〜 選択形式で進めていくスレッドXXXII 〜

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377名無しさんだよもん
 具体的にガディムを倒す方法についてだ。
 話を聞く限り、ガディムは倒される度に依代を換えていったらしいわ。
 オボロさんや裏葉さんは何度かはその時点でのガディムを倒す事は出来たが、
 その度に依代を換えられて逃げられてしまったそうだ。
 つまり、真っ当な手段で奴を倒すのは不可能。
 死んでも体を取り替えて蘇るような奴じゃ、核兵器を持ち出したって倒し切れない。
 だから、奴の能力、特性を順に追って説明して行き、
 その中で有効となる手段を模索しようと言う訳。
 それでこの面子の中で、最もガディムに付いて詳しい裏葉さんがその説明役をする事になったの。
 彼女は折り目正しくソファーに正座をし、冷静な顔で説明を始める。
 私たちは息を飲んでその言葉に耳を傾ける。

「ガディムは本来、異世界への移動がほぼ不可能な上位の神霊です。
 ですが、自身の魂を転送可能な情報へと変質させたのです。
 これにより奴は異世界への転移を容易にし、世界を股に掛ける破壊神となったのです」
 そりゃそうだよね。神様が簡単に世界を移動出来るのなら、
 とっくの昔にどっかの世界で生まれた最強の神様が全ての世界を支配してるでしょうね。
「にしちゃ、随分とやられているみたいだけど…」
 闇の神ってのは看板倒れって奴かしら?
 まぁ、倒せない巨悪ばっかりじゃハリウッド映画も、四角いゲーム会社のRPGも商売上がったりよね。
378名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 05:33:18 ID:AlEezzk90
「肉体を持たない魂だけの存在となったガディムは実質、死を克服したも同然です。
 ですが、魂だけの存在では物質界の存在に干渉する事は出来ません。
 この世で活動する為には、何かに憑依する必要が出てしまったのです。
 その憑依する存在の魂の器の大小によって、行使出来る能力が左右されるのです」
 つまり、ガディムはコンピューターに例えるならもアプリケーション。
 色んな仕事が出来るソフトだけど、その能力はマシンスペックに依存するって事なのだろう。
「ガディムが依代から引き出せる能力はあくまでも、その依代の能力の延長線上でしかありません。
 もっとも、神話には人が神に成った伝承とてあります。
 依代の素質次第じゃ手に負えないモノにな成るかもしれませんが」
 裏葉さんは補足を加えた後に溜息を付き、オボロさんは顔を強張らせる。
 彼らの苦い顔から察するに、それくらい強かった場合があったと言うことなのだろう。
 とは言え、彼女が奴を学校に縛り付けれる以上は、現在のガディムは人間の領域で対処可能なのだろう。
 倒せるかどうかは別として。
 因みにここまでの説明。
 私は何となく概念だけは理解できたみたい。とりあえずは話に付いていけるっぽい。
 四角のRPGとか不死身のラノベっぽい感じだと思えばいいのだろう。
 オボロさんにとっては既知の情報だからか、特に言う事はなさそうだ。
 栗原さんは「へぇ」とか「はぁ」とか気の無い相槌を打つだけ。
 アレは多分、分かって無いでしょうね。その内、頭から煙を吹きそうな勢い。
379名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 05:35:49 ID:AlEezzk90
「魂そのものを攻撃する手段ってのは無いの? ほら、お坊さんとかが悪霊退散って具合に」
 あらかた説明が終わったみたいなので、取り合えず意見を出してみる。
「あの手の術法はあくまでも既に死んでいる亡霊に対して、死を再認識させるものなのです。
 様々な形がありますが、基本は現世に縛られる想念を消し去り、成仏させるものなのです。
 肉体が無くても存在できる魂相手には通用しないでしょう」
「坊主が念仏を唱えただけで神霊級のバケモノが死ぬのならば苦労はしない。
 現世神であるウィツアルネミテアだって自身の消滅を望みながらも叶わず、何千年も己の分身と殺しあったんだ」
 うーん、やっぱり神様を滅ぼすには、そんなお手軽、簡単、五分でお持ち帰りな手段じゃ無理みたい。
「そうなると…やっぱり伝説の武器とかそんなのかしら。 神殺しの魔剣とか、光の聖剣とか」
「ある…らしい。 奴の元の肉体を滅ぼした神話級の聖剣だそうだ。
 この世界にそれに匹敵する武具があるかは分からんが、探す価値はあるだろう」
 けど、それはまさしく雲を掴むような話になるわね。
 歴史のある旧家とか、宗教関係者が持ってそうだけど。
 けど、そう言う手段は今まで試みられなかった筈が無いわ。
 なら、今まで採られなかったような、私たちの世界でしか取れないような手段があるかも。
 さて、どうしようか?いきなり手詰まりっぽいかも。
 私たちが思案に暮れてる中、部屋には時計の針の音だけが響いていた。
「あ、あの」
 すると、今まで喋らなかった栗原さんが突如、口を開いた。
 それは──

A ガディムの魂を直接攻撃する道具があるっぽい
B ガディムの魂を直接攻撃出来る能力者がいるっぽい
C 科学文明万歳。 科学の力で何とか出来る人がいるっぽい
380名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 05:45:43 ID:85fuMzd00
C
381名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 17:45:35 ID:/J/PZjYt0
「か、科学的にガディムをやっつけられないかな……?」
「科学? 何だそれは?」
「この世界で発達している、方術や陰陽とはまた違った術のことでございます。
 道具を使うことで、修行を一切積んでいない者でも術を行使できるようにしたものかと」
 科学と言う言葉を聞きなれていない二人が、すぐにそんな質問を投げる。
 どうでもいいけど裏葉さん、それは全然違うと思うわよ。
「だけど、科学の力かあ。もしかしたら名案かもしれないわね、今まで試したことないのだろうし」
「えへへ……」
 化物退治の機械のようなものが存在すればの話だけどね。
 そんな非科学もいいところのようなものなんて、あたしは聞いたことないけど。
「それで上手くいくのか?」
「オボロ様、科学は私共やガディムから見れば全く未知の力。十分期待できるものでございます」
「前回は俺もそう考え、お前達の世界の方術に賭けた。だが結果はどうなった?」
 中々話がまとまらない。
 特にオボロさんは何度もガディムを取り逃がしているだけあり、
 自分にとって未知数な力を疑う傾向にあった。
「初めはオボロ様の世界で武による殲滅に失敗し、
 次に私共の世界で術による殲滅に失敗しております。
 なればこの世界の科学を用い、武・術・科学の三つの力を合わせて
 ガディムを討つのが上策ではございませんか」
「つまりは、総力を結集させるわけか……」
 渋い顔をしていたオボロさんだが、結局は裏葉さんの案を呑んだ。
 それ以外に上手くいきそうな案が出てくるわけでもなし。
 かといって、神剣や神器といった都合のいい道具があるわけでもないし。
 ただ、問題が一つある。
 そういった対化物用化学兵器について、そんなものの存在すら危ういことだが……。

A ……一応、あたしには一つだけ心当たりがある
B 栗原さんがおずおずと手を上げた。何か知ってるの?
C 裏葉さんが雑誌の紹介を指差して微笑んでる。……そ、それに当たれって?
382名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 18:28:02 ID:ySus9ZW70
383名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 19:46:15 ID:/J/PZjYt0
 心当たりもないし、手詰まりかと思ったそのときだった。
 栗原さんが遠慮がちに、おずおずと手を上げる。
「栗原さん、どうしたの?」
「……いちおう、心当たりはあるよ。
 ただ、あくまで噂みたいなものだから、あんまり当てにならないんだけれど……」
「今はどんな情報だって良い。それで戦力を増やせればしめたものだ」
 どうやら、栗原さんが何か知っているようだった。
 流石に自分で案を出しただけはある。これは期待していいのだろうか。
「あのね……」

A 来栖川エレクトロニクスの主任さんが、おかしな研究をしてるんだって
B 学校の生徒会長が、変なものを作る趣味があるって
C 国立博物館に、妖怪とか曰くつきの宝物を封印している機械があるって
384名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 19:48:04 ID:WfqIJzQm0
Aかのう
385名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 21:04:23 ID:/J/PZjYt0
「来栖川エレクトロニクスの主任さんが、おかしな研究をしてるんだって」
「来栖川エレクトロニクス……」
 その名前はあたしも聞いたことがある。
 炊飯ジャーのような家電製品から、メイドロボのような最先端ロボット技術までなんでもござれ。
 あの来栖川グループの機械開発部門だ。
「見込みはあるのか?」
「会社としてじゃなくて、個人として魔法とか、心霊現象とかの研究をしてるらしいよ。
 だから、もしかすると何か役に立つかも……」
「行ってみるしかないわね」
 あたしもオボロさんも頷く。
 場所はあたしも知っている。来栖川と言えばかなり有名だし。
「……ただ、問題はガディムです。
 現在は私の結界で、学校の中に閉じ込めてはいるのですが、
 それがもし破られでもしてしまいましたら……」
「迂闊に街を離れられないってこと?」
 裏葉さんは頷いた。
 それに、ガディムの力が段々と回復しているのを感じているらしい。
 だから今ガディムを野放しにするのは危険だそうだ。
「……手分けするしかないな」
「そのようね」
 一方は街でガディムの見張り、もう一方は来栖川へ。
 裏葉さんが街に残るのは決定として、残りのメンバーは……。

 七瀬・透子・オボロ・裏葉を二つのメンバーに分けてください。
 裏葉のいるチームが残留組になります。
 ただし、オボロは来栖川までの道が分からないので、彼を一人にすることは出来ません。
386名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 21:18:49 ID:WfqIJzQm0
来栖川:七瀬・透子
街:オボロ・裏葉
学校の外なら安全だろう、多分。
387名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 21:50:31 ID:/J/PZjYt0
「じゃあ、来栖川に向かうのはあたしと栗原さん。
 この世界に疎いオボロさんは裏葉さんと一緒に、学校に異変がないか見張るってことでどう?」
「良い判断かと思います。
 学校から遠く離れれば離れるほど、ガディムの危険も少なくなりますので、
 七瀬様と透子様だけで向かわれても、大丈夫だと思います」
「確かにそうした方がいいな。
 裏葉だけじゃあ、異変が起きた時に心もとないからな」
 皆、あたしの判断に首を縦に振った。
 学校はサボることになるけど、今の学校は何があるか分からない。
 だから、あたしや栗原さんは不用意に近づかない方がいいと思う。
「七瀬!」
「え?」
 オボロさんは急にあたしを呼んだかと思うと、
 二刀持っていた自分の刀を一本投げて、あたしに寄越した。
「使え。この先何があるか分からんからな、それで栗原を守れ」
「……あたしこんなの使えないわよ」
「問題ない。今朝ほどの動きが出来るなら十分使えるはずだ。
 竹刀なんかより、よほど役に立つだろう。……斬る覚悟を決めた時は躊躇うなよ」
「でも……」
「俺のことは心配するな。二刀使いは一刀も二刀以上に鍛錬しているものだからな」
 いえ、あたしの心配はあなたじゃなくて、
 こんなの持ち歩いてて銃刀法違反で捕まらないかの心配なんだけど。
 ……交番の近くは通らないようにしよう。絶対に。

A 七瀬チーム視点で話を進める
B オボロチーム視点で話を進める
388名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 21:52:48 ID:2bkLRs/yO
まずはA
389名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 22:05:04 ID:/J/PZjYt0
 来栖川エレクトロニクスは、あたし達の街から電車で4駅ほど離れた場所にある。
 あたし達はまずそこに向かうために、駅へと向かった。
 切符を買い、何事もなく電車に乗る。
 こうやってみると、本当に街は何も変わったところなどない。
 ただ……
「あと三十分ほどかしら」
「たぶん……」
 栗原さんとの会話に困った。
 他の皆と居る時は良かったのだけれど、途端に二人だけになると、何も話すことがなくなる。
 ただ、ずっと黙っているのも気まずいし、何か話したほうがいいわよね?
「あのさ、栗原さんって……」
「ふえ?」

A どうやって裏葉さんと知り合ったの?
B 付き合ってる人いる?
C ガディムについてどう思う?
390名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 22:12:35 ID:eFAxtO6JO
B
391名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 22:25:26 ID:/J/PZjYt0
「付き合ってる人いる?」
「ふ、ふぇぇっ!?」
 あたしの興味本位の質問に、
 栗原さんは一瞬で顔を茹蛸のようにボッと赤くした。
 ……そこまで照れなくてもいいと思うんだけど。
「な、な、七瀬さん。ど、ど、どうして、そ、そんなこと、き、き、き、聞く……の?」
「幾らなんでもうろたえ過ぎよ。はい、深呼吸」
「え? すー、すー、はー、はー」
 とりあえず深呼吸させて落ち着かせた。
 この反応からして、少なくとも気になる人はいる……と。
「で、誰なの? 同じクラス、それとも他のクラス?」
「べ、べ、別に……」
「栗原さんは嘘つけないわね。彼氏は居なくても少なくとも好きな人はいるんでしょ?」
「ど、どうして分かるのぉ……?」
 いや、こんなに分かりやすい反応されちゃあねえ。
 あたしだって女の子、好きな人の話は聞きたいに決まってる。
 それが惚気話じゃなく、片思いの恋話だったりしたら尚更。
「さあ、さっさと吐いて楽になりなさい。さあ誰なの?」
「…………誰にも言わない?」
「言わない」
「笑わない?」
「笑わない」
「…………ええとね、同じクラスの」

A 木田君。……あの不良が?
B 住井君。ぶっ!
C 折原君。アイツだけは止めなさい!
D 長森さん。ちょ……それは……
392名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 22:27:24 ID:WfqIJzQm0
原作どおりA
393名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 22:36:03 ID:AlEezzk90
「木田君…」
 ……あの不良が?
 まぁ、人には何かしら良い所があるだろうから、彼女は私たちが知らない良い所を発見したのだろう。
「で、とこまで行ったの? 告白したの?」
 チャンスだ。一度落ちたのなら色々と聞き出すのは簡単。
 私はドラマの取調室の刑事のノリで根掘り葉掘り聞き出そうとする。
「え? え? えっと…、その…付き合ってるって程じゃ…けど、他の人から見たら…そうなるのかな?」
 スロットみたいにコロコロ顔を変えてる彼女だが、最終的には何だか嬉しそうな顔に落ち着いてる。
 ああ、畜生。何だか負けた気分だわ。
 どーせ、私は不毛な青春送ってますよ。

「ところで、栗原さん。
 どうやって来栖川の研究所にアポイント付ける訳?
 普通の見学ならいざ知らず、部外者の私たちにそんな重要な機密を教えてくれるとは思えないんだけど。
 ここまで来て知らないとか言わないでよ?」
 私は彼女にどうやってその研究とやらを教えてもらうか尋ねてみた。
 どんな企業だって最終目的は、利潤の追求だ。
 道楽で心霊現象や魔法を研究する筈が無い。
 恐らくは○槻教授みたいに、なんでも「プラズマ、プラズマ」とこじつけるのではなく、
 人々が神様や悪魔の仕業としてきた事象を実証する類のものなのだろう。
 どこかで聞いた話だけど「誰にでも反証が可能ならば、どんなオカルトでも科学」、と言うことなのだろう。
「って言うか栗原さん、アンタなんでそんな機密情報を知ってるのよ?」
 さっきから感じてた違和感に気付き、栗原さんに詰め寄る。
 私だって人並み程度に新聞やニュースを見ている。
 一流企業がそんな風変わりな研究をしているのならば、
 ハイエナのようなマスコミが嗅ぎ付けて、面白おかしく晩のニュースで報道されるはず。
 私と同じ一介の高校生のこの子が知ってるなんて普通はありえないじゃない。
 まさか"ういにー"とか?自衛隊と言い、警察と言い、この国はどうなってんのよ?
394名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 22:39:33 ID:AlEezzk90
「えっと、私たちの学校の後輩で、姫百合珊瑚って子から聞いたの。
 人の魂の構造を解析したとか何とか詳しい事はよくわかんなかったけど
 『これで幽霊も科学的に証明できるでー』、なんて言ってた」
「つまり、その子が…」
「うん、研究所で研究してるって」
 …本人からの流出かいな。
 まぁ、情報流出の大半は口が滑ったとか盗難や紛失とかのヒューマンエラーだって話だけどね。
「それにしちゃ私は全然、その子の話題とかは聞かないんだけど。
 一つ下でそんな天才児がいたら話題になってもいいもんだろうけど」
 転校生とは言え、もう学校に馴染んだ私が知らないなんてね。
「その…何と言うか色々と良くない噂があるらしくて──」

 栗原さん曰く、来栖川のお抱えのエンジニアで、私たちの一つ下でありながら大金持ちだとか。
 生粋のマッドサイエンティストで、モルモットになった奴がトンデモナイ目に会ったとか。
 放課後、双子の妹に街で話しかけようとした男子が、お供のメイドロボに問答無用で叩きのめされたとか。
 私たちと同級生の男子生徒と同棲してるとか。
 前述のメイドロボと4人で夜な夜な肉欲の日々を送ってるとか。
395名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 22:40:29 ID:AlEezzk90
「つまりは、日常生活で出来れば関わりたくない。 つーか、積極的に距離を置きたい人物って事ね」
 流石に話題に出すのもはばかれるって事でしょうね。
 まぁ、その子が爛れた青春を送っていようが、私は知ったこっちゃ無いけど。
 そんな人間と彼女がどうやって知り合ったか気になるけど。
「それで、その…私、その子の携帯の番号を知ってるの。 メアドも」
 なんてこった。この子が数々の重要情報を持つキーマンだったなんて。
 もしかして主役の癖に私が一番役に立ってない?
「ま、まずは連絡を入れてみようよ」
 私たちは研究所の街の東鳩駅前で一旦降りて、その子に連絡を入れることにした。
 数コール後に電話に出たのは──

A 珊瑚本人
B 妹の瑠璃
C メイドロボのイルファ
D ハーレムの主、貴明
396名無しさんだよもん:2007/07/01(日) 22:41:06 ID:2bkLRs/yO
C
397名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 00:17:59 ID:qr5kQ6p20
「栗原さん、とにかく一度連絡を入れてみよう」
「う、うん。分かった」
 私は七瀬さんに言われたとおり、珊瑚ちゃんに連絡を取ることにした。
 電話帳から珊瑚ちゃんの名前を見つけて発信ボタンを押す。

「はい、姫百合です」
「あ、あれ?」
 数回のコール音の後に出てきた声は、珊瑚ちゃんのものではなかった。
 確か…そう、珊瑚ちゃんと一緒にいるメイドロボさんの声だ。
「あのう、えっと、あなたは珊瑚ちゃんじゃなくて、そのぅ……」
 すぐに名前が思い出せない、このメイドロボさんなんて呼ばれてたっけ。
「申し訳ありません。私はHMX-17イルファと申します」
 そうだ、イルファさんだった。
 でもおかしいなぁ、確かに珊瑚ちゃんの携帯電話に掛けたはずなのに。
 どうしてメイドロボさんが出て、珊瑚ちゃん本人が出ないのだろう。
 お家の電話に掛けたのならともかく。普通携帯電話を持ってる本人が出るものだよね?
「すいません、私は栗原透子って言うんですけど、珊瑚ちゃんの知り合いなんです。
 珊瑚ちゃんとあってお話がしたいのですけど……珊瑚ちゃんはいますか?」
 とりあえず私はイルファさんに聞いてみた。 


A 「わかりました、今少し手が離せないので、すぐに掛け直すようお伝えします」
B 「実は…珊瑚様は先日から行方不明なのです」
C 「実は…珊瑚様はとある事情で入院しているのです」
398名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 00:21:02 ID:tIA1e7u80
399名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 02:19:53 ID:SRM+P51i0
『…………』
 携帯からは何やら躊躇いがちな沈黙が流れる。
「あの、どうかしましたか?」
『残念ながら、只今お取次ぎすることは出来ません』
「えっ!?」
 あたしは、思っても見ない返事に思わず声をあげてしまった。
 いきなりの電話で、イルファさんはあたし達のことを怪しんでるのかな?
「あの……あたし達は、別に怪しい人とか、そういうのじゃなくて……」
『違います……そういう意味じゃないんです!』
 弁明しようとしたら、逆にイルファさんから悲痛な叫び声をあげられる。
「ど、どういうことですか?」
『……実は、珊瑚様が先日から行方不明になってしまったのです』
 その言葉にドキッとした。
 携帯に耳を近づけていた七瀬さんも、その言葉の意味が分かったみたい。
 顔色が一瞬で変わっていく。
『昨日のことです。
 私はいつもの通り、自宅で珊瑚様の帰りを待っていました。
 ですが……遅くなっても学校から帰ってくる気配がまったくなく、
 それから何の音沙汰のないまま今日まで……。
 瑠璃様はショックのあまり寝込んでしまいましたし、私もどうして良いか……。
 今日中に戻られなければ、警察に連絡をしようと思っていたところです。
 栗原様、珊瑚様の事……なんでもいいので、知っていたら教えていただけないでしょうか!?』
 知っていたら、どころじゃない。
 学校から帰ってこないなんて、理由は一つに決まっている。
 ガディム……珊瑚ちゃんも、多分巻き込まれた。
 あたし達のような見ず知らずの人間にここまで事情を話してくれるなんて、
 イルファさんも相当切羽詰っているのが分かる。

A ガディムのことを話す
B あまりガディムのことは他人に話さないほうが良い
400名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 02:23:13 ID:TAo0INBa0
401名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 02:45:52 ID:SRM+P51i0
「……心当たりがあります」
『えっ!? 本当ですか、珊瑚様は何処に!?」
「でも、ちょっと電話だと、話しにくくて……」
『…………分かりました。すぐに向かいましょう。
 栗原様は何処におられますか?』
「駅前……」
『駅前ですね、了解しました。ではすぐに参りますので、10分ほどお待ちください』
 即決だった。
 それほどまでに、珊瑚ちゃんを心配してるのだろう。
 なんだかそれがとても人間らしくも感じた。

 それから程なくして、イルファさんがあたし達の前に現れた。
 簡単な自己紹介をしてから、早速本題に入る。
 あたし達の説明をイルファさんは最初黙って聞いていた。
「……というわけなの。信じてもらえるかしら」
「有り得ない……と、言い切ることが出来ません。
 最近の珊瑚様の研究が、それらの方向に向いていましたし、
 何より、話している途中にあなた達の心拍数には少しの乱れもありませんでした。
 ここまで嘘を自然につける人などおりませんでしょう」
 まるでイルファさんは値踏みするように、あたし達を見た。
 あたし達を信じるかどうか、迷っているようにも見える。
「……どうする? 七瀬さん。珊瑚ちゃんが行方不明だなんて……」
「いるとすれば、間違いなく学校ね。
 ……戻るわよ! まず珊瑚ちゃんの助け出さないことには話にならないわ!!」
「う、うん……!!」
 ガディムに、体を乗っ取られてなければいいんだけれど。
「……待ってください!」
 あたし達が踵を返し、駅の中に入ろうとしたところ、イルファさんが呼び止めた。

A 私も連れて行ってください!
B ……珊瑚様の研究品で、役に立ちそうなものを持っていってください!
C せめて一秒でも早く着けるように、ヘリでお送りいたします
402名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 03:23:58 ID:ChTW984c0
C
403名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 19:15:09 ID:qr5kQ6p20
 珊瑚ちゃんが行方不明、このタイミングでそんなことになるなんて十中八九ガディムの仕業に違いない。
 そりゃもちろんガディムと全然関係ない、単なる営利誘拐って線も無くはない。
 栗原さんの話では相当な金持ち、歩く身代金みたいなものなのだから。
 でもそれなら犯人から連絡があって然るべきだろう。早く学校に戻って調べてみなければ。
「……待ってください!」
 そう考えた私と栗原さんが踵を返し、液の中へ入ろうとしたところでイルファさんが呼び止めた。
「少しだけお待ち下さい、電車よりも早く戻れる交通手段をご用意いたしますので」
 そう言いながらイルファさんは携帯電話を出し、どこかに連絡を取りだした。
 うーん、多分タクシーか何かだと思うけど、正直どうかしら。
 今から車がくるのを待って、少々飛ばして戻っても電車で帰るのとそんなに変わらないと思うんだけど…
 珊瑚ちゃんがいなくなって、冷静な判断が出来ないのかも知れない、メイドロボらしからぬ事だ。
 とはいえイルファさんも何か力になりたくて手配してくれてるのだし、断るのも気の毒よね。
 ここはご厚意に甘えよう。

 結果から言えば私の予想は大きく外れた。
 イルファさんは本当に電車など比べものにならない交通手段を用意してくれた。
 イルファさんに言われて駅前近くの公園で待っていると、ソレはやって来た。空から。
 大きなローター音とプロペラ音を立て、強烈な風を巻き起こしながら降りてきた。
「「ヘ、ヘリ?!」」
 二人揃った驚きの声も掻き消される。
 まさかただ早く帰してくれる為だけにこんなものを用意するとは、来栖川工業恐るべし。
「栗原様、七瀬様。どうか…どうか珊瑚様をよろしくお願いします。」
 乗り込む間際、イルファさんが私達の手を握りながら懇願してくる。
 メイドロボには涙を流す機能は付いてないけど、もし付いていたらきっとイルファさんは瞳一杯に涙を浮かべていたに違いない。
 そんな表情で、心配のしすぎでCPUが壊れてしまうのではという顔をしている。
「任せて、きっと何とかしてみせるわ」
「が、頑張ります」
 根拠なんか無かったけど、イルファさんに弱気は返事をしたくはなかった。
 私達は風圧で翻りそうになるスカートを抑えながらヘリに乗り込み、学校のほうへ戻っていった。
404名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 19:16:36 ID:qr5kQ6p20


A まずオボロさん達に報告しなければ、私達は栗原さんのマンションへ向かった。
B 戻る途中に、栗原さんの携帯電話が鳴り出した。
C ヘリの窓から外を眺めていると…? 何かがこっちに飛んで来てる?!
405名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 19:30:17 ID:vUxlQwX70
A
406名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 23:43:08 ID:SRM+P51i0
「お送りする場所は、学校でよろしいですね?」
 ヘリコプターを運転しているイルファさんが、改めてあたし達に目的地を確認する。
 メイドロボはヘリコプターの運転まで出来るのだから凄い。
 後で聞いた話だと、用事に備えて乗り物の運転技術ぐらいならプリインストールされてるらしいけど。
「……いえ、一度栗原さんのマンションに向かってください」
「栗原様のご自宅……ですか?」
「はい。あたし達以外にも、協力してくれている人たちがいるので、その人達にも連絡を……」
「了解しました。……では、栗原様のマンションの近郊で着陸できそうな広い場所をお教えください」
 この事は一度オボロさんと話し合ったほうがいいと思う。
 珊瑚ちゃんがガディムに捕らわれているとしたら、救出にはオボロさんと裏葉さんの力が必要だ。
 栗原さんのマンション近くの公園なら、ヘリを降ろすスペースがあるということで、
 イルファさんにはそこへ向かってもらう。
 途中、学校の上空を通りがかった。すると……

A ……おぞましい瘴気が渦巻いている
B 今は授業中の時間なのに、校庭に有り得ないほど生徒が集まっている
C 学校を中心に、辺りには人も車も通ってないことに気づいた
D オボロさんが一人で学校の中に入ろうとしてる!?
407名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 23:47:39 ID:jefIO9QEO
B
408名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 00:14:13 ID:RyoD7x3+0
「……七瀬さん、あれ!!」
 外の景色を眺めていた栗原さんが、突然あたしの袖を引っ張った。
 栗原さんの指差す先は、あたしたちの学校の校庭。
 ただ……授業中なのに、有り得ないぐらいに人がたむろしている。
 ちなみに、あたし達のサボりついては、緊急事態だし見なかったことにして欲しい。
 遠目では何が起こっているのか、サッパリ分からないが、
 とにかく学校がもう異常事態に巻き込まれていることだけは理解できた。
「七瀬様、栗原様、もう少し寄せましょうか?
 ただし、これ以上近づけばあちらからも、こちらが見ていることに気づかれてしまうでしょうが……」
 学校の様子をよく見たいと思っていたところ、
 イルファさんがそう気を利かせて聞いてくれた。
「……いえ、気づかれちゃ元も子もありませんから」
 何より、イルファさんはあたし達とは無関係だ。
 送ってもらう以上のことをしたら、事件に巻き込んでしまうことになる。
 だけど、この事態……まさか、もう学校は完全にガディムの支配化に落ちたってこと?
 有り得ない話じゃない。
 ガディムが潜んでるって聞いた以上、遅かれ早かれこうなることは目に見えていたのだ。
「イルファさん、急いでください。仲間も心配ですから……」
「……了解いたしました」

 それからすぐに、あたし達はマンション近くの公園でヘリを降ろしてもらう。
「それでは私は珊瑚様の捜索に向かいます。皆様も御武運を」
「どうもありがとうございました」
 イルファさんにお礼を言うのも手短に、あたし達はすぐに栗原さんの部屋へと走った。
 学校がああなった以上、オボロさんたちにも何かあった可能性がある。
 報告もしたいし、何より二人の無事を確認したい。
 あたし達は急いでマンションの階段を駆け上がり、部屋のドアを開けた。
 そこには……

A 何事もなかったかのようにオボロさんと裏葉さんが居た。……どうやら無事みたい
B 誰も居ない。まさか、二人とも学校へ!?
C ここで時間を少し戻してオボロ視点へ 
409名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 00:15:27 ID:JDShc02qO
c
410名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 00:28:16 ID:RyoD7x3+0
 七瀬たちが行ってから暫く経った。
 打ち合わせどおり、七瀬達がこの世界の科学に長けた者に会い、
 その間俺達は学校に異変がないか、裏葉の結界に綻びが生じないか見張ることとなる。
 そして七瀬たちが戻り次第、俺の剣と、裏葉の術、そしてこの世界の科学でヤツを討つ手はずだ。
 七瀬たちがうまくそういった人材を連れてこられるかは分からんが、
 とにかく今のところ、俺の仕事はないといって良い。
 ヤツを閉じ込めている結界は裏葉が張っているのだ。万が一にもヤツを取り逃がすことはないだろう。
 つまり、何かよほどのことがない限りは、俺達は二人が帰ってくるまで動けないわけだが……

