ふ〜、いい湯だった。
浩之さんと神岸さんに風呂を先に譲り、寝床の客間に案内した後で風呂に入った。
さて、さっきのことをネットでチェックチェック。
ん〜、なになに・・・。
『布団には大きく分けて綿布団・羽毛布団・羊毛布団・化繊布団などがあり、日本では最もポピュラーな布団といえば綿布団です。
綿布団は日本のみならず、世界各国でも使用されており保温性が良い、湿気を良く吸ってくれるなどの特徴があります』
確かに俺の布団も綿布団だし、日本で多いっていうのも何となく納得かな。
『羽毛布団はその名の通り、水鳥の羽毛を布団の中に詰め込んだ掛け布団であり、綿布団より吸湿性・放湿性があり軽いという利点があります。
しかし、綿布団より柔らかいので敷布団に不適と言えます。
羊毛布団は中綿に羊毛を用いた布団のことを言い、弾力性があり、保温性や吸湿性・放湿性が優れているために敷布団に最適です。
そして化繊布団は中綿に化繊綿を50%以上使用した布団のことを言い最も安価で、弾力性が長く持続し、取り扱いが簡単です。
また、化繊100%ですと洗濯しても縮みの問題がほとんどないので、安心して洗濯が出来ます』
へぇ・・・結構布団によっても敷布団とか掛け布団とかに適した布団があるんだな。
『人は人生の約1/3〜1/4を布団の中で生活します』
ああ、たしかにそうだよな。
『また、疲れをとるために睡眠が苦にならないためにも、多少値段が高くても良い布団を選ぶべきです』
なるほどね、そう言われてみるとそういう考えもできるよな。
なんか母さんが寝具に関してちょっとうるさいのもちょっとばっかりわかる気がする。
あったかい布団で眠れればやっぱり気分がいいもんな。
ん、なになに?『布団と遺伝子組み替え食品』?
『木綿ワタも、殺虫成分を生成する遺伝子を組み込まれたものが出てきはじめ、その葉を食べた虫は、数十秒の内に死に絶えます。
この木綿ワタを使った布団や衣類を人間が使用した場合の長期的な調査は行われていないので、実際に消費者が知らない間に被験者にされているようです。
また、布団や衣類を購入するときではなく、ワタ自体を購入しようとしても、このような遺伝子組み換えであることを表示したものはありません。
色々な方面から、遺伝子組み換えの必要性が賛否両論ですが、生活する上での様々な危険要素をこれ以上増やさないようにも、消費者が強くなるべき時代が来たように思います』
うーん、怖いなぁ。
遺伝子組み替えの大豆だって出たころはいろんな賛否があったし、布団でもこんなことがあるなんて知らなかった。
そういえばこのみの家でもこの前新しい布団を買ったって話しだしな。
明日注意しといてやるか。
・・・・・・・・・って、買ったのは羽毛布団って言ってたっけ。
それじゃ、全然関係ないか。
・・・・・・・・・。
ん〜、まだ11時か。
ちょっと早いけどもう寝るか。
お、今日の布団はふかふかだ。
そういや昼間に勉強する前に干しておいたからな。
でももう夏だからちょっと暑いかも。
469 :
7月文月:05/02/09 23:38:43 ID:m0H3q/AA0
ようやくこちらにも投下です。
あれ?依然見たときから大分飛んでないか、と思う方は前スレをごらんください。
なんか布団ばっかりの話になっちゃいましたけどようやく初日終了です。
ちなみに今日の話、BGMに『風がくれたおやすみ』を聞きながら読めばちょっとはよく思えるかもしれないですw
どっかに纏めてアップしてくれたりすると楽でいいなぁ。とか
例えば郁乃雄二の人みたく
なんていってみる
471 :
7月文月:05/02/09 23:49:19 ID:m0H3q/AA0
そうですねぇ・・・一応考えてはいますがもうしばらくは作ることはないと思います。
まとめサイトに関してはゆっくりお待ちくださいませ。
>>469 乙。
とうとうこっちに移動してきましたね〜
頑張ってください。
幾度となく一人でベッドから見る窓の向こうの緑景色は、
いくら目が治って新鮮味を感じていたとしても、早々に飽きてしまうものであった。
煌々と照っていた太陽が光を抑えながら傾き、空を薄い橙色に染め始めている。
もうそろそろ待ち人達が訪ねて来る時間。
あたしはノロノロとベッドから降りて、眩しく感じ始めた景色をカーテンで遮る。
薄暗くなった室内は、どこか寂しささ醸し出していた。
小さく欠伸をしながらベッドに戻り、真っ白な掛け布団を被って横になる。
少しだけ眠ろう。今日はいつもより早起きしてしまったから。
きっともうすぐこの部屋も賑やかになる。楽しみの時間を早送りするためにも……。
コンコンと扉の向こうでノックの音がして、気持ち良い眠りから起こされる。
「寝てるのか?」
扉の隙間から覗き込んでいるのだろうか、そんな男の声がしてきた。
あたしの病室に来る男なんて姉の恋人であるたかあきしか居ない。
声と気配から察するに一人で来たのだろう。
扉に背を向けた格好だったので、このまま寝た振りでもしてみようかな。
そんな悪戯心が生まれてしまう。
「入るぞー」
静かに扉をスライドさせながら、たかあきは半分忍び足でそろそろと入ってくる。
電気を点ける気配も無い。どうやらあたしを起こさないようにとの心遣いらしい。
すぐ後ろまでたかあきは近づくと、ベッド脇にあったパイプ椅子に座ったようだ。
何かカサカサと音を立て始める。次にモクモクと何か租借する音。
また勝手に人の見舞い品を食べてるよ……。
「うん、この菓子は旨いな」
小声で感想。聴こえてますから。むしろあたし起きてますから。
と思ってみたものの、伝わるはずも無く。心の中で大きく溜息を吐いた。
「っと――」
カツンっと床に何かを落としたようだ。
パイプ椅子がギシリと軋む音。次いでゴツっと鈍い音がしてあたしのベッドが少し揺れた。
「イツツ……」
どうやら落とした菓子を拾うとして頭をベッドの硬い縁にぶつけたらしい。
あたしは噴出しそうなのを堪えようとして、思わず体をよじってしまう。
そのせいで顔半分隠れていた掛け布団が肩口までずれてしまっていた。
「あ、いけね起こしたか? ってまだ寝てんのか」
そう言うと、たかあきは掛け布団を引っ張り上げてあたしの首元まで掛け直してくれる。
姉がいつもしてくれたはずなのに、たかあきがしてくれるだけで少し安堵感がする。
まるで母親が子供にしてくれるような。
ただの姉の恋人っていうだけなのに、僅か短期間であたしの中にも入ってくる。
不思議だった。あたしは他人にあまり関心が向かないような性格だったはずなのに。
「うん」
何かに納得したようにたかあきが呟く。それと同時に背後で立ち上がる気配。
たかあきの気配がベッドをくるりと回ってあたしの前で止まる。
じぃーっとあたしの顔を見られてる気がする。
「寝顔も似てる」
似てる? 姉と似てるということだろうか。姉妹なんだから似てて当たり前じゃない。
というか人の寝顔見て楽しむのも悪趣味だと思う。
「愛佳に似てて可愛いな。うん」
思いがけない言葉に、一瞬ドキリとしてしまった。
そういう言葉に免疫がないの知ってて言ってるんじゃ――って今は寝てることになってるんだっけ。
顔が火照ってるんじゃないかと心配したけど、薄暗い室内じゃ判らないかも。
なんだかずっと見られてる気がする。このままじゃある種の拷問と言えなくない。
少し薄目で確認してみる。モヤが掛かったような視界の先には、確かにたかあきの顔があった。
でもそれは、疲れたように目を閉じて、ベッドの縁に腕を交差してそこに寄りかかりながら
眠っている姿だった。
今度はあたしが仕返しをする番だ。初めて見る目の前の寝顔を見つめる。
少し女顔だと言っていた通り、なかなかどうして可愛いかった。
たまにはこんなゆっくりとした時間もいいかもしれない。
姉はこんなたかあきの姿、もう見たのかな……。
規制巻き添えされてた時間を利用して初SS初投稿。
慣れないことはするもんではないですねorz
>>473 いや、初めてにしては実に優秀、とても初めてとは思えない。
偉大なり。
というわけで今後もガンb(ry
何故だか優秀が優季に見えてしまった。
>>461 GJです。
まったりいいなぁ。
いつも見事に4レスでまとめられるのはお見事。
頑張って下さい〜♪
かなり気が早いかも知れんが次スレ用テンプレ案。
・割り込み防止の為、出来るだけメモ帳などに書いてから一括投入する。
・名前欄にタイトルと話数を明記する。
・間が開いてしまった場合はメール欄に前レスの番号をレスアンカー付で明記する。
・他人の作品を自サイトに転載する場合は必ず作者の許可を得てからにする。
あくまで読み手側から見たテンプレ案なんで適宜追加、修正お願いします。
まだ後100ちょい余裕あるしー
あとメモ帳で投下しない類の人は終わりの部分に―終了―とか入れると良いかも。
想定していた話数より多くなって追加されることとかあるし
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は微妙な恋人関係。ところが雄二に婚約者が現れて家に
居ついちゃった。
春乃さんの軽いジャブなんてなんのその二人は初めてのデートに……、そこで春乃への不安を打ち明け
る郁乃。そんな不安を解消してあげようと雄二は郁乃を海に連れて行くことに決めた、けど……。
第一話から第九話はこちらで。あとテンプレ案も置いてあるので修正案とかもどんどん言ってくだされ。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
「でも実際の問題、いつどうやって行こうか」
自然食レストランとやらで昼食を取る。食事の内容に気を使わなければならない郁乃は店員とあれこれ相
談してメニューを決めた。郁乃に調味料やらカロリーやら添加物のことを質問されたときの店員の応対は明
快で、偶然見つけた店だったがここにして正解だったようだ。
「来週の木曜日とかどうでしょう? ほら、秋分の日ですし」
「……んと、その日は用事があるんだ。ごめん」
その日こそがまさしく春乃との期限の日、つまり見合いの日その日なのだった。考えてみれば本当にもう
すぐそこだ。春乃のあの自信はどこから湧いたものだったのだろう? と雄二は疑問に思う。もしかすると運
命論者かなにかだとか。あの年頃の女の子ならありえそうなことだ。
「雄二さん、いい日ありますか?」
ふと考え込んだ雄二を、郁乃は日取りのことで思い悩んでいると思ったようだ。
「急なところでは明日明後日はどうなのさ?」
「あ、ごめんなさい。今週末は外泊許可を取ったので家に帰ることになってるんです」
「そっか、自宅に帰るのどれくらいぶりなの?」
郁乃は記憶の糸を手繰ってみる。実のところ入院生活が長いと、時間の感覚というのは非常に曖昧なも
のになってしまうものだ。なまじカレンダーを置いていなかった分、どれくらいという尺度では分かりにくい。
それこそ――
「何年かぶり、かな?」
一昨年に再発と急性期を一度迎えて、それ以降は帰ってなかったはずだから……、とは言ってもそれ以
前の記憶となるとさらに曖昧だ。
「それは楽しみだね」
「どうでしょう? 家に帰ったと言っても、他所のお宅にお邪魔するような気分になるかもしれませんよ」
「家、改築とかでもしたの?」
ふるふると郁乃の首が横に振られる。
「なら多分大丈夫さ。ウチの姉貴なんてもっと長いこと家を空けてたけど、帰ってくるなり我が物顔だったぜ」
根拠のない励ましではあった。なにぶん、環は年に一度くらいは帰ってきていたのだから。
「それならアレだな。とりあえず来週の日曜くらいを考えておきますか」
「はい」
ちょうどそのとき二人の注文した料理が運ばれてきて、会話は一度打ち切りとなった。
「んで、どうやって病院を抜け出すかなんだけど……」
郁乃はようやく料理の半分を始末し終えようとしていたところだったが、それだけの時間で雄二は自分の
分をぺろりと平らげ終わっていた。
「看護士さんに見つかるのとかもやばい?」
「……ちょっと散歩にって言えば大丈夫だと思います」
「そっか、午前中なら誰も訪ねてこないんだよね」
コクリ。
「後は流石に置手紙とか書いておかないとやばいか。行方不明とか、誘拐とか思われたらえらいことだもん
な」
「……誘拐しちゃいます?」
「身代金を要求しない場合って誘拐っていうんだっけ?」
「……要求するのが営利誘拐ですよねぇ」
二人で首を傾げてみる。
「ま、どうでもいいか。置手紙の用意のほうはよろしくな」
そうして郁乃が食べ終わるのを待って、またショッピングモールの中をのんびりと歩いて回った。結局郁乃
の体力が気がかりで、3時過ぎには病院に帰ることにする。結局、買ったのは日傘一本だったが、それでも
郁乃は満足そうだった。
長い坂道を時間をかけて登り、たっぷり行きの2倍以上の時間を使って病院に戻ってくる。
そして何も考えずにガラリと病室のドアを開けた。
「わひゃ!」
「わわっ!」
ふたつの慌てた声と、勢いよく飛びのくふたつの影。顔を赤くした愛佳と貴明がそこにいた。
「貴明、お姉ちゃんに変なことしようとしてたんじゃないでしょうね」
じろりと郁乃の目が貴明を睨む。
「まま、まさか。な、なあ、愛佳」
「う、うん、そうですよ〜。そんなわけないじゃないのよですったら」
明らかに挙動不審のふたりであった。
雄二はつかつかと貴明に歩み寄ると、その肩をぽんと叩く。
「邪魔して悪かったな。委員ちょ、今日は郁乃ちゃんつれて帰るんだろ? んじゃ俺は貴明持って帰るぜ」
「あ、はい、よろしくお願いします〜」
「俺は所有物じゃないって」
「却下」
愛佳と何をしようとしていたのかと貴明をからかい、家に帰ってメシ食って寝る。なんだかんだで疲れてい
たのだろう、いつもよりずっと早い時間にはもう泥のように眠って、日曜だろうと関係のない環に叩き起こさ
れるまで夢のひとつも見なかった。
本当ならこんな予定のない日曜日は昼過ぎまで眠って、怠惰に過ごしてしまいたかったのだが、起こされ
てしまったものは仕方がない。貴明のところにでも遊びにいくかと、とりあえず身支度は済ませてしまう。多
分、貴明も今日は暇を持て余していることだろう。家に帰っている郁乃を愛佳が構わないわけがないのだ。
「ふぁぁ――」
しかし眠り足りなかったのか、疲労が残っていたのか、ベッドを見るとそのまま誘惑に駆られてその上に
横倒しになる。ああ、このまま寝てしまうほうが気持ち良さそうだ。そう思ったときに部屋の扉がコンコンと柔
らかくノックされた。
「ほい」
と、気軽に返事してからはっと気がついたときには手遅れだった。
扉が開いて春乃が顔を覗かせた。
「雄二様、今日はご予定はございませんの?」
言われてみれば期限までもう今日を入れて五日。家まで押しかけられたときはどうなるかと思ったが、意
外に春乃は攻めてくることはなかった。まるでそれが妻の役目だと言わんばかりに雄二のやることには口を
出さず、家のことをきっちりとこなしている。
そうだな。どうせなんの予定もないんだし、今日くらいは付き合ってやるべきか。
「今日はなんもないよ」
「そうなんですか」
春乃の顔が明るくなる。
「でしたら、もし宜しかったら、なんですけど――」
そうして連れ出されたのは昨日郁乃と行ったばかりのショッピングモールだった。どうして女というのはこう
も買い物が好きなのだろうか? 雄二には理解できない。だがアクセサリーやら服やらを楽しそうに見て回
る春乃は普通の14歳の女の子だ。
「これ、どうですか?」
と、たまに雄二に意見を求めてくるが、正直なところよく分からない。だいたい買い物なら一人でも来れる
だろうと思うのだが、女の子の意見はまた別なのかもしれない。
とにかくまあ、押しかけ婚約者であることさえ除けば春乃は可愛らしくて気立てのいい娘だ。
一緒に歩いてそんなに悪い気がするものでもなかった。
それを見かけたとき、心が、震えた。
見なければ良かった。気がつかなければ良かった。姉に誘われたからといって、昨日来たばかりのショッ
ピングモールに再び来なければ良かった。雄二さんの姿を人ごみに見つけて心を躍らさなければ良かった。
片手に大きな包みを抱えて誰か他の女と歩いている雄二さんになんて出会わなければ良かった。
雄二も郁乃も知らなかったのだが、二人はこのとき同じショッピングモールに再び居合わせていた。
雄二は春乃に誘われて、そして郁乃は愛佳に誘われて――。
昨日は着る機会がないと買わなかった服だが、愛佳がそれを良しとはしなかったのだ。それに姉とでかけ
るのは郁乃にとっても嬉しいものであった。
だからこれは楽しい日曜。
そして偶然にもその人ごみの中に雄二の姿まで見つけることができたのだ。
一瞬の喜びに跳ね上がった心が、春乃の姿を見つけ、次の瞬間には黒い蛇に巻き付かれたかのように強
く強く締め付けられる。
――苦しい。
視界が歪む。息ができない。手足がびりびりと痛んで、ふっと感覚が消える。
「郁乃?」
その様子に気付いた愛佳が不安げに郁乃を見て、それからその視線を追った。
そして愛佳も見つける。春乃と肩を並べて歩く雄二の姿を。
――再発の直接的な要因は明らかになっていませんが、大きなストレスがその要因のひとつとなっている
ことは明らかです。
医者の言葉がふと脳裏に甦る。そう、だから学校に通うようになったとき、その環境の変化がストレスと
なって再発する危険性を恐れていたのだ。けどまさかこんな形で!?
「あ……う……」
郁乃が何かを言おうとしているが、それは言葉として形にならない。
「――郁乃ッ!!」
その叫びは人ごみの喧騒を切り裂くようにして、雄二の耳にも届いた。
聞き覚えのあるその声に引っ張られるように視線が横に流れ、そして車椅子とその傍らに立つ少女を見つ
ける。
――郁乃ちゃんと委員ちょ?
