ちはやのたんじょう日がやってきた。
プレゼントは、おかあさんといっしょにえらんだ。
きれいなパスケースに、ちはやはとてもよろこんだ。
そのあと、ぼくのほうをみた。
「これはお母さんと恭介の二人からよ」
おかあさんがせつめいした。
ほんとうは、ぼくもないしょでプレゼントをかってた。
でも、おこづかいでかったプレゼントは、いかにもちゃっちくて、
それに、こっそりかってたから、おかあさんにわるくて、ぼくはうなずいた。
ちはやもうなずいた。すこし、さびしそうだった。
やっぱり、あとでわたそう。
さんにんだけのたんじょうパーティーがおわった。
ぼくはちはやのへやをたずねた。
コンコン。
へやをノックする。ドアをあけたちはやが、めをまるくした。
「おに・・・」
「おにいちゃんじゃない。アンクル・パピィだ」
ぼくは、おとうさんのせびろと、やまたかぼうをもちだしていた。
「よいこのちはやに、アンクルパピィからのプレゼントだよ」
そういって、ちはやのてに、てのひらくらいのつつみをわたした。
おみせでつつんでもらうのをわすれたので、こうこくがみでつつんだ。かっこわるい。
「たいしたものでなくてすまない。わたしもおかねがなくてね」
ちょっとなさけないアンクルパピィ。ちはやはつつみをあけた。
わたしたのは、ちっちゃなかみどめ。おねだん500円。
ちはやは、ぼくをみた。わらいそうになって、なきそうになって、けっきょく、わらった。
「ありがとう、えっと、あんくるぱぴー?」
はてなマークは、やめてほしい。
「アンクル・パピィは、いっつもどこにいるの?」
「どこにいても、ちはやをみまもっているよ」
「あははっ、せいぎのみかたみたーい」
「そうだな。ちはやのための、せいぎのみかた」
「ピンチのときは、たすけてくれる?」
「もちろん」
プレゼントをわたしたあとは、ちはやのへやで、しばらくアンクル・パピィをやった。
そのうちに、ねむくなったちはやをねかしつけて、タンスのへやにもどった。
「なにやってるのっ!」
こえがした。おかあさん。どうして、こわいこえ?
「こんなもの持ち出して・・・」
アンクル・パピィの、いや、おとうさんのせびろをつかむ。
「えっと、これは・・・」
「いいからさっさと脱ぎなさい!」
おかあさんは、なぜかおこってた。そして、なぜかすこしかわいそうだった。
アンクル・パピィがふくをぬいでぼくにもどると、
おかあさんはせびろをかかえてタンスにしまいなおした。
そのあいだ、おかあさんは、だまったままだった。
ぼくも、だまってそれをみていた。
おかあさんとぼくとちはやは、おとうさんのおはかまいりにでかけた。
お父さんのおはかは、でんしゃとバスをのりついだやまの上。
バスていからさかみちをのぼる。
もりのなかにぽっかりとあいた、うみのみえるおはか。
「おとーさん・・・」
ちはやがおはかにだきつく。
「ほら、お父さん綺麗にしてあげましょう。恭介、お水汲んできて」
「はーい」
三人でおはかにみずをかけて、おはなをあげて、
おせんこうをあげて、おかしをあげた。あげたおかしは、ぼくがたべた。
「じゃあ、もどりましょう」
「・・・・」
ちはやは、おはかのまえからうごかない。
「ほら、このあと事務所に寄らないといけないから、バスの時間に遅れちゃうわ」
おはかの<かんりじむしょ>はさかをおりたバスていのとこ。
「・・・やだぁ」
いつまでもここにいられるわけじゃないけど、ぼくももうすこしお父さんといたかった。
「おかあさん、さきにじむしょにいって。ぼくとちはやはあとからおりるから」
おかあさんは、すこしまよったけど、おはかにくっついてうごかないちはやをみてうなずいた。
「わかったわ、30分くらいで終わるから、事務所の入り口でまってなさいね」
おかあさんは、かけあしでおはかからはなれた。
それからしばらく、ぼくとちはやは、お父さんのところにいた。
「ちはや、もうもどらなきゃ」
「・・・」
「・・・おとーさんには、またあいにこようよ」
「・・・うん」
はんぶんなきべそかきながら、ちはやはうなずいた。
「おそくなっちゃったな、おかあさんまってるな」
たしかじむしょは、こっちのさかをおりたところだから…
「まっすぐいけば、ちかいよね」
おはかのわきに、やまのなかにおりるみちがあった。
きっと、ここはじむしょへのちかみちだ。
「こっちいこう、ちはや」
ちはやは、すなおについてきた。
いつだって、ちはやがぼくのいうことをきかなかったことはない。
ふたりで、やまみちをおりた。じめじめして、あるきにくい。
「ちはや、ぼくにつかまって」
べとっ。
「だきつくんじゃないの、てをつなぐの」
ぎゅう。
おもいっきり、てをにぎられた。
なんだかみちがほそくなってきて、ふあんになってきた。
「おにいちゃん、あれ」
ちはやがなにかをみつけた。
「おはな、きれい」
みちから、すこしはなれたところ、もりがひらけて、
すこしあかるいところに、はながたくさんさいていた。
とっとこと、ちはやがはなのほうにかけよる。
「あぶないよ」
ぼくはあわてておいかけて、ちはやをだっこした。
はなは、ちいさながけの上にさいていた。だからひあたりがいいんだ。
「ふさふさ〜」
ちかくでみると、ちっちゃなはながいっぱいあつまって、
なんだかふわふわした、ちはやのかみのけみたいなはなだった。
ふと、ぼくはおもった。
「おとうさんにもみせてあげようか?」
ちはやも、おなじことをかんがえてた。
「うんっ」
そうして、ぼくたちはおはかにもどった。
もどったらおかあさんがまってて、ものすごくおこられた。
おこられながら、ちはやがこっそり、おはかにおはなをそなえた。