A 裏葉と少し昔の話をしていた
B 今朝の七瀬との稽古を振り返り、この世界の技術を自分の技に取り入れようと考えていた
C その時、裏葉が急に苦しみだした
D ……実は、七瀬達を待たずに、俺一人でヤツと決着をつけるつもりだ
411名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 00:43:12 ID:Z5a1FABq0
A
412名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 01:18:33 ID:RyoD7x3+0
「先ほどの切り結びはとても見事なものにございました。
 七瀬様もさることながら、オボロ様も暫し見ないうちに随分と腕を上げたことで……」
「……フン」
 手持ち無沙汰になった俺たちは、何もすることがなく部屋で待機を続けていた。
 暇つぶしにもなるので、裏葉と多少言葉を交わしたりもしているのだが、
 やはり裏葉は何処となく苦手だ。この間延びしたような調子は、俺とは肌が合わない。
「それにしても、この世界は私共の世界と随分と違います。
 出っ張りを押し込むだけで明かりをつけたり、氷室もないのに氷を楽しめたり、
 周りにあるものがみな幻術のように思え、戸惑ってしまいます」
「この世界の衣服を自然に着こなし、科学で湯を沸かしながら言うな」
「これでも、十分戸惑ってるつもりでございます。
 私の学んできた常識や作法が、異世界ではこうまで通じないものだとは……」
「そんなのお互い様だ。俺はお前の世界に行った時にも目を疑ったものだ」
「オボロ様のような方でも、そうだったのですか?」
 まるで意外そうに、裏葉がそんな事を聞き返した。
 こいつ……俺をなんだと思ってるんだ?
「まあな。だからお前達には随分と迷惑を掛けた」
「……そういえば、そうでございましたね。
 オボロ様が最初に私共の前に現れた時のことは、今でもよく覚えております」
 俺だって忘れられない。
 兄者の下から離れ、最初に辿り着いたのが裏葉の世界だ。
 何もかもが初めての体験だったから、言葉に出来ぬほど苦労も沢山してきた。
 そして……裏葉たちに会ったのだ。
 俺と、裏葉達の最初の出会いは……

A 俺が裏葉の主を助けたのがきっかけだった
B 行き倒れになった俺は裏葉に助けられたのだ
C 裏葉たちがガディムと戦っている途中に、助太刀に入ったことが始まりだった
413名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 01:37:59 ID:/p2QBWGA0
A、やっぱ主人は変わらないんだろうなぁ
414名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 03:04:25 ID:RyoD7x3+0
 きっかけは至極単純なものだ。
 俺は右も左も分からない状況で、裏葉の世界をさ迷い歩いていた。
 そんな折だ、俺は一人の女に会ったのだ。
 歳は幼い。ユズハよりも若く……カミュか、アルルゥぐらいだろう。
 俺は最初特に深くは考えずその場を去ろうとしたのだが、
 女の悲鳴が聞こえたので慌てて振り向いた。見れば、女は賊に絡まれていたのだ。
 人気のない場所を一人で出歩くから自業自得だと思わないでもなかったが、
 流石に無視は出来なかったので俺はその女を助けた。
 その助けた相手と言うのが、裏葉の主だったわけだ。

「私も最初は自分の目を疑いました。
 勝手にお屋敷を抜け出した神奈様が、オボロ様におぶられて帰っていらして……」
「賊に襲われた時に足を捻ったと言っていたから、そうやって連れて来てやっただけだ」
「それでオボロ様は神奈様の貞操を狙う狼藉者だと誤解され、会うなりに柳也様に刀を向けられたのでしたね」
「言うな。そこのところは思い出したくもない」
 今から思い出してみれば、随分前のことだ。ある種の懐かしさすら感じる。
 裏葉の主は、言い方こそ尊大だが、礼儀は弁えているヤツで、
 俺に助けられた礼をした後、神奈備命と名乗った。
 それから暫く神奈の屋敷には厄介になった。
 俺の屋敷内での立場は客人兼神奈の護衛弐という、なんとも微妙なものだったが。
 ちなみに壱は柳也という男だ。あの世界で俺と互角にやりあったのはあいつだけだ。
 俺はガディムを追って裏葉の世界に来たわけだから、すぐに出て行こうとしたのだが、
 屋敷を出ようとする時に限って、神奈や裏葉が俺を無理矢理に引き留める。
 そうやって、暫く居つくことになってしまったのだ。
 居心地は悪くはなかった。騒ぎを起こす神奈は見てて飽きなかったし、
 柳也とお互い技を磨きあい、裏葉がそれを見守るという毎日はかなり充実していた。
 だがその平穏も、ガディムが裏葉の世界で活動を再開したことにより全ては消えた。

A ……ガディムが、今度は神奈に憑いたのだ
B 俺は別世界からガディムを連れてきた疫病神だとされ、何処にもいられなくなったのだ
C ガディム討伐の為に、神奈の力が利用されることになったのだ
415名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 03:29:09 ID:R3gB9ZBg0
B
416名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 00:49:43 ID:l7e/2JRU0
 俺はガディムを倒すために、裏葉の世界へとやってきた。
 そして……ガディムは俺達の世界で生まれた。
 だからだろう、俺が災いを持ち込む疫病神だと見なされたのは。
 屋敷で俺を庇ってくれたのは、裏葉と神奈と柳也の三人だけだった。
 厄介になるのも潮時だと感じたな。
 元より、ヤツが行動を起こしたのなら、俺はヤツを倒しに向かわなければならない。
 それが国を捨て、兄者を捨て、友を捨ててまでここに来た俺の使命だからだ。
 神奈達は最後まで引き留めに掛かったが、俺の決意が固いと知ると何も言わなかった。
 決して言葉にはしなかったが、俺が屋敷の人間から露骨に疎まれていたことを気にしていたのかもしれない。
 蔑まれ、疎まれて屋敷を後にするのは、
 俺のような外道には似合いの姿だと自嘲したものさ。
 他人の声より、その時の俺はヤツを倒すことばかりに気が行っていた。
 ヤツが現れたという情報を辛抱強く待ち続け、やっとヤツと戦える機会が出来たのだ。
 前回と違って、今度は兄者や他の仲間達の援護は一切ない。
 俺は多分、死ぬのだろうな……なんとなくそう感じた。
 だが元より覚悟の上だ、もはやこの命はヤツを倒すことのためだけに存在する。
 ヤツを刺し違えることが出来れば本望だ。どの道、命を背いた兄者には会わす顔がないのだから。

「……本当に、オボロ様には申し訳ないと今でも思っております。
 人間の心は弱きもの。己の失敗や不幸を他人の咎としようとするものではありますが……」
「別に気にはしてないさ。ヤツの件は俺達の世界の人間に責任がある。
 ヤツに止めを差せずに、裏葉の世界まで逃がしてしまったことを考えれば、あながち間違いじゃなかった」
 意外だったのは、裏葉たちが俺を追って、ガディム討伐に協力してくれたことだ。
 神奈は「自分達の世界ぐらい自分達で守れずしてどうする」と言ったが、
 俺を心配してくれていたのが分かり、それが非常に有難く、嬉しくもあった。
 気恥ずかしいので絶対に口に出しては言えないが、俺は神奈達には本当に感謝している。
 そうやって、俺達四人でガディムとの決戦に挑んだのだ。
417名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 00:50:28 ID:l7e/2JRU0
「結局は、取り逃がしてしまったのだがな」
「……あれは仕方がありませぬ。
 まさか、ガディムが魂だけで異世界へと逃亡すると誰が考えましょう」
「いや、俺は一度そうやってガディムを取り逃がしていた。
 原理は知らずとも、ヤツが異世界に逃げる可能性があったことは十分承知だったはずだ……!」
 思い出しては、俺の中で怒りが湧き起こる。
 一度ならず二度までも、俺はヤツを取り逃がした。
「それは私の咎でございます。
 まさか魂のみで逃げるとは予想できず、油断を招きました。
 ですから、今回はまずガディムを縛ることからはじめたのでございます」
 裏葉の言葉も、俺はもう聞き流していた。
 ヤツとの戦いを思い出すたびに、俺の体は怒りに震え、狂いそうにもなる。
 妹の、ユズハの仇を討てと、心の中でもう一人の自分が激しく理性を揺さぶるのだ。
「……裏葉」
「なんでございましょう」

A この戦い……お前は勝てると思っているか?
B 柳也は元気にしているのか?
C もう、理性を抑えきれない。ヤツを倒しに行かせてくれ
D ……外の様子がおかしくないか!?
418名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 00:55:04 ID:BvJpi+Sa0
A
419名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 02:05:46 ID:l7e/2JRU0
「この戦い……お前は勝てると思っているか?」
「…………」
 裏葉は答えなかった。
 だが、どう思ってるかなんて今更聞くまでもない。馬鹿な質問をしたものだ。
 ヤツは神の名を冠する存在だ。
 俺の世界ではウィツアルネミテアの空蝉である兄者、
 裏葉の世界では星の記憶を引き継ぐ神奈がいて、ようやく痛み分けに持ち込んだようなものだ。
 ただの人である俺達が神に抗うことが出来るのか。
 誰もが無謀と答えるだろう。神に近づこうとする者は羽根をもがれる運命にある。
 神と同等か、それに近い存在でもない限り、ヤツと渡り合うのは難しいだろう。
 だが……それでも俺はヤツを許さん。
 無謀と言われようが、たとえこの体が血の一滴になろうが、刺し違えても俺はヤツを倒す。
 目的が適うのなら、神にでも悪魔にでも契約を結ぼう。魂を売ろう。
 ヤツは二度に渡る戦いで、その力はだいぶ弱まってはいるはずだ。
 ならばこの世界で、ヤツが回復しきらないうちならば、俺達だけでも勝機はある。
「……やはり勝機があるのなら、この世界の科学の力でしょうか」
 やっと裏葉が口を開いた。
 俺達の力だけでは不足、その意味の言葉をはっきり言ったのだ。
「だが、七瀬も栗原も戦場を知らん。幾ら科学の力を使っても……」
「もしかしたら、七瀬様や栗原様が命を落とすことになるやも知れない。
 ……あの二人を、これ以上巻き込むのは忍びないと?」
「お前はどう思う?」
「私は……」

A 「出来ることなら、二人にはガディムとは戦って欲しくありません」
B 「それは二人とも覚悟の上だと思います」
C 「……お待ちください。何者かが結界を破ろうとしています」
D 殺気を感じる……。ガディムの手の者か!
420名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 02:35:45 ID:e6K0mu1m0
C
421名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 22:43:50 ID:l7e/2JRU0
「……お待ちください。何者かが結界を破ろうとしています」
「何!?」
 俺の質問に答える前に、裏葉がそんなことを言った。
 自然と俺は刀を抜き、外敵に備える。
「ヤツか!? ガディムが動き出したのか!?」
「……相手まではわかりませぬ。
 ガディムの眷属か、はたまたガディム本人か……。
 何れにせよ、気楽に事を構えている場合ではありません」
「行くぞ!」
 俺は裏葉の手を引き、学校へ走った。
 このまま奴らに結界を破らせるわけには行かない。
 今ガディムを自由にすることは、絶対に許してはならないのだ。

 学校の庭には多くの人間が屯していた。
 俺達は注意深く、学校の門に、相手に気取られないように近づいていく。
「……裏葉、連中が結界を破ろうとしているのか?」
「いえ……あれらはおそらく傀儡。
 有象無象の雑兵に破られるような、安い結界は敷いた覚えはありませぬ」
 確かに。
 裏葉の方術は完璧な技だ。
 操られているだけの民に、結界を破る真似事など出来るはずがない。
 ならば、どこかに別の奴がいるはずだ。
 ガディムか、それともヤツの分身のラルヴァか。
 何にせよ、ここから先は油断できない。既にヤツは、臨戦態勢に入っているのだ。
「結界は大丈夫なのか?」
「相手の術者もかなりのものです。……おそらく、後一日は保たないかと」
 ならば、その前に術者を殺るしかないわけか。
 さあ、どうする……どうやって術者を見つけ出す。

A 裏葉に方術で探ってもらう
B 俺が敵陣深く切り込めば、奴らも尻尾を見せるはずだ
C その時、学校の屋上からこちらを見下ろしている女と目が合った
422名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 22:45:12 ID:BvJpi+Sa0
423名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 23:05:24 ID:l7e/2JRU0
 その時だ。
 学校の屋上に、俺達を見下ろしている女が居た。
 ……見られた。俺は舌打ちし、そいつの姿を確認する。
 女の歳は七瀬と同程度かそれよりも一つか二つばかり上ぐらい。
 腰までかかりそうな黒髪、体は細く、運動らしい運動はしていないと見える。
 遠目ではそれぐらいしか分からなかったが、こちらの立場が不味くなったのは十分理解出来た。
 昨日に七瀬に聞いていた女と特徴が合致する。
 ユズハと同じ、目の不自由な女……川名みさきとかいう名だったな。
 まだガディムがその女に憑いているとはっきり決まったわけじゃないが、
 要注意であることに変わらない。どう転んでも、ガディムの手に堕ちているのは間違いないだろう。
 何かの偶然なのだろうか、
 髪といい、年の頃といい、不自由な目といい、
 何処となく彼女はユズハを思わせる。ガディムはそのような人間に憑こうとするものなのだろうか。
「…………っ!」
 俺と女は目が合った。
 距離が遠かったので、何を喋っているかは分からなかったが、
 その時、その女は、確かに……笑った。
 ヤツらが俺達を挑発しているのが分かる。誘ってやがる、学校の中に。
「……オボロ様、まずは結界を破ろうとしている術者を狙うのが先でございます。
 オボロ様のお気持ちは察して余りありますが、今は機ではありませぬ。
 結界が破られる前に術者を倒し、後は七瀬様と栗原様が戻られるまで待つのです」
 それが最良の策だろう。
 俺達二人だけで、ヤツと戦うのは無謀もいいところだ。

A まずは裏葉と共に術者を始末する
B だがそれでも、俺はヤツを相手に背を向けることは出来ない

424名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 23:16:30 ID:KDazCzU30
B
425名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 21:16:15 ID:MFwkFxdl0
 あの女が笑った瞬間、俺の脳裏に蘇る。
 たった一人の妹であり、今はもう二度と会えないユズハの姿が。
 ユズハ、なによりも代え難い俺の宝物。
 わなわなと体が武者震いを起こす。
 刀の柄を握る手に力が込められてきた。
 体中の血という血が、沸騰してくる。
 何故だ。
 ユズハはもう二度と、俺に笑顔を向けてはくれない。
 なのに何故お前は生きて、そんな歪んだ笑みを見せつける!
「…………すまん、裏葉」
 それ以上自分を抑えつけることが出来なかった。
 俺は駆け出し、恐らくは正門よりは人が少ないであろう裏門のほうへ走り出す。
「オボロ様!」
 裏葉が制止の声を掛けるが、止められなかった。
 冷静に考えれば、俺の行動は間違ったものだろう。
 だが、そうであっても、俺は奴を前に背を向けるような真似が出来なかった。
 一刻も早く、奴を地獄へ送りたくて仕方がない。
 七瀬や栗原の到着など待っていられない。
 そもそも、あの二人が上手く協力者を連れてくるとは限らない。
 連れてきたとしても、その協力者の扱う科学とやらの力が必ずしも通用するとも限らない。
 そんな不確かなものを待っている間に、ガディムが本来の力を取り戻したらどうする。
 現に今、傀儡を操り術者を使って結界を破ろうとしている。
 それならば…それならば俺と裏葉が速攻で始末したほうがマシだ。
 俺がガディムの首を刎ねれば、結界も術者もクソもない。
 その後の奴の魂とやらは、裏葉の方術がどうにかしてくれるはず。

(今度こそ……今度こそ俺がユズハの……ユズハの敵を!)
 

A 「オボロ様…申し訳ありません」後ろから裏葉が俺に方術を掛けてきた!
B 裏門に回ると、予想通り人がいない。俺はそのまま校舎に突入した。
C その頃七瀬と栗原は?
426名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 21:26:39 ID:BYcn5rTF0
A
427名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 01:41:52 ID:l6VqzxOD0
「なりませぬ!」
「止めるな裏葉! ユズハはヤツのために死んでいった!
 卑怯な手も使おう、地獄(ディネボクシリ)に落ちることもしよう!
 だが、逃げるということだけは……絶対に俺はしない!」
 俺を追ってきた裏葉の手を振り払い、俺は裏門へと走る。
「オボロ様……」
 すまないな、裏葉。
 また生きて会えることがあれば、その時に俺を殴るなりしてくれ。
 俺が心の中でそう呟き、次の一歩を踏み出したとき、
「……申し訳ありません」
 そう確かに、裏葉は呟いた。
 次の瞬間……俺の視界がぐにゃりと歪む。
「う、裏葉っ……貴様、何を!?」
「方術で眠気を誘わせていただきました。普段の貴方ならどうということもないでしょうが、
 後ろを顧みることも怠っている今の貴方なら、効果もありましょう」
「な、ぜ、邪魔……を……」
「……今はガディムに攻撃をかける時ではございませぬ。
 後ろの守りを怠っては、勝てる戦も勝てなくなることは、オボロ様もよくご存知の筈」
「だ、が……ヤツは……ユ、ズハ、を……」
「無策の玉砕は相手の士気を高めるだけとなりましょう。
 今は眠り、頭をお冷やしになって下さい。せめて、楽しい夢を見られるようにしますから」
「う、ら……は………」
 そこで、俺の意識は途切れた。

 意識を手放したオボロを確認した後、裏葉はふぅっと一息ついた。
「オボロ様は弓矢と同じにございます。撃てばそれきり、戻ることを知らず。
 ……この方には、出るべき機を見極めることの出来る、優秀な射手(主)が必要でございましょうに」

A 裏葉一人で結界を破ろうとしている術者を探しに行く
B 時間のロスは痛いが、一人になるのは得策ではない。一度マンションに戻る
C その時、小柄で関西弁の女の子に見られていることに気づいた
D 七瀬と透子は今何をしてる?
428名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 01:50:47 ID:MqBL/Q8/0
D
429名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 02:06:25 ID:l6VqzxOD0
「誰も居ない……か」
 あたしは栗原さんとマンションまで戻ってきたのだが、
 そこにはもう、オボロさんと裏葉さんの姿はなかった。
「まさか、二人とも学校に?」
「その可能性が高いわね。
 学校がああいう状態になってるのに気づいたとしたら、
 何か行動を起こしていてもおかしくはないわ」
 この仮説、実は逆に考えることも出来る。
 裏葉さんたちに何かあったからこそ、学校がああいう状態になった。
 つまりは裏葉さんの結界が解けたとも。
 だけど、それは意識して考えないようにした。
 今は物事を悪い方にばかり考えていても仕方がない。
「じゃあ、早く学校へ行こ!」
 栗原さんの言葉に、あたしは黙って頷いた。
 オボロさんから渡された刀を、強く握る。……やるわよ、あたし。
 ここから先は、今までの礼に始まり礼に終わる剣道の世界なんかとは全然違う。
 一歩間違えば命さえ失う、騙し騙されの戦場なんだ。今栗原さんを守れるのは、あたしだけなんだ。
 あたしは何度も自分にそう言い聞かせ、立ち上がった。

 あたし達は道路を歩くのも慎重に、学校へ少しずつ近づいていく。
 幸いにも、学校に近づくまで敵は現れなかった。
 そこから考えると、裏葉さんの結界はどうやらまだ生きているらしい。
 それを踏まえても、一応最悪のシナリオにはなってはいないようだ。
「……七瀬さん、あれ!!」
「えっ!?」
 栗原さんが急に声を上げ、指を差した。
 そこにあったのは……

A 道路際で眠っているオボロさんだった
B 眠ったオボロさんを背負った裏葉さんだった
C 両手を挙げて宇宙的挨拶をあたし達に交わす珊瑚ちゃんだった
D 量産型イルファさんが無表情であたし達を睨んでいた……マズい
430名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 02:10:45 ID:eB4zJqRyO
B
431名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 02:38:44 ID:l6VqzxOD0
「裏葉さん!?」
「……お戻りになられましたか、七瀬様、栗原様」
 そこにいたのは、眠ったオボロさんを背負った裏葉さんだった。
 心なしか、裏葉さんの顔が深刻に見える。
 何か良くないことがあったのは、一目瞭然だった。
「あのね、裏葉さん。科学の力のことなんだけど……」
「……場所を移しましょうか。オボロ様も今はお眠りになられていることですし」
「じゃあ、裏山の入り口にも公園があるから、そこで……」
 とにかく、あたし達は学校の傍からそこまで移動することになった。
 流石に敵地の前で作戦会議は出来ない。それに、オボロさんのことも気になった。
 何か大変なことがあったのだろう。だから、敢えてあたしは聞かなかった。

「そうですか……その珊瑚様も、おそらくはガディムに捕らわれて……」
「結界を破ろうとしている術者ね……厄介なことになってきたわ」
 あたし達はまず、お互いの情報を交換し合った。
 流石に平日の真昼間の公園には、人の姿はない。この公園が住宅街から離れていることも一因だが。
 とにかく、あたし達には火急にやらなければいけないことが二つ出来た。
 結界を破ろうとしている術者を倒すことと、珊瑚ちゃんの救出。
 裏葉さんの話だと、結界はこのままじゃ後一日も保たないというし、
 珊瑚ちゃんの方にしても、珊瑚ちゃんの命の保障などないのだ、事は早くした方が良い。
「術者を倒すか、珊瑚ちゃんを助けるか……どちらにしても、敵地に行く以上戦力の分散は出来ないわね」
「仕方がありませぬ。四人しかいないのですから」
 裏葉さんが残念そうに呟いた。
 この世界でオボロさんや裏葉さんに仲間のあてがあるわけもなく、頼れるのは結局自分達だけなのだ。
「あたしは、珊瑚ちゃんを早く助けた方がいいと思うよ」
「……私はまずは術者を倒すことに専念すべきだと思います」
 栗原さんと裏葉さんの意見が二つに割れ、自然とあたしに視線が集まる。
 あたしは……

A 時間がなくなる前に、結界破りの術者をどうにかする方が良い
B 人の命には換えられない。味方も必要だし、珊瑚ちゃんを先に助ける
C その時、オボロさんが目を覚ました
432名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 02:40:14 ID:mjiWiJcvO
c
433名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 03:00:21 ID:l6VqzxOD0
「うぅっ……こ、ここは……」
「……オボロさん。目が覚めたのね」
 あたしが答えようとしたとき、オボロさんが目を覚ました。
 そして、何か探すように、あたりをキョロキョロと見回し始める。
「そ、そうだ、俺は裏葉に眠らされ……くそっ!」
 オボロさんは舌打ちをしたかと思うと、ガバッと起き上がる。
「何処へ行こうというの、オボロさん?」
「知れたこと、ガディムの元へだ! 俺はヤツをこの手で打ち滅ぼすために、この世界に来たんだ!
 そしてヤツが俺達の前に居る。もう答えは一つしかないだろう!?」
 粗方の事情は裏葉さんから聞いている。
 やれやれ、目が覚めれば頭も十分冷えているかと思ったけど、これは相当な重症ね。
 思い立ったらすぐ行動の香車タイプなのね、オボロさんは。
 以前にオボロさんの上司だった人の苦労が目に見て取れるわ。
 あたしだってオボロさんと同じで、深く考えるのはそこまで得意ってワケじゃない。
 だけど今は状況が状況だ。そんなこと言っていられる場合じゃない。
 あたしは道を塞ぐようにオボロさんの前に立つ。
「そこをどけ! ヤツは俺が倒す!!
 今のヤツは不完全だ! 不確かな力や、妙な小細工に頼る必要などない筈だ!!」
 オボロさんは完全に意地になってしまっている。
 頭ではきっと、自分が無茶な考えを起こしてると分かってるだろうし、
 あたしや裏葉さんの意見が正しいことも理解してるだろう。ただ、それを認めたくないだけなんだと思う。
 こうなってしまった人を止めるのは難しい。だけど、止めないわけにはいかない。
 無駄死にすると分かっているのに、オボロさんを行かせるわけにはいかないんだ。
 何か、何かしなくちゃ。オボロさんに自分の間違いを分からせるキッカケがあれば……

A 地道な説得に入る
B オボロさんを殴りつける
C 「行きたければ、あたしを斬りなさいよ」と挑発する
D その時栗原さんが、ポロポロと涙を零した
434名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 03:06:06 ID:neDunBWWO
D
435名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 15:45:12 ID:l6VqzxOD0
「やめてよ! 行っちゃヤダよ……!!
 そんなことして、オボロさんが死んじゃったら、あたしは……うぅっ!!」
 その時だ、おろおろとオボロさんに目を向けていた栗原さんが、
 まるで糸が切れたようにポロポロと涙を零した。
「く、栗原……何故泣く?」
 女の子に泣かれた経験なんてないのだろう、オボロさんがそれに戸惑う。
「……このドアホッ! あんた、栗原さんの気持ちも分からないの!?」
「な、何が言いたいんだ!?」
「そりゃ、あんたは憎い仇に玉砕できりゃ、犬死したところで本望でしょうよ。
 けど残されるあたし達はどうなるの?
 あんたを行かせて、それであんたが死んだら一生後悔するわ。
 残された人間の辛さを一番よく知っているのは、他ならぬあんたじゃないの!
 人を見殺しにしたなんていう、一生かかっても取れない十字架をあたし達に背負わせる気!?」
 あたしは気づけば辛辣な言葉を次から次へとオボロさんにぶつけていた。
 オボロさんは黙って震えている。怒りからか、それとも悲しみからか。
 ……あたしの言っている事は、オボロさんの心の傷に塩をすりこむようなものだ。
「犬死は妹さんも望まないなんて鳥滸がましいことは言わないわ。
 ただね、こっちは世界がかかってるのよ。勝手に突撃されて勝手に死なれるのは迷惑よ。
 悔しいけれど、世界を救うためにはオボロさんの力が必要なんだから。
 死ぬことも、無謀な玉砕に走ることもこのあたしが許さない」
「七瀬、お前……」
 自分でも随分傲慢な言い方だとは思った。
 だけど、オボロさんには柔らかく言うより、厳しく言った方が効果があるだろう。
「あなたの目的は死ぬことじゃなく、ガディムを倒すことでしょ?
 この世界には『急がば回れ』という諺があるわ。一見遠回りだけど、一番確実で近い道を選ぶのよ」
 オボロさんは黙ったままだ。
 だけど、もうどう答えるかなんて決まっている。
 オボロさんだって裏葉さんの意見が正しいことを分かってたんだ。
 ただ、盲目的に仇討ちに執着することで、妹さんへの贖罪としようとしていただけで。
 ずっと顔に書いてあった。俺を止めてくれ……って。
 本当に不器用な人。そんなことしても、きっと妹さんは喜ばないと思うのに。
436名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 15:45:54 ID:l6VqzxOD0
「一つ約束してくれ」
「なに?」
「機が熟したら、ガディムの首は俺に取らせろ。
 俺はそのためだけに全てを捨ててヤツを追ってきたんだ。こればかりは譲ることは出来ん」
「……いいわ。その時が来たら、あなたに任せる。
 あなたはガディムを倒すことだけを考えて。あなたの背中は、あたしが守るわ」
 あたしはオボロさんから受け取った剣を掲げて、微笑んだ。
 こんな物騒な物を振り回す乙女なんていやしないだろう。いて戦乙女がいいところだ。
 あたしは乙女と呼ばれるには程遠いかもしれない。
 だけど、今はそれで良い。本当に……今だけは。

「七瀬様。それでどちらを優先させましょう?」
「えっと、それは……」
 裏葉さんが急に話を戻したので、あたしは思わず口ごもる。
 結局のところ、まだ決めてもないし考えてすらいない。
「オボロさんはどう思う?」
「あそこまで豪語したのだ、俺は七瀬の決定に全て委ねる」
 オボロさんに話を振ってみてが、そうはぐらかされた。
 体よく逃げやがって。あたしの中にふと殺意がわいたような気がした。
「お前に全て任せるんだ、姉者と呼んでやろうか?」
「お願いだからそれはやめて」
 更にからかわれた。
 オボロさんのニヤニヤとした顔が正直憎たらしい。
 あたしは意図的にそれを無視し、考える。
 術者を倒すことを優先か、それとも珊瑚ちゃんを助けることが先か。

A 時間制限のある方が先だ。術者を倒す
B 人の命が懸かってる。珊瑚ちゃんを助ける
437名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 15:51:46 ID:pUccEn7R0
A
438名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 16:18:39 ID:l6VqzxOD0
「今、結界を破壊されるわけには行かないわ。
 相手の戦力を減らすことも考えて、術者を倒すことを第一に考えましょう」
「やはり、それが最上の策でございますね」
 あたしの言葉に裏葉さんが同意する。
 栗原さんは自分の意見が却下されたことで、どことなく悲しそうな顔をしていたが仕方がない。
 珊瑚ちゃんがどんな状態に捕らわれているか分からない。
 必要以上に救出に時間がかかって、結界をその間に破られてしまっては相手の思う壺だ。
「裏葉。術者の居場所は分かっているのか」
「……栗原様、学校の地図をお貸しください」
「えっ? うん、いいよ……」
 栗原さんが生徒手帳を取り出し、学校の見取り図を見せる。
 流石に普通の地図は今は手持ちになかった。
「術者の数は一人。ですが、相当の使い手にございます」
 相手は一人だが、相当の実力者。
 結界の破壊を一人に任せているというのは、相当人材に困っているか、自信があるか。
 どちらにせよ油断だけは出来ない。心して、かからなければ。
「力の波動はこの位置より感じます。おそらくは、そこで呪を行っているのかと」
 裏葉さんが特別教室を指差した。そこに、術者が……。
 その特別教室は?