一瞬春乃といる自分を見られたくないという思いが働いて、その場から逃げ出そうと思ったが、すぐさま事
態がおかしいことに気付く。左手に持っていた和菓子の包みを放り出して車椅子に駆けつける。
「郁乃! 委員ちょ!」
傍目にも郁乃の異変は明らかであった。愛佳はすっかり動転してしまっていて、郁乃郁乃と繰り返し呟い
ている。
「委員ちょしっかりしろ!」
その肩を掴んで揺さぶると、ようやく雄二がそこにいることに気付く。
「あ、向坂くん……」
「郁乃はどうしちゃったんだよ!」
「あ、それは、その……」
泳いだ愛佳の視線が、おずおずと後を追いかけてきた春乃を見つける。
「とりあえず救急車を呼んだほうがよろしいのではないでしょうか?」
「そうだ、それだ!」
慌てて雄二は携帯を取り出して119を押した。
それから慌しく時間が過ぎた。携帯電話からの119番は固定電話からの119番とは異なりまず代表消
防本部に繋がるため、そこで手間取った。2度も電話を転送されてようやく救急車が出動する運びとなり、到
着を待つ間にようやく正気を取り戻した愛佳がカバンから薬を取り出して郁乃に飲ませた。
そして駐車場近くで救急車を待つ、これまで体験したことのない10分間があった。
郁乃は目を閉じたままで、意識はあるようだったが何も言わない。もしかしたら何も言えない。愛佳も、雄
二も、春乃も誰も一言も口を利かなかった。
ようやく救急車がけたたましくサイレンを鳴らしながら到着したとき、雄二は心の底からほっとした。救急隊
員が手早く郁乃を車椅子からストレッチャーに移し、救急車に運び入れる。愛佳が郁乃の病状について説
明しながら一緒に救急車に乗り込んだ。雄二も一緒に乗り込もうとしたが、救急隊員に「身内の方?」と聞
かれ、答えに詰まる。
「車椅子、お願いします」
愛佳のその声を最後に、救急車は後部ドアを閉じて走り去った。
乗り手のいない車椅子を押して、とぼとぼと家に帰る。車椅子は玄関に畳んで置いておいた。
春乃とはあれから一言も口を利いていない。無言で靴を脱いで洗面所に向かい、顔を洗う。
――クソ、なんでだ。なんでこんなことになっちまったんだ。
どんなに後悔してもどうにもならないとは分かっていても、考えないではいられない。ちょっとした気まぐれ
で春乃と出かけたりしなければこんなことにはならなかったのではないか、と。それは雄二本人が思う以上
に真実であったのだが、幸い彼はそれを知らずに済んでいた。
冷水を何度も顔に浴びせかける。
とにかく今は雄二がじたばたしてもどうにもならない。何がどうなっているのかは分からないが、病院の処
置に頼るしかないのが現状だ。
チリチリと焦りが胸を焼く。どうしようもないと分かっていても、それで気持ちがどうにか収まるわけでもな
い。
部屋に戻ろうと廊下に出たところに春乃がいた。
「雄二様」
無視して隣を抜けようとした雄二の前に春乃が立ちふさがる。
「雄二様、申し訳ありませんでした。私が買い物になんて誘わなければ……」
「春乃さんの所為じゃないさ」
それは心からの本心だった。別に春乃の所為ではない。もし誰が悪いのかと問われれば間違いなく自分
だと雄二は思っていた。郁乃が春乃のことを気にしているのを知っていたのに、何も考えずに一緒にでかけ
るなんてどうかしてたのだ。
「……あの方にはお気の毒です。ですが……本当ならこんな時にこんなこと言いたくはないのですが……」
春乃がじっと雄二の顔を見つめる。
「あの方は雄二様にとってご負担なだけです。私は、私なら雄二様を支えていけると、そう自負しておりま
す。それとも――それとも雄二様は私の足が動かなくなれば私のほうを向いてくださるのでしょうか?」
――がつんっ!
右の拳が柱を叩いた。握り締めた拳がぶるぶると震えている。
身をすくめた春乃が一歩後ろに下がった。
「頼む、バカなことを言わないでくれ」
「いいえ、言います。言わないと……」
春乃が両手を胸の前で抱くようにして目を伏せる。つぅと一滴だけ涙が零れた。
「雄二様は同情されているだけです。あの人を哀れだと思われて、情けを――」
春乃はそれ以上言えなかった。雄二の両手が春乃の頬を挟んだからだ。その手が小刻みに震えている。
「頼む――。それ以上言われたら俺は何をしちまうかわかんねぇ」
「構いません。もとよりこの命、雄二様に奪われるなら本望です」
春乃はまっすぐに雄二の瞳を見つめ返している。しかしその瞳は今にもあふれんばかりの涙で潤んでい
る。小さな顔、小さな体。
「キミはおかしい……」
「私をおかしくさせているものがあるとすれば、それは雄二様への想いによるものです」
「クソッ!」
柱を殴りつける。折れるものなら折るくらいのつもりで殴りつけたが、頑丈な柱はびくともせずに、拳のほう
が裂ける。鋭い痛み。だがそれがどうした。そのままぐりぐりと拳を押し付ける。
「雄二様、ご自分を傷つけるのはお止めください」
春乃の手が伸びて、柱に押し付けられたままの雄二の腕の触れる。
「触れるなっ! 分からないのか、俺はキミを殴る代わりにこうやってるんだぞ!」
「ならば柱などよりも私をお殴りくださいませ」
春乃は一歩も引かない。本気なのは火を見るより明らかだ。
「クソ食らえだ!」
春乃の体を押しのけて雄二は自分の部屋に戻る。ずきずきと痛む手をそのままに乱暴に扉を閉めるとベッ
ドに転がった。
――しかしそれでも春乃はついてきた。わざわざ救急箱を抱えて部屋に入ってくる。
「消毒だけでもしませんと」
ベッドの脇に座って、救急箱を開ける春乃を見ているとムカムカと黒い感情がわきあがってくる。
分からないのか? 俺は今キミの顔が一番見たくないってことが!
オキシドールを脱脂綿に染み込ませている春乃の襟首を雄二の傷ついた右手が掴んだ。そしてそのまま
乱暴にベッドに引き寄せる。春乃の手から落ちたオキシドールの容器が床に転げて、独特の鼻につく匂い
のする液体が広がっていく。
驚きに目を開いた春乃の顔が雄二の目の前にある。上半身だけがベッドに横たわっている。
「雄二さまの……お好きに……」
搾り出されたその声が、燃え上がっていたはずの怒りを、別な怒りで焼き尽くす。
春乃の襟首を掴んだままだった手を離して、ベッドから起き上がる。春乃は上半身だけをベッドに横たえた
姿勢のままで雄二を眺めている。その足元に広がったオキシドールを吸った絨毯に、雄二は右の拳を押し
付ける。焼かれたような痛み。
「消毒完了だ。頭を冷やしてくる。今夜は帰らない」
「はい……承知いたしました」
床を踏み鳴らして家を飛び出した。行くアテは、無い。郁乃がどこの病院に搬送されたかも分からないの
だ。とは言っても近辺で救急病院は坂の上のあの病院しかない。普通に考えればそこに救急車が向かうこ
とは容易に想像できる。
――けど、こんな時間に押しかけていって何ができるっていうんだ。
根本的に入り口で止められてしまうだろう。面会時間なんてとっくに過ぎているし、――身内ではないのだ
から。
仕方なく貴明の家のチャイムを押した。
酷い表情の雄二を見て、貴明は結局何も聞かずに家にあげた。
その夜は結局一睡もできはしなかった。
太陽が昇ってくる。今日は祝日だからか、貴明が起きてくる気配は無い。それでもそのうち、このみなりが
押しかけてこないとも限らない。そう思うとあんまり長居をしたくもなかった。
「助かった。ありがとな」
誰にも聞こえていないのは分かっていたが、気持ちだけの礼を呟いて靴を履いた。外は腹が立つくらいの
快晴。行くアテもなく歩き出す。いや、足は明確にひとつの方向を向いていた。
まず家に戻って車椅子を手に歩き出す。
病院の前に立って、立ち尽くす。
――いや、いくらなんでも早すぎるだろ。
時計の針はまだ7時を指していない。胃がキリキリするのを感じながら、踵を返して、適当な喫茶店に入り
モーニングを頼んで時間を潰した。テレビを見たり、新聞を読んだりしてみるが、時間がなかなか進まない。
早く郁乃の顔を見て安心したいという思いと、顔も見れないのではないかという恐怖。
時間が早く過ぎて欲しいのか、それとも面会にいける時間になってほしくないのか。雄二には判断がつか
なかった。ただ間違いないのは、何度時計を見ても進まなかったように思えた針が、気がつくともう面会でき
る時間をとっくに過ぎていたということだ。
観念して喫茶店を出る。
再び病院前。雄二はそこから一歩が踏み出せない。
――だって郁乃が俺の顔を見たら、またあんな状態になるかもしれないじゃないか。
そう思って病院に背を向ける。背を向けたつもりだった。だが気がつくともう病室前にいる。
病室のネームプレートはそのままだった。それで少し安心する。
――そうだよ。寝てるかも知れないし、ちょっと覗くだけでも。
ゆっくりと扉を開ける。ほんの少しあけた隙間から中を覗き込む。
果たして郁乃はそこにいた。以前と変わらぬ様子でベッドに座って、そして雄二がわずかに開いたドアの
隙間を凝視していた。
観念して雄二はドアを開ける。
愛佳も、ふたりの両親も見当たらなかったが、椅子や床に置かれた荷物から今は一時的に病室を離れて
いるだけなのだと分かる。
「おはよう」
雄二の挨拶には返事をせずに郁乃はじっとこれまでにないほどきつい瞳で雄二を見つめている。そして
ゆっくりと口を開いた。
「――今すぐあたしを海に連れて行って」
緊急で何行か削ったりしてます。極力違和感のないように慌てつつも処理したつもりですが……。
貴明と愛佳の恋愛も描いていきたかったのですが、自分の体力と相談した結果、進んでるんだよ〜という
雰囲気見せで終わります(´・ω・`)
今回ちょろっと出てきた携帯電話からの119番ですが、回線の状況によっては県外の代表消防本部にか
かっちゃうことすらあるそうで、運が悪いと電話を取り次いでくれることすらできずに、近くの消防署に直接電
話してくれ、ということまであるらしいです。近所の消防署くらいはメモリー登録しておくべきかもしれないで
すね。
次回はまた何日か空くことになると思います。それではまた。(・ω・)ゝ
泣かせ系だと、夕日の浜辺に車椅子を押してって「綺麗だね」とかひとしきり話した後に郁乃シボンヌ。
( つД`)そんなのはイヤダ
いや、ここはズバリ別れ話を切り出されると見た。
「雄二さんの重荷になりたくないから…」とか
>>494 いや、リハビリの成果を見せて、私はもう大丈夫だから水月………じゃない、春乃さんのところに行って。って言われると見たね。
浜辺で、ジュースとぬいぐるみを持つ愛佳を振り切って雄二と抱き合うんじゃないの?
その日、俺とこのみは久しぶりに同じ布団で寝た。
翌朝このみと一緒に学校へ行き、一緒に昼ごはんを食べ、一緒に帰宅する。少し前まで当たり前だったことが本当に久しぶりに思えた。
二人での帰り道、俺は学校から伸びるの坂道の途中で立ち止まる。
「じゃあ、このみ。俺チエの所に行くよ」
「うん。よっちによろしくね」
「あぁ、分かってる」
チエはいつ目覚めるのか分からないが俺はそう答える。
「よっちのこと悲しませたらダメだよ?大切にしなかったら、このみがよっち奪っちゃうんだからね!」
「それ、何かおかしくないか?」
「これで、いいんだよ。これで…」
きっと、このみなりの照れ隠しなのだろう。
「じゃあな、このみ」
俺は別れを告げる。
「バイバイ。タカ君、また明日!」
このみも別れを告げる。俺たちは、お互い違う方向へ歩き出す。
それでも明日がある、また会えば笑いあえる。俺たちは、ずっと幼なじみなんだから。
俺は学校の少し下に位置する、チエが入院している病院に着く。
もう何度も通っているので、何人かの看護婦さんに名前を覚えられたようで、挨拶をされる。他の人から見たら毎日お見舞いに通っている俺はチエと、どんな関係と思われているのだろうか?
チエのいる病室へとたどり着く。チエのお母さんが来ていたのだろう、花が代えられている。
「よぉ、調子はどうだ?」
俺は、いつも通りチエに話しかける。返事もしない相手に話しかけるなんて最初は恥ずかしいとすら思っていたが、最近ではチエの呼吸など一つ一つが俺に返事をしてくれているような気さえしていた。
「今日、やっとこのみに自分の気持ちを伝えることが出来たんだ、アイツちゃんと最後まで聞いてくれたよ。泣かしちゃったけどな」
俺は苦笑いする。
「それで、やっとチエに想いを伝えられるのに、お前は起きてくれないもんな…」
チエの胸が僅かに上下する。腕から伸びているチューブがとても痛々しかった。
「起きてくれよ…またチエの声が聞きたいよ、笑顔が見たいよ…」
俺は、表情のない顔に優しく触れた。とても冷たく感じた。
俺は自分の無力さに悲しくなる。
「俺はチエが大好きなのにっ…」
俺はチエに軽くキスをする。それは、ほんの一瞬だったが、永遠ともとれるような長い時間にも感じられた。
502 :
名無しさんだよもん:05/02/10 22:14:35 ID:ZzlquClU0
女タカアキは禁忌…?
その時だった
「…あれ、センパイ?」
今まで、無表情だった顔に鮮やかな赤みが蘇る。
「…チエ?」
「…あれ?アタシ何で?」
チエが目覚めた。
「お前事故あって数日意識がなかったんだぞ!?大丈夫か?痛いトコとかないか?」
彼女は自分の体を確認するかのように見渡した後、彼女は申し訳なさそうに言った。
「…お腹空いたッス」
「バカッ!お前、俺がどれだけ心配したと思ってんだっ!」
思わず俺はチエに抱きつく。
「うわっ、なんスかセンパイッ!?」
「よかった、ホントよかった…」
「センパイ…アタシのコト心配してくれてたんスか?」
「当たり前だろ!」
彼女はニヘヘと笑うが、一瞬躊躇ったような表情をし、俺の体を引き剥がす。
「…?」
一瞬、拒絶されたのかと心に不安がよぎる。チエは照れたように
「ほ、ほら今アタシ髪もボサボサだし、ずっとお風呂も入ってないだろうし…」
「そんなの構うかよ」
「う〜、アタシは構うッスよ〜」
今の俺にとっては、そんなことはどうでもよかった。今はただチエが目覚めてくれたことが嬉しかった。
「…うぅっ…うっ」
「…センパイ泣いてるんスか?」
「知るかバカ…」
チエは静かに目を伏せて噛みしめるように呟いた。
「センパイ…ありがとッス…。そんで、ただいまッス…」
その後検査の結果、体に異常などなかった為チエは、体力が戻り次第すぐに退院できることになった。
「よかったのか?お母さんに車で送ってもらわなくて」
「いいッスよ、今は久しぶりに外を歩きたい気分なんス」
病院の帰り俺とチエは二人で歩いていた。彼女は家まで送ると言う母親の申し出を断って、俺と一緒に帰ることを選んだ。
「なぁ。俺、チエに言いたいことがあるんだ」
俺は足を止めチエに向き直って言う。
「なんスか?…と言っても実はアタシ、もう予想ついてるんスけどね」
彼女はイシシと意味ありげに笑う。
「思ってるのと違うことかも知れないよ?」
俺は見透かされているようで、ちょっぴり悔しくてイジワルを言う。
「そのときは舌咬みきって死んでやるッス」
チエはペロッと舌を出す仕草をする。
こりゃ期待に応えないとな…
俺は一度心の中で深呼吸をする。大丈夫きっと言える。
「俺はチエが好きだ。このみでも、他の誰でもなく、チエを一番愛してる」
心の中で何度も何度も噛みしめた想いを言葉にする。
「…アタシでいいんスか?」
不安げな顔でチエが下から見上げる。
「俺は、お前じゃなきゃ嫌なんだ」
「…いっぱい迷惑かけるかもしれないし、ワガママ言って困らせるかもしんないッスよ…?」
「お前のことで、もっともっと俺を困らせてくれよ。それが俺の幸せなんだから」
「何か、ウソみたいッス…」
「こら、勝手にウソにするなよ」
チエは一度うつむき、また顔を上げ話しだした。
「センパイ、今だから言えるけど、アタシずっと前から…ううん、たぶん会ったときからセンパイのコト好きだったんスよ?」
「会ったときから?」
確か俺がチエと初めて会ったのは俺が中学の時、まだ中学に入ったばかりの頃だ。
あの時は、このみが新しい友達が出来たって嬉しそうに俺に紹介してたっけ。
「センパイに会った瞬間に惹かれたんス。でも、それと同時に、このみがセンパイをどう想ってるかも分かってしまったんスよ」
「…そうだったんだ」
「な〜に、しけた顔してんスか?センパイにはアタシが今まで3年間、我慢してきた分しっかりモト取らせてもらうッスよ〜」
「3年も誰にも言わずに、ずっと1人で耐えてたんだ…?」
「べ、別になんてことないッスよ〜!ほ、ほら、あたしとしては、先輩がこのみとくっついても、あたしとくっついても、どっちでもお得なワケで〜…」
俺はチエの髪を優しく撫でた。
「もういいから、もう耐えなくていいから…今まで待っててくれて、ありがとう」
「…センパイ、あたしホントは辛かったッス。このみのために何度も何度も諦めようとした…グスッ…でも、出来なかったっ…」
チエの瞳から涙があふれてくる。俺は指先でぬぐってから、チエの唇に優しくキスをした。
「これからは、ずっとそばにいるから」
そして今、俺とチエは晴れて恋人同士になっている。
俺は彼女の全てが好きになった。それは、無邪気な子供のような笑顔だったり、ふとした瞬間に見せる大人っぽい横顔だったり、俺を困らせるワガママだったり、ケンカした後に口にするごめんねだったり、俺はチエの嫌いなとこすら含めて全てを愛おしいと思える。
まぁ、俺は時々振り回されているんだが…
そして、このみは相変わらず昔のように一緒に登校したり、また不意に抱きついてきたりするようになった。
チエはそれを見ても不機嫌になったりはせず、むしろ対抗して反対側から抱きついてくる始末だ。これは、チエが彼女であることからくる余裕なのだろうか?俺は嬉しいだか困るんだか…
まぁつまり、このみとは何だかんだでグルリと一周して、再び元の幼なじみの関係に戻ったということだ。
春が終わりをつげ初夏の匂いが香りだす頃、俺はチエと待ち合わせをしていた。
「せんぱ〜い!お待たせッス!」
「うわっ!」
チエが後ろから抱きついてくる。
「タマ姉みたいなことするなよ」
「タマ姉?あぁ、あの姉御ッスか!…ふむ、横綱と同じことしても芸がないッスね〜」
とチエは正面に回りイシシシとイタズラっ子ぽい笑みを浮かべている
「それなら正面からッスよ〜!」
「うわわっ!?」
俺は驚いて倒れそうになるが、なんとか踏ん張る。そのはずみでついチエをギュッと抱きしめてしまう。
「バカップル…」
「バカップルだ…」
「バカップルね」
ぐはっ、通行人の視線が痛い
「うぅ…恥ずかしいなぁ」
「なぁに言ってるんスか先輩!アタシは全然恥ずかしくないッスよ〜!」
俺はやっと自分の幸せにたどり着いた。その幸せを手放さないようにしっかりつないでおこう。
「行こう」
俺は愛しい人へと手を差し伸べる
「アタシは、ずっとあなただけを見てるッス
今までも…そしてこれからも」
2つの手はしっかりと結ばれた。
───ひとつだけ大切なモノがある
それを枯らさぬように、折れぬように、心に咲かせ続けよう
太陽の光を浴びて輝き続ける夏に咲く花のように──────
よっち目覚めないENDなどいろいろ考えましたが、やはり最後はハッピーエンドかと思い無難に仕上げました。
もとは無いのなら作ってしまえ、よっちシナリオ!って感じで書き始めたこの話。
当初は、これの10分の1程度だったのに、まさか50レス以上にもなるとは…
初めて書いたSSにしては、まぁまぁかなと思います。
最後まで読んで下さった皆様どうもありがとうごさいました。楽しんでいただけたなら、それだけで幸いです。
次は気楽にギャグ由真SSでも書こうかと思ってます。さらに時間があれば、よっちアフターなんかも。その時はまた読んで下さい。
それでは最後に
(゚∀゚)よっち!よっち!
