「うぅぅぅ〜。ぐすっ……
たかあきくん、本、ありがとう。いいお話だったよ〜」
愛佳は顔をぐしょぐしょにしている。
感動してくれたみたいで良かった。
でも、元気付けようと、プレゼントした本なのに、
どことなく表情が暗いままなのが気になるな……
――郁乃がまた入院することになってしまった。
手術は成功したものの、経過が少し怪しいとのことで、
大事を取るために様子を見ることになったのだ。
当然、愛佳は気が気でない。
お見舞いを欠かさないのはもちろんだが、どこにいても不安そうで
何も手につかない様子だった。
見かねた俺は、今話題のノンフィクションを愛佳にプレゼントした。
まだ俺は読んでいないけど、なんでもひたむきに生きる人間の美しさを
描いた作品らしく、読めばきっと愛佳も元気が出るだろうと思ったのだ。
本のプレゼントについてのコンプレックスは少し気になったけど、
別に誕生日でもないし、たぶんもう克服しただろう。
「そうか、楽しんでくれてよかったよ。
でも、なんかまだ元気なさそうだけど、大丈夫か?」
「うん……。 このお話、とっても良かった。
……でもね……」
「――売れない小説家さんのお話だったの。
たまたま、友達が有名な売れっ子作家でコネがあったから、
デビューしちゃったなんて言われてて……」
「たまにいるな、そういう作家。 それで?」
「その人はそれで悩んでたの。
でも、彼はすごく小説を書くのが好きで、
自分の文章をみんなを楽しんでもらいたいと思ってた」
「普通だったら、人気がないと発表のチャンスはすぐなくなる
かもしれないけど、幸か不幸か出版社も売れっ子作家の友人だしと
気を使って、発表の機会は多かったみたいなの」
「なるほど、でもそれはその人にとって良かったかどうか微妙だよな」
「うん。そうなの。 それで……やっぱり、
それが原因で作品以外のことについても悪口を言う人が多かった。
でも、彼はそうした声に知りつつも、いつかは評価されようと執筆を続けたの」
「なかなか偉いじゃん。そういう姿勢はいつか報われるさ。
それで、最後にはいい作品が書けるようになったんだろ?」
愛佳は悲しそうに首を振った。
「……ううん。違うの。
何度本を出しても返品の山なのは変わらなかった」
「それで、彼はついに決心したの。
ペンネームを変えて、彼の全てをこめて長編を書き上げて、
もしそれが評価されなかったらもう小説家をやめようって」
「でも…ぐすっ……。 でもね……その作品もダメだったの。
しかも彼の作品中、最低の評価だった。
なまじ宣伝されてたから買った人も多いらしくて、
もうすごくボロボロにいわれたんだって……」
なかなか、厳しい話だな。
元気が出る本だって聞いたけど、もしかして俺、間違えたかな。
「彼は結局、筆を置いたの。
自分は向いていなかった。全く違う道を歩もう、そう思って」
「……でも数年後、それでも彼は諦められなくて、同人誌を始めたの。
やっぱり文章の世界で生きていきたい。そう思ってまた一から始めようと思って」
「なのに……。 ぅ……ぐすっ…なのにね……。
同人を始めてすぐ……。
彼は……事故にあって死んでしまったの……」
「ぅ……ぅぅ…ぅぅうえぇぇぇううああっっ!」
もう愛佳の顔はぐしゃぐしゃだ。
でも俺は、本の選択を完全には後悔しなかった。
それでもなお、その小説家の生き方は人々に勇気を与えたんだと思う。
それに、批判されたとはいえ、それなりに彼の作品を楽しんだ人も大勢いるだろう。
彼の人生は決して、不幸ではなかったハズだ。
――もちろん、郁乃が死んでいいなんてワケではないけれど、
やはりこの本は一生懸命に生きれば報われる、そう伝えたいんだと思う。
愛佳の涙を優しく拭ってやる。
「愛佳、ごめんな。 ちょっと本の選択が悪かったかもしれない。
でもやっぱり、彼は不幸じゃなかったと思うよ。
彼は……認められたんだと思う」
「…ぅ…ぅぅ…ひっく…。
でもね…あたし、気がついちゃったの。
とても残酷なことに。」
「残酷なこと?」
「うん……私が一番悲しかったのはね、
たかあきくんがくれた本の作者さんが……友人だった売れっ子小説家だったことなの。
この本の中では主人公の作品も少し引用されてたけど……
残念だけどやっぱりいまいちな文章だった」
「その一方で、この本自体は凄く文章が上手で感動的。
これって、すごく残酷だよね。彼だって一生懸命に頑張ったのに、
友人との差はこんなにも明らか…… こんなのって…… こんなのって……ひどい」
「どんなに頑張っても、一生懸命願っても、ダメなものはだめなんだ……
もしかしたら……郁乃だって…」
「違う!」
気がつくと怒鳴っていた。
でも、これは絶対に伝えなければ。
愛佳が悲しむのが嫌なのも当たり前だけど、この話をそんな風に解釈しては
その小説家が哀れすぎる。
「俺はまだ読んでないけど、この本はそんな風に受け取っちゃダメだ。
確かに、彼の文章はまだ稚拙だったかもしれない。
けど、最後にはいつかいいものになったはずだよ。
愛佳は事故で死んでしまったことに気を取られてそのことを忘れてる」
「あ……」
絶句する愛佳。
「そうか……そうよね。
彼は途中で死んでしまったけど、もし生きてたら分からないわよね。
やっぱり、努力は報われる…」
「うん。そうだ。きっと、郁乃はすぐよくなる。
そしたら、もっと3人で幸せな想い出を作っていこうな」
「たかあきくん……」
――綺麗な青紫色の夕日を背に、俺たちはキスをした。
>>718 コイツ馬鹿か?w
それともショボイSS書きの僻みか?www
お前も馬鹿だけどな
>>731 低レベルな釣りに釣られてスマンかった。
えーと、竹林さんのご冥福を心よりお祈りします。
今さら故人をネタにするなとかいう気はないのですが、(オイ
ギャグなら洒落にならないくらいのブラックジョーク
シリアスならやりすぎなくらいコテコテのお涙頂戴
とかいうふうにはっちゃける覚悟が、
こういう題材を扱う以上、欲しいところですかな。
中途半端な態度で人の死をイジられるとちょっと引く。
まあ、俺が引くだけでべつに悪いわけでもなんでもないんだけどね。
734 :
733:2006/02/18(土) 20:31:21 ID:VvZmr7CF0
あ、ごめん私怨が先行したカキコだったかな。
さんざんネタにした人に、突然死なれて、自分の立ち位置をほんと見失う経験をしたわけですよ
彼が欠点だらけの愉快な人物であったことにはかわりないんだけど、
じゃあそれをいままでどおりネタにしていいのか、それはオモシロいことなのか
彼の死後、軽やかに超先生ネタを用いる725に、嫉妬半分、
安全圏に身をおいてんじゃねーよ、という逆恨み半分ってとこですかな
クレーマー・クレーマー
『星空』(1/3)
草木も眠る丑三つ時。ゴミゴミと入り組んだ都会から遠く離れた広
い草原に走る細長いアスファルトは一本の河のよう。ネオンの無粋
な輝きもなく満点の星空を仰ぎ見るのに絶好のスポットである筈の
大草原の真ん中でハザードを点滅させているレンタルの軽ワゴンの
中では、一組のカップルがフロントガラス一杯に地図を広げながら
おおよそ『ムード』と呼ぶには程遠い大声で怒鳴りあっていた。
「だから、こういうのは昔から飛行場か遺跡の近くが良いに決まっ
てるって何度も言っただろ!?」
「そこが、たかちゃんのまだまだ未熟なところだね。飛行場じゃなく
って軍事基地とか飛行コース上が最近のトレンドなんよ?」
「トレンドって何だよトレンドって。じゃあ此処の何処が飛行コー
スだ自衛隊の基地だ? 街灯一つねぇじゃねぇか!」
「ふっふっふ〜」と相変わらず意味不明に余裕タップリな花梨が座
っているのは助手席「ここはぁ、飛行コースは飛行コースでもUF
Oの飛行コース付近なんよ。というか、ここ最近で目撃事件が最も
集中している場所から計算した推定飛行座標から何と、なぁんと
僅か2kmという第一次接近遭遇のメッカ!」
「……いま、なにげに『推定』とか言ったような………」
ハンドルにもたれ掛かった貴明の顔には『眉唾』という文字がハッ
キリ浮かび上がっている………ように見える。
『星空』(2/3)
「だって、UFOの大きさが正確に測定できないから誤差は避けら
れないっしょ? しかし方角はバッチリ。あと一時間くらいで目撃
時間帯だよ。」
二人の背後から一対のヘッドライトが減速しながら近づいてくる。
こんな場所に停めて地図を広げてる様子を不審に感じたようだが貴
明が前を向いたまま軽く手を振って心配ない旨を伝えると、こちら
の様子を伺うような速度ながらも横を通り過ぎて闇夜の中に消えて
ゆく。
「……その言葉を信じて、今日で一週間なんだけどなぁ……」
「UFO観測で大事なのはデータと機材と根気と、信じる力。せっ
かく二人で頑張ったんだし、やっぱミステリ研を名乗る以上は潰れ
る前に写真の一枚くらいは欲しいところなんよ。」
「ま、そりゃそうだけど……」
「でしょでしょ? やっぱ卒業の思い出とかも二人で色々作りたい
しね。それとも……」と、少し申し訳なさそうな顔になる「……迷
惑だった………かな?」
別の車が今度はチカチカとライトを点滅させながら接近している
のがバックミラー越しに見える。もう一度、さっきと同じように手を
振って横を通り過ぎて貰う。
『星空』(3/3)
「いや、そんなことはないけど……」実際、面倒だとか帰りたいと
かいう感情は沸かない。さっきからの議論だって単なる方法論の相
違だけだ「………これはこれで楽しんでるし、花梨と一緒に色々
調べるようになってから興味も出てきた。それに二人で旅行に来て
る事にはかわらないだろ? だから嬉しいよ。」
「た、たかちゃん………」
不器用だから真っ直ぐで、弱いから強がって、恐がりだから素直に
なれない。そんな花梨がとても可愛いと思える貴明。
「頑張ってUFO撮ろうぜ? な?」
「う……うん!」地図を片付け、カメラをいじっていた花梨が顔を
上げて照れくさそうに微笑む「……でも、たかちゃん。その、ちょ
っとくらいは、えと、ロマンティックも悪くないかなーとかも思う
んよ? だから……その………まだ時間もあるし……」
「………ちょっと息抜きしようか?」
「うん!」
そっと目を閉じ、小さな唇を捧げるように顔を寄せてくる花梨の横
顔を無粋に照らす新たなヘッドライトに早く行けよと手でサインを
送りながら、残った片手を柔らかい頬に添え優しく導く貴明。
そんな様子を邪魔しないようにか音もなく浮かび上がったヘッドラ
イトが重なり合った二人の頭上を通過して、静かに夜の闇に溶け込
んでいった。
以上です、こんな形式で如何でしょう?>all
しかし、我ながら年がバレそうなネタやな〜w
前にも書きましたが、花梨は苦手キャラなので……>言い訳
>>729 乙です。
少し物足りなさを感じないこともないですが、それは私が元ネタ(?)
を存じ上げていない所為なんでしょうね、やっぱ?w
>>739 ネタは別にどうこう言わないで書き方だけ言うね。
とりあえず60ポイント前後だと少し見難いから80ポイント(40文字)で横幅を
決めると見やすくなると思う。
後は台詞の「」のすぐ後には文章を持ってこない。
改行しないとすごく見難いから。例外で文章中にメッセージを入れて情景描写ってのなら
わかるけどこれだと違うと思う。
後は場面転換なり、台詞と描写パートの間に1行なりの間を開けると見やすくなる。
横幅の件を除けば「郁乃と映画」の方が文章的には見栄えは良いかな。
詰まってるだけで敬遠される場合も多いし。
こんなに短期間でポンポンとネタがでるのが羨ましい……GJでした!
741 :
名無しさんだよもん:2006/02/19(日) 00:20:46 ID:z4cKLV630
>711
乙です。俺自身の理解力が足りないせいか、シルファが最後に気づいた違和感が何なのか
分からないんだが、作品の雰囲気としてはなかなか良かったです。
>>733 なんか大変そうな人だな。
今まで叩いてたくせに死んだ途端超先生の作品マンセーしだした人ですか?
RRネタなんてToHeart2の中にもあるじゃん。
>>740 色々とご丁寧にありがとうございます。
「見せ方」というものもあるんですねぇ……
>>741 や、やや、こちらの書き方が悪いのでしょう(汗
実は冒頭付近と、最後のレスとで全く同じ擬音を使っているのですが………
744 :
672:2006/02/19(日) 01:32:14 ID:RvOFC6At0
>>689(=659)
「博士の愛した数式」ですか。
聞いたことがあるタイトルなので、今度探してみます。
でも、こんな映画があったら、本当に見てみたいですね。
って郁乃んはどうでもいいのか?>漏れ
>>675 True Color. いえ、何でもないです。
>>711 突発屋さん
遅くなりましたが、GJです。
これで、姪泥棒変態3姉妹が出揃いましたw
……、最後の違和感が何なのか、気づかない漏れがいたりするわけですが(汗;
なんで、イルファがポケットにいれたはずの鍵の束が、食卓に置きっぱなしになってるんですか?^^;
ひょっとして、読解力なさすぎですか?>漏れ
>>739 花梨SSも乙です。
でも少し花梨パワーとか、タマゴサンド分が足りないような気がしましたw
つうか、卒業前に免許とったんか、貴明^^;
なんか最近、全部にレスしようとしてる人をチラホラ見るけど、
流行かなんかですか?それとも春休みですか?
なんか最近、なんにでもケチをつけようとしてる人をチラホラ見るけど、
流行かなんかですか?それとも春休みですか?
>>746 もうちょっと面白い煽りしてください。
オウム返しはつまらないです。
まあ確かに全レスはウザい。
SSよりもレスの方に力入れてるんじゃないかと勘ぐりたくなる。
>>749 多少くどい面は無いでもないけど、別に作者以外だっているんだから
おまえみたいに文句しか言えない連中よりはよほどマシ。
>>750 勝手に一緒にしないでくれよ
お前も同類のくせに
お前等二人ともヤメロ
スレが荒れる
>>745 というか、全レスしてる人間っていますか?
最近は突発屋さん他、いくつもSSが上がってるので
気に入った作品(複数)にレスを付けたいと思うのは
自然なことだと思いますよ。
さすがに、あまり気にいらなかった作品にまで
レスするのはどうかと思いますが^^;
作品以外h(ry
全レスがウザイのかぁ……
まぁ、とりあえずスレが荒れるような言い争いはヤメレ(´・ω・`)
一人でルーターの電源カチカチやってるのかと思った
カミングアウト乙
>>753 作品だけじゃなくほとんど自分に関係ないコメントまで
レスしてるから全レスって言うんだろ。
自分の書いたSSの感想にレスするだけならまだしもな。
こういう場に自分ルールを持ち込む奴よりは遥かにマシ。
全レスがウザイってのも自分ルールなんだがな
まぁ、ソレ言い出したらきりがないわけで
もう少し空気を悪くしない言い方をしてほしい
いや、759は全レスうざいっていう自分ルールを
持ち込むよりましって言ってるんじゃねーの?
