>>85 スマンが、貴明も愛佳もほとんど別人に見える…
そして他の人も言っているが、羞恥心がちと足りない。
皆さんに、ひとつ訊いておきたいのですが……
今、あるSSを書いているのだが、“ふたなり”ものなんだよね
イヤな人もいるかもしれないし、出来た際にここに張っていいものかと、少しばかり悩んでいる
こういう場合は、リンクだけの方がいいのでしょうか
先人の助言を求む次第です
>>103 (´-`),oO(………むしろ好きだぞ)
>102
雄二がふたなりだって――――― !?
はちょっと考えるけど他なら大丈夫かも。
106 :
7月文月:05/02/02 00:53:16 ID:+JTChq/t
>>102 いいと思われますよ。
基本的にゲームの大まかな設定に基づいた二次創作であればどんなラブになろうがエロがあろうがふたなりだろうが全然OKでしょうね。
それより恐れずに投稿するほうが大事だと思いますよ。
だめでもまた次に頑張ればいいのですし、そのときは住人がやさしく誘導してくれますから。
それと今日の分のSSは前スレの残り容量がもったいないのでそちらに投稿してあります。
基本的に向こうの容量がなくなるまでは向こうで書くつもりでいるので見たい方はそちらをチェックしてくださいね
うぼあ、名前消し忘れ。
>>103-106 助言をありがとうございます
今日明日中には晒せると思いますので、期待はせずにお待ちください
5月を過ぎて、俺が姫百合家の居候になってから1ヶ月が過ぎた。
自制できそうになくて反対していたのだが、例によって珊瑚ちゃんがうちの両親に
まで手を回していつの間にか引越しの手配がされてしまったのだ。
情けないことに、自制は1週間と持たず俺はイルファさんの誘惑に負けてしまい、
それから数日のうちに珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんとも初体験してしまった。
そのときのことは恥ずかしくて、まだあまり話したくない。くぅ〜
先週、キッチンに貼ってある瑠璃ちゃんとイルファさんの家事分担当番表の下に
もう1つ紙が継ぎ足されているのに気が付いた。
月:るり 火:さんちゃん 水:いっちゃん
木:るり 金:さんちゃん 土:いっちゃん
日:貴明スペシャル
ちなみに今日は火曜日だが、家事は苦手な珊瑚ちゃんがなんの当番に?
瑠璃ちゃんは珊瑚ちゃんを厨房に入れたがらないはずなんだけど
その夜、自室で眠っていると(かろうじてプライバシーを保ちたい要望は守られたのだ)布団のなかに誰かが潜り込んできた!
「うわわっ、さ、珊瑚ちゃん」
「たかあきー、なーなー、今夜はうちが、らぶらぶ☆当番やー」
・・・負けました。道理で先週から妙に精の付きそうな夕食が続いたわけだ
でも、当番表の最後に書いてあった
「日:貴明スペシャル」ってのはどういう意味だったのだろうか?
お母様・・・なんだか不吉な予感がします。
そして日曜日・・・・
姫百合家の食卓1(2/4)
昼飯後ソファーで寝入ってしまった俺は肌寒くて目を覚ますとなぜか全裸で
俺の分身はすでにイルファさんの右手に包み込まれて扱かれていた。
「ええっつ、イルファさん、そ、そんなこと」
「今日は貴明スペシャルデーやー」
瑠璃ちゃん、珊瑚ちゃんも既に裸体で俺に張り付いて来る
「貴明さん、もっと気持ちよくして差し上げますね」
「え、えっ」
イルファさんはにっこり微笑んでその唇を俺の右の乳首に吸い付かせると、すぼめた
舌でコリコリと乳首を責め始めた。
頭の中が真っ白になる。俺、オトコなのになんで、なんで??
いままで味わったことの無い乳首から生み出される快楽の波は、その敏感さゆえに
イルファさんのペニスへの愛撫よりも数段鋭敏だった。
「うあ、うぁぁぁ」
俺は背筋をのけぞらして、情けない声を出してしまう。
そんな俺の顔をイルファさんは舌は乳首の周囲をねぶりながら上目使いで嬉しそうに
眺めている。
目が合ってしまい、視線から欲望を流し込まれる。怒張は更に硬さと体積を増して
しまう。
「ちゅぱちゅぱ・・・さ、瑠璃様も、ちゅぷ、ちゃぷ」
瑠璃ちゃんがおずおずと俺の玉袋を手のひらに包み込んで転がしはじめる。
竿のほうはイルファさんに扱かれたまま、別のリズムが袋を揉みじんわりとした快感が
伝わってくる。
「瑠璃様、貴明さまの袋の下を指でつついてあげてください。」
「たかあきのHぃ・・・さきっぽからもうなんかでとるぅ」
とろんとした目つきの瑠璃ちゃんが袋を愛撫しながら中指で袋の裏の合陰を刺激しはじ
めた。
なめくじのように入れて入れられる
組んずほぐれつの試合もまた良し
いとおかしきもの 女童に肛虐されし男子
いとはかなきもの 女陰を秘めたる男子
いとあはれなるもの ぶるまぁに押し込めし肉竿
112 :
7月文月:05/02/02 01:00:50 ID:+JTChq/t
>>108 お互い、いっしょに頑張りましょうや
期待して待ってますよ〜
「き、気持ちいい・・・」
もう、どうにかなりそうだった。
それなのに瑠璃ちゃんは俺の股間で手をうごめかせながら、口で俺の左の乳首に吸い付くとぎこちない舌使いで更なる責めを開始した。
「貴明さん、まだイってはダメですよ」
俺は女の子が胸を吸われた時の快楽を身をもって知ってしまった。
イってしまいたいのに、イルファさんは手の動きに緩急をつけて、俺の快楽を制御する。それでいてペニス以外への愛撫は情け容赦なく、瑠璃ちゃんの舌使いも雑な分、
イタ気持ちよかった。イルファさんに舐められている右のほうはジーンとしびれて
断続的に刺激が走る。
「貴明、うちとも気持ちいいことしよ」
最後に珊瑚ちゃんが迫ってくる。イルファさんが手を離して手際よくゴムを付けて
くれる。
そしてそそり立った俺自身の上にまたがった珊瑚ちゃんが腰をゆっくり落とす。
「あん、貴明ぃ今日はいつもよりおっきいで・・んあぁ・・・いつもは当たらんとこま
でいっぱいになっとる・・ん・・ん・・・ん」
ずぶずぶと珊瑚ちゃんの柔肉に呑み込まれて行く。その間もイルファさんと
瑠璃ちゃんの乳首への奉仕は止まらない。
珊瑚ちゃんは腰を根元まで落として前後に腰をぐりぐりとグラインドさせはじめた。
「珊瑚ちゃん、と、溶けそう、タ、タンマ、はう、うぁぁ」
「貴明、ちゃうねん・・・ん・・ん・溶けるってのはこういうんよ」
そして深くつながったまま、口をあけて俺の唇に舌を割り込ませて来た。
「ん、んっ、ちゅぱちゃぷ」
珊瑚ちゃんの舌が俺の口腔を蹂躙する。今まで何度もキスはしたのに、
俺から舌を入れたことはあっても、入れられたことは無かった。
「んんーーーーーっ!!」
俺は同時に6箇所を責められとうとう発射してしまった。
どくん、どくんっ
おびたたしい量が珊瑚ちゃんとつながったゴムのなかに放出されていった。
あとで瑠璃ちゃんに装着したゴムをチェックされ言われた
「たかあきぃ、さんちゃんがそんなにえかったんか、こないだうちとしたときの倍
くらい出とるで、このごーかんまがー。」
「あの、ごーかんされたのは俺だと思うんですけど・・・・。」
「今度はうちの番や。手抜いたらゆるさへんで」
「ええっつ、もう無理だよ、勘弁してください」
「大丈夫ですよ、貴明さん」
いきなりイルファさんが俺の口を吸う。今度はイルファさんの舌に蹂躙される俺。
「・・・んっ・・ほらもう元気になりましたよ」
キスだけで俺の分身はまたギンギンになってしまっていた。
おしまい
115 :
7月文月:05/02/02 01:04:24 ID:+JTChq/t
投稿途中で割り込んでしまった・・・
すみません OTL
あんだけ仕切り発言しておいて自分が率先して破ってどうする
まぁ難しいし、仕方ないわな
リロードして確認した後の数秒の間に書き込まれるなんていうこともあるかもわからんし
「で、結局食パンかじるん?」
「まさか。姫に食していただくのは至高の『あんばた』でござるぞ」
「あんばた……あー」
ふふふ……学食やコンビニで売ってる普通のあんばたと思ってもらっては困る。
珊瑚ちゃんが食べ過ぎて瑠璃ちゃんに怒られないように、かつ満足できるように。
毎回少しづつ材料を変えていって試行錯誤。ひたすら研究に研究を重ねた逸品よ!!
これだけならイルファさんにも余裕で勝てるぜ!! 小倉トースト以外はアレだがな。
ま、珊瑚ちゃんの為ならえんやこらって事だ。
「じゃ、つくるぞー」
「おー♪」
まずは食パンの耳を落とす。怪獣みたいな名前のパン切り包丁が火を噴くぜ。
マーガリンを塗って、あんこを落とす。で、パラパラっと……
「甘すぎへん?」
「んふふ。今回は生餡を使ってみたんだな、これが」
前回は『これにコーヒーミルクかけたらうまそーやー』
と言う伝説のアイデアで忍者食並の超高カロリー食品が生み出されたが今回は無し。
で、これをトースターに入れて……マイクロマジック!!
「ってなん?」
「あれ、ガキのころなんかそんなCMあったじゃん」
「んー……ちっちゃい頃は……あんま……えぇやん」
「ま、変なCMなんてこれからいっくらでも観れるだろうしなー……一緒に」
「んー。らぶらぶらぶーやで」
なんか今日に限ってべったべったと張り付いてくる彼女。困った顔をしてみせる。
その実全然困っていないと言うよりも頬が緩んでくるのを隠す為に顰めているんだけど。
チン
「できたでー」
「お皿、出してくれる?」
「あいー」
ここで再びウェンガー!! と叫びながらトーストをはんぶんこ……にしようとすると
「わけっこするん?」
「あんまり食べると夕飯に響いちゃうでしょ、珊瑚ちゃんは」
「あーうぅー……」
うめき声の向こうにかすかに聞こえた『くぅう〜』に免じて、ナイフの位置をちょっとずらした。
「これが終わったら運動やんなー」
勢いあまって大分ずれた。彼女は満足そうな顔をした。そうか。そうだな。運動大好き!!
「「いっただきまーす」」
……こっこれは。
「にが」
しまった! しまい過ぎた!! そうだよ砂糖は焦がすとめちゃくちゃ苦いんだよ、うっかりしてた。
「生餡使うてアイデアは良かったのになー」
しかし覚えたぞ。砂糖は最後。確認。ここで再度言わせてもらう。
イルファさんの創作料理になら多分余裕で絶対勝てるといいな!!
「でもな、でもな、学食のあんばたよりすきすきー」
「おこげはガンになるぞー」
「にがにがのあんばたー半分は貴明のらぶらぶーでできてるんやもん♪」
うっは―――――――――――――――――――!!
「あ、でもな」
「ん?」
「マイクロマジックはレンジやん。トースターちゃう」
そうでっか。
勢いが……勢いが止まりませんから――――――――――――!?
今回はここまで。今からエロス修行の旅に行ってくるから。探さないで下さい。少しは探してください。
ごめんね、名古屋人初めて関西弁書くからごめんね。でもゲーム本編の姫百合姉妹もおかしいのでオケ風味。
今日のあんばた
・胡桃入り食パン
胡桃が入ることによりカロリーが増してしまうけれど、
それ以上に歯ごたえからくる満腹感を求めて。少ない量で満足するために。
・カロリーハーフ低塩マーガリン
あんばたと言いつつもコッチ。別に美食番組に出すわけじゃないからこれで良い。低カロリー重視。
胡桃の味を感じる為にも無塩か低塩が吉。
・冷凍生餡
間食に限って言えば、糖分は少なければ少ないほど良い。よって無糖の生餡を。
しかし糖分は防腐作用もあるので無糖は痛みやすくなる。冷凍して長期保存を可能にした。
足らない甘味の補い方は↓
・黒糖
ノンカロリー甘味料は舌に残るエグ味が気に入らない。黒糖はミネラル豊富。
フランスの詩人みたいな名前が本人は気に入らないかもしれないが。
餡に練りこむよりも上から振りかけた方が甘みをより感じられる。砂糖の使用量減少。
ブレッドナイフはウェンガー一択。
>82 ありがとうありがとう。今宵の書き込みの原動力。
>>120 かつてなくアホなノリの貴明に激しく期待してたりする。
こういうノリの主人公の出てくるSSはいかにもSSって感じがして好きだぞ、ガンガって下さいな
>>120 乙です!!
これ読んでたらあんばた食べたくなってくる(*´Д`)
>>114 コーフンしますた。
ここでおしまいと言わず
是非続きを〜
いっちゃんとの○○を〜
気が向いたらでいいですけどね
「入れやすいように持っておいてあげるから、自分で広げて入れてごらん」
「うん…」
愛佳は先っぽを自分の花芯に宛がって、そっと擦りながら入り口を探した。クチュッ
と音がして先っぽが愛佳の中にめり込むところがあった。
「そこだよ。そのまま腰を落として。ゆっくりでいいから」
「うん…うく、ん、ああ…」
プチュプチュ、ズブズブズブと一物と愛液の擦れる音がして、俺の一物が愛佳の中
に飲み込まれていった。
「痛い?」
「う、うん、ちょっと…でもあたし、このままたかあきくんと一緒になりたい」
「ゆっくりでいいから無理しないで。お腹の力抜いて」
「え、う、はああ…ん、ああ、あああっ」
愛佳が大きく息を吐いて、お腹を引っ込ませると更に腰を落としてきた。ん、さっ
きよりスムースに入ってきてるな……ああ、柔かい膣壁が俺の一物を締め付けてくる。
「このままたかあきくんとつながりたい」という愛佳の気持ちを伝えるかのように。
「あ…ああっ、凄い…たかあきくんの……あたしの、お腹の奥まで来てるよ。突き抜
けて…壊れちゃいそう」
「どうしたの、苦しい?」
「うん、お腹が変なの…でも……嬉しいよ。たかあきくんと一つになってるから」
俺の上に跨っている愛佳は目尻に涙を浮かべて、それでも顔は笑っていた。俺が奥
まで入ってくるのは初めてで苦しいのかもしれない。でも今はそれ以上に嬉しいんだ
ろうな。
「愛佳、やっぱり愛佳はかわいいよ。俺もう愛佳を離したくない」
「あっ…」
俺は体を起こして、三度愛佳をギュッと抱き締めた。俺は胸板に愛佳の柔かい体を
押し当てるように抱き、手で髪を撫でる。
「んふ、たかあきくん…大好き……あたし、もっとたかあきくんを感じたい」
愛佳は俺の耳元でそっと言って、腰を浮かせた。クチュクチュッと音がして俺の一
物と愛佳の襞が擦れ、俺の一物がビクッと震える。雁首が出かかったところで愛佳は
ズブズブと音を立てて腰を沈めていった。
「あう…」
「気持ちいい?じゃあ…」
愛佳はそのまま腰を動かすのを速めようとした。
「お、おい、愛佳…」
「大丈夫だよ。たかあきくんだっていつも激しく動いてるもん」
俺は愛佳を気遣って「無理するな」と言おうとしたが、愛佳は気に留めることなく
俺の首っ玉に手を回し、腰を上下に振り始める。愛佳の膣壁が熱くて、きつく締まっ
て気持ちいい。ジュブッ、ジュブッと愛液のかき回される音も盛んに出ている。
「あっ、ああっ、ああ…気持ちいい、気持ちいいよぅ…」
愛佳は俺を気持ち良くさせようとして、自分も感じている。体が揺すぶられるのと
同時におっぱいがプルプル揺れていた。俺は両手で愛佳のおっぱいを鷲掴みにして、
搾るように揉んだ。
「あ、いやぁ…お、おっぱい触られたら、あたし、もう、どうかなっちゃ……あっ、
あああっ」
感じたのを見て取ってから、乳首と乳暈もペロペロ舐める。こうされるとおっぱい
が弱い愛佳はひとたまりもない。
「んくっ、く、ふあ、あ、はぁ、あ、ああん…」
このままあっさりイッちゃうんじゃないかってほど、愛佳は激しく喘いでいる。そ
れでも腰を振る勢いは健気にも緩めない。ああ、やっぱり俺の恋人はこれ以上ないっ
てくらい可愛いぜ。サラサラの髪、可愛い声、柔かくて敏感なおっぱい、きつく締ま
るあそこ…愛佳の全てが愛おしい。どんなことがあっても絶対に離したくない、いや、
離さない。俺は心の底からそう思った。
「あ、ああ、い、イク、イッちゃうよぅ〜」
とうとう限界に達した愛佳がビクビク震えだし、あそこの締め付けが一段ときつく
なった。敏感なところを締められて俺も催してしまう。
「俺も、もう…ううっ」
俺は慌てて一物を抜こうとしたが、愛佳が逆に腰を押し付けてきた。
「だめ、抜かないで…最後まで、たかあきくんを感じたいの」
制止する間もあらばこそ、俺は愛佳の子宮の中に大量に射精していた。
「うふ…あったかい」
愛佳は俺の胸の中に体を預け、精液を受け止めた。
3月14日(月)
「はい、たかあきくん、あーん」
放課後、俺は愛佳と一緒に喫茶店に来ていた。愛佳に言わせるとここの紅茶は絶品
といういかにも愛佳の好きそうな店だ。ここで全額俺の奢りでお茶させてもらうこと。
それが先月の罪滅ぼしにと愛佳が俺に提示した条件だった。かくして愛佳が頼んだデ
ザートは、この店で一番高くてゴージャスなジャンボフルーツパフェだった。おいお
い、ショーウインドーの模型で見たけどあれは随分ボリュームのあるメニューだった
ぞ。あれをいくら何でも愛佳一人で平らげるのは無理じゃないか?つまみ食い常習犯
と言えども…などと思っていると愛佳はチョコレートのたっぷりかかったバニラアイ
スを一掬いするなり俺の口先に差し出してきたのである。去年の今頃の愛佳からは想
像できない大胆な行動に俺は少し当惑して気恥ずかしくもあったが(だって他の客も
見てるんだし)、恋人らしく振舞おうと愛佳なりに頑張ってるんだと思うと恥ずかし
がってばかりもいられず、
「あーん」
俺は意を決して口を開けた。俺の口の中にアイスが放り込まれる。む、アイスもチ
ョコシロップも甘さ抑え目のを使ってあるな。甘いのが苦手な俺でも存外いける味だ。
「どう、おいしいかな?」
「うん、うまいよ。思ったよりいけるわ」
俺が率直な感想を述べると愛佳は満悦の体で、
「良かった、たかあきくんに気に入ってもらえて嬉しい。それじゃあどんどん食べて
ね。はい、あーん」
「あーん」
次から次へとアイスやフルーツ、生クリームを掬っては俺に食わせてくれた。俺に
餌付けをしながら愛佳は楽しそうだ。口の中がだんだん甘ったるくなってくるけどそ
んなことは気にならない。だって愛佳が食べさせてくれるんだもん。
「愛佳」
「ん?」
「こうしてるとさ、俺の恋人が愛佳でよかったってつくづく思うよ。学級委員の仕事
と同じくらい、俺のことも大事にしてくれてるもんな」
「や、や、それは誉めすぎだよぉ。あたしはただ、たかあきくんにいつも喜んでもら
いたくて頑張ってるだけだよ…」
「またまたぁ、嬉しいこと言ってくれちゃって。よし、それじゃあお茶の後は家に来
て、また俺を喜ばせてもらおうか。今夜は眠らせないからな、うひひ…」
「もう、たかあきくんのエッチ。そんなこと言うたかあきくんなんか知らない」
愛佳はプイとそっぽを向いて、俺のほうまで運びかけていた手首を返して自分でフ
ルーツを食べてしまった。
結局愛佳に機嫌を直してもらうために、俺は郁乃の分も含めてお高いケーキをいく
つも買うことになってしまった。
お付き合いいただきありがとうございました。貴明の(みっともない)嫉妬から愛佳
との仲がおかしくなりかかるけど貴明が必死で謝って仲直りする(そんでタイトルを
ジョン・レノンのちょうど主題に見合った歌から取りました)という話を書きたかっ
た訳ですが、結局またエロなしでは楽しめない話になってまいますたね。工房の初々
しさが欲しいという意見もありましたけど三十路間近のおいちゃんにはそれ難しいで
すわ。童貞捨てたのも28の時でしたしねえ。この辺り他の方の作品も読んで吸収し
たいです。いずれまた書き直して自分とこのさいとにうpする予定ですが、その前に
また御意見いただけるとありがたいです。既に前回指摘されたフランス風味の暗喩は
やめました(つーか素直にペニスとかヴァギナとかまんことか秘肉とか言ったり書い
たりできないシャイな性分ですからつい使ってしまうのですよ。今後は気をつけます
けど)。この先もおかしいところがあれば直していきたいです。
129 :
102:05/02/02 15:05:48 ID:xsb9M0Hb
激しい下痢にも負けず、なんとか書き終えました
初めに謝っておきます
ごめんね、草壁さん
12レスほど続きます ↓
今、俺達がいるのは、いつか見たファンタジーっぽいお城の中。夢の中にしかありえないような、豪勢な城。
荘厳なシャンデリア、壁に描かれた宗教画、玉の床……。ここはバッキンガムか、ヴェルサイユか。
ここは、きっと夢の世界なんだろう。お互いの服装は、学校の制服のままだけど、俺達は、いつからここにい
るのかわからない。時間の前後関係がまったくはっきりしない。さっき来たばかりかもしれないし、遥か遠い昔
から、ここにいるのかもしれなかった。
そんな夢の中で――俺と草壁さんはふたりきりで、秘密のお茶会を開いていた。広い広間に小さなテーブル。
そこが二人の遊び場だった。
草壁さんは「今日はちょっと趣向を変えたお茶会にしましょう」と言っていたが、それはいつも通りの甘った
るい雰囲気で進んでいた。
草壁さんの焼いたクッキーを食べながら、ミルクティーを嗜む。一口囓ると、口の中でとろけるクッキー。
「おいしい」と口に出す必要もない。俺の微笑みを見ただけで、草壁さんは喜び、くすっと笑い返した。
草壁さんは、紅茶が注がれたばかりのティーカップに、ふうふうと息を吹きかけていた。そして、俺をチラッ
と横目で見ると、ふふっと笑い、紅茶を一口含んだ。
俺達は口を合わせる。草壁さんの口から、俺の口へと、ぬるくて甘い紅茶が流れ込んだ。
互いの口の端から、紅茶と唾液が混じったものがこぼれ落ちるが、それに構わず、互いに舌を求め、口を吸い
あった。
俺は、草壁さんの柔らかい舌を求めて、追い回した。草壁さんの小さな前歯、歯の隙間のクッキーの欠片……
俺はそれらをなめ回し、舌を追い続けた。やがて、追いかけっこは終わり、求めるままに舌を絡め続けた。
「……夢だとわかっていても……少し、恥ずかしいな」
互いの口の間に唾液が糸を引いているのを見ると、草壁さんは頬を赤く染めて言った。
「でも、俺、草壁さんとこうしていると、とても幸せな気分になれるよ」
俺はそう言って、草壁さんの鼻に軽くキスした。
女の子への苦手意識がまだ拭えない俺でも、これが夢だとわかっているのなら、大胆なことはいくらでもやっ
てみせる、つもりだ。
「……もう、『さん』付けは、やめてほしいのに。貴明さん」
草壁さんがポツンと言った。
「それより、今日のお茶会は『趣向を変えて』とか言ってたよね? どういう意味なのか教えてくれないか?」
俺は、草壁さんの髪を撫でながら言った。
すると、草壁さんは、少しうつむくと目を閉じてしまった。
照れくさいのか、それとも、何か重大なことを言おうとしているのか……。
俺は、草壁さんの顔をじっと見て待った。
やがて、草壁さんは、意を決したように目を開いた。
「貴明さん……こよいの、夜とぎを、申しつけます……」
草壁さんは、俺の目を見て確かにそう言った。
「……承知仕る。俺は、暗黒面に囚われた邪悪な騎士だ」
俺は頷いて言った。俺は、忠義に篤い『騎士クラウス』ではない。
草壁さんも軽く頷き、口元に笑みを浮かべた。
「でも、本当にいいんだね?」
俺は、思わず聞き返してしまう。
「ええ。……でも、驚かないでくださいね?」
草壁さんは、気になる言葉を口にしたが、いつもの謙遜か何かだと思い、気にしないことにした。
俺は、草壁さんの制服のタイを解いた。
お姫様も、俺の制服のボタンを一つずつ外していく。
立ったまま、互いの制服を一枚一枚脱がせていき……互いに下着だけの姿になった。
草壁さんは白いレースの下着。肌が白くて華奢な草壁さんには、清楚な白のアンダーがよく似合う。
でも、黒も似合うかもしれないな。黒い下着と白い肌のコントラストは、大いに情欲をそそるに違いない。
俺はそう思いながら、フロントホックのブラを外した。大きくはないが、形の整った美しい乳房が姿を現す。
「とても綺麗だよ、草壁さん……。俺が触れたら、壊れちゃいそうだ」
「ふふっ……」
草壁さんは、笑顔で俺のアンダーシャツを脱がした。
「あっ……貴明さん。後ろ、向いていいですか……?」
俺がパンティーに手をかけようとすると、草壁さんは急にそんなことを言って、後ろを向いてしまった。
「え? ……ああ、いいよ。やっぱり、ちょっと恥ずかしいよね……」
俺は気にせずに、草壁さんのパンティーを下ろした。足が速い彼女の、引き締まったお尻をまじまじと見る。
草壁さんは、不意に、正面に向きなおった。彼女の恥丘や陰毛が目に飛び込んでくるはずだったが……。
何やら、ゴムの棒のようなものが、しゃがんでいる俺の、鼻の頭を打った。
それを見て、俺は言葉を失った。
「……な、な、な、なんなんだよ!? その……そこに、くっついてるヤツ!!」
草壁さんの股間には……信じがたいことに、俺の股間にあるのと同じ、棒状の物体がそそり立っていた。
その先っぽは綺麗な桜色だが、棒は肌より少し浅黒く、長さや太さは俺のモノとあまり変わらない。13cm
はあるだろうか。尖端からは透明な汁を溢れさせ、その全体は、上下にヒクヒクと物欲しそうに揺れていた。
俺があんぐりと口を開いていると、草壁さんは悪戯っぽく笑った。
「ふふっ……これですか? これは、私の、おちんちんです。
ほら、前にも言ったでしょ? 『女の子には秘密がいっぱい』って」
「女の子の秘密って……それは男の……いや、確かに、俺には雄二とのホモ疑惑とかいろいろあったわけだけ
ど、俺には衆道といいますか男色というか、そういう趣味は、これっぽっちも、ないわけであって、えぇ」
俺はすっかり混乱してしまい、ヘナヘナと腰を下ろし、色々なことを口走った。
俺が今まで付き合ってきて、ディープキスまでかわした女の子が、実はオカマかニューハーフだったなんて、
悪い冗談でしかなかった。世の中には「可愛ければ性差は関係ない」という奇特な人もいるらしいが、俺にとっ
てはそうではない。俺は、普通の女の子と、普通のお付き合いをしたいんだよ!
……でも、小学校の頃の高城さん(旧姓)は、カバンは赤だったし、水着も女の子のものだったし、身体検査
も女の子の列にいたはずだし……。まったく、わけがわからない。
「私、女の子だよ。女の子も、ちゃんとあるよ……貴明さん」
草壁さんは、少しむっとした様子で、左手で男性器をぐいっと真上に引っ張ると、体を後ろに反らした。
陰嚢――タマの袋がないかわりに、女の子らしい割れ目があって、草壁さんは右手でそれを左右に開いた。鮮
やかなサーモンピンクの女性器が姿を見せた。割れ目の間には、透明な汁が糸を引き、キラキラと輝いていた。
見る限り、クリトリスの部分が男性器状になっているようだった。
「私、貴明さんと、ひとつになりたかったから……。
そう願っていたら……夜空の星々が、私に、プレゼントしてくれたのかもしれませんね」
草壁さんはそう言うと、男性器から手を離した。それは、ブルン! と勢いよく振り下ろされ、再び俺の鼻を
強かに打った。鼻の先に、男性器の尖端から溢れる透明な粘液が付着し、鼻と男性器の間で長く糸を引いた。
「これは罠ね」
俺はそう強がって、口をつぐむのが精一杯だった。
気持ち悪い、と逃げてしまうのは簡単だが、草壁さんは傷つくだろうし、かと言って、どう対応したものか。
女の子の部分だけを愛してあげればいいのだろうか? でも、草壁さんは、俺にペニスを楽しそうに見せつけて
いるわけで……でも、男性器を相手するのには、やっぱり抵抗があるわけで……。人生経験の乏しい俺には、打
つ手がすぐに思いつかなかった。
「舐めてほしいな……貴明さん……。
貴明さんの、そんな、照れた顔を見ているだけで……ほら、この子もこんなに嬉しそう」
うっとりした表情の草壁さんは、そのヒクヒクしているおちんちんを、俺の閉じたままの口にグイッと押しつ
けてきた。粘液に濡れた桜色の尖端が、俺の唇に触れる。草壁さんが、ふうっ、とため息をつくのが聞こえた。
草壁さんがおちんちんで俺の唇を犯しているとき、俺は、それを受け入れるべきか否かで、まだ迷っていた。
「貴明さんの唇、気持ちいいな」
草壁さんは両手で俺の顔をガッチリ挟むと、腰をリズミカルに動かし、桜色の亀頭を俺の唇、そして顔全体に
擦りつけている。息をするようにヒクヒク動く尖端の穴から、カウパー氏腺液がわき出して、亀頭や竿がそれを
俺の顔に塗りこめている。
俺は、女の子の裸をこんなにも近くで見るのは初めて(大昔には、このみのを散々見ているかもしれないが、
それは母親の体を見ても欲情しないのと同じだ)なので、それだけでも、戸惑いというか緊張はあった。まさか
草壁さんに男性器が付いていようとは、夢の夢にも思わなかった。
俺は、上目遣いで草壁さんの表情を見る。目を閉じ、うっとりした様子で、頬を真っ赤に染めている。そし
て、濡れた男性器を俺に擦りつけるたびに、ふう、はあ、ふう、とため息を漏らしている。この程度のことで、
こんなに気持ちよさそうにしているなんて。
彼女の男性器を見る。俺の目の前にの桜色をした亀頭は、照明の光を受けて輝き、とても美しいと思えた。
いくら男性器がついていようと、草壁さんは草壁さんだ。目の前の男性器だって、草壁さんの体の一部じゃな
いか。汚いわけがないじゃないか。
……俺は、何を迷っていたんだ。草壁さんを、もっと気持ちよくしてあげないと。
俺は、彼女の亀頭を唇でくわえると、鈴口にゆっくりと舌を這わせた。口の中に、栗の花のような臭いと、カ
ウパーのぬめり、そして少ししょっぱい味が広がる。草壁さんが、はあぁぁ、と声を漏らす。
「貴明さん……してくれるんですね……うれしいな」
俺は、彼女の竿を右手で掴むと、いつも自分のモノにするような手つきで、リズミカルにしごきはじめた。
彼女の性器を擦るたびに、グッチュ、グッチュと音が立つ。俺は淫靡な気分になってきて、鈴口の汁を吸い、
裏スジを丹念になめ回した。
「ふぅ、はぁ、ふぅ……さすが、男の人ですね……と、とても、上手ですよ、貴明さん……!!」
いいか、俺はホモじゃない。絶対ホモじゃない。断然ホモじゃない。これっぽっちも、ホモじゃないんだっ!!
男のモノなら、絶対舐めていないぞ! 女の子のだから、草壁さんの綺麗な、桜色のおちんちんだから、だか
らこうしているんだぞ!! 俺は、誇りを持って舐めているんだ。文句のあるヤツは出てこい。こちとら夢の中な
んだ。俺の気が済むまでトラックで轢き殺し続けてやる、寝れねえ夜でも過ごしとけコラ。
俺は亀頭全体を頬張り、強く吸い、舌でこねくり回した。弾力があって、グミキャンディーのようだ。
「ひっ、ひあっ、ひああぁっ……そ、そんな舐めかた、イヤですっ!」
俺は、もっと激しく舌を踊らせ、亀頭や竿を甘く噛んだ。激しくするたびに、草壁さんは息を荒くし、可愛い
声で鳴き声を上げた。俺が再び亀頭にしゃぶりつき、強く吸ったとき……。
「ご……ご、ご、ごめんなさい……わ、私……だ、だ、出すっ!! 出しますううっ!!」
ビュッ! ビュッ、ビュルッ!
熱くて濃い大量の粘液が噴射され、俺の喉を打った。それは痰のように俺の喉に絡み、俺の呼吸を奪った。
俺は、慌ててティーポットに口を付け、中身をがぶ飲みした。
「げふっ、ごふっ……の、飲んじゃった」
俺が肩で息をしながら座り込んでいると、不意に草壁さんが顔を近づけてきた。そして、俺の顔に付着してい
る、口から漏れた精液を丁寧に舐め取っていった。
「精液って……少し、しょっぱいんですね……」
草壁さんはそう言って、くすっ、と笑った。草壁さんがいた足元には、透明の汁が水たまりになっていた。草
壁さんのオ○ンコから滴り落ちた体液だろう。草壁さんが満足してくれたなら、俺は何も言うことがない。
俺は紅茶をもう一口飲んだ。
射精して気が済んだかな、と思ったのだが甘かった。草壁さんはにっこり笑って、恐ろしいことを口走る。
「……貴明さんの処女、頂いちゃおうかな」
「ぶふっ!?」
俺は、口に含んでいた紅茶をぶちまけた。
「あっ、大丈夫です。ちゃんと、ゴムは着けます。まだ……子作りは、早いですから。
でも……貴明さんを、妊娠させてしまったら……そのときは『できちゃった結婚』ですよね……ふふふっ」
草壁さんは、俺をからかってムチャクチャなことを言う。
「ちょっと待て、なぜ男が妊娠しますか!? ……つーか、お願いだからやめて、勘弁して! 痔になっちゃう
よ! 男の肛門なんて汚いよ!? 草壁さんの綺麗なチンチンにウンチが付いちゃうよ!?」
俺は、震え上がった。
「ふふっ……何も、汚くないよ。だって、貴明さんの体ですもの。全部、私が愛してあげます。
……そうだ。痛くないように、ローションも塗りましょうか?」
草壁さんは、俺をバックで犯すという。
おとなしそうな顔をして、もの凄く大胆な草壁さんは、俺の体を無人の野を往くが如くに蹂躙する。
なぜ、ここまで強気に出られる? やっぱり、これが“夢”だからですか?
それとも……そうさせているのは、俺自身がどこかで望んでいるからなのか?
草壁さんはハミングしながら俺のパンツを脱がし、四つん這いにさせると、すっかり元気になったおちんちん
を、俺の肛門にあてがった。
俺は振り返って、草壁さんをチラッと見る。
「おしり、おしり、貴明さんの、お・し・り〜♪」
草壁さんは、このみの「ひつじ肉〜♪」並にバカな歌を口ずさんでいる。もう俺の肛門しか見えないらしい。
情欲とは、こうも人を狂わせるのだろうか? おかしいですよ、草壁さん!
……ああ、いいさ。草壁さんの悲しい顔は二度と見たくない。そのためなら、アナル星人にもなってやるよ。
「挿れますよ……貴明さん……!!」
ズブブッ!
草壁さんは、一気に俺を貫いた。肛門が押し広げられ、異物感が下腹部全体に広がる。
「くあああっ……!」
俺は思わず声を漏らしてしまった。
「んんっ、ふっ、くっ……貴明さんの中……きついですっ……!!」
草壁さんはそう言いながらも、腰をゆっくりと動かし始め、徐々に快楽を貪ろうとする。
俺の腰を両手でしっかりと掴み、一往復、また一往復、感触を確かめるように突き入れる。
俺はメス犬のような姿で犯されているにもかかわらず、不快感というより、ある種の快感を味わっていた。
肛門は少しヒリヒリする感じがするが、なぜか断続的に快感が脳を突き上げ、それが俺のモノをギンギンに勃
たせ、鼓動を早くさせ、体の芯を熱くさせるのだ。そして、この行為に、何とも言えぬ懐かしさを感じていた。
急に、昔のタマ姉の顔が脳裏に浮かんだ。そうだ、カゼをひいて寝込んだとき、タマ姉がやってきて、俺に何
かをしたような記憶がある。俺のズボンを下ろし、何かを取り出し、ドキドキする何かを……。
夢の中だからか、これ以上は思い出せない。それとも、思い出してはいけない記憶なのだろうか?
「ねえ、貴明さん……男の子には、前立腺というものがあってね……そこを刺激すると、とっても、気持ちがい
いんですよ。私……貴明さんを、いっぱい、気持ちよくしてあげたいんです! 私に、たくさんの、勇気をくれ
た、貴明さんをっ……!!」
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ……。
草壁さんは「うんっ、んっ、んあっ……」と喘ぎながら、熱いペニスで俺の直腸をかき混ぜ、こねくり回す。
俺の口は「あっ、あぁっ、あっ、あぁ……」という情けない声を漏らし、為すがままにされているばかり。
「はっ、はぁっ、はっはっ、はぅっ、い、いいですか、貴明さん……いいですかいいですか、いいでしょう?
き、き、気持ち、いいですよね? 貴明さんっ!!」
草壁さんは、すっかり自分に酔っている。長い黒髪を振り乱し、ひたすら腰を振って、俺を突き続ける。
俺の夢の中で、俺の深層意識が作り上げた草壁さんは、俺を激しく犯し、俺の精気を貪っている。
俺は、ずっと、草壁さんに犯されたいと願っていたのだろうか。
儚げで清楚な女の子にメチャクチャにされたいと、心の底で願っていた変態なんだろうか、俺は。
「ん、んっ……お、おしり、お尻、いいですか? 気持ちいい……? 気持ちいいですか、貴明さん!?
もっと……もっと、私を、感じて! 私も……もう、我慢できない……」
ピストン運動の肉がぶつかる音と共に、くちゅっ、くちゅっ、という粘液の音が聞こえてくる。草壁さんは俺
の腰から左手を離し、自分の女性器を激しくいじっているようだった。女性器と男性器の相乗効果で、さらに気
持ちよくなった草壁さんは、ピストン運動のスピードをどんどん早めていく。絶頂が近いのだろう。
俺は、すっかりお留守になっている自分の性器を擦り始める。草壁さんと一緒にイこうと決めたのだ。
「んっんっんっんっんっ、んぁぁっ、で、出るでるでるっ! もう、出るっ……私、イっちゃいますっ!
貴明さんたかあきさぁん、貴明さあぁぁぁんっ!!」
絶頂に達した草壁さんの右手の爪が、俺の腰の肉にギリギリと食い込んだ。
激痛が走り、俺は思わず、自分のモノから手を離してしまう。……夢なのに、なんでこんなに痛いんだ!
「はぁ、はぁ、ふぅ、はぁ……。貴明さん……今日は、運命的なお茶会に、なりましたね……」
一人で満足した草壁さんは、萎えたペニスを引き抜くと、俺の尻や背中に、精液の残り汁を振りかけ続けた。
「私……自分のことばかりに必死で、貴明さんの……それを、構ってあげるのを、忘れていたなんて……。
私ばかり楽しんでしまって、ごめんなさい……」
草壁さんは少しへこんでしまい、うなだれて俺に謝っている。
「う……うう……汚れされちゃったよぉ……草壁さんに、女の子に、汚されちゃった……」
陵辱され続けた俺は涙を堪え、溢れてくる鼻水をひたすらすすっていた。
俺は気持ちいいどころか、草壁さんにチンポ汁を擦りつけられているばかりだ。
俺のチンポは半端にブラブラしているだけで、肛門や、爪の食い込んだ腰はヒリヒリ痛むばかり。
確かに、草壁さんを気持ちよくするという目的は一応達したが、これでは不公平に過ぎるぞ。
俺は昔のような“チキン”じゃない。このまま黙っているわけにはいかない。こうなったら……。
俺はゆっくり口を開く。
「いやだなぁ、『ごめんなさい』だなんて。……草壁さん、俺は待っていたんだ」
「……えっ、何をですか?」
草壁さんは、きょとんとして訊いた。
「しおらしくなった草壁さんを、押し倒すチャンスをっ!」
「きゃっ!」
俺は、草壁さんを仰向けに押し倒すと、落ちていたタイで手首を縛ってしまった。
「ふっふっふ、よくも散々いじめてくれたな、このお姫様は。罰として、生でやるからな。覚悟しろ」
「そんな……生なんて、ダメですっ」
草壁さんは、盛んに首を振ってイヤイヤをするが、俺は頭から無視。
草壁さんの腰を持ち上げて、いわゆる“マングリ返し”の体勢にすると、濡れてドロドロになっているオ○ン
コを押し広げて、舌を這わせた。
「ここは寂しかったみたいだね。ぬるぬるのぐちょぐちょじゃないか」
サーモンピンクの花びらや膣口には、白濁した汁がこびりついており、それを丁寧にすくい取り、舐めた。
生臭い味も、鼻につくようなムッとする臭いも、草壁さんが分泌した蜜ならばどうということはない。
「ひっ、ひぁっ、た、貴明さんっ……そんなに、臭いを、嗅がないでくださいっ、はっ、恥ずかしいですっ」
膣口をヒクヒクさせながら、草壁さんが訴える。
「俺に散々チンポをしゃぶらせておいて、今さら何だよっ」
俺はオマ○コやアナルを責め立てるが、あえてペニスには手を触れない。自分ばっかり楽しんだお仕置きだ。
“マングリ返し”の姿勢のままで、俺は草壁さんの両足を抑えながら、腰に体重を掛けて、一気に挿入した。
「はああああぁっ……ああっ、あうっ、い、いやあぁぁっ……!」
草壁さんは、目にいっぱいの涙を溜めている。相当に痛いのだろう。草壁さんの膣も俺のモノを締め付ける。
「きついのは……お互い様みたいだね……」
俺はそう言って、ゆっくりと前後に動かし始める。
「んんっ、ふあっ……あ、あんまり、激しくしないで、貴明さんっ」
「人のケツの穴を壊しておいて、何言ってんだ」
「こ、壊してなんか……いませんっ。貴明さん、意地悪ですっ」
腰をグラインドさせるたびに、元気を取り戻しつつある草壁さんのおちんちんが、ブルン、ブルンッと振り回
されて、先走り汁を撒水機のように散らした。
「2発も出しておきながら、もうビンビンじゃないか。絶倫なんだな、草壁さんは」
「んんっ、んあっ、ああっ、あはっ、そ、そんなこと……い、い、言わないでください……!!
き、今日の、た、貴明さん、怖いよ……」
一番怖いのは、草壁さんだよ。そう言いたいのを抑えて、俺は言葉で草壁さんをいじめる。
「毎晩毎晩、俺を想って、その、でっかいチンポを、しごいてたんだろう?」
「んあっ、んはっ、んあっ、んっ……そ、そんなこと、ない、ないですっ……んうっ……!」
「そうだと言え。毎晩、自分の寝室で、俺を心の中で犯しながら、臭いチンポ汁を撒き散らしていたんだろう」
深く挿したまま、前後に揺する。
「んっ、んんっ、んぁっ、んあっ、うはっ……!!」
草壁さんは、喘ぎながらペニスを震わせ、恨めしげに俺を見ている。
「言えってば」
俺は、さらに激しく揺さぶった。草壁さんは我慢汁を垂らしながら鳴き声を上げ、観念した様子で口を開く。
「……ええ、そうですっ! 私……毎晩、貴明さんのことを想って……貴明さんのアナルを、お、犯しながら、
お、お、ちんちん、おちんちんをぉっ、擦って、いましたっ……!!」
「よし。お仕置きは、ここまでだ」
俺は草壁さんの腰を下ろしてやり、えぐるように膣をかき回した。そして、右手で草壁さんのペニスをしごい
てやる。濡れた肉棒が、じゅぷっ、じゅぷっ、と音を立て、泡だった汁が俺の指にこびり付く。
「ふあ、ふあっ、ふああぁぁぁっ!」
「ううっ、うっ……草壁さん……ゆ、優季っ……俺、もうっ!」
草壁さんは、顔や胸をピンクに染めて、仔猫のように喘ぐ。膣の壁に俺の尖端が激しく擦れて、快感が体全身
を駆ける。俺は、限界が近いことを悟る。草壁さんのペニスがビクンと脈を打ち、それが絶頂の合図になった。
「た、たかあきさん、貴明さぁぁぁん!」
「優季、優季っ、優季ぃっ……!!」
俺達は、お互いに名前を叫びながら、好きなだけ精液を吐き出した。
草壁さんの真っ白な熱い精液が、俺の目に飛び込む。それを拭おうとしたとき、後頭部に鈍い衝撃が走った。
・
・
・
「よお。眠そうだな、河野」
古文の先生の声が聞こえる。俺は、学校の教室で、真っ白いノートに突っ伏している。
先生は副読本を丸めて、俺の頭をポカリと叩いた。クラス中が笑いに包まれる。
横目で、右隣の雄二を見る。雄二は額に手を当て、呆れたように掻いている。その手元には、針が剥き出しの
コンパスがあった。
俺の腰に刺すような痛みが走ったのは、雄二が俺を起こそうとして、コンパスでつついたんだろう。
「なぁ、河野。古文が退屈なのはわかる。わかりますよ。そりゃあ、俺にも経験があるから……」
古文の先生は「まぁ『春眠暁を覚えず』とも言うし……」と授業に関係ありそうな話を始めたが、「まあ、春
と言えばあけぼの、曙と言えば元スモウレスラーですが……」とすぐに脱線した。曙が横綱時代にどんなに強い
スモウレスラーだったのか、という話が延々と続き、そのまま古文の時間は終了した。
休み時間に、草壁さんがやって来た。
「あのぅ、貴明さん……」
「どうしたの? 体操着でも忘れたのか?」
俺は草壁さんに訊いた。
次の時間は体育。この日は、女子は体育館でバレーボールのはずだ。
草壁さんは微笑みながら、首を横に振って言った。
「……優季って……呼んでくれたね、貴明さん」
俺は、何も言えずに固まってしまった。
「……また、逢いましょうね、お城の中で。そう……また、今晩にでも」
俺は、草壁さんの言葉を、黙って聞いている。
「もう、あまり、怖いことは言わないでくださいね。縛られるのも……好きじゃないです。
……じゃあ、またね」
草壁さんはハミングをしながら、女子更衣室に向かおうとする。
どこかで聴いた旋律だった。かつて、校舎の屋上で聴いた歌、ではない。もっとマヌケな歌……。
おしり、おしり、貴明さんの、お・し・り〜……。
「草壁さん。その歌、どこで……」
俺は、思わず裏声で叫んだ。そこにいた全員が、俺に注目した。
草壁さんは振り返ると、俺の顔を覗き込むようにして、にっこり笑った。
「うふふっ……それは、ナイショです。女の子には、秘密がいっぱいですから」
乙です。読んでてちんこに手をやってしまいますた。おいちゃんふたなりもいけるほうなのか?
145 :
7月文月:05/02/02 17:05:44 ID:bflqcalF
>>130-141 読ませていただきました
エチィですねぇ(・∀・)ニヤニヤ
最後の部分のネタから見るともしかして以前もミルファSSを投下なされた方では?
146 :
142:05/02/02 17:21:49 ID:xsb9M0Hb
>>143 >ふたなりもいけるほうなのか?
思いつきだけで突っ走ってみました
>>145 女の子には秘密がいっぱい (´ー`)
>>129様
下痢にも負けず、よく頑張った!
感動したっ!!(ダマレ)
>>129 堪能させていただきますた
オチもいいなぁw
病院というところは、健康な――またはそう思い込んでいる――人にとっては居心地の悪い場所である。
特に雄二にとって不思議でならないのは、病人を迎える場所であるはずなのに、暖かい空気がまるで感じ
られないところだ。入り口、待合室からしてもう冷たい感じがしてならない。
――もうちょっと暖色を使って、床だって短毛の絨毯を使って――。
それが衛生面を無視した考えであることを雄二は理解していないわけではない。
だが、ここが生活の場だと考えると、なにか空寒いものを感じずにはいられない。壁面から、床から、そし
て人からすら、早く帰れと攻め立てられているような感じがする。
愛佳の先導でエレベーターを使い、入院患者の病棟まで上がると雄二は少しほっとした。こちらはまだ生
活感を感じることができる。居心地がいいとは言いがたいが、少なくとも拒絶されているような雰囲気は少し
薄れた。
「あら、郁乃ちゃん、今日は彼氏連れかしら?」
ナースステーションの前でふと一人の看護士が足を止めて郁乃に声をかけた。
郁乃の姉とその彼氏の院内有名カップルに加え今日はもうひとり。美形の少年が郁乃の車椅子を押して
いるとなればそうかんぐりたくなるというものだろう。
「いえ、友達です」
郁乃は素っ気無く応えたが、看護士がどう捉えたかはまた別だ。
「あらあら、郁乃ちゃんをよろしくね」
それだけ言うと忙しそうに看護士はナースステーションに入っていく。
「彼氏だってさ、郁乃ちゃん、どうだい本当にしてみないか?」
「いえ、遠慮しておきます」
――まだ今のところは。郁乃は心の中でだけ付け加える。なにせそんな軽口を叩きながら雄二の視線が
追っていたのはさっきの看護士だったからだ。
まったく、男ってのは――。
貴明もこれまでに何度か愛佳に耳を引っ張られたことがある。その気がなくてもつい目で追ってしまうこと
というのはあるものだ。
しかし、彼氏にしてみないか、か。愛佳と貴明の言ったとおり軽口の天才みたいだけど、もし「はい、よろし
くお願いします」と応えたらどうするつもりなんだろうか? 貴明に言わせればいつだって本気らしいけど、と
てもそうは思えない。
その辺が彼自身の悲観する、恋人ができないという理由になっている気がする。
でもまあ、他人の恋愛観など分からないものだ。自分自身のも含めてだけど。
郁乃は肩をすくめた。
愛佳の力を借りて車椅子からベッドに腰掛ける。
「へぇ、結構いい部屋だな」
「それは、どうも。ところでお二方……」
「なんでしょう、お嬢様」
「……着替えるんだけど、見たいの?」
「お許しとあらば、いででっ! ちょっと貴明、耳を引っ張るな! 取れるっ! 取れるッ!」
男性陣の姿が扉の向こうに消えるのを見てから、郁乃の着替えを手に愛佳は少し悲しそうな顔をする。
「見たいの、なんて……」
「冗談よ。お姉ちゃん」
そして扉の外では、
「お前、今の本気だったろ!」
「本気で何が悪いか! チャンスは自らに手を伸ばすもの皆に平等なんだぞ!」
「ウソつけ、お前が手を伸ばすとチャンスとやらは全力疾走で逃げ出すじゃないか!」
小声で罵りあい。
「お前もなー、そのいい加減ささえなくなればモテるだろうに」
すでにモテてることについては言及しない。どっちにしても現在のモテ方では意味がなさそうだし。
「貴明、お前今どれだけ矛盾したことを言ったか分かってるのか!? 例えば俺が誠実に一人の女性だけに真
摯に向かい合ったとする。そしたらその時にはもうその女性に振り向いてもらえれば十分なワケで、不特定
多数の女性にモテる必要なんぞなくなってしまうのだっ!」
「ならそれでいいじゃないか」
実際貴明は愛佳さえ自分を好きでいてくれれば他の女の子が自分のことをどう思っていようと別に気にな
らないし、特に好かれたいとも思わない。逆に万が一好かれて言い寄られたりなんかしたら困ってしまうだ
ろう。だからこれは実感の伴った言葉だったのだが――
「かーっ! だからお前はいつまで経っても男未満なんだ。男ってのはな、愛された分だけ愛し返さなけれ
ばならない義務をもった生き物なんだ。たとえそれが個人だろうが、不特定多数だろうが、だ。分かるか、小
僧、もし俺が誰か一人を深く愛したとする、その結果、別の誰かが俺を愛してくれてもそれに気付けなくな
る。こんな不誠実なことがあるか!?」
「それ、屁理屈だろ。だいたいなんで俺が男未満なんだよ」
「だってお前まだ委員ちょとしてないだろ?」
「――!! なっなっなっななななっなっにいってんだよ」
「分かりやすすぎだな。お前……」
雄二はぽんぽんと貴明の肩を叩く。
「な、なんでそれで男未満ってことにされなきゃいけないんだよ」
「まあ、俺は経験済みかそうでないかで男か男で無いかなんて言うつもりはない。だがな、貴明、お前の場
合は言わせてもらう。なぜならば」
雄二はびしりと貴明の鼻先に指を付きつける。
「――委員ちょは待ってるからだ!!」
「――!! なな、なんでお前がそんなこと断言できるんだよ」
「分からんのか、バカあき、委員ちょがお前のことを見る目を。もぅ、抱いて抱いて光線が出てるじゃないか。
もうちょっとちゃんと委員ちょの態度とか様子に気を配ってみろ」
言葉に詰まった貴明を救ったのは意外な声だった。
「お〜とこども〜〜!! なにやってんの! そのままお姉ちゃんを出火元にさせたいの?」
「あ……」
「お……」
振り返ると、すでに病室の扉は開いていて、それをガラリと開けた姿勢のままで愛佳がゆでだこのように
なっていた。
それから愛佳の顔色を元に戻すまでが大変だった。なにぶん、貴明の顔が見えればまたゆでだこに戻っ
てしまうので、貴明には一時退去命令まで出る始末。
「な、な、委員ちょ気にするなよ。気付いてなかったの貴明くらいだって」
「そ、そんなこと思ってないですからっ!」
雄二も逆効果で退去命令。
「あぅあぅあぅ〜」
ぱたぱたと手のひらで顔を仰いでいる愛佳を見て、つい郁乃も思ったことを口にしてしまう。
「ふ〜ん、それだけ焦るってことは考えたことがないわけじゃないのね」
部屋主に敵対されたため、もう愛佳自身が退去するしかなかった。
ガラリを扉を開けて、そこでまたしても小声でぶつくさやってる二人に「顔を洗ってきます……」とだけ言っ
て洗面所に向かう。
ぱしゃりと冷たい水を顔に浴びると少し落ち着いてくる。
雄二が言ったことはいくらなんでも大げさに過ぎたとは言え、郁乃に言われたことは否定できない。
そう、考えたことがないわけじゃない。だって私たちは付き合ってるんだもん。
そういうことになっても自然な流れというものだろう。
たかあきくんもそういうこと考えたりするのかな。
鏡に映った自分の顔を見て考えてみる。また、かーっと顔が熱くなってくる。
あぅ、こんなんじゃたかあきくんにバレバレじゃない。
考えれば考えるほど泥沼にはまっていく。想像の中で鏡に映った自分の姿から制服を剥ぎ取ってみる。ど
うだろう? たかあきくんは綺麗だと言ってくれるだろうか?
それが逆に心理的ブレーキになった。綺麗綺麗綺麗、あたしにそんなことを考える資格があるだろうか?