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(__ __) (___ フ | | (____ )
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(__ __) / \ | ヽ___ / /
| | / /\ \ ヽ___) ( (_
| | ヽ___ノ \ノ ヽ__)
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`゙ヽ `'i
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.,! ゙'" l .( ____,) ,' ヽ'' ヽ
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! .! .| .___,--、,、 ゙i、 ヽ /
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.ヽ,、 _./ `'-、,,ノ . `'''ー''"
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リアルタイムキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
(゚∀゚) よっち!よっち!
同じく
(゚∀゚) よっち!よっち!
>>508 初めてとは思えない気持ちのいいできですた。
よっちの可愛さが出てたと思います。
このみにはつらい思いさせちゃったけど
そこをさけなかったのがいい。
今度はギャグも読んでみたいです。
(゚∀゚) よっち!よっち!
なんか執筆意欲をそそられるSSだね。
(゚∀゚) よっち!よっち!
>>508 読ませて頂きました。超GJ!!!!!!
粗茶ですが( ・∀・)⊃旦ドゾー
うんうん
いいねよっち
俺もよっちネタ思いついたらカキコしといいですか?
昨日、間違って前スレに誤爆ったのでこっちにも一応はっときます。
時間がなくてあらすじとちょいとしかかけなくてすみません
〔今までのあらすじ〕
このみと晴れて恋人になった貴明。
そんな数月後、急に珊瑚によってメイドロボの実験テストの場として自らの家がその実験場所となってしまった。
そこにやってきたのは以前発売されたHMX-12『マルチ』と藤田浩之、神岸あかりの三人だった。
これからこの三人と貴明との一ヶ月に渡る生活が始まる。
「タカ君、タカ君」
ゆさゆさと揺らされる感覚で目が覚める。
「ん・・・このみか?」
「おはよ、タカ君」
「おはよう・・・」
ベッドの横でにっこりと笑うこのみを朝から見るとやっぱり安心するとともに今日一日が始まった気になる。
ここ最近はこのみに起こされるのが習慣化していて毎朝食事を作ってくれるがてら、いつも7時前に起こしてくれる。
これは頼んだわけでもなく、このみが自分で好きでやっている。
あの寝坊助でこっちが起こしに行ってようやく起き、ドタバタして制服を間違えるし、女の子なのパンをくわえながら登校はするし。
そんなこのみが今はほぼ真逆の位置にいるんだから信じがたい。
信じがたくてもこれは現実だ。
ためしに頬を軽くつねると痛みを感じる。
そうすると―――
「あ、もしかして眠いから目を覚まそうとしてるの?それなら私も手伝うよ」
あ、いや、そういうわけじゃな―――。
「せーの!」
うっ・・・・・・・・・ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
>>516 よっちマニアにはガンガンカキコする義務が。
519 :
516:05/02/11 11:14:50 ID:3yPgkFJJO
いよっし
よっち本スレでカキコしたのを
そのまま流用させてもらいます
520 :
516:05/02/11 11:18:49 ID:3yPgkFJJO
放課後の誰も居なくなった教室にて、
二人きりでこのみを待つちゃるとよっち
よっち「ねえ、ちゃるぅ…。ちゃるのおっぱいが
大きくなる方法…教えてあげようか?」
ちゃる「ぅ…何言ってるのよ、このデカ乳狸
大きなお世話…きゃっ!?」
突然、ちゃるの後ろに回ったよっちが
そのままちゃるの小さな胸を揉みしだく。
よっち「んふふー♪ちゃるのおっぱい、小さくて可愛いー♪
ほら、こうやって他人に胸を揉んでもらうと、
胸がおっきくなるんだよ〜?」
ちゃるの耳元で囁きながら、ちゃるの胸をゆっくりと揉むよっち
ちゃる「ぁ…んッ…!や、やめなさいよぉ…この変態狸ぃ…」
よっち「とか言って、実は気持ちいいんでしょ〜?
そうだ、直に揉んだら効果が上がるかも」
そう言うと、よっちはちゃるの制服の中に手を入れて、
直接ちゃるの胸を揉み始めた
よっち「あれ〜?なんだかちゃるの乳首…固くなってない?」
ちゃる「ぅぅっ、んやぁ…、そ、そんなわけ…あぁ、やぁ…っ」
よっち「もしかしてぇ…、コッチは、どうなってるのかなぁ〜?」
左手を胸から離し、ちゃるのスカートの下に手を伸ばすよっち
ちゃる「んあっ、いやぁッ…や、やめ…あァんっ!」
521 :
516:05/02/11 11:19:58 ID:3yPgkFJJO
教室には、クチュクチュと卑らしい水音が響いている
よっち「やっぱりぃ…感じてるんでしょ?エッチなちゃるぅ♪
ほら、どう?気持ちいい?」
ちゃる「あんッ、やん…っ。ぅ…うるさいっ、
このスケベたぬきぃ…っ!や、あぁあ…!」
よっち「ちゃる…イキそうなんでしょ?
いいよ…、あたしの前だったら、
好きなだけイッていいから…」
ちゃる「んッ……よ、よっちぃ…」
よっち「ちゃるぅ……好き…大好きだよ…」
ちゃる「よっちぃ……あたしも、よっちの事大好きぃ……
も、もうダメぇ…イッちゃう…イッちゃうよぉ…」
そして、ちゃるがイキかけた刹那
このみ「ごめ〜ん、ちゃるーよっちー。
遅くなっちゃって〜」
ちゃる&よっち&このみ「あ」
時が止まった
522 :
516:05/02/11 11:24:15 ID:3yPgkFJJO
よっちスレにカキコしたら、
SSスレに行けと言われてしまったので、
ここでカキコさせていただきました
続きはまた
ここで、このみが出てくるとは思いませんでしたw
続きを楽しみにしてます
(゚∀゚)3P!3P!
このみは驚愕の目で2人を見ながら、ようやく口を開いた
このみ「……ち、ちゃる…?…よっち……?
な、何してるの……?」
ちゃる「ぅ…」
よっち「あー…」
返答に困る2人に対し、
このみは自ら2人を弁解するように続ける
このみ「う…ううん。別にいいんだよ。このみはその……
女の子同士とか、そういうのがいけないとか思ってないから…。
ご、ゴメンね?邪魔しちゃって…」
よっち「…ちゃる」
ちゃる「ん」
2人は頷くと、必死に2人を弁解しようとする
このみに近づいていった。…そして
このみ「…ちゃる?よっち…?
どうしたの………き、きゃあっ!」
よっちは前から、ちゃるは後ろから
このみを捕まえるように、同時にこのみを抱きしめた
このみ「え、ちょっ…、ふ、2人とも、悪い
冗談はやめようよ……んッ?、ふぅんンッ!」
ちゃるは後ろから、このみの胸をゆっくりと
優しく揉みしだきながら、このみの首筋や耳元を
小さな舌で舐め回す。
よっちは前から、このみのスカートの中を弄りつつ、
このみの口内を自らの舌で蹂躙する。
このみ「…んふぅ…ちゅっ……ぅんん…っ」
このみには、何が起こっているのか
全く理解できなかったが、2人の激しい攻めに少しずつ思考を奪われていく
このみ(ふ、2人ともすごいよぉ…。体中気持ちよくって、
なんか、どうでもよくなっちゃいそう…)
ちゃる「…このみの乳首、
固くなってきてる…。感じてるの…?」
よっち「んッ…はぁっ…。…すごいよこのみぃ…。
このみのおま〇こ、グショグショになってるぅ…
…そんなに気持ちいいんだ…?」
2人の手と舌に、全身を犯されるこのみ。
しだいに絶頂の波が押し寄せてくるのを、このみは感じていた。
このみ「んんッ…ふん……。ちゃるぅ…よっちぃ…、
ゴメンね?本当はこのみも…
2人の事…大好きなのぉ…っ」
ちゃる「ううん…。わたしも、
このみのこと大好きだから…」
よっち「このみぃ…、イキそうなんでしょ?
……あたしたちの前なら、
好きなだけイッていいから……」
このみ「…う、うんっ…ちゃるっ、よっちぃ!
あぁっ…好きぃ…2人とも、大好きだよぉ!
あぁああんッ……イく……イッちゃうぅうッ!!
……あ、ふぅあぁああんッッ!!」
絶頂を迎え、力無く座り込むこのみ。
ちゃるとよっちは、この出来事によって
3人の絆がより一層深まった事を
確かに感じていた。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
あー俺も携帯だけど頑張ってみるかなあ。
このスレでは貴明とラヴなのより失恋や修羅場の方が多い気がするこのみのSSでも。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
うわ、なんか自分で書いたのを
改めて見ると恥ずかしいですね
携帯者なので長編は書けませんが、
なんか思いついたら書いてみたいと思います
どもども
丶\ _ __
____ | |_〜、 レ' レ'
(___ フ __|⌒|_ へ_,/ ノ ,へ
丿 丿 (__ __) \_ ー ̄_,ー~' )
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 ̄"` ,! .| .゙L,┐ i ̄l゙,! ,! ″,i´.r‐,.゙lノ .丿
r--'′ ,/ │.゙l, 'く,,/` ヽ,,,,"'_,,,/
.゙l__,-‐′ .゙l_,,〉
以前
>>473-475を書いた者ですが、
ここの住人さん的にはダークシリアス系はどうですか?
やはり需要というかあまり好まれないでしょうか?
自分がほのぼの・ラブ系が書くの苦手で、
どっちかというと暗い話のほうが本業というか得意だったりするもんで…。
容量多くなりそうだし、執筆時間もあまり取れなくて不定期になるかもしれないし、
ホムペ借りてURLをスレに記載のみとかにしたほうが良さそうですかね?
書くなと言われたらそれまでですがorz
好きだよ、うん。
どうせなら救いようがなく書いてくれると有り難い
殺戮、陵辱、鬼畜、ミステリー
日本語ならばなんでもOKです。
とりあえず投下して様子みたらよいのでは?
見たくない人はスルーすればいいし
個人的には最近、連載モノが少なくなってる気がするんで、
ちょうど良いと思われ
535 :
531:05/02/12 07:48:25 ID:BYRd5dHm0
536 :
黒の者:05/02/12 14:56:43 ID:EXpDfpGw0
GJ!!!
かなりいいですな^^
泣きかけましたよ(ぁ
ダークってことは郁乃と暗く背徳的で退廃的ながらも、慎ましやかに愛を育むってわけじゃあなさそうだな。
なんとなく須磨寺を思い出した
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は微妙な恋人関係。ところが雄二が春乃と一緒に歩いて
いるのを見かけた郁乃の病状が急変する。
翌日、雄二が病室を訪ねると郁乃はいつもどおりにしているように見えたが、開口一番。
「――今すぐあたしを海に連れて行って」
第一話から第十話はこちらで。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
「ちょ、ちょっと待った。あんなことがあったすぐなんだぞ」
「うん。あんなことがあったすぐだからよ」
じっと雄二を見つめる郁乃の瞳には非難めいた輝きがある。それが春乃といたことを指しているのは間違
いが無い。それはグサリと雄二の心に突き刺さる。しかし雄二の罪悪感が郁乃を救うわけではない。
考えてみるに郁乃の体調は雄二といる間、良好に保たれてきた。昨日の発作が雄二の所為であったとし
てもそれは春乃といるところを見られたからであって、今こうして雄二と居ることがその原因になるとは思え
ない。事実、郁乃の顔色は悪くなく見えた。
――大丈夫なのか?
と、そう聞こうとしてその言葉を雄二は飲み込んだ。そんなことを聞けばすべてが郁乃の責任になるだろ
う。帰ってきたときに雄二には郁乃が大丈夫だと言ったからという言い訳ができてしまう。それならまだ勝手
に連れ出したと非難されるほうがいい。
覚悟を決める。
「……薬と水筒はあるか?」
郁乃が無言で椅子の上に置かれた小さなポーチを指差した。中をあけて確認するとシートに収まった錠剤
と小さな水筒。昨日愛佳が使ったものだ。
「あと、紙とペン」
郁乃が学校用のカバンからボールペンとルーズリーフを一枚取り出す。それを受け取って雄二は――郁
乃を連れて海に行ってくる。雄二――と書いてサイドテーブルの上に置いた。
「先に言っておくぞ。俺は郁乃の体調に対して責任は取れない」
だが連れ出したことに対する責任なら俺にある。そう無言で付け加える。
「……うん。分かってる」
真剣な顔で郁乃が頷いた。
車椅子に郁乃を乗せて何食わぬ顔で歩き出す。こういうときは見られないように気をつけるより、何気ない
風を装うのが一番だ。それでもエレベーターで一階に降り病院の外に出るまでは、今にも後ろから誰かに呼
び止められるのではないかと気が気でなかった。
幸いだったのは郁乃が昨日救急車で運び込まれたにも関わらず、その状態はそれほど酷くないことで
あった。郁乃が言うには再発や急性期には発作で痙攣を起こしたり、意識を失うことがあっても、それでそ
のまま死ぬような病気ではないから大丈夫だということだった。
二人はあまり話さずに駅に向かい、海に向かう電車に乗った。
何かを話せば、その中に春乃のことが出てくるのではないかという恐怖心がそうさせている。
本当は雄二は春乃のことをもっとちゃんと郁乃に話すべきだと思っていた。なんなら始めから春乃が押し
かけ婚約者であるけれど、自分はなんとも思ってない。断るとはっきり言っておけばよかったとも。しかし同
時に昨日の郁乃の様子からも、やはり話さなくてよかったとも思う。
いずれ笑い話にできるときがきたら、その時に話せばいいのかもしれない。
2時間ほど電車に揺られると、やがてその窓から海が見えてきた。
「わあ……」
郁乃の顔にありありと喜びが浮かび上がる。時間かそれとも海か、またはその両方が二人の間にあった
ぎこちない空気を消し去っていく。
海の傍の駅で二人は電車を降りた。
海沿いの道を車椅子を押して歩く。海は砂浜の向こうで少し遠い。それでも画面でも、写真でも、窓の向こ
うでもない海はどこまでも広がっていて、その音と風と匂いに郁乃は包まれる。
「もうちょっと海の傍に行きたい」
「車椅子じゃ入れないぜ」
じっと郁乃が雄二の顔を見上げる。無言のおねだり。
「仕方ねぇなぁ」
車椅子を止めて、両手で郁乃を抱き上げる。その軽さに驚く。
「よっと」
コンクリートの防波堤から砂浜に下りる。しっかりと砂を踏みしめて砂浜を波打ち際に向かって歩く。
潮の香り、潮騒。
「砂、ついちゃうぜ」
「……ん」
波打ち際から5メートルほど離れたところに郁乃をそっと座らせて、その隣に雄二も座る。
二人で座って寄せては返す波を飽きることなく眺める。
「……知ってる? 天国じゃみんなが海のことを話すのよ」
どれほどそうしていただろうか。ふとそんなことを郁乃が呟いた。
雄二は随分前に観た映画を思い出す。
余命いくばくもない二人の男が病院を抜け出して海へ向かう物語――。
郁乃の目は海を見ているのか、それとも天国の扉を見ているのか。
「それは映画の話だろ。だいたい誰に聞いたんだよ。映画なんて見たことないだろ」
「他の入院患者さんから。――映画の話っていうのは違うと思う。天国で海の話をするかなんて本当はどう
でもいいのよ。ただ死ぬ前に海が見たかった、それだけ」
「郁乃も?」
「あたしは違う。海を見れたからもう死んでもいいなんて思わない」
郁乃が海から目を離して雄二を見る。
「今はしたいことがたくさんあるから」
そうしてまた海に視線を戻す。
「海を見ただけじゃ足りないの。手、貸して」
郁乃が伸ばした手を雄二が掴む。そしてそれを支点に郁乃が立ち上がろうとする。痛みにその顔が歪む。
「お、おい」
がくがくと郁乃の膝が揺れる。痛みに耐えかねてぺたんと尻餅をつく。でも郁乃は諦めない。もう一度
――。
雄二は立ち上がって後ろから抱きしめるように郁乃の体を支える。郁乃の足に彼女の体を支えるだけの力
はない。
「自分の足で立って歩きたい!」
郁乃の叫びは潮騒にかき消されて消える。
「病気なんて!」
郁乃の体ががくがくと震える。
「雄二さんと!」
「落ち着け、郁乃」
「いっしょ……うき……いの」
唇もがたがたと震える。ろれつが回らなくなる。
日傘を放り投げて、震える郁乃の体を抱き上げる。
車椅子に向かって走る!