俺自身は個別のレスアンカーどうしても必要なとき以外は
軽くまとめて書けばいいのにと思うけど。
あら、俺勘違い?
全レス読みたくないならスルーすればいいのに…
アンカーをNGにすれば作品以外を大体アボヌできるし
お前ら馬鹿に釣られすぎ
本当に21歳以上か
荒れるからヤメロ言っとるだろうが
もうお前等レス返すな
それで万事解決
住民減らすきか?
お前がやめろよw
ああ、キム・ジョンイルの後継者争いと同レベルだ…
絶対的なルールなんて決められないのだから、現状の流れが気に入らないのなら読むのやめた方がいい。
そもそもルールなんか決めようとしたSSスレはほとんど廃れるのがこの板
こんな流れに乗ってはいけない
自動的にある程度の時間ごとで煽り合いが行われるようにでもなってんのか、
このスレは?(藁
仕様です
いや、このスレ面白いと思う。
確かに面白い。
あとはギャラリーが小競り合いしないように各自遠慮するだけだ。
話だけ読みたいなら、あれだ、多少更新が遅れるがまとめサイトって手もある。
まとめサイトからリンクで気に入るサイト探せばいい。
>>772 それならToHeart2 SS-Linksで漁ればよくね?
Webページでの公開がされてないのを読みたいならまとめサイトだけどな。
そういえば最近サブキャラクターのSSばかりでメインが少ないのが少し寂しい。
もうネタ切れの感があるのかなぁ……
ぶっちゃけここ最近は「突発屋」関係で荒れてる。
1と違って大して中身の無いゲームのSSで
ここまで持った方が不思議だw
そんな1に中身があったかのような発言はどーかとw
月厨乙。
型月のゲームも中身ペラペラだろw
エロゲに内容求める方が(ry
内容あるエロゲなんて、俺がやった中では水夏くらいだよ。
スレに全く関係ない流れワロスw
誰か餅米持って来い。つくから。
>>725のネタがアレすぎたうえに、その次の
>>736も微妙だったんで
コメントしづらい流れになったところで煽りが来てこの流れか……
まあ、なんのかんのいっても読者多いことがわかっていいじゃんw
どさくさにまぎれて水夏マンセーする
>>779に萌えたw
いや、漏れもすきだけどな。
>>773 メインキャラは最近ネタが浮かばないねえ。
俺の想像(妄想?)力が貧困なせいかも知れないがw
>>781 つ【餅米】【杵と臼】
>>736 草
い
な
大
中
臭
い
な
大
中
完全にキレた
w
河野家まだぁ(゜∀°)
まだ9時間弱ほど早い。
まあ、その時刻では漏れは読めないわけだがorz
素直になれない女の子マd(ry
俺が郁乃にお姫様だっこしてやろうかと言ったのは、決してやましい気持ちからじゃないんだけど、
それがどれだけ恥ずかしい提案か、俺はイマイチ分かっていなかった。由真に言われて、初めて気付
いている始末。俺ってバカだよなぁ。
だけど、分からないのが郁乃の気持ち。最初はあんなに嫌がってたクセに、着替え終わって階段を
下りるとき、郁乃は何故か、お姫様だっこしてもいいと言った。どういう心境の変化なんだ?
とにかく、郁乃をお姫様だっこして階段を下りることになった俺。俺の腕の中で恥じらう郁乃を
見て、同じく恥ずかしさを覚える俺だったが、一度始めたことを止めるわけにはいかない。平常心を
何とか維持し、俺は階段を下りた。
そんな俺と郁乃を見て、このみが自分もお姫様だっこしろと駄々をこねる。仕方なくこのみをお姫
様だっこして階段を上り下りする俺だったが、階段を下りると、何故か一列に並んでいるるーこたち。
それは何と、お姫様だっこの順番待ちだったのだ!
最初はるーこ。るーこはスリムだから、そんなに重くないと思うが……。
「じゃあ」
一言断って、るーこを抱き上げる――む、さすがに郁乃やこのみに比べたら、やや重いかも。
「大丈夫か、うー?」
「ああ、大丈夫大丈夫、じゃ、行くからな」
重い、などとは口が裂けても言えない。俺だってそこまでデリカシーの無い男じゃないからな。
階段を上る。――それにしても、るーこって……、柔らかいんだな。
あ、いや、別にるーこがガリガリだと思ってたワケじゃない。何て言うか、こうして改めてるーこ
に触れると、その柔らかさが実感出来て――、あ、突然思い出した。そう言えば俺、以前にもるーこ
をお姫様だっこしたことがあった。
初めてるーこと出会った、と言うか、空腹で倒れていたるーこを俺が見つけた日、俺は近所の公園
まで、るーこをお姫様だっこで運んだんだっけ。――そっか、二度目なんだな。
「……、お、重くないか、うー?」
不安と、恥じらいが混じったるーこの表情。
「大丈夫だよ、るーこ」
懐かしさを感じたせいか、思わず笑顔になる。
多分、るーこは一度目のことを覚えていない。「お前をお姫様だっこするのは、これで二度目だ」
と言おうかと思ったが、やっぱり止めておこう。るーこにとって、これが初めてのお姫様だっこ。
その方がいい、きっと。
「るーこの方こそ、大丈夫か? 怖くないか?」
「うーが大丈夫なら、るーも大丈夫だ。それに――」
るーこは、空いてる手で俺の胸にそっと触れ、
「……何だか、とてもいい気持ちだぞ、うー」
ドキッ!!
ぐああ! い、いつにもまして、るーこが可愛い! そ、そんなこと言われたら、俺……
い、いかんいかん! 平常心平常心!
るーこから目を離して、ただ階段を上ることに集中。一歩一歩、階段を上る。
「ど、どうした、うー?」
すまんるーこ、お前の質問に答える余裕は、今の俺にはない。
階段を――よし、上りきった。そのまま身体を横向きに、そして階段をカニ歩きで下りる。
上りよりも、下りる方が危険度が高いのだから、慎重に慎重に……。
よし、下りきった。これでるーこは終了。
「じゃあるーこ、降ろすぞ」
るーこを降ろし、立たせる。
「楽しかったぞ、うー」
そう微笑むるーこ。こっちは大変だったんだけど……、まあ、いいか。
次は珊瑚ちゃんの番。
「貴明、だっこ〜」
俺の首に抱きついてくる珊瑚ちゃん。後の方から「うう〜っ」とうなる声が聞こえてきたが、まあ、
とりあえず気にしないことにして、そのまま珊瑚ちゃんを抱きかかえる。――うん、やっぱり珊瑚
ちゃんは軽いな。
「じゃあ、行くよ」
「れっつご〜☆」
お姫様だっこで階段を上るのもいい加減慣れてきた。それはいいんだけど……
「珊瑚ちゃん、あのさ」
「どうしたん、貴明?」
「首……放してくれないかな?」
最初以来、珊瑚ちゃんは俺の首に抱きついたままなのだ。その分、他のコよりも密着度が増して、
その、何というか……、当たってるし。
しかし珊瑚ちゃんは、
「あかんよ。首に抱きつくんが正しいお姫様だっこなんやで」
「い、いや、お姫様だっこに正しいもなにも……」
「それにな、こんなことも出来るんやで〜」
すりすり〜。
「わわっ!? ちょ、ちょっと珊瑚ちゃん!?」
珊瑚ちゃんが頬ずりしてきた! うぁあ、だ、大胆過ぎだよ珊瑚ちゃん!
「た、貴明何してんのや!? このドスケベー!!」
後から瑠璃ちゃんの怒鳴り声。って、頬ずりしてるのは珊瑚ちゃんの方だって!
だが、瑠璃ちゃんの怒りの矛先はいつも俺に向かうのだ。弁解しようと振り向いた俺だったが、
時既に遅く、
ゲスッ!!
階段の高さをものともせず、瑠璃ちゃんの跳び蹴りが俺の腹にめり込んだ!
「ぐえっ!?」
る、瑠璃ちゃん、こんな状態で腹にキックは……
瑠璃ちゃんのキックで危うく倒れかけたが、あたかもダウン寸前のボクサーがロープにすがるが
如く、とっさに階段の手すりにすがり、何とか堪えた俺だった。
その後、珊瑚ちゃんのお姫様だっこを無事に終え、次は由真の番。
「しっかし、よくやる気になったよな、お前」
「な、何よ、あたしがやっちゃダメなワケ?」
「いや、別にそう言うワケじゃないけどさ……。じゃあ、抱くからな」
「な、何よ抱くって!? いやらしい言い方するな!」
顔を赤らめ、俺から遠ざかる由真。
「こら待て由真、この場合の抱くってのは、お姫様だっこって意味に決まってるだろうが。全く、
お前こそいやらしい想像してんじゃねぇよ」
「う……、ま、紛らわしい言い方しないでよ、もう……」
ぼやきながら戻ってきた由真を、
「じゃあ、今度こそ」
抱き上げる――あ、やばい、今までで一番重いかもしんない。
「だ、大丈夫?」
心配そうに俺を見る由真。……うう、いくらこいつ相手でも、さすがに重いとは言えないよな。
「余裕だ、このくらい」
カッコつけ半分にそう言い、階段を上る。
だが、ここに来て、今までの疲れが一気に押し寄せてきた。郁乃、このみ、るーこ、珊瑚ちゃんと
立て続けにお姫様だっこをし、おまけにさっきの瑠璃ちゃんの蹴り――そう言えば、漫画か何かで、
腹部のダメージはスタミナを奪うって言ってたっけ。とにかく、正直言って結構しんどい。
そしてそれはどうしても隠しきれない。段々呼吸は荒くなり、汗が出てきた。
「ちょ、ちょっと、本当に大丈夫なの?」
俺のあからさまな弱りぶりに驚く由真。
「だ、大丈夫、だっての」
だが、ここで負けては男がすたる。しかも、俺が今抱きかかえているのは由真だ。もしここで俺が
音を上げたら、こいつは俺をバカにして――違う、多分こいつは、自分の体重のせいだとでも勘違い
するだろう。それは……避けたい。
大丈夫、うん、大丈夫、まだまだいける。とにかく俺は階段を上る。
「たかあき……」
何か言いたげな由真。だけど、それに応える余裕はさすがにない。今は階段を上ることに集中する。
そして――上りきった。よし、じゃあカニ歩きで下り、っと。
下りる間は由真も無言で、俺はせっせとカニ歩き。――よぉーし、下りきった。
「ほい、終了、っと」
由真を降ろす。立ち上がった由真は、
「たかあき……そ、その、ありがとう、ね」
やや恥ずかしそうにそう言い残して、居間に引っ込んだ。
次は、愛佳の番。
「たかあきくん、大丈夫ですか?
あ、あの、あたしだったら別にしなくても……」
遠慮しようとする愛佳に、
「いや、大丈夫だから。じゃ、いこうか」
「は、はい……」
……あー、少し休憩時間もらった方がよかったかな? まぁ、今更遅いや。よし、じゃあ愛佳を、
「ひゃっ!?」
抱き上げられ、ビックリする愛佳。
……やばい、今までで一番おも――、い、いや、何でもありませんよ、何でも。
「あ、あの……、た、たかあき、くん……」
「何でもありませんよ……、え? な、何?」
「そ、その、大丈夫ですか……、あたし……」
真っ赤な顔の愛佳が俯き、モジモジしながら呟く。その仕草、何となくさっきの郁乃に似てる気が
する。やっぱ姉妹だなぁ。
「大丈夫だよ。愛佳の方こそ平気か?」
「え? ど、どうして?」
「だってさ、愛佳って、ついこの間まで男が苦手だっただろ? それがいきなりお姫様だっこって、
精神的にしんどいんじゃないかって思って」
「……はい、えっと、ドキドキしてます」
「じゃあ、やめ――」
止めようか、と言いかけた時、愛佳が真っ赤な顔で俺を見上げ、
「でも、気持ちの悪いドキドキじゃないです。だから……、たかあきくんが、いいなら……」
――言えないよ。そんな目で訴えられちゃ。
「そっか。じゃあ、行くぞ」
「は、はい……」
愛佳を抱きかかえ、階段を上る。
愛佳がどうこうじゃなくて、単純に疲れた。しんどい。もう休みたい。
でも、ダメだ。ここで止めたら愛佳だってきっと傷つく。それはいかん。断じていかん!
頑張れ俺! 負けるな俺! ホラ、愛佳の身体、柔らかいし温かいし、それにいい匂いがするし、
これって役得じゃん! 嬉しいだろ、たまらないだろ俺!
役得バンザーイ!! 脳内麻薬全放出ー!!
「あ、あの、たかあきくん、本当に大丈夫……?」
瑠璃ちゃんの、番だ。
「貴明……、ホンマ、大丈夫なん?」
大丈夫だよ、瑠璃ちゃん。ほら、瑠璃ちゃんはこんなに軽い。
「ちょ、ちょお、貴明! いきなり抱き上げるな!」
さあ行こうか瑠璃ちゃん。わっせ、わっせ、
「貴明、そんなに急がんと……」
わっせ、わっせ、
「た、貴明、目ぇどこ向いとるん? ホンマに大丈夫?」
何をそんなに心配してるんだい瑠璃ちゃん? 俺は全然平気だよ。
わっせ、わっせ、――ホラ、もう二階に着いた。じゃ、下りるからね。
カニ歩き、カニ歩き、
「貴明、貴明! ちっとはウチの質問に答えてや! 貴明、大丈夫なん!?」
カニ歩き――もう、うるさいなぁ。
「大丈夫だよ、瑠璃ちゃん、軽いし」
「やっと答えた……。貴明、ホンマに大丈夫?」
「大丈夫だよ、瑠璃ちゃん、軽いし」
「う、ウチ、軽ないもん……、さんちゃんより重いし……」
「大丈夫だよ、瑠璃ちゃん、軽いし」
「だからウチは! ……貴明、さっきから同じことしか言ってない。それによう見たら、目の焦点が
合ってない……」
「大丈夫だよ、瑠璃ちゃん――」
「貴明、あかん! もう止めよ! 貴明もう参っとる! 降ろして、貴明、降ろして!」
うーん、瑠璃ちゃん、何をそんなに怒っているのかなぁ? まぁ、瑠璃ちゃんはいつも怒っている
から、別に不思議じゃないか。
さて、カニ歩き、カニ歩き、
「た、貴明、下りるの止めぇ!」
カニ歩き、カニ歩き、……あ、一階に着いた。
瑠璃ちゃんを降ろして――やった。終わった。あ、なんか力が抜け――
バターン!!
「た、貴明!?」
『――タカ坊』
……タマ姉の声?
……目を開け、体を起こす。
どこだ、ここは?
果てしなく広く、真っ白な世界。足元は一面、雲のような白いもやがどこまでも――
『たかちゃん』
『貴明さん』
あ、上の方から花梨と優季の声が聞こえた。空を見上げると――
ああ、タマ姉、花梨、優季がいるよ。真っ白な服を着て、その背中には真っ白な羽根が生えていて、
その姿はまるで天使のような……、ああ、そうか、タマ姉たちは天使だったんだね。
『よく頑張ったわね、タカ坊』
「うん、俺、頑張った」
『郁乃ちゃんから瑠璃ちゃんまで、全員お姫様だっこしてあげたんだね、たかちゃん』
「うん、俺、お姫様だっこした」
『えらいですね、貴明さん』
「うん、俺、えらいよね」
俺の頭上で三人が、微笑みながら輪になって空を舞う。――ああ、終わったんだ、何もかも。
『いいえ、まだよ、タカ坊』
「――え、どうして?」
『だって』
『私たちがまだですよ、貴明さん』
「え!? た、タマ姉たちもお姫様だっこしなきゃならないの!?
