由真かよっちで頼みます
よっちはちゃると絡ませて卒業式後のネタで書いてみようかな…早ければ明日の昼間にはうpできるかも
おまいがツンデレ系だけど実は根は優しい無口な人だったら同姓だろうと異性だろうと構わず結婚してやってもいい
>>330 もし見事書き上げたら俺の初めてをやろう。
といっても耳に指突っ込む初めてだが。
鼓膜破けるぞ
>>333 (*´д`*)ハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
ちょっとスレ汚しに来た
「で・・・出来た・・・」
朝の5時から始めて3時間、ようやくできたお弁当。
見た目はあんまり良くなくても、味の方はちゃんとしてる!・・・はず。
(やっぱり恋人同士なんだし・・・)
きっかけは昨日の放課後のこと、一緒に帰ろうと思ってあいつのクラスに行ったんだけど
・・・いない。
「あれ、由真〜?どうしたの〜?」
教室を見渡していたら、後ろから声がした。愛佳だ。
「愛佳、あのさ、たかあきは?」
「河野くんなら今日掃除当番だったと思うよ〜。」
う〜ん、掃除行っちゃったのか・・・。
「うふ」
「・・・なに?」
愛佳が不意にほくそ笑む・・・壊れた?
「仲直り、したみたいだね〜」
「まぁ・・・ね」
「もう付き合ってるの?」
「ぶっ!つつつ、つきあってる!?」
そういえば告白もしたし、き・・・キスもしたし・・・付き合ってるんだよね、あたし達・・・。
「・・・うん」
でも今のあたし達って、恋人らしいことしてるのかな?いつもとほとんど変わらないような・・・
「・・・ねぇ愛佳?恋人同士だとどんなことするのかな?」
「え、ええ、わ、私に聞かれても〜〜〜」
二人して考え込む。抱きしめあう?キス?どっちもしちゃったし、あとは・・・せ、せ、s
「お弁当とか作るのってどうかな?」
「うえあああ、あ、ああ、お弁当ね、うん、なるほどね〜・・・」
「どうかしたの?」
「なんでもない!なんでもない!」
「でもあたし、弁当なんて作ったことないよ?」
そもそも食事なんて、朝夕はメイドロボが作ってくれるし、昼は学食で食べる。
もちろん自分で食事を作った事なんて無い。
「あ、そういえばこの前、新しい料理の本買ったんだったぁ〜」
と言って愛佳は自分のかばんを開けて本を探し出す。なんで持ってきているのかは聞かないでおこう。
「は〜い、じゃあこれ貸してあげる〜」
「あ、ありがとう愛佳〜。あれ?でも表紙が「春のお菓子特集」なんだけど、大丈夫?」
「え?ああ〜、だいじょうぶだよぉ〜、お菓子特集はおまけみたいなものだからぁ〜。うん、ほんとよ〜」
「そうなんだ、それじゃ悪いけどこれ、ちょっと借りるね」
「うんうん、頑張ってね〜」
よ〜し、それじゃちょっと頑張ってみようかな。
「『あ〜ん』も忘れちゃだめだよぉ〜」
「そんなことまでするの!?」
「あ〜んは基本よ〜」
「・・・頑張ってみるわ」
掃除当番なんてついてないよな〜・・・、おかげで由真のとこに行くの遅れちまった。
由真怒ってないかなぁ・・・。
な〜んて思いつつ適当に掃除を終え、由真のクラスを覗く。
ありゃ、いないや・・・。先に帰ったのかな。
とりあえず教室にもどるかな。
しぶしぶ歩き出す。
「ふわぁ!」
っと、危うく人にぶつかりそうになった。相手は小牧だった。
「あ、ごめん」
「い、いえ、こちらこそすみませんっ」
ペコペコ頭を下げる小牧。
「あ、そうだ。由真知らない?」
「由真ですかぁ〜?あ・・・す、すみませんすみませんっ」
「え?何?どうしたの?」
いきなり謝りだした。
「え〜〜っとぉ、さっきまでいたんですよ〜。
でも帰っちゃったっていうか、帰しちゃったっていうか・・・とにかくごめんなさいっ」
「・・・あのさ、由真怒ってた?」
「怒る?ああ〜、心配しなくても怒ってませんよ〜、というより・・・」
「というより?」
「あっ!ここから先は秘密ですっ」
まぁ、由真が怒ってないのならいいか。
「そっか、ありがと。それじゃ、また」
「うん、ほんとにごめんなさい〜」
さ〜て、そろそろ学校行かなきゃ。時間・・・
やっばーーーーーーーーー!!
作るのに夢中で気づかなかった!あ〜、これじゃ朝にはたかあきに言えないなぁ〜・・・
はぁ〜・・・ってこのままだったら遅刻しちゃうって!
「おーい由真ー、遅れるぞ」
「お、おじいちゃん!いいところにっ!車出して!」
「ぬ?お、おお、構わんが・・・」
「ほれ、ついたぞ由真」
「ありがと、おじいちゃん」
はぁ〜、おじいちゃんのおかげで遅刻は免れたみたい。
たかあきには休み時間の時にでも言おう。
きーんこーんかーんこーん・・・
一時間目の終わりのチャイムだ。よし、たかあきのところに行こう・・・!
呼吸を整え、たかあきのクラスに向かう。
それにしてもなんて言えばいいんだろう?あんなに人が大勢いる中で
『たかあき、お弁当作ってきたから一緒に食べよ』
なんて言えるわけないし。恥ずかしいじゃん!
う〜〜〜〜〜ん・・・
「おはよ〜、ゆま〜」
「わわっ!って愛佳か、おはよ〜・・・」
「お弁当、ちゃんと出来た〜?」
「う〜ん、一応ね・・・。見た目は微妙なんだけど・・・」
微妙というか、ちょっとヤバイ気もするけど。
「大丈夫だよぉ、由真が愛を込めて作ったんだから」
「あ、あ、あい!?あいってそんな・・・」
「はいはい、照れない照れないの〜」
うふふ、と愛佳が笑う。どことな〜くからかわれてる気がしないでもない。
「それじゃ〜、呼んでくるね〜」
そう言うと、愛佳は教室に入って行った。変に意識したせいか教室には入りづらかったので
愛佳が呼んで来てくれたのは助かった。
「おはよ、由真」
すぐにたかあきはやってきた。
「お、おはよ・・・」
「昨日何か用事でもあったりした?」
「え、なんで!?」
たかあきひょっとして、弁当のこと知ってる!?
「いや、昨日先に帰っただろ?何かあるのかな〜って」
「あ・・・」
弁当のことで頭がいっぱいで、最初の目的を忘れてた。
「ごめん・・・」
「いや、俺の方こそ掃除当番だってこと言うの忘れてごめんな。今度からはちゃんと言うよ」
「・・・うん」
「ゆ〜ま〜、あれ言わなきゃ」
間延びした愛佳の声でようやく気づいた。そう、昼食を誘いに来たんだ。なんのためにここに来たんだか。
「あのさ、あんた今日のお昼って学食でしょ?」
「ああ、そだけど。なんで?」
「その・・・学食行く前に、屋上に来てくれない・・・?」
「ん〜、いいよ。今日のカツサンドは諦めなきゃならんが、由真の頼みだしな」
「う、うん、それじゃ、昼休みね」
返事が微妙に気に入らないけど、そこは置いとこう。
あっという間に昼休み。午前中の授業はほとんど耳に入らなかった。
眠かったりもしたけど・・・
よし、屋上に行こっと
晴れ渡る空、心地よい風、ポカポカの陽気。
まぶしい・・・
暖かな日光をあびて、あたしはとっさに目を覆った。
とりあえず場所を取っとこうかな。
いつものベンチに座り、一息つく。
たかあき・・・まだかな・・・、なんだか眠っちゃいそう・・・。
・
・
・
・・・ん、あれ?寝ちゃってたのか・・・
意識がはっきりしてくると、なんだか太ももの辺りに変な感触が。
「え、あ!たかあき!?」
あたしの太ももを枕にして、たかあきは眠っていた。
「・・・ん〜。あ、由真?起きたのか?」
「え、何でたかあきが?っていつからいたの!?」
「ちょっと前から。来たら由真寝てるしさ」
「そ、そう・・・とりあえず起きてよっ!」
しぶしぶたかあきは頭をあげる。あ〜恥ずかしかった。
「それで、何か用?」
「あのさ・・・、弁当、作ってきたの・・・」
「え?」
え?とか言うなー、と心の中で叫びつつ弁当をとりだす。
「その・・・見た目は悪いんだけど、頑張って作ったから・・・」
ふたを取って差し出す。恥ずかしくて顔を上げられない・・・。
見た目が悪いから嫌な顔してるかなぁ・・・と思っていると
「由真」
名前を呼ばれ、恐る恐る顔を上げると
たかあきは笑っていた。
「ありがと、すっごくうれしい」
う〜・・・、そんなこと真面目に言わないでよ〜・・・
顔をそむける。やばい、たぶんあたしの顔すっごく赤くなってる・・・
でも、なんかうれしいかも、こういうの・・・
「由真〜、はしは?」
「あ、ちょっと待って・・・」
おはしおはし〜っと。あ・・・
『あ〜ん』も忘れちゃだめだよぉ〜
忘れてた・・・。むぅ〜、ここまで来たんだから・・・
「たかあき」
「ん?」
呼ぶと同時に弁当を奪う。そして・・・
「あ〜ん」
「・・・あ?」
「あ〜んして」
「へ?」
へ?じゃない!あ〜んだってばっ!
「いいからあ〜んしろ!」
「まじで!?」
「まじっ!」
「自分で食べちゃだめなのか・・・?」
「だめなの!」
むぅ〜〜〜ここまでしてるんだから早くあ〜んしなさいよこのばかあき!
「はやくっ、あ〜んしろ!」
「あ、あ〜ん・・・」
観念したのか、たかあきは口を開けた。そしてそこに卵焼きをひとつ放り込む。
「ど、どう・・・?」
「ん・・・おいひい」
「そ、そう?」
はぁ〜、よかった〜。安堵し、ため息が出る。
「そういや、由真の分は?」
「え?あ・・・」
たかあきの分のことばかり考えて、自分の分を忘れてた・・・
「一人分しか作ってこなかったんだろ?」
「そ、そんなことないわよ!」
「そう?」
嘘。後で購買行けばいいか・・・。
「ほれ、あーん」
不意にさっきのあたしの動作をするたかあき。
「え?」
「おかえし」
「そんな恥ずかしいことでき・・・」
「さっきしたじゃん。それに、どうせ無いんだろ?ほれ、あーんしろって」
くそ〜、たかあきめ〜・・・
しぶしぶ口を開ける。と同時に口の中に広がる卵の味。だが・・・
「なにこれ?あま〜〜〜い!」
「何って、由真が作ったんだろ。甘い卵焼き」
「あたしは塩をいれ・・・」
「あ・・・、もしかして砂糖と塩を間違えたとか?」
「そ、そそ、そんなこと、あるはずないじゃない!ちゃんと砂糖を入れてつくったのよ!」
「ふ〜ん。ま、俺は甘い方が好きなんだけどな」
危うく失敗したのを暴露しそうだった。危ない危ない。
「ふぅ〜、ごちそうさま」
「ん、おそまつさま」
「だけど、ちょっと物足りないよな」
「しょうがないでしょ!たかあきのことしか考えてなかったんだから・・・」
「え?」
「あ・・・」
あああ〜〜〜なに言ってるんだろあたし・・・
「んふ〜、絶景かな絶景かなぁ〜」
「ま、愛佳!」
「小牧!」
いつのまにか愛佳があたしたちの前に立っていた。
「いえいえ、偶然通りかかっただけですから〜、ほんとですよ〜。あ、お気になさらず〜」
どこに屋上に偶然通りかかる人がいるのよっ!
「じゃあ偶然ついでに、はい。どうぞ〜」
と言って渡してきたのは購買のパンだ。
「え、これ・・・」
「頑張った由真へのご褒美。二人で分けて食べてね」
「あ、ありがとう愛佳・・・」
「ありがとな、小牧」
愛佳、あたしが一人分しか持ってきてないこと、気づいてたのか・・・
ありがと、愛佳。
「それじゃ、ここからはお二人でねぇ〜」
「いつからいたのよっ!!!」
「お後よろしくぅ〜」
笑いながら愛佳は去っていった。
いじょです。ってか長っ(゚Д゚;)
>>337-348 乙〜
由真可愛いよ由真。ツンデレいいよツンデレ
って言うか、危うくかち合うところだった。更新確認してよかったよ。
ちゃるSS書いたはいいけど、こんだけボリュームある文章のあとだと、
1レス半しかないショートな上に内容のないSS貼るのは気が引ける…
いいんちょいい仕事しすぎwいいねえ
いいんちょってSSでは大活躍のキャラっぽいなぁ
本編でもなかなかの評価だし人気が出るわな
>>350 いますぐ貼るか俺に初めてを捧げるか選べ。
「っく、えぐっ…」
隣ではよっちが泣いている。
卒業式の後、このみと別れてからずっとこの調子だ。
が、そのとこは特に不快ではない。
自分の感情をストレートに表に出せている事はむしろ少しうらやましくもある。
昔からずっと一緒にいるのだ。よっちの事は隅々まで知っているつもりだ。
よっちが実は涙脆い事も、分かっている事だった。
ただ、いつもは太陽のように明るいよっちが泣いていると、やはり何か調子が狂う。
「よっち、もう泣くな」
「うえっ…うっ…ひくっ…」
「別に、このみと一生会えなくなるわけじゃない。同じ学校には通えなくても、このみとはずっと友達」
「うくっ…うっ、う、ん」
ちーん
私の差し出したちり紙で盛大な音を立てて鼻をかむ。
「ん…ぐしゅっ……ごめんね」
「ううん。別に気にしてない」
「ありがと。…でも、このみには悪かったよね…。このみ、ずっと泣かないで我慢してたのにあたしが先に泣いちゃってさ…」
また泣きそうになる
「そんな事ない。このみはきっと嬉しかったと思う」
「………」
「このみにも、よっちの気持ちはちゃんと伝わってる」
「………うん」
よっちはこのみと別れるのが、会えなくなるのが悲しくて泣いていた。
自分の事を大切に想ってくれている人の気持ちに、このみが気づかないはずがない。
空を見上げる。夕方の空の燃えるような茜色に視界が染められる。
このみも今、この空を見ているのだろうか。
まだ、我慢しているのだろうか。
「へへへ。そうだよね。このみならそう考えるよね。あんた、このみの事よく分かってる」
「当然。このみの一番の友だから」
「な、な、なにを〜!このみの親友ナンバーワンはあたしだぞ〜!」
よっちの顔にようやく明るさが戻る。
よっちは明るくなくちゃいけない。
自分の口数が少ない分、よっちには騒いでいて欲しいのだ。
それが昔からの自分とよっちの関係。
それはこれからも続いてゆく二人の関係。
「このみ、今ごろどうしてるかなぁ?センパイに甘えちゃってるかなぁ」
そうだ、このみには河野先輩もいる。
あの人の前では、このみは我慢なんてする必要ないのだろう。
「たぶん。このみ、私たちの前ではずっと我慢してたから」
「親友のあたし達より気を許されてるなんて、センパイには妬けちゃうな〜」
結局、私たち二人はあの人ほどこのみの近くにはいなかったのかもしれない。
中学校三年間ずっと一緒にいたけど、生まれた頃からの幼馴染には敵わないのかもしれない。
このみが寺女ではなく、先輩の学校へ行くことに決めたのもその表れに違いない。
よっちもそれが分かっているのだろう。言葉の端から悔しそうな色が覗いて見えた。
それでも、よっちは笑っている。
その姿はどこか悲しげに見えた。
だから
「安心して」
「んん〜?何をよぉ?」
この言葉は自分の願い。そして、きっとよっちのものでもある願い。
「私はこのみの一番の友だけど、よっちの一番の友でもあるから。」
これまでも、これからも。ずっと、
「ずっと、一緒」
というわけで糞ショートなSS終了です
実は紙に書いてた段階では4〜5レス分あったんだけど、
確認として東鳩2やったら
「やべぇよ。俺が書いたのちゃるじゃねぇ」
って状況に陥り、必要最低限の台詞以外削ったらこういう結果と相成りました。
すれ汚しスマソ
イイジャマイカ!
独り言のとことかうまい
>>335氏には高校生になった二人のSSをキボンしてみる
>>357 よくやった、約束通り俺の初めてをあげよう。
いつからだろう、あんたのことが気になりだしたのは。
最初はぶつかったり、あんたのせいで遅刻したりして
じゃまな奴としか思ってなかったのに・・・
今でも会うたびドキドキする。あたしは照れ屋だから
つい悪口言ったり、ぶつかっていったり、いたずらしちゃうけど
ホントは好きなんだよ・・・
でも、最近愛佳と仲いいよね・・・
あたしの友達の愛佳、引っ込み思案でおとなしい愛佳。
最初は、あんたがおせっかい焼いてるだけだと思ってた。
でも、このごろのあんたは放課後になるといつもどこかいっちゃうよね。
知ってるんだよ?
あんたは愛佳のところに行ってる事、あんたと愛佳が二人っきりでいること。
それに、あんたが愛佳のことを好きなことも・・・
わかってるよ、私みたいな女のコじゃだめなんだよね。
でもあんたの前だけなんだから、あんな態度をとっちゃうの。
いつもはおとなしくて、口数の少ない女のコ。
あたしも愛佳みたいにおとなしかったら好きになってくれるの?
愛佳みたいに真面目になったら好きになってくれるの?
どうして、あたしじゃだめなの?
だから今日も、あんたを困らせるよ
あんたが愛佳と別れる、その日まで・・・
どうして由真を選んだの?
わたしじゃだめだったの?
由真はただぶつかってきただけじゃない。
何も努力してないじゃない。
あなたの為にお茶を選んだり、何度も失敗したけど頑張ってお菓子も美味しく焼いたのに。
お手伝いさせたのがいけなかったの?
でもあなた来てくれたじゃない。
この小さな隠れ家になんどもなんどもなんども。
優しくするから、その気になっちゃったんだよ。
わたしにそんな資格がないのは分かってる。
あなたが思ってるわたしの親切も、ほんとは妹のためなだけ。
でも、分かってても好きなものは好き。
止められないよ・・・
だからわたしはあなたを困らせるよ
あなたが由真と結ばれた後、わたしが引き裂いてあげるよ
だから今はあなたと由真のこと、応援するよ
別れの痛みを大きくするために、ね
わたしも我慢するから、あなたも頑張ってね
あなたが幸せになるの、待ってるよ
分かってるさ・・・
好きなだけ叩いてくれよ・・・
2連発スマンかったよ・・・
∩( ・ω・)∩るー
これはこれで好きかもしれん
血を見るような物じゃなければ読んでみたいな
らんらん∩( ・ω・)∩るー
独り言とか状況解説とかの文章が書けねぇぇぇぇ
他の人のとか小説とか読んでも自分で書こうとすると書けねぇぇぇぇ
ダレカアドバイスクデ
感想くれた方々ありがたう〜
>>367 書けないとはいってもどれくらい書けないのかが気になるんだが
ご足労申し訳ないのだが336から読んで下され
これだけ書ければ十分だと思いますよ。
自分もたいしたレベルじゃないんで言えたたちではないですが
解説文や情景って言うのは必要最低限の量さえあればなんの問題もないと思うんですが。
ついでに自分もSSを書いたのですがつまらないんでうpしたほうがいいか聞いてみます。
基本的に2ちゃんは携帯ユーザーな俺は携帯でSSを作っている…俺だけだろうか?
いや、暇な時とか執筆できて良いんだよホント。
>>337-348 乙〜。初々しくてほのぼのしますた。個人的に愛佳の出番が多くて嬉しかった。
>>370 恐れるな!皆SSが見たくてここに来ているんだ!
…俺はネタバレ怖くて愛佳と由真のしか読めんが…
なるほど〜、参考になりまする
ってことで参考にするんで是非にSSうpきぼん
「おっす。おはよう、このみ」
「あ、タカ君。おはよ〜」
こうしてこのみと朝に挨拶をするのは毎日の日課のようなもの。
ただ、今日は少し違っている。
「うわぁ。タカ君、かっこいいね」
「そ、そうか?」
「うん、いかにも高校生ぽいっていう感じが出ているでありますよ、隊長」
高校への最初の登校日。
おろしたての新しい制服に包まれるとつい一ヶ月前の自分が自分じゃない気もする。
(高校生か・・・)
高校生になったら今まで以上に女の子とのいろんな関係も増えるんだろうな。
「はぁ・・・」
「どうしたの、タカ君。登校初日から何か問題でもあるの?」
「あ、いや、なんでもない」
しまった、ついため息が漏れちまった。
こんなことじゃいけないな。
何事もポジティブにいかないとな。
カァーカァ―。
ぴちゃ。
ん?
今・・・目の前になんか落ちてきたよな。
ゆっくりと足元へと視線を落とす。
「タカ君、すっごいラッキーだね」
(・・・や、やっぱりポジティブになれないかも)
「いよぅ!」
「あ、ユウ君。おはよ〜」
「おはよう。やけに機嫌がいいな」
なんとなく予想はついているが。
「あたりまえじゃないか。今日から華の高校生活だぞ。人生で最高の期間だぞ。そんな期間にすることは決まってるだろ」
「なんだなんだ、ついに勉強にでも目覚めたのか」
ま、そんなこと地球が逆回転することよりもずっと確率が低いだろうが。
「かーーーっ、お前は華の三年間を勉強に費やすのか?!そんな奴は将来いい大人になれないぞ」
目の前で力説する雄二。
むしろお前のような奴の方がいい大人になれない気がするが。
「よし、ならばお前に聞く。高校三年間ですることは何だ!」
「・・・・・・・・・」
お前が聞きたいことはよ〜くわかってるが・・・言えるか!そんなこと。
「やっぱり、お前は高校生になっても坊やだなぁ」
「うるせぃ。どうせこの三年間で彼女を作る、とでもいいたいんだろ」
「ふっふっふっ、甘いな。彼女を作るだけで飽き足りると思うか?俺が本当にしたいのは、うごっ」
そこで慌てて雄二の口をふさぐ。
「はい、そこまで。このみがいることを忘れるな」
「うっ、あ、ああ。そうだったな」
「え?なになに?」
さすがに女の子だし、お前にはまだピンクすぎるさ・・・。
「それじゃ、ここでな」
「うん、二人とも頑張ってね」
「おーう」
元気に中学校へと走っていくこのみと別れると俺たちは学校への坂道を登り始めた。
「しかし、本当に俺たちも高校生になったんだな。なんつーか、実感がないな」
「そうだなぁ。制服が変わったときはちょっと実感があった気がしたが、
朝もこのみと一緒に登校してるし、たいした中学のときも変わんないな」
おまえのバカっぷりも変わらないしな、と言いかけたがなんとか抑えた。
「なぁ。おまえ、三年間で本当にどうするよ」
さっきと同じ質問を繰り返してくる。
今度はさっきと違って真剣な表情だ。
「そう・・・だな」
正直高校に来たからってなにをするなんてきまっちゃいない。
ほとんどの高校生はそんなもんだろうがな。
「彼女とかほしくないのか?」
彼女・・・か。
「そりゃ、できればほしいけど・・・」
この苦手意識があるんじゃなぁ。
「そうか」
雄二はにやっと笑った。
また何か冷やかされるのかと思ったがそれ以降そのことについて何も言ってくることはなかった。
一体なんだったんだ?
「ここが俺たちの通う学園なんだな」
「ああ、これから三年間お世話になる予定の学園だな」
「よーし。まずは入学式が終わったらクラスの女の子に―――」
雄二はもう新しいところですることが決まっている。
だけどしょうもないことかもしれないが決まってない俺なんかよりはまだ立派だ。
(彼女・・・か)
「おーい、貴明。何してるんだよ。はやくいこうぜ」
・・・ま、何も考えても始まらないか。
「おう」
これから三年間、何が起こるかはわからない。
だけど、俺にもその三年間の中で何か目標が作れたらいいんだがな。
一生、背負っていけるような大きな大きな目標が。
378 :
368:05/01/18 20:18:37 ID:M0kUVr4V
以上です。
ラブやエロがなくてスレ汚しにしかならないような文章でスマソ
いいんじゃないかな?いいんじゃないかな?
>>368 なんかほのぼのした感じが出せててGJと思うですよ。
どこかしらエロを入れないと何も書けない自分には真似できないであります。
いいのぉ、予感めいた終わり方とかカコイイ
で、よっちとのピンクピンクでまっピンクなフラグは第何話で立つんですか?
正直あの二人でエロは想像できねえ・・・
「ひいっ」
「何をしてるの。散歩に行くからさっさと付いてきなさい」
図書委員長は戸惑う愛佳のことなど気にも留めずに教室の扉を開けて廊下に出た。
「ほらほら、何をもじもじしてるの?ちゃんと付いてきてくれないと散歩はいつまで
たっても終わらないよ」
裸の体を隠すようにして愛佳は廊下にペタンと座り込んでいた。委員長がリードを
引っ張って促しても恥ずかしがって動こうとしない。
「う、うう…だ、だって、先輩が…(こんなことまでさせられるなんてひどい…誰か
に見られたら、私、恥ずかしくなって死んじゃいそう)」
「変だね?犬が言葉しゃべるなんて前代未聞だよ。犬ならワンワンとかクンクンとか
しか言わないのに」
委員長は首を傾げた。言葉だけ聞けばただ疑問を発したに過ぎないが、声のトーン
と眼光には犬なら犬らしくしていろという響きがこもっていた。
「う、うう…ク、クゥゥン」
愛佳は悲しみの涙を流して、許しを乞うように鳴いてみせた。それで少しでも手心
を加えてもらえると思ったから。しかしそれは却って逆効果であった。
「困った犬だね君は。犬はちゃんと散歩しないと土地勘が狂って迷子になったら帰っ
て来れないんだよ。あんまり僕を困らせるなら、戻って…」
「わ、わわ、ワンッ、ワンワンッ」
愛佳は「それだけは許してください」という思いを込めて困ったように鳴いた。ど
うやらその意図自体は分かってもらえたようで、
「なんだ、本当のところは散歩したかったんじゃないか。そんなに改まって嬉しそう
に鳴いて。それじゃ行くよ」
リードを引っ張ってゆっくりと廊下を歩く委員長。愛佳は引っ張られるままに後に
ついて四つんばいになって廊下を歩いた。
「(お願い、今は誰も来ないで…)」
愛佳はただそれだけを願って、掌と足に廊下の床の冷んやりした硬い感触を感じな
がら廊下を歩いていた。時刻はもうそろそろ下校放送がかかろうかという頃で、既に
全員が勉強のため帰ってしまって、クラブ活動で使われることもない3年生の教室は
よっぽどのことがない限り誰も来ることは考えられない。それでも不意に忘れ物を取
りに来た生徒や教師が戻ってくることがないとも限らないのだ。愛佳はその誰かに裸
で散歩しているところを見られるのがたまらなく怖かった。廊下の端まで来たところ
で折り返し、再び反対側に向かう委員長。しかし愛佳の元いた教室を通り過ぎて端ま
で来るとUターンしてもう一度逆方向に歩き始めた。そのまま元来た道をまた歩いて
いく。
その日はいつもより気温が幾分低い日だったから裸で廊下を歩くのは寒く感じられ
たし、歩いているうちに床の冷たさが体の芯まで冷やしてきていた。そこで次に愛佳
の体が催してくるのは尿意である。無意識のうちに愛佳は腰をムズムズと震わせてい
た。
「ん、どうしたの?さっきから落ち着かないみたいだけど…ははん、トイレだな。わ
かったよ。ちょっと待ってて」
秀才肌で通っているだけに図書委員長はこうしたことは簡単に察してくれる。だが
彼の向かった先は女子トイレでは決してなく、目の前にあった教室だった。そして委
員長が差し出したのは鉄製のバケツだった。本来は冬にストーブを入れる時、万一発
火した時に備えて水を入れておくためのものであったが今は用がないので空のまま教
室の隅に置いてある。
「どうしたの?ここに遠慮なくすればいいじゃない」
委員長は言うが、犬に徹しきれない愛佳に彼の目の前でバケツの中に放尿するなど
簡単にできようはずがない。それでも裸でいる寒さで恥ずかしさとは裏腹におしっこ
はこみ上げてくるばかりである。
「それとも手伝ってあげようか?」
委員長は有無を言わさず愛佳の足を広げてバケツを跨がせ、膣の中に指を挿入した。
同時に尿道口を親指でグリグリ刺激する。
「くふ、ん、あ、ひゃう、う、ううん…ああ……」
愛佳の膣の中で委員長の指がクネクネ動き回り、感じた愛佳は腰の力が抜けてバケ
ツの上に自然にしゃがんでしまった。それでも尚委員長は指マンで攻め立てるのをや
めない。
「あ、ああ……も、もう…おしっこ…出ちゃう……」
下半身の力が抜けきった愛佳はもうおしっこを我慢することもままならなくなって
いた。
「い、いやあ、み、見ないでくださいぃぃぃ」
愛佳は泣きながら委員長の見ている前で放尿した。ジョボジョボとおしっこがバケ
ツに当たる音を豪快に響かせて。
初投下。
各キャラクターなどの語り口などが思い出せず、いつもの自分の文章で書いてます。
その上、序盤だけで、お目汚し失礼。
なんだか異様に慌しかった4月5月が終わり、修学旅行も終わって、地獄の期末考査がようやく終了し、
答案の返却が始まってすでに気分は夏休みへと向いていた7月のはじめ。転校生がやってきた。
「はいはーい、みんな静かにしてよー」
委員長が相変わらずの小動物ちっくな動きでばんばんと机を叩いている。普通転校生の紹介なんて担任
の仕事だろうに、それも委員ちょマジックなのだろうか? いや、また押し付けられただけか。
「も〜〜、静かにしてってばー」
しかしいつものことではあるが、誰も雑談をやめようとはしなかった。話題はもちろん転校生だ。事前の情
報である程度のことは分かっているものの、それゆえに会話は尽きない。いや誰も委員長を無視しているわ
けじゃない。これはいつもの通過儀礼みたいなものだ。もちろん転校生も気になるが、くるくる動き回る委員
長を見ているのも飽きない。
しかし今日の委員長はいつもとは一味違った。一向に静まらないクラスメイト一同に委員長が背を向け、く
るりと振り返った彼女が手にしていたのはよりによって両手に黒板消し。
(まさか、やる気か!)
教室内に緊張が走る。クラスメイトは静まりかえっていたが、すでにスイッチの入った委員長の手は止まら
ない。
――ぽふっ。
勢い良く振り下ろされたわりにはずいぶんと頼りない音で教卓に叩きつけられた黒板消しから粉塵が舞っ
た。たまらないのは前列の生徒たちだ、と、思われたのだが……。
「あああぅぅ〜〜」
当然のことながら粉塵の中心で両手をばたつかせ、パニックに陥ってるのは委員長自身だった。
「も〜〜、いーかげんにしなさーい!」
自身の一喝で、ぴたりと委員長の動きが止まる。すでにクラスメイトは全員がきっちりと己の席につき、委
員長の一挙一足を眺めていたからだ。
たっぷりと数秒間ほど、クラス全体と自分の手元を確認した後で、委員長はそそくさと黒板消しを戻してぽ
つりと呟いた。
「……う〜ん、黒板消しかぁ」
また使う気か。前列の生徒が可哀相だからやめてあげて欲しい。と、後方の席からそう思う。
「はいは〜い、それでは皆さんお待ちかねの転校生さんを紹介しますよ〜」
委員長が扉をがらりと開けると、その転校生が入ってきた。
おおお〜っとどよめきがあがる。
雄二に至っては口笛を吹き鳴らす。
クラスに事前情報を広めまくったのはもちろんコイツ。そしてその理由は――
「はじめまして、HMX-16リオンと申します。短い間ではありますがよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げたイルファさんにそっくりなこのメイドロボこそが転校生だったからだ。
昼休み。
「いやぁ、やっぱりメイドロボはいいねぇ。くぅ、なんていうの。純情可憐? 俺色に染め上げたいっつーか」
もう朝から何度聞いたか分からないセリフを飽きもせず雄二は繰り返した。
「はぁ〜、ほんっとバカねえ。メイドロボって言っても要は家政婦さんと変わらないでしょ」
屋上に広げたレジャーシートとその上に並べられる昼飯。いつもの昼食光景だ。
「分かってねぇのは姉貴のほう! あの可憐な指から作り出されるメシはさぞかしいい匂いがするんだろう
なあ。どこかの暴力女のゴツゴツした手とは大違っ、いだっ、いだだ、割れる割れる割れるーーーー!!」
「あはは〜。ユウ君は前からメイドロボが欲しいって言ってたもんね」
実際のところ朝から雄二のその欲望は間違った方向に突っ走ったあげく、カーブを曲がりきれず大クラッ
シュを巻き起こした感がある。思い出しても身震いがする。この男は一限が終わった休みに、リオンさんに
群がるクラスメイトの先を突いて言い放ったのだ。
「将来俺のものになってくれ!」
思い出してもげんなりする。しかしリオンさんはこの突然の暴挙にも関わらず平然と、
「それは私をお買い上げいただけるということでしょうか?」
とにっこりと笑って言ってのけたのだ。この柔軟性、いやイルファさんでよく知っているけど、最新のメイドロ
ボというのは予測できないような事態にもそれなりに対応できるようになっているようだ。それどころか、
「でも残念ですね。私は実験機なので民間に払いおろされることはないんです。ですからいつか私の量産型
が発売されたときにはよろしくお願いしますね」
などと営業トークまでこなしてみせた。うーむ、メイドロボおそるべし。だいこん・いんげん・あきてんじゃー
じゃなくてもそれなりの域には達してるということか。当然この後雄二は他男子生徒によって粛清されたわ
けであるが、その後もこりずにリオンさんに話しかけていた。このハングリー精神は見習うべきものがあるか
もしれない。方向性は変えておきたいけど。
「でもね、ユウ。メイドロボの料理には絶対に足りないものがあるわ」
「なんだよ、姉貴」
「それは愛よ!」
タマ姉は拳を握り締めて断言する。箸が折れそうなんですけど……。
「あーいー?」
不審そうに雄二が繰り返した。
「そう。心のないメイドロボなんかが作る料理は、人間のレシピを真似ただけのものよ。料理の一番の調味
料は愛なんだから!」
タマ姉はタマ姉でメイドロボに偏見を持ってるからなあ。必ずしもそうじゃない。心を持ったメイドロボもいる
んだって言いたいけど、矛先がこちらを向いては敵わないので黙っておく。うう、ごめんよ。イルファさん。この
人はいまだにゲームセンターが不良の溜まり場だと信じきっているほどの堅物なのです。とても改心させら
れそうにはありません。
「ふふっ、楽しそうですね」
不意に後ろから声がかかった。振り返ったそこには見覚えのある顔に、見覚えのない栗色の髪の、うちの
制服を着た転校生、つまりリオンさんその人がそこにいた。
この突然の事態に一番うろたえたのはタマ姉だった。
「あ、あら、ごめんなさい。私は決して貴方たちをけなしたんじゃなくて――」
「お気になさらないでください。事実、私の作る料理はデータベースにあるレシピをそのままなぞらえたもの
に過ぎません。料理に愛を込めるためのデータがあれば好いのですが、あいにくと。――こんなこというと、
愛はデータじゃないって怒られちゃいますね」
リオンさんはちょこっと舌を出して笑った。その自然なしぐさにタマ姉はあっけに取られているようだった。神
様、できればこれでタマ姉の偏見が少しでもなくなりますように。万が一イルファさんとあんなことやこんなこ
と、ましてや、あまつさえ以下略があったことがばれたりした日のことを考えると、信じていない神にでも真
剣に祈りを捧げたくなる。
「そんなことないぜっ! リオンさんの作った料理なら、俺が愛を持って口に運ぶから問題なーし! そういう
わけで今晩にでもうちに夕食を作りにきませんか? いや、来てください。是非に!」
「残念ですが、学校が終わると研究所に帰らなくてはいけませんので、申し訳ありません」
頭を下げるリオンさんに雄二のほうが慌ててしまう。
「いや、いーって、ごめん、俺も無理言った」
「はい。でも私の作った料理で誰かが喜んでくださるのなら、それは私にとっての喜びです」
にっこりと微笑んでリオンさんはシートの上に並べられた料理を見た。
「とても美味しそうですね」
「貴方、美味しそうとか分かるの?」
「ごめんなさい。おかしかったですか? 見た目良くできている料理をそう表現するものと思っていたのです
が、間違っていたのならばデータベースの更新を」
「いえ、いや、それでいいわ。ええ」
リオンさんを押しとどめてから、タマ姉は小さく、そうよね。迂闊だったわ。そんなわけないじゃないのよ。と
呟いた。
実に惜しい。でももう一歩だ。がんばれ、リオンさん。
「やっぱり沢山の愛情を込めて作られたのですか?」
「へ? あ? ああ、私? これ? え? ええっ?」
タマ姉が何故かリオンさんとこっちを交互に見てパニくっている。む、いつものタマ姉らしくない。タマ姉なら
びしっと
「ふ、ふんっ、当然でしょ!」
あ、やっぱりいつものタマ姉だった。
「いいですね。羨ましいです」
「羨ましい?」
「はい。私たちも好奇心というパラメータは与えられています。愛に興味を持つメイドロボは変でしょうか?」
「よく――分からないわ」
目を伏せて質問から逃げるタマ姉、流石に最新型メイドロボといきなり向き合うには少し世間ズレしている
のやもしれない。一方で、間違った方向に世間ズレした男が身を乗り出した。いや、いいんだ。言わないでく
れ。分かってる。――多分、俺が一番ズレてる。
「リオンさん、愛のことなら俺がっ、手取り足取りこじガッ、あががっ、今度こそ割れる割れる!!」
「ゆーじぃー」
「あははー」
その光景を穏やかに眺めていたリオンさんがあっと口を手で隠すようなしぐさをする。
「いけない。昼休みのうちに学校を一通り見て回ろうと思ってたのでした。それでは失礼しますね。河野さ
ん、向坂さん、またクラスでもよろしくお願いします。それと柚原さんと、向坂さんのお姉さんも、短い間です
がよろしくお願いします」
「しょんな〜、俺としては是非とも長いお付き合いを――」
「あれ、どうしてこのみたちの名前知ってるの?」
「はい、不便の無いよう、学校内のすべての方のデータは入力済みです」
スルーされる雄二、哀れ。
それはそれとして、一礼するとリオンさんは屋上から姿を消した。
「あー、びっくりした。メイドロボって思ってたよりも大したものなのね。私はまたてっきり平たい顔に、フレー
ム剥き出しの体で、6秒に1歩しか歩けないようなものだとばっかり思ってた」
いったいいつの時代のロボットなんだか。どうやらタマ姉のメイドロボの認識は10年以上前から進歩して
ないらしい。もしかしたら街でメイドロボとすれ違っても気づいてないだけなんじゃないか?