郁乃の体は驚くほど軽い。だが砂に足をとられてうまく走れない。
ぱくぱくと口をあける郁乃を車椅子に座らせて、ポーチから薬と水の入ったペットボトルを取り出して郁乃に
渡そうとするが、郁乃は手が震えていて受け取れない。
「郁乃! しっかりしろ! 郁乃!」
シートから取り出した錠剤を震える唇の中に押し込む。フタをあけたペットボトルをその口に向けて傾ける
が、そのわきから水が零れ落ちる。雄二は自分の口に水を含んで、郁乃に口付けすると零れないように水
を押し込んだ。
――ごくり、と、郁乃の喉がなる。
かちかちと歯が当たる。
雄二は自分の足も震えていることに今更気付く。
「そ、そうだ。救急車」
慌てて懐から携帯電話を取り出す。
「あ……」
郁乃の口から音が漏れる。言葉が出ないと分かると、郁乃は首を横に振った。
「あ、あいひょうふ――」
空気の漏れるような音。しかしそれが大丈夫と言ってることは分かる。
「大丈夫なワケあるかっ!」
構わず119を押そうとした雄二の服を郁乃の手が掴む。その手の力は弱弱しいのに、雄二の手も止まっ
てしまう。弱い力が雄二を引き寄せる。雄二の手から携帯電話がすべり落ちる。そしてそのまま郁乃を抱き
しめた。
そしてどれくらいそうしていただろう。
ぽつりと雄二の頬に冷たい雫が落ちた。
「……ありがとう」
そんな声が雄二の耳元で聞こえた。
「ごめんね。興奮したらいけないのに……」
「大丈夫か?」
「うん。まだあんまり手足の感覚ないけど……」
ぽつり、ぽつり……。
いつの間にかあれだけ晴れ渡っていた空は真っ黒い雲に覆われている。
ぽつ、ぽつ、ぽつ……。
「天気予報は晴れって言ってたのにな」
「さっきまでは晴れてたじゃない」
「傘、取ってくる」
雄二は雨の降り出した砂浜を走って、日傘を取って郁乃の元に戻る。
「通り雨かな……」
「でしょうね」
郁乃に傘を掲げた頃に急に雨脚が強くなる。
「このままだとふたりとも濡鼠ね。雨宿り、する?」
「どっかいいとこあったかな?」
「……来る途中にあったよ」
「何が?」
「……――」
郁乃の呟きは小さすぎて雨音にかき消されて聞き取れない。
「だから何?」
「なんでいっつもいっつも聞き返すのよ! ホテルよ、ホテル! あったでしょ!」
叫んでからかーっと郁乃の顔が赤くなる。
「あ、雨宿りするだけよ!」
そういうわけで雄二は人生で始めてラブホテルとかいうものの門をくぐることになった。この前雑誌で見た
デートホテルとか言うのではなく、どちらかというと旧来のラブホテルそのものという感じだ。
勝手の分からないままロビーに入ると、小さな受付窓の向こうから「休憩かい?」
と、聞かれたのでよく分からないまま「はい」と答えると、小窓から鍵が差し出されたので受け取って奥に
進む。幸いエレベーターはあったので、階段を郁乃を抱いて上がる必要はなかった。
「これ、302って3階?」
「だと、思う……」
妙に声を潜めてしまう。
3階で降りると、わざわざ廊下に303−306← →301−302と書いてあって迷うこともなかった。鍵を
使ってドアを開ける。ちょっと狭くて車椅子を通すのに苦労するが、なんとか入れないことはなかった。
濡れた車輪のままで屋内に車椅子を入れるのもなんなので、雄二は郁乃を抱き上げて……、ベッドは恥
ずかしかったのでソファに座らせる。そしてその隣に身を沈めた。
「あー、なんか無駄に緊張した」
「あたしも……」
ようやく落ち着くと、部屋の中を見回す余裕も出てくる。
ソファ、テレビ、キングサイズのベッド……。
妙に大きなガラスが目に付いて、その向こうを見ようとベッドの傍に歩み寄ると、
「うお、なんじゃこりゃ」
「え、なに?」
「風呂が丸見えになってる……」
まあ簡単な話、バスルームがガラス張りになっておりベッド付近から丸見えになっているのだった。
「どういう意味があるんだよ」
思わず両手をベッドについて突っ伏してしまう。
「こんなところまで来るんだったら、見られても一緒ってことでしょ」
郁乃はくすくすと笑う。
「ねえ、濡れちゃったしお風呂入ろっか」
「え……」
「もちろん雄二さんが手伝ってくれなきゃ無理だけど」
「あ、いや、ダメってことはないけど」
どくんと雄二の心臓が大きく打った。
「で、でも風呂に入るってことはつまり、その、あれだ」
「裸になるってことでしょ。……あたしは気にしない」
そう言うなり、郁乃は着ていたシャツを捲り上げた。白い肌とつつましい胸を包むブラが露わになる。
思わず雄二の視線が釘付けになった。しかしその視線を気にする風でもなく、郁乃は手を背中に回してブ
ラも外してしまう。その形のいい胸から雄二は目を離せない。
「じっと見てないで下、脱がせてよ……。風邪ひいちゃうよ」
郁乃は淡々と言う。裸を見せることに抵抗はないのか、と雄二は疑問に思ったが、よく考えれば幼い頃か
ら検査やなにやらで人に肌を晒す機会は多かっただろうから、今更、ということなのかもしれない。
とは言え、郁乃がいくら慣れていても雄二が慣れているわけではない。恐る恐る郁乃のズボンに手をかけ
た。郁乃が上半身の力で腰を上げて、その間に雄二が引き抜く。
「……!!」
――そして雄二は固まった。郁乃の足からズボンを引き抜いた姿勢のままで動けなくなる。
「ねえ、これ見てもまだあたしのこと可愛いって言える?」
呼吸が止まった。
郁乃の足――、腿から膝の少し下にかけてまでがまるで――。
それは皮膚の色ではなかった。赤く黒く変色し、またでこぼこに膨れ上がったりへこんだりしている。
雄二はただその醜く斑な色彩の肌を見つめることしかできない。顔を上げて郁乃の顔を見る勇気がでな
かった。胸がどこまでも苦しいのはただ郁乃の気持ちを考えたからではない。どれほど雄二が認めたくなく
てもそれは生理的な嫌悪感に他ならない。
それは醜かった。郁乃の体の一部ということを認めたくないくらいに、触れることどころか目を向けることす
ら躊躇われるような……。
雄二になにが言えるだろう。言葉を選ばなくてはいけない。郁乃を傷つけないように……。と、思っても、な
にも言葉が出てこない。ないものはどうやったって選びようがない。
「こんな女触れたくなくなった?」
斑な皮膚の上に落ちた一滴の水滴。弾かれたように郁乃の顔を見た。その瞳からはぼろぼろと大粒の涙
が生まれ、零れ落ちていく。
郁乃はどんな思いでこの肌を晒したのだろうか?
それを考えると、雄二の胸は締め付けられた。
郁乃の肌は醜い。それは変えようのない事実だ。
けれど――
雄二は斑な皮膚の上に落ちた滴に口付けた。
「え……」
突然触れられて郁乃の体が少し震える。
――それに対する俺の気持ちなら変えられる。
「可愛いとは、綺麗とかは確かに言えない」
滑らかとは間違っても言えない皮膚をゆっくりと撫でる。
それはとても悲しい感触だった。
「でも郁乃ならそれでいい……」
膝に口付ける。
腿に口付ける。
脇腹に口付ける。
肩に、首に、頬に、頭に、涙のあふれた目蓋に、鼻先に、そして唇に口付けた。
「郁乃、愛してる……」
唇がほとんど触れたままの距離でそう呟いた。
「人を愛するって不思議だな……。頭だけじゃなくて、心だけじゃなくて――」
「指先が……」
雄二の言葉を郁乃が継いだ。
「唇が……、体の全部が愛してる気持ちで満たされて……」
そして二人はもう一度唇を重ね、強く強く抱きしめあい求め合った。
「雄二さん、あのね、あたし先に言っておかなきゃいけないことがあるの」
ベッドの上でお互いに深く触れ合い、肌と肌をすり合わせて、そして最後の触れ合いに至ろうとしていたと
きに、不意に郁乃がそんなことを言い出した。
「え? 俺、下手だったかな」
「……違うよ」
郁乃が苦笑する。下手だとか上手いだとかが郁乃に分かる訳もないし、そんなことはどうでもよかった。
「違うの。あたし、感じないみたいなの」
雄二との触れ合いはどこまでも心地よかった。しかしそれは郁乃の中で性的な興奮には決して至らなかっ
た。郁乃はその可能性を知っていた。
以前に医師が言ったことがある。
この病気の症状のひとつとして性機能の不全があり、男性なら程度の違いこそあれインポテンツになった
り、女性なら性的興奮を覚えられなかったり、性的満足感を得られないということがある、と。
その時はどうでもいいと思ったし、そんなことを経験することになるなどとも思いもしていなかった。
けれど今、どうやらそれが郁乃自身の身に起こっていた。
「気持ちよくないってこと?」
雄二の問いに郁乃は首を横に振る。
性的興奮が無いということと、性的満足感が無いということは必ずしも一致しない。
雄二の指が、唇が、皮膚が、郁乃の体に触れるたびに、どうしようもないほどの喜びが湧き上がってくるの
は間違いようのない事実だ。それはとても心地よい。
「気持ちいいし、嬉しい。でも、なんていうのかな、快感とかそういうのとは程遠いの」
「……止めたほうがいい?」
不安そうな雄二の顔に郁乃はまた苦笑する。
「違うわよ。もう、こんな恥ずかしいこと言わせたいの?」
郁乃は雄二の顔を引き寄せて口付けた。
「……続けて、あたしは感じないかもしれないけど、雄二さんに気持ちよくなって欲しいから……」
すぐに郁乃の言った意味は理解できた。熱くキツイ肉を押し分けたとき、なお一層それははっきりした。
……郁乃には引き千切られる痛みしかない。そこにはほんのわずかな悦びすらない。
それでも郁乃は微笑んだ。それは悦びによるものではなく、喜びによるもの。
俺は悲しかった。
――あたしは嬉しかった。
肉の悦びはあっても、与える喜びはない。
――肉の悦びはなくとも、与える喜びがある。
郁乃の顔に悦びは無い。少しだけ苦痛に歪んだ優しい微笑。
――雄二さんの顔に喜びは無い。少しだけ快楽に歪んだ悲しい微笑。
「気持ちいいですか?」
「……ああ、とても気持ちいい」
それが悲しい。
――それが嬉しい。
郁乃の手が俺の頬に触れる。
――雄二さんの手があたしの頬に触れる。
その頭を強く抱いた。
――雄二さんの胸に顔を埋めるように、その体を抱きしめた。
俺たちは同じ快楽を享受できない。
――あたしたちは同じように気持ち良くはなれない。
けれど。
――けれど。
ただ心だけが
――溶け合うように
――――繋がっている。
やっと題名のシーン消化。ここまでが(主に春乃さんのせいで)長かったー。
性的快楽を求めるものではない性交を描くことが始めから決まっていました。だから、ただ心だけが。
免疫疾患で皮膚に症状が現れる場合、大抵まず顔に症状が出るそうで、資料集めの際に何枚も写真を
見ましたが。・゚・(ノД`)・゚・。幸い郁乃は顔には症状が出ていないわけですが、服に隠れている部分にそういう
症状が出ているということは当初からちょくちょく臭わせてました。
執筆時のBGMは今回はほとんど鬼束ちひろ。書いているシーンに合わせてBGM変えるのは重要ですね。
海に関してなんか色々予想してくれてたけど、ノッキングオンザヘブンズドアが好きなだけなんだ。
物語はもうちょっと続きます。14日は予定ができたので、次は三日か四日くらい開くかも(・∀・)ニヤニヤ
だんだん奥深くなっていく
すばらしいです。
本当にいい話です。
最初から通しで読んでいますが、グッジョブなんて言葉じゃ感想を言い表せねぇ…素晴らしい
続き、楽しみにしています
某氏とネタがかぶってた。
しかも実力的に劣ってたから駆け足でうpしないで助かったよw
>548の書き方が素晴らしいですね。
題名のシーンが出てきたので終わりかなと思いました。
まだ続くんですね。
期待してます。
無茶苦茶いい話や><
続きが気になるぜ
すごいなあ…
もう、俺とはレベルが違いすぎますな。
俺もタマ姉ネタ(エロ?)を現在製作中ですが、
うpしちゃっていいものか…
てか、郁乃は入院生活が長かったからENDで車椅子に乗っていただけ
じゃなかったのか?
それとも、病気で歩けないなんて設定があるのか
ゲーム内にそこらの説明がないからどちらともいえない。
つか何の病気だったっけ?
眼がどうたらこうたらというのは覚えているんだが
>>558 そうかもしれないが、全身性自己免疫性疾患と
分類されるものの中には、
「多発性筋炎」という筋力の衰えを示すものがあり、
なんとも断言できない。
562 :
名無しさんだよもん:05/02/13 03:34:13 ID:m8neRE3l0
エロシーンなのにエロくない。
変わりに胸が、目頭が熱くなる。
美しいとさえ思ってしまいました。
すばらしいの一言に尽きます。
続き期待してます!><
563 :
7月文月:05/02/13 03:36:49 ID:WEuP1h5f0
おはようございます
(゚∀゚)よっち!よっち!
ようやくできますた。
今からうpしようと思います
時刻は午後三時十分。日も傾き始めた頃、
向坂環は帰宅しようと、下駄箱を開けた。すると
環「あら、手紙…?」
靴の上には一通の手紙。差出人の名前は無く、
小さな女の子文字で、「向坂環様へ」と書いてある。
ハートのシールで封がされているところを見ると、
どうやらラブレターのつもりらしい。
環(九条院にもこういうのはあったけど…)
封を開ける。やはり差出人は
女の子のようで、丸文字で
『向坂環様。あなたをとてもお慕い申し上げております。
つきましては、今日三時十五分、体育館倉庫にて、
返事をお待ちしております。』
と、これだけが書いてあった。
環(どうして私は女の子ばかりに告白されるのかしら…)
かと言って、折角自分を待っている人が
いるのに、無視するわけにもいかない
環(顔を出して、断ってくるだけでいいわよね)
環は手紙を鞄の中に収めると、
体育館倉庫へ向かった。
三時十六分。環は、体育館倉庫の扉を開けた。
電気はついているが、人がいる気配は無い。
環(あら?間違ったのかしら…)
倉庫は第一倉庫、第二倉庫の2つある。もしかしたら
もう一方の倉庫で待っているのかもしれない。
環が倉庫を出ようと、振り向こうとしたその時
環「っ!?」
急に誰かに体を掴まれ、布で口を塞がれる環。
途端、意識が朦朧とし始め、体に力が入らなくなる。
何かを考える余裕も無く、環は意識を失っていった。
環「…う……」
目覚めた環。次第に意識がはっきりしてくる。
大方、クロロホルム(催眠剤)でも嗅がされたのだろう。
環「そうだ…私…」
完全に意識を取り戻した環は、立ち上がろうと体を動かす。
しかし、その場から動くことができない。
見ると、両手足が拘束され、身動きがとれない状態だった。
環「え…?ちょっ…、何なの?これ…」
「ようやくお目覚めになられましたね。お姉様…」
聞いたことのある声。そもそも、この学校で環の事を
「お姉様」と呼ぶのは、三人しかいない。
案の定、環の前に立っていたのは、
環を九条院に連れ戻すために転校してきた、
玲於奈、薫子、霞の三人だった。
下駄箱に手紙を入れたのも、
環を気絶させ拘束したのも、
他ならぬ三人の仕業だったのだ。
環「あなたたち…。これは一体どういう事?」
玲於奈「お姉様がいけないんです。
私達がこんなに愛しているのに、
あのような男に心を奪われてしまって…」
薫子「お姉様を目覚めさせるには、
こうするしかなかったんです!」
霞「こくこく!」
環「で、でもちょっと、
これはいくらなんでもやりすぎ…んっ、ふむぅッ!?」
突然、玲於奈にキスされた環。
さらに、玲於奈の口から液体のような
ものが流れこんできた。思わず飲み込んでしまう。
環「んくっ……な…何を飲ませたの!?
…ん、やぁっ!ふあぁあッ!?」
突如、体中が熱くなり、股間が疼いた。
薫子「霞特製の媚薬です。速効性で、
飲んだ瞬間に効果が現れますよ」
霞「こくこく…」
環「媚薬って…。やぁんっ!いやっ…ああぁ……にゃぁああん!!」
体中の水分が沸騰してしまいそうな熱さ。
スカートの中は、薬の効果で
すでにぐしょぐしょに濡れている。
玲於奈「ああ……。とても可愛らしいです、お姉様…。」
薫子「私はもう…お姉様を見ているだけで
感じてしまいそうです…」
霞「どきどきどきどき…」
薬を飲まされただけなのに、物凄い快感が全身を駆け巡る。
三人は、強烈な快感に悶える環の姿を、
恍惚とした表情で見つめていた。
玲於奈「お姉様。私達が、お姉様が
もっと気持ち良くなれるようにお手伝いいたします。
あの男の事も忘れてしまうくらい…」
三人はゆっくりと環に近寄り、
環の体中を両手で弄る。
環「やッ、やめ…っ!
にゃっ!?ふにゃああぁぁあんッ!!」
薫子「すごい…お姉様…。
触っただけでイッてしまわれるなんて…。
もっと…もっとお姉様を気持ち良くして差し上げますわ」
霞「こくこく」
三人は、環にさらに激しい愛撫を続けた。
玲於奈の舌に自らの舌を犯され、
薫子に豊かな両胸を攻められ、
霞に秘所をいじくりまわされる環。
必死に抵抗しようとするが、
身動きがとれないのでどうしようもない。
それどころか、媚薬の効果で触るだけで
感じてしまう体になった環は、
三人に攻められる間中イッてしまう羽目になった。
環「んあっ…ああ……も、もう許して…にゃあっ!
やっ…いやぁ!…まっ、またイッちゃうぅぅ!!
にゃん!いにゃああぁぁあ!!」
玲於奈「あんっ…お姉様ぁ…。
私も、もうイッてしまいそうですぅっ…!」
薫子「わ、私も……もう、
我慢出来ませんッッ!お姉様ぁ!」
霞「ん…、ふぅん……っ」
全身を激しく悶えさせる四人。
そして、四人が同時に絶頂を迎えた。
環「いっ、いにゃあああああぁぁん!!
またっ、またイッ…くぅあああぁんッ!!」
玲於奈&薫子&霞「おっ、お姉様ァぁあっ!!
あん!ふぁあああぁっッ!!」
全員同時に果てた後、
荒い息を吐きながら、玲於奈が呟いた。
玲於奈「お姉様…、私達は、
いつまでも、ずっと一緒ですよ…」
ようやく、薬の効果が切れ、放心する環。
意識が薄れていくなか、
環は、静かに頷いた。
これで終わりです。
なんか、どこにでもあるようなネタですね…
とっくに既出してそうな話でスマソでした。
ではでは
573 :
日記1:05/02/13 13:36:43 ID:zRpcUUPeO
「えーー…今日から復学する事になった…」
教壇に立つクラス担任が事前に私の事を紹介してくれる。
その間、する事のない私はこれから多くの時間を共有する事になるクラスメイト達に視線を向ける。
ほとんどの生徒が担任の話を聞きつつ、友達同士でヒソヒソと話あっている。
まぁ、話題は確実に私のことだろう。
「…じゃあ、本人に自己紹介してもらおうか?」
などと考えていると担任に話をふられる。
「はじめまして…───」
挨拶を済ませる。
…正直、人前でこういう事をするのは苦手だった。
しかし今朝、姉に
「最初が肝心なんだからね!」
と釘をさされていた為、私なりに『多少』は頑張ってみた。
その後、私のために設けられた机に移動し一時間目が始まる…。
授業の合間にクラスメイトの質問責めに合いながらも何とか無事に昼休みを向かえる事ができた。
574 :
日記2:05/02/13 14:03:12 ID:zRpcUUPeO
昼休み…。
私の周りには物凄い数の人垣が出来ていた。
(この人達はそんなに私が珍しいのか?