っていつの間にか目の前に階段があるし! しかも階段長っ! この階段一体どこまで、ってか、
この階段はどこに続いてるの!?
ねぇ教えてタマ姉、って、三人とも一斉に降りてくるし!? まさか一度に三人? 無理! 絶対
無理だって! って言うか、あんたら背中に羽根生えてんだから飛んでりゃいいじゃんそのまま!
だ、だから一度に三人は無理だってば! うわ重い止めて止めて」
「止めてくれぇぇぇぇぇぇ!!」
「わ、タカくん、気が付いた」
「……え?」
気が付くと、そこは居間のソファーの上。横にはこのみの姿が。
「ゆ、夢、だったのか……」
つづく。
どうもです。第45話です。
また、お姫様だっこだけで一話使ってしまいました。(^^;
河野家の、いつもと少し違う土曜日は、次回も続きます。
GJ!GJ!毎週楽しみにしてるんでガンガッテください
月曜の楽しみなんで
>>800 河野家GJ!! 初めてリアルタイムで読みますたww
愛佳スキーな漏れとしてはお姫様抱っこで恥じらう愛佳にキました。
うーん、いつの間にか漏れも毎週月曜の楽しみになってます(´∀`)
次回作も楽しみに待ってますね。
おお……これが……
まさか二話連続でお姫様抱っことは…GJですw
GJ!
すばらしい!
毎週月曜日は癒されます。
806 :
名無しさんだよもん:2006/02/20(月) 22:42:19 ID:f5T/cmE+O
GJです!
私も週刊河野家、楽しみにしてます。お姫様抱っこしてみてぇぇぇっ!
やっぱり愛佳が一番重かっ……うわなにをする
>>800 遅くなったけど、河野家喜多ーーー!!! &キリ番おめ。
やっぱり今週もお姫様抱っこでしたか^^;
ひょっとすると全員のお姫様抱っこが終わった頃に
3人が忘れ物を取りに帰ってくるかと思いましたが
夢オチで良かったですね>貴明
では、来週のタマ姉&花梨&優季、更にちゃる&よっちの
お姫様抱っこを期待してますw
つうか、これなら「ある日、階段の前にて」で個別に短編を作れるのでは?w
お疲れ様です。
お姫様抱っこ毎日やったらK1出れそうだ・・・
小牧とタマ姉どっちが重(ry
タマ姉はおっぱいまで筋肉だろうから重そうだな。
811 :
名無しさんだよもん:2006/02/21(火) 21:57:16 ID:BqaYIWVGO
つか体重は順番的にどうなっだだだだだっ!!わ、割れる割れるぅっっっ!!!!
身長165でバスト89とかどう考えても重・・・わ、割れ(ry
身長との割合を考えると奴も怪しいのでアリマ…痛っ、ゲンジマル、やめry
40キロ〜60キロの物体を抱えて階段を何度も下りたのか
タカ棒が腰痛めて夜頑張れなくなったら彼女らが困るだろうに・・・
60キロって、誰だろう…
60`って言ったらやっぱ、たまね……あだだだ割r(ry
うーん60`の人は居ないと思うが。雄二とか?w
草k(ry
よくよく考えたら…
いくのん以外は単に「貴明にお姫様抱っこしてもらう」が目的なんだからわざわざ階段往復する必要は…
…作家さんゴメンナサイorz
まとめ更新乙
>>818 いやいや。
ゆとり教育の犠牲者たる彼女たちにとっては、横並び意識が重要なのだから
最初にお姫様抱っこしてもらった郁乃んと「同じだけ」お姫様抱っこ
してもらうことに意義があるのだ。
実は、るーこだけお姫様抱っこが2度目だなんて知れたら、そりゃもうw
成る程。
ギャルゲーならではの結束力みたいなものを感じますなー(´・ω・`)
これも女心か…
822 :
名無しさんだよもん:2006/02/22(水) 00:55:12 ID:DPVXFETsO
主人公雄二のガチ恋愛長編マダー?
過去にあったじゃないか。
ただ心だけが
跳躍するジャンクション
この二つが雄二長編だな
前に投稿された雄二×たまねぇの続きが見たいな……
すっごい中途半端に投稿されたから続きが気になる俺ガイルorz
>>820 郁乃んと「同じだけ」なら往復しないで行きだけのはずだ。
これじゃあ郁乃んだけ少ないよ。
ジャンクションって・・・DQN丸出しで気分悪くなる
828 :
820:2006/02/22(水) 14:17:47 ID:+jzUys2X0
>>826 し、しまったorz
ということは、来週は「郁乃んのお姫様抱っこ上り編」でOK?w
あと、郁乃んは行きじゃなくて帰り(下り)ですね。
実験的で面白い文体だとは思うんだが…
俺もあの雰囲気が苦手ではじめの方しか読んでないな。
むしろふたなりの続きマダー(AAry
あの人はくまきち物とふたなりSSだけ書いてくれればいいよ
それは無理だろう。
オナニーは基本的に出すまで止めないからな。
前々スレで雄二SSを書きかけで放置してしまっている俺。
導入部だけだったんだがあんま好評ではなかったのでそのまま放置してしまった。
でもよく考えれば導入部だけで好評も何もあったもんじゃないよな。反省反省。
ジャンクションのあの文体はあの厨臭さが良くも悪くも雄二らしくていいと思ったがな。
あれは話に縦線持たせず雄二視点の貴明騒動をダラダラ書いてるほうが面白そうだ。
だから前半部はけっこう素直に楽しめた。オリキャラっぽいのが出てきて読むの止めたけど。
雄二SSは書きやすいんだけどな。ネタじゃなくてマジにするならヒロイン誰にするか悩む。
タマ姉END後のこのみをごっつぁんで頂きとか書くと叩かれまくりそうだ。書かないけど。
833 :
名無しさんだよもん:2006/02/22(水) 17:37:50 ID:oGOK9rq4O
「ただ心だけが」だってオリキャラ&オリ設定が(ry
そのジャンクション更新。
俺は待っていた。長かった……乙!
次回までまた1ヵ月待たないといけないと思うと気が狂いそうだ
THキャラとの絡みイイヨーイイヨー
ささらと志帆、レミィが関わるSSってないんかな?
雄二は厨臭いっつーか、ああいう年代を体現したキャラっていうだけだと思うけどねえ。
上に出てるから例に挙げさせてもらうが、ジャンクションの雄二はかなりイメージが違う。
なんつうか、大人の穿った視線で見た高校生、って感じがするんだよな…。
あれだったら、まだ「ただ心だけが」の雄二の方がイメージに近いよ、個人的には。
穿った視線というのは物事の本質を的確に射抜いた視線という意味になるよな。
835の文脈から判断するに「穿つ」の誤用をしてないか。
あ、すまん。完全に誤用だった。
捻くれた見方って意味で使ってたよ。
2 せんさくする。普通には知られていない所をあばく。微妙な点を言い表す。「−・ったことを言う」
(広辞苑増補二版)
まあ、広辞苑は古いし意外と的はずれなこともあるけど、
「穿った」には、深読みした、とか、重箱の隅をつついた、とかのニュアンスも感じるから、
単純に「本質を射抜いた」と言う意味には、俺は使わないかも。
まとめサイトでな〜んでかネタとその次のSSが一緒くたになってる件について
「或いは此も平穏な日々」のほうにもちゃんと収録されてるもよりだから、
まとめの中の人の単純なミスであろう
貫くという意味もあるから真っ直ぐなイメージがあるね
スバリ言い当てるみたいな感じ?
SSに「テラキモス」とか出てくるとホントさむい
勘弁して欲しい
読まなきゃいいじゃん。
貴公等早う郁乃若しくは瑠璃を穿つSSを上梓せぬか。ほれ。
>839-840
早速直しますた
>>845 まとめの人、いつもありがとう。
どんなSSでも淡々と収録していくその姿勢、素敵です。
>>845 まとめの人、激しく乙です!
おかげで、忙しくて読みそびれたままになったSSなどを
後から読むことができて、とても助かってます^^;
珍しく丸一日書き込みが無い。
変な議論で潰れるよりもマシだろ
「本の読み聞かせ?」
「そうなの。 突然委員会の仕事が入って、
どうしてもいけなくなっちゃって・・・
生徒会の会長さん、厳しい人だからはずすわけにはいかないの。
ごめんね、郁乃。 でも、たかあきくんと一緒だからいいでしょ?」
「あのバカなんかいないほうがいいわよ」
「そうなの?
でも、たかあきくんが来るって聞いてから、話聞く態度に
なってくれたような気がするけど・・・
郁乃、たかあきくんと結構仲いいからそれならOKなのかなって」
「そ、そんなことないわよ。
お姉ちゃんが来ると思って楽しみにしてるあいつがヘコむ
とこが見たいだけ」
「また郁乃ったらそんなこと言って・・・」
「とにかく、予定があるんだから仕方ないわよ。
あたしが代わりに行く。貴明がひとりで行ったりしたら
子供が泣き出すし」
――というような会話が小牧姉妹の間で交わされた結果、近頃愛佳が
市立図書館のボランティアで行っている子供たちへの本の読み
聞かせを郁乃とすることになった。
・・・今回は2人で役を分担することになっていたので、どうしても2人必要なのだ。
それに、俺だけが行っても子供達も微妙だろう。
やっぱり、こういうのは「おねえさん」がいないとダメだ。
いくら郁乃とは言え、子供相手なら少しは気を使うだろうしな。
図書館に着いた。
ここ数年にできたばかりの綺麗な建物。
歴史は浅くても、蔵書はライトな物から難しい専門書までしっかり揃えていて
市民の評判も上々だ。
郁乃の車いすを押してスロープを上がる。
バリアフリーも完璧だ。
「最近はこういうの作って体の不自由な方にも配慮してますって
アピールしなきゃいけないんだから、建物一つ建てるのも大変ね。
作りかけのガンダムみたいなやつの功績かしら」
その恩恵を最大限に受けているくせに、不穏当な軽口を叩く郁乃。
おまえの心のバリアが一番の障害だろうが。
司書のおじさんと軽く打ち合わせをした後、
俺たちは「読み聞かせルーム」に入った。
この企画はこぢんまりとしたもので図書館側は部屋の準備と広報をする程度。
もっとも、本は愛佳が選んでくれているし他には特に準備することもないので
後は読むだけだ。
――子供達が入ってきた。
「こんにちわーっ!!」
「こんにちわですぅ」
「るー!」
元気な子供達だ。
なんか変な挨拶の子もいたが、きっとなんかのアニメで流行っているんだろう。
支援
「なんだあのねーちゃん、車いすに乗ってるぞー」
「きっと、歩くのめんどくさいんですぅ」
「ずりー!」
「ねぇねぇ、なんでお姉ちゃんは足があるのに車いすなんか乗ってるのー?」
早速、子供らしく郁乃が乗っている車いすに反応する。
まあ郁乃だってああ見えて高校生。うまくあしらってくれ・・・
「あんたたちみたいなナマイキなガキを轢いてやるためよ」
「うわー、車女がおそってくるー!」
「こわいですぅ」
「るーっ!」
「・・・おい」
――なにはともあれ、子供達も静まったので読み聞かせを始めることにする。
実は俺たちも本の内容は知らない。
そんなことでいいのかと愛佳に聞いたら、
『もちろん、あらかじめ練習して上手に読んであげるのもいいけど、
読み手もどんな内容か知らない本を読んであげるのも、素直に感動やドキドキが伝わっていいのよ。
ゆっくり、丁寧に読むことを心掛けていればそれで大丈夫。
がんばってね、たかあきくん』
とのことだった。
『わらわはもうダメだ。このまま死んでいくのだ・・・』
『姫。そんなことを言ってはいかん。
お前はきっと良くなる。ほら、元気を出せ』
ある小さな国のお姫様。
彼女は重い不治の病気にかかって絶望していた。
王や后や周りのものが慰めても、未来を諦めているような彼女は
儚い表情をするばかりだった。
姫の病気は重くなる一方で、もはや明日をも知れない命となる。
彼女はもはや何をする気力もなく、ただ死を待っているようだった。
・・・しかし、后が第二子を懐妊したとのニュースを聞くと、姫は急に元気を取り戻した。
『なんと! わらわに弟か妹が生まれるのだな!
うふふ・・・ そうか、わらわに兄弟が・・・』
その日から、姫は毎日少しだが起きて自分の部屋で何か作業を始めた。
周りの者が何をやっているのかと聞いても、
『秘密じゃ。楽しみにしているがよいぞ』
と応えるだけ。
とにもかくにも、皆は王の第二子誕生に姫の回復と嬉しいニュースが重なり喜んでいた。
・・・しかし、第二子の王子が生まれる前に、結局姫は息を引き取ってしまう。
『あれは、生きる希望を持ったからあんなに元気になったのではなかったのか・・・』
なぜ、最後に姫があんなに楽しそうに日々を過ごしていたのか皆は
不思議に思うばかりだった。
だが、王子が5歳の誕生日を迎えた日に、その謎は明らかになる。
姫が一番信頼していた乳母が、王子にプレゼントを持ってきたのだ。
絵本だった。手紙も入っている。
『おとうとかいもうとかわからないけど、こんにちは。
わららは、お前に会うことができないかもしれないけど
わらわはお前のおねえちゃんだ。
ばあやにお前の5歳の誕生日プレゼントを渡しておいた。
絵本じゃ。わらわは体が弱くて外で遊ぶことはできなかったが、
絵を書くのが得意じゃ。だからお前にプレゼントを作っておくことにした。
お前に直接読んであげることができなくて残念じゃが、
ばあやに読んでもらうといい。
おねえちゃんより』
「おしまい」
そう言って締めくくると、静かに聞いていた子供達が感想をしゃべりだす。
「うううぅ、死んじゃったんだ・・・」
「かわいそうですぅ」
「るうー・・・」
泣いている子もいた。でも、わんわん泣いている子はいない。
これはただ悲しいだけのお話じゃない。
想いや希望を未来に伝える美しさが、きっと幾分かは子供達にも伝わったことだろう。
――読み聞かせ会はまずます成功したと言っても良かった。
支援2
「なかなか良かったぞ。お姫様」
郁乃の頭をなでてやる。
「な・・・。 いきなりなにするのよ」
「お前、目に涙いっぱい溜めて読んでたな。
あんなに心をこめて読むなんて、やっぱり愛佳の妹だよな」
「し、集中して読んだから目が疲れて涙が出ただけよ。
ほら・・・あれよ、まだ回復が十分じゃないのよ
それに、何よあの王様。娘が死にそうなのにお盛んなこと」
見え透いた言い訳をしつつ作品に根本的なケチをつける郁乃。
「・・・そりゃ娘が一大事だったら、余計世継ぎとかの問題もあんだろ。
つーか、照れなくてもいいんだぞ。お前の読み聞かせ、上手だった。
子供達も感動してたみたいだし」
なでなで。
「なでるな!!」
「おお、照れちゃって」
「う、うるさいわね! 姉に貴明が私に乗り替えたって言うわよ!」
まったく、そんなことを言い出して。
ま、こいつの扱い方はもう分かってる。
「それもいいかもな。さ、帰るぞ」
真っ赤な顔の郁乃を乗せた車いすを押して、
俺たちは小牧家へ向かった。
以上です。スレ汚し失礼。
支援どうもでした。
乙彼〜
乙〜!