――ゴズン!
不意に腹に響くような音が周囲に響いた。
「何? 今の?」
「なんだろ〜?」
みんなもまわりをキョロキョロと見渡すが、音の原因らしいものは見つからない。特に害も無いようなので
再び食事に取り掛かる。
「はぁ〜、でもきれいな人だったね〜」
ふとこのみがそう漏らす。
「タマお姉ちゃんに負けず劣らずって感じだったよ〜」
つい、と、このみの視線が落ちた先はタマ姉の胴体部分、その後このみ自身の胴体部分。あ、そうか。顔
だけの話じゃないのか。そういえばリオンさんはイルファさんに比べるとこう、なんかボリュームがあるよう
な。気のせいかな? 同型ボディって話だったし。
「タカくんは彼女いるんだから、リオンさんと浮気なんかしちゃダメだよ」
「ん、ああ、いや、彼女じゃないって!」
「かーーっ、こいつの場合は彼女たち、だろ。彼女たーち、だーー、やっぱお前に食わす飯など無いっ!」
「あ、こら、雄二」
がばぁと重箱ごと手に取って、中身を一気に口の中に放り込む。
「ゆうじぃ、そんなに頬張ったら噛むのが大変でしょう。手伝ってあげましょうか?」
「んもっ、ぶももーー!! んんんんんんんーーーーーーーーー!!」
「あー、まったく非道い目にあったぜ」
「自業自得だろ」
タマ姉とこのみは先に教室に戻ってしまっている。俺たちは雄二が結果的に口の中のものを撒き散らした
シートの掃除を仰せつかったというわけだ。とはいっても、軽くはたいて終わり。後は雄二に押し付けてしま
おう。
「さ、戻ろうぜ。リオンさんの顔が見れると思ったら授業もいいもんだな。なっ!」
「――黒板見ろよ」
屋上から階段に入るときにふと違和感を覚えて立ち止まる。
「ん? どうした?」
「あれ、ここ、ほら、これ」
と、屋上の扉を指差す。何故か金属製の頑丈な扉のはずだが、だいたい胸くらいの高さが大きくへこんで
いる。
「こんなへこみあったっけ?」
「ん〜、どうだったかな? 前からじゃね? だいたいそんな簡単に付くような傷じゃないぞ。それ。そんなこ
とよりリオンさんだ。リオンさん。あー、いいなあ。本物のメイドロボは」
スキップでもしそうな勢いで階段を下りる雄二に慌てて付いていく。
しかし俺は心の中でじわりと何か嫌な予感めいたものが広がりつつあった。
そしてそれは間もなく最悪な形で現実となるのだった。
395 :
304:05/01/18 22:53:23 ID:J+Xpdfbf
396 :
387:05/01/18 22:55:53 ID:Kw3exiP6
>>395 おつかれさま。
楽しませていただいております。
適当な題名つけたつもりが完璧にかぶってますね。
ごめんなさい。すみません。 orz
>>384-386 毎度楽しみにしてます
イイヨ(・∀・)イイヨー
>>396 ヨシヨシ ( ´・ω・)ノ(つДT)
リオンさんネタは思いつかなかった GJよ
398 :
368:05/01/18 23:12:41 ID:M0kUVr4V
>>384 相変わらずですねぇ
いいんちょ、エロイよ・・・エロイよ・・・
>>387 おおー上手ですね。
キャラをしっかり抑えて情景や貴明の心情をうまく引き出し、表現していますね。
本編に劣らずって感じだと思います。
>>177 すばらしいクオリティーですね
ちゃんとキャラの関係をうまく保ちつつ小ネタもはさみつつ、きちんと話を進めているところが非常にいい感じだと思います。
ちなみに個人的に古文の教師が石原裕次郎の魅力を話し出したところが笑えた
それと再びSSを描いたんで少ししたら投下します
「あーあ。体育祭なんてかったりーなぁ」
「もう、ユウ君はいっつも運動不足だよ。もっと走った方がいいんじゃないかな」
「って、おまえなぁ。姉貴みたいなこと言うなよな」
「その点、やっぱりタカ君はすごいね。クラスのリレー選手として選ばれたんでしょ」
「ああ、俺らのクラスの代表になったんだよ。自分がやらせてくださいって土下座までしたんだぜ」
「へぇ〜。タカ君、すごいなぁ」
「そんなことやったわけないだろ!」
調子に乗った言動をするものには体裁を!
「うぉっ。なんだ、戻ってきたのかよ」
「なんだ、じゃないだろ。大体お前が寝てる間に俺を推薦したってはなしじゃねえか」
起きてからいいんちょに言われたときびっくりしたんだぞ。
「まぁまぁ。お前がなかなか早いのは本当じゃねぇか」
「どっかのだれかさんがが毎日遅刻しそうになってダッシュだぞ。早くならないはずがないよな」
「あ、あはは・・・」
その張本人が苦笑いを浮かべている。
「でもタカ君ならきっと勝てるよ」
おいおい、買い被らないでくれよ。
「貴明」
「ん?」
真剣な目つきでこちらを見ている。
「どうした、雄二」
「あれを見てみろ」
雄二が指差したのは金髪の三年生の外人生徒。
『ハーイ、みんな頑張るんだヨ!』
「やっぱいいよなぁ。あんなに揺れてるんだぜっ、ぶごっ」
やっぱりこいつには体裁を!
リレーの順番は主催委員のくじ引きで決められる。
「A年−@年−B年の順か」
「河野くん、頑張ってくださいね」
「ええっと・・・うん。とりあえずできるだけの事はするよ」
いいんちょの労いも入ったし、ここはいっちょやってやるか。
でも・・・いいんちょって本当は副委員長であって委員長じゃないんだよな。
本当の委員長は本部の一席で悠々とお茶なんかもらってるし。
「なぁ、貴明」
「なんだ?」
「やっぱり女子は走るのかな?」
「・・・・・・・・・」
はぁ・・・疲れてくるからとっととスタンバイするか。
このリレーは300メートルのトラックを一周半走り、バトンを渡して三人を通して一番になった学年のそのクラスには点数が加算される。
「タカくーん、がんばれー」
観客の方からここまでこのみの声が聞こえてくる。
「おう、まかせろー」
手を振って返してやるとこのみは『えへー』というような顔をして向こうも手を振ってきた。
ピピーーーーー!!!
位置につく印のホイッスルが鳴らされる。
よーし、こうなったらやるからには勝ってやるぞ。
『位置について、よーい』
パーーーン!
って、おい!いきなり何転倒してんだよ。
『おーい、にいさん。なにやってるのさー』
あれ?本部の方から・・・まさか・・・。
『そういうな〜弟よー』
や、やっぱり・・・。
あの兄貴あって弟ありか。
そんなこと思っている間にもどんどん隣を他のクラスの奴が走り出していく。
まだなのかよ・・・っておっそ!
『待たせたねぇ〜』
待ったよ、実際に!
地面を蹴ってバトンを渡されるとともに走り出す。
トラックの折り返しをできるだけ内側を走って距離かせぎつつスピードを落とさないようにうまく体重をかける。
「よし、一人目!」
直線に入るとさらにスピードを上げていく。
の割には案外息があがらない。
まさかこのみ効果がこんなところで出てくるとは思わなかった。
二人目と三人目を抜き、再び折り返しでもう一人抜く。
そうして直線。
ほぼ全力で走り、ここで前のクラスの奴を抜こうとする。
しかし前の奴もなかなか早い。
抜けないまま折り返しをまわる。
ラストの直線。
ここは迷うことなく全力で!
「タカ君!がんばってー!」
「貴明!行け!」
「河野くん、がんばれ〜」
うおおおおおおおおおおお!!!
よし!抜いたぁぁぁぁぁ!
そのままバトンを三年へと渡す。
はぁはぁはぁ・・・あと・・・三人・・・。
勝てるのか・・・?
息が上がって顔を上げるのもつらい。
はぁ・・・・・・っう。
ようやく顔を上げるとバトンを受け取った三年はすでに一人抜いていた。
早い・・・。
「浩之ちゃーん、がんばれー」
「浩之、行けーー!」
同じクラスから応援の声援がとんでくる。
一周を終えたところでもう一人を抜かす。
残り半周。
いけるか?いけるか?いけるのか?!
「がんばれーーー!!!」
頭がクラクラするのも気にせずに思いっきり叫んだ。
残り100メートル、距離にしてみればあと半歩ほど。
あと少し・・・よし並んだ!
行け!行け!行け!行け!行け!行け!行け!!!!
パーーーーーン!!!
「やったな、貴明!」
「タカ君頑張ったね」
「おう、さんきゅな」
二人が労ってくれていると後ろから気配を感じた。
「おう、アンタが一年のリレー選手か」
さっきの三年生。
「よく頑張ってくれたな。おかげで一位になる事ができたぜ」
「いえ・・・それは先輩が頑張ったからで」
「リレーは一人じゃできねえよ。アンタも頑張ったから勝てたんだ。礼を言うぜ」
手を差し出してきたので思わずこちらも差し出された手をとった。
「ま、あの二年のほうはどうかとは思うけどな」
三年生はうっしっしと笑って最後にそう付け足した。
「二人ともお疲れ様」
と、その三年生の後ろからさっき応援していた同じクラスの女生徒が紙パックのカフェオレを持ってきた。
「はい、浩之ちゃん。と、ええっと」
その女生徒は俺を見ると何か言いたそうにしている。
・・・あ、そうか。
「河野です。河野貴明」
「河野くんか。はい、お疲れ様」
「あ、そんな、悪いです」
「いいって、あかりがくれるって言うんだから、せっかくだからもらっときなよ」
「あ、ありがとうございます。それじゃあ遠慮なく」
カフェオレを受け取るとストローを突き刺すと一気に飲み干した。
「ご馳走様です」
「おう。また頑張れよ」
「は、はい。あ、あの先輩、よかったらお名前を・・・」
「俺か?・・・3年B組、藤田浩之。ちなみにこいつは神岸あかり」
「藤田・・・先輩」
「じゃあな」
「あ、浩之ちゃん、まってよ〜」
藤田先輩はそう言うと元の自分のクラスに戻っていった。
「藤田浩之先輩か」
ピンポンパンポーーーン♪
続いての―――。
「おい、貴明。次も出場だぜ」
「マジかよ・・・」
「タカ君、次も頑張って!」
少しは休ませてくれよ、まったく。
405 :
368:05/01/19 00:04:53 ID:D+IvqGWy
お察しのとおりです・・・はい
1と2がただ書きたいだけに書いちゃいました。
ちなみに続きはもしかしたらあるかも(?!)
407 :
名無しさんだよもん:05/01/19 01:02:06 ID:7QmnGXTj
>>387-394 イイですねぇ〜、まさかリオンさんを出して来るとは(´ω`)b
続き、期待しています。
>>395 ミルファSS、毎度楽しませてもらってます(*´∀`)
それに、更新も早くてビックリですよ〜。
次も楽しみにしていますね。
帰りにばったり郁乃とタマ姉のおっかけ三人衆に出会ってしまった
俺ピンチ
「私たちはお姉さまが戻るまであきらめませんからね!」
「あなたのお姉さまへの失礼な態度、許し難いものです」
・・・・コクコク
貴明「おいおい、俺がいったいなにしたってんだよまったく」
「おだまりなさい!今日こそ決着をつけてあげますわ!」
「お姉さまを九条院に帰っていただくために!」
・・・こくこく
貴明「(うわぁ・・・・今日もまた一段としつこそうだなぁ・・・)」
郁乃「はぁ・・・なんかしらんがバカとバカ達がもめてるな、道の邪魔だからどけてよ」
「な、なんですかこの子は?!」
「私たちのことバカ呼ばわりするなんて!」
・・・・・ふるふる
「いったいなんですのこの子は!あなたの知り合いですか?!」
郁乃「私の知り合いにバカはいないよ、さっさとどいてよ」
「キィーーーーー!」
貴明「そういういわず助けてくれよ(汗)」
郁乃「自分でもめといて私になすりつけるの?さいてぇ〜」
貴明「・・・・・シスコン(ボソッ)」
郁乃「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
郁乃はカバンで貴明とをバンバン殴りつけた
「お、おまちなさい!その男は私たちの相手ですのよ!」
「これを機にしとめましょう!」
こくこく!
貴明VS郁乃VS三人衆の構図が成り立った
しかし部外者からみればそれは貴明のハーレムにしか見えなかった
そこに・・・・
環「あ!タカ坊〜一緒にかえ・・・・」
愛佳「あ、貴明くん!一緒にかえりま・・・・」
二人のみた光景は
貴明「だから俺は・・・・!」
三人「今日こそは・・・・!」
郁乃「シスコン言うな〜!」
うまいことに争いのセリフが聞こえずに四人の女性に囲まれる男ひとり
ハーレムとしかいいようがない
貴明「あ、タマ姉!小牧!助けてくれ!・・・・ってなんで怒ってるの?」
そこには冷ややかな雰囲気の二人がいた
環「あらタカ坊・・・・いつのまにそんなにモテるようになったのかしら?」
環「それにあなたたちはタカ坊になにくっついてたのかしらね?(ギロッ)」
三人「え!いやそのあのそのこれはその・・・・」
貴明「こ、こえぇ・・・・・愛佳!おまえだけが救いだ!」
愛佳「・・・つーん(プイッ)」
貴明「・・・・ま、愛佳?」
愛佳「いつのまにか郁乃とそんなに仲良くなったんだ・・・」
郁乃「ちょ、お姉ちゃん違うよ!」
貴明「な、何勘違いしてんだよ!俺は被害者だ!」
しかしカバンで至近距離戦をしてたためか二人はやたらと接近していた
説得力0
郁乃「離れろケダモノ!」蹴りをかます
貴明「ぐわぁ!」
郁乃「ち、違うんだよお姉ちゃん!私こんなバカに・・・」
愛佳「つーーんだ(プイッ)」
貴明「ま、愛佳俺を見捨てないでくれ・・・・ハッ!」
タマ姉「タカ坊〜〜〜〜!すこし女性にたいしての貞操を学ぶべきねぇ(ギリギリ)」
貴明「痛い痛い痛い痛い!おれはなんもしてないのにぃ〜〜〜〜〜」
雄二「もてる主人公ってのも大変だな・・・・」
このみ「わ、私もお母さんを使ってタカ君を略奪しようかな・・・」
おしまい
ヤキモチのシチュエーションがうまくいかない
しかも委員ちょの呼び方ミスってるし・・・
出直してくるon_
郁乃かわいいよ郁乃。
>>405 野暮なツッコミいれたくないが
東鳩1から2年10ヶ月後が東鳩2開始時期らしい。
つまりゲーム開始直後なら松原先輩や姫川先輩に会えるわけだ。
先輩二人のどんぶりSSを頼む。
416 :
368:05/01/19 02:17:10 ID:D+IvqGWy
>>414 う、マジですか
普通に二年後だと思ってた
・・・まぁSSだから大目に見て・・・なんていえないよなぁ
タカ坊が高校生時点で在学してるのはギリギリ葵・琴音のエクストリームコンビのみ。
本編で卒業式が出てこないので、既に卒業してると思うんですが
同じ学校なのに1,2キャラ一緒にいるとすっごい違和感があるなぁ
なんでだろ
絵
うむ
しかし琴音はカワタキャラ
423 :
368:05/01/19 08:42:23 ID:TnvR+EoH
なんかこのままでいるのも悔しいので別の形で再び1と2をあわせてみせます
魔法の言葉をあげよう
つ[留年][留学してたから一学年下]
放課後になった。
雄二他、何人かのクラスメイトがリオンさんに一緒に帰らないかと話しかけていたが、どうやら職員室に用
事があるからと体よく断られたらしい。いや、雄二だけは職員室までついていくと断言していたが、流石に他
のクラスメイトに止められていた。あのエネルギーがどこから出ているかが本当に疑問だ。解剖したら何か
新発見でもあるんじゃないだろうか?
まあそれはそれ、こっちはこっちで行くところがある。日課となってる電算室への顔出しだ。というか、こっ
ちから顔を出さないと、珊瑚ちゃんが怪しげな機械を片手にこちらを探し出すことになるだけだからだ。珊瑚
ちゃん曰く
「貴明レーダーや〜☆」
ということらしいけど、原理のほうが一切不明。いつの間にか俺、改造人間とかにされてるんじゃないだろう
か? それともインプラントされたか。
「おお、それは実にミステリだね。たかちゃん」
不意にミステリ研会長の顔が頭をよぎるが振り払う。多分、スパイ衛星とか、各所監視システムとかを
ハッキングして自動追跡させてるか何かに違いない。いや、それでも十分ヤバいんだけど、本人に悪気が
ないのでなんともならない。
つまりどういうことかというと、つまるところ逃げ場はない、ということだ。この前なんか、なんとなく誰も自分
を知らないところに行きたくなって、全然関係ない方向の電車にしばらく揺られてたら、どういうわけか先回り
した駅で待ち構えていたイルファさんが乗り込んできて、これまたどういうわけか涙目で
「どういうことですか! 貴明様は私たちみんなを置いて逃げてしまわれるおつもりですか!」
と詰め寄ってきて、周囲の好奇の目を集めまくったあげく
「もし、もしもどうしても去ってしまわれるというのでしたら、私だけでもついていきます!」
とか言い出した。あまりの真剣さに一瞬ほだされそうになったものの、最終的に理性の勝利。イルファさん
のポケットの中の目薬を探し当てることに成功した、という顛末。拍手までもらっちゃったよ。イルファさんに
涙を流す機能はないものな。
そういうわけで電算室にこちらから向かうのだ。ビバ開き直り。このまま色んなところで寸劇やってたら、そ
のうち日本で俺の顔を知らない人がいないという事態にもなりかねない。さすがにそれは勘弁したい。ただ
でさえ最近商店街を歩くと「ヨッ! 色男、今日は何か買ってかないのかい」などと声をかけられる始末なの
だ。
階段を上がったところで見知った顔と鉢合わせた。
「あ、小牧さん」
「あ、河野くん」
ハモる。あ、う、とお互い気まずい数秒の沈黙。
「これから図書室にいくとこ?」
「これから図書室にいこうと――」
またハモる。
「でも、あれ? 同じ教室を出て図書室に向かうならこっちのほうが近くない?」
「あの〜、それは〜、そのぅ〜」
ごにょごにょといいごもる委員長。その様子でなんとなく分かった。委員長は俺が電算室に行くのを知って
いる。電算室と図書室に行くにはちょうどこの地点まで同じ道で行くのが一番近いから、もし委員長と俺が
同じタイミングで教室を出たりなんかしたら仲良く肩を並べて歩くことになってしまう。それでわざわざ遠回り
してきたんだろう。いつもならそれでうまくすれ違ってたのだろうけど、何故か今日はうまく鉢合わせてしまっ
たということだと思う。
やっぱりちょっと腰が引けてたのかも。
「河野くんは電算室ですよね?」
小首をかしげて委員長が聞いてくる。そのとき不意にまだ委員長に伝えてないことがあるのを思い出し
た。本当はずっと気にしてたものの、どうにも言い出すタイミングが切り出せなかったのだ。
「うん。ごめんな。書庫のこと、結局最後まで付き合えなくて」
「いえ、いいんですよ〜」
話に聞くに、結局あの書庫は一部を除いて処分されてしまったらしい。代わりにCD等が入って図書室は
大盛況ということだ。でもあの秘密基地のことを思い出すと少し心が痛む。もっと手伝っていれば何か変わっ
ていたんじゃないか、と。
「いいですか、河野くん。言葉という物は時代によって変わるものです」
突然、委員長の講義が始まった。委員長は片手を腰に当てて、えらそうに少しふんぞり返って見せる。
「お年よりは若者の言葉を乱れていると言いますが、新たな時代に適した言葉というのは古い世代の人か
らは理解されにくいのです。逆もまた然りであると言えましょう。だからお年寄りの大事なものはそのまま若
い世代に伝わるということはありません」
いきなり言語学である。だが言いたいことはなんとなく分かる。書庫にあった本と、CDのことだ。
「ですが、しかぁ〜し、何一つ伝わらないということもまた無いのです。長い年月を経てきたものをすべて受
け継いでいってもらえないのは残念なことではありますが、きっと本当に大事なことは伝わるんです。人と人
が伝え合って受け継いできたもの。それは決して枯れ果てることはないのですよ」
「つまり結局どういうこと?」
「くふふ、実はですねぇ。あ、そうだ。河野くん。お時間は大丈夫ですか?」
「別に急ぐ用ってわけじゃないよ。後で顔を出しておけば問題なし」
「そうですか、そうですか、それでは一名様ごあんな〜い」
そうやって委員長に促されるままに書庫に向かうことになった。図書館までの道のりで委員長は不意に無
言になる。こちらもあまり話を急いで促す気にもならなかったので黙っていた。するすると二人の距離が開い
てしまう。
結局戻っちゃったんだな。と、少し寂しくも思う。いや、完全に戻りきったというわけでもないだろう。少なくと
も以前ならこうやって書庫に誘われることも、廊下で鉢合わせたから話をするということもなかっただろうか
ら。まあ、何が悪いって、4月以降双子姉妹他に振り回されてまったく書庫にいけなくなった俺が悪いのだ
けど。
「ごかいちょぉ〜」
鍵が開けられて最初に感じたのは寂寥。そこは見る影も跡形もなかった。本棚だったそれは、今はCDラッ
クと呼ぶべきだろう。さらには今も数人の図書委員がCDのチェックやら返却作業やらを行っている。
「ごめん。ちょっとお客様連れてきちゃった」
委員長がそう言うと、図書委員と思しき一人がこっちを一瞥し、固まり、こちらを指差して、
「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
絶叫。耳がキーンとした。隣では委員長の頭の周りを数匹のひよこが旋回している、ようなものが見えた
ような気がした。
「あわ、あわわ、ごめんなさい。ごめんなさい」
その娘はあちこちに頭を下げたあと、こちらにずかずかとやってきて、後ろのドアを勢い良く閉めた後、こち
らの胸に人差し指を突きつけた。
「この人でなし!」
いきなり小声で罵られる。流石にむっとしていいところなはずなのだが、相手が女の子ということでどうにも
思考がまとまらない。というか、すごい迫力だ。斜め下から睨まれてるのにこんなに怖いとはまさに蛇に睨
まれてる状態。
「もー、やめてよ。そんなんじゃないんだってばぁ。河野くん、ごめんね。この子、ちょっと勘違いしちゃってて」
「勘違いじゃないわよ! 小牧さん、あの日まで毎日カップふたつ用意してたじゃん!」
「え?」
我ながらこれほど間抜けな声が出せるものだと感心する。そう、何故かまったく、これっぽっちもひとかけら
もその可能性を考えたことなんてあっただろうか?
――小牧さんは俺と居るのを楽しみにしている。それは思い浮かぶと同時に振り払われねばならない気
がする思考だった。奢ましい。そうだろう? だって俺だぜ。だって委員長だぜ。
「え? じゃないわよ。この唐変木! 小牧さんはね、毎日アンタのこと待ってたんだって言ってんのよ!」
「や、や、や、ホント、そんなことありませんから。河野くんは気にしないでください」
ばたばたと委員長は相手に入ろうとして、またしてもいつものようにはたと自分の言った内容を後から理解
に至る。
「あ、う、や、すみません。決して河野くんが来るのがイヤだったとか、そういうわけではなくて〜」
「で、なに? 気が付きゃ新入生の双子に手を出したですって? このロリコン! アンタがそんなだから、
小牧さんは結局独りで、独りで、そりゃアタシも力にはなれなかったケドさ。そっか、そうだよね。人のこと言
えるような立場でもないか」
図書委員の女の子は一人でヒートアップして、一人でクールダウンしてしまった。でもどうしてこれだけ罵ら
れて腹が立たないのかはなんとなく分かった。この娘は自分のためじゃなくて委員長のために怒ってるん
だ。つまり、俺が不甲斐なかったから。で、その結果がこれだ。委員長の秘密基地はCDラックのジャングル
に変貌してしまった。
「――ごめん」
それだけしか言葉がなかった。それ以外に言う言葉が見つからなかった。
「やぁだ、違うのよ。ね、メグもほら、元気出してってば〜。ほら、元気元気ー」
委員長は両手でガッツポーズをしてみせる。なぜか両腕をふりふりすると、腰もふりふり。恐らく本人は無
意識だ。図書委員の子を元気付けるために一生懸命になってしまっていて、他のことにまで気が回らない
のだろう。
他人のためにいつも一生懸命な委員長、それを俺は手伝うっていって、期待させといて裏切った。
「河野くんも元気元気ー。やだ、しんみりしないでよ〜。そんなしんみりされたら、やだ、あたしまで、なん、
か、しんみり、しちゃ、う」
委員長が急に顔を下に向けた。ガッツポーズだった手が広げられて――
すぱーん!
顔を覆うかと思われた両手がそのまま委員長自らの頬を打った。
「いひゃい!」
流石に痛かったらしい。
「えへへー」
涙目で委員長が顔を上げた。卑怯だ。それが何の涙なのか分からない。
「あのね、今日は河野くんに私の自慢話を聞かせに来たのであって、それ以外は全部却下。却下なので
す」
「ん、分かった。奥使って」
「メグ、ありがとう」
「それはいつも聞いてるし、お礼を言うのはこっちのほう」
「ううん。違うの。メグ、ありがとう」
「……分かったことにしとく」
メグという娘はこっちをキッと睨むとアカンベーをしてクルリと背中を向けた。随分と嫌われたみたいだ。
「ごめんね。河野くん。いつもはあんな娘じゃないんだけど」
「気にしてないよ」
委員長に案内されるままに進んだ書庫の奥のほう、奥まったところにひとつだけ本棚が残っていた。そこ
にパイプ椅子を二つ持ってきて並んで座る。あの頃のように応接セットで向かい合うことはもうできない。紅
茶もお茶請けもない。
「本当はね、私のほうが河野くんに謝らなきゃいけないの。ごめんなさい。河野くん」
「なんで? あれは俺が勝手に押しかけてただけだし、それに本当に途中でこなくなっちゃったわけだし、
やっぱり謝るなら俺のほうだよ」
「違うの。本当はね、書庫が処分されたの急な話じゃないんだ」
そうしてぽつりぽつりと委員長は話し出した。実のところ、書庫の本を処分してCDを入れるという案は前々
からあったらしい。そして積極的に反対してたのは図書委員でもない委員長だけ。だからあのバーコード張
りは委員長流の抗議行動だったわけだ。立てこもりと言ってもいいかもしれない。
「私ね、本当はもっと早く説明しなきゃ、説明しなきゃって思ってた。でもそうしたら河野くん、来なくなっちゃう
かもって思ったらなかなか言い出せなくて、バカだね。私。河野くんに頼るだけ頼っちゃって、勝手に期待し
て、騙してた……。だから、本当に、ごめんなさい」
「謝ることないって、むしろ俺のほうが勝手に押しかけて迷惑かけてたかも」
「ううん。お願い。私が謝ったことを無かったことにしないで。勇気を出してやっと言えたんだから、私に謝ら
せてください」
「……うん」
「じゃあもう一度言うね。河野くん、騙しててごめんなさい」
「うん。分かった。言ってくれてありがとう」
「――ゆるして、くれるの?」
「当たり前だよ。前にも言ったけど俺は迷惑なんて思って、なかった」
過去形にせざるをえないのが、少し言葉をためらわせた。これは終わった物語だ。だから委員長から聞か
せられるのは過去の話、すでに完結しているんだ。現在進行形を今から望む資格は、ない。
「そっかぁ、よかったぁ、私、河野くんに嫌われたらどうしようかと思って」
最後のほうはもう声が震えていた。椅子を向かい合って並べなかったのは幸い。正面を見てれば委員長
の顔を見ないで済む。たぶん委員長だって今の自分の顔を見られたくないに違いない。
とても小さな嗚咽は数分で終わった。永遠のように長く感じられたけど、実際には短い。どれほど隣にいる
女の子に触れ、慰めたいと思ったことか。だが、それだけはしていけないような気がした。ためらいと、とまど
いと、苦手意識と、何よりも泣かせたのは自分自身だということで、どうしても動けなかった。
「えへ、ごめんね。わたし、バカだったね。はじめから河野くんには全部話してしまってればよかった……」
それは後悔。今ようやく話してくれたからといって、あの時間に戻ってやりなおせはしないということ。
ほぅと、小さく息を吐いて、涙を吸ったハンカチをポケットにしまい、委員長は顔を上げた。
「でも、これだけですけど、ちゃんと残せましたから」
そこにはひとつだけ残った本棚。
「本当なら書庫の本は全部処分されちゃうはずだったんですけど、実はギリギリのガキガキで大逆転のミラ
クルシュートが決まっちゃいまして〜」
そうしてやっと委員長の自慢話が始まった。それはどうもこういうことらしい。委員長の抵抗運動は結局の
ところ実を結ばなかった。図書委員の強制執行により書庫の本はすべて運び出される始末になった。バー
コードを剥がされ、ダンボールに押し込まれ、運び出されていく書籍たち。そのとき、一人が一冊の本を落と
したらしい。委員長の目はその本に吸い込まれて、ハッとした。
「データ打ち込み作業のたまものですねぇ〜」
それはこの学校のOBが寄贈したもので、詳しいことは割愛するものの、稀少本として価値のあるものだっ
たらしい。強制執行のさなかに価値あるものが見つかったというタイミングが功を奏した。金の出た山を掘り
もせずに投売りしてしまう人はいるまい。そのために書庫にあったすべての本に価値の再審査が行われる
運びとなって、そのゴタゴタの間に委員長は価値のあるものから順に本棚ひとつ分の書籍を残す。という形
で折り合いをつけたということらしい。
「ごめんなさい。思ったよりお時間取らせちゃいましたね」
気が付けばもう一時間近くが過ぎてしまっていた。参った。そろそろ行かなければ「貴明レーダー☆」が作
動開始しかねない。少し名残惜しいが腰をあげる。
「いや、小牧さんの武勇伝が聞けて楽しかったよ」
「はい。またいつでもいらしてくださいね。前みたいにお茶を出したりはできませんけど」
「うん。じゃあまた明日」
「はい。また明日」
終わってしまった話はこれでおしまい。だから明日からはまた明日からの物語を紡げばいい。委員長は
CDラックの向こう、ひとつだけの本棚の前から手を振って見送ってくれた。目が少し赤くなってるのでもうし
ばらく隠れておくということらしい。
「男の人に泣かされたのは河野くんがはじめてです」
さて、明日の物語を紡ぎだす前にはまず今日の物語をきっちりおしまいまで終わらせておかなきゃいけな
いだろう。まだ電算室に行ってないし、いけばいったでまたドタバタが始まるのは間違いないのだ。
俺は本と紅茶の匂いがなくなった書庫の扉を閉めると廊下を歩き出した。学校が放課後だってだけでまだ
まだ今日は終わっちゃいない。
予定表では「貴明、電算室に向かう途中に委員長とばったり立ち話」の一行だった部分がこの長さ。恐る
べし委員ちょマジック。これはこれで途中から愛佳ルートを外れた場合の一本の話になってしまいました
ね。本来愛佳ルートから双子ルートにいくことはないのですが、その辺は許してください。SS界にはよくある
架空グランドフィナーレ双子ED編という感じのイメージです。
メイドロボ話のはずなのにメイドロボが回想シーンにしか出てきてませんが、それもご容赦を。
ちょいと忙しくなりそうなので、このペースで書けるのはここまでですが、今後ともお付き合いのほどをよろ
しくお願いします。
GJ!
ゲームのシナリオの範囲から外れたSSって、書いてると途中でどうしても空中分解するんだよね…
裏話的なのは得意なんだけど。
どうやって書くのか教えてエロイ人!
>>436 俺の場合だが…
簡単でいいからプロットを用意して(別に書かなくてもいい)、しかるべき位置にしかるべきキャラを配置すれば、
後は勝手に話が動いてくれる
キャラの設定や口調は、激しく間違っていると読み手が萎えてしまうことがあるので、極力原作を尊重する
(このみが貴明を“たかちゃん”と呼んだりするのはおかしいだろう)
多少プロットから外れても、面白い(と思える)展開になれば、そちらを採用するのもよし
438 :
435:05/01/19 13:11:27 ID:pjTPkhLS
>>436 437さんも言われてるように、空中分解を防ぐためにはプロットを書いておくのが一番だと思います。
ただ私の場合、437さんのように話の流れをキャラに任せてしまうとプロットに従ってくれないので
そこを逸脱しないようにコントロールは気をつけるようにしています。
話全体におけるプロットで今回必要だったのは、435にも書いてあるとおり
「貴明、電算室に向かう途中に委員長とばったり立ち話」
だけだったので、言ってしまえばそれ以外の愛佳との絡みは贅肉の部分です。脂身です。
脂身はおいしいですが、食べ過ぎると体に毒なので、
そこに気をつけると健康なSS書き生活が待っているやも知れません。
空中分解って言い方が悪かったかな…
話の大筋はもちろん予め作ってあるんだけど、
いざそのシーンを書く段になるとゲームの中に無いイレギュラーな要素に対してキャラがどう反応するのかわからなくなる。
何やらせても何か違うように感じるし、終いには全然別のキャラになったりして結局そのシーン削ったりとか。
キャラ愛が足りないのかね…?
まぁ、要するに何が言いたいのかというと
よ っ ち & ち ゃ る の 高 校 生 活 し っ ぽ り S S が 書 け ま せ ん
>>439氏の思うちゃるとよっちを書けばいいんだ
ちゃるとよっちは出番が少ないからコレだ!っていう決まった性格みたいなのがないから
自由に書いていいと思うぞ
前作の2年10ヶ月後って初めて聞いた…
ほんとなの?
>>439 441も言うように、ヒロインと比較してサブキャラは本編での掘り下げが
圧倒的に少ないからなぁ。そういう意味では悩みは多いだろうけど、
その分自由にやれる幅が多いと思って頑張ってくれ!
>>442 ここだとスレ違いだけどいいことを教えてあげよう。
とりあえず1のキャラと2のキャラのブルマの色を思い出せ。
446 :
435:05/01/19 16:04:22 ID:pjTPkhLS
>>439 プロットをしっかり見直してみるのはどうだろうか。
無理なことをキャラにさせようとしたりはしてない?
物語的に必要のないシーンだったらバッサリ切ってしまうのも英断。
と い う か 私 が 読 み た い か ら 書 け
遅レスだが「ミルファの居る生活」実にイイ!
勿論他のもイイ!
ああ 幸せだなァ ボカァ
SSって一話できたらすぐうpするのか、
何話か溜まってから一気に行くのかどっちがいいのかね?
>>448 おまいの好きに汁
と言いたいとこだが、早く読みたいので出来たら上げれ
ってか上げて下さい
中倒れすると非常に悲しい思いするので、短編連作ならば最後まで書き上げてから一気に投稿してくれると有り難い。
とかスゲェ無理こいてみる
ここの職人さんの作品は続き物が多いのかな?
よっちのエロが出現するまでは一日も休まずにスレを覗きにくるぞ。
>>451 俺は移り気なので単発ばっかです。
でも連載の人が多いのかな。書ける人がちょっとうらやましい。
>>452 よし、おまいに任せた。
思う存分リビドー解放するがいい
このみたんらぶエロ続き待ってるよー
456 :
名無しさんだよもん:05/01/19 21:22:35 ID:1Ud8CPsK
agetemiru
貴明
「まずい…。このままだと雄二のやつ、確実に殺られてしまうぞ…。」
このみ
「えっ!?どうして?」
このみは当然の疑問を口にする。素人目からみ見ても二人の戦闘力は互角…。いや、雄二の方が僅かながら優っているようにも見える。しかし、実際の所は違っていたのだ。
このみ
「だ…大丈夫だよ、タカ君!
