「ミルファ、ようやく君のボディが完成するよ」
長瀬のおじさんからの嬉しい知らせ。
イルファ姉さんに続いて、私の専用ボディが完成した。
「ん? 胸はちゃんと大きくしたかって? あはは……ちゃんと設計部門にはそう伝えておいたから大丈夫だ」
貴明に会える。
長瀬のおじさんに我が儘を言って、スケジュールの大幅遅延をさせてまで貴明のために大きくした胸。
貴明、喜んでくれるかな。
ようやく、このクマのぬいぐるみのボディともおさらばだ。
「大変です! HMX-17bのボディが何者かに破壊されて……」
「なんだって!?」
私は走り出す長瀬のおじさんの腕にしがみついて、私のボディがあるという部屋に向かった。
「なんて酷い………」
長瀬のおじさんは言葉を失っていた。
私の体になるはずだったそれは、表面の肌を鋭利な刃物でずたずたに切り裂かれ、何かで殴りつけたようにあちこちが陥没し、
可愛らしかったはずの顔はボディから頭ごと引きちぎられ無惨にも陥没してしまっていた。
「誰が、こんな事を……」
私も長瀬のおじさんも、ただそれを呆然と見つめるだけだった。
「あら、ミルファちゃん。 これ、ミルファちゃんのボディになるはずだったんだよね……残念だったね」
来栖大の学生で、彼氏と一緒によく遊びに来る神岸さんだ。
彼女は、私をひょいと持ち上げ優しく抱いてくれた。
この人は、私になぜか優しくしてくれるから好きだ。
「ミルファちゃんはこのままでも十分かわいいよ」
神岸さんはそう言ってずっと私を抱いて撫でてくれていた。
(おしまい)