即死回避って何レスだったっけ?
とりあえず回避支援sage
20か30
<(´・ω・`)> スキスキスー
) )
(((( > ̄ > ))))
ヽ(´・ω・`)ノ フワフワフー
ノ ノ
((( < ̄< ))))
<(´・ω・`)9m こんな気持ち〜メロメロディ〜♪
) )
(((( > ̄ > ))))
22 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:06:05 ID:LSEECnyN0
【半妖狐魔法少女キューティアリスF:第4話ファーストミッション後編】
さてアリスが北川に魔法をかけた翌朝の北川家である。
「お母さんおはよう」
「おはようじゃないわよ潤、朝くらい手伝いなさいっていつも言ってるでしょう」
「だって眠いんだもん」
「もうしょうがないわね。あっそれと、女の子なんだから髪くらいはちゃんととかしなさ
いね」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい」
ごく普通の母娘の会話のような気がする。最早当人はもちろん母親も完全に記憶を改変
されているらしい。
「やあ母さん、潤おはよう」
続いて眠たげな表情の父親が顔を出す。
「お父さんおはよう」
「しかし潤、母さんに似てますます美人になったな」
こっちも改変の自覚はないようだ。
「お父さんったらやだー。でも金髪はお父さん譲りよ」
実際金髪とアンテナはデンマーク人の母を持つ父親譲りだった。
その後いつものように登校。登校途上に出会った生徒達との挨拶の様子を見る限り、誰
一人して北川が女性であることに疑問をもっていないらしい。
ちなみに女性化と同時にフェロモン過多体質は解消されたので、男女どちらからも不自
然に迫られたりしないので安心である。
なお困ったことに魔法の効き目が強すぎたのか、掛けた有子本人も北川が男だったこと
をすっかり忘れてしまっていた。もっとも有子の場合、自分の半分が男だったこともほと
んど忘れかけている節があるので、実は単に忘れっぽいだけかもしれない。
23 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:09:24 ID:LSEECnyN0
そんなわけで最初から三人グループだったかのように行動する、有子、香里、潤は、例
の踊り場で昼食を食べていたのだが、そのうちに香里と潤の間に流れ出した微妙な雰囲気
に気が付いた有子は、用事を思い出した振りをして席を外す。
「ねえ有子さん。なんで二人っきりにするの?」
「バカねえアユアユ、ここは若い二人に任せるものよ」
「有子さんその言い方おばさん臭いよ」
「やあねえ移ったのかしら」
この時美汐がくしゃみをしたかどうかは定かではない。
また昼休みが終わって教室に帰ってきた香里と潤の頬がかすかに上気していたのを、有
子だけは見逃さなかった。
そしてまた夕食後の美坂家天井裏。
「ねえ有子さん、なんでボク達また天井裏に潜んでいるの?」
「ほらやっぱり最期まで見届けないと無責任でしょう」
「そう言うものなの?」
「そう言うものよ。第一こんな面白いこと見逃す手はないでしょう」
「そっちが本音なんだね」
まあ実のところ単なる覗きなのだが、それにしても相も変わらずの肉まんとたい焼きを
頬張りながらの会話、進歩のない奴らである。
「北川さん、こうして来てくれたってことはOKなのね」
「ええ美坂さん」
ひしと抱き合う二人。更に情熱的に唇を合わせる。
「すごい濃厚」
「危険な香りだよ」
「そうね、香里は危険よ。なんかぴちゃぴちゃって音が聞こえてきそう」
どうも舌を絡め合っているらしい。しかも香里の手は潤の潤のお尻を愛おしげになで回
している。
24 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:11:43 ID:LSEECnyN0
「有子さん、やっぱり香里さんの方が責めなの?」
「子供はこれ以上見ちゃいけません」
急に保護意識をかき立てられたらしく、お姉さんぶってアユアユに目隠しする有子。
「うぐぅ、ボク有子さんと同い年」
などとやっているうちに巧に潤の服を脱がせていく香里、続いて器用に自分の服も脱ぎ
捨てる。
「香里さん手慣れてるね」
「あれは相当やり込んでるんじゃないの。軽く10人は落してると見たわね」
二人が見守るうちにも、下着姿になった香里は同様に下着姿の潤をベッドに押し倒して
いる。
「潤、なんて素敵なボディなの。まさにわたしの理想ヴィーナスだわ。美の極致ね」
「ああそんなに見つめないで恥ずかしい」
恥ずかしげにメリハリの効いた肢体を身悶えする潤。胸はCくらいだが、白人の血を
引くだけあってか腰のくびれがすごいのである。
「二人とも派手な下着だよ。勝負用?」
「アユアユってどこからそんなこと覚えてくるの?」
「えっとねえ、栞ちゃんから聞いたんだよ」
「そうか、言われてみれば栞って耳年増な感じ」
「そんなことはありませんよ、ちゃんと実践もしてますよ」
「へー意外だな。失礼しました」
「いえ、わかってもらえれば良いんですよ」
いつの間にか一名増えているのだが、覗きに夢中なアリスとアユアユは全く気が付いて
いなかった。やっぱりオオボケである。
25 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:13:22 ID:LSEECnyN0
「それはともかく、色は香里が黒で潤が赤か」
「赤と黒、小説の題名みたいですね」
「ふーん、ブラを外して胸どうしをくっつけて……乳首をスリスリ、淫靡」
「それにしても北川さんはスタイル良いですね。日本人離れしています」
「ああ潤っておばあさんが北欧系らしいよ」
「ああなるほどそれでですか」
「そうそう」
二人の会話はアユアユの驚きの声で遮られた。
「あれえ、姿勢を変えて今度は股どうしを密着させたよ」
「えっどれどれ……あれっていわゆる貝合わせ?」
野次馬とかして下を覗き見る。
「クチュクチュいってる、パンツをはいたままなのがかえってやらしい」
「ああ、それはありますね。全裸よりちょっとなにか身につけている方がいやらしかった
りしますね」
マニアなのかオヤジなのか?
そのまま香里と潤の痴態を興味津々で見守り続ける天井裏のデバガメ三匹。
「ああもう北川さん、香里さんのなすがままだよ」
「有子さん、あの黒光りする凶悪な棒はなに?」
「あれって、ペニスバンド?でもあれ、美汐のよりふたまわりは大きいよ」
「ってことは祐一君のより相当大きいんだ」
「それはどういうことですか?」
「えっとね、今天野さんは祐一君のものを持ってるんだよ」
「えーじゃあ、祐一さんは?」
「うん、今は女に子になってるよ」
聞かれるがままにペラペラとしゃべってしまうアユアユ。
「香里、あの太くて長いのを全部飲み込んじゃったよ」
「お姉ちゃんなら別に不思議なことじゃないですよ」
「ふーん、凄いんだ」
アリスは下に気をとられて現状に全然気が付いていないようだが。
26 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:16:55 ID:LSEECnyN0
「香里、それ太すぎない。わたし怖い」
「大丈夫、優しくしてあげるから」
「でも」
「もう、女も度胸行くわよ」
「あっやめ。太い、アーン痛いー!」
「大丈夫痛いのは最初だけだから」
「なんて言うか、言い方がオヤジっぽい。けどあんな大声出して大丈夫なの?」
「それはですね、今日は両親は留守なんですよ。しかもわたしは友達に家に泊まりに行っ
てることになってますし」
「へーそうなんだ。栞も気を遣ってるのかな」
「そうなんですよ。特殊な趣味の姉を持つと大変です」
「ふーん、いろいろ難しいんだね」
そこまではただふんふんと頷いていたアリス、しばらくしてハッと気が付く。
「エーッ!栞、なんでここにいるのよー!」
「なんでって、ここはわたしの家ですから」
白のワンピース水着をベースに半透明のミニスカート、ストールをマント代わりにし
たというかなり奇抜な姿の栞は、微笑を浮かべつつそう答えるのだった。
「いやそれは確かにそうなんだけど。わたしの言いたいのはそう言うことじゃなくてね」
「わかっています、みなまで言わなくていいですよ。あなたは誠さんと融合した祐一さん
ですね。そして今の名は魔法少女キューティ・アリスF、変身前は沢渡有子」
自信たっぷりにそう断言。
「なんでそんなのことまで分かるのよ?」
「そこはそれ魔法少女ですから」
27 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:20:06 ID:LSEECnyN0
「へっ?」
想い替え家ない栞の言葉に一瞬ポカーンとなるアリス。
「実はわたしも魔法少女、魔法少女シルキー・シオリDなんです。あっちなみにDはドラ
ッグのDです」
「ちょっと待ちなさい、わたしは栞のことわからなかったわよ」
「それはですねー……アリスさんが未熟だからです。そして未熟なんでわたしの張った罠
にも気が付いていないようですね」
「罠ー!」
素っ頓狂な声を上げるアリス。
「ええそろそろ、散布しておいた薬が効いて体の自由が利かなくなってきたはずですよ」
済ました顔でそう答える栞。
「栞、あんた」
血相を変えて掴みかかろうとしたアリスだが、栞の言葉通り既に体の自由が利かなくな
っており蹲ったまま動けない。
「アユアユ助けて」
「後免有子さん、ボクも動けないよ」
「あゆさんはアリスさんのあとでゆっくりと可愛がってあげますからね。しばらくそこで
大人しくしていて下さい」
「栞、あんた絶対香里の妹だわ。今確信した」
この台詞は聞きたくなかったようで、その時だけは一瞬顔をしかめたが、まあそれだけ
のことで、いそいそとした態度で次なる行動に移るのだった。
「ではアリスさん、これからわたしと楽しみましょう」
栞は楽しげに笑いながら身動きがとれないアリスの体を転がして仰向けにする。
「なんで毎回こうなるのよ?」
28 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:21:55 ID:LSEECnyN0
アリスの抗議には取り合わず上からのしかかって、鼻歌でもでそうな陽気な態度でコス
チュームを脱がせていく。
「天井裏で不法侵入の獣っ子魔法少女を組み敷いて蹂躙する、ドラマみたいで素敵です」
「あぅー、それ絶対にドラマじゃないし」
「それなんて言うエロゲー」
「アユアユ、子供はそんなものやっちゃいけません。っていうか今貞操の危機」
結構余裕があるのか単に危機感足りないだけか?
あっという間に衣装をぐずぐずに崩され大事な部分はすっかり丸出しにされてしまう。
あえて全てを脱がさないところがマニアックである。
「なかなか素敵な艶姿ですよ。これは不法侵入に対する罰ですから覚悟してください」
言っていることは一応筋が通っているような気がしないでもないが、はっきり言って目
つきが相当に嫌らしかったりする。
「いや不法侵入は間違いないけど。……栞、あんた手際よすぎ」
「まあまあ、なかなか可愛らしい胸ですね。うーんここに顔を埋めるのはよいです。最高
です。女の子の乳房に頬ずりするんなんて、もうたまりません」
「ちょっといい加減にしなさい」
抵抗のしようがないから目つきだけは鋭く栞を睨み付ける。
しかし栞は涼しい顔で全く効果はないようだ。
「嫌です。大体本当は男のくせに、わたしよりちょっとだけとは言え乳がでかいなんて生
意気です。お仕置きです」
アリスの手頃な大きさの乳を小さな手で鷲づかみ。
「だってこれは真琴のだからしょうがないのよー」
「問答無用です。うりゃーうりゃー。ここがいいんかです」
もにゅもにゅと好き勝手に揉みしだく。
「アーン、止めてー!」
「栞ちゃんどこをどう見てもオヤジだよ」
「あゆさん聞こえてますよ。後で覚悟してください」
「うぐぅ」
29 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:23:19 ID:LSEECnyN0
「アーンアンアン」
あれからかなり時間がたったが、相も変わらず乳揉みに余念がないようである。
「やっぱりでかすぎる乳よりこの程度の手頃感がよいのです。つまり巨乳なんて飾りです。
偉い人にはそれがわからんのですよ」
確かに小さめの栞の手にはピッタリかもしれない。
「偉い人って誰?ひょっとして秋子さん?」
アユアユが思いつく偉い人といったらそれしかないようだ。
「アーン、もういい加減に止めてー」
「駄目です、こうなったらわたしの魔法でお乳が出るようにして、そのミルクでアイスを
作って食べたいですね」
「それってかなりマニアックだよ」
所在なさげに時々突っ込みを入れるアユアユ。栞は全く聞いてないし、アリスの方はそ
れどころじゃないからむなしい限りだが。
「そんなの止めてー!恥ずかしすぎるわよー!」
「まあお楽しみは次回にとっておきましょう。そこで今回は」
再びアリスを転がして今度は俯せにする。
「えっ、なに?なにするの?」
「やはり獣っ子はバックから責めるのが通です。ここは獣っ子特有の場所を責めましょう」
「あっ、尻尾握っちゃあだめ。アン、耳噛まないで」
好き勝手に体を弄ばれ、思うがままに曲を奏でられる楽器のようでもある。
「あっあ、首筋を舐めないで。息も吹きかけちゃ駄目ー!」
「栞ちゃんテクニシャンだよ」
「アーン栞酷いよう」
涙目で上目遣いで栞を見つめてただすすり泣くアリス。
「キュピーン!今の仕草ストライク。年上でしかも本当は男の子な魔法少女を啼かせるの
は、征服欲が満たされてベリグッドですね。あゆさんのようなロリロリ少女をやっちゃう
のも良いですが」
「ボク、栞ちゃんより年上なんだけど……」
30 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:25:19 ID:LSEECnyN0
などとやっているうちに異変が生じたようだ。
「栞ー!なに、これなに?お尻にあたるのなに?」
「なにって、魔法少女には魔法のスティックは付き物じゃあないですか」
「確かにそうだけど、この生暖かさ、これって魔法少女のスティックじゃないし」
「まあまあ良いではないか、良いではないかです」
「あぅー良くないわよー」
「まっとにかく、このスティックで愛の魔法をかけてあげます」
「止めてー!」
「あっあああー、そんなに突かないで。壊れる、壊れちゃう」
「大丈夫、壊れたらわたしの愛の魔法で直してあげます」
「いやー、壊さないでー」
「それにしても可愛すぎです。このまま裸で首輪をつけて、わたしの部屋でずっと繋いで
飼っておきたいです。それともわたしの専用のメイドさん兼愛人になってもらうのも良い
ですね。ドラマみたいで素敵です」
「アアーン、それドラマじゃなくて、アーンそんなに突かないでー!アーンエロゲーよ。
アンアンアン」
「栞ちゃんって完全に鬼畜だよ」
「やはり獣っ子は首輪に鎖です。これで決まりーです♪これしかないんですー♪あーあな
たをきーっと奴隷にしてみますアアンアー♪」
「歌詞が一部分余計にやばくなってるよ」
それからしばらく後。
「うっう、栞に手込めにされてしまいました」
わざとらしくすすり泣きつつき、恨めしげに栞を見上げるアリス。
「ふー、なかなか良かったです。ここで煙草でもくゆらせたいところですね」
「確かにドラマのシーンみたいだけど、それって小父さん臭いよ」
「ところで栞、なんであなたが魔法少女なのよ?」
「ふっそれはですね、病気で空想の世界に浸るしかなかったわたしにとっては、魔法の一
つや二つなど容易いことです。人間の精神、妄想の力は偉大ですね」
31 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:27:19 ID:LSEECnyN0
「いや、妄想だけで魔法使えるなら、秋葉原とか本物だらけだと思うし」
「長い間に蓄えられた妄想の力を甘く見てはいけません(島本須美風)」
「あーそれ「リメンバーマイラブ」の家庭教師ラーラのパクリでしょう。でもその言い方
なんか嫌だ」
「そうですか」
げんなりのアリスとしれっとした栞の対比が哀れを誘う。
「まっとにかく、北川さんを女の子にしてくれたことにはお礼を言いますよ。これでお姉
ちゃんの魔手から逃れられましたからね」
「それじゃあ不法侵入と相殺でも良いじゃない?」
「それはそれ、これはこれですよ。第一アリスさんも気持ちよかったでしょう?」
「あぅー、そう言う問題じゃないと思う」
「ボクもそう思うよ」
「おやそう言えばあゆさんがいたんですね。忘れるところでした」
「うぐぅ、思い出さなくても良かったのに」
結局いつも墓穴を掘ってしまうのがアユアユというものだろう。
まさに蛇に睨まれた蛙、栞の視線が振り向けられた途端、抵抗の意志すら消え失せそう
な哀れな生贄アユアユだった。
「ゆうさん助けてー!」
「後免アユアユ、わたしもう腰ガクガクで立てない」
「そんなー!」
どうやら都合良く助けが来たりはしないようだ。
たちまちブルマーがパンツごと引きずり下ろされる。そのままじっとアユアユの股間を
観察する栞。
「あゆさん、毛がないんですね」
「うぐぅ、本当はちゃんと生えてるもん。この体はお子さまバージョンだからしょうがな
いんだよー」
32 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:30:07 ID:LSEECnyN0
「まあこういうお子さまなピーも嫌いじゃないですよ。好き嫌いはいけませんからね」
結構見境なしである。
「好き嫌いしてよー」
「それなら辛いものを食べればいいのに」
と口の中でモグモグと呟くアリス。この程度がせめてもの抵抗なのだろう。
栞の方はアリスの呟きが聞こえなかったのか無視したのか、今度はアユアユの体操服を
首までまくり上げて勝ち誇ったように一言。
「胸もペッタンコ、勝ちました」
「ねえ、そんな小学校低学年レベルの体に勝って嬉しい?」
「見かけはどうあれあゆさんの方が年上だからいいんです」
「年上って認めてもらったのに全然嬉しくないよ」
「大体ですね、世間ではわたしのことを貧乳だとか小柄だとか言っているようですが、そ
れは大きな間違いです。わたしくらいが標準なんです。お姉ちゃんや名雪さんは育ちすぎ
です。ましてや川澄さんなんか人類の敵です」
アユアユに覆い被さったまま、突如興奮した口調で大演説を始める栞、どうもバストサ
イズに関して日頃のうっぷんが相当に蓄積していたようだ。
一方こっちはこっちで香里に徹底的に愛された潤。香里のテクニックで昇天させられ失
神していたのだが、気が付くと同時に記憶を取り戻していた。
「わっ、俺はなにをしていたんだー!」
「あら、マイラバー潤どうしたの?」
心配そうに上から潤をのぞき込む香里。
「わっ、香里。えーと、俺は女にされて、それで香里と……」
「もう潤ったらなにを訳のわからないことを言っているのかしら。なに、もう一ラウンド
やりたいの?」
「いやあのそうじゃなくてだな。あっ、そんなこと」
結局押し倒されて仕舞う潤。香里は相当な手練れであるようだ。
33 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:32:24 ID:LSEECnyN0
下のその騒ぎが耳に入ったのか、アユアユの上から体を起こして再び下をのぞき込む栞。
「あゆさんを相手にするよりあっちの方が面白そうですね」
「あのさあ栞、最初からアユアユをからかってただけじゃないの?」
「さーどうでしょう」
アリスの突っ込みに栞の視線が泳いでいた。
「もしかしてボクはオモチャにされたの?酷いよ栞ちゃん」
「まあそれもあゆさんが愛らしすぎるのが悪いんです。わたしのせいじゃありません」
アユアユの抗議をさらりと受け流す、罪悪のかけらもない栞だった。
翌日、かなり不機嫌な様子で有子に詰め寄る潤。
「確かに相思相愛になれたけど……女同士なんて嫌だー!」
「贅沢は敵よ」
「そう言う問題じゃない。元に戻して、ちゃんと男女の恋愛関係にしろ」
「元に戻すのは無理、わたし戻し方知らないし」
「そんな無責任な話があるかー」
「じゃあ香里を男にしようか。そうしたら男女間の恋愛になるよ。男になっても香里の女
好きはそのままだから無問題よ」
「手抜きするな。俺を元に戻して、香里の男嫌いを直せばいいだろうが」
「そりゃあ無理よ、香里のは筋金入りだもん。まっあとはお幸せにね。任務達成バンザー
イ!」
「うぐぅ、本当に任務達成?」
34 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:35:25 ID:LSEECnyN0
【半妖狐魔法少女キューティアリスF:番外編勘違い】
昼休み屋上で食後のたわいのない会話を楽しむ仲の良い二人組、ちょっとオタクが入っ
た男子生徒だ。と、突然やせた方が溜息をついて。
「あーあ、隣にいるのがお前みたいなデブじゃなくてカワイコちゃんだったらなあ」
「ちっ、俺だって同感だぜ。お前みたいながりがり眼鏡君より美少女の方がいいにきまっ
てるだろう。それでお前どんなのが好みなんだ?」
「そうだな、まあメイドさんかな」
「あっそれ賛成。小柄だけで胸は大きくて眼鏡で三つ編みが良いなあ」
「俺は長身でスレンダー、髪は金髪ショートかな」
「いやあお互いマニアだな」
と突然、ひらりと水色のエプロンドレスの少女が二人の目の前に舞い降りてきた。
「わかったわ。そのお願い、この愛と正義を守る魔法少女キューティ・アリスFがかな
えてあげる」
両手を腰に充てやや小さめの胸を張ってそう宣言する自称魔法少女の登場に、一瞬目が
点になる二人組。しかしさすがオタクというか直ぐに立ち直って、なにやら目配せし合う。
一方ややうかつもののアリスの方はそんなに仕草に気付いた風もなく、ウエストポーチ
からなにかを取り出して二人組の目の前に差し出した。
「えっとさっき名前は言ったけど、わたしこう言うものです」
差し出したものは名刺だったようだ。
「ふーんなになに、愛と平和のためにあなたのお悩み解決します。魔法少女キューティ・
アリスF。ふーん魔法少女なんて本当にいたんだな」
「うんうん、それになんだか真城華代ちゃんみたいな名刺だな」
「その方どなたですか?」
可愛らしく小首を傾げるアリス、同じオタクでも嗜好が異なるらしく、相棒の方もその
名に聞き覚えがないようだ。
「誰だよそれ?」
35 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:37:01 ID:LSEECnyN0
「いや、知らないなら別に良い」
「あっそう」
「まあ良いです。ここで普通ならあなた方のお悩みをお聞きするところなのですが、さっ
きもうご希望を聞いてしまいましたからね。あとはアリスにお任せです」
あっさりと話題を切り替えて本題に戻すアリス。基本的に物事を深く考えないタイプな
のである。
「ってあれー、どうして二人してわたしの腕をとるんですか?あっ、困ります」
いつまにか脇に来ていた二人組に挟まれて不安そうなアリス。
「へっへへ、まあメイドさんじゃないけどこれはこれでなかなか。ねえこの耳本物?」
「エプロンドレスってのも良いよな。この尻尾も柔らかいぞ」
「アン、耳は自前です。尻尾引っ張ちゃあ駄目」
ニヤニヤいやらしく笑いながらアリスの体をまさぐる二人組である。
「あっ、胸を触っちゃあ駄目です。変なとこに指入れないで。アン、放してくれないとお
願いかなえられません」
「いやあ、まあいいからいいから」
「そうそう、俺たちといいことしようぜ」
「アーン誰か助けてー」
20分後
「うっうっ、また弄ばれてしまいました。なんかやる気零って感じ。今日はこのままさぼ
って帰っちゃおうかな」
意気消沈したアリスがやる気なさげにそう呟いた途端、上空に巨大な年齢不詳の美女の
顔が出現。一見にこやかに微笑んでいるが、よく見ると額に青筋、目が全然笑っていない。
「駄目ですよアリス、使命をちゃんと果たさないとお仕置きです」
「ひぇー秋子様、嘘です、冗談です。単なる愚痴です。ちゃんと任務を果たしますからお
仕置きだけはご勘弁を」
土下座して頭を屋上の床にぶつけんばかりのアリス。顔は真っ青、目からは涙。おまけ
に乱された衣装のままだから、端で見てみるとかなり情け無い姿であった。
36 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:39:01 ID:LSEECnyN0
「了承、あとはちゃんとやるんですよ」
「ははーもう完璧に仕上げてみせます」
「では、さようなら」
スッと消え去る巨大美女の顔。ホッと胸をなで下ろしたものの、しばらくは立ち上がれ
ないアリスである。内緒だが女の子になって尿道が短くなったため失禁しやすくなったア
リス、今回もちょっぴり漏らしていた。
「今のなんだ?」
「さあ。けどこの姿もそそるぜ」
「じゃあやるか?」
「おう」
さて衝撃から立ち直った二人組は、蹲ったままのアリスに再び欲情し、またもやアリス
を毒牙にかけようとしたのだが。
「もう面倒くさいから今すぐやっちゃう、アリス・フラーッシュ!」
突然立ち上がると二人組の方を振り向き、光りの奔流をぶつけるのだった。
「うぉー!まぶしいー!」
「なんじゃこりゃあ?」
光りが治ると、アリスの姿は屋上から消えていた。そして二人組の耳にどこからかアリ
スの声だけが聞こえてくる。
「じゃあご依頼はかなえたわよ。バイバーイ」
突然の自体の進展に戸惑い顔を見合わせた二人組だが。
「なんじゃこりゃー!」
「ドワー!なーんてこったい」
37 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:40:44 ID:LSEECnyN0
そうお互いの目の前居たのは、小柄で胸が大きく三つ編みで眼鏡と、長身スレンダーで
金髪ショートの……人魚だった。
「だー!確かに隣がカワイコちゃんだったらとは言ったが」
「だからって自分も女になってどうするんだー!」
「これじゃあ全然意味ないだろうが」
確かに言われたとおりに願いを叶えたアリスだが、ボケなのか?悪戯された腹いせに願
いを曲解したのか?どうにも微妙なところであろう。
「ところで、なんで人魚なんだ?俺たちの願いはメイドのはずだぞ」
「さあ」
しばし悩む、可愛らしい人魚少女二人だが、突然眼鏡人魚が叫び声を揚げた。
「あー!わかった」
「えっ、なんだ?」
「マーメイドだ。あいつあの時まあメイドさんって言ったのをマーメイド=人魚と間違え
やがったんだー!」
「なにー!間違えたー!あのバカ魔法少女、元に戻せー!」
しかしアリスはとっくに家に帰っており、人魚姿では移動もままならない。結局彼女達
の絶叫が、むなしく空に響き渡るだけだった。なお翌日発見された人魚達がその後どうな
ったのかは定かではない。
はいアリスです。今回の任務はとっても簡単でした。いつもこうなら楽で良いですね。
まあ悪戯されるのは勘弁してほしいですけど。だってあの後、天野に浮気だって責められ
て酷い目にあったんですから。わたしのせいじゃないのにー!
ちなみに、今回も戸籍等のアフタケアーは万全です。なんてったってアザラシにも住民
票がある時代ですからね、人魚の戸籍なんか簡単ですよ。では失礼します。
38 :
今更ジャムネタ:2005/07/29(金) 20:44:04 ID:LSEECnyN0
不評連載中【半妖狐魔法少女キューティアリスF】(そろそろくると予想してましたか?)
保守用に投下。
本編も酷いが番外編に至ってはどこが葉鍵なんだろう?
ま た K A N O …と思ったが、
栞の魔法少女スティックでヒイヒイアンアン言わされるアリスにちょっと萌えたので
これはこれで。
個人的にはエロけりゃいい
本編でエロが薄い葉鍵だからこそエロくなきゃ
もう感想すら反転と関係なす‥‥
朱鷺子さん、あぁ朱鷺子さん、朱鷺子さん
それにつけても 金の欲しさよ
何そのパタリロ
44 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:12:43 ID:66iIDufZ0
その日俺は女神を見た。
唐突にそんなことを言うと危ないやつみたいだから、ここでまずは自己紹介をしておこ
う。俺の名は七瀬留美、女顔とこの名前のせいでよく女と間違われるが歴とした男、それ
も男の中の男を目指す高校二年生で、この街に引っ越してきたばかりだ。
ちなみに俺の名前はルミではなくリュウビと読むので、そこのとこよろしく。
なに変な名前だ。五月蠅い、全部三国志オタクのバカ親父が悪いんだよ。
俺は男ばかりの五人兄弟の末っ子なんだが、バカ親父が兄弟全員三国志にちなんで名付
けやがった。上から卓(スグル:董卓)、操(ミサオ:曹操)、炎(ホムラ:司馬炎)、亮
(アキラ:諸葛亮)と来て、俺の名前は劉備ってわけだ。
どうも選択の基準がよくわからんチョイスだが、まああのバカ親父のすることだからと
納得するしかないな。ちなみに爺さんもオタでバカ親父は孔明(キミアキ)と言う名だ。
ところで俺の名前だけちょっと異質なんだが、これにはちょっと理由があって、つまり
亮兄のところでバカ親父のネーミングセンスについにお袋が切れた。でまあ今度産まれる
子が女だったらお袋が名前をつける、と言うことにさすがのバカ親父も折れたわけだ。
ところが生まれてきたのはまたもや男、完全にぶち切れたお袋の剣幕の前に妥協策とし
て俺の名前は字面だけは女っぽいこんな名前になっちまったわけだ。
けどまあ、それだけなら我慢もしよう。悲惨だったのはどうしても女の子が欲しかった
お袋が、俺を女の子として育てようとしたことなんだよな。
自分で言うのもなんだが素直な俺は、オカマだナヨ男だとからかわれながらもなるべく
お袋の要望に応えていた。さすがに小学校入学後は外ではスカートの着用は断固拒否して
いたが、まあ中性的な恰好ばかりしていたんだな。
けど、中学入学の時にお袋がセーラー服を買ってきたところでさすがに切れた。
それで、それからは一転男らしく振る舞っていたんだが、今までが今までだから周囲の
目は容易に変わらなかった。おまけにお袋は未だにルミちゃん呼ばわりだし。
しかし、この引っ越しのおかげでこの街に前の俺を知っているものはいない。心機一転
今度こそ、万人に俺を男の中の男と認めさせてやるぜ。
45 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:15:00 ID:66iIDufZ0
そんな風に張り切りすぎたせいで昨夜は興奮してなかなか寝付けず、転校初日だという
のに時間ぎりぎりなんだな。
それで慌てて走っている時だったんだが、最後の曲がり角に近づいたとき、俺の目の前
を二人組の少女が駆け抜けていったんだ。
一人はいかにも乙女って感じの美少女、けどもう一人は……まさに女神だった。
顔は正に美の一言、身長はやや高めくらいだけどすらりと伸びた手足、そして腰まで伸
びた長髪をなびかせて、月と狩猟の女神アルテミスのごとく優美に駆けていったんだ。
「もう、みさおが早く起きないからいけないんだよ」
「違うよ長森が早く起こさないから駄目なんだね」
方向が同じだから後について走っていくと、そんな会話が聞こえてきた。どうやらこの
二人組も遅刻寸前らしく、乙女の方は長森、女神はみさおと言う名前のようだ。
なにやら後を付けているような感じで男らしくないと思い追い抜こうとしたのだが、速
い、すごく速い、しかも遅れがちになる乙女の手を引きながらだというのに信じられない
速さだ。結局俺は黄門を駆け抜けるまで彼女達に追いつくことが出来なかった。
しかしまあ彼女に付いて走ったお陰で間に合ったのだから、まさに彼女は幸運の女神だ
ったのかもしれない。
そして、転校先のクラスで俺は女神と再会した。
そう、自己紹介を終えてクラスを見回すと、後の方の席に乙女と女神が座っていたのだ。
これは最早運命としか言いようがない。俺は男として覚悟を決めた。
「みさおさん。あなたは俺の女神だ。俺と結婚してくれー!」
「会ったばかりで気色の悪いことを言うなー!」
次の瞬間俺の眉間をペンケースが直撃した。
「ふっ、照れ方も過激だぜ、我が女神よ」
男として言うべきことは言わねばならん、その一心でそれだけ言った後、俺は意識失っ
たのだった。
46 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:16:54 ID:66iIDufZ0
従って以下の状況は俺が直接見聞きしたものではなく、あとで住井とか言うやつが教え
てくれた情報なので、本当かどうかはよくわからん。
「あーあ、また折原の外見だけに引かれたバカが一匹」
「うーむ折原は見かけだけは抜群だからな」
「しかしいきなりプロポーズしたのはこいつが初めてだな」
「短絡的なやつ」
「ある意味漢だが」
「とてつもないバカでもある」
このあたりが男どもの評価であったらしい。まあとにかくだ、これで俺を女みたいだと
バカにするやつはいなくなったわけで。やはり彼女は幸運の女神である。
女神とその親友はこうだったらしい。
「誰が照れるか。まったくもって信じられんバカだ。女みたいな顔して、なよっとしてる
のにいきなりとは、おぞましい、次に迫ってきたら絶対に止めを刺す」
「みさお、乱暴はいけないんだよ」
「いやでも、あいつ危険なんだ。獣だって」
「うーん、いきなりものをぶつけるみさおの方がよっぽど危険だと思うんだよ」
「そんなことないって、長森は気が付かなかったのか?あいつ目が変だった。絶対に危険
人物だ、変態に決まってる」
「そんなことないよ、みさおは男の子を警戒しすぎなんだよ。七瀬君は面白い人だよ」
「男のことならわたしの方が詳しい。あいつは絶対に変。目が覚めたらいきなり押し倒そ
うとするに決まってるんだから」
「違うよ、確かに前はみさおの方が詳しかったかもしれないけど。今そんなことないもん。
みさおは男の子を警戒しすぎなんだよ。それじゃあ、男のことはわからないんだよ」
「もう、五月蠅い。だよとかもんとか五月蠅すぎ。このだよもん星人」
「わたしだよとかもんとかそんなに言ってないもん」
この二人はいつもこんな調子らしい。しかし、これだけ意識して貰っていると言うこと
は脈有りだな。これから俺の男の誠意を見せて振り向かせてみせるぜ。
47 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:19:43 ID:66iIDufZ0
ちなみに他の女の子達はといと。
「七瀬君可愛い」
「るみちゃーん、すてきー」
「バカだけど男らしい」
「わたしならいつでもオッケーよ」
「結構好みかも」
何となく微妙な反応だったようだな。なんかオモチャ扱いされてないか?
まあしかしだ、男たる者いつまでも気絶しているわけにはいかん。
「根性ー!」
俺的推定では3分後、俺は絶叫とともに起きあがった。
「すげえ復元力」
「やはりアホは回復力が違う」
「根性だって可愛い」
なんやら外野が五月蠅いなあ。
「あーやっと起きたか転校生、後の方に席があいとるからそこに座るように。ではこれで
ホームルーム終了」
担任はそれだけ言い残して教室を出ていった。いい加減なのか?大人物なのか?
まあとにかくだ、しょうがないから言われた席に着く。ラッキー!女神の真後ろじゃん。
女神の席の前まで歩いて片膝を付き、さっと懐からバラの花束を取り出す。えっどこか
ら出したんじゃそんなもん?ってか。ふっ愚問だな、真の男とは、必要と有ればいついか
なる時でも、どこからかバラの花束や白のタキシードを召還できるものなのだ。
そして俺はこう言ったね。
「ああ俺の女神。愛してます、結婚してください」
「寝言は寝てから言えー!」
グワッシーン!今度は英和辞典で脳天を直撃された。
「ふふっ力強さも素敵だぜ。流石はマイハニー」
「いい加減にしろー!」
「グワッハー!」
肘鉄がまともにきまった。意識は有るけど動けんし、声も出せん。
48 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:22:17 ID:66iIDufZ0
「えーいアホは死ね。ど変態ー!」
ゲシゲシ!床に横たわる俺を容赦なく踏みつける女神。ああ女神はなにをやっても美し
い、優雅だ。ああ白なんだね。しかもなんか高級品っぽい。
「わっ、わーみさおもう止めるんだよ。この人悪いことはしてないよ」
流石は乙女、俺のことを心配してくれるんだね。けど俺に惚れちゃあいけないよ。俺の
ハートはもう女神のものなのさ。
「しっかし、今日の折原はいつにもまして過激だな」
「よっぽどあいつが気に障ったんだぜ」
「そうだな、あれでも普段は広瀬以外には手は出さないもんな」
「超絶美少女に踏んづけられる美少年、背徳的で素敵」
「るみちゃん、あの情けなさがやっぱり可愛い」
なんやらまた外野が余分なことを……。まあそれはともかく、女神は折原って言うのか
折原みさお、女神に相応しい優雅な名だな。
「みさおさん、綺麗な白ですね」
男たる者正直でなければならん。が、今のは失言だったようだ。
「どあほう、本気で死ねー!」
みさおさんの本気の蹴りで後頭部を机の脚に激突。今度はさすがに気絶した。
その後気が付いたらいつの間にか席に着いていて、どうも授業は終了しているらしい。
誰かが席に座らせてくれたらしいんだが、教師は俺が気絶しとることに誰も気がつかんか
ったんかい?それとも気にしてないのか?まったくどんな学校だよ?
みさおさんも乙女もとっくに帰ってしまったらしく、しょうがないので俺も帰ろうとし
たんだが下駄箱に手紙が入っていた。
内容は「体育館裏に来い」……こ、これはつまり、みさおさんからの告白の呼び出しだ
な。やっぱ女の子だからみんなの目のあるところでは恥ずかしかったんだよな。いやー、
モテル男は辛いね。
と言うわけで、俺は浮き浮き気分で体育館裏に行こうとしたのだが……ところで体育館
って何処だ?
49 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:24:49 ID:66iIDufZ0
その後まあ多少は迷ったりしたものの、一応それらしい建物を見つけて裏手に回る。待
っててねみさおさん、今すぐ男らしく抱きしめて、押し倒してあげるよー。
けど角を回ったところにいたのは、みさおさんではなく、なんだか凶悪そうな男子生徒
とその子分らしいのが二人だけだった。
「待ち人がいない。どうやらここは体育館ではなかったらしい」
場所を間違えた上に関わり合いに成りたくない連中までいる。ここは当然速やかに立ち
去るべきだな。それで回れ右した途端。
「待てーい、ど阿呆!お前を呼びだしたのは俺だー!」
「嘘を言うなー!俺は我が女神みさおさんから体育館裏で告白される予定なのだ」
「ない!それは絶対にない!第一ここが体育館裏だー!」
一言で否定しやがった。それにしても一々言うことがむかつくやつだな。決めた、こい
つは敵だ。絶対に敵だ。
「広瀬、こいつ危ないやつだぜ」
「妄想全開バカだな。あの折原がお前なんか相手にするわけなかろうが」
凶悪野郎の絶叫に続き、子分どももなんかくだらんことを言っとるな。
ちっ、好き勝手言いやがって。まあとにかく、このままこの場を立ち去るわけには行か
ないようだな。一応は相手をしてやるか。
「しょうがねえな、なんか用か?」
「当たり前だ。用もないのに誰が野郎なんか呼び出すか」
ふーむ、そいつは理屈だな。
「なるほど、そいつは同感だ。じゃあとっとと済ましてくれないか。みさおさんが俺を待
ってるんでな」
「だから、その妄想を止めろってんだろう」
とりあえずリーダー格、名前は広瀬らしいが、そいつが切れた。短気なやつだな。
「なあ広瀬、もうこのアホを相手にするのは止めた方がいいんじゃないか」
「いや待て南、アホは放置するとなにをするかわからんぞ。やはりここはきっちり言い聞
かせるべきだろう」
「まあ住井の言うとおりだな。アホはちゃんと教育しておかんと」
まったく人のことを散々アホ扱いしやがって、むかつく奴らだな。
50 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:27:10 ID:66iIDufZ0
「もう相談は終わったのか」
「ああ、じゃあ単刀直入に言うぞ、俺は折原みさおを守る会会長広瀬真造だ。お前みたい
な超弩級のアホはみさに相応しくない。即刻手を引け」
「同じく副会長南明義。あんたにはみさおさんは手に負えないよ。今朝も全然相手にされ
てなかっただろうが」
「幹事長住井護、折原はただもんじゃないぞ。お前なんかじゃ相手は無理無理」
「けっ、女神に相手にされない振られ虫がつるんで本命の足を引っ張ろうって言うのか?
男の嫉妬は醜いぜ」
ふっ、今の台詞きまった、男だぜ。
「なんだとこの軟弱野郎」
「こっちが下に出てりゃあ調子にのりやがって。ゆるせん」
「そっちがその気ならやってやるぜ。広瀬行けー!」
そう叫んで住井は広瀬の背後に隠れた。こいつは荒事は駄目なタイプか?
「待ちなさい、暴力は駄目よ」
背後から女性の声。うん、誰だ?
声のする方を振り向くと、建物の影からぞろぞろと3人ほど出てきたよ。
「折原みさお育成委員会事務局長兼演劇部部長深山雪見よ」
「えへへ、雪ちゃんの親友で会長の川名みさきだよ。ちなみに演劇部のお手伝いさんだよ」
『演劇部員で平会員の上月澪なの』
えっと酷く胸がペッタンコなお姉さんがリーダー格で、あとは長い黒髪のお嬢様とスケ
ッチブックを持ったリボンのちっこい子だよ。なんというかまた変な集団だ、この学校っ
てこんなのばっかりかよ?
「転校生君、折原さんは尋常じゃないわよ。君にそれだけの覚悟があるかな?」
深山先輩は左手を腰に充てて、右手の人差し指を立てて口元でゆらしてる。なんかバカ
にされたみたいで悔しいけど、流石は演劇部長というか、きまってるな。
「みさおちゃんはわたし達のアイドルだからね。その辺の男には渡せないよ」
『渡せないの』
つまりこいつらは女性親衛隊なわけね。流石は俺の女神、障害もただもんじゃないな。
51 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:29:28 ID:66iIDufZ0
「深山先輩、ここは俺たちに任せてもらえませんか」
「駄目よ、折原さんにはとびっきりの素敵な女の子になって貰うんだから。そう簡単には
引けないわね」
「いや、みさおは今のままがいいんです」
睨み合う深山さんと広瀬、互いにこだわりがあるらしいが、なんか俺って置いてけぼり?
「ちょっと待ちなさい。いつも言っているとおり、わたしは育成される気も保護される気
もないよ」
おー、この声は我が女神みさおさんだ。やはり俺のことが心配で、なんてけなげなんだ。
「みさおさん、俺のことを心配してきてくれたんだね。でも安心して良いよ。ちゃんと男
らしくこいつらを説得して。君との仲を認めて貰うよ」
「だー!お前となぞどんな仲でもない。貴様が話すと話がややこしくなるから黙ってろ」
うーん、怒った顔もチャーミングだな。
「OK、しかし怒った顔も可愛いねえ」
「可愛い言うな!」
「七瀬君、みさおは可愛いって言われると怒るんだよ。綺麗とか美しいって言われると喜
ぶのに変だよね」
ほう、乙女長森さんもいるな。女神有るところ乙女有りか?
「五月蠅い、綺麗や美しいは容姿だけについての客観的評価だから良いんだ。可愛いって
のは優位に立った上での価値判断を含んでるからいやなんだよ」
うーん流石は女神、常人には若干理解しがたい理屈だな。
「とにかく、貴様はみさおに相応しくない。引っ込め」
話を元に戻そうとしてるのか、突然邪魔者広瀬が割り込んできて。
「広瀬君達も折原さんに相応しいとは思えないけど、君も失格ね」
深山先輩も参戦。
「みんな俺を誤解してるぜ。みさおさんの為なら俺は悪魔とでも取り引きできる」
やはりここは男らしく宣言すべきだよな。見ろみさおさんの表情が変わった。ってあれ
ってこわばってるみたいな。
52 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:32:05 ID:66iIDufZ0
「馬鹿野郎、軽々しく悪魔と取引なんて言うんじゃない。お前もわたしみたいな酷い目に
遭いたいのかー!」
なんだこのみさおさんの突然の激昂は?なにか事情があるのか?
「あーあ、とうとうみさおの逆鱗に触れちゃったんだよ」
えっ、どういうこと?
「そんなのものの例えだろう。なんでそんなに興奮するんですか?」
「わたしはな、わたしは男なんだよー!」
「へっ?????????」
「みさお、それじゃあ七瀬君にはわからないんだよ」
「えっと、今のは耳の錯覚?」
「錯覚じゃない!仕方ない、ちゃんと説明してやるから耳の穴かっぽじって良く聞け。そ
れと多分突っ込みたいところは多いだろうけど、まずは黙って聞いてくれ」
「わかった」
なんだか変なことになったけど、みさおさんが妙に真剣だからここは言われたとおりに
黙って聞いておくべきだよな。
その後みさおさんが説明してくれたのは、到底信じられないような不思議な話だった。
と言うわけで以下はみさおさんの語りなんだ。
わたしは本当は折原みさおの兄で浩平って言う名前だった。そして俺、このころはそう
言ってたんだよ、俺が小学生だった頃妹のみさおは病気で死にかかっていた。
俺はみさおをどうしても助けたかった。みさおが助かりさえするならもう神にでも悪魔
にでもすがりたかった。だからある夜悪魔を呼び出そうとしたんだ。
「わたしも一緒だったんだよ。方法は鏡を向かい合わせてそこを通り抜ける悪魔をつかま
えるって方法だよ」
長森は昔からつきあいの良いやつだからな。
それで首尾良く悪魔を捕まえて取引を持ちかけたんだけど、普通悪魔って魂を渡せって
言うよな。けどそいつは初回サービスで俺の魂は不要だって言うんだ。
どうも胡散臭いとは思ったんだけど、背に腹は代えられないから、みさおの命を助けて
くれって要求したんだ。やつは二つ返事で了承した。
「わかった。折原みさおの命を助けよう」
けどそれが罠だったんだな。やつの返事を聞いた途端俺の意識は途切れた。
53 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:35:12 ID:66iIDufZ0
「わたしも一緒に気を失ったんだよ」
「仲良いんですね」
突っ込みは良いから黙って聞け。
そう、その後俺が意識を取り戻したときには、全ては終わっていた。
いつの間にか病院の長椅子で眠っていたようだ。変だな、さっきまで俺の部屋に居たは
ずなんだが。さっき悪魔を呼び出したのは夢だったんだろうか?
なぜか隣で寝ていた長森を揺り起こす。
「おい長森、こんなところで寝ていると風邪をひくぞ」
「うーん、浩平に起こされるのは始めてみたいな気がするよ。ってなんでみさおちゃんが
ここにいるの?病気直ったの?」
「えっ?なに言ってるんだよ俺は浩平だぞ」
「嘘だよ、だってどう見てもみさおちゃんにしか見えないよ」
「長森お前なあ、こういう時に悪質な冗談は止めろよな」
待てよ、俺の声ってこんな声だったけ?妙に可愛い気がするんだが。
「みさおちゃんこそ、冗談は止めて病室に帰らないと駄目だよ」
長森の顔、冗談を言ってるような表情じゃないな。
「なあ、俺本当にみさおに見えるのか?」
「うんそうだよ。早く帰ろう」
「その前にちょっと鏡を見たいんだが」
「まあそれくらいなら」
渋々って感じで頷く長森、本当にこいつはつきあいが良いよな。
でまあ長森と一緒にトイレの前まで行って鏡をのぞき込む。うーむ、確かにこの顔はみ
さおだな。試しに頬をつねると痛い。やはりこれは俺なんだ。つまりこれは俺とみさおが
入れ替わったってことか?みさおはどうなったんだ?それにこの体ピンピンしてるぞ。み
さおだったらこんな元気なの変だよな?
うむ、疑問が次から次へとわいてくるぞ。
54 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:36:22 ID:66iIDufZ0
「みさおちゃんどうしたの?具合悪いの?」
長森が心配そうに俺の顔をのぞき込んでくるんだが……。ちょっと待て、俺の方が長森
よりやや背が高いぞ。いや、確かに俺の方がやや高かったけど、この体はみさおのはず。
みさおは長森よりかなり背が低かったぞ。どうも身長は俺くらい有るようだ。これはいっ
たいどういうことなんだ?
とにかく長森に現状を理解してもらって協力して貰おう。とりあえず他に頼りに出来る
人は居ないわけだし。
「なあ長森、信じられないかもしれないけど俺は浩平なんだ」
「またその話、冗談はいい加減にしようよ」
「けど長森、みさおはこんなに背がないはずだぞ」
「えっとそう言われればそうなんだけど。でも浩平にも見えないもん。みさおちゃんじゃ
ないならあなたは誰?」
こういう所結構頑固だよな。その後まあ幼なじみが共有する思い出というか、二人きり
しか知らないはずの秘密を話してようやく俺が浩平だと納得して貰った。
えっ、どういう秘密かって?そんなこと女に言わせるな。
「そうだよ、恥ずかしいんだよ」
まあとにかく長森を納得させたんだが、問題はこの異常な事態の原因だよな。
「じゃあ浩平、これってやっぱり」
「そうだな、細かい理屈はよくわからんがあの悪魔野郎の仕業に間違いないだろう」
「ところでこれからどうするの?」
「こうなると、まともな願いのかなえ方がしてあるとはとても思えない。みさおが心配だ
から病室へ行ってみよう」
「そうだね、わたしもそれがいいと思うんだよ」
一応相談がまとまって病室の前まで行ってみたんだが、患者名が「折原浩平」になって
るんだ。しばらく呆然としていたんだけど、見まわりの警備員らしい足音が聞こえてきた
ので慌ててその場を逃げ出した。
55 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:38:31 ID:66iIDufZ0
他にどうしようもないからとりあえず家に帰ってみると、居間には向かい合わせのまま
の鏡や消えた蝋燭が残っていた。やはり悪魔を呼び出したことは夢じゃなかったらしい。
ちなみに、由起子さんは今夜は会社に泊まり込みだ。
その後とても眠れそうにないから長森と現在わかっている状況を整理してみた。それに
よると、俺はどうやらみさおになっているらしい。それと帰ってから確認したんだが、確
かに女になっていた。まだ子供だから胸は膨らんでないが、ちんちんはないし、割れ目が
ある。どこからどう見ても女(以前の状態だけど)だよな。
そして確認できてはいないけどみさおは俺になっているらしい。でなぜか病気で入院し
ているのはみさおになった俺ではなく、俺になったみさおなんだよな。
とにかく幸いなことに明日は学校は休みだから、明日もう一度病院に行ってみることに
して、寝れないまでも体力温存のために俺の部屋で休むことにしたんだが。
「なんじゃこりゃ?これ女の子の部屋だぞ」
「うん、少なくとも男の子の部屋じゃあないよね」
部屋にあるのは花柄のカーテンだの、熊の縫いぐるみだの、少女漫画だの。
「俺のトムキャットは何処に行ったんだー!?」
「浩平、トムとジェリーの縫いぐるみならあるよ」
そうトムキャットのプラモの置いてあったはずの本棚の上にあったのは、長森が言うと
おりトムとジェリーの縫いぐるみだった。
その後ふと思いついて部屋をでてネームプレートを確認してみる。予想通り「みさおの部屋」になってるな。
「多分浩平の部屋とみさおちゃんの部屋が入れ替わってるんじゃないのかな」
「なるほどそうかも」
確かに長森の言うとおりみさおの部屋の扉に掛っているネームプレートは、「浩平の部
屋」になってる。けど部屋の中は確かに男の子っぽい部屋だが、俺の部屋とは違うな。もう
少し子供っぽい感じだ。それとよく見たら教科書がみさおの学年のものだ。名前は浩平
だけどな。
56 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:41:04 ID:66iIDufZ0
それで俺の部屋に引き返すと、折原みさおと記名された教科書は俺の学年のものだ。
「どうも浩平の弟がみさおちゃんに成ってるみたいだよ」
「だな、この写真も姉と弟って感じだ」
机の上に飾っていた俺とみさおの写真も性別が変わっている。ついでにアルバムを引っ
張り出すと、見覚えのある写真の中で俺とみさおの性別だけが変化していた。
「これは相当本格的に変わっちゃってるよ」
「つまり、俺は女として生まれてみさおって名前で、代わりにみさおは男で俺の弟浩平っ
てことになってるんだな」
「まあそうとしか思えないね」
そんなことを話している内にいつの間にか眠ってしまっていたらしい。俺たちは病院か
らの連絡の電話で起こされることになった。
そしてそれは運命の電話だった、そう浩平、つまりみさおの容態が急変したって電話だ
ったんだ。それから大慌てで由起子さんに連絡をして病院に直行したんだけど、間に合わ
なかった、みさおだった浩平は助からなかった。
なお連絡したとき時、由起子さんは当然のように俺のことをみさおと呼び、浩平が危な
いのかと聞いてきた。つまり由起子さんの記憶も変えられているんだ、俺のことを覚えて
いるのは俺と長森だけらしい。
その後のことはショックと悲しみと慌ただしさで、良く覚えていない。気が付いたら四
十九日の法要が終わっていた。相変わらず俺は女のままだ、長森がいろいろと助けてくれ
なかったら困ったことになったと思う。まあまだ生理があるような年じゃなかったのがせ
めてもの救いかな。
57 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:42:31 ID:66iIDufZ0
そしてその夜のことだった、俺のことを心配してくれて泊まっていた長森と一緒に眠っ
ていたんだが、二人そろって夜中にふと目を覚ました。
すると目の前にあの悪魔野郎がいやがったんだ。
「やあお嬢ちゃん、約束通り折原みさおの命は助けたよ」
悪魔野郎は俺たちが目を覚ましたことに気が付くと、さわやかな笑みを浮かべてそんな
ことをぬかしやがった。
「ふざけるな!これになんの意味があるんだ」
「おやおや心外だねえ。折原みさおはちゃんと生きてるじゃないか。死んだのは折原浩平
の方だよ。折原浩平の命までは契約にないからねえ」
悪魔野郎はへらへらと神経を逆なでするような笑顔のままだ。
「みさおの魂が生きて無くちゃあなんの意味もないだろうが」
「しょうがないだろう。俺たち悪魔は肉体的寿命は左右できるけど、魂の寿命には干渉で
きないんだ。そいつは神の領分だからな。だから折原みさおの病気は治した、けどみさお
の魂は予定通り天国行き、魂がないと体も持たないから折原浩平の魂をみさおの体に入れ
てやったのさ。兄弟順を変えたのは単なるアフターサービスだな。君ももう一度下級生に
なりたくないだろう。ああ特別サービスで君はとびっきりの美少女に成るよ。隣の可愛ら
しいお嬢ちゃん以上にね。せいぜい妹の代わりに女の子の人生を楽しむことだな。じゃあ
さらばだ」
「あっ、ちょっと待て、元に戻せー!」
俺の叫び声もむなしく、悪魔野郎は消えてしまった。
悪魔野郎の言葉が正しいとすれば、結局みさおの体を生き延びさせることは出来るけど、
魂は救えないってことらしい。
けど本当は、単に俺が弄ばれただけじゃないのか?
58 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:45:15 ID:66iIDufZ0
「でも、とびっきりの美少女は本当になったんだよ。幼なじみで女のわたしでも時々ドキ
ドキしちゃうんだよ」
「うん、わたしは姿は見えないけどみさおちゃんは美少女な雰囲気なんだよ」
「あっちょっと、みさき先輩抱きつかないで」
『お肌すべすべ。スタイルも良くて羨ましいの』
「澪、尻に頬をすり寄せるんじゃない」
「この際私も参加するわ。あーそんなに大きいわけじゃないけど形良くてふかふかの胸羨
ましい」
「あっちょっと胸触っちゃあ駄目」
とまあ話の途中だったがみさおさんはこれ以上語れる状況になさそうだから、ここから
は再び俺が語らせて貰う。
「なんだか、怪しい光景だな」
「うーん、良くあることなんだがこうなると男は参加できないからな」
「この時ばかりは女に生まれたかったと思うぞ」
なるほど俺の呟きに対して返ってきた答から言って、みさおさんは時々女の子のオモチ
ャにされているようだな。まああれだけの愛らしさだから当然なんだが。
「ちなみにみさおさんは身長162a、上から79Bー51−78だぞ」
住井のやつ、なんでそんなこと知ってるんだ。けどみさおさんって、胸はさほどでもな
いけどウエスト細いんだな。
それでも10分ほどしてようやくみさおさんが抜け出してきた。
「さっきの続きだ。その後悪魔野郎と会ったことはない。そして俺は決心したんだ。こう
なった以上は仕方がない、みさおとして生きてやろう、みさおとして幸せになってやろう
ってな。そしてその時から俺はわたしになったんだ」
「ですから俺が幸せにします。俺と結婚してください」
「馬鹿野郎、お前程度じゃみさおには相応しくないんだ。みさおの相手は昔の俺のような
真の男で、美男子星の王子じゃなくては駄目だ」
やだなあ、俺は条件ピッタリじゃないか。
「その条件に相応しい男って俺だけじゃないですか」
「お前の?どこが?」
みさおさん、なんでそんな疑惑に満ちたような目で俺を睨むんですか?
59 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:46:52 ID:66iIDufZ0
「まあ浩平が成長しても理想の男だとは思えないけど、でも七瀬君じゃあ力不足だよ」
えー、乙女長森さんに駄目だしされちゃったぞ。
「何処が不足なんです?自慢じゃありませんが結構顔はいい男だと思うし、俺の言動は男
らしさに満ちあふれてるじゃないですか」
「るみちゃんは可愛いと思うけど、男らしさは感じないよ。容姿は75点、男らしさは4
0点くらいだよ」
『みさきさんは辛口なの』
「わっ、どうしてその名を?るみちゃんだけはやめてくれー!」
「そうやってうろたえるところが男らしくないわね」
ひでえ深山先輩止めですか。
「とにかくわたしはお前なんかと付き合わないよ」
「まあもっと修行しないとみさおのお婿さんには相応しくないんだよ」
あっ、女神と乙女が去ってしまう。
「わー待ってくれー」
60 :
女神で気紛れ:2005/07/30(土) 20:49:46 ID:66iIDufZ0
>>44-59 まあ元ネタはあれです。ヒロインとヒロイン役の方の名前が同じ発音なあれです。
元ネタ知らないし、それに言うほど嫌ってたりする訳じゃないんだけど、
このてのキャラを置き換えるだけのパロディって何の意味があるんだろ?
まぁパロディに限らず、原作トレースしただけとかって(元ネタ知ってりゃ)読む必要なくね?
文句あるならてめぇで書けや。
>>62 リア厨かよ‥‥
書き手から言わせるとこういう反対意見って貴重なんだから結構うれしいもんなんだけどな‥‥
だからといって、もうちょっと言いようがあるとは思うが。
書き手のインスピレーション刺激するような小ネタでもついでに振っておくとか。
>>44-59 「留美(ルミ)、あのマッカーサー元帥も8歳の頃まで母親の指示でスカート穿いて
学校行ってたりしたのよ?」
…とかお袋さんに言われてそうな子供時代だな七瀬w
44-59
元ネタはよく知らないがGJだ。
ところで、留美が男なのもアフターサービスの一環だったりしないよな?
さて、御堂がちっちゃくなって岩切と戯れていたとき。
蝉枝は坂神家の居間で「てれびじょん」とにらめっこをしていた。
ソファにゆったりと身を沈め、身体にはちゃんと休息を取らせているが、
そうしている間にも現代社会に関する情報の収集には余念がない。
「おお……本当に宇宙空間が無重力だったとは……」
「それでは蝉枝さん、今日はこのあたりで失礼しますね」
「うむ、道中気をつけろ」
「ふむ……大相撲も国際化の時代なのか……変わったな」
「あ、蝉枝。先にお風呂入ってるね」
「承知した」
「それでは、今日のMHKニュース7、これで失礼致します」
眼鏡を掛けた男性アナウンサーが画面に向かって一礼をして、
そうしてお目当てのニュース番組は終了した。
(しかし…情報機関も随分と発達したものだ。)
蝉枝は、昔のことを少しだけ思い出し、目を閉じた。
耳を済ませば、今にもあのとき憧れた香水の宣伝歌がラジオから…
ちゃ〜〜んちゃ〜〜んちゃ〜〜んちゃっちゃっちゃっちゃっちゃ〜〜♪
「ん?」
すると実際に、何やら陽気な音楽が「てれびじょん」から聞こえてきたではないか。
蝉枝は少し驚きつつ、画面の中を覗きこんだ。
桃色のドレスに身を包んだ赤毛の少女が、ステッキを片手に踊っていた。
顔立ちからして、年の頃は17、8といった所だろうか。
蝉枝はしばらく呆然と、眼前に流れる映像を眺めた。
「国営放送でこのような番組を放送するとは……」
ひらひらのレースを何重にも縫いつけたスカートから、素足が扇情的に伸びている。
彼女の感性からしてみれば、破廉恥極まりない出で立ちである。
まるで長襦袢で外を駆け回るようなものだ。
しばらくして、蝉枝は自分の中に一つ、納得をつけた。
「……これも国政の一環なのか、なるほど」
そうだ、これは現代の社会を反映するものなのだ。恐らくそうだ、うん。
それなら、しっかりと研究する必要があるだろう。
蝉枝は姿勢を正して、「てれびじょん」に向き合った。
『モモぉっ!いきなしでわるいんやけど、一発、カードマスターになってくれへんか。』
『ええ!そんなこといきなり言われても!』
『モモっ!これも正義のためやっ!涙をぬぐって戦うんやっ!!』
『ふみゅ〜ん!』
『正義は必ず勝つんやっ!勝ったモンが正義やっ!』
『ふみゅみゅ〜ん!最近、あたしたちのほうが、悪の帝王みたいぃ!』
「あ、蝉枝、お風呂上がったよ」
「月弥、頼みがある」
「ん?どうかした?」
「聞いて欲しい事がある」
「どうしたの、何か大変なこと!?」
蝉枝のただならない様子に、月弥の身体が緊張する。
自分に手助けを求めるなんて、よほどの事が起こったのだろうか。
「今から私が言うことをよく聞いて欲しい。そして、どう思ったかを率直に伝えてくれ」
その言葉の圧倒的な迫力に押されて、
一体何を蝉枝は言おうというのか――。
「それでは、行くぞ…」
「…うん」
「ふみゅ〜ん☆」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………え?」
「以上だ」
「え、あの、蝉枝?」
「さあ、答えてくれ。どうだったのだ」
「えっと、その……」
「…………」
「なんか、ほわん、って感じ…」
「ほわん?それはどのような感情だ?」
「うんとね、上手く言えないんだけど、可愛いっていうか、こう、…なんだろう」
「と、とにかく、悪くはなかったのだな?ならいい」
三井寺月弥、1○才。
萌えに目覚めた瞬間であったかもしれない。
「蝉枝、またやってよ」
「後生だ…」
70 :
元380:2005/07/31(日) 04:58:15 ID:cdkBxuyI0
…ということで新スレ記念に蝉枝さんをプッシュしてみたわけなんですが…
前スレ変な形で落としてすいませんでした_| ̄|○|||
回線吊って首切ってきます。
あ、
>>1さんスレ立てありがとうございます。
という感じで今後もよろしくお願いします。
せ…蝉枝がそれをやるとは。破壊力高けぇw
月弥、お前のその感情は正しい。
で、この次は幼女ver.御堂にピーチコスですか?(マテ
> 耳を済ませば、今にもあのとき憧れた香水の宣伝歌がラジオから…
「ニュース10まず最初はカ○ボウ旧経営陣粉飾決算のニュースから……」
「…………」
73 :
反転集結の愚者:2005/07/31(日) 23:01:33 ID:9UO7Q6FH0
ええと……前スレへのレスを……
鎖は正直無理です……というか、あれ男女反転したらストーリー変わるような……
芳美さんは……あぅ……すみません……ナイトライターをプレイしたのは反転集結書いた後なんです……ていうか一昨日なんです……
頑張ってadult編に出します……むしろ、ちゃんと最初から出さなくちゃいけなかったんですね……
ごめんなさい……吊ってきます……二度と帰ってこれないくらい深く、高く……
>>73 そんなに気になさらなくても平気ですよ。
のんびり待ってますから、のんびりどうぞ。
clannadヒロインと陽子との喧嘩物が見たいとネタを振ってみます
「あんたたちくっつきすぎよ!」みたいな
なんて
体が指先から段々と消えていく。
世界の気まぐれは、終わったのだ。俺は元の世界に戻り、向こうからも女の俺が帰ってくる。
本来ならば喜ばしいことなのだろう。世界が、あるべき姿に戻るのだから。
でも俺は身が切られるほどに悲しかった。
それは、こいつのことを愛しているから。そしてこいつも俺のことを好きでいてくれている。
言葉では表さなかった。いつか費えてしまう、そんな想いだったから。
そんなの悲劇にしかならないって二人とも分かっていたから。
春原が、重い口を開いた。
「ありえないことだってわかってた…。いつかいなくなっちゃうことだって。
ちゃんと覚悟、してたつもりだったのに…なんでこんなにも悲しいんだろうね…。」
こいつはこんな時だって笑顔で
「わたしね、岡崎。今だから言うけど…」
でも目の端にたくさんの涙をためて
「ううん。なんにもない…。何にもないよ…。」
そんな顔をされたら
「じゃあ、さよならだねっ岡崎!君がきてくれてから、滅茶苦茶楽しかった!」
気付いたら俺はこいつのことを力いっぱい抱きしめていた
「やめてよ…。岡崎…。」
春原の拒否の言葉。腕の力は緩めなかった。
「俺な…春原…。お前とずっとこうしたかった。」
「やめて…。」
「ずっとずっと…お前のこと、好きだった。好きだったんだ…。」
「やめてよ…。」
春原の目からはじめてあふれ出てきた涙が俺の肩をぬらす。
「そん、なことい、いわれたら耐えられ、なくな、っちゃうよ、岡崎ぃ…。」
春原の腕から力が抜けた。
「岡崎ぃ…。どこにも行ってほしくないよぉ…。ずっと、ずっと一緒にいようよぉ…。」
なんでこんなにも世界は残酷なんだろう。俺たちはただ普通の恋人のようにいたかっただけなのに。
俺達はぬくもりを求めるように唇を合わせた。キスは甘いなんてうそだ。
しょっぱい味しか、しないじゃないか。
78 :
76:2005/08/01(月) 02:34:16 ID:yeCZcoOl0
思いつきで書いたら痛い目見る。そんなこと分かってたはずなのにな。
あれ?涙が止まらないやあ…。
春原もツンデレ化
「あれ……何の騒ぎだろ?」
駅へと向かう途中、ふゆが何かに気付いて人差し指を上げた。
つられてはじめとかずき、それにさつきがふゆの指差した方向へ顔を向けると、道路を挟んで反対側の歩道にに通行人が群れをなしており、何かを見物しているようだった。
雑音や喧騒が交じり合って何を話しているのか聞こえず、また人々に囲まれ、中心で何が起こっているのか、知る由もない。
「もしかして、噂の人形使いが出張ってきたのかな?」
「まさか。思い切り歩道の真ん中じゃない、通行の邪魔になって警察に捕まっちゃうわよ」
はじめが思いついて顔を綻ばせ、かずきが冷静に反論する。
確かに、見物人達が固まっているせいで壁が出来上がり、歩道の端から端を埋め尽くすように立ち塞がっていた。
騒ぎに興味の無い、急いでいるらしいサラリーマンの男が迷惑そうにその人壁を避けて車道に移動し、車にクラクションを鳴らされて更に不機嫌な表情を作っている。
一体、何が起こっているのであろうか。
「ちょっと見て行こう!」
「あ、待ってよ、はじめちゃん!」
「急に走り出さないで!」
興味を持ったらしいはじめが目を爛々と輝かせて反対側の歩道へ繋がる横断歩道へと駆け出し、ふゆとさつきが慌ててその後を追いかける。
出遅れたかずきが徹夜明けでふらつく足に鞭打って走りながら、その背中に向かって、
「ちょっと、例の芸人はどうするのよ!?」
「そんなもん、後でいいでしょっ!」
はじめに即座に返され、げんなりした顔をする。
「そんなもんって……あんたが言い出したんじゃない……」
まぁちょっと遅れたからって芸人が逃げる訳でも無し、それにあの騒ぎに興味があるのも確かだし。
かずきはそう思うことにした。
しないとやってられなかった。
「ねぇねぇ、何があったの?」
一番前を走っていたはじめが群集に辿り着き、一番後ろで背伸びしながら何とか見物しようとしている中年の男に声をかけた。
男は五月蝿そうに振り向き、はじめの巨大な胸に吸い寄せられるように視線を釘付けにして、ダランと鼻が伸びきった顔で、
「あぁ、俺もよく分からないんだが、どうも変な姉ちゃんが、警察官と言い争いしてるみたいだぜ」
と、赤ら顔で答えた。
はじめはそんな男の様子に気付いた風も無く、
「そ、ありがと」
軽く手を上げて微笑むと、三人が追い付くのを待つ。
すぐに息を切らせたふゆとさつきがはじめの元へと追い付き、ぜぇぜぇと荒く息を付きながら、額の汗を腕で拭った。
「もぅ、いきなり走り出すなんて酷いよ、はじめちゃん」
「置いてけぼりになると思ったじゃない」
「あはは、ごめんごめん」
ぷぅ、と頬を膨らませて可愛らしく文句を言うふゆ、さつきは顔を赤くしてはじめを睨み付ける。
はじめは笑いながら、二人の小さな頭をわしゃわしゃと撫でた。
その間に、もはや疲労困憊といった様子で、ふらふらと三人の下へ駆け寄るかずき。
そのまま、私死にますからと言った感じでバッタリ倒れ込むその身体を、はじめが驚いて抱き止めた。
「ちょっ、大丈夫!?」
「……心配するなら、最初から私の身体のこと考えてよ……」
徹夜明けなんだから……そう呟いて、かずきはグッタリした顔のまま動かなくなった。
疲労の限界で眠ってしまったらしく、すぅすぅと寝息が聞こえてくる。
「か、かずきちゃん、どうしたの!?」
「死んだ!?」
「……眠っちゃったみたい」
はじめが「こんな所で普通寝る?」と呆れてぼやきながら、しゃがみ込んで、その背中にかずきを背負う。
不摂生が祟ったのか栄養失調なのか、かずきの体重は思ったよりも軽く、別段苦痛だとは感じない。
ふと気付けば、ふゆとさつきの二人が心配そうな顔ではじめの顔を窺っていた。
「ま、駅前に着いたら起こしてあげよう」
苦笑しながらもう一度その頭を撫でるはじめ。
同い年なのに、何だか妹を持ったみたい。
そんな微笑ましい気持ちになりながら、そういえばかずきは梓、ふゆとさつきは初音くんっぽいよね……なんて自分の従兄弟と照らし合わせて考えていると、
「もし、そこの方」
「え?」
いつの間にか人垣が割れ、中から一人の女性が現れて、生真面目な顔でこちらの様子を観察していた。
流れるような純白の髪と、スラリと伸びた長い足。
凛々しいその顔は『美しい』というよりも『カッコいい』といった言葉の方がよく似合う。
きっと、同姓のそのテの女に人気があるだろう。
はじめは女性を見て、そんな事をボンヤリと考えた。
ふゆがはじめと白い髪の女性、二人の顔を交互に見比べながら、あわあわしている。
さつきは今や見物人達の視線が自分達にあると感じて、恥ずかしさに頬を染めた。
そんな中で、
「ぐー……志子……そこは……ベタじゃない〜……むにゃむにゃ」
かずきだけが、幸せそうに眠りこけていた。
「罰ゲームです、私のことをお姉様と呼んでください」 ……薄幸の少女、ふゆ。
「じゃあ、お茶会でも開こうか?」 ……同人作家、かずき。
「こうして巡り合った数奇な運命に乾杯! ってとこかな?」 ……鬼の血を持つ女性、はじめ。
「のんびりするって良いことですよ。試してみてくださいな」 ……五月雨堂の主、さつき。
「お、俺はこんな綺麗な服……着たこと、ない」 ……旅の人形遣い、雪穂。
「大丈夫。私に任せておけ」 ……強化人間、蝉枝。
「私達、姉妹だったら良かったのに……」 ……魔を祓うシスター、芳美。
年上のお姉さん達が織り成す、ゆるやかでまったりとした日常。
お茶会、お着替え、お買い物。華麗に煌く百合の園。
某マリ○て風味なハートフル百合コメディ(謎)、反転集結adult編、乞うご期待!
