「この門だけは通すわけにはいかない…?」
一之瀬ことみが勝平の言葉を反芻する。
そしてクスリと微笑んだ。
「ああ、そういうことだったの。それがあなたの得た『新しい力』…」
意味ありげに呟いてみせる。
「何だって?どういうことだ!?」
「…ずっと、不思議には思っていたの。
あなたの脳を支配していた癌細胞は高熱により死滅した。だからあなたは理性を取り戻し、
椋ちゃんを助けるためにMIOに反旗を翻すことができた。ここまでは理解できるの。
でも、銀弓に射られたことであなたの癌は再発したはずなの。だったら、理性は再び失われるはず…
しかし、今のあなたはさっきの台詞で分かるように、理性を保った状態のまま…つまり…」
言葉をきり、勝平の反応を面白そうに確かめる。
「それこそが『新しい力』ということなの。
癌細胞は、あなたの器を認め、あなたにひれ伏した…
だから、理性を保ったまま、癌の再生能力を自在に使用することができるようになったの。
でも…わたしの考えが正しければ…その力は同時に、決定的な弱点をも生じさせたはずなの」
ことみがゆっくりと視線を勝平の頭に動かす。
「脳、か…!」
「ご名答なの。理性を保てるということは、同時に脳が癌化していないことを意味するの。
すなわち、脳には癌細胞の再生能力が及ばない…一度破壊されたら二度と再生することはないの」
嘲るような笑みがことみの顔に浮かんだ。
「愚かなの…高熱以外には無敵の『全身再生』が、恋愛感情に絆された結果、失われることになるなんて…
人間らしい感情、愛情…聞こえは良いかも知れないけれど…それらは冷静さを失わせるの。
冷静を欠いたものに勝利はない…結局、感情なんかに頼るのは、心が脆い弱者のすることなの」
ことみが、うつむいたままの勝平に罵詈雑言を浴びせる。
「どうしたの、勝平くん?弱点が出来たのが、そんなにショック?」
可笑しそうに勝平を覗き込む。
「…良かった…」
勝平がポツリと呟いていた。
「え?」
「ボクは…いつまた理性を失うかと…そして、椋さんを傷つけるようなことをしてしまうかと…
ずっと不安で…心配で…!再び癌に支配されて、暴走するくらいなら…自分で命を絶つしかないと…そう思っていた…」
勝平の目から涙が溢れていた。
「でも…生きていいんだ…!もう理性を失うことがないのなら…椋さんの傍らで、ずっと暮らしてもいいんだ…!
だったら…これ程嬉しい『力』はない!」
目をゴシゴシと拭う。
涙を拭ったその目には、強い光が宿っていた。
「一之瀬ことみ…もう時間を稼ごうだなんて思わない。
ボクはキミを倒す。椋さんとの…『これから』を守るために!」
再び弓をキリキリと引き絞る。
「そう…。わたしとしても、もうあなたを研究材料として生かしておく理由は無くなったの。
あなたとの殺し合い、喜んでお受けする次第なの」
漆黒のレザーコートが翻った。
その下には黒光りするイングラムM11。
ことみの指が引き金に伸びる。
「おそいっ!」
勝平の声。
太陽の光を受けて銀の矢羽が煌く。
幾本もの銀線がことみに向かって伸びていった。
(勝った!)
勝平は確信していた。
アポロンの銀弓による攻撃は、掠っただけでも相手を癌に至らしめる。
勝平の放った、無数の矢の葬列。
避ける場所は何処にもないはずだった。
だが…一之瀬ことみは笑っていた。
(この程度?)
微かに動いた口は、そう物語っていたような気がした。
ことみが僅かに体を反らす。
さっきまで頭があった場所を矢が通過していった。
風圧でことみの髪がそよそよと揺れる。
無駄のない、最小限の動きで、彼女は全ての矢を避けていた。
まるで矢が通る道筋が見えているかのように。
(そんな馬鹿な!)
勝平が驚きのあまり口を開く。
「ごぼっ…」
しかし、言葉の代わりに口からは大量の血が吹き出していた。
無数の弾丸が勝平の胴体を吹き飛ばしていたのだ。
支えを失った体は病院の外壁にもたれ掛かり、ズルズルとずり落ちていく。
「そんな馬鹿な、とでも言いたそうなの」
ことみがゆっくり近づいてくる。
傷は既に再生を始めていたが、攻撃を避けられたショックで勝平は未だ立ち上がれないでいた。
「き、キミは…ボクの矢の軌道を完全に読んでいる…でなければ避けられるはずがないんだ…!」
呼吸を整えながら必死に言葉を吐き出す。
「だけど…っ!放たれた矢の軌道を読むなんて、人間にできるはずはない…!
ま、まさかキミは…人間じゃないのか…!?」
勝平が化け物を見るかのような目でことみを見た。
「その質問は、なかなか難しい問題点をはらんでいるの」
ことみが囁いた。
「ねぇ、勝平くん…」
大きな瞳が勝平を映し出す。
「もし、肉体は人間で…脳がコンピューターの存在がこの世にいるとしたら…『それ』は人間?それとも…」
一旦言葉を切る。
不気味な光がことみの目に宿った。
「それとも、人間を超えた存在…?」
「…っ!その存在というのは…!」
「そう、わたしのこと。わたしの頭に内蔵された人工知能は、未来の技術の粋を結集させて作られたもの。
そして、MIO本部内の集積回路とも密接にリンクしているの」
あくまで淡々と、ことみが説明を続ける。
「あなたの視線や筋肉の動きに始まり…矢の射出角度、周囲の環境、天候、風の向きに至るまで、
必要とされるデータを瞬時に集積回路に転送、演算を行い、結果をはじき出すと…」
ことみが勝平を見下ろす。
「この結果になるの」
ざわざわと、病院を取り囲む森が揺れた。
「この回避能力の前に破れたのは、有紀寧ちゃんについであなたで二人目。
だから恥じることはないの。もともと無理な話なのだから…ただの人間がわたしに勝つなんて」
「だ、だけど…!」
勝平が口を開く。
「例え矢の軌道が読めていたとしても、体が人間だっていうんなら…
キミみたいな女の子が反応できるはずは…!」
「なら、もう一度試させてあげるの」
ことみが小首を傾げて見せた。
「試す…!?」
「この至近距離から、もう一度わたしに攻撃を仕掛けてみればいいの」
「な、何だって…!?」
あまりの発言に勝平が言葉を失う。
無理もないだろう。彼とことみの間の距離は、1メートル程しかないのだから。
(罠…?でも、この好機を逃すわけには…)
ことみが両手を後ろで組んだまま首を傾げる。
まったくの無防備状態だった。
勝平の喉がゴクリと鳴る。
そして―――
ドォン!
44マグナムの、爆発音の様な銃声が、周囲の山々に木霊する。
「!!」
そして、勝平の目に写ったのは、変わらず微笑みを浮かべている一之瀬ことみの姿だった。
勝平の手がガクガクと震える。
マグナム銃を撃った反動のせいではない。
1メートルの距離で放った弾丸が避けられる。
決定的な力の差を目の前で示されたことによる絶望。
それが勝平の平静を奪ったのだ。
「う、嘘だ…!」
「信じられないのも無理はないの…わたしの外見はただの女の子だから…
至近距離での発砲に反応できないと思ってしまうのも、至極もっともなの」
「はぁっ…はぁっ…」
勝平の呼吸が荒くなる。
遠い。余りにも遠すぎる。
これが二帝。これがMIO。
その前では癌細胞の力など、愛の力など、ひどく無力に思えた。
「人間の脳には、『30%の限界』があるの」
ことみが言葉を続ける。
「本来、成人男性の筋肉は、両腕で500キロの物を持ち上げる潜在能力を秘めているとされるの。
でも普段、脳はその力を30%以下にセーブしている…本当に愚かしいことなの。
一方、わたしには…人工知能には、そんな機能はないの。常に100%かそれ以上の力を使うことが出来るの」
哀れみを含んだ瞳で勝平を見下ろす。
まるで、自分に挑んだ愚かな人間を諌める神のように。
「矢や弾丸の軌道を読む『頭脳』と、卓越した『身体能力』…
これがあなた達『人間』と、『人間を超えた存在』であるわたしの、決して埋まることのない差なの」
ことみがコートの中に手を伸ばす。
出てきた手には、再びイングラムが握られていた。
「勝平くんは良く戦ったの。でも、ここが人間の限界…
意識的に脳のリミッターを外すことすらできない下等な存在の限界点…
わたしに一撃を与えることもなく、あなたは死ぬの」
そう言い捨てて照準を勝平の頭に合わせた。
(駄目だ、負ける…もう、打つ手はない…)
勝平は頭を垂れたまま覚悟を決めていた。
(癌細胞の再生能力を持っていようが…所詮ボクは人間に過ぎない…こいつには勝てないんだ…!)
必死に自分に言い聞かせる。
死を少しでも納得して受け入れようとするかのように。
しかし、その時―――
『今度こそ…ずっと一緒にいましょう…何があっても、ずっと…!』
唐突に、椋との約束が脳裏に蘇った。
それは生に対する勝平の未練を象徴したものだったかもしれない。
(椋さん…)
ふと、愛する人の顔を思い浮かべる。
(ここでボクが死んだら…次に狙われるのは椋さんたち…!だ、駄目だ!それだけは…!)
勝平がゆっくり面を上げる。
一之瀬ことみと目が合った。
「どうしたの?たかが人間が…まだわたしに勝てると思っているの…?」
「人間じゃあ、キミに勝てないと言うのなら…!」
勝平が拳を握り締める。
その手の中には、いつの間にかペンダントが握られていた―――
「ボクは化け物にだってなってやる!!」
―――力を渇望する者を求める、黒色の宝石が。
「バーサーカー・レクイエム!?」
ことみが短く声を上げる。
そして間髪射れずにイングラムの引き金を引いた。
ばららららっ!!!
しかし、弾丸が勝平の頭蓋を貫通することはなかった。
「!?!」
勝平の体はことみの腕を潜り抜け、彼女の懐の中にあった。
(至近距離での銃撃の回避…30%の壁を…人間の限界を…超えた…
自らを凶戦士化することで、脳のリミッターを…!?)
「うぁあ゛あ゛あ゛ーーーーっ!!!」
大地を震わす咆哮。
勝平の右拳がことみの腹部を打っていた。
◆病院内駐車場
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』『バーサーカー・レクイエム』44マグナム
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、『コミック力場』、くまのぬいぐるみ
おいおい、燃え展開だよ!
おーすげえ。
100話目前にして熱い展開ですな
GJ
「…読み切ったの。人ではわたしに勝てない。ならば、人を捨てたものに勝利など、尚更あるはずがないの」
腹部を押さえながら、ことみが呟く。
――地に倒れ伏した、勝平に向かって。
バーサーカー・レクイエムの力を以って身体能力のリミッターを外し、ことみに襲い掛かった勝平。
初撃こそ、ことみの動揺によって命中させられたものの、そこまでだった。
理性を捨てた攻撃はそのどれもが単調かつ直情的だった。
威力がどれほど凄くても、当たらなければ何の意味も無い。
勝平の起死回生の作戦は瞬く間にことみによって計算され、解析された。
拳は空を切り、地を抉るばかりだった。
何とかことみに肉薄するも、再び鉛弾をその身に浴び勝平は大きく吹きとばされた。
その拍子に、握り締めていたバーサーカー・レクイエムを手放したのだろう。
自らの血反吐の中、勝平は夢を見ていた。
最初に感じたのは、微かな違和感。
足の怪我なんて、それこそ山のように経験してきたし、今回も似たようなものだと思っていた。
よく、転ぶようになった。
時折痛みを感じるようになった。
…走れなく、なった。
絶望して、病院を抜け出して…。
“男らしく生きる”なんて、訳の分からない目標に縋った。
そして、ボクは…。
『…こそ…ずっと……何が……も…!』
血反吐と理性と痛みの狭間で、声を聞いた。
懐かしく、新しく、優しく、厳しく、そして――強い、声。
ボクが愛した人。――藤林、椋さん。
椋さんは、何と言った?
『今度こそ…ずっと一緒にいましょう…何があっても、ずっと…!』
そう、一緒にいましょう…そう言ったんだ。
そうだ…ボクは…こんな、ところで…!
とどめを刺さんと勝平に迫ることみの足が止まった。
地に伏した勝平の手が、ぴくりと動く。続いて足。
「まだ、動けるの」
「………さっき、キミは言ったよね…冷静を欠いたものには勝利はない…悔しいけど、全くその通りだ。
全くどうかしてた。こんな、ものに頼ったら…椋さんのところには行けないじゃないか…!」
バーサーカー・レクイエムを投げ捨て、立ち上がる。
「…愚か。人ではわたしに勝てない。人を捨ててもわたしには勝てない。
あなたがわたしに勝つことはできないの。不可能なの。不可解なの」
心底呆れたといった口調でことみが吐き捨てる。
改めて銃口を勝平の方へと向け――硬直した。実に不可解なの。
(どうする…?弓は通じない。バーサーカー・レクイエムも通じない。銃弾は残り少ない。ボクに打つ手は…あるのか?)
頭を振る。駄目だ。あるか、ないかじゃない。勝つ。勝たなければ、いけない。
(考えろ。ボクにできること。ボクだからできること。ボクにしか、できないこと)
先程の夢が脳裏をよぎる。そこで思い至った。柊勝平だからできること。柊勝平にしか、できないこと。
―――簡単じゃないか。
勝平は構えた。彼の戦闘フォーム。
即ち――クラウチングスタート。
「…理解はできないけれど、これ以上あなたに付き合っている暇もないの。さよなら、なの」
ことみがトリガーを絞る。
それが合図。いつもと同じ、合図。
「!!」
銃口が火を吹く。地面が弾ける。駆ける。風が吹く。
煙の向こうに、勝平の姿は無かった。
「嘘…!」
思考が追いつかない。否、思考は追いついている。勝平は単に“速く走っている”だけだ。
だが、捉えることができない――!
衝撃。勝平の体当たりがことみを弾き飛ばす。倒れ伏すことみ。そして、見下ろす勝平。
地を転がり、すぐさま体制を整えなおすことみ。その視線が、勝平の脚と足元に注がれた。
夥しい出血。赤黒い肉が脚に走った裂け目を繋いでいる。
「癌細胞の再生能力…そういうことなの。確かにその方法なら肉体の性能を100%引き出して行動することができる…。
だけど、どうやって脳のリミッターを外したの…?そんなこと、意識的にできる筈がないの。理解、不能なの」
「意識的…?そんな必要、ない。だってボクの魂は…この身体全体に宿っているんだ…!
機械に、MIOに脳を身体を支配されたお前なんかには永遠に理解できるものか!」
(想いを力に変える、それが光。なら、この不可解な現象も、光のせいだというの…?)
一之瀬ことみは明らかに狼狽していた。
柊勝平。こんな人間の何処に、これほどまでの力…想いがあるというのだろうか。
叫び終えると、勝平の身体がわずかに揺らいだ。癌細胞の支配から脳が解き放たれた弊害だ。
再生能力は確かに働く。だが、勝平は傷の痛みも普通に感じるようになっていた。
そこにきて肉体のリミッターを外した運動の連続。恐らくもうあと何回も同じ動きはできないだろう。
だけど、倒れるわけにはいかない…!
再び構える。何度も繰り返してきた、構え。
見つめる先は一之瀬ことみではない。さらにその先…愛しいあの人のもと。そこが、ゴール。
「これがボクの…」
ラスト・ラン
「男の意地だッ!」
◆病院内駐車場
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』『バーサーカー・レクイエム』44マグナム
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、『コミック力場』、くまのぬいぐるみ
かなりGJ
661 :
'ヽ/ヽ:2005/07/15(金) 20:29:49 ID:vFJApFqQ0
おいおいっ
カッペの意地ww
本編で見せてほしかった
なんにせよGJ
ズドン!ズドン!ズドン!
手に持たれたマグナム銃からは幾度も白煙が立ち込め、走る先を完全に読んで撃った筈であるのに鉄の玉はまったく勝平をかすりすらもしない。
(おかしいの。そんな力もないはずなのに。絶対にあっちに行く筈なのに)
予想もしていなかった勝平の力にあきらかにことみは動揺していた。
「やああ!」
数十メートル先にいたはずの勝平がいつのまにか左手側から突進してきている。
「甘いのっ」
とっさに手首をひねって引き金を引く。
再び銃口からは白煙が立ち上げているが目の前に勝平の姿は見たらない。
「そこだ!」
どん!
いきなり腹部に衝撃が走り、思わず手に持っている銃から力が抜ける。
(ありえないの。今のをかわしたっていうの?!)