歯を強く噛み合わせる。
そうするともう恥ずかしさや緊張や、ほんのすこし沸いた劣情も、まるで日に照らされた朝もやのように消
えて行くのを感じた。
愛佳が病室に戻ると、ちょうど郁乃のリハビリが始まる時間だった。リハビリとはいっても廃用症候群――
つまり寝たきりでいることによる運動障害や、循環器障害など――を避けるためのもので、それほど本格的
なものではない。
今日はこの後両親が来て、愛佳は彼らと一緒に帰る予定だったので、貴明と雄二はそこで退出することに
した。男二人というのは味気ないが、仕方が無いので肩を並べて帰る。
「なあ、郁乃ちゃん、いつから入院生活なんだ?」
「愛佳は小さいときからって言ってたな。気になるのか?」
「多少とは言え関わっちまうとな」
雄二は頭の後ろで両手を組む。
最初は軽い気持ちで引き受けた。郁乃が自分に多少なりとも好意を持ってくれたというので飛びついたと
いうべきかもしれない。だが実際にはそれほどのものでもなくて、ま、それは別にいつものことなので気には
ならなかったが、ただ郁乃が小さいときからずっとあんなところに閉じ込められてきたのだと思うと胸の奥で
ざわつきを感じてしまう。
雄二はそれが同情であることに気付いている。自分が健康で病院に通院したことはあっても幸い入院ま
ではしたことがない、だから感じる感情だ。それは分かってる。
分かってるんだが、感じてしまうものはどうしようもない。
「あーあ、まったくどうしたもんかね、こんちくしょうめ」
「さあな。念のため聞いておくけど、郁乃ちゃんのこと、どちらかというと気に入ったのか?」
「気に入ったもなにも、俺はすべての女性に平等だぜ。平等にこの愛の手を伸ばしてる」
「なら別にそれでいいんじゃないか? 郁乃ちゃんにも伸ばしてやれよ。毎日顔見せにいくだけでもいいん
だ。郁乃ちゃんは結構お前のこと気に入ってる。だってな、噛みつかれてないじゃないか」
貴明は顔の高さで手をひらひらさせる。俺は噛まれたんだぜ、というジェスチャー。
「そうだな。――友達だしな」
それから雄二が車椅子を押すのに慣れるくらいの時間が過ぎた。
雄二の朝は以前からとそれほど変わっていない。10キロのランニングを終えた環の最後の運動として叩
き起こされ、朝飯を食って家を出る。ただ変わったのは、その時間が以前より1時間くらい早くなって、環と
一緒に出ることはなくなり、向かう先が学校ではなく病院になったことくらいだ。
途中で貴明と合流して声をかけあう。
貴明は病院についてから愛佳の作ったおにぎりやサンドイッチで朝食にする。愛佳は最初雄二の分の朝
食も用意しようかと提案したが、貴明とは違い起きたときには朝食ができているので断った。むしろ貴明が
あと一時間早く起きるというのであれば、うちで食っていけばいいのに、くらいに思っていたが、それは口に
出さない。
そうして郁乃の車椅子を押して学校に向かう。なんてことない。それが日常になってしまっただけだ。
幸い郁乃の体調は安定していた。日々の投薬は欠かせないが、体力も少しずつ取り戻してきている。でき
る限りの最善の治療はしている。
愛佳はそれを信じていたが、その一方でそれがウソだということも分かっていた。
ひとつは治療法、新しく確立された治療法と医者は言ったが、世界規模で考えれば実際にはもう数年前
には実用化されていたものだ。単に日本にそれが入ってきたのが最近ということでしかない。
もうひとつは薬、日本は薬品の認可で立ち遅れている。海外でなら昨年認可された新薬があるのだ。しか
しそれが日本で認可されるまでは、通例であれば5から7年はかかる。
その新薬を海外から取り寄せて使用することは違法ではない。だが認可されていない薬を使うと自由診療
となるため、治療費は10割の負担になってしまう。さらに難病医療費等助成制度の恩恵も受けられなくなっ
てしまう。
郁乃が毎日受けている注射のうちひとつを例にすると一度で11,000円を必要とする。注射だけで、だ。
もし自由診療にするならそれだけで年400万程の費用がかかる。現状であれば特定疾患治療研究事業に
よる公費援助があるため、入院治療費すべて含めて月に23,100円で済んでいるものが、である。
そんな余裕は小牧家には無かった。
それでもできる限りのことはしてるのだ。それが愛佳にできる自分自身への唯一の慰めであった。
放課後、いつものように雄二が郁乃を送って家に戻ると環が待っていた。
「おかえり、雄二」
「――ただいま」
なんとなく不穏な空気を感じて雄二はそれだけ言って自分の部屋に戻ろうとした。しかしその肩をむんずと
掴まれる。
「待ちなさい。――話があるの」
そう言うときに環が目を合わせなかったので、これは悪い話だと雄二は確信した。
しかし悪い話であればこそ今聞かなくてどうするというのか? よい話はいくらでも後回しにすればいい。し
かし悪い話でびっくりパーティというわけにはいかない。
何故か居間に通されて、環が自分でお茶を二人分用意した。
「で、タカ坊の彼女の妹さんとは最近どうなの?」
単刀直入に環が聞いてくる。
「なんだよ。んなことどうだっていいじゃないか」
実際に環に勘ぐられるようなことはなにもない。これまでちょくちょく貴明に余計な世話を焼いてきた、その
延長みたいなものだ。別に郁乃とどうこうなりたいわけではない。そりゃ彼女は欲しいけど。
「――どうでもよくなくなったのよ」
ばさっと長机の上に書類が広げられた。
「小牧郁乃、15歳、2歳の時に現在も罹患してる長ったらしい名前の病気にかかる。自己免疫症の一種。
家庭の経済状況は悪くない。両親は共働きで姉が一人――」
「調べたのか、なんで!? だってもともと郁乃ちゃんとこに行くように仕向けたのは姉貴じゃ」
「状況が変わったのよ。はい、これどうぞ」
環が別のファイルを取り出してくる。
「なんだ、これ?」
妙に分厚い豪華な装飾のされた二つ折のそれを開くと、着物を着た一枚の女性の写真。
「おめでとう、彼女の前に婚約者ができそうね」
苦虫を噛み潰したような顔で環が言った。
「な、な、な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
プロットにおける第2部雄二編開始です。
郁乃の病気は、現実にある病気のどれ、ということにもするつもりはありませんので、その辺はご了承くだ
さい。極力病気に関する情報は表に出したくないのですが、郁乃の病気が特定疾患治療研究対象疾患と
考えた場合には思ったより負担が少なくなりそうだったので、この方向で。愛佳は医大にいけるようなお金
はうちにはないと言ってましたが、まあ普通の家庭では娘の一人が長期入院してなくても厳しい。共働きと
は言ったけど、母親は時間に融通のきくパートだろうし、愛佳自身は意外と金銭的に切羽詰ってる様子は見
せてなかったのもある。たぶんそうなんでしょう。
本来は期限が一年ということなのですが、郁乃の場合は更新できたということなのかもしれませんし、そこ
まで現実的に考えることでもないかと思われます。はい。
参考url 難病情報センター 特定疾患治療研究
ttp://www.nanbyou.or.jp/what/nan_kenkyu_45.htm
>>156 新展開キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
GJ! 現実的な描写も入れてあいかわらず上手いですな〜。
続きが禿しく気になるが、ペース守って作って下さいませ。
うーむつまりラストはこうだ。
ウェディングドレスを着た雄二、表情は暗く、俯いたまま歩く。
神父 「持金醜子、あなたは持金雄二を夫として認めますか」
Sir Yes Sir!!!!
神父 「持金雄二、あなたは持金醜子を妻として認めますか」
…………はい
神父 「では最後にこの結婚に意義のある物は申し出なさい」
━━━━━━━異議ありッッ!!!!
V18気筒 12000rpmの車椅子に乗った郁乃がステンドグラスをぶち破り会場に乱入。
郁乃 「乗りなさい!」
雄二 「おうよ!」
そして愛の逃避行へ。
俺が勝手に考えた外道図書委員長の今後の展開
1 突然いい話になる
愛佳「ゴメンなさい・・・河野君。 ずるい女と思われるかもしれないけれど、私どうしても
あなたの気持ちを確かめたくて。 図書委員長さんに無理をいって陵辱してもらったの」
図書委員長「君たちの絆をたしかめさせてもらったよ、君にならまかせられる」
貴明「そうだったのか!」
2 腐女子的展開
貴明「何故だ! どうして愛佳とタマ姉を陵辱したんだ!図書委員長」
図書委員長「 何故だって?・・・フっ、まだ君は気ずかないのか。 河野貴明・・・・
君を愛してるんだ!」 貴明「ええっ!」俺は突然の告白に驚愕する。
図書委員長「入学した時から君を見ていた・・・だが僕の気持ちは君に伝わらない・・・
だから君の周りの女を憎んで陵辱したんだ。 バカだよ僕は・・・」
俺は激しく嫌悪した、図書委員長の純粋な気持ちに気ずけなかった自分に。
貴明「俺も・・・俺もずっと好きだった!」 図書委員長「貴明!」
3 タマ姉の策略
環「プッ・・・あははははは、もうダメ。 タカ坊にぶすぎ!」 貴明「えっ?」
愛佳「ごめんなさい、河野君。 向坂さんがどうしてもというから・・・」
図書委員長「ははっ、悪役を演じるのもたのしかったよ」
貴明「どっ・・・どういうことだよ! タマ姉!」 環「まだ気ずかないの?タカ坊」
環「今日はエイプリルフールよ」
貴明「くそっ! やられた〜」
3は無茶か・・・(全部、無茶だ)
いや、そんなことはない。
この中だと、3が一番あり得るだろうな。
161 :
114:05/02/02 21:03:58 ID:j2ZiqKX7
>>123 初SSだったのでなにか思いついたらまた書くと思います
>>130氏のにはやられたって感じです。
違和感無く草壁さん世界になってます。
雄二編おもしろそうだ
163 :
図書委員長:05/02/02 21:21:40 ID:I9/cK9CL
こんばんみ。
ようやく風邪が治ってプロット考え直してます。悪いですが
>>159氏の予想は全部外れです。
下手なりにダークな話に挑戦しようと思って書き始めた作品ですからなんとかその路線は維持
していきたいと思ってます。しかし参考になりそうな資料がクリムゾンさんの同人誌しかない
のがなんとも・・・(苦笑。いえ、元々鬼畜もののエロ漫画やゲームはほとんどしませんから)。
>>130-141 この変態が!
貴様、いったいどんな脳みそをしているのだ!
えっちぃ過ぎて、貴様の足下にひれ伏そうにも、股間のテントが邪魔をするわ!
よもや草壁一人ですませようなどと甘いことは考えておるまいな?
>>159様
あーはハはっははヒ不はは!!
あまりの面白さに体をのけぞらせたら
後ろのタンスに後頭部直撃!!!
しかし、笑いは止まらず
笑い転げてたら、母親が入ってきて
母「何やってんの?」
私「ぶばふっ!?」
みたいな展開になってしまったーっははは
「ご苦労様、みんな夕食が出来るまで自由にしてて良いからね」
そういってタマ姉はキッチンのほうへ向かって言った。
「な〜な〜貴明、みんなでなんかして遊ばへん?」
暇そうにしている珊瑚ちゃんがそう聞いてきた。
「何かって例えば!?・・・トランプとかそういうの?」
「うちはたのしければなんでもええで〜」
珊瑚ちゃんは嬉しそうにそう言った。
「わかったよ、雄二トランプとかあるよな?」
「あいよ、じゃ〜ちょっくら部屋まで取りに行ってくるわ」
そう言って、雄二は自分の部屋に向かっていった。
「タカ君、このみもトランプしたいな〜」
「ああ、多いほうがいいだろ。由真も柳瀬さんもやる?」
そう聞くと由真はなにかに気づいたように。
「河野貴明!!今度はトランプで勝負ね!!」
「私もせっかくだから参加させてもらうわ」
「おぉ〜い、持って来たぜ」
雄二も帰ってきて、一人は勘違いしているがこうして全員参加が決定した。
「で、トランプでなにするの、誰か希望とかあるの?」
「トランプでの勝負事は昔から大富豪って決まってるの!!だから大富豪決定なの!!」
・・・よくわからん理由だが、他の皆もそれで納得したようなので大富豪に決定した。
―――数分後。
「フッフッフ、私はコレを待っていた。今回は私の勝ちのようね!!河野貴明」
不気味な笑みを浮かべながら由真の奴が一人で勝ち誇っている。
「革命よ!!どうだまいったか!!」
「スマン、革命返しだ」
「え"っ、そっ、そんな、あっ待って!?待って!!」
混乱している由真を横目にみんなのカードが減っていく。
「これで勝ったと思うなよぉ〜!」
・・・そして由真の大貧民が確定した。合掌。
何度か大富豪をしているうちに。
「あぁー、さんちゃんだけトランプしてずるい〜うちもする〜!!」
夕食の準備が済んだのか、俺達を見るなり瑠璃ちゃんがそう叫んだ。
「だって瑠璃ちゃん料理してて忙しそうやったもん。邪魔したら迷惑やもん」
「あぅ〜でも〜」
二人がそんなやり取りを続けているとイルファさんが
「瑠璃様も珊瑚様も、そろそろ夕食の時間ですよ。皆さん待ってますよ」
「んじゃ、そろそろお開きにしますか」
そうして散らばったトランプを片付け始めた。
「あぅ〜」
「瑠璃ちゃん今度やるときは、一緒にやろな」
「僭越ながら、今度は私も一緒にやらせていただきますね。でも瑠璃様、手加減はしませんよ」
珊瑚ちゃんとイルファさんがそういうと瑠璃ちゃんは。
「・・・わかった、ならそろそろカレー食べいこうか」
「うん☆」
そうして俺たちも食卓に向かった。
「貴明・・・・ここは本当に俺の家か?俺、どこかで道を間違えたのか?」
「いや・・ここ紛れもなくお前が生まれ育った家だ。でも俺はこんな場所は知らない」
雄二が現実逃避する気持ちもわかる、一体ここはどこなんだ!?
そう思いたくなるくらいの程の見栄えのいい料理たちが食卓に並んでいた。
「雄二もタカ坊もぼぉ〜っとしてないで、さっさと座る」
そう促され俺たちは席に着いた。
「それじゃ、食べ始めましょうか」
タマ姉がそういうと皆各自に食べ始めた。
食べたカレーの味は二度と忘れられないくらいおいしかった。
夕食を終え、そろそろ各自家に帰る時間に差し掛かってきた。
「それじゃ、河野君、私そろそろ帰るね」
小牧がそう言って、帰る支度を始めた。
「あっ、愛佳が帰るなら私も帰るかな、時間的にもちょうど良いし」
「あぁ、それじゃ二人ともまた明日学校で」
そうして二人は帰り道を歩き出した。
そうして時間が経つに連れて一人また一人家に帰りだした。
「あぁ〜なんだか騒がしかった時間が懐かしいな」
雄二が感傷に浸ったような声でそう呟いた。
「まぁ、いいじゃない。こういう静かなのも。でも今日は楽しかったわね」
タマ姉もそう返した。
「それじゃ、俺もそろそろ帰るかな」
「おう、それじゃ貴明、また明日な」
最後に残った俺も帰ろうと玄関の方へ向かっていると
「ねぇ、タカ坊。アナタ薫子のことどう思ってるの?」
突然、タマ姉がそんな事を聞いてきた。
「突然なんなのさ、別に俺は柳瀬さんのことはただの普通の友達だと思っているけど・・・」
タマ姉はそれを聞くとすこし不満そうな顔をして
「ふぅ〜ん、ならいいんだけど。それじゃタカ坊お休みね」
「タマ姉もおやすみ、また明日」
そういって向坂家の玄関を出た。
楽しい時間は早く過ぎ去る。そんなことを思いながら、思いながら俺は帰り道を歩く。
それにしても・・・なんでタマ姉がそんなことを聞いてきたのか、今の俺にはわからなかった。
――そうして俺たちの勉強会は一週間続いた。
いつもながら感想くださる皆様、ありがとうございまず
6話目です、結構色々な所を削っているので
目に付くところもあるかと思います。
そろそろメインを中心に入るべきか・・・・
GJと言いたいがその前に一つだけ。
夕食後なら外暗いだろうし、このみは貴明と一緒に帰るようにタマ姉あたり配慮しそうな気がする。
>>171 言いたいことは分かるが作者さんはその辺り削ったんじゃないのかな?
かおりんの人GJであります!!
けっこう読みごたえあるもんなんだなーと感心する今日この頃
>170
GJ
なかなか展開が進まないのでやきもきしてますが気長に待ちます。
>>170 おつ〜、久方ぶりに続きが楽しみなSSに出会えたよ。
176 :
7月文月:05/02/03 00:52:37 ID:Sh/03Kiv
乙です。
無理にメインに行くのが大変だというならもうちょっと日常を楽しむのもいいかと思いますよ。
ToHeartは日々の日常を描いている作品ですから何気ない日々の描写はとても大切だと思いますしね
それと前スレにコソーリ今日の分をうp
177 :
名無しさんだよもん:05/02/03 01:03:51 ID:cxHAnlJ2
前スレに ひろゆきちゃん、あかりキター!!!!
タカちゃんとヒロがっちり握手!
なんだかドキドキですよ!
もすもすもすもす
「にがにがなんも慣れるとイけるなー」
「んー。俺は喰えなくはないってくらいかなぁ」
ぱにぽに笑って食べてる。……意外だ。正直彼女は
『ウチもブラック好きゃもん!』といいつつくいっと飲み干し
『苦ーにがっにがっにがっ』とかやるキャラだと思ってたんだけど。
「……」
って見られてますよ。俺のパンが。英語で言うとパァン。あ・げ・ね・ぇ・ぞ・!?
「ちゃうちゃう。これ」
スティックシュガー? を、俺のパァン俗に言うブレッドにぱらぱら。
たっ確かに、確かに食べやすくなったはなったが、甘みがどうとかカロリーがどうとか……!!
「おそろい」
しっしかも、自分のにまで!? 慣れるとイけるとか言ってたくせに。
「やっぱ甘い方がおいしいなー、貴明」
「……そうだね」
………………………………………………………………甘いのは俺か。そして彼女の笑顔か。
「ま、最近じゃ日常性活までシロップ漬けだかんなー」
「……食べんならもらうよー」
そろそろと伸ばされる手を軽くたたいて残ったトーストを口へ放り込む。
早よ食べんからやーと言う声を右耳から左耳へ流す。多分本当に言いたいのはそれじゃなくて……
「毎日嫌なん?」
「楽しいよ。おおむね。誰かさんがとび蹴りかまさなければ最高だよ」
「みっちゃんもやきもち焼きさんやからー」
「あいつは関節と寝技専門でしょうが」
主に自分の胸を主張する為のとび蹴り係はもっといるだろ? ほら、素直になれない……
「るっ、瑠璃ちゃんのは愛情表現かも〜?」
知ってるけど。だからってノーダメージになるでもなく。愛は苦難の連続ってか。
いやいや意外と知らないところで経験値がたまっててある日しれっと爆肉鋼体したりとか
って見られてますよ。俺のマウスが。英語で言うとミッキーが!?
「たったった貴明」
「?」
「お砂糖……付いてる」
「ん? ありが―――」
「取ったるから、動いたらあかんよ……」
ちゅ ちゅ ちゅちゅ
「―――とう、ございます」
「あーうぅー……」
しどろもどろにお礼を言っても返ってくるのは困った時のいつものアレ。
でもそれはフリだって分かる。だって、
「今度はマーガリン、付いてる」
目が
「取ってあげるね」
笑ってるから
ちゅー
最初は砂糖のときと同じようにほっぺたをついばんでいたけど、そのうち舌をだしてきた。
ぺろぺろと這い回る舌の感触とかすかに頬をくすぐる彼女の鼻息。
耳たぶを時折つつくのは鼻の頭だろうか。鈍い水音を響かせ続ける彼女に聞いてみる。
「マーガリン、きれいにとれた?」
2・3拍遅れて顔が離れていく。唇からつぅっと糸が引かれる、普通唇同士に架かる橋じゃないの?
「まーだ。下手っぴでごめんなー」
それは仕方ない。難しい作業だろうから。あんなに息があがってる。
そんなに瞳が潤んでる。こんなに体が震えてる。
それでも続けてもらわないと。ベタベタのままじゃ明日学校にも行けないしこのみに
「他の娘の事考えちゃ嫌やー」
瑠璃ちゃんにも笑われちゃうからな。
ぽた
頬をつたって顎から鎖骨の間へ、粘り気のある雫が落ちる。
たっぷりと頬に塗りたくられた唾液はやがて独特の匂いを放つ。
決して良い香りではないけれど、それが余計に、獣を連想させて、汚しちゃ駄目なのに。
気が付くと彼女は唾液の流れを追うように俺の胸元へと舌を這わせている。困った事に夏服の上から。
「こら」
「あー……?」
どろどろに蕩けた表情で俺を見上げる。時折垣間見せるこんな顔は妖艶と言っても良いくらいだ。
思わず彼女の首筋に舌を這わせる。マーガリンがどうとか、そんなのは本当にどうでも良くて。
「あっ……あっ」
舌の先を尖らせてくすぐる。彼女が声をあげる度に舌先が擽られこそばゆさに思わず息を吐く。
俺の吐く息も獣の匂いに満ちている。部屋中の空気に染み込むくらいの臭気。息が詰まりそうだ。
何か彼女に言おうとして、気付いた。
「そっちだって口の周り、べたべただぞ」
「綺麗にしてー」
そしてようやく今日、初めてのキスを。
エロス(本番)はどこ行ったの―――――――――――――――――――― !?
俺が聞くよ、俺が聞くよ!? 予定ではもうパンパンパンパンパンパンパンパン……。
正しい意味でのやおいが大好きなのでだらだらだらだらと来てしまいましたが。
ついに、アスへの扉は開かれました!! けどもう少しやおいで。
今宵の原動力
>121
何せ書いてる本人がアレですから、真面目にしようにも限界が有ります。
>122
あんばた、というか小倉トーストですが、イけますよね。
全然関係ないけど海苔トーストもかなりイけます。風呂釜が爆発するくらい旨いです。
と言うような事を書いていたら本当に風呂が死にました。オイオイ。
(;゚Д゚)えっ?
(;゚Д゚)…………続きは?
>>182 楽しみに待とう。
しかしこれはたまらん(;´Д`)ハァハァ
184 :
双月:05/02/03 11:23:59 ID:n8ZhqF5v
前スレで由真SS書いてた双月です。何とか出来上がったので投下します〜。
本当なら、前の場所のリンクぐらい張らないといけないと思うのですが、その辺りがちょっと苦手なので(汗)。一応、前編は前スレの538にあります。
ああ、ここしばらくエロスの巧い人が多くて自分のが恥ずかしいorz
ピンポンピンポンピンポン。
「……うるさい」
せっかく寝ていた所だったのだが、連打されたチャイムの音に、貴明の安眠は邪魔をされてしまった。ようやくやんだかと思えば今度は。
ドンドンドンドン。
「なに?まだ、寝てるの?いい加減起きなさいよ!!」
今度は玄関を激しく叩き始めた。正直近所迷惑この上ない。
「あ〜、ちょっと待ってろ」
窓を開けて外にいた由真に言い捨てると、急いで着替え始めた。
「全く何時まで寝てるのよ」
憮然としながら由真が言いきった。昨日とは違いキャミソールにシャツを軽く羽織り、ジーンズを太もも部分で切ったホットパンツという動きやすい由真の好きな格好だった。
「しかたないだろ。昨日は遅くまで起きてたんだからな。おまえの所為で」
「人の所為にしないでよ」
わけが分からないといった感じで貴明に由真が詰め寄る。ゆっくりと貴明は昨日まで終わっていなかった夏休みの課題を広げて由真の目の前に差し出した。
「あ〜もう。時間がないのは分かってるわよ。早くしないと雨降りそうだし。ちゃっちゃとおわらせ……」
とまくし立てて言った声がしぼんでいく。昨日までは()の空欄しかなかった物がすべて埋まっていた。
「本当なら、おまえがやらないといけないって分かってたけど。今日で夏休み最後だから……。終わったらゆっくり遊べるだろうし」
「そのために、やっててくれたの?」
きょとんとした表情で見つめていた由真に貴明はそっぽを向いて頬をかいていた。多分、それが答えなのだろう。
「べ、別に頼んだわけじゃないからね!!」
そうまくし立てた後、小さい声で由真は呟いた。
「…………でも、ありがと」
気恥ずかしい空気。お互いが照れて何も言えなくなってしまう。
「そ、それじゃあ、どこか行くか?」
「そ、そうね」
貴明の申し出にあたふたしながら、由真は同意した。
最初は水族館、そして、デパートで買い物と楽しい時間を過ごした。
「……雨さえなければね」
「言うな」
疲れたようにぐったりしながらいう由真の一言に、同じくぐったりしながら貴明が答える。
丁度デパートを出て商店街につく前の事だった。最後にゲーセンでリベンジと意気込んでいた由真達の前に落ちてくる幾つ雨のしずく。
無視して商店街まで行こうと思えばいけた。だが、徐々に黒が強くなる雨雲に、激しくなる雨脚。そして、手にはデザートに買ったケーキがあったために、急いで貴明の家まで二人戻ってきたのであった。
「今日だったら絶対負けなかったのに」
「まだ言うか」
ぶつぶつと文句を言う。眼鏡をかけているために、今日は負けないという所らしい。帰る道、走りながら由真はその事で文句を言っていた。
「それより……このままじゃ不味いよな」
「……そうよね」
お互いにびしょぬれの服。貴明はいい。が、由真はこのままという訳にはいかない。
「とりあえず、シャワーと……着替えはおれのシャツしかないけど、いいか?」
「う、うん」
「それじゃあ、タオルとシャツ準備するから、先にシャワー浴びててくれ。風呂場はこのまま先に行けば分かるから」
そう言って靴を脱いで二階に上がっていった。
「着替えとタオル、籠の中にいれといたから」
そう言って出ようとした貴明の手を風呂場のドアを開けて由真の手が伸びてきた。そして、ガシッと掴んだ。
「あんたはどうするのよ。風邪引くでしょ」
「お、おれは後で入るからいいよ」
後ろを見ないように必至に前を向いて貴明は答えて出ようとする。が、その手をグイッと由真が引っ張った。
不意を付かれ、思わず貴明は引っ張りこまれてしまう。たたらを踏んで風呂場に入る。そこには当然のように裸になった由真が立っていた。
「……やっぱり、後でいい」
「だから、このままじゃ風邪引くでしょうが」
「あのな!おれだって男なんだからその……そんな格好見せられたら……」
『おそうかもしれないだろう』とは言えず、思わず貴明は口篭もってしまう。と。そっぽを向いて由真が答えた。
「いいわよ」
「え……?」
「他の奴なら嫌だけどあんたなら…………許したげる。色々世話にもなったし。あたしもあんたの事…………その……」
「由真」
好きだという言葉にするのが照れくさくて、貴明はゆっくりと由真の顔に顔を近づける。
その貴明を由真は瞳を閉じて受け入れた。
「んっふ……。あ……」
貴明の指の動きに合わせて、由真の豊満な胸が形を変えていく。冷たかった手が熱を求めるように由真の胸を執拗に触れていた。
貴明の正面に立っている由真はすでに息に熱が篭り始めていた。
「んんっ、ふぁ……そんなに胸ばっかり揉まないでよ」
「いや、なあ?」
「なあじゃ。ふぁ、んっ、ないわよ」
そうはいっても由真の胸から貴明は手が離せない。押せば跳ね返してくる弾力と吸い付くような肌触りからは逃れがたかった。
ゆっくりとした愛撫をしているうちに手のひらに自己主張する物を感じた。
「まあ、いいや。揉んじゃダメなんだよな」
「そう、ひゃう。や、んんっ、ひっぱる、なぁ」
硬くなり始めた胸のポッチを貴明が軽く指で引っ張った。
「まったく、揉むなとか引っ張るなとか文句が多いな」
「あんたが、んっ。わる、ふむっ」
そう言って文句を言う由真の唇をふさいだ。ピチャと唇の間から水の音が奏でられる。
最初は驚いたように目を開いたが、すぐに目を閉じて、キスに応じた。
互いの舌が絡み合い、流し込まれる唾液を由真が飲み込む。
貴明は由真が目を閉じているのを確認すると、片手を由真の肩に。もう片方をゆっくりと手を下ろす。
そして、由真の大事な所を隠している茂みに指が触れた。
「!!ぷふぁ、なにするのよ」
「何って……そろそろこっちにいこうかなって」
濡れている秘所の髪を掻き分けて中に指が進む。と。
「ひゃうっ!!」
コツンと何かに当たった。ただそれだけなのに由真が驚いたような声をあげていた。
「なにす、んんっ、やっ、こすんないでよ」
おおよその見当をつけて、今度は秘核を避けて通る。と、指を飲むような割れ目にたどり着いた。
「ぁ……」
由真が小さく息を漏らす。誰にも触れられたことのない大事な場所。それを貴明に触れられているのを感じていた。
「……それじゃあ、いくから」
「ふうんっ。ゃ、はぁ……」
由真を浴槽の縁に座らせて貴明は由真の秘所に指を入れていく。
「これだけ濡れてるなら、中に入れてもいいよな?」
「ばかっ、んっ、くぅ、そ、んなの聞くなぁ」
最初は一本だけだったが、由真の中が受け入れるのを確認すると、もう一本も貴明は中に埋めた。
「は……、んん……ぁ、ふあ」
貴明が指で探るように動く度、由真の口から吐息が漏れてしまう。
貴明の方も興奮しているのか、口から荒い息があふれ出ていた。
くちゅ、くちゅと由真の中を動く度にトロッと、さっきまで降り注いでいたシャワーのお湯とは違う物がこぼれていた。
貴明の指を締め付け、潤って動きやすくなっている熱い肉の感触に貴明は由真の耳元で尋ねた。
「そろそろ……いいか?」
「…………いいけど」
そう言いながら、貴明の顔を見ないように、貴明の肩に頭を乗せて呟いた。
「……痛く、しないでよ」
貴明の首に手を回し、由真が足を開く。
その間に貴明の体が入り込み、由真の濡れている秘所に貴明は自身のモノを添えていた。
「いくぞ」
答える代わりに、由真がぎゅっと強く抱きしめる。
頭を貴明の肩に乗せ、声が出ないように口を貴明の体で抑えていた。
「ふぅっ」
貴明の硬いモノが由真の入り口に触れる。貴明は自身のモノを握り、微妙に位置を修正すると、
位置を定めた。そして。っちゅと湿った音そして。
「んんんん!!!!!」
一気に貴明のモノが貫いた。あまりの痛さに由真は力いっぱい貴明を抱きしめた。
「大丈夫か?」
「こ、こんなの平気よ」
そう言いながら、目に涙を浮かべて微笑んでみせる。痛い。が、それ以上に貴明に心配かけたくなかった。
「う、動いていいんだからね」
「いや。このままでも気持ちいいから」
「うん……」
顔をあげ、由真が頬を赤く染める。その唇に触れるだけの軽い口付けを交わした。
そして、二人抱き合ったままで動きが止まる。しばらくして、由真のほうに小さな変化があった。
「くぅ……んっ」
貴明のイチモツが小さく震える。その中で痛みであげていた由真の声の中に吐息が混ざり始めていた。
「はぁ……んっ」
「大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫……だと思う」
由真の答えを聞いて、貴明はゆっくりと動いた。
初めてで押しのけるように強く締め付ける由真の中は進むだけでも一苦労だった。
「ふう、ん、はぁ…………」
ゆっくりと動いた中で由真の声に痛みは無い。そう貴明は感じると一気に由真の中を突きはじめた。
「っつ。あっ、んんっ」
抱きしめあっている分、激しい動きでもあまり動けていない。
が、その分由真の奥の方を貴明のモノの雁が擦っていた。
「ひぅっ。んっ。っくぅ……」
「由真の、中、すごい、いい」
はじめてと言う事もあるが由真の膣は強く締め付け、貴明に快感を与えていた。
「や、やばい。由真」
「きゃっ」
由真の中から貴明はモノを抜く。とすぐに貴明の一物から白濁の液が由真の体にかかった。
ビチャ。ピチャ……。
濡れた由真の体に注がれる貴明の精液。それを呆然と由真は見つめていた。
「んっふ。はあ……、はあ……」
「はぁ、はぁ。…………わるい」
「はあ……え?」
誤られた意味がわからずに由真が思わず聞き返す。
「いや。痛い思いさせたから」
その言葉に、由真の顔の体温がまた少し上がった。
「しょ、しょうがないわよ。初めてだったんだから」
「あ、ああ」
今更ながら、由真のはじめてが自分なんだと思う。それを自覚してしまい、貴明の方の頬も体温が上がった。
「……ねえ?これってどんな味なの?」
そう言って、無造作に指で自分の体にかかった貴明の精液をすくう。
「さあ?自分じゃ舐めないだろ」
「そういうもんなんだ」
そう言いながら由真は興味津々と言った感じで見つめた。興味があることなら、
人目を気にせずに駐輪場の屋根に登るほどの行動力のある由真。一瞬貴明は嫌な予感がした。
そして、由真は予感どおり匂いを嗅ぐと指を舌で舐めた。
「お、おい」
「……にがっ」
苦そうに固めを強くつぶった。ドロッとした白い液が由真の口の端からあふれ出る。それだけじゃない。
すくっている時に落ちたのか、由真の胸、お腹と貴明の精液が所々由真を汚している姿は17の高校生には我慢できないものだった。
「由真……お前」
「何?きゃっ」
ようやく気が付いた。一度は萎えかけたはずの貴明のモノが再び大きくなっているのを。
「もう一回……いいか?」
そう尋ねた貴明に、由真は小さく首を振った。
「……嫌だって言ったのに」
「……悪い」
「それも3回も……」
そう言いながら、恨みっぽく貴明をにらみつける。が。そんな由真に反論するように小さく貴明が呟いた。
「……自分だって最後気持ちいいって言ってたじゃないか」
「!!そ、そそそそんな訳無いでしょ!?」
そうむきになって反論するが、顔を真っ赤にさせていては説得力が全く無かった。
「そ、それよりケーキ食べない?」
「そうだな。あ、先に出しててくれないか?」
「え?ちょっ」
一方的に貴明は言うとタッ、タッと部屋を飛び出て階段を駆け上がっていった。
「……何なのよ。まったく」
そう文句言いながら、由真は立ち上がった。そして、食器棚から皿とフォークを取り出して並べる。
その後で、ヤカンから冷まし湯をティーポットに注いだ。
「まあ、こんな物よね?」
そう一人呟くと冷蔵庫の前で立ち止まる。許可があるとはいえ、他人の家の冷蔵庫を空けるのを一瞬ためらった。
ガチャ。
そして、中からケーキ屋のロゴの入った紙箱を取り出した。
中からイチゴのケーキを2つ取り出し皿の上に置くとようやく落ち着いて椅子に座った。
そして、由真の耳に秒針を刻む音が聞こえる。と、数回その音を聞いていると違う音が混ざってきた。タンタンと階段を駆け下りる音だった。
「遅かったじゃない」
「いや。ちょっとな」
そう言って貴明は手に持った紙包みを由真に見せる。
「ん?どうしたの?」
「……お前気がついてなかったのか?」
「え?え?」
言っている意味がわからず、由真がうろたえる。と、あきれたように、貴明が言った。
「今日、お前の誕生日だったんじゃなかったっけ?」
「え?ああ!!」
ようやく、今になって気が付いた。
「忘れてたのか?」
まさか、忘れていたとは思わず貴明は聞いてしまった。
「だ、だって、しょうがないじゃない。宿題の事とかあったし、毎年バタバタしてたんだから」
「なるほどな」
心当たりは、貴明にもある。徐々に終わっていく夏休み。その前に終わらせないといけない宿題と準備と色々あるからだ。
そんな中で誕生日を思い出す余裕が無かったのだろう。
「それじゃあ、改めて……」
そういって咳払いをすると、手に持った紙袋を由真の手のひらに乗せ、渡した。
「誕生日。おめでとう」
195 :
双月:05/02/03 11:50:10 ID:n8ZhqF5v
長々と書いたうえに、エロスが足りないよ、ママン……。
由真のCGとか体はけっこういい物をもってると思うんですが、力が足りなかったorz
また、いずれラブあまな二人でリベンジしたいです。はい。
>>195 いやいや、この方がハートフルですよ。GJ。
お陰で絶ってきた・・・
あったかえっち、いいな。
でも三回w
由真好きの私にとって
最高な一品でした。
うむ、由真えぇなぁ。。
ども、先般愛佳をヒロインにしたバレンタインネタ書かせていただいた者です。
今回そっち系のネタパート2として、タマ姉ED後のタマ姉と貴明のバレンタイン前のエ
ピソードを書いてみますた。前回目標としていた「倉上淳士の短編のような話」に仕立
てられて自分ではGJかな?と自画自賛してるのですが…ではどうぞ。
2月6日(日)
今日は年が明けて最初に受験した、予備校の模擬試験の成績が返ってくる日だった。
タマ姉と一緒に九条院に入るため、一つ屋根の下で暮らして猛勉強してもう半年。赤本
を見たら入学試験は随分難しかったけど、あれだけ勉強してきたんだから悪くてもB判
定は取れてるだろう。期待してろよタマ姉、俺だってやればできるんだから。俺は期待
と不安混じりで庶務課のおっちゃんに受験番号と名前を告げて個人成績表の入った封筒
を受け取った。だが封を切って取り出した紙を見て、最初に俺の目に飛び込んできた文
字は……
判定D 合格率0% 志望校変更の必要あり
俺は暗澹たる思いに狩られ、帰ってこの成績表を見たタマ姉の、鬼のような怒り顔を想
像して不幸の断崖絶壁に突き落とされる思いだった。
「タ〜カ〜ぼ〜う〜、私がビシビシと教えてきたのにこのお粗末な成績はなあに〜?今から
じゃ挽回の見込みないってこと分かってるわよね?こうなったらもう今日から朝から晩まで
勉強漬けよ!そうでもしないと九条院なんて受かりっこないわ」
あのタマ姉のことだからそんなことは言い出しかねないし、実行しかねない。俺はこの
まま車道に飛び出し、ダンプにはねられて死んでしまいたかった。そして数日後の未来から
草壁さんがやってきて助けてくれて、そのまま草壁さんに鞍替えしてしまえたなら……
キイィィィィッ、ピーピーピー
「わりゃあ、どこ見て歩いとんなら」
急ブレーキとクラクションの音で気がつくと、俺は予備校を出たまま赤信号の横断歩道に
踏み出していた。俺のすぐ横で止まった乗用車の車窓から強面の兄貴が顔を出して俺を睨ん
でいる。ビビった俺は慌てて歩道に戻った。
「ごーたいくそが煮えるわ、あんぽんたんが」
兄貴はそう吐き捨てて行ってしまった。車のナンバーを見ると広島とある。あそこの方言
も脅しに使われると恐いけど…そんなの関係なしで交通事故で死ぬのっていいもんじゃない
よな。でも帰ってタマ姉に何て言おう…。信号が青に変わってから、俺はトボトボと横断歩
道に出て向坂家に向かっていった。
「ただいま〜」
「あ、お帰りタカ坊。今みんなでお茶してるけどどう?」
帰ってきた俺にいの一番に声をかけたのはタマ姉だった。俺の今の気持ちなど知らない
かのように上機嫌な声で!
「いらない」
「あら、本当にいらないの?タカ坊が前から食べたがってた『ステファンの五つ子』のケー
キなのに」
「いらないよ。今は食べたくないんだ。よかったらタマ姉か雄二食べていいよ」
「………」
別の地域でチェーン展開してて、つい最近近くの商店街にもオープンしたケーキ屋だ。
本音を言えば喉から手が出るほど食べたかった。でもタマ姉と顔を合わせて食べるのは今
の俺には苦痛だ。
「やーりぃ!そんじゃ貴明、俺これもらうぜ」
ピシャン
「あだっ、何すんだよ姉貴。貴明はいいって言ってたじゃねーか」
雄二がケーキに伸ばした手をタマ姉に叩かれる音を背に、俺は自室に引っ込んだ。
悪いけど今は一人でいさせてくれ。俺は布団に横になると、掛け布団を頭から被っ
て狸寝を決め込んだ。
トントントン
「タカ坊、タカ坊!いるんでしょ?……入るわよ」
それから10分程して、タマ姉が俺の部屋をノックした。
「………(どうにでもして。どうせ返事しないからさ)」
予告通りタマ姉が入ってきたけど、俺は知らん顔して目を瞑っていた。タマ姉が俺の
側に寄ってくる気配。
「タカ坊、どうしたの?具合でも悪い?」
「…………」
「それとも模試の成績が悪かったの?」
ドキッ!
な、何で分かってしまったんだろう。これだからタマ姉は恐い。
「ほら、今布団が震えたわよ。やっぱり今の図星だったのね…タカ坊、寝たふりしてない
で起きなさい」
布団を剥がされそうになる。でも俺は布団の端をつかんで剥がされまいと頑張った。
「ううん、いいから放っといてくれよタマ姉。どうせ今の時期でもD判定なんて取ってる俺
に九条院なんて無理さ。あれだけ勉強してこんなんじゃ所詮俺はそこまでの…」
「タカ坊、いいかげんにしなさい!」
タマ姉は強引に布団を剥ぎ取った。そして俺の側には鬼のように怒ったタマ姉が…と思っ
たら、普段通りの顔のタマ姉が立っていた。
「でもタマ姉、一体どうして俺が模試の成績悪かったって分かったの?」
「タカ坊もバカねえ。私が何年あなたの弟をやってると思って?それぐらい顔を見ればすぐ
分かるわよ…と言いたいけど、廊下に落ちてたこれを拾ったから分かったんだけどね」
タマ姉はニンマリと笑って、懐から個人成績表の入った封筒を取り出した。
「あ、ちょ…返してよ」
「うーん、数学IIと基礎解析、化学はまあまあだけど英語と国語が前より悪いわね。ひょっ
として今回は雄二みたいにケアレスミスで随分損したんじゃないかしら?あと幾何と物
理、これも下がっちゃってるわ。それで世界史と日本史は…」
タマ姉は俺の言葉を無視して点数と講評を見ながら分析を始めた。どうやら今後の方
針の建て直しを考えているらしい。ああ、これは明日から俺の予想通り勉強漬け生活の
始まりか…。
「タカ坊」
「は、はいいっ」
思わずしゃちこばって返事する俺。タマ姉は机の引出しを開けた。俺はこれからお仕置
きが始まるんじゃないかと血も凍る思いだった。い、一体何を出すつもりなんだ?鞭か?ロ
ープか?それとも…。
「ちょっとこれを見てちょうだい」
そう言ってタマ姉が取り出したのは「九条学院大学全統模試追跡調査2004年度版」と書
かれたリーフレットだった。予備校が自分のところが実施する試験を受けた学生を対象に
どの大学を受けて、何人が合格したかを発表するために毎年発行している資料である。ペ
ージを開いて、タマ姉の説明が始まる。
「ここの表を見てごらんなさい。これが去年ここの予備校から出た九条院の合格者の総数
なんだけど、模試でA判定からC判定を取ってた人ってのはそのうちの半分しかないでしょ。
これってどういうことかタカ坊は分かるわよね」
「え、えっと…もう半分はDかEの人ってこと?」
「そう。それに模試の結果で『だめだこりゃ』って思って志望校変えちゃう人も少なくな
いから、最終的に本番まで受ける人は毎年これより減ってるの。だからこれから一年頑張
れば、タカ坊にだってチャンスはあるわ」
「………でも、俺には実感ないなあ。本当にこんなんで九条院なんて行けるのかよ」
「あら、まだそんな弱気なこと言うつもり?」
タマ姉はもう一度引き出しの中を探る。そうして取り出したのはB5版のファイルだった。
開けてみるとそこに綴じられていたのは俺がこれまで受けた模試の個人成績表。それも1回
目から順にきれいに整理して綴じられていた。いつの間にこんなにきちんとまとめてたんだ
ろう。
「よく見てごらんなさいよ。判定はみんなDかEだけど、どうして各科目の成績は毎回順調に
上がってるわ。今回はちょっと下がっちゃった科目もあるけど」
「少しずつしか上がってないじゃないか」
タマ姉は俺の成長記録を見せるようにゆっくりと成績表をめくって見せるが、本当に少し
ずつしか点数は上がっちゃいない。けれどもタマ姉は言った。
「ねえ、私もタカ坊も子供の時から随分背が伸びたけど、身長が高くなるその瞬間を見たこ
とってある?」
「ないけど」
「自分の身長が伸びてるのが分かるのは、鏡を見るとか服のサイズが合わないとかそんな時
に分かることで、その最中に違いが分かることって滅多にないわよね?」
「うん、そういう結果で分かるってことか」
「そういうこと。成績もそれと同じで勉強してる最中は自分の実力には気づかないものよ。
確かに今のタカ坊の実力じゃ九条院は無謀だと私も思うわ。でもほんの少しでも前とは実力
が違ってるはず。なぜってずっと諦めずに頑張ってきたからでしょ?」
「え、う、うん……」
「それも何のためなのか、忘れてないわよね?」
タマ姉が俺のほうににじり寄って、真剣な顔で訊いてきた。
「はい、俺が生涯愛すると誓ったタマ姉と一緒の大学に進学するためであります!」
「よろしい」
タマ姉の手が伸びて、俺をいつものようにギュッと抱き寄せた。
「タカ坊、だめになりそうになっても九条院に行くってこと忘れちゃ嫌よ。つらくなった
ら私の胸の中で泣いてもいいわ。私のことが好きっていう気持ちを忘れなければ、ね」
俺は答える代わりにタマ姉の背中に手を回して同じように抱き締め、そして唇にそっと
キスした。
「ん…」
目を瞑って俺の唇を受け入れるタマ姉。そのうちにどちらからともなく重ねた唇の奥で
舌が絡まり、俺とタマ姉の体は布団の中に倒れこんだ。
2月13日(日)
「ど、どうかな…?」
「……………………」
俺は裁判官に審判を下される被告人のような気持ちで、机の上のタマ姉を見遣った。タマ
姉は赤ペンと問題集の解答を手に、黙々と俺が答えを書いたノートに○と×を付けている。
俺はあれからタマ姉の指示で前にやった問題集をもう一度やらされた。前にやった時は分か
らなかった問題も不思議と分かるようになっていて、自分ではよくできたほうじゃないかと
いう自負はあった。最後まで答え合わせが終わったところでタマ姉は解答を閉じて、吃驚し
たように言った。
「凄いじゃない、タカ坊!前はこの問題集で一つの問題で悩んで徹夜したことまであった
のに今度は段違いによくできてるわ!」
「本当に?!」
「ほら、見てごらんなさいよ」
タマ姉が俺に見せたノートには赤の×より赤丸のほうが断然多くつけられていた。
「本当だ。やっぱり勉強してるうちにちゃんと実力はついてたんだな」
「そうよ。タカ坊はやればできる子なんだから。このまま諦めないで九条院目指して頑張っ
てよね。あ、そうだ、明日はバレンタインデーよね。今日のごほうびにとびきり上等のチョ
コレート買ってあげるから期待してらっしゃい」
「ん〜、それも嬉しいけど、俺はやっぱりタマ姉の手作りチョコのほうがいいな。やっぱり
手作りのをもらうほうが愛が込めてある分嬉しいしさ」
「タカ坊がそう言うなら、そうしてあげるわよ。それじゃ今から材料買いに行きましょうか」
「おうよ、荷物持ちでも何でもドンと任せてくれ!」
俺たちは日曜の昼下がりの商店街へと繰り出した。
連投規制?
おそまつさまですた。今回はエロを書いてませんがそれはわざとです。前回はエロなし
ではどーしよーもないヘタレ作品だったため、ストーリーのほうに力を入れてみたかっ
たですから。これからmyさいとにうpする予定ですがそん時は空白の一週間の間に濡れ
場入れさせていただくつもりです。既に大体の構想はできてるのですけどちゃんと書け
るでしょうか……。
>207
乙。
できれば『涙見せてもいいよ それを忘れないなら (1/6)』のように、
全体数と現在数をタイトルに付けてくれると割り込み防止と、
纏めて読みやすい気が。
向坂家、江戸時代の大地主に始まる家系で、多くの政財界人著名人を輩出している。現在では政治の表
舞台からは姿を消したものの、その財力からなる発言力は依然大きな影響力を持っている。向坂の家名が
表に出ることはほとんど無いが、大抵の日本人がなんらかの形で向坂の出資する企業工場商品公共機関
などを目にはしているはずだ。経済界に目を向ければ必ずそこにいるが、普通に暮らしていればまず目にし
ない。それが向坂家である。
そういうわけであるから、その向坂家本家筋の直系も直系である向坂家の嫡男である向坂雄二には大き
な将来的責任が待ち構えている。
それは分かっている。分かっていた。
――否、分かっているつもりでいた。
こんな一枚の写真が、目の前に現れるまでは。雄二は自分の見通しの甘さに歯軋りする。
「水無瀬春乃さん、藤原家より連なる公家の筋の方よ」
その着物を着た女性は、化粧をして大人びて見えるが、横に書いてある経歴を見る以上、まだ14歳だ。
頭が痛い。こんな話は聞いちゃいなかったし、想像もしていなかった。
「今時華族か、ざけやがって」
「そういう言い方をするものではないわ」
「姉貴は知ってたのかよ!」
環は悲しそうな目をして、首を横に振った。
「知ったのは数日前よ。郁乃さんのことを調べたのは悪かったと思ってるわ。でもいずれ他の誰かが気付い
て調べる。先手を打ちたかったの」
「どういうことだ。ワケがわかんねえ」
「簡単よ。こっちも調べたから――」
ばさぁと別の封筒から広げられる一連の書類と何枚かの写真。そこには見慣れぬ制服姿や私服姿の少
女。ぱっと見では見舞い写真の女性と同一人物とは分かりにくいが、確かにそれは同じ少女だった。
雄二はそれらを前に固まってしまう。
驚き? 違う。
怒り? 違う。
これは困惑だった。
「知ってから早急に調べさせたものだから、それほど詳しいものじゃないわ。正直、むかつくくらい完璧な子
よ。でも問題なのはこの子のことじゃない――」
「向こうにも姉貴みたいなお節介がいるってこったな」
困惑に火がつくと、怒りが燃え上がった。
「俺はこの数日のほほんと朝夕とかいがいしく郁乃ちゃんの送り迎えをしてた。ああ、当然そう思うだろう
な。そうすると向こう側も姉貴と同じくらいには郁乃ちゃんのことを調べ終わってるだろう」
「そして厄介なのはこれが政略結婚ってことよ。向坂か、水無瀬か、もしくはその双方が貴方の項目に付随
する郁乃さんという存在を厄介だと思うでしょう。いいえ、これは問題のうちでも一歩踏み込んだ部分よ。ま
ず最初に私たちがはっきりさせないといけない問題はそれじゃない」
「姉貴――、姉貴はどう思ってるんだ?」
「私? そうね……。もし自分だったとしたらこんな馬鹿げた家出て行ってやるわよ!」
どしん、と、拳を長机に叩きつける。
もちろん環は本気だ。そうでなかったら、どうして長いこと貴明に恋していられただろう。それにまだ環は諦
めたわけではなかった。確かに第一ラウンドは敗北だ。それは認める。けど戦いが終わったとき勝っていれ
ばそれでいいはず。だからお見合いなんて馬鹿げてると断言できる。
「オーケー、オーケー、ちょっとまだ混乱してるから変なこと言ったら訂正してくれ」
環が頷く。それを確認して雄二は声に出すことで自分の考えをまとめていく。
「このなんたら春乃さんと、俺が見合いするんだな? それもどうも見合いなんてもんは形だけでまとまるこ
とが決定してる。俺の気持ちとか、このなんたらさんの気持ちとかは関係ない。――で、それが気に入らな
いと考えた姉貴はその対抗手段として郁乃ちゃんが使えないかと考えて身辺を調べてみた」
「そういう言い方ってないと思うわ。でも郁乃さんが何らかの鍵になるのは確かね」
「言い方なんて今はどうでもいい。問題点はどこだ? この時点で将来が決定してしまうことか? いや、で
も覚悟はできてるつもりだった。昔から色んなところに引っ張りまわされたし、最近は家長会議なんかにも代
理で……、そうか、くそ、この前の、変だと思ったんだ。あの時撮られた写真があちらに送られたんだな」
「そこまでは知らないけど、そうならそうなんでしょうね」
「そう、そう、そう、今は問題点が違う。でもどうせ将来的に向坂家の家督を俺が継ぐように持っていかれる
んだったら、そのための足場固めのひとつに過ぎないわけだろ……。なあ、姉貴、俺が承諾したらなんの問
題もないんだよな?」
「自由恋愛の権利を失っていいのだったらね。――私はね、貴方が軽薄そうにしながらも特定の誰かを作ら
ないのはいつかこういう日が来るのを覚悟してるからだと思ってた。でも最近女の子に会うために楽しそうに
早起きしてるのを見てるとね、私の勘違いだったと分かった。それは将来的には向坂の思惑に従わなくちゃ
いけなくなるかもしれないけど、まだ早いわ。早すぎるわよ」
「だよな」
姉弟は頷きあう。
「珍しく姉貴と意見が合うぜ。でもこれは俺の問題だ。郁乃ちゃんには関係ねぇ。俺は俺の自由な恋愛を守
るために、これをどうにかしないといかん」
「そう、余計なお節介だったわね。こっちは処分しとくわ。でも忘れないで、相手も同じものを持ってると思う
べきよ」
そう言って環は郁乃に関する資料をまとめて、封書の中に閉じ込める。
「待った、姉貴、ひとつだけ。――本当は聞いちゃいけないことだとは思うんだが……」
「なにかしら?」
「郁乃ちゃん、どれくらいで完治しそうなんだ?」
「完治……?」
環の顔が訝しげに歪められた。
環は分かっている、これから私が言うことはひどく残酷な言葉になる。
「――そう、貴方なにも聞いてないのね」
「なんだよ、どういうことだ!?」
思わず雄二は腰を上げて環に詰め寄った。しかし環はその雄二の勢いを平然と受け流す。どしりと地面に
腰を下ろした事実は、波のごとき勢いでは揺るがない。
「郁乃さんのかかってる病気に完治はないわ。あれを完治させる方法は今のところない。あるのは幾分病状
の穏やかな、次の急性期までの、または再発までの時間を引き延ばすというだけよ」
ガツンと頭を殴られたような衝撃。上げた腰から力が抜けてへなへなと座り込む。
「それじゃ郁乃ちゃんは一生病院で暮らすことになるのか?」
「そんなことは言わないわよ。医療は日々進歩してるのよ。昔は不治の病だった結核だって、今は治療でき
るでしょう。貴方が希望を捨てちゃダメよ。周りにいる人が希望を失っちゃダメなの。分かるわね」
雄二は返事できなかった。急に舞い込んだお見合いの話とか、向坂家の家督とか、そんなことより、そち
らのほうがずっとずっとショックだった。
すっかり日常となった登校風景。愛佳と貴明が並んで歩き、雄二が郁乃の車椅子を押して歩く。それは今
日もいつもどおりだと思われた。しかし――
「どうかされたんですか?」
声をかけたのは郁乃のほうからだった。
いつもなら陽気な話で郁乃を楽しませてくれる雄二が、今日に限ってはだんまりとしていたからだ。
「ああ、いや、なんでもねえ」
雄二はそう答えて、また黙ってしまう。
あんまり深く追求するものでもないだろうと思って、郁乃もそれ以上は聞かない。もし本人が話したくなれ
ば、その時に話してくれるだろう。
それにたまには静かに揺られる感触を楽しむのもいい。
そこでふと思いつく。
「もし、送り迎えが負担だったらいつでも言ってください」
「あ、そうですよ〜。本当ならあたしの仕事なんですから〜」
「そういうんじゃねーよ。お姫様の送り迎えなら騎士の務めだろ」
軽口にも微妙にいつもの精彩がない。
それは雄二自身も自覚していた。
表情にこそ出さないが、心の中で厳しく自分を叱責する。
いつもどおりにできないのかよっ!