…いや、珍しいのだろう。
車椅子で授業を受ける病弱な生徒…。
珍しくないはずがない。)
心の中でそう毒付く。
彼等に罪は無い。しかし、私にも罪は無い。
だから、どうする事もできず困り果てていたその時だった…。
誰かが私の車椅子のハンドルを握ると、人垣を掻き分けて私を教室の外へと連れ出してくれた。
「ここまで来れば、大丈夫だよ!」
そう言って連れて来られた場所…そこは恐らく中庭だろうか?
私は突然の事に呆然とするものの、あの窮屈な場所から解放され一心地つく。
「ごめんね。無理矢理こんな事しちゃって…」
背中で声が聞こえる。
(そっか。私、拉致されたんだ…)
考え込んで、無言でいると後ろのクラスメイトは
「やっぱり…迷惑だった…かな?」
と申し訳なさそうに尋ねてきた。
575 :
日記3:05/02/13 14:26:05 ID:zRpcUUPeO
「そ、そんな事無い!」
慌てて振り向き、返事をする。
私を連れ出してくれた人。
左右の髪をピンク色のリボンで結い、背丈は同じ位。たしか私の隣の席の…。
「柚原…さん?」
午前の記憶を辿り、彼女の名前を口にする。
「私の名前、覚えてくれたんだ!?」
やたー!と両手を上げ、喜びを体で表現する彼女。
しかし、私の視線に気付き我に戻る。
「ご、ごめんなさい…つい…」
一転、しゅんとなる柚原さん。
「くすくすっ…」
思わず笑みがこぼれる。
そんな私に釣られ柚原さんも笑い出す。
それが私と彼女の出会いだった…。
続く
>前スレ757
スレッドのタブの上で右クリックしてプロパティ。
常にチェックするなら、スキンのFooter.htmの該当部分を
( 新着 : <NEWRESCOUNT/> 件 / 総件数 : <ALLRESCOUNT/> 件 / サイズ : <SIZEKB/> KB )
とかすると便利。
577 :
名無しさんだよもん:05/02/13 21:18:47 ID:OfFe5BiAO
姫百合姉妹も絡んでほすぃ
>>576 サンクス。ずっと(∩・ω・)∩の姿勢のままだったよ・・・
俺はどうやら女の子同士の絡みが好きなようです。
なんかイイ(・∀・)!!組み合わせ無いですかね?
このみと春夏さんでヨロシク!
タマ姉と誰か
由真と委員ちょ!
タマ姉とイルファ
入るファと汁ファと診るファ
由真&るーこ(ぁ
>>549 シャーマンの中にファイアフライが紛れ込んでいるのを発見したような
インパクトがあったぞ。るー☆
由真&愛佳
もしくは姫百合姉妹が妥当な線でしょうか
ミルファとシルファは資料が少ないので難いですね
あとは……るーこと花梨とか…?
思いついたら書いてみようと思いますのでよろ
花梨&瑠璃
花梨&このみの異色のコンビ
590 :
名無しさんだよもん:05/02/14 03:02:35 ID:euNLvHmp0
花梨と琴音
綾香と由真
上記にもあったけど、
姫百合姉妹と郁乃&このみ
1のキャラとのコラボはつながりの深い2の良いところだわな。
イルファ×瑠璃
玲於奈×薫子
いいんちょ×郁乃
よっち×ちゃる
ダニエルXゲンジ丸
ダニエル「ほれっ!ヌシの濃ゆい精を儂の中に注ぎ込むんじゃ!」
ゲンジ丸に背をむけ四ん這いになるダニエル。
ゲンジ丸「ばう!ばう!」
ぱんぱんぱん!
ゲンジ丸は誘われるがまま、己の分身を目の前の穴に押し入れる。
ダニエル「!!!
おぉぉ…これは、また…ヒトでは味わえぬ快楽よ!!」
肛門に力を込める…と同時に……
スマソ…本当に…スマソ…m(__)m
書いてて氏にたくなったよ…
ゲンジ丸、随分アグレッシブだな。
普段うごかねえくせになw
タマ姉のED後のSSってあったっけ?
なかったら挑戦してみたいんだが・・・
>>596 別にあっても挑戦するのは問題なくない?
というか書いて( ゚д゚)ホスィ…
>>596 前スレにあったが気にせず挑戦してくれ。
俺の好みで恐縮だが月光華園っていうHPのタマ姉SSは凄いいい出来ダタヨ。
>>597-598 過去スレ読んでないし、SSサイト巡りもやらないので
ネタが被るとアレかな〜と・・・・・
取り敢えず、前スレのログ見て、
ネタが被んないようなら明日までに上げられるように頑張ってみまつ(´-`)
ただ、そんな長いのを書こうとしてないんで期待しないで・・・
忘れた頃にやってくるって感じで・・・・・
チャレンジ精神に溢れてる人募集中
5月1日(土)
「タカ坊・・・タカ坊・・・」
ユサユサ・・・ユサユサ・・・
「タカ坊・・・タカ坊・・・」
ユサユサ・・・ユサユサ・・・プニ・・・・・・・・ん? プニ・・・? 何か前にも同じことがあったような・・・・・
「ん・・・・・タマ姉・・・?」
「起きた? タカ坊」
気がついたらいつの間にか朝になっていた。どうやら、看病したまま寝てしまったらしい。タマ姉も今さっき起きたばかりみたいだ。
「あのままずっと一晩中看病しててくれたんだ・・・」
そう言って、タマ姉が穏やかに微笑む。ハッと、昨日のことを思い出してつい顔を赤くしてしまう。
「あ〜ら、朝っぱらから何を考えてるのかな〜? フフッ」
妖艶な笑み。だけど、いつものようなゾクッと背筋が凍るような感じはしない。やっぱり、お互い告白して気持ちを確かめ合ったからだろうか。だけど、何だか照れ臭い。
「タカ坊も健全な男なワケだし? 朝から興奮するのもわかるけど」
タマ姉の言葉でさらに顔が火照る。
「違うの?」
「違わないけど・・・」
「ま、それはさておき。昨日から制服のままだからそろそろ着替えたいんだけど・・・着替えるところ見る?」
って突然、何てことを言い出しますか、この人は。だが、ここでまた慌てると今後、タマ姉にずっとペースを握られかねない気がする。いや、実際もうかなり握られてるけど・・・
「わかった。じゃあ、俺も一度帰るよ。着替えたいし。」
さすがにこっちも一度、家に戻って着替えないと。このみは・・・・・先に行ってるからいいのか。何だか、少しだけ心の奥がズキッと痛んだような気がした。
「あら、つれないのね。」
タマ姉は本気で残念がってるようだった。う〜ん、ホントに主導権を握れるようになるんだろうか・・・?惚けていると、
「タカ坊、ちょっとだけ部屋の外で待ってて。朝食を作るから一緒に食べましょう。」
そういって、タマ姉が微笑んだ。
「あれ? 具合はもう良いの?」
「ええ。一晩中、タカ坊が看病してくれたんですもの。」
確かに、昨日と比べてタマ姉の顔色が良い気がする。
「お礼にご馳走を作ってあげる。勿論、昨日の「おわび」とは別よ♪ 腕によりをかけちゃうんだから。」
思い出すとまた赤面しそうになるので、慌ててタマ姉の部屋から出た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ふと、玄関の方の扉が開く音がした。
「ふ〜、やっと帰ってこれた。これから学校ってのがまただりぃけどな。」
どうやら雄二が帰って来たらしい。
「あれ、貴明? こんな朝っぱらから何でこんなとこに居んだ?」
タマ姉の部屋の前で待ってた俺と鉢合わせした。
「何だ。姉貴に迎えに来させられたのか? ・・・それとも、まさか・・・・・・」
「いや、雄二、これは・・・・・・」
「昨日、誰も居ないのをいいことに、おおかた姉貴に無理矢理連れ込まれたんだろ? そうなんだろ?」
怪訝な表情をする雄二。ふぅ〜っ、とため息までついている。
「いくらなんでも手が早すぎだろ、姉貴・・・。まあ、結果的にお前もまんざらじゃなかったみたいだし? もうちっと、目立たないようにやってくれれば俺としちゃOKなんだけどな・・・。で、どうだったよ?」
雄二の顔がニヤついている。
「なっ、どうって・・・・・」
すると突然、タマ姉の部屋のドアが開いたかと思うと、中から伸びてきた手が的確に雄二の顔面を捉えた。
ガシッ
「あだだだだっだだだだだだだだだだだだだ」
朝イチの挨拶代わりのアイアンクローといったところか。
「誰の手が早いって? 雄二ったら、朝っぱらから寝ぼけてるのかしら」
ギリギリギリ、と例のごとく締め上げられる。
「今、目が覚めました!すぐ、目が覚めました!もう、目が覚め・・・・・・・ぺきょー」
雄二が事切れそうになる寸前、やっとのことでアイアンクローが解かれた。
「タマ姉、もう着替え終わったんだ?」
「ええ。いつまで経っても、タカ坊が覗く気配ないし。」
ええと、俺にそんな勇気はないデスヨ?
「で、何で貴明がこんな時間からウチに居るんだ?」
やっと、落ち着いたのか、雄二が尋ねてくる。
「それは・・・・・・」
「昨日、私が熱出して、タカ坊がずっと看病しててくれたのよ。」
タマ姉が助け舟を出してくれた。
「へぇ〜〜、やるじゃねぇか。ウチの姉貴と二人っきりなんて怖かったろうに・・・」
ガシッ
「あだだだだだだだだだだだだだだだだだ」
「雄二が前もって謝った意味がやっとわかった気がするよ、何となく。」
「ん、タカ坊、何か言った?」
「あ、いや、何でも-------」
と、急に目の前が景色が揺れる。目眩・・・か? よろけそうにになったが、壁に手を付いて何とか倒れるのだけは免れた。
「タカ坊!?」
慌ててタマ姉が俺の身体を支えてくれる。
「さっきは寝起きで気付かなかったけど、タカ坊、もしかしなくても熱あるでしょ?」
「いや、ちょっと立ちくらみしただけだよ。」
というものの、身体に力が入らない。ちょうど、昨日のタマ姉の状態だ。タマ姉の風邪を貰ったかな?
「雄二、タカ坊は今日は休ませるから、学校行ったら先生に言っておいて。今度は私が付きっきりで看病するから。」
「タマ姉、俺は大丈夫だから・・・」
「病人は無理しないで大人しくしてるの。」
真剣なタマ姉の迫力に負けて、諭されてしまう。
「何だ、姉貴も休むのか? まあ、それならそれで良いけどよ。で、このみはどうするんだ?」
「朝、会ったら伝えておいて。心配するだろうし。”事情”は私が後からでも直接話すから。」
「そう・・・か。わかった。取り敢えず、貴明が休むってことだけ伝えとくよ。」
「お願いね。」
-----そう、このみには話さなくちゃいけない。昨日、タマ姉と気持ちが通じ合った後、看病を続けながらそれは考えてた。でも、それはタマ姉からじゃなく、俺から伝えなくちゃいけない。そんな気がする。
「タマ姉、このみには俺から伝えないと・・・・・」
「いいから、私のベッドを貸してあげるから少い横になりなさい。お薬とか用意してくるから。」
「でも、タマ姉・・・・・」
昨日の今日だけど、このみに伝えるなら早い方が良い。わだかまりを残さないためにも。
「タカ坊。言うこと聞かないと、お姫様だっこで無理矢理ベッドに連れてくわよ?」
うげ、それはイヤだ・・・。だが、どうもこのままだとタマ姉はホントにやりそうだ。ただでさえ、もともと腕っ節で敵わないのに、こっちの体調が悪いんじゃ抵抗のしようがない。しぶしぶタマ姉の部屋に戻る。
「じゃあ、雄二。後はお願いね。」
「ああ。じゃ、行ってくるよ。・・・ふぅ、貴明も可愛そうに・・・・・ナンマンダブナンマンダブ」
こらそこ、念仏を唱えるな、念仏を。
さすがに、立ってると辛いのでここは遠慮なく、タマ姉のベッドに横にならせて貰う。何だか良いにおいだ。昨日は気付かなかったけど、さすがに”タマ姉も”女の子なのか部屋からは良いにおいがする。こんなことは口が裂けても面と向かって言えないが・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ん・・・・・・・・。」
いつの間にか眠ってしまったらしい。寝不足+風邪では当然といえば当然か。気付いたらもう昼をとうに過ぎていた。
「起きた?」
タマ姉は、ちょうどタオルを絞っているところだった。どうやら、俺が寝てる間ずっと看病してくれてたみたいだ。
「気分はどう?」
心配そうにこちらを見ている。いきなり、心配掛けちゃったな・・・。
「グッスリ寝たからもう大丈夫だよ。」
と、起き上がろうとするが、やはりまだ今ひとつ力が入らない。
「もう、無理しないの。せっかくお姉さんが看病してあげてるんだからゆっくり寝てる。」
そういうと、タマ姉はイタズラっぽく笑った。
「『昨日の続き』をするには早く治さないとね。」
昨日と同じこと言ってるよ。だから、続きって何さ・・・。まあ、わかってるけど・・・
「やっと、気持ちが通じ合えたのに、ホント、災難続きね。私たちって。」
「タマ姉・・・・・あのさ、タマ姉。このみには俺から伝えるよ。」
「・・・・・そう。」
タマ姉は優しい笑顔で頷いた。
「いや、俺から伝えなくちゃいけないんだ。このみは俺の大事な”妹”だから・・・」
「タカ坊がちゃんと話せば、このみもわかってくれると思うわ。というより、あの子はタカ坊以上にタカ坊の気持ちをわかってる。」
「タマ姉・・・・・」
「じゃあ、そんなタカ坊に勇気をあげる。」
そういうとタマ姉はゆっくりと顔を近づけてきた。唇と唇が重なる。この間のデートの時とは違う、仮初めじゃない正真正銘の恋人同士のキス。ほんの数秒だったけど、永遠とも思える一瞬。
いろいろと回り道をしたし、まだ問題も山積みだけど、それでも、タマ姉とならどんなことでも乗り越えていける気がする----。
長くてすみません。後、エロ期待した人、漏れには無理だ・・・_| ̄|○
初SSなんで読みにくい部分は多々あると思うけど、勘弁してください。
後、このみとの修羅場も考えたけど、
そこまで書くとToHeartじゃない気がしたんでやめときました。
分けて投稿するの苦労したヨ・・・(;´Д`)
>>606 …つーかもう書いたのかよ!はやっ
初SSと言われなきゃ気づかんほど良かったよ
ネタの被りもないし、タマ姉ほのラブでイイヨイイヨー
ホント(*^ー゚)b グッジョブ!!
>>606 原作とのシンクロ率が高くて、物語の延長を望んでる読者には打ってつけの
内容だと思った。
一つの話として完結するお話もいいけど、この話のように、
原作の続きを垣間見せてくれる内容のものもいいねぇ。
そしてベッドに横になっているタカ坊の縦になってしまったタカ棒を治めてくれるんですね。
すごいなぁ
>>606さん
俺は今由真&愛佳ネタを考案中…。
全然思い浮かばない…
双子BADの後日談ということで、ちょっと書いてみました
いつもとは文体を変えてみたが、面白いかどうかは別問題……
話の筋自体は、すっきりわかりやすいものを目指したつもり
以下、しばらく続きます
要するに、日曜ってのは絶好のナンパ日和なわけでさ。うちみたいな土曜もある学校も、週休二日のとこも休
みなわけでさ、街にもキレイブス問わず女の子がいっぱいなわけよ。
だから俺も行ったよ、駅前に。彼氏に振られてブルーしてるカワイイ女の子とか、いいフェイスやいいボデ
ィーしてるけどファッションがダセえおかげで持てない美女の原石とか、そういうのを発掘するのが無上の喜び
なわけ。純情気取って家でウダウダしてるチェリーボーイとは違うわけですよ、なぁ貴明。
俺様も自分で言うのはアレだが結構なイケメンだしさ、退屈させない自信もあるわけ。だからさ、今日は一人
くらいは釣ってヨシにしようかと思って何人かにお声掛けしたけどさ、うーん、ダメだね。なんでだろうね。
口説くときはさ、真剣そのものだよ。相手を運命の女性とひたすらに信じ、全身全霊で相手を愛して褒めちぎ
る。口説いてるその瞬間だけでも、口説きにかかってるこの女は、俺にとって女神になるわけ。この状態ではカ
ンペキ俺の片思い。どんな言葉を使ってでもまずは振り向いてもらわなくちゃならないわけ。そうしなければ、
同じステージにも上がれやしない。初めて会う女の子と同じステージに上がって、同じものを食って、どうにか
して同じベッドで寝たいわけよ。どうにかこうして寝た後は、相手にもよるけど、どうやって次の一発をヤる
か。もうそれなのよ。まあ俺様も、まだまだ汚れを知らないな純朴な青年ですから、口で言うほど上手くはいか
ないけどね。とにかく、スタートラインに立つにはどうするか。俺は貴明みたいに、黙っていても女の方から寄
ってくる羨ましい男じゃない。悔しいけど、事実。だからこそ、攻めなきゃいけない。こっちから!
だけど、この日は当たりが悪い、最低最悪。どいつもこいつも口を開けば、「ウザイよ、ガキ」とか「バカじ
ゃないの」とか「もっといい口説き文句を考えたら?」とか、そんなんばっかり。おまえらもう少し素直になっ
てさ、思考をオープンなワールドワイドにしてさ、真剣になってるこっちの気持ちに応えてみる気はないのか
ね。「ウザイ」とか「バカ」とか貧弱な語彙を並べ立ててさ、まったく。俺の口から出るのは、ため息ばかり。
顔だけでも言葉だけでも女は釣れない。まだまだ全身から沸き上がる熱い情熱とかオーラが足りないのかな?
