ところでオリジナルキャラSSってのはやっぱり難しいのか?
いまんとこ出てるやつ見るとイイのとイマイチなのではっきり分かれてるし。
そりゃ、自分は書けと言われても無理だけど
うまくそのキャラで話を回せればいいけど、かと言って既存キャラより
目立ってもいかんだろうし。ほど良いさじ加減が必要ですな。
自分はオリキャラありでもいいほう。でもそのキャラが主人公と結ばれるとかになると
ちと行き過ぎかなって思うけど。
男キャラなら結構オリキャラの話つくりやすそうな気がするな。
例えば一年or二年生でタマ姉に片思いな奴とか
郁乃嫉妬SS書いてるんだけど、ちょっと俺の中に郁乃の霊が降りてきたんでなんか長くなりそう
すらすら書ける
鬱モノでもどんどん書くべし
って言うか俺なんて今までに書いたSSの八割強が鬱モノだし
漏れは九割否定するタイプだが、まぁ結果としてまとまってれば問題ないかと。
ただ既存のキャラだけでどこまで書けるかが二次創作の腕前かなぁ とか生意気なことほざいてみるテスト。
>>tSFXpSmQ
ガンガレ、もっとイルファをエロくしてくれ!
まあオリキャラは間違いなく難しいでしょ。
ほぼゼロがらプロット起こしたりなんだり。俺じゃ無理
図書委員のSS書いてる人もいるみたいだが、今はあれでもとにかく続けてほしい。
文章とかストーリーなんて書くだけ上手くなっていくしね。
雄二がオリキャラの女の子に恋をして(またはされて)
貴明、このみ、タマ姉達がそれを応援するって話とか。
言うのはタダだしなーw
>>595 >でもそのキャラが主人公と結ばれるとかになると
一瞬ウホッな展開なのかと思った
女のオリキャラね…
602 :
名無しさんだよもん:05/01/22 02:08:50 ID:rH3rRO3D
>>575 寝る前にチェックしてみたら・・・もう書きあがってる!?
同じ日にw GJ!
内容も、ドキドキウハウハで妄想が膨らみますた(*´Д`)
結構長くなってますが、途中で飽きがこなく読み応えアリで、
先がとても期待できます。この調子でがんば〜〜。
貴明
「ただいまー!」
瑠璃
「あっ…おかえり…なさい。」
俺が姫百合家に引っ越してはや1ヶ月…。
最初は色々戸惑う事はあったが、それでも慣れてしまえば彼女達との共同生活は楽しく、毎日は薔薇色だった。
貴明
「あれ?瑠璃ちゃん一人?
珊瑚ちゃんとイルファさんは?」
いつもだと玄関を開けると同時に珊瑚ちゃんに抱きつかれるかイルファさんに晩御飯の毒味!?(珊瑚ちゃん&瑠璃ちゃんに食べさせる前の味見役)をせがまれるのだが…。
ところが今日はそのどちらもない。
居間に瑠璃ちゃんの姿が見えるだけであった。
続く
少し気になった俺は二人はどうしたのか尋ねてみた。
瑠璃
「う…うん。
さんちゃん、今日は長瀬のおっちゃんのとこで大事な用がある…言うてたから。
よう分からんけどイルファの妹の事で何かあるらしい…せ、せやからイルファとさんちゃんは研究所に行きよったよ…。」
全くテレビから目をそらさずそう応える瑠璃ちゃん。
どんな面白い番組をしてるのか…とテレビ画面を見るが、今、映し出されているのは普通のニュース番組。
しかも天気予報…。
貴明
(天気予報マニア?)
怪訝な目で見つめらて気になったのかムスッとした感じの瑠璃ちゃん。
続く
瑠璃
「なっ…何?人の事じっと見んとって!!」
怒られた。
しかし、気のせいか
貴明
(妙にソワソワしてる気が…。
まさか!?)
貴明
「瑠璃ちゃん!!」
声をかけると『ビクッッ!』っと背中を反らせ、その状態で固まる瑠璃ちゃんに…。
貴明
「トイレ…我慢してる?」
思い切って尋ねてみる。
続く
と、同時に瑠璃の拳がみぞおちにめり込む!
瑠璃
「ばっ…バカたかあきぃ!
そんなんとちゃうわーー!!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ瑠璃ちゃん。
貴明
「ごめんごめん!冗談だって!」
瑠璃を必死になだめる貴明。
貴明
「でも、その様子だと今日は二人とも帰りは遅いか…帰ってこないんでしょ?
…どうする?」
貴明の瞳に妖しい光が宿る。
続く
>606
メモ帳にまとめて書いてから投下するといいのでは?
さすれば1レス毎に「続く」と書く必要はないと思うでぃす。
瑠璃
(ゴニョゴニョ)
聞き取れないほど小さな声で囁く瑠璃ちゃん。
貴明
(まぁ…何を言いたいか分かってるけど…)
貴明の顔が徐々ににやけてくる。そして…
貴明
「ん?何?聞こえないんだけど。」
わざと聞き返す。
瑠璃
「…する。」
貴明
「何を?」
こういう時の瑠璃ちゃんはたまらなくいじめたくなる。
普段なら蹴りの一つでも飛んできそうだが…。
今は違う。
瑠璃
「え…Hっちい…こと。」
耳まで真っ赤にしてそうこたえる瑠璃。
続く…かも
…と言うわけで
おっすおら雄二の人でつ。
ネタ師的な見方をされていた気がしたので即興で悪いがエロさそてもらったりしたが…
眠いから落ちまつorz
続きは後日…(∀`)
と言ってみる。
スゲェ掴みイイな…………
ところで姫百合瑠璃って身長何cm?
瑠璃の身長が何cmなのかによって80cmがデカいのか小さいのか、
およそのトップとアンダーがわかるってもんじゃないか
607も言ってる通り、続くは書かんでいいと思いまつ
いい感じなのだが「続く」で話が途切れる感じがしました
とりあえず続きを期待(・∀・)
>>609 ☆ チン 〃 ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ ___\(\・∀・)< 続きまだー?
\_/⊂ ⊂_)_ \_______
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
>>609 ☆ チン 〃 ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ ___\(\・∀・)< 続きまだー?
\_/⊂ ⊂_)_ \_______
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
ちょっとスレ汚しに来た
「それじゃあね・・・」
俺は何も返せなかった。耳にも入っていなかった。
―――俺達の関係が壊れることなんてあるはずがない―――
どこかでそう安心しきっていた。
ただただ二人の平和な時間が過ぎていくと思っていた。
いつまでも変わらずに、手を引いて行けると思っていた。
だが、それも今日で終わりなのだ。
今日からは違う道を歩く二人。
もう、一秒前には戻れない。
俺は、愛佳の後姿を見送ることしか出来なかった・・・。
616 :
二人の日々:05/01/22 09:44:33 ID:r6C5CQaM
「そうなんだよぉ〜。もう、困っちゃうよぉ・・・」
「へぇ〜、そうなんだ」
いつもの風景。
何気ない話をしながら、俺と愛佳は屋上で昼食を食べていた。
弁当はもちろん愛佳の手作り。
といっても、愛佳の気が向いたときだけなんだけど。
弁当作りっていうのは結構手間がかかるもので、朝早くからそんなことをさせるのは気が引ける。
それに愛佳は冷凍食品とか一切使用せず、全部手作りで仕上げてくる。
本人曰く、いろいろなメニューを作ってみたいそうだ。
そんな弁当だぞ?手間がかかってないわけないだろう。
そんなことを毎日なんてやられたら、ありがたいどころか申し訳なくなってくる。
それにしてもお菓子といい弁当といい、愛佳って家庭的だよなぁ。
「どうかしたの?」
「ん?いや、愛佳の弁当おいしいな〜って」
「や、や、そんなことないよぉ〜」
そういいつつ、赤くなって両手で頬を包む。そんなことあるって。
「ん、ごちそうさま」
「は〜い、おそまつさまでしたぁ〜」
食事を終えて手を合わす。
「ほんと、ありがとな」
「好きでやってるから・・・」
「それでも、ありがと」
「・・・うん」
なんとなく恥ずかしくて、俺達は言葉をなくした。
でも、心地よい静けさだった。
617 :
二人の日々:05/01/22 09:45:30 ID:r6C5CQaM
「五時間目か〜、眠くなりそうでだるいな」
「もう〜、頑張って授業聞かなきゃダメだよぉ」
「わかってるって。でも愛佳だって正直つらいだろ?」
「う〜、それは否定できないかも〜・・・」
不平を言いつつ教室に戻り、俺達は五時間目を迎えた。
主に不平を言うのは俺だけど。
キーンコーンカーンコーン
「それじゃあね」
「おう」
さて、いっちょ気張りますか。
618 :
二人の日々:05/01/22 09:46:35 ID:r6C5CQaM
「〜となって、ここはこうなるわけだ。いいな?」
数学教師の声とチョークの音が教室に響く。
この先生の場合、寝たら何するかわからないからな。
他の奴も、そんなわけで五時間目だというのにきちんと聞いているのである。
ガラガラッ
「すみません、ちょっといいですか?」
数学教師の声をさえぎったのは、戸の開く音と担任の先生だった。
「いいですよ」
「それじゃ・・・小牧、ちょっと来てくれ」
担任は促されると、愛佳を呼び出した。
むむ、愛佳何かしたのか?でも、愛佳って問題とか起こしそうじゃないよなぁ・・・
そんなこと思ってると
「こら、お前達の相手は俺だぞ。小牧のことは気にせず授業に集中しろ」
と数学教師。
そりゃごもっともなんだが・・・、やはり愛佳のこととなると気になる。
といっても外の様子などわかるはずもないしなぁ。
諦めて授業を聞こうとしたとき
ガラガラッ
愛佳と担任の先生が戻ってきた。先生は数学教師に何か話しているみたいだ。
あれ?
俺は愛佳が帰る準備をしているのに気づいた。早退するのか・・・、何かあったのか?
一瞬郁乃のことが頭に浮かんだが・・・あいつは大丈夫だろ。手術も終わったし・・・。
去り際に俺に「ごめん」と手をあわせた後、愛佳と先生は教室を後にした。
「うらやましいやつめ」
「うるさいぞ雄二」
結局その日は久しぶりに一人で帰った。
619 :
二人の日々:05/01/22 09:47:53 ID:r6C5CQaM
次の日、俺が学校に行っても愛佳は来ていなかった。
あれ?愛佳いないや。珍しいこともあるんだな・・・。
愛佳がいない中、時間は過ぎていった。
だが、三時間目になっても愛佳は来なかった。
休みか・・・?昨日何かあったのか?
頭の中で不安が広がっていく。
三時間目が終わり、俺は担任のところに向かった。
「せんせー、ちょっといいですか?」
「ん?なんだ?」
「ま・・・小牧って、今日休みですか?」
「ああ・・・そうだが」
「休みの理由とかって聞いてます?」
「ん〜、特に聞いてはいないが・・・」
「そう・・・っすか」
そして俺は、不安を抱いたまま職員室を後にした。
結局、愛佳の欠席の理由は分からなかった・・・。
620 :
二人の日々:05/01/22 09:49:41 ID:r6C5CQaM
愛佳が休んで2日経った。
今日は来るのかな・・・
期待と不安がつのる中、俺は学校へ向かった。
教室に入るや否や、愛佳の姿を探す。
愛佳は・・・いた!
愛佳を見つけ、俺は席に駆け寄った。
「愛佳!昨日とおとついどうしたの!?」
「たかあきくん・・・」
見上げた愛佳の顔は悲しそうだった。
それに気づいたのか、愛佳は笑顔になった。だが、どこか寂しそうな笑みだった。
「とりあえず、おはよ。久しぶりだね・・・」
「あ、ああ・・・。おはよ。それで・・・」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが俺達の会話を強制終了させた。
「後で、話すね・・・」
俺は言葉に従った。
休み時間。俺は愛佳の席に向かおうとした。
だが、愛佳はすぐに教室を出て行ってしまった。
後から話すって言ったのに・・・
俺の中に、不安が満ちてきた。
次の休み時間も、その次の時間も、昼休みでさえ、愛佳とは話ができなかった。
そして放課後になり、ようやく話す時間を得られた。
愛佳も、今度は席に座っていたので、俺はほっとした。
「愛佳・・・」
「うん・・・」
返事はするものの、愛佳は話そうとしない。
「屋上・・・いこう」
俺は愛佳の手を取り、屋上に向かった。
愛佳も拒否の態度はとらなかったので、俺はほっとした。
621 :
二人の日々:05/01/22 09:51:07 ID:r6C5CQaM
屋上についた俺達は、とりあえずベンチに座った。
「ごめんね。休み時間の時に、職員室に行ってたの・・・」
「そうだったのか・・・」
俺を避けてたわけじゃないことを知り、安心した。
「あのね・・・。早退した日にね、いろいろあったの・・・」
「いろいろって?」
「・・・・・・・・・」
核心に迫ると、愛佳は口を閉ざした。
何かあったのは分かるけど、声に出してくれないと分からないよ・・・。
「あのさ、俺じゃ役にたたない?何があったのかはわからないけどさ、
俺にも愛佳の為に何か出来ることってないか?」
愛佳はうつむいたまま、黙って俺の話を聞いていた。
「言いたくないことは言わなくてもいいけど、俺に出来ることがあったら言ってくれよ。
前にさ、もっと迷惑かけていいって言っただろ?
それに、その・・・彼氏だし・・・。」
彼氏という言葉に、愛佳はビクッと肩を振るわせた。
「―――――ごめん」
しばしの沈黙の後、愛佳の口からようやくその一言だけが聞けた。
「そっか・・・」
「そ、そうじゃなくて・・・」
そう言って、愛佳はまた押し黙った。
なんでだよ?俺じゃダメなのか?俺には何もしてやれないのか?
遠慮してるのか、とも思ったが、愛佳の様子を見ているとそうは思えなかった。
622 :
二人の日々:05/01/22 09:52:06 ID:r6C5CQaM
赤く染まる空の下で、言葉もかわさずにただ座りつづける二人。
そこには心地よい静けさなど無かった。
気まずい空気が流れていた。
「たかあきくん・・・。聞いてくれる?」
意を決したのか、愛佳は真剣な目で俺を見た。
「あのね・・・。私、転校することになったの・・・」
「え・・・」
「だから、休み時間の間に先生の所に行ってたの・・・」
不意打ちな言葉。俺の思考が停止した。
「転校って、どういうこと?」
「その・・・、親がね、転勤することになったの・・・」
「そんな・・・」
信じられなかった。信じたくなかった。
「郁乃の療養費のこととかもあるから、一人暮らしとかは出来ないから・・・」
「・・・・・・・・・」
「転校したら、多分もどって来れないと思うの・・・
もう・・・会えないと思うの・・・」
「そんな・・・」
胸が締め付けられる思いだった。一言、嘘だと言って欲しかった。
「だから・・・」
愛佳の頬に涙が伝う。聞きたくなかった。その先の言葉を・・・
わかれよ・・・。わたしたち・・・
いじょです。初めての鬱系に挑戦で愛佳との別れ話書いてみました。
続きは・・・どうしよう?
>>623 できればハッピーエンドにして欲しい…と言いたいところだが、無理強いはできんか。
続きはあんたが書きたいと思うなら書けばいい。
俺は鬱話は苦手なんでスルーしとくけどな。
続き書きたいんだけど、時間がかかるんよ・・・(´Д⊂遅筆デスカラ
一応ハッピー(?)を考えてはいるのだが・・・
>>625 胸が締め付けられたぜ。コンチクショウ。
鬱というより、二人のさよならが悲しいけどいい別れになることを期待してる。
好き同士がやむを止まれぬ事情で離れていく、という話は大好きだ。
続きを待ってる! 遅筆は気にするな!
俺はここんとこ勢いでがんがってきたが、今ちょっと壁に(´・ω・`)
――翌日。
「たっかあきさまぁ〜♪」
びくっと体が震えた。というのも
「たかあき、さまぁ?」
じろりと6つの目がこちらを凝視している。時間はちょうどお昼時、レジャーシートを広げたいつもどおりの昼
食会が始まろうとしていた、はずだった。
「り、りりり、リオンさん」
背後から声をかけてきたのは当然リオンさんだ。学校では河野さんと呼ぶことにしていたはずだったし、こ
れまでは大丈夫だった。それが何故急に?