手から離れたマグナム銃は弧を描いて病院の噴水の中に音も立てずに沈んだ。
(今ならっ)
バックステップで距離をとり、とっさにことみに背中を向けぐっと足に力をこめる。
足元がアスファルトであるにもかかわらず、ぶわっと砂埃がたち、勝平の姿が徐々に遠ざかっていく。
「くっ、させないの」
胸ポケットのハンドガンをとっさにとり、勝平に銃口を向ける。
が、たちあがった砂埃が勝平の姿を捉えさせることを拒んだ。
「してやられたの」
砂埃がはれ、体勢を立て直したころにはすでに勝平の姿はなかった。
(ここで始末できなかったのはイレギュラーなの。でも困ることはないの。アポロンの弓の力くらいならいつでも始末はできるの)
パッパッと服の埃をおとす。
「とりあえず、ここは一度体勢を立て直す必要があるの」
地面に落ちたレザーコートを拾って羽織ったときにその異変に気が付いた。
「?!」
ないのだ。
確かにあるはずのものがないのだ。
「まさか、さっきの体当たりのときに」
ことみの奥歯でぎりっと音がした。
「はあ!はあ!」
全速力で病院の敷地外へと抜け出し、追っ手がこないことを確認すると近場の瓦礫の隙間に身を隠した。
「はぁ、はぁ、はぁ」
徐々に先ほどの傷も再生してきて体のほうもだいぶ楽になってきた。
(ああ、ボクは生き延びられたんだ)
生き延びられたという安堵感と藤林姉妹はいったいどうなったんだろうかという不安が一気に襲ってくる。
「椋さん…」
ガラッ
(!?)
近くの建物の瓦礫が崩れ、思わず銃口をそちらに向けた。
「はっ?!」
いきなり目の前には目測でも野球のピッチャー並みのスピードが出ているであろう辞書が飛んできた。
「うわっ!」
とっさのところで何とかかわした。
こんなことができるのは…。
それは自分にとって一番よく知っている人の姉。
そしてそのそばには最愛の人がいる。
「…勝平…さん?」
「椋さん!」
「え!勝平?!」
次のエモーションに入っていた杏はとっさに動きを止めた。
勝平は手に持った銃を投げ捨てて二人の元に走った。
「勝平!あんた馬鹿じゃないの!一人であんなバケモノと戦おうなんて!」
近づくや否や杏から罵声を浴びる。
でもその目には大粒の涙が浮かんでいた。
「勝平さん…本当によかった…」
「椋さん…」
ぐすぐすと涙を流しながらも椋は勝平の目線を離すことはなかった。
「しかし、あんたよく生きてられたわね」
「お、お姉ちゃん」
「はは、これも椋さんのおかげだよ」
「そ、そんなこと…私は何もしてないですし」
とたんに椋の顔が真っ赤になった。
「それに一泡吹かせることもできたしね」
と、肩から下げているバッグの中に手を突っ込み、それを取り出した。
春原の光『コミック力場』を。
「柊勝平…今度会ったときには絶対に始末するの」
◆廃墟の町
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい、バイク(ガス欠)
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』、『バーサーカー・レクイエム』、『コミック力場』44マグナム
◆病院内駐車場
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、くまのぬいぐるみ
中途半端に理解してかいたから変な部分がいくつかあったりするかも(´Д`;)
ごめ、↑3/3ね
乙
ただバイクはガス欠にする必要無かったんじゃないか?
あと何でマグナムをことみが使ってるんだ?
書いておいて何ですけど、こっからの繋ぎは難しいだろうな…と思ってました。
GJです!やっぱりここは一旦退くのが正解ですよね。
>>667 所有品に多数の武器と書いてあるので、設定上は問題ないでしょう。
イングラムは弾切れになった、ってことで。
>>667 完全にこちらの読み違いでした(汗
ま、まぁ多数の武器とあるんでその一部としておいてください
それとバイクをガス欠にしたのはそうしたほうが瓦礫の隙間あたりに隠れている理由くらいにはなるかなと思ったからです。
説明不足でスマソ
勝平を逃がしたのは一つの正解だと思うけど、勝平を殺すのもアリだったとは思う
このスレでは、臨戦→逃走ってパターンが多いけど、そろそろ人を減らしても良いのでは?
クラナド戦記はハカロワとかと違って登場人物が少ないから、
元々長く続けることには向いてないんじゃないかと思うよ。書き手さんも少ないしね
今回の勝平なんかは十分段階も踏んでたし、ある意味殺すチャンスだったんじゃないかな?
>>670 大体胴衣。
でもちょっと前の春原のこともあるし、登場人物が少ないからこそ殺すときは慎重になるべきだなと思う。
一応メインキャラは一通り生存してるし、なんとか全員生還に持って行きたいって気持ちもあるな。
>>一応メインキャラは一通り生存してるし
あれ・・・?
おかしいな、確か一人・・・
だ、ダメだ!思い出せない!?
誰かも言った気がするけど、これは既にただのロワモノじゃないと思う
もちろん、考えなしに殺すのは一番マズイ行為だと思う。
だけど、反射的に、とりあえずキャラを生かしとけってのもどうかと俺は思うんだ。
そのキャラが辿って来た道筋、流れ、今後の展開、全てを丁寧に考慮した上でなら、
死なせること、を今より積極的に選択肢に入れてもいいんじゃないかな…
なんだかよくわかんないけど、行くよっ!
677 :
名無しさんだよもん:2005/07/17(日) 05:38:31 ID:1KSg0n9Z0
生かす殺すっていうか、これ別に殺し合いさせる必要ある話じゃないんだよね
ロワはどうしても殺さなきゃいけないから、生かすか殺すかの2択になるんだけど、これはそうじゃない。
ロワ経験者とか読者が多いから勘違いしやすいけど、そこはちょっと頭に入れて欲しいな
もちろん、キャラを殺すなって言ってる訳じゃないよ。
別に無理して殺さなくてもいいんだが、
>670が言ってるように臨戦→逃走ってパターンをあまりにも多用しすぎると、
違和感が出てくるのも事実。
企画の趣旨としてはともかく、キャラ達がやっている事は殺し合いなのだから、
遅かれ早かれこの問題は表面化したかも。
クラナド戦記という物語の性質や、書き手さんの人数なんかを考慮すると…
そろそろ、物語を拡げるのではなく、物語をまとめることを考える時期に入ったのではないかと思う。
キャラを生かすにしろ殺すにしろ、各自、終わりの形を意識した話作りをした方がいいかも試練
結局まとめサイトはどうなったんだろう…
やっぱ
>>611ってことだったのか…
真相は管理人さんのみぞ知るって所だろう。その件はもう忘れた方が良いと思う
ただ、92-93話のトラブルが、書き手間の価値観の相違から起こったものなのは間違いない
だからこうしてお互いの価値観を確認・修正していくことは必要なんだろうね
おいおい!の精神には反するかもしれないが…
お、おいおいっ!
意味わからねぇよっ!
(彼ら…町の住民たちには、得体の知れない力があるの…
愛とか…友情とか…そんな非科学的な力を信じたくはないけれど…
でも、そうでなかったら、わたしが勝平くん如きに遅れをとるはずがないの…)
じっと、佇み、思いを巡らせる一之瀬ことみ。
やがて彼女は小さく笑い声を漏らした。
「上等なの…!だったらこちらにも考えがあるの…」
ことみは踵を返し、病院内に戻っていった。
***
地下壕の薄明かりの中。
先ほどまで賑やかだったその場所は、今や古河一家と仁科を残すのみとなっていた。
「ずいぶん寂しくなってしまいましたね」
早苗が頬に手を当てる。
「かっ、野郎共!もっと景気良く行こうぜ!いやっほーーぅ!!」
秋生が無駄に大きな声を出していた。
「そうですっ!今は私達が仁科さんを守らなければいけません。寂しいとか言っている暇ないですっ!」
渚も元気な声で言う。
「渚は強い子ですねっ!」
早苗がそんな渚を見て微笑んだ。
「朋也くんに情けない所、見せられないですから。
いつ朋也くんが戻ってきても怒られないように、ずっと頑張っていたいです、えへへ」
渚も照れ笑いを浮かべる。
「ふん、軟弱な小僧のことだ。今頃、脅されてMIOの仲間になってるんじゃねぇのか?」
「朋也くんはそんなことしないですっ!」
秋生の悪態に、渚が頬を膨らませて言い返す。
「ええ、渚が好きになった人ですからねっ!再会の時が待ち遠しいですね、渚っ」
早苗がにっこり笑った。
渚も満面の笑みでそれに応える。
「はいっ!」
***
無機質な信号音と共に自動扉が開いた。
大画面のモニターが放つ眩い光が薄暗い廊下にまで差し込んでくる。
そのモニタールームに、ことみは足を踏み入れた。
部屋の奥のソファ。
膝を立てて座りながら、じっと画面に見入っている男の姿があった。
「朋也くん、何を見ているの?」
ことみが声をかける。
「ん…ああ、ことみか…」
ふと、我に返ったかのように視線を画面から外した。
そこには、町で起こった様々な出来事の記録が映し出されていた。
「この映像がそんなに興味深いの?」
ことみが更に尋ねる。
「まぁな…」
再びモニターに視線を戻す。
「なぁことみ…こいつら、馬鹿だよな…」
ポツリと呟いていた。
「?」
ことみが小首を傾げる。
「仲間だとか…家族だとか…そんな物のために頑張って、血を流して…俺には理解できないな…」
モニターには血まみれになって戦う秋生や芳野の姿が映し出されていた。
「誰かのために戦う、とかさ…ウザいんだよな…
皆で力を合わせるだとか、吐き気がするような台詞を良く口に出せるよ…
俺なら絶対こんなことはしない…いや、したくても出来ないのかもしれないけどさ…」
無表情な目でぼんやりとモニターを眺める。
「俺には記憶もないし…愛想もない。気の利いたことだって言えない。
この映像のやつらみたいに、仲間ってのと、上手く付き合っていくことなんて出来ない種類の人間だ…
無難に人間関係をこなしたり、他人に気を遣ったり…そういう器用なことが出来る連中とは遠いところにいる…
結局、駄目な人間なのは俺の方なんだろうな」
自虐的に笑ってみせる。
「そんなことはないの」
ことみがきっぱりと言っていた。
「朋也くんは優れた人間なの。
わたしはあなたを…あなたの孤独を、理解してあげられる…
あなたは、『愛』とか『友情』とかいう概念を妄信し…他者との繋がりを求めなければ生きていけないような、弱い人間とは違う…
わたしたちは、あなたみたいな選ばれた人間を探していたの」
「ことみ…」
ことみが大きな瞳で朋也を覗き込む。
「朋也くん、それを証明してみない?
あなたこそ『強者』で、彼らが本当の『弱者』だということを…!」
レザーコートの中から一丁の拳銃を取り出し、朋也に差し出した。
「あいつらを殺せってのか?」
朋也の目はじっとことみの掌の拳銃に注がれていた。
「そう、朋也くんならきっと出来るの」
「……」
朋也はゆっくりと瞼を下ろした。
『私たちがきっと…あなたを教え、導くから』
ことみは記憶を失った自分に、そう言ってくれた。
そして、彼の孤独を理解してくれた。
ことみの言葉には、心を落ちつかせる魔力がある。
それでいて、ウザったい繋がりを朋也に強いろうとはしない。
…彼女の隣は、居心地が良かった。
再び瞼が開いた時、
朋也の両眼は、かつてない邪悪な光を放っていた。
手を伸ばし、ことみの差し出す銃を掴む。
「どうせ暇だしな。殺ってやるよ、ウザい連中を」
ソファから立ちあがり、じっと銃の表面を見つめる。
「それで暇が潰せるのなら、有意義なことだと思うしな」
朋也がそう言い捨てた、その時。
モニターに、ある少女の顔がアップで表示された。
朋也の目が少女に釘付けになる。
「これは…」
「ああ、これは杉坂さんが学校内で消滅したときの監視カメラの記録なの。画面に映っている子は…」
ことみが意味ありげに言葉を切る。
朋也は食い入るように少女の顔を見つめていた。
残された杉坂の衣服にすがり、泣きじゃくる少女の横顔を。
「この子の名前は…古河渚」
「ふるかわ…なぎさ…」
確かめるように呟く。
「知っているの?朋也くん…」
ことみが朋也の様子を伺う。
やがて、朋也はゆっくりと視線を画面から外した。
「いや、知らない…ただ…」
徐に銃を持ち上げる。
「俺はこういう泣き虫でグズグズした奴が、一番嫌いなんだよな」
銃口を画面の中の渚に向けた。
バァン!!
けたたましい銃声。
モニター表面の液晶が床に飛び散った。
画面が暗転し、モニタールームに闇が訪れる。
「あいつも、殺してやるよ」
闇に支配された部屋の中で、朋也の目が殺気を帯びて鈍く光っていた。
一之瀬ことみが妖しく微笑む。
「愛する二人の再会…とっても、とっても楽しみなの」
◆病院(MIO本部)
001 岡崎朋也 所持品:数点の武器
008 一之瀬ことみ 所持品:多数の武器、くまのぬいぐるみ
◆レストラン跡地(地下壕)
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/勝平細胞による暴走状態 所持品:なし
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ)/存在が消滅しかけ 所持品:店から持ってきた物資
なんだかよく分からないけど、モニターの修理代は経費で落とすよっ!
意味わかんねえよっ!
春原「選ばれし者だったのに!」
ダークサイドに堕ちたか朋也…
いくら探しても公子は見つからない。
仁科の死が差し迫っている今、公子にこだわって時間を浪費している暇は無かった。
探すのを諦めた祐介達3人は、一ノ瀬邸へ全速力で走っていく。
「わっ」
芽衣が転んだ。銃器が大量に入ったリュックのせいで頭からいってしまう。
コンクリートの歩道だったので、非常に痛そうだった。
大人達の全速力は芽衣には早すぎたのかもしれない。
「大丈夫か?」
「いたた・・・だ、大丈夫です!」
芽衣は胸を上下させ、ひゅーひゅーと変な音が喉の奥から聞こえていた。
「お前は戻った方が良い・・・こういうことは大人にまかせろ」
芽衣は不機嫌そうな顔で祐介を見つめた。
「もう、大人とか子供とか関係ないんじゃないでしょうか?私は・・・この町を元に戻したい。あんまり知らない町だけど、私にとって大事な町なんです。だってお兄ちゃんが暮らしてる町なんですから!」
まだ中学も卒業していない芽衣の言葉。
祐介はその言葉を聞いて、力が湧いてくるような気がしたと同時に、自分達の町がほめられていることが、なんだか・・・嬉しかった。
「そうか・・・よし!リュックはここに置いていけ。銃は一丁あれば良い。」
「はい!」
そして、三人は一ノ瀬邸へ着いた。
一ノ瀬邸はリビングも台所も庭も普通の一戸建ての一階である。
その状況は古河家が来たときと、何も変わっていなかった。ただ一点を除いて。
テーブルを囲むように存在する3つの椅子の一つ。
そこにパイプを吸って、煙を吐く、まだ幼さが残る青少年が座っていた。
「誰だ・・・?」
「勇・・・組のものからは鉄砲玉の勇と呼ばれてる・・・今は」
勇は突然テーブルを3人に向かって蹴り飛ばした。
不意をつかれた祐介と美佐枝はテーブルをもろに顔面に受けてしまう。
少し後方にいた芽衣は当たらなかった。が、それは幸運だったのではない。
「番外衆の勇」
ドスを腰に添えると芽衣に向かって突っ込んできた。
芽衣はグロック18Cを構えると、勇に向かって撃ちはなった。
「全然撃ち方がなってねぇな」
勇は鉄砲に全くひるまない。
弾は天井に突き刺さっていた。芽衣は反動に耐えられず、こてっと壁に倒れ込んだのだ。
そこに、勇の感情をもたない鋭い刃が芽衣の肝臓あたりに入った。
刺さった後、勇はずぶずぶと体重をドスにのせていく。
「芽衣!」
祐介は勇に飛びかかっていった。だが、ひらりと避けられ、芽衣の首にドスをつきつける。
「動くな。動くとこいつを殺す」
「あんた、なんて卑怯なの」
「まあな、でもよ。俺みたいに殺す技能を持たないやつはこうするしかないんだよ。もう戻れない・・・姉ちゃんはこの道を行ったら戻れないことを一言も言ってくれなかったけどな」
勇は芽衣のグロック18Cを奪い取ると、片手で構えた。
「当たりにくいが・・・至近距離で撃ちゃあはずさねぇだろ」
その時、壁に寄りかかっていた芽衣がよろよろと立ち上がった。
「まだ動けたのか・・・だけどどうするつもりだ?足の感覚が無くなって痙攣してる。もうそうなったら動けないはずだ」
芽衣は憮然とした表情で大きく手を広げ、勇の前に立ちふさがった。
血がしたたり落ちて、水たまりができていた。
「私が・・・守ら・・な」
「なんだ?」
「陽平お兄ちゃんの町、私が守らなくちゃ!」
芽衣は拳銃を奪おうと、腕にしがみついた。
「な!?」
「美佐枝さん。撃って!」
「馬鹿いってんじゃないわよ!あんたに当たるでしょうが!?」
「いい!」
(なんだ。こいつはなんでこんながむしゃらに自分の命なんて省みないことができるんだ。)
その時、声が聞こえた。
『あなたも昔はこうだったはずなの』
(俺が・・・?)