A 図書室
B 化学室
C 生徒会室
D コンピュータ室
439名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 16:20:41 ID:wE4Envpi0
C
440名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 00:15:32 ID:Y8m9RlVD0
「ここって…生徒会室よね」
 裏葉さんが指差した特別教室は、学生の自治を預かる生徒会室だった。
「生徒会室というのはどんな部屋なのだ?」
 オボロさんが聞いてくる。
「どんなって言われても…、生徒会の人間が仕事をする部屋よ」
「生徒会?」
 こっちの世界のような学校を知らないオボロさんにはよく分からない単語だろう。
 時間も無いし、私は適当に学校の自治の仕組みやら何やらを教えた。
「つまり師匠達ではなく、弟子達の頭が政務をする部屋なのだな」
「まぁそういうことかしら」
 オボロさんの世界の弟子と師匠と、あたし達の学校の教師と生徒ってのは少し違うと思うけど。
「何かこの部屋で気をつけるような事はあるか?」
「特に…無いとは思うわ」
 化学室だったら危険な薬品があったり、家庭科室なら包丁やら刃物類があったりする。
 だけど普通生徒会室にある物といったら、書類やら本やら事務用品やらそんなところだ。
 戦闘となった場合に、特に注意しなければならない事はないだろう…多分。
「でもどうして術者って人はこの部屋を使ってるのかなぁ?」
「申し訳ありません、そこまでは分かりかねます」
 栗原さんの質問に裏葉さんが困った顔をする。
「とにかく、この部屋に裏葉の結界を破ろうとする術者がいるのは間違いないのだろう。
 早く突入して、ソイツを仕留めねば」
 話は決まったとばかりに、オボロさんは立ち上がった。
「ま、待ってよ」
「何だ?」
「その術者ってのが私達の学校の生徒で、ただガディムに操られてるだけだったら…オボロさんはどうするの?」
 そう、今まではっきりとは聞かなかったけど、オボロさんはガディムを『殺し』に来ている。
 と言うことは、この術者やガディムが乗っ取っているらしい川名先輩に対して、オボロさんは――


A 「……斬る、当然だ」
B 「…………」オボロさんは答えを口にはしなかった。
441名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 00:22:34 ID:1LicSv5EO
a
442名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 03:05:42 ID:5FlYlm4i0
「……斬る、当然だ。
 無駄な犠牲は好まないが、俺の目的と命、そいつの命を天秤に掛ける事態であるならば、前者に傾く」
「え?、そ…そんな…」
 オボロさんははっきりと言い放った。その言葉に迷いは見られない。
 栗原さんは彼の冷徹な言葉に驚きを隠せないようだ。
 彼は私たちよりずっと血生臭い世界を生きてきた人間だ。
 戦場において心の天秤がぶれると言うことは無いのだろう。
 根は善人であるが、悪業の行使に躊躇いは無い現実主義者──ちょっと短絡的だけど。
「それにだ、術法を行使するような奴が操られているだけとは思えない。
 事実、俺が渡り歩いた世界には我欲が為にガディムを利用しようとする者もいた。
 世を疎み奴に身も心も奉げ、自ら手駒になった者もいた。
 残念ながらそのような者であるならば、俺は容赦しない」
 そう、今までは操られてゾンビの様に私たちに迫る人間だけが相手だったが、今回は毛色が違う。
 彼の推測が正しいとしたら、協力者かもっと自発的な手駒の存在が浮かび上がる。
 神様だった昔ならいざ知らず、今のガディムは人の手でどうにかなる存在だ。
 ならば、それを利用しようとする奴がいないはずが無い。
「依代の人格を基に顕在するガディムは知性を持ちえますが、目的は常に破壊。
 奴を利用すると言うのは身の破滅を約束するも同然です」
 オボロさんの言葉に裏葉さんが続く。
 魔王や闇の力とかを利用する奴の末路はいつも同じって事ね。
「いいわ。 操られてる人をバッタバッタなぎ倒すのは勘弁だけど、そんな悪党ならやっちゃって構わないわ。
 ここまで事態が深刻だと、誰も死なないでハッピーエンドなんて緩い少年漫画みたいな展開は期待しない」
 私も覚悟を決める事にした。
 私たちが親しい人を手に掛ける可能性と、親しい人が災厄の犠牲になる可能性。
 どちらも起こりうるなら、まだマシな方を選ぼう。
443名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 03:08:22 ID:5FlYlm4i0
「…覚悟は出来ているようだな、なら行くぞ。
 例の操り人形共の邪魔を考えると時間が無い」
 今かと待ち構えていたオボロさんは即、駆け出そうとする。
「ちょっと待って、私に考えがあるの。 栗原さん、イルファさんをここに呼び戻してくれない?」
「え?う、うん、分かった」
 栗原さんがイルファさんに携帯で連絡を付ける。
 イルファさんは学校の様子が気になってヘリで様子を窺ってから帰ろうとした為か、
 まだこの辺りを飛んでいたので、すぐに戻ってきてくれた。
「七瀬様、一体…」
「イルファさん、悪いけどちょっと協力してくれる?」
 私の計画はこうだ。まずは結界を破る術者を倒すのが優先であるが、
 ガディムを倒すキーマンとなる珊瑚ちゃんも見捨てられない。
 術者を倒してから一端撤退して彼女を探すのでは、手遅れになってしまう可能性がある。
 防備を固められて学校に立て篭もられたら、手の出しようが無くなってしまう。
 そこで、術者の撃破と彼女の救出を連続して行なう事にした。
 その為にはイルファさんとヘリが必要と判断した。
 巻き込むのは気が引けるが、如何せん事態が逼迫してるし、猫の手も借りたい。
 計画としては、まず私と誰かが裏山から侵入する。
 開けた校庭や中庭を通る以上は必ず敵の目を引くだろう。
 そして、その隙に残りが空中から学校へ侵入し、術者を討つ。
 そして、すぐさま珊瑚ちゃんの捜索に切り替えて救出し、ヘリで逃げる手筈だ。
「なるほど…空からの侵入か。 屋上から近いこの部屋ならば奇襲効果も高いだろう」
「後、悪いけど栗原さんにはここに残ってもらうわ」
「う、うん…しょうがないよね」
 栗原さんは残念そうな顔をしていた。
 彼女の数少ない友達である珊瑚ちゃんを助けたい気持ちは分かるが、
 彼女は足手まといにしかならないだろう。
「それでは七瀬様、どう言う分担になさるのですか?」

メンバーを2-2に分けてください。ただし、裏山:七瀬、空中:イルファは固定。透子はお留守番で
裏山:
空中:
444名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 06:04:17 ID:1LicSv5EO
とりあえずオボロは空中で。
445名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 08:33:10 ID:yzLX4Hmc0
自動的に
裏山 七瀬 裏葉
空中 イルファ、オボロ
になるわけか。
446名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 14:54:46 ID:Y8m9RlVD0
「それでは私めと七瀬様が裏山から陽動を掛けます」
「二人が騒ぎを起こしている間に、俺達が術者を仕留めるというわけか」
「そういう事よ」
 分担は決まった。
 裏山からは私と裏葉さん。
 空中からはオボロさんとイルファさん。
 ヘリに乗って空中から強襲なんて映画みたいなアクションは、ちょっと私には無理がある。
 戦場馴れしていて身の軽い、オボロさんに任せるのが順当だろう。
 今朝もマンションのベランダから平気な顔して飛び降りてきたし。
 私は裏葉さんの援護を受けながら、敵の目を引きつける役割を選んだ。
 もちろん油断は出来ないけど、動きの遅い操られている人達相手なら私でも何とか出来なくもないはず。
「…承知しました。ですが、その後には必ず珊瑚様をお助けに行かせてください」
 イルファさんがいくらか渋い顔をさせながら、私達に念を押してきた。
 そうよね、イルファさんからしてみれば、生みの親である珊瑚ちゃんの救出を何よりも優先したいはず。
 それなのに私達に付き合わせて、彼女の救出を後回しにしてもらっているのだから。
「もちろんよ、その時はみんなで珊瑚ちゃんを助けましょう!」
「はい!」
 私はイルファさんを元気づけ励ました。
 そうよ、オボロさんのためにも、この世界のためにも、珊瑚ちゃんのためにも、なんとしても成功させなきゃ!
「そ、それじゃああたしは留守番してるけど……みんなちゃんと帰ってきてね。
 絶対、絶対に怪我したり……死んじゃったりしたら嫌なんだからね」
「ええ、必ず帰ってくるわ」
「当然だ」
「無論でございます」
「きっと珊瑚様を連れて、栗原様の元に戻ります」
「よし、それじゃあ早速行きましょう!」
「おう!」「了解しました」「承知です」
 私達は立ち上がり、栗原さんに見送られながらそれぞれ行動に移り出す。
 イルファさんとオボロさんはヘリに乗り込み、私と裏葉さんは裏山のほうから学校へ。
 公園を出る前に、チラリと振り返ると、栗原さんが半分涙目になりながら私達を見送っている。
(栗原さん……栗原さんの分まで、私頑張るわ!)
447名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 14:57:21 ID:Y8m9RlVD0


A 陽動を掛ける七瀬・裏葉視点へ
B 強襲を掛けるオボロ・イルファ視点へ
C お留守番の透子視点へ
448名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 15:22:03 ID:U3JrbjEr0
主役のAから
449名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 15:43:59 ID:sV4wLYtm0
「すぐそこね」
「すぐそこですね」
早足で、だけど余り足音を立てないように裏山のほうからの入り口に近づく。
「ホント、何だか不気味……」
裏葉さんじゃ無いけど、確かになんとなく嫌な感じの空気が学校には立ちこめている。
「七瀬様にもそう感じられるとは……急いだほうがいいかもしれません」
裏葉さんが少し足を速める、私もそれ似合わせる。
「……………………」
歩きながらオボロさんに渡された刀を握り、ゴクリと喉を鳴らす。
私は何をしようとしているのだろう。
未だに校庭には無数の操られた生徒がうろうろとしているのだ。
そしてそいつらを相手に、私と裏葉さんの二人だけで大立ち回りをしなければならない。
改めて想像してみると、額や頬に冷たい汗が浮かんできた。
胸に手を当ててみる。
嫌が応にも鼓動が高まっている、心臓がドクドクバクバクいって止まろうとしない。
「七瀬様、落ち着いてください」
見かねた裏葉さんがなだめてくれた。
「あ、ありがとう裏葉さん。大丈夫よ、全然平気」
ぎこちない笑顔で私は返事をする。
――だけど、裏葉さんには悪いけど、こんな時に『緊張するな』と言うのは酷な話だ。
私も18年と幾らか生きてきたけど、人生こんな場面に遭遇するのは初めてだ。
『生きるか死ぬか』なんて言葉がある。
今までは受験とか、定期テストとか、そんな学生らしい場面で使ってきた言葉だ。
まさか本当に言葉通りの意味で使うようになるとは。
450名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 15:44:40 ID:sV4wLYtm0

「……着いたわ」
「……着きましたね」
長いようで短い、短いようで長い時間だった。
裏山からの入り口に辿り着いてしまった、もう後戻りはできない。
「七瀬様、どのように突入しましょうか」
裏葉さんが聞いてきた。
幾ら敵を引きつける陽動と言っても、何も考えずに突入してもすぐにやられるのがオチだ。
何か方針のようなものを決めておくべきだろう。
「何も厳密に決める必要もありません、大体の感じで良いので」
そうねぇ、それなら――


A 校庭のど真ん中に突入して、裏葉さんと背中合わせで周りの敵を打ち払うような感じで
B 常に逃げて動き回って、追ってくる敵を各個撃破するような感じで
C 敵を引きつけて校庭の隅を背にして、迎え撃つような感じで
451名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 15:59:15 ID:6iwU96ei0
C
452名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 22:25:59 ID:eUCwPI4n0
「行くわよ、裏葉さん!」
「はい!!」
 あたし達は大声を上げながら、校内に突入する。
 学校の中をウロウロしていた生徒達は、あたし達の姿を見るなり、
 まるでホラーゲームの敵キャラのような動きで、あたし達に迫ってきた。
「邪魔よ!」
 あたしは無我夢中で、オボロさんから借りた剣を振り回した。
 裏葉さんの援護があるとはいえ、捕まったら危険だ。
 幸いにも、正気を失っている生徒達の動きは大したことがなかったが、
 数の暴力にはどうしようもなく、あたし達はじりじりと壁際に追い詰められていく。
 ……だが、それでいい。それが狙いだ。
 あたしと裏葉さんは、校庭の隅に壁を背にして、連中と向き合っていた。
 隅にいれば前だけに注意を集中することが出来る。
 そして、あたし達の後ろにはフェンスの切れ目。劣勢になれば撤退できる位置だ。
 あくまであたし達は陽動。無茶する必要はない。
「七瀬様、お見事な策でございます」
「上手くここに誘導できたのは運が良かったからよ。だけど……」
 周りには正気を失った生徒達がウジャウジャあたし達を取り囲んでいる。
 あたしのブランクの開きすぎた剣と、裏葉さんの方術だけで、どれぐらい時間が稼げるだろうか。
 あたしはコイツらを見て、なんとなく太田さんを思い出した。
 気色悪さといい、雰囲気といい、何処か共通する部分がある気がする。
 そういえば、太田さんは生徒会の副会長だった。
 そして今回の強襲の目的地は生徒会室……。
 もしかしたら、太田さんはあの時既に事件に巻き込まれていたのかもしれない。
「……裏葉さん、この後はどうするか考えてる?」
「あらあら、どういたしましょう?」
 あたしの質問に、裏葉さんがわざと明るい声で惚けて見せた。分かってる癖に。
 これからの作戦は……

A あたしが前面に出て、裏葉さんがサポートする形
B 裏葉さんの方術中心に攻め、あたしが裏葉さんを守る形
C 裏葉さんお得意の方術で、この場の生徒の動きを封じる作戦
453名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 22:28:42 ID:gQtpljJU0
B

一対多よりも主力を守って各個撃破だろう。
時間も稼げるし。
454名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 23:18:03 ID:eUCwPI4n0
 悔しいが、あたしの力なんて微々たるものだ。
 自分の身すら守りきれるかどうかも怪しい。だから、あたしが前面に出て戦うのは無謀だろう。
 そうであるからこそ、裏葉さんの方術を中心に戦うのは自然な流れであった。
「……けど、これで大丈夫かな?」
「十分にございます。七瀬様、御自分の力をお信じ下さいませ。
 彼らは術の類で操られている傀儡。彼ら自身には卓越した能力はございませぬ。
 この位置なら、一度に襲い掛かる人数も少なくなり、対処もしやすいかと」
「で、でもっ……!」
 あたしは言葉を返しながら、瞳の色を失った生徒達が繰り出す拳を剣の腹でいなす。
 いなされた拳は、勢いを保ったまま軌道を変え、あたしの代わりにフェンスを殴りつけた。
 フェンスの殴られた部分が、大きくへこんでいる。
 ……どう見ても、普通の力じゃない。当たったらアウトだ。
「コイツら、とんでもない力よ!?」
「人は体を壊さぬように、本来の力を抑える枷があると聞きます。術者はそれを外したのでしょう」
「それって、物凄くヤバいんじゃ……」
「ご安心を。この術者、ここまで広範囲多人数を支配下におけるとは、相当の実力があるのでしょうが、
 ……このような術には幾つか弱点がございます」
「弱点?」
「まず第一に……」
 再び生徒の一人があたしに拳を向けた。
 大きく振りかぶった拳を、びゅんとあたしに投げつけるように振り下ろす。
 あたしはそれを、体を捌いてかわし、相手の後頭部に剣の峰を打ち下ろした。
 鈍い音がして、打たれた生徒が倒れる。……軽い脳震盪でも起こしたのだろう。
 良心の呵責に苛まれないわけでもないけど、とにかく今はこっちもヤバいから我慢してもらおう。
「傀儡自身に考える力がないこと。
 戦も試合も、相手の動きを読み、自分の間合いを考え動くことが重要にございます。
 考えることが出来ないと言うことはつまり、それすらも満足に行うことが不可能ということ」
 確かにそうだ。
 コイツらはさっきから考えた攻撃を一切してこない。
 あたし達を見たら追いかけ、そしてただ闇雲に殴りかかってくるだけ。読み易いことこの上ない。
 いくら相手が化物じみた力があるといっても、当たらなければどうということはないのだ。
455名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 23:18:57 ID:eUCwPI4n0
「そして第二に……」
 裏葉さんがすっと右手を上げる。
 その途端、前にいた生徒がバタバタと音を立てて倒れていく。
「このように、単純な行動しか出来ないこと。
 いくら優秀な術者でも、数人ならともかく数十数百といった数を自在に操ることは不可能。
 よって傀儡は予め与えられた命令を遂行するただの人形に過ぎず、
 策にも簡単にかかり、不測の事態が起こっても自身の判断で対処することが出来ませぬ」
「裏葉さん、これは……?」
「方術で眠気を誘いました。
 今の彼らは私の術に抗うことも知りませぬ故に、このような子供騙しも可能にございます」
 とりあえず、裏葉さんは皆を殺してはいないようで安心する。剣では下手すると殺してしまうし。
 その点から考えても、裏葉さんを中心に据える手は正解だと言える。
「そして、決定的な第三の理由」
「それは?」
「術者が戦況を確認する手段が限られること。
 今のように陽動で傀儡の多くの注意が逸らされていても、
 術者自身の目で確認せぬ限り気付く余地がありませぬ」
 なるほど。そう考えれば、今の状況もそう悪いものじゃない。
 この操られた生徒達相手なら、あたし達二人でも十分と言うわけか。
「流石は、ガディム相手に戦ってきただけあるわ……ねっ!」
 あたしは襲い掛かる生徒をいなし、一撃を見舞いながら、
 素直に裏葉さんの判断を尊敬した。オボロさんと違って、この人は冷静だ。
 そういう人が後ろに控えていてくれると、とても安心できる。
「ただ懸念が一つ。もし私が相手側ならば、不測の事態に備え、
 傀儡ではない手駒か、それとも自分自身かを共に配置しておくでしょう」
 その言葉にドキッとする。裏葉さんの言葉を借りるなら、正に今がその不測の事態……。
 それほどの相手がいるのかと、辺りを見回した。すると……

A 生徒達に指示を送っている……あれは確か生徒会長!?
B ぞくっとする寒気と共に現れた川名さんと目が合った
C 明らかに一人正気を失っていない人の姿が。あれは……珊瑚ちゃん!?
D まるで悪魔と形容すべきかのような禍々しいモノが。あれが敵なの!?
456名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 23:20:59 ID:tHwvrn4j0
B
457名無しさんだよもん:2007/07/11(水) 23:07:19 ID:VQACVSJv0
 その時だった。
 まるで背中に氷でも入れられたような感覚が、全身を迸る。
 長い黒髪、何も映していない瞳、そして……この状況で微笑を崩さないその表情。
 そこに禍々しいと言う言葉が非常に良く似合うだろう、そんな少女があたし達を見下していた。
 まるで自分が異世界に迷い込んだみたいだ。
 世界全体が色を失ったかのような、そんな錯覚さえ感じた。
 腕が震える。足が満足に動かない。目を川名さんから逸らすことができない。
 あの少女……川名さんは、客観的に見て、そんな恐ろしい人間ではない。
 なのに、体は危険信号を発し続ける。あれが破壊神の持つ風格なのだろうか。
 オボロさんから借りたバンダナからは鈍い共鳴音が鳴り続け、彼女が危険であることをあたし達に知らせる。
 裏葉さんも、相手が説明した川名さんであることを分かったようで、警戒を一層強めている。
 このままではまずい。このままではいけない。
 頭の中でそんな言葉が何度もリフレインするも、あたしは動くことが出来なかった。
「……久しぶりだね」
 あたしへ向けた言葉ではなかった。昨日会ったばかりなのだから。
 裏葉さんはぎゅっと唇を噛み、ただじっと川名さんを睨みつけている。
 この人も、オボロさんと同じように、ガディムには浅からぬ因縁があるのだろう。
 今まで敢えて聞くことはしなかったけれど、この態度でそれが分かる。
「まさか、あなた自ら出てくるとは思いませんでした……」
「私も結構切羽詰ってるんだよ。余裕ないからね」
「……ならば、今こそあなたを倒し、この世界を救うのみです!」
 裏葉さんが言葉巧みに挑発を仕掛けるが、裏葉さん自身には今は事を構えるつもりはない。
 証拠に、裏葉さんは先ほどから態度を変え、退くことを前提に動き始めている。
 流石にガディム相手にはあたし達だけでは無謀というわけだ。
「ねえ、二人とも……私の元に来ないかな? そうしてもらえると、とても嬉しいよ」
 まるで赤ん坊をあやす様な優しい口調だった。
 だからこそ油断が出来ない。それが痛いほどに分かる。
 あたしは、川名さんの言葉に……

A 恐怖を感じた
B 気色悪さを感じた
C 妙な安らぎを感じた
458名無しさんだよもん:2007/07/11(水) 23:08:40 ID:1Vba9j13O
ここはcで
459名無しさんだよもん:2007/07/11(水) 23:24:49 ID:VQACVSJv0
 あたしは恐怖や怒りよりも前に、安らぎを感じた。
 不思議な感覚だった。
 絶対的に危険である存在なはずなのに、
 その言葉を聞き、その表情を見ると……不思議と心が安らぐのだ。
 だからこそ怖い。恐ろしい。
 心の弱い人間なら、それだけで彼女の元に陥落しているのだろう。
「七瀬様!」
 裏葉さんの言葉が合図で、
 あたしは弾かれたように、川名さんとは逆の方向へ走り出した。
 戦おうなんて微塵も考えなかった。
 次元が違いすぎる。この言葉を今更ながらに理解する。
 震える体を心で制し、平衡感覚が鈍ったような足で無理矢理大地を踏みしめ、
 あたしは逃げることだけを考えた。絶対に、アイツだけには勝てない。
 無造作に立っているだけなのに、何処にも隙がない。
 何を考えているのかも、次にどう動くかも、何もかも読めない。
 幸いにも、あたし達はフェンスの切れ目を後ろで守る形で向き合っていた。
 だから直に学校から脱出が出来る。
 裏葉さんの結界のおかげで、彼女は学校の外まで追ってくることが出来ないはずだ。
「……逃がさないよ」
 川名さんが、そう呟いたような気がした。
 次の瞬間――――

A フェンスの切れ目に、まるで見えない壁があるかのように顔をぶつけた
B まるで石のように、体が動かなくなった
C 裏山にも、既に虚ろな目をした生徒達が回りこんでいた
460名無しさんだよもん:2007/07/11(水) 23:32:25 ID:DELi7evD0
A
461名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 01:14:08 ID:GAFBKunJ0
 素早くフェンスを潜り抜けようとしたところ、
 顔に強烈な痛みを感じ、あたしは思わずのけぞった。
「えっ!?」
 痛みを堪えながら、あたしは最悪な想像をする。
 その想像が当たってないことを願って、切れ目に手を伸ばした。

 ……想像は、現実となる。願ってもいないのに。

 まるで切れ目にはガラスか何かが挟まっているかのように、
 見えない壁があたし達の邪魔をするように存在していたのだ。
「…………」
 裏葉さんがコンコンと壁を叩き、黙って首を横に振る。
 あたし達は……閉じ込められた!?
「もう少しのんびりしていったらどうかな。
 私ももうちょっとだけ、あなた達とお話がしたいよ」
「たかだかあたし達二人に、ここまでやるの?」
「私は人間を見くびらないよ。
 その技や力、心、そのどれだって凄いと思う。
 だから私は……まずは世界の前に人間を狙うんだよ」
 神と名乗るものだから、もっとあたし達を見下してるものだと思っていた。
 だけど違った。ガディム……こいつはあたしが思っていた以上に細心で、強敵だ。
 今の力関係だって、アイツの方がずっとずっと上だった。
 だから付け入る隙があるとすれば、あいつの慢心を突くことぐらいだと思っていた。
 だけど、はっきりと分かった。こいつに油断はない……。
 オボロさんや裏葉さんが何度も取り逃がしているわけだ。
462名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 01:14:48 ID:GAFBKunJ0
「……七瀬様。この技は私の結界と同じ類のものでしょう。
 私達をこの学校に閉じ込めるのが目的と思われますから、おそらく体に害はないものと……」
 裏葉さんの言葉は気休めにしかならなかった。
 いくら結界に害がないとはいえ、どちらにせよあたし達のピンチに変わりはない。
「逃げた方が、いいわよね? あたし達二人で勝てる相手じゃない」
「同感にございます。オボロ様達の力は絶対必要でしょう」
 あたしと裏葉さんは同時に頷き、同時に行動を起こす。
 もう行動は決まっていた。逃げる一択しかない
「どいたどいたぁーーっ!!」
 あたしはわざと大声を張り上げ、自身の発奮を促しつつ、
 川名さんからは大きく外れた方向へ切り込んでいく。
 裏葉さんが言っていたように、傀儡の生徒達は不測の事態に弱い。
 なるほど、あたし達がこういう行動に出るとも予想できないみたいで、
 不意を突かれればいくら人間離れした力があっても、勢いで突っ切ることはそう大変じゃない。

 さて……逃げるといってもどこへ?

A 生徒会室へ向かい、とにかくオボロさんと合流するのが先決だ
B オボロさん達のために注意を引かないと。校庭を逃げ回る
C 何もない場所ではあまりにも不利だ。校舎内に逃げ込んだ方が良い
D ……オボロさん達は、うまくいってるのだろうか
463名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 01:22:00 ID:p6yDl/KW0
Cで屋内追走戦!!
464名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 02:18:20 ID:GAFBKunJ0
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 もう一生分走った気持ちになった。
 あの状況で、うまく学校の中に逃げ込むことが出来たのが信じられない。
 とりあえずあたし達は、手近の教室へと逃げ込み一息ついていた。
 今は授業中の時間なのに、校舎内にも人の姿は殆どない。
 ガディムに操られている生徒達があたし達を探し回っているのが精々だ。
 やはり学校は既にガディムの手に落ちてしまっている。
 あたしも一昨日オボロさんに会わずにいたら、あの生徒達の仲間入りをしていたのだろう。
 もうほぼ全ての生徒がああなっているのは間違いない。ここが見つかるのも時間の問題だろう。
「嫌な感じね……まるでじわじわと追い詰められていくみたいだわ」
「落ち着きください、七瀬様。ガディムは闇の神より作り出されし破壊神と聞き及んでいます。
 負の感情、即ち闇の力はガディムの好むもの。これではガディムの思う壺にございます」
「分かってる……分かってるわ」
 口ではそう答えるも、内心穏やかじゃなかった。
 ガディム……あれで本調子じゃないというのが信じられない。
 今はこうして逃げ回っているが、何れ”あれ”と戦うことになるのかと思うとゾッとする。
「おそらくは校内はガディムの根城。
 守りの者も、外の傀儡など問題にならぬ者で固められていることでしょう」
「…………」
 あたしは唾をごくりと飲み込み、裏葉さんの説明を黙って聞いていた。
 いくら数が違うとはいえ、二人がかりでどうにか防いでいた外の連中より、
 更に上の相手がこの学校の中にウヨウヨしてるっていうの!?
465名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 02:19:10 ID:GAFBKunJ0
「ガディム本人を除き、相対する敵で予想されるものは大きく分けて二つ。
 まず第一にガディムに自らの意思で従うもの、つまりはガディムの眷族。
 そしてもう一つ、ガディムの分身ともいえる存在……私共はラルヴァと呼んでいます」
「ラルヴァ?」
「はい。ただの分身故、力はガディムよりも数段劣ります。
 ですがその性質は極悪、ラルヴァも他人に憑くことにより、その人間を乗っ取るのです」
 言ってしまえば、量産型ガディムか。
 ガディムの分身なら、あたしの付けているバンダナも反応はするのだろう。
「憑かれた人間を助ける方法は?」
「強い衝撃を与えれば、ラルヴァは体から離れましょう」
 ラルヴァ”は”か……。
 とりあえず、撃退する方法がないわけではなさそうなのでホッとする。
 だが油断は禁物だ。どこに敵が潜んでいるか分かったものではないのだ。
 それにこれからのあたし達の指針はどうする。
 あたし達が囮として敵をおびき出す作戦はそこそこ成功していただろう。
 だけど、ガディムたちはあたし達と同じように、学校内にあたし達を閉じ込める作戦に出た。
 こうなっては最初の構想のように、事が済み次第逃げることが出来ない。
 ガディムの結界だ、そう簡単に解ける代物でもないだろう。
 それにオボロさん達の事もそろそろ気付かれてもおかしくない頃だ。
 さあ、どうする。どうしたらいい……?

A とりあえずオボロさんと合流するのが先決だ
B オボロさん達の邪魔が入らないように、学校内の敵を遊撃して二人をサポートする
C 退路の確保が先決だ。どうにかして結界を破る方法を考える
D あたし達はあたし達で珊瑚ちゃんを見つけ出そう
466名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 02:33:48 ID:E7uMBKr7O
A
467名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 14:38:14 ID:zSBs+2Kk0
「……とりあえずオボロさん達と合流しましょう」
「そうですね、それがいいと思います」
 負の感情を持つのはよろしくないと言われても、私の顔色は良くなかった。
 学校の中では逃げ場がないし、敵も数は少ないけど強力らしい。
 正直さっきの傀儡連中のように、不意を突いてあしらえるとは考えにくい。
 ……それなら少し早いかも知れないけど、オボロさん達と合流したほうが幾分マシだ。
 私達も生徒会室へ向かってみよう。
「オボロさん達のほうは上手くやってるかしら」
 何とはなしに呟く。
 作戦では合流前までに、オボロさん達に術者のほうを倒してもらう手筈なのだ。
 ガディム直々の登場で、予定が狂ってしまったけど。
「……何とも言えません、少なくともまだ術者による結界破りは続いてるようなので」
 裏葉さんも渋い顔をしている。
 一応さっき生徒会室の位置は確認してもらっているし、イルファさんもいる。
 学校の中で迷子になったって事はないはず。
 だとすれば――それって――
「まさか…もうオボロさん達はやられちゃったなんて……ことはないわよね」
 最悪の想像が頭をよぎる。
 駆け付けたときにはもう遅く、オボロさん達はガディムの仲間達に倒されている。
 絶望する私達に、更に連中が襲いかかってくる。
 逃げ場もなく、数でも質でも圧倒的な相手に押しつぶされ、私達もすぐにオボロさん達の後を追って――
「七瀬様! 悪いことばかり考えても事態は改善しません!」
「あっ……ごめんなさい、裏葉さん」
 あんまりにも顔色が悪くなっていた私を、裏葉さんがしなめてくれた。
 見れば刀を握っている手が、また冷たい嫌な汗でじんわりと湿っている。
 そうよね、何を考えているのよ私。
 戦う前から自分でやられちゃう姿を想像して、自分でその想像に負けてしまうなんて……
 やっぱりガディムってヤツの悪い影響を受けているのかしら。
468名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 14:39:15 ID:zSBs+2Kk0


「…誰かいるでしょうか?」
「……いいえ、誰も見あたらないわ」
 慎重に、出来るだけ音を立てないように教室のドアを開け、左右を見る。
 とりあえず誰かがいる様子はない。
 バンダナも今のところ無反応だ。
 私と裏葉さんは廊下に出て、生徒会室へ向けて歩き出した。


A 少し歩いていると…バンダナが反応を示しだした?!
B 少し歩いていると…傀儡とは違うっぽい人間がうろうろしているのが見えた 
C 少し歩いていると…裏葉さんが「時に七瀬様…近くに厠などはありますか?」と、裏葉さん……
D その頃、オボロ達は?
469名無しさんだよもん:2007/07/12(木) 14:41:45 ID:Y60sriepO
d
470名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 03:26:30 ID:OlXEuggf0
「……気取られてはいないな?」
「おそらくは大丈夫だと思います」
 七瀬と裏葉が校庭で陽動に出始めたその頃、
 所変わって屋上ではオボロとイルファが密かに学校に侵入に成功していた。
「この世界の科学とやらは中々便利だな。
 まさか俺が空を飛ぶことができるなどとは微塵も思わなかった。
 確かにオンカミヤリューの術などとは比べ物にならんかもしれんな」
「私から見れば、高度40メートルからパラシュートも付けずに飛び降りて、
 生身なのに怪我どころか顔色一つ変えないあなたの方が怖いです」
 ちなみにイルファはジェットエンジンを背中に積んで屋上に着地した。
 そんなものを用意しているのは珊瑚の影響だろう。
「ここからは油断できんぞ。覚悟はいいか?」
「珊瑚様の為なら、私はこの体がネジの一本になっても悔いはありません」
「良い覚悟だ。お前、戦闘経験は?」
「護身のための格闘術がプリインストールされています」
「上等だ」
 オボロが音を立てずに、屋上の入り口まで近づく。
 僅かに扉を開け、まずは中に見張りの姿がないことを確認した。
 先ほどはこの場所に川名みさき……ガディムに乗っ取られた少女の姿があったが、
 今はその姿はない。移動したのか、それともどこかに隠れているのか。
 どちらにせよ、今は彼女が目的ではない。
 オボロが先に中に入り、安全を確認してからイルファを手招きする。
「ここから先は慎重に行動しろ。目的を果たすまでは気付かれたくはない」
「はい」
 二人は辺りを確認しながら、慎重に階段を下りていく。
 その時――――

A 廊下の向こうに生徒会室と書かれた部屋があった。……近い
B 虚ろな目をしている生徒に指示を送っている男に気付いた
C 丁度オボロの足元にバナナの皮が置いてあった
D イルファぐらい高性能なロボットになるとくしゃみが出るのだ
471名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 04:21:57 ID:oKr5G/Nk0
B
もう少しシリアスを続けさせてみる
472名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 21:40:10 ID:2L+706BKO

「───は西棟の二階の巡回。それから───」
「「!!」」

 最初の階段を気配と足音を殺しながら慎重に降りて行くと、
 踊り場を過ぎた辺りで、何かを指示する様な男の声が聴こえた。

(…気取られるなよ)
(……はい)

 イルファに唇の動きだけでそう告げ、更に慎重に、残りの階段を降りて行く。
 正直、イルファの穏形の技は俺などよりも遥かに研ぎ澄まされていて、
 隣にいる俺ですら、気配を感じ取る事ができない。
 仮に目を閉じようものなら、こいつの存在を感じ取る事は全くできなくなるだろう。
 これも科学の力なのか?
 もし、敵にもこんなヤツがいるとしたら、それは厄介な事この上無いだろう。
 だが、味方だと正直、素晴らしく助かる。
 事実、俺達は声の主に存在を気取られた様子も無く、階段の最後の一段まで辿り着いた。
473名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 21:43:36 ID:2L+706BKO

「(1)は下の連中の援護とガディム様の護衛。(2)は生徒会室の守備に。それと──」

「…声の反響からして、この声の主はこちら側を向いてはいない様ですね」
「ああ」

 階段の終端、白塗りの壁の端から僅かに顔を出し、通路の様子を覗き込む。
 するとやはりそこには、傀儡達に淡々と指示を下している男の姿があった。

(術者は生徒会室とやらに居るはず……ならばアイツはラルヴァ憑きあたりか…)

「(3)は人質の見張りの連中に合流。(4)は…念の為屋上の見張りを」

(オボロ様!)
(チッ…!)


