ぼくは、おちゃのまで、ちはやとおるすばんしていた。
テレビがおわったあとで、ちはやがいった。
「ねえねえおにいちゃん」
「なんだ?」
「もうすぐクリスマスだよね」
「そうだね」
ちょっとはずかしそうに、ちはやがななめしたをむく。
「どしたの?」
「あの・・・さ・・・くるかなあ・・・アンクル・パピィ」
「ぶほっっ!」
おちゃをふきだしてちはやを見ると、えへへわらいをしてる。
ちはやのあの目は、おねだりの目。ちょっとはずかしがってる赤いほっぺ。
「・・・」
「・・・」
あのあと、お母さんにおこられたんだよな。
そうおもってだまってたら、ちはやはそのまますこし下をむいた。
「いそがしいから、こないのかな・・・」
さびしそうなこえをきいた。ぼくはとっさにこたえた。
「くるよ。ぜったい。」
「!」
ぱっとあかるくなるちはやの目。
「ありがとうおにいちゃんっ!」
とびだしそうなえがお。よかった。
でもさ、そこでぼくにおれいをいうのは、へんなんだぞちはや。わかってる?
さて、どうしよう。
きょうはクリスマス。タンスのまえで、ぼくはこまっていた。
プレゼントもかって、いざアンクル・パピィになろうとおもったら、
たんじょう日のときにきた、お父さんのせびろとぼうしが、どこかにしまわれていた。
せびろとぼうしだけじゃなく、お父さんのふくが、ほとんどなくなっていた。
お母さん、お父さんのふくどっかにやっちゃったんだ。
でも、あれがないとアンクルパピィになれない。
とりあえず、タンスのひきだしをかたっぱしからあけてみた。
ひきだしは、上からじゅんばんに、お母さんのだん、ぼくのだん、ちはやのだん。
ちはやのだんの下のだん、あまりつかわないふくがはいってるところ、
そのいちばんおくに、まるめられたあかいものがはいっていた。
なんだろこれ、ひっぱりだしてひろげてみた。
「・・・おとーさんサンタさん」
お父さんが、サンタさんにへんそうするときのふくだ。
クリスマスはいつも、これをきてサンタさんになっていた。
なつかしくなった。これがいいかな。
あたまからかぶってみた。うわ、だぶだぶだ。
あるいてみようとして、ふと、かがみにうつったじぶんがみえた。
ぼくがふくをきてるっていうより、ふくのなかにぼくがいる。
ぼくはじぶんが、すごくたよりなくて、かっこわるくみえた。
こんなんじゃ、ちはやにみせられない。
ぼくはへやからはさみをもってきた。ながいすそを、はさみできってみる。
ちょっきん。なんか、ながさがあわない。ちょっきん。
ふとすぎる。きってテープでとめたらほそくなるよね。ちょっきん。
あながあいちゃった。ガムテープ、どこだっけ・・・
そでとか、どうとか、みじかくしようとおもって、いろいろきっているうちに、
サンタのふくは、ぼろぼろになってしまった。
こまったな。どうしよう。
とりあえずふくをしまおうとおもったとき、へやのとがあいた。
「おにーちゃん、なにやってるの?」
「あ、ち、ちはやっ!?」
ぐずぐずしてるうちに、ちはやがおきてしまったみたい。
ぼくはあわててサンタのふくをかくそうとしたけど、おそかった。
「え?」
ちはやが、めをまんまるにして、ぼくのほうをみる。
「あー、えーと、これは・・・」
「おとーさんっ!」
ちはやは、ぼくじゃなくて、サンタのふくにだきついた。
そのままなきだす。
ぼくはどうしたらいいかわからない。
ちはやがないたことはたくさんあったけど、ぼくがちはやをなかせたことはなかったから。
「あさからどうしたの?」
なきごえをききつけて、お母さんがやってきた。
「なにこれ?恭介、なにをして・・・」
お母さんのことばも、とちゅうでとまった。
お母さんもサンタのふくをみた。
そして、お母さんは、いつかとおなじ、こわくてかわいそうなかおをした。
お母さんは、ちはやからサンタのふくをとりあげた。
「やだっ!」
ちはやは、ふくにしがみついた。
「はなしなさいっ!」
お母さんがおこった。お母さんもちょっとないてるみたい。
「みつからないと思ったら、あなたが隠してたのね」
ぼくでもお母さんでもなければ、こたえはひとり。
サンタのふくは、ちはやがじぶんでかくしてたんだ。
たぶん、お父さんのみがわりに。
「うあああああっ!」
ふくをとりあげられたちはやは、すごいこえでなきながら、いっかいにおりていった。
ぼくは、おいかけられなかった。
サンタのふくをとりあげたお母さんは、
ふくがボロボロなのにきがついて、へんなかおをする。
へやにちらばったふくのきれはし。
「恭介?まったく、なにやってるの」
お母さんは、きれはしをあつめて、ふくといっしょにデパートのふくろにいれた。
すてるのかな?でも、お母さんはふくろをタンスの上にあげた。
もしかしたら、せびろとかもそこにおいてるのかもしれない。と、おもった。
ガタン!
そのとき、げんかんのとびらがとじるとおとがした。
「え?」
「誰?」
お母さんと二人で下におりる。げんかんに、ちはやのくつがない。
「ちはや!?」
そとにでたら、ちはやはもういなかった。