ユウ君の方が…
ほらっ!」
このみの声につられ戦いに目を戻す。丁度、雄二の渾身の一撃を喰らったたま姉が激しく吹き飛び、その勢いで岩山を2つ3つ破壊したところだった。
このみ
「やたー!」
思わず歓声を上げるこのみとは裏腹に冷静に事態を見つめる貴明…。そして未だに戦闘態勢を解かない雄二。
二人の視線の先、たま姉が吹き飛んだ場所。
次第に砂埃が消えたその中にたま姉は何事も無かったかのように微笑を浮かべたたずんでいた…。
雄二
「わりぃ、貴明…。
この勝負、勝てねぇかもしれなぇ…。」
そう呟き、再びたま姉に向かって行く雄二。
続く
グシュッ、グシュ、グシュ…
「う、あぁ、ああぁ…そんなに動かれたら、お腹、壊れちゃ…ひう、お、おっぱいも
そんなに弄らないでくださ…い…ひいい、あん、あああん」
「ほらほら、愛佳君の腰はいやらしく動いて、おまんこも絡みついて離してくれない
よ。本当におとなしそうな顔してるけど淫乱な牝犬なんだね愛佳君は」
あれから愛佳は教室に戻ると裸のまま机の上に手をついた格好で図書委員長の一物
を入れられた。それは何度も何度も愛佳の膣の中で激しく暴れ回り、図書委員長の手
は愛佳のおっぱいを鷲掴みにしてもみくちゃにしていた。
「愛佳…」
二人以外に誰もいない愛佳の耳に、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。兄が妹に語り
かけるような優しげなトーンで。明らかにソフトだけど冷たい響きの図書委員長の声
とは違う。誰もいないはずなのに?
「愛佳…愛佳ったら」
「ああ…私、もう…だめです……」
さんざん陵辱されて朦朧としていく意識の中で、愛佳は体がフワフワ浮くような不
思議な感覚にとらわれていた。そんな中でまた名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ああ…僕ももうイクよ……いつもみたいに中に出してあげるね」
「ひゃあうぅ、ああ、熱いです…でも、赤ちゃんできちゃったら……」
「……か………愛佳。ねえ、ちょっと!聞こえてる?」
「え、あ…たかあきく……きゃあ!」
昨日のことが頭の中にフラッシュバックして、上の空で本の整理をしていた愛佳の
耳に突然貴明が呼ぶ声が聞こえてきた。我に返った愛佳は目の前に図書委員長ではな
く貴明がいたことに驚いて踏み台から足を踏み外してしまった。
ドシン
踏み台から落ちた愛佳は幸い腰を打っただけですんだが、尻餅をついた時に足は広
がっていたのでパンツはしっかり貴明に見られてしまった。
「(今日は薄緑か…愛佳らしい上品な趣味だね。おっといかんいかん、パンツ見てた
こと気づかれて愛佳に嫌われたら大変だ)」
目の保養を程々でやめて、貴明は明後日のほうを向いた。今日の愛佳のパンツの色
が薄緑だったなんて知らないよ、というふうに。愛佳が立ち上がったところで改めて
貴明が聞いてきた。
「この本、どこに置いといたらいいかな?」
「え、えっと、その本は…ああ、西條八十の本ね。だったら芸術の音楽の棚に…」
「いや、確かに西條八十の本だけどさ、これ童謡の本じゃなくて『人食いバラ』って
いう怪奇小説だよ。薄幸の女の子がヒロインで、その娘が金持ちの遺産を相続したは
いいけどそれを妬まれて殺人鬼の女の子に…」
薄幸のヒロインが襲われる、というあらすじを聞いて愛佳はハッとなった。今の自
分にもまさにそれが当てはまると思えたから。
「え、怖かった?ごめんごめん。それで小説はどこの棚だっけ」
「ええっと、小説は向こうの棚に入れておいて」
「愛佳、何か最近変だよ。普段から妙によそよそしいし、時々俺が話し掛けてきたら
変にビクッってなったりして…」
愛佳は努めて冷静に答えたつもりだったが、貴明は愛佳が何かおかしいことを見抜
いていた。
「愛佳、俺たち今更遠慮する仲でもないじゃん?困ったことがあったら遠慮なく言って
くれよ。俺にできることなら何とかするから」
「え…あ、ありがとう、たかあきくん。困った時は相談するね。じゃあ私、続きするか
らたかあきくんも続きやって」
「………分かった」
そうは答えたものの、どうも愛佳の態度が不審に思えてしょうがない貴明だった。そして貴明は決意を胸に秘めた。
「(野暮を承知で、今日は作業が終わったら愛佳を尾行してみるか)」
やっと先が見えてきますた。何とか終わらせられそうでつ。
明らかに疲労の色を浮かべた表情の雄二とは対照的に戦闘が始まって以来、一度も笑みを崩さずに余裕を保つ環。
次第に広がる両者の戦力の差にさすがにこのみも動揺を隠しきれないきれない。
このみ
「そ…そうだよ!まだユウ君には界王拳があるよ!
今のユウ君なら十倍位までなら耐えられるはずだよっ!!」 不安を掻き消すかのように声を荒げるこのみ。しかし…
貴明
「…気付かないか?もう雄二は十倍界王拳を使ってるんだぞ…。」
声を震わせ、このみにそう伝える貴明。
貴明
「だからたま姉には手を出すなと、あれ程忠告したのに…雄二のやつ!」
………
環
「ほらっ!雄二、もう終わり?」
次第に強まる環の攻撃に防戦一方の雄二。
雄二
(くっ…。まずい!このままじゃあ殺られてしまう!!
こうなったら…)
続く
お前ら、何が何やらもうわやくちゃですYO
時間の流れる早さってのは一定じゃない。授業時間は長く、休み時間は短い。いやこれは本当に短いん
だけど。つまるところは楽しい時間は早く、苦しい時間は長い。一秒という絶対的尺度を持ちつつも、主観に
おいて人生に持ちうる長さというのは千差万別なのかもしれない。
なんて言い訳は言い訳になってないよなあ。
つまるところ今、電算室の扉を前にして、大遅刻の理由をどう説明するかで悩んでいるわけだ。
とは言っても珊瑚ちゃんのことだから、正直に話してもなんら問題はあるまい。問題はつまりそれが何らか
の形で曲解されたあげく瑠璃ちゃんやイルファさんに伝わった場合だ。
「貴明な〜、貴明のクラスの委員ちょともらぶらぶや〜☆」
「このえろまじんーーーーーーーーーーーー!!」
「うう、貴明様は私たちだけじゃ飽き足らないんですね」
ああ、めくるめく折檻ワールド。瑠璃ちゃんによる肉体攻撃と、イルファさんによる精神攻撃がちくちく続くこ
とは想像に難くない。晩御飯は俺だけが特別メニューになること必至。ニヤニヤとニコニコが並んで調理して
いる様を想像するだけで喉の奥が痛くなってくる。最近では「貴明のための特別メニュー」なんて口にすると
珊瑚ちゃんが欲しがることを瑠璃ちゃんもイルファさんも理解してしまってさらに性質が悪い。
いや、思ってないぞ。それはそれでちょっと楽しそうだなんてちっとも思ってないんだからな。そういうわけ
で正直に話す案も却下。
「なー」
どこぞで猫が鳴いている。
頼む、思考の邪魔をしないでくれ。いま今日一日を幸せに終えることができるかどうかの瀬戸際なのだ。
「なー」
なんかこう、やむをやまれぬ事情ってのがあるのがいいよな。雄二の葬儀に出席してました。いやいや、
すぐバレるだろ。しかしあの双子の雄二に対する微妙なスルーっぷりを見るに信じつつスルーする可能性も
捨てきれない。悪い、雄二、俺のために死んでくれ。
「なー」
ってわけにもいかないだろうな。こんなタイプの嘘はバレたときの折檻がより酷くなること請け合いだ。もう
ちょっと当たり障りのない、ありきたりな理由はどこかに転がったりしてないものか?
「なー、貴明なにしてるん?」
思考停止。ゆさゆさ。
「なー、貴明」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
「大変や、貴明が立ったまま死んどる」
「わー、死んでない死んでない」
慌てて外界に起きた現実を受け入れる。目の前で開いた扉、学生服を掴んでゆすってる珊瑚ちゃんと、そ
の頭には擬人化されたようなウサギ?のぬいぐるみ。なんとなく既視感を感じる光景だった。
「なー、貴明、突っ立ってなにしとったん?」
「いや、あの、それは」
しまった。まだ言い訳を思いついていない。とにかく委員長の名前だけは出しちゃダメだ。委員長の名前だ
けは出しちゃダメ。ダメったらダメ! なにか別の言葉でお茶を濁すんだ。
「いいん」
しまったー! 意識すればするほどつい口をついて出ちゃう現象。名付けて意識すればするほどつい口を
ついて出ちゃう現象。どーどー、待て待て、すでに出た言葉は取り消せないが敗北が決まったわけでもな
い。こういうときは機転だ。機転。
「かいの書類のコピー取りに時間がかかっちゃって」
「ふ〜ん、貴明って何の委員会なん?」
「へ?」
そういや何の委員会だっけ? 美化? 清掃? それは一緒だ。図書? 歴史が変わるぞ。ああ、こういう
とき口八丁で切り抜けられるような人が羨ましい。そう思った瞬間、廊下の向こうにちらっと見えた人物のお
かげで天啓がひらめいた。
「外宇宙調査委員会」
ありえねぇぇぇぇ! 天啓どころか悪魔の囁きだった。
「そうなんや〜。大変そうやけどがんばってな〜」
信じちゃってるし。
「で、今日はなにをしてたの?」
「サテライトシステムを使って、身体制御の実験や〜」
珊瑚ちゃんの頭の上のウサギがぶんぶんとこちらに手を振ってみせる。
「もしかしてクマ吉か?」
というとピタリとウサギの手が止まる。
「はずれ〜☆ みっちゃんは今別の実験中やねん」
友好的な横振りだったウサギの手が、抗議的な縦振りに変わる。シュプレヒコールでもしているようだ。
「もしかしてイルファさん?」
こくこく。
「だいせいかい〜☆」
「あれ? でも前にもクマ吉で同じことしてなかったっけ?」
「んー、あれはそういう目的とちゃうかってん。昨日からいっちゃん、研究所に帰ってるやろ。実はちょっと問
題がおきてもーてな」
珊瑚ちゃんの話を要約するとこうだ。だいこん・いんげん・あきてんじゃーを搭載したHMX-17型はあくまで
HMX-16型つまりリオンさんのソフトウェア別バージョンにすぎない。多少のカスタマイズは加えられているも
のの、あくまでHMX-16型のボディは、それのためのソフトウェアを乗せるために開発されたもので、17型に
あわせて作られたものではない。リオンさんを見ていれば分かるように、16型のOSもそれなりに凄いもので
あるので、それなりのスペックを持っているのではあるのだが、どうやらだいこん・いんげん・あきてんじゃー
はそれが必要とする記憶容量が桁外れに大きいらしい。いや、正確には段階的に必要とする記憶容量が
増えていっているということのようだ。
問題解決のためには「忘れる」という機能が必要になるわけだが、その線引きの仕方が難しい。ひとまず
オーバフローしないところまで記憶データを消去するにしても、どう優先順位をつければいいのかも分からな
い。参照回数が少ないデータが重要度が低いとは限らないからだ。
さらにイルファさんにとって不幸だったのは新しい人間関係がこの数ヶ月の間に一気に広がったことだ。そ
のため姉妹機にその問題が発生するよりもずっと早く、さらに対策がとれるよりも早く、オーバフローに危機
に瀕したので一度研究所に戻って、大きな記憶装置と直結することで問題を回避しているのだという。
「それでひとまずいっちゃんには遠隔操作の実験をしてもらって、問題ないようやったら、OSとか記憶装置と
かは研究所においたままで、起動させてみようと思ってんねん」
つまり脳みそはあっちで、体はこっちということかな。
「でもなー、それやと根本的な解決にはならへんのよ〜」
そう言って珊瑚ちゃんはべたーと机の上に突っ伏した。
ふむ、専門的なことは珊瑚ちゃんに任せておけば問題あるまい。そのうち解決策を思いついて、あっという
間になにもかもが元通りという気がする。我ながら買いかぶりすぎかな。でも珊瑚ちゃんのそういう能力につ
いては盲目的に信じてしまう、そんなところがある。
「そういうわけで、うちにはしばらくりっちゃんが来てくれることになったんや〜」
「りっちゃん?」
「HMX-16リオン、りっちゃん、今日から貴明のクラスにてんにゅーしてへん?」
なんですと。しかしすぐに放課後に聞こえてきた会話を思い出す。
「あれ、でも学校が終わったら研究所に帰るとか」
「はい、その予定だったのですが、実際に家庭で稼動するのも良い経験になるだろうということで、お邪魔す
ることになりました」
ちょうど話の当人が電算室にやってきた。珊瑚ちゃんがシュタと片手をあげる。
「あ、りっちゃん、やっときたんか〜」
「はい、珊瑚様、お待たせしてしまいました」
「ええよーええよー。貴明もちょうど今やってきたとこやったし、みんなでかえろ〜」
珊瑚ちゃんの提案は即時に受け入れられることになった。
「そういえば瑠璃ちゃんは?」
帰り道、珊瑚ちゃんとリオンさんとならんで坂道を降りていく。こんなところを雄二に見られたらなんと言わ
れるか分かったものではないが、今更雄二に何を言われたところで傷つく俺じゃない。それよりも今注意す
べきは背後から駆け寄ってきて、叫び声と同時に強烈なキックをお見舞いしてくる方のほうだった。
「今日は先に帰ったで〜」
「むむ、大丈夫かな?」
「なにが〜?」
瑠璃ちゃんは現在なんとかイルファさんとうまく折り合っている。というか、どうも最近はイルファさんのほう
が立場が上のような感じさえしてきた。イルファさんが心を持っていて、珊瑚ちゃんが瑠璃ちゃんのために
作った友達。だから瑠璃ちゃんはイルファさんを受け入れたのだ。そのイルファさんが一時とはいなくなって、
代わりのメイドロボがやってくるなんてことになったらまた荒れるなんてことはないだろうか?
「リオンさんがまた瑠璃ちゃんの仕事を奪うとか、そんな勘違いしてないといいんだけど」
「あ〜、それやったらきにしぃへんでええよ〜。全然大丈夫やから〜」
「え? なんで?」
「それは〜」
と、言いかけた珊瑚ちゃんをリオンさんが制した。
「すみません。珊瑚様。その先は私から言わせてください」
「うん。ええよ〜」
ん? よく分からないままに、リオンさんが立ち止まって釣られて足を止める。イルファさんにそっくりの顔
立ちに見つめられて少しドキドキする。違いがあるとすれば栗色の髪と、服装。リオンさんは胸に手を当てて
一度目を閉じてから、すぅと息を吸い込み、目を開けてじっとこちらを見つめ、
そして彼女はきっぱりと言い切った。
「――私が試験的にお使えするのは河野貴明様だからです」
果たしてリオンの真意とは、貴明の今後はどうなるのか、宇宙人はホントにいるのか?
全てを確かめるため俺達は新たな明日と向かう。
そう、俺達の旅は…………まだ始まったばかり…………
ご愛読有り難う御座いました nQjJOgyJ先生の次回作にご期待下さい
ぎゃー、一番最後の大事なとこで誤字してるーーーー。・゚・(ノД`)・゚・。
眠いときは寝ろという訓戒として寝ます。
雄二
(ちっ…貴明の言う事ちゃんと聞いておけば良かったな。
…耐えてくれよ、俺の体!!)
雄二
「うおぉぉぉぉっっっ!!!」
雄叫びを上げる雄二。と同時に大気が…大地が…雄二の気の高ぶりに呼応するかの様に震えだす!
次の瞬間、目にも止まらぬスピードで環に襲いかかる雄二。
これにはさすがの環もついてゆけず、ノーガードの顔面に強烈な一撃。
続けざまにミゾオチに雄二の拳がのめり込む!
そして『く』の字になった環の後頭部にめがけ両腕を振り落とす!!
キューーーーーン…ズドォォォン!!
凄まじい音と共に大地に叩き付けられる環。
473 :
名無しさんだよもん:05/01/20 01:25:47 ID:3ALzt8wV
>>470 いいね〜、GJ!!
続きが気になりますよ〜(*´Д`)
ガンガン書いておくれ〜
このみ
「やたー!」
貴明
「あの馬鹿っ!二十倍界王拳なんて使いやがって!
死ぬつもりか!?」
口ではそう言いながらも、満更でも無い顔をしている貴明。
貴明
「しかし大した奴だ…。本当にたま姉を倒してしまうなんて。」
このみ
「ほんとっ!ユウ君、本当にスゴイよ!ね、タカ君!!」
雄二に惜しみ無い称讚を贈る二人。
しかし雄二はまだ臨戦態勢を解いていない…。
雄二が見つめる先に居たのは怒りに身を震わす環だった!
環
「今のは…痛かったわ…。」
ゆっくりと立ち上がる環…。
左拳に力が収束してゆくのが遠目からもはっきりと見てとれる…。
そして…
環
「痛かったわよーー!!」
怒声一発!その場に居合わせた者の中で彼女の姿を捉らえる事ができた者はいなかった。
続く
雄二
「あぎっ…あっ…ががっ…わ…
割れる割れる割れる割れる割れるー!!!」
気が付けば雄二は割られている最中で、それこそ最初は必死に抵抗してみせてはいたが、今では体を細かく痙攣させるのみで環の為すがままにされている。
貴明
「くっ…くそぉー!!」
このみ
「タカ君!?だっ、だめぇ!」
貴明はこのみの制止を振り切り、友を救う為に駆け出していた!
貴明
「たま姉!その手を離せ!」
環に襲いかかる貴明
。
しかし空いた右手で貴明渾身の右ストレートを受け流すと、がら空きのボディにきつい一撃をお見舞いする環。
貴明
「ぶへはっ!」
血ヘドを吐いてうずくまる貴明。
環
「ふーん…タカ坊まで私に逆らうの?
そう…なら仕方が無いわね」
>470
確かみてみろ! by リュウ
環は少し屈み、うずくまる貴明のこみかめにそっと右手を添える。
そして貴明にこう囁く。
環
「くすくす…。ねぇ、タカ坊。良い事教えてあげる…。
あのね、私、右手が利腕なの。」
そう言うと貴明を掴んだまま立ち上がり、今度は貴明の顔を自分の口元に近付ける。そして…
環
「死なないで…ね!!」
ふんっ!と環が右腕に力を込める!!
と同時にギシギシと骨のきしみむ嫌な音が辺りに広がる!
貴明
「ゆっ…雄二ぃぃぃぃ!!!」
グシャリと音を立てはぜる貴明の頭…。
続く
環
「あらっ?タカ坊も意外とだらしないわね…」
そう言うと『貴明』だったものをゴミを捨てるかの様に放りなげる。
プチィィン!
何かの切れる音。と同時に死に体であった雄二の体から信じられない程の闘気が巻き起こる!
環
「!?」
何かを感じとった環はとっさに左手ぶら下げていた雄二を放りなげる。
雄二の体から発せられる闘気の量は止まる事を知らず今もなお膨らみ続けている。
続く
『先手必勝』
長い月日を戦いの中で過ごした環の本能がそう訴えかける!
環はその本能に従い立ち上がる寸前の雄二に攻撃を仕掛ける。
…が攻撃は当たらなかた。
そう、環が雄二に攻撃を仕掛けるスピードより速く雄二は貴明を抱え、そしてこのみの元へと辿り付いていたのだ。
雄二
「…貴明を連れて早く帰れ…」
このみ
「でっ…でも!ユウ君は?」
雄二
「俺の事はどうでもいい!早く帰れ!!俺を困らせたいか!」
怒気をはらんだ強い口調にこのみは反論の余地を与えられず、おとなしく帰宅する事にした。
環
「逃がさないわ!」
帰宅しようとするこのみを環が狙う!
しかし…
つづく
いい加減うざ
ここまできたらオチきぼん
って言うかちゃんとまとめて書けよw
続きが気になるじゃないか
あと1レスで完結させろ
俺は長編シリーズとして続くことを希望
書いてる人の良識に任せるしかないです。
投下しまつ
多分7レス分
私たちが寺所へ進学してから、もう二ヶ月近くが経つ
ようやく新しい生活にも少しずつ慣れ始め、友人と呼べる人クラスメイトもできた。
学業の方も特別問題はなく、
部活動には参加していないため平凡ではあるがそれなりに充実した学生生活を送っている。
「ちゃる〜。帰ろ〜」
よっちともまた一緒のクラスだった。
別にうんざりというわけではないが、少し飽きが来ないでもない。
けれども、昔から馴れ親しんだ人間が近くに居るという事は、
急激に変化する環境の中ではやはり心強いものがあった。
「吉田さん、山田さん、さようなら」
教室から出ようとすると、入り口近くにいた数名のクラスメイトから声がかかる。
「うん、バイバイ。また明日ね」
そう言って手を振るよっち。
「くすくす…。吉田さんってやっぱり面白いね」
「え?あ、うん、そう?何かよくわからないけど、とりあえずありがと」
「山田さんも、またね」
「うん」
「じゃね〜」
「ねぇあたしさぁ、さっき変な事言った?」
下駄箱まで来たところで、教室を出てからずっと難しい顔をしていたよっちが
「特に面白い事なんていってないと思うんだけど。挨拶しただけだし」
言った。と言うか、気づいてなかったのか。
「よっち」
「なになに?やっぱあたし無意識のうちに何か言ってた?」
「今、何時」
そう訊かれて、よっちは私の左手に視線を走らせ怪訝そうな顔をして
「え、何よ。あんた自分で腕時計してるじゃん」
「うん。でも、何時」
「何それ…えっと、今は」
制服の左袖をまくり
「あ」
声を漏らす。ようやく気づいたか。
「ごめん。あたし、今日、時計忘れてたんだった」
沈黙
「何よぉ。時計忘れるくらい誰でもすることでしょ〜!」
溜息
仕方なく、自分の腕時計を見せる。
「どれどれ」
時間を聞いたのはよっちではなくて私だということは既に脳裏から消え去っているらしい。
左手を差し出すとよっちは素直にそれを覗き込み
「あ」
声を漏らす。今度こそ気づいたようだ。
「今日、土曜日だったんだ…」
「そう。よっちは明日も学校来るか?」
「んーなわけないっしょ!」
そして頭を抱えて
「あぁ〜!はーずーかー」
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
「…道理でお腹も空いてる筈だわ」
さっきまであんな元気だったくせに。
時間と同時に空腹も思い出したらしい。
「すごい。よっちの腹時計」
「腹時計じゃな…!」
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
「腹時計」
「うぅ〜。はぁ。ダメだぁ。ねぇ、ヤック寄ってっていい?」
「仕方ない。よっちの腹時計止めにヤックへ行こう」
「あ〜!しつこ〜い!」
―もうダメだ。もう一歩も歩けない。ちゃる、わたしはここまでみたい。
「よっち」
声をかけてみるが、反応が鈍い。目がヤバイ感じに虚ろだ。
―ああ、お父さん、お母さん、チエはもうお二人に会えないみたいです。先立つ不幸をお許しください。
―あと少しだったのに、あと少しで助かったのに。どうして…
「よっち、元気だす」
「どうして今日に限ってヤックが休みなのよぉ…」
普段はそこにあるはずのないものが目の前に立ちふさがっている。
忌々しき、シャッターという名の壁の前には
『店内改装のため臨時休業いたします』
の張り紙。
「うぅ…もう一歩も動けなぁい」
そう言うと、その場にへたり込んでしまう。
そんな事を言われても、この辺りにはヤック以外のファーストフード店は無い。
どうやって子の駄々っ子を動かしたものかと考えていると、後ろに人の気配がした。
振り向くと
「あれ、よっち、ちゃる。どうしたの?」
このみだった。
「このみ、久しぶり」
よっちは返事をしない。まるで屍のようだ。
「うん。ひさしぶり、ちゃる。ねぇ、よっちどうしたの?」
「よっちは名誉の殉職」
「え?よっち死んじゃったの!?」
屍が返事をする。
「…人の事を勝手に殺すなぁ」
「あ、よっち生きてた。よかったぁ」
「よくないぃ…。死んでた方が楽かも…」
「ちゃる、よっち本当にどうしたの?」
「よっちは…」
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
沈黙
苦笑
「あはは…お腹すいてたんだ」
「うぅ…本当にもうダメかも」
「あ、そうだ。今日調理実習で作ったクッキーがあるよ。食べる?」
「え?本当!?うんうん。食べる食べる!」
急に元気になる。現金だ。
「はい。ちょっと焦げちゃってるけど」
「いやいやいや、全然OKOK。むぐむぐ…うん、おいしい」
「よっちも食べる?」
せっかくの申し出なので頂く事にする。
少し香ばしいけど、甘すぎないしサクサクしていていい感じだ。
「うん。おいしい」
「えへー。良かった」
「うんうん。やっぱ旦那さんに毎日料理作ってると違うねぇ」
「だ、旦那さん!?」
「くぬくぬ。幸せそうにしおってぇ」
そういえば
「このみ、旦那さんは?」
「ちゃるまでそんなこと言う…」
「むぐむぐ…そういえばセンパイいないねぇ。一緒に居なくていいの?ラブラブさん」
「むぅ〜。よっち、なんか今日ちょっと意地悪だよ」
ふて腐れるこのみ。
しかし、当たり前だがこのみも少しずつながら成長しているようだ。
少し前のこのみなら『ラブラブ』なんて言われても顔色一つ変わらなかった。
見ていて微笑ましいものがあるが、すこし気の毒なので助け舟を出す事にする
「よっちはさっき大恥かいたから」
「え、なになに?」
「うん。あのね…」
「わー!わー!わーーーーー!余計なこと言うなぁ!」
予想通りというか何というか、よっちは大声を上げて私の言葉をさえぎろうとする。
「えー。そんな、隠し事なんてずるいよー。」
「なんでもない。隠してない。ずるくない。」
「む〜。ずるいよぉ」
「ずるくないの!」
「それで、このみ。先輩は?」
このままだと収拾がつきそうにないので、話題を別の方へ持っていく。
「え?あ、タカくんは修学旅行だよ。帰ってくるのは今日の夕方」
だから一人だったのか。また何かあったのかと少し心配していたからほっとする。
「そっか、修学旅行かぁ。じゃあこのみ、久々に今からどこか遊びに行かない?」
「あ、うん。えっと…ごめんね。今日はちょっと」
「えー。何か用事?」
「うん。タカくんに久々に会えるから、ご馳走の準備をしようと思って」
当然のように言うこのみ。
前言撤回。このみはまだまだ子供のようだ。自分の行動の意味するところが良くわかっていないフシがある。
「そっか。それじゃ仕方ない。先輩においしいご飯食べさせて久々の味に感動させちゃえ」
「えへ〜。うん、頑張るよ。それじゃあ、このみはもう行くね」
「バイバーイ」
「ばいばい」
「うん。二人とも、またねー。タカくんに二人のお土産も頼んであるから楽しみにしててね〜」
そう言い残してこのみは走り去ってゆく。また足が速くなったようだ。
「このみとセンパイ、うまくいってるみたいで良かったよ」
ヤックを諦めて近くのファミレスへと向かう途中、突然よっちがそんな事を言い出した。
「いやね、あの時、私は先輩に変な事聞いたせいでこのみ泣かせちゃったでしょ?
変な事になったらどうしようってずっと心配してたわけよ」
直接的な原因ではないとはいえ、やはり気になっていたようだ。
「いやしかし、恋愛ってのは大変だね。あたし、当分恋愛はしなくていいや」
当ても無いくせに。
「もう限界。早くいこっ」
そう言って走り出す。空腹で限界の割には走るだけの体力は残っているようだ。
何でこんな事を言おうと思ったのかは、後で考えても全く分からない。
このみの話に少し影響されたのかもしれない。
だが、この時はなんとなくそう言ったほうがいいような気がした。
走りながら
「私も」
「えっ?」
「私も、恋愛はいい」
「…なんで?」
「私が誰かと付き合ったら、よっちは一人ぼっち。可哀想」
「なにー!?あんたにそんな事心配されなくていい!」
「そう? だって、よっちは恋愛しないって今言った」
「ぬぐ…こっちだってあんたの事…」
そこまで言うとよっちは黙り込む
「何?」
「なんでもない。それと、そんな理由だけで恋愛しないのは止めときないよ」
「それだけじゃない」
「なによ」
理由は他にも色々ある。
女子校に通っているというのもその一つだし、男の人と付き合うという事が良くわからないというのもある。
けれど
一番の理由は
「よっちと一緒にいる事が、今一番楽しい事だから」
と言うわけで、毒にも薬にもならないよっち&ちゃるSS終了です
結局何書きたいのかわからない文章になったなぁ…最後なんかグダグダだし
やっぱ異性なしライバルなし喧嘩なし友情ありってのは難しいですね…
とりあずほっとくとよっちは由真に、ちゃるはるーこになるのだけは何とかしようと思う
次は何書こう。やっぱ鬱系の方が書きやすいや。
タマ姉失恋SSか郁乃嫉妬SSのどっちかにしようかな
郁乃嫉妬SS+雄二ちょっかいをかけるのあわせ技とか
ほんわかしててイイヨイイヨ
郁乃SS書いてヽ( ゚д゚)ノクレ
>>500 あれだけ書けばミスも当然
これからも頑張って下さいノシ
>>496 よくやった、GJ!
こういうのを見ると、友情っていいもんだなぁと思うよ。
>>501 おまいが書けよぅ( ´∀`)σ)Д`)
ほの百合だな
イイヨイイヨ―
>>256の続きです。
しかし、まだ完結しておりませんorz
風邪と熱が憎い…
だが、顔を真っ赤にして俯いたところで、自分の視界に入ったものに俺は気付いた。
俺が触る前からかなり濡れていたこのみのズボンが、さっき溢れ出た何かで一層ぐしょぐしょになっていた。
このみのズボンに直接手を入れて、そこを触ったので、まだこのみはズボンを履いたままだった。
誘われるようにズボンに手をかける。このみはさっきの陶然とした表情のまま、反応する様子はない。
そのまま、ズボンだけを脱がせる。
すると、ようやくこのみは意識を覚醒させた表情でこっちを見た。
そして、このみは顔だけでなく、体を桜色に染めて
「タカくん…いいよ……」と酷く恥ずかし気に言った。
それを聞いて、俺は自分でも情けないと思うほどに緊張して、このみのショーツに手をかけた。
普通に下ろしたのだが、ショーツはたっぷり濡れていたので、股布がそこに張り付いていた。
それでもそのまま下ろすと、にちゃりとした糸を引きながらショーツはそこから剥がれた。
そして現れたものを見て、俺は息を飲んだ。
このみのそこには一本の線が走っていた。茂みはまだ薄く、線を隠すまでに至ってはいない。
俺がここにいることを本気で疑ってしまいたくなるほど、淫らな光景だった。
血が頭に集中しすぎて視界がぐらぐらと揺れた。
さっきのように暴走しそうになったが、なんとか押し留めた。
このみの表情を伺おうと顔を見ると、目は開いてはいるものの、そっぽを向いていた。
「うぅ〜…恥ずかしいよ〜……」
体を桜色に染めたまま、このみが言った。
俺は答えずに、このみの裸を見続けた。実際、目が離せなかった。釘付けになっていた。魅了されていた。
508 :
名無しさんだよもん:05/01/20 20:04:46 ID:WhAXF26E
「……このみだけ裸なんてやだよ。その…タカくんも脱いでよ……」
「…………えぇ!?」
服を脱ぐって!?い、いや、このみはもう裸同然だし、脱いでない方がいけない……か。
俺は自分も服を脱がなければならないということを考えていなかったのだ。
しかし、このみの言うとおり、俺がまったく脱いでいないのは不公平と…思う。
「わ、わかった、俺も…脱ぐよ」
顔を合わせながら服を脱ぐのは恥ずかしいと思ったので後ろを向いて、服を脱ぎ始めた。
ふと、視線を感じて後ろをちらりと見ると、このみが体を起き上がらせて、女の子座りをして俺の様子をじっと眺めていた。
しかし、俺は慌てて首の向きを前に戻した。
このみはパジャマの胸元をはだけさせたままでピンクのものがちらちらと見え隠れしている上に、もちろん下は何も付けていない。
くるぶしのらへんに脱がせたと思っていたはずのショーツがくちゃくちゃになってひっかかっていた。
この日、もう何度目になるか判らない理性の暴走が起きそうになった。
少し混乱しながらも服を脱ぎ終えたが、そこで俺は大混乱に陥った。
今まで理性が飛ばないまでも過剰な興奮をしてたせいでまったく気付かなかったが、股間のモノがとんでもなく屹立していたのだ。
「タカくん、どうかした?」
服を脱いだにも拘らず、自分の方を向かない俺にこのみは疑問を抱いたのか、不審気に話しかけてきた。
「ちょ、ちょっと待て!」
「もう、タカくんだけこのみの裸を一方的に見るなんてずるいよ。タカくんもこのみに裸見せてよ」
そう言って、このみは俺の前に回り込もうとする。
「だから、ちょっと待っ――」
すんません、ここまでです。
遅筆も憎い…onz
「な、なんだってーーーーーーーーーー!!」
目の前で閃光手榴弾でも炸裂したかのような衝撃だった。目の前が真っ白になるという現象が現実のも
のとして感じられることなんて滅多にあるものじゃない。突発的且つ突拍子も無い出来事への耐性はそろそ
ろできあがってきたと思い込んでいたが、まだまだ未熟だったようだ。
「待った待った、さっき珊瑚ちゃんはイルファさんの代わりにうちに来ることになった、って言ってたよね?」
「言った〜。だってうちは貴明のうちでもあるやろ。……ちがうん?」
斜め下から覗き込んでくるその顔には、砂の一粒ほどの疑問すら浮かんでいない。そしてその表情を見て
いると、そうだったかもという気になってくる。確かに最近は学校が終わると珊瑚ちゃんの家に直帰して夕食
をご馳走になってから家に帰って寝る日々だ。こうなると河野家というものは寝るためだけに存在しているよ
うなもので、実質的な生活拠点はすでに姫百合家にあると見て間違いない。
とは言っても河野家の存在は理性を肉体に縛り付けておくための最後の砦である。そこが崩れてしまえば
揺られ揺られに流されていくだろう自分の意思の弱さは自分で認識している。だからあくまで河野貴明の家
は河野家なのだ。
「だーめ、そりゃ珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも家族みたいなものだって思ってるけど、やっぱり俺の家は俺の家
だよ。だから毎日ちゃんと帰ってるだろ」
「毎日やない〜。週末なるとうち泊まっていくやん。それに……家族みたいなものちゃう」
ぎゅっと珊瑚ちゃんが腕にしがみついてきた。
「貴明はうちらの家族や〜☆」
ぐらぐらと震度6くらいで最後の砦が揺れるのを感じた。やばいです、司令官、早急な耐震補強を。
必死に脳内砦の補強作業に入った俺の無言を珊瑚ちゃんはどう解釈したのか、不安そうな顔で覗き込ん
でくる。
「それとも貴明はりっちゃんがおんのいやなん?」
その聞き方は卑怯だ。嫌なんて言えるわけがなくて、首を横に振る。
「それやったらええやん。貴明とりっちゃんもらぶらぶや〜☆」
満面の笑みに脳内砦は全面的一時降伏、再建の目処は立っておりません。
「驚かせてしまったようで申し訳ありません。でも私が河野様のところでお世話になるのにはちゃんとした理
由があるのです」
リオンさんがそう話しかけてきたのは坂道の終わろうとしているころだった。隣では珊瑚ちゃんはうさぎイ
ルファさんと謎のボディランゲージで楽しそうに会話を成立させている。このコミュニケーション手段の問題は
当人たち以外が見ているだけでは一切その会話内容を理解できないところだ。
「理由?」
「はい。私たちのようなメイドロボが実際に社会に受け入れられることができるかどうかの実験として、また
私たちの経験を増すためとして、以前から学校への短期編入は行われていましたが、今回もっと実務に則
した形での経験を持つのもよいのではないかということになりました。しかし珊瑚様、瑠璃様はすでにメイド
ロボとの生活に慣れてしまっていて、実際に私たちを購入されると予想される方とは違った環境にありま
す。ですが、その一方せっかく珊瑚様のいる学校に編入しているのですから、その身近な人物にモニターに
なっていただければサポートも得られやすいということなのです」
なるほど。ようやく納得のいく説明を聞くことができた。つまりこれは珊瑚ちゃんのコネクションによるおこぼ
れってところのようだ。それなら素直に受け取っておこう。どうせ短期のことだし。
「珊瑚様は河野様の許可は取ってあると仰っていたのですが、どうもいつもの茶目っ気が出てしまったよう
で申し訳ありません」
「あー、いいよいいよ。2週間だけだろ。よろしく。リオンさん」
「――是非とも長いお付き合いをと言いたいところですが――」
「え?」
ぼそりとリオンさんが言った言葉はよく聞き取れなかった。
「私もよろしくお願いしますと言いました。河野様」
そういってリオンさんはにっこりと笑って右手を差し出してきた。その手を握り返す。イルファさんとは違うメ
イドロボ。でも、なんとなく主従というよりは友情のような、そんな関係になれればいいと思った。
「貴明とりっちゃんなかよしさんや〜☆」
心の底から嬉しそうに珊瑚ちゃんが笑う。うさぎイルファさんもどことなく嬉しそうだ。
「早速のお願いで申し訳ないのですが、貴明様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
少し顔をうつむけて、華奢な指をもじもじと動かしながら、照れくさそうにリオンさんは言った。
「様っていうのはちょっとこそばゆいかも。河野様ってのもさっきから訂正したくてうずうずしてたし」
「でも私はメイドですから」
ぷぅと頬を膨らませるリオンさん。自然な仕草にもほどがあるぞ、来栖川エレクトロニクス。
「私は貴明様とお呼びしたいのです」
職業意識というところだろうか、それともこれまでのほんの何時間かの間にそれだけ親密な何かをリオン
さんが感じ取ってくれたということなのだろうか。どちらにしても無理に拒否するようなことでもない。
「分かった、呼び方はリオンさんに任せるよ。でも学校ではやめてくれ」
「はい。貴明様。学校ではちゃんと河野さんとお呼びしますね」
状況認識能力も二重丸。だいこん・いんげん・あきてんじゃー存在の意味の危機か。これは。イルファさん
と比べてまったく遜色がないぞ。
「ところで私は貴明様のメイドとして、主人に関して知っておきたいことがあるのですが、よろしいでしょう
か?」
「あ、うん。何でも聞いてよ」
「それでは遠慮なく。貴明様は随分と女友達がいらっしゃるみたいですね」
ぶぶーーっ!
