葉鍵ロワイアル3作品投稿スレ2

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1名無しさんだよもん
葉鍵キャラが殺しあう葉鍵ロワイアルの作品投稿専用スレです。

書き手ルール
・このリレー小説の大きな特徴は、書き手は「どの話の続きを書いてもいい」ことです。
 納得できない作品があったらNGを出すのではなく、自分が納得できる展開を書いてください。
 あなたの書いた作品のほうが面白ければあなたの書いた作品の続きを誰かが書いてくれます。
 そうでなければ、放置されっぱなしです。適者生存。

・上記のルールのため、自分が投稿する作品にはどの作品の続きなのかを明記してください。
 その際には自分が書いたキャラの直前の作品ではなく、
 自分が投稿したいルートに投稿された最後の作品を書くこと。
 これは新たに物語を分岐させない場合でも同様です。
(もし、複数のルートが同時に成立した場合、読み手の方々にわかりやすくするため)

・上記のルールのため、自分が投稿する作品には必ず題名を明記してください。

・NGはありませんが、意図的にルートを分ける時以外は極力、前後の状況と矛盾しないようにしてください。

・書き手さんは投稿した作品の最後に出演したキャラの状況を明記してください。
 書く内容は時間、場所、持ち物、肉体的・精神的状況。
 例
 古河渚
 【時間:午後2時ごろ】
 【場所:ホテル跡(E-04)】
 【持ち物:デリンジャー(銃弾装填済み)、予備弾丸×9、水・食料一日分】
 【状況:ひざに擦り傷(血は止まってる)、極度の疲労】
2参加者名簿&会場:2006/09/29(金) 21:52:46 ID:8nC6weoW0
1相沢祐一 2藍原瑞穂 3朝霧麻亜子 4天沢郁未 5天野美汐 6一ノ瀬ことみ
7伊吹公子 8伊吹風子 9イルファ 10エディ 11太田香奈子 12岡崎朋也
13岡崎直幸 14緒方英二 15緒方理奈 16折原浩平 17柏木梓 18柏木楓
19柏木耕一 20柏木千鶴 21柏木初音 22梶原夕菜 23鹿沼葉子 24神尾晴子
25神尾観鈴 26神岸あかり 27河島はるか 28川澄舞 29川名みさき 30北川潤
31霧島佳乃 32霧島聖 33草壁優季 34久寿川ささら 35国崎往人 36倉田佐祐理
37来栖川綾香 38来栖川芹香 39向坂環 40向坂雄二 41上月澪 42河野貴明
43幸村俊夫 44小牧郁乃 45小牧愛佳 46坂上智代 47相良美佐枝 48笹森花梨
49佐藤雅史 50里村茜 51澤倉美咲 52沢渡真琴 53椎名繭 54篠塚弥生
55少年 56新城沙織 57春原芽衣 58春原陽平 59住井護 60セリオ
61醍醐 62高槻 63篁 64橘敬介 65立田七海 66月島拓也
67月島瑠璃子 68月宮あゆ 69遠野美凪 70十波由真 71長岡志保 72長瀬源蔵
73長瀬祐介 74長森瑞佳 75名倉由依 76名倉友里 77那須宗一 78七瀬彰
79七瀬留美 80仁科りえ 81柊勝平 82氷上シュン 83雛山理緒 84姫川琴音
85姫百合珊瑚 86姫百合瑠璃87広瀬真希 88藤井冬弥 89藤田浩之 90藤林杏
91藤林椋 92伏見ゆかり 93古河秋生 94古河早苗95古河渚 96保科智子
97松原葵 98マルチ 99美坂香里 100美坂栞 101みちる 102観月マナ
103水瀬秋子 104水瀬名雪 105巳間晴香 106巳間良祐 107宮内レミィ 108宮沢有紀寧
109深山雪見 110森川由綺 111柳川祐也 112山田ミチル 113湯浅皐月 114柚木詩子
115柚原このみ 116柚原春夏 117吉岡チエ 118芳野祐介 119リサ=ヴィクセン 120ルーシー・マリア・ミソラ

会場:沖木島(原作バトルロワイアルの舞台)
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/1458/map.jpg
3ゲームルール:2006/09/29(金) 21:55:26 ID:8nC6weoW0
【基本ルール】
・全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
・生き残った一人だけが、帰ることができる。
・プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
・プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収される。
 ただし義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。また、衣服は持ち込みを許される。
・ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給される。以下の物は「デイパック」に詰められ支給される。
 中身は「地図」「コンパス」「懐中電灯」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「ランダムアイテム」

【首輪について】
・ゲーム開始前からプレイヤーは全員、首輪を填められている。
・開催者側は、いつでも自由に首輪を爆発させることができる。
・この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
・24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
・「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい(無理やり取り去ろうとすると、首輪が自動的に爆発する)。
・会場である孤島から脱出すると爆発する。
・プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。

【能力制限】
・特殊な能力を持つキャラはその力を制限される。

4前スレ・関連スレ・まとめサイト:2006/09/29(金) 21:58:30 ID:8nC6weoW0
・前スレ
葉鍵ロワイアル3作品投稿スレ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1159023621/

・感想・考察・運営スレ
葉鍵ロワイアル3感想・考察・運営スレ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1159207638/

・まとめサイト
http://www.geocities.jp/hr2_routes/index.htm

・関連スレ
葉鍵ロワイアル統合スレ16
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1126394892/
5名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:09:19 ID:w1coG6Cs0
U-1度が足りない!
6名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:16:58 ID:WU+/VXTb0
とりあえず即死回避しとく…?
7名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:20:55 ID:8nC6weoW0
そうですね。回避しときましょう
8名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:21:43 ID:Gb4NnF0ZO
乙!
そして即死回避!
9名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:37:00 ID:GYeHmxXP0
じゃ、点呼も兼ねて、2度目だけど乙!
10名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:41:29 ID:nw7Wvowh0
ノシwwwwwwwww
11名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:48:50 ID:q9OdtvzI0
うぁ、またやってたのか

しかし、この手のスレは他の糞スレあげるかなんかで
下に下げといたほうがいいと思うけどな
12名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:50:17 ID:8nC6weoW0
ノシ
13名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:54:27 ID:8nC6weoW0
それと訂正

081 無茶苦茶コンビ?
佳乃の一人称は「あたし」
14名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 22:56:19 ID:8nC6weoW0
さらに追加
佳乃の男の子に言う「○○くん」は平仮名
15名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 23:07:30 ID:2sLjr2ly0
ノシ
16名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 23:11:47 ID:Gb4NnF0ZO
ノシ

>>14
渚とかも「くん」は平仮名だな
呼称表見てみると
17名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 23:40:26 ID:IjYLw8fn0
そんな細かいことにぐだぐだ言うなよ・・・・・
18名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 23:44:38 ID:q9OdtvzI0
本スレも見てない今北ばかりの部外者ですまんけど
まじめにやるのならば、一人称間違いはわりと論外レベルなんだが…
19名無しさんだよもん:2006/09/29(金) 23:58:15 ID:GHNYtDS4O
曖昧な記憶だけに頼って書くとその辺まずいね
20悪夢(1/2):2006/09/29(金) 23:59:06 ID:8jllTQ6r0
空気を読まずに彰マーダールート。
81とかぶってるんで分岐で。

身体にまたがると、また一発二発と顔面を殴り続けた。
顔が左右に揺れ、同時に口から鮮血が飛び散る。
何十発と殴ったのかもうわからない。
顔はどす黒く晴れ上がり、綺麗だった面影はどこにも残っていなかった。
真っ赤に染まった拳を止める。振り下ろす拳が赤く染まる。
右へ左へとリズム良く揺れる顔から鮮血が飛び散っていた。
僕は笑っていた。
恍惚の笑みを浮かべ、ただ殴り続ける。
異様なまでに興奮していた。
もはや呻き声も出ないほど憔悴しきったそれが、涙を流しながら自分をじっと見つめている。
僕は気にも止めず、また拳を振り上げ打ち下ろした。
頭が大きく揺れる。
「………ん」
何か言ったように聞こえた。
僕の左腕がぴたりと止まった。
(命乞いか?聞いてやろうじゃないか)
腕が振り下ろされないのがわかったのか、ノロノロと顔を上げて僕の目を見て小さな口を開いた。
「……あ……きら……く……ん」
殴りつけていたはずの顔が美咲さんの顔になって、そしてそのまま目を閉じて……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

そこで目が覚めた。
極度の興奮でほんの数分の休憩を取ろうと腰掛けた、それだけなのに……悪夢だった。
「はぁ……はぁ……」
呼吸がまったく定まらない。
夢は潜在願望を映す鏡と言うが、あれが僕の望み?
美咲さんを殺すことが?
冗談じゃない。
21悪夢(2/2):2006/09/29(金) 23:59:45 ID:8jllTQ6r0
初めて人を殺した興奮が止まないだけだ。
腕に巻いた黄色いスカーフをじっと見つめる。
佳乃に殺されかけた時の黄色い布、それは赤い鮮血で汚れていた。
特に深く考えたわけではない。
気が付いたら握り締めて持ってきていた。
「殺した人間の持ち物をコレクションする……どこぞの快楽殺人者みたいだな、ってか冗談じゃない」
彼女を守るために他の人間はすべて殺す、ただそれだけだったはずだ。
「なんでこんな思考になる?落ち着け、落ち着け、落ち着け……」

『みさき!?』
その時、どこか遠くから懐かしい名前が聞こえた。
もたれた身体をガバリと起こすと目を閉じて耳を澄ます。
だがその後は何も聞こえることは無かった。
ただ静寂が広がるばかり。
(気のせい?いや違う、確かに聞こえた)
「美咲さん、美咲さん、美咲さん!」
(声がしたのはあちらの方角だ、たぶんそうだ)
バックを慌てて掴むと駆け出していた。
頭の中が愛しい人で埋まる。
「会える!会いたい!会える!会いたい!!!」


七瀬彰
【時間:一日目15:50】
【持ち物:武器:アイスピック、自身と佳乃の支給品の入ったデイバック】
【状況:声のした方向へ向かう、叫び声は「気がつけば『お約束』? −春原の受難−」での雪見のもので】
22魔弾の射手/姉のために(1):2006/09/30(土) 02:51:46 ID:DymMd6c40
 島の全景を望む神塚山の頂上、そこに二人の少女がいた。
 二人の顔は全くの相似、いわゆる一卵性双生児である。
 双子の少女――姫百合珊瑚と姫百合瑠璃は眼下の光景を見下ろしていた。

「瑠璃ちゃん……ほんまにやるん?」
「さんちゃん……うちらが生き残るためにはこうするんしかないんや」
「貴明やいっちゃんが知ったらぷんぷんや……」
「うちは……さんちゃんのためやったら地獄に堕ちてもええ」
 姫百合瑠璃は震える手で筒状の物体を握り締めた。
 彼女は愛する姉のためにこれから手を汚そうとしていのだ。
 もし今から行おうとする行為が貴明が知ったら彼はどう思うのだろうか
(きっと怒って悲しむやろな……)
 瑠璃に支給された武器は筒状の物体だった。
 形としては小振りなバズーカ砲に見えなくともない
 砲身にはトリガーもついてある。
 が、その先端には弾頭が発射される穴は開いていない。
 レンズ状の物体がはめ込まれていた。
「ここやったら誰にもにジャマされずに誘導できる、高いところやから障害物も関係あらへん」
「でも三発しか撃てないんやで……こんな強力な武器、あほな殺し合いさせる悪い人の家に撃ったほうがええやん……」
「さんちゃん、これはどこから飛んでくるんやと思う?」
「悪い人の家……」
「そや、これを主催者の家に向けて撃ったかて意味ないんや。やつらの狙いは殺し合い
 自分ところに撃たれた場合の対策はキチンとしてあるはずや」
「そうやけど……」
23魔弾の射手/姉のために(2):2006/09/30(土) 02:54:07 ID:DymMd6c40

 瑠璃に支給された武器――いや、それはもはや兵器である。
 携帯型レーザー誘導装置。
 目標に向かってトリガーを引き、レーザーを照射させることによって
 目標に対地ミサイルによる精密爆撃を行うものである。
 着弾までレーザーを照射し続けなければ誘導できないのが欠点であるが
 命中すれば民家程度なら簡単に全壊させるほどの威力ある。
 珊瑚のレーダーに集中して表示される五つの光点、そして少し離れて表示されるもうひとつの光点。
 場所にしてG−05地点、肉眼で小さく見える人影、そこにいる藤田浩之とその一行
 そして彼らを狙う巳間良祐だとは瑠璃は知るよしもない。

「やめよう瑠璃ちゃん……もしあれが貴明やいっちゃんやったらどうすんねん……」
「ほな聞くで、さんちゃんは貴明やイルファじゃなかったらええんか?」
「それは――」
「さんちゃんに人殺しはさせへん、そんなんうちだけで十分や
 それにあいつら村に向かってる、村に入られたらここからじゃうまく誘導でけへん
 あいつらの姿がここから見えてるあいだがチャンスなんや」

 瑠璃は強張る手でトリガーに手をかける。
 命中すれば木っ端微塵。確実に即死だ。
(ホンマにやるんかうちは……やめるんやったら今のうちや……)
 ここなら誰の邪魔も入らない。
 トリガーを引き、レーザーを照射し続ければ連中は死ぬ。
 ここなら誰の邪魔も入らない、落ち着くんだ。
 だが灯台もと暗し、瑠璃と珊瑚は極度の緊張と興奮のため
 山頂に存在するもう一人の人物の存在に気がつかなかったのだった。
24魔弾の射手/姉のために(3):2006/09/30(土) 02:56:34 ID:DymMd6c40
【85姫百合珊瑚】
【時間:午後四時】
【場所:神塚山の山頂 F−05】
【支給品:レーダー デイバック】
【状態:極度の緊張 できれば瑠璃を止めたい 少年の存在に気づかず】

【86姫百合瑠璃】
【時間:午後四時】
【場所:神塚山の山頂 F−05】
【支給品:携帯型レーザー誘導装置 弾数3 デイバック】
【状態:極度の緊張 G−5地点の浩之達を狙う 殺人に対する迷い 少年の存在に気づかず】

【Bルート系 003、004の続き 061、084とリンク】
25特に異常無し。:2006/09/30(土) 03:47:50 ID:cDFeLM/t0
G4地点。午後4時半くらい。

「お腹すいた」と綾香は言った。

開腹された腹をガムテープ巻かれたメイドロボと富豪。機械どもにはどうでもいい話だが
綾香と芹香は人間なんで最初からそもそも拉致された訳ですらないのだから当たり前なのかもしれない。

のんびり珊瑚だか翡翠だか瑠璃だか琥珀だか瑪瑙だか忘れたが技術者の首求めて探してると、
そこに、足元に一人の遺体を発見した。セリオが近づいて情報照合を行う。

「データ照合。TH2です。045番、小牧愛佳。生年月日5月1日。死亡日は本日。A型 B83W58H84身長154cm。」
「あらら」
「首輪内の住民基本台帳情報から算出すると生存時間は6432日19時間33分。殺害コードは39」

「WikiによるとTH2はLeafの総力を結集した大作であるが、『To Heart』においてシナリオを担当した高橋龍也
 青紫や、原画担当の1人水無月徹らが既に退社していることもあってか、登場キャラクターなどが一新されており前作との
 相関性は薄いとなっております。」
「そこはどうでもいい」と綾香は念を押す。

  綾香:「ていうかコケシに戻ってきてもらっても困るというLeafキャラとしてのココロの声」
 セリオ:「綾香様、口に出してます」

26特に異常無し。:2006/09/30(土) 03:48:55 ID:cDFeLM/t0
「にしても、随分綺麗に頚動脈切れてるわね」
たしかに、愛佳の首の4分の1だけ切れた状態でこと切れていた。

「はいなんまんだなんまんだぁ」と綾香は手を合わせた。そして直ぐ
「じゃ、ここで飯でも食うか」と振り向く。こくこく首を振る姉。無表情なHMX-13。

「ここでですかぁ?」とイルファは驚きを隠せなかった。
  綾香:「なんか困る?」
イルファ:「別に」
いくら人間の心持ってるといっても所詮は機械である。こいつも人の生死にはいまいち鈍感だ。

「じゃあ、携帯用の食料を・・・」とイルファが鞄あけようとすると、
「誰がそんなもん食うって言った?」と綾香が首輪を持って話し出した。

「え?」

「久瀬クーン」と首輪に話しかける。
『はい』
27特に異常無し。:2006/09/30(土) 03:50:03 ID:cDFeLM/t0
───10分後。防衛軍の輸送ヘリCH-48 チヌーク(ライセンス・来栖川工業)が綾香の目の前に下りてきた。
   ヘリには十字の病院によくあるようなマークが書かれていた。

「・・・あ」
イルファは驚いた。既に中に旅客機のファーストクラス並みの料理が準備されているのだ。
あきらかに主催者じゃないとできない暴挙。流石に機械の背筋も凍る。


イルファはそっと綾香らの鞄を覗き見た時だったが、。

綾香と芹香の鞄は、いろんな火器やアイテム・弾薬・薬剤その他が大量に入ってるが
とにかく中の携帯用の食料や水ですら他の奴等とぜんぜん違う。
イルファに支給されてるのは生産地大阪のおいしい水とかかれた軍支給品だが
こいつらだけヴォル○ックやエ○アンでしかも念のため携帯用浄水器や水浄化剤まで入ってる。

糧食にしても、こいつらだけはフランスやドイツ製のレーションでしかも特別製のようだった。
牛肉とニンジンのシチューとかそんな感じの内容が外国製の品のよい形の缶詰に書かれてる。
それとは別の糧食もフリーズドライで軽く持ち運びが出来るようにわざわざ別パック。

他の奴等の食料はカンメシか乾パンであとは軍製造の『いやっほぅ〜元気最高!』とかいう
妖しげな栄養ドリンク程度なのに。

(・・・これなのにしかも補給アリですかぁ?ねえ・・・)
機械の心ですら無体と思うこの心情。

28特に異常無し。:2006/09/30(土) 03:50:55 ID:cDFeLM/t0

何のためにこの糧食があるのかすらわからない。しかも鞄は微妙に他の奴の1.5倍くらい大きいし。
しかも、スーツのバージョンアップまでしてる。銃弾再補給や対衝撃吸収用の物を体に付け始めてた。
武器を持った兵が何人か外に出る。「強化兵部隊」とやらが今、ヘリの護衛をしている。
近づけないようにする為だろう。名札には『御堂』とか書かれてる。あと数人。

ヘリの中の坂神という名札つけた男に綾香が話しかけている。
「小牧愛佳ってのが死んでる。保存状態いいから回収して」といった。

男は「はぁ」とため息をつく。
「なんでこんな国になっちまったんだ」
「知るかよアタシが」と綾香が返す。

「バトロアに参加しないだけマシでしょ?」
「まあそりゃそーなんだが」
「あんたら恵まれてるのよ?少しは感謝してほしいわ」
「まあな」

そして、愛佳の死体がヘリの中に運び込まれた。
29特に異常無し。:2006/09/30(土) 03:52:01 ID:cDFeLM/t0
イルファ:「愛佳さんの死体・・・どうする気なんですかぁ?」
  綾香:「うーんと、多分、他の主催者用に展示?」
イルファ:「・・・」
  綾香:「姉さんの話だと、プラスティネーションの技術を使って永久保存できるらしいのよ。
      だからすっ裸にして人○の不思議展の標本のように乳房とか全部保全できるようにして、
      17歳の健康な美少女全裸標本か剥製として金持ち用の裏オークション?」
イルファ:「プラスティネーション…オークション・・・」
  綾香:「買う奴は金持ちや政治家に多いのよ〜バトロアだから死体どうにでもできるし。
      そもそもこういうときじゃないと作れないしね〜仕方ないんじゃない?」

『綾香さん。できるだけなら妹の小牧郁乃のもお願いします』と首輪の中から声がする。
「OKできるだけやってみる。姉妹同時剥製なら金も上がるって?」
『まあ話ではそうらしいです。九品仏って奴の話だと』
「・・・わかった・・・見つけたらできったけ綺麗にやってみる」
『はい』
「理奈由綺はしないわよ。アレはバレるとマスコミがうるさいからさ」
『ええ。一般人だけっす』

 さっさと食事終わった後、愛佳の体を載せたチヌークはゆっくりと飛び去っていった。
 あのまま島の外まで飛んでいって、久瀬の別部隊に引き渡されるのだろう。

 「もうすぐ放送入るわよ。入れるように言っておいたから」と綾香は言った。

【45 小牧愛佳  死亡     遺体は軍で回収⇒オークションに】
【来栖川綾香・芹香・セリオ  既に首輪は自分で外している。
               パワードスーツはトラとの戦いの経験から耐衝撃性を向上。銃弾は補給済。
 イルファ          首輪が逃げられない様に爆発量を少なくされて続行】

【Dルート系? 068の続き】
30杞憂 ◆/EyftfKRBU :2006/09/30(土) 05:31:47 ID:mt3ovSLI0
 長瀬祐介は、柏木初音と共に歩いていた。
 時を遡ること一時間。
 悲鳴に駆けつけた祐介の元にいたのは、泣きじゃくる初音と横たわる橘敬介だった。
 困惑する祐介だったが、涙交じりの初音の説明から、大体の自体を把握した。
 初音は敬介を死んだものと勘違いしたようだが、祐介が頚部から脈を取ると、まだ生きていることが判明した。恐らくは、なにか麻酔銃のようなもので昏倒したのだろうと思われる。
 そして、二人で敬介が目覚めるのを待つことになった。

 祐介は放って置くべきだと訴えたのだが、初音がそれを拒否したためである。
 折れたのは結局、祐介のほうだった。こんな小さな少女を放って置くことは許されないだろう。
 
 被害者が次の瞬間には加害者に回るかもしれないのだ。……鋸を手に警戒する祐介。
 しかし祐介の心配は全て杞憂に終わったのだった。
31杞憂 ◆/EyftfKRBU :2006/09/30(土) 05:32:54 ID:mt3ovSLI0

 目覚めた敬介を交えた3人は自己紹介の後、これからのことを話し合った。
 敬介は大切な人を探すといい、初音は姉達を探すという。
 三人で行動をした方がいい、と訴えた祐介だが、敬介はそれを断り、一人この場を去った。
 彼なりに、なにか考えがあってのことだろう、と祐介はあえて咎めなかった。
 ただ願うのは、彼の無事。
 別れる間際、祐介は彼にある武器を手渡していた。
 敬介の支給品は花火セット。とても護身にはならないだろう、と祐介は支給されたうちの一つ――トンカチを彼に手渡した。
 敬介はすまない、と頭を下げ、大事そうに其れを受け取ると姿を消した。
 残された二人は自然、行動を共にすることになる。
 
 その道すがら、祐介は初音に尋ねた。
「そういえば、初音ちゃんの武器は?」
「私は……これ」
 そういって彼女がデイバッグから取り出したのは、大ぶりの拳銃だった。
 銀の銃身と、黒のグリップ。まさに『重厚』。
 この銃はコルト・パイソン(6インチタイプ)である。
 ――俗に、拳銃のロールスロイス。
 全長291MM、銃身152MM、重量1150g。口径は.357マグナム、装弾数は6発。

32杞憂 ◆/EyftfKRBU :2006/09/30(土) 05:33:53 ID:mt3ovSLI0
「……祐介おにいちゃん、これ使って」
「え、……いいの?」
「うん、私……こんなの使えないから」
「……わかった。 じゃぁ代わりにこれを」
 祐介はそれを受け取る代わりに、鋸を初音に渡した。
「で、でも私こんな……」
「持っているだけでいいから。 護身にはなる」
「う、うん……」
 恐々と、初音は鋸を受け取る。
 祐介自身、拳銃の扱いなど素人だが、初音に持たせるよりはいいかもしれない、と考えた。
 実際、初音は人を傷つけられるような人間ではないことを、既に祐介は知るに至っている。

(こんな優しい子まで……なんてことだ)
 祐介は、主催者への苛立ちを募らせた。
 同時に、彼女を守って見せる、という強い責任感が芽生える。
 武器を使わないことに越したことはない。だがきっとそうも言っていられない。
 敬介を襲った人間のように、もう何人かは確実にゲームにのっているのだ。
 もしそいつらと出くわしたら……。その光景を想像するとぞくり、と祐介は震える。
 手に持つ銀色の銃は、鈍く重い。それは同時に、命の重みのようでもあった。
(僕はこれで……)
「初音ちゃん」
「え……?」
「僕は……君を守るよ。 絶対に」
「……ありがとう」
(それはあの頃のように……)
33杞憂 ◆/EyftfKRBU :2006/09/30(土) 05:34:50 ID:mt3ovSLI0
初音の姉、そして親戚のお兄ちゃんだという柏木耕一の4人を求めて。
――目指すは、氷川村。



 長瀬祐介
【時間:13:20】
【持ち物:コルト・パイソン&弾数25(内装弾6)&キリ&支給品一式】
【場所:H-07】
【状況:柏木初音と行動。氷川村を目指す(初音を守る)】
 ※橘敬介にトンカチを渡す/初音から拳銃を受け取る/初音に鋸を渡す

 柏木初音
【時間:13:20】
【持ち物:鋸&支給品一式】
【場所:H-07(※初音のスタート地点はS7焼場)】
【状況:姉達を探しに、祐介と共に氷川村を目指す】

 橘敬介
【時間:13:20】
【持ち物@:トンカチ】
【持ち物A花火セット(打ち上げ・爆竹・線香花火など色々&ライターと蝋燭)】
【持ち物B支給品一式】
【場所:H-08】
【状況:単独で観鈴を探す。出会った暁には、一緒に花火を…と思っている】
【状況A:麻酔の影響から、まだ少し頭がぼぅとしている】

 ※ 044の続きです
3410:2006/09/30(土) 09:31:11 ID:u9VMNb8s0
出来ましたー。
B'-026って事で。
No.60 No.92の続き。
35No.95 悪魔の誘惑天使の邂逅:2006/09/30(土) 09:32:28 ID:u9VMNb8s0

どないしょー……! 瑠璃ちゃんが……!
あかん……あかんよ〜……!
瑠璃ちゃんが……瑠璃ちゃんが……!
なんとかしてとめな……なにか……なにか……
!!
「瑠璃ちゃん! あかん! 逃げよ!」
その言葉に瑠璃ちゃんはびくっとなる。
よかった。
瑠璃ちゃんもきっと迷ってた。
「どうしたん!? さんちゃん!」
「これ! 誰かおる!」
そういってうちはレーダーを取り出す。
近くに自分達の近くに光点。
光点自体は動いていないが、こちらの武器はそのものには攻撃力は無い。
ミサイルが飛んでくるまでは完全に無防備だ。
だからやめて?
やめて逃げよう?
そんな思いを込めて瑠璃ちゃんにレーダーを見せる。
「……そやね。はよ逃げな。だれもおらんとこに……」
「うん!」
よかった。
やめてくれた。
瑠璃ちゃんにこんなことさせたない。
「こっち!」
瑠璃ちゃんの手を引いて駆け出した。
36No.95 悪魔の誘惑天使の邂逅:2006/09/30(土) 09:33:08 ID:u9VMNb8s0



ここは……
「さんちゃん、ここは……?」
「うん。神社みたい……」
だれもいないほうにと山を降りてきたら神社に出てきてしまった。
山を降りれば、きっとあの武器も使えなくなる。
そう思いながら。
「…………まぁぁぁ! る……!」
「さんちゃん?なんか聞こえへん?」
「うん……あれ?ひとつ、すごい動いてる光がある……」
「こっち来てる?」
「どやろ……下の道通ってるからこっち来るのかわからんし……」
「でも、こっち来るかもしれへんのやろ? あかんよ! 隠れな!」
「う、うん!」
近くの茂みに隠れる。
声と光はどんどん近くなる。
それにつれて声が聞きやすくなってくる。
「さん……! 瑠璃さまぁぁぁぁぁぁ!!!」
!!!! この声は!
「瑠璃ちゃん!」
「さんちゃん!」
もう言葉はいらない。
瑠璃ちゃんの手を握って駆け出した。
「だんごっだんごっだんごっだんごっ♪」
「ぷひっぷひっぷひっぷひっ♪」
嬉しそうに歌いながら歩く芽衣。
その数歩後ろを顔を引きつらせながら見守るのは緒方英二。
顔は笑ってはいるものの周囲への警戒は怠ってはいない。
気になるのは芽衣の横をとことこと歩いている一匹の獣。
それが何かと言うと、事の顛末はこうだ。

「そう言えば、芽衣ちゃんの支給品はなんだったんだい?」
絶対に兄に合うまでは守ってやるつもりではあるものの
――参加者の中には何人か人間とは思えないような連中が居るからね。自分のことだな、と心当たりのある連中は居るだろう?
英二は最初に言われたウサギの説明を思い出す。
『人間とは思えないような』、それが厳密には何かはわからないがエスパーみたいな人間が混じっているのかもしれない。
もしもそんな誰かに襲われた時、自分の持つ銃だけでは心もとないのも事実だった。
だから出たそんな言葉。
芽衣もまだ見てはいなかったらしく、その言葉に首をかしげた。

バックをおろし鞄を開けて覗き込む。
中をまさぐっても武器らしきものは特には見当たらない。
「あっ!可愛い〜」
芽衣が嬉しそうな声を上げて鞄の中から取り出したのは一体の茶色いぬいぐるみ。
(まさかこれか?)
英二が訝しがっていると、抱き上げたぬいぐるみから一枚の紙がはらはらと落ちる。

 <取扱説明書-ボタン->
 見た目はなんの変哲も無い可愛らしい猪ですが
 一定のキーワードを言った後指を鳴らすとあら不思議、言ったとおりのものになります。
 枕にしてフカフカな夜を満喫するもよし。
 ラグビーボールにしてにくいあんちくしょうの顔めがけてもよし。
 なんと今ならマッサージ機にも、一日の疲れを癒してくれます。
 他にも多機能満載。
 動いてる姿を愛でたくなったら再度指を目の前で鳴らしてあげてくださいね(はぁと)
 ただれっきとした生き物ですので餌は三食しっかりと与えてください。
 糞の始末も飼い主の責任ですよ!

……読んでもいまいち状況が飲み込めない。
ただ間違いなく芽衣に支給されたものは、いわゆる外れの部位に入るこれのようだった。
ぬいぐるみを抱きかかえながら黄色い声を上げている芽衣を手招きする。
つぶらに固まった眼の前に手をかざす。
揺ら揺らと風を起こしても何も反応は無い。
(これが生き物……?)
とても信じられない。
指をぱちんと鳴らしてみた。
「う、うわっ」
途端、今まで黙っていたその物体がプルプルと震えだした。
暴れるように芽衣の腕から飛び跳ねると「ぷひっ」と奇妙な泣き声を上げる。
「か、可愛い〜っ!」
狐につままれたように呆然と立ち尽くす英二に対し、芽衣は目を輝かせてボタンに飛びついた。

すっかり芽衣になついてしまったボタンは、芽衣のそばを離れようとはせずずっと隣を歩いていた。
「串に刺さ〜って、だんごっ♪」
「ぷっひっ♪」
「みっつ並んでだんごっ♪」
「ぷっひっ♪」
しかしこの猪はどこまで出来るのか。
もはや歌い始めて3週目になり、芽衣の歌詞にしっかり相槌まで打っている。
わけがわからなくて英二は思わず声を出して笑ってしまう。
いきなり出た笑い声に、芽衣はくるりと振り返り尋ねた。
「どうかしました?」
英二は答えることが出来ないほどの笑いをこらえようと、必死に腹を押さえてうずくまった。
39No.95 悪魔の誘惑天使の邂逅:2006/09/30(土) 09:34:25 ID:u9VMNb8s0



「珊瑚さまぁぁぁぁぁ!! 瑠璃さまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 貴明さぁぁぁぁん!」
やはり、のんびり探すことなんて出来ませんでした。
自分の安全を優先してゆっくり探している間に瑠璃様の身に何かあったら、私は壊れてしまうでしょう。
「何処にいらっしゃるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
この、心が。
何処にいる何処にいるこの壊れた島の何処にいるはやくみつけないとはやくはやくはやく
「いっちゃーん!!」
「イルファー!!」
!!!!!!!
弾かれた様に振り向く。
そこには。ああ、そこには。
私がずっとずっと求めていた愛しい人が。
「瑠璃様っ!珊瑚様っ!」
もどかしい。寸暇が惜しい。
この短い距離がもどかしい。
早く瑠璃様を抱きしめたい。
身体が瑠璃様を求めている。
瑠璃様。瑠璃様!瑠璃様!!
「いっちゃん!」
「イルファ!」
ああ、よかった。本当によかった。
瑠璃様を、珊瑚様をこの手で守れる。
「瑠璃様!珊瑚様!」
瑠璃様、珊瑚様は抱きついてきてくださった。
大きな涙をこぼしながら。
よほど、怖かったのでしょう。
本当に、よかった。
40No.95 悪魔の誘惑天使の邂逅:2006/09/30(土) 09:35:03 ID:u9VMNb8s0

「いっちゃん、いっちゃん、いっちゃん……」
「イルファ……イルファ……」
「もう、大丈夫ですからね……お二人は絶対に私が守りますから……」
こんなゲームは、絶対に許さない。
私が、絶対に止めて見せる。
でも今は、もう少しだけこのまま……
抱きしめさせてください……
この、愛しい二人を……


姫百合瑠璃
【持ち物:デイパック、水を少々消費。携帯型レーザー式誘導装置 弾数3】
【状態:健康、安堵、軽い精神的疲労。最優先は珊瑚ちゃんの安全】

姫百合珊瑚
【持ち物:デイパック、水を少々消費。レーダー】
【状態:健康、安堵、軽い精神的疲労。最優先は瑠璃ちゃんの安全】

イルファ
【持ち物:デイパック、フェイファー ツェリスカ(Pfeifer Zeliska)60口径6kgの大型拳銃 5/5 +予備弾薬15発】
【状態:健康、安堵、冷静、ゲームを潰す決意。最優先は二人の安全。人探しは続行するつもり】

共通
【時間:一日目午後五時頃】
【場所:G-05】
【状態:周囲に他に人はいない】
「んーもう、どうしたんですかっ?」
陽の光を隠すように身体が影に覆われる。
顔を上げると、芽衣が少し膨れっ面で英二に歩み寄っていた。
隣には同じように怒ったように毛を逆撫でたボタンの姿が。
……そこが限界だった。
「……あ」
「あ?」
「……は、はは、あはははははは!」

「ごめんごめん」
ひとしきり笑うとゆっくりと息をついた。
隣ではまだ芽衣がハムスターのような顔でそっぽを向いていた。
勿論下を見ればボタンも同じように……再びこみ上げそうになる前に芽衣を見直した。
「なんか英二さん失礼ですっ」

心の底から笑ったのなんて何年ぶりだろう。
(あっちの世界では仕事に追われ、そんなことを考える余裕さえなかったな)
平和な日常では笑うことさえ出来ず、命を天秤にかけたこの島ではこんなにも笑えるなんて。
……皮肉だった。

春原芽衣
【時間:一日目14:55】
【場所:C-4D-4の境目のちょい南ぐらい】 
【持ち物:支給武器:ボタン 支給品一式、水と食料が残り半分】
【状況:英二にご立腹中】
緒方英二
【時間:一日目14:55】
【場所:C-4D-4の境目のちょい南ぐらい】 
【持ち物:支給武器:拳銃(種別未定) 支給品一式、水と食料が残り半分】
【状況:芽衣を必死になだめ中】
【動向:二人とも鎌石村に向かってます】
どう見ても3/3でしたorz
ちょっとルート確認してみたんですが、全体の流れがBルートに進んでるご様子。
英二ルートの1話が彰マーダールートのトリガーになってるので
両方とも含めて新ルート(B-4あたり?)でおねがいします。
彰マーダー化がどうも不評なのでなかったことになりそうですネ。
43名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 10:17:29 ID:vPQ7IRET0
別に不評じゃないだろうかと
というか好評なルートってDしかない
44笹森花梨の疾走:2006/09/30(土) 10:48:19 ID:/aHwjKFj0
私は今浜辺を走っています。
そして私の後ろには、男の人が声をかけながらついてきます。
波が爽やかな音を立て、海が陽光できらきらと反射して、とても綺麗です。
何も知らない人が見たら、ロマンチックなワンシーンだと思いますよね? 確かにそうかもしれません。
…男の人が、カッターを振りまわしながら鬼の形相で追いかけてきていることを除けば。

「くそっ、しぶとい女だ! さっさと観念しろ!」
「殺されると分かって、わざわざ止まる人間はいないでしょー!」
地獄の追いかけっこは、まだまだ続いている。一体、いつまで続くのかなぁ。それにしてもこの岸田という男、しつこいったらありゃしない。きっと女の子には絶対にモテないタイプだと思うんよ、うん。
しかぁーししかしこの私、花梨ちゃん様は伊達にミステリ研の会長を務めてはいないんよ! 教師から逃げるための…いやいや日々のUMA捜索活動の為の脚力はそこらへんの女とは違うっ!
とにかく、助けてくれそうな人のところまで逃げきれれば…
と思ったところで、私の目の前に誰かが現れた。や、やった、ようやく助けを呼べるんよ!
「そっ、そこの人―! おねがーい、追われているんよ…?」
その人はこちらの姿を確認したかと思うと、おもむろにポケットから何か黒いボールみたいなのを取り出した。へっ? あれって、手榴弾に似てなくも…ないよね?
ゆったりとした動作のまま、安全ピンを引きぬいて…って、この人もなのーーっ!?
後ろからは変態強姦魔で切り裂き魔の岸田。前からは爆弾魔で見た目美少年系の少年A。
「わわわわっ、こ、これっていわゆる、『前門のべんとら、後門の狼男』って事態!? 花梨ちん、だぶるぴんちっ!」
45笹森花梨の疾走:2006/09/30(土) 10:49:12 ID:/aHwjKFj0
どこかの誰かの真似をしてみても事態が好転するはずはないって。…しからば!
道なりに逃げるルートは諦め、林の中へと逃げ込む。直後、私の横方向から爆音が聞こえた。
グァァァァァン!
危ない危ない。もう少し早く投げられていたら間違い無く爆発に巻きこまれていたんよ、うん。
「けど、これであの変態切り裂き強姦男も振りきれ…」
「た訳ねぇだろうが! くくく、俺はしつこいんでな!」
「ひぇえぇぇっ!?」
まだついて来ていた。林に逃げこんだのはいいけど、凹凸が多い分、体力の消費も早くなる。脚力はあっても、花梨ちゃんの体力は普通のおなご同然なのです。
「こっちも混ぜてくれないかなぁ? 椋さんへのみやげ話、もっと欲しいんだよね」
「わぁあっ、爆弾マニアまでっ!」
敵が二人になってしまった。ううっ、どうして私ってば、いつもこんな役どころなんだろう。
必死に逃げるものの、敵との距離が徐々に縮まってきた。い、息も、ちょっとやばいかもっ…
「はぁ…はぁ…だ、誰でもいいからっ、た、助けてぇ〜…助けてくれたらっ、私、UMAだけじゃなくて神様も信じるんよ〜!」
「ダッたら、体勢を低くすルんだナ!」
いきなり聞こえてきた声。ひょ、ひょっとして、かみさま!? 私はにべもなく体勢を低く保った。直後、私の頭をパンが飛んでいった。…パン?
ボンボン、ボンッ!
漫画みたいな音がしたかと思うと白い煙がモクモクと辺りを包んだ。
「ゲホ、ゲホッ、な、何だこれは!…む、小麦粉の味」
「あはは、真っ白だねー。何も見えないや」
46笹森花梨の疾走:2006/09/30(土) 10:49:45 ID:/aHwjKFj0
どうやら煙幕みたいなもののようだ。私が感心していると、不意に横から手を引っ張られた。
「何してるんや! ボサッとしとらんではようこっちきい!」
私を引っ張る、謎の委員長風メガネ。私はなされるがままその人に引っ張られていった。

「フウ…取り敢えず撒いたようダナ。お嬢さん、オレっちに感謝しろヨ」
私を助けてくれた神様は愉快な頭をした黒人の人だった。
「まったく、あんたのお人好しにも程があるで。追われているとは言え、見ず知らずの人間を助けるなんてな。…ま、その手伝いをする私も私やけどな」
私と同じ制服の女の人が、自嘲気味に笑う。…うーん、学校でも見た事がないなぁ。まぁ、単に学年が違ったりするだけかもしれないけど。
話を聞いたところ、黒人の人、エディさんがこの支給品の粉塵パンをどうしようか思案していたところ、メガネの人、保科智子さんがやってきた。
そのまま二人は戦意がないことを確認し合い、取り敢えずは二人で行動しようとしたところ、例の爆音を聞いたらしい。何事かと行ってみたところ、私が追われていたのでエディさんは保科さんの制止を振り切って私を助けてくれたらしい。本人いわく、
「追われている女を救い出すのは、男の役目だからナ」
とのこと。そのお陰で、私は助かったのでありがたやありがたやである。
「ともかく、これでひとまずは安心やな。私とエディはこのまま二人で人探しをするつもりやけど、あんたはどうする?」
「んー…一緒に行動してた人はいるけど、バラバラになっちゃったからね。その人を探そうと思うけど、私も一緒に行かせてもらっていいかな? 一人より、仲間といたほうが安全だと思うんよ」
「ふぅん。で、その人はなんて言うんや?」
「ええっと、確か…十波由真っていうんだけど」
「UMA? このゲームにはそんなモンもいるのカ?」
「アホ。UMAじゃなくて、ゆま、や」
うん、と返事するとエディさんは感心したように頷いた。
「流石関西人。ツッコミが上手いナ」
「ドアホ! 関西じゃなくて、神戸出身や」
すっかり名コンビだった。
「…取り敢えず、この近辺からは離れよか。まだ例の岸田っちゅう奴がおるかもしれへんからな」
「そうだナ。それじゃ、まずは西へ向かうカ」
47笹森花梨の疾走:2006/09/30(土) 10:50:23 ID:/aHwjKFj0
「ちっ、この俺が見失うとはな。しかもあの爆弾のガキもどっかにいっちまったしな。仕方がない、もうすこしマシな得物を調達するとするか。まずは、この先の村に向かうか」
まだまだ、パーティは始まったばかりなんだからな…くくく。

「ちぇ、結局お土産はできなかったなぁ。ヘンな男の人も見失っちゃうし。まあいっか。なんとかなるでしょ」
まだまだ、お祭りは始まったばかりだもんね、ふふ。

『笹森花梨(048)』
【時間:1日目午後一時ごろ】
【場所:C−2、森林帯】
【持ち物:特殊警棒(ランダムアイテム)、海岸で拾ったピンクの貝殻(綺麗)】
【状態:少し疲労が残る、エディ達と行動、由真を探す】

『エディ(010)』
【時間:1日目午後一時ごろ】
【場所:C−2、森林帯】
【所持品:支給品一式、大量の古河パン(約27個ほど)】
【状態:健康、知り合いを探す】
48笹森花梨の疾走:2006/09/30(土) 10:51:04 ID:/aHwjKFj0
『保科智子(096)』
【時間:1日目午後一時ごろ】
【場所:C−2、森林帯】
【所持品:支給品一式、武器は不明】
【状態:健康、知り合いを探す】

『岸田洋介』
【花梨を見失う、武器の探索を開始。C−3の鎌石村の方角へ向かう。(現地点はC−2)】

『柊勝平(081)』
【時間:1日目午後1時ごろ】
【場所:C−2、再び鎌石村の方向へ歩く】
【所持品:手榴弾二つ。首輪。他支給品一式】
【状態:普通。人が集まりそうな場所へ移動】

【備考:ルートはB−2。018、053、063の続き】
49笹森花梨の疾走:2006/09/30(土) 11:24:24 ID:/aHwjKFj0
すまん。↑の備考を
【備考:ルートはB−2、B−3。018、053、063の続き】
にしておいて
50名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 13:26:53 ID:UiWu9Qm9O
佳乃生存(宗一と行動ルート)での彰で続きを
51もう一人の七瀬(浩平談):2006/09/30(土) 13:29:14 ID:UiWu9Qm9O
「うっ…くっそお……」
七瀬彰(078)は負傷した右腕を押さえながら林の中を歩いていた。

(弾が貫通してくれたのが幸いだった……中に残っていたらどうなっていたか……)
止血処置はしたとはいえ、未だに右腕からは激痛がする。当分は激しく動かすことはできないだろう。

(――こんな時、もし敵が現れたら………)
先程の戦いで彼の支給品であるFNブローニング・ハイパワーMkVは失われている。
ただでさえ負傷しているのに武器もない状態で戦闘になれば間違いなくこちらが不利だろう。
(確かこの先に村があったはずだ…まずはそこに避難しよう。
それまで敵に遭遇しなければ……)

――ガサッ
「!?」
その時、近くで草をかき分ける音が聞こえた。


まさか敵!? こんなところで――
くそう。まだこんなところで死んでたまるか。
必ずこのゲームに勝ち残って美咲さんや冬弥、由綺たちと一緒にあのもとの生活に帰るんだ。


彰は木陰に身を隠すと敵と思える者が通り過ぎてくれるのを願った。

「はぁ…はぁ…」
ガサガサ…
静かな林の中に彰の息苦しそうな呼吸と、誰かが草をかき分ける音だけが響く。
ガサガサ…
52もう一人の七瀬(浩平談):2006/09/30(土) 13:31:25 ID:UiWu9Qm9O
やがて彰の視界に自分より1、2歳年下と思われる少年の姿が映った。


「また銃声か? いったいこの辺には何人の殺し屋がいるんだよ?」
一升瓶を肩に担いだ少年が林の中を駆け抜けていく。
「生きていたらなんとか助けてやりたいが……間に合ってくれよ」
どうやら彼は先程銃声がした場所、すなわち、さっきまで彰がいた池を目指して進んでいるようだった。

「…………」
どうやら聞いたところによると、あの少年は敵ではないらしい。
そのため、彰は考えてみた。
(ここで彼に助けを求めて村まで連れていってもらおうか? それとも、このままやり過ごすのを待つか……)

彰としては後者がいいと思った。
自分はどちらかと言うとこのゲームに乗った身だ。
いずれ彼とは敵になるかもしれないというのに、そんな奴から情けをもらうのはどうかと思ったからだ。

(――でも、もしここで彼をやり過ごしたとして、その後にさらに誰か別の人が来て、それが敵だったら………)
それも一理ありそうだとも思った。

(――僕ってこんなに優柔不断だったっけ?)
彰は考えれば考えるほど別の考えをうかべてしまう自分が少しおかしく思った。

「………なにやってんだ、あんた?」
「うわぁ!」
気がついたら先程の少年が自分の目の前にいた。
思わず1歩後ろに後退してしまう。
「あー。大丈夫だ。俺はあんたの敵じゃな……ん? おい、あんた。その腕どうしたんだ?」
少年こと折原浩平(016)は彰の負傷した右腕に目を止めた。
53もう一人の七瀬(浩平談):2006/09/30(土) 13:33:27 ID:UiWu9Qm9O
「その腕……誰かにやられたのか?」
「あ…ああ。まあね……」
「…バイキンとか入ったら大変だぜ。ちょっと失礼」
そう言うと浩平は持っていた一升瓶の栓を抜くと、その中身をいきなり彰の右腕の負傷していた部分にぶっかけた。
「いたっ!」
かけられた瞬間、傷口にしみて激痛が走った。
「君、いったい僕になにをかけたんだ!?」
「酒だよ。消毒薬の代わりにはなるだろ?」
浩平はニカッと笑いながらそう言って一升瓶の栓をしめた。


「で? これからどうすんだあんた?」
「この先に村があるみたいだから一度そこに行こうと思うんだ。武器を失っちゃったから、そこで必要なものを集められそうだからね」
あるかわからないけど、と付け足して彰はその場を去ろうとした。
「そうか。なら俺も一度戻るとするかな。もしかしたら長森たちもいるかもしれないし」
「えっ? い…いいよ。1人でいける」
彰はこれ以上浩平に自分に関わってほしくなかった。
だが、当の浩平はというと
「いいじゃねーか。それにあんた、その腕まだ動かせないんだろ?
だったら、敵に遭遇した時不利にならないように2人のほうが少しは安心じゃないか。ほら、行こうぜ下手したら敵が来かもしれない」
そう言って彰の尻をバンと叩くと浩平は歩きだした。

「……はぁ」
こいつにはいろんな意味でかなわない。彰はそう思うと溜め息をついた。


「――そういや自己紹介まだだったな。俺は折原浩平だ。あんたは?」
「―――七瀬彰」

54もう一人の七瀬(浩平談):2006/09/30(土) 13:34:26 ID:UiWu9Qm9O
 折原浩平
 【所持品:だんご大家族(残り100人)、日本酒(残りおよそ3分の2)、ほか支給品一式】
 【状態:健康。鎌石村へ移動中】

 七瀬彰
 【所持品:武器以外の支給品一式】
 【状態:右腕に負傷。鎌石村へ移動中】

 【時間:1日目2時30分ごろ】
 【場所:D−03】
55 ◆elHD6rB3kM :2006/09/30(土) 13:39:19 ID:6hfsQjf80
投下します。すいません、またルート分岐です。
ルートBより079を採用しない新規ルートです。ルートB-4?


56 ◆elHD6rB3kM :2006/09/30(土) 13:43:22 ID:6hfsQjf80
「脱出」

 水瀬秋子の物語は施設を出る前に始まった。
 自分がディパックを受け取るときかされていたその部屋。その部屋には先客が二人いた。ただでさえ、狭い室内がさらに圧迫感を増す。
「あ……」
その内の一人、髪の短いほうが声を上げる。
「ええと、あの、はじめまして」
髪の短いほうがそういうと、もう一人のおさげもこちらを向いた。
「はじめまして」
秋子も柔らかく微笑んで返事をする。
「あの、わたし澤倉って言います。ええと、こっちが」
「保科智子や。よろしゅう」
関西系のイントネーションでもう一人がそういう。
「水瀬秋子よ。よろしく」
そう言って、後ろ手にドアを閉めた。横の戸棚――最後の一つだ――が開いて、ディパックが飛び出す。それを受け取ってから、秋子は口を開いた
「それで、二人はこんなところでどうしたの? 危ないわよ。そろそろ爆発するらしいわ。私が最後みたいだし」
「ええ、それはわかってるんですけど」
と、唐突に二人の顔が暗くなる。
「?」
「出られないんです」
「え?」
「誰かに狙撃されてるんや」
苦々しげな顔で智子が呟く。
57 ◆elHD6rB3kM :2006/09/30(土) 13:45:19 ID:6hfsQjf80
「ちょっといいかしら」
秋子がドアに近づくと、二人が慌てて部屋の右側に寄った。よくよく見ると部屋の左側に弾痕がある。ドアの構造から考えても、どうも右側から撃たれているらしい。
 少しだけドアを開く。それだけで針のような殺意が外の世界から伝わった。
「……本気……みたいね」
小さく呟く。
「え?」
「あ、ごめんなさい。なんでもないわ。それよりあなたたち、何を支給されたの?」
秋子は扉を閉めながら後ろの二人に聞き返す。
二人はしばらく、顔を見合わせた後、
「釘バットでした」
「ええと、多分硫酸やと思う。ビンに入ってるこれ」
と現物を見せながら答えた。使いようによってはなかなか恐ろしい武器だが、狙撃されてる現在ではあまり役に立ちそうにない。
「そういえば、私は何かしら」
そういいつつディパックをあける。自然、二人が期待した目で見つめる。そして、中から出てきたのは、
「……これは」
「……消火器ね」
58 ◆elHD6rB3kM :2006/09/30(土) 13:47:00 ID:6hfsQjf80
 篠塚弥生は寝そべって照準を通して施設のドアを見つめながらじっとチャンスをうかがっていた。施設に立てこもられてしまったのは誤算だったが、問題はない。
 すぐにあの施設は爆発する。まさか、じっと待って死を待つわけではあるまい。必ず、その前に出てくる。そこを、しとめる。
 中に入っている人間が何人かはわからないが、自分あの施設を出発した時の状況と、この狙撃ポイントまでかかった時間を考えれば、おそらく3、4人程度。
 全員殺そうとは思わない。それができれば越したことはないが、この狙撃銃は一発撃つのに時間がかかる。慌てず、冷静に、一人づつ殺していく。
 扉が少しだけ開いた。身を硬くし、神経を集中させる。だが、扉はすぐに閉じられた。
(あせるな……)
 冷静に自分に言い聞かす。由綺を間違って殺したりしまってはしゃれにならない。まずは相手を確認する。それから、殺す。扉がちょっとぐらい開いたからどうだというのだ。
 いきなり駆け出されても人の走る速度などたかが知れてる。後ろから撃ち殺せばいい。息を吐き出し、頭を切り替える。
(まず、確実に一人。ほかの事はそれから考える)
そして、改めてスコープを通して施設のドアを見たその瞬間、

 がん!

 派手な音がしてドアが開けられた
「っ!」
反射的に引き金を押しそうなるが慌ててこらえる。まだだ。まだ、誰も現れていない。ドアが開い……
『ドアが開いただけ』。心の中で言おうとしてそこで再び、驚愕する。
「走って!」
声と同時にブワッ!と音がしてスコープ内の視界が真っ白になった。
「なに!?」
小さく声を上げる。なんだあれは、何かの煙がぶわっとスコープ内を埋め尽くす。そして、その前に聞こえた声、出てくるつもりだ。
「くっ!」
一度、スコープから目を離し、全体の状況を確認するため、顔をあげる。だが、煙はかなりの広範囲に広がり、それでも状況はよく見えない。だが、何かが走り出すように煙

の中を移動するのが見える。
「119分の1の確率だもの!」
そう言って自分を勇気付け、その影に向かって狙撃する。

 ガンッ!
59 ◆elHD6rB3kM :2006/09/30(土) 13:48:37 ID:6hfsQjf80
狙撃は成功。その間にバタバタといくつかの影が走り去る。あらかじめ覚悟でもしていたのか、その走り方には迷いがなかった。
(まずは、一人)
とりあえずはこれでいい。後は自分が打ったのが由綺でないことを――その確率はほとんどないが――祈るだけだ。
やがて、煙が晴れていく。
「……やられたわ」
施設が爆発したのは丁度そのときだった。




「ど、どうにかうまくいきましたね」
「ええ」
「ギリギリの綱渡りやったけどな」
消火器の煙にまぎれてその隙に逃げることは瞬時に誰もが考え、主張した。が、秋子はそれだけでは不十分だと認識し、身代わりを作ることを考えついたのである。
消火器と釘バットを美咲のストッキングと智子の靴下で十字にむすび、釘バットの両端に秋子のセーターの両袖を通して放り投げたのだ。果たして敵はそれに見事に引っかかり、銃弾をそれに向かってぶちあてたのだ。
「それで、これからどうする?」
「うちは知り合いを探す。クラスメートがここにおるんや」
秋子の問いかけにまずははっきりした声で智子がそう宣言する。
「あの、私も友達を探そうと思うんですけど」
美咲も追従するわけではないだろうが、控えめにそう主張する。
「そうね、私も娘と甥を探したいし。とりあえず三人で行動しましょ」
二人はこくりと頷く。
「さて、それじゃあ、どっちに向かいましょうか」
支給品である地図を広げる。
「でもここがどこかすらわからんしな」
「それならとりあえず、あの施設から離れましょう。いつまた狙撃されるともわからないですし」
「そうね、そうしましょう。あなたもそれでいいわね」
「うん、かまへんよ」
特段大きな反対理由もなかったのだろう。智子は素直に頷いた。
60 ◆elHD6rB3kM :2006/09/30(土) 13:51:16 ID:6hfsQjf80
澤倉美咲
【時間:12時ごろ】
【場所:H-07(ここから灯台方面へ移動予定)】
【持ち物:荷物一式のみ】
【状態:異常なし。ストッキングはいてない】

保科智子
【時間:12時ごろ】
【場所:H-07(ここから灯台方面へ移動予定)】
【持ち物:硫酸(500ミリリットル)】
【状態:異常なし。靴下はいてない】

水瀬秋子
【時間:12時ごろ】
【場所:H-07(ここから灯台方面へ移動予定)】
【持ち物:荷物一式のみ】
【状態:異常なし。セーター着てない】

篠塚弥生
【時間:12時ごろ】
【場所:H-06】
【持ち物:M24対人狙撃銃(装填残弾数2)。予備弾丸20本】
【状態:異常なし】
61一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:14:53 ID:/HktRmfN0
 「ここからだと……氷川村だな」

 地図に目を落としながら呟く芳野祐介(118)。
 相沢祐一(001)らと別れた後も、彼は依然として単独行動だった。
 未だに遭遇した参加者が彼等二人だけだという理由もあるが、実際は祐一にも同行の誘いを受けた。
 だが、彼はそれを断った。これからも断るつもりだ。
 芳野には探したい人がいた。それだけでも祐一達に助力を頼んでおけばいいものを、結局は曖昧にしたまま彼等とは別れた。
 芳野の探し人―――伊吹公子(007)は彼にとっては何事にも代え難い存在であり、婚約者でもある。
 高校時代での新任教師であった彼女には、多大な感謝と共に生涯の伴侶として支え合うと決めていた。
 そんな折にこんな狂ったゲームに巻き込まれたのでは、自身の不運を呪うしかない。
 だからといって、彼の目的は何ら変わりない。
 過去、自分が間違った過ちを犯した時、彼女はどうしてくれたか。
 他所から掌を返されたように否定されながらも、彼女だけは優しく間違いを正し、全てを受け入れてくれたのだ。
 ならば、今度は自分の役目だ。
 震えているのなら一緒に行動を共にし、間違ったことをしているのならば正して全てを受け入れる。

 彼女だけは、何を賭しても守り通さなければならない。
 それは、芳野がゲームを始めるまでもなく既に定められていた誓いだ。
 環境を言い訳にするつもりはない。
 公子を守れなければ、それは全て自分の責任だという強迫観念のような思いもある。
 だが、それが芳野祐介の生き様であり、最大にして尊ぶべき至高の愛の形だ。

 芳野にとって、殺し合いというゲームなど関係ない。
 公子を守るという一点においては、何処で何をしようが変わりがないのだから。
62一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:18:31 ID:/HktRmfN0
 そのためには、まずは公子との合流が先だ。
 人が集まりそうな場所を地図で確認した結果、近場だと氷川村になる。
 一先ず、そこで公子を探し、いなければ他の参加者に聞こうと思う。
 あの時は焦っていたとはいえ、祐一達にも言伝を頼んで置けばよかったと、今更ながらに悔やんだ。
 ともかく、目的地は決まったのだ。行き違いに合わぬよう急ぐに越したことはなかった。
 
「―――よし。夕刻には辿り着けそうだな」

 時刻を確認して、彼は走り出した。

(無事でいろよ。公子―――っ!)

 芳野は重い荷物を背負っているというのに、その走りには乱れがない。
 一定の呼吸に、ペース配分がなされた理想的な走行だ。
 電気工という、以外と体力のいる労働を楽にこなす彼に比べれば、学生ばかりの参加者達とは基礎体力のできが違う。
 速度は速く、それでいて余裕がある芳野は、思考する余地まであった。
 勿論、公子関連のことだ。

(―――名簿にある伊吹風子……。どういうことだ? 風子なんてそうそうある名前じゃないし、何よりも伊吹だ。
 十中八九、公子の妹だな。だが、彼女は今も病院で眠りについている筈では……)

 ありえない、と芳野は頭を悩ませる。
 伊吹風子は公子の実の妹であり、事故で意識を失って以来目を覚ましていない筈だ。
 彼も一度、病院で眠る風子を公子から紹介もしてもらっている。
 実際、この島に来る前も明らかに意識が戻っていなかったが、それは一週間も前の話だ。
 もしかすると、つい最近目が覚めたのかもしれない。
 しかし、そうだとすれば真っ先に自分に教えてくれるものではなかろうか、と芳野は思う。
 自惚れるわけではないが、公子もまずは一番初めに大切な人にその事実を打ち明けるのではないか。
 目が覚めたことを隠すより、打ち明けるほうが公子の行動原理としては正しいはず。
 ならば、こう考えるしかない。
63一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:20:36 ID:/HktRmfN0
(公子も知らないとしたら? 確かに島に来るまでは眠ったままであり、とても身体が動く状態ではなかったとしたら……)

 背筋がゾクリと震えた。
 寝たままの状態で連れて来たのか、もしくは主催者には何年も眠った少女を回復させる手段があるのか。
 前者だとまだいい。人道的ではないが、これだけの参加者達を強引に集めたのだ。
 病院にいる患者の一人や二人を攫ってくるのも訳がないだろう。
 だが、後者だとすればどうだ。
 現代医学では自然と意識が戻るまでは方法がないとさえ言われたのだ。
 仮に起きたとしても、数年間行使していなかった身体を元に戻すまで、どれほどのリハビリが必要であるか。
 それを考えてしまうと、主催者側には一瞬で全てを解決できる技術があるということにもなる。
 主催者側の全容が未だ見えてこないが、参加者を攫う手腕といい、武器の配給具合といい、かなり大規模な組織ということだ。
 しかし、その考えも現実の範囲に基づいてのことだ。
 主催者が言っていたではないか。人間とは思えぬ力と。
 そんな非常識な存在を収集できる主催者とて決して普通ではなく、それこそ人外な存在なのではないのか。
 認めたくはないが、今回の騒動は非現実的な力を元にして開催されたのかもしれない。
 そんな連中にどう対抗すればいいのか。
 あの兎が主催者かどうかは解らぬが、奴が言っていたように、これは単なるゲームだ。
 つまり、彼等にとってこの殺し合いは取るに足らないお遊びで、自分達参加者はいい様に踊らされている傀儡もいいとこなのではないか。 
 祐一が言っていた脱出の方法を探るというのも、実際かなり望みが薄そうだ。
 
 これ以上の思考は、辺りの警戒と走行に問題が生じる場合があったため、強引に打ち切った。
 何をするにしても、何を考えるにしても、前提は公子との合流だ。
 情報が少ない今、あれこれ考えても仕方ないだろう。
 そう思い、走ることに集中しようとした矢先だ。
64一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:22:13 ID:/HktRmfN0
『―――きゃあ!』
「っ!?」

 近くから悲鳴が聞こえた。
 急いでいる今の現状、捨て置きたかったのだが、悲鳴の発生源があまりにも近すぎる。
 思わず芳野は舌打ちした。
 観鈴の時もそうだった。あまりにも近すぎるが故に公子の可能性を捨てきれず、飛び出してしまったのだ。
 そして、今度もまた同じだ。

「―――くそっ。悲鳴を上げるなら、もっと遠くにしてほしいもんだな……!」

 進行方向を一時的に変え、彼は再び横槍に飛び出した。




「―――わ、わたしを……どうするつもりですか……?」
「どうって……ねぇ?」
「貴女にはこれが見えませんか?」

 尻餅をついて後ずさる長森瑞佳(074)へ追い討ちをかけるように近づく天沢郁未(004)。
 その際に、呆れたように肩を竦めながらチラリと横目で鹿沼葉子(023)を流し見る。
 当の葉子は鉈を手で弄びながら、何を可笑しなことを、と言いたげに瑞佳を嘲笑う。
65一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:24:22 ID:/HktRmfN0
「こ、こんな馬鹿げたゲームに乗ったんですかっ? そんなことしないで―――」
「脱出の為に皆で力を合わせろって? はっ、全員殺して帰った方が遥かに楽じゃない」
「そ、そんな……。あなたもそうなの……?」

 郁未にいとも簡単に否定された瑞佳はショックに息を呑む。
 だが、それでも希望に縋ろうと葉子へと問い掛ける。
 ゲームを肯定した郁未と共にいるというのに、それさえも忘れたように。

「そうですけど……それが何か?」
「だ、だって! 生き残れるのは一人なんだよ!? なら何であなたは……」
「生き残れるのは一人……貴女も分かってるじゃないですか。だから、最後には郁未さんを殺して私が勝者となりますので」
「ふふ。あなたのそういうところ、好きよ」
「な、なにをいって……」

 瑞佳には二人の言っていることがまったく理解できなかった。
 二人で行動を共にしているというのに、最後になったらお互い殺し合うのか。
 脱出という目的の元に集まったのではないのか。 
 瑞佳には分かるはずもない。彼女達の行動原理も、生き方も。
 過酷な環境というルールで生活していた彼女達にとって、今の状況はさほど苦痛を伴うものでもない。
 確かに、初めは殺し合いに対して困惑し、躊躇したものだが、一度心を決めてしまえばどうってことはないのだ。
 普通に過ごしていた瑞佳からみて、彼女達は未知の生物に見えたのかもしれない。
 最初は説得する様子であった彼女も、今では顔を青褪めて震えていた。 
66名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 15:27:00 ID:sOeR3yxyO
連投回避失礼します
67一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:28:03 ID:/HktRmfN0
(―――や、やだっ。なにこの人たち……。怖いっ怖いよ浩平……っ)

 この島で今も何処かで生きている筈の幼馴染へと助けを縋ろうとするが、そんなものは逃避でしかない。
 震える彼女へと、二人は悠々と歩み寄る。

「出発して数時間……ようやく見つけた獲物だからね。楽に逝かせてあげるわ。いいわよね葉子さん?」
「どうぞ、お好きなように」

 これから人を殺そうとするとは思えない気楽な態度で飄々と言葉を紡ぐ郁未。
 それが逆に瑞佳の恐怖心を煽った。人扱いされていないような、既に死ぬことは前提のような話の進め方に、涙が瞼から溢れ出した。
 
「―――や、やめて。イヤ……いやぁ……」
「もう命乞いをする段階は終わってるのよ。さ、大人しくしていたら痛くさせないから」
 
 手に持つ薙刀を馴染ませる様に軽く振る。
 ブンッという風切り音に、ついにその時が来たのかと身を竦ませる瑞佳。
 
「それじゃ、そろそろお別れね」

 無表情になった郁未は上段に薙刀を構える。
 傍らで、静かに事の成り行きを静かに見守る葉子。
 その視線を背に受け、郁未は一思いにやってやろうと腕を力ませた瞬間―――

 ―――ズドンという轟音が辺りに鳴り響く。
68一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:38:52 ID:/HktRmfN0
 何事かと反射的に耳を手で押さえた葉子だが、郁未が薙刀を地へと落とした瞬間を目にした時は流石に戸惑った。 

「い、郁未さん……?」
「っぅあ……。だれっ!?」

 腕を押さえ、苦痛に顔を歪めた郁未が射殺さんばかりに瑞佳の背後にある茂みを睨みつけた。
 郁未の言葉に素直に出てきた芳野は、両手で拳銃を構えながら、二人を牽制する。

「ちっ。外したか……。おいお前ら、ここで頭をブチ抜かれたいか……それとも大人しく引き下がるか選ばせてやる」
「くっ! この男……っ」

 顔を苦悶に歪ませながらも、郁未は芳野へと殺意の視線を注がせる。
 実の所、郁未の傷は浅い。
 芳野は腕を頂くつもりで放ったが、その銃弾は二の腕を掠めるだけに終わった。
 だが、この大口径の拳銃ではそれだけでも痛みを伴わせる事が出来る。掠るというより、抉ったのだから。
 慣れぬ反動に腕の痺れを起こしながらも、それを決して表面上にはださない。
 激昂する郁未とは反対に、幾分か冷静であった葉子がいたことは芳野にとっても幸運だった。
69一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:40:07 ID:/HktRmfN0
「郁未さん。ここは引きましょう」
「はぁ!? ダメよ! こいつは今ここで―――」
「郁未さん! 不可視の力が使えない私たちが、拳銃を持つ彼に対抗するにしても無傷ではいられません。ですから、今は引きましょう」
「っ!」
 
 郁未は歯をギリっと噛み締めながら、渋々頷いた。
 確かに不可視の力も使えない、装備は近接系の武器で相手は飛び道具。これでは心許ない。
 そして、葉子が撤退を選んだ重要な理由としては、芳野の眼光だ。
 彼は恐らく、彼女達を撃つのにまったくの躊躇いを見せないだろう。
 二人で分散して襲い掛かれば、芳野を倒せる自信はあるが、かならず一方が犠牲になるのは目に見えている。
 葉子は郁未とはゲームの最後に決着をつけると約束した。
 ならば、こんなくだらないことで郁未を殺すわけにも行かないし、自分が死ぬことも納得できない。
 よって今は引くと決めた。当然、この男もいずれは片付ける算段で。
 だから、葉子は口を開いた。

「……私は鹿沼葉子、彼女が天沢郁未。貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「―――芳野祐介だ」
「芳野祐介……。アンタは絶対に殺す。覚えときなさい!」
「ふん。御託はいいから、さっさと行け」

 悔しそうに顔を顰めた郁未を連れ添って、葉子も早々とその場から離脱する。
 その背を警戒して見ていた芳野だが、姿が見えなくなるとホッと息をついて銃を下ろす。
 そして、近くで茫然と事の成り行きを見守っていた瑞佳へと近づいた。
70一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:41:08 ID:/HktRmfN0
「大丈夫か? ほら」

 座り込んだ瑞佳の眼前へと手を差し出すが、反応がない。
 よほどショックだったんだろうな、と思いながら掛ける言葉を探していたら芳野の手を唐突に両手で掴む。

「うおっ。だ、大丈夫か……?」
「うっ……ひぐっ。うぅ、うう……」

 嗚咽を徐々に零しながら溢れ出す涙を我慢していた瑞佳だが、決壊したかのように泣き出してしまった。 
 当然、その対処に困る芳野はあたふたとしながら掴まれた腕を眺めるしかなかった。
 本当にこんな調子で公子に会えるんだろうか、と漠然と思った芳野である。 
71一難去ってまた一難:2006/09/30(土) 15:41:42 ID:/HktRmfN0
 『芳野祐介(118)』
 【時間:1日目午後4時頃】
 【場所:H−08】
 【所持品:Desart Eagle 50AE(銃弾数4/7)・支給品一式】
 【状態:普通。公子を探すため、一先ず氷川村へ】

 『長森瑞佳(074)』
 【時間:1日目午後4時頃】
 【場所:H−08】
 【所持品:不明・支給品一式】
 【状態:普通。浩平を探す】

 『天沢郁未(004)』
 【時間:1日目午後4時頃】
 【場所:H−08(既に移動)】
 【所持品:薙刀・支給品一式(水半分)】
 【状態:右腕軽症(痛みは伴うが、動かすのに支障はない)。ゲームに乗る。もっと強力な武器を探す】

 『鹿沼葉子(023)』
 【時間:1日目午後4時頃】
 【場所:H−08(既に移動)】
 【所持品:鉈・支給品一式】
 【状態:普通。ゲームに乗る。郁未と同行】

 「その他:046・056の続きです。Dルート以外で」
72名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 16:11:42 ID:/HktRmfN0
ごめんなさい。訂正です。
芳野の所持品に、サバイバルナイフの追加をお願いします。
73惨劇の神様:2006/09/30(土) 16:41:32 ID:/aHwjKFj0
「みゅ、みゅーーーっ! こわいよー! たすけてー!」
「わーーっ、すみませんすみません神様〜〜! 私まだ死にたくないんですー! 家でお腹をすかせている弟や妹がいるんですー!」
思い思いに絶叫しながら並んで走る二人。しかし、この二人は最初から行動を共にしていたわけではない。
事の始まりはこの次第である。

「うう〜、いきなりこんなことになっちゃって、どうしたらいいんだろ…浩之さんもいないし、一人ぼっちだし、おまけに何なのこの武器…」
理緒はデイパックの中から出てきた『アヒル隊長』を見て若干の失望を覚えた。普段からヒキの悪い理緒だが、ここまでくだらないものが出るとは思わなかった。
「お風呂に浮かべて、水遊びでもしろって言うの?」
純真無垢な瞳で理緒を見つめるアヒル隊長。何の慰めにもならなかった。
理緒はまだ気付いていなかったのだが、このアヒル隊長、実はとんでもない仕掛けがあった。
中に時限装置式のプラスティック爆弾が入っていて、ゲーム開始からきっかり24時間後に爆発する仕組みになっていたのである。
当然説明書も入っていたのだが、理緒はまったく気にする事もなくそれはデイパックの奥底に眠っていた。
そんなこととは露知らずため息をつく理緒。そんな時どこからか声が聞こえてきた。
「みゅ〜〜〜〜〜っ!!!」
「ミュウ? ポケモンなら良太のほうが詳しいわよ、って、何アレ!?」
理緒が声のしたほうを向くと、そこには泣きじゃくりながら走ってくる制服姿の女の子――椎名繭――と種類は違うが同じく制服姿の女の子が走ってきた。…しかも、追いかけているほうは手に鋏を構えている。
74惨劇の神様:2006/09/30(土) 16:42:14 ID:/aHwjKFj0
「みゅ〜〜〜っ! どいて〜〜〜!」
「へっ? わわわ、こっち来ないでぇ!」
どしんっ!
双方避けきることが出来ず正面衝突。そのままごろごろと前方に転がる。
「…痛ったぁー…こっち来ないでって言ったのに…?」
地面に転がっている繭を見る。理緒は目を疑った。繭の体は擦り傷、切り傷だらけで、制服もぼろぼろだった。…まさか、あの子が?
後ろを見てみると、まさにその鋏を持った女の子がゆっくりと上品な笑みを浮かべながら近づいてきていた。
「くすくす…捕まえた」
ゾッとするくらいきれいで虚ろな瞳をたたえた少女――月島瑠璃子――は、あくまでもゆったりとした動作で鋏を振り上げた。
「ひいっ!」
とっさに転がったせいで何とか刺さることは免れた。…私も、狙われてる!? この子、まともじゃない! 逃げないと!
立ち上がって、走り出した時。
「みゅーーっ!」
何時の間にか起きあがったらしいみゅー少女、繭がこちらと並んで走ってくる。
「ちょっと、逃げるなら別の方向へ行ってよ! 二人いっぺんに狙われるじゃない!」
「いやだよー! いたいのやだー!」
聞いちゃいない。
「また、追いかけっこ? 楽しいね、くすくす」
地面から鋏を引きぬいた瑠璃子が、またこちらを追ってくる。
「きゃ〜〜っ、こっち来ないでーー!」
「みゅ〜〜〜〜っ!!! もうやだ〜〜!」

…以上が事の次第である。実際のところ理緒が別の方向へ逃げればいいのだが彼女にそんなことを考える余地はなかった。何しろ、意外と足の速かった瑠璃子はこちらとの差をもう数歩近くに縮めていたのだから。
(やだっ、やだっ、死にたくない死にたくない死にたくない! 助けてっ、神様!)
「くすくす。捕まえたよ」
75惨劇の神様:2006/09/30(土) 16:43:31 ID:/aHwjKFj0
「み゛ゅ〜〜〜っ…!!!」
祈りは通じた。ただし、他人を犠牲にした上での。
瑠璃子の鋏は理緒ではなく、傷ついた繭の方を狙ったのだ。繭の悲鳴が、森に木霊する。
その悲鳴に驚いた理緒が足をもつれさせて派手に転がる。
「痛っ…」
うめきを上げた後、事態はどうなったのだろうかと顔をあげる。そこには――
「さぁ、もっと楽しもうね」
馬乗りになった瑠璃子と、血を流しながらじたばたと暴れる繭の姿だった。


『雛山理緒(083)』
【時間:1日目午後12時半ごろ】
【場所:H−9、森林帯】
【持ち物:アヒル隊長(24時間後に爆発)、支給品一式】
【状態:錯乱、目の前の事態に恐怖。アヒル隊長の爆弾については知らない】
76惨劇の神様:2006/09/30(土) 16:44:19 ID:/aHwjKFj0
『椎名繭(053)』
【時間:1日目午後12時半ごろ】
【場所:H−9、森林帯】
【持ち物:武器不明、支給品一式】
【状態:錯乱。全身に無数の切り傷、擦り傷と背中に深い刺し傷。瑠璃子に組み敷かれている】

『月島瑠璃子(067)』
【時間:1日目午後12時半ごろ】
【場所:H−9、森林帯】
【持ち物:鋏、支給品一式】
【状態:冷静。無差別に攻撃をしかける。繭を組み敷いている】

【備考:繭、瑠璃子はS5、理緒はS7がスタート地点。B系のルートで】
77無題(1/2):2006/09/30(土) 17:30:55 ID:tEoE7puz0

(怖い・・・もう、どうすればいいのよ・・・)

それは、普段の気丈な彼女からは決して繋がることのない様子であった。
聖との接触後、七瀬留美は道に沿った形でとぼとぼと歩き続けていた。
うつむきながら、でも周囲への警戒は怠らない。
今となっては、もう誰にも会いたくなかった。浩平や、瑞佳でさえ。
友人等さえも100%信頼できるか分からない・・・というより、こんな情けない自分を見せたくなかったから。

(あいつらがこのゲームになんて乗るわけないじゃない!・・・でも、私は・・・)

足が止まる。握った拳に力が入る。

(私は・・・殺せるの?殺してしまえるの?)

