「何やってんのよ……」
かずきが可愛そうな物でも見るような目付きでふゆ達を見下ろした。
はじめも、やれやれとばかりに首を振っている。
さつきはゴホン、と一つ咳払いをして、
「どうしたの、こんな所まで」
「ちょっとね。さつきは駅前の芸人の話、知ってる?」
「芸人?」
さつきは顎に手を添えてうーんと唸り、やがて手をポンと叩く。
「ああ、そういえばスフィーがそんなこと言ってたわ」
「スフィー君? あ、そういえばスフィー君は今日どうしたの?」
何とか回復したふゆが店内を覗き込み、宮田家に居候している少年、スフィーを探してキョロキョロと見回した。
背が低い者同士、何か通じる者があるのかもしれない。
「スフィーならリアンに会いに言ったわよ。……それより、その芸人がどうしたの?」
「……なんかねー、いつの間にかみんなで見に行こうって話が出てるんだけど」
「さつきも一緒に行かない?」
かずきが眠そうに、はじめが無駄に元気溌剌とした顔でさつきに誘いかける。
さつきは一瞬迷った後、
「まぁ、面白そうだしね」
と、快く笑顔で同意した。
いそいそと『ただいま休業中』という看板を入り口の扉に立てかけ、着ていたエプロンを店内に放り投げる。
「ちょっと、そんなことしていいの?」
呆れ顔で訊ねるかずきに、大丈夫、と茶目っ気たっぷりに微笑むさつき。
こうして凸凹コンビを再結成した四人は、一路駅前へと向かうこととなった。
……その途中、白髪の女性が警察官と何か問答しているのを見かけるまでは。
702 :
上の作者:2005/07/23(土) 23:45:39 ID:5Kyt11ip0
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
もう二度としません。首吊って反省します。生まれてきてすみませんでした。
ちなみにadultはyoungと区別する為のもので決してエロという意味ではございません……
705 :
一発ネタ:2005/07/24(日) 02:01:20 ID:rnrmkXLr0
ある朝、宮田さつきが不安な夢からふと覚めてみると、
ベッドの中で自分の姿がスクール水着の、とてつもなくエロスな少女に変わってしまっているのに気がついた。
薄いポリエステル質の背中を下にして、仰向けになっていて、ちょっとばかり頭をもたげると、
まるくふくらんだ、濃紺色の、ダブルフロントの分け目を入れられた下腹部が見えた。
「スフィーーーーーーーーーーーー!」
ある暑い、夏の日の朝であった。
夏コミには反転本でるのだろうか…
707 :
609続き:2005/07/24(日) 22:48:14 ID:FXcqq2FV0
今回エロではないですがちょいと下品なので注意。
>>702 吊る必要はどこにもない!GJ!Adult編続きもyoung編も期待してます。
「タカ坊!」
家に足を踏み入れようとした時、いきなり後ろから声をかけられた。
その瞬間。
「キャア!」
あたしの体は後から突進してきた何者かによって見事に吹っ飛ばされた。
な、何…?
「もう、家に来るなら来るって先に言ってくれれば色々準備してたのに〜。今日は夕飯はどうするの?」
「タ、タマ姉…苦しい…」
あたしを吹っ飛ばした声の主の方を見れば凄く綺麗な人があいつをすりすりと自分の方へと抱き寄せていた。
「あ、あの…」
「ほら、雄二。ぼうっとしてないでお茶くらいお出ししなさい。
仮にも貴方も向坂の人間なんだから今からちゃんと最低限の礼儀くらい弁えておかないとだめよ。
相手がタカ坊と言えどお客様には変わりないんだから」
「はあ…」
この規律や礼儀への拘り、もしかしてこの人兄貴の男版…?
えぇぇえええ!? ちょっと待って、あの兄貴が女になるとこんなに美人になるの!?
あの兄貴とは思えないほど気品に溢れているわ。あの暴力兄貴とは全く違うわ。
どうして同じ人間なのにこうも違うの? あたし、思いっきり損してない?