い、言ってみただけですよ……?
ああ、石を投げないで……言われなくても吊って帰ってきませんから……
>>73 んじゃ、鎖の悪役鉄板な彼を性別反転させてみる
岸田洋子:機関不調で漂流していた海洋調査船の乗員。自称海洋学者。
西欧人に見劣りしないほどの長身であるため、全体としては細身に見えるが、
実は脱ぐとかなり凄い。
温厚を装ってはいるが、肉食獣(♀)のような別の意味で凄みのある眼差しは
隠し切れない。
「ショタ5、大人1、小娘も2人…フフフ、よりどりみどり」
…あれ?
>>76-77 岡崎の方が積極的なシチュは珍しいかも。GJ
ここまでやっちゃって「実はまだ帰れませんでした」オチになるのか?
そこで未練がましく唇を合わせていたら、
いつの間にか相手が入れ替わっている罠(ぉ
>86
想像すると軽く死ねる
で、男岡崎の方は男春原をぼっこぼこにするわけでつね?
>>84 朋也はいざというときはやる男だと思う。春原(陽平)とは違ってw
>73
いあ、鎖を反転してくれって意味じゃなくて、鎖のようにみんながリョジョークされる展開になるのかな?っていいたかった。
何か騒ぎがあったとか言ってたから、
漂流船を発見→乗ってた人物を救出→不調相次ぐ船旅→最初の犠牲者
って感じになるのかなーって。
…そうだよ! ただ単にエロを期待してただけなんだよ! でも実際こいつらがそうなるのは半分見たいけど半分見たくないよ!
何となく書いてみた。
春原の体付きがなんか変な気が…。小さくて柔らかかったはずの体が、何というかこう…。
表春原「ひぃぃぃぃぃーっ!?岡崎が岡崎にっ!?」
表岡崎「…おまえかよっ!」
ばきっ!
春原「ボディっすか!」
それでも、あいつと同じ顔を殴ることなんて、できなかった。
裏岡崎「ちょっと!春原なにしてるのよ!」
裏春原「岡崎っ、元に戻ったんだねっ!」
裏岡崎「それはいいとして、この姿勢はどういうつもりかしら?」
理由次第じゃ殴る。
裏春原「わたしね、岡崎が男になって気付いたの。わたし、岡崎が好きだったって…」
ばきっ!
裏春原「何でグーで殴るんですかぁっ!」
気付いたら、男春原相手のように、グーで殴っていた。
>>84 その場合、難船してるのは海洋観測船じゃなくて(株)猫柳と船腹にでっかく書いたクレーン台s;fgへ;れ:rげrggじぇ
94 :
女神で気紛れ:2005/08/02(火) 23:25:01 ID:aO75tUk40
「待て逃がさんぞ、話はまだすんでないんだ」
用は済んだとばかりに立ち去っていくみさおさんの後を追おうとした俺の肩を、後から
広瀬が掴んできた。まったく事毎に邪魔なやつだな。
まあそれでもどうにかやつを振りきったんだが、みさおさんの姿はもう何処にも見えな
い。今朝見かけたときのことから考えてこっちの方向から来たと思ったんだけどなあ。
諦めて帰ろうとしたときだった。
「よう、そこのおぼっちゃん、何処に行くんだ?」
ちっ、俺は女顔で身長も168しかないから良くこういう柄の悪いのにからかわれるん
だよな。まあ別に喧嘩を売られるわけじゃないからここは無視が一番。さりげなく通り過
ぎようとしたんだが。
「おーい、おぼっちゃま、聞こえないのか?」
無視、無視。
「ちゃうちゃう、あの顔、あの体格、あれは女にきまってるだろう。お嬢ちゃんは男呼ば
わりされて怒ってるんだよ」
「そうだな、拗ねちゃったんだな可愛いじゃないか。ガハハ!」
「ギャハハ!そういやそうだな。可愛いお嬢ちゃん、ツンとすましてないでこっち向いて」
くー、なんたる侮辱、もうこいつ殴ってやろうか。いや待て、男はここでグッと我慢だ。
阿呆の戯言など気にかける必要なし。
「おい姉ちゃん、無視すんなよ。胸がぺったんっこだからってそれだけ顔が可愛けりゃあ
気にする必要ないんだぜ。って本当に洗濯板じゃないのか、ギャハハ!」
こいつよりによって胸に触ってきやがった。きしょー、重ね重ねの侮辱。さすがに今の
は我慢ならん。ぶっ飛ばしてやる。
「誰が姉ちゃんだ、お嬢ちゃんだ。俺は男だー!」
とりあえず触ってきた真正面のやつとその隣をぶっ飛ばした。そこまでは良かったんだ
が……やったときは頭に血が上ってそこまで気が回らなかったけど、どうにもちょっと相
手が多すぎたな。たちまち捕まって袋だたきだ。
95 :
女神で気紛れ:2005/08/02(火) 23:26:07 ID:aO75tUk40
それで、散々やられてほとんどグロッキー状態に成ったころだ。
「お前ら、なにをやってるんだ?」
えっ、この声はみさおさん?なんで今頃?いや、それより危険だ。
「駄目だみさおさん、逃げろ!」
「なんだ、この超絶綺麗な姉ちゃんがこの坊やの女か?」
「丁度いい、一緒に可愛がってやるぜ」
くそー、もう体に力がはいらねえ。せめて相手が一人ならしがみつくなりなんとしてで
も止めるんだが。
「止めろー!みさおさんに手を出すな」
手近なやつの足を掴んだんだが、無理だ、とても全員は止められない。俺がバカやった
せいでみさおさんが大変なことに。
「へっへへへお嬢ちゃん、こんな軟弱な坊やほっておいて俺たちと良いことしようぜ」
「汚い手でわたしに触るんじゃない」
突然みさおさんの肩に手をかけたゴロツキAが吹っ飛んだ。なにが起こったんだ?
「てめえ、なにしやがる」
ゴロツキBは腹を抱えて蹲る。なんだ、もしかしてみさおさんがやったのか?
続いてみさおさんのけりが3人目のアゴを直撃、なんちゅう華麗な蹴りだ。いやもう、
あれは格闘なんてもんじゃない、芸術だよ。俺はもう惚けたようにゴロツキの足を掴んだ
ままみさおさんの舞(としか表現しようがないんだ)を見ていることしかできなかった。
けどさすがに相手が多すぎたようだ。ゴロツキのうちの一人がいつの間にか乱闘から外
れていたらしく、近くに隠れていたらしい長森さんを捕まえてきたんだ。
「おい、この子お前の連れだろう。この子のことが心配なら抵抗は止めて貰おうか」
長森さんにナイフを突きつけるド外道野郎。この卑怯者め。
「長森、なんで逃げなかったんだ」
「後免みさお、でも心配だったんだもん」
麗しい友情だけど、今の場合はやばい、非常にまずい。けどちっとは回復したから一撃
くらいはなんとかなりそうだ、どうにか隙を作れないかな。
「けへへっ散々やったくれたじゃねえか。この礼は体で払って貰おうか」
「こっちへ来いよ」
「みさお来ちゃ駄目!この人達信用できない」
「でも長森を見捨てられないよ」
えーい、どうする、どうするんだ俺?
96 :
女神で気紛れ:2005/08/02(火) 23:27:19 ID:aO75tUk40
「ギャッ!」
突然長森さんを人質にしていた野郎が目を押さえてナイフを取り落とした。咄嗟にそい
つに飛びつく。
「長森さんこっちだ」
「あっ、南君」
「てめえら、よくもおれのみさに」
「うぎゃあ!広瀬だ、広瀬が出やがった」
「殺される、助けてくれー!」
「広瀬ー!この人があんたの女だとは知らなかったんだ。許してくれー!」
「誰が広瀬の女だー!」
「とにかく殺す、てめえら全員ぶっ殺す」
その後はいろいろ有りすぎてよくわからんけど、どうも南が長森りさんを助け出し、広
瀬とみさおさんが後の連中をかたづけたらしい。まあ正確には広瀬を見ただけで総崩れに
なってほとんど掃討戦に過ぎなかったらしいが。それと良くは見えなかったが、とにかく
広瀬に殴られたやつは一撃で沈んだ。こいつ本当に化けもんだな。ひょっとして俺はとん
でもないやつと張り合おうとしているのか?
いやそれより、俺ってみさおさんより全然弱いみたいだ。本気で情け無いな。
ちなみに長森さんを人質にした卑怯者がナイフを落したのは住井がレザーポインターを
目に当てたせいらしい。それ本当はまずいんだろうけど、まあやつに関しては自業自得と
しか思えないな。
97 :
女神で気紛れ:2005/08/02(火) 23:28:00 ID:aO75tUk40
でまあゴロツキどもが退散した後。
「みさー、なんで無茶するんだよ。お前が傷ついたら俺、俺」
「そうですよ、こんなやつのためにみさおさんが怪我でもしたら」
「大丈夫だって、心配しなくても一人ならあいつら程度には負けないよ」
「けど、けど、みさおー」
広瀬のやつ半泣きだ。さっきと完全に別人だな。
「広瀬、みっともないから泣くなよ」
「広瀬君が心配するのは当然だよ、みさおは無茶しすぎなんだよ」
「けどまあ、こんなやつでもクラスメートだしな。見捨てたら夢見が悪いじゃん」
「みさおは女の子だよ。さっきだって広瀬君達が来なかったら」
みさおさんにくってかかる長森さん、本当に心配してるんだよな。
「それなら言わせてもらうけど、長森が逃げてれば問題は無かったんだって」
「みさお、いい加減にしないとわたし本当に怒るよ」
げっ、話の方向がどんどんまずい方に。いかん考えるまでもなく100%俺の責任じゃ
ないか。俺のせいでみさおさんと長森さんが気まずくなっては問題有りすぎだ。
「すみません、俺が全面的に悪いんです。そんなことで喧嘩せんで下さい」
とにかくここは土下座しかない。そんなもんで許される問題じゃないけど、とにかくこ
の場を治めないと。
「そう言えばそうだ、全部てめえが悪い」
「そうだ貴様は二度とみさおさんに近づくな」
「いくら馬鹿な君でも如何に折原さんに迷惑かけたか理解出来たろう」
口々に俺をののしる広瀬達、けど確かに反論のしようがない、ここは男らしくみさおさ
んを諦めるべきなのか?いやしかし、一度決めたことをこうも簡単に諦めるのも男らしく
ない気もする。俺はどうすべきなんだ?ってこういう風に悩むのも男らしくないぞ。
「止めてやれよ広瀬。こいつなりに頑張ったんだし、わたしは気にしてないよ」
あああ、みさおさんに助け船を出されてしまった。まずい、こう言うのは怒鳴られるよ
りもっと堪えるな。
98 :
女神で気紛れ:2005/08/02(火) 23:31:14 ID:aO75tUk40
「けど、みさおー」
「広瀬、言いたくないけどお前だって今まで散々迷惑かけてたぞ」
「うっ、ま、まあ確かに……わかったよ」
「まあみさおさんがそう言うなら」
「今度だけは折原さんの顔を立てるか」
広瀬に続いて南と住井も渋々ながら頷く。けどまたみさおさんにかばってもらっただけ
だな。ものすげえ情け無い、穴があったら入りたい。
「七瀬君、今回は不可抗力もしれないけど、今度みさおを巻き込んだら許さないんだよ」
なんか長森さんが一番怖い、真の乙女って強いんだよな。
「肝に銘じます」
「七瀬、お前は喧嘩バカの広瀬と違って弱いんだからもう無茶するなよ。長森が泣くから
二度と助けないからな」
「もう、みさおったら、わたし泣いたりしてないよ」
「はいはい、わかりました」
やっぱこの二人仲良いよな。
はっきり言って今日の俺は全然男らしくなかった。まず手近な目標としてせめてみさお
さんの足を引っ張らない男になるぞ。
そう決心はしたものの、今のところはみさお軍団のパシリだよな。などと自嘲するしか
ない一週間後だった。
99 :
女神で気紛れ:2005/08/02(火) 23:34:36 ID:aO75tUk40
私こと藤林杏はここのところ結構キている
というのも
「岡崎っ!学食いこっ!」
「おう」
むかり
「岡崎っ!トイレいこっ!」
「馬鹿かお前」
むかむか
「岡崎っ!商店街よって帰ろっ!」
「ああ」
むかむかむかり
「だーーー!!!もう!!!あんたたちたまにはもっと離れて過ごしなさいよ!!!ていうか一日中じゃない!!!
間違いでも起こったらどうしてくれんのよーーーーー!!!!」
ぜーっぜーっ
息が上がる。つまりは、こういうことなのだ。
岡崎朋也。春原陽子。この二人は俗に言う「問題児」である。
町一番の進学校たるこの高校では珍しい存在であり、どうしても目立ってしまっている。無論、悪い意味で。
そのような環境で真っ当な学生生活が送れるはずもない。
多分この二人が出会っていなかったなら双方とっととドロップアウトしてしまっていただろう。
それはわかる。超わかる。でも、でもだ。
「あんたたちは異常なのよーーーー!!!」
「ひぃっいきなり何なんですかっ」
「おい春原。お前またなんかしたのか」
岡崎朋也こと朋也。顔はかなりカッコ良さげだ。心根も(知る人は“一部”だろうが)しっかりしている。
つまりは十二分にモテ要素をもった男なのだ。が、モテない。可哀想なほどに、モテない(“一部”除く)。
その理由の一つにして最大の理由がこの子の存在なのだ。
こいつらはまるで酸素分子がごとく常に一緒に行動している(よく“一部”の内誰かが入ってオゾンになるが)。
しかも朋也が夜を忍んでは女子寮に入り込んでいるときたらこれはもう健全な女子高生にとって邪推するなというほうが無理な話だろう。
しかし近しいものなら誰でもわかることだが、朋也のほうにまるでその気がないというのだから不思議な話だ。
さりげに(陽子にとっては、だが)陽子がアピールしてもその類まれなる鈍さと天性のツッコミで完膚なきまでに返り討ちにしてしまうのである。
そのせいでいまだに望みを持ってしまっている私も私だが。
ともあれ、朋也を狙ううちの一人である私にとっては、目下この子のせいで心休まらぬ日々が続いているのである。
「もう埒が明かないわっ!!陽子!ちょっとこっち来なさい!!」
「えっあっちょっ!なに!?岡崎っ!たすけてぇぇ!」
「I don't want to meet you again(俺もう二度とお前に会いたくねえよ)スノハラ!!」
「え、あ、えーと、せ、せんきう?じゃなくてたすけてえぇぇぇぇぇ……」
「うん、えーと。何をしたのかは知らんが、穏やかに眠れ」
後には木枯らしが吹くばかりであった。合掌。
後半へ〜つづくっ(ちびまるこ風に)
「いたたっ!いたいよぉ杏!もっとやさしく扱ってよ!こちとら女の子なんだからね!!」
ずるずると校舎裏まで引きずられていったせいで、制服が所々汚れたり破れたりしてしまっていた。そ
れでも体には傷はおろか汚れさえついていないのは流石というべきか。
「失礼ね!あたしだって女よ!ていうかそれより!」
どごしゃぁ!!
「ひいっ!」
とりあえず気分を落ち着かせるためにそこらへんに転がっていたゴミ箱をただのスクラップに変えた。
「い〜ぃ?陽子。
とりあえず今から話すことに同意とはいかないまでも落ちついて聞くぐらいはしなさいいいわねわかった返事をしなさい!」
「へ…は…」
「返事は“はい”か“YES”!!!」
どごしゃぁ!!!
「ひゃ、ひゃい!!」
春原陽子こと陽子。顔は不本意ながらカワイイ。が、モテない。泣けてくるほどに、モテない。
その理由の一つとして上記のように朋也の存在があるにはある。しかしもっと大きな理由は、その心根にあるのだ。
それを一言で表すのならば“典型的子悪党タイプしかも馬鹿”。
つまり、強きを助け弱きをくじくしかも馬鹿。これではモテる物もモテないだろう。
さらにその非常にステキな性格のせいで、この高校内での友人の数は両手の指で足りてしまうというのだから情けない。
「ねぇ陽子。あんたと朋也、最近いっしょにいすぎじゃない?」
「え?うーんと、そ、そうかな…。」
「そうなの。第一、オトコと一緒にトイレ行こうとするなんて聞いたこともないわ。」
「え?そうなの?」
この子の馬鹿さ加減に思わずため息をつきそうになってしまう。
「でもでもさ、杏。何で私、岡崎と一緒にいたらだめなの?」
「え、あ、うーんと、アレよアレ。
あんた達、只でさえ教員に目ぇつけられてれるんだからこれ以上目立ったら後々めんどいわよ?」
自分でも良くここまですらすらと言葉が出たと思う。
胸が、ひどく痛む。
人のための振りをしていても結局は自分のためだというのに。
「ほら、あたしとか渚とかことみとか智代とかもいるんだし。あたしたち友達じゃない!」
また綺麗事。でも、この子にだけはこの気持ちを知られたくないのだ。
「…うんっ!そうだよね!私たち、友達だよね!うん、友達!」
「…。」
“典型的子悪党タイプしかも馬鹿”。そんな陽子にだって付き合わないと見えてこない、いい所があるのだ。
それは誰よりも純心でだれよりもまっすぐなところ。多分、普段の行動もこれの裏返しなのだろう。
わたしには、無いところ。
心が痛い。
そんな娘を騙そうとしてる自分に吐き気がする。でも、それでも私は。
陽子が不意に口を開いた。
「でもさ、杏。杏だから言うんだけど、私ね、実は岡崎のこと」
え?
「ず〜っとね。」
やめてよ。
「好き、だったんだ。だから、いっしょにいるんだ。」
そんな事言われたらあたし、勝負にも立てないじゃない。邪魔する建前、無くなっちゃうじゃない。
「そ、そうだったんだ。あはは、そりゃそうよね。ずっと、一緒にいるんだもんね。
うん、あんたたちならきっとお似合いカップルになれる。頑張りなさいよ、応援してる。」
ともすればあふれ出てきそうな涙を懸命にこらえる。口だけは勝手に動いてくれた。
「え? 何言ってるの、杏。」
「な、何って…。」
「杏も岡崎のこと、好きなんじゃないの?」
「!」
「ちがうの?」
忘れていた。この子はことこういう方面に関しては驚くべき洞察力を発揮するのだ。
段々とやり場の無い怒りが沸いてくる。
この子はそのことを知りながらもあたしの目の前であのように朋也とくっついていたのか。
「あんた…っ」
「だから私たち、ライバルだよね?」
「え?」
「ライバルだから、杏も私に遠慮しなくていいんだよ?前々から言おう言おうと思ってたけど、杏って
私と岡崎が一緒にいる時 変に遠慮してるよね。だから、フェアじゃないなーって。」
目から鱗が落ちた。
この子は馬鹿ではない。普段は馬鹿かもしれないが、ここ一番の時にはちゃんと人のことを考えることのできる娘なのだ。
不意に、涙が出た。
「でも杏って可愛いし私よりスタイルもいいしって、え!ど、どどどどうしたのっ杏!!」
「ううん、なんでもない。なんでもないよ。うん、あたしも朋也のこと、好きだよ。」
「うん!だからライバル!だね!」
「友達でね。」
「ライバルで、友達!いい言葉じゃん!」
「あははははははっ」
「なんでわらうのさっ!」
「んーん。何にも無い。ありがと、陽子。」
「え?なにが?」
「んーん。」
「なによ、気になるじゃん」
「あんたのこと結構見直しただけよ。」
「やばいっ!杏が杏らしからぬことをっ!明日はいったい何が起こるのっ!」
「なぁんですってぇ〜〜」
「ひいぃぃぃぃっ」
「あははははははっ」
「杏が壊れたぁっ」
ライバルで、友達。本当にいい言葉だ。
この子は本当に、いい子だ。
後日。
「岡崎っ!学食いこっ!」
「おう」
がららっ
「ちょっとまったぁ!あんたたち!今日からお昼は演劇部部室にてよ!!もう皆待ってるんだから!」
「え、皆ってだr「うんっ」て、え?」
「お前らって一緒にメシ食うぐらい仲良かったっけ…。」
「当たり前じゃない。あたしたち友達なんだから。」
「ねー!」
「…一体何があったんだ…」
108 :
100:2005/08/03(水) 14:27:00 ID:IrlzDTfV0
はっはっはなんだこれ。はっはっは…はぁーーーー!!
お目汚しごめんなさいでした・・・。
いや、いいよ、コレ、いい!
もういっちょ頼むわ!
この二人お持ち帰りしていいですか?
111 :
時を渡る少女:2005/08/03(水) 19:46:54 ID:fLjykjzg0
「雪積ってますよ」
誰かにそう呼びかけられて顔を上げる。今ちょっと眠っていたかもしれない。
声をかけてきたのは昔の面影はあるけど想像していたよりずっと格好良く大人びた少
年、ううん、青年って言った方がいいかも。
だからわたしはしばらく彼に見ほれてしまったいたみたいだ。
「どうされました?わたしの顔に何か付いていますか?」
慌てて頭を左右に振る。
「べ、べつに。それより雪弥、来るのが遅いよ」
「お嬢さん、どなたかと勘違いされているみたいですね。わたしは雪弥と言う名前ではな
いんですが」
「えーっ!雪弥じゃやないんですか。御免なさーい」
びっくりしてベンチから立ち上がりって頭を下げる。もう全身真っ赤だ。わー恥ずかし
いよう。こんな恰好いい人相手に大恥かいちゃった。考えてみたらあの雪弥がこんなに格
好良くなるわけないのに、なにを勘違いしてたんだろう。
もう、これというのもバカ雪弥が遅れてくるのが悪いんだ。決めた、なにかいっぱい奢
らせちゃうぞう。おっと、それどころじゃなかったわね。
「あのー、そう言えばどういう御用ですか?」
「ああ、わたしは水瀬秋人って言うんですが。なにかずっと待っておられてお困りのよう
でしたので、わたしでお助けすることが出来ればと思いまして」
わーなんかすごく親切なお兄さんだ。大人の魅力って言うか余裕があるって言うか、下
心なんか全然感じさせない素敵な笑顔ね。
えへっ、このお兄さんに会えた幸運に免じて雪弥を許してやるか。
「えっと、わたし相沢ゆうと言います。今日からこの街の叔父の家でお世話になるんです
けど、ここで待ち合わせしている従兄弟が迎えに来てくれないんですよ。それで寒いし退
屈だし困っていたんです」
なにか初対面なのにそんな感じがしなくて、安心してなんでも話せちゃうのよね。
けど秋人さんって叔父さんと同姓同名だ。なにかそういえば叔父さんに似てるみたい。
112 :
時を渡る少女:2005/08/03(水) 19:48:16 ID:fLjykjzg0
「そう言うことでしたらわたしがお手伝いしましょう。その叔父さんのお家はどちらなん
ですか?」
「えっと東町3丁目15ー12の水瀬って言うんです。それで偶然なんですけど叔父さん
も秋人って言うんですよ」
「それはすごい偶然ですね。これもなにか縁ですから、わたしがご案内しましょう。その
迎えの従兄弟君には伝言板にメモを残しておけば良いでしょう」
「そんなのご迷惑じゃないのですか?」
「かまいません。どうせ今日は閑なんですから」
「じゃあすいませんけどお願いします」
どうしてだろう、こういうときって普通は警戒心がわいてきそうなのに、全然そんな感
じがしない。人畜無害君っていうのじゃあないけど、側にいて酷く安心できる人だ。
そして秋人さんに案内されて目的地に着いたんだけど、表札が森本になってる。
「へんですね15ー12はここなんですが」
「おかしいです、この住所で間違いないはずなんです」
「番地の記憶違いかもしれませんね」
「そ、そうですよね。きっとそうです、わたしドジだから」
でも1丁目にも2丁目にも4丁目にも、12−15にも、西町にも、水瀬なんて家はな
かった。手近な電話ボックスで水瀬を捜す……この街で水瀬って本町の秋人さんの家だけ
だ。一体どうなってるの?わたしは不安で立っていられなくなり、秋人さんの腕の中に倒
れ込んだ。
「大丈夫ですか、ゆうさん」
「秋人さん、わたし、わたし」
「大丈夫、わたしが付いてますよ」
秋人さんは優しく背中をさすってくれる。そうされるなんだかとっても安心できて……
でもそれでホッとしたのか意識が薄れていくのを感じていた。
113 :
時を渡る少女:2005/08/03(水) 19:49:16 ID:fLjykjzg0
>>100 なにこの爽やか高校生活。
メチャGJ!!
>>111-112 ゆうが何年前の世界に遡っているのかで、この後の展開変わりそうだな。
場合によると、結局自分の時代に帰れず秋人とケコーンして「雪弥」を産むゆう、なんてSFチックな
ENDになったりして。
数々の苦難の末、遂に他の2倍はある朋美フラグを立てまくった春原
途中、大人の女性ルートへ道を踏み外すところだったが
春原は遂に朋美を自分の部屋に誘うことに成功した
岡崎朋美が春原のめのまえで、あかくなっている
これはチャンスだ 春原陽平はどうする?
ピッ >のうさつ すのはらキッス
おしたおす
にげる
「春原は「のうさつ すのはらキッス」を行なった」
朋美「! す、すのはら!?やめなさいよ は、恥ずかしいじゃない!」
「「のうさつ すのはらキッス」は成功した 春原陽平はどうする?」
こくはくする
ピッ >むねなんてかざりです
性別反転する
にげる
「春原は「むねなんてかざりです」を言いはなった」
朋美「え!?………春原がそっち好みなら…この胸 小さく…してもいいかな?」
「岡崎はかおが、さらにあかくなっている!春原陽平はどうする?」
ピッ >こくはくする
スカート脱がす
にげる
「春原は「こくはく」を行なった」
朋美「…す、春原っ!私っ!わたしっ!あんたの!いえ貴方の事が!わたしっ、わたしはぁあ!!」
朋美は春原を抱きしめた
春原も朋美を抱きしめた つよく つよく だきしめた そして朋美の服を一枚、一枚ていねいに…――――
――朝
春原の目が覚めたら、部屋に朋美の姿はなかった 恐らく今朝早くに女子寮に戻ったのだろう
春原が顔を洗っていたら、突然、同じ男子寮の「古河 渚」が春原の後ろに居た いつ入ってきたのだろうか
古河 渚は突然、喋りかけてきた
渚「昨夜はおたのしみでしたな」
「しかし春原はその言葉の意味は理解できなかった 彼は朋美が自分に抱きついてきた際に
形が崩れた制服を丁寧に一枚、一枚、形を整えなおしていただけなのだから 純粋な春原にはその言葉は決して…」
ごめんなさい ごめんなさい
本当にごめんなさい
>115 なんでこれだけでゆうが過去に行ってるって解るの?
>>118 ワロタ
渚、宿屋のオヤジかよ!
一人男子寮に住んでる陽子とか、どうよ?
ラグビー部にギリギリなセクハラをされる日々。
朝起きたら部屋の前にエロ本落ちてたりする。
ちなみに風呂は混浴。
誰も居ない時を見計らって入るが、時々途中で誰か入ってきたりする。
でも手は出されない。
だって春原だもの。
>>123 ガチで男と間違われてたりする春原(貧乳)
「男の癖に女みたいなヤツだな」とか信じられているとか。
唯一秘密を知っているのが岡崎って事でOK?
126 :
時を渡る少女:2005/08/04(木) 23:29:21 ID:ZE2aToWF0
気が付いたらそこは豆電球だけに照らされた見知らぬ部屋(和室)だった。それでわた
しは布団に寝かされていたようだ。
とりあえず起きあがってみる、服は着てる。上着とコート、そしてもちろん靴は脱がし
てあるけど。よく見るとコートと上着はハンガーにかけてあり、わたしの荷物もちゃんと
枕元においてある。
多分気を失ったわたしを秋人さんが家に連れ帰ってくれたのだろう。なんだかまた醜態
を晒してしまって酷く恥ずかしい。
電気を付けて髪を直したりスカートの皺を手で伸ばしたりしていたら、わたしが動く気
配に気が付いたのだろう、誰かが部屋の扉を軽くノックしてきた。
「ゆうさん、気が付かれましたか?」
秋人さんのなぜか人を安堵させる声だ。
「あっ、はい。どうぞ入ってください」
なにか人の家でそう言うのも変な感じだけど、今はそう言うしかないわね。
秋人さんはそろりとドアを開けて部屋に入ってくる。
「おかげんはどうですか?」
「えっと、体は何ともないです。ご迷惑をおかけしてすいません」
「いいんですよ。わたしの方こそ若いお嬢さんを勝手に家に連れ込んだりして申し訳あり
ません」
「そんな、あのもう良くなったのでご迷惑でしょうから帰ります。またお礼には改めて伺
いますから」
行く当てなんて全然無いけど、見ず知らずの他人がいつまでも居座ってはご迷惑よね。
「ゆうさん、失礼ですけど行く当てがないんじゃないんですか?」
うー、そうやってじっと見られると嘘なんかつけないよう。
「えっと……その、はい、確かに当てはないです。どうして叔父さんの家がないのかどう
してもわからないんですけど、変なんです、なにかがおかしいんです」
結局全部正直に話してしまう。まあ別に大したことも言ってないけど。
127 :
時を渡る少女:2005/08/04(木) 23:30:45 ID:ZE2aToWF0
「そう言うことでしたら、ゆうさんを出ていかせるわけにはいきません。落ち着き先がち
ゃんと決まるまで家でお世話しましょう。まあゆうさんがここにいる方が外より危険だと
思われるなら別ですが」
手持ちのお金はそんなにないから多分3日もホテルに泊まったら、それで現金はスッカ
ラカンだ。両親から渡された通帳とカードは有るけど、それだっていつまで持つんだろう?
けど、秋人さんはともかく、ご家族の方はどう思われるのかな?
「えっとあの、お心遣いは嬉しいですし、秋人さんを信用出来ないわけではないんですけ
ど、でもご家族の方がご迷惑に思われませんか?」
「それは心配ないです。わたしは姉が一人居るだけで、それも東京で就職してしまってい
ますから、この家はわたし一人だけです。それと申し遅れましたけどわたしは21歳で大
学3年です」
そうか21か、18か19くらいかと思ってた。そうか、そんなお兄さんだもんね。ど
おりで頼れる感じなわけね。
「あっ、わたしは16です」
「では高校1年生ですか?」
「いえ2年です。わたし3月生まれだから。やっぱり子供っぽく見えますか?」
「いえいえゆうさんは年のわりには落ち着いていると思いますよ」
うーん、その評価ってどうなんだろう。容姿は童顔幼児体型で子供っぽいけど、態度が
おばさん臭いってことだろうか?自分でもちょっとそう言う自覚はあるの辛い所ね。
「えっとゆうさんどうかされましたか?」
「あっ、えーとなんでもないです。あのそれじゃあ厚かましいお願いですけど、しばらく
お世話になります」
「ようこそ狼の巣へ、姫君」
秋人さんは悪戯っぽく笑ってお姫様に挨拶する騎士のようなポーズをとったから、思わ
ずクスッと笑いがこぼれた。
「えへっ、秋人さんは紳士だし、わたしみたいな子供なんか相手にしませんよね」
「おやおや、姫君は自分を過小評価しておいでだ。魅力的な女性の前では男はみんな狼で
すよ。まあでも紳士と見込まれたからには信頼にお答えすべく務めましょう」
あれっ、今のって釘を差したことになるのかな?なんだか秋人さんになら狼に成られて
良いような気もするけど、でもわたしまだ未経験だからやっぱり怖いな。
128 :
時を渡る少女:2005/08/04(木) 23:32:09 ID:ZE2aToWF0
その後、夕食をごちそうになる。秋人さんの手料理だ。すごく美味しい、そしてどこか
懐かしい味がした。だから思わず食べ過ぎちゃった。
あーあ秋人さんはわたしのこと食いしん坊だと思ったんだろうな?それに毎日こんなに
ごちそうになったらデブに成っちゃうわ。これはよっぽど気を付けないとね。
食後の洗い物を無理を言ってさせてもらう。秋人さんはお客様にそんなにことはさせら
れないって言ってたけど、自分としては居候的立場だと思うから、せめてこの程度は手伝
わないと申し訳がない気がする。
秋人さんはリビングでテレビを見てる。洗い物をしながらちらりと見ると、この間亡く
なった刑事役が得意な性格俳優が、鬼の恰好、ううん雷様だよね、で映っていた。
追悼番組にはしてはちょっと間が空きすぎだけど、ケーブルテレビ当たりの再放送かな
にかなのかな?
結局その日はお風呂に入って寝ただけ。疲れていたせいかすぐにバタンキューだけど、
秋人さんが居なければ不安で寝付けなかったかも?
どうしてだろう、秋人さんと一緒ならなにがあっても大丈夫な気がする。
翌朝、秋人さんの準備してくれた朝ご飯を食べながらテレビのニュースを見てたんだけ
ど、なんか妙に古めかしい。それに知らないアナウンサーだ。おかしいなにかが変よね。
変だなって思いつつも後かたづけを済ませて秋人さんの方に視線を向ける。秋人さんは
新聞を読んでたのだけど、その日付が……昭和××年1月7日?
うそー!昭和××年ってわたしが生まれる前だよ。
ショックのあまり全身から血の気が引いていき、わたしはまた意識を失ってしまった。
気が付いたら秋人さんに抱きかかえられていた。秋人さんの顔がすぐ近くにあって、も
う不安に押しつぶされそうで秋人さんにしがみつく。
「秋人さん、わたし、わたし」
「ゆうさん大丈夫、大丈夫ですよ」
それで秋人さんの顔がわたしの顔と急接近して、唇と唇が……。
もうその後は一気呵成、つまりいくら紳士でも秋人さんもやっぱり若い男の人だったっ
てことね。
うーんそれで凄く痛かったんだけど、それ以上に嬉しいって言うか充実感があったな。
129 :
時を渡る少女:2005/08/04(木) 23:33:30 ID:ZE2aToWF0
そんな関係になっちゃったから、結局秋人さんの所に居着くことになっちゃった。
それで秋人さんは、わたしの素性を調べだしたらしい。でも調べたってわかる分けない。
わたしはまだ生まれてないんだから。
けどわたしたちゃんと生まれてくるんだろうか。わたしが生まれるのは再来年の3月の
はずだから、両親はそろそろ出会ってるはずなんだけど。両親の馴れ初めとか聞いたこと
ないからよくわからないのよね。
今どこでどうして居るんだろう?
そんなことを考えることもあったけど、秋人さんと一緒に居られれば実のところでそん
な些細なことはどうでも良かった。
秋人さんは当座の生活費には困らないみたいだけど、閉じこもっていてもしょうがない
からわたしは近所のスーパーでレジうちのバイトなんか始めた。この時代はまだ田舎には
コンビニなんかないんだ。
家にいるときは一緒にお料理したりして、新婚さんみたい。きゃっ、恥ずかしい。
それでまあ健康な若い男女がやることやってれば、いつかは出来ちゃうのは当然で、翌
年の春わたしは妊娠していることに気が付いた。予定日は12月半ば、ってことは概ね雪
弥の誕生日の頃だ。じゃあこの子は雪弥なの?
秋人さんはもうちゃんと就職先も決まっているから結婚しようって言ってくれたけど、
困ったことにわたしには戸籍がない。まあ本来存在するわけがない人間だから当然なんだ
けど。
130 :
時を渡る少女:2005/08/04(木) 23:36:21 ID:ZE2aToWF0
そんなある日、秋人さんのお姉さんが婚約者を連れてやって来た。お姉さんの名は夏樹、
わたしの母と同じ名前だ。今までなるべく考えないようにしてたんだけど、じゃあやっぱ
り秋人さんはわたしの叔父さんなの?でも母さん?夏樹さんの婚約者は父じゃなかった。
ここはわたしにとって直接の過去じゃやないの?それともわたしの存在が歴史を変えて
しまったの?
けどまあそれはこの際どうでもよい。それより問題なのは、秋人さんがわたしの叔父さ
んだってことだ。
でも考えてみよう、わたしは遺伝上は秋人さんの姪かもしれない、でもそれを証明する
ものはここには存在しない。
大体叔父と姪の結婚がいけないなんて今の法律ではそうだけど、そんなのキリスト教の
影響に過ぎない。ローマ皇帝ネロの母親は叔父である皇帝クラウディウスと結婚したし、
天武天皇と持統天皇の夫婦も叔父姪だ。藤原道長の孫の後一条天皇は叔母である道長の娘
と結婚している。そうよ、叔父姪で結婚したって全然問題じゃない、問題なのは法律だけ
なんだからばれなければいいのよ。
理論武装終了、でも本音は秋人さんと絶対に離れたくない。それしかないんだけどね。
131 :
時を渡る少女:2005/08/04(木) 23:39:12 ID:ZE2aToWF0
葉鍵でこういう話って何か新鮮ですね。 オレンジロードを思い出したのはオレだけだろうか?
一つだけ気になったのは秋人とくっつくのが唐突過ぎな感じがした。
もう何段階か置いた方が自然なかと思いました。
余計なお世話ですねスマソorz
133 :
100:2005/08/05(金) 01:13:54 ID:zA0BGGgW0
がららっ
「有紀寧ちゃん!!」
「あ、春原さん。いらっしゃいませ〜。」
「ねぇねぇ有紀寧ちゃん。いきなり不躾な質問で悪いんだけどさ。」
「はい。」
「いや、う〜んとさ、え〜とぉ」
「はい。」
「…異性と体育倉庫とかで閉じ込められちゃうみたいなそんなラブ&ロマンティックなお呪い、無いかな…?」
「…はい?」
そんなうららかな午後の日。
「いやいやいや、そんな特別な気持ちは無いんだよ?え〜と、そうそう好奇心ってやつ!」
何も聞いていないにも拘らずあわてまくる春原陽子17歳。
その行動が何よりも雄弁に語ってしまっていることに気づけないお年頃である。
「…あぁ。岡崎さんですか。」
「!!!ああもう何いっちゃんてんのかね〜この子は!そそそそんな岡崎とだなんて!
危機的状況に陥った二人は最早二つの男と女でしかなくあわよくばイっちゃうとこまでイっちゃうのは必然かつ当然の行為
でありその後も二人の愛は衰えることを知らずやっぱり結婚式は教会そこで永遠の愛を契り合った二人はその後も子宝にめ
ぐまれ男の子一人女の子一人が無事誕生子供達に会いに来た友人たちをみて昔この子達とはライバルだったなぁなんて感傷
に浸りたいだなんてぜぇ〜んぜん、ぜぇ〜んぜん!!!」
「あ、あはは…」
すさまじいまでの人生設計っぷりを語る陽子の目が爛々と光る。
その目に若干気圧されながらも、よくもまぁあんなに喋って息が続くものだと有紀寧は半分呆れていた。
しかしもう半分はこんなにも一生懸命になっている陽子を健気だと思ったのも事実でもあり、生来お人好しな少女は
自分の持てる秘術(お呪い)を尽くして彼女をサポートしようと決めた。
何段階か書くつもりでネタバレされたから一気に書いたんだろ。
135 :
100:2005/08/05(金) 01:14:47 ID:zA0BGGgW0
「わかりましたっ。私に任せてください!」
「えっほんと!?」
「はい。では少しお待ちください。」
「うんっ」
「す、す、す、好きな…」
チャームポイント風のアンテナヘアーにすうっと一条の光が落ちる。
「ありました…。」
「どれどれみせて!」
バチィッ
「あいたぁっ」
本を掴み取ろうとした陽子の手に電流が走った。
「すみません…。この本は人を選ぶので…。」
「どんな本なんですかねぇっ!もういい教えてっ!」
「はい。では、十円玉を二枚用意してください。」
「ふむふむ。」
「それを縦に二枚立てて…」
「ふむふむ…って、ちょっとだけ難易度高くない…?」
「結構強力な術なので…。その分効果は保障できます。」
「なるほど…。」
「そして最後に想い人を思い浮かべながらスピードキアヌリーブスガゴトク、と三回心の中で唱えてください。その後それが倒
れれば成功です。」
「うんっ!じゃ、やってみるよ!」
かわいらしいがま口風の財布から真新しい十円玉をまるで神器がごとく二枚取り出した。
「こういうのって使えないんだよねぇ。」
貧乏性である。ともあれ、陽子は緊張の面持ちでその作業に取り掛かり始めた。
「むむむ…。」
プルプルと震える手で早速一枚目を立てる。
「っはぁ〜〜、私こうゆうの得意なんだ!きっと二枚目も楽勝だよ!」
「はいっ!頑張ってください!」
他人事ながらも心から応援する有紀寧。本当にいい子である。
136 :
100:2005/08/05(金) 01:16:32 ID:zA0BGGgW0
「よ〜し…。」
またも震える手で二枚目を乗せようと試みる陽子。
プルプル…。カチャ、チャリーン
が、その震える手が災いしてせっかく立てた一枚目毎倒してしまった。
「ああっ!」
「いえ、まだ一回目ですから…。」
「うんっ!じゃ、もっかい。」
カチャ、チャリーン。
しかし失敗。
「あれ?」
カチャ、チャリーン。
また失敗。
「おろ?」
カチャ、チャリーン。
ともあれ失敗。
「…。」
カチャ、チャリーン カチャ、チャリーン カチャ、チャリーン カ……(以下エンドレス)
何かと失敗、そこはかとなく失敗、かといって失敗、めそ……(以下エンドレス)
「あ、あはは…。」
「(プルプルプル…)」
「あ、あのー。す、春原さん…?」
137 :
100:2005/08/05(金) 01:17:35 ID:zA0BGGgW0
ぷっちん☆
「だー!!!もうこんなのできるわけないじゃん!!!もうわたしゃぷっつんきたよ!ああきたともさ!!」
「ほう、きたのか。で、なにをやっているんだ?」
「お呪いよお呪い!!好きな人とロマンチックな気分に浸れるような!!」
「あぁ、朋也か。」
「だから岡崎じゃないって…って智代!?いつのまに!!」
「お前がぷっつん来たあたりからだ。やぁ宮沢。また来たぞ。」
「いらっしゃいませ坂上さん。コーヒーですか?」
「ああ。砂糖とミルクはたっぷり入れてくれ。」
「わかりました。少々お待ちくださいね。」
パタパタと駆けていく有紀寧を尻目に陽子が口を開く。
「意外なもの飲むんだね…。」
「どうだ。女の子らしいだろう?」
そう言って微笑む智代。それは同性の陽子が見ても一瞬呆けてしまうほどに美しかった。
138 :
100:2005/08/05(金) 01:18:14 ID:zA0BGGgW0
坂上智代。現生徒会長である。その圧倒的なカリスマ性と確かな施政で生徒達からの信頼は絶大なものがある。
しかも美人だというから生徒達のもうしんぼうたまらん、などの声がそこかしこから聞こえてきてちょっと不気味である。
つまりは完璧超人。某ナンバーワンもびっくりだ。しかしそんな彼女でも当選まではかなりの苦労をしたのだ。
それは、
「でも智代。あんたなんでこんなところに居るの?」
「ここには昔のなじみも多いからな…。」
「ああ!あの熊か人間かって言われたらどっちかというと熊よりな不良たちね!」
「後ろに居るぞ。」
「!」
ばばっ
陽子が飛ぶ。
「…冗談だ。(目で追いきれなかった…!)」
「もう〜。びっくりさせないでよね!」
ずるりと掃除用具入れから出てくる陽子。
139 :
100:2005/08/05(金) 01:18:47 ID:zA0BGGgW0
つまり、むかし智代は超ワルだったのだ。しかも只のワルではなく、近隣の不良たちにも恐れられるような超ワル。
この町の不良たちはその名を恐れ、智代に触れた風を感じるだけで某槍風に自らの滅びを悟る。
“一つの学校が消滅した”とか“一つの町が消滅した”など多少なり脚色された伝説が各所でまことしやかに囁かれている程だ
ともあれ、この高校がどんなに平和であってもそのような噂は入ってくるもので、一時は当選を危ぶまれもした。
そんな智代を西から東へ大奔走(具体的には運動部と試合等をさせたり噂の書かれた選挙通知を消したりして)ついには当選へと押し上げた人物がいた。
「はい、おまたせしました〜。」
「ん、ありがとう。…うまいな。ここはやっぱり落ち着く。」
「うん、わかる。」
「あはは。ありがとうございます。」
「ふぅ。話は変わるんだが…宮沢。」
「はい?」
「私にもそのおまじないとやらを教えてくれないか。」
「はい!わかりました!」
「え…智代…もしかして…」
「言わせるな…。恥ずかしいじゃないか…。」
「やっぱり…。」
岡崎朋也、その人である。
141 :
100:2005/08/05(金) 01:22:04 ID:zA0BGGgW0
後半へ〜つづくっ
前回、もういっちょという声がありましたので僭越ながら書かせていただきました。
あ、石は辞めて・・・。
て言うかかいたss二作両方ともここでの反転ものってどうなんでしょう
142 :
100:2005/08/05(金) 01:24:21 ID:zA0BGGgW0
後半は明日にでもアップできそうです…。
スゴク(・∀・)イイ!!
おまいさん良い仕事やりますね、面倒になるまで延々と続きキボンヌ
>>133-139 素敵なまでにストレートなおバカっぷりがチャームポイントだな陽子w
智代をライバルとして見ちゃうと色々とつらくなるぞ。
>>140 凛々しくていい蝉枝さんじゃないですか。GJ
この顔で「ふみゅ〜ん☆」とやるのか…ってこれ他人のネタか。
最近、透の付き合いが少なくなった。うわさに聞くと最近部活動をはじめたらしい。
それは悪いことじゃない、むしろ積極性を持つのはとてもいいことだと思う。ただ、あの未来から来たとか言うふざけた女、木田朱鷺乃さえいなければ‥‥
「‥‥ここが件の木工用ボンド部か」
部室とはいっても誰も使わないあき教室の一室を使っているに過ぎない。
それにしても木工用ボンド部?なんてふざけた部活名なんだ。つか、ほんとに部活登録通ったのかコレ?
資料によると部員は木田と透の二人だけ部活内容は「白濁液で色んな事をヤる」‥‥らしい
ドアの向こうからは二人の声は聞こえるが何を言っているのかよくわからない。そこでドアの空いている隙間から覗いてみることにした。
「いきそうならイってもいいんだよ‥‥ふふっ」
淫靡で意地悪、魔女みたいな笑みを浮かべながら、木田は足で透のモノを踏みつけるように器用にしごいている。
「んうっ‥‥き、木田さん‥‥ぼく、もうっ‥‥っ‥‥」
透も限界が近いらしい。息が荒くなり、透の男根の先端は透明の液で‥‥「て、何をやってんだおまえらーっ!」
「行くぞ透、もうこんなやつの所に行く必要ないぞ」
「え、あ、うん‥‥」
「まて透、まだ私が終わってない。だるいからさっさと準備しなさい」
「う、うん‥‥」
「行くぞ透!」
「う‥‥うん」
「透」
「う‥‥ん」
「透っ!」
「う‥‥」
「さっさと決めなさいって」
どぐしゃぁ
‥‥それは一瞬の出来事だった。
「さっさと決めなさいって」
その一言とともに木田はどこからとも無くとりだしたバットで透の頭を思いっきり殴った。
透の体は血を撒き散らしながらゴムボールのように床を跳ね、壁にぶつかったっきり動かなくなった。
な、なぐられた頭部は凄惨なことになっていて、く、くだけた、ず、ずがいから、おれ、おれんじいろのぅうあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ
そこで俺は意識を手放した。
ただ意識が暗転する瞬間、どこからともともなく間抜けな音が聞こえた気がする。
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー
俺が目をさますと辺りに二人の姿は無く、もう日はすっかり落ちていた。
翌日、透は無事な姿で学校に来ていた。昨日の事を聞いても覚えていないの一点張りだった。
それでは、昨日の出来事はなんだったのだろうか。俺が見た夢?それとも‥‥
むしゃくしゃしてかいた。今は反省している
148 :
スクイズ:2005/08/05(金) 19:31:50 ID:WghcB/1h0
「ぼくしーちゃんのこと嫌いになった訳じゃないから、
うまく言えないかもしれないけど・・・
最高だ、しのぶ、朱鷺乃よりずっと良い
しのぶのこの大きくて柔らかい胸に比べたら
朱鷺乃のなんて物足りないよ、しのぶの胸は最高だ
ここも、締まりもすごくて、朱鷺乃のじゃ全然いけないけど
しのぶには入れるだけでもうすぐにもいっちゃいそうだ
朱鷺乃のあんな体に溺れていたなんて自分で情けないよ
この吸い付くような肌に触れたら
もう朱鷺乃のブヨブヨとした体なんて触る気もしない
朱鷺乃なんて中出しさせてくれるくらいしか価値のない屑女だよ
しのぶさえ居ればぼくは・・・ しのぶぅ、しのぶぅぅ」
149 :
148:2005/08/05(金) 20:01:50 ID:vVjlTmiN0
「しーちゃん」じゃなくて「木田さん」だった。
スマソ
天いなふたつもきてたーヽ(゚∀゚)ノ
>>140 あれ?スクロールが鎖骨の下が止まっちゃうよ?
やっぱダイヤルアップだから回線弱いなぁ……
>>145-146 エスカリボルグ噴いた。
我欲で撲殺してたりして、本当に輪っかついてるのか朱鷺乃。
>>148 真っ黒透キター!
どうして天いなはこういうネタと相性がいいんだろう?
153 :
100:2005/08/06(土) 02:11:22 ID:4C17Flpt0
「…それで倒れたら成功です。」
「なるほど。…体育倉庫か…………やっぱり、将来は男の子一人女の子一人かな…………?」
「はい?」
「いや、何も無い…。」
「顔、真っ赤ですよ?」
「…。」
「どうしたんですか?」
「いや、じゃぁ早速はじめるとしよう。」
にやけるのを抑えることが出来ない智代であった。
154 :
100:2005/08/06(土) 02:11:52 ID:4C17Flpt0
春原陽子は恐怖していた。自分の居場所、すなわち岡崎の隣が他の人で埋まってしまうのではないかという恐怖。
その恐怖の代わりに多数の友人を得もしたがそれとこれとは別の話だ。
只でさえ最近二人っきりでいる機会が減ったのだ。ここらで取り返さなければならない。
しかも体育倉庫という閉鎖的な環境だ。それこそ何が起こるk……
カチャ、チャリーン
ほんのり失敗。
「だーー!!!」
坂上智代は戦慄していた。初めて恋なるものを経験したのはいいが、その相手の周りには多数の魅力的な女性がいたのだ。
たとえば目の前の少女。自分とはまた違った可愛さを持っている。
只でさえ自分は生徒会の仕事等で会える機会が他と違って少ないのだ。ここらで挽回しとかなければならない。
しかも体育倉庫という閉鎖的な環境だ。それこそ何が起こるk……
カチャ、チャリーン。
ところで失敗。
「ぐ、」
カチャ、チャリーン カチャ、チャリーン カチャ、チャリーン カチ……
さりげなく失敗。鮮やかに失敗。何はともあれ失敗。めそ……
「…。」
「…。」
155 :
100:2005/08/06(土) 02:12:23 ID:4C17Flpt0
二人からどす黒い負のオーラが放たれ始めた。周りの景色がゆがんでいく。
それとは裏腹に二人はまるで機械のように無表情だ。
はっきり言って怖い。子供が見たら泣くのを通り越して一皮か二皮剥けてしまうだろう。そんな顔をしている。
そんな二人を幾多の修羅場を乗り越えてきた有紀寧は見守ることしか出来なかった。
こんな場面に言葉は無粋でしかないのだから。
(頑張ってください…!二人とも…!)
本当にいい子である。
二人は登り続けてゆく。長い、長い坂道を。
カチャ、チャリーン カチャ、チャリーン カチャ、チャリーン カチャ、
カチャ…
しかし、終わりがあるから坂なのである。
156 :
100:2005/08/06(土) 02:13:27 ID:4C17Flpt0
「や、やった…。」
目の前には自分を成功者へと誘ってくれるであろう二枚の銅辺で出来た栄光の架け橋。BGMにゆずが流れる。
坂の終わりにはふさわしい情景だ。
勝者は、陽子だった。まるでフルマラソンを終えた後のような充足感あふれる顔をしている。
(おっといけないいけない…。 スピードキアヌリーブスガゴトク、スピードキアヌリーブスガゴトク、スピードキアヌリー
ブスガゴトク…岡崎岡崎岡崎岡崎おかざき〜!!!)
今日の陽子はどこか違う。詰めを誤らない。
しかし物事が終わった今、相手方の情勢が気になるのは人情である。しょうがない事だったのである。
(智代はどうなのかな…。)
それがいけなかった。やっぱり陽子だった。
チャリリ〜ン。橋が崩れる破滅へのメロディ。
(え…私今、智代のこと…。ってことは…)
「”#”$%#&%%&$’&)(’〜〜〜〜〜!!!!!」
「あぁ…。何だ春原…成功、したのか。」
「坂上さん…。残念でしたね…。でも、とってもいい勝負でしたよ!!」
「ああ…。有難う…。…しょうがない。私も女だ…。潔く諦めるとしよう…。」
未練たらたら、今にも泣き出しそうな顔で資料室を出て行く智代。背中が煤けている。
しかし、それ以上に煤けているのは、
「良かったですね、春原さん!!」
「…。」
「春原さん…?」
陽子であった。
157 :
100:2005/08/06(土) 02:13:58 ID:4C17Flpt0
だん!!ばたばた!!がららっ!!びしゃりっ!!ばたばたばた…
「え、えーと…。あ、あれ?」
すさまじい勢いで駆けていく陽子を有紀寧はただただ、見送ることしか出来なかった。
「そんなに嬉しかったんでしょうか…。良かったですね、春原さん。」
やさしく微笑む有紀寧。本当にいい子である。
しかしこの世には“知らぬが仏”という言葉があるというのも忘れてはならない。
158 :
100:2005/08/06(土) 02:21:11 ID:4C17Flpt0
続きです…。
前回、後半へ続くなどといっておきながら、あまりにも長くなってしまったので
急遽前、中、後半へと分けさせていただきました…。
はっはっはそんな期待して無い?はっはっは……泣いてなんかいませんよ?
できれば観想なんてくださると励みになります…。
正直ムチャクチャいい。
途中でやめたら泣くよ。
ただでさえ個人的に倉ネタが好きなんだから。
160 :
時を渡る少女:2005/08/06(土) 22:00:29 ID:jSsfYDLz0
秋人さんがわたしの戸籍を手に入れてくれた。もちろん非合法だけど。
今日からわたしは白石優香、年が近くてゆうと呼べる名前と言うことでこうなったわけ。
苗字の方はどうせすぐに水瀬に変わるんだからどうでも良いしね。年が1歳近く増えちゃ
ったのは女としてなんか嫌なんだけど。まあそれは些細なことだ。
なお周囲には、事実とは逆に相沢ゆうは事情があって名乗っていた名前だと説明。幸い
あまり詮索好きの人が居なくて助かる。
しばらくして入籍、わーい今日から秋人さんの奥さんだ。えへへ水瀬優香、良い名前。
けどなんかはずかしくって「あなた」とは呼べないよう。
ところで、おそらくは秋人さんのお姉さん水瀬夏樹は、わたしの母相沢夏樹と同一人物
だ。でもここの夏樹さんの婚約者は原田健二であって、わたしの父相沢祐太ではない。す
るとここはわたしが生まれることがない世界なのだろう。
細かい理屈はわからないけれど、多分わたしが存在するために、わたしが生まれること
が出来ないのだろう。きっとなにかの強制力が働いて、同一人物が一時に存在することが
できないのだ。
そうここはわたしが生まれた過去じゃあない。だからこの秋人さんは秋人叔父様とは同
じであって別の人だ。
そうなのだから、わたしは秋人さんの子供を産んでも良い。そう自分を納得させていた
んだけど……。
161 :
時を渡る少女:2005/08/06(土) 22:01:17 ID:jSsfYDLz0
4月、夏樹さんは突然婚約者と別れた。なにか相手が二またかけていたらしい。
そう思ったら9月に突然籍を入れたとの連絡があった。出来ちゃった結婚で相手は相沢
祐太、振られた夏樹さんを慰めてそのままってことらしい。
それで夏樹さんの出産予定日は3月、するとその子供はきっとわたしになるのだ。では
その子が生まれたとき、わたしはどうなるのだろう?
多分この世界に止まることは出来ない、根拠はないけどなぜかそんな気がする。すると
わたしは元の時代に帰ることになるのか?それとも消え去ってしまうのか?あるいは時間
の狭間に落ちてしまうのだろうか?
嫌だよ、秋人さんと別れるなんて嫌だよ。これって叔父さんに恋してしまった罰なの?
どちらにしてもわたしはこの子、多分雪弥と命名されるはずだ、この子を育ててあげる
ことは出来ない。そうなんだ謎の存在だった雪弥の母、それはわたしだったんだ。
なんだかんだ言っても子供のころに雪弥の面倒を見てあげたのは、本能的に自分の子供
だって知っていたからなのかもしれない。
この家に買収の話が出ているらしい、なにか大型店が進出してくるらしい。秋人さん
は立ち退きに応じて東町に家を買おうかって言ってる。つまりわたしの居た時代の水瀬家
だ。やっぱりこの世界はわたしが生まれる前の過去なんだね。
12月23日、予定日よりちょっと遅れて、でも歴史の予定通りに男の子誕生。名前は
当然雪弥、これは秋人さんの命名だ。
結局、わたしは雪弥を産むためにこの時代にやって来たらしい。実際、雪弥を産んでか
らわたしの存在がだんだん希薄になってきたような気がする。
そんなわけでどうもあまり長くは一緒に居られないようだから、出来たら一緒にいる間
は母乳で育ててあげたいんだけど、わたしは母乳の出が悪いみたいだ。
それともちろん秋人さんと出来るだけ思い出を作っておくつもり。
そして翌年3月27日、つまり義姉夫婦に女の子が生まれた日、わたしは予感通り2年
あまりを過ごしたこの世界から消滅した。
162 :
時を渡る少女:2005/08/06(土) 22:02:39 ID:jSsfYDLz0
今わたしはまた駅前のベンチに座っている。駅前の風景から言ってどうやら現代に帰っ
てきているようだ。今日が過去に飛び立つことになったあの日なのかどうかまではわから
ないけれど。もしかすると、あの日の2年後の3月27日かも?