これからどうするか。その展望など定まっているはずが無い。
辺りの色は既に茜になっていて、現在の時刻がそれを表し始めていた。
たった数時間、されど数時間。
留美の消耗は、激しかった。

その時。
握りこぶしを作ったまま立ち尽くしている彼女の脇から。
・・・ガサっと、音が、した。

「・・・あの、ちょっといいかな?大丈夫、攻撃はしないから」

現れたのは、一人の青年だった。
78無題(2/2):2006/09/30(土) 17:31:52 ID:tEoE7puz0
藤井冬弥は当てもなく歩き続けている留美を発見してから、少しずつ彼女に近づいていってた。
先の誤算から、時間にしてはそう経っているわけではない。
それでも、攻撃性のない人間を見つけられるというのはチャンスでしかないのだ。

(正直、一人で立ち向かうのはきついしね。)

恋人や友人等のことも気になっている。
情報が欲しかった。

スコープ越しの少女にそれを求めても大した結果は出ないだろうけれど。
でも、一か八かという言葉もあるし。

それに、そのか細い背中が気になって仕方ないのだ。
・・・大切な恋人も、こうして縮こまっているのだろう。
この、悲しい非現実に。

冬弥は守る存在に値するとして、彼女に近づいた。
しかし。

「・・・・・・・きゃああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

精神的緊張の限界を迎えていた留美にとって、それは逆鱗に触れるべき事になってしまった。
79補足:2006/09/30(土) 17:33:03 ID:tEoE7puz0
七瀬留美
 【時間:1日目午後4時近く】
 【場所:C−06】
 【所持品:P−90(残弾50)、支給品一式】
 【状態:混乱】

藤井冬弥
 【時間:1日目午後4時近く】
 【場所:C−06】
 【持ち物:H&K PSG−1(残り4発。6倍スコープ付き)、他基本セット一式】
 【状況:普通】

(関連・041 062)
80名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 17:49:45 ID:L4lD4cGQ0
投下します。A、B、E共通準拠ですが、002不採用となっています。
81ゲームに乗らず殺す者 1/5:2006/09/30(土) 17:50:58 ID:L4lD4cGQ0
 住井護は、このゲームに対し他の人間と思考ルーチンが違っていた。
他の人間は、ゲームに乗るか乗らぬかの選択をした、あるいは葛藤をした。
しかし、この男は違った。このゲームを好機と捉えていた。日ごろから抱えている
鬱屈を晴らす好機と。彼の目的は、生き残る事でも逃げる事でもなかった。
ゲームに乗らず、ゲームを利用する。それが彼の行動原理。
「しっかし、武器が頼りないね。おまけの方は使えそうなんだけどさー」
住井に支給されたもの、それは二つあった。一つは薬。不死とまではいかぬも、
生命力を格段にあげることができる。そう簡単には死ななくなる薬だった。
ちなみに有効期間が二日もある。そう取扱説明書に書いてあった。
その薬が入った注射器が、五つ支給されていた。
既に、その内の一つを自分に対し使用している。
「全く、俺の目的の為にあるようなもんだね」
 残りの四つの使用法は決まっていた。
 そしてもう一つの方であるが、つまりとりスポイト通称「ラバーカップ」であった。
市販のラバーカップと違う点は、ゴムの部分が異様に柔らかい事である。
『穴の周りがどんな複雑な形状でも、ジャストフィットします』
そう取説には書いてあった。
「トイレ掃除でもしろってのかよ」
住井は呟きそうになる声を慌てて抑えた。目の前を歩く少女の存在に気付いたから。
服はボロボロで、大きな緑のチェック柄リボンが特徴的な少女だった。
疲労の為か、こちらの存在に気付いていない。ゆっくりと後ろから近づく。
後10m、5m、3m、5歩、4歩、3歩、2…
 残り二歩の所で、飛び掛り後ろから組み伏せ、ラバーカップの柄を背中に突きつける。
銃だと錯覚してくれるだろうか。
「騒ぐと殺す。騒がなきゃ助けてやる」
82名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 17:51:38 ID:/m9evY6p0
この別人軍団はなんですか?
832/5:2006/09/30(土) 17:51:53 ID:L4lD4cGQ0
少女、倉田佐祐理は悲鳴を上げそうになった口を慌てて押さえる。
自分には目的がある。死ぬわけには行かない、と。何をされても黙っていよう。
背中に当たった感触から考えて、彼は銃を持っている。もし、本当に殺すつもりなら
とっくに撃っていたのだ。だから、黙って従っていれば殺しはしないだろう。
と、佐祐理は都合のいい考えをしてしまった。してしまったのだ、不幸にも。

当初住井は武器を強奪するつもりであったが、佐祐理の肉付きのいい身体に
触れて考えを変えた。武器は後で奪えばいい、と。
それよりも今は、自分の脳に過ぎった悪魔的発想を実践してみたくなったのだ。
「命だけは助けてやるから、動くなよ」
 佐祐理のパンツに手をかけ、一気に下ろす。彼女の息を呑む声が聞こえたが、
抵抗はなかった。犯される程度の覚悟はしていたのだろう。
だがそれは、見当違いの覚悟だった。
 住井はラバーカップの吸引部分を、佐祐理の尻にあてがった。
なるほど、確かにジャストフィットだ。人体にさえジャストフィットだ。
住井は一瞬の躊躇も見せず、ラバーカップを思い切り押し、そして勢いよく引いた。
何かがひきずり出される手応えを、住井は感じた。
「ひゃあああああ!」
 瞬間、絶叫が辺りに木霊する。途轍もない苦痛に、彼女は堪え切れなかったのだ。
内臓を蹂躙する凄まじい圧力に、彼女は耐えられなかった。
 住井はラバーカップを引き剥がし、尻部の惨状を目の当たりにした。
肛門から、血や糞とともに腸が飛び出ていた。映画『黒い太陽731』の、
圧力器による人体実験が脳裏に浮かぶ。
843/5:2006/09/30(土) 17:52:56 ID:L4lD4cGQ0
「おっと、このままじゃ死にそうだな。約束どおり助けてやるよ」
 厳密には、佐祐理は叫んでいたので約束を反故にしてもいいのだが、先ほどの悲鳴は
聞こえなかった事にしたらしい。住井は注射器を取り出すと、佐祐理に準不死薬を
投与した。この薬の性能にもよるが、すぐに死ぬことはないだろう。
「しっかし、このラバーカップ、思ってたより高威力だなぁ」
 住井は続けて、佐祐理の性器にラバーカップをあてがった。痛みに悶絶していた
佐祐理だが、次に自分が何をされるかは分かったらしい。身体を捩って逃げようとした。
しかし、遅かった。
 強烈な圧力が、今度は膣内へかかる。体内に嵐が巻き起こり、破壊していく。
大切な何かが壊れ、体外へ排出されるのを彼女は感じ取った。
意識が飛びそうになる痛みの中でも、それを感じ取れた。
「今度は膣と尿が飛び出たか。気付け薬塗ってやるよ」
 住井は意地悪く笑うと、民家から拝借していた七味とマスタードを
はみだしている腸へと振りかけた。護身の目潰し用にと持ってきた物だが、
まさかこんな使い方をするとは考えてもいなかった。
「いやあああああ!」
 再び絶叫が沸き起こり、佐祐理の身体が痙攣しながら跳ねる。動くたびに
はみ出した膣や腸が地面に擦れ、その都度激痛が彼女を襲う。
地獄のループだった。
 住井は佐祐理の荷物をまとめると、約束通りトドメは刺さずに歩き始める。
その耳に「殺してください…」という佐祐理の声は届いたはずだが、
振り返りもしなかった。
854/5:2006/09/30(土) 17:54:22 ID:L4lD4cGQ0
 住井は歩く。目的に向かって。彼の目的は、折原浩平の目の前で
長森瑞佳を責め殺すことだった。生命力増幅の効果を持つこの薬は、
長森の為にこそあった。残された三つの内、二つは実験用だ。
どこまでやっても死なないのか、という。
 だから、次の標的は殺すことに決めていた。酷く責め抜いて殺す。
その為には、猿轡と隠れ家が必要だった。さっきみたいに、悲鳴を上げられては
落ち着いて実験できないから。
 万が一実験中に長森が死んだ場合は、折原を責め殺すつもりでいた。だから、
彼は焦ってはいなかった。長森はともかく、折原はそう簡単には死なないだろう
「折原ぁ、俺はお前の従属物じゃねぇってこと、しっかりと理解させてやるよ」
(そのためにも、お前も長森さんも、極限の苦痛の元に殺してやるよ。
さっきのリボン女みたいな、ぬるい事はやらねー)
 彼にとっては、先ほどの拷問ですら『ぬるい事』であった。
865/5:2006/09/30(土) 18:02:32 ID:L4lD4cGQ0
『倉田 佐祐理(036)』
【時間:一日目、午後5時半ころ】
【所持品:なし】
【場所:D−4】
【状態:脱腸、脱膣、膀胱破壊、擦過傷多数、生命力増幅薬効果継続中】

『住井護(059)』
【時間:同上】
【所持品:支給品一式、生命力増幅薬入り注射器*3、ラバーカップ、
菊一文字(E)or吹き矢セット(青×5:麻酔薬、赤×3:効能不明、黄×3:効能不明)(AB)
【場所:同上。ただし高原池方面に歩き始めている】
【状態:冷静、生命力増幅薬効果継続中】
【備考:最終目的は長森を浩平の眼前で殺すこと。若しくは浩平の抹殺。
    佐祐理から奪った武器は、ルートにより変化。002は不採用】
87新米家政婦と御姑さんと御局様 1/2:2006/09/30(土) 18:34:47 ID:jET9/qKk0
水道の流れる音が聞こえる、割烹着を着た少年は手馴れた手つきで食器をを洗う。
「ちょっと、まだ!?時間かかりすぎよ。」
彼の速度が遅くは無いにもかかわらず、割烹着を着たボブカットの少女は彼を急かす、つまりは彼をからかってるのだ…。
彼女の名前は広瀬真希、愉快愉快と椅子の上に腰をかけて食後のお茶をすすっている。すると
「はあぁっ…御姑さんは厳しいねぇ〜。」
割烹着を着た少年、北川潤は冗談の口調で溜息を漏らし水道の蛇口を止める、つまりは食器を洗い終えたのだ。
「…家政婦さん洗い物コンプリート。」
まるで台本を棒読み用に呟くのは割烹着を着た遠野美凪、
たまねぎハンバーグのタネを右手と左手でキャッチボールして空気ぬきをしている最中。

「さ〜て、次は部屋の掃除よ、ほらっ、サッシがこんなに汚れてる。」
楽しそうな口調と共に人差し指でサッシのホコリをすくい上げ北川に見せる広瀬
…その姿はどう考えても御姑さんそのもの。
「楽しんでるだろ…。」
ジト目になりながら…広瀬を見る北川。
「あははははっモチロン、本当ならアンタは本来なら裸エプロンならぬ、裸割烹着の刑で洗い物をするはずだったよ、有り難く思いなさい♪」
「マジかよっ!て言うかオレの裸割烹着姿が見たいのかよ!!」
「マジよ!!」
本気とも冗談とも取れる口調で言葉を交わす広瀬と北川。
「………ぽっ。」
「ヲイヲイ…。」
「この娘って子は…。」
よく解らないが北川広瀬遠野の凸凹□トリオは順調に機能してるのだった…。
88BabyFace(1/3):2006/09/30(土) 18:35:36 ID:Oqk9lWFo0
がらがらっ

その音に杏は反射的に机の下に身を隠す。
誰かが消防分署の中に入ってきたようだ。
敵なのか味方なのか……出来れば後者であって欲しいところだ。
包丁をぐっと握り締め、そっと息を殺す。

ガチャッ……バタン……。
ガチャッ……バタン……。

ドアの開く音と閉まる音がリズムよく聞こえてくる。
足音がゆっくりと近づくのがわかった。
入るときに確認したこの部屋以外の部屋は3つ。

ガチャッ……バタン……。

3つ目の部屋が閉まった。
……残るはこの部屋だけ。
心臓がけたたましいほどに脈打っているのを必死に押さえる。

「落ち着けあたし……」
乱れた呼吸を整えようと大きく息を吸い込む。
ゆっくりと吐く。
また大きく息を吸い込……んだところで部屋のドアがバタンと開いた。
異を付かれ、全身がビクッと震えた。
身体がドンっと机にぶつかり、その音が静かな部屋に響いた。
89新米家政婦と御姑さんと御局様2/2:2006/09/30(土) 18:35:45 ID:jET9/qKk0
「で…なんでこんなとこに来たの?」
寸劇の閉め時だと感じたのか話を切り替える広瀬…今度は目が真剣そのもの。
「普通に考えたらご飯を食べに来たなんてウソに決まってるもの、だからと言ってアタシや遠野を殺しに来たとも思えない…。」
黙々と推理する広瀬、本気で北川が殺しに来たのなら、今頃美凪共々彼の持つ【SPAS12ショットガン】で撃ちされている。
「さあてね…。」
適当に誤魔化す北川、手には遠野に手渡されたお米券をヒラヒラと漂わせている。
徐に割烹着の下に着ている制服の裏ポケットから何かを取り出す、別に銃という訳ではない…ただの携帯電話だ…。
「携帯電話は通じないわよ。」
あたしも何度か試したんだからと言いたいのか、自分の携帯を取り出す広瀬。
「通じないよなあ…。」
そう言いつつもボタンを押す北川…勿論相手に繋がるはずも無く『ツーツー』としか音は出ない。
「だからアタシはそう言ってるでしょうが…。」
「だよなあ…。」
イラつく広瀬を気にしない北川、まったく取り合おうとしない、今度は給湯室の横に備えてある【家庭用の電話】の受話器に手をとる。
「それも切れてるって…アタシと遠野でご飯作る前に確認したもの!」
「電話線が切れてるな…これじゃあ助けは来てくれないな。」
割烹着姿の北川がそこでニヤリとした顔を広瀬に見せた。
「えっ…。」
広瀬は北川の笑顔と、そして何を言いたいのか良く解らなかった


給湯室のガスコンロからジュージューとたまねぎハンバーグの焼く音と匂いがする、焼いているのはもちろん遠野美凪
「…みちる」
フライパンの中のハンバーグが急にみちるに見えたかの用だった…。

90新米家政婦と御姑さんと御局様:2006/09/30(土) 18:36:17 ID:jET9/qKk0
【時間:1日目正午四時過ぎ】
【場所:鎌石村消防署】【C-5】
北川潤  (30番)
【持ち物:SPAS12ショットガン 防弾性割烹着&頭巾 水・食料、他支給品一式、携帯電話、お米券】
【状況:冷静・臨機応変 】
広瀬真希 (87番)
【持ち物:消防斧、防弾性割烹着&頭巾、水・食料、他支給品一式、携帯電話、お米券】
【状況:周囲警戒 】
遠野美凪 (69番)
持ち物:消防署にあった包丁、防弾性割烹着&頭巾 水・食料、他支給品一式、お米券数十枚】
【状況:順応、みちるのことが心配】

【その他】
【和の食材セット1/2】 【余り物(035)のおにぎり】【玉ねぎハンバーグ】
    
(関連・035の続き)
91BabyFace(1/3):2006/09/30(土) 18:38:35 ID:Oqk9lWFo0
衝撃に頭の中が真っ白になる。
(いや……ごめんなさい、助けて、お父さん……お母さん、……朋也!)
いざとなって、自分がこんなに弱い人間だとは思わなかった。
真っ青になって震えるその姿に、普段の凛とした杏の姿はどこにも無かった。
「誰かいるんだね?」
震えていた身体が止まる。
聞き覚えのある声に、杏はおそるおそる顔を覗かせる。
見知った顔がそこにあり、思わず駆け出していた。
「柊さんっ!」
妹の彼氏、そんなことも忘れて思わず抱きついてしまっていた。
止まらない涙。
結局のところ虚勢を張っていただけだった。
学校では恐れられていても、一皮向けば芯の弱い普通の女の子でしかなかった。
勝平がゆっくりと身体を抱きしめてくれた。
(……温かい)

「杏さんは一人なの?諒さんは?」
勝平がポツリと呟いた。
「うん、ずっと一人で隠れてた……諒はわかんない」
零れた涙をぬぐいながら恥ずかしそうに顔を上げる。
「そっか、じゃあ楽だね」
「え?」
「ほら、人が一杯いたら殺すのが大変でしょ?」
いつもと変わらぬ笑みで杏に向けてはにかむ。
変わらないはずなのに、勝平の口から出る言葉がまるで知らない言葉に聞こえた。
92BabyFace(3/3):2006/09/30(土) 18:39:38 ID:Oqk9lWFo0
杏の泳いだ視線に映ったのは、勝平の袖についた紅いしみ。
いや、良く見ると衣類のあちらこちらにそれは広がっていた。
気が付くと勝平の身体を力の限り跳ねつけていた。
勢い良く勝平の身体が壁に叩きつけられる。
座り込んだまま服を見渡すと杏に向かって、また同じ笑顔で口を開く。
「あぁ、これ?さっき殺した子の血なんだけどね、洗っても全然落ちないんだね。
 杏さん知ってる?人間の脳ってすっごい綺麗なんだよ」
腰をパンパンと叩きながらゆっくりと立ち上がる。
「頭を鉈でこう割ってさ、脳味噌をこう掻き混ぜて……」
勝平の身体がゆっくりと杏に近づき、同じ距離を保ったまま杏は後ずさる。
「杏さんのも見てみたいなぁ……ね!いいよね?」



藤林杏(009)
 【時間:1日目16:00頃】
 【場所:鎌石消防分署】
 【持ち物:ノートパソコン(充電済み)、包丁、辞書×3(英和、和英、国語)】
 【状態:勝平と対峙中、恐怖に固まっている】
柊勝平(081)
 【時間:1日目16:00頃】
 【場所:鎌石消防分署】
 【所持品:手榴弾三つ。首輪。他支給品一式】
 【状態:杏を狙う】

 【その他:Bルートで】
93名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 19:35:05 ID:UiWu9Qm9O
031 ランナウェイの続きです
Bルートで
94修羅とひとときの安らぎ:2006/09/30(土) 19:45:47 ID:UiWu9Qm9O
「いやー。偶然立ち寄った一軒家にボー●ドがあってよかったー」
朝霧麻亜子(003番)は現在、平瀬村のとある一軒家の風呂場で返り血が付いていた制服を洗っていた。
洗濯機を使うのではなく、桶と洗濯板、そしてお湯による手洗いである。
「これでよーし! 洗い上がり真っ白。後は乾かせば、驚きの柔らかさー!」
血を洗い落とし、まーりゃんは制服をドライヤーで乾かす作業に取り掛かった。
なぜなら今彼女は下着姿だからだ。これではさすがに外に出ても寒い。
……ちなみに羞恥心というものは今の彼女には既に存在していない。したがって、恥ずかしいからではない…………たぶん。

ガチャ…

「むむっ!?」
突然玄関の扉が開く音がしたので、まーりゃんはすぐさまバッグからナイフと鉄扇を取り出し、風呂場の戸を閉めた。

玄関と風呂場のある洗面所は近い。
そのためすぐに人の気配がした。

少し戸を開けて玄関をのぞき見る。
(一人か……それも女の子)
入ってきたのはスケッチブックを持った女の子だった。上月澪(041番)だ。

どうやらここまでなんとか避難してきたようだ。
彼女の顔は未知の恐怖のあまり真っ青に染まっており、体も震えていた。

(――おお、可哀想に。しかたがない。今あたしがその恐怖から解放してあげよう!)
そう思うやいなや、左手でナイフを逆手に、右手に鉄扇を構える。
(まずはナイフで首の動脈を、次に鉄扇で心臓をズドン! よし。それでいこう!)
頭の中で戦闘をシュミレートすると、まーりゃんは風呂場を飛び出した。
95修羅とひとときの安らぎ:2006/09/30(土) 19:47:30 ID:UiWu9Qm9O
「――!」
澪は突然の襲撃に驚きを隠せない。
(だけどもう遅い!)
まーりゃんは自身の勝利を確信した。

――しかし、次の瞬間。予想外の自体が発生した。

「そこまでですよ」
再び玄関の扉が開き、某ニワトリのマークがついた殺虫剤を持った女性が現れた。
そして現れた瞬間、殺虫剤をまーりゃんの顔に噴射した。

「うぎゃー!」
目に殺虫剤がかかり、思わず目を閉じる。
「なにすんのさー! 目元が腫れちゃうじゃ……ぐはー!」
女性の蹴りがまーりゃんの腹にたたき込まれ、まーりゃんは壁ぎわまで吹っ飛ばされる。

「げほ…仲間がいたとは〜……って、うお!?」
起き上がるまーりゃんの眉間に女性は今度は銃を突き付けた。
「チェックメイトです」
女性――水瀬秋子(104番)はにこりと微笑んで言った。



(え〜と…これはいったいどーなっているのだ?)
あの後、まーりゃんは秋子によりバッグごと武器をすべて剥奪され、今は――澪、秋子と一緒に少し早めの夕食をとっていた。
「冷蔵庫の中身もちゃんと用意されていてよかったですね」
『よかったのー』
(………ま。いっか)
96修羅とひとときの安らぎ:2006/09/30(土) 19:49:17 ID:UiWu9Qm9O
「それにしてもさっきの澪ちゃんは見事な演技でしたよ。さすがは演劇部ですね」
『大成功なの!』
澪の開いたスケッチブックにはそう書かれていた。
「まさかあの時の行動はすべてあたしをおびき寄せるための罠だったとは……」
「はい。だってあの時の麻亜子さんの声外まで聞こえてましたから」
『ご機嫌のあまり声が大きくなっていたの』
「くっ…このまーりゃん、最大の不覚…………」
そう言いながらまーりゃんは皿に盛られていた卵焼きを口に運んだ。

ちなみに今のまーりゃんは制服ではなく藍色の着物を着ていた。
これは澪の支給品で、防弾性を供えているらしいが澪ではサイズが合わなかったらしい。
なお、借りる際に「なんであきりゃん(もちろん秋子のこと)が着なかったんだ?」と聞いてみたのだが、
「それは秘密です♪」という答えが返ってきた。

「……だがあきりゃん。これで終わりじゃないぞ。
いずれリベンジしてあたしをここで倒さなかったことを公開させてやるー」
「ふふ…楽しみにしています」
――どういうわけか、秋子はまーりゃんが人を殺すことを止める気はなかった。
そのことはまーりゃんだけでなく澪も気になったが、あえて2人とも聞かなかった。
2人は(きっと秋子は既に誰かを殺しているんだ)と思った。
97名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 19:51:05 ID:IG3WfMXZ0
あいかわらず秋子は秋子だな
秋子信者は秋子信者と書いたほうがいいか
98修羅とひとときの安らぎ:2006/09/30(土) 19:53:15 ID:UiWu9Qm9O

「さて……あたしはもう行くぞ」
夕暮れ時、まーりゃんは玄関で靴を履くと立ち上がった。
「では麻亜子さん。これはお返ししますね」
そう言って秋子はまーりゃんに彼女のバッグを渡した。
開けると中には基本的な支給品一式と2種類のナイフと鉄扇――それとアイロンがけされた制服が入っていた。
「ありがとう」
「できればあなたとはもう戦いたくはないんですけどね……」
「ふっふっふ。いずれまためぐり合うのだよ。それが私たちの運命なのだから」
「そうですね。この島にいるかぎりは……」
「――ではさらばだあきりゃん。そしてみーりゃん」
「はい。お気をつけて」
『今は一度さよならなの』

まーりゃんは夕焼け空の下、村を駆けた。
が途中、一度足を止めバッグを開けて制服を取り出してみた。
その制服は新品のように綺麗になっていた。
「うん。洗い上がり真っ白。驚きの柔らかさだ……」
しかし、これは洗剤だけで得た美しさではないということをまーりゃんは理解していた。
この制服をここまで綺麗にしてくれた人の顔をまーりゃんはもう一度思い出す。

「……さて、行きますかと」
バッグに制服をしまい、まーりゃんは再び駆け出した。
もう一度修羅の道に飛び込むために……

99修羅とひとときの安らぎ:2006/09/30(土) 19:54:22 ID:UiWu9Qm9O
 朝霧麻亜子
 【状態:健康】
 【所持品:バタフライナイフ、投げナイフ、仕込み鉄扇、制服、ほか支給品一式】
 【状況:着物(防弾性能あり)を着ている。ささら、貴明たちを守るために人を殺す】

 水瀬秋子
 【状態:健康】
 【所持品:IMI ジェリコ941(残弾14発)、包丁、殺虫剤、ほか支給品一式】
 【状況:名雪、祐一たちを探す。澪と行動。澪と出会う以前に何かあったらしい】

 上月澪
 【状態:健康】
 【所持品:フライパン、スケッチブック、ほか支給品一式】
 【状況:浩平、みさきたちを探す。秋子と行動。澪と秋子が出会ったのは2人が平瀬村に来た少し前】

 【時間:一日目5時】
 【場所:F−1】
 【備考】
・秋子の持つ銃はもともとは澪の支給品
・殺虫剤、フライパン、包丁はまーりゃんと戦う前に別の民家で手に入れていたもの
100老人と老人の死体:2006/09/30(土) 20:35:53 ID:/aHwjKFj0
海岸沿いをつれづれと歩いていく老人が一人。幸村俊夫(043)だった。彼は殺人ゲームということが起こっているにもかかわらず、いつもと変わらない悠然とした調子で歩いていた。
すでに還暦を過ぎたこの老いさらばえた身にとっては、己の命などどうでもいい、とまではいかないものの、自分より若い者が次々と命を落としていくのには耐えられなかった。
ゆえに彼は、こうして一人でぶらぶらと歩いて、もしこのくだらんゲームに乗ってしまった人物と出くわしたら、喝をいれてやるつもりだった。
「…む、これは」
幸村が発見したのは自分と年が同等だと思われる老人が、物言わぬ姿となった現場だった。もちろん、幸村がその老人を篁だと知る術はなかったがそれでもこの哀れな犠牲者を弔ってやろうと思い、手を合わせてやった。
「…すまんの、昔ほど筋肉もなくてな。埋めてやるのはもう少し後にさせてくれないかの」
ナイフの刃を丁寧に抜いてやり、彼の横へと供えた。そして申し訳程度に手を組ませてやる。今の彼には、これが精一杯であった。
「さて、と」
幸村は周りの確認へと行動を変える。まずは篁の荷物を確認することにした。どうやら荷物を確認していなかったらしく、武器がまだ入っていた。幸村はここで一つ疑問を覚えた。
(ゲームに乗っている者なら、武器を欲しがるはず。どうしてまだ取られていないのかの?)
ただ単に自分の持っていた武器が強力だったというなら納得はいくものの、それでもこの武器を欲しがらない参加者はいないはず。
デイパックの中身は、アサルトライフル、ステアーAUGだった。姿形こそ奇抜だが、その攻撃力は拳銃の比ではない。
「…ま、気狂いの心情など、わしには分からんがの」
危険極まりない代物だが、持ち歩くには少々年をとりすぎた。デイパックを木の影に隠し、他の参加者に見つからないように祈る。
「…さて」
再び幸村は周りを調べ始める。すると、近くで奇妙なものを発見した。木の削りカス。
101クジ運:2006/09/30(土) 20:36:21 ID:DMzneOaG0
このバトル・ロワイヤル。不運な人はナイフとかそんなもんだけの時もある。
だが、稀に。大当たりする奴もいる。彼女がそうだった。

彼女の支給された鞄の中には、何も入っていなかった。
入っていたのは、IDカードのような鍵と地図だけ。

『彼女』は、必死になって鞄の中から出てきた鍵と紙を頼りに、C06-C07の境目あたりの海岸線にきていた。
そこに地図に『武器』と×が書かれた記号があったからだ。どうもそこにしか支給品はないらしい。

ひたすら、そこを目指す。というよりも目指さざるを得ない。彼女だけ食料すら支給されてないのだ。
森の中を、海岸を、ひたすら歩く。ただ歩く。
そうするとそこに、果たしてコンクリートで囲まれた、一つの扉。
鉄で出来た分厚そうな扉が一つだけあり、その横にカードが差し込めるようになっていた。
何もないので、彼女はそこにを差し込む。

開かない。じゃあ東京三菱UFJ銀行のキャッシュカードなら開くかとか、どうでもいい事を試した。
もちろん開かない。仕方なくもう一回そのカードをゆっくり差し込んでみた。

すると、鉄で作られた分厚いドアがゆっくりと、自動で開いた。
中は、真っ暗な道がずっと続いている。
その暗い道を一人で歩いていく。
またカードを挿すドア。何度も何度も行くと、そうすると、大きい部屋にたどり着いたようだった。

そばにスイッチがあるので、それをつけると。
その部屋や通路も含めて全部に電気がついた。
102老人と老人の死体:2006/09/30(土) 20:36:27 ID:/aHwjKFj0
恐らくは、ここにいた人物のもの。そして、篁を殺した人物のものかもしれない。
幸村には、一つの心当たりがあった。
「伊吹…風子」
幸村の知っている風子はそんなことをするような子ではない。この場の空気に呑まれたか、あるいは怯えた末の悲劇か。どちらにせよ、彼女に真偽を問う必要がある。
「わしの、勘違いであってくれればいいがの…」
幸村は一つ呟いて、その場を後にした。

『幸村俊夫(043)』
【時間:1日目午後2時半ごろ】
【場所:C−2】
【持ち物:武器は不明、支給品一式】
【状態:風子を探す。篁の荷物は近くの木の影に放置】

【備考:26話の続き。B−2、4、5系ルート、86話はスルーしてあります。】
103クジ運:2006/09/30(土) 20:37:11 ID:DMzneOaG0
明かりをつけると。周囲の状況が全部わかった。

まるで要塞のような、総コンクリートと鉄筋の壁。ミサイルの攻撃ですら防げるのではないだろうか。
そして、その中に大きな鉄の壁。
あまりに巨大なものが目に入った。そのそばに武器も糧食も全部揃っており、さらに説明書きも書かれている。
糧食が日本製でないことは明らかだった。どうもフランスかドイツ製の缶詰のようにも思える。
水もあるが、何故かヴォ○ビック。日本国生産の物ではない。
つまり総じて他よりグレードが高い。誰かこんな糧食をほかに支給されている人間がいるんだろうか。

しかもどうも、この要塞、トンネルになっているらしい。
C6と、C7の海岸線からそのままG06-H07の交差地点までこの人一人入れるぐらいのコンクリートトンネルが続いており、
地図で見ると、G2-H2の境界線と海岸線の交差地点までトンネルが続いている。そしてもう一つは逆方向、GとHの交差する
09地点までこのトンネルが(地図で言う)東西に走っている。
 そして、ここのトンネルは仮にC6地点の爆破があったときもここのトンネルは別地域として見られるようだ。
 ここのトンネル全体としてはA10地点としてみると周囲のポスターに書かれている。

この広い部屋はF6とF7の交差地点なのだろう。地図上ではそうなっている。
ここでは簡単なソファーとテレビまで見れるようだ。実際に電気がつく。台所みたいのまである。
武器として支給されたものの確認。まず。500S&WマグナムとS&W M500が100発とデザートイーグルと50AE弾100発。
防弾アーマー。34徳ナイフ、ナタ、そして…
104クジ運:2006/09/30(土) 20:37:52 ID:DMzneOaG0

「・・・・・・・・」
「マジですか…」

部屋の大部分を占めている巨大な機械。ガンダムみたいなもの。そして操作説明書もそばにおいてある。

                『アヴ・カミュ操作説明書』

鉄の壁にカードを入れて開く。そうすると、外の光が中に入ってきた。
そして自分は主婦の格好。エプロンしたまま拉致られて、手には最初から持ってたおたまだけ。
後ろの軍事基地みたいのと比べてもあまりにもアンバランスである。

116 柚原春夏
   位置:要塞(F6‐F7交差地点/神塚山中腹。ルール上ではこのトンネル内はA10として見る)
   武器 【アヴ・カミュ】【500S&Wマグナム】【デザートイーグル】
      【おたま】【防弾アーマー】【34徳ナイフ(スイス製)】【ナタ】
   状態 【微妙に疲労】


かぶった
10510:2006/09/30(土) 20:45:42 ID:u9VMNb8s0
>>104
アヴ・カミュじゃなくてアヴ・カムゥだと思う
106名無しさんだよもん:2006/09/30(土) 21:34:10 ID:ty+sHvot0
わざとだよ
でっかいカミュ型アヴ・カムゥなんだって
107思巡 ◆6cJovHvx6g :2006/09/30(土) 21:42:48 ID:oS2LRaZl0
ゲーム開始地点の無学寺を出て、二人は森の中を道路と平行に慎重に南下していった。
レーダー頼りに他の参加者との接触を避けてきた為、いまだ他の参加者との遭遇はない。
少し足を休め、二人は休憩した。
珊瑚が水を取り出すのを見て、瑠璃はまだ自分のデイバッグを開けていない事に気が付いた。
瑠璃がデイバッグを開けると、そこには……

「拳銃……やな」
「良かった……これでうちさんちゃんの事守れる……」

珊瑚は少しだけ考えを巡らせたあと、
「瑠璃ちゃん、簡単に撃ったりしたらあかんで」
「何でや、さんちゃん。うちらが身を守る為にはしゃーないやん?」

こつん
軽く、本当に軽く珊瑚は瑠璃の頭を小突いた。
「さんちゃん、何するんや」
「瑠璃ちゃん、小突かれたら痛いやん? そんなんで撃たれたらもっと痛いに決まってるやん?
うちは瑠璃ちゃんが傷つくんが一番嫌やけど、瑠璃ちゃんが誰かを傷つけるんも……嫌やで?」
「……分かった。 さんちゃんがそういうんやったら……つかわへん」
108思巡 ◆6cJovHvx6g :2006/09/30(土) 21:43:59 ID:oS2LRaZl0
(だけど、本当にさんちゃんが危険な目に遭いそうになったら……うちは撃つで……)
(早く何とかする手立てを考えんと……瑠璃ちゃんに手を汚させへん為にも……)

二人、心に思いを巡らせながら……
目指すは氷川村。

【85姫百合珊瑚】
【時間:午後3時】
【場所:H-08、他の参加者を避ける為、森の中を移動】
【支給品:レーダー デイバック】
【状態:氷川村を目指しつつ警戒行動】

【86姫百合瑠璃】
【時間:午後3時】
【場所:H-08、他の参加者を避ける為、森の中を移動】
【支給品:シグ・サウエルP232(残弾8)デイバック】
【状態:氷川村を目指しつつ警戒行動】

→004
⇔092
新ルート(Hルート)用作品
109晴れのちVサイン:2006/09/30(土) 23:28:14 ID:/aHwjKFj0
「琴音さん、藤田先輩、みんな一体どこにいっちゃったんだろう…?」
海岸沿いの街道を所在なげに歩くのは、松原葵(097)。彼女は離れ離れになった仲間を探して、まずは海沿いに歩いてみることにした。
今のところ葵は誰にも接触しておらず、本当に120人もの人間が殺し合いをしているのだろうかとさえ思ったが、時折聞こえる銃声や爆発音を聞くと、やはりこの悪夢のようなゲームが行われているのだと痛感する。
葵は怖くて仕方がなかった。一人というのももちろんあるが、それ以上に殺されるという感覚が、何か得体の知れない、決して追い払うことのできない怪物のようで。
格闘技の心得はあるつもりだが、そんなものは銃の前では無力に等しい。たとえ自分が持っていたとしても、人に当てられるだけの技量があるわけがない、と思っていた。
やがて、葵は海岸にある奇妙な建物を発見した。この殺戮ゲームには、あまりにも似つかわしくない代物だった。
「…海の家?」
夏の海水浴場ならばどこにでもある建物だが、さすがにこんな場所にあると場違い極まりない。ある意味では、それは『日常』をよく表しているものなのだから。
「休憩するには、いい場所かも」
他に人がいるかもしれないと思ったが、砂浜には足跡が見られない。どうやら自分が最初の客人のようだった。
中に入ると、『日常』の色はますます濃さを増した。ビーチボールに、パラソル。ビニールボートに、貸し水着まである。
「…どうせなら、藤田先輩や琴音さんと一緒だったら良かったのに」
嘆息してみても始まらない。海の家ならば、多少の食料があるに違いない。奥の方を物色してみると、そこには様々な材料があった。野菜に、麺や、調味料。よりどりみどりだ。当然キッチンもあった。
110晴れのちVサイン:2006/09/30(土) 23:28:54 ID:/aHwjKFj0
「けど、おかしいなぁ。どれもこれも全部新品…」
食料も、キッチンも、いや建物そのものが新築の匂いがしていた。新設されたばかりなのだろうか。
「取り敢えず、持っていけるものは持っていこうっと」
食材一式や、偶然置いてあった携帯用ガスコンロを持って行くことにする。
「…そう言えば、まだ荷物開けてなかったな。何が入っているんだろう?」
もし銃とか危険なものだったらどうしよう、と思いながらも中身を確認する。
「銃じゃ…ないようだけど…でも、これって…」
出てきたものは薄っぺらいステンレス製のモノ。
「どこからどう見てもお鍋のフタ、だよね…」
愕然するのを通り越して笑みさえ浮かんでくる。
「あ、あはは…これで、敵の攻撃を防御しろ、ってことかな?」
用途がそれ以上考えられない。どうせならフライパンの方が良かった。料理できるし。
だが、人を傷つけるものよりかはマシだ。葵は何かの役には立つだろうと思い持っておこうと思った。
他に支給されているものを確認する。と、葵はデイパックの底に見なれた物を見つけた。
「これって、私の体操服!?」
111晴れのちVサイン:2006/09/30(土) 23:29:48 ID:/aHwjKFj0
てっきり没収されたものだと思っていたが、こんなところにあったとは。葵はそれを取り出して、しげしげと見つめた。学校での全ての思い出が、この服一枚に詰まっている。
『勝った…私が、好恵さんに…勝った…?』
『葵ちゃんは強いっ!』
体操服を見ていると、しぼんでいた勇気の炎が再び燃え盛ってきた。
「そうだよね…私は、私は、こんなところで落ちこんでいるような人間じゃないですよね、藤田先輩」
制服を脱ぎ捨て、愛用の体操服に着替える。葵の目が、鋭く凛としたものへと変わった。
「藤田先輩、琴音さん! 今行きます! こんな殺し合い、私が止めてみせますから!」


『松原葵(097)』
【時間:1日目午後12時半ごろ】
【場所:G−9、海の家】
【持ち物:お鍋のフタ、支給品一式、野菜など食料複数、携帯用ガスコンロ】
【状態:体操服に着替える。浩之や琴音の捜索開始】

【備考:葵の出発地点はS3、制服は放置。一応全ルート】
11210:2006/09/30(土) 23:41:14 ID:u9VMNb8s0
>>106
そか。悪い。
と、言うわけで。
出来ましたー。
ルートはB'-2-108-92-95+109希望。
自分で書いておいてカットってのもどうかと思うけどこっちの方が上手いと思うので。
なんかまとめの人に負担掛けてばっかだなー。
ごめんなさい。
113No.111 世界は見えぬ翼:2006/09/30(土) 23:42:02 ID:u9VMNb8s0

河野貴明(042)達はH-07の分かれ道まで来ていた。
「……どっちに行く?」
「……どっちにしようかねぇ」
「……どうしようか」
「……どうしましょうか」
仲良く頭を捻っていた。
「確認しよう。今の俺たちの武器は」
「はーい! あたしフライパーン!」
「俺はガントレット」
「私はモップですー」
「そして俺が工具セット、と」
各々微笑を浮かべつつ顔をつき合わせて、
「「「「はぁ〜〜〜〜〜〜」」」」
溜息一つ。
笑うしかない。
四人揃って戦闘向きの武器が一つもないのだ。
戦闘する気はさらさら無いものの、やる気な人が現れた時にはったりかます事も出来やしない。
「ここで右に行くか左に行くかだけど、左に行けば村が在る」
「村には人も集まるだろうけど、それを狙った『参加者』も多分集まるよねぇ」
「かといって俺らに『参加者』を撃退できる能力なんか無いし」
「そうはいっても右に行ったところで何も無いしね」
「今のうちに覚悟を決めて左に行くか、取り敢えず逃げて右に行くか」
「こうして挙げると右に行ってもいい事無さそうなのはわかんだけど……」
「……怖いんだよなぁ」
「ねぇ……」
114No.111 世界は見えぬ翼:2006/09/30(土) 23:42:53 ID:u9VMNb8s0

「「「はぁ……」」」
再び、溜息。
「はわ〜。みなさん、すごいです〜。よく考えてますねぇ」
三人は無言でマルチを凝視して、
「「「はぁ……」」」
三度、溜息。
「しゃあない。多数決で決めよーぜ。このままじゃ決まらん」
「そうだね。新城さんもマルチちゃんもそれでいい?」
「はいっ!」
「いいけど、割れた時はどうするの?」
「そん時考える。じゃあ、右がいい人」
手が、二つ。
「……割れたな」
「……そうだな」
上がった手は雄二と沙織。
「なんで二人は手を上げたの?」
「やっぱり、怖いし……」
「ガントレット持ってる分俺が盾になる気がしてな。お前らは何で?」
「村とかに行くんなら早いほうがいいと思うんだ。右に行ったところで参加者に会わない保証は無いし」
「きっと、話せばわかってくれますよー」
「それにずっと何処にも行かないわけにはいかないだろ。いつか行くんなら早いほうがいいんじゃないか?」
雄二はそれを聞いて頭を掻く。
「ああー、分かったよ。お前らのが正論だ。仕方ねぇから喜んで盾になってやるよ」
「はぁ。しょうがないわね。三対一じゃあたしの負けか。じゃ、村に行きましょうか」
115No.111 世界は見えぬ翼:2006/09/30(土) 23:43:54 ID:u9VMNb8s0

「ちっ、せめてこのモップがモップ型ライフルとかだったら……」

カチッ

「「「「あ」」」」
モップの先端が折れ曲がって取れた。
断面から黒い穴が見えている。
「…………モップ型ライフルだったな」
「…………ああ」
「雄くん、すごーい!」
「すごいですー」
「でもこれ、威嚇になるのかな……」
「あ……」
「モップ突きつけて『これはモップ型のライフルです! 撃たれたくなかったら逃げてください!』ってか?笑い話にしかなんねぇよ……」
「本当だけに余計に困る……」
「しかもこれ木製だろ? どう見ても。一発威嚇射撃で撃って壊れたら元も子もねぇ……」
「砲身は鉄みたいよ?」
「だからって今試し撃ちして壊れたら俺ら唯の阿呆じゃん……試す気にもなんねぇ……」
「第一弾の詰め方も分からないしね。と言うか詰め替えできるのか?」
「あの、鞄の中にはもう弾は無いみたいです」
「何発撃てるかも分からないライフル……」
「頼りになるんだかならないんだか……」
「モップよりはましじゃない」
「そうだね……」
116No.111 世界は見えぬ翼:2006/09/30(土) 23:45:07 ID:u9VMNb8s0

「みなさんのもこんな風になってたりするんでしょうか?」
「「「あ」」」
三人は大慌てで自分のランダムアイテムをチェックした。

しかし 何も 見つからなかった。

「はぁ…………じゃ、行くか」
「ああ……」
「うん……」
「はい!」
一向は、西へと歩き出した。
117No.111 世界は見えぬ翼:2006/09/30(土) 23:46:22 ID:u9VMNb8s0



河野貴明
【持ち物:デイパック、水を少々消費。工具セット、モップ型ライフル(マルチから託される)】
【状態:健康、やや冷静、軽い精神的疲労】

向坂雄二
【持ち物:デイパック、水を少々消費。ガントレット(手甲)】
【状態:健康、やや冷静、軽い精神的疲労】

新城沙織
【持ち物:デイパック、水を少々消費。フライパン(板の部分にカルボナードが埋め込まれていて上手くいけばライフルも跳ね返せる)】
【状態:健康、やや冷静、軽い精神的疲労】

マルチ
【持ち物:デイパック】
【状態:健康、元気】

共通
【時間:午後三時半時頃】
【場所:I-07】
【状態:氷川村を目指す、ゲームには乗らないつもり、知り合いを探す】
118074の追加文:2006/09/30(土) 23:55:49 ID:/HktRmfN0
「ま、まあまあ。二人とも、少し落ち着こうよ。ほらっ、水でも飲んでさ!」
「早くっ……離してください……!」
「ちょ、ちょっと! 暴れないでよねっ」

 雅史の声など何処吹く風、椋と詩子はお互いのことに夢中でまるで取り合わない。
 椋は詩子を退けることに夢中で、詩子は椋を押さえつけることに夢中だ。
 雅史の声は聞かないが、それでも彼女達は身勝手な助けを催促することは忘れなかった。

「さっきから何ぼっと突っ立ってんの!? だからキミも早く手伝いなよ!」
「お、お願いします……っ。この人退けてください……!」
「だから、まずは僕の話を……」

 依然として雅史の意向は無視されていた。
 いや、彼女達の勢いに呑まれて、気勢が削がれたといったほうが正しいか。
 ぼそぼそと喋る雅史の声など、言い争う二人の前では無きに等しい。
 何の役にも立たない雅史を置いて、場の好転は一向に良くならないと諦めかけていたとき―――

「詩子さん。何を遊んでいるのですか」
「うわっ!?」
 
 背後からの唐突な声に、雅史は飛び上がる勢いで驚いた。
 後退りながら振り向くと、そこにはメイドロボであるセリオ(060)が静かに佇んでいた。
 ―――いつのまに……。
 こんなに近くにいながら足音はおろか、息遣いまでも感じなかった。
 だが、それもメイドロボという理由で納得できてしまう。
119074の追加文:2006/09/30(土) 23:57:01 ID:/HktRmfN0
「あぁー! セリオ良いところに来た! この子捕獲するのに手伝ってっ!」
「承知しました」

 その言葉と共に、詩子は椋を離す。
 チャンスとばかりに、椋は立ち上がり駆け出そうとするが―――

「失礼します」
「い、痛っ!」

 椋の前にすぐさま回りこみ、腕を背後に取って軽く固めた。
 あくまでメイドロボが基準とする軽くであって、椋にとっては耐え難い苦痛であった。

「痛い痛いっ……痛いです!」
「あー……。セリオ、少し緩めたげて」

 詩子の指示にコクリと頷いて手を緩めると、椋の顔も幾分か緩む。
 椋の身体を固めたままのセリオへと、詩子は悠々と近づいてその肩を叩いた。

「いやぁ、ホント助かったよ。ちょっち遅かったけど、結果オーライオーライ!」
「F−04のポイントに詩子さんがいなかったので、捜索に手間取ったのですが」
「あはは! セリオがあの怖い女の人が離れたかどうか確認しに行った時ね、その悪女に狙われちゃってさ」
「あ、悪女って……。だから、それは勘違いだと……」

 弱弱しくも言葉を挟む椋だったが、詩子は意図的に黙殺する。
 そして、何故かセリオもその意向に従った。
 雅史と椋をそっちのけで、朗らかに会話をする詩子とセリオ。
 椋はともかく、雅史に至っては気付かれてもいないんじゃないだろうか。
 悲鳴が聞こえたから勇ましく飛び出したというのに、不当な扱いだ。
 
(むしろ、僕って役立たず……?)

 内心で、咽び泣いてしまう雅史を慰めるものはいない。
120074の追加文:2006/09/30(土) 23:57:34 ID:/HktRmfN0
 『佐藤雅史(049)』
 【時間:1日目午後2時頃】
 【場所:E−05】
 【所持品:金属バット・支給品一式】
 【状態:疲労。行動を決めかねている】

 『藤林椋(091)』
 【時間:1日目午後2時頃】
 【場所:E−05】
 【所持品:何かしらの拳銃・支給品一式】
 【状態:普通。セリオを何とかする】

 『柚木詩子(114)』
 【時間:1日目午後2時頃】
 【場所:E−05】
 【所持品:ニューナンブM60(5発装填)&予備弾丸2セット(10発)・支給品一式】
 【状態:普通。セリオと行動を共にする】

 『セリオ(060)』
 【時間:1日目午後2時頃】
 【場所:E−05】
 【所持品:不明・支給品一式】
 【状態:左腕損傷(軽微) 専守防衛】

 「その他:074の捕捉文です。一応Bルート059の続きのつもりで書いたのですが、分かり難いようだったので追加しました。」
       申し訳ありませんが、以上の分を追加、各状態の更新をお願いします。」
121 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 00:51:57 ID:YHRA728c0
「無言と遠慮とおせっかい」

 小牧愛佳は一歩一歩、怯えるように森の中を歩いていた。
「だ、誰も、いないよね」
がくがくとひざを震わせながら歩く。彼女は両手で支給品の包丁を持って時折あたりを確認するようにきょろきょろしてから、ゆっくりと歩き回っていた。既に目じりには涙が浮かんでいる。
ガサガサ!
「ひっ!」
何かが動く音がして慌てて飛び退る。
(な、なんなの!)
心の中では恐怖で張り裂けそうだったが、それを極力外に出さないようにして威圧的に叫ぶ。
「だ、誰かいるんですか!」
だが、その声はやはり、若干震えていた
「で、で、出てください!」
そういうと意外なことに隠れていたと思われる人物はあっさりと茂みから姿を現した。
「ん、何?」
女性だった。年のころは、二十台半ばだろうか。どちらかといえば大柄で、気だるそうな目が印象的だった。年寄りじみた猫のような雰囲気をかもし出している。
その女性は愛佳の顔と彼女が持っている包丁をかわるがわる見て、
「はぁ」
とため息をついた。
「なに、やるの?」
「いえっ、あのっ、そういうわけではなくてでしてね、ええと、これはなんというか、その、いろいろと動転していまして」
愛佳は慌ててワタワタと腕を上下に振る。包丁を持ったままなので危なっかしいことこの上ない。
「ふぅん」
と美佐江は興味なさそうに呟く。
「まぁ、やる気がないなら別にかまわないんだけどね」
と言うと、またのんびりした様子でディパックを担ぎなおす。
「あ、ど、どうもすいません」
「いやなに、確かにこんな状況なら神経過敏になるのも当然だわな。こっちこそ驚かせて悪かったよ」
気にするな、というジェスチャーを付け加えながら言う。
122 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 00:53:05 ID:YHRA728c0
「ねえ、ところでさ、あんた、どっちから来たの」
「え、えっとあっちからですけど」
「ふぅん、ねぇそっち何があった?」
「え? えっと廃校になった小学校がありましたけど……」
「ふぅん、小学校ねぇ」
ふむ、と美佐江は考え込むしぐさをする。
「で、参考までにあなたはどっちに行くの」
「えっとまだ決めてませんけど、とりあえず、知り合いを探そうと思ってるんです。このまま、北に行けば、一番大きな町があるらしいんで、日暮れまでにはそっちに着きたいなっって……」
「……そう。でもあんまし、お勧めしないわ。あっちにいくのは」
「え?」
女性の言葉に愛佳が固まる。
「確かに、そこは人が集まるところだけど、それはゲームに乗った人も同じくらい集まるってことよ。何人かで固まってるならともかく一人でいくのはよしなさい」
「………」
「お友達が心配なのはわかるわ。でも命あってのものだねよ。安易に自分を危険にさらすようなまねは感心しないわ」
「……あ、えっとえへへ、そうですよね、うん」
「……わたしは人のいなそうな山のほうに行くわ。あなたも来る?」
「え、いや、私はいいです」
「そ。じゃあ、お互い健闘を祈りましょ。私は相良美佐枝。あなたは?」
「あ、小牧です。小牧愛佳」
123 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 00:54:23 ID:YHRA728c0
 そうして、名前だけ聞くと相良美佐枝はさっさと別れの言葉を告げて、足早に去っていった。
(あんなこと言われちゃったけど、だからってとめられないよね)
ぐっとこぶしを握り締める。
(みんなを助けなきゃ)
そうして、進路を変更することなく愛佳は駆け出そうとしたそのとき、
「………」
目の前に人の顔が合った。
「………」
「………」
一瞬見つめあった後、
「ぎょえ〜〜〜〜っ!!」
森に愛佳の絶叫が響き渡った
「ああもう、バカか、あたしは!!」
直後に後ろでそんな声、震えながら振り返ると美佐江がそこにいた。
「ああ、まったく見捨てて逃げちゃえばいいのに、なんでそれができないかしら。挙句の果てにこっそり後ろから着いてくなんてこれじゃまるっきり変態じゃないか」
「え、相良さん?」
「ええ、そうですよ。どうせこんな役回りの私だよ。ったく、で何が起こった……ってまあ聞かなくても大体わかるわね」
しりもちをついた愛佳とそれから同じようにしりもちをついた少女を見て美佐枝はそういう。
「ほら、たって。あんたもほら、大丈夫?」
美佐江は二人の腕を強引に引っつかむと立ち上がらせた。少女はありがとうございます、と小さな声で礼を述べた。
「怪我はなさそうね、あんた名前は?」
「………」
来栖川芹香と申します、とその少女は答えた。
124 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 00:55:34 ID:YHRA728c0
 その後、愛佳が大慌てで謝罪の言葉をのべたり、その途中で舌をかんでさらに大騒ぎになったりした後、三人は互いの目的や今まで自分が得た情報、今後の活動方針について話し合っていた。
「じゃあ、芹香さんも知り合いの方を探してるんですね」
愛佳が確認するように言うと芹香がこくりと頷いた。
「そうですか、私、これからこの島で一番大きな町に行くんですけど、けど、えと……どうしましょう。相良さん」
「え? あたしが決めるの?」
「ええと、とりあえず意見は聞きたくって」
「……さっきと一緒だよ。女の子二人で殺人鬼のいる場所へと飛び込むというのは賛意しかねるわ。せめて、もう二、三人くらい増えないと、あぶないよ」
「はぁ……」
今度は太鼓判を教えてくれるという期待でもあったのか、愛佳は傍目から見てもわかるほど、落胆していた。
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
しばらく無言が続いた後、最初に言葉を切り出したのは美佐枝だった。
「ああもう、わかったわよ。私がついてってあげる」
「え?」
「………」
二人が同時に美佐枝の顔を見る。
「そ、そんな、いいんですか!?」
そして愛佳がそう叫んだ。
「言いも悪いも何も、話の流れから言って当然そうなるでしょ」
何をいまさら、と言わんばかりの様子でディパックからウージーを取り出す。
「でも、あの、そんな、ご、ご迷惑では」
「全然迷惑なんかじゃないって言ったら嘘になるだろうけど、でもここで見捨てて死なれたら夢見も悪いし」
「で、でも相良さんも知り合いとかいらっしゃらないんですか、ほら、おきれいですし、恋人とか!」
「……残念ながら、いないのよ」
125 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 00:56:25 ID:YHRA728c0
「あ……っとそうでしたか、それじゃあ、家族とか兄弟とか」
「この島には着てないわ。もともと一人っ子でもあるけど」
「あ、はあ。でも」
「あのさ」
と尚も反論を続けようとする愛佳を美佐枝はさえぎった。
「仮にあたしに死ぬほど探したい人がいるとしてもね、別にあなたに同行することは、マイナスにはならないわ。闇雲に探すか、あなたに随行するかなの、その二つに違いなんかないんだから、気にしないの」
「……わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
その横で芹香もぺこりと頭を下げた。
 目指すは鎌石村。



来栖川芹香
【時間:午後一時】
【場所:E-03】
【持ち物:不明】
【状態:異常なし】

小牧愛佳
【時間:午後一時】
【場所:E-03】
【持ち物:包丁】
【状態:異常なし。やや疲労】

相良美佐枝
【時間:午後一時】
【場所:E-03】
【持ち物:ウージーマイクロ】
【状態:異常なし】
126 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 00:58:45 ID:YHRA728c0
補足
【それぞれのスタート地点は芹香がホテル跡、愛佳が小学校跡、美佐江が菅原神社】
【ルートB系】

修正点
美佐枝の持ち物を【ウージーマイクロ】から【ウージー】へ
題名を「無言と遠慮とおせっかい」から「無言と遠慮とお人よし」へ
127ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 00:59:53 ID:CQzU+PPR0
久瀬 【時間:開始直後】 【場所:不明】 【持ち物:無し】 【状況:健康】

モニターの画面が、ざーっと、音が鳴り、次の画面に変わった。

───モニターの、中。
──今度は宴会だった。

「ばばんばばんばんばん♪」「あーあびばびば♪」
「ばばんばばんばんばん」「あーあびばびば♪」
かなりの人数の男女が飲み会をやっている。

「にゃ〜、久瀬のお兄さん、お兄さんも呑め呑めいぇいですよ。にゃあ」
何故かカメラに向かって黄色の髪の女が俺を誘っている。
なんだか。全くよく分からない。なんなんだ一体

テレビの中では完全に宴会モードである。
「天いな・こみパ・まじアン・誰彼勢該当者無しを祝してかんぱーい♪」
「かんぱーい♪」

あきらかにドンチャン騒ぎである。ケーキまで出ている。

───白い、部屋。

なんだかよく分からない・・・ままその画面を見入っていると、急に電気がつき、鍵が開く音。
殺風景なドアが急に開く。中から、数人の女性が現れた。

女性:「初めまして。」
 女は名刺を差し出してきた。
 榊:「初めまして、久瀬秘書官。」
   
「厚生労働省人口調査調整係課の榊しのぶと申します。」
128ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 01:00:20 ID:CQzU+PPR0
 久瀬先生。確かに俺はそう呼ばれている人間、まあ今は国会議員秘書でだが。
 今は親父の防衛庁長官の下で東大に行きながらいきなり実戦で働かされていた。
 ただ、将来は…親父の跡継ぎという事になるのだろう。

「今回はこのようなご無礼な形で任務につかれた事を大変申し訳無く思っております。」

他の女性のうち、眼鏡の女は、椅子を入れたり、テーブルを出したりしている。
名札には『栗原 透子』と書かれている。どうもこいつは厚生労働省の下の社保庁から派遣された職員らしい。

榊と名乗る女性がうやうやしく礼をする。

──モニターの中では──ウサギの話が続いている。

「支給サレルモノハ水2リxtuトル、食料6っっ食分、コンパス、地図、筆っ記用具、参加者の名簿、懐中電灯、
ソレカラ武器トソノ説明書ダ。武器ニハサマザマナ種類ガアル。コレモ何ガ誰ニ当taルカハ・ラnダムda」

(画面が切り替わる)

「こなああああああああああああああああああ──ゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいい♪」
「ふみゅーん!私のマイクかえしなさいよぉ!!!」

テレビの画面の中では緑髪の変なめがねの男と緑髪の女がカラオケのマイクをとりあっている。

(画面が切り替わる)
また元の画面。テレビでは、教室の悲惨な状況が写る。
129ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 01:00:58 ID:CQzU+PPR0
──部屋。

驚愕と恐れの表情と、もう一つの天国というか平和すぎる画像。
このあまりに違いすぎる陰陽の二つの映像の前で、久瀬はその榊と名乗る女と話る事になる。

 「何を見せたいんだ」と久瀬は聞く。
 ただ、親父も防衛庁長官。俺もその仕事を手伝っていた。となると何となくだが、想定はできていた。

 榊は…俺が予想した一つの答えを発した。
「久瀬氏。貴方の任務は、」
「今回の『改正バトル・ロワイアル』の開催するに当たっての任務を、お父上である久瀬長官より直接指名されました。」

「なに?」
「『改正・バトルロワイヤル総司令官』の着任命令書です。同意と判をお願い致します。」
と、一枚の紙を差し出してきた。

「『バトル・ロワイアル』…総司令官・・・だと?」
「防衛庁の話では、この件については貴方にこの話だけすれば分かると承っております」
しばしの沈黙。そして返事をした。

「ああ。」
確かに俺は、この話の内容、親父から聞いていた・・・だが、
(冗談だと思っていた。)

普通こういうのは、防衛軍の幹部クラスが総指揮を取るはずだ。

130ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 01:01:29 ID:CQzU+PPR0
「若すぎる。しかも俺は文民だ・・・」と久瀬は断ろうとした。
「しかし」
「この立案と計画はお父様である久瀬長官と貴方が練った話のはずです」
「?!」

 榊は、さらに話し出す。
「改正BR法では文民の司令官が一応条件付で認められていた筈です」
───確かにそうだ。今回のBR法からは、軍だけでは出来ない『さる』事情の為に、軍人以外の司令を認めていた。

「じゃあ、──倉田『先輩』は──」
「貴方の計画の通り。ご存知のはずです」
「──そうだな。」

 確かにそうだ。
 俺はこの内容を知っている。確かに知ってはいた。
 だが、まさか『俺が』司令になるとは思ってなかった。

 そうこう言う内に、榊の携帯が鳴り出した。榊は携帯から話をし、俺に携帯を渡してきた。
 久瀬長官。俺の父だった。





 「親父か」 と電話を取った。
 「そうだ」 と電話の声は言った.
131ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 01:02:06 ID:CQzU+PPR0
───東京
「あまり、榊君を困らせるな」とその男は言った。
「・・・・・・」電話の先の息子の声は、しなかった。
「お前も・・・話はしただろう。これは他者に漏れてはならない話だと自分でも」
『はい』

「お前は、陸軍・海軍・空軍の全ての知識を高校3年の時から叩き込んだ筈だ。しかも自らの意思で。
 ───防大の教授まで呼んでお前に対して特別な講義までさせた。この社会情勢下で、国家防衛や行政の
 エキスパートになりたいというお前の意思でだ。出来る筈だ。この艦隊の総司令官を」
『艦隊?!艦隊の総指揮を取れというのか!』
「そうだ。それがそもそも総司令官だろうが。」

───沖木島海上

(・・・確かに「司令官」というのはそういう役目だが・・・)と電話の向こうの息子は思っていた。

「これは『戦争』ではない。『戦争』に近いがな」
「・・・」
「お前は、倉田の娘とは違う。小さい偽善を為す事が国家百年の大計の為にならぬ事ぐらいわかっているだろう。
「・・・・・・」
「やれ。これは父の命令だ」

「まってくれ。サポートがほしい。まだ俺は21だ」
「軍の規律は判っている筈だ。小僧だからといって命令を聞かぬ連中ではない。それに軍の中にもお前の知己はいる」
「・・・」
「出来るか、出来ないか。返答はそれだけだ」
132ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 01:10:07 ID:CQzU+PPR0
──判ってはいた。

 この改正BR法の内容も、文民でありながら防衛の知識を身につけて、父の仕事に即ついて行った。
 20前だが、酒の席にもついていって飲めない酒も飲まされたり、18歳の時・・・高校の時ですら選挙の時は
 自分の意思で父の選挙も助けた。

 俺はなんとしてでも『成長』したかった。倉田の勢力を追い抜く事。それが自分の目的だった。
 20までは。

 「出来るか」と電話の向こうの親父の声がした。

──久瀬の目が光りだした。

 「出来る」と久瀬は即答した。

 自信があるか、ないか。それは無い。
 だが、『この事』を知っている人間は確かにあまりいない。
 そして、これは何より父から俺への試験だという事。そしてこの『命令』を実行する事が俺の仕事だという事を。

榊が俺に質問を投げかけてきた。
「お引き受け下さる・・・という事で、宜しいですね」

久瀬は、
「ああ」
と短く、一言だけ答えた。


133ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 01:11:15 ID:CQzU+PPR0
 俺は榊に、特殊戦略室に運ばれた。

 「特別と第零と第一、第二・第三で並べられたのリストです。再確認をお願いします」
そうして並んでいる。先ず来栖川綾香・芹香の2名が最初に並び、次に第零種参加者、第一種参加者・・・と
並んでいる。

 「特別は主催者ですので判るのですが、この『第零種』から『第一種』『第三種』の違いは知らされておりません。」
 「『第二種』・・・は判るのか?」
 「第二種は・・・これは・・・マスコミ関係ですよね?」

 当たらずとも遠からず。

 今回、バトル・ロワイヤルの開催にあたり、参加者選別の際に5種類に分けていた。

 第零種参加者・・・国家指定消去命令。直接上層部からバトル・ロワイヤル参加命令を出された参加者郡。
 第一種参加者・・・絶対殺害条件。絶対に殺害する事を条件としているメンバー。
 第二種参加者・・・推奨殺害条件。主に反政府宣伝扇動者の文化人文化人及びその文化人の親類・支援者。
 第三種参加者・・・一般人。生存帰還ヨシ

 の四種と
 特別参加者・・・来栖川綾香・来栖川芹香の二名。 の5カテゴリに分けられていた。

 本来なら、今回の主催であるパワードスーツの性能を確認するには来栖川綾香が生き残る事が望ましい。

 ただ、最悪の場合はバトル・ロワイヤルである以上考慮に入れなければならない。
 最悪、綾香が殺害された場合、『誰を生き残らせるか』という別の命令。
 それは俺以外では自衛軍と政府上層部しか知らない情報。
 ここでも最高司令官と軍の一部以外知ってはいけない情報である。
 生存していたのが『第三種』だった場合は、勝利者・生存者として公表してよい。
 ぶっちゃけた話、国崎往人。奴は第三種だ。
134ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 01:13:09 ID:CQzU+PPR0
 第二種参加者が最期まで生存していた場合は、判断。状況を見て消去し、『生存者無し』で公表せよ。
        但し、政府に対して従順になったと判断された場合は、三種に落としてよい。
        (その判断は俺の・・・つまり司令官の政治判断になる)

 第一種参加者が最期まで生存していた場合は殺害せよ。公表は『生存者無し』。
 第零種参加者が生存していた場合は、島ごと一気に砲撃せよ。航空兵力とクラスター爆弾の使用も許可する
 その後、情報統制を行い、事故として公表せよ。
-------------------------------------------------------------------------------------------

 第零種───具体的には天皇・皇室からの直接命令で殺害する事を命じられている者である。

 何故殺害しなければいけないのか──は俺は知ってはいるが、国民に公表はされないし当然榊も
 「知らない」
 と答えていた。

 これらは最重要機密。今回の目的は、『特定固有異種族』の消去と根絶、もしくは遺伝子改造である。
 皇居では、『歴史機密』に属する物だと説明を受けている。多かれ少なかれ、時の政府の心中を苦しめ、
 その為太古の古文書にもその内容は載っている内容。それが第零種になる。

 今回のパワード・スーツの開発、そしてそれの実戦使用も──最初からそれらとの戦いを想定している。
 ただ、来栖川綾香自身が参戦するのは想定外だったが。

榊:「『第零種』の参加者としては代表としては柏木千鶴等です・・・一族全員選択されているケースが多いですよね」

 だが、この女は、何も知らずにただ『第一種』『第二種』『第三種』『第零』を指定された通りに
 分類しているのだろう。そりゃそうだ。『アレ』らは一般人が知るはずも無い情報。
 現に榊は、今回使われる『結界』についても知らないだろう。
 結界の存在は、バトル・ロワイヤル参加者にしか通達されない。
 軍が結界を張っていると知られたところで参加者はどうせ全滅するか一人だ。どちらにしろ口封じされる。
135ルートD- Power Game:2006/10/01(日) 01:14:04 ID:CQzU+PPR0
そして、念のため、『特殊能力を持っている可能性のある』人間は、
うまい事を言って各船の内部に優待という名の隔離をしてある。
能力があると判断された段階で・・・今回はこのバトル・ロワイヤルに参加して貰い、
消えてもらうかその場で消す。

No.121  久瀬(主催者/司令官)

【武器】 ヘリ空母  「あきひで」(コントロール・センター)
     ヘリ空母  「くにさき」(旗艦) イージス艦 「あしがら」
     汎用護衛艦×5 ミサイル艇×2 潜水艦×3(1は原子力)
     調査船・病院船・輸送船・客船等 海上保安艇×10 

     VTOL機 40機 攻撃ヘリ 30〜50 輸送ヘリ 20
     海兵隊 陸上兵 強化兵部隊 葉鍵キャラの大部分(VIPアリ)
     ニューナンブ(38口径)

【目標】 第一目標 第零種参加者(結界対応者・地球外異種族等)の全消去
     第二目標 来栖川綾香/芹香の勝利
         (原則人間の科学力が第一、人間の魔法力使用での勝利が第二勝利条件)
     (誰彼キャラは今回は第零種に入らない⇒1945以前の旧来通り国家側の部隊に配属)

No.122  榊しのぶ(厚労省派遣職員)
【武器】 ニューナンブ(38口径) 書類

No.123  栗原 透子(社保事派遣職員)
【武器】 ニューナンブ(38口径) メガネ

位置は、 大型艦隊は瀬戸内海、沖木島周辺2kmから4kmの沖合。
     コントロール・センターは島内部にもあるが、
     重要情報はヘリ空母「くにさき」と「あきひで」「あしがら」で処理される。
     今回、結界の処理も、島内部の結界と大型艦隊・陸上部隊の三重の結界を張っている。
     放送も民間の支援を受けて安全地域からの衛星使用での遠隔放送になるであろう。
136名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 01:21:49 ID:CQzU+PPR0
___________________________
 ルートD専用しおり

  ヽ、.三 ミニ、_ ___ _,. ‐'´//-─=====-、ヾ       /ヽ   
        ,.‐'´ `''‐- 、._ヽ   /.i ∠,. -─;==:- 、ゝ‐;----// ヾ.、  
       [ |、!  /' ̄r'bゝ}二. {`´ '´__ (_Y_),. |.r-'‐┬‐l l⌒ | }  
        ゙l |`} ..:ヽ--゙‐´リ ̄ヽd、 ''''   ̄ ̄  |l   !ニ! !⌒ //  
.         i.! l .:::::     ソ;;:..  ヽ、._     _,ノ'     ゞ)ノ./

                     今日はここまでこじつけた
―――――――――――――――――――――――――――
007追加で
137無題(1/4):2006/10/01(日) 02:15:07 ID:Ll1eB5Bk0
「冬弥君、冬弥君。私頑張るよ・・・待っててね。冬弥君、冬弥君・・・」

森川由綺の呟きは止まらない。
そんな中で、構えられた89式小銃は何の躊躇いもなく火を噴くことになる。

「ちっ!」
「・・・っ」

柳川祐也は柏木楓を抱える形でしゃがみこみ、横一線引かれる弾の流れを回避する。
あくまでギリギリ、紙一重。
少しでも遅れれば即刻退場だ。

(鬼の力が制限されているのがつらいな・・・)

それでも軌道を読み取れたのは、彼のくぐって来た修羅場があったからこそ。
そして。
よた・・・。軽量とはいえ、女性の手には余るのであろう。
非力な由綺は体勢を少し崩す、一瞬ライフルの照準がずれた。
だが、その隙を楓が見逃すはずは無い。
パァン!パァンッ!
二発の銃声。
柳川の懐から放たれた楓の反撃、狙いは由綺の右肩口。

「きゃあ!いっ、痛いいぃぃ」

打たれた場所を庇う形で、由綺は膝をついた。
138無題(2/4):2006/10/01(日) 02:16:06 ID:Ll1eB5Bk0
楓が外すわけはない。
二発の銃弾は、しっかりと由綺の肉を抉っていた・・・。
アサルトライフルVS拳銃、勝敗は一目瞭然のようでもあったが、最後は使用者で決まる。
鬼の力の名残が、この結果を生んだ。
倒れこむ由綺を冷静に見つめ、彼女はとどめに残りの4発を全て彼女の腹部を狙って射撃した。

「・・・何とかなるもんだな」

血の海に沈んだ由綺を見つめた後、柳川は感心したように楓に目をやる。

「正直、最悪の展開しか予想してなかったからな」
「・・・・・・」

柳川が手を貸さずとも、すくっと立ち上がる冷静な少女。
楓は柳川よりも長く、慎重に由綺を見据えた後やっと彼に向き直った。

「・・・・・・」
「何だ、柏木の娘」

じっと見つめられる。楓の表情は変わらない。

「・・・・・・」
「話があるなら言ってくれないか、ないならないでそう答えてくれ」
「・・・・・・・・・ぅ」
「何?」
「・・・庇ってくれたから。それだけは、礼を言うわ・・・」
139無題(3/4):2006/10/01(日) 02:16:40 ID:Ll1eB5Bk0
そして、すいっと避けられる眼差し。
すたすたと、一戦の際に放ることになっていた荷物を取りに行く背中は、年頃の小ささを物語っているようで。
その態度と相まみれ、それは非常に微笑ましいもので。

(・・・馬鹿か。相手は、あの柏木の娘だぞ?)