「実は貴明様に食べてもらおうと思ってお弁当作ってきたんですよー」
ひょいと後ろ手に持っていた布に包まれたお弁当箱が差し出される。朝から妙に機嫌が良かったと思った
らこういうことか。しかしすでにレジャーシートの上にはこのみのお弁当にタマ姉の重箱弁当がどんと鎮座お
わせられていて、それだけでもすでに食べきれるかどうか、という量だ。
「はい、どうぞ〜」
リオンさんはこのみとの間にすとんと座って、お弁当一丁追加。これはなんというか致命的な量だ。端から
見て人数と照らし合わせてみればなんら問題はないように見えるだろうが、内ひとりは一切手をつけない。
つけられないのだから、単純にひとり分増えたということだ。
救いを求めて三人の顔を伺ったが、
「たかあき様、当然私のお弁当もちゃんと食べてくださるわよね?」
「貴明さま、俺にも当然分けてくれやがるんでしょうね?」
「たかあきさま、このみのお弁当もちょっと食べるー?」
得られたのは色んな意味で死刑宣告だけだった。
別れエンドのほうが書くの難しそうだな
おれ的にはどっちでもいいので続ききぼーん
そのまた翌日。
「しっかしお前はなんというかまあ、人の忠告を聞かないことに関しては天下一品だな」
二人前の昼食を取ることになった二日目の昼が終わった5時限目。タマ姉も量を減らしてくれればいいの
に、ここぞとばかりに量と手間を増やしてきた気すらする。
「どういうことだよ?」
「すっかりリオンさんとラブラブだっちゅうことだよ」
ぐりぐりぐりと頭に拳が突きつけられる。
「そ、そんなんじゃないって」
「おーおー、よく言うよ、貴明さま」
雄二は額に手のひらを当てて、遠くを見ようと少し上半身を突き出している。その視線の先はプールだ。そ
う、今日女子は今学期最後のプール授業となっている。男子は代わり映えしない野球。絶対面倒くさがって
るぞ。体育教師。
とりあえずは一回表、こちらの先行で雄二とともに日差しの中で打順待ちしているところだ。
「くそ、遠目じゃいまいちよく分からん。貴明、どこかに双眼鏡ないか?」
「ないし、あったとしてもそんなの使ってたら体育教師が飛んでくるぞ」
「くっそー、男の浪漫が分からんやっちゃなあ。お、あれリオンさんじゃないか?」
言われて見てみると、確かに遠目ではあるもののリオンさんらしき姿がプールサイドに立っている。
「あっさり釣られやがって、分かりやすいぜ。貴明」
「うるさい!」
しかし栗色の髪の間からイヤーカバーが見えているような気がするからにして、あれはやっぱりリオンさん
なんだろう。メイドロボって泳げるんかな? 一応完全防水だとは聞いてるし、お風呂にだって入ってるから
大丈夫だとは思うけど。
「リオンさんのスクール水着姿かー、くぅぅ、もっと近寄りたいぜ」
「そっかな」
「そりゃお前は毎日そばでもっとすごいのを見てるんだろうから、そう思わないだけだ。このブルジョワジー
め! プロレタリアートはこうやって富を遠くから眺めることしかできんのだっ!」
「見て、ねぇ!」
強く否定したつもりだったものの、いまいち迫力に欠けたのは自分でも分かる。そりゃ見てないとはいえな
いさ。見たさ、見えちゃったさ。でもわざとじゃないんだ。あれはリオンさんのほうが。
「しっかしリオンさんのスタイルは抜群だな。クラスの女どもが霞んで見えるぜ」
それはなんかの色目が入ってるだろと思わないでもなかったが、リオンさんのスタイルがいいのもまた事
実だ。そりゃだってメイドロボだもんな。スタイルの崩れようがない。
なんとなく遠目で見ていても、リオンさんのスタイルの良さが改めて確認できる。
そのとき準備体操を終えたリオンさんがきょろきょろと頭を振ったかと思うと、こちらを見た。そしてこちらに
向かってぶんぶんと手を振って見せた。
「――――!!」
両手を口に当てて何かを叫んでるようにも見えるが、なにも聞こえない。俺はなにも聞こえないぞ。
「……なんというか、貴明さま、ちょっと同情するぜ」
ニヤニヤ笑いやがって、絶対同情なんかしてないだろ。お前。
さらにそのまた翌日。
半ドンの授業を終えた俺とリオンさん、そして珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんはそろってバス停の前に立ってい
た。別にこれから4人でどこかにでかけようというわけじゃない。その逆だ。
一台のバスがやってきて止まり、そこからよく見知った顔が降りてくる。
「ただいま戻りました。瑠璃様、珊瑚様、貴明さん、そしてリオンお義姉様」
そう言ってにっこりと笑ったのはうさぎじゃないイルファさんだった。
「無線のほうはどうなん?」
少し心配そうに瑠璃ちゃんが尋ねる。
「ええ、少し違和感はありますけど、思ったほどじゃありません。問題ありません」
そうか、それは本当に良かった。しかし――
「こうやって並べてみると、本当にそっくりだなぁ」
珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんと、イルファさんリオンさん。双子美人姉妹二組に囲まれてる状態だ。
「当然じゃないですか。貴明さん」
5人になって帰り道を歩き出す。
「いっちゃんのお帰りパーティする〜☆」
という珊瑚ちゃんの提案でとりあえずは買出し。
「今日は腕を振るいますねっ!」
腕まくりをするイルファさん。いや、まだまくるのは早いから。
あー、食べた食べた。ここのところ昼食は過食気味だけど、今日はまあ仕方ないだろう。ソファにごろりと
横になって食後の怠惰な時間を満喫することにする。キッチンでは瑠璃ちゃんとイルファさんが後片付けを、
リビングの片付けはリオンさんが担当している。
「貴明様、食べてすぐ横になると牛さんになっちゃいますよ」
「あー、そうするよ。俺は牛になる」
ごろごろ〜ごろごろ〜。
「そうや〜☆」
そのとき、コンピューターにかじりついていた珊瑚ちゃんが両手を挙げた。
「そうやそうやそうや〜〜そうや〜♪」
挙げられた状態からキーボードに振り下ろされた指は途端に機関砲に変わる。うわぁ、指が20本はあるよ
うに見えるぞ。
「どうされたんですか? 珊瑚様」
手を拭きながらイルファさんが入ってくる。
「そうや〜、いっちゃんは忘れんぼさんになるんや〜☆」
「はぃぃ?」
珊瑚ちゃんの長く分かりにくい話を俺なりに要約するとこういうことになる。ダイナミック・インテリジェンス・
アーキテクチャにおける記憶容量で大きなウエイトを占めるのが実はデータ同士のリンク。あるデータとある
データの関連性を繋ぎとめておくためのもの。たとえば河野貴明のデータがあれば、そこからは無数のリン
クが伸びている。このみや雄二のような人間関係。学校などの所属、国家との関わりに至るまでありとあら
ゆるデータにそのようなリンクは用意され、またそこにはその関係性の概要まで書かれている。これが河野
貴明というデータとその周りだけなら問題はないが、そこから伸びた例えば姫百合珊瑚からはまた同じよう
に無数のリンクが広がっている。ここにさらに姫百合瑠璃が加わると、単純に一人分のデータが追加される
というだけでなく、河野貴明のデータにも、姫百合珊瑚のデータにも、学校のデータにも、国家のデータに
も、姫百合瑠璃に対するリンクが追加される。だから知っている世界が広がるたびに、その容量は爆発的に
増大していく。
以前は大本のデータを消すことで問題解決する方向を模索していたが、それはデータとリンクを一体化し
て考えられていた。例えば容量が一杯で危ないのであれば、重要度の低い――例えばの話だ、多分――
向坂雄二のデータを消す。これによって向坂雄二から伸びるリンクだけでなく、そのほかすべての向坂雄二
に繋がるデータからもリンクが消えることになる。総データ数が大きければ大きいほど、一つのデータを消す
ことによって得られる空き容量も増えるというわけだ。
しかし向坂雄二のデータが重要度が低いのかどうか、という評価が如何に下されるべきかが問題だった
し、また改めて向坂雄二のデータが追加されれば元の木阿弥だ。
そこで珊瑚ちゃんが思いついた方法が、リンクの段階的消去と、データの劣化圧縮であった。
まず各リンクには耐久値が用意され、一定期間ごとに値は減っていくが、参照される度に値は追加され
る。参照が繰り返されるほどに耐久値は上がり、放置されるほどに減って行き、やがて0になると消滅す
る。例えば河野貴之と向坂雄二が友人であるというリンクは、それを再確認することなく一定期間が過ぎる
と忘れ去られてしまう、ということだ。河野貴明のデータが消えるわけでも、向坂雄二のデータが消えるわけ
でもない。だから別のリンクを辿っていけば河野貴明のデータから向坂雄二のデータにたどり着けないという
ことは決してない。これによってデータの接続性は死なない。
続いてデータの劣化圧縮とは例えば100メガバイトの写真データがあるとして、32万色を16万色に抑え
たり、サイズを小さくすることによって、見た目的にはほとんど変わらない状態を維持しつつデータ量を大幅
に軽減することはできる。またあまり参照されないようであれば16万色を2万色、256色、16色、2色と段
階的に減らしていく。サイズもどんどん縮小していけばいい。ディティールは失われていくが、情報そのもの
は消えてしまうことはない。例えば向坂雄二――いい加減すまんとは思ってるんだぞ――のデータが長い
時間参照されなかった場合、イルファさんの記憶のなかの雄二が徐々に色あせていく、ということだ。
本来、必要なありとあらゆるデータを瞬時に参照できるコンピュータというシステムとしては致命的な欠陥
ではある。コンピュータはちゃんとデータの打ち込みさえしていれば1年前に何をしたかというデータをすぐに
引き出してくることができるが、そのシステムを導入してしまうとその一年前のできごとがよほど印象に残る
ことでないかぎり思い出せない。または思い出せても詳細までは分からない。
「秘書にするには失格って感じだよな」
「私はもともと「友達」になるためのメイドロボですから、それでもいいのかもしれません」
「でもまあ、なんにせよ、これで一安心ってところだよ」
「そうですね。現状でほとんど問題はありませんが、やっぱりなにか気にはなるんですよ」
そう言ってイルファさんは頭をコツンと叩いた。
「で、プログラム自体はどれくらいで完成しそうなの?」
「う〜、そんなすぐには無理や〜。とりあえず基本設計をおっちゃんとこ送ったからすぐ取り掛かってくれると
は思うよ〜」
うーん、と、珊瑚ちゃんが大きく伸びをする。
ここのところずっとこの問題にかかりきりで大変そうだったからな。今日はゆっくり羽を伸ばしてもらいたい
ものだ。そう思っていると立ち上がった珊瑚ちゃんがまっすぐこちらに歩いてくる。
「貴明、抱っこ〜☆」
なんですとっ!
しかし有無を言わさず珊瑚ちゃんは膝の上に飛び乗ってくる。
「あーーーーーーーーーーーー!!」
瑠璃ちゃんの叫びがリビングを揺るがすものの、イルファさんが「まぁまぁ」となだめに入る。
「さ、さ、珊瑚ちゃん?」
「くぅ〜♪」
呼びかけてみたものの、すでに珊瑚ちゃんは夢の中に行ってしまっていた。本当に根を詰めてたんだな。
仕方ない、今はゆっくり休ませてあげよう。
「ところで貴明さん、今夜は泊まっていかれるんですよね?」
珊瑚ちゃんが完璧に熟睡モードに入ってしまったので、ベッドに寝かせに行ってると、イルファさんからそう
声をかけられた。
「う〜ん、どうしようかな」
以前なら泊まっていくのが習慣になってたら、そうしただろうけど、今はリオンさんがいる。船頭多くして、
船山に上る、じゃないけど、リオンさんは結構イルファさんを意識してたから、あんまり長いことそばにいさせ
ると負担になるかもしれない。
「今日は帰ろうかな」
「私の体に飽きちゃいましたか?」
ふっと耳元に息を吹きかけられる。いつの間にかすぐ後ろに来ていたイルファさんの顔がすぐそこにあっ
た。
「リオンお義姉様の体はそんなに良いんですか? 私ヤキモチ焼いちゃいます」
「な、なにを」
すぐ横には珊瑚ちゃんが寝ている。ロフトの下では瑠璃ちゃんとリオンさんが一進一退のボードゲーム戦
だ。ここはぎりぎり死角にはなっているけど、ほとんどオープンスペース。少し大きな声を出せば筒抜けだ。
そんな中イルファさんはにじり寄ってくる。体が熱くなってくる。やばい。すでにスイッチはイルファさんに握ら
れてしまっている。
「研究所で体はコードで繋がれてしまって、心は珊瑚様の傍にずっといましたけど、だからこそ体は貴明さん
に触れて欲しくて、それはもう寂しがっていたんですよ」
ベッドの上の俺の手のひらにイルファさんの手が重ねられる。
「ふふ、今は心があっちで体がこっちですね」
「ちょ、ちょっとまった。珊瑚ちゃんも、瑠璃ちゃんも、リオンさんもいるんだぞ」
「はい、だから静かに、しましょうね」
にっこり。
ダメだー! その読点の位置はなんだっ! どういう意味だっ!
ゆっくりとイルファさんの体が覆いかぶさってくる。
「ん〜〜」
すぐ隣からは珊瑚ちゃんの寝息。初めて恐怖が如何に興奮と近い感情であるのかを実感した。珊瑚ちゃ
んが目を覚ましたり、なにかの気まぐれで瑠璃ちゃんやリオンさんがロフトの異常に気づけばそこでアウト。
その後はどうなるかとてもじゃないが考えたくなどない。ぞっとする。
それとまったく同じように密着してくるイルファさんの体にぞっとする。腰の辺りから脳髄に向かって熱い何
かが駆け上がってくる。柔らかい肉の重みがぢりぢりと神経を灼く。唇が――触れる。
「んふ――」
咥内にイルファさんの舌先が侵入してくる。抵抗できない。体を侵食されていく。
「ぷふぅ……貴明さん、美味し」
イルファさんの顔が首筋に埋められる。
「だから珊瑚様もきっと美味しいと言ってくれますよ」
かぷり。首筋に甘噛み。まるで極上の麻薬でも打ち込まれたかのように頭の中が真っ白になる。気がつ
けば手がイルファさんの背中に回されている。
「あ――」
強く抱きしめると唾液で濡れた唇から悩ましい吐息が漏れて、それを唇で掬い取る。
「あ、んまり、脱がしちゃダメですよ――」
仕方がないので服の上から膨らみに触れる。滑らかな生地の向こう側に柔らかい手ごたえのようなものは
感じられるけど、同時に物足りなさも感じる。せめてそれを確かめようと、手のひらで潰してみたり、さすって
みたり、掴んでみたりする。
「ぁん、貴明さんはおっぱい好きのお子ちゃまですね」
イルファさんが俺の頭をやさしく撫でながらくすくす笑う。
「イルファさんは淫乱メイドロボだな」
「そうですよ。私は貴明さんの前でだけは淫乱なメイドロボになっちゃうんです」
ちっとも悪びれない。
「だから今の私は貴明さんだけのものですよ」
そう言ってイルファさんは俺の手を取ると、自分の大事なところに導いた。
「ね、貴明さん、時間もあまりないですから、もう」
「う、うん――」
そこはじっとりと熱く蒸れている。イルファさんは、えい、と体重を横にかけてぐるりと半回転。俺が上でイル
ファさんが下になる。そしてもぞもぞとそこで今度はイルファさんだけが半回転。つまりうつぶせのイルファさ
んに俺が覆いかぶさっている状態だ。
「今日は後ろからお願いします――」
そう言って腰を小さく上げると、イルファさんは自分の手で大事なところを覆っている布を太ももまでずり下
げる。小さく震える可愛らしいイルファさんのお尻。俺はエサを目の前にした獣のようにイルファさんに覆いか
ぶさった。なにも、もうなにも考えられるわけがなかった。
「あれぇ、そういや貴明もイルファもおらんなあ」
リビングから瑠璃ちゃんの声が聞こえてきたとき、イルファさんは俺の腕を枕にして寝転んでいた。
「うふふ、このまま寝た振りしちゃいましょう」
そう言ってイルファさんは目を閉じる。
「そうしちゃうか」
そうは言ったものの、
「貴明様ぁ〜?」
リビングからリオンさんの声が聞こえてきた瞬間、なにか俺の胸に鈍く冷たい重りがのしかかってきた。も
しかして俺はすごくとんでもないことをしてしまったんじゃないか――。
「どこいっちゃったんでしょう?」
リオンさんの声は、純粋無垢だ。リオンさんは何も知らない。俺とイルファさんが過去幾度もこういう関係を
持っていたことは知られているけど、今のこの関係は伝えたくない。知られたくない。
なんでだ。
なんでなんだ。
答えは出ない。分からない。だから目を閉じる。しかしどんなに忘れようとしても、胸の重りはどこにも消え
てなくなってくれなかった。
技術的だったり、専門的だったりする部分は俺の妄想で書いてるので
あんまり厳しく突っ込まないでくださるとありがたいです。
このSSではそうなってるということで。
結構要望ありそうだったんで、イルファさんのシーンが入りましたが、
昔「お前のエロは実用性がない」って突っぱねられた苦い経験を
思い出すだけの結果となりました(´・ω・`)
ちょっと詰まってたんですけど、皆さんの応援を読んで頑張ることが
できました。物語はそろそろ佳境に入ります。
最後までお付き合いいただければ幸いであります。
>>640 GJ!
いや、エロいよ十分
最後までガンガレ
このみシナリオでのタマ姉失恋SS書くとここかタマ姉スレで言ってた人いたが、マダー?
>>640 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
リオンもイルファも(*´Д`*)ハァハァ
エロリ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━ヌ!!
楽しみにしてまつ
さてちょっと休憩してから9話目書くかって思ってたら母親から
「今日、誕生日なの覚えてくれてた?」って電話が orz
すみません。息子は貴方の誕生日の朝から濡れ場書いてハァハァしてましたよ、と。
なんか家族全員に忘れられていたみたいで可哀相なんで、ちょっとなんか買っていってくる(´・ω・`)
東鳩2をプレゼントだ('A`)b
すっげぇワロタ
650 :
画竜点睛:05/01/22 17:20:58 ID:P4KyOiPb
先輩方〜お疲れ様ッス〜
…ところでまだ出てないキャラのストーリーってあるなら誰になるんでしょうか?
草壁さんはまだ見たことないな。
由真もまだかな。このみもないような…。
652 :
名無しさんだよもん:05/01/22 17:40:37 ID:rH3rRO3D
>>640 GJ!!!