「雪積ってるよ」
こう声をかけてきたのは今度こそ雪弥だ。結局今日はわたしが消え去った日だったって
ことか。でもあの日々は夢じゃない、だってお乳が疼くんだもん。
こうしてわたしは成長した(体だけは?)我が子雪弥と再会?したわけ。
その後当然秋人さんと再会、彼はなにも言わないけど、さてわたしのことがわかっただ
ろうか?年くったぶん、ポーカーフェイスが上手くなってるからよくわからない。
本当は秋人さんの腕の中に飛び込みたいけど、この時代のわたしはあくまでも秋人さん
の姪。世間的に許されない関係だ。まあ姪じゃなくても女子高生と40男じゃ目立ちすぎ
る。わたしの方はそれでもかまわないけど、秋人さんの社会的立場があるから。
あーあ、こんなに身近にいるのにとっても遠い存在。ひどく苦しいことだね。
その後なんだかいろいろと寂しい男の子達と出会うことになった。なんだかみんな弟み
たいで可愛い。まあ実際にはわたし19になっているから、最年長の舞人でも年下だ。童
顔幼児体型のわたしだから戸籍年齢の16で通るけどね。
まあそれはともかく、歩、舞人、紫苑、誠、みんな可愛いからなるべく力になってあげ
た、ただショタ趣味なくて恋愛感情はないから、懐かれすぎると困るけどね。
ちなみに雪弥もわたしに異性としての好意を抱いているみたいだけど、その感情はズバ
リマザコンだね。つまりわたしに失われた母親を見ているわけ、実は母親本人だけど(笑)。
叔父ならまだしもさすがに母子相姦はしたくないから、ちゃんとお相手を見つけないさ
いね。けどこの子鈍いからなあ、本当のことは言えないし、例え言っても信じられないだ
ろうし、困ったことね。母としてすごく心配、もっとしっかりしなさいね。
163 :
時を渡る少女:2005/08/06(土) 22:03:52 ID:jSsfYDLz0
ってひょっとすると秋人さんといちゃつけないぶん、八つ当たり混じってるかも。
よく考えてみたら、秋人さんがわたしのことに気が付いていても、成長した秋人さんは
こんな小娘相手にする気がないかもしれないよう。だんだん考えがネガティブな方向に向
かってる。えーいもう当たって砕けろだね。
追伸:雪弥の大学合格後わたしと秋人さんは偽装事故死して駆け落ちしました。雪弥二
度も捨てちゃって後免、悪い母親だよね。でもね、わたしって母であるよりまず女だった
みたい。まあ財産は秋人さんがしっかり残してるから勘弁してね。
これはどういうことかって言うと、つまり秋人さんはちゃんとわたしのことをわかって
いたわけで、それで雪弥が合宿で居ない日に押し倒されちゃったわけで、秋人さんのテク
ニックは格段に進歩してたわけで、つまりまあよりが戻ったってこと。
結局のところ案ずるより産むが安しね。わたしたちの愛の間には時間も年の差も血縁も
関係ないわ。たとえ実の息子でも割り込めないの。
それでねえ秋人さんったら、
「17年ぶりに若いままの奥さんが帰ってきてくれて嬉しいですよ」
だって、きゃーん恥ずかしい!
それでまあまた非合法だけど新しい戸籍を手に入れて、誰も知らない街でわたし達幸せ
に暮らしてます。もうすぐ二人目も生まれるし、神様感謝しています。
164 :
時を渡る少女:2005/08/06(土) 22:05:09 ID:jSsfYDLz0
これもある意味ハッピーエンドなのか?(w
雪弥哀れw
ここに限らず、SSでよく見かける表現に「戸籍を何とかして」とか
さらっと書いてある部分があるけど、これ気になるなあ。
まあ、所詮フィクションの世界に無粋なツッコミだとは思うけど、
日本の戸籍制度って、かなり精密かつ厳格なのよね。
どんなに金や権力があっても、改ざんとか、捏造は難しいのよ。
擬装結婚みたいに、実在する人物同士のニセの届出を出すのは
簡単なんだけど、実在しない人の戸籍を作るみたいな、
戸籍そのものを操作するのは不可能に近い仕組みになってる。
だから、さらっと「秋子さんの力で戸籍をなんとかして」とか書かれると
ちょっと気になるんだわ。
いや、すまん。無粋なツッコミだとは分かっていたんだが、
職業柄、戸籍に関わる仕事をしているもので、どうしても気になっちまって。
スルーして続けてくれい。
「吐き気をもよおす『邪悪』とはッ! 何も知らぬ無知なる者を利用することだ…!
己の利益のためだけに利用することだ…! 両親が何も知らない“息子”をッ! てめーらだけの都合でッ!
許せねぇッ! あんたらは今、再びッ! オレの心を『裏切った』ッ!」
石橋「…何ジョジョ立ちして吠えてるの雪弥君?」
雪弥「あ、石橋先生。聞こえちゃった?」
石橋「あんなに大声出して『聞こえちゃった?』も何もないでしょ。それと、家にいる時は『先生』は止めて欲しいんだけど」
雪弥「でも俺、大学は決まったけどまだ卒業してないし」
石橋(そういう意味じゃないんだけどなあ…)
>>160-163に触発されて小ネタ書いてみた。今は反省してる。
>167
なんかの理由で出生時に届出されてなかった子供が見つかったってことで戸籍を取るのって難しい?
170 :
167:2005/08/07(日) 02:05:47 ID:3g8Y3XMK0
>>169 不可能ではないが、ある程度以上の年齢の人間が
「実は出生届でてませんでした」という理由で戸籍を
取ろうとすると、色々と厳しい審査やチェックを受ける
仕組みになってる。
もし、病院で生まれたという供述をしたなら、担当した
医者とか助産婦に事情聴取されたりもするし、親との
血液型に矛盾がないか、血液検査されたりもすることも
あったりするんだよ。
だから、虚偽の戸籍作成はかなり厳しいかな。
パスポート偽造して、外国人になりすますのは比較的
容易なんだけどねー。
って、スレ違いもいいところだな。スマソ。
まぁ考えられる線は二つだな。
「死亡届の出ていない死者(行方不明者)の戸籍」
「戸籍管理が厳密ではなく、かつ日本帰化が比較的難しくない国(アメリカ等)での戸籍捏造」
小説だとダンボールハウスの住人から買ったりするのが多いかな。
ダンボールハウスの往人に見えてしまた
実在の人間に成りすますのはありだろうな
世捨て人みたいな人から戸籍を買うというパターンで
でも、自分の都合のいいように戸籍を新たに作っちゃうのは、
>167氏の言うとおり今の日本の制度では厳しいだろうな
戸籍抄本の偽造なら簡単だろうけど、役所の原本と照合されたらすぐバレるし
>>173 いつものことです
野宿のお供に段ボール
177 :
撲殺天使の:2005/08/07(日) 10:47:50 ID:5G/X96WZ0
皆さんこんにちは。しーちゃんです。透をあの未来からやってきた撲殺天使にとられて数ヶ月。友人を失った悲しさと丑の刻参りはあまり効果が無いことを知り、ボクは少し大人になった気がします。
今ボクは因縁の木工ボンド部の前にいます。部室前には“ボンド塗りたて”とかふざけた看板が立ててありました。
以前のボクなら指をくわえてドアの隙間から二人痴態を覗いてハァハァして家に帰ってご飯食べてオナニーして寝るだけが限界でしたが今日のボクはひと味違います。
なぜならにっくき木田朱鷺乃をこの世から抹殺する未来アイテムを手に入れたからです!
ボクは大きく息を吸い込んでからドアを勢いよくあけました。
「覚悟しろっ!木田朱鷺乃!」
「‥‥なにしにきたのよ、ガチホモメガネフェチ」
「うるさい、木田っ!今日こそ貴様の魔の手から透をとりもどさせて‥‥って、だれがメガネフェチだーっ!」
「‥‥しーちゃん、ここはガチホモを否定しようよ‥‥」
隙だらけだっ‥‥!木田朱鷺乃っ‥‥!
この一瞬でっ‥‥!この未来アイテムの一千万ボルトのスタンガンでっ‥‥!
朱鷺乃さんがバットを取り出す前にボクは一気に踏み込みます!
左手に隠し持ったスタンガンを朱鷺乃さんの下腹部に突きつけ‥‥あれ?
もう少しのところで手が止まってしまい、なぜかボクの体はそれ以上進んでくれません。
「あ、あれ!?ちょ、なんで‥‥!?」
み、右手がドアノブにくっついて離れない‥‥っ!“ボンド塗りたて”ってこういう事かっ!
‥‥前方から、今まで感じたことの無いオーラをひしひしと体中に感じます‥‥
ああ、そうか、これがモノを殺すって事か‥‥
178 :
撲殺天使の:2005/08/07(日) 10:50:29 ID:5G/X96WZ0
「なかなか物騒なもの持ってるじゃない?なんだか現代のものじゃないみたいだけど‥‥どこで手に入れたの?」
「え、あ、ああ、こ、これは拾ったといいますかその‥‥」
「‥‥‥透。ちょっと顔を突き出して」
「へ?う、うん。こんな感じ、かな?」
「‥‥‥。いまいち首の角度気に食わないけどまあいいわ。そりゃっ」
ぐしゃぁぁ!
掛け声と同時に棘つきのバットが綺麗に透くんの頭を粉砕します。透くんの小さな体は脳漿をぶちまけながら床を転がっていきました。
「ひぃぃぃぃいいいいっ!」
「で、どこで手に入れたの?」
「も、貰いました!喫茶店で働いてそうでさわやかな笑顔の裏にいろいろ隠してそうな人に貰いましたぁっ!!!」
『失敗しても俺の事は絶対に言わないでね。』と得物をくれたさわやかな笑顔のお兄さんとの約束を思い出しましたが、人間、見ず知らずの人よりも自分の命の方が大切です。血みどろのバットを突きつけられボクはあっさり叫んでいました。
するとあまり感情を表に出さない朱鷺乃さんの顔が怒りに引きつるのがわかりました。
ああ、やばい。完全に殺られる。うふふ、天国ってどんなところなのでしょうか。おばあちゃんにあえるといいなぁ。
‥‥しかし、いつまでたってもバットは振り下ろされません。
ボクが恐る恐る顔を上げると、朱鷺乃さんは暗い笑みを浮かべながら言いました。
「不問にしてやるよ。なぜか私の記憶にその特徴にピンポイントで思い当たる人物がいる謎をとかなきゃいけないしな‥‥」
言い終わると朱鷺乃さんはどこからともなく中世ヨーロッパで使われた拷問用の鉄の靴を取り出します。さようなら、さわやかな笑顔のお兄さん。二度と会うことも無いでしょうが命だけは大事にしてください。
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー
一段落ついたところで朱鷺乃さんが魔法の呪文をならします。すると不思議な事に透の傷は元に戻り、いつもの気弱な笑顔を浮かべながらフラフラと歩いてきました。
「あはは、も、もうちょっとで死ぬとこだったよ‥‥」
「いや、完全に死んでたよ」
「そ、そうかな‥‥えへへ」
二人は談笑しながら帰っていきました。それにしてもすばらしくトンだ会話です。これが未来の日常会話のなのでしょうか。
つか‥‥ボクは放置っすか‥‥
179 :
撲殺天使の:2005/08/07(日) 10:51:27 ID:5G/X96WZ0
むしゃくしゃしてかいた。いまははんせいしている。
180 :
100:2005/08/07(日) 14:52:34 ID:IjQYBjg10
「やばい、やばい、やばいよ〜。」
智代に追いつくために廊下を駆ける陽子。運命を変えなければならない。
このままでは岡崎とラブ&ロマンティックできなくなってしまう。
このイベントを逃してしまうと二人の関係はいつまでたっても進展しないだろう。
今の自分は岡崎がいるからこそなのだ。もしも二人がそろわなかったなら、結局双方だめになっていたに違いない。
だからずっと一緒にいたのだ。それを横から奪われるなんて、きっと自分には耐えられない。
これを解決したらもう一度あれをやり直そう、明るい未来のために。兎にも角にも、今は何も考えずに走らなければならない。
「あ〜〜!!もう!!智代足速すぎ!!」
「ふぅ…。なんで、こうなってしまうんだろうな…。」
歩きながらたそがれる智代。いつもこうだ。自分が何かをなし遂げようとすると必ずどこかで空回ってしまう。
生徒会選挙の時だってそうだ。昔の自分の虚栄が招いた結果だった。しかし、あの時は朋也がいた。
いたからこそ頑張れたのだ。そして、いたからこそ今の私がいるのだ。
やはりこの想いはなんとしても成就させなければならない。
これからも頑張れるように。そしてなによりも、朋也とずっと一緒にいるために。
「よし、頑張ろう!まずは…。」
家に帰ってもう一度あれをやり直そう、明るい未来のために。兎にも角にも、今は忘れることだ。
「明日はお弁当でも作ってやってみるか…。具は何にしよう…。」
お弁当のことで悩む智代はとても女の子らしかった。
ここで終わっていればとても美しい話だったのにと後悔を禁じえない。
181 :
100:2005/08/07(日) 14:53:44 ID:IjQYBjg10
下駄箱前。
「とーーーもーーーよーーー!!!!」
「ん、どうした春原。朋也は?」
ぜーっぜーっ
「智代…あんた今日、逆方向から回り道して帰って…。私は普通の方向で帰るから…。」
「質問には答えては…」
「いいから!何も言わないで!」
びくぅっ!
目の血走り具合がやばい。さからったらとって食われそうだ。こんなもの、夜の街でも感じたことは無い。
(ほんとうにこれがあの春原かっ!?)
自分の知っている春原はもっと…
「わかった!?」
「あ、あぁ…。」
「っはぁ〜〜〜良かったよ…。うん、ありがとね。じゃ、私はちょっと時間潰して帰るから…。」
「あ、あぁ…。」
校舎の中に消えていく陽子を見て
(たまにはもっといたわってやるか…。頭かな…?)
と、智代は思った。
182 :
100:2005/08/07(日) 14:54:29 ID:IjQYBjg10
校舎の二階。一階だと万が一の確率でお呪いが成就しかねないと念を押したからであった。
「あ〜良かった良かった。いくら有紀寧ちゃんのおまじないでも二人が一緒にいなかったらどうにもなんないよね。
でも、智代かぁ。」
窓際でたそがれる陽子。案外様になるもんである。
「はっきり言って、ライバル多いよねぇ…。しかも皆可愛いし…ありえないよね、あのモテモテ王国め。」
夕方の優しい風がそっと頬をなぶる。
髪がそよそよと動くさまはいつもの彼女の動的な可愛さよりも、むしろ静謐な美しさを感じさせた。
「あ〜ぁ。なんだかめらんこりっく・・・。」
そこに唐突に現れたのが、
「あっ!変な頭の人です!」
風子である。
風子はいつものように陽子に駆け寄っていった。そう、風子には罪はなかった。いつもの事をしただけなのだから。
「変な頭の人!このヒトデを…ってうわぁっ!何でこんなとこにバナナの皮が!プチ最悪です!」
神の見えざる手によって配置されたとしか思えないバナナの皮を踏み、陽子を目前にしてバランスを崩してしまう風子。
陽子は窓際でたそがれている。
「あ、風子ちゃん…。ってなになになに!!?」
「わわわわ〜〜〜!!!よけて下さいっ!!」
どんっ
後のことは言うまでも無いだろう。
つまり、落ちた。二階から。
「ふ、風子は何も見てませんっ!!」
183 :
100:2005/08/07(日) 14:55:07 ID:IjQYBjg10
その真下。智代がいた。しかも体育倉庫を目の前にして。
「ふぅ。逆方向から帰れといわれたから来てみたが…。この前は通りたくなかったな…。」
何しろ自らの黒星の象徴である。今の前に歩き出そうとしている心境ではあまり通りたくはなかった。
まだ朋也と春原がいないというのが救いだろう。
「早く帰ってシャワーでも浴びよう。それから…」
「うわわわわわわ〜〜〜〜!!!」
「!?」
虚からの攻撃。そしてこの場所は少なからず智代を動揺させていた。
それらの要因が複雑に絡み合い、智代の反応を幾拍か遅らせた。
「「うわわっ」」
二人はもつれ合いながら体育倉庫の闇の中へと、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
消えていった。
この世には“人事を尽くして天命を待つ”という言葉がある。
人事はできるだけ尽くしていたのだ。そう、人の考えうる限界まで。
つまり何が言いたいのかというと、有紀寧のおまじないは言わば天命だったのである。
その圧倒的な力の前で人はただ、踊り続けることしかできない。
184 :
100:2005/08/07(日) 15:00:17 ID:IjQYBjg10
hahaha!!
また先延ばしだってよjohn!!
ごめんなさい・・・。
続きは今日か明日の夜二でもアップします・・・。
マジGJ 続きを待つぜ
↓ここでアロウン様登場
舞台の上を裸の女優が走り回り、その体の前に床から板が立ち上がって隠すCM
188 :
我名は斎藤:2005/08/07(日) 22:26:47 ID:Pi0VU8o30
俺の名は斉藤(名前は秘密)、3年に進級してあこがれの水瀬さんと再び同じクラスに
なれ、しかも席まで隣という大ラッキーである。ちなみに俺の前が北川、その横で水瀬さ
んの前が美坂なわけだ。
それで何となく4人一緒に行動することが多くなって、新美坂チームの誕生だな。
えっ相沢、やつは別のクラスになった。なぜかしらんが同じクラスになった久瀬と仲良
くなったらしい。本題とはなんの関係もない話だが。
さて今日は水瀬さんと一緒に調べものをしようと放課後の図書館にやってきた、もうご
一緒できるだけで気分は浮き浮きワクワクである。ちなみに今日は陸上部は練習休みだ。
しかも図書委員の田中(水瀬さんの友人)はちょっと5分ほどはずすから、しばらく留守番し
ててね、とかいって消えてしまった。じゃあしばらく二人っきり?ラッキー。
しかし好事魔多し、棚の本をとろうとしてバランスを崩した水瀬さんを支えようとした
んだが、どこぞのアホが床に水かなにかを零していたらしく、俺も滑ってしまって、彼女
の額と俺の額が激突、あまりの痛さに意識を失う羽目になった。
「斉藤君、斉藤君大丈夫?」
水瀬さんの声で意識を取り戻したんだが、どうも水瀬さんに膝枕をされているようだ。
けど水瀬さんの膝って案外ゴツゴツしてるな、やっぱり陸上部で鍛えてるせいか?
「えっと大丈夫ですよ」
「良かったよ気が付いて」
あれっ、水瀬さんの声ってこんなに野太かったかな?そう言えば頭に合ってるのがスカ
ートの生地じゃなくてもっとごわごわしてるような。
それで目を開けると、なんだ男だぜ。けどこいつの顔やけに見覚えがあるような……。
「わー!こいつ俺じゃん」
「落ち着いてよ斉藤君、どうもさっき頭を打ったときに入れ替わってみたいなんだよ」
「ってえことは、お前、いやあなたは水瀬さんなんですね」
「うんそうだよ」
しかしこの人はこんな異常な事態になんで落ち着いてるかな、まあそう言うところが魅
力なんだが。おっとそれどころじゃないな。
189 :
我名は斎藤:2005/08/07(日) 22:28:24 ID:Pi0VU8o30
「このままじゃお互い困りますよね。とりあえずもう一回頭をぶつけてみますか」
「うん、じゃあとりあえずやってみようよ」
コクンと頷く外見俺な水瀬さん、いやあ外側が俺でも中身が水瀬さんだとしぐさがなん
か可愛いなあ。けど第三者が見たら気持ち悪いだろうなって、そう客観的に見てしまえる
俺もまた居るわけで、早くも元に戻らないとな。
でまあ頭をゴツンとぶつけてみたが、効果はない。ゴツンじゃ駄目なのかと、思い切っ
てガツンとぶつけてみる。やはり効果はないがかなり痛い。
どうしても無意識に勢いセーブしてしまうようで、先ほど並の衝撃を自力で与えるのは
どうも無理なようだ。それにこれ以上の衝撃を与えると下手すると死んでしまう。死ぬく
らいなら今の状態の方がまだましだな。
比喩としては死んだ方がましって気分だけだな。
「水瀬さん、どうも簡単には元に戻らないようですよ」
「うーんそうみたいだね」
「これはもうしばらくは入れ替わって生活するしかしょうがないと思うんですけど、どう
思います?それと周囲にはやっぱり黙っておくべきですよね」
「わたしはね、とりあえずお母さんと香里が気が付くのは確実だと思うんだよ。だからこ
こは正直に話した方がよいと思うよ」
「うーん、まあ確かに身近な人にはばれますよね。幸いうちの方は今一人暮らしなんで家
族の問題はないですけどね」
「へーそうなんだ」
「ええ親父は単身赴任だったんですが、交通事故で入院しちゃったんでお袋も今向こうに
行ってるんですよ」
「それは大変だね」
「いやまあ右足の単純骨折だけですから、でもまあ後一ヶ月は帰ってきませんから当分は
問題ないですよ。電話かけてくるような親でもないですしね」
190 :
我名は斎藤:2005/08/07(日) 22:30:12 ID:Pi0VU8o30
「その点家はお母さんってちょっと計り知れないところがあるから」
「例のジャムですか?」
「しっ!あれの話をするとアレが来るんだよ。でも斉藤君も知ってるんだ、そうすると結
構有名な話なのかな?」
「まあこの街で知らない人はもぐりじゃないですか?本人が食べたかどうかはともかく、
少なくともアレを勧められたことがある人は誰でも身近に居ると思いますよ」
思わず小声になってしまうな。
「そう言えば、相沢は同居でしょう。あいつには黙っておいていいんですか」
「祐一は鈍いから多分気が付かないよ。それにバカでお節介だから帰って邪魔になるしね」
かなり低い評価だな相沢。まあおまえなぞ俺のライバルじゃないってことだな。むしろ
北川の方が強敵かもしれん。あいつは常時「美坂美坂」のアホだけど、全然相手にされて
ないからなあ。突然水瀬さんとくっつく可能性は皆無じゃないよな。
「それでね斉藤君、とりあえずお互いに情報交換する必要があると思うんだよ。だからと
りあえず家にいこうよ」
まあ確かにもっともな提案だな。
「了解です」
で水瀬さんの案内で彼女の家に、うーん始めて入ることになるわけで感動だ。出来れば
お互い本来の性別のままで来たかったものだが。
さらなる感動、なんと彼女の部屋に入ることに。まあ今の俺は水瀬さんなんだから彼女
の部屋に入るのは当然なんだが。って言うかむしろ俺の姿の水瀬さんが部屋にいる方がや
ばいのでは?幸いというか家には誰もいなかったけど。
「じゃあ斉藤君脱いで」
「へっ?」
突然の思いがけないお言葉に一瞬目が点になる。
「だっていつまでも制服じゃおかしいるよ。例えばだけど斉藤君ブラ自分でつけれる?」
「そ、それは確かにそうですけど。いいんですか?」
「そんなこと気にしてても始まらないよ。さあ早く脱いで」
なんちゅうかおおらかな人だな、この際その方が助かるけど。
191 :
我名は斎藤:2005/08/07(日) 22:32:27 ID:Pi0VU8o30
でまあ確かに水瀬さんの言う通りなわけで、結局水瀬さんの指導の元、女性としての最
低限の身だしなみや下着を含めた衣類の着方等を教えてもらうことになった。
それでまずは着る前には脱がなければならないのが道理で、水瀬さんの説明を受けなが
らどうにか制服を脱いだ。滅茶苦茶恥ずかしかったが、水瀬さんはあっけらかんとしてい
る。彼女の方はもうトイレにも行ってるんだけど。そのご感想は。
「わたし一度立ちションってしてみたかったんだよね」
変わった人だ。むろんそこが良いのだが。
「クッチュン!」
考え事してる場合じゃなかった、まだこの恰好(下着姿)じゃあ寒い季節だな。早く着
替えようと。これ以上こんな姿だと興奮のあまり倒れそうだし。
そんなわけでブラのホックに手をかけたときだった、突然部屋の扉が開いて誰かが部屋
の顔を突っ込んできた。
「おーい名雪、借りていた参考書……ワッ後免!」
バタン!ノックもせずに乙女の部屋に飛び込んできた大馬鹿野郎、つまりアホの相沢は
慌てて顔を引っ込め扉を閉めた。こいついつの間に帰ってきてたんだ?
一瞬頭の中が真っ白になったんだが、どうにか身支度を整えて扉を開けると、相沢は扉
の前に直立不動で立っていたが、俺の姿を認めると土下座して頭を廊下に叩きつけた。
「すまん100%俺が悪かった。それと斉藤とのことは絶対に他言しないから」
つまり俺と水瀬さんができてると思ったわけだ。まああれを見れば当然そう思うよな。
相沢から見れば、居候先の娘である従姉妹が自分の部屋に男を引っ張り込んで服を脱ぐ、
つまりすでにそう言う関係ないのか、誘惑しようとしてるとしか思えないよな。
まあこいつの情け無い姿を見ていてもつまらんから、誤解を解くべくなにか言わないと
な。気まずい雰囲気もなんか嫌だし。
「信じるよ。それと覗きの罰は、イチゴサンデー3杯で許してあげるよ」
えっ、俺はなにを言ってるんだ?勝手にこんな台詞が口から飛び出したぞ。
「うっ、まあ仕方がないな。いや本当にすまなかった」
相沢は神妙な顔で頭を下げると、俺に参考書を手渡してすごすごと自室に引き上げてい
った。どうも思わぬ出費が相当に痛いようで背中に哀愁漂っているが、まあ乙女の下着姿
を見たんだから当然の報いだな。
192 :
我名は斎藤:2005/08/07(日) 22:33:16 ID:Pi0VU8o30
「ってわー!俺はなにを考えているんだ」
「斉藤君どうしたの?」
水瀬さんが心配そうに俺の顔をのぞき込んでくる。俺の顔でも中身が水瀬さんだと萌え
萌えだ。っておれってナルシスト?
「い、いや、別になんでもないです」
「そう、でも斉藤君すごいよ。わたしの反応そのままだよ。とっても自然だったよ」
水瀬さんに誉められるのは嬉しいんだが、なんでイチゴサンデー3杯なんて台詞が出て
くるんだ?すごく不思議なんだが?ひょっとして体自体が覚えてる記憶?
体が覚えてると言えば、その後教わったとおりにブラを付けてみたんだが、えらく簡単
に出来たぞ、何となくもっと難しいものだと思ってたんだが。
「斉藤君、初めてにしてはすごく上手だよ」
うーん、こういうのって誉められてもあまり嬉しくないような。つまりは俺が女装が上
手いってことになるんだよな。どうにも複雑だな。
などとやっていたらトイレに行きたくなった。けどどうにも恥ずかしいぞ。
でまあ俺がもじもじしだしたので水瀬さんは事情を察したようだ。
「斉藤君。トイレは座ってするんだよ。で終わったらちゃんとふくんだよ」
真顔でそんなことを言われると、同伴のしていいかわからんな。
「わ、わっかりましたー!」
結局それだけ言ってトイレに駆け込む。どうも女の体は我慢がききにくいようだな。
でトイレから出てくると、見たことのない中学生くらいの女の子が居た。
「名雪五月蠅い、テレビの音が聞こえないじゃないの」
誰だこの子は?水瀬さんに妹って居たっけ?まずい、いきなり大ピンチか?
193 :
我名は斎藤:2005/08/07(日) 22:36:49 ID:Pi0VU8o30
>>188-192 なんとんなく端役とヒロインの入れ替わりもの
「うぐぅ、メインヒロインはボクだよ」
「諦めろあゆ、この話では俺たちは端役なんだ。大人しく隅の方で鯛焼きでも食おう」
194 :
元380:2005/08/08(月) 00:29:22 ID:ZjY4N4mu0
蝉枝さんをプッシュするためシチュ募集中ー。
とかのたまってみます。
んじゃ回線吊って首切ってきます。
>>194 家事に挑戦させてみる→落ち込む蝉枝さん。
働かせる→スク水ライフセーバー蝉枝さん。
カレーを食べさせる→ハバネロ蝉枝さん。
普通にデートに誘ってみる→戸惑う蝉枝さん。
浴衣を着せる→納涼蝉枝さん。
一緒にお風呂に入らせる→恥らう蝉枝さん。
エロアイテムを見せる→隠れM蝉枝さん。
だめだ………このぐらいしか思いつかない……
どうでもいいけど俺の中で蝉枝さんはランブルローズの紅影なイメージがあったりなかったり
あとなんか瞬間的に思いついたネタ
『反転学園』
ヒロイン
岡崎朋美 主人公の下宿先の主。未亡人。わけあって息子とは別に暮らしてる。
(不良キャラは朱鷺乃とダブりそうなのであえて汐シナリオ途中反転で)
河野貴子 主人公のクラスメイト。(他のキャラと比べたら)真面目で男が苦手の委員長。
千堂かずき クラスメイト。エロ同人作家。
木田朱鷺乃 先輩。エロス担当。
那須宗一 変なクラスメイト。黄色はいらない娘
蝉枝 古文と体育の先生。ごめんなんにもおもいつかな
藤井ふゆ どじっこ先生。すぐに修羅場(バットエンド)
宮田さつき バイト先の店長。
うわなんだこのベタなエロゲ
197 :
元380:2005/08/08(月) 01:57:13 ID:ZjY4N4mu0
>>195 暇ができたらいろいろとやってみますw
御用とお急ぎでない方は、是非一度蝉枝さんを書いてみましょー
>>140 GreatにGood Jobです。
>>196 ちょwwwおまwww宗一だけそのままかよwww
>>198 うえ、ミスってたorz
……普段は男装してるってことで
>>193 そこで斉藤を持ってくるとは、やるなあんたw
それにしても「体自体が覚えている記憶」って一歩間違えるとホラーだよな。
相手の体に自分の意識が侵食されていくとか。
>>194 はじめてのビキニ着用(選んだのは坂神ばあちゃん)に狼狽する蝉枝さん
蝉枝「現代の女性は本当にこんな卑猥な格好で泳ぐのか? ほとんど裸ではないか」
月弥「み、みんな同じようなの着てるし平気なんじゃないかな?」(赤面
坂神(このスタイルなら「ブラジル水着」とやらもいけそうじゃな。さすがは私のオリジナルじゃの)
――夢。
夢を見ている。
家族の夢だった。
普段、夢などほとんど見ないくせに。
なぜ、今日に限って――。
それも、最もおぞましく、最も嫌悪すべきモノを――。
最悪の気分だ。
私は確か昼休み、屋上で本を読んでいたのはず……。
「オラいつまで寝てんだ岡崎!」「舐めてんのかこのアマ!」
何者かの粗野な叫び声が聞こえる。実に煩い。私はうっすらと目を開けた。
どんよりと薄暗い空の下に、歪んだ笑みをした男達の顔があった。
ああ――本を読んでいて、そのまま眠ってしまったのか。
しかしこの状況は何なのだろう? 辺りを見回す。
気付けば手は後ろで屋上の出入り口に沿ったパイプに縄でくくりつけられている。
「やっと起きたかよ、眠ったまんまのマグロを犯してもつまらねぇからな……」
私の位置に一番近い男がそう言う。
そうか、ようやく理解した。この男達は今まさに、私を襲おうとしているのだ。
この男はたしか――サッカー部のキャプテンだったか
クラスの女子が話題にしていた気がする。わざわざ私なんか襲わなくても
相手には不自由しないだろうに、物好きもいるものだなあ、などと思った。
後の男達がが野卑な笑い声を上げる。
すると後ろのこいつらはサッカー部のチームメイトか何かだろう。
「俺はお前の泣き叫ぶ顔が見たいんだよなあ」
犯されて泣き叫ぶか……自分のその姿を想像すると笑いがこみ上げてくる。
それは良い。傑作じゃないか、丁度良い暇つぶしだ。抵抗するのも……面倒だ。
「好きに……すれば……」
男の顔が醜く引きつる。
「なんだと? 強がってんじゃねえよ岡崎ぃ て、てめえ処女なんだろ!?」
確かにその通り。だが私の処女性など昼食に何を食べるかよりどうでも良いことだ。
例え私がどのような目に遭おうと誰にも関係はない。
――それを悲しむであろう人達――家族など―― 私には
存在しないのだから。
私の身に何が起きようとも私一人の問題なのだから。気楽である。
「うるさいわね……どうでもいいわよそんなこと」
感情を放棄して、投げやりにそう言った。
男の顔はますます歪んでいく。鼻息が荒い。どうも性的に興奮しているというよりも
これは多分――そう、怒りなのだろう。どうでもいいことではあるが。
「女のクセしやがってお前! 男の俺をば、馬鹿にしてんのか?
不良だとか魔女だとか大層な噂も聞くけどなぁ!お前もただの女だってことをわ、分からせてやるよ!
お、俺の大事なモノまで奪いやがって!!」
腹部を何度か蹴られる。さすがにサッカー部のキャプテンである。息が詰まった。意識が飛びそうになる。
大事なモノ? 私はこの男と初対面である。一体何のことだ――ただの言いがかりか?
男はかちゃかちゃとベルトを外しはじめた。よく考えてみれば私もまだ服すら脱がされていない。
なんと段取りの悪い男達なのだろう。見たところ後にも4人程男がいるのだが一人はビデオカメラを構え
他の奴に至ってはへらへらと笑ってみているだけだ。言葉だけは勇ましいこの男も
間が抜けていることこの上ない。一体何なんなのだろうこの余りにも馬鹿馬鹿しい状況は。
意識が朦朧としてきた……再び目を閉じる。
もう何もかも、どうでも良い……このまま眠ってしまおう。
――気付けば私は、眠っていることが多い。それは余計なことを考えずにすむからなのかもしれない。
しかしどいつもこいつも……何故みんな私に関わってくるのだろう。
私はずっと、出来るだけ目立たないように、誰とも関わらないように――生きてきたつもりだ。
粋がっているなど、とんでもない。まるで正反対だ。
なのに――下品な金色の頭――そう、あれは春原だ。あの阿呆と出会ってから
私の環境は一変してしまった。
周囲には人が増え、否が応でも人と関わらざるを得ないようになってしまった。
改めて考えてみると腹が立ってくる。
そして想像する――例えば春原や、智司、京達が、私が襲われた事を知ったら、どう思うのだろう。
汚らわしい女だと忌避されるだろうか、愚かな奴と軽蔑されるだろうか。
みんな離れていってしまう――それは、少し寂しい気がする。何故だろう。
我ながら勝手なものだと思う。人との関わりが煩わしいのではなかったか――。
しかしそこに別の考えが浮かんだ。いや……もしかすると
彼らは怒るなり悲しむなりといった、普通の友達のような反応をするのではないだろうか。
あるいはこの男達に何らかの報復をしたり――そんなことはありえないと言い切れるか?
智司など生徒会選挙があるというのに、そんなことになったら大変じゃないか。
京も手加減という物を知らないし、春原――に至っては脊髄反射のみで生きているのだから。
やはり大変なことになりそうだ。
まあそれは私の自惚れだろう、彼らには私のために復讐などする義理は無いし。
ただの同級生に過ぎない人間のためにそんなことをするはずがないじゃないか。
はずがない、とは思うのだが彼らなら――もし、もし万が一でも。
こんな下らないことが原因で、彼らを困らせてしまうとしたら。
――それは嫌だな
うん、それは嫌だ。
ならば、寝ぼけている場合ではない。
意識を――覚醒させる。
再び目を開けるとそこには男のモノが垂れ下がっている。
「ま、まずは俺のを銜えてもらおうか」
改めて見るとこのキャプテン、彼はどうも口とは裏腹に自信なさげである。
乱暴な言葉遣いで無理に自分を奮い立たせているようにすら感じる。
まさか童貞――ということはないだろう、私も処女だから人のことは言えないが。
男達が嘲笑しながら口々に言う「気を付けて下さいよキャプテンッ」
「そいつ握力計捻りきるそうですから」ハハハハと笑いが起きる。
何がおかしいのだろう。というかそんなデマが回っているのか。
体育会系の部員でもない痩せ気味の女生徒がそんな化け物じみた握力を持っているかどうか、
考えれば分かりそうなものなのだが。
現実にはせいぜい一の位を四捨五入して、やっと三桁に届く程度である。
私は男達を無視して後ろで手を縛っている縄を確認する。
結び目が甘い。素人である。
これならば図書室で読んだ「縄抜け―秘伝の奥義―」入門編のテクニックで十分だ。
「お前もただの女だってことを、分からせてやるよ!」
それはさっきも言っただろうに……それにしてもセリフがいちいち陳腐である。
素早く拘束を解く。
男が腰を前に突き出す。絶好のタイミング――。
「グギュッ」手にした縄を男の性器の根本に回し、左右に思い切り引っ張る。
男は一言も発せず崩れ落ちた。
「ゴメン、ちょっと事情が変わっちゃった」
――突然目の前でキャプテンがぶっ倒れた。なんだ? 何が起きた?
強姦魔でありサッカー部の一人――高槻は一瞬の出来事に当惑した。
いかに腕力があったとしても、所詮は女一人、そう高を括っていた。
ちょっと生意気な噂を聞く女生徒を手込めにしてやろう。
体力のある自分たち男数人でかかれば泣いて許しを請うに違いない――そのはずだったのだ。
「まず俺がやってやる。お前らはその後で勝手に楽しめ」キャプテンはそう言っていた。
せっかく楽しみにしていたのに。ずっと狙っていた最上級の獲物が――。色々と用意もしていたのに。
その獲物がゆっくりと、大儀そうな仕草で、一人ずつ仲間をに薙ぎ倒していく。誰も反応できていない。
そもそも頑丈なロープで縛ったはずなのだ。何故立ち上がって動けるんだ?
――人間では、ないのか?
気が付けば、俺の目の前に。さっきまでは死んだ魚のような目をしていたのに。
今、その瞳は黒く光り輝いているように見えた。なんだ……?
目を合わせた瞬間、その中に吸い込まれるような錯覚を覚えた。体が言うことを聞かない。
「あなた、悪そうな顔してるわね」
腹部に衝撃が走る。
意識が遠のく――。
痛みで目が覚めた。気が付くと全身をよく分からない複雑な方法で強めに縛られている。痛い。
まるで――そうだ。詳しくは知らないがSMとかで良くあるような――亀甲縛り。それと似た感じだ。
口にはガムテープが貼られている。手も足も出ないとはこのことだ。
確か、俺はズボンとパンツを下げて(中略)を出して……そして……そうか、そこまでは覚えている。
周りを見渡すと、仲間も同様の格好で床に転がっている。
ガサゴソ。
音のする方向を見ると獲物――岡崎朋美が少し離れたところで俺が高槻に用意させた道具の入った鞄を漁っている。
「随分沢山集めたものね――」その中から次々と、所謂大人の玩具を確認しては鞄に戻す。手にはゴム手袋をはめていた。
「それにしてもこんな玩具が無きゃ女の子も襲えないなんて……」
「こんなモノどうしようってのかな?――」笑いながらそう言う。アレは確か――。
全長24cm 直径6.5cm 業界最大最強の電動バイブですよキャプテン――と高槻が自慢していた気がする。
それにしてもバイブの数が多い。全身のありとあらゆる穴を勘定しても有り余る本数だ。どうかしている。
「これもあった方がいいか――」ローションを取り出した。
――何を、する気だ?
「もうこんな面倒なことはイヤだから……ちょっと口封じをさせてもらうわね」
そう言うと岡崎は落ちていたビデオカメラを拾い。鞄を持ってこっちへ来る。
自分が……襲われかけた直後だというのに。何故こんなに楽しそうにしてるんだ?この女。
「こんなのは趣味じゃないんだけど……」
ふうとため息をつきつつ、そう言った彼女の唇は、うっすらと笑みを浮かべた。
そしてその眼、何よりも黒い。漆黒の瞳――それは美しかった。
そうか、これは――魔女だ。
「――と、言うわけで。もし、このことを逆恨みして私や、私の知人に危害を加えたり
このことを誰かに漏らしたら、このあなた達の痴態を全世界にネット配信するからね」
しかし、誰も聞いていない。というか全員恍惚の表情でひくひくと痙攣していた。
半裸で、ありとあらゆる穴が異物で塞がっている状態だ。鞭の痕まで付いている。
報復にしても口封じにしても――明らかにやり過ぎである。落ち着いて辺りを見渡すと自分自身が怖くなる。
まさか私にはそっちの気でもあるんだろうか――恐ろしい。思わず頭を抱える。
「……まあ、良いか。」細かいことは気にしないに限る。
それにしてもこの状況はまずい。この縛り方では彼ら自身には解きようがないし
いずれ誰かに見つかる。
「はあ……」結局自分で後始末をしなければならないのだ。せっせと一人づつ縄を解いていく。
そこへ。
「岡崎ーやっぱりここにいたか、もうすぐ昼休みが――」
屋上の扉から春原が出て来た。
「なななな何やってんの岡崎!?なんなのこいつら!?あれ……どこかで見たような顔が」
嫌なタイミングで出てくるものだ。そういえばこいつは元サッカー部か。
「屋上に昼寝に来たらSMクラブの部員が転がってたのよ。自分たちで縛って自分たちで
動けなくなっちゃったみたいだから、解いてあげてるの。自縄自縛ってヤツね」
「そんなクラブ学校にあるわけないでしょっ!」
「甘いわね春原。この学校には表には出せない秘密クラブがたくさんあるのよ」
「へー、そうなんだ……。でも気持ち悪いから放って置いた方が良いんじゃない!?」
「そう言うわけにもいかないのよ――。あなたも手伝ってよコレ」
「まあ良いけどさ。って何だよこの結び方?こんなの解けないよ!?
っていうか岡崎はなんでそんな器用に解いてるの!?」
うるさい男だ。
「図書室で読んだ本に書いてあったのよ解き方、いいからそこどいて」
春原をどかして最後の一人を解く。
「ああ面倒ね、やっと終わった」
縄は解いたものの当分意識が戻りそうにないので
人目に付かないように、全員貯水タンクの陰に押し込んでおく。
「これで良しと。春原、もう昼休みが終わるんでしょう?教室に戻るわよ」
「ああ?うん。そうだね?」
春原は最後まで怪訝そうな顔をしていた。
次の日。やはり今日も薄暗い曇り空だった。天気予報では晴れだったのに。
朝、廊下を歩いていると見覚えのある顔が、あれは昨日の――サッカー部のキャプテン?
何故うちのクラスの前に? まずい、やはりやり過ぎたのだろうか。報復か、それとも――。
身を翻す。だが時既に遅し。彼は大声で叫ぶ。
「待って、岡崎さん!朋美お姉様!」朋美……お姉様?
怖気が走った。
無理に笑顔を作る「ああ、おはよう。どうも。あの、昨日のことは――」
「お姉様、私、あなたにどうしても謝らなくっちゃと思って
……もちろん謝って済む事じゃないのはわかってるの。でも」
くねくねと身をよじってそう言う。しかも声がデカい。その上こんな人のいるところで話すことではない。
っていうかそのお姉言葉はなんだ。
「女性を暴力で無理矢理手込めにしようだなんて、私、人間として最低のことを――お姉様に」
それは実にその通りだ。ではあるが何故か少し耳が痛い。どうやら彼は周囲の人のことは気にしていないようだ。
「まあ実際被害は私、少し蹴られただけだし。人間、おかしくなっちゃうこともあるよね。
それよりもお姉様はやめて」
そう、私はあのときおかしかったのだ――そう思うことにしたのだ。
「私……岡崎さん。あなたに嫉妬していたの――」
彼が唐突に語った内容を要約するとこうなる。
まあ彼はいわゆる厳格な家庭に育ち、厳しい両親に男らしく男らしく育てられたのだそうだ。
だがしかし、中学生になったある時、同じクラスの――男子に恋をしてしまう。
それと同時に自分の中の女性的な部分にも気付き、それは苦悩したのだそうだ。
そして高校に入り、部活は男らしくサッカー!鍛えた汗で煩悩を吹き飛ばせ!
しかしやはり無理をすればするほど、悩みは深刻になっていく。
「……今にして思えば、良くある話なのかもしれないけどね、自分が世界一不幸に思えて――」
そんな折り、たまたま目に付いたのがわたくしこと岡崎朋美。
「岡崎さんは……女性なのに――ああ、こんな言い方は失礼ね。ごめんなさい。
不良だとか、魔女だとか周りの評判や噂なんか全く自由に、奔放に、気にせず暴れ……
じゃなくて力強く生きていて――。
男だとか、女だとか関係なく生きている様子が羨ましくて、私、嫉妬していたの
そう……女のくせにって。本当、馬鹿だったわ。救いようがないわね」
……不良というのはともかくとして、魔女ってなんなのだろう。
大変な誤解である。私は自分ではこれ以上ないほど女性的に振る舞っているつもりだ。
その上出来る限り目立たぬよう、静かに、独りで――生きてきたのに。
そしてある日、彼の葛藤は臨界点を超えたのだった。
「部活の高槻って子に岡崎さんの話をしたら――あの生意気な女は俺も前から気に入らなかった。
部の奴ら数人集めて襲っちゃおうって。それで私もだんだん調子に乗っちゃって
ああ!岡崎さん。私……警察に自首すべきかしら」
「いいのよ。大丈夫。私はもう気にしてないから」
というよりもそんなことをされてはえらいことになる。私が。ああ、自分勝手なものだ。
「でも私、岡崎さんのおかげで吹っ切れたの。もう男だとか女だとかにこだわるのはやめたわ。
私は私なんだもの。今の私は女性的なこころを併せ持った、男が好きな男。ただそれだけよ」
わたしはわたし、か。 吹っ切れすぎな気もするが、本人が納得しているなら良いのだろう。
「あなたに私の、その……男性をロープで締められたとき気付いたのよ」
「その話はやめて」
「あの……あなたのことは大体分かったのだけど、他の人達は……その
あの後、どうなっちゃったのかな?……ちょっと気になって。」
「大丈夫。うちの部はそんなヤワな鍛え方してないわ。ピンピンしてるわよ」
「そう、良かった。」
本当に良かった。ホッと胸をなで下ろす。
「ただ――」
「ただ?!」
「みんなちょっと、新しい趣味に目覚めちゃったみたいではあるんだけど
――新しい部を作るんだそうよ。さっき言った高槻って子が部長になって」
「そう……」
それ以上は聞くまい。
「それと実は……私が嫉妬した原因はもう一つあっ――」
「ホントだってホント!!僕見たんだよ!!岡崎が男子数人をブチのめしてそのあともの凄いことを……
口では言えないほど凄いことなんだよ!!僕の推理では岡崎はあいつらに昼寝の邪魔をされて
ブチ切れたんだろうね……間違いないよ。本当にあいつは学園の魔女だね。うん。
ああ、もちろんコレは絶対に秘密ね!誰にも言っちゃダメだからね!
それじゃ僕ちょっとトイレね!」
彼(彼女?)の話を遮るように教室の中から空気の読めない騒音が響く。
秘密の話ならもう少し声のヴォリュームを下げるべきだと思う。
と言うか、私に関する噂の出所はここか。よく考えれば分かりそうなものだが。
灯台もと暗しである。
ガラガラと教室の戸が開くと中から相変わらず呆けたような顔の金髪頭が出て来た。
そしてそれは突然、飛び上がって驚愕の表情を示す。
「ゲエェッッ! 岡崎!?」
「おはよう春原」
「あ、おはよう、あはは。もしかして、い、今の聞いてた?」
見れば一瞬にして滝のような汗をかいている。顔色も死体のように真っ青だ。
「聞いてたってなんのこと?」
「い、いや。そうか。聞いてなかったなら良いんだ。なんでもないよホント。アハハ――。」
「岡崎さん、あの――」
キャプテンが言った。振り向くとこちらは顔を真っ赤に染めてうつむいている。
「どうしたの?」
「……そ、その。お、岡崎さんと、その……す、春原君って、どういう関係……
なのかなって……その――」
大事なモノ――嫉妬のもう一つの原因――これか、コレなのか。
蓼食う虫も好き好き――何故かそんな言葉を思い出した。
「……そうね。まあ友達未満他人未満ってところだと思うけど」
「それってどんな関係なんですかねえっ!?」
空気の読めない突っ込みが入る。
「っていうかあれっ? おい岡崎、この人昨日屋上に転がってた――キャプテン?」
「春原君!!」
「な、何すか突然!?」
「私、一目会ったときから、貴方のことを心から愛しているの!私と付き合って下さい!」
「えええ? えっと……あなた男ですよね? 僕もこう見えても男の子なんですけどね……?」
突然の事態についていけない春原。顔が引きつっている。朝早いため頭の回転が鈍いのだろう。
最も彼の場合24時間365日。年中無休で鈍い。
「男だとか……女だとか……この愛の前では無意味なことよ!
今の私はそう!一人の恋する乙女なのよ!」
彼(彼女?)力強くそう言いきった。
「あはは、あっそうなんだ。あの、僕ちょっとトイレに――」
「そうね、トイレの個室なら二人が愛を語らうのにちょうど良いわね」
「ええっ!?いやその……僕が行くの男子トイレだし。あなたは乙女なんでしょ!?」
「大丈夫、心は恋する乙女でも体は男だから」
「ず、ずるいっ!卑怯ですよねぇっ?それっ!」
ああ全く……煮え切らない男だ。
私は言い合う二人を尻目に鞄から紙とペンを取り出す。
「とにかく僕は 男に愛してるなんて死んでも言えないよっ!!」
「ひどい、ひどいわ! こんなにも愛しているというのに」
「それはそっちの都合でしょっ!!」
さらさらさら。よし出来た。
そしてそれを春原に差し出す。
「春原、これこれ。」
「なんだよ突然! は? 何この紙切れ」
「暗号クイズよ。解読できたら豪華賞品を進呈するわ! ま、貴方の頭じゃ無理だろうけど。」
「随分唐突だね……えーと、『たぼたくもきたみのことたをあたいしたていまたす』
なんだこれ?……うーん。」
「横にヒントが書いてあるわよ」
「ほんと? あ、このたぬきの絵か。たぬき……そうか! わかった! たぬきだから
『た』を抜いて読めば良いんだよこれは!! 楽勝じゃん!! 僕を甘く見たね岡崎!」
「さあ、彼女の方を向いて、大きな声で回答をどうぞ!」
春原の顔をキャプテンの方向に向ける。
「答えは『ぼくもきみのことをあいしています』!!」
「大正解!! 正解者の春原さんには賞品として豪華男子トイレの旅 ペア宿泊券をプレゼント!」
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「エエッ!? それちょっと強引すぎませんかねぇっ!?」
「さあ、行きましょう。二人の愛の逃避行へ!」
「ひいぃぃぃーーっ!」
キャプテンは春原を軽々と(それもお姫様だっこで)抱き上げ
恋する二人は軽快に走り去っていく。
「お!おかざきいぃぃぃぃぃ助けてえぇぇぇぇぇぇ!!!」
「……春原、彼女少し強引なところがあるから気を付けなさいよ」
「まあっ、お姉様ったら」
そういって彼女は微笑んだ。
「はクhdfジrョ×gうfhモokのuォiウiotghらsdん〜!!」
訳の分からぬ呪詛を振りまいて春原は廊下の曲がり角に消えた。
結局……彼(彼女)は何も変わっていない気がする。
むしろ開き直った分だけタチが悪くなったようだ。
「まあいっか」
春原はアレで結構芯が強い。多分。
廊下に陽の光が差し込む。窓の外を見ると
そこには――蒼く、晴れ渡る空があった。
初めてSS書いたんですがダラダラと長くなってしまってすみません。
朋美の魔女っぽい設定が好きなので、せっかくだから思いっきり魔女にしたら
キャラが壊れてズレてしまいました。強すぎるし。ツンデレですらないし。
書いてみて職人さん達の上手さを改めて実感させられました……
>現実にはせいぜい一の位を四捨五入して、やっと三桁に届く程度である。
朋美の握力95〜104。((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
長編は難しいもんです
楽しめたので次回作もよろしく
面白いよ〜、次も期待。
218 :
100:2005/08/08(月) 21:46:07 ID:re8Eh5Zh0
「いたたぁ…。」
体育倉庫は真っ暗闇だ。
「…春原…。」
もうもうと土煙が立ち込める中、地獄の釜から響いてくるような声が聞こえてきた。場所のせいでムード満点、花丸だ。
「…は、はい?」
「おまえは…」
「…え、えーと…」
「いったい何がしたいんだーーー!!!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
釜がひっくり返った。
当然である。彼女は何のために頑張って、何のために振っ切って、何のために前へ歩いたのか。
お笑い種である。噴飯物である。やるせないのである。
「やっと諦められたと思ったらなんなんだこれは!!お前は私をバカにしているのか!!」
「ご、ごめんなさ〜〜〜〜〜い!で、でも」
「デモもデーブスペクターも無い!!大体お前はいつもそうだ!!いつもいつも私の邪魔ばかりする!!」
「!?」
ピキーーーン!!
疎まれ続け、周りにあまり友達のいなかった陽子は一気に多数の友人を得た。
それ自体は喜ばしいことではあるが、しかし一つの弊害があった。
たくさんの友人を得た彼女は極度の寂しがり屋さんになってしまったのである。
友人を失うのが恐い。
そんな彼女に対して過去の孤独を思い出させる“邪魔”という言葉は(それがたとえ事実であれ)一種の禁句になってしまった。
つまり、陽子は某髪形をバカにされた人のごとく、ぷっつんきたのである。
219 :
100:2005/08/08(月) 21:46:39 ID:re8Eh5Zh0
「なにさなにさなにさ!!!そんな言い種無いじゃないの!!!私だってできることは何だってやったんだからー!!!」
が、そのような込み入った事情を知らない智代にとっては只の開き直りにしか聞こえない。
このとき彼女は(春原が男だったならここで一発蹴りでもくれてやれるのになぁ)と不思議なことを考えたという。
とりあえず一発鉄製のドアにキめておいた。
どごぐしゃどかーーーん!!!!
穴が開く、とまでは流石にいかなかったがくるぶしぐらいまでは埋まる智代の足。
ぐぼぉ・・・と足を抜く彼女を見てぷっつんきたはずの陽子は
「ま、まぢでごめんなさい…。」
と、謝る事しかできなかった。
そんな彼女をヘタレと貶めることは彼女に対して酷という物だろう。誰だって死にたくは無い。
220 :
100:2005/08/08(月) 21:48:21 ID:re8Eh5Zh0
「で、だ。春原。」
一発キめたことにより多少なり冷静さは取り戻せたようだ。
一方陽子の方は跳び箱の後ろに隠れ、まるで小動物のように震えてしまっている。
「ひゃ、ひゃい…。」
歯の根が合わない。
「そんなに恐がるな…。傷つくじゃないか…。」
なにゆうとんのじゃこら。だれのせいやおもとんねんはげ。
と、いった類の突っ込みがのどのあたりにまでせりあがってきてはいる。
しかしそれを口に乗せることができるほど陽子は人生に絶望していない。
「ほら、もう怒って無いから…。どうどう。」
聖母のように腕を広げる智代。しかし宥め方は馬である。
「ほ、ほんとう?」
「ああ。」
「い、いじめない?」
「いじめないいじめない。」
「う、うん・・・。」
とことこと恐る恐る近づいていく陽子。まるっきり小動物になってしまっている。ちなみに陽子の方が年は上だ。
そんな陽子にとんでもなく母性愛と保護欲をそそられてしまい、智代はその体を思わず抱きしめてしまっていた。
「よ〜しよしよし。」
「あ・・・。」
なぜか智代の腕の中は安心できる。いわゆる母性というやつのせいであろう、いい匂いもする。
なんだかよくわからないような、当惑と駘蕩と安心がないまぜになった中でしばらくそうしていた。
しかし、その安心がなぜか心に痛い。
・・・いや、原因は分かっているのだ。
「ねぇ、智代・・・。」
「ん?」
「なんで、岡崎なの?」
腕の中の陽子は存外小さい。
221 :
100:2005/08/08(月) 21:49:17 ID:re8Eh5Zh0
前々から思っていた。
智代は頼りがいがあり、頭も良くて、美しいだけではない。海のような母性と温かさを持っている。
とても、敵わないじゃないか。
いい匂いのする腕の中で陽子はそう思った。
「ねぇ、智代・・・。」
敵わないから、
「ん?」
あんまりにも腕の中の自分が惨め過ぎるから、
「なんで、岡崎なの?」
こんなことを聞いてしまったんだ。
222 :
100:2005/08/08(月) 21:50:30 ID:re8Eh5Zh0
「え・・・」
思いもよらない質問と、その語気の鋭さに一瞬言葉を無くす智代。
「ねぇなんで?なんでなの?智代、キレイじゃん。私なんかじゃ・・・。」
砂を吐くように、苦しげに、
「なんで、岡崎なのさぁ・・・。智代だったらもっと違う人狙えるじゃん・・・。いっぱいいっぱい、他にもいるはずじゃん・・・。」
智代の胸をたたく。
「なんで、なんでなのさぁ・・・。わたし、か、かなわ、ないよぉ・・・。わたし、こんなの、惨め過ぎる、じゃんよぉ・・・。」
なんで、なんでと腕の中で泣きじゃくる陽子。どん、どん、と智代の胸をたたくその手には、まるで力なんて入っていなかった。
智代は正直驚いていた。陽子の本心にも、その体の小ささにも。
するりと、言葉が自然と口から零れた。
「春原は、可愛い。」
きゅっと腕に力をこめる。
「・・・?」
「思わず守ってあげたくなってしまうんだ。その小さな体も、その心も。朋也もそんなお前だから、一緒にいたんだろうな。」
「そしてそれは、私には無いところだ。だから春原、もっと自分に自信を持て。」
「…。」
「みんなみんな違うものを持っていて当然だ。私には私のいいところ、お前にはお前のいいところ。だから私達は、ライバルなんだろう?」
「…うん…。」
「正直、私も自信をなくしてしまっていた。でもさっきのお前の言葉を聞いてみんな同じ事を考えてるってそう思えて・・・。
言い方は変かもしれないが、なんだか楽になってしまった」
「…うん・・・。」
初めて聞いた智代の本心。
それはいつだって完璧だと思っていた彼女の、自分と変わらない気持ち。
223 :
100:2005/08/08(月) 21:51:09 ID:re8Eh5Zh0
「ねぇ、智代・・・。」
「ん?」
「しばらくこうしてていい・・・?」
「ああ、いいとも。」
「・・・ありがと・・・。」
陽子は智代の暖かい腕の中で、なぜか懐かしいその中で、泣き続けた。
虫の声が聞こえてきて、耳に心地よかった。
会話の無い沈黙が続く。しかしその沈黙は決して不快な類のものではない。
時計を見てみるともう夜といっても差し支えない時間になっている。
そんな中唐突に腕の中から陽子が脱け出し、口を開いた。
「智代・・・。」
「ん?」
「何で岡崎のこと、好きになったの?」
湿り気の無い、さっきと同じ質問。
「・・・恥ずかしいことを堂々と聞くんだな・・・。」
「良いじゃん。教えてよ。」
「いや、だから・・・。」
「こういうのも女の子らしいと思うよ。」
一瞬言葉を無くす智代。
224 :
100:2005/08/08(月) 21:52:31 ID:re8Eh5Zh0
「・・・そうか?」
「うん。」
「・・・じゃ、教えてやろう。」
案外単純なのかもしれない。そんなところを見つけると、段々と智代に近づけている気がして陽子は嬉しかった。
「・・・わたしはな昔、荒れていたんだ。
その過去の過ちのせいで私は生徒会長になれないかもしれない、そんなことを感じた時ほど因果応報という言葉を思い知ったことはなかった。
でも、そんな私を救ってくれたのがお前と朋也だった。」
「だから・・・なの?」
「・・・いや、こんなことは理由の半分でしかないのかもしれないな。私は普通に朋也に出会い、普通じゃない恋をした。そんなものなのかもしれない。」
智代の満ちた顔はとてもキレイだと、そう陽子は思った。
「それと・・・。」
「それと?」
「女の子は自分を守ってくれるナイトが好きだ。」
一瞬呆けてしまう陽子。しかしすぐに腹のそこから笑いがこみ上げてきて、止まりそうに無い。
「あはははははっ!」
「笑うなんてひどいじゃないか…。」
「いや、智代はかわいいなぁって・・・ぷぷ、あはは・・・。」
「もういい・・・。春原、お前も教えろ。その後で思いっきり笑ってやる。」
「え?私?」
「ああ。不公平じゃないか。」
「え、えーと。・・・わかったよ。教えてあげる。」
「ああ。来い。」
「で、でわ心して・・・。」
「・・・ああ。」
「って意気込んでみたは良いけど・・・やっぱり腐れ縁かな?」
「なに?」
「腐れ縁。でも超極太直径十メートル、グラスファイバー製、超音速で飛んでる飛行機だって楽々止めれちゃうよ!」
笑う陽子に引き込まれるように、ついつい笑顔になってしまう智代。
225 :
100:2005/08/08(月) 21:53:16 ID:re8Eh5Zh0
「そいつは強敵だな・・・。」
「うん!私にとられちゃっても恨まないでね。」
「それはこっちのセリフだ。」
陽子は突然真顔に戻り、そして
「私たち、ちゃんとライバルだよね?」
「え?」
「私達、ちゃんと同じ位置に立ててるよね?」
「・・・ああ。今更何を言っているんだ。」
「…うん!ありがと智代っ!!」
ひまわりの様に、笑う。
春原はやはり笑顔が一番可愛い。暗闇の中でも輝いて見えるその顔を見て、智代はそう思った。
後日。
「有紀寧ちゃん!!」
「あ、こんにちは春原さん。」
「有紀寧ちゃん!お呪い上手くいったよ!ありがとっ!」
「そうですか。それは良かったです!」
「色々あってさ!最初は泣いちゃったけど、最後はとっても良かったよ!」
「い、色々ですか・・・?」
「うん!いろいろ!」
「い、いろいろ・・・朋也さんと、いろいろ・・・。」
完熟トマトのように真っ赤になってしまう有紀寧。本当にいい子である。
そんな有紀寧をのこして陽子はずっとずっと、笑顔だった。
226 :
100:2005/08/08(月) 21:53:56 ID:re8Eh5Zh0
おまけ。
「で、結局こうなっちゃうんだよねぇ・・・。」
「おい春原。何を言ってるんだ。そしてこれはいったいどういうことだ。」
「朋也。女の子には色々あるんだぞ。」
「ねー。」
「智代まで・・・。一体どうなっているんだ・・・。」
体育倉庫の中、三人で一晩。
知らぬは当人ばかりなり。
227 :
100:2005/08/08(月) 21:55:31 ID:re8Eh5Zh0
ずいぶんと長くなってしまい申し訳ございません・・・。
はっはっは、きたいしてなかった?はっはっは・・・。吊ってきます・・・。
次回は渚あたりが来ると思います。
俺の親戚のねーちゃん、高校時代の性格まんま朱鷺乃やった。
ズボラやし冷めてたし、多分タバコも吸っとった不良娘やったっけ。
でも当時小学生だった俺と遊んでくれた時はすごい優しいお姉ちゃんで憧れたりしてたなぁ……
今その人は二児の母になってて、この間子供に焼いてあげたマフィンの余りを持ってきてくれた。
朱鷺乃の母親になったりしたらきっとそんな感じの良い母親になるんだろうなぁ……
>>227 「強敵」と書いて「とも」と読む。女の友情ここに成立!
といった感じですなGJ
あと、体育倉庫の中で一晩中という事はやっぱ3P(ry
>>228 いいなそれ!
アルバムで昔の自分の写真見つけて苦笑したりするんだろうか。
>>227 春原にちゅーしたくなった(´3`)
期待してんだから自虐的にならずに次も書いてくだちい
うへぁ陽子が可愛い…萌えた。
GJです、あとトリップ希望。
>>201-214 ぐわっ。声出して笑っちまったじゃねーか!
朋美の自己認識(目立たず女らしい)と、周囲からの評価との
ギャップがなんともいえん。
朋美のそれは韜晦なのか、マジなのか。
いかん、にやつきがおさまらん。ともかく、GJ。
「根も葉もない噂を流した罰として、岡崎朋美の睡眠中はそのボディガードを勤めること」
なぜ、そうなる。納得がいかない。僕だって被害者の一人だぞ。というか根も葉もあるだろう。
「鼠が龍のお守りをするようなモノだな……」
とは坂上智司大先生の弁。岡崎が龍だってのはまあ……良いとして。僕は鼠か?
え?そんなことより僕があのあとキャプテンとトイレで一体どうなったのかって?