※(1)、(2)、(3)、(4)に該当するキャラを、下のアルファベットから選択してください(一人多答可)。
 また、最初に選択される方は、“声の主”の選択(AIR、うたわれ以外の男キャラ指定)もお願いします。

a:向坂環 b:十波由真 c:川澄舞 d:水瀬名雪
e:春原陽平 f:坂上智代 g:那須宗一 h:湯浅皐月
474名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 21:45:25 ID:OlXEuggf0
一番それっぽい能力は月島拓也かな。
475名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 21:48:44 ID:OlXEuggf0
んでもって、
1-a
2-b
3-e
4-c
476名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 02:16:21 ID:pFRsuZ2Z0
 オボロがその男に感じたのは、敵意よりも前に違和感だった。
 見たところその男は普通の人間と変わらない。
 むしろ戦乱の世を生きてきたオボロから見れば、か弱い部類に入るだろう。
 だがオボロの第六感が、幾度となく警鐘を鳴らし続ける。
 奇妙な感覚だった。相手は丸腰の上に、格闘術などの使い手にも見えない。
 なのに一瞬たりとも油断が出来ない相手に映るのだ。
(……オボロ様、どうします? タイムロスになりますが、南校舎側から迂回しましょうか?)
(…………)
 オボロの中に生まれるのは、躊躇い。
 相手が見た目どおりの男なら、一瞬で後ろを取り当身を食らわすことも出来るだろう。
 だが、その光景が想像できない。あの男は強さ以外の何かがある。
 長年ガディムと戦ってきた、オボロの勘であった。そして、その勘は正しく働いたと言える……。
「……隠れてないで出てきたらどうだい? オボロ君」
「!」
 それまで傀儡となった生徒に指示を送っていた男が、急に自分の名を呼んだことに狼狽する。
 声こそあげなかったものの、オボロの顔に一瞬冷や汗が流れた。
「いくら気配を殺しても無駄だよ。気配や姿を消すことは出来ても、電波を消すことは出来ない。
 僕から見れば、君が大声で騒いでいるようなものさ」
 その男は電波と言う聞きなれない言葉を使い、オボロを挑発する。
 オボロもイルファも動かなかった。
 挑発に乗らなかったというより、その男の得体の知れない雰囲気に二の足が踏めなかったのだ。
「自己紹介させてもらうよ。僕は月島拓也、この学校の生徒会長さ。
 君の事はよく知っている。一番の邪魔者だって……ね」
 その男……月島は、ゆっくりとオボロ達に向かって歩み寄ってくる。
 位置すらも完全に気付かれていた。
 オボロたちの取った行動は……

A 気付かれた以上戦うしかない
B 嫌な予感がする。逃げた方が良い
477名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 02:28:54 ID:IOyGpKqP0
A
478名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 12:52:23 ID:pFRsuZ2Z0
(ちぃっっ!)
(オボロ様、不用意に出ては……!)
 この瞬間、オボロはまるで弾かれたように、月島の前に飛び出していた。
 確かに月島は得たいが知れない。だが、このまま逃げることは出来ない。
 自分達の存在を知られてしまっているのだ、このまま逃げては作戦が失敗する。
 月島が力を出す前に、一瞬で仕留めればいいのだ。
 そう考えての行動だった。だが……。
「……ぐっ!?」
「おやおや、そんなに急に出てこなくてもいいだろう?
 もう少し僕の話を聞いてからでも遅くはないんじゃないか?」
 オボロの体は、月島に攻撃を当てる前に失速し、床に片膝をついていた。
 自分の意に反して、まるで体が動かないのだ。
「貴様……何をした!?」
「この世界には非常に便利な能力があるということさ。
 電波……僕はこの話をするのが大好きでね。まあ、いわゆる自慢話で恐縮なのだが……」
 お決まりの前口上を述べながら、月島が説明を始める。
「君は知らないと思うが、人間の頭なんて所詮は電気信号の集まりなのさ。
 だからそこへ割り込んで命令を送ってやれば、ホラこの通り僕の命令に従うしかなくなる。
 君達の術とはまた違う、科学の超能力といったところかな。はははは……」
「……そうか、傀儡どもはこの能力で」
「そうさ! 僕のこの電波の力で僕の命令だけを聞くロボットにしてやったのさ!
 僕の電波は最強なんだ、その気になれば街一つ操ることだって出来るさ!」
479名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 12:53:25 ID:pFRsuZ2Z0
 オボロは体の自由が利かなくとも、あくまで冷静を努めた。
 こういう状況で熱くなったら拙い。長年の経験がそれを教えていた。
 見たところこの男は話したがりのようだ。
 ラルヴァが憑いているとはいえ、ラルヴァの人格自体は憑いている人間に依存する。
 ならば月島の油断を誘うことも可能だろう。
 オボロが月島の後ろに視線を送ると、その物陰にはイルファが控えていた。
 お互いアイコンタクトだけで意思の疎通を図る。
 月島はイルファの存在を察知してないようなのだ。
 いくら月島でも、生物ではないイルファの電波を察知は出来なかったのだろう。
 そこが逆にチャンスかもしれない。
 イルファならば、月島の電波の影響を受けないかもしれない。
 オボロは知る由もないが、イルファの体は実に高性能だ。
 外部からのノイズで中の命令が狂わないように、それなりの措置は施されているだろうし、
 そもそも機械なのだ。人間や生物とは根本的に違う構造なので、月島の電波が通じない可能性もある。
 オボロは考える。
 自力で月島の呪縛から逃れるか、それともイルファに賭けるか。
 ここが一つの分岐点となりそうだった。

A 月島の注意を逸らすために、挑発を仕掛ける
B 後はイルファに全てを任せる
C 自分の精神力で電波に抗う
480名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 13:30:54 ID:+4nD6cMP0
A
481名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 21:55:30 ID:pFRsuZ2Z0
「……貴様、ラルヴァ憑きか」
「ははは、だからどうしたというのさ。
 この体に別の存在が入っていようが僕は僕さ、違うかい?」
 オボロは月島の注意を引くために、敢えて言葉を交わした。
 今の自分の体はまるで石のように動かない。
 この状況では、イルファに託すしかないのだ。
「よく言う。ラルヴァ如きに打ち負かされるような弱輩者が偉そうな口を叩くな」
「……なんだと?
 生意気だよ、君は。偉そうなのはどっちなんだい。
 君の事はよく知っている。妹をその手にかけた外道……ってね」
「…………ッ!」
「気分はどうだった? ガディム様を滅するために自分の愛する妹に刃を突き立てた気分は!
 それも所詮無駄死にに終わるのが、泣かせる喜劇じゃないか!」
「キサマァッ……!」
「おやおや、声が荒いね。幾らでも吼えるがいいさ。所詮今の君は檻に捕らわれた猛獣。
 力でも、妹を愛する心でも僕に勝てるわけがない。
 ああ瑠璃子、僕はお前を愛してるんだ。僕の言うとおりにするのが一番なのに、なのに何でお前は……」
 まるで陶酔するかのように、月島がうわ言のような言葉を呟き続ける。
 その時オボロはなんとなく直感した。
 コイツは俺のもう一つの可能性の姿である、と。
 妹を溺愛するあまり、その弱さに付込まれラルヴァに心を乗っ取られたのだろう。
 まるでかつての……兄と慕う男に出会う前の自分を見ているようでもあった。
(……もしも、俺が兄者と出会わなかったら、こいつのような末路を辿ったのだろうか)
「お喋りはここまでだ。君には壊れてもらうよ。
 君のその言動、行動……何もかもが僕にとって不愉快だ!」
 月島が声をあげて、電波を溜め始めた。
 来る……オボロがそう感じて身構える。その時だ――――

A 背後からイルファが月島に奇襲を浴びせた
B 突然月島が狼狽し、電波が解けた
C 突如月島が別の方角に注意を向けた。誰か来る……!
482名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 22:01:06 ID:BTYQz3rPO
A
483名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 23:08:00 ID:XGRXnCkX0
 意識が途切れかける直前、月島の背後から滲み出る様にイルファが現れた。
 骨がきしむ音も、心臓の鼓動も血流も無い彼女の隠形は人では成し得ないほど完璧であった。
 奴は彼女の存在に全く気付いていない。完璧な奇襲であった。
 そのまま無言で彼の背後に駆け寄り、後頭部を凄まじい握力で掴むと、そのまま顔を廊下の柱に叩きつけた。
 鼻っ柱と歯が砕ける音が豪快に響き、何が起こったのか理解する間もなく彼は廊下に崩れ落ちた。
 事実、彼の顔は愉悦に顔を歪めたまま、前衛芸術の様に崩れたデッサンで豪快に鮮血で塗りたくられていた。
 彼女の存在に彼は全く気付かなかったわけで無い。
 彼の電波を操る技を持ってすれば、イルファや電子機器の存在を個々に探す事は容易だっただろう。
 しかし、身の回りに電子機器が増え、電波探知の邪魔になるノイズが増えた現代において、
 波長が違う人と電子機器の探知を同時に行なうことは難しい。
 同じレーダーであっても用途によって機種や走査する波長が異なる様に、
 人の探知に専念していた彼にとって、背後から感じていた電波はまさしくノイズであった。
「…殺したのか?」
 月島が気絶して金縛りは解けた。
 オボロはまだ続く頭痛を無視して、イルファに駆け寄る。
「死んでないと思います。 殺すつもりはなかったので」
 彼女はそっけない感じで殺意を否定する。
 しかし、この惨状を見る限り”確実に”意識を奪うつもりでやったのは間違いない。
 死んだら事故くらいには割り切っているのだろうが。
「まぁ、これだけ派手に叩きのめせばラルヴァは確実に剥がれているだろう」
 マトモに相手をすればやっかいな相手であったが、早急に無力化できたのはありがたかった。
「一気に術者の元まで強襲したかったが、恐らく感づかれてるだろう。
 時間が惜しい、行くぞ」
 先んじて学校に侵入した七瀬たちに引き付けられ、現在の校舎内に人影はほとんど無い。
 彼らは一路、生徒会室の術者の元へ急いだ。
484名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 23:09:36 ID:XGRXnCkX0
「あの──珊瑚様は、大丈夫なのでしょうか?」
 散在する傀儡を鎧袖一触で蹴散らし先へ進む中、イルファはオボロに不安げに話しかけた。
 生気の無い傀儡たちや月島の様な危険な人物が存在する今の学校において、
 身の安全を保証された者はいない。
 この状況を目の当たりにして、彼女が主の安否を気にするのは無理もない。
「奴にとってそいつが不利益な存在だと気付いているなら、とっくに殺してる筈さ。
 喋りたがりの月島が何も言及しなかった辺り、まだ捕まって無いか、そこらの傀儡と同じ扱いだろう」
 最高水準の危険領域ではあるが、その中では一番マシ。
 その程度の気休めだがイルファは少しだが不安を和らげた。
 目的地の生徒会室まで後、僅か。その時──

A 由真が襲い掛かってきた
B みさきが襲い掛かってきた
C 術を中断して術者が現れた※(術者を人物指定)
485名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 23:10:16 ID:WbyH2vL80

術者は後の人に譲る
486名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 23:16:43 ID:+4nD6cMP0
みちる
出番×だったから、あえてを出してみようと思うんだ
487名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 23:49:17 ID:pFRsuZ2Z0
 目的の場所、生徒会室の扉がガラリと開いた。
「わっ、オボロが来たのだ!」
「キサマは……!?」
 現れたのは、この場に似つかわしくないとも思える、小さな少女。
 髪は二つに縛ってはいるが、かなりの長髪。
 その少女の姿にイルファは拍子抜けし、オボロは逆に驚愕の表情を見せた。
「……オボロ様、お知り合いですか?」
「裏葉たちの世界で少しな……。なるほど、みちるなら裏葉の結界に干渉できてもおかしくはない」
 オボロはみちるを睨みつけ、刀を構える。
 そこには躊躇も戸惑いも一切ない。
 そしてイルファは、拍子抜けする反面、戸惑ってもいた。
 視覚情報は間違いなく、みちるを小さな女の子と認識している。
 だが、目の前の少女は明らかにおかしい。
 どこか地に足が着いていないような、そんな印象を受ける。
「イルファ、油断するな。ヤツは……人間じゃない」
「……そう、申されますと?」
「裏葉の世界の神、翼人の力で作り出された思念体のようなものだ。
 思念体といっても、実体はあるし、術を行使することも可能だ。
 コイツの場合おそらくは、ガディムが真似て作り出した紛い物だろうがな」
「大正解なのだ!」
 まるで無邪気にみちるは答える。
 所詮は偽物か……みちるの何処か浮いている挙動に、オボロはなんとなくそう思った。
 ……だが、油断はしない。奇襲には失敗だが、作戦自体が失敗したわけではない。
 三人は既に一触即発の状況に入っていた。最初に動いたのは―――

A オボロだった
B イルファだった
C みちるだった
D 傀儡となっている生徒達だった
488名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 23:54:27 ID:BTYQz3rPO
まずはD
489名無しさんだよもん:2007/07/15(日) 00:45:36 ID:SXj4Rh230
 その時だった。
 三人の間を割って入るかのように、別の生徒が雪崩れ込む。
「傀儡どもっ……!?」
「にゃはは、どうする? いくらオボロでもタゼイにブゼイだぞーっ!」
 みちるの指摘は事実その通りだった。
 いくら紛い物とはいえ、みちるは手加減できるような相手じゃない。
 それに加えて、雑魚とはいえ力のリミッターが外れた生徒達が向かってくるのだ。
 いかにオボロが達人級の技量を持っているとはいえ、状況が悪すぎる。
「……イルファ、援護しろ。俺に連中を近づけさせるな」
「分かりました」
 オボロが前面のみちるに剣を構え、
 背中合わせにイルファが後方の生徒達に拳を構える。
「勝てる見込みはあると思うか?」
「……分かりません。
 ですが、私個人は多対一の戦闘は経験もなければ得意でもないということを予めお断りしておきます」
 厳しい。
 二人ではあまりにも厳しい。
 オボロもイルファも、正直に言って生きた心地がしていなかった。
 敵がイルファの数メートル前まで迫る。
 イルファはジッと傀儡の生徒達を睨みつけ、迎撃の姿勢を取った。
 だが、その時だった。
 傀儡の生徒は、イルファたちを目前にして、びくんと震え……床に倒れる。
「にょわっ!?」
 みちるが驚きの声をあげるが、傀儡の生徒達はまた一人、
 また一人と……まるで電池の切れたオモチャのように動かなくなっていった。
490名無しさんだよもん:2007/07/15(日) 00:46:17 ID:SXj4Rh230

 一方その頃――――

「……裏葉さん、あれ!」
「あれは……!!」
 オボロたちと合流すべく、ひとまず生徒会室を目指していた七瀬と裏葉であったが、
 廊下に人が倒れているのに気付いて、足を止めた。
 それは先ほどオボロたちと戦っていた月島なのだが、二人には知る由もない。
「……酷い怪我ね」
「ご油断なさらぬように。傀儡を操る不穏な気は、この者から感じられます」
 七瀬はその言葉に唾をのみつつ、慎重に月島の様子を観察した。
 完全に気は失っている。
 廊下の柱に顔を思い切り叩きつけられたのだろう、顔はヒドイことになっていた。
 おそらく命に別状はないとは思うが、このまま放っておいて無事とも思えない。
「オボロさんかイルファさんか知らないけれど……やりすぎじゃないかしら」
「おそらく、加減をする余裕もなかったのでございましょう」
「この人って……ラルヴァに憑かれてたのかな」
「十中八九は。これほどの衝撃を与えれば、ラルヴァも離れましょうが。
 ですがこの者も弱っています。傀儡を操る気も、弱まっていくのを感じます」
 裏葉が淡々と説明する。
 七瀬は心中穏やかではなかった。
 ラルヴァにとり憑かれていたのなら、この人も被害者なのではないか。
 悪いのはラルヴァであって、この人ではないのに、この人を見捨てていいのか……と。

A 今は先を急ぐべきだ
B 月島をこのまま放ってはおけない
C その時月島が意識を取り戻した
491名無しさんだよもん:2007/07/15(日) 00:49:21 ID:XKalYri4O
ぬぅ、悩む……スルーで;
492名無しさんだよもん:2007/07/15(日) 01:08:46 ID:wC1YgMfG0
A
493名無しさんだよもん:2007/07/15(日) 01:49:08 ID:SXj4Rh230
「……七瀬様、先を急ぎましょう。ここで時間を取られるわけには参りませぬ」
「で、でも……」
 七瀬が遠慮がちに月島を覗き見た。
 顔の傷が少々痛々しい。このまま放っておくのは、人として間違っている気もする。
「……その者のことなら、心配は要りませぬ」
 裏葉は右手ですっと月島の顔を撫でた。
 それから七瀬に向き直り、先を促す。
 裏葉が先を歩き出したので、七瀬も月島のことは置いておいて、慌てて後に続いた。
「何をしたの?」
「方術・生の癒しにございます。意識を取り戻す頃には、傷も癒えてましょう」
「便利ね……方術って」
「そうでもありませんよ。この力も……ガディムには何処まで通じるかどうか。
 それに利便性ならば、科学のほうがよほど優れております」
「そうかしら……」
 言われてみれば、使える人が限られる方術よりも、 
 より沢山の人が使える科学技術の機械の方が便利と言えば便利かもしれない。
 その分、方術の方が強力にも見えるが。
 とにかく、今はオボロたちと合流することが先決だろう。
 ガディムに憑かれたみさきや、ラルヴァに憑かれた人間に出くわさなければいいのだが。

A 生徒会室の前で、みちると睨みあっているオボロ達を発見した
B 川名さんが行く手を阻んできた
C その時、特別教室から物音がしたのに気付いた
494名無しさんだよもん:2007/07/15(日) 01:59:39 ID:fwLX+/mpO
c
495名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 00:17:38 ID:4uZ7gWyl0
「……七瀬様」
「どうしたの、裏葉さん」
「その部屋より……物音が聞こえました」
「ここって……」
 裏葉が立ち止まり、一つの教室を指差した。
 そこにあったのは……コンピュータ室。言わずと知れた、珊瑚の部屋のような場所だ。
 ここで物音がしたというのだ、何か作為めいたものを感じて仕方なかった。
「七瀬様、こんぴゅーた室というのは……?」
「パソコンが置いてある部屋よ」
「ぱそこん……?」
 流石に裏葉ではパソコンを理解するのは酷というものだろう。
 このとき七瀬は世界の違いというのを思い知らされた気がした。
「とにかく、ここで物音がしたのね?」
「はい。私の気のせいかもしれませぬが……」
「臭うわね。ここは珊瑚ちゃんがよく使ってる場所らしいし、
 もしかしたら彼女と何か関係があるかもしれない。だけど……罠かもしれない」

A 入って調べてみる
B どうも嫌な予感がする……
C その時、扉がガラリと開いた
496名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 00:26:22 ID:adWdMYb20
A
497名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 01:00:57 ID:quKjJ+Zm0
 私は中に入って調べてみる事にした。
 オボロさんたちとの合流が優先だが、万が一ガディムの手の者だったとしたら背後を突かれる。
 ガディムだったらバンダナが遠くからでも反応するが、眷属かラルヴァ憑きならば近づいて確認せざるをえない。
 現在、バンダナの反応は無い。つまり、危険ではあるがババを引く可能性は皆無だ。
 諸々のリスクを勘定して、私は部屋の探索をする事にした。
 こう言う怪しい場合は軍隊の特殊部隊とかだったら問答無用で鉛弾や手榴弾をぶち込むらしい。
 もっとも、人探しが目的でもある私にそんな真似は出来ないけど。
 扉を開けようとしたが案の定、鍵が掛かってる。
 だが、学校全体の電気は生きているので、電子ロックは生きているはずだ。
「ドアは…電子ロックが掛かってる。 学生証で開くはずだけど…」
 私は財布から学生証を取り出し、扉の傍のカードリーダーに通す。
 中から敵が出てこないか警戒し、裏葉さんが身構える。
 微かな電子音と共に施錠が解除され、扉が開く。
「札一枚が鍵の代わりになるとは…これが科学ですか」
 現代に割と順応してる裏葉さんもびっくりしているようだ。
 これでパソコンに触らせたら引っくり返るんじゃないだろうか。
 慎重に中に入ると、人はおらずパソコンの温度管理の為の単調な空調の音が響いているだけだった。
「人が隠れてそうな場所は…あの辺りかな?」
 辺りを見回すと人が隠れれそうな場所がいくつかあった。
 掃除道具入れ、教師用の大きな机、それと奥の準備室。
「さて、どこを探しましょうか?」

A 掃除道具入れ
B 教師用の大きな机
C 準備室
498名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 01:13:46 ID:8Cr9mkWm0
C
499名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 16:09:57 ID:wwVK+DVpO

「…奥を調べてみましょう」
「解りました」

 あたしは奥の準備室に向かう事にした。
 普通に考えればここが一番怪しいし、物音の原因が教卓や掃除用具入れに何かあるなら、
 少なからずその周囲に、何らかの痕跡があると思ったからだ。
「…奥を調べてみましょう」
「解りました」

 あたしは奥の準備室に向かう事にした。
 普通に考えればここが一番怪しいし、物音の原因が教卓や掃除用具入れに何かあるなら、
 少なからずその周囲に、何らかの痕跡があると思ったからだ。
 とは言え、一応油断はできない。
 準備室の扉に辿り着くまでは、常に周囲に気を配りながら移動する。

「…やはり、扉の向こうから、人の気配がします」
「そう…」

 準備室の扉はこの部屋と違い、廊下と直結していない為、電子ロックはかかっていない、ただの引き戸だ。
 扉の前まで着いたあたしは、右手に刀を構え、空いた左手で慎重に扉を開けた。
 するとそこにいたのは──


A:縛られて猿轡を噛まされた女生徒だった。
  聞いていた特徴と一致する。彼女が姫百合珊瑚ちゃんだろう。
B:縛られて猿轡を噛まされた女生徒だった。
  確か、折原の知り合いの…深山先輩?
C:ぴくりとも動かず倒れている、傀儡らしき生徒達だった。
D:……こちらを見て不気味に微笑む生徒だった(AIR以外の生徒キャラ指定)。

※選択肢は複数選択可。
500名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 16:11:32 ID:wwVK+DVpO
うぉ、ミスったorz
脳内で頭の数行を削除してください…。
501名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 16:13:09 ID:4uZ7gWyl0
Aだけで
502名無しさんだよもん:2007/07/17(火) 22:18:48 ID:/Kt2Gc/Q0
 そこにいたのは、縛られて猿轡を噛まされた女生徒だった。
 予め聞いていた特徴と瓜二つ、彼女が姫百合珊瑚ちゃんだろう。
 ここで実は双子の妹とすりかわってたなんてオチはない……ハズだ。
 見たところ、主だった外傷はない。どうやらひどい目には遭わされてないみたいだ。
 まあガディムの目的を考えれば当然かもしれない。
 世界を滅ぼす前に、女の子一人どうこうしたところで何の意味もないのだろうから。
 見張りの生徒は近くに倒れたままだ、おそらくは傀儡の術が解けたからであろう。
 オボロさん達が早めにあの人を倒してくれて、正直助かった。
 いくら傀儡とはいえ、大勢の敵が校舎をウロウロしていたら、やりにくいことこの上ない。
「なんと酷い仕打ち……まだ年端も行かぬ少女にこのような……」
 裏葉さんが嘆きながら、珊瑚ちゃんの縄を解く。
 いや、年端も行かないといっても、あたしと一つしか違わないんだけど……まあいいか。
 するするという衣擦れの音がし、まず珊瑚ちゃんの猿轡が解かれる。
「あなた、珊瑚ちゃんよね? 安心して、あたし達はあなたを助けに来たのよ」
 あたしが言葉をかけても、まだ珊瑚ちゃんは呆然としていた。
 まだよく事態を飲み込めていないようだ。だが、直に……

A 宇宙的挨拶をしながら大きく万歳をした
B 突然あたしに抱きついてきた。なっ、何よ……!?
C バンダナから嫌な共鳴音がした。……まさか!?
503名無しさんだよもん:2007/07/17(火) 22:21:09 ID:YR7o0K2jO
A
504名無しさんだよもん:2007/07/17(火) 22:30:47 ID:/Kt2Gc/Q0
「……るー!」
「えっ?」
 突然珊瑚ちゃんは謎の奇声を上げ、両手を大きく挙げて万歳の体勢をとった。
 これには流石にあたしも裏葉さんも面食らってしまう。
 一種の儀式なのだろうか。何だかよく分からないけど、表情から喜んでることは分かる。
「おおきになー。ウチ、ずっとこのままかもしれへん思うてたわー」
「い、いえ、それほどでも……」
 不思議なテンションの子だと思った。
 次には何事もなかったかのように、関西弁だけれど普通に対応してくるから、
 こちらとしてもどう返事していいのか非常に悩む。
「ほな、帰ろっかー。昨日からこのままやから、
 きっと瑠璃ちゃんもいっちゃんも貴明も心配してるで」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 今外は危ないのよ!!」
「危ない? どうしてや?」
「それは、ちょっと説明すると長くなると言うか、なんというか……」
 なんなんだろうこの子。恐ろしいぐらいにマイペース。
 こっちの話は聞いてくれるんだけれど、なんというか、その……。
 気付いたら、あっちのペースにどんどん引きずり込まれているというのだろうか。
 とにかく、あたしがまず珊瑚ちゃんに言いたいことは……

A お互いの自己紹介
B 今の珊瑚ちゃんの状況について
C イルファさんが探しにきてるということ
D ぶっちゃけ「るー」って何?
505名無しさんだよもん:2007/07/17(火) 22:31:54 ID:Y3vp0KA10
まずはA
506名無しさんだよもん:2007/07/17(火) 22:53:51 ID:/Kt2Gc/Q0
「ええと、まず自己紹介するわね。あたしは七瀬留美、それでこっちが……」
「裏葉にございます」
 とりあえず、相手のペースに呑まれないよう、
 まずはお互いの自己紹介から始めることにした。
 このまま珊瑚ちゃんに合わせていたら、こっちが先に参ってしまう。
「ウチは姫百合珊瑚いうんよー」
 珊瑚ちゃんは、この状況でものほほんとした態度を崩さない。
 ……この子、間違いなく将来大物になると思うわ。
 いえ、今の経歴考えればとっくに大物になってるんだろうけど。
「珊瑚ちゃんは、どうしてここで縛られてたの?」
「ウチもよくわからへんよ。昨日、ここでパソコンいじってたら、
 急にぶわってなって、ゴンっていって、それから気がついたら縛られてて……」
 まったくもって分からない説明だった。
 辛うじて、昨日のうちに誰かに襲われたというのだけは分かる。
 まあ、彼女を襲う相手なんてもう決まりきっているものだから、いちいち聞くまでもなかったことだが。
 ただ疑問は、何で彼女を捕まえてたかである。
 この様子から見て、珊瑚ちゃんにはラルヴァも憑くことが出来なかったと言うのは分かる。
 闇の力を好むラルヴァだ、そういったものとは全く無縁そうな珊瑚ちゃんに憑けないのはなんとか納得できる。
 だが……ならば何故わざわざ珊瑚ちゃんを捕まえた?
 見張りだって面倒だろうから、殺したり傀儡にしたりと他にやりようがあったはずだ。
 敢えてそれをしないとすれば……

A 相手も珊瑚ちゃんの力を必要としていた
B ガディムには珊瑚ちゃんを殺すことの出来ない理由がある
C 人質として、珊瑚ちゃんに関係のある人物を学校におびき出すのが目的?
D 実はさっきの月島がロリコンで個人的趣味として珊瑚ちゃんを監禁したに過ぎなかった
507名無しさんだよもん:2007/07/17(火) 23:03:01 ID:tIwmvqYO0
B
508名無しさんだよもん:2007/07/17(火) 23:44:52 ID:/Kt2Gc/Q0
 ガディムには何か、珊瑚ちゃんを殺すことの出来ない理由があるんじゃないだろうか。
 その理由が何かはあたしが知るわけはない。だけど、そう考えるのが自然な気がした。
 いや、そう考えないと、珊瑚ちゃんがこうやって人質のように扱われていることの説明がつかない。
 とにかく今の状況で、この件については結論を出せる状態ではないだろう。
「そんで、外はどないなっとるん? 危ないのはなんでや?」
「ああ、それは……」

 あたし達の説明を珊瑚ちゃんは黙って聞いていてくれた。
 理系の子みたいだから、そういった非科学的な事件について拒絶反応を起こすかとも思ったけど、
 どうやら柔軟な頭の持ち主らしく、すんなりと状況を正しく理解してくれる。
「……というわけでございます。
 つまり珊瑚様の世界は、ガディムと言う妖に侵略されているのです」
「ガディム……」
「理不尽なのは百も承知よ。
 だけどあたし達に残された道は二つ。あいつと戦うか、この世界と心中するか」
 自分でも言ってて無茶苦茶だとは思った。
 今まで普通に生きてきた女の子が、突然そんなこと言われたって困るだろう。
 だけど珊瑚ちゃんの科学力は必要なのだ。
 打算的な物言いになってしまうけれど、助けたのはそれが理由の一つでもある。
「なんや、ゲームみたいでワクワクしてきたわー」
「げ、ゲーム?」
「せや。ガディム言うのは悪の魔王で、留美ちゃんらは魔王と戦う勇者みたいなもんやろ?」
 い、言ってしまえばそうかもしれない。
 天才のというのは、やはり考え方がどこかズレてるのだろうか。
 まさか、本当に世界の危機なのに、ゲーム感覚で物事を捉えられるとは思いもしなかった。
「そういうわけで、あたし達に協力して欲しいんだけど……」
 珊瑚ちゃんの様子は……