口の中の空気を全部吐き出した。何かを飲んでなくて本当によかった。どうにも今日は不意打ちが多い日
だ。最後の最後まで気を抜かないように気をつけよう。
「お昼は柚原このみさんと向坂環さんとお食事。貴明様の分は向坂環さんが愛情をたっぷりと込めて作られ
たお弁当」
リオンさんは先ほどから変わらないニコニコした笑みを見せている。見せているにも関わらず、何故か周囲
の温度が何度か下がったような気がした。
「放課後には書庫で小牧愛佳さんと閉じこもること54分と29秒コンマ06」
「貴明はぎょーさんラブラブやなぁ」
うさぎイルファさんがこくこく。
「私は私の主人に節度ある態度と行動を期待しているのですが、その期待を今後とも持ち続けてもよろしい
のでしょうか?」
それはなんというか、言っちゃ悪いんだけど、珊瑚ちゃん関係者から発されたとは思えないような、しごく
まっとうな意見だった。最近は瑠璃ちゃんもすっかり毒されてきたからなあ。しみじみ。とは言っても誤解は
しっかりと解いておく必要がある。
「このみは妹みたいなもんだし、タマ姉だって本当の姉のように思ってる。委員ちょ、小牧さんとは以前の仕
事の話をしてただけだ。だからリオンさんが心配するようなことはなにもないよ」
「本当ですか?」
「なんだよ。疑り深いななあ。本当だって」
「ではもうひとつ質問させてください。先週の日曜のことです。正確には日曜の午前0時47分ごろから始
まった一連の貴明様の行動についてなのですが――」
「だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! すとっぷすとっぷすとっぷぅぅぅぅぅぅぅぅ」
その時間帯には思い当たることがあった。あったというか、それ以外にありえない。うさぎイルファさんも当
然のように思い当たったらしく、珊瑚ちゃんのカバンの中に逃げ込んでしまった。珊瑚ちゃんはわけが分から
ないようできょとんとしている。
リオンさんの目がこちらをじっと見つめている。顔は笑ってるんだけど、なんか目が笑ってないよ。目が。い
やぁ、こんな人間らしい表情までできるんだなあ。リオンさんって。イルファさんの腹黒さといい勝負だ。
しかしなんでバレたんだろうと、考えて思い出した。今イルファさんの本体は――増えすぎた必要記憶容
量の問題で――研究所に戻っている。そこで一度は捨てるべき記憶がないかのチェックは当然行われて然
るべきであり……。
バレて当然だー! やばいやばいよ、人生の暗部公開、穴があったら入りたいとはまさにこのことだ。
「……あの、怒ってます?」
「いいえ、私が怒るようなことですか?」
頬がリスみたいに膨らんでますけど、リオンさん。
「しかしそれなのによく研究所の人はうちにリオンさんを預ける気になったなあ」
ビバ開き直り。今日二度目の開き直りだ。そのうちアジの開きみたいに開きっぱなしになるかもしれない。
「いえ、研究所の方は誰もご存知ありませんよ」
「へ?」
「該当データはイルファの記憶データの中でも特に深層部分、本人がプライベートを主張するエリアに存在し
ていました。研究所の方々は私から見ると必要以上に私たちメイドロボを人間扱いする傾向があるように思
われます。見ることは可能でしょうが、見ていないと思います」
「じゃあなんでリオンさんは知ってるのさ」
「自分の主人となる方に関する情報を知ろうとするのはいけないことでしょうか?」
程度の問題があると思われます。はい。とは思ったものの、リオンさんの語気の強さになんとなく言い返す
ことができない。珊瑚ちゃんと同じでまったく悪気がないのだろう。なんてったってすぐ横に分身とはいえイ
ルファさんがいるというのに、堂々と言っちゃうくらいだ。
「いや、まあ、確かに相互理解は大切だよな」
「はい。ですから貴明様も私に関して分からないことがあれば、何でも聞いてくださいね」
「おかえり〜!」
姫百合家に足を踏み入れると、台所のほうから元気な声が出迎えてくれた。
「ただいま〜☆」
「ただいま」
「お邪魔いたします」
三つの声がそれに返事をする。
靴を脱いで上がり込めば、後は勝手知ったるなんとやら。カバンを置いて、首元を緩めればもうくつろぎ
モード。珊瑚ちゃんは別のソファでうさぎイルファさんと不可解なダンスの続きを始めている。どうやら記憶選
別に関する真剣な討論ではあるらしい。端から見ていると完璧に未開地部族の霊的な踊りだ。話が専門的
なものになればなるほど、そのボディランゲージは複雑さを増すようであった。
リオンさんは台所の瑠璃ちゃんのところに顔だけ出すとそのまま手伝いに入ったようだ。むむ、予想以上
の受け入れっぷり。瑠璃ちゃんから罵声のひとつでも飛ぶかと思っていたけど、いきなり仕事を任せるくらい
に瑠璃ちゃんも大人になったということか。
そうか、瑠璃ちゃんも大人に……。
……まさかイルファさん!
なんてったってイルファさんだからな、ありえないとも言い切れないぞ。そうだよな。あのイルファさんがもう
2ヶ月以上なにもしなかったとは思えない。それは身を持って知っている。あのイルファさんに関しては押さ
れると弱い瑠璃ちゃんのことだ。それほど抵抗もできなかったに違いない。
そうなるとやはりイルファさん攻めだったのだろうか。意外と瑠璃ちゃんはいざというときは受身だからな。
でもイルファさんの性格からすると、案外うまく口八丁手八丁で瑠璃ちゃんから攻めなくてはいけないような
状況を作りあげないとも限らない。いや、でも流石にそんな状況はないか。
「ばかあきーーーーーーーーー!!」
ずがん!と、脛から走る衝撃が痛みに変わる。
おおうおおう、一瞬の思考停止。脛を押さえて床にうずくまってると、リオンさんが駆け寄ってきて、心配そ
うにおろおろしている。
「だ、大丈夫ですか、貴明様」
とは言っても頭がちかちかして、何がなんだか良くわからない。理解できたのはいつものごとくいきなりの
瑠璃ちゃんによる鉄拳制裁が発動したということだ。原因は不明。
「大丈夫や、リオン、どうせ痛がってる振りしてるだけやから」
そんなわけあるかー! 弁慶だって泣いちゃうんだぞ、ここは。抗議を示そうと顔をあげる。痛みで思考能
力が減衰している。だから思ったことがそのまま口に出た。
「白と水色」
どかん! 振り下ろされた足の裏がモロに顔に突き刺さった。
「たかあきのすけべーーーーー!! へんたいーーーーー!!」
どしんどしんと足を踏み鳴らして瑠璃ちゃんが去っていく。
「あたた」
「今のは貴明様が悪いですよ」
そっと目の上にリオンさんの手のひらが乗せられる。あ、蹴られて顔が熱を持っていたからか、ちょっとひ
んやりしてて気持ちいい。顔の痛みが引いていくと、何故か一緒に脛の痛みも和らいでいった。痛みを痛み
で相殺する療法か、ただの気のせいか。多分後者だ。
「で、結局瑠璃ちゃんはなんだったの?」
「お食事の準備ができましたと瑠璃様は何度も貴明様にお伝えしていたのですが、お返事がいっこうにな
かったので業を煮やされたようです。何か大切なことでもお考えだったのですか?」
「いや、なんでもないよ」
まさか瑠璃ちゃんとイルファさんの濡れ場を妄想していたなどとは口が裂けても言えまい。
「いただきます」
今日の夕飯の献立は鮭の塩焼き、里芋とイカの煮付け、タコとキュウリの酢の物だったのだが、
「ねえ、聞いてもいいかな?」
「なんや?」
「どうして俺の鮭だけ身がぼろぼろになってるの?」
そう、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんの鮭は型崩れせずにきれいに焼けているにも関わらず、俺の分だけ妙に型
崩れしている。これは新手のいじめか。
「魚は殿様に、餅は乞食に焼かせろってゆーやろ」
と、知らないことわざが飛び出してきた。なんだそりゃ?
「はぅ〜、焼き加減がどうしても気になったものですから〜」
部屋の隅ではリオンさんがすっかりしょげ返っている。あ、そうか、そういうことなのか。
「これ、リオンさんが作ったの?」
「は〜い〜、うう、今後の課題として精進します」
「魚はな、片面をしっかり焼き上げてからゆっくり一回裏返すだけでええんや。モチみたいにちょこちょこいじ
くっとったらあかんねん」
なるほど。そういうものなのか。ただグリルで焼くだけだと思ってたけど、それなりにコツがあるんだな。し
かし瑠璃ちゃんとリオンさんがまるで嫁と姑だ。
「ははっ、レシピが完璧だからといって料理がうまくいくとは限らないんだな」
「笑わないでくださぃ〜」
崩れてほぐれた身を箸でつまんで口に放り込む。
「うん、見た目はともかく美味しいよ」
嘘じゃなかった。まあ売られてた切り身を焼くだけなんだし、味付けうんぬんが前面にでる料理じゃないか
ら当然と言えば当然なのだが、それでもリオンさんの表情がぱぁーと明るくなる。
「私なりに愛を込めて作りましたからっ!」
満面の笑みで何故か両手でガッツポーズ。
「愛とかよくわからないんじゃなかったっけ?」
「私の持つデータベースから該当しそうな行為を、愛を込めると表現してみました」
むむ、急に一抹の不安が頭をよぎる。データベースにおける愛を込めるって、セーターに髪の毛を織り込む
ような行為、じゃないよな。まさか、な。
「ぐ、具体的には?」
「お魚が焼けるのを見ながら、貴明様がどんな風に食べてくださるだろう。美味しいって言ってくださるだろう
かと演算していましたら、ついつい手が出てしまって」
再びがっくり首をうなだれるリオンさん。その反面こっちは安心する。良かった。常識的な解答だ。
「そういうことならありがたくいただきます」
「む〜」
瑠璃ちゃんに骨を抜いてほぐしてもらった鮭をつまみながら、珊瑚ちゃんがじーっとこちらを見ている。あ、
あの目はなんか久しぶりだ。
「ウチもりっちゃんの愛情ご飯たべる〜」
「だ、ダメですっ。これは私が初めて貴明様のために作ったものなんですから!」
意外や意外なリオンさんの強固な抵抗。
「そやそや、さんちゃんのご飯にはうちがたっぷり愛情注いどいたから今日はそれで我慢しとき〜」
「う〜、つまらんなぁ」
さらに意外なのは瑠璃ちゃんが全面的にリオンさんの味方についてるということだ。
「なんや貴明、うちの顔になんかついとるんか?」
「いや、イルファさんの時にはあんだけごたごたしたのに、リオンさんとはあっさり仲良くなっちゃったんだな
あと思って」
「ああ、そんなことかいな。だってリオンはうちの立場を脅かすような存在やないもん」
「うん?」
「リオンがご飯を作るのは貴明のため、掃除をするのも貴明のためって言うんやったらウチがどうこういうこと
ちゃうやろ」
瑠璃ちゃんは肩をすくめて冷笑する。あ、これはなんかたくらんでるときの顔だ。とりあえず探りでも入れて
みようかと思ったそのときに、
「貴明とりっちゃんもラブラブや〜☆」
珊瑚ちゃんのいつもどおりに能天気な一言で、追及の言葉はあいまいに遮られて、ひとまずなかったこと
になった。まあ少なくともケンカされるよりはよっぽどいいよな。
食事が終わり、後片付けも瑠璃ちゃんとリオンさんの手によって仲良く進められ、いつもどおりの食後の団
欒タイムがやってきた。とりあえず親睦会ということでゲーム機を出してきて、リオンさんの格闘ゲームの腕
前でも見てみようということになったのだが、
「だーーー、勝てねぇ」
現在のところ対戦成績31勝0敗がリオンさんの対戦成績であった。負けたほうがコントローラーを譲る方
式で、俺、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんが順繰りにリオンさんに挑むのだが、まったく歯が立たない。リオンさん
は別に強いキャラを使ってるというわけでもハメをしかけてくるというわけでもない。というか、本人の弁が本
当であれば、このゲームを触ること自体が初めてだという。
「ルール変更を申請する。勝った方が交代ってことで」
「そんなことより、貴明」
くいっと瑠璃ちゃんが時計を指差す。いつの間にか時計は8時過ぎを指していた。通例ならばそろそろお
暇する時間帯だ。
「あ、つい長居しちゃったな。そろそろ帰るよ」
「え〜、泊まっていけばええのに〜」
「「却下」」
瑠璃ちゃんとハモってこれを言うのもお約束。
「つまらんな〜」
「はい、それじゃあ珊瑚様、片付けましょうね」
テキパキとリオンさんがゲーム機を片付け始める。その間にカバンを持って玄関へ。
「それじゃ珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、リオンさん、また明日」
「「「ええっ!?」」」
三重和音が響いてきた。
だだだっと走ってきたのはリオンさんだ。掴みかからんとする勢いで詰め寄ってくる。あっという間に玄関ド
アに追い詰められてしまった。
「私のことはつい忘れてたんですよね? ね?」
「貴明、りっちゃんにイジワルしたらあかんよ〜」
「はぁ〜、まったく」
え? え? どういうこと? これはどういうこと?
「貴明様、私は貴明様のメイドなのですよ?」
「う、うん」
「貴明様がお休みになるまでその身辺についている義務がありますし、朝のお世話だってたくさんありま
す! 当然、貴明様のご自宅までついていきます!」
「え、えええっ!? で、でもそれって流石にやばくない?」
「なにがですか? 当然のことだと思いますけど」
きょとんと尋ねてくるリオンさん。
「いや、ほら、年頃の男女が一つ屋根の下に二人きりとか」
「貴明様が紳士的な方であればなんら問題はないと思われますが。それとも違うのですか?」
イルファさんと何があったか知ってるくせによく言う。こちらとしてはそのイルファさんと同じ顔をしているメイ
ドロボが一つ屋根の下で寝るということになったら、それだけで眠れなくなりそうだ。なまじ、その服の下が
どうなっているのかを知っているだけに。
あ、やば、考えただけで顔が赤くなってきた。
「あ、貴明がまたすけべぇ〜なこと考えとる。やめとき、リオン。Hぃことされるだけやで〜」
「瑠璃ちゃん、Hぃことってなにするん?」
「さんちゃんは話がややこしくなるから、今は黙っとき」
「あう〜瑠璃ちゃんがいじめる〜」
「とにかく私は貴明様のことを信じておりますから、絶対に! ついていきます!」
これはダメだ。押し切られる。次の断る口実を考えながら、心のどこかではもう白旗を揚げていた。
「絶対についていきますから!」
とほほ。これからどうなっちゃうんだろ。
途中で本文が長すぎます、くらっちまったい。
今回一番苦労したが夕食の献立は何にしようかと、ネットでレシピサイトを延々探し回ったことだったりす
る。こういう一見どうでもいいところに一番時間を食うのは悪い癖。さらにどうにも双子キャラが掴みきれない
ですヨ。貴明がすでにイルファさんとは肉体関係を持っているという設定はさりげなく第一話から言及されて
います。
しかし想定外に長くなってる。ミルファのいる生活みたいにこっちも別のところにアップしたほうがよかった
かなあ。
>>510 〃〃∩ _, ,_
エ ロ マダ───⊂⌒( ゚∀゚)───ッ!?
`ヽ_つ ⊂ノ ジタバタ
リオンタン
(;´Д`)ハァハァ
527 :
名無しさんだよもん:05/01/20 22:09:07 ID:3ALzt8wV
>>510 >>524 お疲れ様です。
お二方共にいいペースで執筆してくれているので、
楽しみに待っている俺としては、たいへんうれしい限りです(*´Д`)
ミルファたんもリオンたんも、イイ!(*´∀`*)
>>527 二次創作を書くのは数年ぶりで、あんまりにも楽しくて筆が止まりません。
たすけてー。ちんじゃう。ちんじゃうよー。
>>528 リオンさんが萌えなのはいいんですが、これだとHMX-17系とかわらなすぎなので
16シリーズ独自の長所と17系に及ばない点みたいなのをもっと掘り下げると
いいかとおもいますた。
貴明がイルファさんに喰われちゃったという設定はアリだと思う
>>529 そうですね。がんがってみます。
というわけで、すでに第5話が書き終わってるので今から推敲してきまふ。
夕闇の中をリオンさんと歩く。一日のうちに怒涛に環境が変化することはこれまでにも何度かあった。例え
ば中学から高校に入学したときや、両親がいなくなったとき、双子姉妹と出会った日もそういう一日に挙げら
れる。それにしても今日のはこれまでのなかでもとびっきりだ。
朝には転校生としてやってきたメイドロボが、今は自分を主人と呼んで隣を歩き、今二人で家に帰ろうとし
てる。とびっきりもとびっきり、上等すぎて感覚が麻痺しているに違いない。
「そういえば、さ」
「はい。なんでしょうか。貴明様」
「リオンさんは嫌じゃなかった? 急に見知らぬ人のところに奉公に出されたわけだし」
ぐっ、と、胸の前でリオンさんが祈るように両手を握り締めた。少しうつむき加減のその表情は苦しげで何
かを押し隠しているように見える。なんだろう。不味いことを聞いちゃったんだろうか。
「貴明様は、私が貴明様に命令だから仕方なくお仕えしているように思われているのですか?」
「いいや、そんな風にはとてもじゃないけど思えない。でもメイドロボは主人を選べないじゃないか。必ずしも
大事にされるとは限らないし、どんな人のところに行くことになってもやっぱり好意を持っているような、そう
いう行動を取らざるを得ないかなって思って」
そういう意味でもリオンさんはとても優秀だと思う。リオンさんが向けてくれる好意は本物以上に本物に思
えるからだ。もしモニターに雄二が選ばれていれば、今頃は脳髄から末端神経までどろどろに溶け切ってい
るに違いない。
「あれ? リオンさん?」
ふと気づくと隣にリオンさんが居なくて振り返る。すると10メートルほど後ろに、両手を祈るように組んだま
まのリオンさんがそこで静止していた。
「おーい、リオンさーん?」
「あ、貴明様。申し訳ありません」
はっと顔をあげるとリオンさんは小走りに寄ってくる。
「私は貴明様のところにご奉仕に来ることができて幸せですよ。嫌だなんてちぃっとも思ってません」
にっこり。この微笑みには今日一日ですっかり参ってしまった。
「そっか、それを聞いて安心したよ」
夜空には星。地上には街の灯り。街路にはふたりだけ。住宅街に人気はない。
「あの、貴明様……」
リオンさんが両手をもじもじさせながら、少し頬を紅潮させる。
「なに?」
「あの、その」
うつむいた耳まで真っ赤になっている。おそるべし来栖川エレクトロニクス。
「手を」
「手を?」
「手を繋いでいただけませんか?」
ずばっ! とリオンさんの手が伸ばされる。
「え? あ……う、うん」
かぁ、と顔に血が登ってくる。たぶんリオンさんに負けず劣らず真っ赤になっていることだろう。汗ばんだ手
でリオンさんの手を掴む。途端に二人して無言になって歩き出す。
「――夢、だったんです」
もうすぐ家にたどり着く、というところになってリオンさんがぽつりと言った。
「ご主人様と手を繋いでお家に帰るんです。そして家に帰ったら――」
リオンさんの手を少し引いて足を止めさせた。もう家についていた。
「ただいまー」
誰もいない家の玄関の鍵を開けて入るときも、つい言ってしまうのは何故だろうか? でも今日は、
「おかえりなさい。貴明様。で、ただいま戻りました。貴明様」
「うん。おかえり。リオンさん」
こんな何気のないやりとりが暖かい。
「それでですね、貴明様、お食事になさいますか? それともお風呂になさいますか?」
ちょっと悪戯っ子ぽい笑みでリオンさんが尋ねる。
「食事は食べてきたから、風呂がいいな」
「はい、今すぐ用意しますね」
そういってパタパタと奥に消える。雄二じゃないけど、いいな。こういうのって。とりあえずカバンを部屋に置
いてくるかと、階段を登ろうとしたら、奥にいったリオンさんが戻ってきて扉の影からにゅ〜っと首を突き出し
ている。
「たかあきさまぁ〜お風呂はどこなんでしょうかぁ」
あらら、言われてみれば家の中を案内するのが先だったかな。
「こっちだよ」
そう言ってとりあえずお風呂を最優先に、家の中のだいたいの配置を言って聞かせる。
「わっかりました。任せてください。私、記憶力はいいほうなんですよ」
今日二度目の両手ガッツポーズ。
いや、ロボットが記憶力悪かったら故障だろ。それは。
そして10分後――
「貴明様ー、お湯加減は如何ですかー?」
脱衣所から響いてくるリオンさんの声。
「ああ、ちょうどいいよ。ありがとう〜」
「はい、こちらにお着替え置いておきますね」
「何から何まで助かるよ〜」
「いえいえ、まだまだ何から何までは終わってませんから〜」
なんですと?
と、同時にごそごそと動く脱衣所のリオンさんのシルエット。両手を腰の辺りに当てて?
ぱさりとシルエットの中央下付近から滑り落ちる台形っぽい影。
どええええええええええ!!?
「ふんふん〜〜♪」
なにやら鼻歌まで聞こえてきますが、視線はもうシルエットから離れない。続いて両手が上に引き上げら
れると同時に上半身のディティールが変化する。やわらかい曲線がシルエットで表現される。
ぱさり。
そして、ごくり。
両手が背中に回されたかと思うと、上半身を強調するふくらみを包んでいたと思しきシルエットが取り払わ
れて、両手は最後に腰あたりから多分最後の一枚を引き降ろし、リオンさんの足が片足ずつそのシルエット
から引き抜かれる。
「貴明様ー、お背中流しますよー」
がらら〜
「どわぁっ!」
とっさに首を90度捻ってかぶりつき体勢から、せめて顔だけでも逸らす。それでも一瞬だけ見えちゃった、
リオンさんは間違いなく全裸だった。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってー」
顔を背けたままざざざっと湯船の奥に退避する。特に今の下半身を見られるわけにはいかない。
「それがお、俺に、し、紳士的な態度を望んでる人がやることかー!」
「貴明様がいけないんですよ」
しれっとそう言うと、リオンさんは湯船から洗面器にお湯をすくって、肩からかける。
「あんなこと言うから……」
「あ、あんなこと?」
二度肩から掛け湯をすると、すっと立ち上がって、俺が端っこで縮こまっている湯船の中にリオンさんが侵
入してくる。あ、あの、このあまり広いとはいえない湯船に無理に二人入るとどうしても体が接触するのです
が。お湯もいくらかあふれちゃってるよ。
「メイドロボは誰に買われてもその人に好意を持たないといけない。確かにそうです。その通りです」
リオンさんの顔が近づいてくる。足に、足に、あ、あ、足にリオンさんの生足が触れている。
「でも貴明様はそうは思えないと仰いました。それじゃ、それだけじゃダメなのですか?」
ぶんぶんとリオンさんが首を横に振る。
「メイドロボは購入者に好意を持たなければいけないとして、じゃあ、じゃあ私が貴明様に「強制されている
からリオンは自分に好意を持って接してる」だなんて思われたくない! この気持ちもプログラムによる強制
ですかっ!?」
お湯のしぶきが涙の代わりにリオンさんの頬を伝う。
「わ、私はっ」
リオンさんが湯船で膝立ちになって、こちらに体を乗り出してくる。俺はもう目を逸らせない。
「貴明様をっ」
リオンさんの両手が俺の顔を包むように伸ばされる。
「だって、私は……」
指先は触れそうで触れない。
「――――だから」
リオンさんが口の中で何かを呟いたが、それは耳にまでは届かない。
リオンさんの顔が辛そうに歪んで、ぱっと手が離れた。
「ご、ごめんなさい。わ、わたし、わたしっ」
そう言うや否や湯船から飛び出して、そのまま脱衣所に駆け出す。がらら、ばたんっと勢い良く扉が閉じら
れて、シルエットはバスタオルをひとつ引っ掴んで、脱衣所からも駆け出していった。
しばらくぼけーっと湯船の中で脱力する。
なんなんだ。今のは。
(強制されてるからと思われたくない思いもプログラムによる強制?)
もし本当にそうなのだとしたら、来栖川エレクトロニクスもずいぶんと罪なプログラムを組んだことになる。
でも、だって、それ以外にリオンさんが俺に好意を寄せる理由なんてないじゃないか。出会ってまだ24時
間も経っちゃいないんだぞ。
――リオンさんの体、綺麗だったな。
メイドロボなのだから、当然と言えば当然だ。そもそもイルファさんもおんなじだ。でもその一方でイルファさ
んとまったく同じというわけでもないみたいだ。おそらくはイルファさんのほうが何らかのカスタマイズを受け
ているんだろう。
いやいや、今はそんなこと考えてる場合じゃないだろ。
最後のリオンさんの辛そうな顔。今にも泣き出しそうな顔。あんな表情をさせていいのか?
ばしゃ! っと、半分お湯に沈んだ頬を両手で打つ。
「おい、俺は真面目に考えてるんだぞ」
さっきからギンギンドクドクと主張を繰り返す愚息に愚痴ってもあまり効果は無かった。
風呂からあがるとリオンさんの姿は見えなかった。さすがにちょっと顔を合わせ辛かったのでありがたい。
時間はまだ9時前で、テレビを見て時間を潰した。適当にチャンネルを変えながらうつらうつらしているうち
に10時を回り、11時を回る。流石にそろそろリオンさんの姿を欠片も見ないというのはどうもおかしい。
まず玄関を見ると、リオンさんが履いていた靴はそのままになっていた。多分、外に出て行ったということ
はないんだろう。だとしたらとりあえず家の中にはいるわけだ。なんとなく足音を忍ばせて階段を上がる。ま
ずは自分の部屋。ゆっくりと扉を開けると、中の様子は一目瞭然なほど変化していた。
――すっかり片付いている。
メイドロボ根性ここに極まれり、というところか。まあちょっとアレな写真集などがまとめて机の上に平積み
になってるのは、アレだが。
「ふぅ、俺、なんか悪いこと言っちゃったんだな」
ベッドに腰掛けて一人ごちる。ふにょり。手に何か柔らかいものが触れる。
――硬直。
なるほど不意打ちの多い一日の締めくくりにこれほど相応しいものはあるまい。そっと注意深く布団をめ
くっていくと、そこには予想通りにリオンさんの顔が埋もれていた。しかもめくっていく過程で、肩が露である
ことが判明し、そこで手を止める。
「たかぁきさまぁ……」
心臓が止まるかと思った。体を完全に硬直していて、動けないまま数秒が過ぎても、リオンさんは目を開
けなかった。どきどきしながら布団を元に戻して、忍び足で部屋を出て行く。音を立てないように注意深くドア
を閉じると、やっぱり気を使いながら階段を下りてソファに寝転がった。
今日はこのままここで寝ることにしよう。
「クソっ、なんだよ。寝言いうメイドロボなんてアリかよ」
リオンさんの白い肌が闇の中ちらついて今日はとてもじゃないが、深くなんて眠れそうにない。
だから眠いときは誤字増えるって学んだことはどこにー。・゚・(ノД`)・゚・。
でも勢いに任せてないと書ききれないような気がするので
またやると思われ。ご勘弁をー。
>>531-537 このままがんばってくださいー
恐らく、オチというかリオンが誰かは判った気がします
かなり上の方でオリジナルキャラのSSを上げた者です。
今まで細々と書いてきたんですけども、難しい・・・
オリキャラなのでヒロインとの接触が少なく、おまけに終始一人で語っているorz
もう何がなんだか分かんないですけど、とりあえず途中までのを載せます。
もうどうにでもなれ〜
図書室なんて言うものは、ものすごく保守的なものだと思っていた。
本があって、机があって、あとはせいぜい、コピー機に検索用のPC。
それはどこの図書室だって同じだろう。
消えてゆくのは読まれなくなった本くらいで、
新しく来るのもその代わりの本。
だから仕事内容も同じ。
うちの委員長はそれが嫌だったのかもしれない。
「図書室にCDの貸し出しコーナーを設ける事が正式に決まった。
棚は書庫のものを使う。それに伴い、書庫で読まれなくなった本の整理を行う。」
前からぼつぼつそれらしい話は出ていたので、特に驚きはしなかった。
けど、書庫云々なんて言うのは全くの初耳だ。
整理というのは、早い話処分と言う事だろう。
委員長は続ける。
「書庫の蔵書もバーコード化を進めていたが・・・もう必要ない。
担当者には僕から話を通しておく。貸し出しは5月中には始めるつもりだから、
仕事は迅速に行って欲しい。以上、ここまででなにか質問はあるかな」
この人にしては珍しく、あまり余裕が感じられない喋り。
CDの貸し出しにしても、「少しでもここが役立てば、それに越した事はないだろう?」
と言って、半ば強引に押し切った。
学校の近くにはレンタルビデオ店が2軒あり、CDについては全く不自由していないのだが・・・
「あ、あの!質問いいですか?」
一人の女子が意を決して声を上げる。
委員長が変わってから場のムードもピリピリしたものになり、
意見一つ出すのにもおっかなびっくりになってしまった。
「なんだい?」
「書庫の棚を使うと言っていましたけど、生徒会からの予算で新しいのは買えないんですか?
わざわざ本を処分することはない・・・とおもうんですけど・・・」
最後の方は少し口ごもりながら、それでも全て言い終えると、彼女は気まずそうに腰を下ろした。
「予算は全てCDに回る事が決まっている。数百枚並べるだけじゃ、様にならないからね。
それに、読まれなくなった本は場所を取るだけだろう?」
「しかし!本があっての図書室なのでは?」
「いくら図書室でもいらない物はいらない。今までだって、そうしてきたんじゃないのかい?」
「・・・」
その子は納得し切れていない様子だったが、こうなってしまっては言い返しようがない。
ずっと机に顔を向けて俯いてしまった。
(どうしてそんなにこだわるんだ?あの人になに言っても言いくるめられるのは分かってる筈なのに)
その時は、ただ単純にそう思っていた。ただ単純に・・・
彼女は何故、書庫の事にそこまでこだわりを持つのか。
それに気づいたときには、僕にとっては全てが手遅れだった。
543 :
名無しさんだよもん:05/01/21 03:52:54 ID:RD/OpZJh
>>538 もう続きが挙がっていて、かなりビックリしましたw
この勢いに乗ったまま、ガンガンつき進んでください(´∀`)b
楽しみにしてます〜。
しかし猛スピードで現れた雄二に手首を掴まれ阻止されてしまう。
雄二
「いい加減にしやがれ…。クソ姉貴…。」
手首を握る力が更に強くなる。
雄二
「罪の無い人間を…次々と殺しやがって…。」
環
「あっ…あなた…いったい?」
雄二のあまりの豹変ぶりに驚きを隠せない環。
雄二
「ご存知だろ?
俺は向坂家の長男。
穏やかな心を持ちながらも激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士…」
続く
環の顔に戦慄が走る!
環
「黙りなさいっっ!!」
無防備な雄二に向かって渾身の一撃をみまう!
が、しかし…
環
「ばっ…馬鹿な!」
手加減などしていない…当たれば星一つ容易に破壊出来るほどの一撃だった…。
しかし…しかし雄二には傷一つ付けることが出来なかった。
雄二
「幼馴染みは壊せても…
たった一人の弟は壊せない様だな…。」
雄二かつぶやく…。
続く
雄二
「貴明は2度死んだ…。
向坂の財力を使ってももう生きかえれない…。
本当にいい奴だった。
俺の一番の親友だった…。
それを…。」
今にも壊れそうな勢いで大地が震え出す!
雄二
「姉貴っっ!俺は怒ったぞ!!!」
一閃!怒りに身をまかせた雄二の一撃が環を捕える!!
ガードの間に合わない環は雄二の一撃を受け、地面に膝をつける。
続けさまに放たれる雄二の蹴り。
右腕で何とかこれはガードする…が
環
(くっ…ガードごしに何て威力なの!?)
雄二の怒涛のラッシュ!環はなすすべも無く雄二のサンドバックになりはてた…。
続く
雄二
「…ってのはどうだ、委員ちょ?」
愛佳
「却下♪」
完
工エエェェ(´Д`)ェェエエ工
(;´Д`)<妄想オチかよ!
( ´_ゝ`)雄二だからな
( ´∀`)雄二じゃしょうがないな
./゙ヽ ./゙ヽ
.,'´r  ̄、ヾ
llミ.i((ハ))) チャキ!チャキ!
|l lゝ゚ ヮ゚ノl| (|/)
. ノl i,/つ ヽつ∞
li/ ┐l|
(/ (/
>550
そういえば最近クロックタワーやってないなぁ。
艦長!北の方角から巨大なノイズが接近してきます!
超小型波動砲攻撃機 R-9A!総員攻撃態勢を取れ!
あえて言おう!!
誤爆であると ∧||∧ !!
( )
(;´Д`)<R-typeスレからの誤爆か!
( ´_ゝ`)VYsi6ihUだからな
( ´∀`)VYsi6ihUじゃしょうがないな
と、まあそれはさておき、投下開始。
「あれぇ、タカくんまだ寝てるのぉ?」
がちゃりとドアの開く音、そしてこのみの呟きが聞こえてきて目が覚めた。案の定頭が重い。今、何時だ?
時計を探すのに少し時間がかかる。そうか、ここリビングだ。壁掛け時計の位置をようやく思い出して見る
と、いつも目覚ましを鳴らすくらいの時間だ。
アレか、たまにこのみが早く起きる日か、今日は。助かったといえば助かったのかもしれない。このみが来
なかったら、本当に寝坊していたかもしれない。
などとぼけーっと考えているうちに、このみの気配が消えている。否、このみが朝やってきて俺がまだ寝て
いた場合ならどうするか? そんなことは決まっている。
「ヤベェッ!」
飛び起きて階段を駆け上がる。すでに俺の部屋の扉は開いている。
「タカくん、朝だよ。起きて〜」
「このみっ! 俺は起きてるぞっ!」
そういって部屋に飛び込んだがすべてがもう手遅れだった。このみは布団をめくり上げた姿勢のまま固
まってる。そのままゆっくりとこちらを向いて、言った。
「た、た、たたた、大変だよ。タカくん。タカくんが女の子になっちゃったー!」
「ええと、つまりリオンさんは一時的にだけどタカくんのメイドさんになったってことで、だからお布団に裸で寝
てたの?」
「後半は忘れてくれ。頼むから」
話をここまで要約するのに30分。かなり早かったほうだと思う。
「申し訳ありません。河野さんのお部屋を掃除していたらそのままうとうとと寝てしまいました」
とりあえず俺もリオンさんも制服への着替えは済んでいる。今はリオンさんが焼いてくれたトーストを食べ
ながらこのみに事情を説明している最中だ。
「つまりタカくんはリオンさんに裸でお掃除させてたんだね」
「ああ、もう、だからそれは俺が命令したんじゃないの」
「昨夜、入浴中の河野さんのお背中を流そうと思ったのですが、粗相をしてしまいまして、そのまま慌てて取
り繕おうと掃除をしに行ったものですから、申し訳ありません」
「ふ〜ん、タカくんがなにかしたんじゃないの?」
「ばっか、おまえ、そんなわけないだろ」
「はい、河野さんはとても紳士的でした。私はなにひとつされてませんので、ご安心を」
「ふぅ〜ん」
なんだかこのみの「ふぅ〜ん」には納得して無いという響きがありありと聞き取れた。
「頼むからタマ姉には秘密にしておいてくれ」
「リオンさんがタカくんのベッドで寝てたってこと、それとも裸でお部屋のお掃除してたってこと?」
「どっちもだー!」
「……遊園地」
「へ?」
「今度、遊園地連れて行ってくれたら黙っててあげる」
く、足元をみやがって。だがそれくらいでタマ姉に黙っててくれるというのならば仕方あるまい。
「分かった。連れてくから、忘れんなよ。じゃなくて忘れろよ」
「えへへ、やったー」
そうやって今日は3人で学校への道を歩き出す。あの桜舞う季節が忘れられない日々になったように、こ
の太陽の降り注ぐ日々は忘れられない思い出になるんだろうか?