それは……あの、人には、忘れてしまいたい過去ってものがあるんだ。うん。良いじゃないか別に。
まあそれは、ともかくとして。
――ある日の放課後、日も暮れかけた頃、僕は岡崎が図書室で本を読むというので付き添わされていた。
なかば強制的にだ。
そしていつものごとく岡崎さんちの朋美ちゃんは、机に突っ伏してすやすやと眠りに付いたのでした。
「本当にいい気なものですねぇっ!?」
下僕、ここに極まれり。神様、僕は一生この魔女の支配から逃げられないのでしょうか。
ああ、不吉なことを考えるな――僕。
まあ、この女は起きているとろくな事をしないので、出来ればこのまま永久に眠っていて欲しいものだ。
……
――退屈である。退屈なので岡崎の読んでいた本を手に取ってみる。
彼女の読む本は種類に方向性というものが存在しない。
もの凄く分厚い、それこそ凶器になりそうなハードカバーの難解な文学小説を読むこともあれば。
はたまた何をトチ狂ったか男の僕でさえ思わず目を背けたくなるようなドギツイ内容の成人雑誌まで読んだりする。
いちおう花も恥じらう乙女なのだからもう少し考えて欲しいものだと思う。
そしてどんな本でも変わらず、気だるそうに、つまらなそうに読んでいるのだ。
全ての本は平等に、彼女にはとって暇つぶしに過ぎないのかもしれない。どうでもいいけど。
題名を見てみる。全ての漢字が読めないのはいくらなんでもまずいだろうか。
パラパラとめくってみる。僕の目から見ると暗号に近いものが羅列されているだけだった。
睡眠薬代わりだろうか、この本は。
「はあ」
本を閉じる。こっちまで眠ってしまいそうだ。そうなった場合、僕はえらい目に遭う。
234 :
魔女の夕暮:2005/08/09(火) 13:36:34 ID:DnfAZfXS0
ああ、この女のせいで、僕の人生は……。おぞましき記憶がいくつも蘇る。
――とはいうものの、迷惑をかけている度合いでは僕の方も引けを取らない。
考えてみると良く今まで生きてこられたものである。
――持ちつ持たれつ。
「いやだよそんな関係は!!」
つい大声を出してしまった。
「起こしちゃったかな?」
岡崎の方を見る。ピクリとも動かない。寝息一つ立てていない。
生気が感じられない。
まるで――はじめから良く出来た人形であったかのようだ。
むしろコレが生きて動いていたという方が奇跡に近い。
夕日に照らされて、神々しさすら感じる。
だがそれは、触れたら壊れてしまいそうな脆さと表裏一体なのだ。嘘だけど。
――しかし、それにしても。癪だけどやはり綺麗だ。
別に人形でもいいや、綺麗な人形だなあ。あはは。
毎日のように見ているはずなのに。引き込まれそうな魔力がある。
良い機会なのでじっくりと眺めてみる。普段やると怒られるだろう。
顔はこちらを向いている。小さい顔、長い睫毛、形の良い眉、小振りな鼻と朱く薄い唇
黒くて綺麗な髪、そして、陶器のように白い肌。窓から風が吹くとほのかな香りがする。
「うう……」
なにやらドキドキしてきた。アホか僕は。落ち着け。
ぱんぱん
顔をはたいて気合いを入れる。痛い。
235 :
魔女の夕暮:2005/08/09(火) 13:38:32 ID:DnfAZfXS0
それにしてもこの顔で、浮いた噂一つ聞かないってのは……人間としてどうなのだろう。
全然中身が伴っていないのだ。宝の持ち腐れも良いところだと思う。
無駄だ、余りにも無駄すぎる。見た目は可憐な少女なのに。
少し引いたところから全身を見てみる。
均整の取れたプロポーション……というか無駄な部分がない。
細身でほどよく引き締まっている。
――とはいえ、あの怪力の説明は付かないが。
腕周りは僕なんかより遙かに細くて、華奢である。繊細なガラス細工のようだ。
世の中には不思議なことがあるものだ。
そして胸には胸が……当たり前だが。
平均サイズをかなり上回るであろう大きさだ。
ここまでのものは学校中探してもそうは見ない。
本人は肩が凝って邪魔なだけだと言っていたが。
今は机に突っ伏しているので当然、弾力を持つそれは潰れた状態にある。
……
……
……
「おお!!」
気付かぬうちにそっちの方向に手が伸びていた。間一髪である。
「何を考えてるんだ僕は!」
恐ろしい。まさに魔性である。もしこんな事がばれたら生命の危――
「ち、違う!信頼されてるんだよ僕は!それを裏切っても良いのか!」
がつんがつん
額を書棚に叩きつける。少し血の気が引く。
「れ、冷静にナレ。スのハラ」
声が裏返る。
236 :
魔女の夕暮:2005/08/09(火) 13:40:12 ID:DnfAZfXS0
しかし懲りずにまたも見つめてしまう僕なのだった。
こんどは下半身を眺める――いや、変な意味はないよ。ホントに。
よく見るとこのスカートはかなり短いと思う。
うちの制服はもともと他の学校と比べても短い方だ。それを更に短くしているらしい。
本人曰くこの方が動きやすいのだそうだ。それはそうなのだろうが、目のやり場に困る。
男の視線というものを全く考えていないのだろうか。まあ残念ながら中身を見たことはないが。
そしてそこからすらっと長く真白い脚が伸びている。
あ、脚が……のぞいて……太股……が。
「うわああああああああああああ!!」
がつんぼきべきばき
全身を書棚や机の角に幾度も叩きつける。
「が、頑張れ春原陽平! 煩悩撃退! 悪霊退散! 」
「ま、魔女の誘惑に負けるんじゃない!」
どかんどかんばきぼごべき
――目眩が……。ああ、目の前に天使が……見えて……僕を……連れて行くのだろうか?
「おはよう……どうしたの春原?」
天使じゃなかった。
「ぜいぜい。ああ、おかざき。おきたのか……おはよう?」
「なんか額が割れて血がどくどく出てるけど……手とかもアザだらけだし」
「……よくぞ聞いてくれた。アノネ。図書室に筋肉ムキムキでナイフ持ったモヒカンが何人も襲って来て
僕は必死で撃退したんだよ、楽勝だったけど……そのときのい、言わば……名誉の負傷?」
なぜ僕は、こんなときでも訳の分からない見栄を張るのだろうか。自分で自分が分からない。
「そう……」
「あ、あのさ岡崎。はあはあ。ぼくはここで戦いの疲れを癒してから帰るから……先帰ってていいよ?」
情けなさのあまり、心にもないことを言ってしまう。まあ動けないほど消耗してるのは事実なんだけどね……
「うん……」
そう言うと岡崎はさっさと図書室を出て行ってしまった。
「ひぃひぃ……ああ、本当に帰っちゃうのね……」
自分で言ったことだが。
「ねぎらいの言葉一つでもかけてくれれば……やる気も違うんだけどなあ……ふう」
まあ、最も自分を自分でボコボコにしただけなのだが。我ながら救いようがない。
237 :
魔女の夕暮:2005/08/09(火) 13:44:03 ID:DnfAZfXS0
――
目に血液が垂れてきた。視界がかすむ。額に手をかざす。
「うわ!ホントに凄い血だ!え、えらいことだ。」
死ぬかもしれない――戦慄が走った。
「横になって、春原」
「あ、え?」
目の前に――ガーゼと救急箱を持った岡崎が立っていた。
「保険の先生……もう帰っちゃってたから、これ。止血するから横になって」
「あの……わざわざそれを取りに。」
「いいから」
強制的に床に寝かされる。しかも膝枕だった。素晴らしい感触だった。良い匂いがした。
――だ、だめだ、興奮するな、何もいやらしいことなんかないぞ?
頭を擡げた欲望を必死に抑えつける。
「ちょっと痛いかもしれないけど」
岡崎がガーゼを持った手で額を強く抑える。
「イヤ、別に痛くない。全然大丈夫。うん」
「そう」
……位置関係上、どうしても岡崎と見つめ合うことになる。しかもやけに顔が近い。
息がかかりそうだ。さっき付いたくだらないウソのこともあってどうにも恥ずかしい。
「あ、あのさ岡崎。さっきの暴漢がどうとかいうあれだけど」
「良いから動かないで」
沈黙が続く。ああ、大きな目だ。この眼には、何故か魅入られそうになる。
別に向こうは何とも思っちゃいないだろうけど。こっちの顔はどんどん紅潮していく。
なんで毎日顔を合わせているのに今更こんな緊張しなきゃならないんだ。
「春原、顔が赤いけど」
「い、いやこれはその 血を失った顔に急激に血を巡らせているから、その」
しどろもどろになって正体不明なことを言う。
「血はほとんど止まったわね。見た目より傷が浅かったみたい
あとは消毒薬付けるけど、ちょっと染みるかも」
「痛い!」
思わず声が出た。
岡崎がかすかに微笑む。人が痛がるのが嬉しいのだろうか、この女。
238 :
魔女の夕暮:2005/08/09(火) 13:49:32 ID:DnfAZfXS0
新しいガーゼをテープで額に固定する。
「はい、終わり」
「腕のアザとかはどうする?」
「え? いやこんなのは全然大丈夫だよホントに」
「そう、じゃあ救急箱を返して帰ろう」
「ああ、うん」
岡崎の膝を離れて立ち上がる。名残惜しい。もう少しこのままでいたいという気持ちもある。
「――じゃあ行こう、春原」
一瞬。その笑顔を見たせいでふと、思ってしまった。
別に、一生下僕でもいいかな、と。
「――いいわけないでしょっ!!?」
なぜ思ったことをそのまま声に出してしまうのだろうか。
ああ、案の定岡崎は怪訝そうな顔でこっちを睨んでるし。
「そう……じゃあ一人で帰れば?」
すたすたと行ってしまう。
「ああ!ちょっと待って!そう言う意味じゃないんだってば!」
足が速い。必死で追いかける。まだ少し傷は痛むけど、そんなことはどうだって良い。
「待って岡崎ー!」
――まあ、先のことを考えても仕方がないか。
多分、なるようになるだろう。うん。
前回読んでいただいた皆さん、レスをくれた方、ありがとうございました。
ホント拙くて恐縮ですがorzもう一個書いてみました。
無自覚Sの朋美と無自覚Mの陽平…いいですね。
「あ゛あああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「くそっ!またか!?」
帳の下りた住宅街に彼女の絶叫が木霊する。
俺は彼女が入っているであろう浴室に駆け込んだ。
彼女、貴子は裸で浴槽の脇にへたり込み、その背はシャワーに打たれ続けていた。
かたかたと震えながら今も「あ…あ…」と掠れた声を漏らして。
「貴子、おい貴子」
シャワーを止め、けっして触れないように側に寄り添う。
「―――ない……おちない…」
「え…?」
よく聞き取れない。
努めて貴子の裸には目を向けないようにして正面に回り込む。
尤も、俺のそんな欲望との鬩ぎ合いも今の貴子には無意味。
俺が、いや誰が目の前に居ても彼女は気に留めるだけの余裕は持ち合わせていないから。
そうして回り込んだ先で目に付いたのは、今をもって擦られ続けていた彼女の二の腕。
もう随分と擦り続けていたようで、ぼんやりとした浴室でも赤く変色していたのが判る。
すぐに目を逸らしたが、腹や胸にも同じく、強く擦ったような跡。
「貴子…」
「おちない…取れないんだ…あいつらの…精液の感触が……」
蒙昧とした呟きが零れる。
会話にはならない、それでもこうして話し掛ければ返ってはくるのだが…。
「貴子、やめるんだ。気のせいだ、気のせいなんだよ。お前の肌はキレイだぜ?なぁ貴子」
「取れない…っ、取れないっ!」
「もう止せ!傷ついちまうぞ!」
少しずつヒステリックに、身体を擦る腕の力を強めていく貴子を制止しようと、
思わず彼女の腕を掴んじまった。
マズった!そう思った瞬間、既に遅く「ひッ」と貴子の目の色が一転する。
「触るなァっ!!」
叫びながら、あらん限りの力で振り払われてしまう。
「はぁっ、はぁっ…―――うっ……ひっ…ぅ…うっ…」
肩で荒い息を吐きながら、やがて嗚咽へと変わっていく。
そして俺にはそれを見ている事しか許されない。
言葉での慰めは届かないって事は散々思い知らされた。かといって触れることも叶わない。
こんなに…こんなにも近くで貴子が泣き崩れているってのに!
誰だよ……何処のどいつなんだよ!貴子をこんなにしやがったヤロウは!!
歯軋りと握った拳に力を篭めるのを何度くり返しただろうか。
貴子は座り込んだまま眠りに落ちた。
ようやく俺の出番というわけだ。
それでも裸の貴子を介抱するのは初めてで、随分と骨を折る作業となった。
浴室から連れ出し、濡れた身体を拭いてシャツと下着を着せてやる。
その間、どれだけまともに呼吸が出来ていただろうか?
彼女の裸が気にならないといったら間違いなく完全に嘘だ。
かといって、こんな状況でまじまじと覗き込むのは卑怯もんのやる事。
そんな二つの意識が、古典的じゃあるが天使と悪魔のように俺を板挟みにした。
俺の気が乱れないだけの服を着せ、貴子の部屋へと運んでいく。
貴子の部屋、とは言っても今は俺もその少し離れたフローリングの上に布団を敷き
眠る事にしていた。不測の事態にすぐさま対処できるように。
貴子をベッドに寝かせる。
ふと彼女の目尻が泣いた事によるであろう腫れに気付き、濡れタオルで拭いてやり、明りを落とす。
一段落。
こんな夜をもう何度迎えただろうか。まだ二桁とはいってないだろうが…。
現在俺達は河野家で暮らしている。
事の始まりは俺が『貴子』から貴子を呼び戻した二日後まで遡る。
「ここを出てくって…どういうこったよ貴子!」
「どうもこうもないさ。昨日のあれ、見ただろ?」
それは昨夜のことだ。
出された夕食もろくに喉へ通す事無くトイレへと発った直後。
貴子の絶叫が屋敷中に響き渡ったのだ。
俺と姉貴が急行した先では貴子が縁側の暗がりで震えながら、しゃがみ込んでいた。
どうしたのかと俺が肩に手をおいた次の瞬間、跳ね除けられ、姉貴が彼女を落ち着かせるのを
黙って見ているしかできず、歯痒さでいっぱいになった。
直接の原因は貴子に聞くのも憚られて、断定はできねえけど姉貴が拾った貴子の
呟きから、明かりの無い暗がりの道が引き金になってしまったらしい。
「暗い場所に出ただけであれだ。俺自身がどう抑えようとしても止められないんだよ。
このまま屋敷でやっかいになってれば必ずタマ姉たちに迷惑かけることになる」
「迷惑って!お前なぁ!」
「止しなさいユウ。ねえタカ坊、貴方なら私達にそう言った理屈が通用しないってこと、
解ってるでしょう?」
俯いていた貴子がハッとしたように顔を上げ、自嘲気味に呟く。
「敵わないなタマ姉には。本心を言えば、辛いんだよ。俺を気に掛けてくれる事も、
俺を案じる人が側に居るって事も。自分にされた事がかえって明確になったみたいで、
辛い……。一人になりたいんだ。今は」
皆、口を噤む。止めたいのはやまやま。
しかし言っても聞かないだろう、というのは俺と姉貴には目に見えて取れた。
それだけの悲壮感に裏付けられた決意が瞳に宿っていたのだ。
思いやる事が貴子にとって枷になるというなら、これ以上どう口出しすればいいのか図りかねていた。
「いいわ。でも、此処を発つのはもう少し待ってちょうだい。
タカ坊の家、電気も水道も止まってるでしょうから。それと合わせて小父様方から
預かった生活費の工面もしないとね」
「姉貴!?」
事務的に話を進める姉貴に苛立ち、文句を言おうとするや目の前に掌を突き出し制止される。
「今日はもう休みなさいタカ坊。ユウ、私はタカ坊を部屋まで送っていくから。
あと、少ししたら私の部屋まで来なさい」
「って、おい!」
納得がいかず、追いかけようとしたが貴子の申し訳なさげな顔に、足が止まっちまった。
時間一杯。無い頭振り絞って考え尽くす。
これから俺が貴子にしてやれることを…。
思いついた事は多くない。どんな案もつまるところ、唯一つの思いに集約されていたからだ。
その為にまずは姉貴を説き伏せなけりゃならない。
「姉貴、入るぜ」
「どーぞ」という返事に招かれ、目にした姉貴の表情は暗く、重たい。
「貴子は?」
「大丈夫よ、眠ったわ。ただ…部屋の中でも真っ暗闇は駄目みたい…。
仕方が無いから電気は点けたまま病院で処方されてる睡眠薬を飲ませたわ。
今はグッスリよ」
聞く限り少しも大丈夫というニュアンスが感じられない。
第一、処方された睡眠薬なんて何時の間に?
姉貴の物なのか、貴子の為に貰ってきたのか…多分後者だろう。
さらに口が開こうとしたところを手で制した。
無理難題を吹っ掛けられる前に俺の結論を、しかし一蹴されようが言っておきたくて。
「姉貴が何の用事で呼んだかしらねえが、貴子の事で言っておきてぇんだ。
あいつに付いていこうと思ってる。大方姉貴がその役目を買って出ようとしてたんだろうけど
こいつだけは…譲れねえ…!」
「―――そうね。それが良いんじゃない?」
「へ?」
阿吽で返される了承に思わず呆けた。
「何か不満?」
「い、いや!願ったり叶ったりだけど…よ。いいのか?」
「…なにがよ?ユウから言い出した事じゃない」
拍子抜けしていたところで「ホント言うとね…」と呟きが零れだす。
「初めはあんたが言った通り私がタカ坊の面倒見てあげようって考えてたわ。でも…ね…。
私やこのみじゃ、必ず何処かでタカ坊のこと不憫に思ってる事がでてしまいそうだから…。
その点、雄二の方が私達から見えない視点でタカ坊のこと見ていてくれると思ったの。
これは…長年友達やってたあんたにしか出来ない事よ?」
「姉貴……じゃあ…?」
「でも!タカ坊への接し方はあくまでも『親友』のそれ。これは絶対条件。
ユウのタカ坊への気持ちは十二分に解っているわ。でも今は耐える時。いい?」
喉の奥でごくりと唾を飲み込む。
俺にとってそれは言うほど簡単じゃねえ。
『貴明』の延長として貴子に接する……あいつを女の子として意識したままで?
ぶるぶると頭を振る。
待てよ、二人っきり何だぜ?堪えられんのかよ俺…。
貴子の言い分は『女扱いされたくない。また、そう意識しないようにしてるのを見るのが辛い』。
おまけに俺…いや、男に触れる事すらままならねえ状態なのに。
「むぅぅ………ぅぅ―――って!?痛だだだだだだだだだだだだだだ!!!」
わ、割れるぅーーーーー!
ウンウン唸っていた俺の頭部にいきなりのアイアンクロー。
拘束時間はほんの数秒足らずだが、割れんばかりの痛みに苛まれる。
「って〜〜〜〜………何しやがる!突然―――っ?」
今度は額にデコピン。力はまるで篭っておらず、ただ弾いただけのもの。
「しょうがないなぁ」、そんな表情を浮かべながら。
「少しは頭の中、晴れたかしら?ユウなんかが悩んでどうなるってもんでもないでしょう?
いつも通りでいいのよ。あなたの出来る事だけできれば、それで十分」
「あ…………る、るっせえ、余計なお世話だ!」
不器用で実に姉貴らしい励まし。
俺の中身が筒抜けになっているような気恥ずかしさとズキズキと痛む頭の事とかが
重なり、礼にもなってない返事を返す。
「あ〜あ〜。私ってば最近フォロー役ばっかりね〜」
愚痴りながら「話は終わった」とばかりに腰を上げる。
「なぁ姉貴よぉ…。姉貴は貴子…貴明のやつのことを…?」
「ええ、好きよ……ユウの初恋よりずっと前からね。最近やっとこのみへの『好き』と
同じものになってきたんだから。だ・か・ら!ちゃんと応援してあげるわよ。
タカ坊が私の妹になるのも悪くないし、先行投資のようなものよ」
「なんて姉だ。弟は無視かよ」
「ふふふ…。……ユウ、タカ坊のこと、頼んだわよ」
「言われるまでもねえよ」
今は貴子が荒らした風呂場の片付けついでに風呂を取っている。
差別的な表現だが、こういう庶民的な風呂も悪くない。
「何時まで続くんだろうな…」
湯船に浸かりながら、誰に問うでもなく呟いた。
彼女が発狂したのはこっちに移って三度目。
夜限定らしいが毎回手を変え品を変え、貴子のトラウマを呼び起こしやがる。
それでも明かりを消して寝る事にもなんとか慣れてきたし、姉貴に渡された鎮静剤を打つ程
深刻な事態にも見舞われてはいないだけ回復には向かっているんだろうか。
それでも正直、
「キツイな…」
言葉に出したのは失敗だった。途端に弱気になっちまう。
俺が先に折れちまうワケにゃいかねぇ。
けど少しずつ、少しずつ追い込まれているのを日々感じる。
それはなにもこういったマイナス要素のみに留まらないから曲者だ。
例@―――翌日
けたたましい音で目を覚ます。乱暴に目覚ましを止め、ベッドに目をやるとそこは蛻の空。
よろよろと階段を下りていくと段々とトントンと規則正しい音が聴こえてくる。
男物の服を来た彼女が台所の主のように動き回っていた。
何となく声が掛け辛くてボーっと眺めていると、体の向きを変え、おたまで味噌汁を
啜っている彼女と目があった。
「よっ。おはよ」
「お、おう。ハヨっす。いつもながら朝ァ早いな」
「慣れってのは怖いな。どうしてもジョギングの時間に目が覚める。ここんとこ寝るのも早いしな」
「ジョギングには…」
「出てないって。約束は守ってるよ」
貴子と暮らすにあたって、彼女との決め事がある。『決してひとりでは出歩かないこと』。
レイプ犯と出くわす危険性というのが貴子向けの大儀名分だが、実際のところは
俺が不安で仕方が無いからだ。
未だ男に対し恐怖を抱えている貴子は学校には行ってない。
まるっきり触れられないわけじゃないが、彼女の心の準備が出来てない状態で触れればジ・エンド。
現状じゃあ数人の男に囲まれただけで発狂してしまう事も有り得た。
何よりも貴子自身が乗り気でないのが大きい。
学校には生徒には伝えないという条件でおおまかな事情は伝えてあり、貴子は自宅療養という形だ。
なもんで、昼間はすこぶる暇で仕様がないのでは、と危惧してたが本人はネットライフを
満喫してるようで、それはそれで複雑だ。
ずらずらと述べてきたが俺を追い詰める要素とはつまり、
「はぁぁ〜、ほんっと料理上達したよなお前。毎朝和食なのに全然重複してねえし」
「もうそろそろ品切れだけどな。味噌汁だって具を少しずつ変えてるだけで大元は変わらないさ」
「謙遜すんなって!ハハハ……はぁ〜あ…」
とまあ…こんな感じで。
要するに普段の貴子はネガティブ気味じゃあるが自分の面倒を見る位は余裕なのだ。
なんてーか…凄まじく居候全開だぞ俺。
貴子からそのテの不満は一度も言われた事はないが、こんだけ役立たずぶりを発揮している
というのは彼女を守る為に付いて来た俺的にはひどく所在無いものだ。
例A―――帰宅後、夕方。
この時間は貴子の買出しに付き合うのが早くも日課になっている。
彼女としても篭りっぱなしの生活で、この時間は気晴らしになってるらしい。
「あら、貴子さん、雄二さん。今日もお二人御一緒ですか?」
申し合わせたように商店街の入り口でイルファさんと出くわす。
以前もこうして遭遇したことがあったが、以来貴子とは「買い物同盟」なるものを結成したという。
内容はいかに低予算で目的の買い物を果たせるかっつー寄り合いだ。
あいつの性格上イルファさんの事はメイドロボじゃなく一人の女の子として見ているんだろうが
女嫌いの彼女が、ああして一緒にどこが安いだのどこが美味しいだのやってるのを眺めてると
貴子が本当の…あの作り物でない本物の女の子に見えてならない。
おまけに行く先々が既に貴子達にとって行きつけのようなもんだから、気立てのいい
おばちゃんからなんかは「今日も夫婦で買い物かい?」なんてからかわれる。
初めの内は貴子もかなりの勢いで否定してくれやがったが、受け流す術に長けてきたのか
「そんなとこです」と微妙な応え方をする。
貴子の真意がどうあれ悪い気はせず、勘違いを起こしたくもなる。
学校には生徒には伝えないという条件でおおまかな事情は伝えてあり、貴子は自宅療養という形だ。
なもんで、昼間はすこぶる暇で仕様がないのでは、と危惧してたが本人はネットライフを
満喫してるようで、それはそれで複雑だ。
ずらずらと述べてきたが俺を追い詰める要素とはつまり、
「はぁぁ〜、ほんっと料理上達したよなお前。毎朝和食なのに全然重複してねえし」
「もうそろそろ品切れだけどな。味噌汁だって具を少しずつ変えてるだけで大元は変わらないさ」
「謙遜すんなって!ハハハ……はぁ〜あ…」
とまあ…こんな感じで。
要するに普段の貴子はネガティブ気味じゃあるが自分の面倒を見る位は余裕なのだ。
なんてーか…凄まじく居候全開だぞ俺。
貴子からそのテの不満は一度も言われた事はないが、こんだけ役立たずぶりを発揮している
というのは彼女を守る為に付いて来た俺的にはひどく所在無いものだ。
例A―――帰宅後、夕方。
この時間は貴子の買出しに付き合うのが早くも日課になっている。
彼女としても篭りっぱなしの生活で、この時間は気晴らしになってるらしい。
「あら、貴子さん、雄二さん。今日もお二人御一緒ですか?」
申し合わせたように商店街の入り口でイルファさんと出くわす。
以前もこうして遭遇したことがあったが、以来貴子とは「買い物同盟」なるものを結成したという。
内容はいかに低予算で目的の買い物を果たせるかっつー寄り合いだ。
あいつの性格上イルファさんの事はメイドロボじゃなく一人の女の子として見ているんだろうが
女嫌いの彼女が、ああして一緒にどこが安いだのどこが美味しいだのやってるのを眺めてると
貴子が本当の…あの作り物でない本物の女の子に見えてならない。
おまけに行く先々が既に貴子達にとって行きつけのようなもんだから、気立てのいい
おばちゃんからなんかは「今日も夫婦で買い物かい?」なんてからかわれる。
初めの内は貴子もかなりの勢いで否定してくれやがったが、受け流す術に長けてきたのか
「そんなとこです」と微妙な応え方をする。
貴子の真意がどうあれ悪い気はせず、勘違いを起こしたくもなる。
所変わって食卓風景。
おだてや気遣いの無いあくまでも友達然とした食事。
さして面白くも無いバラエティを眺め、まったりした空間にもふとハプニングは起きる。
「っ…」
意識をテレビに向けていながらソースを取ろうとしたところで貴子と指が触れ合う。
まったくもってベタな展開だが今の貴子はこういった不意打ちに滅法弱い。
俯いて、火傷でもしたかのように指を庇う。
大方動揺と、動揺してる自分に自己嫌悪でも負っているんだろうが、そんな姿で固まって
いられると余計に意識し合ってるみたいでえらく恥ずかしい。
例B―――その後、リビング
「ん〜なカッコで歩き回んな!!」
「え?ああ…気にするなよ」
無理言うな!
風呂上り、バスタオル一枚の貴子が冷蔵庫のジュース目当てに俺の目の前を通り過ぎてく。
その動作は普段と変わりなく、無骨で男っぽい。
いつぞやの夜を思い起こすが、違えのは今の彼女は到って自然体であるってこった。
ここ何年かは元より、俺ん家でも貴子の部屋と浴場、俺の部屋が離れていたことから
移り住むまで貴子の生活スタイル…というか癖を知らずに過ごしてきた。
どうもあの誘惑の夜の事も偶然や策略じゃなく本当に『風呂上り直ぐには服を着ない』
奴だったみたいだ。
これが新しい俺の日常ってんだから始末が悪い。
言っても面倒臭がって聞きゃしねぇし、こっちを意識してないってのがマズイ。
遠慮がないから何時タオルがはだけ落ちるのかハラハラものだ。
内心期待してる自分がどっかにあるからまた度し難い。
言っても聞かないなら、と部屋で待ってた事があるが着替えが其処にあるわけだから
当然出くわしてしまう。
やらしい目で見て彼女が不快にならないように俺は内心で日夜激闘を繰り広げている。
とはいえ鋼の意思だってこんなのを続けてればいつか豆腐並みの装甲に落ち込むだろう。
目下精神的困憊よか理性のタガが外れないかという不安がでかい。
今に始まった事じゃねえが何度彼女を『オカズ』にしようとしたかわからねえ。
けどそれは貴子への裏切りのようで、ずぅっと自粛してきた。
此処に移り住んでからというもの『処理』だって控えている。
見つかるのが怖かったから。
あいつも表面上は「俺にもその気持ちは解るから」と流してくれるかもしれない、
でも腹の底じゃ忌まわしい出来事から、俺の事すらも汚らしい男だ、と烙印を押されるのが
怖かった。そういったプライドというよりエゴでもって日々耐え偲んでいた。
学校も終わり一路貴子の家へ。
このところ早く帰ることばかり優先してろくに遊び歩くこともしてない。
優先度で云えばクラスの男共より貴子のが上だし、姉貴もチビ助もあいつ無しじゃ締まらねぇ。
遊びに行くならブランク明けは貴子と、ひとりでそう勝手に決め込んでいた。
女に変わっちまってからあいつとはカラオケに行ってないことだし、今のあいつの歌も聴いてみたい。
「たでぇま〜」と帰った事を示しながら中に入ると玄関からリビングに貴子の姿が見える。
一目みて理解った。震えてる、と。
「―――!」
決して声は上げず駆け寄る。
ここで俺が取り乱したが最後、大声が引き金にもなる事を思い知らされていたから。
顔色を覗きながらゆっくりと彼女の目線とを合わせる。
向かい合っていたテーブルには落書き満載のカレンダーが二月分。
赤いバツ印が視界の端に映った。
「貴子……?」
「ゆう…じ………こないんだ……どうしよう……どう…っ」
自身を両腕で抱き締め、ぎゅう、と袖を引っ張る。
かろうじて自我を保っていたが、その姿は決壊寸前のダムを連想させた。
「どうした?何が、来ないって?」
薄氷の上を歩くように、ゆっくりと、ゆったりと声を紡ぐ。
「……せーり…」
「なっ!?」
絶句する他なかった。
若年層の男が女から聞かされたくない告白ナンバーワンの言葉がこんな状況で出てくるなんて…。
「昨日…ずっと不安だった…。でもこなかった。そしたらもっと不安になって…何度も
何度も確認、したんだ。でも…やっぱり予定日に……間違いなくって」
「落ち着け…落ち着けよ。まだ一日遅れてるだけだろう?」
努めて言い聞かすように話したが、段々と言葉が届かない所へ追い詰められていく。
「イヤだ…あんな、奴らの……こど、こっ……やっ…いや……ぁ…」
やべえ!表情が歪んで目が虚ろになってきてる。発狂前のサインだ!
ひびの入ったダムから一筋、また一筋と水が漏れ出すように。
もうこっちも考えて抑えこむ余裕なんて無い。
理性と思考を肉体と勢いに委ねる。
「貴子!貴子!貴子!!」
顔を両手で固定して、キス出来そうなくらい顔を接近させ名前を呼ぶ。
どんなに大声を張り上げても届く気がしない。それでも呼び続けた。
「ぁ…ぅぁ……」
一瞬…瞳に光が戻った。見間違えでもいい、まだ連れ戻せる!そう奮い立てて。
頭と背中に手を回し、腕の中に抱き入れる。
離すかよ。例え嫌がられ、跳ね除けられようとも。離さない。
「大丈夫…大丈夫だ。大丈夫だから」
背中を撫でながら「大丈夫」と囁き続けた。
いまのそこに邪は情愛は無い。泣き喚く子供をあやすように、囁き続ける。
意外にも貴子は震えこそすれ、俺の腕の中でも暴れる様子は見せない。
sienn
どれだけの間そうしていただろうか。
外はガキ共がまだ遊び回ってる時間帯なのに、此処だけ喧騒から隔離されていた。
やがて腕の中から聞こえるうわ言めいたものが小さくなっていき、次いで身体の震えも
鎮まっていったのが感じ取れる。
「…すまん」
細い声でぽつりと呟くのを拾った。
「もう少しだけ……あとちょっとだけ借りるな?」
「おぅ。なんぼだって貸してやる。濡らしても構わねぇぜ?」
「あほ…」
囁きと共に少しだけ強く、貴子が胸の中に埋もれてくる。
どうしようもなくコイツに「女の子」を感じる。
折れるほど抱き締めたくなるのを堪え、頭を撫でることで想いを緩和させた。
「止せよ…子供みたいだ…」
言葉の上だけの抗議。その証拠に強張りが弛緩していく。
「オトナじゃあ、ないわな」
「お前こそ」
逡巡。
ゆっくりと顔が上がり、見詰め合う形になる。
「もう大丈夫か?」
「たぶん、な……ほんと、助けられた…」
まじィ……雰囲気良過ぎだ。
俺の目にドラマチックフィルターでもかかってるのか貴子の瞳も潤んでるように見える。
もし、ここで顔を近付ければ、その目を閉じて待っててくれそうな、そのまま押し倒して
しまえば最後まで受け入れてくれそうな、そんな淡い予感すら抱かせる。
けど…待て待て!そうやって流されて今まで失敗してきたんだ。
ここは紳士っぽく振舞って終わりにしておこう。
ゆっくりと腕を解き、離れるよう促す。
「今更だけど、よく嫌がらなかったな。結構力一杯抱き締めたんだぜ?」
「抱き締めるとか言うな。それに……それは…雄二だったから…」
「それって……」
「ふ、深い意味じゃないぞ!?こんだけずっと一緒に居たんだから慣れて当然というか
その…つまりそういう事だ!」
強引に話を切られちまった。もう一押しで転ぶかと思ったのに。
「俺からも、聞いていいか?なんで雄二は…こんなに一生懸命になってくれるんだ?」
好きだからに決まってる、そう答えるのは簡単だ。でも…
「やっぱり…俺のこと、その、想ってる…から…なのか?」
あまり色よい反応が見えない。
「想ってる」なんて遠回しに言うのは果たして「好かれてる」事を認めたくないからか
それとも単に「好き」って言い方が恥ずかしいだけなのか判断に苦しむ。
だから俺は、人差し指で額をちょん、と押しながら
「ばぁか。マブダチが苦しんでる時に放っとけねぇってだけさ」
「……ふっ……恥ずかしいヤツ」
「うっせぇ」
笑顔が戻ってくるなら、まだこの応えでいい。
その日の内にタマ姉に相談した上で、翌日三人で病院へ出向いた。
結果が出るまでの時間、断頭台に括られっぱなしにされたようで生きた心地がしなかった。
結果は…陰性。
一瞬俺と雄二は「は?」となったが要するに最悪の事態は免れたらしい。
あまりの安堵に崩れ落ちた上、少々泣いてしまった。
その晩。
心配事が片付いた後の、あの独特な倦怠感と言い表し様の無いモヤモヤに包まれていた。
自分の家に戻ってから、何度かあった感覚だが今日のは特に激しい。
何だか身体が熱い。火照る、というやつだろうか…。
っ……何考えてるんだ俺は。すぐ隣には雄二が寝てるのに。
……………………もう寝たよな?
――――――――――――――
んっ…胸、今まで意識して触れた事、なかったな。
柔かい、な…。
胸だけじゃない。腕も腰なんかも全部……全部、俺の身体なんだよな?
うっ、ん…強く握ると痛い…。……!なんだ…?今の、感覚。
余計に熱く……なんか…この触り方、やらしい…俺の胸なのに…。
さきっぽがジンジンする…そこだけデキモノみたいに、っ擦れ…て。
ひぅっ!
………うそ…いまの声、俺が出したのかよ…。き、聞かれてないよな?
こんなに、固く…。だ、ダメだ。刺激…強すぎる、でも……。
あ、あ、ふぅっんっ…!
こんな、こえ…っ、男の時のオナニーじゃ出したこと、無いのにっ。
やめなきゃ…もうやめよう…。
これ以上は……………う、ち、ちょっとだけ…なら。
湿ってる…?これが、『濡れる』?
ひっ…あっ!?ちが…うっ!?トイレで拭いた時、はっ…こんっ、な!
こんな声…こんな声出しちゃダメだ!おれ、女なんか…じゃ…はっ、ぅっ!
どうしよう…どうしよ…気持ちいい……。
あいつらにされた時よりも……違う違う!あんなのは……。
あいつらじゃなくて…。あいつらじゃないのは…。
……ゆう、じ…
――――――――ぞくっ――――――――
?!!?!!!?!!!!
ああっ!?はぁ、っ、っぁ!
なに?なんだよこれっ!ゆびっ、止まらな…あ、うぁっぁ!!
やっ…すごい、ぐちゅぐちゅいってるっ!
だめ、だめだ。聞こえる!バレちまう!
……っじ……ゆうじ…ゆうじぃっ!
んっあっ!くるっ…!?こしのうずき、とまんない!
あ、あ、あ、あ、っっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜――――――――――――!!!!
―――
――
―
はっ…ハっ…はぁ、っあ……ん……。
俺…俺は何てこと……。
俺が、雄二を?馬鹿なっ!そんなことない!
気の迷い…そう!手近な名前呟いてみただけで!そんなハズ……無い。無いんだ…。
っ!?
起きて…ないよな?
――――――――――――――
もう収まったか?
チクショウ……丸聞こえだっての…。
このおっ立ったモンどうすりゃいいんだよ…。
∧||∧
オナニー描写は大の苦手ですが少しでもこの先への整合を求める為ねじ込みました
実況中継なのは単なる実験です
おもっ・・・
なんというかこう、シリアス分の補充に最適だ。
あいかわらず続きが気になる展開ですよ……GJ、そしてファイト。
貴子が別の方向に壊れだした…のか?
最後の一線を踏み越えてしまいそうになる日もそう遠くはないな。
>>261 上の雪弥見てなぜかこいつ→(;゚皿゚)が思い浮かんだw
京に何をされたか理解するまでに、しばらくかかった。
そして、それがわかった瞬間、私は驚きのあまり京を突き飛ばしていた。
今度は本気で。
「と…朋美…」
驚きで、言葉に感情を込めることすらできない。
「いきなり…何するのよ…」
言ってからふと思う。私が春原にしたことだって同じようなものだったんじゃないかと。
春原の気持ちなんて考えていなかったんじゃないかと。
「ごめん…忘れてくれ…」
京も表情の消えた顔で言葉を発し、背を向ける。
そして、そのままふらふらと立ち去っていった。
私はしばらくその場に立ち尽くしていたが、思い出したように買い物袋を拾う。
「岡崎、こんなところにいたのか」
「芳野さん!?今の見てた…?」
「何のこと?」
良かった、どうやら見られていないらしい。
「岡崎のお陰で公太郎さんと有意義な話ができた。感謝している」
「ど、どういたしまして」
「それで、迎えにきた」
「…有難うございます」
まだ、心臓がバクバク言っていた。
伊吹家に泊めてもらっている手前サボることもできず、重い足取りで学校にきたのだが隣は空席。正直ホッとした。
京に会うこともなかった。
次の日も、その次の日も隣は空席。
一週間たった今日も、隣は空席だった。
「おはようございます、岡崎さん。今日も早いですね」
「まぁ、本気を出せばこんなものよ」
「折角岡崎さんが毎日早く来てくれてるのに、兄さんってばずっと風邪で…見せたかったなぁ」
「…風邪なの…?」
本当に風邪なのかしら…。
「春原くんもずっと来てないですしね。岡崎さん淋しいですか?」
「…そんなことないわよ」
何でみんなアイツの話題を出すのよ…。
「そうだ、春原くんが何をしてるか占います」
しゅっ、しゅっ、しゅっ
「あっ」
ばらばらばら…
例のごとく床にぶちまけたトランプを拾い集め、扇形に広げて私に突き出す。
「えっと、4枚ひいてください」
仕方なく4枚のカードを抜き取り藤林くんに返す。
「春原くんはいなくなることなんて無く、岡崎さんのそばにいます」
「そばにいないわよ…?」
「あれっ?まぁ、占いは占いですからね」
それより、いなくなることが無いって…彼の占いの場合、いなくなるってことよね…。
「とりあえず、春原くんは存在しているみたいです」
存在している…?って事は…。存在しているの逆は…?
その続きを考えるのが恐かった。
「ごめん、藤林くん…私、早退するわ…」
「えっ、岡崎さん?」
私は藤林くんの返事も聞かずに教室を飛びだした。
そんな馬鹿な話ありえないわよ…ありえない…。
まずは学生寮。かつて毎日通っていた男子寮に入る。数日来ていないだけなのに、ひどく懐かしい。
「岡崎、何してるんだ?」
「あ、美佐雄さん…」
「春原なら、ずっと部屋に鍵かけて籠もっているが…」
「えっ、何かあったんですか?」
「岡崎がここに通う前はしょっちゅうだったよ。サボってないで学校に行くように言ってくれ」
よかった、いるんじゃない…。
1年生の時から春原に借りていたスペアキーを使ってドアを開ける。
「春原、藤林くんや美佐雄さんに迷惑が掛かるから学校にきなさいよ」
答えは、無かった。
動くものといえば、開きっ放しの窓から流れ込む風で揺れるカーテンだけ。
「うそ…」
どこに行ったのよ…。
私はドアも閉めずに男子寮の廊下を走る。
「美佐雄さんっ!春原がいない!」
「なんだって!?」
「私、探してきます!」
もし、春原に何かあったんだとしたら、それは私のせいだ。
つまらない意地なんて張ってないで、ずっと一緒にいればよかった。
しばらく色々な場所を探したが、春原は見つかりそうにもなかった。
古河パンの前を通った瞬間、聞き覚えのある声に呼び止められる。
「岡崎さん、どうかしたんですか?」
もう、学校が終わっている時間らしい。真っ暗な空を見てそれは確信に変わる。
「古河くん…春原見なかった?」
「春原さんですか?ごめんなさいです、僕はみてないです」
「そう…」
私は疲れ切ったように肩を落とした。
「春原さんに何かあったんですか?」
「いないのよ…どっかにいっちゃったの…探しても全然見つからないの!」
普段出したりしないような大声で古河くんに告げる。
「岡崎さん、落ち着いてください、僕も一緒に探しますから」
「でもっ!どこを探してもいなくて…私、どうしたらいいか…!」
「うるさいよ小娘!人の店の前でキーキー叫んでるんじゃないよ!」
「お母さん、違うんですっ。岡崎さんのお友達が行方不明になっちゃったみたいで…」
「行方不明〜?」
改めて言われるとその通りだった。行方不明。
いや、その言葉を敢えて使っていなかっただけかもしれない。
春原…何でいなくなっちゃったの?
「…きさん、岡崎さん!」「え?」
古河くん…。
「もう暗いですから岡崎さんは帰って休んでいてください。今、お母さんが近所の人をよんでます。ここは、僕とご近所さんに任せてください」
「私も探す…」
「駄目です!岡崎さん凄く疲れてます。休まなきゃ駄目です。僕が家まで送りますから」
「……」
家に行ったとしても抜け出して探すつもりだ。
「渚、行かせてあげてくださいっ」
「お父さん…」
「きっと、渚が家まで送っても岡崎さんは友達を探そうとしますよ」
「……」
バレバレだった。
「それならいっそ探してもらった方がいいです」
「はい、その方が私も気が楽です」
「ただし、この時間に女の子が一人歩きするのは危ないですから渚と一緒に行動してくださいね」
「僕、体が弱いから岡崎さんを守れないかもしれないです」
いきなり弱気発言ね…。
「あの、でも決して手は抜きませんので、少しだけ安心してください」
少しだけなのね…。
「岡崎さん、一足先にいきましょう」
「ええ…」
まずは、一度私が探した心当たりのある場所をもう一度丁寧に探す。
「いないですね…春原さんと最後に会ったのはいつですか?」
「一週間くらい前よ…」
「えっ、じゃあ僕のほうが最近会ってます……あっ!」
古河くんは何かに気が付いたように声を上げると、そのまま走りだした。
私も急いで後を追う。
「何か、お母さんが春原さんに言ってた…願いの叶う場所が…あるって…」
「走りながら喋って大丈夫なの」
「今は調子いいから平気ですっ」
確かにいつものように顔色が悪くなったりはしていない。無理しているわけでは無さそうだ。
と言うか、バスケをやっていた私がやっと追い付けるくらい足が速い。
「ここですっ…!」
追い掛けることに必死でまわりを見ていなかった。
いつのまにか木々の生えている場所にいて、目の前は開けていて、そこに横たわっていたのは…。
「春原っ!」
見間違うはずもない金髪。
私は駆け寄ってその体を起こした。
「春原…?」
あれ?春原ってこんなに小さかったっけ?
それに、何だか体に触れた感触が柔らかい…。
私に抱き起こされた春原のまぶたが震え、薄目を開ける。
「う…岡崎…」
女の子の、声だった。
「あれ…?僕…声が…」
春原、否、春原によく似た少女がぽつりと呟く。
「岡崎さんっ、どうしたんですかっ?春原さんは…」
「春原じゃ…ない…」
私は、ただ、そうとしか言えなかった…。
269 :
すのぷ〜野郎:2005/08/10(水) 03:56:07 ID:ZNggOFFoO
何かとんでもない展開になってすみません…。
蔵反転は岡崎と春原のカプばかりなのはやはり、どっちかが女だったら間違いなくそうなる状況だからなのかな。
そして改行ミスも多くてすみません。
>>258 TH2未プレイだけど普通に面白いです!続き楽しみにしています。
貴子キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
─―春が、すぐそこまで来ていた。
パステルカラーのタイルが敷き詰められた歩道を歩く。
暖かい日溜まりのなか、道端にはいつものように鳩たちが群がっていた。
見慣れた景色、いつもの朝。
ただ、ゆるやかに吹く風に、少しずつ春の訪れを感じさせるものがあった。
――春。
それは新しい出会いの季節。
この春、俺はいったい、どんな出会いをするんだろう……?
……なんて事を、一年くらい前にも思ったような気がする。
俺の名前は、藤田浩之。何処にでもいる男子高校生だ。三年生になったので、そろそろ真面目に受験
とかを考えなくちゃいけない時期だ。
なんか「お前の何処が普通の男子高校生だ」という声が聞こえたような気がするが、俺は嘘は言ってない。
俺自身は普通の人間だ。
知り合いの女の子には、魔女だの超能力者だのロボットだの、変わった娘が多いのは確かだけどな……
みんな可愛い娘ばかりなのに、恋人にしよう、とまで思わなかったのは、そういう理由があるから
かもしれない。結局友達どまりだ。幼馴染みのあかりにしても、向こうから恋人になって欲しい、
というアプローチが無くはなかったけど、俺はどうしてもあかりを妹みたいなもの、としか
思えなかったしな……
そんなわけで、俺は現在もなお、彼女いない暦(古)を刻み続けている。
受験とかを疎かにしたいわけじゃないが、やっぱり彼女は欲しいよな……とぼんやり考えていた時の事だった。
どすん
そんな感触と共に、俺は少しよろめいた。前にもこんな事があったような気がする。確か、あの時は
芹香先輩を……俺は足元を見た。
「うわ、やっぱり」
俺は思わずそんな事を口走った。足元で小柄な女の子が尻餅をついている。ぼんやりしていたせいで、
彼女の存在に気づかずにぶつかってしまったらしい。
「悪ぃ。大丈夫か?」
俺は手を差し出した。女の子は一瞬手を伸ばそうとして、俺の手に触れる直前に、びくっと震えて手を
引っ込めた。おずおずと俺を見上げるその顔には、微かに怯えの表情が見える。
……そんなに怖い顔か? 俺……と、ちょっとブルーになった。まぁ、三白眼であまり目付きが良くない
のは自覚してるけどさ。
「ぶつかって悪かったよ。そんなに怖がらないでくれ。それとも、どこか痛いのか?」
俺はできるだけ優しい声で言ったが、女の子はまだ怯えの表情を見せている。見ればなかなか可愛い娘だ。
見覚えが無いところを見ると、新一年生だろうか?
気が付くと、周りに人だかりが出来始めている。マズイと俺は思った。たぶん、傍目には目付きの
悪い男(俺)がいたいけな女の子をいじめているようにしか見えないだろう。何とかせねば、と思った時、
人ごみを掻き分けるようにして、一人の女の子が出てきた。
「貴子、どうしたの? 大丈夫?」
二人目の女の子がそう言って最初の女の子――貴子と言うらしい――に手を差し出す。貴子ちゃんは
その娘にはためらい無く手を差し出し、起こしてもらった。
「ありがと、悠里」
礼を言う貴子ちゃん。二番目の女の子は悠里と言うらしい。こっちもなかなか可愛い娘だ。貴子ちゃん
とは対照的に、背が高くてスタイルも良い。ただ、ちょっと軽そうだ。印象としては志保に似ているかもな。
その悠里ちゃんの後ろに、立ち上がった貴子ちゃんが隠れて、こっちを気弱そうな視線で見てくる。
そして、悠里ちゃんのほうは、敵意の篭もった視線でこっちを睨んでいる。
……なんかすごく罪悪感を掻き立てられるんだが、どうしたらいいんだろう。
「あー……その、確かに俺はその子にぶつかって突き倒してしまったけど、わざとじゃないし、悪いとも
思っている。そう睨まないでくれ」
とりあえず、俺はそう謝ってから、彼女たちを信用させるために、生徒手帳を取り出した。
「俺は三年の藤田浩之。何か文句があるなら、担任の木林先生に話してもいいし、俺の家に直接怒鳴り
込んできてもいいぞ。親はいないけどな」
そう言って手帳を開いてみせると、急に悠里ちゃんの視線から敵意が消えた。表情がにこやかになり、
好奇心の篭もった視線で俺を見てくる。その変化に戸惑っていると、悠里ちゃんが明るい声で
言った。
274 :
名無しさんだよもん:2005/08/10(水) 23:23:32 ID:CGbeLg3O0
「三年の藤田先輩!? うわぁ、初めて見ちゃった! あたしは1−Aの向坂悠里って言います!
こっちはクラスメイトの河野貴子。すいません、この娘ったら男の人がちょっと苦手で」
あの怯えっぷりは「ちょっと苦手」程度か? と俺が思っていると、悠里ちゃんは無理やり貴子ちゃん
を前に出して、頭を押さえつけるようにしていた。
「ほら、貴子も謝んなさい。あんまり怯えてるから、てっきりアンタにちょっかい出しに来たナンパ野郎
かと思ったじゃない」
「あ、あのっ……す、すいません……」
真っ赤になって頭を下げる貴子ちゃんに、俺は手を振って答えた。
「良いよ。元はと言えば悪いのは俺だし。おっと……」
予鈴が聞こえてきた。急がないと遅刻しちまう。
「じゃあ、俺はこれで。君たちも急げよ。遅刻するぞ」
俺はそう言って手を上げると、踵を返して走り始めた。
これが、俺と河野貴子の初めての出会いだった。
最後の書き込みでミスった……orz
ということで、浩之と貴子の話です。タカ坊は浩之の2年後輩だそうなので、二人が同時に在学している
時期があるわけで、こんなのもありかなと思いまして。
貴子の話はいろいろ出ているようですが、こっちはベタベタに甘い話にしようかと思います。
悠里(女雄二)の名前は、一番可愛いと思ったのをお借りしました。作者さんありがとう。
では回線吊って首切ってきます。
じーじぇー!!浩行がやたら紳士になってるw
ところで、東鳩2って東鳩で浩行達が2年生になった2年後、
つまり浩行と貴明って1クール離れてるんじゃなかったっけ?
気のせいかな?
ダb(ry
>>269 春原の(後先考えない)願いが叶ってしまったー!?
この先に待っているのは悲劇か喜劇か。
岡崎と春原って精神的な波長が合いまくってるからなあ…。言うなれば夫婦漫才?
>>275 お久しぶり&GJ。
いろいろなタイプwの女性と知り合ってる浩之も、貴子みたいなのは初めてか?
近いと言えば琴音ちゃんあたりか。
浩之vsタマ兄
無理だって勝てねえって!エクストリーム的修行積んでても届かないって!
>>275 >276指摘のとおり、浩之と貴明は同時に在学はしてないです。
設定上、「前作の2年後」ですが、これ、前作のゲーム終了時(=浩之2年の時)の2年後が、
2のゲームスタート時(=貴明1年の時)という意味なので。
浩之と貴明が同じ学年にいた年を基準にすれば、実は3年後なんですね。
貴明たちと同時に在学していた前作キャラは、葵と琴音の下級生コンビのみです。
彼女らが3年の時に、貴明が1年ということになります。
つまり2の作中、貴明の学年が上がってこのみが入学してくるのと入れ替わりに、
葵たちが卒業しているということです。
281 :
276:2005/08/11(木) 00:54:32 ID:5Dg8IXU70
なんだか無粋な突っ込み入れちゃったカナ? スマソ。
>275の話の続きは是非見たいので、この際設定なんかは気にせず続けていただければ幸いです。
>>277 そうか!女雄二が名前聞いたことある風だったのは有名だったからか!!ダb(ry
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「…も、もう平気……」
新城くんの背中におぶさったまま、私は後ろを振り返った。
人影はなく、誰かが追いかけてくるような気配もなかった。
私たちは、なんとか渡り廊下のところまで逃げ戻ることができた。
もう大丈夫だよね、といって新城くんは私をベンチに座らせてくれた。
「大丈夫?」
「な…なんとか…。喉渇いた…」
新城くんの呼吸は荒いままで、額には汗がびっしりと浮かんでいた。
「ごめんなさい…」
「別に平気……それより、大丈夫?」
大丈夫では、なかった。
今もまだ、私の頭の中を、電気の洪水が、ぐるぐると渦巻いている。
脚にそっと触ってみたけれど、まだ痺れていた。
「新城くん…」
次第に震えだした脚を必死に抱え、私は言葉を搾り出した。
「怖い…怖いよ……」
「祐ちゃん…」
「もう…電気は…電気は嫌……!」
私は新城くんの腕の中に、子供のように飛び込んだ。
何と言われてもいい。もういやだった。早く家に帰りたかった。
涙さえ流していた。それでも構わなかった。彼にならそれも許せるから。
「祐ちゃん」
優しく呼びかける声が聞こえた。
「新城…くん…」
「大丈夫だよ、もう電気なんかこない」
「…本当に…?」
見上げた新城くんの顔はにじんでよく見えなかった。
でも、微笑んでいるようだった。
「今はとにかく、さっさとここから逃げよう。立てる?」
「…待って」
私は新城くんから距離をとって、腕に力をこめる。
ベンチからお尻が浮く。でも、それ以上立ち上がれない。膝から下が石になったかのように動かない。
「無理……ごめん…」
再び涙がこみ上げそうになるところ、新城くんはまたしゃがみ込んで助けてくれた。
「じゃ、またおぶってあげるから。ほら、泣かないで」
「…新城くん…」
「やっぱり『伊織くん』のほうがいいなぁ」
新城くんはこうやって私を笑わせて、悲しい気分を忘れさせてしまう。
本当に、ひどい人だ。
「早く行こう…伊織くん」
安全な場所に避難してからタイミングを見計らって脱出しよう。
伊織くんの提案で、私たちはひとまず体育館へと向かうことにした。
私の脚はまだ使い物にならず、今も伊織くんの背中にお世話になっている。
とても申し訳ない気持ちがある一方で、彼の背中の温かさに安心できるのが嬉しかった。
「祐ちゃん、平気?辛くない?」
「うん、すこし楽になったよ」
少し休んだらまた歩けるようになるだろうから、そうしたらここから逃げよう。
叔母さんに連絡して、見たものを全部話して、それでもうおしまいなんだ。
私はもうなにもしなくていいんだ。
見たものを、全部、話して。
『ハハハハハ…そうよ、乱れろ!もっと乱れなさい!この淫乱メス猫!』
(――――――――っ!)
身体の奥が、激しく脈を打ち出した。
激しく、激しく、激しく、激しく。
電気のように。
286 :
元380:2005/08/11(木) 02:38:22 ID:dudE2uzN0
…ということでいつぞやのさおりん編の続きを書いてみたわけなんですが…
次回、ガチエロ時空を作りたいと思います。「えろえろな 事も無き世を えろえろに」の精神で。
苦手な人はスルー推奨でお願いします。
>>275 お久しぶりですー。続き期待。
それでは回線吊って首切ってきます。
>>283 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「…も、もう平気……」
まで読んだ。
>>287 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「…も、もう平気……」
まで読んだ。
まで読んだ。
朝のハプニングの後、わたしたちは時間ぎりぎりに校門に飛び込んで遅刻を免れた。ホームルームが終わると、
一時間目までの間に、わたしは悠里に話し掛けた。
「ねぇ悠里、あの人の事、知ってるの?」
すると、悠里は驚いたような目でわたしの事を見てきた。
「アンタこそ知らないの? 三年の藤田先輩って言えば、伝説の人よ?」
そう言って、悠里はわたしの知らない藤田先輩の事を、いろいろと話してくれた。
超能力者の女の子の謎を解いたり、エクストリーム同好会の設立に関わったり、クラスで起きていた
いじめ問題の解決に一役買ったり、サッカー部の助っ人を引き受けて大活躍したり。
とにかく人の世話を焼く、と言う事ではすごい人らしい。
それでいて、自慢したり偉そうにしたりしないから、女の子たちの間では、結構人気のある人なのだそうだ。
「そんな先輩とお近づきになれるなんて、アンタってば運が良いわね〜こいつこいつぅ」
「やめてよ、悠里。わたしはそんな……」
頭をくしゃくしゃにしてくる悠里からわたしは逃げ出した。
正直、運が良いなんて思わない。話を聞く限りでは良い人みたいだけど、男の人が苦手って言うのは、
それとは別。今朝先輩にぶつかられた時も、せっかく起きるのを手伝ってくれようとしてたのに、ついつい
怖くて手が出なかった。
「はぁ……もったいないわね、貴子は。街角でぶつかるなんて、運命の出会いのお約束じゃない。せっかく
だから、あたしが先輩にアプローチしちゃおうかな〜」
「うん、良いんじゃない?」
悪巧みする猫みたいな表情で言う悠里にわたしはそう答えた。
悠里は昔からの親友で、女のわたしから見ても可愛いと思う。背丈も150cmちょいのわたしより頭半分くらい
高いし、悔しいけどスタイルも良い。
ただ、ちょっと気さく過ぎる性格のせいか、男の子にもてた事がない。正確に言うと、もてるけど、長続きした事がない。
でも、本当は悠里が良い娘だって事は、わたしが一番知ってると思う。藤田先輩が悠里の言うような凄い人なら、
悠里の良さだってわかってくれるかもしれない。
「悠里がそうするなら、わたし応援するよ」
「良い娘ね〜、貴子は。でも、そんなんだと一生彼氏できないわよ?」
せっかく応援するって言ってるのに、余計な事を言う。その言葉は、そっくり悠里にお返しします。そう反撃すると、
悠里はなんだとこいつぅ〜と言いながら、わたしのほっぺたをグリグリしてきた。
その時は、藤田先輩の話はそれで終わった。また会う事も無いと思ってたんだけど、実はそうでもなかった事に
わたしが気づくまでは、しばらくの時間が必要だった。
数日後の放課後、わたしは校門に急いでいた。もうこのみが来ているはず。つい掃除が長引いてしまった。
このみ、待っているだろうな。
父さんと母さんが仕事で海外に行ってしまって以来、わたしはこのみの家に居候するような形になっている。
春夏さんやおじさんはそんなに気を使わないで、自分の家にいるつもりで良いよ、と言ってくれているけど、
それじゃ申し訳ないので、わたしは買い物とか料理の手伝いとかを引き受けるようにしていた。今日は買い物に
行くことになっている日で、このみも一緒に来る事になっていた。
校門が見えてきた。門柱のところに、ついこの前までわたしも着ていた青い制服を着たこのみが立っている……
けど、その前に思いもかけない人がいた。わたしは思わず立ち止まってしまう。
すると、このみの方もわたしに気づいたらしく、満面の笑みを浮かべて手を振ってきた。
「タカお姉ちゃ〜ん、ここだよ〜」
しょうがないので、わたしは覚悟を決めてこのみのところに近づいていき……3mくらいの距離をおいて立ち止まった。
「よぉ、また会ったな」
このみのそばに立っていた藤田先輩が、しゅたっと手を挙げて挨拶してきた。
「こんにちわ……先輩」
わたしは俯いて挨拶する。失礼なのはわかってるけど、やっぱり男の人は苦手。それに……どうして先輩が
このみと話していたのかがわからない。噂では先輩は女の子には親切だって言うけど、下心なしとも思えないし……
でも、このみみたいな子供にまで声をかけるような人なのかしら?
「? 早く行こうよ、タカお姉ちゃん」
このみが立ち止まってしまったわたしを不思議に思ってか、駆け寄ってきて手を繋ごうとする。
「う、うん……そうね。じゃあ、先輩。わたしたちはこれで」
「おう」
先輩はひょいと後ろに下がって、わたしたちが通るスペースを空ける。わたしたちは先輩と門柱の間を抜けて、
駅前の商店街へ続く坂道を降り出した。
「ねぇタカお姉ちゃん、さっきの人、知り合いなの?」
このみが聞いてくる。
「うん……二、三度話をしただけ、なんだけど」
正しくは今日で二回目だ。
「それより、このみは何で先輩と?」
知りたかった事を聞くと、このみはえへ〜、と笑みを浮かべて答えた。
「うん、校門のところでタカお姉ちゃんを待っていたら、さっきの人が『誰か探してるのか?』って。
それで、タカお姉ちゃんの事を話してたの」
初対面の人にそう言うことをほいほいと話すこのみもこのみだけど、藤田先輩もよくわからない人だ。本気で
このみをナンパしようとしてたんじゃないみたいだけど……
それから話題はお互いの近況に変わり、わたしたちは学校で起きたいろんな事を話しながら商店街へ向かった。
まずは八百屋に行くと、行きがけに春夏さんから預かっていたメモを鞄から出して、そこに書かれた野菜を買っていく。
春夏さんは良い野菜の見分け方をいろいろ教えてくれて、「これも花嫁修業よ」なんて言ってたけど、
わたしが誰かのお嫁さんになるなんて、正直想像もつかない事だ。
このみと一緒になって、あれが良い、これが良いと吟味しながら八百屋での買い物を済ませ、つぎはスーパーに向かう。
牛乳や調味料が目的だ。
メモではわからなかったんだけど、いざ買ってみると、結構な量があった。一人では持ち運べないかもしれない。
このみも一緒に行きなさい、という春夏さんの指示は正しかったみたいだ。
一応このみには軽い方の袋を持たせ、店を出ようとしたわたしは、また足を止めていた。
藤田先輩が買い物をしていた。支払いを済ませ、店を立ち去ろうとする先輩と思わず目が合ってしまう。
「「あ……」」
同時に声が漏れた。
浩之×貴子、たー子Sideの話でした。こういう風に二人の視点を切り替えながら進めていく予定です。
それにしても、自分で書いてみて思いましたが、貴子可愛いよ貴子。
浩之みたいに魔改造しなくても、ちゃんと女の子らしいキャラになるところが素晴らしい。
……微妙に愛佳のコンパチと言う気がしないでもないですが。
>276
え、紳士っぽいですか? どうも女の子浩之しか書いてないもんで、本来のキャラが思い出せません(マテ。
>277
なにを略しているのかわかりません。
>278
確かに内気なところは琴音に近いかも。
>280
調べなおしてみたら仰るとおりでしたorz。とりあえずパラレルワールドという事で納得していただきたく。
>286
こちらこそお久しぶり&GJ。えろえろ時空楽しみにしてますw
>293
えーと、もしかして地域によってはそう言わないかも知れないので解説するけど、
留年して同じ学年を繰り返すことを「ダブり」「ダブる」と言うわけで。
だから282も「それで有名なんだ!」とネタに乗ってくれたわけで。
おかげで貴子と同じ時を過ごせるなら問題なしなわけで…すみませんでした。
ハハハハハ…そうよ、乱れろ!もっと乱れなさい!この淫乱メス猫!』
だけ読んだ。
セックス!セックス!
まで読んだ
「ど、どどん波!どどん波!」
まで読んだ
┏┳┳┓ ┏┳┳┓
┏┫┃┃┃ 糞展開は ┃┃┃┣┓
┃┃┃┃┣┓ ここまで ┏┫┃┃┃┃
┃ ┃┃┏━━━┓┃┃ ┃
┃ 夏厨. ┣┫ ・∀・ ┣┫ OUT ┃
┗━━━━┛┗┳━┳┛┗━━━━┛
┏┻┓┃
┏━┛ ┣┻┓
┗━━━┫ ┗━┓
┗━━━┛
この手のレスは書いてる本人はきっと面白いと思ってるんだろうな‥‥
↑夏厨のみんな!この暗号を解いて送ると新作の体験版が当たるらしいぞ!
瑠璃「今日は随分と電波が飛び交っているみたいだね長瀬ちゃん」
祐子「夏ですからね」
かずき「何言ってるの二人とも!これが電波のせいですって!?」
祐子「え?」
かずき「これは妖精さんの仕業よ! ほら、そこに妖精さん達が阿波踊りしてるのが見えるでしょ!」
祐子「…もしもし?」
かずき「さあ、今回も売って売って買いまくるわよアーヒャヒャヒャヒャ!」
瑠璃「例の祭典でテンションが振り切れちゃってるみたいだね…」
みんなコミケに行っているのか
304 :
名無しさんだよもん:2005/08/14(日) 10:25:11 ID:TM8HKrEUO
い し の な か に い る
305 :
名無しさんだよもん:2005/08/14(日) 12:21:16 ID:+9EG7y3w0
306 :
純情マコピー:2005/08/15(月) 21:48:30 ID:IIlQyXAl0
ガラッ、気持ちよく風呂へ入って目を閉じていたらいたら、誰かが急にドアを開けてき
た。けど寝惚けた雪弥でも入ってきたんだろうと気にかけてなかったんだけど。
「誠、背中流してあげようか」
聞き覚えのある声にびっくりして目を開けると、そこには風呂だから当然かもしれない
けど全裸のゆうが立っていたわけで……。
「誠全然心を開いてくれないんだもん。だからわたし考えたんだ。やっぱり裸のお付き合
いが大切よね。ねっ誠上がって、洗ってあげるから、ねっ」
こ、この女なに考えてるんだ。夫婦でもないのに年頃の女が男の入ってる風呂に裸で入
ってくるかー?
「馬鹿野郎なに考えるんだ。さっさと出ていけ」
えっと胸とかそんなに大きくないけどでもとこの体とは全然違うわけで、タオルで前す
ら隠してないから、あそこの毛も丸見えっていうか、毛が薄いからあそこの形も結構わか
っちゃったりして、服着てるときから細いとは思ってたけど、なんか折れそうなくらいだなとか
……じゃなくって……わー!雑念よされー!
「照れない照れない。ねっ誠ほら背中流してあげるから」
こいつ全然気にしてない。羞恥心ないのか?
「そんな恥ずかしがらなくて良いから」
「うるせー、お前のほうこそ恥ずかしくないのか?」
「えっ、どうして?なんで恥ずかしいの?」
こいつ天然かよ?