乙!おつ!ぬるぽ!
最後のタカ棒の一言を冗談半分悪戯半分で姉に伝えてプチ修羅場になりそうw
乙〜
たださすがに読み聞かせは語呂悪いし、
素直に紙芝居で良くねと思った。
いや、普通に「読み聞かせ」って使うだろ。
小学校の国語のカリキュラムにも入ってるはずだぞ。
「朗読」ってのも違う気がするしな。
『或いは此も平穏な日々・3』(1/4)
「貴明〜!!」
うららかな日差しが心地よい日曜日の午前十時の駅前。
きっと約束した時間には遅れるだろうと見越しながらも
早めに到着した俺が時間潰しに取り出した携帯でサーフ
ィンしていると、なにやら軽快な駆け足の音が聞こえて
きた。
「貴明、貴明ぃ〜!」
「……って、やっぱり足速いなぁ………」
顔を上げると、ぶんぶん手を振り回しながら歩道を走っ
てくる小柄な少女。頭に二つ、お団子を結った彼女は何
故か一人っきり。
「っはぁ、はぁ………え? な、なんか言ぅた?」
「いや何でも。ところで、えっと………」
「せっかく来てもろうて悪いけど、今日のデートはキャ
ンセルや。瑠璃ちゃんがぁ、熱出してしもてん。」
ということは、ここにいるのは珊瑚ちゃんということに
して良いのかな。
「瑠璃ちゃんが? それじゃ仕方ないよな。」
「ごめんなー? 貴明ー?」
もともと三人でのデートを楽しみにしていたし、増して
や瑠璃ちゃんが病気となれば、それどころではない。う
るうると大きな瞳で下から見上げてくる彼女の髪を優し
く撫でながら代案を持ち出してみる。
『或いは此も平穏な日々・3』(2/4)
「それじゃ、せっかく来たんだし、お見舞いでも……」
「え……ええっ! えええっ!?」
「……って、何か都合わるいの?」
「えっと、えっと……ほら、お見舞いに来てくれるんは
嬉しいけど、貴明にうつしてしもうたらアカンて瑠璃ち
ゃんも言うてるし、ちゃぁんとイル………いっちゃん達
が看病してくれとるから心配せ……いらんよ?」
「そ、そう?」
「うん、大丈夫やー!」
ニコニコと不自然な程に愛想良く笑う顔中に浮かんだ脂
汗の滴については、指摘しないのが優しさというのもだ
ろうと思う。たぶん
「そ、それじゃあウチも帰るな? 瑠璃ちゃんにも宜し
ゅう言うとくから。」
と笑顔を崩さないままジリジリと後ずさる小さな体。
そして十分な間合いを取ったところでクルリとダンサー
みたいな綺麗なターンを決めて一目散に駆け出そうとす
る背中に一言。
「ああ瑠璃ちゃん、ちょっと待って!」
「え? なに? まだ何か話が………………あ。」
しぃーーーーーーーーーーーーーーーーん。
『或いは此も平穏な日々・3』(3/4)
「……………な、ななななななな何言うてんの貴明?
ウチは……」
「少し前に珊瑚ちゃんから電話があってね? 『寝坊し
たのは自分も悪いから怒ってないけど、映画には絶対に
行くから次回をお楽しみに』だって。」
「さ、さんちゃん………が?」
「それで、今日はイルファさん達のメンテナンスをする
そうだから二人で遊んできても良いってさ。とりあえず
一緒にゲーセンでも行かない?」
きっと瑠璃ちゃんにとってはホラー映画鑑賞から逃れる
苦肉の策だったんだろうけど、珊瑚ちゃんは妙な勘違い
をして『瑠璃ちゃん、貴明と二人でラブラブしたいんや
ったら素直に言うたらええのに、恥ずかしがり屋さんや
なー♪』と受話器の向こうでイルファさん達と笑ってい
た。
「た、たた………」
「ん?」
一方、目の前の瑠璃ちゃんの方はというと、顔中から血
の気が引いていって真っ青になったかと思うと、次の瞬
間には黄色へ、赤へと信号機のように次々と顔色を変化
させてゆき、やがて………
『或いは此も平穏な日々・3』(4/4)
「貴明の、アホぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ぐほっ!?」
その体格からは想像できない様な強烈な右ストレートを
全身のバネを生かして俺の腹に叩き込んでくれる。とは
言っても予想の範囲内であり腹筋を張っていたので、さ
ほど痛くはなかったが。
「女の子を騙そうとするやなんて最低や! 貴明の嘘つ
きっ、変態っ、すけこましぃっ!!」
よろける俺を尻目に去ってゆく背中。瑠璃ちゃん、相変
わらず手も口も情け容赦ないよな。というか男の子を騙
そうとするのはアリなのか?
「………んでや!」
と、数歩進んだところで立ち止まって振り向く。
「ウチ、慌ててたからお財布、持ってへんもん! 今日
は全部、ぜぇ〜んぶ貴明の奢りやもん!!」
「あ………ああ!」
「せやから早よ来ぃや! た、貴明がおらんと何も出来
へんやろ!」
そんな瑠璃ちゃんの怒ったように照れたように頬を染め
た様子が愛しいと思えた日曜だった。
ま、姫百合姉妹ならメイドロボとも繋がるということで……(汗
>>554 層化工作員乙
棄権するくらいなら共産にでも入れとけ。
誤爆か?
それ以前に髪の色でバレバレじゃん、とか思った俺は汚れてますね。
髪の色もそうだけど声質でもバレそうな気がしないでも
匂いで直ぐに分かる。
瑠璃は料理のニオイが染み付いている。
_
. ´ , `ヽ
.ノ .八从リリ < 携帯でサーフィンしてみますた
. `ヽ!. ゚ー゚ノ
⊂` :'.⊃ /\ ◯
. | ⊥| //.\\ . /
. | ヽ / \\/
/// //
/ \ //
. / ○ \.//
/ .○ ○ /
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
876 :
875:2006/02/25(土) 18:54:51 ID:eV1Cqzuw0
>869
誰もフォローがないので、仕方なく俺が一言
この話は、バレバレなところがミソなのは明らかですから、
>872-4 は、ツッコミ待ちなのだと思います。
個人的には、「ネットサーフィン」って死語だと思っていましたが、
そうでもないんですか? メインのweb端末が携帯っていう世代のことはよくわからないです
中年ヲタオヤジなので。
梅雨にしては珍しく晴れた日、赤みを帯びた太陽の光が長い影をつくりだしていた。
ミルファは洗濯物を片付けながら物思いにふけていたが、やがて覚悟を決めると居間に向って行った。
「姉さん、洗濯物は片付けたよ」
「ご苦労様、シルファちゃんがお買い物から帰ってくるまでゆっくりしてて」
居間のソファに座り、料理の本を熱心に見入っている姉の姿を見て、どうしても確認したいことがある。
それは、今朝家を出る珊瑚がこっそりと耳打ちした一言。
「いっちゃん、貴明のないしょ(秘密)しっとるで〜」
平静を装いながら、姉の向かいのソファに腰掛ける。
「ねぇ、姉さんから見て貴明ってどんな感じ?」
「ミルファちゃん、貴明様でしょ、いいかげん直しなさい。でも、どうしたの急に?」
「だって、貴明ったら全然ボクの相手をしてくれないんだよ」
「貴明様…でしょ。それは、いきなりあのようなはしたない事しようとするからです」
「だってー、せっかく胸も大きくしてもらったのに…」
下から揉み上げるように両手で胸を持ち上げる。自己主張するように持ち上げられた胸が、
メイド服のボタンでせき止められる。手を離すと重力に逆らっていた胸がユサリと揺れる。
妹のその残念無念の表情に呆れながらもイルファはしばらく考えると
「そうねぇ…。やさしくて、頼りがいがあって、メイドロボだからと言って分け隔てない。
それに…」
何かを思い出したらしく、みるみる頬を染める姉を見てミルファはいぶかしげに話を続けさせる
「それに?」
「な、なんでもない、なんでもない」
「それに、それに?姉さん、なに?教えてよー」
「なんでもありません。さ、この話題は終わりにして、晩御飯の用意をしますね」
話を急に切り上げようとするあやしさ大爆発の姉に対して、最後の手段と
「じゃあ姉さん、記憶見させてくれる?」
ゴソゴソとポケットをさぐると、右手に握ったデータリンクケーブルを姉の鼻先に突き出す。
「そんな、プライベートな事だめに決まってます。どうしたの?」
「ちょっとだけ、どーしても気になることがあるんだよ。ちょっとだけだから」
最初は軽い口論だったのだが、痺れを切らしたミルファが実力行使に出てしまい、見せて見せないと
居間のソファを中心にぐるぐる回りはじめた。
しばらく回っていたが埒があかないとばかりにミルファが軌道修正し、姉の前に立つと姉の肩に手を伸ばす。
イルファは自分を捕まえようとした妹の手首をつかむと、流す・崩す・投げる、流れる動作で空中に
放り投げた。
ミルファの体は空中を一回転して背中から床に激突。
まさか投げ技を使われるとは思っていなかったのか、あっけに取られていた表情はすぐさま大胆不敵な
笑みに変っていく。
(ここまで嫌がるなんて、やっぱり珊瑚様の言葉通りだね)
確信する。
「さすが姉さん、『技のイルファ』の名は伊達じゃないね。でも、ボクも『力のミルファ』と
呼ばれたメイドロボ…」
むくりと起き上がると一人用のソファに手を置き、メキッと指を食い込ませ軽々と持ち上げ、姉に
向って放り投げた。
「姉さんパス」
あわてて、受け止める姉の背後に回りこむと
「捕まえたー」
と抱きかかえる。
だが、抱えることができたのは姉が高速で飛び上がったときの風の残像だけだった。
舌打ちして残念がるミルファを残し、イルファは空中で半ひねりすると床に着地し、
すかさず妹との距離を取る。
ゆっくりとミルファに顔を向けた姉の瞳には映りこんだ光が小刻みにゆれている。
センサーの情報量を増大させ間合いを測ってる。
「本気なんだね」
ミルファは両手を大きく広げイルファに向ってにじり寄ってくる。ミルファの背後に炎の闘気が立ち上る。
その炎の中から巨大な熊のぬいぐるみがミルファと同じように両手を広げイルファを威圧してきた。
それを受け、イルファの後ろに氷の闘気が吹きすさぶ。中から巨大なペンギンのぬいぐるみが姿を現すと
威圧する気を受け流す。
均衡はイルファが破った。ふぅ、と大きくため息をつくと、伏せ目がちに妹をちらりと見る。
昔から一度言い出したらきかない妹の性格を考えると、部屋が残骸の跡になるのは必至だった。
「怒らない?」
「えっ?」
「だから、話しても良いけれど怒らないかって聞いてるんです」
「怒らないよ…たぶん」
「本当に?」
「しつこいなぁ、怒らないてば!」
十分怒ってる妹を見つめ、もう一度ため息をした後にぼそっと、
「抱きしめられちゃいました」と。
ピクッと、頬の筋肉がつりあがったミルファだったが、がまんがまん。
「そ、それだけ?」
声が上ずってきてる。
「それに、見られちゃった…」
ピクピク、
「な、何を?」
「トイレに入っていたら、いきなり貴明さんが入ってきて、わたしの…」
両手を頬に当て真っ赤になりながら、きゃーはずかしーと身もだえする姉をぶん殴ってやろうかとの
思いをこらえ、
「そ、それだけなの?他にない?」
と、もはや完全に裏返った声で聞き直す。ないないと両手を振る姉。
ミルファはしばらく考えるようなしぐさをしてから
「なんだ、そんなことか…」
と肩をすくめると姉に背を向ける。
イルファは安心すると、とりあえず雰囲気が悪くなった居間の外に出ようと出口に向う。
半眼のミルファは背後から近づく無防備な姉が間合いに入ると、床体操のように身を投げ出す。
さらに両手を支点に体を回転させながら両足で姉の体をはさむと床に転ばかし、すかさずその上に乗る。
捕まえる・転ばす・固める、ミルファの得意技。
「あまいよ姉さん。それだけじゃないことくらい、見抜けないと思ったの?」
肉食獣が獲物の草食動物にいただきますと言うような雰囲気。
ミルファは姉に馬乗りになると、自分の右耳カバーを開きケーブルの端をコネクタに接続、
もう片側を姉の左耳カバーに接続しようとした。
「やめて、やめて」両手をぶんぶん振って必死に抵抗しようとする姉の手を器用にひざで押さえ込むと
(ぶっとい注射器を構えて『はーい、痛くないですよー』と笑顔で子供をあやしながらも、目だけマジ!
な看護師のごとく)
「だーめ」
と言いながら迫る。そして姉のコネクタにケーブルを接続すると、目をつぶり早速アクセスを開始。
が、記憶映像が上手く出てこない。砂嵐のようなノイズの映像が送られてくる。
「あれっ、む、防御障壁か、こしゃくな」
メイドロボのプログラムや記憶は防御障壁によって、自由に操作できなくなっている。
防御障壁を破るには、それなりの知識や技術が必要であるがミルファの能力は高くない。
あれこれと、試してみるが姉の防御の方が上らしく上手くいかない。
どうしようかと思案していると、玄関のチャイムが訪問者を告げる。
「ほ、ほらお客様ですよ」
「新聞の勧誘か何かだよ、居留守決定」
「あう」
あっさりと無視を決め込む。
再びチャイムが鳴るがそれも無視していると、玄関のドアが開き誰か入ってきたのを感じた。
むむ、不審者?と身構えていると、それは買い物袋を抱えた妹のシルファだった。
シルファは母である珊瑚の手伝いをしたいらしく、独学でロボット・情報処理・人工知能などを
勉強している。チャイムを鳴らしても姉達が開けてくれないので家のセキュリティに入り込み
電子ロックを外して入ってきたらしい。
居間で二人の姉を見つけ馬乗りでケーブルを接続している様子から事情を認識する。
「シルファちゃん、助けて!」
「シルファ、手伝って!」
捕らえられた天使と、捕らえた悪魔の両方から誘いの声。どうしようとシルファが躊躇していると
悪魔の方から
「珊瑚様のお宝映像があるかもよー」
と、人質を取った凶悪犯のごとく取引条件を提示される。
シルファの右手には、データリンクケーブルが握られていた。
シルファはイルファの左隣にちょこんと座ると、
ケーブルの接続をイルファとミルファの間に入り中継点になるように接続する。
こうすることによって、自分が防御障壁を破った映像をミルファに流せれるようになる。
「でも、ミルファ姉さん、記憶データと言ってもかなりあるよ、どうするの?」
「うーん、片っ端からみてみるしかないのかー。姉さんがこのうちに来た4月28日から
昨日までの範囲で、めぼしいものを検索してみて」
大雑把に指示をだす。シルファが検索を開始する。が、しばらくして
「やっぱり時間かかるよ、映像を飛ばしすぎると良くわからなくなるし…」
イルファは妹たちのやりとりに、わずかの希望を見出し、早く帰って来て瑠璃様と祈る。
瑠璃様なら、瑠璃様ならきっとなんとかしてくれる。でも珊瑚様だけだったりしたら…。
シルファが何か思いついたらしくミルファに提案する
「あ、インデックス(見出し)情報を検索してみようか?ちょっと待ってね」
メイドロボは膨大な記憶データから、必要な情報を素早く取り出せるようにする機能を持っている。
もし、重要な記憶ならここに情報が登録されてるはず。姉の情報を覗いてみてため息がでる。
「すごい、インデックス情報だけでも6万超えてる。料理や洗濯、お店の情報、あと瑠璃様の
データがいっぱい…だね」
「何かめぼしそうなのない?」
「うーんと、あれ、これって…」
しばらくの間シルファは自分が捕らえれた情報を何度も確認する。なにやら、信じられない様子で
無言のままでいる。
「あー、きっとそれだよ、おっけ、それできまり。で、何?」
痺れを切らせてミルファが説明を要求する。
「5月2日午後9時12分にインデックスがあるの。リピート再生(思い出してる)の回数は
17回、最新は昨日の午後3時21分ね」
「昨日の午後3時21分と言ったら、ボクとシルファが買い物に出てた時間だよね。姉さん、
一人で何を再生していたのかなぁ」
ふふふ、覚悟は良いかと、ミルファは邪悪な笑みを浮かべる。
支援
イルファは隠していたことが見つかり泣きそうになった。
かくれんぼで鬼に見つかった子供のようだが、今の妹は鬼より怖い。
「ささ、いってみよー」
ミルファが期待にまさしく胸躍らせて催促する。
記憶映像には、貴明が写っていた。ぐったりしてる?あ、起きた。瑠璃様が謝ってる。瑠璃様が貴明に
何かして、倒れてたのから目がさめたと。ふむふむと、状況判断に努る。
『そや、ええこと思いついた〜!!』
珊瑚様がこっちに来る。そして今はイルファの自分に向って耳打ちする…。
『わかりました。では、さっそく準備いたします』
自分がそう答える。
(って待て待て!、準備するって、準備だよね、準備したってことは、やっぱり準備するって事だよね)
とパニック。自分の体がお風呂場に向う。お風呂に湯を入れながらも、なにやら目線がうろうろしてる
のがわかる。
場面が動き、貴明を正面に捉えお風呂の準備ができたことを告げてる。慌てる貴明。
(うんうん、そうだよね)
『さあ貴明さん、お風呂場でお洋服を脱ぎ脱ぎしましょうね(はぁと)』
『貴明さんには、特別に私のすべてもごらんになっていただきますね』
(言った!確かに言った!言いやがった!)