それでも、悪い気はしない。
無表情な少女のちょっとした仕草に、柳川は自分らしくもない感情を描くのであった。

・・・が、その刹那。幼い背中は赤に染まる。

パァンパァンパアンパアンっ!!!

「っ?!」
「なにっ!!!!」

襲撃に構えなおす、振り向いた先には・・・由綺が、真っ赤に染まった森川由綺が。

「ひゃひゃひゃひゃひゃっ・・・仕返しだよぉぉぉっっ」

それは何と表現してよいものか。
土下座のような形で倒れている彼女、打たれた右手はそのままで。
・・・根性で、左手を伸ばし89式小銃のトリガーを引いていたのだ。
140無題(4/4):2006/10/01(日) 02:17:24 ID:Ll1eB5Bk0

普通であれば、そんなことで標準が取れるはずなどない。
しかし。

・・・由綺は、二人に襲撃した時点で、横に構えていたにも関わらず、ライフルの二脚を立てた形で装備していたのだ・・・

それは、銃に関して無知であった彼女だからこその結果であり。
そこまで見越すことのできなかった二人の、結果でもあった・・・。

「くそぅ!!!」

殺気を満たす、柳川は手にしたままであった出刃包丁を躊躇い無く投げつける。

「ひゃは・・・ひぐぅ!!!」

刃は由綺の眉間を貫く。それにより、彼女はやっと本当の意味で停止した。

「・・・何てことだ。」

二つの赤い池に挟まれる形で、柳川は呆然とするしかなかった・・・。
141補足:2006/10/01(日) 02:18:31 ID:Ll1eB5Bk0
柳川祐也
【時間:1日目午後3時近く】
【場所:平瀬村住宅街(G-02上部)】
【持ち物:ハンガー・支給品一式】
【状況:呆然】

柏木楓  死亡

森川由綺  死亡

(関連・076)
142名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 02:22:17 ID:wOcxCpV5O
030、031の続きです
………そう言えば今日からですな吉野家w
143やったねパパ。明日はホームランだ!:2006/10/01(日) 02:24:43 ID:wOcxCpV5O
「とりあえず逃げ切れたみたいだな…」
住井護(059)は後ろを振り返り誰も付いてきていないことを確認するとふぅと安堵の息を吐いた。

(しかし、もうゲームに乗った奴がいるとはな)
先程遭遇した自分と同年代の女の子の顔を思い出す。
「はあ…あれで敵じゃなかったら是非とも仲間になってもらいたかったぜ」
別にロリ系フェチじゃないけど、結構可愛かったし、などと言いながら住井は別の場所へ移動するために足を進める。


(――そういや、腹減ってきたな。支給されたパンでも食うか……)
住井は物陰に隠れて腰を下ろすと、バッグを開いた。
さすがに走りっぱなしだったせいか、既に住井の腹は空腹を伝える音を2、3回度鳴らしていた。
(えーと。パン、パンと……ん?)
その時、住井の鼻に美味しそうな匂いが漂ってきた。

(こ…この食欲を誘う美味そうな匂いは……まさか)
住井はバッグを持って立ち上がると、匂いに誘われてふらふらと歩きだした。


「も…もう限界っス〜〜……………」
吉岡チエ(117)は箸を止め、その場にごろんと大の字に寝っ転がった。
「……まだ3杯目。頑張る…………」
川澄舞(028)は5杯目の牛丼に口を付けるとチエに言った。
「そんな無茶な……」
そう。彼女達は今例の1週間分(すなわち3食×7日分=計21杯)の牛丼と格闘している真っ最中なのだ。
ちなみにチエは現在まで2杯と半分を食べたところである。
144やったねパパ。明日はホームランだ!:2006/10/01(日) 02:26:13 ID:wOcxCpV5O
「……ていうか、苦しくないんスか?」
「………………正直言うと少し辛くなってきた」
「はあ…せめてけんちん汁か卵かコールスローとかも付いていればもう少しはいけるかもしれないっスけど…………
さすがに牛丼だけだとお腹は苦しくなるし飽きてきちゃうっスよ…………」
そう愚痴りながらチエは残り半分を下回った自分の水に口を付けた。

「ここか…………って、おお! やはり牛丼じゃないか!」
そこに牛丼の匂いに誘われた住井がやって来た。

「だ…誰っスか!?」
突然の住井の登場を敵襲と勘違いしたチエはとっさに支給品の日本刀を持って住井を威嚇した。
「ああ、俺は敵じゃない。ただ腹が減っていたところをこの匂いに誘われて来ただけなんだ」
「え? えーと……つまりコレが食べたいんスか?」
舞のバッグの中にあるまだ手付かずの牛丼たちを指差すチエ。
「くれるのか!?」
「…食べるの手伝ってくれるなら大歓迎っス!」
「はちみつくまさん。でも、今日中には全部食べないと……」
「まかせろ! さっきも言ったが、ちょうど腹が減っていたところだ!」
そう言うやいなや、住井は早速手付かずのうちの1杯を手に取り容器のフタを開けた。
刹那。牛丼独特の匂いが住井の周りに広がる。

「くぅーっ! そうそう。この匂いだよ! いっただきまーす!」
住井は物凄いスピードで1杯目の牛丼をそれは美味そうに口の中に掻き込み始めた。
「…………負けていられない」
「そ…そうっスね。あたしもせめてこれだけは食べきるっス」
住井の食べっぷりを見て闘争心に僅かに火が点いたのか、
舞とチエも食べ掛けだった自分たちの牛丼に再び箸を進めはじめた。

―――3人の牛丼攻略はまだ始まったばかりである。
145やったねパパ。明日はホームランだ!:2006/10/01(日) 02:26:58 ID:wOcxCpV5O
 住井護
 【状態:空腹】
 【所持品:投げナイフ(残り4本)、ほか支給品一式】

 吉岡チエ
 【状態:腹8分目】
 【所持品:日本刀、ほか支給品一式(ただし水・残り3分の1)】

 川澄舞
 【状態:腹・少しきつくなってきた】
 【所持品:牛丼以外の支給品一式(ただし水・残り半分ほど)】

 【場所:G−04】
 【時間:1日目午後1時30分】
 【状況:牛丼攻略中】
 【牛丼:残り16杯(現在食べている分含む)】
146ラブハンター、山を往く:2006/10/01(日) 02:39:59 ID:kdB4jrsC0

(ホンマに……ホンマにやるんか、うちは……)

撃つべきか、撃たざるべきか。

「―――瑠璃様ぁーっ、珊瑚様ぁーっ、逃げてくださ……」

姫百合瑠璃の葛藤は、突然の闖入者によって、

「はい遅い、どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」

胸郭ごと打ち破られた。

「ひ……がっ……!?」

悲鳴を上げることも叶わず、瑠璃の身体が盛大に鮮血を撒き散らしながら
数メートルの距離を転がっていく。
綾香に遅れること数秒、芹香とイルファを抱えたままのセリオが轟音と共に着地する。
追加装甲により更に表面露出の少なくなった綾香とセリオは、まるでどこかのSF映画から
抜け出してきたかのようだった。
驚愕のあまり声も出せない珊瑚。
転がったままぴくりとも動かない瑠璃を観察し、セリオが口を開く。

「綾香様、そちらはおそらく姫百合瑠璃です」
「え、間違えた? ……しょうがないじゃんそっくりなんだもん双子ってー」

っていうかおそらくって何だよファジー機能かよ、と思いながら言い訳をする綾香。
その間に、セリオから降りた芹香がぽてぽてと歩いていく。
147ラブハンター、山を往く:2006/10/01(日) 02:40:47 ID:kdB4jrsC0
瑠璃の傍らにしゃがみ込むと、なにやら真剣そうな目つきでつつき回し始める芹香。
自分も慌てて駆け寄り、だいじょぶですかるりさまーなどと声を掛けるイルファ。
どこからどう見たって大丈夫そうではなかったが、何しろ末期癌患者にも大丈夫ですよー、と
優しい笑顔つきで言わせておけばいいだろうというのがメイドロボの開発思想である。
珊瑚謹製のHMX最新型といえども社会通念の呪縛からは逃れられなかったらしい。

そうこうする内に、青いを通り越して白くなってきた瑠璃の顔をつねったり、
胸に大きく開いた裂傷へ直に手を突っ込んだりしていた芹香が、不意にその手を放した。
不満そうなその目が、何だまだ死んでないじゃんつまんねえの、と雄弁に語っている。
それを見てイルファがよかっただいじょぶですってるりさまー、と嬉しそうな声を上げる。
表情から感情を類推することはできても、それを応用して考えることはできないらしい。
現代におけるメイドロボの限界をみる思いの綾香。

「る……瑠璃、ちゃん……?」

ようやく硬直が解けた珊瑚が、小さな声を上げた。
腰が抜けているらしく、四つん這いのままよろよろと瑠璃に近づこうとする。
あーそういえばこっちが本命だったっけ、と思いながらその背を踏む綾香。
瑠璃に向かって伸ばされた珊瑚の手が、空しく宙を掻き毟る。
るりちゃんるりちゃん、と掠れた声で呼びかけ続けている。
死にかけの蝉みたいで気持ち悪いなあ、と眉をひそめる綾香の背に、セリオが声を掛けた。
なにようっさいわねえ、とぞんざいに聞き返す綾香。
るりちゃんるりちゃん。

「そういえば先刻、対地攻撃の要請信号を確認していました」
「は?」

るりちゃんるりちゃん。
148ラブハンター、山を往く:2006/10/01(日) 02:41:36 ID:kdB4jrsC0

「データによれば、姫百合瑠璃への支給品はレーザー誘導装置です」
「で?」
「要請に応じてベースから小型のミサイルが発射されます」
「だから?」
「そのスイッチが押されました」
「大変じゃん」
「さあ」
「さあじゃねえよガラクタ」

想像の中でセリオをきっちり50通りの方法でスクラップにしてから、
綾香は本部へと通信を繋ぐ。

るりちゃんるりちゃん。

「あー、久瀬君? 今のナシ。間違い。
るりちゃんるりちゃん。
 ……は? もう発射しちゃった? 誘導が無いから信号位置に着弾する?
るりちゃんるりちゃんるりちゃん。
 それ欠陥品じゃない! ……あ、来栖川が防衛庁に無理やり売りつけた。
るりちゃんるりちゃんるりちゃん。
 ははは、そうだっけ……? っかー、じゃしょうがないわねえ……。」
るりちゃんるりちゃんるりちゃんるりちゃん。


「あー、うるさいなあもう!!」

思わず特殊合金で装甲された足を踏み抜く綾香。
るりちゃんるりちゃんる

「あ」
149ラブハンター、山を往く:2006/10/01(日) 02:42:22 ID:kdB4jrsC0
妙な感触を感じたときには遅い。
珊瑚の胸の、双子の妹と同じような位置に大穴が開いていた。
呪言のように瑠璃瑠璃と繰り返していた声もぴたりと止んでいる。
少し嫌な汗をかいた綾香、いったん通信を切って芹香に声を掛けた。

「あー……姉さん、これでもまだ使えるんだよね……?」

蟻を潰してピラミッドを作っていた芹香が顔を上げる。
ちなみにイルファは蒼白を通り越して土気色になった瑠璃の顔に頬擦りしながら
るりさまだいじょぶでよかったー、と包帯をぐるぐる巻いて遊んでいる。
芹香はぽてぽてと珊瑚に近づくと、痙攣するその身体を一瞥して綾香に耳打ちした。

「え? まだ生きてるからダメ。状態はどうでもいい?
 そ、そうだよね!」

それだけ聞くと、綾香は晴れ晴れとした顔で再び久瀬との通信回線を開く。

「ああいやちょっとこっちの話で、ゴメンねー。
 で、ミサイルが来るまでどのくらいだっけ? ……は? 着弾まで90秒?」

電光石火で振り向いた綾香が、大声で指示を出す。

「セリオ! 姉さんとガラクタ抱えてダッシュ! ついでにその物騒な装置も拾って!
 ほら急ぐ! ああもう、ガラクタってもお前じゃない! お前もガラクタだけど!
 いやだからスネるな、畜生うぜえなもう! いいから走れ!」

パワードスーツを着込んだ自分や装甲を強化したセリオはともかく、怪しげなローブを
纏っただけの芹香や民生品のイルファ、厳密にはその中身のパーツがミサイルの直撃を
受けてはたまらない。
脱兎の如く駆け出す綾香一行。
途中、ちらりと見えた人影に、時間無いんだからあんたちょっと黙ってなさいよ、と
目配せして、綾香がその場を後にする。
150名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 02:43:47 ID:GI58KXXuO
連投回避
151ラブハンター、山を往く:2006/10/01(日) 02:44:34 ID:kdB4jrsC0

後に残されたのは、もはや意識すらなく死を待つのみの姉妹。
血と臓物を撒き散らしたその肢体に、一人の少年が歩み寄っていく。

破壊の使者が目前に迫り来る天空を悠然と見上げ、死を待つ贄の横たわる大地を
見下ろして、少年は嘆息する。

「君はもう少し命の大切さを勉強した方がいいと思うよ」

呟いた直後、周辺は爆炎に包まれた。

152名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 03:03:18 ID:GI58KXXuO
【時間:16時過ぎ】
【場所:神塚山の山頂 F−05】

【85 姫百合珊瑚】【支給品:焼失】【状態:死亡】

【86 姫百合瑠璃】【支給品:焼失】【状態:死亡】

【37 来栖川綾香】
【持ち物:パワードスーツKPS−U1改、各種重火器、こんなこともあろうかとバッグ】
【状態:健康】

【60 セリオ】【持ち物:なし】【状態:正常】

【38 来栖川芹香】
【持ち物:水晶玉、都合のいい支給品、うぐぅ、狐、珊瑚&瑠璃】
【状態:健康】

【9 イルファ】
【持ち物:支給品一式】
【状態:割腹はガムテープ補修】

【55 少年】
【状態:異常なし】

D準拠で009、067、084、092採用、008不採用ルート。
→092、→093、⇔095。
153一時の逃避:2006/10/01(日) 03:12:53 ID:LZF3auxE0
 結局は、全てを失うのだ。
 美しい旋律を奏でていた両の腕も、憩いの言霊を紡いでいた歌声も。
 ―――命までもだ。

「―――ふふっ」

 仁科りえ(80)は口許を自嘲に歪めて小さく笑う。
 恐らく、自分は最後までは絶対生き残れないと、強く漠然と思った。
 りえの傍には、白い拡声器が転がっている。それが彼女に支給されたアイテムだ。
 武器ならばよかった。人を傷つける勇気はないが、それでも有ったほうが安心できるし、何よりも生き延びようと努力も出来る。
 だというのに、拡声器などというある意味危険極まりない代物では、諦めもつくというものだ。
 いっそ拡声器のボリュームを最大にして歌でも自棄で歌ってやろうかとも思ったが、流石に羞恥心の方が勝っていたため断念する。
 当然、彼女もこんなゲームから脱出したいと思ってはいたが、大した策も思いつかない。
 人を探そうにも、こんな拡声器一つでは心許なく、なによりも恐ろしくて行動も出来ない。
 参加者の仲には何人か知り合いもいたが、信頼しあえるほど仲が良かったわけではない。

(岡崎さんと春原さん……。二人とも不良って呼ばれてるけど、こんなゲームには乗ってない気がします。根は優しそうですからね。
 古河さんや一ノ瀬さんもきっと大丈夫。生徒会長さんと宮沢さんはよく知らないけど、大丈夫な気がする……
 それに、幸村先生……)
154一時の逃避:2006/10/01(日) 03:14:04 ID:LZF3auxE0
 馴染みがあるのはこの数人だ。
 岡崎と春原、渚にことみの四人についてはある程度の面識はある。
 智代と有紀寧に至っては、まともに会話すらしたことがない。
 しかし、この二人はある意味有名人であったから顔と名前は一致できる。逆に二人はりえのことなど知りもしないだろう。
 そして、りえにとってはこの島で最も信頼できるといえるのが幸村俊夫だ。
 彼女が一度挫折した時、新たに道を示してくれた恩師でもある。
 そんな幸村も何故か参加者の一人として加えられていた。
 大半が学生で構成される中、数人ほど大人までも加える必要があるのか。まあ、意味などないのかもしれないが。

 ともかく、彼女は出発してしばらく、運良く誰とも遭遇せずに海沿いの岩陰で休止していた。
 かれこれ数時間も同じ場所に留まっている。 
 時折聞こえてくる銃声が、今にも近づいてくるような気がして必死になって耳を塞いだものだ。
 それも無駄な行為だと悟ったのは、つい先程の事である。
 結局は殺されてしまうのだ。頼れる人もいない、一人孤独に死ぬのだと考えると震えが走ることは分かっているので考えないようにしていた。
 ならば、なるべくこことは無縁だと思えるような明るい話題を思い浮かべようして、瞼を閉じながらその情景を思い浮かべる。
155一時の逃避:2006/10/01(日) 03:14:51 ID:LZF3auxE0
 幼少の頃のささやかな思い出。両親のこと。音楽との出会い。親友との出会い。新たなる可能性。
 様々な過去を振り返っていると、徐々にその光景がぼやけ始める。鮮明であった情景が霞み出す。
 ―――眠くなったのだ。
 目を開けていたときはそれほどでもなかった睡魔が、目を閉じた途端に緊張が緩んだ隙を狙って襲い掛かってきた。
 何時見つかるとも知れないこんな場所で無防備をさらすということが、どれほど危険かは分かっていた。
 それでも、りえはこのまま眠ってしまおうと思った。
 このまま眠り、起きた時は全てが夢であったという願いを抱いて。
 彼女は、そのまま睡魔に身を任せる。

 これが夢なんかではないと、心の中では諦めている自分がいることに苦笑しながらも。



 『仁科りえ(080)』
 【時間:1日目午後3時頃】
 【場所:D−08】
 【所持品:拡声器・支給品一式】
 【状態:普通。睡眠中】

 「その他:B関連のルートでお願いします」
156衝動・優しさ・嗚咽 ◆/EyftfKRBU :2006/10/01(日) 04:17:19 ID:+iO9AgH60
広瀬村に到着した浩之一行は、なにか異様な雰囲気を感じていた。
 それは形容しがたい、独特の禍々しさをまとっていて、空気が僅かに湿っているようにも感じた。
「……なんだ?」
 怪訝にあたりを見渡し、探るように街中を歩いていく。
 
 いとも簡単に――それは姿を現した。
 二人の女の血濡れと、その一方を抱える一人の眼鏡の男を。
 あの惨事から、既に一時間以上が経過して尚、柳川はその場を動くことが出来なかった。
 それは、なんとも言いがたい、特別な感情だったのかもしれない。
 あるいは貴之に向けたような愛、あるいは長瀬警部補への憧憬……
 しかし、同質であるはずの『それ』は、なぜか楓への『それ』とは異形であるような気もする。
 それがなんなのか……ずっとそればかりを考え、時間が過ぎていた。
157衝動・優しさ・嗚咽 ◆/EyftfKRBU :2006/10/01(日) 04:17:59 ID:+iO9AgH60
「てめぇっ!!」
 皆が異様な光景に息を呑む中、真っ先に飛び出したのは春原陽平だった。
 無用心だ、とは思う。 だが、そんな理性より先に身体が動いていた。
 それは春原が持つ正義感だったのかもしれないし、単純な無鉄砲さだったかもしれない。 とにかく、『衝動』だった。
 死を認めたくない……という衝動。それは、死に対する忌避の裏面でもあった。
 死を恐れる春原はだからこそ、真っ先に死の現場へと勇んだ。
 一方の浩之たちは、一歩踏み出すこと、息を呑むことさえ忘れていた。
 初めて見た死体に――ただ、立ちすくむしかなかった。
 春原に胸ぐらを掴まれた柳川は力なく、だらりと首をもたげ視線だけを春原に向けた。
 その瞳に、生気はない。
「……」
「お前がやったのかよ!?」
「……」
「……何とか言えよ!」
「……放っておいてくれ」
 それだけを柳川は搾り出すと春原の手を払い、また楓の亡骸に手を添えた。
 真っ赤に塗れた少女。その両手は、胸の当たりで組まされていた。
 柳川は楓の頬を、優しくなでる。
 微動だにしない楓の死顔――それはまるで嘘っぽく、別人のように感じられた。
 先刻までのひと時が、永遠のようにさえ思えた。
158名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 04:19:11 ID:+iO9AgH60
「……かえで」
 柳川は(彼女の名前なのであろうその名前を言った)それっきり、何も言わなくなった。
「……お前」
 ――それを見て事情を察した春原はそれ以上なにも出来ず、ただ、柳川とそこにいる楓の亡骸を見下ろすことしかできなかった。
 危険の無いことを確認した浩之たちが、ゆっくりと歩み寄る。
 少し離れたところに横たわる死体。
――それは人気アイドルの森川由綺。
 浩之は一瞬驚嘆したが、それでも彼女を仰向けにさせ、両手を組ませ、瞼に手を添えた。  
 それが、この島で出来る、精一杯の死者への弔いだった。
 同時に、彼女の装備していた89式小銃とデイバッグを回収する。
 そんな、強かでゲームに迎合している自分がいることに、浩之自身驚嘆し、嫌悪した。
(でも、しかたないよな……)
 一連の動作を終えた浩之が視線を戻すと、ルーシーが男にIMIマイクロUZIを構えているところだった。 
 ルーシーは真っ直ぐに、柳川を捉える。
「……お前が二人を殺したのか?」
「ちょ、ちょっとっ!」
 いつもの調子で言いのけるルーシーに、雪見が慌てふためく。
 みさきに至っては、まだよく状況が飲み込めていなかった。
「…………」
 柳川はやはり、なにも言わない。ずっと、視線を落としたままだ。
「どうにか言ったらどうだ?」
「やめなよ」
 ルーシーを春原が小さく制止した。
159衝動・優しさ・嗚咽 ◆/EyftfKRBU :2006/10/01(日) 04:21:00 ID:+iO9AgH60
「……うーへい?」
「こいつ…泣いてるよ。 そんなやつが殺すわけ無いよ。……少なくとも、こっちの女の子は」
「…………」
 ルーシーは、ゆっくりと構えを解いた。 
(……泣いている? 俺が?)
 一歩の柳川は、後ろで響いた春原の声を反芻させた。
(俺が、泣いているだと……?)
「……っ、……くっ」
 力なく、柳川は嗤った。 その声は不思議と涙混じりで、鼻はつんと痛んだ。
(俺が泣く? なぜ? 俺は……狩猟者だぞ? 涙なんて……流すわけがないだろうが)
「………っ…ぅ……」
 思いとは裏腹に自分の口から零れるのは――震えた嗚咽。
 眼窩からはなぜか、熱を帯びた潤いが生じていく。
 その潤いが零れるのを恐れ、柳川は顔を上げた。 
 まず飛び込んできたのは、真っ赤な夕日と、それに染まる茜空だった。 
 そしてそれさえも、潤いの前に霞んでゆく。
(あぁ……俺は……俺は)
 柳川は肩を震わせ、大きく息を吐いた。唇がわなわなと緩む。
 そんな折、
「…………悲しいときは、泣いてもいいんだよ」
 みさきがそう、小さく呟いた。
 それを発端に、柳川は声を出して泣いた。
 ただただ……泣き続けた。 ――姪の死を偲んで。
 その光景を5人はただ――茫洋と見つめていた。

――夜の訪れは、もうすぐそこまできていた。
160衝動・優しさ・嗚咽 ◆/EyftfKRBU :2006/10/01(日) 04:24:01 ID:+iO9AgH60
 【時間:16:46】
 【場所G-02広瀬村】

柳川祐也
 【所持品@:出刃包丁/ハンガー/楓の武器であるコルト・ディテクティブスペシャル(弾数10内装弾4)】
 【所持品A自分と楓の支給品一式】
 【状況:号泣】
藤田浩之
 【所持品:折りたたみ式自転車/89式小銃(弾数22)と予備弾(30×2)&89式小銃用銃剣/自分と由綺の支給品一式】
 【状況:呆然】
春原陽平
 【所持品:スタンガン/支給品一式】
 【状況:呆然】
ルーシー・マリア・ミソラ
 【所持品:IMIマイクロUZI(弾数30)&予備カートリッジ(30×5)/支給品一式】
 【状況:呆然】
川名みさき
 【所持品:スタングレネード(×3)/支給品一式】
 【状況:呆然】
深山雪見
 【所持品:SIG P232(残7)/支給品一式】
 【状況:呆然】


 ※柳川の今後の同行は次の方におまかせ。
  >137-141の続き(作品No,067と一連)
161 ◆/EyftfKRBU :2006/10/01(日) 04:40:37 ID:8PW0gb+MO
一歩の柳川→×
一方の柳川→○
訂正お願いします
162策略 対 一念(1/3):2006/10/01(日) 06:41:39 ID:00RcanB20
由依は目の前の惨状に震えていた。
(そんな…、こんなことって)
由依の記憶がフラッシュバックする、あまり思い出したくないあの施設での、出来事。
だがそんな考えはすぐに消えることになる。突然、がさっとした音とともに誰かが横から飛び出してきたからだ。
「え? わ、わああああああぁぁぁぁぁぁーっ!」
由依はパニックになりながらも、飛び出してきた何かを避けるために反射的に体をのけぞらせる。

すぱっ
何かが切られた音がした、と同時にバランスを崩した由依は尻餅をつく。
(な、なんなんですか?)
由依は突然飛び出してきた人に視線を移す。
(女の人?)
見ると年上っぽい女の人が前のめりになっていた。手にはナイフを持っている。
(まさか、あたし狙われてる!? と、とにかく逃げないと)
由依はすぐに立ち上がって女の人とは反対方向へ駆け出そうとする。

とにかくこの場を離れる――混乱していた由依はそれしか考えられなかった。



(仕留め損ねた!?)
公子は焦った。公子が踏み入る前は少女はがくがくと震え倒れそうであり、獲物を仕留めるには絶好の好期だった。
死体を見たあの子はショックで動けない。そこにこのスペツナズナイフを胸に突き刺せればそれでおしまい。
現場の状況。相手の心情。大丈夫、やれる。そう確信しての行動だった。
だけどわたしのナイフが切り裂いたのはあの子のセーラー服の胸下の部分だけ。
突き刺す対象を失ったわたしは出足の勢いで体勢が崩れてしまっている。そして何よりあの子にわたしの存在を知られてしまった。
絶対的優位が崩れた今、もし今相手が反撃してきたら、わたしは――
163策略 対 一念(2/3):2006/10/01(日) 06:44:33 ID:00RcanB20
――いえ。

公子はデリンジャーへと手をかける。
向こうは武器がさっきのナイフだけだと思っている。その思いこみで襲ってきたところを振り向きざまにこれでおしまい。
もし相手がわたしに構わず、我一目散に逃げ出そうとしたら。
理奈を撃った時の感覚を思い出す――大丈夫、この距離なら少し離れても当てられる。後はこのナイフで…!

公子の思考がまとまるとあの子が動いた。後ろを振り向いたところをみると逃げ出すようだ。
想定したとおりの行動。それに自分に危害を被るケースではない。優位に立てた公子の精神に余裕が生まれる。
(それじゃ、今度こそさよなら)
あの子が駆け出そうとしたところで――当たりやすいよう標的の背中の辺りを狙って――引き金を引いた。



「あっ」

パァン!

ずざぁぁぁぁ


乾いた音と何かが滑り込んだ音が辺りに木霊した。
164策略 対 一念(3/3):2006/10/01(日) 06:48:34 ID:00RcanB20
(いったあぁぁっ! う、撃たれた!?)
由依は駆け出そうとした際……足がもつれて派手にこけた。
(でも、弾は…当たってない! 早く、また撃たれないうちにここから逃げないと)
由依は体の痛みをこらえつつ一目散に逃げ出す。



公子が目の前の事実が信じられなかった。引き金を引く瞬間――あの子の姿が消え、銃弾は何もない空間へと消えていった。
展開通りの結末に至らなかったこと、そして目標が消えたことによる焦りで一瞬公子は混乱した。
その混乱から我に返ったときには、既に木々の奥へと駆けだしてしまっていた。
もう一発撃ってもよかったが、あの距離では確実に当てられるかがわからなかったためやめた。何よりこれ以上無駄玉を出したくはない。
それに焦る必要はない。わたしにはまだこの囮がある。
(…大丈夫、焦らなくても、祐くんと風ちゃんはまだ助けられる)



「どうしよう…」
あの場から逃げ出せた由依は息を整えながら、一人とぼとぼと歩いていた。
ここはTVゲームではなく現実である。そしてこのゲームに既に乗った人がいる。殺された人もいる。
この非日常な世界に放り込まれた自分は何をするべきか。姉は無事なのだろうか。

それよりも――
「これじゃ人前に出られませんよぉ…」
さっきの戦闘と滑り込みで――由依の制服の前部分の生地は上下とも何とか下着を隠せる程度にしか残っていなかった。
165No,119 策略 対 一念:2006/10/01(日) 06:50:55 ID:00RcanB20
『伊吹公子(007)』
【時間:1日目午後1時50分頃】
【場所:E−05】
【所持品:二連式デリンジャー(残弾五発)、スペツナズナイフ】
【状態:健康、服に返り血、理奈の死体の側に止まる】

『名倉由依(075)』
【時間:1日目午後2時00分頃】
【場所:E−06】
【所持品:不明】
【状態:着衣(前部は上下とも下着が隠せる程度の生地のみ)、体中浅い切り傷と擦り傷、疲労困憊。
     自分の恰好を気にしている】


【備考:085:曲げられない信念の続き】
166名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 07:58:41 ID:wOcxCpV5O
訂正です
115の最後。牛丼の残りの数は15杯です。
167名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 08:24:53 ID:sAiXC04g0
投下します。
⇔070
ルートB系希望
168一ノ瀬ことみの奮闘(1/3):2006/10/01(日) 08:26:20 ID:sAiXC04g0
この島は、地獄だ。
彼女、一ノ瀬ことみ(060)は即座にそう判断した。
昨日までの日常は今では非情なものと成り下がり、
愛や友情は灰の荒城と化すだろう。
生きたければ“強さ”を求めなければならないのだ。
それは単純な力でなく心の“強さ”
意志の力・・・
そのことを理解してからの彼女の反応は早かった。

まず、冷静にこの状況を分析する。
ルールは単純、この島で119人の人間と戦えばいいのだ。
しかし彼女はその考えを打ち消した。
自分にそれだけの力量はない。
それに主催者の言った『人間とは思えないようなやつ』
彼女の両親の生涯のテーマはこの世とは別の世界を取り扱うものだった。
そのよう人間がいても不思議ではない。
ならばできることはただ一つ。
「言われなくてもすたこらさっさなの」
169一ノ瀬ことみの奮闘(2/3):2006/10/01(日) 08:27:20 ID:sAiXC04g0
障害は意外に少ない。
『首輪を外して、海を渡る』
たったこれだけだ。
この沖木島は瀬戸内海に浮かぶ全長6キロあまりの島だと認識している。
うさぎの言うことが真実なら渦潮に気をつければ
泳ぎのうまいものなら泳いで脱出できてしまう。
それを予防するための首輪も彼女の技術力なら
普通の工具さえあれば簡単に無力化できるだろう。
「一家に一台一ノ瀬ことみ、どっかのサテライトより役に立つの」
しかし、簡単すぎはしないだろうか?
自分がそれだけの技術力を持つ人間だということは相手も理解してるはず。
ならばこの首輪、あるいは他のところに罠が仕掛けられている?
そもそも相手の全容、目的もわからない。
わざわざ危険を冒して自分達を隔離する目的は?
「わかった!!相手は情報統合思念体なの。私達は本体じゃなくて
 情報統合思念体によって作られた実験体なの!!」
下らない考えが頭をよぎる、ありそうで怖い。
とりあえず相手の出方がわかるまで首輪もそのままにしたほうがいいだろう。
この首輪にはおそらく発刊、発熱、脈拍、呼吸、血圧等の個人の身体状況を調べる装置に
発信機や盗聴、盗撮器などの個人を管理するための装置が入ってることを
念頭に置かねばならないだろう。
ならば迂闊な真似はできない。
あくまで秘密裏にことを進める。
そのためには協力者がいる。
ならば動かなければ、話はそれからだ。
170一ノ瀬ことみの奮闘(3/3):2006/10/01(日) 08:28:42 ID:sAiXC04g0
まずは周囲の状況を確認しなければならない。
街道沿いに進み、手頃な民家、窓は少なく適当な広さで出入り口が二つ以上あるもの、
を探す。最初期に出た彼女なら誰かと出会う確率は極端に低いだろう。
適当なものを見繕ったら中に入るがあえて鍵はかけない。
これならば偶然誰かが入ったとしても鉢合わせにならずに済む。
そこで彼女はまず手荷物の確認、ひいては名簿と武器を調べ始めた。
武器はすぐに見つかった、『十徳ナイフ』
「えぇと。毒針、吹き矢、高圧電流などを兼ね備えた便利な暗殺用ナイフ。
 いや、普通の十徳ナイフがよかったの」
つぎに名簿の確認
「椋ちゃん、杏ちゃん、渚ちゃん、朋也くん。みんなそろってるの」
しかも古河姓、岡崎姓が続いてることから家族ぐるみでさらわれたのだろう。
この中の誰かと接触できればあるいは…
「椋ちゃんは出会ったイケメンとしっぽりやってるの、渚ちゃんは即マーダー化
 しそうなの。杏ちゃんはデフォルトマーダーなの」
とりあえず知り合いといえど迂闊に信用しないほうがよいだろう。
しかし一人では生きていけない。何とか同じ考えの人と接触する方法を考えなくては。
「うぅ〜朋也くん・・・」
彼女の苦難は続く

  一ノ瀬ことみ
 【時間:正午前】
 【場所:平瀬村民家F02】
 【持ち物:暗殺用十徳ナイフ、基本セット】
 【状況:冷静、民家を不法侵入かつ家宅捜索中】
171名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 11:03:17 ID:wOcxCpV5O
057、063の続きです
172無題:2006/10/01(日) 11:16:07 ID:wOcxCpV5O
「…………あれは」
山田ミチル(112)は海岸沿いを歩いていると、故障している小型船を発見した。

「…………」
さらに、船や海岸の周辺には数名の足跡とバッグが2つあったので、誰か隠れているかもしれないと思った彼女はMG3をいつでも射てるように構えなから船に近づいた。


「これって………」
船に乗り込み船室を調べてみると、全裸の女の死体があった。
死因は頭を強く打ったことによる即死――といったところだろうか?

(この人――首輪をしていない)
ミチルは死体には自分達に付けられている爆弾つきの首輪が付けられていないことに気がついた。
(もしかして主催者側の人間……もしくは私たち参加者でも主催者側でもない別の人間が島に来ているってこと?)

ミチルは船の燃料を確認してみた。
まだまだ燃料には余裕がある。燃料漏れも起きていないようだ。

ミチルは船全体と女の死体をもう一度確認してみた。
船は外損以外特に損傷は見当たらなかった。
(――船は修理すれば動きそうだ。
そして、この人――よく見ると体中に怪我をしている。それも服ごしじゃ絶対に傷つかないような擦り傷ばかり………
おまけに――性交をした形跡もある………強姦されていたの?)
173無題:2006/10/01(日) 11:22:40 ID:wOcxCpV5O
このことをもとに、ミチルはある仮説をたててみた。

(何者かがこの女性をこの船上で強姦していた……
しかし、女性は相手の隙を見て船の舵を奪い取り、その結果相手と取っ組み合いになった。
そのせいで航行がメチヤクチャになった船は偶然この島に漂流し座礁……
女性はその時に頭を強打して死亡。そして相手は……………)
ちらりと浜の方を見る。
座礁の衝撃で外に放り出されて死んだなら周辺に死体があるはずだ。
しかし、死体らしきものなどどこにも見当たらなかった。


(―――こいつはちょっとまずい?)
只でさえ女性参加者が多いこの殺人ゲーム。下手をすれば強姦魔にとってこれほど面白く、自身の嗜好を満たせるものはないだろう。

「ゲームに潜り込んだイレギュラーが強姦魔で、なおかつ殺人鬼だったら最悪かも……」
ミチルはぽつりとそんなことを呟いた。
「まさかね…」
―――しかし、彼女のその予想は実は大当たりだったりする。


ミチルはしばらくこの船に身を隠すことにした。
もしかしたら、隠れ場所を求める他の参加者がやって来るか強姦魔が戻ってくるかもしれないと思ったからだ。

(――前者であろうと後者であろうと、来た奴は誰であろうと殺すだけだ…………)
ミチルは女の死臭が僅かに満ちた船室に身を潜め、次の標的が来るのを待ち続けた。

174無題:2006/10/01(日) 11:23:20 ID:wOcxCpV5O
 山田ミチル
 【場所:D-01(海岸沿い・小型船内)】
 【時間:午後3時】
 【所持品:MG3(残り35発)、ほか支給品一式】
 【状態:健康。ゲームに乗っている。船内に身を潜める】

 【備考】
・海岸の近くにあった2つのバッグは十波由真、笹森花梨のもの。そのまま放置されている
175人中の化け物:2006/10/01(日) 11:52:31 ID:U3rcsCrb0
「さて、もうこの辺りでいいでしょうか」
宮沢有紀寧(108)はスタート地点近くの山中で腰を下ろした。
有紀寧は最初、このゲームに乗るかどうか迷っていた。生き残るには、どちらの方が確率が高いか。有紀寧は自分を支えてくれる人達のために、天国へ逝ってしまった兄のために、まだ死ぬわけにはいかなかった。
だからゲームに乗るかどうかは、自分に支給された武器で決めることにした。拳銃や爆弾のような、殺傷性の高い武器ならゲームに乗る。棒きれなどの殺傷性の低いものなら、ゲームに乗らない。
デイパックのジッパーを開ける段階で、有紀寧はあることを思い出して苦笑いした。このシチュエーション、本家バトルロワイアルの桐山にそっくりじゃないか、と。
「違うのは、決める材料が十円玉じゃないということなんですけどね」
どきどきしながら、ジッパーを開ける。果たして、どんな武器が出てくるのか。
「これは…リモコン、でしょうか」
有紀寧が手に入れたのは、ボタンが一つだけのリモコンだった。外れだったのだろうか。
これだけでは用途が分からないので、他に何かないだろうかと探してみると、案の定説明書が出てきた。それを見て、有紀寧は驚かずにはいられなかった。
「首輪を…爆発させるリモコン…」
もしそれが本当なら、恐らく当たりの武器ということになる。有紀寧は急いで続きを読んでみる。
有紀寧がざっと流し読みしてみたところ、このリモコンの使い方はこのようになっていた。
・ 首輪に向かってボタンを一回押すと、首輪の時限装置が作動し、24時間後に爆発。
・ 更に一回押した相手に対してもう一回押すと、その場で即座に爆発させることができる。
・ ただし、その射程範囲は半径3m、しかも指向性であるためきちんと首輪に向けないと不発に終わる。
・ 加えて、ボタンは成功するしないに関わらず6回までしか押せない。
・ 一旦作動させると、このリモコンではもう解除することはできない。
176人中の化け物:2006/10/01(日) 11:53:01 ID:U3rcsCrb0
以上が基本的な使い方だった。有紀寧はこれを使い勝手のいい武器だと思ったが、同時に弱点も多いと思った。
まず、最大のメリットは相手の死を自由に操れること。爆弾を作動させた後、「解除して欲しければ人を殺して来い」などといった要求を出せる。仮に従わず歯向かってきたとしてももう一回押せば即座に殺せる。
加えて、自分は直接手を下さないという点もある。
一方のデメリットは射程が短すぎることだ。どうしても相手に接近しなければならず、爆弾を作動させるまえに自分が殺されたのではたまったものではない。
しかも、6回までしか押せないのだから、手駒は最高6人ということだ。相手は選ぶ必要がある。
その上説明書によれば『この』リモコンでは解除はできない、すなわち首輪爆弾の解除用リモコンもあるかもしれないという懸念もあった。
とはいえ、こんなものを使わない手はない。上手くいけば、自分が手を汚さずに勝ち残る事だって可能だ。
非道極まりない武器であるが、自分はまだ死ぬわけにはいかない。
「…それに、わたしはもう『悪い子』ですから」
自分の家庭。兄との決別。見ぬふりをしていた自分。もはや有紀寧の取るべき道は一つ。
この武器を最大限に利用して、このゲームを勝ち残る。そう決めた。
リモコンを手に持ち、山を降りる。まずは一人で歩いている人間を見つけよう。
そう考えていた矢先、おどおどとした表情で歩いている人を見つけた。
制服を着た、長髪の女の子。
有紀寧は当然名前も知らないが、あの様子では格好の標的だ。有紀寧はいつものように柔らかい笑みを浮かべながら彼女に近づいていった。
「あのー…ちょっといいですか?」
「えっ!? あっ、はははは、はいっ」
声をかけられただけでこの調子だ。かなりうろたえている。大丈夫。きっと上手くいく。
「あっ…すみません。驚かせちゃいいましたね」
「い、いえ、急に声をかけられたもので、つい…こっちこそ、すみませんでした」
リモコンは後ろ手に隠している。まだ相手は気付く様子すらない。
「いえいえ、こんな状況では、仕方がないですもんね。いきなり、こんなことになってしまって…」
「そうですよね…私も、何がどうなっているのか…」
177人中の化け物:2006/10/01(日) 11:53:40 ID:U3rcsCrb0
「それで、一人だと危険なのでわたしはお友達を探していたんですけど…岡崎朋也さんという人と、春原陽平さんという人を知りませんか?」
当然、探しているわけではない。むしろこの二人からは離れたい。出来れば、有紀寧は殺したくはなかった。
「いえ…実は、あなたが初めて出会った人なので…私も、友人を探しているのですが」
「あなたもですか?」
「はい…藤田浩之さんという人と、松原葵さんという人なんですが、そちらはご存じないですか」
「いえ、私もあなたと同じで…」
「そ、そうなんですか…」
相手が落胆の表情を見せる。有紀寧は今が好機だと思った。
「そうです。それなら、二人で一緒に探しませんか? 一人より、二人のほうが心強いですし」
「えっ? でも…いいんですか」
「はい。実を言いますと、わたしも一人だとものすごく心細くて…」
そう言うと、相手が幾分ほっとした表情を見せる。同種の人間だと分かって、親近感を覚えたのかもしれない。
「でしたら、その、ご一緒させてもらってもよろしいですか? あ、私は姫川琴音といいます」
琴音が握手を求めて手を差し出す。
「あ、ご丁寧にありがとうございます。わたしは宮沢有紀寧といいいます」
互いに握手をする。その時、有紀寧は空いた手でリモコンをさっ、と琴音に向け、ボタンを押した。琴音は、何をされたのか分かっていない表情だった。そして、首輪が赤く点滅を始める。
「え? えっ? み、宮沢さん?」
有紀寧はにっこりと笑って琴音に答える。
「今、このリモコンで姫川さんの首輪爆弾の時限装置を作動させてもらいました。24時間後に爆発するので、えーっと…そうですね。取り敢えず、五人殺してきてくれませんか?」
「み、宮沢…さん? じょ、冗談はやめてください」
「嘘じゃないですよ? でしたら、今この場で姫川さんの首を飛ばしてあげてもいいですよ」
178人中の化け物:2006/10/01(日) 11:54:55 ID:U3rcsCrb0
すっ、とリモコンを向ける。琴音ががくがくと震えだし、涙をこぼし始める。
「あっ、心配しないでくださいね。ちゃんと五人殺してくれたら爆弾は解除させてあげますから。後、殺してきた証拠として、その人が持っていた武器を持ってきてください」
爆弾を解除する、というのは当然嘘だ。こうしないと、相手は殺しにいかない。
「ど…どうして、ここ、こんなことを…」
「さっき、説明はしましたよね? わたしにあれこれ尋ねる前に、早くいってきた方がいいですよ? もう、カウントダウンは始まってますから。あ、誰かにこのことを話したら、その場でドカン、ですよ?」
あくまでも笑みを浮かべたまま、有紀寧は話を続ける。対照的に、琴音の顔色は絶望に満ちていた。やがて、のろのろと動き出した琴音が、街道の方へ走って行く。
「いってらっしゃいませ。いい結果、期待してますよ」
琴音には、そんな声はまったく聞こえていなかった。
(ははは、早く早く殺す殺さなきゃ殺さなきゃ誰か殺さなきゃ藤田さん葵さん助けて助けて殺さなきゃ誰か早く藤田さん助けて殺さなきゃ葵さん殺して助けて)
「…さて、まずはここで姫川さんを待ちましょうか」
近くの枯れ木に腰掛けて、有紀寧は悠然と呟いた。
それは化け物を中に飼った、一人の女の姿だった。
179人中の化け物:2006/10/01(日) 11:55:36 ID:U3rcsCrb0
『宮沢有紀寧 (108)』
【時間:1日目午後12時ごろ】
【場所:F−7、山中】
【持ち物:リモコン(残り5回)、支給品一式】
【状態:冷静。琴音を待つ】

『姫川琴音(084)』
【時間:1日目午後12時ごろ】
【場所:F−8、山中】
【持ち物:武器不明、支給品一式】
【状態:錯乱。街道へ向かう。24時間後に首輪爆発】

【備考:二人とも出発地点はS10、一応全ルート】
180名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 12:31:56 ID:aWm1ueEQ0
>人中の化け物
この書き手CLANNADやったことないだろ
181名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 12:41:25 ID:Po44/evv0
なんか、武器として凶悪なのや卑怯なのが次々と出てくるな
綾香のパワードスーツはストーリー上仕方ないかもしれんが
有紀寧の首輪爆破のリモコンだの住井の薬だの柚原の要塞だの…w
182名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 14:02:24 ID:wOcxCpV5O
投下します
ルートはB系のルートで
183凄いものが出ちゃいました:2006/10/01(日) 14:08:51 ID:wOcxCpV5O
「――いったいなんなのかしらこのスイッチ?」
「さあ…」
「わかんないネ…」

ここは鎌石村のとある一軒家の一室。
そこで久寿川ささら(034)、沢渡真琴(052)、宮内レミィ(107)の3人は目の前にある謎のスイッチをじっと見つめていた。


話は少し前に遡る。

3人は偶然この村で出会い、なおかつ全員の目的が『自分たちの知り合いの捜索』ということで意気投合し、共に行動することにしたわけである。
そして、3人はそれぞれの支給品を順番に出し合うことになったのだ。


いいだしっぺで、最初にバッグを開けた真琴の支給品は日本刀だった。
「オウ。サムライソード!」
「当たり……ってことかしら?」
「あうーっ…どうせなら肉まんのほうがよかったのに〜……」

そして次にバッグを開けたのがささらである。
出てきたものは……

「――えっと…………」
「What?」
「何それ……?」

―――先程のあのスイッチだったわけである。
そして今に至る。

184凄いものが出ちゃいました:2006/10/01(日) 14:10:33 ID:wOcxCpV5O
「でも、コレ本当に何に使うネ?」
「ねえ。説明書とか入ってないの?」
「ちょっと待って………あ。これかしら?」
ささらがバッグの中から1枚の紙を取り出す。
見てみると、確かにそれがささらの支給品の説明書だった。

―――しかし、それでもスイッチの正体はわからなかった。
なぜなら、その説明書に書いてあったのは以下のことだけだったからだ。



【支給品No.120 秘密のスイッチ】

おめでとう。これを引き当てたあなたは非常に運がいいです!

これを使えばどんな臆病な方も、どんなに気が狂ってしまった方も、どんな方でも楽になれます

しかも充電式で1度使っても専用の充電器に1時間接続すればまた使えるというスグレモノ!

ぜひ一度お試しあれ



「―――さっぱりわからない!」
狙ったわけでもないのに、説明書(らしきもの)を読んだ3人は同時に同じ言葉を叫んでいた。

「えーと……読んでみるかぎり、最初に使えるのは1回きりみたいだけど…………」
「『充電すればまた使える』って書いてあるネ」
「専用の充電器………バッグの中にはそのような物は何も入ってないわ………」
ささらは再びバッグの中を調べたが、彼女の言ったとおり中にはそれ以外特別な物は何も入ってはいなかった。
185凄いものが出ちゃいました:2006/10/01(日) 14:12:39 ID:wOcxCpV5O

「……でも、本当に気になるわねコレ」
「イエス」
「もしかして………アレでしょうか?」
「アレかあ………」
「アレ? アレとは何のことネ?」
唯一アレが意味することが理解できないレミィがささらたちに尋ねた。

「あ…アレというのは…………その……別に変な意味ではないんだけど……………」
「これの自爆スイッチよ………………」
説明に戸惑うささらをよそに真琴は自分の首に付いている爆弾つきの首輪を指差して答えた。

「………………」
先程とは打って変わって一気に静まり返る一同。
「………『楽になれます』って書いてあるもんね」
「イエス…………」
「………………」
スイッチの引き当て主であるささらは終始無言だった。


「と…とりあえず、このことは一度忘れましょ!」
「そ…そうね。そうしましょう」
「じゃ…じゃあ次はワタシのアイテムをお披露目するネ!」
なんとか話題を変えようと、3人は最後の1人であるレミィの支給品を見ることにした。
186凄いものが出ちゃいました:2006/10/01(日) 14:14:11 ID:wOcxCpV5O
「――ずいぶん大きいですね」
ささらが言うように、レミィのバッグはささらや真琴のものより一回り、二回りは大きかった。
「これはきっと中にすんごい武器が入っているのよ! 早く開けて〜〜!」
「ハァイ。開帳シマシタ……Oh?」
「ど…どうしたのレミィさん?」
「まさか、また自爆スイッチが…………」
おそるおそるレミィの支給品を確認しようと近づく2人。
出てきたのは…………








「プラネタリウムはいかがでしょう?
………………あれ? あの……ここは…どこでしょうか?」

ロボットの少女――ほしのゆめみだった…………
187凄いものが出ちゃいました:2006/10/01(日) 14:16:25 ID:wOcxCpV5O

 【時間:午後1時半】
 【場所:B−05】

 久寿川ささら
 【所持品:スイッチ(どんなスイッチかは謎。充電器は付属していない)、ほか支給品一式】
 【状態:健康。呆然】

 沢渡真琴
 【所持品:日本刀、ほか支給品一式】
 【状態:健康。呆然】

 宮内レミィ
 【所持品:支給品一式】
 【状態:健康。呆然】

 ほしのゆめみ
 【所持品:なし】
 【状態:呆然】
 【その他:一応レミィの支給品】

 【備考】
・真琴の日本刀は吉岡チエのものとは長さ、形状が少し異なる
・ゆめみは大戦前の世界なのでなんの支障もなく普通に活動可能
・ささらのスイッチがどんなスイッチなのかは後続の書き手さんにお任せします
188無題(1/6):2006/10/01(日) 14:23:39 ID:Bc5nGiEY0
−−−−−−悲鳴を上げる自分のその裏で、何かがはじけた気がした。

今、七瀬留美の目の前には「敵」がいる。
男だ。澪や繭のような、か弱い女の子とは訳が違う。

ガクガクと、震えだす膝を堪えて留美は対峙していた。
・・・怖い。あふれ出す感情は止められない。
そんな時に思い出だすのは、いつもの「自分」であった。

強い自分。
いつも、浩平から「漢」とからかわれていた自分。
いじめにも屈しなかった、自分の信念を貫くことに誇りを持っていた。
・・・でも、こんな状況では、全てが、覆される・・・。

(私らしくないに決まってる、本当の私なら立ち向かえるはずっ・・・なのに・・・)

それは彼女に押し付けられた印象、誰もが「七瀬なら」と思う期待。
彼女はそれに答えなくてはいけない。
でも、七瀬留美はあくまで七瀬留美。・・・一人の、ごくごく普通の女の子だ。

それは、留美自身にとっての心労へと繋がる。
私がやらねば。
私がやらねば。
私が、殺ら・・・

「?!ひぃっ・・・・」

気がついたら、留美は。
自然に、肩にかけたP−90の照準を目の前の「敵」に合わせていた・・・。
189無題(2/6):2006/10/01(日) 14:24:17 ID:Bc5nGiEY0
一方、藤井冬弥はあせっていた。

(と、とんだ失敗だ!何で俺、こんなついてないんだ・・・)

ツインテールをリボンで結んだ、そんな女の子らしい外見の少女。
制服からしても明らかに年下、庇護を申し出れば喜ばれる立場になるだろうと予想していたから。

(俺、何か呪われてるんじゃないのか・・・っ?)

P−90は、こちらに向けられたままである。
そのまま、少女がキッと睨みながら叫んできた。

「う、動かないでよ!」

それが、目の前の少女の言葉としての声を聞いた、初めての瞬間だった。

「・・・はい」

大人しくバンザイ、まずは敵意がないことを伝えなければいけない。
ぜぇ、ぜぇ・・・留美の荒い呼吸は、こちらまで聞こえてくる。
どうしたものかと。冬弥は彼女の様子を窺うしかない。
・・・しかし、留美はそのまま動かなかった。
否、動けなかった。
トリガーに指はかけてある。・・・しかし、迷いが拭えた訳ではない。
190無題(3/6):2006/10/01(日) 14:24:53 ID:Bc5nGiEY0
「あの・・・」

もたない場に耐え切れず、おずおずと冬弥は話しかけた。

「な、何よ!」

それに返ってきた台詞。
いかにも、鼻っ面の強いものだった。

(・・・マナちゃんが大きくなったら、こういう感じか?いや、でも・・・)

うっかりそんな考え事をしてしまい、冬弥は二の句をつがなかった。
イライラと、今度は留美から声を荒げる。

「あ、あなたね!横からいきなり現れたら誰だって驚くでしょ!!」
「そうだね、ごめん・・・」
「?!」

あっさりと謝られたことに対し、狼狽する留美。
そして、思い出すは約30分前のできごと。
霧島聖との、接触。



ちょっと待って。これは、あの時と全く同じパターンではないのか・・・?


191無題(4/6):2006/10/01(日) 14:25:28 ID:Bc5nGiEY0
あの時も、いきなり声をかけられた留美はこうしてうろたえて。
でも、今ほど余裕が無いわけでもなく。
悲鳴?いや、そんなもの、前はあげなかったし。
・・・30分。状況が状況である、決してそれは短いと判断できるものではない。
30分。その間、ゲームに乗るか乗らないかを悩み続けていた留美の心は、それだけ病んでしまっていたのだ・・・。

視線を彼に定める。
今だ手を上げたままでいる名も知らぬ彼は、律儀に留美の出方を待っていた。
そんな彼に敵意を感じるか?
・・・騙すにしても、騙まし討ちができる立場にあった彼だったのに?

そう考えていると、思考の糸は至極自然に紡ぐことができ。
留美は、自分の浅はかな行動を、今になって恥じるのだった・・・。


ごめんなさい、という呟きは、冬弥の耳にもしっかり届いた。
ほっとしたような優しい笑みを浮かべる彼に対し、留美は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そして、お互い遅い自己紹介。
情報交換も一応交わしたが、特別彼等に関わるものはなかった。
沈黙はすぐに訪れる。
あのようなことがあったばかりだったから、留美もしょぼくれていて。
だが、決して彼女は泣き言を吐かなかった。
・・・冬弥は、やっぱり似ていると微笑ましく感じながらも、彼女の頭に手を添えるのだった。

「!」
192無題(5/6):2006/10/01(日) 14:26:31 ID:Bc5nGiEY0
さすり、さすり。
一瞬肩を震わせた後、留美は驚いて冬弥を見据えた。
冬弥はにっこりと笑みを浮かべ、囁く。

「怖い時はさ、助けてって言っていいんだ」
「・・・はあ?」
「それでね、助けてって泣いていいんだよ」
「そ、そんなことできる訳ないでしょ?!わ、私・・・」

私、七瀬なのよ。そう続く、いつものパターン。
しかし、冬弥は微笑んでそれを制する。

「強気なのはいいけど疲れちゃうでしょ。」
「え・・・」
「意地はんなくていいから」
「そんな、私そんなんじゃっ」
「君にちょっと似た知人がいるんだ」

懐かしむように語る冬弥、留美はただ彼を見つめるだけ。
家庭教師をしているという女の子、生意気で、気が強くて。
でもどこかで、甘えたい部分を押し殺そうとする少女。

「あ!そういえば、マナちゃんも君と同じ髪型だ」

どき。嬉しそうに、今気づいたと指摘する彼はどこか子供らしくも見え。
そういう一面を、不覚にも留美は可愛いと思ってしまった・・・
193名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 14:29:30 ID:c7Ag+fKeO
連続投稿避け
194無題(6/6):2006/10/01(日) 14:39:19 ID:c7Ag+fKeO
「ありがとうございます…でも、私はやっぱり私らしくいたい」

照れ隠し含め、留美は冬弥の手から逃れると改めて彼に向き直った。
視線を上げた彼女の瞳は、固い決意で結ばれて。
それは、私らしくあいつ等に再会したいということ。
つまり。

「攻撃されっぱなしになるつもしはないけど…ゲームには乗らない、自分から乗りたくない。絶対乗らないわ!」
「うん、いいと思う。俺もそのつもり。…じゃあ、そろそろ行こうか」

さも当然と、冬弥は道を進もうとする。
留美が同行するのは、もう決まっているとでも言うが如く。
…今更野暮なことかと、留美もつっこんだりはしなかった。

「ちょっと寄りたい所があるんだけど、いいかな」
「どこです?」
「鎌石消防分署。この近くなんだ、何か物資があるかもしれないし…」

いつの間にか地図を片手に持った冬弥の誘導で、移動は開始される。
隣を歩く彼を見て、留美も足を動かし始めた。

(ありがと藤井さん。私を女の子扱いする人なんていなかったから、何だか照れちゃうわ)

…今まで自分の傍にいなかったタイプ、優しい大人のお兄さん。
自分を女の子扱いする彼が、くすぐっかくて堪らない留美であった。
195補足:2006/10/01(日) 14:40:04 ID:Bc5nGiEY0
七瀬留美
 【時間:1日目午後4時15分程】
 【場所:C−06】
 【所持品:P−90(残弾50)、支給品一式】
 【状態:決意】

藤井冬弥
 【時間:1日目午後4時15分程】
 【場所:C−06】
 【持ち物:H&K PSG−1(残り4発。6倍スコープ付き)、他基本セット一式】
 【状況:普通】

目的地は鎌石消防分署

(関連・102)
196名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 14:40:25 ID:kdB4jrsC0
引っかかったか…携帯からどうぞ。
197名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 14:44:52 ID:Bc5nGiEY0
>>194
すみません、誤字です
×くすぐっかくて→○くすぐったくて
198理想と現実(1/3):2006/10/01(日) 15:21:45 ID:og9nsMD3O
――あぁ神様、僕が一体何をしたのでしょうか?
女の子に助けを求められると言うのは、確かに男なら憧れる一度は経験したいシチュエーションですが
手榴弾を持ちながらニコニコと近づいてくる男が相手なんて
この僕にはちょっとレベルが高すぎやしないでしょうか?
せいぜい裸で女子を追いかける相沢から助ける……ぐらいのレベルにして欲しかったです。

今をさかのぼることほんの数分前。
すぐ近くで聞こえた女性の悲鳴に、北川は思わず反応していた。
広瀬と遠野も一緒に立ち上がっていたが、危険だからとそれを制する。
それならば、と広瀬が自身の武器である消防斧を北川に差し出した。
「これも念のため、持ってきなさい」
接近戦になったらショットガンよりも確かに便利だろう。
「信用してくれんの?」
「ま、一応ね」
「サンキュッ!」
そう言って北川は外へと飛び出した。
刹那、北川の胸に女の子が飛び込んできた。
「お願いっ、助けてっ!!」

そして時は今に戻る。
右手にはショットガン。
腰には斧。
左腕には顔面蒼白で泣きじゃくる杏。
そしてそれを携えるは割烹着姿の金髪の男、北川潤。
199理想と現実(2/3):2006/10/01(日) 15:22:52 ID:og9nsMD3O
格好を覗けばなんとも理想的なシチュエーションだろうか。
だが、所詮中身はヘタレ北川。
「あんた、なにやってんだよ!」
「なにって?鬼ごっこかなぁ」
勝平はゆっくりと二人へと近づく。
「こ、こっちに来るんじゃねぇ、撃つぞ!」
その笑みは変わらず手にもった手榴弾をぽんぽんと手の上で弾ませている。
「ご、ごめん!言い過ぎました、来ないでください!オネガイシマス!!」
抱きつく相手が北川だったのが彼女の不運でしかないだろう。

「北川っ!」
あぁ、やっぱりお前は俺の親友だ。
さっきは変なことを考えて悪かった。
俺は一生お前についていくよ……。
「あいざわぁ……」

情けない声を上げながら北川が見たそこには、S&W M19を構えた彼の悪友が立っていた。
200理想と現実(3/3):2006/10/01(日) 15:24:35 ID:og9nsMD3O
北川潤(030)
 【場所:C-5鎌石村消防署のすぐそば】
 【持ち物:SPAS12ショットガン 防弾性割烹着&頭巾、他支給品一式、携帯電話、お米券】
 【状態:ヘタレ中】
藤林杏(090)
 【場所:C-5鎌石村消防署のすぐそば】
 【所持品:手ぶら、荷物はC-6消防分署に】
 【状態:北川の腕の中で震えている】
柊勝平(081)
 【場所:C-5鎌石村消防署のすぐそば】
 【所持品:所持品:手榴弾(Bなら残り3つ、B-2なら残り2つ)他支給品一式】
 【状態:北川&杏と対峙、その距離20mほど】
相沢祐一(001)
 【場所:C-5鎌石村消防署のすぐそば】
 【所持品:S&W M19(銃弾数4/6)・支給品一式】
 【状態:状況は飲み込めていないが、北川の左方100mのところで勝平に銃を構える】
神尾観鈴(025)
 【場所:C-5鎌石村消防署のすぐそば】
 【所持品:フラッシュメモリ・支給品一式】
 【状態:祐一の隣に】
広瀬真希(087)
 【場所:C-5鎌石村消防署内】
 【持ち物:防弾性割烹着&頭巾、他支給品一式、携帯電話、お米券】
 【状態:消防署の中で待機中】
遠野美凪(069)
 【場所:C-5鎌石村消防署のすぐそば】
 【持ち物:包丁、防弾性割烹着&頭巾 他支給品一式、お米券数十枚】
 【状態:同上】

 【時間:1日目午後4時過ぎ】
 【備考:→083&→104&→105 北川組が消防署、杏&勝平が消防分署と表記が違ってたので別物として扱い】
201理想と現実(訂正):2006/10/01(日) 15:32:52 ID:og9nsMD3O
美凪の場所は広瀬同様署内でお願いします
202狂気の片割れ:2006/10/01(日) 16:18:51 ID:LZF3auxE0
「瑠璃子……瑠璃子……」

 かれこれ歩き回って数時間か。
 月島拓也(066)は何の進展もないまま、ふらふらと島を彷徨い歩く。
 手には黒光りする拳銃。引き鉄には指が掛かっており、傍から見れば近寄りがたい雰囲気を醸しだしていた。
 瑠璃子瑠璃子と、同じ言動を繰り返し、目も空ろな危うい状態の彼に一体誰が好き好んで近寄るというのか。
 マーダーから見れば格好の獲物だし、盛んにゲーム脱出を考える者からすれば、輪を乱しかねない存在はお断りだ。
 こういった殺人ゲームでは、両者共になによりも冷静な思考と明確な目的意識が必要となってくる。
 だから、彼のように冷静ではいられなくなったもの、正常な思考を失ったものがゲームで生き残りには困難を極める。
 しかし、拓也には誰よりも強く深い明確な目的意識が存在した。

「待ってて瑠璃子、瑠璃子。もうすぐだ……もうすぐだよ。ここはすごくいいよ。
 本能のままで殺し合い憎しみ合い、裏切ってまた殺して。どろどろの人間像が全てある。ここなら僕たちは愛し合えるね。ずっと……ずっと愛し合える。
 ふ、ふふ。ふふふふ……。そうだ、そうだよ。障害もない。邪魔者は……簡単だね、消せば良い。無残に……後腐れなくね。
 嗚呼……、どうしよ瑠璃子……瑠璃子どうしよ。瑠璃子との綾瀬の日々を思い浮かべると止まらない。高鳴る鼓動が止まらないよ瑠璃子……」

 ゲームに乗るだとか、乗らないだとかは、まったくもって関係ない。
 最優先目標は瑠璃子の捜索で、最善の行動は瑠璃子を探し、最高の未来は瑠璃子と過ごすことだ。
 深く考えることはない。
 瑠璃子と合流し、愛を重ね、暇を見つけては邪魔者を排除し、愛を重ね、二人の新居をこの島で構え、愛を重ね、その手間に邪魔者を排除し、愛を重ねる。
 至極簡単なことだ。
 そうして邪魔者を消して準備も整えば、二人で死ぬまで誰もいないこの島で過ごせば良い。
 それはとても理想的な現実じゃないか。
 神など信じちゃいないが、今だけは感謝したい。自分に理想の未来と最高の結末を、この素晴らしいゲームで果たしてくれるのだから。
203狂気の片割れ:2006/10/01(日) 16:22:35 ID:LZF3auxE0
 瞳に危険な色を灯し、彼は勝手に考えて、勝手に納得し、勝手に行動することを決める。
 残忍な笑みを浮べ、そして恍惚に表情を歪めながら彼は延々と歩き出す。
 滲み出す笑みを隠すことなく、それでいて全範囲の物音を聞き逃さず。
 拓也は冷静でも正常でもなかったが、留まることを知らない恐ろしいほどの瑠璃子への執着が、彼の全神経を刺激していた。
 瑠璃子が今にも現れるのではないか、そう考えてしまうと顕著なほどに神経を昂ぶらせてしまう。
 
 ―――だからであった。
 極限まで抑えられた足音が、背後から忍び寄るようにして近づいていることを拓也の聴覚が正確に聞き取れたのは。
 拓也は破顔した。

(瑠璃子、瑠璃子瑠璃子! 瑠璃子だ! 僕に会いにきてくれたんだね! 
 ふふ、ふふふふふ。流石は瑠璃子、僕よりも先に見つけちゃうなんてね。それも後ろから忍び寄っちゃって……そういうところもお茶目で可愛いよ瑠璃子)

 既に背後から近寄ってくるのは瑠璃子と確定事項である。
 普段の彼女がどうであったかなど、自身の妄想で打ち消して都合よく解釈する身勝手さ。
 正しく狂人の思考だが、拓也はお構い無しに幸せそうだ。
 うずうずと待ち遠しそうにしながら瑠璃子の接近を待つ。
 そして、手が触れ合う距離にまで接近したら逆に振り返って驚かせてやろう。
 明日の遠足が楽しみで眠れないという子供の思考と同じように、拓也は無邪気にその時を待った。

(さぁ瑠璃子。僕を驚かせてごらん。今も瑠璃子は僕を驚かそうと笑ってるんだろうね。でもだめだよ瑠璃子。
 笑顔の瑠璃子も魅力的だけど、驚き戸惑いの顔を見せる瑠璃子も大好きだからね。
 困ったよ……嬉しすぎて声を出しちゃいそうだよ瑠璃子……)

 拓也は肩を震わせながら笑みを我慢した。
 そんな拓也の精一杯の自制が幸を成したのか、背後にいる瑠璃子は手が届く位置で歩みを止める。
 今が好機とばかりに、拓也が輝かしい笑顔で振り返った。
204狂気の片割れ:2006/10/01(日) 16:26:13 ID:LZF3auxE0
「―――瑠璃子っ! 残念だったね瑠璃……え?」
「少年よ。ちと、聞きたいことがあるんじゃが……はて、るりとは?」
「…………」

 振り返った拓也は硬直した。
 愛しい瑠璃子の驚き顔があるはずが、そこにいたのは屈強で老齢な男。
 まじまじと見るが、似ても似つかなかった。
 ようやく頭で別人物と認識したとき、先程とは比べようもないほどの震えが拓也の身体を駆け巡る。 

「るり……。姫百合瑠璃殿のことかの? 生憎面識がなくて詳しくは知らぬが、知り合いかね……?」
「―――なっ、な……!」
[ん? おお、そうであった。由真という少女を知らぬか? これでも孫であるのだが―――]

 ガキンと、拓也の奥歯が砕けた。
 
「なんなんだああぁぁ!! おまえはあぁ―――!!!!」

 腕に持った拳銃を持ち上げて問答無用に発砲した。 
 ズドンドンッ、という二発の銃弾は正確に老人―――長瀬源蔵(72)の腹部に着弾した。
 小さく呻き声を上げて、源蔵は仰向けに地へと伏した。

「はぁ、はぁ、はぁっ……クソがっ! ふざけやがって! 人の純情を弄びやがって……!」

 荒い息を吐いて、転がる老人の死体を睨みつける。
 当然の報いだとばかりに、彼は憤慨した様子で歩き出した。
 その際に、源蔵を踏みつけておいた。  

「激しく無用な時間を食っちゃったよ瑠璃子。待ってて瑠璃子。今行くからね」
「―――待て小僧」

 歩き出した卓也の耳に、殺したはずの老人の声が何故か横方から聞こえてきた。
 ギョッとなり振り替えると、眼前には固められた拳の姿。
205狂気の片割れ:2006/10/01(日) 16:27:19 ID:LZF3auxE0
「―――なっ!?」
「出会い頭に攻撃とは―――教育がなっておらんようじゃの―――!!」

 電光石火の如く、源蔵の拳が拓也へと突き刺さり、身体が半回転して吹き飛んだ。
 そして、地へと倒れ伏した拓也は起き上がってこない。先程とは逆の構図だ。
 違いといえば、卓也は完全に沈黙していることだが。
 それを見届けることなく源蔵は襟を正しながら鼻を鳴らす。

「危なかったが、このチョッキが役に立ったようじゃな……」

 穿たれたスーツの間からは、銃弾を止めた防弾チョッキが姿を現していた。
 多少の衝撃はあったものの、行動に支障はない。
 源蔵は近くに転がった卓也の拳銃を回収する。 

「これは貴様には過ぎた物だ。没収じゃな」

 拳銃を自身のバックに詰め直し、気絶した拓也には目もくれずに歩き出した。
 食料が入った拓也のバックを残したことは、せめてもの情けだ。 
 こんな危険な奴でも改心する余地が有るのなら、望みは断つべきではない。
 少し甘いかもしれないが、源蔵は恐らくゲームでの年長者。
 未来ある若者を費やしてしまうのは忍びなかったのかもれない。 

「さて、由真も無事であるといいのだが……」
206狂気の片割れ:2006/10/01(日) 16:27:54 ID:LZF3auxE0
 『月島拓也(066)』
 【時間:1日目午後5時頃】
 【場所:G−07】
 【所持品:弾倉2セット(各八発)・支給品一式】
 【状態:気絶中。瑠璃子を探す】

 『長瀬源蔵(072)』
 【時間:1日目午後5時頃】
 【場所:G−07】
 【所持品:防弾チョッキ・トカレフ(TT30)銃弾数(6/8)・支給品一式】
 【状態:普通。由真を探す】

 「その他:021の続きです。共通でお願いします」
207名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 17:07:14 ID:K1fd9I740
【午後1時半】【場所:B-05】(ルートB>>187の続き)

鎌石村のとある一軒家。突如「由真はおらんかぁ!!」と声がした。

とっさにささらとレミィ・真琴は身を隠す。玄関に長瀬源蔵(072)が立っていた。

 仕方なく彼は玄関から家の庭に回る。すると人影と日本刀の影が確認できた。
 待ち伏せしていると判断した彼は台所まで周る。

 「あう・・・何しているのかな?」と真琴がいぶかしげに言う。
 「判らないネ」
 「何か探しているようね・・・裏には・・・台所・・・ちょっとまって!まさかプロパンガス!」

 そう。その庭に設置されていたプロパンガスに彼は所持品の手榴弾を投げつける影が窓から見えた。
 ささらとレミィは即テーブルを蹴倒してその影に伏せ隠れた。
 そして直後。家が轟音を立てて爆発した。

こげたテーブルからささらが様子を見てみると、
家の中は壁も壊れて庭まで風通しがよくなり、先ほどまで生きていた沢渡真琴だったものと
何故か爆発を受けても大丈夫だったほしのゆめみだけが転がっていた。
「・・・なんでしょうか・・・これは・・・」 ゆめみもまっ黒になっていた。だが体は無事らしい。

 煙を立てて家が半壊した家を後ろに見て、彼は小さく言った。
「誰かいたようだが、これでとりあえずは中の人間は怪我してるじゃろ。
 こういう狭い家の中で下手に近づくのは危険じゃからの。」

こういい残して去っていく。彼の名はダニエル。由真を探すちょっぴりダンディーな漢である。
208名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 17:08:18 ID:K1fd9I740

 【長瀬源蔵(072)】【所持品:防弾チョッキ・手榴弾(0/0)・支給品一式】
 【状態:健康。いたって元気】

 【沢渡真琴】 プロパンガスと手榴弾の爆発により即死。

 【久寿川ささら】【所持品:スイッチ(どんなスイッチかは謎。充電器は付属していない)、ほか支給品一式】
 【状態:健康。爆発はなんとか避けたが心身喪失】

 【宮内レミィ】
 【所持品:支給品一式、日本刀(吉岡チエのものとは長さ、形状が少し異なる )】
【状態:健康。心身喪失】
 【ほしのゆめみ】 【所持品:なし】 【状態:呆然】
 【その他:一応レミィの支給品。けっこう頑丈に出来ているのかもしれない】
209名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 17:39:09 ID:S91Seb1L0
訂正

やったねパパ。明日はホームランだ!
>既に住井の腹は空腹を伝える音を2、3回度鳴らしていた。
   ↓
既に住井の腹は空腹を伝える音を2、3回は鳴らしていた。


理想と現実
>【所持品:所持品:手榴弾(Bなら残り3つ、B-2なら残り2つ)他支給品一式】
   ↓
【所持品:手榴弾(Bなら残り3つ、B-2なら残り2つ)他支給品一式】

狂気の片割れ
>[ん? おお、そうであった。由真という少女を知らぬか? これでも孫であるのだが―――]
   ↓
「ん? おお、そうであった。由真という少女を知らぬか? これでも孫であるのだが―――」

>違いといえば、卓也は完全に沈黙していることだが。
   ↓
違いといえば、拓也は完全に沈黙していることだが。
210オレがココに来た理由 :2006/10/01(日) 18:37:19 ID:3Julu8NW0
「広瀬、オレの携帯に…お前の携帯の番号を送ってくれ。」
携帯電話を取り出し、真面目な顔でそう切り出したのは割烹着姿の北川潤(30番)かなりマヌケな姿だ…。
「だから、番号を教えても、携帯は繋がらないんだって…。」
何度言えばわかるのとでも言いたげに広瀬(勿論割烹着)は携帯電話の番号を【赤外線受信】で北川の携帯に送る。
広瀬のデータが送られたのを確認すると、次は自分のメールを送る作業をする。
「音量と振動が出ないように確認しといてくれよ。」
解ってると言いつつ手を上げる広瀬、北川からデーターが送られてきた合図だ…。
「…うら若き男女が互いに番号のやり取り……ぽっ」
顔を赤らめ手を親え一連のやり取りに割ってはいるのは69遠野美凪タマネギハンバーグが出来たのか、備え付けのタッパに入れている最中である。
「…絶対違うわよ。」
否定の意思を見せる広瀬…肩を落とし、しかも落ち込んだ声で…。

「なるほどっと。」
参加者名簿の裏に書き込む北川、色々書き込んでるらしく興味心身に広瀬と美凪は紙の中身を見つめる。
211オレがココに来た理由 2:2006/10/01(日) 18:38:11 ID:3Julu8NW0
―――現在のまとめ ―――

・ゲームの最初の説明で、外すと爆発する首輪(首輪に細工?)
・ 、、   島の外に出ると爆破(遠隔操作?)
・ 、、   連続して24時間誰も死ななかったとき(殺されるとタイマーリセット?)
・ワケの解らないトンデモ能力は制御(首輪の力?遠隔操作?)

