がいなくても情報や使えそうなものも手に入るかもしれないし……行くしかないわね」
予備のカートリッジをポケットに入れ、村に入ろうとしたその時、ふいに誰かに呼び止められた。
「そこの君、ちょっと待って!」
「ん?」
声がした方へ振り替える。
もちろん、警戒は怠らずにサブマシンガンはいつでも射てるように構えておく。
そこ(といっても少し距離はある)には香奈子と同い年くらいの少年がいた。
「なに? わたしに何か用?」
「呼び止めたりしてごめん。ちょっと聞きたいことがあるだけなんだ。いいかな?」
少年はそう言いながら香奈子に近づいてきた。
「……別にいいけど………銃はこのまま構えさせてもらうわよ?」
そう言いながらサブマシンガンの銃口を少年に向ける。
「ああ、かまわいよ。仮に僕が君を襲おうとしたら遠慮なくそれをぶっぱなしてくれていい」
そう言って少年は香奈子の前方2メートルくらいで足を止めた。
337 :
決意と惑い:2006/10/03(火) 02:13:32 ID:9G9DP1g4O
「自己紹介がまだだったね。僕は氷上シュン」
「太田香奈子よ。それで、用件は?」
「太田さん。相沢祐一、河野貴明、水瀬秋子っていう人を知らないかな?
僕はその3人を探しているんだ」
「いいえ。知らないわ。それに、わたしこの島に来てまともに出会った人はあなたがはじめてだから」
「そうか、ありがとう」
そう言うとシュンという少年は香奈子の横を通り村に入ろうとした。
「あ。待って!」
「ん? なんだい?」
今度は香奈子がシュンを呼び止める。
「わたしも人を探しているの」
「そうなんだ。奇遇だね」
「藍原瑞穂って子と月島瑠璃子って子なんだけど知らないかしら?」
「……ごめん。僕もこの島に来てまともに会話をした人は今はもう君だけなんだ」
「そう………今は?」
「ああ。君に会う前に草壁優季、月宮あゆって女の子と出会ったんだ。
だけど………ゲームに乗った誰かの手によって殺されてしまった…………」
「そう……」
――よく見るとシュンの握られた右手は震えているようだった。
聞かないほうがよかっただろうか、と香奈子は思った。
しかしシュンは話を続けた。
「僕なんかよりもぜんぜん強い人たちだった。それなのに、銃弾の弾を1発受けただけで簡単に死んでしまった…………
だから僕は、彼女たちが伝えられなかったことを代わりに伝えてあげるためにさっき言った3人を探している」
シュンの顔には涙も悲しみの色もなかった。
ただ、そこにあったのは決意という色に満ちた男の顔だった。
「あ……ごめんね。こんな話に付き合ってもらっちゃって」
「いえ……わたしこそ、急いでいるところを呼び止めちゃって………」
2人は互いにすまないと頭を下げた。
338 :
決意と惑い:2006/10/03(火) 02:17:55 ID:9G9DP1g4O
「……ねえ。氷上くんはこの村にははじめてきたの?」
「うん。3人に関する情報やなにか使えそうなものが手に入るかもしれないしね」
「………じゃあ、もしよかったら今は一緒に行動しない?
わたしも氷上くんと同じ目的でここに来たばかりなんだけど………」
「…………そうだね。そのほうが少しは安全かもしれないし、情報とかも集められそうだ。
………それに、お互い探している人を見つけやすいかもしれない」
シュンはうんと頷いたあと「よろしく頼むよ太田さん」と言って香奈子に手を差し出してきた。
「………………」
シュンが手を差し出してきた瞬間、自分で言っておいてなんだが、一緒に行動して大丈夫だろうか、と香奈子は内心悩みはじめた。
なぜなら香奈子は親友の瑞穂はともかく、瑠璃子を探している理由はほかでもなく『殺す』ためだからだ。
もちろん香奈子はシュンにそのことを言っていない。
きっとシュンは瑠璃子は香奈子の親友の一人だと思っているだろう。
――もし、この後仮に瑠璃子が見つかった場合、自分はシュンの前で瑠璃子を殺せるだろうか?
香奈子の心にそんな疑問が浮かんだ。
「太田さん?」
「あ……」
シュンの声を聞いて香奈子ハッと我に返った。
目の前にはまだ差し出されたシュンの手があった。
「大丈夫? 疲れてるみたいに見えるけど………」
「ごめん……大丈夫だから……」
そう言いながら香奈子も手を差し出した。
「そうかい? それならいいんだけど……あまり無理はしないほうがいいよ?」
「うん……ありがとう」
そうして2人は握手をかわした。
ただ、香奈子のほうははシュンをだましているんじゃないかということに内心心を痛めた。
339 :
決意と惑い:2006/10/03(火) 02:18:44 ID:9G9DP1g4O
「太田さん。これが僕の支給品なんだけど……」
そう言いながらシュンが自分のバッグから取り出したのは狙撃銃――ドラグノフだった。
「人を殺す気なんてないけど、防衛や威嚇に………ね」
「そ…そう」
香奈子はとりあえず相づちをうった。
しかし、少なくとも1人殺そうとしている香奈子にとって誰も殺す気はないというシュンは別の世界の人に見えた。
「よし。それじゃあ行こうか」
シュンはドラグノフを肩にかけると先に歩きだした。
それに続いて香奈子も再び歩きはじめた。
(せめて今は――氷上くんといるときだけは瑠璃子さんと出会わないでほしい……)
そう心の中で呟きながら――――
340 :
決意と惑い:2006/10/03(火) 02:23:02 ID:9G9DP1g4O
【時間:1日目午後2時30分過ぎ】
【場所:I−06】
太田香奈子
【所持品:H&K SMG U(残弾30/30)、予備カートリッジ(30発入り)×5、他支給品一式】
【状態:健康。内心迷いあり。目標・瑞穂を探す。瑠璃子を見つけて殺す】
氷上シュン
【所持品:ドラグノフ(残弾10/10)、他支給品一式】
【状態:健康。目標・祐一、貴明、秋子を探す】
【備考】
・香奈子とシュンは一緒に行動
・021、047の続きです
柏木耕一と長岡志保の壮絶な鬼ごっこはかれこれ50分程続いていた。
「ハア、ハア・・・・。待てってば!」
「ゼェ、ゼェ・・・。いつまで追ってくるのよ、この変態! 」
「だから、それは誤解だ!俺は変態じゃない!」
「私がいくら魅力的だからって、しつこいのよ!」
二人は叫びながらも、鬼ごっこを続けている。
鬼の力が制限されているとはいえ、
常人より遥かに優れた身体能力を持つ筈である耕一。
何故、普通の女子高生である志保相手にマラソン勝負で追いつけないのか。
全ての理由は支給品の差にあった。
志保の支給品は、新聞紙。
最軽量の部類の装備である。
・・・・新聞紙が装備と呼べる代物であるかは、いささか疑問であるが。
一方耕一の支給品は、先の尖っていない大きなハンマーであった。
成る程、この武器なら近接戦闘では強力な威力を発揮するであろう。
相手が刀やナイフで受けようとしても、その程度の防御は容易に粉砕出来るに違いない。
高い身体能力を持つ耕一にとって、「当たり」と言える武器だろう。
しかし一つ、この状況においては大きな問題があった。
「くそっ、重い・・・・・。」
重い。とにかく、重い。
耕一の体力は、重い荷物と長時間の鬼ごっこにより、限界が近付いていた。
c−5地点にさしかかった辺りで、少しずつ両者の間隔は広まっていった。
――逃げ切れる。そう確信した直後だった。
志保は傍の茂みに、何か光る物体が見えた気がした。
とっさにヘッドスライディングのような体勢で滑り込まなければ、
彼女はここでゲーム退場になっていたであろう。
1秒前まで彼女の首があった空間を、鋭利な日本刀が切り裂いていた。
茂みから日本刀を携え出てきたのは、
女子84番、姫川琴音だった。
「い、一体何なのよ、あんた!!」
倒れた体勢のまま叫ぶ。
「ははは、早く死んで死んで死んで時間無い時間無い時間無い」
琴音はうわごとを呟きながら、倒れている志保に向かって日本刀を振りかぶった。
「くぅ!!」
琴音が刀を振り降ろす前に反応し、間一髪で地面を転がり狂気の一閃を凌ぐ志保。
しかし、再び顔を上げた時には、既に琴音は次の一撃を振り下ろしていた。
避けきれない。そう確信した志保には
「きゃあああああああああああぁぁ!!」
目をつぶり悲鳴をあげる事しか出来なかった。
しかし、いつまでたっても琴音の斬撃が志保を捉える事は無かった。
「やめろぉーーーーーっっ!!!!」
ドゴッ!!
ズザザザザッッ!!
派手な効果音と共に、姫川琴音は吹き飛び、地面に倒れていた。
追いついた耕一が体当たりを決めていたのである。
大きな体格の耕一の体当たりは破壊力十分で、琴音は完全に気絶していた。
耕一は呆然としている志保に手を差し伸べながら言った。
「大丈夫か?」
志保は、その手を取り立ち上がった。
「ちょ、ちょっと足を擦り剥いちゃったけど、大丈夫よ、ありがとう。」
倒れている琴音を見据える。
「この子確か私の学校の後輩よ。大人しそうな子だったのに、なんでいきなり・・・。」
「それは分からないけど、とにかくこの場を離れよう。
さっきの騒ぎで人が集まってくるかもしれない。」
そう、このゲームでは騒ぎがあった場所に人が集まる。
もしかしたら殺し合いを止めようとする勇敢な者が来るかもしれない。
しかし、漁夫の利を得ようとする殺戮者もまた、呼び寄せてしまうのだ。
耕一は琴音の日本刀を拾い、すぐさま歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ変態さん!私も行くわ!」
「俺は変態じゃねえっ!」
かくして変態・ガセネタのコンビが誕生した。
時間:1日目13時ごろ】
【場所:c-5、街道】
姫川琴音
【持ち物:支給品一式】
【状態:気絶。吹き飛ばされた際に数箇所打撲、擦り傷。23時間後に首輪爆発】
長岡志保
【持ち物:新聞紙、支給品一式】
【状態:疲労、足に軽いかすり傷】
柏木耕一
【持ち物:日本刀、大きなハンマー、支給品一式】
【状態:疲労】
*(ルートB、H系共通ルート、関連は029、122)
*ルートB、H系で現在投稿されている最後の作品は
>>336-340。 間違ってたらごめんw)
345 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:38:51 ID:ZKw0/d2r0
「おいっ、どうすんだよ!?」
「ちっ! あの馬鹿……っ」
走り去った柏木梓(017)をそれぞれが唖然と見送る中、いち早く我に返った巳間晴香(105)はその背を追い掛ける。
その勢いに押されたのか、藤田浩之(089)も駆け出そうとするが―――
「待てうーひろ。るー達も早くこの場から離れるぞ」
「離れるって……追わないのかよ!?」
「当然だ。何の義理がある。うーはるが追ったから問題ない。だが、少し騒ぎすぎたぞ」
反論は許さないと、鋭い眼つきで皆を見渡して行動を制止させる。
るーこは不満そうに眉を顰める浩之を流し、ちらりと、川名みさき(029)へと目配せした。
勿論、視線など感じる事ができないみさきに代わり、その親友である深山雪見(109)がみさきの耳元に口を寄せた。
「……みさき。どう?」
「ダメっ……距離を縮めてるっ」
みさきが顔を青褪めさせて雪見へと告げる。すぐさま彼女はるーこへと首を横に振った。
その反応に、るーこは眉を顰めた。
「緊急事態だ。マーダーが動いたぞ」
「ま、マジでっ!?」
「おい春原っ。声がデカいって……!」
皆を見渡して一言。機嫌の悪そうな顔でるーこが唐突に口火を切る。
それに驚いた春原陽平(058)を浩之が宥めた。当然、言葉に出さずとも皆驚いていたが、その役目を担ってくれた春原のおかげで幾分か冷静さを取り戻す。
各々が緊張の眼差しで、自身の武器を手に取った。
その行為はマーダーに警戒を促す可能性があるが、即座に反撃できる態勢を取っておかなくては、あっという間に全滅などという事態になってしまう。
大半がこのことを理解していないが、最も命を保障をしてくれるのは武器だけなのである。
防衛手段を反射的に出してしまうのは仕方ないことだ。
その結果、マーダーに感付かせてしまうとしても。
346 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:41:10 ID:ZKw0/d2r0
(ん? 気付かれたか……いや、位置の特定がまだのようだな……
フン。感の良い奴もいるようだが、どっちにしろ丸見えだ)
彼等を先程から付け回していた巳間良祐(106)は、獲物が慌てふためく様を見て口許を吊り上げた。
自身の存在は把握できていても、そんなに目線を引っ切り無しに走らせては、居場所まで特定できていないと言わんばかりではないか。
当然、彼等から見える位置にいるほど、良祐だって馬鹿ではない。
木々が生い茂る中、その一つの茂みに隠れているが、よほどの視力と注意力がなければ見つけられはしないだろう。
彼は小さな視界から大きな風景をみればいいが、向こうからしたら大きな視界の中で一つの風景を探さなければならないのだ。
そんな悠長などないし、与えるつもりもない。
最低一人。確実に一人は奇襲で片付く。それを遂行すれば、即座にこの場から離脱すればいい。
彼等は驚き、恐怖するだろう。仲間の一人の無残な姿に。
その時が、第二の好機。
怯える兎を順々に狩っていけばいい。所詮は烏合の衆、直に全滅だ。
(さて……。まずは、誰でいくか)
良祐は複数の獲物へと目を走らせる。
男二人は後回しだ。女性の死に一番敏感なのはこの二人だろう。それが死ねば勝手に混乱して自滅してくれるかもしれない。
何よりも、後回しにしたところで脅威になるとは思っていない。ただの学生に何が出来るのかと。
ならば女ということになるが、良祐は三人の中では誰を初めに狙うかは、追跡していた時から実のところ決めていたのだ。
(―――あの黒髪の女……。現実を一番理解してなさそうなんでな。此処が何処だか解らせてやるよ)
良祐の目線は、明確にみさきの姿を捉えていた。
彼女が盲目であることは知らないが、彼等の話の節々は断片的に聞こえてきたのだ。
その中で最も陽気にしていた少女。まったくもって気に喰わなかった。
良祐はこのゲームに真剣に望んでいる。ルールに沿って懸命に努力をしている。
なのに何だ? 奴等の態度は。
反主催者を掲げ、弱者同士で徒党を組んで、一体何をするつもりなのかと。
347 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:43:13 ID:ZKw0/d2r0
(主催者を倒して脱出する? 馬鹿が……。現実性も皆無な話をして恥ずかしくないのか。
傍から見れば滑稽以外の何者でもない。阿呆な理想論を疑わない奴の気が知れん。理解に苦しむな……)
根拠もない希望を持つ参加者のことを考え出すと、虫唾が走るほど不愉快な気分になる。
良祐が殺した二人もそうだ。嬉しそうに妄想の中の未来を語る姿は不憫に感じるほど無様であった。
だから躊躇なく殺した。
ヤル気のない奴は死んで理解させる必要があるのだ。
此処が何処で、何をするために集まったのかをだ。
(―――殺し合いだ。それが至上目的のはずだろ。一方的な虐殺なんて、虚しいことを俺にさせるなよ)
良祐は葉を揺らしながら散弾銃を構えた。
草葉が少し邪魔であったが、弾道が逸れるほどでもないだろう。
遠すぎず近すぎずの距離であったが、彼等は迂闊なことに一塊に固まっていた。
奇襲に警戒して、その事実にまったく気付いていない。
彼は目を細めて小さく舌打ちする。
何故こうも危機管理がなってないのか。眩暈を起こすほど呆れ果ててしまう。
無能な弱者はふるいに掛けられて当然だ。
死ねば弱者。生きれば強者。至極簡単な図式である。
殺してくださいと言わんばかりの彼等は、一体どちらなのか。
(言うまでもないだろ……。結果は推して知れだ)
良祐は冷徹に目を細めて―――引き金を引いた。
348 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:44:27 ID:ZKw0/d2r0
―――浩之は思う。
それは、本当に偶然であった。
彼等が襲撃に目を光らせていたとき、横にいたみさきの肩が小さく震えていることに気付く。
当然だろう。姿の見えない襲撃者のことを想像すると自分だって怖い。
だが、みさきは文字通り見えないのだ。相手の姿どころか、周りの風景も何もかもが暗闇なのだ。
だから、彼は小さく声を掛けた。
「―――川名。心配すんなよ。こんなくだらねぇ所で死んでるようじゃ、カレーなんてもう二度と食えないぜ?」
「え、そうなのかな……」
「最後にカレー食べたのはいつだ?」
「えっと……一昨日かな。……あまり味わってなかったよ〜」
「あ〜あ、なるほどね。それが最後のカレーとなるわけだな」
「……ふふ。それはイヤだなぁ……」
恐怖は決して薄まることはないが、それでもみさきを口許を小さく綻ばせる。
日常の一時が、頭の片隅で駆け巡った。
それを思い出してしまうと、こんな理不尽な状況で死んで堪るか、という帰心も湧いてくる。
絶対に諦めないで絶対に皆で帰る。そう何度も何度も頷いて、浩之の言葉を噛み締めたとき、既に震えは止まっていた。
「ありがとね、浩之君……」
「ん、気にすんなって」
目が見えないというのに、それでも浩之を真っ直ぐ見詰めるみさき。
澄んだ笑顔の表情に、浩之は照れ臭くなりそっぽを向く。
―――そこで見つけた。
茂みの中で小さく蠢く小枝の姿に。
浩之がその小さな光景を見つけたとき、そこから見え隠れする殺意の銃口を明確に感じ取る。
硬直しながら、何故か銃口の向きと弾道を想像していた。
その銃口の先―――みさきの姿を確認した時、彼は叫んでいた。
「―――川名っ!!」
349 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:47:43 ID:ZKw0/d2r0
叫んだと同時、浩之は手に持つ銃を投げ、代わりに肩に下げた由綺のバックをみさきの眼前へと放った。
そして鳴り響く銃声。
「きゃぁ―――っ!?」
「うわっ」
「―――くっ」
宙に浮くバックが勢いよく踊り、中の食料や水、様々な物品がズタズタとなって辺りに散らばる。
―――これも運とタイミングが良かった。
首から下を狙われていたら、完全にアウトだったのだから。
みさきは前からの衝撃に押されて尻餅をつき、浩之もバックを放った不安定な姿勢によりたたらを踏んだ。
春原と雪見も余りの衝撃音に身を竦ませたが、ただ一人―――るーこだけは全てにおいて早かった。
みさきの荷物から転がり出た物を即座に掴むと手を振り上げる。
「うーひろよくやった! うーみさ借りるぞ! ―――散れっ!」
手に持つみさきの支給品―――スタン・グレネードを先の地面へと叩きつける。
途端―――広がる閃光と耳朶を強引に叩く不快な音が辺り全域に広がった。
「―――なんだとっ!?」
白い風景の中、確かに戸惑う男の声が聞こえてきた。
浩之達四人は、あらかじめ閃光弾を使おうとするるーこの姿だけは声と共に朧ろげながらも目にしており、視界を閉じて耳を塞いでいた。
だが、閃光弾を保持しているという前知識がなかった良祐は完全に虚をつかれ、目を一時的に焼かれて前後不全となる。
彼を倒すまたとないチャンスだが、実際良祐の位置を浩之以外は未だに把握していなかったし、この光の前では探すことも出来ないだろう。
ならば、やることは一つ
「るー! おいうーへい、何やってる! 今度こそ死ぬぞっ」
「ちょ、いきなり閃光弾を使われた身にもなってもらえますかねぇ!?」
「グダグダ言うな、いいから逃げるぞ!」
回避
351 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:30:54 ID:ZKw0/d2r0
春原は散弾銃と閃光弾の二発の衝撃に驚いて引っくり返っていたが、るーこが強引に引き起こして、その手を取って走り出す。
他の三人も心配だが、襲撃者が銃を持ってるという事実が露呈した今、集団で逃走するのは得策ではない。
全員が安全に散らばれば最善だが、いざとなったらそれぞれに囮となってもらわなくてはならない。追われる側は運が悪かったと。
酷な考えだが、そうしなければ誰かが生き残る可能性を失くしてしまう。
るーこは全滅の事態だけは避けたかった。それ故の考えだ。
そして、雪見も回復した不鮮明な視界を頼りに駆け出そうとするが―――
「みさきっ? 何処にいるのみさき!?」
『私は大丈夫だよ! だから雪ちゃんも早く逃げてっ』
「駄目よ! あなたは私がいないと―――」
『いいから行って! 信じて雪ちゃん。絶対にまた会える……約束だよ!』
「―――っ。必ずよ!」
ハンデを背負う親友の安否が、一番に雪見の頭を掠める。
だが、それでも雪見は歯を食いしばりながら、全速力でその場から離れた。
身が裂けるほど心配だが、今さら戻ることも出来ない。
みさきの親友であると自負している自分が、彼女を信じてやらなくてどうする。
約束したのだ。それまでは死ぬわけにはいかない。お互いにだ。
(―――約束破ったら承知しないわよ―――みさきっ!)
だから、雪見は彼に託した。
光に染まる光景の中で、微かに浮んだ一つの影に。
352 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:32:33 ID:ZKw0/d2r0
(あ〜あ……。結構ピンチだよ……)
雪見を送り出した後も、みさきはその場を動けないでいた。
腰を抜かしていたのだ。
実際、浩之の対応が遅れていれば、完全に顔面へと銃弾が突き刺さっていたのだから。
眼前で穿たれまくるバックの音を聞いていた時点で、彼女は腰を落としていた。
諦めたくない。諦めたくはないが、どうしようもなかった。
再び震え上がる衝動を抑えていた時―――
「―――川名ぁ! 早く乗れ!!」
「ひ、浩之君……」
そこに颯爽と現れたのが、自転車に乗った浩之だった。
彼もるーこ同様、いち早く回復して自転車を急いで組み立てていたのだ。
逃げる上では、これほど心強いものはない。
だが、切羽詰っていたのか、浩之は投げた銃を回収できずにいた。
何が何だか分からぬ内に捨ててしまったのだ。今も持っている気で、まったく落とした事実に気付いていない。
そんな浩之でも、何時までたっても動かないみさきだけは忘れなかった。
流れ弾で何処か怪我をしているのではと、内心ひやっとしたが、それは杞憂である。
彼女はただ単に腰を抜かしていただけなのだから。
「おい! 荷物集めたか!? さっさと乗れ!」
「で、でも……それ荷台付いていないんじゃ……」
「立って乗れば問題ないって! ほらっ早くしろ」
「こ、腰が……」
「腕に力は入るだろ! 重心は全部預けていいから、急いで離れるぞ!」
みさきの二の句を告げさせぬ勢いで強引に後輪のステップに足を乗せさて、彼女の体温を感じながら浩之はペダルを思いっきり踏む。
徐々に速度を増しながら、彼等はその場から離脱した。
353 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:34:15 ID:ZKw0/d2r0
「―――やってくれる……」
良祐は目が正常に戻るまで、元いた場所から動くことはなかった。
スタン・グレネードの閃光を受けた時、彼はこの奇襲が失敗したことに気付いた。
だが、向こうは逃走を優先にし、こちらへ反撃する意思を見せなかったのだ。
ならば無闇に姿を晒す真似はするべきではない。
どの道、閃光で焼かれた目と、平衡感覚を失った聴覚ではどうしようもない。
だから、良祐は彼等の逃走を見逃す代わりに、自身の感覚の回復へと費やした。
そして、行動に支障がないほどにまで回復した今、やるべきことは一つだ。
「思い違いだったな。奴等も必死というわけか……。―――面白い」
物怖じせず茂みから出てきた良祐は、浩之が投げ捨てた小銃を拾う。
銃弾数を確認して、彼は不適に笑った。
「さぁ……狩りはまだ終わっていないぞ。無事に逃げ切れるなどと……甘いことは考えちゃいないよな?」
354 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:35:53 ID:ZKw0/d2r0
『藤田浩之(089)』
【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
【場所:G−02(F−03方面へ逃走)】
【所持品:折りたたみ式自転車・予備弾(30×2)・89式小銃用銃剣・クッキー・支給品一式】
【状態:普通。みさきと一緒に良祐から逃げる】
『春原陽平(058)』
【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
【場所:G−02(F−02方面へ逃走)】
【所持品:スタンガン・支給品一式】
【状態:普通。るーこと一緒に良祐から逃げる】
『ルーシー・マリア・ミソラ(120)』
【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
【場所:G−02(F−02方面へ逃走)】
【所持品:IMI マイクロUZI 残弾数(30/30)・予備カートリッジ(30発入×5)・支給品一式】
【状態:普通。春原と一緒に良祐から逃げる】
『川名みさき(029)』
【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
【場所:G−02(F−03方面へ逃走)】
【所持品:スタングレネード(2/3)・支給品一式】
【状態:普通。浩之と一緒に良祐から逃げる】
355 :
始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:43:15 ID:ZKw0/d2r0
『深山雪見(109)』
【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
【場所:G−02(G−03方面へ逃走)】
【所持品:SIG(P232)残弾数(7/7)・支給品一式】
【状態:普通。良祐から逃げる】
『巳間良祐(106)』
【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
【場所:G−02】
【所持品:ベネリM3 残弾数(4/7)・89式小銃 弾数数(22/22)・支給品一式・草壁優季の支給品】
【状態:普通。一方を追撃(次の書き手さんにおまかせ)】
『巳間晴香(105)』
【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
【場所:G−02】
【所持品:ボウガン・支給品一式】
【状態:普通。梓を追う】
「その他:147の続きです。B関連のルートで」
356 :
贖罪:2006/10/03(火) 11:45:17 ID:iedY20OK0
「怖い・・・、怖いよ・・・。」
水瀬名雪は震えながらとぼとぼと歩いていた。
今も時折銃声が聞こえてくる。
その銃声が、ゲームが着々と進行している事を報せていた。
このゲームにおいては、無闇に動き回るよりも一箇所に留まった方が敵と出くわす可能性は下がるのだが、
今の彼女にはそんな判断力はある筈も無かった。
なんでこんな事になったの?どうして?
