蘇るSSスレ

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5日目 2時35分

クレゾー>チンチン
クレゾー>マダーマダー
A太>クレゾーうるせー
あきお>あげたよ。passはいつもの
クレゾー>キター
A太>あ、俺もこれは持ってるや
クレゾー>ハァハァ
あきお>うーん、まあ新作は上がらないわなぁ
A太>まあ、まさか本物とは思わなかったよな
クレゾー>ハァハァ
クレゾー>ちはやタンハァハァ
A太>お前そればっかだな>クレゾー

「…っ。勝手な事を。」
俺はモニタに流れる会話をぼんやり眺めながら、軽く舌打ちした。
こいつらは、岸田が流していた陵辱ビデオの動画をダウンロードしていた連中だ。
岸田が死んで、動画の供給が止まってからも、未練がましく会話を続けている。
俺がここを覗くようになったのは、あの事件の後しばらくしてからだ。
ドラマチッックな事件に、ここぞと群がる報道陣に揉みくちゃにされた間、
未成年という事で俺達の名前は一応伏せられていたが、
あれだけ露出が多ければ情報は止めようもない。
むしろごく自然に、俺達のプライバシーは流出していった。
差出人不明の中傷・悪戯は無数、励ましの手紙やメールなんてのも随分届いた。

まあ、受け流すしかないのだが、少しは相手らしきものを把握しておくべきかと、
俺は苦手なネットを多少積極的に回って情報収集するようになった。此処の存在を知ったのはその頃だ。
もっとも、事件から1年以上が経過した今では動画のやりとりもすっかり下火になっていて、
俺も、数少なくなったチャットの参加者も、最近は単なる惰性でアクセスしているようなものだった。
流れてゆく良心のかけらもない文字の羅列に、嫌気を通り越して眠気を覚える…

が、次の瞬間、目が覚めた。

余市>この画像、あるか?

見たことのない、しかし聞き覚えのあるハンドルネームの参加者が、そういってアドレスを示す。
思わずアドレスを辿った先には、あの船の中で、奴に、犯される、恵の、姿が写っていた。
5日目 14時10分

翌日、俺は件の事件を担当していた警察署を訪ねた。
昨夜の画像が、今頃になって現れたのなら、
原因として疑わしいのは押収された証拠ビデオの流出だ。
少なくとも、チャットのログを捜査してもらえばアップロードした当事者は特定できるだろう。
そう思って署の玄関をくぐったのだが、廊下の入口で小柄な体とぶつかった。

「きゃ…あ、恭介?」
「め、恵!?なんで?」

「ちょっと…聞きたい事があって…長瀬さんに…」
「お疲れさん、んー?、彼氏のお迎えか?」
噂をすればなんとやらで、俺達の事件を担当した長瀬刑事が姿を現した。
「…そうなの?」
「…まあ、それでもいいけど」
何故か俺は、その場で自分の用件を切り出す気がせずに、
そのまま恵と連れだって警察署を出た。

「今頃になって、なんなんだ?」
「うん…ちょっとね」
「…」
「…話でしか、聞いてなかったから」
その言葉に、殴られるような衝撃を受けた。
「!お前、もしかしてビデオ!?」
「…しかし…改めて…やっぱ来るわね。正直、吐きそう」
恵は、自分が陵辱された際のビデオを見てきたと言う。
しかし何故、今頃、しかもこんなタイミングで…

その答えを、俺はおそらく知っていた。だが、目を背けた。

「しかし良くそんなもん見せてくれたな。いいのか長瀬さん」
「融通の利く人だから。後の事は知らないけど。」
「疲れただろ。ちょっと、そこの茶店で休んでいくか?」
「・・・うん」