・鎌石村役場【C-3】より出発
・携帯電話通じない
・鎌石郵便局の電話回線が切れている(電話線そのもの)
・道中の民家、電話回線―――×
・広瀬の電話―――通じず
・鎌石の消防署・・×
・広瀬の携帯―――通じ×
・赤外線―――OK

後になるにつれ雑に書き込んである潤の文面、
「…?」
それを見たの美凪が普段はおっとりしているはずなのだが食い入るように聞く。
「…。」
続いて真希まで…。
212オレがココに来た理由 3:2006/10/01(日) 18:39:12 ID:3Julu8NW0
―――[適当に相槌を打ってください、喋らずに]―――
とペンで書き込む北川―――二人を見る目は真剣になってた。
【これは今までの行動で判断した結果です…憶測なので勘弁してください】
食い入るように見る二人
【家庭用の電話回線は島全体が『切られてる』可能性があります】
【しかし、今のところオレと広瀬の携帯は『通ながらない』だけです…多分妨害電波みたいなモン】
「「…!!」」
声に為らない声をハモる美凪と広瀬。

【話を変えます、あなたがこのゲームを仕掛けた連中なら、爆弾&能力制限&発信機(憶測)だけで安心しますか?】
【参加者連中がモニターの地図上に映った、発信源(俺たち)を見ているだけで安心できますか?】
【答えはNO、つまり盗聴をされている可能性があります】
「ちょ…ちょっと…!!」
広瀬が焦った口調で話しかける、しかし北川は気にせず書き込む。
【盗撮の可能性もありますが、この首輪についている可能性は限りなく低いでしょう】
【何故なら動画は、連中が目で見る情報量多すぎて次第に疲れ判断が鈍るが関の山でしょう…。】
【そのため、盗聴のほうが銃声なり悲鳴を聞き取り、リアルで連中が判断できます】
【(もちろん、森の中や町の中はカメラがあるかもしれません。)】

そこまで北川が書き込んだ時点で広瀬が北川の紙に寄せ書きする、
【じゃあどうしろと言うのよ!!て言うかなんで丁寧語!?】
憶測の段階だが信憑性のある北川の文をみて思わず書き込む真希、もちろん突っ込みありで…。
【どうにもできない、オレにはメカニックの知識も乏しければ、現状を奪回出来る力もありませんのであしからず】
身も蓋も無い書き方をする北川
【…でも、何か考えがあるようで】
そう書き込むのは遠野、今までのが茶番なら北川がこんな事を書き込むはずが無いからだ…。
ようやく本題が書き込めるとペンを走らせるのが早くなる北川
213オレがココに来た理由 4:2006/10/01(日) 18:40:36 ID:3Julu8NW0
―――憶測―――
・以上のことから、島中は主催者の監視下に置かれている
・妨害電波で携帯電話は繋がらない
・特殊電波で島中が首輪爆弾のフィールドに包まれてる
・ヘンな能力持ちが、首輪or能力でフィールドで使えなくなってる

―――憶測からの推測(もはや役に立たない)―――
・つまり、首輪爆弾、特殊な回線or強力なフィールドをなんとかすれば、現状を打開できる…。
・なんとかしたとしても、ゲームに乗り気の【能力持ち】や【主催者】が気づくとNG
・て言うかそんな都合よく物事は運びません…。

【それに機械に詳しい参加者がいたのならば現状を打開するため行動してるでしょう。】

「…少しでも期待したアタシが馬鹿ね…北川、アンタ一度フル○ン割烹着の刑になりなさい。」
「…ぽっ。」
呆れて冗談しか言えない広瀬、何処まで本当か解らない美凪、二人の行動を予測してか最後の書き込みに筆をとる。

・もし、あなたが今まですがっていた希望が夢でしか無いと解ればどうしますか?
・それが何人(俺たち3人以上)もの人が集まってたらどうなりますか…?
・今まで抑えてきた気持ちが…。

214オレがココに来た理由 5:2006/10/01(日) 18:41:28 ID:3Julu8NW0
北川はここでペンを止める、書いていて嫌になってるのが解ったからだ、そして二人に顔を向けて重い口を開く。
「別に、二人を困らそうと思ったわけじゃない…ただ。」
北川の舌があまり動いてないのが解る、次の台詞を言ってほしいのだ
「偏った考え方や軽はずみな行動をとるなってことでしょ…。」
「では…どうすればいいのですか」
広瀬と美凪が交互に口を挟む、北川の書き込みは何の解決にもなってないからだ
「このゲームオレ達を含めて乗り気の奴は少ないはずだ、…でも、広瀬の言った通り根拠も無いのに偏った考え方や軽はずみな行動をとる奴が出てくる。」
あさっての方向を見ながら喋り始める北川、まるで自分に言い聞かせてるようだ…。
「オレの知り合いも参加してる…しかも本当に信用できるかと言えばウソになる」
相沢や水瀬、美坂や妹の顔を思い浮かべる北川、今現在連中がゲームに乗り気じゃなくても、まともだと言い切れる判断材料が無いのだ。
「遠野の探している、みちるって子は出来るかぎりのことはする…でも」
「…今はその時では無いと言いたい訳ですね。」
一見無責任な台詞を話してるように見える北川だが、闇雲に行動をしても意味がないと言いたいのだと感じた遠野
215名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 18:47:51 ID:wOcxCpV5O
回避しろー
216オレがココに来た理由 6:2006/10/01(日) 19:00:33 ID:3Julu8NW0
「これでこの話は終わりっ。」
切りのいい声を張り一連の話と気分を切り替える北川、ネガティブな考えを切り替えたいからだった。
「…何の解決にもなってないんですけどね、…しょぼ〜ん」
元も子もない台詞を喋る美凪、
「本っ当〜に解決してないわね…で、今後のプランは?」
やれやれと頭を抱える広瀬しかし北川には何か考えがまだあると踏んでいる。
「とり合えず荷物を纏めてここを出る、もう少し北へ誰にも気づかれないように…。」
(もう少ししたら放送が流れる…そこが判断の付け所だな…。)
「…ところでこの割烹着、着てないとだめ?」
北川は自分の割烹着姿を鏡で見てなんだか情けない姿だと思いつつ広瀬に意見してみる。

「嫌ならいいのよ、裸割烹着で島中ブラリな旅なんだから♪」
「…ブラリな旅の北川さんの道中を祝って【お米券】進呈♪」
北川は、嫌な旅だ…と言うか何で二人とも乗り気なんだと思い、それが悔しかったのか
美凪からもらった二枚目の【お米券】を握り締め、言っては為らないことを事を口走ってしまう。
「それなら、二人が裸割ぽ…。」
     ―――スパーン!―――
ヨコシマな北川の意見に広瀬のスリッパがクリーンヒット!!
「…切れ味抜群な広瀬さんに【お米券】進呈。」
北川が最後まで言い終わる前に行動を起こす広瀬、すかさず美凪が【お米券】…北川は頭を抑えてる。
「…痛っ〜ぜ…全国の純正マキマキ&ナギーファンにサービスは考えてないのかぁぁぁ!!」
血走った目で抗議する北川、しかし追い討ちを掛けるが如く
     ―――スパーン!!―――
「アンタがファンサービスしなさい!全国のお茶の間のお兄さま&お姉さまにモテモテよ。」
「するか〜っ!!てかオレにファンなんて居るのかぁぁ!」
支離滅裂な絶叫をする北川、真希の二度目のスリッパ攻撃で軽く頭にキているらしい。
「…とりあえず、次の放送が勝負の分かれ目だ…いま下手に騒ぎ立てるのは得策じゃない、行くぞ。」
「最後だけかっこよく閉めるなぁ。」
     ―――スパーン!!!―――
三回のスリッパの音と共に三人は鎌石村消防署をあとにする、誰にも気づかれず、敵は勿論見方にも…。
北川の憶測が正しければ、下手に固まるのは得策ではないからだ…
217オレがココに来た理由:2006/10/01(日) 19:02:15 ID:3Julu8NW0
【時間:1日目正午四時半過ぎ】 B-5へ移動
【場所:鎌石村消防署】【C-5】
北川潤  (30番)
【持ち物:SPAS12ショットガン 防弾性割烹着&頭巾 水・食料、他支給品一式、携帯電話、お米券×2 】
【状況:冷静・臨機応変 】
広瀬真希 (87番)
【持ち物:消防斧、防弾性割烹着&頭巾、水・食料、他支給品一式、携帯電話、お米券×2 和の食材セット1/2】
【状況:周囲警戒 】
遠野美凪 (69番)
持ち物:消防署にあった包丁、防弾性割烹着&頭巾 水・食料、他支給品一式、お米券数十枚 タッパ(玉ねぎハンバーグ)】
【状況:順応、タマネギハンバーグ完成】

【その他】
(104の続き)(125とルート別でお願いします)
(120)のことみの爆弾解除とは違い、首輪爆弾の盗聴はあくまで憶測の段階です(彼にどうにか出来るシロモノではないですし)
 北川は鎌石村役場【C-3】より出発
美凪のたまねぎハンバーグを完成→みちる関係の書き手さん宜しく
218賭け 1/2:2006/10/01(日) 19:34:38 ID:4UCm8W4y0
 木の幹に腰を落ち着けながら、青い矢を見つめる少女。倉田佐祐理。
どれくらい走ったのだろうか、時間の感覚が掴めていない。
いや、それよりも問題はこの矢の効能だ。致死性の毒か、大した事のない毒か。
あの男性の倒れ方からみて、超強力な致死性の毒か、
麻酔薬かのどちらかであろう事は佐祐理の頭にも推測できた。
どちらかというと、麻酔薬の可能性の方が強い。例えばヤドクガエルの毒でさえ、
ああも一瞬では死なないだろう。
(いえ、それさえ佐祐理の願望でしょうか?単にそう思いたいから、
致死性の毒ではないと思いたいから、思い込んでいるだけでしょうか?)
 どちらにせよ、人を殺す覚悟はできそうになかった。さっきは出来たと
思っていたが、いざ実行してれみれば、殺人の重さは想像以上だった。
(ならば…佐祐理がすべき事は、祐一さんと舞を返すこと…。たとえば二人以外の
人を全員殺したとしても、あの二人はもとの世界には返れない。
どちらか一人しか…。そしてその選択をあの二人はできないでしょう…)
そうなれば、穏便にここから逃げ出すか、ゲーム自体を崩壊させるしかない。
それが出来るのか、そしてやるのか、と佐祐理は自問自答した。
(答えは…佐祐理の罪に聞いてみましょう)
佐祐理は青い矢を取り出した。これを自分に刺し、もし生きている事ができれば
このゲームを壊す、もしくは脱出する。もし、致死性の毒ならば彼に対する償いには
ならずとも、最低限の罰を自分に与えることができる。
仮に麻酔薬で、寝ている隙に誰かに殺されてもそれはそれで構わなかった。
すくなくとも自分は殺そうとしたのだから。
 そう考えた佐祐理は、躊躇いもなく青い矢を腕に走る脈に刺した。
効果はすぐに現れた。段々と佐祐理の意識が遠くなる。
219賭け 2/2:2006/10/01(日) 19:35:48 ID:4UCm8W4y0
遠くなる意識の中で、昔読んだ本の一節が彼女の頭に浮かんだ。

『私の文章を読んでくれている君 君が誰であろうとかまわない。
君の好運を賭けたまえ。私がしているように慌てずに賭けるのだ。
今これを書いている瞬間に私が君を賭けているのと同様に君も賭けるのだ。
この好運は君のでも私のでもない。すべての人の好運であり、すべての人の光なのだ。』

誰のなんという本の一節だったか。それが何であれ、
睡眠に落ちる佐祐理の脳を過ぎったのは、ある種の願いであり、決意であった。
(もし、”私”に幸運が訪れたのなら…。それが皆さんの幸運になりますよう…)

【時間:1日目 14:30頃】
【場所:G-7】
【所持品:基本セット、 吹き矢セット(青×5:麻酔薬、赤×3:効能不明、黄×3:効能不明)】
【状況:麻酔による睡眠。起きたら脱出・ゲーム破壊の方法を考えるつもり】
【備考:ルートB】
220言い訳:2006/10/01(日) 19:40:51 ID:U3rcsCrb0
先程の何者かの銃撃を上手く回避しきった高槻と郁乃&七海ペアは銃撃がもうないのを確認すると、まずは一段落をつけた。
「あ、あのっ…どちら様だか分かりませんが、ありがとうございましたっ」
目の前のちんまい少女、立田七海に一生懸命頭を下げられ、高槻は半ば困惑していた。今までの高槻の人生でここまで感謝されたことはなかったからである。
「………」
が、もう一人のちんまい少女、小牧郁乃からはジロリとした目線を浴びせられるだけだった。
「ほらっ、郁乃ちゃんもありがとう、って言わないと。せっかく助けてもらったんだから」
「…ま、一応礼はしとくわ。でもあなた、一つ聞きたいんだけど」
「あん? 何だ」
疑いの視線を崩さないまま、郁乃は腕組みをして尋ねる。
「どうして、あんな絶妙なタイミングで助けに来ることができたの? 銃撃が始まったとたんに『危ない』って言ったでしょ? しかもあんな近距離から。あらかじめ機を窺っていたようにしか思えないんだけど」
「い、郁乃ちゃん、そういう言い方は…」
「七海。悪いけど、あたしは疑りぶかい性格なの。で、どうなの? 本当のところは」
言えない。ってか、言えるか。「実は、あなた達の懸命に叫ぶ姿があまりに美しかったので、思わずガールウォッチングに勤しんでいたんです」などと言った言葉を進呈するが如きは、良くて変態扱い、悪くてその場で頭を撃ち抜かれない。最近の女は怖いからな。
「あー…それは、だな」
高槻は考えうる限りの頭脳を駆使して一番適当な言い訳をチョイスした。
「あー…実はな、俺はハードボイルド小説の愛読者なんだ」
「は?」
郁乃が素っ頓狂な声をあげる。
221言い訳:2006/10/01(日) 19:41:23 ID:U3rcsCrb0
「女が悪に襲われてる現場を見るとだな、アメリカン・コミックヒーローのようにジャジャーンと登場して『待ってました!』と間一髪助けるのが俺の夢なわけよ。で、目の前にまさにそんな状況があったから思わず口が」
「………」
完璧な言い訳をしたつもりだったのだが、ものの見事に疑われていた。しかも七海までジト目だった。
「と、ともかく、これで俺は目的を果たした訳だ。じゃあな、お嬢ちゃんたち」
クールに決めて、その場から逃げようとする高槻。しかし郁乃達がそれを許すはずもない。それは高槻にも分かっていたので。
「ちょっと待ちなさいよ…って、逃げた!」
覚えてろよガキども。武器がまともだったら、こんな三流悪役のような逃げ方をせずに済んだものを。おのれクマのぬいぐるみ。おのれ、高野山。
クマのぬいぐるみと高野山に全ての責任を押し付けて、高槻はどこかへと走り去っていった。
「…で、結局何だったの? あの男」
「さぁ…少なくとも、ハードボイルド小説の愛読者じゃなさそうだね。それより、郁乃ちゃんのお姉さんと、宗一さん達を探しに行こっ」


小牧郁乃
 【時間:1日目14:30頃】
 【場所:E−07】
 【持ち物:支給アイテム不明、車椅子、他基本セット一式】
 【状況:七海と共に愛佳及び宗一達の捜索】
222言い訳:2006/10/01(日) 19:42:19 ID:U3rcsCrb0

  立田七海
 【時間:1日目14:30頃】
 【場所:E−07】
 【持ち物:支給アイテム不明、他基本セット一式】
 【状況:七海と共に愛佳及び宗一達の捜索】

  高槻
 【時間:1日目14:30頃】
 【場所:E−08】
 【持ち物:熊のぬいぐるみ(やや大きめ)、他基本セット一式】
 【状況:街道に沿って南へ逃走】


【備考:Bルート系で】
223名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 19:56:20 ID:S91Seb1L0
発見誤字報告

賭け
>(ならば…佐祐理がすべき事は〜
『返』→『帰』
224後日談:2006/10/01(日) 21:44:27 ID:U3rcsCrb0
くそっ、どうしてこの俺様がガキ二人から尻尾を巻いて逃走しなきゃならないんだ!?
ふざけるな、俺様は高槻様だぞ。女を犯し、支配して、苦痛を与えることこそが喜びではなかったのか。それがなんだこのザマは。一流どころか三流悪役じゃないか。タイムボカンじゃないんだぞ。
俺様はこの状況の原因となった激プリチーなクマのぬいぐるみを憎しみをもって睨みつけた。
そもそも、これさえなけりゃこんな思いをすることもなかったんだ。おのれ、ぬいぐるみ。おのれ、高野山。おのれ、高野連。
やつあたりする対象が増えたような気もするが、それだけ腹が立ってるってことだ。ちくしょう、FARGOの連中が見たら笑うだろうな。
「いっそのこと、こんなもん東京湾の奥底に…ん? 何だこれは」
今まで気付かなかったが、ぬいぐるみの後ろにジッパーがあった。ま、まさか、これは!
「ハハ、ハハハハハ! 参った! 俺は参ったぞぉぉぉぉ! ぬいぐるみとは見せかけのフェイク、すなわち、ここに真の秘密兵器が眠っているに違いない! ハハハハ! 我が世の春が来たァ!」
前々からおかしいと思っていたんだよ。殺し合いに、こんなプリチーな代物が配られるはずはない。やはり俺様はツイている。
見てろよあのクソガキども。こいつで俺様の雌奴隷にしてやる。
「さぁ見せてみろ! 俺に真の姿を!」
「ぴこ」
…ぬいぐるみの中から出てきたのは、何やら白い毛むくじゃらの奇怪な生物。おい、秘密兵器は?
「ぴこぴこ、ぴっこり」
つぶらな瞳二つが俺を捕らえる。…なんだよ、こっち見るな。そんなに俺がピエロだと?
「ぴこっ!」
謎の奇怪生物は勢いよく飛び出すと、俺の前に対峙した。…何だ? 俺とやる気か?
「くそ、このクソ生物がぁ…俺の夢をぶち壊しにしてくれやがって! この一流の悪を自称するこの高槻様、そう簡単にやられはせん! 最後まで生き残ってみせる、エースだ!」
225後日談:2006/10/01(日) 21:45:15 ID:U3rcsCrb0
宇宙外生命体ピコ(仮)に向かって拳法の構えをとる。どうせなら食料にしてやる。宇宙生物だろうが何だろうが、生命体なら食えるはず。
「ぴこ〜〜〜っ♪」
…が、宇宙外生命体ピコ(仮)は攻撃してくるどころか俺に懐いてきた。…なんだぁ? こいつ、人間慣れしてやがる。
「ぴっこ、ぴっこ…」
しまいには一般のお子様には到底見せられないような踊りを披露する。やめてくれ。
「わかったわかった、食わねえから踊るな。ちくしょう…どうしてこの島に来てからこんなにヒキが悪いんだよ…」
「ぴこ、ぴーこっ」
ぽんぽんと俺の足を叩いて慰めるピコ(仮)。ざけんな、ぬっ殺すぞ。
俺はまた意気消沈しつつ歩き出した。頭のどこかで、俺が家畜のエサになっている姿を想像しながら。

  高槻
 【時間:1日目14:50頃】
 【場所:E−08】
 【持ち物:ポテト、他基本セット一式】
 【状況:南へ移動。意気消沈】
226 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 22:24:51 ID:YHRA728c0
 パンッ! バンッ! 森の中に二種類の銃声が交互にこだまする。
 向坂環はコルトガバメントで牽制しながら少しづつ、相手に近づいていった。
 いざとなれば相手の命を奪う覚悟は既にできていたが、それはあくまでほかに手がないときの最終手段にしたかった。
 理想は近づいていって銃を奪い、相手を一発ぶん殴ること。次善は相手の銃を奪うこと。
 再びパァン! 風船が破裂するような音がして、目の前の木から樹皮が飛び散る。環は慌てて大きな岩の陰に身を隠した。
 環にとって都合がよかったのは、相手もこちらに近づいていることだった。さっきの「やっぱもう少し近づかなアカンな!」という一言は偽らざる本心らしい。
 ちらりと岩の陰から相手の様子を探ろうとしたが、少し顔を出しただけで、銃弾が襲ってくる。岩の端に銃弾が当たってガチンと音を立てる。眼前で火花が散って慌てて隠れた。
 今度は環は岩の横から相手をうかがう。今度は何もない。相手の姿を木の陰に認める。発射。近くの樹皮が削れただけだった。だは、相手はそれに怯えたか、完全に身を隠す。
(チャンス!)
 環はもう一発、相手がいると思われる方向にでたらめに打つと、そのまま岩の陰から飛び出し、斜面から張り出すように出ていた木の陰に隠れる。
 無事に成功した。今ここに隠れたことは相手に見えてないはず。このまま逃げ出すことも十分に可能だったが、
(魅力的な提案ではあるんだけどね……)
だが、あの女がこのみや雄二やタカ坊の前に姿を現して攻撃しないという保障は何もない。あいつの戦闘力をここで奪っておかなければ安心できない。
 そんなことを考えていると、先ほどまで自分がいたあたりの木に銃弾が当たったのが見えた。まだ、あの辺にいると思い込んでいるのか。だとしたら別方向から回り込めば奇襲をかけられる。
(でも今ので、銃弾を使い切っちゃったわよね)
マガジンを取り出し確認すると、そこに銃弾はなかった。
(やっぱり、か)
だが、予備弾丸はまだディパックの中にある。環は一旦マガジンをしまうと、すばやくディパックの中に手を入れて、弾丸を取り出す。そしてマガジンを引き出し、木の横からちらりと向こうの状況をうかがう。
227無題(1/3):2006/10/01(日) 22:24:56 ID:wl3yyrLe0
「ふん。ちょろいもんね」
「・・・・・」

川澄舞は、本来は自分に支給された物ではない日本刀を握っていた。
その持ち主、吉岡チエは目の前に立ちふさがる女の傍らでうずくまっている。

「ふーん。見たところは外れ武器かと思ったんだけど、こういう使い方もあるってことね」

舞に対峙する形、向坂環はサバイバルナイフについた血糊を払いながら不敵に笑った。
ナイフを持たない左手には爆竹の束。彼女の支給武器である。



ことの始まりは数分前。
牛丼戦争を繰り広げていた二人は、背後の殺気には気づかないでいて。
・・・いや、舞だけは確かに反応していた。
しかし、振り向いた彼女の手には牛丼と箸。
対応が遅れてしまったことは否めない。

パアン!パパパパパァァンッ!!

衝撃音。舞もチエも、すかさず身を翻す。

「じゅ、銃っスか?!ひええぇ〜」
「・・・・・・・・・」
228無題UP者:2006/10/01(日) 22:25:51 ID:wl3yyrLe0
重なっちゃったんで、また時間ずらして上げなおします。
すみません
229 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 22:26:33 ID:YHRA728c0
 神尾晴子の顔が目の前にあった。
「!」
「!」
 銃弾があるとかないとか関係ない。環は夢中でコルトガバメントにマガジンを押し込むと、相手の眉間に突きつけた。だが、それと同時に相手の銃口が視界のど真ん中に鎮座しているのを知覚する。
 そういう状態になってからいつのまにここまで、という驚きが心に浮かんだ。
 さて、どうする? 引き金はひけない。ひけば、相手に銃弾がないのがわかってしまう。何も顔に出すな! 自分に強く命じた。 恐怖も! 迷いも! あせりも! 何もかも!
 動かない、いや動けない。どうする? はったりをかけてこの場を穏便に収めるか。いや、それはだめだ。それでいいのなら自分はとっくに逃げ出しているのだ。
 ならば、銃を捨てて接近戦に持ち込むか? 体格はほぼ同等。いや、相手はヒールをはいてるから、ややこちらのほうが大きい。ならば、いける?
 でも失敗したら自分はここで死んでしまう。それはタカ坊たちを守るためにもさけなければいけない。ならば、やはり見逃すか?
 待て、どうして相手は撃たない。ひょっとして自分と同じように弾切れか? その可能性は高い。弾があるならさっさと撃てばいいのだから。まさか、それを躊躇するような人物ではない。
 ならば、その可能性にかけて接近戦に持ち込む! まずは体を低くして銃を持っている右腕を取る!
 環の思考がそこまで及んだときだった。
「うおりゃあぁ!!」
相手のほうが一瞬早く同じ思考にいたったらしい。銃を投げ捨てこちらにとびかかってくる。こちらが銃をしまうと相手はにやりと獰猛な笑みを浮かべた。だが、環は相手の腕を取るとそのまま後方に跳ね飛ばす!
「なっ!」
相手は宙を待った後、したたかに腰を地面に打ち付けた。
「あぐぅっ!」
「チェックメイト、ね」
そう言って環は相手の胸の上に軽く足を乗せる。妙な動きを見せたら即刻踏みつけるつもりだった。
230 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 22:28:02 ID:YHRA728c0
「冗談きついわ!」
だが、晴子は右手ですばやく石をつかむと、環の足を殴打する。
「っ!」
油断していた環は避けきれずに足をまともに攻撃され、バランスを崩した。
「これでどうやっ!」
その隙にすばやく晴子が立ち上がって、環のもう一方の足を引っ掛ける!
「ぐっ!」
今度は環がたたらを踏む。平地ならまだよかったが、そこは足場の悪い森の中。バランスをとりきれず倒れる。そこに猛然と晴子が飛び掛った。
「形勢逆転やな!」
そう言って馬乗りになると環の首を絞めにかかった。
「がっ! はっ!」
無理やり気道から空気を押し出される。ブラックアウトしかかる視界を無理やり広げると、環は晴子の両腕を逆につかみ、思いっきり力をこめる!
「!」
環の握力に耐えかねて、晴子の締めが弱くなる。そこをチャンスと見て、環は腹筋で足を振り上げると後ろから晴子の首を引っ掛け自分から一気に引き剥がしにかかった。
「げふっ!」
今度は晴子の気道がつぶされかかる。晴子は逆らわずに後ろへ逃げた。地面の上を転がると、銃に手を伸ばす。だが、環は自分の持っていた銃を晴子の銃に投げつけ、遠くへ跳ね飛ばした。
「くっ!」
「そっちこそ、なめんじゃないわよ」
静かにどすの利いた声で低くつぶやきながら環は立ち上がった。銃はもうどこへ行ったかわからない。自然とお互いの視線は相手にぶつかり合う。
「はぁ……はぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……」
お互いに首を押さえながら荒いい息をはく。はきつつも視線だけは鋭く、相手をにらみつける。
「そのへんにしときなさい、お二人さん」
言葉とともにガァン!という第三の銃声。同時に二人の中間地点で跳ね飛ばされた樹皮が踊った。新手だ。
「正直、ほっといてもいいんだけど……殺し合いなんて見ててあんまり気分のいいものじゃないからね。おせっかいかもしれないけどとめさせてもらうわよ」
そういってスミス&ウェッソンを構えて現れたのは第三の女。
「馬鹿な真似はやめなさい。さもないと撃つわよ」
エクストリームの全日本女子チャンピオン、来栖川綾香はそう勧告した。
231 ◆elHD6rB3kM :2006/10/01(日) 22:29:07 ID:YHRA728c0
向坂環
【時間:12時過ぎ】
【場所:F-03】
【持ち物:荷物一式。銃はその辺に飛んでいった(探せば回収可能)予備弾丸20発】
【状態:足と首に痛み。疲労】

神尾晴子
【時間:12時過ぎ】
【場所:F-03】
【持ち物:荷物一式。銃はその辺に飛んでいった(探せば回収可能)予備弾丸18発】
【状態:腰と首に痛み。疲労】

来栖川綾香
【時間:12時過ぎ】
【場所:F-03】
【持ち物:S&W M1076(現在装填弾数8)、予備弾丸30発】
【状態:異常なし】

ルートB系(069の続き)
232無題(2/3):2006/10/01(日) 22:32:36 ID:wl3yyrLe0
>>227続き

牛丼を足蹴にしながらも後方に避ける二人。
・・・だが、音はしたというのに、いつまで経ってもこちらへの攻撃は来ない。

「・・・どういうことっスか?」
「見てくる。動かないで」

カチャッ。ごく自然にチエの荷物から日本刀を抜き、舞は音の出所を確かめに行く。

「き、気をつけてくださいっス」
「あら、気をつけなくちゃいけないのはあなたの方よ」

シュパッ・・・一瞬の煌きであった。

「ごめんね。本当はこのみのお友達をいじめたくもないんだけど・・・状況が状況だから。恨まないでね。」
「・・・・・・・っ、チエ!!」

舞が振り向いた時は、既に首から血を噴出すチエが全面に向かい倒れこむ瞬間であった。
駆け寄りたいが、それは隣の女が許さない。

「・・・ふふ、いいエモノ持ってるじゃない。私のナイフと交換して欲しいものだわ」
「・・・・・・・」
「ああ、でも奇襲をかけるなら、こっちの方が目立たなくていいのよね」
「・・・・・・」
「どうしようかしら・・・ふふ。じゃあ、両方私の物にすればいいのね。何だ、簡単じゃない・・・あっはははっ!!」
「・・・・・・」
「あなた、何か言ったらどうなの?おしゃべりは嫌いかしら」
233無題(3/3):2006/10/01(日) 22:33:11 ID:wl3yyrLe0
「・・・許さない」
「あら。ならどうするのかしら・・・私と、争う?」

舞がかまえる、環もそれに合わせて身構えた。
その時。

「・・・はぁ、ぐふっ・・・」

環の傍らの少女、チエのうめきが外に漏れた。

「・・・・・チエ?」
「あら、浅かったのかしら。まだ息がるなんて・・・しぶといわね」

キッと、舞の睨みが一層きつくなる。
環は気にせず刃をつきつけていた。
・・・チエの命は、刻一刻と失われてゆくことになる。
舞は、目の前の敵に集中するしかなかった。
234補足:2006/10/01(日) 22:33:46 ID:wl3yyrLe0
向坂環
【時間:1日目2時近く】
【場所:G−04】
【持ち物:バタフライナイフ、爆竹&ライター(爆竹残り9個)、他基本セット一式】
【状況:貴明を探すついでに邪魔者を減らす方向に】

川澄舞
 【時間:1日目2時近く】
 【場所:G−04】
 【所持品:牛丼一週間分(割箸付き)。支給品一式】
 【状態:怒り】
 
吉岡チエ
 【時間:1日目2時近く】
 【場所:G−04】
 【所持品:日本刀。支給品一式】
 【状態:重傷、首の後ろを真横に切られている】

(関連・1・30)(Aルート)
235名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 22:48:33 ID:hDeSIp9l0
2作品でのあまりの環のキャラの違い振りに吹いたw
236名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:02:04 ID:Po44/evv0
だんだん、読んでてこんがらがってくるな…
しかし、ルート別に専用にスレ造ると造るでまた文句が出るか…
237名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:07:00 ID:/4mGlHoS0
別に立ててもいいんじゃないか?
どうせ今の葉鍵板には他にろくに価値の有るスレなんてないんだし
238名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:15:41 ID:gb2UrbLA0
>>237
このペースだと終わる(ルールの関係上終わりは存在しないが)までに
あと何十個も分岐ができると思う。
ますますわけがわからなくなるからやめれ。
239名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:28:41 ID:YBjtLMOQ0
>>238

それならしたらば使えばいいんでね?
240名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:33:29 ID:pKBnLhYc0
普通に今でもまとめサイトのまとめで状況はわかるのだが>まとめサイトの中の人感謝

ただ単に共通ルートになり得そうなのしか書いてないからなのかも知れないけど。
241名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:40:50 ID:NdTs3E7yO
もちろん、まとめさんには感謝しているのだが
Bルートだけ選出した項目にB―2だか3だかが混じってるのが分かりにくいかも。
242名無しさんだよもん:2006/10/01(日) 23:56:46 ID:mq8kgt5h0
文句言うならおまえが作れよ
作って苦労を知れ
243少女、二人:2006/10/01(日) 23:56:51 ID:U3rcsCrb0
流れ読まずに投下。

取り敢えずの和解を成立させた坂上智代(046)と里村茜(050)は、協力してくれる仲間を探すため、次はどこへ向かうかを相談していた。
「さて、このスタート地点からは大きく分けて二つのルートがあるわけだが」
智代は指で鎌石村と平瀬村を指した。
「人が集まりそうなのは、この二つ。茜、どちらに行くのがいいと思う」
「近いのは鎌石村の方ですが…今から行くには、少し早いような気もします。まだ始まったばかりですし、ゲームに乗るか乗らないかで混乱している人も大勢いると思います。
早いうちから村に集まるとは、到底思えません」
智代が、うん、と頷き顎に手を当てた。
「確かにその可能性は高いな。逆に言えば早く判断を下した奴が来ている事になる。そして、そいつらがゲームに乗った奴らの可能性も高い」
「…普通、こんなものを付けられて脱出できるなんて思う人間はいませんからね」
茜は首の忌々しい爆弾をさする。茜も先程まではそちら側の人間だった。
「なら、こっちの平瀬村へ向かおうか。日が暮れるまでには辿りつきたい。日が暮れれば、襲われやすくもなるからな。正直、今の装備では心許ない」
「…ですね。早く行きましょう」
二人はそう結論付けると、平瀬村の方角へ向けて歩き出した。
その時。
グアァァァン!
空気が震え、耳をつんざくような爆音が聞こえた。
「!? な、何だ! 今の音は?」
「…鎌石村の方角のようですね」
244少女、二人:2006/10/01(日) 23:57:27 ID:U3rcsCrb0
智代は焦った。もう、こんなところでも戦闘が行われているのだろうか。
「…行くぞ、茜」
「…分かりました。しかし智代、恐らく相手は爆発物を持っているはずです。どうするのですか?」
「いや、逆に密着状態に持ちこめば相手も手出しは出来ない。
まだこんな時間だ、敵も支給された武器以外、もう一種類持っている可能性は少ない。白兵戦なら、私は得意なのでな」
自信ありげに笑みをみせる智代。茜もコクリと頷いた。
「分かりました、信じます」
少女二人は走り出す。犠牲者が出ない事を祈って。

坂上智代
【時間:午後1時】
【場所:B−2】
【持ち物:手斧】
【状態:健康、爆発音のところまで向かう】

里村茜
【時間:午後1時】
【場所:B−2】
【持ち物:フォーク】
【状態:健康、爆発音のところまで向かう】

【備考:爆発音は097話のもの。B−2ルートで】
245名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 00:05:17 ID:4R9sEleV0
>>219
ごめん、これB系だわ。
246 ◆elHD6rB3kM :2006/10/02(月) 00:09:50 ID:F+C7QE9A0
すいません。題名忘れてました。「女傑三人」でお願いします。
247名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 00:45:18 ID:CyinBRFmO
→038
雄二デスノート所有ルートの続き
248名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 00:47:08 ID:LqImqWyh0
ルートE、70及び103を回避しての投入になります。
249強敵の出現!?(1/5):2006/10/02(月) 00:47:53 ID:LqImqWyh0
それまで警戒と疲労から険しい表情のままだった倉田 佐祐理は、
ようやくその表情を緩ませる。どうやら無事に高原池まで辿りついたようだ。
池を覗き込み、水の澄んだ状態を確認すると、一口だけ舐めてみる。
「はぇー、一応飲めなくはないけど、止めた方がよさそう」
やはり、まともな飲料水を補給しようとなると居住地まで降りる必要がありそうだ。
それでも、顔や手足の汚れを落とせるだけでも佐祐理には幸福だった。

 あははーっ。こんな些細な事で幸せを感じる事が出来るなんて・・・。
 当たり前のような生活を送っていたころからは考えられない。
 今、置かれている状況は決して良いものではないけれど、
 生きる事の大切さを学べた事は大きかったかもしれない。
 一弥を失った頃には考えられなかった、生きるという重み。
 舞や祐一さんと共に過ごす事で少しずつ育まれてきた気持ち。
 わたしは、ここに来て少しずつ変れてきているのかもしれない。

ひんやりとした水の心地よい感触を確かめながら、柄にも無くそう思ってみる。
「一弥、お姉さんはもう少しがんばって生きてみるね」
手首を切った事に後悔は無いけれど、もうあんな事はすまい、と改めて亡き弟に誓う。
このゲームを覆す事が出来なければ、きっとわたしは死ぬだろうけど、
その時を迎えた時に、自分が納得できる舞台を作り上げよう。
250強敵の出現!?(2/5):2006/10/02(月) 00:48:44 ID:LqImqWyh0

辺りの気配を伺いつつ、休憩をする事30分ほど。
周りの木々が、ざわめき始める。
耳を澄ますと、何か複数の走る足音が段々とこちらに近づいてくる。
近くの木陰に隠れ、様子を見る…と、足音の主の姿がはっきりと見えた。
どこかの制服を着ているところを見ると高校生らしい女性、特徴としては
髪型の上部、左右に二つお下げを垂らし、少しふっくらとした感じがする。
こんな場所には似つかわしくないような、物静かな印象を受ける。
何かから逃げてきたのか、息を切らし、足元もおぼついていない。
一心不乱に池の淵まで走りぬけ、そこで転倒してしまう。
「あぁ…」
彼女の表情に絶望の色が伺える。そこに見える、もう1つの足音の主。
ーーーあれは山犬だろうか…?
グルルルルル…と唸りを上げて、彼女に飛び掛るタイミングを伺っている。

出来るだけ人との接触を絶ちたかったが、この状況を見過ごせるほど
佐祐理は冷酷にはなれなかった。

「舞…力を貸して!」
背中に背負う刀を持ち、山犬が飛びかかろうとした、まさにその時、
佐祐理は飛び出し、宙を舞う山犬の胴を薙ぎ払う!
ギャインギャイン!
山犬は一旦飛びのき、標的を佐祐理に変更する。
「逃げて!・・・早く!」
佐祐理は、状況が飲み込めないのであろう少女に叫ぶように指示を出しつつ、
剣道でいう、正眼の構えの真似事を取る。
「あ、ありがとうなの」
少女は鈍い動きで立ち上がり、よろよろと避難する。
251How to use:2006/10/02(月) 00:49:26 ID:CyinBRFmO
「フライパンにモップ……そして汚い大学ノート………」
「なんか外ればかりだな………」
「うん」
「貴明さんの銃がなかったら今頃は私たち危なかったですねー」

貴明たちは各自の支給品を確認しながら氷川村を目指していた。
しかし、貴明の支給品の散弾銃――Remington M870以外は一見まともな武器はなかった。

「まあ、1つでもまともな武器があっただけでもよしとしようぜ」
「そうだね。貴くんのショットガンがあるだけでも少しは安心できるよ」
「そうだな………それにしても…………」

貴明は雄二の支給品である大学ノートの表紙の裏に書かれている英文に目を通した。

「どうだ? なんか読めそうか?」
「無理に決まってるだろ。
まあ、せいぜい最初の一文『How to use』―――これは訳すと『使い方』っていう意味なのはわかるけど………」
「『使い方』? ノートにそんなもの書く必要なんてまずありませんよね?」
「ああ。字とか書くくらいしか使い道ないよな」
「だから雄くんが最初に言ったように誰かが落書きで書いた詩なんだよそれ」

それからしばらくはこのノートについて議論が繰り広げられたが、結局は雄二が言う「落書き」という説が最有力ということで幕を閉じた。

252強敵の出現!?(3/5):2006/10/02(月) 00:49:33 ID:LqImqWyh0

…運動神経は悪い方ではないが、格闘の経験なんてものは無い。
ましてや相手は佐祐理以上に動きの素早い山犬だ。
今更だが、舞はよくこんな相手を軽々とあしらえたと感心する。
ーーーふぇ?ちょっと待ってよ。山犬……まさか!?
佐祐理はデイパックの中から非常食を取り出し、山犬の目をそちらに移させる。
案の定、山犬はお腹を空かせているのだ。山犬の目は佐祐理の手にから離れない!

「犬さん、犬さん、遠くに飛ばすから、ちゃんと食べてね…!」
非常食を山犬の目の前でユラユラと揺らし、その後振りかぶって大きく遠方へと投げる!
山犬は佐祐理への興味を一旦無くし、一目散に飛んでいった非常食に向かって走る。
「さぁ、今の内に逃げよ!」
少女の手を取り、山犬とは反対方向へと走る。
253強敵の出現!?(4/5):2006/10/02(月) 00:50:19 ID:LqImqWyh0

……
「はぁ…はぁ…ここなら、もう大丈夫かな?」
「そうですね…。どうもありがとうなの」
「あ、あはははーっ」乾いた笑いと共に、佐祐理はその場にへたり込む。
そこで少女も、ハッと我に帰ったのか、それまでの彼女の動きからは考えられない素早い動きで
佐祐理から離れ、警戒をする。
 …?わたしが怖いのかな?ちゃんと警戒を解いてあげないと…
「あ、あの〜」
一声かけると、少女はビクっとして頭を抱え始め、涙目になって呟く。
「…ぶたない?ぶたない?」
「はぇー。ぶ、ぶちませんよ、あははーっ」
さすがの佐祐理にも、この反応は読めなかったのか、呆気に取られた顔で苦笑する。
すると少女も胸をなでおろし、
「ほっ…よかったの」
と、一呼吸おいて自己紹介を始める。
「3年A組、一之瀬ことみです。ひらがなみっつでこ・と・み。呼ぶ時はことみちゃん。
 趣味は読書です。どうかお友達になってください」
…その彼女特有の世界に、佐祐理は苦笑を解く事が出来ない。
「は、はぇ…同じく3年の倉田 佐祐理です。佐藤の佐に祐天寺の祐、理科の理で佐・祐・理。
 呼ぶ時は佐祐理でいいです。こちらこそお友達になってください」
「祐天寺…東京都目黒区中目黒にある浄土宗の寺。明顕山善久院と号する。1719年祐天の遺命により…」
「あ、あの〜、それはいいから…」
佐祐理でさえ持て余す強敵の登場だった…。
254強敵の出現!?(5/5):2006/10/02(月) 00:51:04 ID:LqImqWyh0
『倉田 佐祐理(036)』
【時間:午後6時すぎ】
【場所:高原池畔(D−04北西部)】
【持ち物:封印した菊一文字、その他支給品(水は残りわずか、食料も半分消費)】
【状態:苦笑。水浴びにより、少々疲労回復。この先ことみと行動を共にするかは、まだ未定】

『一之瀬ことみ(006)』
【時間:午後6時過ぎ】
【場所高原池畔(D−04北西部)】
【持ち物:飲み薬カプセル式の時限爆弾×5、その他支給品(水を少し消費)
 (カプセルが消化される事で起爆、トータル15分ほどで爆発。爆発力は2階建ての家一件を爆破可)】
【状態:安堵】
255How to use:2006/10/02(月) 00:51:57 ID:CyinBRFmO
(『使い方』か……詩のタイトルにしては変わってるな………)

貴明は唯一訳せた最初の一文のことをもう一度思い返すと、それきりノートのことを考えるのをやめた。

なぜなら今は殺人ゲームの真っ最中。
一歩間違えればわずかな油断でも死に繋がる。したがって、油断は許されないのだ。

「みんな。村には人もいると思うけど、逆にそれを狙った連中――つまり、ゲームに乗って人殺しをしている奴らもいるかもしれない。気をつけろ」
「うん!」
「わかってるって。
俺だってまだ十分に生きちゃいないんだからな。こんなところで死ねるかって」
「そうですね。そして最後は皆さんと一緒にもとの暮らしに帰りましょう」

256How to use:2006/10/02(月) 00:53:12 ID:CyinBRFmO
 河野貴明
 【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

 向坂雄二
 【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

 新城沙織
 【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

 マルチ
 【所持品:モップ、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

 【時間:午後3時30分】
 【場所:H−07】

 【備考】
・友人、知人を探すため氷川村へ移動中
257名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 00:54:26 ID:LqImqWyh0
ID:CyinBRFmOさん、すみませんでした・・・。
258名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 00:58:04 ID:CyinBRFmO
いやいや、こちらこそ失礼いたしました
259名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 01:04:32 ID:CyinBRFmO
ただ今投下したものの訂正

>これは訳すと『使い方』っていう意味なのはわかるけど………
   ↓
これは訳すと『使い方』という意味だってことがわかるくらいだ
260人間らしさ(1/4):2006/10/02(月) 02:05:37 ID:qxEkNc9D0
祐一はまっすぐに北川に走り寄ると尋ねた。
「……いまいち状況がつかめてないんだが、あいつはゲームに乗ったやつって認識でいいんだな?」
「あぁ……」
そして北川の珍妙な格好と、抱えられた杏をチラリと見ると一言。
「まぁ積もる話は後でたっぷりするとして……とりあえずあいつだな、神尾さん少し下がっててくれ」

「めんどくさいなぁ」
つまらなそうに言う勝平に祐一は苛立ちを隠せない。
「お前なんだってこんなゲームに乗っちまったんだよ?」
「うーん、なんでだろ……面白そうだったからかな?」
「ざけんなっ!」
祐一が吼えた。
「人が死ぬのがおもしれぇだ?舐めたこと言ってんじゃねぇよっ!」
自身の右手をゆっくりと見つめ、苦しそうな顔で続ける。
「俺はさっき人を、この手で、殺した」
親友の口から出た信じられない言葉に、北川の顔が固まる。
「そうしなければこの子が、俺が、危なかった。
 だからって言い訳になるとも毛頭思っちゃいない。
 俺がやったのは最低な行為で、楽しくなんかまったくねぇんだよ!」
「いまいち君の言ってることが良くわからないんだけど……」
 僕は凄く楽しかったよ?可愛かったなぁ、あの子。
 噴水みたいに血が飛び出てさ、こう脳味噌をかき混ぜたらグニョグニョって僕の手を刺激してくるの」
「こいつおかしいよ……」
北川が泣きそうな顔でかぶりを振った。
祐一も同意だった。
ドス黒い嫌悪感だけが襲ってくる。
(こいつはダメだ……)
狂ってる。
まともな交渉など通じるはずはないだろう。
銃を握り締める手に力がこもる。
261人間らしさ(2/4):2006/10/02(月) 02:06:27 ID:qxEkNc9D0
「撃つの?撃てるの?ちょっとでも狙いがずれたらコレに当たってみんな大爆発かもね。
 はは、それはそれでおもしろいかな」
「けっ、黙れよ」
もはやこいつの声は、言葉は、一分一秒たりとも聞いていたくなかった。

ドンッ
S&W M19が火を噴き、弾は外れ勝平の足元へと吸い込まれた。
だがこれは威嚇。
射撃訓練もしたことのない自分が、先ほどのように偶然でも狙い通りに撃てることを期待なんか出来なかった。
同時に身をかがめ勝平に向かって駆ける。
一気に間合いを縮めながら銃を左手に持ち直すと、右手を握り締め振り上げた。
手ごたえは……ない。
渾身の力を込めたアッパーがむなしく空を舞う。
「遅いよ」
一瞬のうちに後ろに回りこんだ勝平の拳が、隙だらけの祐一のわき腹をえぐる。
「ゴフッ」
左のわき腹が重い、折れてはいないだろうがひびぐらいは入ったかもしれない。
痛みに崩れ落ちる祐一の左手を思いっきり蹴り飛ばした。
「ぐあっっっ!」
その反動でS&W M19が手を離れ、大きく飛ばされた。
休む暇も与えず続けざまに顔面を蹴り上げ、そして両手を握り締めると祐一の脳天に向かって叩きつけた。
バタリと倒れこむ祐一の背中に、なおも足を振り上げる勝平。

「やめろよっ!」
ほんの数秒の出来事。
その数秒の間何も出来なかった自分を恥じ、北川が声を荒げた。
左手に抱えた杏をぐっと離すと観鈴に向かって叫ぶ。
「あんた、ちょっとこの子を頼む!」
ヨロヨロと歩く杏を観鈴がそっと抱きしめ、心配そうな瞳で北川を見つめていた。
SPAS12ショットガンの照準を勝平に向ける。
262人間らしさ(3/4):2006/10/02(月) 02:07:10 ID:qxEkNc9D0
だが北川の叫びにも勝平はまったく怖じることなく言った。
「次は君?」
「うるせぇっ!相沢から離れろよっ!!」
「別に撃ってもいいけど……彼に当たるよ?」
そ呟くと、全身を襲う痛みに呻く祐一の身体を抱え、自身の盾とする。
「くそっ!やめろってんだろ!」
「言ってるね。やめないけど、ははは」
祐一を前に差し出し、一歩、また一歩と北川に歩み寄っていく。
(これじゃ相沢に当たっちまう)
ショットガンを観鈴に向かって投げつけ、腰から斧を引き抜いた。
「え?え?」
「持っててくれ!」
勢いよく助走をつけ斧を振りかぶり、勝平に向かって振り上げた。
だがその前に祐一の身体がそっと差し出される。
その行動に北川の動きがピクリと止まった。
「はい、残念」
同時に北川の腰をつんざくような衝撃が襲った。
斧を握る手から力が抜け、束縛されることが無くなったそれは静かに地面へと突き刺さる。
腰を抑えながらヨロヨロと後ずさる。
「あーもう、つまんないよ君たち……2対1でこれなの?
 もっと面白くしてくれないと諒さんへのお土産にならないじゃない」
侮蔑したように言い放つと、刺さった斧を引き抜いた。

「――なら3対1でもいいのかな?」
後ろから聞こえた声に勝平がくるりと身を翻す。
「楽しませてくれるなら、喜んで」
まったく笑みを崩さない瞳には、銃を構えた英二と芽衣の姿があった。
263人間らしさ(4/4):2006/10/02(月) 02:08:06 ID:qxEkNc9D0
相沢祐一(001)
 【所持品:S&W M19(銃弾数3/6)・支給品一式】
 【状態:左わき腹損傷、他打撲多数、結構ぐったり】
北川潤(030)
 【持ち物:防弾性割烹着&頭巾、他支給品一式、携帯電話、お米券】
 【状態:目立った損傷はないが腰を痛める】
柊勝平(081)
 【所持品:消防斧 手榴弾(2つ)他支給品一式】
 【状態:祐一を抱えている】
藤林杏(090)
 【所持品:手ぶら、荷物はC-6消防分署に】
 【状態:観鈴と一緒に、なおも精神状態不安定】
神尾観鈴(025)
 【所持品:SPAS12ショットガン フラッシュメモリ・支給品一式】
 【状態:杏を支えながらも混乱中】
緒方英二(014)
 【持ち物:武器拳銃、支給品の中に入っていた食料と水を少し消費、他支給品】
 【状況:勝平と対峙】
春原芽衣(057)
 【持ち物:支給品の中に入っていた食料と水を少し消費、他支給品】
 【状況:健康状態中】

共通
 【場所:C-5鎌石村消防署のすぐそば】
 【時間:1日目午後4時過ぎ】
 【備考:→096&→125 多分B-2ルートで S&W M19(銃弾数3/6)は地面に落ちました】
264名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 02:11:32 ID:qxEkNc9D0
>>263の祐一の所持品訂正
 【所持品:支給品一式】
265遭うなら今が吉:2006/10/02(月) 02:11:54 ID:+UECkjMT0
「さぁ、早く武器を手渡してください」
「ど、どうしよ香里さん……」
「…………」

 美坂香里(099)は内心で舌を打つ。
 ゲームからの脱出を恐らく懸命に考えているであろう友人の元へ行く道中、幾分か好戦的な相手に遭遇したことは不運以外の何者でもない。
 確かに、誰とも遭わずに知り合いの元へ辿り着けるなどという甘い考えなどはなかった。
 それでも道順を彼女なりに模索した結果、安全且つ有効なルートを選出したつもりだったのだ。
 馬鹿正直に道沿いなどは進まなかったし、見渡しの良い道を横切るときだって細心の注意を払いもした。
 遮蔽物を計算に入れて、自身の視野と偶像された人間の視野までも確認しながら、決して目に届かぬ位置を進んできたはずだ。
 だが、彼女と同じことを考える人物がいることに失念していた。
 当然似たようなルートで進んできた相手が近くにいるのならば、相対するのが道理というものだ。
 そして、実際遭遇した。 
 出会い頭に双方唖然としたが、いち早く正気に返った香里は拳銃を所有する同行者―――神岸あかり(026)に構えるように指示した。
 しかし、篠塚弥生(054)が銃を構えるほうが遥かに早かった。
 当のあかりといえば、震えるばかりでまるで役に立たない。
 度重なる失策に、香里は顔を歪めた。

「どうしました? 命が惜しくないというのなら―――」
「待って。仮に渡したとしても、本当に命が保障できるのかしら?」

 一先ずの懸念がそれだ。
 一思いに撃てばいいものを、彼女は何故かこちらに妥協点を持ち上がる。
 ゲームに乗らずに、ただ単に武器が欲しいのか。
 もしくは、助けると言いつつ油断した隙に殺すのか。
 あまり考えたくはないが、自分がゲームに乗ったのならば無用な問答に時間を費やさずに即座に撃ち殺して終了だろう。
 なのに、殺さないというのは何故か。 
 香里の考えを他所に、弥生は一度だけ頷いた 
266遭うなら今が吉:2006/10/02(月) 02:16:02 ID:+UECkjMT0
「保障します。貴方達の命には興味はありませんし、ゲームにも今のところは乗るつもりもありません。
 ですが、私の探している子を死なすわけにはいかないもので」
「要は、その子のために武器を集めて身を守らせるって訳ね? いや、むしろ貴女が重武装でその子を守るのかしら」
「どう取ってもらっても構いませんが、貴方達には他に選択肢があるのですか? 先の言動、貴女自身はこっちに対抗できる武器はないようで。
 そこの子も……あまり約に立ちそうには見えませんし」

 あかりに目を配りながら無表情に呟く弥生。
 言外に、香里一人では何も出来ないことと、いざとなればあかりが足を引っ張ることを揶揄していた。
 あの時、あかりの状態を分かっていれば、構えろなどという指示はしなかったものを。
 そのせいで自身の弱味を出してしまったというのに。
 香里は小さく息をつく。

「そうね。殺す気があるのなら、その銃で遠い所から狙撃されて終わりだものね」
「一介の女子高生に銃の区別などつくのですか?」
「それだけ長い銃身ならライフルしかないじゃない。でも、貴女も失念していたのよね? 自分と同じルートで進む参加者がいることに」
「…………」
「私がポカをやらかしたんだから、貴女も相当焦ったんじゃない? でも良かったわね。私達が何の力もない子供で。
 乗った参加者なら手遅れだったものね……貴女の反応」

 弥生が目をスッと細める。
 明らかに煽っている様子の香里を、あかりはオロオロとしながら宥めようとするが、緊張で口が回らない。
 香里も決して油断を見せず、冷静な顔で弥生と目を交差させる。

「……私がここで逆上するのを、まさか期待でもしているのですか? 
 勘違いしているようだから言いますが、確かにゲームには乗っていません。ですが、殺すことに躊躇はありません」
「へぇ……。殺すことがゲームに繋がると思うのだけれど?」
「私にとってゲームに乗るということは、全ての望みが潰えて自棄になることですので。つまり、それまでもそれからも他者など重要ではありません」
「そ、道理ね。その考えに基づくと、貴女の邪魔さえしなければ助かりそうね私達」
「そう言ってますが。選択はご自由に」
267遭うなら今が吉:2006/10/02(月) 02:17:39 ID:+UECkjMT0
 香里は肩を竦めながら、あかりに目配せする。 
 一瞬戸惑いの視線を向けるが、香里が強く頷いたため、怖怖と拳銃を取り出した。

「あ、あの……これです」
「こちらに投げてください」

 あかりは小さく拳銃を放った。
 弥生の足元に落ちた拳銃を、彼女は目線を香里に移したまま拾う。

「一応貴女のも確認しますので……どうぞ」
「こんな物欲しかったの? くれてやるわよ」

 香里はあかりとは違い、ぞんざいに自身の支給品を弥生へと転がす。
 ころりと、弥生の靴へと衝突した。
 それを拾わず眺めること一時、弥生は何処か同情したような目線を向ける。

「……何よ。なんか文句あるわけ?」
「いえ、別に。これは貴女のものでしょう? 返します」

 足先にあった香里の支給品―――コンパスを軽く蹴り返した。
 ちなみに全員に支給されている方位磁石ではなく、文房具の方だ。
 自分がぞんざいに扱ったものが、同じようにぞんざいに返されては、こんなものを引き当てた不運を呪うしかない。
 嘆息しながら、それを渋々と拾う。

「さ、このままズガンなんてのは無しよ」
「わかっています。自分で言うのもなんですが、貴女達は運がいいですよ。由綺の状況を知らぬ今、迂闊な行動をするつもりはありませんからね」
「由綺? あぁ、もしかしなくても森川由綺のことかしらね。もしやと思ったけど……まさか本物?」
「ええ。正真正銘のアイドルです」
「へぇ……。名簿見たときは驚いたけど、本物か。じゃあ貴女は追っかけ……でもないか。関係者よね?」
「そんなことは貴女には関係ないことです」
「それもそうね」
268遭うなら今が吉:2006/10/02(月) 02:18:49 ID:+UECkjMT0
 話は終わりだとばかりに弥生は充分に距離を取ってから、林の中に飛び込んで香里達の視界から消えた。
 不安の荷が下りたように、香里は大きく深呼吸する。
 これでも、内心緊張していたのだ。
 先程まで銃口を向けられ続け、安穏としていられるわけがない。

「よ、よかったんですか?」
「仕方ないわよ。例えこの先敵に襲われたとしても、今ここで死ぬよりはマシでしょ?」
「それもそうだけど……それよりも森川由綺って本物だったんですね! なら緒方理奈っていうのも……」
「ま、本物と考えるのが妥当よね」

 先程まで会話に参加できなかった鬱憤を晴らすかのように話し出すあかり。
 あれこれとアイドルについて語る彼女へ適当に相槌を打ちながら、香里は考えていた。
 弥生との邂逅は本当に運が良かったと。 
 遭ったこと事態は不運だが、今の弥生であったことは幸運であった。
 今は様子見であり、下手に過剰な行動をしていない弥生だが、彼女の導火線に火がつけば?
 それを担うのは森川由綺。
 ―――香里は断言できる。
 由綺を失ったら、弥生は必ずゲームに乗ると。必ずだ。
 生きることを諦めたり取り乱したりするなど、そんなぬるい状態になるわけがない。

(彼女が死なないように祈るしかないわね……)

 由綺にとっても弥生にとっても、そう願わずにはいられなかった。
 だが、お互いが非情な現実を知るのは―――もう間近である。
269遭うなら今が吉:2006/10/02(月) 02:19:25 ID:+UECkjMT0
 『美坂香里(099)』
 【時間:1日目午後4時30分頃】
 【場所:G−04】
 【所持品:コンパス・支給品一式】
 【状態:普通。祐一や北川の元にあかりを届ける。その際に栞の捜索】

 『神岸あかり(026)』
 【時間:1日目午後4時30分頃】
 【場所:G−04】
 【所持品:支給品一式】
 【状態:普通。香里に同行。浩之達との合流】

 『篠塚弥生(054)』
 【時間:1日目午後4時30分頃】
 【場所:G−04(既に移動)】
 【所持品:レミントン(M700)装弾数(5/5)予備弾丸(15/15)・ワルサー(P5)装弾数(8/8)・支給品一式】
 【状態:普通。由綺の捜索】

 「その他:032の続きです。B関連のルートで」
27010:2006/10/02(月) 03:01:30 ID:0NOaAuGb0
>>117
訂正。
I-07は目的地であって現在地じゃない。
H-08に。
後、半端に出来ましたー。
半分にしても長いけど区切り良いので先に投下。
Iルートで。
どなたか連投規制回避頼みます。
271No.139 後悔の悲鳴と安堵の号泣:2006/10/02(月) 03:02:26 ID:0NOaAuGb0

「……ついたな」
「うん、ついた……」
姫百合姉妹は氷川村の前まで来ていた。
ここまで来るのに普通に来るよりも結構な時間が掛かった。
レーダーが在ったので、ここまで誰とも合わずに来れたのだ。
しかしそれでも……遠くから狙えるものが在ったときに、道を行くだけでは身を守る術が無い。
その為、念を入れて森の中を突き進んできていた。
「さんちゃん、どないする?」
「そやなぁ……とにかく、やすまん?」
「……そやね。家ん中やったら遠くから撃たれることもないやろし。だれか来そうになってもレーダーあるからわかるしな」
瑠璃ちゃんは承諾して、近くの民家に入る。
そして、狙撃を警戒してまだ真新しいカーテンを全部閉める。
「ふぅ……」
「瑠璃ちゃん、だいじょぶなん?」
「だいじょぶ。さんちゃん守るためやもん。全然、なんでもないよ」
(ウソや……)
瑠璃ちゃんは珊瑚ちゃんが通りやすいように森で先に立ち、身体を張って道を作っていたのだ。
しかし、そういっても目の前の妹は認めないだろう。
だから、少しでも休んでいてほしかった。
「瑠璃ちゃん、ゆっくりやすもーな。レーダーあるからだれか来てもだいじょぶやで」
「うん……」
瑠璃ちゃんはほっと息をつく。
初めて銃を持つプレッシャーもかなり在ったのだろう。
272No.139 後悔の悲鳴と安堵の号泣:2006/10/02(月) 03:02:58 ID:0NOaAuGb0

当然だ。
武器を持っているのは自分だけ。
仮に自分が失敗したら守っている姉の見も危うい、所の話ではない。
しかし成功すると言うことは自分の銃で相手を撃つと言う事だ。
当たり所によっては死に至る。
そのための武器だ、そう考えてもその恐怖は容易く拭えるものではない。
この二重三重の板挟みに疲弊しない方がどうかしている。
そんな瑠璃ちゃんを心配そうに見ながら、珊瑚ちゃんはふと何か思い付いたようにレーダーの方を見た。
そしてしばし考える。
「……………………」
暫くしてそんな姉の様子に瑠璃ちゃんが気付く。
「ん……?さんちゃん、どないしたん?」
「……瑠璃ちゃん」
「なに?」
「ちゅー、してええ?」
「へっ? ちょ、ちょっ、さんちゃん、急にどないしたん?」
「ええ?」
「ええけど……」
赤くなった瑠璃ちゃんの元に珊瑚ちゃんが行く。
筆記具を持って。
273No.139 後悔の悲鳴と安堵の号泣:2006/10/02(月) 03:03:32 ID:0NOaAuGb0

「瑠璃ちゃん……」
「さんちゃ……んっ」
ちゅっ……と、微かな部屋に水音が響く。
そのまま珊瑚ちゃんは体を沈める。
瑠璃ちゃんの首筋まで頭を持ってきて、そのまま抱きしめる。
「さん……ちゃん……」
「瑠璃……ちゃん……」
空間が止まったまま、時間だけが流れる。
そして珊瑚ちゃんが瑠璃ちゃんの唇に人差し指を押し当てる。
「……?」
そして、
【瑠璃ちゃん、しゃべらんで、なるべく音も立てんで】
と、判別し難い字で紙に書く。
瑠璃ちゃんにも筆記具を渡して。
【どしたん?】
【あのレーダー、どうやって動いてると思う?】
【なにって……電池で?】
【ううん、そういうことやなくて。レーダーはなんに反応して光ってると思う?】
【えっと……ひと?】
【そうかもしれへんけど、もっと簡単にできるもんがあるんよ】
【なに?】
【首輪】
「あ……」
瑠璃ちゃんが声を漏らしてしまう。
珊瑚ちゃんはとっさに、瑠璃ちゃんの唇を吸う。
「ん……」
「んっ……さんちゃん……」
「瑠璃ちゃん……」
274No.139 後悔の悲鳴と安堵の号泣:2006/10/02(月) 03:04:06 ID:0NOaAuGb0

【しー、な。しゃべったらあかんよ】
【うん……でも、何で?】
【これってみんなつけられとるんやろ? やったら、人に発信機つけるより簡単やん】
【それもやけど、そうやなくてなんでしゃべったらあかんの?】
【順番に説明するから、待っててな】
【うん……】
【この首輪、たぶん生死判定に使ってる。最初、ウサギさんがいうとったやん。最後の一人まで……ころしあいさせるって】
殺し合い、の所でただでさえ読みにくい字が更に歪む。
【やったら、どうにかして生きてるか調べなあかんやん。心臓の音か体温かしらんけど、なんかでデータ、おくっとると思うよ】
【そうやって考えると、この首輪他にもなんかあるかもしれんやん】
【で、さっき瑠璃ちゃんに抱きついた時見てみたんやけど、たぶんその首輪盗聴器ついとる】
「!!」
瑠璃ちゃんが声を上げかけるが、今度は未然に防がれる。
【カメラかマイクかついてるかなーって思ったんやけど、レンズはついてなかった。やから、カメラはない】
【で、マイクあるかなーってみたんやけど、首輪にちっちゃい穴がいっぱいあいとった】
【たぶん、音拾うための穴やと思うねん】
【違うかもしれへんけど、気をつけるに越したことないから】
【……でも、気をつけるって何を気をつけたらええの?】
【そやね……とりあえず、気付かれたことに気付かれないのが一番ええと思う。自然にしとって】
【……うん】
【どうにかして、この首輪はずさないっしょにこの島でられへん】
【はずさなって……はずせるん? あのウサギ、バクハツするって……】
【うん……でも、】
そこまで書いたときに、扉が誰かに叩かれた。
瞬間的に振り向く二人。
275名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 03:12:12 ID:eKKNbTw30
ほい
276No.139 後悔の悲鳴と安堵の号泣:2006/10/02(月) 03:15:49 ID:0NOaAuGb0

まずい。
会話に夢中でレーダーを見てなかった。
慌ててレーダーを見る。
家の前に光点が……四つ。
珊瑚ちゃんは絶望的な気分になった。
扉は一つ。
その前には四人。
こちらは二人でしかも自分は足手纏い。
武器も銃一つだけ。
カーテンを閉めたのが仇になった。
他の家と様子が違うのが興を引いたのだろう。
(どうしよう……どうしよう……どうしよう……ウチのせいで瑠璃ちゃんが……)
瑠璃ちゃんも不安そうな顔で珊瑚ちゃんを見る。
「さんちゃん……どないしよ……」
「……うちがおとりになるから、瑠璃ちゃん逃げて」
「! あかん! 絶対あかんよ! それやったら、ウチがおとりになる!」
「でも!」
きぃ……
軋みを立ててドアが開く。
瑠璃ちゃんは銃を構えて、珊瑚ちゃんは瑠璃ちゃんの前に両手を広げて立つ。
「! さんちゃん! どいて!」
「どかへん! 瑠璃ちゃん、今のうちに逃げて!」
「そんなんいやや! さんちゃんがおらんとウチいかへんもん!」
「瑠璃ちゃん!」
277No.139 後悔の悲鳴と安堵の号泣:2006/10/02(月) 03:17:10 ID:0NOaAuGb0

「あーのー、ちょっといいかなー……」
「「?」」
「あたし達、戦う気は無いんで……逃げなくていいよ?」
「……ほんま?」
「さんちゃん! だまされたらあかん! ウソついてるかもしれへんよ!}
「でも……」
「んー……どうすれば信じてくれるかなー……」
「ねぇ新城さん、ちょっと変わってくれるかな」
「え?いいけど……男の子じゃ余計に怖がらせちゃわないかな?」
「大丈夫だと思う。ねぇ、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんでしょ?」
「「! 貴明〜!!」」
二人は貴明の事を確認すると、弾かれたように駆け出した。
「珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、二人だけ?」
「うん、うん……」
「貴明〜……」
貴明は堰を切ったように泣き出す二人の身体を抱きとめて、見やった。
二人の身体は森の中を通ってきて、傷ついていた。
得に瑠璃ちゃんの方が酷い。
珊瑚ちゃんを守ってこうなったのだろうと言うことは、容易に想像できた。
「……がんばったね。二人とも」
「ぅう〜〜……」
「うん……うん……」
沙織は気を利かせたのか、部屋から出て行った。
家の中では、いつまでも二人の泣き声がこだましていた。
278No.139 後悔の悲鳴と安堵の号泣:2006/10/02(月) 03:18:16 ID:0NOaAuGb0

姫百合珊瑚
【持ち物:水を消費、レーダー】
【状態:安堵、号泣、僅かな擦過傷、切り傷】
姫百合瑠璃
【持ち物:水を消費、シグ・サウエルP232(残弾8)】
【状態:安堵、号泣、擦過傷、切り傷。珊瑚ちゃんよりは多少深い。が、動くには支障は無い程度】
河野貴明
【持ち物:水を少々消費、工具セット、モップ型ライフル】
【状態:安堵、健康】
向坂雄二
【持ち物:水を少々消費、ガントレット】
【状態:待機、健康】
新城沙織
【持ち物:水を少々消費、フライパン(カーボノイド入り)】
【状態:待機、健康、実は少々気まずい】
マルチ
【状態:待機、健康】
共通
【持ち物:デイパック】
【時間:一日目午後四時半頃】
【場所:I-07の民家】
27910:2006/10/02(月) 03:18:55 ID:0NOaAuGb0
>>275
ありがとうございました
280診療所にて(1/3):2006/10/02(月) 07:08:06 ID:r8YlcdzV0
「!!・・・誰ですか、誰かそこにいるんですか?」

沖木島診療所、その中で休息を取っていた古河親子。
今、渚は極度の緊張感からくる疲れでぐっすり眠ってしまっている。
ベッドは二台。そのうちの一つで安眠する娘を、早苗は不安まじりで見つめていた。

(これからどうしましょう・・・)

そんな時だった。鍵を閉めているはずのドアが、ガチャッと音をたてたのは。
小さな診療所、はっきり言って隠れるところはほとんどない。
しかし、不安も確かにあったが、あの時は渚を休ませることを念頭に置いてしまい・・・。

ガチャ、ガチャガチャ。

早苗が声をかけてからも、ドアノブは引っ切りなしにいじられていた。
・・・もし、このドアの向こうにいるのが・・・容赦ない殺戮者だとしたら?