自分が情けなかった。こんなことなら聞かなきゃよかったんだ、と思う。だが聞いてしまったものは仕方な
い。そしてそれが自分に予想外のダメージを与えたことも。
いや、きっとそれだけだったらなんとかなったに違いない。
――見合いの話もある。
日取りそのものはまだ少し先だが、断ることも逃げることもできないに違いない。
なんだよ。別にそれでもいいじゃねぇか。
そう思うと同時にそれが自己欺瞞であることにも気付いている。
おかしいぞ、俺、なんで――郁乃ちゃんを手放したくない、なんて考えてるんだ? そもそも一度だって恋
人関係なんてものにはなってないし、そもそも郁乃に恋をしているわけでもない。それは間違いない。
なにがおかしいって、それだ。俺は郁乃ちゃんから何かをもらおうなんてちっとも思っていない。こうやって
朝夕の送り迎えをするのだって、何の見返りもないし、求めてもいない。ただひとつだけもらっているものが
あるとしたら、不思議な信頼だけだ。
それが何に基づくものなのかは全然分からない。そもそも郁乃は貴明には敬語を使わないのに、雄二に
は使う。それこそがまだ二人の距離の遠さを示しているはずである。それに関わらず、始めから郁乃は雄二
に車椅子を任せた。ひとたび雄二が悪気を起こせば、命にも関わるというのに、だ。
そう、だから俺はその信頼に応えたい。
応え続けたいのだ。
それは少なくとも恋という感情ではないだろう。愛でもない。人間関係における純粋な信頼関係だ。
俺が手放したくないのはこの信頼関係だ。
雄二はぐっとハンドルを握る。少しでもお姫様の乗る馬車が揺れないように。
4時間目が始まろうとしていたとき、ついに雄二は朝から考えていたことを決行することにした。
多分他にタイミングはあるまい。次の授業は、生徒側にほとんど向かないことで有名な現社の山里だ。運
が良ければサボったことすら気付かれまい。
「委員ちょ、話がある」
「え、でももうすぐ授業が――」
「貴明、委員ちょ借りるぞ」
「あ、あれ、向坂くん、あれれ?」
そのまま雄二は愛佳の袖を引っ張って、授業直前の教室を抜け出し、図書室前までやってきた。
「委員ちょ、鍵持ってたよな。ちょっと中で話させてくれ」
「で、でも授業始まっちゃいますよ」
「委員ちょ!」
「は、はいっ」
わたわたとポケットから書庫の鍵を取り出して、開ける。勢いに押されただけではない。雄二の目が真剣
だったからだ。
鍵を閉めなおし、パイプ椅子を持ってきて、向かい合って座る。
「多分、今から嫌な話をする。聞いてくれるか?」
「聞いてくれるかもなにも、何も聞かずに無理やり連れてきたの向坂くんじゃないですか」
はぁ、と愛佳がため息をつく。
「わりぃ、けどどうしても我慢ができなくて」
「――郁乃のこと、ですよね?」
雄二が頷く。愛佳はほっとした。そういうことなら授業をサボるのもやぶさかではない。
「それで、何でしょう?」
「ちょっと、たまたま小耳に挟んだんだが、郁乃ちゃんの病気、一生治らないって本当か?」
びくりと愛佳が体が緊張する。
ああ、そうか、嫌な話と向坂くんは最初にちゃんと言ってくれたのに、あたしは何を期待していたんだろう。
「本当です。現在の医療では進行を食い止めたり、再発の時期を延ばすのが精一杯で、毎日あれだけ薬を
飲んだり、注射をしているのだって、治すためじゃないんです……」
それこそが愛佳に一時期医療研究職を目指させた理由であった。
「それじゃあ一生病院からは出られないのか?」
「いえ、そんなことはありません。その、たまには外泊許可も出ますし、将来的にはもっと長く外泊することも
……」
「でも病院からは離れられない……」
雄二は真剣な顔で愛佳を見つめている。それが自分ではなく、郁乃を見ているのだろうと思うと、不謹慎
ながら少し嬉しかったりしないでもない。もちろん話の内容そのものは陰鬱な気持ちを呼び起こさせるもので
はあったが……。
「はい。それには二つ理由があります。ひとつは薬で免疫力を抑えてますから、あまり長期間病院を離れる
と、いろんな合併症が併発する危険性があります。例えば普通の風邪でも郁乃にはすごく大きなダメージに
なるんです。体温が上がるとそれだけで色んな症状が出てきて、再発の危険性がぐっと高まりますから
……。もうひとつは単純に費用の問題です。郁乃は特定疾患治療研究という名目で月額の医療費に上限
が設けられています。もしこれが外れたら、年間に数百万では足りないような医療費が必要になってしまう
んです」
「飛躍した話をするけど、例えば結婚とかは……」
「どうなんでしょうね……」
愛佳は目を伏せる。
「勝手な話ですが、あたしは郁乃と向坂くんが好きあってくれればいいと思ってました。ううん。そこまでいか
なくても、郁乃が向坂くんを好きになれば、もっと世界を好きになるきっかけにもなると思ったんです。でも、
そうですね、あたしたちではまだ実感とかはわきませんが、もし結婚となると相手の方に与える負担も相当
のものでしょうね。――一応、妊娠や出産には問題はないそうですし、子どもへの遺伝も、完全には解明さ
れていませんが、危険視するほどではないそうです。ただ、それらの直後には再発の可能性がぐっと高まる
のもまた事実です……。
――ごめんなさい」
「いや、委員ちょが謝るこったない」
「でも、あたし勝手なことしようとしてましたね。向坂くんの気持ちも考えずに……」
「本当に俺の気持ちとかはどうでもいいんだ。ただ、な、俺は勝手に病気なんてそのうち治るもんだと思って
たもんだから、俺のほうが悪かった。軽い気持ちで郁乃ちゃんの周りをうろついてた」
愛佳がふるふると首を横に振った。
「そんなことありません。向坂くんがいることでどれだけ救われてるか。ただ郁乃の友達としていてくれるだ
けでもいいんです。郁乃は向坂くんが帰った後、今日の向坂くんはどうだったって話をするんです。向坂くん
がいるときはあたしもいるのにね。それだけでも、本当にどれだけ感謝していいか」
雄二は膝の間でぐっと手を握った。白くなるそれをじっと見つめる。
おい、俺の思った以上に信頼を寄せられてるみたいじゃないか。
そう思うと、思わず口が滑っていた。
「――実は見合いの話が来てるんだ」
「え?」
呆気に取られた愛佳の顔が雄二を見る。
ワケが分からない。見合い、誰が?
「ああ、俺にな。笑える話だが、どうにも断れそうに無い。それこそ失踪でもしない限りは」
「でも、まだ……」
「だから法的に結婚するのはずっと先になるだろう。なんてったって、相手はまだ14歳だ。俺が大学を卒業
してからだな。けど、そういうルートには乗せられちまう」
ぎり、と、雄二の歯が鳴る。
「別に郁乃ちゃんと結婚したいと思ってるわけじゃない。そもそも多分好きでもない。これはすごく不誠実な
思いだ。だが今、郁乃ちゃんから信頼を寄せられてて、それが凄く心地いい。それなのにそういうことになっ
ていくのが、俺は――」
雄二の手は強く握り締められすぎていて、カタカタと震えている。
「向坂くん……。その、あたしが差し出がましいことを言うみたいですが、どうしても断れないんですか? 普
通に考えたら高校生なのにおかしいじゃないですか」
「ああ、分かってる。そのつもりではいるんだが、姉貴が気になることを言ってたな。いや、すでに手遅れか
も……。それこそ下手をすれば郁乃ちゃんところに札束持って俺と別れてくれとか。ははは――」
「…………」
愛佳は何もいえない。なんとなく気付き始めていた。雄二を取り巻く環境は、なにか普通ではないのだ。
雄二は苦笑して言ったが、本気なのだ。
「……先方は多分独自に俺の調査をやったはずだ。そこから絶対に郁乃ちゃんの名前があがってる。俺が
断ったら、そこをつつかれるのは間違いない。それは、避けたい……。できるのは、そうだな。せいぜい婚約
はする、だが数年は自由にさせてくれ、というところか」
「それはダメです!」
「委員ちょ?」
「それはダメです……。そうやって向坂くんは郁乃の信頼にウソで応えるつもりですか?」
思わず雄二は黙り込む。何十秒かじっと黙った後、
パァン! と、雄二が自分の両頬を打った。
「あー、そうだな。まったく情けねえ。信頼に応えたいとか自分で言ってたくせに、一番大事なところ忘れち
まうとこだった。助かったぜ、委員ちょ」
「いえ、こちらこそ、勝手な思いを押し付けてごめんなさい」
「いんや、よし、覚悟ができた。信頼に応えるってことは、逆にどうしても相手に迷惑をかけることもあるだろ
う。だが、俺は誠心誠意を尽くそう。委員ちょにも郁乃ちゃんにもなんかの迷惑をかけることになるかもしれ
ないが、よろしく頼む」
「いえいえ、こちらこそ向坂くんにはお世話になってばっかりなんですから、いいんですよ。でもこのこと郁乃
には……」
「まだ、言わないで欲しいな」
それはやはり信頼に応えるということではないのかもしれない。だがまだ、まだ早い。何も具体的になって
ないのに変な不安を与えることは無い。
「はい、あたしもそう思います。本当はストレスもよくないんです」
「そうか、できる限りの努力はしてみる」
「はい」
雄二はすっかり固まってしまっていた両手をゆっくりと引き剥がした。血の気の引いていた手のひらにどく
どくと新しい血が流れ込む。毛細血管が押し広げられる痛みが広がっていく。
「ありがとう。向坂くん。郁乃のこと好きになってくれて――」
愛佳が顔を伏せたままで言った。
「えっ!? いや、違うぜ。委員ちょ、そういうんじゃなくて」
「そういうんじゃありませんよ。でも向坂くん、郁乃のこと大切に考えてくれてるじゃないですか。そういう好き
ですよ」
――ああ、そうだな。そういう「好き」か。そういうのならアリかもしんねぇ。
すっかり血の気を取り戻した手を、雄二はもう一度強く握り締めた。
途中で予定していたよりレス数が増える増える。・゚・(ノД`)・゚・。
行数じゃなくて、データ量で。・゚・(ノД`)・゚・。
当然ですが、この作品はフィクションです。実在の人物団体等とは一切関係ありませんので、お願いです
から本物の水無瀬家の方は笑って許してください。・゚・(ノД`)・゚・。 すみません。すみません。向坂家について
の情報もでっちあげですので、あんまり深く追求しないでください。
リアルタイムで読ませていただいた、GJ!!
雄二、漢を見せろ!
222 :
7月文月:05/02/03 21:04:42 ID:Sh/03Kiv
毎度すばらしいですね
いつもはさえない雄二もついにかっこいい光を浴びることになるんですね。
設定も本当にありそうな設定ですし(実際、向坂家の人は頭が古いらしいですから政略結婚とかありそうですしね)
期待してますんで頑張ってください!
SS投下します。
前話は
>>88-93です
このみがお泊まりに来るとこから。
「タカ君、もうすぐカレー出来るからお皿並べててよ」
キッチンで夕食を作っていたこのみに声をかけられる。
「わかった」
台所からはカレーのいい匂いがしている。このみの料理の腕はちゃんと上達してるらしく、思ったよりも早く出来た。俺はテキパキと皿を並べる。
「ど、どうでありますか隊長…」
最初の一口を食べた俺をこのみ隊員が凝視している。
そんなに注目されると味も何もあったもんじゃない。…あれ?
「…ウマい」
前よりも確実にウマくなっている。
「ホントでありますか隊長!?」
このみ隊員がテーブルの上に体を乗り出して聞いてくる。
「うん、前よりウマいよ。なんていうか味に深みがあって、飽きない感じだな」
俺は思ったままの感想を述べる。
「やた〜!初弾は命中、目標は木っ端微塵でありますよ〜!」
何だかワケの分からないことを言う、このみ。よっぽど嬉しかったんだろう。
「実は私ね、お料理いっぱいいっぱい練習したんだよ。でね、他のお料理はまだまだだけど、カレーだけはお母さんも誉めてくれるようになったんだ〜」
「そっか、ガンバったんだな」
「うんうん、タカ君のお弁当を毎日作れる日も近いよ〜」
今のこのみの料理ならきっと何でもウマいとさえ思える気がした。それほど、このみの努力が感じられた。
そーいや、チエは料理するのかな…?俺はまたチエのことを考えていた。
「お風呂あがったよ〜、タカ君どうぞ〜」
どうやら、このみのお風呂が終わったようだ。リビングでテレビを見ていた俺は二階の部屋に戻り着替えを持って一階に下りる。
リビングでは風呂あがりのこのみがジュースを飲みながら、くつろいでいた。
まだ生乾きのつやつやした髪、ほんのりピンクに染まった頬、パジャマのボタンが開いている胸元、なんだかこのみが別人のように色っぽく見えた。
いかんいかん俺は何を見とれてるんだ?相手はこのみだぞ…
風呂からあがった俺は、濡れた髪を乾かして二階の部屋に戻る。部屋に入るとやっぱり、というか当たり前のように、このみは俺の部屋のベッドの横に布団を敷いていた。
「おい、お前が寝る部屋はあっちだぞ」
「今日は、ここで寝るからいいよ〜」
いや、いいよ〜じゃなくて俺が困るんだけど。
「ダメだ、他の部屋に行け」
「やだ、ここで寝る」
このみは断固居座りを決め込んだ。こーなるとテコでも動かないことはわかっているので、俺は仕方なく諦める。
「好きにしろ」
「やた〜」
「でも、俺は疲れてるからすぐ寝るぞ?」
「う〜ん、ホントはお話したかったけどタカ君が疲れてるなら仕方ないね」
なぜか今度は、やたらと素直だった。
明かりを消して10分ほどたった頃だろうか、布団がもぞもぞ動いているのが分かった。…またか。
「えへへ〜敵地に潜入成功でありますよ〜」
「このみ、自分の布団にもどれ」
「やだよ、このみはタカ君とお話がしたいんだよ」
「疲れてるって言ったろ?早く戻れ」
少しイラついて、つい語調が強くなってしまう。
「タカ君、今日なんか冷たいよ?少しイライラしてるし…」
このみが心配そうに聞いてくる。
「そんなことないし、このみには関係ないだろ?」
「関係なくないよっ!」
突然のこのみの叫びに驚いてしまう。
それが誰が発した言葉なのか、俺は一瞬理解することが出来なかった。
「最近タカ君おかしいよ、前みたいに一緒に遊んでくれなくなったし、学校だって時々1人で行っちゃうじゃない!」
「…このみ?」
「タカ君が何か悩んでるくらいこのみには分かるよっ、このみはタカ君のこと心配なのに、なんで何にも話してくれないの!?
このみはっ…このみはタカ君のことが大好きなのにっ…」
このみの突然の告白。
バカバカしい、何を今更…。このみが俺を好きだなんて物心つく前から知っている。でも俺はこのみを受け入れることは出来ない。しかし、俺にはこのみを断る勇気すらなかった…
それからこのみは、何も言わず自分の布団に戻って眠ってしまった。
その夜はとても心が痛かった。
翌朝、俺が目を覚ますとこのみの布団は、まるでそこに何もなかったかのようにキレイに片づけられていた。
「このみ?」
なぜか心に穴がポッカリ穴が空いてしまったよう気分になる。
俺は慌てて一階に下り、このみを探す。がどこにもいない。俺は不安になる。
「このみ!?」
ダイニングのテーブルの上に何かがあるのを見つけた。そこには、もう冷めきってしまった不格好なベーコンエッグと一枚のメモが置いてあった。
メモを手にとって読む。
『ごめんね』
…くそっ!何がごめんねだ!悪いのは一方的に俺だろ!?
このみは昔っからそうだ。俺とケンカすると自分が悪い悪くないに関わらず、必ず自分から謝ってきた。それが俺を余計苛立たせているとも知らず…
楽しかった子供時代はいつか終わる。俺たちはいつまでも幼なじみのままじゃいられない。
確実に俺とこのみの今までの関係は崩れ始めていた。俺は、それが怖くて、このみの気持ちに応えることすら出来ない。
俺が謝れば、またいつもの二人に戻り何もなかったかのように、また毎日を過ごせるだろう。…でも、それは同時にこのみに望みのない期待を持たせてしまうことになる。それは余計にこのみを傷つけてしまうのではないのか
だったら俺は……
その日、俺は1人で学校へ行った。昼休み廊下でこのみが俺の姿を見つけ駆け寄ってくる。
「あっ、タカ君今朝は先に行っちゃってごめんね…、それに昨日のことも…」
俺は、またこのみを傷つけてしまうのが怖かった。
だから俺は、このみの顔を見ずに、視線すら動かさないままで、このみの横を通り過ぎた……
「…タカ…君?」
そう、まるで他人のように───
229 :
夏に咲く人:05/02/03 21:50:07 ID:LFRrvlI/
いつも読んでくれる皆様ありがとうございます。
この辺から話が少し重くなると思いますが、最後までどうぞよろしくお願いします。
相変わらず文章ヘタいな俺…つーか、今回よっち出てねぇし…OTL
GJ!
だからといってその方法はあかんやろ貴明ー!
この流れってベタな幼なじみシナリオっぽいが、これってよっちシナリオなのよね(´・ω・`)
「ごめんなさい・・・本当にごめんなさい・・・」
タマお姉ちゃんの嗚咽が聞こえる。
今思えばお姉ちゃんが泣いている所を見るのはこれが初めてだと思う。
「お願い、お姉ちゃん。顔を上げて」
「でも・・・私・・・私。」
「そんな顔を見るとこのみまで・・・」
そう。お姉ちゃんにはいつでも笑っていて欲しい。
じゃないと私まで泣きたくなってしまう。
「私は・・・私は・・・みんなの関係を壊してしまったの!」
「ううん。そんなことない、そんなことないよ」
「でも私はこのみの気持ちを知ってて・・・」
お姉ちゃんが私の胸に顔を埋める。そして嗚咽と共に肩が震えて泣いている。
お姉ちゃんが・・・泣いている。
ぽた―――
これは涙。
お姉ちゃんの・・・いや、これは私の涙。
あれ、おかしいな。あれ、あれ・・・
「この・・・・み?」
私の様子に気づいたお姉ちゃんが顔を上げる。
「このみ、泣いているの?」
不安そうに私の顔を覗いてくる。
「ううん。このみ、泣いてないよ。」
目元をゴシゴシと擦る。
「ほら、えへ〜」
「このみ・・・」
ぽた―――
ぽたぽた―――
「あれ、あれあれ。おかしいなぁ。このみ目にゴミ入ちゃった」
ゴシゴシ
ゴシゴシゴシ
それでも涙は止まらない。
「このみ・・・」
「お姉ちゃんは悪くない。悪くないんだよぅ」
声が擦れる。
ボフッ―――
「あっ・・・」
お姉ちゃんの胸元に顔を埋められた。
ちょっと苦しい。でも・・・暖かい。
「このみ。泣きたいなら泣きなさい。」
「ぇ?」
「私はそれを受け止めなくてはならない理由がある。
そして、なにより私はこのみにこれ以上泣いている姿なんて・・・」
「お姉・・・ちゃ・・・・ん」
「ね。」
なでなで――
「あ・・・」
なでなで――
お姉ちゃんが私の頭を優しく撫でてくれた。それと一緒にたくさんの涙が溢れてくる。
「う・・・う、うわぁぁぁぁん」
たくさんの、たくさんの涙が溢れてくる。
もう、止まらない。止まらないの。
「あぁぁぁぁぁん」
環は自分の胸元で泣いているこのみを優しく撫でながら
そっと、空を見上げる。
そして、このみには聞こえないぐらいの声でそうっと呟いた。
「ありがとうね。このみ・・・」
彼女の頭上にはもう既に枯れたと思っていた最後の桜の花びらが1つゆっくり舞い降りた。
続く
>>231-233 です。
駄文すまんorz
正直、ほぼ初参加です(´Д⊂グスン
なんとか文章力を付け様と頑張ってる次第です。
まぁこれからえちぃ部分を付けていこうと思う次第であります
最近は良作ばっかでいかんなあ・・・
他を廻る時間が無くなっちまう。
ところでラッキーストライクの人マダー?
>>202読んだ。
>「タカ坊もバカねえ。私が何年あなたの弟をやってると思って?それぐらい顔を見ればすぐ
分かるわよ…と言いたいけど、廊下に落ちてたこれを拾ったから分かったんだけどね」
おいおいw
日本一の弟だと思っています。
>>237 郁乃の言葉に、みんな誰彼想像したんだろうか。。。
ラーメン大好き古池さんと、向坂家近所の高岡さん(食堂のおばちゃん)が主人公のSSきぼんぬ。
240 :
名無しさんだよもん:05/02/03 23:54:09 ID:ipT/PHDS
貴明×郁乃 おねがいしも〜
241 :
名無しさんだよもん:05/02/04 00:00:05 ID:wfT0fsin
>239
ラーメン好きの古池さんってさ・・・
パ○マンに出てこなかったっけ?
あと忍者ハっ○リ君にも・・・
「ぐす・・・っ」
あれからどれだけの時間が経ったのだろうか。
きっと数分。でも環には生まれてきた時間の中で一番長く感じた。
「ねぇ・・・このみ」
「・・・・・・ぐすっ」
環はこのみが落ち着くとそうっと呟き始めた。
「聞いてくれるだけでいいの。少し、話をさせて頂戴」
「・・・ん」
「私もね。私もタカ坊・・・貴明が好きだったの。
それは最近の話じゃなくてね。ずっと前の話。
でも、このみもタカ坊の事が好きなことはずっと前から知ってた。
だから、最初は私が身を引こうと思った。だってタカ坊にとって
一番近い存在はこのみだったから」
「・・・・・・」
「でもね、無理だった・・・」
「知ってた」
突然、このみが環の顔を見上げて語りだした。
>>234 GJ!
こういうのってなかなか味があっていいな。
もっとタマ姉書いてくれ
「知ってた。このみだって、もう子供じゃないもん。
ずっと、お姉ちゃんがタカ君のことが好きなの、小さい頃から知ってたよ」
「このみ・・・」
胸元に蹲っていたこのみがすっと環から離れた。
「だからね・・・だから、これでおしまい。
お姉ちゃんはタカ君の恋人で、タカ君の恋人はお姉ちゃん。
これでいいんだよ。これで」
「ありがと・・・このみ」
最後に彼女はすうっと一筋の涙を流す。
だけど、これは決別の涙。そして感謝の涙。
だから私はこれからこのみの気持ちを背負っていかなければならない。
しかし、これが重荷になることはない。
だって……これがこのみの優しさなのだから。
「じゃ、お姉ちゃん。私行くね」
このみはそれを言い残すとさっと後ろを向き、走り去っていった。
環は一瞬それを止めようと手を伸ばしたが、すぐにそれを止めた。
「ここで、追いかけたらバカだよね」
最後までこのみの後姿を見送ると、彼女も後ろへと向き帰路へと歩き出した。
――――
――
―>Konomi side
「ん?・・・あれはちびっこか?」
物凄い勢いで雄二の隣をこのみが走り去っていく。
「あ・・・おい!なんなんだよ・・・って、ん?」
雄二の袖には微妙に小さな模様が出来ていた。
これは・・・なんだ?・・・・・・涙?
「アイツ、泣いていたのか・・・?」
雄二は走り出した。なんで走ってるんだ、オレ。
追いつかないのは知っている。
だってアイツは幼馴染の中で一番速いんだから。
だからこそ、オレは知っている。アイツのこれから行きそうな場所が――
「って・・・はぁはぁ。ちびっこの奴はえーなぁ」
久しぶりにおもいっきり走ったらこれだ。
部活に入ってたらよかったかと今後悔した。
まぁ今更入っても仕方ないけどな・・・2年になってから入部しても邪魔者扱いだろうし。
「さて、アイツはどこに行ったんだ・・・?」
雄二が来たのは土手だった。雑草がそれなりに茂っている土手。
なんかあるといつもここだしな。
「あ・・・居た」
雄二はこのみにそっと気づかれないように近づいていく。
1歩、2歩、3歩―――
「こ〜のみちゃん!!」
「―――ッ!?」
雄二はこのみの髪をくしゃっとし、話しかけた。
「ユウ君・・・・・・ぐすっ」
「誰かにいじめられたの?そんな悪い奴はオレが――」
シュッ、シュッとこのみの前でジャブを始める。
「・・・お姉ちゃん」
「え?」
お姉ちゃん・・・?姉貴のことか?
いや、無理。勝てない。絶対無理。
というか勝てる奴がそもそもこの世に存在するのか?
ってか、姉貴はスカウターが壊れるぐらいの戦闘力がある化け物だぜ。
「はは・・・」
なぜか心の中で苦笑したはずなのに声として出てしまった。
「あ、姉貴かぁ〜。で、でも姉貴がこのみちゃんを泣かしたっていうなら、
オ、オレも容赦し、しないぞ」
こ、声が震えている。これは生存本能が勝手に・・・
「違うの・・・」
「よ、よーし。オレは行くぞ!」
いざ行かん、姉貴の元へ!
「違うの!!」
今日中にえちぃに持って行きたいので気合でガンガリますorz
まぁすでに展開をよめると思いますが・・・orz
「ごめんな・・・ウチのせいで貴明まで友達おらんようになったんやろ」
「違うよ。珊瑚ちゃんのせいなんかじゃ・・・」
いや、俺は嘘をついてる。珊瑚ちゃんにもそれがわかってるだろう。
「ウチ、ただ瑠璃ちゃんといっちゃんを仲直りさせてくれたお礼をしよう思っただけなんよ・・・」
・
・
・
久しぶりに貴明の部屋に遊びに行った時に見たんだ。
アイツのパソコン、壁紙にパジャマで寝てる瑠璃ちゃんになってた。
珊瑚ちゃんと見分けはつけられないけど『瑠璃ちゃん すきすきすき〜』なんて書いてあったからこれは間違いないだろう。
そして起動音やエラー音などの各種サウンドにやっぱり珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん。
それだけじゃない。
アイコン、腰掛けマスコット、さらにはマウスカーソルを追いかけてくる2頭身で体操服を着てる珊瑚ちゃんか瑠璃ちゃん。
極めつけは『らぶらぶにゅーはーと2』なんていう、自分を主人公に瑠璃ちゃんや珊瑚ちゃん、さらにはメイドロボまで貴明に惚れるなんて自作ゲームまで作っていやがった。
「このみ、姉貴。もう、お前らの知ってる貴明はいなくなっちまった。諦めろ・・・」
貴明。俺はもう、お前には何も言わないよ。せいぜい嫌われないようにしろよ。
完
>193
>「!!そ、そそそそんな訳無いでしょ!?」
これ、ちょっと違うなぁ。
すまそ
>>248 「だから言うたのに。さんちゃんにちかづいたらあかんて言うたのにぃぃっ!」
「瑠璃ちゃんの独占欲がそう言わせてるのかと思ったんだよ!」
「さんちゃんの本性しれたら、またさんちゃんいじめられるやんか。知り過ぎたもんはタダで帰すわけにいかんのやっ」
「あぁ……確かに高く付いたよ。雄二エンドにすらいけねぇ……」
そろそろ元祖!メイドロボの人登場キボン
軽く唇をあわせる。ただそれだけで幸せそうな響きの吐息がもれる。
「満足した?」
意地悪のつもりで聞いてみたら、意外な答えがかえってきた。
「ん。幸せいっぱい」
と思ったら
「嬉しさは別腹やー」
はいはい。欲張りの罰として二度目のキスはとりあえずおあずけ。まずはお行儀の悪い娘の後始末だ。
唇の端から垂れた唾液はすでに顎までてらてらと光らせている。
蛇の腹のような反射はマーガリンが混じってるんだろう。歪んだ輝きがますます獣じみた行為を促す。
顎を食いちぎらんばかりの勢いで吸い付く。
軽く歯があたり、彼女がびくっと身をすくませるが構わず舌を這わせる。
そのうち悪戯心がむくむくむくとわいて来て……!!
「桜散らしたらあかんよ、泣く」
わきっぱなしのコレはどうすればいいんですか!?
「ちゅー」
ちゅーじゃなくて。あー何処に悪戯しようかな? っと!?
肩を寄せあっていた筈なのに、いつしか右の膝がテーブルの上にちょこんと乗っている。
何 て お 行 儀 の 悪 い 娘 ざ ま し ょ う !?
しかし直接行ってしまってガード固められるのも面白くない。搦め手から行こうかな?
ようやく二度目のキス。軽く目をつぶって絡まる舌の感触を楽しむ。くなくなと糸を引いて入れ替わる舌。
最初は恥ずかしがって控えめだった鼻息が荒くなっているのを感じ、薄目を開けてみた。
「んーっ、んふーっ、ん! ……ん。んん」
眉間に悩ましげな皺寄せちゃってまぁ。目標は完全に行為に没頭中。
数 奇 将 星 、 我 に あ り !
そろそろっと左手を下に持っていく。気取られるな。気配を消せ……。性欲をもてあます。
右の膝が乗ってるってことは……足が開いてるってことなんですよ、わかってます……か!
拳を軽く握り、中指だけを立てる。視界の9割は彼女の顔で埋まっているので、事は慎重を要する。
こ、こ、ら、辺、かな? えいや
「ん゛っ!?」
俺の口の中で変な叫びが反響した。同時に吐き出された息が俺の胃袋に落ちていく。
あーあーあー、絶対げっぷ出る。げっぷ出るよコレは。雰囲気ぶち壊さないようにこっそりしないと。
あわてて口を離すけれど、もう遅い。ぱっと開いた手でお尻を握り締める。ちょっと強め。
つぱっと舌で糸を切ると真っ赤になった顔で非難を開始。
「あかん、あかんよ、貴明」
「テーブルの上に足乗っけちゃ駄目。だからお仕置き」
身を起こした瞬間に残った右手を上からかぶせて、逆のお尻を掴む。んー柔らかい。
「あ゛ッ! あかんって言って……!!」
ぅをッ!? ブン殴られ……ない? 両手を俺の首に回してきゅっと抱きしめてきた。
腰が近づき、愛撫しやすくなる……オッケー、って事でいいよな。
それから二人特に会話もなく、部屋に響くのは服の擦れる音と粘膜の擦れる音。
「ぁ-。ぁ-。ぁっ」
上から降ってくる、気が狂いそうになる雨音。
どのくらい経ったのかわからない。指先に触れるもの全てをこね回し、つまみ、掻く。
かすかに聞こえていた声。もう泣き声と聞き分けがつかなくなってるけど、悲しいからじゃない。
涙がぽろぽろ降ってくるけど、悲しいからじゃないだろう。
かわいらしい(と言うと怒るだろうけど)プリントのパンティは濡れて重く捩れて食い込みそれはそれは。
最初はつかめていたお尻の肉もぬるぬると滑って掴めない。窄まりに指を食い込ませてようやく掴めた。
「あ゛!!」
それが引き金になったのだろうか、ぶるぶるッと体を震わせ脱力した。
覆いかぶさってくる薄い体は風でも引いたのかと思うくらいに熱く、ときおりひくっと震えていた。
「続けて……良い?」
「嫌ぁ。嫌やぁ……」
嫌よ嫌よも好きの内。
+---------------------------------------------------------------------------------------------+
進まないよー。助けてー。……ってもいきなりパンパンやってるのも風情が無いカナ? 無いカナ!?
エロスにしろSSにしろ初めて尽くしなので加減が分りません。もう情熱だけ。ドロドロギラギラした。
しっかし読み返してみて2点ほど致命傷が……。
すでに結末が崩壊してます。けど苦し紛れの言い訳させて続けます。
ああ、最初から最後まで書き終えてからじゃないといかんなぁ。
今宵の原動力
>182 ご期待に沿えず申し訳ないです。もう少し待ってください。
>183 もう少し溜めてください。
ラッキーストライクとラッキースケベを見間違えてしまったオレがいるんだが…
どうしよう
静かなで憂鬱な時間に終了を告げる終業のチャイム、おそらく全生徒がそれを待っている。
「・・・・・」
「・・・・・」
・・・・キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン、キ〜ンコ〜ンカ〜ンコン
「それでは、筆記用具を置き、列の一番後ろの人。答案を前に集めて」
教員の声に従い、黙々と答案は集められる。
「では、今日でテストも終わりだ。担任が来るまで教室で待っているように」
・・・・そうして教員は教室を後にした。
「イヤッホ〜ウゥ!!俺たちは・・・・・自由だ〜!!」
「皆の衆、宴じゃ宴じゃ!!」
クラスメイト達はテストから解放された、喜びを各自表現している。
「なぁなぁ貴明、どうだったよ?最後の英語」
そんな光景をぼんやり見ていると雄二が俺に話しかけてきた。
「まぁ、良くもなし悪くのなし平均ってところじゃないのかな。雄二はどうなんだよ」
実際もう少し出来たと思うが、こんな事を聞かれて「余裕だった」と答えると嫌味な気がするので俺はそう返した。
「俺も赤点は免れたんじゃないかと思う、これで姉貴からの嫌味も少なくなるぜ」
そりゃ、一週間も勉強会続けて入れば、そのくらいはいけるだろう。
でも、勉強している時間よりそれ以外の事をしていた時間のほうが多かった気がするが
「で、委員ちょはどうなのよ。相変わらず高得点ばっか?」
近くにいた小牧に雄二がそう聞いた。
「私は別に普通ですよぉ〜、点数が良かったとしたら向坂くんのお家でした勉強会のおかげですよ〜」
そう言ってもらえると、誘った俺も嬉しい限りだ。
「お前ら〜席に着け。テストが終わったからって気を抜くんじゃないぞ」
俺たちが話をしていると、担任がやって来て、間もなくして俺たちは下校した。
「そいじゃ貴明、俺らも帰りますか。ついでにテスト終了記念にパァ〜っと遊びますか」
「あぁ、久々にゲーセンでも行くか」
そう、一週間ずっと勉強をしていた俺たちは娯楽に餓えていたのだ。
そうして俺たちは校門に向かう。
「むっ、貴明アレを見ろ」
いきなり雄二が柱の陰に隠れるので何かと思い、言われるままに見てみる。
「あれは・・・タマ姉とこのみだな。お前なんかマズイことしたのかよ?」
「違わい!!姉貴にばれるとゲーセンなんて行けるわけないだろうがよ!?」
あぁ、確かにタマ姉はゲーセンは『不良の溜まり場』という
偏った知識の持ち主だったことを思い出した。
「なるほど、なら面倒だが裏の方からこっそり出るとするか」
「あぁ、賛成だ」
そうして俺たちは来た道を振り返り、裏のほうへ行こうとした。
「ねぇ、アナタたち何やってるの?」
突如、声をかけられ誰かと思い振り返るといつもの三人組が入た。
「一体コソコソと何をやっているの?お姉さまの弟さんはよろしいけど
そこの男はあからさまに不審者ですわ」
コクコク・・・
そういって工藤さんは俺のほうを睨みつけた。
「まぁいいじゃないの、玲於奈。でもどうしたの?
誰かに気づかれたくないような素振りだったけど?」
ギクッ!!柳瀬さん鋭いよ・・・・。
「あら、あそこに入るのはお姉様!!お姉様〜!!」
工藤さんがタマ姉に気づき大きな声でタマ姉の方へ駆け寄っていく。
するとタマ姉もこちらのほうを振り返った。マズイな・・・・。
「あら、アナタ達、それに雄二にタカ坊。ちょうどよかったわ、待っていたのよ」
案の定俺たちを待っていた、雄二は小さな声で。
「貴明・・・姉貴が入る限り。俺たちに自由はないのか?」
「ん?雄二何か言った?」
「いいえ、ボクは何も言っていませんよ?」
―――雄二、俺たちの自由はタマ姉次第だ。
俺と雄二は校門でタマ姉に捕まり、連れられるがままに駅前に連れてられた。
「あの〜、姉貴。一体俺らは何処へ連れて行かれてるんでしょうか?」
俺たちは何処へいくかなんて一言も聞いてない。
「あれ、言ってなかったけ?買い物よ、買い物」
「ってここらへん女向けの服や小物店ばっかじゃんかよ!?俺ら来る意味あんのかよ!!」
確かに回りは男とは無縁のアクセサリーや服が綺麗に陳列してある。
「どうせ雄二もタカ坊も暇でしょ?ならついてきてくれてもいいじゃないの」
決め付けられていた・・・・事実、暇なんだろうけどさ。
「それじゃ、私達この店に入るけど二人とも来る?」
そうして男が一人で入ったら通報されそうなファンシーな店に入っていった。このみの趣味かな?
「あぁ〜俺はCDショップでも行って来るわ。女の買い物は長そうだしな。貴明も来るか?」
「俺は別にいいや、ここら辺ブラブラしとくよ」
そう返すと雄二はCDショップの方角へ歩いていった。
しかし俺は目的がある訳でもないのに歩くのも面倒なので、近くに設置されている自動販売機で
飲み物を買い、近くのベンチに腰をかけた。
「隣、いいかしら」
突然、女の人に話しかけられて少し戸惑って
「あっ、どうぞ」
そうして振り返ると何故か柳瀬さんが横に座っていた。
「何を驚いているの?」
「いや、別に驚いてないから。でもなんでここにいるの買い物は」
「私は今、別にほしいもの特にないし」
さっき買った飲み物を飲んでいると、彼女はこちらの方を向き
「あえてあげるのなら・・・・冷たい飲み物が欲しいかも」
その声を聞き俺は隣の自動販売機の前に行き。
「何が飲みたい?」
「アナタと同じのでいいわ」
そうして、俺と同じ飲み物のボタンを押した。
「それじゃ、これは俺からのプレゼントということで」
「ありがとう」
タマ姉たちの買い物はまだ長く続きそうだ。
まだ日常にすがりつく7話目です
次くらいから話を進めていこうかと思います。
最後に感想などを下さる皆様、いつもありがとうございます。
アナタと同じ・・・アナタ色に染まってしまうよ
>>259お疲れ様です
かおりんはツンデレなんですか。
素直になりたい、でもなりたいという典型的なツンデレですか。
それともツンだったのにある日突然愛に目覚めて貴明にラブラブ光線ですか。
やはりバカ坊は奥手なのでかおりんからモーションをかけてくるのだろうか。
問答無用でおごらせるのかよ
と思ったがまあ展開的には悪くない。
>>252 ワロタ&萌えた
いい雰囲気です
生殺しや〜
合流した珊瑚ちゃんはいつも以上に笑顔、瑠璃ちゃんは何故か俺から顔をそむけるようにそっぽを向いていた。
珊瑚ちゃんが笑顔なのはイルファさんと瑠璃ちゃんが仲良くやっているからなんだろうとして・・・瑠璃ちゃんは機嫌が悪いとかじゃなさそうだけどどうしたのかな。
「なぁなぁ、貴明。今日のお昼は学食なん?」
瑠璃ちゃんに声をかけようとしたところ珊瑚ちゃんから声がかかった。
考えるまでもなく答える。
「うん。そのつもりだけど・・・珊瑚ちゃん達もでしょ?」
「えへ〜。今日はなんと、瑠璃ちゃんがお弁当作ってくれたんや〜」
バンザイをしながらそう言う珊瑚ちゃん。
へぇと瑠璃ちゃんのほうを見ると、なんだかさっきよりも思いっ切りそっぽ向いてるんですけど。
珊瑚ちゃんの話では瑠璃ちゃんとイルファさんで家事を当番制にしたらしい。そして今日の朝食の仕度はイルファさんで、手の空いていた瑠璃ちゃんがお弁当を作ったのだと。朝食で手一杯でお弁当が作れないって前に言ってたもんな。
ちなみに屋上で食べることまで決定済みなのだそうだ。
「じゃあ俺はパンでも買ってご一緒しようかな」
こういう場合で1人で学食という選択肢は、今の俺にはもう出てこない。
「「えっ?」」
俺も変わったよなぁ・・・と思っているとそんな2人の驚きの声が。
そっぽを向いていた瑠璃ちゃんまでこっちを振り返ってる。
もしかして初めての弁当だから一緒するのが迷惑だったりするとか?
「貴明、瑠璃ちゃんのお弁当よりパンのほうがええの?」
一呼吸考える。それってつまり。
「もしかして瑠璃ちゃん、俺にも作ってきてくれた、とか?」
「そ、そんなことないぃ。アンタの分は余り物や。アンタに作ったんとちゃうんやから。さんちゃんがどーしてもみんなでて言うから仕方なくなんやーっ」
「うんうん。瑠璃ちゃんのご飯、美味しいから余り物でもありがたいよ」
パクパクと何か言いたそうだったけど、そのまままたそっぽを向く瑠璃ちゃん。
理由はともかく俺の分もある、と。
スキンシップはまだ苦手だけど、これくらいは素直に口にできるようになった俺。感慨再び。
「も〜。瑠璃ちゃん、素直やないねんから」
「さんちゃん〜」
そんな朝の出来事。
お昼。
瑠璃ちゃんの弁当はやっぱり美味しかった。
が、余り物のはずの俺の分の弁当がなぜか一番多かった。
それを瑠璃ちゃんに言うと、瑠璃ちゃんは真っ赤になりながら理由も言わずに俺のことを蹴ってくるのだった。
完
>>250 うまい、やられたという感じです。
そこまでは思いつかなかったorz
>>266 GJ!
いいなぁこういうの。
あくまで個人的な意見だけど、エロよりもこういったほのぼのの方が、
なんというかすんなり入り込めてイイ(*゚∀゚)=3
ただ心だけが の作者さん GJ
カコイイ雄二を見ることができて幸せナリよ
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となる。しかし見合いの話が降って湧き、また郁乃の病気が現代医
療では完治せしめないことを知った雄二の心は激しく揺れる。
とにかく今は馬鹿げた見合いの話をどうにかしよう。そう雄二は決心した。
第一話から第四話まではこちらで。
http://www.geocities.jp/koubou_com/
その日、貴明とともに郁乃の病室に現れたのは見知らぬ女性だった。
「あ……おはようございます」
そう言って愛佳が頭を下げる。妙な緊張ぶりが郁乃にも伝わる。
「おはよう、愛佳さん。それと、郁乃さんね。おはよう」
「おはようございます」
郁乃の訝しげな視線に気付いたのか、女性はニコリと笑う。
「はじめまして、雄二の姉の環です」
ふと以前貴明が言っていたことを思い出す。雄二の姉で、貴明にとっても姉のような存在、そう、なんと
言っただろう。
「――タマ姉さん?」
ぷっ、と、環が吹き出した。
「タカ坊の入れ知恵ね。タマ姉さんか、私のことはそう呼んでくださるかしら?」
「あ、はい――あの」
「雄二? 風邪を引いたから何日か学校を休ませるつもりよ。郁乃さんにうつしたら大事でしょ」
「そうですか。そのお大事にと……」
「伝えておくわ」
そのとき郁乃が感じた妙な寂しさはなんだったのだろうか?
慌てて郁乃はその感情を振り払う。
別に何日か顔を見れないだけじゃない。そう、ただそれだけのことだ。風邪さえ治ればまたすぐに顔を出し
てくれるだろう。
「あ、でもどうして」
雄二が風邪を引いたということを伝えるだけなら、貴明に伝言を伝えておけば済む話だ。なぜそれをわざ
わざ朝から病院に寄ってまで環が直接伝える必要があるのだろう?
「私がただ郁乃さんと一度お話をしてみたかっただけよ。これからも雄二をよろしくね」
そう言ってニコリと笑う環が、一瞬、愛佳と意味ありげな視線を交わしたことに郁乃は気付かなかった。
一方その頃、風邪を引いたことにされた雄二は、窮屈なスーツ姿で車中の人となっていた。
まったく、親父のヤツ、昨日は大阪に居たと思ったら、今日は東北かよ。
父親と電話で話をしたわけではない。雄二はできれば話は直接したいと思っていた。それに父に直接電
話が繋がることは稀だ。だから先日の夜、雄二が連絡を取った相手は父親の秘書だった。そこで父親の予
定を聞き、今日は北陸に向かうこと、そして夜なら時間が取れるということを確認した。
それで朝から電車を乗り継ぎ、新幹線で北陸に向かうことにしたのである。
早めに出発したのは考える時間を作るためだ。父親を説得するためにそれなりに意見をまとめておかなけ
ればお話にならないだろう。昔から比較的自由を許してくれてきたとはいえ、こうと決めたことは必ず貫く父
親だった。
だから単純にお見合いを断るというだけじゃ済まないだろう。それなりの理由を提示しなければ一笑に伏さ
れるのがオチである。そうするための自分の持ち札を数えなおしてみる。
――っても持ち札なんてほとんどないんだよな。
一番簡単なのが、すでに誰かと付き合っているというものだ。だがそうなるとその対象は郁乃以外にあり
えない。なぜならすでに雄二の素行について、いくらか調べられているだろうからだ。郁乃ならば、調査した
側がそういう勘違いしたことも十分に考えられる。だがその札を切ることはつまり郁乃に迷惑が及ぶ可能性
をあげることを意味している。
というわけで一番実用性のありそうな札は使えない。
見合い相手が気に入らないというのはどうだ? 年上しか興味が無いとか。いや、ダメだ。こんなことを言
い訳にすると次は年上を連れてこられて、その時には言い訳がつかなくなってしまう。容姿は? 腹が立つ
ほど申し分なかった。特Aランクだ。性格、素行、調査上はいずれも問題なし。
相手を理由にすることもできそうにない。
と、なると雄二自身を理由にするしかない。俺は家督に相応しくないから、それに相応しい男を連れてき
て、姉貴と見合いさせてくれ。そんなことをしたら、雄二が環に殺されるだけだ。それに情報をくれた環を裏
切ることにもなってしまう。環の話が本当なら、この話はギリギリまで伏せられているはずだったのだ。
あー、やっぱあれこれ考えてもダメだな。
あれこれ考えるために早く出たというのに、雄二は結局その結論に行き着くしかなかった。
政略結婚なんてごめんだ。見合いもする気はない。
はっきりそう断言するしかあるまい。それに対して父親がどんな風に反応するか、雄二には想像できな
かった。そもそも父親に逆らってみたということがない。逆らえる相手だと感じたこともない。
だが誠心誠意を尽くすと誓った以上、今、できることははっきりと自分の意志を伝えることだけだ。
前もって時間を調べておかなかったのがいけなかったのだが、雄二は思っていたよりもずっと早く、昼前に
は目的地に到着してしまった。新幹線はなじみのない人間にしてみれば、飛行機の次の移動手段という認
識かもしれないが、実際の利便性からすると都市圏を結ぶ移動手段としては飛行機より高速である場合が
多々ある。わずか2時間程度で、雄二は見慣れぬ空の下に立っていた。
早すぎることは早すぎるが、とりあえず父親の秘書に連絡を取ってこちらについたことを伝えるために携帯
を手に取った。父親が予定しているホテルで待てればそれが一番だろう。だが秘書は電話を取るとそこで
待っているように雄二に伝えた。
わずか30分ほどで携帯が鳴り、車が到着したことを知らされる。言われた場所に行くと黒塗りのリムジン
が待っていた。運転手がドアを開け、雄二がその中に身を躍らせると、そこに父がいた。
「雄二か、久しぶりだな」
「久しぶり。父さん」
「遠いところをよく来てくれたな。話があるそうだが、それは用事が終わってからにしようじゃない
か。せっかくだから、今日は付き合ってもらうぞ」
ニコリともせずにそう断言する。雄二は焦って早く来たことを後悔したが、もう後の祭りだった。
その後はもう散々だった。昼食会、会合、視察、会議、夕食会、接待と引きずりまわされ、行く先々で息子
として紹介された。挨拶さえ済んでしまえば後ろで縮こまっているだけでよかったので、なにか苦労するとい
うことはなかったが、色んなお偉いさんの顔と名前が一度に頭に入ってきて混乱する。今日一日で何人と握
手したか、もう思い出せない。
握手ってしすぎると、手が痛くなるんだな。と、今更なことを実感する。
そうしてようやくホテルに入ったのは夜の11時過ぎになってからだった。父親に勧められて先にシャワー
を浴びる。疲れを軽く落として、用意されてあった下着とバスローブに袖を通しながら、似合わねぇと苦笑す
る。バスルームを出ると、父親はスーツを脱いで、袖と襟を緩め、ソファに腰を下ろして琥珀色の液体の入っ
たグラスを傾けていた。
「まだ飲むのかよ」
思わず呆れてしまう。今日一日でどれだけ飲んだと思ってるのだ。
「こいつは別だ。まあ座れ」
そう言って、空のグラスにウイスキーを注いで雄二に差し出した。
「俺は未成年だ」
「気にするな。息子と酒を飲める日がこんなに早く来るとは思わなかった。家にいるといろいろうるさいしな」
そう言って目を細める父親は、雄二がこれまで見たどんな父親とも違っているように見えた。
仕方なく雄二はグラスを取って、口につける。が、その液体は唇に触れるだけで焼けどしそうなくらい熱く
感じた。
「うえっ、なんだよ。これ」
「酒ってのはそういうもんだ」
そういうと、別のグラスに氷を入れ、それに注ぎなおし、マドラーで何度かかき回すと、それも雄二に差し
出した。
「これならどうだ?」
今度はなんとか一口、口の中に入れることができた。だがしかしそれでも口の中がかーっと熱くなる。無
理して飲み込むと、その熱い感触が喉から胃に向かって落ちるのが分かった。
「よしよし、飲めるじゃないか」
そう言って、自分はストレートのままぐいっと飲み込んだ。
「父さん、今日は――」
「話があるというのは聞いている。だがもうしばらく我慢して付き合え。酒が不味くなる。環はどうしてる?
九条院を飛び出してそっちに行ったそうじゃないか」
「姉貴は元気だよ。元気すぎて困ってるくらいだ」
「ははは、そうか。変わってないようで何よりだ。母さんは環におしとやかになって欲しくて色々画策したみ
たいだが、無駄だったようだな。それでいい。あれくらいはねっかえってないと、イニシアチブは取れん。学校
生活はどうだ?」
「まあ、普通だよ。普通――」
そうしてしばらく世間話につき合わされる。しかし時計の針がもう1時を指そうかというころになって、雄二
はこれ以上は待てないと覚悟を決めた。
「父さん、今日ここまできたのは大事な話があるんだ」
「――見合いのことだろ」
詰まらなさそうに父親はグラスを傾ける。
「一体何が不満なんだ。100%、何の問題もない良縁だと思うが」
「その考え方はもう古臭いんだ。俺は自分の結婚相手は自分で決める。この話は断る」
「お前一人の一存で簡単に決められるようなことではない。先方はとても乗り気だ」
「その先方に言わせりゃ、こちらもとても乗り気なんじゃないのか? 父さん、相手はまだ14歳だ。そして俺
はまだ16歳だ。世間から見りゃまだまだガキだ。そんなガキがいきなり将来の相手はもう決まってるなんて
言われてそうそうハイだなんて言えると思うのか?」
「……お前のためなんだよ」
「違う! 向坂家のためだ。俺のためじゃない」
「その二つが果たして切り離せるものなのかね? お前は向坂雄二だ。向坂家の後継者なんだ」
「それは分かってる。でもそれとこれとは別だ。約束どおり、高校を出たら言われた大学に入るさ。言われた
勉強をするさ。だが結婚に関して口出しされたいとは思わない」
「それは――」
すっと父親の目が細められる。
「将来を誓い合った相手がすでにいるとかそういうことかね?」
「揚げ足を取るなよ! そんな相手はいない。だけど父さんの言うとおりにしたらそんな相手を自分で探しに
いくこともできやしない」
「良かったではないか。探しに行く前に見つけることができたのだ」
「俺はイヤだって言ったんだ! 断固拒否するからな!」
「落ち着け。どちらにしてももう遅い。見合いの日取りは決まってしまっているし、それには出席してもらう。な
んとしても、だ。向坂家の面子というものがある。これはもう決定事項だ。分かったな」
「クソッ、もうアンタとは話さねえ」
「好きにしなさい。こちらもそういうことならそれなりの方法で対処させてもらう。逃げられるとは思わないほう
がいいぞ」
「ああ、分かったよ。こんちくしょう。好きにしやがれ。精一杯抵抗してやるからな!」
雄二はバスローブを脱いで、一度は脱いだスーツに袖を通す。
「おいおい、もうこんな時間だぞ。泊まっていきなさい」
しかしそれには返事をせず、きちっとネクタイまで締めると、グラスを掲げる父親にしっかりと一礼をして、
無言のままホテルを出た。
その日の放課後も、郁乃は貴明の押す車椅子で病室に戻った。
雄二の風邪はまだ治らないみたいだ。ひどくなければいいのだけど。
そんなことを思いながら、姉に着替えを手伝ってもらっているときだった。病室の扉の向こうで言い合う声
が聞こえてくる。不思議に思いつつも、服を着終わったところで、バタンと勢いよく病室の扉が開かれた。
「あ……」
飛び込んできたのは雄二だった。でもその姿は見慣れた制服姿とは全然違う。着崩れしたスーツ、そして
雄二自身の顔色もボロボロだった。眠っていないに違いない。目の下には大きな隈ができていて、目も充血
している。
あれ? 確か風邪で寝込んでるんじゃなかったっけ?
しかしそれを深く考える間もなく雄二はつかつかと郁乃の座るベッドに歩み寄って、郁乃の肩をがしっと掴
んだ。そして郁乃の顔を真剣な顔でじっと見つめて、言った。
「郁乃ちゃん! 俺と付き合ってくれ!」
「――え?」
唐突すぎて郁乃は理解が追いつかない。しかしそんなことはお構い無しに雄二はまくし立てた。
「いいから! 俺と付き合ってくれ! 「はい」は?」
「あ、は、はい……」
「はいって言ったな。はいって言った! よし、それじゃ俺たちは恋人同士だ。そういうことだからな!」
「え……あ……?」
呆気に取られる二人を置いて、雄二は言いたいことだけ言ってさっさと病室から立ち去ってしまう。
「え、なに? 今、雄二さんなんて言ったの?」
「さ、さぁ?」
姉妹は顔を見合わせるが、いまいち何が起こったのか理解していない。
――付き合ってくれ! 「はい」は? ――あ、は、はい。 ――よし、それじゃ俺たちは恋人同士だ。
あれ……? これってどういうことなのかしら?
そして郁乃は愛佳の口が見る間に大きく開かれるのを見た。
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!???」
姉の絶叫が病室を揺るがした段になっても、依然郁乃は状況がちゃんとつかめていなかった。
「あれ……?」
自分でh抜き忘れた orz
雄二編は一旦閉幕。次回は郁乃編。
さて、晴れて?恋人同士となった二人ですが、前途は多難、どうなることやら。
毎度重厚で面白い話ありがとうございます。果たしてこの先雄二と郁乃はどうなるでしょうか。
彼らがどんなラブストーリーを見せてくれるか楽しみですが、タマ姉がどう絡んでくるのか、
ファンとしては密に気になるところですw。
>>277 ベタだけど、こういう話大好きだ。
郁乃可愛いよ郁乃。
本編では不遇な雄二
こちらではめぐまれて、いるかも?
「そんな事言ってもさ……」
「?」
「もう我慢できないんだな、これが!?」
フローリングに寝かせる・その前にぬるぬるの両手をシャツで軽くぬぐう。
彼女の制服を汚さない細やかな心配り。それが貴明クオリティ。
腋の下に手を差し込むと、信じられないくらい熱かった。一瞬ほんとに風邪でも引いたのかと戸惑う。
「……どしたん?」
「あ……嫌なら、っていうか体調――」
「だいじょぶ。それより……我慢効かんのはウチもおんなじやから」
ふあぁあ、たまらん……てめーはおれを興奮させた。
いや、くだらないジョークでも混ぜないとホントヤバいから。バールの様な何かでこじ開けそう。
えーと、えーと、何かネタは……
「早よゥ……」
を――――――――――――――――――――――――― !?
気が付くと服をむしり取らんばかりの勢いで押し倒していた。
「まっ待って、待って!」
「ごめん待てない」
セーラー服の裾に突っ込んだ両手を必死に掴んでくる。そこから本気を感じ取ったので、渋々諦める。
なんですか? 焦らしプレイですか!?
「今日は……そのぉ……服ぅ着たままじゃ……あかん?」
「へ?」
「あ、あと、胸触るのも嫌やし」
あー。なるほど。かといってこれで素直に引き下がるのもアレか。
「痛いの?」
「え? あ、あぁ、そうや」
「よし今すぐ病院行こう」
「あーあーあーちゃうねん。痛ない。ないけど、今日は堪忍して」
うーわカツカツだよ。でもまあ、せっかくだから俺はこの制限プレイを選ぶぜ。
下着はさすがに良いんだよね? と目で窺いながらパンティに手をかけると、すっと腰を浮かせてくれた。
捩れて食い込んでいた股布が内側の粘膜を巻き込んで剥がれていく
「わ……ぅわぁッ!?」
敏感な部分を擦りあげていったらしく顎をのけぞらせ、歯は凍えたようにカチカチと鳴る。
後頭部が床にぶつかるのも気にしていない、というより意識が飛びかけたらしい。
鳥肌が内股一面に立ち股布の水気がドッと増すと、力を失ったお尻がぺたんと冷たいフローリングに落ちる。
変な抵抗がなくなった分脱がしやすくなった。
くちゃくちゃと音を立ててパンティを脱がせば、内股は油を塗ったように濁った反射を返していた。
そして胸を……胸を……胸触れないって。胸触れないって! うーくそー!!
……オーケーオーケー。この貴明、主人公らしくぶっつけ本番には強い性分ゆえ、何とでも致そう。
ここでバールの様なものを取り出しまして…… こ じ あ け ま す よ ?
先端を軽く埋めるとぬるま湯のような熱湯のような感覚が俺を包む。思わず溜息。
もちろんそれは相手にも伝わるわけで、彼女の意識を覚醒させる。
「あ」
またですか? また俺を試されますか!?
「ごむ」
ごむ?
「昨日たまたま、たまたまパッチ貼り忘れてん。だから、今日は……ごむ、お願いや」
……ってああ、今度産のことか。あ、やべ。俺の部屋だ……。
苦しい時こそニヤリと笑え はたから見てみな男だぜっ
ちゅぽっ
俺、漢ぜ!! しかし、しかし盛り上がったこの、この何かは、戻ってくる頃にはその……。
「……これ」
顔を真っ赤にして……ってさっきからずっと赤いんだけど、
もうこっちを見ることも出来ないくらいになってて、あまりの恥ずかしさに全身が震えだしている。
もちろん差し出された手も、指先も震えているわけで、挟まれている避妊具もふるふるふる。
「たまたま今日の保険の時間にたまたま先生が配っててん。それをたまたまスカートのポッケに……」
あんまり連呼されると合いの手で『姉』って付けるぞ。そして白けさせるぞ。
「つ……付けたるから……堪忍な……」
おぼつかない感じで起き上がると、その割には異様に慣れた手つきでゴムを被せてくれる。
……慣れさせた本人が言うのもなんだけど……犯罪臭せぇ……。
ん? ゴムか……。ゴムつけるんならいっそのこと……
「また意地悪するん?」
サイキック発動。というかそんなに表情に出やすいかな、俺。にこっと笑って否定してみる。
「するよ、絶対する」
断言された。期待にこたえねば。瞳をしっかりと見据えながら再び先端を……一気に埋める。
ぱくぱくと声にならない声をあげる彼女を見つめながら、綺麗だな、と微妙にずれた感慨に耽った。
いやいやそれよりも悪戯の準備。本気で盛り上がらないように、かつ本気で盛り上げる為の往復運動。
ヘソの裏側を擦るような感じでゆっくりゆっくり。
「――ッ!? ――ッ!!」
こっちはまだ奥歯をかみ締めなきゃならないほどでもない。ゴム越しで良かったのか悪かったのか。
きつく目を閉じぽろぽろと泣いている彼女を尻目に目的のものを探す。
さっきテーブルの上で少々おいたをしたけれど、それはそこにあった。
マーガリンをナイフで多めに取り分けると口の中に突っ込む。
あまりの脂臭さに飲み込みそうになるが、我慢我慢。完全に溶けるまで口の中で泳がせる。
「――――――――――――――――――――っあ゛!!!!」
口の中が油壺になった頃、下半身が激しく握り締められた。
+---------------------------------------------------------------------------------------------+
盛大にごめんなさい!! しかし、寝る前に続きは落とすぞ! 落とせたらいいな!! 明日会議だし!?