『あなたの場合はお姉さんだった』
麻薬でほとんど空洞化した脳に、あるはずのない記憶が蘇ってきた。
それは姉ちゃんを助けようと不良のたまり場に入っていった記憶だった。
その時の彼には勇気があった。
(でも、それならなんで俺は・・・こんなことをしているんだ)
だんだん思い出してくる。
(あの不良の二人が楽しそうだった。二人で楽しそうに馬鹿をやって、お互い信頼していたんだ。それが、楽しそうでずっと彼らの不良達と入り浸っているうちに学校を休むようになって、そいつらと姉ちゃんと一緒にずっと楽しく過ごせると思った。
だけど、姉ちゃんが大学に入学するときにはほとんどの仲間はいなくなってしまった。
そう、彼らはただの遊びだったんだ。
だけどそれが悔しくて、ずっとずっとそこにいて、麻薬に手を出して、俺はヤクザになった。あのとき、俺の心が強かったら・・・)
茫洋とする意識の旅が終わると、目の前の芽衣は地面に突っ伏して動かなくなっていた。
「お前!」
祐介はぼおっとした視線を続ける勇から芽衣を引きはがすと、胸に耳を当てた。鼓動が止まっていた。
祐介は制服のボタンをはずすと、胸に手を打ち、人口呼吸を始めた。
「おい!生き返ろよ!なんでこんなに早く死ななければならないんだ!」
「このバカ!なんで・・・なんでよ!」
勇は襟首を掴まれ、揺さぶられる。
襟首は美佐枝の涙で濡れていた。
「お前は大切にされてるんだな・・・」
そういうと、皮膚をつまみ、何かキラリと光るものを取り出した。
それを芽衣の方に投げあげる。
腹部の傷が水に液体窒素を混ぜたように一瞬で凍り付いていく。
それと同時に祐介が心臓マッサージをする手から、鼓動が伝わってきた。
「げほ!ごほ・・・」
芽衣の息がふきかえった。
「あんた、何やったの?」
「ナノマシンだ。超ミクロ技術と量子半導体でつくられた原子レベルのハイテク医療器械。俺は本来これを使って不死身の肉体で戦うことになっていた・・・だけどもうやめだ。」
祐介はみるみる塞がる傷口を見て、これなら仁科を助けることができるかもしれないと思った。
勇は立ち上がった。そして、庭から外へと歩いていく。
「お前どこにいくんだ?」
「さぁ・・・」
勇は茂みの中に去っていった。
麻薬に犯された彼の脳はナノマシンで保たれていた。もうナノマシンが無い彼の体はほとんど動かなくない。ふらふらと雑木林を歩いていくと、ふと大きな木の下に体を傾ける。
「姉ちゃん・・・なんでいなくなったんだよ」
彼は目を閉じると、涙を流して眠っていた。
◆レストラン跡地周辺
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
欠番 未来の勇 所持品:無し
芽衣の銃器はあまりに量が有りすぎたので、リュックか何かに入れていたと判断しました・・・
おいおい!!
意味わかんねえよっっっっ!!!!!!
故・乾が一ノ瀬邸に探しに来ていた「何か」はナノマシンだったってわけだねっ
伏線回収しつつ仁科復活のフラグも立ってGJだよっ!
勇なんてやつ原作に出てたっけ?
さあ?やっちゃったかもね
グランチャーでも出しますか?
>>勇
ゆきねえシナリオのガキではなかったか?
そろそろテストおわる〜(  ̄ー ̄)
(`・ω・´)
試験は終わったものの、続きが思い浮かばない…
てか、まとめサイト無いと書きづらい…
「う゛…」
力なく横たわる仁科を芳野がそっと抱き起こす。
「本当にそいつで治るのかよ」
秋生が胡散臭そうに見守っていた。
芳野一行が一之瀬家から無事帰ってきたのは、つい先刻。
芳野の右手には、一之瀬家から持ち帰ったナノマシンがあった。
「こいつは瀕死の芽衣を助けてくれた代物だ。俺はコイツを信じる」
芳野が仁科の制服の裾を捲くる。
覗く腹部には、毒々しい紫色の皮膚が広がっていた。
「待ってろ、今助ける…」
キラキラ光るナノマシンを患部に近づけた。
ジュッ!
何かが焼けるような音がして、患部から煙が上がる。
「ぐ…うぐ…っ!」
仁科が体を苦しそうに捩る。
全身が熱を発し始めた。
「お、おい…大丈夫なのか!?」
一同が心配そうに見守る中、不意に、仁科ががくりと頭を垂らした。
「仁科さんっ!?」
渚が緊張した声を上げる。
「彼女なら、もう大丈夫ですよ」
穏やかな声がうろたえる皆を制する。
ウェイトレス・仁科だった。
さっきまで不安定だった体は、はっきりと実体を取り戻していた。
「私の体が回復したということは、現代の私の容態も安定期に入ったということでしょう。
皆さん、本当にありがとうございました。何とお礼を言えばいいのか…」
そう言って頭を下げた。
「礼なら芽衣に言ってくれ。あんたのために、町のために、命を懸けて戦ったんだ」
芳野が顎で芽衣を指した。
「芽衣ちゃん、どうもありがとう」
「そんな、私はただ夢中だっただけで…それに、私も仁科さんには命を助けてもらいましたからっ」
芽衣が照れて頬を赤くしていた。
「さて…こうなると、あとは伊吹先生が心配よね」
美佐枝が首を傾げていた。
「すぐ戻ると仰っていたんですが…出てから大分時間が経ちますね」
早苗も眉を顰める。
「ったく、どこ行ったんだか…MIO本部に突入する算段を立てなきゃいけないってのによ」
秋生が舌打ちした。
「そのMIO本部突入の件だが…」
芳野が口を挟んでいた。
「あん?」
「そもそも、何故俺たちはMIO本部を目指していたんだ?」
「何故ってそりゃあ…」
秋生が言葉を探す。
「MIOが悪い奴らだからに決まってるじゃない。あいつらを倒さないと、この戦いは終わりそうにないし」
美佐枝が代わりに答えていた。
「そうだな、だが…何も焦って突入しなくてもいいだろう?」
芳野が腕組みをして言葉を続けた。
「公子さんの話では、病院への侵入を拒む『絵画迷宮』は今日の真夜中にその効力を失うそうだ。
今突入するとなると、敵が待ち受けるだろうわずか一本の抜け道を進まなければならない。
だが、今日の夜以降ならば、好きなルートを辿り、病院へ駒を進めることが出来る。
ならば、突入は夜以降にするのがベターだろう」
「それもそうね…何も危険な橋を渡らなくてもいいのよね」
美佐枝が頷く。
「ふん、今俺もそう言おうとしてたがなっ!よし、じゃあ本部突入は明日未明にするかっ」
秋生の言葉に皆が口々に賛同の声を上げた。
ただ一人を除いて。
「それじゃだめですっ!!」
渚が声を張り上げていた。
「古河さん…?だめって、何が?」
「今日の夜を過ぎたら遅いんです!早く…今すぐ行かなきゃだめなんですっ」
「お、おい…意味が分からないぞ。何故今すぐじゃなきゃだめなんだ?」
芳野が困惑した表情を浮かべる。
「えっ…!そ、それは……何となく…です」
「何となく…?理由もないのに危険地帯に行けっていうのか?」
「いえ、理由はあるんですっ…ええと…っ!」
渚自身も、なぜ、今すぐ行かなければならないのか分からないでいた。
しかし無性に、そう言わずにはいられなかったのだ。
「えっと…!」
必死に記憶をたぐり寄せる。
その時、おぼろげな記憶の中に、小さな少女のシルエットが写った。
顔は見えない。しかし、腕に抱えた星型の彫刻には見覚えがあった。
星…?
いや…
「ヒトデですっ」
渚は叫んでいた。
「ヒトデを持った女の子が、捕まっているんです!その子は私たちの仲間で…早く行かないと殺されてしまうんです!」
必死に皆に訴えかけた。
しかし、一同は首を傾げ、顔を見合わせあっていた。
「古河さん…ヒトデの女の子なんて、あたし知らないわ…」
「私も知りません…」
「みなさん、忘れているだけですっ」
渚が必死に食い下がった。
「全員が一度に、特定の仲間の存在を忘れるなんてことが…あるとは思えないが…
そのヒトデの少女が実在したという証拠はないのか?」
芳野が訝しそうに渚の顔を見た。
「証拠は…ないです…
で、でも…本当なんですっ!信じてくださいっ!
その子は…とても小さくて…可愛くて…いい子だったんですっ
そんな子が、病院で一人助けを待っているんですっ!!」
悲痛な叫びが地下壕に響き渡った。
しかし…
反響が止んだ後に渚に向けられたのは、可哀想なものを見るような、冷たい視線だった。
「なあ、渚さん…疲れているんじゃないか?しばらく休んだ方がいい…」
芳野が渚を労わり声をかけた。
「無理もないわ…突然こんな過酷な環境に放り出されたんだもの…高校生の女の子には限界でしょうよ」
美佐枝も同情の視線を渚に投げかけた。
「え…っ?私、別にどうもしてないですっ!疲れてもいないですっ!信じてくださいっ!」
「いいから、少し休むんだ」
芳野が渚をひょいと担ぎ上げた。
そのまま、隣の仮眠室へと連れて行こうとする。
渚がもがきながら必死に叫ぶ。
「信じてください!本当なんですっ!だ、誰か…っ!」
「ああ、分かった、信じるから、今は休むんだ」
芳野が適当にあしらって部屋を出て行った。
その時―――
「待て」
それまで沈黙を守っていた秋生が口を開いた。
「ん、どうした?」
芳野が渚を抱えたまま戻ってくる。
「お、お父さんっ!私、嘘なんてついてないですっ」
悲痛な声をあげる渚に、秋生がゆっくりと微笑み返す。
「ああ、分かってるよ」
今度は芳野が面食らう番だった。
「あんたまで…正気なのか?
捕らわれた仲間が助けを待っていて…それを俺たち全員が忘れているなんて夢物語を、信じるのか」
「信じる」
寸分の迷いもなく秋生が答える。
「この子の言葉が、もし、嘘だったなら…俺たち全員の命が危険に晒されるんだぞ?」
「渚は嘘なんかつかねぇよ」
娘への信頼に満ちた揺らぐことのない言葉に、芳野が思わずたじろいだ。
「……こんなことは言いたくないが」
言葉を濁す。
「渚さんがMIOの手先で…俺たち全員を陥れようとしている可能性も…」
ガタンッ!!
突如芳野の体が吹っ飛び、机を巻き込んで地に倒れる。
秋生の拳が、芳野の頬を撃っていた。
「秋生さんっ!!」
「てめぇ…!!適当なことぬかしてんじゃねぇぞっ!!」
怒りに満ちた目が芳野を射抜いた。
芳野が静かに切れた唇を拭う。
「…知っているか?この町の高校に、坂上智代という生徒がいた…」
突然、芳野が語りだした。
「彼女は成績も優秀で、全校生徒からの信頼も篤い、生徒会長だったそうだ。
だが、そんな彼女ですらMIOの手に落ち…相楽達を襲う刺客となり…徳田と言う同校の生徒すら殺害したらしい。
つまりは…敵に人の心を支配し、操る力がある以上…むやみに人の言うことを信じるのは得策でないと、そう俺は言っているんだ。
この中の誰かがMIOのスパイである…その可能性はゼロじゃないんだ」
ゆっくりと体を起こした。
「そんなこと問題じゃねぇ…っ!」
秋生が声を張り上げる。
「いいか…敵の本部に、幼い俺たちの仲間が捕らえられてるかも知れねぇんだぞ!!
そいつは、たった一人で…死を待つだけの状況の下で…来るかも分からない助けを待ってるかもしれねぇんだぞ!!
それがどれだけ辛いか…寂しいか…てめぇには分かんねぇのかよっ!?
仲間が助けを待ってる可能性が、たとえ1%でもあるのなら…そいつを見殺しになんてできるかっ!!」
その言葉に、芳野の目が微かに見開かれる。
だが、放つ言葉は変わらなかった。
「それでも、俺には出来ないな。
俺とて…捕らわれた仲間が確かに実在しているというのなら、命を賭けて助けに行くことには何の未練もない。
だが、確証もない不確かな情報のために、チーム全員の命を危険に晒すことは…出来ない。
それが俺の答え…俺の愛だ」
断固たる決意を秘めた目で秋生を睨み返した。
「そうかよ…なら、お前は来なくていい!てめぇら、行くぞっ!!」
一同に声をかけて出発しようとする。
しかし、その声に応えて席を立ったのは数人だった。
「お前ら…!」
美佐枝、芽衣、ウェイトレス仁科は未だ席についたままだった。
「未来の仁科…お前も残るのかよ」
「すいません…私は芽衣さんを置いていくことはできません。土方店長に芽衣さんのことは頼まれていますし…すいません」
そう言って何度も頭を下げた。
「ちっ…結局来るのはうちの家族だけかよ…
もういい…仲間を見殺しにするのが『家族(CLAN)』だって言うんなら、俺たちは…『CLAN』を抜ける!」
秋生が言い捨てて出て行こうとする。
「ま、待って!私も、連れて行ってください!渚さんが行くというのなら、私が行かない理由はありませんっ」
その時、ソファで寝ていた現在の仁科が体を起こした。
「よく言った、仁科。それじゃ、てめぇら…短い付き合いだったなっ!」
階段を上がり、4人は外へ出て行った。
途端、ぐすっと芽衣がしゃくり声を上げる。
「わたし達は…間違っているんですか…?仲間を、見殺しにしているんですか…?」
涙声で訴える。
「いいえ。これはどっちが間違っているって問題じゃないわ。仲間を想う気持ちは同じ…だけど信じる道が違ったのよ。
両方、正しいのよ。それはたぶん秋生さんも分かってるわ」
美佐枝が芽衣の頭を撫ぜる。
「どっちにしろ、公子さんが帰ってきたときにここに残っている人がいないと困るし…それに…」
続く言葉を言いかけて、美佐枝は口を噤んだ。
「それに…何ですか?」
「う、ううん。なんでもないわ」
(それに二組に分かれていれば、もし待ち伏せがいて古河さん一家が殺されても、わたし達が戦えるしね)
そう言いかけた言葉を、美佐枝は心の奥に仕舞い込んだ。
年端も行かぬ女の子に突きつけるには、余りに過酷な言葉だからだ。
「大丈夫よ。すぐにまた皆で笑い会える時が来るわ…きっと」
祈るように、そう、つぶやいた。
◆地下壕
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:『ラブアンドスパナ』含む工具一式
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資
◆町
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ 所持品:不明
なんだかよくわからないけど、GJだよ!
話は数時間前に遡る。
辛くも一之瀬ことみの魔手から逃れ、病院の外へと脱出した春原。
何だかよく分からないけど行くと決心してから既に1時間余りが過ぎようとしていた。
「…うーーーーん」
瓦礫に腰掛け、唸る金髪。
「いやさ、そりゃあ僕だって今すぐ乗り込みたいよ?でもさぁ…」
独り、虚空に言い訳する金髪。
「やっぱ厳しいって!いくら僕が運動神経抜群で頭も良くておっぱい美女にモテモテだからって、あんなバケモノ相手にはできないよっ」
引きつった笑いを浮かべ、病院を見上げる。
「……はぁ、何でつっこまないんだよ、岡崎」
お前、冗談は顔だけにしろよ。
何時も隣に居た少年の、悪戯っぽい声。いくら耳を澄ませても、聞こえることはなかった。
代わりに聞こえてきたのは……。
ぺーっぺっぺっぺ…
「…なんか、凄く嫌な予感がするんですけど」
ぺーっぺっぺっぺ…
音は次第に大きくなり…
べすん!!
「あーっ、もう!」
「どうしたの、お姉ちゃん!?」
「なんか瓦礫轢いたみたい。急いでるってのに!……よし、タイヤに異常はないか」
「……勝平さん、大丈夫でしょうか」
「心配してもしょうがないでしょ。ほら、行くわよ」
「そんな…」
「はぁ…椋、あのバカの気持ちに応えてやる最大の方法…分かる?」
「…逃げて、生き延びること」
「そーゆーこと。ほら、しっかりつかまってなさいよっ」
ぺーっぺっぺっぺ…
遠ざかっていく。
後に残されたのは、顔に見事なタイヤ跡をつけた馬鹿ひとり。
「……って、僕のことは無視っすか!」
顔面から突っ込まれたにも関わらず、存在を認識してもらえないというのもある意味凄い。
服についた埃をはたきながら、立ち上がる。
「……勝、平?」
バイクに乗っていた少女達よりも、彼女達が口にしていた名前の方に意識が向いた。
勝平。柊勝平。小川を殺し、自分が命を賭して葬ったと思っていた存在。
「あの野郎…生きてやがったのか…」
気がついた時には、体は既に杏達が出てきた方向――病院へと向かっていた。
そこで、見てしまった。
一之瀬ことみと対峙する勝平の、その姿を。
聞いてしまった。
魂の奥底から吐き出された、その想いを。
愛する人を守るため、何度倒れ、傷ついたとしても立ち上がる。
人間離れした動きを見せる一之瀬ことみ。それに追い縋り、超越せんと咆哮する勝平。
いつしか、勝平が倒れる度に息をのみ、拳を握り締める自分に気付いた。
(あいつは、小川を殺したんだぞ…!敵なんだ…!)