極めて短い片思いは、片思いのままでことごとく霧散しちゃいました。ボンッ!てなもんだ。あーあ。
昼になれば、一人寂しくヤックの窓から良く晴れた空を仰ぎ見る。青いキャンバスに白い雲がゆたっている。
おおい雲よぉ、どこへ行く? 素直なギャルが引っかけ放題の国があったら、是非教えてくれえ。
振られた女にゃ興味ないけど、あいつら、俺がガイジンだったらついてきたかな? クルマに乗ってたら話く
らいは聞いてくれたかな? そんなことをふと思った。バイク(原付じゃねーぞ)やクルマの免許、早く欲し
い。でもウチの学校厳しいから、在学中は免許取れないんだよな。クソ親父もきっと反対する。「お前に乗り物
は100年早い」って。100年も経ったら死んでるだろうがよ。おい親父、俺は知ってるんだぞ。別邸にハー
レーダビッドソン持ってて、年甲斐もなく黒い革ジャン、マッカーサー元帥みたいなグラサンでバッチリ決めて
さ、企業の社長連中や重役どもとツーリングして遊んでるってことを。バイクなりクルマがあれば、少なくとも
ガキ扱いはされないだろう……てのは早計ってやつかな? 暴走族(あ、今は“珍走団”って言うのな)みたい
に、クルマ転がしててもお子様な連中はいるけど、それはそれ、これはこれ。まぁ本音は、彼女と一緒にドライ
ブしたい。そんだけ。
憂いを抱いたロンリーガイの俺。窓際で黄昏れてアイスコーヒーをチューと吸ってたら、神様っているんだ
ね。運命的な出会いを授けてくれたわけ。外を見るとさ、すごい女がいた。背がスラッと高くて、色白で、髪は
ポニーテールに纏めてて風になびき、おまけにすげえ巨乳で、ケツを振り振りしながら歩いてたわけよ。黒いワ
ンピースが大人っぽくてさ、足のラインも引き締まってて素晴らしいのなんの。ファッション雑誌の中から逃げ
てきたモデルちゃんみたいでさ、もう一目惚れ。歳は、いくつかなぁ? 二十歳くらいかなぁ? でも、愛があ
れば歳なんか関係ないっ! ここであの娘のハートを射止め、ラブラブ街道をひたすら驀進して、封建的価値観
とメスゴリラの支配するプリズンからエクソダスするんだ! 今こそ、青春の逆転ホームランをぶちかまてや
る! 俺はポテトを残らず口に放り込み、アイスコーヒーで流し込むと、一目散に外へ出た。
青空の下を、彼女の尻を追って駆ける駆ける。パーマのババアも風船持ったお子様も、俺にとってはただの背
景。俺が唯一存在を認めているのは、かの絶世の美女のみ。ようやく追いついたのは、スクランブル交差点の手
前。信号が赤でよかったよかった。天も我に味方せり。俺はポーンと跳躍して、彼女の横にスクッと降り立つ。
綺麗な顔は良く見えないけど、とにかく俺は攻撃開始、攻める攻める。もう攻めの一手よ。クビになった野球選
手が合同トライアウトに挑む心持ちで、全身全霊をかけて俺は行ったさ。
「ねぇ彼女カノジョぉ、すっごいキレイな髪だよね。天使の羽みたいに、春風になびいちゃってさぁ。ほんっ
と、かわいいよねぇ。モデルさんやってるの? それとも女優さん? さっきもどっかの映画監督が、血眼で君
のことを見てたよ? 君を主役にしたいってさ。でも、そいつの撮る作品、きっと他の役者が逃げちゃって映画
にならないよ。君があんまりまぶしすぎるからさぁ、君のプロモーションビデオになっちゃうこと請け合い!
いや、その方が大ヒットするから問題ないってか?」
笑ってるよ、彼女。口に手ぇ当てて、可愛く笑ってるよ。うふっ……ふふふ……って。綺麗な指だなぁ。許さ
れるなら、是非ペロペロしゃぶりたいねぇ。こんな手でしごいてもらったら、一発で昇天しちゃうよね。
こういう女は、野郎に興味がなければシカト決め込むか、手ぇヒラヒラさせて“シッシッ”ってやるかのどっ
ちか。とにかく面白い男だって思わせれば勝ちよ。いざ勝負っ。
「ねぇ彼女ぉ、ここにはよく来るの? この辺じゃぁ、あんまり見かけないよね。見かけたらすぐわかるって。
だって君みたいな超絶セクシーな美女、一目見たらもう二度と忘れねぇ、絶対忘れねえ、メモリーの一番大事な
ところに記憶されてさ、網膜にも焼き付き起こしちゃうもん。君を忘れる奴は人間じゃねえよ、カカシ。そう、
カカシか泥人形!」
彼女はクスクス可愛く笑ってる。脈あるぞ、これは!! この素敵なお姉さん、いったいどんな女なんだろう。
ウチを暴力で支配しているメスゴリラとは違って、優しくて、包容力があって、甘えさせてくれて、アレする時
も「雄二くん……お姉さんが全部教えてあげる……」って具合で優しくリードしてくれちゃったりして!? 手取
り足取り手コキパイズリ、最後は俺がリードして、マングリ返しで突っ込んで激しく腰を跳躍させるの。彼女は
デカいオッパイをブルンブルンさせながら、二人が繋がってる汁まみれの場所を見せつけられて恥ずかしくなっ
ちゃって、喘ぎまくってイクの。いいよね。すごくいいよね。他の女ともそこまでしたことはないけれど、こん
な天使みたいなお姉さんならノープロブレム! もっと知りたい、君のこと。俺は攻めるさ。どこまでも。
「よし、超プリティーな君が何者か当ててあげよう。あっ、わかった。天使の国から逃げてきたんだろう? き
っと、そうに違いないっ!」
「その天使は、こんな顔してるのかしら?」
その天使ちゃんはウフフッて笑うと、俺の方に振り向いたわけ。太陽みたいな満面の笑顔でさぁ。
ああ、彼女は満面の笑顔だったさ。実に楽しそうでさ。この世に恐ろしいものなど何もないような表情でさ。
その邪悪な瞳とトゲを含んだ妖しの指で、俺を捕らえて放さない。この世界に舞い降りた、堕天使だったさ。
この女……姉貴だったさ。
「残念でした、カカシさん。ナンパされちゃったのは、これで二度目かしら?」
ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!
ああそうだよ、二度目だよ。前回は、髪をアップにしてたとき! この歩くブラクラめ! ブラクラはPCを
再起動すればおしまいだけど、こいつはトロイの木馬みたいにいつまでも覚えてやがるし、ついでに食い物を奢
らせ、買い物にも付き合わせて荷物持ちをさせやがってくれるから、なおタチわりい。むしろ、歩く“ワンクリ
ック詐偽”と言うべきだな。ああ、この日も奢らされたさ、高いケーキ2つと美味しい本場物の紅茶を。しめて
1650円(税込)。「声を掛けてきたのは雄二なんだから、あなたが払うのは当然でしょ?」だとよ。へいへ
い、自己責任ってヤツね。クソ。
エロマンガとかの題材に『姉萌え』ってジャンルあるよな。他の連中も「雄二いいよな、あんな綺麗な姉ちゃ
んがいてさぁ」なんて気軽に言ってくれちゃったりするけど、俺は奴らの言ってることが解らねえんだよなぁ。
そりゃあ姉貴を一人の“女”として冷静に見たら、まあ、モデルみたいな体型した美人だと思いますよ。顔も、
アイドル気取りのしょぼい連中よりはずっといい。事実、芸能プロダクションのスカウトに声掛けられたって言
ってた。名刺を俺に見せびらかして、呆れたように鼻で笑ってたっけ。でも、近親者だからこそ実感できること
だが、どう考えても恋愛の対象にはならないね。あれは、女じゃないもの。ギャルの皮を被った『向坂環』って
いう別の生命体だもの。統制社会の頂点に立つ、スターリンやポル・ポト、拳王に匹敵する絶対支配者だもの。
生まれたときから、俺はヤツの正体をまじまじと見てきているんだ。どこの世界の女の子が、健全な青少年の日
常生活を恐怖と暴力で支配しますか? ちょっぴり寝過ごしただけの可愛い弟相手に乱暴狼藉を働きますか?
オヤツから貯金箱の中身までガッチリ管理統制しますか? 私的な用事にもかかわらず、こっちの用など顧み
ず、人を下僕のように駆り出しますか? 端から見れば面倒見のいいお姉ちゃんかもしれんけど、『あなたのモ
ノは私のモノ、私のモノは私のモノ』というジャイアニズム全開の姉貴に萌えろというのは、俺にはできない。
金貰っても無理。日本の国家予算をやるって言われても無駄。ダメなモノは、ダメッ!!
ケーキを美味そうに食っている姉貴を見ると、どうしても思うよ。これが姉貴じゃなかったらなあって。俺の
理想の女性に最も近いのが、姉貴(外見のみ)だなんて。クソ。ワンピースの隙間から、白いレースのブラがチ
ラチラ見えてますよ、お姉様。お嬢様教育されてるくせに、俺の前では地のガサツで荒っぽい部分を大股開きで
見せつけやがる。アイドルの皮を被ったメスゴリラめ、畜生。ああ天よ。なぜ俺にこうも試練を与えるのだ!?
夜中にコッソリと、人の中身だけを取り替えられる機械ってないかなぁ。どっかのマッドサイエンティストが
作っていないだろうか? それが手に入るのなら、先祖伝来の壺や刀剣を売り払っても惜しくはないぞ。取り替
える相手は誰がいいだろう? 例えば、このみはどうかな? ……ダメだ。嬉々として貴明の元へ行っちまう。
「タカくんタカくん、わたしこんなにオッパイ大きくなったよ」って。チビ助は貴明真理教の狂信者、かつデカ
尻巨乳主義に取り憑かれていることは、こちとらお見通しなんだよ。貴明が双子に振られたかも知れないと聞く
やいなや、小躍りして再び貴明に擦り寄り始めている、ふてえお子様だ。それじゃあ、小牧愛佳はどうだ。よく
気がつくいい嫁さんになるんじゃないかと密かに思っているんだけど。そのかわり、うちのクラスが、姉貴が中
身の小牧に制圧されることになるな。外面小牧で性格姉貴……やべえ、全く想像できねえ。何より、クラスのみ
んなに迷惑がかかるからやめといた方がいいよな。……なんだ、まるで使えねえじゃん。機械いらねぇ。
青空マーケットに付き合わされて、荷物をしこたま抱えて帰宅すると、チェリーボーイの貴明からTEL。
奴曰く……。
「最近……珊瑚ちゃんたちが、おかしいんだ。校内で声をかけようとしても逃げるようなそぶりを見せるし、電
話にも全然出てくれないし……」
彼女たちに対して曖昧な感情しか持てず、曖昧な態度でモラトリアムを気取っていたくせに、今さら何を言う
のかね、この小僧は。
「だから、振られたんだろ? お前が純情気取りでつれないからさ、いい加減に飽きたんだろうよ」
「俺はあのふたりの……」
「お前は面倒見のいい『兄ちゃん』でいたいんだろ? 恋人じゃなくてさ」
貴明は、何も答えない。
「ズバリ訊くが、あのお姫様たちを“女”だと思ってないんだろう?」
「そうかもしれない」
そういうことは即答するんだな。とことん情けない野郎だ。そりゃあ、奴がここまで女嫌いになったのは、姉
貴に弄ばれたトラウマもあるかもしれないが、奴もいい年齢じゃねえか。一生そうやって女怖い女怖いって生き
ていくのか? ネコ型ロボットなら道具でも出すところだが、俺には便利なポケットはないし、なにより奴のた
めにならない。ここは心を鬼にして、カツを入れてやらねばっ。
「まったく、呆れた奴だな。姉貴が嘆く気分もわかるわ。そんな不誠実な、煮え切らない態度ばかり取ってるお
前みたいな奴にな、彼女なんか出来るわきゃねえだろっ。チビ助すら持て余しているお前には一億年早いわ!!」
「俺な、お前の言ってることが解らないんだよなあ。珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんを“女”だと思うことと、俺が避
けられてることと何の因果関係があるんだ?」
「はぁ? お前、本気で言ってるのか?」
「だってさ、俺のことが本当にふたりにとって邪魔になったら、瑠璃ちゃんが真っ先に俺を排除にかかると思う
ぜ。珊瑚ちゃんもあれでなかなかしっかり者だから、本当に俺が嫌いになったらハッキリ言うと思うんだ」
貴明よぉ。君には呆れた。実に呆れた。女心のカケラも解らぬ男の言うことか? このみの下心など何も考え
ずに、このみと一緒の布団でおねんねしてる奴の言うことか? 自分が姫百合姉妹にしてきたことを、胸に手を
当てて考えてみろってんだ。そうだよ。面倒くさがって逃げて愚痴こぼしてばっかりいたじゃねえか。虫がよす
ぎるんだよ、お前は。もっと言ってやれ!
「だから飽きられたんだよ。ふたりにとってどうでもいい存在だから、わざわざ排除する必要もないわけだ。珊
瑚ちゃんにとっても、お前のことなど『近寄らんといて』とか口にする価値もない存在なんだよっ。言わば、お
前はふたりの中で予選落ちしたんだ。唐突に訊くが、お前は今までに同じクラスになった奴の名前を、全員分覚
えているか?」
「そんなわけないだろう……いきなり何を言い出すんだ……」
「もはや友達でもないどうでもいい存在に成り下がったから、名前すら思い出せないわけだ。名前も顔も思い出
せない奴は、お前の中で存在自体が消去されたんだよ。要するに、お前の存在はふたりに否定されたんだよ。い
や、『否定された』と言うより『否定しようとしている』と言った方がいいかな」
「いい加減なことを言うな」
貴明め、ムカついてるムカついてる。だが、俺のムカつき具合はこんなものではない。いつぞやに遊園地で味
あわされた敗北感、俺は決して忘れてはいないぞ。
お前はもっといい男になれると思ったんだがな。俺以上のナイスガイになれる素質があると思ってたのにな。
全て俺の気の迷いだったようだ、残念だよっ。そろそろ、とどめを刺してやる。
「いい加減なものか。自分たちのことを本気になって見てくれない男のことなど、脳内からキッパリ消去したい
んだろうよ。お前みたいなチキン以下の七面鳥ボーイには、珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも任せられねえ。ふたりが
そんなに心配だったら、ふたりとも俺が面倒見てやるよ。それでいいだろ? 解ったら、チビ助と一緒にピザで
も食って寝ちまえ。お前にはまだ、帰れる場所があるんだ」
「……雄二にアドバイスを求めたのが間違いだった。時間の無駄だった」……ガチャン。
けっ、切りやがった。後ろで聞き耳立ててた姉貴が「まるでハイエナね」と苦笑いしてた。『ふたりとも俺が
面倒見てやる』って言ったことを指しているのか。ハイエナ? 結構じゃないか。自分でエサを採ろうとせず、
メスに任せっきりの怠惰なライオン。ライオンが悠然と見逃した獲物をハントする孤独なハイエナ。どっちが懸
命に生きていると言える? 貴明は、自分がライオンだっていうことにすら気付いていない。ある意味、とても
可哀想なヤツだよな。
ふたりとも、俺が面倒見る、か。悪くはないアイデアだが、さてどうしたものかな。貴明にはああ言ったが、
本当にふたりの中で貴明の存在が消えたかどうかなんて、直撃してみなければわかるもんか。奴のことが気にな
ってはいるが、何らかの事情で隠し事をしているのかもしれない。まあいいさ。いつもの俺様のように、まずは
ポジティブにぶつかってみてから、どうするか――つまり、珊瑚、瑠璃のどちらを攻略するか、それとも本当に
ハーレムで片手うちわでウハウハな状況に持って行くかは、それから考えればいいさ。俺の勘では瑠璃ちゃんの
方が与しやすしと出ているが、さて!?
消灯しても、目が冴えて眠れやしねえ。どうにも、ふたりと貴明のことが気にかかって。あれこれ考えても仕
方ないことなんだけど、俺は本質的にいい人だから、やっぱり略奪愛なんか出来るかなあ、出来ねえかもなぁ、
なんてな。
布団の中で悶々としていると、どこからか、フウ、フウ、フウと荒い息づかいが聞こえてきた。泥棒かと思っ
て、こっそりドアを開け、忍び足で廊下に出る。フウ、フウッ、フウ……って声、どうも姉貴の部屋からみたい
だ。今この家にいるのは、俺と姉貴だけのはず。静まりかえった廊下に、かすかに聞こえる荒い呼吸。呼吸の合
間に、それは誰かの名前を呼んでいるようだった。俺が姉貴の部屋近くの壁に耳を付けて耳を澄ますと、“珍走
団”のゴッドファーザークラクションが遠くに響き、声はかき消されちまった。そんなもん、今時流行らねえん
だよクズどもが。まあ、なんとなく事情は読めた。ワンモアタイム、もう一度聴いてみよう。“あの名前”が出
たら確定なんだが。
……はあ、はぁ……ぼう……ぼぉ、……ぼお……ぼお……ヵぼおっ、たかぼおっ!
……。
声は止んだ。当確が出ました。メスゴリラが発情していたようです。
なぁ姉貴よ、貴明のことをチキンとか意気地なしとかボロクソに言ってたけどさ、そういう姉貴はどうなんだ
よ? 本当はアンタも好きなんだろ、奴のことが? やっぱり貴明のことが好きだから、会いたいから、短い間
だけでも一緒に過ごしたいから、こっちに戻ってきたんだろうが。姉貴なら貴明の一匹や二匹、強引にでも自分
のモノにできるだろ? 実際、やろうとしてただろ? どうしてお姉さん気取りで引っ込んじまうんだよ。アン
タだって、大概じゃねーか。馬鹿だよ。姉貴も、貴明も。罪な野郎だよ。まったく。俺は壁に軽く蹴りを入れ、
それから小便に立った。肌寒い廊下にいて腹が冷えちまったよ。
メスゴリラだなんだと言ってても、この世にたった二人の姉弟だもの、気にはなるさ。まあ俺としては、あの
二人がくっついてくれると嬉しいってのもあるんだけどな。言うまでもない、俺が自由になるしな。それに、奴
と本当に兄弟になるのも悪くはないだろ。今までだって似たようなものだったんだし。かなり、いや相当なヘタ
レだけど、悪人ではないしな。うん、いいかもしれないな。
そんなことを思いながら水を流してドアを開けると、目の前に般若が立っていた。それは俺のこめかみを禽獣
のように掴み、グイとねじりあげた。奴の手からは、賞味期限切れのヨーグルトみたいな臭いがしていた。
以上。誤字脱字があったらご容赦を
連載モノの予定で始めたんだけど、私事(転職)で忙しくなってしまった
ヘタすりゃ一週間くらい間が空いてしまうかも知れない ( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
GJ!
