暑かった。
国崎は両膝に両手をついて呼吸を整えようとした。汗があごの先から畳に滴り落ち、
小さな染みを作っては消えていくのを繰り返す。身体を起こし、辺りの様子を窺う。
誰もいない。いてたまるか。
こんな真っ昼間から家にいるのは、勤労意欲のない若者か年金暮らしの老人か自分
くらいのものだ。ちっとも自慢になることではないのに、そんなことはどうでもよく
なっていた。
国崎は大きく深呼吸をして、くたくたになったジーパンのポケットに手を突っ込む。
ポケットから出した手には、封筒が握られていた。先ほど部長から貰ったものだ。
国崎は高鳴る鼓動を抑えるようにもう一度深呼吸をしてから、
その封筒を、
開けた。
封筒には写真が入っていた。
色素の薄い、長い髪の毛を頭の後ろで結んだ少女が映っている写真だ。
この町で出会った、この家の娘、観鈴だった。ピンクのブラウスと白いミニスカート
という見慣れた格好をして写真に写っている。
無防備な姿で。
「………………………ふっ」
国崎は写真を凝視して微笑を浮かべる。
写真に映る観鈴のスカートは、大きくめくれあがっていた。
そして、
は。
い。
て。
な。
い。
「――グレイト」
「なにしとるんやこの破廉恥居候がっ!」
言葉と同時に衝撃がきて、国崎は畳に頭を突っ込む羽目になった。
が、後悔はなかった。
男の浪漫が、そこにあった。