怖い怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイ
祐一、お母さん、どこにいるの助けて助けて・・・・
名雪の精神は、少しずつ蝕まれていっていた。
極度の緊張感と恐怖の所為で、失われていく冷静さ。
疲労していく精神。
そして、名雪の精神に致命傷を与える出来事が起こった。
「いやっ・・・、いやぁぁぁぁぁ!!」
視界に入ったのは、無残にも眉間を打ち抜かれた少女――緒方理奈の死体だった。
これは夢だ。
こんなの現実である筈が無い、きっともう少ししたら目が醒めるんだ、
そしてお母さんが作ったパンを食べて、祐一と一緒にまた学校に行くんだ
これは嘘、ウソダウソダウソダ・・・・
その時
ガサリ・・・・
後ろの森の茂みの中から、微かに物音がした。
「誰っ!?」
慌てて振り返る名雪を待っていたのは、
「チッ!」
舌打ちとともに飛来する、スペツナズナイフの刃であった。
357 :
贖罪:2006/10/03(火) 11:46:47 ID:iedY20OK0
――伊吹公子は緒方理奈の死体の傍で、待ち伏せを続けていた。
そして彼女の目論見通り、愚かな獲物がまたやってきた。
死体を見た少女は立ち止まっている。
仕留めるのは容易いだろう。
彼女は茂みに隠れたまま銃で打ち抜くか、
それとも後ろから近付いてスペンツズナイフで直接斬りつけるか。
思考を巡らせた末、直接斬りつける事にした。
弾数には限りがある。
このような隙だらけの少女相手に限りある弾数を消費していては、
今後やっていけないだろう。
そうして背後から近付こうとした彼女であったが、それが大きな判断ミスであった。
実戦経験の無い彼女に、物音を立てずに忍び寄る事など出来る筈も無かったのだ。
物音に気付いた獲物がこちらに振り返った瞬間、直接斬りつけるのは諦め、
咄嗟にナイフを発射したが慌てていた為に彼女の狙い通りの軌道には飛んでくれなかった。
ザクッ!!
自分の肩に何か違和感を感じ、自分の肩を見やる名雪。
「あああああああああああああああぁぁぁぁっ!!!!」
名雪の肩にナイフの刃が突き刺さっていた。激痛が走る。
顔を上げた名雪の視界に映ったのは、返り血を浴びた伊吹公子の姿だった。
「いやぁぁぁぁ!!!」
彼女の姿を視界に捉えた瞬間、名雪は一目散に逃げ出していた。
358 :
贖罪:2006/10/03(火) 11:48:27 ID:iedY20OK0
急いで二連式デリンジャーを取り出し、名雪の背中に向かって構える伊吹公子。
しかし何かの物音に気付き、咄嗟にそちらに構え直して銃を発射した。
「くっ!!」
何とか反応して横っ飛びし、すんでの所で弾丸を避けた男の名は、柳川祐也。
この騒ぎを聞きつけ、殺戮者を止める為に駆けつけてきたのである。
ダンッダンッダンッ!!
「な・・・、何で当たらないのよぉ!!!」
狼狽しながらも、連続して弾を発射する公子。
その全てを、柳川は人間離れした反応速度ですんでのところで回避していた。
実戦経験の無い普通の女性である公子と、
制限されているとはいえ鬼の力を有し、職業柄銃の扱いにも慣れている柳川。
決着が着くのは一瞬だった。
ダンッ!!
柳川のコルト・ディテクティブスペシャルが一回だけ火を噴き、
彼の一撃は、正確に公子を捉えていた。
伊吹公子は、彼女の犯した唯一の殺人の被害者――緒方里奈と同じく眉間を撃ちぬかれていた。
まるでその罪を贖うかのように。
彼女は死の際に妹や祐介の今後を案じる暇も与えられず、ゲームから退場する事となった・・・。
「くそっ、こんな女性までこんなゲームに乗ってしまうとはな・・・」
柳川は公子の二連式デリンジャーを拾い、駆け出そうとし、立ち止まった。
「・・・・・・。」
振り返り、座り込み、伊吹公子の見開かれた目蓋をそっと閉じた。
例え相手が殺戮者であろうとも、殺人は殺人。
こんな事で贖罪になるとは思っていないが、何故かそうしたくなったのだ。
そうして再び立ち上がり、今度こそ振り返らずに駆け出した。
359 :
贖罪:2006/10/03(火) 11:51:54 ID:iedY20OK0
【時間:1日目午後5時50分頃】
【場所:E−05】
柳川祐也
【所持品@:出刃包丁/ハンガー/楓の武器であるコルト・ディテクティブスペシャル(弾数10内装弾3)】
【所持品A二連式デリンジャー(残弾1発)、自分と楓の支給品一式】
【状況:正常。ゲームを止めようとしている】
伊吹公子
【所持品:支給品一式】
【状態:死亡】
水瀬名雪
【持ち物:GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)
赤いルージュ型拳銃 弾1発入り、青酸カリ入り青いマニキュア】
【状況:肩に刺し傷。発狂寸前。】
【その他:制服姿、電話の機能に気が付いていない】
*(ルートB系共通ルート、関連は013、119、142)
*(H系に組み込む場合は名雪の持ち物だけ改変が必要です)
*(ルートB系で現在投稿されている最後の作品は
>>345-355)
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、
自己を守らなければならない。
アイザック・アジモフの小説から生まれ、その後の多くのロボット作品に大きな影響を与えたという上記の三箇条。
ロボット三原則とよばれるこれらは実際のロボットを開発する上でも大きな指針となっている。
無論、この三原則はメイドロボにも適用されており、マルチやセリオ、イルファもこの原則に従うようになっている。
ちなみにこれらはよく誤解されるのだが『ロボットが守らなければならない規則』ではない。
設計時から既に組み込まれているものである為、『ロボットが持っているべき本能』と表現するのが正しい。
上記の三原則は結構有名な話なので知っている方も多いと思うが、実はこれには続きがある。
この三原則のみでは優先順位を決めることが困難なのである。
例えばAがBに危害を加えられようとしている時にBに危害を加えなければBを止められない場合、
三原則では判断が出来ないのである。
このような矛盾や問題点を解決する為に、後に第零法則とよばれるものが追加される。
これは第一条の人間が人類に置き換わったものであり、これにより第一条の文末に
「第零法則に反する場合はこの限りではない」という一文が付される事となる。
これにより悪意ある人物によって大多数の人間が脅かされる場合、
この悪意ある人物を排除することが可能になり、その究極が人類なのである。
また、第零法則は三原則と違い、ロボット自身が所有者の命令や自らの知能・経験。
過去の歴史や未来の予測などから優先順位を考えて導き出されるものなのである。
話を沖木島に戻そう。
茂みの中でイルファは考えていた。
支給品はマカロフ。俗に言う当たり武器だ。
それ故に人を殺すという事が考えに直結するのは自明の事だ。
基本的にメイドロボである私が人を殺す事は許されない。
瑠璃様や珊瑚様も許してくれないだろう。
だけど私が殺さない事を選んだら、もしかしたら殺さなかった人が瑠璃様達を殺めるかもしれない。
私が人を殺す事で瑠璃様達が殺されないかもしれない。
私が破壊されてもいけない。私が破壊されていいのは命と引き換えに瑠璃様達を守れる時のみなのだ。
瑠璃様達とそれ以外を比較した場合、どちらがより大切か。
そんなのは考えるまでもない。
たとえ人類全てと瑠璃様達でも瑠璃様達の方が大切なのだから。
(瑠璃様……珊瑚様……)
(やっぱり私は愛と本能のあいだで揺れ動くいけないメイドロボです……)
【9イルファ】
【時間:午後1時】
【場所:C-02、茂みの中】
【支給品:マカロフ(装弾数8予備弾16)デイバック】
【状態:マーダー】
目的:瑠璃・珊瑚・貴明以外の全員の排除
贖罪にて二連式デリンジャーから4発も弾丸が発射されている件について。
二連式デリンジャーの装弾数は2発だよ。
364 :
10:2006/10/03(火) 12:15:18 ID:tuabi/6G0
>>360 イルファさんには三原則は組み込まれてないよ
「罪と罰」
場は膠着状態に陥っていた。
緒方英二と柊勝平はお互いに動けないでいる。勝平から見れば下手に動けば撃たれてしまうし、英二から見れば下手に撃てば盾にされている少年に当たってしまう。
北川は勝平の足元で悶絶しているし、観鈴と芽衣は完全に場の空気に押されていた。
杏は杏で少し落ち着きを取り戻しつつあるものの、完全に回復しているわけではない。妹の恋人に襲われたという信じたくない現実を未だに受け入れられないでいた。
「あ」
と、芽衣が小さな声を上げた。彼女のディパックがもぞもぞと動き、そこからボタンがひょっこりと顔を出す。
「ボタン!」
杏が叫ぶと、うり坊はうれしそうにご主人様の足元へ走りよった。
「ああその子、杏さんのペットだっけ」
それだけ言うと勝平はそれに特に注意を払うことなく、ボタンは無事、杏のもとへと走りつく。
「あんたまで、こんなところに来てたの?」
「ブヒ。ブヒブヒ」
杏の心配そうな声を無視するようにうれしそうに声を上げるボタン。だが少しすると、ご主人の沈痛な面持ちに気付いたのか心配そうな声を上げる。
「ブヒ?」
「大丈夫よ、ボタン」
優しく言ってうり坊の頭をなでる。そして改めて現状を見た。
不思議だ。心が落ち着いてきている。ボタンのおかげだろう。 責任感、というやつかもしれない。ボタンを守らねば、という。
あるいは見栄、ボタンの前では情けない姿をさらせない、という。
ああもう、何だっていい。理由をうだうだ考えるほど自分は遠回りにできていないのだ。自分は復活した。だから、この状況をどうにかする。
「あ、あの」
「大丈夫。ありがとね」
自分の傍らに立つ少女にそう言って顔を上げた。
英二と勝平はいまだに相沢祐一を間にいれたまま、にらみ合っていた。芽衣も突っ立ったままだ。だが北川は先ほどと違い、こちらに顔を向けていた。
ぐっと頷く。それで相手もなんとなく察したようだった。少し心配した様子だったがあえてそこは無視。
不恰好にも自分の荷物は向こうにおいてきてしまった。自分に残されたのはボタンだけ。だが、これで十分。
「ボタン、ラグビーボール」
小さな声で言ってパチンと指を鳴らした。
大体なにやってんだ、あの女男は。こんな状況であっさりパニックになりくさりやがって、こら。それでも椋の恋人か。あの子は精神的にもろいんだから、こんな時に支え
られんでどうする。
ああ、考え出したらなんかだんだん腹立ってきた。何が『人間の脳ってすっごい綺麗なんだよー』だ。エド・ゲインかっつーの。親父の精子まで遡ってやり直して来い、ボ
ケが。もう、土下座でも許さん。修正してやる。
戻ったらピンクフリルの服着せて春原の部屋に監禁の刑だ。ケツの穴ほられれば、ちったぁしおらしくなるだろ。
そんな調子で一しきり、勝平に対する恨みを晴らす方法を頭の中で列挙した後、狙いを定める。
向こうにいる二人組みもこちらが何かやりそうな気配に気付いたようだ。
「取引をしないか?」
だが、それを一切顔には出さず、英二は勝平にそう言った。注意を引きつけてくれるらしい。
「取引?」
「そう、こちらの要求はその少年を離してこの場から去ってること、それさえしてくればいい。こちらも君には危害を加えないことを約束しよう」
「ふふふ、駄目だよ。土産話が少なくなっちゃうからね、僕は椋さんをあんまり退屈させたくないからね。それって男として結構失格じゃない」
「そうか、じゃあ一応言っておくが……」
「なんだい?」
勝平はぐっと身を硬くして英二を注視する。
「僕はセンスのない人間が嫌いでね、もしそんな土産話を喜んで聞いてくれるような女の子なら君の趣味は間違ってもセンスがいいとは言えない」
「っ! 椋さんのことをバカに……!!」
だが勝平が口にできたのはそこまでだった。
「タッチ、ダーウン!!」
元気よくそう言って杏がボタンを投げつける!
「おごっ!」
妙な叫びを口にし、勝平の小さな頭部が揺れた。
「相沢!」
その隙を逃さず、北川は勝平から祐一を強引に奪い去る。ガチャンと途中で何かを落とした音がしたが気にしている暇はない。
「ま、待て!」
そして、
ドン!
英二の持つ拳銃が火を噴いた。
「あぐっ!」
勝平の体が不自然にかしいだ。撃たれたのは……左の太もも。
ドン! ドン!
英二は勝平から手榴弾を手放させようとしてさらに二発立て続けに撃った。だが、二発とも外れて地面の砂を跳ね上げるだけ。
「ちっ!」
「とんでもないことしてくれたね。これは椋さんのところへ行くための、大事な足なのにさぁぁ!!」
勝平は手榴弾のピンを抜き取ると英二と芽衣に向かって投げつける!
「させるかぁ!」
相沢がそれを阻止しようと落ちていた携帯電話を投げつけた。だが、携帯は勝平の左肩に当たるだけで力なく落ちる。
手榴弾が放たれた。
「くっ!」
英二は慌てて芽衣の手を引き後ろに下がった。少し遅れて爆発。
「きゃあああ!」
「くっ!」
爆風で芽衣の華奢な体が吹っ飛びかけるのを、英二は必死で止めた。だが、そのために英二は拳銃を落としてしまう。それだけならよかったが、爆風でどこかにとんでいって
しまったらしく、見つけることができない。
「ちっ!」
「あ、あたしが探します」
芽衣がそう言って地面に目を凝らした。緒方も爆炎の向こうを警戒しつつ、あたりに視線を飛ばす。
一方勝平は足元にあるS&Wに手を拾い上げると、すばやく二度引き金を引いた。まずは北川へ。そして、もう一つは観鈴へ。
「がっ!」
「ぼさっとしない!」
「ひゃうっ!」
「北川!」
同時に四人の声が上がる。北川は幸い、ケプラー製の割烹着にあたるだけで問題なかった。だが、衝撃までは完全に殺せず、うめき声を上げる。
観鈴も杏がすばやく腕を引っ張り、物陰に隠れたため、無事だった。もっともそれ以前に勝平はリボルバーの構造がいまいち把握できてなかったらしく弾が発射されること
はなかった。
「あれ?」
そんなすっとぼけた声を出すが、あらためて銃を見たところで困惑を消し去ったらしい。
「北川! 大丈夫か!」
その間に相沢は北川に呼びかける。
「へ、平気だ、どうに……か……」
途中で北川の声が途切れ途切れになった。そこでふっと視界が黒味を帯びる。
「少年! 後ろだ!」
英二の声が響いた。
相沢は慌てて振り返った。小柄な勝平の姿がやたらと大きく見えて。
「そうそう、映画でやってたもんね。確か、ここをまわして、と」
そんなことを言いながらリボルバーの弾倉をまわす。一瞬、北川はハリウッドまで行って勝平の見た映画とやらを作った監督の首を絞める場面を想像してしまった。
「勝平さん!! いい加減にして! 今ならまだ冗談で済むから!!」
杏が、おそらく観鈴から受け取ったのだろう、ショットガンを構えながらそう叫ぶ。それに対して相沢は冗談で済むわけねぇだろ! と反射的に心の中でののしった。こいつのせいで体中ボロボロだ。
「何言ってるのさ。杏さんは椋さんのことが心配じゃないの?」
だが、杏の必死の叫びにも勝平はとんちんかんな答えを返すだけ。だが、その椋の名は確実に杏に動揺をもたらす。
「妹の心配をしないお姉さんなんかいないほうがいいよね」
勝平がそう言って杏に銃口を向ける。だが、その一瞬を相沢は逃さなかった。
「この、野郎!」
勝平に飛び掛ると銃を持った右手を上に向けさせてギリギリと締め上げる。
「邪魔しないでよっ!」
そう言って自由な左手で相沢の腹を殴りつけようとしたが、相沢ももう片方の手でそれを押さえる。
「ぐっ」
そして、そこで勝平の動きが鈍くなった。力をこめたせいで足からの出血がひどくなったのが原因だろう。
(チャンス!)
相沢は左手をさらにつよくギリギリと締め付ける。
「ぐっ……このっ!」
「ぎっ、ぎぎっ!」
だが、それでも勝平は手から銃を離そうとしない。
「き、北川。は、はやく! 早くこいつの手から銃を!」
「あ、ああ」
北川がびびりながらも一歩を踏み出す。杏もこちらにかけよってくるのが視界の端に見えた。だが、そこで相沢に一瞬の油断が生まれた。
その隙を突くように勝平はすばやく左手を後ろに引いて相沢からの拘束をはずすと、ポケットに手を入れる。
(?)
情けない話だったが、相沢には勝平が何をやろうとしているのかわからなかった。緊張の連続でだいぶ集中力が落ち、明晰な思考ができない。
勝平がポケットから取り出したのは最後のパイナップル。勝平は口で器用にピンを抜いた。
「逃げろおおおぉぉぉぉ!!」
ただ、必死に相沢は叫んだ。あわてて勝平の左腕から手を離し、背を向けて逃げ去る。前方に杏と北川が見える。
「へ?」
北川が呆けた声を出す。だが、その問いに答えるまもなく勝平のこえが響き渡る。
「遅いよ!」
そういって手榴弾を相沢の背中に向かって投げつける!
「相沢! 後ろだ!」
北川がそんなことを言うが、正直振り返ることもできない。死ぬ!?
「この薬はすばらしいの。うまく使えば優勝間違いなしなの」
一ノ瀬ことみ(060)は、当初はゲームにのるつもりはなかった。
彼女はもともと好戦的な性格ではないし、銃などの武器の扱いにも長けてはいない。
支給されるであろう武器は当然現代科学の範囲内のものであり、
120人の中で自分が勝ち残れる確率は天文学的に低いと、聡明な彼女は考えていた。
───そう、支給品を確認するまでは。
彼女に支給されたのは、「書き手薬」とかかれたビンに入った5錠の錠剤であった。
試しに1錠飲んでみたところ───
>あれ? じゃあうさぎさんの言ってた殺し合いも? タカくんも?
>お母さんも? タマお姉ちゃんも? ユウくんも?
>みんなみんな死んじゃうの?
>いやだよ!
>死んじゃうなんて!
>みんな死んじゃうなんて!
>みんな?
>みんな死んじゃうって事はタカくんも死んじゃうの?
>タカくんが死んじゃうの?タカくんが死んじゃうの?タカくんが死んじゃう?タカくんが死タカくんがタカくんがタカくんタカくん……
───このような錯乱する醜い文章が見えた。
この瞬間、ことみは薬の効果を理解し、このみを操り自殺に追い込んだのである。
しかし問題があった。薬の持続時間は短いこと、そして数が少ないことである。
「残り4錠、有効に使わなくてはいけないの。」
彼女はもう1錠薬を飲み、過去ログを速読した。
何をするにしても、状況を完全に把握することが最も重要であるからだ。そして───
>「わ、ワープだと……くっ! 味な真似を!!」
>【状態:唯一者モード(髪の色は銀。目の色は紫。物凄い美少年)】
エク ・ ス ・ ヒューム ・ ド
>地水火風冷雷闇光滅撃
イベント ・ ホライズン
>事 象 深 淵
「これなの。かっこよすぎるの」
彼女は自身に追加設定を大幅に加え、能力を増強した。
なまえ 一ノ瀬 ことみ
しょくぎょう U-1
せいべつ おんな(ただしふたなり)
ちから 無量大数
すばやさ 無量大数
みのまもり 無量大数
かしこさ 無量大数
かっこよさ 無量大数
そうび E ことみの剣(功+無量大数、無属性をもちあらゆる結界の類を無効化する、状況により銃に変化)
E ことみの鎧(防+無量大数、防弾仕様、あらゆる攻撃魔法を反射する)
びこう 古今東西のあらゆる武術、剣術、銃火器類の扱いに長ける
あらゆる属性の攻撃魔法及び回復、補助魔法を習得済み
光速で飛行可能
体の一部でも残っていればそこから再生する
「完璧なの」
一ノ瀬ことみ
【時間:午後2時ごろ】
【場所:沖木島上空】
【持ち物:書き手薬×3、ことみの剣、ことみの鎧、デイバッグ】
【状況:U-1化、ゲームにのる】
(070の続き、Dルート、わりこみになってしまってスマソ)
「させない!」
だがそこで杏が逆に一歩を踏み出し、ショットガンの銃身をバットのように構える持ち手のほうで手榴弾を打ち返した。
「よし!」
打ち返された手榴弾は勝平の目の前へ。
「え……」
「ちょ、ちょっと」
ちょっと待ってよ。私、そんなつもりこれっぽっちもなかったのよ。勝平さんを殺そうなんて。
だからちゃんと手榴弾もアッパースイング気味に打ち返したし。ねぇ待ってったら。なんでそんなとこ飛んで行くのよ。
タンマ、マジでお願い。今の無し。今の無しだから。もう一回、もう一回やり直させて。ホント、一生のお願い。
「ああああぁぁぁ!」
勝平の眼前で手榴弾は爆発した。赤いナニカが飛び散り、杏の眼前には、ヒトの下半身だけが存在していた。
「あ、あぁ、あああああ」
ガクガクとひざが震える。背筋に凍りつきそうなほど冷たいものが流れる感触。比喩でなく顔から血の気が引いていくのが感じられた。
ぐらりと下勝平の半身がゆれて杏のほうに倒れる。
「!」
少し離れていた相沢と北川からも、まだ勝平の内臓がパートナーを探すように律動しているのが見えた。もちろん杏にも。
「違う、違うの。そんなつもりじゃなかったの。本当なら、もっと上のほうに飛んでいくはずで。それで、それで、とにかくこんなはずになるはずはなくって、だから違うんだって。本当なの。本当なのよ」
藤林杏は殺人を犯した。
「本当なんだってばぁぁぁぁ!!」
だれがなんと言おうと、それは残された厳然たる事実だった。
374 :
359:2006/10/03(火) 12:53:38 ID:7z+eyb+T0
>>363 知りませんでした、、、、、
>>まとめの人
>ダンッダンッダンッ!!
>「な・・・、何で当たらないのよぉ!!!」
>狼狽しながらも、連続して弾を発射する公子。
>その全てを、柳川は人間離れした反応速度ですんでのところで回避していた。
の部分を、
>ダンッ!!
>「な・・・、何で当たらないのよぉ!!!」
>狼狽しながらも、再び弾を発射する公子。
>その凶弾を、またしても柳川は人間離れした反応速度で回避していた。
に。
> 柳川祐也
>【所持品@:出刃包丁/ハンガー/楓の武器であるコルト・ディテクティブスペシャル(弾数10内装弾3)】
>【所持品A二連式デリンジャー(残弾1発)、自分と楓の支給品一式】
>【状況:正常。ゲームを止めようとしている】
の部分を、
柳川祐也
>【所持品@:出刃包丁/ハンガー/楓の武器であるコルト・ディテクティブスペシャル(弾数10内装弾3)】
>【所持品A二連式デリンジャー(残弾3発)、自分と楓の支給品一式】
>【状況:正常。ゲームを止めようとしている】
に修正お願いします・・・。度々すいません。
共通
【時間:午後4時30分】
【場所:鎌石村消防署のすぐそば(C-05)】
相沢祐一
【持ち物:なし】
【状態:呆然。体のあちこちに痛み。若干の吐き気】
緒方英二
【持ち物:予備の弾丸、荷物一式、支給品の中に入っていた食料と水を少し消費】
【状態:呆然】
神尾観鈴
【持ち物:フラッシュメモリ、荷物一式×3(自分の分と相沢祐一の分と藤林杏の分)】
【状態:呆然】
北川潤
【持ち物:防弾性割烹着&頭巾、他支給品一式、お米券】
【状態:呆然。腹部と胸部に痛み。若干の吐き気】
春原芽衣
【持ち物:荷物一式、支給品の中に入っていた食料と水を少し消費】
【状態:英二の落とした銃を捜索中。少し疲労】
藤林杏
【持ち物:SPAS12ショットガン】
【状態:混乱】
柊勝平:死亡
補足:ラグビーボール状態のボタン、北川の携帯電話、緒方の拳銃はその辺に転がっています。勝平の持っていた物は全て大破。
ルートはB−2、137の続き
>>372 いえいえ、連投規制に引っかかってたんで助かりました。
またマーダー殺しかよ・・・・・
先のこと何にも考えてないだろおまえ
さらに馴れ合い加速か
茂みの中でイルファは考えていた。
支給品はマカロフ。俗に言う当たり武器だ。
それ故に人を殺すという事が考えに直結するのは自明の事だ。
だからといって人を殺してもいいのか?
いいわけがない。
瑠璃様や珊瑚様も決して許してくれないだろう。
だけど私が殺さない事を選んだら、もしかしたら殺さなかった人が瑠璃様達を殺めるかもしれない。
私が人を殺す事で瑠璃様達が殺されないかもしれない。
私が破壊されてもいけない。私が破壊されていいのは命と引き換えに瑠璃様達を守れる時のみなのだ。
瑠璃様達とそれ以外を比較した場合、どちらがより大切か。
そんなのは考えるまでもない。
たとえ人類全てと瑠璃様達でも瑠璃様達の方が大切なのだから……
答えは出た。
後は決行するのみである。
(瑠璃様……珊瑚様……)
(やっぱり私は愛と本能のあいだで揺れ動くいけないメイドロボです……)
【9イルファ】
【時間:午後1時】
【場所:C-02、茂みの中】
【支給品:マカロフ(装弾数8予備弾16)デイバック】
【状態:マーダー】
目的:瑠璃・珊瑚・貴明以外の全員の排除
基本的にHルート用ですが、下記の作品を通っていないルートなら流用できると思います。
⇔060
⇔095
⇔ルートD
無駄な連レス失礼します。orz
『いけないメイドロボ』は
>>360-362『アジモフ・コード』の問題点を修正した代替作品です。
まとめサイトに収録の際は『アジモフ・コード』の代わりに『いけないメイドロボ』を収録お願い致します。
先の由依奇襲の失敗から、公子は今まで以上に慎重になろう、と思った。
あれほど驚愕していたのに、傷を与える事すら出来なかった。よほど自分は人殺しには向いていないらしい。…こんな事で、大丈夫なのだろうか。
一瞬気が萎えかけたが理奈の死体を見て、すぐにその弱気を追い払う。冗談ではない。ここで諦めたら、何のためにあの少女を殺したのか。
次こそは必ず仕留める。出来なければわたしは死ぬ。
自分を強く戒めて再び誰かが来るのを待つ。
時間感覚がマヒするほど理奈の死体を見つづけた。すると、がさがさという音と共に明らかに恐怖しきった感じの少女、水瀬名雪が姿を現した。
――来た!
スペツナズナイフを強く握り締め、名雪が理奈の死体の前に来るまで待つ。
「えっ? あ、あ…き、きゃあぁぁぁっ!」
木々をも揺るがすような絶叫が辺りに響き渡る。公子は内心舌打ちした。こんな声を出されては、人がやってくるではないか。こうなっては、巧遅より拙速をとるしかない!