しかしあたしのそんな勘違いも一瞬で終わってしまうのだった。
「あ、お茶の前にはい、これ」
「…何?」
「買い物。行ってきてくれるわよね? 今日はタカ坊、うちで夕飯食べていくんでしょ? ならたまには奮発しないとね。とゆーわけで」
「な、何であたしが…」
「―……」
あたしは一瞬何が起きたのか分からなかった。
こちらに伸びてくる女版兄貴と呼ぶには失礼なくらい綺麗な人の手。
「タ、タマ姉、ちょっと待った…!」
あいつの静止の声がかかったのは一瞬遅かった。
「〜わ、割れる割れる割れる! い、痛い痛い!」
「姉の言うことは黙って聞く。それに何? 「あたし」? それは新手の嫌がらせかしら?
それとも大事な息子を手放す覚悟ができたってことかしら? そうねえ「妹」の方がまだ可愛げあるわよねぇ」
前言撤回。この人、いやこいつ絶対あの兄貴の女版だ!
「分かったらさっさと行く。本当に大事な息子奪われたくないでしょ?」
にっこりと笑う「タマ姉」はあの兄貴にそっくり!
向こうの兄貴が魔王ならこの人はさしずめ女帝って感じかしら?
パっと見モデルみたいな美人なんだけどやっぱり中身は唯我独尊の暴君。
相手に有無を言わせない迫力がある。
あたしはそのまま家に足を踏み入れることもなく買い物へと使いっぱしられたのでした。
「タ、タマ姉…ちょっと話が……」
こちらに申し訳なさそうな顔を向けてくるあいつ。でも絶対許さない。
あとで覚えとけ!
「あ、あのー…」
「あら、おかえりなさい」
恐る恐る家に足を踏み入れたあたしを出迎えたのはさっきの暴力女だった。
思わずガバっと身構えてしまう。
「先ほどは大変失礼しました。タカ坊から事情は聞いたわ」
「へ…?」
さっきまでの暴君ぶりが幻であるかのように兄貴男版と思われる女の人は行儀良く頭を下げた。
これはこっちも拍子抜けするわ。
「事情を知らぬとはいえ、先程までの無礼、お許し下さい。向坂の人間として恥ずべき行いだったと反省しております」
「は、はあ…」
これも兄貴がよくやる演技の一部かしら? と、疑いたくなるのはさっきの傍若無人っぷりな行いを見てるせいかしら。
でもこうしてると本当に深窓の令嬢みたい。
顔なんかはあたしに似てるけど気品が違う。物腰も優雅でいかにもお嬢様って感じ!
しかも悔しいけどナイスバディ! そのよく育った乳をあたしにも半分分けてもらいたいわ。
ってゆーか、あたしの周りってどうして無駄に胸ばっかり成長してるような女ばっかりなの?
あたし、いかにも引き立て役だわ…。
「あの、あたしの話、信じて頂けたんですか…?」
「その判断はこれから致します。正直とてもじゃないけど信じられない話ですが、可能性が全くないお話でもありませんから…」
何だか考えの読めない表情をして彼女はあたしからスーパーの袋を受け取る。
「もしこれが全部雄二の演技だった場合私の完敗です。ご褒美として後で本当に女にして差し上げるだけです。
もしも多重人格だとしても貴方は雄二とは別の人。お客様である以上手荒には扱えませんから」
にっこりと笑いつつも彼女の言っていることは恐ろしい。
が、頑張れ、こっちのあたし…。もし本気で女にされたらごめん。でもそれあたしのせいじゃないから、たぶん。
「買い物、お疲れ様でした。それより先に湯を浴びては如何ですか? 湯加減も丁度良くなっておりますよ?詳しいお話はまた後ほど。
今はまだお客様をお迎えする準備もできておりませんから…。上がってくるまでにお夜食の準備もできているでしょうし…」
「はあ…」
ああこっちでは別にあたしが夕食作る必要はないのよね。
向こうでは家事は女の仕事、家を守るのが男の仕事って感じであたしが毎日三食作ってたんだけど、こっちは全く逆なのよね。
ん? なら向こうの兄貴は大丈夫かしら?
