蘇るSSスレ

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「ほお」
「うわぁ、凄い」
「すっげぇ…」
「ふぅん」
「えっへん!」
「お前が威張るな」
「えぇ〜」

「す、凄いわね・・・ってどこに昇ってるのよ!」
「おおおぉぉぉおおぉぉ、やっほーーーーぉぅっ!」

「・・・猿となんとかは。」
「高い所が好きなのは猫だがな。」
「猫も登りそうよ、ほら。」

高速巡洋船バジリスク号。
クルーズ船としては最小の部類に入るんだろうけど、
客船なんか縁のない私たちには、とてつもなく豪華にみえる。
みんなの言葉は、それぞれ字面は違えど、驚きと感動を表現している

で、驚きと感動を煙突に昇って身体で表現しているのが約一匹、もとい、約1名。
それを何故か追いかけている赤のワンピース、と、黄色の下着。
「こ、こら、さっさと降りなさい!危険でしょ!」
「ねーちゃんの方があぶないぞ!しかも下からパンツ丸見えだぞ!」
「へ、あ、こ、こら、早間!覗くな!、って、きゃあ!」

ハシゴを昇ってる最中にスカート押さえるのは危ないと思う。
「あいたた・・・」
煙突を登りかけて途中で落っこちたのは綾之部可憐。旧家のお嬢様。
私たちのクラスメートで、恭介や明乃とはなにかと行動を共にする間柄。
私とも、教室でのお上品な仕草が地でない事を知っている位には交友がある。
外見は背が高くて清楚な美人。スレンダーというには肉付きが良すぎるか。
緩やかなワンピースの上からでもはっきりと主張する胸のラインは・・・やめやめ。

「姉ちゃん、だいじょーぶか?」
大した高さじゃなかったけれど、心配そうに降りてきたのは綾之部珠美。可憐の妹。
ちんまい、という言葉がぴったりだが、身長は私と大差ない。はいはい、私が低いだけ。
可憐と遊びに出かけるともれなくオプションとしてついてくる。オプションだけあって、くるくると良く動く。
姉のパンツをどうこういっていたけど、妹も黄色のワンピース、しかもミニなので

「水色っては色気がないよな、恭介」
「あの色ならストライプの方がいいな」
「うぉっ、縞パン好きかお前」
男って、下賤。
・・・ストライプの下着、あったかな・・・

「うう…」
屈んだまま動かない可憐に、珠美が近づく。
「まさかうちどころが悪・・・わきゃっ!」
射程距離に入った瞬間、可憐の手が珠美を捕まえる。
「あんたは少し大人しくできないのっ!」
「わー、わー、姉ちゃん卑怯っ…じゃなくて勘弁、かんべんっー!」
「まったく、少しは大人しく…きゃっ!」
頭を押さえつけて説教態勢に入った可憐のスカートを、珠美が思いきりまくりあげた。
慌てた隙に、機関室の天井から飛び降りてこっちに駆け寄ってくる。
「こ、こら!待て!」
走り寄る黄色。追いかけてくる赤は、階段経由で遠回り中。
「きょーすけかくまえ…ぷぎゃ」
恭介にすがりつこうとして、逆に脳天チョップで撃墜される珠美。
まあ、いつもの光景
「さっさと荷物置いてこい」
「やだ、まだ走り足りない」
「じゃあ、どれだけ走れば気が済むんだ?」
「それは勿論、夕日をバックにキックの応酬・・・ぺぎゃっ」
そんなやりとりの間に、息を切らして可憐が追いついてきた。
珠美は恭介から離れると、何故か私の後ろに隠れた。

「ふっ!姉ちゃん!これを見ろ!」
そういって私の首になにやら突きつける。玩具のナイフ・・・本物!?
「この娘の命が惜しくば、そこでストリップだぁ!」
「馬鹿、危ないからやめろ」
どこで持ってきたのかナントカに刃物を振り回す珠美から、恭介がナイフを奪う。
「ほれ、可憐」
頭をつかんで姉に引き渡そうとする恭介に、珠美は私に抱きついて抵抗した。
「いやじゃいやじゃあ…、お?」
「・・・」
抱きついた珠美の手が、私の胸を掴んだ。
「んー、んーむ、むーう」
掴んだ、というか、掴むところがなくて彷徨ってる、というか、そう言いげな手つき。
私は振り向いて珠美に正対した。
「・・・・・・・・・なにか?」
「・・・・・・・・・正直、すまんかった」

背中に抱きついてた珠美のも、大きくはないんだけど・・・
・・・イツカコロソウ