ミスズの空、AIRの夏

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93名無しさんだよもん
 暑かった。
 国崎は両膝に両手をついて呼吸を整えようとした。汗があごの先から畳に滴り落ち、
小さな染みを作っては消えていくのを繰り返す。身体を起こし、辺りの様子を窺う。
 誰もいない。いてたまるか。
 こんな真っ昼間から家にいるのは、勤労意欲のない若者か年金暮らしの老人か自分
くらいのものだ。ちっとも自慢になることではないのに、そんなことはどうでもよく
なっていた。
 国崎は大きく深呼吸をして、くたくたになったジーパンのポケットに手を突っ込む。
 ポケットから出した手には、封筒が握られていた。先ほど部長から貰ったものだ。
 国崎は高鳴る鼓動を抑えるようにもう一度深呼吸をしてから、
 その封筒を、
 開けた。
 封筒には写真が入っていた。
 色素の薄い、長い髪の毛を頭の後ろで結んだ少女が映っている写真だ。
 この町で出会った、この家の娘、観鈴だった。ピンクのブラウスと白いミニスカート
という見慣れた格好をして写真に写っている。
 無防備な姿で。
「………………………ふっ」
 国崎は写真を凝視して微笑を浮かべる。
 写真に映る観鈴のスカートは、大きくめくれあがっていた。
 そして、
 は。
 い。
 て。
 な。
 い。
「――グレイト」
「なにしとるんやこの破廉恥居候がっ!」
 言葉と同時に衝撃がきて、国崎は畳に頭を突っ込む羽目になった。
 が、後悔はなかった。
 男の浪漫が、そこにあった。