名雪に息をつかせる暇もなく、公子が茂みから飛び出した。目の前の死体に完全に気を取られていた名雪は公子の接近に気がつかなかった。…いや、気がつき、『何者か』に振り向いた時には。
「さよならっ!」
「ぐがっ…あ゛、あ゛あ゛…っ」
喉を切り裂かれ、盛大に血が噴出していた。女のものとは思えない、くぐもった声が出ていた。
「お、おがあ…さん、ゆうい…」
公子が最後に聞き取ったのは、恐らく親族の者と思われる物の声だった。そして、名雪からはもう何も聞くことはなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
公子の心臓は、激しく鼓動していた。疲れたからではない。人をまた殺めたという事態によるものだった。
「ぐっ! うぐ…っ」
今日二度目となる吐き気。公子は自分の弱さを呪わずにはいられなかった。しかし、じきにそれも収まる。息を落ち着けた後、名雪の武器を取りに行こうとした、が。
「…そこまでだ、殺人鬼」
公子の後頭部に、冷たいものが当てられる。この威圧感。公子はすぐにその物体を銃の類だと思った。実際に当てられたことはないが、感覚で分かる。公子の顔から、冷や汗が流れ落ちた。
「こんな女性までゲームに乗っているとは思わなかったな。…だが、すぐにそれも終わる」
拳銃を突きつけた男、柳川祐也が、冷徹に呟いた。
「おっと、ヘンな真似はするなよ。俺も一応刑事なんでね。その危なっかしいナイフ、投げ捨ててもらおうか」
言う事に従わなければ、即座に殺られる。公子は少しでも反撃の可能性を模索すべく柳川の言う事に従った。ヒュッ、という音がした後、茂みの中にナイフが落ちる。
「…フン、状況はわきまえているようだな。だが残念だったな、この俺が相手で」
カチリ、とハンマーピンを押し上げる音が聞こえる。
「ましてや、初めて人を殺したような奴が相手ではな」
…どうやら、この男は公子がたった今、初めて人を殺したと思いこんでいるらしい。…つまり、二連式デリンジャーの存在は知らないということだ。
(まだ、わたしは生き残れる)
「…こうなっては、仕方ありません。気休めかもしれませんが、この女の子達の埋葬をしてあげてもいいでしょうか。せめてもの、つぐないとして」
「…ふん、いいだろう。お前にもまだ人としての自覚はあるようだな。ただし、ヘンな真似をすれば、即座に撃つ」
柳川が少しだけ銃を離す。そのまま名雪の側まで移動し、その場にしゃがみこむ。――そして、柳川に気付かれないよう、ポケットに片手を入れた。
その時偶然、遠くからパン、パーンという音が聞こえた。
「ちっ、また誰かがやりあっているのか?」
柳川の目が、少しだけ音のほうへ向く。その一瞬。公子はポケットからデリンジャーを引き抜く!
「…ん? 貴様何を…っ!?」
パァン、という発砲音と共に、柳川の足から血が噴出した。柳川が思わずバランスを崩す。
「ぐ…おおおおっ! この、女っ!」
足を庇ったまま、必死で銃を構えようとしたが、公子に銃を蹴り飛ばされる。ならば奴の銃を奪って――と思ったところで、柳川のこめかみにデリンジャーを突きつけた。
「さよなら、刑事さん」
もう一発、乾いた音が森に響いた。
柳川がぴくりとも動かないのを確認したところで、ようやく公子は安堵のため息をついた。
「相手が素人だと見くびっていて良かったですね」
柳川が狩猟者として豊富に戦闘経験を積んでいた事こそが結果的に油断を招き、公子に勝利をもたらした。無論、無謀な賭けに成功した公子の運の良さもあったのだが。
「でも、幸運は二度も続かない…できれば、こんな相手とは二度と殺りあいたくないですね」
柳川の銃とスペツナズナイフを回収し、改めて名雪の支給品を確認する。
「GPSレーダー、時限爆弾入りMP3再生機能付携帯電話、赤いルージュ型拳銃、青酸カリ入りマニキュア…どれもこれもクセのあるものばかりね」
だが、ルージュ型拳銃は使える。奇襲にはもってこいだ。体力や腕力の劣る公子にとって、奇襲を成功させていくことこそが勝利への鍵だった。
ルージュ型拳銃とデリンジャーをポケットに仕舞い、残りはコルト・ディテクティブスペシャルとスペツナズナイフを除いてデイパックに仕舞った。包丁とハンガーは使えそうもないので放置しておいたが。
そして最後に、コルト・ディテクティブスペシャルを片手に持ちもう片手にスペツナズナイフを持って、移動することにした。
「…あ、そう言えば、やり残したことがありましたね」
荷物を一旦置き、三つの死体のところまで行く。そう、死者の埋葬。これが公子に残された最後の良心。
「みなさん、ごめんなさいね。でもわたしにだって命より大切なものがあるんです」
三人の死体を埋めながら、贖罪の言葉を、公子は呟いた。
【時間:1日目午後5時50分頃】
【場所:E−05】
伊吹公子
【所持品:コルト・ディテクティブスペシャル(弾数10装弾4)、二連式デリンジャー(残弾4発)、スペツナズナイフ、
GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)、赤いルージュ型拳銃 弾1発入り、青酸カリ入り青いマニキュア】
【状況:正常。死体を埋葬している】
柳川祐也
【状態:死亡、武器以外は放置】
水瀬名雪
【状態:死亡、武器以外は放置】
注:これは「贖罪」のアナザーストーリーであり、本編でリレーするものではありません。
>>377 逆に考えろ
勝平が死んだのは杏が気が狂ってマーダーになる伏線なんだよw
しかし、デスノートがアメリカ人に渡ったか…凶悪なコンビだな、たぶん…
というか定期放送の後はマーダー間違いなく増える
カッペイ死んだから椋にもマーダー化フラグ立ったな
訂正
千鶴再出撃
>自分と自身と同じ考えのマーダーたちが既に行動を開始しているかもしれない。
↓
自分と同じ考えのマーダーたちが既に行動を開始しているかもしれない。
「まったく…観鈴たちは本当にどこにいるんだ?」
国崎往人はあれから知人たちを探し続けていたが、それらしき人とはまったく遭遇しなかった。
―――というより、人影すら見つけることができなかったというのが正しかった。
「暗くなってきたからみんな建物とかに身を隠しちまったのか?
――くそっ。しかし、今日は本当にろくなことがない!
目が覚めたら変なウサギに殺人ゲームをしろと言われるわ、
出会った奴らにはバッグを投げ付けられるわ、逃げられるわ、銃を向けられるわ、挙げ句の果てには外見だけで殺人鬼扱いだ!
いったい俺の目のどこが………………ん?」
愚痴を吐きまくりながら歩き続けていると、前方に自分と同年代の青年が倒れているのを発見した。
(死体か?)
そう思って近づいてみると、青年はまだ息があり特に外傷はなかった。どうやら気絶しているだけのようだ。
「………せっかくだから、使えそうなものがあったらもらっていくか」
そうと決まればと往人は青年の近くに転がっていた彼のバッグを手に取り開帳する。
「これは………弾倉か? 銃は…………さすがにないか。
こいつをのした奴が持ってったのか?」
まあ、あれば何か役に立つかもしれないと思い、取り出した弾倉を自分のバッグに移し替える。
「――さて。こっちはどうするか……………」
次に往人は気絶している青年の方へ目をやる。
「…………とりあえず起こしてやるか」
起きろ、と言って青年の顔を2、3度べしべしと張った。
しかし、青年は「う……」と一声上げはしたが目を覚まさなかった。
「ダメだこりゃ。完全にのびてやがる………自分から目を覚ますのを待つしかねえな………」
しかし、こんな所でいつまでもつっ立っていてもこちらが危険なだけだ。
とはいえ、自分だけ逃げてこの青年を見捨てていくわけにもいかなかった。
「しかたねえ、どこか安全な所まで運ぶか……まったく、面倒臭い」
そう言って青年と彼のバッグを背負うと往人は安全な場所を求めて歩きだした。
国崎往人
【所持品:トレカフ TT30の弾倉(×2)、ラーメンセット(レトルト)、化粧品ポーチ、支給品一式(×3=往人と名雪と拓也のバッグ)】
【状態:健康。知り合いを探したいが今は安全な場所を探す】
月島拓也
【所持品:なし】
【状態:気絶中】
【場所:G−07】
【時間:午後5時15分】
【その他】
・往人は大荷物のせいで少し足取りが遅くなっている
誤字訂正
>>168 一ノ瀬ことみの奮闘(1/3)
>>370 ことみはU-1なり、U-1はことみなり
誤 一ノ瀬ことみ(060)→正 一ノ瀬ことみ(006)
「罪と罰」持ち物修正
神尾観鈴
【持ち物:フラッシュメモリ、荷物一式×3(自分の分と相沢祐一の分と藤林杏の分)】
→神尾観鈴
【持ち物:フラッシュメモリ、荷物一式×2(自分の分と相沢祐一の分)】
393 :
10:2006/10/03(火) 19:40:21 ID:tuabi/6G0
出来ましたー。
時間掛かった……
→060→098で対立項色々。
番号なんか自信無くなって来た。
アナザーは158でいいのだろうか。
ともかく、回避願います。
(だーれもいねーナー)
エディはイルファと別れてからひたすらに歩き続けていた。
周囲への警戒だけは怠らず。
(あのネェちゃんが走ってきたのに何もなかったってこたぁ……)
鎌石村には宗一達はいないのだろう、と思う。
(お……?ありゃあ……)
曲がり角の先に、二人の人影が見えた。
片方がもう片方に肩を貸している。
怪我でもしているのだろうか。
(しかし、二人連れってこたぁ……)
このゲームに載ったときの勝利条件は自分以外の皆殺しだ。
二人以上の『参加者』が助け合うと言うことは考えにくい。
在り得ないと言う訳ではないが、自衛の道具が殆ど無いこの状況下ではなるべく安全そうな者に当たったほうが良いだろう。
「オ〜イ、チョイトそこ行くお二人さん。聞きたい事がってちょっとマテマテマテ!」
怪我している方がいきなりこっちを向いて鞄の中に手を突っ込んだ。
その後何かに気付いたように小さく舌打ちすると、鞄に手を入れたままエディの方を睨んだ。
「おい、七瀬。とりあえず話を聞こうぜ」
「……ああ」
そういうと彰は鞄から手を取り出した。
「で、何?おっさん」
「人を探してんだ。お前さん、名前は?」
「折原浩平」
「そっちの怪我してるは七瀬って呼ばれてたナ」
「……そうだけど」
「留美、彰、どっちダ?」
「……僕は、男だ……」
そういって彰はエディを睨みつける。
「ヒャッハッハッハ、スマネエスマネエ。だろうたぁ思ったけどもしかしたらと思って、ナ」
隣で浩平が腹を抱えて笑いをこらえている。
「……で、何」
憮然として彰が尋ねた。
「オウ、忘れてた。人探しだ人探し」
「その前に、あんたの名前は」
「オウ、更に忘れてた。オレッチはエディ」
そして又顔面総崩れで笑う。
何がおかしいんだか……と、小声で悪態をつく彰。
一頻り笑ってエディは本題に入った。
「いいカ?那須宗一、湯浅皐月、伏見ゆかり、梶原夕菜、リサ=ヴィクセン、それと姫百合珊瑚、姫百合瑠璃、河野貴明だ」
「結構いんなぁ」
「二人分の捜索だ。仕方アンメェ。で、どーだ?聞き覚えは?」
「や、俺は……」
そこまで言いかけて、浩平は言葉を止めた。
そして先程の悪夢が脳裏によみがえる。
「……なぁ、その人たちの特徴を教えてくれ」
「ン?なんか知ってんのカ?」
「かもしれない……」
問われて、エディはイルファに聞いたことを含め、浩平たちに話した。
浩平は青い顔をしながらその話を聞いていた。
「どーだ?知ってたら教えてくんねぇか?」
「……その話の中で一番近い、っつーだけだけど。……人が死んでるのを見た」
その話に、エディの剣幕が豹変した。
「っ! ダレだ! ダレに近い!」
浩平の肩を掴んで問い質す。
「っ……その……伏見ゆかりって人……」
「!」
エディはよろよろと二三歩後退り、項垂れた。
(なんて……こったっ……)
「……銃声がして、それで行ってみたんだよ。そしたら……誰かが死んでた……」
エディは項垂れたままその話を聞いていた。
「多分、機関銃の類だと思う。蜂の巣だった」
「ソウカ……」
「怒らないで聞いてくれ。これは……その娘の荷物から取ってきた」
浩平はそう言って日本酒を取り出す。
「傷の消毒には使えるかと思ってな。現に、こうして使ったわけだが」
彰の傷口を指し示す。
「イヤ、いい……。で、場所は分かるカ?」
「あ、ああ……多分……この辺だったと思う」
そう言って、D-02の道の辺りを指し示す。
「アリガトナ……」
「いや、いい」
「じゃあ、ナ……」
エディはそういって、駆け出した。
(ユカリちゃんなのか確かめねぇと……これがソーイチや姐さんなら違うって言い切れんダガ……)
イルファと約束した道からは外れるが仕方ないだろう。
いくらなんでもそんなすぐにここまで来れるとも思えない。
急いで確認してすぐに戻れば大丈夫な筈だ。
そんなことを考えながら急いで走った。
周囲への警戒だけは怠らず。
「……行こうか」
「ああ……」
彰と浩平はエディが行くのを見送って、再び鎌石村に向かって歩き出した。
が、暫くして気付く。
「あ……しまった……こっちも聞いときゃ良かった」
「聞けた?あの状況で」
「……無理だな」
力無く笑って、浩平は嘆息する。
彰は内心、葛藤していた。
(誰かを殺せばああいう人は出てくる)
(誰かが悲しむんだ)
(でも……そうしないと僕達は帰れない)
(いや、僕は良い。でも、美咲さんは……)
(美咲さんが帰れなくなる……)
(美咲さんが……誰かに……殺され……)
(駄目だっ!!それだけは絶対に!!)
(やはり殺し合いに乗るしかないのか……)
(でも……)
傷が痛む。
思考に集中出来ない。
(取り敢えず……)
(武器を手に入れてから考えよう……)
(今は……痛い……)
そうして二人は鎌石村に向かっていった。
エディ
【場所:C-05(スタート地点はS-10)】
【持ち物:瓶詰めの毒1リットル、デイパック】
【状態:死んだ人がゆかりかどうかを確認しに行く。やや焦っているが、警戒は怠らない。人探し続行中】
折原浩平
【所持品:だんご大家族(残り100人)、日本酒(残りおよそ3分の2)、デイパック】
【状態:健康、鎌石村へ移動中】
七瀬彰
【所持品:デイパック】
【状態:右腕に負傷、殺人の決意はしているが迷いがある。鎌石村へ移動中】
共通
【時間:一日目午後三時十分頃】
【場所:C-03とD-03辺りの分岐点】
400 :
10:2006/10/03(火) 19:48:40 ID:tuabi/6G0
? 連投規制はどうなった?
まぁいいや。
取り敢えず訂正。
No.60 焦燥
エディの持ち物
瓶詰めの毒1?→瓶詰めの毒1リットルに。
メモ帳ってℓも保存出来ないのな。
401 :
死神:2006/10/03(火) 20:53:01 ID:QPbGEhh/0
少年は覚悟を決めつつあった。
このゲームに参加する覚悟を。
罪の無い者達を容赦無く殺す覚悟を。
彼は一回目の放送が終わるまでは、何も許されていない。
人を殺す事も、助ける事も。しかし、一回目の放送以降は違うのである。
このゲームに於いて最初の数時間は緊張や恐怖から暴走する者も多く、
殺し合いは盛んに行なわれるだろう。
しかしそのような暴走の仕方をする愚かな者は、大抵がすぐに命を落とす。
このゲームにおいて冷静さを失う事はそのまま死に直結する。
生き残るのは十分な冷静さを持った者か、運の良い者なのだ。
ゲームに乗る、乗らないに関わらず、だ。
以上の事を考えると一回目の放送が終わる頃には、暴走している者は減るだろう。
慎重に行動する者が多くなり、少々殺し合いのペースが落ちてしまう筈だ。
お互い憎しみ合う激しい殺し合いを望む主催者にとって、それは避けたい状態だ。
それを危惧した主催者は少年に使命と、その使命を遂行する為の強力な装備を与えた。
少年の使命とは―――
1回目の放送以降は、容赦無く参加者を殺して回る事である。
女も、自分の友人も、自分の恋人である郁未ですら、容赦無く。
402 :
死神:2006/10/03(火) 20:54:39 ID:QPbGEhh/0
愛する者を殺されたり、襲撃を受けた者の多くは冷静さを失うであろう。
冷静さが失われれば、殺し合いは加速する。
要はきっかけさえあれば、悲劇は連続して起こるのだ。
そのきっかけを作る為に準備されたジョーカーが、
少年である。
「僕に自由は許されていない。自分の感情を口にする事すら許されていない。」
「でも、僕に郁未が殺せるのかな・・・・。」
少年の呟きに答える者はいない。
放送まで後僅か。
最強の死神が解き放たれる時が、刻一刻と近付いていた・・・。
少年
【場所:神塚山山頂(F-05)】
【時間:午後5時30分】
【持ち物:不明(強力な装備を数点)】
【状況:異常なし】
※(ルートB系、H系共通ルート。関連は061)
休める時は休む、体力は無限ではないのだから。
天沢郁未は診療所のベッドに横になり、瞼を閉じている。
交代の見張り制にし、順々に疲労が溜まっているであろうメンバーに小休止を与えることになったのだ。
那須宗一(夕ご飯)はまだ帰ってきていない。
(・・・物資のパン、食べた方が効率的だったかもね・・・)
胃がキリキリと鳴く。
ふと、隣のベッドを見ると眠り続けていて今だ挨拶していない古河渚の横顔が見えた。
その隣のベッドには、霧島佳乃が眠っている。
「ふわ〜、だめだよぉーポテト〜。むにゃ・・・それは往人く・・・むにゃ」
外の見張りは鹿沼葉子と古河早苗が担当していた。
年小組みから休憩ということ、葉子が起きているなら、と郁未も特に反対はしなかった。
「ゆっくり休んでくださいね、郁未さん。外は私達に任せてください」
思い出すのは早苗の微笑み。
少し、感傷的な思いが生まれるが、郁未はそれを取り払おうとした。
・・・キィ。
その時、足元の方・・・部屋の扉が開く音がした。
気を張る、コツコツという足音は、佳乃と渚のベッドの間にて止まった。
(・・・誰?)
薄く目を開ける。・・・暗くてよく見えないが、背格好で分かった。
「渚・・・まだ起きないのですね」
声。
渚の顔を覗き込むようにし、早苗が彼女の頬を撫でているのが見えた。
心配そうな顔。・・・母の、表情。
しばらくそうした後、渚、それに佳乃の布団もかけ直し、足元はこちらに向けられた。
「あら、目が覚めていたんですね」
気がついたら、じっと彼女を見つめていた。
早苗は何も言わず自分を見つめる少女にむかい柔らかい笑みを浮かべながら、枕元までやってきた。
そして。
ふわり。
頬に感じた優しい体温、さすりさすりと撫でられる。
「もうすぐご飯になりますからね、後ちょっとだけ待ちましょう」
それは、さっき見た光景の再現。
暖かい、その感触に酔いしれる。懐かしい感覚が郁未の心を締め付けた。
手が離れ早苗自身も扉の方へ、郁未はその姿から目が離せないでいた。
「お母さん・・・」
そして、気がついたら漏れていた声。
早苗には届かない本当に小さな呟き、郁未は言葉を噛み締めた。
・・・早苗の姿が部屋から消えると、郁未はのそっと起き上がり、隣の少女に近づいた。
古河渚、母の庇護を受ける幸せな少女。
彼女の抱えるものを郁未は知らない、郁未にとって渚はそのような印象でしかなかった。
実際、目の前の少女の安らかな寝顔は、正直郁未をいらだせる原因にもなる。
このような非常識な時でもこうしていられるのは、正に母親が近くにいるからであろう。
「・・・あなたが私と同じ立場になった時、一体あなたはどうするのかしらね」
ふと思う。そう、彼女は。
古河渚は、今一番天沢郁未に近い少女だった。
大切な母を目の前で失ったら、彼女はどうするだろうか。
郁未は知らず知らずに、口の端を引き上げた意地の悪い笑みを浮かべていた。
それは期待、その裏に隠れているのは嫉妬。
郁未は面白くなってきた、とさらに
---------------その時、スピーカー特有のザーザーというノイズが辺りを走った。
時刻は午後6時。第1回目の放送が始まる・・・
407 :
補足:2006/10/03(火) 21:02:55 ID:ZsLTcC7V0
天沢郁未
【時間:午後6時】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:薙刀、支給品一式(水半分)】
【状態:右腕負傷(軽症・手当て済み)・悪いこと考えている・ゲームに乗っている】
古河早苗
【時間:午後6時】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:ハリセン、支給品一式】
【状態:空腹】
(関連・141 )(宗一が生きているのでBルート系)
408 :
406訂正:2006/10/03(火) 21:05:55 ID:ZsLTcC7V0
×郁未は面白くなってきた、とさらに
↓
○郁未は面白くなってきた、とさらに歪んだ表情を浮かべるのであった。
失礼しました
葉鍵の二次創作のはずなのに大半が名前だけ借りてきたようにしか見えないのがすごいなこのスレ
410 :
戦いを望む者(1):2006/10/03(火) 22:13:33 ID:V7i/2kPd0
━━━定期放送。それは、突然始まった。
君の、ままで♪君の、ままで〜
スピーカーから音。たぶんこみパの主題歌。それが大音量で流れてる。
───はーい、この放送はバトル・ロワイヤル事務局の提供でお送りいたしちゃいまーす♪───
「音が小さいな。」と英二は小言を言っていた。こういう放送を聞き逃すのはダメージがデカイ。
耳を澄ませていた。そしたらいきなり全く関係ない所から音がした。
-------------------------------------------------------------------------------------
(首輪)
-┼─ -┼、\ ┼-┼-
/ -─ / | .| J
/ ヽ_ ./ J ヽ___ ですよーーーーーーーーーーー!!!
覚 え て ま す か ───────────────────────!!
/ ̄ ̄ ̄ / / ̄ ̄ ̄ ̄/ / ̄ ̄ ̄ / / ̄ ̄ ̄ ̄/
/ ./二/ /  ̄ ̄ノ / ./ ./二/ /  ̄ ̄ノ / .
/__,--, / < <. /__,--, / < <.
/___ノ ヽ、_/ .姐とは違うんだよ /___ノ ヽ、_/ .姐とはよぉおおおおお!!!!!!」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
英二:「なんだぁ?!」
英二:「何だア!」
芽衣:「何これ!」
英二は耳をふさいだがそれでもクソデカイ音で聞こえる。
どうやら首輪から直接骨伝道で耳塞いでも直接鼓膜に聞こえるようになっているらしい。
すんげー無駄な技術。
「皆さん。元気ですかーーーーーー!
元気があればなんでもできる!バトル・ロワイヤル運営委員会運営委員で、
10万本以上確か売り上げたはずなのに作品ごと削られた『こみっくパーティ』というくっっだらねー話の
しがないヒロインやっている高瀬瑞希と申すもんでーーーーーーーーっすよ!忘れた言うたらぶっ殺す!」
-------------------------------------------------------------------------------------
耳をつんざくような大音量で直接鼓膜に届く。耳塞ごうが何しようがいやでも大音量で聞こえる。
音のボリュームを下げる方法がないので、もう強制的に聞くしかない。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
瑞希:「今回皆さんの奮闘により、バ鍵人口の10分の1以上氏んでくれました。
「ざまーみろ」
--------------------------------------------------------------------------
英二:「・・・・」
--------------------------------------------------------------------------
あさひ:「じゃぁ、これから、残念ながら敗北した人のお名前をぉ、読み上げちゃいまーす♪」
あさひ:まずぅ、最萌優勝者の小牧愛佳さん。17歳。首を切られて失血死。即死!
(ちょっとかわって)(あっ・・・そんな強引ですしのぶさん・・・)
--------------------------------------------------------------------------
───島のどっか。。
英二:「なんなんだ!一体!」
ふつう町のスピーカーだろう。こんな大音量・・・いや、
(音量自体は意外と小さいのかも知れないが、それが直接骨伝道するので何十倍にも
音が大きく聞こえるだけなのかもしれない)と
当然仕事の関係上スピーカーにも多少は詳しい英二は推測した。が、そこはどうでもいい。
しばらく首輪がシーンと鎮まりかえったが、ゆっくりと女の声がした。
女:「はーい皆の衆。」
どっかで聞いた声がした。
-------------------------------------------------------------------------------------
(放送)
───厚生労働省、特別人口調査室の榊です。今回の参加者の権利発生に関するお知らせを致します。
住民基本台帳番号33218802のバトル・ロワイヤルに参加中のの岡崎朋也さん、
住民基本台帳番号33218802のバトル・ロワイヤルに参加中のの岡崎朋也さん。
10月14日に住民基本台帳番号33218802の岡崎がこっそりと市役所に婚姻届だしていた
住基番号38221088番の岡崎智代さん、旧姓坂上智代の死亡が、午後12時32分に確認されました。
配偶者死亡の為、180日後の3月25日、午後12時33分を持って岡崎様に再婚を行える権利が発生した事を
ここにご報告申し上げます。
───以上、岡崎朋也さんの権利発生に関するお知らせです。よかったなお米券進呈してやるよ生きてたらな
ぴん
ぽん
ぱん
あさひ:(ううっまだ言ってないのにぃ・・・)
ぽーーーーーん。。。。。
------------------------------------------------------------------------------------
渚:「ぁあ゛!!」
──ヘリ空母「くにさき」
「それ放送すべき内容か?」と久瀬は榊に聞いた。
榊:「異世界でも何でもないのに名前すら出てないんですよ。こーでもしないとやってらんねー」
久瀬:「あっそ」
久瀬:(いろいろとたまってるんだろうなあ・・・)
久瀬はとりあえず、『代われ』とマイクを奪った。
──沖木島
「コホン」と咳をする声がして、首輪の声が、若い男の声に変わった。
「「やあ」」
------------------------------------------------------------------------------------
「今回の・・・主催者の一人。」「今回司令官に任命された」
「久瀬だ」
------------------------------------------------------------------------------------
倉田:「?!」
------------------------------------------------------------------------------------
「今回、君たちに、謝らなければならないことがある。」
「120人が1人になるまで・・・殺しあうというのが、今までのルールだった。」
「だが。今回は少し事情があってな。
「変える」
------------------------------------------------------------------------------------
「?!」
予想もできないような話が続こうとしていた。
とりあえずあとで
ルート?見りゃわかるだろ
連投回避?