十分エロエロですよ〜(*´Д`)
期待度は高まるばかりです!!
653 :
名無しさんだよもん:05/01/22 18:31:41 ID:pia2whIj
草壁さんのが読みたいですね。
草壁さんアフターきぼん
草壁さんは、夜の印象が強すぎて(なんかえっちぃな)
後日談が作りにくいんだよな〜
一応考え中なんで、期待しないで待ってて
草壁さんのを書いてみたんだが…アフターで無い上に3年ぶりに小説書くせいで所々むちゃくちゃだが投下してヨカデスカ?
んじゃ、激しくネタバレあるんでクリアして無い人は飛ばしてね……
──貴明さんと再び出会えて嬉しかった
迫り来るダンプカーを目の前に私は微笑む。
今日は4月24日──全てが終わって、そして、全てが始まった日。
視線の先には道路際に倒れた貴明さんの姿。
ちょっと強く倒してしまったらしく頭を打ってしまったらしい。
でも、これでいい……貴明さんだったら私を救う為に飛び出してくるだろう、そうなったら全てが水の泡。
だから、貴明さん、辛いのは私が全部引き受けますからコレ位は我慢してくださいね
刻一刻と近づくトラックの光を全身に受けながら私は愛しい人に最後の別れを告げる。
さようなら、どうか私の事を最後まで思い出さないでくださいね……
思い出しちゃったらきっと貴明さんは苦しんでしまうから。
私は幻、存在しない筈の私。だから貴明さん、哀しまないでくださいね。
私は、本当はここに居る筈の無い人間なんだから…
その後の事はぼんやりとしか覚えていない。
貴明さんが私の「本当」の名前を呼んで。
私がそれに応えて。
それと同時にダンプが私に突っ込んできて。
覚えているのは何かが衝突する音、そして痛みを感じる暇も無く意識は暗い淵へと落ちていった。
お母さんの仕事の都合でこっちに帰って来る事になって、学校も近くの公立高校に入学する事になった。
お母さんはわざわざ学校を変えなくても……って言ってくれたけど、私は曖昧に笑ってそれを断った。
表向きの理由は家計を圧迫したくないし、お母さんから離れたくないから。
でも、本当の理由は……一人の男の子だった。
こっちに帰ってくる話をお母さんから言われた時、私はこっそり転校先になるかもしれない高校を片っ端に電話をかけ、
一人の生徒が在校しているかどうか確認していたのだった。
その生徒は、小学校の頃一緒に遊んでくれた男の子、友達が居なくて、クラスで浮きがちだった私を誘って一緒に遊んでくれた男の子。
そして……「高城」じゃなくなる私に「河野」の名前をくれるって約束してくれた男の子。
ソレは小さい子供の他愛ない約束。
ソレは、幼稚園児が大きくなったらお父さんのお嫁さんになるって言うくらい曖昧で素敵で、でも不誠実な約束。
でも……私は本気ですからね、貴明さん!
転校する前に貴明さんと交わしたもう一つの約束──また会うことが出来たらずっと一緒に居る。
私はそれだけを支えに今まで生きてきた。
お母さんと二人っきりになって慣れない生活を送っていた時でも、自分は「草壁」優季であり、「河野」優季であるって考えたら頑張れた。
でも、不安が無い訳ではなかった。
子供の頃の約束だし、貴明さんはもう私の事なんか忘れてるかもしれないし、今の貴明さんの写真なんて持ってないし顔も判らない。
それに、もう彼女さんとか居るかもしれない。
でも、そんな事私にはどうでもよかった。
私達は別れた後、再び出会う運命だったのだ。
私は貴明さんならきっと一目で見抜く事が出来るし、貴明さんが忘れていたなら思い出させてみせるし、もし彼女さんが居ても奪ってみせる。
「恋する女の子は凄いんですよ、貴明さん♪」
私はそう笑いながらベッドの上の貴明さん人形をぎゅっと抱きしめて毛布を被った。
明日から始まる、騒々しくも、きっと楽しい日々を夢見て。
次の日、期待に胸膨らませて起きた私を待っていたのは残酷な運命だった。
すぐにでも学校に行って貴明さんの姿を探したかったが、
お母さんに転校で嬉しいのは判るけどせめて朝ごはんを食べて行きなさいといわれ、仕方なく私はパンを食べ始めた。
そういえば、昔、貴明さんが住んでいた所ってここの近くだったし、もしかしたら朝通学途中に出会うかも、
あぁ、朝パンを加えて走る転校生とぶつかる貴明さん、そしてその転校生は実は幼馴染で恋人、ああ、運命的ですぅぅ
これから起こるであろう輝かしい私の未来を閉ざしたのはお母さんの一言だった。
「そういえば、昨日ここら辺で交通事故があったんですって。優季、あなたちょっと抜けてる所があるから気をつけなさいよ」
そういって事故の記事を指し示してくるお母さん。
お母さんの示した先には、私の初恋の、運命の少年の名前が書いてあった。
その後は覚えていない。ただ、感情を抑えきれずに外に出た。
外に出て、すぐにでも探し出したかった、貴明さんを。
そして、抱きしめて、孝明さんのぬくもりが欲しかった。
貴明さんの存在を信じたかったのだ。
そして、次に気がついた時、目にしたのは、懐かしい、変わっているようで、でも昔と変わっていない愛しい少年の姿だった。
そして、私達は二度目の運命的な出会いをした──
暗い意識の海を泳ぎきって、次に目が覚めた時、目に入って来たのは一面の白い部屋、そして、心配気に見つめるお母さんの顔だった。
お母さんは私を抱きしめて、泣いてくれた。
私はそんなお母さんに感謝の気持ちを抱きながらも大きな喪失感に包まれていた。
やっぱり、アレは夢だったんだ、私が生きてるって事は……
ぼんやりとそんな事を考えていた私に「痛い所は無い?大丈夫?」とお医者さんが優しく聞いてきてくれた。
私は、ええ、大丈夫です……とだけ応えると再びベッドにもぐろうと思った。
心配をかけたお母さんには悪いとは思ったけど、もう一度寝たら貴明さんに会えるかもしれない。そんな一縷の望みが自分の中を占めていた。
もう一度シーツを被った私を、看護婦さんは気分が悪くなったのかと思ったのか、気遣わしげに声をかけてきてくれた。
「草壁さん、やっぱりもうちょっと詳しい検査をしましょうか、気分が悪そうですし……」
そんな看護婦さんの言葉にお医者さんは同意しながら言葉を続ける。
「しかしまあ、不思議な事ってのはあるもんだねえ。
草壁さんが入院する前日、草壁さんと全くおんなじ理由で入院してきた高校生の男の子が居たんだよ。
そいや、あの子の検査日程も色々考えないと駄目だねえ……」
その後の会話は全く耳に入らなかった。
ただ、この世界が、あの夢の世界の続きかもしれない、そんな考えがずっと頭の中を占めていた。
色々な検査が終わって自由に動けるようになった後、私は看護婦さんに頼んで4月24日の新聞の隅から隅まで目を通した。
そして、そこには、あの事故の話題は一切書いてなかった。
それを確認した時、涙が頬を流れていくのが自分でも判った。
「夢じゃなかったんだ、夢じゃなかったんだね、貴明さん」
そして、5月7日。
ちょっと遅れた転校初日。
希望通り貴明さんと一緒のクラスになれた私は少しの落胆と安心を味わう事になった。
紹介された後、どのように貴明さんに挨拶しようかと考えていた私を出迎えたのは、
ぽっかりと一つ空いた空席だったのだ。
私はその席に鞄が立てかけてあるのを見た後、ちょっと気分が悪くなったので……といって転入挨拶もそこそこにクラスを抜け出して
貴明さんの姿を探し始めた。
そして──私達は四度目の運命的な出会いをした。
もう二度とこの手は離しませんよ、貴明さん
いじょーでっす。
草壁さんがなんで貴明の事故見つけられたんだとかそーゆーのをテーマに書いてみますた。
ほんとはこのみと草壁さんの絡み書きたかったんだが…続き書いたら書いてみたいなあ、VSたま姉とか。
GJ!草壁さん視点でのラストの描写か〜、いいねぇ。
他キャラとの絡みも楽しみなんで続き書けたらまたよろしく。
>>662 GJ!
優季視点の補完ストーリーですね
続きもよければキボン
>>662GJ!
草壁さんがらみの二次創作はほんと少ないからなあ
書いてくれてありがとう
俺と草壁さんが4度目の「運命的出会い」をした日、
ぽかぽかと明るく世界を照らす太陽と余りに対称的に教室は冷ややかだった。
あの後二人で抱き合ってる所を、何故か雄二に見つかり、
(本人曰く、俺を探しに来たと言ってたが、どうせ草壁さんの様子を見にいこうと思ってたのに違いない)
俺と草壁さんがクラス中の話題を掻っ攫う事になったからだ。
草壁さんは現状を理解して無いのか理解した上でやってるのか俺の手をぎゅっと握り締めていて、
それが男子の怒りを増徴させ女子の間にあらぬ噂を立てるのを加速させていた。
ああ、俺、明日から晒し者だな……などと自分の運命を呪っていると
「で、自称女嫌いでシャイでイナセなナイスガイ貴明よ」
などと言いながら雄二が顔をこちらに近づけてきた。
「だから、女の子が嫌いじゃなくて苦手なんだって……」
言い終わる間も無く雄二は机の上に土足で脚を乗せるとやおら叫び始めた
「んな事ぁ、どーでもいいんだよ!なんでお前はいきなり転校生とそんならぶらぶで甘い香りでぞっこんんだよ、
このむっつりが!あーそうかそれは擬態だったわけだな!俺も明日から女嫌いになるぞ!」
「な、なんだよ!大体、雄二だって知ってる筈だよ草壁さんの事を!」
その言葉に一瞬、雄二の顔が埴輪みたいな間の抜けた顔になるが、それも一瞬。
「はぁ、お前口からでまかせいってんじゃねーよ、大体俺がこんな美しい人の顔を一時たりとも忘れようか、いや忘れまい!忘れる事などありえない!」
そう断言する雄二を目の前にして、草壁さんはちょっと困った顔をしつつも、
「貴明さん、あの時とは苗字が違ってますし……でも、向坂さんお久しぶりです、
小学校の時同じクラスだった高城優季ですよ。今は色々あって苗字変わっちゃいましたけど……」
と雄二に向かって言ってくれた。
雄二はその言葉を受けて暫くうつむいてぶつぶつと呟いた後やおら立ち上がると、
「あーーーー、小学校4年の時に同じクラスだった高城!?あの高城さんか!」
と言うと、いきなり馴れ馴れしく草壁さんの手を握っていやー久しぶりーなどといい始めた。
その姿にちょっとむっとしてると、草壁さんはにこやかに笑いながら、
「ええ、本当にお久しぶりです。でも忘れるなんて酷いですよ」
とそこまで言うと本当に見惚れる位素敵な笑顔で
「嫌がる私にあんな事やそんな事をしたのに……」
といってよよよ泣き崩れる真似をした。
その言葉を受けて、男子の視線が一斉に俺から雄二に向かい、女子の中からも、雄二君さいてーなどという声が上がってきた。
いきなりのその言葉に度肝を抜かれたのか、雄二は口をぱくぱくしながら、
「え? ええ?く、草壁さん?」
と言ったまま固まっていた。
そんなクラスメイトの姿を尻目に俺と草壁さんはアイコンタクトをして何とか教室を抜け出す事が出来たわけだ。
先ほどの針のむしろといっても差し支えない教室からぽかぽかと5月のお日様が暖かい屋上へと抜け出した後、
俺達は顔を見合わせてくすくすと笑いあった。
「でも、草壁さんも酷いね」
俺は笑いながら草壁さんに話しかける。
「幾ら抜け出す為とは言えあんな事言い出すなんて」
草壁さんはその言葉を受けると、ちょっと頬を膨らませると
「むー、貴明さん、本当にそんな事があったのか!?なんて心配してくれないんですね……ショックです」
などといじけはじめてしまったので、
「い、いやほら、雄二ってそんな事する奴じゃないし、ね、ねえ?」
と慌てて言葉を繋ぐと、草壁さんは少し笑いながら冗談ですよと言いながら俺の横に座ってきた。
その流れるような自然の動作に俺の心臓はとくんと跳ね上がる。
数日間の夜の逢瀬、あの時の草壁さんの様子が思い浮かんできて、そして今自分の隣に居る草壁さんとダブっていく。
草壁さんはそんな俺の手をぎゅっと握ると、「あの時も今ここに居る私も両方夢じゃなくて現実ですよ」と笑いかけてくれた。
草壁さんのその言葉にばつが悪い顔をすると、草壁さんはまるで俺の事など何でもお見通しです、とばかりに澄ました顔で微笑んだ。
暫くそうした後、草壁さんはふと思い出したように口を開いた。
「でも……実は私向坂さんに少し感謝してるんですよ」
「え、雄二に?なんで又?」
思わぬその言葉にそう答えると、草壁さんはちょっといたずらっぽく笑うと
「だって、今こうして二人っきりで居られますしね♪」
と言いながら今にも抱きついてこようとした時……
「こほん!」
と余りにわざとらしい咳払いが後ろから聞こえ、反射的に体を離して二人して後ろを見たそこには小牧さんがなにやらいいたげに立っていた。
どうやら小牧さんは授業が始まっても戻ってこようとしない俺達をわざわざ探しにきてくれたみたいだった。
「お二人とも遅いと思って探しにきてみれば……」
とびしっという効果音が似合いそうな勢いで指をこっちに向けながら小牧さんはくどくどとお説教をし始めた。
「大体ですね、お二人は不健全で、神聖な学び舎である学校を──」
あー、長くなりそうだなあと思って草壁さんの方を見ると、草壁さんは
「小牧さん」
「え?」
突然名前を呼ばれた小牧さんはきょとんとして言葉を途中で終わらせ、そこで狙ったように──
「私、もう貴明さんと将来を約束しあった中ですから全然構わないって事ですよ」
とご丁寧に顔を赤く染めて仰ってくれました。
その言葉を受けて牧野さんは口を大きく広げ──
「え、え、え、え、え、え、、エーーーーーーー」
小牧さんの叫びを5月の空に聞きながら、これからは色々と騒がしくなるなあ……と人事のように考えていた。
でも──
「これからも、ずーっと、ずーーっとよろしくお願いしますね、貴明さん♪」
草壁さんの笑顔を見れるなら安いもんなんだろう、きっと
何か電波が飛んできたので連続して書き上げてみますた
だが、どーしても草壁ルートでは愛佳のキャラが委員ちょでしか無いので
愛佳と絡ませるのは俺の実力では無理ですた…後は誰か頼んだorz
次回希望があれば環かこのみか…
まぁ委員ちょはお説教キャラではないし
仮にしてももっとマターリとしたものになるだろうな
>>669 激しくGJ
タマ姉と絡ませると、
子どもの頃に将来の約束をした女vs子どもの頃に振られちゃった女
で、勝負ついちゃってる気もするけど、それはそれで対比としてみてみたいかも。
GJ
だが牧野さんが気になった
>>670 あの場面は説教っつーかどっちかっつーとお姉さんが弟に言い含めるっつー感じを想像してもらえれば
ゴメン 愛佳ファン ゴメンネ
>>671 タマ姉、普通の人の前では礼儀正しいからそれをどうやって崩すかってのが難しいデス
>>672 小牧ダッタ orz
674 :
671:05/01/22 21:25:01 ID:IrcnlwTw
とりあえず犬の散歩でもする草壁さんとタマ姉を遭遇させれば
礼儀とかそういうのは崩れ去るに違いない。(*´ω`)
その後収拾がつくという保証は一切できないが。
3月10日、放課後。図書室にて。
「愛佳、いる?」
「あ、来てくれたんだー。さ、どうぞどうぞ。入って」
書庫の奥から、愛佳が由真に向かって手招きする。
「紅茶入れるね。リクエストある?」
「……エスプレッソ」
「え?コーヒーの方が良かった?」
「冗談。何でもいいわ」
さっき、あいつの前で買い逃して悔しかったから言ってみたなどとは、とても口に出せない。
憮然とした表情をしていると、愛佳がティーカップを運んできた。
「はい、お待ちどおさま」
「ん、ありがと」
立ち上る香気が鼻をくすぐる。
「そういえば、眼鏡掛けるのやめたの?」
「ちょっと壊れただけ。今、修理に出してる」
「そうなんだ」
紅茶に口をつけた由真は、あの時のことを思い出して顔をしかめた。
「ちょっと苦かった?」
「へ?」
「紅茶」
「そんなことないよ。それより」
「うん?」
「ここの仕事、順調?」
「う……うん。まあ」
愛佳は口ごもりながら、曖昧な笑みを浮かべる。
「四月になって、新任の図書委員さんに引き継いだら、私の仕事も終わり」
どこか寂しそうに笑う愛佳を見て、思わず問い返す。
「それでいいの?」
「……うん。もともと、私の我が侭でやらせてもらってたんだし。後は、きっと皆で上手くやってくれるよー」
「そっか」
(結局、こうやって妥協して、自分を誤魔化していくしかないのかな……でも)
割り切れない想いを持て余しながら、二人は紅茶を口に含む。
やがて、重くなった空気を変えるように、愛佳が口を開いた。
「ところで、由真」
「?」
「最近、河野くんと仲いいよね」
思わず紅茶を噴き出しそうになる。
「いや、違う」
「そんな、力一杯否定しなくても」
「関係ないし」
「でも、河野くんと一緒にいる時、とっても生き生きとしてるよね」
「違うってば」
妙な誤解をされてはたまらない。
「あいつが勝手に絡んでくるだけ」
「ふうん」
意味ありげににこにこと笑う愛佳を、恨めしげに睨みながら紅茶を飲み干す。