「でね、タカくんったら――」
「まあ、そうなんですか――」
「――なんだよ〜」
どうもこのみとリオンさんは俺の過去話で盛り上がっているらしい。過去の汚点はそれはもう数え切れない
ほどあるから、とりあえず聞こえない振りをしておくことにする。
やがて階段で雄二とタマ姉に合流する。
「あ゛ああああああああああああああああ!!」
階段の上から大声で叫ぶのは当然雄二のほうだ。タマ姉のほうは肩をすくめるだけで、苦笑を浮かべてい
る。いい加減、この星の巡りの異様な男についてタマ姉も諦めがついてきたようだ。とりあえずこのみが最
後まで黙っていてくれることを信じつつ、歩きながら状況説明。昨夜の出来事については伏せたままで、一
応の顛末は話し終えたはずだ。
「ちぇっちぇっクソがっ、なんで貴明ばっかり優遇されてるんだ。この世界はなんかおかしい!」
世界がおかしいと思ったら、頑張ってなんとか変えてみてくれ。俺自身が多分におかしいと思ってる。
そんなことを話しているうちに、学校へと向かう坂道の途中で珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんが手を振って待って
いる。
「るー☆」
「おはよ」
そんな毎日劇的なことが起こるわけじゃない。天下泰平、世は事もなし。平和が一番。
学校でのリオンさんは昨日学校にいたときとなにも変わらなかった。クラスメイトに囲まれてにこにこ楽しそ
うに笑っている。双子姉妹のところにいたときや、その後のことなんて微塵も考えさせない。特にあの辛そう
な顔や、寝言のようなことは。
「止めとけ止めとけ」
どっかと雄二が隣に座る。朝に話をしてから、雄二はリオンさんにちょっかいを出すのを止めていた。
「なんだよ?」
「そんなじーっとだな、リオンさんのこと見てたら誰だって分かる。でもな、止めとけ」
思わずぱっと雄二から顔を背ける。確かにぼけーとリオンさんを見ていたのは事実だ。でもそれは気にな
ることがいろいろあるからであって、決して雄二が言ってるようなことじゃない。
「そんなんじゃないさ。少なくともお前に言われたくはないぞ」
「俺はいいんだよ。出会いも別れも同じように愛でることができる男だからな。俺は」
そう嘯くと雄二は肩をすくめる。しかし目は笑っていなかった。たまにだけ見せる本当に真剣な表情。
「出会いと別れがセットでやってくるヤツが何を言うか」
「言うさ、貴明、リオンさんは止めとけ。お前には辛すぎる」
「なにがだよ」
「絶対に別れの来る恋になるからさ。それも近いうちだ。分かってるだろ。2週間もしないうちにリオンさんは
いなくなる。その後はどうだ? 2度と会えないかも知れない。いや、会えないだろ。そして何よりもそれから
数年が過ぎたら、だ。リオンさんと同じ顔のメイドロボが街にあふれ出すことになるかもしれない。お前のこと
なんてちっとも知らないリオンさんが、だ。隣にいる別の誰かに微笑みかけるリオンさんだ。お前は耐えられ
るのか?」
「そんなの分かんねーよ」
本当にそんなのちっとも分かんねー。今思うことはただ、昨夜のようなあんな顔をもうリオンさんにさせたく
ないってだけで、それ以上でもそれ以下でもない。本当にないんだ。
放課後、珍しく今日教室掃除を任命されている面々は誰一人として脱走することなくその任務に当たって
いた。理由は簡単。
「――♪」
実に楽しそうにパタパタと掃除しながら走り回るリオンさんがいるからだ。その姿はその小さな体からは想
像もできないほどテキパキとしている。さすがメイドロボ。
そういえばリオンさんが掃除しているところを見るのは初めてだな。と、昨夜に何があったかを思い出し
て、慌ててその思考を打ち消す。わー、バカ、俺のバカ。リオンさんが裸で掃除しているところを想像するな
んて。
とにかく手に持った箒の動きに集中することにする。そうそう、まずは自分のやることをちゃんとやらな
きゃ。
ざっざっ、ざっざっ。
一方リオンさんはバケツの雑巾を絞り上げ、片手には濡れ雑巾、片手には乾いた雑巾をもって窓拭きに取
り掛かり始めた。
あらら、そこまですることないのにな。と、最初の一面をある程度拭いたところでリオンさんの動きが止ま
る。その視線の先は窓の上半分。そうリオンさんの身長では、2列に分かれた窓ガラスの下側すら全部カ
バーできないのだ。しばらく思案にふけっているように見えたリオンさんは教室内を見渡して、答えを得た。
教室の端に固められていた机と椅子から、一脚の椅子を持ってきて、上履きを脱ぐと椅子を踏み台にして窓
を拭き始めた。
お、それならなんとか下側なら全部拭けそうだ。
って、箒が全然動いてないぞ、俺ーーーーー!!
ようやく掃除が終わってリオンさんと一緒に電算室に行くと、今日も珊瑚ちゃんはうさぎイルファさんと謎の
ダンス。どうやら結構煮詰まっている様子だ。どの記憶を消すか、というのはやはりそう簡単に割り切って考
えられるものでもないらしい。椅子をひとつ引っ張ってきて、二人を見守っている瑠璃ちゃんの隣に座る。
「どう、進んでる様子?」
「よぉ分からんけどあかんっぽい」
「そっか、でも例えば忘れたい出来事を簡単に忘れられるっていうのは便利そうだけどな」
「それはあ〜か〜ん〜」
珊瑚ちゃんがずしゃあと机に突っ伏す。
「え、なんで?」
「いやなこと全部忘れとったら、またいやな思いするだけやもん〜。いやや、もうあんなんいややって思うか
ら、おんなじ失敗せぇへんねんで〜」
あ、そうか。テストで悪い点取った記憶を消しちゃったら、次こそは! なんて思うこともなくなるもんな。そ
れにリオンさんにあんな顔させたことを忘れたら、またさせるに決まってるわけだ。
「ふにゅ〜」
疲れきった様子の珊瑚ちゃんの頭をうさぎイルファさんがぽんぽんと元気付ける。
「でも遠隔操作の実験のほうは順調みたいだし、そんなに焦ることもないんじゃないかな。イルファさんはど
のくらいで戻って来れそう?」
「それもな〜、おっちゃんがええ機会やからって徹底的にハードメンテするんやて〜。だからもうちょいかかり
そうなんや〜」
「そっか、うさぎイルファさんも可愛いけど、なんかちょっと寂しいね」
そう言うと、うさぎイルファさんは両手を頬に当ててくねくねと踊って見せた。ああ、なんかそれは俺にも伝
わったよ。
「貴明様はイルファに早く戻ってきてもらいたいですか?」
姫百合家からの帰り道、夜道を並んで歩いているとリオンさんが不意にそう尋ねてきた。
「そうだなあ。うさぎイルファさんもそれはそれでいいんだけど」
少なくとも腹黒さは見えないしな。あれだと。
「まだ2ヶ月くらいだけど家族みたいにしてきたから、やっぱり早く戻ってきて欲しいかな」
「わ、私じゃイルファの代わりにはなれませんか?」
少し考えてみる。イルファさんの代わりにリオンさんのいる生活。
「うーん、それはやっぱりなにか違う気がするな。リオンさんはやっぱりイルファさんにはなれないよ」
主に腹黒さとか。と、それは冗談にしておいても、イルファさんは俺にとっての家族みたいなものだ。でも珊
瑚ちゃんと瑠璃ちゃんにしてみれば家族そのものに違いない。それはきっと他のどんな誰でも代用なんてで
きないものなんだ。
リオンさんの大きく息を吐いた。
「――やっぱり貴明様はイルファを愛しておられるんですね」
「ほえ?」
「いえ、差し出がましいことを申しました。なんでもありません。お忘れください」
「いや、ねえ、なにか勘違いしてない。リオンさん?」
「では、差し出がましい質問を――」
リオンさんが足を止めて、じっとこちらを見つめてくる。どうもこの家に帰るまでの道のりにはリオンさんを思
いつめさせるなにかでもあるようだ。
「――貴明様は愛してもいないイルファを抱いたのですか?」
「――ッ!!」
リオンさんは真剣そのものな表情で立ち尽くしている。
「ならば、私が望めば私のことも抱いていただけるんでしょうか?」
胃の辺りをガツンと殴られたような気がする。強烈な吐き気、不快感。これはなんだ。
「私のボディはイルファのものと基本的に違いはありません。愛していなくても抱けるのであれば、私とイル
ファ、なんら違いはないと思われますが――」
「やめてくれっ!」
「貴明様、貴明様はやはりイルファを」
「やめてくれと言ったんだ。聞きたくない!」
両耳を塞いで早足で歩き出す。小走りで追いかけてくるリオンさんの気配。
なにがこんなにイラつくんだ。なんでこんなに胸がざわつくんだ。
家に帰りつくと、何も言わずに自分の部屋に戻ってカバンを放り投げ、着替えもせずにベッドに体を投げ出
した。少し遅れてリオンさんが部屋に顔を出してくる。
「――貴明様、お風呂は」
「いい、入りたくない」
「――せめてお着替えを」
「いいんだ。ひとりにしてくれ!」
「はい、電気は消しておきますね……」
パチンと、部屋の電気が消され暗闇の中に一人になった。
また、リオンさんにあんな顔をさせてしまった。なにを、なにをやってるんだ。俺は。
『ならば、私が望めば私のことも抱いていただけるんでしょうか?』
違う違う違う違うっ! そんなことできるわけないだろう!
枕の下に頭を埋めて、とにかく、一刻も早く眠ろうと思った。まるで眠れば全部忘れられるなんて、本当は
そうじゃないって分かりきっているのに。
当初の予定通り、二日目以降は展開を早めていきます。
シーンシーンがぶつ切りだと感じられるかもしれませんが、間を書いていたらキリがないのでご了承くださ
い。実は行数制限のある掲示板でSSを書くのは初めてで、そういう意味でこのレスごとにぶつぎりになる
書き方は新しい挑戦となっています。
これはこれで結構便利なのですが、もし後で一本にまとめるとしたら、書き直しが必要になりそうですね。
頂ける応援の声が、執筆パワーです。アリガト━━━━━━\(T▽T)/━━━━━━ !!!!!
>554
いつもGJです。盛り上がって参りましたね。
スピーディーなのはいいけど>556の最後のこのみのセリフとか
「やったー」じゃなくて「やたー」に直すといいのでは。
推敲してるのはわかるのですが速さと勢い重視っぽいので、一応。
565 :
563:05/01/21 14:11:07 ID:tSFXpSmQ
>>564 ご指摘ありがとうございます。手元の原稿分は訂正しておきます。
これでも何度もゲームを起動して、早送りして、セーブしてロードして
しているのですが、やはり細部までは目が行き届きませんので
どんどんご指摘していただけると助かります。
≫566
ありが
そのGJでかなり救われたよ…
568 :
名無しさんだよもん:05/01/21 20:17:11 ID:RD/OpZJh
>>563 GJ!!
いつも楽しく読ませて頂いています。
毎夜、ブラウザを立ち上げて掲示板を表示させるとSSが書き込まれているので、
その勢いに驚いています(´∀`)
SS書くのは大変でしょうけど、これからもガンバー
「もっといろんなこと、ためしてみたく、ありませんか?」
イルファさんに求められたおやすみのちゅ〜。離れようとしたシャツの襟元を掴まれて逃げられない。まだ
唇と唇は5センチも離れていない。珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんはもう1時間以上前に寝てしまっていた。二人が
寝静まってから、イルファさんが静かに細かい片付けをするのを、テレビをなんとなく眺めて待っていた。一
応、イルファさんが眠る――休眠状態になる――寸前まで俺が起きて待っているという週末の習慣。それで
やっぱりいつものようにイルファさんにおやすみのちゅ〜をねだられる。そこまではいつもどおりだったんだ。
そこまでは。
唇にかかるイルファさんの吐息が熱い。心臓がばくばく鳴り出した。
「な、なに――」
声がかすれる。状況を理解できない。イルファさんが何を言ってるのかが分からない。
「ちゅ〜だけじゃなくて」
そう言いながら襟元を引っ張られて、イルファさんからのちゅ〜。いいや、これはキスだ。
「世の中の恋人たちや、夫婦や、行きずりの男女なんかが、今くらいの時間にしてることとか」
ぎゅっと抱きつかれる。
「してみたいとは思いませんか?」
「い、イルファさん、なにいって」
「――それがダメなら興味はありませんか? 最新型のメイドロボがどこまで人間にそっくりなのか」
少なくとも押し付けられる胸の柔らかさは、本物にそっくりだ。
「貴明さんも見たじゃありませんか。私の。――その奥がどうなってるのか気になりません?」
結局のところそれが始まりで、その一回で終わりにはならなかった。
「貴明様、起きてください。貴明様」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
うーん、なんか夢見が悪かったんだ。頼むからもうちょっと寝かせてくれ。
一度は暑くて蹴飛ばしていたらしい布団をもう一度引き上げてその中に退避する。
「ダメですよ。貴明様。遅刻しちゃいますよ」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
「起きないと、ちゅ〜しちゃいますよ」
がばっ! 一発で目が覚めた。
「あら、ちょっと残念」
頭を振って状況確認。目覚ましが鳴る時間だが、止められている。そんでリオンさんが起こしにきてる。
「はいはい、貴明様、制服を着替えてくださいね」
ベッドの上にきれいに畳まれた制服がぽんと置かれる。
「それとも今からお風呂に入られますか? そうなら用意いたしますが」
「シャワーにするよ」
「はい、承知しました」
今おいたばかりの制服と、タンスから勝手に下着の替えを出して、まとめて下に持っていくリオンさん。
「くそ、昨日のことなんとも思ってないのかな」
頭を振る。まだ目が覚めきっていないらしい。よく覚えてないが、夢もよくなかったようだ。それでも少なくと
もリオンさんが何事も無かったかのように振舞っているのは分かった。だったらこっちもそう振舞おう。
放課後、今日こそは本当に一度研究所に帰らなくてはいけないというリオンさんは、掃除が終わるとそそく
さと帰っていった。本人から珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんを優先するように言われたので仕方なく見送って電算室
に向かう。扉を開ける前に中の会話が少し聞こえてきた。
「おっちゃんがイジワルやねんよ」
「そうなんかなぁ、貴明がにぶいだけとちゃうん?」
「何? 何の話?」
瑠璃ちゃんがぎょっと椅子から腰を浮き上がらせた。珊瑚ちゃんは机につっぷす最近のスタイルだ。
「う〜、みっちゃん、おっちゃんにいじめられとんねん〜」
「みっちゃんというと、クマ吉だっけ?」
確かいっちゃんがイルファさんで、みっちゃんが、ミルファ、だっけ? とにかくクマ吉のことだ。それでしっ
ちゃんがシルファで、二人ともイルファさんと同型の姉妹なんだっけか。
「貴明ぃ、クマ吉クマ吉って、そう呼ばれるほうの気持ちは分かってるんかいな」
「そういわれても、クマ吉はクマ吉だしなあ」
ふさふさであったクマ吉を思い出す。とはいってもあれは擬似ボディだったというから、今はイルファさんと
同型になっているはずだ。リオンさんも含め全員集合したらすごいことになるんだろうな。果たして見分けが
つくのかどうか。
「で、そのクマ吉がどうしたの?」
「テスト受けてるんや〜。でもみっちゃんあんまり我慢きくほうやないさかい、心配なんよ〜」
「へぇ、メイドロボにもテストがあるんだな。って当然といえば当然か。それはどんなテストなの?」
「環境適応テスト〜。だいこん・いんげん・あきてんじゃーは何かを無理してやらせるのにむいてへんのよ
〜。そやからそのへんは強制プログラムがどれくらい有効か、ってことと、本人の自制心しだいやねん」
「で、それと俺がなにか関係あるの?」
びくっと瑠璃ちゃんが身をすくませる。
「あ、あらへんよ」
「あるよ〜☆」
珊瑚ちゃんが両手をあげる。
「ほんまはな、貴明にみっちゃん迎えに行って欲しいねん。みっちゃん、もうそろそろがまんの限界やとおもう
のよ。そこで貴明が迎えに行ったら、みっちゃん、貴明にぎゅーってしてはっぴーや〜☆」
「いや、それはちょっと勘弁したいかも」
「えー、つまらんなあ」
あの小さかったクマ吉にさえそこそこの手傷を負わされたというのに、人間大のサイズで対峙するとなると
命の覚悟が必要だ。悪気があるかどうかはともかくとして。
「でもみっちゃん、かなり思いつめとったからなあ。無茶せぇへんかったらええねんけど」
「珊瑚ちゃんから言ってあげたら、そのおっちゃんもテスト止めてくれるんじゃない?」
「それはあかんー」
「なんでさ?」
「このテストはみっちゃんが望んだものやから」
珊瑚ちゃんは少し寂しそうな笑みを見せる。
「だから最後まで見守ってあげたいんよ」
「そっか」
娘の巣立ちを見守る母親の心境といったところなのかもしれない。
「ま、あんまり根詰めて考えてばかりでも大変だから、今日はとりあえず帰ろうか」
姫百合家から帰ってくると、玄関前にぽつんと人影。両手に小さな買い物袋と、少し大きめのバッグを持っ
たリオンさんだった。
「おかえりなさいませ。貴明様」
「ただいま、リオンさん。まさかずっと、待ってたの?」
「いえ、私も今こちらについたところです。間に合うように用事は済ませてきました」
「そう、とりあえず入ろっか」
「はいっ」
二人で家の扉をくぐる。リオンさんはパタパタと台所のほうに消えていった。
「貴明様、晩御飯は食べてらしたんですよね〜」
「ああ、うん」
「それじゃあお風呂いれてきますね〜」
「お願いするよ」
今日は風呂場でのリオンさんの襲撃もなく、平穏無事に一日が終わりに近づいていく。
「貴明様、何をみてらっしゃるんですか?」
お風呂上りのリオンさんがパジャマ姿でやってくる。ああ、なるほど。あのバッグの中身は生活用品か。
「なんだろ」
テレビを見てはいたが、別に集中してて見てたわけじゃない。リオンさんはクスリと笑って、細々とした片づ
けを始める。ソファのクッションの位置を直したり、テーブルの角度を修正したり、そういったことだ。
「なんだか恥ずかしいですからテレビを見ててください」
「あ、ああ、ごめん」
いつの間にかじーっとリオンさんの仕事を凝視していたらしい。
「リオンさん、こっちきてくれる?」
「はい、なんでしょう?」
玄関で何かをやっていたリオンさんはすぐにやってきて、ソファに腰掛ける。
「まず昨日はごめん。変に取り乱した」
「あ、はい、いえ、お気になさらなくて結構ですよ。私のほうこそ変なことを言って申し訳ありませんでした」
「ううん。違うんだ。ちゃんと聞いて欲しい。確かにリオンさんはイルファさんにはなれない」
「――はい」
「でもイルファさんはリオンさんにはなれない」
今日一日ぼんやりと考えていた。なによりも何故昨夜自分はあんなに取り乱したのだろうか?
「確かに俺はイルファさんに好意を持ってる。珊瑚ちゃん風に言えばすきすき〜だ。そして、まあ、なんという
か、そういう関係を持ってもいる」
また何故リオンさんがイルファさんのことを出して、その関係性を自分にも当てはめようとするのか。
「でもだからといって、イルファさんと入れ違いでやってきたリオンさんが、イルファさんの代わりになろうとす
る必要なんてないんだ。リオンさんはイルファさんの代用品なんかじゃない。リオンさんはリオンさんだ」
そしてまた自分はリオンさんの好意をどう受け止めたいのか? リオンさんの好意がプログラムかどうか、
という問題じゃない。もう1週間とちょっとしかないこの時間だけの関係だから、という問題でもない。ただ、
自分がどうしたいか、ということだ。
「だからイルファさんが戻ってきても、リオンさんの居場所は変わらないし、短い間だけどその間はずっと俺
のメイドロボでいてほしいと思ってる。だからあんまり無理はしないでほしいな」
「――はい、はい、ありがとうございます。貴明様。本当に――ありがとうございます」
リオンさんは顔を伏せてしまう。
「あ、あれ、おかしいです。すごく嬉しいのに、貴明様の言葉がすごく嬉しかったのに、笑顔になれないんで
す。どうしてでしょう。故障しちゃったんでしょうか?」
「どうしてだろうね」
俺にも分からなかった。でもなにかそれはとても好ましいもののように思えた。
>>567 俺もワロタよ。毎回楽しみにしてた。
>>568 そうやって言っていただけるのが何よりもの報酬であります。サー。
はやっ!もうあがってるとは・・・
そしておもろかった(・∀・)!
>>575 素朴な疑問としては、この先濡れ場があるかないかだな!!
ネタバレ。リオンはクマ吉。
俺の予想は当たる…。
おまいらさまがた、このスレ的に鬱話はどうなんでしょか?
需要とかあるんでしょおか・・・?
思いついたら書けばいいさ
らじゃ。書き上げたら投げ込みます(`・ω・´)
>>580 オマイが欝話書かなかったら、オチを欝モノにする!
いや、マジで今迷ってる orz
みんなたち的にはどーなのよ?
個人的には嫌いだけど好きな人もいるからいいんでないの
ぶっちゃけ面白ければエロでもバトルでもほのぼのでも鬱モノでも何でもいいよ。
妄想はできても文章にできない自分が悲しい・・・
間違えた
○欝モノ
×鬱モノ
レスdクス
まだもうちょいだけ先だし、両方用意して最後の瞬間に決めるよ。
>>586 俺が間違ってたような気もするが orz
「面白い」という言葉に隠れたプレッシャーが・・・
面白くなくても勘弁してください(;´д`)
>>583 おいらもどうしようか迷ってるんよ
ってことで好きなの書こうぜ(・∀・)人(・∀・)
鬱モノが正解
誤字大王ケテーイ(゜∀。)アヒャヒャ
>>588 自分が楽しんだもの勝ちってこったな(・∀・)人(・∀・)
鬱モノでもレイープとか勘弁な。天いなみたいなのならアリ。
(エロネタなんて書けねぇ・・・なんて言えないよなぁ
>>592 エロなし大歓迎!ほのぼのらぶらぶ待ってます。
ところでオリジナルキャラSSってのはやっぱり難しいのか?
いまんとこ出てるやつ見るとイイのとイマイチなのではっきり分かれてるし。
そりゃ、自分は書けと言われても無理だけど
うまくそのキャラで話を回せればいいけど、かと言って既存キャラより
目立ってもいかんだろうし。ほど良いさじ加減が必要ですな。
自分はオリキャラありでもいいほう。でもそのキャラが主人公と結ばれるとかになると
ちと行き過ぎかなって思うけど。
男キャラなら結構オリキャラの話つくりやすそうな気がするな。
例えば一年or二年生でタマ姉に片思いな奴とか
郁乃嫉妬SS書いてるんだけど、ちょっと俺の中に郁乃の霊が降りてきたんでなんか長くなりそう
すらすら書ける
鬱モノでもどんどん書くべし
って言うか俺なんて今までに書いたSSの八割強が鬱モノだし
漏れは九割否定するタイプだが、まぁ結果としてまとまってれば問題ないかと。
ただ既存のキャラだけでどこまで書けるかが二次創作の腕前かなぁ とか生意気なことほざいてみるテスト。
>>tSFXpSmQ
ガンガレ、もっとイルファをエロくしてくれ!
まあオリキャラは間違いなく難しいでしょ。
ほぼゼロがらプロット起こしたりなんだり。俺じゃ無理
図書委員のSS書いてる人もいるみたいだが、今はあれでもとにかく続けてほしい。
文章とかストーリーなんて書くだけ上手くなっていくしね。
雄二がオリキャラの女の子に恋をして(またはされて)
貴明、このみ、タマ姉達がそれを応援するって話とか。
言うのはタダだしなーw
>>595 >でもそのキャラが主人公と結ばれるとかになると
一瞬ウホッな展開なのかと思った
女のオリキャラね…
602 :
名無しさんだよもん:05/01/22 02:08:50 ID:rH3rRO3D
>>575 寝る前にチェックしてみたら・・・もう書きあがってる!?
同じ日にw GJ!
内容も、ドキドキウハウハで妄想が膨らみますた(*´Д`)
結構長くなってますが、途中で飽きがこなく読み応えアリで、
先がとても期待できます。この調子でがんば〜〜。
貴明
「ただいまー!」
瑠璃
「あっ…おかえり…なさい。」
俺が姫百合家に引っ越してはや1ヶ月…。
最初は色々戸惑う事はあったが、それでも慣れてしまえば彼女達との共同生活は楽しく、毎日は薔薇色だった。
貴明
「あれ?瑠璃ちゃん一人?
珊瑚ちゃんとイルファさんは?」
いつもだと玄関を開けると同時に珊瑚ちゃんに抱きつかれるかイルファさんに晩御飯の毒味!?(珊瑚ちゃん&瑠璃ちゃんに食べさせる前の味見役)をせがまれるのだが…。
ところが今日はそのどちらもない。
居間に瑠璃ちゃんの姿が見えるだけであった。
続く
少し気になった俺は二人はどうしたのか尋ねてみた。
瑠璃
「う…うん。
さんちゃん、今日は長瀬のおっちゃんのとこで大事な用がある…言うてたから。
よう分からんけどイルファの妹の事で何かあるらしい…せ、せやからイルファとさんちゃんは研究所に行きよったよ…。」
全くテレビから目をそらさずそう応える瑠璃ちゃん。
どんな面白い番組をしてるのか…とテレビ画面を見るが、今、映し出されているのは普通のニュース番組。
しかも天気予報…。
貴明
(天気予報マニア?)
怪訝な目で見つめらて気になったのかムスッとした感じの瑠璃ちゃん。
続く
瑠璃
「なっ…何?人の事じっと見んとって!!」
怒られた。
しかし、気のせいか
貴明
(妙にソワソワしてる気が…。
まさか!?)
貴明
「瑠璃ちゃん!!」
声をかけると『ビクッッ!』っと背中を反らせ、その状態で固まる瑠璃ちゃんに…。
貴明
「トイレ…我慢してる?」
思い切って尋ねてみる。
続く
と、同時に瑠璃の拳がみぞおちにめり込む!
瑠璃
「ばっ…バカたかあきぃ!
そんなんとちゃうわーー!!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ瑠璃ちゃん。
貴明
「ごめんごめん!冗談だって!」
瑠璃を必死になだめる貴明。
貴明
「でも、その様子だと今日は二人とも帰りは遅いか…帰ってこないんでしょ?
…どうする?」
貴明の瞳に妖しい光が宿る。
続く
>606
メモ帳にまとめて書いてから投下するといいのでは?
さすれば1レス毎に「続く」と書く必要はないと思うでぃす。
瑠璃
(ゴニョゴニョ)
聞き取れないほど小さな声で囁く瑠璃ちゃん。
貴明
(まぁ…何を言いたいか分かってるけど…)
貴明の顔が徐々ににやけてくる。そして…
貴明
「ん?何?聞こえないんだけど。」
わざと聞き返す。
瑠璃
「…する。」
貴明
「何を?」
こういう時の瑠璃ちゃんはたまらなくいじめたくなる。
普段なら蹴りの一つでも飛んできそうだが…。
今は違う。
瑠璃
「え…Hっちい…こと。」
耳まで真っ赤にしてそうこたえる瑠璃。
続く…かも
…と言うわけで
おっすおら雄二の人でつ。
ネタ師的な見方をされていた気がしたので即興で悪いがエロさそてもらったりしたが…
眠いから落ちまつorz
続きは後日…(∀`)
と言ってみる。
スゲェ掴みイイな…………
ところで姫百合瑠璃って身長何cm?
瑠璃の身長が何cmなのかによって80cmがデカいのか小さいのか、
およそのトップとアンダーがわかるってもんじゃないか
607も言ってる通り、続くは書かんでいいと思いまつ
いい感じなのだが「続く」で話が途切れる感じがしました
とりあえず続きを期待(・∀・)
>>609 ☆ チン 〃 ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ ___\(\・∀・)< 続きまだー?
\_/⊂ ⊂_)_ \_______
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
>>609 ☆ チン 〃 ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ ___\(\・∀・)< 続きまだー?
\_/⊂ ⊂_)_ \_______
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
ちょっとスレ汚しに来た
「それじゃあね・・・」
俺は何も返せなかった。耳にも入っていなかった。
―――俺達の関係が壊れることなんてあるはずがない―――
どこかでそう安心しきっていた。
ただただ二人の平和な時間が過ぎていくと思っていた。
いつまでも変わらずに、手を引いて行けると思っていた。
だが、それも今日で終わりなのだ。
今日からは違う道を歩く二人。
もう、一秒前には戻れない。
俺は、愛佳の後姿を見送ることしか出来なかった・・・。
616 :
二人の日々:05/01/22 09:44:33 ID:r6C5CQaM
「そうなんだよぉ〜。もう、困っちゃうよぉ・・・」
「へぇ〜、そうなんだ」
いつもの風景。
何気ない話をしながら、俺と愛佳は屋上で昼食を食べていた。
弁当はもちろん愛佳の手作り。
といっても、愛佳の気が向いたときだけなんだけど。
弁当作りっていうのは結構手間がかかるもので、朝早くからそんなことをさせるのは気が引ける。
それに愛佳は冷凍食品とか一切使用せず、全部手作りで仕上げてくる。
本人曰く、いろいろなメニューを作ってみたいそうだ。
そんな弁当だぞ?手間がかかってないわけないだろう。
そんなことを毎日なんてやられたら、ありがたいどころか申し訳なくなってくる。
それにしてもお菓子といい弁当といい、愛佳って家庭的だよなぁ。
「どうかしたの?」
「ん?いや、愛佳の弁当おいしいな〜って」
「や、や、そんなことないよぉ〜」
そういいつつ、赤くなって両手で頬を包む。そんなことあるって。
「ん、ごちそうさま」
「は〜い、おそまつさまでしたぁ〜」
食事を終えて手を合わす。
「ほんと、ありがとな」
「好きでやってるから・・・」
「それでも、ありがと」
「・・・うん」
なんとなく恥ずかしくて、俺達は言葉をなくした。
でも、心地よい静けさだった。
617 :
二人の日々:05/01/22 09:45:30 ID:r6C5CQaM
「五時間目か〜、眠くなりそうでだるいな」
「もう〜、頑張って授業聞かなきゃダメだよぉ」
「わかってるって。でも愛佳だって正直つらいだろ?」
「う〜、それは否定できないかも〜・・・」
不平を言いつつ教室に戻り、俺達は五時間目を迎えた。
主に不平を言うのは俺だけど。
キーンコーンカーンコーン
「それじゃあね」
「おう」
さて、いっちょ気張りますか。
618 :
二人の日々:05/01/22 09:46:35 ID:r6C5CQaM
「〜となって、ここはこうなるわけだ。いいな?」
数学教師の声とチョークの音が教室に響く。
この先生の場合、寝たら何するかわからないからな。
他の奴も、そんなわけで五時間目だというのにきちんと聞いているのである。
ガラガラッ
「すみません、ちょっといいですか?」
数学教師の声をさえぎったのは、戸の開く音と担任の先生だった。
「いいですよ」
「それじゃ・・・小牧、ちょっと来てくれ」
担任は促されると、愛佳を呼び出した。
むむ、愛佳何かしたのか?でも、愛佳って問題とか起こしそうじゃないよなぁ・・・
そんなこと思ってると
「こら、お前達の相手は俺だぞ。小牧のことは気にせず授業に集中しろ」
と数学教師。
そりゃごもっともなんだが・・・、やはり愛佳のこととなると気になる。
といっても外の様子などわかるはずもないしなぁ。
諦めて授業を聞こうとしたとき
ガラガラッ
愛佳と担任の先生が戻ってきた。先生は数学教師に何か話しているみたいだ。
あれ?
俺は愛佳が帰る準備をしているのに気づいた。早退するのか・・・、何かあったのか?
一瞬郁乃のことが頭に浮かんだが・・・あいつは大丈夫だろ。手術も終わったし・・・。
去り際に俺に「ごめん」と手をあわせた後、愛佳と先生は教室を後にした。
「うらやましいやつめ」
「うるさいぞ雄二」
結局その日は久しぶりに一人で帰った。
619 :
二人の日々:05/01/22 09:47:53 ID:r6C5CQaM
次の日、俺が学校に行っても愛佳は来ていなかった。
あれ?愛佳いないや。珍しいこともあるんだな・・・。
愛佳がいない中、時間は過ぎていった。
だが、三時間目になっても愛佳は来なかった。
休みか・・・?昨日何かあったのか?
頭の中で不安が広がっていく。
三時間目が終わり、俺は担任のところに向かった。
「せんせー、ちょっといいですか?」
「ん?なんだ?」
「ま・・・小牧って、今日休みですか?」
「ああ・・・そうだが」
「休みの理由とかって聞いてます?」
「ん〜、特に聞いてはいないが・・・」
「そう・・・っすか」
そして俺は、不安を抱いたまま職員室を後にした。
結局、愛佳の欠席の理由は分からなかった・・・。
620 :
二人の日々:05/01/22 09:49:41 ID:r6C5CQaM
愛佳が休んで2日経った。
今日は来るのかな・・・
期待と不安がつのる中、俺は学校へ向かった。
教室に入るや否や、愛佳の姿を探す。
愛佳は・・・いた!
愛佳を見つけ、俺は席に駆け寄った。
「愛佳!昨日とおとついどうしたの!?」
「たかあきくん・・・」
見上げた愛佳の顔は悲しそうだった。
それに気づいたのか、愛佳は笑顔になった。だが、どこか寂しそうな笑みだった。
「とりあえず、おはよ。久しぶりだね・・・」
「あ、ああ・・・。おはよ。それで・・・」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが俺達の会話を強制終了させた。
「後で、話すね・・・」
俺は言葉に従った。
休み時間。俺は愛佳の席に向かおうとした。
だが、愛佳はすぐに教室を出て行ってしまった。
後から話すって言ったのに・・・
俺の中に、不安が満ちてきた。
次の休み時間も、その次の時間も、昼休みでさえ、愛佳とは話ができなかった。
そして放課後になり、ようやく話す時間を得られた。
愛佳も、今度は席に座っていたので、俺はほっとした。
「愛佳・・・」
「うん・・・」
返事はするものの、愛佳は話そうとしない。
「屋上・・・いこう」
俺は愛佳の手を取り、屋上に向かった。
愛佳も拒否の態度はとらなかったので、俺はほっとした。
621 :
二人の日々:05/01/22 09:51:07 ID:r6C5CQaM
屋上についた俺達は、とりあえずベンチに座った。
「ごめんね。休み時間の時に、職員室に行ってたの・・・」
「そうだったのか・・・」
俺を避けてたわけじゃないことを知り、安心した。
「あのね・・・。早退した日にね、いろいろあったの・・・」
「いろいろって?」
「・・・・・・・・・」
核心に迫ると、愛佳は口を閉ざした。
何かあったのは分かるけど、声に出してくれないと分からないよ・・・。
「あのさ、俺じゃ役にたたない?何があったのかはわからないけどさ、
俺にも愛佳の為に何か出来ることってないか?」
愛佳はうつむいたまま、黙って俺の話を聞いていた。
「言いたくないことは言わなくてもいいけど、俺に出来ることがあったら言ってくれよ。
前にさ、もっと迷惑かけていいって言っただろ?
それに、その・・・彼氏だし・・・。」
彼氏という言葉に、愛佳はビクッと肩を振るわせた。
「―――――ごめん」
しばしの沈黙の後、愛佳の口からようやくその一言だけが聞けた。
「そっか・・・」
「そ、そうじゃなくて・・・」
そう言って、愛佳はまた押し黙った。
なんでだよ?俺じゃダメなのか?俺には何もしてやれないのか?
遠慮してるのか、とも思ったが、愛佳の様子を見ているとそうは思えなかった。
622 :
二人の日々:05/01/22 09:52:06 ID:r6C5CQaM
赤く染まる空の下で、言葉もかわさずにただ座りつづける二人。
そこには心地よい静けさなど無かった。
気まずい空気が流れていた。
「たかあきくん・・・。聞いてくれる?」
意を決したのか、愛佳は真剣な目で俺を見た。
「あのね・・・。私、転校することになったの・・・」
「え・・・」
「だから、休み時間の間に先生の所に行ってたの・・・」
不意打ちな言葉。俺の思考が停止した。
「転校って、どういうこと?」
「その・・・、親がね、転勤することになったの・・・」
「そんな・・・」
信じられなかった。信じたくなかった。
「郁乃の療養費のこととかもあるから、一人暮らしとかは出来ないから・・・」
「・・・・・・・・・」
「転校したら、多分もどって来れないと思うの・・・
もう・・・会えないと思うの・・・」
「そんな・・・」
胸が締め付けられる思いだった。一言、嘘だと言って欲しかった。
「だから・・・」
愛佳の頬に涙が伝う。聞きたくなかった。その先の言葉を・・・
わかれよ・・・。わたしたち・・・
いじょです。初めての鬱系に挑戦で愛佳との別れ話書いてみました。
続きは・・・どうしよう?