朝霧麻亜子―――彼女はまるで自分自身のひとつの可能性のように見えた。
自分ではなく、守りたいもののためにあえてゲームに乗って人を殺す―――
まさに『修羅』ともいえるその行為。
―――実を言うとゲーム開始当初は自分も彼女と同じ道を歩もうとした。
ただ娘のためだけに自分がすべての罪を一身に受けようとした。
…………しかし、それは叶わなかった。
自分に支給された品がただのコーヒー味の飴玉――それもたったの1個だったから。
そして、スタートしてすぐ近くの場所にあった村の入り口で捨てられた子犬のように怯える彼女と出会ってしまったから―――
「―――どうしたんですか?」
「――!?」
なぜあの時私は彼女に声をかけたのか、今ならそれがはっきりとわかる。
彼女は――私の娘と同じ、なんの罪も無いただの1人の女の子だったから―――ただ1人の人の子だったからだ。
『恐いの…近づかないでほしいの………』
「落ち着いて。ほら。これでも舐めて……」
飴玉はその時彼女にあげた。
ただ何も特別な力などもっていない飴玉。
最初はハズレだと思ったが違う。あれは間違いなく当たりだった。
だって――――
「――おいしい?」
『うん。おいしいの〜♪』
「そう…よかった……」
『恐怖』という色で染まりきっていた彼女の心に僅かではあるが『安らぎ』という色を与えることができたのだから。
―――彼女の笑顔を見て、私は決意した。
このゲームの主催者を倒すことを。
そして、娘や彼女のようなまだまだ芽吹いていく未来ある種たちを1人でも多く守っていくこと、あの笑顔を守っていくことを……………
――だからあの時、私は彼女を殺しはしなかった。
なぜなら、彼女もまた管理者の手により未来を奪われつつある被害者だったから。
――でも、彼女はこれからも罪を重ねていくだろう。
他の未来ある者たちを紡いでいくだろう。
しかし、私はそれを止めはしなかった。
たとえやり方を少し間違えてはいるけれども、彼女のしようとしていることも結果的には私と同じだったからだ。
彼女が茜色の空の下を駆けていく。
私たちはそれを見送ると、今度は自分たちの出発の準備をした。
「――じゃあ澪ちゃん、行きましょうか」
『はい、なの』
まだすべては始まったばかりだ。
これから先もこの島では多くの罪と悲劇が生まれていくだろう。
それでも私は自分の思いを貫き続けよう。
この島に彼女、そして多くの未来ある者たちの笑顔があるかぎり。
【時間:午後5時30分】
【場所:F−01(移動)】
水瀬秋子
【所持品:IMI ジェリコ941(残弾14/14)、包丁、殺虫剤、ほか支給品一式】
【状態・状況:健康。主催者を倒す。祐一・名雪を探す。ゲームに参加させられている子供たちを1人でも多く助けて、守る】
上月澪
【所持品:フライパン、スケッチブック、ほか支給品一式】
【状態・状況:健康。浩平やみさきたちを探す】
【備考】
・秋子は澪たちに自身の胸の内を明かしていない。(そのため少し誤解されている)
・106の続きです
神尾晴子(024)は新たな敵の出現に内心で毒づいた。
(ちっ、この子だけでもてこずってるってのに…こら、逃げたほうがよさそうやな)
ちらりと後方を確認する。だいたい銃はあの辺にあるはずだ。距離は…5歩くらいか。
(茂みになってる訳やあらへん。さっと見つけて逃げれば当たる事もないはずや。それにあの娘、プロっちゅうわけでもなさそうやしな)
綾香の方を見る。若干ではあるが、銃口は環の方へ向いている。まだ自分にはツキが残っているらしい。
「とりあえず、手を上げてもらいましょうか。それから、後ろを向いてもらうわよ」
綾香が銃をまだ向けながら環と晴子に命じる。まず応じたのは環だった。
「…これでいいの?」
手を頭の後ろに回し、綾香に背を向ける。続いて晴子も後ろを向き…そして即座に駆け出した!
「っ!? そこ、動くと撃つわよ!」
すかさずM1076を晴子の足元に発砲する。しかし、動く人間に簡単に当てられるはずがない。
「アホ! うちはまだこんなとこで終わるわけにはいかんのや!」
全神経を集中し、自分の銃を探す。そして視界の隅に自分のデイパックとVP70を見つけた。
(やっぱうちはついとる! 飛ばされた銃と荷物が同じところになるなんてな)
かっさらうように持ち上げ、逃走を試みる。
「くっ、待ちなさい!」
今度は晴子の胴体に向けて発砲する綾香だが、銃弾は空しく空間を引き裂くだけに終わった。綾香が舌打ちをして、環の方へ向き直る。
「…あなたは逃げなかったのね。今の隙に逃げることだって出来たでしょうに」
すると、環は皮肉な口調で、
「だって、動かないで、って言ったでしょ? それに殺人鬼扱いされちゃたまらないしね」
その言葉を聞くと、綾香はようやく固かった表情を少しだけ和らげた。
「…あなたは、あの女とは違う種類の人のようね。それじゃ、少し落ち着けて情報交換でもしない? 私は来栖川綾香よ」
「私は向坂環よ。よろしくね、綾香さん」
互いに固い握手を交わす。それから情報交換が始まった。
「…それじゃ、ついさっき動き始めたばかりだったの? 残念ね、姉さんのことを聞こうと思ったんだけど」
綾香が少しがっかりした表情になる。
「あなた、お姉さんがいるの? 名前は?」
コルトガバメントのマガジンを変えつつ、環が尋ねる。
「名簿にも書いてあると思うけど、来栖川芹香って言うの。極端に無口な人だから、すぐ分かると思うわ」
「ふぅん、そうなんだ…覚えとくわ。それで、綾香さんはここまででどんな人に会ったの?」
「残念だけど、環とあの女が一番最初の遭遇者なの。あなた、弟さんとその幼馴染達を探しているのよね?」
「ええ。特に、柚原このみっていう子の方は恐がりなところもあるから、早く探して安心させてあげないと」
「お互い、人探しに苦労するわね」
綾香が苦笑いする。環もつられて苦笑する。
「それじゃ、私はもう行くわ。早く姉さんと合流しないと」
「そうね…一旦別れるけど、またどこかで会いましょう。その時は、この主催者達を倒すためにね」
「ええ。けど、つまらないことでマーダーになったりしないでよ。…もっとも、その時は私が喝入れてあげるけど」
「残念ながら、その機会はないわね。それじゃ」
綾香は南へ。環は北へ向かうことにした。
「ゼェ、ゼェ…へへ、振りきれたようやな。はぁーっ、ごっつ疲れたわー…年は取りたないもんやな…って、うちはまだ全然若いっちゅーねん」
自分にツッコミを入れて、気合を入れなおす晴子。
「…さて、グズグズできへんな。早いとこ、観鈴のためにもたくさん殺っとかんと。観鈴が聞いたら怒るやろうけど、うちにはこれくらいしか思いつかへんからな…堪忍な、観鈴」
VP70にマガジンを再装填し、再び立ちあがる。目指すのは、新たな獲物だ。
『向坂環(039)』
【時間:1日目、午後2時ごろ】
【場所:E−3、森林帯】
【所持品:支給品一式、コルトガバメント(残弾、残り20)】
【状態:健康。北へ向かう。仲間の捜索を開始】
『神尾晴子(024)』
【時間:1日目午後2時ごろ】
【場所:G−3、森林帯】
【所持品:支給品一式、H&K VP70(残弾、残り18)】
【状態:健康。次の標的を探す】
『来栖川綾香(037)』
【時間:1日目午後2時ごろ】
【場所:F−3、森林帯】
【所持品:支給品一式、S&W M1076(現在装填弾数6)、予備弾丸30】
【状態:健康。芹香の捜索】
【備考:B、H系ルート】
っつーかいい加減にしてくれ。
俺が何か悪いことでもしたってーのか?
いや、そんなもん星の数ほどしてきたけどよ。
だからってこの仕打ちはねーだろうよ。
まだ銃で撃たれて死に掛けって方がハクもつくってもんだ。
いやそれもまっぴら御免だな、この方がましか……だからそうじゃねぇ、あぁもう頭がいてぇ。
ただただ愚痴しか出てこない。
それもそのはず――とにかくぴこぴこうるさい宇宙外生命体ピコ(仮)を振り切ろうと必死に山の中へ逃げたものの
何を勘違いしてくれるのか嬉しそうについてきやがる。
3時間近く走り回っているのにも関らず、突き放すどころかもはや自分の体力が先に尽き先導される始末。
人間様のプライドもあったもんじゃない。
「あぁなんでこんなクソ畜生のケツ見ながら歩かなきゃないけねーんだよ。
もう日も暮れかけてきたじゃ……うぉぉぉ!!!???」
呟きながら紅く染まりかけた空を見上げようとしたその時、訳もわからぬうちに景色がぐるりと半回転した。
気付けば右足を取られ宙吊りになっている高槻。
「なんだなんだ!?おい、だから踊るな!!」
右足にロープが括り付けられ、木に逆さに吊るされた状態で大きく揺れる高槻の下で、ピコ(仮)は嬉しそうに踊る。
「うっわ、明らかに当たりねこりゃ」
ガサッと茂みがざわめいたかと思うと、出てきたのはさっきの郁乃だか七美だか言うガキに負けるとも劣らぬチビガキ。
こいつの仕業か?くそ。
「わけのわかんねーこと言ってねーで早くおろせよクソガキ!」
高槻の言葉に反応し、キッと睨みつけるとマナは持っていたワルサーP38の銃身を鼻先に突きつける。
「げっ」
「あんたそれが人に物を頼む時の言葉?いいから黙んなさい」
頼んでんじゃねーよ、命令してんだよ。んな事を言えるわけもねぇけどな。
ダメだ厄日だ。
今日の運勢は絶対『知らない子供には気をつけましょう』って感じのが出てるにちがいねぇ。
トホホ……。
高槻
【時間:1日目17:30頃】
【場所:F-07西】
【持ち物:ポテト、他支給品一式】
【状況:宙吊り】
観月マナ(102)
【時間:1日目17:30頃】
【場所:F-07西】
【所持品:ワルサー P38・支給品一式】
【状態:普通】
【備考:周辺にはマナが仕掛けたと思われるトラップ多数】
「-----ちっ、何だ、違ったか」
その瞬間聞こえたのは舌打ちだった。
住井護と春原陽平の視線の先、ショットガンを構えた男は巳間良祐であった。
駆けつけた彼の予想とは反する風景が、目の前には広がっていた、
そう、彼が聞いたのは女性の声。今は亡き仁科りえのものであった。
脱兎、次の瞬間良祐は場を離れる。
残された二人は、ぽかんと彼を見送るだけであった。
殺そうと思えば殺せた、何せ彼の支給武器はショットガンという当たりだったのだから。
しかし、彼は撃たなかった。否、撃てなかった。
動揺、「もしかしたら」を考えていた彼の思考、それを裏切られ不安定になっていたのだ。
(馬鹿か、俺は。そんなの、確率的には絶望的に低いに決まっているというのに)
ちょうど考えていたから、その手の事柄に結びついたのかもしれない。
襲われた女性が、もし彼女だったら。
・・・妹、晴香だったら、と。
名簿を見た際すぐ気がついた、自分の一つ前の番号の持ち主。
巳間晴香。結局施設で再会したにも関わらず、口はほとんど聞けていない状態の身内。
(・・・とんだ失態だ。もう許されないな、こんなことは)
気を引き締める。
冷静に、感情を押し殺しこのゲームに集中することを決意する。
(それに、このゲームは一人しか生き残れないのだから・・・あいつのことを気にしても、意味はないんだ)
-------次会う人間が晴香だとしても、殺らねばいけない。
良祐の心に青い炎が燃え上がる。
彼の甘さは、この瞬間掻き消えた。
428 :
補足:2006/10/04(水) 02:16:35 ID:3sFsgBGM0
巳間良祐
【時間:1日目午後12時15分頃】
【場所:G−5(移動済み)】
【所持品:ショットガン(ベネリ M3)銃弾数7/7・支給品一式・優季の荷物】
【状態:ゲームに乗る】
住井護
【時間 1日目 午後12時15分頃】
【場所 G−5】
【持ち物 コルトパイソン】
【状況:銃口を春原の頭につきつけたまま呆然】
春原陽平
【時間 1日目 午後12時15分頃】
【場所 G−5 】
【支給品 不明】
【状況:頭に銃口をつきつけられていることも忘れて呆然】
(関連・8・47)(Aルート)
※47の前の話になります
429 :
不幸な再会:2006/10/04(水) 03:19:53 ID:1pJp201q0
姫川琴音は正気を失っていた。
気付いたら道路に倒れており、体のあちこちに痛みが走っていた。
何より彼女の唯一の武器である日本刀も無くなっていた。
それから琴音は必死に近くにあった民家の中を探し回り、
どうにか八徳ナイフを探し当て、今は街道を南東へと駆けていた。
「人・・・・!」
一人の少女―――仁科りえの姿が彼女の視界に入った。
「これをこれをつきさせばころせるころせるころせばしななくてすむんだ
いそがなきゃいそがなきゃはやくはやく」
彼女の形相は、もはや人間のそれでは無かった。
「いや・・・、いやぁぁぁぁ!!!」
その迫力は、りえを硬直させるに十分であった。
既に正気を失っていた琴音は何の躊躇も無く一気に斬りかかった。
「ああああっ!!」
琴音のナイフはりえの右肩を切り裂いた。しかし、浅い。
戦闘用の刀などに比べると、八徳ナイフはどうしても威力が足りないのである。
「あれ、しんでないしんでないなんでだろちゃんとちゃんとさしたのに」
琴音はそう呟くと、
またもやナイフを振るい、今度はりえの左腕に突き刺した。
430 :
不幸な再会:2006/10/04(水) 03:20:50 ID:1pJp201q0
「うわぁぁぁぁ・・・!!」
今度の傷は深い。りえの絶叫がこだまする。
琴音の顔に、返り血が降りかかる。
琴音は一瞬考えた後、ある結論に達した。
「・・・そうか、くびをきらないからしなないんだね」
そうして、琴音は、ナイフを、振り上げた。
りえの目に、琴音の動きがスローモーションのように映る。
振り降ろされるナイフ。琴音の狂気に満ちた表情。
りえの体は恐怖と痛みで硬直して動かない。
彼女は自分の命が終わる瞬間を見続けるしかない筈だった。
――しかし。
何かが飛び込んできたかと思うと、
琴音が3メートル程吹き飛ばされていた。
「うう・・・」
琴音が顔を上げると、彼女の友人、松原葵が立っていた。
431 :
不幸な再会:2006/10/04(水) 03:22:14 ID:1pJp201q0
「琴音さん、一体これは・・、どういう事なんですか・・・?」
狼狽した表情で問いかける少女の名は、松原葵。
彼女は琴音に当身を食らわせ、琴音の凶行を止めたのである。
ただし手加減していた為か琴音のダメージは小さいようであった。
琴音はゆらりと、まるで幽鬼のように立ち上がった。
「あおいちゃんあなたもじゃまするのなんでなんでなんで」
「な・・・、何を言ってるですか・・・?人殺しなんて、ダメに決まってるじゃ、ないですか・・・。」
「みんながわたしのじゃまをするみんながわたしをころそうとするなんでなの」
「え・・・?え・・・?」
かつての友人の面影の欠片も感じられない姿を目の当たりにして、
葵は完全に狼狽していた。
葵は今の今まで必死の思いで琴音を探し回り、ようやく見つけ出したのだった。
しかし、彼女が見つけ出した人物は、もはや以前の琴音ではなかった。
「その子を殺さないと私が死んじゃうのに、何で邪魔するのよぉ!!!」
琴音はそう叫び、ナイフを拾い上げた。
432 :
不幸な再会:2006/10/04(水) 03:24:13 ID:1pJp201q0
【時間:1日目午後17時頃】
【場所:D−08】
仁科りえ
【所持品:拡声器・支給品一式】
【状態:硬直。右肩に浅い切り傷、左腕に深い刺し傷】
松原葵
【持ち物:お鍋のフタ、支給品一式、野菜など食料複数、携帯用ガスコンロ】
【状態:混乱】
姫川琴音
【持ち物:支給品一式、八徳ナイフ】
【状態:狂気。数箇所打撲、擦り傷。19時間後に首輪爆発】
※(B系共通ルート)
※(関連は110、117、152)
「うわー、ここの学校木造なんですかぁ〜」
校舎に感銘を受けながら鎌石中学校の昇降口を通り抜ける。
「さてと、ここに何か着れるものがあればいいんですけどぉ、いつまでもこのままっていうわけにはいけませんし」
あれから由依は遅い食事をとりつつ、ある意味郁未さんより大胆(由依談)になってしまった恰好をどうしようかと悩んでいた。
リュックを開けてみたが、支給品は衣類ではなく、普通のカメラ付き携帯電話。
誰か来てくれないかと思ったが、今の状態ではそれは自殺行為ということに気付き、断念。
結局リュックで自分のさらけ出された肌を隠しながら、衣類を求めて探し歩いていたのだった。
「それにしても、この携帯なんなんでしょうか。アンテナ三本立っているのにどこにも通じませんし…って、あ!」
昇降口を曲がったところに、この学校のものだろうか男女の制服が展示ケースに飾られている。
「わぁ〜この制服かわいい」
黒い色を主体に周りが赤いラインのブレザーにピンクのリボン。グレーのチェックのスカートに黒のソックス。
中学からずっとセーラー服だった由依にとってはこの女性用の制服全てが新鮮に映っていた。
「ちょっと着てみたいです。でも中学校の制服ってあたし着れるでしょうか…胸とか」
数分後、由依は望み通りに真新しい制服を着ることができ、ひとまずは恥ずかしい恰好から逃れることができた。
ただその表情はなぜか落ち込んでいた。
【時間:1日目午後4時00分頃】
【場所:D−06:鎌石中学校内】
名倉由依
【所持品:鎌石中学校制服(リトルバスターズの西園美魚風)、
カメラ付き携帯電話(バッテリー完全:備考参照)、
荷物一式、破けた由依の制服】
【状態:体中浅い切り傷と擦り傷、少々落ち込み気味。】
【備考:No.119:策略 対 一念の続き
携帯電話はNo.13の物とは違う普通の次世代携帯電話。
沖木島内でしか通話及びネットができないが、電話番号、アドレスさえわかれば、
沖木島中の全ての電話及びネット等につなげることが可能。なお、かかってくる電話は全て番号が通知される】
久瀬の口から出た言葉。
それはまさに予想もできないような話だった。
信じがたいその驚愕の真実を告げる久瀬の声が参加者たちの骨髄に響き渡ったが、
それはもうあまりにも信じがたい話だったので、誰も信じなかった。
「へえ」「ふ〜ん」「そりゃすげえ」「ぶったまげた」「馬鹿じゃねえの」「キモイ」「まぁ久瀬君だし……」
「……あれ?」
期待したリアクションが帰ってこないのでちょっと首を傾げる久瀬。
っていうか最後の、倉田さん?
代わりに罵声が飛んできた。
「うるっっっっせえよ久瀬!!」
聞き慣れた怒声だが、思わず首をすくめる。
盗聴器からではなく、司令室への直接通信。
来栖川綾香だった。
「あ、綾香さん。ちょうど良かった、先程の話はですね……」
「いいから!! さっき大声上げたこみパの馬鹿連中ぶっ殺しとけ! わかったら返事は!?」
「あのいやそれよりもですね、今の通告は非常に重要で」
「黙れ久瀬、久瀬のくせに口答えするな!!」
全然話を聞いてもらえなかった。
「そういう口は下の名前まで考えてから叩けこの権兵衛!
そうだお前なんか権兵衛で充分だ、おいそこの榊とかいう女!
お前厚労省の役人だったろ、そいつの名前権兵衛で登録! 復唱!」
綾香の怒声に、榊が冷静な声で答える。
「来栖川綾香様ですね?」
その静かな声音に内心で安堵する久瀬。
どうやら話を本線に戻してもらえそうだった。
「そうよ、だったら何! お前も権兵衛にされたいの榊権兵衛!?」
「はい、いいえ、久瀬様の姓名は久瀬権兵衛様で受理されました。オンライン入力完了」
「どうして!?」
「この国では金持ちの言うことは絶対ですボンボン野郎」
「ぼ、僕も一応金持ちなんだけど」
「そういう口は御自分で税金払ってから叩いてください権兵衛。
ああ早く帰ってメシくってオナニーして寝てえ」
「お前もういいから帰ってくれ!」
「……あ、じゃあようやくあたしの出番ですね……? あたし栗原と、」
「お前も帰れ!」
一言でも出番ゲット。
スキップしながら退場する栗原。
「誰か僕の話を聞いてくれえ!」
久瀬権兵衛の切実な叫びが艦内を駆け巡っていた。
【時間:夕方】
【来栖川綾香御一行様】
【状態:怒ってる】
→163、Dルート。
436 :
末期症状:2006/10/04(水) 07:22:00 ID:fzZLjRgl0
「…っ!」
澤倉美咲は突然の目眩に思わずしゃがみ込んだ。
目に見える光景は瞬時に赤く染まり、強烈な寒気が襲ってくる。
少し先を歩いていた梶原さんが駆け寄って来て、何事か私に呼びかけてくる。
『大丈夫?』
心配そうな顔でそう言っている様に聞こえた。
初めて会った時から励ましてくれたりする梶原さん。
でもなんで通りすがりの私に親切にしてくれるんだろう。
(あっ…)
それはとても簡単なこと。何で気がつかなかったんだろう。
私を油断させて… 殺そうとしているのだ。そうだ、そうに違いない。
そもそも殺人ゲームが行われている島で親切に声をかけて来る方がおかしいのだ。
信じられない失態、馬鹿正直に一緒に歩いてるなんてどうかしていた。
油断させて殺す、小説でもお決まりのパターン。
どうすれば… どうすればこの状況を打開できるのだろう…
恐怖で頭がどうにかなりそう。だけど…
(いえ、もっと冷静に、クールになるのよ澤倉美咲)
そう、相手が殺す気なら… 私も殺すしかない!
(甘えを捨てなきゃ美咲、今なら梶原さんも気がついていない筈…)
様子を伺うために顔を上げる、そこにいる梶原さんは相変わらず同じ顔をしていた。
そんな顔をしても無駄なのに、演技はもうばれたのだから。
(やるなら今しかない!)
私は両手で持っていたプラスチック製の盾を、思いっきり彼女に叩きつけた。
437 :
末期症状:2006/10/04(水) 07:24:33 ID:fzZLjRgl0
梶原さんは簡単に倒れた。
こんな非力な私でもその気になれば人を倒すことが出来るのに驚く。
叩きつけた衝撃で盾は足元に落としたが何の問題も無い、起きる前に拾える。
本当はこんな事したくはなかった。でも仕方がない、一歩間違えれば殺されるのは私だった。
さあ、止めを刺そう。この盾の硬さなら大丈夫。思いっきり頭に何度も叩き込めば死ぬはずだ。
(早く盾を拾わないと)
夕菜から視線を外す美咲。
―――その時ある事に気がつき、愕然とする。
(なんてことなの…)
私は周りを誰かに囲まれていた。
いつの間になのだろうか、五人、いや六人はいる。
いずれも人とは思えないほど大きく、妙な程に堂々と構えている。
気配すら無かったのに信じられない事態だった。
しかもそんな風に近づくなんて敵に決まっている。
(事実は事実よ、怖いけど落ち着いて美咲)
自分にそう言い聞かせる。
(一番近い相手までおよそ3m、先手を取れない距離ではない。一人当たり二十秒、いえ十秒で片づけてみせる。
それが六人なら… わずかに一分!)
なんだ、それだけの時間で敵を倒すことができるのではないか。
今の私になら簡単なはず、視野が赤く染まってから何故だかわからないけど感覚も冴え渡っている。
(がんばれ、私)
そうして美咲は素早い動作で盾を拾い―― そのまま目前の相手に叩き込んだ。
438 :
末期症状:2006/10/04(水) 07:27:07 ID:fzZLjRgl0
「そ、そんな…」
美咲は盾を叩き込んだ敵に呆然とした。
いくら自分が非力だからといっても身じろぎもしないとはどういうことなのか。
何度も何度も、盾が何処かにはじき返されてからも素手で殴り続けてる。
しかし敵は一向に倒れる様子も無ければ逃げる様子も無い。
既に手からは血と蛆虫が流れているが恐怖にはかなわな―――
「え…」
(う、蛆虫!?)
見間違え様がない、確かに手から蛆虫が流れ出てきているのだ。
慌てて掻き毟るが止まらない、それどころか勢いを増して出てくる。
「あぁぁぁぁぁ…」
喉の奥でも何かが蠢いている、痒くてたまらない。
がりがりがりがり
首を掻き毟っても出てきたのはやはり蛆虫。
あはははははは あははははははは あはははははは
同時に周りを取り囲んでいた者達が一斉に笑い出す。それは余りにも奇怪な声だった。
(逃げなきゃ… 殺される!)