今宵の夜伽を申し付けます
>263 本人エロスよりも笑いに重点絞ってますので。エロス期待されてたならごめんなさい。
ウワー!エロイ!エロイよアンさん!珊瑚ちゃんと羞恥プレイだよワッショイ!
珊瑚艦長!私の波動砲も充填率500%でありますよ!?発射許可キボン発射許可キボンヌ!!!
俺は、その日からこのみを避けだした。時間をずらして登校したり、なるべく校内で会わないように行動したり、帰るときは裏口から出たり。
このみがあてもなくひたすら俺を待っているのかと思うと俺の心は傷んだ…
そして数日が過ぎた───
ある日、俺はタマ姉に呼び出され屋上に来ていた。タマ姉はフェンスに寄りかかり腕組みをしている。タマ姉の綺麗で長い髪が風でなびいていた。
タマ姉の険しい表情から話の内容は大方想像ついていた。
タマ姉が口を開く。
「タカ坊あなた最近このみを避けてるそうね?」
「タマ姉には関係ないだろ…」
やっぱり、そうきたか…
「関係ないワケないでしょ?このみは私の大切な妹分よ?私が心配したら何かおかしいかしら?」
「このみは何か言ってたのか?」
「タカ君に嫌われた、私がタカ君を怒らせちゃった。って言ってたわよ」
あいつまた自分を責めて…
「ヒドい顔ね…、何を悩んでるの?自分がわからないって顔してるわよ」
やっぱりタマ姉には分かってしまうのだろうか。
「どうせ、このみを傷つけたくないとか思って避けてるんでしよ?バカね、そんなことしたって、このみが余計傷つくだけだって、それくらい分からない?」
俺だって、そんなことは分かってる…
「でも、俺は…」
「そんなに幼なじみという関係を失うのが怖い?でも、あなたがしていることは、ただの逃げよ」
俺は何も言い返せなかった。
「…ねぇタカ坊。あなた、好きな人がいるんでしょ?」
急にタマ姉が聞いてくる。俺は、ハッとした。一瞬アイツの顔が浮かぶ。
「どうやら図星ね。私が何年タカ坊の姉貴分をやってると思ってるの?それぐらい分かるわよ」
「俺は…まだ好きかどうかなんてことは分からない。でも何故か気になって頭から離れないんだ…」
俺は思ったまま答える。
「それを好きって言うのよ。フフッ、なんだかんだ言ってまだまだ子供ね、タカ坊は」
タマ姉は先程までの引き締まっていた顔がゆるみ、『お姉さん』の時の顔で笑った。
「うるさいなぁ…」
俺は頭に置かれた手を払いのけるように言う。
「私はタカ坊に好きな人がいても何も言わないわ。でも自分の気持ちくらい認めなさいよね」
俺の気持ち…
「…あのね、タカ坊には言っておくけど、私は卒業したら九条院に帰るの」
タマ姉から思いもよらない言葉が返ってくる。
「そんな…ずっとこっちに居られるんじゃなかったのか?」
そんな話は今まで一度だって聞いていない。俺は、もう完全にこっちへ帰ってきたものだと思っていた。
「今年一年ワガママを言わせてもらっただけよ、タカ坊を九条院に連れて行くためにね…」
「…俺を?」
どういうことだ?
「私は、ずっとタカ坊が好きだった。だから私は九条院から帰ってきの、このみには悪いと思ったけど、あなたを恋人にして九条院に連れて行くためにね。」
タマ姉が…?俺を好き…?突然すぎてワケが分からない。
「久しぶりに見たタカ坊は立派に男になっていた。私はとても嬉しかったわ。でも、もう私には勝ち目は無さそうね…」
風が強く舞った。タマ姉は髪をかきあげると、なんだか寂しい目をしていた。
がそれはすぐに元の意志の強い眼差しへと戻る。
「タカ坊。あなたは自分が思っているより周りから必要とされている。あなたには、それだけの価値がある人間なんだからもっと自分に自信を持ちなさい」
俺が価値のある人間?
「何を迷ってるの?あなたは自分の思い通りにすればいいのよ」
俺は…
「あなたの幸せが、私の幸せそのものなんだから」
そう言ってタマ姉は子供をあやすように俺を抱き、優しく髪を撫でた。
「自分の気持ちを受け入れて。さぁ、行きなさいタカ坊」
そうだ俺はっ…
「ごめんタマ姉。…ありがとう」
俺は屋上を後にした。やっと分かった、そうだ俺は、きっとアイツが好きだったんだ。
俺は、ようやく分かった自分の想いを伝えたかった。しかし俺は、彼女の住所や電話番号すら知らなかった。
帰宅しようと校門を出ようとしたとき、よく知っている人影を見つけた。チエだった。
なんという幸運だろうか、俺は覚悟を決める。
「先輩、待ってたッス。話があるけど、ちょっといいッスか?」
「あのさ、今度の日曜ヒマかな?」
俺は頭で思い描いたプランを実行するための誘いを告げる。
「えっ?あ、あぁ、一応ヒマッスけど?」
チエは自分の質問に質問で返されたからか、少し戸惑って答える。
「あ、あのさ、もしよかったらだけど、デートしない?」
自分で言っておきながら、デートという単語を使ったことに後悔する。やっぱり、遊びに行かない?とかにした方がよかっただろうか?
「えっ、デ、デートッスか?」
「うん、嫌ならいいけど…」
やっぱり迷惑だっただろうか?チエは少し考えてから答える。
「…それじゃ、お供させて頂くッス!」
「よかった。それじゃ今度の日曜な」
「はい、楽しみにしてるッス」
よかった、断られたらどうしようかと思っていたところだった。
「あぁ、そういえば、俺に話があるとか言ってなかった?」
チエは苦笑しながら
「それは、そのときにでも言うッスよ。それじゃセンパイ、さよならッス」
家の近くまで送ろうか、と言おうとも思ったが、それすら言う暇もなくチエは帰ってしまった。
結局、話とは何だったんだろう?考えると余計気になった。
今じゃなくていいということは、そんなに重要なことではなかったのだろうか?
とりあえず俺は疑問を頭から払いのけて、俺の今までの人生の少ない経験から日曜のデートプランを考える。河野貴明、一世一代の大勝負だ。
デート当日、俺は目覚まし時計にたたき起こされる。正直、昨日はなかなか眠れなかった。
俺は、いろいろとプランを練った結果、結局無難に映画に行くことに決めたのだった。
家から少し遠いが駅前で昼頃に待ち合わせをした。
俺が、いつもより念入りに鏡を見て、着ていく服やら髪型やらを試行錯誤しながら悩んいると、家を出ようとした時間に遅れてしまい、俺が着いた頃には、すでにチエは来ていた。
しまった、絶対にチエより早く来ようと思ってたのに…
それでも彼女は怒ることなく「センパイ遅いッスよ〜」とだけ言って笑った。
そんな何気ないことが、とても嬉しかった。俺は、改めて彼女が好きなんだなと感じた。
俺たちは駅前の映画館に入る。見る映画はもう決めてある。
内容は、結ばれるはずのない二人が障害を乗り越えて幸せになるという、非常にありきたりなものだった。
でも、俺はまるで今の自分みたいだな、と映画の主人公に自分を当てはめて見ていた。そう考えると、なんだか無性に切ない気持ちになった。チエはこの映画を見てどんな風に感じているのだろう。そんな事を思い映画館を出る。
「うぅ…よかったッスね〜、あの二人…最後は幸せになれて」
あれ、チエ泣いてる?それを見て、俺は素直に可愛いと思った。そっとハンカチを差し出す。
「グスッ…センパイ、ありがとッス」
「ホントいい映画だったよな」
「アタシもあんな風に幸せになれたらな…」
きっとなれるさ…と俺は心の中で呟いた。
「…センパイ、手ぇつないでいいッスか?」
チエが少し照れながら俺の顔をのぞき込み聞いてくる。
「あぁ」
そんなに可愛い顔をされて聞かれると断る理由なんてどこにもなかった。
俺が手を差し出すと、ぎこちなくチエの手が絡んでくる。
「アハッ、何か恋人みたいッスね〜」
チエの手は思っていたよりも、ずっと小さくとても暖かかった。
手をつなぐってこんなに暖かいものだったかな…
俺は、そう思い、それはとても幸せなコトだと思った。
俺たちは、手をつないだまましばらく街を歩いた。
ふと、つないでいた手が引っ張られる。いや、チエが立ち止まったのか。
チエはいろいろな小物を売っている露店を眺めていた。
「なにを見てるの?」
「ん〜これッス」
チエが見ていたのは安っぽいファッションリングだった。
「センパイ、悪いんスけど、これ買ってもらえませんか?」
チエは申し訳なさそうに頼んできた。それ自体はシンプルな指輪で値段も3ケタほどだった。
「いいけど、こんな安っぽいのでいいの?よかったら、もっといいヤツを…」
「今のアタシには、これで十分ッスよ…」
そう言って笑ったチエの顔はなんだか寂しそうに見えた。
俺は露店の兄ちゃんに金を払い、チエに指輪を渡す。
「センパイ、ありがとッス!」
そう言ってチエは指輪を大事そうにポケットにしまった。
「あれ?つけないの?」
「これは、お守りみたいなもんスから」
「…?」
どういうことだろうか?まぁチエがそれでいいならいいけど…
俺たちは、ずっと手をつないだまま帰り道をあるいた。辺りは真っ赤に染まりかけ二人の影が長く伸びている。
「センパイ、この前言いそびれた話があるんスけど、いいッスか?」
不意にチエが切りだす。
「真面目な話?」
「大マジッス!」
チエがこぶしを握りしめて言う。よっぽど大事な話なんだろうな。
「なら、どこか落ちつく所で話そうか」
俺たちは、いつもの公園へと向かった。
293 :
夏の人:05/02/05 01:16:57 ID:XKZnGqQ6
いつも読んでくれる皆様ありがとうございます。
やっぱり何らかの感想が返ってくると嬉しいですね。まだまだがんばります。
それはそうとエロスが書けませんヽ('д´)ノ
>>293 いつも読ませてもらっています。
他の方は、どう思ってるか分かりませんが、
エロはムリに入れなくてもいいのではないでしょうか?
ほのぼのと終わらせるのもアリかと。
次回を楽しみにお待ちしています。
>>293 「無理」に挿れるぐらいなら無い方がよいと思われ。
(゚∀゚)よっち!よっち!
296 :
名無しさんだよもん:05/02/05 01:41:09 ID:g8f4v0w0
>295
うまい!
山田(ちゃる)君
座布団全部持っていきなさい!
(やばッ!?)
っていうか口の中のマーガリンもやばッ!?
あわてて引き抜き、尻の穴に力を籠める。っはー、危うし危うし。ちょっと鼻からマーガリン。
「……。」
余韻に浸ってるところ悪いんだけど、ひっくり返さないと行けないのでちょっとひっくり返しますよ?
しっとりからじっとりにかわった腰周りを掴むと、怯えたようにこちらを見た。
「あ、あかん、今、すごい……とにかくあかん……」
ぐっっと親指を押し込むと、彼女を苦痛一歩手前の快楽が襲った。
『ひぃッ!?』っと声をあげると両腕で顔を隠してしまった。自分の声にビックリしたんだろう。
いまなら手で突っ張る事も出来ない。えいやっ! ころりとうつぶせに転がすと膝を立たせた。
「……何で黙ってるん?」
マーガリンに言ってくれ。
「怖い」
後で叱っとく。
「なー?」
なーなー。
「お願い……何でもえぇから喋ってぇ……ほんとに怖いねん!」
くるりとこちらを振り向くのを合図に、たぱりと口の中のものを空けた。目標は
「何なん!? いっ今の何なん?」
菊一文字!!
下半身を覆う生暖かい液体に疑問や不審より先に唖然とする彼女。
初めてって訳でも……さすがにマーガリンは初めてか。
もともとぐしょぐしょだったところに油が加わってもう訳のわからない状態に。いやらしいのは確か。
窄まりに視線を感じ、にもご理解いただけたようだ。
「……するん?」
「意地悪だろ?」
こくん、とうなずくと潤んだ目でじっと見上げてくる。ごめんいじめっこで。
口の中に残ったマーガリンをかき集めて舌の上に。
さっきから両手で粘土ヨロシク捏ねまくられているおしりを舐める。
「ふゎ」
学校ではなかなか聞く事の出来ないぽやーんとした声。今日はてんこ盛りに聞いてるなぁ。
お尻に垂らされたマーガリンも混ぜ合わせ、ようやく目的地へ出発する。突貫でありますよー!!
んー。少々ターゲットが見づらいでありますよ。タカくんまいっちんぐ。
斬首を待つ罪人のポーズと言ったら物騒なんだけど、まさにそんな感じの彼女の足の間に割り込む。
自分の膝を使って無理やり大きく開かせる。同時に両手でお尻を思い切り広げる。
「――! 嫌や嫌やいやいやいやいゃーぁ!!」
視界良好。性欲をもてあます。ってさっきやったよそれは。
ちゅう
「変態変態変態、貴明のへんたいー!!」
よし、元気元気。このままディープキスに移行します。
肉の輪を潜り抜けてむわっとする空洞へ入り込む舌先。
俺以外の他人どころか、自分でさえも触れた事のない場所。綺麗は汚い、汚いは綺麗。
舌を中で一回転させてつぽりと抜く。何事にも段階と言うものがあってな。
ぎとぎとぬるぬるで丁度良くなったそこに指を添える。ちらと顔色を窺ってみる。
覚悟は決まったらしく、何かを期待するような目で見つめてくるだけだ。よし。本気で嫌なわけじゃない。
以前から何度も悪戯したかいがあってか、中指はすんなり飲み込まれていった。
「……ん」
「するけど、本当に、本気で嫌なら言ってくれよ?」
「……」
ぷい、と視線を逸らす。嫌ではない、でも恥ずかしすぎて認めることも出来ない。
じっと顔を覗き込みながら指を抜き差しする。眉間に皺。切ないのか、人差し指を噛んでいた。
中指の腹で窄まりを内側から持ち上げ、親指でほぐす。丹念に、飽きるほど繰り返す。
いや、何時間、何日だって続けられるかも。飽きることなんて無い。その顔が見ていたいよ。
やがて油脂特有のレモン色の泡が立ち始める頃には、人差し指2本で余裕があった……。
バ ー ル の よ う な も の ー !!
……定期ageみたいなもんだから気にしないで。こっちもいじってるだけでやらかしそうなんですよ!!
ゴムの具合を見てみる。まだ一度も自分で触っていないにも関わらず、ぴったり密着しズレは無かった。
指を引き抜いても、窄まり……いや、穴は閉じず、呼吸に合わせて蠢いている。
時折ひくり、ひくりと痙攣しているのは、やっぱり彼女も感じているからだろう。
ひとつ上の穴からは、ひっきりなしに愛液が湧き出ている。
実はその上の穴からも何か滲んでるけど無視。漢は細かい事気にしない!! 待ってるにょう♪
「いつものポーズ、やって?」
「……ん」
どういったら分るだろう? 肘と膝を使った四つんばいから肩と爪先をつかった体勢へ。
顔の前でクッションを抱えてもらい、膝を突っ張った状態で前に倒れてもらう。
ひらがなの『へ』の字に近い。この状態にするとすんなり入ると言うのに最近気付いた。
初めてお願いした時はぺちぺち蹴られたんだが。最近は良く見ると口元が緩んでいる。
「じゃあ」
「う……ん。ん!? うふゎッ!! あぁあ゛ん゛っあ――― !!」
亀頭が肉の輪を潜り抜けると後は笑えるくらいすんなり入った。
彼女にしてみればそうではなかったらしく、一瞬で床に水玉模様を描いていた。
よく聞くと『ぁ-』と声を出し続けている。壊してしまいそうな予感に暗い悦びを感じる。さあ、続けよう。
粘膜を傷つけないように、いや、肉の輪がしごき上げる感覚を楽しむ為にゆっくり引き抜く。
いやいやをするようにクッションに額をこすりつけている。感情が爆発して涙が止められないのか、
クッションは湿った音を立てていた。俺がそうさせたと思うと、我慢が効かなくなりそうだった。
一度、それに負けたことがある。粘膜が傷つきやすいと言う事はその時文字通り痛いくらい思い知った。
顎の具合が落ち着いてもしばらく彼女は曲げたヘソをなおしてくれなくって。
あんな思いはさせたくないし、したくない。欲望に忠実な行為こそ、思いやりがいるんだろうな。
だから雄二に借りたDVDみたいには出来ないし、したいとも思わなくなった。
めちめちと肉の輪がめくれあがってくるのを眺める。めくれあがるのと同じ時間をかけて押し込む。
普通にしてるんだったら指とかしゃぶってもらうのにな。今回は無理だ。つーか嫌だ。
だらしなく開いた彼女の唇を見ながらそんな事を思う……ん?
もにょもにょと唇が動きうわ言めいたものを口にしているのに気付いた。
覆いかぶさるように口元に耳を近づける。
「たかぁーきぃー。たかぁーきぃー。すきぃすきぃーめっちゃすきー」
一瞬で持ってかれた。『言葉責め』ってのとは違うかもだけど、昇り詰めた。
体が強張り、お尻の中で角度が激変する。
「たかーあぁあッ!! ふああッ!! あ――――――――ッ!!」
肉の輪に噛み締められた瞬間、今まで言わずに置いといた言葉が思わず漏れた。
「る゛ッり゛っ」
瑠璃ちゃん……
荒い息の音だけが響く。二人とも暫く動かなかった。じゃないや、動けなかった。気持ちよすぎて。
ずっと抱きしめていたいんだけど、そこはそれ現実は非情。
ジャパニーズジェントルメンシッダーンプリーズ!!
しおしおしおふみゅーん……ってヤバイ、ゴムが外れる!? 予兆を感じた瞬間に引き抜く。
慌てたせいで少し勢いがついてしまい、瑠璃ちゃんの中のさざなみが一瞬荒れる。
それをきっかけに瑠璃ちゃんも現実に戻ってきた。
「……何時から気付いてたん?」
行為中のそれとはまた違った恥ずかしさに襲われ、そむけた顔を真っ赤にしていた。
「実は最初から」
「何で黙ってたん?」
それはこっちが訊きたいくらいで。
あんまり必死に珊瑚ちゃんのフリをするものだから、口にはすまい、すまいと思ってた。
というか心の中でも極力瑠璃ちゃんって使わなかったくらいだ。逆に訊くよ。何でさ?
「だって……」
「だって何や……」
「だってだってやねんもーん!!」
そんなんでわかるか――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!
全ては我等、アナルファックの為に!!
AF団の皆様、僕は元気に生きてます。クソ婆ぁの影から見守っててくださいね。
えー。そして珊瑚ファンの皆様。
騙しててごめんなさい。お詫びに家に来て俺の妹(脳内)をファックしていいぞ。
とは言えところどころに伏線……というかあからさまに
『気付いてー!!』ってのをちりばめたつもりなんですが。
ここまで読まれた方はもう一度最初から読んでいただければ分るかも。分っかんねぇかも。
だって略1>49-51
だって略2>118-120
だって略3>178-181
だって略4>252-254
だって略5>281-283
だって略6>297-300(今回です)
実はまだまだ続きます。次回は多分エロス無しで。次々回には在るかも。
さて、今日は大事な営業会議だよ!? お休みしましょうそうしましょう♪
今宵やらないか
>284 というわけで珊瑚SSではないんです。瑠璃AFSSなんです。お詫びに家に(゚w゚)
>296 IDが(゚w゚)
十尻衆の中の人ですか?
懐かしいな。
>>301 乙GJ
読んでて久々に彼女とえちしたくなった(´・ω・`)
でも無理なんで脳内妹借りとく。
>>301 オチもよかったっす!
AF団か、何もかも懐かしい
と言うにはまだ早い!!
>>301 久しいなAF団!
かくの如く再び相まみえる日が来ようとは!
双子の導きに感謝しようぞ。
ああしかし、よもや尻で純愛を知るとはおもわなんだ。
尻をいじられいじらしさを知る、佳きかな。
それが、おしりの小さな女の子、であればなおのこと。
ううむ、佳きかな、佳きかな。
AF団だとォォォォッッッッ!!!! (ドッギャァァァァァァン!!!!!!!!)
貴様ッ!やりおるなッ!!(ドドドドドドドドドド!!!!)
「〜♪ 〜♪」
「瑠璃様、ご機嫌ですね」
私は朝食の仕度の手を休めると、鼻歌を歌いながら今はウインナーを炒めている瑠璃様に声をかける。
こうして一緒のキッチンに立てることが素直に嬉しいです。
「えっ、ご、ご機嫌とちゃう。あ、いや、さんちゃんのお弁当を作ってるんやもん、楽しいに決まっとる」
「ふふ、そうですか」
「そ、そや。だって、ウチ、さんちゃんとウチの分しか作っとらへんもん」
「でも瑠璃様と珊瑚様の分にしてはいくらか作りすぎのような気がするのですが・・・」
今までに出来たお弁当のおかず、珊瑚様と瑠璃様の分でしたらその半分くらいで良いはずなのですから。
「そ、そやな。しゃ、しゃあないから貴明にでもくれてやるか。余らせるんももったいないしな」
赤くなりながら言う瑠璃様。素直じゃないけどとっても素直です。
ん〜、ちょっといじわるをしてみたり・・・
「でしたら朝食にお出ししたらよろしいのではないでしょうか」
「え、あ、で、でも、朝ご飯、イルファが作ってくれてるやんか。さんちゃん、そんなに食べられへんよ。
そ、それにさんちゃんも、お弁当貴明も一緒がええって言うに決まっとる」
予想道理慌てて弁解する瑠璃様。
こういう時の瑠璃様も可愛らしいと思ってしまう私は、好きな子をいじめたくなるという話も今なら信じられます。
珊瑚様も、の”も”の意味を指摘したらもっと慌てるのだろうと考えると少しゾクゾクしてしまうのでした。
「なぁさんちゃん。お弁当、貴明のもあったほうがええか?」
「うん〜」
「さんちゃんが言うならしゃあないな」
半分寝ぼけてるような珊瑚様に理由を作ってもらって、瑠璃様は貴明さんの分のご飯をおにぎりにしてるところです。
どうにか用意したタッパーは瑠璃様のお弁当箱より大きいのですがおかずで一杯になってますから。
「貴明のお弁当箱も買わなあかんなぁ。毎日おにぎりじゃ手の皮分厚くなるう」
「うん。じゃあ今日帰ったらみんなで買いにいこ〜」
氷水で手を冷やした後、熱いご飯を握りながら言う瑠璃様。
ちなみに『ラップを敷いてしゃもじで形を整えては』というと『そんなんおにぎりとちゃう』なんていういじらしい言葉を返してくださいました。
それはそれとして、これからも貴明さんの分までお弁当を作ることは決定事項なのですね。つい苦笑が漏れてしまいました。
「さ、さんちゃんが貴明一緒がよさそうやから、仕方なくや。そ、それだけなんやで」
「私は何も言ってませんよ?」
「うぅ〜」
私の漏れた苦笑の意味を正確に受け取った瑠璃様がまたも弁解。本当に可愛らしい。
珊瑚様はわけのわからない顔をしていましたが、3人でお弁当を食べられるということにすぐに笑顔になっていました。
その後、朝食を終え熱の取れたお弁当をしまい学校に向かう瑠璃様と珊瑚様を見送りました。
『これくらいで足りるかな』とか『もっとあったほうがええかな』とか真剣に悩みながらおにぎりを握ってたほどなのに、瑠璃様ったらほんとに素直じゃないんですから。
「みんなして何見てるん?」
今日の夕食の仕度は瑠璃様の担当です。
瑠璃様が仕度をしている間、私は珊瑚様と貴明さんに私の瑠璃様コレクションを披露していたのですが、ちょうどいいタイミングで瑠璃様がこちらに顔を出してきました。が・・・
「イ、イ、イルファやなーっ。こんなんするの、イルファしかおらんーっ」
「はい。今朝、瑠璃様が楽しそうにお弁当を作っていらっしゃる場面、しっかりと隠しカメラで収めさせていただきました」
DVDにもばっちり編集しましたから。
「み、見るな見るな見るなーっ」
思いっ切り貴明さんを蹴っ飛ばしてしまわれました。
「た、貴明さん、大丈夫ですか?」
貴明さんの側に急ぐと、完全に白目をむいていました。
明日は、私が貴明さんに朝食を御馳走することになるかもしれません。
「イールーファー。カメラ出しぃ」
隠しカメラは全部取り上げられてしまいました。また珊瑚様にお願いしなくてはいけません。
完
>>267 ありがとうございます。
そう言って貰えて嬉しいです。
>>310GJ!GJ!
うおっリアルタイムでみてしまった。週末だからうp祭の予感。
イルファは何でも口に出してしまうタイプだな
イルファ視点ってのが新鮮で(・∀・)イイ!!
>>イルファ様
夜の分の映像データをください。
>>315 言われまくりだYO・・・;
っつか、黒n(ゴホゴホッ!)
317 :
黒の者:05/02/05 19:09:10 ID:LimCICkd
何か用ですか?(ぁ
>>310 今回もGJ!
堪能しました。
ラップ使わないで自分の手で握る
瑠璃ちゃん…イイネ(*゚∀゚)=3
伝説のコテハンのおまいも
様とかsとか付けてたなぁと。
>>316 ん?お前さん糞コテじゃなかったのか?
まあいいか。
まぁ、余談だが
ネット上のいたる所で
>>317を見かけるんだが。
漏れの気のせいか?
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となる。降って湧いた馬鹿げたお見合い話をなんとかしようと父親に
直訴にいった雄二だが、父親は取りつく島も無い。父親の元を飛び出した雄二は郁乃のところにいくと叫ん
だ。
「郁乃ちゃん! 俺と付き合ってくれ!」
へ?(・ω・)?
第一話から第五話はこちらで。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
そうして晴れて?あたしたちは恋人同士?になったわけだけど、翌日になっても雄二さんの態度が変わる
ことは無かった。まるであれはあたしの見た夢だったとでも言わんばかりに……。ただ変わったことと言え
ば、以前より少し優しくなった、とは言ってもあたしにではなくて、雰囲気が、だ。
恋人同士というのはこういうものなのだろうか? 少なくとも姉と貴明を見ているとそうとは思えない。二人
は暇さえあれば頻繁にスキンシップを持っている。それは手を繋いだりするはっきりしたものから、すれ違い
ざまにそっと腕に触れたりする程度のものまで、色々だ。
では雄二さんのあれはなんだったのか?
冗談? 冗談ではないと思う。なんでかっていうと、あのときの雄二さんはとても真剣だったからだ。そう
じゃなかったらいくら勢いに押されたとは言え、はい、だなんて答えなかっただろう。でも、ならどうしてあたし
たちの関係に変化がないのだろう?
そんな不安を郁乃が抱いているなどとは露知らず、雄二はただ車椅子が揺れないように気をつけて、そし
て学校の話や、聞きかじったような雑学なんかを、面白おかしく話している。
「――雄二さん、あたしたち付き合ってるんですか?」
あんまり思い悩むのも郁乃の性格ではなかったので率直に聞いてみる。
「そうだよ」
優しく雄二は応じる。しかし、それだけだ。
もしこれが貴明だったら、言葉とともに優しく髪に触れただろうと郁乃は思う。貴明がそんな風に優しく愛佳
の髪に触れるのを何度も見かけている。
では何が違うのだろう?
そして根本的に違うことに思い当たる。
郁乃は雄二から一方的に付き合ってることにされて、最初は困惑したものの、別に嫌でなかったので、ま
あいいか、とこの状態に甘んじている。雄二のことを求めてそうなったわけではない。そしてまた雄二も郁乃
に別に何も求めなかったし、関係は以前と何も変わらなかった。だからこそ郁乃はこの関係を好ましく思って
いる。
だが愛佳と貴明は違う。あの二人はお互いでなくてはならない。貴明は愛佳でなければあんなふうに髪に
触れたりしないだろうし、愛佳は貴明でなければ髪に触れることなんて許さないだろう。二人は求め合い、
そして柔らかにそれに応えあっている。
雄二さんはあたしを求めたのではないのか?
根本的に雄二は郁乃に触れようともしない。
郁乃は首を傾げるしかない。
「雄二さんはあたしのこと好きなんですか?」
よく分からなかったので聞くしかない。
「そうだよ。郁乃ちゃんは俺のこと嫌いかい?」
「……嫌いじゃないです」
その聞き方は卑怯だと思った。
もし「好きかい?」と聞かれれば郁乃は答えに詰まっただろう。だが決して雄二のことは嫌いではないのだ
から、嫌いかと聞かれれば否定するしかない。
それに、なにか雄二の好きだという言葉に実感が湧かないのだ。何かあたしに好かれるようなところが
あっただろうか?
「なら、それでいいじゃないか」
本当にそれでいいのだろうか?
よく分からなかったが、あまり思い悩むことではないと思って、郁乃は考えるのを止めた。
「向坂くん、結局あの話は?」
休み時間につつつと愛佳が雄二の傍に寄ってきた。
ふるふると雄二は横に首を振る。
愛佳の中にあった疑問と不安がさらに大きくなる。
「それじゃどうして郁乃にあんなこと言ったんですか?」
「悪いとは思ってる。あの時は俺はどうにかしてた」
それは言われなくても愛佳にだって分かっていた。あの時、明らかに雄二は疲労しきっていたし、正常な
判断力を保っているようには思えなかった。しかしそれはもうそういうことで時間は進んでしまっている。
「決意表明みたいなもんなんだ。自分自身に対する」
「でもそうやって向坂くんは郁乃にウソをついています」
「分かってる。認める、俺は卑怯な人間だよ。委員ちょ。郁乃ちゃんにこのことを言うかい? 今は嫌いじゃな
いと言ってくれてるけど、愛想を尽かしてくれるかも知れないぜ」
苦々しく雄二は言う。しかし雄二がそれを望んでいないことはその口調からも明らかだ。
愛佳の中の疑惑のひとつが確信に変わる。
「いいえ、そんなことはしません。向坂くん自身がどう思ってるかは知りませんけど、あたしは向坂くんが郁
乃のこと好きになってるって思ってますから、あたしは向坂くんが郁乃を利用するのを利用します」
思わず雄二は苦笑する。
それは愛佳に心の内を見透かされたからなのか、それとも愛佳の勘違いを笑ったのか、雄二自身にも分
からなかった。
「貴明は委員ちょのそういう側面知ってるのかね……」
「知ってますよ」
ふん、と愛佳が胸を張る。
「今のあたしたちには隠し事なんてありませんから」
「そりゃまったく羨ましいことで」
心の底から雄二はそう思った。
放課後になっていつものように雄二に押され、郁乃は病室に戻ってくる。そして男二人を一時的に病室か
ら追い出して郁乃の着替えをすると、愛佳がそそくさと自分の荷物をまとめた。
「郁乃、今日はお姉ちゃんもう帰るから」
「ん、分かった」
「向坂くんは置いてくから」
「え……」
思わず戸惑う。そう愛佳に言われるまで気付かなかった。
雄二と付き合うことになってから、一度も二人きりになったことなどない。いや、元々郁乃は雄二と二人き
りになったことが無い。いつも傍には愛佳と貴明がいた。
「ちょっと」
「じゃあね、ごゆっくり〜」
手を振って愛佳は扉の向こうに出て行ってしまう。
たっぷりと息をつくだけの時間があって、扉が開くと頭をかきながら雄二が入ってきた。
「やれやれ、気を使われちまったぜ」
「いいんじゃないですか、姉も最近貴明と二人きりになれなかったみたいですし」
「ああ、そうだな。帰りもいつも俺が引っ付いちまってたし」
そう言いながら雄二はベッドの脇の椅子に座る。
「さて、なにかご要望はございますか? お嬢様」
「…………」
雄二を見る。最近いつも郁乃を見るときの優しい笑み。でもそれは穏やか過ぎる。
郁乃は左手を伸ばした。
「……手」
「ん?」
「手に触れてください」
よく分からない。そもそもこういうことを言うこと自体がおかしいのではないかと思う。
でもこれが世に言う恋愛だというのなら、ひとまず形が欲しいと郁乃は思った。
雄二の両手が優しく郁乃の手を包み込む。暖かく、少しごつごつした男の人の手。
その感触を郁乃は指先で確かめる。
穏やかで、優しくて、心地よい。
――けど、それだけだ。
以前郁乃自身が貴明に言った言葉がある。
――恋なんて性欲でしょ。
それが間違っていたとは郁乃は思わない。これは何かが違う。
「雄二さん、本当にあたしのこと好きなんですか?」
朝にも聞いたことをまた聞いてしまう。
「なんだよ。信用無いなあ。郁乃ちゃんのこと好きだよ」
雄二の目はウソは言っていない。けど、それはやはり穏やか過ぎる。
優しく、――見下ろされているような錯覚。
「あたしは雄二さんにとっての何ですか?」
「彼女じゃダメかい?」
「なら――」
郁乃はじっと雄二の目を見つめた。そこに現れるどんな変化も見逃さないようにしよう。
「――キスしてください」
その言葉は雄二の臓腑を深く抉る。
まさかそんなことを言われるとは思いもしていなかったのだ。
郁乃が自分に寄せるのは信頼であって、恋愛感情ではないと雄二は知っているつもりだった。それはこの
みが貴明に抱く感情にどこか似ている。寄り添い、しかし性的でないもの。だからそれに安心しきっていた。
だが今郁乃は鋭くそんな雄二の甘えに切り込んできた。
雄二は分かっている。自分が郁乃を見合いに対する自分の決意表明として、そして切り札として利用した
ことを。しかしそれが何のためかと問われれば、まさしく郁乃との時間を守るためなのだ。
この娘の信頼に応えたいということと、この娘の想いに応えたいということにどれほどの違いがあろう?
だがしかし、これは違う。
今郁乃が求めてきたのは、付き合ってるという言葉だけの関係に実を持たせるためだ。郁乃自身が本当
に雄二からのキスを求めているわけではない。
震える手を郁乃の頬に添えた。
郁乃の瞳が伏せられる。
――いいのか、俺。これでいいのか?
ぐるぐると頭の中が回る。郁乃の顔が近づいてくる。いいや、雄二が顔を近づけている。
お互いの距離が近づくにつれて、雄二は心が重くなるのを感じる。そして吐息すらかかりそうな距離になっ
たところで雄二はその重さに降参した。
顔を離す、そして手を離す。
郁乃の目が開く。じっと雄二を見つめている。
「やっぱり俺たちにはまだ早いよ」
微笑んで言った。しかし――
「嘘吐き」
郁乃がじっと雄二の顔を見つめたままで言った。
「――え?」
郁乃の目は冷たい。これまで雄二に向けたどんな視線とも違う。
――拒絶。
「嘘吐きって言ったの。聞こえなかったの? もう一度言ってあげる。――嘘吐き」
郁乃は全身で拒絶を示す。いきなり示されたそれに雄二はどうしていいか分からない。
「郁乃ちゃん……」
「どうせ姉の差し金かなんかなんでしょう! 本当はあたしのことなんか好きじゃないくせに、楽しかった?
楽しかったんでしょ? 世間知らずな娘を騙して、自分に振り向かせるゲーム、違う?」
まったくの見当外れ。郁乃の言うことは間違っている。違うのだが、決してそのすべてが間違っていると断
言できるだろうか?
「違う……」
「違わないわよ。アンタの態度を見てれば分からないわけないじゃない。あたしにどんなに優しくしても、そ
れはただ優しいだけだわ。あたしのご機嫌伺いに来る親戚連中と一緒。そんなのは表向きの優しさの見せ
掛け。あたしみたいな不具者を同情して見下ろしてるだけなのよ」
言葉が雄二を切り裂く。
雄二はその口を塞いでしまいたいと思った。
自分が罵られるのならいくらでも耐えられる。だが、それらの言葉は雄二に向けられていると同時に、郁乃
自身にも振り下ろされている。
「違う……」
「違う、違う、違う、違う、それしか言えないわけ? 本当に違うのなら、あたしのこと好きなら、キスしたいと
か、セックスしたいとか思うんじゃないの? それともこんな寝たきりの女は汚らしい? アンタはどういう目
であたしを見てるのよ!」
「違う……」
「それ以外のことを言ってみたらどうなのよ!」
――初めて雄二はその厳しい言葉を投げかける唇を奪いたいと――
「違うっ!」
――本気で思った。
「違わ――」
言いかけた郁乃の唇を奪う。最初は強く、そして優しく。驚きで開かれた郁乃の目が伏せられた――。
一話だけの郁乃編はこれにて一時閉幕。
次回からは再び雄二編に戻りたいと思います。(・ω・)ゝ
雄二キュンは優しいねぇ、でも郁乃は相変わらずアレだ。
だ が そ れ が い い ! !
(・∀・)イイ!!
ほんと面白いっす。続き期待してます。
>322
あらすじを書くのっていいね。
いくつかSS読んでるから、どの話がどこまで進んでるかごっちゃになったりするのでありがたい。
「ねぇ、アナタって恋愛ってそたことあるかしら?」
「そうだな・・・・・って!!いきなりなんなんだよその質問は!?」
俺たちはタマ姉たちの買い物をベンチに座って待っていたら、柳瀬さんはとんでもないことを聞いてきた。
「だから、アナタは恋愛したことあるかって聞いているの」
この質問に正直に答えた方がいいのか、適当なことを言うのがいいのか。
「そりゃ、俺だって小さかった頃には好きな子だっていたけどさ・・・・」
そんな曖昧な答えを返すと、彼女は不思議そうな顔をして。
「でも、アナタの回りって女性が多いじゃないの?」
「だから〜、このみとタマ姉はただの幼馴染だって何回も・・・・」
「違うわよ、そうね・・・例を上げるとしたら
あなたのクラスの委員長さんとか姫百合さん姉妹とか・・・・あとイルファさん」
そうすると彼女の口から俺の知っている名前が続けて出てきた。
「彼女達とはちょっと色々あって親しくなっただけだって、しかもイルファさんはメイドロボだろ」
「でも皆、良い人たちだったわよ。それにイルファさんだって料理は上手だし綺麗だし」
・・・・おそらくこのまま話し合っていても埒が明かない。ここは話の方向を変えてみるか。
「でも、柳瀬さんだって小さな頃とかに好きな男の子だっていただろ?」
「いないわよ、そんな人。だからアナタに聞いてるんじゃない」
・・・・今頃めずらしいと言うか、天然記念物のような子だな。
「私はずっと昔から、九条院にいたからあまり男の子と会って話をする機会とかなかったから」
そういえば九条院は女子高、それでは確かに恋愛するのも難しいな。
「でもさ、こういうのって異性に聞いてもあまり参考にならない気がするんだけど
だから、もっと身近な友達・・・・工藤さんとかに聞いてみたら」
そう聞くと彼女は怒ったような口調で。
「玲於奈たちにそんな恥ずかしいこと聞けるわけないじゃないの!!」
「じゃ、なんで俺に聞いてるのさ、恥ずかしくないの?」
すると彼女はハッとした顔をして。
「馬鹿・・・・・・恥ずかしいに決まってるじゃないの!!」
明らかに言われて気づいたよな、でもなんでだろうか?
「タカ君、お待たせ〜、買い物終わったよ〜」
小さな買い物袋を持ったこのみが俺の方へ駆け寄ってきた。
「タカ君と柳瀬さんはずっとそこに座ってたの?」
このみは俺たちを見てそう聞いてきた。
「あぁ、俺の方が先に座ってたけどな」
そう言うと、後ろに立っていた工藤さんが
「・・・・なんていうか、その・・・」
「まるで恋人同士見たいね」
工藤さんが話している途中でタマ姉がそう言ってきた
すると柳瀬さんの顔は見る見るうちに赤くなっていった。
「なっ・・・!!玲於奈もお姉様も何を言っているの!?そんな私は別に・・・・」
「そ、そうだよ!!俺たちは別にそんなんじゃないし・・・!!」
・・・・どうして俺はこんなに慌てているのだ?別にホントに何もないはずなのに。
「お〜い貴明。おっ、姉貴たちの買い物も終わったのか」
CDを買いに行っていた雄二が帰ってきた。
「あら、どうしてお前ら二人の顔はそんなに赤くなってんだ?」
俺と柳瀬さんの顔を見て、不思議そうに聞いてきた。
「べ、別に何もねぇよ!!もう、とっとと帰るぞ」
そうして俺は体の向きを変えて歩き出した。
「あっ、待ってよタカ君」
「まったく、相変わらずタカ坊も素直じゃないんだから」
そう言って、タマ姉たちも俺についてきた。
「それじゃ、アナタ達また明日ね」
そうして彼女達と別れた。
それにしても柳瀬さんがあんな事を聞いてくるなんて思ってもなかった
でも、何故その事を気にしている俺がいるのだろうか。
「おはよ〜タカ君それじゃ学校へ行くでありますよ」
いつものようにこのみがやってきて、俺達は学校へ行く。
途中、タマ姉と雄二と合流し学校へ到着した
「あっ、今日は昼屋上に来なくていいからね」
それぞれの教室に別れる前にタマ姉はそういった。まぁいつも一緒な訳じゃないし。
「貴明さん、おはようございます」
教室に入ると草壁さんが声をかけてきた。
「あぁ、おはよ」
「なにか元気がありませんね?悩みごとですか」
「悩み事・・・なのか、どうかもわからない状態なのかな」
俺は昨日のことがまだ気になっていた
「貴明さん、私は思うんです。人との出会いは運命なんだと思います。
どんな些細な出会いも、忘れられないほどの衝撃的な出会いも全部。
その出会いから、何をするか、何を言うかで運命は変わっていきます
でも、その行動には不安や悩み、焦りなどで思うようにならないことだってあります。
そうして、自分の言いたいことしたいことが出来ずに後悔するんですよね、いつも。
でもほんの少しの勇気を振り絞れば今後の運命なんていくらでも変えられるんですよ
だから、貴明さんも勇気を出して、自分の思うことや言いたいことを言ってみたらどうですか?
そうすれば、今の自分が見えてくる・・・・私はそう思います」
話をする草壁さんを見ていると、話を言い終えたのか
「すいません、説教みたいなこと言ってしまって・・・・」
「いや・・・・なんか草壁さんの話を聞いていると少し楽になった気がする」
「そんな、私なんかが貴明さんの役に立ててよかったです」
そうして、草壁さんは自分の席に戻っていった。
「頑張って下さいね。貴明さん」
そういわれ俺は荷物を持っていないほうの手を上げて反応した。
しかし・・・彼女は何故、俺が悩んだことがわかったのだろうか。
でも、そんなことはどうでもよかった。
ただ、俺の中の形を得ない答えはぼんやりとその形を表しだした。
一日空いての8話目です
私も
>>322さんのようにあらすじでも作ってみようかと思う今日この頃
でも私のSS。あらすじ作るほど内容がないんですよね。実は・・・・orz
次くらいで終わりかな?
最後にいつもながら感想下さる皆様ありがとうございます。
>>330 あなたの文章はわたしをとても面白く感じさせた素晴らしい!
あなたの話は緊張していて油断できない!
破局かハッピーエンドか全然予測できない!
あなたの雄二は男らしくて好きだ
そして郁乃はひねくれ者で自分を傷つけながら悪口を言うところが良かった
雄二が自分を大切にしてくれることを知ってるのにひどいことを言う郁乃はずるい女の子だと思ったけど
貴明と愛佳は優しいからぶつからない恋愛をしているけど
雄二と郁乃はぶつかりあってはげしい恋愛をすると思う
>>337 彼女のような令嬢との恋は波乱があって面白そう
そしてだんだん恋に落ちていくところを見るのが楽しいよ
まとめサイトがあるとうれしいな
>338
おおむねその意見には禿同なのだが
おまいはエキサイト翻訳の中の人かなんかですか?
あなたの文は、非常におもしろいIで素晴らしいです。それに感じさせます。
それは消耗しています、そして、あなたの話に対して人の警備を弛緩することがで
きません。 それは. すべてのカタストロフィーかハッピーエンドで予測できません。
あなたのYujiはりりしく、それが好きです。
そして、利益はそれを破損している間にほとんど話さないひねくれ者のsでしたか?
それは考えられましたが、Yujiが自分を評価するのを知っていますが、ひどいことを言うそれは油断のならな
い少女でした。
私は、Yujiとして極端な愛をすると考えて、それが優しいので、それが打ちつ
けない愛をしますが、あなたの認識とAiの互いを打ちつけます。
>>337 彼女のようなさんがいる愛が、問題、おもしろい局面、およびゆるやかな愛があ
るのがわかるのは、幸福です。
それであるときに、うれしくない、持って来る、サイトがあります。
新手のSSと見t
SS読めるならくらいならわざわざエキサイト翻訳使わなくても日本語わかるだろ?
エキサイト翻訳使いながらSS読んでいるならそれはそれで尊敬したい
そもそもTH2が外国で売っているとは思えないが・・・
>>330 GJ! まじで文上手いですね。
次が気になる〜
>>337 これまたGJ!
少しづつ仲良くなってってるのがいい感じです。
>>310 (*^ー゚)b グッジョブ!!
前作もよかったですが今作も良いですなぁ
ほのぼの感&ツンデレがたまりませぬ
このスレ原作と違って鬱とか鬼畜とか多いんでこういう普通の作品が来ると嬉しいです
GJ
347 :
7月文月:05/02/06 00:53:03 ID:PxwbXa+S0
皆さんがんばるなぁ・・・
僕も頑張らなきゃ。
と、言うことで容量の残っている前スレに今日もコソーリ投下。
それと読んでいただいている方、昨日と一昨日は投下できなくてすみませんでした。
忙しくて眠ってしまったもので。
毎日SS投稿する方はすごいなあ、尊敬しますホント。
ああ・・・全国の花梨ファンの皆さんパワー(ネタ)を下さいorz
多国籍SSスレに改称
仕事が一段落したので、こないだのふたSSの続きを書いてる
まだ需要があるなら、近いうちに投下しようと思うが
351 :
名無しさんだよもん:05/02/06 17:52:25 ID:f8KVMoKj0
ふたSSって?
ふたなり? 双子? 二人はプリキュア?
>350
準備して待ってます。
よろしくお願いします。
てかSS書いてないのにコテでレスすんなよ
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は微妙な恋人関係。
しかしまだ雄二のお見合い話はなんともなってないぞ。
どうなる!?
第一話から第六話はこちらで。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
さて、物語はほんの一日遡る。
父親にタンカを切ってホテルを飛び出した後、雄二は打ちひしがれた気持ちのままで長い時間見知らぬ街
をただ歩いた。深夜を過ぎた街はまだ静まり返ってはいなかったが、しかしそれも残滓のようなもので、
徐々に夜の帳が静かにすべてを覆い尽くそうとしていた。
ただ悔しかった。何の力もないこと自分が、父親の決めたことを覆せない自分が――。
自分には、郁乃との時間を守る力すらない。
いいや、結局のところそれも自分のエゴなのだ。だって郁乃との間には何の関係も無いのだから。
雄二と郁乃の関係は現在ただの友人であるに過ぎない。それも出会ってからまだ数週間も過ぎていな
い。浅い友情だ。
それにそれがただの友情であるというのなら、父親の決めた見合いに何の問題があるというのだ。婚約者
ができることが郁乃を裏切ることにはならない。別に婚約者ができたところで、郁乃との時間を問題視される
謂れは無いのだ。
では何故自分はこれほどムキになって、見合いの話を無かったことにしようとしているのか?
よく分からない――。
ただイヤなのだ。イヤだと感じるのだから仕方ない。
「くそっ!」
空き缶を蹴飛ばす。
カンッ――カラカラカラ――と、小気味のいい音を立てて空き缶が転がる。
とにかく抵抗してやると言い切った以上は、どんなことをしても抵抗してやる。
利用できるものは利用する。できることは全部やる。
それは何のためだ?
――今は郁乃ちゃんと居たいんだ。文句があるかっ!
理由なんてクソ食らえだ。
始発の鈍行に揺られていた。
とてもじゃないが、新幹線を使う気にはなれない。あれは早すぎる。
雄二は自分にまだまだ考える時間が必要だと分かっていた。
分かってはいたが、しかし一睡もしてない頭はすでにもやがかかってしまっていてまともな思考を結ぶこと
ができない。
――ガタン――ゴトン――
揺られる揺られていく。レールの上を走っていく。
自分は幸いな人間なのだと思う。なにせ走るレールがある。わざわざ未開地に自らの道を切り開いていく
必要はない。親の敷いたレールの上をただ走るだけで、それなりの人生を送ることができるだろう。当然、
途中に幾多の試練が待ち受けていることは間違いないが、進むべき方向を見失うことは無い。
それでいいのか?
これまでにもそんな疑問を持ったことがないわけではない。だが、どうせ逃げられないのだから、抵抗など
するべくもないのだからと、考えることを放棄し続けてきた。だが今、ひとりの少女の顔が雄二に考えるのを
放棄させない。
――それは恋ではない。
雄二自身何度も考えたのだ。自分は郁乃のことが好きになっているのではないのか、と。しかしその度に
答えは「ノー」だ。もちろん好ましいという感情は持っているが、それは恋愛に言うような恋ではない。貴明が
このみに対して抱いているような、手を引いてあげたいという感情。
郁乃の車椅子を押すのは自分でありたいという感情。
でもそれがどこか恋愛感情の枠に抵触していることにも雄二は気付いている。なぜならば見合いをすると
いうことが、郁乃に対する裏切りだと感じてしまっているからだ。しかしそれも妙な感情だ。郁乃に彼氏がで
きるのならば構わないと思う。むしろいいことだと思う。しかし自分にそういう人ができるのはよくない。
これってやっぱ恋じゃないよな。でも――
電車を降りて真っ先に病院に向かったのは考えがあってのことではなかった。
でも自分が見合いを断って郁乃を傍に置いておきたいと考えるのならば、――たとえそれが恋愛ではな
かったとしても――それなりの形にしてしまったほうがいい。
郁乃の病室の前には貴明がいた。
雄二を見てその目が大きく見開かれる。
「お、おい、雄二、どうしたんだよ」
「郁乃ちゃんいるか?」
貴明の返事なんて待たずに中に入ろうとする。が、貴明の手がその肩を掴んで止める。
「バカ、郁乃ちゃん着替え中だよ」
「構うか」
ガラリと扉を開ける。
貴明と同じように驚いた郁乃と愛佳の表情。それだって関係ない。
そのまま郁乃のもとに歩み寄って、その肩を掴む。
筋肉のない、骨すら細い肩。力を入れれば簡単に壊れてしまいそうだ。
まだ驚きに見開かれたままの目をじっと見つめる。
そして言った。いや、口が勝手に動いた。
「郁乃ちゃん! 俺と付き合ってくれ!」
「――え?」
呆気に取られた郁乃の表情、しかしそんなことはお構い無しだ。
「いいから! 俺と付き合ってくれ! 「はい」は?」
「あ、は、はい……」
「はいって言ったな。はいって言った! よし、それじゃ俺たちは恋人同士だ。そういうことだからな!」
形はできた。
これは恋愛ではない。だが恋をしてなければ付き合ってはならないということにはならないだろう。
付き合っていくうちに好きになっていってもいいのだから。
そのとき、雄二はそれが言い訳であることに気付いていなかった。
家に帰って真っ先に熱いシャワーを浴びる。体表から疲れが流れ落ちていくのが分かる。だが同時に芯に
残った疲れは取れない。頭痛にこめかみを押さえる。より強い刺激のある痛みが、鈍痛を消してくれる、よう
な気がする。
部屋着に着替えた雄二は疲れの残った体で姉の部屋の扉を叩いた。
「ちょっと、雄二、貴方大丈夫?」
顔色の悪さは隠しようが無い。環の部屋の床にどかりと胡坐をかく。
「……あまり大丈夫じゃねぇな。父さんは聞く耳持っちゃくれなかった」
「そう……」
それは決して予想できなかった結果ではない。むしろ妥当なところだ。環は考えていた別の手段の優先
順を頭のなかでまとめに入る。しかし外枠から埋めていくにはあまりにも時間が無い。
「そんで郁乃ちゃんと付き合うことになった」
「――はぁ!?」
その唐突の無さに環ですら呆気に取られた。
「とにかくそういう事になった。見合いを断る大義名分だ。姉貴、協力してくれ」
雄二の目は真剣だ。しかしそれでも環は納得できない。雄二が郁乃のことを大事に思っているのは分かっ
てる。が、環もそれが恋心だとはとても思えなかった。
「貴方、自分がなに言ってるのか分かってるの? そんなことしたら……」
「郁乃ちゃんに迷惑がかかるのは百も承知だ。責任は取る。元々郁乃ちゃんのことは気に入ってたんだ。好
きになれるさ」
「……あんたねぇ、ううん、いいわ。とりあえず今は寝なさい。小言は起きてからにするわ」
バカもここまでいくと見事なものね。環はもう感心すらしてしまう。小言は言ってやらないと気がすまないけ
ど……、けどそれでもその直情振りを少しだけ羨ましく思った。
「ああ、そうしてくれ」
そして雄二は自分の部屋に戻ると、ベッドの上に倒れこんで、泥のように眠った。
翌朝、環がランニングに出るはずの時間に雄二は叩き起こされた。いつもなら憤慨してしかるべき時間だ
が、昨日は夕方過ぎにはもう寝てしまっていたので睡眠は十分だった。むしろすっきりしている。
冷水で顔を洗い、居間にいくと環が書類を広げて待っていた。
「まず言っとくけど、私が調べたことはあくまで私にできる範囲よ。最善は尽くしたけど、十分といえるかどう
かは分からない。それでも分かったことはいくつかあるわ。今度のこの見合いは政略結婚の要素は確かに
あるけど、利益を生み出すのが目的というわけじゃない。結果的にはそうなるでしょうけど、その理由は違
う。向坂は先々代の時に水無瀬に大恩を受けてる。まだ向坂が政治に手を出してたころね。その具体的内
容はこの際重要じゃないから置いておいて、とにかくこの時に向坂と水無瀬には縁ができた――」
環の話す内容のほとんどは雄二にはどうでもよかった。その中で必要だった情報はひとつ。この政略結婚
は向坂、水無瀬双方の利益のためではなく、どちらの立場が上というわけでもないということだ。
「ということは、もし破談になってもどちらかが大きな被害を被るってものでもないんだな」
「利益という点においてはそういうことになるわね」
そこが一番重要だった。これで気兼ねなく断りにいけるというものだ。
「先方に電話で都合を聞いて、直接断りに行くか」
「ドンキホーテね」
それは環の考えた手段の中では最後のほうの手段だった。環はまずは双方の親類筋に連絡を取ってか
ら――と考えていたが、それでは時間がかかりすぎるのもまた確かだ。
「確かに勝算は無いさ。けど筋は通しておきたい。見合いの席で先方の顔にお茶でもぶっかけてやろうかと
思ってたんだから、それに比べりゃ紳士的さ」
「はぁ、貴方が言うと冗談に聞こえないわ」
環は頭を押さえたが、雄二は決して冗談のつもりではなかった。
「それで……、郁乃さんのことはどうするつもりなの?」
「どうもしねぇよ。いつもどおりにしとくさ」
「それってすごく不誠実よ」
「そうかもしんねえ。けど……そうしたいんだ」
「……まあ、いいわ。なるようになるでしょう」
その日の放課後、いつものように郁乃を送っていく。
そう、いつものように。
二人は付き合ってることになった。そしてそれを郁乃は穏やかに受け入れたようであった。
郁乃の着替えを終えた愛佳が荷物を持って部屋を出てくる。
「たかあきくん。帰りましょ」
「あれ、今日は早いんだな」
「んじゃ俺も――」
そう言って腰を上げた雄二に愛佳がにっこりと微笑みかける。
「向坂くんは郁乃といてあげてくださいね。せっかく恋人同士になったのに二人きりの時間が無いなんて申
し訳ないですから」
雄二は愛佳が学校で言ったことを思い出す。
――あたしは向坂くんが郁乃を利用するのを利用します。
なるほど、口実を与えてしまったということらしい。
愛佳は貴明の手を引いて、さっさと帰ってしまう。
ち、しゃあねえなあ。
雄二は少し緊張して、病室に入った。
郁乃が真剣な瞳で雄二を見つめている。その意味に、まだ彼は気付いていない。
そして彼は失策を犯し、その為に自分の気持ちに気付かざるを得なくなった。
そして――
その翌日の夕方、雄二は水無瀬家の門の前に立っていた。
向坂家に負けるとも劣らない日本家屋のその邸宅は都会の中心地からさほども離れていない場所に鎮座
していた。
チャイムを押すと、お手伝いさんと思しき女性がやってきて雄二を招き入れる。
居間に通されて、お茶を出される。ほどよく煎れられたそれに何度か口をつけた頃に、障子が開いて、和
服の男性が現れた。40台か、50台か、あごひげを蓄えて、人当たりの良さそうな笑みを浮かべている。
雄二は立ち上がって頭を下げる。
「急な話でお時間を取らせてしまって申し訳ありません」
「あー、いやいや、構いやしませんよ。さ、座ってください」
そう言って男性は雄二の向かいに座る。
「さて、向坂雄二さんですね。私は水無瀬真蔵、一応水無瀬家の当主ということになってます。本当なら君
にお会いするのは来週のことだと思っていましたが、そちらから会いたいということでしたら、こちらもお断り
する理由がありません。どういったご用件でしょう?」
「率直に言います。春乃さんとのお話、お断りさせてください」
真蔵氏の目がすっと細められた。
「ほう、うちの娘とまだ顔もあわせていないのに、ですか」
「お嬢さんに非があるわけでは当然ありません。俺、いや、私の事情です」
「ふむ、折りよく進んでいた縁談を急に断るという、その理由を聞かせてもらえますかな?」
「私が父にちゃんと伝えていなかったのがいけないのですが、私には恋人がいるんです」
「ほう、君のお父上は君に決まった人はいないようなことを言っていたが、それは君が父上にそれを伝えて
いなかったから、ということかね?」
「はい。このたびの縁談は私のいないところで進められたものです。ですから私は父のそのことを伝える機
会がなかったのです」
「――ということらしいよ。どうするかね? 春乃や」
襖がしゃっと開く。
驚いてそちらに目をやると、ひとりの少女がそこに正座していた。どことなく見覚えのある制服姿。長い髪
を後ろで高くひとまとめにしている。どこから見ても間違いの無い美少女。
紹介されるまでもない。写真で見た。水無瀬春乃だ。
「……当然ながら、納得できるものではありません」
ぴしゃりとそう言ってから、春乃は雄二に向かって頭を下げた。
「お初にお目にかかります。私、貴方の「婚約者」の水無瀬春乃と申します。以後よろしくお見知りおきを」
慌てて雄二もそちらに向き直り頭を下げる。
春乃は立ち上がり、真蔵の隣に座りなおす。
雄二は目を疑った。これが本当に自分よりも二つも年下の少女なのだろうか? ぴんと伸びた背筋、引き
締まった表情から漂う威厳は環に負けるとも劣らない。
「雄二様、私は幼い頃より貴方様の妻となるべく育てられてまいりました。雄二様がお知りになられたのが
つい先日のことだというのはお聞きしましたが、それでは私は納得がいきません。向坂の男子と水無瀬の
女子の婚姻。このお話は私共が生まれる以前より決められていたことなのです」
雄二は目に続いて耳まで疑わなくてはいけなかった。
「そ、それは知りませんでした」
「ご存知あろうがなかろうが、その約束は有効であろうと私は確信します。とはいえ、雄二様にとって急な話
だったというのは、こちらも初耳。――お父様!」
きっ、と鋭い視線が真蔵のほうに向けられた。
「いやまあ、向坂のほうもちゃんと覚えていると思ったんだよ。確かに結構な間、水無瀬には男子しか生ま
れなかった。だからお前が生まれたときにすぐさま向坂にそれとなく伝えたのだが、単純に出生の知らせと
思ったらしいんだな。それですれ違うこと十数年というワケさ」
「まったく我が父ながら……」
春乃が肩を落とす。
「最近になって向坂のほうをせっついたら、随分慌てててなあ。まあこっちも驚いたわけだが、向こうでも確
認が取れたそうで安心していたんだよ。まさか雄二君にすでに恋人がいるなんてなあ」
「冗談ではありませんよ。お父様」
そして真蔵に向けていた鋭い視線を雄二に向ける。
「雄二様。私は貴方様の「婚約者」であると確信しております。しかしながら雄二様に想い人がいらっしゃる
という事実を無理に否定しようとは思いません。ですから、もちろん今すぐその関係を清算するよう迫るつも
りも毛頭ございません」
雄二はほっと心の中で息をついた。口調こそ厳しいが、話は分かるようだ。
それにどうもこの真蔵氏は娘に頭が上がらないらしい。そういうことなら春乃とさえ話がつけばそれでなん
とかなりそうな雰囲気である。
「しかしながら、私が雄二様の妻となるべく努力してきたこの十四年の日々を無為にする気もまた毛頭ござ
いませんし、私はそれほど気が長くはありません。これまででも十分に、十二分に待ちました。その想いが
ようやく叶おうかと思いましたのに……」
その瞳が潤むのを見て、雄二は心臓が跳ね上がった。
生まれたときから定められた婚姻に従って、それを自分の想いに変え、十四年待った少女。その想いを雄
二が想像できるはずもない。
「雄二様……」
溢れそうに思えた涙は、春乃が目を伏せてじっとしているうちにどこかに消えてしまった。
「――要は雄二様を私に振り向かせてしまえばよろしいのでしょう?」
にっこりと微笑んで、しかし付け入る隙のない真剣なまなざしで春乃は雄二を見つめていた。
春乃さん萌え(゚∀゚)
雄二に協力的でちょっとお転婆なお嬢さん予定が、こんなに(俺の中で)萌えキャラになるとは。お陰でプ
ロットを随分方向転換しないといけない予感。
伏兵の出現でうまく行くかと思われた雄二と郁乃の恋愛ははてさてどうなってしまうのでしょう。
>>364 ずっと追いかけさせてもらってます。
面白いっす。
春乃さんハァハァになりそうっす。ハァハァ
OKOK!全然構わない。
それより早く次が欲しい・・・(;´Д`)
春乃さん〜
ここ最近
>>364さんの郁乃(雄二?)SSとかおりんSSを見るのが日課となってしまった。
やヴぁい、愛佳萌えのはずなのに・・・・・・。
春乃さんに感じるこの気持ちはなんだろう?