そう心の中で呟いても、体の震えは止まらなかった。
春原の目に映っていたのは、狂気の笑みをたたえた狂人でも、無慈悲に人を殺す悪魔でもなく――愛するべき人のために全てをかける、男の姿だったから。
戦いは、勝平の“勝利”で終わった。
忌々しげに息を吐いた一之瀬ことみが去り、病院には先程までの静寂が戻ってきていた。
存在を気付かれぬよう身を隠していた茂みの影で、春原はようやく一息ついた。
「……確かめるしかない、よな」
身を起こし、勝平達が去っていった方向へと走り出した。
勝平達は、案外すぐ見つかった。少し行った先、瓦礫の裏から楽しげな声が聞こえてきた。
近づいていくと、長い髪を翻して少女が瓦礫の影から姿を現した。
「これ以上近づいたら、命は…って、陽平じゃない!アンタ、こんなとこで何やってんのよ」
何時もと変わらぬ冷ややかな口調が、今は嬉しかった。
杏に連れられ、瓦礫の裏に移動した。
そこには、泣き笑いの表情を必死に隠そうとする椋と――柊勝平が、いた。
「………」
言葉も無く、見詰め合うふたり。
親友なんて呼べない、だけど他人だなんて思えない、一人の少年の顔が浮かんだ。
(分かってるよ…!こいつがもう、昔のあいつとは違うんだってことくらい…!)
あの戦いを見れば分かる。
「…いいよ、ボクを殺しても」
暫くの間の後、勝平はそう告げた。
「勝平さん!?」
全てを受け入れた瞳で春原を見つめる。
「ちょっと勝平!」
「ふたりとも、手を出さないでほしい。これは…いつか清算しなきゃいけなかったことだから」
懐から黒光りする銃を取り出し、春原に差し出す勝平。
「……くそぉっ!!」
それを振り払い、勝平の顔を殴った。
鈍い音が、拳を伝わる。
「…それだけで、いいの?」
「いいわけあるかよっ!だけど、だけどなぁ…あんなもん見ちまったら…もう、何もできないに決まってるだろっ!!」
「……ほら、立てよ」
先に沈黙を破ったのは、春原だった。
倒れている勝平に手を差し伸べる。
「…………ありがとう」
その手を取る。
「…もう、いいってぶはぁぁぁ!!!」
勝平が見上げる先――春原の頭には、三千世界が見事にめりこんでいた。
「何だかよく分からないけど、妹の彼氏に手ぇ出してタダですむと思ってんのかしらねぇ〜?」
「お姉ちゃん…」
「……ぷっ、はははっ!」
場が笑いに包まれる。
そこはもう、彼らの日常だった。
「…………僕、無茶苦茶真面目だったんですけど」
「ゴメンゴメン。ほら、これあげるからさ。機嫌直してよ」
言うと、勝平は先程一之瀬ことみから奪い取ったバッグを投げてよこす。
「何故だか分からないけど、それはキミのものだと思うんだ」
バッグを開けた途端に飛び出してくる光――コミック力場。
春原の身体に吸い込まれていった。懐かしい感覚。
「それ、ひょっとして陽平の“光”?」
興味深げに近づいてくる杏を見て、春原は思い出した。この力の凄さを。
「ふふふ…藤林杏!!さっきはよくも人の頭をどついてくれたよなぁ…」
凄んでみせる。
「あァ!?」
「ひいっ!!……ごほん、もうそんな脅しは通用しないぞっ!僕の力を見ろっ!はぁぁぁ!!」
Z戦士よろしく、気合を入れる春原。みるみるうちに金髪が逆立ち、金色のオーラを纏った。
「うそっ!?陽平が穏やかな心を持ちながら激しい怒りに目覚めたっ!?」
「食らえっ、藤林杏!これが僕の怒りだあーーーっ!!」
殴りかかる春原。避ける杏。拳が、杏の背後にあった瓦礫を捉えた。
べきっ
「……え?べきっ…?瓦礫ってさ、砕ける時にべきっって音がするの?」
「…陽平、自分の手見てみ」
視線を落とす。
「………ってなんじゃこりゃあああ!!!」
見事に血まみれ。
「ノォォォーーーッ!!」
のたうちまわる。
「………はぁ」
三つのため息が、見事に重なった。
◆廃墟の町
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい、バイク(ガス欠)
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
004 春原陽平 応急処置済み 所持品:無し(上着に癌細胞)『コミック力場』
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』、『バーサーカー・レクイエム』、44マグナム
光・コミック力場(弱)
気合を入れると髪の毛が逆立って金色のオーラを纏うことができる。
身体能力の向上、エネルギー弾の使用なんて期待してはいけません。こけ脅しにはなるかも程度。
93話で力の殆どを無くしたという設定だったのでこんな感じにしてみました。
伏線や因縁の回収の仕方とか、めちゃめちゃGJ!
春原と杏の掛け合いもいいねぇ
722 :
前スレ535:2005/08/02(火) 23:07:28 ID:Aq7tO5re0
ご無沙汰すみませんでした。
先月、2ch嫌いの嫁に私がここに入り浸っていることがバレまして、
即刻アカウント削除と全ログ消去、2ch出入り禁止を命じられたもので・・・
いま嫁の留守中の目を盗んで書いてはいますが・・・たぶん定期的には
来れないさそう。
会社で酒飲まされてちょとフラフラなんで寝ます。
おいおい!
意味わかんねえよっ!
102、103話ときて、段々キャラも集まってきた感じだな。
>>722 大変そうだが、頑張れ!
>>723 今はお前が頼りだ、頑張れ!
>>722>>723ッ!君たちの心意気に、僕は敬意を表するッ!
でも家族が第一なんで、くれぐれも無理はしないで
奥さんにこのスレ…というかこの板見られたらきっついよなぁ…
何だかよく分からないけど、行くよっ!
素朴な疑問なんだけど、光って13個集めたら何が起こるん?
サードインパクト
いまさらながら
>>678に同意
「臨戦→逃走ってパターンが多い」って誰かが言ったけどそのとおりだと思うな
今までトムとジェリーみたいに敵と味方が追っかけあいを続けてきたけど
CLAN陣営でもMIO陣営でもいいから、さすがにそろそろ13個の光を集めきって新展開を起こしてほしいと思う
今ってなんかフリーザ一味とZ戦士がドラゴンボールの渡しあいしてるみたい
秋生組が病院に向かったし、そろそろ最終決戦と考えてもいいんじゃない?
光集めきるのはそれこそ本当に最後に回したほうがいいと俺は思うけど…
てか、そもそも光が発動してないキャラってもう残ってなかったっけ?
早苗
美佐枝
智代もまだだしことみの光もよくわからんね。
アスファルトを駆ける四つの足音。
その主は秋生の率いる一団だった。
「秋生さん、絵画迷宮の抜け道の場所は、把握しているんですか?」
「ああ、ここに地図がある。伊吹公子がマーカーで抜け道の場所を示した地図がな」
そういって地図をヒラヒラと振って見せた
「あ…」
その時、渚が小さく声を漏らした。
「どうした、渚」
「いま…誰かの声が聞こえたんです。このステッキを通じて」
渚がレイジングヒトデをぎゅっと握り締めた。
「渚…その声は、何て仰っていましたか?」
「ええと…」
一瞬ためらい、そして口を開いた。
「早く、おねぇちゃんが危ない…と」
***
「はぁ…はぁ…」
大きく肩で息をする伊吹公子。
かたや、対峙する坂上智代は汗一つかくことなく、涼しげな顔をしている。
「元二帝とあろう者が…嘆かわしいな、私の攻撃を避けるだけで精一杯じゃないか」
「…くっ…!」
「そのゼウクシスの魔筆とやら…使ってもらっても構わないんだぞ?もっとも…」
そう言うが早いが、智代の姿が公子の視界から消えた。
「使う暇を私が与えればの話だが」
次の瞬間には、公子の懐の中に智代の姿があった。
その体が翻る。
智代の銀髪が公子の頬を撫ぜた。
(回し蹴り…!!)
そう気づいたときには、既に公子の体は智代の蹴りを腹に受け、宙を舞っていた。
木に叩きつけられ、ずるずると落下していく。
「…!今の感触は…」
智代が怪訝な顔をする。
足元に、ボトリと円形の盾が落ちた。
その表面にはくっきりと智代の足型が残っている。
「とっさにシールドを張って致命傷を避けたのか。腐っても鯛、と言ったところだな」
ぱんぱんと服についた埃を掃いながら言った。
「ぐ…っ」
公子がゆっくりと身を起こした。
(シールドで防御してもこの威力…!で、でも、彼女の攻撃にはとっさに対応できた…
ついていけないスピードではないわ…)
「今の攻撃に対応できたからといって、勝機を見出したつもりではないよな?」
智代の言葉に、ぎくりと公子が身を固める。
「今の回し蹴りは、フェイクだ。別の目的を遂げるための…な」
そういって握った右手を差し出して見せる。
「……!!ま、まさかっ!?」
慌ててポケットを弄る公子。
しかし、『あるべきモノ』はそこにはなかった。
「何を探している?もしかして、これか…?」
ゆっくりと右手を開く智代。
そこに、燦然と輝く『光』があった。
「……っ!!」
驚きに公子が言葉を失う。
「私の『光』、確かに返して貰ったぞ。
そして同時に、お前の勝機は――そんなものが最初からあったのか分からないが――完全に潰えたわけだ」
返す言葉もなく、うな垂れる公子。
「うん、まぁ…同情するぞ、伊吹先生。せめてお前が…『上級魔法』を使えたならば、幾分マシな戦いは出来ただろうにな」
その言葉に、公子がハッと面を上げる。
「なぜ、そのことを…!」
「なに、一之瀬ことみから聞いただけだ。元々、『ゼウクシスの魔筆』と『レイジングヒトデ』は、二つ合わせて一つの『光』。
どちらか片方だけでは、せいぜい非戦闘魔法や拘束魔法などの、殺傷能力の低い『低級魔法』しか使えない。
魔筆で描いたものにレイジングヒトデで更なる魔力を加えることで初めて、その真の力、『上級魔法』を使えるんだろう?」
智代が言葉を続ける。
「お前はその強力な『上級魔法』の力を買われて二帝の地位にまで登りつめたんだろうが…
愚かだったな。妹を助けるために、自らレイジングヒトデを手放し、『上級魔法』を失うとは」
そう、様々な刺客の攻撃から風子を守るために、公子はレイジングヒトデを風子に託した。
それは同時に、自らが強力な力を失うことを意味していたのだった。
「さて先生。おしゃべりはもうこれくらいでいいだろう…」
智代がゆっくりと公子との距離を詰める。公子は静かに目を閉じた。
(後悔は…していない。ふぅちゃんを助けるにはレイジングヒトデを手放すしかなかったから…
ただ、一つ心残りがあるとすれば…ふぅちゃんを助けられなかったこと…)
「ごめんね、ふぅちゃん…おねぇちゃんの力では、あなたを助けられなかった…」
一筋の涙が頬を伝った。
「こんなおねぇちゃんを、許してね…」
覚悟を決めた、その時だった。
「伊吹先生ですっ!!」
渚の叫ぶ声が聞こえた。
公子の場所から百メートルほど離れた森の入り口に、秋生たち一行の姿があった。
「渚ちゃん、レイジングヒトデを貸してっ!!」
突如現れた幸運の女神に向けて、公子が叫んだ。
「無駄だ。間に合わない」
智代には焦る様子もなかった。じりじりと公子に迫っていく。
「ピッチャー振りかぶって、第一球…」
「ん…?」
智代が入り口から聞こえた声に振り返る。
そこに、レイジングヒトデを握り締めて大きく振りかぶる秋生の姿があった。
「投げたぁーーーーっ!!」
絶叫とともに秋生の手からレイジングヒトデが放たれる。
ぱんっ!!
次の瞬間には、レイジングヒトデは公子の手中にあった。
智代の顔色がわずかに変わる。
「…!!だが、やはり無駄だ!
最初に言っただろう、魔筆を使わせる暇は与えないと!」
智代が地を蹴る。
しかし、公子は微笑んでいた。
「いえ、魔筆を使う必要はもうないんです」
そう言ってレイジングヒトデを掲げる。
と同時に、智代の動きが止まった。
「なに…!?これは一体…」
智代の周囲に、目に見えない壁のようなものが張り巡らされていた。
「足元を見てください。あなたは既に、私の敷いた陣の中にいます」
いつの間にか地面には奇妙な模様が描かれていた。
智代の立つ直径五メートル程の円を中心に、直線や曲線、数字、様々な文字が文字が広がっており、うっすらとした輝きを放っていた。
「お前、いつの間にこんなものを…!!」
「最初からです。あなたの攻撃を避けながらずっと、私はこの魔法陣を描いていたんです」
たじろぐ智代を前に、言葉を続ける。
「これは賭けでした。
いくら上級魔法のための魔法陣を描こうとも、レイジングヒトデが無ければ発動できません。
しかし、あなたに勝つにはこれしか…上級魔法しか無かった…
ですから私は、再びレイジングヒトデを手にするという奇跡に賭けて、魔法陣の準備をしていたんです」
高々とレイジングヒトデを掲げる。
「上級魔法… 『無限銃殺刑』」
公子の言葉とともにポツリ、ポツリ、と光が智代の周囲に現れ始めた。
やがて無数の光が智代を取り囲み、それらはゆっくりと形を変えていく。
数百、数千の銃が宙に葬列を作り、智代を完全に包囲していた。
「伊吹公子…たいしたやつだ…お前は…」
智代が呆然と言葉を漏らした。
「坂上さん…出来ることならあなたを殺めたくはありません。
しかし…あなたは変わってしまった。余りに多くの人を…殺しすぎました。
だから私はあなたを殺すことで…あなたの魂を…救います…!」
悲壮な決意とともに、最期の言葉を発した。
「汝の死を持って、汝の罪を赦す…執行」
言葉が終わると同時に、智代を囲む無数の銃が一声に火を噴いた。
幾重にも銃声が重なり、爆音のように鳴り響く。
降り注ぐ弾丸の雨が、智代のたつ地面を抉った。
「すげぇ…!お前、無敵じゃねぇかよ…」
公子の元へとたどり着いた秋生が感嘆の声をあげる。
「いえ…上級魔法の使用にはほとんどの魔力を持っていかれるので、諸刃の剣でもあります。
発動に制限を要するものも多いですし…例えば今の魔法は陣の中に敵を誘い込まなければ使えません。
しかし、それだけに威力は強烈です。いかに坂上智代といえども、これで…」
公子が思わず言いかけた言葉を飲み込む。
「これは…『桜』…?」
幻想的な光景が目の前に広がっていた。
無数の弾丸が巻き上げた粉塵の中で、桜の花びらがヒラヒラと舞っていたのだ。
「あん?なんでこんな所に桜があんだよ」
「いえ、これは桜じゃありません…!桜色の紙ふぶきです」
公子が一枚の花びらを掴んで言った。
「どうだ、なかなか綺麗だろう」
粉塵の中から響く声に、皆が一斉に身を固くした。
「そんな…馬鹿な…」
見開かれた公子の視線の先、そこに、坂上智代の姿があった。
左手に、桜色の折り紙の束を握っている。
「嘘…!どうやって私の攻撃を…!!」
「なに、私はただ千切っただけだ。この紙をな」
動揺する公子に向けて、ひょいと紙の束を持ち上げてみせる。
「紹介しよう。これが私の光、『ジークフリート』だ。
私はこの折り紙を破くことで、破いた枚数に比例した『力』を瞬間的に得ることが出来る。
今私は十枚の折り紙を千切ることで、お前の弾丸を全て弾き返すだけの力を得た。ただし、『あるもの』を代償にな」
「代償だと…!?」
「そうだ。この折り紙の枚数は、私が天寿を全うし、死ぬまでの年数に対応している。
最初は70枚あったから、10枚破いた今は60枚になったわけだな」
「まさか…!あなたの言う代償と言うのは…!」
「ああ、私は寿命を減らすことで強くなれる。それが私の『ジークフリート』の力だ」
まるで他人事のように淡々と、無感情に、智代が言ってのけた。
「寿命と引き換えに強くなるだと…!てめぇ、化けモンかよ!」
「そうです!それは余りに生命を愚弄しています!命の尊厳に対する…冒涜です!!」
秋生と公子が食って掛かる。
「お前たちは無知なだけだ…人を殺したことなどないんだろう?いいか…こいつを見ろ」
近くに転がっていた番外衆の遺体の下に近づいていき、足で遺体を裏返して見せた。
「こいつのような価値の無い命ですら…死の瞬間にはドラマがある。
万物は、その命が尽きる時こそ美しいんだ。まるで散りゆく桜のようにな…」
そう言って低い声で笑ってみせる。
「こいつ…!狂ってやがる…!」
気味の悪いものを見るような眼差しを向ける秋生を尻目に、智代がゆっくりと頭を上げる。
端正な顔の中で、狂気を秘めた目が爛々と輝いていた。
「さぁ、見せてくれ…お前たちの命が散る際に見せる、『桜』を…!」
◆森
005 伊吹公子 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:とくになし
018 仁科りえ 所持品:不明
017 坂上智代 所持品:『ジークフリート(残り60枚=智代の余命60年)』
【ジークフリート】
智代の光。形状は折り紙(の束)。
一枚破くごとに、一年寿命が減り、生きるはずだった一年間分のエネルギーを瞬間的に使うことが出来る。
折り紙の枚数は常に、ジークフリートを持つ人間の残りの寿命の年数に変化する。
つまり、例えば秋生が智代の寿命を減らそうとしてジークフリートを手にし、破いても、減るのは秋生の寿命である。
おいおい!!
意味わかんねえよっ!