「……ごちそうさま、また来るね」
「うん。……あ、そうだ」
「何?」
「由真、借りっぱなしの本があるでしょ。明日までに返しておいてね」
「わかった」
(……それにしても)
ああやって、変に気を回すのが玉に瑕だよね……由真はひとりごちると、書庫を後にした。
* * *
それから二日後。
体操着姿の由真が、図書室で捜し物をしていた。
(確か……あれに……)
昨日返した本に、期末の答案を挟んだままだったことを、体育の授業中に気が付いたのである。
あれを人に見られるのは、ちょっと……いや、かなり恥ずかしい。
点を比べた時の、貴明の勝ち誇った顔(と、由真には見えた)を思い出して、頭に血が上る。
いてもたってもいられなくなった由真は、授業が終わるやいなや、
ホームルームにも出ずに図書室へ飛んできたのだった。
(本棚に無いってことは、こっちかな……あった、あった)
カウンターに回ってようやく本を見つけた時には、もうホームルームが終わる時間だった。
急いで答案を取り戻すと、図書室のドアが開く音がした。
(早いな……誰だろ)
カウンターから出口を伺うと、よりによって貴明が入ってくるところだった。
(な……なんで、あいつが)
体操着でこんなところにいる気恥ずかしさもあって、顔を合わせづらい。
なんとなく癪だったが、カーテンの陰に隠れてやり過ごすことにした。
………
……
…
数瞬後、図書室にやってきた愛佳の目に、走り回る二人の姿が目に入った。
(やっぱり、仲いいんじゃない)
半ば呆れ、半ば微笑ましく思いながら見ていると、苦虫を噛み潰したような顔で
こちらにやってくる由真と目が合った。
「あ、由真」
「何」
「や、や、何も見てないよ」
「……」
「……」
「そういうんじゃ無いっつーに」
顔を真っ赤にした由真は、振り返りもせず足早に歩き去っていく。
愛佳はくすくすと笑いながら、その後ろ姿に手を振った。
(素直じゃないんだから。今度、お膳立てしてあげないとねー)
〜おわり。
なんだか山無しオチ無しという感じですが、本編では友人の割に余り絡みの無かった二人に、
こんな会話があったのかなーとか考えながら書いてみました。お目汚し、失礼しましたー。
GJです。こんなふうに本編でも2人の絡みが見たかったね。
そういや本編でのキャラ同士の絡みって少ないよなぁ
このみとたま姉は別として
「貴明様〜、おきてください〜」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
いつものリズムが目覚めの時間を教えてくれる。うーん、と、軽く伸びをして起き上がる。
「もぉ、朝ごはんできてますよ〜」
昨日はあのあと本当に眠ってしまった後で瑠璃ちゃんとリオンさんに見つかり、珊瑚ちゃんと同じ布団で
眠ってたことに関してこっぴどく叱られた。幸いにして眠る前に何があったかは知られずに済んだようだ。
でもそれからどうにもリオンさんを意識してしまう。その一方でリオンさんはリオンさんで、もう片時も傍を離
れようとしない。
「私とは添い寝してくれないのに、イルファとはするなんて不公平です」
ということらしい。
朝食の間、キッチンで控えているイルファさんが何度か頭をコツンと叩いていたのが気になった。
「イルファさん、どうしたの? 調子悪い?」
横ではリオンさんが頬を膨らます気配。
「あ、すみません。サテライトで繋いでる違和感、すぐに消えると思ってたんですけど、消えなくって」
この中、今はからっぽなんですよね。と言って、また頭をこつん。
「一度研究所戻ったほうがいいんじゃない?」
「それはやーでーすー。うさぎロボは結構窮屈なんですよ」
つん、とイルファさんが唇をとがらせて顔を背ける。
「いっちゃん、あかんで〜。調子悪いときはちゃんと調べんと〜」
「それはそうなのですが、珊瑚様」
「イルファ、いっといで」
「瑠璃様まで……」
「ウチらはイルファのこと心配して言っとるんや」
「ぶー、分かりました。でも絶対明日には戻りますからね。絶対ですから」
翌日の昼休み、いきなり予告もなしにやってきたのは珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんだった。
「るー☆」
「貴明、ちょっと」
クラスの奇異の目にはもう慣れたぜ。
「雄二、タマ姉とこのみに後から行くからって言っといて」
「おう、任せられたぜ」
二人にいきなり連れてこられたのは電算室。
「いきなりどうしたの?」
「あのな〜☆」
「さんちゃんが説明すると時間がかかるから、ちょっと黙ってて」
「う〜」
「実はちょっとイルファがややこしいことになってんねん」
「急に、なんで? 研究所に行ったんじゃなかったっけ?」
確かサテライトシステムが不調なのかなんなのか、違和感があるとか言ってたので、嫌がるイルファさんを
みんなで無理やり研究所に送り出したのはまだ昨日のことだ。
「イルファ、絶対今日戻るゆーてたやろ。あれ、本気やってん。朝んなったらもうおってな。しかもどうしても心
が別のところにあるのに耐えられへんゆーて、OS自分の頭のほうに戻してきよった」
「でもそれじゃオーバフローの危険があるんじゃ?」
「そうやねん。でも研究所に行く度に一応バックアップは取ってるから、万が一のことがあってもそこまで戻
る程度で済むんやけど――」
さすがイルファさんのこととなると、苦手だと言っていたロボ関係の知識もなんとか詰め込んだようだ。
「でもこうしてる間にオーバフローするかも知れへんし、貴明しかおらんときにそうなるかも知れへん」
「でも珊瑚ちゃんが記憶を劣化させるとかなんとかのプログラムを思いついたって言ってなかった?」
「それはまだ理論だけやねん。まだ実行できるプログラムは完成してへん。おっちゃんとこのスタッフが今
コーディングしてるとこや。それだってテストもせずにいきなり実戦投入ってわけにはいかへんやろ」
まあもっともだ。バグがあったら大変だしな。
「つまりイルファは今いつ緊急停止してもおかしくない状態ってことや」
「そりゃ大変だ」
「そう、大変やねん。だから万一のために貴明にもいくらか覚えておいて欲しいことがあってな。ええか?」
「なんかメモ取ったほうがいいかな?」
「じゃじゃじゃ〜〜ん♪ 紙とボールペン〜」
横からさっと珊瑚ちゃんが差し入れてくれる。準備いいな。
「まずオーバフローが発生すると、OSはハングアップしてフリーズする可能性が高い。システムは再起動を
試みんねんけど、起動のためのメモリが足りてなかったらそれもあかん。そうなると発電がストップする。か
なりの記憶容量が通電がストップすると消えてしまうタイプのもんやから、予備バッテリーが切れるとおじゃ
んや。予備バッテリーの作動限界はおよそ30分程度やから、その間にシステムをなんとか再起動せんと、
最後のバックアップ以降のイルファは消えてなくなってまう」
「たった30分か」
「たった30分や。外部から停止状態のイルファのシステムに干渉するためには、イヤーカバーのコネクタか
ら接続する必要がある。念のため以前からこの学校の電算室にはその用意がある。って学校は関係なかっ
たわ。あはは。貴明とイルファやと商店街か、家やろ。もし外でイルファが止まった場合は、とにかく一刻も
早く家に連れて帰って」
「分かった。了解」
「でももし繋げたとしても、イヤーカバーのコネクタからは電力供給できるようにはなってへんねん。想定外っ
ちゅうやっちゃな。だからできるのは単純に手動の再起動くらいのもんや」
「事実上のお手上げってこと?」
「そうでもない。まだ最後の手段がのこっとる」
「それは?」
「記憶の切り取り、や。容量が溢れてOSがハングアップしとるんやから、記憶を削ってしまえば再起動はで
きる。そしたらスリープモードで研究所まで運べば残りの部分はバックアップが取れる」
「荒治療だな」
「そうや、荒治療や。でも失ってしまうかも知れん一日にイルファにとって大事な何かが無かったなんて誰が
決められるん? ただ問題は――記憶削除のためのプログラムのインターフェイスや。どこのアホが作った
んか知らんけど、指定条件の絞込みが曖昧やねん」
「俺みたいな素人でも扱える?」
「それは問題ない。簡単すぎるんや」
ぱっぱっぱと、珊瑚ちゃんがプログラムを開く。
「これや〜☆」
HMX-17用の緊急用記憶削除プログラム。それはその意味あいに比べればぞっとするほど簡素な画面
だった。ただ画面中央に文字を書き込むためのテキストボックスと、その右側に「実行」と書かれたボタンが
あるだけ。
「これだけ?」
「そう、これだけや」
「これは、この枠に言葉を入れて実行を押すんだよね?」
「そう、それでその言葉に関する記憶がぜーんぶ消去される」
「全部まとめて!?」
「そうやねん。それで十分やと思われるだけのデータを削ったら、今度はスリープモードでの再起動や」
またしても珊瑚ちゃんがぱぱっとプログラムを開く。
HMX-17用の緊急用再起動プログラム。これも驚くほど簡素なメニュー画面だった。
「スリープモードでの再起動を選ぶだけや。簡単やろ。プログラムの名前メモっときや」
「ああ、うん」
「後はウチなりさんちゃんなりに連絡取れば、研究所に連絡して引き取ってもらうから安心しぃや」
「安心って、イルファさんの記憶を削るなんてことのないように祈ってるよ」
「そうやな。ホントにそう思うわ。ごめんな。時間取らせたわ」
「いや、いいよ。ありがとう。何も知らずに目の前で急にイルファさんが止まったりするなんて、とてもじゃない
けどぞっとするもんな。これで全部かな?」
「うん。全部や。――っと、もうひとつ」
「あ、なに?」
「きばりや」
「はい?」
「あー、やっぱなんでもない。なんでもないからさっさと行き」
瑠璃ちゃんに電算室から追い出される。
屋上に向かおうと歩き出そうとしたとき、
「ふ〜、さんちゃん、ウチうまく言えたかな?」
「瑠璃ちゃんすご〜い、かんぺきや〜☆」
「あ〜、英単語覚えるほうがまだ楽やったわ」
……? なんだそりゃ?
翌日は朝から雨だった。
――で、なんで我が家には傘が一本しかないのでしょうか?
そういや両親とも自分の傘は高いものだから、ってわざわざ梱包して持っていってたな。
「困ったな」
「困りましたねえ」
そう言いながらリオンさんはなにやらニコニコ。
「実に困りましたね。貴明様。困っちゃったですね」
だ、大丈夫か? 壊れたんじゃないだろうな。
「こうなったら一本の傘に二人で入っていくしかないのではないでしょうか?」
ニコニコと微笑を向けてくるリオンさん。
なるほど、そういうことか。
「そういうことなら仕方ないな。ほらもっとこっち寄って」
「え、ダメです。貴明様。私が傘持ちますよ」
「バカゆーな。どこの世界に女の子に傘を持たせるヤツがいるか」
「でも私はメイドですし」
「関係ない。これは命令。分かったね」
「はい、命令なら仕方ありません。貴明様」
そう言ってリオンさんが、俺の胸に肩があたるくらいに寄り添ってくる。その華奢さに胸が高鳴った。
それで出発、まず向かったのは当然となりのこのみの家で
「春夏さ〜ん、傘一本貸してくだいだだ、いだだだ、いだいよ、リオンさん」
頬をつねられた。
そのまた翌日――。
姫百合家から帰ってくると、いつものようにお風呂を入れにはいかず、リオンさんはそそくさと奥の部屋に
消える。む、なんかだ急だな。らしくないといえばらしくない。かと思うと、
「貴明様、貴明様〜」
ぱたぱた走ってきて俺の部屋をノックする。
「なに? 入っていいよ」
「はい〜」
がちゃりとドアが開いて現れたのは、メイドのリオンさんだった。いや、いつだってリオンさんはメイドロボな
んだけど、そういう意味じゃなくて、いわゆるひとつのメイド服でめかしこんでいらっしゃったわけだ。
「どう、どうですか? 似合いますか〜?」
裾を持ち上げてみたり、その場でくるっと回ってみたり。服を買ってもらった女の子そのままの反応だ。
「それ、どうしたの?」
「どうしたのじゃないですよ〜。こういうときはまず感想を言ってください」
「あ、ああ、すごくよく似合ってる」
嘘じゃない、それどころか言葉が足りないんじゃないかってくらいだ。黒地に白のエプロンドレス。妖しい雑
誌やビデオで出てくるようなレース付きのふりふりミニスカートなメイド服じゃなくて、質素な本物のメイド服っ
て感じで、リオンさんがそれを着て立ってるだけで違う時代に紛れ込んだような気分になる。
「ありがとうございます。これは向坂さんに頂いたんですよ〜」
「タマ姉!?」
「いえ、雄二さんのほうです〜」
あっちか。メイド欲しさのあまりに先に服に手を出していたとは知らなかった。
「なんか変な要求とかされなかったか?」
「いえ〜、ただ写真を何枚か撮ってくれ、と。申し訳ないからお断りしたんですけど、どうしても、と言われま
して〜」
「はぁ、仕方のないやつだな」
適当に何枚か撮って後でくれてやればいいだろう。
また翌日。
「ねえ、貴明様」
風呂から上がったリオンさんはまたメイド服を着ていた。結構気に入ったらしい。それだけは雄二に感謝し
ておくか。写真を渡すまでは。
俺はというと、またしてもテレビをつけているのに、ろくに画面を見てなかった。
「あと二日だけなんですね――」
ぎゅっと胸が締め付けられた。意図的に避けていた話題。無言のうちに調停ができていたんだと思ってい
た。リオンさんがやってきたのが先週の月曜日。早々ともう十一日目が終わろうとしている。あと金曜と土
曜、土曜の昼にはリオンさんは研究所に帰る予定になっている。
「そうだな」
それ以外に言葉がなかった。はじめからそういう予定だったのだ。ずっと一緒にいてくれとか、もうちょっと
期間を延ばしてくれ、とか言う権利はない。
「どこにも行くな、とか言ってくれないんですね」
「言ってどうなるっていうのさ。リオンさん自身が前に言った。払いおろされることはないって」
「それでも言って欲しいときって、あるんですよ」
差し出された熱いお茶を一口すする。
言うべきか、言わざるべきか、考えてみた。言うだけなら簡単だ。本当に簡単だ。そしてリオンさんが求め
てるのはそんな他愛もない嘘だ。それは分かってる。行くな。心の中でリオンさんに言ってみる。お前は俺
のメイドロボだ。俺のなんだから、どこにも行くな。
リオンさんは喜ぶだろう。そして「はい」と言うに違いない。そして二日後には研究所に戻っていくのだ。
「ダメだ。やっぱりそんな無責任なことは言えない」
「そんな言葉が聞きたいんじゃありません」
リオンさんは隣にやってきて、俺の頬を両手で挟むと、ぐいと自分のほうに向けた。
「私が聞きたいのは、貴明様がどう思っているかです。言ってください」
もう――、ダメだ。
リオンさんの瞳が間近から俺の瞳を覗き込んでいる。
もうこれ以上自分に嘘はつけない。本当はずっと分かってたんだ。珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんやイルファさん
に抱くのとはまた違った感情。自分の中に生まれたまったく新しい感情だ。
「好きだ。リオン。俺、お前のこと好きになっちまった」
「私も大好きです。貴明様」
リオンさんが頬から手を離して、俺の首に手を回そうとして動きを止めた。そういえば何度か似たようなこと
があった気がする。ぎりぎりのところでリオンさんは踏みとどまってしまうのだ。だから――
「あっ……」
俺のほうから抱きしめた。嬉しかったのに悲しかった。
暖かい。
そしてこの温もりは後二日後には消えてなくなってしまうのだ。
母親の誕生日を祝うために実家に帰り、中学生の妹に
頼むからメイドロボとの萌えシチュエーションを一緒に考えてくれ、と頼み込んだ俺です。
こんばんは。
意外や意外、メイド服というシチュは妹がいなかったら実現しませんでした。ここで感謝。
例によって専門的な部分などは(以下略
前回のイルファさんは予想以上の反響を頂きました。ありがとうございます。
でも多分もうエロはないヨ。(・ω・)
GJ
しかし雄二、メイド服もってるとはw
リオンさんもへ
そして中学生に助言を請うおまいさんにももへ
そしてGJ
>>690 乙です。だんだん佳境になってきましたなぁ。
ちなみにそんな事話せる妹がいるのがうらやましい…。
俺の妹なんて…orz
>>694 濃いエロスキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
TOEICは捨てるな。でも無理に詰め込んでもしゃあないから、
ホットミルクでもミルファに入れてもらって飲んで寝てください。
お疲れ様。頑張って!
おもろかった
だがトーイック捨てるなYO!
>>694 激しくGJ! エロエロデスヨ―
試験はやってみなけりゃ分からない。
気休めにしかならないがガンガレ−!!