(ど、どうすれば・・・そうです、渚がっ!)

早苗は咄嗟に、うーんと寝言を呟く渚を抱き上げベッドと壁の脇に下ろした。
ここなら、すぐにはみつからないはずである。

(渚だけは・・・渚だけは、私が守らなくてはいけません・・・)

早苗は意味があるとは思えないが、一応ハリセンを構えてドアの方へと近寄った・・・。
281診療所にて(2/3):2006/10/02(月) 07:08:42 ID:r8YlcdzV0
「中にいるのは女性のようですね」
「上等よ・・・そいつも殺して、占拠してやるわ」

診療所前で構えていたのは、天沢郁未と鹿沼葉子であった。
先の戦闘にて祐介にやられた傷を癒すべくこの場所へ向かった二人だが、今は先客のおかげで立ち往生になってしまっている。

「こんなドア、その鉈なら簡単に壊せるんでしょうけど・・・」

葉子の武器を見て郁未は言う。
建物自体は新しいものではないので、ドアと鍵の繋ぎ目に叩き込めば破壊することはできるだろう。
だが。
・・・この郁未の負傷自体、飛び道具が原因となったものである。
中の人物の支給武器が分からない今、早計は余りにも危険すぎた。

「どうします?」
「こっちに声かけているんだし、私達が手荒な真似しなければ多分大丈夫な気もするけど」
「・・・そうですね。自ら声を出すような愚かな行為をしている時点で、そこまで危機的な相手だとは判断はしません」
「それも罠だとしたら?」
「・・・」
「ま、その時はその時ね。自分達の運の無さを呪いましょう」

決意し、郁未はすぅっと息を吸ってから、ドア越しの住人に聞こえるよう声を張り上げた。

「すみません、怪我をしているんです。手当てをさせてくれませんか?」
「あらあら、それは大変です!」

ガチャ。

次の瞬間、ドアは驚くほど普通に開けられた。
二人が構える暇もない。
282診療所にて(3/3):2006/10/02(月) 07:09:38 ID:r8YlcdzV0
「まぁ、大変!さ、中へ入ってください。すぐに手当てしますよ〜」
「え、ちょ・・・引っ張んないで・・・」

郁未の右腕、今はタオルか何かで巻かれているもののそれは赤く染まっていて。
早苗は四の五の言わせる隙もなく、郁未の逆の手を引き中へ連れ込んだ。

「可哀想に、ばい菌でも入って痕でも残ったら大変です」
「・・・えっと・・・」

ちらっと、葉子を振り返る。
狼狽する郁未に、彼女は微笑ましそうな眼差しを送っていた。

「いいじゃないですか、郁未さん。お世話になりましょう」
「・・・そうね」

それが、元からの策でもあったのだから。
二人の様子に早苗が気づいた気配はない。
とにかく、今目の前の傷を見て「あれをしなければ、これをしなければ」とあたふたするばかりであった・・・
283補足:2006/10/02(月) 07:10:17 ID:r8YlcdzV0
古河 早苗
【時間:午後5時頃】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:ハリセン、支給品一式】
【状態:郁未のケガを見て慌てている】

古河 渚
【時間:午後5時頃】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:次の書き手さんにお任せします】
【状態:ベッドと壁の間で睡眠中】 

天沢郁未
【時間:1日目午後5時頃】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:薙刀・支給品一式(水半分)】
【状態:早苗の行動に驚いている。右腕軽症(痛みは伴うが、動かすのに支障はない)】

鹿沼葉子
【時間:1日目午後5時頃】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:鉈・支給品一式】
【状態:成り行きを見守っている】

(関連・71・100)
284名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 10:10:10 ID:CyinBRFmO
訂正

126 狂気の片割れ
源蔵のセリフで記号が「」ではなく[]なところが一ヶ所存在しているので「」に修正お願いします

>まとめサイトのBルートまとめページ
雄二・デスノート保有ルートなのに017が未収録でした
285名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 13:07:51 ID:o3DPTrcU0
訂正

人間らしさ
>「いまいち君の言ってることが良くわからないんだけど……」
最後の」が不要だったので削除しておいてください。
286名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 13:51:46 ID:CyinBRFmO
おお、気づけばもう140作品も投下されたんだな
287おつかい役1号:2006/10/02(月) 13:56:32 ID:o3DPTrcU0
「さて、とりあえず診療所まで無事に来たわけだが……」
「明かりは点いてないね」
「そりゃあ点けてたら敵に居場所を知らせるようなものだろ」
「そっか」

宗一たちが家を出発してかれこれ1時間ほど経過したが、2人は無事に沖木島診療所にたどり着いた。
(本当なら30分足らずで着けたのだが、宗一の案で油断せずに警戒しながら進んでいった結果ここまで時間がかかった)

「とりあえず中に入るか。ここでつっ立っててもしょうがないしな」
「うん」
「中に敵がいる可能性も考えられるからな。慎重にいくぞ」
宗一はゆっくり診療所の入り口の扉を開いた。

「静かだね」
「そりゃあそうだろ」
「お姉ちゃんいるといいな…」
「確かに、ここで見つけられれば苦労はしないな」

とりあえず入り口付近には人がいないことを確認すると宗一たちは奥に進む。


「ん?」
少し進んだところでふと宗一が足を止める。

「あれ? どうしたの、宗一くん?」
「人の気配がする」
「えっ?」
「――この部屋か?」
288おつかい役1号:2006/10/02(月) 13:57:52 ID:o3DPTrcU0
宗一はある部屋の扉の前に立った。
それは患者の入院用の病室うちの1室だった。
廊下をよく見るとあと2、3部屋は入院用の部屋があった。

「診療所なのに入院用の病室が数部屋もあるとはな……」
「そりゃあこの島唯一の診療所だからね」
「なるほど」
頷いた宗一は左手でドアノブを握った。

「いくぞ佳乃。いるのは敵かもしれないが、その時は覚悟はいいな?」
「うん……」
「よし……いくぞ!」
宗一が扉を開いた。


――スパーン!


「いてっ!」
扉を開けた早々宗一は中にいた女性にハリセンでぶっ叩かれた。

「郁未さんに手出しはさせません!」
ハリセンを持った女性が宗一たちに叫んだ。
そして、もう1回それで宗一をぶっ叩いた。

――スパーン!
289おつかい役1号:2006/10/02(月) 13:58:35 ID:o3DPTrcU0
「だから痛いっての!」
「――早苗さん、やはり危ないです。ここはわたしに任せて下がってください」
女性の後ろにいた鉈を持った女が女性に言った。
「そうね。それに、そいつ銃持ってるし」
さらにもう一人、椅子に座っている右腕に包帯を巻いた少女が言った。
「いいえ。それでも引き下がれません。だって郁未さんは怪我をしているんですよ!
葉子さん。今のうちに郁未さんを連れて逃げてください!」

――スパーン!

「おい! だからちょっと! 俺の話を聞け……ぶっ!」

――スパーン!

「ええと…とりあえず宗一君を攻撃するのは止めてもらえるかなあ?」
遅れて部屋に入った佳乃が言った。
「あたしたちは人を探しているだけなのー。人を殺す気はないから〜」
「えっ?」
佳乃のおかげで宗一をハリセンでぶっ叩いていた女性の手がぴたっと止まった。


「ごめんなさい。つい郁未さんを守るために必死になってしまって……」
女性――古河早苗は宗一に頭を下げた。
「いえいえ。大人は万一の時には未来ある子供たちを守ることが務めですから。お気になさらずに…」
「あら? 私ももう大人ですよNASTYBOY?」
早苗の後ろでベッドに腰掛けていたもう一人の女性――鹿沼葉子が宗一に言った。
「あらら…こんなところでも俺を知っている奴がいたなんて。俺も随分有名になったもんだ」
「そりゃあ有名人ですもの」
葉子はそう言ってクスリと笑った。
きっと先程の世界一のエージェントが普通の主婦にハリセンで一方的にぶっ叩かれていた姿があまりにも可笑しかったのだろう。
290おつかい役1号:2006/10/02(月) 13:59:20 ID:o3DPTrcU0
「でもハリセンで宗一くんに挑むなんてすごいよー」
「そう? ただの無謀な行動にしか見えなかったけど?」
そして病室にいた最後の1人、少女――天沢郁未が言った。

「ええと…それで宗一君たちが探している人って誰なんですか?」
参加者名簿を開いた渚が宗一たちに尋ねた。
「俺が探しているのはこの010番のエディと022番・梶原夕菜。065番・立田七海に092番・伏見ゆかり。それと113番の湯浅皐月と119番のリサ=ヴィクセンの6人だ」
「あたしが探しているのはお姉ちゃんの032番・霧島聖と035番の国崎往人くんだよ」
「全部で8人ですか……」
「―――残念ですが、この中で私が出会った人はいませんね……」
早苗がしゅんと肩を落とす。
「――そうか」
「あ…早苗さん。そんなに気を落とす必要はないよー」

「――で。そちらの探している人は?」
「あっ。はい。今わたしが探しているのは秋生さんと朋也さん。それと春原さんに伊吹先生と風子ちゃん、芽衣ちゃんです」
「そりゃまた随分といるな……」
「はい……皆さん無事だといいのですが………」
早苗の顔からは不安の色が浮かんでいた。
「……あんたらはいないのか?」
「…………別にいないわ」
郁未が無愛想に宗一に答えた。

(いいんですか、郁未さん?)
葉子が小声で郁未にこっそりと尋ねた。
それに対して郁未も小声で返答する。
(かまわないわ。どうせ晴香や由依や少年たちともいずれ敵になるんだから……)
291おつかい役1号:2006/10/02(月) 14:00:14 ID:o3DPTrcU0
「……ねえ宗一くん」
「ん? なんだ?」

突然、佳乃が深刻そうな顔をして宗一に尋ねてきた。

「どうした? ……まさか、誰かが診療所に入ってきて…………」
「…………………お腹すいてない?」
「……………」

ぐう〜…

「その言葉を待っていた」とばかりに宗一、佳乃の腹の虫が同時に鳴いた。
「………そういえばこの島に来てから特に何も食べてなかったな」
「…そういえば私もです」
早苗が恥ずかしさのあまり顔を赤らめて言った。
「本当に馬鹿ねあなたたち。食べられるときに食べておかないとこの先何かあるかわからないっていうのに……」
宗一ってそれでも本当に世界No.1エージェントなの? と付け足して郁未が毒づいた。

「――あ〜…でも、ちょうど支給のパンがあるから……」
「え〜。でもさ宗一くん、このパンあまり美味しそうじゃないよ。それにさ、万一のことも考えてこれは非常食として取っておいたほうがいいと思うよ」
バッグの中から取り出したパンを見ながら佳乃が言った。
「………つまりどうしろと?」
なんか嫌な予感、と宗一は感じた。

「せっかく村にいるんだからさ。宗一くん一度村に戻って何か料理の材料を調達してきてくれないかな?」
もちろんパン以外で、と付け加えて佳乃がお願いと両手を合わせた。
292名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 14:01:19 ID:CyinBRFmO
連投規制回避
293おつかい役1号:2006/10/02(月) 14:10:17 ID:o3DPTrcU0
「――おい。なんでそうなる? みんなで行けばいいだろ?」
「酷いなー宗一くん。か弱い女の子や女性が夜道を歩くのは危ないんだよー」
「あの…那須さん。すいませんがわたしからもお願いできますか? 私も佳乃ちゃんと同じ意見で、このパンは万一の時のために残しておいたほうがいいと思うんです」
早苗が佳乃の隣に来て宗一に言った。

「な…早苗さんまで……なあ…郁未たち、何とか言ってくれないか?」
「悪いけど私たちには関係ないわそんな話。したがって私は棄権票」
「ごめんなさいね宗一さん。郁未さんがそうおっしゃるなら私も同じ意見ですので」
「マジかー!?」
「あはは。賛成票2・反対票1・棄権票2で宗一くんが一人で行くことに決定。
じゃあ悪いけど宗一くんは『おつかい役1号』として早速行ってもらうね」
「はあ……わかったよ。行ってくればいいんだろ? 悪いが、邪魔になりそうだから俺のパンと水はここに置いていくから取るなよ」
「わかってる、わかってる〜。あ。そうだ宗一くん、もしよかったらこれを持っていってよ」
「――!」

佳乃は自身の支給品である銃を宗一に差し出した。
銃が姿を見せた際、郁未と葉子がなぜかピクリと反応したように見えたが、多分気のせいだと佳乃は思った。

「これは……」
それは宗一にとって馴染み深いものだった。
―――FN Five-SeveN。
宗一が普段から愛用していたものと同じ自動拳銃だったからだ。

「持っていたんなら最初から出しとけよ。まったく無用心な……まあ、ありがたく借りていくぜ」
「うん。いってらっしゃ〜い♪」

そうして『おつかい役1号』こと那須宗一は一度診療所を後にした。

「それにしても郁未たち、なんかずっと俺を警戒するような目で見ていたような気がしたが……この島じゃ俺ってそんなに悪人面なのか?」
などとぶつぶつ口に出しながら……
294おつかい役1号:2006/10/02(月) 14:14:19 ID:o3DPTrcU0

 【時間:午後5時過ぎ】
 【場所:沖木島診療所(I−07)】

 那須宗一
 【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾7/7)、FN Five-SeveN(残弾20/20)、包丁、ツールセット、ロープ(少し太め)、救急箱、ほか水・食料以外の支給品一式】
 【状態:空腹。氷川村に戻り食料調達へ】

 古河早苗
 【所持品:ハリセン、支給品一式】
 【状態:空腹】

 霧島佳乃
 【所持品:武器以外の支給品一式】
 【状態:空腹】

 天沢郁未
 【所持品:薙刀、支給品一式(水半分)】
 【状態:右腕負傷(軽症・手当て済み)。ゲームに乗っている。宗一を警戒。隙あれば早苗たちを殺す気満々】

 鹿沼葉子
 【所持品:鉈・支給品一式】
 【状態:特に異常なし。ゲームに乗っている。宗一を警戒】

 【備考】
・佳乃の支給品は宗一に貸したためのもとに
・宗一の水と食料は診療所に置いていく
・渚は早苗たちとは別の部屋で寝かされている
295おつかい役1号:2006/10/02(月) 14:16:47 ID:o3DPTrcU0
追記
佳乃生存ルートにおける
081『無茶苦茶コンビ?』と『診療所にて』の続きです

>ID:CyinBRFmO様
ありがとうございました
296名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 14:42:17 ID:jXUAkj8a0
藤田浩之達が立ち去った後も柳川祐也は暫くの間、泣いていた。
自分の油断で、楓を死なせてしまった。
柳川は、自責の念に苛まれていた・・・・。


柳川は、ゲームに参加する以前は内なる鬼に支配され非情な殺人者と化していた。
しかし能力が制限されている今は鬼の力だけでなく、意思すらも抑制され、
元の警察官としての性格を有している彼に戻っていたのであった。
――尤も、本人にその自覚は今の今まで無かったが。


そうして30分程泣いた後、柳川は再び立ち上がった。

――このゲームの主催者が許せない。必ず殺してやる。
それに、このゲームに乗ってしまった、愚かな者達も見過ごすわけにはいかない。
ゲームに乗らない者達を救い、ゲームに加担する者は容赦無く殺す。

「それが、警察官としての俺の役目だ。」

強い決意の籠もった声で呟き、最後に柏木楓の死体を一瞥した後、
柳川祐也は楓のコルト・ディテクティブスペシャルを手に、駆け出した。
この哀しい殺人ゲームを止める為に。
―――警察官としての正義を貫く為に。




柳川祐也
 【所持品@:出刃包丁/ハンガー/楓の武器であるコルト・ディテクティブスペシャル(弾数10内装弾4)】
 【所持品A自分と楓の支給品一式】
 【状況:正常。ゲームを止めようとしている】
*(>>156-161と関連。)
297296:2006/10/02(月) 15:05:59 ID:DYyMoKbpO
ああ、題名書き忘れてた、、
題名「決意」で。
携帯からでID変わっててスマソ
298理緒の戦い(1/3):2006/10/02(月) 17:33:37 ID:CRLrxB8Q0
「みゅ・・・みゅああああああ゛あ゛あ゛ぁぁ」
「すぐ楽にしてあげたいけど・・・それじゃ、つまらないよね」

月島瑠璃子の振りかぶった鋏は、その勢いのまま椎名繭の肩を抉った。
ガクガクと痙攣する繭を見つめながら、雛山理緒は震えるしかない。

(ど、どうしよう・・・私のせい?私が、私だけ助かることを願ったから?!)

グサッ、グサッ。鋏は連続して少女の体を引き裂いていく。
みるみるうちに血の海が形成されるが、どれも致命傷ではないのか繭の意識が途切れることはなかった。

「ふふ・・・かわいい」

瑠璃子の手は止まらない、微笑みながらの行為は狂気に支配されていた。
...その時理緒の中で、幼い繭の体が大切な兄弟に重なって。
それは、恐怖で散乱していた意識に理性が戻るきっかけ。

(・・・・・・だめ、あのままじゃあの子、本当に死んじゃうよ・・・)

恐怖が拭えた訳でも、震えが止った訳でもない。
しかし、気づいた時には固まっていた、理緒の足の俊敏さは戻っていた。

「止めて、もう止めてっ!死んじゃう、その子本当に死んじゃうー」

走りこむ、揉み合う2人のその中へ。
理緒は勢いでタックルを決め、瑠璃子を繭の上から押し出した。
が。全力でぶつかったので、その反動は理緒自身にも返ってくる。
二人転がり、倒れこむ。・・・体勢を立て直したのは、瑠璃子の方が早かった。

「・・・邪魔、しないで」

299理緒の戦い(2/3):2006/10/02(月) 17:34:16 ID:CRLrxB8Q0
瑠璃子の殺気、しかし理緒はひるまなかった。

「だ、だめー!お願い、殺さないで・・・きゃっ!!」

ブンッと振りぬかれる鋏、相手は有無を言わさない。
間一髪で避けるものの、理緒はその時になって自分が丸腰なことに気がついた。

(ど、どうしようぅ!)

目につく物は自分のデイバック、咄嗟につかむが中身の武器には期待できない。

(・・・あれ?私のカバン、こんな重かったっけ・・・?)

違和感、しかしそれを確かめる余裕はない。
突くように繰り出される瑠璃子の鋏から逃げながら、理緒はデイバックを振り回した。

(うわぁ、やっぱりちょっと重い!)

カバンに弄ばれそうになる。
しかしその重みの生んだ遠心力は、瑠璃子にとってちょっとした脅威になった。

「・・・!」

半歩下がることで直撃を防ぐことはできた、しかし。
カシャン!
宙を舞う凶器、デイバックは瑠璃子の鋏の刃に当たり、それをはじき飛ばした。

「あ!やったっ」

300理緒の戦い(3/3):2006/10/02(月) 17:36:06 ID:CRLrxB8Q0
鋏はそのまま、後方の茂みに潜り込む。探索に時間はかかるだろう。
瑠璃子は放射状にに舞う鋏を視線で追い、すぐの回収が不可能と分かると理緒に対峙したまま動きを止めた。
一方理緒は、カバンを振りかぶるジェスチャーをして瑠璃子を威嚇する。
・・・ただし、威嚇以上の行為はできない。

(こ、この後どうすればいいの・・・)
「ねえ」

その時、ふと瑠璃子に話しかけられた。
訝しげに睨むが、彼女の表情は変わらない。
瑠璃子は視線を外さず、ある一点に向かい指を差した。
そして、告げる。

「いいの?あの子、死んでるよ」

(・・・・・・・・・・・・・・・え?!!!)

はっとなる。
瑠璃子の指の先を急いで視線で追う・・・そこには。

「・・・う、嘘、そんな・・・」

だらんとした肢体、メッタ刺しにされた少女の動く気配は皆無。
駆けつける、傍らに膝をつき顔を覗き込むが苦痛に歪んだ表情が変化することはなかった。
・・・背後でガサガサと瑠璃子が逃走する物音が聞こえるが、理緒は動けないでいて。
血に濡れた幼い手のひらを握りこみ、理緒は泣いた。

「ごめんね・・・私がもう少し、早く動けていれば・・・うぅ・・・」

まだ生暖かい体温が、せつなかった。
301補足:2006/10/02(月) 17:36:50 ID:CRLrxB8Q0
雛山理緒
【時間:1日目午後1時】
【場所:H−9、森林帯】
【持ち物:アヒル隊長(24時間後に爆発)、支給品一式、繭の支給品一式(抱きかかえているだけ)】
【状態:号泣。アヒル隊長の爆弾については知らない】

月島瑠璃子
【時間:1日目午後1時】
【場所:H−9、森林帯】
【持ち物:支給品一式】
【状態:逃走中。鋏を持っていた右手が少し痺れている。殺意は消えない】

椎名繭  死亡

・理緒が振り回したバックは繭の物、少し重い。中身は開けていない。

(関連・101)
302無題:2006/10/02(月) 20:14:28 ID:qKS1kDo80
「さて、出発前に確認しておきたいことがある」
灯台から出たところで、雄二が周りの仲間に向かって声をかける。
「何? 雄くん」
「出ようと言った言い出しっぺが悪いんだが、まだ武器の確認をしてない」
「…あ」
「そうでした…」
共に「しまった」という表情をしていたのは貴明とマルチ。彼らは仲間を探すのに精一杯で武器の確認を怠っていた。
「お前ら、まだ見てなかったのか? まったく、危機意識がなさ過ぎるぞ」
「そう言う雄くんはどうなの?」
「…すみません、俺もまだっす」
ははは、と笑う雄二を沙織はこんなので大丈夫なのかしら、と思わずにはいられなかった。
「それじゃ、いっせーので開けてみようか。オーケイ?」
雄二とマルチもコク、と頷く。
「それじゃ…いっせーのーでっ!」
三人のデイパックが一斉に開けられる。沙織も興味深そうに覗き込む。
「俺のは…何だこりゃ?」
雄二が取り出したのは無線機が四つ。『特別仕様』と本体に書いてある。
「これは…多分、トランシーバーの類なんじゃない? でも、『特別仕様』って、何だろうね」
「多分…だと思うけど、この島では俺達、どうしてだか知らないけど携帯が使えないよね。だから、この無線機だけが特別に使えるようになってるんじゃないかな」
「わ。貴明さん、頭いいですね」
マルチがぱちぱちと拍手する。
「ふーん…それじゃ、次は貴明のを見せてみろよ」
雄二が貴明のデイパックから武器を取り出す。
「げっ、貴明っ、これってメチャクチャ当たりの部類なんじゃないか?」
貴明の支給品はレミントンM−1100P。銃身が低く、威力は通常のショットガンより落ちるものの携帯性の良さから長期に持ち歩くには適した代物だ。
303無題:2006/10/02(月) 20:15:01 ID:qKS1kDo80
「はは…あまり嬉しくないんだけどね。こんな、人を殺す道具なんて」
貴明のその言葉で、一同が静まる。
「あっ、ご、ごめん。ヘンな事言って」
「…いや、貴明は間違っちゃいねえよ。お前は正しいんだ。…さて、最後はマルチちゃんだな」
「あっ、はい。わたしはこれみたいです」
マルチが取り出したのは…
「モップね」「モップだよな」「モップ…だね」
何の変哲も無いお掃除に使うモップだった。しかも微妙に汚れていることから、使用済みの品らしい。
「…ううっ、これって、適当に入れられた武器のような気がします」
涙目になるマルチ。それをみんなが慰める。
「ま、まぁまぁ。いいじゃないか。マルチちゃんにピッタリだぞ」
「そ、そうそう。それにほら、年季が入ってていい感じよ」
「何かの役に立つかもしれないしさ。ほら、持って持って」
「…はい」
いささか複雑な空気になったものの、取り敢えずは全員の武器が確認できた。
「よしっ。んじゃ改めて姉貴やチビ助達を探しに行こうぜ。それと、もしもの時のためにこれを持っておいてくれ」
雄二が各々に無線機を渡していく。
「これでたとえ離れ離れになっても連絡がとりあえるはずだ。使い方は分かるよな?」
304無題:2006/10/02(月) 20:15:46 ID:qKS1kDo80
「もちろんよ。…でも、ちょっとテストはしておいたほうがいいかもしれないわね」
「そうだね。それじゃ、俺から試してみるよ」
そう言うと、貴明はみんなから少し離れて無線機を口に当てる。みんなも音が重ならない程度に離れる。
「あー、テスッ、テスッ。みんな、聞こえる?」
「ええ。ちゃんと聞こえるわよ」「おう。俺もだ」「だいじょうぶですー」
どうやら全員大丈夫のようだった。
「大丈夫みたいだね。それじゃ、行こうか」
「オーケー。…んでも、無線機に話しかけると全員に伝わるってのはちょっと厄介だな。みんなが喋ったら何が何だか分からなくなるな」
「そうね…そこは気をつけるようにしましょ」
互いに再度持ち物を確認し合い、灯台を後にする。


 向坂雄二
 【所持品:無線機、他支給品一式】
 【状態:普通】

 新城沙織
 【所持品:フライパン、無線機、他支給品一式】
 【状態:普通】
305無題:2006/10/02(月) 20:17:32 ID:qKS1kDo80
 河野貴明
 【所持品:無線機、レミントンM1100P(24発)、支給品一式】
 【状態:普通】

 マルチ
 【所持品:無線機、モップ、支給品一式】
 【状態:普通】

 【時間:1日目午後2時】
 【場所:I−10】

 【備考:B−2準拠の017話、136話不採用の新ルートで】
306千鶴再出撃(1/3):2006/10/02(月) 20:29:35 ID:o3DPTrcU0
「……どうやらあの子たちは場所を変えたようね」
あれから2時間近くの時間が経過した今、柏木千鶴は先ほど自分がセリオたちと戦闘した場所に戻ってきていた。

彼女自身は先ほどと特に変化は無いが、唯一違うところといえば今の彼女は全身緑色の2速歩行するトカゲのような生命体にまたがっていた。
―――ウォプタルというらしいその生命体は一応彼女の支給品であった。


話はスタート直後に戻る。
千鶴は自分に支給されるバッグを待っていた。
開始前の説明であのウサギが言っていた通り鬼の力を制限されてしまっていたので、できれば『当たり』がいいと彼女は思っていた。
そんな彼女の前に出現したのが自身に支給されたバッグとそれを背中の鞍に乗っけたウォプタルだったというわけだ。

最初見たときは「なっ……!?」と思わず己が目を疑ったが、
バッグの中に入っていた支給品の説明書を読んでやはりこれが自分の支給品であることを確認すると思わずため息をついてしまった。

「――『乗れば移動は快適。とても足が速いです。ただし単体の戦闘力はほぼ皆無です』ねえ………」


……とまあそんな感じである。
彼女が詩子を襲った際素手だった理由もそれである。
(ちなみにあの時ウォプタルは少し離れた場所のの木に繋いでおいた)

(――何か長物があれば乗ったまま戦うことができるのですが……)
そう思いながら地図を取り出した。

「今いる所がF−04ですから……近くに平瀬村がありますね………」

村なら人が集まるはず。そこを狙えば大勢の参加者を倒すことができる。
しかし、逆を考えればそのことを警戒してあえて村に近づかない者や自分と自身と同じ考えのマーダーたちが既に行動を開始しているかもしれない。
307千鶴再出撃(2/3):2006/10/02(月) 20:30:32 ID:o3DPTrcU0
(それに平瀬村は3箇所のスタート地点に囲まれている……
人は集まっているかもしれないでしょうけど、それの半数以上がマーダー……それも銃などの火器で武装した者たちばかりだったら今の私では太刀打ちできるかしら?)

そう考えた結果、さすがに今は自身から渦中に飛び込んでいくのは不味いと判断し、千鶴はまずは使えそうな武器などを集めていくことにした。

「……こちらの氷川村なら近隣のスタート地点との距離と村の面積からしてあまり人がいないかもしれませんね。
………ウォプタルさん、少し遠いかもしれませんがお願いできますか?」
千鶴の問いかけにウォプタルはクワーッと鳴いて答えた。

「―――では行きましょう」
千鶴を乗せたウォプタルは進路を南にとり駆け出した。

(耕一さん…梓…そして楓に初音。私は多くの人を殺そうとしています。やはり貴方たちだったら今の私を止めようとしますか………?)
仮に耕一や妹たちに出会ってしまったらいったい自分はなんと言われるだろうか、そして自分は彼らも殺せるだろうか?
そんな惑いを僅かに残しながら千鶴は氷川村を目指す――――
308千鶴再出撃(3/3):2006/10/02(月) 20:33:08 ID:o3DPTrcU0

 柏木千鶴
 【時間:1日目15:30頃】
 【場所:F−04】
 【持ち物:支給品一式】
 【状況:健康・マーダー(かなり積極的)・ウォプタル(状態・異常なし)に乗ってどこかの氷川村へ】

 【その他】
・千鶴のスタート地点は菅原神社(E−02)
・ウォプタルは最初からバッグから出た状態で支給された
・059の続きです
309名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 20:36:52 ID:o3DPTrcU0
早速訂正です

>(ちなみにあの時ウォプタルは少し離れた場所のの木に繋いでおいた)
   ↓
(ちなみにあの時ウォプタルは少し離れた場所の木に繋いでおいた)
31010:2006/10/02(月) 20:43:56 ID:0NOaAuGb0
投下ー。
139の続きと言うか何と言うか。
元々こっちまで含めて一つの話だったり。
当然Iルート。
多分入らんのでどなたか回避を。
311No.146 脱出の鍵穴:2006/10/02(月) 20:44:39 ID:0NOaAuGb0

「……」
「……」
「……さっきの珊瑚ちゃん瑠璃ちゃん、可愛かったな」
「それ以上言うな!」
まだ赤い目をした瑠璃ちゃんが雄二を思いっきり蹴っ飛ばす。
「ぐはっ!」
悶絶する。
「雄二、流石にお前が悪い」
「ジョークだよジョーク……空気重いしさ……」
「選べよ……」
「雄くんひどーい」
しかし空気が軽くなったのも確かだった。
「これから、どうする?」
「そやねー、どないしよー」
そういいながら珊瑚ちゃんは紙を取ってくる。
「? 珊瑚ちゃ……」
珊瑚ちゃんの指に口を塞がれる。
「瑠璃ちゃんは、どうしたい?」
そう言いながら紙を手渡される。
「……。そやね……」
……! これは……
312No.146 脱出の鍵穴:2006/10/02(月) 20:45:29 ID:0NOaAuGb0

そこには珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんがした筆談の跡があった。
これが本当なら大事なことは会話では決められない。
いや、上らせることすら危ない。
(しかし……これは……)
マルチちゃんにこれを見せるのはどうだろう。
マルチちゃんに腹芸は出来ないだろう。
最初の一行に【マルチちゃんには見せないほうがいいと思う】と書き加えて、沙織ちゃんに渡した。
ちゃんと口を塞ぐのも忘れず。
「そうだね……とりあえず、お互いのアイテムの確認をしようか」
「そやね」
「……これって! あ……」
新城さんが声を上げてしまった。
まずい……何か……あ!
「ああ! 凄い! レーダーだ!これがあれば無闇に人と会わなくてすむ!」
「へへー、すごいやろー?さんちゃんが引き当てたんやで?」
「うん。凄いや」
新城さんが手で謝る。
雄二が訳が分からないと言う風にこっちを見ているが、さっきのジェスチャーで喋るのがまずいのだけは伝わったようだった。
取り敢えず黙っていてくれた。
そして新城さんが雄二に渡す。
ちゃんと口を塞いで。
雄二がそれを見て方眉を吊り上げる。
声は漏らさなかった。
313No.146 脱出の鍵穴:2006/10/02(月) 20:46:38 ID:0NOaAuGb0

「で、瑠璃ちゃんが鉄砲やねん」
「なんか……こっちのアイテム見せるのが申し訳ないというか……」
「ねぇ……」
「私はモップですー」
「この子は……」
「モップ……?」
「あ、いや、モップ型のライフル」
「すごいやん」
「まぁ……それだけと言うか……」
「それ以外は使えないと言うか……」
「愚痴っていても仕方ないだろ。さっさと言って楽になろうぜ。俺は、これだ」
雄二はさりげなく紙を折り畳んでポケットに入れながら両腕を見せた。
「ガントレットだ」
「私は……その……フライパン……」
新城さんがフライパンを顔を隠すようにしながら取り出す。
この二人はまだ防具に出来るだけましだろう。
「で、まぁ……俺が一番はずれっぽいんだけど……これ」
そういって、工具セットをデイパックから取り出す。
「!?」
とたん、珊瑚ちゃんが急激に反応した。
「さ、珊瑚ちゃん?」
焦って紙を取り出して、それに書き殴る。
【なんとかなるかもしれへんよ】
それをみんなでまじまじと見て、俺が一言書き加える。
【ごめん。読めない】
珊瑚ちゃんは、ちょっぴりむくれた。
314No.146 脱出の鍵穴:2006/10/02(月) 20:47:40 ID:0NOaAuGb0

姫百合珊瑚
【持ち物:水を消費、レーダー、工具セット(貴明から貰った)】
【状態:冷静、安堵、僅かな擦過傷、切り傷(手当て済み)】
姫百合瑠璃
【持ち物:水を消費、シグ・サウエルP232(残弾8)】
【状態:やや冷静、安堵、擦過傷、切り傷。珊瑚ちゃんよりは多少深い。が、動くには支障は無い程度(手当て済み)】
河野貴明
【持ち物:水を少々消費、モップ型ライフル】
【状態:やや冷静、安堵、健康】
向坂雄二
【持ち物:水を少々消費、ガントレット】
【状態:やや冷静、股間に打撲(瑠璃ちゃんに蹴っ飛ばされた)】
新城沙織
【持ち物:水を少々消費、フライパン(カーボノイド入り)】
【状態:やや興奮、健康】
マルチ
【状態:一人話に入れない、みんなで紙を見ていたのにも気付いていない、健康】
共通
【持ち物:デイパック】
【時間:一日目午後五時頃】
【場所:I-07の民家】
31510:2006/10/02(月) 20:48:12 ID:0NOaAuGb0
いらんかった
316名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 21:04:22 ID:o3DPTrcU0
訂正

千鶴再出撃
>【状況:健康・マーダー(かなり積極的)・ウォプタル(状態・異常なし)に乗ってどこかの氷川村へ】
   ↓
【状況:健康・マーダー(かなり積極的)・ウォプタル(状態・異常なし)に乗って氷川村へ】
317激昂少女:2006/10/02(月) 22:57:30 ID:8JhBpfQx0

「このクッキーは携帯食として使えそうだな。」
藤田浩之達は、広瀬村の民家の探索を行っていた。
柳川から簡単な事の経緯は聞きだしたが、
それ以上詳しく話を聞ける状態ではなかった為、
情報収集は一旦中断して、かれこれ40分近く、生き残る為に必要な物を探していた。
大体このゲームは開始時の支給品だけでは、あまりにも不十分である。
生きるのに絶対必要である食料でさえ1日分程度しか与えられていないのだ。

「カレーの食材も持って行って良い?」
無茶な希望を口にするのは当然、”歩く胃袋”川名みさきである。

「そんなもの、作ってる余裕なんて無いに決まってるでしょ・・・。」
彼女の親友、深山雪見はため息混じりに呟いてた。


その時、外から足音がした。
足音は複数する。
「おい。今の・・・・・。」
浩之はすぐさま89式小銃を手に取り、警戒態勢をとった。
「ひぃぃぃぃぃ!」
春原も狼狽しつつもスタンガンを構えている。
ルーシーや雪見も、同様にそれぞれの武器を構えていた。

足音がドアの前で止まった。
浩之達に緊張が走る。

ガチャリ。
――――ドアが開いた。
318激昂少女:2006/10/02(月) 23:01:02 ID:8JhBpfQx0
「動くなっ!俺達は殺し合う気はねえっ!!」
「動かないで!私達、ゲームに乗る気はないわ!!」
同時に叫び声がした。

「・・・・え?」
浩之達と、来訪者―――巳間晴香・柏木梓は武器を構えた体勢のまま、呆気にとられていた。



お互い殺意が無い事が分かると、浩之達と晴香達は早速情報交換を始めていた。
「つまり、あんた達はこのゲームから脱出するために仲間を探しているのね。」
既に構えは解き、晴香は言葉を続けた。
「私達もゲームに乗る気はないのよ。仲間になってあげても良いわよ。」
「そうか、助かる。これからよろしくな」
浩之も構えを解いた状態で答えた。

既に最初にあった緊張感は無くなっていた。
その時梓は一つ大事な事を聞き忘れていた事を思い出した。
「ねえ、あんた達柏木って名前の女の子達を見なかった?
千鶴姉に、楓に、初音っていうんだけど。」

――場の空気が固まった。
春原が言いにくそうに口を開く。
「楓って子なら見たぞ。」
「ホント!?どこにいたの!?」
梓は目を輝かせている。

「いや、残念だが彼女はもう・・・・。」
「え・・・嘘でしょ?」
319激昂少女:2006/10/02(月) 23:02:51 ID:8JhBpfQx0

場に沈黙が訪れる。その沈黙が、春原の言葉が嘘で無い事の何よりの証明となっていた。
「楓は絶対こんなゲームには乗らない、優しい子だったのよ・・・!
一体誰が!!!」
「僕達が到着した時には彼女はもう死んでいたんだった。
犯人ももう死んでいて、その場にいたのは柳川って人だけだった。」
「!!」
梓の目が見開かれる。
「犯人が死んだなんて嘘よ!!柳川がやったに決まってるわ!!!
アイツは人の命をなんとも思ってない奴なのよ!」
「でもあいつ・・・、泣いていたよ。」
「・・・そんな嘘泣きに決まってるわ!ちくしょう、殺してやる!!」
そう叫び、突然梓は駆け出した。

浩之達は慌てて制止しようとしたが、
鬼の力を制限されているとは言えその速度は常人離れしており、
浩之達が民家の門の外に出た頃には既に浩之達の視界から消え去ってしまっていた。
残された者達はただただ呆然とする事しか出来なかった。


―――その様子を遠巻きに見ていた巳間良祐はニヤリと笑った。
「とうとう警戒を緩めたな。隙だらけだ・・・。」
一人で多数に勝つには奇襲を成功させる事が絶対条件である。

ようやく彼らに追いついた時は民家に入られており、
奇襲は厳しい状況だったが、
今まさに奇襲を成功させる為の条件が、整ったのだ。
320補足:2006/10/02(月) 23:04:37 ID:8JhBpfQx0
 【時間:1日目 17時30分】
 【場所G-02広瀬村、民家の傍】
藤田浩之
 【所持品:折りたたみ式自転車、自分と由綺の支給品一式】
 【所持品Aクッキー,89式小銃(弾数22)と予備弾(30×2)&89式小銃用銃剣】
【状態:呆然】
春原陽平
 【所持品:スタンガン/支給品一式】
 【状態:呆然】
ルーシー・マリア・ミソラ(るーこ・きれいなそら)
 【所持品:IMI マイクロUZI(残り30発)と予備カートリッジ(30発入り×5)、他支給品一式】
 【状態:呆然】
川名みさき
 【所持品:スタングレネード(×3)、他支給品一式】
 【状態:呆然】
深山雪見
 【所持品:SIG P232(残り7発)、他支給品一式】
 【状態:呆然】
巳間晴香
【持ち物:ボウガン、他支給品一式】
【状態:呆然】
巳間良祐
 【所持品:ベネリ M3(残り5発)、他支給品一式、草壁優季のバッグ】
 【状態:戦闘態勢。ゲームに乗っている。浩之達を狙う】
柏木梓
【持ち物:不明(次の書き手さんに任せます)】
【状態:錯乱、柳川を狙っている】

*(ルートB系、関連は075、118、142)
*ルートB系の今投稿されてる最後の作品は145『千鶴再出撃 』?
321名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 23:26:46 ID:CyinBRFmO
広瀬村じゃなくて平瀬村ですよ
322320:2006/10/02(月) 23:29:35 ID:8JhBpfQx0
マジだ・・・・。
広瀬村の部分→平瀬村に訂正お願いします・・・。>まとめの人
323名無しさんだよもん:2006/10/02(月) 23:33:07 ID:p2v9V4Hh0
推敲してねえな
324巻き戻らない時間(1/3):2006/10/02(月) 23:47:53 ID:qxEkNc9D0
「芽衣ちゃん、入っちゃダメだ!」
扉を開けた瞬間英二が見たものは。もはや顔の原型がないほど殴られ死んでいる杏の死体だった。
生きていた頃の面影は微塵も無い。
他にも体中に刺されたような切り傷が点在し、腫れ上がった顔に流れた涙の跡が目に痛かった。
「ひどいなこれは……」
英二の言葉のとおり、芽衣は扉に身体を隠したまま不安にも様子を窺う。
「ぷひっぷひっ」
抱いていたボタンが急に暴れだす。
芽衣の身体から飛び降りると杏の周りを勢い良く回りだした。
不思議そうに英二がじっと見つめる中、何度も、何度も、止まっては鳴き、止まっては鳴きを繰り返す。
――勿論返事は返ってこない。
物言わぬ主人の顔をボタンはそっと舐め続ける。
その背中をゆっくりと抱え、芽衣にそっと手渡す。
芽衣は震えるその小さな身体をただただなで続けた。

英二はそこで一台のノートパソコンに目を見やる。
画面に映っているのは真っ赤に染まった『ロワちゃんねる』の文字。
そして一つのスレッドが更新されていた。


【1】:自分の安否を報告するスレッド

 1:藤林杏:一日目 12:34:08 ID:ajeogih23
  自分が今、どういう状態にあるか、報告するスレッドです。
  報告して知り合いを安心させてあげてください。

  私は、今は無事です。さしあたっては当面の危機もありません。
  それから、私は積極的に人を殺そうとは思っていません。攻撃された場合は別ですが。もし、あたしを見つけても撃たないでね。

  みんな、希望を捨てちゃ駄目よ。生き延びて、みんなでまたもとの町へ帰りましょう!
325巻き戻らない時間(2/3):2006/10/02(月) 23:48:45 ID:qxEkNc9D0
 2:柊勝平:一日目 16:03:16 ID:du5YiewBn
  諒さんは今どこで何をしてる?
  僕はさしあたっては元気かなぁ。
  あ、そうそう、杏さん、死んじゃった。
  ちょっと殴っただけなんだけどね、ははは。
  詳しい話は会った時に話すね。
  他にもいろんなお土産話もって行くから待ってて!


見た瞬間英二はこの惨劇を理解し、そして悔いた。
これは自分がここに来るほんの数分前。
もしほんのちょっとだけ早くここに来ていれば彼女は死なずにすんだのではないか。
やり場のない怒りが身体中を襲い、思わず机を殴りつけていた。
「え、英二さん?」
そのいきなりの行動に、芽衣はおそるおそる口を開いた。
「……いや、……なんでもないよ」
そしてノートパソコンを手に取ると、電源を抜きそっとバックにしまいこんだ。
ただの蛋白質と成り果てた杏。
目を閉じ、小さく祈ると芽衣の手を取り分署を出る。
(やっぱりゲームに乗ったやつが他にもいるのか……)
――仇を取るとまで偽善的なことは言えない。
  だが、柊勝平と言う男、もしもこいつに会うことがあったなら容赦はしない……。

藤林杏(009) 死亡
326巻き戻らない時間(3/3):2006/10/02(月) 23:50:19 ID:qxEkNc9D0
緒方英二
 【時間:一日目16:30頃】
 【場所:鎌石消防分署を出て村の中心に向かう】 
 【持ち物:拳銃(種別未定)ノートパソコン 支給品一式、水と食料が残り半分】
 【状況:再び尋ね人探しに】
春原芽衣
 【時間:一日目16:30頃】
 【場所:同上】 
 【持ち物:ボタン 支給品一式、水と食料が残り半分】
 【状況:英二に同行】

柊勝平(081)
 【時間:1日目16:05頃】
 【場所:すでに鎌石消防分署から立ち去る、行き先不明】
 【所持品:杏の包丁 手榴弾2つ。首輪。他支給品一式】
 【状態:杏を殺した後移動】
327三人から四人へ:2006/10/03(火) 00:28:20 ID:oevTUzVv0
宮内レミィ(107)、沢渡真琴(052)、久寿川ささら(034)は困惑していた。何しろデイパックの中からロボットが現れたのである。どこぞの男のように言うなら、
「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!『私は支給品を確かめようとしたらなんとロボットが出てきた』
な…何を言ってるのかわからねーと思うが私も何が起こったのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
そもそもどうしてロボットがデイパックに入るんだ、とかどうしてぱんつはいてないんだ、とかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」
とか言う感じである。ともかく、三人が思ったのは「主催者の頭はイカレている」ということだった。
「あのー…お客様? ここはどこでしょうか?」
何が何だかわかっていないように話すロボット、ゆめみ。それはこっちが聞きたいわよ、とは真琴の弁。
「困りました…ものすごく困りました。実を申しますと、わたしは今日からとある方の元へ最新型コンパニオンロボの試験体として送られることになっていたんです。
名前はわたしもまだ存じ上げないのですが、今日大規模なパーティを開かれるということでして、わたしはその披露宴で紹介されるということになっていたのですが…」
こちらが返答する時間も与えないようにまくしたてるゆめみ。話がようやく切れたところでささらが尋ねる。
「あの…質問していいかしら?」
「はい、何でしょう?」
「そのパーティの内容、というのは…」
「はい。わたしもまだ詳しくは知らないのですが、120人もの男女が集まって大いに楽しむ、ということらしいのですが…もしかして、もうパーティは始まってしまっているのでしょうか?
でしたら、わたしはたいへんな粗相をしてしまったということになります…あの、そちらの皆様は、お客様でしょうか?」
不安顔で尋ねるゆめみ。ささら達は顔を見合わせる。
「もしかして、この人…じゃなくてロボットが言ってるのって…」
「イエス、間違いなくこのゲームのことだと思うネ」
「だとしたら…このロボットも、参加者なの?」
ロボットに振り向くや否や、三人で取り囲みじろじろと観察する。
328三人から四人へ:2006/10/03(火) 00:28:57 ID:oevTUzVv0
「えっ? あ、あ、あ…あの?」
困惑するゆめみをよそにぺたぺたと触る三人。
「…やっぱり、支給品でも、首輪はついてるみたいね」
「わぁ…キレイな髪の毛〜。あうーっ、うらやましいなぁ」
「マルチとは、チョット型が違うようデス。最新型というのは間違いなさそうネ」
「え、えーと…」
すっかり困り顔のゆめみを一通り観察すると、ささらがゆめみに話しかける。
「すみません、返答が遅くなってしまって。結論から言わせてもらってもいい?」
「あ、はい。わたしは構いません」
「あなたの言う通り、私達はこのパーティの『お客様』には違いないわ。…でも、あなたの想像しているようなパーティとは、全然違うの。このパーティはね、殺人ゲームなの」
殺人ゲームと言われたにも関わらず、ゆめみはきょとんとした表情だった。
「…あの、お客様。申し訳ないのですがわたしの情報データベースにはそのような情報は存在していないのですが…『さつじんげーむ』とはどんなパーティでしょうか」
どうやらまったく知らないようだった。今度は真琴が話す。
「あのね。『バトルロワイアル』っていう小説って、知ってる?」
「あ、はい。それならわたしも存じ上げています。原作は高見広春さんで、過去に映画化もされており、社会に問題を巻き起こした話題作ですね。映画版はR−15指定になっていて…」
「ストップ、ストップ! 話がそれていってるヨ!」
レミィの指摘で、ゆめみの口が止まる。
「あ…申し訳ありません。何分ロボットですので、求められた情報には全てお答えするのがわたしのお仕事ですので…それでそのバトルロワイアルがどうなさったのですか?」
「その『バトルロワイアル』が今まさに行われているノ。もちろん、ジョークじゃないヨ」
レミィが真剣な眼差しで答える。ゆめみが驚いたように答えた。
「えっ? あの、お客様。この国におきましては、殺人は犯罪で、ましてや集団による殺し合いというのは…」
329三人から四人へ:2006/10/03(火) 00:29:39 ID:oevTUzVv0
「もちろん許されることじゃないけど、でも実際に行われているの。…もう、死人だって出ているかもしれないのよ」
「そ、そんな…そのようなことが…お客様、申し訳ありません。少しお時間を頂いてよろしいでしょうか」
ゆめみはそう言うと、後ろを振り向いて何かを呟き始めた。
「警察への通信…不可能…各通信センターへの救助要請を試行します…通信、不可能…」
ゆめみのすがるような、そんな風にさえ聞こえる事務的な機械音声は、しばらく続いた。
「各センターとの通信、全て不可能…業務モードへの復帰へ移行します」
ゆめみがそう言って、三人に向き直る。
「…お客様。各情報機関との連絡がとれないということが確認できました。したがって、お客様の言っていることは、事実だと判断します。…わたしは、どのようにすればよろしいでしょうか」
コンパニオンロボットだという彼女。人間のために存在する彼女。ここにいる意義を失って、彼女はどう思っているのだろうか。
「えーっと…とりあえず、私達と一緒に行動しない? ロボットだったら、きっと強いと思うし。ね、二人ともいいでしょ?」
真琴がレミィとささらに同意を求める。
「ワタシは全然オッケーだヨ。この子、マルチにそっくりだしネ」
「…敵ではないですから、私も構いません」
「決まり! それじゃ、自己紹介しよっ! 私は真琴。沢渡真琴」
「レミィ・クリストファー・ヘレン・宮内デス。レミィでいいヨ」
「久寿川ささら、といいます。よろしくお願いします」
今までずっと困惑気味だったゆめみの顔が、少しだけほころんだ。
「わたしは、SCR5000Si/FL CAPELII.通称はほしのゆめみと申します。どうか、よろしくお願いいたします」
330三人から四人へ:2006/10/03(火) 00:30:17 ID:oevTUzVv0
 【時間:午後2時】
 【場所:B−05】

 久寿川ささら
 【所持品:スイッチ(どんなスイッチかは謎。充電器は付属していない)、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

 沢渡真琴
 【所持品:日本刀、ほか支給品一式】
 【状態:健康】

 宮内レミィ
 【所持品:支給品一式】
 【状態:健康】

 ほしのゆめみ
 【所持品:なし】
 【状態:普通。ささら達と行動を共にする。首輪もつけられている】
 【その他:一応レミィの支給品】

 【備考】
・真琴の日本刀は吉岡チエのものとは長さ、形状が少し異なる
・ゆめみは大戦前の世界なのでなんの支障もなく普通に活動可能
・ささらのスイッチがどんなスイッチなのかはまだ不明
331名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 00:43:02 ID:w1ltiB3v0
ダニエル襲撃の前か
332マーダー・ゲーム(1/3):2006/10/03(火) 01:18:25 ID:ucHlvp1T0
やることも特になく、向坂雄二と新城沙織はただただ時間を持て余していた。
訪れる者もいない。
むなしい、自分達ができる最善のことなんて思いつかなかった。

「コレじゃあねー」
「ねー・・・」

ボロボロの大学ノートにフライパン。
わざわざこのゲームに乗る気があったとしても、まず役には立たない代物。
二人は、相変わらず灯台の最上階にて地上の景色を眺めるしかすることがない状態であった。
その時。

「きゃっ!」
「わ、こりゃ強い・・・あ。」

突風が二人を襲う。
高い場所にいたからこそ、その威力は強くなていたようで。
・・・気がついたら、バサバサバサっと宙を舞う大学ノートが雄二の視界に入った。
うっかり手を離してしまったらしいソレは、まっさかさまに落ちていく・・・

「ま、待ってくれ!俺の支給品〜」
「え、雄くん?!」

起こった風から長い髪と短いスカート庇っていたため、事の顛末を見ていない沙織はただ慌てるだけだった。



使いようはなくとも、一応はこれが雄二の武器である。
特に愛着がある訳ではなくとも、いつか役に立つ時が来ると信じているのだ。
333マーダー・ゲーム(2/3):2006/10/03(火) 01:19:24 ID:ucHlvp1T0
急いで階段を駆け下り、形振りかまわず外に出る。
ノートの落ちる様は見ていたため、回収自体はすぐに終わった。
ポンポンと土ぼこりを払い、パラパラと中身を確認。

「よし、どっかのページが抜けている訳でも無さそうだな。」

あまり乱暴に扱ってしまっては、それこそあっという間にバラバラになってしまいそうな一品である。
これからは大切に扱おうと、ちょっぴり思った。。

「あー、よかったよかった。よし、じゃあ戻ろう」

クルリ。方向転換。

・・・ん?何か、今、視界の隅に映ったような・・・

「Checkmate!!!」

ザックリ。その時、向かって左腹に衝撃が広がった。
瞬間、熱。
熱い、熱い痛み。これは・・・

「いっ・・・な、何だこれっ」

矢。そうとしか言えない。
よく弓道部の女の子が打っている弓矢の矢、それが雄二の横腹に突き刺さっていたのだ。
ガクン、じわっと広がる流血の感触に気を失いそうになりながら、雄二は矢の飛んできた方向を見据える。

「ハンティング成功ネー!弘法は弓を選ばずではなく、弓が弘法を選ぶのネッ」
334マーダー・ゲーム(3/3):2006/10/03(火) 01:19:54 ID:ucHlvp1T0

陽気な台詞の持ち主は、宮内レミィ。
彼女は馴染み深い和弓を手にし、有無を言わさず雄二へとどめを刺した。


その後はスムーズであった。
雄二を追ってきた沙織は、ただ事態が飲み込めぬまま震えるだけで。

「ン〜、これだとハンティングのしがいなさ過ぎネ〜」

それでも一切の容赦は無い、レミィは的確に急所を狙い沙織を沈黙させた。
今はもう動かない二人に刺さった矢、それらは躊躇いなく回収される。

「もったいないオバケが来るヨー。限りあるアイテムは大切に、ネ♪」

そして、その際気づいたのは。
雄二の近くに放られた、一冊の大学ノートであった。

「・・・・・??」

首をかしげながらも手を伸ばすレミィ、パラパラとめくるが、記述は特にない。
そう、最初の内側の、「使い方」以外は。
レミィはしばらく「使い方」を眺めると、「AHAHAHAHA!」と声に出して笑った。

「オウ!まさしくDEATH・NOTEネ。ジャパニーズジョークは意外とシュールネッ!!」

新しいおもちゃを手に入れた子供のように、きゃっきゃっと喜ぶレミィ。
一頻り笑って満足した後、次の獲物を求め移動を再会するのであった。

「MurderGameは始まったばかりネ。これからが楽しみヨーッ!」
335補足:2006/10/03(火) 01:20:31 ID:ucHlvp1T0
宮内レミィ
【時間:1日目午後4時過ぎ】
【場所:I−10(琴ヶ崎灯台)】
【所持品:和弓、矢・残り5本(回収したので)、死神のノート、他支給品一式】
【状態:ゲームに乗っている】


向坂雄二  死亡

新城沙織  死亡


(関連・17)(Aルート希望)

以下の話とは相反する内容になっています。

(沙織&雄二関連)
38・うたがわれるもの
111・世界は見えぬ翼
136・How to use
139・後悔の悲鳴と安堵の号泣
144・無題
146・脱出の鍵穴

(レミィ関連)
123・凄いものが出ちゃいました
127・無題
149・三人から四人へ
336決意と惑い:2006/10/03(火) 02:11:45 ID:9G9DP1g4O
「ここは………氷川村かしら?」
地図を見ながら歩いていた太田香奈子は氷川村と思える村の入り口にめぐり着いた。
周辺をよく調べてみるたら、『氷川村』と書かれた看板があった。
「――つまり、これで地図には誤りはないことがわかったってことね」
そう自分に言い聞かせると、地図をバッグにしまって今度は支給品のサブマシンガンと予備のカートリッジを取り出した。

(――村にはゲームに乗った参加者もいるかもしれないけど、人は結構いそうね…………もしかしたら瑞穂にも会えるかもしれない)
親友である藍原瑞穂の顔が一瞬だけ香奈子の脳裏に浮かんだ。
「それに人がいなくても情報や使えそうなものも手に入るかもしれないし……行くしかないわね」
予備のカートリッジをポケットに入れ、村に入ろうとしたその時、ふいに誰かに呼び止められた。

「そこの君、ちょっと待って!」
「ん?」
声がした方へ振り替える。
もちろん、警戒は怠らずにサブマシンガンはいつでも射てるように構えておく。

そこ(といっても少し距離はある)には香奈子と同い年くらいの少年がいた。
「なに? わたしに何か用?」
「呼び止めたりしてごめん。ちょっと聞きたいことがあるだけなんだ。いいかな?」
少年はそう言いながら香奈子に近づいてきた。
「……別にいいけど………銃はこのまま構えさせてもらうわよ?」
そう言いながらサブマシンガンの銃口を少年に向ける。

「ああ、かまわいよ。仮に僕が君を襲おうとしたら遠慮なくそれをぶっぱなしてくれていい」
そう言って少年は香奈子の前方2メートルくらいで足を止めた。
337決意と惑い:2006/10/03(火) 02:13:32 ID:9G9DP1g4O
「自己紹介がまだだったね。僕は氷上シュン」
「太田香奈子よ。それで、用件は?」
「太田さん。相沢祐一、河野貴明、水瀬秋子っていう人を知らないかな?
僕はその3人を探しているんだ」
「いいえ。知らないわ。それに、わたしこの島に来てまともに出会った人はあなたがはじめてだから」
「そうか、ありがとう」
そう言うとシュンという少年は香奈子の横を通り村に入ろうとした。

「あ。待って!」
「ん? なんだい?」
今度は香奈子がシュンを呼び止める。
「わたしも人を探しているの」
「そうなんだ。奇遇だね」
「藍原瑞穂って子と月島瑠璃子って子なんだけど知らないかしら?」
「……ごめん。僕もこの島に来てまともに会話をした人は今はもう君だけなんだ」
「そう………今は?」
「ああ。君に会う前に草壁優季、月宮あゆって女の子と出会ったんだ。
だけど………ゲームに乗った誰かの手によって殺されてしまった…………」
「そう……」
――よく見るとシュンの握られた右手は震えているようだった。
聞かないほうがよかっただろうか、と香奈子は思った。
しかしシュンは話を続けた。
「僕なんかよりもぜんぜん強い人たちだった。それなのに、銃弾の弾を1発受けただけで簡単に死んでしまった…………
だから僕は、彼女たちが伝えられなかったことを代わりに伝えてあげるためにさっき言った3人を探している」
シュンの顔には涙も悲しみの色もなかった。
ただ、そこにあったのは決意という色に満ちた男の顔だった。

「あ……ごめんね。こんな話に付き合ってもらっちゃって」
「いえ……わたしこそ、急いでいるところを呼び止めちゃって………」
2人は互いにすまないと頭を下げた。
338決意と惑い:2006/10/03(火) 02:17:55 ID:9G9DP1g4O
「……ねえ。氷上くんはこの村にははじめてきたの?」
「うん。3人に関する情報やなにか使えそうなものが手に入るかもしれないしね」
「………じゃあ、もしよかったら今は一緒に行動しない?
わたしも氷上くんと同じ目的でここに来たばかりなんだけど………」
「…………そうだね。そのほうが少しは安全かもしれないし、情報とかも集められそうだ。
………それに、お互い探している人を見つけやすいかもしれない」
シュンはうんと頷いたあと「よろしく頼むよ太田さん」と言って香奈子に手を差し出してきた。


「………………」
シュンが手を差し出してきた瞬間、自分で言っておいてなんだが、一緒に行動して大丈夫だろうか、と香奈子は内心悩みはじめた。
なぜなら香奈子は親友の瑞穂はともかく、瑠璃子を探している理由はほかでもなく『殺す』ためだからだ。
もちろん香奈子はシュンにそのことを言っていない。
きっとシュンは瑠璃子は香奈子の親友の一人だと思っているだろう。
――もし、この後仮に瑠璃子が見つかった場合、自分はシュンの前で瑠璃子を殺せるだろうか?
香奈子の心にそんな疑問が浮かんだ。

「太田さん?」
「あ……」
シュンの声を聞いて香奈子ハッと我に返った。
目の前にはまだ差し出されたシュンの手があった。
「大丈夫? 疲れてるみたいに見えるけど………」
「ごめん……大丈夫だから……」
そう言いながら香奈子も手を差し出した。
「そうかい? それならいいんだけど……あまり無理はしないほうがいいよ?」
「うん……ありがとう」
そうして2人は握手をかわした。
ただ、香奈子のほうははシュンをだましているんじゃないかということに内心心を痛めた。

339決意と惑い:2006/10/03(火) 02:18:44 ID:9G9DP1g4O

「太田さん。これが僕の支給品なんだけど……」
そう言いながらシュンが自分のバッグから取り出したのは狙撃銃――ドラグノフだった。

「人を殺す気なんてないけど、防衛や威嚇に………ね」
「そ…そう」
香奈子はとりあえず相づちをうった。
しかし、少なくとも1人殺そうとしている香奈子にとって誰も殺す気はないというシュンは別の世界の人に見えた。
「よし。それじゃあ行こうか」
シュンはドラグノフを肩にかけると先に歩きだした。
それに続いて香奈子も再び歩きはじめた。

(せめて今は――氷上くんといるときだけは瑠璃子さんと出会わないでほしい……)
そう心の中で呟きながら――――

340決意と惑い:2006/10/03(火) 02:23:02 ID:9G9DP1g4O
 【時間:1日目午後2時30分過ぎ】
 【場所:I−06】

 太田香奈子
 【所持品:H&K SMG U(残弾30/30)、予備カートリッジ(30発入り)×5、他支給品一式】
 【状態:健康。内心迷いあり。目標・瑞穂を探す。瑠璃子を見つけて殺す】

 氷上シュン
 【所持品:ドラグノフ(残弾10/10)、他支給品一式】
 【状態:健康。目標・祐一、貴明、秋子を探す】

 【備考】
・香奈子とシュンは一緒に行動
・021、047の続きです
341変態とガセネタ:2006/10/03(火) 02:32:55 ID:NX9wMosL0
柏木耕一と長岡志保の壮絶な鬼ごっこはかれこれ50分程続いていた。
「ハア、ハア・・・・。待てってば!」
「ゼェ、ゼェ・・・。いつまで追ってくるのよ、この変態! 」
「だから、それは誤解だ!俺は変態じゃない!」
「私がいくら魅力的だからって、しつこいのよ!」
二人は叫びながらも、鬼ごっこを続けている。

鬼の力が制限されているとはいえ、
常人より遥かに優れた身体能力を持つ筈である耕一。
何故、普通の女子高生である志保相手にマラソン勝負で追いつけないのか。

全ての理由は支給品の差にあった。
志保の支給品は、新聞紙。
最軽量の部類の装備である。
・・・・新聞紙が装備と呼べる代物であるかは、いささか疑問であるが。

一方耕一の支給品は、先の尖っていない大きなハンマーであった。
成る程、この武器なら近接戦闘では強力な威力を発揮するであろう。

相手が刀やナイフで受けようとしても、その程度の防御は容易に粉砕出来るに違いない。
高い身体能力を持つ耕一にとって、「当たり」と言える武器だろう。
しかし一つ、この状況においては大きな問題があった。


「くそっ、重い・・・・・。」
重い。とにかく、重い。
耕一の体力は、重い荷物と長時間の鬼ごっこにより、限界が近付いていた。

c−5地点にさしかかった辺りで、少しずつ両者の間隔は広まっていった。
――逃げ切れる。そう確信した直後だった。
志保は傍の茂みに、何か光る物体が見えた気がした。
342変態とガセネタ:2006/10/03(火) 02:34:34 ID:NX9wMosL0
とっさにヘッドスライディングのような体勢で滑り込まなければ、
彼女はここでゲーム退場になっていたであろう。
1秒前まで彼女の首があった空間を、鋭利な日本刀が切り裂いていた。

茂みから日本刀を携え出てきたのは、
女子84番、姫川琴音だった。


「い、一体何なのよ、あんた!!」
倒れた体勢のまま叫ぶ。

「ははは、早く死んで死んで死んで時間無い時間無い時間無い」
琴音はうわごとを呟きながら、倒れている志保に向かって日本刀を振りかぶった。

「くぅ!!」
琴音が刀を振り降ろす前に反応し、間一髪で地面を転がり狂気の一閃を凌ぐ志保。
しかし、再び顔を上げた時には、既に琴音は次の一撃を振り下ろしていた。

避けきれない。そう確信した志保には
「きゃあああああああああああぁぁ!!」
目をつぶり悲鳴をあげる事しか出来なかった。
343変態とガセネタ:2006/10/03(火) 02:35:55 ID:NX9wMosL0


しかし、いつまでたっても琴音の斬撃が志保を捉える事は無かった。


「やめろぉーーーーーっっ!!!!」
ドゴッ!!
ズザザザザッッ!!