>>623 できればハッピーエンドにして欲しい…と言いたいところだが、無理強いはできんか。
続きはあんたが書きたいと思うなら書けばいい。
俺は鬱話は苦手なんでスルーしとくけどな。
続き書きたいんだけど、時間がかかるんよ・・・(´Д⊂遅筆デスカラ
一応ハッピー(?)を考えてはいるのだが・・・
>>625 胸が締め付けられたぜ。コンチクショウ。
鬱というより、二人のさよならが悲しいけどいい別れになることを期待してる。
好き同士がやむを止まれぬ事情で離れていく、という話は大好きだ。
続きを待ってる! 遅筆は気にするな!
俺はここんとこ勢いでがんがってきたが、今ちょっと壁に(´・ω・`)
――翌日。
「たっかあきさまぁ〜♪」
びくっと体が震えた。というのも
「たかあき、さまぁ?」
じろりと6つの目がこちらを凝視している。時間はちょうどお昼時、レジャーシートを広げたいつもどおりの昼
食会が始まろうとしていた、はずだった。
「り、りりり、リオンさん」
背後から声をかけてきたのは当然リオンさんだ。学校では河野さんと呼ぶことにしていたはずだったし、こ
れまでは大丈夫だった。それが何故急に?
「実は貴明様に食べてもらおうと思ってお弁当作ってきたんですよー」
ひょいと後ろ手に持っていた布に包まれたお弁当箱が差し出される。朝から妙に機嫌が良かったと思った
らこういうことか。しかしすでにレジャーシートの上にはこのみのお弁当にタマ姉の重箱弁当がどんと鎮座お
わせられていて、それだけでもすでに食べきれるかどうか、という量だ。
「はい、どうぞ〜」
リオンさんはこのみとの間にすとんと座って、お弁当一丁追加。これはなんというか致命的な量だ。端から
見て人数と照らし合わせてみればなんら問題はないように見えるだろうが、内ひとりは一切手をつけない。
つけられないのだから、単純にひとり分増えたということだ。
救いを求めて三人の顔を伺ったが、
「たかあき様、当然私のお弁当もちゃんと食べてくださるわよね?」
「貴明さま、俺にも当然分けてくれやがるんでしょうね?」
「たかあきさま、このみのお弁当もちょっと食べるー?」
得られたのは色んな意味で死刑宣告だけだった。
別れエンドのほうが書くの難しそうだな
おれ的にはどっちでもいいので続ききぼーん
そのまた翌日。
「しっかしお前はなんというかまあ、人の忠告を聞かないことに関しては天下一品だな」
二人前の昼食を取ることになった二日目の昼が終わった5時限目。タマ姉も量を減らしてくれればいいの
に、ここぞとばかりに量と手間を増やしてきた気すらする。
「どういうことだよ?」
「すっかりリオンさんとラブラブだっちゅうことだよ」
ぐりぐりぐりと頭に拳が突きつけられる。
「そ、そんなんじゃないって」
「おーおー、よく言うよ、貴明さま」
雄二は額に手のひらを当てて、遠くを見ようと少し上半身を突き出している。その視線の先はプールだ。そ
う、今日女子は今学期最後のプール授業となっている。男子は代わり映えしない野球。絶対面倒くさがって
るぞ。体育教師。
とりあえずは一回表、こちらの先行で雄二とともに日差しの中で打順待ちしているところだ。
「くそ、遠目じゃいまいちよく分からん。貴明、どこかに双眼鏡ないか?」
「ないし、あったとしてもそんなの使ってたら体育教師が飛んでくるぞ」
「くっそー、男の浪漫が分からんやっちゃなあ。お、あれリオンさんじゃないか?」
言われて見てみると、確かに遠目ではあるもののリオンさんらしき姿がプールサイドに立っている。
「あっさり釣られやがって、分かりやすいぜ。貴明」
「うるさい!」
しかし栗色の髪の間からイヤーカバーが見えているような気がするからにして、あれはやっぱりリオンさん
なんだろう。メイドロボって泳げるんかな? 一応完全防水だとは聞いてるし、お風呂にだって入ってるから
大丈夫だとは思うけど。
「リオンさんのスクール水着姿かー、くぅぅ、もっと近寄りたいぜ」
「そっかな」
「そりゃお前は毎日そばでもっとすごいのを見てるんだろうから、そう思わないだけだ。このブルジョワジー
め! プロレタリアートはこうやって富を遠くから眺めることしかできんのだっ!」
「見て、ねぇ!」
強く否定したつもりだったものの、いまいち迫力に欠けたのは自分でも分かる。そりゃ見てないとはいえな
いさ。見たさ、見えちゃったさ。でもわざとじゃないんだ。あれはリオンさんのほうが。
「しっかしリオンさんのスタイルは抜群だな。クラスの女どもが霞んで見えるぜ」
それはなんかの色目が入ってるだろと思わないでもなかったが、リオンさんのスタイルがいいのもまた事
実だ。そりゃだってメイドロボだもんな。スタイルの崩れようがない。
なんとなく遠目で見ていても、リオンさんのスタイルの良さが改めて確認できる。
そのとき準備体操を終えたリオンさんがきょろきょろと頭を振ったかと思うと、こちらを見た。そしてこちらに
向かってぶんぶんと手を振って見せた。
「――――!!」
両手を口に当てて何かを叫んでるようにも見えるが、なにも聞こえない。俺はなにも聞こえないぞ。
「……なんというか、貴明さま、ちょっと同情するぜ」
ニヤニヤ笑いやがって、絶対同情なんかしてないだろ。お前。
さらにそのまた翌日。
半ドンの授業を終えた俺とリオンさん、そして珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんはそろってバス停の前に立ってい
た。別にこれから4人でどこかにでかけようというわけじゃない。その逆だ。
一台のバスがやってきて止まり、そこからよく見知った顔が降りてくる。
「ただいま戻りました。瑠璃様、珊瑚様、貴明さん、そしてリオンお義姉様」
そう言ってにっこりと笑ったのはうさぎじゃないイルファさんだった。
「無線のほうはどうなん?」
少し心配そうに瑠璃ちゃんが尋ねる。
「ええ、少し違和感はありますけど、思ったほどじゃありません。問題ありません」
そうか、それは本当に良かった。しかし――
「こうやって並べてみると、本当にそっくりだなぁ」
珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんと、イルファさんリオンさん。双子美人姉妹二組に囲まれてる状態だ。
「当然じゃないですか。貴明さん」
5人になって帰り道を歩き出す。
「いっちゃんのお帰りパーティする〜☆」
という珊瑚ちゃんの提案でとりあえずは買出し。
「今日は腕を振るいますねっ!」
腕まくりをするイルファさん。いや、まだまくるのは早いから。
あー、食べた食べた。ここのところ昼食は過食気味だけど、今日はまあ仕方ないだろう。ソファにごろりと
横になって食後の怠惰な時間を満喫することにする。キッチンでは瑠璃ちゃんとイルファさんが後片付けを、
リビングの片付けはリオンさんが担当している。
「貴明様、食べてすぐ横になると牛さんになっちゃいますよ」
「あー、そうするよ。俺は牛になる」
ごろごろ〜ごろごろ〜。
「そうや〜☆」
そのとき、コンピューターにかじりついていた珊瑚ちゃんが両手を挙げた。
「そうやそうやそうや〜〜そうや〜♪」
挙げられた状態からキーボードに振り下ろされた指は途端に機関砲に変わる。うわぁ、指が20本はあるよ
うに見えるぞ。
「どうされたんですか? 珊瑚様」
手を拭きながらイルファさんが入ってくる。
「そうや〜、いっちゃんは忘れんぼさんになるんや〜☆」
「はぃぃ?」
珊瑚ちゃんの長く分かりにくい話を俺なりに要約するとこういうことになる。ダイナミック・インテリジェンス・
アーキテクチャにおける記憶容量で大きなウエイトを占めるのが実はデータ同士のリンク。あるデータとある
データの関連性を繋ぎとめておくためのもの。たとえば河野貴明のデータがあれば、そこからは無数のリン
クが伸びている。このみや雄二のような人間関係。学校などの所属、国家との関わりに至るまでありとあら
ゆるデータにそのようなリンクは用意され、またそこにはその関係性の概要まで書かれている。これが河野
貴明というデータとその周りだけなら問題はないが、そこから伸びた例えば姫百合珊瑚からはまた同じよう
に無数のリンクが広がっている。ここにさらに姫百合瑠璃が加わると、単純に一人分のデータが追加される
というだけでなく、河野貴明のデータにも、姫百合珊瑚のデータにも、学校のデータにも、国家のデータに
も、姫百合瑠璃に対するリンクが追加される。だから知っている世界が広がるたびに、その容量は爆発的に
増大していく。
以前は大本のデータを消すことで問題解決する方向を模索していたが、それはデータとリンクを一体化し
て考えられていた。例えば容量が一杯で危ないのであれば、重要度の低い――例えばの話だ、多分――
向坂雄二のデータを消す。これによって向坂雄二から伸びるリンクだけでなく、そのほかすべての向坂雄二
に繋がるデータからもリンクが消えることになる。総データ数が大きければ大きいほど、一つのデータを消す
ことによって得られる空き容量も増えるというわけだ。
しかし向坂雄二のデータが重要度が低いのかどうか、という評価が如何に下されるべきかが問題だった
し、また改めて向坂雄二のデータが追加されれば元の木阿弥だ。
そこで珊瑚ちゃんが思いついた方法が、リンクの段階的消去と、データの劣化圧縮であった。
まず各リンクには耐久値が用意され、一定期間ごとに値は減っていくが、参照される度に値は追加され
る。参照が繰り返されるほどに耐久値は上がり、放置されるほどに減って行き、やがて0になると消滅す
る。例えば河野貴之と向坂雄二が友人であるというリンクは、それを再確認することなく一定期間が過ぎる
と忘れ去られてしまう、ということだ。河野貴明のデータが消えるわけでも、向坂雄二のデータが消えるわけ
でもない。だから別のリンクを辿っていけば河野貴明のデータから向坂雄二のデータにたどり着けないという
ことは決してない。これによってデータの接続性は死なない。
続いてデータの劣化圧縮とは例えば100メガバイトの写真データがあるとして、32万色を16万色に抑え
たり、サイズを小さくすることによって、見た目的にはほとんど変わらない状態を維持しつつデータ量を大幅
に軽減することはできる。またあまり参照されないようであれば16万色を2万色、256色、16色、2色と段
階的に減らしていく。サイズもどんどん縮小していけばいい。ディティールは失われていくが、情報そのもの
は消えてしまうことはない。例えば向坂雄二――いい加減すまんとは思ってるんだぞ――のデータが長い
時間参照されなかった場合、イルファさんの記憶のなかの雄二が徐々に色あせていく、ということだ。
本来、必要なありとあらゆるデータを瞬時に参照できるコンピュータというシステムとしては致命的な欠陥
ではある。コンピュータはちゃんとデータの打ち込みさえしていれば1年前に何をしたかというデータをすぐに
引き出してくることができるが、そのシステムを導入してしまうとその一年前のできごとがよほど印象に残る
ことでないかぎり思い出せない。または思い出せても詳細までは分からない。
「秘書にするには失格って感じだよな」
「私はもともと「友達」になるためのメイドロボですから、それでもいいのかもしれません」
「でもまあ、なんにせよ、これで一安心ってところだよ」
「そうですね。現状でほとんど問題はありませんが、やっぱりなにか気にはなるんですよ」
そう言ってイルファさんは頭をコツンと叩いた。
「で、プログラム自体はどれくらいで完成しそうなの?」
「う〜、そんなすぐには無理や〜。とりあえず基本設計をおっちゃんとこ送ったからすぐ取り掛かってくれると
は思うよ〜」
うーん、と、珊瑚ちゃんが大きく伸びをする。
ここのところずっとこの問題にかかりきりで大変そうだったからな。今日はゆっくり羽を伸ばしてもらいたい
ものだ。そう思っていると立ち上がった珊瑚ちゃんがまっすぐこちらに歩いてくる。
「貴明、抱っこ〜☆」
なんですとっ!
しかし有無を言わさず珊瑚ちゃんは膝の上に飛び乗ってくる。
「あーーーーーーーーーーーー!!」
瑠璃ちゃんの叫びがリビングを揺るがすものの、イルファさんが「まぁまぁ」となだめに入る。
「さ、さ、珊瑚ちゃん?」
「くぅ〜♪」
呼びかけてみたものの、すでに珊瑚ちゃんは夢の中に行ってしまっていた。本当に根を詰めてたんだな。
仕方ない、今はゆっくり休ませてあげよう。
「ところで貴明さん、今夜は泊まっていかれるんですよね?」
珊瑚ちゃんが完璧に熟睡モードに入ってしまったので、ベッドに寝かせに行ってると、イルファさんからそう
声をかけられた。
「う〜ん、どうしようかな」
以前なら泊まっていくのが習慣になってたら、そうしただろうけど、今はリオンさんがいる。船頭多くして、
船山に上る、じゃないけど、リオンさんは結構イルファさんを意識してたから、あんまり長いことそばにいさせ
ると負担になるかもしれない。
「今日は帰ろうかな」
「私の体に飽きちゃいましたか?」
ふっと耳元に息を吹きかけられる。いつの間にかすぐ後ろに来ていたイルファさんの顔がすぐそこにあっ
た。
「リオンお義姉様の体はそんなに良いんですか? 私ヤキモチ焼いちゃいます」
「な、なにを」
すぐ横には珊瑚ちゃんが寝ている。ロフトの下では瑠璃ちゃんとリオンさんが一進一退のボードゲーム戦
だ。ここはぎりぎり死角にはなっているけど、ほとんどオープンスペース。少し大きな声を出せば筒抜けだ。
そんな中イルファさんはにじり寄ってくる。体が熱くなってくる。やばい。すでにスイッチはイルファさんに握ら
れてしまっている。
「研究所で体はコードで繋がれてしまって、心は珊瑚様の傍にずっといましたけど、だからこそ体は貴明さん
に触れて欲しくて、それはもう寂しがっていたんですよ」
ベッドの上の俺の手のひらにイルファさんの手が重ねられる。
「ふふ、今は心があっちで体がこっちですね」
「ちょ、ちょっとまった。珊瑚ちゃんも、瑠璃ちゃんも、リオンさんもいるんだぞ」
「はい、だから静かに、しましょうね」
にっこり。
ダメだー! その読点の位置はなんだっ! どういう意味だっ!
ゆっくりとイルファさんの体が覆いかぶさってくる。
「ん〜〜」
すぐ隣からは珊瑚ちゃんの寝息。初めて恐怖が如何に興奮と近い感情であるのかを実感した。珊瑚ちゃ
んが目を覚ましたり、なにかの気まぐれで瑠璃ちゃんやリオンさんがロフトの異常に気づけばそこでアウト。
その後はどうなるかとてもじゃないが考えたくなどない。ぞっとする。
それとまったく同じように密着してくるイルファさんの体にぞっとする。腰の辺りから脳髄に向かって熱い何
かが駆け上がってくる。柔らかい肉の重みがぢりぢりと神経を灼く。唇が――触れる。
「んふ――」
咥内にイルファさんの舌先が侵入してくる。抵抗できない。体を侵食されていく。
「ぷふぅ……貴明さん、美味し」
イルファさんの顔が首筋に埋められる。
「だから珊瑚様もきっと美味しいと言ってくれますよ」
かぷり。首筋に甘噛み。まるで極上の麻薬でも打ち込まれたかのように頭の中が真っ白になる。気がつ
けば手がイルファさんの背中に回されている。
「あ――」
強く抱きしめると唾液で濡れた唇から悩ましい吐息が漏れて、それを唇で掬い取る。
「あ、んまり、脱がしちゃダメですよ――」
仕方がないので服の上から膨らみに触れる。滑らかな生地の向こう側に柔らかい手ごたえのようなものは
感じられるけど、同時に物足りなさも感じる。せめてそれを確かめようと、手のひらで潰してみたり、さすって
みたり、掴んでみたりする。
「ぁん、貴明さんはおっぱい好きのお子ちゃまですね」
イルファさんが俺の頭をやさしく撫でながらくすくす笑う。
「イルファさんは淫乱メイドロボだな」
「そうですよ。私は貴明さんの前でだけは淫乱なメイドロボになっちゃうんです」
ちっとも悪びれない。
「だから今の私は貴明さんだけのものですよ」
そう言ってイルファさんは俺の手を取ると、自分の大事なところに導いた。
「ね、貴明さん、時間もあまりないですから、もう」
「う、うん――」
そこはじっとりと熱く蒸れている。イルファさんは、えい、と体重を横にかけてぐるりと半回転。俺が上でイル
ファさんが下になる。そしてもぞもぞとそこで今度はイルファさんだけが半回転。つまりうつぶせのイルファさ
んに俺が覆いかぶさっている状態だ。
「今日は後ろからお願いします――」
そう言って腰を小さく上げると、イルファさんは自分の手で大事なところを覆っている布を太ももまでずり下
げる。小さく震える可愛らしいイルファさんのお尻。俺はエサを目の前にした獣のようにイルファさんに覆いか
ぶさった。なにも、もうなにも考えられるわけがなかった。
「あれぇ、そういや貴明もイルファもおらんなあ」
リビングから瑠璃ちゃんの声が聞こえてきたとき、イルファさんは俺の腕を枕にして寝転んでいた。
「うふふ、このまま寝た振りしちゃいましょう」
そう言ってイルファさんは目を閉じる。
「そうしちゃうか」
そうは言ったものの、
「貴明様ぁ〜?」
リビングからリオンさんの声が聞こえてきた瞬間、なにか俺の胸に鈍く冷たい重りがのしかかってきた。も
しかして俺はすごくとんでもないことをしてしまったんじゃないか――。
「どこいっちゃったんでしょう?」
リオンさんの声は、純粋無垢だ。リオンさんは何も知らない。俺とイルファさんが過去幾度もこういう関係を
持っていたことは知られているけど、今のこの関係は伝えたくない。知られたくない。
なんでだ。
なんでなんだ。
答えは出ない。分からない。だから目を閉じる。しかしどんなに忘れようとしても、胸の重りはどこにも消え
てなくなってくれなかった。
技術的だったり、専門的だったりする部分は俺の妄想で書いてるので
あんまり厳しく突っ込まないでくださるとありがたいです。
このSSではそうなってるということで。
結構要望ありそうだったんで、イルファさんのシーンが入りましたが、
昔「お前のエロは実用性がない」って突っぱねられた苦い経験を
思い出すだけの結果となりました(´・ω・`)
ちょっと詰まってたんですけど、皆さんの応援を読んで頑張ることが
できました。物語はそろそろ佳境に入ります。
最後までお付き合いいただければ幸いであります。
>>640 GJ!
いや、エロいよ十分
最後までガンガレ
このみシナリオでのタマ姉失恋SS書くとここかタマ姉スレで言ってた人いたが、マダー?
>>640 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
リオンもイルファも(*´Д`*)ハァハァ
エロリ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━ヌ!!
楽しみにしてまつ
さてちょっと休憩してから9話目書くかって思ってたら母親から
「今日、誕生日なの覚えてくれてた?」って電話が orz
すみません。息子は貴方の誕生日の朝から濡れ場書いてハァハァしてましたよ、と。
なんか家族全員に忘れられていたみたいで可哀相なんで、ちょっとなんか買っていってくる(´・ω・`)
東鳩2をプレゼントだ('A`)b
すっげぇワロタ
650 :
画竜点睛:05/01/22 17:20:58 ID:P4KyOiPb
先輩方〜お疲れ様ッス〜
…ところでまだ出てないキャラのストーリーってあるなら誰になるんでしょうか?
草壁さんはまだ見たことないな。
由真もまだかな。このみもないような…。
652 :
名無しさんだよもん:05/01/22 17:40:37 ID:rH3rRO3D
>>640 GJ!!!
十分エロエロですよ〜(*´Д`)
期待度は高まるばかりです!!
653 :
名無しさんだよもん:05/01/22 18:31:41 ID:pia2whIj
草壁さんのが読みたいですね。
草壁さんアフターきぼん
草壁さんは、夜の印象が強すぎて(なんかえっちぃな)
後日談が作りにくいんだよな〜
一応考え中なんで、期待しないで待ってて
草壁さんのを書いてみたんだが…アフターで無い上に3年ぶりに小説書くせいで所々むちゃくちゃだが投下してヨカデスカ?
んじゃ、激しくネタバレあるんでクリアして無い人は飛ばしてね……
──貴明さんと再び出会えて嬉しかった
迫り来るダンプカーを目の前に私は微笑む。
今日は4月24日──全てが終わって、そして、全てが始まった日。
視線の先には道路際に倒れた貴明さんの姿。
ちょっと強く倒してしまったらしく頭を打ってしまったらしい。
でも、これでいい……貴明さんだったら私を救う為に飛び出してくるだろう、そうなったら全てが水の泡。
だから、貴明さん、辛いのは私が全部引き受けますからコレ位は我慢してくださいね
刻一刻と近づくトラックの光を全身に受けながら私は愛しい人に最後の別れを告げる。
さようなら、どうか私の事を最後まで思い出さないでくださいね……
思い出しちゃったらきっと貴明さんは苦しんでしまうから。
私は幻、存在しない筈の私。だから貴明さん、哀しまないでくださいね。
私は、本当はここに居る筈の無い人間なんだから…
その後の事はぼんやりとしか覚えていない。
貴明さんが私の「本当」の名前を呼んで。
私がそれに応えて。
それと同時にダンプが私に突っ込んできて。
覚えているのは何かが衝突する音、そして痛みを感じる暇も無く意識は暗い淵へと落ちていった。
お母さんの仕事の都合でこっちに帰って来る事になって、学校も近くの公立高校に入学する事になった。
お母さんはわざわざ学校を変えなくても……って言ってくれたけど、私は曖昧に笑ってそれを断った。
表向きの理由は家計を圧迫したくないし、お母さんから離れたくないから。
でも、本当の理由は……一人の男の子だった。
こっちに帰ってくる話をお母さんから言われた時、私はこっそり転校先になるかもしれない高校を片っ端に電話をかけ、
一人の生徒が在校しているかどうか確認していたのだった。
その生徒は、小学校の頃一緒に遊んでくれた男の子、友達が居なくて、クラスで浮きがちだった私を誘って一緒に遊んでくれた男の子。
そして……「高城」じゃなくなる私に「河野」の名前をくれるって約束してくれた男の子。
ソレは小さい子供の他愛ない約束。
ソレは、幼稚園児が大きくなったらお父さんのお嫁さんになるって言うくらい曖昧で素敵で、でも不誠実な約束。
でも……私は本気ですからね、貴明さん!
転校する前に貴明さんと交わしたもう一つの約束──また会うことが出来たらずっと一緒に居る。
私はそれだけを支えに今まで生きてきた。
お母さんと二人っきりになって慣れない生活を送っていた時でも、自分は「草壁」優季であり、「河野」優季であるって考えたら頑張れた。
でも、不安が無い訳ではなかった。
子供の頃の約束だし、貴明さんはもう私の事なんか忘れてるかもしれないし、今の貴明さんの写真なんて持ってないし顔も判らない。
それに、もう彼女さんとか居るかもしれない。
でも、そんな事私にはどうでもよかった。
私達は別れた後、再び出会う運命だったのだ。
私は貴明さんならきっと一目で見抜く事が出来るし、貴明さんが忘れていたなら思い出させてみせるし、もし彼女さんが居ても奪ってみせる。
「恋する女の子は凄いんですよ、貴明さん♪」
私はそう笑いながらベッドの上の貴明さん人形をぎゅっと抱きしめて毛布を被った。
明日から始まる、騒々しくも、きっと楽しい日々を夢見て。
次の日、期待に胸膨らませて起きた私を待っていたのは残酷な運命だった。
すぐにでも学校に行って貴明さんの姿を探したかったが、
お母さんに転校で嬉しいのは判るけどせめて朝ごはんを食べて行きなさいといわれ、仕方なく私はパンを食べ始めた。
そういえば、昔、貴明さんが住んでいた所ってここの近くだったし、もしかしたら朝通学途中に出会うかも、
あぁ、朝パンを加えて走る転校生とぶつかる貴明さん、そしてその転校生は実は幼馴染で恋人、ああ、運命的ですぅぅ
これから起こるであろう輝かしい私の未来を閉ざしたのはお母さんの一言だった。
「そういえば、昨日ここら辺で交通事故があったんですって。優季、あなたちょっと抜けてる所があるから気をつけなさいよ」
そういって事故の記事を指し示してくるお母さん。
お母さんの示した先には、私の初恋の、運命の少年の名前が書いてあった。
その後は覚えていない。ただ、感情を抑えきれずに外に出た。
外に出て、すぐにでも探し出したかった、貴明さんを。
そして、抱きしめて、孝明さんのぬくもりが欲しかった。
貴明さんの存在を信じたかったのだ。
そして、次に気がついた時、目にしたのは、懐かしい、変わっているようで、でも昔と変わっていない愛しい少年の姿だった。
そして、私達は二度目の運命的な出会いをした──
暗い意識の海を泳ぎきって、次に目が覚めた時、目に入って来たのは一面の白い部屋、そして、心配気に見つめるお母さんの顔だった。
お母さんは私を抱きしめて、泣いてくれた。
私はそんなお母さんに感謝の気持ちを抱きながらも大きな喪失感に包まれていた。
やっぱり、アレは夢だったんだ、私が生きてるって事は……
ぼんやりとそんな事を考えていた私に「痛い所は無い?大丈夫?」とお医者さんが優しく聞いてきてくれた。
私は、ええ、大丈夫です……とだけ応えると再びベッドにもぐろうと思った。
心配をかけたお母さんには悪いとは思ったけど、もう一度寝たら貴明さんに会えるかもしれない。そんな一縷の望みが自分の中を占めていた。
もう一度シーツを被った私を、看護婦さんは気分が悪くなったのかと思ったのか、気遣わしげに声をかけてきてくれた。
「草壁さん、やっぱりもうちょっと詳しい検査をしましょうか、気分が悪そうですし……」
そんな看護婦さんの言葉にお医者さんは同意しながら言葉を続ける。
「しかしまあ、不思議な事ってのはあるもんだねえ。
草壁さんが入院する前日、草壁さんと全くおんなじ理由で入院してきた高校生の男の子が居たんだよ。
そいや、あの子の検査日程も色々考えないと駄目だねえ……」
その後の会話は全く耳に入らなかった。
ただ、この世界が、あの夢の世界の続きかもしれない、そんな考えがずっと頭の中を占めていた。
色々な検査が終わって自由に動けるようになった後、私は看護婦さんに頼んで4月24日の新聞の隅から隅まで目を通した。
そして、そこには、あの事故の話題は一切書いてなかった。
それを確認した時、涙が頬を流れていくのが自分でも判った。
「夢じゃなかったんだ、夢じゃなかったんだね、貴明さん」
そして、5月7日。
ちょっと遅れた転校初日。
希望通り貴明さんと一緒のクラスになれた私は少しの落胆と安心を味わう事になった。
紹介された後、どのように貴明さんに挨拶しようかと考えていた私を出迎えたのは、
ぽっかりと一つ空いた空席だったのだ。
私はその席に鞄が立てかけてあるのを見た後、ちょっと気分が悪くなったので……といって転入挨拶もそこそこにクラスを抜け出して
貴明さんの姿を探し始めた。
そして──私達は四度目の運命的な出会いをした。
もう二度とこの手は離しませんよ、貴明さん
いじょーでっす。
草壁さんがなんで貴明の事故見つけられたんだとかそーゆーのをテーマに書いてみますた。
ほんとはこのみと草壁さんの絡み書きたかったんだが…続き書いたら書いてみたいなあ、VSたま姉とか。
GJ!草壁さん視点でのラストの描写か〜、いいねぇ。
他キャラとの絡みも楽しみなんで続き書けたらまたよろしく。
>>662 GJ!
優季視点の補完ストーリーですね
続きもよければキボン
>>662GJ!