そう言えばこいつの反応っていつも普通じゃないよな。最初にあったときだって。
「お前だけはぜったに許さないぞー!」
っていきなり殴りかかったのに、ニコニコ笑って
「えーっと、わたしはあなたを知らないから人違いだと思うけど、でもまあここで会った
のもなにかの縁だよね。とりあえずお茶でもごちそうするから付いてきてね。そこでゆっ
くりとお話ししよう」
なんてこというから気が抜けて気絶しちゃったんだよな。
普通こういう場合放置だと思うんだけど、しっかり僕を家まで担いで帰って、こいつバ
カだろうか?
307 :
純情マコピー:2005/08/15(月) 21:49:33 ID:IIlQyXAl0
それでまあ調子狂っちゃうけど、とにかくこいつがにくいから寝てるときにコンニャク
を落してやったら
「あれー夜ばいなの?わたしは大歓迎ね」
そのリアクションに驚いて思わず逃げ出しちゃったじゃないか。
今日だってお使いのついでに「やおい本」なんか頼むし、でもマンガ買ったら豆腐を買
えなくなっちゃったときはおこったけど豆腐の代金を出してくれた。変なやつ。
などと思わず現実逃避していたら、いつの間にか風呂から引っ張り出されて腰掛けに座
らされていたわけで、それでゆうに背中を洗われていたわけで、けどなんだか背中に当た
る感触がタオルにしてはやけに柔らかいし、スポンジにしては奇妙にスベスベしてるわけ
で、なんかふわふわで暖かくって異常に気持ちいいわけで……これはまさか?
そうしたらゆうが耳に唇がくっつくくらいに近づけてきて
「誠、わたしの胸気持ちいい?」
「あぅー!」
そのままのぼせてぶっ倒れた。言っとくけどあくまでのぼせたんであって、気持ちよく
て倒れたんじゃないからな。ゆうの貧弱な体になんか誘惑されたんじゃないからな。
けど僕、こんなんでちゃんと復讐できるんだろうか?
308 :
純情マコピー:2005/08/15(月) 21:51:18 ID:IIlQyXAl0
決着つくまで頼む
面白い、続き希望。
二度あることは三度ある、と言うけど、三度目がこんなにすぐになるとは思わなかったな。
こっちを見て硬直している貴子ちゃんを見ながら、俺はそう思った。
すると、一緒にいた彼女の妹……確か名前はこのみだったか……が明るい声で挨拶してきた。
「あ、お兄さん。さっきはありがとうございました〜」
気の抜けるようなしゃべり方ながら、これだけは何故か様になっている敬礼をするこのみちゃんに俺は
答礼する。
「なに、良いさ。ちゃんとお姉ちゃんに会えてよかったな」
実際、俺は何もしていない。このみちゃんの話を聞いているうちに貴子ちゃんが来てしまったんだし、
正直なところ、このみちゃんの説明はあまり上手くなくて、俺はこのみちゃんが探している相手が
貴子ちゃんだとはわからなかった。
「買い物がえりか?」
聞いてみると、このみちゃんはえへ〜、という思わず頭をなでたくなるような笑顔で答えた。
「はい、今日はわたしとタカお姉ちゃんが買い出し担当なのでありますよ〜」
見ると、二人とも結構な大荷物を持っている。家がどの辺なのかはわからないが、女の子にはちょっと
辛い重さなのではあるまいか。
「そうか、大変だな……そうだ、荷物持ってやるよ」
俺はそう言いながら二人に近づいた。すると、貴子ちゃんがびくっと震える。そう言えば、彼女は男が
苦手なんだったっけか。マズったかな、と思ったが、いまさら足は止まらない。
「え? そんな、悪いでありますよ」
このみちゃんが言う。貴子ちゃんも赤い顔でこっちを見上げて言った。
「そ、そうですよ……このくらい、大丈夫ですから……」
そう言って、貴子ちゃんは荷物を両手で持って歩き出そうとする。が、重い物を持って急に方向転換
したもんだから、上体がふらついた。危ないと思ったときには、彼女はよろけて転びそうになっていた。
「きゃっ……!」
「タカお姉ちゃん!」
このみちゃんが叫ぶより早く、俺はとっさに貴子ちゃんの肩を支えていた。
「大丈夫か?」
「は、はい」
声をかけると、貴子ちゃんはびっくりしたような顔で返事をして、それから俺に触られている事に気づき、
ただでさえ赤らめていた顔を、さらに真っ赤にした。
「あ、わ、悪ぃ。男はダメだったんだよな」
バランス的にはもう大丈夫だろうと判断して、俺は彼女の身体を離した。
「はぅ、荷物が大変な事になっているのでありますよ」
このみちゃんが言う。見ると、貴子ちゃんがよろけた時に落としてしまった買い物袋の中身が、床に
転がっていた。俺はしゃがみこむと、それを拾い集めた。幸い割れたり傷ついたりしたものは無い。
野菜なんかも、洗えば大丈夫だろう。
「これで全部か?」
まだちょっと呆然としている貴子ちゃんに袋の中身を見せると、彼女ははい、と頷いた。
「そうか。じゃ、行こう」
俺は買い物袋を持ち直して、貴子ちゃんに言った。
「え?」
不思議そうな表情の貴子ちゃん。
「荷物、持ってやるよ。結構重いじゃないか。このみちゃんのも持ってやるよ」
俺が言うと、このみちゃんはちょっと渋ったものの、結局俺に荷物を預けた。やっぱり重かったのだろう。
こうして、俺は貴子ちゃん、このみちゃんと一緒に帰る事になった。幸い、帰る方向はそれほど違っては
いなかった。一応、彼女に配慮して、あまり距離を詰めないようにはしている。
「先輩……すいません」
非常に申し訳なさそうな顔で言う貴子ちゃんに、俺は笑いながら答える。
「そんなに遠慮する事は無いぜ。力仕事は男の務めだからな」
一方、このみちゃんの方は屈託が無くて、3メートルくらいの距離を置いている貴子ちゃんと俺の間を
行き来しながら話し掛けてくる。そこでわかったのは、二人は本当の姉妹と言うわけではなく、一歳違い
の幼馴染みだと言う事、それに貴子ちゃんの親が海外出張中で、彼女は今このみちゃんの家で暮らしている、
と言う事だった。
「へぇ、なんだか境遇が似ているな、俺と貴子ちゃんは」
思わずそんな感想を漏らすと、貴子ちゃんがえ? と言いたげな表情を見せた。そこで、俺は自分も親が
仕事で家を空けているので一人暮らしをしている事、歳は同じだが、やはり妹みたいな幼馴染みがいる事
などを話した。
「そう……なんですか」
ちょっとだけ親しみを持ってくれたのか、貴子ちゃんは俺の顔を微笑みながら見てきた。考えてみれば
彼女の笑顔を見るのは初めてだな。
うん、可愛いじゃないか。やっぱり女の子は笑っているのが良いな。
そんな会話をしているうちに、俺たちはこのみちゃんの家に着いた。ちなみに貴子ちゃんの実家は隣だそうだ。
こんな所まで俺とあかりの関係にそっくりだな。
「それじゃあ、先輩。わたしたちはここで」
「ああ」
俺はまずこのみちゃんに荷物を渡し、次に貴子ちゃんにちょっと近寄って腕を伸ばした。貴子ちゃんが
荷物を受けとろうと手を伸ばしてくる。その指先が触れ合った。
「あ……」
貴子ちゃんがまた顔を赤くする。こういう反応をされると、俺としても困ってしまうな。
何とか荷物を渡し終え、俺は手を振った。
「じゃあ、またな」
再会を期待する言葉。まだ出会ってからほんの少ししか経っていないのに、ずうずうしいかなと思う。
が、貴子ちゃんはあの微笑みと共に頷いてくれた。
「はい、藤田先輩」
「ありがとうございました〜」
このみちゃんの無邪気な声が続く。俺はその声に送られて、家への道を歩き出した。
連載の3回目。次はまた貴子視点になります。
>295
あ、ダブりの事でしたか。これは気付きませんで……
>302
かずきで無くてもキレそうでした。暑くて。
>306-307
天然ボケと言うより露骨に誘惑してないかゆうw
面白いので是非続き希望。
では回線吊って首切ってきます。
ドォォォォォォン!!!
爆発音は、唐突にして起こった。
船体が揺らぎ、床が傾く。窓に張り付いていたゆうとひろみは全身を後ろへ薙ぎ倒され、背後にいた浩子に慌ててキャッチされる。
「ちょっ……何!?」
ソファからずり落ちて顔を強打した朱鷺乃が怒りと羞恥心で顔を真っ赤に染め、涙目で周囲を見渡した。
近くで待機していた亮子が彼女に駆け寄って立ち上がらせ、軋む足元のバランスを保つ。
「地震!?」
「こんな海上で地震が起きるわけないでしょ!?」
「じゃあ、一体何が……っ、きゃあ!?」
「くっ、みんな、とりあえず床に這い蹲れ!!」
祐子、朋美、貴子、郁巳の四人は飲んでいた紅茶やコーヒーを床にぶちまけながら、近くの机やソファにしがみつくように全身を下方に寄せた。
思考は混乱していたが、郁巳がしっかりとした指示を出し、ほぼ無意識にそれに従う。
そんな九人の様子を尻目に、
(まさか、ボクを狙って……でも、こんな大掛かりな……)
牟祢は揺らぐ地面にも動じず、冷静に状況判断に務めていた。
世界一のエージェントである、那須牟祢。彼女をこの世から消し去りたいと思う輩は、この世にごまんといる。
そうでなくても最近、牟祢は熊野灘にて起こり、日本中を震撼させたタンカー消失事件を日本・アメリカ両国の首脳陣を巻き込んで解決したばかりである。
更に、『世界の破滅』と呼ばれた謎の怪現象、『海中二酸化炭素発生事件』を解決したのも、彼女だと言われていた。
やっかみを受けるのも、当然かもしれない。
(だからって、みんなを巻き込むわけには……いや、まだそうと決まったわけじゃない。とにかく……)
牟祢はみんなが怪我一つ負ってないことを確認すると、
「何が起こったのか調べてくる」
と言い残し、未だに揺れる床下をものともせずに、扉から廊下へと駆け出した。
「あ、ちょ、単独行動は待って、何が起きてるのか分からないのにっ!!」
リーダー格である浩子が慌てて引き止めるが、牟祢が引き返す様子は無かった。
数分後、ようやく船体の揺れが収まってきた。
それでも、みんな立ち上がらない。全員、例外無く顔が青ざめ、未知なる恐怖に対して震えていた。
そんな状態が延々と続く中、ようやく郁巳と亮子が立ち上がり、腰が抜けて立ち上がれない者達を引っ張り上げる。
「ほらっ、貴子ちゃん、手ぇ貸して」
「……」
貴子は一瞬躊躇った後、おずおずといった感じで郁巳に手を差し出し、立ち上がった。
ようやく、全員が起立し、ほっとした空気が流れる。
耳を澄ませば、隣は勿論遠くの船室から、ざわざわと落ち着かない声が聞こえてきた。
この豪華客船に乗っている連中はほとんどが金持ちであり、突然の事態に驚き、船体の不備に文句でも言ってるのであろう。
「さて……どうしよう?」
浩子が郁巳に困った顔で尋ねる。
先刻のやり取りで、郁巳は頼れる、と無意識に脳に刷り込まれたらしい。
郁巳はふむ、と顎に手を沿え、
「……とにかく、動かない方が良い。近く放送が入ると思うから、それに従おう」
「爆発音、起きたよね……普通の事故とは思えないんだけど」
「分からん……とにかく、こういう状況下では冷静でいることが大切だ。各自、勝手な判断で動かないでほしい」
郁巳が周りを見渡しながらそう言うと、全員、恐る恐るといった様子で頷いた。
「……郁巳。牟祢はどうする?」
牟祢が出て行った扉をちらりと見ながら発言する亮子。
郁巳が答えようとした寸前、
「私が探してくるわ」
と、朱鷺乃が面倒くさそうに挙手をした。
意外そうな顔で朱鷺乃の顔をまじまじと見つめる郁巳。
朱鷺乃はいらついた様に、
「船長に文句を言いたいと思ってたし。ついでに、ね」
「その理由はどうかと思うが……」
呆れた郁巳に目も向けず、朱鷺乃は既に歩き出していた。
「あ、ちょっと待って。二重遭難しないためにも、誰かを付いて行かせて」
「必要ないわ」
浩子の言葉を途中で遮ると、朱鷺乃は牟祢が出て行った扉を潜り、出て行く。
しん、とした静寂が、客室内に舞い戻った。
「団体行動出来ない奴め……」
郁巳は舌打ちすると、放送がかかるのを待つことにした。
自分と同じく、廊下に出ている人間も、何人かいるようだった。
那須牟祢は周囲の気配を探りながら、爆発音とおぼしき音が聞こえた方向へと足を向ける。
現在のところ、不審人物らしき影は、無し。
だが、まだ油断は出来ない。
「せめて、武器があれば良いんだけど」
流石に、テレビ局にてボディチェックは受けている。厄介なことにならないためにも、銃は持ってきていない。
エリィに連絡をつけたいところだが……あのゴテゴテした携帯は、現在修理中だった。
そのため、彼女のポケットに入っているのは、『圏外』と表示されている、普通の携帯電話である。
「まぁ、ボクは拳打だけで何とか出来るとは思うけど……」
楽観は出来ない。いつものおちゃらけた雰囲気の『那須牟祢』から、世界一のエージェント『NASTY GIRL』へと意識の変換。
突発的事態へ早急に対応出来る様に姿勢を低く、身体はヒート、脳はクール。
そうして油断もせぬまましばらく歩き続け、やがて、
「ここか……」
『エンジン室 関係者以外立ち入り禁止』
という看板のついた扉の前に辿り着いた。
既に自分以外の何人かがその周囲に集まり、開いたままの扉の向こうの闇を注視している。
それはまるで、迷い子を誘う悪魔の手のよう。
「何があったの?」
「スタッフが入ったまま、帰ってこないんだ」
乗客の一人に尋ねると、痩せ細ったさえない顔の男が、不安そうに答えた。
その言葉を聞いた瞬間、
「あ、ちょっと、お嬢ちゃん!?」
牟祢は駆け出し、引き止める声に耳を貸さずに扉の向こうへと姿を消していた。
>>323 貧よりの並みである事は察しがつく
どこが、とは言わない
326 :
純情マコピー:2005/08/17(水) 22:07:59 ID:1ecYQgf10
第2話雪くんも純情
「どわー!わー!わー、わー!」
気持ちよく寝てたら誰かの大声で叩き起こされた。
「誰だよ五月蠅いなあ」
「だー!ゆ、ゆう、ゆう。そ、その恰好?」
なんだ雪弥の声か、また寝惚けてるんだな。家主の秋人さんと容姿以外は全然似てない
と思うぼけーっとした一人息子の雪弥が、寝惚けて騒ぐのなんてめずらしくないよな。ど
うせイチゴサンデーを食べ損なった夢でも見てるんだ。
でもまあ、気持ちよく寝ていたところを起こされた恨みでも言ってやるか。
そう思って雪弥の部屋に入ったら、裸、パンツだけは履いてたけど、とにかく裸のゆう
が雪弥のベッドの上にいたわけで、まさか雪弥がゆうを……。
あんなのでもゆうも女の子なわけで、女の子は守ってあげなきゃいけないわけで、これ
は復讐とはまた別な話なわけで、とにかく雪弥、許せーん!
「雪弥ー!お前ゆうになんてことを」
「えっ、違うんだよ。これはゆうが勝手に」
この期に及んでそんな見え透いた言訳するとは、男の風上にも置けないやつだな。
「嘘言うなー!」
「誠落ち着いて、別に襲われたりしてないよ。第一雪弥にそんな度胸も甲斐性もないよ」
そう言われてみれば確かにゆうの様子は襲われたみたいには見えないな。
「うー、その言い方はちょっと引っかかるんだよ」
雪弥が何となく落ち込んでいるように見えるのは気のせいか?
「じゃあどうして、ゆうが裸で雪弥の部屋にいるんだ?」
「裸じゃないわよ。ちゃんとパンツ履いてるもん」
「普通そういうのは裸って言うんだ」
「そうかなあ?」
だからその恰好で心底不思議そうに小首を傾げたりするな。か、可愛いじゃないか。じ
ゃなくってー。
327 :
純情マコピー:2005/08/17(水) 22:09:05 ID:1ecYQgf10
「お、起こすだけなら制服に着替えてからでも良いだろう?」
「だって雪弥って寝惚けて抱きついてくるんだもん。制服が皺になるじゃない」
なるほどそうか、って頷いてる場合か。
「それならパジャマのままで良いと思うんだよ」
そうそう雪弥の言うとおりだな。
「だって雪弥涎付けるんだよ。お気に入りのうさちゃんパジャマが汚れちゃったんだから」
ゆう、お前は服が皺になるとか、汚れる方が裸を見られるより嫌なのか?絶対普通の感
覚じゃないぞ。
「ゆうは裸で恥ずかしくないの?」
顔を真っ赤に染めた雪弥がそう訊ねたんだけど。
「えー外で裸だったら恥ずかしいけど、家の中だから平気だけど」
「家の中なら、男に見られても平気なのかよ?」
唖然としてる雪弥に代わって質問。
「だって雪弥や誠は家族じゃない。どうして恥ずかしいの?」
えーとつまり、僕や雪弥はゆうにとって男じゃないのかな?もしかして弟の前で裸で歩
き回る姉の心境?なんか釈然としないぞ。
「ねえどうして二人ともそんな不景気な顔なの。まだ眠いの?じゃあ大サービス」
えっゆうなにをするつもりなんだ?なんかゆうの思考パターンにあきれちゃって、唖然とし
てたら、いつの間にかゆうの顔が異常接近していたわけで……。
そして……ブッチュー。
「あぅー」
「えへへ、おはようのキス。ちゃんと目覚めた?はい雪弥にも」
ブチュー。
328 :
純情マコピー:2005/08/17(水) 22:10:59 ID:1ecYQgf10
こうして僕と雪弥はゆうに唇を奪われてしまったわけで、でもゆうにとっては単なる親
愛の情の表現らしくて大して意味がないようなわけで。
僕と雪弥はそのままぶっ倒れて熱を出して寝込んでしまった。
それでゆうが看病してくれたんだけど、寒気がするって言ったら温めてあげるって言っ
て裸で布団の中に入って来たりするから、余計に熱が上がっちゃったぞ。
これはゆうの異常な言動にあきれて頭がオーバーヒートしただけで、べ、別に興奮して
熱を出したわけじゃやないからな。絶対に違うからな。誤解するなよ。
そんなわけで今日はとてもじゃないけど復讐どころじゃなかったけど、明日こそは、絶
対に復讐してやるんだからなー。
それと雪弥はこれで「かいきんしょう」を逃しちゃって残念だったよ、って言ってたけ
ど、開襟章ってどんな襟章なのかな?
第3話おみそ汁(あゆくんも純情)
ふふふっ、やったぜ。やってやったぜ。もくろみ通りゆうが風呂に入ったぞ。もうすぐ
ゆうの悲鳴を聞けるはず。はははっ、ついに復讐成功だー!
秋人さんは今夜は風邪気味だから風呂に入らないって言ってたし、雪弥は部活の後でい
つも一番に入るからゆう以外に迷惑掛らないもんな。もう完璧。
辛かった、長い長い隠忍の時を終え、ついにゆうをギャフンと言わせられるぞー。
けど変だなあ、いくら女の子でもそんな服を脱ぐくらいでこんなに時間がかかるもの
なのか?いい加減になにかリアクションがないと変なんだけどな。
けど妙に静かなまま時間が過ぎて、ゆうの反応が気になってせっかくのテレビの大好き
なアニメも全然頭に入らなかった。
329 :
純情マコピー:2005/08/17(水) 22:12:09 ID:1ecYQgf10
そうしているうちにゆうが上がってきて、いかにもさっぱりしたって風情で、湯上がり
の洗い髪が色っぽい、じゃなくてタオル一枚だけなんて蠱惑的すぎ、じゃあなくて、わー
僕は一体なにを考えるんだ。
でもゆうのほうは涼しい顔で
「誠、わたし上がったから早く入ってね、冬だからすぐにお湯が冷めちゃうんだから」
なにこの普通の反応?それにゆうって時々所帯じみてるよな。まあそれはともかく。
「ゆ、ゆう、お風呂なんともなかったの?」
「うん、いいお湯だったよ」
「だ、だって、湯船の中、味噌汁」
「ああ、あれ誠の仕業かあ。わたしのお肌のために気を遣ってくれたんだね。ありがとう」
ま、負けた。なんでこうなるんだよー!
でガクッとなって落ち込んでいたらいつの間にかゆうが異常接近してるわけで、おまけ
にゆうはタオルを脱ぎ捨てているわけで、つまりパンツ一枚の裸で僕に密着しているわけ
で、つまりなんというか非常に危ない状態なわけで……。
「ほらっ、こんなにお肌スベスベ。おまけに体も柔らかくなったみたい」
「わっ、わー!見せなくて良い。って言うか抱きつくな。僕の手を胸の所に持っていくん
じゃなーい!」
「変な誠、なんで赤くなるのかなー?」
こいつは全然意識してない。駄目だ、一生この変な女に勝てそうもない気がしてきた。
翌朝、今日はめずらしく朝ご飯が和食。なんか時々フラフラこの家に遊びに来る歩とか
言うチビ助(多分小学生?)のリクエストらしい。
それにしても今日の味噌汁はやけに美味しいな。秋人さんの料理はプロ級だし、雪弥も
ぼけっとしてるけどまあそこそこ上手い。
ゆ、ゆうも下手ではないよな。まあその……食べられないことはないぞ。
「今日の味噌汁は格別だね。ボクこんな美味しいおみそ汁初めてだよ」
歩のやつ本当に美味しくてたまらないって風に、実に幸せそうに食ってるな。そう言え
ばチビの上にやけに痩せてるけど、もしかして家でろくに食わしてもらってないのか?
「本当だね、今日は格別美味しいよ。お父さん出汁変えたの?」
ふーん、寝ることとと走ることの他は食い気以外に取り柄のない雪弥が言うんだから本
当に今日は格別なんだよな?と、僕が再び味噌汁に口を付けようとしたときだった。
330 :
純情マコピー:2005/08/17(水) 22:13:06 ID:1ecYQgf10
「それはまあ今日のお出しは特別製ですから。まだまだ沢山ありますから沢山食べてくだ
さいね」
へー、秋人さん秘伝の特別製の出汁かな?
「なにせ、わたしの可愛い姪っ子のゆうさんのお出汁ですからね」
バシャッ!驚きのあまり味噌汁に顔を突っ込んじゃったぞ。
「誠、お行儀悪いわ」
「えっどういうこと?」
「お父さんどういう意味?」
このボケボケコンビはわかってないみたいだな。
「ですから、昨日誠がお風呂で味噌汁を作りましてね、そのお風呂にゆうさんが入ったの
がこれです。つまり、誠とゆうさんの合作です」
「うぐぅー!」
「わっ、わー!」
あっ汚ねえ、こいつら味噌汁吹きやがった。
「もう、二人とも子供じゃないんだから」
ってなんでゆうは冷静なんだよ。
「おかしな子達ですねえ」
秋人さんの考えも読めない。かねがね思ってたけど、やっぱりただもんじゃない。
「ふ、普通そういうのって捨てるよ」
ようやく立ち直った雪弥が正論を述べる。えっと、歩の方はショックで泡吹いてるよ、
なんかだらしないやつだなあ。
「そんなもったいないことできないじゃないですか。食べ物を粗末にしてはいけないのは
もちろん、こんな貴重なものを捨てるなんてとんでもないことです」
「そうですよね秋人さん。それで残りは冷凍してあるから当分飲めるわよ」
「この味噌汁なら風邪も吹っ飛びますよ。これは毎朝楽しみですね」
駄目だ、ただもんじゃなさすぎる。僕達はこの二人には永遠に勝てそうにないぞ。
332 :
純情マコピー:2005/08/17(水) 22:20:24 ID:1ecYQgf10
追伸、結局秋人さんの言葉通り当分この味噌汁を吸うことになった。やっぱり食べ物を
復讐の道具にしては駄目だな。でも普通の味噌汁になってからなんか物足りない。
ち、違うぞ、純粋に味が違うだけで、ゆうのお出汁だから特別だってわけなんかじゃな
いからな。味噌汁すするたびにゆうの裸が頭の中に浮かんだり、肌の感触を思い出したり
するせいじゃないからな。ゆうのおっぱいが柔らかくて気持ちよかったな、なんて全然思
ってないからな。誤解するなよ。
>>308-309 えっと当初、そう言えば浩平長森だけじゃやなくて、祐一って真琴と裸のお付き合いして
たよなって、思ったら、突発的に電波が飛んできて書いただけの小ネタだったので、全然
続きなんか考えてませんでしたが、なにやらもう一度電波が来たので小ネタを二つほど。
>>315 ゆうはむしろ天真爛漫かも?とりあえず本人には誘惑している気はないようです。
実は結構貞操観念強いです。
「夜這い」発言については、実は意味よくわかってない模様。
夕食が終わって、わたしは春夏さんと並んで洗い物をしていた。
春夏さんはこのみのお母さんだけど、そうは思えないくらいに若々しくてきれいな人だ。料理を初めと
して家事全般も得意で、ちょっと不器用なわたしにとっては、目標となる女性として憧れの存在だ。
ただ、一つだけ悪い癖があるけど……
「ねぇ、貴子ちゃん」
ふきんでお皿を拭いているわたしに、春夏さんが声をかけてきた。
「はい、なんですか?」
手を休めずにわたしが答えると、春夏さんはいきなり爆弾を投げてきた。
「夕方の男の子は誰? ずいぶん仲良さそうだったけど」
「!?」
わたしは驚きのあまり皿を落としそうになった。いつの間に見られてたんだろう。
「あ、あの人は……学校の先輩で……」
「ふ〜ん、学校の先輩ね」
すごく楽しそうな表情の春夏さん。これが悪い癖。わたしの事を良くからかってくるのだ。
「まぁ、貴子ちゃんが珠樹君以外の男の子と一緒にいるところなんて、滅多に見られないから、ちょっと
びっくりしたのよね」
春夏さんが言う珠樹君……通称タマ兄は、悠里のお兄さん。わたしにとってもお兄ちゃんみたいな人
だし、タマ兄もわたしの事は「たー子」と呼んで、本当の妹みたいに可愛がってくれてた。
タマ兄は悠里のお兄さんらしく、モデルみたいに背も高いし、顔立ちも整っている。それに成績優秀で
運動神経抜群。何か古武道をやっていて、とても強い。一見欠点の無い、すごい人だ。
でも、実を言うと、わたしの男性恐怖症はタマ兄が原因のような気がする。タマ兄は横暴ってほど
じゃないけど、とにかく強引で人の話を聞かないところがあったから、わたしも悠里も子供の頃から
振り回されっぱなしだった。
だから、男の人を見ると、ついタマ兄みたいなんじゃないかと思って、怖くなる。まだタマ兄は昔から
知っているから良いけど……悠里がやたらと男の子との付き合いにこだわるのも、わたしとはベクトルが
違うだけで、やっぱりタマ兄の影響なんじゃないかと思う。
でも、藤田先輩は、ちょっと違うかもしれない。
「…ちゃん。貴子ちゃん」
わたしは春夏さんの声で我にかえった。つい物思いにふけってしまっていたらしい。
「あっ……ご、ごめんなさい」
わたしは話を聞いていなかった事を春夏さんに謝った。でも、すぐにそれを思い直したくなった。
「良いのよ。でも、貴子ちゃんがぼうっとするなんて、そんなに素敵な先輩なのかしら〜? やっぱり
貴子ちゃんは年上好みだったのね」
そう言って、春夏さんが「不思議の国のアリス」のチェシャ猫みたいな笑いを浮かべる。こういうときの
春夏さんは、このみのお母さんというよりは、悠里と血がつながってるんじゃないか、と思うときがある。
「もう……そんなのじゃないですってば」
わたしはぷいっと横を向いて、洗い物に専念するようにした。
>>316-321 やはりこういう事態になると牟祢は生き生きとしてくるな。ていうか普通にカッコイイ。
あと、実はこの期に及んで「邪魔されずに煙草が吸いたいから」という理由で単独行動する気じゃないだろうな朱鷺乃。
>>326-330 こっちの秋人さんは、ゆうとは普通の叔父−姪の関係以上には踏み込んでないみたいだが、
別の意味でとんでもない人になってる…w
ゆうがまこぴー達を「男」と認識するようになるのはいつの日になるやら。
その夜、お風呂から上がって部屋に行くと、ベッドの上ではもうこのみが布団をかぶっていた。
「このみ、寝るなら電気は消した方が良いよ」
わたしが言うと、このみはえへ〜、と笑って布団から顔を出した。
「布団を温めていたのでありますよ、隊長」
「秀吉じゃないんだから」
わたしは苦笑して、電気を消すとベッドに潜り込んだ。このみのベッドはそれほど大きくない。でも、
このみが小さいし、わたしもそんなに大きくないから、二人で寝るのに支障は無い。
「温かい? タカお姉ちゃん」
「ん……あったかいよ、このみ」
布団の中はこのみの体温でほかほかしていた。子供は体温が高いから……と言うと拗ねるだろうから
言わないでおく。
わたしが柚原家に預けられる事になった時、最初は一階の客間がわたしの寝室として提供されるはず
だった。でも、このみが「タカお姉ちゃんと一緒に寝る」と言い出したので、その案は流れて、今は
このみの部屋の一角を借りてわたしの勉強スペースとし、夜はこうして一緒のベッドに寝ている。
「タカお姉ちゃんも温かいよ」
このみがきゅっとしがみついてくる。
「あまり抱きつかないでね。苦しいから」
わたしは釘を刺した。
「了解であります、隊長!」
このみは頷いた。もっとも、寝た後は無意識のうちに抱きつかれている事があるから、今言うのは
気休めにしかならないけど。
でも、このみはまだ小さくて軽いからマシで、前に向坂家……悠里とタマ兄の家にお泊りに行ったとき、
タマ兄につかまって抱き枕代わりにされたときは、もっと苦しい夢を見た。
「なんか、今夜はタマ兄の事をよく思い出すなぁ……今頃どうしてるのかな」
タマ兄は高校から九条院って言うすごい名門の学校に通っている。向坂家はいわゆる地元の名家という
やつで、跡を継ぐことになるタマ兄は、今からそういうエリート教育? を受けているのだ。
ただ、この九条院は全寮制学校で、しかも外出許可がなかなか出ない厳しい学校なので、わたしはもう
1年近くタマ兄の顔を見ていない。
「あのお兄さんとお話したからかなぁ?」
このみが言った。
「お兄さん……藤田先輩のこと?」
わたしが言うと、このみが頷く気配がした。
藤田先輩……そうかもしれない。歳の近い男の人と話をするのは久しぶりだったし。
そんなことを考えているうちに、わたしはいつのまにか眠りに落ちていった。
やっと最初の一日が終わった……
>>322 牟祢かっこいいな。今後の活躍に期待。
Adult編の続きにも期待してます。
>>332 男みんな純情なのかw
この調子で、ゆうが誰を最初に意識するようになるのか興味がありますねー。
それにしても姪をダシに使う秋人って……
では回線吊って首切ってきます。
339 :
335:2005/08/18(木) 22:25:56 ID:E9mcxu750
うわ、やっちまってたorz
>>338 割り込みスマン&可愛い貴子GJ
340 :
純情マコピー:2005/08/19(金) 23:05:38 ID:4oQbCsE10
第4話 鈍感舞人君
えっとどうしてこんなことに成っちゃったんだろう?最近ゆうが夜外に出掛けていくか
ら、僕に黙って肉まんでも買い食いしてるんだろうと思って付いてきただけなんだけど。
なんでこんなおかしなことに成っちゃったんだろう?
ち、違うぞ、ゆうがなにしようと僕は関係ないけど、僕に黙って肉まんを食うのが許せ
ないだけだからな。ゆうが男と密会しててもぜ、全然平気だぞ。
それで家を出たゆうの後をついって行っていたら、最初は思った通りコンビニに入って
行って、物陰で様子を窺っていたら思った通り袋を下げて出てきたんだけど、でもゆうは
家と反対の方向に向かっていくんだ。
それでしょうがないからまた後を付けていったら、ゆうはなんだかひどく大きな建物の
中に入っていった。そうかここがゆうが昼間通っている学校って言うところだな。けど夜
は誰もいないみたいなのに、いったい何のようだろう?もしかしてテスト用紙でも盗みに
入ったのかな?ゆうはあんまり頭良さそうじゃないもんな。変なやつだから。
けど中に入ってみたら、ゆうは一人じゃなくて、身長180近くある無愛想な感じの長
髪男が居たわけで、しかもそいつは剣なんか持っている危ないやつなわけで、一体あいつ
はゆうとどんな関係なんだ?
そうしたらゆうはコンビニの袋からなにかを取り出したぞ、あれは多分丼ものの容器だ
よな。くんくん、あの匂いは牛丼だな。けどなんで夜中の学校で牛丼なんか食べるんだ?
あれっ二人で階段に座ってるけど、牛丼はゆうだけしか持ってないぞ。それでゆうは割
り箸で摘んだ牛丼を自分の口に入れて、それで、あれっ、噛んでないな?えっ、なんで?
なんでゆうがあの男とキスしてるんだよー?
341 :
純情マコピー:2005/08/19(金) 23:06:42 ID:4oQbCsE10
「舞人美味しい?」
「牛丼は嫌いじゃない」
ゆうの問いかけに長髪男は口の中をモグモグさせたまま行儀悪く返答。
えっ、えー!つまり今のは口移しー!ゆ、ゆとあの男とはそう言う関係なのかよー!
ってまあ僕とは関係ない話だよな。うん、断じて関係ないぞ。
け、けどこんな夜中にしかも学校でゆうが不純異性交遊してるなんてことだと、大変だ
よな。ばれたら秋人さんにも迷惑掛るよな。ここはちゃんと見届けて、やばくなりそうな
ら邪魔しないとな。こ、これは誓って嫉妬なんかじゃないからな。
なんてことを僕が思っている間にも、ゆうは舞人ってやつに何度も口移しで牛丼を食べ
させているわけで、3回に一回くらいは自分で食べていたりもするわけで。不純だよ、こ
んな不純なやつには復讐プラス天誅だよね。
大体なんで舞人は自分の手を使わないんだよ、両手でしっかり剣を握ったまま時々周囲
を見回していたりして、眼光鋭いぞ、一体なにを警戒してるんだ?
まさかもっと過激なことをしちゃうつもりなのか?
そうしているうちに牛丼を二つとペットボトルのお茶二本という夜食を食べ終わって、
ゴミをコンビの袋の中に仕舞って、それで二人は立ち上がったんだけど、な、なんでゆう
はスカートのホックに手をかけるんだ?
ゆうはスカートを脱いで丁寧に畳んで、それであらかじめ別に準備していたらしいコン
ビニの袋の中に仕舞った。
ゆ、ゆう、一体なにをするつもりなんだい?厚手の黒のタイツを履いてるからはっきり
とはしないけど、どうも白いパンツを履いているみたいで、ゆうのお尻って結構形良いよ
な、じゃあない、よ、嫁入り前の娘が恥ずかしいぞ。
342 :
純情マコピー:2005/08/19(金) 23:07:52 ID:4oQbCsE10
突然、すごく危ない気配を感じたと思ったら、なにか見えないものが高速で通り過ぎて
いった。その後は舞人が例の剣を振りまして走り出すし、ゆうも無防備な下半身のまま一
緒に走り出した。だからはしたないからそう言うことは止めろよな。
そんな余分なことを考えていたのがまずかったみたいで、逃げ損なってゆうと正面衝突、
気が付いたらゆうの股間に顔を突っ込んでいたわけで。
ち、違うぞゆうの下半身の色香に騙されたとかそんなことはないからな、もう何度も裸
見ちゃったし、触ったことも何度もあるから今更興奮なんかしないぞ。
あっ、あー、今のは間違い、絶対に間違い。
で結局、ゆうを付けていたことがばれちゃったわけで、魔物が消えちゃった後で、もう
やけくそだから聞いてみたら、あの舞人ってのはゆうの先輩らしくて、この学校にいる魔
物と戦っているらしくて、別に二人は恋人同士とかってわけじゃないらくって、べ、別に
僕には関係ないけど。
それでゆうが口移しで食べさせていたのは、舞人は魔物を警戒するために両手を開けて
置かなきゃいけないからだって言ってたけど、別に口移しじゃなくても、箸でアーンくら
いで良いんじゃないの?
スカート脱いだのも動きにくいからだって言ってたけど、それならそれで最初からパン
ツスタイルで来れば良いんじゃないのか?ゆうってやっぱり変だよな。
それに舞人もなんでゆうのあんな恰好や口移しに平然としてるんだ?
そう言ったら、舞人は別に気にならないって言うし、ゆうはだってわたしプリーツスカ
ートが好きなんだもん、でもここの制服プリーツスカートじゃないから普段着の外出はプ
リーツスカートって決めてるんだって言うし、やっぱり変な奴ら。
343 :
純情マコピー:2005/08/19(金) 23:09:20 ID:4oQbCsE10
番外編 ちゃっかり紫苑君
僕は今取っても気持ちよいんだ。お母さんのお隣でお昼寝でほわほわ気分。
反対側で寝ている弟の歩も幸せそうだ。歩はまだ赤ちゃんなんだ。
大好きなお母さんはゆう、お父さんは紫苑と言う名前なんだ。
お母さんとお父さんはとっても仲良しだけど、お母さんは時々お父さんに騙されて結婚
したって言ってるんだ。
普段はぼけっとした雪弥叔父さんも、この時ばかりは紫苑君は策士だ、卑怯だ、鳶に油
揚さらわれたって言ってるよ。僕も油揚好きだから、さらわれたら嫌だな。
騙したってどういうことかよくわからなかったんだけど、この間薫伯父さんがそのころ
のことを教えてくれたんだ。
今は全然元気だけどお父さん子供の頃は病気で死にかかったことがあるんだって。
それでね、これは今でもそうなんだけどお父さんはアイスが大好きだったんだ。
だから死ぬ前に最後の願いとして、お母さんとこんな約束をしたんだって。
「ゆうさん、一つだけお願いがあります」
「うんなにかな?わたしができることならなんで良いよ」
「僕にゆうさんのアイスを食べさせてください」
「そんなことで良いの?了承、なーんて秋人さんの真似。えっ、紫苑君なんでそんなに近
づいてくるのかな?……えっと、どうしてわたしは押し倒されているのかな?」
「ですから、ゆうさんに約束を果たしてもらっているところなんですけど」
「???意味がよくわからないんだけど……でさあ、どうして服のボタンを外しているの
かな?」
「ですからアイスですよアイス」
「えっと、確かに胸とミルクは縁があるけど。あれはアイスじゃなくてぬるいよ。第一わ
たしはまだ出せないんだけど」
「えっと、そっちはまあついでというか、前戯ですね」
「言っている意味が全然わからないんだけど。って言うかパンツ脱がせてどうするの?」
「こうするんですよ」
「えっ、なんで紫苑君も脱ぐの?あっ、痛ーい!痛い痛い痛い!紫苑君痛い、抜いて。あ
っあ、痛いから動いちゃ駄目ー!」
344 :
純情マコピー:2005/08/19(金) 23:10:19 ID:4oQbCsE10
〜(中略)〜
「酷いよ紫苑君、いきなりなんて酷いじゃない。第一これとアイスとどう関係するの?」
「えっとこれでゆうさんもミルクが出るようになりますから、それを原料にアイスを作る。
これで僕にもそれまで生きる目標が出来ました」
「ふーんやっと意味がわかったけど……でも紫苑君」
「あれっ、えーとゆうさん、なんでそんなに怒ってるんですか」
「アイス食べたくらいで死なれてたまるかー!わたしの処女奪ったんだから最後まで責任
取れー!ちゃんと結婚して養ってもらうからね。死ぬなんて許さないんだから」
「は、はい!」
「それでよろしい、死んだりしたら地獄まで付いていって最後の審判の日までねちねち文
句言ってやるからね」
「イエッサー!」
その様子を隠れてみていた薫伯父さんによると、その時のお母さんはもうものすごく怖
かったらしい。それで病気の方がお母さんの剣幕に恐れを成して逃げちゃったんだって。
その時に出来たのが僕なんだって話だけど、子供にそんな話するかなあ。
あと、お母さんは今でもその約束を守ってるんだけど、お父さんがおっぱい独占しすぎ
だから、歩が栄養不良で大きくなれないんだ、たまには僕にもイチゴサンデーを作れ、っ
て雪弥叔父さんは言ってたよ。
お母さんはそんなことはないわ、だって歩だから大きくなれないんだからって言ってた
けど、どういう意味だろう。
345 :
純情マコピー:2005/08/19(金) 23:16:01 ID:4oQbCsE10
>>340-343 舞人も純情だけど、それ以上に天然。つまりボケ対ボケで漫才以前。
>>344-345 誠一人称縛りで紫苑を登場させようとしたら、こんなものが。
あの二人接点がないし、ところで全編通して歩が一番影薄?
>>338 残念ながらそれを描ききる技量がございません。
それで男を意識する前に女になってしまいました。
【半妖狐魔法少女キューティアリスF:第5話○○さん】
さてある夜のこと、例によって秋子さんに呼びだされた有子=アリス。
「さあアリス今度の任務ですが」
「はーい秋子様わっかりましたー、きっと久瀬さんを幸せにするんですねー」
秋子のことばを遮り、軽いのりで元気良く答えた有子だが。
「コッホン、人の台詞をとってはいけません。出しゃばり娘はお仕置きです」
「ああぅー、今の発言って大失敗?秋子様御免なさい。いやー!全裸首輪付での夜の町内
散歩だけは、あれだけはご勘弁を」
いつもの如く涙で顔中グチャグチャにして土下座する有子、毎度のことだが情け無い限
りである。
「あらアリス、自分から言い出すとはそんなに犬の真似でお散歩がしたいんですか?」
「あぅーまた失言。わたしってお馬鹿?」
正直この少女には根元的に学習能力というものが欠けているとしか思えない。
結局平謝りに謝ってお仕置きは勘弁してもらった有子である。
「あーもう、口は災いの元よね。おしゃべりを直さないと駄目ね」
そう決心はしたものの、多分無駄な努力であろう。
その後嫌なことはすぐ忘れ、早速お供のアユアユと作戦を練る。こういう切り替えの早
いところが良いところでもあり、鳥頭と言われる所以でもあった。
「えっと、まず佐祐理さんと舞の間には男は割り込めない。久瀬さんは二人のことが好き。
久瀬さんは男。と言うことは」
「なるほど女性なら割り込めるかもしれないってことだね」
ウンウンと腕を組んで重々しい態度で相づちを打つアユアユ、正直前々に合わない。
「わかってるじゃないアユアユ、となれば久瀬さんが女の子になれば良いんだよね」
「わー有子さん天才」
本気で感心して有子を褒め称える。今度は滅茶苦茶はまっていた。
「いやー、我ながら冴えてるわね。もっと誉めて」
調子に乗りすぎである、本来祐一の精神がメインのはずなのだが、最近とみに真琴化が
顕著なようである。
そして善は急げ(本当に善か?)とばかりに、早速久瀬家に忍び込み、眠っている久瀬
を問答無用で性転換。少しは躊躇と言うことを覚えて欲しいものである。
その夜、任務達成とばかりに自室でアユアユと肉まんたい焼きパーティを開いていると、
佐祐理&舞が昭和時代に絶滅したとおぼしき大人しくて純情そうな三つ編み眼鏡少女を連
れて飛び込んできた。
「あははー佐祐理惨状ですよー」
「わたしも来た。それで佐祐理、字が違う。正しくは参上」
「あのー、お邪魔します。でもこの部屋の現状にはその字で合ってるかもしれませんよ」
大人しげな外見の割に突っ込みがきつい眼鏡少女。さあ彼女の正体は誰だろう?まあほ
とんどの人には正体バレバレだろうが。
なお、確かに有子とアユアユが肉まんとたい焼きの袋を散らかし、そこらに読みかけの
マンガは散らばってる上に、佐祐理達が土足で踏み込んだのだから、それはもう絵にも欠
けない悲惨な状況ではあった。つまり発言内容は的確なのだ。
「あ、あぅー、あんたら不法侵入よ」
ようやく我に返り佐祐理達を詰問する有子だが、驚きのあまり腰を抜かしたままなので
全然迫力など無かった。
「う、うぐぅー!み、みみずー」
なおアユアユの方はたい焼きを喉に詰まらせて苦しんでいるのだが、誰もそれに気が付
いていなかった。実はこれこそが本当の惨状なのかもしれない?
そこはマイペースな佐祐理、有子の抗議も周囲の状況も目にも入らず、ニッコリ笑って
有子に頭を下げる。つられるように舞も。
「久瀬さんをこんなに可愛い女の子にしてくれてありがとうございます」
その視線は眼鏡少女の方に向いている。懸命なる読者の皆さんはとっくにお見通しの通
り彼女がアリスの魔法で女性になった久瀬だったのだ。
「このセンス、相当に嫌いじゃない」
「あっ、うん、まあわたしのかかればこんなもんよ。えっへん」
大してない胸はって、いばりん坊な有子であるが、うかつ者ゆえに佐祐理と舞の目が怪
しく光っていることに全く気が付いていなかった。
「さすがはご町内の愛と平和を守る魔法少女さんですね。それで実はわたしも魔法少女な
んですよ。そして、前から久瀬さんを女の子にして可愛がりたいと思ってたんですよ」
「その考えは嫌いじゃない」
「ああそうですか。お役に立てて嬉しいです」
とりあえず誉められたのだと判断し、照れる有子である。やっていることはかなり無茶
苦茶だがあくまで本人的には善意の人、人々の賛辞や感謝はアリス=有子のエネルギーの
元なのだった。
「はいお役に立ちました。もう舞と二人で久瀬さんをすっかり堪能させていただきました。
でもですね有子、いえアリスさん、こういうことは魔法少女として禁忌に当たるんですよ」
「そうタブー」
急に態度が改まった佐祐理と横で真面目な顔(じつはいつもとあまり変わらないような
気もするが)で頷く舞。
「えっと、それはどういうことなんでしょう?」
さすがに脳天気な有子もなにや風向きが変わってきたことに気が付き、ジリジリと後退
しようとする。だがむろん佐祐理と舞が逃げられないような位置に着いていて、あっとい
う間に取り押さえられたのはお約束である。
「あぅー、もしかして有子またピンチ?ひょっとして有子って総受け?」
うかつものの有子もようやく真理にたどり着いたようだ、反転ヒロインは基本的に総受
けだというお約束な事実に。
「コンコンきつねさん、ものすごく嫌いじゃない」
「あははー、舞と一緒に可愛がってあげますよ」
「あぅー、遠慮しとく」
「まあまあお子さまは遠慮しなくて良いんですよ」
「子供の我が儘、嫌いじゃない」
「あぅー、有子子供じゃないもん」
本人の自覚の有無はともかく、その態度は完璧に子供だった。
「あははーじゃあ行きますよ。魔法折檻リボンアタッーク!」
いつの間にかヒラヒラドレスのいかにも魔法少な女姿に変わった佐祐理、多少とうが経
ってはいるがまだ10代なのでかろうじて魔法少女なのだった。
頭のリボンをほどくと鞭状の形態に代わり、たちまち有子の方に向かって伸びていくと
有子をぐるぐる巻きにしてしまう。けれども、なぜか頭の上では相変わらずほどいたはず
のリボンが揺れている。流石は魔法少女である。
「流石は魔法少女サユリン、良い手際」
そう言う舞の方はキャッ○アイ風の全身レオタード姿(色は黒)だが、実は右足は完全
に露出しているし、胸の切れ込みが凶悪である。
「あははー、超能力少女マイも格好いいですよ」
「あぅー、確かに二人とも似合ってるけど、わたしどうなるの?」
「まあ生贄というかオモチャですね」
いつの間にか床の上で正座(座布団持参)してお茶をすすっている久瀬(女)、まさに
天野美汐と寸分違わぬおばさん臭い、もとい落ち着いた態度である。
「この番茶はなかなかいけますね。これも秋子さんの手作りですか」
「なんでもいいから助けなさいよー!」
吾関せずの久瀬に無駄と思いつつも助けを求める有子、そして部屋の片隅では誰にも省
みられないアユアユが……。
「み、み、み、みず……み……」
そろそろ顔がやばそうな色になっていたりする。
「この恰好は少々色気不足ですね」
「ぐるぐる巻の情けなさも嫌いじゃない」
「ずずー、うーんでもいまいち華が欠けてますね」
一方口々に勝手なことを言う闖入者達である。
「華がない、確かに。……佐祐理、ここはわたしに任せる」
「あははーじゃあ舞のお手並み拝見とするよ」
佐祐理は舞をちらりと見ると、さっと有子に巻き付いたリボンを引き上げる。
そこでようやく体が自由に動くようになり逃げ出そうとする有子だが、むろんそうは問
屋が下ろさない。
「では行く、六角亀さん」
今度は舞のリボンが有子に絡みつき、あっという間に再び絡め取られてしまう。
「あぅー、なんて恰好にさせるのよー」
「ずずー、これは禁断の亀甲縛りですね。まあ着衣のままというのもなかなか」
「バカー!解説するなー!」
「有子さんとってもお似合いですよ」
「五月蠅い!こんな恰好似合っても嬉しくないわよー!」
「大丈夫、すぐに気持ちよくなる」
「ああ所謂縄酔いと言うやつですね」
「久瀬ー、あんたなに冷静に解説してるのよ。おまけに変なこと詳しいし」
「そう言われましても、わたしもあなたにか弱い少女にされてしまいましたからね。無駄
な抵抗はしない主義ですし。あなたも快楽に身を任せて楽しんではどうですか」
結構いい加減というか享楽主義な生徒会長である。
「あひーん!」
体に巻き付いたリボンを佐祐理に急に引っ張られ、食い込みに股間を擦られ卑猥なあえ
ぎ声とともに体をのぞけらせる有子。
「今の声と表情、滅茶苦茶嫌いじゃない」
その後も佐祐理と舞に交互に嬲られる。
すっかり出来上がったところで……。
「次は逆さま海老さん」
有子に巻き付いていた縄リボンが一度解けると、たちまち別の形に絡みついていく。
「く、苦しい、この恰好駄目ー」
「はー今度は逆海老ですか。川澄先輩意外にマニアですね。うん、それにしてもこの栗ま
んじゅう、たまりませんね」
「いいから早くほどいてよう。これじゃあ拷問」
「苦しむ顔も本当に嫌いじゃない」
「あははー舞はサディストですね」
「ひーん、誰か助けてー!」
「次はちょきちょき蟹さん」
「あははーナイスですよ舞」
「あぅー!海老の次は蟹?」
「ああなかなか見事に決まってますね。綺麗な蟹縛りです」
しかし久瀬はなぜこんなことに詳しいのだろう?もしかしてマニア?
「ちょきちょきだから鋏で服をちょきちょき」
「縛られた女の子の着衣を鋏で切るのはなかなかサド心を刺激しますね」
「やだー!こんな丸見え恥ずかしいよう」
それからしばらくして、ようやく解放されて息も絶え絶えで床に横たわっていると。
「最後に」
「ま、まだやるの?」
かすれる声で有子がそう訊ねると。
「わたしはマゾを狩るものだから」
「あぅー有子はマゾなんかじゃないわよー」
懸命の抗議だが、もうほとんど聞き取れない程度の声しか出せない。
「では行く、ぱかぱか馬さん」
「そう来ましたか、これは当然」
「あぅー、なに?」
「木馬責めですね」
リボンの一部が有子の手を後ろ手に拘束し、残りのリボンは三角形を形成し、それがた
ちまちのうちに質感がある者に変化していく。
「えっ、えっ」
そして有子の体が持ち上げられ、その三角形に跨らせられる。
「あぅー、く、食い込むー。尻尾が千切れるー」
「わたしは錘を追加するものだから」
嬉々として有子の両足に錘を追加していく舞。
「三角木馬は基本ですね」
「あははーよく似合いますよ」
「苦悶の表情、完璧に嫌いじゃない」
「さ、裂けるー。あんたら変質者よー」
「ふさふさ尻尾さん。ふかふか耳さん」
ある意味無邪気で無垢な表情のまま変態行為に及ぶ舞、つまり有子はお子さま舞のオモ
チャなのだろう。
「あははー、無邪気な舞可愛いです」
「だから、引っ張るなー」
「無垢な子供の恰好のオモチャというわけですか、沢渡さんも災難ですね。あーこの煎餅
も美味しい、ポリポリ」
大騒ぎの中一人冷静な久瀬だった。
「あんたねー、冷静に解説してないでなんとかして」
「なんで私がそんなことをしなければいけないのですか」
「もしかして、かまってもらえなから嫉妬?」
「嫉妬、そんなことはありません。もっともあなたに恨みは有りますけれど」
「恨みってなによー?」
「それはですね、あなたの安直な魔法のせいで、共学のはずの我が校が男女比1対9にな
っちゃったじゃあないですか。生徒会として色々と困ってるんですよ」
それはまあそのとおりで、有子=アリスが最近やって来たことと言えば、
嫌な男に迫られていると女生徒から相談を受けると、相手が女になれば解決ね。
覗きが居ると相談されれば、覗き野郎が女になれば問題なんてナッシング。
彼がもてすぎで困るんです、彼が女の子になれば大丈夫ね。
好きなあの子とお友達になりたいんです。文字通り解釈して女同士の親友に。
等々と言った具合である。基本的にアフターケアーは万全とは言え、やはり生徒会長と
しては目に見えない部分の苦労があり、いろいろと不満があったのだろう。
その後、秋子さんと天野も参戦し、有子の受難はまだ続くのだった。
ちなみにお楽しみが過ぎて、アユアユの顔が土気色になっていることに一同が気が付い
たのは翌朝のことだった。まったくこれでこの作品がお馬鹿ギャグで、かつまたアユアユ
が使い魔でなければ命がなかったところである。
だがまあ命に別状はなくめでたしめでたしであった。
「うぐぅー!全然めでたくないようー!」
「有子さん、毎回こんなのでいいの?」
「さあわたしに言われても。でも次回で最終回(予定)だから」
「最終回かあ、ボク達元に戻れるのかなあ?」
「さあどうかしらね」
(浩之Side)
あふ、とあくびを漏らしながら、俺は学校への道を歩いていた。一人で登校するのにもずいぶん慣れた。
前は、俺の隣にはあかりがいた。ちょっと低血圧気味で寝起きの悪い俺を、あかりは良く起こしにきてくれた
ものだった。その後も連れ立って登校するわけだから、俺とあかりは問答無用で付き合っている、と言う事に
されていた時期もある。
実際にはそんな事は無くて、少なくとも俺はあかりを「恋人」として見た事は無かった。だから、あかりに
告白されたときはずいぶんと驚いたっけ。
そして、俺は前にも言ったように、あかりの告白に応える事は無かった。俺とあいつは、あまりにも近すぎた
から。近すぎて……恋人とは見れなかったから。
それ以来、あかりが俺と一緒に登校する事は、滅多に無くなった。別に関係が疎遠になったと言う事ではなく、
今でも会えば普通に話をする。たぶん、恋人と見られがちな事をしない、というのがあいつなりのけじめの
つけ方なんだろう。
俺も断った手前、あかりの真意を聞くのはいろいろと憚られたので、なんとなく違和感を覚えつつも、一人
での登校を続けていた。
が、今日は、一人で登校するのは坂の手前、この前貴子ちゃんにぶつかった辺りまでの事だった。
「藤田先輩」
突然俺を呼ぶ声が聞こえた。足を止めて辺りを見回すと、そこにはあの時貴子ちゃんと一緒にいた娘……確か……
「悠里ちゃん?」
名前を呼ぶと、悠里ちゃんは嬉しそうににっこりと笑いながら近づいてきた。
「おはようございます、先輩。あたしの名前、覚えててくれたんですね。嬉しいです!」
そう言って、悠里ちゃんはいきなり俺の手を握ってきた。ちょっとびっくりする。大胆な事をする娘だ。
「き、今日は貴子ちゃんと一緒じゃないのか?」
ちょっと声が動揺していたかもしれない。
「貴子ならそろそろ来ると思いますけど……それより、あたし先輩の事をいろいろ聞かせて欲しいです」
悠里ちゃんはそう言って、俺の顔を見上げる。猫を連想させる切れ長の目が、好奇心に満ちた光を湛えていた。
「俺の事? そんなに話す事も無いけど、まぁ聞きたいことがあれば」
悠里ちゃんの押しの強さに驚きつつも、俺は答えた。すると、彼女は思わぬ事を聞いてきた。
「先輩、今彼女いますか?」
「え? いや、残念ながらいないが」
俺は反射的にそう答えていた。言ってから心の中で舌打ちする。そんな事、胸を張って言えた事じゃないからなぁ。
「じゃあ、気になる人とかはいますか?」
俺は首を横に振った。「人"とか"」と聞かれたときに、一時期マルチと良く関わっていたせいでメイドロボフェチと
間違われた俺に対する挑戦か、とも思ったが、まぁ考えすぎだろう。
「それもいないですか。ふふ〜ん」
なにやら楽しそうにメモをしている悠里ちゃん。こういうところも志保に似てるな……気が合うんじゃない
だろうか。ただ、引き合わせるのは激しく混ぜるな危険の予感だが。
悠里ちゃんが次の質問を発しようとしたとき、背中から声が聞こえてきた。
「悠里、おはよう」
貴子ちゃんの声だった。
(貴子Side)
わたしが悠里と藤田先輩に気がついたのは、学校に続く坂道の入り口だった。すぐに声をかけようとしなかったのは、
悠里の遠慮の無い大声が聞こえてきたから。
「先輩、今彼女いますか?」
悠里ったら、何日か前の宣言通り、先輩の彼女に立候補する気まんまんみたい。もし「いるよ」って答えだったら
どうする気なんだろう?
「え? いや、残念ながらいないが」
先輩が戸惑ったように答えた。悠里の表情が緩む。わたしもほっとした。
……ほっとした?
わたしは自分の気持ちにびっくりした。先輩に彼女がいなかった事が嬉しいみたい。
(あ、えっと……悠里にチャンスがあることに安心したのよね)
自分にそう言い聞かせる。その間に、悠里が次の質問をしていた。
「じゃあ、気になる人とかはいますか?」
首を横に振る藤田先輩。悠里、すごく嬉しそう。まだ質問したいみたいだったけど、時計を見ると予鈴の三分前だ。
わたしは声をあげた。
「悠里、おはよう」
悠里と藤田先輩がわたしの方を振り向く。一瞬、先輩と目が合った。その時、先輩はどこかほっとしたような
表情をしていた。
「おはよう、貴子」
「おっす」
二人が口々に挨拶する。わたしが予鈴が近い事を言うと、そりゃ大変だ、とばかり二人は歩き出した。
わたしも悠里の横に並ぶ。
「じゃあ、次はサッカーの時の話とか……」
悠里はまだまだ話し足りないらしく、しきりに先輩に質問をしていた。先輩も丁寧にそれに答える。わたしは
横で聞いているだけだったけど、先輩の事をいっぱい知る事が出来た。
この前よりもずいぶん余裕を持って校門をくぐり、玄関に着く。先輩とはここでお別れだ。
「じゃな」
軽い調子で別れを告げ、先輩は三年生の下駄箱に向かう。わたしはそれを見送って、自分の靴を取った。
「やっぱり藤田先輩かっこいいわよねー」
悠里がすっかり夢見る乙女の表情で言う。中学のときから悠里はこうなる時があったけど、いつも夢中になる
相手は年上の人ばかりだったような気がする。悠里もやっぱりタマ兄の影響受けまくりだと思う。本人は絶対
認めないだろうけど。
それはともかくとして、藤田先輩がすごい人だと言うのは同意。昨日手伝ってもらったり助けてもらったり
したのもあるけど、話してる内容だけ聞くと、結構重いテーマもあるのに、全然力みが無い。なんて言ったら
良いのかな。自然体?
比較対照を他に知らないから、どうしてもタマ兄になってしまうけど、タマ兄は力技でまわりを引っ張って
いくような人なんだけど、藤田先輩は自然とまわりを纏めてしまうような感じがする。何と言うか、悠里が
惹かれるのもわかる気がするなぁ。いつもタマ兄に振り回されて、わたしに「兄さんの馬鹿」って愚痴って
ばかりだったし。
でも、悠里が良くフラれるのも、その強引な性格のせいだから、やっぱり二人は似たもの兄妹なんだろう。
さっきの藤田先輩、ちょっと困ったような顔をしてたし。
その時、わたしは自分が藤田先輩の表情を覚えていた事に気がついた。
父さんやタマ兄以外の男の人の顔を、表情を見分けられるほど見ていた事なんて、ほとんど無かったはずなのに……
二日目の朝の話でした。悠里がちょっと可愛くなってきた……
この設定で浩之×悠里の話を書くのもいいかもなぁ。
>>345 結局勝ったのは純情でも何でもない紫苑だったわけですな。本当に病人かこの小僧w
>>346-353 事件解決は全部女の子にしてって……GJだ有子。
では回線吊って首切ってきます。
Clannad分が不足してきたな
「こんなの…嘘よ…」
岡崎は僕を見てしばらく茫然としていた。
僕だって嘘だと信じたかった。
「…違うっ!こんなの…春原じゃないっ!」
突然そう叫びながら立ち上がると、その場から走り去ってしまった。
「岡崎さん!」
「…岡崎っ!」
出てきた声は、女の子の声。
その声が自分の考えを代弁しているような感覚。
古河はオロオロしながら僕とどんどん小さくなる岡崎を交互に見ている。
そして、意を決したように僕を引き起こした。
「春原さん…なんですよね?」
「そんな事より早く岡崎を追い掛けろよっ!僕は後回しでいいからっ!」
そう言った途端に足の力が抜け、僕はその場に座り込んでしまう。
悔しいけど、体が熱っぽくて歩けそうにも無かった。
「古河っ、行けよっ」
「でも、具合悪そうな春原さんを一人にするなんて…」
「あんな混乱してる岡崎も一人にできないよっ!」
煮え切らない古河の態度が頭にきて、僕はからからに渇いた喉で大声を上げ、ふらふらの足で立ち上がり、掴み掛かった。
「やっぱり…春原さんですね…」
「そうだよっ!早く…岡崎を追い掛けろよっ!」
「渚ぁっ!」
タイミング良く古河のおばさんが追い掛けてきた。古河もようやく決めたようだ。
「お母さんっ、あとはお願いしますっ!」
「は?何言ってんだ?あたしはあんたを迎えに…」
「僕は岡崎さんを追い掛けるので、春原さんを運んであげてくださいっ」
古河はそう言いながらもすでに走りだしていた。
体が弱くて岡崎よりも足が遅かったはずなのに、今は、速かった。
古河の姿も見えなくなってから、僕は、ふらりと立ち上がった。
「古河のおばさん、僕が…春原です…」
信じてくれないかもしれないけど、一応言ってみた。
「お姉さんと呼べ!」
確かに見た目は若いけど、30代後半(推定)でお姉さんはないだろう…。
「とにかく、僕、春原陽平なんです」
おばさん部分を省略して言い直す。
すると、おばさんは頭を抱えてため息をついた。
「はぁ…それくらいわかってるっつーの…あんた何て馬鹿な事を願ったんだよ…」
「え…」
すんなり信じてくれるなんて、意外だった。
「とりあえず、うちに来い」
おばさんは僕の手を引っ張り、元来た道を辿っていった。
「それ、洗濯してやるからあたしの若い頃の服でも着てな」
泥だらけの男子の制服のズボンとワイシャツというスタイルだった僕に、おばさんは服を手渡してくれた。
促されるままに僕は着替える。
「かーっ!貧相な体付きだねぇ!あたしの下着じゃサイズが合わないじゃないか!」
「ひぃっ!何見てるんすかっ!」
「別に女の子同士なんだからいいだろ?」
「確かに今の僕の体は女の子かもしれないけどっ…どう考えてもあんた『子』じゃありませんよねぇっ!?」
「あぁっ?何だって?」
「ひぃぃーっ!何でもありませんっ!」
そのやり取りをしていたときには、もう、さっきまでの熱っぽさは何故か無くなっていた。
着替えおわってから鏡を見てため息。僕が僕じゃ無くなっている。
いや、顔はほとんど変わってないんだけど。
これで僕が中性的なベビーフェイスじゃなかったらとても気持ち悪い状況になっていたこと必至である。
「おば…じゃなくてお姉さん、何ですんなり信じたんですか?」
「あたしも、あそこで叶うはずのないことを願って、それが叶ったからね」
「うーん…」
その願いの内容も気になったが、今はそれどころじゃなかった。
「あの…僕はどうなっちゃうんですかね…?」
「何とも言えないけど、顔が同じなんだし男装して学校に行けば問題ないだろ」
「声も体型も変わっちゃってるんですけどねぇ!」
「声はもともと甲高かったろ。体だってあたしのようなプロポーションならともかく、そんなペッタンコでバレるわけないな」
「すっごい投げやりっすね!」
「ま、渚にも色々サポートはさせるから安心しな」
「はい…」
激しく不安なんですが…。
「とりあえず渚が小娘を連れてくる前に帰りな。渚が追い掛けたって事はショックで逃げたんだろ?」
「……」
たぶん、そんな感じだろう。
「じゃあ、制服は明日とりに来ます。有難うございました」
やっぱり、頭が痛い。1週間も外をふらついていたんだから具合悪くなって当たり前だよね。
岡崎に会うのも気まずいし、僕は素直に寮に帰って寝ることにした。
朋美視点、春原視点が統一されてなくて申し訳ない。
これからはたぶん春原ビジョン多めかと。
わーい倉分補給だ
何だかんだ言って倉が一番現実味があるあ……ねーよ
とにかく、乙
おお、ちょっと来なかった間に作品がこんなにも。
>>345 牛丼口移しするわ、プリーツスカートは好きだけど動きづらいからと平然と脱ぐわ…
ゆうの周りが純情(つうか「普通」じゃない)男ばかりじゃなかったらどうなっても知らんぞ。
…と思ってたら紫苑が「普通」の男だったかw
>>346-353 久瀬反転させた意味無ぇー!