ちょっとスレ汚しに来た
699 :
消える光:05/01/23 01:45:17 ID:T15hb3he
「あ〜、突然な話なんだが、今日で小牧は転校することになった」
え〜、と教室にブーイングが走る。
「まぁ、家庭の事情だそうだ。小牧」
「はい・・・」
先生に促されて、愛佳が壇上に上がる。
幾度と見てきた光景。だけど、いつもとは違う。
「今までお世話になりました、今日まで本当にありがとうございました。」
簡単にあいさつをする愛佳。そんな彼女を、俺は見ることができなかった。
「おい、貴明!どういうことなんだよ・・・」
雄二が納得いかんと言わんばかりに聞いてくる。
俺が知るかよ・・・。放っておいてくれよ。
「それじゃあみなさん、お元気でっ・・・」
言い終わると同時に拍手の雨が降る。
「委員長ばんざーい!!」
「元気でね〜〜!」
「俺達のこと忘れないでくれよな〜!」
俺は、みんなと同じようには拍手はできなかった。
700 :
消える光:05/01/23 01:46:28 ID:T15hb3he
「わかれ・・・る・・・?」
愛佳はうつむいたままで、返事は無かった。
「なんで!俺のこと嫌いになったの!?」
「ち・・・がうよ・・・!」
ちがうなら・・・、ちがうならなんで!
言葉にならない思いが、俺の中で弾ける。
なんで!なんでなんでなんでなんで!?
転校するだけでどうして別れなきゃいけないんだよっ!
「遠距離じゃっ・・・駄目なのか・・・?」
しかし、その問いにも愛佳は答えてくれない。
どうすればっ、どうすればいいんだよ!
別れたくない!そんな想いだけが頭の中をぐるぐる回っていた。
「・・・じゃあ、俺もついて・・・」
「だめだよ!」
愛佳の悲鳴にも似た叫びに、俺は驚いた。
「それだけはだめ・・・!絶対にだめだから・・・」
「どうして・・・」
「お願い・・・わたしのこと、忘れてっ・・・」
「そんなこと・・・」
「お願いだから・・・たかあきくん・・・」
愛佳はそれで幸せなのか?別れた方がいいのか・・・?
「一ヶ月間、ありがと・・・。とても楽しかった。そして、いっぱい迷惑かけて、ごめん・・・なさい」
「そんな・・・」
その時、下校時刻を知らせる放送がながれ、俺の言葉をかき消した。
「じゃあ・・・もう帰らなきゃ・・・」
「・・・・・・・・・」
701 :
消える光:05/01/23 01:47:34 ID:T15hb3he
その日一日中、俺は授業にも会話にも集中出来なかった。
胸に穴が空いたみたいだった。
愛佳がどれだけ俺にとって大切だったのか、ようやく分かった。
「ひっどい顔してるわね」
うるさいな、放っておいてくれよ・・・。
そう思って顔を上げたそこには、由真がいた。
「・・・なんだよ」
「話があるの、ついて来て」
由真はいつもとは違って、真剣な表情で俺を見ていた。
「何の話だよ?」
「愛佳の話よ」
「いいよ・・・もう」
もう愛佳は行っちまったんだよ。今はもう、考えたくないんだ。
そう思ってると
ガツン!
「痛ってーな、何するんだよ!」
突然グーで殴られた。
「ついて来いっていっただろ!さっさと来る!」
クソッ、なんなんだよ・・・。
俺はしぶしぶ由真について行った。
702 :
消える光:05/01/23 01:48:36 ID:T15hb3he
屋上。俺と愛佳が別れた場所。・・・なんでここなんだよ。
「で、何の用だ?」
ベンチに座り、俺は由真に尋ねた。
「そっちょくに言うわ。あんた、愛佳のこと本当に好き?」
「はぁ?」
なんで今更そんなこと聞くんだか。
「・・・もう、別れたよ。」
「そんなこと聞いてない。好きかってきいてんの!」
「好きだったよ・・・」
「だった?今はどーなの?」
今?今のこと考えたってどうしようもないだろ、愛佳は行っちまったんだから。
「話はそれだけか?だったらもう帰るから」
「質問に答えろっ!」
「なんでそんなことお前に言わなきゃならねぇんだよっ!?」
しまった、言い過ぎたか。
荒くなってしまった俺の言葉に、由真は驚いていた。
「・・・じゃあ、俺帰るから・・・」
今日はだめだ。愛佳のことが整理できてないのか、人に当たっちまってる。
俺は扉に手をかけた。
703 :
消える光:05/01/23 01:49:24 ID:T15hb3he
「あ〜あ、いるよねこういうやつ。」
扉を開きかけたとき、由真はわざとらしく大声で言い出した。
「相手の言葉を受け入れるのが優しさだ、とか思って変に潔いやつ。
ちょっと逆らっても駄目だと分かったら諦めちゃうやつ。
相手の気持ちや事情も考えないで、自分だけ不幸ヅラしてるやつ。
あたし、そういうの、突き飛ばしたくなるくらい、大っきらいっ!」
言いたいこと言いやがって・・・。
「他に何か出来るのか?出来ることなんてないだろうが」
そうだ、俺にはもう出来ることなんてないんだよ。
「好きなんでしょ?まだ・・・」
「好きでも・・・どうしようもないだろ」
「あんたさ、愛佳に何て理由を聞いたの・・・?」
「両親の転勤だろ。それがなんだよ」
「はぁ?両親が転勤?何それ?」
由真のやつ、何言ってるんだ?愛佳は転勤って言ったんだぞ。
「愛佳は・・・そう言った」
「ふうん・・・。でもそれ、違うわよ」
「え?」
どういうことだ?他に理由があるのか?
「あんたに心配かけたくなかったんでしょうね。
愛佳、ほんとにあんたのこと好きだったから」
「どういうことだよ・・・」
「いい?よ〜く聞いてなさいよ。愛佳の転校の本当の理由は・・・」
花梨タンのエロまだ〜?
705 :
消える光:05/01/23 01:50:48 ID:T15hb3he
次の日ちょうど土曜日だったので、学校が終わると俺は病院に向かった。
「愛佳の転校の本当の理由は、愛佳の妹のため、なのよ」
あの後由真はそう言った。
「昨日電話があったの。で、そのとき聞いたのよ。ついでにあんたのことも」
「・・・俺のこと?」
「うん、また嘘ついちゃった、って言ってた」
「そう・・・か」
結局細かいことは分からなかった。
郁乃は前に手術をしたはずだ。だが、由真は『妹のため』と言っていた。
どういうことなんだ?
考えてもしかたないよな・・・。
とりあえず、俺は郁乃のいる病院にやってきた。
少しでも、愛佳との関係を直せるかも知れないから・・・。
706 :
消える光:05/01/23 01:51:42 ID:T15hb3he
コンコン
二回ほどノックした後、俺は郁乃の病室にはいる。
だが俺は、目の前の光景を疑った。
「だれ・・・?」
「お前・・・どうしたんだよ・・・」
そこには、目を包帯で覆った郁乃の姿があった。
「ああ、たかあき。来たの。」
郁乃は俺の方をちらっと見た後、また窓の外に顔を向けた。
「それ、どうしたんだ?」
「神様が与えた新しいハードルよ。それとも、もう見放されたかな」
何を言ってるんだ?また悪ふざけか?
「ふざけてるのか?」
そう言うと、郁乃はふぅとため息をつく。
「別にふざけてない、そのままの意味よ」
「そのままって・・・」
そこまで言ってようやく気づいた。
「・・・病気、悪化したのか?」
郁乃は返事をしなかった。
「あたしのせいで姉を失うのに、心配なんてするんだ」
「なんでお前のせいで愛佳を失うんだ?」
そう聞くと、郁乃は俺の方に顔を向けて笑う。
「聞いてないんだ。飽きられちゃったんだ」
「お前っ!ほんとにふざけて・・・」
俺が近寄ったその時
「すまないが、面会はこれまでにしてくれないかな」
回診の先生か何かが入ってきたのだろう。俺は退出を強制させられた。
「ばいば〜い。゛おにいちゃん"」
707 :
消える光:05/01/23 01:53:05 ID:T15hb3he
「すいませんっ。あいつ・・・郁乃の奴どうしたんですか?」
俺は、今しがた出てきた先生を捕まえて尋ねた。
「君は・・・誰だね?」
「えっと、その・・・親戚です」
親戚はまずかったか・・・と思いつつ反応を待っていると
「彼女は、今度別の病院に移ることになったんだ」
嘘をついてしまったがこの際構ってられない。
俺は話を聞きつづけた。
「この前手術しましたよね?」
「ああ、だがその後がね・・・」
「その後・・・?」
「視力の方は回復に向かっていたんだよ。だが彼女の場合、身体も弱いだろう。
視力の回復に身体が伴わなかったのだよ・・・」
「・・・・・・」
「それで今回、地方の病院で治療をすることになったんだよ」
「そう・・・ですか」
「それでは、失礼」
そう言って、先生はこの場を去った。
あいつ・・・だからあんなこと言ったのか。
その日、俺は大人しく帰ることにした。
いじょです。なんかよくわからん話に・・・(゚Д゚;)
>>704 おまいさんが書いてくれYO(・∀・)
>>708乙。
「貴明のヘタレ〜。バッド行ってやんの、プッw」
って感じの内容ですな。
こんなのも悪くないかも。
>>708 GJ!イイですね。
これからの展開が凄く気になりましたよ。
>>704 絶妙な間で書き込んだなぁ。
711 :
名無しさんだよもん:05/01/23 03:58:00 ID:tuRaf756
>>690 遅ればせながら、お疲れ様〜。そしててGJ!
いよいよ佳境ですねぇ。続き期待してます(´∀`)
>>694 ミルファエロ最高に萌えますた(*´Д`)
イイ仕事してますなぁ〜。これからもガンガレ!!
このスレ大好き
お前等全員GJだァ!!!!
イルファはエロイ。
さすが愛と欲望のメイドロボと自称するだけのことはある!
言いたいことはそれだけじゃない。
>>640は ネ申
うむ、ほとほと淫乱だないっちゃんは。
そして無事平穏な日々はあっという間に過ぎ去っていく。そして幸せな日々というのはほんの数日でもま
るでそれまでずっとそうだったかのように心に刻まれていくものだ。
例えばそれは眠る俺を揺するそのリズムだったり、
例えばそれは手を繋いで歩くその暖かさだったり、
例えばそれは学校で誰にも気づかれないように交わされる目配せだったり、
例えばそれは眠る前の挨拶だったりした。
だからいつの間にかリオンさんがこれまでずっと傍にいたような気になっていたし、これからもずっと傍にい
るような気になっていた。
リオンさんの作る味噌汁は、データベースのレシピどおりに作られただけかも知れないけど、それでもその
味を忘れられそうにはなかったし、部屋の隅々まで掃除の行き届いていない生活なんてもう考えられない。
テレビを見ていれば、差し出されるはずのお茶に手が伸びるし、眠る前に柔らかい声を聞かなければ、安ら
かな睡眠はやってきそうにない。
だから――
「貴明様、起きてくださいー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
もう少しこのリズムを味わっていてもいいじゃないか。
「ホントに遅刻しちゃいますよー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
「んもう、起きないとちゅ〜しちゃいますよー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ――。
「…………」
心地よいリズムが止まる。
「ホントにしちゃいますよ……」
ぎしり、と手を置かれたベッドが音を立てた。徐々に近づいてくるその気配。吐息を鼻先に感じて――
ピシリ! と、おでこに軽い痛みが走った。びっくりして目を開けると、リオンさんが悪戯っ子のような笑みを
浮かべている。
「貴明様、息を止めたらバレバレですよ」
ピシリと、もう一回でこピン。
「さあ、早く起きてください。朝ですよー」
「リオンさん、明日までなんだね〜」
「はい、残念ですが」
3人で歩くのもあと2回でおしまいだ。リオンがいても以前と変わりなく思えたこの通学路は、リオンがいな
くなったらどう見えるのだろうか? この暑くてたまらない日差しは酷くなるのか、マシになるのか。それとも
なにも変わらないのか――。
「タカくん、寂しくなっちゃうね」
「そうだな」
「お別れのとき、タカくん、泣いちゃダメだよ」
「そうだな」
「タカくん、このみの話聞いてないでしょ」
「そうだな」
「も〜〜、えいっ!」
ぐえっ! いきなり首が絞まる。やばい、このみ、いきなり全開は無しだ。
「ぎぶぎぶぎぶっ!」
「も〜〜、タカくんが話を聞かないのがわるいんだよ」
「分かった分かった、悪かったよ」
リオンがじぃーとこちらを見つめている。なんかイヤな予感。
「貴明様、私もやっていいですか?」
「却下」
放課後になると、リオンさんのお別れ会の開催が決定していた。仕切っているのは当然というか、何故か
というか雄二だ。どこに行くかは結構迷ったらしいが、結局ボウリングで落ち着いた。まあこの人数でカラオ
ケいっても収拾つかんしな。
クラスメイトの大半がぞろぞろと集まって、駅前のアミューズメント施設に押しかける。
道中、俺のとこに寄ってこようとするリオンさんと、それを連れ戻して質問攻めにするクラスメイトたち。
「まあ今日くらいはみんなにもリオンさんを分けてやれ」
ぽんと雄二に肩を叩かれる。質問の大半は俺との関係に終始する。始めは河野さんだったのが、途中か
ら貴明様に変わったわけだから、そりゃ聞きたいだろう。俺だって野次馬だったら聞きたくなること請け合い
だ。だからといってそれが慰めになるわけでもない。
「貴明様ぁ〜、これ答えちゃっていいんですか〜」
密集するクラスメイトの中からぴょんぴょんとリオンさんが飛び上がってるのがなんとか確認できる。
あーあー、俺に振るな。頼むから。
だがもう遅い。仮想のマイクを俺に突きつけるクラスメイトたち。
「――お二人の馴れ初めは?」
「――最初のデートはどこだったんですか?」
「――リオンさんはみんなのアイドルだったのにこのヤロウ」
「あー、ノーコメント、ノーコメント」
仮想のテレビカメラを手で隠してやる。
「この通り、河野貴明氏は全面的に取材を拒否しております。以上現場からTNNの東でした。スタジオにお
返しします」
ボウリング個人戦は、というとリオンさんの一人勝ちとなった。そういえば珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんと一緒に
やったゲームの時にも思ったが、意外と勝負事にはこだわるほうだよな。絶対に手を抜かないというか。
華麗なフォームから投げ出される玉がピンをなぎ倒していく。
「やった、またストライクですよ。貴明様ー!」
あー、どうでもいいが、スカート丈には気をつけたまえ。男子どもがリオンさんの投球となるとかじりついて
きてるから。
「リオンさ〜ん、投げ方教えてよ〜」
女子に呼ばれてパタパタと走っていく。動きを教えてみたり、玉の重さに助言をしてみたり、色々と走り
回っている。実に微笑ましい光景だ。
「覚悟はできてるのか?」
どっかと横に腰を下ろした雄二が言う。
「覚悟してりゃ別れがどっかに逃げて行ってくれるのか?」
「それを覚悟、っちゅうんだよ。いや、わりぃな。余計なこと聞いちまったようだ」
そう言ってからリオンさんを囲む輪に飛び込んでいく。
「リオンさ〜ん、俺にも投球フォーム教えてくれー」
「楽しかったです〜」
みんなと別れた後、本当に嬉しそうにリオンさんは言う。そんなリオンさんの肩に手を置いて雄二がニヤリ
と笑う。
「まだ終わりじゃないぜ。リオンさん」
え? そうなの?
雄二に案内されるままにたどり着いたのは、……我が家ではないですか。
「おかえり〜、リオンさん、タカくん、ユウくん」
中から出迎えてくれたのはこのみだった。そうか、そういや合鍵持ってたな。リビングに行くと、タマ姉が
キッチンを使っていた。
「あわわ、向坂さん、料理なら私がー」
「ダメダメ、今日はあなたが主賓なんだから、もてなされておきなさい」
「あうー、分かりましたー」
とは言ってもリオンさんはなにも食べられないから、リオンさんをもてなすものは、俺の昔話に終始した。
楽しい思い出、つまらない思い出、恥ずかしい思い出、俺自身が忘れてしまっていたような思い出まで、
そばで聞いているのが照れくさくなるような色んな思い出話。それをとても興味深そうにリオンさんは聞いて
いた。
この2週間はリオンさんにとってどんな思い出になるんだろうか? なったんだろうか?
そしていつかリオンさんが誰かに俺のことをこんな風に話す日がくるんだろうか。
「じゃあねータカくん、リオンさん」
「また明日な」
「遅くまで失礼したわね。後は二人でごゆっくり」
口々に言い残して三人が帰っていく。急に人の数が減ったリビングは、何か物悲しい。
「あ、お風呂入れますね」
「うん、お願い」
タマ姉は後片付けまできっちりしていって、リオンさんは最後の最後まで戸惑っていたようだ。
「貴明様のためにお風呂入れるのもこれで最後ですね」
「なんなら一緒に入るか?」
冗談めかして聞いたつもりだったが、
「はい、是非とも。お背中流させてください。最初の日の汚名返上ですよ」
リオンさんはむんと気合を入れる。やる気まんまんだ。
「そうだな。お願いするか」
風呂から上がってしまうともうなにもすることがなくなってしまった。
話すべきことは話してしまったし、伝えるべきことも伝えた。二人とももう満足していた。
「時間ももう遅いし、寝ようか」
「あの、貴明様、最後にひとつだけお願いが――」
「なに?」
できることならなんでもしてあげたい。リオンさんに残せるものがあればなんだって。
「その――子どもっぽいんですけど」
照れくさそうにリオンさんはもじもじする。
「寝るとき、手を繋いでいて欲しいんです」
「なんだ、そんなことか」
「なんだってことないですよー! 勇気を出してお願いしたんですから真面目に受け取ってくださいよー」
ぷんぷんと怒りを表明してみせるリオンさんをふわりと抱き寄せる。
「ひゃん!」
可愛らしい声をあげるリオンさんの手を取ると途端にしおれた花みたいに大人しくなってしまった。それを
引っ張るように俺の部屋へ。リオンさんがベッドに潜り込むのを確認して電気を消した。布団に入ると、リオ
ンさんはぴたりと寄り添ってくる。
「おやすみ、リオンさん」
「はい。おやすみなさいませ。貴明様」
繋いだ手と手から温もりが広がっていく。この温もりを絶対に忘れないようにしよう。
絶対に。
エロいイルファさんと対比して、リオンさんとはプラトニックに――。
どうも物語を盛り上げるというのが苦手で、最後の時間というのを淡々と書く手法なんだと昔から自分をご
まかし続けてきたので、このままごまかしていきます。文章はあえて序盤の書き込みを捨て淡々としたもの
に変えていって、る、よね?