743 :
名無しさんだよもん:2005/08/05(金) 09:09:51 ID:2dF8mMOPO
何だかよく分からないけど、行くよっ!!
>>723 いつのまにか更新されとる・・・
素晴らしく乙!!
>>731 リントホルストの壷も87話で偽物ってことになってるからな
746 :
前スレ535:2005/08/13(土) 17:04:27 ID:FoL19/EK0
>>723 申し訳ございませんなどめっそうもない。
俺が作るよりファッショナブルな造りですし。
消滅しますなどといわず
正式版として是非是非後をお任せしたいと思います。
代わりといっちゃ何ですが僕は秘密裏にコツコツと
なんちゃって紙媒体をやっておりました
ttp://www1.axfc.net/uploader/6/so/No_1626.zip.html (キーワードは clannad です)
ポプルスあたりにこのPDFを持ってけば
明日にでも紙媒体として印刷できるであろうことかな。
本当は今上がっている104話を全部ぶち込みたかったんですが
80話時点で356頁になったんで切りのいいトコでやめますた。
ぶっちゃけ感動した
748 :
名無しさんだよもん:2005/08/16(火) 06:52:20 ID:sNnuqMgw0
ミミ彡  ゚̄ ̄' 〈 ゚̄ ̄ .|ミミ彡 正直、感動した
よってage
お、おいおい!
セッ・・・拙者!拙者!イクでござる!ウッ!
>クラナド戦記・暫定ログ保管庫の人
幻想世界6(
>>219-222、ゆきねぇの話)が抜けてる。
>>751ってクラナド戦記最終話の台詞だよな、確か
なんだかよくわからないけど、拙者拙者詐欺だよ!
お、おいおい!
758 :
名無しさんだよもん:2005/08/24(水) 19:14:31 ID:L3yEd18m0
希望のage!!
759 :
名無しさんだよもん:2005/09/01(木) 22:01:46 ID:uZp+gQ7rO
あげあげ〜
760 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 00:40:37 ID:Zpe4c9OoO
最近誰も来ないな・・・
「はぁ」
ため息とともにその男が現れた。その場の誰もが知っている人影、岡崎朋也だった。
智代の後ろから、朋也が声を掛けた。
「てこずってるな、智代。お前らしくもない」
「うん、侮ると痛い目にあう相手だぞ。朋也、お前も油断するな」
何かに魂を奪われたような、冷たい声を二人は掛け合う。
「と、朋也くん…朋也くん、ですか?」
渚が恐る恐る智也に聞いた。
「そうだ」
「どうしたんですかっ!朋也くん、変です!」
「そうかい」
朋也の手には一丁の拳銃。一瞬の躊躇もなく、渚に向ける。
銃声が数発。
「あぶねえっ!」「あぶないですっ」
秋生と早苗が渚を庇うと、茂みに飛び込む。3人の頭上を弾丸が飛び去る。
「渚っ、今の朋也さんは危険です。何者かに操られてるみたいです」
「だらしない小僧だなおい!気付けにレインボーパンでも食わしてやろうぜ」
「ぐすっ…私のパンは…私のパンは…」
「お母さん、そんなこと言ってる場合じゃないです!」
「そうだ、呑気なことを言ってる場合ではないぞ」
見下ろす智代が立ちはだかる。即死の蹴りの構えをとって。
「待ちなさい…」
智代の背後に伊吹公子がいた。手には一振りの長剣があった。
優美なフォルムの西洋剣。鍔にはヒトデの装飾が施されている。
「あなたの相手はこの私です…」
「剣か…?またどこからともなく面妖な物を出したものだな」
「『レイジングヒトデ』『ゼウクシスの魔筆』の合体形態のひとつ、ヒトデソードです!」
「ふふっ…要するに、時間も空間も自在に操るあなたも、上級魔法とやらで魔力が尽きればそうして腕力に頼るしかないわけだ」
冷ややかな笑みを浮かべる。
公子が飛び出す。長剣の間合いに智代を捕捉する。ヒトデから伸びた刃が風を切る。突く。
ヒトデソードの切っ先が無数の弧を描く。
空中に壮大な絵画を刻むように、軽やかにそして快活に。
だが……。
「素人めっ…魔法の飾りを捨てたあなたなど、所詮その程度の使い手ということだ」
公子の描く弧に一瞬の遅れもなく、智代の腕が円を描く。
足さばきが智代を優美に舞わせ、また手刀が剣の腹を打ち、智代を狙う刃を反らす。
斬ることができない。流れる水を断つ刃などありはしない。
(この子…強すぎる!)
「話にならないっ!!」
鉛よりも重く、金剛石よりも硬く、弾丸よりも速い。
避けられない。
公子の顎に、智代の握りしめた拳がまっすぐに打たれた。
「ごぼっ…………」
公子の視界が暗転する。意識がどこかに吹き飛ばされた。
葬送の花束のように、いつしかそこには桜色の紙ふぶきが舞っていた。
「念のため、“一年分”の拳をくれてやった。いかに伊吹公子とはいえただではすむまい」
智代は足元の公子の手から、ヒトデソードを軽く蹴とばした。
カラカラと軽い音を立てて転がった。
***
一方秋生らは、断続的に続く朋也の銃撃にさらされている。
秋生の『ゾリオン』が赤い光弾を放つ。朋也の拳銃が火を噴く。
繰り返されるその応酬。
均衡を破ったのは秋生だった。
「小僧、そこだぁぁぁっ!!」
朋也のわきの茂みから、『ゾリオン』を構えた秋生が引き金を矢継ぎ早に引いた。
「な、なにーっ!か、鏡だとーっ!?」
「オッサン…あんたの『ゾリオン』は対策済みなんだよ」
光弾の弾痕の空いた制服を広げてみせる。上着の下には、朋也を守るように鏡が仕込まれている。
「さーて…俺の前に出てきたのは間抜けだなクソオヤジ。いくらあんたのスピードが人外だろうと、この距離で外しゃしないよ」
朋也の銃口は、秋生の額を正確に向けられている。
一瞬の躊躇もなく、引き金に力を込めた。
どすっ……
――――――朋也の背後から重みが突き刺さった。――――――
「ごめんなさいです…ともやくん…ともや…くん」
振り返ると、そこに渚がいた。
ヒトデの装飾が施された剣――ヒトデソードを握りしめる彼女が、朋也を刺していた。
「ごめんなさいです…でも…もうやめて…やめて…ください…」
迷いと決意と恐怖と後悔……多すぎる感情が渚の脳裏をめぐる。目から涙があふれ出た。
刺突の恐怖に、渚の全身から力が抜ける。力なくヒトデソードを手放す。精も根も尽き果てていた。
渚はひくひくと嗚咽しながら、両膝を地についた。
ヒトデソードの長い刃は、朋也の右肩から生えている。
こんな傷は致命傷には程遠い。いくらでも戦える。……それなのに。
「ぐああああああああああああああああああああああっ!!!!」
耐えがたい痛みに朋也は絶叫した。
右肩に錐を突き立てられたような、否そんな程度ではない。融けた鉛を注がれたような、そんな程度でもない。
「ぐうううっ!!ぐうふ!!ぐうおおお!!!」
この世で一度も感じた覚えのないような巨大な痛み。それが朋也の右肩に突然訪れたのだ。
(何なんだ…これはよ…!?俺の右腕に何が起こってるんだよ…!?)
「と…ともや…くん…? 痛かったですよね…ごめんなさい…ごめんなさいです…」
渚の声も朋也には聞こえない。右肩の痛み、それ以外になにも感じられない。
だが…朋也の頭の中のある冷静な一部分が、必死に考えをめぐらしていた。
(俺の右腕…なぜだ…ずっと昔から、すでに破壊されていたような気がする…!?
忘れていた…!なぜ俺は忘れていたんだ…?俺の右腕…破壊したのはいったい誰なんだ…!!)
***
「研究…か。いやぁ…悪いけど学問の発展なんてね、私はこれっぽっちも興味がないんでねえ…」
いつもの得体の知れない微笑とともに、リアカーを引いた直幸がひとりごちた。
荒野をしばらく歩く。遠くにはもといた岡崎家が見えた。
直幸は向き直り、ふうと息をついた。
リアカーの荷台を覗く。そこには大量の武器と――――一ノ瀬夫妻の研究成果を記した論文があった。
夫妻が同意していないことは言うまでもない。ひそかに持ち出してきたからだ。
「あの墜落事故から、論文とともに生還したあなた方の手際は見事だった…。
でもね…あなた方はMIOに協力しているわけでは決してない。生かしておけば、必ず災いの種になるだろう…。
早い話が…この『胡蝶』とあなた方の研究成果が手に入れば、もう邪魔でしかないってことだね…」
直幸が右手を柔らかく握りしめる。
すると手の中には、暖かな光があった。
白く澄み切った光の筋が幾本も、指の隙間から漏れている。
直幸はもと来た方向を見つめながら、握った右手を天空にかざした。
「………試させてもらうよ………」
右手をゆっくりと開くと、おごそかに直幸は言った。
クラナディック・カノン
「 幻 想 血 族 砲 」
直幸の手のひらに、まばゆく輝く光の玉が全貌を現した。
暖かな光。雪のように白い。
開いた手から、虫かごから放たれた蝶がはためくように、光はその目指す処へと飛び立ち――――
閃光。
遅れてやってくる衝撃。
ゴウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……………!!!!!
そして、その場のすべてを光が埋め尽くした。
人も、物も、思いも全部、真っ白に洗い流すかのように――――
「…………これが、私に流れる岡崎の血。
歴史という因果の糸を通じて“幻想世界の少女”と結ばれている大いなる力だよ」
すべては一瞬だった。
途方もない光の力が、そこの在るすべてを薙ぎ払ってしまった。
さっきまでかつての我が家があったその場所には、もう巨大なクレーターが残されるばかりだった。
直幸はその様と、自分の右手とを見比べた。そして満足げにつぶやいた。
「はっはっはっ…それにしても予想以上の威力だねえ。
やはり朋也くんの“右腕”、この私によくなじむ。あの日、彼から奪った“右腕”の力――
MIOのために存分に役立てさせてもらうよ」
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃
005 伊吹公子/気絶 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
012 古河秋生 所持品:『光弾銃ゾリオン』、タバコ、ライター
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:とくになし
018 仁科りえ 所持品:不明
017 坂上智代 所持品:『ジークフリート(残り59枚=智代の余命59年)』
◆荒野
欠番 岡崎直幸 所持品:『胡蝶』、『リントホルストの壺』(偽)、大量の武器を積んだリアカー
(一ノ瀬鴻太郎、一ノ瀬水恵、宮沢和人、スメルライクティーンスピリッツ 再起不能)
おいおい!
小物に成り下がりつつあった幸村だし抜いて直幸ラスボス化か。悪くない。
一ヶ月ぶりにキタ――(゚∀゚)――!!!!
769 :
'ヽ/ヽ:2005/09/12(月) 15:22:50 ID:hQ6cw2UP0
お、おいおいっ!
意味分かんねえよ!
河南子タンとともタンも参戦きぼんぬ
唐突に訪れた千載一遇の好機。
その喜びを表情に出さぬように噛み締めながら、私はゆっくりと地下壕の中を見渡した。
テーブルの向い側に座している芳野と私以外に人影はない。
『他の二人』は隣の仮眠室で休んでいるからだ。
秋生一行と別れた後、私達は伊吹公子が戻ってくるまで交代で休むことを決めたのだった。
思えば随分長くこの時が来るのを待ち望んでいたものだ。
今までは『良い私』を演じることで、そして勝ち取った信用を利用し長いものに巻かれることで、身の安全を確保してきた。
しかし、そもそもこの状況下で他人など信用できるはずがない。
仮眠を取っている間に、仲間と信用していた者の手によって寝首を掻かれるかもしれないのだ。
―――そう、これから私がしようとしている様に。
私以外の人間には、私の安全のために消えてもらうしかない。
その計画の足がかりが、この地下壕内の人間の抹殺なのだ。
秋生と芳野が喧嘩別れしたことは予想外だったが、お陰で計画の実行は容易になった。
隣で寝ている女二人は問題なく始末できる。
だがその前に目の前の芳野を殺らねばならない。
幸いこいつの『光』は戦闘タイプではないから、隙を突けば容易に殺せるだろう。
例え芳野と戦闘になっても私の勝ちは揺るがない。
芳野には私を殺せない理由がある。
それを今までの経験から確信していた。
ゴクリ、と喉が鳴る。
掌にはじわりと汗が滲んでいた。
「どうした、疲れてるのか?顔色が悪いぞ」
不意に芳野に声をかけられ、心臓が竦みあがった。
それほど私は緊張していたのだろうか。
「何ならお前も休んでくるといい。見張りは一人いれば十分だ」
大丈夫だと答えると、芳野はそれ以上追求してこなかった。
心の中でホッと胸を撫で下ろす。
危ないところだったが、この一件は結果的に、私の心を落ち着かせる作用をもたらした。
芳野は私を信用している。
殺れる。間違いなく。
そう自分に言い聞かせた。
芳野を殺せば奴の『光』が手に入るんだ。
そうすれば私の生存確率は更に上がる。
殺るしかないんだ。
私のより確実な生のために――――
ゴウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……………!!!!!
突如沸き起こった低い地鳴り音。
同時に、部屋全体がカタカタと震えた。
「何だ、地震か!?いや、だが今の感覚は前にも…!」
芳野が立ち上がり地下壕の入り口を見上げる。
そう、規模は小さいが、今の振動には覚えがあった。
世界を荒野に変えた大破壊。
それに酷似していたのだ。
だが、今の私にとってはそんなことより重要な事実が目の前にあった。
芳 野 が 背 中 を 向 け て い る
懐の銃を握り締め、席を立つ。
静かに照準を芳野の背中に定めた。
その時―――
「どういうつもりだ… 仁 科 」
芳野が振り返ることなく私に呼びかけた。
ギョッと身が強張り、思わず引き金から指が離れた。
「よ、良く気づきましたね。」
銃を構えたまま、上ずった声で言い返す。
「しかし…古河渚さえMIOのスパイもしれないと疑ったあなたのこと。最初から私も疑っていたと言うことですか」
「その言葉を訂正しておくなら…そうだな、俺は渚さんの人間性については信頼していた。
疑ったのは、彼女がMIOに操られている可能性についてだ。
ただ、お前に関しては最初からある疑念を抱いていた」
「疑念…?」
「そうだ。
古河パンの主人から聞いたことだがな…現代の仁科は本来友達さえ手にかける冷徹な人間だったそうじゃないか。
しかし、友を助けるためなら自らの命も厭わない渚さんの精神に触れ改心したと…
ところが妙だな…未来のお前は最初から善人だった。渚さんに命を救われたわけでもないのに、な。
だから俺は一つの疑念を抱くことが出来た。微かな疑念…外れてくれればそれに越したことは無かったんだが…
『未来の仁科は善人を演じているだけなのではないか』と言う疑念をな。残念ながら当たりのようだ」
芳野が冷静に私の問いに答える。
「しかし幾ら気づいていようとも、結局はあなたの負けです。
あなたには私を殺せない理由がある」
「ああ、確かに。
現代の仁科が死ねば、未来から来たお前の存在も消える。
その逆――つまり未来の仁科が死んだ場合に現代の仁科が死ぬかどうかは定かではない…が、その可能性は否定できない。
お前を殺せば現代の仁科が死ぬ可能性が僅かでもある以上…俺はお前を殺せない。
現代の仁科に罪はないからな…」
またしても落ち着き払った声で回答する芳野。
その態度が私を苛立たせた。
私は芳野の生死を握っている。
芳野は泣き喚いて助けを請うべきなのだ。
「…もう…あなたとのおしゃべりはお仕舞いにしましょう。
後はあなたを殺すだけです!」
芳野への死の宣告。
それは芳野の顔に絶望の表情をもたらす筈だった。
しかし、ゆっくりと振り向いた芳野の端正な顔には、焦りの表情一つ伺うことが出来なかった。
「仁科、今ならまだ遅くない。俺たちは誰一人、お前を裏切ったりしない。
人間は一人では生きていけないんだ。愛なしでは生きていけないんだよ」
静かな瞳が私を見据えていた。
しかし、ようやく私は理解した。
やはりこいつはやせ我慢をしていただけなのだ。
結局はこうして私に命乞いをするしかない。さも正義を語るかのように。
今はそんな芳野が滑稽にしか思えなかった。
「あなたにとっては残念ですが、私は一人で生きていけます。
ただ、生き残る過程で、何人かを利用することはあるかもしれませんが…
例えば、古河秋生の運動能力は利用出来ます。『現代の私の命』、ひいては『未来の私の存在』を守る良い殻になりますし。
もう少し泳がせてMIOと潰しあって貰った方が都合が良さそうですね…
人格の方も、実在するか分からない仲間を助けるために命を賭けるようなお人良しですしね。
しかし、結局は、その決断は正しかったわけですが…」
その時、芳野の表情に微かな動揺の色が見て取れた。
「なに…?誰の決断が正しかったって…?」
「捕らわれの仲間を助けに行った古河秋生の決断が、ですよ。
ヒトデの少女は実在しますからね」
「馬鹿な…なぜお前がそんなことを知っている!?」
明らかに芳野が狼狽する。
問いに答える義理はないが、芳野の動揺が少しだけ私を饒舌にしたようだった。
「冥土の土産に教えましょう。
何故あなたたちが突然仲間のことを忘れたかは分かりませんが…
恐らく、地下壕から出てMIO本部へ向った時に、何らかの攻撃を受け、伊吹風子に関する記憶を失ってしまった。
しかし私はあなた達に同行していなかった。ゆえに私だけは記憶を失うことがなかったんです。
現代の私も地下壕に残っていましたが、彼女はずっと気絶していたので一度も伊吹風子と対面していません。
だからヒトデの少女が伊吹風子とは気づけなかったんです。
私は伊吹風子のことをあなたたちに教えることも出来ましたが、これは利用できると思い、あえてそうしなかったんです。
あなたと古河秋生が喧嘩別れしてくれたのは予想外でしたが…お陰で動きやすくなりました」
私の言葉に芳野が呆然とした表情で微かに口を動かす。
「伊吹…風子…
お、思い出した…何故俺は忘れていたんだ…愛する人の妹さえ…」
芳野の目から一筋の涙が流れた。
「どうやら伊吹風子という名前を知ることが、記憶復活の鍵になったようですね…
しかし、今更もう遅いんです。自ら、自分の死を招いたことを悔いても無駄です」
とどめの言葉を投げかける。
「違う…俺は自分の命が惜しくて泣いているんじゃない…
古河さん達を、渚さんを傷つけてしまったこと…仲間を信じられなかった自分の愚かさを悔いているんだっ!」
肩を震わせてそう叫んでいた。
「いえ、仲間なんて信じなくて正解なんですよ。こうして私に殺されるんですから」
私はそう言い放つと静かに銃のトリガーを引いた。
銃声と共に芳野の作業着の左胸に穴が開く。
ゆっくりと芳野の体が地面に倒れこんでいった。
「さて、光をいただきますね」
屍にそう声をかける。
芳野の持つ工具入れのジッパーを開けると、その中にうっすら光を放つスパナがあった。
スパナを手にした、その時だった。
「あんた、何してんのっ!!」
鋭い声に思わず顔を上げる。
銃を構えた美佐枝と芽衣が部屋の入り口に立っていた。
どうやら銃声を聞きつけて飛び出してきたらしい。
戦闘でこの二人に負ける気はしなかったが、『光』が手に入った今、危険を冒して二人を殺す必要は無かった。
私は素早く出口への階段を駆け上がった。
「待ちなさいっ!!」
「芳野さんっ、大丈夫ですかっ!?」
二人の叫び声を背に受けながら、私は地下壕を後にした。
***
「芳野ぉ…何で死んじゃうのよ…」
「嘘…芳野さん…」
仁科が去った後の地下壕では、横たわる芳野の体に寄り添って二人が泣きじゃくっていた。
「相楽…お前まで泣いてどうする?