単発でも充分面白いって(w
アンパン日記を髣髴とさせるSSだったよ。
う〜、いつつ・・・。
まだ頬が痛む。
おかげで目はぱっちりと覚めたんだが・・・。
きゅっと水道の蛇口をひねり、出てくる冷水で顔を洗いながら鏡で頬の赤くなった部分をさする。
なんか学校で誰かに誤解を招かれそうだな。
特に女の子にうるさいあいつなんかには余計なことまで詮索されそうだ。
蛇口を閉め、かけてあるタオルで顔を拭く。
そしてそのままリビングへと向かう。
「おはよう、貴明くん」
「おはようございます」
すでに神岸さんとこのみが朝食の準備をしていて中には換気扇をつけているのにもかかわらず、魚の焼く匂いが充満していた。
「これはアジの開きですか?」
「うん、冷蔵庫に入ってたから勝手だけど使わせてもらったよ。もしかして駄目だったかな?」
「あ、全然大丈夫です。基本的にうちの冷蔵庫はこのみに任せきりになっちゃてますんで。このみがOKならほとんどは大丈夫ですよ」
「うん、わかった。それじゃあ今度からはこのみちゃんに聞くことにするね」
神岸さんはテーブルを拭き終わると再びキッチンへと戻り、すれ違い様にこのみが焼けた魚をテーブルへと運んできた。
「よいしょっ、タカ君、もう座ってていいよ」
「いや、俺も手伝うよ」
俺にだって飯を盛るくらいはできるし、二人だけじゃ悪いもんな。
というよりはこれは自分でやらないとまた昨日のようなことを引き起こされかねないからな。
「俺の分に・・・と。このみ、どれくらいがいいか〜?」
「う〜ん」
ちょっと考えたが頬をちょっぴり赤めて、
「大盛で」
と、答えた。
ハイハイ、大盛ね。
恥ずかしがらなくてもお前の胃の大きさはわかっているつもりだよ。
神岸さんは・・・普通でいいよな。
それと浩之さん・・・。
あれ、浩之さんは?
「あれ?浩之さんはどうしたんですか?」
「さっき起こしたんだけど・・・。まだ眠っちゃってるのかな?」
そそくさとリビングを出て行く。
『浩之ちゃん。浩之ちゃん、起きてよ』
予想的中らしく、やっぱり寝ていたみたいで神岸さんの起こそうと頑張っている声が聞こえてくる。
『起きないと無理やりやっちゃうよ。それっ!』
『あひゃっ!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ』
・・・・・・・・・。
一体何をやってるんだろう?
「痛いよ、浩之ちゃん」
「お前が無理な起こし方をするからだろ」
額を抑えた神岸さんとオレンジのTシャツに綿パンツ姿の浩之さんがともにリビングへと入ってくる。
「だって〜、なかなか起きないんだもの」
「限度があるだろ、限度が」
まださっきのことで揉めているらしい。
一体どんな起こし方をしたんだろう?
・・・・・・起こすといえばマルチはどうなったんだろう?
「浩之さん、マルチはどうしたんですか?」
「ああ、さっきスリープモードを解除したばっかりだから今はシステムが立ち上がってるとこだよ。すぐに来るさ」
「はわ〜、おはようございます」
噂をすれば何とかってやつだ。
黄色パジャマのマルチが眠そうに目をこすりながらこちらへと歩いてくる。
昨日のうちに神岸さんが着替えさせて布団に寝かせたらしい。
お、一回あくびもしたぞ。
やっぱりどう見てもメイドロボになんか見えないよなぁ。
すごく自然すぎるってか・・・。
それより眠たそうだなぁ。
それじゃあ、ここはひとつ―――。
「マルチは食べ物も食べれるんだよな」
「はい・・・少しくらいなら・・・」
「じゃ、はい」
と、目の前に出したのはコップ一杯の牛乳。
「これで目を覚ませな」
「ありがとうございます・・・」
ゆっくりと手をかけると冷やされた牛乳をこくんこくん、と少しずつ飲み込んでく。
あっという間にコップは空になり、口の周りがちょっと白っぽいけどマルチはすっかり目を覚ましたようだった。
「ご馳走様でした」
「お粗末様」
にこっと笑ってコップを取り上げて流しへと置いておいた。
「それじゃ、ご飯にしましょう」
「はーい」
みんなそろって椅子へと座る。
久々だな、うちでこんな風に大人数で朝食を取るなんて。
親父たちが行って以来かな。
「いただきま〜す」
「いただきます」
>>625 に〜ちゃんの文章おもろいなぁ〜。
ジェットコースターみたいに勢いあって楽しかったで☆
ギャルゲ板の本ヌレでネタになってる草野球編を書いてホスィ。
あれはきっちり書けば面白そうだな
こみパOVAの3話みたいになりそうだがw
>>624 ハゲワロスw
話としてもまとまってておもろい
ここ最近は雄二ブームですか先生
雄二の勘では瑠璃の方が与しやすいのか。
636 :
606:05/02/15 10:57:28 ID:NFXnWXd/0
遅レスだけど、取り敢えずレスだけでも・・・
>>607 >…つーかもう書いたのかよ!はやっ
書いた時間短かったのは、一気に書かないと頓挫すると思ったんでw
元々、筆不精だし・・・・・
>>610 >物語の延長を望んでる読者
ノシ
ってか、タマ姉シナリオ短過ぎ・・・・・('A`)
このみシナリオだとタマ姉にもフォロー入るのに
タマ姉シナリオだと、このみはおろか三人娘も放ったらかし・・・
野球SS、面白そうですね。
相手チームが出来れば(誰かが)書けそうな気も・・・
後、ここってやっぱ非・微エロ系のSSって少ない?
まあ、21禁板だから仕方ないのかもしれないけど・・・
漏れは、エロを書くにはまだまだ力が足りない・・・・・
相手チームはCLANNAD or1のキャラで。
サッカーなら書けそうだけど、あんまりSS向きではないわな。
永田さんあたりなら余裕でできそうだけど。
意表をついて相手チームは北朝(ry
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は恋人関係。
郁乃に無理やり連れ出された海で通り雨に降られた二人はホテルで雨宿り。
そしてついに二人は結ばれた……のだけど。
ちょっと長めなエピローグの始まり。
第一話から第十一話はこちらで。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
滑らかな長い髪をゆっくりと撫でていた。
不思議なもので一度達してしまうと裸で寄り添いあってることの照れくささはまったく感じなくなっていた。
「……ちょっと寒い」
空調が効き過ぎているのかもしれないと、ベッドの傍にあるパネルを操作する。それから重めの布団に二
人して潜り込むと、郁乃は雄二に抱きついてきた。
「ん、あったかい」
左腕を曲げて、腕の上の頭を抱え込むように撫で続ける。余った右手で郁乃の肩に触れる。ゆっくりと肩
から腕にかけて手のひらを動かすと、郁乃は少しくすぐったそうに身をよじった。
「……もう」
ぎゅっと郁乃の手が雄二の鼻をつまむ。
「ごめんごめん。ギブギブ」
鼻をつまんだ手を取って、握る。
「……雄二さんは優しいよね。……でも、あたし知ってるの。雄二さん、優しいだけじゃないよね」
「……え?」
「ううん。独り言」
そう言って首を振る郁乃の顔は幸せそうに見えたので、雄二はそれ以上なにも聞かなかった。
「あ、そうだ。雨止んだかな?」
ベッドから抜け出して、窓を小さく開ける。小さく切り取られた空は、さっきまでの雨が信じられないほどの
青さだった。
振り返るともそもそと郁乃も布団の下から這い出てくる。
「シャワー浴びないと……。雄二さん、手伝って」
伸ばされた郁乃の手を掴んで、その軽い体を抱き上げる。
「お姫様ダッコされて初めて通るドアは風呂場です」
そう言ってくすくすと郁乃が笑った。
「あんまり乾いてないね」
顔を見合わせて苦笑する。
風呂から出てきて服を着ようとしたものの、脱ぎ散らかしたままの服はほとんど乾いていない。とはいえ、
外は快晴だし、もともとずぶ濡れというわけでもなかったから、そのまま袖を通してしまう。
お金を払ってホテルを出ると、濡れた地面に太陽の光が反射して、きらきらと世界が輝いていた。
「ちょっと眩しい……」
雄二は日傘を二度三度振って雨の滴を払うと、車椅子に深く掲げた。
「そろそろ帰らないと委員ちょがパニックで入院しかねないな」
懐から電源を切っておいた携帯電話を取り出して電源を入れる。そしてそのまままた懐に戻そうとしたとこ
ろでメールを着信する。メール受信欄を開くと、
「げ、34件、マジかよ……」
何件か貴明から来たものもあったが、それ以外はすべて愛佳からだった。おそるおそる最新のものを開こ
うとしてボタンを押した瞬間、着信があってそのまま画面は通話中に変わる。
「あ、はい、えーっと向坂です」
慌てて携帯電話を耳に当てる。
――向坂くんっ! なにやってたんですかっ!
その瞬間耳を貫いたのは、携帯電話としてありえないほどの怒声だった。耳がキーンとなる。
――……あ、あや、ご、ごめんなさい。すみません。すみませんすみませんすみま……――
一方で電話の向こうでは周りに謝っているらしい愛佳の小さな声が聞こえる。
――コホン、向坂くん、郁乃はそこにいるんですか?
「ああ、ちゃんとここにいるぜ」
ほう、と電話の向こうから聞こえる吐息。
――分かりました。とりあえずそれならいいんです。でも、せめて連絡はつくようにしておいてください。
「ごめんな、委員ちょ。悪かった」
――心配してたのはあたしだけじゃないですから、すぐ戻ってきてくださいね。
「ああ、分かった。ちょうど今から帰ろうと思ってたとこなんだ」
電車に乗って二人の街に戻る。
「お姉ちゃん怒ってた?」
恐る恐るという雰囲気で郁乃は雄二の顔を伺う。雄二が苦笑いして郁乃の頭を撫でた。
「いや、でもすごい心配してた。謝らなきゃな」
「うん。そうだね」
二人で電車の窓から青空を眺める。太陽は傾き始めていたが、まだまだその強さを保ったままなので、雄
二は注意して郁乃ができるだけ日陰になるような位置に車椅子を止めている。
「……本当はね、やっぱり不安だったの」
郁乃の目は青空と、行き過ぎる風景に向けられたままだ。雄二は一瞬だけ郁乃の顔を見たが、郁乃の視
線を追うように窓の外に目を向けた。
「雄二さんがあの人と歩いててね、すごくお似合いだって思ったの。……それでね、ああ、あたしはあんなふ
うに雄二さんと並んでは歩けないんだって分かっちゃったの。それがね、悲しかった……」
「……大丈夫さ。郁乃だって歩けるようになる」
「うん。でもね、もう平気……」
郁乃の手が伸びて、雄二の手を掴んだ。ぎゅっと握り締めあう。
「雄二さんがね、あたしの全部を受け入れてくれたから……、もうなにがあっても平気なの」
二人は微笑みあう。
柔らかな時間は穏やかに過ぎ行き、あっという間に二人を見慣れた街まで連れて行った。
電車から降りてすぐに雄二は携帯を取り出す。罪滅ぼしというわけではないが、愛佳にはこまめに連絡を
入れたほうが安心だろう。そう思ってリダイヤルするとすぐに愛佳は出た。
「ただいま。もう駅についたよ」
――あ、それだったら北側の改札に出て頂けますか? その、もうついてますから。
「お、了解」
電話を切ると、くいくいと郁乃の手が雄二の服を引っ張った。
「お姉ちゃん、なんだって?」
「もう駅についてるらしい。というか、ずっと駅で待たせちゃったかもな」
愛佳に言われたとおりに北改札に向かうと、自動改札機の向こうに手を振る愛佳が見えた。こちらが手を
振り返すと、ほっと両手を胸にあてて息を吐いた。実際に郁乃の姿を見るまで心配でならなかったのだろう。
改札を出ると、すぐさま駆け寄ってくる。
「もー、本当に心配したんですよ!」
ぷんぷんと両手を振り回す愛佳。
「悪かった悪かったって」
「お姉ちゃん、ごめんね」
郁乃も素直に謝る。愛佳の手がその頭を撫でた。
「いいのよ。お姉ちゃんも郁乃の気持ちもっと考えてあげないとダメだったね」
そしてくるりと雄二に振り返る。
「向坂くん、その申し上げにくいのですが、うちの両親の気が少し立ってますので、病院へは」
「あ、そうか、すまん。ちゃんと謝りに行ったほうがいいんじゃないか?」
ふるふると愛佳が横に首を振る。
「今日のところはあたしが取り持っておきます。少し時間を置いたほうがいいと思いますので」
「委員ちょがそう言うんだったらそうするよ。その、全部俺が悪かったということにしておいてくれないか」
「それは……ダメ」
郁乃が雄二の服を掴んで、首を横に振る。
「お姉ちゃん、あたしが雄二さんにお願いしたの」
「……はいはい。二人とも悪かった、ということでいいですか?」
愛佳の微笑みに二人は顔を見合わせあい、そして頷いた。
「まったく……本当に心配したんだからね」
もう何度目だろうか。雄二と別れた後、車椅子を押す愛佳は何度もそう呟いていた。
最初は神妙な気持ちでそれを聞いていた郁乃だったが、流石にそれが二桁を数えようという頃になると、
そうも言ってられなくなってくる。
「お姉ちゃんは心配性すぎるのよ」
「だってあんなことがあったすぐ次の日なのに……」
それは郁乃もそう思う。随分と無茶をしたものだ。もし郁乃が愛佳の立場だったらもっと怒っていただろう。
しかし――。
「うん。そうだね。でもね……海いけて本当に良かった……」
それが郁乃の純粋な気持ちだった。
そっと目蓋を下ろせば、青い空に青い海、雲の白と潮の白、潮騒まで甦ってくるように思える。
「本当に、もうこんな無茶は止めてね。どうしても行きたいところがあるなら言って。お願いだから……」
「……お姉ちゃん……」
郁乃は少し微笑んで、愛佳に手招きをする。
「……?」
首を傾げて、愛佳が車椅子を止め、郁乃の前に回った。
郁乃はさらに手招きをして愛佳の顔を呼び寄せる。
「……あ……」
そして郁乃の手が愛佳の頭を撫でる。ゆっくりと慈しむように。
「ごめんね。心配させちゃったね」
「……いいのよ。もう。なにもなかったんだから……」
なにもなかった。その言葉が郁乃の悪戯心を刺激する。
「ね、お姉ちゃん、貴明とどこまで進んだの?」
「なっ、なによ。急に」
愛佳の頬に朱が差す。
「まさか――まだ――キスだけなの?」
くすくすと郁乃は笑う。その笑みに余裕が混じっていることに愛佳は気付く。
「ま、まさか……って、郁乃、まさか、え、ええっ、ええええぇぇ!?!?」
郁乃と別れた後、雄二はまっすぐに家に帰った。郁乃との確かな絆を手に入れた今、春乃に謝罪しなくて
はいけない。ひとつはもう確実に春乃に振り向くことはないということ。そしてもうひとつは昨夜の酷い態度に
ついて、だ。いくら余裕が無かったとは言え、あれは男の態度ではなかった。
玄関を上がり、まっすぐに春乃が滞在している客間に呼びかけるが、返事がない。そっと障子を開けて見
たが、どうやら留守にしているようだった。仕方なく自分の部屋に帰ると、部屋が片付けられていた。絨毯の
オキシドールが広がった後が少し色落ちしている。あの後、春乃は一人で後片付けをしたのだろう。
心から申し訳なく思ったが、相手がいないのではどうしようもない。
雄二はベッドに寝転がると目を閉じた。
一日郁乃の車椅子を押していて疲れていたのかもしれない。
そのまま雄二は深い眠りに落ちていった。
――――。
どんどんどん!!
「雄二、起きなさーい!!」
雄二は夢も無い深い眠りから浮き上がるように目覚め――なかった。
頭が、体が重い。
いつ眠ったのかは思い出したのに、眠った瞬間に目覚めたような気がする。しかしカーテンも閉めていな
かった窓から差し込んでくるのは確かに朝の光だった。
ドアを開けて中を覗き込んできた環が、雄二の様子に気付いてベッドの脇までやってきて、雄二の額に手
を当てる。
「雄二、あんた熱あるじゃない」
「……うそ、マジかよ。バカは風邪引かないんじゃなかったのか?」
「自分でそれ言ってる時点で頭回ってないでしょ。アンタ。ちょっと寝てなさいよ」
布団の上に寝てたのを、環に無理やり布団の下に押し込まれる。
どたばたと環が春乃を呼ぶ声が聞こえたりして、少しすると救急箱を抱えた春乃を連れて環が帰ってき
た。二人並んでベッドの脇に腰を降ろし、救急箱から体温計を取り出すと雄二に咥えさせる。
おわ、咥えさせるならその前に拭けよ、姉貴。と思ったものの、咥えさせられた以上喋るわけにもいかず、
頭もまた回らなかったので雄二はそのままにしておいた。
「――8度1分、まあ医者にかかるほどでもないわね。今日は一日寝てなさい。いいわね?」
「あ、でも郁乃、迎えにいかないと」
「雄二、アンタはバカだけど今日は輪をかけてバカになってるようだから、素直に私の言うことを聞くように。
郁乃さんに風邪がうつったらどう責任取るつもり?」
「あ……そうか……」
以前に聞いたような気がする。郁乃はただの風邪でも大事になってしまうのだ。
「私が行って伝えてあげるから、安心して寝てなさい。いいわね?」
「……分かった」
頭が回っていないのは間違いないようなので、逆らうに逆らえなかった。――それからどれくらいの時間が
過ぎたのだろう? 春乃がこまめに額に乗せられたタオルを変えに訪れる度に目が覚める。もとより眠りは
深くないので不快ではない。春乃がまだいるということはそれほど時間が経っていないのだろうか?
「……春乃さん……」
「はい」
「……ありがとう。それとごめん」
春乃が首を傾げる。
「どうして謝られるのでしょうか?」
「……キミの気持ちは嬉しい。でも応えられない。俺の気持ちは変わらない」
春乃は何も言わずに雄二の額から乗せたばかりのタオルを手に取り、もう一度冷水につけなおすと、細い
腕で力を込めて絞り、さっきよりも広めに折りたたむと額から目にかけてまでをタオルで覆った。それで雄二
にはなにも見えなくなる。
「雄二様がそう仰ることは分かっておりました」
ふぅと春乃が長く息を吐く音が聞こえる。
「私ももう無理は言いません。体面の問題もありますから、明後日の見合いだけは形だけでも来ていただき
ませんと困りますが、お父様もおじさまも私の方から説得してみせます。愛する人と結ばれたいという気持
ちはよく分かりますから」
「ごめん……、ありがとう……」
「いいえ、お気になさることはありません。雄二様にはこれで貸しひとつですわ」
そして次の瞬間、雄二の唇に少し湿っぽい感触が触れる。
「……これで貸し借りなしです」
びっくりしてタオルを外そうとした雄二の手を、春乃の手が押さえる。
「……お願いです。何も仰らないでください。何も見ないでください。何かを感じたのならお忘れください」
震える春乃の声に、雄二はもう何も言えなかった。
風邪薬の所為だろうか、意識は飛び飛びで時間の感覚はまるでない。寝ているようで起きているような感
覚。春乃はずっと雄二の傍にいる。流石にそろそろ雄二にも春乃が学校を休んだということが理解でき始め
ていた。それはこれが最後だからだ、と、雄二にも分かる。
「――雄二、ちゃんと寝てる?」
ドアが開いて環が顔を見せる。環は郁乃に伝言を伝えに行ったはずで、学校を休むわけはないだろうか
ら、すでに時間は放課後を回ったということなのだろう。雄二にはあまり実感が無い。
「……雄二、あのね……」
環がらしくもなく口ごもる。
「……意識はっきりしてないようだけど、言わなきゃいけないと思うから言うわ」
環の苦虫を噛み潰したような顔。環のこんな顔を見れるのは雄二のこれまでの人生でもそう何回もあるま
い。奥歯をかみ締め、環は言葉を探している。
「あの……私は席を外しますね」
空気を察したのか、春乃が立ち上がって部屋を出て行く。それを見送ってたっぷりと時間を待ってから、環
がゆっくりとその言葉を吐き出した。
「……郁乃さんが合併症を起こしたわ……」
「……え?」
「……状態がね、あまり良くないらしいのよ……」
「どういうことだよ!」
飛び起き――ようとして、ぐらりと視界が揺れ……床に倒れる。
慌てて駆けつけた環に支えられてベッドに戻った。
「郁乃は、郁乃は大丈夫なのか?」
「……朝の状態ではなんとも言えない……」
「俺か!? 俺の所為か!? 昨日、郁乃を海に連れ出したり……」
そして抱いたりしたから……!!