A 「ウチも協力するで」と、大乗り気のようだった
B 「ウチの作った道具、ぎょうさん持ってってやー」どうやら、一緒についていくまではしないみたい
C 「頼ってくれたのに悪いんやけど、今のウチじゃ力になれそうにないわ……」とショボンとしていた
509名無しさんだよもん:2007/07/17(火) 23:54:41 ID:Kaf65G3s0
510名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 04:12:32 ID:g6RfWz+w0
「ウチも協力するで」
 笑顔でそう答えた珊瑚ちゃんは大乗り気のようだった。
 ありがたいが、危険なことには変わりない。
 事実、珊瑚ちゃんはこの部屋に監禁されていたのだ。
「確かに助かるけど、現実はゲームとは違うのよ?」
「でも、留美ちゃんたちは戦うんやろ?
 誰かがやらな、あかんねん。
 乗りかかった舟や、ウチも知らん顔はできへんよ」
 どうやら、のほほんとしてるいるようで決意は固いようだ。
 今度は裏葉さんが珊瑚ちゃんに質問した。
「ところで、珊瑚様は科学と魔法に関する研究の
 お手伝いをされていたと、お聞きしましたが?」
 これには、あたしも興味がある。
 あたし達が珊瑚ちゃんを探してたのもこのためだし、
 ガディムが珊瑚ちゃんに危害を加えられなかったのも、
 もしかしたら、このためかもしれない。
「長瀬のおっちゃんが研究しとった『アレ』の事やな。
 そういえば、アレの試作品を学校に持ってきとったな」
「それで、その『アレ』って一体何なの?」

A 伝説の聖剣「フィルスソード」のレプリカや
B 霊体を固定できる「キルリアン振動機」や
C ガストラ帝国の魔導兵器「まどうアーマー」や
511名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 04:57:09 ID:lm5ysBRt0
512名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 19:56:19 ID:thgB/0EL0
「これや、これ!」
 珊瑚ちゃんは得意げに、準備室の片隅にあった妙なモノを指差した。
 一応二本足がついていて、乗り物のようには見える。
 だけどどう使うのか全く分からない、正に妙なモノとしか形容のしようがない代物だった。
「これ、何……?」
「おっちゃんとゲームしてて思いついたまどうアーマーや。
 魔導の力使うて、長時間活動できるようにしとる画期的な代物やで。
 来栖川には魔法関係で協力してくれる人がおるさかい、実現できたわけや」
 ま、まどうアーマー……。
 そういえば昔そんなモノが出てくるゲームをやったことがあったような。
 どうやら、マッドサイエンティストというのは、つくづく妙なものを開発するのが好きらしい。
「あのゲームはええでー。
 今度は乗り物も作ったろ思てるんや、きっと便利や」
 あのゲームの飛空艇って壊れてばかりでどちらかといえば不吉じゃない。
 まあそれはそれとして置いといて、とにかくまどうアーマーの性能が気になる。
「これって使えるの?」
「使えへんかったら意味ないやん。もちろん、ちゃんと使えるで。
 デジョネーターとかは使えへんけど、まどうレーザーは搭載しとる。
 せやけど、試作段階やから大した動きは出来へんのが問題やなー。
 操作性も悪いし、最高速も30キロがええとこやで。しかもこれ一台きりや」
 悪くはないけど、微妙ね……。
 使おうと思えば使えるのだろうけど、ガディム相手に通じるかは不安が残る。
 これは武器というより、どちらかといえば乗り物として使ったほうがいいみたいだし。
 それに開けた場所でないと、この機械は使い勝手が悪いであろう。
 教室や廊下といった、狭い場所では不利になる可能性もある。

A ……まあ、ないよりはマシだろう
B 搭載武器だけをひっぺがして持ってったほうが小回りが利くかな
C 人を傷つけずに、直接ガディムを攻撃出来るような武器がないか聞いてみる
513名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 20:34:47 ID:LTLb9GzFO
基本乗り物で武器は個々人が持つのがいいんじゃないかと思いつつb
514名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 20:35:08 ID:Nm9JAo+r0
とりあえずはAで
515名無しさんだよもん:2007/07/19(木) 03:25:46 ID:mqjH1LcN0
 確かにまどうアーマーは使いようによっては便利かもしれない。
 だけどよく考えて欲しい。
 これからの戦いは室内戦が主なのだ、小回りの効く武器の方が便利である。
 それに、このまどうアーマーは横幅がありすぎる。
 廊下で敵と鉢合わせした時に、満足には動けないだろう。
 大体このアーマーが階段を上り下りできるかも怪しい。
 そう考えれば、流石にこのアーマーを使うのは憚られた。
「珊瑚ちゃん。まどうアーマーの武器だけひっぺがせないかしら?」
「えぇー? なんでや、なんでアーマーに乗ってかへんの?」
「目立ちすぎるのよ。これじゃいい的だわ」
 あたしはなるべくソフトに言った。
 変にヘソを曲げられても困るし、流石に本音は言えない。
 珊瑚ちゃんは渋々といった感じで頷き、ドライバーでまどうアーマーの分解を始める。
 その流れるようなテキパキとした作業に、思わず感心してしまう。
 見た感じはこうでも、やはり機械系に強い天才少女なんだなあ、と。
「……これでええん?」
 程なくして、珊瑚ちゃんが光線銃っぽいのを見せる。
 エネルギーが入ってると思われる箱は人が背負えるように出来ているみたいだし、
 これなら人が持ち運び出来そうなので、文句はない。
「ここでファイアビーム、ブリザービーム、サンダービームの切り替え。
 こっちでまどうレーザーを撃つんや。ヒールフォースは研究中さかい、実装はまだしてへん」
 拘ってるわね。技名までアレと同じにしなくてもいいのに。
 異世界出身の裏葉さんなど、話についてけなくてポカンとしたままだ。
 いや、こっちの世界出身のあたしだって、このノリはちょっとついてけない。
 それで……これは誰が持つべきなのかしら?

A あたしが持った方がいいかな
B これは珊瑚ちゃんに任せるべきね
C 原作では使い手の魔力に比例する武器だったし裏葉さんで
516名無しさんだよもん:2007/07/19(木) 04:27:48 ID:eJti8O640
B 戦闘力からすると珊瑚が順当かな
517名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 03:16:06 ID:iu9ltb8U0
 これの機能の熟知具合から見て珊瑚ちゃんに任せるべきね。
 私は銃の扱いなんてやった事ないし、裏葉さんは方術があるから不要でしょう。
 そして何より全くの自衛手段を持たない戦力外を抱えて戦うのはきつい。
 威力がゲーム準拠なら自衛の域を超えてるけど。
「ところでそれってどれくらいの威力があるの?」
 流石に死体の山を築いたり、辺りの物を破壊するのは憚れる。
 過剰な威力ならガディム本人か眷属とかヤバイのが来るまで後ろで控えてもらおう。
「んー、ジェネレーター直結なら壁に風穴開けるくらいはいけるんやけどなぁ。
 バッテリーで人が撃てるくらいまで出力絞るとライフルくらいが関の山やな。
 もちろん、手加減してブリザービームで凍らせたり、サンダービームで気絶して貰うのもアリやで。
 最近は色々とうるさいでなぁ。
 兵器にも”じんどーてきはいりょ”っちゅーもんがあった方が市場があるんや」
「はぁ、それは便利そうで」
 頼みもしないのに光線銃の説明を続ける珊瑚ちゃん。
 裏葉さんは最早、理解不能な言語に適当に相槌を打つだけだ。
 工学系ヲタは他人が理解出来なかろうがスペック説明に走るって言うけどその通りみたいね。
 しかも、この超兵器ぶり。米の国の人が目を付けたら攫われるわよ。
 とは言えこの調子なら対ガディム用の兵器も期待できそうね。
「時間食っちゃったし、そろそろオボロさんたちと合流しないと」
 準備が整った所で、私は先を急ぐように皆を促がす。
 珊瑚ちゃんの救出やまどうアーマーの分解で大分、時間を食ってしまってる。
 術者の能力次第ではどうなってるか分からないし、何よりガディム本体がやってきたら危険だ。
 さっさと術者を倒しておさらばするのが妥当だろう。
 私たちは生徒会室へと急いだ。

A バンダナに反応が。しかもこれは…ガディム?
B その頃のオボロたちは?
C その頃、お留守番の透子は?
518名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 03:30:54 ID:+Sh5WZRs0
C
519名無しさんだよもん:2007/07/24(火) 23:51:15 ID:I3nQxuIF0
「みんな……大丈夫かなぁ……」
はぁ。
今日何度目になるかも分からない、重い溜息をついてしまいます。
え、えっと。お久しぶりです。
栗原透子です。
七瀬さんや裏葉さん達を見送った後、あたしは家でお留守番をしている。
七瀬さん達はとても心配だったし、ついて行きたくもあったんだけど……
私ではどうしても、みんなの足手まといになっちゃう。
何もしないのは嫌だけど、足を引っ張るのはもっと嫌。
だから大人しくお留守番。
だけど――だけど――。
「怪我とかしてなきゃいいんだけどなぁ……」
やっぱり心配で心配で仕方がないよ。
だって七瀬さん達が戦おうとしてる相手って、よく分からないけどとっても強くて怖いバケモノなんだよね。
オボロさんも裏葉さんもきっと強いと思うけど……
「七瀬さん達だけで本当に大丈夫かなぁ」
私も、なにか自分に出来ることとかを探すべきなのかもしれないけど……


A やっぱり心配だし、学校の近くまで様子を見に行く
B そうだ、みんなが帰ってきたときのために夕ご飯を作っておこう
C 「ピンポーン」その時、玄関のチャイムが鳴った。誰だろう?
520名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 00:32:42 ID:WOt1SIxkO
C
521名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 23:08:28 ID:ZWloE6vc0
「ピンポーン」
 色々と考え込んでいると、不意に玄関からチャイムの音がした。
 こんな時に誰だろう?
 もしかして裏葉さん達がもう悪いバケモノを倒して帰ってきたとか!
 ……でも、それなら携帯電話とかで連絡が先にありそうだよね。
 じゃああのチャイムは裏葉さん達とは考えにくい。
 だったら……一体誰なんだろう。
 全然自慢にはならないけど、私はお友達が少ない。
 私の家に来てくれる友達なんて、幼馴染みのしーちゃんぐらいだ。
 でもそのしーちゃんも、多分まだ学校に居るはず……・
「ピンポーン、ピンポーン」
 そんな事を考えている間にも、チャイムは鳴り続ける。
 いつもなら特に何も考えずに返事をして玄関に出ちゃう。
 で、でも。今はそういうのってとっても不用心な気がするよ――
「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン」
 チャイムは未だに、規則的な感覚で鳴り続けている。
 あうう、どうしよう、どうしたらいいの?


A なんか危険そうだし、居留守を使う
B そこまで心配になることもないかな、出てみよう
C 用心にこしたことはない、インターホンで相手が誰か確かめる
522名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 23:31:32 ID:jtarMVPD0
C
523名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 13:49:19 ID:M6HPcg8b0
 どうしよう。いきなり玄関に出るのって怖いよ。
 あ、そうだ。
 ふと思い出した私は、リビングに置いてあるインターホン用の受話器を取った。
 機械って苦手だからいつもは使わないけど、今日は別だよ。
 それに苦手は苦手だけど、最近は携帯電話とか持ち出したからちょっとは馴れてるつもり。
「は、はい。栗原ですけど、どちら様でしょうか?」
 私はそんなことを考えながら、少しどもりながらだけど声を掛けてみた。
 一体誰なんだろう、こんな時に。
 ちょっとの間をおいて、チャイムを鳴らしていた人が返事をしてきた。
 その声は――


A 「透子様ですか。私です、裏葉です」あれ? 裏葉さんの声だ?
B 「こんにちは、栗原さん」え……この声って川名さん……?
C 「こんにちはー、宅配便でーす!」なんだ、宅配便の人だったよ。
D その他人物を指定してください
524名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 13:56:24 ID:ZB6DvIk90
D フィール
525名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 17:48:21 ID:tZKBXf0w0
フィールって誰?
526名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 20:02:37 ID:ZB6DvIk90
THRに出てくるロボ


…もしかして名前間違ってる?
527名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 20:21:09 ID:ZymPtX330
>>526
おk、把握した。
それで正解。
528名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 21:07:55 ID:qmLce4a10
もうちょっとみんな知ってる名前出せよ

とは思った、人物指定でマイナーキャラ出してくるアホがこれまで何度停滞の原因になったことか
529名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 21:50:01 ID:ZB6DvIk90
申し訳ないことをした、なんかLeafの過去作にも出てると聞いてたから
てっきりみんなの方が俺以上に知ってるもんだと…orz

こういう時に選択を募ってリコールすべきなのか…というわけで、もし不当なら無視で構いません。

A >>523の選択からやり直す
B >>524の人物指定からやり直す
C このまま続行
D もっといい方法がある(処理を指定)
530名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 22:19:27 ID:ZymPtX330
C
とりあえずやってみるよ。
531名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 06:58:40 ID:icGR7N4v0
「……こんにちは、HMX-11・フィールと申します。お話があって参りました」
 インターホンから聞こえたのは、女性の声だった。
 HMX……ってことはメイドロボ、かな?
「あ、あの、お話って一体どういう…」
「はい、この世界に大きな危害を与える存在……あなたたちが『ガディム』と呼ぶ存在についてです」
 ……! この人、ガディムのこと知ってるの!?
「とても重要なお話なんです、状況が状況だけに警戒している気持ちも分かりますが、
 せめて、インターホンごしでも構いませんのでお話だけでも聞いていただけませんでしょうか」
 何だか押し売りのセールスレディみたいなことを言っているけど、もしこの人の言う事が本当なら……
「お気遣いなら心配いりません。メイドロボは長時間の立ち話にも問題なく対応できますので」
 いや……それはそうかも知れないけど、話を聞く側としてはとても悪い気がするし、
 何よりも世界の危機とか得体の知れないバケモノの話を外で話してるのを、もし近所の人に聴かれたら
 変に思われるんじゃ…かといって家に上げるのも怖いし、どうしたらいいんだろう……

A 立ち話もなんだからとりあえずドアを空けて家にあげる
B やっぱり怖いのでそのまま扉の前で
532名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 07:27:24 ID:Tdrea8kX0
A
533名無しさんだよもん:2007/07/31(火) 01:50:10 ID:l1hoismr0
「あの……どうぞ、上がってください」
 恐る恐る入り口のドアを開ける……。
 本当はすごく怖いけど、でもこのまま外でって訳にもいかないと思ったから。

 ドアを開けた先には、私とそれほど年齢が違わなそうな、ごく普通の女性が立っている。
 ただひとつ普通と違うのは、メイドロボ特有の耳カバーをつけているところだった。
 といっても、この前のイルファさんとはまた一風変わった雰囲気だった。
 何かに操られているとか、悪い人には見えなかったので、ちょっとだけ安心した。
 私はフィールさんをリビングに迎え、そこで話の続きを聞く事にした。

「……改めて自己紹介を、私は来栖川エレクトロニクスのメイドロボ、HMX-11・フィールと申します。」
「あっ、えっと……栗原透子と言います。改めてよろしく…」
 まずはお互い、改めて挨拶をする。
「他の方々は現在留守のようですね……本来なら裏葉様やオボロ様とも直接お伺いしたいと思っていたのですが……」
 どうやら、オボロさん達の事も知っているようだった。
534名無しさんだよもん:2007/07/31(火) 01:56:00 ID:l1hoismr0
「それで、話というのは?」
「はい。まず、数年前に来栖川グループ内部で、ある予測結果が出たところまで話が遡ります……その予測と いうのが『近い将来、85%以上の確率で地球上に根源的破滅招来体が発生する』というものだったんです」
「根源的破滅…えっと、何ですかそれは?」
「平たく言うと『問答無用で世界を滅ぼそうとする存在』のことです。そしてその招来体こそが、
 あなたたちが戦っているガディムという存在に、ほぼ間違いないありません。根源的破滅招来体が出現
 した時、それに対抗しようとする方々の力になるというのが私の役目です。といっても、こうして情報を
 伝えるくらいしかできませんが……」
 信じられない、ガディムみたいな現実離れしたものが現れる事を前から予測していた人がいたなんて……
「その予測を発表した研究員は、招来体の存在に何らかの方法で気づき、その性質や能力などについても
 ある程度把握することに成功し、この発表をするに至ったそうです。内容が内容だけに、話を聞いた方々の
 声は半信半疑がほとんどで、その時点では有効な対処法も特になかったため、その場で具体的な対策を
 とるまでには至りませんでした。」
「それで……結局どうすることもできなかったんですか?」
「いいえ、その研究員は、対根源的破滅招来体プロジェクトを立ち上げたいと何度も上層部に掛け合いました。
 しかし、本当に来るかどうか、防げるかどうかも曖昧な存在に対する投資は、当然反対も多いため本来なら
 まず承諾されることはありません。そこで、利潤の追求を兼ね、『家庭用製品の開発の名目で対招来体用
 兵器を研究する』という内容にすることで、双方が納得してプロジェクトを発足することができました。
 そしてその家庭用製品というのが、私たちメイドロボなんです。」
535名無しさんだよもん:2007/07/31(火) 01:57:39 ID:l1hoismr0
「そうなんですか……って、ちょ、ちょっと待ってください!? ガディムと戦うのとメイドロボと一体
 どんな関係が?」
 いきなり話がよくわからなくなってきた。もっと詳しく聞いてみないと。
「兵器といっても、ミサイルや爆弾などとは全く違うものです。物理的な攻撃で倒せないことは当時から
 分かってましたから。従来とは異なるアプローチでの攻略手段が、メイドロボの運用を通して現在まで
 研究されている最中なんです。その手段というのは……」

A 人間の心を模したD・I・Aのシステムにわざととり憑かせる封印作戦
B メイドロボ達が協力して固有結界を発生させ無力化させる『メイド・イン・ヘブン』
C メイドの気高きご奉仕魂を人々に思い出させ、他者に精神を乗っ取られない心の強さを奮い起こさせる防衛策
536名無しさんだよもん:2007/07/31(火) 01:58:15 ID:akf8WdKjO
B
537名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 11:06:33 ID:I0Lhd60n0
 『メイド・イン・ヘブン』……
 フィールさんの口から語られたその聞きなれない単語、私には意味が全然分からなかった。
「あの、『メイド・イン・ヘブン』って……?」
「メイドたちが力をあわせて発動させる事ができるといわれている固有結界です。古来より、メイドには
 不可思議な魅力があるといわれ、何か呪詛的なものが作用しているのではないかと考える学者が各界から
 注目しているそうです。今から約25年前、ある機関の研究員が発表した論文によると、ある条件下で
 現実世界とは隔離された特殊な空間が一時的に発生し、その中では自然界のあらゆる法則が無効化される
 とのことです。その現象を固有結界と呼び、さらにその発動には、メイドの存在が大きく関係している
 そうです。固有結界の中でもメイドをキーとして発動するものは『メイド・イン・ヘブン』と
 名づけられました」
 そもそもどうしてメイドにそんな力が……という私の疑問をよそに、フィールさんはさらに話を続ける。
「先に話した来栖川の研究員はその論文に目をつけ、固有結界を人工的に発生させる方法で根源的破滅招来体
 ……つまりガディムに対処しようと考えました。うまくいけば、結界内でガディムを無力化できるかも
 知れない、ただ、現在仕事に従事しているメイドの方々を呼んで協力してもらうという方法は人事的な
 観点で無理があります。そこで、彼は私たちメイドロボの開発プロジェクトを立ち上げ、すぐに召集できる
 メイドを社内で確保出来るようにすることを目指しました」
「メイドロボの開発にそんな裏話があったんですか……」
「ただ、そんな結界が本当に発生するのか分かりませんし、もし発生しても、それがガディムに有効な手段か
 どうかもまだわかりません。それに、この固有結界の発生に重要な要素は『主に尽くす奉仕の精神』と
 いわれているのですが、残念ながら現在出回っているメイドロボの量産型には自我の概念が乏しいため、
 充分な精神を持つメイドロボがほとんど確保できない状況です。こんな状況なので、メイドロボを利用した
 固有結界発生実験はまだ一度も成功しておらず、現在も様々なアプローチで、適性のあるメイドロボの
 試験開発が行われています」
 先行き不安な言葉に、私も何だか不安になってきた。
538名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 11:07:28 ID:I0Lhd60n0
「あれ?でもイルファさんというメイドロボに会ったんですけど、あの人は普通の人間のメイドさんと
 変わらないような……」
「イルファさんをご存知なのですか?彼女とその姉妹機は最新式の試作機で、DIAという独自のシステムを
 搭載しているんです……恐らく彼女は、『メイド・イン・ヘブン』の実現において、もっとも重要な鍵の
 一人となるでしょう」
 イルファさんが!? そんな重要な人物だったなんて知らなかった。
「お願いします。あなた方もイルファさんに協力してもらうよう呼びかけてもらえませんでしょうか?
 来栖川のメイドロボなら、快く了承してくれるはずです。彼女だけでなく、他のメイドロボ、もしくは
 人間のメイドさんにも……ガディムが現れてしまった以上、今は少しでも多くのメイドが必要なんです。
 来栖川エレクトロニクスとしても、まだ試験段階ですが一刻も早く固有結界の準備を始めています。
 その時までに、出来るだけ万全な体制で望めるようにしたいんです」
「わ、わかりました、みんなにもすぐに伝えます」

A 「では、私は結界の準備がありますので」フィールさんはひとまず帰っていきました
B 他の人の視点で(指定)
539名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 11:58:44 ID:xA9JJclTO
b で七瀬
540名無しさんだよもん:2007/08/09(木) 13:10:33 ID:/CSOnNoi0
結論:やっぱりまだ表に戻るのは無理だった
541名無しさんだよもん:2007/08/14(火) 01:18:42 ID:d/NE4hbj0
期待しつつ保守
542名無しさんだよもん:2007/08/20(月) 23:12:49 ID:Pf7h27EQ0
保守
543名無しさんだよもん:2007/08/25(土) 12:29:22 ID:x1OpdkMd0
 みんな久しぶり。七瀬よ、留美をやっているわ。
 とりあえず現状を説明するわね。
 どうしてって?
 なんとなく一ヶ月以上私達って動いていない気がするからよ。

 私は裏葉さんと一緒に、コンピューター室に閉じこめられていた姫百合珊瑚ちゃんを助け出したわ。
 その後、部屋の隅にあった珊瑚ちゃん特製の「まどうアーマー」の説明を受けた。
 そのまま乗ってもよかったけど、学校の廊下や教室では小回りが効かなさそう。
 だから、搭載武器だけひっペ返して珊瑚ちゃんに持たせたのよ。

 まどうアーマーの分解に随分時間を食っちゃったわ。
 オボロさん達が術者を上手く倒しているか気になるし、ガディム本体が襲ってきたら危険だ。
 そんなわけで術者がいると思われる生徒会室へ向かったんだけど――


A 生徒会室の前でオボロさん達と赤紫色でツインテールの小さな女の子(みちる)が対峙していた
B 生徒会室に向かう途中、金髪のヘタレっぽい男子生徒(春原陽平)が襲いかかってきた
C 生徒会室に向かう途中、青髪ショートでメガネをかけた女子生徒(十波由真)が襲いかかってきた
D 本当に大変アレな話なんだけど、色々とあって私達全員で『メイド・イン・ヘブン』で昇天するガディムを見送っていた
544名無しさんだよもん:2007/08/25(土) 12:40:23 ID:OyHZVjdJ0
Dでいいや
545名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 02:55:51 ID:NrxTHOhd0

「グ、グググウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!」

 六体のメイドロボが描く魔法陣。その中心で川名先輩に取り憑いていたガディムが、彼女の肉体から引き剥がされる。
 そしてそのまま断末魔の悲鳴と共に、最悪の破壊神は細かい光の粒子となって消滅しようとしていた。

「綺麗ね」
「神々しく御座います」
「ふ、ふえ〜。『メイド・イン・ヘブン』って凄いんですね」
「…………そうだな」

 私と裏葉さんとオボロさん。それに心配になって学校に来てしまった栗原さん。
 私達四人は学校の運動場で並んで体育座りをしながら見送っていた。
 来栖川エレクトロニクスの研究成果『メイド・イン・ヘブン』で昇天しつつあるガディムを。

 珊瑚ちゃんを救出した私達は、オボロさん達と合流するために生徒会室へ向かった。
 だけど私達が着いた時、既にオボロさん達は結界破りの術者(なんか赤紫髪ツインテールの幼女だった)を倒していた。
 なんか大量の学園生徒を操っていたラルヴァ憑き(どうも生徒会長らしい)をイルファさんがやっつけたのが効いたらしい。
 とりあえずガディム側の圧倒的だった数の有利もなくなり、私達の反撃が開始された。
 勿論、あのゾンビっぽい生徒の群れがいなくなっても、他の何人かのラルヴァ憑き達が襲い掛かってくる。
 ラルヴァの魔力が上乗せされ、人間としてのリミッターを解除したラルヴァ憑き達は強かったわ。
 でも、合流した私達を止められるほどでは無かった。
 向かってくる相手を一人、また一人と皆で力を合わせて倒していく。
『やっちゃってくれるね。甘く見ていたつもりはないんだけど』
 どうにかあらかた片付けたところで……川名先輩、つまりガディムが直々にお出ましになった。
 数の上では逆転していた分、狭い校舎の中はかえってこちらが不利。
 そう考えて私達はガディムを運動場に誘い出して、最終決戦に持ち込んだわ。
546名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 02:59:36 ID:NrxTHOhd0
 持ち込んだのはいいけど……ガディムは強い、強すぎだったわ。
 RPGで例えたら「これイベントボスじゃね?」って思って戦闘放棄したくなるくらい。
 だって“あそびにん”なわけ勿論ないんだから、ガチでイオ○ズンっぽい爆裂魔法とかバンバン使ってくるし。
 「余の手刀こそ世界最強の剣だ」と言わんばかりに素手でオボロさんと斬り合いするんだもの。
 もうむちゃくちゃ強かった、いやアレはむちゃくちゃどころじゃなくて、くちゃくちゃ強かったわ。
 ハッキリ言って私なんて全然役に立てなかった、もう珊瑚ちゃんと一緒に逃げ回るので精一杯。
 それでも裏葉さんが術法でガディムの攻撃をしのいで、オボロさんが僅かな合間を縫って切り込みをかけてくれた。
 イルファさんも私を庇いながら、珊瑚ちゃんから渡された「まどうアーマー」のパーツで反撃を仕掛ける。

 そんな戦闘がどれくらい続いたかしら。
 実際は大した時間じゃなかったと思うけど、もう数時間ぐらい戦った気がする。
 ガディムもそれなりに消耗していたけど、私達の消耗のほうが激しかった。
 「まどうアーマー」のパーツのエネルギー残量も底を尽きかけて、オボロさんの体力も裏葉さんの精神力も限界に近かった。
 「これはもう駄目かも知れない……」そんな風に思いかけたその時、援軍が来たのよ。
 来栖川エレクトロニクスのトラックから降りてきたのは、五体のメイドロボだったわ。
 緑髪でロリっぽいのと、茶色の髪でスタイルのがいいのと、ピンク髪でやたら巨乳なのと、黄色髪で甘えん坊っぽそうなやつ。
 それになぜか太田加奈子さんと瓜二つで、まるで本人がコスプレしたようなメイドロボもいた。
 とにかくその五体のメイドロボが、イルファさんと一緒に何かをするからもう少しだけ時間を稼いで欲しいと言ってきたの。
 何が何だか分からなかったけど、他に手段もない私達はメイドロボ達に従ったわ。
 もちろん目の前で何かをしようとするメイドロボ達を、ガディムがボサッと見守るはずもなかった。
 メイドロボ達に襲い掛かろうとする破壊神を、オボロさんに裏葉さんが最後の力を振り絞って止めに掛かる。
 私? い、一応頑張ったわよ。珊瑚ちゃんと一緒にイルファさんから渡された「まどうアーマー」パーツで援護を。
547名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 03:00:18 ID:NrxTHOhd0

 そうやっているうちに準備が整って発動したの。
 固有結界『メイド・イン・ヘブン』とやらが――
 なんかガディムを中心に六角形に並んだメイドロボがピカーとか白く光り出して、でっかい魔法陣を作ったわ。
 アレね、ほらダ○の大冒険でいうところのミ○カトールに近いんじゃない? 破邪呪文ってやつ。
 あっちの世界だと六芒星は邪悪っぽいけどこっちの世界じゃ違うようね。

「さんちゃ〜ん。さんちゃ〜〜ん。ウチ…ウチ…めっちゃ心配したんやで……」
「ごめんなぁ瑠璃ちゃん。でももう大丈夫や」
 体育座りでならんだ私達の隣で、珊瑚ちゃんとその双子の妹の瑠璃ちゃんが再会を喜び合っていた。
 うんうん、仲良きことは美しきことかな。
 斬り殺されたり焼き殺されたりしなくてよかったわね、アンタ達。

「オボロさん…大丈夫?」
 複雑な表情でガディムの昇天を見送るオボロさんに、私は思わず尋ねた。
「……問題ない。怪我は幾つもしたが、命に別状はない」
「そうじゃなくて…その、妹さんの敵だったんでしょ。自分の手で倒したかったんじゃ……」
「目的はガディムを始末することだ。これで……よかったんだ」
 そうは言ってるけど膝を抱えている手にギュッと力が込められている。
 やっぱり不本意だったんだろうな……


「これからオボロさんはどうするの?」
 ガディムの昇天を見送り、栗原さんの家に帰る途中で聞いてみた。
「どうせならこの世界の見物とかしてみない」
 学校が再開されるには最低一週間はかかるらしい。
 まぁ運動場は激しい戦闘で大穴がボコボコあいて、校舎もあちこち壊されている。
 なにより結構な数の生徒が軽くない怪我をしてる。
 後始末なりなんなりに時間が掛かるのは当然だろう。
 その間私も栗原さんも暇だ、ちょっとした休みを楽しめる。
 それなら元気のないオボロさんを元気づけたいと思ったんだけど――
548名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 03:01:03 ID:NrxTHOhd0
「悪い、俺は準備が整い次第すぐにでも帰るつもりだ」
「そう……そっか、それはそうよね」
 オボロさんは物見遊山でこっちの世界に来たんじゃない。
 早く戻って妹さんのお墓に花を添えたり、敵討ちの報告とかをしたいんだと思う。
 本人は異世界で骨を埋める覚悟もしてたけど、裏葉さんのおかげで元の世界に帰れるそうだ。
「裏葉、手間を掛ける」
「これも知り合ったよしみでございます」


「じゃあね。オボロさん、裏葉さん、栗原さん」
「ああ」
「失礼いたします」
「そ、それじゃあね。七瀬さん」
 交差点で、栗原さんの家に戻るオボロさん、裏葉さん、栗原さんと別れた。
 裏葉さんの法術の準備は二、三日中に整うらしい。
 その時にまた改めてお別れをしよう。
 オボロさんは嫌がるかも知れないけど、お別れパーティーを開くのも悪くない。
 ……私もオボロさんも栗原さんも食べ役で、裏葉さん一人で料理を作らないといけないかも知れないけど。
 あ、でもメイドロボのイルファさん達に手伝ってもらえばいいか。


「終わった……のかな」
 一人になり、空を見上げながら呟いた。
 夕暮れが雲や空を真っ赤に染め上げている。
 今日一日で本当に色々あった。
 朝から来栖川重工に行ってイルファさんに会って、へりで学校に送ってもらって。
 そこから学校に突入して、今さっきまで世界の存亡賭けて戦っていたんだもの。
「お腹も空いちゃったし、早く帰ろう」
 そう言えばお昼ご飯も食べていない気がする。
 こんな腹ぺこ状態でよくガディム相手に戦えたと、我ながら感心してしまった。
 改めて自分の体を見回すと、服も肌も汚れまくっている。
 あんだけ激しいバトルしたんだし、汚れて当然か。
549名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 03:01:45 ID:NrxTHOhd0

「何か拭くものは……あ、これって」
 ポケットから出てきたのは、オボロさんから渡されたバンダナだった。
 もう二度と光ったりはしないだろうし、光ってもらっては困る。
「オボロさんに返さなきゃね」
 そう呟いてバンダナをポケットに入れ直した。
(でも……剣の稽古のお礼ってことで、貰っちゃってもいいかな)
 オボロさんとした早朝稽古。久しぶりに本気で剣を振るった。
 ほんの僅かな出会いと付き合いだったけど、一つくらい何か形に残る思い出があっても悪くないと思う。
(明日か、お別れのときにでも聞いてみよう)


 日も沈みかけて辺りが薄暗くなり、まばらに星も見えてきた。
 とりあえず私達の世界は守られたようだ。
 ぶっちゃけ色々とアレでソレな結果だけど、平和な日々というのはいいものだ。
 これからもこの穏やかな日常を守りながら、私らしく生きていこう。
 そう思った。


 Fin
550名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 08:10:08 ID:pvsNEvHs0
またまた物語が終わって5時間も主役選択がされてないとは…
だが選択スレは滅びぬ、何度でも蘇るさ!
という訳でまずは作品選択

A 誰彼
B White Album
C ナイトライター(with 雀鬼's)
D リトルバスターズ!
E うたわれるもの
F Planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜
G 鎖
H CLANNAD
I フルアニ
J Kanon
K Routes
L ONE
M Filsnown
N テネレッツァ
O 雫
P 天使のいない12月
Q まじかる☆アンティーク
R こみっくパーティー
S ToHeart2
T 痕
U Tears to Tiara
V To Heart
W AIR
X MOON.
551名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 08:15:00 ID:3JQUL+m20
リトバスはまだ早いのでは?ここはGだ
552名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 08:17:46 ID:pvsNEvHs0
おお、思ったより選ばれるの早くてよかったです。
では主役選択

A 折原明乃
B 片桐恵
C 早間友則
D 岸田洋一
E 香月恭介
F 綾之部珠美
G 折原志乃
H 綾之部可憐
I 香月ちはや
553名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 08:17:57 ID:3JQUL+m20
554名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 08:19:29 ID:pvsNEvHs0
は、早っ!でも悪役なら何とかなるかな…少し書いてみます
555名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 08:21:20 ID:3JQUL+m20
作品が選ばれたら主役選択出るまでリロードしまくるって
昔の癖が出ただけだよ
つっても今俺しかいなさそうだけど、選択者
556名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 08:25:31 ID:pvsNEvHs0
ククク…俺は岸田洋一。パ○ワくんに出てたア○シ○マじゃないぞ。
俺は葉鍵作品の中でも数少ない、
生粋の悪役の一人だ。だが、俺はどうも他の悪役と比べて
知名度も選択率も少ない。そこで、俺は…

A ある一人の『女』を犯す事にした
B 他の悪役に弟子入りする事にした
C 敢えて善人の役をやってみようと思った
D 全国鬼畜友の会に出席する事にした
557名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 08:26:36 ID:3JQUL+m20
まずは普通に悪役らしくA
558名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 09:03:02 ID:pvsNEvHs0
そう、俺は悪役だ。強姦魔としての実力なら
他の悪役には負けない自信がある。
女を陵辱し、怯えさせ身も心も破滅させてこそ悪役冥利に尽きる。

だがしかし!!ただ普通の女を犯すだけではただの三下だ。
この俺の偉業をサプライズに彩り伝説として残すには、
一般人を犯すのでは駄目だ。そんな事は誰にでも容易くできる。
それにただでさえ陵辱は食傷気味の上にスレの空気を悪くする危険性がある。
だから、普通では駄目だ。弱い女を犯すだけでは駄目なんだよ!!