派手な効果音と共に、姫川琴音は吹き飛び、地面に倒れていた。
追いついた耕一が体当たりを決めていたのである。
大きな体格の耕一の体当たりは破壊力十分で、琴音は完全に気絶していた。


耕一は呆然としている志保に手を差し伸べながら言った。
「大丈夫か?」
志保は、その手を取り立ち上がった。
「ちょ、ちょっと足を擦り剥いちゃったけど、大丈夫よ、ありがとう。」
倒れている琴音を見据える。
「この子確か私の学校の後輩よ。大人しそうな子だったのに、なんでいきなり・・・。」
「それは分からないけど、とにかくこの場を離れよう。
さっきの騒ぎで人が集まってくるかもしれない。」
そう、このゲームでは騒ぎがあった場所に人が集まる。
もしかしたら殺し合いを止めようとする勇敢な者が来るかもしれない。
しかし、漁夫の利を得ようとする殺戮者もまた、呼び寄せてしまうのだ。


耕一は琴音の日本刀を拾い、すぐさま歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ変態さん!私も行くわ!」
「俺は変態じゃねえっ!」
かくして変態・ガセネタのコンビが誕生した。
344変態とガセネタ:2006/10/03(火) 02:37:25 ID:NX9wMosL0
時間:1日目13時ごろ】
【場所:c-5、街道】

 姫川琴音
【持ち物:支給品一式】
【状態:気絶。吹き飛ばされた際に数箇所打撲、擦り傷。23時間後に首輪爆発】
 
 長岡志保
【持ち物:新聞紙、支給品一式】
【状態:疲労、足に軽いかすり傷】

 柏木耕一
【持ち物:日本刀、大きなハンマー、支給品一式】
【状態:疲労】

*(ルートB、H系共通ルート、関連は029、122)
*ルートB、H系で現在投稿されている最後の作品は>>336-340。 間違ってたらごめんw)
345始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:38:51 ID:ZKw0/d2r0
「おいっ、どうすんだよ!?」
「ちっ! あの馬鹿……っ」

 走り去った柏木梓(017)をそれぞれが唖然と見送る中、いち早く我に返った巳間晴香(105)はその背を追い掛ける。
 その勢いに押されたのか、藤田浩之(089)も駆け出そうとするが―――

「待てうーひろ。るー達も早くこの場から離れるぞ」
「離れるって……追わないのかよ!?」
「当然だ。何の義理がある。うーはるが追ったから問題ない。だが、少し騒ぎすぎたぞ」

 反論は許さないと、鋭い眼つきで皆を見渡して行動を制止させる。
 るーこは不満そうに眉を顰める浩之を流し、ちらりと、川名みさき(029)へと目配せした。
 勿論、視線など感じる事ができないみさきに代わり、その親友である深山雪見(109)がみさきの耳元に口を寄せた。

「……みさき。どう?」
「ダメっ……距離を縮めてるっ」

 みさきが顔を青褪めさせて雪見へと告げる。すぐさま彼女はるーこへと首を横に振った。
 その反応に、るーこは眉を顰めた。

「緊急事態だ。マーダーが動いたぞ」
「ま、マジでっ!?」
「おい春原っ。声がデカいって……!」

 皆を見渡して一言。機嫌の悪そうな顔でるーこが唐突に口火を切る。
 それに驚いた春原陽平(058)を浩之が宥めた。当然、言葉に出さずとも皆驚いていたが、その役目を担ってくれた春原のおかげで幾分か冷静さを取り戻す。
 各々が緊張の眼差しで、自身の武器を手に取った。
 その行為はマーダーに警戒を促す可能性があるが、即座に反撃できる態勢を取っておかなくては、あっという間に全滅などという事態になってしまう。
 大半がこのことを理解していないが、最も命を保障をしてくれるのは武器だけなのである。
 防衛手段を反射的に出してしまうのは仕方ないことだ。
 その結果、マーダーに感付かせてしまうとしても。
346始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:41:10 ID:ZKw0/d2r0
(ん? 気付かれたか……いや、位置の特定がまだのようだな……
 フン。感の良い奴もいるようだが、どっちにしろ丸見えだ)

 彼等を先程から付け回していた巳間良祐(106)は、獲物が慌てふためく様を見て口許を吊り上げた。
 自身の存在は把握できていても、そんなに目線を引っ切り無しに走らせては、居場所まで特定できていないと言わんばかりではないか。
 当然、彼等から見える位置にいるほど、良祐だって馬鹿ではない。
 木々が生い茂る中、その一つの茂みに隠れているが、よほどの視力と注意力がなければ見つけられはしないだろう。
 彼は小さな視界から大きな風景をみればいいが、向こうからしたら大きな視界の中で一つの風景を探さなければならないのだ。
 そんな悠長などないし、与えるつもりもない。
 最低一人。確実に一人は奇襲で片付く。それを遂行すれば、即座にこの場から離脱すればいい。
 彼等は驚き、恐怖するだろう。仲間の一人の無残な姿に。
 その時が、第二の好機。
 怯える兎を順々に狩っていけばいい。所詮は烏合の衆、直に全滅だ。

(さて……。まずは、誰でいくか)

 良祐は複数の獲物へと目を走らせる。
 男二人は後回しだ。女性の死に一番敏感なのはこの二人だろう。それが死ねば勝手に混乱して自滅してくれるかもしれない。
 何よりも、後回しにしたところで脅威になるとは思っていない。ただの学生に何が出来るのかと。
 ならば女ということになるが、良祐は三人の中では誰を初めに狙うかは、追跡していた時から実のところ決めていたのだ。
 
(―――あの黒髪の女……。現実を一番理解してなさそうなんでな。此処が何処だか解らせてやるよ)

 良祐の目線は、明確にみさきの姿を捉えていた。
 彼女が盲目であることは知らないが、彼等の話の節々は断片的に聞こえてきたのだ。
 その中で最も陽気にしていた少女。まったくもって気に喰わなかった。
 良祐はこのゲームに真剣に望んでいる。ルールに沿って懸命に努力をしている。
 なのに何だ? 奴等の態度は。
 反主催者を掲げ、弱者同士で徒党を組んで、一体何をするつもりなのかと。
347始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:43:13 ID:ZKw0/d2r0
(主催者を倒して脱出する? 馬鹿が……。現実性も皆無な話をして恥ずかしくないのか。
 傍から見れば滑稽以外の何者でもない。阿呆な理想論を疑わない奴の気が知れん。理解に苦しむな……)

 根拠もない希望を持つ参加者のことを考え出すと、虫唾が走るほど不愉快な気分になる。
 良祐が殺した二人もそうだ。嬉しそうに妄想の中の未来を語る姿は不憫に感じるほど無様であった。
 だから躊躇なく殺した。
 ヤル気のない奴は死んで理解させる必要があるのだ。
 此処が何処で、何をするために集まったのかをだ。

(―――殺し合いだ。それが至上目的のはずだろ。一方的な虐殺なんて、虚しいことを俺にさせるなよ)

 良祐は葉を揺らしながら散弾銃を構えた。
 草葉が少し邪魔であったが、弾道が逸れるほどでもないだろう。
 遠すぎず近すぎずの距離であったが、彼等は迂闊なことに一塊に固まっていた。
 奇襲に警戒して、その事実にまったく気付いていない。
 彼は目を細めて小さく舌打ちする。
 何故こうも危機管理がなってないのか。眩暈を起こすほど呆れ果ててしまう。
 無能な弱者はふるいに掛けられて当然だ。
 死ねば弱者。生きれば強者。至極簡単な図式である。
 殺してくださいと言わんばかりの彼等は、一体どちらなのか。

(言うまでもないだろ……。結果は推して知れだ)

 良祐は冷徹に目を細めて―――引き金を引いた。
348始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:44:27 ID:ZKw0/d2r0
 ―――浩之は思う。
 それは、本当に偶然であった。
 
 彼等が襲撃に目を光らせていたとき、横にいたみさきの肩が小さく震えていることに気付く。
 当然だろう。姿の見えない襲撃者のことを想像すると自分だって怖い。
 だが、みさきは文字通り見えないのだ。相手の姿どころか、周りの風景も何もかもが暗闇なのだ。
 だから、彼は小さく声を掛けた。

「―――川名。心配すんなよ。こんなくだらねぇ所で死んでるようじゃ、カレーなんてもう二度と食えないぜ?」
「え、そうなのかな……」
「最後にカレー食べたのはいつだ?」
「えっと……一昨日かな。……あまり味わってなかったよ〜」
「あ〜あ、なるほどね。それが最後のカレーとなるわけだな」
「……ふふ。それはイヤだなぁ……」

 恐怖は決して薄まることはないが、それでもみさきを口許を小さく綻ばせる。
 日常の一時が、頭の片隅で駆け巡った。 
 それを思い出してしまうと、こんな理不尽な状況で死んで堪るか、という帰心も湧いてくる。
 絶対に諦めないで絶対に皆で帰る。そう何度も何度も頷いて、浩之の言葉を噛み締めたとき、既に震えは止まっていた。

「ありがとね、浩之君……」
「ん、気にすんなって」

 目が見えないというのに、それでも浩之を真っ直ぐ見詰めるみさき。
 澄んだ笑顔の表情に、浩之は照れ臭くなりそっぽを向く。
 ―――そこで見つけた。
 茂みの中で小さく蠢く小枝の姿に。
 浩之がその小さな光景を見つけたとき、そこから見え隠れする殺意の銃口を明確に感じ取る。
 硬直しながら、何故か銃口の向きと弾道を想像していた。
 その銃口の先―――みさきの姿を確認した時、彼は叫んでいた。

「―――川名っ!!」
349始まりの狩猟:2006/10/03(火) 05:47:43 ID:ZKw0/d2r0
 叫んだと同時、浩之は手に持つ銃を投げ、代わりに肩に下げた由綺のバックをみさきの眼前へと放った。
 そして鳴り響く銃声。

「きゃぁ―――っ!?」
「うわっ」
「―――くっ」

 宙に浮くバックが勢いよく踊り、中の食料や水、様々な物品がズタズタとなって辺りに散らばる。
 ―――これも運とタイミングが良かった。
 首から下を狙われていたら、完全にアウトだったのだから。
 みさきは前からの衝撃に押されて尻餅をつき、浩之もバックを放った不安定な姿勢によりたたらを踏んだ。
 春原と雪見も余りの衝撃音に身を竦ませたが、ただ一人―――るーこだけは全てにおいて早かった。 
 みさきの荷物から転がり出た物を即座に掴むと手を振り上げる。

「うーひろよくやった! うーみさ借りるぞ! ―――散れっ!」

 手に持つみさきの支給品―――スタン・グレネードを先の地面へと叩きつける。
 途端―――広がる閃光と耳朶を強引に叩く不快な音が辺り全域に広がった。
  
「―――なんだとっ!?」

 白い風景の中、確かに戸惑う男の声が聞こえてきた。
 浩之達四人は、あらかじめ閃光弾を使おうとするるーこの姿だけは声と共に朧ろげながらも目にしており、視界を閉じて耳を塞いでいた。
 だが、閃光弾を保持しているという前知識がなかった良祐は完全に虚をつかれ、目を一時的に焼かれて前後不全となる。
 彼を倒すまたとないチャンスだが、実際良祐の位置を浩之以外は未だに把握していなかったし、この光の前では探すことも出来ないだろう。
 ならば、やることは一つ

「るー! おいうーへい、何やってる! 今度こそ死ぬぞっ」
「ちょ、いきなり閃光弾を使われた身にもなってもらえますかねぇ!?」
「グダグダ言うな、いいから逃げるぞ!」
350名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 05:48:58 ID:Y0HdMifUO
回避
351始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:30:54 ID:ZKw0/d2r0
 春原は散弾銃と閃光弾の二発の衝撃に驚いて引っくり返っていたが、るーこが強引に引き起こして、その手を取って走り出す。
 他の三人も心配だが、襲撃者が銃を持ってるという事実が露呈した今、集団で逃走するのは得策ではない。
 全員が安全に散らばれば最善だが、いざとなったらそれぞれに囮となってもらわなくてはならない。追われる側は運が悪かったと。
 酷な考えだが、そうしなければ誰かが生き残る可能性を失くしてしまう。
 るーこは全滅の事態だけは避けたかった。それ故の考えだ。

 そして、雪見も回復した不鮮明な視界を頼りに駆け出そうとするが―――

「みさきっ? 何処にいるのみさき!?」
『私は大丈夫だよ! だから雪ちゃんも早く逃げてっ』
「駄目よ! あなたは私がいないと―――」
『いいから行って! 信じて雪ちゃん。絶対にまた会える……約束だよ!』
「―――っ。必ずよ!」

 ハンデを背負う親友の安否が、一番に雪見の頭を掠める。
 だが、それでも雪見は歯を食いしばりながら、全速力でその場から離れた。
 身が裂けるほど心配だが、今さら戻ることも出来ない。
 みさきの親友であると自負している自分が、彼女を信じてやらなくてどうする。
 約束したのだ。それまでは死ぬわけにはいかない。お互いにだ。
 
(―――約束破ったら承知しないわよ―――みさきっ!)

 だから、雪見は彼に託した。
 光に染まる光景の中で、微かに浮んだ一つの影に。
352始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:32:33 ID:ZKw0/d2r0
(あ〜あ……。結構ピンチだよ……)

 雪見を送り出した後も、みさきはその場を動けないでいた。
 腰を抜かしていたのだ。
 実際、浩之の対応が遅れていれば、完全に顔面へと銃弾が突き刺さっていたのだから。
 眼前で穿たれまくるバックの音を聞いていた時点で、彼女は腰を落としていた。
 諦めたくない。諦めたくはないが、どうしようもなかった。
 再び震え上がる衝動を抑えていた時―――

「―――川名ぁ! 早く乗れ!!」
「ひ、浩之君……」

 そこに颯爽と現れたのが、自転車に乗った浩之だった。
 彼もるーこ同様、いち早く回復して自転車を急いで組み立てていたのだ。
 逃げる上では、これほど心強いものはない。
 だが、切羽詰っていたのか、浩之は投げた銃を回収できずにいた。
 何が何だか分からぬ内に捨ててしまったのだ。今も持っている気で、まったく落とした事実に気付いていない。
 そんな浩之でも、何時までたっても動かないみさきだけは忘れなかった。
 流れ弾で何処か怪我をしているのではと、内心ひやっとしたが、それは杞憂である。
 彼女はただ単に腰を抜かしていただけなのだから。

「おい! 荷物集めたか!? さっさと乗れ!」
「で、でも……それ荷台付いていないんじゃ……」
「立って乗れば問題ないって! ほらっ早くしろ」
「こ、腰が……」
「腕に力は入るだろ! 重心は全部預けていいから、急いで離れるぞ!」

 みさきの二の句を告げさせぬ勢いで強引に後輪のステップに足を乗せさて、彼女の体温を感じながら浩之はペダルを思いっきり踏む。
 徐々に速度を増しながら、彼等はその場から離脱した。
353始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:34:15 ID:ZKw0/d2r0
「―――やってくれる……」

 良祐は目が正常に戻るまで、元いた場所から動くことはなかった。
 スタン・グレネードの閃光を受けた時、彼はこの奇襲が失敗したことに気付いた。
 だが、向こうは逃走を優先にし、こちらへ反撃する意思を見せなかったのだ。
 ならば無闇に姿を晒す真似はするべきではない。
 どの道、閃光で焼かれた目と、平衡感覚を失った聴覚ではどうしようもない。
 だから、良祐は彼等の逃走を見逃す代わりに、自身の感覚の回復へと費やした。
 そして、行動に支障がないほどにまで回復した今、やるべきことは一つだ。

「思い違いだったな。奴等も必死というわけか……。―――面白い」

 物怖じせず茂みから出てきた良祐は、浩之が投げ捨てた小銃を拾う。
 銃弾数を確認して、彼は不適に笑った。
 
「さぁ……狩りはまだ終わっていないぞ。無事に逃げ切れるなどと……甘いことは考えちゃいないよな?」
354始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:35:53 ID:ZKw0/d2r0
 『藤田浩之(089)』
 【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
 【場所:G−02(F−03方面へ逃走)】
 【所持品:折りたたみ式自転車・予備弾(30×2)・89式小銃用銃剣・クッキー・支給品一式】
 【状態:普通。みさきと一緒に良祐から逃げる】

 『春原陽平(058)』
 【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
 【場所:G−02(F−02方面へ逃走)】
 【所持品:スタンガン・支給品一式】
 【状態:普通。るーこと一緒に良祐から逃げる】

 『ルーシー・マリア・ミソラ(120)』
 【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
 【場所:G−02(F−02方面へ逃走)】
 【所持品:IMI マイクロUZI 残弾数(30/30)・予備カートリッジ(30発入×5)・支給品一式】
 【状態:普通。春原と一緒に良祐から逃げる】

 『川名みさき(029)』
 【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
 【場所:G−02(F−03方面へ逃走)】
 【所持品:スタングレネード(2/3)・支給品一式】
 【状態:普通。浩之と一緒に良祐から逃げる】
355始まりの狩猟:2006/10/03(火) 06:43:15 ID:ZKw0/d2r0
 『深山雪見(109)』
 【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
 【場所:G−02(G−03方面へ逃走)】
 【所持品:SIG(P232)残弾数(7/7)・支給品一式】
 【状態:普通。良祐から逃げる】

 『巳間良祐(106)』
 【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
 【場所:G−02】
 【所持品:ベネリM3 残弾数(4/7)・89式小銃 弾数数(22/22)・支給品一式・草壁優季の支給品】
 【状態:普通。一方を追撃(次の書き手さんにおまかせ)】

 『巳間晴香(105)』
 【時間:1日目午後5時30分過ぎ】
 【場所:G−02】
 【所持品:ボウガン・支給品一式】
 【状態:普通。梓を追う】

 「その他:147の続きです。B関連のルートで」
356贖罪:2006/10/03(火) 11:45:17 ID:iedY20OK0
「怖い・・・、怖いよ・・・。」
水瀬名雪は震えながらとぼとぼと歩いていた。
今も時折銃声が聞こえてくる。
その銃声が、ゲームが着々と進行している事を報せていた。
このゲームにおいては、無闇に動き回るよりも一箇所に留まった方が敵と出くわす可能性は下がるのだが、
今の彼女にはそんな判断力はある筈も無かった。

なんでこんな事になったの?どうして?
怖い怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイ
祐一、お母さん、どこにいるの助けて助けて・・・・

名雪の精神は、少しずつ蝕まれていっていた。
極度の緊張感と恐怖の所為で、失われていく冷静さ。
疲労していく精神。
そして、名雪の精神に致命傷を与える出来事が起こった。


「いやっ・・・、いやぁぁぁぁぁ!!」
視界に入ったのは、無残にも眉間を打ち抜かれた少女――緒方理奈の死体だった。
これは夢だ。
こんなの現実である筈が無い、きっともう少ししたら目が醒めるんだ、
そしてお母さんが作ったパンを食べて、祐一と一緒にまた学校に行くんだ
これは嘘、ウソダウソダウソダ・・・・

その時
ガサリ・・・・
後ろの森の茂みの中から、微かに物音がした。
「誰っ!?」
慌てて振り返る名雪を待っていたのは、

「チッ!」
舌打ちとともに飛来する、スペツナズナイフの刃であった。
357贖罪:2006/10/03(火) 11:46:47 ID:iedY20OK0


――伊吹公子は緒方理奈の死体の傍で、待ち伏せを続けていた。
そして彼女の目論見通り、愚かな獲物がまたやってきた。
死体を見た少女は立ち止まっている。
仕留めるのは容易いだろう。
彼女は茂みに隠れたまま銃で打ち抜くか、
それとも後ろから近付いてスペンツズナイフで直接斬りつけるか。

思考を巡らせた末、直接斬りつける事にした。
弾数には限りがある。
このような隙だらけの少女相手に限りある弾数を消費していては、
今後やっていけないだろう。

そうして背後から近付こうとした彼女であったが、それが大きな判断ミスであった。
実戦経験の無い彼女に、物音を立てずに忍び寄る事など出来る筈も無かったのだ。

物音に気付いた獲物がこちらに振り返った瞬間、直接斬りつけるのは諦め、
咄嗟にナイフを発射したが慌てていた為に彼女の狙い通りの軌道には飛んでくれなかった。


ザクッ!!
自分の肩に何か違和感を感じ、自分の肩を見やる名雪。

「あああああああああああああああぁぁぁぁっ!!!!」
名雪の肩にナイフの刃が突き刺さっていた。激痛が走る。

顔を上げた名雪の視界に映ったのは、返り血を浴びた伊吹公子の姿だった。
「いやぁぁぁぁ!!!」
彼女の姿を視界に捉えた瞬間、名雪は一目散に逃げ出していた。
358贖罪:2006/10/03(火) 11:48:27 ID:iedY20OK0
急いで二連式デリンジャーを取り出し、名雪の背中に向かって構える伊吹公子。
しかし何かの物音に気付き、咄嗟にそちらに構え直して銃を発射した。

「くっ!!」
何とか反応して横っ飛びし、すんでの所で弾丸を避けた男の名は、柳川祐也。
この騒ぎを聞きつけ、殺戮者を止める為に駆けつけてきたのである。

ダンッダンッダンッ!!
「な・・・、何で当たらないのよぉ!!!」
狼狽しながらも、連続して弾を発射する公子。
その全てを、柳川は人間離れした反応速度ですんでのところで回避していた。
実戦経験の無い普通の女性である公子と、
制限されているとはいえ鬼の力を有し、職業柄銃の扱いにも慣れている柳川。
決着が着くのは一瞬だった。

ダンッ!!
柳川のコルト・ディテクティブスペシャルが一回だけ火を噴き、
彼の一撃は、正確に公子を捉えていた。

伊吹公子は、彼女の犯した唯一の殺人の被害者――緒方里奈と同じく眉間を撃ちぬかれていた。
まるでその罪を贖うかのように。
彼女は死の際に妹や祐介の今後を案じる暇も与えられず、ゲームから退場する事となった・・・。


「くそっ、こんな女性までこんなゲームに乗ってしまうとはな・・・」
柳川は公子の二連式デリンジャーを拾い、駆け出そうとし、立ち止まった。

「・・・・・・。」
振り返り、座り込み、伊吹公子の見開かれた目蓋をそっと閉じた。
例え相手が殺戮者であろうとも、殺人は殺人。
こんな事で贖罪になるとは思っていないが、何故かそうしたくなったのだ。
そうして再び立ち上がり、今度こそ振り返らずに駆け出した。
359贖罪:2006/10/03(火) 11:51:54 ID:iedY20OK0
【時間:1日目午後5時50分頃】
 【場所:E−05】
 
 柳川祐也
 【所持品@:出刃包丁/ハンガー/楓の武器であるコルト・ディテクティブスペシャル(弾数10内装弾3)】
 【所持品A二連式デリンジャー(残弾1発)、自分と楓の支給品一式】
 【状況:正常。ゲームを止めようとしている】

 伊吹公子
 【所持品:支給品一式】
 【状態:死亡】

 水瀬名雪
 【持ち物:GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)
  赤いルージュ型拳銃 弾1発入り、青酸カリ入り青いマニキュア】
 【状況:肩に刺し傷。発狂寸前。】
 【その他:制服姿、電話の機能に気が付いていない】

*(ルートB系共通ルート、関連は013、119、142)
*(H系に組み込む場合は名雪の持ち物だけ改変が必要です)
*(ルートB系で現在投稿されている最後の作品は>>345-355
360アジモフ・コード ◆6cJovHvx6g :2006/10/03(火) 12:01:56 ID:Dyx5dcL60
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
    また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
    ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、
    自己を守らなければならない。

アイザック・アジモフの小説から生まれ、その後の多くのロボット作品に大きな影響を与えたという上記の三箇条。
ロボット三原則とよばれるこれらは実際のロボットを開発する上でも大きな指針となっている。
無論、この三原則はメイドロボにも適用されており、マルチやセリオ、イルファもこの原則に従うようになっている。
ちなみにこれらはよく誤解されるのだが『ロボットが守らなければならない規則』ではない。
設計時から既に組み込まれているものである為、『ロボットが持っているべき本能』と表現するのが正しい。

上記の三原則は結構有名な話なので知っている方も多いと思うが、実はこれには続きがある。
この三原則のみでは優先順位を決めることが困難なのである。
例えばAがBに危害を加えられようとしている時にBに危害を加えなければBを止められない場合、
三原則では判断が出来ないのである。
361アジモフ・コード ◆6cJovHvx6g :2006/10/03(火) 12:03:08 ID:Dyx5dcL60
このような矛盾や問題点を解決する為に、後に第零法則とよばれるものが追加される。
これは第一条の人間が人類に置き換わったものであり、これにより第一条の文末に
「第零法則に反する場合はこの限りではない」という一文が付される事となる。
これにより悪意ある人物によって大多数の人間が脅かされる場合、
この悪意ある人物を排除することが可能になり、その究極が人類なのである。
また、第零法則は三原則と違い、ロボット自身が所有者の命令や自らの知能・経験。
過去の歴史や未来の予測などから優先順位を考えて導き出されるものなのである。

話を沖木島に戻そう。

茂みの中でイルファは考えていた。
支給品はマカロフ。俗に言う当たり武器だ。
それ故に人を殺すという事が考えに直結するのは自明の事だ。

基本的にメイドロボである私が人を殺す事は許されない。
瑠璃様や珊瑚様も許してくれないだろう。
だけど私が殺さない事を選んだら、もしかしたら殺さなかった人が瑠璃様達を殺めるかもしれない。
私が人を殺す事で瑠璃様達が殺されないかもしれない。
私が破壊されてもいけない。私が破壊されていいのは命と引き換えに瑠璃様達を守れる時のみなのだ。
362アジモフ・コード ◆6cJovHvx6g :2006/10/03(火) 12:03:46 ID:Dyx5dcL60
瑠璃様達とそれ以外を比較した場合、どちらがより大切か。
そんなのは考えるまでもない。
たとえ人類全てと瑠璃様達でも瑠璃様達の方が大切なのだから。

(瑠璃様……珊瑚様……)
(やっぱり私は愛と本能のあいだで揺れ動くいけないメイドロボです……)

【9イルファ】
【時間:午後1時】
【場所:C-02、茂みの中】
【支給品:マカロフ(装弾数8予備弾16)デイバック】
【状態:マーダー】
目的:瑠璃・珊瑚・貴明以外の全員の排除
363名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 12:07:52 ID:Dyx5dcL60
贖罪にて二連式デリンジャーから4発も弾丸が発射されている件について。
二連式デリンジャーの装弾数は2発だよ。
36410:2006/10/03(火) 12:15:18 ID:tuabi/6G0
>>360
イルファさんには三原則は組み込まれてないよ
365 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 12:37:28 ID:82MYCyTu0
「罪と罰」

 場は膠着状態に陥っていた。
緒方英二と柊勝平はお互いに動けないでいる。勝平から見れば下手に動けば撃たれてしまうし、英二から見れば下手に撃てば盾にされている少年に当たってしまう。
 北川は勝平の足元で悶絶しているし、観鈴と芽衣は完全に場の空気に押されていた。
 杏は杏で少し落ち着きを取り戻しつつあるものの、完全に回復しているわけではない。妹の恋人に襲われたという信じたくない現実を未だに受け入れられないでいた。
「あ」
と、芽衣が小さな声を上げた。彼女のディパックがもぞもぞと動き、そこからボタンがひょっこりと顔を出す。
「ボタン!」
杏が叫ぶと、うり坊はうれしそうにご主人様の足元へ走りよった。
「ああその子、杏さんのペットだっけ」
それだけ言うと勝平はそれに特に注意を払うことなく、ボタンは無事、杏のもとへと走りつく。
「あんたまで、こんなところに来てたの?」
「ブヒ。ブヒブヒ」
杏の心配そうな声を無視するようにうれしそうに声を上げるボタン。だが少しすると、ご主人の沈痛な面持ちに気付いたのか心配そうな声を上げる。
「ブヒ?」
「大丈夫よ、ボタン」
優しく言ってうり坊の頭をなでる。そして改めて現状を見た。
 不思議だ。心が落ち着いてきている。ボタンのおかげだろう。 責任感、というやつかもしれない。ボタンを守らねば、という。
 あるいは見栄、ボタンの前では情けない姿をさらせない、という。
 ああもう、何だっていい。理由をうだうだ考えるほど自分は遠回りにできていないのだ。自分は復活した。だから、この状況をどうにかする。
「あ、あの」
「大丈夫。ありがとね」
自分の傍らに立つ少女にそう言って顔を上げた。
366 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 12:38:41 ID:82MYCyTu0
 英二と勝平はいまだに相沢祐一を間にいれたまま、にらみ合っていた。芽衣も突っ立ったままだ。だが北川は先ほどと違い、こちらに顔を向けていた。
 ぐっと頷く。それで相手もなんとなく察したようだった。少し心配した様子だったがあえてそこは無視。
 不恰好にも自分の荷物は向こうにおいてきてしまった。自分に残されたのはボタンだけ。だが、これで十分。
「ボタン、ラグビーボール」
小さな声で言ってパチンと指を鳴らした。
 大体なにやってんだ、あの女男は。こんな状況であっさりパニックになりくさりやがって、こら。それでも椋の恋人か。あの子は精神的にもろいんだから、こんな時に支え

られんでどうする。
 ああ、考え出したらなんかだんだん腹立ってきた。何が『人間の脳ってすっごい綺麗なんだよー』だ。エド・ゲインかっつーの。親父の精子まで遡ってやり直して来い、ボ

ケが。もう、土下座でも許さん。修正してやる。
 戻ったらピンクフリルの服着せて春原の部屋に監禁の刑だ。ケツの穴ほられれば、ちったぁしおらしくなるだろ。
 そんな調子で一しきり、勝平に対する恨みを晴らす方法を頭の中で列挙した後、狙いを定める。
 向こうにいる二人組みもこちらが何かやりそうな気配に気付いたようだ。
「取引をしないか?」
だが、それを一切顔には出さず、英二は勝平にそう言った。注意を引きつけてくれるらしい。
「取引?」
「そう、こちらの要求はその少年を離してこの場から去ってること、それさえしてくればいい。こちらも君には危害を加えないことを約束しよう」
「ふふふ、駄目だよ。土産話が少なくなっちゃうからね、僕は椋さんをあんまり退屈させたくないからね。それって男として結構失格じゃない」
「そうか、じゃあ一応言っておくが……」
「なんだい?」
勝平はぐっと身を硬くして英二を注視する。
「僕はセンスのない人間が嫌いでね、もしそんな土産話を喜んで聞いてくれるような女の子なら君の趣味は間違ってもセンスがいいとは言えない」
「っ! 椋さんのことをバカに……!!」
だが勝平が口にできたのはそこまでだった。
367 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 12:39:51 ID:82MYCyTu0
「タッチ、ダーウン!!」
元気よくそう言って杏がボタンを投げつける!
「おごっ!」
妙な叫びを口にし、勝平の小さな頭部が揺れた。
「相沢!」
その隙を逃さず、北川は勝平から祐一を強引に奪い去る。ガチャンと途中で何かを落とした音がしたが気にしている暇はない。
「ま、待て!」
そして、
 ドン!
 英二の持つ拳銃が火を噴いた。
「あぐっ!」
勝平の体が不自然にかしいだ。撃たれたのは……左の太もも。
 ドン! ドン!
 英二は勝平から手榴弾を手放させようとしてさらに二発立て続けに撃った。だが、二発とも外れて地面の砂を跳ね上げるだけ。
「ちっ!」
「とんでもないことしてくれたね。これは椋さんのところへ行くための、大事な足なのにさぁぁ!!」
勝平は手榴弾のピンを抜き取ると英二と芽衣に向かって投げつける!
「させるかぁ!」
相沢がそれを阻止しようと落ちていた携帯電話を投げつけた。だが、携帯は勝平の左肩に当たるだけで力なく落ちる。
 手榴弾が放たれた。
「くっ!」
英二は慌てて芽衣の手を引き後ろに下がった。少し遅れて爆発。
「きゃあああ!」
「くっ!」
爆風で芽衣の華奢な体が吹っ飛びかけるのを、英二は必死で止めた。だが、そのために英二は拳銃を落としてしまう。それだけならよかったが、爆風でどこかにとんでいって

しまったらしく、見つけることができない。
「ちっ!」
「あ、あたしが探します」
芽衣がそう言って地面に目を凝らした。緒方も爆炎の向こうを警戒しつつ、あたりに視線を飛ばす。
368 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 12:41:18 ID:82MYCyTu0
一方勝平は足元にあるS&Wに手を拾い上げると、すばやく二度引き金を引いた。まずは北川へ。そして、もう一つは観鈴へ。
「がっ!」
「ぼさっとしない!」
「ひゃうっ!」
「北川!」
同時に四人の声が上がる。北川は幸い、ケプラー製の割烹着にあたるだけで問題なかった。だが、衝撃までは完全に殺せず、うめき声を上げる。
 観鈴も杏がすばやく腕を引っ張り、物陰に隠れたため、無事だった。もっともそれ以前に勝平はリボルバーの構造がいまいち把握できてなかったらしく弾が発射されること

はなかった。
「あれ?」
そんなすっとぼけた声を出すが、あらためて銃を見たところで困惑を消し去ったらしい。
「北川! 大丈夫か!」
その間に相沢は北川に呼びかける。
「へ、平気だ、どうに……か……」
途中で北川の声が途切れ途切れになった。そこでふっと視界が黒味を帯びる。
「少年! 後ろだ!」
英二の声が響いた。
 相沢は慌てて振り返った。小柄な勝平の姿がやたらと大きく見えて。
「そうそう、映画でやってたもんね。確か、ここをまわして、と」
そんなことを言いながらリボルバーの弾倉をまわす。一瞬、北川はハリウッドまで行って勝平の見た映画とやらを作った監督の首を絞める場面を想像してしまった。
「勝平さん!! いい加減にして! 今ならまだ冗談で済むから!!」
杏が、おそらく観鈴から受け取ったのだろう、ショットガンを構えながらそう叫ぶ。それに対して相沢は冗談で済むわけねぇだろ! と反射的に心の中でののしった。こいつのせいで体中ボロボロだ。
「何言ってるのさ。杏さんは椋さんのことが心配じゃないの?」
だが、杏の必死の叫びにも勝平はとんちんかんな答えを返すだけ。だが、その椋の名は確実に杏に動揺をもたらす。
「妹の心配をしないお姉さんなんかいないほうがいいよね」
勝平がそう言って杏に銃口を向ける。だが、その一瞬を相沢は逃さなかった。
369 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 12:43:39 ID:82MYCyTu0

「この、野郎!」
勝平に飛び掛ると銃を持った右手を上に向けさせてギリギリと締め上げる。
「邪魔しないでよっ!」
そう言って自由な左手で相沢の腹を殴りつけようとしたが、相沢ももう片方の手でそれを押さえる。
「ぐっ」
そして、そこで勝平の動きが鈍くなった。力をこめたせいで足からの出血がひどくなったのが原因だろう。
(チャンス!)
相沢は左手をさらにつよくギリギリと締め付ける。
「ぐっ……このっ!」
「ぎっ、ぎぎっ!」
だが、それでも勝平は手から銃を離そうとしない。
「き、北川。は、はやく! 早くこいつの手から銃を!」
「あ、ああ」
北川がびびりながらも一歩を踏み出す。杏もこちらにかけよってくるのが視界の端に見えた。だが、そこで相沢に一瞬の油断が生まれた。
 その隙を突くように勝平はすばやく左手を後ろに引いて相沢からの拘束をはずすと、ポケットに手を入れる。
(?)
情けない話だったが、相沢には勝平が何をやろうとしているのかわからなかった。緊張の連続でだいぶ集中力が落ち、明晰な思考ができない。
 勝平がポケットから取り出したのは最後のパイナップル。勝平は口で器用にピンを抜いた。
「逃げろおおおぉぉぉぉ!!」
ただ、必死に相沢は叫んだ。あわてて勝平の左腕から手を離し、背を向けて逃げ去る。前方に杏と北川が見える。
「へ?」
北川が呆けた声を出す。だが、その問いに答えるまもなく勝平のこえが響き渡る。
「遅いよ!」
そういって手榴弾を相沢の背中に向かって投げつける!
「相沢! 後ろだ!」
北川がそんなことを言うが、正直振り返ることもできない。死ぬ!?
370ことみはU-1なり、U-1はことみなり:2006/10/03(火) 12:43:40 ID:9kOPUw7w0
「この薬はすばらしいの。うまく使えば優勝間違いなしなの」

 一ノ瀬ことみ(060)は、当初はゲームにのるつもりはなかった。
彼女はもともと好戦的な性格ではないし、銃などの武器の扱いにも長けてはいない。
支給されるであろう武器は当然現代科学の範囲内のものであり、
120人の中で自分が勝ち残れる確率は天文学的に低いと、聡明な彼女は考えていた。

───そう、支給品を確認するまでは。

 彼女に支給されたのは、「書き手薬」とかかれたビンに入った5錠の錠剤であった。
試しに1錠飲んでみたところ───


>あれ? じゃあうさぎさんの言ってた殺し合いも? タカくんも?
>お母さんも? タマお姉ちゃんも? ユウくんも?
>みんなみんな死んじゃうの?
>いやだよ!
>死んじゃうなんて!
>みんな死んじゃうなんて!
>みんな?
>みんな死んじゃうって事はタカくんも死んじゃうの?
>タカくんが死んじゃうの?タカくんが死んじゃうの?タカくんが死んじゃう?タカくんが死タカくんがタカくんがタカくんタカくん……
371ことみはU-1なり、U-1はことみなり:2006/10/03(火) 12:51:13 ID:9kOPUw7w0
───このような錯乱する醜い文章が見えた。
この瞬間、ことみは薬の効果を理解し、このみを操り自殺に追い込んだのである。
しかし問題があった。薬の持続時間は短いこと、そして数が少ないことである。

「残り4錠、有効に使わなくてはいけないの。」

 彼女はもう1錠薬を飲み、過去ログを速読した。
何をするにしても、状況を完全に把握することが最も重要であるからだ。そして───

>「わ、ワープだと……くっ! 味な真似を!!」

>【状態:唯一者モード(髪の色は銀。目の色は紫。物凄い美少年)】
 エク ・ ス ・ ヒューム ・ ド
>地水火風冷雷闇光滅撃
 イベント ・ ホライズン
>事 象 深 淵

「これなの。かっこよすぎるの」
彼女は自身に追加設定を大幅に加え、能力を増強した。
372ことみはU-1なり、U-1はことみなり:2006/10/03(火) 12:52:23 ID:9kOPUw7w0
なまえ     一ノ瀬 ことみ
しょくぎょう  U-1
せいべつ    おんな(ただしふたなり)

ちから     無量大数
すばやさ    無量大数
みのまもり   無量大数
かしこさ    無量大数
かっこよさ   無量大数
そうび    E ことみの剣(功+無量大数、無属性をもちあらゆる結界の類を無効化する、状況により銃に変化)
       E ことみの鎧(防+無量大数、防弾仕様、あらゆる攻撃魔法を反射する)

びこう    古今東西のあらゆる武術、剣術、銃火器類の扱いに長ける
       あらゆる属性の攻撃魔法及び回復、補助魔法を習得済み
       光速で飛行可能
       体の一部でも残っていればそこから再生する

「完璧なの」

一ノ瀬ことみ
 【時間:午後2時ごろ】
 【場所:沖木島上空】
 【持ち物:書き手薬×3、ことみの剣、ことみの鎧、デイバッグ】
 【状況:U-1化、ゲームにのる】

(070の続き、Dルート、わりこみになってしまってスマソ)
373 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 12:53:07 ID:82MYCyTu0
「させない!」
だがそこで杏が逆に一歩を踏み出し、ショットガンの銃身をバットのように構える持ち手のほうで手榴弾を打ち返した。
「よし!」
打ち返された手榴弾は勝平の目の前へ。
「え……」
「ちょ、ちょっと」
ちょっと待ってよ。私、そんなつもりこれっぽっちもなかったのよ。勝平さんを殺そうなんて。
 だからちゃんと手榴弾もアッパースイング気味に打ち返したし。ねぇ待ってったら。なんでそんなとこ飛んで行くのよ。
 タンマ、マジでお願い。今の無し。今の無しだから。もう一回、もう一回やり直させて。ホント、一生のお願い。
「ああああぁぁぁ!」
勝平の眼前で手榴弾は爆発した。赤いナニカが飛び散り、杏の眼前には、ヒトの下半身だけが存在していた。
「あ、あぁ、あああああ」
ガクガクとひざが震える。背筋に凍りつきそうなほど冷たいものが流れる感触。比喩でなく顔から血の気が引いていくのが感じられた。
 ぐらりと下勝平の半身がゆれて杏のほうに倒れる。
「!」
少し離れていた相沢と北川からも、まだ勝平の内臓がパートナーを探すように律動しているのが見えた。もちろん杏にも。
「違う、違うの。そんなつもりじゃなかったの。本当なら、もっと上のほうに飛んでいくはずで。それで、それで、とにかくこんなはずになるはずはなくって、だから違うんだって。本当なの。本当なのよ」
藤林杏は殺人を犯した。
「本当なんだってばぁぁぁぁ!!」
だれがなんと言おうと、それは残された厳然たる事実だった。
374359:2006/10/03(火) 12:53:38 ID:7z+eyb+T0
>>363
知りませんでした、、、、、

>>まとめの人
>ダンッダンッダンッ!!
>「な・・・、何で当たらないのよぉ!!!」
>狼狽しながらも、連続して弾を発射する公子。
>その全てを、柳川は人間離れした反応速度ですんでのところで回避していた。
の部分を、

>ダンッ!!
>「な・・・、何で当たらないのよぉ!!!」
>狼狽しながらも、再び弾を発射する公子。
>その凶弾を、またしても柳川は人間離れした反応速度で回避していた。
に。


> 柳川祐也
>【所持品@:出刃包丁/ハンガー/楓の武器であるコルト・ディテクティブスペシャル(弾数10内装弾3)】
>【所持品A二連式デリンジャー(残弾1発)、自分と楓の支給品一式】
>【状況:正常。ゲームを止めようとしている】
の部分を、
柳川祐也
>【所持品@:出刃包丁/ハンガー/楓の武器であるコルト・ディテクティブスペシャル(弾数10内装弾3)】
>【所持品A二連式デリンジャー(残弾3発)、自分と楓の支給品一式】
>【状況:正常。ゲームを止めようとしている】
に修正お願いします・・・。度々すいません。
375 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 12:55:05 ID:82MYCyTu0
共通
【時間:午後4時30分】
【場所:鎌石村消防署のすぐそば(C-05)】

相沢祐一
【持ち物:なし】
【状態:呆然。体のあちこちに痛み。若干の吐き気】

緒方英二
【持ち物:予備の弾丸、荷物一式、支給品の中に入っていた食料と水を少し消費】
【状態:呆然】

神尾観鈴
【持ち物:フラッシュメモリ、荷物一式×3(自分の分と相沢祐一の分と藤林杏の分)】
【状態:呆然】

北川潤
【持ち物:防弾性割烹着&頭巾、他支給品一式、お米券】
【状態:呆然。腹部と胸部に痛み。若干の吐き気】

春原芽衣
【持ち物:荷物一式、支給品の中に入っていた食料と水を少し消費】
【状態:英二の落とした銃を捜索中。少し疲労】

藤林杏
【持ち物:SPAS12ショットガン】
【状態:混乱】

柊勝平:死亡
376 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 12:55:41 ID:82MYCyTu0
補足:ラグビーボール状態のボタン、北川の携帯電話、緒方の拳銃はその辺に転がっています。勝平の持っていた物は全て大破。
ルートはB−2、137の続き

>>372
いえいえ、連投規制に引っかかってたんで助かりました。
377名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 13:11:16 ID:iTIaX8cV0
またマーダー殺しかよ・・・・・
先のこと何にも考えてないだろおまえ
さらに馴れ合い加速か
378いけないメイドロボ ◆6cJovHvx6g :2006/10/03(火) 13:37:58 ID:Dyx5dcL60
茂みの中でイルファは考えていた。
支給品はマカロフ。俗に言う当たり武器だ。
それ故に人を殺すという事が考えに直結するのは自明の事だ。
だからといって人を殺してもいいのか?
いいわけがない。
瑠璃様や珊瑚様も決して許してくれないだろう。

だけど私が殺さない事を選んだら、もしかしたら殺さなかった人が瑠璃様達を殺めるかもしれない。
私が人を殺す事で瑠璃様達が殺されないかもしれない。
私が破壊されてもいけない。私が破壊されていいのは命と引き換えに瑠璃様達を守れる時のみなのだ。

瑠璃様達とそれ以外を比較した場合、どちらがより大切か。
そんなのは考えるまでもない。
たとえ人類全てと瑠璃様達でも瑠璃様達の方が大切なのだから……

答えは出た。
後は決行するのみである。

(瑠璃様……珊瑚様……)
(やっぱり私は愛と本能のあいだで揺れ動くいけないメイドロボです……)

【9イルファ】
【時間:午後1時】
【場所:C-02、茂みの中】
【支給品:マカロフ(装弾数8予備弾16)デイバック】
【状態:マーダー】
目的:瑠璃・珊瑚・貴明以外の全員の排除
379 ◆6cJovHvx6g :2006/10/03(火) 13:43:29 ID:Dyx5dcL60
基本的にHルート用ですが、下記の作品を通っていないルートなら流用できると思います。
⇔060
⇔095
⇔ルートD
380 ◆6cJovHvx6g :2006/10/03(火) 13:47:04 ID:Dyx5dcL60
無駄な連レス失礼します。orz

『いけないメイドロボ』は>>360-362『アジモフ・コード』の問題点を修正した代替作品です。
まとめサイトに収録の際は『アジモフ・コード』の代わりに『いけないメイドロボ』を収録お願い致します。
381『贖罪』アナザー:2006/10/03(火) 15:40:18 ID:oevTUzVv0
先の由依奇襲の失敗から、公子は今まで以上に慎重になろう、と思った。
あれほど驚愕していたのに、傷を与える事すら出来なかった。よほど自分は人殺しには向いていないらしい。…こんな事で、大丈夫なのだろうか。
一瞬気が萎えかけたが理奈の死体を見て、すぐにその弱気を追い払う。冗談ではない。ここで諦めたら、何のためにあの少女を殺したのか。
次こそは必ず仕留める。出来なければわたしは死ぬ。
自分を強く戒めて再び誰かが来るのを待つ。
時間感覚がマヒするほど理奈の死体を見つづけた。すると、がさがさという音と共に明らかに恐怖しきった感じの少女、水瀬名雪が姿を現した。
――来た!
スペツナズナイフを強く握り締め、名雪が理奈の死体の前に来るまで待つ。
「えっ? あ、あ…き、きゃあぁぁぁっ!」
木々をも揺るがすような絶叫が辺りに響き渡る。公子は内心舌打ちした。こんな声を出されては、人がやってくるではないか。こうなっては、巧遅より拙速をとるしかない!
名雪に息をつかせる暇もなく、公子が茂みから飛び出した。目の前の死体に完全に気を取られていた名雪は公子の接近に気がつかなかった。…いや、気がつき、『何者か』に振り向いた時には。
「さよならっ!」
「ぐがっ…あ゛、あ゛あ゛…っ」
喉を切り裂かれ、盛大に血が噴出していた。女のものとは思えない、くぐもった声が出ていた。
「お、おがあ…さん、ゆうい…」
公子が最後に聞き取ったのは、恐らく親族の者と思われる物の声だった。そして、名雪からはもう何も聞くことはなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
公子の心臓は、激しく鼓動していた。疲れたからではない。人をまた殺めたという事態によるものだった。
「ぐっ! うぐ…っ」
今日二度目となる吐き気。公子は自分の弱さを呪わずにはいられなかった。しかし、じきにそれも収まる。息を落ち着けた後、名雪の武器を取りに行こうとした、が。
382『贖罪』アナザー:2006/10/03(火) 15:40:52 ID:oevTUzVv0
「…そこまでだ、殺人鬼」
公子の後頭部に、冷たいものが当てられる。この威圧感。公子はすぐにその物体を銃の類だと思った。実際に当てられたことはないが、感覚で分かる。公子の顔から、冷や汗が流れ落ちた。
「こんな女性までゲームに乗っているとは思わなかったな。…だが、すぐにそれも終わる」
拳銃を突きつけた男、柳川祐也が、冷徹に呟いた。
「おっと、ヘンな真似はするなよ。俺も一応刑事なんでね。その危なっかしいナイフ、投げ捨ててもらおうか」
言う事に従わなければ、即座に殺られる。公子は少しでも反撃の可能性を模索すべく柳川の言う事に従った。ヒュッ、という音がした後、茂みの中にナイフが落ちる。
「…フン、状況はわきまえているようだな。だが残念だったな、この俺が相手で」
カチリ、とハンマーピンを押し上げる音が聞こえる。
「ましてや、初めて人を殺したような奴が相手ではな」
…どうやら、この男は公子がたった今、初めて人を殺したと思いこんでいるらしい。…つまり、二連式デリンジャーの存在は知らないということだ。
(まだ、わたしは生き残れる)
「…こうなっては、仕方ありません。気休めかもしれませんが、この女の子達の埋葬をしてあげてもいいでしょうか。せめてもの、つぐないとして」
「…ふん、いいだろう。お前にもまだ人としての自覚はあるようだな。ただし、ヘンな真似をすれば、即座に撃つ」
柳川が少しだけ銃を離す。そのまま名雪の側まで移動し、その場にしゃがみこむ。――そして、柳川に気付かれないよう、ポケットに片手を入れた。
その時偶然、遠くからパン、パーンという音が聞こえた。
「ちっ、また誰かがやりあっているのか?」
柳川の目が、少しだけ音のほうへ向く。その一瞬。公子はポケットからデリンジャーを引き抜く!
383『贖罪』アナザー:2006/10/03(火) 15:41:28 ID:oevTUzVv0
「…ん? 貴様何を…っ!?」
パァン、という発砲音と共に、柳川の足から血が噴出した。柳川が思わずバランスを崩す。
「ぐ…おおおおっ! この、女っ!」
足を庇ったまま、必死で銃を構えようとしたが、公子に銃を蹴り飛ばされる。ならば奴の銃を奪って――と思ったところで、柳川のこめかみにデリンジャーを突きつけた。
「さよなら、刑事さん」
もう一発、乾いた音が森に響いた。


柳川がぴくりとも動かないのを確認したところで、ようやく公子は安堵のため息をついた。
「相手が素人だと見くびっていて良かったですね」
柳川が狩猟者として豊富に戦闘経験を積んでいた事こそが結果的に油断を招き、公子に勝利をもたらした。無論、無謀な賭けに成功した公子の運の良さもあったのだが。
「でも、幸運は二度も続かない…できれば、こんな相手とは二度と殺りあいたくないですね」
柳川の銃とスペツナズナイフを回収し、改めて名雪の支給品を確認する。
「GPSレーダー、時限爆弾入りMP3再生機能付携帯電話、赤いルージュ型拳銃、青酸カリ入りマニキュア…どれもこれもクセのあるものばかりね」
だが、ルージュ型拳銃は使える。奇襲にはもってこいだ。体力や腕力の劣る公子にとって、奇襲を成功させていくことこそが勝利への鍵だった。
ルージュ型拳銃とデリンジャーをポケットに仕舞い、残りはコルト・ディテクティブスペシャルとスペツナズナイフを除いてデイパックに仕舞った。包丁とハンガーは使えそうもないので放置しておいたが。
そして最後に、コルト・ディテクティブスペシャルを片手に持ちもう片手にスペツナズナイフを持って、移動することにした。
「…あ、そう言えば、やり残したことがありましたね」
荷物を一旦置き、三つの死体のところまで行く。そう、死者の埋葬。これが公子に残された最後の良心。
「みなさん、ごめんなさいね。でもわたしにだって命より大切なものがあるんです」
三人の死体を埋めながら、贖罪の言葉を、公子は呟いた。
384『贖罪』アナザー:2006/10/03(火) 15:42:14 ID:oevTUzVv0
【時間:1日目午後5時50分頃】
 【場所:E−05】
 
 伊吹公子
 【所持品:コルト・ディテクティブスペシャル(弾数10装弾4)、二連式デリンジャー(残弾4発)、スペツナズナイフ、
GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)、赤いルージュ型拳銃 弾1発入り、青酸カリ入り青いマニキュア】
 【状況:正常。死体を埋葬している】

 柳川祐也
  【状態:死亡、武器以外は放置】

 水瀬名雪
 【状態:死亡、武器以外は放置】

注:これは「贖罪」のアナザーストーリーであり、本編でリレーするものではありません。
385名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 15:48:38 ID:6dZbeK3Y0
>>377

逆に考えろ
勝平が死んだのは杏が気が狂ってマーダーになる伏線なんだよw

しかし、デスノートがアメリカ人に渡ったか…凶悪なコンビだな、たぶん…
386名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 16:01:43 ID:0v9hHxhq0
というか定期放送の後はマーダー間違いなく増える

カッペイ死んだから椋にもマーダー化フラグ立ったな
387名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 16:06:24 ID:0v9hHxhq0
訂正

千鶴再出撃
>自分と自身と同じ考えのマーダーたちが既に行動を開始しているかもしれない。
   ↓
自分と同じ考えのマーダーたちが既に行動を開始しているかもしれない。
388わりとお人好しな往人さんの厄日?:2006/10/03(火) 16:46:14 ID:9G9DP1g4O
「まったく…観鈴たちは本当にどこにいるんだ?」

国崎往人はあれから知人たちを探し続けていたが、それらしき人とはまったく遭遇しなかった。
―――というより、人影すら見つけることができなかったというのが正しかった。

「暗くなってきたからみんな建物とかに身を隠しちまったのか?
――くそっ。しかし、今日は本当にろくなことがない!
目が覚めたら変なウサギに殺人ゲームをしろと言われるわ、
出会った奴らにはバッグを投げ付けられるわ、逃げられるわ、銃を向けられるわ、挙げ句の果てには外見だけで殺人鬼扱いだ!
いったい俺の目のどこが………………ん?」
愚痴を吐きまくりながら歩き続けていると、前方に自分と同年代の青年が倒れているのを発見した。

(死体か?)
そう思って近づいてみると、青年はまだ息があり特に外傷はなかった。どうやら気絶しているだけのようだ。
「………せっかくだから、使えそうなものがあったらもらっていくか」
そうと決まればと往人は青年の近くに転がっていた彼のバッグを手に取り開帳する。
「これは………弾倉か? 銃は…………さすがにないか。
こいつをのした奴が持ってったのか?」
まあ、あれば何か役に立つかもしれないと思い、取り出した弾倉を自分のバッグに移し替える。

「――さて。こっちはどうするか……………」
次に往人は気絶している青年の方へ目をやる。

「…………とりあえず起こしてやるか」
起きろ、と言って青年の顔を2、3度べしべしと張った。
しかし、青年は「う……」と一声上げはしたが目を覚まさなかった。

「ダメだこりゃ。完全にのびてやがる………自分から目を覚ますのを待つしかねえな………」
しかし、こんな所でいつまでもつっ立っていてもこちらが危険なだけだ。
とはいえ、自分だけ逃げてこの青年を見捨てていくわけにもいかなかった。
389わりとお人好しな往人さんの厄日?:2006/10/03(火) 16:49:51 ID:9G9DP1g4O

「しかたねえ、どこか安全な所まで運ぶか……まったく、面倒臭い」
そう言って青年と彼のバッグを背負うと往人は安全な場所を求めて歩きだした。

 国崎往人
 【所持品:トレカフ TT30の弾倉(×2)、ラーメンセット(レトルト)、化粧品ポーチ、支給品一式(×3=往人と名雪と拓也のバッグ)】
 【状態:健康。知り合いを探したいが今は安全な場所を探す】

 月島拓也
 【所持品:なし】
 【状態:気絶中】
390わりとお人好しな往人さんの厄日?:2006/10/03(火) 16:54:20 ID:9G9DP1g4O
 【場所:G−07】
 【時間:午後5時15分】

 【その他】
・往人は大荷物のせいで少し足取りが遅くなっている
391名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 17:22:01 ID:BATP9TUS0
誤字訂正
>>168 一ノ瀬ことみの奮闘(1/3)
>>370 ことみはU-1なり、U-1はことみなり
誤 一ノ瀬ことみ(060)→正 一ノ瀬ことみ(006)
392 ◆elHD6rB3kM :2006/10/03(火) 19:32:00 ID:82MYCyTu0
「罪と罰」持ち物修正

神尾観鈴
【持ち物:フラッシュメモリ、荷物一式×3(自分の分と相沢祐一の分と藤林杏の分)】
→神尾観鈴
【持ち物:フラッシュメモリ、荷物一式×2(自分の分と相沢祐一の分)】
39310:2006/10/03(火) 19:40:21 ID:tuabi/6G0
出来ましたー。
時間掛かった……
→060→098で対立項色々。
番号なんか自信無くなって来た。
アナザーは158でいいのだろうか。
ともかく、回避願います。
394No.160 罅割れた現実:2006/10/03(火) 19:41:03 ID:tuabi/6G0

(だーれもいねーナー)
エディはイルファと別れてからひたすらに歩き続けていた。
周囲への警戒だけは怠らず。
(あのネェちゃんが走ってきたのに何もなかったってこたぁ……)
鎌石村には宗一達はいないのだろう、と思う。
(お……?ありゃあ……)
曲がり角の先に、二人の人影が見えた。
片方がもう片方に肩を貸している。
怪我でもしているのだろうか。
(しかし、二人連れってこたぁ……)
このゲームに載ったときの勝利条件は自分以外の皆殺しだ。
二人以上の『参加者』が助け合うと言うことは考えにくい。
在り得ないと言う訳ではないが、自衛の道具が殆ど無いこの状況下ではなるべく安全そうな者に当たったほうが良いだろう。
「オ〜イ、チョイトそこ行くお二人さん。聞きたい事がってちょっとマテマテマテ!」
怪我している方がいきなりこっちを向いて鞄の中に手を突っ込んだ。
その後何かに気付いたように小さく舌打ちすると、鞄に手を入れたままエディの方を睨んだ。
「おい、七瀬。とりあえず話を聞こうぜ」
「……ああ」
そういうと彰は鞄から手を取り出した。
395No.160 罅割れた現実:2006/10/03(火) 19:42:48 ID:tuabi/6G0

「で、何?おっさん」
「人を探してんだ。お前さん、名前は?」
「折原浩平」
「そっちの怪我してるは七瀬って呼ばれてたナ」
「……そうだけど」
「留美、彰、どっちダ?」
「……僕は、男だ……」
そういって彰はエディを睨みつける。
「ヒャッハッハッハ、スマネエスマネエ。だろうたぁ思ったけどもしかしたらと思って、ナ」
隣で浩平が腹を抱えて笑いをこらえている。
「……で、何」
憮然として彰が尋ねた。
「オウ、忘れてた。人探しだ人探し」
「その前に、あんたの名前は」
「オウ、更に忘れてた。オレッチはエディ」
そして又顔面総崩れで笑う。
何がおかしいんだか……と、小声で悪態をつく彰。
一頻り笑ってエディは本題に入った。
「いいカ?那須宗一、湯浅皐月、伏見ゆかり、梶原夕菜、リサ=ヴィクセン、それと姫百合珊瑚、姫百合瑠璃、河野貴明だ」
「結構いんなぁ」
「二人分の捜索だ。仕方アンメェ。で、どーだ?聞き覚えは?」
「や、俺は……」
そこまで言いかけて、浩平は言葉を止めた。
そして先程の悪夢が脳裏によみがえる。
396No.160 罅割れた現実:2006/10/03(火) 19:43:31 ID:tuabi/6G0

「……なぁ、その人たちの特徴を教えてくれ」
「ン?なんか知ってんのカ?」
「かもしれない……」
問われて、エディはイルファに聞いたことを含め、浩平たちに話した。
浩平は青い顔をしながらその話を聞いていた。
「どーだ?知ってたら教えてくんねぇか?」
「……その話の中で一番近い、っつーだけだけど。……人が死んでるのを見た」
その話に、エディの剣幕が豹変した。
「っ! ダレだ! ダレに近い!」
浩平の肩を掴んで問い質す。
「っ……その……伏見ゆかりって人……」
「!」
エディはよろよろと二三歩後退り、項垂れた。
(なんて……こったっ……)
「……銃声がして、それで行ってみたんだよ。そしたら……誰かが死んでた……」
エディは項垂れたままその話を聞いていた。
「多分、機関銃の類だと思う。蜂の巣だった」
「ソウカ……」
「怒らないで聞いてくれ。これは……その娘の荷物から取ってきた」
浩平はそう言って日本酒を取り出す。
「傷の消毒には使えるかと思ってな。現に、こうして使ったわけだが」
彰の傷口を指し示す。
「イヤ、いい……。で、場所は分かるカ?」
「あ、ああ……多分……この辺だったと思う」
そう言って、D-02の道の辺りを指し示す。
397No.160 罅割れた現実:2006/10/03(火) 19:44:26 ID:tuabi/6G0

「アリガトナ……」
「いや、いい」
「じゃあ、ナ……」
エディはそういって、駆け出した。
(ユカリちゃんなのか確かめねぇと……これがソーイチや姐さんなら違うって言い切れんダガ……)
イルファと約束した道からは外れるが仕方ないだろう。
いくらなんでもそんなすぐにここまで来れるとも思えない。
急いで確認してすぐに戻れば大丈夫な筈だ。
そんなことを考えながら急いで走った。
周囲への警戒だけは怠らず。
398No.160 罅割れた現実:2006/10/03(火) 19:45:52 ID:tuabi/6G0



「……行こうか」
「ああ……」
彰と浩平はエディが行くのを見送って、再び鎌石村に向かって歩き出した。
が、暫くして気付く。
「あ……しまった……こっちも聞いときゃ良かった」
「聞けた?あの状況で」
「……無理だな」
力無く笑って、浩平は嘆息する。
彰は内心、葛藤していた。
(誰かを殺せばああいう人は出てくる)
(誰かが悲しむんだ)
(でも……そうしないと僕達は帰れない)
(いや、僕は良い。でも、美咲さんは……)
(美咲さんが帰れなくなる……)
(美咲さんが……誰かに……殺され……)
(駄目だっ!!それだけは絶対に!!)
(やはり殺し合いに乗るしかないのか……)
(でも……)
傷が痛む。
思考に集中出来ない。
(取り敢えず……)
(武器を手に入れてから考えよう……)
(今は……痛い……)
そうして二人は鎌石村に向かっていった。
399No.160 罅割れた現実:2006/10/03(火) 19:46:31 ID:tuabi/6G0

エディ
【場所:C-05(スタート地点はS-10)】
【持ち物:瓶詰めの毒1リットル、デイパック】
【状態:死んだ人がゆかりかどうかを確認しに行く。やや焦っているが、警戒は怠らない。人探し続行中】

折原浩平
【所持品:だんご大家族(残り100人)、日本酒(残りおよそ3分の2)、デイパック】
【状態:健康、鎌石村へ移動中】

七瀬彰
【所持品:デイパック】
【状態:右腕に負傷、殺人の決意はしているが迷いがある。鎌石村へ移動中】

共通
【時間:一日目午後三時十分頃】
【場所:C-03とD-03辺りの分岐点】
40010:2006/10/03(火) 19:48:40 ID:tuabi/6G0
? 連投規制はどうなった?
まぁいいや。
取り敢えず訂正。
No.60 焦燥
エディの持ち物
瓶詰めの毒1?→瓶詰めの毒1リットルに。
メモ帳ってℓも保存出来ないのな。
401死神:2006/10/03(火) 20:53:01 ID:QPbGEhh/0
少年は覚悟を決めつつあった。
このゲームに参加する覚悟を。
罪の無い者達を容赦無く殺す覚悟を。

彼は一回目の放送が終わるまでは、何も許されていない。
人を殺す事も、助ける事も。しかし、一回目の放送以降は違うのである。


このゲームに於いて最初の数時間は緊張や恐怖から暴走する者も多く、
殺し合いは盛んに行なわれるだろう。

しかしそのような暴走の仕方をする愚かな者は、大抵がすぐに命を落とす。
このゲームにおいて冷静さを失う事はそのまま死に直結する。
生き残るのは十分な冷静さを持った者か、運の良い者なのだ。
ゲームに乗る、乗らないに関わらず、だ。

以上の事を考えると一回目の放送が終わる頃には、暴走している者は減るだろう。
慎重に行動する者が多くなり、少々殺し合いのペースが落ちてしまう筈だ。

お互い憎しみ合う激しい殺し合いを望む主催者にとって、それは避けたい状態だ。
それを危惧した主催者は少年に使命と、その使命を遂行する為の強力な装備を与えた。
少年の使命とは―――


1回目の放送以降は、容赦無く参加者を殺して回る事である。
女も、自分の友人も、自分の恋人である郁未ですら、容赦無く。
402死神:2006/10/03(火) 20:54:39 ID:QPbGEhh/0
愛する者を殺されたり、襲撃を受けた者の多くは冷静さを失うであろう。
冷静さが失われれば、殺し合いは加速する。
要はきっかけさえあれば、悲劇は連続して起こるのだ。

そのきっかけを作る為に準備されたジョーカーが、
少年である。

「僕に自由は許されていない。自分の感情を口にする事すら許されていない。」
「でも、僕に郁未が殺せるのかな・・・・。」

少年の呟きに答える者はいない。

放送まで後僅か。
最強の死神が解き放たれる時が、刻一刻と近付いていた・・・。
403名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 20:57:49 ID:QPbGEhh/0
 少年
【場所:神塚山山頂(F-05)】
【時間:午後5時30分】
【持ち物:不明(強力な装備を数点)】
【状況:異常なし】

※(ルートB系、H系共通ルート。関連は061)
404母の面影(1/3):2006/10/03(火) 20:59:39 ID:ZsLTcC7V0
休める時は休む、体力は無限ではないのだから。
天沢郁未は診療所のベッドに横になり、瞼を閉じている。
交代の見張り制にし、順々に疲労が溜まっているであろうメンバーに小休止を与えることになったのだ。
那須宗一(夕ご飯)はまだ帰ってきていない。

(・・・物資のパン、食べた方が効率的だったかもね・・・)

胃がキリキリと鳴く。
ふと、隣のベッドを見ると眠り続けていて今だ挨拶していない古河渚の横顔が見えた。
その隣のベッドには、霧島佳乃が眠っている。

「ふわ〜、だめだよぉーポテト〜。むにゃ・・・それは往人く・・・むにゃ」

外の見張りは鹿沼葉子と古河早苗が担当していた。
年小組みから休憩ということ、葉子が起きているなら、と郁未も特に反対はしなかった。

「ゆっくり休んでくださいね、郁未さん。外は私達に任せてください」

思い出すのは早苗の微笑み。
少し、感傷的な思いが生まれるが、郁未はそれを取り払おうとした。

・・・キィ。

その時、足元の方・・・部屋の扉が開く音がした。
気を張る、コツコツという足音は、佳乃と渚のベッドの間にて止まった。

(・・・誰?)

薄く目を開ける。・・・暗くてよく見えないが、背格好で分かった。
405母の面影(2/3):2006/10/03(火) 21:00:26 ID:ZsLTcC7V0
「渚・・・まだ起きないのですね」

声。
渚の顔を覗き込むようにし、早苗が彼女の頬を撫でているのが見えた。
心配そうな顔。・・・母の、表情。
しばらくそうした後、渚、それに佳乃の布団もかけ直し、足元はこちらに向けられた。

「あら、目が覚めていたんですね」

気がついたら、じっと彼女を見つめていた。
早苗は何も言わず自分を見つめる少女にむかい柔らかい笑みを浮かべながら、枕元までやってきた。
そして。

ふわり。

頬に感じた優しい体温、さすりさすりと撫でられる。

「もうすぐご飯になりますからね、後ちょっとだけ待ちましょう」

それは、さっき見た光景の再現。
暖かい、その感触に酔いしれる。懐かしい感覚が郁未の心を締め付けた。
手が離れ早苗自身も扉の方へ、郁未はその姿から目が離せないでいた。

「お母さん・・・」

そして、気がついたら漏れていた声。
早苗には届かない本当に小さな呟き、郁未は言葉を噛み締めた。
406母の面影(3/3):2006/10/03(火) 21:01:25 ID:ZsLTcC7V0
・・・早苗の姿が部屋から消えると、郁未はのそっと起き上がり、隣の少女に近づいた。
古河渚、母の庇護を受ける幸せな少女。
彼女の抱えるものを郁未は知らない、郁未にとって渚はそのような印象でしかなかった。
実際、目の前の少女の安らかな寝顔は、正直郁未をいらだせる原因にもなる。
このような非常識な時でもこうしていられるのは、正に母親が近くにいるからであろう。

「・・・あなたが私と同じ立場になった時、一体あなたはどうするのかしらね」

ふと思う。そう、彼女は。

古河渚は、今一番天沢郁未に近い少女だった。

大切な母を目の前で失ったら、彼女はどうするだろうか。
郁未は知らず知らずに、口の端を引き上げた意地の悪い笑みを浮かべていた。
それは期待、その裏に隠れているのは嫉妬。
郁未は面白くなってきた、とさらに

---------------その時、スピーカー特有のザーザーというノイズが辺りを走った。

時刻は午後6時。第1回目の放送が始まる・・・
407補足:2006/10/03(火) 21:02:55 ID:ZsLTcC7V0

天沢郁未
【時間:午後6時】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:薙刀、支給品一式(水半分)】
【状態:右腕負傷(軽症・手当て済み)・悪いこと考えている・ゲームに乗っている】

古河早苗
【時間:午後6時】
【場所:沖木島診療所(I−07)】
【所持品:ハリセン、支給品一式】
【状態:空腹】

(関連・141 )(宗一が生きているのでBルート系)
408406訂正:2006/10/03(火) 21:05:55 ID:ZsLTcC7V0
×郁未は面白くなってきた、とさらに

○郁未は面白くなってきた、とさらに歪んだ表情を浮かべるのであった。

失礼しました
409名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 21:38:45 ID:0I4zLHT30
葉鍵の二次創作のはずなのに大半が名前だけ借りてきたようにしか見えないのがすごいなこのスレ
410戦いを望む者(1):2006/10/03(火) 22:13:33 ID:V7i/2kPd0
━━━定期放送。それは、突然始まった。

君の、ままで♪君の、ままで〜

スピーカーから音。たぶんこみパの主題歌。それが大音量で流れてる。

───はーい、この放送はバトル・ロワイヤル事務局の提供でお送りいたしちゃいまーす♪───

「音が小さいな。」と英二は小言を言っていた。こういう放送を聞き逃すのはダメージがデカイ。
耳を澄ませていた。そしたらいきなり全く関係ない所から音がした。


-------------------------------------------------------------------------------------
(首輪)
-┼─   -┼、\  ┼-┼-
 / -─   / |    .|  J  
/ ヽ_  ./  J     ヽ___    ですよーーーーーーーーーーー!!!

 覚   え   て   ま   す   か      ───────────────────────!!

 / ̄ ̄ ̄ / / ̄ ̄ ̄ ̄/            / ̄ ̄ ̄ / / ̄ ̄ ̄ ̄/
/ ./二/ /   ̄ ̄ノ /             ./ ./二/ /   ̄ ̄ノ / .
/__,--,  /    <  <.             /__,--,  /    <  <. 
  /___ノ      ヽ、_/ .姐とは違うんだよ   /___ノ      ヽ、_/ .姐とはよぉおおおおお!!!!!!」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

英二:「なんだぁ?!」
411戦いを望む者(1):2006/10/03(火) 22:14:35 ID:V7i/2kPd0
英二:「何だア!」
芽衣:「何これ!」

英二は耳をふさいだがそれでもクソデカイ音で聞こえる。

どうやら首輪から直接骨伝道で耳塞いでも直接鼓膜に聞こえるようになっているらしい。
すんげー無駄な技術。

「皆さん。元気ですかーーーーーー!