我を忘れて走り出す。それでも大勢がついて来る、まるで先回りをしていたかの様に…
こわいこわいこわいこわい
こわいこわいこわいこわい
こわいこわいこわいこわい
(藤井くん、七瀬くん、由綺ちゃん、はるかちゃん、誰か助けて…)
439 :
末期症状:2006/10/04(水) 07:30:48 ID:fzZLjRgl0
梶原夕菜は目の前で起こっていた信じられない出来事を呆然と見ていた。
いきなり美咲は恐ろしい形相で何事か叫びながら盾で殴りかかってきたのだ。
その顔は控えめそうな性格からはとても想像が出来るものではなかった。
このままでは殺される、と思ったのも束の間、何を思ったのか辺りの木にも同じ様に攻撃をし始めた。
仕舞いには自分の首を血が勢いよく流れ出る程掻き毟る。
そして風が吹き木がざわめくのと同時に何処かへと走り去っていった。
理解しがたい事だったが、つまりこれはこういう薬なのだろう。
鞄の中にある注射器に視線を落とす。
人を発狂させて自傷行為をさせる。
幻覚でも見ているに違いない、もうきっと誰が誰だかもわかっていないだろう。
止めを刺そうとも思わない、あのままでは直に死んでしまう筈だ。
それに逆に返り討ちに遭いそうな様子だった。
(今後の使い方には気をつけないと…)
夕菜は置き去りにされた盾を見ながら思った。
美咲の残した道具を拾い終え夕菜は歩き出す。
目的地は、ホテル跡。
(地図でもはっきりと描かれているのだから、きっと休む所ぐらいあるよね)
440 :
末期症状:2006/10/04(水) 07:32:33 ID:fzZLjRgl0
『梶原 夕菜(022)』
【時間:1日目16:30頃】
【場所:F−05(ホテル跡に移動)】
【所持品:強化プラスチックの大盾(機動隊仕様)、注射器(H173)×19、他支給品一式】
【状態:軽い打撲と疲労】
『澤倉 美咲(094)』
【時間:1日目16:30頃】
【場所:F−05】
【所持品:なし】
【状態:L5末期症状、錯乱、手と首に深い傷、自傷行為を続けている、迷走中】
【079の続き】
441 :
フラグの因縁:2006/10/04(水) 10:55:09 ID:nXMix3u+0
「勝平さんやお姉ちゃんはどうしてるのかな」
藤林椋(091)は姉や恋人と合流すべく散策を行っていたが、
まだ誰とも会えずにいた。とりあえず休憩しようと木にもたれかかり、
手に持った支給品を見つめる。武器はベレッタM92、大ハズレである。
ルートHやルートIならアタリだったんだろうね。
「椋ちゃんこんにちわなの」
「え……あ、ことみちゃんこんにちわ。というか、すごい格好ですね」
目の前には一ノ瀬ことみ(006)が立っており、
その上半身は豪華な鎧に覆われ、巨大な剣を持っていた。なんというか、趣味が悪い。
いつの間に? そんなぼーっとしていたつもりはないんだけどと
訝しがりながらも、椋は友人との再会を喜んだ。
「私は初めて会ったのがことみちゃんなんですけど、
ことみちゃんはお姉ちゃんたちが何処にいるのか知りませんか?」
「知ってるの。でも教えてあげないの」
「えっ……」
442 :
フラグの因縁:2006/10/04(水) 10:56:04 ID:nXMix3u+0
気がつくと、椋は首に剣を突き付けられていた。
「こ、ことみちゃん、冗談はやめてください」
「私は知ってるの。朋也くんが図書室に来なくなったのは椋ちゃんの仕業だってことを」
「な、何のことを言ってるんですか?」
「椋ちゃんは図書室に行こうとする朋也くんに向かって、上目づかいで
『あ、あの…どこにいくんですか…?』
とか言って引き止めたの」
それなら椋とことみは友人になっていないのではないかという邪推はしてはならない。
「あれはクラス委員長として……」
「それを口実に色目を使っていただけなの。そうやって私のフラグをつぶしておきながら、
他のイケメンが現れたらあっさり乗り換えた尻軽女なの」
「それが魁クオリティーなんですよ! 勝平さんのことを悪く言わないでください」
「その勝平くんは、ゲーム開始早々に女の子の頭を鉈でかち割ってたの。
脳をぐちゃぐちゃかき混ぜて、愉悦の表情を浮かべてたの。
椋ちゃんは男を見る目がないの」
「そ、そんな……」
443 :
フラグの因縁:2006/10/04(水) 10:57:05 ID:nXMix3u+0
椋は恋人の豹変を聞かされて呆然としていた。ことみはさらに剣を近づける。
「命が惜しいなら服を脱げなの」
「な、何をする気ですか…」
「この島にはガイキチがいるの。淫乱の椋ちゃんには、
ピコピコしゃべる実験動物のお供の肉奴隷がお似合いなの」
「い、いやです」
「それなら私が脱がしてあげるの」
ことみは素早く椋を組み伏せると、服をびりびりと引き裂いた。
そして自らの下着をずらし、椋に股間の一物を突き立てる。
「きゃっ、やめ」
「ガバガバなの。乗り換えそうそうやりまくってるとは、
さすがはイケメンなら誰にでも股を開くと評判の椋ちゃんなの」
「だ、だれがそんなこと…」
「こんなヤリマン、肉奴隷にさせても喜んでよがるだけなの。
もういい、さっさと死ね」
「だったらテメェがやってることはなんなんだよこのふたなりやろぉーーーーー!!」
一瞬のスキをついて椋はベレッタの引き金を引こうとするが───
444 :
フラグの因縁:2006/10/04(水) 10:57:52 ID:nXMix3u+0
───グサリ───
「遅すぎるの」
一ノ瀬ことみ
【時間:午後2時半ごろ】
【場所:E−05】
【持ち物:書き手薬×3、ことみの剣、ことみの鎧、デイバッグ】
【状況:壊れてきた】
藤林椋
【時間:午後2時半ごろ】
【場所:E−05】
【所持品:ベレッタM92、デイバッグ(その場に放置)】
【状態:死亡】
(156の続き、Dルート)
ビッグバンさえ椋のマンコの中の出来事吹いたw
適当な理由でっち上げて生き返らせたら?
Dだしむちゃくちゃなほど面白い
もちろん生き返り前提ですが何か
449 :
神の高みで:2006/10/04(水) 15:33:52 ID:v4KbHpWD0
「遅すぎるの」
―――グサリ、とことみの聖浄肉棒が椋の秘所に突き立てられた。
「あ……ああぁっ……!」
椋の身体が一瞬だけ撥ね上がり、すぐに地に落ちて動かなくなる。
ことみの、一国を滅ぼすとまで称えられた究極の肉棒によって与えられた至高の快楽による
超性感刺激に耐えきれなかった椋の身体が、心臓の活動を停止したのである。
元来、年中無休で己が性感帯の開発に勤しんできた椋ならではの、皮肉な結末であった。
「せっかくだからこのまま死姦するの」
ゆっくりと前後していたことみの聖棒が、やがて速度を増していく。
それは止まるところを知らず、人間の目に映る速度を遥かに超えていくのだった。
残像すらも残さず、掻き消えたように見えることみの下半身。
ソニックブームによって周囲に撒き散らされる壮絶な破壊のエネルギーだけが
その凄まじさを物語っている。
450 :
神の高みで:2006/10/04(水) 15:34:46 ID:v4KbHpWD0
音の消えた世界に、やがて奇妙な変化が現れた。
超光速のピストンにより歪んだ時空に、ピシリと裂け目が走る。
それはまるで光速を超えることみの腰使いに、時空そのものが悲鳴を上げているようだった。
時空の裂け目に周囲に舞い上がっていた土煙が、落ちていたベレッタが、そして衝撃波で
倒された木々までもが飲み込まれていく。
「え……?」
ここに至って、ようやくことみも異変に気がついていた。
「こ、腰が止まらないの」
椋の秘所にくわえ込まれたままのペニスが、自分の意思とは別の衝動に
突き動かされているかのように、止まらない。
それどころか、死んだはずの椋の肉襞が、ざわ、と蠢いたようにすら感じられる。
否、
「…………!」
椋の秘所は、死んでなどいなかった。
戦慄することみ。
藤林椋は先程の衝撃で紛れもなく、心停止に陥ったはずだった。
「どうしてなの……!」
「ふふふ……」
「な……っ! 生きていたの、椋ちゃん!」
451 :
神の高みで:2006/10/04(水) 15:35:27 ID:v4KbHpWD0
驚愕に打ち震えることみ。
奇妙に静かな、椋の言葉がそれに答える。
「ふふふ……忘れたのことみちゃん、私の処女膜は素粒子一つ、無限小の時間さえあれば
再生可能なのよ……? 心臓など私の組織の中では瑣末な存在」
「そ、それでも人間なの?」
「人間……? 胸と同じで志も小さいわねことみちゃん。ヒトなどに留まっていては
イケメンセックスによる快楽など得られないわ。数多のイケメン生物、数多のイケメン無機物、
数多のイケメン神霊体を制してきたこの処女膜こそが私、私こそが永遠の処女膜!」
「ば、化け物なの……」
「言ってくれるわねことみちゃん。貴女だって、その腰使いはもう人間のレベルを
遥かに超越しているわ。私に言わせればまだまだだけどね」
妖艶に笑む椋。
「油断したわね一ノ瀬ことみ、もうここは……私の世界」
「……!?」
いつの間にか、周辺の様子が大きく変わっていた。
先程まで確かに存在していたはずの、沖木島の景色がどこにもない。
代わりにそこにあったのは、無限の桃色。
「ようこそ、イケメンふたなり一ノ瀬ことみ」
正常位で繋がったことみには、舌なめずりする椋の蟲惑的な笑みから
視線を逸らすことができない。
「これから貴女に永遠の快楽を教えてあげる―――。
藤林椋に挿入した、貴女自身の愚かさを知りなさい……!」
性戦が、始まる。
452 :
神の高みで:2006/10/04(水) 15:36:06 ID:v4KbHpWD0
【時間:存在しない】
【場所:ペニスとヴァギナの間にあるという時空の狭間、桃色世界】
一ノ瀬ことみ
【持ち物:書き手薬×3、ことみの剣、ことみの鎧、デイバッグ】
【状況:大ピンチ】
藤林椋
【所持品:ベレッタM92、デイバッグ(その場に放置)】
【状況:ヤる気マンマン】
→172、Dルート
ことみをヤリマンの同類にするなよボケ
―――性戦が、始まる。
バロスw
ともかく、連投回避お願いします
455 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:06:36 ID:/DejeWhT0
「―――ごめんなさいね姫川さん。やっぱり一人で待つのは心細いんで」
宮沢有紀寧 (108)は殺しを強制させた姫川琴音(084)を待つことなく、村の方向へ向かって歩き出していた。
本来ならば、琴音が持ってくる筈の支給品を元いた場所で待っているつもりであったが、有紀寧は方針を変えた。
ゲームに乗ったかもしれない人間が襲撃をかけてきた場合、非力な彼女の力では抵抗できないからだ。
確かに、有紀寧に支給された時限式の起爆リモコンは非常に有用だが、奇襲は勿論のこと、使用した参加者に逆上されて殺されかねないなどと使い勝手が悪い。
使うならば、明らかに生への執着と死への恐怖がある者にしか効果は望めないだろう。
つまり、解除をちらつかせて自分に隷属させる必要があるのだ。先程の琴音のように。
それで集めた奴隷達で身を固めるのもいいが、解除の希望を抱いた奴隷共が結託し、リモコンを奪われでもしたら元も子もない。
実際解除する機能などありはしないのだ。絶望の矛先は確実にこちらへと向く。
リモコンという凶悪な武器を持っているが、自分は非力な少女。
忘れてはいけないことだが、こんなリモコン一つで安心してはいけないのだ。
だから、琴音に拳銃などの強力な支給品を求めたのだが。
(あの様子では、あまり期待しないほうがよさそうですね。―――まあ、彼女には適当にゲームを掻き回す役目でも担ってもらいますか)
琴音の様子は恐怖に顔を歪め、思考も満足にできないほど錯乱していて見るに耐えなかった。
あの調子では、彼女の元に支給品を献上することはおろか、満足に人も殺せないのではないか。
そう思ったからこそ、早々と切り捨てた。
元より生かすつもりもなかったし、何もしなくても二十四時間後には勝手に死んでくれる。
456 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:11:13 ID:/DejeWhT0
彼女はある意味、ただの実験体だ。
本当に爆発するのかどうかは分からないが、首輪が作動したことは確か。それを使って人間も操れることも確認した。
リモコンの効果を望めるなら、本来使うべきは彼女のような非力な存在ではなく、有紀寧を守ってくれるような強力な存在だ。
そういった存在を心理的に意のままに操れるのならば、有紀寧の生存率は格段に上昇することだろう。
だが、そんな彼等も彼女からリモコンを取り上げようと躍起になることは分かっている。
素直に従わせるようにするには、いくらか偽証の材料が必要だ。
例えば、自分のリモコンは自身の首輪と連動していて、自身が死ねばそれに伴いリモコンに照射された首輪も爆発するといった風にだ。
それを嘘だと、安易に否定することは決して出来ない筈だ。確証するには、自分の命を賭けなければならないのだから。
そして、有紀寧はこの首輪が志望判定の役目を担っているということにも気が付いている。
主催者はゲームだと言ったのだ。楽しむ要素があるということになる。
ゲームの趣旨は殺し合い。つまり、それらが娯楽になるということだ。
ならば、どこかで観察しているか、もしくは傍聴していないと楽しめないではないか。
そういった予測的な話を聞かせてやれば、首輪とリモコンが連動しているという偽りの事実にも一層と現実味が増すであろう。
そのためにはまず、利用できそうな人材を探すことから始めなくてはならない。
彼女の支給品は、非常に貴重であるため、使用時は慎重になる必要がある。
回数制限が限られているのだ。出遭った参加者に手当たり次第にリモコンを使うわけにもいかない。
だから、他の武器も必要であるし、リモコンを使用する者の見極めも必要となってくる。
何も真っ向から自分がマーダーになる必要はない。表面上は非力で気弱な参加者を装えばいいのだ。
457 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:13:38 ID:/DejeWhT0
今の位置から比較的近いのが氷川村。そこならば、参加者も夜が更ける前に集まることだろう。
そこで、今後に役立つ人材という名の哀れの犠牲者と合流することを方針とした。
ゲームに乗り気の人間に関しては、問答など必要なしに襲われる可能性もあるのだ。
琴音など捨て置き、急いで村へと行って安全を確保せねばならない。
当然身を隠すという意味ではない。身を守らせるためにだ。
歩いて数時間。氷川村がもう間近といった場所で。
内心、歪な考えをしていた有紀寧の視界に、とある参加者が映る。
―――一少年と小さな少女の姿だ。
少年のほうは少女を気遣いながら歩いており、少女もはにかみながら頬を緩ませている。
兄弟であろうか。いや、顔の造詣があまりにも違って見えるので、参加者同士が共に行動しているのだろう。
しかし、好都合。
少年が少女を保護したと見れば、明らかにゲームには乗っていない者達だ。
それも格好の獲物、お人好しだ。
拳銃までも所持しているのだから、ネギを背負ってきたカモに見える。
ふと考え思い浮かべた名案に、彼女は表情を笑みへと形作った。
おもむろにバックから筆記用具であるシャープペンを取り出し、躊躇なく自分の前腕に突き刺した。
苦痛に顔を歪めるが、構わず刺したままのペンを縦へと移動させる。
グチュリと、肉を抉ったところでペンを引き抜き、血液が湧き出てきた部分を摘み上げた。
圧迫されることにより少しずつ洩れてきた自身の血を、そのまま手首まで滴らせる。
(ごめんなさい。あなた達はわたしに遭った不運を嘆いてくださいね)
有紀寧は手に持つ先端が血濡れのシャープペンを草むらへ放り投げて、二人へ駆け寄った。
ほい
459 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:15:35 ID:/DejeWhT0
「祐介お兄ちゃん、もう村が見えてきたね」
「ああ。もう少しだから、初音ちゃんもがんばって」
目指していた氷川村までは、もう目の届く範囲だ。
お互いの探し人が、村にいることを願って二人は互いを労う。
「お姉さん達、いるといいね」
「うん。ここにいなくても、また探せばいいよ」
「そっか。そうだね……」
長瀬祐介(073)は内心、柏木初音(021)のことを不憫に思っていた。
名簿を見る限り、いくつかの苗字が重なる親類をいくつも見受けられたが、中でも柏木姓が一番多いというのも理由の一つだ。
それでも健気に姉達を探す姿を見ていると、こんな島で殺し合いをする参加者達が血も通っていない化け物に思えてしまう。
こんな小さな子が殺し合いという凄惨な環境に放り込まれながらも、決して自分を見失わない強さを持っている。
それが寂しさから来る求めであっても、自我を失う殺人者より何倍もマシというもの。
何の力もない彼女がそう在ろうとしているのだ。
電波が使えない程度でうろたえた自分が恥ずかしくなる。
初音を守るという責任感が、既に祐介の中で芽生えているため、確固たる決心が揺らがない限り彼女を守り続けるだろう。
自身の知り合いとも合流したいが、それでも初音の姉達を優先させた。
彼女に早く、本当の意味での笑顔が浮ばせたかったから。
「初音ちゃん。村に入ったからといって気を緩ませちゃダメだよ」
「うん。怖い人たちがいるかもしれないからだよね」
コクリと祐介は頷いた。
村に寄り付くというのは一種の賭けだ。
ゲームに乗ったものも乗らないものも集まってしまうからだ。
こんな状況だからこそ、人というのは無意識に人を求めてしまうものである。
本来なら寄り付きたくはなかったが、知り合いを探すというのなら行かざるを得ない。
460 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:17:01 ID:/DejeWhT0
二人は心を引き締めて、歩を進めようとしたその時、ザザッと何かが駆け寄る音を耳にした。
ビクリと、肩を振るわせた二人だが、すぐさま祐介は必死に拳銃を取り出して、音の方へと銃口を向ける。
「―――さ、下がって初音ちゃん……!」
「え、え……?」
初音を背後にやり、銃口を震わせながら警戒する。
逃げようとも思ったが、そんな暇はなさそうだ。
祐介の視界に、一人の少女が飛び込んできたからだ。
「た、助けてください……っ!」
飛び込んできた少女―――宮沢有紀寧は瞼に涙を湛えて無遠慮に祐介に縋りついてきた。
肌が触れ合う距離にまで接触してきた少女に対して、健全な男である祐介は、それはもう慌てる。
「あ、いや、その! だ、大丈夫……かな?」
「……何やってるの祐介お兄ちゃん。それよりも、この人怪我してる……」
初音は慌てる祐介をジト目で見つつ、有紀寧の腕から滴る血を目敏く見つける。
有紀寧は祐介の胸に顔を埋めながら、身体を振るわせた。
「わ、わたし……。人殺しなんて、い、嫌だったので……。誰かと合流しようと、したら……」
「や、やられたの……?」
コクリと小さく有紀寧は頷いた。
461 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:22:30 ID:/DejeWhT0
(さて、接触は上手くいきましたね……)
現在は祐介の胸に恐怖で縋りつく、一人の非力な少女。
その背を初音がゆっくりと撫でていた。
祐介も手に余りつつも、まったく警戒はしていない。
やはり、お人好し。有紀寧は嘲笑した。
「その……ごめんなさい。もう大丈夫です」
「あ、うん。傷はどうかな? 痛む……?」
「いえ。大分楽になりました。ありがとうございます」
祐介の胸から離れながら、軽く傷の手当てをしてくれた初音へと頭を下げた。
少し居直った有紀寧は二人に事の説明をすることにする。
「わたし、もう何が何だか分からなくて……」
「大丈夫。何があったか、ゆっくり離してみて」
「……はい。最初に、女の子と会ったんです。怖かったけど、勇気を振り絞って声を掛けました……
そしたら、その子も答えてくれたんです。ゲームには乗らない……皆で一緒に脱出しようって……」
「……そっか。それで……?」
優しく問い掛ける祐介の言葉を受けて、有紀寧は悲痛そうに顔を歪めた。
その顔を見て、居た堪れなくなった初音は祐介を制止しようとするが、彼は軽く首を振る。
誰に襲われたかという情報は、自分達が生きる上でも必要なのだ。
そう祐介は自分に言い聞かせて、有紀寧へと同情の視線を送りながら続きを促した。
彼女は弱弱しく頷いた。
「じ、自己紹介して、仲良くなった筈なんですっ。な、なのに! 彼女はわたしの首をペンで指そうと……っ。
必死で抵抗して、腕で庇って……。こ、怖くなったから逃げてきたんです……」
「自己紹介したの? 名前は覚えてる……?」
462 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:24:28 ID:/DejeWhT0
有紀寧は顔を伏せた。
「―――姫川琴音」
そう小さく呟いた。
有紀寧が身体を震わせる様子に、祐介も初音も彼女を労わった。
もう大丈夫、などといった言葉を二人は投げかけてくる。
有紀寧は俯いた表情の下で、口許を吊り上げていた。
(あっさり信じちゃいましたね。まあ、二人が姫川さんの知人じゃなくて僥倖といったところでしょうか)
琴音の知人であったならば、普段の人格により否定されたかもしれないが、知らない人間ならば仕方ない。
仮にこの先会ったとしても正気じゃないのだから、まったく問題ないだろう。
だが、自分は心優しい少女なのだ。これだけでは詰めが甘い。
「で、でも! 彼女も何か事情があったかも知れないんです……。もし見つけたりしたら……助けてあげてください……」
「そうだね……。こんな首輪まで填められて、ゲームを強制させられてるんだ。無理もないよね」
自我を狂わせるゲームの存在に、祐介は歯噛みする。
初音も、悲しそうに目を伏せた。
―――その反応だ。
これで彼等は完全に甘い思考の人種だと判断する。
彼等にリモコンを使えば、隷属できる自信もあった。
だが、必要ない。
こんな甘ったるい人間の価値など、一つしかないではないか。
463 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:27:04 ID:/DejeWhT0
「うん、わかった。彼女をもし見つけたら、頑張って説得してみるよ」
「あ、ありがとうございます……! わ、わたし、もうどうしていいか分からなくて……」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。ちゃんと話せば分かってくれるよ!」
「はいっ、はい……っ!」
ついでに感謝の涙を浮かべておく有紀寧。
死の秒読みが始まっている琴音をどう説得するのか拝見したいものだ。
自分も含めて、どいつもこいつも道化ばかりだと思えてしまう。
真摯に言葉を吐く二人を嘲笑いながら、有紀寧は濡れた瞳を祐介へと向ける。
「あ、その。わたし、一人では怖くて……」
「うん、勿論分かってるよ。初音ちゃんも、それでいいよね?」
「お姉ちゃんもわたし達と一緒に行こっ」
「あ、ありがとうございます……!!」
二人が笑顔で、精神的に弱っているであろう有紀寧へと笑いかける。
あまりの滑稽さで失笑を噛み殺すのに苦労しながらも、嬉しさの笑みを湛えて言葉を吐いた。
あくまで見せ掛け。あくまで偽証。
―――断言できる。自分にとって彼等の価値など一つしかないではないか。
(―――精々、わたしの盾となってくださいね。“お兄ちゃん”)
仮面の表情の下で。彼女はほくそ笑む。
464 :
偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:29:01 ID:/DejeWhT0
『宮沢有紀寧 (108)』
【時間:1日目午後2時頃】
【場所:H−7、】
【持ち物:リモコン(5/6)・支給品一式】
【状態:前腕に軽症(治療済み)。強い駒を隷属させる。】
『長瀬祐介 (073)』
【時間:1日目午後2時頃】
【場所:H−7、】
【持ち物:コルト・パイソン(6/6) 残弾数(19/25)・支給品一式】
【状態:普通。氷川村へ行き、初音の姉を探す】
『柏木初音 (021)』
【時間:1日目午後2時頃】
【場所:H−7、】
【持ち物:鋸・支給品一式】
【状態:普通。祐介に同行し、姉を探す】
「その他:094と122の続きです。共通でお願いします」
霧島聖(032)は七瀬と分かれた後、
鎌石村中心部の民家で探索を行なっていた。
妹を探す為、そしてある物を探す為だ。
ある物を探す作業は、終わりを迎えようとしていた。
「ふむ、これだけあれば応急処置をする分には困らないか。」
彼女の鞄には、包帯・消毒液・化膿止め・糸などの、治療用の道具一式が入れられていた。
彼女はこの絶望的な状況下においても、医者であり続けるつもりなのだ。
「本当ならもっと色々と道具が欲しいんだが、診療所は遠すぎるからな。」
そう呟き、外に出ようとするとしたが、聖はある事に気付きその足を止めた。
丁度少女、一ノ瀬ことみが家に入ってこようとしている所だったのだ。
相手も当然自分に気付き、慌ててナイフを取りだし、そのまま固まっている。
「待て待て、私は医者だ。誰かに危害を加えたりするつもりはないんだ。」
「君もこの家に用があるのか。私はもう外に出るから、後は自由にしてくれたまえ。」
そう言うと、両手をあげ、敵意が無い事を示しながら少女の横を通り過ぎる。
ことみの方はまだ警戒心を解いていないのか、黙って聖の方を見据えていた。
聖はある事を思い出し、振り返った。
「ああ、私は妹を探しているんだが、霧島佳乃という子を見なかったか?」
「ごめんなさい、このゲームで出会ったのは、あなたが始めてなの。」
ことみは初めて口を開いた。
「そうか。では失礼するとしよう。」
聖はそう言い、立ち去ろうとした。
ことみは少し考えた後、ある事を決心した。
「待って!あなたはこれからどうする気なの?」
「私か?私は妹を探し出し、それからゲームを脱出する方法を考え出すつもりだ。」
「なら、私と一緒に行動すれば良いと思うの。私の目的も、脱出する事なの。」
そう、ことみは聖を信用する事にしたのだ。
聖はゲームに乗る気は無いと言ったが、勿論ただそれだけで信用するのは危険過ぎる。
しかし、理屈では表せない、信用出来る独特の雰囲気のようなものを、彼女は持っていた。
ことみはそれに賭ける事にしたのである。
どうせ理屈でいくら考えても、相手が100%信用出来るかどうかは分からないのである。
「・・・ふむ。悪くない案だ。しかし、私はゲームに脱出する事よりも、
まずは妹を探し出す事を優先するつもりだぞ?」
「問題無いの。もっと人を集めないとこのゲームを脱出するのは無理なの。
人探しをするのは大歓迎なの。」
暫くして、聖が口を開いた。
「わかった。なら一緒に来ると良い。」
「! 聖先生、ありがとうなの!」
聖は笑みを浮かべつつ、語りだした。
「君は幸運だぞ。私なら多少の怪我はすぐ応急処置出来る。」
「おまけに多少は腕に覚えがあるつもりだ、絶対に人殺しはしないがな。」
「更にある程度は頭も良いつもりだ。相当頼もしい人材である事は間違いないだろう。」
(・・・・聖先生ってもしかして、結構お調子者なの?)
いきなり先行きに不安を覚えつつも、
一ノ瀬ことみと霧島聖の知性派(変人でもあるのだが)コンビは歩き出した。
【時間:1日目午後5時過ぎ】
【場所:C−03】
霧島聖
【所持品:支給品一式、治療用の道具一式】
【状態:健康。佳乃を探し、それからゲームの脱出を図るつもりである。】
一ノ瀬ことみ
【持ち物:暗殺用十徳ナイフ、支給品一式】
【状態:健康。仲間を集め、それからゲームの脱出を図るつもりである。】
※(ルートB系共通ルート。関連は062、120)
「よう、気分はどうだ?」
「……最悪だな」
「俺は仲間が増えて最高だけどな」
高槻がいまだ宙吊りのままケケケと笑う。
同じように隣にぶら下がっている国崎往人はチッと舌打ちをすると恨めしそうに呟いた。
「……なんなんだこれは?」
「変なチビガキがいるんだけどよ、今はどっかいっちまったがそこら中にトラップを仕掛けて回ってるみてぇでな」
後は想像出来るだろ、と続いた高槻の言葉に往人は深く溜め息をつきながら辺りを見渡す。
往人の真下には、背負ってきた青年月島がの姿があった。
勢い良く背中から落ちていたようだが特に怪我はなさそうだ。
「あの兄ちゃんは何だ?」
往人の視線に気付くと高槻は言う。
「気絶してたから連れて来た。言っとくがやったのは俺じゃないぞ」
「お前今の状況わかってるのか?ほっときゃいいじゃねぇか、お人よしにもほどがあるぞ」
「……耳が痛いくらい言われ慣れてるさ」
ムスッと返す往人の言葉に高槻は下卑た笑いを上げた。
「ぴこっ?」
気付けば今までどこにいたのか、ピコ(仮)が往人をじっと見つめている。
「ポテト、お前も来てたのか」
「あぁ?その畜生のこと知ってるのか?」
「いや知り合いのペット何だが……」
高槻は安堵の溜め息を漏らしながら、これで厄介払いが出来るとほくそえんでいた。
「ぴこぴこ後をついてきて五月蝿くてしょうがねーんだ、引き取ってくれ」
「……まぁ無事に降りれたらな」
「……ちげぇねぇ」
国崎往人
【所持品:なし】
【状態:宙吊り】
高槻
【所持品:なし】
【状態:宙吊り】
月島拓也
【所持品:なし】
【状態:気絶中】
【場所:F-7西】
【時間:一日目17:45頃】
【備考:往人の所持品と高槻の所持品は木の根元に散在、詳細は下記に。
トレカフ TT30の弾倉(×2)ラーメンセット(レトルト)化粧品ポーチ 支給品一式(×4=往人と名雪と拓也と高槻のバッグ)】
※共通、関連は159・166
「ん…僕は、何をしていたんだ?」
橘敬介(064)はまだ麻酔が抜けきっておらず力の入らない体を無理矢理起こした。
僕はどうしてこんなところに倒れていたのだ?