俺が死んだら、今芽衣を守れるのはお前だけなんだ。
しっかりしないか」
「そんなこと言ったって、あんたが死ぬから悪いんじゃないっ!」
芳野の言葉に美佐枝が涙声で言い返した。
「…え?」
美佐枝が慌てて身を起こす。
芳野が目を開いて二人を眺めていた。
「芳野さん、生きていたんですねっ!」
芽衣が歓声をあげる。
「ああ。こんなこともあろうかと地下壕で見つけた防弾チョッキを着込んでいたんだ。
もっとも、仁科が頭を狙っていたら殺されていたから、これは賭けだったけどな」
芳野がゆっくり体を起こした。
「ばかっ!生きていたならとっとと起き上がりなさいよっ」
美佐枝が涙を拭いながら罵声を飛ばす。
しかし、芳野は黙って地下壕の出口を見据えていた。
「さて、もたもたしてはいられない。行くぞ、相楽、芽衣」
「ええ、未来の仁科りえをやっつけて『光』を取り戻すのねっ!」
美佐枝が俄然はりきり始めた。
「違う。そんなことよりもっと優先すべきことがあるだろう」
芳野は『光』を奪われたことを悔いてはいなかった。
それと引き換えに大切なものを手に入れたからだ。
掛け替えの無い、愛する人の記憶を―――
「伊吹風子を助けに、だ」
◆地下壕
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:工具一式、防弾チョッキ
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
◆町
欠番 ウェイトレス(=未来の仁科りえ) 所持品:店から持ってきた物資、『ラブアンドスパナ』
GJだよっ!
780 :
名無しさんだよもん:2005/09/22(木) 11:56:37 ID:NsL5nCX70
なんか美佐枝さんと芳野のコンビが凄く好きな俺ガイル
781 :
名無しさんだよもん:2005/09/22(木) 12:50:37 ID:hCdRBy2o0
(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ
お、おいおい!
意味・・・わかんねぇ・・・よ!
実は生きてたって話が多すぎないか?
クラナド戦記の最大の課題がそこにあると思う
参加人数が少ないから必然的にリアルよりドラマを優先する傾向にある…しかしやり過ぎは萎える…このさじ加減が難しい
同じ話の中でならいいと思うが、他の人に移った後の生き返りがどうも気になる
そろそろ殺してもいいように思う
一応メインキャラは一通り生存してるし、なんとか全員生還に持って行きたいって気持ちもあるな。
何だかよく分からないけど行くよ。
/ ̄ ̄ ̄ ̄\,
/_____ ヽ.
| ─ 、 ─ 、 ヽ | |
| ・|・ |─ |___/ …………
|` - c`─ ′ 6 l
. ヽ (____ ,-′
ヽ ___ /ヽ
/ |/\/ l ^ヽ
| | | |
■━⊂( ・∀・) 彡
ガッ☆`Д´)ノ
あれあれ?10月入ってレスがたった2て
793 :
名無しさんだよもん:2005/10/22(土) 20:55:47 ID:uEq7awCc0
(´・ω・`)このスレサミシス
「ぐああああああああああああああああああああああっ!!!!」
肩を走る痛みは、治まるどころか勢いを増すばかりだった。
まるで俺の心の臓に楔を打ちつけられたかのような激痛。
失われた俺の記憶…既に破壊されていた右肩…それらに関係しているのか?
「公子!」
古河渚の父親の声だろうか。
朦朧とする意識の中に鋭く響いていた。
目を向けると、倒れ伏した伊吹公子。その傍らに立つ智代の姿が見えた。
「公子さん…!大変です、すぐに手当てを…!」
古河の母親らしき女性が立ち上がる。しかし、その動きを制する手があった。
「秋生さん…!?」
「忘れたのかよ、早苗。俺たちは大破壊の直後に決めたはずだろうが。
仲間を守るのはお前の役目。敵と戦うのは、俺の役目だ」
腕まくりをして智代に向って歩みだす。
「何があってもそこを動くなよ。早苗、渚…仁科、お前もだ」
最後に、銃を掲げた女生徒に向って釘をさした。
「な、何故ですか!?私は戦えます!」
「てめぇは邪魔だ。あいつは、『違』うんだよ。あの坂上智代って女はな…」
振り向きもせずにそう言い放つ。
「お前…もしかして、古河秋生か?」
智代が渚の父親に声をかけた。
「あん?だったら何だ?」
「なに、古河秋生には気をつけろとことみに言われていたからな。そいつが恐らく最大の敵だともな…」
智代がスカートのポケットから桜色の折り紙を取り出す。
「念のためだ。三枚ほど…使っておくか」
言いながら数枚の折り紙を手の中で千切っていく。
「馬鹿野郎!それを使っちまえばてめぇの寿命が…!」
秋生が叫んだ。その刹那、智代の姿が消えた。
次の瞬間には舞い散る花吹雪と共に秋生の背後に現れる。
「やれやれ…敵の心配をしているようでは、お前の高も知れたものだな…」
言葉と共に高速の回し蹴りを放つ。
ガッ!
しかし、秋生の頭のわずか手前で、その蹴りはゾリオンの銃身に阻まれていた。
「…!この蹴りを見切るとは…やるじゃないか…!」
智代がにやりと笑う。
「ああ見えてるぜ。てめぇの蹴りも、パンツもな」
秋生の言葉で智代が慌てて足を戻す。
「殺すぞ…お前はっ!」
怒号と共に再び秋生に飛び掛って行った。
俺の目に追えたのはそこまでだった。
その先は朦朧とした俺の視界では捕捉できない程、速く、そして熾烈な技の応酬だった。
俺はあんな化け物と戦っていたのか?
古河秋生…別物だ…俺と戦っていた時とは…
我に返った途端に、再び肩の傷が激しく疼いてくる。
「ぐうっ…!ぐああああっ!!」
俺は再び悲鳴を上げた。
「渚、ヒトデソードを朋也さんの肩から抜いてください」
その時、古河母の声がした。
「は…はいっ」
その言葉で、呆然としていた渚が我に返る。
俺の肩からゆっくりと剣が抜けていった。
だが、肩に走る激痛は依然消えることはない。俺は変わらず悲鳴を上げ続けた。
「それではヒトデソードの合体を解除して、レイジングヒトデで傷の手当をしてあげてください。
一度扱ったことのある渚なら出来ますね?」
「はいっ」
落ち着き払った女性の声に再び渚が応える。
やがて、俺の傷口を温かな光が包んだ。
徐々に、痛みが消えていく。
「お前ら…馬鹿だろ」
俺は思わず口に出していた。
「はい?」
母親がきょとんとした顔で俺を見る。
その目は敵を見る目ではなかった。旧知の仲間を案ずる瞳。
俺にはそれが理解できなかった。
「俺の怪我を治して同情を誘うつもりか知らないけどさ…。甘いんだよ。絶対後悔することになるぜ」
辛辣な言葉を投げかける。
俺の治療に没頭している渚の代わりに母親が口を開いた。
「後悔…ですか?」
「怪我さえ治れば、またお前たちに銃を向けるからな、俺は」
「どうしてそれが後悔することになるんでしょうか?」
生真面目な顔で、そう聞き返していた。
「は?」
「私も渚も、苦しんでいる朋也さんを見ていられないから、こうして傷を治しているんです。
私たちがしたいと思ったことをしたのなら、その結果どんな事態が引き起こされようとも…
『後悔』、するはずがありません」
曇りのない瞳。
一瞬、圧倒される自分がいた。
こいつは自分の死さえ覚悟して、俺の傷を治しているのだろうか。
(いや…)
そこで思い直す。
そんなはずはない。そんな人間いるはずがない。
こいつは馬鹿なだけだ。無知なだけだ。
傷さえ治れば…俺が再び銃を向ければ…その時、『気づく』はずだ。
だから俺はただそのときを待てばいい。会話すればペースを崩されるだけだ。
そう考えて俺は口を噤んだ。
「あっ!」
秋生たちの戦いを追っていた仁科が声を上げていた。
俺を含め、皆が振り向く。
秋生が智代の背後を取っていた。
眩い光を放つゾリオンの銃口を智代の背中に向ける。
勝敗は決した。
…かに思われた。
秋生の指が引き金に触れた、その時だった。
あたり一面を桜の花吹雪が覆う。
「なんじゃこりゃあっ!?」
秋生が驚くのも無理は無い。
その紙吹雪の量は尋常ではなかった。
その中にいる者の視界を覆う程に。
「くそっ…どこに行きやがった…!?」
智代を見失い、途方に暮れる秋生。
しかし、吹雪の外にいる俺たちには智代の姿が見えていた。
この森の中、秋生の頭上にまで張り巡らされた木々の枝。その上に。
「お父さん、上ですっ!」
渚が叫ぶ。
智代は渾身のかかと落としを既に振り下ろしていた。
咄嗟にゾリオンを頭上に掲げ、盾にする。秋生のその反応速度は超人的だった。
しかし、考えれば分かる。
視界を覆うほどの紙吹雪。それは同時に、多量の『ジークフリート』が消費されたことを意味する。
この一撃のために。
受け止められるはずはなかった。
バキッ!!
鈍い音と共に、ゾリオンが砕けた。
そして、智代の蹴りが秋生の頭上に降り注ぐ。もう秋生を守るものは何も無い。
それは勝負の幕が降ろされた瞬間でもあった。
ゴッ
ぐらりと秋生の体が傾く。
そのまま、音も無く地面に倒れた。
「きゃああああああっ!!!」
仁科が絶叫する。渚と母親は言葉も無く立ち尽くすだけだった。
「まったく、馬鹿な男だった」
智代がスカートの埃を払いながら呟いていた。
「戦っている間ずっと、殺気が感じられなかった。まるで私を殺すまいと力を抑えているかのようにな。
正義のヒーロー気取りか…くだらない…」
倒れたままの秋生に言葉を吐き捨てる。
「お前たちは…大概、現実を見ていない。
『自分だけは』『私だけは』きっと助かるはず。この状況下においても無意識に信じ込んでいる。
自分にとって、自分自身は物語の主人公だからだ。だから何事においても『死』への覚悟が足りない。
自分は死ぬ、そう判っていたのなら、ヒーローを気取っている暇なんてないんだ!
何かを守るためには、形振り構わず、どんな手段を使おうとも、戦い抜かなければいけないんだ!
それをこの男は、『死』への覚悟も決まらないまま私に挑み、陳腐なヒーローごっこの末に屍を晒した。
まったく、くだらない『死』だっ!」
智代が激昂する。
「くだらなくなんてありませんっ」
その時、渚の母親が叫んでいた。
きっと口を結び、智代に向き直る。
「なに…?」
智代がギロリと睨みつける。
「秋生さんは、最後まで、自分のルールを、正義を、貫いたんです。とても立派でしたっ」
「何が立派なものか…じゃあ、尋ねようじゃないか。
その正義とやらを振りかざして、結局何が変わった?何が残ったんと言うんだ?」
嘲笑い、冷酷な言葉を突きつける。
「それは…人の心です。
懸命に正義を貫いたのなら、例え死んでしまっても、その遺志は人の心に残ります。
その真摯な姿勢は、きっと…人の心を、変えてくれます。」
迷いの無い口調で、それだけを言い切った。
その言葉に、俺はぎくりと身を強張らせた。
先刻秋生の死を目撃してから、自分の中に違和感とも言うべき奇妙な感覚が生じていたからだ。
まるで自分が自分でないかのような感覚。
しかし、それは…心地よかった。
もしかしたら…もともと…今の俺は…『俺』じゃあないのかもしれない。
そう気づいたとき、体の中に温かい何かが流れ込んできた。
そして俺は、思い出していた。
自分の幼い日の光景を。
小さい頃は、ヒーローになりたかった。なれると信じていた。将来は希望に満ちていた。
しかし、時が経つにつれて、俺は色々なことを知ってしまった。
自分の能力には限界があるということ。悪は勝つということ。
だから自分は…いや、人間、誰もが…
ヒーローにはなれないということ。
ああ…そんな、抗えない流れの中で…
ずっと、少年でいられたオッサン。ずっと、少女でいられた早苗さん。
この人たちは…何て、強いんだろう。何て…勇敢なんだろう…
「お父さんっ!!」
渚が叫び、駆け出していく。俺はその肩を掴んだ。
「離してくださいっ!お父さんが…お父さんが…っ!」
必死で俺の手を振り払おうとする。
しかし、俺の顔を見て暴れるのを止めた。
「朋也くん…何で泣いて…?」
俺は黙って智代に近づいていった。
うつ伏せに倒れたままのオッサン。その傍らに、ゾリオンがあった。
俺はそれを拾い上げ、銃口を智代に向けた。
「朋也…まさかとは思うが…今のヒーローごっこを真に受けたんじゃないだろうな…
それとも、気でも違ったのか?そんな壊れた銃でどうすると言うんだ?」
智代が冷笑する。その言葉はもっともだった。
ゾリオンのいたる所にはヒビが入り、銃身は中ほどで折れ、トリガーすら残っていなかった。
それでも、俺はそうせずにはいられなかった。
血の滲んだグリップ…このゾリオンは…オッサンが懸命に戦った証だったから。
そして
ゾリオンは俺に応えた。
一際眩い光を放つ。
「なんだ…?何が起こっていると言うんだ?」
智代がうろたえる。
そして光が止んだ、そこには…
砕かれる以前の、傷一つ無いゾリオンが在った。
『智代ちゃん、お仕事に行ってもらう前に、二つ、注意しておきたいことがあるの』
『一つは古河秋生。この人が「わるもの」の中で一番手ごわいと思うから…』
『それで、あと一つはね…』
『岡崎の血』
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ 所持品:不明
017 坂上智代 所持品:『ジークフリート(残り35枚=智代の余命35年)』
012 古河秋生 生死不明
久々にキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
お、おいおい!
意味分かんねぇよ!
朋也の能力が俺の予想と同じなのが少し嬉しい
とりあえず、GJ!
>>798の智代と
>>799の朋也の考え方を対比すると
キャラクター性の違いが見えて面白いね。とても「らしい」なあと思った。
秋生の死(?)も活きているし、グッと来たよ。
805 :
'ヽ/ヽ:2005/11/06(日) 15:27:40 ID:ryVHp9V40
お、おいおい!!
意味わかんないですっ
何だかよくわからないけど次のSS早く書けよっ!
state
月1不定期連載
涼元並の遅筆じゃねーかw
(`Д´)ノ
ハカロワスレよりも飽きるの早いな!!
