第二回 葉鍵板最萌トーナメント Round12!!

このエントリーをはてなブックマークに追加
 こんにちは、姫川琴音です。
 結局私とは結ばれず、あかりさんとフォーリンラブしたっぽい藤田さんですが、
 あれからも何くれとなく目をかけてくれています。
 それはそれでありがたいのですが、あの、なんでしょう、
 この手袋にしてはやたらとごわごわして、そのくせ隙間だらけの赤い物体は。にぎにぎ。
「姫川さん、最初は軽くでいいからね」
 サンドバッグの向こう側から、かつて藤田さんを取り合った間柄の、松原さんが微笑んでいます。
 はぁ、軽くですか。
 自慢じゃありませんが、この姫川琴音、枕より固いものを殴ったことはありません。
 なんで枕なんか殴ったんだとか聞かないでください。私にも色々あるんです。
「がんばれー、琴音ちゃん」
 はいっ、藤田さん。琴音がんばりますっ! 明日のためにその一っ!
 べき。
 なんか鈍い音がしました。なんか手首が変です。角度とか。
 というか、これは曲がってはいけない方向に曲がってませんか!?
「ひっ、姫川さん、大丈夫!?」
 大丈夫じゃありません。めちゃくちゃ痛いです。
 てゆーか私、なんで人気の絶えた神社裏で、こんなことしてるんでしょうか。
 そこに集うブルマ少女二人。はっきり言ってマニアックすぎです。
「だいじょうぶかー、琴音ちゃん」
 もう駄目かも知れません、藤田さん、せめて最後はあなたの胸の中で……。
「姫川さん、ちょっと痛いけど、我慢してね」
 え?
 ぐい。こき。はう!
 ――痛い痛い痛い痛いですっ! なにをするんで……あれ? 直った?
517名無しさんだよもん:2006/02/08(水) 01:08:31 ID:H4IQOpay0
[[LK8-20hafppp-LZ]]
東鳩よりMOONの方が古かった気がしたが
同じ年に出てたのか<<葵>>
518名無しさんだよもん:2006/02/08(水) 01:08:33 ID:q3M2h7vf0
[[LK8-MX.s5.ca-MA]]
>>492の1枚目、かっこよくてかわいいのがツボに入ったので<<松原葵>>に1票。
テーマ曲は鳩1の中では一番好きだったな。
「ごめんね。あと湿布して、テーピングするから、動かないで」
 あの、えぇと、……手際いいですね。
「あはは……私も最初の頃はしょっちゅう怪我してたし、今は自己管理が出来るようになったけど、
 それでも時々やっちゃうから、いつの間にか慣れちゃった。はい、おしまい。ちょっとぐーぱーしてみて」
 ぐー、ぱー。……痛くありません。
「よかった。格闘技ってやっぱり、痛い思いをするから、それでやめちゃう人も多いんだよね……」
 あの、ちょっと、そこで捨てられた子犬みたいな寂しい笑顔をしないで下さい。
 格闘技なんてとんでもない、藤田さんの紹介じゃなかったら、
 金輪際関わりませんと思っていた私が悪者みたいじゃないですか。
「あー、やっぱ琴音ちゃんには、ちょっと無茶だったか。悪りぃな、無理につき合わせちゃって」
 えー、まぁ、それは不向きなのは認めますけど……、
 野蛮で、痛くて、苦しくて、なんでこんなことするのか、さっぱり分かりませんけど……、
「しょうがない。葵ちゃんの練習するか。琴音ちゃん、悪いけどそこで見ててよ」
「あの、こういうことやるんだって、ちゃんと説明しながらやりますから」
 え、あの、私放置プレイですか? ――ま、待ってくださいっ!
「え?」
 み、右が怪我しても、左手がありますっ! 大丈夫ですっ!
