蘇るSSスレ

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135ちはや支援SS『紅い絆』プロローグ1/2
「おとーさん、おしごとやすんじゃだめだよ」

ぼくは、ふとんのなかからいった。
「どうして」
おとうさんは、だいどころからこたえた。
「おしごとやすむひとはえらくなれないんだよ」
って、ともだちがいってた。
「いいんだよ」
おとうさんは、ふとんのそばにきてわらった。
「ずうっと<ひらしゃいん>だよ。おとうさんかわいそうだよ」
「おとうさんはね、えらくなるより、おまえとちはやに会う方が幸せなんだよ」
おとうさんは、だいどころからリンゴをすってもってきてくれた。
「ほれ、あーん」
「じぶんでたべる」
「そっか、えらいな」
のどがいたかったけど、リンゴはつめたくておいしかった。
「じゃ、おとうさんはちはやをねせてくるから、恭介も少し寝なさい」
へやをでていくおとうさん。
「おとうさん」
「なんだい」
「おとうさんは、ぼくとちはやにあえたらしあわせなの?」
「そうだよ」
「ずっと?」
「ずっと」
「いっしょう?」
「いっしょう」
おとうさんは、いりぐちからもどってきて、ぼくのあたまをなでた。
136ちはや支援SS『紅い絆』プロローグ2/2:2006/03/24(金) 00:34:31 ID:p5mAdMyK0
「おとうさん、きょうはしごといかなきゃだめだよ」

ぼくはまた、かぜをひいてしまった。そのせいでおとうさんは、さいきんおやすみばっかり。
「これいじょうやすんだら、おとうさんクビになっちゃうよ」
そういっても、おとうさんはきかないんだけど。
「はいはい、わかったよ」
あれ?きょうはあっさりうなずいたぞ。そして、いえをでていくおとうさん。
ぼくは、おとうさんがしごとをやすまなくてうれしかったけど、
ちょっとさみしくなって、ふとんをかぶった。ちはやがおきたら、どうしよう。

ガチャ。
すこしたって、げんかんのとびらがひらいた。
なんだ、けっきょくおとうさん、もどってくるのか。
ぼくはがっかりしたようなうれしいようなきもちで、ふとんのなかでおとうさんをまった。
ぴたぴたと、スリッパのおとがこっちにくる。

「香月恭介くんだね」
「?」
へんなこえで、はなしかけられた。
ぼくはふとんからかおをだした。
そして、ふきだした。
おとうさんがたっていた。へんなぼうしをかぶって、へんなひげをつけてた。
「おとうさん、なにやってるの?」
「わたしは、おとうさんではない」
まじめなかおで、おとうさんはいった。
「わたしはアンクル・パピィ。お父さんの親友だ」
「仕事で手が離せないお父さんに、子供たちを頼まれたのだ。」
「でも、母さんとちはやには内緒だよ」
ぼくはわらった。
それから、びょうきのときにぼくのめんどうをみるのは、おとうさんでなくアンクル・パピィになった。
「・・うっ・・・うぇっ・・・ひっく・・・ひっ・・・ぐすっ・・うぁあ・・・」
ちはやは、まだないてる。ぼくは、なくのをやめてた。きょうは、おとうさんのおそうしき。

「ちはやちゃん、ほら、なみだふいて」
「う・・・うあああ・・・ぐっ・・」
「ほら、お菓子食べようよ」
「・・・ひっ・・ふ・・・」
<しんせき>のひとたちが、ちはやにこえをかける。
おかあさんは、どこかにいったっきり。おそうしきって、いそがしいんだ。

ちはやは、おとうさんが<れいきゅうしゃ>ではこばれて、
<かそうば>でもやされて、<ほね>になってもどってきても、まだないてた。

おかあさんは、いそがしい。ぼくは、おかあさんに、ようじをたのまれた。
もどってくると、ちはやがいない。
「おばさん?ちはやはどこ?」
「あら恭介ちゃん。ちはやちゃんはね、おそとの空気を吸いにいったわ」
ぼくはくつをはいてにわにおりた。
だれもいない。でも、ちはやがないてる。こえがきこえる。