813 :
'ヽ/ヽ:2005/11/20(日) 21:31:10 ID:uQtY34PW0
だが確実に進んでいる
俺暇なときに書いてみるかな…
書き手の一人です
自分は智代アフターをやる時間的余裕もなければ、話の風呂敷を広げる余裕も無いので、
智代アフターには関知せずにせずに書き進めて行きたいと思ってます。
ただ、他の書き手さんで、是非智代アフターを入れて書きたいって方が入れば、
それを考慮して書き進めたいんですけど、どうでしょうか
読者の指示を仰ぐようじゃ駄目だろ
今からアフター入れたらゴチャゴチャしそうだな
いちいち意見なんて仰がなくていいから、とっとと新作投下汁!
おいおい!
・・・・なんだっけ?
あ、思い出した。
わけわかんねえよ!!
ゆきねぇin幻想世界編マダ-?
最終兵器志乃さんマダ-?
意味わかんねえよ、だ
続きキボンヌ
やっぱハカロワはなんだかんだであれだけ続いたんだから凄かったよな
何故だろう。
ゾリオンのグリップは俺の手に良く馴染んだ。
まるでずっと昔から俺の持ち物であったかのように。
現に俺は、誰に聞くことなくゾリオンの使用法・能力を把握していた。
『持ち主の受けた精神的苦痛・身体的苦痛を相手に叩きつける』
それがゾリオンの能力。
そしてオッサンを目前で倒された俺の『苦痛』を具現化するかのように、ゾリオンは荒々しい光を放っていた。
「ゾリオンは確かに破壊したはずだ…これが『岡崎の血』の力というわけか…?面白い…!」
不適に笑う智代に銃を突きつける。
「オッサンの仇だっ!」
グリップを握りなおし、俺は智代を正面から睨み付けた。
「朋也くんっ!」
渚の声で我に返る。
いつの間にか背後に迫っていた渚が俺の手を押さえていた。
「そんな力で撃ったら、坂上さん、死んでしまいますっ」
「え…?」
思わず拍子抜けしてしまう。
「でも渚、こいつはオッサンをっ!」
「何か…何か、理由があるはずですっ!」
俺の腕を掴む渚の手に、きゅっと力が篭った。
「坂上さんは、本当は良い人です。こんな私にも優しくしてくれたんです。
生徒会長さんで、とっても忙しいのに、嫌な顔一つせず私の相手をしてくれた人ですっ」
「渚…」
「お前も頑張れって、励ましてくれた立派な方ですっ。
その優しい言葉に…どれだけ…背中を押してもらったか…っ」
一気に捲くし立てたせいか、そこでゴホゴホと咳き込んでしまった。
「私は、ずっと…坂上さんみたいになりたいと……!」
見ると、渚の足はガクガクと震えていた。
俺の治療に力を使い果たし、その上、目の前でオッサンが倒れるところを目撃したのだ。
精神的にも、肉体的にも、疲弊しきっているのだろう。
それでも渚は、今自分に出来ることをやり遂げようと必死で…
「だから、今度は…私が坂上さんを助けます…!」
肩を震わせ、そう言った。
「……」
そうか…
智代は、そういう奴だったよな…
間違ってもこんなことをする奴じゃあない。
何だか、あいつと笑いあっていた日々が余りにも遠くへ行ってしまったような気がして…
そんな簡単なことすら、俺は忘れていたんだ…
「ちょっと…持っててくれ」
俺はそう言って渚にゾリオンを預けた。
そして…
ぱんっ!
両の掌で思い切り自分の頬を叩いた。
頬に篭る鈍い痛みに、目の覚める思いがした。
「朋也くん…?」
「ありがとう、渚…俺は、大事なものを失うところだった…」
ゾリオンをズボンのベルトに固定する。
「智代は俺が説得する。
だから渚は、公子さんや…オッサンを看てやってくれ。もしかしたら…」
(まだ生きてるかも…)
そう続けようとして、口を噤んだ。
(それじゃオッサンが死んだと認めてるみたいじゃないか…縁起でもない…っ)
頭を振って不吉な考えを振り払う。
「私も坂上さんを助けたいです」
渚が涙で潤んだ瞳で俺を見ていた。
「いや、お前ふらふらだからさ…それに…」
責任を感じていた。
俺さえ記憶を失っていなければ、オッサンがやられることはなかったんじゃないかと。
だから…この一件は、俺が何とかしなきゃいけないんだ。
「渚、朋也さんを困らせてはいけませんよ」
そんな俺の心中を察したのだろう。早苗さんが助け舟を入れてくれた。
「すいません…私、また足を引っ張ってしまいました…」
渚は、泣いていた。
「お願いします…坂上さんを、助けてあげてくださいっ…お願いしますっ」
ぼろぼろと、零れる涙を拭おうともせずに、そう言って頭を下げていた。
親の仇の境遇を想い、涙を流せる人間が、いったいどれほどいるのだろうか。
そっと、その涙を拭う。
涙から、渚の想いが伝わってくる気がした。
「ああ、必ず助ける。智代は仲間だからな」
俺はそういい残すと、智代に向き直った。
智代は、腕組みをして退屈そうに俺を待っていた。
「聞こえたぞ…私を助けるとか何とか…戯言がな…」
腕組みを解いて俺に近づいてくる。
「まだ下らない仲間意識を私に求めているとはな…
もう一人くらい殺してやらないと夢から覚めないか…?」
残酷な笑みを浮かべてそう言ってみせる。
それを見て確信した。
こいつは、『智代』じゃない。少なくとも『智代の意志』じゃない。
「だって、楽しかったからな…」
思わず、口に出していた。
「なに…?」
「世界がこんなになって、今俺が思い出すのは…
くだらない受験勉強や、上辺だけの人付き合いをしていた光景じゃないんだ。
そっちの方が大切なことのように教わっていたんだけどな、あの頃は…
でも、今、失われてみて初めて…分かる。
俺にとって本当に大切だったのは、お前らと過ごした時間だった…
進学も諦めて…好きだったバスケも辞めて…何で生きてるのか分からないような日々だったけど…
そんな、灰色の生活だったけどさ…お前らが、色を与えてくれたんだよ…
一緒になって春原をからかって…笑い合って…
他の奴らからみたら、つまんないことかもしれないけどさ…それが全てだったんだよな…。
楽しかったんだよ、本当に…!
それを取り戻すためなら…見るさ、夢だって…!」
大きく息を吐き、正面から智代を見据える。
「命を賭けて夢を見るさ…!」
伝わっただろうか、俺の気持ちは。
今、俺を嘲笑っている目の前の智代にではなく…
俺達と笑い合っていた、あの頃の智代に。
「長々と語らせておいて悪いんだがな…
無駄なんだ、そんなことをしても。その楽しかった学校生活の記憶とやらが…
無いんだからな、私には…!」
「え…?」
「なぜか知らないが…昔の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
なに、私は満足しているんだ。とても良い気分だぞ…背負っていた荷を降ろしたようにな…」
それを聞いて、頭の奥に痺れたような感覚が走る。
昔の記憶が無いって…?それって…さっきまでの俺と同じじゃないか…
「そうか、お前も記憶を…それでか…」
歯車がカチリと噛み合うように、再び思考が動き出す。
同時に、激しい怒りが胸の奥からこみ上げてきた。
「許さねぇ…あんただけは…!」
迸る怒りを抑え、一語一語、はっきりと言葉にする。
「そうだ、来い、朋也。岡崎の血の力とやらを見せてみろ…!」
智代が俺を挑発するかのように近づいてくる。
「俺の記憶を奪い…オッサン達を襲わせただけじゃなく、智代まで…!」
「…?何を言っているんだ、お前は…?」
きょとんとする智代の顔を覗き込む。
その澄んだ瞳の奥に、禍々しい光が潜んでいるのが見えた。
「全部、あんたの仕組んだことだったんだな…!」
――――なに、心配はいらない。私は君の…『友人』だからね…
「何が、『友人』だっ!許さない、あんただけは、絶対っ…!!」
智代の制服の襟を掴む。
「くっ…離さないかっ!」
智代が俺の腕を払おうとした瞬間、
ばちっ
俺の体から火花が迸った。
「痛っ…!?な、何だ…?何なんだ、お前は…!」
智代の声はもう俺には届いていなかった。
俺は一心に智代の瞳を睨んでいた。
その奥底に潜む、『そいつ』を。
「お前の薄汚い能力で、いつまでも智代を操ってるんじゃねぇよっ!」
「糞親父っ!!!」
刹那、
空間は光に包まれた。
***
荒野の中、リヤカーを引き、進む男の姿があった。
パキ…
「おや…?」
荷台からした音に振り返り、声を漏らす。
「『リントホルストの壺』が割れている…」
小首を傾げ、壺のかけらを摘み上げる。
「偽の『光』とは言え…私の操る『光』を内側から破壊するとは…
驚いたねぇ…こんな真似が出来るのは…『岡崎の血』を引く者しかいない…
『光の使い手』としての力を持つものしかね…」
にっこりと満足気に微笑む。
「朋也くん、か」
***
光が収まると同時に、智代はくたりとその場に倒れこんだ。
俺の言葉が聞こえるか分からなかったが、かいつまんで状況を説明することにした。
「智代、もう大丈夫だ。お前は記憶を奪われてたんだ。
俺の親父がやった…でも、もう元に戻ったはずだからさ…」
むくり、と智代が体を起こす。
長い眠りから覚めた後のように虚ろな目をしていた。
「そうか…記憶を奪われていたか…
私としたことが、迂闊だったな…」
ぽつりと呟くと、ごそごそと制服のポケットを漁り始める。
中から、桜色の折り紙の束を取り出した。
「あ、それ…!」
―――馬鹿野郎!それを使っちまえばてめぇの寿命が…!
オッサンの言葉を思い出す。
「もう、使わないでくれな…寿命、減らすんだろ、それ…」
俺の言葉に、ふっと微笑みんでみせる。
ふと
その笑みに、違和感を感じた。
「なに…こんな不完全な光、こちらから願い下げだ……」
「え…?」
徐々に、『違和感』は明確な『異常事態』へと姿を変えていく。
その笑みは、気のおける仲間に向ける類のものでは、なかった。
その裏には、分かりにくいけれど、確実な『棘』が、あった。
『敵意』が。
「光とは、その人間の想いが形となって現れるもの…
あれが私の『本当の光』だと思ったか…?記憶を失った状態で発現した光が…?」
手中の折り紙が、桜色に光り輝く花弁へと姿を変えていく。
舞い散るその花びらは、智代の体を覆いつくし、やがて、あるものを形作っていく。
それは…
「『スティーリィ・ベアー』
‘守りたい’と願う私の意志に呼応して発現した…私の、『本当の光』だ」
いつか…創立者祭で見たことがある。
熊の着ぐるみだった。
ただ、俺が創立者祭で見たそれとは違い、銀色の毛皮を纏っている。
その着ぐるみはとても可愛らしくて…
それだけに、次に発した言葉は――――
「待たせたな、朋也…」
――――背筋を、凍らせた。
「殺し合いを、再開しようか」
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
013 古河早苗 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ 所持品:不明
017 坂上智代 所持品:『スティーリィ・ベアー』
012 古河秋生 生死不明
◆荒野
欠番 岡崎直幸 所持品:『胡蝶』、大量の武器を積んだリアカー
破損:『リントホルストの壺』(偽)
意味わかんねえよっ!
でもかっこいいよっ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
と思っても先の展開が難しいよっ!
意味わかんねぇよ!
お、おいおい!
新作キタ-GJ!!
このままだと病院前で春原組や芳野組、仁科までかち合ってしまう予感
「悪い、今何て?」
違う。
俺はしっかりと耳にしていた。聞こえなかった訳じゃない。
ただ、信じられなかっただけだ。
「呆けたか、朋也。私はこう言ってるんだ」
目前の熊のぬいぐるみが肩を竦めてみせる。
本当に、冗談みたいな光景だった。
だから冗談で終わらせてくれ。
言わないでくれ。その先を―――
「殺し合いを再開する、とな」
カサリ、と落ち葉を踏みしめる音。
俺は智代から後ずさっていた。
何で?何で智代から逃げるような真似をしなきゃならない?
記憶は戻ったはずじゃないのかよ…?
「ないだろ…もうっ…!俺とお前が戦う理由なんて…っ!」
かすれた声でそう言うのがやっとだった。
「そうか?」
くぐもった声が着ぐるみの向こう側から返ってくる。
「だって、記憶は戻ったんだろっ!?」
「だから?」
即答。
もう、俺との会話に一縷の興味すら抱いていないような…そんな、即答だった。
「……っ!」
着ぐるみに遮られ、智代の表情が、見えない。読めない。
クマの眼窩にはまっているガラス球が、やけに大きく、不気味に見えた。
着ぐるみを怖いと感じたのはそれが初めてだった。
「変わらないんだ。記憶を取り戻したところで」
唐突に、言葉を発する。
「な…!?」
「何も変わらない。私の置かれた状況はな」
そう言って重心を落とし、構えた。
つまり、どうやらそれで終わりらしかった。
俺の問いに対する返答は。
俺を殺す理由は。
「行くぞ」
短い言葉と共に、智代の足元の枯れ葉が弾けた。
パンッ!
突如、熊の頬から火花が散る。
「仁科さんっ!?」
渚の声。
振り返ると、震える手で銃を握り締める仁科の姿があった。
「記憶を取り戻したのに、私達を殺そうとするだなんて…
もう、話し合いが通じる相手じゃないです…!
しかし…でも何故…何故銃弾が効かない…!?」
着ぐるみが顔を仁科の方に向ける。
「『スティーリィ・ベアー』…
つまりは、『steely(鋼鉄製の・動じることのない心)bear(クマ)』と言う訳だ。
鋼鉄製のこの毛皮には…銃弾など効きはしない。
鋼鉄による剛の防御力、そして毛の弾力による柔の防御力。
その二つを兼ね備えたこの『光』は、紛れも無く、『最強の防具』だ」
着ぐるみの首がぐるりと回る。
呆けたように突っ立っていた俺と目が合った、その時だった。
ドン…!
不意に…鈍い音と共に、腹部に激痛が走った。
いつの間にか、智代は俺の眼前に迫っていた。
その右拳が俺の腹にめり込んでいる。
一瞬遅れて凄まじい吐き気が襲ってきた。
「ぉ…」
声にならない声と共に汚物を吐き出す。
ビチャビチャと音を立てて溢れ出すそれは…
血、だった。
「どうした?もうことわってあったはずじゃないか…『行くぞ』、とな」
ぐっと右腕を押し込まれ、背後の大木に叩きつけられる。
拳が離れるときに、鋼の毛皮が俺の腹の皮膚をえぐっていった。
「ぐ……っ!!」
歯を食いしばり、絶叫を飲み込もうとする。
「悲鳴を堪えるな。我慢するより吐き出してしまった方が痛みは緩和されるものだ。
まぁ…死に逝く人間には関係の無いことだったか…」
「う………」
頭からサーッと血の気が引いていく。
それが出血によるものなのか…今、この状況に絶望しているためなのかは分からない。
寒気がするのに、いやな汗がじっとりと噴出してきた。
「反撃してこないのか…?
このままでは数分と待たず、この世とお別れだぞ」
智代の声が這い蹲ったままの俺に浴びせられる。
「無抵抗の相手を一方的に甚振るのは趣味じゃないんだ。
できれば正当防衛を貰いたかったんだが」
(こ…こいつ……っ)
悪びれる様子も無い智代を見て、
俺の中にどす黒い感情が湧き上がってくるのを感じた。
駄目だ…こんなことを考えるのはまずい…
(もう…智代は……『駄目』だ…)
やめろ……考えるな…
(もう手遅れだ…智代は……)
智代は、仲間だ…
(俺じゃあ救うことの出来ないくらい、深いところまで…堕ちている…)
………。
(やらなきゃ、やられる……しょうがないんだ…もう…!どうしようもないことだってあるんだ…!)
………………。
(あいつも言ってたろ?正当防衛だ…!撃て…っ!身を守るんだっ……!)
ふらふらと、手がベルトに差し込んだゾリオンまでのびていく。
「そうだ…さっさと構えるんだ」
智代の声。
カリカリと、爪がゾリオンの表面を掻いた。
…………………じゃあ、さ……
(え?)
どうなるんだよ…智代は……誰があいつを救うんだよ……?
(だから、それはしょうがない…)
見捨てるのかよ…?智代を…?あいつの幸せを…!?
(………)
できるかよ…!そんなこと…!
そんな…簡単に…諦めていいもんじゃない…!
…例え、智代自身が『智代』を見捨てていたとしても……!
手が、ゾリオンから離れていく。
「俺は…」
ひどく…肩が重くて…首を上げるのが億劫だったけれど…
「見捨てないからさ…」
しゃんと首をあげて、着ぐるみの…智代の、顔を見た。
「俺は『智代』を見捨てたりしないから…!」
「………」
一瞬の間、そして…
「馬鹿な奴だ」
そう吐き捨てた。
ガンッ…ガン…カンッ…
遠くで聞こえていた音が、徐々に鮮明になってきた。
クマの全身から散る火花。
遅れて、仁科が智代を狙撃してるのだと気づいた。
「鬱陶しいな…」
俺から視線を外さずに、そう漏らした。
足を振り上げる。
「うわっ」
とっさに両手で頭を庇った。
ドォンッ!