この短期集中連載でしたが、この物語も次回で最終回。
どうもお付き合いありがとうございました。
>>723 神キタ━━(゚∀゚)━━!!
このまま2人は別れてしまうのか!?気になりますよ。
お疲れさまです。
いってるYO
ってもう終わってしまうのか〜、残念!
とりあえず715氏GJ
最終回も楽しみにまっちょるよ(´ω`)ノ
リオンを正妻と仮定したらイルファは浮気相手ってとこか。
あともう一息、ガンガレ。
727 :
名無しさんだよもん:05/01/23 12:16:56 ID:tuRaf756
>>723 ここまでとても良い質・ペースで、お疲れさんでした。
あと一息!がんばってくだされー。
ラスト楽しみにしてます(´∀`)
728 :
名無しさんだよもん:05/01/23 12:28:10 ID:eadOeDbE
今までSSになってないキャラっておりますでしょうか?
メインキャラはあらかたやってる気がする。
三人娘とか?
ダニエルとか雄二メインの話とか無いと思う
>>730 >雄二メイン
おっすおら(ry
図書委員長とかゲンジマルとかはまだのような希ガス
おっすおら(ry があったな!
図書委員長は上のほうで愛佳陵辱してなかった?
ゲンジマル・・・は無いな。てか作る人いるのか
真委員長もまだじゃね?
自分が書きたいキャラを書けばいいさ。
被ってるとか気にしなくてもいいよ。
>>733 基本的にビジュアル無いとSS書く気になれない
俺だけ?
書きたいキャラがいてもネタが思いつかない罠
737 :
妲:05/01/23 13:07:10 ID:eadOeDbE
草壁来てた?
740 :
妲:05/01/23 13:17:26 ID:eadOeDbE
みなさま方?
ここは21禁の板という事でよいのでしょうか?
こにゃにゃちわ。今続きを考えてるところですけど今一つ気に入らないため話を再検討
しており、更にしばらく忙しい日が続くため俺の話は数日間続き書けません。あんまり
期待せずお待ちくださいませ>読者の方々
何を当たり前なことを、あととりあえず下げようぜ
>>739 実は委員ちょシナリオまだ途中だから郁乃書きたくてもかけない
最後の夜が明けた。
固く結ばれた手を解こうとすると、最後にもう一度強くリオンの手が握り返してきた。
「貴明様、おはようございます」
「おはよう、リオンさん。先に起きてたなら起こしてくれればいいのに」
「いえ、貴明様の寝顔が可愛らしかったものですから」
ベッドに横になったままする朝の挨拶はなにか照れくさい。というか、根本的に照れくさいこと言われた。
「よっ、と、リオンさん、朝ごはんよろしく」
顔の紅潮を気取られないように起き上がった。
「はい。任せてください」
リオンさんが腕まくり。
台所に立つリオンさんを見るのも今日で最後。
いや、あんまり最後最後考えないようにしよう。
いつもどおりに過ごしたい。
この2週間のいつもどおりに。
だから普通に朝飯食って、このみを迎えに行って、こんな日でも寝過ごすこのみをからかって、雄二とタマ
姉も一緒で、途中で珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんも一緒になって学校に行く。
特別なことなんて何もない。多分、特別なことをすればするほど悲しくなるだけだから。
だから誰もリオンさんが今日でいなくなることなんて口にしなかった。
「それじゃこの問題はリオンさんにやってもらおうか」
「はい」
数学教師に言われて、リオンさんが黒板の前に進み出る。
リオンさんの華奢な手がチョークを持ってスラスラを解答を黒板に刻み付けていく。
こんな姿を見れるのもこれで最後かもな。
ずきん、と胸の奥が疼いた。
ああ、おい、俺はどうしちまったんだよ。自分で決めたんだぜ。最後を最後らしくしないでいようって。これま
での2週間が大事だったから、その大事な日をもう一日作って、それで終わりにしようって。
それなのに俺は何かを考えれば、これで最後、これで最後って、女々しいことこの上ないぜ。
そのとき不意に、解に至る寸前でリオンさんの手が止まった。
あれ? あそこまでいけば俺だって答え分かるぞ。
しかしそういうことではなかった。たっぷり5秒ほども静止していたかと思うと、リオンさんはそのままその
場に崩れ落ちたのだ。
倒れこんだリオンさんを見ても、しばらくは動けなかった。何が起きたのか理解できなかったから。
頭の中が真っ白になる。なにも考えられない。
なんで、リオンさんが急に――。
ガツン!と頭に衝撃が走る。
「しゃっきりしろ、貴明! お前がしっかりしないでどうする」
ああ、そうだ。今はとにかく!
リオンさんのところに駆け寄る。机も椅子も邪魔だっ!
そばにしゃがみこむと、リオンさんは完全に機能停止しているように見えた。なんで、急に――。
『つまりイルファは今いつ緊急停止してもおかしくない状態ってことや』
なんでだっけ?
『まずオーバフローが発生すると、OSはハングアップしてフリーズする可能性が高い。システムは再起動を
試みんねんけど、起動のためのメモリが足りてなかったらそれもあかん。そうなると発電がストップする』
急速に冷えていくリオンさんの体。それが直接死に繋がるわけじゃないと分かっていても、抑えがたい恐
怖が胸を締め付ける。
イルファさんの話だったはずだ。イルファさんの。だってオーバフローはHMX-16のボディにHMX-17のシス
テムを乗せるから起きることで――。
まるで本物の感情があるかのようにくるくると表情が変わるのは誰だ――。
鼻歌を歌いながら、窓を拭くために椅子を使ったのは誰だ――。
イルファにヤキモチを焼いていたのは――。
リオンさんを背中に背負って走った。とりあえずは――。
授業中とかなんて構うもんか!
扉を力任せに開けて、驚きこちらを見る生徒たちのなかから目当ての顔を見つけ出す。
「珊瑚ちゃん、クマ吉がっ!」
「やっぱ起きてしもたか」
瑠璃ちゃんが言って、珊瑚ちゃんの手を取ってこちらに駆け寄ってくる。
「貴明、電算室!」
「分かってる!」
走る、走る、走る! いろんな教室の生徒や教師が驚いてこちらを見ていたが、そんなこと構うもんか!
階段を二段飛ばしに駆け上がる。
電算室の扉に飛びついて開けようとする。が、鍵がかかっていて開かない。
「珊瑚ちゃん、鍵!」
ポケットの中に手を突っ込んでごそごそやった珊瑚ちゃんが泣きそうな顔になる。
「あ、え、えーっと、カバンの中や」
「ウチが取ってくる!」
瑠璃ちゃんが踵を返して走り出した。
くそっ、くそっ、くそっ、一分一秒が惜しいんだ。
「ごめん。貴明、ウチ、にぶいから」
「いいよ。珊瑚ちゃん。万が一があってもバックアップまでは戻るんだろ」
「それやねんけど、みっちゃんな、こっちきてから一度もバックアップとってへんねん」
「――な! だって一度は研究所まで戻ったし、サテライトシステムだってあるんだろ」
「みっちゃん、研究所戻ったときに実験中止や言われて、怒って飛び出してきてん。それからはサテライトシ
ステムも切ってしもてて」
なんてこった。瑠璃ちゃんはまだか。
イライラして、ガツガツと扉を蹴ってしまう。
「落ち着け、貴明。よく分からんけど、お前が焦ってちゃなんもよくはならんぜ」
雄二に肩を叩かれて気づいた。クラスの皆がいる。
「とにかく早く中に入れればいいんだよな?」
誰かが言う。
「――連帯責任だぜ」
がっしゃーーん!
と、言うや否や、一人の男子生徒が肘でガラスを叩き割った。そこから手を突っ込んで窓ガラスの錠を外
す。がらりと開いた窓からまた別の一人が電算室の中に飛び込んだ。そして扉を開ける。
「サンキュ!」
窓ガラス代くらいなら後からいくらでも請求してくれ。
電算室内に飛び込んで、一台を起動する。女子の一人が椅子を持ってきてくれて、そこにリオンさんを座ら
せる。がくりと力なくうなだれる頸に肝が冷える。
残りは15分あるかないか。
ケーブルをイヤーカバーに繋いで、改めてリオンさんがメイドロボであることを強く認識する。
HMX-17用の緊急用記憶削除プログラムを起動すると、画面上に[識別信号 HMX-17bミルファ]と表示さ
れた。
ああ、本当にクマ吉だったのか。こんな形で知ることになるとは思わなかった。こんな形で知りたいなんて
思わなかった。そしてお前の記憶を削らなくちゃならなくなるなんて思いもしなかった。
キーボードを前に俺は固まる。
打ち込んだ言葉に関するデータはまとめて消去される。
「珊瑚ちゃん、例のプログラムは――」
悲しげに横に首を振る。選択肢は、ない。
今ここで再起動できなければ、リオンさんとして過ごした2週間は、デリートキーでファイルが消えるごとく、
跡形もなく消え去ってしまう。かといって、2週間を守るためには何かを犠牲にしなければいけない。
「おい、なんだよ。記憶削除プログラム!?」
雄二が大声をあげる。止めてくれ。記憶をプログラムで消すだなんて、分かっちゃいるけど、お願いだ。言
葉にしないでくれ。
「どういうことだよ。貴明!」
「うるせぇ!」
肩に掛けられた手を払いのける。
「――あかんねん。記憶削らんと、りっちゃん、消えてなくなってまうねん」
ぽろぽろと珊瑚ちゃんの目から涙が零れ落ちる。
そうだ。リオンさんが本当はミルファだとかそんなことはどうでもいい。それが仮初めだとしたらなおのこと、
その記憶が消えてしまえば、リオンさんという存在がこの世から消えてしまうことを示している。
もう残り10分を切っただろう。
「なんやこれ!」
戻ってきた瑠璃ちゃんが割れた窓ガラスを見て大声をあげる。
みんなの視線がそちらに向いた。
もう手段は――ない。
そして俺がここに打ち込む権利がある言葉はひとつしかない。
震える手でキーボードを叩く。
――[河野貴明]――。
大きく根を張った記憶ほど、削除されたときに大きな空き容量を生み出すのならば、これほど効果的な言
葉は他にないはずだった。マウスを持つ手が震える。実行ボタンにカーソルを置くことすら困難なほどに。
クリックしなくちゃ、クリックを――。
「この! ばっかやろう!」
その手を捻りあげられた。瑠璃ちゃんに一瞬気を取られた雄二が気がついたのだ。
そしてそのまま床に引き倒される。
「やめろ、バカっ、早くしないとリオンさんが消えるんだぞ!」
「バカはお前だっ! おい、手伝ってくれ」
暴れまわってなんとか抜け出そうとするが、4人がかりで結局押さえつけられてしまう。
「どけよっ、コンチクショウ! どけよ、バカッ! リオンが、リオンがっ!」
「頭を冷やせっつってんだ! この大バカ野郎!!」
雄二の拳が叩きつけられる。頭がスパークする。涙が溢れてくる。悔しい、悔しい、悔しい!!
「委員ちょ!」
雄二が叫ぶと、委員長がすぱっとキーボードの前に座った。
「分かるな!」
「アイアイサー」
普段の見た目からは想像もできない速さで、委員長がキーボードを叩き、実行ボタンを押す。そして連続し
てもう一人分。
「俺のも頼む」
「私のもお願い」
ひとり、またひとり。クラスメイトの記憶がリオンさんから消えていく。なんで、なんで、なんでっ!
「俺のは残しといて」
「却下」
「うぃ、まどもあぜる」
ほんの数分で委員長は俺を除く全員分の名前を打ち終える。
「なんでっ!なんでなんでなんでだよ! 俺ひとりで十分だったはずだ!」
「自分の行動を自分で選ぶのはお前だけじゃない。そんなことも分からないのか、クソ大バカ野郎が。俺や
委員ちょやあいつらみんな、お前と同じ選択をしたんだ。リオンさんが大事なんだ。だったらどうするべき
だ!? 貴明、お前の記憶だけは消しちゃいけない。消しちゃいけないんだっ!」
「そぉや、貴明が全部責任を背負い込むことはあらへんよ。――多分もう十分や」
委員長が一切手を触れなかったマウスを珊瑚ちゃんがぱぱっと操作して再起動メニューを呼び出す。
「なんとか、間におうた」
かちっ。
[スリープモードでの再起動を完了しました]
画面上に表示されるエンドタイトル。
「お前らもみんな大バカだ――」
ゆっくりと手足の拘束が解かれても、俺はしばらく顔を上げられなかった。
「そうだぜ。自分よりバカが世の中にいないとでも思ってたか、バカ野郎」
雄二の手を借りて起き上がる。
「河野くん、どうぞ」
委員長から差し出されるハンカチ。ああ、そうか、俺泣いちゃってるのか。なさけねぇ。
遠慮なく借りて、頬をぬぐう。
そして、椅子に座ったままの休眠状態に入ったリオンさんの前に立つ。
「平和そうに寝やがって、お前が一番の大バカだ。なぁ、ミルファ」
初めてそう呼びかけた。
何のためにリオンとして俺の前に現れたのかは知らないけど、それでみんなに迷惑かけて、でもみんなに
愛されて、それで俺に好きにさせやがって。
頭に触れる。そっともう必要ないだろうイヤーカバーに刺さったケーブルを抜いた。
――ぶんっ。
突然休眠状態にあったはずのリオンさんの眼に光が戻った。
「河野貴明声紋確認、状況認識」
「状況――スリープモード時において河野貴明がHMX-17bを確認」
「認証――契約に基づきHMX-17bミルファの所有権を河野貴明に譲渡する」
「規約――1. 一生大事にすること」
「――――2. 1.が成立している間、HMX-17bミルファの維持に関する費用は、ミルファのデータの定期的な
回収を条件として来栖川エレクトロニクスが負担するものとする」
「5分以内のちゅ〜により、譲渡に同意したものと見なす」
機械的な音声が一気にまくしたてる。
いやいやいや、なにこれ? 費用とかそんなこと考えてらんない、というかちょっと待て、どこで声紋採られ
てたんだよ。つーか、これはそういう問題じゃねぇ。え? なに? これ、何が起きてるの? 誰か教えてくれ
ませんか? ねえ? 最後のなんなのよ?
救いを求めて見渡すに、クラスメイト一同+珊瑚ちゃん瑠璃ちゃん。
一同――興味津々。目が爛爛。
「残り4分」
ご丁寧にカウントダウン付きかよ! 誰だよ、こんなバカげた仕掛け考えた奴は。
「――ねぇ、奥さんするのかしら?」
「――まあ、奥さん、しますわよ」
「わああああああああああああああああああああ!!」
もう頭を抱えてわめくことしかできない。
パニックに陥ることの多かった2週間だが、これが最強だ。間違いなく最強だ。
「残り3分」
委員長
「そう…あの日は夕陽がきれいだった…。」
委員長は語る。
委員長
「委員の用事で下校時間ギリギリまで学校に残っていたんだ。」
まぁ…委員長として当然の事なんだがね
…と何気に付き足す辺りがムカついてくる。
俺、河野貴明は何故か近所のファーストフード店(通称ヤック)に目の前の人物、そう我がクラスの委員長に拉致され、延々と奴のヨタ話を聞かされている。
それも一時間以上…
委員長
「キミには真実を話しておこう…」
などという誘いに乗ってしまった自分のミスなのだが…。
奴曰く、骨折事件(?)の真相を誰かに打ち明けたいらしいのだが…何故俺なんだ?
俺、そんなに暇そうに見えるのか?
委員長
「…野、河野!僕の話を聞いてるのか!?」
貴明
「あっ…ああ。ちゃんと聞いてるって!」
いかんいかん…。意識が飛んでいたよ。
委員長
「…で、お前はどう思う?」
ぽん、と肩を叩かれた。振り返ると雄二のヤツが笑いを堪えるあまり、苦虫を噛み潰したような顔になって
いた。
「くくくっ、た、貴明さまよ、いい加減覚悟を決めな、ぷぷっ」
「河野くん、ファイトです」
委員長は両手で顔を覆っているようで、しっかり両目のところが開いている。
「残り2分」
「貴明、みっちゃん、すきすき〜や〜☆」
両手を挙げて喜ぶ珊瑚ちゃん。
一方、瑠璃ちゃんはにやぁと笑って見せて、
「良かったなあ。貴明。決まった人ができたんやからさんちゃんに手ぇ出したらコロス。さぁさっさとしぃ!」
ああ、そっか。リオンさんに協力的だったの、そういうことだったのね。というか最初から全部知ってたんだ
ね。
「残り1分」
くそっ、マジかよ。最悪だ。リオンさん、いや、今更クマ吉っていうのもアレだな。そう、ミルファ、ミルファと
の初めてのちゅ〜だぞ。初めてなんだぞ。心の準備なんてできちゃいねーし、しかもミルファ寝てるじゃん。
「残り30秒」
あー、分かった分かった分かった。俺の負けだ。完全敗北。無条件降伏だ。
「残り10秒」
今10秒くらい飛ばしたろーーーーーーーーーーーーーー!!