でも貴子がいるなら平気かー。って、それ以前に貴子がこっちのあたしにちゃんと慣れてるかが重要なんだけど。
こっちと同じ現象を起こってるなら中身は男でも体はあたしだろうから平気かしら。
「さ、ここで立ち話も何ですし、中へどうぞ。タオルや寝巻きはこちらで用意しますから」
「あ、はい、おじゃまします…」
自分の家に「おじゃまします」って言うのも変だけど、完全にお客様扱いされた今、何だかそう言わないといけない気がした。
何だか狐に騙されたような気分になりながらあたしはようやく自分の家へと帰ったのだった。
「はあー、何だかすっごく疲れた…」
家の間取りは向こうと全く同じだった。
だから別に迷うことなんてなかったんだけどお姉様と呼ぶに相応しいような
こっちの兄貴こと環さんに案内されてあたしは脱衣所へと足を踏み入れた。
途中であのクソ貴明に会ったから思いっきりガンつけておいた。
アイツがもうちょっと早く止めてくれればあたしは環さんに変なイメージ持たなくて済んだのに〜!
数々の無礼な発言といい許すまじ、河野貴明。
後で一発殴っておこう。折角の男の子の体なんだからグーで思いっきり。
一回グーで殴ってみたかったのよね! 結構スカっとしそう!
向こうで誰かをグーで殴った日には兄貴に「品がない!」ってグリグリで殺されるわ。
この機会に思う存分楽しんでおかなくちゃ。
そんなあたしの楽しい気分も服を脱ぐまでだった。
上機嫌のまま上着を脱ぎ捨て、ズボンを脱ぎ捨てたあたし。後はトランクスだけ。
別に男の下着なんてどうともないの。毎日兄貴のやつを洗ってるし。
でも、その油断があたしのその先の恐怖を予想させる判断能力を奪っていた。
「―……」
ズボンを下ろした先にあったもの。
―…何アレ?
え、今の何?
ちょっと待って、い、今のって……。
「イィヤアアアアア!」
家が揺れた。後に環さんとあいつはそう言うんだけどその時のあたしにそこまで考えてる余裕はない。
「な、何!? 何事!?」
「お、おい、大丈夫か!?」
ガララっと脱衣所のドアが勢い良く開く。
そこから環さんと貴明が中へと突っ込んでくる。
「キャッ、ゆ、雄二ちょっと…!」
「ば、馬鹿服着ろ、お前…!」
「へ、変なのついてた…」
「はあ!?」
あたしの脱ぎ捨てた服をあたしの体にかけながら貴明がこっちを覗き込んでくる。
ああもう泣きたい。
「変なのついてた〜!」
「変なのってお前…」
「何、あの気持ち悪いの!?」
「き、気持ち悪い……」
あたしはついに泣き出してしまった。
だってショックよ。大ショックよ。
嫁入り前の体なのに〜。
精神的に陵辱された気分だわ! これは許せない辱めだわ!
何でこんなコートマンに遭遇した時のような気分にならなきゃいけないのよ〜。
セックスの時、あれを女の中に挿れるって知識としてはあったけどまさかあんなのだとは思わなかった!
無理! 絶対無理! あんなの体に突っ込むなんて!
一般的なカップルって凄いことしてたのね。あたしには無理。
今なら貴子の男が嫌って言ってた気持ちもちょっと分かるわ。
男って凄いわ…あんなのつけて生きてるなんて…。
あんなのが兄貴や好巳にも…ああだめ、考えただけで意識が遠のく。
「し、仕方ないだろ、今のお前は男の体なんだから!」
「で、でも〜」
「これからトイレだってその体で行かなきゃならないんだぞ!」
ト、トイレ…。そうだわ、忘れてたけどトイレ…。
つまり男が並んであそこからあれが…。
もう、無理…。想像が追いつかないってゆーか、もうあまりの事態に意識を保っていることすら…。
「お、おい! 悠里!」
「し、しっかりして…!」
ああ兄貴、貴子、好巳、このまま先立つ不幸を許して…。
この生活には予想以上に無理があったみたい…。
「うう〜ん」
「良かった…目が覚めたみたい」
「おい、大丈夫か?」
ああ、何か似たような状況が前にもあったような…。
そうだ、あの時は目が覚めたら男の子になってたんだ。
今都合良く元に戻ってたら良かったんだけど、そうはいかないみたい。
その証拠に今あたしの目の前にいるのは貴子と兄貴じゃなく、貴明と環さん。
「あたし…」
「ごめんなさい…もう少し配慮が必要だったわね…。こちらに落ち度がありました」
「いえ、そんな…」
あれは全面的にあたしが悪いのに…。いや、むしろ全部事前に男のアレがどんなものか説明しておかなかった貴明のせい!