草壁さんがらみの二次創作はほんと少ないからなあ
書いてくれてありがとう
俺と草壁さんが4度目の「運命的出会い」をした日、
ぽかぽかと明るく世界を照らす太陽と余りに対称的に教室は冷ややかだった。
あの後二人で抱き合ってる所を、何故か雄二に見つかり、
(本人曰く、俺を探しに来たと言ってたが、どうせ草壁さんの様子を見にいこうと思ってたのに違いない)
俺と草壁さんがクラス中の話題を掻っ攫う事になったからだ。
草壁さんは現状を理解して無いのか理解した上でやってるのか俺の手をぎゅっと握り締めていて、
それが男子の怒りを増徴させ女子の間にあらぬ噂を立てるのを加速させていた。
ああ、俺、明日から晒し者だな……などと自分の運命を呪っていると
「で、自称女嫌いでシャイでイナセなナイスガイ貴明よ」
などと言いながら雄二が顔をこちらに近づけてきた。
「だから、女の子が嫌いじゃなくて苦手なんだって……」
言い終わる間も無く雄二は机の上に土足で脚を乗せるとやおら叫び始めた
「んな事ぁ、どーでもいいんだよ!なんでお前はいきなり転校生とそんならぶらぶで甘い香りでぞっこんんだよ、
このむっつりが!あーそうかそれは擬態だったわけだな!俺も明日から女嫌いになるぞ!」
「な、なんだよ!大体、雄二だって知ってる筈だよ草壁さんの事を!」
その言葉に一瞬、雄二の顔が埴輪みたいな間の抜けた顔になるが、それも一瞬。
「はぁ、お前口からでまかせいってんじゃねーよ、大体俺がこんな美しい人の顔を一時たりとも忘れようか、いや忘れまい!忘れる事などありえない!」
そう断言する雄二を目の前にして、草壁さんはちょっと困った顔をしつつも、
「貴明さん、あの時とは苗字が違ってますし……でも、向坂さんお久しぶりです、
小学校の時同じクラスだった高城優季ですよ。今は色々あって苗字変わっちゃいましたけど……」
と雄二に向かって言ってくれた。
雄二はその言葉を受けて暫くうつむいてぶつぶつと呟いた後やおら立ち上がると、
「あーーーー、小学校4年の時に同じクラスだった高城!?あの高城さんか!」
と言うと、いきなり馴れ馴れしく草壁さんの手を握っていやー久しぶりーなどといい始めた。
その姿にちょっとむっとしてると、草壁さんはにこやかに笑いながら、
「ええ、本当にお久しぶりです。でも忘れるなんて酷いですよ」
とそこまで言うと本当に見惚れる位素敵な笑顔で
「嫌がる私にあんな事やそんな事をしたのに……」
といってよよよ泣き崩れる真似をした。
その言葉を受けて、男子の視線が一斉に俺から雄二に向かい、女子の中からも、雄二君さいてーなどという声が上がってきた。
いきなりのその言葉に度肝を抜かれたのか、雄二は口をぱくぱくしながら、
「え? ええ?く、草壁さん?」
と言ったまま固まっていた。
そんなクラスメイトの姿を尻目に俺と草壁さんはアイコンタクトをして何とか教室を抜け出す事が出来たわけだ。
先ほどの針のむしろといっても差し支えない教室からぽかぽかと5月のお日様が暖かい屋上へと抜け出した後、
俺達は顔を見合わせてくすくすと笑いあった。
「でも、草壁さんも酷いね」
俺は笑いながら草壁さんに話しかける。
「幾ら抜け出す為とは言えあんな事言い出すなんて」
草壁さんはその言葉を受けると、ちょっと頬を膨らませると
「むー、貴明さん、本当にそんな事があったのか!?なんて心配してくれないんですね……ショックです」
などといじけはじめてしまったので、
「い、いやほら、雄二ってそんな事する奴じゃないし、ね、ねえ?」
と慌てて言葉を繋ぐと、草壁さんは少し笑いながら冗談ですよと言いながら俺の横に座ってきた。
その流れるような自然の動作に俺の心臓はとくんと跳ね上がる。
数日間の夜の逢瀬、あの時の草壁さんの様子が思い浮かんできて、そして今自分の隣に居る草壁さんとダブっていく。
草壁さんはそんな俺の手をぎゅっと握ると、「あの時も今ここに居る私も両方夢じゃなくて現実ですよ」と笑いかけてくれた。
草壁さんのその言葉にばつが悪い顔をすると、草壁さんはまるで俺の事など何でもお見通しです、とばかりに澄ました顔で微笑んだ。
暫くそうした後、草壁さんはふと思い出したように口を開いた。
「でも……実は私向坂さんに少し感謝してるんですよ」
「え、雄二に?なんで又?」
思わぬその言葉にそう答えると、草壁さんはちょっといたずらっぽく笑うと
「だって、今こうして二人っきりで居られますしね♪」
と言いながら今にも抱きついてこようとした時……
「こほん!」
と余りにわざとらしい咳払いが後ろから聞こえ、反射的に体を離して二人して後ろを見たそこには小牧さんがなにやらいいたげに立っていた。
どうやら小牧さんは授業が始まっても戻ってこようとしない俺達をわざわざ探しにきてくれたみたいだった。
「お二人とも遅いと思って探しにきてみれば……」
とびしっという効果音が似合いそうな勢いで指をこっちに向けながら小牧さんはくどくどとお説教をし始めた。
「大体ですね、お二人は不健全で、神聖な学び舎である学校を──」
あー、長くなりそうだなあと思って草壁さんの方を見ると、草壁さんは
「小牧さん」
「え?」
突然名前を呼ばれた小牧さんはきょとんとして言葉を途中で終わらせ、そこで狙ったように──
「私、もう貴明さんと将来を約束しあった中ですから全然構わないって事ですよ」
とご丁寧に顔を赤く染めて仰ってくれました。
その言葉を受けて牧野さんは口を大きく広げ──
「え、え、え、え、え、え、、エーーーーーーー」
小牧さんの叫びを5月の空に聞きながら、これからは色々と騒がしくなるなあ……と人事のように考えていた。
でも──
「これからも、ずーっと、ずーーっとよろしくお願いしますね、貴明さん♪」
草壁さんの笑顔を見れるなら安いもんなんだろう、きっと
何か電波が飛んできたので連続して書き上げてみますた
だが、どーしても草壁ルートでは愛佳のキャラが委員ちょでしか無いので
愛佳と絡ませるのは俺の実力では無理ですた…後は誰か頼んだorz
次回希望があれば環かこのみか…
まぁ委員ちょはお説教キャラではないし
仮にしてももっとマターリとしたものになるだろうな
>>669 激しくGJ
タマ姉と絡ませると、
子どもの頃に将来の約束をした女vs子どもの頃に振られちゃった女
で、勝負ついちゃってる気もするけど、それはそれで対比としてみてみたいかも。
GJ
だが牧野さんが気になった
>>670 あの場面は説教っつーかどっちかっつーとお姉さんが弟に言い含めるっつー感じを想像してもらえれば
ゴメン 愛佳ファン ゴメンネ
>>671 タマ姉、普通の人の前では礼儀正しいからそれをどうやって崩すかってのが難しいデス
>>672 小牧ダッタ orz
674 :
671:05/01/22 21:25:01 ID:IrcnlwTw
とりあえず犬の散歩でもする草壁さんとタマ姉を遭遇させれば
礼儀とかそういうのは崩れ去るに違いない。(*´ω`)
その後収拾がつくという保証は一切できないが。
3月10日、放課後。図書室にて。
「愛佳、いる?」
「あ、来てくれたんだー。さ、どうぞどうぞ。入って」
書庫の奥から、愛佳が由真に向かって手招きする。
「紅茶入れるね。リクエストある?」
「……エスプレッソ」
「え?コーヒーの方が良かった?」
「冗談。何でもいいわ」
さっき、あいつの前で買い逃して悔しかったから言ってみたなどとは、とても口に出せない。
憮然とした表情をしていると、愛佳がティーカップを運んできた。
「はい、お待ちどおさま」
「ん、ありがと」
立ち上る香気が鼻をくすぐる。
「そういえば、眼鏡掛けるのやめたの?」
「ちょっと壊れただけ。今、修理に出してる」
「そうなんだ」
紅茶に口をつけた由真は、あの時のことを思い出して顔をしかめた。
「ちょっと苦かった?」
「へ?」
「紅茶」
「そんなことないよ。それより」
「うん?」
「ここの仕事、順調?」
「う……うん。まあ」
愛佳は口ごもりながら、曖昧な笑みを浮かべる。
「四月になって、新任の図書委員さんに引き継いだら、私の仕事も終わり」
どこか寂しそうに笑う愛佳を見て、思わず問い返す。
「それでいいの?」
「……うん。もともと、私の我が侭でやらせてもらってたんだし。後は、きっと皆で上手くやってくれるよー」
「そっか」
(結局、こうやって妥協して、自分を誤魔化していくしかないのかな……でも)
割り切れない想いを持て余しながら、二人は紅茶を口に含む。
やがて、重くなった空気を変えるように、愛佳が口を開いた。
「ところで、由真」
「?」
「最近、河野くんと仲いいよね」
思わず紅茶を噴き出しそうになる。
「いや、違う」
「そんな、力一杯否定しなくても」
「関係ないし」
「でも、河野くんと一緒にいる時、とっても生き生きとしてるよね」
「違うってば」
妙な誤解をされてはたまらない。
「あいつが勝手に絡んでくるだけ」
「ふうん」
意味ありげににこにこと笑う愛佳を、恨めしげに睨みながら紅茶を飲み干す。
「……ごちそうさま、また来るね」
「うん。……あ、そうだ」
「何?」
「由真、借りっぱなしの本があるでしょ。明日までに返しておいてね」
「わかった」
(……それにしても)
ああやって、変に気を回すのが玉に瑕だよね……由真はひとりごちると、書庫を後にした。
* * *
それから二日後。
体操着姿の由真が、図書室で捜し物をしていた。
(確か……あれに……)
昨日返した本に、期末の答案を挟んだままだったことを、体育の授業中に気が付いたのである。
あれを人に見られるのは、ちょっと……いや、かなり恥ずかしい。
点を比べた時の、貴明の勝ち誇った顔(と、由真には見えた)を思い出して、頭に血が上る。
いてもたってもいられなくなった由真は、授業が終わるやいなや、
ホームルームにも出ずに図書室へ飛んできたのだった。
(本棚に無いってことは、こっちかな……あった、あった)
カウンターに回ってようやく本を見つけた時には、もうホームルームが終わる時間だった。
急いで答案を取り戻すと、図書室のドアが開く音がした。
(早いな……誰だろ)
カウンターから出口を伺うと、よりによって貴明が入ってくるところだった。
(な……なんで、あいつが)
体操着でこんなところにいる気恥ずかしさもあって、顔を合わせづらい。
なんとなく癪だったが、カーテンの陰に隠れてやり過ごすことにした。
………
……
…
数瞬後、図書室にやってきた愛佳の目に、走り回る二人の姿が目に入った。
(やっぱり、仲いいんじゃない)
半ば呆れ、半ば微笑ましく思いながら見ていると、苦虫を噛み潰したような顔で
こちらにやってくる由真と目が合った。
「あ、由真」
「何」
「や、や、何も見てないよ」
「……」
「……」
「そういうんじゃ無いっつーに」
顔を真っ赤にした由真は、振り返りもせず足早に歩き去っていく。
愛佳はくすくすと笑いながら、その後ろ姿に手を振った。
(素直じゃないんだから。今度、お膳立てしてあげないとねー)
〜おわり。
なんだか山無しオチ無しという感じですが、本編では友人の割に余り絡みの無かった二人に、
こんな会話があったのかなーとか考えながら書いてみました。お目汚し、失礼しましたー。
GJです。こんなふうに本編でも2人の絡みが見たかったね。
そういや本編でのキャラ同士の絡みって少ないよなぁ
このみとたま姉は別として
「貴明様〜、おきてください〜」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
いつものリズムが目覚めの時間を教えてくれる。うーん、と、軽く伸びをして起き上がる。
「もぉ、朝ごはんできてますよ〜」
昨日はあのあと本当に眠ってしまった後で瑠璃ちゃんとリオンさんに見つかり、珊瑚ちゃんと同じ布団で
眠ってたことに関してこっぴどく叱られた。幸いにして眠る前に何があったかは知られずに済んだようだ。
でもそれからどうにもリオンさんを意識してしまう。その一方でリオンさんはリオンさんで、もう片時も傍を離
れようとしない。
「私とは添い寝してくれないのに、イルファとはするなんて不公平です」
ということらしい。
朝食の間、キッチンで控えているイルファさんが何度か頭をコツンと叩いていたのが気になった。
「イルファさん、どうしたの? 調子悪い?」
横ではリオンさんが頬を膨らます気配。
「あ、すみません。サテライトで繋いでる違和感、すぐに消えると思ってたんですけど、消えなくって」
この中、今はからっぽなんですよね。と言って、また頭をこつん。
「一度研究所戻ったほうがいいんじゃない?」
「それはやーでーすー。うさぎロボは結構窮屈なんですよ」
つん、とイルファさんが唇をとがらせて顔を背ける。
「いっちゃん、あかんで〜。調子悪いときはちゃんと調べんと〜」
「それはそうなのですが、珊瑚様」
「イルファ、いっといで」
「瑠璃様まで……」
「ウチらはイルファのこと心配して言っとるんや」
「ぶー、分かりました。でも絶対明日には戻りますからね。絶対ですから」
翌日の昼休み、いきなり予告もなしにやってきたのは珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんだった。
「るー☆」
「貴明、ちょっと」
クラスの奇異の目にはもう慣れたぜ。
「雄二、タマ姉とこのみに後から行くからって言っといて」
「おう、任せられたぜ」
二人にいきなり連れてこられたのは電算室。
「いきなりどうしたの?」
「あのな〜☆」
「さんちゃんが説明すると時間がかかるから、ちょっと黙ってて」
「う〜」
「実はちょっとイルファがややこしいことになってんねん」
「急に、なんで? 研究所に行ったんじゃなかったっけ?」
確かサテライトシステムが不調なのかなんなのか、違和感があるとか言ってたので、嫌がるイルファさんを
みんなで無理やり研究所に送り出したのはまだ昨日のことだ。
「イルファ、絶対今日戻るゆーてたやろ。あれ、本気やってん。朝んなったらもうおってな。しかもどうしても心
が別のところにあるのに耐えられへんゆーて、OS自分の頭のほうに戻してきよった」
「でもそれじゃオーバフローの危険があるんじゃ?」
「そうやねん。でも研究所に行く度に一応バックアップは取ってるから、万が一のことがあってもそこまで戻
る程度で済むんやけど――」
さすがイルファさんのこととなると、苦手だと言っていたロボ関係の知識もなんとか詰め込んだようだ。
「でもこうしてる間にオーバフローするかも知れへんし、貴明しかおらんときにそうなるかも知れへん」
「でも珊瑚ちゃんが記憶を劣化させるとかなんとかのプログラムを思いついたって言ってなかった?」
「それはまだ理論だけやねん。まだ実行できるプログラムは完成してへん。おっちゃんとこのスタッフが今
コーディングしてるとこや。それだってテストもせずにいきなり実戦投入ってわけにはいかへんやろ」
まあもっともだ。バグがあったら大変だしな。
「つまりイルファは今いつ緊急停止してもおかしくない状態ってことや」
「そりゃ大変だ」
「そう、大変やねん。だから万一のために貴明にもいくらか覚えておいて欲しいことがあってな。ええか?」
「なんかメモ取ったほうがいいかな?」
「じゃじゃじゃ〜〜ん♪ 紙とボールペン〜」
横からさっと珊瑚ちゃんが差し入れてくれる。準備いいな。
「まずオーバフローが発生すると、OSはハングアップしてフリーズする可能性が高い。システムは再起動を
試みんねんけど、起動のためのメモリが足りてなかったらそれもあかん。そうなると発電がストップする。か
なりの記憶容量が通電がストップすると消えてしまうタイプのもんやから、予備バッテリーが切れるとおじゃ
んや。予備バッテリーの作動限界はおよそ30分程度やから、その間にシステムをなんとか再起動せんと、
最後のバックアップ以降のイルファは消えてなくなってまう」
「たった30分か」
「たった30分や。外部から停止状態のイルファのシステムに干渉するためには、イヤーカバーのコネクタか
ら接続する必要がある。念のため以前からこの学校の電算室にはその用意がある。って学校は関係なかっ
たわ。あはは。貴明とイルファやと商店街か、家やろ。もし外でイルファが止まった場合は、とにかく一刻も
早く家に連れて帰って」
「分かった。了解」
「でももし繋げたとしても、イヤーカバーのコネクタからは電力供給できるようにはなってへんねん。想定外っ
ちゅうやっちゃな。だからできるのは単純に手動の再起動くらいのもんや」
「事実上のお手上げってこと?」
「そうでもない。まだ最後の手段がのこっとる」
「それは?」
「記憶の切り取り、や。容量が溢れてOSがハングアップしとるんやから、記憶を削ってしまえば再起動はで
きる。そしたらスリープモードで研究所まで運べば残りの部分はバックアップが取れる」
「荒治療だな」
「そうや、荒治療や。でも失ってしまうかも知れん一日にイルファにとって大事な何かが無かったなんて誰が
決められるん? ただ問題は――記憶削除のためのプログラムのインターフェイスや。どこのアホが作った
んか知らんけど、指定条件の絞込みが曖昧やねん」
「俺みたいな素人でも扱える?」
「それは問題ない。簡単すぎるんや」
ぱっぱっぱと、珊瑚ちゃんがプログラムを開く。
「これや〜☆」
HMX-17用の緊急用記憶削除プログラム。それはその意味あいに比べればぞっとするほど簡素な画面
だった。ただ画面中央に文字を書き込むためのテキストボックスと、その右側に「実行」と書かれたボタンが
あるだけ。
「これだけ?」
「そう、これだけや」
「これは、この枠に言葉を入れて実行を押すんだよね?」
「そう、それでその言葉に関する記憶がぜーんぶ消去される」
「全部まとめて!?」
「そうやねん。それで十分やと思われるだけのデータを削ったら、今度はスリープモードでの再起動や」
またしても珊瑚ちゃんがぱぱっとプログラムを開く。
HMX-17用の緊急用再起動プログラム。これも驚くほど簡素なメニュー画面だった。
「スリープモードでの再起動を選ぶだけや。簡単やろ。プログラムの名前メモっときや」
「ああ、うん」
「後はウチなりさんちゃんなりに連絡取れば、研究所に連絡して引き取ってもらうから安心しぃや」
「安心って、イルファさんの記憶を削るなんてことのないように祈ってるよ」
「そうやな。ホントにそう思うわ。ごめんな。時間取らせたわ」
「いや、いいよ。ありがとう。何も知らずに目の前で急にイルファさんが止まったりするなんて、とてもじゃない
けどぞっとするもんな。これで全部かな?」
「うん。全部や。――っと、もうひとつ」
「あ、なに?」
「きばりや」
「はい?」
「あー、やっぱなんでもない。なんでもないからさっさと行き」
瑠璃ちゃんに電算室から追い出される。
屋上に向かおうと歩き出そうとしたとき、
「ふ〜、さんちゃん、ウチうまく言えたかな?」
「瑠璃ちゃんすご〜い、かんぺきや〜☆」
「あ〜、英単語覚えるほうがまだ楽やったわ」
……? なんだそりゃ?
翌日は朝から雨だった。
――で、なんで我が家には傘が一本しかないのでしょうか?
そういや両親とも自分の傘は高いものだから、ってわざわざ梱包して持っていってたな。
「困ったな」
「困りましたねえ」
そう言いながらリオンさんはなにやらニコニコ。
「実に困りましたね。貴明様。困っちゃったですね」
だ、大丈夫か? 壊れたんじゃないだろうな。
「こうなったら一本の傘に二人で入っていくしかないのではないでしょうか?」
ニコニコと微笑を向けてくるリオンさん。
なるほど、そういうことか。
「そういうことなら仕方ないな。ほらもっとこっち寄って」
「え、ダメです。貴明様。私が傘持ちますよ」
「バカゆーな。どこの世界に女の子に傘を持たせるヤツがいるか」
「でも私はメイドですし」
「関係ない。これは命令。分かったね」
「はい、命令なら仕方ありません。貴明様」
そう言ってリオンさんが、俺の胸に肩があたるくらいに寄り添ってくる。その華奢さに胸が高鳴った。
それで出発、まず向かったのは当然となりのこのみの家で
「春夏さ〜ん、傘一本貸してくだいだだ、いだだだ、いだいよ、リオンさん」
頬をつねられた。
そのまた翌日――。
姫百合家から帰ってくると、いつものようにお風呂を入れにはいかず、リオンさんはそそくさと奥の部屋に
消える。む、なんかだ急だな。らしくないといえばらしくない。かと思うと、
「貴明様、貴明様〜」
ぱたぱた走ってきて俺の部屋をノックする。
「なに? 入っていいよ」
「はい〜」
がちゃりとドアが開いて現れたのは、メイドのリオンさんだった。いや、いつだってリオンさんはメイドロボな
んだけど、そういう意味じゃなくて、いわゆるひとつのメイド服でめかしこんでいらっしゃったわけだ。
「どう、どうですか? 似合いますか〜?」
裾を持ち上げてみたり、その場でくるっと回ってみたり。服を買ってもらった女の子そのままの反応だ。
「それ、どうしたの?」
「どうしたのじゃないですよ〜。こういうときはまず感想を言ってください」
「あ、ああ、すごくよく似合ってる」
嘘じゃない、それどころか言葉が足りないんじゃないかってくらいだ。黒地に白のエプロンドレス。妖しい雑
誌やビデオで出てくるようなレース付きのふりふりミニスカートなメイド服じゃなくて、質素な本物のメイド服っ
て感じで、リオンさんがそれを着て立ってるだけで違う時代に紛れ込んだような気分になる。
「ありがとうございます。これは向坂さんに頂いたんですよ〜」
「タマ姉!?」
「いえ、雄二さんのほうです〜」
あっちか。メイド欲しさのあまりに先に服に手を出していたとは知らなかった。
「なんか変な要求とかされなかったか?」
「いえ〜、ただ写真を何枚か撮ってくれ、と。申し訳ないからお断りしたんですけど、どうしても、と言われま
して〜」
「はぁ、仕方のないやつだな」
適当に何枚か撮って後でくれてやればいいだろう。
また翌日。
「ねえ、貴明様」
風呂から上がったリオンさんはまたメイド服を着ていた。結構気に入ったらしい。それだけは雄二に感謝し
ておくか。写真を渡すまでは。
俺はというと、またしてもテレビをつけているのに、ろくに画面を見てなかった。
「あと二日だけなんですね――」
ぎゅっと胸が締め付けられた。意図的に避けていた話題。無言のうちに調停ができていたんだと思ってい
た。リオンさんがやってきたのが先週の月曜日。早々ともう十一日目が終わろうとしている。あと金曜と土
曜、土曜の昼にはリオンさんは研究所に帰る予定になっている。
「そうだな」
それ以外に言葉がなかった。はじめからそういう予定だったのだ。ずっと一緒にいてくれとか、もうちょっと
期間を延ばしてくれ、とか言う権利はない。
「どこにも行くな、とか言ってくれないんですね」
「言ってどうなるっていうのさ。リオンさん自身が前に言った。払いおろされることはないって」
「それでも言って欲しいときって、あるんですよ」
差し出された熱いお茶を一口すする。
言うべきか、言わざるべきか、考えてみた。言うだけなら簡単だ。本当に簡単だ。そしてリオンさんが求め
てるのはそんな他愛もない嘘だ。それは分かってる。行くな。心の中でリオンさんに言ってみる。お前は俺
のメイドロボだ。俺のなんだから、どこにも行くな。
リオンさんは喜ぶだろう。そして「はい」と言うに違いない。そして二日後には研究所に戻っていくのだ。
「ダメだ。やっぱりそんな無責任なことは言えない」
「そんな言葉が聞きたいんじゃありません」
リオンさんは隣にやってきて、俺の頬を両手で挟むと、ぐいと自分のほうに向けた。
「私が聞きたいのは、貴明様がどう思っているかです。言ってください」
もう――、ダメだ。
リオンさんの瞳が間近から俺の瞳を覗き込んでいる。
もうこれ以上自分に嘘はつけない。本当はずっと分かってたんだ。珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんやイルファさん
に抱くのとはまた違った感情。自分の中に生まれたまったく新しい感情だ。
「好きだ。リオン。俺、お前のこと好きになっちまった」
「私も大好きです。貴明様」
リオンさんが頬から手を離して、俺の首に手を回そうとして動きを止めた。そういえば何度か似たようなこと
があった気がする。ぎりぎりのところでリオンさんは踏みとどまってしまうのだ。だから――
「あっ……」
俺のほうから抱きしめた。嬉しかったのに悲しかった。
暖かい。
そしてこの温もりは後二日後には消えてなくなってしまうのだ。
母親の誕生日を祝うために実家に帰り、中学生の妹に
頼むからメイドロボとの萌えシチュエーションを一緒に考えてくれ、と頼み込んだ俺です。
こんばんは。
意外や意外、メイド服というシチュは妹がいなかったら実現しませんでした。ここで感謝。
例によって専門的な部分などは(以下略
前回のイルファさんは予想以上の反響を頂きました。ありがとうございます。
でも多分もうエロはないヨ。(・ω・)
GJ
しかし雄二、メイド服もってるとはw
リオンさんもへ
そして中学生に助言を請うおまいさんにももへ
そしてGJ
>>690 乙です。だんだん佳境になってきましたなぁ。
ちなみにそんな事話せる妹がいるのがうらやましい…。
俺の妹なんて…orz
>>694 濃いエロスキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
TOEICは捨てるな。でも無理に詰め込んでもしゃあないから、
ホットミルクでもミルファに入れてもらって飲んで寝てください。
お疲れ様。頑張って!
おもろかった
だがトーイック捨てるなYO!
>>694 激しくGJ! エロエロデスヨ―
試験はやってみなけりゃ分からない。
気休めにしかならないがガンガレ−!!
ちょっとスレ汚しに来た
699 :
消える光:05/01/23 01:45:17 ID:T15hb3he
「あ〜、突然な話なんだが、今日で小牧は転校することになった」
え〜、と教室にブーイングが走る。
「まぁ、家庭の事情だそうだ。小牧」
「はい・・・」
先生に促されて、愛佳が壇上に上がる。
幾度と見てきた光景。だけど、いつもとは違う。
「今までお世話になりました、今日まで本当にありがとうございました。」
簡単にあいさつをする愛佳。そんな彼女を、俺は見ることができなかった。
「おい、貴明!どういうことなんだよ・・・」
雄二が納得いかんと言わんばかりに聞いてくる。
俺が知るかよ・・・。放っておいてくれよ。
「それじゃあみなさん、お元気でっ・・・」
言い終わると同時に拍手の雨が降る。
「委員長ばんざーい!!」
「元気でね〜〜!」
「俺達のこと忘れないでくれよな〜!」
俺は、みんなと同じようには拍手はできなかった。
700 :
消える光:05/01/23 01:46:28 ID:T15hb3he
「わかれ・・・る・・・?」
愛佳はうつむいたままで、返事は無かった。
「なんで!俺のこと嫌いになったの!?」
「ち・・・がうよ・・・!」
ちがうなら・・・、ちがうならなんで!
言葉にならない思いが、俺の中で弾ける。
なんで!なんでなんでなんでなんで!?
転校するだけでどうして別れなきゃいけないんだよっ!
「遠距離じゃっ・・・駄目なのか・・・?」
しかし、その問いにも愛佳は答えてくれない。
どうすればっ、どうすればいいんだよ!
別れたくない!そんな想いだけが頭の中をぐるぐる回っていた。
「・・・じゃあ、俺もついて・・・」
「だめだよ!」
愛佳の悲鳴にも似た叫びに、俺は驚いた。
「それだけはだめ・・・!絶対にだめだから・・・」
「どうして・・・」
「お願い・・・わたしのこと、忘れてっ・・・」
「そんなこと・・・」
「お願いだから・・・たかあきくん・・・」
愛佳はそれで幸せなのか?別れた方がいいのか・・・?
「一ヶ月間、ありがと・・・。とても楽しかった。そして、いっぱい迷惑かけて、ごめん・・・なさい」
「そんな・・・」
その時、下校時刻を知らせる放送がながれ、俺の言葉をかき消した。
「じゃあ・・・もう帰らなきゃ・・・」
「・・・・・・・・・」
701 :
消える光:05/01/23 01:47:34 ID:T15hb3he
その日一日中、俺は授業にも会話にも集中出来なかった。
胸に穴が空いたみたいだった。
愛佳がどれだけ俺にとって大切だったのか、ようやく分かった。
「ひっどい顔してるわね」
うるさいな、放っておいてくれよ・・・。
そう思って顔を上げたそこには、由真がいた。
「・・・なんだよ」
「話があるの、ついて来て」
由真はいつもとは違って、真剣な表情で俺を見ていた。
「何の話だよ?」
「愛佳の話よ」
「いいよ・・・もう」
もう愛佳は行っちまったんだよ。今はもう、考えたくないんだ。
そう思ってると
ガツン!
「痛ってーな、何するんだよ!」
突然グーで殴られた。
「ついて来いっていっただろ!さっさと来る!」
クソッ、なんなんだよ・・・。
俺はしぶしぶ由真について行った。
702 :
消える光:05/01/23 01:48:36 ID:T15hb3he
屋上。俺と愛佳が別れた場所。・・・なんでここなんだよ。
「で、何の用だ?」
ベンチに座り、俺は由真に尋ねた。
「そっちょくに言うわ。あんた、愛佳のこと本当に好き?」
「はぁ?」
なんで今更そんなこと聞くんだか。
「・・・もう、別れたよ。」
「そんなこと聞いてない。好きかってきいてんの!」
「好きだったよ・・・」
「だった?今はどーなの?」
今?今のこと考えたってどうしようもないだろ、愛佳は行っちまったんだから。
「話はそれだけか?だったらもう帰るから」
「質問に答えろっ!」
「なんでそんなことお前に言わなきゃならねぇんだよっ!?」
しまった、言い過ぎたか。
荒くなってしまった俺の言葉に、由真は驚いていた。
「・・・じゃあ、俺帰るから・・・」
今日はだめだ。愛佳のことが整理できてないのか、人に当たっちまってる。
俺は扉に手をかけた。
703 :
消える光:05/01/23 01:49:24 ID:T15hb3he
「あ〜あ、いるよねこういうやつ。」
扉を開きかけたとき、由真はわざとらしく大声で言い出した。
「相手の言葉を受け入れるのが優しさだ、とか思って変に潔いやつ。
ちょっと逆らっても駄目だと分かったら諦めちゃうやつ。
相手の気持ちや事情も考えないで、自分だけ不幸ヅラしてるやつ。
あたし、そういうの、突き飛ばしたくなるくらい、大っきらいっ!」
言いたいこと言いやがって・・・。
「他に何か出来るのか?出来ることなんてないだろうが」
そうだ、俺にはもう出来ることなんてないんだよ。
「好きなんでしょ?まだ・・・」
「好きでも・・・どうしようもないだろ」
「あんたさ、愛佳に何て理由を聞いたの・・・?」
「両親の転勤だろ。それがなんだよ」
「はぁ?両親が転勤?何それ?」
由真のやつ、何言ってるんだ?愛佳は転勤って言ったんだぞ。
「愛佳は・・・そう言った」
「ふうん・・・。でもそれ、違うわよ」
「え?」
どういうことだ?他に理由があるのか?
「あんたに心配かけたくなかったんでしょうね。
愛佳、ほんとにあんたのこと好きだったから」
「どういうことだよ・・・」
「いい?よ〜く聞いてなさいよ。愛佳の転校の本当の理由は・・・」
花梨タンのエロまだ〜?
705 :
消える光:05/01/23 01:50:48 ID:T15hb3he
次の日ちょうど土曜日だったので、学校が終わると俺は病院に向かった。
「愛佳の転校の本当の理由は、愛佳の妹のため、なのよ」
あの後由真はそう言った。
「昨日電話があったの。で、そのとき聞いたのよ。ついでにあんたのことも」
「・・・俺のこと?」
「うん、また嘘ついちゃった、って言ってた」
「そう・・・か」
結局細かいことは分からなかった。
郁乃は前に手術をしたはずだ。だが、由真は『妹のため』と言っていた。
どういうことなんだ?
考えてもしかたないよな・・・。
とりあえず、俺は郁乃のいる病院にやってきた。
少しでも、愛佳との関係を直せるかも知れないから・・・。
706 :
消える光:05/01/23 01:51:42 ID:T15hb3he
コンコン
二回ほどノックした後、俺は郁乃の病室にはいる。
だが俺は、目の前の光景を疑った。
「だれ・・・?」
「お前・・・どうしたんだよ・・・」
そこには、目を包帯で覆った郁乃の姿があった。
「ああ、たかあき。来たの。」
郁乃は俺の方をちらっと見た後、また窓の外に顔を向けた。
「それ、どうしたんだ?」
「神様が与えた新しいハードルよ。それとも、もう見放されたかな」
何を言ってるんだ?また悪ふざけか?
「ふざけてるのか?」
そう言うと、郁乃はふぅとため息をつく。
「別にふざけてない、そのままの意味よ」
「そのままって・・・」
そこまで言ってようやく気づいた。
「・・・病気、悪化したのか?」
郁乃は返事をしなかった。
「あたしのせいで姉を失うのに、心配なんてするんだ」
「なんでお前のせいで愛佳を失うんだ?」
そう聞くと、郁乃は俺の方に顔を向けて笑う。
「聞いてないんだ。飽きられちゃったんだ」
「お前っ!ほんとにふざけて・・・」
俺が近寄ったその時
「すまないが、面会はこれまでにしてくれないかな」
回診の先生か何かが入ってきたのだろう。俺は退出を強制させられた。
「ばいば〜い。゛おにいちゃん"」
707 :
消える光:05/01/23 01:53:05 ID:T15hb3he
「すいませんっ。あいつ・・・郁乃の奴どうしたんですか?」
俺は、今しがた出てきた先生を捕まえて尋ねた。
「君は・・・誰だね?」
「えっと、その・・・親戚です」
親戚はまずかったか・・・と思いつつ反応を待っていると
「彼女は、今度別の病院に移ることになったんだ」
嘘をついてしまったがこの際構ってられない。
俺は話を聞きつづけた。
「この前手術しましたよね?」
「ああ、だがその後がね・・・」
「その後・・・?」
「視力の方は回復に向かっていたんだよ。だが彼女の場合、身体も弱いだろう。
視力の回復に身体が伴わなかったのだよ・・・」
「・・・・・・」
「それで今回、地方の病院で治療をすることになったんだよ」
「そう・・・ですか」
「それでは、失礼」
そう言って、先生はこの場を去った。
あいつ・・・だからあんなこと言ったのか。
その日、俺は大人しく帰ることにした。
いじょです。なんかよくわからん話に・・・(゚Д゚;)
>>704 おまいさんが書いてくれYO(・∀・)
>>708乙。
「貴明のヘタレ〜。バッド行ってやんの、プッw」
って感じの内容ですな。
こんなのも悪くないかも。
>>708 GJ!イイですね。
これからの展開が凄く気になりましたよ。
>>704 絶妙な間で書き込んだなぁ。
711 :
名無しさんだよもん:05/01/23 03:58:00 ID:tuRaf756
>>690 遅ればせながら、お疲れ様〜。そしててGJ!
いよいよ佳境ですねぇ。続き期待してます(´∀`)
>>694 ミルファエロ最高に萌えますた(*´Д`)
イイ仕事してますなぁ〜。これからもガンガレ!!
このスレ大好き
お前等全員GJだァ!!!!
イルファはエロイ。
さすが愛と欲望のメイドロボと自称するだけのことはある!
言いたいことはそれだけじゃない。
>>640は ネ申
うむ、ほとほと淫乱だないっちゃんは。
そして無事平穏な日々はあっという間に過ぎ去っていく。そして幸せな日々というのはほんの数日でもま
るでそれまでずっとそうだったかのように心に刻まれていくものだ。
例えばそれは眠る俺を揺するそのリズムだったり、
例えばそれは手を繋いで歩くその暖かさだったり、
例えばそれは学校で誰にも気づかれないように交わされる目配せだったり、
例えばそれは眠る前の挨拶だったりした。
だからいつの間にかリオンさんがこれまでずっと傍にいたような気になっていたし、これからもずっと傍にい
るような気になっていた。
リオンさんの作る味噌汁は、データベースのレシピどおりに作られただけかも知れないけど、それでもその
味を忘れられそうにはなかったし、部屋の隅々まで掃除の行き届いていない生活なんてもう考えられない。
テレビを見ていれば、差し出されるはずのお茶に手が伸びるし、眠る前に柔らかい声を聞かなければ、安ら
かな睡眠はやってきそうにない。
だから――
「貴明様、起きてくださいー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
もう少しこのリズムを味わっていてもいいじゃないか。
「ホントに遅刻しちゃいますよー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
「んもう、起きないとちゅ〜しちゃいますよー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ――。
「…………」
心地よいリズムが止まる。
「ホントにしちゃいますよ……」
ぎしり、と手を置かれたベッドが音を立てた。徐々に近づいてくるその気配。吐息を鼻先に感じて――
ピシリ! と、おでこに軽い痛みが走った。びっくりして目を開けると、リオンさんが悪戯っ子のような笑みを
浮かべている。
「貴明様、息を止めたらバレバレですよ」
ピシリと、もう一回でこピン。
「さあ、早く起きてください。朝ですよー」
「リオンさん、明日までなんだね〜」
「はい、残念ですが」
3人で歩くのもあと2回でおしまいだ。リオンがいても以前と変わりなく思えたこの通学路は、リオンがいな
くなったらどう見えるのだろうか? この暑くてたまらない日差しは酷くなるのか、マシになるのか。それとも
なにも変わらないのか――。
「タカくん、寂しくなっちゃうね」
「そうだな」
「お別れのとき、タカくん、泣いちゃダメだよ」
「そうだな」
「タカくん、このみの話聞いてないでしょ」
「そうだな」
「も〜〜、えいっ!」
ぐえっ! いきなり首が絞まる。やばい、このみ、いきなり全開は無しだ。
「ぎぶぎぶぎぶっ!」
「も〜〜、タカくんが話を聞かないのがわるいんだよ」
「分かった分かった、悪かったよ」
リオンがじぃーとこちらを見つめている。なんかイヤな予感。
「貴明様、私もやっていいですか?」
「却下」
放課後になると、リオンさんのお別れ会の開催が決定していた。仕切っているのは当然というか、何故か
というか雄二だ。どこに行くかは結構迷ったらしいが、結局ボウリングで落ち着いた。まあこの人数でカラオ
ケいっても収拾つかんしな。
クラスメイトの大半がぞろぞろと集まって、駅前のアミューズメント施設に押しかける。
道中、俺のとこに寄ってこようとするリオンさんと、それを連れ戻して質問攻めにするクラスメイトたち。
「まあ今日くらいはみんなにもリオンさんを分けてやれ」
ぽんと雄二に肩を叩かれる。質問の大半は俺との関係に終始する。始めは河野さんだったのが、途中か
ら貴明様に変わったわけだから、そりゃ聞きたいだろう。俺だって野次馬だったら聞きたくなること請け合い
だ。だからといってそれが慰めになるわけでもない。
「貴明様ぁ〜、これ答えちゃっていいんですか〜」
密集するクラスメイトの中からぴょんぴょんとリオンさんが飛び上がってるのがなんとか確認できる。
あーあー、俺に振るな。頼むから。
だがもう遅い。仮想のマイクを俺に突きつけるクラスメイトたち。
「――お二人の馴れ初めは?」
「――最初のデートはどこだったんですか?」
「――リオンさんはみんなのアイドルだったのにこのヤロウ」
「あー、ノーコメント、ノーコメント」
仮想のテレビカメラを手で隠してやる。
「この通り、河野貴明氏は全面的に取材を拒否しております。以上現場からTNNの東でした。スタジオにお
返しします」
ボウリング個人戦は、というとリオンさんの一人勝ちとなった。そういえば珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんと一緒に
やったゲームの時にも思ったが、意外と勝負事にはこだわるほうだよな。絶対に手を抜かないというか。
華麗なフォームから投げ出される玉がピンをなぎ倒していく。
「やった、またストライクですよ。貴明様ー!」
あー、どうでもいいが、スカート丈には気をつけたまえ。男子どもがリオンさんの投球となるとかじりついて
きてるから。
「リオンさ〜ん、投げ方教えてよ〜」
女子に呼ばれてパタパタと走っていく。動きを教えてみたり、玉の重さに助言をしてみたり、色々と走り
回っている。実に微笑ましい光景だ。
「覚悟はできてるのか?」
どっかと横に腰を下ろした雄二が言う。
「覚悟してりゃ別れがどっかに逃げて行ってくれるのか?」
「それを覚悟、っちゅうんだよ。いや、わりぃな。余計なこと聞いちまったようだ」
そう言ってからリオンさんを囲む輪に飛び込んでいく。
「リオンさ〜ん、俺にも投球フォーム教えてくれー」
「楽しかったです〜」
みんなと別れた後、本当に嬉しそうにリオンさんは言う。そんなリオンさんの肩に手を置いて雄二がニヤリ
と笑う。
「まだ終わりじゃないぜ。リオンさん」
え? そうなの?
雄二に案内されるままにたどり着いたのは、……我が家ではないですか。
「おかえり〜、リオンさん、タカくん、ユウくん」
中から出迎えてくれたのはこのみだった。そうか、そういや合鍵持ってたな。リビングに行くと、タマ姉が
キッチンを使っていた。
「あわわ、向坂さん、料理なら私がー」
「ダメダメ、今日はあなたが主賓なんだから、もてなされておきなさい」
「あうー、分かりましたー」
とは言ってもリオンさんはなにも食べられないから、リオンさんをもてなすものは、俺の昔話に終始した。
楽しい思い出、つまらない思い出、恥ずかしい思い出、俺自身が忘れてしまっていたような思い出まで、
そばで聞いているのが照れくさくなるような色んな思い出話。それをとても興味深そうにリオンさんは聞いて
いた。
この2週間はリオンさんにとってどんな思い出になるんだろうか? なったんだろうか?
そしていつかリオンさんが誰かに俺のことをこんな風に話す日がくるんだろうか。
「じゃあねータカくん、リオンさん」
「また明日な」
「遅くまで失礼したわね。後は二人でごゆっくり」
口々に言い残して三人が帰っていく。急に人の数が減ったリビングは、何か物悲しい。
「あ、お風呂入れますね」
「うん、お願い」
タマ姉は後片付けまできっちりしていって、リオンさんは最後の最後まで戸惑っていたようだ。
「貴明様のためにお風呂入れるのもこれで最後ですね」
「なんなら一緒に入るか?」
冗談めかして聞いたつもりだったが、
「はい、是非とも。お背中流させてください。最初の日の汚名返上ですよ」
リオンさんはむんと気合を入れる。やる気まんまんだ。
「そうだな。お願いするか」
風呂から上がってしまうともうなにもすることがなくなってしまった。
話すべきことは話してしまったし、伝えるべきことも伝えた。二人とももう満足していた。
「時間ももう遅いし、寝ようか」
「あの、貴明様、最後にひとつだけお願いが――」
「なに?」
できることならなんでもしてあげたい。リオンさんに残せるものがあればなんだって。
「その――子どもっぽいんですけど」
照れくさそうにリオンさんはもじもじする。
「寝るとき、手を繋いでいて欲しいんです」
「なんだ、そんなことか」
「なんだってことないですよー! 勇気を出してお願いしたんですから真面目に受け取ってくださいよー」
ぷんぷんと怒りを表明してみせるリオンさんをふわりと抱き寄せる。
「ひゃん!」
可愛らしい声をあげるリオンさんの手を取ると途端にしおれた花みたいに大人しくなってしまった。それを
引っ張るように俺の部屋へ。リオンさんがベッドに潜り込むのを確認して電気を消した。布団に入ると、リオ
ンさんはぴたりと寄り添ってくる。
「おやすみ、リオンさん」
「はい。おやすみなさいませ。貴明様」
繋いだ手と手から温もりが広がっていく。この温もりを絶対に忘れないようにしよう。
絶対に。
エロいイルファさんと対比して、リオンさんとはプラトニックに――。
どうも物語を盛り上げるというのが苦手で、最後の時間というのを淡々と書く手法なんだと昔から自分をご
まかし続けてきたので、このままごまかしていきます。文章はあえて序盤の書き込みを捨て淡々としたもの
に変えていって、る、よね?
この短期集中連載でしたが、この物語も次回で最終回。
どうもお付き合いありがとうございました。
>>723 神キタ━━(゚∀゚)━━!!
このまま2人は別れてしまうのか!?気になりますよ。
お疲れさまです。
いってるYO
ってもう終わってしまうのか〜、残念!
とりあえず715氏GJ
最終回も楽しみにまっちょるよ(´ω`)ノ
リオンを正妻と仮定したらイルファは浮気相手ってとこか。
あともう一息、ガンガレ。
727 :
名無しさんだよもん:05/01/23 12:16:56 ID:tuRaf756
>>723 ここまでとても良い質・ペースで、お疲れさんでした。
あと一息!がんばってくだされー。
ラスト楽しみにしてます(´∀`)
728 :
名無しさんだよもん:05/01/23 12:28:10 ID:eadOeDbE
今までSSになってないキャラっておりますでしょうか?
メインキャラはあらかたやってる気がする。
三人娘とか?
ダニエルとか雄二メインの話とか無いと思う
>>730 >雄二メイン
おっすおら(ry
図書委員長とかゲンジマルとかはまだのような希ガス
おっすおら(ry があったな!
図書委員長は上のほうで愛佳陵辱してなかった?
ゲンジマル・・・は無いな。てか作る人いるのか
真委員長もまだじゃね?