それが最後の後押しになった。もう体裁とか、どうちゅ〜しようかとか、そんなことが一切吹き飛んで、ただ
ただミルファの唇に飛びついた。
――ちゅ。
「――ちゅ〜を確認。HMX-17bの権利を河野貴明に正式に譲渡。決定。確認」
「――お買い上げありがとうございます。それでは良い一日を」
後はもうなんか大騒ぎで、良いのか悪いのか、そんなこととてもじゃないけど感じられない、そんな一日に
なった。いやそんなことを言ったらミルファに悪い。そうだ、今日は最高だ。ちょっとまた涙でそうだけど――。
ずっと ずっと 憧れている
奇跡が はじまる
I want to believe that a wish come true.
さんさん 雲の切れ間から あかるい 光うけて
新しい季節 この道からはじまる
日差しに誘われ 振り向いた瞬間
まぶしい笑顔 あなたを見つけた
hum こんなに近くにいても 渡せないものがあるの
空に ひとつ流れゆく星
青空が見せてくれた奇跡
きっと Heart to Heart 叶えてくれる
眼を閉じ 三回 願い事繰り返す
――epilogue――
翌日、珊瑚ちゃんに連れられて来栖川エレクトロニクスの研究所に案内されることになった。
どうにもミルファの譲渡にはいくらかの書類にサインをしないといけないらしい。
「安心してえーよ。長瀬のおっちゃん、ええ人やから」
居心地の悪い応接室でしばらく待たされる。そうして入ってきたのは人の良さそうな一人の男性だった。
「いやぁ、ごめんごめん。待たせちゃったね」
そう言って男性は名詞を差し出した。
来栖川電工 第七研究所開発主任 長瀬源五郎――と、書かれている。
「いやぁ、実を言うとね暴力行為があったもんだから結構心配していたんだよ」
「暴力行為?」
「うん。まあミルファがそっちにいった最初の日にだね。君が女の子らと一緒に食事をしてるのを見て、いき
なりぶちきれたわけだ。それで――」
長瀬さんが殴るような仕草をしてみせる。そういえば心当たりがある。突然聞こえてきた大きな音と、扉に
あった大きなへこみ。
「その場は取り繕ったみたいだが、君から見えないところに行った途端、爆発したらしい」
……あれ、か。直接殴られなくて本当に良かった。
「それはログがちゃんとあったからちゃんと学校に賠償すればいい話なんだが、ほら、二日目以降戻って
きてくれなかっただろ。しかも結構記憶がずたずただから、なにかあっても分からないから困っちゃってさ」
長瀬さんは一言断ってタバコに火をつけた。
「でも話を聞くに、暴れたのはその一回だけみたいだね。あの子も随分と大人になったもんだ」
「そうなんですか?」
「いやはや、二日目に初日のログを見て冷や汗をかいたよ。それでミルファに言ったんだ。これ以上の実験
継続は止めておこうと、ね。ははは、逃げられたよ。内側へのセキュリティも強化せんといかんな」
「で、結局どういうことだったんでしょうか?」
どうしても聞いておかなければならないことがひとつ。
何故クマ吉、ミルファは、リオンと自分を偽って現れなくてはいけなかったのか。
「ああ、それかい」
少し照れくさそうに長瀬さんは自分の鼻を掻いた。
「賭けだったんだよ」
「賭け?」
「ミルファがね、どうしても君専属のメイドロボになるって言って聞かなくてね。でもその気持ちをそんな風に
押し付けていいのか? って聞くと、君も絶対に自分のことを愛してくれると断言してくれたわけだ。まあそ
れが本当ならば、こうしようと。ミルファの環境テストを兼ねて君の学校、君のクラス、そして君の家庭にリオ
ンとしてお世話に行きなさい。自分を抑えられなければメイドロボ失格だ。だからミルファにはいくつもの制約
をつけた。それでその間に君がリオンの正体を見抜いたならば、好きにしたらいいってね」
――期間中は自分がHMX-17型であることを直接明かしてはならない。
――第三者によって明かされた場合も、条件に反するものとみなす。
――ミルファからの肉体的接触は、第一次接触までしか認めない。
――上記の条件で期間中に河野貴明が、ミルファをミルファであると見抜いた場合は、5分以内に契約を
済ませることによってHMX-17bミルファの所有権を河野貴明に譲渡するものとする。
――ただし契約は河野貴明の意思によって行われなくてはならない。
「君には迷惑をかけたと思っているよ」
「いえ、そんな、どちらかというと俺は全然気づけなくって」
「でも間に合った。そうだろ? 少年」
「それで、本当にいいんですか?」
重ねられた書類を前に改めて尋ねる。二度読み返しても、こちらに有利な条件としか思えない。
――HMX-17bミルファは正式に河野貴明が所有するものとなり、ミルファを大事にして、また月に一度は
研究所に戻ることを条件に、ミルファの維持にかかるあらゆる費用は来栖川エレクトロニクスが負担する。
その他細かい条項はあるものの、いきなり契約内容がひっくり返るようなことは一切書いてない。
「本当にいいもなにも、テストケースその2として大事に利用させてもらうよ」
長瀬さんはニヤリと笑って見せる。
「記憶容量の問題解決もまだ万全とは言えないし、そもそも物忘れするようなメイドロボを世間が必要として
いるかも市場調査してみんとなんともいえん。けどコイツには可能性がある。そうだろ」
「はい。本当に、そう思います」
「よし、それじゃ決定だ。ちゃっちゃと判を押してくれ。嫌だと言ってもあの子は押しかけていくだろうがね」
「それでミルファは?」
「結構ごっそり記憶削っちゃったからなぁ。本人なりの形で整理がつくまで休眠状態にしとくつもりだ。それで
もあと数日ってところだよ。単純な子だからね」
そう言って長瀬さんは3本目のタバコに火をつけた。
「なー、おっちゃん、ええ人やったやろ」
帰り道珊瑚ちゃんがそう言って笑う。
「そうだな」
そう返事して、その頭をくしゃりと撫でた。
一学期が終わる。
本当に慌しい4ヶ月間だった。
4月に珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんと出会った。
5月にイルファさんのことでいろんな衝突があった。
6月は比較的穏やかに過ぎたものの、それでも色んなことがあった。
7月にリオンさんとしてミルファがやってきた。
これからもこんな日々が続くんだろうか。
それともこれは人生の一節をもっとも鮮やかに彩った季節として思い出に変わっていくんだろうか。
体育館での詰まらない話を半分寝ながら聞き終えて、みんなで教室に戻る。以前にも増してみんなの仲
は良くなったように思う。それだけでもリオンさんという存在に感謝することができる。
教室の扉を開けると、とても懐かしい姿が視界に飛び込んできた。
「――リオン、さん?」
おおっと、どよめきがあがる。
しかしそのリオンさんは首を横に振った。
「私は河野貴明様のメイドロボ、HMX-17bミルファと申します」
一礼。
「ミルファ……」
「貴明様、貴明様ぁっ!」
走ってきたミルファが俺の首っ玉に抱きついてきた。それを強く抱き返す。
この温もり、帰ってきた。本当に帰ってきたんだ。
「――ねぇねぇ奥さん。またキスするんじゃないかしら?」
「――まぁまぁ、奥さん。きっとするわよ」
「しねぇよっ!」
けったいな女子どもに一喝して、ミルファを見ると眼を閉じて顔を突き出してきてる。
本当に勘弁してくれよ。
「だって初めては私、意識がないときだったじゃないですか」
ミルファは眼を閉じたまま言う。
ああ、くそっ、もう一度も二度も同じだろ。
――唇を重ねる。
どよめきと拍手。
「――河野さん、河野さん、今のご感想は?」
「――味をおっしゃってください。味を!」
「知るかーーーーー!!」
叫ぶと、ミルファは俺の胸から離れて、みんなの前に改まった。
「私は皆様にお礼とお詫びを申し上げなければなりません。皆様の尽力の賜物で私は大事なものを失わず
にすみました。それなのに私は皆様のことを覚えておりません。本当にありがとうございました。そして、本
当に申し訳ありません」
深々と頭を下げる。
「よーし、そうだな。それじゃミルファちゃんの歓迎会といきますか」
「おっしゃ、ボウリングいこうぜ。ボウリング」
「え〜またかよ」
「バッカだろ、おまえ。だから、ボウリングに行くんだよ」
夏の日差しは強くて、時々目を覆いたくなるほどだけど、しっかりとこの道を歩いていこう。
大事な人と手を繋いで、一緒に――。
どこまでも――。
エンディングテーマの歌詞が手元にないのでオープニング夏Ver.に。
自分で書いて泣いた。一番の大バカ野郎は俺自身か。
Side StoryでもShort Storyでもなく、きっちりした一本のシナリオとして書こうと序盤に決意して、そのスタイ
ルを貫かせて頂きました。伏線も意識的に張った分は回収できているはず。
このスレには相応しくないような長編となってしまいましたが、最後までお付き合いくださいまして本当にあ
りがとうございました。皆さんの応援がなければ最後まで書けなかったでしょう。心から感謝します。
そしてこんなストーリーを書かせてくれたミルファの存在にも感謝。
初期構想ではキミがリオンとしてやってきたのに、それに全然気づかない貴明にヤキモチやいて色々やら
かす話だったんだよ。と暴露。
では名無しに戻ります。またいつかストーリーの神が降って来る日まで。
追伸、某所で「居たい想い」という題名でこの話を再掲載していっておりますが、俺本人ですので見つけても
怒らないでやってください。1レスごと掲載すれば3ヶ月くらいは更新さぼれるぜー。
>>762 長編お疲れでした。ラストのミルファとの再会は感動したよ。
FDあったらこんな感じでミルファシナリオがあればいいね。
改めてホント、お疲れさんでした。
乙!
そして今までお疲れ様。
そして次回作もよろしく。
おもろかった!感動した!
そして更新のはやさにびっくりした!
なにはともあれおちかれ(・∀・)ノ
次の作品にも期待してるよーぃ
貴明
「どう…と言われても…」
ポリポリと頭をかく。
普段から虚言・狂言の目立つ奴だったが…今回の話ばかりは常軌を逸している。
内容はこうだ。
下校時に見た夕陽に感銘(?)をうけた委員長は遠回りをして家に帰ろうと正門からではなく裏門から帰る事にしたらしい。
委員長
「ふぅ…思った通りここだとよく見える」
そういって辿り着いたのは学校の裏手にあるボロボロの神社。
境内に腰を下ろし大自然の素晴らしさに身を委ねていたら神社から通学路へ続く階段から誰か登って来たらしい。
>>762 長編乙、耳コピでも良いならED歌詞挙げとく…
教室で騒ぐ友達の声が 今でも聞こえてくるような灰色の校舎
憧れの人や夢を語ったり 少女時代は空に描かれた一筋の飛行機雲
時は流れていく あの頃の私は今もいるのかな
懐かしいあの日々へ 戻りたい夢のような 思い出の場所へ
最近の私 愛想振りまいて 気遣うことばかりになって 馴染めないでいる
新しい町の生活の中で 追いかけていた夢さえ 消えそうでもう一度取り戻そう
時は流れていく 沢山の微笑み達 くれた人達に
ありがとういつまでも 生きている 夢のような思い出の場所で
始まりと終わり告げるチャイムが遠くで響くよ
時は止まらないね 幼さの抜け殻 静かに残して
ありがとう 忘れない 沢山の思い出達 また夢を見せて
i wish to have dreams with you again
間違ってたら指摘よろ。
後、誰か春夏さんd(ry
>>767 マジにサンクス
手元原稿はこちらに差し替えておきます。
昼休み、気がつくと雄二はこのみを連れて学食へと避難し、
屋上には俺と草壁さん、そしてタマ姉のみ取り残されていた。
「へー、この子が雄二が言ってた、タカ坊の幼馴染の草壁さんねえ」
いつもの何かを企んでる目で俺と草壁さんを見ていたタマ姉は挨拶もそこそこに自己紹介を始めた。
「私は向坂環、一応年齢的には先輩に当るけど
私もこの4月から転校してきたばかりだから、気軽に環って呼んでね」
ああ、そうか、そんなタマ姉の反応を見ながら俺は安堵の息をついた。
タマ姉、いつも暴走してるように見えて、他人の前では借りてきた猫みたいに大人しいからなあ……
正直、雄二がこのみを連れて学食に行った時は、後で覚えてろよと思ったがこの分だとそう変な事にならないだろう──
「あ、はじめまして、私は草壁優季、貴明さんとは運命で結ばれた仲です」
──という期待は儚くも我が愛しい人によって全てぶち破られた。
「タカ坊」
「ハ、ハイ」
思わず自分の声が上擦ってるのが自分でも判った
「どういう事か」
「ハイ」
「説明してもらえるわよね?」
にっこりと笑うタマ姉の顔は凄惨な程綺麗で──
「はいぃ」
逆らえる訳も無かった……
>>762 GJ!&長編乙!
楽しく読ませていただきました
しかし文章書くのはえぇ〜
かといっても、まさか時を止めただとか夜の学校であっていたなんて話しても信じてもらえそうに無かったので
草壁さんとは学校が変わった後もずっと文通をしていて、今回晴れて同じ学校に通えるようになったと
適当に話を作り上げてタマ姉には話しておいた。
タマ姉は疑う事も無く、ふーん、そうと言ったっきり黙って何かを考えていた。
そして、優しい顔になってタマ姉が呟いた。
「馬鹿ねえ、私がタカ坊の幸せを願ってないと思ってるの?」
そして、頭を撫でて来るタマ姉を振り解くと、思わず怒鳴ってしまった。
「ば、馬鹿、タマ姉、く、草壁さんも見ているんだから、
それに何度も言ってるけどもう高校生なんだからそ、そういう事やめてよね!」
振り解かれてきょとんとしていたタマ姉はその声を受けるとにまーっと人の悪い笑みを浮かべた。
あー、あの顔絶対何か企んでるよ……俺がそう思ったのも束の間、
「もう、タカ坊照れちゃって、可愛い〜〜」
お約束的に抱きしめられてしまった。
目で草壁さんに助けを求めると、草壁さんはにこにことただ笑っていた。
でも、心なしか口元が引きつっているのは気のせいだろうか……
そう思っていると、タマ姉は突然抱きしめる力を緩めてきて、
俺の肩を草壁さんの方へとぽんと軽く押した。
突然の出来事に脚がふらついて草壁さんの方によろけるように進んだ俺は
倒れこむように草壁さんを抱きしめる格好になってしまった。
気がつくと、突然の事にただ目をぱちくりとさせている草壁さんの顔が間近にあって
香水だろうか、若草の良い匂いが草壁さんからしていた。
お互い固まったままずっと抱き合っていると、
「はいはい、若い二人が獣欲の赴くままに愛し合うのは仕方ないけど、
ここは学校よー。そういうのはオトナの時間にやりなさい」
タマ姉が手を叩いてそんな言葉をかけてきた。
その言葉でスイッチが入ったのか、俺と草壁さんは顔を真っ赤にしながら飛び退るように離れた。
俺はいまだ顔の赤みが引かない状態で、恥ずかしさを隠すためにタマ姉に怒鳴った
「た、タマ姉、何するんだよ、いきなり!草壁さんも困ってるじゃないか!」
すると、俺の言葉を全く意に介さずタマ姉はあの意地の悪い笑みを浮かべながら
「あらー? 草壁さんにタカ坊を返してあげただけよね、ねえ?」
と草壁さんに話を振る。
「え、えと、その私はあの、貴明さんとは、その……しましたが
二人ともこんなのはまだ早いと……」
駄目だ……草壁さんオーバーヒートしちゃってる……しかも何気にタマ姉に聞かれるとやばい言葉発してるし……
俺は慌てて草壁さんの手を引いてとりあえずこの場を去る事にした。
「タマ姉!お昼ご馳走様!でも、二度とこんな事やめてよね、草壁さんも困ってるんだから!」
その言葉に、タマ姉は苦笑しながら
「はいはい、判ってるわよぉ」
と答えると、さっさと行きなさいと手をひらひらさせて追い払う仕草をしてきた。
「ああ、でも、草壁さん」
その言葉を受けて階段を下がってる途中、最後にタマ姉が冗談交じりに発した言葉が
「あんまり安心してると」
何か頭の片隅でやけに
「わるーい泥棒猫にタカ坊取られちゃうわよ」
ひっかっかった。
タカ坊と草壁さんを見送った後、屋上で私は唇をかみ締めただ立ち尽くしていた。
そうしているといつの間に屋上に来てたのか、雄二が珍しく私を気遣うように声をかけてきた。
「姉貴、ほんとにアレでよかったのかよ」
そんな弟を背に私は黙って空を見る。
空は私の感情を逆撫でするかの様に青く、広く、そして澄んでいた。
ため息を一つつき、目を閉じて雄二の方へ向き、そして微笑む。
「いい事、雄二、私はタカ坊と雄二とこのみのお姉さん。
それ以上でも、それ以下でも無いのよ、少なくとも今はね」
雄二は何か言いたげに口を開きかけたが途中で何かに気づいたのか黙った。
そして、数分の沈黙の後──
「ちょっと待て、姉貴!今はってなんだ、今はって」
私はその言葉ににっこり微笑むとここには居ないタカ坊、そして草壁さんに向かって宣言する。
「当たり前よ。向坂家家訓、勝負は完全に着くまで諦めるな、よ。
確かに今はあの草壁さんにタカ坊を取られちゃったけど……
最後に笑うのは、私よ」
後ろで溜息をつきつつ何かいいたげな雄二をアイアンクローで黙らせると、
私は空を一瞥しそして校舎へと入っていく。
やる事、やらなければいけない事は色々ある。
こんな所で油を売ってる余裕など挑戦者の自分には無いのだから──
壁さんの手をとって一緒に階段を駆け下りていく。
胸はまだ鼓動が早く、治まる気配が無かった。
草壁さん、柔らかくて──いい匂いだったな──
ぼうっとそんな事を考えていると、
突然草壁さんが、手を抓って来た。
「い、いたっ。何をするんだよ、草壁さん」
そういって草壁さんの方を見ると、草壁さんは顔をまだ赤らめたまま
つんと横を向いて、私怒ってるんですよとでも言わんばかりの雰囲気を醸し出していた。
「え、えっと、草壁さん?」
「……なんですか、貴明さん」
「もしかして……怒ってる?」
その言葉に草壁さんはこちらを振り向くと、凄くいい笑顔でこうのたまわれた
「いいえぇ、ちょっと貴明さんの手に対して抓りたいと思っただけですから」
「え、えっとごめん、草壁さん……そのタマ姉、悪い人じゃないんだけど」
すると、草壁さんはちょっと悲しそうな顔をして
「貴明さんは全然判ってられてません。
私が悲しいのは今まで貴明さんと、私との間に繋がりが無かったのに、
いきなりあんな風に、しかもあんな素敵な人と色んな思い出を持ってる事ですよ」
そんな草壁さんの言葉に俺は申し訳ないという気持ちで一杯になった。
そうだった、草壁さんは、ずっと俺の事を覚えて、俺との約束を覚えてあんな事までしてくれたのに──
775 :
767:05/01/23 15:12:31 ID:BsIl3xVx
スマン
7行目の
×沢山の微笑み達→○沢山の微笑み
に修正、なんで達を入れてんだorz
「だから」
悪戯っぽく笑うと、草壁さんはこちらに飛び込んできた。
反射的に草壁さんの体を支えると、
「今まで会えなかった年月分のダストノートが一杯になるまでまずは二人で思い出作りましょうね」
そう優しく耳にささやいて来た。
俺は耳まで真っ赤になってるのを自分でも判りながら、黙って草壁さんの体を抱きしめた。
ごめんね、草壁さん、これからは二人でもっと運命的な事をやっていこうね、と心の中で呟きながら。
「きゃっ、貴明さん、でも、学校の廊下で愛する二人が愛の抱擁……運命的です!」
>>762 お疲れ様でしたー
へたれSS書きの自分としてはそこまでキャラを動かせて筆が早いのは純粋に羨ましいorz
てか、俺の文章がスレ全体の足引っ張ってなかったらいいんだが……
まあ、順当に環を登場させて…というか、どうしてもいきなり打ち解ける環と優季ってのがおもいつかなかった…
>>777 優季さんかわ(・∀・)イイ!!