訳のわからないままこの殺し合いに参加させられて、とりあえずは安全な場所に身を隠すことを考えて…それから?
記憶がない。何か首にちくりとした痛みを感じたところまでは覚えているのだが。
敬介は不審に思い、首のあたりをさすってみた。
「…! これは」
敬介の手に当たったもの、それは青い色をした小型の矢だった。
「麻酔針…か? 何にせよ、これが原因なのは間違いないな」
ゆっくりと抜き取った後、すぐにそれを投げ捨てた。刺さったところを撫でてみても、出血はない。どうやら大丈夫なようだ。
「眠っていたせいか、やけに頭がすっきりしてるな…さて」
ぐっ、と背伸びして、これからの方針を組みたてる。
安全な場所を探す。まずはそれが目的だが、それからどうする。じっと何もせず待つのか。それともそこを拠点に何か行動を起こすか。
出来れば、観鈴と晴子だけは保護してやりたいところだ。特に観鈴はあんな別れかたをしたとはいえ、たった一人の娘だ。是が非でも助けなければ。
「どうするにせよ、まずは拠点の確保だな…急ごう」
敬介は荷物を持って歩き出した。空を見てみると、赤い色が一面を覆っていた。もう夕方になっていた。
「…この分だと、いくつか戦闘が起こっていても不思議じゃないな…クソッ」
もし、自分がマヌケに眠っていた間に、二人に何かあったら――そう思うと、敬介の足は自然と早くなるのだった。
やがて、敬介は一軒の空き家を見つける。周りからは目立たないように、ひっそりと佇んでいた。
「ここなら、隠れ場所には向いているかもしれない」
すぐにそう判断した敬介は、中に殺人鬼が潜んでいない事を願って静かに扉を開けた。そして、注意深く中を窺う。すると、一人の少女が椅子に座っているのを見かけた。
(先客か。あの様子では、敵には見えないが…)
声をかけるべきか迷っていると、相手の方から声がかかった。
「…こんにちは。そこに誰かいるのは分かっています。安心して下さい。私に敵意はありませんから」
落ち着いた声色で答えたのは、天野美汐(005)だった。敬介は存在を悟られていたことに驚きながらも、ゆっくりと中に入っていった。
「見ぬかれていたか。どうやら、僕に忍者の才能はないようだな」
「そうでもありませんよ。扉が軋む音がしなければ、多分分かりませんでした。この島、小鳥の囀る声さえしないので」
無表情に美汐が答える。敬介は苦笑いしながら荷物を床に下ろした。
「君は、ずっとここにいたのかい?」
「ええ。特にする事もありませんでしたから」
「友達とか、家族とかはいないのか?」
「友達はいますが…わざわざ探しにいくほどでもありません」
しれっとした顔で、美汐は答える。敬介は肩をすくめながら、
「ここから移動する気がなかったら、ここを僕の行動拠点にしてもいいかい? 僕には探している人がいるんでね」
「構いません。ゲームには乗っていませんから」
「良かった。それじゃ、挨拶くらいはしておこうか。僕は橘敬介だ。橘でいい」
「天野美汐、と申します。天野でいいです」
互いに頭を下げた後、敬介は支度を始める。
「橘さん、あなたの支給武器は?」
椅子に座ったまま、美汐が尋ねる。
「さぁね…僕もまだ見ていなかった」
そう言いながら、敬介がデイパックの中から取り出した物は。
「ボウガン、か。やれやれ、とんだ皮肉だ」
「何か嫌な思い出でもあるのですか?」
「さっき、首のあたりを麻酔付きの矢で撃たれてね。今まで夢の中にいたってわけさ」
「それはお気の毒に」
全然そうは思っていなさそうに美汐が言う。敬介はボウガンと矢のストックを持ち、小屋を出ようとする。
「荷物はここに置いておくよ。また後で戻ってくる」
「分かりました。泥棒さんには盗られないように見張っておきましょう」
「それは心強い」
敬介は少し手を上げた後、小屋を後にした。
「さて、次は観鈴たちを探さないとな…まずは平瀬村のほうにでも行ってみるか」
デイパックがなくなった分、体は若干楽になった。森を歩きながら、敬介は思う。
(確かに、小鳥の囀る声さえしない…いや、それ以前に動物の気配すらない。木や植物も、同じようなものばかりだ)
目の前の風景が、何となく作り物のように思われる。ひょっとしたら、と敬介は考えた。
「この島は…殺し合いのためだけに作られた人工島だとでも言うのか」
馬鹿馬鹿しいと思うが、何しろ主催者がイカレた性格だ。本当だとしても不思議はない。
「…いや、その前に観鈴たちを探すのが先だ。急ごう」
先を急ごうとした時、男声のくぐもった声が聞こえてきた。
――1回目の、死亡者の発表だった。
064 橘敬介
【時間:1日目午後6時前】
【場所:I−6】
【持ち物:マスターモールドMC−1(矢の残りは18本)】
【状況:観鈴と晴子を探す、デイパックは美汐のところへ放置】
005 天野美汐
【時間:1日目午後6時前】
【場所:I−7】
【持ち物:様々なボードゲーム・支給品一式】
【状況:普通。ゲームには乗らないが、目的もない】
【備考:B、H系ルート】
>おばさんとおじさん
このままだと094と矛盾するので分岐になるよ
すまん、94話見逃してた。
ということでこの作品はアナザー逝きにしちゃってください
ルートB、ルートB'専用シナリオ
(ルートB−2、B−4、B−5、B−6、B−7、B−8は矛盾するので)
→063
⇔097
⇔099
笹森花梨は逃げていた。背後から迫るイレギュラー、岸田洋一から。
「うわーん。しつこいよー!」
「黙れ雌豚、貴様だけは許さん!」
どうやら先ほどの砂攻撃が岸田の堪忍袋を爆発させてしまったようで、
今の岸田は目の前を逃げる花梨しか見えていないようだった。
「や…やばっ。どんどん近づいてくる〜!」
一度チラリと後ろを振り返る。徐々に岸田は花梨に追いついてきていた。
やはり花梨も女の子である。男である岸田とは身体能力に違いが出てしまうのだ。
2人の距離はどんどん縮んでいく。
「もらったァ!」
次の瞬間、岸田が持っていたカッターを構え一気に花梨に飛び掛った。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
――ボーン!
「え?」
「なにっ!?」
突然何かが発射される音がしたと思ったら、次の瞬間にはよく獣を捕らえたりするのに使う捕縛用の網が岸田を捕らえていた。
「大丈夫? 怪我しとらん?」
「あ…ありがとう………」
声と共に近くの茂みからバズーカ砲を持った保科智子(096番)が姿を現した。
どうやら、そのバズーカから捕縛ネットを発射したようだ。
「くそぅ! これしきのことで!」
岸田は早速カッターで網を切ろうとしていたが、意外とネットの糸は硬く悪戦苦闘しているようだった。
「うわっヤバ! ねえ、今のうちに逃げよう!」
「せやな。こっちや!」
智子の指差す方――鎌石村へと2人は駆け出しその場を離脱した。
「自己紹介がまだやったな。保科智子や」
「笹森花梨なんよ」
「ちっ。あの雌豚どもめ……」
それから1時間ほどして岸田はネットを破って脱出した。
「――まあいい。まだ時間はたっぷりとある。存分にこのゲームを楽しむとしよう……
まずは……そうだな。人が集まりそうな場所を探してみるか………」
岸田はニヤリと笑うと自身も智子たちが走っていったほうへ歩いていった。
【時間:午後2時】
笹森花梨
【場所:C−03(鎌石村)】
【所持品:特殊警棒、海岸で拾ったピンクの貝殻(綺麗)】
【状態:健康。今は岸田から逃げる】
保科智子
【場所:C−03(鎌石村)】
【所持品:専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾(残り2発)、支給品一式】
【状態:健康。今は岸田から逃げる】
岸田洋一
【場所:C−02】
【所持品:カッターナイフ】
【状態:健康。とりあえず花梨たちを後を追う。マーダー(やる気満々。イレギュラー)】
訂正
141 おつかい役1号
>「ええと…それで宗一君たちが探している人って誰なんですか?」
>参加者名簿を開いた渚が宗一たちに尋ねた。
『宗一君』を『那須さん』、『渚』を早苗に訂正お願いします
岸田厨さん一人リレー必死ですねw
そこは、掘っ立て小屋のようなものだった。
源五郎池淵、多分この池を管理するためであろう物置のようなところに、相良美佐枝は隠れていた。
今は使われていないのであろう、天窓を開け喚起しても、空気はまだ埃臭い。
(開始数時間で20人以上・・・一体どうなってるんだい)
溜息。地べたに腰掛け、ガダルカナル探知機を起動させながら美佐枝は呟いた。
この探知機の機能を知った彼女は、その足で逃げ隠れ場所を確保すべく氷川村へ向かった。
しかし、よくよく考えてみれば隠れる民家のある村では、人の集まりも激しくなるであろう。
・・・戦闘面では全く歯が立たない自分の装備、まずはどこかに隠れ状況を整理するしかなかった。
彼女がこの物置を見つけたのは正に偶然、氷川村へ進路をとっていた最中であった。
運が良かったとしか、言いようがない。
美佐枝はいまいちど自分の名簿を広げる。
そこには、いくつもの印があった。
斜線は死亡者、丸で囲んだものは殺害者。
筆記用具はここで見つけた、それ以来美佐枝は敵対関係などを細かくチェックしている。
この場所についてから30分弱。
少々の休憩の後、美佐枝はひたすらそれに時間を費やした。
殺害者に関してはうまくタイミングがかち合わないと分からなかったが、これまでの死亡者の確認は既に終わっている。
ふぅ、と溜息。・・・美佐枝には、まだ考えることがあった。
この探知機の不安、よく見ると右上画面にバッテリーを表す電池のマークがあるのだ。
最初つけたであろう時は満タンだったと思うが、今は三分の一ほどの空間ができている。
(まずいね、一端電源を切った方がいいのかもしれない)
正直、それは心もとない選択である。
今は安全だろうし、切手も大丈夫かも知れないが・・・
その時、電池マークの下にもまた違うマークがあるのに気づいた。
(あれ、こんなものあったかい・・・?)
触れてみる、ピッという音と共に一つのウィンドウが現れた。
「・・・・・・・ロワちゃんねるポータブル?」
不思議そうに見つめる美佐枝、この手のことにはうといらしい。
色々いじってみて、何とか違う画面に移るとその内容に驚いた。
自分の安否を報告するスレッド
1:藤林杏:一日目 12:34:08 ID:ajeogih23
見知った名前である。
・・・安心した、その内容を見る限り彼女はゲームに乗っていないことになる。
「よし、いっちょあたしもやってみるか・・・って、あれ。どうやって書き込めばいいんだい?」
残念、この探知機はロム専用なのでそれはできないのだが美佐枝は奮闘し続ける。
数分後、諦めてウィンドウを閉じ(これまた苦労して)美佐枝は元のマップ画面に戻った。
(・・・そう言えば、あの子はまだ無事かね)
ふと、杏のことが気になった。まだあの子は無事だろうか。
ピっと、マップ上の自分だと思われる光点に触れる。
(047)相良美佐枝
プロフィール画面、勿論美佐枝の物。
ここで名前の隣の番号に触れると、番号の一覧が出てそこから人の検索ができるのだ。
慣れた手つき、もう探知機の把握は完璧であった。
(藤林、藤林・・・090、と)
ピッ。杏の写真はカラーである、まだ無事な証拠だ。
よかった、素直にそう思った・・・その瞬間。
殺害数 1
その表示に、驚愕した。
見間違い・・・ではない。
もう一度ロワちゃんねるを開き彼女の書き込みを確認するが、現実に変化はない。
(何てこったい・・・)
溜息、そして愕然。
気がついたら、美佐枝はこめかみに手をやり目を閉じていた。
-------------彼女が杏の身に起きていたことをチェックできていれば、この誤解は生まれなかったのかもしれない・・・
487 :
補足:2006/10/04(水) 23:02:06 ID:Stsk6VPH0
相楽美佐枝
【時間:1日目4時50分ほど】
【場所:H−06】
【持ち物:ガダルカナル探知機(残り電池2/3)・支給品一式】
(美佐枝がどこまで敵対者を理解しているかは書き手さんにお任せします)
【状況:杏に疑念。冷静に交戦を見守っていたが、少し混乱】
(関連・16・155)(美佐枝の支給品が探知機なのでAルート系)
(まとめさんへ:112は愛佳が生きているので、Aルートではないと思います;)
祐介達と別れた後、橘敬介(064)安全な場所を探すのに奔走していた。観鈴はあんな別れかたをしたとはいえ、たった一人の娘だ。是が非でも助けなければ。
「まずは拠点の確保だな…急ごう」
敬介は荷物を持って走り出した。空を見てみると、赤い色が一面を覆っていた。もう夕方になっていた。
「…この分だと、いくつか戦闘が起こっていても不思議じゃないな…クソッ」
二人に何かあったら――そう思うと、敬介の足は自然と早くなるのだった。
やがて、敬介は一軒の空き家を見つける。周りからは目立たないように、ひっそりと佇んでいた。
「ここなら、隠れ場所には向いているかもしれない」
すぐにそう判断した敬介は、中に殺人鬼が潜んでいない事を願って静かに扉を開けた。そして、注意深く中を窺う。すると、一人の少女が椅子に座っているのを見かけた。
(先客か。あの様子では、敵には見えないが…)
声をかけるべきか迷っていると、相手の方から声がかかった。
「…こんにちは。そこに誰かいるのは分かっています。安心して下さい。私に敵意はありませんから」
落ち着いた声色で答えたのは、天野美汐(005)だった。敬介は存在を悟られていたことに驚きながらも、ゆっくりと中に入っていった。
「見ぬかれていたか。どうやら、僕に忍者の才能はないようだな」
「そうでもありませんよ。扉が軋む音がしなければ、多分分かりませんでした。この島、小鳥の囀る声さえしないので」
無表情に美汐が答える。敬介は苦笑いしながら荷物を床に下ろした。
「君は、ずっとここにいたのかい?」
「ええ。特にする事もありませんでしたから」
「友達とか、家族とかはいないのか?」
「友達はいますが…わざわざ探しにいくほどでもありません」
しれっとした顔で、美汐は答える。敬介は肩をすくめながら、
「ここから移動する気がなかったら、ここを僕の行動拠点にしてもいいかい? 僕には探している人がいるんでね」
「構いません。ゲームには乗っていませんから」
「良かった。それじゃ、挨拶くらいはしておこうか。僕は橘敬介だ。橘でいい」
「天野美汐、と申します。天野でいいです」
互いに頭を下げた後、敬介は支度を始める。
「橘さん、あなたの支給武器は?」
椅子に座ったまま、美汐が尋ねる。
「僕かい? 僕はこれだ」
そう言いながら、敬介がデイパックの中から取り出した物はトンカチと花火セットだった。
「…外れの部類だけどね」
「トンカチはまんざら外れでもないんじゃないですか。思いきり叩けば武器になりますよ」
全然そうは思っていなさそうに美汐が言う。敬介はトンカチを持ち、小屋を出ようとする。
「荷物はここに置いておくよ。また後で戻ってくる」
「分かりました。泥棒さんには盗られないように見張っておきましょう」
「それは心強い」
敬介は少し手を上げた後、小屋を後にした。
「さて、次は観鈴たちを探さないとな…まずは平瀬村のほうにでも行ってみるか」
デイパックがなくなった分、体は若干楽になった。森を歩きながら、敬介は思う。
(確かに、小鳥の囀る声さえしない…いや、それ以前に動物の気配すらない。木や植物も、同じようなものばかりだ)
目の前の風景が、何となく作り物のように思われる。ひょっとしたら、と敬介は考えた。
「この島は…殺し合いのためだけに作られた人工島だとでも言うのか」
馬鹿馬鹿しいと思うが、何しろ主催者がイカレた性格だ。本当だとしても不思議はない。
「…いや、その前に観鈴たちを探すのが先だ。急ごう」
先を急ごうとした時、男声のくぐもった声が聞こえてきた。
――1回目の、死亡者の発表だった。
064 橘敬介
【時間:1日目午後6時前】
【場所:I−6】
【持ち物:トンカチ】
【状況:観鈴と晴子を探す、デイパック(花火セットはこの中)は美汐のところへ放置】
005 天野美汐
【時間:1日目午後6時前】
【場所:I−7】
【持ち物:様々なボードゲーム・支給品一式】
【状況:普通。ゲームには乗らないが、目的もない】
【備考:B、H系ルート。これを
>>470-473と入れ替えて下さい】
491 :
教師の鑑:2006/10/04(水) 23:38:28 ID:CdrcrVLC0
坂上智代は里村茜は、海沿いに歩いていた。
もっとも二人の持つ武器では護身には少々不十分である為、その足取りは非情に慎重であった。
二人は街道をさけ、海岸沿いに平瀬村へ向かっていた。
街道は危険と判断しての行動である。
今の二人の状態で敵に襲われてはひとたまりも無い。
「おい、あれは・・・。」
何かに気付いた様子の智代が指を指している。
「・・・・?」
智代が指を指している方向を見ると、一人の老人が立っていた。
5分後、老人――幸村俊夫と、智代達は簡単な自己紹介を済ませ、本題に入っていた。
「ほうほう、つまりわしに仲間になってくれと?」
「その通りだ。正直な所、もっと協力者がいないとどうにもならない。」
「・・・・。」
茜は黙って様子を見ていた。
「こんな老いぼれがどれだけ役に立つか分からんが、いいじゃろう。
わしの生徒達と同じ年頃の子供達を見捨てるわけにはいかんしな・・・・。」
あっさりそう言うと、老人はすぐに歩き出した。
智代は慌てて追いかけ、遅れて茜もついてきている。
「生徒?アンタ教師なのか?・・・もしかして、アンタの生徒も参加しているのか?」
「そうじゃよ・・・。あいつ等無事だったらいいがの・・・・。
わしのような老いぼれは死んでも良いが、若いもんがこんな所で死ぬのは耐えられん・・。」
幸村が遠い目でそう言うと、智代はそれきり何も言えなくなり、
茜も幸村も口を開く事なく歩き続けた。
492 :
教師の鑑:2006/10/04(水) 23:39:15 ID:CdrcrVLC0
一行は、暫く歩き続けると海岸に船を発見した。
「おい、船があるぞ!・・・でも、外傷が激しいし故障していそうだな。」
「・・・・それでも、修理すれば脱出の時に使えるかも知れません。」
「そうだな。とにかく行ってみるか!」
二人は脱出方法が見つかったかもしれない事に、興奮しており、周りが見えなくなっていた。
(もっとも修理する技術がある者が仲間にいないし、首輪の問題もまだ未解決であったが。)
出発当初の慎重さは、全く無くなっていた。
この時海岸に捨てられたバックに気付いたのは、幸村だけだった・・・・。
二人は我先にと船に乗り込み、まずは船尾の方を調べてみた。
船尾は外損以外特に損傷は見当たらず、修理すれば問題無さそうであった。
次に二人は船室を調べるべく、
船室の扉を開けた。
その瞬間、
「駄目じゃっ!!」
幸村が二人を突き飛ばしていた。
その直後、
パラララララ!!という音が聞こえ、
二人が顔を上げると、
幸村は体中のあちこちから血を迸らせていた。
「な―――!?」
「くそっ、勘付かれたっ!?」
3人一気に仕留めれると確信していた山田ミチルは予想外の出来事に一瞬狼狽したが、
すぐにMG3を構えたまま走りこんできた。
茜も智代もあまりに突然過ぎる出来事に動けない。
493 :
教師の鑑:2006/10/04(水) 23:40:48 ID:CdrcrVLC0
―――駄目だ、殺られる
二人が、そう確信した時だった。
幸村は最後の力を振り絞り、彼の支給武器――煙球を、船室内に叩きつけていた。
「な・・・!!」
突然ミチルは視界を奪われて、立ち往生していた。
グイッ!!
茜は強引に智代の腕を掴むと走り出した。
「おい、離せっ!!先生を助けにいかせろっ!!」
智代は強引に振り払おうとするが、茜は手を離さない。
「・・・お願いですから、黙ってください・・・・。」
彼女にしては珍しく、感情の籠もった強い口調で言った。
「お前・・・、泣いてるのか?」
それ以降二人は何も言わず、ただ走り続けた。
涙を流しながら・・・・。
494 :
教師の鑑:2006/10/04(水) 23:42:43 ID:CdrcrVLC0
【時間:16時】
【場所:D-1】
坂上智代
【持ち物:手斧、支給品一式】
【状態:体は健康。逃亡中】
里村茜
【持ち物:フォーク、支給品一式】
【状態:体は健康。逃亡中】
山田ミチル
【所持品:MG3(残り30発)、他支給品一式】
【状態:普通。マーダ―。この後の行動は次の書き手さんにお任せ】
幸村俊夫
【持ち物:支給品一式(その場に放置)】
【状態:死亡】
※(B系共通ルート、関連は051、107、121)
「―――ん〜……。これとこれと……これも使えそうかな」
開始数分で一人を惨殺した柊勝平(081)は未だ鎌石村へと留まっていた。
既に空は赤みを帯び始め、夕刻へと時間が差し迫っている。
かれこれ数時間か。勝平が平凡な一軒家に腰を据えてから。
何故、未だに場を離れないのか。理由としては武器の調達と夜に備えた休息だった。
彼は一つの家を重点的に漁っており、その作業に長時間を必要としたのだ。
生活用品でもなんでもいい。
人殺しが可能だと思える物は最大限活用しようと思っている。
現在の武器は手榴弾。これも非常に有用できそうだが、自分の意向には沿わない。
「手榴弾もいいんだけど、全部吹き飛ばされちゃ困るからねぇ……」
何が楽しいのか、勝平は鼻歌に合わせて家の中を物色する。
特に刃物関係は基本的に確保だ。これがなくては始まらない。
彼の目的を果たす上で、手榴弾よりかは有効的に活用できるからだ。
(ふふ。瑞穂ちゃんのはいい色だったからなぁ……。友達の香奈子ちゃんにも期待出来そうかな。
朋也クン達とも早く合流しなきゃね)
人を惨たらしく殺しておきながら、勝平の笑みに変わりはない。
それは当然だろう。彼は罪悪感など片時も感じていないのだから。
何処で狂ったのか。もしくは初めから狂っていたのか。
彼にとってこのゲームは正しくゲームであった。
自分が如何に楽しめるか、如何に攻略するか。その言葉に尽きる。
勝平はこのまま日没までこの場を動くつもりはなかった。
誰かが来れば当然親切に歓迎してやるつもりだ。自分なりのやり方で。
それさえなければ、彼は夜まで待つつもりでいた。
理由は簡単。奇襲は夜だと相場が決まっているからだ。
緊張が緩み、眠気を堪える瞬間が食べ時である。
何も知らない無垢な表情のままで。
安らいだ顔で眠るその人の、開いた頭の中を覗くのだ。
開いてからの数分が、一番の鮮度を保っている。
時間が経過してしまうと汚臭しかしなくなるので、手早く行動することがポイントだ。
現に勝平は経験済みだからこそ言えることである。
それに、あの時掻き混ぜたのは良くなかった。赤黒く変色と変体してしまい、あまり綺麗とは言い難かった。
やはり、開いた原型のままで鑑賞すべきだったのだ。
だが、惜しむ必要は何処にもない。
(うん、そうだよね。どうせまだ百人近く残ってるよね。とりあえず……十人は見てみたいかな。
そしたら椋さんに会いにいこう。怖い話をしてあげると、椋さんは直に震えるからね。あの反応が可愛いんだよなぁ……)
彼にとっての人殺しは、怪談話のストックを増やすということでしか意味はない。
そして、それを椋に聞かせることが、今のところの目的である。
だから躊躇わない。自分の欲求を満たすためなのだ。努力は惜しまない。止まるつもりもない。
自身が引き出した、椋の怯える表情を拝むまでは―――彼は、決して止まらない。
『柊勝平(081)』
【時間:1日目午後5時頃】
【場所:B−04】
【所持品:手榴弾三つ・首輪・和洋中の包丁三セット・果物、カッターナイフ・アイスピック・他支給品一式】
【状態:普通。夜まで武器探し。一先ず10人殺して椋に会う。】
「その他:B、B'ルートです。」
各々の探し人を見つける為に、リサ=ヴィクセン(119)と美坂栞(100)はまずは南へ下っていくことにした。体力のあまりない栞に合わせて歩いているため、そんなに早く進むことはできなかった。
「栞、大丈夫? 荷物、持ってあげましょうか」
「いえ、私は大丈夫です。これくらいは自分でやりたいので」
「分かったわ。でも、辛くなったら言ってね」
リサの心遣いが、栞にとっては歯がゆかった。死ぬのが恐いくせに、人の役にも立たない。
もっと強くなりたい。心の底から、栞はそう願った。
…やがて、海岸沿いのある地点で、リサが足を止める。
「どうしたんですか、リサさん」
「…血の匂いがするわ」
血の匂い、と言われてもそんな匂いはしない。…いや、注意してよく嗅いでみると、かすかに鉄のような匂いがしてきた。
「注意して。近くに、殺人者がいるかもしれない」
殺人者。栞が体を強張らせる。リサは栞に体勢を低くするように命じた。リサは体勢を低く保ったまま、トンファーを構え匂いの元へと歩み寄っていく。
「栞はこのまま待って。安全そうだったら、合図するから」
こくりと栞が頷くのを確認すると、リサが「Good」と滑らかな発音で言ってから、一歩一歩匂いの元へと近づいていった。
数分が経った頃だろうか、栞が不安になってきたころ、リサから「OK、大丈夫よ」という声がかかった。栞はまだ周りを警戒しつつ、リサの元へと小走りに行く。
リサの待っていた地点では、おぞましいものが横たわっていた。
「リ…リサさん、これは…」
リサが見下ろしていたのは男の死体だった。腕は片方が無くなっており、恐らく致命傷を与えたものと思われる銃弾が男――醍醐の眉間を貫いていた。目は見開かれたままであり、その最後が壮絶である事を物語っていた。
「…この男はね、その筋の世界では一流の傭兵だった男よ。…まさか、こんなに早く脱落していたとはね」
リサが感慨深げに醍醐の死体を見つめる。一流の傭兵。そんな殺しのプロフェッショナルでもこんなに簡単に死んでしまうものなのか。
ましてや、自分は病弱。そんな自分が、生き残る事などできるのか――栞の不安は、いやがうえにも高まった。
(あの醍醐をこんなにも簡単に屠れる人間…あの兎の言っていた、人間離れした参加者がいるということ、まんざら嘘ではないのかもしれないわね。これからは、用心してかからないと)
心中で決意を新たにした後、リサは醍醐の目を閉じてやり、そして醍醐に向けて十字を切ってやった。
「さて、栞、行きましょうか。もう少し歩く事になるけど…栞?」
醍醐の死体を見たまま固まっている栞を見て、リサがぽんぽんと軽く叩く。
「ごめんなさいね。こんなものを見せちゃって…」
「いえ…それはいいんです。ただ…」
「ただ?」
「ただ…こんなに強そうな人でも簡単に死んじゃうなんて…私なんか、絶対に生き残れないんだろうなぁ、って思ってしまって…バカですよね、私」
リサはその言葉を聞くと、何も言わずに、ただ優しく微笑んで栞の体を抱きしめた。
「リ、リサさん?」
「大丈夫よ。何があっても私が守るから、あなたは絶対に死にはしない。だから、もっと気を強く持ちなさい。弱気は、いざという時に窮地を招くわよ」
栞の弱気の虫を追い払うように、優しく頭を撫でる。栞も、それに甘えるように顔をうずめた。
「はい…わかりました」
坂上智代は里村茜は、海沿いに歩いていた。
もっとも二人の持つ武器では護身には少々不十分である為、その足取りは非情に慎重であった。
二人は街道をさけ、海岸沿いに平瀬村へ向かっていた。
街道は危険と判断しての行動である。
今の二人の状態で敵に襲われてはひとたまりも無い。
「おい、あれは・・・。」
何かに気付いた様子の智代が指を指している。
「・・・・?」
智代が指を指している方向を見ると、一人の老人が立っていた。
「幸村先生!!」
5分後、老人――幸村俊夫と、智代達は簡単な情報交換を済ませ、本題に入っていた。
「ほうほう、つまりわしに仲間になってくれと?」
「その通りです。正直な所、もっと協力者がいないとどうにもなりません。」
「・・・・。」
茜は黙って様子を見ていた。
「こんな老いぼれがどれだけ役に立つか分からんが、いいじゃろう。
わしの学校の生徒や、生徒達と年頃の子供を見捨てるわけにはいかんしな・・・・。」
あっさりそう言うと、老人はすぐに歩き出した。
智代は慌てて追いかけ、遅れて茜もついてきている。
「このゲーム、私達の学校の生徒も一杯参加していますね・・・。」
「そうじゃよ・・・。みんな無事だったらいいんだがの。
わしのような老いぼれは死んでも良いが、若いもんがこんな所で死ぬのは耐えられん・・・・。」
幸村が遠い目でそう言うと、智代はそれきり何も言えなくなり、
茜も幸村も口を開く事なく歩き続けた。
しばらくして、栞が落ち着いてから、二人はまた歩き出した。
空が赤みを見せ始めた頃、二人は海岸にある建物を発見した。
「リサさん、あれって海の家じゃないですか?」
「うみのいえ? あれがそうなの? 私はまだ見たことがなくてね」
「リサさん、見たことがないんですか?」
「ええ、日本でそういうことをする機会はあまり無かったから」
意外だった。日本語がかなり上手だったからこういうものも当然知っていると思ったのだが。リサの思わぬ側面に、思わず笑いが漏れてしまう。
「あ、栞。今笑ったでしょう」
「いえ、そんなことはないですよ」
「いいのよ、笑っても。どーせ私は外国人ですからねー」
不貞腐れるリサ。何だか、幾分か気分がほぐれたような気がする。
「拗ねないで下さいよー。取り敢えず、あそこでちょっと休憩しましょう、ね」
栞はリサを引っ張りながら、海の家まで歩いていった。
『美坂栞(100)』
【時間:1日目午後5時半ごろ】
【場所:G−9、海の家に向かって移動】
【所持品:支給品一式、支給武器は不明】
【状態:健康】
【備考:香里の捜索が第一目的】
『リサ=ヴィクセン(119)』
【時間:1日目午後5時半ごろ】
【場所:G−9、栞と同上】
【所持品:支給品一式、鉄芯入りウッドトンファー】
【状態:健康】
【備考:宗一の捜索及び香里の捜索が第一目的、まだ篁を主催者と考えている】
【備考:葵の制服は海の家に放置されたまま、B、H系ルートで】
一行は、暫く歩き続けると海岸に船を発見した。
「おい、船があるぞ!・・・でも、外傷が激しいし故障していそうだな。」
「・・・・それでも、修理すれば脱出の時に使えるかも知れません。」
「そうだな。とにかく行ってみるか!」
二人は脱出方法が見つかったかもしれない事に、興奮しており、周りが見えなくなっていた。
(もっとも修理する技術がある者が仲間にいないし、首輪の問題もまだ未解決であったが。)
出発当初の慎重さは、全く無くなっていた。
この時海岸に捨てられたバックに気付いたのは、幸村だけだった・・・・。
二人は我先にと船に乗り込み、まずは船尾の方を調べてみた。
船尾は外損以外特に損傷は見当たらず、修理すれば問題無さそうであった。
次に二人は船室を調べるべく、
船室の扉を開けた。
その瞬間、
「駄目じゃっ!!」
幸村が二人を突き飛ばしていた。
その直後、
パラララララ!!という音が聞こえ、
二人が顔を上げると、
幸村は体中のあちこちから血を迸らせていた。
「な―――!?」
「くそっ、勘付かれたっ!?」
3人一気に仕留めれると確信していた山田ミチルは予想外の出来事に一瞬狼狽したが、
すぐにMG3を構えたまま走りこんできた。
茜も智代もあまりに突然過ぎる出来事に動けない。
―――駄目だ、殺られる
二人が、そう確信した時だった。
幸村は最後の力を振り絞り、彼の支給武器――煙球を、船室内に叩きつけていた。
「な・・・!!」
突然ミチルは視界を奪われて、立ち往生していた。
グイッ!!