それにしても、やはり佐祐理と舞のコンビネーションは凶悪だな。
>>354-357 何このボーイミーツガールの王道。
微妙な三角関係に突入しそうな予感?
>>361-363 こういうシチュでは、本物の女性も驚く程のプロポーション(特に胸)で性別反転されるのが
お約束じゃないのか春原w
TSスキーで貧乳スキーな俺はイヤッホォォォォウ!!(AA略
なかんじで大変だ。
368 :
普通じゃない :2005/08/23(火) 22:05:37 ID:v6bTHU8e0
月曜日、いつものように浩平を起しに来たんだけど、一見今朝はちゃんと布団で寝て居
るみたいだよ。
なーんて騙されないんだよ。あの浩平が普通に寝てるわけないもんね。これは布団の中
に丸めた毛布かなにかが入っていて、浩平はどこかに隠れているに決まっているんだよ。
でもまあ一応は騙された振りをして布団を剥ぎ取ってみるんだよ。
えっと、毛布じゃなくて女の子だよ。わたしや浩平と同い年かちょっと下くらいの女の
子が寝ているんだよ。ダブダブの男物のパジャマでも隠せない女らしい丸みを帯びた体と
いい、可愛らしい寝顔といい、どこをどう見ても女の子だよね。
「ちょっとあなたは誰?なんで浩平の布団で寝ているの?」
「うーん長森五月蠅い、俺はまだ眠いんだ」
なんかこのしゃべり方といい、仕草といい、どことなく浩平みたいだけど。でもそんな
ことないよね、浩平は男の子だもん。
「良いから起きてよ」
「あと30光年寝させてくれ」
「それは距離の単位だよ」
なんかますます浩平に似ている気がするよ。
「いい加減に起きてくれないと怒るよ」
「五月蠅いぞガミガミ長森、お前は俺の母親か」
ブツブツ言いつつもようやく起きた女の子、前髪で目が隠れているけど顔もどことなく
浩平に似ているみたいだよ。
「やっと起きたんだよ。あなたは誰?浩平とどういう関係?」
「なに言ってるんだ長森、俺は浩平だぞ。美男子星の王子様の俺を見忘れたのか?」
この変な言い方って本当に浩平にそっくりだけど、でもこの子は女の子だよね。
「あのね、あなたは女の子だと思うんだよ」
「おい長森、いい加減に冗談はよせ」
「もうしょうがないなあ、はい」
押し問答をしていてもしょうがないから女の子の顔の前に鏡を突きつけた。
「ふーむ相変わらずの美男子ぶりだな。しかしちょっと女っぽくなったか?」
確かに少しは浩平に似ているけど絶対に別人の顔だよ。この子ちょっと尋常じゃないよ。
369 :
普通じゃない :2005/08/23(火) 22:07:07 ID:v6bTHU8e0
じゃあ最終手段。女の子の手を自分の胸の所に持っていく。
「おい長森なにをするんだ……???うにゃ、やわらかい。俺におっぱいがあるぞ」
ようやく現状を認識したようだよ。
「えっ、じゃあまさか?」
今度は自分でパジャマのズボンに手を突っ込んでるんだよ。
「な、ない、俺様の自慢のマグナムがない」
浩平のはせいぜい22口径くらいだと思うんだよ。
「俺は、俺は女になってしまったのかー!」
この変な反応、やっぱりこの子は浩平だよ。女の、っていうか幼なじみの勘なんだよ。
「こんな変な子浩平以外に居るわけがないんだよ」
「随分失礼な反応だな」
さすがの浩平でも朝起きたら女の子になっていたっていうのはショックみたいで、その
後1分ぐらいはボーっとしてたんだよ。でもすぐに顔を上げて。
「おい長森、予備の制服を貸せ」
えっと、いきなりなにを言うんだよ。
「浩平、正気?」
「正気も正気だ。この恰好では俺の制服が着られんではないか」
まあ確かに身長が10センチ以上縮んだみたいで、わたしとあんまり背丈が変わらない
っていうかむしろ気持ち低いくらいだから、あの服は着れないんだよ。
「でも浩平、その姿で学校へ行くつもりなの?」
「当然だ、学生のお仕事は勉学だからな」
こんなときだけ真面目ぶるんだからやっぱり変だよ。
「まあ制服だけなら貸しても良いけど」
「うん長森、どうしたんだ?……おおそうか、そう言えば当然下着もいるよな。スカート
の下がトランクスじゃあんまりだ。ブラとパンツも貸してくれ」
「そ、それは絶対に駄目だよ」
それはいくらなんでも恥ずかしいよ。
370 :
普通じゃない :2005/08/23(火) 22:08:01 ID:v6bTHU8e0
「しょうがねえなあ、じゃあコンビニでも何処でも良いからパンツだけでも買ってきてく
れないか。この恰好じゃあ外出も出来ないぞ」
うーんそう言われればそうだよね。
「しょうがないなあじゃあ下着くらいは買ってきてあげるよ」
「よしわかった。じゃあ頼む」
「って浩平、なんでいきなり脱ぐんだよ」
「だってサイズを測らなきゃ駄目なんだろう」
女の子になってそうそう平気で裸になるかな。浩平にデリカシーを求めたわたしが間違
っていたよ。どうでも良いけど浩平はあんまり胸大きくないよ。わたしよりは一回りくら
い小さいよ、元男の子に負けなくて良かったよ。
それでサイズを測って下着を買ってきたよ。そうしたら浩平は不満そうだよ。
「なんか地味だな。もっと派手なのはないのか。黒と赤とかスケスケとかレースヒラヒラ
とか穴あきのやつとか」
「浩平、いい加減にしないとわたし怒るよ」
もう本当になにを考えているのかわからないよ。
「しかし長森、俺なら似合うと思うんだが」
「浩平は幼児体型だから似合わないよ」
「失敬な。長森、お前言うことがきついぞ」
「どういたしまして、これが地だよ。そんなことより本当に学校へ行くつもりなら早く着
替えてよ、もう遅刻は間違いないけど急げば2時間目には間に合うよ」
「わかった」
そう答えて浩平は今着ていたジャージを脱ぎだしたんだけど……。
「ちゃーん、ちゃららららん♪ちゃーん、ちゃららららら♪ちょっただけよ」
「浩平!」
浩平ったらなにをやってるんだよ。いきなりストリップの真似事(っていうか加藤茶の
真似)なんかするから、思わず手が出ちゃったよ。
「痛て!長森、あんたも好きねえ」
「まだ言うか」
「ちょっとした冗談だろうが。長森乱暴だぞ」
「まだふざけるなら置いていくよ」
「わかったよ」
371 :
普通じゃない :2005/08/23(火) 22:09:00 ID:v6bTHU8e0
さすがにその後は真面目に着替え始めたんだけど、すぐに根を上げたんだよ。
「長森、これどうやって付けるんだ」
下の方はともかくブラはやっぱり難関みたいだよ。しょうがないから手伝ってあげる。
そのあとも上手くできないところを手伝ってあげて、ようやく出来上がり。
なんかとっても可愛いかも。ちょっと繭みたいな小動物的可愛さって感じだよ。
それで鏡を覗いてみて、お約束の反応?
「ふーむ流石は美男子星の王子様の俺様だ、女になると美少女星のお姫様だな」
「もう付き合いきれないよ、行くよ」
鏡の前でナルシスしてる浩平の首に手をかけて引きずるようにして登校。あれっ、でも
この子が浩平だってどうやって説明しようかな。髭先生は繭がクラスにいても気が付かな
いくらいだからいいとしても、クラスの子になんて説明しようか。
「ハハハハ、なんか美少女転校生になった気分だぞ。七瀬のお株を奪ってやるかな」
わたしが色々悩んでるのに、本人はどうしようもなく呑気だよ。
「はー、もうこれからどうなるんだろう」
「大丈夫だ、今日から俺様が学園のアイドル、ヒロイン、女王様だぞ。アッハハハハ!」
この根拠のない自信、信じられないよ。
「そうだ長森」
「なに?」
「放課後私服を買いにいくから付き合ってくれ」
普通そう嬉しそうに言う?浩平って絶対におかしいよ。
372 :
普通じゃない :2005/08/23(火) 22:10:35 ID:v6bTHU8e0
>>368-371 なんとなく突然女性化しても動じない主人公の話を書きたくなって、
そうしたら浩平しか思い浮かばなかった。
動じなさすぎだよっ!
確かに浩平ぐらいしかいない・・・しかし普段以上にトんでるな
375 :
普通じゃない :2005/08/24(水) 20:24:07 ID:FpZjhIz+0
今朝浩平を起しに行ったらなぜか女の子になっていたんだよ。それが今は平気な顔で女
子用制服を着て一緒に登校してるんだけど、ちょっと信じられないよね。だって下着もち
ゃんと女性用を着てるんだよ。
おまけに放課後服を買いにいくから付き合ってくれだって、今日は部活があるんだけど
浩平を一人で行かせるとなにを買ってくるかわからないから、仕方なく付き合うことにし
たんだよ。
「ところで浩平、服を買うのは良いけどお金はあるの?」
「ああそれは大丈夫だ。長森にパンツを買いに行ってもらっている間に由起子さんに電話
して事情を説明したら、昼休みに俺の講座に服代を振り込んでくれるって言ってたぞ」
「えっもう由起子さんに言ったの?」
「だって報告しないわけにいかないだろう」
「それはそうなんだけど、良く信じてくれたね」
「別にすぐに信じてくれたぞ」
やっぱり浩平の叔母さんだけあって由起子さんも普通じゃないよ。
「ところで浩平、その姿に今の口調は似合わないと思うよ。せめて俺だけは止めた方がよ
いと思うんだよ」
一瞬浩平の目が点になったけど、すぐに立ち直ったみたいだよ。
「なるほどそれは盲点だったな。じゃあこんな感じか」
いきなり口元に手を当てたんだよ。
「おほほっ、私今朝から女になりましたの。でも今まで通りお付き合いしてくださってよ
ろしくってよ」
ちょっと絶句。
「浩平、それ絶対に変」
「そうか、じゃあこんな感じかな。こんな姿だけど浩平なの。よろしくお願いするの」
今度はなんだかもじもじした感じだけど、これ知ってる子がモデルだよ。
「それって、演劇部の上月さんの真似だね。ちょっと浩平のキャラじゃないと思うよ」
「うーむじゃあ、えっとー、折原はー、今日から女に子になっちゃったのー。それでー学
園のアイドルを目指すからー、みんなーよろしくね」
「似合ってるけど、今時そんなしゃべり方って完全にバカだよ。浩平は女の子をよくわか
ってないんだよ。そうだ、わたしの話し方を真似すればいいんだよ」
えっどうして無言になるんだよ?
376 :
普通じゃない :2005/08/24(水) 20:25:03 ID:FpZjhIz+0
「あのなー長森、俺にだよもん星人になれと言うのか」
「なによその言い方は、わたしだよとかもんとかそんなに言ってないもん。浩平は観察力
が足りないんだよ」
「今現にだよもんって言ってるじゃないか」
変だなあ、そんなはずはないんだけど。
「まあそれはいいが、この姿で浩平じゃ変だな。よし今から俺、もといわたしは通称ひろ
みでいくぞ」
「なんでひろみ、でなんで通称なんだよ?」
「だって戸籍名は簡単に変えられないだろうが。それに偽名は本名をもじったりした方が
良いんだよ。あまり変えすぎると呼ばれたときに反応できないからな」
「ふーん、浩平にしてはものを考えているんだね」
「お前絶対に、お、じゃなくてわたしをバカにしてるだろう」
「……そんなことはないんだよ」
「今の間はなんだ?」
「なんでもないんだよ」
そんな話をしているうちに学校へ着いたんだよ。浩平、もといひろみは平気な顔でどん
どん進んでいくけど、本当に大丈夫かな?
丁度休み時間中に学校へ到着して、浩平はなんのためらいもなく教室の扉を開けたよ。
それですたすたと教卓の所に歩いていくんだよ。そうすると当然のことだけど見知らぬ
生徒の登場に気が付いた子もいるわけで。
「おい、あの子誰だ?」
「転校生か?」
「この時間に?」
「結構可愛いじゃん」
「まっ、わたしには負けるけどね」
「そうね、あまりスタイルは良くないみたいね」
とか結構注目を集めているんだよ。浩平は全然動じてないけど。
377 :
普通じゃない :2005/08/24(水) 20:25:43 ID:FpZjhIz+0
「おーいみんな注目してくれ。折原浩平、今朝起きたら女になってたんだ。で、今日から
ひろみって名乗るから。みんな今まで通りよろしくな」
いきなりそんな風に馬鹿正直に話すかな。浩平の考えだけは本当に読めないよ。
「なんだそう言えば折原に似てるな」
「確かに折原が女になるとああかもな」
「まあ折原ならいきなり女になっても不思議はないよな」
「折原だもんな」
「そうね折原君だから」
ってなんでみんなそんな簡単に納得するんだよ。
「ああつまんない」
「おい、次の数学当たるんだ。この問題教えてくれ」
「ちっ、たまには自分で考えろよ」
どうしてこう無反応なの。男の子がいきなり女の子になっちゃったんだよ。このクラス
も変だよ。変すぎるよ。
拍子抜けして肩を落していたらポンポンって肩を叩かれて、振り向いたら同情の視線を
向けている七瀬さんが居たよ。
「あのねえ瑞佳、こいつらに常識を求めるのはCDショップで魚を買うようなものよ」
なんだか同病相憐れむって感じの疲れ切ったような口調だよ。
「まあ留美の例えが適切かどうかはともかく、このクラスの連中に常識の持ち合わせはな
いわね」
こっちは広瀬さんだけど、ねえこのクラスで常識があるのはわたし達だけなの?
その後、ひろみはどうしてるんだろうって見回したら、繭がまとわりついてた。性別が
変わっても本質は変わらないのかな?
授業が始まった後も先生はなんにも言わないんだよ。関心がないのか、無視してるのか、
そこのところはよくわからないんだけど、もしかして先生もクラスの子と同じ考えかもし
れないんだよ。
378 :
普通じゃない :2005/08/24(水) 20:26:54 ID:FpZjhIz+0
あとはひろみがお昼休みに里村さんの御弁当に手を出して怒られたりしてたけど、別に
何事もなくて放課後になったんだよ。でもこの平和が嵐の前の静けさみたいでかえって怖
いんだよ。
そう言えば里村さんと一緒だと柚木さんみたいだったよ。
まあとにかく服を買いに行くことになったんだけど、なぜかみんな付いてきてるんだよ。
「折原を監視しないと」って七瀬さん。
「留美の付き添い」って広瀬さん。
「置いてけぼりは嫌です」って里村さん。
「茜有るところ詩子有り」っていつの間にか来ていた柚木さん。
あと、繭はもちろん、最近は積極的に出掛けられるようになった川名先輩に、深山先輩
や上月さんまで居るんだよ。
女の子がこれだけ集まってるだけでも注目の的なのに。
「あはは、わたしもなかなか人気者だな。そんなにわたしのファッションショーが見たい
のか?」
ひろみはとんでもないこと言ってるよ、なんだか本気で頭が痛いんだよ。
379 :
普通じゃない :2005/08/24(水) 20:28:40 ID:FpZjhIz+0
>>375-378 嬉し恥ずかしなど何もない初登校編
級友も変
次回はみんなで楽しいお買い物?
大物すぎるよ浩へ…じゃない、ひろみ。
七瀬たちがいなかったら、変なのは実は自分の方なんじゃないかと考え出しかねないな長森w
「この世界には私の居場所は無いんだ」
そのまま長森が永遠の世界へ…
いや長森も十分変だとおもうぞ、一人称だから仕方がないけど地の文がひろみになってるし
まどろみの中から呼び覚まされた私は、眠い目を擦りながら布団から這い出し、目覚まし時計のスイッチを止めた。
眩しい陽射しが窓から射し込んで、私の頬を暖めている。
私は一度、ゆっくりと伸びをしながら大きなあくびをし、ひと息ついてからベッドを下りた。
今日は休日だった。
頭の中がまだはっきりしてなくて、何の休日だったのかは曖昧だが、とにかく今日は家でゆっくりできるはずだった。
パジャマがわりに使用しているTシャツを脱いで、昨日と同じシャツを羽織る。
私は心地よい陽射しを背中に受けながら、そのまま立ち惚け、シャツのボタンを止めることさえ忘れていた。
世界は春の訪れを感じさせていた。
今日もいい天気になりそうだ。
私はじっとしたまま、思いにふける。
夢を見ていたような気がした。
何か…長い、長い、夢を…。
なにかとても嫌な夢だったかも知れないし、とてもいい夢だったのかも知れない。
とにかく心に残る夢だったはずなのに、不思議と、その内容を思い出すことはできなかった。
時折、映画のワンカットのような光景が、ポツポツと頭に思い浮かぶ。
そのばらばらの映像を順に繋げても、とても一本のストーリーにはならない。
そんな、夢らしい夢だった。
ただ、そのワンシーンずつが、各々かなりの臨場感と鮮やかなリアリティをおびていたような気がした。
私はだらしない格好のまま部屋を出て、階段を降りていった。
居間には誰もいなかった。
父さんも母さんもどこへ行ったんだろう。
まてよ。
確か、何かがあって、そのためにどこかへ出かけたはずだ。
なんだったっけ?
どこだったっけ?
まあ、いいや。
寝起きのわりには、妙にお腹がすいていた。
私はテーブルの上にあった食パンを取って、それをトースターに放り込むと、スイッチを入れた。
ジジジジジジジジジ…。
トースターのタイマーが回り出す。
トーストが焼き上がるまでの時間を持て余し、私はテレビのスイッチを入れた。
ぷつん。
「…依然まったく原因がつかめていない、ここ、K県E市S町で起きた集団精神病事件ですが、警察側は、何らかのガスが使用された疑いがあると見て、目下、全力の調査を続けています…」
「…今日現在、すでに140名をこえた被害者の容態は、未だ回復の兆しを見せず、被害者の親族の不安は募る一方です。また…」
騒がしく動くテレビの画面。
私はしばらくぼんやりとそれを眺めていたが、ふとある重大なことに気が付いた。
どうしてこんな大切なことに気が付かなかったんだろう。
私は自分の愚かさにおかしくなった。
トースターのコンセントが抜けているじゃない。
まだ導入部だし、ここからオリジナル展開になっていくのでは?
>>384 俺イメージだと長瀬ちゃんはもうちょっと内気っぽい感じなんだけどGJ
…ところで集結話の続きマダー?(死
389 :
普通じゃない :2005/08/25(木) 22:07:06 ID:gKPvFIPA0
今朝突然女の子になっちゃったひろみ(浩平)の服を買いに向かってるんだけど、途中
ナンパされたりすることもなく無事に到着したよ。視線は集めてたけど。
どうも人数が多すぎて敬遠されたみたいだけど、別にナンパなんかされたくないから丁
度良かったんだよ。でもひろみだけはつまらなさそうだよ。
「どうしてこんな美少女に誰も声をかけてこないんだ。TS美少女には虫の如くナンパ野
郎が寄ってくるものじゃないのか?」
「見かけより中身が問題なんじゃないの」
「そうね、内面から滲み出るものが違うのかしら」
あっ、広瀬さんと深山先輩きつい一言。
「やはり乙女のあたしとは違うってことよ」
「五月蠅い、他の連中はともかく七瀬にそんなことを言われる筋合いはないぞ。お前に比べ
ればわたしの方がまだしも女らしいぞ」
もう女らしさを張り合うなんて適応能力高すぎだよ。
「言ったわねー!」
「ひろみ言い過ぎだよ。七瀬さんも落ち着いて」
なんて騒ぎはあったけど、ひろみと一緒ならこの程度は騒ぎの範疇じゃないんだよ。
最初は制服の注文、それは問題なかったんだけど、次の下着売り場で早速ひろみがやら
かしたんだよ。
いつ元に戻るかわからないからむやみ数をそろえるのもどうかなってことで、替えの下
着を当座のものとしてシンプルなのを一応上下5枚づつ選んだんだけど、そうしたらひろ
みが馬鹿なことを言い出したんだよ。
「勝負下着とかは買わなくて良いのか?」
「あんたがなに勝負するって言うのよ。にわか女のくせになま言うんじゃない!」
ほら、七瀬さんが怒っちゃったんだよ。
390 :
普通じゃない :2005/08/25(木) 22:08:11 ID:gKPvFIPA0
「ちっ、まあ良いか、別に今すぐ男とやるわけじゃないし。でももう少しは色気のあるやつはないのか?」
「口が減らないやつね。大体まだ半日しか経ってないのに馴染み過ぎよ。けど男でも女で
も迷惑なのは全然変わらないのね。それにしても違和感なさ過ぎ、変態じゃないの?」
「なんだと、お前こそこのまま男になってもなんの違和感もないぞ」
「なんですってー!」
「まあまあひろみちゃんも留美ちゃんも落ち着くんだよ。こんなところで騒ぎを起こした
らつまみ出されちゃうよ」
「うん、ここはみさきの言う通りね」
『静にするの』
「わかったよ」
「うっ、わかったわよ」
「まあ勝負用はともかく、よそ行き用に少しは可愛いのも必要だと思いますよ」
「うんうん茜の言うとおり。ここはこの詩子さんが選んであげるよ」
「みゅー繭も選ぶ」
「柚木のセンスが信用できるか。ここは長森と里村に頼む」
「言ったな折原君、わたしはこう見えてもお嬢様なんだよ」
「でも、とっひょうしも無いところもありますね」
「茜酷いよ」
「うっふーん」
「って折原!あんたなにやってるのよ」
七瀬さんの大声に驚いて振り向いたら、ひろみはどこからかガーターベルトセットにな
った黒の3点セットとか引っ張り出して、さすがに試着まではしてないけど、体の前に充
てて鏡の前でマリリンモンローみたなポーズとってるよ。ちなみに一人では手が足りない
からブラは繭が押さえてるんだよ。
『幼児体型には似合わないの』
上月さんって結構辛辣な性格かも?
「五月蠅い!体型については澪にだけは言われたくないぞ」
『それそれこれはこれなの』
391 :
普通じゃない :2005/08/25(木) 22:10:13 ID:gKPvFIPA0
まあどうにか下着を選び終わったよ。でも次でもまた騒動なんだよ。
「折原君にはピンクハウスとか似合うんじゃないの?」
「ひろみはゴスロリ系の方が似合います」
「わたしは見えないからスクール水着を着たひろみちゃんを抱き枕にしたいよ」
『澪とおそろいでエプロンドレスを着るの』
なんだかこの人達を連れてきたのは失敗だったような気がするんだよ。
「長森こっちを向くんだみょ」
えっ、今の声ひろみの声みたいだけど。みょってなに?
「完璧文明ハイブリッド猫少女ヒロミョンだみょ。ご主人様に精一杯お仕えするんだみょ」
えっとこんな衣装何処にあったんだよ。ひろみったらクリーム色のエプロンドレス(猫
尻尾装備)に猫耳付カチューシャまで、いったい何のつもり?もう信じられないよ。
『可愛い過ぎなの。これは記録しておくの』
上月さんは携帯で写真撮ってるし。
「あっなんかイメージが。この子を主役に不思議の国のアリスでもやろうかしら」
深山先輩、目がハートマークに……先輩はまともだと思ってたのに。
「不思議の国のアリスって言うより、存在の耐えられない不思議さって感じだけど」
よくわからないけど広瀬さんの的確な突っ込みのような気がするよ。
「えっへん、わたしの方はひろみょんのライバルのシイコンだこん」
なんで柚木さんまでひろみと同じ恰好をしてるの?ドレスの色がピンクで猫じゃなくて
狐だけど。けどこの二人ってなんだかよく似てるよ。まるでひろみが二人居るみたいだよ。
いつの間にか上月さんもひろみとよく似た恰好、でもスカートがキュロットだよ。
『わたしも参加するの。ヒロミョン妹分のヒロミオなにゃ』
これなにかのコスプレ?そう思ったけど即興で別に特定のモデルは居ないんだって。
それにしてもひろみのあの恰好とっても愛らしいよ。あんなの子に御飯を作ってもらっ
たり給仕してもらったりしたら素敵だよ。
「瑞佳様お起き下さい」
なーんて言われて起こされたりしたら最高だよ。
392 :
普通じゃない :2005/08/25(木) 22:10:51 ID:gKPvFIPA0
「ちょっと、ちょっと瑞佳、大丈夫」
はっ!七瀬さんに方を揺すられて正気に戻ったよ。白昼夢を見ていたよ。気をしっかり
と持たないと駄目なんだもん。
「ところであれ放っておいて良いの?」
えっ、広瀬さんの指さす先を見てみたら。
「お客様、水割りのお代りはいかがですか?」
ひろみと柚木さんがバニーさんの恰好をしてるよ。でも二人ともどっちかって言うと胸
が小さいから今一似合ってないよ。じゃなくて、あんなもの何処にあったんだよ。
「さっきはチャイナドレス着てたわよ。全然色気無かったけど」
『これがその映像なの』
上月さん素早いんだよ。へー、ちゃんとお化粧までしてるよ。
「ひろみ浴衣も着てくれなくては嫌です」
「いいけど、茜も着ようよ」
「わたしも参加したいんだよ」
「しょうがないわねみさきはわたしが着付けしてあげる」
もう無茶苦茶だよ。本人が率先してやっているから暴走が止まらないよ。
「今度は振袖いくぞー」
こんな大騒ぎを起こしたら普通怒られると思うんだけど、なんだかお客さんにとっても
評判が良かったらしくてサービスしてくれたよ。このお店の人もお客も普通じゃないよ。
「そう言う瑞佳だって最後にひろみとOLさんの恰好で写真撮ったでしょう」
「七瀬さんも地球防衛軍の女子用制服みたいなの着て記念撮影したでしょう」
なんでそんな服まで置いてあるんだろう?
「みゅー、みんな一緒」
『一緒なの』
393 :
普通じゃない :2005/08/25(木) 22:12:17 ID:gKPvFIPA0
実は怒られなかったのは、他にも似たようなグループが居たせいもあるみたいだよ。
「ゆうにはこっちの方が似合うんだよ」
「名雪は少女趣味過ぎるのよー。ゆうにはこういう活動的な方が似合うの」
「真琴は自分と同じ恰好をさせたいだけだよ、ボクはこっちを勧めるよ」
「あゆちゃんの趣味は子供っぽすぎるよ」
「あら相沢さんにはこっちのシックな方が」
「お姉ちゃんは引っ込んでください。ゆうさんには白のワンピです」
「相沢さんはやはりグレーのスーツです」
「美汐おばさんくさい」
「タイトスカートのゆう、嫌いじゃない」
「あははーやはりここは魔法少女風ヒラヒラドレスですね」
「もう勘弁してくれー」
そんな感じで女の子が一人友達にもみくちゃっていうか着せ替え人形にされて、もうう
んざりって表情をしてたよ。でも着てるときは満更でもないって感じだけどね。
深山先輩に言わせるとあれが正しいTS少女の態度で、ひろみの場合は嫌がるところと
か恥じらいとかが欠けているらしいよ。恥ずかしがったり抵抗してくれないと萌えがない
ってことらしいんだよ。奥が深いよ。
394 :
普通じゃない :2005/08/25(木) 22:14:33 ID:gKPvFIPA0
>>389-393 お買い物編終了、徐々に長森も毒されつつある模様。
>>393は一般的な令として出てきただけでクロスはしない予定。
ってまだ続くんだろうか?
とっひょうしが気になって仕方が無い
>クリーム色のエプロンドレス(猫尻尾装備)に猫耳付カチューシャ
いきなりそっち系に挑戦するか貴様は!w
レイヤー魂持ちだったのか折原。
他のみんなもノリノリだしもうダメだこいつらw
>バニー
>チャイナドレス
>地球防衛軍の女子用制服
こんなのが揃ってるなんてどんな店なんだw
>>396 いや、むしろこれからが始まりだというべきだろうっ!w
地球防衛軍の女子用制服ってあれか。
空飛ぶことを前提にしているにも関わらずミニスカなあれか。
(浩之Side)
四時間目の授業が終わると、学校は戦場と化す。戦士たちの目的はただ一つ、美味いパンをゲットする事だ。
三年生の教室は最上階だから、それだけ戦いにおいては不利なポジションである。だが、俺を含めて三年生にはそれを
補って余りある経験と言うやつがある。廊下や階段、渡り廊下に至るまで、購買部に向かう最短ルートを熟知しているのだ。
この日も、俺は勝者の列に並ぶ事が出来た。戦士たちの垂涎の的、カツサンドと焼きそばパンを入手し、意気揚揚と
引き揚げにかか……ろうとして、俺は意外な人物をそこに見た。
貴子ちゃんだった。購買のパンを買いに来る奴は、坂下とかのごく一部例外を除けば、ほぼ男子ばかりだ。彼女はその
黒い塊を見ながら、途方に暮れた表情をしている。
なんかすごくデジャヴを感じる光景だな、と思いつつ、俺は貴子ちゃんの所に歩み寄る。一応3メートルの距離をおいて。
「貴子ちゃん」
「え? あ、ふ、藤田先輩!」
彼女は驚きの表情で俺を見た。
「パン、買いに来たのか?」
俺の質問に、彼女は「はい……でも……」とうな垂れた。ただでさえ女子には入り込み辛い戦場なのに、彼女には
男性恐怖症と言う致命的弱点がある。あそこに突っ込むなんて芸当は、貴子ちゃんには無理だろう。
「何が欲しいんだ?」
聞いてみると、彼女は俯いて「フィッシュサンドとメロンパン」と答えた。
「メロンパンは何とかなるかもしれないな。ちょっと待ってなよ」
俺は貴子ちゃんの返事も聞かず、今離脱したばかりの戦場に戻ると、わずかな人ごみの隙間を見定めて、強引に身体を
割り込ませていった。これも今までの戦いで身に付けたテクニックだ。
カウンターに着いた俺は、大声でフィッシュサンドとメロンパンの名を叫んだ。何人もが欲しいパンを連呼するのを、
まるで聖徳太子のように聞き分ける購買のおばちゃんが、紙袋にパンを放り込んでいく。それを受け取り、代金を支払った
俺は、また隙間を縫って離脱し、貴子ちゃんの所へ戻った。
「待たせたな。フィッシュサンドは無かったからコロッケパンになっちまったけど、良いかい?」
俺がそう言って紙袋を渡すと、貴子ちゃんはようやく我にかえったように、俺に頭を下げた。
「あ、ありがとうございます、先輩」
「なに、お安い御用さ」
俺はそう言って立ち去ろうとした。すると。
「あ、あの、藤田先輩っ!」
思いもかけないことに、貴子ちゃんに呼び止められた。
「ん? なんだい?」
振り返ると、紙袋を抱いていた彼女は、俺が手に持っているパンを見ながら聞いてきた。
「先輩も……パンですか?」
俺が頷くと、彼女は少し逡巡するように俺と俺のパンと自分のパンを見比べていたが、やがて意を決したように言った。
「じ、じゃあ、わたしと一緒に食べませんか!?」
俺は驚いた。まさか、貴子ちゃんの方からそんなお誘いを受けるとは思わなかったからだ。
精一杯の勇気だったのか、顔を赤くして俯く貴子ちゃん。俺はその勇気に応えずにはいられなかった。
「良いよ。じゃあ、屋上にでも行こうか」
貴子Side
屋上にはうららかな春の日差しが降り注いでいた。先に立って登ってきた藤田先輩は、空いているベンチの一つを確保して
手招きしてきた。わたしの男性恐怖症に配慮してか、ベンチの端のほうに座っている。わたしはその反対の端に腰掛けた。
考えてみると、ちょっと妙な光景かもしれない。
「じゃあ、食うか。いただきます」
先輩はそう言って、まずは焼きそばパンの封を切った。香ばしいソースの匂いが食欲をそそる。
「ん、美味い」
本当においしそうにパンをかじる藤田先輩。わたしも、買ってもらったコロッケパンを開けて、一口かじりついた。
「それ、結構おいしいだろう?」
藤田先輩が微笑みながら聞いてくる。わたしはパンを口に入れたままだったので、無言で頷いた。
「そっか。良かった良かった」
そう言いながら、先輩はパンを食べ、カフェオレを飲む。二つ目のカツサンドを開けると、先輩は聞いてきた。
「それにしても、今日はどうしてパンを? あそこが大変だって話は聞いてなかったかい?」
わたしは首を横に振った。
「今日は春夏さんがお出かけで……お弁当が無くて」
「春夏さん?」
「あ、春夏さんはこのみのお母さんです」
春夏さんはおじさんの仕事に関係して、時々地方へ出かける。いつもは春夏さんにお弁当を作ってもらうんだけど、
今日みたいな日はそれが出来ない。それで、パンを買おうと思ったのだ。
前に悠里がパンを買ってきたことがあるから、わたしでも大丈夫だと思ってたのだ。でも、いざ購買部に行ってみると
足がすくんでしまった。悠里はよくあれでパンが買えたなと思う。そう言うところの要領の良さはうらやましい。
「そっか。大変だったな」
先輩はそう言って、カツサンドに口をつける。わたしはちょっと拍子抜けした気持ちになった。
わたしはあまり器用じゃなくて、料理をするのが苦手だ。その事をタマ兄や悠里には良く指摘されていた。
「俺、そのうちたー子の手料理を食ってみたいな」
タマ兄はそう言ってプレッシャーをかけてくれたし、悠里も
「手料理は男の人を満足させる最終兵器なのよ!」
と主張してやまない。実際、悠里は結構料理を上手に作る。春夏さんには及ばないにしても、わたしよりはずっと上。
だから、先輩にも「自分で弁当作らないの?」とか何とか言われるかな、と思ったんだけど、先輩は何も言わなかった。
その代わり、食べ終わった後のごみを紙袋にまとめて潰すと、わたしの方を向いて別のことを聞いてきた。
「それより、貴子ちゃんは何で俺と一緒に食べようと思ったんだ? 教室に戻って悠里ちゃんと一緒に食べるのかと思ってたけど」
「え……そ、それは」
わたしは口篭もった。確かに、本当は教室に帰って食べる予定だったのだ。
でも……わたしの代わりに、あんなに混み合っているところに二回も入っていって、パンを買ってきてくれた先輩を見た
ときに、とっさに「一緒に食べませんか」と言ってしまっていた。なんて言うんだろう。その場の勢いと言うか、若さゆえの
過ちと言うか……これは悠里がフラれたときに言ってる言葉だけど。
「そ、その……よくわかりません」
結局、わたしはそう言ってごまかしてしまっていた。後先考えずに言ってしまったことに、上手く説明はつけられない。
「そうか。でもまぁ、俺にはラッキーだったな」
先輩はわたしのあいまいな言葉に怒りもせず、そう言ってにっこり笑った。
「ラッキー……ですか?」
何がそうなのかわからずにわたしが首を傾げると、先輩は大きく頷いた。
「そりゃそうさ。教室に帰ってヤローどもと顔つき合わせて食うよりも、貴子ちゃんみたいな可愛い女の子と一緒に食うほう
が美味いに決まってるからな」
……え? 今、先輩なんて言ったの……? 可愛い? 誰が? わたしが?
絶句するわたしの耳に、昼休み終了五分前の予鈴が聞こえてきた。
「お、もうこんな時間か……貴子ちゃん教室二階だろう? 早く戻った方が良いんじゃないか?」
「あ、は、はいっ!」
わたしは立ち上がった。まだメロンパンに手をつけてなかったけど、しょうがない。わたしは先輩にもう一度お礼を言って、
階段を駆け下りた。だから、その事に気づいたのは教室に戻ってからだった。
「あ、パン代……払ってない」
そう、先輩はわたしのパン代を立て替えてくれていたのに、それを払っていなかったのだ。放課後、わたしは先輩の教室
までパン代を払いに行った。でも、そこで応対してくれた関西弁の女の先輩によると、藤田先輩はもう帰った後だった。
仕方なく、わたしも帰ることにした。ポケットの中には、パン代の210円。返すことは出来なかったけど、それを握り
締めながら、わたしは思った。
これを返しに行くことにすれば、いつでも藤田先輩に会える……って。
文章の配分間違えたorz
>364
倉は良く知らないけど、いつもGJ。
>普通じゃない
動じなさ過ぎな浩平に爆笑。
では回線吊って首切ってきます。
>>405 やばいよたー子可愛すぎるよたー子
GJ!!
フラグ立ったーー!w
408 :
名無しさんだよもん:2005/08/28(日) 19:35:12 ID:rNNv31F80
>>405 なんか王道って感じでいいですね。
ところでもう夏も終わりですが、反転ヒロイン達の水着のイメージってどんなもんでしょう。
>>408 牟祢…機能性重視(逆に言うと色気に欠ける)のフィットネス水着。
さつき…ビキニ系。お子様用からグラマラス用まで各種取り揃え。
かずき…メ○ミマガ○ンとかの水着ピンナップからチョイス(って自作?
(浩之Side)
ランニングを終えて、俺は公園の水飲み場に着くと、蛇口を捻った。水は春らしくだいぶぬるくなっていたが、疲れ
た身体にはこれも心地良い。と言うか、いきなり冷たい水を飲むのは、あまり身体によくないらしいし。
飲み過ぎないように少しのどを湿らす程度にしておいて、俺はタオルで汗をぬぐう。あとは神社に行って葵ちゃんと
スパーリングでもしようかというところだ。
ここ何日か、俺が放課後にこんな事をしているのは、恒例の綾香との対決が迫っているからだ。綾香と出会ってからの
一年間、あいつが暇な時に河原で一戦交えるのは月に何度かのお楽しみである。
まぁ、あいつは女の子と言ってもエクストリームのチャンプで、俺はちょっとかじっただけの素人だから、まともな
勝負になるはずは無いんだが、そこは綾香も心得たもので、上手く手加減してくれている。
綾香に言わせると、俺はなかなか筋が良いそうで、本格的にエクストリームに取り組んでみないか、と誘われた事も
あるのだが、今の所はその気にはなっていない。趣味レベルでも楽しいから、というのもあるが、まだ俺自身、将来は
どうしたいのか、っていう明確なビジョンが無いからだろうな。
本当は、ちゃんとそう言うことは考えた方が良いとは思うんだが……何しろ一生の事だ。そう簡単にエクストリームに
賭ける、って決断を下すわけにもいかないよな。
ともかく葵ちゃんのところへ行くか、と思って歩き始めたとき、上の道路から公園に降りてくる階段のところで、
女の子が手すりに乗っているのが見えた。あの制服は中学校のやつか。危ない事をしているな。注意してやった方が
良いだろうか、と思った時、俺はその娘がこのみちゃんだということに気がついた。そして、隣にいるのは……
(貴子Side)
「ねぇ、見て見てタカお姉ちゃん」
二人で連れ立って帰る途中、このみがそう言って階段の手すりに飛び乗ったのは、いつもの公園での事だった。
このみはのんびりした性格と外見によらず、運動神経が良いし体力もある。情けない話だけど、わたしよりもずっと。
そんなこのみが良くやる悪い癖が、こうして階段の手すりを歩いて降りたがる事だった。
確か、子供の頃にタマ兄がこれを良くやっていて、その時はわたしも悠里もかっこいい、と思って真似をしたがったんだっけ。
結局真似できたのは、一番ちっちゃいこのみだけだったけど。
「このみ、やめなさい!」
わたしは注意した。もちろん危ないから、っていうのもあるけど、女の子としてはしたない事だから。なにしろ、
このみが一歩踏み出すたびに、スカートの下の白いものがちらちらと見えてしまっている。誰か男の人に見られたら、
と思うと、わたしだったら絶対に恥ずかしくて出来ない(そもそもそんな運動神経無いけど)し、このみのも見せたくない。
でも、このみはそんなわたしの言葉などどこ吹く風で、いい調子で手すりを降りていく。置いていかれそうになった
わたしは、慌ててこのみを追いかけた。追いついて、もう一度叱ろうとした時。
いきなり強い風が吹いてきた。
「わわっ!?」
このみが風に煽られてバランスを崩す。危ない、とわたしが言うより早く、このみは手すりから足を踏み外していた。
咄嗟にわたしはこのみを抱きとめようとしていた。
でも、それはいくらなんでも無茶だった。いくらこのみが軽いと言っても、わたしの腕力で支えきれるはずが無い。
一瞬だけしか持ちこたえられずに、下げてしまった足が、何も無い宙を踏んで……わたしはこのみを抱いたまま、後ろに
倒れていった。まだ階段の下までは10メートル以上はあったと思う。
せめてこのみだけでも……! と、わたしは腕の中のこのみを強く抱きしめ、襲ってくる衝撃に耐えようとした。
ぽふ
「え?」
思ったより軽い衝撃に、わたしは戸惑った。その時。
「大丈夫か!?」
力強い声がした。見上げると、そこにはとうとう見慣れたあの人の顔があった。
「ふ、藤田先輩……?」
そう、落ちそうになったわたしとこのみを後ろから抱きとめて助けてくれたのは、藤田先輩だった。
「大丈夫そうだな。間に合って良かった」
先輩は安心した表情を浮かべ、わたしたちをそっと降ろした。そして、笑顔のままで握りこぶしを作ると、それで
このみの頭をぽかりと撫でた。
「はう、痛いでありますよ隊長〜」
それほど力を入れたようには見えなかったけど、涙目になるこのみ。すると、先輩は一転してまじめな表情になり、
厳しい声で言った。
「ダメだろ、あんな危ない事をしちゃ。俺がいなかったら、二人とも大ケガをしてたぞ」
その言葉で、ようやくこのみも自分のした事に気づいたらしい。
「ごめんなさい……」
しゅんとなるこのみ。先輩は首を横に振った。
「謝るのは、俺にじゃないだろう?」
それで、このみはわたしの方を振り向いた。
「ごめんなさい、タカお姉ちゃん……」
「わかれば良いわよ」
わたしはこのみの頭を撫でた。先輩が先に叱ってくれた以上、わたしまで一緒になって叱ることは無い。でも、逆に
それが効いたのか、このみの目に涙があふれてきた。
「うっ……ひっく……ごめんなさい……」
ひざが震えている。今になって怖くなってきたのかもしれない。わたしはそんなこのみをそっと抱きしめ、頭を撫でて
やった。そうしながら、先輩の方を見る。
「先輩……どうしてここに?」
見ると、先輩は一度帰ったのか、私服に着替えていた。上半身はTシャツ一枚で、下はトレーニングパンツ。制服の
ときはわからなかったけど、先輩はとても逞しい体つきをしていた。
「あぁ、ちょっとトレーニング中でね。通りがかったのは偶然だけど、良かったよ」
先輩はそう言って笑った。そのうちに、泣いていたこのみも、落ち着きを取り戻してきた。
「もう大丈夫ね、このみ?」
声をかけると、目を赤くしながらもこのみは頷いた。わたしは先輩に頭を下げる。
「ありがとうございました、先輩。じゃあ、これで……」
「あぁ、気をつけてな」
先輩が頷く。わたしは階段を降りようとして……
「……っ!」
急に左足に痛みを感じて、わたしはよろめいた。
「貴子ちゃん!? どうした!?」
先輩が驚いた顔でわたしを支えるが、わたしは立っていられずに階段に座り込んでしまった。
「左足が……」
わたしが言うと、先輩は思わぬ行動に出た。しゃがみこんで、わたしの左足に触ったのだ。
「!」
「ちょっと見るよ」
硬直するわたしに先輩はそう言うと、左の靴と靴下を脱がして、足首の辺りを触りはじめた。
「ん……!」
くすぐったさにわたしが身体を震わせると、先輩はわたしの方を見上げて言った。
「痛かったか?」
「く、くすぐったいです……」
わたしが答えると、先輩はちょっと我慢して、と言いながらわたしの左足のあちこちを触った。その時、わたしは気づいた。
先輩の顔が、ちょうどわたしのスカートの中を覗ける位置にあることに。
顔が一瞬で熱くなる。思わず足を閉じようとすると、先輩が鋭い声で「動かしたらダメだ!」と言った。反射的に足を
止めたわたしは、手でスカートの裾を押さえたが、先輩はそっちには目もくれずに、わたしの左足を診ている。わたしは
逆に恥ずかしくなった。先輩はそんな事しない人なのに、一人で意識するなんて……
そのうち、ふくらはぎの裏側を触られたとき、鋭い痛みが背筋まで走り抜けて、わたしは思わずのけぞった。
「痛いのは今の所?」
先輩の問いに、わたしは頷いた。
「ふむ……腫れてはいないな。ちょっと捻っただけか。念のために帰ったら湿布をはって、場合によっては病院に行った
方が良いかな」
病院、と言う単語を聞いて、このみがまた泣きそうな顔になる。先輩は安心させるように笑った。
「大丈夫。そんなにすごいケガとかじゃないから。一晩寝れば治るさ」
そう言うと、先輩はわたしに背中を向けてしゃがみこんだ。そして、思いも寄らない事を言った。
「一応、無理に歩いたりしない方がいいと思う。送っていってやるから、おぶさって」
一瞬、わたしはその言葉の意味を理解できなかった。おぶさるって……それって、先輩におんぶされるって事?
そう気づいた瞬間に、わたしはたぶんまた真っ赤になったと思う。
「で、でも……」
躊躇するわたしに、先輩はまじめな声で言う。
「無理すると治りが遅くなる。あまりこのみちゃんを心配させたくないだろ? さ、早く」
先輩の声も顔もあくまでまじめで、何か下心があるようには見えなかった。わたしは決意して頷くと、先輩の背中に
身体を預けた。
「よし、行くぞ」
先輩はそう宣言して、わたしの身体を軽々と背負うと、階段を降りた。このみも後からついてくる。しきりに「大丈夫?」
とか「痛くない?」と聞きながら。
「痛かったらそうと言ってくれ」
先輩も言う。でも、足に響かないようにそっと優しく歩いてくれているようで、痛みを感じる事は無かった。大丈夫
です、と答えると、先輩も安心して歩いていく。
(不思議……男の人に背負われてるのに、嫌じゃない)
わたしは思った。先輩の広い背中。微かな汗の匂い。どれも苦手な男の人のものなのに、逆にわたしの気持ちを落ち着かせ、
安心させてくれる。何時の間にか、わたしは眠りの世界に引き込まれていった。
TH2らしいイベントを入れてみようということで手すり登りを。
>406-407
感想ありがとうございます。今回もフラグ立てに行ってますw
>408
今回は王道を追求してみようと思います。
水着ですが……
浩子…意外にも大人しいワンピース
はじめ…ビキニ。しかもサイドがヒモ
貴子…学生らしくスク水
こんな感じですかね。鍵ヒロインについては誰か補完よろ。
では回線吊って首切ってきます。
>>415 この三人だけでよい
鍵ヒロインはどうでもいい
>>410-414 やっぱ何だかんだ言って「頼れるお兄さん」系に弱いんだな貴子ちゃん。
タマ兄の影響と見て間違いあるまい。
>水着ネタ
朱鷺乃はエロ水着でもわりと平然としてそうなので、逆に、よくサイズが合うのがあったなって感じの
フリフリ可愛らしい系水着を強制してみるとかw
418 :
ジャックダニエル:2005/08/30(火) 11:36:07 ID:h5xAUD0a0
>>417 NO!むしろ朱鷺乃は競泳水着とかシンプルなタイプをエロく着こなすとみた!
スタイルだけでいえば浩子とかの方が上だけど、
高校生とも思えん妙に成熟した艶っぽさがあるって感じか?>朱鷺乃
>>415 えらく浩之が格好いいな。グッジョブ。
チチチ…と、鳥の鳴き声が聞こえる。
窓から差し込んであたしの瞼を焼くのは眩しい朝日。
うーん、もうちょっとだけ…。
…じゃない! いっけない、早く朝ご飯作ってお弁当も作らないと兄貴に殺される!
もう今頃は稽古で起きてる時間だわ!
あたしは慌てて起きた後ドタドタと形振り構わず台所へと駆け込んだ。
「あら、雄二今日は珍しく早いじゃない? どうしたの?」
「―……」
走りこんだ先の台所に立っている綺麗な人に、あたしは激しく脱力した。
ああ、そうだ。あたし、今雄二っていう男の子だったんだ。
で、兄貴は環さんっていうお姉さんであたしなんかより余程綺麗でたぶん料理も上手。
あたしが作る必要なんてどこにもないんだった。
「あ、ごめんなさい。今は雄二じゃなくて…えっと……」
「悠里です。すみません、こんな朝早くに」
「あ、そうそう悠里さん。ごめんなさいね、私ったら。それにもしかして起こしてしまいましたか?」
「あ、いや、そんなんじゃないんで気にしないで下さい! 早く起きるの、習慣になってるんです…」
「そうですか、雄二とは大違いでとてもいい心掛けですね。その体の本来の人格である
雄二ったらもう高校生にもなるのにいつまで経っても朝起きれなくて…」
「いえ、あたしも本当は朝苦手なんです。でも兄が厳しい人で…。
それに、昔から家の仕事は女がするものだと躾けられてきましたから」
「あら、そうなんですか。……あの、もしよろしければ、なんですが」
「はい?」
環さんはにっこりと綺麗な笑みを浮かべる。それは兄貴とは似ても似つかない。
「一緒に作りませんか? うちは女の姉弟がいなかったので一度やってみたかったんです」
「あ、あたしでいいんですか!?」
「ええ、勿論です」
優しい環さん。こっちのあたしは幸せ者ね。
経験からようやく巧くなってきたとはいえ明らかにあたしより年季が入ってそうな環さんの手助けが
どれほどできるか分からなかったけど、あたしは環さんから渡されたエプロンを身に付ける。
でも年頃の男の子がエプロンって微妙な構図。
「…何だか雄二のそんな姿って初めて見るから異様に違和感があるわ…」
環さんもこの姿に微妙なことを感じるのか、何とも言いがたい表情をしていた。
「気持ちは分かります…」
「せめて体も女の子に変わっていれば心置きなくぎゅーといけたんですけど、雄二の体じゃあねえ…」
はあ、と溜息を吐く環さん。美人は溜息でも美しいわ。
「じゃあ、悠里さんはお味噌汁をお願いしますね」
そう言ってそれぞれに作業を始めるあたしたち。
環さんが時折こちらを覗き込んでは何やらうんうんと頷いていた。
「やっぱり雄二じゃ…ないんですね。雄二は包丁すらまともに握ったことないですから、そんなに手際良くできませんし。同じ体でも大違いです」
「…こっちのあたし…いや、雄二さんってどんな人なんですか?」
「雄二ですか…。そうですね、雄二はただのアホです。以上」
「―…それだけですか?」
「それだけです。全く心配がないといえば嘘になりますが、あの子はそれなりに社交能力もあるし、
図太さとしぶとさだけは人並以上なのでたぶん今も適当に何とかやってるでしょう」
にっこりと環さんはそう言ってまた手を動かし始めてしまった。
アホ。ただのアホ。言わばあたしと同一人物と言っても過言じゃないのに。
いやいや、環さんと兄貴に違いがあるように雄二とやらとあたしにも違いがあるはず。
いっぺんどんな奴か見てみたいわ。兄貴には負けるとはいえ外見はそこそこイケメンで結構好みだと思ったのに。
……アレはついてるけど。
「ところで悠里さん? 先ほどお兄様がいらっしゃると仰ってましたが、その方はどんな方なんですか?」
「兄貴ですか? うーん、兄貴はとにかく暴力的! そして有害な毒吐き生物!
傍若無人の暴君でいいのは外見だけですよ。環さんとは似ても似つきません」
「―……」
ゾクリ。何か今物凄い冷たいものが背筋を駆け抜けた気がするけど気のせいかしら。
うん、たぶん気のせいね。環さんはさっきと同じようににこにこと笑ってるし。
「あ、悠里さん。お味噌汁を作り終わったらタカ坊を起こしてきてくれないかしら?
雄二の部屋…と言っても分からないかもしれないけど、今日はそこで泊まっているので。
ふふ…昨日は貴方のことが心配だって言って夜遅くまでここに居てくれたんですよ」
「はあ…。あ、部屋なら大丈夫です。分かります」
何、意外と心配性っていうか面倒見がいいんじゃないの、アイツ。
でも余計なお世話! あたしは誰かに心配されるほど弱くはないの。
それにしても、泊まったってことはアイツはこの家では暮らしてないってことかしら。
まあアイツは男だから流石に強姦未遂なんてことにはなってないんでしょうけど。
こっちの世界って平和だわ。
兄貴の言葉の暴力に怯えることもないし、貴子を守る必要もない。
…でも、こんな平和な世界に本当にあたしなんて必要あるの?
あたし一人いなくたって世界は変わらず動いていて、何一つ困らない。
あたし、一体何の為に生きてるの? 誰の為に生きてるの?
向こうで暮らしている時は必要とされるのが当たり前になりすぎててこんな事、考えたこともなかった。
あたしはたぶんきっと、与えられた生活に何の疑問や不満も抱かずに生きてきたんだ。
いまさらそんなことに気付いた所で、どうしたらいいかなんて、分からないのに。
「お前さ、何ぼーっとしてるわけ?」
「は、はいいッ!?」
あたしの迷走は突然かけられた声によって妨げられた。
声のした方を見れば例のアイツが。
「ちょ、ちょっと驚かさないでよ!」
「別に驚かせてねえよ。お前が勝手に驚いただけ」
何て勝手な言い草! 人の思考回路を踏みにじっておいて!
でもあのまま考えててもきっと答えなんて出なかったんだ。
なら今は流れに身を任せるのが一番いいのかもしれない。
「あら、タカ坊早いのね」
「んー、この後このみ迎えに行かなきゃならないからさ。雄二の部屋にある時計の目覚し機能勝手に使わしてもらった」
「雄二もタカ坊くらいしっかりしてくれればいいんだけどね。あ、待ってて今、朝ご飯運ぶから」
そう言って環さんは三人分の朝食を盛り始めたからあたしも三人分のお味噌汁を盛った。
環さんの作ったご飯はあたしが普段作る物よりすっごくレベルの高い物に見えた。
作ってる物はそんなに変わらないのに。
「ん、タマ姉ありがと」
「ちゃんといっぱい食べるのよ。タカ坊はまだまだ食べ盛りなんだから」
「いや、朝からそんなに腹に流し込めないし…」
環さん、本当にいいお姉さんって感じ。うちの兄貴とは大違い。
あ、でもうちの兄貴も貴子から見たらいい兄貴なのかもしれないわね。貴子には甘いし、あの人。
「悠里さんはこちらへどうぞ。いつも雄二の座ってる場所で申し訳ないんだけど」
「あ、いえいえお気遣いなく」
「ってゆーか、お前、さっきから思ってたけどすげーかっこだな」
「仕方ないでしょ、元は女の子なんだから」
やっぱり大の男がエプロンつけてるって結構異質みたい。
でも仕方ないわよね、中身は女なんだし。
けどこいつといると不思議と気が楽。昨日会ったばかりなのに何故か何でも言えちゃうから不思議。
「いただきます」
「いただきまーす」
「いただきます、と」
そう言って朝食を口に運ぶ。
…やっぱり環さんのご飯は美味しい。流石は環さんって感じ。
「…ん? タマ姉、もしかして味付け変えた? この味噌汁いつもと違うよな。まあ、俺はどっちかって言うとこっちのが好きだけど」
「あら、それは悠里さんが作ったのよ?」
ブ――ッ!
失礼なことにアイツが思いっきり噴いた、味噌汁を。
「ちょ、アンタ汚ッ!」
「タ、タカ坊…!」
「ゆ、雄二の作った飯!?」
「ちょ、ちょっとそりゃ体は男かもしれないけどあたしは女だって…!」
「タカ坊」
バッと環さんの手が伸びる。
あたしの脳裏に忘れかけてた悪夢が蘇る。まさかあれは…!
「〜ッ、イタタタタッ! タ、タマ姉死、ぬ…!」
「タカ坊。私の可愛いタカ坊は人様の作った食べ物を粗末に扱うような子じゃなかったはずだけど? 私の気のせいだったかしら?」
「わ、分かった分かった! 俺が悪かった! です!」
「うん、分かればよろしい」
にっこりと微笑んでようやく環さんはアイアンクロー地獄からアイツを解放する。
……やっぱり環さんは兄貴の女版かもしれない。
笑顔の迫力とか有無を言わせない威圧感とかそっくりだわ…。
あの時あたしが見た暴力女な素顔も幻じゃなかったのね…。
何か体に教え込まれた習性のせいかこの人には絶対に逆らっちゃいけない気がしてきた。
「じゃあ、気を取り直して…はい、タカ坊、あ〜ん?」
「や、やめろよ、タマ姉…。自分一人で食べれるよ、それくらい」
「駄目よ。また噴き出したりしちゃ大変でしょ? 恥ずかしがらなくてもいいのよ? タカ坊はいつまで経っても可愛いタカ坊なんだから」
「あ、あいつが見てるだろ…!」
「あん、もうタカ坊ったらいつまで経ってもウブなんだから」
ションボリとした顔でアイツに伸ばした自分のお箸を自分の口に運ぶ環さん。
…今の、何?
何かすっごい新婚さんみたいな雰囲気だったんですけど。
こっちの環さんとあいつって向こうと違っていい感じだったりするの?
向こうは明らかに兄貴の片想いっていうか、貴子の方が恋愛云々以前の問題って感じだったけど。
「おい、お前、勘違いするなよ。タマ姉と俺はただの幼馴染なんだからな」
さらに釘を刺すアイツ。ますます怪しいわ。
でも気のせいかしら? 今のアイツの言葉に環さんがちょっとだけ傷ついたような顔をした。
兄貴が貴子を好きなように、環さんもアイツが好きなのかな?
でも正直全然似合ってないわ、この二人。だってアイツに環さんは勿体無さすぎる人だもの!
アイツの相手は犬辺りがお似合いね、うんうん。
「…と、タマ姉、俺そろそろこのみ起こしに行かなきゃ行けないから行くよ。家にも寄らないと行けないし」
「あら、そう。じゃあまた後でね。急いで転んだりしたら駄目よ」
「もう子供じゃないんだから大丈夫だって」
「ちょ、ちょっとアンタ!」
あたしはそのまま席を立とうとするアイツの肩を掴んで引き止めた。
「…何だよ?」
「―…さっき味噌汁噴いたのは許せないけど…昨日心配してくれたんですってね。その事には感謝しとくわ。ありがと」
「―……」
な、何よ、あたしが素直にお礼言ったら変だっての!?
言ってて自分でも変だと思うし、恥ずかしいとも思うわよ!
でも、やっぱりお礼くらい言うのが礼儀じゃない…。
思わずプイっと顔を逸らすあたしの頭にポンと軽く手が置かれる。
「うん、どういたしまして」
アイツから返ってきたのは憎まれ口でもなく、予想外に何かやたら可愛げのある笑顔だった。
ああ、駄目だ。貴子に対してもそうだけどあたしってこういうタイプって憎めないんだ。
そういえば笑顔がよく似てる気がするわ、この二人。
「今度また味噌汁作ってくれよ。今度はちゃんと飲むからさ。それとお前、素直になった方が可愛げあるよ」
「…ッ! 余計なお世話!」
な、何でこんな恥ずかしい台詞を素面で言えるのよ、こいつは…!
ああ、駄目。こんな言葉、言われ慣れてないから顔が火照ってきた。
こいつになんて死んでもトキメキたくなんてないのに…!
あたしは心の中で運命の人、緒方理雄を思い描きながら無理矢理アイツの笑顔を打ち消した。
先行きは大いに不安いっぱいです。
話進むの遅くて申し訳ない…。
水着ネタで鍵キャラを想像してみるものの
水着なんて人生で一度も着たことのない常に黒シャツな往穂さんとか
ビキニ着ても可哀相なことにしかならない陽子とかしか想像できなかった…orz
ゆうは秋人さんが相手だったら頑張ってビキニとか着そうだ。
個人的には初音君の為に頑張る裕子さんが見たい所。
>>420 朱鷺乃は何かフェロモンが出てると見たw
428 :
名無しさんだよもん:2005/08/31(水) 02:58:16 ID:KZpZXf5q0
水泳の授業があった場合の男子学生の反応。
浩子の場合
男子A「うぉー、さすが藤田色っぽいなぁ」
男子B「揉みまくりてー」
男子C「まじ、スタイルいいよな」
朱鷺乃の場合
男子A「ごくっ……」
男子B「木田ってやっぱしてるのかな」
男子C「(どんな男としてるのかな)」
浩子の場合は大声で明るく自分を主体に有り得ない妄想を、
朱鷺乃の場合は小声でひそひそと自分達が知らない世界を知っているモノとして
気楽な妄想を働かせられない。
二人の差はそんな感じかなと妄想するしだいです。
なんか納得
朋美の場合・・・あqwせdrftgyふじこl
>ビキニ着ても可哀相なことにしかならない陽子
親友とパン屋の女主人があんな感じなだけに、余計にみじめな思いをしてしまうわけですね。
心情とかは女の子なのに肉体が……なもんで、すげぇ微妙な絵面しか想像出来なくてクマった(;´∀`)
>>421-426 なんか面白そげな雰囲気になってきたな。
…今の悠里の体が雄二のそれだってことを考えると怖いビジュアルになるがw
あと元バスケ選手の朋美は水着姿になるとお腹のラインとかすっきり締まってて、
陽子にはさらなる追い討ちとなったりして。
さつきなんかは完全にインドア派で身体動かしてなさそうだから、
水着を着るのをためらうだろうな。身体のラインが少してふてふしてて。
いや、普段バニー服やメイド服着せられてるし、それなりに気を使ってるのでは。
(貴子Side)
ノックの音がした。わたしは読んでいた本を閉じて、どうぞ、と言うと、ふすまが開いて春夏さんが
顔を見せた。
「貴子ちゃん、足痛くない?」
「はい、大丈夫です」
わたしは頷いた。ここは客間。このみの部屋は2階で階段を使わなきゃいけないので、今夜は念のため
にこっちに寝る事にしたのだ。
ちなみに、このみは事情を知った春夏さんにものすごく怒られたので、いまはしゅんとなって部屋に
篭もっている。
「なら良いんだけど。それにしてもびっくりしたわ。貴子ちゃんが男の子に背負われて帰ってくるなんて。
しかもあんな安心した寝顔で」
わたしは顔が熱くなるのを感じた。今日何回目だろう?