こえのほうにいってみた。にわのすみっこで、きのかげで、ちはやがないてた。

「ああ、恭介くん。丁度よかった。ちはやちゃんを見ててくれないかな」
<しんせき>のおじさんがいった。ぼくはうなずいた。
「そっとしておいてあげれば、落ち着くと思うから。よろしくね」
おじさんはそういって、いえのなかにはいっていった。
めのまえで、ちはやがないてる。
ぼくは、なにかいおうとした。

「・・・すっ・・・おと・・さん・・・ぐっ・・・ぅっ・・・」
なにもいえなかった。
ちはやがさがしてるのは、ぼくじゃない。でも、なにかいわなきゃ。
「ちはや・・・」
「ぐすっ・・・と・・さ・・・い・・・そぅ・・・」
「ちはや?」
「おとさ・・・か・・・い・・・そ・・・ぐすっ・・・」

おとうさん、かわいそう。ちはやは、そういってないていた。
ぼくは、あたまがあっつくなった。
ぼくは、じぶんがかわいそうでないていた。
ちはやは、おとうさんがかわいそうでないていた。
だから、ぼくじゃだめだとおもった。
だから、はしってうちにはいった。ぼくじゃない、だれかになりたくて。
ぼくは、うちにはいると、おとうさんのへやにいった。

おとうさんのへやは、まだ、おとうさんのへやだった。
ぼくは、タンスをあけて、おとうさんのふくをとりだした。
おっきなせびろと、くろいぼうし。
ぶかぶかのせびろをきて、ぼうしをかぶって、ちはやのところにいった。

ちはやは、まだないていた。
「ちはや。」
ぼくは、こえをかけた。
「えぐっ・・・ぐすっ・・・」
ちはやは、まだないていた。
「ちはや。なくことはない」
「すんっ・・・?」
ちはやがかおをあげた。

「・・・おにいちゃん?」
「おにいちゃんじゃない。」
まじめなかおで、ぼくはつづけた。
「わたしは・・・」
なんっていえばいいんだろう。ぼくはまよった。

「・・・わたしはアンクル・パピィ。」
そして、ぼくしかしらない、もうひとりのかぞくのなまえをなのった。
アンクル・パピィは、ちはやにはなしかける。
「おとうさんに、たのまれてた・・・ていたのだ」
ちはやは、おとうさんっていったとき、すこしびくっとした。

「もしも、こどもたちが、おとうさんのためにないていたら」
ちはやがもういちどぼくをみた。
「おとうさんのために、なくことはないといってくれと。」
ちはやは、じっとみている。
「おまえが、おとうさんにあえてしあわせだったように」
ちはやがぶんっ、とくびをたてにふる。
「おとうさんは、おまえにあえてしあわせだったはず」
ちはやが、ちいさくうなずく。
「だから、かなしいことはない」
ちはやのめに、またなみだがたまる。
「じぶんのぶんをかなしいだら、おとうさんのぶんはなかなくていいんだよ」
ちはやはめをまるくひらく。そこからまた、なみだがおちる。
「いまは・・・もう・・・あえないけど」

ちはやがぼやける。めのまえが、ぼやっとなる。あっつい。
「おとう・・・さん・・・は・・・」
こえがでなくなる。ほほになにかがながれてる。ちはやがどんなかおをしてるのか、ぜんぜんみえない。
「おまえに・・・であえて・・・」
「いっしょう・・・ぶん・・・も・・・しあ・・しあわせ・・・だった・・・ん・・・だから」
まえをみてたのに、じめんがみえた。かおをあげたら、そらがみえた。
そらは、うみみたいになってて、おひさまが、みずのなかみたいに、ゆらゆらしてた。

とんっ。むねがあったくなる。かおをさげると、めのまえにちはやのかみのけ。
ぼくは、ちはやをぎゅっとした。ちはやは、ぼくにぎゅっとくっついた。
アンクル・パピィはなかなくていいっていったけど、ふたりで、ずっとないた。