ガサッ。
「ひゃっ」
収容されていた平瀬村分校跡を出て以来、ずっと近くの林の中で身を潜めていた小牧愛佳(045)は、何者かが近づく音に怯えて小動物のように頭を抱えた。
「あなた……小牧さん」
「……向坂先輩」
そこに現れたのは顔見知りの学校の先輩、向坂環(039)だった。
「タカ坊は一緒じゃないの?」
「は、はい」
クラスメイトであり今は恋人でもある少年の名が出て、こんな時でも愛佳は少しだけ顔を赤らめた。
「タカ坊ったら、彼女をほったらかしにするなんて……ごめんなさいね。そんな子に育てたつもりはなかったんだけど」
「い、いえ……」
本気とも冗談ともつかないその言葉をどう受け止めていいものか分からずただ曖昧に笑うことしかできなかった。
それでも、知り合いとごく日常的な会話をする事で愛佳の心は和らいだ。
「それにしても……まったく、これは何の冗談なのかしら……」
それは愛佳も同感だった。『最後の一人になるまで殺し合え』だなんて。
「それで、あなたは何を貰ったの」
「え……?」
何が、と問い返す前に環は言った。
「武器よ」
「あ、はい!」
慌ててスカートのポケットを探り、これです、と言いながら差し出したのは刃の閉じられたバタフライナイフだった。
「ふぅん……」
環は愛佳の掌からナイフを取ると慣れた手付きで刃を出し入れさせる。
「ちゃちなオモチャね」
片手でナイフを弄びながらそう呟いた。
「そうですよね。もし男の人もいるなら、こんなナイフだけじゃ……」
戦えないですよね、と言おうとして愛佳は口篭もった。
そもそも自分に「戦う」なんて事できる筈が無かった。
そんな他人を傷つけるような真似ができる訳が無い。
人を、傷つけるなんて。
「いいえ。そんなことないわ」
「え?」
それは何に対する返答なのだろう。
「ナイフ一本あれば十分よ」
ズ…………バシュ。
愛佳の首が4分の1ほど切断された。
「あぐ……あががガガググ……」
首を手で押さえるも血は止まらずに指の間から吹き出る。
「ほらね?」
どさっ……。
そして愛佳は彼女自身の思いのままに誰も傷つけることなく退場した。
「さて、と」
タカ坊タカ坊タカ坊タカ坊タカ坊タカ坊タカ坊タカ坊タカ坊タカ坊。
(この間、劣化月姫風狂気描写が32行続くが省略)
「……今すぐ行くから待っててね」
そして環は駆け出した。
ただ一人しか生き残れないというこのゲームにあって、彼女はいかなる考えから貴明を求めるのか。
――それはまだ我々には分からない。
045番 小牧愛佳 死亡
【残り119人】
039番 向坂環
【時間:一日目正午ごろ】
【場所:G-04】
【持ち物:バタフライナイフ、本人に支給された武器(続き書く人のお好きなように)、最初に与えられたリュック(愛佳の分は放置)】
【状況:貴明を探して移動中】
以上です。