「赤ちゃん可愛いでありますよー
でも、学校行きながらお世話するんじゃ、タマお姉ちゃん大変だねー」
「タマちゃんならそんなの平気よ。それより問題はタカくんね」
「まあ、そんなとこです春夏さん。
生活費から何から向坂の家に出してもらっている手前、俺も、下手な成績はとれないですから……」
「悪い女に引っかかったばかりに、苦労するな、貴あ……痛っ、割れる割れる!!」
「たかあきー、久しぶりやなー」
「珊瑚ちゃん瑠璃ちゃん! それにイルファさんにクマ吉も」
「うわちっちゃいなー、かわいいなー、まっ赤やなー」
「それは赤ん坊って言うくらいですから珊瑚様」
「さんちゃんそんな乱暴にさわったらあかんー、こわれてまうー」
「………」
「どうしたの、私の顔になにかついてるかしら、ミルファさん?」
「…ううう」
「ミルファさん?」
「……貴明のお嫁さんになっただけでも許せないのに、こんどは赤ちゃん産んだですって?」
「ミルファの気持ちはうれしいけどさ、俺は…」
「聞きたくなーい! ああ悔しいなあもう、
なんでこんなに可愛いのよこの赤ちゃん。なんで? ずるいよ」
「みっちゃん落ち着きやー。ほら、抱いてみるー?」
「うううう」
珊瑚ちゃんから手渡されて、赤ん坊を抱きとったミルファは、
しばらく複雑な表情でそのしわくちゃな顔を眺めていたが、
何を思ったか、突然、脱兎のごとくかけだした。
閑静な住宅地に雄二の絶叫が響く
「 姪 泥 棒 ! ! ! ! 」