 元気があればなんでもできる!バトル・ロワイヤル運営委員会運営委員で、
 10万本以上確か売り上げたはずなのに作品ごと削られた『こみっくパーティ』というくっっだらねー話の
 しがないヒロインやっている高瀬瑞希と申すもんでーーーーーーーーっすよ!忘れた言うたらぶっ殺す!」
-------------------------------------------------------------------------------------
耳をつんざくような大音量で直接鼓膜に届く。耳塞ごうが何しようがいやでも大音量で聞こえる。
音のボリュームを下げる方法がないので、もう強制的に聞くしかない。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
 瑞希:「今回皆さんの奮闘により、バ鍵人口の10分の1以上氏んでくれました。

     「ざまーみろ」

--------------------------------------------------------------------------
英二:「・・・・」

412戦いを望む者(1):2006/10/03(火) 22:15:20 ID:V7i/2kPd0
--------------------------------------------------------------------------
あさひ:「じゃぁ、これから、残念ながら敗北した人のお名前をぉ、読み上げちゃいまーす♪」

あさひ:まずぅ、最萌優勝者の小牧愛佳さん。17歳。首を切られて失血死。即死!
 (ちょっとかわって)(あっ・・・そんな強引ですしのぶさん・・・)

--------------------------------------------------------------------------
───島のどっか。。


英二:「なんなんだ!一体!」

 ふつう町のスピーカーだろう。こんな大音量・・・いや、
 (音量自体は意外と小さいのかも知れないが、それが直接骨伝道するので何十倍にも
 音が大きく聞こえるだけなのかもしれない)と
 当然仕事の関係上スピーカーにも多少は詳しい英二は推測した。が、そこはどうでもいい。

しばらく首輪がシーンと鎮まりかえったが、ゆっくりと女の声がした。


女:「はーい皆の衆。」

どっかで聞いた声がした。
413戦いを望む者(1):2006/10/03(火) 22:17:00 ID:V7i/2kPd0
-------------------------------------------------------------------------------------
(放送)
───厚生労働省、特別人口調査室の榊です。今回の参加者の権利発生に関するお知らせを致します。

 住民基本台帳番号33218802のバトル・ロワイヤルに参加中のの岡崎朋也さん、
 住民基本台帳番号33218802のバトル・ロワイヤルに参加中のの岡崎朋也さん。
 10月14日に住民基本台帳番号33218802の岡崎がこっそりと市役所に婚姻届だしていた
 住基番号38221088番の岡崎智代さん、旧姓坂上智代の死亡が、午後12時32分に確認されました。
 配偶者死亡の為、180日後の3月25日、午後12時33分を持って岡崎様に再婚を行える権利が発生した事を
 ここにご報告申し上げます。

───以上、岡崎朋也さんの権利発生に関するお知らせです。よかったなお米券進呈してやるよ生きてたらな

ぴん
  ぽん
    ぱん
あさひ:(ううっまだ言ってないのにぃ・・・)
      ぽーーーーーん。。。。。
------------------------------------------------------------------------------------

渚:「ぁあ゛!!」


──ヘリ空母「くにさき」

「それ放送すべき内容か?」と久瀬は榊に聞いた。
 榊:「異世界でも何でもないのに名前すら出てないんですよ。こーでもしないとやってらんねー」
久瀬:「あっそ」
久瀬:(いろいろとたまってるんだろうなあ・・・)

久瀬はとりあえず、『代われ』とマイクを奪った。
414戦いを望む者(1):2006/10/03(火) 22:18:23 ID:V7i/2kPd0
──沖木島

「コホン」と咳をする声がして、首輪の声が、若い男の声に変わった。

「「やあ」」

------------------------------------------------------------------------------------
「今回の・・・主催者の一人。」「今回司令官に任命された」

「久瀬だ」

------------------------------------------------------------------------------------
倉田:「?!」


------------------------------------------------------------------------------------
「今回、君たちに、謝らなければならないことがある。」
「120人が1人になるまで・・・殺しあうというのが、今までのルールだった。」
「だが。今回は少し事情があってな。

「変える」

------------------------------------------------------------------------------------

「?!」

予想もできないような話が続こうとしていた。


415名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 22:20:00 ID:V7i/2kPd0
とりあえずあとで

ルート?見りゃわかるだろ
416名無しさんだよもん:2006/10/03(火) 22:42:01 ID:BATP9TUS0
連投回避?
417秋子の胸の内。そして決意:2006/10/04(水) 00:17:28 ID:cUaisRDQO
朝霧麻亜子―――彼女はまるで自分自身のひとつの可能性のように見えた。

自分ではなく、守りたいもののためにあえてゲームに乗って人を殺す―――
まさに『修羅』ともいえるその行為。

―――実を言うとゲーム開始当初は自分も彼女と同じ道を歩もうとした。

ただ娘のためだけに自分がすべての罪を一身に受けようとした。
…………しかし、それは叶わなかった。

自分に支給された品がただのコーヒー味の飴玉――それもたったの1個だったから。
そして、スタートしてすぐ近くの場所にあった村の入り口で捨てられた子犬のように怯える彼女と出会ってしまったから―――


「―――どうしたんですか?」
「――!?」

なぜあの時私は彼女に声をかけたのか、今ならそれがはっきりとわかる。

彼女は――私の娘と同じ、なんの罪も無いただの1人の女の子だったから―――ただ1人の人の子だったからだ。

『恐いの…近づかないでほしいの………』
「落ち着いて。ほら。これでも舐めて……」

飴玉はその時彼女にあげた。
ただ何も特別な力などもっていない飴玉。
最初はハズレだと思ったが違う。あれは間違いなく当たりだった。
だって――――
418秋子の胸の内。そして決意:2006/10/04(水) 00:18:44 ID:cUaisRDQO
「――おいしい?」
『うん。おいしいの〜♪』
「そう…よかった……」

『恐怖』という色で染まりきっていた彼女の心に僅かではあるが『安らぎ』という色を与えることができたのだから。


―――彼女の笑顔を見て、私は決意した。
このゲームの主催者を倒すことを。
そして、娘や彼女のようなまだまだ芽吹いていく未来ある種たちを1人でも多く守っていくこと、あの笑顔を守っていくことを……………


――だからあの時、私は彼女を殺しはしなかった。
なぜなら、彼女もまた管理者の手により未来を奪われつつある被害者だったから。

――でも、彼女はこれからも罪を重ねていくだろう。
他の未来ある者たちを紡いでいくだろう。
しかし、私はそれを止めはしなかった。
たとえやり方を少し間違えてはいるけれども、彼女のしようとしていることも結果的には私と同じだったからだ。

彼女が茜色の空の下を駆けていく。
私たちはそれを見送ると、今度は自分たちの出発の準備をした。

419秋子の胸の内。そして決意:2006/10/04(水) 00:19:31 ID:cUaisRDQO
「――じゃあ澪ちゃん、行きましょうか」
『はい、なの』

まだすべては始まったばかりだ。
これから先もこの島では多くの罪と悲劇が生まれていくだろう。
それでも私は自分の思いを貫き続けよう。
この島に彼女、そして多くの未来ある者たちの笑顔があるかぎり。

420秋子の胸の内。そして決意:2006/10/04(水) 00:20:53 ID:cUaisRDQO
 【時間:午後5時30分】
 【場所:F−01(移動)】

 水瀬秋子
 【所持品:IMI ジェリコ941(残弾14/14)、包丁、殺虫剤、ほか支給品一式】
 【状態・状況:健康。主催者を倒す。祐一・名雪を探す。ゲームに参加させられている子供たちを1人でも多く助けて、守る】

 上月澪
 【所持品:フライパン、スケッチブック、ほか支給品一式】
 【状態・状況:健康。浩平やみさきたちを探す】

 【備考】
・秋子は澪たちに自身の胸の内を明かしていない。(そのため少し誤解されている)
・106の続きです
421女傑三人、別離:2006/10/04(水) 00:38:56 ID:Q8hLaQ9A0
神尾晴子(024)は新たな敵の出現に内心で毒づいた。
(ちっ、この子だけでもてこずってるってのに…こら、逃げたほうがよさそうやな)
ちらりと後方を確認する。だいたい銃はあの辺にあるはずだ。距離は…5歩くらいか。
(茂みになってる訳やあらへん。さっと見つけて逃げれば当たる事もないはずや。それにあの娘、プロっちゅうわけでもなさそうやしな)
綾香の方を見る。若干ではあるが、銃口は環の方へ向いている。まだ自分にはツキが残っているらしい。
「とりあえず、手を上げてもらいましょうか。それから、後ろを向いてもらうわよ」
綾香が銃をまだ向けながら環と晴子に命じる。まず応じたのは環だった。
「…これでいいの?」
手を頭の後ろに回し、綾香に背を向ける。続いて晴子も後ろを向き…そして即座に駆け出した!
「っ!? そこ、動くと撃つわよ!」
すかさずM1076を晴子の足元に発砲する。しかし、動く人間に簡単に当てられるはずがない。
「アホ! うちはまだこんなとこで終わるわけにはいかんのや!」
全神経を集中し、自分の銃を探す。そして視界の隅に自分のデイパックとVP70を見つけた。
(やっぱうちはついとる! 飛ばされた銃と荷物が同じところになるなんてな)
かっさらうように持ち上げ、逃走を試みる。
「くっ、待ちなさい!」
今度は晴子の胴体に向けて発砲する綾香だが、銃弾は空しく空間を引き裂くだけに終わった。綾香が舌打ちをして、環の方へ向き直る。
「…あなたは逃げなかったのね。今の隙に逃げることだって出来たでしょうに」
すると、環は皮肉な口調で、
「だって、動かないで、って言ったでしょ? それに殺人鬼扱いされちゃたまらないしね」
その言葉を聞くと、綾香はようやく固かった表情を少しだけ和らげた。
「…あなたは、あの女とは違う種類の人のようね。それじゃ、少し落ち着けて情報交換でもしない? 私は来栖川綾香よ」
422女傑三人、別離:2006/10/04(水) 00:39:40 ID:Q8hLaQ9A0
「私は向坂環よ。よろしくね、綾香さん」
互いに固い握手を交わす。それから情報交換が始まった。
「…それじゃ、ついさっき動き始めたばかりだったの? 残念ね、姉さんのことを聞こうと思ったんだけど」
綾香が少しがっかりした表情になる。
「あなた、お姉さんがいるの? 名前は?」
コルトガバメントのマガジンを変えつつ、環が尋ねる。
「名簿にも書いてあると思うけど、来栖川芹香って言うの。極端に無口な人だから、すぐ分かると思うわ」
「ふぅん、そうなんだ…覚えとくわ。それで、綾香さんはここまででどんな人に会ったの?」
「残念だけど、環とあの女が一番最初の遭遇者なの。あなた、弟さんとその幼馴染達を探しているのよね?」
「ええ。特に、柚原このみっていう子の方は恐がりなところもあるから、早く探して安心させてあげないと」
「お互い、人探しに苦労するわね」
綾香が苦笑いする。環もつられて苦笑する。
「それじゃ、私はもう行くわ。早く姉さんと合流しないと」
「そうね…一旦別れるけど、またどこかで会いましょう。その時は、この主催者達を倒すためにね」
「ええ。けど、つまらないことでマーダーになったりしないでよ。…もっとも、その時は私が喝入れてあげるけど」
「残念ながら、その機会はないわね。それじゃ」
綾香は南へ。環は北へ向かうことにした。


「ゼェ、ゼェ…へへ、振りきれたようやな。はぁーっ、ごっつ疲れたわー…年は取りたないもんやな…って、うちはまだ全然若いっちゅーねん」
自分にツッコミを入れて、気合を入れなおす晴子。
「…さて、グズグズできへんな。早いとこ、観鈴のためにもたくさん殺っとかんと。観鈴が聞いたら怒るやろうけど、うちにはこれくらいしか思いつかへんからな…堪忍な、観鈴」
VP70にマガジンを再装填し、再び立ちあがる。目指すのは、新たな獲物だ。
423女傑三人、別離:2006/10/04(水) 00:40:21 ID:Q8hLaQ9A0
『向坂環(039)』
【時間:1日目、午後2時ごろ】
【場所:E−3、森林帯】
【所持品:支給品一式、コルトガバメント(残弾、残り20)】
【状態:健康。北へ向かう。仲間の捜索を開始】

『神尾晴子(024)』
【時間:1日目午後2時ごろ】
【場所:G−3、森林帯】
【所持品:支給品一式、H&K VP70(残弾、残り18)】
【状態:健康。次の標的を探す】

『来栖川綾香(037)』
【時間:1日目午後2時ごろ】
【場所:F−3、森林帯】
【所持品:支給品一式、S&W M1076(現在装填弾数6)、予備弾丸30】
【状態:健康。芹香の捜索】

【備考:B、H系ルート】
424女難(1/2):2006/10/04(水) 00:41:24 ID:xuBzm6p+0
っつーかいい加減にしてくれ。
俺が何か悪いことでもしたってーのか?
いや、そんなもん星の数ほどしてきたけどよ。
だからってこの仕打ちはねーだろうよ。
まだ銃で撃たれて死に掛けって方がハクもつくってもんだ。
いやそれもまっぴら御免だな、この方がましか……だからそうじゃねぇ、あぁもう頭がいてぇ。

ただただ愚痴しか出てこない。
それもそのはず――とにかくぴこぴこうるさい宇宙外生命体ピコ(仮)を振り切ろうと必死に山の中へ逃げたものの
何を勘違いしてくれるのか嬉しそうについてきやがる。
3時間近く走り回っているのにも関らず、突き放すどころかもはや自分の体力が先に尽き先導される始末。
人間様のプライドもあったもんじゃない。
「あぁなんでこんなクソ畜生のケツ見ながら歩かなきゃないけねーんだよ。
 もう日も暮れかけてきたじゃ……うぉぉぉ!!!???」
呟きながら紅く染まりかけた空を見上げようとしたその時、訳もわからぬうちに景色がぐるりと半回転した。
気付けば右足を取られ宙吊りになっている高槻。
「なんだなんだ!?おい、だから踊るな!!」
右足にロープが括り付けられ、木に逆さに吊るされた状態で大きく揺れる高槻の下で、ピコ(仮)は嬉しそうに踊る。
425女難(2/2):2006/10/04(水) 00:41:57 ID:xuBzm6p+0
「うっわ、明らかに当たりねこりゃ」
ガサッと茂みがざわめいたかと思うと、出てきたのはさっきの郁乃だか七美だか言うガキに負けるとも劣らぬチビガキ。
こいつの仕業か?くそ。
「わけのわかんねーこと言ってねーで早くおろせよクソガキ!」
高槻の言葉に反応し、キッと睨みつけるとマナは持っていたワルサーP38の銃身を鼻先に突きつける。
「げっ」
「あんたそれが人に物を頼む時の言葉?いいから黙んなさい」
頼んでんじゃねーよ、命令してんだよ。んな事を言えるわけもねぇけどな。
ダメだ厄日だ。
今日の運勢は絶対『知らない子供には気をつけましょう』って感じのが出てるにちがいねぇ。
トホホ……。


高槻
 【時間:1日目17:30頃】
 【場所:F-07西】
 【持ち物:ポテト、他支給品一式】
 【状況:宙吊り】
観月マナ(102)
 【時間:1日目17:30頃】
 【場所:F-07西】
 【所持品:ワルサー P38・支給品一式】
 【状態:普通】

 【備考:周辺にはマナが仕掛けたと思われるトラップ多数】
426最初の失態(1/2):2006/10/04(水) 02:13:55 ID:3sFsgBGM0
「-----ちっ、何だ、違ったか」

その瞬間聞こえたのは舌打ちだった。
住井護と春原陽平の視線の先、ショットガンを構えた男は巳間良祐であった。
駆けつけた彼の予想とは反する風景が、目の前には広がっていた、
そう、彼が聞いたのは女性の声。今は亡き仁科りえのものであった。

脱兎、次の瞬間良祐は場を離れる。
残された二人は、ぽかんと彼を見送るだけであった。


殺そうと思えば殺せた、何せ彼の支給武器はショットガンという当たりだったのだから。
しかし、彼は撃たなかった。否、撃てなかった。
動揺、「もしかしたら」を考えていた彼の思考、それを裏切られ不安定になっていたのだ。

(馬鹿か、俺は。そんなの、確率的には絶望的に低いに決まっているというのに)
427最初の失態(2/2):2006/10/04(水) 02:15:23 ID:3sFsgBGM0
ちょうど考えていたから、その手の事柄に結びついたのかもしれない。
襲われた女性が、もし彼女だったら。
・・・妹、晴香だったら、と。

名簿を見た際すぐ気がついた、自分の一つ前の番号の持ち主。
巳間晴香。結局施設で再会したにも関わらず、口はほとんど聞けていない状態の身内。

(・・・とんだ失態だ。もう許されないな、こんなことは)

気を引き締める。
冷静に、感情を押し殺しこのゲームに集中することを決意する。

(それに、このゲームは一人しか生き残れないのだから・・・あいつのことを気にしても、意味はないんだ)

-------次会う人間が晴香だとしても、殺らねばいけない。
良祐の心に青い炎が燃え上がる。

彼の甘さは、この瞬間掻き消えた。
428補足:2006/10/04(水) 02:16:35 ID:3sFsgBGM0
巳間良祐
【時間:1日目午後12時15分頃】
【場所:G−5(移動済み)】
【所持品:ショットガン(ベネリ M3)銃弾数7/7・支給品一式・優季の荷物】
【状態:ゲームに乗る】

住井護
【時間 1日目 午後12時15分頃】
【場所 G−5】
【持ち物 コルトパイソン】
【状況:銃口を春原の頭につきつけたまま呆然】

春原陽平
【時間 1日目 午後12時15分頃】
【場所 G−5 】
【支給品 不明】
【状況:頭に銃口をつきつけられていることも忘れて呆然】

(関連・8・47)(Aルート)

※47の前の話になります
429不幸な再会:2006/10/04(水) 03:19:53 ID:1pJp201q0
姫川琴音は正気を失っていた。
気付いたら道路に倒れており、体のあちこちに痛みが走っていた。
何より彼女の唯一の武器である日本刀も無くなっていた。

それから琴音は必死に近くにあった民家の中を探し回り、
どうにか八徳ナイフを探し当て、今は街道を南東へと駆けていた。

「人・・・・!」
一人の少女―――仁科りえの姿が彼女の視界に入った。


「これをこれをつきさせばころせるころせるころせばしななくてすむんだ
いそがなきゃいそがなきゃはやくはやく」
彼女の形相は、もはや人間のそれでは無かった。

「いや・・・、いやぁぁぁぁ!!!」
その迫力は、りえを硬直させるに十分であった。

既に正気を失っていた琴音は何の躊躇も無く一気に斬りかかった。


「ああああっ!!」
琴音のナイフはりえの右肩を切り裂いた。しかし、浅い。
戦闘用の刀などに比べると、八徳ナイフはどうしても威力が足りないのである。

「あれ、しんでないしんでないなんでだろちゃんとちゃんとさしたのに」
琴音はそう呟くと、
またもやナイフを振るい、今度はりえの左腕に突き刺した。
430不幸な再会:2006/10/04(水) 03:20:50 ID:1pJp201q0
「うわぁぁぁぁ・・・!!」
今度の傷は深い。りえの絶叫がこだまする。
琴音の顔に、返り血が降りかかる。


琴音は一瞬考えた後、ある結論に達した。
「・・・そうか、くびをきらないからしなないんだね」
そうして、琴音は、ナイフを、振り上げた。

りえの目に、琴音の動きがスローモーションのように映る。
振り降ろされるナイフ。琴音の狂気に満ちた表情。
りえの体は恐怖と痛みで硬直して動かない。
彼女は自分の命が終わる瞬間を見続けるしかない筈だった。

――しかし。
何かが飛び込んできたかと思うと、
琴音が3メートル程吹き飛ばされていた。

「うう・・・」
琴音が顔を上げると、彼女の友人、松原葵が立っていた。
431不幸な再会:2006/10/04(水) 03:22:14 ID:1pJp201q0


「琴音さん、一体これは・・、どういう事なんですか・・・?」
狼狽した表情で問いかける少女の名は、松原葵。
彼女は琴音に当身を食らわせ、琴音の凶行を止めたのである。
ただし手加減していた為か琴音のダメージは小さいようであった。


琴音はゆらりと、まるで幽鬼のように立ち上がった。
「あおいちゃんあなたもじゃまするのなんでなんでなんで」
「な・・・、何を言ってるですか・・・?人殺しなんて、ダメに決まってるじゃ、ないですか・・・。」

「みんながわたしのじゃまをするみんながわたしをころそうとするなんでなの」
「え・・・?え・・・?」
かつての友人の面影の欠片も感じられない姿を目の当たりにして、
葵は完全に狼狽していた。

葵は今の今まで必死の思いで琴音を探し回り、ようやく見つけ出したのだった。
しかし、彼女が見つけ出した人物は、もはや以前の琴音ではなかった。


「その子を殺さないと私が死んじゃうのに、何で邪魔するのよぉ!!!」
琴音はそう叫び、ナイフを拾い上げた。
432不幸な再会:2006/10/04(水) 03:24:13 ID:1pJp201q0
【時間:1日目午後17時頃】
 【場所:D−08】

 仁科りえ
 【所持品:拡声器・支給品一式】
 【状態:硬直。右肩に浅い切り傷、左腕に深い刺し傷】

 松原葵
 【持ち物:お鍋のフタ、支給品一式、野菜など食料複数、携帯用ガスコンロ】
 【状態:混乱】

 姫川琴音
 【持ち物:支給品一式、八徳ナイフ】
 【状態:狂気。数箇所打撲、擦り傷。19時間後に首輪爆発】

※(B系共通ルート)
※(関連は110、117、152)
433小っちゃいってことは便利だねっ:2006/10/04(水) 03:53:05 ID:dRVYYHNf0
「うわー、ここの学校木造なんですかぁ〜」
校舎に感銘を受けながら鎌石中学校の昇降口を通り抜ける。
「さてと、ここに何か着れるものがあればいいんですけどぉ、いつまでもこのままっていうわけにはいけませんし」

あれから由依は遅い食事をとりつつ、ある意味郁未さんより大胆(由依談)になってしまった恰好をどうしようかと悩んでいた。
リュックを開けてみたが、支給品は衣類ではなく、普通のカメラ付き携帯電話。
誰か来てくれないかと思ったが、今の状態ではそれは自殺行為ということに気付き、断念。
結局リュックで自分のさらけ出された肌を隠しながら、衣類を求めて探し歩いていたのだった。

「それにしても、この携帯なんなんでしょうか。アンテナ三本立っているのにどこにも通じませんし…って、あ!」
昇降口を曲がったところに、この学校のものだろうか男女の制服が展示ケースに飾られている。
「わぁ〜この制服かわいい」
黒い色を主体に周りが赤いラインのブレザーにピンクのリボン。グレーのチェックのスカートに黒のソックス。
中学からずっとセーラー服だった由依にとってはこの女性用の制服全てが新鮮に映っていた。
「ちょっと着てみたいです。でも中学校の制服ってあたし着れるでしょうか…胸とか」


数分後、由依は望み通りに真新しい制服を着ることができ、ひとまずは恥ずかしい恰好から逃れることができた。
ただその表情はなぜか落ち込んでいた。

【時間:1日目午後4時00分頃】
【場所:D−06:鎌石中学校内】
 名倉由依
 【所持品:鎌石中学校制服(リトルバスターズの西園美魚風)、
       カメラ付き携帯電話(バッテリー完全:備考参照)、
       荷物一式、破けた由依の制服】
 【状態:体中浅い切り傷と擦り傷、少々落ち込み気味。】
 
 【備考:No.119:策略 対 一念の続き
     携帯電話はNo.13の物とは違う普通の次世代携帯電話。
     沖木島内でしか通話及びネットができないが、電話番号、アドレスさえわかれば、
     沖木島中の全ての電話及びネット等につなげることが可能。なお、かかってくる電話は全て番号が通知される】
434りーぶみーあろーん:2006/10/04(水) 05:04:58 ID:v4KbHpWD0

久瀬の口から出た言葉。

それはまさに予想もできないような話だった。
信じがたいその驚愕の真実を告げる久瀬の声が参加者たちの骨髄に響き渡ったが、
それはもうあまりにも信じがたい話だったので、誰も信じなかった。

「へえ」「ふ〜ん」「そりゃすげえ」「ぶったまげた」「馬鹿じゃねえの」「キモイ」「まぁ久瀬君だし……」

「……あれ?」

期待したリアクションが帰ってこないのでちょっと首を傾げる久瀬。
っていうか最後の、倉田さん?
代わりに罵声が飛んできた。

「うるっっっっせえよ久瀬!!」

聞き慣れた怒声だが、思わず首をすくめる。
盗聴器からではなく、司令室への直接通信。
来栖川綾香だった。

「あ、綾香さん。ちょうど良かった、先程の話はですね……」
「いいから!! さっき大声上げたこみパの馬鹿連中ぶっ殺しとけ! わかったら返事は!?」
「あのいやそれよりもですね、今の通告は非常に重要で」
「黙れ久瀬、久瀬のくせに口答えするな!!」

全然話を聞いてもらえなかった。

「そういう口は下の名前まで考えてから叩けこの権兵衛!
 そうだお前なんか権兵衛で充分だ、おいそこの榊とかいう女!
 お前厚労省の役人だったろ、そいつの名前権兵衛で登録! 復唱!」
435りーぶみーあろーん:2006/10/04(水) 05:05:59 ID:v4KbHpWD0

綾香の怒声に、榊が冷静な声で答える。

「来栖川綾香様ですね?」

その静かな声音に内心で安堵する久瀬。
どうやら話を本線に戻してもらえそうだった。

「そうよ、だったら何! お前も権兵衛にされたいの榊権兵衛!?」
「はい、いいえ、久瀬様の姓名は久瀬権兵衛様で受理されました。オンライン入力完了」
「どうして!?」
「この国では金持ちの言うことは絶対ですボンボン野郎」
「ぼ、僕も一応金持ちなんだけど」
「そういう口は御自分で税金払ってから叩いてください権兵衛。
 ああ早く帰ってメシくってオナニーして寝てえ」
「お前もういいから帰ってくれ!」
「……あ、じゃあようやくあたしの出番ですね……? あたし栗原と、」
「お前も帰れ!」

一言でも出番ゲット。
スキップしながら退場する栗原。

「誰か僕の話を聞いてくれえ!」

久瀬権兵衛の切実な叫びが艦内を駆け巡っていた。


【時間:夕方】

【来栖川綾香御一行様】
【状態:怒ってる】
→163、Dルート。
436末期症状:2006/10/04(水) 07:22:00 ID:fzZLjRgl0
「…っ!」
澤倉美咲は突然の目眩に思わずしゃがみ込んだ。
目に見える光景は瞬時に赤く染まり、強烈な寒気が襲ってくる。
少し先を歩いていた梶原さんが駆け寄って来て、何事か私に呼びかけてくる。
『大丈夫?』
心配そうな顔でそう言っている様に聞こえた。
初めて会った時から励ましてくれたりする梶原さん。
でもなんで通りすがりの私に親切にしてくれるんだろう。

(あっ…)
それはとても簡単なこと。何で気がつかなかったんだろう。
私を油断させて… 殺そうとしているのだ。そうだ、そうに違いない。
そもそも殺人ゲームが行われている島で親切に声をかけて来る方がおかしいのだ。
信じられない失態、馬鹿正直に一緒に歩いてるなんてどうかしていた。
油断させて殺す、小説でもお決まりのパターン。
どうすれば… どうすればこの状況を打開できるのだろう…
恐怖で頭がどうにかなりそう。だけど…
(いえ、もっと冷静に、クールになるのよ澤倉美咲)
そう、相手が殺す気なら… 私も殺すしかない!
(甘えを捨てなきゃ美咲、今なら梶原さんも気がついていない筈…)
様子を伺うために顔を上げる、そこにいる梶原さんは相変わらず同じ顔をしていた。
そんな顔をしても無駄なのに、演技はもうばれたのだから。
(やるなら今しかない!)
私は両手で持っていたプラスチック製の盾を、思いっきり彼女に叩きつけた。
437末期症状:2006/10/04(水) 07:24:33 ID:fzZLjRgl0
梶原さんは簡単に倒れた。
こんな非力な私でもその気になれば人を倒すことが出来るのに驚く。
叩きつけた衝撃で盾は足元に落としたが何の問題も無い、起きる前に拾える。
本当はこんな事したくはなかった。でも仕方がない、一歩間違えれば殺されるのは私だった。
さあ、止めを刺そう。この盾の硬さなら大丈夫。思いっきり頭に何度も叩き込めば死ぬはずだ。
(早く盾を拾わないと)
夕菜から視線を外す美咲。

―――その時ある事に気がつき、愕然とする。
(なんてことなの…)
私は周りを誰かに囲まれていた。

いつの間になのだろうか、五人、いや六人はいる。
いずれも人とは思えないほど大きく、妙な程に堂々と構えている。
気配すら無かったのに信じられない事態だった。
しかもそんな風に近づくなんて敵に決まっている。
(事実は事実よ、怖いけど落ち着いて美咲)
自分にそう言い聞かせる。
(一番近い相手までおよそ3m、先手を取れない距離ではない。一人当たり二十秒、いえ十秒で片づけてみせる。
それが六人なら… わずかに一分!)
なんだ、それだけの時間で敵を倒すことができるのではないか。
今の私になら簡単なはず、視野が赤く染まってから何故だかわからないけど感覚も冴え渡っている。
(がんばれ、私)
そうして美咲は素早い動作で盾を拾い―― そのまま目前の相手に叩き込んだ。
438末期症状:2006/10/04(水) 07:27:07 ID:fzZLjRgl0
「そ、そんな…」
美咲は盾を叩き込んだ敵に呆然とした。
いくら自分が非力だからといっても身じろぎもしないとはどういうことなのか。
何度も何度も、盾が何処かにはじき返されてからも素手で殴り続けてる。
しかし敵は一向に倒れる様子も無ければ逃げる様子も無い。
既に手からは血と蛆虫が流れているが恐怖にはかなわな―――
「え…」
(う、蛆虫!?)
見間違え様がない、確かに手から蛆虫が流れ出てきているのだ。
慌てて掻き毟るが止まらない、それどころか勢いを増して出てくる。
「あぁぁぁぁぁ…」
喉の奥でも何かが蠢いている、痒くてたまらない。
がりがりがりがり
首を掻き毟っても出てきたのはやはり蛆虫。
あはははははは あははははははは あはははははは
同時に周りを取り囲んでいた者達が一斉に笑い出す。それは余りにも奇怪な声だった。
(逃げなきゃ… 殺される!)
我を忘れて走り出す。それでも大勢がついて来る、まるで先回りをしていたかの様に…
こわいこわいこわいこわい
こわいこわいこわいこわい
こわいこわいこわいこわい
(藤井くん、七瀬くん、由綺ちゃん、はるかちゃん、誰か助けて…)
439末期症状:2006/10/04(水) 07:30:48 ID:fzZLjRgl0
梶原夕菜は目の前で起こっていた信じられない出来事を呆然と見ていた。
いきなり美咲は恐ろしい形相で何事か叫びながら盾で殴りかかってきたのだ。
その顔は控えめそうな性格からはとても想像が出来るものではなかった。
このままでは殺される、と思ったのも束の間、何を思ったのか辺りの木にも同じ様に攻撃をし始めた。
仕舞いには自分の首を血が勢いよく流れ出る程掻き毟る。
そして風が吹き木がざわめくのと同時に何処かへと走り去っていった。

理解しがたい事だったが、つまりこれはこういう薬なのだろう。
鞄の中にある注射器に視線を落とす。
人を発狂させて自傷行為をさせる。
幻覚でも見ているに違いない、もうきっと誰が誰だかもわかっていないだろう。
止めを刺そうとも思わない、あのままでは直に死んでしまう筈だ。
それに逆に返り討ちに遭いそうな様子だった。
(今後の使い方には気をつけないと…)
夕菜は置き去りにされた盾を見ながら思った。

美咲の残した道具を拾い終え夕菜は歩き出す。
目的地は、ホテル跡。
(地図でもはっきりと描かれているのだから、きっと休む所ぐらいあるよね)
440末期症状:2006/10/04(水) 07:32:33 ID:fzZLjRgl0
『梶原 夕菜(022)』
【時間:1日目16:30頃】
【場所:F−05(ホテル跡に移動)】
【所持品:強化プラスチックの大盾(機動隊仕様)、注射器(H173)×19、他支給品一式】
【状態:軽い打撲と疲労】

『澤倉 美咲(094)』
【時間:1日目16:30頃】
【場所:F−05】
【所持品:なし】
【状態:L5末期症状、錯乱、手と首に深い傷、自傷行為を続けている、迷走中】

【079の続き】
441フラグの因縁:2006/10/04(水) 10:55:09 ID:nXMix3u+0
「勝平さんやお姉ちゃんはどうしてるのかな」
 藤林椋(091)は姉や恋人と合流すべく散策を行っていたが、
まだ誰とも会えずにいた。とりあえず休憩しようと木にもたれかかり、
手に持った支給品を見つめる。武器はベレッタM92、大ハズレである。
ルートHやルートIならアタリだったんだろうね。

「椋ちゃんこんにちわなの」
「え……あ、ことみちゃんこんにちわ。というか、すごい格好ですね」

 目の前には一ノ瀬ことみ(006)が立っており、
その上半身は豪華な鎧に覆われ、巨大な剣を持っていた。なんというか、趣味が悪い。
いつの間に? そんなぼーっとしていたつもりはないんだけどと
訝しがりながらも、椋は友人との再会を喜んだ。

「私は初めて会ったのがことみちゃんなんですけど、
ことみちゃんはお姉ちゃんたちが何処にいるのか知りませんか?」
「知ってるの。でも教えてあげないの」
「えっ……」
442フラグの因縁:2006/10/04(水) 10:56:04 ID:nXMix3u+0
 気がつくと、椋は首に剣を突き付けられていた。
「こ、ことみちゃん、冗談はやめてください」
「私は知ってるの。朋也くんが図書室に来なくなったのは椋ちゃんの仕業だってことを」
「な、何のことを言ってるんですか?」
「椋ちゃんは図書室に行こうとする朋也くんに向かって、上目づかいで
 『あ、あの…どこにいくんですか…?』
とか言って引き止めたの」

それなら椋とことみは友人になっていないのではないかという邪推はしてはならない。

「あれはクラス委員長として……」
「それを口実に色目を使っていただけなの。そうやって私のフラグをつぶしておきながら、
他のイケメンが現れたらあっさり乗り換えた尻軽女なの」
「それが魁クオリティーなんですよ! 勝平さんのことを悪く言わないでください」
「その勝平くんは、ゲーム開始早々に女の子の頭を鉈でかち割ってたの。
脳をぐちゃぐちゃかき混ぜて、愉悦の表情を浮かべてたの。
椋ちゃんは男を見る目がないの」
「そ、そんな……」
443フラグの因縁:2006/10/04(水) 10:57:05 ID:nXMix3u+0
 椋は恋人の豹変を聞かされて呆然としていた。ことみはさらに剣を近づける。
「命が惜しいなら服を脱げなの」
「な、何をする気ですか…」
「この島にはガイキチがいるの。淫乱の椋ちゃんには、
ピコピコしゃべる実験動物のお供の肉奴隷がお似合いなの」
「い、いやです」
「それなら私が脱がしてあげるの」

 ことみは素早く椋を組み伏せると、服をびりびりと引き裂いた。
そして自らの下着をずらし、椋に股間の一物を突き立てる。

「きゃっ、やめ」
「ガバガバなの。乗り換えそうそうやりまくってるとは、
さすがはイケメンなら誰にでも股を開くと評判の椋ちゃんなの」
「だ、だれがそんなこと…」
「こんなヤリマン、肉奴隷にさせても喜んでよがるだけなの。
もういい、さっさと死ね」
「だったらテメェがやってることはなんなんだよこのふたなりやろぉーーーーー!!」
一瞬のスキをついて椋はベレッタの引き金を引こうとするが───
444フラグの因縁:2006/10/04(水) 10:57:52 ID:nXMix3u+0
───グサリ───

「遅すぎるの」


  一ノ瀬ことみ
 【時間:午後2時半ごろ】
 【場所:E−05】
 【持ち物:書き手薬×3、ことみの剣、ことみの鎧、デイバッグ】
 【状況:壊れてきた】

  藤林椋
 【時間:午後2時半ごろ】
 【場所:E−05】
 【所持品:ベレッタM92、デイバッグ(その場に放置)】
 【状態:死亡】

(156の続き、Dルート)
445名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 11:14:08 ID:fWKAOG9+0
おいおいヤリマン涼がもう退場かよ
このスレのネタを使えばスゲーおもろいキャラにできそうだってのに
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1157288860/
446名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 11:28:52 ID:hrBmUfL90
ビッグバンさえ椋のマンコの中の出来事吹いたw
447名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 11:30:33 ID:Yu7SnlwIO
適当な理由でっち上げて生き返らせたら?
Dだしむちゃくちゃなほど面白い
448名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 11:32:27 ID:nXMix3u+0
もちろん生き返り前提ですが何か
449神の高みで:2006/10/04(水) 15:33:52 ID:v4KbHpWD0

「遅すぎるの」

―――グサリ、とことみの聖浄肉棒が椋の秘所に突き立てられた。

「あ……ああぁっ……!」

椋の身体が一瞬だけ撥ね上がり、すぐに地に落ちて動かなくなる。
ことみの、一国を滅ぼすとまで称えられた究極の肉棒によって与えられた至高の快楽による
超性感刺激に耐えきれなかった椋の身体が、心臓の活動を停止したのである。
元来、年中無休で己が性感帯の開発に勤しんできた椋ならではの、皮肉な結末であった。

「せっかくだからこのまま死姦するの」

ゆっくりと前後していたことみの聖棒が、やがて速度を増していく。
それは止まるところを知らず、人間の目に映る速度を遥かに超えていくのだった。
残像すらも残さず、掻き消えたように見えることみの下半身。
ソニックブームによって周囲に撒き散らされる壮絶な破壊のエネルギーだけが
その凄まじさを物語っている。
450神の高みで:2006/10/04(水) 15:34:46 ID:v4KbHpWD0

音の消えた世界に、やがて奇妙な変化が現れた。
超光速のピストンにより歪んだ時空に、ピシリと裂け目が走る。
それはまるで光速を超えることみの腰使いに、時空そのものが悲鳴を上げているようだった。
時空の裂け目に周囲に舞い上がっていた土煙が、落ちていたベレッタが、そして衝撃波で
倒された木々までもが飲み込まれていく。

「え……?」

ここに至って、ようやくことみも異変に気がついていた。

「こ、腰が止まらないの」

椋の秘所にくわえ込まれたままのペニスが、自分の意思とは別の衝動に
突き動かされているかのように、止まらない。
それどころか、死んだはずの椋の肉襞が、ざわ、と蠢いたようにすら感じられる。
否、

「…………!」

椋の秘所は、死んでなどいなかった。
戦慄することみ。
藤林椋は先程の衝撃で紛れもなく、心停止に陥ったはずだった。

「どうしてなの……!」
「ふふふ……」
「な……っ! 生きていたの、椋ちゃん!」
451神の高みで:2006/10/04(水) 15:35:27 ID:v4KbHpWD0
驚愕に打ち震えることみ。
奇妙に静かな、椋の言葉がそれに答える。

「ふふふ……忘れたのことみちゃん、私の処女膜は素粒子一つ、無限小の時間さえあれば
 再生可能なのよ……? 心臓など私の組織の中では瑣末な存在」
「そ、それでも人間なの?」
「人間……? 胸と同じで志も小さいわねことみちゃん。ヒトなどに留まっていては
 イケメンセックスによる快楽など得られないわ。数多のイケメン生物、数多のイケメン無機物、
 数多のイケメン神霊体を制してきたこの処女膜こそが私、私こそが永遠の処女膜!」
「ば、化け物なの……」
「言ってくれるわねことみちゃん。貴女だって、その腰使いはもう人間のレベルを
 遥かに超越しているわ。私に言わせればまだまだだけどね」

妖艶に笑む椋。

「油断したわね一ノ瀬ことみ、もうここは……私の世界」
「……!?」

いつの間にか、周辺の様子が大きく変わっていた。
先程まで確かに存在していたはずの、沖木島の景色がどこにもない。
代わりにそこにあったのは、無限の桃色。

「ようこそ、イケメンふたなり一ノ瀬ことみ」

正常位で繋がったことみには、舌なめずりする椋の蟲惑的な笑みから
視線を逸らすことができない。

「これから貴女に永遠の快楽を教えてあげる―――。
 藤林椋に挿入した、貴女自身の愚かさを知りなさい……!」

性戦が、始まる。
452神の高みで:2006/10/04(水) 15:36:06 ID:v4KbHpWD0

 【時間:存在しない】
 【場所:ペニスとヴァギナの間にあるという時空の狭間、桃色世界】


  一ノ瀬ことみ
 【持ち物:書き手薬×3、ことみの剣、ことみの鎧、デイバッグ】
 【状況:大ピンチ】

  藤林椋
 【所持品:ベレッタM92、デイバッグ(その場に放置)】
 【状況:ヤる気マンマン】

→172、Dルート
453名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 15:45:02 ID:W0laE4NC0
ことみをヤリマンの同類にするなよボケ
454名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 16:03:07 ID:/DejeWhT0
―――性戦が、始まる。
バロスw

ともかく、連投回避お願いします
455偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:06:36 ID:/DejeWhT0
 「―――ごめんなさいね姫川さん。やっぱり一人で待つのは心細いんで」

 宮沢有紀寧 (108)は殺しを強制させた姫川琴音(084)を待つことなく、村の方向へ向かって歩き出していた。
 本来ならば、琴音が持ってくる筈の支給品を元いた場所で待っているつもりであったが、有紀寧は方針を変えた。 
 ゲームに乗ったかもしれない人間が襲撃をかけてきた場合、非力な彼女の力では抵抗できないからだ。
 確かに、有紀寧に支給された時限式の起爆リモコンは非常に有用だが、奇襲は勿論のこと、使用した参加者に逆上されて殺されかねないなどと使い勝手が悪い。
 使うならば、明らかに生への執着と死への恐怖がある者にしか効果は望めないだろう。
 つまり、解除をちらつかせて自分に隷属させる必要があるのだ。先程の琴音のように。
 それで集めた奴隷達で身を固めるのもいいが、解除の希望を抱いた奴隷共が結託し、リモコンを奪われでもしたら元も子もない。
 実際解除する機能などありはしないのだ。絶望の矛先は確実にこちらへと向く。
 リモコンという凶悪な武器を持っているが、自分は非力な少女。
 忘れてはいけないことだが、こんなリモコン一つで安心してはいけないのだ。
 だから、琴音に拳銃などの強力な支給品を求めたのだが。

(あの様子では、あまり期待しないほうがよさそうですね。―――まあ、彼女には適当にゲームを掻き回す役目でも担ってもらいますか)

 琴音の様子は恐怖に顔を歪め、思考も満足にできないほど錯乱していて見るに耐えなかった。
 あの調子では、彼女の元に支給品を献上することはおろか、満足に人も殺せないのではないか。
 そう思ったからこそ、早々と切り捨てた。
 元より生かすつもりもなかったし、何もしなくても二十四時間後には勝手に死んでくれる。
456偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:11:13 ID:/DejeWhT0
 彼女はある意味、ただの実験体だ。
 本当に爆発するのかどうかは分からないが、首輪が作動したことは確か。それを使って人間も操れることも確認した。
 リモコンの効果を望めるなら、本来使うべきは彼女のような非力な存在ではなく、有紀寧を守ってくれるような強力な存在だ。
 そういった存在を心理的に意のままに操れるのならば、有紀寧の生存率は格段に上昇することだろう。
 だが、そんな彼等も彼女からリモコンを取り上げようと躍起になることは分かっている。
 素直に従わせるようにするには、いくらか偽証の材料が必要だ。
 例えば、自分のリモコンは自身の首輪と連動していて、自身が死ねばそれに伴いリモコンに照射された首輪も爆発するといった風にだ。
 それを嘘だと、安易に否定することは決して出来ない筈だ。確証するには、自分の命を賭けなければならないのだから。
 
 そして、有紀寧はこの首輪が志望判定の役目を担っているということにも気が付いている。
 主催者はゲームだと言ったのだ。楽しむ要素があるということになる。
 ゲームの趣旨は殺し合い。つまり、それらが娯楽になるということだ。
 ならば、どこかで観察しているか、もしくは傍聴していないと楽しめないではないか。
 そういった予測的な話を聞かせてやれば、首輪とリモコンが連動しているという偽りの事実にも一層と現実味が増すであろう。

 そのためにはまず、利用できそうな人材を探すことから始めなくてはならない。
 彼女の支給品は、非常に貴重であるため、使用時は慎重になる必要がある。
 回数制限が限られているのだ。出遭った参加者に手当たり次第にリモコンを使うわけにもいかない。
 だから、他の武器も必要であるし、リモコンを使用する者の見極めも必要となってくる。
 何も真っ向から自分がマーダーになる必要はない。表面上は非力で気弱な参加者を装えばいいのだ。
457偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:13:38 ID:/DejeWhT0
 今の位置から比較的近いのが氷川村。そこならば、参加者も夜が更ける前に集まることだろう。
 そこで、今後に役立つ人材という名の哀れの犠牲者と合流することを方針とした。 
 ゲームに乗り気の人間に関しては、問答など必要なしに襲われる可能性もあるのだ。
 琴音など捨て置き、急いで村へと行って安全を確保せねばならない。
 当然身を隠すという意味ではない。身を守らせるためにだ。

 歩いて数時間。氷川村がもう間近といった場所で。
 内心、歪な考えをしていた有紀寧の視界に、とある参加者が映る。
 ―――一少年と小さな少女の姿だ。
 少年のほうは少女を気遣いながら歩いており、少女もはにかみながら頬を緩ませている。
 兄弟であろうか。いや、顔の造詣があまりにも違って見えるので、参加者同士が共に行動しているのだろう。
 しかし、好都合。
 少年が少女を保護したと見れば、明らかにゲームには乗っていない者達だ。
 それも格好の獲物、お人好しだ。
 拳銃までも所持しているのだから、ネギを背負ってきたカモに見える。

 ふと考え思い浮かべた名案に、彼女は表情を笑みへと形作った。
 おもむろにバックから筆記用具であるシャープペンを取り出し、躊躇なく自分の前腕に突き刺した。
 苦痛に顔を歪めるが、構わず刺したままのペンを縦へと移動させる。
 グチュリと、肉を抉ったところでペンを引き抜き、血液が湧き出てきた部分を摘み上げた。
 圧迫されることにより少しずつ洩れてきた自身の血を、そのまま手首まで滴らせる。

(ごめんなさい。あなた達はわたしに遭った不運を嘆いてくださいね)

 有紀寧は手に持つ先端が血濡れのシャープペンを草むらへ放り投げて、二人へ駆け寄った。
458名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 16:14:05 ID:v4KbHpWD0
ほい
459偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:15:35 ID:/DejeWhT0
「祐介お兄ちゃん、もう村が見えてきたね」
「ああ。もう少しだから、初音ちゃんもがんばって」

 目指していた氷川村までは、もう目の届く範囲だ。
 お互いの探し人が、村にいることを願って二人は互いを労う。

「お姉さん達、いるといいね」
「うん。ここにいなくても、また探せばいいよ」
「そっか。そうだね……」

 長瀬祐介(073)は内心、柏木初音(021)のことを不憫に思っていた。
 名簿を見る限り、いくつかの苗字が重なる親類をいくつも見受けられたが、中でも柏木姓が一番多いというのも理由の一つだ。
 それでも健気に姉達を探す姿を見ていると、こんな島で殺し合いをする参加者達が血も通っていない化け物に思えてしまう。
 こんな小さな子が殺し合いという凄惨な環境に放り込まれながらも、決して自分を見失わない強さを持っている。
 それが寂しさから来る求めであっても、自我を失う殺人者より何倍もマシというもの。
 何の力もない彼女がそう在ろうとしているのだ。
 電波が使えない程度でうろたえた自分が恥ずかしくなる。
 初音を守るという責任感が、既に祐介の中で芽生えているため、確固たる決心が揺らがない限り彼女を守り続けるだろう。
 自身の知り合いとも合流したいが、それでも初音の姉達を優先させた。
 彼女に早く、本当の意味での笑顔が浮ばせたかったから。

「初音ちゃん。村に入ったからといって気を緩ませちゃダメだよ」
「うん。怖い人たちがいるかもしれないからだよね」

 コクリと祐介は頷いた。
 村に寄り付くというのは一種の賭けだ。
 ゲームに乗ったものも乗らないものも集まってしまうからだ。
 こんな状況だからこそ、人というのは無意識に人を求めてしまうものである。
 本来なら寄り付きたくはなかったが、知り合いを探すというのなら行かざるを得ない。
460偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:17:01 ID:/DejeWhT0
 二人は心を引き締めて、歩を進めようとしたその時、ザザッと何かが駆け寄る音を耳にした。
 ビクリと、肩を振るわせた二人だが、すぐさま祐介は必死に拳銃を取り出して、音の方へと銃口を向ける。

「―――さ、下がって初音ちゃん……!」
「え、え……?」

 初音を背後にやり、銃口を震わせながら警戒する。
 逃げようとも思ったが、そんな暇はなさそうだ。
 祐介の視界に、一人の少女が飛び込んできたからだ。

「た、助けてください……っ!」

 飛び込んできた少女―――宮沢有紀寧は瞼に涙を湛えて無遠慮に祐介に縋りついてきた。
 肌が触れ合う距離にまで接触してきた少女に対して、健全な男である祐介は、それはもう慌てる。

「あ、いや、その! だ、大丈夫……かな?」
「……何やってるの祐介お兄ちゃん。それよりも、この人怪我してる……」

 初音は慌てる祐介をジト目で見つつ、有紀寧の腕から滴る血を目敏く見つける。
 有紀寧は祐介の胸に顔を埋めながら、身体を振るわせた。

「わ、わたし……。人殺しなんて、い、嫌だったので……。誰かと合流しようと、したら……」
「や、やられたの……?」

 コクリと小さく有紀寧は頷いた。
461偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:22:30 ID:/DejeWhT0
(さて、接触は上手くいきましたね……)

 現在は祐介の胸に恐怖で縋りつく、一人の非力な少女。
 その背を初音がゆっくりと撫でていた。
 祐介も手に余りつつも、まったく警戒はしていない。
 やはり、お人好し。有紀寧は嘲笑した。

「その……ごめんなさい。もう大丈夫です」
「あ、うん。傷はどうかな? 痛む……?」
「いえ。大分楽になりました。ありがとうございます」
  
 祐介の胸から離れながら、軽く傷の手当てをしてくれた初音へと頭を下げた。
 少し居直った有紀寧は二人に事の説明をすることにする。 

「わたし、もう何が何だか分からなくて……」
「大丈夫。何があったか、ゆっくり離してみて」
「……はい。最初に、女の子と会ったんです。怖かったけど、勇気を振り絞って声を掛けました……
 そしたら、その子も答えてくれたんです。ゲームには乗らない……皆で一緒に脱出しようって……」
「……そっか。それで……?」

 優しく問い掛ける祐介の言葉を受けて、有紀寧は悲痛そうに顔を歪めた。
 その顔を見て、居た堪れなくなった初音は祐介を制止しようとするが、彼は軽く首を振る。
 誰に襲われたかという情報は、自分達が生きる上でも必要なのだ。
 そう祐介は自分に言い聞かせて、有紀寧へと同情の視線を送りながら続きを促した。
 彼女は弱弱しく頷いた。

「じ、自己紹介して、仲良くなった筈なんですっ。な、なのに! 彼女はわたしの首をペンで指そうと……っ。
 必死で抵抗して、腕で庇って……。こ、怖くなったから逃げてきたんです……」
「自己紹介したの? 名前は覚えてる……?」
462偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:24:28 ID:/DejeWhT0
 有紀寧は顔を伏せた。

「―――姫川琴音」

 そう小さく呟いた。
 有紀寧が身体を震わせる様子に、祐介も初音も彼女を労わった。  
 もう大丈夫、などといった言葉を二人は投げかけてくる。
 有紀寧は俯いた表情の下で、口許を吊り上げていた。

(あっさり信じちゃいましたね。まあ、二人が姫川さんの知人じゃなくて僥倖といったところでしょうか)

 琴音の知人であったならば、普段の人格により否定されたかもしれないが、知らない人間ならば仕方ない。
 仮にこの先会ったとしても正気じゃないのだから、まったく問題ないだろう。
 だが、自分は心優しい少女なのだ。これだけでは詰めが甘い。

「で、でも! 彼女も何か事情があったかも知れないんです……。もし見つけたりしたら……助けてあげてください……」
「そうだね……。こんな首輪まで填められて、ゲームを強制させられてるんだ。無理もないよね」

 自我を狂わせるゲームの存在に、祐介は歯噛みする。
 初音も、悲しそうに目を伏せた。
 ―――その反応だ。
 これで彼等は完全に甘い思考の人種だと判断する。
 彼等にリモコンを使えば、隷属できる自信もあった。
 だが、必要ない。
 こんな甘ったるい人間の価値など、一つしかないではないか。
463偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:27:04 ID:/DejeWhT0
「うん、わかった。彼女をもし見つけたら、頑張って説得してみるよ」
「あ、ありがとうございます……! わ、わたし、もうどうしていいか分からなくて……」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。ちゃんと話せば分かってくれるよ!」
「はいっ、はい……っ!」

 ついでに感謝の涙を浮かべておく有紀寧。
 死の秒読みが始まっている琴音をどう説得するのか拝見したいものだ。
 自分も含めて、どいつもこいつも道化ばかりだと思えてしまう。
 真摯に言葉を吐く二人を嘲笑いながら、有紀寧は濡れた瞳を祐介へと向ける。
 
「あ、その。わたし、一人では怖くて……」
「うん、勿論分かってるよ。初音ちゃんも、それでいいよね?」
「お姉ちゃんもわたし達と一緒に行こっ」
「あ、ありがとうございます……!!」

 二人が笑顔で、精神的に弱っているであろう有紀寧へと笑いかける。
 あまりの滑稽さで失笑を噛み殺すのに苦労しながらも、嬉しさの笑みを湛えて言葉を吐いた。
 あくまで見せ掛け。あくまで偽証。
 
 ―――断言できる。自分にとって彼等の価値など一つしかないではないか。
 
(―――精々、わたしの盾となってくださいね。“お兄ちゃん”)

 仮面の表情の下で。彼女はほくそ笑む。
464偽りの仮面:2006/10/04(水) 16:29:01 ID:/DejeWhT0
『宮沢有紀寧 (108)』
【時間:1日目午後2時頃】
【場所:H−7、】
【持ち物:リモコン(5/6)・支給品一式】
【状態:前腕に軽症(治療済み)。強い駒を隷属させる。】

『長瀬祐介 (073)』
【時間:1日目午後2時頃】
【場所:H−7、】
【持ち物:コルト・パイソン(6/6) 残弾数(19/25)・支給品一式】
【状態:普通。氷川村へ行き、初音の姉を探す】

『柏木初音 (021)』
【時間:1日目午後2時頃】
【場所:H−7、】
【持ち物:鋸・支給品一式】
【状態:普通。祐介に同行し、姉を探す】

「その他:094と122の続きです。共通でお願いします」
465天才少女と医者:2006/10/04(水) 16:40:40 ID:GRif2uQb0

霧島聖(032)は七瀬と分かれた後、
鎌石村中心部の民家で探索を行なっていた。

妹を探す為、そしてある物を探す為だ。
ある物を探す作業は、終わりを迎えようとしていた。
「ふむ、これだけあれば応急処置をする分には困らないか。」

彼女の鞄には、包帯・消毒液・化膿止め・糸などの、治療用の道具一式が入れられていた。
彼女はこの絶望的な状況下においても、医者であり続けるつもりなのだ。
「本当ならもっと色々と道具が欲しいんだが、診療所は遠すぎるからな。」
そう呟き、外に出ようとするとしたが、聖はある事に気付きその足を止めた。

丁度少女、一ノ瀬ことみが家に入ってこようとしている所だったのだ。

相手も当然自分に気付き、慌ててナイフを取りだし、そのまま固まっている。

「待て待て、私は医者だ。誰かに危害を加えたりするつもりはないんだ。」
「君もこの家に用があるのか。私はもう外に出るから、後は自由にしてくれたまえ。」
そう言うと、両手をあげ、敵意が無い事を示しながら少女の横を通り過ぎる。
ことみの方はまだ警戒心を解いていないのか、黙って聖の方を見据えていた。


聖はある事を思い出し、振り返った。
「ああ、私は妹を探しているんだが、霧島佳乃という子を見なかったか?」

「ごめんなさい、このゲームで出会ったのは、あなたが始めてなの。」
ことみは初めて口を開いた。

「そうか。では失礼するとしよう。」
聖はそう言い、立ち去ろうとした。
466天才少女と医者:2006/10/04(水) 16:42:17 ID:GRif2uQb0

ことみは少し考えた後、ある事を決心した。
「待って!あなたはこれからどうする気なの?」
「私か?私は妹を探し出し、それからゲームを脱出する方法を考え出すつもりだ。」
「なら、私と一緒に行動すれば良いと思うの。私の目的も、脱出する事なの。」

そう、ことみは聖を信用する事にしたのだ。
聖はゲームに乗る気は無いと言ったが、勿論ただそれだけで信用するのは危険過ぎる。
しかし、理屈では表せない、信用出来る独特の雰囲気のようなものを、彼女は持っていた。
ことみはそれに賭ける事にしたのである。
どうせ理屈でいくら考えても、相手が100%信用出来るかどうかは分からないのである。

「・・・ふむ。悪くない案だ。しかし、私はゲームに脱出する事よりも、
まずは妹を探し出す事を優先するつもりだぞ?」
「問題無いの。もっと人を集めないとこのゲームを脱出するのは無理なの。
人探しをするのは大歓迎なの。」

暫くして、聖が口を開いた。
「わかった。なら一緒に来ると良い。」
「! 聖先生、ありがとうなの!」

聖は笑みを浮かべつつ、語りだした。
「君は幸運だぞ。私なら多少の怪我はすぐ応急処置出来る。」
「おまけに多少は腕に覚えがあるつもりだ、絶対に人殺しはしないがな。」
「更にある程度は頭も良いつもりだ。相当頼もしい人材である事は間違いないだろう。」


(・・・・聖先生ってもしかして、結構お調子者なの?)
いきなり先行きに不安を覚えつつも、
一ノ瀬ことみと霧島聖の知性派(変人でもあるのだが)コンビは歩き出した。
467天才少女と医者:2006/10/04(水) 16:43:11 ID:GRif2uQb0
【時間:1日目午後5時過ぎ】
 【場所:C−03】

 霧島聖
 【所持品:支給品一式、治療用の道具一式】
 【状態:健康。佳乃を探し、それからゲームの脱出を図るつもりである。】

  一ノ瀬ことみ
 【持ち物:暗殺用十徳ナイフ、支給品一式】
 【状態:健康。仲間を集め、それからゲームの脱出を図るつもりである。】


※(ルートB系共通ルート。関連は062、120)
468イケてない二人:2006/10/04(水) 16:56:38 ID:xuBzm6p+0
「よう、気分はどうだ?」
「……最悪だな」
「俺は仲間が増えて最高だけどな」
高槻がいまだ宙吊りのままケケケと笑う。
同じように隣にぶら下がっている国崎往人はチッと舌打ちをすると恨めしそうに呟いた。
「……なんなんだこれは?」
「変なチビガキがいるんだけどよ、今はどっかいっちまったがそこら中にトラップを仕掛けて回ってるみてぇでな」
後は想像出来るだろ、と続いた高槻の言葉に往人は深く溜め息をつきながら辺りを見渡す。
往人の真下には、背負ってきた青年月島がの姿があった。
勢い良く背中から落ちていたようだが特に怪我はなさそうだ。
「あの兄ちゃんは何だ?」
往人の視線に気付くと高槻は言う。
「気絶してたから連れて来た。言っとくがやったのは俺じゃないぞ」
「お前今の状況わかってるのか?ほっときゃいいじゃねぇか、お人よしにもほどがあるぞ」
「……耳が痛いくらい言われ慣れてるさ」
ムスッと返す往人の言葉に高槻は下卑た笑いを上げた。

「ぴこっ?」
気付けば今までどこにいたのか、ピコ(仮)が往人をじっと見つめている。
「ポテト、お前も来てたのか」
「あぁ?その畜生のこと知ってるのか?」
「いや知り合いのペット何だが……」
高槻は安堵の溜め息を漏らしながら、これで厄介払いが出来るとほくそえんでいた。
「ぴこぴこ後をついてきて五月蝿くてしょうがねーんだ、引き取ってくれ」
「……まぁ無事に降りれたらな」
「……ちげぇねぇ」
469イケてない二人:2006/10/04(水) 16:57:39 ID:xuBzm6p+0
国崎往人
 【所持品:なし】
 【状態:宙吊り】
高槻
 【所持品:なし】
 【状態:宙吊り】
月島拓也
 【所持品:なし】
 【状態:気絶中】

 【場所:F-7西】
 【時間:一日目17:45頃】
 【備考:往人の所持品と高槻の所持品は木の根元に散在、詳細は下記に。
     トレカフ TT30の弾倉(×2)ラーメンセット(レトルト)化粧品ポーチ 支給品一式(×4=往人と名雪と拓也と高槻のバッグ)】

 ※共通、関連は159・166
470おばさんとおじさん:2006/10/04(水) 21:01:55 ID:Q8hLaQ9A0
「ん…僕は、何をしていたんだ?」
橘敬介(064)はまだ麻酔が抜けきっておらず力の入らない体を無理矢理起こした。
僕はどうしてこんなところに倒れていたのだ?
訳のわからないままこの殺し合いに参加させられて、とりあえずは安全な場所に身を隠すことを考えて…それから?
記憶がない。何か首にちくりとした痛みを感じたところまでは覚えているのだが。
敬介は不審に思い、首のあたりをさすってみた。
「…! これは」
敬介の手に当たったもの、それは青い色をした小型の矢だった。
「麻酔針…か? 何にせよ、これが原因なのは間違いないな」
ゆっくりと抜き取った後、すぐにそれを投げ捨てた。刺さったところを撫でてみても、出血はない。どうやら大丈夫なようだ。
「眠っていたせいか、やけに頭がすっきりしてるな…さて」
ぐっ、と背伸びして、これからの方針を組みたてる。
安全な場所を探す。まずはそれが目的だが、それからどうする。じっと何もせず待つのか。それともそこを拠点に何か行動を起こすか。
出来れば、観鈴と晴子だけは保護してやりたいところだ。特に観鈴はあんな別れかたをしたとはいえ、たった一人の娘だ。是が非でも助けなければ。
「どうするにせよ、まずは拠点の確保だな…急ごう」
敬介は荷物を持って歩き出した。空を見てみると、赤い色が一面を覆っていた。もう夕方になっていた。
「…この分だと、いくつか戦闘が起こっていても不思議じゃないな…クソッ」
もし、自分がマヌケに眠っていた間に、二人に何かあったら――そう思うと、敬介の足は自然と早くなるのだった。
やがて、敬介は一軒の空き家を見つける。周りからは目立たないように、ひっそりと佇んでいた。
「ここなら、隠れ場所には向いているかもしれない」
すぐにそう判断した敬介は、中に殺人鬼が潜んでいない事を願って静かに扉を開けた。そして、注意深く中を窺う。すると、一人の少女が椅子に座っているのを見かけた。
471おばさんとおじさん:2006/10/04(水) 21:02:31 ID:Q8hLaQ9A0
(先客か。あの様子では、敵には見えないが…)
声をかけるべきか迷っていると、相手の方から声がかかった。
「…こんにちは。そこに誰かいるのは分かっています。安心して下さい。私に敵意はありませんから」
落ち着いた声色で答えたのは、天野美汐(005)だった。敬介は存在を悟られていたことに驚きながらも、ゆっくりと中に入っていった。
「見ぬかれていたか。どうやら、僕に忍者の才能はないようだな」
「そうでもありませんよ。扉が軋む音がしなければ、多分分かりませんでした。この島、小鳥の囀る声さえしないので」
無表情に美汐が答える。敬介は苦笑いしながら荷物を床に下ろした。
「君は、ずっとここにいたのかい?」
「ええ。特にする事もありませんでしたから」
「友達とか、家族とかはいないのか?」
「友達はいますが…わざわざ探しにいくほどでもありません」
しれっとした顔で、美汐は答える。敬介は肩をすくめながら、
「ここから移動する気がなかったら、ここを僕の行動拠点にしてもいいかい? 僕には探している人がいるんでね」
「構いません。ゲームには乗っていませんから」
「良かった。それじゃ、挨拶くらいはしておこうか。僕は橘敬介だ。橘でいい」
「天野美汐、と申します。天野でいいです」
互いに頭を下げた後、敬介は支度を始める。
「橘さん、あなたの支給武器は?」
椅子に座ったまま、美汐が尋ねる。
「さぁね…僕もまだ見ていなかった」
そう言いながら、敬介がデイパックの中から取り出した物は。
「ボウガン、か。やれやれ、とんだ皮肉だ」
「何か嫌な思い出でもあるのですか?」
472おばさんとおじさん:2006/10/04(水) 21:03:59 ID:Q8hLaQ9A0
「さっき、首のあたりを麻酔付きの矢で撃たれてね。今まで夢の中にいたってわけさ」
「それはお気の毒に」
全然そうは思っていなさそうに美汐が言う。敬介はボウガンと矢のストックを持ち、小屋を出ようとする。
「荷物はここに置いておくよ。また後で戻ってくる」
「分かりました。泥棒さんには盗られないように見張っておきましょう」
「それは心強い」
敬介は少し手を上げた後、小屋を後にした。

「さて、次は観鈴たちを探さないとな…まずは平瀬村のほうにでも行ってみるか」
デイパックがなくなった分、体は若干楽になった。森を歩きながら、敬介は思う。
(確かに、小鳥の囀る声さえしない…いや、それ以前に動物の気配すらない。木や植物も、同じようなものばかりだ)
目の前の風景が、何となく作り物のように思われる。ひょっとしたら、と敬介は考えた。
「この島は…殺し合いのためだけに作られた人工島だとでも言うのか」
馬鹿馬鹿しいと思うが、何しろ主催者がイカレた性格だ。本当だとしても不思議はない。
「…いや、その前に観鈴たちを探すのが先だ。急ごう」
先を急ごうとした時、男声のくぐもった声が聞こえてきた。
――1回目の、死亡者の発表だった。
473おばさんとおじさん:2006/10/04(水) 21:04:51 ID:Q8hLaQ9A0
064 橘敬介
【時間:1日目午後6時前】
【場所:I−6】
【持ち物:マスターモールドMC−1(矢の残りは18本)】
【状況:観鈴と晴子を探す、デイパックは美汐のところへ放置】

005 天野美汐
【時間:1日目午後6時前】
【場所:I−7】
【持ち物:様々なボードゲーム・支給品一式】
【状況:普通。ゲームには乗らないが、目的もない】

【備考:B、H系ルート】
474名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 21:14:36 ID:Yu7SnlwIO
>おばさんとおじさん
このままだと094と矛盾するので分岐になるよ
475おばさんとおじさん:2006/10/04(水) 21:24:53 ID:Q8hLaQ9A0
すまん、94話見逃してた。
ということでこの作品はアナザー逝きにしちゃってください
476名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 22:23:28 ID:aIu/KFJA0
ルートB、ルートB'専用シナリオ
(ルートB−2、B−4、B−5、B−6、B−7、B−8は矛盾するので)

→063
⇔097
⇔099

477イレギュラーの本格的始動:2006/10/04(水) 22:25:17 ID:aIu/KFJA0
笹森花梨は逃げていた。背後から迫るイレギュラー、岸田洋一から。

「うわーん。しつこいよー!」
「黙れ雌豚、貴様だけは許さん!」

どうやら先ほどの砂攻撃が岸田の堪忍袋を爆発させてしまったようで、
今の岸田は目の前を逃げる花梨しか見えていないようだった。

「や…やばっ。どんどん近づいてくる〜!」
一度チラリと後ろを振り返る。徐々に岸田は花梨に追いついてきていた。
やはり花梨も女の子である。男である岸田とは身体能力に違いが出てしまうのだ。
2人の距離はどんどん縮んでいく。

「もらったァ!」
次の瞬間、岸田が持っていたカッターを構え一気に花梨に飛び掛った。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」

――ボーン!

「え?」
「なにっ!?」
突然何かが発射される音がしたと思ったら、次の瞬間にはよく獣を捕らえたりするのに使う捕縛用の網が岸田を捕らえていた。
478イレギュラーの本格的始動:2006/10/04(水) 22:25:52 ID:aIu/KFJA0
「大丈夫? 怪我しとらん?」
「あ…ありがとう………」
声と共に近くの茂みからバズーカ砲を持った保科智子(096番)が姿を現した。
どうやら、そのバズーカから捕縛ネットを発射したようだ。

「くそぅ! これしきのことで!」
岸田は早速カッターで網を切ろうとしていたが、意外とネットの糸は硬く悪戦苦闘しているようだった。

「うわっヤバ! ねえ、今のうちに逃げよう!」
「せやな。こっちや!」
智子の指差す方――鎌石村へと2人は駆け出しその場を離脱した。
「自己紹介がまだやったな。保科智子や」
「笹森花梨なんよ」



「ちっ。あの雌豚どもめ……」
それから1時間ほどして岸田はネットを破って脱出した。

「――まあいい。まだ時間はたっぷりとある。存分にこのゲームを楽しむとしよう……
まずは……そうだな。人が集まりそうな場所を探してみるか………」

岸田はニヤリと笑うと自身も智子たちが走っていったほうへ歩いていった。
479イレギュラーの本格的始動:2006/10/04(水) 22:27:26 ID:aIu/KFJA0
【時間:午後2時】

笹森花梨
【場所:C−03(鎌石村)】
【所持品:特殊警棒、海岸で拾ったピンクの貝殻(綺麗)】
【状態:健康。今は岸田から逃げる】

保科智子
【場所:C−03(鎌石村)】
【所持品:専用バズーカ砲&捕縛用ネット弾(残り2発)、支給品一式】
【状態:健康。今は岸田から逃げる】

岸田洋一
【場所:C−02】
【所持品:カッターナイフ】
【状態:健康。とりあえず花梨たちを後を追う。マーダー(やる気満々。イレギュラー)】
480名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 22:32:11 ID:aIu/KFJA0
訂正

141 おつかい役1号
>「ええと…それで宗一君たちが探している人って誰なんですか?」
>参加者名簿を開いた渚が宗一たちに尋ねた。

『宗一君』を『那須さん』、『渚』を早苗に訂正お願いします
481名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 22:48:37 ID:dBDD5gk10
岸田厨さん一人リレー必死ですねw
482内輪の中の疑念(1/4):2006/10/04(水) 22:57:25 ID:Stsk6VPH0
そこは、掘っ立て小屋のようなものだった。
源五郎池淵、多分この池を管理するためであろう物置のようなところに、相良美佐枝は隠れていた。
今は使われていないのであろう、天窓を開け喚起しても、空気はまだ埃臭い。

(開始数時間で20人以上・・・一体どうなってるんだい)

溜息。地べたに腰掛け、ガダルカナル探知機を起動させながら美佐枝は呟いた。
この探知機の機能を知った彼女は、その足で逃げ隠れ場所を確保すべく氷川村へ向かった。
しかし、よくよく考えてみれば隠れる民家のある村では、人の集まりも激しくなるであろう。
・・・戦闘面では全く歯が立たない自分の装備、まずはどこかに隠れ状況を整理するしかなかった。
彼女がこの物置を見つけたのは正に偶然、氷川村へ進路をとっていた最中であった。
運が良かったとしか、言いようがない。

美佐枝はいまいちど自分の名簿を広げる。
そこには、いくつもの印があった。

斜線は死亡者、丸で囲んだものは殺害者。

筆記用具はここで見つけた、それ以来美佐枝は敵対関係などを細かくチェックしている。
この場所についてから30分弱。
少々の休憩の後、美佐枝はひたすらそれに時間を費やした。
殺害者に関してはうまくタイミングがかち合わないと分からなかったが、これまでの死亡者の確認は既に終わっている。
483内輪の中の疑念(2/4):2006/10/04(水) 22:58:07 ID:Stsk6VPH0
ふぅ、と溜息。・・・美佐枝には、まだ考えることがあった。

この探知機の不安、よく見ると右上画面にバッテリーを表す電池のマークがあるのだ。
最初つけたであろう時は満タンだったと思うが、今は三分の一ほどの空間ができている。

(まずいね、一端電源を切った方がいいのかもしれない)

正直、それは心もとない選択である。
今は安全だろうし、切手も大丈夫かも知れないが・・・
その時、電池マークの下にもまた違うマークがあるのに気づいた。

(あれ、こんなものあったかい・・・?)

