「じゃあ,お母さんそろそろ出るわね」
「はーい」
「恭介、ちはやの事ちゃんとみてなさいよ」
「わかってるよ」
「なにかあれば私の携帯か、おばさんの家に電話しなさい」
「うん」
「ちはやは,恭介の言うこと聞くのよ」
「うんっ」
「じゃ、いってくるわ」
「「いってらっしゃーい」」
お父さんがしんでから、お母さんはいえにいないことがおおいです。
きょうは日よう日なのに、よるまでおしごと。
「あ、カギしめるからいいよ」
「ありがと、じゃあね」
「きをつけてね」
パタン、カチャリ、かぎをかけてちゃのまにもどる。
「いっちゃった」
こたつにはいって足をのばす。
「・・・なに?」
ちはやがじっとぼくをみている。
「いうこと」
「いうこと?」
「ちはやは、おにいちゃんのいうことをきくんだもん」
「いうこときくってのは・・・」
「えへへー。なんでもめいれいしてー。」
そういってにこーとわらう。
「あのね。いうこときくってのは,ちゅういしたらやめるっていみで
ぼくがちはやにめいれいするわけじゃないの」
「えー、つまんないのー」
なぜかほっぺたをふくらませるちはや。
こたつから足を出してうしろをむいた。
「だから、かってにどっかいったりしなければいいんだよ」
くるっとこちらをむくちはや。あれ、またうれしそうになってる。
「どっかいっちゃだめなんだ?」
「え?うん」
「じゃあ,どっかいっちゃだめっていって」
「なんで?」
「なんでもっ。いわないとどっかいっちゃうもん」
ちはやは立ってあるきだす。
「わかったよ。じゃあ、どっかいっちゃだめ。」
「うんっ」
くるっとふりむいて、とびついてきた。
「うわっ、なにすんだよ」
「どこにもいかないよー」
ぎゅうっとせなかにくっついて、ほっぺをぼくのくびにすりつけるちはや。
ぼくがふりむきかけると、ちはやはななめにおんぶするようにのっかってきて、
そのままコタツとぼくの間にわりこんだ。
ヒザの上で、ペトっとだきついてにこにこうれしそう。
なにかいおうとおもったけど、そのかおをみたらなにもいえなくなった。
うれしくなって、そのままずっと、ちはやをだっこしてすごした。