待ってたよー(・∀・)
いつもほんとに楽しませてもらってます。
早く次が読みたいっす。
370 :
名無しさんだよもん:05/02/06 21:50:48 ID:23pu1+ah0
イイ! はやく続きが読みたい…。
神がよく出現するスレはここですか?
明日が月曜なためか今晩は控えめだな。
374 :
7月文月:05/02/07 00:06:56 ID:+fLf19S30
我楽多さんはどうしてこんなにも文章を書くのが上手なのだろう?
やっぱりすばらしく多い雑学がないとここまで書くのは無理なのだろうか。
で、今日もコソーリうp
向こうも10k切ったんで後3日もすればこっちに移植してくると思います〜
学校での一日も中頃に差し掛かり、生徒達は昼食を目指し食堂を目指す。
その雑踏の中で俺もパンを買うために廊下を歩いている。
「あなた、ちょっと待ちなさい」
誰かが誰か呼んでいる声が聞こえる、そんなことはどうでもいい今はパンだ。
「だから、待ちなさいって言ってるでしょ!!」
その声は気づいてもらえないのか、今度は怒鳴り始めた。
くいくい・・・・
ん?なんか俺の服の裾が誰かに掴まれている。気になって振り返ってみると。
「あれ?朝比奈さんどうしたの」
「ハァ・・・ハァ、やっと・・・止まりましたか」
すると何故か疲れた様子の工藤さんもやってきた。
「俺に何か用?それになんで工藤さん疲れてるのさ?」
「あなたが大きな声で呼んでも気づかないからでしょ!!」
もしや、誰かを呼んでいた声は俺を呼んでたのか・・・。
「それは、ゴメン謝るよ。で俺に何の用」
俺がそう返すと、工藤さんは不満そうな顔をして。
「あなたには、一時期色々と私達の勘違いで迷惑かけたからその謝罪よ」
「なんで、今頃そんなこと謝るのさ?工藤さんらしくもない」
すると工藤さんは意外そうな顔をして
「・・・・あなた、まさか知らないの。薫子から聞いてないの?」
彼女から何かを聞いた記憶にもないし。心当たりもない。
「多分、知らないと思う。柳瀬さんから聞いた記憶もないし」
そう言うと、工藤さんは真剣な顔をして
「私達、今週を最後に九条院に帰るのよ。最初から強引にこっちに来た訳だから
九条院の方に色々とやること残してきたから、帰らないといけないのよ」
「工藤さん、その私達って・・・工藤さんと朝比奈さんと・・・・柳瀬さん?」
聞かないと後悔する・・・・これは予感ではなく確信だった。
昼休みに工藤さんの話を聞き、午後の授業も耳に入らず彼女のことばかりを考えていた
九条院に帰るということは外には滅多に出られないということだ。タマ姉が実際にそうだったように。
「おい、貴明もうHR終わってんぜ。帰らないのかよ」
雄二の声に現実に戻される。周りを見ると教室には俺達二人になっていた。
「あっ・・・あぁ、そろそろ帰るか」
「貴明、今、お前が悩んでるの柳瀬さんのことだろ」
雄二は真剣な顔でそう聞いてきた。
「・・・そんな、別に何も悩んでねぇよ]
「・・・嘘つくなよ、お前との付き合いももう長いんだからよ。顔見りゃわかるよ
もっとも今のお前が悩んでることぐらいみんなわかってるけどな」
「そんなことない!!」とは言えなかった朝も草壁さんに言われたように
「お前はな、もっと自分の気持ちに正直になった方がいいんだよ。
慎重なのが悪いと言わねぇが、たまには今の気持ちに任せてみないと
草壁さんが言ったようにいつか絶対に後悔するぞ」
あぁ・・・そうだよな。草壁さんも雄二もわかってたんだな・・・。
どうして俺はこんな時にならないと答えを見つけられないのだろうか。
でも、今、後悔しても何も始まらない。何かをしないと何も始まらない、何も変わらない。
「雄二、俺、行くとこあるから先に帰っとけ!!」
「おう、頑張ってこいよ。青少年」
そうして俺は教室を飛び出した。
「姉貴、コレでいいのか」
「雄二にしては上出来じゃないの」
「でもよ、姉貴はコレでいいのか?」
「いいのよ、あの二人を見てるともどかしくて」
「相変わらず姉貴も正直じゃねぇな〜」
「・・・・ブツわよ」
「・・・・殴ってから言うなよな」
俺はいつから彼女にこんな気持ちを抱いていたのだろうか。
最初に会ったのはタマ姉のことでの勘違い、それから色々ありそのことについては解決した。
そして町で迷ってる彼女を見つけて道を教えた。今に思うとここから何かが始まったのだろうか。
みんなと一緒に勉強して、みんなと一緒に夕食の準備をしたり。
思い返すと色々な出来事が思い浮かぶ、昨日の出来事。恋愛についての質問をされたとき
彼女に好きな人がいるのかとか、そんなことばかり思い。不安になった
今になって思うとそんな些細な出会いや一つ一つの出来事が俺の思いも大きくしていったのだと思う。
「あぁ〜、もうどこにいるんだよっ!!」
学校内を走り回り探し続けたが彼女は何処にもいない。先に帰ったなんて思いたくもない。
「河野貴明!!」
俺を呼ぶ声が聞こえ、俺はその声の方に振り返ると工藤さんと朝比奈さんが立っていた。
「あの子なら、ちょっと前に玄関を出たところよ。走れば間に合うわよ」
そう聞くと俺は玄関に走って向かおうとしたが、ただ一つ
「初めて、工藤さんに名前呼ばれたよ」
俺がそういうと、彼女は少し笑いながら
「だって、アナタ名前で呼ばないと気づかないでしょ」
「あぁ・・・そうだったな。ありがとう」
そうして、また走り出した。
「薫ちゃんを・・・薫ちゃんを泣かせるようなことがあったら許さないから!!」
後ろから朝比奈さんの声が聞こえてきたが、俺は振り返ることなく右手を大きく上げて反応した。
まったく、今回の出来事で俺は何人の人に感謝をしなければならないんだろうか。
こうでもしてもらわないと、俺はきっとずっと自分で行動はしなかっただろう。
でも今はそんなことより彼女を見つける方が先だな。
生徒達のあまりいない閑散とした校舎を抜け、玄関を過ぎ長い坂道を全力で駆け抜ける・・・って
「こんなスピードで坂道が止まれるかぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は坂道の終わりのあたりで壮絶にこけた。だが受身がとれたのか痛みはあまりなかった。
「アナタ、凄いわね・・・何が落ちて来たのかと思ったわ。それにしても大丈夫?」
仰向けに倒れている俺を覗き込むように見る俺の探し物をやっと見つけた
「やっと・・・・捕まえた」
俺がそう言うと、彼女は不思議そうな顔をした。
俺は立ち上がり体についているゴミや埃を掃う。
「はい、カバン向こうの方へ飛んでいってたから」
そういって彼女は俺にカバンを手渡した。
「柳瀬さん、少し話があるからそこの公園に行かない?」
「えぇ、別に構わないけど・・・・」
そうして、二人で少し歩き公園に着いた。
「で、話ってなんなわけ?」
「帰るんだって・・・・来週、九条院に」
すると彼女は寂しげな顔をしながら
「そう・・・・知ってたのね。えぇ、帰るわよ。来週にね」
「どうして、俺に言ってくれなかったのさ」
「だって、アナタには関係ないことでしょ、私が帰ろうと」
「関係なくない!!」
俺が少し大きな声を出したので驚いたのか
「なっ、何でよ!!だって私はアナタにとってはただの友達でしょ!?」
「柳瀬さんがそうでも、俺の方は違う!!」
今の俺は覚悟を決めている。ここで砕けようとも悔いはない。
「俺は柳瀬さんのことが好きだ。九条院に帰るのはものすごく残念だけど
でも、今言わないと皆が教えてくれたことすべて無駄にしてしまう。
それに後悔したくないから」
俺が言い終えると彼女は
「どうして!!どうして私なんかを好きになるのよ!?私はアナタに何もしてないのに」
「俺はただ言いたかっただけ・・・・いや、言わなきゃいけなかったから。
俺の想いを伝えないといけなかたっから、自分の為にも」
「私はもうすぐ九条院に帰るのよ。もういなくなる相手に想いを伝えてもなにもならないじゃない!?」
「別に俺は柳瀬さんと付き合いたいとかそういうのじゃない、ただ今の気持ちを伝えないと
絶対、いつか後悔するから、後悔したくないから」
「どうして・・・・どうして・・・アナタはいつも優しくて
道を迷ったら道を教えてくれて。荷物を一緒に持ってくれて。
一緒に勉強してくれたり。トランプしてくれたり。
悩みを話すといつもかけて欲しい言葉をかけてくれて。
どうして・・・・私が言えない言葉を言えるの?」
言い終えると彼女の瞳から涙がこぼれだした。
「私だってアナタのことが好きよ!!どうしてアナタは私に気持ちを伝えたのよ!?
思いを伝えずに帰れば、寂しい思いも。辛い思いもせずに帰れたのに!!」
「俺も最初はそうだった。自分の気持ちを誤魔化し続けてれば、
自分も相手も傷付かずに済む。そうやって逃げてた
でも、思いを伝えずにずっとしまい込んでいたらきっと後悔をするって
雄二や草壁さんに教えてもらったから。俺も勇気を出して言った」
「私は・・・私はアナタみたいに強くない。思いを伝えても、すぐに別々になるのなんて耐えれないの」
「俺はどんなに離れていても、どんなに近づいていようと俺が柳瀬さんのことを思っている限り
俺の心の中から柳瀬さんは消えない。だから距離なんて関係ない!!」
「ホントに?・・・・・なら何年経っても、私はアナタにあえなくても。アナタの中から私は消えないの?」
「あぁ、俺が柳瀬さんのことを思い続けている限り絶対に消えない、消させない」
そういって俺は彼女の体を抱きしめた。
「それに思っていれば絶対にまた逢える。二人は一緒になれる」
「・・・・ホントに・・・信じていいの?」
彼女は俺の顔を真っ直ぐ見ながらそう聞いてきた。
「あぁ、神に誓うさ」
俺がそう言うと、彼女の腕が俺の背中に触れた
―――そうして俺達は始まりのキスをした。
俺の一世一代の告白をした日から、何日か時が流れた
あれから薫子と一緒に色々なことをした。
水族館に行ったり、映画を見たり、一緒に夜を過ごした日もあった。
でも、そんな楽しいかった時間もこれでひとまずお終い。
「それじゃ、アナタ達向こうに行っても元気でね」
「お見送りなんてありがとうございます、お姉様。
これでお姉様が付いて来てくれれば言うことはないのですが・・・・」
「何か言った玲於奈?」
そんな感じの会話を向こうは繰り広げている。
「それじゃ、薫子。向こう行っても元気でな」
俺はあの日から彼女を名前で呼ぶようになった。
「えぇ、貴明の方こそ元気でね」
そう笑顔で返してくれた。
「もう、そろそろ時間だから行くわね」
薫子は歩き出す。
「おう、頑張ってこいよ」
「あ〜ら、タカ坊もう彼女と乳繰り合わなくていいの?暫く会えなそうなのに」
タマ姉がそういって俺の方に近づいてきた。
「あぁ、いいんだよ。俺達はまた会えるから」
「ふ〜ん、タカ坊も大人になっちゃて」
電車に乗り込んだ薫子に向かって俺は
「それじゃ、また今度な」
そして閉じたドア越しに薫子は
「こちらこそ、また今度ね」
―――俺達は知っている。
――――俺達の思いが続く限りきっとまた会える。
―――――だから・・・。
――――――二人の別れにさよならはいらない。
リアルタイムで読ませていただきました。
とりあえず、かおりんの人乙でした!
最後は急ぎ足だったものの、うまくまとまっててよかったです。
次回作待ってます!
>>381 乙でした。
なんか一気に薫子が好きになった!
これからも期待してます。
>>381 乙!
Afterストーリーに期待age。
むしろ完全版の薫子シナリオはこれでいいと思ったwww
俺たちは近くの公園へ向かった。夕暮れの公園は人もまばらで、とても静かだった。何かを決心したかのように一呼吸おいてチエが話し始める。
「アタシ、センパイのこと好きだったッス」
…えっ?どうゆうことだ?好きだった?過去形?
「どうゆうことだよ?」
ワケが分からない…
「あたし、センパイのこと諦めて、このみにセンパイ譲るッス。センパイとこのみならきっとお似合いのカップルになれるッスよ」
チエは悲しそうに、それでも笑顔のままで言った。
「ちょっと待て、何だよそれ?何でいきなりそんなコトになるの?」
「センパイ、このみのこと避けてるっしょ?」
「…それは」
俺は何も反論できない。
「最近のこのみすごくつらそうに見えるッス。あんなつらそうなこのみ、あたしは見てられないッスよ…」
やっぱり、俺のせいで、このみはつらい思いをしていたんだ…
俺は何も言い返せなかった。
「センパイはこのみと付き合ってアタシからセンパイを忘れさせて下さい…。じゃないと、アタシはずっとセンパイを諦めらんないッス…」
「俺の気持ちは無視なのか?」
いきなり何なんだ!?あまりにも一方的すぎる……
「ホントはこの話、前に会った時に言おうと思ってたんス。でも、センパイからデートに誘ってもらえて、すごく嬉しかった…それをセンパイとの最後の思い出にしようと思った。…だから、この指輪もアタシの宝物。これは付けずに大事にしまっておくッス」
そう言ってチエは指輪を取り出し胸の前で握り締める。
「…お前の好きって、たかがその程度だったのかよ?」
あまりにも突然で、あまりにも一方的だったので、俺はつい心にもないことを言う。
チエは俺を睨みつけ
「アタシがっ…アタシが、どれだけ先輩のことを好きと思ってるんスか!?でも、やっぱり先輩はこのみとくっつくのが一番お似合いだと思って、誰にも言わず一人でずっと我慢してた…。
このみを応援することで自分の気持ちをごまかそうとしてた…。でも、…アタシは…アタシはやっぱりセンパイが好きです!!」
それは、まぎれもなく彼女のホントの気持ちだったのだろう。
彼女は今にも泣き出しそうな表情で俺を見ていた。
…が視線が俺の後ろに逸らされると彼女は驚いたまま目を見開いている。嫌な予感がして俺は振り返る、そこには立ったまま固まっている、このみがいた────
なんで、このみがこんなトコにいるんだ!?いや、それより…
「…ご、ごめんね、よっち…まさか、よっちがタカ君のこと好きだったなんて気づかなかったよ…」
「ち、違うの、このみ…、あたしはっ…」
チエは今にも泣き出しそうな声で言い訳をする。しかし、このみには届かない。
「…ごめんね、それなのに私ってば、よっちにタカ君のこと相談したりして…よっちのこと気づかずバカみたいに浮かれちゃって…ホントにごめん…」
そう言ってこのみは逃げるようにして去ってしまった。
俺は反射的に、このみを追いかけようと駆け出した。…が、その瞬間、視界の脇から人影が飛び出した。チエだった。
チエは俺を抜き去ってこのみを追いかける。
「待って、このみっ…!!」
だが、足はこのみの方が断然早かった。
あっという間に公園から出ていってしまった。
チエが遅れて公園を飛び出た。
その瞬間───
キキ──────────ッ!!!!!!ドンッッ!!
やけに耳障りな音が聞こえた。ゴムが焦げた臭いが鼻を刺す。俺は一瞬なにが起こったのか分からなかった。
目の前にはぐったりとして血を流しながら倒れているチエがいた………
「…いやぁぁぁぁぁ!!よっち!よっちー!!」
このみが叫びながら倒れているチエに駆け寄ってくる。その声で我に返った俺は飛び出したチエが車にひかれたのだとようやく理解できた。
車は猛スピードで角を曲がるとこだった。今すぐ追いかけようかと思ったが、目の前のことの方が重要だった。…大丈夫、血はそんなに出ていない。どうやら、ひかれたというか車に接触してはね飛ばされた感じだった。
「よっちしっかりして!!」
このみが泣き叫びながら呼びかけている。そうだ、先ずは救急車だ…。
俺は携帯を取り出し救急車を呼ぶ。
「よっち!よっち!!」
「このみ、とりあえず落ち着け!今、救急車呼んだから!」
「タカ君どうしよう…よっちがっ…よっちがぁっ…うわあぁぁぁぁん!!」
泣き叫ぶ、このみ。だがその嗚咽も、まもなく鳴り響くサイレンにかき消された─────
俺とこのみは待合室の長椅子に座っていた。時計の針は夜の8時を過ぎていた。俺はまだ小さく震えているこのみの頭を撫でている。お互い会話はない。
集中治療室の扉が開き中から若い医者が出てくる。
俺とこのみはほぼ同時に立ち上がる。
「先生っ、チエは大丈夫なんですか!?」
医者は一息ついてから説明を始めた。
「まず命に別状はありません。外傷も全治2週間程度の打撲と擦り傷ですみました。……ただ事故のショックからか深い昏睡状態に陥っているんです」
医者が言い終わる前にこのみが飛び出していた。俺もすぐに後を追う。
ベッドの上のチエは右腕の包帯と腕に刺さる点滴がなければ、ただ寝ているだけのように見えた。
「一通り検査をしましたが脳にも異常は見られません。眠っているような状態なのです。外傷ではなく精神的なものと思われますから、すぐに目が覚めるとは思いますが、ただ…」
「ただ、何ですか?」
「確率は限りなく低いですが、このまま目覚めないと言う可能性もあります」
俺は暗闇のどん底にたたき落とされたような気分になった。
チエが目覚めない…?そんな…ウソだろ?オイッ!?
「そんなっ、私のせいだっ…、私のせいでよっちが…」
このみが頭を抱え込み泣き出した。
「このみのせいなんかじゃない…」
俺は、このみに慰めの言葉をかけるが、それがこのみの心に届いているかは分からなかった。
いつも思うんだが毎日SSうpしてる人ってホントすごいな…
ところで、もう終盤なんですけど今週中には終われそうです。
なんとかウマくまとめたい次第でありますよ〜
>392
GJ
リアルタイムで読ませてもらいました。
用の済んだゴムを結ぶ瑠璃ちゃん。またそんな慣れた手つきでアンタ……
「風呂、沸いてるで」
俺の魂の叫びには答えずに、てくてくと洗面所に向かう。用意周到だなアンタ!?
ズボンを履きなおしながら瑠璃ちゃんを追いかける
風呂はいるんなら結局脱ぐじゃん……いやいやパンツ一丁はなぁ。でも恥ずかしがる間柄でも無し……?
珍妙なポーズで後ろにすがる俺をみてくすりと笑うと洗面所に入った。
縛り終わったゴムをつまんでゴミ箱に……捨てないでじっとたまった精液を見つめる。
視線はそのままにぽそっと呟いた。
「さんちゃんと貴明が寝てる……そう思うとチュクチュクするねん」
なんかいきなり話が飛んでる気がしないでもないけど、話したいようにさせてみる。
「胸の……真ん中の……奥の方……」
告白。ぽさっとゴムをゴミ箱に放り込んで擦り寄ってくる。
「それやったら、さんちゃんとウチが一緒に寝てるときはええか思たら、余計な事ばっか浮かぶん」
抱き寄せると、甘い吐息。まださっきのが燻っているらしく、両足をすり合わせている。
「あー、今頃貴明は誰とえっちぃことしてんねやろ。……やっぱチュクチュクするねん。」
もう胸を隠し続ける理由もない。胸元のリボンを引き抜くと、後は珊瑚ちゃんが自分で脱いだ。
「さんちゃんにはウチだけ見てて欲しい。……貴明にも……ウチのことだけ見てて欲しい」
とくん、と心臓が脈打つ。初めて逢ったときからは想像も出来ない言葉だった。
「独占欲やん。自分勝手やん」
シニヨンを外してロールした髪ををほどく。さぁっと髪が肩から背中を覆った。
「かっこ悪い。そんくらいは分かる」
自分の服を脱ぎ終わった瑠璃ちゃんは、俺のボタンにも手をかけた。抵抗はしない。
「それでも、それでもチュクチュクするんはどうしようもないやん……」
手早くシャツの前を広げると、裸の胸を押し当ててきた。ランニング越しの腹に凶悪な柔らかさが伝わる。
「止めよう思て止まったら世話無い」
……あ、やばい。また元気に……
「先、入るな」
そんな先生!? 寸止めはまだ続いとるとですか? じっと我慢の子ですか?
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
そして三年後、貴明とこのみは付き合っていて……
とかキボンヌ
だいいち勝手に話しはじめたと思ったら勝手にやめて、えらくゴーイングマイウェイだぞ!?
とは言えあんな事やった後にそのままでいるわけにも行かない。
給食前のガキンチョ並に丁寧に両手を洗い、ジェントルメン的に水歯磨き。くぁー沁みるー!! 強すぎ。
軽く顔を洗った頃、ふと 後 始 末 を 何 も し て い な い のに気付いた。
「姫、リビングに戻ってもよろしいでしょうか」
「何で?」
「汁とか液がイッパイであります」
「んー……ウチが髪洗ってる間に終わらしてな」
「心得ましてございます」
やれやれ、危なかったぜ。玄関のロックはしてあったけどチェーンがかかってなかった。
このみにでも入ってこられたら完全アウトだ。自覚が足らんな。
しかし、瑠璃ちゃんのさっきのは何だったんだろう。
俺のこと、好きでいてくれるのはわかる。けどそれと珊瑚ちゃんのフリをするってのが結びつかない。
ここら辺をニブチンやなーと珊瑚ちゃんに突き刺されるんだな。
でもわからない事をそのままにするのは気持ち悪いし、放っといて良い問題とも思えない。
……なんにしろ俺がこうして悩んでるより本人に聞いたほうが早い。後片付け後片付け。
パ ン ツ 発 見 !!
脱がしたんだから当たり前だっつーの。かなり汚しちまったから洗濯しとくか。
おい、好きな女の下着だぜ!? 他にする事があるだろう? と俺の中のデビルが叫ぶ。
汚らわしい!! それよりも伸びてないか確認してあげるのが人の道です! と俺の中のエンジェルが叫ぶ。
満場一致!! ぴろーん。っていうか、うわっ!? こんな、ぬるぬる
「パンツ見てたら殺す―――――― !!」
「いや、見てるっていうか広げてる」
「絶対殺すから早よ風呂きいや―――――― !?」
「パンツの何がそんなに楽しいんや?」
「楽しくない?」
「恥ずかしいだけや!! ひたすらにッ!!」
口調は厳しいものの、両手はやさしく俺の頭をかいぐりかいぐり。
人にしてもらうシャンプーって何でこんなに気持ちいいのか。
背中にぺとぺと当たるお腹はそれはそれは素晴らしい感触で。わざとやってる?
「ワザとやるってえのは、こうやッ!!」
ぬるぬるぬるぬる……をををををを? この感覚……まさか、ニュータイプ!?
鏡に映った瑠璃ちゃんは自分の体にボディーソープを垂らし、俺の背中であわ立てている。
それではもしや、このぷちぷち背中に当たる突起は……おお、おお神よ!!
「こんなのどこで覚えたのさ!?」
「どっどこでも……ええやん」
「そういや珊瑚ちゃんもこれ――」
って馬鹿! さっきの今でんな話題出すなこの馬鹿!! もう遅い。一瞬凍りつくも、
「いっ、意地悪やな〜貴明は〜♪」
張りぼて見え見えの明るい声で体をすり合わせる。俺は馬鹿だ……。
「ごめん。話しやすいかなあと思って軽口言ってたはずなのに……ごめん」
「こっち向き」
落ち着いた声だった。素直に振り向くとそのまま抱きついてきた。
「前も洗うし」
しばらく無言……にゅるにゅるとした感触に三度体は反応するけど、どうにも気まずくて。
ソレに気付いた瑠璃ちゃんは洗う重点を下に移す。『すまた』ってやつに似てる。
「貴明はえっちいなー」
見上げた顔に翳りは欠片も無く。聞かなかった事にするんだろう。
今回ばっかりはそれに甘えないと話が進まない。
本当にごめんなさい、と瑠璃ちゃんに心の中で謝って、俺も言わなかった事にした。
「おッ俺だって男だしなー」
われめにわざとこすり付けるように腰を動かすと、眉がハの字に釣りあがった。
「ぅあ……しゃあないなー変態貴明」
再び無言でにゅるにゅると体をあわせていたけれど、先ほどの気まずい空気は無くなっていた。
>396は 2/3 ですね。またこの間違いか。
今回はエロス無しで……ない筈だったんですが。
まあイける所までイこうと決めましたのでひっそりとお楽しみ下さい。
やー、貴明に無理やりキミ、だの彼女だの言わせるのは気持ちの悪いものでした。
偽珊瑚SSも楽しいっちゃ楽しいんですけど、やっぱ真瑠璃SSも楽しい。
今宵全てはAFの為に
>302-306 いつも感想ありがとうございます。AF団スレではROMでした。
というか自分、生AFは病気が怖くて出来ないAF団失格者ですから。予防方法ってあるのかなあ。
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は微妙な恋人関係。
雄二は降って湧いたお見合い話をなんとかするため、直接水無瀬家に乗り込んだ。しかしそこで待ってい
たのは実の父親以上に手ごわい見合い相手、水無瀬春乃その人だった。
「要は雄二様を私に振り向かせてしまえばよろしいのでしょう?」
さあさあ、どうなっちゃうのー!?
春乃さんにプロットに無い動きをされて作者も困っちゃってるぞー((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
第一話から第七話はこちらで。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
「ねえ、雄二、アンタ、見合いの話断りに行ったのよね?」
水無瀬家から帰ってきた雄二に玄関で靴を脱ぐよりも早く環の雷が落ちた。
「ハイ、ソーデスネ」
乾いた声がそう答える。
「どこの世界に見合い断りに行って、見合い相手お持ち帰りするヤツがいるのよ!!」
ミリミリミリと、環の指が雄二の顔面に食い込む。
「ハハハハハハハ……」
雄二の頭蓋からは絶望の音が、口からは痛みすら超越した乾いた笑いが流れる。
「お姉さま、おやめください!」
どさりと雄二の体が玄関先に崩れ落ちる。しかしそれにも関わらず二人の女は視線をぶつけ合わせた。
「お姉さま? 残念ながら貴女にそう呼ばれる覚えはなくてよ?」
「今にきっとそうなりますわ。だって私は雄二様の婚約者ですもの」
バチバチと視線がぶつかりあう音すら聞こえそうだった。
「あら、そんなことを決めたのはバカな大人たちよ。私も雄二も了承した覚えはないわ。よって貴女が雄二の
婚約者というのも当人同士の了解あってのことではなくて、貴女がひとりで言ってることなの。少なくともこ
の場ではね」
「お言葉ですが、お姉さま。私たちの婚約は両者の親も了解済みのことですわ。後は雄二様のお気持ちさ
え変わればそれで万事うまくまとまることではございませんか」
「なるほど、貴女、判った上で付いてきたというわけね。雄二のことを誘惑でもするつもり?」
「誘惑だなんてとんでもありません。ただ雄二様には私と接する機会がこれまでなかっただけのこと。私のこ
とさえ知っていただければ、振り向いていただけるとそう確信している次第です」
「そう――そこまで言うなら好きになさい。貴女のことは客人として扱いましょう。けれどこの家で勝手なこと
をするのは許しません。判ったわね」
「はい、承知いたしました」
ぺこりと春乃は頭を下げる。
「な、なぁ、俺のこと、忘れてないか? 二人とも――」
地面にのびたままの雄二がそう呟いた。
翌朝、どうしても郁乃の顔が見たいという春乃の説得を、雄二はついに諦めた。意固地になった女の子と
いうのはどうにも扱いようがないものだ。それでもなんとか婚約者ではなく従妹と身分を偽ることを妥協させ
た。
春乃は昨日言った。
――雄二様には私と接する機会がこれまでなかっただけのこと。私のことさえ知っていただければ――
なら君は俺の何を知っているというんだ。
春乃は並んで歩きながらもちらちらと雄二の横顔を見つめてくる。
何故、よく知りもしない男の妻になることを疑問にも思わないのか?
その寄せてくる好意は分かる。だが理解はできない。
くそっ、どっかのバカの女が苦手なのがうつっちまったぜ。
階段のところでそのバカが待っている。こちらに手を振ってから、こちらが環とは違う女の子と一緒なのに
気がついて怪訝そうな顔をした。
「雄二、それ、誰だ?」
「初めまして、私――」
「従妹の春乃さん。しばらくウチで預かることになった」
機先を取っておく。春乃のことは油断できないと雄二は直感的にそう悟っていた。
「春乃さん、こいつは親友の貴明。女の子が苦手だからあんまり近寄ってやらないほうがいい。窒息死す
る」
「そうか、初めまして」
貴明が少し引きつった笑みを見せる。相変わらず女の子が近くにいるだけで緊張するみたいだ。
「初めまして」
にっこりと笑って春乃は会釈した。
「でもなんでこんな朝っぱらから雄二についてくの? その制服、うちのじゃないよね?」
「雄二さんの恋人さんに一目お会いしたくて」
春乃はにこにこと笑っているが、それが対外的なものであることは推測に難くない。いわば環の外行き
モードみたいなもので、雄二からすればもう見慣れた女の仮面ということになる。
「――おい」
貴明に肘でつつかれる。付き合いが長いからこそ、何か感じるところがあったのだろう。
無理に隠すのも良くないかもしれない。
片目を閉じて、苦々しげな表情をしてみせる。それから軽く首を横に振る。それだけでなんとか今は追及し
ないでくれとは伝わったらしい。この様子では愛佳からも追求されるだろう。この二人には全部話して協力し
てもらうほうがよさそうだ。
「あ、そうです」
ぱん、と春乃が手を叩いて、貴明に寄っていく。そして貴明の腰がさささっと引ける。
「貴明さんから見て雄二さんってどんな方です? 私、これまであまり雄二さんとお会いすることはなかった
ものですので」
貴明が捕食される寸前の小動物みたいな哀れめいた瞳を雄二に向ける。雄二は苦々しい顔で顔を横に
振る。意味は「すまない」と「良い事は言わないでくれ」
「あ、あー、えーっと、そうだな。雄二はだらしがないし、勉強の成績もそんな良くないし、女の子と見ればす
ぐに声をかける、そんな奴だよ」
「あらあら」
くるんと春乃の顔が雄二に向く。その微笑に雄二は恐怖を感じた。そう、疑惑は確信に変わる。
――コイツ、姉貴と同類だ。
「でもお二人は親友なのですから、貴明さんから見てきっと雄二さんのいいところはたくさんあるのでしょう。
どうやら仰ってはいただけないようですけど……」
「いや、なんというか腐れ縁だよ。なあ」
「そ、そうだよなー」
男たち二人は乾いた笑い声をあげることしかできなかった。
そうして病室前までたどり着いたとき、雄二が春乃の袖を引っ張って耳打ちする。
「くれぐれも郁乃ちゃんの前で変なこと言ったりするなよ」
「あら、変なことというのはよく分かりませんが、私、約束はちゃんと守ります。ええ、約束はちゃんと、絶対
に守りますとも」
――そして守ってもらいますとも。という無言の声が聞こえた気がした。
がっくりと肩を落とした雄二に代わって、貴明が病室の扉をノックする。
コンコン。
人の足音に特徴があるように、やはりノックの仕方にも特徴というものがある。貴明の伺うようなノックは愛
佳も郁乃もすぐにそれと分かった。とは言ってもこの時間に病室を訪ねてくるのは貴明と雄二くらいしかいな
い。だから二人とも雄二の後ろについて入ってきた美少女に気がついて動きが止まった。
「あっと、俺の従妹の水無瀬春乃さん。なんか懐かれちゃってて、郁乃ちゃんに会いたいって無理について
きちゃった、です、はい」
もう誰かに下手なことを言われる前に先手を打ちまくるしかない。しかし疑惑に満ちた四つの瞳にじろりと
嘗め回されて、雄二は心から冷えあがった。
やれやれ、世の中には姉貴より怖い女が一杯いるぜ。
「初めまして。雄二さんの従妹で、春乃と申します」
春乃がぺこりと会釈する。それだけ見てると14歳の年相応に見えないこともない。
「わあ、可愛らしい従妹さんですね〜。初めまして、小牧愛佳です」
愛佳がにこにこと会釈に応じる。
「……初めまして、郁乃です」
一方郁乃は女の勘か春乃に警戒心を抱いたようで、怪訝そうな顔を隠しもせずに軽くおじぎした。
「私、しばらく雄二さんのお宅にご厄介になることになりましたので、今後ともお会いすることがあるかと思い
ますが、よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」
郁乃の雰囲気に気付いた愛佳がその間を取り持つことにしたようだ。にこにこと春乃に応対する。
「それじゃあ私は学校に急がなければならないので、これで」
それはウソではない。春乃は最初雄二と同じ学校に転校すると言っていたのだが、雄二の高校が単体
――つまり高校だけで、中学校も小学校も付属していない――と知るや、落胆の色を隠さなかったものだ。
そもそもそういう高校だけという教育機関があることすら知らなかったのではあるまいかという反応だった。
そういうわけで春乃は以前と同じ学校に通っているため、水無瀬付きの運転手が朝に向坂に回される手
はずになっている。それは環に伝言を頼んであるので、病院前に回っているはずだ。
「いってらっしゃい」
いくつかの声を背に、たたたと軽快な足取りで春乃は立ち去っていく。
「ふぅ〜ん」
にこにこと愛佳が雄二を見る。
「随分と可愛らしい従妹さんでしたねえ。あ、これ郁乃の代弁ですから」
声が笑っていない。
「あはは、そうだろ〜」
乾いた雄二の冗談は、誰の耳にも冗談には聞こえなかった。なにせ春乃は間違いなく美少女だったから。
「さて、きりきり説明してもらいますよー」
「そうだぞ。雄二」
というわけで、学校について郁乃を教室にしっかり設置し、教室に戻るなり、雄二は二人に詰め寄られた。
「ははは、貴明は見合いの話は委員ちょからもう聞いたのか?」
「は? 見合い? なにそれ?」
「委員ちょ、貴明に隠し事はないんじゃなかったのか?」
「だってこれはあたしのじゃなくて、向坂くんの隠し事ですもん」
「え? なに? 見合いするの? 雄二が?」
貴明の頭の周りにはすっかり?マークが飛び交っているようだ。
雄二は肩をすくめてみせる。
「もちろん断るつもりなんだがな。というか昨日断りに行ったんだよ。そしたら――」
「あんまり可愛かったんでグラリと来て家に連れ帰っちゃったんですか?」
ぶすーっと口を尖らせた愛佳が横槍を入れてくる。
「委員ちょ、頼むからいじめないでくれ。貴明みたいに女が苦手になりそうだ」
「向坂くんの場合はそれくらいでちょうどいいと思いますけど」
愛佳は真顔だ。本気で言っている。雄二は二本目の白旗を探しに行きたくなったが、一本でも二本でも降
参は降参だ。
「あー、分かった。分かったから説明させてくれ。春乃さんの出した交換条件はこうだ。今すぐ別れろとは言
わない代わりに、自分をしばらく傍に置け。見合いも表向きはちゃんとしろ。それまでに自分が俺のことを振
り向かせられなかったら諦める。どうだ、分かりやすいだろ」
「それって随分自信のある発言ですねぇ。それと、その約束はちゃんと守ってもらえそうなんですか?」
「そこのとこは大丈夫だと思う。やけに約束にはこだわってた。……そもそも婚約というの自体が向坂の水
無瀬の約束でしかないんだから、約束を反故にしたらそれは自分にも跳ね返ってくると思ってるのかな」
「でも雄二、郁乃ちゃんにはどう説明するんだよ。従妹だとか言って、バレたら大変だぜ」
「かと言って、付き合い始めて二日後には婚約者が現れました、ってか? 冗談にしちゃ笑えないし、事実
だからもっとタチが悪い」
どっかと椅子に座った雄二に愛佳が指を突きつけた。
「向坂くんのタチの悪いところは、婚約者がいると分かってから郁乃と付き合いだしたところですけどね」
「貴明、お前と付き合いだしてから委員ちょ性格変わってねぇか?」
「違う違う、愛佳は郁乃ちゃんのことになるとムキになるから」
「話を逸らさないでください。あたしが言いたいのは――」
「郁乃ちゃんを傷つけたら許さない、だろ」
雄二が愛佳に指を突きつけ返した。
「分かってるならいいんです。あ、でももし向坂くんがあの人のこと好きになっちゃったのならそれはそれで仕
方ないんですよね……」
「あー、それなら多分大丈夫」
照れくさそうに、雄二は頭を掻いた。
「俺、郁乃ちゃんのこと好きになっちまったみたいだから」
ぱぁと愛佳の顔が明るくなる。雄二の手を取って上下にぶんぶんと振る。
「郁乃のことよろしくお願いしますね!」
と、そこまで言ってから雄二の手に触れてることに気付いて、
「わひゃ!」
飛び下がって貴明に飛びついた。
「いや、そこまで過剰反応されると流石にちょっと傷つくぞ」
「あぅぅ〜、ごめんなさいぃ〜」
放課後になって愛佳が委員会の用事があるというので、雄二がひとりで郁乃を病院に送っていくことに
なった。元々の愛佳の忙しさを考えれば、これからはこんな日が増えていくのかもしれない。愛佳の中では
郁乃の優先順位が一位なのは端から見ても分かる。だがそれでもこれまで積み上げてきた人間関係のし
がらみというものはそう簡単には断ち切れないだろうし、愛佳自身もそれは望まないだろう。
坂道を注意しながら車椅子を押していく。というより下り坂だから、引きながら前に進むという感じではあ
る。万が一手を離してしまったらと思うとぞっとする。だから極力坂のない道を選んで進むものの、全部が全
部そうというわけにはいかないので、坂が急なところでは後ろ向きに進む。これなら万が一の時にも雄二の
体が車止めの役割を果たすだろう。
朝、春乃を見た後の郁乃はあからさまに不機嫌だったが、どうやらそれはどこかに行ってしまったようだ。
ご機嫌とはいえないが、いつもどおりである。
なんとか病室にたどり着いて、郁乃の手を支えて、車椅子からベッドに移らせる。
いつもならここで雄二と貴明は追い出されて、愛佳が郁乃の着替えをするのだが、今日はそういうわけに
もいかないだろう。ベッドに腰掛けた郁乃と向かい合うように、雄二はベッド脇の椅子に腰を下ろす。
「さて、どうしようかね」
「……あたしを着替えさせるとかどうですか?」
一瞬ドキッとするが冗談であるのはすぐに分かる。
「そんなことしたら、俺が委員ちょに殺されちまうよ」
そうして仕方が無いので、いつものように雄二が色々なことを話した。昔の笑い話や、冒険談、――郁乃
にはそういう思い出が限られすぎていて、雄二が話すしかない。せめて自分が話したことを郁乃が自分の経
験のように思えたら、と、雄二はそう考えていた。
「――雄二さん」
話の途中で郁乃が呼びかけた。こんなことは珍しい。
「ん、どうしたの?」
「……わがまま言っていいですか?」
「いいよ。なんでも叶えられるとは言えないけど」
そうすると郁乃は恥ずかしそうに顔を伏せてしまう。さらに珍しい。
「――――てってください」
ぼそぼそというので聞き取れない。
「え、なに?」
「だから――とに連れて行ってください」
「何に連れて行ってって?」
よく聞こうと顔を近づけた雄二の顔を、郁乃が勢いよく押し返す。
「デートよ、デート、デートッ!! はい、聞こえた!? 分かった!?」
赤い顔をしてそう言うと、制服のままベッドの中に潜り込んでしまう。
――ヤバ、これは可愛すぎるだろ。
郁乃を好きになったと自覚の出始めていた雄二だったが、今の郁乃の姿に確信を通り越してしまう。
布団の上から、完全に潜ってしまった頭に触れる。
「ん、委員ちょになんとかならないか聞いてみるよ。どこか行きたいところはあるかい?」
そういうと、布団の中から郁乃の顔だけがぴょこんと飛び出してきた。
「……海、海に行きたい。見たことないから」
ちょうど海の話をしていたからだろう。泳ぐことは叶わなくても、海は見るだけで感じるところは十分にある。
「そうか、分かった。海だな。――ところで今俺は無性にキスしたいんだが、いいかな」
かぁぁと郁乃の顔が赤くなって、また布団の中に隠れてしまう。
「……いくの」
布団の中で郁乃が自分のことを呼んでいる。
「え、なに?」
「……郁乃ちゃんじゃなくて、郁乃って呼んで。そしたら顔出してあげる」
「――郁乃」
そう言うと、ゆっくりと真っ赤になった顔が布団から出てきた。
前回はたくさんの反響をありがとうございます。
俺のやる気は皆さんの声でできてます。
そして今回、やっぱ郁乃も萌え(゚∀゚)
実はこの第八話だけで書くのに三日必要としました。書き溜めた原稿、無くなっちゃったヨ。
春乃の扱いが難しすぎです。orz
>>7月文月様
お褒めの言葉恐悦至極であります。
文章を書くということに関して高説を垂れることができるほどの腕前とは思えませんが、俺なりに思うことを
いくつかつらつらと書いたのですが、あんまりにも長いので流石にここに投下するのは躊躇われました orz
要点だけ申しますと、たくさん文章を書くことが単純に技術向上に繋がるかと思われます。雑学の部分は
現在ですとネットで埋められる部分も大きいですのでそれほど気になさることはないと思います。ですが、文
章書きの趣味のためだけに毎年現代用語の基礎知識に手がのびるのもまた事実。
たくさん文章を書いて、たくさん人生経験を積んでください。(・ω・)ゝ
( ゚Д゚)ウマー
スゴクオモチロカッタデツ
よっち…゚・(ノД`)・゚・
新作ラッシュで頭の切り替えが・・・も少しじっくり読んでみマース
>「――――てってください」
ここを勝手に「出てってください」とか勘違いした俺は最低orz
415 :
7月文月:05/02/07 22:22:55 ID:+fLf19S30
>>我楽多様
なるほど・・・
やっぱり暦が浅いとどうもうまくかけんのですね。
世の有名な小説家たちも経験は大事だと言ってますし、何となく納得できます。
その練習もかねて今日もコソーリと(ry
>409
いつもありがとうございます!
次回楽しみにしてます。
>414
ワロタ
>414
「トイレに…」と勘違いした俺も(ry
>>409 相変わらず、先が気になる展開だな。
常にドキドキしながら読ませてもらったよ。
郁乃は可愛いしw
ただ、ED後ってのもあるんだろうが、愛佳がここまで変わってるのがどうもな…
姉としてはいい傾向ではあるんだが。
ま、何はともあれお疲れさん。
>>398 「エロ」じゃなくて「エッチ」な雰囲気がいいですなあ
掛け合いも面白いです
SSはおもしろいがコテの馴れ合いは勘弁
421 :
350:05/02/08 13:11:11 ID:q961J+2W0
>>421 GJ!激しくハァハァしますた
次の獲物はいいん(ryか、草壁さんすごいぜw
>>421 GJ!!
草壁さんはふたでも違和感なのはなぜだろう?
次の獲物はタマ姉でお願いします。
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は微妙な恋人関係。
雄二の家に居ついた春乃なんてなんのその、二人は着実に関係を進めていく。そして郁乃が海にデート
に行きたいと言い出した。
第一話から第八話はこちらで。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
「海ですか〜」
うーんと愛佳が首を捻る。
「日差しに気をつければ、海を見に行くだけなら問題ないでしょうけど、病院から遠く離れるというのが心配
ですねえ」
「大丈夫よ。なにかあったってすぐ死ぬような病気じゃないんだから」
「それはそうなんだけどね。郁乃、心配なのは心配なの」
委員会の仕事を終えて貴明と病室にやってきた愛佳に、郁乃を海に連れて行きたいという話をしたら、案
の定というか愛佳はあまり乗り気でないようだ。
「お姉ちゃんもついていっちゃダメ?」
「ダメ、だってこれは――なんだもん」
デートの部分だけがごにょごにょとほとんど言葉にならない。
「うぅ〜ん、あたしとしても郁乃の希望通りにはしてあげたいけど……。海以外のどこか、そう近場で屋内
じゃダメ?」
「…………」
郁乃が唇をとがらせる。
「とりあえずお出かけというだけなら問題はないってことでいいのか?」
「今言ったように、近場で屋内なら大丈夫だと思いますよ。でも海となると……」
「別に海で泳ぎたいってんじゃない。見に行くだけさ」
「当然です! それは今は郁乃の病状も安定してますし、何日かの外泊を取る予定だってありますけど
……。ねえ、郁乃、海にあたしとたかあきくんも一緒に行くか、近場で屋内かどっちがいい?」
貴明にはどちらにせよ決定権はないらしい。
2択を迫られた郁乃はしばらく全員の顔を順番に眺めていたが、やがて諦めたように肩を落とした。
「近場にする……」
「あらあら、お姉ちゃん振られちゃいましたね。というわけですから、向坂くん、いいところ探しておいてくださ
いね」
「うぇ、俺の役目かよ」
「当然です。車椅子で入れる施設も最近は増えてますから、しっかり下調べしておいてください」
「あー、分かった分かった。雑誌かなんか買ってくるよ。それで一緒に行くところ決めよう。郁乃、それでいい
か?」
「うん。分かった」
そういうことで雄二は帰りに本屋に寄って、タウン誌を買って帰った。とりあえず一度目を通しておくか、な
んて考えながらガラリと玄関を開けると、
「雄二様、おかえりなさいませ」
春乃が三つ指をついて玄関で待っていた。
「ぬお、びっくりした」
とりあえずその衝撃から立ち直って、思わず一歩外に出てしまった玄関に入りなおす。
「は、春乃さん。いつからそこで?」
「えっと、4時半くらいからですね」
腕解けを確認すると5時過ぎ、だが――
「俺が何時に帰ってくるかなんて知らなかったよね?」
「はい。お姉さまに遅くなることもあるとお聞きしましたが、待てる間は待とうと思いまして」
「どうして、また」
雄二は頭を抱える。環が春乃に雄二の帰宅時間がわからないと告げたのはこうなることを見越してのこと
だろう。春乃がどれくらい待てるものが見てやろうというわけだ。そして春乃もそれが分かっていたから、もし
雄二が遅くなることがあっても我を張り通しただろう。
――姉貴になんで早く帰ってきたの!? とか言われそうだよな。
病院からさっさと帰ってこなければ、春乃がどれだけ待ちぼうけしたかもしれないと考えるとぞっとする。
「私が待ちたかったのです。それではいけませんか?」
「いけなかないけど……。あんまり無理すると体壊すぞ」
「まあ、私が勝手にやってることですのに心配してくださるなんて、やっぱり雄二様はお優しいですね」
しまった、と思ったときにはもう手遅れだった。もっとも春乃の場合はどんな雄二を見てもポジティブに捉え
そうな気もしないでもない。
「それにもうちょっと待って帰ってらっしゃらなかったら、もう食事の準備をしなくてはいけませんでしたから」
そう言いながらそそくさと春乃は台所のあるほうに向かう。
「あれ、今日の晩飯は春乃さんが作るの?」
「はい。花嫁修業の成果をとくとご覧あれです。できあがりましたらお部屋に呼びにあがりますね」
「う、うん。よろしく」
どうにも環は春乃を色々試してボロが出るのを待っているようだ。だが、もしボロが一切出なかった場合は
どうするのだろう? と、雄二は陰鬱な思いで部屋に戻った。
ベッドの上でぱらぱらとタウン誌をめくる。
そして絶望。
普段からこういう雑誌を見ていたわけではなかったので詳しくなかったのだが、広告でないページの大半
が食事どころの紹介だった。確かにデートというと食事も必ず付随してくる部分なのだろうが。
――郁乃ちゃんの場合はそんな簡単でもないんだよな。
ひどく制限されているというわけではないが、食事にも気を使わなければならないと愛佳から聞いていた。
だから適当にレストランやら、喫茶店で食事というわけにもいかないのだ。それにタウン誌とは言っても範囲
が広すぎて、徒歩でいける店の情報なんて数えるほどしかない。
ぱらぱらとめくっていっても、やはり食べ物関係が大半を占めている。それ以外となるとヘアサロンとか
……、男もそういう情報に気を配る時代かも知れないが、雄二はそういう性質ではなかったので読み飛ば
す。そしてふと現れたページで手が止まる。
デートホテル、なんじゃそりゃと思ってよく見るとどうやらラブホテルらしい。そういやファッションホテルとか
いう言い方をしたりもするような気がする。ラブホテルという単語の持つ先行イメージを改めたいのだろう。実
際そこに写った写真を見るに、リゾート地のホテルの一室のように見えなくもない。端々にはラブホテルらし
さが滲み出てはいるのだが、雄二にはそこまでは分からない。
雄二は思わず見入ってしまっていたが、これもデートにはまったくさっぱりこれっぽっちも関係がない。それ
はまあ、雄二からキスを求めたとき、その延長上に性的な感情が芽生えていたことに気付いていなかった
わけではない。
車椅子でラブホテルってどんなもんなんだろうな? バリアフリーのラブホテルとか。
下らない想像を巡らせてみる。
しかしそこに郁乃の顔がふと浮かんでしまって、雄二は頭を振った。
――まったく、昨日今日キスしたばかりでなに考えてんだ。俺は。
ぱたんと雑誌と閉じて、目も閉じる。メシができたら春乃が呼びにくるだろう。それまではちょっと寝ていよ
う。
春乃の作った晩飯は腹が立つほど美味かった。もちろん家政婦さんや、環の作る食事が美味くないわけ
はないのだが、それに慣れきった味覚に新しい刺激を与えてくれたことは確かだ。ただはっきり分かったの
は、なんというかお嬢さま族の基本なのだろうが、作るものが和食だというところだ。たまには家で洋食も食
べてみたいものだとは思う。言えば春乃は作ってくれるだろうが、そんな些細なことで恩を買うのもなんなの
で、雄二はなにも言わないことにする。
環も春乃の料理の腕にはなにも言えなかったようだ。元々細かいところを指摘して相手の揚げ足をとるよ
うな性格ではないので、春乃が相当大きな失敗でもしない限りは環はなにもできないに違いない。
「あの、お口に合いませんでしたでしょうか?」
雄二の顔が浮かないのに気がついた春乃がそう声をかける。
「どんな味付けがお好きか仰っていただければ、それに合うように努力いたしますので」
「あ、いや、美味かったよ。うん」
ほっと、春乃が息をつく。雄二は意識していなかったが、春乃は春乃で緊張していたらしい。まあ好きな男
に初めて食事を作ったのだから、それも当然だ。
「ねえ、雄二様」
食事も終わりになりかけたころ、ふと思いついたように春乃が声をかけた。
「ん、なに?」
「雄二様と一つ屋根の下と考えると胸が高鳴って、昨夜はとてもではないですが眠れませんでした。と言っ
たらどうなさいます?」
一瞬、ドキッとしたのを否定はできないが、環が横目でギロリと睨んできたので高鳴った心臓は次の瞬間
には縮み上がった。
「いい心療内科を紹介するよ」
酷い答え方だ、とは雄二自身も思う。
「そういうことじゃありませんのに」
少し春乃が口をとがらせた。
食事が終わって風呂に入ったあと、雄二はまた環の部屋のドアを叩いた。
「姉貴、ちょっといいか?」
「いいわよ」
机に向かっていた環が振り返る。環はこの一年が終われば九条大学に入る予定になっていたから、その
勉強だろう。本来エスカレーター式なのをわざわざ蹴ってこちらに来て、また舞い戻るというのだから、大変
なことだ。
自分の気持ちに決着をつけると息巻いて戻ってきて、結局貴明を愛佳に取られたのだからたまったもので
はない。環に言わせればまだ半年ある、ということらしいが、雄二はその見込みは薄いのではないかと思っ
ている。実際、環のほうでも今では貴明を奪うというよりも、構うことに幸せを見出しているようでもあった。
雄二はいつものように床に胡坐をかく。
ふと思ったことがそのまま口をついて出た。
「姉貴と春乃さんって似てるよな」
「はぁ? どこが」
「なんもかもだよ。こうと決めたらテコでも動かないとこもそうだし」
続きを言うか少し迷って、雄二は言うことに決めた。
「――幼い頃から同じ男を想い続けてるところとか……。どういうもんなんだよ。他にいい男はいくらでもいる
だろうに」
「そうね。視野狭窄に陥っていると言われればそれはそうなんでしょうけど……」
環は自分の中の貴明を好きだという気持ちを、そっと心の指でなぞってみる。
「私がタカ坊を想ってるということはもう私自身の一部なんでしょうね。もう切り離せないのよ」
「それが報われなくても?」
「報われないと決まったわけじゃないわよ」
「そういうところも春乃さんとそっくりだぜ」
ふんふんと環は自分の想いと、春乃を比べてみた。
確かに雄二の言うことは否定できない。
椅子の上で片膝を抱える。
「認めるわ。となると春乃さんは手ごわいわよ」
「ああ、そうだろうな」
実際細かい攻撃にぐらぐら揺れてるのは認めないわけにはいかない。幸い郁乃への気持ちはこれっぽっ
ちも揺らぎはしなかったが、それが無ければこの見合い、案外うまく行っていたかもしれない。
「でもそんな心配はしてない。春乃さんの失敗はお見合いまでという期限を設定したとこだな。もう一週間な
いんだぜ」
「最後には体に訴えてくるかもよ」
環が意地悪く笑う。
「春乃さんはそういうタイプじゃないと思うな。正々堂々筋は通してくると思う」
だからこそ春乃に勝ち目はないのだ、と雄二は思った。
「まだ若いから真正面から当たるしかないんでしょう。女の手口をまだ知らないのね」
「なんだよ、それ」
「女は巧妙なのよ。男は一生知らなくていいの」
「へいへい」
肩をすくめて雄二はあぐらをかきなおす。それで環の部屋を訪れた本来の目的に立ち戻ることにする。
「ところで郁乃ちゃんとデートに行くことになったんだけど、なんかいいとこないかな」
「うーん、難しい質問ねえ。何がダメとかは何があるのかしら?」
「まず車椅子入れないとダメだろ。委員ちょからは屋内とのお達しだろ。運動系はもってのほかだし、鑑賞系
も目があんまりだからなあ」
「それってほとんど残らないじゃないのよ。そうねぇ、お買い物くらい?」
「ああ、女の子は総じて買い物好きだもんな」
まあ最初のデートとしては無難なところだろう。
そして翌日の半ドンの授業を終えた放課後、雄二は郁乃の車椅子を押して、初めて学校のある坂を一番
下まで下りる。後で上がることを考えると少し頭痛がした。体力は残しておいたほうが良さそうだ。
郁乃の表情を見るに、思ったよりは機嫌がいいらしい。
街中を車椅子を押して歩く。病院と学校の送り迎えでは感じなかった色々な障害が街に溢れている。バリ
アフリーバリアフリーと騒がれる昨今だが、実は路上が一番整備されていないのかもしれない。歩道に入る
ためのスロープがないところまであって、雄二は力づくで車椅子を歩道に押し上げなければならなかったり
する。そしてまた歩道は歩道で立て看板やら、放置自転車が邪魔をする。場合によっては歩道を降りて車
道を押して歩かなければならなかったりまでした。
「なんだよ。チクショウ。ワケわかんねえ公共施設作る金があるんだったら先にこういうのをなんとかして欲し
いぜ」
「……こういうので苦労するのはあたしみたいな人かお年寄りだけですから」
「まあ俺もこういう機会でもなかったら気付かなかっただろうな」
不便さがつのる一方で、意外と各所の階段とともにスロープが設置されてるのも分かる。
そうしてようやくといった感じで、駅前の複合商業施設に辿りついた。
「なにかこれを見たい買いたいっていうものはあるかい?」
「……よく分からないので、まずは回ってみたいんですけど、いいですか?」
「オッケー」
女の子がウィンドウショッピングが好きなのは共通事項らしい。
だらだらと一軒一軒見て回る。
やはり女の子というべきか、服にはそこそこ興味があるようだった。もっともある程度見た後で、必ず着る
機会がないからと言って、買わずに次の店に行ってしまうのだったが。
そんな郁乃がふとある店でじっと見つめたまま動かなくなったのがただの日傘だった。
「あ、そうか、日光よくないんだっけ?」
よく考えてみれば残暑も厳しいこの季節にこれまで使ってないのがおかしいくらいだ。
「…………」
それには答えずにじっと日傘を見つめ続ける郁乃に、雄二はちょっと首をかしげた。
「どうしたの?」
「……やっぱり海行きたいです」
郁乃の手がぎゅっと雄二の服の裾を掴んだ。
「二人で海、見たい……」
思いつめたような表情。それがどういうことが雄二にはよく分からない。どうしてそんなに海に拘るのか。
「……あの人、雄二さんのこと好きだよね」
急に話がすりかわって、雄二には何が何やら分からない。
「昨日の朝の人。すぐ分かった。あたし人の顔ばかりうかがってきたからそういうことには敏感なの」
「春乃さんのこと? それならだいじょ――」
「分かってる! 雄二さんがあたしのこと見てくれてるの分かってる。でもイヤなものはイヤなの」
服の裾を掴む手にぎゅっと力が込められる。
そうか、急にデートに行きたいなんて言い出したのも、それが原因なのか。
「今、同じ家に住んでるんでしょ? あたしよりも長い時間一緒にいるんだよね。それがイヤ、すごくイヤな
の」
だからといって一緒に海に行くことでそれが解決されるわけじゃない。それでも郁乃は雄二との特別が欲
しいのだ。春乃が雄二と一つ屋根の下で生活しているなら、それ以外の何かを。
「――日傘買おうか」
くしゃりと郁乃の頭を撫でる。郁乃の顔が不安そうに雄二の顔を見る。
「で、それ持って海行こう。ただしお姉ちゃんにはナイショでな」
当て馬な春乃さん、しょせん二次創作におけるオリキャラの存在なんてこんなものよ。・゚・(ノД`)・゚・。
いくら気に入ったからといって前面に押し出すわけにもいかないこの生まれの不運。そこが萌え。
サブキャラ救済っぽいSSでさらに救済されないっぽいキャラを生み出すとは、これが業というものか。
ちょっと体調を崩し気味でして、申し訳ありませんが、明日から毎日というのはちょっと無理そうです。
物語は終盤を迎えようとしておりますので、必ず終わらせます故、少しばかり気長にお待ちいただけると
幸いです。
お疲れ様です〜
二次創作キャラを更にSS・・・
あせらず頑張ってくださいな。
>>433 連日の更新GJ。
無理に毎日更新に拘らず、自分のペースで書いていけば良いと思いますよ。
締め切りに追われて作品のクオリティを落としてしまったら元も子もありませんし。
まぁ、数週間〜数ヶ月も間が開いたりするのは流石にあれですけど。
ここまで読んだ、雄二がカコイイw
サブのサブが逆転なんてことが
あってもいいかも、なんて無責任なことを
言ってみたりw
雄二キュンに萌えるSSだから当て馬なんて飾りですよ。
←立ち絵がなきゃサブキャラじゃない、とか思っちゃう人(しかしそれもアリか!?とも考えてみたり)
>437
せめて郁乃はサブキャラ扱いしてあげて欲しい。
立ち絵はなくてもイベント絵はあるんだから!!