「もうその話はやめてください、春夏さん」
恥ずかしさにたまりかねてわたしが言うと、春夏さんはうふふ、と笑った。
「良いじゃない。短い青春、しっかり楽しまないと。それに、あの男の子なら、貴子ちゃんの母親代わり
として私も安心できそうだし」
藤田先輩はわたしを家まで送ってくれた後、ケガをした経緯には触れずに、どう処置したら良いかだけ
を説明して帰ってしまった。せめてお茶くらい、という春夏さんの申し出も丁寧に固辞して。その態度
は春夏さんにも感銘を与えたみたい。
「こうなると……このみにはまだ早いと思ってたけど、貴子ちゃんにはそろそろ伝授する必要があるかな?」
「何をですか?」
伝授、と言う言葉に興味を引かれて私が聞くと、春夏さんはびしっとどこかあさっての方向を指差し、
高らかに宣言した。
「秘伝、必殺カレーよ!」
「ひ、必殺カレー?」
その奇天烈な名前に、わたしは思わず間抜けな声を出してしまった。
「そうよ。私がお父さんをゲットしたときも、このカレーを使ったの。効果は抜群よ♪」
にこにこ笑う春夏さん。
「どんな男の人でも、お前のカレーを一生食べたいと言ってくれる。だから必殺カレー」
何が「だから」なのか良くわからないけど、要するに、それは藤田先輩にそのカレーを食べさせれば、
わたしに一生ついてきてくれる、と。それって……つまり……
「え、いや、あの、そんな」
混乱するわたしに、春夏さんが笑いかける。
「まぁ、おいおいそのうちにね。貴子ちゃんも興味が無いわけではなさそうだし」
わたしはその言葉に、手にしていた読みかけの本……料理のレシピ集を隠すようにして置いた。
「こ、これはたまたまあったから……」
「うふふ、照れない照れない」
何を言っても春夏さんには通用しそうも無い。わたしはため息をついた。
「じゃあ、あまり遅くならないうちに寝なさいね」
春夏さんはそう言うと、湿布を交換してくれた。おやすみなさい、と挨拶を交わして、電気を消す。
(……なんか眠れない)
いつもこのみと寝ているからか、それとも先輩の背中で寝てしまったからか、あまり眠くない。しばらく
目を閉じてみたけど、やっぱりダメみたい。
仕方なく、わたしは無理に寝ようとするのをやめて、読みかけの料理の本を開いた。それは、季節の
お弁当についての本。
(もしお弁当を作っていったら……先輩食べてくれるかな)
一人暮らしをしている関係で、先輩はいつもお昼はパンを買っていったり、学食で済ませたりしてる
みたい。それなら、お弁当はきっと喜んでくれると思う。
いくつかのお弁当を作る所を頭の中で想像してみる。それを食べて、美味しいよって言ってくれる先輩。
そんな空想を膨らませているうちに、ようやく眠気が襲ってきて、わたしはちょっと幸せな気持ちで眠りについた。
(浩之Side)
あふ、とあくびを漏らしながら、俺は学校への道を歩いていた。
ただし、二週間くらい前と違うのは、一緒に行く相手が増えた、って事だな。貴子ちゃんと悠里ちゃんだ。
去年の一年生で知り合いになったのが、超能力者の琴音ちゃん、格闘家の葵ちゃん、ロボットのマルチと
変わった娘が多かったせいで、志保の奴が今度はどんな変人だとか失礼な事を抜かしていたが、まぁ
あの3人に比べれば、貴子ちゃんと悠里ちゃんは普通だよな。
今のこの3人の組み合わせだと、悠里ちゃんが賑々しく話題をリードして、俺が相槌を打ち、貴子ちゃんが
微笑みながらそれを聞いている、と言う感じだ。悠里ちゃんは最初志保っぽいのかな、と思ったけど、
どっちかと言うとレミィに似ているようだ。ごめんよ悠里ちゃん。あんなのと一緒にして。
「え、藤田先輩も"Heart to Heart"聴いてるんですか?」
共通の話題を見つけたと喜ぶ悠里ちゃんに、俺は頷く。
「ああ、毎週聞いてるよ。先週のねこっちゃの失敗談は大爆笑だったな」
「はい、夜中にお腹抱えて笑ってたら、父さんにうるさいって怒られちゃいました」
俺と悠里ちゃんが盛り上がっていると、貴子ちゃんが聞いてきた。
「"Heart to Heart"って、なんですか?」
「ん? 土曜の夜にやってる深夜ラジオだよ。辛島美音子っていう人がパーソナリティなんだけど……」
俺が解説すると、悠里ちゃんが相槌を打つ。
「貴子も聞いてみなさいよ。最高に面白いわよ」
すると、貴子ちゃんは困った表情をした。
「うーん……聴いてみたいけど、やっぱり他人様のうちだから、あまり夜にうるさくするのは……このみも寝てるし」
「だったら、このみにも聴かせれば良いのよ」
悠里ちゃんが貴子ちゃんの懸念を一蹴する。まぁ、それとは違うけど、俺も貴子ちゃんがあまり柚原家の
人たちに遠慮する事は無いんじゃないかと思う。この間このみちゃんのお母さんだと言う春夏さんにも
会ったけど、貴子ちゃんの事を実の娘同様に思ってるみたいだし。
それにしても、ああいう若いお母さんが、ひかりさん以外にいるとは思わなかった。お姉さんかと思ったよホント。
「そういえば、藤田先輩はお昼ご飯はいつもパンなんですか?」
悠里ちゃんが唐突に話題を変えてきた。俺は頷いた。
「ああ。一人暮らししてると、なかなかね」
以前は、あかりがお弁当を作ってきてくれた事もあったっけ。あの頃の食生活は恵まれていたな。
「そうですか……それじゃあ藤田先輩……」
「ん? なんだい」
悠里ちゃんが珍しく語尾を濁した。俺が言葉の続きを促すと、悠里ちゃんはちょっと顔を赤くして、
叫ぶように言った。
「その、今日はお弁当のおかずを多めに作っちゃったんです。良かったら一緒に食べませんか!?」
驚いたのか、貴子ちゃんがびくっと震える。まぁ、俺もちょっと驚いたが。
良く見ると、悠里ちゃんの鞄は大きく膨らんでいた。全部がお弁当とは思わんが、かなりの量がありそうだな。
「わかった、ゴチになるよ」
俺は答えた。正直、まともなメシにありつけるのはありがたい。
「本当ですか!? やったぁ!」
はしゃぐ悠里ちゃん。そうまで喜ばれるとは思わなかったな。今日の昼飯が楽しみだ。
昼休み、俺が屋上で待っていると、悠里ちゃんが大きな弁当箱を提げてやってきた。貴子ちゃんも一緒だ。
手には彼女らしい、控えめな大きさの弁当箱を持っている。
「お待たせしました、藤田先輩」
「いや、俺も今来た所だよ」
なんかデートの時のお約束みたいな会話をしながら、俺たちはスペースを確保した。悠里ちゃんが
持ってきたビニールシートを敷く。用意の良い娘だ。
「さぁ、どうぞ召し上がれ!」
そう言って彼女が広げた弁当は、確かに美味そうだった。おにぎりの他にサンドイッチもあり、おかずは
定番の唐揚げやちくわのごま炒め、たこさんウィンナー、卵焼きと見た目にも豪華である。
「じゃあ、いただきます」
俺は割り箸を割ると、まずは唐揚げから攻めてみた。
うん、美味い。時間が経っているのにまだ衣がパリッとしている。そう感想を言うと、悠里ちゃんは
嬉しそうな顔をした。
「えへへ、良かった。結構自信作だったんですよ」
「え、悠里ちゃんが自分で作ったのか? やるなぁ」
俺は感心しながら卵焼きを食べる。寿司屋で出るような、甘い味付けのふわっとした卵焼きだ。これもいける。
俺は一品ごとに悠里ちゃんの腕前を誉めた。1年生でこれなら、頑張ればあかりに匹敵する腕前になれると思う。
いや、お世辞抜きで。まぁ、そういう比べるような事を言うのは失礼だろうから、言わないけど。
「そんなに喜んで食べてもらえると、あたしも張り合いがあります。明日も作ってきますね」
「え、そりゃ悪いよ」
やけに張り切っている悠里ちゃんに俺はそう言ったが、多分断っても作ってくるだろうな……まぁ、
これで毎日昼飯代が浮くし、助かるけど。
そんな事を考えていた俺は、ふと貴子ちゃんの様子がおかしい事に気がついた。あまり弁当に手をつけず、
暗い顔をしている。
「貴子ちゃん、具合でも悪いのか?」
声をかけると、貴子ちゃんは驚いたように顔を挙げ、それから首を横に振った。
「いえ、そんな事無いです……」
そう言って弁当を食べ始める。本当に大丈夫かな? と思ったが、弁当を食べる横顔に、なんだか強い決意
のようなものが感じられて、俺はそれ以上声を掛けられなかった。
と言うことで、たー子、先制攻撃を受ける、と言う話でした。
なんか三人でお弁当ってKanonの舞シナリオを思い出すな……
>416
まぁそう言わずに。
>417
本人も気付いてない刷り込みって奴ですね。
>418-419
激しく同意
>420
まぁ、本編から1年経って成長してるって事で>浩之
>427
GJ! 次は雄二in悠里編ですね。楽しみにしてます。
それでは回線吊って首切ってきます。
>>441 あまり作品の感想にはなりませんが、、、東鳩2で一番残念だったことがheart to heartが無かったこと。 何となくその無念が解消された気分です。GJ!w
444 :
倒錯カノン:2005/09/02(金) 22:05:06 ID:j8Qo3tvx0
俺は相沢祐一だ。なに、確かに男子用制服は着ているがどう見ても女にしか見えない?
まあそれも仕方がないよな、戸籍上も生物学的にも女だし。
けどまあいろいろと事情があるんだよ。詳しいことはそのうち説明するつもりだが、と
りあえず今日は転校初日なんだな。
さて、そこで転校の挨拶なんだが。
「今度転校してきた相沢祐一です。見ての通り性別は女ですが女の恰好をするつもりあり
ません。そこのとこよろしく」
自分でも型破りな挨拶だとは思うが、こういうことは最初にガツンとやっておいた方が
いいんだ。けど案に相違して全然反応がないぞ、どうも変なクラスだな。
でまあ反応がないままに指示された通りに空いている席に着く、ふーんアンテナみたい
な癖毛の金髪男の前か。なんか妙に可愛らしい顔だけどな。
一応周囲の奴らに軽く挨拶して席に着く、それで担任が出ていくと直ぐに後の金髪男が
声をかけてきた。
「よう、俺は北川潤。お前面白いやつだな、これから仲良くしようぜ」
まあ転校生としては近くに友好的なやつが居るのはありがたいよな。こいつは気のいい
やつのようだし仲良くしておいて損は無かろう。
「こっちこそよろしく。まあつれションにはつきあえないけど、それ以外では俺のことは
男だと思ってくれ」
「いやつれションは出来るぞ、残念なことに俺はまだ女だからな」
「えっ、まだ女?どういう意味だ?」
そう訊ねた途端に一時限目の担当教師が教室に来てしまった。
「悪い、詳しくは後で説明するわ」
「あっ、ああ」
えらく気になるひきで、もともと授業の進行速度が違うせいも有り、教師の言葉なんか
全然耳に入らなかった。
445 :
倒錯カノン:2005/09/02(金) 22:06:23 ID:j8Qo3tvx0
それで休み時間だ。
「北川、さっきの話はどういう意味だ?」
「それはだな、俺は性同一性障害なんだ。体は女なんだが、どうしても自分が女だとは思
えないんだ。相沢も俺の同類なんだろう?」
ああそう言うことか。けど俺はちょっと違うんだな。俺の場合は自分は女であることは
認めている、ただ女であることが嫌なだけだ。こうなったのは俺の生い立ちが影響してる
んだが、一言では言い難いんだよな、さてどう説明するべきだろう。
「いや、俺は別に自分が女であることは否定してないよ、ただ女の役目に嫌悪感を持って
るだけだ。別に肉体的に男に成りたいわけじゃない。百合のケはあるかもしれんけどね」
この説明でわかってもらえると良いんだが。
「ふうむ、まあ人にはいろいろ事情があるよな。まっ心配すんな、うちの学校は結構いろ
んなやつが居るから、ただの服装倒錯とか、ニューハーフとかな」
「そうか、なんだかすごい学校だな。あっそうか、それで俺の挨拶に大した反応が無かっ
たんだな」
「正解、なんか理事長方針らしいんだが、俺たちはぐれものには住みやすいところだ」
「そうか」
なーんて話をしてたら二時限目が始まってしまった。
二時限目もちんぷんかんぷんでついつい考え事してしまっていた。そう北川との話がき
っかけで、昔のことを思い出していたんだ。
俺は北川みたいに性同一性障害と言うわけではない。
別に自分が肉体的に女であることは否定していない。女の体に拒否感があるわけでも、
男の体が欲しいわけでもない。ただ社会的に女の役目を果たしたくないだけだ。
だから屈託無く女の子している従姉妹の名雪が少々疎ましかったりもする。まったくも
って名雪の責任ではないから、自分でも理不尽な感情だと思うのだけど。
446 :
倒錯カノン:2005/09/02(金) 22:07:42 ID:j8Qo3tvx0
俺は10歳まで自分が男だと信じていた。そう11歳の誕生日の3日前に初潮が来たあ
の日まではな。
あの男=俺の父親(そうは認めたくない存在だが)とされている人間は、どうも人間と
してどこか欠けた部分があったらしい。少なくとも俺が生まれて以降は完全におかしくな
っていたのだと思う。
俺が生まれたとき、俺が女だと知り、かつ母親がもう子供を産むのが無理だ知ったあの
男は、俺が男だと周囲に偽って、戸籍も男として届けると言う暴挙に出た。
まあ当然違法なんだが、自分の経営する病院での出生だから院内での権力を使ってどう
にかしたらしい。詳しい手口は知らないし、まあ別に知りたくもない。
それで母親の方は完全に体をこわしていて、俺を抱くこともなく半年後に死んでしまっ
たんだそうだ。だから俺が男だと思ったまま死んだらしいが、真相を知ったらどう思った
んだろうな。
母親の死後あの男は更に常軌を逸していったらしい、多分俺が2、3歳の頃だろうが、
ニセのペニスを作る手術を行ったんだそうだ。だからあのころ俺は立ちションが出来たん
だ。おまけにご丁寧なことには、なにやら口実を作って大きくする手術を4歳くらいの時
にやったようだ。まあ酷い話だよ。
俺も小学校3年くらいになると、他の子となにかちょっと違うな、変だなとは思ってい
たんだが、医者であるあの男に個人差だと言われるとそんなものかと納得しちまったんだ
よな。なんで俺は尻の穴以外に変な穴が有るんだろうとは思っていたけど、まさか自分が
女であの穴が膣だと思わなかったぜ。
でまあ、ある日学校で初潮が来たことで、俺が女だと判明し、同時にあの男の偽装工作
も発覚した。俺はそのままあの男の元から引き離さされ施設に収容された。あの男の方は
精神病院行きになったそうだ。その後あの男がどうなったのかは知らない、死んだという
話は聞かないからまだ入院してるんだろう。
ところで後で思ったんだが、初潮が来たのが学校でなくてあの男の前だったら俺はどう
処置されていたんだろう?どうもろくなことには成りそうもない、本当のところは想像も
したくない話だな。
447 :
倒錯カノン:2005/09/02(金) 22:08:33 ID:j8Qo3tvx0
当然だが俺はそれ以後戸籍上は女になった。ただ名前は読み方だけは「ゆい」に変えた
が祐一のままだ。女性としての自覚を促す意味でも変えた方が良いと勧められたんだが、
この名前は母親が付けてくれた名前だそうで、どうしても変える気にならなかった。
あの男のことは思い出したくもないが、この名前だけが記憶にも残っていない母親と俺
を結ぶ唯一の絆なんだ。そう主張して頑固にそれで通した。
それからはカウンセリングを受けたり、ニセのペニスを取り去る手術をしたり、いろい
ろと女性に必要な知識を教わったりして、中学校入学の前後にはまあ一応(少なくとも表
面上は)女で有ることを受け入れられるようになってはいた。まあ当然ながら幾ばくかの
違和感はあるし、あまり普通の女子中学生では無かったわけだけど。
なおあの事件から一年ほどしてからは俺は叔父(父の弟)の家に引き取られている。
その後はどうにか女の子の生活にも適応して来ていたんだけど、俺が女であることを決
定的に嫌悪する原因となる出来事が起きた。
そう、俺が15の時にお世話になっていた叔父の家で5歳上の従兄弟に暴力的に犯され
た。そしてその関係は、俺の妊娠そして流産によりそのことが叔父一家にばれるまで一年
近く続いたんだ。
それで叔父の家に居づらくなった俺は、この北の街に叔母である秋子さんを頼ってやっ
てくることになった。
従姉妹の名雪はこんな事情は知らないはずだ、母の死は知っているけど、親父は研究の
ために海外に行ったと言う事になっている。別に教える必要もないと思うし。
ちなみに名雪とは子供の頃男として遊んだことがあるから、俺が昔は男(もどき)だっ
たのは知っている。だから俺が実は仮性半陰陽で、本当は女だとわかった。けれどその状
態に上手く適応できていない、という風に秋子さんが説明しているらしい。
そんなわけで不幸な従姉妹に名雪は良くしてくれる、けど名雪の明るさが今の俺には疎
ましいんだ。そしてそう思ってしまう自分が、それ以上に疎ましい。
もう一度自分の性をちゃんと受け止められる日が俺に来るんだろうか?
448 :
倒錯カノン:2005/09/02(金) 22:09:36 ID:j8Qo3tvx0
わたしは転校してきた従姉妹の祐一をぼんやりと眺めていた。
そう、わたしは水瀬名雪、外見上も戸籍上も女だ。けれど本当は、染色体は女性ではな
い。実はわたしは男だったんだ。
15になっても生理が来ないから病院で調べてもらったら、実は男だったってわかった
わけ。なんでもお母さんの胎内に居たときにホルモンの関係かなにかで間違って女性器が
構成されてしまったんだそうだ。
そしてわたしは男性と女性のどちらを選ぶかの選択を迫られた。でもわたしの答は最初
から決まっていた。15年間女として生きてきたんだよ、今更男になんかなれないよ。
そう主張してわたしはそのまま女として生きることになった。ただ胎内にあった睾丸は
摘出された。よくわからないんだけど、放っておくと癌化するからってことらしい。
そして今でもわたしは女の子として生きている、でもホルモンの投与は受けなければな
らないし、子供を作ることもできない。
それでもわたしは良かった。だって男になってしまっては祐一と一緒になれないんだか
ら。そう、わたしが女を選んだ本当の理由はそれだった。
けれどわたしは知らなかったんだ、その時既に祐一が女の子になっていたことを。
7年ぶりに祐一がこの街にやってくることになったとき、お母さんが祐一が女の子にな
っていることを教えてくれた。その時わたしの人生は終わったんだと思う。
おまけに祐一は女の子なにの男の子として振る舞っているらしい。
そんなの許せないよ、わたしの選択はなんだったの。でもお母さんの説明してくれた祐
一の境遇を聞いたら……そうだよね祐一の責任じゃないんだよね。
わたしが祐一の力になってあげなくてはいけないんだよね。
でもやはりわたしは祐一や北川さんを疎ましく思っているのだと思う。
そう、むろんそれは彼女たちの責任ではないことはようくわかってるよ。けどちゃんと
女の子に生まれているのにそれを否定するなんて贅沢だよ。どうしてもそう言う気持ちを
抑えきれない。
なんだか最近そんな自分が嫌でたまらないよ。
449 :
倒錯カノン:2005/09/02(金) 22:14:35 ID:j8Qo3tvx0
北欧系クウォーター北川、黒ビキニ
久瀬、スクール水着「北川さん、そんな水着は校則違反ですよ」
ゆう、わりと大人しめのワンピース
ひろみ、長森の前だとほとんど紐にしか見えないビキニ
往穂、水着など持ってないので上は晒しで、下は普通のパンツのまま、それで透けちゃって……
またはどこから見つけてきたのか大昔の縞々で手足まで隠れる水着
まあ、スルーしといてやれ。ホントこのスレは玉石混交だな。
この人もたまに褒められると次にキワモノを落とすからなあ。
>>444-449 ここまで揃いも揃って倒錯だと流石についていけないなw
性同一性障害の北川(♀)とか発想は悪くないが。
つうか何気に祐一(♀)の過去シャレになってないので勘弁してくれ。
454 :
名無しさんだよもん:2005/09/03(土) 03:45:42 ID:oNEOmy6n0
父親が倒錯ってのは前にもあったような。
カノンuzeeeeeeeeeeeeeeee!
なぜか、カノンの作品を読むとイライラした気分になる。
他の葉鍵作品だとなんでもないのに、カノンキャラに限っては
性別反転させると、生理的に受け付けなる。
久々にネタ振り。
反転葉鍵キャラが酔っ払ったらどうなるだろうか?(お酒は二十歳かr
初音「あ〜っ!裕子さんだ〜v」
裕子「は、初音!?お酒臭っ!ていうか、横に転がっているのは銘酒・鬼殺し?」
初音「裕子さ〜んv(抱きっ)」
裕子「きゃっ!ちょ、ちょっと初音!だ、駄目だってば・・・!」
初音「ちゅっちゅっv」
裕子「ひゃうっ!く、首は、首はダメぇ〜〜っ!!」
鶴丸「やりますね初音・・・」(感心している)
梓「うわっ皆が見ているのにそこまで・・・」(どこまで行くのか静観中)
楓「・・・すごい」(事細かく観察している)
はじめ「えっと・・・」(止めるタイミングを逃した)
>>457 初音、途中でダウン→火照った体を持て余す柳川さん
という展開になると見た。
――――で、朝起きたら女になっていた、と?」
「…………おう」
確認の問いに、往人は頭痛に堪えるような表情で応えた。伸びた髪が頬にかかってうざったい。
場所は既に廃駅前のベンチではない。
白と淡い青を基調とした清潔感のある室内。
観葉植物が部屋の片隅に置かれ、ソファーが中央に並んでいる。
薬物臭に近い独特な刺激臭が漂っているのは、此処がそういった施設だからだ。
街の魔窟、恐怖の根源、ヒマヒマドクターKの秘密研究所――数々の異名を持つその実態は、国からの支出金を全て妹への愛情と流し素麺に費やす不良公共機関――この町唯一の医療施設、霧島診療所。その待合室に、往人は居た。
目の前にはズラズラと並んだ見慣れた顔。
神尾親子に霧島姉妹、美凪とみちる、端の方に件の地球外毛玉生命体、ポテトも並んでいた。
あの後――朝起きて、洗面台に写った女の顔が他ならぬ自分の顔だと認めた後。
往人はとりあえず悲鳴を上げ、泣き喚き、怒り狂い、時々笑ってみたりして、神を呪ったり、夢オチを期待して柱に頭をぶつけたり――と、一通り混乱してみることもなく、あっさり思考を切り替えてここに来ていた。
悩む前に行動する。長い根無し草生活から学んだ、国崎一流の処世術である。
「――なんとも、荒唐無稽な話だな」
「無理に信じろとは言わん。というか、俺自身夢じゃないかと思っているしな」
難しい顔で呟く聖に、溜め息混じりに言い返す。
実際、これが夢で、実際には自分はまだ駅のベンチで寝ているなら、どんなにいいかと思う。
多分、想像力なんて言葉は大嫌いになるだろう。
「……んー、ほな確認として、アンタ、うちらのことで知ってること言うてみい」
スーツ姿の晴子が、横から言ってくる。
どうでもいいが、お前仕事はどうしたんだよと言いたい。不良社会人め。
「あー、名前でいいのか?
なら右から神尾観鈴、神尾晴子、遠野美凪、みちる、霧島佳乃、ポテト。んで俺の目の前にいるのが霧島聖だ」
「……名前だけかね?
例えば、私について知っていることは?」
診察する医者の目で見られ、なんとなく居心地の悪さを感じたが、素直に思い出す。
「――霧島聖。霧島佳乃の姉で、俺の知る限りこの街唯一の医者。
その割に自分の都合でしょっちゅう診療所を閉めるのはどうかと思うんだが、まあ開いてた所で患者も来ないしいいか、とも思う。
思考原理は妹至上主義。ジーク妹。ハイル妹。そのせいで暴走することたびたび。俺がそのシワ寄せを食うことたびたび。
よく俺を無職だヒモだと扱き下ろすが、考えてみりゃ客の来ない診療所で国からの税金で食ってるお前はどうなんだコノヤローと言いたいが、言ったら酷い目に会うだろうから言わないことにしてる。
通天閣Tシャツを愛用してるが、そのセンスは最早俺の理解が及ぶものでは無い。時々目付きが堅気のものじゃなくなる。あと――」
シュパッ、と空気が裂ける音がした。
往人はそこで言葉を切り、無言で顔の前に両手をかざす。
その指間に挟まれる形で、四本のメスが現れた。
「――何かにつけてメスを投げる癖は直したほうがいいと思う。早急に。
とりあえず、死人が出る前に」
受け止めたメスを除けながら、投げ放った姿勢のままの聖に呻く。
聖は一つ小さく舌打ちしたが、そのままメスを受け取った。
「……成る程、確かに君は、国崎君のようだな」
「………信じるのか? こんな話」
思わず声が出る。
正直、往人自身が己の正気に疑いを持っている状況なのだが。
「その礼儀知らずな態度は、間違いなく私の知る国崎君のものだ。
言っていることも、まあ的を射た事実ではあるからな。それに――」
と、そこで聖はメスの一本を取り上げた。それを、目の前に翳す。
「――メスを投げつけた時の感覚が、国崎君に対して放った時のものだった。
あれだけ気持ち良く投げつけられる相手は、国崎君くらいしかいない。なら、君は国崎君なのだろう」
「…………そんなもんで人を識別してるのか、この殺人医師は……」
恐ろしい。
コイツの歩いてきた道程には、きっとメスに切り刻まれた男の屍が無数に積み上がっているに違いない。
往人は、並み居る男たちを千切っては投げ千切っては投げ、白衣を血に染めて屍の上に立つ聖の姿を幻視した。
「……まあ、信じてもらえるなら、こっちとしちゃ願ったりなんだがな」
基本的に他人に頼ることをあまり是としない往人だが、この状況ではどうにも手詰まりである。
医療の専門家の助けを借りられるのは、非常に有難かった。
「………む〜」
そんな呻きが、横から聞こえた。
「……なんだよ?」
実を言えば、先程から気になっていたその声の方を向く。
視線を向ければ、其処にはなんとも微妙な顔をした佳乃や観鈴、みちるの姿がある。
彼女らは、自分の正体が往人だ、と言った時から、なんとも妙な視線でこちらを見ていた。
「むむむ〜」
「……うぅ」
「うにゅ〜……」
眉根を寄せながら尋ねた往人の声には応えず、三者三様の珍妙な呻きを返してくる。
何処と無く刺々しいというか恨みがましいというか、そんな視線が往人の顔ではなく胴体部分に注がれていた。
そんな目で見られる謂れを思いつかない往人は、疑問符を深くしながら首を傾げる。
――だから、自分の脇から二本の手が生えてきていることには気付かなかった。
「だから、一体なんだと――」
「――えいや」
むに、と。
端的に言い表すならそんなような擬音を伴い、自分の胸が形を変えた。
「…………あ?」
「……ほう、これはこれは」
もにゅもにゅと。まるで粘土でも捏ねるように。大胆かつ大雑把な手つきで。
自分の胸部に当てられた手が、自分の胸を揉んでいる。
――うどんでも捏ねてるみたいだな、と完全に空回った思考が一巡りし、
「どおおぉぉうあああぁぁぁぁあ!!?」
完全な反射行動として悲鳴を上げながら、往人は身を翻した。
無意識に腕を胸に巻きつけて隠しながら、座ったまま距離を取る。
「って何をしてんだ美凪ぃ!?」
振り返り後ろを見れば、其処には手を伸ばした姿勢の遠野美凪の姿。
彼女はそのまま空中を二度三度とわきわきと揉みしだき、そのまま自分の手のひらに目を落とした。
「……ふむふむ、なるほどです」
「何がだオイ!?」
一人納得した様子の美凪に激しく尋ねる。
それに対し美凪は、ビッと鋭く――しかしやはり何処か気の抜けた動きと視線で――こちらを指差すと、ボソリ、と告げた。
「国崎さん……」
「……だから何だよ?」
「……91のD、とお見受けしました」
「……あん?」
「結構なお手前で……」
Kanon以外なら何でもいいやw
小さな――そのくせ、妙に通りのいい声で告げられた言葉に、往人は間の抜けた疑問符で返した。
91? D?
その言葉の指し示す所が思い当たらず、往人は首を傾げる。
――――何の話だ?
胸中で呟いた自問の、その解答は、すぐ真横から怒鳴り声で与えられた。
「やっぱりっ!? 非道すぎるよ往人くん! 外道くん1号だよ!! 冥府魔道666号だよ!!」
「うう、往人さんずるい……」
「うにゅにゅにゅにゅ〜、国崎往人のさいていさいあくへんたいきちくゆうかいごうかんまぁ!!」
「………ぁあ?」
あまりに唐突な非難を浴びせられ、往人は怒ることも出来ずにただ困惑する。
「っていや、だから先刻からなんなんだよ?」
「なんで往人くんの胸がそんなに大きいのさぁ!?」
事態究明のための問いには、やたら威勢のいい声が返ってきた。
胸、と言われて、先程から腕で覆っていた自分の胸部に視線を落とす。
それなりのサイズの、少なくとも真っ直ぐ視線を落とすと足元が見えない程度の双丘が、そこには揺れていた。
91の、D。
そのサイズを大雑把に目算してから、先程から騒がしい三人に目を向ける。正確には、三人の体のある部分に。
「……………ああ、成る程」
「うわ、納得されちゃった……」
「国崎往人のあほー!!」
得心がいった、と頷く往人に、観鈴がショックを受けたように呟く。みちるには罵倒される。
フォローのつもりでも無かったが、往人は一応続けておいた。
「いや、こんなもんデカくたってなんの得もないだろう。走ると痛いしな」
「……国崎さん。それは多分、下着を着ければある程度はどうにかなります」
「あん、そうなのか?」
「はい」
ぼやくように告げた言葉――それを聞いた途端、佳乃の目がますます尖った気がしたが――に、美凪が後ろから応えてきた。
そういうものなのか、と改めて自分の胸に目をやる。
「つーか居候。自分ノーブラなんかい」
「当たり前だろう。朝気が付いたら女になってたんだぞ。それで女物の下着の持ち合わせがある方が問題だろうが」
「ああ、それもせやね。
しかし、それでそこまで型崩れしてへんのは凄いなあ。ウチも羨ましなってきたわ」
おっしゃ、ちょっと揉ましてみい、とスケベ親父のような台詞を晴子が吐いた。
そのまま手をワキワキと開閉させながら、じりじりとにじり寄ってくる。
「っておい晴子。それはセクハラ行為だぞ。仮にも人の親なら思いとどまれってオイコラ」
「ええやん女同士なんやし。堅いこと言いなんなや」
「なにが女同士だ!俺は男だ!」
「今は女やん、どっからどう見ても」
クッと呻くと、往人は助けを求めて周りを見回した。
佳乃とみちるは親の仇でもみるような目で睨んでくる。
観鈴は未だにショックから立ち直っておらず、美凪は我関せずとボーっとしている。
――やってられるか、と往人は口の中で呟いた。
「――おい聖」
「なんだね国崎君。この状況の打破方法なら知らんよ。女性の永遠のテーゼに土足で踏み込んだ君が悪い」
「んなことは知るか。そうじゃなくて、医者の本分を果たしてくれ」
一拍おいてから、尋ねる。
「どうやった治るんだ? この体」
「ふむ……」
聖は一つ頷くような息を漏らすと、顎に手を当てた。
「正直に言わせて貰うなら、さっぱり分からんな。
性ホルモンのバランスが崩れると、男性でも乳房が膨らんだり喉仏が無くなったり、といった症例は確認されてるんだが。
一晩のうちにそこまで劇的な変化を及ぼす生理反応があるとは考え難い。
正直、それが医学の領分なのかどうかも判別し難いからな。下手な診察は出来んよ」
「……おいこら藪医者」
「誰が藪かね。
そもそも君は、法術とかいう科学に対立するようなよく分からん力を持っているのだろう?
しかも今年の夏は、私の医学知識を嘲笑うような出来事が君の周囲で頻発したんだ。
モノがオカルトの領域だというなら、私に出来ることなぞないさ。
まあ、私なりに調べては見るがね」
「……それはつまり?」
「この場での治療は無理だ、ということだ。暫くの間、女性をやっていたまえ」
君のことだから、深刻に考えなくてもどうにでもするだろう、と無責任なことを言って、聖は話を打ち切った。
往人は文句を付けようとして、聖の言ったことがあながち的外れでもないことに気付いて頭を抱える。
頭が痛い。
確かにこの夏は、前世の記憶を覗いてみたり、カラスに転生してみたりといろいろ波乱万丈であったが、しかしこの状況というのはそういったものとは別領域の難儀さであるような気がしてならない。
対処方法が分からない、というのは如何ともし難いだろう。
――――まあ、いいか。
「………はあ」
特大の、溜め息一つ。それで、思考を切り替えた。
聖も言った通り、深刻に考えてもどうにもならないことは無理に考えない方がいい。その程度の思考のリセットは出来る。
もう一つ小さな溜め息をつき、現状打破をとりあえず諦める。
そうして往人は、晴子を振り切り、佳乃とみちるを宥めすかすことに集中することにした。
もはや自分でも前作をいつ投下したんだったか思い出せないほど久しぶりに書いてみた、AirSSです。
分からん人はSS倉庫で見て下さい。内容なぞあってないようなものですが。
Air反転SSがあまりに少ないんで、自給自足で書いたものなんですが、ふと気がつきました。
Airって、往人さんが女になっても本筋破綻せずに成立するよね。
しかも、往人さんの行動も、男だろうと女だろうと大差なさそうだし。
主人公が女になっても問題起きないギャルゲー(18禁)ってのも奇特ですわな……。
流石Air。テーマは「家族愛」
それでは、長々とお目汚し失礼しました。
470 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:04:09 ID:fgNV5cLe0
ある晴れた冬の日親友の月宮あゆと一緒に登校するわたし。
なんだか今日は気分が良いんだな。だからついこんな台詞が。
「うーんさわやかな朝、やっぱり朝はこうでないと」
「まあそれはボクも同意するけど。ねえユイちゃん、名雪さんをおいて来ちゃっても良か
ったのかな?」
もう嫌なことを思い出させるなあこの子は。
「たまには良いんだ、名雪は朝練の日以外は滅多に自分で起きようとしないんだから。い
つまでもわたしが起こしてあげれるわけじゃあないぞ。大体わたしが女だから起こしてあ
げられるけど、いくら従姉妹でも男だったら年頃の乙女の部屋に入れないじゃん」
さすがに週3、4回も起こすのは面倒くさい、だから月に1、2回くらいは置いていっ
ても許されると思うんだけど。駄目かな?
「まあそれはそうなんだけど、そう男だったらね……」
「うん、あゆなにか言いたいのかな?」
「いやさあ、あれから7年経ったのかって思って。ユイちゃんが女の子になってから7年
経つんだよね。御免ねボクのせいで」
「そうだな、あゆのお願いが一生続く素敵な親友が欲しいじゃなくて、素敵な恋人が欲し
いだったら、わたしは今頃格好良いスーパー美少年だったのにな」
「うぐぅ、御免なさい」
あゆがシュンとなると少々罪悪感が生じるな。
「いいよ気にするな。その「素敵な」のお陰で、自分で言うのもなんだけど一応美人の範
疇に入る容姿、勉強もスポーツも出来すぎじゃない程度に出来るっていう、まあ理想的な
状態になってるからね」
「でもユイちゃん、前は俺は男だー!って叫んでたよ。本当に今のままで良いの?」
「あのねーあゆ、それは小学生の時だろ。今更男に戻ったって男子高校生としてどう振る
舞って良いのかわかんないしな。もうそんなことは過去のことさ」
471 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:05:40 ID:fgNV5cLe0
そうなんだよな、10歳で女の子になって、11で生理が来て、それでもしばらくは俺
は男だって言ってたし絶対にスカートなんか履かなかったけど、中学に入ってしばらくし
たらなんかさすがに無理があるなって気が付いたね。
と言っても今でも制服以外じゃああまりスカートは履かないし、今の会話でわかるとお
り特に女らしい口調ってわけでもない。
つまり自分は自分、ただ体は間違いなく女だし、無理に男らしくすることもないって感
じかな。別に俺とか言わないとアイデンティティが保てないわけじゃないさ。
でもさすがに「あたし」とか「なになにだわ」なんて言えないけどね。
「ユイちゃんって割り切ってるんだね」
「そう簡単なものでもないけど、今のわたしが女であることは否定できないだろう。おま
けに両親含めて周囲は誰もわたしが男だったって信じてくれないし」
「そうだよね、祐一君が男の子だったのを覚えてるのはボクとユイちゃんだけなんだよね」
「だからもうその名は言うな、わたしはユウイチじゃない、相沢祐一(ユイ)なんだ」
「わかったよ、けど昔の写真まで女の子に変わっていたのは凄かったね」
「そうだな、秋子さんも名雪もわたしが男だったこと忘れてたしな。名前はそのままだけ
ど読み方がユイに変わってたし」
「それもだけど、突然ユイちゃんのご両親が海外に転勤に成っちゃって、秋子さんの家に
住むようになったのはびっくりしたよ」
「まああっちは日本人学校もないようなちっぽけな国だしね。子供を連れて行くような所
じゃないさ。それにあゆだって急に引っ越しが決まって前のアパートから水瀬家の三軒隣
になっただろう」
「そうしたらお父さんと秋子さんが仲良くなって、再婚しちゃったんだよね」
そう言うわけでわたしとあゆは義理の従姉妹でもあるんだな。ちなみに名雪の方は、水
瀬家を嗣ぐため月宮の叔父さんと養子縁組をしているわけではないので水瀬姓のままだ。
こういうのも義姉妹って言うのか?
「完全な女性上位の家で、叔父さんはちょっと肩身が狭いって言うか居心地悪そうだけど
な。再婚後に生まれたのも女の子だし」
つまりあゆには異母妹、名雪には異父妹ってことになる。
「どっちにしてもあの人形の力って凄いんだね」
「ちょっと凄すぎるけどな」
472 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:07:39 ID:fgNV5cLe0
結局わたしはあゆの親友に成るために女になって、おまけに両親と離れて秋子さんの家
で暮らすことになったってことなんだよな。
両親は勇んで出掛けていったし、秋子さんや名雪も家族が増えて喜んでたし、一応わた
し以外の人間には迷惑は掛ってないらしい。
つまり「わたしだけが我慢すれば問題なし」=「わたしの力でかなえられる願い」って
ことらしいな。やっぱり軽々しく約束なんかするもんじゃない。
さて最早女にされたことについてとやかく言う気はないけど、一つ非常に気に入らない
ことがあるんだな。でまあ早速その不満を張本人にぶつけてみる。
「ところでさああゆ、君の言うところの素敵な親友ってのは、プロポーションがよいって
ことは含まれてないのかな」
あゆはぶんぶんと首を大きく左右に振ってる。
「そんなことないよユイちゃん。ユイちゃんウエストは見事にくびれてるし、お尻も形も
良いし、身長も高すぎない程度にあってすらっとしてるし、手足はほっそりってとっても
格好良いじゃない」
「あゆ、意図的に話を逸らすな。わたしが言いたいのは胸のことだ」
「う、うぐぅ、ユ、ユイちゃんの胸はとっても形良いよ」
動揺してるな、こいつはすぐ顔に出るもんな。本当にわかりやすいね。
「だからー、形じゃなくて大きさ。なんで君より背が8aも高いのに胸が8aも小さいの
かな?ほれ、本当のことを白状せい」
あゆの両肩を掴んで軽く揺すってみる。
「ユイちゃん、怒らない?」
おうおう、可愛い上目遣いだねえ。男ならイチコロか?まあ7年間女をやってて、なお
かつ同じ期間あゆの親友をやってるわたしには通じないけどな。けど一応余裕を見せてお
いてやるか。
「まあ怒らないでおいてやろう、ほれ言ってみ」
「うん、あのね、だってなにか一つくらいはボクが勝てなきゃ情け無いよ。そうじゃない
とボクはユイちゃんの取り巻きで、親友だなんて言えないと思うんだ」
うーんそう言うこと気にしてたのか?つまりこれはあゆのコンプレックスのなせる技?
それはいいとして、取り巻きって、わたしはお嬢様じゃないぞ。
473 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:09:20 ID:fgNV5cLe0
「ふうむつまりなにか、わたしがあゆより胸が小さいのは君のプライド保つためで、確定
事項、言い換えれば運命なんだな」
「うん、まあそう言うこと」
非常に腹立たしい話だが、どうにもならんようだな。しかしだ。
「わかったあゆ、わたしより君の方が大きいことは諦めよう」
「えっとユイちゃん、その怖い微笑みはなに?」
「うむわたしが考えるにだ、要するにわたしの胸は相対的にあゆより小さくなければなら
ん、と言うことはだ」
「と言うことは?」
「つまりこういうことだー」
いきなりあゆのは以後に回り込み、後からあゆを抱え込んで以外に豊かな胸をもみもみ。
「うぐぅ、ユイちゃんいきなりなにをするんだよー!」
「うん、だから乳揉み」
「そんなのわかってるよー、そうじゃなくてなんでそんなことをするの?」
「バカだなあ。つまり君の胸が大きくなればわたしの胸もいくらかは成長するってことだ
ろう。だからこれは自救行為だな。せめて75は欲しいぞ」
「うぐぅー!こんなところではやめてよう」
うーん人目のないところならやっても良いのだろうか?まああゆが何と言おうと止める
気ないけどね。仮に効果がないにしても楽しいから。
「ゆい、わたしを置いて行ってなにを楽しそうなことをやってるんだよ?」
うん、名雪?いつの間に追いついたんだ?と言うかちゃんと自力で起きれるじゃないか。
「あら名雪羨ましいの?」
ほう香里までいるね。などと観察する間も手は休めない。
しかし香里も謎の存在だね。名雪の親友だからわたしともつきあいは長いんだけど、深
いつきあいじゃないんだな。人当たりは良いんだけど、正直本心では名雪以外には誰にも
心を許してないんだと思う。
474 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:10:53 ID:fgNV5cLe0
「あーん香里止めてよー!」
あっ香里もわたしと同じことしてる。ちなみに香里がスキンシップするのは、当然の如
く名雪だけなんだよね。けど名雪の声色っぽいね。あゆとは大違いだ。ついそんな目であ
ゆを見下ろしてしまったりするわけなんだけど、そうすると……。
「うぐぅ、ユイちゃん今ボクをバカにした。絶対に子供扱いしたー!」
ちっ、こういう時だけ鋭いやつ。それでも手は止まらないけどね。
「おい相沢楽しそうだな。で俺と結婚してくれ」
こいつは同級生の北川潤、でまあここだけ聞くと脈絡がないようだが、後半はいつもの
朝の挨拶に過ぎない。従ってわたしとしても普通にこう返す。
「却下、わたしにその気はない」
「うむそうか、まあ気が変わったらいつでも言ってくれ」
こういうしつこく迫ったりせずあっさりしたところが、北川の短所でも長所でもあるな。
まあ未だ男と付き合ったりする気がないわたしとしては助かるが。
「よう美坂、相変わらず美人で、相変わらずお盛んだな。それにつけても、俺と結婚して
くれー」
「悪い冗談ね」
いつものように香里はそっけない。しかし北川はめげたりしない。
「つれないなあ。じゃあ水瀬、俺と結婚してくれ」
「お断りしておくよ」
にこやかに笑ったまま柔らかな口調での返答、内容はにべもないけどな。
「そうか、まあ気が変わったらよろしく」
北川のやつ、気は良いし、面白いし、わたしが男のままだったら親友になれたと思うん
だが……。ただこの女を見るとTPO考えずにプロポーズする悪癖だけは、正直何とかな
らないものだろうか?本気でも冗談でも問題があると思うんだが。
475 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:13:35 ID:fgNV5cLe0
「うー」
うん、横の方であゆが拗ねてるぞ。
「どうしたあゆ?」
「北川君、またボクだけ無視した」
そう言えばクラスの女子で北川からプロポーズされたことがないのは、あゆを含めて5
人くらいだったかな?あいつ容姿はえり好みしないけど、子供っぽい子は避けてたな。
「うぐぅゆうちゃんその哀れみの視線むかつくんだけど」
そう言われてもなあ。なんとなくあゆに対しては保護者的気分になってしまうな。
「まあまああゆ、君が子供っぽいのは今に始まったことじゃない。そのうち君も大人にな
れるさ」
「そのうちっていつ?これじゃあ大人になる前におばあちゃんになっちゃうよ」
「あゆちゃんはそこが可愛いんだよ」
「そうね、月宮さんはそこが魅力なのよ」
こいつら誉めてるつもりだろうけど、止め刺してるんじゃないのか?
とにかく泣かれたくないからなんとか誤魔化す、もとい説得すべきだな。
「まあまて、良く考えたら北川はまだ17だ。つまり日本の法律では男であるやつはまだ
結婚出来ない。つまり本気じゃないんだ。だから気にするな」
「でもユイちゃん、ボク達は結婚できるよ」
「うっ!」
そうだよな、考えたくもないことだけどわたしはもう法的には結婚できるんだよな。う
わーおぞましい。男と付き合うとか結婚するとかやっちゃうとか考えたくもない。
その後気が付いたらあゆを宥めるために帰りにたい焼きを奢ることになっていた。なん
か納得がいかんのだが、ひょっとして素敵な親友の役目ってこれがメインなのか?
放課後、あゆを連れてたい焼き屋に向かうところ。素敵な親友たるものあゆを放ってお
いてはいかんから、部活などやっている閑など無いのだ。あゆが部活を始めれば別だが。
名雪に陸上部に誘われたりもしたが、あゆはただ走るのは嫌いらしい。わたしも必要も
ないのに走るのは御免だな、週に最低2回は朝強制的に走らされてるし。
そう言って断わったら、なぜか名雪がチョコパフェを奢ってくれた。我が従姉妹にも一
応悪いという気は有るようだ。出来たら態度で示して欲しいものではあるが。
476 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:15:21 ID:fgNV5cLe0
「ねえユイちゃんは恋人とか欲しくないの?」
「うーんそんな気はないが、それより君がそれを言うか。素敵な親友には素敵な恋人がオ
プションとしてついていても良いような気がするが、どうもあゆの方に恋人が出来ない限
り居てはならんような気がするのだが」
「うぐぅ、ボクのせいなの?御免ね」
うーむ今の言い方はまずかったな。こいつは簡単に気に病んでしまうからな。ここはフ
ォローしておかないとまずい。
「いや気にするな、例えそのせいだとしてもわたし自身にその気が無いことに変わりはな
いからな。ところであゆの方には好きなやつは居ないのか?」
「うーん、今のところ居ないよ」
あっさりと返答が返ってきたな。やれやれまだ当分わたしがあゆの保護者か。
「そうか、その辺もお子さまだな。まあ好きなやつが出来たら正直に教えること、素敵な
親友として出来うる限り協力してやろう」
「協力の内容がちょっとだけ気になるんだけど……でもありがとう」
「相沢さん酷いです。素敵な恋人ならわたしが居るじゃないですか」
うっ、聞いてたのかよ、しかもこの声は……。
「天野、普通恋人って言うものは異性なんだが」
後方に突然出現したこの少女は一年後輩の天野美汐、中学校の時にふとしたことから知
り合って妙に懐かれてしまった。普段は暗くて友達も少ない(いない?)らしいが、わた
しの前では不自然なくらい明るいやつだ。慣れるまでは冷たいやつだって印象だったけど。
どうも簡単に他人に心を開けないタイプらしい。
「性別の違いなど大した問題ではありません。わたしと相沢さんが結ばれる、これはもう、運
命なんです」
おーいもしもし、帰ってこーい。と心の中で突っ込み。どうせ口に出してもこの状態の
天野には聞こえちゃいないし。
477 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:19:28 ID:fgNV5cLe0
「天野君、馬鹿なこと言ってもらっては困りますね。相沢さんには僕という立派な婚約者
が居るんですよ」
出たよ爺さん同士が勝手に決めた許嫁の久瀬、そりゃあ家は昔は家老で男爵にもなった
けど、二代目男爵破産して爵位返上、今はただのサラリーマン家庭、名家の久瀬家が相手
にする必要はないと思うんだけどな。けど維新後成り上がった足軽上がりの久瀬家として
は、迷惑なことに未だに家柄コンプレックスがあるらしいんだよね。
もっとも元々の許嫁は久瀬の妹だったはずなんだけど、わたしが女に変わったときに必
然的に許嫁まで変わっちゃったんだよね、やれやれ。
典型的高飛車お嬢様の妹と、どこかしら嫌みでキザなところがあるこいつと、どっちが
ましかは難しいところだけどな。いや二人とも本質的には悪いやつじゃあないよ、ちょっ
と庶民にはつきあいがたい面があるだけで。
ちなみに久瀬の妹の許嫁は倉田一弥って言う本校の倉田先輩、佐祐理さんの弟、これも
前は佐祐理さんと久瀬が許嫁だったはずなんだけど、ここにも変化の影響が出てるな。さ
て一弥君達は本来の世界より幸福になって居るんだろうか?
「相沢さんは、お姉様は誰にも渡しません」
頼むからお姉様呼ばわりは止めてもらえないかなあ。まあこれも前に何度言っても無駄
だったから、もうほとんど諦めてるんだけど。
「僕としての姫をお渡しするわけにはいきませんね。もっとも君がその不埒な高望みを捨
てるのなら、姫の腰元としてなら雇ってあげないこともありませんが」
姫に腰元、なんでこいつはこんなに時代錯誤なんだ。大体世が世であってもわたしは姫
じゃないよ、別に大名じゃないしせいぜいお嬢様くらいだと思うが。
それに実はあゆや天野の方がお姫様なんだけどな、月宮家は元伯爵(今は庶民だけど)
のお公家さんだし、天野家は旧国造の元男爵で天野神社の宮司さんだしね。
久瀬家の場合武家しか眼中にないらしいけど、よくわからん基準だよな。
478 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:20:24 ID:fgNV5cLe0
まあ過去の経験からいって、この二人が張り合いはじめると周囲のことなど目に入らな
くなるらしいのが幸いだな。
「と言うわけで、あゆこいつら放っておいてたい焼き買いに行くぞ」
「いいの?」
あゆはなんて言うかいい子ちゃんだから、今朝の名雪を見捨てたこととかこういうこと
には良心が疼くらしい。けどまあここ話の持っていきようだ。
「お前、あいつらを見ていたいか?あいつらに付き合ってたい焼きが売り切れになったり
しても平気か?」
「うぐぅ、ユイちゃんすぐに出発だよ」
即答だな、まあ所詮あゆの遠慮と良心はこの程度のものだ。
たい焼きを買って公園のベンチに座っていたら、上級生に二人組が前を通りかかった。
「そのたい焼き嫌いじゃない」
背の高い方、つまり舞が物欲しげにこっちを見ている。うっ、わたしは捨て猫とかそう
言う視線に弱いんだ。彼女は川澄舞、年上だけどちょっと子供っぽいと言うか保護欲をか
き立てるところがある。おまけに子供の頃からの友達でもあるから、彼女のことは舞と呼
び捨てなんだ。
舞とは10年くらい前に知り合って、それから女の子になってしばらくしてから再会し
たんだけど、なんか無口でちょっと暗い子になってたから驚いたね。
それから6年、随分明るくなって表情も豊かになったんだけど、どうも無口なのは変化
がない。ただ最近その点については、どうもこいつは単に話すのが面倒くさいんじゃない
かと疑っているんだ。つまりただの横着ってわけ。
「はちみつくまさん」
「舞、人の心を読んで返事をするな」
心を読むとか言っても、別に超能力とかじゃないよ。舞はどうも人の感情を敏感に感じ
取れるらしい。なにか子供のころに虐められたせいらしいけど。
「ゆいの心は相当に嫌いじゃない」
「あははー、ゆいさんは素直だから読みやすいんですよ」
この人が佐祐理さん、舞とは親友同士。一見性格正反対に見えるけど、実は舞とそっく
りじゃないかって気もするね。まあつまりは名コンビだ。
479 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:21:26 ID:fgNV5cLe0
「とにかくたい焼き」
舞に催促されて一応あゆの方を見てみたら、大慌てで自分の分を飲み込んだらしく喉に
つまらせて苦しんでるよ。しょうがないなあこの子は……でこんなことも有ろうかと思っ
て常備しているペットボトルのお茶を渡す。お子ちゃまあゆあゆの素敵な親友たる者の当
然の心得だ。
その後、もう他にしょうがないから唯一残っていた一口囓った自分の分のたい焼き(2
匹目で、1匹目はもう腹の中)を舞に差し出す。舞はたい焼きを二つに割って片方を佐祐
理さんに渡す。やっぱりこの二人って仲良いよな。
「佐祐理と二人で食べる。相当に嫌いじゃない」
「わたしも舞と仲良く分け合って食べるのは嬉しいよ」
たい焼きを食べた後、肉まんを買って帰る。これを怠ると従姉妹が五月蠅いんだよ。誰
に似たのかあの子は結構鼻が利くので、わたし達がたい焼きを食べたのは間違いなくばれ
る。それでお土産がないと100%拗ねるからね。
「ただいま」
「わーい、ゆい、あゆ、お帰り」
パタパタと駆けてくる6歳くらいの女の子、これがわたしの従姉妹であゆ、名雪に共通
の妹真琴。年上を呼び捨てにするなよな。
「おーい真琴、転けるなよ」
バターン!
「ワーン!痛いよう」
いわんこっちゃない。この子やけに転けやすいんだよね。子供は一般に重心が高いから
転けやすいけど、この子はそれを割り引いても良く転ける。なんでだろう?
「大丈夫か真琴。痛いの痛いの飛んでいけー」
まあちょっと打っただけのようだ。良く転ぶかわりに転びなれているせいか大して怪我
もしないのが不幸中の幸いというか。
480 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:25:22 ID:fgNV5cLe0
「アーン、アンゆいー」
わたしにすがりついて大泣き。なぜかこの子は姉達より従姉妹にわたしに懐いていたり
する。実のところ名雪はともかく、あゆの方は姉扱いしてないような気も……。
「うぐぅ、ユイちゃんまたボクのことバカにしたー」
鋭い。けどこのすぐに膨れる態度が子供扱いの原因なんじゃあ……。
真琴の方は肉まんを渡した途端に満面の笑顔。この顔を見ると肉まん代も惜しくない。
「ねえゆい、ご本呼んで」
「またあの本か、真琴は飽きないね」
「あゆは黙ってて。ねえゆい良いでしょう」
「はいはい、わかりました」
「わーい」
「うぐぅ、ユイちゃんの親友はボクなのに」
「あぅー、ゆいは真琴のお姉ちゃんなの。あゆは取っちゃ駄目」
「君達喧嘩は良くないぞ」
どうしてあゆも10歳以上離れた真琴と対等に張り合うかな。まあそこがあゆらしいと
言えばあゆらしいんだけど。
こんな風にして、また今日も騒がしいけど平凡な一日が終わった。この平凡な日々がい
つまでも続くと良いな。
481 :
天使の悪戯:2005/09/03(土) 16:30:11 ID:fgNV5cLe0
>>469 確かに案外Airってないですね。
>>470-480 最初から女って言うわけでもなく、最近反転したってわけでもない話を書きたかっただけで
なんか中身ないですね。
反転の結果各自の運命がダイナミックに変更。
あゆは祐一と別れることが無くなったため木に登らず、あゆシナリオ自己解決。
名雪は祐一の女性化に伴い恋心自体が消滅、当然失恋もせず名雪シナリオ不発。
真琴は執念で祐一の従妹として生まれ変わり、真琴シナリオは不要に。
舞は早期に祐一と再会し原作より明るくなり、舞シナリオも不要に。
佐佑理は祐一の女性化に伴う玉突現象で一弥が生存することになり明るいまま。
天野も祐一と早期に接触し原作よりは明るい、むしろ弾け過ぎか?
美坂姉妹のみ補完されてない模様。どうやったら良いんだろう?
>>482 はぁーい、ちゃんと嫌いなものなら食べずにスルーする事を覚えまちょうねー?
てか、いいじゃない。
書き込みなくなるよりは。
朱鷺乃さんが居なくて寂しいのに変わりはないのだが。
カノン飽きた
>>459-469 面白かったです 巧いし
もっと読みたいのでまたいつか何か書いて下さいな
なんだってそんなにKanonに噛み付くんだよ。
題材とそれを選択した作者に罪はないだろう。
U-1系等の一部KanonSSがウザイのは分かるが。
>>481 俺は期待してる。念の為、過去スレを見てここの空気読んで気を付ければ
そんなに叩かれないだろうから。
>>469 ……久々のAIR
キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━( ゚)━━( )━━(゚ )━━(∀゚ )━━━(゚∀゚)━━!!
ぎゃあぎゃあ文句垂れてる奴らの神経がようわからん。
最初の1レス読めばどの程度のもんかは分かるだろうに。
そんでスルーか読み続けるか自分で選べばいいじゃないのよ……。
そうすりゃ読むSS数は全体の1/3以下で済むぞ? あくまで俺の場合、だけど。
>>457-458 火照り潤みまくった視線をさまよわせるうちに、席を外すタイミングも逸して一部始終見てた一同を発見する裕子さん。
そして久しぶりに攻め裕子(鬼淫乱モード)降臨。
翌朝、やつれ加減だけど妙に満足そう(&後ろめたそう)なみんなを見て首をかしげる初音(昨夜の記憶ゼロ)
他の反転ヒロインが酔っ払ったら
ふゆ…実はとんでもなく酒に強く、そっち方面で男の餌食になる心配は皆無
往穂…酔うと目つきがさらに悪くなる上に絡み酒でマジ怖い
さつき…陽気に激ヤバぶっちゃけトーク開始
「 ま た K a n o n か 」
というより、
「 ま た お 前 か 」
という方が正しい。
>486-487
別に個人の勝手だろ。カノンうぜーと思う奴だって居るだろうし、
そんなの好きに言わせておけばいいじゃねーか。
お前らも一々相手にすんなよ。
カノンうぜーといくら思っても構わねーけどそれをいちいち書き込むなっつーの。
それは思う、なぜならそう言う空気になっていると 他の書き手までやはり
書き込みにくい雰囲気になるから。良いじゃないですか玉石混合で
とにかく書いたものを出しやすい雰囲気にした方が、自分にとって面白いものを読める確率が上がりますぜ
職人放置して議論する前に、ネタに反応してやれようヽ(´Д`;)ノ
>>469 コンシューマ移植や一般向けアニメが問題なくできるほど、エロ要素が
取ってつけたようなものだからねえw
みちるや佳乃はともかく観鈴はわりと胸あったんじゃ…
と思ったけど佳乃とほぼ同じだったのね。それじゃ気になるわな。
>>481 KANONは祐一を性別反転させると途端に話がおかしくなるなw
色恋が物語の根幹にあるからだろうか。
>KANONは祐一を性別反転させると途端に話がおかしくなるなw
U−1を思い出すから
405 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/03(土) 02:39:54 ID:bmlVqTP5
BrotherOneの千堂一樹チョーシ乗り過ぎ
406 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/03(土) 04:47:55 ID:eXo4Md7Q
>>405 詳しく
407 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/03(土) 08:21:24 ID:wO48BXsk
あいつ猫魚の大庭とか空身亭の猪名川とかといっつも一緒にいるんだよね。
体使ってすりよってんじゃねーの?
あんな本しか描けないのに壁なんてマジアリエネ
408 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/03(土) 08:24:30 ID:jISuUiL3
内部告発キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
409 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/03(土) 08:25:49 ID:44jLn99A
スタッフとも親しげだよねー。ブロック長とか。最近壁になったのだって、それじゃね?
「……ふぅん」
志子が細めた目で液晶モニタを睨み付けている。わたしは、その隣で当人を他所に延々と続けられる「BrotherOne千堂かずきのウリ疑惑」を、呆れながら見ていた。
「随分と愉快なことを書いてるわね。こいつら」
不愉快極まりない、という表情でそう呟く志子は、物凄い速さでキーをタイプする。
そして、エンターキーを押す。
420 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/03(土) 09:31:23 ID:SIi00Ln
バッカ。違うって。
BrotherOneの千堂は一緒にいる九○仏(女)と昔から肉体関係あるんだよ。
男なんて見向きもしないって。
421 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/03(土) 09:32:23 ID:ZmVwcOq2
>>420 (* ´Д`*)=3 ハァハァ
422 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/03(土) 09:32:30 ID:jISuUiL3
>>420 リリアンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
「……ふぅ。これでかずきの名誉は守られたわね」
額の汗を拭う真似をしながら、これ以上ないくらいミッションコンプリートな笑顔を浮かべる志子。
私はその様を眺め、ひたすらに肩を震わせ。
「なにやってんのよ、このバカ――――――!!!!!!!!!」
早朝の我が家に、叫び声が響き渡った。
やるな志子w
その話がそれだけスムーズに受け入れられるような雰囲気だったってことだな、これまでもw
502 :
名無しさんだよもん:2005/09/04(日) 20:32:22 ID:wX6JoIhd0
しかし、あのエキセントリックな容姿をどう女性化したものか未だに想像がつかん。名前もアレだが。
さっきまで駅前で名雪を待っていたはずなんだが、気が付いたら街をさまよっていた。
けどどうも変だ、なんか違和感があるんだよね。そのうちにその違和感の少なくともひと
つの理由に気が付いた。そう、視線がいつもより低い。まさか気が付かないうちに背丈が
縮んだのかよ。
そう思って手近の人影が映っているショーウインドウをのぞき込んでみる。
けど映っているのは15、6歳くらいの少女だけだ。なんで俺は映ってないんだろう。
デニムのジャンパーとミニのプリーツスカートで、長めの髪をリボンでツインテールに纏
めた結構可愛い女の子で、身長はこのと仕事路の女の子にしては普通、やや痩せてるけど
胸は体格の割にはあるみたいだ。そんな特に大きいわけでもなさそうだけど。
なんか無意識に髪に手をやったらその少女も同じ動作をする。あれっと首を傾げたらそ
の少女がまた同じ動作を。変に思って周囲を見回してみたんだけど、そんな少女はどこに
も居ないよ。
えーっと、この事態から導き出される結論は……つまりこの少女が俺か?
あっそうか、これは夢なんだ。うん、あんまり名雪が来るのが遅いから居眠りしちゃっ
たんだな。あははしょうがねえな、早く起きないと凍死するぞ。
と言うわけで頬を思いっきり抓ってみる。
「痛ーい!」
痛いけど目が覚めない。じゃあこれは現実?それになんだよこのアニメに出てくる女性
声優みたいな甲高い声は?これが俺の声なのか?
訳がわからなくなってそれからしばらく無意識に歩き回っていたらしい。気が付いたら
公園の前にいた。そうだ公園ならトイレがあるよな、トイレの鏡でもう一度確認してみる
か。それに個室があるから体を確かめることも出来るぞ。なんか尿意も催してきたし。
それで公園に入ってトイレをさがすとすぐにあった。けど男性用、女性用どっちに入る
んだ?幸い公園とかに時々ある男女兼用のやつがあったので、入って鏡を見てみる。
やっぱりさっきの女の子だよ。こうやってまじまじと見ると、さっきもちょっと思った
んだけど結構可愛いな。まあどうせ女の子になるんなら可愛い方がいいよな。じゃあなく
て、これじゃあ水瀬家に行けないぞ。これからどうするんだよ。
とにかくトイレの個室に入ってみる。 まずはすることをするか。スカートをたくし上
げると、そこには予想通り女物のパンツがあって、男なら当然あるはずの出っ張りがなく
て、つるつるなわけで……。
パンツを引き下ろしてもやっぱりナニはない。
まあこうしていてもしょうがないしそろそろ我慢できなくなったので腰を下ろすと、も
う限界が近かったらしくあっけなく黄色い液体が股間から噴き出してきた。
男の排尿と違って妙に頼りない気分だ。
出終わったけど、男と違って先を振るって終わりというわけにはいかない。って言うか
振るうものがない。それでトイレットペーパーで拭くことにする。
で紙が下腹部に触れた途端、なんか電気が走ったぞ。女の体ってわけわかんない。
その後はもう蛇足なんだろうが、一応胸も確認してみた。やっぱりあるな。結構形良い
かも。これが自分の体でなくて彼女に付いてるやつならなあ。
ついでに服のあちこちを探ってみると、持ち物は財布(中身は一万円ちょっと)の他は
ハンカチとティッシュとかその程度だ。
一万円じゃあ食い物買うくらいしかできないな。それも何日持つんだろう?
とにかくホテルに泊まるのは無理、まあこの姿じゃあ家出少女にしか見えないから金が
あっても泊めてもらえないかもしれないけど。
すると野宿しかないのか?ところでさっきから感じていたんだけど、この体は寒さに強
いみたいだ。真冬にこんな薄着で戸外にいてほとんど寒さを感じていない。寒がりの俺本
来の体とは対照的だな。
そうは言ってもなにか野宿に使えるものはなかろうかとそこらをぶらつく、そうしたら
コンビニが有った。途端に腹が減っていることに気が付く、そう言えばもう夕方だもんな。
俺の置かれている現状からして、求めるのは安くてカロリーがあって温かいものだな。
そうなると中華まんだ。肉まん2個とあんまん1個を袋に詰めてもらう。袋を懐に入れ
ると温かくて少しだけ明るい気分になってきた。
とりあえずさっきの公園に引き返してベンチで食べようと思ったのだが、方向音痴は体
が変わっても直らないらしい。どうも道を間違えたようだ。
でも結果的にはそれが良かった、通りがかりのゴミ置き場に毛布と段ボールに新聞紙の
束が捨ててあった。幸い最近捨てられたものらしく乾いている。ラッキーとばかりに人目
がないのを確認して拾って帰る。それからもう少し歩くとさっきの公園に出た。偶然だろうけ
ど過程は違っても到着地は一緒ってことだったらしい。
中華まんを食べた後、茂みに潜り込んで段ボールをしいて新聞紙をその上にしく、でそ
の上で毛布にくるまって反対側の段ボールを上に掛ける。
それから思いついて残りの新聞の一枚を腹巻き代わりに腹にまく。結構温かいな。
翌日百円ショップで替えのパンツと手袋とマフラーを買った。他の出費は食費のみ。そ
れも中華まんか菓子パン、さもなければカップ麺だけ。それでもお金はどんどん減ってい
く。不安ながらもどうしようもなく数日が過ぎて、ある日俺はとんでもない人物と出会う
ことになった。
なんでこんな所に俺が居るんだよ?朝飯を調達しようとコンビニに向かっていたら、な
んか格好悪い制服を着て登校途上らしい俺が居た。凄い勢いで走っていて、隣を走ってい
るこれまたやけに派手な赤いワンピースを来た女は多分名雪なんだろう。なんとなく七年
前の面影があるから。けどなんであんな短いスカートで走ってパンツが見えないんだ?