鈍い音と共に体が震える。
いや、俺が攻撃されたのではなかった。
メキメキと音を立て、背後の大木が傾いでいく。
智代の蹴りは俺ではなく大木に命中していたのだ。
(外したのか…?助かっ…)
「きゃあああああああっ!!」
鋭い悲鳴。
と同時に、全身に戦慄が走った。
外したんじゃない――――
「渚ぁああああああーーーーっ!!!」
――――わざと、狙ったんだ。
仁科や早苗さん、そして、渚を……!!
ズゥゥゥゥウン!
低いうなり声を上げて、大木が地面に倒れこむ。
「渚っ!早苗さんっ!!仁科ーっ!!」
痛む体に鞭を打つようにして立ち上がり、その姿を探す。
そんな俺の前に、智代が立ちはだかった。
「お前が悪いんだ、朋也。こうでもしなければ、私と戦おうとしないからな」
「お前――――!」
「あいつらは木の下敷きだろう。急げばまだ助かるかもしれないな…」
その言葉に、はっと目が覚めた。
「邪魔だ!」
智代の肩を掴み、脇へどけようとする。
しかし、頑として智代は動かなかった。
まるで、巨岩のように。
俺の人生…俺の幸せ…その前に立ちはだかる、番人の様に。
「助けたければ助けるがいい。ただし…」
クマのガラスの瞳がぎょろりと回転した。
「私を殺した後でな」
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
017 坂上智代 所持品:『スティーリィ・ベアー』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
013 古河早苗/生死不明 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚/生死不明 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/生死不明 所持品:不明
012 古河秋生/生死不明
「ちょっと、アレって…!」
病院へと向かう途中、森の入り口。
杏の声で春原達は立ち止まった。
視線の先には人影、対峙するのは熊の着ぐるみ。
「おーい、おかざ…」
知り合いの姿に気付いた春原が無防備に近づこうとする。
「!!」
杏に耳を引っ張られて春原が木陰に引きずり込まれた。
勝平と椋もそれに続いて木陰に身を潜める。
「何するんだよっ!」
「馬鹿っ、少しは無い頭使いなさいよ!」
更に強く春原の耳を引っ張る。
「痛い、痛いって! 取れるーーっ!」
「ほら! 見なさい」
春原と勝平が木陰から顔だけを出す。
距離が離れすぎていて会話は聞き取れない。
けれど。
横たわる人影。異形の熊が放つのは、確かな殺気。
「穏やかじゃないね…」
そして、その光景を見つめる春原の顔は険しい。
「………アイツ、まだ」
「アイツって、キミはあの熊の正体を知ってるの?」
「ああ。だから、僕が止めなきゃいけない」
木陰から身を出そうとする春原の腕を勝平が掴んだ。
「止めるなよっ、今行かないでどうするんだよっ!」
「無鉄砲に飛び出しても状況が好転するとは限らないよ!」
椋さん達に勘付かれないように足をさする。
癌細胞の力で今はなんとか歩けるようになってはいるけど、あとどれだけ“走る”ことができるのかは分からない。
焦ってチャンスを失うわけにはいかない。
けれど…。
春原君の顔を窺う。
焦り、不安、苛立ち。
(ボクは…どうすれば…)
「だからって、こんなの…指をくわえて見てられるかよっ!」
「陽平!」
静止を振り切り、春原君が走り出す。
その時、影に動きがあった。
熊の脚が翻る。
脚は側にあった大木を捉える。
打ち抜かれた大木が倒れる。
少女たちの、頭上へと。
その光景がやけにスローに見えて、ボクは――。
(無鉄砲なのはボクも同じだな、ハハ)
「持ってくれよ、ボクの脚…! ラスト・ランッ!!」
「助けたければ助けるがいい。ただし…私を殺した後でな」
「智代…」
智代を睨みつけ、ゾリオンに手をかける朋也。
けれどその瞳に浮かぶのは、哀しみ。
「それでも、俺は…お前を救う。でなきゃお前が…可哀想だ」
「まだ言うか…!」
「同感だね」
森に響く声。
金髪を逆立たせて、春原陽平が姿を現す。
「春原!」
「岡崎。何だかよく分からないけど…今しなきゃいけないことは分かるよ」
並び立つは岡崎朋也。
そして春原陽平。
「生きていたか、春原。いいだろう…二人まとめて殺してやる」
再び構える智代。
「私を救うなど無駄なことと知れっ!」
「生憎だな。無駄なことに一生懸命なのが、俺たちなんだよ」
馬鹿ふたり、ここに在り。
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい、
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
004 春原陽平 応急処置済み 所持品:無し(上着に癌細胞)『コミック力場・弱』
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』、『バーサーカー・レクイエム』、44マグナム
017 坂上智代 所持品:『スティーリィ・ベアー』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
013 古河早苗/生死不明 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚/生死不明 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/生死不明 所持品:不明
012 古河秋生/生死不明
バイク(ガス欠)は廃墟の町に放置してます。
お、おいおい!
意味わかんねぇよ!
おお、新作がたくさん来てるGJ!
正直燃えた。
やっぱここの春原はカッコいいな。
GJ!
俺も次は春原と岡崎の再会にしようと思って書いていたんだが、先を越されてしまったなw
まさかその日のうちに続きが投下されるとは。全部仕上げる暇が無かった
ずっと温めてたネタなだけに無念だよっ・・・orz
何だかよく分からないけど、頑張れよっ!
技術さえあれば漫画化したい・・・。
大切なのは技術じゃない、情熱だ!と無責任に言ってみるよっ!
856 :
'ヽ/ヽ ◆DOASFNYARI :2005/12/31(土) 15:19:02 ID:esoeLQkE0
おいおいっ
意味はわかるよっ
858 :
人生ブラフ ◆8/zHLnhKDE :2005/12/31(土) 20:33:49 ID:l9xCE7iJ0
俺が立てたこのスレまだ残ってたんだな。
あんなトンデモ設定でよくぞ話を広げてくれたもんだ。
50話くらいまでしか読んでないけど時間がある時全部
読み直してみるよ。
とりあえず書き手さんガンバレ。
ジャンプの富樫並の不定期連載ですな
書き手サソガンガレ!
イメージイラストとして黒スーツに赤のシャツで正装した渚が描きたい
でも俺どらえもんしか描けない((ミ゚o゚ミ))
お、おいおい!
「おい岡崎、遂に…最強コンビが揃ったなっ」
金髪の馬鹿が、にっと白い歯を俺に向ける。
「え?どこに?」
「露骨に目を逸らすなよっ!お前の最高の親友が目の前にいるでしょっ!?」
「悪い、お前のこと友達だと思ってねぇや」
「思えってのっ!世界が滅びたときくらいっ!」
春原と軽口を叩きあう。
もう二度と…戻らないかと思っていた日々。
楽しかったあの日々が、蘇っていく気がした。
まだ戻れるんだ。
きっと、オッサンも、早苗さんも、渚も…みんな無事で…
あとは、この中に智代が加わればいい。
そうすれば帰れるんだ。あの日々に。
ドゴッ!!
鈍い音と共に春原の姿が視界から消えた。
「せっかく助けに来ても、無駄死にだったな。だが、まぁ…好きなんだろう?無駄なことが…」
その背後から智代の姿が現れる。
「すの…!?」
見おろすと、後頭部から血を流しながら転がっている春原の姿があった。
一瞬で、現実に引き戻された気がした。
智代には容赦なんてない。
本気で殺す気なんだ。
熊の冷たい両眼が俺を睨み付けた。
「いい加減にしないか、朋也…何人、殺したら気が済むんだ?」
そう、吐き捨てる。
「な、なに言ってる…!みんなを傷つけたのはお前だろ…!」
「なら、そうさせなければ良かったじゃないか」
「な…!?」
「私を殺していればこんなにも仲間が傷つけられることはなかった」
「お…俺は…お前を助けようと…!お前が可哀想だから…!」
「ふざけるな…」
智代が静かに言葉を放つ。
「え…?」
「ふざけるなっ!!!!!!!」
怒号に、
森全体がビリビリと震えた気がした。
「いつまで…そうやって…気取っているつもりだ…偽善者を…っ!!」
わなわなと手が震えていた。
「みんな…必死なんだ…!何かを守るために…生き残るために、必死なんだっ…!!」
「お前…」
「必死だからっ…許されると思ったんだっ…!!
この戦いは、バトルロワイアルじゃなかったのか!?
互いに、殺されることを覚悟した戦いじゃなかったのかっ!?
私は覚悟していたっ!殺されても文句は言うまいと、胸に刻んでいたっ!!」
かすれた声で叫んでいた。
「だから、い っ ぱ い 殺 し た っ !!
いっぱい、殺したんだ!!許されると思ったから、殺したんだっ…!!
なのに…それなのに…っ!!」
智代は、泣いているようだった。
涙は流さねど…
心で。
「お前は、否定するのかっ……!
私のしてきたことを…この戦いを……っ
だったら…何だったというんだ…私の決意は…!奪ってきた、命…は……」
ほとんど悲鳴に近かった。
搾り出す様にして発する一語一語が、静かな森に吸い込まれていく。
守るため……
智代は度々そう言っていた。
―――‘守りたい’と願う私の意志に呼応して発現した…私の、『本当の光』だ。
智代はそうも言っていた。
それほど強い想いなのだろうか。
『本当の光』を発現させるほどに…それほどに守りたいものが、智代にもあるのだろうか。
そして、仲間を手にかけても守り通すと…覚悟を決めていたのだろうか。
なら…俺は、甘かった。
渚なら、決して智代を傷つけたりしないだろう。
杉坂たちが…合唱部のために顧問を諦めてくれと頼みに来たときも…
顔で微笑みながら…心で泣きながら…
夢を、譲った。
そんな渚だから、今度だって…譲ってしまうに違いなかった。
だけど…夢なら…代わりを探せる。
しかし、命は代わりを探せない。
「智代…」
微笑んで譲ってしまう…そんな渚を、守るためには…
俺だけは、死んでも、譲っちゃだめなんだ…!
大事なものを守るために…!
そして、仲間である智代を止めるために…!
「俺はお前と、戦う…!」
体の震えが、止まった。
そして…
俺はゾリオンの引き金を引いた。
『苦痛』…『怒り』…
俺の全てを込めた光弾が智代に迫り…
「ありがとう、朋也」
その時、着ぐるみの向こうで智代は微笑んだ気がした。
鋭く右腕を横に薙ぐ。
ばしっ、という音と共に、光弾はかき消えた。
「これで迷い無く殺せる」
そう、言った。
(ばしっ…?)
俺は銃を掲げたまま、ぼうっと突っ立っていた。
(ばしって、何だよ…あの『光弾』には…
仲間を傷つけられた俺の『苦痛』が…立つのもやっとなほどに傷つけられた、この体の『痛み』が…
詰まってるはずじゃ、なかったのか…?俺の全てをぶつけたんだぞ…っ!?)
「な、何で……!?」
俺はみっともなく呟いていた。
「そんなに不思議か。渾身の一撃を防がれたことが」
淡々と、智代が答える。
「こんな…馬鹿な……」
うわ言のように俺は繰り返していた。
なぜか体が震えている。
「なら…お前は積み重ねていなかったということだな」
智代が呟く。
「え…?」
「私だって…何も最初から強かったわけじゃない…
学年でトップ10に入る学力だって、持ち合わせてはいなかった。
この運動能力、それに学力も、少しずつ、日々の生活の中で積み重ねてきたんだ」
ぽつりぽつりと語りだす。
「連日連夜、町を徘徊し、悪さをする奴を懲らしめた。
時には…深刻なダメージを負うこともある。
地に伏し、泥を舐め、顔をぼこぼこに腫らしたことも、あった…
それでも家に帰ってくれば、休むまもなく、学校の予習や復習をしなければならない。
辛かった…本当に…過酷な…日々だった。
だが、そこで挫けず…放棄せず…積み重ね続けたから、今の私の強さがある…!」
「お前の渾身を防げる、強さがあるんだ」
俺のうわ言に、応えてくれていた。
それは本気で向ってきた俺に対する感謝の気持ちだったのだろうか…とにかく…
俺は惨めだった。
「あ……!」
脳裏に浮かぶ。
学校で寝て…春原の部屋で漫画本をあさって…
怠惰に暮らしてきた生活の様子が。
「う……っ!!」
あつかましい、と思った。
どうしてこれで勝てるんだ…?勝てるだなんて思うんだ…?
智代はきっとあの瞬間にも努力を重ねていたのに…!
「ううっ…!!」
何故、俺は努力しなかった…!
何故、怠惰に暮らすその生活の中で、ほんの少しでも積み重ねてこなかった…!?
「うううっ!!」
目に溢れていた涙が、遂に零れた。
及ぶはずはなかった…!
今まで努力もせず、だらだらと生きてきた俺なんかの全てをぶつけたところで…
智代に及ぶはずはなかったんだ…!
目標のために…懸命に積み重ねてきた人間に…勝てるはずないだろっ…!!
俺なんかに、誰かを守ることなんて…最初っから…
で き や し な か っ た ん だ っ … !
「哀れだな…今、楽にしてやる」
智代が体を捻った。俺へのとどめの一撃を下すために―――
もう、俺には…みっともなく涙を零しながら…祈ることしか出来なかった
だ、誰か…
俺はいい…俺はいいから…っ
みんな…を……!
「助けて…くれぇっ……!」
風を切る音。
そして…
「待てっての」
智代の拳を掴む影があった。
血で真っ赤に染まった金髪が、日の光を受けてきらきらと輝いていた。
「まだ息があったとはな…春原…!」
智代が掴まれた手を振り払い、攻撃対象を春原に移す。
「死んだ振りをしていれば助かったものを…なぜ、わざわざ命を捨てにくるんだ?」
―――智代がそう吐き捨てた、その時だった。
「春原、時間稼ぎごくろうさま〜!あんたたまにはいい仕事するじゃない!」
「古河さんたちは、勝平さんと私たちで、安全な所へ避難させておきました」
「みんな軽く頭を打って気絶してるけど、命に別状はないよっ!」
明るい声が右方向から聞こえてくる。
「杏…藤林…勝平…!」
「何だ…まだ命知らずがいたのか…
だが、屠る相手が三人ばかり増えようと同じことだ」
智代が杏たちを一瞥する。
「じゃあ、もう三人足しといてくれますか?」
左方向からの新たな声に、智代がハッと体を翻す。
「仲間の窮地に間に合えてよかった。これも愛の起こした奇跡、か」
「はぁ…また坂上智代と鉢合わせるなんてねぇ…。しゃあない、やるしかないか」
懐かしい顔がそこに並んでいた。
「美佐枝さん…芳野さん…それに、確か春原の妹…芽衣ちゃんまで…!」
春原が智代に向き直る。
「さっきの質問の答え…!何で僕が…僕たちが…岡崎を助けに来るのか、教えてやるよっ」
「なに…?」
「仲間だからだよっ!死なれちゃ困る、仲間だからだっ」
クマの瞳が一瞬春原を見つめ、微かに頷くと俺にその視線を移した。
「そうか、朋也…」
自分を包囲する人影をぐるりと見渡す。
「これがお前の…‘‘積み重ねてきたもの’’というわけか…」
独り言のように呟くその声は、みんなが口々に俺を呼ぶ声でかき消されてしまった。
やかましい声たちに囲まれて…
俺は…また、涙が出てしまうほどに…頼もしかった。
俺は一人で…勝てなくたって、いいんだ…
だって、俺には…!
「遂に…最強のチームが揃ったな、岡崎っ!」
窮地に駆けつけてくれる『仲間』が――――!
◆森
001 岡崎朋也 所持品:銃、『光弾銃ゾリオン』
002 藤林杏 所持品:『三千世界・上巻』、辞書いっぱい
003 藤林椋 所持品:『三千世界・下巻』、ルガースーパーレッドホーク9in
004 春原陽平 応急処置済み 所持品:無し(上着に癌細胞)『コミック力場』
005 伊吹公子/気絶 所持品:なし
007 柊勝平 所持品:『アポロンの銀弓』、『バーサーカー・レクイエム』、44マグナム
009 相楽美佐枝 所持品:銃、洗濯ロープ、ライター、リュック(中身不明)
011 芳野祐介 所持品:工具一式、防弾チョッキ
欠番 春原芽衣 所持品:グロック18C
017 坂上智代 所持品:『スティーリィ・ベアー』
012 古河秋生/生死不明
013 古河早苗/気絶 所持品:レインボーパンほか
014 古河渚/気絶 所持品:『ゼウクシスの魔筆』、『レイジングヒトデ』
018 仁科りえ/気絶 所持品:不明
おいおいおい!
冷蔵庫に入れておいたプリンがないよっ!!
意味わかんねえよっ!
何だかよく分からないけど、行くよっ!
>>863-970 持ち上げといて落としてさらに引っくり返す…もう王道も王道だな。GJ!
この対智代戦で最終章幕開けになりそうな予感。
敵側の数が圧倒的に少ないからしかたないとはいえ
智代一人VS光戦士ほぼ総がかりってのはパワーバランス悪すぎだよね
戦隊モノでは、怪人は常に5人のヒーローにボコられるんだ
ちゃんと戦えそうな奴少ないから、うまくやれば大丈夫だろ。たぶん。
最近、ヒーロー戦隊は最初の5人に加えて、第6の戦士が加入するケースが多いよっ!
燃えだな…
何だかよく分からないけど、行くよっ!