(゚Д゚)ハァ?
郁乃はメインキャラだろ。花梨よりよほど(ry
そんなこと言うな
言うなよ・・・(´Д⊂グスン
>>438 郁乃は一枚絵があるからメインヒロインだと思ってたが…………
それを言ってしまったら雄二なんて専用ENDまであるじゃまいか。
>>440 由真ちゃんさまが自分の中でいまいち萌え不足だったんだけど、
>>185のSSの
おかげで萌えUP出来たので、貴殿も花梨SS投下してくれ
SSから初まる萌えもある。
109の続きそろそろ書けそうな気がしてきた。
次の日、俺は学校が終わるとチエのお見舞いのために一人で病院へと向かった。
俺が病室へ行くとチエの母親が見舞いに来ていた。
俺は、当たり障り無く友達です、とだけ名乗る。チエの母親の話からすると、チエは一人娘で両親は共働きだと言う事が分かった。だから昨日は、来てなかったんだな…
その後、チエの母親が夕食の支度があるからと帰ってしまう。夕日が差し込む病室には俺と未だ意識の戻らないチエとの二人だけの空間になった。
俺は、返事をしないチエに語りかける。「いいお母さんだよな。今日は、昼間中はずっと居たみたいだし、チエが心配されてるって分かるよ」
死んだように眠るチエ。呼吸のときの僅かな胸の上下だけが、生きているという事を教えてくれた。
「このみだって心配してるよ。自分のせいでチエが事故にあったんだって、でもお前はこのみを責めたりするようなヤツじゃないもんな」
返事は返ってこない。
「なぁ…俺、やっと自分の気持ちに気づけたんだ。俺はやっぱりチエが…」
そこで院内放送が鳴り響く。面会時間の終わりだった。
「また来るよ」
そう言い残し俺は病室を後にする。俺は明日もまたここへ来る。チエが目を覚ますまで何度でも来るつもりだった。たとえ何ヶ月、何年とかかっても。やっと分かった自分の想いを伝えるまでは───
それから俺は毎日病院へ通い続けた。相変わらずチエは目覚めない、それでも俺は呼びかけ続ける。それが、たとえ反応がなくても、たとえ必要とされてなくても…
それはあてもない作業のようにも思えた。
俺がこうして普通に生活している間にもチエが苦しんでいると思うと、眠ることさえロクに出来なかった。しかし今の俺にはそんなこと苦痛ですらなかった。
そして数日がたった。
今日も放課後になり俺はいつも通り病院へ向かう。校門を出たあたりで足がふらつくのを感じた。
…あれ、少し疲れてるのかな?そういや今日昼メシ食ったかな…覚えてないな。とゆうか学校であったことがいっさい思い出せなかった。
「タカ君フラフラしてるし顔色悪いよ?大丈夫?」
誰かに話し掛けられた気がした。
そうだ早く病院へ行かなきゃ、チエが待っているから。
「タカ君、ねぇタカ君?聞いてるの!?」
誰かが俺の袖をつかみ揺さぶる。そこで俺はようやく、このみの存在に気づいた。
「…あぁ、このみか?いつからいたんだ?」
「いつからいたんだ?じゃないよ〜。さっきからずっと話しかけてるのに!」
「俺は、アイツの所に行かなきゃいけないんだ。じゃあなこのみ…」
俺はこのみを振り切って歩きだそうとするが、体が動かない。このみが後ろからしがみついていた。
「ダメだよ!そんなに具合悪そうなのに家で寝てなきゃ!」
このみがほとんど叫びながら言う。
「タカ君最近おかしいよ!ちゃんと寝てる!?ちゃんとゴハン食べてる!?」
「離せ、このみ」
俺は、このみを振り切ろうとする。がロクに力が入らなかった。
「やだ!このままじゃタカ君死んじゃうよ!なんでタカ君が、よっちの為にそこまでしなきゃいけないの!?」
「なんでって、俺は…」
その瞬間、足がもつれ地面が近づき視界が真っ暗になる。
そこで俺の意識は途絶えた─────
目が覚めると自分の部屋にいた。辺りは真っ暗、どうやら夜中のようだ。…俺は何でここに居るのだろう?思考を巡らすが全く思い出せなかった。
ふとベッドの脇で黒い影がもそっと動いた。このみだった。
そうだ、俺はこのみと揉み合ってて倒れたのか?とすると、このみが家まで運んでくれたのだろうか?家にも帰らず、ずっと看病していてくれたのだろうか?
また、このみが少し動き目を覚ます。
「あっ、タカ君よかった〜目、覚めたんだ。タカ君倒れちゃって大変だったんだよ?」
やっぱり俺は倒れたのか。
「このみがここまで運んでくれたのか?」
「タマお姉ちゃんとユウ君に手伝ってもらったんだよ。二人とも、もう帰っちゃったけどタカ君のこと心配してたよ」
そっかタマ姉と雄二にも迷惑かけたな。
「そうだ、タカ君お腹空いてない?なんか作ってくるよ」
そう言って下に下りていくこのみ。確かに腹ぺこだった。俺は、いつから食べてなかったんだろう。
「タカ君、おいしい?」
俺は、このみが作ってくれた雑炊を食べている。
「あぁ、おいしいよ」
こんなにウマいものを食べたのは本当に久しぶりな気がした。
「よかった〜!ホントはいろいろ作ろうかと思ったんだけど、タカ君最近何も食べてなかったんでしょ?だから胃に優しい方がいいかと思って」
「そっか、ありがと」
いつの間にか、このみはこんなに料理が上手くなってたんだな…
「久しぶりだね」
このみが食事してる俺を見つめながら嬉しそうに言う
「あん、何が?」
「タカ君と普通にお話するの」
「そうか?」
「うん、そうだよ〜。タカ君やっと口を聞いてくれた」
そうだった、俺はこのみを避けてたし、チエの事故なんかもあって、このみとちゃんと話しをするのは久しぶりだった。
「ごめんな、このみ今まで避けてて…」
「いいよ。気にしてないって言ったらウソになるけど、またタカ君と普通に話せるんだもん。それだけで充分だよ」
改めてこのみの純粋さに気づいた俺はこのみを避けてたことをとても後悔した。
「このみに話しておかなきゃいけないことがあるんだ」
このみはあらかた察したのか
「ヤダ、聞きたくない。…って言ってもいつかは聞かなきゃいけないことだもんね…」
このみは優しく笑って言った。
「このみ、今まで苦しめてごめんな…俺はもう自分に嘘はつかない、だから全部聞いてくれるか…?」
「…うん」
「俺はアイツが…チエが好きだったんだ」
「…そっか、よっち可愛いもんね」
「だから、このみのことは幼なじみ以上には見れない、このみの気持ちに応えることはできない、ごめん…」
「タカ君、謝っちゃダメだよ…このみに魅力がなかっただけだよ。よっちの方が可愛いしムネもおっきいもんね。タカ君とよっちならきっとお似合いだよ」
このみは明るく聞こえるように言った。あきらかに無理をしていることぐらい俺には分かっていた。
「でも、このみは大好きな幼なじみだ、世界で一番大切な妹だと思ってる」
このみの目には涙が溢れ出す程たまっていた。
「…このみは、それでもいいよ。だって幼なじみならずっとタカ君のそばにいれるもん…」
「…このみ」
このみが俺の体にしがみつく
「だからっ…タカ君今日だけはっ…ウゥッ…明日には…いつも通りだから…ヒクッ…タカ君ごめんっ、ごめんね………うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
このみは俺の胸で、ひたすら泣き続けた。
全国のこのみすとの皆さんスマソ
ここで、このみリタイアです。
ホントは最後まで、このみかよっちか分からない展開とかにしたかったんだけど、私の文章力不足のために書けませんでした。・゚・(ノд')・゚・。
それから毎回感想書いてくれる方々ホントにありがとうございます。
とりあえず次で最後になると思いますが最後まで、どうぞよろしく。
俺も泣いた
貴明がヘタレてない、珍しい(w
今思えば日溜りの詩の貴明は冬弥並にヘタレだったな。
さあ〜、もうあのやさしい日々には戻れなくなってまいりました!
454 :
名無しさんだよもん:05/02/09 03:55:02 ID:esk/vV270
どっちを泣かせてもチャルには嫌われるんだよなぁ
貴明 「俺が二番目に一番好きなのはちゃる、君なんだ!」
ちゃる「先輩、私も愛してる キスしろ。」
そしてめくるめく愛と官能の世界へ。
456 :
名無しさんだよもん:05/02/09 14:57:59 ID:Qu4PqwuN0
ちゃる
「それはそうと先輩、二番目に一番好きというのは何か矛盾してないか?
まぁいい、ちゅー」
だが断る
「イルファさんの料理、どんどん美味しくなってきてるね」
「そうですか? ありがとうございます」
今日も姫百合邸で夕飯を御馳走になる。
家事は瑠璃ちゃんとイルファさんの当番制、今日の夕食当番はイルファさんだった。
最初はお子様ランチのような単調な味付けだったのに、最近はいろいろと凝った味付けにも挑戦しているみたいだ。うん、美味しい。
「ふ、ふん。家の台所を任せるからには、これくらい出来てもらえんと困る」
「もしかして瑠璃ちゃん、いつもいっちゃんばっかり貴明に褒められるからて拗ねてる?」
「さ、さんちゃん。な、何言うてるん・・・そ、そんなことあらへん、絶対にあらへんもん。貴明のあほぅ」
なんで俺?
「もう、瑠璃ちゃん、素直やないな」
「瑠璃様、心配しないでも大丈夫ですよ」
「イルファ?」
「貴明さんに褒めていただいて確かに嬉しいですが、それでも私の一番は瑠璃様に変わりありませんから」
「そんな心配してないぃ」
「ならどんな心配なん?」
「う・・・うぅ〜。さんちゃんのいじめっこ〜」
本格的に拗ねてしまった瑠璃ちゃんはおいておいてイルファさんと話す。
拗ねてしまった瑠璃ちゃんはそっとしておくのがいいと思う。下手に機嫌を直してもらおうとすると余計に機嫌悪くさせちゃう事が多いからだ。
いや、きっと瑠璃ちゃんはキスで誤魔化されるタイプだと思うけど、それを実行するには俺の方にかなりの心の準備が必要なのです。
あの時みたいによっぽどのことでもないかぎりは無理です。少なくとも今は。
「でも本当に上達してるよね。なにか秘訣でもあるの?」
「えっと、そうですね・・・やっぱり美味しいと言ってもらいたい人がいる、というのが原動力でしょうか。
瑠璃様、珊瑚様、そして貴明さんに美味しいと喜んでいただいてるところを思うと、いっぱい頑張れるんです」
「あ、ああ、そういう物かもしれないね」
正面からそういうこと言われると照れる。
「ふ〜ん、そうなん? ならウチでも美味しい料理作れるかな〜」
「いや、珊瑚ちゃんは絶対に手とか切りそうだから料理はしないほうがいい」
「つまらんな〜」
珊瑚ちゃんの肩に手を置いて首を横に振った。
それは美味しい、不味い以前の問題なのだ。
賑やかに夕食が進む。
そして珊瑚ちゃんの言葉がまた瑠璃ちゃんに油を注ぐ。
「でもな、貴明。瑠璃ちゃんの料理もあの頃からもっと美味しくなっとるんよ。瑠璃ちゃん、貴明すきすきすき〜やもん。
だから貴明は瑠璃ちゃんのことも褒めてやらなあかん」
あの頃ってのは、瑠璃ちゃんとイルファさんが仲直りして俺が姫百合邸に入り浸るようになった頃のことだ。
でも褒めろと言われてもイルファさんのは元が単調な味付けだったから違いがわかるのであってね、最初から凝った味付けだった瑠璃ちゃんの料理の違いなんてわからないわけですよ。俺、料理評論家じゃないし。
だいたい、『美味しくなった』とは言えても『今日も美味しいよ』なんて素で言えないよな。
「べ、別に貴明なんて関係ないぃ。イルファだってここにおるようになったやんか」
「瑠璃様・・・そう言っていただけるのは嬉しいのですが、残念ながら私は瑠璃様の料理を食べることができませんよ?」
珊瑚ちゃんはそれを聞いて(珊瑚ちゃんにしては)難しい顔をしながら、おっちゃんにどうにかしてもらおうかなとか呟いてる。
「ですからきっと、貴明さんの為に瑠璃様の料理も・・・もう、妬けてしまいます、貴明さん。ええ、ほ・ん・と・う・に」
「イルファまでそんなこと言う〜」
最後の方、こっちを向いたイルファさんの両目が十字に光った気がする。思わず背筋が震えた。
「ほ、ほら珊瑚ちゃん、きっと賑やかな食卓だから美味しく感じるんだよ」
珊瑚ちゃんとイルファさんにからかわれて(?)真っ赤になってる瑠璃ちゃんの為に助け船を出したつもりなんだけど、でもなぜか瑠璃ちゃんが怒りだした。
「そ、そんなん理由がないと美味しくないんやったら、無理して食べてもらわんでもええ」
「・・・貴明、ダメダメやな〜」
「ほんとに、はぁ」
そして珊瑚ちゃんとイルファさんに呆れられる俺。
・・・翌日、夕食当番の瑠璃ちゃんが出したのは俺にだけねこまんまだった。
完
感想下さった方、ありがとうございます。
私も今度は自分でSS置き場なんぞを作ってみましたのでよければ見てやって下さい。
と言っても過去のは紛失しちゃってここに投稿した分しかありませんが。
ttp://www17.ocn.ne.jp/~gonzou/
ほんわかでええなあ
>貴明のあほぅ
この辺もかわいい
瑠璃ちゃんの魅力を再発見
その日の姫百合家はいつもと雰囲気が違っていた。
「今日は、みんなで映画を見てきたのです」
へんにかしこまってミルファが言った。
映画、というところで双子が反応する。
うっうっと肩を震わせ始める瑠璃。涙を見られたくないのか、だだだっとロフトの上に行ってしまう。
珊瑚は珊瑚で鬱の入ったうっとぉしい顔をしている。自分の嫌な過去を思い出しているような陰の入り方だ。
「私はDANZEN!不満でしたからね」
妙にツンケンした物言いのイルファ。心に秘めたカップルのイチャイチャが見られなくて怒ってるファンみたいだ。
「ざっぱーん☆ なのだー☆」
意味不明な事を言って珊瑚に抱きつくシルファ。珊瑚お母さんに甘えたくて仕方ないらしい。
「ねえ貴明さん」
ミルファは貴明の名を呼び、強引に自分の方に向き直らせた。
目が据わっている。
「もっと私に甘えていいのだよ? 彼女と言っていいのだよ?」
「どうしたの? 今日のミルファはへんだぞ……」
「ことわらなくてもいいのだよ? 私を好きにしていいのだよ?」
「え、いや、だから、いきなりすぎるって」
「このまま押し倒してもいいのだよ? らぶらぶしていいのだよ?」
「てゆーか押し倒されてるの俺……い、いやぁぁぁぁっ!」
ぼんっ! 固いウレタン枕が貴明の顔にまともに命中する。
それを投げたロフトの主は、涙で顔がぐちゃぐちゃで、まともに見られたものではない。
「あふぉ貴明のすけべぇー! でてけぇー!」
ばたん! 貴明の鼻先でドアが閉じられた。
なんだったんだ、今日のは。
貴明は立ちつくしたまま何度も首を傾げた。
だが彼がその日の姫百合家の謎を知ることは遂に無かった。
【完】
ワケ ワカ ラン♪
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
( ・∀・) ( ・∀・) ( ・∀・)
⊂ ⊂ ) ( U つ ⊂__へ つ
< < < ) ) ) (_)|
(_(_) (__)_) 彡(__)
ミルファちん、ぴんち
珊瑚「・・・・進呈・・・ラブラブ券」
貴明「なに?これ」
ふ〜、いい湯だった。
浩之さんと神岸さんに風呂を先に譲り、寝床の客間に案内した後で風呂に入った。
さて、さっきのことをネットでチェックチェック。
ん〜、なになに・・・。
『布団には大きく分けて綿布団・羽毛布団・羊毛布団・化繊布団などがあり、日本では最もポピュラーな布団といえば綿布団です。
綿布団は日本のみならず、世界各国でも使用されており保温性が良い、湿気を良く吸ってくれるなどの特徴があります』
確かに俺の布団も綿布団だし、日本で多いっていうのも何となく納得かな。
『羽毛布団はその名の通り、水鳥の羽毛を布団の中に詰め込んだ掛け布団であり、綿布団より吸湿性・放湿性があり軽いという利点があります。
しかし、綿布団より柔らかいので敷布団に不適と言えます。
羊毛布団は中綿に羊毛を用いた布団のことを言い、弾力性があり、保温性や吸湿性・放湿性が優れているために敷布団に最適です。
そして化繊布団は中綿に化繊綿を50%以上使用した布団のことを言い最も安価で、弾力性が長く持続し、取り扱いが簡単です。
また、化繊100%ですと洗濯しても縮みの問題がほとんどないので、安心して洗濯が出来ます』
へぇ・・・結構布団によっても敷布団とか掛け布団とかに適した布団があるんだな。
『人は人生の約1/3〜1/4を布団の中で生活します』
ああ、たしかにそうだよな。
『また、疲れをとるために睡眠が苦にならないためにも、多少値段が高くても良い布団を選ぶべきです』
なるほどね、そう言われてみるとそういう考えもできるよな。
なんか母さんが寝具に関してちょっとうるさいのもちょっとばっかりわかる気がする。
あったかい布団で眠れればやっぱり気分がいいもんな。
ん、なになに?『布団と遺伝子組み替え食品』?
『木綿ワタも、殺虫成分を生成する遺伝子を組み込まれたものが出てきはじめ、その葉を食べた虫は、数十秒の内に死に絶えます。
この木綿ワタを使った布団や衣類を人間が使用した場合の長期的な調査は行われていないので、実際に消費者が知らない間に被験者にされているようです。
また、布団や衣類を購入するときではなく、ワタ自体を購入しようとしても、このような遺伝子組み換えであることを表示したものはありません。
色々な方面から、遺伝子組み換えの必要性が賛否両論ですが、生活する上での様々な危険要素をこれ以上増やさないようにも、消費者が強くなるべき時代が来たように思います』
うーん、怖いなぁ。
遺伝子組み替えの大豆だって出たころはいろんな賛否があったし、布団でもこんなことがあるなんて知らなかった。
そういえばこのみの家でもこの前新しい布団を買ったって話しだしな。
明日注意しといてやるか。
・・・・・・・・・って、買ったのは羽毛布団って言ってたっけ。
それじゃ、全然関係ないか。
・・・・・・・・・。
ん〜、まだ11時か。
ちょっと早いけどもう寝るか。
お、今日の布団はふかふかだ。
そういや昼間に勉強する前に干しておいたからな。
でももう夏だからちょっと暑いかも。
469 :
7月文月:05/02/09 23:38:43 ID:m0H3q/AA0
ようやくこちらにも投下です。
あれ?依然見たときから大分飛んでないか、と思う方は前スレをごらんください。
なんか布団ばっかりの話になっちゃいましたけどようやく初日終了です。
ちなみに今日の話、BGMに『風がくれたおやすみ』を聞きながら読めばちょっとはよく思えるかもしれないですw
どっかに纏めてアップしてくれたりすると楽でいいなぁ。とか
例えば郁乃雄二の人みたく
なんていってみる
471 :
7月文月:05/02/09 23:49:19 ID:m0H3q/AA0
そうですねぇ・・・一応考えてはいますがもうしばらくは作ることはないと思います。
まとめサイトに関してはゆっくりお待ちくださいませ。
>>469 乙。
とうとうこっちに移動してきましたね〜
頑張ってください。
幾度となく一人でベッドから見る窓の向こうの緑景色は、
いくら目が治って新鮮味を感じていたとしても、早々に飽きてしまうものであった。
煌々と照っていた太陽が光を抑えながら傾き、空を薄い橙色に染め始めている。
もうそろそろ待ち人達が訪ねて来る時間。
あたしはノロノロとベッドから降りて、眩しく感じ始めた景色をカーテンで遮る。
薄暗くなった室内は、どこか寂しささ醸し出していた。
小さく欠伸をしながらベッドに戻り、真っ白な掛け布団を被って横になる。
少しだけ眠ろう。今日はいつもより早起きしてしまったから。
きっともうすぐこの部屋も賑やかになる。楽しみの時間を早送りするためにも……。
コンコンと扉の向こうでノックの音がして、気持ち良い眠りから起こされる。
「寝てるのか?」
扉の隙間から覗き込んでいるのだろうか、そんな男の声がしてきた。
あたしの病室に来る男なんて姉の恋人であるたかあきしか居ない。
声と気配から察するに一人で来たのだろう。
扉に背を向けた格好だったので、このまま寝た振りでもしてみようかな。
そんな悪戯心が生まれてしまう。
「入るぞー」
静かに扉をスライドさせながら、たかあきは半分忍び足でそろそろと入ってくる。
電気を点ける気配も無い。どうやらあたしを起こさないようにとの心遣いらしい。
すぐ後ろまでたかあきは近づくと、ベッド脇にあったパイプ椅子に座ったようだ。
何かカサカサと音を立て始める。次にモクモクと何か租借する音。
また勝手に人の見舞い品を食べてるよ……。
「うん、この菓子は旨いな」
小声で感想。聴こえてますから。むしろあたし起きてますから。
と思ってみたものの、伝わるはずも無く。心の中で大きく溜息を吐いた。
「っと――」
カツンっと床に何かを落としたようだ。
パイプ椅子がギシリと軋む音。次いでゴツっと鈍い音がしてあたしのベッドが少し揺れた。
「イツツ……」
どうやら落とした菓子を拾うとして頭をベッドの硬い縁にぶつけたらしい。
あたしは噴出しそうなのを堪えようとして、思わず体をよじってしまう。
そのせいで顔半分隠れていた掛け布団が肩口までずれてしまっていた。
「あ、いけね起こしたか? ってまだ寝てんのか」
そう言うと、たかあきは掛け布団を引っ張り上げてあたしの首元まで掛け直してくれる。
姉がいつもしてくれたはずなのに、たかあきがしてくれるだけで少し安堵感がする。
まるで母親が子供にしてくれるような。
ただの姉の恋人っていうだけなのに、僅か短期間であたしの中にも入ってくる。
不思議だった。あたしは他人にあまり関心が向かないような性格だったはずなのに。
「うん」
何かに納得したようにたかあきが呟く。それと同時に背後で立ち上がる気配。
たかあきの気配がベッドをくるりと回ってあたしの前で止まる。
じぃーっとあたしの顔を見られてる気がする。
「寝顔も似てる」
似てる? 姉と似てるということだろうか。姉妹なんだから似てて当たり前じゃない。
というか人の寝顔見て楽しむのも悪趣味だと思う。
「愛佳に似てて可愛いな。うん」
思いがけない言葉に、一瞬ドキリとしてしまった。
そういう言葉に免疫がないの知ってて言ってるんじゃ――って今は寝てることになってるんだっけ。
顔が火照ってるんじゃないかと心配したけど、薄暗い室内じゃ判らないかも。
なんだかずっと見られてる気がする。このままじゃある種の拷問と言えなくない。
少し薄目で確認してみる。モヤが掛かったような視界の先には、確かにたかあきの顔があった。
でもそれは、疲れたように目を閉じて、ベッドの縁に腕を交差してそこに寄りかかりながら
眠っている姿だった。
今度はあたしが仕返しをする番だ。初めて見る目の前の寝顔を見つめる。
少し女顔だと言っていた通り、なかなかどうして可愛いかった。
たまにはこんなゆっくりとした時間もいいかもしれない。
姉はこんなたかあきの姿、もう見たのかな……。
規制巻き添えされてた時間を利用して初SS初投稿。
慣れないことはするもんではないですねorz
>>473 いや、初めてにしては実に優秀、とても初めてとは思えない。
偉大なり。
というわけで今後もガンb(ry
何故だか優秀が優季に見えてしまった。
>>461 GJです。
まったりいいなぁ。
いつも見事に4レスでまとめられるのはお見事。
頑張って下さい〜♪
かなり気が早いかも知れんが次スレ用テンプレ案。
・割り込み防止の為、出来るだけメモ帳などに書いてから一括投入する。
・名前欄にタイトルと話数を明記する。
・間が開いてしまった場合はメール欄に前レスの番号をレスアンカー付で明記する。
・他人の作品を自サイトに転載する場合は必ず作者の許可を得てからにする。
あくまで読み手側から見たテンプレ案なんで適宜追加、修正お願いします。
まだ後100ちょい余裕あるしー
あとメモ帳で投下しない類の人は終わりの部分に―終了―とか入れると良いかも。
想定していた話数より多くなって追加されることとかあるし
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は微妙な恋人関係。ところが雄二に婚約者が現れて家に
居ついちゃった。
春乃さんの軽いジャブなんてなんのその二人は初めてのデートに……、そこで春乃への不安を打ち明け
る郁乃。そんな不安を解消してあげようと雄二は郁乃を海に連れて行くことに決めた、けど……。
第一話から第九話はこちらで。あとテンプレ案も置いてあるので修正案とかもどんどん言ってくだされ。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
「でも実際の問題、いつどうやって行こうか」
自然食レストランとやらで昼食を取る。食事の内容に気を使わなければならない郁乃は店員とあれこれ相
談してメニューを決めた。郁乃に調味料やらカロリーやら添加物のことを質問されたときの店員の応対は明
快で、偶然見つけた店だったがここにして正解だったようだ。
「来週の木曜日とかどうでしょう? ほら、秋分の日ですし」
「……んと、その日は用事があるんだ。ごめん」
その日こそがまさしく春乃との期限の日、つまり見合いの日その日なのだった。考えてみれば本当にもう
すぐそこだ。春乃のあの自信はどこから湧いたものだったのだろう? と雄二は疑問に思う。もしかすると運
命論者かなにかだとか。あの年頃の女の子ならありえそうなことだ。
「雄二さん、いい日ありますか?」
ふと考え込んだ雄二を、郁乃は日取りのことで思い悩んでいると思ったようだ。
「急なところでは明日明後日はどうなのさ?」
「あ、ごめんなさい。今週末は外泊許可を取ったので家に帰ることになってるんです」
「そっか、自宅に帰るのどれくらいぶりなの?」
郁乃は記憶の糸を手繰ってみる。実のところ入院生活が長いと、時間の感覚というのは非常に曖昧なも
のになってしまうものだ。なまじカレンダーを置いていなかった分、どれくらいという尺度では分かりにくい。
それこそ――
「何年かぶり、かな?」
一昨年に再発と急性期を一度迎えて、それ以降は帰ってなかったはずだから……、とは言ってもそれ以
前の記憶となるとさらに曖昧だ。
「それは楽しみだね」
「どうでしょう? 家に帰ったと言っても、他所のお宅にお邪魔するような気分になるかもしれませんよ」
「家、改築とかでもしたの?」
ふるふると郁乃の首が横に振られる。
「なら多分大丈夫さ。ウチの姉貴なんてもっと長いこと家を空けてたけど、帰ってくるなり我が物顔だったぜ」
根拠のない励ましではあった。なにぶん、環は年に一度くらいは帰ってきていたのだから。
「それならアレだな。とりあえず来週の日曜くらいを考えておきますか」
「はい」
ちょうどそのとき二人の注文した料理が運ばれてきて、会話は一度打ち切りとなった。
「んで、どうやって病院を抜け出すかなんだけど……」
郁乃はようやく料理の半分を始末し終えようとしていたところだったが、それだけの時間で雄二は自分の
分をぺろりと平らげ終わっていた。
「看護士さんに見つかるのとかもやばい?」
「……ちょっと散歩にって言えば大丈夫だと思います」
「そっか、午前中なら誰も訪ねてこないんだよね」
コクリ。
「後は流石に置手紙とか書いておかないとやばいか。行方不明とか、誘拐とか思われたらえらいことだもん
な」
「……誘拐しちゃいます?」
「身代金を要求しない場合って誘拐っていうんだっけ?」
「……要求するのが営利誘拐ですよねぇ」
二人で首を傾げてみる。
「ま、どうでもいいか。置手紙の用意のほうはよろしくな」
そうして郁乃が食べ終わるのを待って、またショッピングモールの中をのんびりと歩いて回った。結局郁乃
の体力が気がかりで、3時過ぎには病院に帰ることにする。結局、買ったのは日傘一本だったが、それでも
郁乃は満足そうだった。
長い坂道を時間をかけて登り、たっぷり行きの2倍以上の時間を使って病院に戻ってくる。
そして何も考えずにガラリと病室のドアを開けた。
「わひゃ!」
「わわっ!」
ふたつの慌てた声と、勢いよく飛びのくふたつの影。顔を赤くした愛佳と貴明がそこにいた。
「貴明、お姉ちゃんに変なことしようとしてたんじゃないでしょうね」
じろりと郁乃の目が貴明を睨む。
「まま、まさか。な、なあ、愛佳」
「う、うん、そうですよ〜。そんなわけないじゃないのよですったら」
明らかに挙動不審のふたりであった。
雄二はつかつかと貴明に歩み寄ると、その肩をぽんと叩く。
「邪魔して悪かったな。委員ちょ、今日は郁乃ちゃんつれて帰るんだろ? んじゃ俺は貴明持って帰るぜ」
「あ、はい、よろしくお願いします〜」
「俺は所有物じゃないって」
「却下」
愛佳と何をしようとしていたのかと貴明をからかい、家に帰ってメシ食って寝る。なんだかんだで疲れてい
たのだろう、いつもよりずっと早い時間にはもう泥のように眠って、日曜だろうと関係のない環に叩き起こさ
れるまで夢のひとつも見なかった。
本当ならこんな予定のない日曜日は昼過ぎまで眠って、怠惰に過ごしてしまいたかったのだが、起こされ
てしまったものは仕方がない。貴明のところにでも遊びにいくかと、とりあえず身支度は済ませてしまう。多
分、貴明も今日は暇を持て余していることだろう。家に帰っている郁乃を愛佳が構わないわけがないのだ。
「ふぁぁ――」
しかし眠り足りなかったのか、疲労が残っていたのか、ベッドを見るとそのまま誘惑に駆られてその上に
横倒しになる。ああ、このまま寝てしまうほうが気持ち良さそうだ。そう思ったときに部屋の扉がコンコンと柔
らかくノックされた。
「ほい」
と、気軽に返事してからはっと気がついたときには手遅れだった。
扉が開いて春乃が顔を覗かせた。
「雄二様、今日はご予定はございませんの?」
言われてみれば期限までもう今日を入れて五日。家まで押しかけられたときはどうなるかと思ったが、意
外に春乃は攻めてくることはなかった。まるでそれが妻の役目だと言わんばかりに雄二のやることには口を
出さず、家のことをきっちりとこなしている。
そうだな。どうせなんの予定もないんだし、今日くらいは付き合ってやるべきか。
「今日はなんもないよ」
「そうなんですか」
春乃の顔が明るくなる。
「でしたら、もし宜しかったら、なんですけど――」
そうして連れ出されたのは昨日郁乃と行ったばかりのショッピングモールだった。どうして女というのはこう
も買い物が好きなのだろうか? 雄二には理解できない。だがアクセサリーやら服やらを楽しそうに見て回
る春乃は普通の14歳の女の子だ。
「これ、どうですか?」
と、たまに雄二に意見を求めてくるが、正直なところよく分からない。だいたい買い物なら一人でも来れる
だろうと思うのだが、女の子の意見はまた別なのかもしれない。
とにかくまあ、押しかけ婚約者であることさえ除けば春乃は可愛らしくて気立てのいい娘だ。
一緒に歩いてそんなに悪い気がするものでもなかった。
それを見かけたとき、心が、震えた。
見なければ良かった。気がつかなければ良かった。姉に誘われたからといって、昨日来たばかりのショッ
ピングモールに再び来なければ良かった。雄二さんの姿を人ごみに見つけて心を躍らさなければ良かった。
片手に大きな包みを抱えて誰か他の女と歩いている雄二さんになんて出会わなければ良かった。
雄二も郁乃も知らなかったのだが、二人はこのとき同じショッピングモールに再び居合わせていた。
雄二は春乃に誘われて、そして郁乃は愛佳に誘われて――。
昨日は着る機会がないと買わなかった服だが、愛佳がそれを良しとはしなかったのだ。それに姉とでかけ
るのは郁乃にとっても嬉しいものであった。
だからこれは楽しい日曜。
そして偶然にもその人ごみの中に雄二の姿まで見つけることができたのだ。
一瞬の喜びに跳ね上がった心が、春乃の姿を見つけ、次の瞬間には黒い蛇に巻き付かれたかのように強
く強く締め付けられる。
――苦しい。
視界が歪む。息ができない。手足がびりびりと痛んで、ふっと感覚が消える。
「郁乃?」
その様子に気付いた愛佳が不安げに郁乃を見て、それからその視線を追った。
そして愛佳も見つける。春乃と肩を並べて歩く雄二の姿を。
――再発の直接的な要因は明らかになっていませんが、大きなストレスがその要因のひとつとなっている
ことは明らかです。
医者の言葉がふと脳裏に甦る。そう、だから学校に通うようになったとき、その環境の変化がストレスと
なって再発する危険性を恐れていたのだ。けどまさかこんな形で!?
「あ……う……」
郁乃が何かを言おうとしているが、それは言葉として形にならない。
「――郁乃ッ!!」
その叫びは人ごみの喧騒を切り裂くようにして、雄二の耳にも届いた。
聞き覚えのあるその声に引っ張られるように視線が横に流れ、そして車椅子とその傍らに立つ少女を見つ
ける。
――郁乃ちゃんと委員ちょ?
一瞬春乃といる自分を見られたくないという思いが働いて、その場から逃げ出そうと思ったが、すぐさま事
態がおかしいことに気付く。左手に持っていた和菓子の包みを放り出して車椅子に駆けつける。
「郁乃! 委員ちょ!」
傍目にも郁乃の異変は明らかであった。愛佳はすっかり動転してしまっていて、郁乃郁乃と繰り返し呟い
ている。
「委員ちょしっかりしろ!」
その肩を掴んで揺さぶると、ようやく雄二がそこにいることに気付く。
「あ、向坂くん……」
「郁乃はどうしちゃったんだよ!」
「あ、それは、その……」
泳いだ愛佳の視線が、おずおずと後を追いかけてきた春乃を見つける。
「とりあえず救急車を呼んだほうがよろしいのではないでしょうか?」
「そうだ、それだ!」
慌てて雄二は携帯を取り出して119を押した。
それから慌しく時間が過ぎた。携帯電話からの119番は固定電話からの119番とは異なりまず代表消
防本部に繋がるため、そこで手間取った。2度も電話を転送されてようやく救急車が出動する運びとなり、到
着を待つ間にようやく正気を取り戻した愛佳がカバンから薬を取り出して郁乃に飲ませた。
そして駐車場近くで救急車を待つ、これまで体験したことのない10分間があった。
郁乃は目を閉じたままで、意識はあるようだったが何も言わない。もしかしたら何も言えない。愛佳も、雄
二も、春乃も誰も一言も口を利かなかった。
ようやく救急車がけたたましくサイレンを鳴らしながら到着したとき、雄二は心の底からほっとした。救急隊
員が手早く郁乃を車椅子からストレッチャーに移し、救急車に運び入れる。愛佳が郁乃の病状について説
明しながら一緒に救急車に乗り込んだ。雄二も一緒に乗り込もうとしたが、救急隊員に「身内の方?」と聞
かれ、答えに詰まる。
「車椅子、お願いします」
愛佳のその声を最後に、救急車は後部ドアを閉じて走り去った。
乗り手のいない車椅子を押して、とぼとぼと家に帰る。車椅子は玄関に畳んで置いておいた。
春乃とはあれから一言も口を利いていない。無言で靴を脱いで洗面所に向かい、顔を洗う。
――クソ、なんでだ。なんでこんなことになっちまったんだ。
どんなに後悔してもどうにもならないとは分かっていても、考えないではいられない。ちょっとした気まぐれ
で春乃と出かけたりしなければこんなことにはならなかったのではないか、と。それは雄二本人が思う以上
に真実であったのだが、幸い彼はそれを知らずに済んでいた。
冷水を何度も顔に浴びせかける。
とにかく今は雄二がじたばたしてもどうにもならない。何がどうなっているのかは分からないが、病院の処
置に頼るしかないのが現状だ。
チリチリと焦りが胸を焼く。どうしようもないと分かっていても、それで気持ちがどうにか収まるわけでもな
い。
部屋に戻ろうと廊下に出たところに春乃がいた。
「雄二様」
無視して隣を抜けようとした雄二の前に春乃が立ちふさがる。
「雄二様、申し訳ありませんでした。私が買い物になんて誘わなければ……」
「春乃さんの所為じゃないさ」
それは心からの本心だった。別に春乃の所為ではない。もし誰が悪いのかと問われれば間違いなく自分
だと雄二は思っていた。郁乃が春乃のことを気にしているのを知っていたのに、何も考えずに一緒にでかけ
るなんてどうかしてたのだ。
「……あの方にはお気の毒です。ですが……本当ならこんな時にこんなこと言いたくはないのですが……」
春乃がじっと雄二の顔を見つめる。
「あの方は雄二様にとってご負担なだけです。私は、私なら雄二様を支えていけると、そう自負しておりま
す。それとも――それとも雄二様は私の足が動かなくなれば私のほうを向いてくださるのでしょうか?」
――がつんっ!
右の拳が柱を叩いた。握り締めた拳がぶるぶると震えている。
身をすくめた春乃が一歩後ろに下がった。
「頼む、バカなことを言わないでくれ」
「いいえ、言います。言わないと……」
春乃が両手を胸の前で抱くようにして目を伏せる。つぅと一滴だけ涙が零れた。
「雄二様は同情されているだけです。あの人を哀れだと思われて、情けを――」
春乃はそれ以上言えなかった。雄二の両手が春乃の頬を挟んだからだ。その手が小刻みに震えている。
「頼む――。それ以上言われたら俺は何をしちまうかわかんねぇ」
「構いません。もとよりこの命、雄二様に奪われるなら本望です」
春乃はまっすぐに雄二の瞳を見つめ返している。しかしその瞳は今にもあふれんばかりの涙で潤んでい
る。小さな顔、小さな体。
「キミはおかしい……」
「私をおかしくさせているものがあるとすれば、それは雄二様への想いによるものです」
「クソッ!」
柱を殴りつける。折れるものなら折るくらいのつもりで殴りつけたが、頑丈な柱はびくともせずに、拳のほう
が裂ける。鋭い痛み。だがそれがどうした。そのままぐりぐりと拳を押し付ける。
「雄二様、ご自分を傷つけるのはお止めください」
春乃の手が伸びて、柱に押し付けられたままの雄二の腕の触れる。
「触れるなっ! 分からないのか、俺はキミを殴る代わりにこうやってるんだぞ!」
「ならば柱などよりも私をお殴りくださいませ」
春乃は一歩も引かない。本気なのは火を見るより明らかだ。
「クソ食らえだ!」
春乃の体を押しのけて雄二は自分の部屋に戻る。ずきずきと痛む手をそのままに乱暴に扉を閉めるとベッ
ドに転がった。
――しかしそれでも春乃はついてきた。わざわざ救急箱を抱えて部屋に入ってくる。
「消毒だけでもしませんと」
ベッドの脇に座って、救急箱を開ける春乃を見ているとムカムカと黒い感情がわきあがってくる。
分からないのか? 俺は今キミの顔が一番見たくないってことが!
オキシドールを脱脂綿に染み込ませている春乃の襟首を雄二の傷ついた右手が掴んだ。そしてそのまま
乱暴にベッドに引き寄せる。春乃の手から落ちたオキシドールの容器が床に転げて、独特の鼻につく匂い
のする液体が広がっていく。
驚きに目を開いた春乃の顔が雄二の目の前にある。上半身だけがベッドに横たわっている。
「雄二さまの……お好きに……」
搾り出されたその声が、燃え上がっていたはずの怒りを、別な怒りで焼き尽くす。
春乃の襟首を掴んだままだった手を離して、ベッドから起き上がる。春乃は上半身だけをベッドに横たえた
姿勢のままで雄二を眺めている。その足元に広がったオキシドールを吸った絨毯に、雄二は右の拳を押し
付ける。焼かれたような痛み。
「消毒完了だ。頭を冷やしてくる。今夜は帰らない」
「はい……承知いたしました」
床を踏み鳴らして家を飛び出した。行くアテは、無い。郁乃がどこの病院に搬送されたかも分からないの
だ。とは言っても近辺で救急病院は坂の上のあの病院しかない。普通に考えればそこに救急車が向かうこ
とは容易に想像できる。
――けど、こんな時間に押しかけていって何ができるっていうんだ。
根本的に入り口で止められてしまうだろう。面会時間なんてとっくに過ぎているし、――身内ではないのだ
から。
仕方なく貴明の家のチャイムを押した。
酷い表情の雄二を見て、貴明は結局何も聞かずに家にあげた。
その夜は結局一睡もできはしなかった。
太陽が昇ってくる。今日は祝日だからか、貴明が起きてくる気配は無い。それでもそのうち、このみなりが
押しかけてこないとも限らない。そう思うとあんまり長居をしたくもなかった。
「助かった。ありがとな」
誰にも聞こえていないのは分かっていたが、気持ちだけの礼を呟いて靴を履いた。外は腹が立つくらいの
快晴。行くアテもなく歩き出す。いや、足は明確にひとつの方向を向いていた。
まず家に戻って車椅子を手に歩き出す。
病院の前に立って、立ち尽くす。
――いや、いくらなんでも早すぎるだろ。
時計の針はまだ7時を指していない。胃がキリキリするのを感じながら、踵を返して、適当な喫茶店に入り
モーニングを頼んで時間を潰した。テレビを見たり、新聞を読んだりしてみるが、時間がなかなか進まない。
早く郁乃の顔を見て安心したいという思いと、顔も見れないのではないかという恐怖。
時間が早く過ぎて欲しいのか、それとも面会にいける時間になってほしくないのか。雄二には判断がつか
なかった。ただ間違いないのは、何度時計を見ても進まなかったように思えた針が、気がつくともう面会でき
る時間をとっくに過ぎていたということだ。
観念して喫茶店を出る。
再び病院前。雄二はそこから一歩が踏み出せない。
――だって郁乃が俺の顔を見たら、またあんな状態になるかもしれないじゃないか。
そう思って病院に背を向ける。背を向けたつもりだった。だが気がつくともう病室前にいる。
病室のネームプレートはそのままだった。それで少し安心する。
――そうだよ。寝てるかも知れないし、ちょっと覗くだけでも。
ゆっくりと扉を開ける。ほんの少しあけた隙間から中を覗き込む。
果たして郁乃はそこにいた。以前と変わらぬ様子でベッドに座って、そして雄二がわずかに開いたドアの
隙間を凝視していた。
観念して雄二はドアを開ける。
愛佳も、ふたりの両親も見当たらなかったが、椅子や床に置かれた荷物から今は一時的に病室を離れて
いるだけなのだと分かる。
「おはよう」
雄二の挨拶には返事をせずに郁乃はじっとこれまでにないほどきつい瞳で雄二を見つめている。そして
ゆっくりと口を開いた。
「――今すぐあたしを海に連れて行って」
緊急で何行か削ったりしてます。極力違和感のないように慌てつつも処理したつもりですが……。
貴明と愛佳の恋愛も描いていきたかったのですが、自分の体力と相談した結果、進んでるんだよ〜という
雰囲気見せで終わります(´・ω・`)
今回ちょろっと出てきた携帯電話からの119番ですが、回線の状況によっては県外の代表消防本部にか
かっちゃうことすらあるそうで、運が悪いと電話を取り次いでくれることすらできずに、近くの消防署に直接電
話してくれ、ということまであるらしいです。近所の消防署くらいはメモリー登録しておくべきかもしれないで
すね。
次回はまた何日か空くことになると思います。それではまた。(・ω・)ゝ
泣かせ系だと、夕日の浜辺に車椅子を押してって「綺麗だね」とかひとしきり話した後に郁乃シボンヌ。
( つД`)そんなのはイヤダ
いや、ここはズバリ別れ話を切り出されると見た。
「雄二さんの重荷になりたくないから…」とか
>>494 いや、リハビリの成果を見せて、私はもう大丈夫だから水月………じゃない、春乃さんのところに行って。って言われると見たね。
浜辺で、ジュースとぬいぐるみを持つ愛佳を振り切って雄二と抱き合うんじゃないの?
その日、俺とこのみは久しぶりに同じ布団で寝た。
翌朝このみと一緒に学校へ行き、一緒に昼ごはんを食べ、一緒に帰宅する。少し前まで当たり前だったことが本当に久しぶりに思えた。
二人での帰り道、俺は学校から伸びるの坂道の途中で立ち止まる。
「じゃあ、このみ。俺チエの所に行くよ」
「うん。よっちによろしくね」
「あぁ、分かってる」
チエはいつ目覚めるのか分からないが俺はそう答える。
「よっちのこと悲しませたらダメだよ?大切にしなかったら、このみがよっち奪っちゃうんだからね!」
「それ、何かおかしくないか?」
「これで、いいんだよ。これで…」
きっと、このみなりの照れ隠しなのだろう。
「じゃあな、このみ」
俺は別れを告げる。
「バイバイ。タカ君、また明日!」
このみも別れを告げる。俺たちは、お互い違う方向へ歩き出す。
それでも明日がある、また会えば笑いあえる。俺たちは、ずっと幼なじみなんだから。
俺は学校の少し下に位置する、チエが入院している病院に着く。
もう何度も通っているので、何人かの看護婦さんに名前を覚えられたようで、挨拶をされる。他の人から見たら毎日お見舞いに通っている俺はチエと、どんな関係と思われているのだろうか?
チエのいる病室へとたどり着く。チエのお母さんが来ていたのだろう、花が代えられている。
「よぉ、調子はどうだ?」
俺は、いつも通りチエに話しかける。返事もしない相手に話しかけるなんて最初は恥ずかしいとすら思っていたが、最近ではチエの呼吸など一つ一つが俺に返事をしてくれているような気さえしていた。
「今日、やっとこのみに自分の気持ちを伝えることが出来たんだ、アイツちゃんと最後まで聞いてくれたよ。泣かしちゃったけどな」
俺は苦笑いする。
「それで、やっとチエに想いを伝えられるのに、お前は起きてくれないもんな…」
チエの胸が僅かに上下する。腕から伸びているチューブがとても痛々しかった。
「起きてくれよ…またチエの声が聞きたいよ、笑顔が見たいよ…」
俺は、表情のない顔に優しく触れた。とても冷たく感じた。
俺は自分の無力さに悲しくなる。
「俺はチエが大好きなのにっ…」
俺はチエに軽くキスをする。それは、ほんの一瞬だったが、永遠ともとれるような長い時間にも感じられた。
502 :
名無しさんだよもん:05/02/10 22:14:35 ID:ZzlquClU0
女タカアキは禁忌…?