たま姉こわ(・∀・)イイ!!
おもろかったよー
タマ姉怖いヨー
って言うかおまいら割り込みすぎです
委員長
(むっ…一体誰だ?)
一人の時間を邪魔され少し気に障ったらしいが…
委員長
(これは…女性の声)
そう階段からは女性の…おそらく二人の女性の声。
しかも、何か言い争っているらしい。
委員長
(おおっ!修羅場か!?)
委員長は怖い物みたさでとっさに身を隠したらしいのだが…。
貴明
(お前は変態か!)
心の中で突っ込んでおくのは忘れない。
そして境内に現れたのは二人の女性、一人は髪の長い女性。
ぱっと見ておとなしそうな雰囲気が伝わってくる。属にいう『お嬢様』タイプと言うやつだ。
でもう一人の女性は…髪の短かく、部活中だったのかブルマー姿をしている。
真委員長のSSの方はどうしたんじゃろうか
>>777 草壁さん、イイ!うまくタマ姉とのvsイベントになってるなぁ。
他キャラと絡むと草壁さんっておもろいw
続きがあれば読みたいです。
>>777 GJ! 草壁さん可愛いよー。
(ゴメン割り込んでしもうた)
力作SSが増えて読み応え十分ですな
自分なんて1レス分が限界…
>>777 俺の望みどおりにタマ姉でキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
おもしろかったっすよー。どんどん書いて━━━━!!
そろそろ次スレを建てないと
スレの容量オーバーになるよ!
スレの上限値500KBだっけ?
これを超えると表示できなくなるよ!
そうか、テンプラとかはいらない?
委員長
(あの色…三年か?)
ブルマー少女のブルマーの色からそう判断する委員長。
委員長
(…にしても一体?)
二人は激しく言い争っている。
じょじょにヒートアップしていく二人。
詳細までは聞こえないが会話の節々に「先輩は…」とか「フジタさんは…」などの名前が出てくることから…
委員長
(ははぁーん…恐らくフジタって先輩をめぐる女の死闘…ってところか)
女同士のケンカはたちが悪いからなぁ…など考えつつ更に出歯ガメを続ける委員長。
委員長
(おっ!!)
業を煮やしたブルマー娘がお嬢様に詰め寄る!
身をこわばらせるお嬢様!
そして次の瞬間、突然の耳鳴り!
委員長
(!!!)
キィィィィンという音が鳴り響き…と同時に見えない『何か』により数メートル後方に吹き飛ばされるブルマー娘。
テンプレはキャラごとのSSまとめサイトの
リンク貼ればいいんじゃないかな
SSのまとめサイトってあったっけ?
>>762 素晴らしいペースで素晴らしい作品をありがとうございました。
お疲れ様でした。GJ!!
委員長
(いっ!?)
後方に吹き飛ばされるブルマー娘。しかし空中で器用に回転し無事着地…。
足が地面に着くと同時に怒声一発、猛ダッシュでお嬢様との距離を詰める。
が、しかしお嬢様はどこからか取り出した大量のテニスボールを謎の力で連続照射!
信じられない速さでブルマー娘に襲いかかるテニスボール…。しかし委員長ははまたも我が目を疑った!
ブルマー娘が高速で飛来するテニスボールを右足の蹴りのみで全て迎撃しているではないか!?
全てのボールを迎撃し終わったブルマー娘が間合いを詰め渾身のハイキックをお嬢様に叩き込む!
委員長
(ひぃぃっ!)
あの凄まじい蹴りを受けたら…。
目の前で繰り広げられるであろう大惨事を想像し目をつむる委員長。
しかし、ブルマー娘の蹴りはお嬢様のすぐ横の空間でピタリと止まっているではないか!
委員長
(寸止め?いやちがう!!)
恐らくお嬢様はその不思議な力でブルマー娘の蹴りを防いだのだっ!!
>>789 だいたい作者の人たちがサイトにうpしました
ってリンク貼ってるからそれを集めてテンプレにすれば見やすくていいと思うよ。
貴明
「…で何で委員長が怪我したんだ?二人を止めに入ったの?」
と尋ねる。
正直早く帰りたい。
話を切り上げなければ…。
委員長
「そう。僕は目の前でいがみあってる二人の女性を止めようとしたのさ!」
貴明
「ああ…それで?」
適当に相槌をうつ。
まだ続くのか!?
委員長
「しかし一歩足を踏み出した途端、テニスボールに足をとられて転んでしまってね…。しかも運悪く転んだ拍子に階段から落ちてしまって通学路までまっ逆さまさ。」
貴明
「……」
委員長
「僕としては二人を止めてあげたかったのだが…って河野!聞いてるか!!」
貴明
「委員長…殴っていいか?」
言うより早く、委員長のギブスめがけ拳を叩き込む!
ヤックに響く委員長の悲鳴を後に俺は店を出た。
完
>>794 乙。前作との絡みシリーズやね。
ただメモ帳なりにまとめてから一気に投下をオススメしたい。
…というわけでおっすおら雄二の人です。
瑠璃SSそっちのけで禁断の真委員長SSをうpしてみました。
あなたのファンです
サイト持ってないから書いた挙げられなくて正直スマンカッタ
誰か全部纏めて引き取って乗せてくれたら一番ありがたいんだが……
凄いスレが進んでいるので
白い微笑でも落とされてるのかと思った
んで次スレどうするよ?
テンプレがいるとしたら前スレ、関連スレとのリンクか。ちと作ってみる
って、しまた。ごめん。
一個だけ、h抜き忘れてた orz
ウホッ、GJ!
もう立てていいのかな?
810 :
368:05/01/23 20:26:20 ID:sdW7/GDK
もうちっと待ってからの方がいいと思いますよ〜
テンプレ案、もうチョットあるかもしれないですし
ラジャッ
812 :
368:05/01/23 20:41:22 ID:sdW7/GDK
いいとおもいまつ
>>812 それでそろそろヨロ。
新スレ立った直後に投下予定の人はお互いの割り込みに注意w
どうでもいいことだけど
こういう『容量は残り少ないけどレス数はまだ余裕のあるスレ』って
980越えみたいなのと同じカンジですぐ落ちるのかな?
どーでもいいことだが完全無欠なくらいスルーされているな、るーこ。
本編でわりと満足しちゃったからね>るーこ
むりろネタにも出てこないかもりんはどうなる。
かもりん、スレの最初のほうにあるよ
るーこは割と好きなんだが、どうにも書きにくい
あえて書くとしたら後日談だろうか
>>259のるーこの続きを今でも待っているのは俺だけでいい
しかしなんだかかんだでSSスレじゃメイドロボ大人気だな。
サブキャラ系スレでもブッチ切りの伸びだし。
そこでだ、そろそろよっちの大作が投下されるんじゃないかと俺は践んでるんだが?
いや、いよいよ郁乃アフターの登場では?
るーこはコンペスレにあるね 一応
なんかスレ2の方に既にSS上がってるぞ。
こっちまだ使い切ってないのに
>>827 後7KBでdat落ちしちゃうので、SSあげられないのですよ。
俺は郁乃アフター断念しました。
いやね?本編での登場期間があまりに短かったせいで、こいつに嫉妬させるってのがどういうことか分からんのですよ。
ちょっと気を抜くと愛佳についてある事ない事貴明に吹き込んでたときのようなかなり性格の悪いキャラになるし、
あんまツンデレさせて「お姉ちゃん大好き!」にすると瑠璃化するんですよ。それはそれでいいかもしれないけど
落ちるかな。
☆*****☆*****☆☆*****☆*****☆ч
あんまり早く容量いっぱいにすると落とされるかもしれない。
このスレは最小限のカキコのみで維持することを
おすすめする。
GJ
>832
THX
1919(イクイク)5454(ゴシゴシ)ジンギスカぁ〜んっ♪ あぁあん♪
たかくんすごいであります!!
5454(ゴシゴシ)ってあんたw
4545だと柔らかく優しい感じだが
5454だと力強く荒っぽい感じだな
840 :
836:05/01/26 21:59:44 ID:TJqV0rsU
1919年5月4日に起きた54運動のこと。
厨房時代の社会化のセンセが教えてくれた。
ちなみに社会のセンセの後輩数学のセンセは球体積の公式を
(4/3)πr3
みよちゃんのおっぱいれろれろれろ
と覚えると良いよと教えてくれた。忘れられない。
まだ書き込める?
あと5〜6k
4月の終わり、河野貴明と向坂環は恋人同士となった。
しかしそれは一つの物語の終わりではなく、むしろ始まりであった。
5月に入り修学旅行まであと少しという頃、早朝2人の姉弟が河野家を訪れた。
「ほら! タカ坊、早くたべて支度なさい。 時間ないわよ!」
よく通る澄んだ声で環がせかす。 制服にエプロン姿が眩しい。
「大丈夫だよ少し急げば、いままでもこの時間ぐらいで・・・いたたた!!」
頬をつねられて最後まで言葉がつげない、つねってる本人はにこやかに言う。
「いままではね、でもこれからはそうはいかないわよ!」
ここ数日、環は朝から河野家に通っている。 貴明の生活を改善するためと
意気込んでのことだ。
なんせ5時に起きてそれから10Km走る人だ、朝は強い。 その後、雄二を
起こし河野家に来るのだから貴明でなくても恐れ入る。
「お前はまだいいぜ、俺より30分余計に寝られるんだからな。6時に叩き
起こされる俺の身にもなれよ! とんだとばっちりだぜ・・・」
となりで食事している雄二がぼやく。 環が河野家に朝から通うようになり
食事を作る手間を省くためココに連れて来られたのだ。
貴明も以前より早く起きているのだが、環はそれからご丁寧に手の込んだ
朝食と弁当(昨晩にほとんど仕込みは終わっているが)を作るので結局
いつもと同じ時間になってしまうのだ。
3人での朝食はここ最近のお決まりとなっていた。
「あ〜あ、貴明に姉貴をあてがえば俺は開放されると思っていたのによ・・・
とんだ見当ちがいだぜ! 貴明! お前のせいだぞ」
「お前の仕込みが足らないからだ! とっとと姉貴を女に・・・あだだだ!!」
いわずもがなのアイアンクローが炸裂する。
「そ!そんなことアンタに関係ないでしょ!!」 顔を真っ赤にして環が叫ぶ。
「あだだだだだ! 割れる! マジ割れる〜!!」 いつも以上の圧力に雄二
が絶叫する。
「ははは・・・」 貴明がちからなく笑う。 雄二をようやくその豪腕から
開放した環もなにか言いたげに貴明をちらと見た後、黙ってしまった。
4月の終わり、互いに告白し幼馴染から恋人同士となった後も2人はまだ完全
に結ばれたわけではなかった。 そのような機会はいくらでも在ったし、また
環もそうなる事を望んでいるのはいくら貴明といえど気がついていた。
ただ貴明はまだその一線を越えることに対して踏み切れないでいた。 なんの
障害もないはずなのに。
「おはよう、タカ君、ユウ君も」 すぐ隣、柚原邸の前でこのみと合流する。
「おっす!ちびっこ」 「おはよう、このみ」挨拶をかえす雄二と貴明。
「おはようタマお姉ちゃん」 「・・・おはよう、このみ」
雄二と貴明とは別に挨拶するこのみ、暫しの沈黙ののちにそれを返す環。
二人の間にある微妙な空気。 貴明と環の関係を知った時、このみの受けた
衝撃は小さなものでは無く、こうして再び一緒に登校できるようになるの
には数日を要した。
環とこのみは一晩語り合ったという。 そのとき何を話したのか、貴明も雄二も
一生教えてもらえないだろう。
二人はそれから表面上はいつもどうりの関係に戻ったように見えるが、とき
おりギクシャクする時もある。 もっともそれは、貴明や雄二、春夏などの
ごく身近な人物にしか解りえない程度のものであった。
人はいつまでも同じままではいられない、しかし少なくともこの時の4人は
幼いときと変わらないように見えた。
845 :
名無しさんだよもん:05/01/27 20:45:42 ID:P1nlp3K5
>843-844
イイ!!
続き待ってます
(・∀・)イイ!!
続き期待してます。
4時限目の授業が終わり、昼休みとなった。 学食に行く者、弁当を広げる者
みな其々であった。 環は弁当をもっていつもの屋上に向かおうとしていた。
「お〜いタマちゃん、彼氏といつものランチタイムですかな?」
クラスメートの少女が呼び止める、環は慌てるふうもなくさらりと答えた。
「最愛の妹と弟2人よ」 「2人の弟君の内の一人が彼氏なんでしょ?」
こんどはさらりというわけにはいかなかった。 「・・・うん、最近ね」
「まあ、いつもあの2人と一緒にいるタマちゃんに告白しようなんて奴はいない
もんね」 「え?」環はちょっと理解しかねた。
「解んない?実の弟君もかっこいいし、貴明君はかわいいし今彼氏なんでしょ?」
「ちょっとまった!雄二は知らないのにタカ坊の名前がでてくるのは何故!?」
たしかにあの2人はもう少しおバカをなんとかすれば女の子にキャーキャー
言われても不思議なことはないが、関係の無い3年生から突然その名がでてくる
のは看過できない。「あら?知らないの、以前から貴明君、上級生のお姉さま方に
結構人気だったんだよ」 「そこらへん、詳しく」 3匹の雛鳥が腹をすかせる
だろうが、今はこっちの方が重要だ。
「詳しくも何も彼、年上殺しだよ。 タマちゃんがいい例でしょ?」
反論のしようが無い、昔から環自身タカ坊がかわいくてどうしようもないのだから。
「おせえよ!姉貴 突然生理でもはじまったのかよ。 こっちは待ちくたび・・」
雄二を得意のアイアンクローで黙らせ、環はこのみと貴明に謝った。
「ごめんなさい、ちょっと用事ができちゃって。 おなかすいた?」
「いや平気だよ」 「うん大丈夫」 「あだだだだだ! いい加減・・離せ・・」
雛鳥たちは三者三様に返事する。
「それじゃ、始めましょうか」 シートの上に色とりどりのお弁当を広げていく。
「ほんといつもすごいね・・タマお姉ちゃんのお弁当」
自分の弁当と見比べながらこのみが言う。
「そんなこと無いわよ、この位このみだって・・・あら?」
環はこのみの弁当箱に目をとめる。