第二回 葉鍵板最萌トーナメント 決勝戦 Round91!!
「さて観鈴、お前にはやり残した事が幾つかあるな?」
唐突に晴子は観鈴に顔を向けると腕を組みつつ真顔で言った。
「え.......?」観鈴は返答しかねていると
「まずはお前の生みの親.....郁子姉さんにお別れの挨拶してきぃや
ウチらは普通の人間と違うよって、同じ死んだモンでも
帰る場所は違うんや。 せやからお前の生みの母親とは
今生の別れになる事になるんや....」
晴子には今迄保持した記憶とは別に、これからの自分達が
還る迄に為さねばならぬ事と言う記憶が新たに蘇っていた。
「ウチもついてく.....今からいくで」晴子は観鈴に言った。
「うん!」観鈴は躊躇する事無く晴子に返事した。
「俺も行こう」往人も従った。
橘郁子は大樹の木陰に佇み、一点を見つめていた。
急逝してから今日まで長い時間を彼女は此処で一人過ごしていた。
誰が訪れるわけでもなく、たった一人で.......
「おーい、姉貴ぃー!」
不意に自分を呼ぶ声がした。
郁子は訝しげに当たりを見回した。
そして遥か彼方から3つの物体が自分に向かって飛んできているのを見つけた。
「晴....子?」郁子は数十年ぶりとなるであろう再会に驚いた。
「久しぶりやな姉貴.....元気しとったか?
あ、元気言うのも変か....ウチらは皆生きとる訳でも無いしなぁ」
郁子の目からポロポロと涙が零れ落ちる。
「ゴメンね.....晴子.....あたし達のせいであんたには迷惑を....」
「ストップや」晴子は郁子の話を遮った。
「ウチはあの件については迷惑なんて思っとらんで
それより長い話になるんやが聞いて欲しい事がある
観鈴、あんたも往人はんの後ろに隠れてないでこっちきぃや」
観鈴がおずおずと往人の背後からこちらを覗く
そしてゆっくりと姉妹の前に歩み寄ってきた。
「観鈴........観鈴なの?」
郁子は我が目を疑った。
二度と会えないと思っていた我が娘の姿を前に
郁子は更に大粒の涙を流し始めた。