俺は自分を知っている。俺は悪役だ。だが、ただの人間だ。
某電波使い兄妹の兄の方みたいに相手を強制的に屈服させる能力がある訳でも無し、
某火戦試挑体のように超人的な肉体を持っている訳でもない。
某FARGO研究員のようにバックに強力な組織がある訳でもない。
何の後ろ盾も無く、拳銃一発、ナイフ一刺で死ぬようなただの人間だ。
一般人しか出ていなくてSFファンタジー要素も全く無い原作を今だけは恨む。
俺にあるのはせいぜい普通の一般人よりは鍛えられた体と、『策』だけだ。
だがこの『策』にかけては俺は負けない自信がある。他の誰にもな。

こんな俺が葉鍵キャラ最強スレなんかに書いたら一笑され煽られるような
化物キャラを屈服させられたら、それは悪役冥利に尽きるんじゃないか…?
フフフフフ…それこそが名誉!それだけが生きがいだ!!

俺は予め調べておいた資料を手にし標的を選ぶ。
中途半端は駄目だ。ちょっと喧嘩が強いとか、腕に自信がある一般人ではいけない。
俺如きが平手で挑んだらまず勝てない連中を選出した。
知恵と策謀だけで俺は果たしてこいつを犯せるのか…!?
559名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 09:03:33 ID:pvsNEvHs0
その女の名は、

A 月島瑠璃子。電波を使う一般人なら廃人確定の女だ。
B 柏木千鶴。 …怪物らしい。俺ですら悪寒が走る。
C スフィー。 噂によると魔法を使うらしいが…。
D 岩切花枝。 …何故かこの女を見ると腹が立ってくる。
E カミュ。 …燃やされた恨みを返して…何を言っているんだ俺は?
F 天沢郁未。 不可視の力というやはり超常的な力を使うらしい。 
G 川澄舞。 剣術を使うだけでなく魔物を召還する能力があるらしい。
560名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 09:09:13 ID:lpa7id8R0
E
561名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 09:40:15 ID:pvsNEvHs0
ヒッ!
一つの写真に目が止まった。瞬間、俺は恐ろしいほどの戦慄を覚えた。
写真に写っているのは何故か羽の生えている、胸の大きい少女だ。
これだけでもう普通の人間ではない事が解るが、何故か俺は脅えてしまった。
何故脅えるんだ?俺はこの女とは何の面識も無いというのに!

………思い出した。そうだ。こいつは俺が何度も見る悪夢に出てきた女だ!
その夢の中で俺は、ある小娘を騙し、犯した。だがその直後この女が現れ、
あろう事か変身し、俺は成す術も無く焼き殺されてしまうのだ。
夢とはいえ俺が焼かれ、消し炭にになっていく時の熱さ、苦しみ、
まるで本当にあった出来事のように感じた。

だがそれは所詮夢に過ぎない。だが、夢とはいえあれが正夢だとしたら…、
やはり俺が真っ向から挑んで犯せるような相手ではない。
だが、俺はやらなければならん。この程度の女も犯せないようでは
俺は葉鍵の悪役に名を残す資格はないッ!!
それにこの夢が事実だったとしたらあの時の恨みを返す目的もある。
何時の恨みかは解らないがとにかく江戸の恨みを長崎で返すくらいの意義はあるだろう。

そうと決まれば早速、『策』を練らねば。策謀、演技、心理戦こそが俺の得意とする所だ!
カミュを犯す為にまず何をする?どう挑む?犯すのは最終地点、まずは外堀から埋めていくとするか。

A まずは彼女の知り合いから情報を得る事にする
B まずは武器、防具の調達だ。一般人としてできる限りの装備は揃えておきたい。
C 悪には悪の繋がりがある。同じ鬼畜・犯罪者仲間に連絡をする
562名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 09:41:58 ID:bTfPUZQA0
563名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 11:09:22 ID:+5fIr7sn0
ピポパポピポパ プルルルル…ガチャッ
「もしもし、聖ユリ○ンナ病院ですか?比○坂竜○さんは…」

俺は今掟破りにも板違いのミ○クのキャラクターに電話をかけている。
他の会社には鬼畜道を極めた大先輩達が沢山いる。
悪役として、陵辱を極める者として、鬼畜と罵られる者として
誰しもが憧れ目指すであろう外道の極みだ。
そういう鬼畜の大先輩から助言を頂ければ、
必ず俺の野望成就に役立つはずだ。
俺は何としてでもあのカミュという超人を犯す!
その為なら板違いも鉄の掟も糞くらえだッッッッッ!!
シュト○ハイムのような一発ネタとして見逃せッ!!!!!

「ええ?いない!?…そうですか、失礼しました」
比○坂竜○さんは外出中との事だった。最近復刻版やらパチスロやらで
また出番が増えて大忙しらしい。次にア○スソ○トに電話をかけ、
ラ○スさんを呼び出す。ラ○スさんといえば鬼畜王と称えられるほどの男だ。
厳密には悪役ではないかもしれないが、それでも話す価値はある。
「はあ?戦国時代に出張中って…わかりました」
ラ○スさんも忙しいようだ。
シリーズ化して未だに作品が出ている先輩方が羨ましい。
俺もここまで名を轟かせる鬼畜になりたい…!!
564名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 11:10:14 ID:+5fIr7sn0
『もしもし』
「あの〜そちらは伊○○作さんのお宅ですか?」
『ああ、そうだけど』
「そうですか。失礼ですが貴方は遺○さんですか?」
『ああ?俺は鬼○だよ!兄貴!!電話だ』
『もしもし』
「遺○さんですよね?」
『なーに人の電話勝手に取ってんだ臭○!!もしもし、俺が遺○だ』
「貴方が噂の…夜分遅く申し訳ありません!」
『ほ〜うお前がLeafに入った鬼畜の新人か』

三回目にしてようやくエ○フの鬼畜代表、○作三兄弟に連絡が取れた。
○作さん達はゲームと違い実生活では優しく、後輩の面倒も良い。
まさに鬼畜の鏡だ。俺は○作さんに憧れて鬼畜になろうと決心したんだ。
『いいか、陵辱に必要なのは忍耐、そして狡猾さだ』
『違うって兄貴、愛だよ、愛。陵辱にも愛は必要だぜ』
『どんな人間にも必ず弱みがある。それを調べ、脅し、陵辱するんだ』
○作兄弟は皆俺のような若輩者の新人に丁寧にアドバイスしてくれた。
『お前は俺達と同じで知略とずる賢さで立ち回るタイプだ。長所を伸ばしていけよ、ククク…』
「はい!ありがとうございます!!必ずや戦果を上げてみせます!!」
565名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 11:11:10 ID:+5fIr7sn0
丁寧にお礼を言って電話を切る。やはり先輩方の助言は違う。
俺では思いもしない人の騙し方、犯し方、強者への対処法を教えてくれた。
俺はやるぞ!先輩方に恩を返す為にも俺は陵辱を成功させる!
そして葉鍵悪役列伝に名を残すんだ!!

A さらに他の悪役の助けを借りる(人物指定・今度は流石に葉鍵キャラでw)
B 事前調査をしよう。カミュの身辺調査を行う
C カミュの攻撃に対する対策を練る
D その前に食事に行くとするか…
566名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 11:15:41 ID:7zDRDm9h0
B
567名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 12:28:40 ID:pvsNEvHs0
俺はカミュの身辺調査を行う為に街へ出た。
策で獲物を狩る俺の普段の姿は、実に真面目で誠実そうに見えるだろう。
実際近所では一人暮らしの勤勉な好青年で通っている。
この演技力も俺の数少ない武器の一つだ。
今の俺なら高速実験船くらいなら一人で騙し討ちして制圧できると自負している。

まずは事前に調べておいた奴が住んでいる場所に伺ってみるか。
確実に、一つづつ駒を進めていこう。失敗は…俺の死だろうからな。
あの女のいる場所は…

A 御神夜龍神社。この神社で巫女をしているらしい。
B 秋葉原のコスプレ喫茶。なるほど、背中の羽根を誤魔化すには持ってこいだな
C 新宿歌舞伎町。犯罪の匂いが漂う場所だ。
D 動物園…!?珍獣扱いされて売り飛ばされたのか?
568名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 12:34:36 ID:lSidM9fd0
Dw
569名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 13:11:41 ID:7zDRDm9h0
『葉鍵動物園』
 駅から徒歩10分の場所にある、この街の名物動物園。
 若いカップルから家族連れまで、大勢の人が楽しむ憩いの施設。

 そう、あの女のいる場所はなぜか動物園だった。
 いやいや、あの女の住所が動物園なのにもちゃんと理由がある。
 無論その理由も調べてある。
 事前の調査に抜かりはない。
 その理由とは……


A 本当に「人の言葉を喋る鳥人間」として飼育されている。マジかよ……
B 実は動物園の飼育係として住み込みで働いている。まぁ常識的な理由だな
C ……実は住所不定で、たびたび動物園の餌をかっぱらってるのが目撃されてるので一応住所扱いになっているだけ 
570名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 13:21:40 ID:V9ZKzBKy0
a
571名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 13:31:19 ID:pvsNEvHs0
なんと本当に「人の言葉を喋る鳥人間」として飼育されているらしい。
何だと!?だが、考えてみればそれは最もな話だ。
俺は一人納得しながら葉鍵動物園へと向かった。

「2000円になります」
俺は入場料を払い、葉鍵動物園に入った。
カミュは見世物の珍獣扱いで捕らえられているらしいからだ。
しかし…2000円は高い!なんだこの入場料は!?
サンシャイン水族館の入館料より高いじゃないか!!
こんなにボッタくるほど、この動物園は価値がある動物を飼っているのか?
そう愚痴りながら歩いていると、目の前に看板が立っていた。

『空を飛ぶハーピーをついに捕獲!』
『半鳥半人の美少女カミュ!ご見学の方はこちらへ』
『現代に生きる空想生物!あと20メートル先です』

「……やっぱりな」
俺はまた一人頷く。考えてみればこの現代の社会で羽根を生やし
飛行する人間等がいたら珍獣扱いされるのは無理もない事だ。
他の家族連れや観光客は皆カミュがいるという場所へ向かっている。
しかし妙な話だ。俺の夢で見た記憶が真実ならあの女は
魔法を使い変身も出来るはず。ただの人間に捕まえ檻にぶち込む芸当が可能だろうか?
だが、今は考えても仕方が無い。俺もその場所に向かった。
572名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 13:31:51 ID:pvsNEvHs0
「これは凄いな…」
付いた場所は動物園の動物を入れる場所にしては広く、
小屋や檻というよりは巨大な応接間のような場所だった。
動物にしてはコアラやパンダ…いやそれ以上の破格の扱いだ。
いや、動物なのか?動物ではないだろう。だとしたら俺は
陵辱どころか強姦ならぬ獣姦者になってしまう!!違うッ!!
違うんだ!そうだと思いたい。俺は人ごみを掻き分け、
最前列の場所まで移動する。やはり全面に強化ガラスが張ってあるな。
この厚さなら銃弾どころかミサイルの直撃にも耐えそうだが…ここまでする必要があるのか?

『では、鳥人カミュの法術ショー午後の部を行います』
ナレーションの声が場内に響き、建物の電気が落とされる。
同時に安っぽいミュージカル調の曲が流れ、ショーアップライトが
ガラスホールの内部、中心部を照らす。舞台が競り上がり、
一人の美しい少女が姿を現す。そこにいたのは紛れも無くカミュだった。
俺が襲うべき女が今、目の前にいる。いるのだが…

A カミュは疲れきっていた。全く動かない。目が澱んでいる。
B カミュは疲れを見せる事無く、普通に笑って芸を始めた
C カミュは俺の方を向き、微笑んだ。…俺を知っているのか?
D カミュは突然暴れだし、ガラスをぶち破り逃走した
573名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 13:34:14 ID:V9ZKzBKy0
a
574名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 13:57:35 ID:pvsNEvHs0
目の前にいるカミュは憔悴しきっていた。
おそらく何度も休まず芸を強要させているのだろう。
目は澱み濁りきっている。そう、この目は…俺も何度も見てきた。
陵辱され、心を壊され、精神をすり潰された廃人の目だ。

「おい、どうしたんだ?ショーは始まらないのか?」
「早く芸を見せてよ!高いお金払っているのに」
他の客が騒ぎ始めている。見世物の主役が微動だにしないのだから当然だろうな。
だが、この『壊され』っぷりはどういう事だ?
俺も悪役だが一般人の代表だから解る。凡人が正面から太刀打ちできる相手じゃない。
曲りなりにも異形の者である彼女をどうやって捕まえ、芸を強要させるほどに『壊した』?
俺はそれが気になって仕方が無かった。

「きゃあああああ!!」
突然、彼女が叫び声を上げた。何だ?俺は周りを見る。
他の客は気づいていないが舞台装置が数ミリ空いていたのを俺は見逃さなかった。
なるほど、あれはテーザーガンか。死なない程度の電流を流して躾ている訳か。
「……これでは駄目だな」

このカミュという女は完全に弱りきっている。こんな女を犯しても意味はない。
一般人では敵わないような女を犯さなければ俺はいつまでも悪としても鬼畜としても3流以下だ。
目の前でうなだれている女は強さではもうそこらの三歳児のガキにも劣る。
今の彼女ならひ弱な中学生でも襲えるだろうよ!それでは駄目だッ!!
俺はこの場を離れる事にした。やらなければいけない事が出来たからだ。

A この動物園の園長を脅す。場合によっては殺人も陵辱もやむを得ないッ!!
B この見世物小屋の牢屋を破壊する。カミュには今は逃げて頂くとしようか
C 何者かの肩が立ち去る俺にぶつかった(人物指定)
D この女にもう用は無い。他の強い女を捜す事にする
575名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 14:03:25 ID:igi5G/ya0
C 御堂
576名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 14:18:15 ID:pvsNEvHs0
ドッ

立ち去る俺の肘に何者かの肩がぶつかった。
「ゲーック、すまねえな兄ちゃん…てめえは岸田か!」
「…御堂さんでしたか」

この小男は御堂。話の冒頭でも言ったが
軍の秘蔵の強化兵・火戦試挑体にして、俺の悪役としての先輩にあたる。
だが、俺はこの人を嫌いだった…。
「こんな場所で何をしているのですか、御堂さん」
俺は外面だけはどんな人間に対しても敬語で優しく接する。
この男の前では俺の本性も知れているから無駄ではあるのだが、
それでも形式的に先輩と後輩としての上下関係は守る。

「ケケケ…あそこでくたばりかけてる女がいるだろ?」
御堂は俺が出てきた場所を指差す。
上からの命令でな、あの女をよ…

A 犯せ、と言われたんだよ
B 殺せ、と言われたんだよ
C 逃がせ、と言われたんだよ
D さらえ、と言われたんだよ
577名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 14:19:06 ID:ZH2qgPwX0
578名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 15:12:25 ID:pvsNEvHs0
「あの女をこの動物園から逃がせってよ」
あの女?カミュを?あの女を逃がすというのは俺にとっても悪い話ではなかった。
俺が襲い犯すべきなのはあんな痩せ犬のように疲れ果てているような廃人ではない。
万全の状態の超人。それを知恵と策謀だけで弱らせ、屈服させる。それこそが陵辱だ。
青い果実が熟するまで殺さずに待つ…そう言ったのは
どこかの少年漫画雑誌の無期限休載中の漫画の悪役だったか。

「それで、どうやって逃がすつもりなのですか」
「ゲーック、どうしようかねえ?はっきり言えば簡単な任務なんだけどなぁケッケッケッ!」
そう言い御堂は下卑た声で笑い出す。……これだ。これだから俺は御堂が嫌いなのだ。
「このまま正面から乗り込んで掻っ攫ってもいいし、夜に奇襲をかけてもいい」
この男は『持って』いる。俺に無い物を。
「死にかけを守ってるのは強化ガラスだけだしなあ、楽勝だなゲッゲッゲッ」
この男は『持って』いる。俺が欲しい力を。
「鳥人を捕まえたぐらいだから少しは骨のある奴が出てくるかもしれねぇが、俺の敵じゃねえなあ!」
この男は『持って』いる。この自信を保つだけの強さを。

……だから俺は嫌いなのだ。人間は生まれながらに国、肌の色、体格等に違いを持ち、
それによって贔屓され差別される。この御堂という男は生まれながらにして
強化兵、仙命樹、無敵の身体能力、射撃能力、回復能力と優遇されすぎるほどの設定を持つ。
俺と御堂ではもうこの時点で駄馬とサラブレッドほどの差が付いてしまっているのだ。
それに引き換え、俺は何もない。鎖のキャラは設定的には全員一般人だ!!
魔法も必殺技もなく、ビームを撃つみたいな超展開も何も無い!
それどころか強力な組織の一員でもない!俺は何の後ろ盾も無い、ただの人間だ。
579名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 15:13:24 ID:pvsNEvHs0
だから俺はさっき悪役の先輩方に連絡する時も月島や御堂に連絡はしなかった!
そんな異常な力を持つ奴の力など借りず、あくまで『人間』の悪役として、
人間の『鬼畜』として、一花咲かせたかった。たとえそれで死ぬ事になってもだ!!
それをこの男はいけしゃあしゃあと…!!
実際御堂ならこの後正面から切り込んで、軍人が百人現れたとしても
余裕で任務を遂行するだろう。俺が二百人いても敵うかどうか。
それぐらい一般人と強化兵の差は離れているのだ。

「…で、だ、お前もあの女に何か用があるんじゃねえのか?」
「…え、ええ」
「どんな用なんだ?」
「それは御堂さんには関係ないでしょう」
「そうかい。ゲッゲッゲ、あの女の事なんだがな」
「何ですか」
「俺は逃がせと命令されてはいるがその後の事は知らん」
「…どういう意味ですか?」
まただ。言いたい事はもう顔に出ているのに勿体ぶって話す。
強者の驕り甚だしいそのそぶりを弱者の俺は顔に出さず聞きに徹する。

「少し遊ぼうかと思ってなあ。ゲーック、お前に聞きたい」
「何でしょうか」
「お前、俺の任務を手伝え」
…やはりな。自分一人で容易く片付く仕事をわざわざ人に手伝わせる。
「後輩のお前にも良い所見せてやんなきゃなあ、ゲゲゲゲゲ!」
「何を手伝うのですか?御堂さんなら楽勝の任務でしょう」
「任務じゃねえよ。これはもはや遊びだ遊び。で、お前にやってもらいたいのはな…」

A 説得だな。たまには暴れずに解決するのも面白ぇ
B 陽動だな。正面突破は俺がやるからてめえは裏方に回れ
C 探索だな。あの女を縛り付けている原因があるはずだ
D 身代わりだな。カミュが捕まってる施設は水の中にあるんでなあ、俺の代わりに行ってきてくれや
580名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 15:22:15 ID:zDTOrMb70
悩むが・・・・・・・・・・Dだな
581名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:09:17 ID:dZyNbWPx0
「身代わりだな。カミュが捕まってる施設は水の中にあるんでなあ、俺の代わりに行ってきてくれや」
「それは…………手伝うと言うよりほとんど一人での仕事になると思いますが」
「そうでもねえさ、ここの警備は異常に厳重だからな。
 お前が行ってるうちに俺がそっちのほうを片付けておいてやる」
…話としては悪くない。確かに並の人間ではここの警備は歯が立たないだろう。
だからこそ御堂がでて来たのだろうが、その御堂が唯一歯が立たないのが水だ。
そこさえどうにかしてくれれば後は俺が面倒見てやると言われてるようなものなのは癪だが、
それほど無敵の男の唯一の弱点に関して優越感に浸れるのは悪くない気分だ。
「いいだろう、引き受けた」

言われたとおりに動物園の裏手に向かうと、そこに“動物の宿舎”があった。
それはまるで堀に囲まれた砦のようで御堂が突入を渋るのも分かる。
物陰から伺うと、唯一かかっている橋の上では――『α』が『β』と『γ』していた。


α
A.カミュ B.岩切花枝 C.上月澪 D.『その他人物名』
β
A.インカラ B.石原麗子 C.○作 D.『その他人物名』
γ
A.警備 B.酒盛り C.口喧嘩 D.アナルセックス

(1レス1選択)
582名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:11:17 ID:ONcJcJss0
α

β

γ
D
583名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:13:43 ID:7zDRDm9h0
「お前にやってもらいたいのは一番肝心な突入さ」
「突入を? なぜ俺が?」
 この男は好戦的な人間だ。
 一番好き勝手ができる「突入」を俺に譲るなど、普通は考えられない。
 それに遊びとはいえ上の命令とやらで動いているはず。
 軍人にとって任務の放棄は最も忌避すべきのはずだが……
「ああ実はな、ステージでショーをしているとき以外、カミュは特別な場所に捕らえられているんだが……
 そこに入るためには水を避けられない場所があるそうだ。さすがの俺も水だけは大の苦手でな。お前に頼みたいんだよ」
 なるほど、合点がいった。
 火戦試挑体、御堂。
 仙命樹の力を得た無敵の旧日本軍兵士。
 だが唯一弱点がある、それは「水を極端に恐れる」ことだ。
「お前が断るのなら誰か別の手頃な人間を捜すだけさ、どうする?」
 さて、どうするべきか。
 カミュが捕まっている場所がどう特殊なのかはよく分からない。
 それに上手く逃がせたとして、俺が襲うに値するほどにすぐ回復するかも不明だ。
 何より、御堂の手伝いをするというのが気に入らない。
 化け物女性キャラはカミュだけじゃない、他の女に目標を移したほうがいい気がする。
 とはいえ、お膳立てが揃っているのも事実。
 俺の選択は――


A なるたけ単独犯がいい、別の女にターゲットを移す
B 御堂と協力をする
584名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:14:45 ID:ptOGjeDO0
A
585名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:14:51 ID:7zDRDm9h0
ギャース、書き負けた……orz
586名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:15:40 ID:ptOGjeDO0
…orz
587名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:19:59 ID:eGh7REVf0
1レス1選択なら>>582は最初しか有効にならんのじゃ?
いや、そもそも○作とか混ざってる本文を有効にするべきか、から問題な気がするけど。

有効ならβがDで冬弥
588名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:28:29 ID:DPnhMOx5O
γ
589名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:31:59 ID:HMs/jaeG0
あんまり本文をリコールするのは気が引けるけど一応選択で決めようか

A ○作とか選択肢に混ぜるのはマズいだろう。>>581には悪いけどリコールする
B ○作は選ばれなかったんだし、>>581は有効にして以降γの選択をしてもらう
590名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:33:36 ID:HMs/jaeG0
あ、もうγも選ばれてたのね…orz
591名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:40:08 ID:eGh7REVf0
ここで突然携帯か……
いや、問うまい。選んだのが正義で、書ける限り続ければいいのが選択スレだしな。

でも流石に>>587書いてこれを選ぶわけにはいかんので俺は保留。
592名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:48:47 ID:Lzx9fqXM0
ここでグダグダにする訳にはいかんのでBにしておく
それで状況を整理すると、

>>581で選ばれた選択肢は1レス1選択で
αA βD γDで
カミュと冬耶がアナルセックスしている、で問題ないんだよね?
593名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:55:25 ID:eGh7REVf0
確認するなら訂正するけど冬弥だよ、ホワルバの藤井冬弥のつもりで指定した。
他にいないよな?
あとはそれでいいと思われ。
594名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 20:58:56 ID:rqNWK30g0
おまえらそんなにアナルセックス好きか
595名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 21:22:59 ID:pvsNEvHs0
「ハア、ハア、ハア………」
「………………………………」

それは異様な光景だった。わざわざ橋の上、宿舎の入り口の前で
これ見よがしに一人の男がカミュを犯していたからだ。
あの男は…誰だ?面を見た限りでは単なる学生風の優男だな。
次にずり下がったズボンの辺りを見る。下半身の筋肉も
それほど引き締まってる訳じゃない。こいつはただの素人、一般人だな。
能力者なら分が悪い所だが、ただの堅気なら…俺でも楽に倒せる。

しかし、見た所尻の穴を犯しているようだが…なっちゃいないな。
陵辱とは相手を追い詰め絶望させ少しづつ壊していく所に美学がある。
既にあの女は壊れているじゃないか。あれだけ乱暴に犯されているのに何の反応もない。
抵抗も叫びもせず犯されるがままの女など肉便器にも劣る。それなら死体を犯す方がまだいい。
俺はこんな生物ですらない『物』を犯す為にここまでやってきたんじゃない!
やはりここは助けてやるべきだな。

それにしてもこんな目立つ場所で蛮行に及ぶなんて、
どう考えても罠か誘っているようにしか見えないのも事実。
さて、ここで『策』を考えろ。足りない頭で考えろ、岸田洋一。
俺が他の連中より優位に立てるのはこの策と知恵だけなんだからな。
そろそろ御堂が警備の連中を片付けている頃か。
俺はこの後どう動くべきか?

A このまま普通に奇襲をかけ、冬弥をぶちのめす
B 得意の演技力を最大限に利用する。警備の振りをして話しかける
C 考えていると、他の何者かが冬弥に襲いかかった(人物指定)
D その時、銃声が聞こえた。御堂が暴れ始めたようだな
596名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 21:26:59 ID:jiUZA35pO
c オボロ
597名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 22:10:44 ID:pvsNEvHs0
俺が考えていると、カミュを犯している男の背後に
もう一人男が『いた』。現れたというより、いつの間にかそこに『いた』んだ。
いつの間に現れた!?それを考えた時には、その男は次の行動に移っていた。
「……おい」
「えっ?…がああっ!!」
犯している男が間抜けな声を上げた次の瞬間、そいつは股間を蹴り上げられていた。
勃起している剥き出しの男根を蹴られたんだ。その痛みは想像するだけで気絶しそうなほどだろう。
現れた男は悶絶しているそいつにはもう目もくれず、カミュの元に駆け寄った。

「カミュ、おいカミュ!!大丈夫か、しっかりしろ!!」
「………………………………」
だが、カミュはやはり反応しない。
「きさまあああぁぁぁぁぁ!!」
激情した男はさらに呻いている男を蹴り、殴りつける。
…何者だこいつは?目の前で殴られている方は全くの素人だが、
今現れたこの男は、違う。出来る奴だ。それは現れた時の素早さ、身のこなし、
露出している筋肉の張りを見ても解る。華奢だが締まった良い筋肉をしている。鍛えられているな。
よく見ると、耳が少し尖っている。何だこれは?奇形にしては整っているし…
カミュを助けに来たという事は…同族、超人の類と認識した方がいいか?