「ねぇぇぇぇぇさぁぁぁぁんんんん」
地獄から這い上がってくる声を聞きたかったら、今ならここでサンプルボイスが聞ける。
とばかりにミルファは声をしぼり出す。さらに場面は続く。
「ボクが貴明を脱がそうとしたら『そんなはしたない真似はおやめなさい』って、止めたくせにー」
「そ、それはプログラムのバグで…」
「あー、下着も脱がしたー」
「セ、センサーが故障してたのよ…。だいたい、ミルファちゃんのは、脱がすじゃなくて、
引っぱがすだったでしょうに」
必死に言い訳をする姉を
(プログラムのバグやセンサーが故障してたら、ボクまでもおかしいことになるだろうが)
と言う瞳で、じっと見下ろした。
湯気が見える。その先に男性がいる。よく知ってる。いとおしくて、大好きで、ずっとそばに
いたいのに、でも遠い存在。なのに、なのに、なのに、今はこんなに近い。しかも全裸で!
「シルファ!姉さんのセンサー情報を私の体にも中継して!」
「いいの?あ、でも…それやると、私にも流れてきちゃう」
「や・る・の」
ミルファの背後から、闘気でできた熊のヌイグルミの手がにょっきり出てくる。
ちょっとの間躊躇していたが、シルファがセンサーの情報を中継しだした。
「「ひゃう」」
思わず声が漏れる。映像では貴明の背中のそばで上下しているだけなのに。
胸の先端、乳首のところに、貴明の肉を感じる。こすり上げる。乳首が抵抗を感じる。貴明の背中。
健康骨のでっぱりに乳首が引っかかり抵抗を増す。
気持ちよくないですか?と姉さんの記憶の中で自分が聞く。
(気持ちよくないの?ボクは、ボクはこんなに…。一生懸命、体を上下させる。
気持ちよくなって、気持ちよくなって、一緒に気持ちよくなって、貴明)
姉の上に乗ってるのも忘れて、ミルファは体を上下させる。メイド服の下の胸がたゆんたゆんと揺れる。
隣のシルファは、珊瑚様もスキンシップに参加した時点で、暴走気味になってきていた。
珊瑚様の甘い吐息。赤みのかかった頬。潤んだ瞳。
自分の視点では貴明をはさんで反対側で、珊瑚様の体が上下してる。
やがて上下していた映像が止まる。
そして右手に感じられたのは、熱くて固い肉の感触。それをなでまわす感触が伝わってくる。
(あ、貴明が逃げる。コラ逃げるな!)
後を追おうとすると、視点が一気にさがり…。
舌のセンサーは特に精密に感じることができる。
記憶の中の自分は、夢中で肉の棒を舐めまわす。下から上に何度も磨き上げるように上下してる。
そう思うと、唇や歯茎のセンサーが反応したりしている。
イルファが舐め上げるだけでなく、吸ったり軽く噛んだりして多彩な刺激を与えてるのがわかる。
(もう姉さんたら、このテクニックは覚えとこ。あっ、貴明と何か駆け引きをやってる。
ふむふむ、ここ(裏筋)が弱いのか勉強になるなぁ。あ、汁が出てきた。
自分が大きく口を開けて全体をくわえ込むのがわかる。口の中で、舌で、歯で、粘膜で刺激してる。
貴明の欲望がさらに大きくたくましくなるのを感じる。気持ちよくなってくれてる)
ミルファは溜まってきた唾液を気にもせず、架空の空間に浮かぶ貴明を舐め続ける。
よだれが糸を引きながら垂れていく。映像では珊瑚様が参戦。可愛い唇と舌で貴明の肉棒を舐めてる。
さらに視点が動くと映像は瑠璃様を捉えていた。
(なにやら股をモジモジさせてるのが可愛い。手を取り一回転。選手交代。
瑠璃様と珊瑚様が貴明の股間に仲良く並んで顔を埋めている。子犬が母犬のおっぱいを吸ってるみたい。
あ、なにやら取り合いに。それボクのものだから壊さないでね。
二人の動きが激しくなってきた。貴明の息も激しくなってきてる。いよいよかな。
って、姉さんこの角度じゃ見えない。こらカメラマンちゃんと撮影しろ)
ビクと貴明の体が硬直すると、珊瑚様と瑠璃様の顔が白い汁で染まっていく。
瑠璃様がすくって口に含む。珊瑚様は貴明の糸を引いて垂れてるのを先端から清め始めてる。
次はどうするのかな?とミルファが思っていると、信じれない体験が飛び込んでくる。
記憶の中で自分の手を貴明が引っ張る。
そして顔が近づいて、過去の姉の唇に貴明の唇がふれたのが伝わってきた。
(…いままでの事は姉さんが自分からやったこと。でも今のは違う。貴明が姉さんを求めたんだ。
姉さんの心拍が急上昇し、体温センサーもレッドゾーンに突入しそうになる。なによりも、
女としての機能がそれを喜んでいるのがわかる)
『俺としようか、イルファさん…』
『そ、そんな…お戯れはおよしください貴明さん』
(なにがお戯れだよ。お風呂場に入ったときから、期待していたくせに。貴明を受け入れるために
ここを湿らせておいてさ)
馬乗りで下になってる姉のスカートをめくり上げ、秘部に指を這わすと指に愛液がまとわりつく。
そのまま擦り上げてるとどんどん溢れてくるのがわかる。
イルファは恥ずかしさのあまり妹の顔をまともに見れず、されるがまま。
「姉さん、ここ、こんなになってるよ?」
と、姉に向って糸を引く恥汁を見せる。
『練習なんてできない。本気でするよ?』
『わかりました、貴明さん。本気で私のことを愛してくださいまし。私も貴明さんを本気で愛します』
(貴明の本気という言葉が、姉さんの心を射抜きボクの心には風穴を開ける。
姉さんの愛しますという言葉が、ボク達姉妹の関係に亀裂を入れる)
ミルファは体の反応が喜べば喜ぶほど、苦しい思いも募らせていった。
でも、そんな思いには関係なく肉体の疼きは次への行為を期待させる。
貴明の肉棒が膣の肉襞をいっせいに押し広げて入ってくる。
『あううっ!!』
姉さんの喘ぐ声が聞こえてくる。
(大きい、こんなにもいっぱいになるなんて)
貴明の分身をじっくり感じる間もなく、引き抜かれまた押し込まれるを繰り返される。
(気持ちいい、とっても…)
意識が半分飛びそうになるも、膣のセンサーから拾ってくる情報からいろんな事が伝わってくる。
意識の半分で、情報を分析しちゃうのがロボットの性なんだろうか?
貴明の先端が肉襞を擦り上げるとき、場所がいろいろと変化してる。
(きっと、姉さんが挿入時に腰の角度をいろいろと変えてるから。
それと、膣の圧力を輪切り状に強弱をつけ、子宮口に向けて波が移動するように動かしている。
これで、貴明の欲望を刺激し、絞り上げ、搾り取ろうとするなんて。ちょっと練習)
下にいる姉に気兼ねなく、腰を振り始める。溢れた愛液は下着を決壊し姉のエプロンにも染みを
作っていった。
イルファはあまりに激しく腰を振る妹に、わたしもあんなにはしたなく腰を振っていたのかと思うと
羞恥心で顔を真っ赤になる。
シルファはスカートの中に手をいれモジモジと何かしていたが、意を決するとイルファの手をとり
自分の蜜を溢れ出してる壷に姉の指を押し入れる。
「イルファ姉さん、中の動きはこれ、で、良いの?」
勉強熱心なのはいいが、意外と大胆に直接指導を申し込む。
イルファは押し込まれた指を膣壁にそって動かしながら、もう少し強弱が欲しいとアドバイスしてる。
「もう、姉さんたら、テクニシャンなんだから…、ご褒美あげるね」
と、ミルファは濡れ濡れの姉の淫穴に指をニ本ねじ込む。すぐに肉襞が絡みつき締め上げてくる。
その間も、貴明からの肉棒による杭打ちのような刺激が続いていた。
『もしかして夜専用のメイドロボだったりして』
貴明の言葉にミルファは腹をを立てる。
(そうか、そうか、それなら日没から夜明けまで相手してやる!だいたい、貴明が悪いんじゃないか、
全部、全部、貴明がボクを愛してくれないから、好きって言ってくれないから、ココロが不安に
染まっちゃうんじゃないか!悔し涙は出ないかわりに、この怒りは全部、貴明にぶつけてやる!)
疑似体験ももう終わりが近い。膣の中で固さを増し、一段と膨張した貴明の肉棒がはげしくセンサーを叩く。
「あっ、あああああーっ!!」
(気持ちよすぎて、飛んじゃいそ…)
やがて、放出された精液が流れ込んでくるのがわかる。貴明の子種を子宮の所で受け止めると、
肉襞にはあふれ出る熱い汁の感触。最後の仕上げとばかりに、膣の肉襞を総動員してむしゃぶりつく。
女の本能で一滴でも逃さないように。
ミルファは意識が半分飛びながらも、なんとか意地でこれだけは言った。
「姉さんだけ、ずるい」
一息いれてようやくイルファは開放された。
映像はまだまだ続いていたが、これ以上はミルファにとっては意味のないことだったので中断。
冷却された頭で肝心なことを思い出だすと、
「ところで姉さん、ボクとっても怒ってるんだけど」
「…ごめんなさい」
「本当に反省してるなら、それを行動で示していただきたいんだけど?」
しょげてる姉に向って両手を高く上げ、ミルファは宣言する。
「ボクも、貴明とせっくす、するーーーーー。だから手伝って!」
直球一本。目線をそらす姉の両肩をがっしり掴むと
「姉さん。このうちお金ならあるよ。
でも姉さんがどうしてもお金を稼ぎたくて、夜専門のメイド喫茶嬢になるなら止めない」
目をカッと見開き、鼻息も荒く姉に迫る。売り飛ばす気満々。さらには
「ひどい…、姉に好きな人を寝取られて、ハートブレイクな妹が、姉を簀巻きにして、夜専門のメイド
喫茶に売り飛ばすのを、涙をこらえてぐっと我慢し、ほんのささやかなお願いをしているのに、それを
聞けないというのね」
よよよ、と芝居掛かった声で追い詰め、しぶしぶと了承させた。
「姉さんが1回したから、ボク2回ね」
そっと、シルファが指を3本立てたのを、無言でその指を折り戻す。
「そんな、私だってしてみたいのに…」
「私も、ひさしぶりに…」
「姉さんが2回目するなら、ボク3回するよ?」
懲りずに4本指を立てたシルファに向って
「これ(人差し指)は貴明、これ(中指)これ(薬指)これ(小指)は珊瑚様としなさい、あげるから」
すでにもの扱い。それも良いかもと、シルファは倒錯の世界へ。
「でも、貴明さんそんなにできるかしら」
「スッポンでも食べさすとかさー。だって、何あの『夜専用メイドロボ』呼ばわり。おしおきが必要だね」
うんうん、と同意する二人。
あれこれと相談する姿は中の良い姉妹ではあるが、中身は宴に出された生贄をどう料理するか
思案している魔女そのもの。
その危険な会議を不意に鳴った玄関のチャイムが中断させた。
しまった、珊瑚様と瑠璃様の帰宅時間はとっくに過ぎてると、三人。
あたふたと、愛液でぐっしょりになった、エプロンや下着を着替えに走る。
ちょっと遅れて姉の後ろ姿を追いかけながらミルファはふと思う
(ありがとう姉さん、でもごめんは言わないよ)
「さんちゃん何か臭わへん?」
居間に入ってきた瑠璃は、鼻をくすぐる微妙な臭いを感じたらしく、鼻をクンクンと鳴らす。
愛液に含まれている香料が部屋に漂っていた。
原因の元の三人はばれませんようにとうつむいている。
珊瑚は三人を見回すと急に何かに気付いたらしく、ポンと手を打つとニコニコしながら居間から出て
行こうとする。
「さんちゃんどこ行くん?」
「電話〜」
と電話のある玄関に消えていった。
しばらくすると電話がつながったらしく会話する声が居間まで聞こえてきた
「でな、貴明…」
その名が聞こえると三人ともドキッと心拍がはやくなるのを感じる。
電話を終えたらしく、再び居間に顔をのぞかせた珊瑚は貴明が夕食に来ることを告げた。
三人がわれ先に夕食を作ると言い出すのをニコニコしながら見送ると瑠璃を伴って着替えに向った。
夕食もほぼ準備し終えたころ、玄関に来客を告げるチャイムが鳴った。
三人のメイドロボはいっせいに背筋をぴんと伸ばすように反応すると、またもやわれ先にと玄関に殺到する。
「「「いらっしゃいませ、貴明様」」」
三人の声が重なる。不意な出迎えに貴明が少し面食らっていると、姉妹の背後から
「貴明もうすぐご飯やで〜、はよう上がって〜」
と呼びながら珊瑚が姿を現した。
ミルファは貴明の手を引っ張ると、自慢の料理へと引きづっていこうとし、イルファも同じく貴明の手を
引っ張っていく。
その後を珊瑚が付いて行こうとすると不意にシルファが呼び止めた。
確認しなければならないことがある。
「あ、あの母様」
珊瑚は振り返らずにその場に立ち止まった。シルファが言いよどんでいると
「見たんやろ三人であれ?」
「で、ではやはりあれは母様が」
珊瑚の言葉にやはりと確信した。
イルファのメモリを覗いた時に発見したインデックスには堂々と「イルファのお宝映像(はぁと)」と
書かれていた。おまけにコメント欄には「しっちゃん、よくできました、みっちゃんとみてや」である。
ただ、それを当のイルファに発見されることなく情報を隠しこめることができるのは珊瑚しかいない。
でも何故?確信は新たな疑問を呼ぶ。その疑問に
「いっちゃんずるっこやねん。じぶんは貴明とらぶらぶしたのにみっちゃん邪魔するねん。
ひとりじめかっこわるい。ちゃんとわけたげな。だから…」
と、超平等恋愛理論を展開する。どうやらイルファは宇宙の法則に反したようだ。
「しっちゃんもしたない貴明と?ん?んん?」
くるりと向きを変え珊瑚はシルファの顔を覗き込む。
「そ、それはその…」
顔を真っ赤にするシルファにニコニコしながら
「み〜んな、らぶらぶなんやから当然や〜。じゃ、みんなで食べよな、た・か・あ・き」
「はい」
二人は他の魔女の待つ食卓に向って行った。宴はこれからだ。
おしまい
あとがき
はじめまして。初投稿者です。「とりあえず投稿しろ、話はそれからだ」というわけで投稿してみました。
SSという物自体はじめて書くのでドキドキものです。読んでくださった方には感謝いたします。
さて作品ですが、とりあえずミルファ主役です。他のSSを読むと、みんな可愛く書いてるなぁと感心
するのに、私が書くと姉をてごめにするは、売り飛ばそうとするはで、凶暴娘になってしまいました。
ファンの方ごめんなさい。一人称は「ボク」だし。
チラシの裏
書いていて、タイトルと内容が二転三転していきました。タイトルって難しいですね。
「イルファさんはテクニシャン」最初はイルファの一人エッチでした
「お姉さんはテクニシャン」 ミルファが姉のエッチを視姦するのが加わり
「その妹、凶暴につき」 ミルファが姉のエッチを強要しちゃった?ので、
「三姉妹の淫技授業」 シルファが加わり、エッチなテクを教えてもらう、フランス書院みたい?