その時だった
「…あれ、センパイ?」
今まで、無表情だった顔に鮮やかな赤みが蘇る。
「…チエ?」
「…あれ?アタシ何で?」
チエが目覚めた。
「お前事故あって数日意識がなかったんだぞ!?大丈夫か?痛いトコとかないか?」
彼女は自分の体を確認するかのように見渡した後、彼女は申し訳なさそうに言った。
「…お腹空いたッス」
「バカッ!お前、俺がどれだけ心配したと思ってんだっ!」
思わず俺はチエに抱きつく。
「うわっ、なんスかセンパイッ!?」
「よかった、ホントよかった…」
「センパイ…アタシのコト心配してくれてたんスか?」
「当たり前だろ!」
彼女はニヘヘと笑うが、一瞬躊躇ったような表情をし、俺の体を引き剥がす。
「…?」
一瞬、拒絶されたのかと心に不安がよぎる。チエは照れたように
「ほ、ほら今アタシ髪もボサボサだし、ずっとお風呂も入ってないだろうし…」
「そんなの構うかよ」
「う〜、アタシは構うッスよ〜」
今の俺にとっては、そんなことはどうでもよかった。今はただチエが目覚めてくれたことが嬉しかった。
「…うぅっ…うっ」
「…センパイ泣いてるんスか?」
「知るかバカ…」
チエは静かに目を伏せて噛みしめるように呟いた。
「センパイ…ありがとッス…。そんで、ただいまッス…」
その後検査の結果、体に異常などなかった為チエは、体力が戻り次第すぐに退院できることになった。
「よかったのか?お母さんに車で送ってもらわなくて」
「いいッスよ、今は久しぶりに外を歩きたい気分なんス」
病院の帰り俺とチエは二人で歩いていた。彼女は家まで送ると言う母親の申し出を断って、俺と一緒に帰ることを選んだ。
「なぁ。俺、チエに言いたいことがあるんだ」
俺は足を止めチエに向き直って言う。
「なんスか?…と言っても実はアタシ、もう予想ついてるんスけどね」
彼女はイシシと意味ありげに笑う。
「思ってるのと違うことかも知れないよ?」
俺は見透かされているようで、ちょっぴり悔しくてイジワルを言う。
「そのときは舌咬みきって死んでやるッス」
チエはペロッと舌を出す仕草をする。
こりゃ期待に応えないとな…
俺は一度心の中で深呼吸をする。大丈夫きっと言える。
「俺はチエが好きだ。このみでも、他の誰でもなく、チエを一番愛してる」
心の中で何度も何度も噛みしめた想いを言葉にする。
「…アタシでいいんスか?」
不安げな顔でチエが下から見上げる。
「俺は、お前じゃなきゃ嫌なんだ」
「…いっぱい迷惑かけるかもしれないし、ワガママ言って困らせるかもしんないッスよ…?」
「お前のことで、もっともっと俺を困らせてくれよ。それが俺の幸せなんだから」
「何か、ウソみたいッス…」
「こら、勝手にウソにするなよ」
チエは一度うつむき、また顔を上げ話しだした。
「センパイ、今だから言えるけど、アタシずっと前から…ううん、たぶん会ったときからセンパイのコト好きだったんスよ?」
「会ったときから?」
確か俺がチエと初めて会ったのは俺が中学の時、まだ中学に入ったばかりの頃だ。
あの時は、このみが新しい友達が出来たって嬉しそうに俺に紹介してたっけ。
「センパイに会った瞬間に惹かれたんス。でも、それと同時に、このみがセンパイをどう想ってるかも分かってしまったんスよ」
「…そうだったんだ」
「な〜に、しけた顔してんスか?センパイにはアタシが今まで3年間、我慢してきた分しっかりモト取らせてもらうッスよ〜」
「3年も誰にも言わずに、ずっと1人で耐えてたんだ…?」
「べ、別になんてことないッスよ〜!ほ、ほら、あたしとしては、先輩がこのみとくっついても、あたしとくっついても、どっちでもお得なワケで〜…」
俺はチエの髪を優しく撫でた。
「もういいから、もう耐えなくていいから…今まで待っててくれて、ありがとう」
「…センパイ、あたしホントは辛かったッス。このみのために何度も何度も諦めようとした…グスッ…でも、出来なかったっ…」
チエの瞳から涙があふれてくる。俺は指先でぬぐってから、チエの唇に優しくキスをした。
「これからは、ずっとそばにいるから」
そして今、俺とチエは晴れて恋人同士になっている。
俺は彼女の全てが好きになった。それは、無邪気な子供のような笑顔だったり、ふとした瞬間に見せる大人っぽい横顔だったり、俺を困らせるワガママだったり、ケンカした後に口にするごめんねだったり、俺はチエの嫌いなとこすら含めて全てを愛おしいと思える。
まぁ、俺は時々振り回されているんだが…
そして、このみは相変わらず昔のように一緒に登校したり、また不意に抱きついてきたりするようになった。
チエはそれを見ても不機嫌になったりはせず、むしろ対抗して反対側から抱きついてくる始末だ。これは、チエが彼女であることからくる余裕なのだろうか?俺は嬉しいだか困るんだか…
まぁつまり、このみとは何だかんだでグルリと一周して、再び元の幼なじみの関係に戻ったということだ。
春が終わりをつげ初夏の匂いが香りだす頃、俺はチエと待ち合わせをしていた。
「せんぱ〜い!お待たせッス!」
「うわっ!」
チエが後ろから抱きついてくる。
「タマ姉みたいなことするなよ」
「タマ姉?あぁ、あの姉御ッスか!…ふむ、横綱と同じことしても芸がないッスね〜」
とチエは正面に回りイシシシとイタズラっ子ぽい笑みを浮かべている
「それなら正面からッスよ〜!」
「うわわっ!?」
俺は驚いて倒れそうになるが、なんとか踏ん張る。そのはずみでついチエをギュッと抱きしめてしまう。
「バカップル…」
「バカップルだ…」
「バカップルね」
ぐはっ、通行人の視線が痛い
「うぅ…恥ずかしいなぁ」
「なぁに言ってるんスか先輩!アタシは全然恥ずかしくないッスよ〜!」
俺はやっと自分の幸せにたどり着いた。その幸せを手放さないようにしっかりつないでおこう。
「行こう」
俺は愛しい人へと手を差し伸べる
「アタシは、ずっとあなただけを見てるッス
今までも…そしてこれからも」
2つの手はしっかりと結ばれた。
───ひとつだけ大切なモノがある
それを枯らさぬように、折れぬように、心に咲かせ続けよう
太陽の光を浴びて輝き続ける夏に咲く花のように──────
よっち目覚めないENDなどいろいろ考えましたが、やはり最後はハッピーエンドかと思い無難に仕上げました。
もとは無いのなら作ってしまえ、よっちシナリオ!って感じで書き始めたこの話。
当初は、これの10分の1程度だったのに、まさか50レス以上にもなるとは…
初めて書いたSSにしては、まぁまぁかなと思います。
最後まで読んで下さった皆様どうもありがとうごさいました。楽しんでいただけたなら、それだけで幸いです。
次は気楽にギャグ由真SSでも書こうかと思ってます。さらに時間があれば、よっちアフターなんかも。その時はまた読んで下さい。
それでは最後に
(゚∀゚)よっち!よっち!
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(__ __) (___ フ | | (____ )
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(__ __) / \ | ヽ___ / /
| | / /\ \ ヽ___) ( (_
| | ヽ___ノ \ノ ヽ__)
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`゙ヽ `'i
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.,! ゙'" l .( ____,) ,' ヽ'' ヽ
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| .'(__./ .,、 `'、 ,,,,,/ ,ノ .゙l__,-‐′ ヽ___/
.ヽ,、 _./ `'-、,,ノ . `'''ー''"
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リアルタイムキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
(゚∀゚) よっち!よっち!
同じく
(゚∀゚) よっち!よっち!
>>508 初めてとは思えない気持ちのいいできですた。
よっちの可愛さが出てたと思います。
このみにはつらい思いさせちゃったけど
そこをさけなかったのがいい。
今度はギャグも読んでみたいです。
(゚∀゚) よっち!よっち!
なんか執筆意欲をそそられるSSだね。
(゚∀゚) よっち!よっち!
>>508 読ませて頂きました。超GJ!!!!!!
粗茶ですが( ・∀・)⊃旦ドゾー
うんうん
いいねよっち
俺もよっちネタ思いついたらカキコしといいですか?
昨日、間違って前スレに誤爆ったのでこっちにも一応はっときます。
時間がなくてあらすじとちょいとしかかけなくてすみません
〔今までのあらすじ〕
このみと晴れて恋人になった貴明。
そんな数月後、急に珊瑚によってメイドロボの実験テストの場として自らの家がその実験場所となってしまった。
そこにやってきたのは以前発売されたHMX-12『マルチ』と藤田浩之、神岸あかりの三人だった。
これからこの三人と貴明との一ヶ月に渡る生活が始まる。
「タカ君、タカ君」
ゆさゆさと揺らされる感覚で目が覚める。
「ん・・・このみか?」
「おはよ、タカ君」
「おはよう・・・」
ベッドの横でにっこりと笑うこのみを朝から見るとやっぱり安心するとともに今日一日が始まった気になる。
ここ最近はこのみに起こされるのが習慣化していて毎朝食事を作ってくれるがてら、いつも7時前に起こしてくれる。
これは頼んだわけでもなく、このみが自分で好きでやっている。
あの寝坊助でこっちが起こしに行ってようやく起き、ドタバタして制服を間違えるし、女の子なのパンをくわえながら登校はするし。
そんなこのみが今はほぼ真逆の位置にいるんだから信じがたい。
信じがたくてもこれは現実だ。
ためしに頬を軽くつねると痛みを感じる。
そうすると―――
「あ、もしかして眠いから目を覚まそうとしてるの?それなら私も手伝うよ」
あ、いや、そういうわけじゃな―――。
「せーの!」
うっ・・・・・・・・・ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
>>516 よっちマニアにはガンガンカキコする義務が。
519 :
516:05/02/11 11:14:50 ID:3yPgkFJJO
いよっし
よっち本スレでカキコしたのを
そのまま流用させてもらいます
520 :
516:05/02/11 11:18:49 ID:3yPgkFJJO
放課後の誰も居なくなった教室にて、
二人きりでこのみを待つちゃるとよっち
よっち「ねえ、ちゃるぅ…。ちゃるのおっぱいが
大きくなる方法…教えてあげようか?」
ちゃる「ぅ…何言ってるのよ、このデカ乳狸
大きなお世話…きゃっ!?」
突然、ちゃるの後ろに回ったよっちが
そのままちゃるの小さな胸を揉みしだく。
よっち「んふふー♪ちゃるのおっぱい、小さくて可愛いー♪
ほら、こうやって他人に胸を揉んでもらうと、
胸がおっきくなるんだよ〜?」
ちゃるの耳元で囁きながら、ちゃるの胸をゆっくりと揉むよっち
ちゃる「ぁ…んッ…!や、やめなさいよぉ…この変態狸ぃ…」
よっち「とか言って、実は気持ちいいんでしょ〜?
そうだ、直に揉んだら効果が上がるかも」
そう言うと、よっちはちゃるの制服の中に手を入れて、
直接ちゃるの胸を揉み始めた
よっち「あれ〜?なんだかちゃるの乳首…固くなってない?」
ちゃる「ぅぅっ、んやぁ…、そ、そんなわけ…あぁ、やぁ…っ」
よっち「もしかしてぇ…、コッチは、どうなってるのかなぁ〜?」
左手を胸から離し、ちゃるのスカートの下に手を伸ばすよっち
ちゃる「んあっ、いやぁッ…や、やめ…あァんっ!」
521 :
516:05/02/11 11:19:58 ID:3yPgkFJJO
教室には、クチュクチュと卑らしい水音が響いている
よっち「やっぱりぃ…感じてるんでしょ?エッチなちゃるぅ♪
ほら、どう?気持ちいい?」
ちゃる「あんッ、やん…っ。ぅ…うるさいっ、
このスケベたぬきぃ…っ!や、あぁあ…!」
よっち「ちゃる…イキそうなんでしょ?
いいよ…、あたしの前だったら、
好きなだけイッていいから…」
ちゃる「んッ……よ、よっちぃ…」
よっち「ちゃるぅ……好き…大好きだよ…」
ちゃる「よっちぃ……あたしも、よっちの事大好きぃ……
も、もうダメぇ…イッちゃう…イッちゃうよぉ…」
そして、ちゃるがイキかけた刹那
このみ「ごめ〜ん、ちゃるーよっちー。
遅くなっちゃって〜」
ちゃる&よっち&このみ「あ」
時が止まった
522 :
516:05/02/11 11:24:15 ID:3yPgkFJJO
よっちスレにカキコしたら、
SSスレに行けと言われてしまったので、
ここでカキコさせていただきました
続きはまた
ここで、このみが出てくるとは思いませんでしたw
続きを楽しみにしてます
(゚∀゚)3P!3P!
このみは驚愕の目で2人を見ながら、ようやく口を開いた
このみ「……ち、ちゃる…?…よっち……?
な、何してるの……?」
ちゃる「ぅ…」
よっち「あー…」
返答に困る2人に対し、
このみは自ら2人を弁解するように続ける
このみ「う…ううん。別にいいんだよ。このみはその……
女の子同士とか、そういうのがいけないとか思ってないから…。
ご、ゴメンね?邪魔しちゃって…」
よっち「…ちゃる」
ちゃる「ん」
2人は頷くと、必死に2人を弁解しようとする
このみに近づいていった。…そして
このみ「…ちゃる?よっち…?
どうしたの………き、きゃあっ!」
よっちは前から、ちゃるは後ろから
このみを捕まえるように、同時にこのみを抱きしめた
このみ「え、ちょっ…、ふ、2人とも、悪い
冗談はやめようよ……んッ?、ふぅんンッ!」
ちゃるは後ろから、このみの胸をゆっくりと
優しく揉みしだきながら、このみの首筋や耳元を
小さな舌で舐め回す。
よっちは前から、このみのスカートの中を弄りつつ、
このみの口内を自らの舌で蹂躙する。
このみ「…んふぅ…ちゅっ……ぅんん…っ」
このみには、何が起こっているのか
全く理解できなかったが、2人の激しい攻めに少しずつ思考を奪われていく
このみ(ふ、2人ともすごいよぉ…。体中気持ちよくって、
なんか、どうでもよくなっちゃいそう…)
ちゃる「…このみの乳首、
固くなってきてる…。感じてるの…?」
よっち「んッ…はぁっ…。…すごいよこのみぃ…。
このみのおま〇こ、グショグショになってるぅ…
…そんなに気持ちいいんだ…?」
2人の手と舌に、全身を犯されるこのみ。
しだいに絶頂の波が押し寄せてくるのを、このみは感じていた。
このみ「んんッ…ふん……。ちゃるぅ…よっちぃ…、
ゴメンね?本当はこのみも…
2人の事…大好きなのぉ…っ」
ちゃる「ううん…。わたしも、
このみのこと大好きだから…」
よっち「このみぃ…、イキそうなんでしょ?
……あたしたちの前なら、
好きなだけイッていいから……」
このみ「…う、うんっ…ちゃるっ、よっちぃ!
あぁっ…好きぃ…2人とも、大好きだよぉ!
あぁああんッ……イく……イッちゃうぅうッ!!
……あ、ふぅあぁああんッッ!!」
絶頂を迎え、力無く座り込むこのみ。
ちゃるとよっちは、この出来事によって
3人の絆がより一層深まった事を
確かに感じていた。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
あー俺も携帯だけど頑張ってみるかなあ。
このスレでは貴明とラヴなのより失恋や修羅場の方が多い気がするこのみのSSでも。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
うわ、なんか自分で書いたのを
改めて見ると恥ずかしいですね
携帯者なので長編は書けませんが、
なんか思いついたら書いてみたいと思います
どもども
丶\ _ __
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(___ フ __|⌒|_ へ_,/ ノ ,へ
丿 丿 (__ __) \_ ー ̄_,ー~' )
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r--'′ ,/ │.゙l, 'く,,/` ヽ,,,,"'_,,,/
.゙l__,-‐′ .゙l_,,〉
以前
>>473-475を書いた者ですが、
ここの住人さん的にはダークシリアス系はどうですか?
やはり需要というかあまり好まれないでしょうか?
自分がほのぼの・ラブ系が書くの苦手で、
どっちかというと暗い話のほうが本業というか得意だったりするもんで…。
容量多くなりそうだし、執筆時間もあまり取れなくて不定期になるかもしれないし、
ホムペ借りてURLをスレに記載のみとかにしたほうが良さそうですかね?
書くなと言われたらそれまでですがorz
好きだよ、うん。
どうせなら救いようがなく書いてくれると有り難い
殺戮、陵辱、鬼畜、ミステリー
日本語ならばなんでもOKです。
とりあえず投下して様子みたらよいのでは?
見たくない人はスルーすればいいし
個人的には最近、連載モノが少なくなってる気がするんで、
ちょうど良いと思われ
535 :
531:05/02/12 07:48:25 ID:BYRd5dHm0
536 :
黒の者:05/02/12 14:56:43 ID:EXpDfpGw0
GJ!!!
かなりいいですな^^
泣きかけましたよ(ぁ
ダークってことは郁乃と暗く背徳的で退廃的ながらも、慎ましやかに愛を育むってわけじゃあなさそうだな。
なんとなく須磨寺を思い出した
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は微妙な恋人関係。ところが雄二が春乃と一緒に歩いて
いるのを見かけた郁乃の病状が急変する。
翌日、雄二が病室を訪ねると郁乃はいつもどおりにしているように見えたが、開口一番。
「――今すぐあたしを海に連れて行って」
第一話から第十話はこちらで。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
「ちょ、ちょっと待った。あんなことがあったすぐなんだぞ」
「うん。あんなことがあったすぐだからよ」
じっと雄二を見つめる郁乃の瞳には非難めいた輝きがある。それが春乃といたことを指しているのは間違
いが無い。それはグサリと雄二の心に突き刺さる。しかし雄二の罪悪感が郁乃を救うわけではない。
考えてみるに郁乃の体調は雄二といる間、良好に保たれてきた。昨日の発作が雄二の所為であったとし
てもそれは春乃といるところを見られたからであって、今こうして雄二と居ることがその原因になるとは思え
ない。事実、郁乃の顔色は悪くなく見えた。
――大丈夫なのか?
と、そう聞こうとしてその言葉を雄二は飲み込んだ。そんなことを聞けばすべてが郁乃の責任になるだろ
う。帰ってきたときに雄二には郁乃が大丈夫だと言ったからという言い訳ができてしまう。それならまだ勝手
に連れ出したと非難されるほうがいい。
覚悟を決める。
「……薬と水筒はあるか?」
郁乃が無言で椅子の上に置かれた小さなポーチを指差した。中をあけて確認するとシートに収まった錠剤
と小さな水筒。昨日愛佳が使ったものだ。
「あと、紙とペン」
郁乃が学校用のカバンからボールペンとルーズリーフを一枚取り出す。それを受け取って雄二は――郁
乃を連れて海に行ってくる。雄二――と書いてサイドテーブルの上に置いた。
「先に言っておくぞ。俺は郁乃の体調に対して責任は取れない」
だが連れ出したことに対する責任なら俺にある。そう無言で付け加える。
「……うん。分かってる」
真剣な顔で郁乃が頷いた。
車椅子に郁乃を乗せて何食わぬ顔で歩き出す。こういうときは見られないように気をつけるより、何気ない
風を装うのが一番だ。それでもエレベーターで一階に降り病院の外に出るまでは、今にも後ろから誰かに呼
び止められるのではないかと気が気でなかった。
幸いだったのは郁乃が昨日救急車で運び込まれたにも関わらず、その状態はそれほど酷くないことで
あった。郁乃が言うには再発や急性期には発作で痙攣を起こしたり、意識を失うことがあっても、それでそ
のまま死ぬような病気ではないから大丈夫だということだった。
二人はあまり話さずに駅に向かい、海に向かう電車に乗った。
何かを話せば、その中に春乃のことが出てくるのではないかという恐怖心がそうさせている。
本当は雄二は春乃のことをもっとちゃんと郁乃に話すべきだと思っていた。なんなら始めから春乃が押し
かけ婚約者であるけれど、自分はなんとも思ってない。断るとはっきり言っておけばよかったとも。しかし同
時に昨日の郁乃の様子からも、やはり話さなくてよかったとも思う。
いずれ笑い話にできるときがきたら、その時に話せばいいのかもしれない。
2時間ほど電車に揺られると、やがてその窓から海が見えてきた。
「わあ……」
郁乃の顔にありありと喜びが浮かび上がる。時間かそれとも海か、またはその両方が二人の間にあった
ぎこちない空気を消し去っていく。
海の傍の駅で二人は電車を降りた。
海沿いの道を車椅子を押して歩く。海は砂浜の向こうで少し遠い。それでも画面でも、写真でも、窓の向こ
うでもない海はどこまでも広がっていて、その音と風と匂いに郁乃は包まれる。
「もうちょっと海の傍に行きたい」
「車椅子じゃ入れないぜ」
じっと郁乃が雄二の顔を見上げる。無言のおねだり。
「仕方ねぇなぁ」
車椅子を止めて、両手で郁乃を抱き上げる。その軽さに驚く。
「よっと」
コンクリートの防波堤から砂浜に下りる。しっかりと砂を踏みしめて砂浜を波打ち際に向かって歩く。
潮の香り、潮騒。
「砂、ついちゃうぜ」
「……ん」
波打ち際から5メートルほど離れたところに郁乃をそっと座らせて、その隣に雄二も座る。
二人で座って寄せては返す波を飽きることなく眺める。
「……知ってる? 天国じゃみんなが海のことを話すのよ」
どれほどそうしていただろうか。ふとそんなことを郁乃が呟いた。
雄二は随分前に観た映画を思い出す。
余命いくばくもない二人の男が病院を抜け出して海へ向かう物語――。
郁乃の目は海を見ているのか、それとも天国の扉を見ているのか。
「それは映画の話だろ。だいたい誰に聞いたんだよ。映画なんて見たことないだろ」
「他の入院患者さんから。――映画の話っていうのは違うと思う。天国で海の話をするかなんて本当はどう
でもいいのよ。ただ死ぬ前に海が見たかった、それだけ」
「郁乃も?」
「あたしは違う。海を見れたからもう死んでもいいなんて思わない」
郁乃が海から目を離して雄二を見る。
「今はしたいことがたくさんあるから」
そうしてまた海に視線を戻す。
「海を見ただけじゃ足りないの。手、貸して」
郁乃が伸ばした手を雄二が掴む。そしてそれを支点に郁乃が立ち上がろうとする。痛みにその顔が歪む。
「お、おい」
がくがくと郁乃の膝が揺れる。痛みに耐えかねてぺたんと尻餅をつく。でも郁乃は諦めない。もう一度
――。
雄二は立ち上がって後ろから抱きしめるように郁乃の体を支える。郁乃の足に彼女の体を支えるだけの力
はない。
「自分の足で立って歩きたい!」
郁乃の叫びは潮騒にかき消されて消える。
「病気なんて!」
郁乃の体ががくがくと震える。
「雄二さんと!」
「落ち着け、郁乃」
「いっしょ……うき……いの」
唇もがたがたと震える。ろれつが回らなくなる。
日傘を放り投げて、震える郁乃の体を抱き上げる。
車椅子に向かって走る!
郁乃の体は驚くほど軽い。だが砂に足をとられてうまく走れない。
ぱくぱくと口をあける郁乃を車椅子に座らせて、ポーチから薬と水の入ったペットボトルを取り出して郁乃に
渡そうとするが、郁乃は手が震えていて受け取れない。
「郁乃! しっかりしろ! 郁乃!」
シートから取り出した錠剤を震える唇の中に押し込む。フタをあけたペットボトルをその口に向けて傾ける
が、そのわきから水が零れ落ちる。雄二は自分の口に水を含んで、郁乃に口付けすると零れないように水
を押し込んだ。
――ごくり、と、郁乃の喉がなる。
かちかちと歯が当たる。
雄二は自分の足も震えていることに今更気付く。
「そ、そうだ。救急車」
慌てて懐から携帯電話を取り出す。
「あ……」
郁乃の口から音が漏れる。言葉が出ないと分かると、郁乃は首を横に振った。
「あ、あいひょうふ――」
空気の漏れるような音。しかしそれが大丈夫と言ってることは分かる。
「大丈夫なワケあるかっ!」
構わず119を押そうとした雄二の服を郁乃の手が掴む。その手の力は弱弱しいのに、雄二の手も止まっ
てしまう。弱い力が雄二を引き寄せる。雄二の手から携帯電話がすべり落ちる。そしてそのまま郁乃を抱き
しめた。
そしてどれくらいそうしていただろう。
ぽつりと雄二の頬に冷たい雫が落ちた。
「……ありがとう」
そんな声が雄二の耳元で聞こえた。
「ごめんね。興奮したらいけないのに……」
「大丈夫か?」
「うん。まだあんまり手足の感覚ないけど……」
ぽつり、ぽつり……。
いつの間にかあれだけ晴れ渡っていた空は真っ黒い雲に覆われている。
ぽつ、ぽつ、ぽつ……。
「天気予報は晴れって言ってたのにな」
「さっきまでは晴れてたじゃない」
「傘、取ってくる」
雄二は雨の降り出した砂浜を走って、日傘を取って郁乃の元に戻る。
「通り雨かな……」
「でしょうね」
郁乃に傘を掲げた頃に急に雨脚が強くなる。
「このままだとふたりとも濡鼠ね。雨宿り、する?」
「どっかいいとこあったかな?」
「……来る途中にあったよ」
「何が?」
「……――」
郁乃の呟きは小さすぎて雨音にかき消されて聞き取れない。
「だから何?」
「なんでいっつもいっつも聞き返すのよ! ホテルよ、ホテル! あったでしょ!」
叫んでからかーっと郁乃の顔が赤くなる。
「あ、雨宿りするだけよ!」
そういうわけで雄二は人生で始めてラブホテルとかいうものの門をくぐることになった。この前雑誌で見た
デートホテルとか言うのではなく、どちらかというと旧来のラブホテルそのものという感じだ。
勝手の分からないままロビーに入ると、小さな受付窓の向こうから「休憩かい?」
と、聞かれたのでよく分からないまま「はい」と答えると、小窓から鍵が差し出されたので受け取って奥に
進む。幸いエレベーターはあったので、階段を郁乃を抱いて上がる必要はなかった。
「これ、302って3階?」
「だと、思う……」
妙に声を潜めてしまう。
3階で降りると、わざわざ廊下に303−306← →301−302と書いてあって迷うこともなかった。鍵を
使ってドアを開ける。ちょっと狭くて車椅子を通すのに苦労するが、なんとか入れないことはなかった。
濡れた車輪のままで屋内に車椅子を入れるのもなんなので、雄二は郁乃を抱き上げて……、ベッドは恥
ずかしかったのでソファに座らせる。そしてその隣に身を沈めた。
「あー、なんか無駄に緊張した」
「あたしも……」
ようやく落ち着くと、部屋の中を見回す余裕も出てくる。
ソファ、テレビ、キングサイズのベッド……。
妙に大きなガラスが目に付いて、その向こうを見ようとベッドの傍に歩み寄ると、
「うお、なんじゃこりゃ」
「え、なに?」
「風呂が丸見えになってる……」
まあ簡単な話、バスルームがガラス張りになっておりベッド付近から丸見えになっているのだった。
「どういう意味があるんだよ」
思わず両手をベッドについて突っ伏してしまう。
「こんなところまで来るんだったら、見られても一緒ってことでしょ」
郁乃はくすくすと笑う。
「ねえ、濡れちゃったしお風呂入ろっか」
「え……」
「もちろん雄二さんが手伝ってくれなきゃ無理だけど」
「あ、いや、ダメってことはないけど」
どくんと雄二の心臓が大きく打った。
「で、でも風呂に入るってことはつまり、その、あれだ」
「裸になるってことでしょ。……あたしは気にしない」
そう言うなり、郁乃は着ていたシャツを捲り上げた。白い肌とつつましい胸を包むブラが露わになる。
思わず雄二の視線が釘付けになった。しかしその視線を気にする風でもなく、郁乃は手を背中に回してブ
ラも外してしまう。その形のいい胸から雄二は目を離せない。
「じっと見てないで下、脱がせてよ……。風邪ひいちゃうよ」
郁乃は淡々と言う。裸を見せることに抵抗はないのか、と雄二は疑問に思ったが、よく考えれば幼い頃か
ら検査やなにやらで人に肌を晒す機会は多かっただろうから、今更、ということなのかもしれない。
とは言え、郁乃がいくら慣れていても雄二が慣れているわけではない。恐る恐る郁乃のズボンに手をかけ
た。郁乃が上半身の力で腰を上げて、その間に雄二が引き抜く。
「……!!」
――そして雄二は固まった。郁乃の足からズボンを引き抜いた姿勢のままで動けなくなる。
「ねえ、これ見てもまだあたしのこと可愛いって言える?」
呼吸が止まった。
郁乃の足――、腿から膝の少し下にかけてまでがまるで――。
それは皮膚の色ではなかった。赤く黒く変色し、またでこぼこに膨れ上がったりへこんだりしている。
雄二はただその醜く斑な色彩の肌を見つめることしかできない。顔を上げて郁乃の顔を見る勇気がでな
かった。胸がどこまでも苦しいのはただ郁乃の気持ちを考えたからではない。どれほど雄二が認めたくなく
てもそれは生理的な嫌悪感に他ならない。
それは醜かった。郁乃の体の一部ということを認めたくないくらいに、触れることどころか目を向けることす
ら躊躇われるような……。
雄二になにが言えるだろう。言葉を選ばなくてはいけない。郁乃を傷つけないように……。と、思っても、な
にも言葉が出てこない。ないものはどうやったって選びようがない。
「こんな女触れたくなくなった?」
斑な皮膚の上に落ちた一滴の水滴。弾かれたように郁乃の顔を見た。その瞳からはぼろぼろと大粒の涙
が生まれ、零れ落ちていく。
郁乃はどんな思いでこの肌を晒したのだろうか?
それを考えると、雄二の胸は締め付けられた。
郁乃の肌は醜い。それは変えようのない事実だ。
けれど――
雄二は斑な皮膚の上に落ちた滴に口付けた。
「え……」
突然触れられて郁乃の体が少し震える。
――それに対する俺の気持ちなら変えられる。
「可愛いとは、綺麗とかは確かに言えない」
滑らかとは間違っても言えない皮膚をゆっくりと撫でる。
それはとても悲しい感触だった。
「でも郁乃ならそれでいい……」
膝に口付ける。
腿に口付ける。
脇腹に口付ける。
肩に、首に、頬に、頭に、涙のあふれた目蓋に、鼻先に、そして唇に口付けた。
「郁乃、愛してる……」
唇がほとんど触れたままの距離でそう呟いた。
「人を愛するって不思議だな……。頭だけじゃなくて、心だけじゃなくて――」
「指先が……」
雄二の言葉を郁乃が継いだ。
「唇が……、体の全部が愛してる気持ちで満たされて……」
そして二人はもう一度唇を重ね、強く強く抱きしめあい求め合った。
「雄二さん、あのね、あたし先に言っておかなきゃいけないことがあるの」
ベッドの上でお互いに深く触れ合い、肌と肌をすり合わせて、そして最後の触れ合いに至ろうとしていたと
きに、不意に郁乃がそんなことを言い出した。
「え? 俺、下手だったかな」
「……違うよ」
郁乃が苦笑する。下手だとか上手いだとかが郁乃に分かる訳もないし、そんなことはどうでもよかった。
「違うの。あたし、感じないみたいなの」
雄二との触れ合いはどこまでも心地よかった。しかしそれは郁乃の中で性的な興奮には決して至らなかっ
た。郁乃はその可能性を知っていた。
以前に医師が言ったことがある。
この病気の症状のひとつとして性機能の不全があり、男性なら程度の違いこそあれインポテンツになった
り、女性なら性的興奮を覚えられなかったり、性的満足感を得られないということがある、と。
その時はどうでもいいと思ったし、そんなことを経験することになるなどとも思いもしていなかった。
けれど今、どうやらそれが郁乃自身の身に起こっていた。
「気持ちよくないってこと?」
雄二の問いに郁乃は首を横に振る。
性的興奮が無いということと、性的満足感が無いということは必ずしも一致しない。
雄二の指が、唇が、皮膚が、郁乃の体に触れるたびに、どうしようもないほどの喜びが湧き上がってくるの
は間違いようのない事実だ。それはとても心地よい。
「気持ちいいし、嬉しい。でも、なんていうのかな、快感とかそういうのとは程遠いの」
「……止めたほうがいい?」
不安そうな雄二の顔に郁乃はまた苦笑する。
「違うわよ。もう、こんな恥ずかしいこと言わせたいの?」
郁乃は雄二の顔を引き寄せて口付けた。
「……続けて、あたしは感じないかもしれないけど、雄二さんに気持ちよくなって欲しいから……」
すぐに郁乃の言った意味は理解できた。熱くキツイ肉を押し分けたとき、なお一層それははっきりした。
……郁乃には引き千切られる痛みしかない。そこにはほんのわずかな悦びすらない。
それでも郁乃は微笑んだ。それは悦びによるものではなく、喜びによるもの。
俺は悲しかった。
――あたしは嬉しかった。
肉の悦びはあっても、与える喜びはない。
――肉の悦びはなくとも、与える喜びがある。
郁乃の顔に悦びは無い。少しだけ苦痛に歪んだ優しい微笑。
――雄二さんの顔に喜びは無い。少しだけ快楽に歪んだ悲しい微笑。
「気持ちいいですか?」
「……ああ、とても気持ちいい」
それが悲しい。
――それが嬉しい。
郁乃の手が俺の頬に触れる。
――雄二さんの手があたしの頬に触れる。
その頭を強く抱いた。
――雄二さんの胸に顔を埋めるように、その体を抱きしめた。
俺たちは同じ快楽を享受できない。
――あたしたちは同じように気持ち良くはなれない。
けれど。
――けれど。
ただ心だけが
――溶け合うように
――――繋がっている。
やっと題名のシーン消化。ここまでが(主に春乃さんのせいで)長かったー。
性的快楽を求めるものではない性交を描くことが始めから決まっていました。だから、ただ心だけが。
免疫疾患で皮膚に症状が現れる場合、大抵まず顔に症状が出るそうで、資料集めの際に何枚も写真を
見ましたが。・゚・(ノД`)・゚・。幸い郁乃は顔には症状が出ていないわけですが、服に隠れている部分にそういう
症状が出ているということは当初からちょくちょく臭わせてました。
執筆時のBGMは今回はほとんど鬼束ちひろ。書いているシーンに合わせてBGM変えるのは重要ですね。
海に関してなんか色々予想してくれてたけど、ノッキングオンザヘブンズドアが好きなだけなんだ。
物語はもうちょっと続きます。14日は予定ができたので、次は三日か四日くらい開くかも(・∀・)ニヤニヤ
だんだん奥深くなっていく
すばらしいです。
本当にいい話です。
最初から通しで読んでいますが、グッジョブなんて言葉じゃ感想を言い表せねぇ…素晴らしい
続き、楽しみにしています
某氏とネタがかぶってた。
しかも実力的に劣ってたから駆け足でうpしないで助かったよw
>548の書き方が素晴らしいですね。
題名のシーンが出てきたので終わりかなと思いました。
まだ続くんですね。
期待してます。
無茶苦茶いい話や><
続きが気になるぜ
すごいなあ…
もう、俺とはレベルが違いすぎますな。
俺もタマ姉ネタ(エロ?)を現在製作中ですが、
うpしちゃっていいものか…
てか、郁乃は入院生活が長かったからENDで車椅子に乗っていただけ
じゃなかったのか?
それとも、病気で歩けないなんて設定があるのか
ゲーム内にそこらの説明がないからどちらともいえない。
つか何の病気だったっけ?
眼がどうたらこうたらというのは覚えているんだが
>>558 そうかもしれないが、全身性自己免疫性疾患と
分類されるものの中には、
「多発性筋炎」という筋力の衰えを示すものがあり、
なんとも断言できない。
562 :
名無しさんだよもん:05/02/13 03:34:13 ID:m8neRE3l0
エロシーンなのにエロくない。
変わりに胸が、目頭が熱くなる。
美しいとさえ思ってしまいました。
すばらしいの一言に尽きます。
続き期待してます!><
563 :
7月文月:05/02/13 03:36:49 ID:WEuP1h5f0
おはようございます
(゚∀゚)よっち!よっち!
ようやくできますた。
今からうpしようと思います
時刻は午後三時十分。日も傾き始めた頃、
向坂環は帰宅しようと、下駄箱を開けた。すると
環「あら、手紙…?」
靴の上には一通の手紙。差出人の名前は無く、
小さな女の子文字で、「向坂環様へ」と書いてある。
ハートのシールで封がされているところを見ると、
どうやらラブレターのつもりらしい。
環(九条院にもこういうのはあったけど…)
封を開ける。やはり差出人は
女の子のようで、丸文字で
『向坂環様。あなたをとてもお慕い申し上げております。
つきましては、今日三時十五分、体育館倉庫にて、
返事をお待ちしております。』
と、これだけが書いてあった。
環(どうして私は女の子ばかりに告白されるのかしら…)
かと言って、折角自分を待っている人が
いるのに、無視するわけにもいかない
環(顔を出して、断ってくるだけでいいわよね)
環は手紙を鞄の中に収めると、
体育館倉庫へ向かった。
三時十六分。環は、体育館倉庫の扉を開けた。
電気はついているが、人がいる気配は無い。
環(あら?間違ったのかしら…)
倉庫は第一倉庫、第二倉庫の2つある。もしかしたら
もう一方の倉庫で待っているのかもしれない。
環が倉庫を出ようと、振り向こうとしたその時
環「っ!?」
急に誰かに体を掴まれ、布で口を塞がれる環。
途端、意識が朦朧とし始め、体に力が入らなくなる。
何かを考える余裕も無く、環は意識を失っていった。
環「…う……」
目覚めた環。次第に意識がはっきりしてくる。
大方、クロロホルム(催眠剤)でも嗅がされたのだろう。
環「そうだ…私…」
完全に意識を取り戻した環は、立ち上がろうと体を動かす。
しかし、その場から動くことができない。
見ると、両手足が拘束され、身動きがとれない状態だった。
環「え…?ちょっ…、何なの?これ…」
「ようやくお目覚めになられましたね。お姉様…」
聞いたことのある声。そもそも、この学校で環の事を
「お姉様」と呼ぶのは、三人しかいない。
案の定、環の前に立っていたのは、
環を九条院に連れ戻すために転校してきた、
玲於奈、薫子、霞の三人だった。
下駄箱に手紙を入れたのも、
環を気絶させ拘束したのも、
他ならぬ三人の仕業だったのだ。
環「あなたたち…。これは一体どういう事?」
玲於奈「お姉様がいけないんです。
私達がこんなに愛しているのに、
あのような男に心を奪われてしまって…」
薫子「お姉様を目覚めさせるには、
こうするしかなかったんです!」
霞「こくこく!」
環「で、でもちょっと、
これはいくらなんでもやりすぎ…んっ、ふむぅッ!?」
突然、玲於奈にキスされた環。
さらに、玲於奈の口から液体のような
ものが流れこんできた。思わず飲み込んでしまう。
環「んくっ……な…何を飲ませたの!?
…ん、やぁっ!ふあぁあッ!?」
突如、体中が熱くなり、股間が疼いた。
薫子「霞特製の媚薬です。速効性で、
飲んだ瞬間に効果が現れますよ」
霞「こくこく…」
環「媚薬って…。やぁんっ!いやっ…ああぁ……にゃぁああん!!」
体中の水分が沸騰してしまいそうな熱さ。
スカートの中は、薬の効果で
すでにぐしょぐしょに濡れている。
玲於奈「ああ……。とても可愛らしいです、お姉様…。」
薫子「私はもう…お姉様を見ているだけで
感じてしまいそうです…」
霞「どきどきどきどき…」
薬を飲まされただけなのに、物凄い快感が全身を駆け巡る。
三人は、強烈な快感に悶える環の姿を、
恍惚とした表情で見つめていた。
玲於奈「お姉様。私達が、お姉様が
もっと気持ち良くなれるようにお手伝いいたします。
あの男の事も忘れてしまうくらい…」
三人はゆっくりと環に近寄り、
環の体中を両手で弄る。
環「やッ、やめ…っ!
にゃっ!?ふにゃああぁぁあんッ!!」
薫子「すごい…お姉様…。
触っただけでイッてしまわれるなんて…。
もっと…もっとお姉様を気持ち良くして差し上げますわ」
霞「こくこく」
三人は、環にさらに激しい愛撫を続けた。
玲於奈の舌に自らの舌を犯され、
薫子に豊かな両胸を攻められ、
霞に秘所をいじくりまわされる環。
必死に抵抗しようとするが、
身動きがとれないのでどうしようもない。
それどころか、媚薬の効果で触るだけで
感じてしまう体になった環は、
三人に攻められる間中イッてしまう羽目になった。
環「んあっ…ああ……も、もう許して…にゃあっ!
やっ…いやぁ!…まっ、またイッちゃうぅぅ!!
にゃん!いにゃああぁぁあ!!」
玲於奈「あんっ…お姉様ぁ…。
私も、もうイッてしまいそうですぅっ…!」
薫子「わ、私も……もう、
我慢出来ませんッッ!お姉様ぁ!」
霞「ん…、ふぅん……っ」
全身を激しく悶えさせる四人。
そして、四人が同時に絶頂を迎えた。
環「いっ、いにゃあああああぁぁん!!
またっ、またイッ…くぅあああぁんッ!!」
玲於奈&薫子&霞「おっ、お姉様ァぁあっ!!
あん!ふぁあああぁっッ!!」
全員同時に果てた後、
荒い息を吐きながら、玲於奈が呟いた。
玲於奈「お姉様…、私達は、
いつまでも、ずっと一緒ですよ…」
ようやく、薬の効果が切れ、放心する環。
意識が薄れていくなか、
環は、静かに頷いた。
これで終わりです。
なんか、どこにでもあるようなネタですね…
とっくに既出してそうな話でスマソでした。
ではでは
573 :
日記1:05/02/13 13:36:43 ID:zRpcUUPeO
「えーー…今日から復学する事になった…」
教壇に立つクラス担任が事前に私の事を紹介してくれる。
その間、する事のない私はこれから多くの時間を共有する事になるクラスメイト達に視線を向ける。
ほとんどの生徒が担任の話を聞きつつ、友達同士でヒソヒソと話あっている。
まぁ、話題は確実に私のことだろう。
「…じゃあ、本人に自己紹介してもらおうか?」
などと考えていると担任に話をふられる。
「はじめまして…───」
挨拶を済ませる。
…正直、人前でこういう事をするのは苦手だった。
しかし今朝、姉に
「最初が肝心なんだからね!」
と釘をさされていた為、私なりに『多少』は頑張ってみた。
その後、私のために設けられた机に移動し一時間目が始まる…。
授業の合間にクラスメイトの質問責めに合いながらも何とか無事に昼休みを向かえる事ができた。
574 :
日記2:05/02/13 14:03:12 ID:zRpcUUPeO
昼休み…。
私の周りには物凄い数の人垣が出来ていた。
(この人達はそんなに私が珍しいのか?
…いや、珍しいのだろう。
車椅子で授業を受ける病弱な生徒…。
珍しくないはずがない。)
心の中でそう毒付く。
彼等に罪は無い。しかし、私にも罪は無い。
だから、どうする事もできず困り果てていたその時だった…。
誰かが私の車椅子のハンドルを握ると、人垣を掻き分けて私を教室の外へと連れ出してくれた。
「ここまで来れば、大丈夫だよ!」
そう言って連れて来られた場所…そこは恐らく中庭だろうか?
私は突然の事に呆然とするものの、あの窮屈な場所から解放され一心地つく。
「ごめんね。無理矢理こんな事しちゃって…」
背中で声が聞こえる。
(そっか。私、拉致されたんだ…)
考え込んで、無言でいると後ろのクラスメイトは
「やっぱり…迷惑だった…かな?」
と申し訳なさそうに尋ねてきた。
575 :
日記3:05/02/13 14:26:05 ID:zRpcUUPeO
「そ、そんな事無い!」
慌てて振り向き、返事をする。
私を連れ出してくれた人。
左右の髪をピンク色のリボンで結い、背丈は同じ位。たしか私の隣の席の…。
「柚原…さん?」
午前の記憶を辿り、彼女の名前を口にする。
「私の名前、覚えてくれたんだ!?」
やたー!と両手を上げ、喜びを体で表現する彼女。
しかし、私の視線に気付き我に戻る。
「ご、ごめんなさい…つい…」
一転、しゅんとなる柚原さん。
「くすくすっ…」
思わず笑みがこぼれる。
そんな私に釣られ柚原さんも笑い出す。
それが私と彼女の出会いだった…。
続く
>前スレ757
スレッドのタブの上で右クリックしてプロパティ。
常にチェックするなら、スキンのFooter.htmの該当部分を
( 新着 : <NEWRESCOUNT/> 件 / 総件数 : <ALLRESCOUNT/> 件 / サイズ : <SIZEKB/> KB )
とかすると便利。
577 :
名無しさんだよもん:05/02/13 21:18:47 ID:OfFe5BiAO
姫百合姉妹も絡んでほすぃ
>>576 サンクス。ずっと(∩・ω・)∩の姿勢のままだったよ・・・
俺はどうやら女の子同士の絡みが好きなようです。
なんかイイ(・∀・)!!組み合わせ無いですかね?
このみと春夏さんでヨロシク!
タマ姉と誰か
由真と委員ちょ!
タマ姉とイルファ
入るファと汁ファと診るファ
由真&るーこ(ぁ
>>549 シャーマンの中にファイアフライが紛れ込んでいるのを発見したような
インパクトがあったぞ。るー☆
由真&愛佳
もしくは姫百合姉妹が妥当な線でしょうか
ミルファとシルファは資料が少ないので難いですね
あとは……るーこと花梨とか…?
思いついたら書いてみようと思いますのでよろ
花梨&瑠璃
花梨&このみの異色のコンビ
590 :
名無しさんだよもん:05/02/14 03:02:35 ID:euNLvHmp0
花梨と琴音
綾香と由真
上記にもあったけど、
姫百合姉妹と郁乃&このみ
1のキャラとのコラボはつながりの深い2の良いところだわな。
イルファ×瑠璃
玲於奈×薫子
いいんちょ×郁乃
よっち×ちゃる
ダニエルXゲンジ丸
ダニエル「ほれっ!ヌシの濃ゆい精を儂の中に注ぎ込むんじゃ!」
ゲンジ丸に背をむけ四ん這いになるダニエル。
ゲンジ丸「ばう!ばう!」
ぱんぱんぱん!
ゲンジ丸は誘われるがまま、己の分身を目の前の穴に押し入れる。
ダニエル「!!!
おぉぉ…これは、また…ヒトでは味わえぬ快楽よ!!」
肛門に力を込める…と同時に……
スマソ…本当に…スマソ…m(__)m
書いてて氏にたくなったよ…
ゲンジ丸、随分アグレッシブだな。
普段うごかねえくせになw
タマ姉のED後のSSってあったっけ?
なかったら挑戦してみたいんだが・・・
>>596 別にあっても挑戦するのは問題なくない?
というか書いて( ゚д゚)ホスィ…
>>596 前スレにあったが気にせず挑戦してくれ。
俺の好みで恐縮だが月光華園っていうHPのタマ姉SSは凄いいい出来ダタヨ。
>>597-598 過去スレ読んでないし、SSサイト巡りもやらないので
ネタが被るとアレかな〜と・・・・・
取り敢えず、前スレのログ見て、
ネタが被んないようなら明日までに上げられるように頑張ってみまつ(´-`)
ただ、そんな長いのを書こうとしてないんで期待しないで・・・
忘れた頃にやってくるって感じで・・・・・
チャレンジ精神に溢れてる人募集中
5月1日(土)
「タカ坊・・・タカ坊・・・」
ユサユサ・・・ユサユサ・・・
「タカ坊・・・タカ坊・・・」
ユサユサ・・・ユサユサ・・・プニ・・・・・・・・ん? プニ・・・? 何か前にも同じことがあったような・・・・・
「ん・・・・・タマ姉・・・?」
「起きた? タカ坊」
気がついたらいつの間にか朝になっていた。どうやら、看病したまま寝てしまったらしい。タマ姉も今さっき起きたばかりみたいだ。
「あのままずっと一晩中看病しててくれたんだ・・・」
そう言って、タマ姉が穏やかに微笑む。ハッと、昨日のことを思い出してつい顔を赤くしてしまう。
「あ〜ら、朝っぱらから何を考えてるのかな〜? フフッ」
妖艶な笑み。だけど、いつものようなゾクッと背筋が凍るような感じはしない。やっぱり、お互い告白して気持ちを確かめ合ったからだろうか。だけど、何だか照れ臭い。
「タカ坊も健全な男なワケだし? 朝から興奮するのもわかるけど」
タマ姉の言葉でさらに顔が火照る。
「違うの?」
「違わないけど・・・」
「ま、それはさておき。昨日から制服のままだからそろそろ着替えたいんだけど・・・着替えるところ見る?」
って突然、何てことを言い出しますか、この人は。だが、ここでまた慌てると今後、タマ姉にずっとペースを握られかねない気がする。いや、実際もうかなり握られてるけど・・・
「わかった。じゃあ、俺も一度帰るよ。着替えたいし。」
さすがにこっちも一度、家に戻って着替えないと。このみは・・・・・先に行ってるからいいのか。何だか、少しだけ心の奥がズキッと痛んだような気がした。
「あら、つれないのね。」
タマ姉は本気で残念がってるようだった。う〜ん、ホントに主導権を握れるようになるんだろうか・・・?惚けていると、
「タカ坊、ちょっとだけ部屋の外で待ってて。朝食を作るから一緒に食べましょう。」
そういって、タマ姉が微笑んだ。
「あれ? 具合はもう良いの?」
「ええ。一晩中、タカ坊が看病してくれたんですもの。」
確かに、昨日と比べてタマ姉の顔色が良い気がする。
「お礼にご馳走を作ってあげる。勿論、昨日の「おわび」とは別よ♪ 腕によりをかけちゃうんだから。」
思い出すとまた赤面しそうになるので、慌ててタマ姉の部屋から出た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ふと、玄関の方の扉が開く音がした。
「ふ〜、やっと帰ってこれた。これから学校ってのがまただりぃけどな。」
どうやら雄二が帰って来たらしい。
「あれ、貴明? こんな朝っぱらから何でこんなとこに居んだ?」
タマ姉の部屋の前で待ってた俺と鉢合わせした。
「何だ。姉貴に迎えに来させられたのか? ・・・それとも、まさか・・・・・・」
「いや、雄二、これは・・・・・・」
「昨日、誰も居ないのをいいことに、おおかた姉貴に無理矢理連れ込まれたんだろ? そうなんだろ?」
怪訝な表情をする雄二。ふぅ〜っ、とため息までついている。
「いくらなんでも手が早すぎだろ、姉貴・・・。まあ、結果的にお前もまんざらじゃなかったみたいだし? もうちっと、目立たないようにやってくれれば俺としちゃOKなんだけどな・・・。で、どうだったよ?」
雄二の顔がニヤついている。
「なっ、どうって・・・・・」
すると突然、タマ姉の部屋のドアが開いたかと思うと、中から伸びてきた手が的確に雄二の顔面を捉えた。
ガシッ
「あだだだだっだだだだだだだだだだだだだ」
朝イチの挨拶代わりのアイアンクローといったところか。
「誰の手が早いって? 雄二ったら、朝っぱらから寝ぼけてるのかしら」
ギリギリギリ、と例のごとく締め上げられる。
「今、目が覚めました!すぐ、目が覚めました!もう、目が覚め・・・・・・・ぺきょー」
雄二が事切れそうになる寸前、やっとのことでアイアンクローが解かれた。
「タマ姉、もう着替え終わったんだ?」
「ええ。いつまで経っても、タカ坊が覗く気配ないし。」
ええと、俺にそんな勇気はないデスヨ?
「で、何で貴明がこんな時間からウチに居るんだ?」
やっと、落ち着いたのか、雄二が尋ねてくる。
「それは・・・・・・」
「昨日、私が熱出して、タカ坊がずっと看病しててくれたのよ。」
タマ姉が助け舟を出してくれた。
「へぇ〜〜、やるじゃねぇか。ウチの姉貴と二人っきりなんて怖かったろうに・・・」
ガシッ
「あだだだだだだだだだだだだだだだだだ」
「雄二が前もって謝った意味がやっとわかった気がするよ、何となく。」
「ん、タカ坊、何か言った?」
「あ、いや、何でも-------」
と、急に目の前が景色が揺れる。目眩・・・か? よろけそうにになったが、壁に手を付いて何とか倒れるのだけは免れた。
「タカ坊!?」
慌ててタマ姉が俺の身体を支えてくれる。
「さっきは寝起きで気付かなかったけど、タカ坊、もしかしなくても熱あるでしょ?」
「いや、ちょっと立ちくらみしただけだよ。」
というものの、身体に力が入らない。ちょうど、昨日のタマ姉の状態だ。タマ姉の風邪を貰ったかな?
「雄二、タカ坊は今日は休ませるから、学校行ったら先生に言っておいて。今度は私が付きっきりで看病するから。」
「タマ姉、俺は大丈夫だから・・・」
「病人は無理しないで大人しくしてるの。」
真剣なタマ姉の迫力に負けて、諭されてしまう。
「何だ、姉貴も休むのか? まあ、それならそれで良いけどよ。で、このみはどうするんだ?」
「朝、会ったら伝えておいて。心配するだろうし。”事情”は私が後からでも直接話すから。」
「そう・・・か。わかった。取り敢えず、貴明が休むってことだけ伝えとくよ。」
「お願いね。」
-----そう、このみには話さなくちゃいけない。昨日、タマ姉と気持ちが通じ合った後、看病を続けながらそれは考えてた。でも、それはタマ姉からじゃなく、俺から伝えなくちゃいけない。そんな気がする。
「タマ姉、このみには俺から伝えないと・・・・・」
「いいから、私のベッドを貸してあげるから少い横になりなさい。お薬とか用意してくるから。」
「でも、タマ姉・・・・・」
昨日の今日だけど、このみに伝えるなら早い方が良い。わだかまりを残さないためにも。
「タカ坊。言うこと聞かないと、お姫様だっこで無理矢理ベッドに連れてくわよ?」
うげ、それはイヤだ・・・。だが、どうもこのままだとタマ姉はホントにやりそうだ。ただでさえ、もともと腕っ節で敵わないのに、こっちの体調が悪いんじゃ抵抗のしようがない。しぶしぶタマ姉の部屋に戻る。
「じゃあ、雄二。後はお願いね。」
「ああ。じゃ、行ってくるよ。・・・ふぅ、貴明も可愛そうに・・・・・ナンマンダブナンマンダブ」
こらそこ、念仏を唱えるな、念仏を。
さすがに、立ってると辛いのでここは遠慮なく、タマ姉のベッドに横にならせて貰う。何だか良いにおいだ。昨日は気付かなかったけど、さすがに”タマ姉も”女の子なのか部屋からは良いにおいがする。こんなことは口が裂けても面と向かって言えないが・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ん・・・・・・・・。」
いつの間にか眠ってしまったらしい。寝不足+風邪では当然といえば当然か。気付いたらもう昼をとうに過ぎていた。
「起きた?」
タマ姉は、ちょうどタオルを絞っているところだった。どうやら、俺が寝てる間ずっと看病してくれてたみたいだ。
「気分はどう?」
心配そうにこちらを見ている。いきなり、心配掛けちゃったな・・・。
「グッスリ寝たからもう大丈夫だよ。」
と、起き上がろうとするが、やはりまだ今ひとつ力が入らない。
「もう、無理しないの。せっかくお姉さんが看病してあげてるんだからゆっくり寝てる。」
そういうと、タマ姉はイタズラっぽく笑った。
「『昨日の続き』をするには早く治さないとね。」
昨日と同じこと言ってるよ。だから、続きって何さ・・・。まあ、わかってるけど・・・
「やっと、気持ちが通じ合えたのに、ホント、災難続きね。私たちって。」
「タマ姉・・・・・あのさ、タマ姉。このみには俺から伝えるよ。」
「・・・・・そう。」
タマ姉は優しい笑顔で頷いた。
「いや、俺から伝えなくちゃいけないんだ。このみは俺の大事な”妹”だから・・・」
「タカ坊がちゃんと話せば、このみもわかってくれると思うわ。というより、あの子はタカ坊以上にタカ坊の気持ちをわかってる。」
「タマ姉・・・・・」
「じゃあ、そんなタカ坊に勇気をあげる。」
そういうとタマ姉はゆっくりと顔を近づけてきた。唇と唇が重なる。この間のデートの時とは違う、仮初めじゃない正真正銘の恋人同士のキス。ほんの数秒だったけど、永遠とも思える一瞬。
いろいろと回り道をしたし、まだ問題も山積みだけど、それでも、タマ姉とならどんなことでも乗り越えていける気がする----。
長くてすみません。後、エロ期待した人、漏れには無理だ・・・_| ̄|○
初SSなんで読みにくい部分は多々あると思うけど、勘弁してください。
後、このみとの修羅場も考えたけど、
そこまで書くとToHeartじゃない気がしたんでやめときました。
分けて投稿するの苦労したヨ・・・(;´Д`)
>>606 …つーかもう書いたのかよ!はやっ
初SSと言われなきゃ気づかんほど良かったよ
ネタの被りもないし、タマ姉ほのラブでイイヨイイヨー
ホント(*^ー゚)b グッジョブ!!
>>606 原作とのシンクロ率が高くて、物語の延長を望んでる読者には打ってつけの
内容だと思った。
一つの話として完結するお話もいいけど、この話のように、
原作の続きを垣間見せてくれる内容のものもいいねぇ。
そしてベッドに横になっているタカ坊の縦になってしまったタカ棒を治めてくれるんですね。
すごいなぁ
>>606さん
俺は今由真&愛佳ネタを考案中…。
全然思い浮かばない…
双子BADの後日談ということで、ちょっと書いてみました
いつもとは文体を変えてみたが、面白いかどうかは別問題……
話の筋自体は、すっきりわかりやすいものを目指したつもり
以下、しばらく続きます
要するに、日曜ってのは絶好のナンパ日和なわけでさ。うちみたいな土曜もある学校も、週休二日のとこも休
みなわけでさ、街にもキレイブス問わず女の子がいっぱいなわけよ。
だから俺も行ったよ、駅前に。彼氏に振られてブルーしてるカワイイ女の子とか、いいフェイスやいいボデ
ィーしてるけどファッションがダセえおかげで持てない美女の原石とか、そういうのを発掘するのが無上の喜び
なわけ。純情気取って家でウダウダしてるチェリーボーイとは違うわけですよ、なぁ貴明。
俺様も自分で言うのはアレだが結構なイケメンだしさ、退屈させない自信もあるわけ。だからさ、今日は一人
くらいは釣ってヨシにしようかと思って何人かにお声掛けしたけどさ、うーん、ダメだね。なんでだろうね。
口説くときはさ、真剣そのものだよ。相手を運命の女性とひたすらに信じ、全身全霊で相手を愛して褒めちぎ
る。口説いてるその瞬間だけでも、口説きにかかってるこの女は、俺にとって女神になるわけ。この状態ではカ
ンペキ俺の片思い。どんな言葉を使ってでもまずは振り向いてもらわなくちゃならないわけ。そうしなければ、
同じステージにも上がれやしない。初めて会う女の子と同じステージに上がって、同じものを食って、どうにか
して同じベッドで寝たいわけよ。どうにかこうして寝た後は、相手にもよるけど、どうやって次の一発をヤる
か。もうそれなのよ。まあ俺様も、まだまだ汚れを知らないな純朴な青年ですから、口で言うほど上手くはいか
ないけどね。とにかく、スタートラインに立つにはどうするか。俺は貴明みたいに、黙っていても女の方から寄
ってくる羨ましい男じゃない。悔しいけど、事実。だからこそ、攻めなきゃいけない。こっちから!
だけど、この日は当たりが悪い、最低最悪。どいつもこいつも口を開けば、「ウザイよ、ガキ」とか「バカじ
ゃないの」とか「もっといい口説き文句を考えたら?」とか、そんなんばっかり。おまえらもう少し素直になっ
てさ、思考をオープンなワールドワイドにしてさ、真剣になってるこっちの気持ちに応えてみる気はないのか
ね。「ウザイ」とか「バカ」とか貧弱な語彙を並べ立ててさ、まったく。俺の口から出るのは、ため息ばかり。
顔だけでも言葉だけでも女は釣れない。まだまだ全身から沸き上がる熱い情熱とかオーラが足りないのかな?