耳が尖った男は刀を抜き、脅えている男の喉笛に突きつける。
「言え。誰の差し金だ?何故こんな事をする?どんな理由があって?」
「そ、それは…」
「いいか。今からは真実だけを答えろ。嘘を付いたら…即、首を落とす」
あの腰に携えている二本の刀が奴の武器か。やはりこの男はマジだな。
キレてはみたがすぐ相手を殺さない。聞き出せる事は聞き出す魂胆だ。
嘘を付いたら即殺すというのも、本当だろう。この状況で躊躇する訳が無い。
598名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 22:11:15 ID:pvsNEvHs0
そしてこれだけ奴が暴れて叫んでも、誰も助けに来ずサイレン一つすら鳴らないという事は、
御堂が既に警備の連中を制圧したという事だ。

A オボロは冬弥から何かを聞き出すと、宿舎の中へと入っていった
B オボロは冬弥を斬り殺し、カミュを抱き上げ去ろうとした
C そこに一発の銃声!御堂がオボロに襲いかかった
D このタイミングでカミュが意識を取り戻し、飛び去っていってしまった
599名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 22:12:04 ID:5wAr28sN0
600名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 23:08:12 ID:HMs/jaeG0

 ターン!!!

「なっ!」
「うげっ!」
 優男を尋問していた男が、とっさに身を翻した。
 瞬間、さっきまで男がいた場所に銃弾が撃ち込まれたようだ。
 優男のほうは男が身を翻したときに、頭を打って気絶している。

「御堂か……相変わらず正確な狙撃だ」
 様子を見ながら俺は呟いた。
 どこにいるのかは分からないが、橋の周囲からあの男を狙っているのだろう。

 ターン!!!

「くっ……卑怯だぞ! 出てこい! 姿を出せ!」
 今度も男は銃声と同時に飛んだが、左足を銃弾が掠めたようだ。


「まったく……やってられないな」
 様子を眺めながら俺は一人毒づいた。
 橋の上で繰り広げられる死闘に、俺が入り込む余地はない。
 一人の人外が人間離れした狙撃を行い、もう一人の人外がかろうじてかわし続ける。
 一般人レベルの俺が手出しできる状況では無かった。
「とはいえ、じきに決着は着くか」
 いくら超人的な体力とカンで銃弾をかわそうにも、限度があるだろう。
 御堂は姿を現さない。現す必要はないし、そもそも水場の近くなので現れられない。
 唯一橋の上の男ができるのは、弾切れまでかわし続けることだが……
601名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 23:08:54 ID:HMs/jaeG0


A 何発かの後に、とうとう御堂の銃弾がオボロの胸を貫いた
B ? 狙撃が止んだ? 御堂に何かあったのか?
C 「オ……ボロ……」ここでカミュが意識を取り戻した
602名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 23:12:22 ID:0vSZowqB0
B
603名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 23:42:16 ID:pvsNEvHs0
その後何発かの銃弾を耳の尖った男は避け、見切り、叩き落した。
だが突然御堂から銃撃がぴたりと止んだのだ。
「?…どういう事だ…?」
狙撃が来ない。弾丸を装填しているにしては時間がかかりすぎている。
何かあったのか?トラブルか、もしくはさらに他の奴が御堂に襲いかかったか…
そうなると今カミュを浚えるのは俺しかいないという事になる。

「やはり連中が………おい、そこのお前!」
男は俺のいる方向を向き声をかけた。やはりバレていたか…
俺は姿を見せようとする。しかし、その前に声がかかる。
「いや、出てこなくていい。一言言わせてくれ」
まさか俺が御堂の仲間だと気付いていないのか?
この状況で見ず知らずの俺をただの一般人だと思っているのか?
御堂の狙撃はまだ撃たれない。おかしい。明らかに妙な状況だ。
耳の尖った男は言った。

A カミュを連れて逃げろ!彼女は大事な『鎖』なんだ!
B カミュを守ってやってくれ!俺は狙撃手を潰す!
C お前も…彼女の力が目当てなのか?
D お喋りはそこまでだ!御堂の銃撃が再度オボロを襲う!
604名無しさんだよもん:2007/08/26(日) 23:42:58 ID:COB82GZx0
605名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 00:23:23 ID:rSWeba820
「カミュを連れて逃げろ!彼女は大事な『鎖』なんだ!!」
『鎖』?鎖とはどういう意味だ?だがここでこの女を逃がすというのは
実に好都合だ。御堂からもカミュは逃がせと言われているしな。
だが、引っかかる。なら何故御堂が銃撃を中止した?
カミュを逃がすという意味においては両者とも意見は同じ。戦う必要性がない。
だが目の前の男がカミュを助けようとしたら御堂は狙撃をしてきた。
その理由は?御堂の追撃は未だ放たれない。

「…解った」
考えても仕方が無い。俺はカミュの元に駆け寄る。
「俺の名はオボロ。…カミュを頼む」
奴の目を見る。俺の事を敵だと疑いもしていない、真剣な目だ。
俺の事を疑っていないのか、それとも…
とにかく俺はカミュを抱いて、この場から逃げ去る事にした。
……軽い。俺が捻じ伏せ、陵辱し蹂躙しようと思った怪物は
俺が思っている以上に華奢で軽かった。俺が屈服させたかったのはこんなか弱き者なのか?
違う!違うはずだ。でなければ俺が襲う価値等全く無いのだから。

俺がカミュを抱いて逃げ去ろうとしても、御堂の攻撃は来ない。
最悪俺を殺すかもしれないという選択肢も考えていたが、それも違うようだ。
一体どうしたのだろうか。オボロは黙って見送っている。
…色々な可能性を考え、推理する。未だ目覚めぬ『鎖』を抱きながら俺は走る。
走りながら俺はこう考えていた。

A 御堂はオボロの仲間に殺されたのではないか?
B オボロは俺の事を知っていたのではないか?
C 御堂もオボロもあの優男もグルで、俺にカミュをさらわせるのが最大の目的なのではないか?
606名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 00:25:44 ID:nPw12Ypt0
607名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 00:43:25 ID:gVcit/ve0
御堂もオボロもあの優男もグルで、俺にカミュをさらわせるのが最大の目的なのではないか?

――明らかに突拍子もない仮定なのは分かっている。
お調子者キャラが片手をかざしながら「だったんだよ!」と叫べば、
場面にいる全員が「な、なんだってー!?」と切り返しそうな仮定だ。
だが……もしも、もしもだが。
この状況が最良の結果であるとするならば、そこに至るために彼らが描いた構図は
『全員がグルとなって、俺がカミュを直接さらわせる作戦』になる。

散々繰り返してきたが、俺は並の人間。名推理が出来るわけではない。
だから今の状況が何であるか、正直言ってさっぱりだ。
言い換えれば彼らに深謀があっても察する事など到底不可能、
『鎖』が何の事かなんて独力で調べられるはずもない。
しかも所詮一般人なら必要なときに取り戻すのは簡単だろう。
一旦預けておくには最高の相手だ、これくらいは自分でも分かる。

「…どうするかな」

ひとりごちて、抱えているカミュの様子をうかがうと――

A 「…………」相変わらずの放心状態だ、こういう時にはありがたい
B 「……い、いやぁぁぁ!」くっ、こんなタイミングで暴れだした!?
C 「おしりに……もっとぉ……」まずい、くぎゅボイスの甘ったるさにはさすがの俺も参りそうだ!
D 「○○……○○に……」なんだ、そこに行けと言いたいのか?(地名を指定)
608名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 00:47:14 ID:LWjdSedI0
B
609名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 01:08:16 ID:rSWeba820
「い、いやあ!いやああああああ!!」
まずい!このタイミングで目を覚ましてしまったか!
「や、やめてえええぇぇぇ!!カミュに酷い事しないでぇぇ……」
やはりあの動物園で凌辱の類を受けたのは間違いなさそうだな。
とにかくこのまま騒ぎになるのはまずい。
俺はタクシーを拾い、彼女と共に乗った。
羽根を生やしたカミュはあまりにも奇発な格好だ。
帰り道の電車や歩きで人目に晒して目立つ訳にはいかない。
ましてやこうも騒いでいたらなおさらだ。
運転手に聞かれたら最新鋭のコスプレだと誤魔化しておこう。
車の中で俺は考える。

全員がグルとなって俺にカミュをさらわせるのが目的だとすれば、
確かにあの時御堂の狙撃が止んだ合点がいく。
でなければ御堂クラスの超人が御堂を襲ったとしか考えられないからだ。
御堂の「俺の任務はカミュを逃がす所まで」という言葉と
オボロがカミュを救う時の態度。目。表情。
そのどちらにも嘘は無いと考えるならばこう結論付けるのが自然だ。
しかしだとしたらなぜ優男にカミュを犯させた?
無傷で助けるのが目的ならばそれは余計な事だろうに。

そもそも何故、俺なんだ?俺が強い女を捜し襲おうとしていたのは
俺が個人的に調査し俺一人で立てた計画だ。それが漏れる事もなければ
他の連中が手助けしてくれる理由もメリットも何も無い。
俺が一般人だという事を利用しているとしたら、
危険を被るのは俺なのではないか…?
610名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 01:10:02 ID:rSWeba820
そう考えている内に、俺は自分のマンションに着いてしまった。
…結局、この女を一番来させたくない自分の城に連れてきてしまったのだ。
女は車の中で騒いでいる内にまた寝てしまった。よほど疲労しきっているのか。
運賃を払い、部屋に入る。前述の通り俺はこの近所では
とても真面目で誠実な好青年で通っている。そんな俺がこんな女を部屋に連れてくるとは。
住み家の近くでは犯罪を犯さないのは鉄則なんだがな…。
といっても、まだ俺はこの女を犯すつもりはないが。
自分の家で無力な女を犯す。そんなのは実に簡単、容易い事だ。
以前の俺なら何の躊躇いも無く犯し、壊し、殺し、快楽の限りを尽くしただろう。
だが、それをやってしまえば俺はただの三下だ。小物以下の下衆野郎だ。
盗人にも三分の理、悪人にも美学がある。俺は自分の美学の為にも、まだ強姦はしない。

「ん…」
『鎖』のお目覚めだ。まず俺に出来る事は…

A 「気が付いたかい?」優しく声をかける事だ。
B 「砂糖はいくつかな?」暖かいコーヒーを入れてやる事だ。
C 「それを着るといい。」女物のパジャマだ。どうしてこんな物を持っているかは聞くな。
D 「結婚してください!!」俺の中で欲望は純愛に変化した!!
E 「京都は日本の首都なんどすえっ!!」アラ○ヤマの物真似をする事だけだ。
611名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 01:10:34 ID:xWv2Z1DQ0
Eに吹いたw
612名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 01:36:19 ID:X/X3wAYg0
>>611
選択じゃないならそう断っておかないと次の書き手に真に受けられるぞww

ダメモトでC
613名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 03:46:37 ID:rSWeba820
「き、京都は日本の首都なんどすえっ!!」
「………へ?」
し、しまった!見事にはずしたあ!!パ○ワくんネタなんて
そうそう年端も行かない小娘に判る訳がなかった!
やはりストレートに鬼○郎の物真似で攻めるべきだったか?
「……プッ」
「ぬあ?」
「プッ…クスクス…キャハハハハハ!!」
カミュは笑い転げている。どうも俺の渾身の一発ギャグではなくて
それをはずしてショックを受けていた俺の顔がおかしかったらしい。
寒いギャグをはずした後のリアクションで受けるなんて、俺はダン○ィ坂野か!!

「と、とにかく…これを着るんだ」
今彼女が着ている服は相当汚れ、擦り切れている。
あれだけの乱暴と非道な扱いを受ければ当然だろう。
俺は女物のパジャマを投げてやる。ちなみにイチゴ柄の滅茶苦茶キュートなパジャマだ。
しかもサイズが大きめなのでだぶだぶで袖から手が出きらないという萌え萌え仕様だ。
な、何故俺がこんなのを持っているかって!?そ、そりゃ俺は強姦魔だ!犯罪者だからな!!
色々あるんだよ、色々!!そ、それ以上は詮索するな、詮索するなあ!!

彼女は特に逆らわず、もそもそとパジャマを着だした。
羽根が引っかかって上手く着られないでいる。
(か、可愛い…)
がああああああああああ!!!!!違う、違うぞ!!
俺はやましい事等何も考えていない!!襲わん犯さん!!
俺の犯罪美学はこんな事で挫けたりはしなあああいいいいい!!
614名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 03:47:24 ID:rSWeba820
「…どうしたの?」
「い、いや、何でもない。それより驚かしてしまい、すまなかったね」
「そういえば、ここはどこなの?」
「ここは僕の家さ。そういえば自己紹介がまだだったね。僕は岸田洋一」
俺は早速人当たりの良い善人モードに意識を集中し、演技を行う。
今はまだ聞きたい事もあるし、彼女の前ではこの性格のまま徹するのがいいだろう。
「カミュは確か知らないおじさんに捕まって、ずーーっと檻の中で芸をやらされて…」
「………」
「疲れても無理やり起こされて、夜になると変なお薬を飲まされて…その後はよく覚えてないの」
「もう大丈夫だ。僕は頼まれて君を助けたんだ。もう怖い目にあう事はないよ」

「うっ、ぐすっ、ふえぇぇ…!」
どうやら安心して一気に気が緩んだのだろう。
カミュは泣き出し俺にしなだれかかってきた。
普通の女なら目が覚めた瞬間に知らない部屋で知らない男と二人きりなんて状況なら
まず叫ぶか脅えるか暴れだすか、何にせよろくなリアクションはとらないだろう。
ましてやお目覚め一発、ギャグかましたりパジャマを着ろとせがむ変人ならなおさらの事だ。
そういう辺りこの女は純粋なのだろう。…だから利用される。だから俺のような悪党共に襲われ浚われ犯される。
結局の所、純粋な性格なんて乙女の秘密の日記帳の中だけにあればいいんだ。現実には不必要な物だ。

ぷにっぷにっ♪
そ、それはそうとして、カミュが俺に抱きつき泣いている訳だが
この胸の大きさ、弾力性はなんだ!?パジャマ越しでもしっかり伝わるやわらかさ!
いいいいかん、俺は何もしない!今だけは禁欲を貫くと決めたのだ!!
この状況を打破しなければ!!

A 俺は冷静にカミュから離れて聞いた。「オボロという男を知っているかな?」
B 俺はクールにカミュを引き剥がし、こう言った。「そういう遊びは大人になってからだぜベイビー」
C その時インターホンが鳴った。まずい、隣に住んでいる(人物指定)さんだ!
D こうなったらネコ耳もつけてみよう。勿論どこで手に入れたかは聞くな。
615名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 04:14:59 ID:JwFD6J+C0
A
616名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 12:06:21 ID:rSWeba820
「オボロという男を知っているかな?」
俺は気を取り直し、質問を始めた。
「オボロ…オボロ兄さまの事?」
「うん。僕は彼に君を助けてくれと頼まれたんだ」
「そんな、兄さまが生きているはずない!」
生きているはずがない?どういう意味だ?
「だってオボロ兄さまはカミュを庇って…」
「まさか死んだ、っていうのかい?」
あの時俺にカミュを助けろと言った男は間違いなく自分でオボロだと名乗った。
あいつが幽霊や幻の類でない事は間違えようのない事実だ。

「オボロ兄さまはカミュと一緒に逃げていたの」
「仲間だったのかい?」
「うん。でも怖いおじさん達に襲われて、先にオボロ兄さまが…」
「捕まった、と?」
「捕まったんじゃない。カミュの目の前で撃たれたの」
撃たれた?それで死んだのならばあの時会ったオボロはゾンビだという事になる。
撃ち所がよくて助かったか、何らかの能力か回復でもしたのか?
「カミュはそのまま捕まってしまって、後は…思い出したくない」

なるほど、カミュとオボロは仲間同士だったが捕まり、
オボロはその場で始末され(結果生きていたが)
カミュはあの動物園の連中に捕まった(もしくは売り飛ばされた)
生きていたオボロはカミュを助けるべく動物園に向かい、
御堂も任務としてカミュを逃がした。そして偶然居合わせた俺に
御堂がカミュを助ける手伝いをさせ、オボロも俺にカミュの保護を任せた。
現状で起きた事柄を整理するとこんな所か。
617名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 12:06:51 ID:rSWeba820
しかし、こう考えるとあまりにも出来すぎている。
さっきは御堂とオボロ全員グル説も考えたが、
カミュの話だとオボロは一度撃たれ死にかけている。
仲間同士だというオボロがカミュにそこまで大掛かりな嘘を付くだろうか?
だからといって流石にカミュまでグルで嘘を付いているとも考えにくい。
そもそもカミュ達はどこからやってきたのか?
何故捕まらなければならないのか?『鎖』とは何か?
知りたい事はまだ沢山ある。次に何を聞くべきか。

A 君達は一体どこからやってきたんだい?
B カミュちゃんを捕まえた怖いおじさん達は何者なんだ?
C 『鎖』という言葉に何か心あたりはないかな?
618名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 12:17:19 ID:Sl07iDqI0
A
619名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 13:35:53 ID:rNqnzfBQ0
「カミュちゃんやオボロさんはどこから来たんだい?」
 人当たりの良さそうな笑みを浮かべながら、落ち着いた声でカミュに聞く。
 俺は引き続きカミュに警戒されないよう、善人モードで質問した。
 質問内容は――カミュ達の出身、出自、どこからやって来たのかだ。
 羽を生やし魔法を使う少女に、獣耳で常人離れした身体能力を持つ男。
 コスプレ少女兼手品師だとか、鍛えられた格闘家がコスプレしただとかではないだろう、今さら。
 明らかに俺のような一般人とは『異なる』存在だ。
 恐らくはそれ故に何者かに捕まったり、御堂達に逃されようとしている。
「カミュ達はね――


A 信じてもらえないかも知れないけど、こことは別の世界から来たの」
B ……ある研究所で人工的に生み出された実験生命体、それがカミュ達なんだ」
C ……ごめんなさい、どうしてかカミュもよく分からないの」
620名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 13:52:00 ID:6DU9sBMy0
621名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 14:13:03 ID:rSWeba820
「……ある研究所で人工的に生み出された実験生命体、それがカミュ達なんだ」

やはりか。俺はさほど驚かなかった。御堂もそうだが、
実験や手術で超人化する人間を俺は知っている。
だが実験生命体…この言い方は手術強化の類ではなく、
まるで0から作られた存在のようだ。

「カミュはずっと、ずーっと狭いお部屋の中で暮らしていたの」
「毎日毎日、知らないおじさんに変な事をされて凄く嫌だった」
変な事…レイプ?いや、言葉通り考えるな。これは人体実験の類と考えるのが妥当だ。
「カミュちゃんが作られた理由というのは、自分では知ってるのかい?」
「解らない。カミュが自分を実験生命体だと知れたのは、オボロ兄さまが教えてくれたからなんだ」
あの男の名がここで出るか。オボロがこの女を救いたいという気持ちは本当なのか?

「カミュがもう死にたいと思いつめていたある日、オボロ兄さまがカミュを助けてくれたの」
「カミュは兄さまと一緒に研究所を出た。カミュはもう飛ぶ元気もなくて、兄さまがおぶってくれた」
俺としてはその研究所が何なのかも気になる所だが…
「走る兄さまに背負われながらカミュは振り返って、今までカミュがいた建物を見たの」
「どんな建物だった?」
「う〜んとね…」

A ミズシマ研究所と書いてあった
B 軍隊の施設みたいだった
C 長瀬エレクトロニクスと書いてあった
D 篁バイオテクノロジーと書いてあった
622名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 14:16:22 ID:X/X3wAYg0
A
623名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 15:56:23 ID:rSWeba820
「ミズシマ研究所。そう書いてあったよ」
ミズシマ…?確か前にテレビで…そうだ。
少し前のオカルト番組やSF番組に出演しては
狂人扱いを受け、ネタ芸人呼ばわりされていたあのミズシマ博士か?
彼は雑誌にテレビ全てのメディアでこう叫んでいた。
『今のままでは人類は絶滅する』
『人の殻を破らなければ21世紀を生き抜く事はできない』
『人間は、さらに進化しなければならない』
『遺伝子レベルからの改革、一般人からの変貌』
『倫理やモラルに縛られていては未来は無い』

マスコミも最初は彼の常軌を逸脱した言動に注目していたが、
メディアのネタの移り変わりは激しく数年もしない内に忘れ去られていった。
俺自身もこんな事を冗談で言ってるのでなければ気違いの戯言としか思えなかった。
まさか本当にこんな生命体を作り出しているとはな。

「で、逃げ続けた先であの動物園の連中に捕まった訳なんだね」
「うん…」
これで憶測とはいえ大体の見当が付いた。
ミズシマ研究所から実験体のカミュとオボロが逃走した。それだけの事だ。
だが、何故かカミュ達を捕らえる者と逃がす者達が存在する。
あの動物園の連中はどうだ?単純に異形の珍獣だと思い見世物にしたと考えるのが妥当だし
御堂がカミュを逃がす任務を受けたという事からも、動物園の連中は
研究所とは無関係の敵と考えるのが普通だ。
624名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 15:56:54 ID:rSWeba820
しかし、なら何故オボロは殺そうとした?カミュだけ必要でオボロは不必要と考えたか?
御堂もそうだ。途中で銃撃を止めたとはいえ明らかにオボロを殺そうとしていたのは明白。
御堂を雇っていたのがミズシマ研究所だと考えると、カミュだけ逃がしてオボロを殺す理由が解らない。
大体この逃がす、という選択も理解不能だ。ミズシマ側に立って考えれば脱走した実験体を捕獲する事が重要だろう。
御堂を使って動物園から逃がすより、最初から御堂にカミュを捕獲させるなり
動物園と交渉してカミュを引き渡して貰えばいいだろうが!
何故捕らえる、のではなく逃がす?オボロも俺を信用してカミュを預けた。
何故だ?何故こんな回りくどい事をしてまで犯罪者である俺にこの女を預ける?
それに何の意味がある?誰の思惑が絡んでいる?考えろ。必ず理由があるはずだ…。

A 『鎖』という単語について何か心あたりがないか聞く
B オボロという人物について詳しく聞く
C その時、電話がかかってきた(人物指定)
625名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 15:58:30 ID:RYC0xXXo0
Cオボロ
626名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 16:26:27 ID:rSWeba820
プルルルルル・・・

その時、電話が鳴った。
「カミュちゃん、ちょっと待っててね」
俺はにこりと笑って電話の方へ向かう。

「もしもし」
「…カミュは無事か?」
この声は…オボロか!
「あの…どうして僕の」
「そんな似合わない態度を取らなくていい。いつも通りに喋ってくれ」
この男は俺の本性をお見通しって訳か。
「解った、そうさせてもらう。何故俺の家の電話番号を知っている?」
「簡単な事だ。お前がカミュの事を調べていたように、俺もお前の事を知っている」

オボロが俺の事を知っている?カミュの事を俺が調査していた事も…
待て、そういえばミズシマ研究所で作られている実験生命体なんて極秘事項もいい所だ。
そんな情報を何故俺が調べ、知る事が出来た?何故動物園にカミュが囚われている事を
俺如きが容易に知れたんだ?…わざと情報を流させて、俺の元にカミュを匿わせるのが目的だったのか?
「…何もかもお見通しという事か?」
「そういう事だ」
「だったら一つどうしても聞きたい事がある」
「何だ?」
627名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 16:26:59 ID:rSWeba820
「どうして俺なんだ?」
「………」
「なんで俺を使った?何故お前は俺にカミュを預けた?何故俺でなければならないんだ?」
「………」
「俺はお世辞にも自分を真面目な男だとは思っていない。犯罪者でしかないんだ」
「………」
「今にも俺がカミュの事を襲い犯してしまうかもしれないんだぞ?そんな危険を考えなかったのか?」
「……………………」
「答えろッッッ!!俺をここまで振り回した理由を!!」
「………それを答えるのは、あんたの人生にも関わる。それでもいいか?」
「構わないさ」
俺は所詮悪人。襲い犯し殺し殺されるのが日常だ。
今更身の危険がどう変わろうと、知った事か。

「岸田洋一…。あんたは…」
だがその後に続いた一言は、本当に俺の人生を一変させた。

A あんたは能力者だ。偽の記憶を植えつけられている
B あんたはミズシマが作ったクローンだ。本物の岸田洋一じゃない
C あんたも俺達と同じ実験体だ。作られた存在なんだよ
628名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 16:27:46 ID:ATHEJV3G0
CCCCCCCCCCCCCCCCC
629名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 17:00:37 ID:rSWeba820
「あんたも俺達と同じ実験体だ。作られた存在なんだよ」

………………………………………………………………は?
何を言ってるんだ?こいつは?頭が沸いてるのか?
「あんたはミズシマが初期に作ったサンプルの一人なんだ」
………………………電話の向こうで男が何か言っている。
俺はそれを呆けた面で聞いていた。他人から見たらさぞ低脳な顔に見えただろう。

オボロの話によると、俺は十年以上前に起きた
高速実験船バシリスク号大量虐殺事件の犯人の遺伝子から作られた実験体で
サンプルの元になった犯人は船を乗っ取り乗組員と乗客のほとんどを虐殺、
女性は全員強姦したらしい。そんな犯人が死刑執行される前に
極秘に採取しておいた遺伝子からデータを抽出、培養して作られたのが俺だとか。

………俺は馬鹿面をして固まっていた。
そんな話をいきなりされて、平常でいられると思うか?
俺は記憶している。何年何月にこの世に生まれ幼少時代過ごした場所も、
初めて殺した男の顔も、初めて犯した女の顔も、全部覚えている。
その記憶に嘘があるっていうのか、ええ!?
630名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 17:01:08 ID:rSWeba820
「いや、お前は誰も殺しちゃいない」
「…何だと?」
「お前は元のデータの死刑囚の記憶に酔っているだけだ。誰も殺していないし誰も犯していない」
「いい加減にしろ!罪を犯す事こそ悪人の美学だ!それを貴様は否定するってのか?」
「…あんた、自分で自分が丸くなっていると思っていないか?」
「どういう意味だ!?」
「あんたの元のデータの死刑囚はもっと好戦的だったし本性を現した時の口調ももっと汚かったらしい」
「そ、それは…」
「強い女しか犯さないと心に決めていたそうだが、その時点でもう可笑しいんだよ」
「………」
「だからこそ俺はカミュをあんたに預けられたんだ。襲う訳が無いと踏んでいたからな」

訳がわからない。俺は俺ではないのか?俺が俺でないとしたら
俺の記憶は一体…?嘘を付いているとしか思えないが…
「とにかく俺は今からそちらへ向かう。カミュを頼む」
一方的に俺を無残に混乱させた電話は一方的に切られた。
「はは…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

俺は笑った。突然自分の人生を根本から否定され、笑うしかなかった。

A ほどなくして、オボロが家にやって来た
B 俺は俺の人生をもう一度思い出し振り返ってみた
C カミュが俺に声をかけてきた
631名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 17:08:41 ID:j7Gdjnyw0
b
632名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 17:37:15 ID:rSWeba820
俺は元の部屋に戻りオボロが来るまでの間に
PCを立ち上げ、ネットで検索をかけた。
同時に自分の過去の記憶を思い出す。
そういえば俺は今の今まで自分が過去に犯した犯罪の場所を
振り返った事がまるでなかった。中にはニュースやワイドショーで
取り上げられるほどの事件も起こしたはずなのに、だ。

平成○○年………俺が3人の女を監禁し、三日三晩犯したあげく
全員バラバラにして殺した。その場所は…この辺りだ。
モニターに地図が写される。そこには…
…???なんだこれは?警察署が立っていた。
まさか。俺が女を監禁したのは小さいバラック小屋だ。
警察署など近くにある訳がない!!この警察署が立てられたのは…昭和△△年!?
俺が事件を起こす数十年も前からこの場所には警察署が!?

そんな、そんなはずはない!だったらあの事件はどうだ?
平成□□年に俺が起こした雑居ビル立てこもり虐殺事件だ。
俺はあの事件で善良な人間の振りをして20人もの人間を虐殺した。
これはニュースにもなったしマスコミを騒がせる大事件になったはずだ。
ビルの名前に月日まではっきり覚えている。これで打ち込んで検索をかけてやる。

検索結果が出た。俺はそれを凝視した。………!?
「馬鹿なッ!!」
確かに事件はあった。ビルの名前も表示された。だがこれは…。
『雑居ビル連続爆破事件、犯人の金森弥太郎を逮捕』
何だこれは!?誰だこいつはッ!?俺はビルを『爆破』なんてしていない!
こんな顔のこんな名前の犯人など面識も無い!!全く関わりの無い出来事だ!!
633名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 17:37:47 ID:rSWeba820
その後も俺は記憶を頼りに検索するが、俺の記憶の中で起きた事件は
実際には全くの他人のした犯罪か、事件を起こした場所に矛盾がある等して
全て否定されてしまったのだ…。
「じゃあ、俺は本当に何もしていないのか…?」

A オボロが家にやってきた
B その時メールが届いた。差出人不明
C 家の外が騒がしい。何かあったのか?
634名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 17:49:00 ID:1Ljki6MaO
A
635名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 19:37:23 ID:rSWeba820
ピンポーン
玄関のインターホンが鳴り響く。誰かなんて見なくても解る。
「…オボロか?」
「そうだ」
ドアを開け、奴を迎え入れる。
「カミュは無事か?」
「向こうにいる」
オボロは部屋の奥に入っていった。

「オボロ兄さま!」
「カミュ!気が付いたんだな!」
二人は抱き合って感動の再開としゃれこんでいる。
俺はそれを冷めた目で見つめていた。いや、腹が立っていた。
今すぐこの場で二人ともくびり殺して自殺してやりたくなるような
衝動的な怒りがこみ上げてきたが、俺は抑えた。感情は殺す。冷静になる。
そして心は冷静にしたまま俺は二人に近寄り…一気にオボロの胸倉を掴み上げた。

「答えろ。さっきの話、あれは真実なのか?」
カミュの前だがもう体裁を取り繕う必要も無い。
「ああ、事実だ」
オボロも胸倉を掴まれたまま顔色一つ変えず答える。
「岸田さん、どうしたの?」
「カミュ、少し黙っていてくれ」
オボロは俺の手を振り払い、さらに話し始めた。
636名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 19:37:54 ID:rSWeba820
「自分の記憶に矛盾がある事に気付いたか?」
「……ああ、悔しいがその通りだ」
俺の人生、犯罪歴、美学が全て打ち砕かれてしまった。
普通の精神を持つ人間なら自分が全く罪を犯していない事を
当然だと思いこそすれ、わざわざ喜んだりはしないだろう。
だが、俺は悪人だ。自分が悪である事に誇りを持ち
罪を犯す事に喜びを感じる。それを否定されるのは死んだのと同じ事だった。

「お前も自分の記憶が偽りの物だと気付いたのか?」
「そうだ。だから俺は脱走を決意した。カミュと一緒にな」
「…俺が作られた理由はなんだ?」
目の前の二人も俺も全てミズシマ博士が作った実験体だというのなら、
俺にだって作られた理由があるはずだ。
「それは岸田、お前だけじゃない。これから全てのサンプルに聞かれるであろう質問だな」
「どういう意味だ?」
「そして全てのサンプルに同じ答えを返さねばならない」

A ミズシマの作った遺伝子を人から人へ拡散するのが目的だ
B もうすぐ『人間狩り』が始まる。それを止めるのが目的だ
C 殺人者の遺伝子を集め、戦闘に特化した怪物を作るのが目的だ
637名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 19:39:29 ID:mqrq9ClO0
A
638名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 20:35:53 ID:rSWeba820
「ミズシマの作った遺伝子を人から人へ拡散するのが目的だ」
「拡散、だと?」
「そうだ、ミズシマが作った遺伝子には二種類ある」
「一つはカミュやオボロ兄さまみたいな動物や鳥類と人間の遺伝子を掛け合わせるタイプ」
「もう一つは岸田のような外見上は普通の人間と同じタイプだ」
オボロの話によると、動物の遺伝子と掛け合わせるタイプは
獣の生命力や防疫力、肉体強化を図るのが目的だったが
やはり耳や羽根や尻尾などの外見上に人ならざる箇所が残ってしまう。

俺の体に流れている遺伝子は、すぐには効果が訪れず
数年をかけて力を発揮するらしい。この遺伝子は
性交をすれば感染し、例えばこの遺伝子を持つ男性が女性とセックスすれば
精子を伝って女性にも遺伝子が混ざり、当然これで妊娠すれば生まれる子供にも遺伝子は含まれる。
俺はそんな遺伝子と凶悪死刑囚の遺伝子を掛け合わせて生まれた実験体らしい。
「この遺伝子を持つ男性が他人と交われば交わるほど遺伝子は散らばっていく」
「そして遺伝子を移された女や生まれた子供が大人になってセックスしても…」
「そういう事だ。何十年もかかるが確実にミズシマの作る遺伝子が世界中に広がっていく」

記憶自体は作られた物でも、性衝動や本能は遺伝子のデータ元の人間の特性を濃く受け継ぐ。
だから最初の遺伝子を広める人物のデータ元は、俺の元データのような強姦魔、
ホストやAV男優に風俗嬢と『不特定の他人と性交する回数が多い』人間から取ったらしい。
遺伝子を気付かせずにバラ巻く最初のサンプル。それが俺だったという事だ。
つまり、俺は『生きていた』のではない。『生かされて』いたにすぎないんだ…!!
「では、俺は常に監視されていたのか?」
「常に、じゃあない。だが監視している者がいるはずだ」
639名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 20:36:23 ID:rSWeba820
「俺の遺伝子は体にどんな効果を与えるんだ?」
「それが解らないんだ。だが、岸田のようなサンプルが活動してもう数年経つ」
「効果が目に見えて現れるのはそろそろだという事か」
「俺はそれを確認する為と、お前のようなサンプル全員に会い注意を促すのが目的なんだ」
オボロ達の遺伝子ですら外見を人間として取り繕う事はできない欠陥がある。
俺の遺伝子にも何か不都合がある可能性があるという事か。そしてそれは発症するまで解らない。

A そういえば、あの時言った『鎖』ってどういう意味だ?
B そんな事を言っていると早速俺の体に異変が起こった!
C そこに他のサンプルが現れた(人物指定)
D 突然ガラスを割り敵が乱入してきた!何者だ?(人物指定)
640名無しさんだよもん:2007/08/27(月) 20:43:17 ID:YEUba9ov0
A
641名無しさんだよもん:2007/08/28(火) 13:58:30 ID:+F8ANlsJ0
「そういえば、あの時言った『鎖』ってどういう意味だ?」
カミュを連れて逃げろ、彼女は大事な『鎖』なんだ!
オボロは俺にカミュを預ける際にこう叫んだ。
この鎖というのが俺は気になっていた。

「その事なんだが……岸田は鎖と聞いて何を連想する?」
「やはり縛る、繋げる、絡みつく、拘束するという辺りか」
「だろうな。俺もそんな感じだ。で、それは置いといてだ」
「何が言いたいんだ?」
「───『糖鎖』という言葉を知っているか?」
糖鎖?砂糖を逆さまにした言葉か?…解らん。
「待ってくれ、今調べる」
俺はまたPCの前に座り糖鎖を検索する。話術や演技の知恵はあっても
こういう知識はないとは…自分が情けねえ!