茜は強引に智代の腕を掴むと走り出した。
「おい、離せっ!!先生を助けにいかせろっ!!」
智代は強引に振り払おうとするが、茜は手を離さない。
「・・・お願いですから、黙ってください・・・・。」
彼女にしては珍しく、感情の籠もった強い口調で言った。
「お前・・・、泣いてるのか?」
それ以降二人は何も言わず、ただ走り続けた。
涙を流しながら・・・・。
【時間:16時】
【場所:D-1】
坂上智代
【持ち物:手斧、支給品一式】
【状態:体は健康。逃亡中】
里村茜
【持ち物:フォーク、支給品一式】
【状態:体は健康。逃亡中】
山田ミチル
【所持品:MG3(残り30発)、他支給品一式】
【状態:普通。マーダ―。この後の行動は次の書き手さんにお任せ】
幸村俊夫
【持ち物:支給品一式(その場に放置)】
【状態:死亡】
※(B系ルート(B-2、B-7以外共通)、関連は051、107、121)
※(教師の鑑の修正版です。まとめサイトに載せるのはこちらでお願いします>まとめの人)
※(
>>498割り込みになってしまってすいません。)
篁未死亡、もしくは『ムティカパと篁』ありルート用に書いたものですが、一応Bルート共通?
関連
→072
(→107)
⇔教師の檻
「さて……随分と歩いてきたが、おまえさんは大丈夫かの?」
幸村俊夫(043番)は自分の足元を歩いている自身の支給品――ぴろ(猫)に目を向けた。
幸村と目が合うとぴろは「大丈夫だ」とばかりに、にゃーと元気そうに鳴いた。
彼はこのゲームに乗る気など微塵もなかった。
むしろ、密かに主催者への怒りで満ち溢れていた。
自分よりも若い多くの者たちを殺し合わせようとしている主催者たちに喝を入れてやりたいとすら思っていた。
(――大事な教え子たちを貴様らの勝手な都合だけで殺させはせんぞ…………)
そう。このゲームの参加者の一部の人間は彼の教え子たちなのだ。
さらに、名簿を見るかぎりこのゲームの参加者の半数以上は現在の彼の教え子たちと同年代の者たちばかりだった。
そんなまだ未来ある者たちが殺し合う………
それを1人の教師として――否。人として見過ごしておけるはずが無い。
幸村はなんとかしてこのゲームを止めようと考えていた。
(しかし、この老いぼれ1人の身ではそれを成すことは難しい。誰か1人でも同士がいれば心強いのだが………)
そう考えながら歩いていると前方に2人組の人影が見えた。
よく見ると、そのうち1人は銃らしき物を持っていた。
(――いかん!)
マーダーかと思い一度幸村はぴろを一度バッグに入れ草影に身を隠した。
「皐月さん。本当にもう大丈夫なの?」
「うん。もう大丈夫だから。ありがとうね、このみちゃん」
「えへ〜…そう言われると照れるでありますよ」
2人のそんな話し声がかすかに聞こえた。
声からして2人とも女の子だろうと幸村は判断した。
(このままやり過ごしてくれればよいのだが……)
身を潜めながらそう思っていた幸村だったが、
ここで見逃してしまったらもう誰にも会えずに終わってしまうかもしれないとも思ったのですぐさま覚悟を決め2人に近づいて声をかけてみることにした。
(殺し合いに乗った者たちでなければよいが……)
「おまえさんたち。ちょっとよいかの?」
「ん?」
「ほえ?」
少女たちが同時に幸村の方へ振り返る。
振り返ったと同時に幸村は2人に尋ねた。
「わしは幸村俊夫というもんじゃ。
単刀直入に聞かせてもらうが、おまえさんたちはこのゲームとやらに乗ったのか? それとも乗っていないのか、どちらじゃ?」
「………まだわからないわ」
「このみたちは今タカくんたちを探しているんでありますよー」
「そ。まずはそれからよ。ゲームに乗るか、乗らないかなんて今は考える暇はないわ」
「ふむ……」
少なくとも彼女たちは今のところゲームに乗っていないようなので安心した。
「そういうおじいさんこそなにをしようとしてんの?」
今度は逆にこちらが尋ねられる。
だから幸村は正直に答えた。
「わしは――この理不尽なゲームを止めようと思っておる」
「………とめるのでありますか?」
「うむ。老いぼれだがわしとて教師じゃ。未来ある若いもんたちが互いのその身を食い合うところなど見たくはないのでな………」
「食い合う!? 隊長。このみたちは食べられてしまうのでありますか!?」
「このみちゃん。今のはたとえよ。たとえ………
ゲームを止めるか……きっと宗一やリサさんたちも今そうしようと動いているんだろうな………
よし。決めた! おじい…じゃなかった。幸村さん。私も協力するよ!」
「隊長、隊長。このみもお手伝いするでありますよー!」
「―――しかし、主催者たちを敵にするということはこの島においてかなり危険な選択じゃぞ?」
「心配ご無用! こう見えても私はあのNASTY BOYのパートナーですから!」
「このみもタカくんのお家のお隣さんでありますから!」
そう言って2人の少女――湯浅皐月(113番)と柚原このみ(115番)は自分の胸をどんと叩いた。
無論、幸村はNASTY BOYやエージェントなどは知らないが、彼女たちは頼もしい存在になりそうなことに間違いはなかった。
「さて。やはりまずは知人関係を探してみるかの?」
「はい」
「どこから探してみるでありますか?」
このみが広げた地図に3人が目を通す。
「そうじゃな……ふむ。近くにホテル跡があるらしい。そこから調べてみるかの」
「そうですね。それにここなら床にもつけそうですし」
「それなら早速出発でありますよー」
「にゃー」
【場所:E−03】
【時間:午後5時40分】
幸村俊夫
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【その他:ゲームを止める。知人たちを探す】
湯浅皐月
【所持品:38口径ダブルアクション式拳銃(残弾8/10)、予備弾薬80発ホローポイント弾11発使用、セイカクハンテンダケ(×2)、支給品一式】
【状態:健康】
【その他:宗一たちを探す】
柚原このみ
【所持品:ヌンチャク(金属性)、支給品一式】
【状態:健康】
【その他:貴明たちを探す】
ぴろ
【状態:健康】
【その他:幸村の支給品】
【備考】
・3人(と1匹)で行動。ホテル跡へ向かう
・このみの支給品は皐月が使うことに
舞一行の、牛丼を食べるペースは、極端に落ちていた。
「もう駄目だ・・・」
住井護は、牛丼を5杯食べきった時点で、人体の限界を感じていた。
どう足掻いても、これ以上は食べれない。
「……………」
吉岡チエは既に、爆睡状態だ。
「・・・・・・・げっぷ・・・。」
牛丼7杯を屠った魔人・川澄舞もとうとう限界の時を迎えていた。
既に、舞の水も尽きている。これ以上食べるのは普通に考えて不可能である。
「川澄さん・・・、まだ食べる気なのか・・・?」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
これ以上は、食べれる訳がない。大食い選手権以上の荒行である。
しかし、このままでは牛丼の鮮度が落ちてしまう。
場に、重い沈黙が訪れる。
そんな時である。
「ぎ・・・、牛丼・・・・。」
そんな台詞と共に現れたのは、鬼。食欲の鬼と化した、耕一である。
「牛丼だね・・・。」
続いて志保も現れた。
二人とも、よほど腹が減っているのであろう。
こんなゲームに参加しているにも関わらず、視線は舞達を捉えていない。
彼らの視線は牛丼、ただその一点のみに集中していた。
「・・・食べる?」
全く警戒せずに、牛丼の容器が入ったバッグを耕一達に差し出す舞。
住井も新たな来訪者に全く気を取られる事無く、寝転がっていた。
っていうかこんな食欲丸出しの殺戮者なんている訳ないしね。
「くれるのか!?サンキュー!!」
「え、マジ!?ありがとう!」
それだけ言い、待ってましたと言わんばかりに牛丼を貪る耕一と志保。
恐ろしい勢いで、容器の中の牛丼が減っていく。
「・・・・最後の力を振り絞る。」
「俺も、人間の限界に挑戦してみたくなったぜ。」
再び立ち上がる戦士が二人。
最強を誇った牛丼の群れも、とうとう最期の時を迎えようとしていた・・・・。
共通
【場所:G−04】
【時間:1日目午後4時00分】
【状況:牛丼攻略中】
【牛丼:残り6杯(現在食べている分含む)】
住井護
【状態:満腹度100%】
【所持品:投げナイフ(残り4本)、ほか支給品一式】
吉岡チエ
【状態:爆睡】
【所持品:日本刀、ほか支給品一式(ただし水・残り3分の1)】
川澄舞
【状態:満腹度100%】
【所持品:牛丼以外の支給品一式(ただし水・残り半分ほど)】
長岡志保
【持ち物:新聞紙、支給品一式】
【状態:疲労、限界空腹、足に軽いかすり傷】
柏木耕一
【持ち物:日本刀、大きなハンマー、支給品一式】
【状態:疲労、限界空腹】
【備考】
・ルートB、H共通
・関連は115、152
突如、葵の脳裏に、藤田浩之の言葉が浮かんだ。
『葵ちゃんは強いっ!』
その瞬間、冷静さを取り戻した葵は、
「くぅ!」
即座に側転し、ギリギリの所でナイフをかわしていた。
もう、うだうだ考えるのは止めだ。
とにかく殴り倒して、それから考えよう。
全力で戦う。そして気絶させる。
落ち着かせてから話し合えば、琴音さんならきっと分かってくれる筈――
それが、葵の一瞬で出した結論だった。
続けざまに、琴音のナイフが振り下ろされる。
それをかわして、距離を一歩詰める。
業を煮やした琴音は大きな動作でナイフを突いた。
それはかなりの速度であったが、葵はその一撃も頬の皮1枚でなんとかかわした。
葵の目論見通り、琴音に決定的な隙が生まれる。
「ハッ!!」
そこにすかさずローキックを一発。格闘家の、重い一撃。
ローキックは琴音の左足に完全に直撃し、琴音の体勢は崩れた。
続いて一番の得意技、ハイキックを放つ。
その一撃は唸りを上げ、無防備な琴音の頭部を直撃し、
琴音は5,6メートル程吹き飛ばされていた。
琴音は地面に倒れたまま、動かなかった。
「ハァハァ・・・。」
戦闘時間自体は短かったが、極度の緊張の為か葵は息を切らしていた。
「だ・・、大丈夫ですか?」
ようやく口を開くのは、保科りえ。
しかし、葵よりも彼女の方が明らかに重症である。
「私は平気です・・・、あなたこそ大丈夫ですか?」
当然葵も、自分の事よりも彼女の事を気遣う・・・・。
「凄い痛いですけど、あなたのおかげでなんと・・・」
りえはそこまで言って、目を見開き、そのまま硬直した。
彼女の視線は、葵の後ろを凝視していた。
まるで恐ろしい、化け物を見るかのような目で・・・。
葵が慌てて振り返ると、そこには、狂気に支配された少女、姫川琴音が立っていた。
彼女はボロボロだった。顔は返り血と彼女自身の血で血まみれだった。
足はどす黒く変色し、左側頭部からは血が垂れ流れている。
しかし、彼女の口は、この世のモノとは思えないおぞましい笑みを浮かべていた・・・。
その姿を見て、絶句する葵とりえ。
姫川琴音は、度重なるショックと、恐怖と、己自身の行為によって、完全に壊れてしまっていた。
彼女はナイフを構え、葵の胸めがけ、それを突き出した。
「ぐっ!」
そのナイフを持つ手を、何とか受け止める葵。
力なら、私に分があるはず・・・。
このまま腕をとって関節技で骨を折るしかない!
そう考え、葵は腕をとろうとした。
しかし、微動だにしない。
おかしい。ただの女性相手に、仮にも格闘家である私が、なんで腕をとれないの?
そう考えている間にも、琴音の力が、どんどん強まってくる。
なんで、なんで、なんで?
なんで私が力負けするの?あんなに鍛えたのに、なんで?
「あれぇ?あおいちゃん、つかれてるのぉ?」
琴音はそれだけ言い放つと、「今の」全力を、腕に籠めた。
葵の抵抗など無かったかのように、ナイフはあっさりと葵の胸に突き刺さっていた。
葵の口から大量の血が溢れる。
胸からは、血の花火を咲かせていた。
体の感覚が無くなっていく。
葵の体が、ゆっくりと崩れ落ちる。
(ひろ、ゆきさん、ごめんな、さい・・・・。わたし、がんばった、けど、とめれません、でした・・・。)
そうして葵の意識は、永遠に消失した。
彼女の『勇気』は、琴音の『狂気』の前に敗北したのだ―――
琴音の精神は既に取り返しのつかないほど、異常をきたしていた。
その異常の副産物として、まるで毒電波で操られている人間のように、
筋力を100%引き出せるようになっていたのだ。
自分の体を守る為に脳から課せられた規制が、今の彼女には適用されていなかった。
故に、異常な筋力を発揮する事が出来る。
代償として自らの筋肉を引き裂きながら。
自らの命を引き裂きながら・・・・。
保科りえは、いつの間にか逃げ出していた。
「さて、あとよにんだねぇ・・・・」
かつて琴音だったモノは笑みを浮かべつつそう言うと、次の標的、保科りえの追跡を開始した。
今の彼女なら本気を出せばすぐに追いつける筈だが、
敢えて彼女はそうしなかった。
ほい
筋力を100%ひきだせるようになったのだ。って
…………それはひょっとしてギャグで言ってるのか?
どこかおかしいか?
【時間:1日目17時半ごろ】
【場所:D−8】
松原葵
【所持品:お鍋のフタ、支給品一式、野菜など食料複数、携帯用ガスコンロ】
【状態:死亡、所持品は死体の傍に放置】
仁科りえ
【所持品:拡声器・支給品一式】
【状態:パニック状態で逃亡中。右肩に浅い切り傷、左腕に深い刺し傷】
姫川琴音
【所持品:支給品一式、八徳ナイフ】
【状態:狂気、異常筋力。右側頭部出血、左足打撲、他細かい傷多数。18時間半後に首輪爆発】
【備考:No.168:不幸な再会の続き。B系ルート】
>514-517
仁科が保科になってるぞ。
>520
IDはおかしいと言ってるな。
523 :
514:2006/10/05(木) 10:30:07 ID:L5ttfynQO
ああ、マジだ、、
保科→仁科で掲載お願いします>まとめの人
すいません。
IDは運営スレ参照。
芳野祐介は溜息をついた。
傍らで眠る少女、長森瑞佳をなだめるのには、意外と手こずり時間もかかった。
そして、この始末である。
「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
叩き起こす、かついで氷川村まで移動する、放っておく。
選択肢はいくつもあるが、祐介はそれを選ばなかった。
隠れられるだろう茂みに入り、瑞佳を横たえると自分はその隣で周りを警戒する。
「たっく、いつになったら氷川村に行けるんやら」
まぁ、仕方ないか、という諦めにも似た思い。
ちらっと盗み見る。
もぞもぞと体を丸くしてる瑞佳、まだまだ可愛い年頃だ。
「・・・風子よりちょっと上、くらいだよな」
その時、彼女の抱えるデイバックも目に入る。
彼女の支給品・・・祐介は、それに目をつけた。
(悪いけど、いい物だったら頂戴するか)
丸くなっている体を押しのけ、鞄を取り出す。
気づかれぬよう素早く開ける、彼女の支給品は・・・
「・・・・・これは・・・」
制服。見覚えのあるファミレスか何かのものだ。
薄い緑色の、肩が出るタイプ。札には
まるで水着、長いパレオが特徴の涼しげなタイプ。
ブロンズパロットのような作り、赤と白のコントラストが可愛いタイプ。
それぞれ「フローラルミントタイプ」「トロピカルタイプ」「ぱろぱろタイプ」という札がついている。
瑞佳の鞄には、この3着が無理やりギュッギュッと押し込まれていた。
「何だ、一体・・・」
そして、一枚の髪。説明書。
『防弾チョッキ(某ファミレス仕様)』
頭が痛かった。
そんな混乱状態の中、気づいたらなぜか・・・
「いや、着ないから。着るぐらいなら蜂の巣になるから。
っていうか露出多くて弾から守ってくれないから」
526 :
補足:2006/10/05(木) 11:46:59 ID:tOJPtgBN0
芳野祐介(118)』
【時間:1日目午後5時50分】
【場所:H−08】
【所持品:Desart Eagle 50AE(銃弾数4/7)・サバイバルナイフ・支給品一式】
【状態:氷川村へ向かおうとしているものの、足止め中】
長森瑞佳(074)』
【時間:1日目午後5時50分】
【場所:H−08】
【所持品:防弾チョッキ(某ファミレス仕様)×3・支給品一式】
【状態:熟睡】
(関連・100)(共通)
527 :
訂正:2006/10/05(木) 11:49:01 ID:tOJPtgBN0
>>525 ×薄い緑色の、肩が出るタイプ。札には→○薄い緑色の、肩が出るタイプ。
すみません・・・
「あ………」
「―――っ!?」
皐月の一撃を受け敗走中だった名倉友里は海岸を歩いている伊吹風子と偶然でくわした。
直ぐ様友里は応戦しようとしたが、自身の武器はあの時あの場所に置いていったことを思い出す。
(――しまった………)
その隙をついて今度は風子が動く。
自身のバッグに両腕を突っ込んで………
「これあげますっ!」
と知っている人にはすっかりお馴染みの木彫りのヒトデをバッグから取出し友里に差し出した。
「はぁ?」
無論、わけがわからない友里は頭のうえに大きな?マークを浮かべる。
「つまり友里さんはこのゲームに乗ろうとしているんですね?」
「まあね。そういうあなたはどうなの?」
「風子はゲームなんて興味ないです。風子は普段どおりヒトデを掘っているこそが風子なんです!」
「―――馬鹿ね。そんなことしていたらいずれ無駄死にするだけよ」
「そんなこと関係ないです。風子はどうなろうともお姉ちゃんのためにヒトデを掘り続けるだけです!」
ナイフが無くなっちゃいましたけど、と付け足して自分の支給品のスペツナズナイフの残った柄の部分を見せる。
「馬鹿馬鹿しい……付き合ってられないわ………」
そう言って友里は風子と別れた。
――木彫りのヒトデは強引に貰わされたが…………
「――まずは人が集まりそうな場所……鎌石村あたりへ行こうかしら…………?」
【場所:B−02】
【時間:午後5時】
名倉友里
【所持品:木彫りのヒトデ、支給品一式】
【状態:右肩負傷(軽傷、止血済み)。マーダー(積極的)】
伊吹風子
【所持品:スペツナズナイフの柄、支給品一式】
【状態:健康。ゲームに乗る気もゲームを止める気もない(理解しきっていない?)】
訂正
吉〇屋→吉〇家
支給してもらった武器がないと人が殺せないとはずいぶんへぼい積極的マーダーですね
532 :
10:2006/10/05(木) 19:30:02 ID:CNRD6KmT0
できましたー
篁生かしておいて何もしないのもどうかなので篁生存ルート。
篁関係と⇔って事で。
一応Iルート。
と、まとめの人Iルートに183加えておいてくださいな。
篁は怒り心頭に来ていた。
(おのれ……オノレ……この私が……)
(このような愚劣なゲームに参加しろだと……?)
篁は今何も持っていなかった。
怒りに任せ開いた戸棚を思い切り殴り付けていた。
支給品ごとに。
こんなゲームに参加させられてむざむざ施しを受けるなど篁には耐えられなかった。
(巫山戯……おって……)
篁は又、怒りに任せて傍に在る木を力任せに殴る。
ドゴォ……と凄まじい音がして、梢が揺れる。
(何なのだ……この封印とやらは……)
その木には罅が入り、拳の跡が刻まれていた。
普通の老人では在り得ない様な膂力だった。
が、それでも彼の本来の力の一欠片も出せていない。
(忌々しい……)
しかし、篁を本当に怒らせていたのは封印ではなかった。
(この私を駒にしてゲームをするだと……?)
(最後まで残った者は生かして帰してやろう……?)