極めて短い片思いは、片思いのままでことごとく霧散しちゃいました。ボンッ!てなもんだ。あーあ。
昼になれば、一人寂しくヤックの窓から良く晴れた空を仰ぎ見る。青いキャンバスに白い雲がゆたっている。
おおい雲よぉ、どこへ行く? 素直なギャルが引っかけ放題の国があったら、是非教えてくれえ。
振られた女にゃ興味ないけど、あいつら、俺がガイジンだったらついてきたかな? クルマに乗ってたら話く
らいは聞いてくれたかな? そんなことをふと思った。バイク(原付じゃねーぞ)やクルマの免許、早く欲し
い。でもウチの学校厳しいから、在学中は免許取れないんだよな。クソ親父もきっと反対する。「お前に乗り物
は100年早い」って。100年も経ったら死んでるだろうがよ。おい親父、俺は知ってるんだぞ。別邸にハー
レーダビッドソン持ってて、年甲斐もなく黒い革ジャン、マッカーサー元帥みたいなグラサンでバッチリ決めて
さ、企業の社長連中や重役どもとツーリングして遊んでるってことを。バイクなりクルマがあれば、少なくとも
ガキ扱いはされないだろう……てのは早計ってやつかな? 暴走族(あ、今は“珍走団”って言うのな)みたい
に、クルマ転がしててもお子様な連中はいるけど、それはそれ、これはこれ。まぁ本音は、彼女と一緒にドライ
ブしたい。そんだけ。
憂いを抱いたロンリーガイの俺。窓際で黄昏れてアイスコーヒーをチューと吸ってたら、神様っているんだ
ね。運命的な出会いを授けてくれたわけ。外を見るとさ、すごい女がいた。背がスラッと高くて、色白で、髪は
ポニーテールに纏めてて風になびき、おまけにすげえ巨乳で、ケツを振り振りしながら歩いてたわけよ。黒いワ
ンピースが大人っぽくてさ、足のラインも引き締まってて素晴らしいのなんの。ファッション雑誌の中から逃げ
てきたモデルちゃんみたいでさ、もう一目惚れ。歳は、いくつかなぁ? 二十歳くらいかなぁ? でも、愛があ
れば歳なんか関係ないっ! ここであの娘のハートを射止め、ラブラブ街道をひたすら驀進して、封建的価値観
とメスゴリラの支配するプリズンからエクソダスするんだ! 今こそ、青春の逆転ホームランをぶちかまてや
る! 俺はポテトを残らず口に放り込み、アイスコーヒーで流し込むと、一目散に外へ出た。
青空の下を、彼女の尻を追って駆ける駆ける。パーマのババアも風船持ったお子様も、俺にとってはただの背
景。俺が唯一存在を認めているのは、かの絶世の美女のみ。ようやく追いついたのは、スクランブル交差点の手
前。信号が赤でよかったよかった。天も我に味方せり。俺はポーンと跳躍して、彼女の横にスクッと降り立つ。
綺麗な顔は良く見えないけど、とにかく俺は攻撃開始、攻める攻める。もう攻めの一手よ。クビになった野球選
手が合同トライアウトに挑む心持ちで、全身全霊をかけて俺は行ったさ。
「ねぇ彼女カノジョぉ、すっごいキレイな髪だよね。天使の羽みたいに、春風になびいちゃってさぁ。ほんっ
と、かわいいよねぇ。モデルさんやってるの? それとも女優さん? さっきもどっかの映画監督が、血眼で君
のことを見てたよ? 君を主役にしたいってさ。でも、そいつの撮る作品、きっと他の役者が逃げちゃって映画
にならないよ。君があんまりまぶしすぎるからさぁ、君のプロモーションビデオになっちゃうこと請け合い!
いや、その方が大ヒットするから問題ないってか?」
笑ってるよ、彼女。口に手ぇ当てて、可愛く笑ってるよ。うふっ……ふふふ……って。綺麗な指だなぁ。許さ
れるなら、是非ペロペロしゃぶりたいねぇ。こんな手でしごいてもらったら、一発で昇天しちゃうよね。
こういう女は、野郎に興味がなければシカト決め込むか、手ぇヒラヒラさせて“シッシッ”ってやるかのどっ
ちか。とにかく面白い男だって思わせれば勝ちよ。いざ勝負っ。
「ねぇ彼女ぉ、ここにはよく来るの? この辺じゃぁ、あんまり見かけないよね。見かけたらすぐわかるって。
だって君みたいな超絶セクシーな美女、一目見たらもう二度と忘れねぇ、絶対忘れねえ、メモリーの一番大事な
ところに記憶されてさ、網膜にも焼き付き起こしちゃうもん。君を忘れる奴は人間じゃねえよ、カカシ。そう、
カカシか泥人形!」
彼女はクスクス可愛く笑ってる。脈あるぞ、これは!! この素敵なお姉さん、いったいどんな女なんだろう。
ウチを暴力で支配しているメスゴリラとは違って、優しくて、包容力があって、甘えさせてくれて、アレする時
も「雄二くん……お姉さんが全部教えてあげる……」って具合で優しくリードしてくれちゃったりして!? 手取
り足取り手コキパイズリ、最後は俺がリードして、マングリ返しで突っ込んで激しく腰を跳躍させるの。彼女は
デカいオッパイをブルンブルンさせながら、二人が繋がってる汁まみれの場所を見せつけられて恥ずかしくなっ
ちゃって、喘ぎまくってイクの。いいよね。すごくいいよね。他の女ともそこまでしたことはないけれど、こん
な天使みたいなお姉さんならノープロブレム! もっと知りたい、君のこと。俺は攻めるさ。どこまでも。
「よし、超プリティーな君が何者か当ててあげよう。あっ、わかった。天使の国から逃げてきたんだろう? き
っと、そうに違いないっ!」
「その天使は、こんな顔してるのかしら?」
その天使ちゃんはウフフッて笑うと、俺の方に振り向いたわけ。太陽みたいな満面の笑顔でさぁ。
ああ、彼女は満面の笑顔だったさ。実に楽しそうでさ。この世に恐ろしいものなど何もないような表情でさ。
その邪悪な瞳とトゲを含んだ妖しの指で、俺を捕らえて放さない。この世界に舞い降りた、堕天使だったさ。
この女……姉貴だったさ。
「残念でした、カカシさん。ナンパされちゃったのは、これで二度目かしら?」
ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!
ああそうだよ、二度目だよ。前回は、髪をアップにしてたとき! この歩くブラクラめ! ブラクラはPCを
再起動すればおしまいだけど、こいつはトロイの木馬みたいにいつまでも覚えてやがるし、ついでに食い物を奢
らせ、買い物にも付き合わせて荷物持ちをさせやがってくれるから、なおタチわりい。むしろ、歩く“ワンクリ
ック詐偽”と言うべきだな。ああ、この日も奢らされたさ、高いケーキ2つと美味しい本場物の紅茶を。しめて
1650円(税込)。「声を掛けてきたのは雄二なんだから、あなたが払うのは当然でしょ?」だとよ。へいへ
い、自己責任ってヤツね。クソ。
エロマンガとかの題材に『姉萌え』ってジャンルあるよな。他の連中も「雄二いいよな、あんな綺麗な姉ちゃ
んがいてさぁ」なんて気軽に言ってくれちゃったりするけど、俺は奴らの言ってることが解らねえんだよなぁ。
そりゃあ姉貴を一人の“女”として冷静に見たら、まあ、モデルみたいな体型した美人だと思いますよ。顔も、
アイドル気取りのしょぼい連中よりはずっといい。事実、芸能プロダクションのスカウトに声掛けられたって言
ってた。名刺を俺に見せびらかして、呆れたように鼻で笑ってたっけ。でも、近親者だからこそ実感できること
だが、どう考えても恋愛の対象にはならないね。あれは、女じゃないもの。ギャルの皮を被った『向坂環』って
いう別の生命体だもの。統制社会の頂点に立つ、スターリンやポル・ポト、拳王に匹敵する絶対支配者だもの。
生まれたときから、俺はヤツの正体をまじまじと見てきているんだ。どこの世界の女の子が、健全な青少年の日
常生活を恐怖と暴力で支配しますか? ちょっぴり寝過ごしただけの可愛い弟相手に乱暴狼藉を働きますか?
オヤツから貯金箱の中身までガッチリ管理統制しますか? 私的な用事にもかかわらず、こっちの用など顧み
ず、人を下僕のように駆り出しますか? 端から見れば面倒見のいいお姉ちゃんかもしれんけど、『あなたのモ
ノは私のモノ、私のモノは私のモノ』というジャイアニズム全開の姉貴に萌えろというのは、俺にはできない。
金貰っても無理。日本の国家予算をやるって言われても無駄。ダメなモノは、ダメッ!!
ケーキを美味そうに食っている姉貴を見ると、どうしても思うよ。これが姉貴じゃなかったらなあって。俺の
理想の女性に最も近いのが、姉貴(外見のみ)だなんて。クソ。ワンピースの隙間から、白いレースのブラがチ
ラチラ見えてますよ、お姉様。お嬢様教育されてるくせに、俺の前では地のガサツで荒っぽい部分を大股開きで
見せつけやがる。アイドルの皮を被ったメスゴリラめ、畜生。ああ天よ。なぜ俺にこうも試練を与えるのだ!?
夜中にコッソリと、人の中身だけを取り替えられる機械ってないかなぁ。どっかのマッドサイエンティストが
作っていないだろうか? それが手に入るのなら、先祖伝来の壺や刀剣を売り払っても惜しくはないぞ。取り替
える相手は誰がいいだろう? 例えば、このみはどうかな? ……ダメだ。嬉々として貴明の元へ行っちまう。
「タカくんタカくん、わたしこんなにオッパイ大きくなったよ」って。チビ助は貴明真理教の狂信者、かつデカ
尻巨乳主義に取り憑かれていることは、こちとらお見通しなんだよ。貴明が双子に振られたかも知れないと聞く
やいなや、小躍りして再び貴明に擦り寄り始めている、ふてえお子様だ。それじゃあ、小牧愛佳はどうだ。よく
気がつくいい嫁さんになるんじゃないかと密かに思っているんだけど。そのかわり、うちのクラスが、姉貴が中
身の小牧に制圧されることになるな。外面小牧で性格姉貴……やべえ、全く想像できねえ。何より、クラスのみ
んなに迷惑がかかるからやめといた方がいいよな。……なんだ、まるで使えねえじゃん。機械いらねぇ。
青空マーケットに付き合わされて、荷物をしこたま抱えて帰宅すると、チェリーボーイの貴明からTEL。
奴曰く……。
「最近……珊瑚ちゃんたちが、おかしいんだ。校内で声をかけようとしても逃げるようなそぶりを見せるし、電
話にも全然出てくれないし……」
彼女たちに対して曖昧な感情しか持てず、曖昧な態度でモラトリアムを気取っていたくせに、今さら何を言う
のかね、この小僧は。
「だから、振られたんだろ? お前が純情気取りでつれないからさ、いい加減に飽きたんだろうよ」
「俺はあのふたりの……」
「お前は面倒見のいい『兄ちゃん』でいたいんだろ? 恋人じゃなくてさ」
貴明は、何も答えない。
「ズバリ訊くが、あのお姫様たちを“女”だと思ってないんだろう?」
「そうかもしれない」
そういうことは即答するんだな。とことん情けない野郎だ。そりゃあ、奴がここまで女嫌いになったのは、姉
貴に弄ばれたトラウマもあるかもしれないが、奴もいい年齢じゃねえか。一生そうやって女怖い女怖いって生き
ていくのか? ネコ型ロボットなら道具でも出すところだが、俺には便利なポケットはないし、なにより奴のた
めにならない。ここは心を鬼にして、カツを入れてやらねばっ。
「まったく、呆れた奴だな。姉貴が嘆く気分もわかるわ。そんな不誠実な、煮え切らない態度ばかり取ってるお
前みたいな奴にな、彼女なんか出来るわきゃねえだろっ。チビ助すら持て余しているお前には一億年早いわ!!」
「俺な、お前の言ってることが解らないんだよなあ。珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんを“女”だと思うことと、俺が避
けられてることと何の因果関係があるんだ?」
「はぁ? お前、本気で言ってるのか?」
「だってさ、俺のことが本当にふたりにとって邪魔になったら、瑠璃ちゃんが真っ先に俺を排除にかかると思う
ぜ。珊瑚ちゃんもあれでなかなかしっかり者だから、本当に俺が嫌いになったらハッキリ言うと思うんだ」
貴明よぉ。君には呆れた。実に呆れた。女心のカケラも解らぬ男の言うことか? このみの下心など何も考え
ずに、このみと一緒の布団でおねんねしてる奴の言うことか? 自分が姫百合姉妹にしてきたことを、胸に手を
当てて考えてみろってんだ。そうだよ。面倒くさがって逃げて愚痴こぼしてばっかりいたじゃねえか。虫がよす
ぎるんだよ、お前は。もっと言ってやれ!
「だから飽きられたんだよ。ふたりにとってどうでもいい存在だから、わざわざ排除する必要もないわけだ。珊
瑚ちゃんにとっても、お前のことなど『近寄らんといて』とか口にする価値もない存在なんだよっ。言わば、お
前はふたりの中で予選落ちしたんだ。唐突に訊くが、お前は今までに同じクラスになった奴の名前を、全員分覚
えているか?」
「そんなわけないだろう……いきなり何を言い出すんだ……」
「もはや友達でもないどうでもいい存在に成り下がったから、名前すら思い出せないわけだ。名前も顔も思い出
せない奴は、お前の中で存在自体が消去されたんだよ。要するに、お前の存在はふたりに否定されたんだよ。い
や、『否定された』と言うより『否定しようとしている』と言った方がいいかな」
「いい加減なことを言うな」
貴明め、ムカついてるムカついてる。だが、俺のムカつき具合はこんなものではない。いつぞやに遊園地で味
あわされた敗北感、俺は決して忘れてはいないぞ。
お前はもっといい男になれると思ったんだがな。俺以上のナイスガイになれる素質があると思ってたのにな。
全て俺の気の迷いだったようだ、残念だよっ。そろそろ、とどめを刺してやる。
「いい加減なものか。自分たちのことを本気になって見てくれない男のことなど、脳内からキッパリ消去したい
んだろうよ。お前みたいなチキン以下の七面鳥ボーイには、珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも任せられねえ。ふたりが
そんなに心配だったら、ふたりとも俺が面倒見てやるよ。それでいいだろ? 解ったら、チビ助と一緒にピザで
も食って寝ちまえ。お前にはまだ、帰れる場所があるんだ」
「……雄二にアドバイスを求めたのが間違いだった。時間の無駄だった」……ガチャン。
けっ、切りやがった。後ろで聞き耳立ててた姉貴が「まるでハイエナね」と苦笑いしてた。『ふたりとも俺が
面倒見てやる』って言ったことを指しているのか。ハイエナ? 結構じゃないか。自分でエサを採ろうとせず、
メスに任せっきりの怠惰なライオン。ライオンが悠然と見逃した獲物をハントする孤独なハイエナ。どっちが懸
命に生きていると言える? 貴明は、自分がライオンだっていうことにすら気付いていない。ある意味、とても
可哀想なヤツだよな。
ふたりとも、俺が面倒見る、か。悪くはないアイデアだが、さてどうしたものかな。貴明にはああ言ったが、
本当にふたりの中で貴明の存在が消えたかどうかなんて、直撃してみなければわかるもんか。奴のことが気にな
ってはいるが、何らかの事情で隠し事をしているのかもしれない。まあいいさ。いつもの俺様のように、まずは
ポジティブにぶつかってみてから、どうするか――つまり、珊瑚、瑠璃のどちらを攻略するか、それとも本当に
ハーレムで片手うちわでウハウハな状況に持って行くかは、それから考えればいいさ。俺の勘では瑠璃ちゃんの
方が与しやすしと出ているが、さて!?
消灯しても、目が冴えて眠れやしねえ。どうにも、ふたりと貴明のことが気にかかって。あれこれ考えても仕
方ないことなんだけど、俺は本質的にいい人だから、やっぱり略奪愛なんか出来るかなあ、出来ねえかもなぁ、
なんてな。
布団の中で悶々としていると、どこからか、フウ、フウ、フウと荒い息づかいが聞こえてきた。泥棒かと思っ
て、こっそりドアを開け、忍び足で廊下に出る。フウ、フウッ、フウ……って声、どうも姉貴の部屋からみたい
だ。今この家にいるのは、俺と姉貴だけのはず。静まりかえった廊下に、かすかに聞こえる荒い呼吸。呼吸の合
間に、それは誰かの名前を呼んでいるようだった。俺が姉貴の部屋近くの壁に耳を付けて耳を澄ますと、“珍走
団”のゴッドファーザークラクションが遠くに響き、声はかき消されちまった。そんなもん、今時流行らねえん
だよクズどもが。まあ、なんとなく事情は読めた。ワンモアタイム、もう一度聴いてみよう。“あの名前”が出
たら確定なんだが。
……はあ、はぁ……ぼう……ぼぉ、……ぼお……ぼお……ヵぼおっ、たかぼおっ!
……。
声は止んだ。当確が出ました。メスゴリラが発情していたようです。
なぁ姉貴よ、貴明のことをチキンとか意気地なしとかボロクソに言ってたけどさ、そういう姉貴はどうなんだ
よ? 本当はアンタも好きなんだろ、奴のことが? やっぱり貴明のことが好きだから、会いたいから、短い間
だけでも一緒に過ごしたいから、こっちに戻ってきたんだろうが。姉貴なら貴明の一匹や二匹、強引にでも自分
のモノにできるだろ? 実際、やろうとしてただろ? どうしてお姉さん気取りで引っ込んじまうんだよ。アン
タだって、大概じゃねーか。馬鹿だよ。姉貴も、貴明も。罪な野郎だよ。まったく。俺は壁に軽く蹴りを入れ、
それから小便に立った。肌寒い廊下にいて腹が冷えちまったよ。
メスゴリラだなんだと言ってても、この世にたった二人の姉弟だもの、気にはなるさ。まあ俺としては、あの
二人がくっついてくれると嬉しいってのもあるんだけどな。言うまでもない、俺が自由になるしな。それに、奴
と本当に兄弟になるのも悪くはないだろ。今までだって似たようなものだったんだし。かなり、いや相当なヘタ
レだけど、悪人ではないしな。うん、いいかもしれないな。
そんなことを思いながら水を流してドアを開けると、目の前に般若が立っていた。それは俺のこめかみを禽獣
のように掴み、グイとねじりあげた。奴の手からは、賞味期限切れのヨーグルトみたいな臭いがしていた。
以上。誤字脱字があったらご容赦を
連載モノの予定で始めたんだけど、私事(転職)で忙しくなってしまった
ヘタすりゃ一週間くらい間が空いてしまうかも知れない ( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
GJ!
単発でも充分面白いって(w
アンパン日記を髣髴とさせるSSだったよ。
う〜、いつつ・・・。
まだ頬が痛む。
おかげで目はぱっちりと覚めたんだが・・・。
きゅっと水道の蛇口をひねり、出てくる冷水で顔を洗いながら鏡で頬の赤くなった部分をさする。
なんか学校で誰かに誤解を招かれそうだな。
特に女の子にうるさいあいつなんかには余計なことまで詮索されそうだ。
蛇口を閉め、かけてあるタオルで顔を拭く。
そしてそのままリビングへと向かう。
「おはよう、貴明くん」
「おはようございます」
すでに神岸さんとこのみが朝食の準備をしていて中には換気扇をつけているのにもかかわらず、魚の焼く匂いが充満していた。
「これはアジの開きですか?」
「うん、冷蔵庫に入ってたから勝手だけど使わせてもらったよ。もしかして駄目だったかな?」
「あ、全然大丈夫です。基本的にうちの冷蔵庫はこのみに任せきりになっちゃてますんで。このみがOKならほとんどは大丈夫ですよ」
「うん、わかった。それじゃあ今度からはこのみちゃんに聞くことにするね」
神岸さんはテーブルを拭き終わると再びキッチンへと戻り、すれ違い様にこのみが焼けた魚をテーブルへと運んできた。
「よいしょっ、タカ君、もう座ってていいよ」
「いや、俺も手伝うよ」
俺にだって飯を盛るくらいはできるし、二人だけじゃ悪いもんな。
というよりはこれは自分でやらないとまた昨日のようなことを引き起こされかねないからな。
「俺の分に・・・と。このみ、どれくらいがいいか〜?」
「う〜ん」
ちょっと考えたが頬をちょっぴり赤めて、
「大盛で」
と、答えた。
ハイハイ、大盛ね。
恥ずかしがらなくてもお前の胃の大きさはわかっているつもりだよ。
神岸さんは・・・普通でいいよな。
それと浩之さん・・・。
あれ、浩之さんは?
「あれ?浩之さんはどうしたんですか?」
「さっき起こしたんだけど・・・。まだ眠っちゃってるのかな?」
そそくさとリビングを出て行く。
『浩之ちゃん。浩之ちゃん、起きてよ』
予想的中らしく、やっぱり寝ていたみたいで神岸さんの起こそうと頑張っている声が聞こえてくる。
『起きないと無理やりやっちゃうよ。それっ!』
『あひゃっ!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ』
・・・・・・・・・。
一体何をやってるんだろう?
「痛いよ、浩之ちゃん」
「お前が無理な起こし方をするからだろ」
額を抑えた神岸さんとオレンジのTシャツに綿パンツ姿の浩之さんがともにリビングへと入ってくる。
「だって〜、なかなか起きないんだもの」
「限度があるだろ、限度が」
まださっきのことで揉めているらしい。
一体どんな起こし方をしたんだろう?
・・・・・・起こすといえばマルチはどうなったんだろう?
「浩之さん、マルチはどうしたんですか?」
「ああ、さっきスリープモードを解除したばっかりだから今はシステムが立ち上がってるとこだよ。すぐに来るさ」
「はわ〜、おはようございます」
噂をすれば何とかってやつだ。
黄色パジャマのマルチが眠そうに目をこすりながらこちらへと歩いてくる。
昨日のうちに神岸さんが着替えさせて布団に寝かせたらしい。
お、一回あくびもしたぞ。
やっぱりどう見てもメイドロボになんか見えないよなぁ。
すごく自然すぎるってか・・・。
それより眠たそうだなぁ。
それじゃあ、ここはひとつ―――。
「マルチは食べ物も食べれるんだよな」
「はい・・・少しくらいなら・・・」
「じゃ、はい」
と、目の前に出したのはコップ一杯の牛乳。
「これで目を覚ませな」
「ありがとうございます・・・」
ゆっくりと手をかけると冷やされた牛乳をこくんこくん、と少しずつ飲み込んでく。
あっという間にコップは空になり、口の周りがちょっと白っぽいけどマルチはすっかり目を覚ましたようだった。
「ご馳走様でした」
「お粗末様」
にこっと笑ってコップを取り上げて流しへと置いておいた。
「それじゃ、ご飯にしましょう」
「はーい」
みんなそろって椅子へと座る。
久々だな、うちでこんな風に大人数で朝食を取るなんて。
親父たちが行って以来かな。
「いただきま〜す」
「いただきます」
>>625 に〜ちゃんの文章おもろいなぁ〜。
ジェットコースターみたいに勢いあって楽しかったで☆
ギャルゲ板の本ヌレでネタになってる草野球編を書いてホスィ。
あれはきっちり書けば面白そうだな
こみパOVAの3話みたいになりそうだがw
>>624 ハゲワロスw
話としてもまとまってておもろい
ここ最近は雄二ブームですか先生
雄二の勘では瑠璃の方が与しやすいのか。
636 :
606:05/02/15 10:57:28 ID:NFXnWXd/0
遅レスだけど、取り敢えずレスだけでも・・・
>>607 >…つーかもう書いたのかよ!はやっ
書いた時間短かったのは、一気に書かないと頓挫すると思ったんでw
元々、筆不精だし・・・・・
>>610 >物語の延長を望んでる読者
ノシ
ってか、タマ姉シナリオ短過ぎ・・・・・('A`)
このみシナリオだとタマ姉にもフォロー入るのに
タマ姉シナリオだと、このみはおろか三人娘も放ったらかし・・・
野球SS、面白そうですね。
相手チームが出来れば(誰かが)書けそうな気も・・・
後、ここってやっぱ非・微エロ系のSSって少ない?
まあ、21禁板だから仕方ないのかもしれないけど・・・
漏れは、エロを書くにはまだまだ力が足りない・・・・・
相手チームはCLANNAD or1のキャラで。
サッカーなら書けそうだけど、あんまりSS向きではないわな。
永田さんあたりなら余裕でできそうだけど。
意表をついて相手チームは北朝(ry
前回までのあらすじ
貴明と愛佳が結ばれたことで、必然的に出会った雄二と郁乃。郁乃が雄二をいい男と言ったことを拡大解
釈した愛佳の後押しで、ふたりは友人となり、今は恋人関係。
郁乃に無理やり連れ出された海で通り雨に降られた二人はホテルで雨宿り。
そしてついに二人は結ばれた……のだけど。
ちょっと長めなエピローグの始まり。
第一話から第十一話はこちらで。
ttp://www.geocities.jp/koubou_com/
滑らかな長い髪をゆっくりと撫でていた。
不思議なもので一度達してしまうと裸で寄り添いあってることの照れくささはまったく感じなくなっていた。
「……ちょっと寒い」
空調が効き過ぎているのかもしれないと、ベッドの傍にあるパネルを操作する。それから重めの布団に二
人して潜り込むと、郁乃は雄二に抱きついてきた。
「ん、あったかい」
左腕を曲げて、腕の上の頭を抱え込むように撫で続ける。余った右手で郁乃の肩に触れる。ゆっくりと肩
から腕にかけて手のひらを動かすと、郁乃は少しくすぐったそうに身をよじった。
「……もう」
ぎゅっと郁乃の手が雄二の鼻をつまむ。
「ごめんごめん。ギブギブ」
鼻をつまんだ手を取って、握る。
「……雄二さんは優しいよね。……でも、あたし知ってるの。雄二さん、優しいだけじゃないよね」
「……え?」
「ううん。独り言」
そう言って首を振る郁乃の顔は幸せそうに見えたので、雄二はそれ以上なにも聞かなかった。
「あ、そうだ。雨止んだかな?」
ベッドから抜け出して、窓を小さく開ける。小さく切り取られた空は、さっきまでの雨が信じられないほどの
青さだった。
振り返るともそもそと郁乃も布団の下から這い出てくる。
「シャワー浴びないと……。雄二さん、手伝って」
伸ばされた郁乃の手を掴んで、その軽い体を抱き上げる。
「お姫様ダッコされて初めて通るドアは風呂場です」
そう言ってくすくすと郁乃が笑った。
「あんまり乾いてないね」
顔を見合わせて苦笑する。
風呂から出てきて服を着ようとしたものの、脱ぎ散らかしたままの服はほとんど乾いていない。とはいえ、
外は快晴だし、もともとずぶ濡れというわけでもなかったから、そのまま袖を通してしまう。
お金を払ってホテルを出ると、濡れた地面に太陽の光が反射して、きらきらと世界が輝いていた。
「ちょっと眩しい……」
雄二は日傘を二度三度振って雨の滴を払うと、車椅子に深く掲げた。
「そろそろ帰らないと委員ちょがパニックで入院しかねないな」
懐から電源を切っておいた携帯電話を取り出して電源を入れる。そしてそのまままた懐に戻そうとしたとこ
ろでメールを着信する。メール受信欄を開くと、
「げ、34件、マジかよ……」
何件か貴明から来たものもあったが、それ以外はすべて愛佳からだった。おそるおそる最新のものを開こ
うとしてボタンを押した瞬間、着信があってそのまま画面は通話中に変わる。
「あ、はい、えーっと向坂です」
慌てて携帯電話を耳に当てる。
――向坂くんっ! なにやってたんですかっ!
その瞬間耳を貫いたのは、携帯電話としてありえないほどの怒声だった。耳がキーンとなる。
――……あ、あや、ご、ごめんなさい。すみません。すみませんすみませんすみま……――
一方で電話の向こうでは周りに謝っているらしい愛佳の小さな声が聞こえる。
――コホン、向坂くん、郁乃はそこにいるんですか?
「ああ、ちゃんとここにいるぜ」
ほう、と電話の向こうから聞こえる吐息。
――分かりました。とりあえずそれならいいんです。でも、せめて連絡はつくようにしておいてください。
「ごめんな、委員ちょ。悪かった」
――心配してたのはあたしだけじゃないですから、すぐ戻ってきてくださいね。
「ああ、分かった。ちょうど今から帰ろうと思ってたとこなんだ」
電車に乗って二人の街に戻る。
「お姉ちゃん怒ってた?」
恐る恐るという雰囲気で郁乃は雄二の顔を伺う。雄二が苦笑いして郁乃の頭を撫でた。
「いや、でもすごい心配してた。謝らなきゃな」
「うん。そうだね」
二人で電車の窓から青空を眺める。太陽は傾き始めていたが、まだまだその強さを保ったままなので、雄
二は注意して郁乃ができるだけ日陰になるような位置に車椅子を止めている。
「……本当はね、やっぱり不安だったの」
郁乃の目は青空と、行き過ぎる風景に向けられたままだ。雄二は一瞬だけ郁乃の顔を見たが、郁乃の視
線を追うように窓の外に目を向けた。
「雄二さんがあの人と歩いててね、すごくお似合いだって思ったの。……それでね、ああ、あたしはあんなふ
うに雄二さんと並んでは歩けないんだって分かっちゃったの。それがね、悲しかった……」
「……大丈夫さ。郁乃だって歩けるようになる」
「うん。でもね、もう平気……」
郁乃の手が伸びて、雄二の手を掴んだ。ぎゅっと握り締めあう。
「雄二さんがね、あたしの全部を受け入れてくれたから……、もうなにがあっても平気なの」
二人は微笑みあう。
柔らかな時間は穏やかに過ぎ行き、あっという間に二人を見慣れた街まで連れて行った。
電車から降りてすぐに雄二は携帯を取り出す。罪滅ぼしというわけではないが、愛佳にはこまめに連絡を
入れたほうが安心だろう。そう思ってリダイヤルするとすぐに愛佳は出た。
「ただいま。もう駅についたよ」
――あ、それだったら北側の改札に出て頂けますか? その、もうついてますから。
「お、了解」
電話を切ると、くいくいと郁乃の手が雄二の服を引っ張った。
「お姉ちゃん、なんだって?」
「もう駅についてるらしい。というか、ずっと駅で待たせちゃったかもな」
愛佳に言われたとおりに北改札に向かうと、自動改札機の向こうに手を振る愛佳が見えた。こちらが手を
振り返すと、ほっと両手を胸にあてて息を吐いた。実際に郁乃の姿を見るまで心配でならなかったのだろう。
改札を出ると、すぐさま駆け寄ってくる。
「もー、本当に心配したんですよ!」
ぷんぷんと両手を振り回す愛佳。
「悪かった悪かったって」
「お姉ちゃん、ごめんね」
郁乃も素直に謝る。愛佳の手がその頭を撫でた。
「いいのよ。お姉ちゃんも郁乃の気持ちもっと考えてあげないとダメだったね」
そしてくるりと雄二に振り返る。
「向坂くん、その申し上げにくいのですが、うちの両親の気が少し立ってますので、病院へは」
「あ、そうか、すまん。ちゃんと謝りに行ったほうがいいんじゃないか?」
ふるふると愛佳が横に首を振る。
「今日のところはあたしが取り持っておきます。少し時間を置いたほうがいいと思いますので」
「委員ちょがそう言うんだったらそうするよ。その、全部俺が悪かったということにしておいてくれないか」
「それは……ダメ」
郁乃が雄二の服を掴んで、首を横に振る。
「お姉ちゃん、あたしが雄二さんにお願いしたの」
「……はいはい。二人とも悪かった、ということでいいですか?」
愛佳の微笑みに二人は顔を見合わせあい、そして頷いた。
「まったく……本当に心配したんだからね」
もう何度目だろうか。雄二と別れた後、車椅子を押す愛佳は何度もそう呟いていた。
最初は神妙な気持ちでそれを聞いていた郁乃だったが、流石にそれが二桁を数えようという頃になると、
そうも言ってられなくなってくる。
「お姉ちゃんは心配性すぎるのよ」
「だってあんなことがあったすぐ次の日なのに……」
それは郁乃もそう思う。随分と無茶をしたものだ。もし郁乃が愛佳の立場だったらもっと怒っていただろう。
しかし――。
「うん。そうだね。でもね……海いけて本当に良かった……」
それが郁乃の純粋な気持ちだった。
そっと目蓋を下ろせば、青い空に青い海、雲の白と潮の白、潮騒まで甦ってくるように思える。
「本当に、もうこんな無茶は止めてね。どうしても行きたいところがあるなら言って。お願いだから……」
「……お姉ちゃん……」
郁乃は少し微笑んで、愛佳に手招きをする。
「……?」
首を傾げて、愛佳が車椅子を止め、郁乃の前に回った。
郁乃はさらに手招きをして愛佳の顔を呼び寄せる。
「……あ……」
そして郁乃の手が愛佳の頭を撫でる。ゆっくりと慈しむように。
「ごめんね。心配させちゃったね」
「……いいのよ。もう。なにもなかったんだから……」
なにもなかった。その言葉が郁乃の悪戯心を刺激する。
「ね、お姉ちゃん、貴明とどこまで進んだの?」
「なっ、なによ。急に」
愛佳の頬に朱が差す。
「まさか――まだ――キスだけなの?」
くすくすと郁乃は笑う。その笑みに余裕が混じっていることに愛佳は気付く。
「ま、まさか……って、郁乃、まさか、え、ええっ、ええええぇぇ!?!?」
郁乃と別れた後、雄二はまっすぐに家に帰った。郁乃との確かな絆を手に入れた今、春乃に謝罪しなくて
はいけない。ひとつはもう確実に春乃に振り向くことはないということ。そしてもうひとつは昨夜の酷い態度に
ついて、だ。いくら余裕が無かったとは言え、あれは男の態度ではなかった。
玄関を上がり、まっすぐに春乃が滞在している客間に呼びかけるが、返事がない。そっと障子を開けて見
たが、どうやら留守にしているようだった。仕方なく自分の部屋に帰ると、部屋が片付けられていた。絨毯の
オキシドールが広がった後が少し色落ちしている。あの後、春乃は一人で後片付けをしたのだろう。
心から申し訳なく思ったが、相手がいないのではどうしようもない。
雄二はベッドに寝転がると目を閉じた。
一日郁乃の車椅子を押していて疲れていたのかもしれない。
そのまま雄二は深い眠りに落ちていった。
――――。
どんどんどん!!
「雄二、起きなさーい!!」
雄二は夢も無い深い眠りから浮き上がるように目覚め――なかった。
頭が、体が重い。
いつ眠ったのかは思い出したのに、眠った瞬間に目覚めたような気がする。しかしカーテンも閉めていな
かった窓から差し込んでくるのは確かに朝の光だった。
ドアを開けて中を覗き込んできた環が、雄二の様子に気付いてベッドの脇までやってきて、雄二の額に手
を当てる。
「雄二、あんた熱あるじゃない」
「……うそ、マジかよ。バカは風邪引かないんじゃなかったのか?」
「自分でそれ言ってる時点で頭回ってないでしょ。アンタ。ちょっと寝てなさいよ」
布団の上に寝てたのを、環に無理やり布団の下に押し込まれる。
どたばたと環が春乃を呼ぶ声が聞こえたりして、少しすると救急箱を抱えた春乃を連れて環が帰ってき
た。二人並んでベッドの脇に腰を降ろし、救急箱から体温計を取り出すと雄二に咥えさせる。
おわ、咥えさせるならその前に拭けよ、姉貴。と思ったものの、咥えさせられた以上喋るわけにもいかず、
頭もまた回らなかったので雄二はそのままにしておいた。
「――8度1分、まあ医者にかかるほどでもないわね。今日は一日寝てなさい。いいわね?」
「あ、でも郁乃、迎えにいかないと」
「雄二、アンタはバカだけど今日は輪をかけてバカになってるようだから、素直に私の言うことを聞くように。
郁乃さんに風邪がうつったらどう責任取るつもり?」
「あ……そうか……」
以前に聞いたような気がする。郁乃はただの風邪でも大事になってしまうのだ。
「私が行って伝えてあげるから、安心して寝てなさい。いいわね?」
「……分かった」
頭が回っていないのは間違いないようなので、逆らうに逆らえなかった。――それからどれくらいの時間が
過ぎたのだろう? 春乃がこまめに額に乗せられたタオルを変えに訪れる度に目が覚める。もとより眠りは
深くないので不快ではない。春乃がまだいるということはそれほど時間が経っていないのだろうか?
「……春乃さん……」
「はい」
「……ありがとう。それとごめん」
春乃が首を傾げる。
「どうして謝られるのでしょうか?」
「……キミの気持ちは嬉しい。でも応えられない。俺の気持ちは変わらない」
春乃は何も言わずに雄二の額から乗せたばかりのタオルを手に取り、もう一度冷水につけなおすと、細い
腕で力を込めて絞り、さっきよりも広めに折りたたむと額から目にかけてまでをタオルで覆った。それで雄二
にはなにも見えなくなる。
「雄二様がそう仰ることは分かっておりました」
ふぅと春乃が長く息を吐く音が聞こえる。
「私ももう無理は言いません。体面の問題もありますから、明後日の見合いだけは形だけでも来ていただき
ませんと困りますが、お父様もおじさまも私の方から説得してみせます。愛する人と結ばれたいという気持
ちはよく分かりますから」
「ごめん……、ありがとう……」
「いいえ、お気になさることはありません。雄二様にはこれで貸しひとつですわ」
そして次の瞬間、雄二の唇に少し湿っぽい感触が触れる。
「……これで貸し借りなしです」
びっくりしてタオルを外そうとした雄二の手を、春乃の手が押さえる。
「……お願いです。何も仰らないでください。何も見ないでください。何かを感じたのならお忘れください」
震える春乃の声に、雄二はもう何も言えなかった。
風邪薬の所為だろうか、意識は飛び飛びで時間の感覚はまるでない。寝ているようで起きているような感
覚。春乃はずっと雄二の傍にいる。流石にそろそろ雄二にも春乃が学校を休んだということが理解でき始め
ていた。それはこれが最後だからだ、と、雄二にも分かる。
「――雄二、ちゃんと寝てる?」
ドアが開いて環が顔を見せる。環は郁乃に伝言を伝えに行ったはずで、学校を休むわけはないだろうか
ら、すでに時間は放課後を回ったということなのだろう。雄二にはあまり実感が無い。
「……雄二、あのね……」
環がらしくもなく口ごもる。
「……意識はっきりしてないようだけど、言わなきゃいけないと思うから言うわ」
環の苦虫を噛み潰したような顔。環のこんな顔を見れるのは雄二のこれまでの人生でもそう何回もあるま
い。奥歯をかみ締め、環は言葉を探している。
「あの……私は席を外しますね」
空気を察したのか、春乃が立ち上がって部屋を出て行く。それを見送ってたっぷりと時間を待ってから、環
がゆっくりとその言葉を吐き出した。
「……郁乃さんが合併症を起こしたわ……」
「……え?」
「……状態がね、あまり良くないらしいのよ……」
「どういうことだよ!」
飛び起き――ようとして、ぐらりと視界が揺れ……床に倒れる。
慌てて駆けつけた環に支えられてベッドに戻った。
「郁乃は、郁乃は大丈夫なのか?」
「……朝の状態ではなんとも言えない……」
「俺か!? 俺の所為か!? 昨日、郁乃を海に連れ出したり……」
そして抱いたりしたから……!!
「……そう、かもしれないわね……」
目を伏せて環は首を横に振った。
環が部屋を出て行ってすぐ雄二は携帯を充電器から取り上げた。メモリーから愛佳を選び出し通話ボタン
を押す。呼び出し音を聞きながら雄二は心の重みは胃の辺りに落ちてくるのだということを知った。
この電話が愛佳に繋がったとき、なんと言えばいいのだろうか。雄二には考えもつかない。ただ電話しなく
てはいけないと思っただけだ。
かたかたと耳に当てた携帯が震えている。否、それを持った雄二の手が震えている。
――留守番電話におつなぎ――
一度切ってかけなおす。
愛佳は病院にいるのかもしれない。いや、そうだとしたら電源を切っているはずだ。愛佳は必ず病院に入
る前に携帯の電源は切るようにしていた。
るるるる、と呼び出し音が鳴り続ける。愛佳は出ない……。
もう一度切って、リダイヤルする。
お願いだから出てくれ、という思いと、いっそこのまま愛佳が電話を取らなければいいのに、という思い。
どちらが自分の本当の思いなのか分かるより前に、ぷつっという音とともに通話が繋がった。
「もしもし、委員ちょか!?」
――……向坂くん……。
愛佳の声は冷たく、重い……。
「郁乃は……、郁乃は大丈夫なのか?」
――それが……その……昼過ぎから病状が急変したそうで……
体の中を冷たいものが滑り落ちていく。
――……今は……面会謝絶に……
愛佳の声は疲れ果てている。魂のほとんどをどこかに持っていかれてしまったような沈んだ声。
「委員ちょ。なにか、なにか俺にできることはないのか?」
熱の所為で考えがまとまらない。ぐらぐらと視界が揺れる。
愛佳からの返事は無い。沈黙が重くのしかかってくる。
やがて……
――……向坂くん……、郁乃は向坂くんと結ばれて幸せだったんですよね……。
携帯の向こうから聞こえてくる愛佳の声が、雄二にはどこまでも遠く、遠く聞こえた。
今回からはすこし長めのエピローグ。次回で終わるか、まだ先かは、なんとも。
郁乃の病気はなんなんだ、という話題がちらりと出てましたが、特定の病名をしっかり出して作品を書くの
であれば、それこそ実際に取材に出かけるなどしなければ、同様の症状に苦しむ方、そのご家族の方に強
い不快感や悲しみを与えてしまうかもしれないと思い、わざと自己免疫疾患に類する病気の症状を混ぜこ
ぜにしております。一体なんていう病気なんだと深く考察して、こんな病気はねぇよというのは当然ですので
ご承知くださいませ。
原作のほうでもはっきり当てはめることができないように書かれていたのだと個人的には思っております。
ところで天使の卵っていい小説だったよね。俺の恋愛小説の原点でもある作品です。
>>650 GJ!
…けど、郁乃ー!(つдT)・゜。
>650,652
乙。
エピローグという感じのしないエピローグですな。
>>650 正直に言おう。
最近俺はあなたのSSを読むためだけに2chに来ている。
激しくGJだ!!
658 :
名無しさんだよもん:05/02/16 00:35:18 ID:NY2FI3fu0
>>650 天使の卵。いい小説だったと思うぞ。
ただ、郁乃ー。生きて欲しい。
>>650 この作品を読んだとき、昔見た映画のことを
(確か骨肉腫に罹った少女を題材にしたもの)、
懐かしく思い出していました。
当時、子供心に強く感じた無力感が、今また
思い返されるのです。あのときの私は、医学の
進歩を強く願ったものでした。
キャラの幸福を願う心はあれど、それはまずは
さておいて、貴殿の目指したかった結末を、
私も見てみたいのです。
物語を読み終えた後、それについてずっと考え
続けられるような余韻を、貴殿の作品に求めて
いるからかもしれません。
続きが、楽しみです。
>>650 今まではROM専だったが言わせてくれ。
ホンッットに続きが楽しみです。
雄二がめちゃくちゃカッコいいなぁ。
>>659の言うような、考えさせられるような、それでいて心地よい余韻が残るような素晴らしい締め括りを期待しています。超がんがれ
雄二x郁乃の人…
当スレのSS番付1位に認定しますた。
お め で ♪
(゚∀)人(゚∀゚)人(∀゚)
>>650 天使の卵。
良い小説だ。大好きな小説だ!
だが言わせてくれ。郁乃、生きろっ(つД`)
あなたのSSは大好きだが、
天使の梯子編書いてくれるって言ってもそれでも郁乃には生きて欲しい。_no
663 :
531:05/02/16 06:43:00 ID:DKE2F1yo0
つi
>650
投下を始めてから、楽しみに読ませてもらっています。
言うか言うまいか悩んだのですが、どう思っているのかも知りたいので書かせてもらいます。
8話以降、どうにも話の雰囲気が変わってしまっているような気がしてなりません。
シリアスになった、物語が佳境の入り口に入ったというだけではないような気がします。
まるでゲーム本編の中盤以降のような、読者の気持ち、キャラの気持ちが追いついていないように思われます。
郁乃あたりなんか、初めてできた友達への独占、嫉妬からの勘違いでしたという最後まで想像してしまうような展開です。
ともあれ、物書きとしてのルール、ポリシーを持たれて描かれており、非常の面白いと思っていることにかわりはありません。
ちょうどその時期、体調も崩されていたので、いろいろあったのでしょう。
次、楽しみにしてます、がんばってください。
あれから幾つかの季節が過ぎ去り、新しい出会いの季節または始まる。
「えへ〜、タカくん、タカくん今日から新学年だよ」
俺の隣を歩くこのみが嬉しそうな顔でそう言った。
「別に進級なんて留年しない限りするもんだし、
俺なんて進路関係で面倒だし。別に嬉しくもねぇな・・・・」
俺の言葉を聞き、このみは少し機嫌を悪そうな顔をして。
「も〜、タカくんは浪漫がないよ〜。新しい友達とか新しいクラスとか楽しみじゃないの?」
「浪漫って、お前は雄二かよ・・・・」
「いいこと言ったぞチビ助!!そうだ、新しい出会いだ。恋の一つや二つが待っているものなんだよ!!」
少し上の方から声が聞こえてきた、そうか話をしている間にいつもの待ち合わせに着いたんだな。
「ユウくん、おはよ〜。ユウくんならわかってくれる気がしてたよ〜」
「おはよ〜さん、なんかこのみと雄二の意見が合うのもめずらしいな」
いつものように挨拶を済ます。でも今年からいつもいたはずのタマ姉がいない。
「そうか、タマ姉は今年から九条院の大学なんだよな〜」
「うん、ちょっと寂しいけど・・・。またいつか必ず会えるから。このみはその時が楽しみだよ〜」
そうだな、どんなに離れても自分がその人を思う限り必ずもう一度会えるんだよな。
「へへへ、こっちは姉貴が向こうへ言ってくれたおかげで晴れて自由の身だぜ」
「そんなこと言ってもタマ姉が帰るときに寂しそうにしてたのはどこのどいつだよ」
「ぐっ・・・うるせぇよ、お前こそ遠距離恋愛中の彼女とはどうなんだよ!!」
「ぐ、別にそんなこと今は関係ないだろうが!!」
「もう、タカくんもユウくんも喧嘩してないで学校行こうよ〜、初日から遅刻なんて嫌だよ」
「まぁ、そうだな。とっとと行って新しいクラスのメンバーの面でも眺めに行くか」
そうして俺達はいつもと変わらない通学路を歩き出した。
「わ〜、タカくん掲示板の前が人でいっぱいだよ」
間もなくして学校につき、クラス発表の紙が張られている掲示板を見に来たがいいが暫く見れそうもない。
「それじゃ、このみは2年生の方に行って来るね。帰りは玄関で待ってるね」
そう言ってこのみは2年生の掲示板へ向かっていった。
「貴明さんに雄二さん、おはようございます」
後ろから俺達を呼ぶ声が聞こえ振り返ると草壁さんが立っていた。
「おはよ、草壁さんはクラスの発表もう見たの?」
「いえ、私も来たばかりなのでまだ見てません。また一緒のクラスになれるといいですね」
そう言って俺の方へ微笑んだ。
「お二人さん、もうそろそろ人も散ってきたから見に行こうぜ」
雄二にそう言われ、掲示板の方を見てみると来た当事よりだいぶ人が減っていた。
「よし、そろそろ行くとしますか」
そうして俺達は掲示板の方へ向かっていった。
「そいじゃ、まずは順番に沿ってA組だな。えぇ〜と・・・・おっ、俺の名前発見したぜ貴明」
「俺はお前の名前のすぐ下だよ。大体、あいうえお順なんだから俺達は番号近いだろうが
それにしても・・・・お前とはいつもクラスが一緒だな・・・呪われてるのか?」
「まぁ、そう言うなや。で、草壁さんはどうだった?」
「残念ですが、私は一緒のクラスではないみたいです。でも一つ気になったことがあるんですよ」
「そっか、草壁さんは違うのか〜。で気になったことって?」
俺がそう聞くと、草壁さんが掲示されている紙を指差しながら。
「ここですよ、この名前って確か」
そう言われ彼女の指差す方を見てみると。
「えぇ〜っと、笹森花梨。って笹森さんと一緒か落ち着けなそうだな・・・・」
「違いますよ、貴明さん。その上ですよ」
どうやら違ったようだ、また掲示板に目を戻す。
「ん〜っと、工藤玲於奈?・・・・って工藤さん!?なんで同姓同名とかじゃ・・・」
「貴明、この名前はあんまりいないだろうよ・・・・でも本人だとしてもどうして?」
「ですよね・・・私もこれが気になっていたんですよ。あっ私はさっき見てきたんですけどB組でした」
そんな疑問を抱いているうちに予鈴が聞こえてきた。
「まぁ、教室に行けばわかるだろうよ。行こうぜ貴明」
「あぁ、そうだな・・・」
疑問を残したまま俺達は新しい教室に向かって行った。
「タカちゃ〜ん、一緒のクラスだよ!!
これでいつもの様にミステリな話し合いがいつでもできるんだよ」
教室に入るなり笹森さんが俺の方へ向かってきた。
「そんな話し合いしたこともなければこれからもする気はないよ」
俺がそう返すと笹森さんはつまらなそうな顔をして。
「もう、タカちゃんはその場の空気を読んでないんだよ、こう言うときは
『会長!!ミステリ研の未来は輝かしいものになるさ俺達二人で頑張って行こう!!』
ぐらい言うのが普通だよ」
「俺には笹森さんの普通がまったくわからない」
「もう!!タカちゃんにはUFOが来たってUMAを発見しても呼んであげないんだから!!」
由真?どうしてそこで由真が出てくるんだ?俺が疑問に感じていると笹森さんは席の方へ戻って行った。
どうやらこのクラスに俺の安息の場がないことが教室に入った途端に判明した。
「お〜い、そろそろお前ら席に着け」
暫くして新しい担任の教師が入ってきた。
「今日からお前らの新しい担任だからな。一年間よろしく頼むな」
担任はよくある無難な挨拶を始めた。だが俺は俺の隣が空席であることが気になっていた。
「そして、お前らに重要な連絡がある」
嫌な予感がする・・・・これは朝の疑問の答えなのだと思う。
「転校生がいるんだ。前に少しこの学校にいたんだが短い期間だったから知らない奴も多いだろう」
あぁ・・・やっぱり。でも何故、彼女がこの学校に?薫子からは何も聞いてないし・・・・。
「よぉ〜し、入って来い」
教室の入り口が音を立てて開いた。生徒の視線はその方向へ向けられる。
俺も雄二もその方向へ目を向けてしまう。やはり彼女だ。
「工藤玲於奈です。これから一年間皆様よろしくお願いします」
彼女は挨拶を済ませ、一つの空席に腰を下ろした。そう、俺の隣だ。
「それじゃHRは終わり、始業式まで少し時間があるから自由にしてていいぞ。ただし教室からは出るなよ」
さて、それでは俺の疑問の答えを聞かせてもらうとしますか。
そうして彼女の方に目を向ける。
少し前に言われたように続編らしきものを書いてみました。
投稿するか悩みましたがとりあえず投稿です、容量がギリギリですが。
今回は期限的な制限がないのでのんびりとやっていきます
古いのはスレや保管庫に置いてありますので、気の向いた方はどうぞです。
670 :
名無しさんだよもん:05/02/16 20:32:05 ID:NANt0q5HO
リアルタイムキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!
かおりんはずっと読んでました。
だから激しくGJです。
最後まで楽しみにしてます(・∀・)
三人娘ファソには嬉しい限りです。
あげてしまった…orz
スマソ
これはまさか3Pの予感か!そうなのか!
かおりんアフターを書いてくれるとは思わなかった…。
かおりん自体まだ出てきてないけど、楽しみにしてますよ!
つーかサブキャラSSたまんねぇ
かもりんとの掛け合いがいかにもという感じでナイスだ。
494KB
678 :
▲:05/02/17 17:38:43 ID:uO/Nq//U0
再録でスマソだが、投下。
桜色のタイが、風に舞い踊る。
ひらりひらり、止むことなくいつまでも。
それはみんなから、愛佳への感謝の気持ち。
さあ、顔を上げて。
涙を拭いて、上を向いてごらん。
愛佳には泣き顔なんか……かなり似合うけど笑ってる方がずっと素敵だから。
あ、校舎の屋上からこっちに向かって手を振ってる。
おーーい。ほら、手、振り返してみよう。
おーーーーーーい。
ね? 誰も愛佳を無視したりしないし、冷たくしたりもしない。
だってみんな、愛佳のことが好きなんだから。
……もちろん、俺もそんな愛佳のこと大好きだよ。
愛佳……
んっ……
「あいつ、学校サボってキスなんかしてやがる……ゆ、許せん!」
「ふぅん、ちゃんとうまいことやってんじゃない」
「ひゃ〜、全校生徒の前で…だいた〜ん」
「先生! まだ5月だというのにこの暑さは近年稀に見る異常気象であります!」
「バカップルだ……」
「バカップル……」
「「 (…………しまったー!!) 」」
「るー☆」
……るー。
「なーなー、貴明元気ないなー。どないしたん?」
別に元気ないってわけじゃないけど。
「ほなら、何で下向いてんの。ひょっとしてお腹痛いん?
いくら瑠璃ちゃんのごはんおいしいからって、がっつくからやでー。あかんなー、もう。あかんあかん」
いや俺が気にしてるのはご飯のことじゃなくて、こっち。
「……腕?」
そう、腕。何故か両横から俺の腕にしっかと絡められてる珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんの腕。
「なーんもおかしなことあらへんよ? ウチと瑠璃ちゃんが貴明とくっつくんはらぶらぶらぶー、の証やで」
「ち、ちゃう、そんなんちゃうもん! ウチ、貴明とらぶらぶらぶーなんてしてへんもんっ!」
……えーと。でさ、珊瑚ちゃん。登下校の時にベタベタするのはもうちょっと控えない?
「なんで?」
なんでって、ほら、皆注目してるし。瑠璃ちゃんもすごく恥ずかしがってるし。
俺だって今にも顔から火が出そうなくらい恥ずかしいよ。
「それがええんやないかー」
「「 え 」」
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⊂二 ̄⌒\ /:.:.:| ノ)
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((/ ( _ )
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/ / / / . ((( ))).
/ / ( / ( -Д-)
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/ / し′ 人 Y
( / し'(_)
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し′ .....:::::::::::::::::::::::::::.::::::
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498KB
ギャグものはかなり好きです。
なれなれちゅうい
ラストだったら郁乃SS書く
オーラス恋人選び
旭化成グループの提供でお送りしました
/`ヽ∠> 、
+ / /,´ ヽ
|/〃,´ j、 ヽ
{ { ノ__ノハ_,,,, } }
i Y''"_,、 _、{ノjノ +
(i l`' ̄ノ ヽ ゞ;l
. iヽ l r `__"_ヽ ,|;/
| .iヽ、~`'''''" /;;ヾ これで終わりか?
| i/`r、_-,,,,,,r"ノ''ii{
/ \ `ー- '"ヽ`ヽ、
,-'"~ i ヽ /,,\|| ` ::
;;,, フ ヽ. 〈/ヽ, | ::''
'';;,, \ ヽ | ヽ |,,::''
'';;,,\ ヽ|,,;;;;;::::
ζ /ヽ / |
/ ̄ ̄ ̄ ̄\ | | / /
,‐ヽ /"ノ / \ | ヽ‐'、/__,-‐つ
_ \ \ | / /\ \ /| ,,---、/二、 ヽ、,,-'"
\゙゙''ヽ‐-‐'"゙''| ___ _||||||| (・) (・) | ヽ‐-、 ヽ 二ニ⊃
゙゙''ゝ ,‐''''ヽ',,,,-ヽ ,-‐'''''''''''‐-;;.、 ^ (6-------◯⌒つ |''‐-、 |‐--,,,,、__/
/ヽ ヽ‐-/ ./::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;|--| _||||||||| |:;;;;;;ヽ、__ / ヽ‐''"ノ
レ'"ヽ、,,,,,/ \ ,,,,/-‐‐-、;;;;;;;;;;;;;;;;;;; \ / \_/ /、;;;;;;;;;;;;;| /'" '"|
|‐‐''" \‐''"""ヽ \;;;;;,,/ \ \___/ ゙''‐,-‐''''" " ''ヽ | .|
| |ヽ ゙゙"'-,,,,, \ / 、,,,--、 / ,,;; |、 /
| / | ヽ、‐ニ ^ ^ ‐'''''| // \ヽ─‐''"ノ
ヽ___/ / /"~ | /\,,,,, ヽ---‐' _/"
_ヽ、 ‐-、,,,,,,,,,/、 __|_ //  ̄""─''"
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