事情を知ってるんだからもう少し気を使ってもいいんじゃない!?
でも、人のせいにした所で今の状況が変わるわけでもないのよねぇ…。
「でも、これで貴方が雄二じゃないって確信が持てたわ。こんなことになって大変でしょうが、元に戻るまで私もタカ坊も全面的に協力しますから」
「はあ…」
何か返事をする気力も沸かない。もう大変とかそういう次元の話じゃない気がしてきた。
「申し訳ないけど、こうなってしまった以上貴方には暫く向坂雄二として生活してもらいます。でも、安心して。
タカ坊や私や幼馴染のこのみも全力で補助しますから。女の子に男の子の生活を強いるのも酷だと思うけど、
何とか元に戻る策が見つかるまでは家ではともかく、学校ではこの事態を隠し通してください」
「はい…」
ああやっぱりこの人兄貴の女版かも。こういう時、ほんとにしっかりしてる。頼りになる姉御って感じ。
美人でナイスバディなのにその上しっかり者なんて羨ましい。ずるい。
あたしとは大違い。同じ向坂の女なのに、環さんはどうしてこんなにも素敵な人なんだろう。
あたしもこうなりたかった。
ヤバ、何か情けなくて泣けてきた…。
「すみません、少し一人にして頂けますか…?」
「え、ええごめんなさい。こちらこそ長居をしてしまって。さ、行くわよ、タカ坊…」
「あ、ああ。とりあえず無理すんなよ」
そんなの言われなくても分かってるわ。
パタリ、と襖が閉まって部屋に一人取り残されると今まで堪えていた涙が急に溢れてきた。
何で? あたし、そんなに弱くないはず。
今までずっと貴子を支えてきたじゃない。
でもこの世界に貴子はいない。
こっちの兄貴は綺麗で聡明なお姉さんで、別にあたしがいなくても何一つ困らない。
この世界に、あたしを必要としてくれる人なんてどこにもいない。
あたし、本当にここに居る意味があるの?
環さんやあいつに迷惑かけてるだけじゃないの?
もし向こうの世界の貴子がこっちのあたしを気に入ったらあたしの居場所、本当にどこにもなくなる。
あたし、今まで貴子に必要とされてると思ったけど、本当は違う。
あたしが貴子を必要としてた。あたし、本当は貴子がいなきゃ何もできない。
どうしよう。今更こんなことに気付くなんて。
こんな弱いあたしなんていらないのに。
――明日からあたしの新しい生活が始まる。
でも、あたし、どうしたらいいのか分からない。
本当にこっちの世界で男の子として生きていけるの?
どうしよう、涙が止まらない。泣きたくなんてないのに。
もうどうしたらいいか分からない。
何であたしはこの体になっちゃったんだろう…。
>>708-714 悠里も悠里でキッツイ状況になってるな…
この深刻な孤独感疎外感からどうにかして抜け出すのが第一の課題か。
それにしても、雄二の方は自分(悠里ボディ)の裸見たとき平気だったのかね?(w
480KB超えたし、そろそろ新スレ立てる?