触れてみる、ピッという音と共に一つのウィンドウが現れた。

「・・・・・・・ロワちゃんねるポータブル?」

不思議そうに見つめる美佐枝、この手のことにはうといらしい。
色々いじってみて、何とか違う画面に移るとその内容に驚いた。







 自分の安否を報告するスレッド

1:藤林杏:一日目 12:34:08 ID:ajeogih23


484内輪の中の疑念(3/4):2006/10/04(水) 22:59:15 ID:Stsk6VPH0

見知った名前である。
・・・安心した、その内容を見る限り彼女はゲームに乗っていないことになる。

「よし、いっちょあたしもやってみるか・・・って、あれ。どうやって書き込めばいいんだい?」

残念、この探知機はロム専用なのでそれはできないのだが美佐枝は奮闘し続ける。
数分後、諦めてウィンドウを閉じ(これまた苦労して)美佐枝は元のマップ画面に戻った。

(・・・そう言えば、あの子はまだ無事かね)

ふと、杏のことが気になった。まだあの子は無事だろうか。
ピっと、マップ上の自分だと思われる光点に触れる。

(047)相良美佐枝
485内輪の中の疑念(4/4):2006/10/04(水) 23:00:10 ID:Stsk6VPH0
プロフィール画面、勿論美佐枝の物。
ここで名前の隣の番号に触れると、番号の一覧が出てそこから人の検索ができるのだ。
慣れた手つき、もう探知機の把握は完璧であった。

(藤林、藤林・・・090、と)

ピッ。杏の写真はカラーである、まだ無事な証拠だ。
よかった、素直にそう思った・・・その瞬間。

殺害数 1

その表示に、驚愕した。
見間違い・・・ではない。
もう一度ロワちゃんねるを開き彼女の書き込みを確認するが、現実に変化はない。

(何てこったい・・・)

溜息、そして愕然。
気がついたら、美佐枝はこめかみに手をやり目を閉じていた。

-------------彼女が杏の身に起きていたことをチェックできていれば、この誤解は生まれなかったのかもしれない・・・
486名無しさんだよもん:2006/10/04(水) 23:01:38 ID:CaXFX8XG0
>>481

一人じゃないよ
ルートDが待っている
487補足:2006/10/04(水) 23:02:06 ID:Stsk6VPH0
相楽美佐枝
【時間:1日目4時50分ほど】
【場所:H−06】
【持ち物:ガダルカナル探知機(残り電池2/3)・支給品一式】
(美佐枝がどこまで敵対者を理解しているかは書き手さんにお任せします)
【状況:杏に疑念。冷静に交戦を見守っていたが、少し混乱】

(関連・16・155)(美佐枝の支給品が探知機なのでAルート系)

(まとめさんへ:112は愛佳が生きているので、Aルートではないと思います;)
488おばさんとおじさん(改訂版):2006/10/04(水) 23:14:07 ID:Q8hLaQ9A0
祐介達と別れた後、橘敬介(064)安全な場所を探すのに奔走していた。観鈴はあんな別れかたをしたとはいえ、たった一人の娘だ。是が非でも助けなければ。
「まずは拠点の確保だな…急ごう」
敬介は荷物を持って走り出した。空を見てみると、赤い色が一面を覆っていた。もう夕方になっていた。
「…この分だと、いくつか戦闘が起こっていても不思議じゃないな…クソッ」
二人に何かあったら――そう思うと、敬介の足は自然と早くなるのだった。
やがて、敬介は一軒の空き家を見つける。周りからは目立たないように、ひっそりと佇んでいた。
「ここなら、隠れ場所には向いているかもしれない」
すぐにそう判断した敬介は、中に殺人鬼が潜んでいない事を願って静かに扉を開けた。そして、注意深く中を窺う。すると、一人の少女が椅子に座っているのを見かけた。
(先客か。あの様子では、敵には見えないが…)
声をかけるべきか迷っていると、相手の方から声がかかった。
「…こんにちは。そこに誰かいるのは分かっています。安心して下さい。私に敵意はありませんから」
落ち着いた声色で答えたのは、天野美汐(005)だった。敬介は存在を悟られていたことに驚きながらも、ゆっくりと中に入っていった。
「見ぬかれていたか。どうやら、僕に忍者の才能はないようだな」
「そうでもありませんよ。扉が軋む音がしなければ、多分分かりませんでした。この島、小鳥の囀る声さえしないので」
無表情に美汐が答える。敬介は苦笑いしながら荷物を床に下ろした。
「君は、ずっとここにいたのかい?」
「ええ。特にする事もありませんでしたから」
「友達とか、家族とかはいないのか?」
「友達はいますが…わざわざ探しにいくほどでもありません」
しれっとした顔で、美汐は答える。敬介は肩をすくめながら、
「ここから移動する気がなかったら、ここを僕の行動拠点にしてもいいかい? 僕には探している人がいるんでね」
489おばさんとおじさん(改訂版):2006/10/04(水) 23:14:56 ID:Q8hLaQ9A0
「構いません。ゲームには乗っていませんから」
「良かった。それじゃ、挨拶くらいはしておこうか。僕は橘敬介だ。橘でいい」
「天野美汐、と申します。天野でいいです」
互いに頭を下げた後、敬介は支度を始める。
「橘さん、あなたの支給武器は?」
椅子に座ったまま、美汐が尋ねる。
「僕かい? 僕はこれだ」
そう言いながら、敬介がデイパックの中から取り出した物はトンカチと花火セットだった。
「…外れの部類だけどね」
「トンカチはまんざら外れでもないんじゃないですか。思いきり叩けば武器になりますよ」
全然そうは思っていなさそうに美汐が言う。敬介はトンカチを持ち、小屋を出ようとする。
「荷物はここに置いておくよ。また後で戻ってくる」
「分かりました。泥棒さんには盗られないように見張っておきましょう」
「それは心強い」
敬介は少し手を上げた後、小屋を後にした。

「さて、次は観鈴たちを探さないとな…まずは平瀬村のほうにでも行ってみるか」
デイパックがなくなった分、体は若干楽になった。森を歩きながら、敬介は思う。
(確かに、小鳥の囀る声さえしない…いや、それ以前に動物の気配すらない。木や植物も、同じようなものばかりだ)
目の前の風景が、何となく作り物のように思われる。ひょっとしたら、と敬介は考えた。
「この島は…殺し合いのためだけに作られた人工島だとでも言うのか」
馬鹿馬鹿しいと思うが、何しろ主催者がイカレた性格だ。本当だとしても不思議はない。
「…いや、その前に観鈴たちを探すのが先だ。急ごう」
先を急ごうとした時、男声のくぐもった声が聞こえてきた。
――1回目の、死亡者の発表だった。
490おばさんとおじさん(改訂版):2006/10/04(水) 23:16:19 ID:Q8hLaQ9A0
064 橘敬介
【時間:1日目午後6時前】
【場所:I−6】
【持ち物:トンカチ】
【状況:観鈴と晴子を探す、デイパック(花火セットはこの中)は美汐のところへ放置】

005 天野美汐
【時間:1日目午後6時前】
【場所:I−7】
【持ち物:様々なボードゲーム・支給品一式】
【状況:普通。ゲームには乗らないが、目的もない】

【備考:B、H系ルート。これを>>470-473と入れ替えて下さい】
491教師の鑑:2006/10/04(水) 23:38:28 ID:CdrcrVLC0
坂上智代は里村茜は、海沿いに歩いていた。
もっとも二人の持つ武器では護身には少々不十分である為、その足取りは非情に慎重であった。
二人は街道をさけ、海岸沿いに平瀬村へ向かっていた。
街道は危険と判断しての行動である。
今の二人の状態で敵に襲われてはひとたまりも無い。

「おい、あれは・・・。」
何かに気付いた様子の智代が指を指している。
「・・・・?」
智代が指を指している方向を見ると、一人の老人が立っていた。



5分後、老人――幸村俊夫と、智代達は簡単な自己紹介を済ませ、本題に入っていた。
「ほうほう、つまりわしに仲間になってくれと?」
「その通りだ。正直な所、もっと協力者がいないとどうにもならない。」

「・・・・。」
茜は黙って様子を見ていた。

「こんな老いぼれがどれだけ役に立つか分からんが、いいじゃろう。
わしの生徒達と同じ年頃の子供達を見捨てるわけにはいかんしな・・・・。」
あっさりそう言うと、老人はすぐに歩き出した。

智代は慌てて追いかけ、遅れて茜もついてきている。
「生徒?アンタ教師なのか?・・・もしかして、アンタの生徒も参加しているのか?」
「そうじゃよ・・・。あいつ等無事だったらいいがの・・・・。
わしのような老いぼれは死んでも良いが、若いもんがこんな所で死ぬのは耐えられん・・。」
幸村が遠い目でそう言うと、智代はそれきり何も言えなくなり、
茜も幸村も口を開く事なく歩き続けた。

492教師の鑑:2006/10/04(水) 23:39:15 ID:CdrcrVLC0
一行は、暫く歩き続けると海岸に船を発見した。
「おい、船があるぞ!・・・でも、外傷が激しいし故障していそうだな。」
「・・・・それでも、修理すれば脱出の時に使えるかも知れません。」
「そうだな。とにかく行ってみるか!」

二人は脱出方法が見つかったかもしれない事に、興奮しており、周りが見えなくなっていた。
(もっとも修理する技術がある者が仲間にいないし、首輪の問題もまだ未解決であったが。)
出発当初の慎重さは、全く無くなっていた。
この時海岸に捨てられたバックに気付いたのは、幸村だけだった・・・・。

二人は我先にと船に乗り込み、まずは船尾の方を調べてみた。
船尾は外損以外特に損傷は見当たらず、修理すれば問題無さそうであった。

次に二人は船室を調べるべく、
船室の扉を開けた。

その瞬間、
「駄目じゃっ!!」
幸村が二人を突き飛ばしていた。


その直後、
パラララララ!!という音が聞こえ、
二人が顔を上げると、
幸村は体中のあちこちから血を迸らせていた。

「な―――!?」
「くそっ、勘付かれたっ!?」
3人一気に仕留めれると確信していた山田ミチルは予想外の出来事に一瞬狼狽したが、
すぐにMG3を構えたまま走りこんできた。
茜も智代もあまりに突然過ぎる出来事に動けない。
493教師の鑑:2006/10/04(水) 23:40:48 ID:CdrcrVLC0

―――駄目だ、殺られる
二人が、そう確信した時だった。

幸村は最後の力を振り絞り、彼の支給武器――煙球を、船室内に叩きつけていた。
「な・・・!!」
突然ミチルは視界を奪われて、立ち往生していた。


グイッ!!
茜は強引に智代の腕を掴むと走り出した。

「おい、離せっ!!先生を助けにいかせろっ!!」
智代は強引に振り払おうとするが、茜は手を離さない。

「・・・お願いですから、黙ってください・・・・。」
彼女にしては珍しく、感情の籠もった強い口調で言った。
「お前・・・、泣いてるのか?」

それ以降二人は何も言わず、ただ走り続けた。
涙を流しながら・・・・。


494教師の鑑:2006/10/04(水) 23:42:43 ID:CdrcrVLC0
【時間:16時】
【場所:D-1】

 坂上智代
 【持ち物:手斧、支給品一式】
 【状態:体は健康。逃亡中】

 里村茜
 【持ち物:フォーク、支給品一式】
 【状態:体は健康。逃亡中】

 山田ミチル
 【所持品:MG3(残り30発)、他支給品一式】
 【状態:普通。マーダ―。この後の行動は次の書き手さんにお任せ】

 幸村俊夫
 【持ち物:支給品一式(その場に放置)】
 【状態:死亡】

※(B系共通ルート、関連は051、107、121)
495無垢なる探求者:2006/10/04(水) 23:46:58 ID:/DejeWhT0
「―――ん〜……。これとこれと……これも使えそうかな」

 開始数分で一人を惨殺した柊勝平(081)は未だ鎌石村へと留まっていた。
 既に空は赤みを帯び始め、夕刻へと時間が差し迫っている。
 かれこれ数時間か。勝平が平凡な一軒家に腰を据えてから。
 何故、未だに場を離れないのか。理由としては武器の調達と夜に備えた休息だった。
 彼は一つの家を重点的に漁っており、その作業に長時間を必要としたのだ。
 生活用品でもなんでもいい。 
 人殺しが可能だと思える物は最大限活用しようと思っている。
 現在の武器は手榴弾。これも非常に有用できそうだが、自分の意向には沿わない。
 
「手榴弾もいいんだけど、全部吹き飛ばされちゃ困るからねぇ……」

 何が楽しいのか、勝平は鼻歌に合わせて家の中を物色する。
 特に刃物関係は基本的に確保だ。これがなくては始まらない。
 彼の目的を果たす上で、手榴弾よりかは有効的に活用できるからだ。

(ふふ。瑞穂ちゃんのはいい色だったからなぁ……。友達の香奈子ちゃんにも期待出来そうかな。
 朋也クン達とも早く合流しなきゃね)
496無垢なる探求者:2006/10/04(水) 23:47:54 ID:/DejeWhT0
 人を惨たらしく殺しておきながら、勝平の笑みに変わりはない。
 それは当然だろう。彼は罪悪感など片時も感じていないのだから。
 何処で狂ったのか。もしくは初めから狂っていたのか。
 彼にとってこのゲームは正しくゲームであった。
 自分が如何に楽しめるか、如何に攻略するか。その言葉に尽きる。
 
 勝平はこのまま日没までこの場を動くつもりはなかった。
 誰かが来れば当然親切に歓迎してやるつもりだ。自分なりのやり方で。
 それさえなければ、彼は夜まで待つつもりでいた。
 理由は簡単。奇襲は夜だと相場が決まっているからだ。
 緊張が緩み、眠気を堪える瞬間が食べ時である。
 何も知らない無垢な表情のままで。
 安らいだ顔で眠るその人の、開いた頭の中を覗くのだ。
 開いてからの数分が、一番の鮮度を保っている。
 時間が経過してしまうと汚臭しかしなくなるので、手早く行動することがポイントだ。
 現に勝平は経験済みだからこそ言えることである。
 それに、あの時掻き混ぜたのは良くなかった。赤黒く変色と変体してしまい、あまり綺麗とは言い難かった。
 やはり、開いた原型のままで鑑賞すべきだったのだ。
 だが、惜しむ必要は何処にもない。 

(うん、そうだよね。どうせまだ百人近く残ってるよね。とりあえず……十人は見てみたいかな。
 そしたら椋さんに会いにいこう。怖い話をしてあげると、椋さんは直に震えるからね。あの反応が可愛いんだよなぁ……)
497無垢なる探求者:2006/10/04(水) 23:49:48 ID:/DejeWhT0
 彼にとっての人殺しは、怪談話のストックを増やすということでしか意味はない。 
 そして、それを椋に聞かせることが、今のところの目的である。
 だから躊躇わない。自分の欲求を満たすためなのだ。努力は惜しまない。止まるつもりもない。
 自身が引き出した、椋の怯える表情を拝むまでは―――彼は、決して止まらない。


 『柊勝平(081)』
 【時間:1日目午後5時頃】
 【場所:B−04】
 【所持品:手榴弾三つ・首輪・和洋中の包丁三セット・果物、カッターナイフ・アイスピック・他支給品一式】
 【状態:普通。夜まで武器探し。一先ず10人殺して椋に会う。】

 「その他:B、B'ルートです。」
498弱気は最大の敵:2006/10/05(木) 00:08:18 ID:XkORQDEs0
各々の探し人を見つける為に、リサ=ヴィクセン(119)と美坂栞(100)はまずは南へ下っていくことにした。体力のあまりない栞に合わせて歩いているため、そんなに早く進むことはできなかった。
「栞、大丈夫? 荷物、持ってあげましょうか」
「いえ、私は大丈夫です。これくらいは自分でやりたいので」
「分かったわ。でも、辛くなったら言ってね」
リサの心遣いが、栞にとっては歯がゆかった。死ぬのが恐いくせに、人の役にも立たない。
もっと強くなりたい。心の底から、栞はそう願った。

…やがて、海岸沿いのある地点で、リサが足を止める。
「どうしたんですか、リサさん」
「…血の匂いがするわ」
血の匂い、と言われてもそんな匂いはしない。…いや、注意してよく嗅いでみると、かすかに鉄のような匂いがしてきた。
「注意して。近くに、殺人者がいるかもしれない」
殺人者。栞が体を強張らせる。リサは栞に体勢を低くするように命じた。リサは体勢を低く保ったまま、トンファーを構え匂いの元へと歩み寄っていく。
「栞はこのまま待って。安全そうだったら、合図するから」
こくりと栞が頷くのを確認すると、リサが「Good」と滑らかな発音で言ってから、一歩一歩匂いの元へと近づいていった。
数分が経った頃だろうか、栞が不安になってきたころ、リサから「OK、大丈夫よ」という声がかかった。栞はまだ周りを警戒しつつ、リサの元へと小走りに行く。
リサの待っていた地点では、おぞましいものが横たわっていた。
「リ…リサさん、これは…」
リサが見下ろしていたのは男の死体だった。腕は片方が無くなっており、恐らく致命傷を与えたものと思われる銃弾が男――醍醐の眉間を貫いていた。目は見開かれたままであり、その最後が壮絶である事を物語っていた。
499弱気は最大の敵:2006/10/05(木) 00:08:57 ID:XkORQDEs0
「…この男はね、その筋の世界では一流の傭兵だった男よ。…まさか、こんなに早く脱落していたとはね」
リサが感慨深げに醍醐の死体を見つめる。一流の傭兵。そんな殺しのプロフェッショナルでもこんなに簡単に死んでしまうものなのか。
ましてや、自分は病弱。そんな自分が、生き残る事などできるのか――栞の不安は、いやがうえにも高まった。
(あの醍醐をこんなにも簡単に屠れる人間…あの兎の言っていた、人間離れした参加者がいるということ、まんざら嘘ではないのかもしれないわね。これからは、用心してかからないと)
心中で決意を新たにした後、リサは醍醐の目を閉じてやり、そして醍醐に向けて十字を切ってやった。
「さて、栞、行きましょうか。もう少し歩く事になるけど…栞?」
醍醐の死体を見たまま固まっている栞を見て、リサがぽんぽんと軽く叩く。
「ごめんなさいね。こんなものを見せちゃって…」
「いえ…それはいいんです。ただ…」
「ただ?」
「ただ…こんなに強そうな人でも簡単に死んじゃうなんて…私なんか、絶対に生き残れないんだろうなぁ、って思ってしまって…バカですよね、私」
リサはその言葉を聞くと、何も言わずに、ただ優しく微笑んで栞の体を抱きしめた。
「リ、リサさん?」
「大丈夫よ。何があっても私が守るから、あなたは絶対に死にはしない。だから、もっと気を強く持ちなさい。弱気は、いざという時に窮地を招くわよ」
栞の弱気の虫を追い払うように、優しく頭を撫でる。栞も、それに甘えるように顔をうずめた。
「はい…わかりました」
500教師の鑑・修正版:2006/10/05(木) 00:09:07 ID:bOt7an130

坂上智代は里村茜は、海沿いに歩いていた。
もっとも二人の持つ武器では護身には少々不十分である為、その足取りは非情に慎重であった。
二人は街道をさけ、海岸沿いに平瀬村へ向かっていた。
街道は危険と判断しての行動である。
今の二人の状態で敵に襲われてはひとたまりも無い。

「おい、あれは・・・。」
何かに気付いた様子の智代が指を指している。
「・・・・?」
智代が指を指している方向を見ると、一人の老人が立っていた。
「幸村先生!!」


5分後、老人――幸村俊夫と、智代達は簡単な情報交換を済ませ、本題に入っていた。
「ほうほう、つまりわしに仲間になってくれと?」
「その通りです。正直な所、もっと協力者がいないとどうにもなりません。」

「・・・・。」
茜は黙って様子を見ていた。

「こんな老いぼれがどれだけ役に立つか分からんが、いいじゃろう。
わしの学校の生徒や、生徒達と年頃の子供を見捨てるわけにはいかんしな・・・・。」
あっさりそう言うと、老人はすぐに歩き出した。

智代は慌てて追いかけ、遅れて茜もついてきている。
「このゲーム、私達の学校の生徒も一杯参加していますね・・・。」
「そうじゃよ・・・。みんな無事だったらいいんだがの。
わしのような老いぼれは死んでも良いが、若いもんがこんな所で死ぬのは耐えられん・・・・。」
幸村が遠い目でそう言うと、智代はそれきり何も言えなくなり、
茜も幸村も口を開く事なく歩き続けた。
501弱気は最大の敵:2006/10/05(木) 00:09:53 ID:XkORQDEs0
しばらくして、栞が落ち着いてから、二人はまた歩き出した。
空が赤みを見せ始めた頃、二人は海岸にある建物を発見した。
「リサさん、あれって海の家じゃないですか?」
「うみのいえ? あれがそうなの? 私はまだ見たことがなくてね」
「リサさん、見たことがないんですか?」
「ええ、日本でそういうことをする機会はあまり無かったから」
意外だった。日本語がかなり上手だったからこういうものも当然知っていると思ったのだが。リサの思わぬ側面に、思わず笑いが漏れてしまう。
「あ、栞。今笑ったでしょう」
「いえ、そんなことはないですよ」
「いいのよ、笑っても。どーせ私は外国人ですからねー」
不貞腐れるリサ。何だか、幾分か気分がほぐれたような気がする。
「拗ねないで下さいよー。取り敢えず、あそこでちょっと休憩しましょう、ね」
栞はリサを引っ張りながら、海の家まで歩いていった。
502弱気は最大の敵:2006/10/05(木) 00:10:26 ID:XkORQDEs0
『美坂栞(100)』
【時間:1日目午後5時半ごろ】
【場所:G−9、海の家に向かって移動】
【所持品:支給品一式、支給武器は不明】
【状態:健康】
【備考:香里の捜索が第一目的】

『リサ=ヴィクセン(119)』
【時間:1日目午後5時半ごろ】
【場所:G−9、栞と同上】
【所持品:支給品一式、鉄芯入りウッドトンファー】
【状態:健康】
【備考:宗一の捜索及び香里の捜索が第一目的、まだ篁を主催者と考えている】

【備考:葵の制服は海の家に放置されたまま、B、H系ルートで】
503教師の鑑・修正版:2006/10/05(木) 00:13:00 ID:bOt7an130

一行は、暫く歩き続けると海岸に船を発見した。
「おい、船があるぞ!・・・でも、外傷が激しいし故障していそうだな。」
「・・・・それでも、修理すれば脱出の時に使えるかも知れません。」
「そうだな。とにかく行ってみるか!」

二人は脱出方法が見つかったかもしれない事に、興奮しており、周りが見えなくなっていた。
(もっとも修理する技術がある者が仲間にいないし、首輪の問題もまだ未解決であったが。)
出発当初の慎重さは、全く無くなっていた。
この時海岸に捨てられたバックに気付いたのは、幸村だけだった・・・・。

二人は我先にと船に乗り込み、まずは船尾の方を調べてみた。
船尾は外損以外特に損傷は見当たらず、修理すれば問題無さそうであった。

次に二人は船室を調べるべく、
船室の扉を開けた。

その瞬間、
「駄目じゃっ!!」
幸村が二人を突き飛ばしていた。


その直後、
パラララララ!!という音が聞こえ、
二人が顔を上げると、
幸村は体中のあちこちから血を迸らせていた。

「な―――!?」
「くそっ、勘付かれたっ!?」
3人一気に仕留めれると確信していた山田ミチルは予想外の出来事に一瞬狼狽したが、
すぐにMG3を構えたまま走りこんできた。
茜も智代もあまりに突然過ぎる出来事に動けない。
504教師の鑑・修正版:2006/10/05(木) 00:13:38 ID:bOt7an130

―――駄目だ、殺られる
二人が、そう確信した時だった。

幸村は最後の力を振り絞り、彼の支給武器――煙球を、船室内に叩きつけていた。
「な・・・!!」
突然ミチルは視界を奪われて、立ち往生していた。


グイッ!!
茜は強引に智代の腕を掴むと走り出した。

「おい、離せっ!!先生を助けにいかせろっ!!」
智代は強引に振り払おうとするが、茜は手を離さない。

「・・・お願いですから、黙ってください・・・・。」
彼女にしては珍しく、感情の籠もった強い口調で言った。
「お前・・・、泣いてるのか?」

それ以降二人は何も言わず、ただ走り続けた。
涙を流しながら・・・・。

505教師の鑑・修正版:2006/10/05(木) 00:14:10 ID:bOt7an130



【時間:16時】
【場所:D-1】

 坂上智代
 【持ち物:手斧、支給品一式】
 【状態:体は健康。逃亡中】

 里村茜
 【持ち物:フォーク、支給品一式】
 【状態:体は健康。逃亡中】

 山田ミチル
 【所持品:MG3(残り30発)、他支給品一式】
 【状態:普通。マーダ―。この後の行動は次の書き手さんにお任せ】

 幸村俊夫
 【持ち物:支給品一式(その場に放置)】
 【状態:死亡】

※(B系ルート(B-2、B-7以外共通)、関連は051、107、121)
※(教師の鑑の修正版です。まとめサイトに載せるのはこちらでお願いします>まとめの人)
※(>>498割り込みになってしまってすいません。)
506名無しさんだよもん:2006/10/05(木) 00:26:10 ID:HP026hJNO
篁未死亡、もしくは『ムティカパと篁』ありルート用に書いたものですが、一応Bルート共通?

関連
→072
(→107)
⇔教師の檻
507名無しさんだよもん:2006/10/05(木) 00:29:15 ID:HP026hJNO
「さて……随分と歩いてきたが、おまえさんは大丈夫かの?」

幸村俊夫(043番)は自分の足元を歩いている自身の支給品――ぴろ(猫)に目を向けた。

幸村と目が合うとぴろは「大丈夫だ」とばかりに、にゃーと元気そうに鳴いた。

彼はこのゲームに乗る気など微塵もなかった。
むしろ、密かに主催者への怒りで満ち溢れていた。
自分よりも若い多くの者たちを殺し合わせようとしている主催者たちに喝を入れてやりたいとすら思っていた。

(――大事な教え子たちを貴様らの勝手な都合だけで殺させはせんぞ…………)

そう。このゲームの参加者の一部の人間は彼の教え子たちなのだ。
さらに、名簿を見るかぎりこのゲームの参加者の半数以上は現在の彼の教え子たちと同年代の者たちばかりだった。
そんなまだ未来ある者たちが殺し合う………
それを1人の教師として――否。人として見過ごしておけるはずが無い。
幸村はなんとかしてこのゲームを止めようと考えていた。

(しかし、この老いぼれ1人の身ではそれを成すことは難しい。誰か1人でも同士がいれば心強いのだが………)

そう考えながら歩いていると前方に2人組の人影が見えた。
よく見ると、そのうち1人は銃らしき物を持っていた。

(――いかん!)
マーダーかと思い一度幸村はぴろを一度バッグに入れ草影に身を隠した。

「皐月さん。本当にもう大丈夫なの?」
「うん。もう大丈夫だから。ありがとうね、このみちゃん」
「えへ〜…そう言われると照れるでありますよ」
508未来(あす)ある者たちを守るため:2006/10/05(木) 00:35:25 ID:HP026hJNO
2人のそんな話し声がかすかに聞こえた。
声からして2人とも女の子だろうと幸村は判断した。
(このままやり過ごしてくれればよいのだが……)
身を潜めながらそう思っていた幸村だったが、
ここで見逃してしまったらもう誰にも会えずに終わってしまうかもしれないとも思ったのですぐさま覚悟を決め2人に近づいて声をかけてみることにした。

(殺し合いに乗った者たちでなければよいが……)


「おまえさんたち。ちょっとよいかの?」
「ん?」
「ほえ?」

少女たちが同時に幸村の方へ振り返る。
振り返ったと同時に幸村は2人に尋ねた。

「わしは幸村俊夫というもんじゃ。
単刀直入に聞かせてもらうが、おまえさんたちはこのゲームとやらに乗ったのか? それとも乗っていないのか、どちらじゃ?」
「………まだわからないわ」
「このみたちは今タカくんたちを探しているんでありますよー」
「そ。まずはそれからよ。ゲームに乗るか、乗らないかなんて今は考える暇はないわ」
「ふむ……」

少なくとも彼女たちは今のところゲームに乗っていないようなので安心した。

「そういうおじいさんこそなにをしようとしてんの?」
今度は逆にこちらが尋ねられる。
だから幸村は正直に答えた。
「わしは――この理不尽なゲームを止めようと思っておる」
「………とめるのでありますか?」
509未来(あす)ある者たちを守るため:2006/10/05(木) 00:36:47 ID:HP026hJNO
「うむ。老いぼれだがわしとて教師じゃ。未来ある若いもんたちが互いのその身を食い合うところなど見たくはないのでな………」
「食い合う!? 隊長。このみたちは食べられてしまうのでありますか!?」
「このみちゃん。今のはたとえよ。たとえ………
ゲームを止めるか……きっと宗一やリサさんたちも今そうしようと動いているんだろうな………
よし。決めた! おじい…じゃなかった。幸村さん。私も協力するよ!」
「隊長、隊長。このみもお手伝いするでありますよー!」
「―――しかし、主催者たちを敵にするということはこの島においてかなり危険な選択じゃぞ?」
「心配ご無用! こう見えても私はあのNASTY BOYのパートナーですから!」
「このみもタカくんのお家のお隣さんでありますから!」

そう言って2人の少女――湯浅皐月(113番)と柚原このみ(115番)は自分の胸をどんと叩いた。
無論、幸村はNASTY BOYやエージェントなどは知らないが、彼女たちは頼もしい存在になりそうなことに間違いはなかった。



「さて。やはりまずは知人関係を探してみるかの?」
「はい」
「どこから探してみるでありますか?」
このみが広げた地図に3人が目を通す。
「そうじゃな……ふむ。近くにホテル跡があるらしい。そこから調べてみるかの」
「そうですね。それにここなら床にもつけそうですし」
「それなら早速出発でありますよー」
「にゃー」


510未来(あす)ある者たちを守るため:2006/10/05(木) 00:37:42 ID:HP026hJNO
 【場所:E−03】
 【時間:午後5時40分】

 幸村俊夫
 【所持品:支給品一式】
 【状態:健康】
 【その他:ゲームを止める。知人たちを探す】

 湯浅皐月
 【所持品:38口径ダブルアクション式拳銃(残弾8/10)、予備弾薬80発ホローポイント弾11発使用、セイカクハンテンダケ(×2)、支給品一式】
 【状態:健康】
 【その他:宗一たちを探す】

 柚原このみ
 【所持品:ヌンチャク(金属性)、支給品一式】
 【状態:健康】
 【その他:貴明たちを探す】

 ぴろ
 【状態:健康】
 【その他:幸村の支給品】

 【備考】
・3人(と1匹)で行動。ホテル跡へ向かう
・このみの支給品は皐月が使うことに
511祝・吉○屋牛丼復活キャンペーン:2006/10/05(木) 02:05:16 ID:bOt7an130
舞一行の、牛丼を食べるペースは、極端に落ちていた。
「もう駄目だ・・・」
住井護は、牛丼を5杯食べきった時点で、人体の限界を感じていた。
どう足掻いても、これ以上は食べれない。

「……………」
吉岡チエは既に、爆睡状態だ。

「・・・・・・・げっぷ・・・。」
牛丼7杯を屠った魔人・川澄舞もとうとう限界の時を迎えていた。
既に、舞の水も尽きている。これ以上食べるのは普通に考えて不可能である。


「川澄さん・・・、まだ食べる気なのか・・・?」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
これ以上は、食べれる訳がない。大食い選手権以上の荒行である。
しかし、このままでは牛丼の鮮度が落ちてしまう。
場に、重い沈黙が訪れる。
そんな時である。


「ぎ・・・、牛丼・・・・。」
そんな台詞と共に現れたのは、鬼。食欲の鬼と化した、耕一である。
「牛丼だね・・・。」
続いて志保も現れた。
二人とも、よほど腹が減っているのであろう。
こんなゲームに参加しているにも関わらず、視線は舞達を捉えていない。
彼らの視線は牛丼、ただその一点のみに集中していた。
512祝・吉○屋牛丼復活キャンペーン:2006/10/05(木) 02:05:46 ID:bOt7an130
「・・・食べる?」
全く警戒せずに、牛丼の容器が入ったバッグを耕一達に差し出す舞。
住井も新たな来訪者に全く気を取られる事無く、寝転がっていた。
っていうかこんな食欲丸出しの殺戮者なんている訳ないしね。


「くれるのか!?サンキュー!!」
「え、マジ!?ありがとう!」
それだけ言い、待ってましたと言わんばかりに牛丼を貪る耕一と志保。
恐ろしい勢いで、容器の中の牛丼が減っていく。

「・・・・最後の力を振り絞る。」
「俺も、人間の限界に挑戦してみたくなったぜ。」
再び立ち上がる戦士が二人。

最強を誇った牛丼の群れも、とうとう最期の時を迎えようとしていた・・・・。


513祝・吉○屋牛丼復活キャンペーン:2006/10/05(木) 02:07:04 ID:bOt7an130
共通
【場所:G−04】
 【時間:1日目午後4時00分】
 【状況:牛丼攻略中】
 【牛丼:残り6杯(現在食べている分含む)】

住井護
 【状態:満腹度100%】
 【所持品:投げナイフ(残り4本)、ほか支給品一式】

 吉岡チエ
 【状態:爆睡】
 【所持品:日本刀、ほか支給品一式(ただし水・残り3分の1)】

 川澄舞
 【状態:満腹度100%】
 【所持品:牛丼以外の支給品一式(ただし水・残り半分ほど)】

 長岡志保
 【持ち物:新聞紙、支給品一式】
 【状態:疲労、限界空腹、足に軽いかすり傷】

 柏木耕一
 【持ち物:日本刀、大きなハンマー、支給品一式】
 【状態:疲労、限界空腹】


 【備考】
・ルートB、H共通
・関連は115、152
514狂気に取り憑かれしモノ:2006/10/05(木) 04:46:36 ID:lOb1OnGm0
突如、葵の脳裏に、藤田浩之の言葉が浮かんだ。
『葵ちゃんは強いっ!』
その瞬間、冷静さを取り戻した葵は、
「くぅ!」
即座に側転し、ギリギリの所でナイフをかわしていた。

もう、うだうだ考えるのは止めだ。
とにかく殴り倒して、それから考えよう。
全力で戦う。そして気絶させる。
落ち着かせてから話し合えば、琴音さんならきっと分かってくれる筈――

それが、葵の一瞬で出した結論だった。


続けざまに、琴音のナイフが振り下ろされる。
それをかわして、距離を一歩詰める。
業を煮やした琴音は大きな動作でナイフを突いた。

それはかなりの速度であったが、葵はその一撃も頬の皮1枚でなんとかかわした。
葵の目論見通り、琴音に決定的な隙が生まれる。

「ハッ!!」
そこにすかさずローキックを一発。格闘家の、重い一撃。
ローキックは琴音の左足に完全に直撃し、琴音の体勢は崩れた。
続いて一番の得意技、ハイキックを放つ。

その一撃は唸りを上げ、無防備な琴音の頭部を直撃し、
琴音は5,6メートル程吹き飛ばされていた。

琴音は地面に倒れたまま、動かなかった。
515狂気に取り憑かれしモノ:2006/10/05(木) 04:47:50 ID:lOb1OnGm0

「ハァハァ・・・。」
戦闘時間自体は短かったが、極度の緊張の為か葵は息を切らしていた。

「だ・・、大丈夫ですか?」
ようやく口を開くのは、保科りえ。
しかし、葵よりも彼女の方が明らかに重症である。

「私は平気です・・・、あなたこそ大丈夫ですか?」
当然葵も、自分の事よりも彼女の事を気遣う・・・・。

「凄い痛いですけど、あなたのおかげでなんと・・・」
りえはそこまで言って、目を見開き、そのまま硬直した。
彼女の視線は、葵の後ろを凝視していた。
まるで恐ろしい、化け物を見るかのような目で・・・。

葵が慌てて振り返ると、そこには、狂気に支配された少女、姫川琴音が立っていた。
彼女はボロボロだった。顔は返り血と彼女自身の血で血まみれだった。
足はどす黒く変色し、左側頭部からは血が垂れ流れている。
しかし、彼女の口は、この世のモノとは思えないおぞましい笑みを浮かべていた・・・。
その姿を見て、絶句する葵とりえ。

姫川琴音は、度重なるショックと、恐怖と、己自身の行為によって、完全に壊れてしまっていた。
彼女はナイフを構え、葵の胸めがけ、それを突き出した。

「ぐっ!」
そのナイフを持つ手を、何とか受け止める葵。

力なら、私に分があるはず・・・。
このまま腕をとって関節技で骨を折るしかない!
516狂気に取り憑かれしモノ:2006/10/05(木) 04:49:14 ID:lOb1OnGm0
そう考え、葵は腕をとろうとした。
しかし、微動だにしない。
おかしい。ただの女性相手に、仮にも格闘家である私が、なんで腕をとれないの?

そう考えている間にも、琴音の力が、どんどん強まってくる。

なんで、なんで、なんで?
なんで私が力負けするの?あんなに鍛えたのに、なんで?

「あれぇ?あおいちゃん、つかれてるのぉ?」
琴音はそれだけ言い放つと、「今の」全力を、腕に籠めた。

葵の抵抗など無かったかのように、ナイフはあっさりと葵の胸に突き刺さっていた。

葵の口から大量の血が溢れる。
胸からは、血の花火を咲かせていた。
体の感覚が無くなっていく。
葵の体が、ゆっくりと崩れ落ちる。

(ひろ、ゆきさん、ごめんな、さい・・・・。わたし、がんばった、けど、とめれません、でした・・・。)
そうして葵の意識は、永遠に消失した。
彼女の『勇気』は、琴音の『狂気』の前に敗北したのだ―――
517狂気に取り憑かれしモノ:2006/10/05(木) 04:50:42 ID:lOb1OnGm0
琴音の精神は既に取り返しのつかないほど、異常をきたしていた。
その異常の副産物として、まるで毒電波で操られている人間のように、
筋力を100%引き出せるようになっていたのだ。
自分の体を守る為に脳から課せられた規制が、今の彼女には適用されていなかった。
故に、異常な筋力を発揮する事が出来る。

代償として自らの筋肉を引き裂きながら。
自らの命を引き裂きながら・・・・。

保科りえは、いつの間にか逃げ出していた。
「さて、あとよにんだねぇ・・・・」

かつて琴音だったモノは笑みを浮かべつつそう言うと、次の標的、保科りえの追跡を開始した。
今の彼女なら本気を出せばすぐに追いつける筈だが、
敢えて彼女はそうしなかった。
518名無しさんだよもん:2006/10/05(木) 04:56:46 ID:L5ttfynQO
ほい
519名無しさんだよもん:2006/10/05(木) 07:36:57 ID:jB5qn73K0
筋力を100%ひきだせるようになったのだ。って

…………それはひょっとしてギャグで言ってるのか?

520名無しさんだよもん:2006/10/05(木) 07:47:22 ID:wWWi4sZ60
どこかおかしいか?
521狂気に取り憑かれしモノ:2006/10/05(木) 08:37:28 ID:2BrLykUH0
【時間:1日目17時半ごろ】
【場所:D−8】
 
 松原葵
【所持品:お鍋のフタ、支給品一式、野菜など食料複数、携帯用ガスコンロ】
【状態:死亡、所持品は死体の傍に放置】

 仁科りえ
【所持品:拡声器・支給品一式】
【状態:パニック状態で逃亡中。右肩に浅い切り傷、左腕に深い刺し傷】

 姫川琴音
【所持品:支給品一式、八徳ナイフ】
【状態:狂気、異常筋力。右側頭部出血、左足打撲、他細かい傷多数。18時間半後に首輪爆発】



【備考:No.168:不幸な再会の続き。B系ルート】
522名無しさんだよもん:2006/10/05(木) 10:18:25 ID:7KOorvyS0
>514-517
仁科が保科になってるぞ。
>520
IDはおかしいと言ってるな。
523514:2006/10/05(木) 10:30:07 ID:L5ttfynQO
ああ、マジだ、、
保科→仁科で掲載お願いします>まとめの人
すいません。

IDは運営スレ参照。
524なにがなんだかver.ハカロワ3(1/2):2006/10/05(木) 11:45:37 ID:tOJPtgBN0
芳野祐介は溜息をついた。
傍らで眠る少女、長森瑞佳をなだめるのには、意外と手こずり時間もかかった。
そして、この始末である。

「・・・すぅ・・・すぅ・・・」

叩き起こす、かついで氷川村まで移動する、放っておく。
選択肢はいくつもあるが、祐介はそれを選ばなかった。
隠れられるだろう茂みに入り、瑞佳を横たえると自分はその隣で周りを警戒する。

「たっく、いつになったら氷川村に行けるんやら」

まぁ、仕方ないか、という諦めにも似た思い。
ちらっと盗み見る。
もぞもぞと体を丸くしてる瑞佳、まだまだ可愛い年頃だ。

「・・・風子よりちょっと上、くらいだよな」

その時、彼女の抱えるデイバックも目に入る。
彼女の支給品・・・祐介は、それに目をつけた。

(悪いけど、いい物だったら頂戴するか)

丸くなっている体を押しのけ、鞄を取り出す。
気づかれぬよう素早く開ける、彼女の支給品は・・・
525なにがなんだかver.ハカロワ3(2/2):2006/10/05(木) 11:46:16 ID:tOJPtgBN0

「・・・・・これは・・・」

制服。見覚えのあるファミレスか何かのものだ。
薄い緑色の、肩が出るタイプ。札には
まるで水着、長いパレオが特徴の涼しげなタイプ。
ブロンズパロットのような作り、赤と白のコントラストが可愛いタイプ。
それぞれ「フローラルミントタイプ」「トロピカルタイプ」「ぱろぱろタイプ」という札がついている。
瑞佳の鞄には、この3着が無理やりギュッギュッと押し込まれていた。

「何だ、一体・・・」

そして、一枚の髪。説明書。

『防弾チョッキ(某ファミレス仕様)』

頭が痛かった。
そんな混乱状態の中、気づいたらなぜか・・・

「いや、着ないから。着るぐらいなら蜂の巣になるから。
っていうか露出多くて弾から守ってくれないから」
526補足:2006/10/05(木) 11:46:59 ID:tOJPtgBN0
芳野祐介(118)』
【時間:1日目午後5時50分】
【場所:H−08】
【所持品:Desart Eagle 50AE(銃弾数4/7)・サバイバルナイフ・支給品一式】
【状態:氷川村へ向かおうとしているものの、足止め中】

長森瑞佳(074)』
【時間:1日目午後5時50分】
【場所:H−08】
【所持品:防弾チョッキ(某ファミレス仕様)×3・支給品一式】
【状態:熟睡】

(関連・100)(共通)
527訂正:2006/10/05(木) 11:49:01 ID:tOJPtgBN0
>>525
×薄い緑色の、肩が出るタイプ。札には→○薄い緑色の、肩が出るタイプ。

すみません・・・
528どんな時も自分らしく:2006/10/05(木) 14:38:28 ID:HP026hJNO
「あ………」
「―――っ!?」
皐月の一撃を受け敗走中だった名倉友里は海岸を歩いている伊吹風子と偶然でくわした。

直ぐ様友里は応戦しようとしたが、自身の武器はあの時あの場所に置いていったことを思い出す。
(――しまった………)
その隙をついて今度は風子が動く。
自身のバッグに両腕を突っ込んで………

「これあげますっ!」

と知っている人にはすっかりお馴染みの木彫りのヒトデをバッグから取出し友里に差し出した。

「はぁ?」
無論、わけがわからない友里は頭のうえに大きな?マークを浮かべる。



「つまり友里さんはこのゲームに乗ろうとしているんですね?」
「まあね。そういうあなたはどうなの?」
「風子はゲームなんて興味ないです。風子は普段どおりヒトデを掘っているこそが風子なんです!」
「―――馬鹿ね。そんなことしていたらいずれ無駄死にするだけよ」
「そんなこと関係ないです。風子はどうなろうともお姉ちゃんのためにヒトデを掘り続けるだけです!」
ナイフが無くなっちゃいましたけど、と付け足して自分の支給品のスペツナズナイフの残った柄の部分を見せる。

「馬鹿馬鹿しい……付き合ってられないわ………」
そう言って友里は風子と別れた。
――木彫りのヒトデは強引に貰わされたが…………

「――まずは人が集まりそうな場所……鎌石村あたりへ行こうかしら…………?」
529どんな時も自分らしく:2006/10/05(木) 14:40:50 ID:HP026hJNO


 【場所:B−02】
 【時間:午後5時】

 名倉友里
 【所持品:木彫りのヒトデ、支給品一式】
 【状態:右肩負傷(軽傷、止血済み)。マーダー(積極的)】

 伊吹風子
 【所持品:スペツナズナイフの柄、支給品一式】
 【状態:健康。ゲームに乗る気もゲームを止める気もない(理解しきっていない?)】
530名無しさんだよもん:2006/10/05(木) 14:51:37 ID:HP026hJNO
訂正

吉〇屋→吉〇家
531名無しさんだよもん:2006/10/05(木) 17:32:18 ID:NDIjUP6O0
支給してもらった武器がないと人が殺せないとはずいぶんへぼい積極的マーダーですね
53210:2006/10/05(木) 19:30:02 ID:CNRD6KmT0
できましたー
篁生かしておいて何もしないのもどうかなので篁生存ルート。
篁関係と⇔って事で。
一応Iルート。
と、まとめの人Iルートに183加えておいてくださいな。
533No.188 暴君爺 森を逝く:2006/10/05(木) 19:30:40 ID:CNRD6KmT0

篁は怒り心頭に来ていた。
(おのれ……オノレ……この私が……)
(このような愚劣なゲームに参加しろだと……?)
篁は今何も持っていなかった。
怒りに任せ開いた戸棚を思い切り殴り付けていた。
支給品ごとに。
こんなゲームに参加させられてむざむざ施しを受けるなど篁には耐えられなかった。
(巫山戯……おって……)
篁は又、怒りに任せて傍に在る木を力任せに殴る。
ドゴォ……と凄まじい音がして、梢が揺れる。
(何なのだ……この封印とやらは……)
その木には罅が入り、拳の跡が刻まれていた。
普通の老人では在り得ない様な膂力だった。
が、それでも彼の本来の力の一欠片も出せていない。
534No.188 暴君爺 森を逝く:2006/10/05(木) 19:35:55 ID:CNRD6KmT0

(忌々しい……)
しかし、篁を本当に怒らせていたのは封印ではなかった。
(この私を駒にしてゲームをするだと……?)
(最後まで残った者は生かして帰してやろう……?)
(巫山戯る……な……)
彼の背中からどす黒いオーラが立ち上っている様にも見えた。
「必ず……後悔させてくれるわ……」
「地獄の底で……その罪を悔いるがいい……」
噛み砕かんばかりに力を込めた奥歯がぎりぎりと悲鳴を上げる。
もう一度力任せに木を殴り付け、篁はその場を去った。
篁に殴られたその木は軋む様な音を立てる。
暫くして、めきめきと嫌な音を立てていたその木は、倒壊した。
そして、その場に静寂が戻った。
535No.188 暴君爺 森を逝く:2006/10/05(木) 19:36:40 ID:CNRD6KmT0


【時間:一日目午後三時頃】
【場所:E-04とE-05の境目付近】
【持ち物:無し】
【状態:怒り心頭、目標はゲームの主催者の皆殺し、参加者は眼中に無い】
536hungry road:2006/10/05(木) 19:50:33 ID:XkORQDEs0
「ゼェ…ゼェ…ゼェ…こ、ここまで来れば、もう大丈夫、よね」
十波由真(070)は後ろから誰も尾行してくる人物がいないことを確認すると、近くの木の陰に腰を下ろした。
「あ〜〜〜〜っ、つっかれたぁ…花梨の奴、大丈夫かな?」
今も岸田に追われているであろう友人の姿を思い浮かべる。まぁ、あの子は逃げ足だけは速そうだから、大丈夫よね。
勝手にそう結論付けて、水分を補給する為にデイパックから水をを取り出……せなかった。
「あっちゃ〜…あの場所に置いてきたまんまだったっけ」
状況が状況だったとはいえ、全食料を失ったのは痛い。しかし、戻ろうにも騒ぎを聞きつけた他の参加者が待ち伏せしている可能性すらある。食い気より命だ。
「さてここで問題よ。この食料の無い状況でどうやってこの先生きのこるか」
1、 キュートで可愛い十波由真は突如食料を調達するアイデアをひらめく
2、 仲間が来て食料を分けてくれる
3、 餓死する。現実は非常である
「あたしとしては2がベストなんだけど、そう簡単に誰か来てくれるわけでもないし、これを期待するのは酷ってもんよね。…となると、答えは1しかないようね…! よしっ、まずは自分の現在位置を確認よ」
地図を取り出そうとする、が手は空を掴んだままだった。
「…地図もデイパックの中だった」
ぶっちゃけた話、由真は双眼鏡一つしか持っていないのである。パックマンではないので、こんなもんをバリバリ食う事など出来はしない。
「はぁ…適当に歩いて、食べ物がありそうなところを探すしかないのか…」
ぐぅ〜、と由真の腹の虫が鳴る。朝から何も食べていなかった。
「こんな状況でもお腹が空くあたしが恨めしいわ…よいしょっと」
ふらふらと立ちあがり、行く当ても無くのろのろと歩きだした。
537hungry road:2006/10/05(木) 19:51:23 ID:XkORQDEs0
夕刻になろうとしている時間だったが、由真の視界には民家の一つさえ見えてこない。というか、そもそも自分がどれだけ進んでいるかも怪しい。
きっと今の自分の顔はゾンビのようになっているに違いない。この調子では銃に撃たれて死ぬどころか先に空腹で死にかねない。
いやだ、そんなの、絶対にいやだ。あたしの命はそんなに軽くない…はず。
色々な意味で自分に自信が持てなくなってきた時、とうとう体力が限界に達した。ふらりとよろめき、ドタッと地面に倒れ伏す。
が、がんばれ…あたしの体…ち、ちくしょーっ、動けッ、あたしの足! もっとふんばって体を持ち上げろーッ!
…が、抵抗も空しく徐々に意識が闇の中に飲まれていく。
――答え3 答え3 答え3
そんな言葉が頭をよぎった時。
「にょわ〜…この人、なんか行き倒れになってるよ。まるで国崎往人だ」
失礼ね。行き倒れ何かじゃ…ない。たぶん。
倒れた由真の前にやってきたのは、みちると岡崎朋也ご一行様だった。
「あん? 誰かいるのか…って、誰だコイツ? 死んでる…のか?」
冗談じゃないわ。こんなの最もマヌケな死に方じゃない。ズガンの方がまだましよ。
「あ、ちょっと動いたよ。まだ生きてるみたい」
「…ん? じゃあ、どうして倒れてるんだ。まさか…腹が減ってるとか」
朋也がそう言った時、ぐぅ〜〜〜〜、という大音声が木霊した。
「お腹、減ってるみたいだね…ね、かわいそうだから何かあげようよ」
あたしゃ捨てられた子犬ですか。でも、欲しい…
「…ああ、このまま見捨てるわけにもいかないしな…ほら、あんた。パンだ。食えよ」
目の前にパンが差し出される。すると、怒涛の勢いでパンにかぶりつく由真。ものの十数秒でパンを平らげる。
「にょわっ、国崎往人より早いっ」
「ごちそうさまっ!」
最後の一口を呑みこんだ後、手を合わせて元気に言った。それから朋也に向かって普段から考えると珍しく素直に礼を言う。
538hungry road:2006/10/05(木) 19:52:11 ID:XkORQDEs0
「ありがと。お陰で最悪の事態だけは免れたわ。朝からずっと食べてなくって。荷物も無くしちゃうし」
「ふぅん、そりゃ災難だったな…誰かに襲われでもしたのか」
うん、と由真が言ってこれまでの経緯を説明する。
「…ヤバい奴だな。いきなりやって来てしかも殺人鬼か」
「それに、口がものすごく上手いの。もうオレオレ詐欺を遥かに超越してるわよ、あれ」
「オレオレ詐欺って、もう古いよ。今は架空請求の時代だよ」
みちるがツッコミをいれるが、二人は気にしない。
「…口も上手い、か。渚なんかはお人好しだから、簡単に信じちまうかもな…早いとこ、渚を探さないとな。それで、あんたはどうする。連れてけというなら構わないぞ。仲間は多いに越した事はないからな」
「うん、みちるもオッケーだよ」
「そうね…荷物もないし、一緒に行かせてもらうわ。あたしは十波由真よ」
「俺は岡崎朋也だ。で、こっちのちっこいのが」
「みちるだよ。…って、さりげなくチビ言うなーっ!」
ゴスッッッ!
「ぐはっ! ぐぉぉぉぉ…」
鳩尾を蹴られ、悶絶する朋也。
(…このチビッコ、意外にやるわね)
みちるの素晴らしい蹴りに感心しつつ、由真はうんうんと頷いた。
539hungry road:2006/10/05(木) 19:52:49 ID:XkORQDEs0
十波由真
【時間:17:30】
【場所:E−2の街道】 
【持ち物:ただの双眼鏡(ランダムアイテム)】
【状況:朋也達と行動を共にする。まだ少しだけ空腹。デイパックはD−1に放置状態】

岡崎朋也
【時間:17:30】
【場所:E−2の街道】 
【持ち物:お誕生日セット(クラッカー複数、蝋燭、マッチ、三角帽子)、支給品一式】
【状況:友人達の捜索をする。パンを一つ消費】

みちる
【時間:17:30】
【場所:E−2の街道】 
【持ち物:武器は不明、支給品一式】
【状況:美凪の捜索をする】

【備考:B−2、B−7、B−8ルートで】
540虚ろな瞳:2006/10/05(木) 20:23:07 ID:0fXFJr7X0
月島瑠璃子は手の痺れが取れた後に再び雛山理緒を殺しに戻った。
しかし既にそこはもぬけの殻であった。
繭の支給品一式も、そして繭の死体すらも、無かったのだ。
瑠璃子は自分が使っていた鋏をずっと探し回ったが、それすらも無かった。
彼女にとって唯一の武器なのに、茂みの中にも何処にも無かった。

月島瑠璃子は鋏を探すのを諦めた後、じっくりと思考を巡らせた。鋏が無くては戦えない。
――否、鋏があったとしても満足には戦えない。
先程も鋏があったにも関わらず、丸腰同然の女に遅れをとったばかりだ。

だから、彼女は仲間を、仲間という名の傀儡を探す事にした。
自分自身で戦えないなら、他の者に戦わせ、
自分自身で自分の身を守れないなら、他の者に守らせれば良い。

自分は傀儡達を散々利用し、最後に寝首を掻くだけでいい。
殺戮がしばらく楽しめなくなるのは残念だが、今は仕方無い。
彼女はそう考え、傀儡を探す事にした。

しかし、傀儡探しはあくまで慎重に行なわなければならない。
声を掛けた相手がゲームに乗ったマーダーだったとすれば、
今の自分の装備では抵抗すら満足に出来ずに殺されるだろう。

そこで今は街道付近の茂みで息を潜め、様子を見ている、という訳である。
その後1時間ほどずっと待っていると、
街道の向こうの方から一人の女が歩いてきた。
(駄目・・・、あの女の人は、殺気立ってる。)

女―――神尾晴子は、次なる標的を探し、街道を徘徊していた。

この女と話し合うのは危険過ぎる。
下手すれば姿を見せた瞬間撃たれかねない。
そう判断し、瑠璃子は隠れたままやり過ごした。
541虚ろな瞳:2006/10/05(木) 20:24:26 ID:0fXFJr7X0
またしばらく息を潜めていると、今度はガラの悪い男が歩いてきた。
ベルトには大きな銃を差し込んでいる。
しかしその男の雰囲気は、何故か日常に近いものがあった。
このゲームに参加している者独特の緊張感も、殺気も感じられない。
この男には人に警戒心を抱かせない何かがあった。


男――古河秋生は、街道を歩いていた。
最初に鎌石小中学校を探索したが、彼の家族は見つからなかった。
その後はどこに向かうが迷ったが、自分の勘に任せ氷川村へと向かう事にした。

「あの、すいません。」
突然、近くの茂みから声をかけられる。

「誰だ!!」
秋生はすぐに足を止めて銃を茂みに向けて、構えた。

「待ってください、私、兄を探しているだけなんです。」
瑠璃子は両手を上げて、武器を持ってないことをアピールしつつ出てきた。

「わりいが、ゲームが始まってから人を見たのは嬢ちゃんが初めてだ。」
「そうですか。残念です。」
「すまんな。ところで嬢ちゃんは、古河渚と古河早苗って女を見なかったか?」

「いえ、見ていません。」
瑠璃子は俯きながら答えた。

「そうか。じゃあな」
秋生はそれだけ言うと、立ち去ろうとした。
542虚ろな瞳:2006/10/05(木) 20:25:26 ID:0fXFJr7X0

「待ってください。あなたも人探ししてるなら、一緒に行動しませんか?」
「ふむ・・・。」
「お願いします、私一人じゃ何も出来ませんから。」

はたしてこのゲームで簡単に人を信用していいものか。
恐らくそれは、かなり危険な行為であろう。
しかし、娘と同じ年頃の女の子の頼みを断るのは罪悪感が残る。
出来れば信じてあげたい。

秋生はしばらく考えた後、
「・・・いいぜ。ついてきな。」
そう言い、歩き出した。

「ありがとうございます。」
それだけ言い、後をついていく瑠璃子は、微笑みを浮かべていた。
しかしその瞳だけは、どうしようもなく虚ろだった。
秋生はその事に、気付いていなかった。
543虚ろな瞳:2006/10/05(木) 20:26:08 ID:0fXFJr7X0
神尾晴子
【時間:1日目16:20】
【場所:F−9、街道】
【所持品:支給品一式、H&K VP70(残弾、残り18)】
【状態:健康。次の標的を探している。】


月島瑠璃子
【時間:1日目16:30】
【場所:G−9、街道】
【持ち物:支給品一式】
【状態:健康。最終的にはマーダーになるつもりである。】

古河秋生
【時間:1日目16:30】
【場所:G−9、街道】
【持ち物:S&W M29(残弾5発)、他支給品一式】
【状態:普通。渚と早苗を探して氷川村へ移動中】

(B系ルート、関連014、143、165)
544track6/Blizzard of Ozz:2006/10/05(木) 21:07:36 ID:nOsBjP0J0
何だかんだと本部の方ですったもんだがあったようだが、放送はどうにか
滞りなく行われた。
もっとも逐一データ提供を受けている綾香には関係のない話である。
適当に聞き流した。

「ったく使えないわねー、久瀬って」

ぶつぶつ文句を言いながら紙パックの野菜ジュースにストローを挿す来栖川綾香。
もちろん支給品ではない。
喉が渇いたので主催部隊に持ってこさせたものである。
ぢゅー、と音を立てて啜りながら、綾香は地面に転がしたイルファを足で小突く。

「じゃー姉さん、とっととヤっちゃって?」

芹香の準備は万端である。
妖狐である真琴の血で書いた魔法陣と、その真ん中に置かれた狐の生首。
あうー、ちょんぱーという冥界からの恨み言もどこ吹く風と涼しい顔で
座っていた芹香は、綾香の声に頷くと何やら懐から取り出した水晶球を
天に翳し、怪しげな呪文を唱え始めた。

(うわー、やっぱこえー)

折からの曇天もあり、周辺は既に薄暗い。
奇妙な抑揚をつけて詠われる呪言に誘われるかのように、生暖かい風が
渦を巻き始める。
つむじ風に吹かれたか、狐の首がカタカタと音を立てる。

(え?)

否、首はひとりでに蠢いていた。
545track6/Blizzard of Ozz:2006/10/05(木) 21:08:26 ID:nOsBjP0J0
開くはずのない頤を大きく開け、まるで変わり果てた自らの哀れな姿を
哄うかのように牙を噛み鳴らす妖狐の首。
音のない哄笑と共に、周囲の空気が変わっていく。
どこか淀んだ、生臭い匂いが綾香の鼻をついた。
おぞましい気配が辺りを包み込む。

と、芹香の肩がぴくりと震えた。
その震えは瞬く間に全身に拡がっていく。
それはまるで質の悪いドラッグで神経を侵されている中毒者のように、
綾香の目には映った。

「ね、姉さん……大丈夫なの……?」

がくりがくりと身を揺らし、腕を、額を、地面に擦り付け、叩きつける芹香。
さすがに心配になってきた綾香が、芹香の肩を掴もうと手を伸ばした、その刹那。

「ぎにゃあ!」

一瞬の出来事だった。
快楽とも、苦痛ともつかない奇妙な感覚が、綾香の全身を駆け巡り、消えた。
思わず両腕で我が身を抱え、しゃがみ込む綾香。

「何だったの、今の……? って、姉さん!」

見れば、目の前で芹香が地に伏していた。
慌てて姉を抱き起こす綾香。
息が荒い。
ぼんやりと虚ろに見開かれていた瞳が、綾香を映して焦点を戻していく。
546track6/Blizzard of Ozz:2006/10/05(木) 21:08:57 ID:nOsBjP0J0

「ちょっと、しっかりしてよ姉さん、大丈夫!?」

必死に呼びかける綾香の声を聞いて、ぽそぽそと何事かを囁く芹香。

「え? ……あ」

ふるふると震えながら掲げられた芹香の手指が、Vサインを形作っていた。
秘儀成功。



【37 来栖川綾香】
【持ち物:パワードスーツKPS−U1改、各種重火器、こんなこともあろうかとバッグ】
【状態:健康】

【38 来栖川芹香】
【持ち物:水晶玉、都合のいい支給品、うぐぅ、狐(首だけ)、珊瑚&瑠璃】
【状態:珊瑚召喚成功】

【60 セリオ】【持ち物:なし】【状態:出番なし】

【9 イルファ】【持ち物:支給品一式】【状態:俎上の鯉】

→116,→170 D−2ルート
547復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:56:49 ID:9/AdTALE0
「ぎゃあああああああ」

激痛と恐怖のうちに水瀬名雪は振り返りもせずに走っていた。

怖い怖い怖い怖い怖い。
痛い痛い痛い痛い痛い。

名雪は走りながらも肩に刺さったナイフを抜こうと手を伸ばすがうまくいかない。
左肩に刺さったナイフは深く刺さっていて簡単に抜けない上に、だんだん左腕がしびれてきていた。

声を立てて走っていたのに幸い他に狙われる事も無かった。
痛みが痺れと共に感覚が無くなって来て意識も朦朧としてくる。

「はぁ。はぁ。はぁ。」

しばらく走ってきたが、どうやら追っては来ないようだ。
名雪はやっと足を止めて茂みの方で座って、改めて左肩を見るとナイフが刺さったままになっていた。
そっと右手を伸ばす。

「痛。」

痛みで右手もうまく動かない。

「ああ。私も....私も死んじゃうんだ。お母さん。祐一・・・もう会えない。」
「私は独りぼっちだよ。怖い・・・怖い。怖いよ。怖いよ。」
548復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:57:53 ID:9/AdTALE0
泣きたい。けれど恐怖のためか顔が引きつって泣けない。
唇は乾いて、喉も乾いている。でも水も何も持っていない。

「・・・怖い。・・・喉が渇いた。」

日が暮れてきて風が出てくる。
ガサガサと近くの森が揺れるたびに名雪はひっと首を縮め、恐怖で目が閉じる。

「――――――。」

そんな事を何度も繰り返して、かなり暗くなった時、名雪は茂みから出て歩き始めた。


「かなり暗くなってきたから、どこかで休憩しましょうか。」
『はい、なの』

水瀬秋子は上月澪に声を掛ける。

休憩できる上に見通しが聞いて行動しやすい場所、できれば電気や水が使えると有難い。
でも水道は毒が入っていそうだから、小川か井戸があったほうがいい。
549復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:58:30 ID:9/AdTALE0
「あそこにしましょう。」

村はずれのちょっと小高い所にある民家に向かう。
ドアに鍵はかかっていない。入る前に一応先客が居ないか確かめる。

「大丈夫そうね。さ。入って。」

澪を入れると秋子は慎重にドアを閉め、代わりにベランダの窓を開ける。脱出経路を確保するためだ。
かなり暗くなってきていて、澪のスケッチブックも読めない。
電気は点きそうだが、電気をつけるとかえって危ない。

「そうだ。澪ちゃん。スケッチブック1枚くれる?」

澪が暗がりの中、スケッチブックを1枚剥いで秋子に渡す。
秋子は勘を頼りに台所に向かい、サラダ油と皿を探して持ってくる。

「こうやって・・・・」

秋子がサラダ油を皿に注ぎ、スケッチブックを細く剥いで油に浸すと、片方に火をつける。
ぼぅっと周りが明るくなる。澪が眩しさで目を細める。

「これでも明るすぎて危ないんだけど。我慢してね澪ちゃん。」

こくこくと澪がうなずく。
550復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:59:04 ID:9/AdTALE0
「さっ、食事にしてしまいましょう。」

秋子が支給品の食料を取り出すと澪もにこにこと食料を取り出した。
秋子はふふふと微笑む。が、ふとその手が止まる。

「澪ちゃん。灯りを消して!」

澪が慌てて火を吹き消すと、周りは闇に包まれた。
物音が聞こえた気がしたのだが、既に外は日が暮れていて姿かたちを判別するのは困難だ。
だが、今日は月が出ている。しっかり見れば見えるはずだと秋子は思った。

やがて、遠くから独りでとぼとぼ歩いている姿が見えて来た。足取りはふらついているが女性のようだ。
何やらぶつぶつ言っているようだが聞き取りにくい。

「澪ちゃんは動かないで。物音も立てちゃダメよ。」

秋子は澪にそう言い聞かせると、そっとベランダから外に出る。

「・・・か・・・・ん。」

やっとかすかな声が聞こえるようになった。幸いにこっちに気がついていないようだ。
ふらふらと歩いてくる姿が派別できるようになると秋子は目を見張った。
551復讐の誓い:2006/10/05(木) 21:59:36 ID:9/AdTALE0
「名雪っ!」

秋子は慌てて走り寄って我が子に抱きつく。
だが、名雪は何があったのか判らなかった。

「名雪!名雪。よく・・・無事で。」

泣きながら秋子は我が子の顔を覗き込む。

「お母さん・・・怖いよ・・。痛いよ・・・。お母さん・・・。」

名雪は意識も朦朧なのか、視点の定まらない目のままで。繰り返し呟く。

「名雪!」

秋子は何度も名雪を揺するが、状況は変わらない。
気がふれたのか、少しよだれも出ている。

「お母さん・・・怖いよ・・。痛いよ・・・。お母さん・・・。」

秋子は改めて名雪を見る。
ぼろぼろになった制服。そして肩に刺さった大型のナイフ。
秋子は唇を強く噛んだ。

「ゆ・・・る・・・さ・・・な・・・い。」

きっと秋子は月を見上げて呟いた。

「許さない!こんなゲームをしかけたやつ!そして名雪をこんな目にあわせたやつを!」

秋子は自身が修羅に落ちても復讐すると誓った。
552復讐の誓い:2006/10/05(木) 22:00:31 ID:9/AdTALE0
【時間:午後7時頃】
 【場所:F−02】

 水瀬秋子
 【所持品:IMI ジェリコ941(残弾14/14)、包丁、殺虫剤、ほか支給品一式】
 【状態・状況:健康。主催者を倒す。ゲームに参加させられている子供たちを1人でも多く助けて守る
        そして名雪に危害を与えた者を探して復讐する。】

 上月澪
 【所持品:フライパン、スケッチブック、ほか支給品一式】
 【状態・状況:健康。浩平やみさきたちを探す】

 水瀬名雪
 【持ち物:GPSレーダー、MP3再生機能付携帯電話(時限爆弾入り)
  赤いルージュ型拳銃 弾1発入り、青酸カリ入り青いマニキュア】
 【状態:肩に刺し傷。すでに混乱もしくは発狂?】
 

 【備考】
・秋子は澪たちに自身の胸の内を明かしていない。(そのため少し誤解されている)

→154,→164 Bルートで
553氷川村(1/3):2006/10/05(木) 22:30:41 ID:WU+WGPcP0
PM5:00過ぎ。
向坂雄二一行、氷川村到着。
静かな場所である、立ち並ぶ民家に人気は感じられない。

「なぁ、何でこんな時間かかったんだ?」
「さぁ・・・」
「まぁ、目と鼻の先のはずだったんだけどね」
「はわわ・・・すみません〜〜」

顔を覆うマルチ、道中こんなことがあったんだ。




「はぅ?!」
「どうした、マルチ」

いきなり大声を出したマルチ、貴明が聞いてみたところ。

「わ、私の耳がぁ〜〜」
「あれ、本当だ。アンテナみたいなの、かたっぽなくなっちゃってるね」
「うお、マジだ。なくても動けるもんなのか?!」

興味深そうにジロジロ見られる、マルチは頬を染めて俯いてしまった。
554氷川村(2/3):2006/10/05(木) 22:31:29 ID:WU+WGPcP0
「はう〜〜ダメなんです〜、わ、わたし、わたしはメイドロボとして、あ、あれがないとぉ・・・な、ないとぉぉ!!」
「お、落ち着いてマルチ。多分そこら辺に落としただけかもしれないからさ」
「そうそう。さっきからよく転んでたし、その弾みなんじゃね?」

・・・が、これに意外と手間取った。

「・・・え、えっと。ここでも・・・あれ、あっちでも転んでなかった?」
「いや、新城。ここもあそこもみーんなだ」
「はわぁ、すみません〜〜〜」

結局茂みの奥から見つかるまで、ゆうに一時間弱。
本来ならば日が暮れる前に、到着できたというのに・・・

「す、すみません〜・・・」
「いいから、気にしないの。見つかって良かったね」
「は、はいっ!ありがとうございます、沙織さんっ」

ここまで他の敵対者に会うこともなく順調に来れたからか、彼らはのん気なものであった。
緊張感の欠片もない。

だが、それはここまで。

555氷川村(3/3):2006/10/05(木) 22:32:55 ID:WU+WGPcP0

「・・・!雄二、あっち誰かいる」

貴明が雄二の手を引く、沙織とマルチも向かいの民家の影に逃げ込んだ。

「・・・おい、誰も来ないぞ」
「しっ!静かに。」

貴明の真剣な表情に、思わず雄二も押し黙る。




・・・実際、彼の感覚は当たっていた。

「ほほう、気を抜いていたとはいえ、俺の気配を読み取るとはやるじゃねえか」

四人組の数十メートル先、彼らからは死角になっているであろう場所。
そこに、那須宗一は立っていた。
右手にはFN Five-SeveN。準備、万端。

「来やがれ、腕が鳴るぜ」
556補足:2006/10/05(木) 22:34:28 ID:WU+WGPcP0
 那須宗一
 【時間:午後5時15分過ぎ】
 【場所:I−07】
 【所持品:ベレッタ トムキャット(残弾7/7)、FN Five-SeveN(残弾20/20)、包丁、ツールセット、ロープ(少し太め)、救急箱、ほか水・食料以外の支給品一式】
 【状態:周囲を警戒している】

 河野貴明
 【時間:午後5時15分過ぎ】
 【場所:I−07】
 【所持品:Remington M870(残弾数4/4)、予備弾×24、ほか支給品一式】
 【状態:周囲を警戒している】

 向坂雄二
 【時間:午後5時15分過ぎ】
 【場所:I−07】
 【所持品:死神のノート(ただし雄二たちは普通のノートと思いこんでいる)、ほか支給品一式】
 【状態:貴明の後ろに隠れている】

 新城沙織
 【時間:午後5時15分過ぎ】
 【場所:I−07】
 【所持品:フライパン、ほか支給品一式】
 【状態:フライパンを顔の前にかかえびびっている】

 マルチ
 【時間:午後5時15分過ぎ】
 【場所:I−07】
 【所持品:モップ、ほか支給品一式】
 【状態:あわあわしている】

(関連・136・141)(Bルート、デスノ有りルート共通)
557眠り姫:2006/10/05(木) 22:45:44 ID:7KOorvyS0
「にはは、ありのままに起こったことを話すよ。

『わたしは祐一さんと行動をともにしていると思ったら、いつの間にか一人になっていた』

何を言ってるのかわからないと思うけど、わたしも何が起こったのかわからなかった。
おいていかれたとか、幻を見ていたとか、そんなチャチなものじゃ断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わった」

 神尾観鈴は困惑していた。一緒に行動しようと決めた祐一が、何故か忽然と姿を消したからだ。
とりあえず辺りを適当に探しまくったが、結局見つけることはかなわなかった。
「もう疲れたよパトラッシュ。少し眠ってもいいよね」
(駄目です先生。まだ仕事がたくさん残っています)
「が、がお。なんか変な電波受信した」

 彼女は横になり、仮眠をとることにした。
武器を持っていないので、どうせマーダーに対抗する手段はない。


夢、夢を見ている

3人の男女が旅をする夢を

「柳也ど───」
558眠り姫:2006/10/05(木) 22:46:19 ID:7KOorvyS0
───ガブリ───

 獲物を求めて彷徨っていたムティカパは、眠っている観鈴の横腹に噛み付いた。
引き摺り出された胃の中から、消化途中のパンがあふれ出てくる。
続いて心臓を引き摺り出し、意識のない病原体保有者に止めを刺す。
一心不乱に肉を引きちぎり貪り食うその獣は、
後ろで翼を広げてたたずむ少女の姿に気付いていなかった。

「破ッ」

 少女の掛け声ひとつでムティカパは遠方まで吹き飛び、木に叩きつけられた。
彼女の周りからは異様なオーラが立ち上り、景色が揺らめいている。
その髪は徐々に逆立ち、色を金色へと変化させていく。

「戦闘力5、まったく益体もない。余の宿主を喰い殺すとはいい度胸だ。
この代償は高くつくぞ。貴様の鼻水を飲み尽くしてくれよう!



まて、なんでそんなものを飲まねばならぬのだ。
変なことを書くでない!」

(が、がお。ちょっとした冗談)
559眠り姫:2006/10/05(木) 22:46:57 ID:7KOorvyS0
 神尾観鈴 
 【時間:3時ごろ】
 【場所:E-03】
 【持ち物:カンペ】
 【状況:死亡(神奈の力で霊体になる)】

 神奈 
 【時間:3時ごろ】
 【場所:E-03】
 【持ち物:不明】
 【状況:怒り心頭】

 ムティカパ 
 【時間:3時ごろ】
 【場所:E-03】
 【持ち物:なし】
 【状況:軽傷、炭疽菌に感染】

 【備考:さすがは神奈様だ、瞬間移動してもなんともないぜ】

(→010, 046, 052, ルートD)
560久瀬のもうひとつの役目
このゲームが始まってかれこれ数時間………
久瀬はまだ例の部屋にいた。
たびたび水と食料が部屋に不定期に送られてはきたが、誰がどのように送ってきたのかは久瀬にはわからなかった。
さらに、この部屋に来てから尿意等がまったくしないということも気になっていた。
そのため、久瀬はこれは例の人のものではない力によるものだろうと思った。

『やあ、調子はどうかな久瀬君?』
「――!? 貴様は!」

久瀬が見ていたモニターの映像が突然変わり、あの殺人ゲームのスタートを告げた忌まわしいウサギが画面に映った。

『―――いかがかな? 君のために特別に用意した121番目の参加者―――『観測者』となった気分は?』
「…………最悪だな。こんな役割まで用意して、いったい貴様たちは何を企んでいる?」
『それは最後までこのゲームを見届ければわかるさ。
………さて、本題に入るが、実は君にもうひとつ頼みたいことがある』
「なんだ?」

『今島で行なわれているゲームは毎日朝6時と夕方6時にこれまで出た死者を発表する定期放送というものがあるんだがね。
それのアナウンサーを君にお願いしたいのさ』
「なんだって!?」
『5時59分になったらこれまでの死者の名を君の部屋のモニターに送るから、6時になったら随時発表してくれたまえ。
君の部屋に仕掛けてある隠しカメラとマイクから君の声と顔が島に送られる仕組みになっているからね。
ああ。基本的には何を言ってもいいが、我々に関する情報、参加者に対してゲームを止めるように促すこと等を言うのは禁止だよ。
少しでも言った瞬間、君を君の部屋ごと木っ端微塵に爆破するつもりなのであしからず』
「クッ……」
それのどこが自由なんだ、と思いながらも久瀬はウサギの言うことにただ従うしかなかった。