(巫山戯る……な……)
彼の背中からどす黒いオーラが立ち上っている様にも見えた。
「必ず……後悔させてくれるわ……」
「地獄の底で……その罪を悔いるがいい……」
噛み砕かんばかりに力を込めた奥歯がぎりぎりと悲鳴を上げる。
もう一度力任せに木を殴り付け、篁はその場を去った。
篁に殴られたその木は軋む様な音を立てる。
暫くして、めきめきと嫌な音を立てていたその木は、倒壊した。
そして、その場に静寂が戻った。
篁
【時間:一日目午後三時頃】
【場所:E-04とE-05の境目付近】
【持ち物:無し】
【状態:怒り心頭、目標はゲームの主催者の皆殺し、参加者は眼中に無い】
「ゼェ…ゼェ…ゼェ…こ、ここまで来れば、もう大丈夫、よね」
十波由真(070)は後ろから誰も尾行してくる人物がいないことを確認すると、近くの木の陰に腰を下ろした。
「あ〜〜〜〜っ、つっかれたぁ…花梨の奴、大丈夫かな?」
今も岸田に追われているであろう友人の姿を思い浮かべる。まぁ、あの子は逃げ足だけは速そうだから、大丈夫よね。
勝手にそう結論付けて、水分を補給する為にデイパックから水をを取り出……せなかった。
「あっちゃ〜…あの場所に置いてきたまんまだったっけ」
状況が状況だったとはいえ、全食料を失ったのは痛い。しかし、戻ろうにも騒ぎを聞きつけた他の参加者が待ち伏せしている可能性すらある。食い気より命だ。
「さてここで問題よ。この食料の無い状況でどうやってこの先生きのこるか」
1、 キュートで可愛い十波由真は突如食料を調達するアイデアをひらめく
2、 仲間が来て食料を分けてくれる
3、 餓死する。現実は非常である
「あたしとしては2がベストなんだけど、そう簡単に誰か来てくれるわけでもないし、これを期待するのは酷ってもんよね。…となると、答えは1しかないようね…! よしっ、まずは自分の現在位置を確認よ」
地図を取り出そうとする、が手は空を掴んだままだった。
「…地図もデイパックの中だった」
ぶっちゃけた話、由真は双眼鏡一つしか持っていないのである。パックマンではないので、こんなもんをバリバリ食う事など出来はしない。
「はぁ…適当に歩いて、食べ物がありそうなところを探すしかないのか…」
ぐぅ〜、と由真の腹の虫が鳴る。朝から何も食べていなかった。
「こんな状況でもお腹が空くあたしが恨めしいわ…よいしょっと」
ふらふらと立ちあがり、行く当ても無くのろのろと歩きだした。
夕刻になろうとしている時間だったが、由真の視界には民家の一つさえ見えてこない。というか、そもそも自分がどれだけ進んでいるかも怪しい。
きっと今の自分の顔はゾンビのようになっているに違いない。この調子では銃に撃たれて死ぬどころか先に空腹で死にかねない。
いやだ、そんなの、絶対にいやだ。あたしの命はそんなに軽くない…はず。
色々な意味で自分に自信が持てなくなってきた時、とうとう体力が限界に達した。ふらりとよろめき、ドタッと地面に倒れ伏す。
が、がんばれ…あたしの体…ち、ちくしょーっ、動けッ、あたしの足! もっとふんばって体を持ち上げろーッ!
…が、抵抗も空しく徐々に意識が闇の中に飲まれていく。
――答え3 答え3 答え3
そんな言葉が頭をよぎった時。
「にょわ〜…この人、なんか行き倒れになってるよ。まるで国崎往人だ」
失礼ね。行き倒れ何かじゃ…ない。たぶん。
倒れた由真の前にやってきたのは、みちると岡崎朋也ご一行様だった。
「あん? 誰かいるのか…って、誰だコイツ? 死んでる…のか?」
冗談じゃないわ。こんなの最もマヌケな死に方じゃない。ズガンの方がまだましよ。
「あ、ちょっと動いたよ。まだ生きてるみたい」
「…ん? じゃあ、どうして倒れてるんだ。まさか…腹が減ってるとか」
朋也がそう言った時、ぐぅ〜〜〜〜、という大音声が木霊した。
「お腹、減ってるみたいだね…ね、かわいそうだから何かあげようよ」
あたしゃ捨てられた子犬ですか。でも、欲しい…
「…ああ、このまま見捨てるわけにもいかないしな…ほら、あんた。パンだ。食えよ」
目の前にパンが差し出される。すると、怒涛の勢いでパンにかぶりつく由真。ものの十数秒でパンを平らげる。
「にょわっ、国崎往人より早いっ」
「ごちそうさまっ!」
最後の一口を呑みこんだ後、手を合わせて元気に言った。それから朋也に向かって普段から考えると珍しく素直に礼を言う。
「ありがと。お陰で最悪の事態だけは免れたわ。朝からずっと食べてなくって。荷物も無くしちゃうし」
「ふぅん、そりゃ災難だったな…誰かに襲われでもしたのか」
うん、と由真が言ってこれまでの経緯を説明する。
「…ヤバい奴だな。いきなりやって来てしかも殺人鬼か」
「それに、口がものすごく上手いの。もうオレオレ詐欺を遥かに超越してるわよ、あれ」
「オレオレ詐欺って、もう古いよ。今は架空請求の時代だよ」
みちるがツッコミをいれるが、二人は気にしない。
「…口も上手い、か。渚なんかはお人好しだから、簡単に信じちまうかもな…早いとこ、渚を探さないとな。それで、あんたはどうする。連れてけというなら構わないぞ。仲間は多いに越した事はないからな」
「うん、みちるもオッケーだよ」
「そうね…荷物もないし、一緒に行かせてもらうわ。あたしは十波由真よ」
「俺は岡崎朋也だ。で、こっちのちっこいのが」
「みちるだよ。…って、さりげなくチビ言うなーっ!」
ゴスッッッ!
「ぐはっ! ぐぉぉぉぉ…」
鳩尾を蹴られ、悶絶する朋也。
(…このチビッコ、意外にやるわね)
みちるの素晴らしい蹴りに感心しつつ、由真はうんうんと頷いた。
十波由真
【時間:17:30】
【場所:E−2の街道】
【持ち物:ただの双眼鏡(ランダムアイテム)】
【状況:朋也達と行動を共にする。まだ少しだけ空腹。デイパックはD−1に放置状態】
岡崎朋也
【時間:17:30】
【場所:E−2の街道】
【持ち物:お誕生日セット(クラッカー複数、蝋燭、マッチ、三角帽子)、支給品一式】
【状況:友人達の捜索をする。パンを一つ消費】
みちる
【時間:17:30】
【場所:E−2の街道】
【持ち物:武器は不明、支給品一式】
【状況:美凪の捜索をする】
【備考:B−2、B−7、B−8ルートで】
540 :
虚ろな瞳:2006/10/05(木) 20:23:07 ID:0fXFJr7X0
月島瑠璃子は手の痺れが取れた後に再び雛山理緒を殺しに戻った。
しかし既にそこはもぬけの殻であった。
繭の支給品一式も、そして繭の死体すらも、無かったのだ。
瑠璃子は自分が使っていた鋏をずっと探し回ったが、それすらも無かった。
彼女にとって唯一の武器なのに、茂みの中にも何処にも無かった。
月島瑠璃子は鋏を探すのを諦めた後、じっくりと思考を巡らせた。鋏が無くては戦えない。
――否、鋏があったとしても満足には戦えない。
先程も鋏があったにも関わらず、丸腰同然の女に遅れをとったばかりだ。
だから、彼女は仲間を、仲間という名の傀儡を探す事にした。
自分自身で戦えないなら、他の者に戦わせ、
自分自身で自分の身を守れないなら、他の者に守らせれば良い。
自分は傀儡達を散々利用し、最後に寝首を掻くだけでいい。
殺戮がしばらく楽しめなくなるのは残念だが、今は仕方無い。
彼女はそう考え、傀儡を探す事にした。
しかし、傀儡探しはあくまで慎重に行なわなければならない。
声を掛けた相手がゲームに乗ったマーダーだったとすれば、
今の自分の装備では抵抗すら満足に出来ずに殺されるだろう。
そこで今は街道付近の茂みで息を潜め、様子を見ている、という訳である。
その後1時間ほどずっと待っていると、
街道の向こうの方から一人の女が歩いてきた。
(駄目・・・、あの女の人は、殺気立ってる。)
女―――神尾晴子は、次なる標的を探し、街道を徘徊していた。
この女と話し合うのは危険過ぎる。
下手すれば姿を見せた瞬間撃たれかねない。
そう判断し、瑠璃子は隠れたままやり過ごした。
541 :
虚ろな瞳:2006/10/05(木) 20:24:26 ID:0fXFJr7X0
またしばらく息を潜めていると、今度はガラの悪い男が歩いてきた。
ベルトには大きな銃を差し込んでいる。
しかしその男の雰囲気は、何故か日常に近いものがあった。
このゲームに参加している者独特の緊張感も、殺気も感じられない。
この男には人に警戒心を抱かせない何かがあった。
男――古河秋生は、街道を歩いていた。
最初に鎌石小中学校を探索したが、彼の家族は見つからなかった。
その後はどこに向かうが迷ったが、自分の勘に任せ氷川村へと向かう事にした。
「あの、すいません。」
突然、近くの茂みから声をかけられる。
「誰だ!!」
秋生はすぐに足を止めて銃を茂みに向けて、構えた。
「待ってください、私、兄を探しているだけなんです。」
瑠璃子は両手を上げて、武器を持ってないことをアピールしつつ出てきた。
「わりいが、ゲームが始まってから人を見たのは嬢ちゃんが初めてだ。」
「そうですか。残念です。」
「すまんな。ところで嬢ちゃんは、古河渚と古河早苗って女を見なかったか?」
「いえ、見ていません。」
瑠璃子は俯きながら答えた。
「そうか。じゃあな」
秋生はそれだけ言うと、立ち去ろうとした。
542 :
虚ろな瞳:2006/10/05(木) 20:25:26 ID:0fXFJr7X0
「待ってください。あなたも人探ししてるなら、一緒に行動しませんか?」
「ふむ・・・。」
「お願いします、私一人じゃ何も出来ませんから。」
はたしてこのゲームで簡単に人を信用していいものか。
恐らくそれは、かなり危険な行為であろう。
しかし、娘と同じ年頃の女の子の頼みを断るのは罪悪感が残る。
出来れば信じてあげたい。
秋生はしばらく考えた後、
「・・・いいぜ。ついてきな。」
そう言い、歩き出した。
「ありがとうございます。」
それだけ言い、後をついていく瑠璃子は、微笑みを浮かべていた。
しかしその瞳だけは、どうしようもなく虚ろだった。
秋生はその事に、気付いていなかった。
543 :
虚ろな瞳:2006/10/05(木) 20:26:08 ID:0fXFJr7X0
神尾晴子
【時間:1日目16:20】
【場所:F−9、街道】
【所持品:支給品一式、H&K VP70(残弾、残り18)】
【状態:健康。次の標的を探している。】
月島瑠璃子
【時間:1日目16:30】
【場所:G−9、街道】
【持ち物:支給品一式】
【状態:健康。最終的にはマーダーになるつもりである。】
古河秋生
【時間:1日目16:30】
【場所:G−9、街道】
【持ち物:S&W M29(残弾5発)、他支給品一式】
【状態:普通。渚と早苗を探して氷川村へ移動中】
(B系ルート、関連014、143、165)
何だかんだと本部の方ですったもんだがあったようだが、放送はどうにか
滞りなく行われた。
もっとも逐一データ提供を受けている綾香には関係のない話である。
適当に聞き流した。
「ったく使えないわねー、久瀬って」
ぶつぶつ文句を言いながら紙パックの野菜ジュースにストローを挿す来栖川綾香。
もちろん支給品ではない。
喉が渇いたので主催部隊に持ってこさせたものである。
ぢゅー、と音を立てて啜りながら、綾香は地面に転がしたイルファを足で小突く。
「じゃー姉さん、とっととヤっちゃって?」
芹香の準備は万端である。
妖狐である真琴の血で書いた魔法陣と、その真ん中に置かれた狐の生首。
あうー、ちょんぱーという冥界からの恨み言もどこ吹く風と涼しい顔で
座っていた芹香は、綾香の声に頷くと何やら懐から取り出した水晶球を
天に翳し、怪しげな呪文を唱え始めた。
(うわー、やっぱこえー)
折からの曇天もあり、周辺は既に薄暗い。
奇妙な抑揚をつけて詠われる呪言に誘われるかのように、生暖かい風が
渦を巻き始める。
つむじ風に吹かれたか、狐の首がカタカタと音を立てる。
(え?)
否、首はひとりでに蠢いていた。
開くはずのない頤を大きく開け、まるで変わり果てた自らの哀れな姿を
哄うかのように牙を噛み鳴らす妖狐の首。
音のない哄笑と共に、周囲の空気が変わっていく。
どこか淀んだ、生臭い匂いが綾香の鼻をついた。
おぞましい気配が辺りを包み込む。
と、芹香の肩がぴくりと震えた。
その震えは瞬く間に全身に拡がっていく。
それはまるで質の悪いドラッグで神経を侵されている中毒者のように、
綾香の目には映った。
「ね、姉さん……大丈夫なの……?」
がくりがくりと身を揺らし、腕を、額を、地面に擦り付け、叩きつける芹香。
さすがに心配になってきた綾香が、芹香の肩を掴もうと手を伸ばした、その刹那。
「ぎにゃあ!」
一瞬の出来事だった。
快楽とも、苦痛ともつかない奇妙な感覚が、綾香の全身を駆け巡り、消えた。
思わず両腕で我が身を抱え、しゃがみ込む綾香。
「何だったの、今の……? って、姉さん!」
見れば、目の前で芹香が地に伏していた。
慌てて姉を抱き起こす綾香。
息が荒い。
ぼんやりと虚ろに見開かれていた瞳が、綾香を映して焦点を戻していく。
「ちょっと、しっかりしてよ姉さん、大丈夫!?」
必死に呼びかける綾香の声を聞いて、ぽそぽそと何事かを囁く芹香。
「え? ……あ」
ふるふると震えながら掲げられた芹香の手指が、Vサインを形作っていた。
秘儀成功。
【37 来栖川綾香】
【持ち物:パワードスーツKPS−U1改、各種重火器、こんなこともあろうかとバッグ】
【状態:健康】
【38 来栖川芹香】
【持ち物:水晶玉、都合のいい支給品、うぐぅ、狐(首だけ)、珊瑚&瑠璃】
【状態:珊瑚召喚成功】
【60 セリオ】【持ち物:なし】【状態:出番なし】
【9 イルファ】【持ち物:支給品一式】【状態:俎上の鯉】
→116,→170 D−2ルート
547 :
復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:56:49 ID:9/AdTALE0
「ぎゃあああああああ」
激痛と恐怖のうちに水瀬名雪は振り返りもせずに走っていた。
怖い怖い怖い怖い怖い。
痛い痛い痛い痛い痛い。
名雪は走りながらも肩に刺さったナイフを抜こうと手を伸ばすがうまくいかない。
左肩に刺さったナイフは深く刺さっていて簡単に抜けない上に、だんだん左腕がしびれてきていた。
声を立てて走っていたのに幸い他に狙われる事も無かった。
痛みが痺れと共に感覚が無くなって来て意識も朦朧としてくる。
「はぁ。はぁ。はぁ。」
しばらく走ってきたが、どうやら追っては来ないようだ。
名雪はやっと足を止めて茂みの方で座って、改めて左肩を見るとナイフが刺さったままになっていた。
そっと右手を伸ばす。
「痛。」
痛みで右手もうまく動かない。
「ああ。私も....私も死んじゃうんだ。お母さん。祐一・・・もう会えない。」
「私は独りぼっちだよ。怖い・・・怖い。怖いよ。怖いよ。」
548 :
復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:57:53 ID:9/AdTALE0
泣きたい。けれど恐怖のためか顔が引きつって泣けない。
唇は乾いて、喉も乾いている。でも水も何も持っていない。
「・・・怖い。・・・喉が渇いた。」
日が暮れてきて風が出てくる。
ガサガサと近くの森が揺れるたびに名雪はひっと首を縮め、恐怖で目が閉じる。
「――――――。」
そんな事を何度も繰り返して、かなり暗くなった時、名雪は茂みから出て歩き始めた。
「かなり暗くなってきたから、どこかで休憩しましょうか。」
『はい、なの』
水瀬秋子は上月澪に声を掛ける。
休憩できる上に見通しが聞いて行動しやすい場所、できれば電気や水が使えると有難い。
でも水道は毒が入っていそうだから、小川か井戸があったほうがいい。
549 :
復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:58:30 ID:9/AdTALE0
「あそこにしましょう。」
村はずれのちょっと小高い所にある民家に向かう。
ドアに鍵はかかっていない。入る前に一応先客が居ないか確かめる。
「大丈夫そうね。さ。入って。」
澪を入れると秋子は慎重にドアを閉め、代わりにベランダの窓を開ける。脱出経路を確保するためだ。
かなり暗くなってきていて、澪のスケッチブックも読めない。
電気は点きそうだが、電気をつけるとかえって危ない。
「そうだ。澪ちゃん。スケッチブック1枚くれる?」
澪が暗がりの中、スケッチブックを1枚剥いで秋子に渡す。
秋子は勘を頼りに台所に向かい、サラダ油と皿を探して持ってくる。
「こうやって・・・・」
秋子がサラダ油を皿に注ぎ、スケッチブックを細く剥いで油に浸すと、片方に火をつける。
ぼぅっと周りが明るくなる。澪が眩しさで目を細める。
「これでも明るすぎて危ないんだけど。我慢してね澪ちゃん。」
こくこくと澪がうなずく。
550 :
復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:59:04 ID:9/AdTALE0
「さっ、食事にしてしまいましょう。」
秋子が支給品の食料を取り出すと澪もにこにこと食料を取り出した。
秋子はふふふと微笑む。が、ふとその手が止まる。
「澪ちゃん。灯りを消して!」
澪が慌てて火を吹き消すと、周りは闇に包まれた。
物音が聞こえた気がしたのだが、既に外は日が暮れていて姿かたちを判別するのは困難だ。
だが、今日は月が出ている。しっかり見れば見えるはずだと秋子は思った。
やがて、遠くから独りでとぼとぼ歩いている姿が見えて来た。足取りはふらついているが女性のようだ。
何やらぶつぶつ言っているようだが聞き取りにくい。
「澪ちゃんは動かないで。物音も立てちゃダメよ。」
秋子は澪にそう言い聞かせると、そっとベランダから外に出る。
「・・・か・・・・ん。」
やっとかすかな声が聞こえるようになった。幸いにこっちに気がついていないようだ。
ふらふらと歩いてくる姿が派別できるようになると秋子は目を見張った。
551 :
復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:59:36 ID:9/AdTALE0
「名雪っ!」
秋子は慌てて走り寄って我が子に抱きつく。
だが、名雪は何があったのか判らなかった。
「名雪!名雪。よく・・・無事で。」
泣きながら秋子は我が子の顔を覗き込む。
「お母さん・・・怖いよ・・。痛いよ・・・。お母さん・・・。」
名雪は意識も朦朧なのか、視点の定まらない目のままで。繰り返し呟く。
「名雪!」
秋子は何度も名雪を揺するが、状況は変わらない。
気がふれたのか、少しよだれも出ている。
「お母さん・・・怖いよ・・。痛いよ・・・。お母さん・・・。」
秋子は改めて名雪を見る。
ぼろぼろになった制服。そして肩に刺さった大型のナイフ。
秋子は唇を強く噛んだ。
「ゆ・・・る・・・さ・・・な・・・い。」
きっと秋子は月を見上げて呟いた。
「許さない!こんなゲームをしかけたやつ!そして名雪をこんな目にあわせたやつを!」
秋子は自身が修羅に落ちても復讐すると誓った。
552 :
復讐の誓い:2006/10/05(木) 22:00:31 ID:9/AdTALE0
【時間:午後7時頃】
【場所:F−02】
水瀬秋子
【所持品:IMI ジェリコ941(残弾14/14)、包丁、殺虫剤、ほか支給品一式】
【状態・状況:健康。主催者を倒す。ゲームに参加させられている子供たちを1人でも多く助けて守る
そして名雪に危害を与えた者を探して復讐する。】
上月澪
【所持品:フライパン、スケッチブック、ほか支給品一式】
【状態・状況:健康。浩平やみさきたちを探す】
水瀬名雪
【持ち物:GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)
赤いルージュ型拳銃 弾1発入り、青酸カリ入り青いマニキュア】
【状態:肩に刺し傷。すでに混乱もしくは発狂?】
【備考】
・秋子は澪たちに自身の胸の内を明かしていない。(そのため少し誤解されている)
→154,→164 Bルートで
PM5:00過ぎ。
向坂雄二一行、氷川村到着。
静かな場所である、立ち並ぶ民家に人気は感じられない。
「なぁ、何でこんな時間かかったんだ?」
「さぁ・・・」
「まぁ、目と鼻の先のはずだったんだけどね」
「はわわ・・・すみません〜〜」
顔を覆うマルチ、道中こんなことがあったんだ。
「はぅ?!」
「どうした、マルチ」
いきなり大声を出したマルチ、貴明が聞いてみたところ。
「わ、私の耳がぁ〜〜」
「あれ、本当だ。アンテナみたいなの、かたっぽなくなっちゃってるね」
「うお、マジだ。なくても動けるもんなのか?!」
興味深そうにジロジロ見られる、マルチは頬を染めて俯いてしまった。
「はう〜〜ダメなんです〜、わ、わたし、わたしはメイドロボとして、あ、あれがないとぉ・・・な、ないとぉぉ!!」
「お、落ち着いてマルチ。多分そこら辺に落としただけかもしれないからさ」
「そうそう。さっきからよく転んでたし、その弾みなんじゃね?」
・・・が、これに意外と手間取った。
「・・・え、えっと。ここでも・・・あれ、あっちでも転んでなかった?」
「いや、新城。ここもあそこもみーんなだ」
「はわぁ、すみません〜〜〜」
結局茂みの奥から見つかるまで、ゆうに一時間弱。
本来ならば日が暮れる前に、到着できたというのに・・・
「す、すみません〜・・・」
「いいから、気にしないの。見つかって良かったね」
「は、はいっ!ありがとうございます、沙織さんっ」
ここまで他の敵対者に会うこともなく順調に来れたからか、彼らはのん気なものであった。
緊張感の欠片もない。
だが、それはここまで。
「・・・!雄二、あっち誰かいる」
貴明が雄二の手を引く、沙織とマルチも向かいの民家の影に逃げ込んだ。
「・・・おい、誰も来ないぞ」
「しっ!静かに。」
貴明の真剣な表情に、思わず雄二も押し黙る。
・・・実際、彼の感覚は当たっていた。
「ほほう、気を抜いていたとはいえ、俺の気配を読み取るとはやるじゃねえか」
四人組の数十メートル先、彼らからは死角になっているであろう場所。
そこに、那須宗一は立っていた。
右手にはFN Five-SeveN。準備、万端。
「来やがれ、腕が鳴るぜ」
556 :
補足:2006/10/05(木) 22:34:28 ID:WU+WGPcP0
那須宗一
【時間:午後5時15分過ぎ】
【場所:I−07】
【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾7/7)、FN Five-SeveN(残弾20/20)、包丁、ツールセット、ロープ(少し太め)、救急箱、ほか水・食料以外の支給品一式】
【状態:周囲を警戒している】
河野貴明
【時間:午後5時15分過ぎ】
【場所:I−07】
【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】
【状態:周囲を警戒している】
向坂雄二
【時間:午後5時15分過ぎ】
【場所:I−07】
【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
【状態:貴明の後ろに隠れている】
新城沙織
【時間:午後5時15分過ぎ】
【場所:I−07】
【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
【状態:フライパンを顔の前にかかえびびっている】
マルチ
【時間:午後5時15分過ぎ】
【場所:I−07】
【所持品:モップ、ほか支給品一式】
【状態:あわあわしている】
(関連・136・141)(Bルート、デスノ有りルート共通)
557 :
眠り姫:2006/10/05(木) 22:45:44 ID:7KOorvyS0
「にはは、ありのままに起こったことを話すよ。
『わたしは祐一さんと行動をともにしていると思ったら、いつの間にか一人になっていた』
何を言ってるのかわからないと思うけど、わたしも何が起こったのかわからなかった。
おいていかれたとか、幻を見ていたとか、そんなチャチなものじゃ断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わった」
神尾観鈴は困惑していた。一緒に行動しようと決めた祐一が、何故か忽然と姿を消したからだ。
とりあえず辺りを適当に探しまくったが、結局見つけることはかなわなかった。
「もう疲れたよパトラッシュ。少し眠ってもいいよね」
(駄目です先生。まだ仕事がたくさん残っています)
「が、がお。なんか変な電波受信した」
彼女は横になり、仮眠をとることにした。
武器を持っていないので、どうせマーダーに対抗する手段はない。
夢、夢を見ている
3人の男女が旅をする夢を
「柳也ど───」
558 :
眠り姫:2006/10/05(木) 22:46:19 ID:7KOorvyS0
───ガブリ───
獲物を求めて彷徨っていたムティカパは、眠っている観鈴の横腹に噛み付いた。
引き摺り出された胃の中から、消化途中のパンがあふれ出てくる。
続いて心臓を引き摺り出し、意識のない病原体保有者に止めを刺す。
一心不乱に肉を引きちぎり貪り食うその獣は、
後ろで翼を広げてたたずむ少女の姿に気付いていなかった。
「破ッ」
少女の掛け声ひとつでムティカパは遠方まで吹き飛び、木に叩きつけられた。
彼女の周りからは異様なオーラが立ち上り、景色が揺らめいている。
その髪は徐々に逆立ち、色を金色へと変化させていく。
「戦闘力5、まったく益体もない。余の宿主を喰い殺すとはいい度胸だ。
この代償は高くつくぞ。貴様の鼻水を飲み尽くしてくれよう!
まて、なんでそんなものを飲まねばならぬのだ。
変なことを書くでない!」
(が、がお。ちょっとした冗談)
559 :
眠り姫:2006/10/05(木) 22:46:57 ID:7KOorvyS0
神尾観鈴
【時間:3時ごろ】
【場所:E-03】
【持ち物:カンペ】
【状況:死亡(神奈の力で霊体になる)】
神奈
【時間:3時ごろ】
【場所:E-03】
【持ち物:不明】
【状況:怒り心頭】
ムティカパ
【時間:3時ごろ】
【場所:E-03】
【持ち物:なし】
【状況:軽傷、炭疽菌に感染】
【備考:さすがは神奈様だ、瞬間移動してもなんともないぜ】
(→010, 046, 052, ルートD)
このゲームが始まってかれこれ数時間………
久瀬はまだ例の部屋にいた。
たびたび水と食料が部屋に不定期に送られてはきたが、誰がどのように送ってきたのかは久瀬にはわからなかった。
さらに、この部屋に来てから尿意等がまったくしないということも気になっていた。
そのため、久瀬はこれは例の人のものではない力によるものだろうと思った。
『やあ、調子はどうかな久瀬君?』
「――!? 貴様は!」
久瀬が見ていたモニターの映像が突然変わり、あの殺人ゲームのスタートを告げた忌まわしいウサギが画面に映った。
『―――いかがかな? 君のために特別に用意した121番目の参加者―――『観測者』となった気分は?』
「…………最悪だな。こんな役割まで用意して、いったい貴様たちは何を企んでいる?」
『それは最後までこのゲームを見届ければわかるさ。
………さて、本題に入るが、実は君にもうひとつ頼みたいことがある』
「なんだ?」
『今島で行なわれているゲームは毎日朝6時と夕方6時にこれまで出た死者を発表する定期放送というものがあるんだがね。
それのアナウンサーを君にお願いしたいのさ』
「なんだって!?」
『5時59分になったらこれまでの死者の名を君の部屋のモニターに送るから、6時になったら随時発表してくれたまえ。
君の部屋に仕掛けてある隠しカメラとマイクから君の声と顔が島に送られる仕組みになっているからね。
ああ。基本的には何を言ってもいいが、我々に関する情報、参加者に対してゲームを止めるように促すこと等を言うのは禁止だよ。
少しでも言った瞬間、君を君の部屋ごと木っ端微塵に爆破するつもりなのであしからず』
「クッ……」
それのどこが自由なんだ、と思いながらも久瀬はウサギの言うことにただ従うしかなかった。