もう、口もきいてくれそうに無かった。
岡崎が僕を無視しているのは僕の責任だと思う。
僕があの状況に流されなければ。
ヤケになっていた岡崎を止めていれば。
そして、京にあの事がバレそうにならなければ。
いや、そもそも…僕が男じゃなければ…。
岡崎と、ずっと一緒にいられたのに…。
僕は後悔で埋め尽くされた気持ちのままふらりと外に出た。
「春原?」
どこかで聞いたような女の人の声に呼び止められた。
「春原だろう?どうかしたの?」
「芳野さんこそどうしたんスか…」
元カリスマMC。もともとは弟がファンだったんだけど、その美女っぷりに僕もファンになった人。
最近この街で見かけてサインをせがんだが、やはり引退後だしもらえなくて。
まぁとにかく、会ったら挨拶をするくらいの仲だ。
「私は客を迎えにきた。それよりも、私で良ければ話を聞くが」
不思議と考えるより先に口が動いていた。
「岡崎を…好きな人を傷つけちゃったんです。もう許してもらえないかも」
「岡崎…?」
芳野さんの表情が一瞬変わった気がした。
「芳野さん?どうかしましたか?」
「いや、何でもない…」
明らかに動揺している。僕、何かまずいことを言ったんだろうか?
「え、えっと…じゃあ、話聞いてくれて有難うございました」
これ以上芳野さんに迷惑をかけるわけにもいかない。
僕は芳野さんに軽く頭を下げて、その場を後にした。
少し歩いていると聞き慣れた男女の声が聞こえてきた。
「朋美、頼むから聞いてくれ」
京が岡崎を追い掛けてその手を引っ張っていた。
僕は慌てて建物の影に隠れる。
「…何よ」
岡崎の声が答える。
「オレはおまえがずっと好きだったんだ…」
「…私は…」
「陽平とは縁を切ったんだろ?もう、オレが身を引く理由はない」
「京…」
「朋美、好きだ…」
耳を塞ぎたかった。買い物袋がアスファルトに落ちる音。
「ん…」
重なる影…。胸が締め付けられる。
心が痛くて、耐えられなくて、僕は…逃げた。
ただ、がむしゃらに走る。
そして、考えは確信に変わる。
やっぱり、僕が男に生まれたのは間違いだったんだ。
岡崎を傷つけて。京の気持ちを潰して。
友達に戻りたい。友達でいい。僕が女だったら…!
718 :
すのぷ〜野郎:2005/07/25(月) 23:14:43 ID:llSngT5bO
今回は春原視点でお送りします。
ようやく書きたかった場面に近付いてきた…。
何この王道展開。GJ
>友達に戻りたい。友達でいい。僕が女だったら…!
かくして春原はモロッコへ…だったらイヤン
質問なんですがこのスレって同じ作品のSSでも
作者によって全くアナザーの世界ってのでも良いですか?
果てしなく続く青空と、降り注ぐ陽光の元、燦然と煌く紺碧の大海。
穏やかな波風と、遠くから流れてくるカモメの鳴き声。
豪華客船『白皇』は、太平洋上をのんびりと航海していた。
日々、中央ホールで開かれるダンスパーティも夜になるまでは開催されないので、それまで乗客達は自分の客室でくつろぐことになる。
中には、各地に設えた談話室等で、雑談に興じる者も数多くいた。
そして、ここでも……
「あーっ! ちょっとひろみ、私のケーキ食べたでしょっ!?」
「えー、知らないわよそんなの」
「このっ、ゆうまで! 待ちなさーい!!」
「ヤだよーだ!」
ある巨大談話室の内部で、女の子達の姦しい声が響いていた。
二大悪戯っ娘、折原ひろみと相沢ゆうのターゲットにされたのは、この中で一番手を出してはいけない気がするNo.1、岡崎朋美である。
美しい顔立ちに阿修羅の如く怒りを滲ませ、殺意の波動を撒き散らしながら追いかけっこをするその傍らでは、
「ちょっと、うざいから静かにしなさいよ……」
木田朱鷺乃がソファーをまるごと占領して寝っ転がりながら、眉根を寄せて文句を吐く。
ただ、船酔いでもしたのかその顔は真っ青で、あまり覇気は感じられない。
「あんまり暴れないで、カメラに映らないからっ!」
ハンディカムを片手に装備して録画しながら、三人に狙いをつけているのは藤田浩子。