「……そう、かもしれないわね……」
目を伏せて環は首を横に振った。
環が部屋を出て行ってすぐ雄二は携帯を充電器から取り上げた。メモリーから愛佳を選び出し通話ボタン
を押す。呼び出し音を聞きながら雄二は心の重みは胃の辺りに落ちてくるのだということを知った。
この電話が愛佳に繋がったとき、なんと言えばいいのだろうか。雄二には考えもつかない。ただ電話しなく
てはいけないと思っただけだ。
かたかたと耳に当てた携帯が震えている。否、それを持った雄二の手が震えている。
――留守番電話におつなぎ――
一度切ってかけなおす。
愛佳は病院にいるのかもしれない。いや、そうだとしたら電源を切っているはずだ。愛佳は必ず病院に入
る前に携帯の電源は切るようにしていた。
るるるる、と呼び出し音が鳴り続ける。愛佳は出ない……。
もう一度切って、リダイヤルする。
お願いだから出てくれ、という思いと、いっそこのまま愛佳が電話を取らなければいいのに、という思い。
どちらが自分の本当の思いなのか分かるより前に、ぷつっという音とともに通話が繋がった。
「もしもし、委員ちょか!?」
――……向坂くん……。
愛佳の声は冷たく、重い……。
「郁乃は……、郁乃は大丈夫なのか?」
――それが……その……昼過ぎから病状が急変したそうで……
体の中を冷たいものが滑り落ちていく。
――……今は……面会謝絶に……
愛佳の声は疲れ果てている。魂のほとんどをどこかに持っていかれてしまったような沈んだ声。
「委員ちょ。なにか、なにか俺にできることはないのか?」
熱の所為で考えがまとまらない。ぐらぐらと視界が揺れる。
愛佳からの返事は無い。沈黙が重くのしかかってくる。
やがて……
――……向坂くん……、郁乃は向坂くんと結ばれて幸せだったんですよね……。
携帯の向こうから聞こえてくる愛佳の声が、雄二にはどこまでも遠く、遠く聞こえた。
今回からはすこし長めのエピローグ。次回で終わるか、まだ先かは、なんとも。
郁乃の病気はなんなんだ、という話題がちらりと出てましたが、特定の病名をしっかり出して作品を書くの
であれば、それこそ実際に取材に出かけるなどしなければ、同様の症状に苦しむ方、そのご家族の方に強
い不快感や悲しみを与えてしまうかもしれないと思い、わざと自己免疫疾患に類する病気の症状を混ぜこ
ぜにしております。一体なんていう病気なんだと深く考察して、こんな病気はねぇよというのは当然ですので
ご承知くださいませ。
原作のほうでもはっきり当てはめることができないように書かれていたのだと個人的には思っております。
ところで天使の卵っていい小説だったよね。俺の恋愛小説の原点でもある作品です。
>>650 GJ!
…けど、郁乃ー!(つдT)・゜。
>650,652
乙。
エピローグという感じのしないエピローグですな。
>>650 正直に言おう。
最近俺はあなたのSSを読むためだけに2chに来ている。
激しくGJだ!!
658 :
名無しさんだよもん:05/02/16 00:35:18 ID:NY2FI3fu0
>>650 天使の卵。いい小説だったと思うぞ。
ただ、郁乃ー。生きて欲しい。
>>650 この作品を読んだとき、昔見た映画のことを
(確か骨肉腫に罹った少女を題材にしたもの)、
懐かしく思い出していました。
当時、子供心に強く感じた無力感が、今また
思い返されるのです。あのときの私は、医学の
進歩を強く願ったものでした。
キャラの幸福を願う心はあれど、それはまずは
さておいて、貴殿の目指したかった結末を、
私も見てみたいのです。
物語を読み終えた後、それについてずっと考え
続けられるような余韻を、貴殿の作品に求めて
いるからかもしれません。
続きが、楽しみです。
>>650 今まではROM専だったが言わせてくれ。
ホンッットに続きが楽しみです。
雄二がめちゃくちゃカッコいいなぁ。
>>659の言うような、考えさせられるような、それでいて心地よい余韻が残るような素晴らしい締め括りを期待しています。超がんがれ
雄二x郁乃の人…
当スレのSS番付1位に認定しますた。
お め で ♪
(゚∀)人(゚∀゚)人(∀゚)
>>650 天使の卵。
良い小説だ。大好きな小説だ!
だが言わせてくれ。郁乃、生きろっ(つД`)
あなたのSSは大好きだが、
天使の梯子編書いてくれるって言ってもそれでも郁乃には生きて欲しい。_no
663 :
531:05/02/16 06:43:00 ID:DKE2F1yo0
つi
>650
投下を始めてから、楽しみに読ませてもらっています。
言うか言うまいか悩んだのですが、どう思っているのかも知りたいので書かせてもらいます。
8話以降、どうにも話の雰囲気が変わってしまっているような気がしてなりません。
シリアスになった、物語が佳境の入り口に入ったというだけではないような気がします。
まるでゲーム本編の中盤以降のような、読者の気持ち、キャラの気持ちが追いついていないように思われます。
郁乃あたりなんか、初めてできた友達への独占、嫉妬からの勘違いでしたという最後まで想像してしまうような展開です。
ともあれ、物書きとしてのルール、ポリシーを持たれて描かれており、非常の面白いと思っていることにかわりはありません。
ちょうどその時期、体調も崩されていたので、いろいろあったのでしょう。
次、楽しみにしてます、がんばってください。
あれから幾つかの季節が過ぎ去り、新しい出会いの季節または始まる。
「えへ〜、タカくん、タカくん今日から新学年だよ」
俺の隣を歩くこのみが嬉しそうな顔でそう言った。
「別に進級なんて留年しない限りするもんだし、
俺なんて進路関係で面倒だし。別に嬉しくもねぇな・・・・」
俺の言葉を聞き、このみは少し機嫌を悪そうな顔をして。
「も〜、タカくんは浪漫がないよ〜。新しい友達とか新しいクラスとか楽しみじゃないの?」
「浪漫って、お前は雄二かよ・・・・」
「いいこと言ったぞチビ助!!そうだ、新しい出会いだ。恋の一つや二つが待っているものなんだよ!!」
少し上の方から声が聞こえてきた、そうか話をしている間にいつもの待ち合わせに着いたんだな。
「ユウくん、おはよ〜。ユウくんならわかってくれる気がしてたよ〜」
「おはよ〜さん、なんかこのみと雄二の意見が合うのもめずらしいな」
いつものように挨拶を済ます。でも今年からいつもいたはずのタマ姉がいない。
「そうか、タマ姉は今年から九条院の大学なんだよな〜」
「うん、ちょっと寂しいけど・・・。またいつか必ず会えるから。このみはその時が楽しみだよ〜」
そうだな、どんなに離れても自分がその人を思う限り必ずもう一度会えるんだよな。
「へへへ、こっちは姉貴が向こうへ言ってくれたおかげで晴れて自由の身だぜ」
「そんなこと言ってもタマ姉が帰るときに寂しそうにしてたのはどこのどいつだよ」
「ぐっ・・・うるせぇよ、お前こそ遠距離恋愛中の彼女とはどうなんだよ!!」
「ぐ、別にそんなこと今は関係ないだろうが!!」
「もう、タカくんもユウくんも喧嘩してないで学校行こうよ〜、初日から遅刻なんて嫌だよ」
「まぁ、そうだな。とっとと行って新しいクラスのメンバーの面でも眺めに行くか」
そうして俺達はいつもと変わらない通学路を歩き出した。
「わ〜、タカくん掲示板の前が人でいっぱいだよ」
間もなくして学校につき、クラス発表の紙が張られている掲示板を見に来たがいいが暫く見れそうもない。
「それじゃ、このみは2年生の方に行って来るね。帰りは玄関で待ってるね」
そう言ってこのみは2年生の掲示板へ向かっていった。
「貴明さんに雄二さん、おはようございます」
後ろから俺達を呼ぶ声が聞こえ振り返ると草壁さんが立っていた。
「おはよ、草壁さんはクラスの発表もう見たの?」
「いえ、私も来たばかりなのでまだ見てません。また一緒のクラスになれるといいですね」
そう言って俺の方へ微笑んだ。
「お二人さん、もうそろそろ人も散ってきたから見に行こうぜ」
雄二にそう言われ、掲示板の方を見てみると来た当事よりだいぶ人が減っていた。
「よし、そろそろ行くとしますか」
そうして俺達は掲示板の方へ向かっていった。
「そいじゃ、まずは順番に沿ってA組だな。えぇ〜と・・・・おっ、俺の名前発見したぜ貴明」
「俺はお前の名前のすぐ下だよ。大体、あいうえお順なんだから俺達は番号近いだろうが
それにしても・・・・お前とはいつもクラスが一緒だな・・・呪われてるのか?」
「まぁ、そう言うなや。で、草壁さんはどうだった?」
「残念ですが、私は一緒のクラスではないみたいです。でも一つ気になったことがあるんですよ」
「そっか、草壁さんは違うのか〜。で気になったことって?」
俺がそう聞くと、草壁さんが掲示されている紙を指差しながら。
「ここですよ、この名前って確か」
そう言われ彼女の指差す方を見てみると。
「えぇ〜っと、笹森花梨。って笹森さんと一緒か落ち着けなそうだな・・・・」
「違いますよ、貴明さん。その上ですよ」
どうやら違ったようだ、また掲示板に目を戻す。
「ん〜っと、工藤玲於奈?・・・・って工藤さん!?なんで同姓同名とかじゃ・・・」
「貴明、この名前はあんまりいないだろうよ・・・・でも本人だとしてもどうして?」
「ですよね・・・私もこれが気になっていたんですよ。あっ私はさっき見てきたんですけどB組でした」
そんな疑問を抱いているうちに予鈴が聞こえてきた。
「まぁ、教室に行けばわかるだろうよ。行こうぜ貴明」
「あぁ、そうだな・・・」
疑問を残したまま俺達は新しい教室に向かって行った。
「タカちゃ〜ん、一緒のクラスだよ!!
これでいつもの様にミステリな話し合いがいつでもできるんだよ」
教室に入るなり笹森さんが俺の方へ向かってきた。
「そんな話し合いしたこともなければこれからもする気はないよ」
俺がそう返すと笹森さんはつまらなそうな顔をして。
「もう、タカちゃんはその場の空気を読んでないんだよ、こう言うときは
『会長!!ミステリ研の未来は輝かしいものになるさ俺達二人で頑張って行こう!!』
ぐらい言うのが普通だよ」
「俺には笹森さんの普通がまったくわからない」
「もう!!タカちゃんにはUFOが来たってUMAを発見しても呼んであげないんだから!!」
由真?どうしてそこで由真が出てくるんだ?俺が疑問に感じていると笹森さんは席の方へ戻って行った。
どうやらこのクラスに俺の安息の場がないことが教室に入った途端に判明した。
「お〜い、そろそろお前ら席に着け」
暫くして新しい担任の教師が入ってきた。
「今日からお前らの新しい担任だからな。一年間よろしく頼むな」
担任はよくある無難な挨拶を始めた。だが俺は俺の隣が空席であることが気になっていた。
「そして、お前らに重要な連絡がある」
嫌な予感がする・・・・これは朝の疑問の答えなのだと思う。
「転校生がいるんだ。前に少しこの学校にいたんだが短い期間だったから知らない奴も多いだろう」
あぁ・・・やっぱり。でも何故、彼女がこの学校に?薫子からは何も聞いてないし・・・・。
「よぉ〜し、入って来い」
教室の入り口が音を立てて開いた。生徒の視線はその方向へ向けられる。
俺も雄二もその方向へ目を向けてしまう。やはり彼女だ。
「工藤玲於奈です。これから一年間皆様よろしくお願いします」
彼女は挨拶を済ませ、一つの空席に腰を下ろした。そう、俺の隣だ。
「それじゃHRは終わり、始業式まで少し時間があるから自由にしてていいぞ。ただし教室からは出るなよ」
さて、それでは俺の疑問の答えを聞かせてもらうとしますか。
そうして彼女の方に目を向ける。
少し前に言われたように続編らしきものを書いてみました。
投稿するか悩みましたがとりあえず投稿です、容量がギリギリですが。
今回は期限的な制限がないのでのんびりとやっていきます
古いのはスレや保管庫に置いてありますので、気の向いた方はどうぞです。
670 :
名無しさんだよもん:05/02/16 20:32:05 ID:NANt0q5HO
リアルタイムキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!
かおりんはずっと読んでました。
だから激しくGJです。
最後まで楽しみにしてます(・∀・)
三人娘ファソには嬉しい限りです。
あげてしまった…orz
スマソ
これはまさか3Pの予感か!そうなのか!
かおりんアフターを書いてくれるとは思わなかった…。
かおりん自体まだ出てきてないけど、楽しみにしてますよ!
つーかサブキャラSSたまんねぇ
かもりんとの掛け合いがいかにもという感じでナイスだ。
494KB
678 :
▲:05/02/17 17:38:43 ID:uO/Nq//U0
再録でスマソだが、投下。
桜色のタイが、風に舞い踊る。
ひらりひらり、止むことなくいつまでも。
それはみんなから、愛佳への感謝の気持ち。
さあ、顔を上げて。
涙を拭いて、上を向いてごらん。
愛佳には泣き顔なんか……かなり似合うけど笑ってる方がずっと素敵だから。
あ、校舎の屋上からこっちに向かって手を振ってる。
おーーい。ほら、手、振り返してみよう。
おーーーーーーい。
ね? 誰も愛佳を無視したりしないし、冷たくしたりもしない。
だってみんな、愛佳のことが好きなんだから。
……もちろん、俺もそんな愛佳のこと大好きだよ。
愛佳……
んっ……
「あいつ、学校サボってキスなんかしてやがる……ゆ、許せん!」
「ふぅん、ちゃんとうまいことやってんじゃない」
「ひゃ〜、全校生徒の前で…だいた〜ん」
「先生! まだ5月だというのにこの暑さは近年稀に見る異常気象であります!」
「バカップルだ……」
「バカップル……」
「「 (…………しまったー!!) 」」
「るー☆」
……るー。
「なーなー、貴明元気ないなー。どないしたん?」
別に元気ないってわけじゃないけど。
「ほなら、何で下向いてんの。ひょっとしてお腹痛いん?
いくら瑠璃ちゃんのごはんおいしいからって、がっつくからやでー。あかんなー、もう。あかんあかん」
いや俺が気にしてるのはご飯のことじゃなくて、こっち。
「……腕?」
そう、腕。何故か両横から俺の腕にしっかと絡められてる珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんの腕。
「なーんもおかしなことあらへんよ? ウチと瑠璃ちゃんが貴明とくっつくんはらぶらぶらぶー、の証やで」
「ち、ちゃう、そんなんちゃうもん! ウチ、貴明とらぶらぶらぶーなんてしてへんもんっ!」
……えーと。でさ、珊瑚ちゃん。登下校の時にベタベタするのはもうちょっと控えない?
「なんで?」
なんでって、ほら、皆注目してるし。瑠璃ちゃんもすごく恥ずかしがってるし。
俺だって今にも顔から火が出そうなくらい恥ずかしいよ。
「それがええんやないかー」
「「 え 」」
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/ / し′ 人 Y
( / し'(_)
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し′ .....:::::::::::::::::::::::::::.::::::
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ギャグものはかなり好きです。
なれなれちゅうい
ラストだったら郁乃SS書く
オーラス恋人選び
旭化成グループの提供でお送りしました
/`ヽ∠> 、
+ / /,´ ヽ
|/〃,´ j、 ヽ
{ { ノ__ノハ_,,,, } }
i Y''"_,、 _、{ノjノ +
(i l`' ̄ノ ヽ ゞ;l
. iヽ l r `__"_ヽ ,|;/
| .iヽ、~`'''''" /;;ヾ これで終わりか?
| i/`r、_-,,,,,,r"ノ''ii{
/ \ `ー- '"ヽ`ヽ、
,-'"~ i ヽ /,,\|| ` ::
;;,, フ ヽ. 〈/ヽ, | ::''
'';;,, \ ヽ | ヽ |,,::''
'';;,,\ ヽ|,,;;;;;::::
ζ /ヽ / |
/ ̄ ̄ ̄ ̄\ | | / /
,‐ヽ /"ノ / \ | ヽ‐'、/__,-‐つ
_ \ \ | / /\ \ /| ,,---、/二、 ヽ、,,-'"
\゙゙''ヽ‐-‐'"゙''| ___ _||||||| (・) (・) | ヽ‐-、 ヽ 二ニ⊃
゙゙''ゝ ,‐''''ヽ',,,,-ヽ ,-‐'''''''''''‐-;;.、 ^ (6-------◯⌒つ |''‐-、 |‐--,,,,、__/
/ヽ ヽ‐-/ ./::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;|--| _||||||||| |:;;;;;;ヽ、__ / ヽ‐''"ノ
レ'"ヽ、,,,,,/ \ ,,,,/-‐‐-、;;;;;;;;;;;;;;;;;;; \ / \_/ /、;;;;;;;;;;;;;| /'" '"|
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| / | ヽ、‐ニ ^ ^ ‐'''''| // \ヽ─‐''"ノ
ヽ___/ / /"~ | /\,,,,, ヽ---‐' _/"
_ヽ、 ‐-、,,,,,,,,,/、 __|_ //  ̄""─''"
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