「琴音ちゃん……」
 そうですよ、ここで引き下がったら、私怪我しただけのただの馬鹿娘じゃないですか。
 せめてあのサンドバッグにもう一撃くらい加えてやらないと……、
 松原さん? なんですか、そんな急に感動したような瞳で。
「姫川さん、そうだよ! その気迫だよ! 格闘技に大切なのは、技術や身体よりも、そのハートなんだよっ!」
 松原さん、こちらから見て左斜め上方四十五度に、なにかあるのですか?(PC版)
 背景に炎のエフェクトしょって、豪華ですね。
「じゃあ、左手で、ジャブいこうか! 拳はしっかり握って、最初はそーっと、筋肉を慣らしていく感じで、徐々に強く」
 あ、ちょっといい音がしてきました。えい、打つべし、打つべし。
 ……なんか、悪くないです。
 こう手応えとか、体を動かす喜びとか、なんかやたらと嬉しそうな松原さんの笑顔とか……
 ――はっ! ぶるぶる。そんなはずありません。私はノーマルです。
 藤田さんとか場合によっては佐藤さんに恋したりする真っ当な乙女です。
「あ、今のパンチ良かったよ、姫川さん!」
 そ、そうかな?
 ――はっ! なんでしょう、今の私のちょっと馴れ馴れしげな口の利き方は。
 数回会話しただけの間柄なのに、やたらフレンドリーです。
 私は孤独な超能力少女。人との間にはまず心の壁を作るのが大原則です。
 世が世なら汎用○型決戦兵器に乗れていたかも知れないこの私が――、
「そうそう、もうちょっと脇を締めて、真っ直ぐ突き出す感じで!」
 こうですか?
「うんうん!」
 ああ、なんでしょう……この湧き上がる解放感は。これが私の知らなかった、格闘技の世界?
 野蛮で、汗くさくて、痛くて、血だらけで、テレビに映ったらすぐチャンネルを変えてしまっていた、あの――。
 打つべし、打つべし。ううっ、身体が止まりません。
 周りが白くなって、撃ち抜くそのワンポイントしか見えなくなってきたような――これがゼロの領域の向こう側!?
「姫川さん、ちょっとストップ」
 え? なんですか、いまちょっといいとこ……ぜー、はー。
 はっ。いつの間にか息が切れるほどに熱中してしまっていたなんて。
「最初はちょっと飛ばし過ぎちゃうことって、よくあるから。一休み入れようか。
 はい、タオルとスポーツドリンク」
 あ、ありがとうございます。ぜー、はー。ごくごく。ふぅ。落ち着きました。
「……どうだった、かな?」
 えぇと、そんなすがるような目で見ないで下さい。答えにくいじゃないですか。
「あ、ごめんね」
 あぁあだからっ、全開笑顔と寂しげにするのを交互に噛まさないでください。
 今はやりのツンデレですか? って、なに言ってるんでしょう、私。
 デレている松原さんに感じている感情を感じている場合じゃありません。
 おちつけー、わたしー。いやいや、この動悸は運動不足だったせいです。そうに違いありません。
 胸の中にわく喜びは、きっと脳内麻薬がランナーズハイしたせいです。
 まぁ、それも含めて……思ったよりは、悪くなかったですよ。
「本当ですかっ!?」
 ううっ、またそんな素敵に眩しい笑顔を……。
 か、勘違いしないでよねっ、って私がツンデレしてしまいそうなほどに動揺してしまいます。
「いやー、琴音ちゃんもやるもんだなぁ」
 もう、藤田さんまで。ダメですよ、素人をそんなことでのせようったって。
 でもまぁ、その……もう少しだけなら、つき合っても悪くないかもしれません。
 もう少しだけですよ。 
「ほんと!? それじゃあ次はちょっと高度にコークスクリューブローいってみよう! こう、栓抜きを抉りこむように――」
 普通でいいです。普通で。

 もしかしたらこんなことがあったのかもしれません。R版では。
 色々問題もありますけど、あのアニメ、この設定だけで存在価値がありますよね。