ぶっきらぼうだが根は優しく、リーダーシップが取れているので、この集団の班長的存在と化している。
「ボク、目立つのはちょっと……」
那須牟祢は誰に言うでもない独り言と曖昧な笑顔を浮かべながら、浩子の背中側に回り込んでその場所を維持していた。
優秀なエージェントは、公の場に姿など現さないのである。
そんな涙ぐましい努力をする彼女を、
「何か変だよ、牟祢ちゃん……」
長瀬祐子が苦笑して眺めていた。
ティーカップの紅茶を一口啜りながら、ゆったりとした動きで視線を横にずらす。
そこには、
「……」
「……」
男が苦手な河野貴子と、唯一の男性メンバーである天沢郁巳が、かなりぎこちない感じで向かい合って座っていた。
貴子は顔を伏せ、チラチラと窺うように何度か郁巳に視線を這わせ、郁巳はかなり困った顔をして、明後日の方向に視線を逸らせつつ頭を掻いている。
そしてその隣、
「……」
同じく無言に、しかも無表情で、松浦亮子がボーっとしていた。
先程からピクリともしていないところを見ると、もしかしたら目を開けたまま眠っているのかもしれない。
そんな光景が、この談話室の中に広がっていた。
総勢十人。
全員が花も恥らう女子高生(一人除く)である。
事の発端は一ヶ月前、とあるテレビ番組で『豪華客船の旅にご招待』という企画が始まったのが最初である。
自分で葉書を出したもの、友人に勝手に葉書を出された者、多種多様な参加希望者の中で、見事に選ばれたのがこの十人だった。
企画内容としてはバラエティで、ダンスパーティの行われる豪華客船に何の予備知識もないまま放り込まれたら、という状況を視聴者が見て楽しむというものだ。
そんな訳で、どうせなら花があった方がいい、というプロデューサーの独断と偏見もあり、女子高生ばかりが選出された。
すぐ誰かに頼らないように、スタッフも誰一人として参加せず、カメラ撮影も彼女達に任せるという徹底振りである。
本当に最低限の知識とドレス、後は各自の用意した荷物だけを持って、乗船と相成った。
今日で三日目。
最初は右往左往していた彼女達も、最近は落ち着きを見せ始め、こうして昼時のまったりとした時間を過ごしている。
……このまま、何事もなく終わる。
そう信じていた者は、果たして何人いたのだろうか。
『船内の皆様にご案内致します』
三時を過ぎた辺りで、突如室内スピーカーから、放送がかかった。
それまでの喧騒が嘘だったかのようにピタリと静まり、全員が顔を上げてスピーカーを注視する中、放送は続けられる。
『ただいま、原因不明のトラブル発生につき、止む無く船体を停止させております。皆様方に置かれましては、予めご了承くださるよう、お願い申し上げます。なお、トラブルは一時的なものであり、すぐに再稼動することを、お約束致します』
「……船体が、停止?」
一人呟いたゆうが備え付けの窓から外を覗き、ひろみも後ろからそれに続く。
確かに、『白皇号』はその動きを止め、海上に静かに佇んでいた。
「沈んだりしないでしょうね」
「怖いこと言わないでよ……」
朋美がポツリと呟いた言葉に、浩子が呆れた風に返す。
二人共、沈むなんてこれっぽっちも考えていない顔だ。
「原因不明のトラブルって何かな?」
「さぁ……判別つかないわね」
部屋の片隅では、祐子と貴子がひそひそと雑談を交わしていた。
こちらは心持ち、不安そうな顔をしている。
「揺れないならOKだわ……」
「……」
逆に朱鷺乃は先程よりも安らかな顔で寝相の修正を行なっていた。
その隣で、濡れタオルを持った亮子が、朱鷺乃の介抱を行なっている。
「まさか……でも……」
牟祢は部屋の扉の横に陣取り、顎に手を添えて考えに没頭していた。
エージェントである自分を狙った事件なのではないか、それを疑っているのだ。
「……ふぅ」
そして。
ソファに腰掛けながら、天沢郁巳は天を仰いで深い溜め息を吐いた。
「どうして、こう立て続けにトラブルが起きるかなぁ……」
そもそも、この女性だらけの集団の中で唯一の男性である郁巳の参加経緯について話さねばなるまい。