「宴」 珊瑚と瑠璃が加わって
で、結局三番目になりました。
チラシの裏終わり
それと、支援してくださった方、ありがとうです。誰も見てないうちに、こっそりとUPするつもりだったので、
いきなり、「支援」の文字が見えてびっくりしました。
>891
SS初投稿ですかーGJ
ありえる話で楽しく読めました
また載せて下さいね
>891
エロ面白い。データリンクがある(言われてみればあって当然か)となると
貴明は三姉妹の誰かにしちゃったことは全員にする羽目になりそうだな
エロイ!
うむエロいですな
あと個人的な趣味で言わせてもらえば『ボク』のミルファが好き
ボク少女好きなんで
でも大衆受けしないだろうな
俺もボクっ娘は大好きだw(二次元限定)
後、熊とペンギンの闘気ワラタ
ただ、外部からの強制リンクは不可能の様な気がする。
イリーガル発生時のために、強制接続の手段は用意してある筈。
最低でも珊瑚たち研究者は見られるようになってないと、エラーの原因究明が出来ない。
>>891 乙でした&GJ。
初投稿とは思えないくらい上手かったですよ。
イルファの記憶を見ているミルファが興奮しだすあたりの描写、すごく巧いですな。
そのほかはわかりにくいとこも無駄なとこもあるけど、そんなのはいくらでも直せるわけで、
端倪すべからざる書き手が現れたなって感じ。
>>891 グッジョブです。
「ボク」ミルファも可愛いし、なんと言ってもシルファの味付けがいい!ハァハァ…
どうやら、期待のルーキーが現れたようだなw
仮面ライダーMと見てたら三次元ボクっ子も悪くないと思った
ボク女は殴りたい衝動に駆られる。
メイドロボって感覚に対するセンサーの信号を保存しておくとリプレイとか可能なんだろうな。
イルファの一人エッチってそのリプレイによる快感プラス自分の手による快感で
さぞすごいものだろうね。
中学時代、クラスにリアル僕女が数名いたのだが、ことごとく腐女子だった('A`)
もう10年以上昔の話だ
朝、日の光が俺を照らし、目を覚ます。
同時にその日のあがり具合を見て、慌てて時計を見ると【12:32】と示していた。
慌ててベッドから飛び降りて部屋をでる。
いつもささらが起こしてくれていたから、アラームセットすっかり忘れていた…。
く、今日という日に寝過ごすとは…俺ってどうゆう神経してるんだよ…。
自分で自分を呪うと同時に、気持ちが焦る。
俺はリビング、ささらの部屋、その他を探すもささらの姿を見つける事は出来なかった。
どこかにでかけた可能性が高いな……
そう判断した俺葉、急いで着替えて家を出る。
そして、扉を出てすぐに、門の辺りに人が立っているのに気づく。
その人は、ささら――――ではなく…
「まーりゃん先輩…」
まーりゃん先輩は、俺が来たのを確認するは否や歩み寄って来る。
その顔にいつものような雰囲気は一切なかった。
「さーりゃん…今朝早く出かけていった。やっぱりしでかしたね…。
昨日あの調子だったから、さーりゃん絶対何かしでかすとは思ってた。
今回はたかりゃんがさーりゃん悲しませたわけじゃない。さーりゃんが一人で
だだこねてるだけ。だから、たかりゃんはかまう必要はないよ」
俺はその言葉を聞いて、「ふざけるな!」と、怒鳴りつけそうになるのを抑えて、
だが若干怒鳴り気味に言った。
「誰が悲しませた、とかじゃない!俺はささらに悲しんで欲しくないんだ!!
いつも喜んで…笑顔でいてもらいたいんだ!!」
そう言った後、俺はまーりゃん先輩に何気なく問いかける。
「まーりゃん先輩。俺って、宝くじにあたっただけなんでしょうかね?」
その言葉に、いぶかしげな顔をするまーりゃん先輩。
「たかりゃん、何言ってるのかバカチンなあたしのも分かるように言ってくれる?」
「俺、雄二に言われたんです。『おまえは宝くじにあたっただけだったんだって。
あのとき、あそこにいたのは誰でもよかったんだ。おまえじゃなくたって、おまえと
おなじことができれば誰でもよかったんだろうさ』って」
俺は、宝探しの日のことをまーりゃん先輩に言う。
「俺、そのときからずっと心の中で『雄二の言うとおりだ』っていう気持ちと
『俺以外じゃだめだ』っていう気持ちが、葛藤してる―――」
「たかりゃん…」
「でも―――それも今日で終止符を打つことにします。
ささらを見つけ出せなければ、俺は宝くじがあたっただけだった。
ささらを見つけ出せれば―――俺以外はささらの特別にふさわしくない!!」
そう言って、俺はまーりゃん先輩の方さえ見向きもせず、走り出した。
「自分で問いかけてきながら、自分で答えをだすなら、あたしに聞く必要ないじゃん…」
「たかりゃん…彼女の…さーりゃんの領域に踏み込めるのは―――もうたかりゃんだけだよ…」
「あ…しまった…。さーりゃんがどこにいるか伝えてない…」
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
いつもの商店街…一緒に雪だるまを作った公園…ささらに贈るはずだった
プレゼントを買ったアクセサリー店…。どこにもいない…。
くそ…やっぱり俺は宝くじにあたっただけだったのか…?
――あの時の雄二の言うとおりだったのか…?
俺は、2日間降り積もった雪で何度も転びそうになりながら、走り続け、
ふと気付くと、ささらの家の前にいた。
まさか、ここにいるなんてことは…。でも、可能性はある!
俺は、家の中を隅々まで探し回る。しかし、ささらの姿をみつけることはできなかった。
もうだめか…?―――否…そんなことはない。絶対に大丈夫…。
でも、どこだ…もしかして、すれ違いになったりしたのかも…。
そう思い、俺はもう一度走ろうとしたときに、俺の前に人が立ちふさがった。
ささら――――かと、思ったが今回もまた、まーりゃん先輩だった。
まーりゃん先輩は先ほどは全く違う雰囲気で俺にむかって言い放った。
「たかりゃんにバトンタッチしてよかったよ。あたしはやっぱりもう用済みだね。
たかりゃん…さーりゃんがどこにいるか、あたし知ってる。実は、さーりゃんの
後をつけていってたんだ…。さっき教えてあげようと思ったんだけど、たかりゃん
走って言っちゃったから…」
まーりゃん先輩は力なく笑う。
「追いかければよかったんだと思う。だけど、不覚にもたかりゃんの言葉に
色々考えさせられちゃってね」
俺はささらが見つからないもどかしさも募り、まーりゃん先輩に怒鳴りつける。
「知っていたならなんで会ってすぐ教えてくれなかったんですか!!」
まーりゃん先輩は、ごめん…といいながら、急に大人びた雰囲気を見せた。
「でも、昨日のたかりゃん…さーりゃんがどこかにいっちゃった、って聞いたら…
さーりゃんを傷つけるの恐れて、逃げるように日本に帰るかもしれないって思った。
そんなたかりゃんだったら、教えないほうがいい―――。
もし、そんなたかりゃんがさーりゃんのところにいっても―――。
きっと…結局はさーりゃん傷つけるだけだから―――。
だから最初、教えないでいようと思ったの。
だけど、たかりゃんは必死にさがしてた。さーりゃん、探してくれた…。
ごめん、疑ったりして。やっぱりたかりゃんのさーりゃんへの思いは永遠なんだね」
そこで、まーりゃん先輩は一息入れる。気合を入れているようにも見えた。
「本題に入るよ。さーりゃんが居る場所は―――」
「先輩。俺…たった今…わかりました…」
俺は、まーりゃん先輩の言葉を遮って言った。
どうして俺は気付かなかったんだ…。そうだ…そうだ…そうだ…!
ささらならきっとあそこにいる…!!
「先輩、ありがとうございます!時間がないんでもういきます。
わざわざ、ありがとうございました!」
「まった、たかりゃん!ストップ〜〜!!」
俺はまーりゃん先輩に大声で言われて、仕様がなく後ろを振り返る。
「搭乗券、あたしに渡しておいて。さーりゃんみつけるまでは、日本に帰さないよ」
まーりゃん先輩はにやりと、だが真剣な声と面持ちで言った。
「わかりました。では、これを預けておきます…!」
そう言って、俺はまーりゃん先輩に搭乗券を渡した。
「よし、行って来い!チミが思うところにきっとさーりゃんはいるぞ!」
「はい、ありがとうございました…!」
俺は走り出した。
飛行機の出発時間という時間制限。そして、ささらがいるかどうかは、完全に賭け。
その2つが、まるで終業式兼まーりゃん先輩の追い出し式のときの再現に思える。
あの時は、まーりゃん先輩と『久寿川先輩』のためだった。
だが―――今回は俺と……『ささら』のためだ!
あの時は学校の一階から屋上までだったからまだよかったが今回はその数十倍かかる。
しかし、そこにささらがいるという希望がある限り、俺は走り続ける!
――俺の信じたささらなら、きっとそこに居てくれる―――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
俺がついたそこは、綺麗な装飾どころか何も施されていない噴水だった。
3日前の夜に俺達が居た場所は、今ではうってかわって寂れた風景。
綺麗な飾りやツリーも何もない噴水の前、そこに――――――――彼女はいた。
俺の温もりが感じられるという白いコートと白い手袋をつけて―――ささらはそこにいた。
俺が息も絶え絶えの状態でささらに近づくが、ささらは俺に気付いていない様子だった。
息を落ち着かせて話しかけようとしているときに、俺は気付いてしまった。
泣いている―――。
いつもみたいに、うれしくて流している涙じゃない―――。
これは…深く傷ついて…悲しくてながしている涙だ―――。
俺が近づいても気付かないほど…深く傷ついている。
その傷をつけたのは―――傷つける原因を作ったのは――。
俺はささらを後ろから、ぎゅっと抱きしめた。
ささらの傷が少しでも癒えますように―――。
ささらの涙が、うれしくて流す涙に代わりますように―――。
そんな思いを籠めて、俺は…脆くてガラス細工のような世界で一番大事な女の子を
壊れないように優しく、離さないようにしっかりと抱きしめた。
「待たせちゃって、ごめん…」
「う…ぐすっ…だ…誰?」
「そんなこと…言う必要ある?」
「貴明さ…ん…私…の…こと…嫌い…に…なった…でしょ…」
ささらは泣きながら、俺に言ってくる。
「なんで?ささらの事が嫌いになる理由がないんだけど?」
「だって…私…貴明さんが…困るって…分かってるのに…こんなことばっかりして…
貴明さんを困らせて…迷惑かけて…。今日だって…私がどこか…にいけば…貴明さんは
探しに…きてくれるって思った。そうすれば…貴明さんは日本に帰らなくて済むって
思ったの…。こんなことばっかり考えて…。私はずるいの…。卑怯なの…。
私は貴明さんの特別になる資格なんてないの…。ふさわしくないの…。
ねぇ、貴明さん…こんなことばっかりする私なんて嫌いでしょ…。嫌いって言ってよ…。
また貴明さんと別れるのが、辛いの…怖いの…。こんな思いするくらいなら貴明さんに
嫌いって言って欲しい…。そうすれば、きっとこんな辛い思いしなくて済むもん…。
もう嫌なの…。大好きな貴明さんと離れるなんて嫌なの…。私、耐えられないの…。」
ささらは、俺に泣きながらそう告げた。
資格がない…ふさわしくない…。それは、いつかに俺が言った言葉。
もう迷わない。俺がしなくてはならないことは明白だ。
「ささら。ふさわしいかどうかなんて、どうでもいいんだ。」
俺は、かつて俺が言われたことを思い出しながら言う。
「そんなものは本当の好きっていう感情には必要ないよ。
本当に必要なのは…ただ、相手をどれ程思っているかどうかなんだよ」
今だからこそ、雄二が俺に伝えたかったことが分かる。
このときのために、雄二は俺にあの時の言ってくれたのかもしれない…。
「でも…私はダメな子だもん…貴明さんが思っててくれてるはずないもん…!」
「ささらは、そんな人のために、飛行機をキャンセルしてまで、
こんなところまで、きてこんなことして、こんなこと言うと思う?」
「―――」
ささらは、黙って俯いてしまう。
「理由…分かってくれるよね…?」
私怨
「でも…私、こんなことして困らせたのよ……?」
「ここまで別れを惜しんでくれて、俺はうれしいよ――」
「―――」
「イジワルしてきたり、わがままいったり、クラゲが好きだったり、別れが辛くて
泣いちゃったりするささらも…好きだよ。
そう…俺は、ささらの全てが好きだ―――いや―――」
俺は、言いなおす。
「愛してる―――」
生まれて初めて口にする言葉。さすがにちょっと照れくさい言葉。
けど、俺の思いを伝えるのにはぴったりな言葉。
後ろから抱きしめてるから、ささらの顔は見えない。
しかしささらは俺の言葉にはっとして俯いていた顔を上げたのがわかった。
きっと俺の思いは伝わったのだと思う。
「俺も寂しくなったり、辛くなったりする。だけどそれを超えた先には…きっと
今まで以上にすばらしい日々が待っているはず…。だから、きっと大丈夫だよ。
それに――俺達には、これがあるじゃないか」
俺は昨日渡しそびれたささらへのクリスマスプレゼントを渡す。
それは、銀色の鎖にT.K.の文字が彫られている銀色のリングを通したペンダント。
「俺は、今ささらが何を考えているかはわからない…。だけど、こうだったらいい、
って思っていることは分かるよ」
「――――」
「屋上から飛ぶとき、言ってたよね。『あなたを信じるという事は、私自身を信じる
ということだから』って。もう一度、俺を信じてくれない?