まあそんなことはどうでも良いんだが、後を付けようとしたんだが速すぎて見失った。
まあ良い、ここが通学路なら下校時間に張っていれば捕まえれるな。
なんで俺がいるのかわからないが、こうなったらとにかくやつをとっつかまえて俺の体
を取り返すぞ。どうやったら出来るのかわからないけど……。
夕方、買物に来たらしいやつを発見。見つからないようにそっと後を付ける。
そして買物を済まして店から出来た俺の前に立ちふさがった。
「やっと見つけたぞ」
俺は唖然とした表情で俺を見つめている。
うーん、俺と俺じゃややこしいな。こいつのことはとりあえず偽祐一と呼ぶか。
「お前だけは絶対に許さないぞー」
そうだにえ祐一、俺の体を盗んだやつめ。誰か知らないけど絶対に許さない。
「お前なんかに恨まれる筋合いはないぞ」
こいつなにも知らないのか?それともとぼけてるのか?偽物のくせに嫌なやつだ。どっ
ちにしても今更後には引けないな。
「そっちになくてもこっちにはあるんだよ。覚悟」
やつに飛びかかったけど、サッと身をかわされた。畜生俺の体だけあって素早いな。
その後の攻撃もことごとくかわされるって言うか、むしろ弄ばれてる。
あげくにやつの手で頭を押さえられてしまうと、力が足りないからそれ以上近づけない
し、手も届かない。やけくそになって手をグルグルさせるけど疲れるだけだ。
結局へたり込んで息をぜいぜいさせるだけ。
「おい、許さないんじゃなかったのか」
バカにしやがって、むかつく。
「最近ろくなもの食べてないから調子が出ないんだよ」
まあ万全でも男と女じゃ違いすぎる。奇襲攻撃でもしなければ勝てっこないだろうけど、
こう負け惜しみでも言わないと気が収まらない。
「そうか、それは残念だな」
やつは無防備に両手をだらんと下げる。
バカにしてー。もう一度偽祐一に殴りかかろうとしたんだけど、急に足元がふらついて
視界が暗くなって……しまった、偽祐一のことが気になって昼飯食べてなかったから……。
体力の限界が来て、俺はそれっきり意識を失った。
気が付いたらどこかの家の部屋の中のようだ。ひょっとして水瀬家かも?
どっちにしても腹が減ったな。申し訳ないけど冷蔵庫でも漁らせてもらうか。
しかし、うーんこの家には加工せずに食べられるものはないのか?
ゴソゴソやっていたら突然首筋に冷たいものが。
「あぅー!」
驚いた表紙に頭をどこかにぶつけて、頭を抱えてごろごろと転がり回る。その時に体中
をあちこちにぶつけたけどそれどころじゃない。
そのうちに灯りがついて、それからあと二、三人部屋に入ってきたみたいだ。
「おい名雪、なにをやっているんだ?」
なにこいつ、俺を名雪と間違えたのかよ。
「何するんだよ、腹が減っただけなのに」
偽祐一の後によく似た感じの若い女性が二人いる、多分姉妹だと思うけど、あれっ、半
纏を着てるちょっと眠たい目の女の子が年齢から言って多分名雪なのは良いとして、もう
一人の二十歳前後のお姉さんは誰だ?名雪にお姉さんなんか居たっけ?
「お腹がすいてるの?」
そのお姉さんがそう訊ねてくる。誰もが安心して素直になっちゃうような暖かな声だ。
だから思わず頷いてしまう。
「そう、それなら何か作ってあげるから座って待っていてね」
「はい」
素直に頷いて椅子に座って見ていたら、お姉さんはお茶漬けを作ってくれるみたいだ。
うっう、久方ぶりのまともな御飯だ、感激だ。
けど、くーって可愛らしくお腹が鳴ったので顔が赤くなってしまった。
「頂きます」
鮭茶漬美味しい。なぜか偽祐一と二人の女性も一緒にお茶漬けを食べている。
「おいお前、連絡先はどこだ?」
偽物のくせに偉そうだ。けど俺が祐一だって言っても誰も信じてくれないよな。あとで
なにか適当な話をでっち上げることにして、ここはとりあえず黙秘といくか。
「おい、答えろ」
「この鮭美味しいよ」
名雪?ナイスボケ。
「そうねお茶漬けには丁度良いわね」
姉妹?の会話のお陰でここは有耶無耶になった。
ああ食欲が満たされたらまた眠くなってきた、お休み。
なかなか面白いけど…これ反転か??
(貴子Side)
その日、学校から帰るわたしの足取りには、今までにない決意がこもっていた、と思う。
まさか、悠里がいきなりお弁当を作ってくるなんて、思っても見なかった。ちょっと作りすぎたなんて
本人は言ってたけど、あれは絶対に嘘。先輩に喜んでもらおうと思って、一生懸命作ったんだろう。
実際、先輩は喜んでた。美味しそうに悠里のお弁当を食べてた。先輩が悠里の料理を褒めるたびに、
わたしもあんな風に褒めて欲しいって思った……
でも、わたしは悠里みたいに料理は作れない。今から春夏さんに習っても、悠里の腕前に追いつくのは
ずっと先の話だと思う。そのハンデを何とかするためには……わたしは柚原家に戻ると、真っ先に台所に向かった。
「春夏さん!」
わたしが大声で呼ぶと、春夏さんは驚いた表情でわたしのほうを向いた。
「どうしたの、貴子ちゃん」
わたしの様子が普通でないと思ったのか、穏やかに聞いてくる春夏さん。わたしは息を吸い込んで
気持ちを出来るだけ落ち着かせると、口を開いた。
「あ、あ、あのっ……わ、わたしに……」
失敗。全然落ち着けてない。春夏さんが苦笑いしてる。わたしは恥ずかしさで顔が熱くなった。
「これでも飲んで、しっかりしなさい」
春夏さんがコップに水を入れて渡してくる。ちょっと緊張に震える手でわたしはそれを受け取り、
一気に飲んだ。冷たい水が身体の内側から激情を冷ましてくれるような気がした。
「良い? じゃあ、話してごらんなさい」
今度こそわたしが落ち着いたと見計らったのか、春夏さんが聞いてきた。わたしはコップをテーブル
の上において、春夏さんに頭を下げた。
「わたしに……必殺カレーの作り方、教えてください!」
「いいわよ」
一瞬戸惑うくらい、あっさりと答えが返ってきた。
「い、良いんですか?」
一瞬のためらいも無い春夏さんの了承の言葉に、わたしが思わず頭をあげて聞くと、春夏さんはくすくすと笑った。
「もちろん。大事なもう一人の娘がせっかくやる気になってくれたんですもの。全部教えるわよ」
春夏さんはそう言ってくすくす笑いを収めると、わたしの全身を見て付け加えた。
「だから、早く着替えてらっしゃい」
「は、はいっ! ありがとうございます、春夏さん!!」
わたしはそう言って台所を飛び出すと、私服に着替えて、タンスから前に家庭科の実習で使ったエプロンを
取り出した。それを服の上からつけて階段を降りていくと、春夏さんはまたくすくすと笑った。
「可愛らしいエプロンねー。それならあの先輩もイチコロね」
わたしのエプロンは黒猫のアップリケがついた、小さい女の子がままごと遊びで着るようなデザイン
のものだった。中学で実習の備品をクラス単位で纏め買いした時、うっかりこれを選んでしまった過去の
自分にちょっと自己嫌悪。
「そこでいちいち赤くならない。それじゃあ、基本的なところから教えましょうか」
俯いたわたしの肩を叩いて春夏さんは言った。テーブルの上には、既にジャガイモやにんじんにたまねぎ、
肉と言った材料が用意してあった。
後で聞いた話だと、春夏さんはおじさん、つまりこのみのお父さんであるところの夫のために、
カレーの材料だけは別にいつもキープしてあるのだそうだ……流石と言うかなんと言うか。
でも、当然その時のわたしには、材料がそろってる事の不思議さに気づく余裕はなく……春夏さんが
材料の切り方から講義してくれるのに、ついていくだけで精一杯だった。同じ包丁を使ってるはずなのに、
どうしてこう、切った後の形が違うんだろう? なんか、じゃがいもを剥いても残った部分より皮に
くっついてる身の方が多いし……
そんな不器用なわたしに呆れた様子一つ見せず、春夏さんは丁寧にコツを教えてくれた。その甲斐
あってだんだん皮むきは上手くなってきたけど、こんなにじゃがいもばかりあっても意味が無いような。
「ああ、それならコロッケとかポテトサラダにするから大丈夫よ」
春夏さんはそう言って気にしない気にしない、と言ってくれた。それに必殺カレーは具の方は割と粗めに
切っても良くて、大事なのはスパイスの調合だそうだ。
「え、カレールーは使わないんですか?」
わたしが疑問を口にすると、春夏さんはもちろんとばかりに頷く。
「ええ、これこそが必殺カレーの必殺たる真髄よ。市販のルーなんかじゃ出せない味を作るわ」
こうして、わたしは必殺カレーのレシピを教えてもらった。その配合は……内緒にする約束なのでここでは言えない。
こうして、わたしが初めて作った――といっても下拵えはほとんど春夏さん任せになっちゃったけど――
カレーは、このみにもおじさんにも好評だった。自分で食べてみても、美味しかったと思う。もちろん
春夏さんには全然かなわないけど、でもわたしにとっては大いに自信が持てる出来だった。
後の問題は……これを何時どうやって先輩に食べてもらうか、だよね……まさか学校には持っていけないし。
(浩之Side)
最近、俺の生活はなかなか充実している、と思う。
朝に貴子ちゃん、悠里ちゃんと登校するのも楽しくなってきたし、昼に悠里ちゃんのお手製弁当を
いただく楽しみも出来た。そのせいか、放課後のトレーニングにも力が入るようになった。
そして、今日はいよいよ綾香との対決の日だ。前回は3分しか持ちこたえられなかったけど、今度は
5分は粘って……いや、一発くらいは打撃を入れてやる。
その決意の元に、待ち合わせ場所の河原に行こうと席を立つと、いいんちょが近寄ってきた。
「藤田くん」
「ん? なんか用か、いいんちょ」
いいんちょ……保科智子とは、彼女がクラスメイトとの間に抱えていた対立……というか、いじめ問題を
解決してやって以来の友人だ。あの時の彼女はちょっと一押ししたら崩れてしまいそうなくらいにか弱くて、
ひょっとしたらあの時強引にでも迫っていれば、今頃は恋人同士の付き合いが出来ていたかもしれない。
が、いじめの事や昔の友達の事で傷ついていた彼女の弱みに付け込むような真似はどうか、と自制したのが
運の尽き。結局いいんちょとも友達どまりだ。まぁ、すっかり明るくなった彼女は話していて楽しいし、
授業のわからない部分を解説してくれたりして得がたい友人ではあるので、これはこれで満足すべきか?
「忘れとったんやけど、このあいだ1年生の女の子がなんか藤田くんに用事があるって言うて来とったで」
俺は首をかしげた。1年生の女の子……貴子ちゃんか? それとも悠里ちゃんか? 俺は尋ねた。
「それって、ショートボブの大人しそうな娘だったか? それともロングヘアの活発そうな娘だったか?」
「ショートボブの娘やね。何や、知り合いなん?」
いいんちょは答えた。貴子ちゃんの方か。何しに来たんだろう……俺が考え込んでいると、いいんちょは
顔をしかめて聞いてきた。
「藤田くん、まさかとは思うけど、あんたあの娘に何かしたん?」
「な、何かって何だよ!?」
思わず上ずった声で答えると、いいんちょはくすくすと笑った。
「冗談や。藤田くんが女の子を泣かすような人やない、言うんは知っとるさかい」
「いいんちょが冗談を言うのは珍しいな」
俺はほっとして答えた。すると、いいんちょはちょっとさびしそうな笑顔になった。
「でも、時には女の子を泣かす覚悟で行く、っちゅうんも大事やで。あの時藤田くんに迫られてたら、
私でもどうなったかわからへん」
俺はちょっとドキッとした。いいんちょも似たような事を考えてたのか……その気持ちをごまかすために、
俺はちょっと冗談ぽく言った。
「そうだったのか。ち、惜しい事をしたな」
「逃した魚は大魚やで」
いいんちょもそれに応えて笑った。
そんな事を話していたら、ちょっと遅刻しそうな時間になってしまった。走らないと間に合わないかも
しれない。貴子ちゃんが何の用事で俺を訪ねてきたのかは気になるが、それは明日の朝にでも聞けばいいか。
「わかった、いいんちょ。ありがとな」
「ええって」
礼を言って、俺は教室を飛び出した。腕時計を見ると……うわ、やっぱりヤバイ。綾香も決して暇じゃない中で
俺に合わせてくれてるんだからな。待たせちゃ悪い。俺はスピードを上げて河原まで走っていった。そして……
「う、う〜ん?」
目を覚ますと、いきなり目の前に綾香の顔があった。
「うわ!?」
「あ、気づいた?」
驚く俺に笑いかける綾香。ちょっと記憶が混乱していた俺だが、その笑顔を見て、何が起きたのか
思い出してきた。
「あちゃ……また負けたのか。しかもKOで」
そうだった。河原まで走っていって疲れていた俺は、綾香のハイキックをかわしきれず、まともに
くらって轟沈したんだった。
「そうよ。でも、浩之また強くなったわね。つい本気で蹴っちゃった」
「そりゃ嬉しい事を言ってくれるね……いてて」
動こうとする俺を綾香が押さえつけた。
「だめよ。急に動いちゃ。急所は外れてるはずだけど、まともに側頭部に蹴りが入ったからね」
「うぃ」
俺は返事をして、頭の下に感じる柔らかい感触を楽しんだ……って、ここは河原だろ? 何だこの感触は?
「うわっ!」
俺は慌てて起き上が……ろうとして、また止められた。そう、柔らかいと思ってたのは、綾香の膝枕だったのだ。
「ちょっと、ダメって言ったでしょ?」
怒る綾香だったが、俺も流石にこんな人通りの激しい所で女の子に膝枕されて平気なほど、羞恥心は
欠けちゃいない。
「勘弁してくれよ、綾香。この辺結構学校の連中も通るんだから」
こんな所を見られた日にはどんな噂が立つやら。
「あら、良いじゃないの。私は気にしないわよ」
「気にしてくれ」
俺は言った。目だけ動かして辺りを見ると、堤防の上の方で「昼日中からうらやましーじゃねーかこの
バカップルめ」と言いたげなおっさんとかが見ている。幸い、学校の連中はいな……いや、女子がいる。
やべえな……と思ったら、その娘は急に走り出して俺の視界から消えた。
(ん?)
今の娘、なんか見覚えが……?
話も大分佳境に入ってきた、な感じです。
>469
いやいや、これぞ正当派TSって感じですな。GJ!
>496-498
涙出るほどワロタ。これまたGJ!
>509
なるほど、上手く台詞を当てはめてるなぁ……この後祐一(IN真琴)はどうなるんだろう。
続き激しく希望。
では回線吊って首切ってきます。
惜しい 惜しいなぁ・・・ 逃がした魚は人魚なんよ!!
正直スマンカタ。
>ID:TbK+GAXS0
お気に入り
>ID:F4ICyIwr0
NG登録
>469
GJ!面白いです。続き読みたい。
kanonのSSばかりあるんでAirやクラナドをもっと増やして欲しい。
正直kanonのキャラの名前見るだけで読む気なくしてスルーしちゃう。
>>511-516 貴子ちゃん大丈夫、インド人は普通にお弁当でカレー持ってくからw
向こうの多段式ランチボックスとか密閉性高くて便利。ステンレス製なんで重くてかさばるけど。
それにしても、綾香に膝枕してもらってる浩之を見ちゃったのは誰なんだろう?
このまま昼ドラになるかなw
AIRのSS求む!特に柳乃タソネタを!
ポテト性反転
ちょっとまて。そもそもありゃどっちだ?(w
水に浮かべて沈んだらオスの日、浮かんだらメスの日(w
う……久しぶりに来たらKanonキャラはNGっぽい雰囲気ですか……
次回はadult編で、その次はyoung編のつもりだったのですが……
young編には祐一反転のゆうが出てるんですよね……
young編は削除して、adult編だけを進めた方が板的によろしいのでしょうか……
>>528 KanonそのものがNGってわけじゃない。
ロクでもないSSを投下するやつが、好んでKanonを題材にしたがるので、その悪影響で「またKanonか」になってるだけ。
>>528 俺はゆう好きだからyoung編は是非とも書いて欲しい。
あと今更だが、ひろみは酒飲むと脱ぎ出しそう。脱ぎ上戸というよりは半分わざと。
そして七瀬(♂)にしなだれかかって反応を確かめてみたり。
な に そ の 夢 空 間 ?
朋美や朱鷺乃さんあたりはどうなる?
意外と幼児退行とか起こしてくれんかな?
翌日、いい匂いに誘われてフラフラと階段を下りてキッチンを覗いたら、昨夜の正体不
明のお姉さんが朝ご飯を作っていた。
「あら、早いのね」
「あっ、おはようございます」
「もうすぐ出来るからもう少し待っていってね」
「あっ、はい」
どうも、偽祐一と名雪はまだ眠っているらしい。
しばらくボーっとしていたらお姉さんが御飯と味噌汁の朝ご飯を運んできてくれた。おかず
は焼シシャモと白菜のおひたし、俺シシャモ好きなんだよね。あと卵が有れば完璧。
「あなたは生卵食べる?」
えっと、考えを読まれてる?偶然だよな。
「はい、好きです」
「そう」
お姉さんに渡された卵に醤油を落してグルグルかき混ぜる。ところでこの体はちょっと
不器用だな、箸の握り方がちょっと変だ。
「おい、これ食ったら家に帰れよな」
突然背後からそんな声が、また偽祐一が偉そうに。
「おはよう。あんたは挨拶もろくに出来ないのか」
「なんだと、生意気な」
「今のは祐一の負けだおー」
なんだか名雪が妙に間延びした声でゆっくりと姿を現わした。どうでも良いけどこいつ
半分寝てるんじゃないのか?
「ちっ、ああおはようさん。これで良いんだろう。で、早く食って帰れよ」
「祐一さん、食べ終わるまでは止めてください。ゆっくり食べて良いのよ」
謎のお姉さんは優しいなあ。
「わかりました秋子さん。おい名雪、お前はちゃんと起きろ」
えっ、このお姉さんが秋子さん?嘘だ10歳以上若く見えるぞ。
「ご馳走様でした」
「はい、お粗末様。それでね、わたしの方はいつまでも居てもらってかまわないのだけど、
お家の人が心配するでしょう。せめて連絡先くらいは教えて欲しいのだけど」
秋子さんには嘘は付きたくないけど、でもこの手しかないよな。
「それが、わたし記憶喪失なんです」
「嘘つけ!」
「イタッ!」
いきなり偽祐一に頭を叩かれた。こいつ乱暴だぞ。
「祐一さん」
「すみません」
秋子さんは声を荒げたりはしないけど、偽祐一はシュンとなる。所謂これが鶴の一声っ
てやつだな。ざまあみろと、心の中で舌を出す。
「それは困ったわね」
「こんなやつの言うことを信用するんですか?」
「わたしは嘘だとは思えないよ」
うんうん、名雪結構良いやつじゃん。ただ詐欺の被害にはくれぐれも気をつけろよ。
「ちっ、まあ記憶喪失だとしてだ。なんで俺に襲いかかってきたんだ?」
「あんたが憎いからだよ」
「なんで記憶喪失のくせに俺が憎いんだ。どうせ記憶喪失って言うのは嘘で、家出少女が
因縁つけて適当に家に転がり込もうとしたんだろう?」
「そんなんじゃない」
こいつとことん惚ける気だな。お前の方が転がり込んでるんだろうが。って言うか潜り
込んでいるのか?
「じゃあなんなんだ、言ってみろ」
「あぅー」
うーむ返答のしようがない。偽物め、なんて狡猾なんだ。
「まあまあ祐一さん。この子怯えちゃってるじゃないですか。脅かしては駄目ですよ」
自分はそんなつもりはないけど、この体だと怯えてるように見えるようだ。
「そうだよ祐一、まず自己紹介からいこうよ」
「わ、わかりました」
またたじたじとなってるぞ。情け無いやつ。
「ではわたしから、わたしはこの家の家長で水瀬秋子です」
「わたしはお母さんの娘で名雪だよ」
「俺は秋子さんの甥で名雪の従兄弟の相沢祐一だ。親が海外赴任になったからこの家でお
世話になっている。で、お前の名前は?」
「だから覚えてないって言ってるだろう。頭悪いんじゃないの?それにあんた居候のくせに
態度でかいよ」
「なんだとー!もう我慢ならん、警察に突き出す」
「あぅー」
それは困る。今のところこいつが唯一の手がかりだし、もう野宿は御免だ。
「祐一さん」
秋子さんが偽祐一の方に視線を向ける。それだけで偽物は降参。
「わ、わかりましたよ。それでこれからどうするんだ?」
「記憶が戻るまでここに居る」
図々しいけど、こいつの側にいないと困るもんな。
「やっぱり警察いこう。記憶喪失の保護は警察の役目だ」
「それは困るんだって、警察ってなんか怖いし」
この体の持ち主正体不明だもんな。家出少女だったりしたら連れ戻されちゃうかも?こ
こから引き離されると困るんだよね。
「俺はお前の方が怖い。いきなり覚悟だもんな」
「それは……あんたが唯一の道しるべだからだよ」
「道しるべ?」
「うん、本当の自分を取り戻すための唯一の道しるべ。あんたが憎いってことがね」
「はた迷惑な道しるべだな。なあ俺は本当にお前を知らないぞ、誰かと間違えてるんじゃ
ないのか?」
「違う、絶対あんたで合ってる」
「どっちにしろお前みたいな不審人物は家に置いておけないぞ」
「ここは家長のお母さんの裁定を仰ぐんだよ」
今までほんわかと微笑んだまま黙って聞いていた名雪が、急に口を挟んできた。
「わっ待て!秋子さんに言ったら一発で了承を」
「了承」
本気で一瞬で了承されたぞ。秋子さんって前からこんな芸風だったかな。
「まあ秋子さんが許可したならしょうがない。けどそうなると名前がないと不便だな。…
…とりあえず、殺村凶子なんてどうだ?」
このバカ本気か?センスゼロだぞ。けどどんな字を書くんだよ?
「漢字は?」
「これだ」
そう言ってバカの偽物が見せた紙に書いてあったのは……。
「殺村凶子、なんて名前だよ、バカー!」
思わず平手で頬を叩く。あー、なんか今の女の子っぽい。無意識に女性化してるのか?
「そう言う手の早いところがピッタリだろうが。名前を思い出すまでそう呼ぶぞ」
「それはぜーったいに嫌だ。頑張って良い名前を思い出す」
「それって頑張ってどうにかなるものか?」
「あぅー」
なんでだか口籠もるとき無意識にこう言っちゃうみたいだ。この体に染みついた口癖?
まあとにかく、なにかもっとまともな名前を考えるぞ。
しばらくしたら、誰かが偽物を訪ねてきたようだ。それでどうも俺の荷物の整理をする
らしい。よし、ここは手伝うぞ。なにか手がかりが見つかるかもしれないし。
偽物を訪ねてきたのはあゆとか言う中一か中二くらいの女の子だった。でもなんかもっ
と子供っぽい感じもする。もしかして偽物はロリコン?俺の貞操は大丈夫か?
それはともかく、あゆは手伝いと言いながら実際はほとんど漫画を読んでいるだけで役
に立たない。漫画と言えば、なぜか「恋は唐突」とか言う昔の少女漫画が一冊だけ紛れ込
んでいた。なぜこんなものが残っていたのか不明だけど、妙に懐かしい。
それと唐突に昔沢渡真琴という先輩にあこがれていたことを思い出した。丁度いいやと
りあえずこれを偽名にしておくか。
それにしても偽物のくせにちゃんと手際よく荷物を整理していくな。なんでそんな知識
があるんだ。こいつの方は俺の知識も持っているのか?なんか不公平だ。
あゆが帰った後、偽祐一に名前を宣告。
「名前思い出したよ、沢渡真琴」
「ほう良い名前じゃないか」
あれっ、案外素直じゃないか。と思ったんだけど……。
「皺足りないとか、まあお前確かに脳みその皺が足り無さそうだしな」
「って違ーう!しわたりじゃない沢渡!沢渡真琴!」
「えっ、猿渡真琴?まあお前猿みたいにキャッキャッと騒がしいしな」
「違う沢渡、猿じゃない!」
「おおそうか、煤渡(すすわたり)か。小汚いお前にはピッタリだな」
こいつ性格悪すぎるぞ。くそう、善人たる最近の本当の俺を知っていれば、秋子さんや
名雪に一発で偽物だとわかるはずなのに。これでは俺の評判が落ちてしまうではないか。
ハッ!もしかしそれが偽物の狙いなのか?
「煤でもない!あんた耳がおかしいか、脳みそ腐ってるんじゃないのか。あっそうだ、良
い名前だったから悔しいんだろう」
「そんなわけあるか。第一その名前の何処が相沢祐一より良いんだ」
「だって真琴は沢渡真琴って好きだからね、真琴の勝ち」
なんか言い合いしているうちに本気でそう思えてきた。
「うっ、そう臆面もなく言い切られると……負けたのか?」
「うん、祐一の負けだと思うよ。真琴よろしくね」
「そうですね、ここは真琴の言うとおりじゃないですか」
「やったー!真琴の勝ち」
ふっ、やっと偽物に一矢を報いたぞ。って待てよ、なんで一人称が真琴に成ってるんだ?
だんだん体に馴染んで来ちゃってるのか?
その日の深夜、ささやかな昨夜の復讐を決行する。偽物の部屋に忍び込み。
「一、ニ、三」
ペシャ!太平楽に熟睡中の偽物の顔の上にコンニャクを投下。夕べ首元にコンニャクを
落された仕返しだ。やっぱり世の中目には「目を歯には歯を」だよな。でもここまで気が
付かないのって、偽祐一のやつ鈍すぎ。
翌朝
「いやあ、コンニャクパックでお肌スベスベだぞ」
「負け惜しみは見苦しいって」
偽物のくせに口が減らないやつ。生意気だぞ。
「なんか健康に良さそうだおー。今度わたしもしてもらおうんだおー」
「名雪、良いからお前は起きろ」
偽物は糸目で山盛りジャムトーストを囓ってる名雪の頭を軽くこづいてた。なんかやけ
に馴れ馴れしいって言うか自然。なんで偽物なのにこんなに馴染んでるんだ?
あとどうでも良いんだけど、名雪は朝が弱くて寝惚けていると語尾が変になるみたいだ。
そのせいか、時間ぎりぎりみたいで二人は大慌てで家を出っていった。なんかこっちは高
みの見物だけど、偽物の生活もなかなか大変だな。
偽物が出掛けた後、手がかりを探して部屋を捜索。でもなにも出てこない、退屈なので
やつの部屋で発見した漫画を拝借。って元々俺のじゃないか。
それが結構熱中してしまい気が付いたら夕方、腹が減ったので近所のコンビニで中華ま
んを買ってきた。
寝転がって食べながら続を読んでいたら視線に気が付いて、振り向いたら偽祐一に観察
されていた。もしかしてストーカー?
夕食後、偽物はなにか名雪と言い合いをしてたけど、そのまま風呂に入って寝たみたい
だ。いったい何だったんだろう?
夜、ここは復讐第二弾だ。昨夜のは全然堪えてないみたいだから、今度は部屋に発煙式
の殺虫剤を投げ込んだんだけど、逆襲を食らって煙を吸い込んだのは俺だった。
くそう偽者め、なかなかやるな。次は見てろよ。
貴子Side
わたしは堤防の上を走っていた。視界がなんだかぼやけている。それが涙のせいだとわからないほど、
わたしは動揺していた。
(藤田先輩……あんなに仲良さそうに……)
頭の中では、見知らぬ女の人に膝枕されている藤田先輩の姿が、何度も何度もフラッシュバックしては
消えていた。
春夏さんから必殺カレーの作り方を教わり、それをどうやって先輩に食べてもらうか。考えた挙句、
わたしは直球勝負で、先輩の家にカレーを作りに行くことを申し出ようと思った。
でも、朝やお昼は悠里がいるから、恥ずかしくて言い出せない。一人だけで先輩に会いに行く口実はないか、
と思った時、わたしはパン代をまだ返していなかった事を思い出した。
これなら、返しに行くついでに先輩にカレーのことを言える。そう思ったわたしは、放課後に先輩の
教室へ行った。すると、またあの時の関西弁の先輩が応対してくれて、また先輩が帰ってしまった事を教えてくれた。
気が削がれて、がっかりして帰ろうとするわたしに、関西弁の先輩は河原に行けば藤田先輩に会える
かもしれない、と教えてくれた。それでわたしは先輩を追って河原に行って……見てしまったのが、さっきの光景。
やっぱり、先輩には彼女がいたんだ。それも、あんな綺麗な人……それに、あの制服はお嬢様学校の
西園寺女学院のものだった。
きっとすごいお嬢様なんだ……悠里ならともかく、わたしなんかじゃ全然あの人には張りあえない。
そう思うと、たかだかちょっと美味しいカレーが作れるようになっただけで浮かれていた自分が恥ずかしくなって、
わたしは夢中で走りつづけた。先輩とあの人から逃げるために。
すると、足がもつれて、わたしは転んでしまった。制服が土だらけになってしまう。でも、それを払う
気力もわたしにはなかった。のろのろと立ち上がってみると、左足が痛い。この前痛めたところと同じ
……また捻っちゃったみたい。
でも、その痛みも気にならなかった。心の方がずっと痛いから。足を引きずって柚原家に帰ると、
出迎えてくれたこのみが息を呑んだ。
「タカお姉ちゃん、どうしたのっ!?」
その叫びを聞きつけて、奥から春夏さんも出てきた。一目見て、制服や怪我だけでなく、わたしの
様子がおかしい事に気づいたんだと思う。でも、春夏さんは一言も詮索しようとしなかった。
「とりあえず、お風呂に入って休みなさい……制服は洗濯しておくわ」
そう言って、春夏さんはわたしを家に迎え入れた。お風呂に入ろうとして、ようやくわたしは自分の
ひどい格好に気がついた。顔は涙でくしょぐしょだし、あちこちすりむいて血がにじんでいる。制服も
泥だらけ。こんな格好でずっと道を歩いてきたんだと思うと、また涙が出そうになった。
シャワーを浴びて、傷を洗い流して、身体だけはさっぱりとした。でも、気持ちは全然晴れない。
食欲もなく、わたしは客間に春夏さんが用意してくれた布団に潜り込んだ。時々このみが様子を見に
来てくれたけど、それに応える気持ちにはとてもなれなかった。
その夜、怪我のせいか熱が出てきて、わたしは次の日学校を休んだ。
(悠里Side)
めずらしく貴子が学校を休んだ。このみによると、熱を出したから、って言ってたけど、でもなんか
それだけじゃない感じね。元気がとりえのこのみが、妙に沈んだ表情だったし。ひょっとしたら、すごく
具合が悪いのかしら?
昼休みに屋上でお弁当食べた時は、藤田先輩が凄く心配そうにしてたし……みんなに思われて幸せもんよね、貴子は。
やっぱり親友たるあたしとしても、お見舞いには行かなきゃね、ということで、あたしは放課後このみの家に
行くことにした。途中で商店街に寄って、貴子の好きな13のアイスを……と思ったけど、藤田先輩向けの
お弁当作りでお小遣い使いすぎちゃって、ちょっと余裕がなかったのよね……ごめん貴子。
結局コンビニのアイスで妥協してもらう事にして、あたしはこのみん家に着いた。ブザーを鳴らすと、
このみのお母さんが出てくる。会うのはちょっと久しぶりだけど、相変わらず若くて綺麗よね……あたしが
物心ついたときから全然変わってないの。今度メイクとかコスメの秘訣を聞こう。
っと、それはどうでも良いんだった。
「あら、悠里ちゃん……いらっしゃい」
「こんにちわ、春夏さん。貴子の具合、どうですか?」
あたしは挨拶がてら貴子の具合を聞いた。今朝のこのみの様子から見るとかなり不安なんだけど。
「うん……熱は下がっんだけど……」
珍しく歯切れが悪い口調の春夏さん。熱が下がった、って事は良くなったんじゃないのかしら? それとも……
「貴子、そんなに悪いんですか?」
不安になってあたしが聞くと、春夏さんは少し考え込んで、顔を上げた。
「なんて言ったら良いのかしら……そうね……悠里ちゃんなら大丈夫かしら」
また、良くわからない事をいわれてしまった。あたしなら大丈夫って……ひょっとして、はしかか
何かかしら。
確かにあたしはもう罹ったから免疫があるけど。あれ? でも、貴子も同じ歳くらいの時に罹ってたような?
「さ、あがって」
「あ、はい、おじゃまします」
春夏さんに急かされるようにして、あたしは靴を脱いだ。案内された先は、確か客間になっているはずの
部屋だった。
「貴子、お見舞いに来たよ」
そう言ってふすまを開ける。部屋の中は暗かった。窓にはカーテンが二重にかけてある。まぁ、明るいと
寝られないから当然かもしれないけど、なんだかそれだけじゃないような重苦しい暗さがそこにはあった。
「貴子……? 寝てるの?」
反応が無い事に不安になって、あたしはふとんを頭からかぶっている貴子の横にしゃがみこんだ。
「……起きてる」
声が聞こえてきた。起きてはいるのね。
「大丈夫? アイス買ってきたけど、食べる?」
あたしはコンビニの袋を振って聞いた。さわさわというビニールのこすれる音が部屋の中に響く。
「……いらない。食べたくない」
また布団の中から声がする。あたしはちょっとむっとした。親友が来たって言うのに、顔も見せない気?
でも、と思い直す。ひょっとしたら、はしかではないにしても、おたふく風邪かもしれない。そうなら
顔は見せたくないだろうなぁ。
「わかった。じゃあ、冷蔵庫に入れてもらっておくから。後で食べてよね。せっかく買ってきたんだから」
親友の気持ちを察して、あたしは顔を見せない事には妥協した。幸いあたしはおたふくももうやっている。
その時は、膨れた顔を見た貴子にずいぶん笑われたっけ。
……前言撤回。やっぱり親友同士の間で隠し事は禁物よね。って言うか、復讐するは我にありよっ。
「た〜か〜こ。ひどい顔になってるのはわかるけど、隠すのはズルイわよ〜。どんくらいふくれたのか、
あたしにも見せてごらん」
そう言って、あたしはふとんを剥ごうとした。すると、貴子は今まであたしが聞いた事の無いような、
激した声をあげた。
「そうよっ! ひどい顔だもん……だから放って置いてよっ!!」
「……貴子?」
あたしは戸惑った。それは、病気だからとか言うんじゃなくて、まるで貴子が自分で自分を傷つけようと
しているかのような、そんな捨て鉢な台詞に思えた。
貴子は昔からちょっと自分を責めるような所があって、悩みを溜め込んだりする事も多かったけど、
でもこんな風にやけっぱちになるような娘じゃなかった。
「貴子……何があったの?」
あたしは聞いた。貴子は返事をしない。でも、あたしはじっと待つ。時計の秒針が5周ほどしたところで、
あたしはもう一度聞いた。
「貴子……そういうのはあんたらしくないわ。何があったの? あたしにも言えない事?」
ふとんがちょっと動いた。頷いたようだ。あたしにも言えない事……って事なのね。いったい何だろう。
あたしは昨日の貴子との事を思い返した。確か、一緒に帰ろうって言ったんだけど、何か用事があるって
断られたんだっけ。その用事とやらで何かあったのか。
あたしはそのままじっと待った。貴子が何か言い出すんじゃないかって期待して。でも、親友はこんな時には
ひどく頑固なのだった。お互い何も言わないまま、時計の針は回りつづけて……気がつくと、カーテンの
隙間から差し込む光はオレンジ色になっていた。
「はぁ……」
あたしは根負けしたようにため息をついた。同時にちょっとがっかりもしている。何か悩みがあるなら、
思い切りぶつけてくれてよかったのに。親友なんだからさ……
「貴子……今日はもう聞かないよ。でも、熱が引いたらちゃんと学校に来なさいよね。藤田先輩も心配
してたし」
それは何気ない一言のつもりだった。でも、貴子が一番激しく反応したのはその時だった。
「先輩の事は言わないで!」
あたしは立ち上がりかけていたのを止めて、もう一度座り直した。藤田先輩の名前を出した途端に、
この反応……まさか、貴子は……
「貴子、先輩がどうしたの?」
何も聞かないって前言を撤回して、あたしは尋ねた。貴子は何も答えようとしないけど、こうなったら
こっちも意地でも聞き出すつもり。
窓の外のオレンジ色の光が徐々に薄くなり、紺色の夜空へ変わっていく。あー、もうこんな時間かぁ……
家に帰ったら怒られるだろうなぁ。でも、まだ帰ることは出来ない。あたしはもう一度言った。
「答えてよ、貴子。そうでなきゃあたし帰らない」
「……いたの」
「え?」
ふとんの中からの声に、あたしは耳を傾ける。くぐもってよく聞き取れない。
「……じょがいたの」
「聞こえないわよ、貴子。はっきり言って」
さっきよりは長く聞き取れたけど、まだ判然としない。あたしはもう一度と貴子を急かした。すると、
貴子は大声で叫んだ。
「彼女がいたのっ!」
……彼女? 誰に? この場合はやっぱり……
「藤田先輩に?」
確認のためにあたしは聞いた。すると、貴子はそれまで決して出てこようとしなかったふとんの壁を
蹴り飛ばして、あたしを見た。言いたくない、聞きたくないことを何度も言わせる憎い相手……つまり、
あたしを睨みつけている。
「そうよっ! 先輩には彼女がいたの! 寺女のお嬢様の! 膝枕なんかしてもらって、すごく仲良さそうだった!」
貴子が叫ぶ。怒っている声というよりは、悲痛な泣いているような声で。
ショックだった。先輩に彼女がいたっていうのもまぁそうだけど、悲しいことにあたしはフラれ慣れ
してるから、あぁやっぱり、と言うくらいで、そんなに辛くはない。
本当にショックだったのは、貴子の顔。さっき本人はひどい顔だって言ってたけど、本当にひどい。
目は泣き腫らして真っ赤になっているし、髪はぼさぼさ。肌も荒れている。
あたしほどじゃないけど、貴子は可愛い。本人に言ったら怒るだろうけど、ちょっと童顔気味で保護欲を
そそるタイプって言うのかな。背丈も男の人なら腕の中にちょうど収まるくらいだし。これは背の高い
あたしには出来ないアピールポイントだと思う。
その貴子が、こんなひどい顔になってしまうくらい、藤田先輩に彼女がいたって事が辛かったのだ。
それだけ貴子は藤田先輩のことが……
「好きだったのね?」
ひとしきり気持ちをぶちまけてしまったらしい貴子が少し落ち着きを取り戻した所で、あたしは尋ねた。
貴子はううん、と頭を横に振った。
「わかんない……」
あぁ、これだからもうこのお子様は。素直になれば良いのに。
「貴子。藤田先輩は嘘をつく人だと思う?」
あたしは質問を変えた。前にあたしは藤田先輩に質問したことがある。彼女はいるか、って。その時
先輩ははっきり「いない」と答えた。
それは本当だと思う。先輩はこういう質問に嘘を答えるような人だとは、あたしは思わない。貴子が見た
「寺女のお嬢様」も、藤田先輩は彼女とは思ってないんじゃないだろうか。もし思ってたら、正直に
言ってくれるはず。
「貴子、どうなの?」
なかなか答えない貴子に焦れて、あたしが答えを急かすと、貴子は首を横に振った。
「……思わない」
同時に、掠れたような声でそう答える。あたしは笑顔を浮かべた。
「そうでしょ。だったら、先輩を信じれば良いじゃない……好きになった人なんだから」
「うん……」
貴子は思わず頷いた後、見る間に真っ赤になった。ふふふ、引っかかったわね。
「……悠里のいじわる」
拗ねたように言う貴子。あたしはにやっと笑って立ち上がった。さすがにそろそろ帰らないと。ふすまを
開けながら、あたしは貴子の方を振り向いた。
「貴子……気持ちは正直にぶつけた方が良いわよ。やって後悔するより、やらずに後悔する方が、ずっと
辛いんだから」
これは、あたしの本心からのアドバイス。まぁ、あたしはやって後悔することばかりなんだけどね。
「うん……ごめん、悠里」
頷く貴子。ただ、その顔にはまだ心配事がありそうな表情が浮かんでいた。
「どうしたの、まだ何かあるの?」
あたしが聞くと、貴子はあたしの顔を一瞬見つめて、それから俯き加減に言った。
「その……悠里も先輩のことが……」
「なんだ、そんな事?」
あたしは笑った。
「良いのよ。世の中藤田先輩だけが男じゃなし。きっと、あたしにふさわしい良い男が、世の中のどこかに
いるわよ」
あたしは手を振ると、ふすまを閉めた。玄関に行く途中、台所から春夏さんが出てきた。
「もう大丈夫ですよ」
あたしが言うと、春夏さんは安心した笑顔を浮かべた。
「そう。ありがとう、悠里ちゃん」
「良いんですよ。親友のためですから!」
あたしはそう答えて、このみん家を後にした。誰もいない夜道を家に向かって歩く。
「はぁ……負けたな」
そうひとりごちる。貴子のヤツってば、ずるいわよ。あたしの知らない所であんな真剣な想いを育て
ちゃってさ……応援するしかないじゃないの、親友としては。
そのはずなんだけど……
妙に視界がぼやけるのは何でかしらね。
意外性の無い展開ですいませんorz
>518
大魚にしたのはわざとです……智子はその辺ちゃんとした言葉使うと思うので。
>519
ありがとうです。
>521
ああ、あのでっかい水筒みたいなやつですね。流石にあれは……w
>528
私はyoung編にも期待してますよ。一部の心無い作者とアンチのせいでKanonのSSが叩かれてるのは遺憾ですが、
めげずに頑張りましょう。
>533-539
今の身体に馴染みつつある祐一(IN真琴)に萌え。
風呂のイベントとか今から楽しみですねー。
では回線吊って首斬ってきます。
>>548 >意外性の無い
世の中にはお約束と言う賞賛すべき言葉があってな……とにかくGJ
悠里がカッコイイ。身を引いてるのがなんとも……甘酸っぱい感じがする
550 :
名無しさんだよもん:2005/09/08(木) 02:38:03 ID:etbn+1dW0
>>547 悠里…自分の想いを抑えて親友を応援してしまうのは
向坂の女の血筋故なのか
トンクス
ID:F6M5X1tT0
(・∀・)カエレ!
ID:Q2ePqX7D0
下り坂かと思いきやその先に上り坂が待っていようとは
どうしよう……、萌える。
Kanonウゼーなふいんき(なぜか変換できない)だけど
俺は純情マコピーの続きがみたい、外伝で終わりなのだろうか・・・
天然のゆうが萌えるんだよ・・・(*´д`)=3ハァハァ
>>554 まぁなんつうかあれだ「ふんいき」で変換してみろ
>555
まぁなんつうかあれだ「ふいんきのガイドライン」で検索してみろ
>>556 まぁなんつうかあれだ「アンカール・ワット」で検索してみろ
そこで文化祭の舞台に乱入して美佐紀会長に追っかけられる祐巳さんですよ
朝名雪がカエルの縫いぐるみを抱えて現われた。
「けろぴーはここ」
へえーこの縫いぐるみの席もあるんだ。それと名雪は半分寝たままでも食事を食べれる
んだな。我が従姉妹ながらなかなか器用だなあ。
ちなみになんだか偽祐一も驚いてるみたいだから、おそらくこれは日常的光景ってこと
はないんだよな、まあ日常だったら怖すぎるけど。でも秋子さんは平然としてたぞ、そう
すると時々はこういうことがあるのかな?
夕方秋子さんに頼まれて買物に出掛けようとしたら、下校途中の偽祐一に出会った。
「よう真琴、また肉まんの買い食いか?」
どうしてこいつはいつも一言多いんだろう?
「違う、秋子さんのお使いだ」
「お使い?お前みたいな子供にちゃんと出来るのか?」
なんちゅう疑わしそうな目で俺を見るんだ。確かに見かけはちょっと年下だけど、中身
はお前と同い年なんだ。バカにするにもほどが有るぞ。
「真琴は大人なんだよ」
なんかこの体で一人称が俺だと変だし、かといってあたしとかは言いにくいから、いつ
の間にか真琴って言うようになっていた。それはまあいいとして、今のは我ながら子供っ
ぽい物言いだな。なぜかこいつの前では平静でいられないぞ。
「そうか大人ならエロ本買えるよな」
「あったりまえだ」
しまった、挑発に乗せられてついつい返事をしてしまった。けどこいつに折れるのは癪
だし……。ようし買ってきてやろうじゃん、エロ本。
しかし、やっぱりこの体ではエロ本購入は無理だった。やっぱり見かけ女子中学生には
売ってくれるわけなくて、店主に説教された。おまけに怒りのあまり肝心なお使いの品物
を買い忘れた。えーい、これというのも全部偽物が悪い。
だと言うのに、偽物にもお使いもまともに出来ないのかと説教された。もの凄くむしゃ
くしゃするぞ。こうなったら仕方がない復讐だ。今夜はどうしてやろうかな。
作戦を練るべく湯船の中で考え中。ガラッと扉を開ける音でハッと我に返った。
そうしたらやつが目の前にいて、一瞬間をおいた後
「キャー!エッチ。スケベ、出ていけー!」
「ワッ!真琴止めろー!」
悲鳴を上げながら手でお湯をデバガメ野郎の偽物にぶっかける。なんてこった、熟考中
で脱衣場での音に気が付かなかったんだな。それにしても偽物野郎め、風呂を覗くとはま
ったくなんて変態だ。乙女の裸体をなんと心得るか。
あれっ、なにかが微妙に間違ってるような……。
仕返しに偽物のもみあげを切ってやろうと思ったけど、よく考えたら元に戻ったときに
みっともないのは自分なので取りやめ。代わりに偽物のノートで紙飛行機を作って飛ばし
てみた。あまり飛ばない、どうもこの体は手先が今一不器用だな。
今朝はちょっと寝坊しちゃって、朝食に降りたら偽物も名雪ももう居なかった。そうか
きっと今日は名雪が早く起きたんだな。本人のためにいつもこうなることを祈る。
秋子さんに甘くないジャムを食べてみないって勧められたけど、この体になってから甘
い物が好きになってるし、なんとなく断わって普通の苺ジャムを食べた。
うんうん、秋子さんの手作りってなんでも本当に美味しいよな。けど秋子さんはちょっ
と残念そうだった。今度は食べてあげるべきだろうか?
秋子さんが仕事に出掛けた後しばらくはテレビを見ていたけど、さあ今日はどうしよう
かな?家の中にはもう手がかりはなさそうだし、とりあえず街をぶらついてみるか。
なんかお約束な気もするけど迷った。このあたりつくづく自分の方向音痴が情け無いぞ。
けどまあいいか、別に何時に帰らなければ行けないわけじゃやないし、いくらなんでも
夕方までには帰れるだろう。
昼飯は適当に見つけたコンビニで買ったんだけど、無意識のうちに肉まんを購入してい
た。かっしいなあ、別にここまで肉まん好きじゃなかったはずだし、最近しょっちゅう食
べているからいい加減に飽きそうなもんだが。この体は肉まんを欲しているのか?
その後百円ショップで時計を買った。それから更に歩いてみたけど、当然ながら闇雲に
歩き回っても収穫なんかあるわけないよな。
2時前くらいに何となく落ち込んできて俯いて歩いていたら、角で中学生くらいの女の
子とぶつかった。この体と外見年齢は同じくらいってことだな。
「あっ御免、ぼんやりしてたから」
ここは一応謝っておく。とっても細い子だし、怪我でもさせたら大変だ。
「いいえ、わたしこそうっかりしてました」
結構礼儀正しい子だな。ボブカットで大人しそうな女の子だ。肩掛け、ストールってい
うんだっけ?をしていたから寒がりなんだろうか?
名雪も秋子さんも薄着だからこの街の女性はみんな寒さに強いんだと思ってていたけ
ど、そうでもないのかな?一瞬そう思ったんだけど、女の子の荷物がスーパーのレジ袋か
らこぼれていて、アイスクリームが一山。やっぱりこの子も寒冷地仕様か?
荷物を拾うのを手伝ったら、お礼にと言って一個くれたんだけど、一緒に公園のベンチ
で食べるのは勘弁してほしかった。本来の自分の体よりはよっぽど寒さに強いんだけど、
それでも戸外のアイスは冷えるし、女の子はトイレ近いしね。
もっともご一緒したおかけでいろいろ話をして、この子、美坂栞って言う名前だったが、
偽祐一の知り合いだってわかって、それで道を教えてもらったお陰で無事帰宅できたんだ
けどな。その直後に大雪になったからかなりラッキーかも。
ただこの子は偽物をかなり美化しているみたいだ。偽物のやつこんな清純そうな少女を
たぶらかしているのか。先日のあゆといい、大したナンパ師だな。もっともロリ専門のよ
うな気もするが。どっちにしても女の敵だぞ、むかつく。
あゆと言えば、帰り道で私服のあゆが商店をうろついているのを見かけたけど、あの子
も学校へ行ってないのかな?
偽祐一は夕食前にやっと帰ってきた。
「祐一、遅かったね」
雪のせいで部活が早く終わった名雪がそう訊ねると。
「それがな、あゆがまた捜し物をしてたんだ。雪の中チビ一人ってのも可哀想だしな。手
伝ってやったんだよ」
へーあゆって捜し物をしてるのか。それで偽祐一が大雪の中捜し物に付き合ってた、も
しかしてあれで根は善人なのか?
「そうなの、それで捜し物は見つかったの?」
「いいや、骨折り損のくたびれもうけだな。大体何処でなくしたのか、なにを無くしたの
か覚えてないんだから仕方がないけど」
おいおい、そりゃあ見つからないよな。
「真琴と言いあゆちゃんと言い、なんか知り合いに健忘症が多いね」
それを言われると弱いなあ。
「名雪、ボケボケ女王のお前には言われたくないぞ」
「酷いよ祐一、今のは極悪だよ。祐一だって7年前のこと良く覚えてないのに」
そうか偽物も昔のことを良く覚えていないんだな。俺の持っている記憶以上のものは持
っていないのだろうか?
ところで今の名雪は冗談めかしてはいたけど、なにかどこかしら寂しそうな感じがした
のは気のせいかな?それと偽物のくせに名雪とやけに親しげなのが腹立つぞ。
さて今夜も偽物になにか仕掛けてやるか。えっともう復讐じゃないぞ。この間キ○ズ・
ス○ーションでやっていた「ビュー○ィフル・ド○ーマー」のなかで保健医のサク○さん
も言ってたじゃないか、「要はコトを起こすことじゃ」ってな。
つまり偽祐一になにか仕掛けてやつにぼろを出させるのだ。
と言うわけでやつの部屋にネズミ花火を投げ込んでやった。
たんだけど、またもや逆襲を食らってしまい階段から転げ落ちた。
「きゃー!あぅー、いったーい!」
うー痛いぞ。偽物め手強い。
これだけ大騒ぎするとさすがに秋子さんが起きてくる。おまけに地震があっても起きな
いんじゃないかと思った名雪も。よく考えたら初日も起きてきたっけ、女の子の悲鳴は良
く響くから名雪でも起きるのだろうか?
あっ、今の悲鳴すごく女っぽかった。わー俺はどうなっていくんだ。
「真琴、花火をしたかったの。でも夜中にやったらご近所迷惑でしょう。だから花火をし
たかったらわたしに言ってね。今度みんなでやりましょう」
「花火って、今冬だぜ」
「冬の花火もきっと楽しいよ」
「あぅー、はい」
うーん、怒られるよりこういう風に静かにさとされた方がかえって堪える。とにかく音
の出るものはもう駄目だな。明日の攻撃は静かに行くぞ。
>>548正統派まっとうな三角関係って良いですね。
ご期待の風呂イベントはこんなもんで申し訳ないです。
>>564 二時間経過してもレスがつかないという時点で、いい加減自分の評価を悟ってもいいと思うんだがな。
>>559-563 これはこれで面白いと読み続けてる俺ガイル。
ところでこのままシナリオが進むと、名雪達を偽祐一に寝取られたりするんだろうか?
∧_∧
_( ´Д`)
/ ) _ /
/ ,イ 、 ノ/ ∧ ∧―= ̄ `ヽ, _
/ / | ( 〈 ∵. ・( 〈__ > ゛ 、_
| | ヽ ー=- ̄ ̄=_、 (/ , ´ノ \
| | `iー__=―_ ;, / / /
>>564 (!、) =_二__ ̄_=;, / / ,'
/ / / /| |
/ / !、_/ / 〉
/ _/ |_/
ヽ、_ヽ
前までのカノンものよりマシだよなぁ、と思ってる俺もいる。
まあ、どうせならテキストにまとめてうpろだにあげて読みたい人だけ読めるようにする方が平和だと思うが。
初心者の俺には何故カノンが叩かれるのかよく分からんけど
何か理由があるん?
>>569 U-1を思い出すから。
最近では純情マコピーや564のはkanonだが割と面白いと思うよ。
まぁ、kanonもので最高だったのは雪弥がかっこよかったあれだけど。
地の文が一人称「のみ」で構成されているとうざい。状況説明も全部一人称って、
何かの実況レポートでもやってるのかという気になる。
なんかとにかく叩きたい連中がいるみたいだな
>>571お前がそう言いたい気持ちもわかるが
誰かの作品に対する感想でもなく投下される前からそんな
「〜〜〜」な書き方ウザイとか言ってるとネ申が来てくれないから
つーかお前に読ませるためだけにこのスレあるわけじゃないから
つまりナニがいいたいのかとゆーと続きキボンヌ(;´д`)<反転萌え分が不足シテマス
>573
いや、いくら言ってもコテ付けてくれない特定の作家に対するコメントのつもりだったが。
その人以外のカノンネタ自体は別に否定しないよ。
…特定だよな。同じような文章の書き手が複数いるなんてことは…
>>571 じゃ、お前さんは「半分の太陽、二つの月」シリーズも「伝説の先輩と純情な後輩」シリーズも
完全否定するわけだな?素晴らしい。
こんなネタスレに居座ってないで、もっと高尚な学術書でも読んでたら?
まあこれ以上やると葉鍵学園スレと同じ徹を踏みそうなのでこの話ここまで。
スレが荒れた罰として
タカちゃんにエネルギー注入であります
そろそろ次スレのテンプレを決めようジャマイカ
早いんジャマイカ?
とはいえもう490KBちかいし。
つうわけで一発ネタ。
た〜かこ〜♪ た〜かこ〜♪
た〜っぷり貴子♪ @キユー○ーパ○タソースた○こ
悠里「あなたのテーマソング思いついたんだけど、どう?」
貴子「ヤメテヤメテヤメテ」
ある特定の作家が嫌いだと学術書を読まなきゃならんのかよ…。文学書ならまだしも何故…
その二つの作品は普通の地の文も混ぜて書いてるじゃんか。具体的には564の人だけだ、漏れが嫌いなのは。
とりあえず数学板にでも追放されてきます。
度々済みません……
今反転集結書いてるんですけど……思ったら、一人称「私」のキャラ多いですね……
そこで、何人かを「あたし」にしたいんですけど……誰がいいでしょうかね……?
やっぱり朋美とかそのあたりでしょうか……
参考になるかわからないけど、自分は反転キャラの一人称は元の一人称から考えてますね。
基本的に「僕」⇔「わたし」、「俺」⇔「私」、「オレ」⇔「あたし」とかで。違うときもありますが。
ご自分の判断で決めちゃっていいと思いますよ。
なんかちょっと好みの問題で荒れてるようですが、冷静に行きましょうや。
>549
甘酸っぱい感じが伝わったなら嬉しいです。
>550
次は浩之×悠里もやってみたいですねぇ。
>564
感想ありがとう&GJ。
お風呂シーンは期待通りというか、ますます女性化が進んでいるようで良い感じです。
>581
あなたの抱いているイメージに従えば良いと思いますよ。
書き手のイメージ通りでこそ面白いものが生まれると思いますよ
というか自分でも書いててキャラ違いすぎないか迷うときが多いですが 突っ切ります。
もう490kbと言うところでもあるし、テンプレ案を一つ投下。
♪は・は・葉鍵の反転ショー スレッド合わせば顔なじみ
萌えてちょうだい今日もまた 誰にも遠慮はいりません
♪は・は・葉鍵の反転ショー ヒロインますます元気です
今日の主役は誰だろな 力いっぱい萌だえるぞ
♪は・は・葉鍵の反転ショー 職人全員ネ申ばかり
てぐすね引いて待ってます これを見なけりゃ損をする
♪は・は・葉鍵の反転ショー 浩子に貴子にはじめさん
ゆうちゃんひろみに往穂ちゃん
揃ったところではじめよう 揃ったところではじめよう〜
前スレ:葉鍵キャラを性別反転させてみよう!その17 (実質18代目)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1122474474/l50 いや、そのなんだ。認めたくないものだな、自分が年寄りだということは。
>>586 全員集合ハゲナツカシス
確かに、自分の年齢がわかるなw
>>586 反転主人公キャラ全員を採用しきれないのはお約束デスネw
>>586 全員集合か
葉×鍵というのも面白いかな。
牟祢×ひろみ(どちらかが男)とかはじめ×往穂(左に同じ)とか。
朱鷺乃×春原なんて相性良さそうだし、志子+ひろみだと恐ろしそうだし。
ただかなり難しそうだな・・・。
>>586のテンプレ案で問題なしかと。立ててしまいましょう。
591 :
『ふゆ』書き:2005/09/14(水) 03:10:21 ID:9eY/HIJ40
採用を前提としないテンプレ案(理由:長いから)
とくがわ「史上最高の反転スレを見たくはないか―――ッ!」
観客 「オーーーーー!!!!」
とくがわ「ワシもじゃ!ワシもじゃ、みんな!! 」
全ヒロイン入じょ・・・・ひぃぃーっ
・・・あのー、生きていますか??えーっ、更なる研鑚をつんでめげない女が蘇った!!
のか? 春原陽子だァ――――!!!
反転キャラ萌えは最初のSSで完成している!!
Moon.から高槻だァ――――!!!
買い付け次第売りまくってやる!! 伸縮自在!!
五月雨堂女店主 宮田さつきの登場だァ――――!!!
反転スレでの萌え具合ならソフトの歴史がものを言う!!
鍵の最古キャラ 「同棲」から・・・(名前なんだっけ?)
真のツンデレを知らしめたい!!クラナド 岡崎朋美だァ!!!
またKanonかといわれようとも投稿SSの数ならこの娘がbPだ!!
カノンの受身ヒロイン 相沢ゆう!!!
美坂対策は完璧だ!! 報われぬ金髪娘 北川潤子!!!!
一対一なら絶対にオチル。常に一杯一杯。
元祖反転萌えヒロインのストーリー見せたる!! White Alubum 藤井ふゆ!!
592 :
『ふゆ』書き:2005/09/14(水) 03:10:52 ID:9eY/HIJ40
とくがわ「史上最高の反転スレを見たくはないか―――ッ!」
観客 「オーーーーー!!!!」
とくがわ「ワシもじゃ!ワシもじゃ、みんな!! 」
全ヒロイン入じょ・・・・ひぃぃーっ
・・・あのー、生きていますか??えーっ、更なる研鑚をつんでめげない女が蘇った!!
のか? 春原陽子だァ――――!!!
反転キャラ萌えは最初のSSで完成している!!
Moon.から高槻だァ――――!!!
買い付け次第売りまくってやる!! 伸縮自在!!
五月雨堂女店主 宮田さつきの登場だァ――――!!!
反転スレでの萌え具合ならソフトの歴史がものを言う!!
鍵の最古キャラ 「同棲」から・・・(名前なんだっけ?)
真のツンデレを知らしめたい!!クラナド 岡崎朋美だァ!!!
またKanonかといわれようとも投稿SSの数ならこの娘がbPだ!!
カノンの受身ヒロイン 相沢ゆう!!!
美坂対策は完璧だ!! 報われぬ金髪娘 北川潤子!!!!
593 :
『ふゆ』書き:2005/09/14(水) 03:12:49 ID:9eY/HIJ40
一対一なら絶対にオチル。常に一杯一杯。
元祖反転萌えヒロインのストーリー見せたる!! White Alubum 藤井ふゆ!!
バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこの女性が萌える!!
魅惑の職業人 大谷貴野だァ――――!!!
旧Tacticsから黒一点の登場だ!! Moon. 天沢郁巳!!
good/badの区別のないエンディングを見たいから同性(女)になったのだ!!
長年の付き合い方見せたる!! 佐藤雅美!!!
メイド服着せてみたいとはよく言ったもの!!
葉っぱ最新作の主人公が今実践で反転する!! ToHeart2から河野貴子だ―――!!!
ツンデレこそが地上最強の代名詞だ!!
まさかこの娘がきてくれるとはッッ 木田朱鷺乃ッ!!!
稼げないからこの町まできたッ キャリア一切不明!!!!
田舎町のドール(紙人形)使い 国崎往穂!!!
オレは誰彼で最強ではない全反転ヒロインで最強なのだ!!
御存知、旧日本軍強化兵 御堂(下の名は不明)!!!
葉っぱの本場はいまや東京にある!!誰かわたしをコイツ(九品仏志子)
から引き離してくれる人はいないのか?こみパから千堂かずきだァ――――!!!
594 :
『ふゆ』書き:2005/09/14(水) 03:13:52 ID:9eY/HIJ40
デカカァァァァァいッ説明不要!! バスト93p!! Eカップ!!
不滅の双丘、柏木はじめだ!!!
強化兵は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦仙命術!!
本家日本から坂神蝉枝の登場だ!!!
瑠璃はわたしのもの 邪魔するやつは思いきり電波を浴びせるだけ!!
雫から 月島卓美!!
知名度を試しにこのスレへきたッ!!
ONEの友人のもうひとり 斉藤(下の名は不明)!!!
キャラスレで磨きをかけ“もともと女顔”七瀬彰が帰ってきたァ!!!
今の自分に出番はないッッ!! …どうすればいいんだっ?? アビスボート、ブレンダ=オークランド!!
葉っぱ最古の主人公がいまベールを脱ぐ!!ナイト雀鬼から城戸芳美だ!!!
梓先輩の前ならわたしはいつでもOKです。
燃える後輩 日吉かおり 反転しないで登場だ!!!
トースターの始末はどーしたッ 心の電波 未だ消えずッ!!
治すも壊すも思いのまま!! 長瀬裕子だ!!!
595 :
『ふゆ』書き:2005/09/14(水) 03:15:55 ID:9eY/HIJ40
特に理由はないッ 聖上が総受けなのは当たりまえ!!
エルルゥにはないしょだ!!! 日の下開山!
ハクロウ妃殿下がきてくれた―――!!!
長森相手に磨いた実戦的いたずら!!
ONEのデンジャラス・ヒロイン 折原ひろみだ!!!
ツンデレだったらこの人は外せない!! 低身長+メガネの生徒会長 久瀬 奏だ!!!
超一流エージェントの超一流のストーリーだ!! 生で拝んでオドロキやがれッ
Routesの超主人公!! NastyGirl!!!
近代反転キャラSSはこの娘が完成させたっ!!
反転スレのドレッドノート!!「To Heart」藤田 浩子だァ―――!!
反転スレが帰ってきた!!!
何処へ行っていたんだ職人たちッッッ!!!
俺達は君たちを待っていたッッッ反転SSの登場だ――――――――ッ
以上32名と追加されるリーザバー、そしてあまたの元ヒロインズによって
第19回反転スレが織り成されます。、
観客「アリガトォオオ」 観客「アリガトオオッ」
観客「アリガト―――ッ」 観客「サイコーだ〜〜〜〜」
観客「アリガトオオッ」 観客「アリガト―――ッ」
前スレ:葉鍵キャラを性別反転させてみよう!その17 (実質18代目)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1122474474/l50
GJ!!
いや良いね。最近はキャラ紹介も少なかったから是非これで
597 :
『ふゆ』書き:2005/09/14(水) 03:26:36 ID:9eY/HIJ40
……いかん、こんな一発ネタ作るのに3時間もかけてしまった。
ちと長いがオモロイ
だがなぜONEの斉藤がいて氷上や住井がいないんだ・・・。
つか斉藤って誰?
>591-595氏
サイコーだよアンタァッ!
新スレも立ったし、こっちのスレの埋め立て企画でも考える?
反転キャラ最萌えじゃなくて反転キャラ最燃え投票とかいかがでしょうか?
とりあえず自分は風太郎に一票を投じる。
萌えではなくて燃えですか・・・なら漏れは来栖川綾(リョウ)もとい綾彦にイピョーウで
(綾香の反転キャラって名前まとまってないよねー
出勤前に聞く 男のみ?
斉藤はKanonじゃなかったけ?
Kanonウザイ
柏木四兄弟とか晴彦とか聖とか、最近めっきり見なくなって寂しいぞ。
良スレハケーン
610 :
暇人:2005/09/17(土) 18:11:03 ID:Cyf/dfVi0
女ハクオロが総受けだと、敵キャラ(たとえば、ニウェとか)にも好かれるんだろうか?・・・
聖上は総受けですからもちろん
612 :
暇人:2005/09/17(土) 23:32:02 ID:Cyf/dfVi0
そうですか〜・・・・・これはネタにつかえますね〜
陵辱モノとか・・・・・ニウェに挑んで呆気なく負けてそのままお持ち帰りとか
613 :
名無しさんだよもん:2005/09/18(日) 05:30:05 ID:DQYasTlq0
トゥスクル全兵に一兵卒すらラスボス級の無敵補正がかかりそうですな。
一ノ谷の義経ばりに崖さえも直進する騎兵衆
気死せよとばかりにウォークライを轟かせる歩兵衆
矢玉が尽きた弓兵衆は投石のレーザービーム
軍令は悉くマーチ!マーチ!!マーチ!!!
対ニウェ戦の前に辞書から敬老の二文字を消しておくのを忘れずに。
むーざんむざん
614 :
暇人:2005/09/18(日) 19:15:12 ID:9ooth6k30
私は、文才が無いのでできませんがどなたかこのネタで、小説を書きませんか?
>>613 しかしプレイヤー的には聖上陵辱シーンのためにも敗北したい罠w
CG出現条件:味方全滅
特殊効果:味方ステータスMAX及び毎ターン全回復
負けたいのに負けないてかw