といっても理由は至極簡単簡潔、写真が同封されていなかったので、この企画のプロデューサーが『郁巳(いくみ)』という名前を見て、女性だと勘違いしてしまったのだ。
最初に十人が集められた時、何故か紛れ込んでいた男である郁巳を最初は降ろそうかと考えられた(本人もそれを望んだ)が、これはこれで面白そう、という安易な理由により、こうして参加者として乗船している。
人は彼のハーレム的状況を幸せだと思い、やっかむだろうか。否。何だか個性的で無限のエネルギーに満ち溢れている乙女達に囲まれて、郁巳はすっかり消耗しきっていた。
ひろみやゆう等とは簡単に打ち解けたが、他の女性陣とは微妙に距離を置いているし、特に二大女王の朋美と朱鷺乃とは、あまり会話をする機会が起きないし、そもそもする気がない。
そして一番の問題は、先程向かい合って座っていた、男性不信の気がある少女、河野貴子である。
更にこのトラブル。何か疫病神でも憑いてるのか、と頭の中に麗しい女魔王閣下の姿を思い浮かべつつ、郁巳はもう一度深い溜め息を洩らした。
ちなみに、相部屋なのは男と一緒に寝ることをまったく気にしないひろみと亮子。
それはそれで悲しいものだった。
首、吊ってきますから。
浩子と貴子が一緒にいるのは、きっと不思議素敵夢時空なのです……
ていうか、当方Routesと東鳩2やったことありませんから……残念……っ!
待て待て、完結を希望する。
エスポワール並のバトルが繰り広げられたら楽しそう。
>>726も
>>728もGJ!
ところでもう500kb近いし新スレ立てようとしたけどダメだった…
誰か頼む。
・・・・しまった。 スレ数更新するの忘れてた。
ホントなら18スレだorz
ホントごめんなさい。邪魔なようなら削除して新スレ立て直して下さい。
スレたてとかなれないことするんじゃなかった。反省してまふ。。。
いやいや乙だよ
>>731 数字は別にいいんじゃね?
洋上の船…ここから鎖に持っていくのを期待してもいいだろうか…
新スレが即死回避したら埋めに恒例反転最萌投票でもするかね
_| ̄|○ ←反転集結adult編でもyoung編でも忘れられてる城戸芳美
いや別に責めてる訳じゃないよ?
>>726 続きでちゃんと出してくれれば無問題w
SSのネタ思いついたけど
チキンなんで投下できない
>>737 出すだけ出してみ。
職人の気が向けば書いてもらえるぞ
>>737 ネタだけならそう構える事もないだろう
SSならちと勇気が要るけどな
∧__∧ =ャ=ャ
/ \ =ャ=ャ =ャ=ャ
>>595 >>683 | (゚) (。) | =ャ=ャ
>>692 >>611 |┌ ⊂⊃ ┐| =ャ =ャ=ャ=ャ
>>740 | \___/ | =ャ=ャ =ャ =ャ
\ \|/ / =ャ=ャ =ャ=ャ
595人気が羨ましい
いや、明らかに同一の粘着だろ‥‥
次でスレスト↓
うぇ、よく考えたら512kで落ちるんだったorz
そろそろ旧作の反転キャラも出張ってきてほしい‥‥
GJ!
元から女の春原と只の岡崎物って何でこんなに少ないんだろう
さて、御堂がちっちゃくなって岩切と戯れていたとき。
蝉枝は坂神家の居間で「てれびじょん」とにらめっこをしていた。
ソファにゆったりと身を沈め、身体にはちゃんと休息を取らせているが、
そうしている間にも現代社会に関する情報の収集には余念がない。
「おお……本当に宇宙空間が無重力だったとは……」
「それでは蝉枝さん、今日はこのあたりで失礼しますね」
「うむ、道中気をつけろ」
「ふむ……大相撲も国際化の時代なのか……変わったな」
「あ、蝉枝。先にお風呂入ってるね」
「承知した」
「それでは、今日のMHKニュース7、これで失礼致します」
眼鏡を掛けた男性アナウンサーが画面に向かって一礼をして、
そうしてお目当てのニュース番組は終了した。
(しかし…情報機関も随分と発達したものだ。)
蝉枝は、昔のことを少しだけ思い出し、目を閉じた。
耳を済ませば、今にもあのとき憧れた香水の宣伝歌がラジオから…