糖鎖について検索し調べていく。糖鎖とは、
解析が完了したヒトゲノム遺伝子に続く次の生命の設計図として
研究が進められている人間を構成する大事な物質の一つのようだな。
ちなみにDNA、タンパク質、糖鎖。この3つが生命の三大設計図と言われている。
糖鎖はタンパク質や脂質等と結合し、色々な糖質や栄養素を体中に送り込み、
自然治癒力を上げ、60兆個から成す人体細胞全てを覆っている
とにかく生命体になくてはならない重要な物らしい。
人間一人一人の血液型も免疫作用もこの糖鎖により決まっているという。
642名無しさんだよもん:2007/08/28(火) 13:59:20 ID:+F8ANlsJ0
「難しい話だが、遺伝子と同じくらい人体に必要な物なのは解った」
「いや、俺も研究所を脱出する時に少し調べただけに過ぎない」
「それで、この糖鎖とお前の言った『鎖』に何の関係があるんだ?」
「……こっちに来い。カミュ、少し待っててくれ」
オボロは玄関の方へ向かい、俺を呼びつけた。カミュに話したくない事なのか?
「それで、何の話だ」
「──人は生まれる時も、生まれてからもずっと『鎖』に縛られている」
「どういう意味だ?」

「例えばDNA。これが鎖状の形をしているのは知っているだろう?」
「ああ、それぐらいは知っている」
「糖鎖もそうだ。細胞同士を繋げ、絡まっている『鎖』だ」
「だからなんだ?その話とお前の言う『鎖』に何の関係があるんだ!」
「ミズシマ博士はこの『鎖』を引きちぎり、人間を解き放つのが目的だった」
「それは知っている。以前テレビでそんな電波な事をしきりに叫んでいたからな」
「だが、その『鎖』を外したら俺達はもはや人ですらなくなってしまう」
「いい加減にしろ!勿体ぶらずに結論を言ってくれ!!」
俺が怒鳴ると、オボロは真剣な眼差しで言った。
643名無しさんだよもん:2007/08/28(火) 14:00:19 ID:+F8ANlsJ0
「カミュを守って、いや助けてほしい」
「なんだと?」
「カミュは──」

A ミズシマ遺伝子を無効化する抗体を持っている。人を人のまま繋げられる『鎖』だ
B 糖鎖の影響でタンパク質が変異し、もうすぐ変身してしまう。『鎖』が解かれてしまう
C カミュが死ねばミズシマ遺伝子を持つ全ての人が暴走する。彼女自身が世界の安全を支えている一本の『鎖』なんだ
644名無しさんだよもん:2007/08/28(火) 14:08:01 ID:O3IDEoB0O
悩むがC
645名無しさんだよもん:2007/08/28(火) 18:47:11 ID:fcGJELAN0
「もしカミュが死ねば……俺やお前、それにミズシマ遺伝子を持つ全ての人間が暴走してしまうんだ」
「ぼ、暴走だと?!」
「ああ。詳しくは知らないが、カミュの生命反応とミズシマ遺伝子を持った人間の『糖鎖』とは、密接な関係があるらしい」
「…………」
 あまりの展開に言葉を失ってしまう。
 ……『鎖』とはそんな意味だったのか。
「早い話、俺やお前の正常さとカミュの命は一蓮托生ってことか」
「それだけじゃない。他のミズシマ遺伝子の持ち主や、そいつ等と性交を持った人間やその子供もだ。
 だからカミュを助けてほしい。彼女自身が世界の安全を支えている一本の『鎖』なんだ」
 オボロの懇願。目は真剣そのものだ。
 犯罪者の遺伝子と記憶を持つ俺に、真摯な態度を崩さない。
 それだけカミュを守りたい、助けたいと考えているのだろう。

 と、ここで俺は一つの疑問を思いついた。
 ……いや、思いつかなかったほうが良かったのかも知れない。
 だが思いついた以上、聞かねばならないものだった。
「一つ聞きたい。カミュが死ねばミズシマ遺伝子の持ち主が暴走するって言ったよな」
「ああ」
「少なくともお前達のような、動物や鳥類と掛け合わせたタイプはごく少数だろう」
「珍獣扱いされるぐらいだかな」
「それで、俺のような最初から『ミズシマ遺伝子の拡散』を目的としたタイプはどれくらいいるんだ?」
「……俺達よりいくらか多いのは確かのはずだ」
「仮に他の俺と同じタイプの人間が、既に何人かの女と性交をしてしまったとしても……
 カミュの死で暴走してしまう人間って、世の中全体から見たらごく少数じゃないか?」
646名無しさんだよもん:2007/08/28(火) 18:47:55 ID:fcGJELAN0

「…………」
「…………」

 気まずい沈黙が俺達の間に流れた。
 オボロの目が「何で気が付いたんだよ、このバカ!」と言っているように思える。
「だからって、岸田。世の中のために進んでカミュを死なせて自分も暴走するなんて認められるか?」
「No! 絶対にNoだ!」
 俺はそんなお人好しでは無い。
「もちろん俺もだ。だがお前のように考える人間も当然いる。自分達が助かるために少数を切り捨てようとする連中が」
「そういう連中がカミュの命を狙っているのか?」
「ああ、そういう事だ」
「だとして! 俺達に対抗策はあるのか?! 俺達は圧倒的少数者で厄介者なんだぞ!」
 声を荒げる俺に、オボロは渋い表情を浮かべた。
「……手段が無くはない」
「何だそれは? 勿体ぶらずに言え!」


A 「……計算上、カミュの子供から暴走を無効化できるワクチンが採取できるらしい」
B 「ミズシマ遺伝子を持つ人間の中に、暴走を無効化できるワクチンが採取できる突然変異種がいるらしい」
C 「……カミュを、仮死状態のまま永遠に『死なせない』ようにするんだ」
647名無しさんだよもん:2007/08/28(火) 18:50:50 ID:6LgdJenY0
A
648名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 00:46:24 ID:FdEHNviB0
「……計算上、カミュの子供から暴走を無効化できるワクチンが採取できるらしい」
「子供だと?」
「そうだ。人体は上手くできていて、悪い因子を進化や遺伝情報から取り除くように出来ているのかもしれない」
確かにその子供からワクチンを取り出せばミズシマ遺伝子かに対する安全は保障されるだろう。
問題はまだあるんだが…、それより気になるのは、

「こんなガキに子供だと?」
悪いがカミュはどう見ても13、4歳ぐらいにしか見えんガキだ。
胸だけは発達しているが。子供が子供を生むってのか?
いくら最近は高校や中学でガキを生んだり捨てたりしてる馬鹿女が増えてるとはいえ。
「お前がカミュを連れて研究所から逃げたのはいつだ?」
「半年ほど前だな」
この時点で無理がある。半年でどうやって子供を生む?早産にもほどがあるぞ。
大体、妊娠してるなら今カミュの体型は腹ボテになってなきゃまずいだろうが!

「待ってくれ。岸田、お前は普通の人間の常識で話をしているだろう?」
「…じゃあ、常識的に生まれた子供ではないという事か?」
「それに、カミュの子供という言葉も言葉通りに捉えているだろう?」
「それ以外何が考えられる?」
「まず、俺やカミュ達の肉体は遺伝子工学で培養され作られた」
「俺も作られた存在だというのならば、同じ原理で人工的に作られただろうな」
「鋭いな。俺達は普通の人間の数十倍の勢いで成長し生み出された」
「それを前提に踏まえたとして…、どういう事になるんだ?」

「詳しい説明はこれからするが…、驚かずに聞いてほしい」
「今更これ以上驚く事などあるか!」

A 「実は、既にカミュは子供を生んでいる」
B 「カミュのデータを親元として作られた実験体がいるらしい」
C 「カミュと交わりを持った男がさらに他の女と交わって、それで生まれる子供からもワクチンは採取できる」
649名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 01:05:23 ID:jkNgRkQA0
Aかな
650名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 08:02:45 ID:TJDW78LX0
「実はな……カミュは既に子供を産んでいる」
「なっ!!!」
 これ以上驚く事など無いと、さっきの言葉がもう覆ってしまった。
「カミュが……子供を……」
 思考が混乱する。言葉が続かない。
「カミュは妊娠から出産まで、普通の人間のように10ヶ月も時間を必要としない。
 受精から一週間足らずで、赤ん坊を産むことができる」
「そんな……まさか……」
「お前もだが、俺達が普通じゃない存在なのは十分理解しただろう」
「…………」 
 確かにオボロもカミュも普通の人間じゃない、オボロに言わせれば俺もそうらしいが。
 通常の妊娠から出産までを基準に考えるなど、無意味なのかも知れない。
 だが――それでも――
(カミュが……あのカミュが……何かの冗談だろ)
 モノマネのネタをハズした時に見せた、楽しそうに笑った顔。
 パジャマを着せた時に見せた、安心しきった表情。
 あの無邪気で純粋なカミュに、そんな過去があったなんて――

(ん、待てよ?)
 カミュの過去に少なからぬショックを受けていた時、脳裏にごく素朴な疑問が浮かんだ。
「ちょ、ちょっと待て。カミュは既に子供を産んでいると言ったな」
「ああ」
「おかしいじゃないか。だったら子供からワクチンを作って問題は解決するハズだ」
「…………」
「なのに何故カミュは追われている? 御堂は手を出してくる?」
 そうだ、子供がいるならワクチンが作れる。
 ワクチンをミズシマ遺伝子の持ち主に摂取させれば、それで全てカタがつくはず。
「……実は――

A カミュの子供が、行方不明なんだ」
B カミュの子供は……死んでいるんだ」
C ワクチンが採取できるのは(男・女)の子だが……カミュが産んだのは(女・男)の子なんだ」(組み合わせを指定) 
651名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 08:16:05 ID:p4Q3WTD80
う〜ん、どの選択でどう変化するかさっぱり想像がつかん
Bでいいや
652名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 10:32:42 ID:FdEHNviB0
「カミュの子供は……死んでいるんだ」
「どういう事だ!?」
「その前に俺達が研究所を脱出した後の事を話さなくてはならない」
オボロはさらに語りだした。カミュを助けだしミズシマ研究所から逃げた後の事を。
「俺がカミュを助け出した時には、既に腹は少し膨れていた」
「その時点で誰が父親なのかも解らないのに種付けされてたって訳か」
「人工授精だろうとは思うが、とにかく人間の胎児なら3、4ヶ月といった辺りだろう」
「そこまで成長が早いとは…」
「研究所から離れ追っ手が来ないのを確かめた後、すぐに俺は医者を探した」

だが、ただでさえ羽根を生やしているような異形の者。
しかも僅か数日で成長し出産するなんて非科学的な状況を
まともに受け入れてくれる病院がなかなかあるはずもなく…
「やっとカミュを受け入れてくれる病院を見つけた時は、カミュはもう限界だった」
陣痛がいつ始まってもおかしくないほどカミュは腹が膨れ上がっていたのだ。
「その病院の医者は俺達の姿を見ても何も騒がず、すぐに入院の準備に取り掛かった」
「まさにギリギリセーフだったのか」
「医者は明日にはもう出産するだろうと言い、俺を安心させてくれた。
俺は連日カミュの為に動き回った疲れもあり、そのまま病院のソファーで寝てしまったんだ」

そしてオボロは目を覚ました。が、ここで事件が起こる。
「俺が起きると明らかに様子がおかしかった。嫌な予感がした」
「何があったというんだ?」
「結論から言うと…、カミュが浚われていた」
「病院内の状況はどうなっていたんだ?」

A 病院の医者や看護婦も全て消えていた
B 血と死体だらけだった。何者かに襲撃され、荒らされた跡がある。
C いや、病院そのものが『なかった』。俺はまったく知らない場所で寝ていたんだ
653名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 10:44:28 ID:Fr19pUW70
B
654名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 11:55:58 ID:FdEHNviB0
「病院の中はそれはもう凄まじい事になっていた…」
オボロの話を聞いて俺は絶句した。夜中に目を覚ますと
病院の廊下、病室、ナースルームを問わず血の海。
患者や看護婦は全員殺されていた。
「俺は血相を変え、カミュのいる病室に走った」
オボロはカミュの病室に向かう。だが、そこには誰もいなかった。
目の前にあるのは誰も寝ていないベッド、割られたままのガラス窓、そして…
「――血溜まりの中に捨てられていた、赤ん坊の死体だったんだ…」
「それがカミュの子供だったというのか?何故解る?」
「俺達の体を見れば解るだろう?体のどこかに必ず普通の人間とは違う特徴が出来る」
「ああ、そうだったな」
「その子も背中の肩甲骨の辺りに羽根が少し生えていた。それでカミュの子供だろうと解ったんだ」

その後オボロはカミュが生きていると信じ半年間も一人で捜索を続け、
ミズシマ遺伝子に関する知識、情報、一部の感染者の居場所等を頭に叩き込んだ。
そしてついに動物園にカミュが囚われている事を嗅ぎ付ける。
「後は知っての通りだ。…やっとカミュを助けられた」
「……しかし、無茶苦茶をやるもんだな」
「岸田、お前があの時いてくれたのは偶然だった。だが、俺は必然だと思っている」
「必然だと?」
「何も知らず生きていく俺達実験体が真実を知る為のな」

「ところで、オボロが病院で目が覚めた時には既に皆殺しだったと言ったな?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ何故オボロ、お前は助かったんだ?お前も寝ている内に殺されたかもしれないんじゃないか?」
「敵の立場で考えろ。俺が目を覚ましたら、俺は当然反撃するしカミュの元へすっ飛んでいくだろう?」
「ああ、そして敵の立場で考えればカミュを殺さずに攫うという事はだ、」
「カミュが死ぬと不味いという事を既に知っているという事になるな」
「カミュの子供だけは殺していったというのも、ワクチンが子供から作られるのを知っていたからと予想できる」
「やはりカミュを攫った連中はミズシマの手の者か、カミュの必要性を解っている連中と考えるべきか…」
655名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 11:56:29 ID:FdEHNviB0
「しかしミズシマの関係者だったら、カミュを攫った後研究所にまた戻すはずだ」
「だから気になるんだ。病院でカミュを攫った連中は誰なのか。半年もの間何をしていたのか」
「あの動物園の連中はどうなんだ?本当に見せ物目的だけでカミュを捕まえたと思うか?」
「確かに、言われてみれば…それに、あれから半年も経っている」
「…何か考えがあるようだな」
「俺はカミュを助けるのに必死で動物園の内情までは考えていなかった。だが…」
「だが?」
「半年もあれば、何でもできる。これはあくまで予想に過ぎないが…」

オボロは語りだす。
「これはあくまで予想なんだが…」

A あの動物園に、カミュが産み落とした他の子供がいるのではないか?
B あの動物園は、ミズシマ研究所と裏で繋がっているのではないか?
C あの動物園で、カミュは既に新しく種付けされているのでは?
656名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 12:10:36 ID:Fvl0D8K30
657名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 14:51:20 ID:FdEHNviB0
「あの動物園で、カミュは既にまた妊娠しているのでは?」
「おい、それは今度こそ本当に考えが早すぎるんじゃないか?」
カミュが妊娠すれば常人の数十倍のスピードで成長するのは聞いた。
しかし、そうだとしても今のカミュの腹部は全く膨れてなどいない。
「だから言っただろう、これはあくまで予想だと。だが――」
その時、部屋の奥からカミュが顔を覗かせた。

「うぷ、気持ち悪い…」
「カミュ!どうした!?まさか…岸田ッ!洗面所は?」
「こっちだ!」
オボロはカミュを抱えて洗面所に向かった。まさか…
流し台から吐く声と水を流す音が聞こえる。
「岸田、この辺に病院はあるか?」
「何?ではやはり…」
「ああ、一応見てもらった方がいいだろう」

とはいえ、まともな病院ではカミュのような外見の人が行って
いきなり取り合ってくれるとは思えない。
それに表立った病院だとまた襲撃されるかもしれない。
だが、心配ない。何も問題はないのだ。
「オボロ、今度は俺に任せてくれ」

俺は病院に電話をかける。といっても普通の病院じゃあない。
前にも言ったろう?悪には悪の、裏には裏の繋がりがある。
小さいのではヤクザの指詰めの治療から
大きいのでは臓器ブローカーから買った内臓の移植手術まで、
そういう裏の仕事を生業としている闇医者はいるもんだ。俺はある病院に電話をかけた。

その病院は…
A 霧島診療所。表向きはただの診療所だが裏では絶大な人気を誇る。
B 石原診療所。御堂がいつも世話になっている診療所らしいが…
C 助産師エルルゥ。「何だと!?」その名前を聞いた途端オボロが反応した!
658名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 15:09:27 ID:gtGad9ubO
c
659名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 16:15:55 ID:FdEHNviB0
俺はとある産婦人科に電話をした。
この産婦人科は、所謂訳ありの仕事を裏でやっていて
堕ろせなくほど成長した胎児の堕胎等
犯罪が絡む仕事も請け負う、まさに裏の産婦人科だ。
この婦人科なら子供を産みに来た女がヤクザだろうが犯罪者だろうが
奇形の障害者だろうが、どんな奴でも対応してくれるだろう。
表立った病院ではないので敵に襲われにくいというメリットもある。

ここにエルルゥという凄腕の助産婦がいるらしい。
噂ではどんな難産でも何なくこなし、母体に苦痛を与えず
出産させられる、若くして産婆のスペシャリストと言われるほどだとか。
さらに薬学にも詳しく薬の調合の分野でも有名らしい。
ただ、こんな裏の世界にいながら子供を堕ろす仕事には立ち会わず、
あくまでも出産する仕事しか受けないらしい。
何故これほどの女が表の世界ではなく裏の世界に生きているのか?
とにかく俺はその産婦人科に電話をかける事にした。

「もしもし、○○産婦人科ですか?そちらにエルルゥさんは…」
「何だとッ!?」
突然、オボロが叫んで俺の目の前に詰め寄ってくる。
「あ、はい。解りました…今電話に出すってよ」
「今、エルルゥと言ったな?本当にエルルゥという名前なんだな?」
「ああ、間違いないが」
「そいつは俺達と同じ半獣半人の実験体だ!研究所で名前を聞いた事がある」
「何だとッ!?」
「俺達以外にも研究所から逃げた実験体がいたとはな…」

思わずオボロと同じ事を言ってしまった。
いや、だとすれば何故これだけの腕前を持ちながら
裏の世界に生きているのか納得がいく。カミュやオボロと同じ外見だとしたら、
表の世界では目立ちすぎる。奇異の目で見られすぎるからだ。
しかしこれは好都合だ。オボロ達と同じ実験体なら俺達に快く協力してくれるだろう。
660名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 16:16:30 ID:FdEHNviB0
「もしもし」
「エルルゥさんですか?」
「はい、そうですが…」
ここで俺は裏の仕事の合言葉を言う。
「ルクスゥト」
「!!──────解りました。どのような仕事ですか?」
オボロが俺に換わってくれという身振りを見せる。俺は受話器を渡した。

「ミズシマ遺伝子の実験体の女性がいる。妊娠しているかどうか調べてほしい」
「ミズシマ!?どうしてその名前を知っているのですか?」
「俺はオボロ。お前と同じ実験体の一人だ。いや、逃げてきた仲間という方が正しいか」
「そこまで知っているなんて…」
「今すぐにお前の力が借りたい。同じ実験体として」
「………」
しばらく沈黙の時が続き、エルルゥは言った。

A 解りました。今すぐにこの病院に来てください
B 解りました。私がそちらに伺います
C 待ってください。今どうしても手が離せない用事があるんです
661名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 16:27:52 ID:mIkeb33R0
662名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 19:57:36 ID:TJDW78LX0
「解りました。私がそちらに伺います。それまで女性を安静に寝かせておいて下さい」
「解った、住所は――」
 オボロは俺の家の住所をエルルゥに伝え、電話を切った。

「ほらカミュ。もうすぐお医者さんが来るから」
「うん……ありがとう岸田さん」
 電話の後、俺達はカミュをベッドに寝かせた。
「……すぅ……すぅ」
 疲れていたのだろう。少しするとカミュは穏やかな寝息を立てだす。
 未だに信じられなかった。カミュの幼い寝顔を見ていると。
 彼女が既に一度子供を出産し、しかもその子供は殺され、あまつさえ再び妊娠させられた可能性があるなんて。
663名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 19:58:17 ID:TJDW78LX0

 エルルゥが来るまでの間、俺とオボロは現状を整理するために話し合い始めた。
「……ところで、半年前にカミュが出産した子供を殺し、カミュを浚った連中が現れたんだよな」
「ああ」
「そいつ等はカミュもお前も殺さなかった、だがワクチンの取れる子供は殺した」
「その通りだ」
「そこから考えると、連中は『ミズシマ遺伝子の暴走無力化』を嫌っていると考えられる」
「なるほど」
「だが、カミュ自身は殺さなかった。彼女を殺せばすぐにミズシマ遺伝子は暴走しだすはずなのに」
「確かに…不思議だ」
「ここからは俺の予想だが、カミュを浚った連中は、ミズシマ遺伝子がより広まるのを待っているのではないか?
 十分に世の中にミズシマ遺伝子が広まったところで、カミュを始末して大勢の人間を暴走させる。
 今カミュを殺してしまっても、少数の人間しか暴走しないからだ」
「ならカミュを死なせないように監禁しておくのじゃないか、カミュに新たな子供を妊娠させるなど話があべこべだ」
「俺はカミュを浚った連中と敵対関係にある別の連中が、カミュを浚い返したのだと考える。
 そいつ等はワクチンを作り出すために、動物園の連中にカミュを引き渡した。
 あるいは動物園の連中自身が、カミュを浚った連中と敵対関係にあるのかも知れない。
 こう考えれば色々と辻褄が合うんじゃないか?」
「間違っていないようには聞えるが……」
 俺の話を聞き、オボロは複雑そうなな顔を浮かべる。
 正直なところ、俺だってそうだ。仮説に仮説を重ねて自論を語っているに過ぎない。
 真相に迫りたければ、調べねばならない事が山ほどある。


A しばらくすると、エルルゥが俺の家に来た。
B ……しばらく待ってもエルルゥが来ない、何かあったのか?
C その時、御堂から電話が掛かってきた
664名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 20:05:08 ID:gtGad9ubO
c
665名無しさんだよもん:2007/08/30(木) 05:58:10 ID:Wo6QhzqL0
 俺はオボロと現状について話し合いながら、エルルゥの到着を待った。
 そろそろ到着するころか、そう思ったその時。
「電話? こんな時に一体誰だ?」
 不意に電話のベルが鳴った。
 俺はオボロとの会話を一旦切り上げ、受話器を取る。
『はい、もしもし』
『ゲーック。元気か岸田』
『み、御堂…さん』
 独特の口癖、聞き覚えのある中年ボイス。
 電話の主は御堂だった。
(御堂……コイツの立場もよく分からん)
 御堂はカミュを「逃す」のが組織からの任務だと言っていた。
 それが本当なら、もうコイツの仕事は終わっているはず。
 なのに何故、今さら俺に電話を掛けてきたんだ。
 予定と違って、俺が乱入してきたオボロと協力してカミュを逃したからか?
 ならば何故あの時、オボロをキッチリ仕留めようとしなかったんだ?
 どうしてオボロを狙撃し、そして中途半端に止めたのか?
 単に敵と勘違いしただけだったのか?
 他に理由があるのか?
 俺は御堂の次の言葉を待った。


A 『仕事も終わったし酒でも飲まないか。良い気分だからおごってやるぞ』
B 『予定通りオボロと接触できたか?』よ、予定通りだと?
C 『俺の組織がカミュを引き渡せと言ってるんだが、どうだ?』
666名無しさんだよもん:2007/08/30(木) 07:23:49 ID:2eUu8mRF0
Bだな
岸田さんらしさが失われてきてる
667名無しさんだよもん:2007/08/30(木) 13:24:56 ID:CLhkjgb90
「予定通りオボロと接触できたか?」
予定、予定通りだと?何を言っているんだ?
「御堂さん、予定通りとはどういう意味ですか?」
「お前には黙っていたがな…俺の本当の任務は
『オボロ達と岸田洋一』を合流させる事だったんだよ」
何?では…
「俺がお前と動物園で会ったのは偶然じゃない。
あの日にお前が動物園にカミュを見に行く事も、
オボロがカミュを助けに向かう事も全て知ってたんだよ」
「!!」
「その上で俺はお前をカミュ救出に誘い、
わざと手加減してオボロを狙撃した。オボロとお前を接触させる為にな」

やはり御堂の行動は全て計算づくだったのか!
不自然な出会いや撤退だと思ってはいたが…
「まさかオボロがカミュをお前に預けるとは思わなかったぜ。
そこまで確認して、俺は去った訳だ」
「………………」
「オボロがカミュをお前に預けたままボサッとしてる訳ねえよなあ。
当然、オボロとまた会っているんだろう?それとももうそこにいるんじゃねえか?ケケケ」

「御堂さん、貴方はカミュやオボロ達にとって敵ですか?味方なのですか?」
俺は敢えて会話に答えず、御堂に聞いてみた。
「カミュやオボロ達…だけじゃねえなあ!『お前』も入ってるんだぜ、実験体の岸田さんよ」
な…に!?御堂は俺が実験体だという事も知っている?という事は、
「それらは全て御堂さんに任務を下した組織から聞いた事ですか?」
「ケケケッ!そうだ。任務を受ける前にお前らの事は一通り聞いてある」
「その組織は一体何者なんですか!?」
「ゲーック、そいつぁ守秘義務って奴だ、言う訳にゃあいかねえな!」
668名無しさんだよもん:2007/08/30(木) 13:25:27 ID:CLhkjgb90
糞が!それが解ればこの先の行動の指針も決められそうだったのに!
「…だがこれだけは教えてやる。今俺はお前らにとって敵か味方かと、そう言ったな?」
「はい、言いました」
「答えは、どっちでもねえ。次の任務で味方になるかもしれんし敵に回るかもしれねえ」
「それはどういう意味で…!?」
「俺は仕事として、組織に金を貰い任務を果たしただけだ。
もう前の仕事は終わった。次の命令次第では…」
「協力もするし、殺す事もあるという事ですか」
「そうだ。俺は傭兵だからな…情やエゴで動いたりはしねえ」
御堂のような化物を敵に回したくはない。
だが御堂を操る組織が掴めない以上はどうしようもない…!

「ただ、今の所はお前らが殺されるなんて事はないと思うぜ」
「何故なんですか?」
「俺が命令を受けた組織は、お前達実験体同士を集め、合流させる方向で動いているらしい」
「集める?実験体を殺さず、捕まえもせずに?何の目的で?」
「それは解らねえし、俺にとっちゃどうでもいい事だ。とにかく俺が話せるのはここまでだな」
「そうですか…」
「ただ忘れるなよ。あくまで今の組織はお前を殺さないだけで、他にお前達を狙ってる連中がいるかもしれねえ」
それはいる可能性が大きいだろう。カミュを病院から攫った奴等も気になる。
「案外そういう連中に俺が雇われるかもしれないぜ?ゲッゲッゲ!!」
「御堂さん、笑えない冗談ですよ」
「ケケケ、まあいい。お前とオボロ達が行動を共にしているのを確認できたら
俺はそれでいいんだ。気が向いたらまた連絡してやる。またな」

一方的にかかってきた御堂からの電話が終わった。
だが御堂の謎の行動の理由が解った事と、御堂を雇っている組織が
少なくとも俺やカミュの命を脅かす存在ではない事が解っただけでも収穫というべきか。

A ほどなくしてエルルゥが家に到着した
B 再度電話がかかってきた。御堂やエルルゥではない。誰だ?
C 家の側で叫び声が聞こえた!この声はエルルゥか!?
669名無しさんだよもん
A