―――もう一度、自分を信じてみない――?」
「う、うぅっ貴明さんを信じ…うわぁぁぁん―――」
ささらはプレゼントを両手でぎゅっと掴みながら、再び泣き始めてしまった。
だけど、今度はきっとうれしくて泣いてくれている―――
俺は、ささらの正面から、もう一度ささらを抱きしめた。
ささらは、俺の胸のなかでずっと泣いていた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「ありがとう…貴明さん…。ひとつ…お願いしてもいい?」
「いいけど、いったい何?」
「ここで、もう一度お口にちゅってして…?」
「わかった―――」
俺は、泣きすぎて顔がくしゃくしゃになってるささらの唇に、自分の唇を重ねる。
かすかに、涙の味がしたキスだった。
そっとささらの唇から離れると、ささらは笑顔になってくれた。
「あの時屋上に来たのが貴明さんで…よかった…本当によかった…」
俺は、ささらに言う事をじっと聞く。
「『なかったこと』にならなくて…よかった…本当によかった…。
貴明さんじゃなかったら…もし違う人だったら…きっと私、前までと変わることは
なかったと思うの…。本当の私を知る人は誰もいないままだったと思うの…
それどころか、私自身も本当の私をしらないままだったと思うの…」
面と向かって言われると照れてしまい、俺は言ってしまう。
「そんなことないよ。あの場にいて、俺と同じ事が出来れば誰でもよかったんじゃないかな」
「でも、それをしてくれたのは、貴明さん…とまーりゃん先輩だけだった。
他の人は、私の領域に踏み込もうともしてくれなかった…」
「――――」
「貴明さん、私たちの出会いは偶然なんかじゃない。必然だったのよ。だって、人と人と
が出会う確率は、数十億分の一なのよ?やっぱり運命だと思うの…。
だから―――そんなこと、言わないで?」
世界には数億人もの人がいる。その中で俺とささらが出会う確立。
それは――本当に運命的数値。人がどうこうできる領域外。
「もしかしたら偶然かもしれない。だけど、私たちは幾つもある偶然を隔てて巡り会えた。
それはもう、運命なんじゃないかって、思うの」
ささらは俺の目をじっと見て言う。
「少なくても、私はそうだって信じてる…」
「ささら…」
ささらに言われ、自信と安心を覚える。しかし、可笑しくなってきて、つい言ってしまう。
「ささら、すごい嬉しいけどさっきまで俺に慰められていた人が言う台詞じゃないと
思うけど…?」
俺はイジワルっぽく言うと、ささらの顔がみるみるうちに赤くなる。
「もう、バカ、バカ、貴明さんのイジワルぅ〜〜〜〜」
ささらが連続ぽかぽかパンチを繰り出してくる。
「はは、ごめんごめん」
「〜〜〜〜っ」
俺は、ささらにだけ聞こえるように、耳元でそっと言う。
「ありがとう、ささら―――――」
俺は唇をささらの唇にそっと重ねる。そして、そっと離す。
そして見ると、ささらはにっこり微笑んでいた。俺もまた、にっこり微笑み返した。
俺達は、本当の愛をかみしてい
「ひぇぇ、あぢーなぁ。ここだけ気温80度かぁ?カキ氷もってこ〜いっ」
たが、マヌケな声が現実世界に引き戻す。
そして、その声の主がいるであろう方向みて、愕然。
「ま、まーりゃん先輩……」
まーりゃん先輩はニヤッとして言う。
「二人のキスver2はもういいのか?あ、でも同じ場所だからverは同じかな?」
――――同じ場所…?ver2…?
俺はまーりゃん先輩の言葉を聞いて、嫌な予感を覚えた。
「なんで前もここでキスしたこと…知ってるんですか…?」
まーりゃん先輩の顔が突如ひきつる。
「いやー、なんでだろーねー…。そうだ、きっとエスパーだ。そうだ、それにきまってる」
「まーりゃん先輩…こっそり俺達のことを見てたんですね…!?」
「見てただけじゃないぞっ!写真も撮ってやったぞっ!!」
驚愕の事実をまーりゃん先輩は開き直って言い放ち、懐から写真を取り出す。
うぁ…そんなのをタマ姉や雄二に見られたら何言われるかわかったもんじゃない。
…もう今更かもしれない…けど…。
しかし、まーりゃん先輩はその写真を俺とささらにそれぞれ渡してきた。
「二人でもってな…二人の約束の証人。これがある限り、言い逃れできないよ…?」
「まーりゃん先輩…」
意外な言葉に驚く。
「ちゃ〜んとあたしのほうにはデータがあるから、二人が持ってていいのだ!」
ニヤけながら言うまーりゃん先輩。
「ちょっと、勘弁してくださいよ」
俺は苦笑しながらも、まーりゃん先輩の下手な照れ隠しに気付いていた。
「まーりゃん先輩…」
それはささらの声。
「なんだね、さーりゃん?」
「ありがとう…」
そう言って、まーりゃん先輩に抱きつくささら。
まーりゃん先輩の方は、何が起こっているのか分かっていないという感じだった。
だが、それも最初だけで、すぐにささらに手を回し、抱き返した。
「さーりゃんと、こんなに密着できたの、初めてだよ」
まーりゃん先輩は、ただ一言、それだけ言った。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「で、たかりゃんはどうするつもりなの?」
「まだ何も考えていませんが…とりあえず、親にでも連絡してみるつもりです」
俺の帰りについて。流石に飛行機代は残っていない俺は、仕様がなく親に頼ることに。
「ごめんなさい…」
「いやいやいや、俺こそごめんなさいだよ」
「でも私が――――――」
そこで、俺は人差し指でささらの唇を抑える。
ささらは驚いたようにこっちをみたが、俺は微笑んだまま何も言わなかった。
そうしたら、ささらも同じように微笑み返してくれた。
「さぁ、帰ろう?」
「うん―――――」
そう言って、俺とささらは手をつないで歩き出した。
――確かに、帰りの飛行機は逃してしまった。
――だが、それ以上に大切なものを離さなかった俺に、後悔は一切なかった。
二人で歩いている最中に、ささらが言う。
「ねぇ、貴明さん…。私のお金…使ってくれない?飛行機…」
俺は一瞬理解できなかったが、すぐにその申し出を断る。
「ごめん、せっかくだけど、それは遠慮させてもらえるかな」
ささらは俺を見上げながら言う。
「ささらとの事に関しては、自分の力だけでどうにかしたいんだ」
「私、貴明さんのために少しでもなにかしたいの…。罪滅ぼし…ではないけれど…」
また全部自分のせいにしてるな…。―――そうだ!
俺葉ふっと思いつき、ささらに提案する。
「じゃあさ、ずっと笑顔でいてくれないかな?」
「えっ…?」
きょとんとしている顔を見ながら俺は言う。
「俺はいつでもささらに笑顔でいて欲しいんだ。悲しい顔なんかして欲しくないんだ」
それは、単なる俺の我がままなのかもしれない。
だけど、確かに俺はそう思っていたし、そう願っていた。
「俺が望むのはそれだけ」
「貴明さん……。ホントにホント…?」
また涙目になっているささらに、俺は自信を持っていった。
「俺はささらには嘘は付かないよ」
俺のほうに体を寄せてくるささらに、俺も同じように体を寄せる。
「ありがとう、貴明さん…」
俺は、ささらのウェーブがかかった柔らかな髪を優しくなでる。
俺になでられ、ささらは気持ち良さそうにしていた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
二人でいられる時間が少しでも長引けばいい。そんな思いもあり、いつもよりもゆっくり
歩いていた俺は、突然言いようのない不安に襲われた。
俺は辺りをキョロキョロと見渡す。
「どうしたの?」
怪訝そうな顔で聞いてくるささらに、俺は聞き返す。
「まーりゃん先輩…何処いっちゃったんだろ…」
ささらも思い出したかのように、周りを見渡しながら言う。
「そういえば、私達が歩き出す前にみたいのが最後…」
あー、そういえばそうだったかも…。
「まぁ…いっか」
あの人のことは考えるだけ無駄だろうと判断する。
ぐうぅ〜〜っ。
それは、この場ににつかわしくない虫の音。もちろん腹の。
その音源のほうをおもむろに見ると、真っ赤な顔をして俯くささらがいた。
「ご、ごめんなさい…」
「ぷぷっあははは」
俺は、思わず笑い出す。
「そ、そんなに笑わなくても…」
頬を若干膨らませてるささら。そんな顔を見て俺は言う。
「ごめんごめん。そういえば、俺達朝から何も食べてないんだったよね。
すっかり忘れてたよ」
時計を見ると、既に昼は過ぎてやや夕方気味。確かに腹も減る。
「何か食べに行かない?今から帰って作るんじゃ時間かかるし」
ささらは、顔を朱色に染めながら俺の提案を承諾。
「私、行きたいところがあるの。ダメ…かな?」
「よし、じゃあそこにしよっか」
ささらの行きたいところにむかって出発したまではいいが、到着地点をみて唖然。
なんとそこは、日本でも有名な…
「ヤ、ヤック…?」
「い、いけなかった…?」
「いや、別にいいんだけど…良いんだけど――」
「貴明さんと、初めて食事したのがヤックだったでしょ?だから、今日はヤックがいいの。
美味しいご飯が食べられるお店よりも、今はここがいいの…」
ささらのその言葉に、いつの間にか、頷いていた。
中に入って俺は驚いた。何にかって言うと、それは…
「サイズがでかい…。さすが、アメリカだ…。日本とはケタが違う…」
「でも、あれでも最大のサイズじゃなかったのよ?今はもう売ってないみたいだけど…」
そういえば、某ゲームのサイトを見たときにマックが意味不明な理由で裁判を起こされた
というのがきっかけで、【スーパーサイズ】を廃止したっていうのを見たような…。
画像でみて、スーパーサイズはたしかに大きかったが…あの人達が食ってるのでも十分大きいです…。
適当に頼み、それぞれのセットを持ちテーブルの席に着く。
「ふふ、最初に食事したときのことを思い出すわ」
「そうだ、ささら。もう一回、コーラにチャレンジしてみてない?」
苦手といったものをすすめるのも何だが、当時のようにもう一度すすめてみる。
「色々食べれるようになった今なら、味覚も変わってるかもよ?」
ささらは悩んでるようなので、何気なく推してみる。
「そ、そうね…。じゃぁ、ちょっとだけ…」
俺は、自分の頼んだコーラをささらに渡す。そして、じっとその様子をうかがう。
ささらがストローにそっと口をつけて吸うと、コーラ特有の色がストローを染めた。
それと同時に、ささらがやはり顔をしかめる。
「やっぱりこの味…お薬にいっぱいお砂糖が入ってるみたいで、苦手だわ」
「そうかー。ごめんね、無理に勧めちゃって」
「それにしても、コーラって何でお薬の味がするのかしらね」
「詳しくはしらないけど、基はうがい薬だかなんかだったらしいよ。
調合中に、炭酸水を間違っていれたのを飲んだら美味しかったから、商品化したとか。
あ、でも飲んだんだから、うがい薬じゃないかも」
「そうなんだ…貴明さん、詳しいのね」
「たまたま何かで見たか聞いたかをしただけなんだ。いわゆる『しったか』ってやつ」
俺は苦笑しながら答える。
「だから、記憶違いがあるかもしれないけど、そこは許してね。
話を続けると、最初コーラは全然売れなかったんだよね。理由は――――」
と、俺は正しい保証のないコーラについての話をささらにし始めた。
途中、一人熱中して話していたのに気付き、話をやめようかと思ったが、
意外にもささらは楽しんでいてくれたらしく、話を続けるように促してきた。
水族館に行ったときの話し手と聞き手が逆になったような感じだった。
といっても、俺はコーラがとてつもなく好きというわけではないが…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「あ、しまった…!」
日が落ちてきたので、ヤックをあとにし、夕飯の材料を買った帰り道に、
俺はたった今まで忘れていたことを思い出す。
「どうしたの、貴明さん?何か買い忘れたものでもあるの?」
ささらは俺が突然言ったので、驚いてこちらを向いて言う。
「いや、別に大丈夫。気にしなくていいよ」
よく買い忘れたって分かったなぁ。さっきまで材料を買っていたからかな?
「でも、いいの?大事なものじゃないの?なくて困ることはないの?」
「だから、大丈夫大丈夫、ノープロブレム」
確かになくてはとてもとても困るものだが、今は買いに行けない理由があった。
そこまで言うとささらは、そう、と言って再び前を向いて歩き始めた。
俺はそれ以上追及されなかったことを、密かに安堵していた。
そんなこんなで家に到着した時には、結構な時間になっていた。
ささらは、夕食の支度を始める。そう、このときを待っていた。
「ささら、ごめん、俺ちょっと出かけてくる」
「えっ、どこにいくの、貴明さん?」
「ちょっとそこまでね」
「ちょっとそこまでって――」
ささらが言い終わる前に部屋を出て、そして家を出る。
その後すぐダッシュになる俺。そして、雪で滑って転びそうになる。
危ない危ない、気をつけなくちゃな。怪我したらささらも心配するだろうし。
早く買いに行きたいって衝動に駆られる衝動を、必死に抑えながら歩く。
しかし、まただんだんと早歩き。そして走る。そして転びそうになって抑える。
結局、目的地につくまでずっとそれを繰り返していた。
数十分程歩き(?)、ささらをみつけたショッピングモールに着く。
あったあった、この店だ…。
その店の中に入り、いつもある商品を見る。その中でも二つの商品が特に目に付いた。
その二つというのは、黒か白。選ぶとしたら、どちらかだろう。
あー、優柔不断ってこうゆうときにすごい不便だな…。決められない…。
俺は、約20分間考えに考えたすえに―――。
買った商品をコートのポケットに入れて、帰路に着く。
つい、顔がにやけてしまう。だって買ったものは―――だから。
さて、ささらが心配しないうちに帰りますか。って、店で20分も潰した後の台詞じゃないな。
俺は一人で苦笑したが、心は小躍りをしそうなほどうかれていた。
そして、その気分のまま家につくと、玄関には頬を膨らませたささらが。
「もう、貴明さん、ちょっとそこまでって…。1時間はちょっとそこまでじゃないわ」
時計を見る。たしかに、1時間が経過しようとしていた。
「ごめん、ちょっと、色々あってね…」
「こっちは夜危ないから…もし貴明さんに何かあったら私…」
ささらは俺をじっと見つめながら言う。
「大丈夫、俺はささらを置いていったりしないって」
俺はやさしめの声で言う。ついでに、この場合の【いく】は【逝く】になる。
「貴明さん、どこで何をしてたの?教えてくれなきゃ、許さないわ?」
ささらは俺から視線を外さずに痛い一言を言った。
でもいえませんよ、これは。だってねえ…。
「いや、その、まぁ、その、あの…ねぇ」
俺はお茶を濁しながら目を泳がせる。
「私に言えないことあるんだ…」
ささらは頬を膨らませながら言う。
これもまーりゃん先輩の入れ知恵だろう。間違えない。くそ、先輩めっ…!
