何処をどう歩いたのかさえ、記憶に無い。
次にボクが意識を取り戻したのは、吐瀉物の臭いがする、水瀬家のいつもの自室。
身を起こし、自分の姿を確認して―――吐き気がした。
ラクガキだらけの、からだ。
馬鹿な、馬鹿な、バカな!!
だってボクは今、眼鏡を――!
顔をまさぐる。
…かけて、いる。
改めて身体を見るが、そこにはボロボロになった一張羅を纏った貧相な身体があるだけ。
気の、せいか。思わず安堵の息が零れた。
真っ暗な部屋で、時計の音だけをBGMに、今日のことを振り返ってみる。
途端、ガクガクと脚が震え脂汗が噴出してきた。
なんだってんだ、一体。
ボクは、あのバケモノを、コロシタ。
それは小躍りする位嬉しいことじゃないのか。相手は人外。世間様に後ろ指指されることなくボクは乾きを潤せたんだ。
収まれ、鼓動。鎮まれ、身体。
階下から、豚の呼ぶ声が聞こえた。糞め。またあの豚どもと顔をつき合わせて食事を取ることを考えると、それだけで吐き気がしてくる。
こんなことなら――。
こんな、ことなら…?
刹那。あの無邪気な笑顔が、階段を下りるボクの脳裏をよぎった。
――なんだってんだ、本当。