最初の頃、あたしと瑞佳が愛し合っている間、住井くんは外に出て行った。
それが最近では部屋にいて、あたしたちの行為をじっと見ていることが多くなった。
あたしは初めは見られながらすることに戸惑っていたけど、すぐに慣れた。
部屋に入るとすぐに瑞佳があたしの服を脱がせながら、唇を合わせ、舌を絡めてくる。
「くふっ…ふあ…」
あたしも舌を瑞佳の口の中に深くさし入れながら、瑞佳の服を脱がせる。
住井くんは今日も黙ってあたしたちが全裸で抱き合うのを見ている。
「今日はね…新しい道具を用意してきたんだよ」
そういって瑞佳がかばんの中から取り出したのは、二本を繋げたような形のバイブと手錠だった。
「これは片方ずつお互いに入れて使うんだよ…これで二人一緒に楽しめるからね」
そういってバイブをいやらしい舌づかいで舐めまわす瑞佳。
それを見ているだけで、あたしの下半身は熱を帯びて蜜を滴らせはじめる。
瑞佳があたしの手首を頭の上に挙げさせて、ベッドのパイプを通して手錠をかける。
あたしは、もう、逃げられない…。このまま瑞佳がいなくなっても、自力で家に帰ることすらできない…。
その事実は、すでに、あたしの膣からより多くの蜜をあふれさせる為の材料にすぎなくなっている。
まだ何もされていないのに、シーツに染みが出来るほど濡らしているあたしを見て、瑞佳が微笑む。
「もう欲しくてたまらないみたいだね。すぐに入れてあげるからね」
瑞佳はあたしの足を大きく広げさせ、充分唾液がついたバイブをあたしの膣口にあてがう。
くちゃ…ずぷぷぷっ…
「ふぁ…っ!あぁ…いいっ…」
「すごく気持ち良さそうな顔だね、留美…可愛い…」
そう言うと、あたしの中に入ったバイブを出し入れし始める。
「あ、ひゃあっ…は…あああん!」
ぐちゃっ、ぐちゃっ、ぐちゃっ。
「ほら、留美。留美のエッチなあそこにバイブが出たり入ったりするのを、住井くんがじっと見てるよ」
「あああっ…いやあぁ…」
ぐちゅっ、じゅぷっ、じゅぷっ…
恥ずかしい…恥ずかしいのに、どうしてこんなに感じちゃうんだろう。
確かめるように薄目をあけて住井くんの顔を盗み見る。
本当に住井くんはベッドの端からあたしのあそこをじっと見つめている。
「あんっ…ああっ!はああっ!」
そんなはずないのに、彼の視線が突き刺さるような熱さで感じられて、恥ずかしさがあたしを更に高みへと上らせて行く。
突然、瑞佳がバイブのスイッチを入れた。バイブが膣の中でうねるように動く。
「ひゃうっ!?…は、ああああぁぁっ!!」
あたしは思わず大きく腰を振りながら、身体を弓なりにのけぞらせてイってしまった。
ぶぅぅぅぅぅぅん…
それでもまだ低く唸りをあげるバイブは動きを止めない。
「はあああっ!だめぇっ…止めてぇ…!し、死んじゃうよぉっ!」
あたしの身体のあちこちが勝手に痙攣してビクビクと跳ねている。
息が上手くできない…ほんとに死んじゃいそう…でも。
瑞佳があたしの足を持ち上げ、自分の足と交差させながらバイブのあいている方を自分の中に
沈めていく。あたしの中に入っている側が、押されるようにしてあたしの深いところまで届く。
「ふああぁぁぁ…っ!!」
奥をえぐるようなバイブの動きに気が狂いそうになりながら、あたしはより大きな波が近づいてくるのをうっすらと感じる。
気持ちいいのと怖いのがごちゃ混ぜになったような混乱した感覚の中で、あたしの腰は勝手に動いて、さらに大きな絶頂へとあたしを導いていく。
「はあんっ…留美、留美、気持ちいい?」
あたしの腰の動きに合わせて瑞佳も腰を振っている。
ふたりのあそこは粘液の糸を引きながら、くっついたり、離れたりを繰り返す。
「あああっ、留美っ、奥まで届いてるよっ!すごい…はああっ!ふあ…っ」
あたしはもう瑞佳の声に答える余裕もなく、よだれを垂れ流しながら腰を振りつづける。
ぴと。
急に濡れた暖かいものが、あたしのクリトリスにはりついた。
「はああうっ!!」
いつのまにか住井くんが、二人の結合部に舌を這わせている。
あたしの膣はその衝撃で強く締まって、バイブの振動を深く感じてしまう。
「あっ、だ、だめっ…!もう、もうっ…」
あたしは住井くんの髪を掴んで、彼の顔をあそこに押し付けるようにしながら
一度目より更に大きな絶頂の波に呑まれていく…。
嫌な予感というのは当たるものだ。
オレはたどり着いた住井のアパートのドアの前で凍りついていた。
微かに聞こえてくる声は、オレの耳になじんだ七瀬のあの時の声に間違いなかった。
不意に足元が崩れていくような気がして、オレはよろよろとドアにもたれかかる。
その時、ドアの横の小さな窓が少し開いているのに気がついた。
銀色のシンクが鈍く光っている。・・・洗い場か。閉め忘れてるんだな。
見るべきではないと分かっているのに、オレはその隙間から中を覗いてしまっていた。
オレの目は、長森に胸と股間を愛撫されながら住井の上に跨って腰を振り、
狂ったように嬌声を上げている七瀬を確認する。
分かっていたのに、実際に目にするとそのショックは大きかった。
でも、今のオレには、そんな七瀬をなじる資格などない。
あの呆れるほど純情だった七瀬を変えてしまったのは、他でもない、オレ自身だった。
胸が苦しかった。住井と長森を殺してでも、七瀬をオレの腕に取り戻したかった。
七瀬がそれを望むかどうかを考える余裕など、もはやオレにはなかった。
オレが部屋の中を窺いながらじりじりとドアに手を伸ばしかけた、その時。
快楽でぼんやりしたような七瀬の目が、ついにオレの目を捉えた。
ゆっくりとそれを認識するように、目の光が変わっていく。
祈るような気持ちでオレは心の中で叫ぶ。
七瀬!オレだ!オレは、ここにいるんだ・・・
「きゃあああっ!!」
七瀬が自分の身体を抱きしめるようにして屈み込む。
「な、何だ!?」
「誰か窓の外にいるっ!やだっ!」
「えっ?うわ、隙間あいてるぞ。覗き野郎かよっ」
住井がベッドから降りてこっちに歩いてくる。
オレは動くことができずに、馬鹿みたいにその場に立ち尽くしていた。
ガラッ!窓が開く。
住井。住井、オレだ・・・折原浩平だ・・・。
いきなり胸倉を掴まれる。
「誰だてめぇ!他人の部屋、覗いてんじゃねえよっ!」
・・・やっぱり、そうなのか。オレはまた、忘れられていくのか。
暗い絶望感がオレを包み込んでいく。オレは震える足で一歩、後ずさった。
長森と七瀬は身を寄せ合って怯えたような顔でオレを見ている。
オレは居たたまれずに背を向けて走り出した。
足が震えて、何度も転びそうになりながらも、一刻も早くその場を
立ち去りたい一心で、走りつづけた。