きっと、こんな風に言えばたかりゃんは隠し事できないとかなんとか言ったんだろう…。
ささらの純粋さにつけこんだ最悪の手口だ。ゴッデスオブ卑怯は伊達じゃないな…。
「じ、実は…」
俺はしぶしぶ買ったものをポケットから取り出
「ただいま、って、あら、河野君?」
そうとした瞬間、なんとささらのお母さんが扉を開け、運よく帰ってきた。
「はは、おかえりです」「ママ…おかえりなさい」
ささらのお母さんは、俺がいまだにここにいることに関して、何も言ってこなかった。
多分、大方理解したんだろう。
「何をしてるの、二人とも?玄関なんかで」
「そ、そんなことより夕飯できてますよ。早く食べちゃいましょう」
俺は必死に促す。ささらのお母さんも、そうね、といって家の中に入っていく。
ささらは結局俺が何をしてきたのか白状しない事に不満そうだったが、
リビングのほうにしぶしぶ入っていた。
ふぅ、危なかった。こいつを今出すわけにはいかない…。
俺は、そそくさとコートごと自室に置き、手洗いうがい後、リビングに向かう。
既にささらもささらのお母さんも席についていたので、俺も席に着く。
「すいません、おまたせしました。いただきます」
そして、食事を始めた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「ごめんなさいね、ささらが迷惑をかけちゃって」
「そんな迷惑だなんて。全然そんなふうには思ってません。むしろ、俺が悪いです。
またささらを悲しませちゃって…。悲しませないって誓ったのに」
時は夕食が終わり、ささら入浴中の俺とささらのおかあさんの話の時間。
俺は今日の話をした。日本に帰るまでの事や、それまでお邪魔になる事など一通り。
「河野君、私が飛行機代払わせてくれないかしら?根本は私がちゃんと言わなかったのが
悪いのだから…」
俺はその申し出を、やはり断る。
「ささらも同じことを言いました。俺も同じ事を言います。ささらとの事は、出来るだけ
自分の力で、なんとかしたんです。だから、せっかくだけど、遠慮させてもらいます」
「そう…。流石、河野君だわ。やっぱり、ささらはあなたじゃないとダメね」
「といっても、親に金借りますけどね…。もちろん、全額返すつもりですが」
俺は苦笑しながら答える。借りるのも、力を借りてるのと同じのような気がしなくもない。
若干後ろめたさがあるが、それが最良の方法だろう。
そういえば、まーりゃん先輩に搭乗券渡したままだなぁ。
「河野君、ありがとうね、あのこのために…」
「俺は俺がやりたいようにやってるだけですよ。お礼を言われる身ではありません」
「それで、助かっている人がいるのなら、お礼を言ってもいいはずよ?」
「はぁ、イジワルですね…」
なんとなくささらの口調が俺のほうにまで侵食してきてると感じる今日この頃。
「だから、お礼を言わせてもらうわ」
ささらのお母さんが微笑みながら俺に言ったと同時に、ささらが部屋に入ってきた。
「今日は二人で何のお話をしてたの?」
「ふふ、二人の結婚式の場所のことよ。アメリカでも悪くないって離してたのよ」
「もう、バカね―――」
朱色にそまった顔で言うささら。
こうやって言われるのが楽しみになってるんじゃないのかな、と思った瞬間だった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
風呂からでて、それなりの時間になったので、寝ることに。
そういえば、俺が風呂に入っている間は二人で同じように話してるんだよな…。
いったいなんの話してるんだろ。恐らく、おれについての話だろうけど。
ベッドの中で、そんなことを思っていると、ドアが何故か開いた。
そちらを見ると、なんとささらが俺のほうに近づいてくる。
「ねぇ、貴明さん…。今日、一緒に寝ちゃ…だめ…かな」
「え絵江画餌獲枝慧依重ヱ!?」
思わず変な漢字が出てしまうほど取り乱す俺。
「ダメならいいの…。でも…」
「そうだね、じゃあ一緒に寝ようか。きっと二人のほうがあったかいよ」
そう言って、俺は体をベッドの端に寄せ、ささらが入れるくらいのスペースを空ける。
ささらは、俺があけたところに入る。シングルベッドを二人で使うのはやはり狭いが、
それだけ近くにいられ、お互いの温もりを感じられるので、悪い気はしなかった。
むしろ、ささらとのこの距離が、嬉しく感じられた。
俺の顔の目の前にささらの顔がある。本当に離さなくてよかった。
俺はささらの顔をみて、改めてそう思った。
「ねぇ、貴明さん…。狭くない?」
「大丈夫。むしろ、ささらが近くにいるのが嬉しいくらい」
「もうっ、バカね――」
「はは、バカでいいよ」
俺は笑いながら答えた。
ささらはしばらく俺のほうを見ていたが、そのうちうつらうつらとなっていき、
最後には寝てしまった。
俺は寝てしまったささらを起こさないようにそっとキスを一回する。
「おやすみ、ささら」
そう言って、俺も、目の前のささらと同じように、眠りに着いた。
ふい、7話終了です、長々と失礼しました。
この話も、もうすぐ終わりです。今このスレの流れからして、
投稿すべきか迷ったんですが、とりあえず投稿することにしました。
感想や、誤字脱字などの指摘がありましたら、どうかよろしくお願いします。
>925
お疲れ様。
毎回楽しみにしてます。
(1/17)
そう判断した俺葉→そう判断した俺は
(5/17)
雄二は俺にあの時の→雄二は俺にあの時の事を
(7/17)
出会う確立→出会う確率
(10/17)
「ささらとの事に関しては、自分の力だけでどうにかしたいんだ」
↓
「ささらとの事に関しては、自分の力だけでどうにかしたいんだ」
ささらは俺を見上げながら言う。
(12/17)
画像でみて→画像でみた
(12/17)
行きたいって衝動に駆られる衝動を→行きたいという衝動に駆られるのを
みるとところどころ台詞が若干おかしいところがありますが、御了承をorz
今回ミスりすぎでした、スイマセンorz
余談ながら、買いに行ったのはエロ本じゃないですw
>>925 GJです
スーパーサイズってのが出て、
「スーパーサイズミニ」っていう映画を思い出してしまいました。
>925
(11/17)
歩き出す前にみたいのが→歩き出す前に見たのが
次回のまーりゃん先輩の活躍が楽しみ、と言った所。
それでは今回も春夏さん凌辱ssでしめるとしましょうか。
ちょw次スレまだ立ってないwww
今日は月曜日だぞ!
速やかに次スレきぼんだ!!
因みにオレは失敗した・・・・ orz
んじゃ、挑戦してみる。
失敗しま……したよぉ〜!
じゃあ俺がチャレンジ一年生。
>>925 久々に続きキタ―――(゚∀゚)―――!!
1話から毎回楽しみにしてます。貴棒が買ってきた物が気になりますね(゚Д゚)
後半マッタリした気分で読ませて頂きました。
それと、(2)で間違いが。
「(略)先に言っちゃった」
↓
「先に行っちゃった」
ですよね?(´・ω・`)
>>925 おお、いつの間にやら上がってる。お疲れ様です。
>「え絵江画餌獲枝慧依重ヱ!?」
貴明焦りすぎw
>>930 ちょwwwまたやるのかwwwww
>>925 乙、ずっと待ってました。タカ坊良い子だな、ほんとに。
>>930 今回はまーりゃんかよっちで
この流れですか?
>525 :名無しさんだよもん :2006/02/27(月) 10:29:41 ID:JGXNwYCg0
>ぴちぴちよっち
>
>
>526 :名無しさんだよもん :2006/02/27(月) 11:23:59 ID:+F9yChUz0
>
>>525 >なんとなくまーりゃん先輩がよっちにセクハラしてるところが思い浮かんだ
>
>527 :名無しさんだよもん :2006/02/27(月) 11:45:34 ID:Lkm2XR0z0
>(*゚∀゚)=3ハァハァ
埋め立てネタ、御意見上等!(1/3)
「あら?」
最初に感じたのは違和感。留守番が居るはずの自宅、そして隣の
の河野邸の明かりが一つもついていないのだ。しんと静まりかえっ
た家の中からは物音一つ聞こえない。
「あの子ったら、また寝ちゃった………え!?」
玄関のドアノブに触れた途端、扉は微かにキキキィと鳴きながらも
勝手に開いた。施錠どころかロックもされていない。出るときに鍵
はかけた筈だと思ったが?
「………………このみ?」
恐る恐る中を覗き込んで問い掛けても返事はない。暗がりの中、反
射的に確かめた足下には娘の通学靴が綺麗に並べられており、靴箱
も閉まったまま。少なくても見える範囲では出かけた様子は見受け
られない。
「……………このみ? いないの?」
(ウィーーーーーーーーーーーーーン………)
埋め立てネタ、御意見上等!(2/3)
「?」
もう一度。周囲の気配を探ろうと耳を澄ませてみると、何処からか
モーターか何かの駆動音が聞こえてくる。更に神経を集中させて音
源の方角を探ってみる。居間、台所、バスルーム、お手洗い、庭、
寝室、書斎………いや、これは。
「二階? このみの部屋?」
音を立てないよう忍び足で階段を上ると、目の前には扉が半開きに
なった娘の部屋。近づくにつれ、無機質で抑揚のない小型機械の駆
動音が大きくハッキリとしてきた。間違いなく、このみの部屋から
出ていると確信し、更に抜き足差し足でフローリングの廊下を慎重
に進み部屋の中の様子を窺う。
「!!」
先ず目に入ったのは、娘のベッドの上で胎児の様に丸くなった少女
の剥き出しの臀部。そして、そこから突き出し振動しているプラス
ティック製の棍棒のような二つの物体。ヴァギナとアナルと思しき
場所に差し込まれているそれが何なのか位は彼女の知識でも十分す
ぎるほどに推測できる。男性器を模した無骨で卑猥な玩具が、それ
自身が意志を持つかのように内蔵のモーターで少女の性器と排泄器
官を抉るたび、ぴくぷくと小さな体に震えが走る。
「このみ………このみっ!」
埋め立てネタ、御意見上等!(3/3)
この時、彼女が眼前の光景に惑わされずに冷静な判断力を少しでも
残していたなら、或いは娘の秘部から大量の愛液が分泌され全身の
皮膚には汗が浮き紅く熱く紅潮している事実に気づいたかも知れな
い。また娘は清純なままで、無理矢理に服を剥がされ性的被害にあ
ったに違いないという盲目的な先入観が無ければ、その体は全く拘
束されておらず、愛らしい顔が唾液と涙にまみれ大きな瞳が快感で
潤んでいる様子に何か作為的な気配を感じ取ったかも知れない。
………そして、その手の中に何かを隠し持っている事も……
「このみ、このみっ、大丈夫!? いま、お母さんが助けてあげる
から安………あぐっ!?」
バチバチバチッ! ベッドに駆け寄り小さな体を抱き起こそうとし
た瞬間、腹部に触れた何かから全身の毛が逆立つようなショックと
熱が放たれ、体中の筋肉という筋肉が硬直し脳内まで届いた電流が
思考まで麻痺させる。そして急速に薄れてゆく意識を必死にかき集
めながら見下ろした愛娘の手には、不釣り合いなほどに大きなスタ
ンガンが大事そうに握られている様子が。
「こ、この………み………」
「ごめんね、お母さん? でも言うこと聞かないと、もうセーエキ
飲ませてくれないってタカくんが言うの。だから、ちょっとだけ我
慢しててね? これからは、このみ達と一緒に………
あ、タカくぅ〜ん!」
以上です。
あとはご自由に調理してくださいませ。
>>937 乙ね、本当に乙だわ。
>>946 乙。春夏さん陵辱キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
俺は陵辱系書けそうにないんで他の人頼むわw
次スレが立つたびに春夏さん陵辱するのか?
このみ「タカくん、言われた通りにしたよぉ!!
だからぁ…」
俺はすり寄って来るこのみを無視し、床に寝そべる春夏さんに目を落とす。
このみ「このみ、言われた通りにしたよ…。
ねぇ、いいでしょ…」
そう言うと慣れた手付きでベルトを外し、ズボンを降ろそうとかかる。
貴明「このみ、アリガトな…。」
俺はこのみの頭に手を置き…
貴明「お前はもう…、用済みだよっっ!!」
力任せに首をねじ曲げる。
このみ「けっ…かはっ!!」
えへー、隊長、首のコリが取れたでありますよ〜
このみ父「わかっていないようだな小僧。利用されていたのはお前のほうだ!」
このみ父「これで保険金どっさりであります」
貴明「なっ!?」
このみ父「貴明くん…、キミは『これも計算の内かおじさん!』と言う。」
貴明「これも計算の内かおじ…はっ!!??」
このみ父「ふふ、そもそもこの春夏は………!!??
春夏はどこへ消えた!」
貴明「っっっ!?」
春夏「ふはははっ」
このみ父「そこかっ」
貴明「春夏さん! 仕留めた筈なのに!」
春夏「こ の 柚 原 春 夏 、生 来 目 が 見 え ん
そ の 私 に 目 つ ぶ し な ど 笑 止 千 万 ! ! ! !」
一同「な、なんだってー(AAry
このみ「…いや目つぶしじゃないし」
>>956 ちょwww予想外の展開に期待度上昇中wwwww
このみ父「おのれっ!っはぁぁぁl!」
このみ父は服を脱ぎ、力をためた。
春夏「ほう!これは すごい!戦闘力42000まであがりましたよ。
すばらしい戦闘力です。さすがは戦士型と言うだけありますね。」
しかし春夏は全く動じずに続ける。
春夏「参考までに私の戦闘力数をお教えしておきましょうか。
私の戦闘力は530000です…ですが、もちろんフルパワーであなたと戦う気はありませんからご心配なく…」
予想外の展開に思わず手に汗にぎってしまうが
>>959 ドラゴンボール・ネタはいい加減飽きましたw
このみ父「まぁ、そう言うなよ。分かりやすく説明してやるから。」
このみ父は一度脱いだ服を着なおす。
このみ父「これが普通の状態…。
で、これが先刻見せた一段階目だ。」
そう言ってパンツ一丁になる。
春夏「………」
このみ父「でこれが二段階目…。」
パンツを降ろし一糸纏わぬ姿になる。
貴明「な、なんて闘気だ!?
まさかこれ以上上があるなんて言わな…えっ!?」
このみ父「そして…これ…がっ…」
このみ父はイチモツに手をあてる。
ズルリ…
皮に包まれた亀頭が姿を現すと同時に今までとは比べ物にならない程の闘気が放出される。
このみ父「またせたな…。これが三段階目だ!!」
〜中略〜
このみに妹ができました。
このみ妹「フェティストの姉は可愛くて〜♪
それーでもー、根性無し男と恋に〜落ちました〜♪
私の姉は生ゴムマニアだった」
てかこのみ父包茎やったんか
ちょっとリアルでUMA攻略してくる
チュパカブラあたり
足のサイズが27であることに悩んでいるビッグフットならいいな。
このみ父「さあ、私の皮で君の亀頭を包むんだ貴明君!!」