自分が書きたいキャラを書けばいいさ。
被ってるとか気にしなくてもいいよ。
>>733 基本的にビジュアル無いとSS書く気になれない
俺だけ?
書きたいキャラがいてもネタが思いつかない罠
737 :
妲:05/01/23 13:07:10 ID:eadOeDbE
草壁来てた?
740 :
妲:05/01/23 13:17:26 ID:eadOeDbE
みなさま方?
ここは21禁の板という事でよいのでしょうか?
こにゃにゃちわ。今続きを考えてるところですけど今一つ気に入らないため話を再検討
しており、更にしばらく忙しい日が続くため俺の話は数日間続き書けません。あんまり
期待せずお待ちくださいませ>読者の方々
何を当たり前なことを、あととりあえず下げようぜ
>>739 実は委員ちょシナリオまだ途中だから郁乃書きたくてもかけない
最後の夜が明けた。
固く結ばれた手を解こうとすると、最後にもう一度強くリオンの手が握り返してきた。
「貴明様、おはようございます」
「おはよう、リオンさん。先に起きてたなら起こしてくれればいいのに」
「いえ、貴明様の寝顔が可愛らしかったものですから」
ベッドに横になったままする朝の挨拶はなにか照れくさい。というか、根本的に照れくさいこと言われた。
「よっ、と、リオンさん、朝ごはんよろしく」
顔の紅潮を気取られないように起き上がった。
「はい。任せてください」
リオンさんが腕まくり。
台所に立つリオンさんを見るのも今日で最後。
いや、あんまり最後最後考えないようにしよう。
いつもどおりに過ごしたい。
この2週間のいつもどおりに。
だから普通に朝飯食って、このみを迎えに行って、こんな日でも寝過ごすこのみをからかって、雄二とタマ
姉も一緒で、途中で珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんも一緒になって学校に行く。
特別なことなんて何もない。多分、特別なことをすればするほど悲しくなるだけだから。
だから誰もリオンさんが今日でいなくなることなんて口にしなかった。
「それじゃこの問題はリオンさんにやってもらおうか」
「はい」
数学教師に言われて、リオンさんが黒板の前に進み出る。
リオンさんの華奢な手がチョークを持ってスラスラを解答を黒板に刻み付けていく。
こんな姿を見れるのもこれで最後かもな。
ずきん、と胸の奥が疼いた。
ああ、おい、俺はどうしちまったんだよ。自分で決めたんだぜ。最後を最後らしくしないでいようって。これま
での2週間が大事だったから、その大事な日をもう一日作って、それで終わりにしようって。
それなのに俺は何かを考えれば、これで最後、これで最後って、女々しいことこの上ないぜ。
そのとき不意に、解に至る寸前でリオンさんの手が止まった。
あれ? あそこまでいけば俺だって答え分かるぞ。
しかしそういうことではなかった。たっぷり5秒ほども静止していたかと思うと、リオンさんはそのままその
場に崩れ落ちたのだ。
倒れこんだリオンさんを見ても、しばらくは動けなかった。何が起きたのか理解できなかったから。
頭の中が真っ白になる。なにも考えられない。
なんで、リオンさんが急に――。
ガツン!と頭に衝撃が走る。
「しゃっきりしろ、貴明! お前がしっかりしないでどうする」
ああ、そうだ。今はとにかく!
リオンさんのところに駆け寄る。机も椅子も邪魔だっ!
そばにしゃがみこむと、リオンさんは完全に機能停止しているように見えた。なんで、急に――。
『つまりイルファは今いつ緊急停止してもおかしくない状態ってことや』
なんでだっけ?
『まずオーバフローが発生すると、OSはハングアップしてフリーズする可能性が高い。システムは再起動を
試みんねんけど、起動のためのメモリが足りてなかったらそれもあかん。そうなると発電がストップする』
急速に冷えていくリオンさんの体。それが直接死に繋がるわけじゃないと分かっていても、抑えがたい恐
怖が胸を締め付ける。
イルファさんの話だったはずだ。イルファさんの。だってオーバフローはHMX-16のボディにHMX-17のシス
テムを乗せるから起きることで――。
まるで本物の感情があるかのようにくるくると表情が変わるのは誰だ――。
鼻歌を歌いながら、窓を拭くために椅子を使ったのは誰だ――。
イルファにヤキモチを焼いていたのは――。
リオンさんを背中に背負って走った。とりあえずは――。
授業中とかなんて構うもんか!
扉を力任せに開けて、驚きこちらを見る生徒たちのなかから目当ての顔を見つけ出す。
「珊瑚ちゃん、クマ吉がっ!」
「やっぱ起きてしもたか」
瑠璃ちゃんが言って、珊瑚ちゃんの手を取ってこちらに駆け寄ってくる。
「貴明、電算室!」
「分かってる!」
走る、走る、走る! いろんな教室の生徒や教師が驚いてこちらを見ていたが、そんなこと構うもんか!
階段を二段飛ばしに駆け上がる。
電算室の扉に飛びついて開けようとする。が、鍵がかかっていて開かない。
「珊瑚ちゃん、鍵!」
ポケットの中に手を突っ込んでごそごそやった珊瑚ちゃんが泣きそうな顔になる。
「あ、え、えーっと、カバンの中や」
「ウチが取ってくる!」
瑠璃ちゃんが踵を返して走り出した。
くそっ、くそっ、くそっ、一分一秒が惜しいんだ。
「ごめん。貴明、ウチ、にぶいから」
「いいよ。珊瑚ちゃん。万が一があってもバックアップまでは戻るんだろ」
「それやねんけど、みっちゃんな、こっちきてから一度もバックアップとってへんねん」
「――な! だって一度は研究所まで戻ったし、サテライトシステムだってあるんだろ」
「みっちゃん、研究所戻ったときに実験中止や言われて、怒って飛び出してきてん。それからはサテライトシ
ステムも切ってしもてて」
なんてこった。瑠璃ちゃんはまだか。
イライラして、ガツガツと扉を蹴ってしまう。
「落ち着け、貴明。よく分からんけど、お前が焦ってちゃなんもよくはならんぜ」
雄二に肩を叩かれて気づいた。クラスの皆がいる。
「とにかく早く中に入れればいいんだよな?」
誰かが言う。
「――連帯責任だぜ」
がっしゃーーん!
と、言うや否や、一人の男子生徒が肘でガラスを叩き割った。そこから手を突っ込んで窓ガラスの錠を外
す。がらりと開いた窓からまた別の一人が電算室の中に飛び込んだ。そして扉を開ける。
「サンキュ!」
窓ガラス代くらいなら後からいくらでも請求してくれ。
電算室内に飛び込んで、一台を起動する。女子の一人が椅子を持ってきてくれて、そこにリオンさんを座ら
せる。がくりと力なくうなだれる頸に肝が冷える。
残りは15分あるかないか。
ケーブルをイヤーカバーに繋いで、改めてリオンさんがメイドロボであることを強く認識する。
HMX-17用の緊急用記憶削除プログラムを起動すると、画面上に[識別信号 HMX-17bミルファ]と表示さ
れた。
ああ、本当にクマ吉だったのか。こんな形で知ることになるとは思わなかった。こんな形で知りたいなんて
思わなかった。そしてお前の記憶を削らなくちゃならなくなるなんて思いもしなかった。
キーボードを前に俺は固まる。
打ち込んだ言葉に関するデータはまとめて消去される。
「珊瑚ちゃん、例のプログラムは――」
悲しげに横に首を振る。選択肢は、ない。
今ここで再起動できなければ、リオンさんとして過ごした2週間は、デリートキーでファイルが消えるごとく、
跡形もなく消え去ってしまう。かといって、2週間を守るためには何かを犠牲にしなければいけない。
「おい、なんだよ。記憶削除プログラム!?」
雄二が大声をあげる。止めてくれ。記憶をプログラムで消すだなんて、分かっちゃいるけど、お願いだ。言
葉にしないでくれ。
「どういうことだよ。貴明!」
「うるせぇ!」
肩に掛けられた手を払いのける。
「――あかんねん。記憶削らんと、りっちゃん、消えてなくなってまうねん」
ぽろぽろと珊瑚ちゃんの目から涙が零れ落ちる。
そうだ。リオンさんが本当はミルファだとかそんなことはどうでもいい。それが仮初めだとしたらなおのこと、
その記憶が消えてしまえば、リオンさんという存在がこの世から消えてしまうことを示している。
もう残り10分を切っただろう。
「なんやこれ!」
戻ってきた瑠璃ちゃんが割れた窓ガラスを見て大声をあげる。
みんなの視線がそちらに向いた。
もう手段は――ない。
そして俺がここに打ち込む権利がある言葉はひとつしかない。
震える手でキーボードを叩く。
――[河野貴明]――。
大きく根を張った記憶ほど、削除されたときに大きな空き容量を生み出すのならば、これほど効果的な言
葉は他にないはずだった。マウスを持つ手が震える。実行ボタンにカーソルを置くことすら困難なほどに。
クリックしなくちゃ、クリックを――。
「この! ばっかやろう!」
その手を捻りあげられた。瑠璃ちゃんに一瞬気を取られた雄二が気がついたのだ。
そしてそのまま床に引き倒される。
「やめろ、バカっ、早くしないとリオンさんが消えるんだぞ!」
「バカはお前だっ! おい、手伝ってくれ」
暴れまわってなんとか抜け出そうとするが、4人がかりで結局押さえつけられてしまう。
「どけよっ、コンチクショウ! どけよ、バカッ! リオンが、リオンがっ!」
「頭を冷やせっつってんだ! この大バカ野郎!!」
雄二の拳が叩きつけられる。頭がスパークする。涙が溢れてくる。悔しい、悔しい、悔しい!!
「委員ちょ!」
雄二が叫ぶと、委員長がすぱっとキーボードの前に座った。
「分かるな!」
「アイアイサー」
普段の見た目からは想像もできない速さで、委員長がキーボードを叩き、実行ボタンを押す。そして連続し
てもう一人分。
「俺のも頼む」
「私のもお願い」
ひとり、またひとり。クラスメイトの記憶がリオンさんから消えていく。なんで、なんで、なんでっ!
「俺のは残しといて」
「却下」
「うぃ、まどもあぜる」
ほんの数分で委員長は俺を除く全員分の名前を打ち終える。
「なんでっ!なんでなんでなんでだよ! 俺ひとりで十分だったはずだ!」
「自分の行動を自分で選ぶのはお前だけじゃない。そんなことも分からないのか、クソ大バカ野郎が。俺や
委員ちょやあいつらみんな、お前と同じ選択をしたんだ。リオンさんが大事なんだ。だったらどうするべき
だ!? 貴明、お前の記憶だけは消しちゃいけない。消しちゃいけないんだっ!」
「そぉや、貴明が全部責任を背負い込むことはあらへんよ。――多分もう十分や」
委員長が一切手を触れなかったマウスを珊瑚ちゃんがぱぱっと操作して再起動メニューを呼び出す。
「なんとか、間におうた」
かちっ。
[スリープモードでの再起動を完了しました]
画面上に表示されるエンドタイトル。
「お前らもみんな大バカだ――」
ゆっくりと手足の拘束が解かれても、俺はしばらく顔を上げられなかった。
「そうだぜ。自分よりバカが世の中にいないとでも思ってたか、バカ野郎」
雄二の手を借りて起き上がる。
「河野くん、どうぞ」
委員長から差し出されるハンカチ。ああ、そうか、俺泣いちゃってるのか。なさけねぇ。
遠慮なく借りて、頬をぬぐう。
そして、椅子に座ったままの休眠状態に入ったリオンさんの前に立つ。
「平和そうに寝やがって、お前が一番の大バカだ。なぁ、ミルファ」
初めてそう呼びかけた。
何のためにリオンとして俺の前に現れたのかは知らないけど、それでみんなに迷惑かけて、でもみんなに
愛されて、それで俺に好きにさせやがって。
頭に触れる。そっともう必要ないだろうイヤーカバーに刺さったケーブルを抜いた。
――ぶんっ。
突然休眠状態にあったはずのリオンさんの眼に光が戻った。
「河野貴明声紋確認、状況認識」
「状況――スリープモード時において河野貴明がHMX-17bを確認」
「認証――契約に基づきHMX-17bミルファの所有権を河野貴明に譲渡する」
「規約――1. 一生大事にすること」
「――――2. 1.が成立している間、HMX-17bミルファの維持に関する費用は、ミルファのデータの定期的な
回収を条件として来栖川エレクトロニクスが負担するものとする」
「5分以内のちゅ〜により、譲渡に同意したものと見なす」
機械的な音声が一気にまくしたてる。
いやいやいや、なにこれ? 費用とかそんなこと考えてらんない、というかちょっと待て、どこで声紋採られ
てたんだよ。つーか、これはそういう問題じゃねぇ。え? なに? これ、何が起きてるの? 誰か教えてくれ
ませんか? ねえ? 最後のなんなのよ?
救いを求めて見渡すに、クラスメイト一同+珊瑚ちゃん瑠璃ちゃん。
一同――興味津々。目が爛爛。
「残り4分」
ご丁寧にカウントダウン付きかよ! 誰だよ、こんなバカげた仕掛け考えた奴は。
「――ねぇ、奥さんするのかしら?」
「――まあ、奥さん、しますわよ」
「わああああああああああああああああああああ!!」
もう頭を抱えてわめくことしかできない。
パニックに陥ることの多かった2週間だが、これが最強だ。間違いなく最強だ。
「残り3分」
委員長
「そう…あの日は夕陽がきれいだった…。」
委員長は語る。
委員長
「委員の用事で下校時間ギリギリまで学校に残っていたんだ。」
まぁ…委員長として当然の事なんだがね
…と何気に付き足す辺りがムカついてくる。
俺、河野貴明は何故か近所のファーストフード店(通称ヤック)に目の前の人物、そう我がクラスの委員長に拉致され、延々と奴のヨタ話を聞かされている。
それも一時間以上…
委員長
「キミには真実を話しておこう…」
などという誘いに乗ってしまった自分のミスなのだが…。
奴曰く、骨折事件(?)の真相を誰かに打ち明けたいらしいのだが…何故俺なんだ?
俺、そんなに暇そうに見えるのか?
委員長
「…野、河野!僕の話を聞いてるのか!?」
貴明
「あっ…ああ。ちゃんと聞いてるって!」
いかんいかん…。意識が飛んでいたよ。
委員長
「…で、お前はどう思う?」
ぽん、と肩を叩かれた。振り返ると雄二のヤツが笑いを堪えるあまり、苦虫を噛み潰したような顔になって
いた。
「くくくっ、た、貴明さまよ、いい加減覚悟を決めな、ぷぷっ」
「河野くん、ファイトです」
委員長は両手で顔を覆っているようで、しっかり両目のところが開いている。
「残り2分」
「貴明、みっちゃん、すきすき〜や〜☆」
両手を挙げて喜ぶ珊瑚ちゃん。
一方、瑠璃ちゃんはにやぁと笑って見せて、
「良かったなあ。貴明。決まった人ができたんやからさんちゃんに手ぇ出したらコロス。さぁさっさとしぃ!」
ああ、そっか。リオンさんに協力的だったの、そういうことだったのね。というか最初から全部知ってたんだ
ね。
「残り1分」
くそっ、マジかよ。最悪だ。リオンさん、いや、今更クマ吉っていうのもアレだな。そう、ミルファ、ミルファと
の初めてのちゅ〜だぞ。初めてなんだぞ。心の準備なんてできちゃいねーし、しかもミルファ寝てるじゃん。
「残り30秒」
あー、分かった分かった分かった。俺の負けだ。完全敗北。無条件降伏だ。
「残り10秒」
今10秒くらい飛ばしたろーーーーーーーーーーーーーー!!
それが最後の後押しになった。もう体裁とか、どうちゅ〜しようかとか、そんなことが一切吹き飛んで、ただ
ただミルファの唇に飛びついた。
――ちゅ。
「――ちゅ〜を確認。HMX-17bの権利を河野貴明に正式に譲渡。決定。確認」
「――お買い上げありがとうございます。それでは良い一日を」
後はもうなんか大騒ぎで、良いのか悪いのか、そんなこととてもじゃないけど感じられない、そんな一日に
なった。いやそんなことを言ったらミルファに悪い。そうだ、今日は最高だ。ちょっとまた涙でそうだけど――。
ずっと ずっと 憧れている
奇跡が はじまる
I want to believe that a wish come true.
さんさん 雲の切れ間から あかるい 光うけて
新しい季節 この道からはじまる
日差しに誘われ 振り向いた瞬間
まぶしい笑顔 あなたを見つけた
hum こんなに近くにいても 渡せないものがあるの
空に ひとつ流れゆく星
青空が見せてくれた奇跡
きっと Heart to Heart 叶えてくれる
眼を閉じ 三回 願い事繰り返す
――epilogue――
翌日、珊瑚ちゃんに連れられて来栖川エレクトロニクスの研究所に案内されることになった。
どうにもミルファの譲渡にはいくらかの書類にサインをしないといけないらしい。
「安心してえーよ。長瀬のおっちゃん、ええ人やから」
居心地の悪い応接室でしばらく待たされる。そうして入ってきたのは人の良さそうな一人の男性だった。
「いやぁ、ごめんごめん。待たせちゃったね」
そう言って男性は名詞を差し出した。
来栖川電工 第七研究所開発主任 長瀬源五郎――と、書かれている。
「いやぁ、実を言うとね暴力行為があったもんだから結構心配していたんだよ」
「暴力行為?」
「うん。まあミルファがそっちにいった最初の日にだね。君が女の子らと一緒に食事をしてるのを見て、いき
なりぶちきれたわけだ。それで――」
長瀬さんが殴るような仕草をしてみせる。そういえば心当たりがある。突然聞こえてきた大きな音と、扉に
あった大きなへこみ。
「その場は取り繕ったみたいだが、君から見えないところに行った途端、爆発したらしい」
……あれ、か。直接殴られなくて本当に良かった。
「それはログがちゃんとあったからちゃんと学校に賠償すればいい話なんだが、ほら、二日目以降戻って
きてくれなかっただろ。しかも結構記憶がずたずただから、なにかあっても分からないから困っちゃってさ」
長瀬さんは一言断ってタバコに火をつけた。
「でも話を聞くに、暴れたのはその一回だけみたいだね。あの子も随分と大人になったもんだ」
「そうなんですか?」
「いやはや、二日目に初日のログを見て冷や汗をかいたよ。それでミルファに言ったんだ。これ以上の実験
継続は止めておこうと、ね。ははは、逃げられたよ。内側へのセキュリティも強化せんといかんな」
「で、結局どういうことだったんでしょうか?」
どうしても聞いておかなければならないことがひとつ。
何故クマ吉、ミルファは、リオンと自分を偽って現れなくてはいけなかったのか。
「ああ、それかい」
少し照れくさそうに長瀬さんは自分の鼻を掻いた。
「賭けだったんだよ」
「賭け?」
「ミルファがね、どうしても君専属のメイドロボになるって言って聞かなくてね。でもその気持ちをそんな風に
押し付けていいのか? って聞くと、君も絶対に自分のことを愛してくれると断言してくれたわけだ。まあそ
れが本当ならば、こうしようと。ミルファの環境テストを兼ねて君の学校、君のクラス、そして君の家庭にリオ
ンとしてお世話に行きなさい。自分を抑えられなければメイドロボ失格だ。だからミルファにはいくつもの制約
をつけた。それでその間に君がリオンの正体を見抜いたならば、好きにしたらいいってね」
――期間中は自分がHMX-17型であることを直接明かしてはならない。
――第三者によって明かされた場合も、条件に反するものとみなす。
――ミルファからの肉体的接触は、第一次接触までしか認めない。
――上記の条件で期間中に河野貴明が、ミルファをミルファであると見抜いた場合は、5分以内に契約を
済ませることによってHMX-17bミルファの所有権を河野貴明に譲渡するものとする。
――ただし契約は河野貴明の意思によって行われなくてはならない。
「君には迷惑をかけたと思っているよ」
「いえ、そんな、どちらかというと俺は全然気づけなくって」
「でも間に合った。そうだろ? 少年」
「それで、本当にいいんですか?」
重ねられた書類を前に改めて尋ねる。二度読み返しても、こちらに有利な条件としか思えない。
――HMX-17bミルファは正式に河野貴明が所有するものとなり、ミルファを大事にして、また月に一度は
研究所に戻ることを条件に、ミルファの維持にかかるあらゆる費用は来栖川エレクトロニクスが負担する。
その他細かい条項はあるものの、いきなり契約内容がひっくり返るようなことは一切書いてない。
「本当にいいもなにも、テストケースその2として大事に利用させてもらうよ」
長瀬さんはニヤリと笑って見せる。
「記憶容量の問題解決もまだ万全とは言えないし、そもそも物忘れするようなメイドロボを世間が必要として
いるかも市場調査してみんとなんともいえん。けどコイツには可能性がある。そうだろ」
「はい。本当に、そう思います」
「よし、それじゃ決定だ。ちゃっちゃと判を押してくれ。嫌だと言ってもあの子は押しかけていくだろうがね」
「それでミルファは?」
「結構ごっそり記憶削っちゃったからなぁ。本人なりの形で整理がつくまで休眠状態にしとくつもりだ。それで
もあと数日ってところだよ。単純な子だからね」
そう言って長瀬さんは3本目のタバコに火をつけた。
「なー、おっちゃん、ええ人やったやろ」
帰り道珊瑚ちゃんがそう言って笑う。
「そうだな」
そう返事して、その頭をくしゃりと撫でた。
一学期が終わる。
本当に慌しい4ヶ月間だった。
4月に珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんと出会った。
5月にイルファさんのことでいろんな衝突があった。
6月は比較的穏やかに過ぎたものの、それでも色んなことがあった。
7月にリオンさんとしてミルファがやってきた。
これからもこんな日々が続くんだろうか。
それともこれは人生の一節をもっとも鮮やかに彩った季節として思い出に変わっていくんだろうか。
体育館での詰まらない話を半分寝ながら聞き終えて、みんなで教室に戻る。以前にも増してみんなの仲
は良くなったように思う。それだけでもリオンさんという存在に感謝することができる。
教室の扉を開けると、とても懐かしい姿が視界に飛び込んできた。
「――リオン、さん?」
おおっと、どよめきがあがる。
しかしそのリオンさんは首を横に振った。
「私は河野貴明様のメイドロボ、HMX-17bミルファと申します」
一礼。
「ミルファ……」
「貴明様、貴明様ぁっ!」
走ってきたミルファが俺の首っ玉に抱きついてきた。それを強く抱き返す。
この温もり、帰ってきた。本当に帰ってきたんだ。
「――ねぇねぇ奥さん。またキスするんじゃないかしら?」
「――まぁまぁ、奥さん。きっとするわよ」
「しねぇよっ!」
けったいな女子どもに一喝して、ミルファを見ると眼を閉じて顔を突き出してきてる。
本当に勘弁してくれよ。
「だって初めては私、意識がないときだったじゃないですか」
ミルファは眼を閉じたまま言う。
ああ、くそっ、もう一度も二度も同じだろ。
――唇を重ねる。
どよめきと拍手。
「――河野さん、河野さん、今のご感想は?」
「――味をおっしゃってください。味を!」
「知るかーーーーー!!」
叫ぶと、ミルファは俺の胸から離れて、みんなの前に改まった。
「私は皆様にお礼とお詫びを申し上げなければなりません。皆様の尽力の賜物で私は大事なものを失わず
にすみました。それなのに私は皆様のことを覚えておりません。本当にありがとうございました。そして、本
当に申し訳ありません」
深々と頭を下げる。
「よーし、そうだな。それじゃミルファちゃんの歓迎会といきますか」
「おっしゃ、ボウリングいこうぜ。ボウリング」
「え〜またかよ」
「バッカだろ、おまえ。だから、ボウリングに行くんだよ」
夏の日差しは強くて、時々目を覆いたくなるほどだけど、しっかりとこの道を歩いていこう。
大事な人と手を繋いで、一緒に――。
どこまでも――。
エンディングテーマの歌詞が手元にないのでオープニング夏Ver.に。
自分で書いて泣いた。一番の大バカ野郎は俺自身か。
Side StoryでもShort Storyでもなく、きっちりした一本のシナリオとして書こうと序盤に決意して、そのスタイ
ルを貫かせて頂きました。伏線も意識的に張った分は回収できているはず。
このスレには相応しくないような長編となってしまいましたが、最後までお付き合いくださいまして本当にあ
りがとうございました。皆さんの応援がなければ最後まで書けなかったでしょう。心から感謝します。
そしてこんなストーリーを書かせてくれたミルファの存在にも感謝。
初期構想ではキミがリオンとしてやってきたのに、それに全然気づかない貴明にヤキモチやいて色々やら
かす話だったんだよ。と暴露。
では名無しに戻ります。またいつかストーリーの神が降って来る日まで。
追伸、某所で「居たい想い」という題名でこの話を再掲載していっておりますが、俺本人ですので見つけても
怒らないでやってください。1レスごと掲載すれば3ヶ月くらいは更新さぼれるぜー。
>>762 長編お疲れでした。ラストのミルファとの再会は感動したよ。
FDあったらこんな感じでミルファシナリオがあればいいね。
改めてホント、お疲れさんでした。
乙!
そして今までお疲れ様。
そして次回作もよろしく。
おもろかった!感動した!
そして更新のはやさにびっくりした!
なにはともあれおちかれ(・∀・)ノ
次の作品にも期待してるよーぃ
貴明
「どう…と言われても…」
ポリポリと頭をかく。
普段から虚言・狂言の目立つ奴だったが…今回の話ばかりは常軌を逸している。
内容はこうだ。
下校時に見た夕陽に感銘(?)をうけた委員長は遠回りをして家に帰ろうと正門からではなく裏門から帰る事にしたらしい。
委員長
「ふぅ…思った通りここだとよく見える」
そういって辿り着いたのは学校の裏手にあるボロボロの神社。
境内に腰を下ろし大自然の素晴らしさに身を委ねていたら神社から通学路へ続く階段から誰か登って来たらしい。
>>762 長編乙、耳コピでも良いならED歌詞挙げとく…
教室で騒ぐ友達の声が 今でも聞こえてくるような灰色の校舎
憧れの人や夢を語ったり 少女時代は空に描かれた一筋の飛行機雲
時は流れていく あの頃の私は今もいるのかな
懐かしいあの日々へ 戻りたい夢のような 思い出の場所へ
最近の私 愛想振りまいて 気遣うことばかりになって 馴染めないでいる
新しい町の生活の中で 追いかけていた夢さえ 消えそうでもう一度取り戻そう
時は流れていく 沢山の微笑み達 くれた人達に
ありがとういつまでも 生きている 夢のような思い出の場所で
始まりと終わり告げるチャイムが遠くで響くよ
時は止まらないね 幼さの抜け殻 静かに残して
ありがとう 忘れない 沢山の思い出達 また夢を見せて
i wish to have dreams with you again
間違ってたら指摘よろ。
後、誰か春夏さんd(ry
>>767 マジにサンクス
手元原稿はこちらに差し替えておきます。
昼休み、気がつくと雄二はこのみを連れて学食へと避難し、
屋上には俺と草壁さん、そしてタマ姉のみ取り残されていた。
「へー、この子が雄二が言ってた、タカ坊の幼馴染の草壁さんねえ」
いつもの何かを企んでる目で俺と草壁さんを見ていたタマ姉は挨拶もそこそこに自己紹介を始めた。
「私は向坂環、一応年齢的には先輩に当るけど
私もこの4月から転校してきたばかりだから、気軽に環って呼んでね」
ああ、そうか、そんなタマ姉の反応を見ながら俺は安堵の息をついた。
タマ姉、いつも暴走してるように見えて、他人の前では借りてきた猫みたいに大人しいからなあ……
正直、雄二がこのみを連れて学食に行った時は、後で覚えてろよと思ったがこの分だとそう変な事にならないだろう──
「あ、はじめまして、私は草壁優季、貴明さんとは運命で結ばれた仲です」
──という期待は儚くも我が愛しい人によって全てぶち破られた。
「タカ坊」
「ハ、ハイ」
思わず自分の声が上擦ってるのが自分でも判った
「どういう事か」
「ハイ」
「説明してもらえるわよね?」
にっこりと笑うタマ姉の顔は凄惨な程綺麗で──
「はいぃ」
逆らえる訳も無かった……
>>762 GJ!&長編乙!
楽しく読ませていただきました
しかし文章書くのはえぇ〜
かといっても、まさか時を止めただとか夜の学校であっていたなんて話しても信じてもらえそうに無かったので
草壁さんとは学校が変わった後もずっと文通をしていて、今回晴れて同じ学校に通えるようになったと
適当に話を作り上げてタマ姉には話しておいた。
タマ姉は疑う事も無く、ふーん、そうと言ったっきり黙って何かを考えていた。
そして、優しい顔になってタマ姉が呟いた。
「馬鹿ねえ、私がタカ坊の幸せを願ってないと思ってるの?」
そして、頭を撫でて来るタマ姉を振り解くと、思わず怒鳴ってしまった。
「ば、馬鹿、タマ姉、く、草壁さんも見ているんだから、
それに何度も言ってるけどもう高校生なんだからそ、そういう事やめてよね!」
振り解かれてきょとんとしていたタマ姉はその声を受けるとにまーっと人の悪い笑みを浮かべた。
あー、あの顔絶対何か企んでるよ……俺がそう思ったのも束の間、
「もう、タカ坊照れちゃって、可愛い〜〜」
お約束的に抱きしめられてしまった。
目で草壁さんに助けを求めると、草壁さんはにこにことただ笑っていた。
でも、心なしか口元が引きつっているのは気のせいだろうか……
そう思っていると、タマ姉は突然抱きしめる力を緩めてきて、
俺の肩を草壁さんの方へとぽんと軽く押した。
突然の出来事に脚がふらついて草壁さんの方によろけるように進んだ俺は
倒れこむように草壁さんを抱きしめる格好になってしまった。
気がつくと、突然の事にただ目をぱちくりとさせている草壁さんの顔が間近にあって
香水だろうか、若草の良い匂いが草壁さんからしていた。
お互い固まったままずっと抱き合っていると、
「はいはい、若い二人が獣欲の赴くままに愛し合うのは仕方ないけど、
ここは学校よー。そういうのはオトナの時間にやりなさい」
タマ姉が手を叩いてそんな言葉をかけてきた。
その言葉でスイッチが入ったのか、俺と草壁さんは顔を真っ赤にしながら飛び退るように離れた。
俺はいまだ顔の赤みが引かない状態で、恥ずかしさを隠すためにタマ姉に怒鳴った
「た、タマ姉、何するんだよ、いきなり!草壁さんも困ってるじゃないか!」
すると、俺の言葉を全く意に介さずタマ姉はあの意地の悪い笑みを浮かべながら
「あらー? 草壁さんにタカ坊を返してあげただけよね、ねえ?」
と草壁さんに話を振る。
「え、えと、その私はあの、貴明さんとは、その……しましたが
二人ともこんなのはまだ早いと……」
駄目だ……草壁さんオーバーヒートしちゃってる……しかも何気にタマ姉に聞かれるとやばい言葉発してるし……
俺は慌てて草壁さんの手を引いてとりあえずこの場を去る事にした。
「タマ姉!お昼ご馳走様!でも、二度とこんな事やめてよね、草壁さんも困ってるんだから!」
その言葉に、タマ姉は苦笑しながら
「はいはい、判ってるわよぉ」
と答えると、さっさと行きなさいと手をひらひらさせて追い払う仕草をしてきた。
「ああ、でも、草壁さん」
その言葉を受けて階段を下がってる途中、最後にタマ姉が冗談交じりに発した言葉が
「あんまり安心してると」
何か頭の片隅でやけに
「わるーい泥棒猫にタカ坊取られちゃうわよ」
ひっかっかった。
タカ坊と草壁さんを見送った後、屋上で私は唇をかみ締めただ立ち尽くしていた。
そうしているといつの間に屋上に来てたのか、雄二が珍しく私を気遣うように声をかけてきた。
「姉貴、ほんとにアレでよかったのかよ」
そんな弟を背に私は黙って空を見る。
空は私の感情を逆撫でするかの様に青く、広く、そして澄んでいた。
ため息を一つつき、目を閉じて雄二の方へ向き、そして微笑む。
「いい事、雄二、私はタカ坊と雄二とこのみのお姉さん。
それ以上でも、それ以下でも無いのよ、少なくとも今はね」
雄二は何か言いたげに口を開きかけたが途中で何かに気づいたのか黙った。
そして、数分の沈黙の後──
「ちょっと待て、姉貴!今はってなんだ、今はって」
私はその言葉ににっこり微笑むとここには居ないタカ坊、そして草壁さんに向かって宣言する。
「当たり前よ。向坂家家訓、勝負は完全に着くまで諦めるな、よ。
確かに今はあの草壁さんにタカ坊を取られちゃったけど……
最後に笑うのは、私よ」
後ろで溜息をつきつつ何かいいたげな雄二をアイアンクローで黙らせると、
私は空を一瞥しそして校舎へと入っていく。
やる事、やらなければいけない事は色々ある。
こんな所で油を売ってる余裕など挑戦者の自分には無いのだから──
壁さんの手をとって一緒に階段を駆け下りていく。
胸はまだ鼓動が早く、治まる気配が無かった。
草壁さん、柔らかくて──いい匂いだったな──
ぼうっとそんな事を考えていると、
突然草壁さんが、手を抓って来た。
「い、いたっ。何をするんだよ、草壁さん」
そういって草壁さんの方を見ると、草壁さんは顔をまだ赤らめたまま
つんと横を向いて、私怒ってるんですよとでも言わんばかりの雰囲気を醸し出していた。
「え、えっと、草壁さん?」
「……なんですか、貴明さん」
「もしかして……怒ってる?」
その言葉に草壁さんはこちらを振り向くと、凄くいい笑顔でこうのたまわれた
「いいえぇ、ちょっと貴明さんの手に対して抓りたいと思っただけですから」
「え、えっとごめん、草壁さん……そのタマ姉、悪い人じゃないんだけど」
すると、草壁さんはちょっと悲しそうな顔をして
「貴明さんは全然判ってられてません。
私が悲しいのは今まで貴明さんと、私との間に繋がりが無かったのに、
いきなりあんな風に、しかもあんな素敵な人と色んな思い出を持ってる事ですよ」
そんな草壁さんの言葉に俺は申し訳ないという気持ちで一杯になった。
そうだった、草壁さんは、ずっと俺の事を覚えて、俺との約束を覚えてあんな事までしてくれたのに──
775 :
767:05/01/23 15:12:31 ID:BsIl3xVx
スマン
7行目の
×沢山の微笑み達→○沢山の微笑み
に修正、なんで達を入れてんだorz
「だから」
悪戯っぽく笑うと、草壁さんはこちらに飛び込んできた。
反射的に草壁さんの体を支えると、
「今まで会えなかった年月分のダストノートが一杯になるまでまずは二人で思い出作りましょうね」
そう優しく耳にささやいて来た。
俺は耳まで真っ赤になってるのを自分でも判りながら、黙って草壁さんの体を抱きしめた。
ごめんね、草壁さん、これからは二人でもっと運命的な事をやっていこうね、と心の中で呟きながら。
「きゃっ、貴明さん、でも、学校の廊下で愛する二人が愛の抱擁……運命的です!」
>>762 お疲れ様でしたー
へたれSS書きの自分としてはそこまでキャラを動かせて筆が早いのは純粋に羨ましいorz
てか、俺の文章がスレ全体の足引っ張ってなかったらいいんだが……
まあ、順当に環を登場させて…というか、どうしてもいきなり打ち解ける環と優季ってのがおもいつかなかった…
>>777 優季さんかわ(・∀・)イイ!!
たま姉こわ(・∀・)イイ!!
おもろかったよー
タマ姉怖いヨー
って言うかおまいら割り込みすぎです
委員長
(むっ…一体誰だ?)
一人の時間を邪魔され少し気に障ったらしいが…
委員長
(これは…女性の声)
そう階段からは女性の…おそらく二人の女性の声。
しかも、何か言い争っているらしい。
委員長
(おおっ!修羅場か!?)
委員長は怖い物みたさでとっさに身を隠したらしいのだが…。
貴明
(お前は変態か!)
心の中で突っ込んでおくのは忘れない。
そして境内に現れたのは二人の女性、一人は髪の長い女性。
ぱっと見ておとなしそうな雰囲気が伝わってくる。属にいう『お嬢様』タイプと言うやつだ。
でもう一人の女性は…髪の短かく、部活中だったのかブルマー姿をしている。
真委員長のSSの方はどうしたんじゃろうか
>>777 草壁さん、イイ!うまくタマ姉とのvsイベントになってるなぁ。
他キャラと絡むと草壁さんっておもろいw
続きがあれば読みたいです。
>>777 GJ! 草壁さん可愛いよー。
(ゴメン割り込んでしもうた)
力作SSが増えて読み応え十分ですな
自分なんて1レス分が限界…
>>777 俺の望みどおりにタマ姉でキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
おもしろかったっすよー。どんどん書いて━━━━!!
そろそろ次スレを建てないと
スレの容量オーバーになるよ!
スレの上限値500KBだっけ?
これを超えると表示できなくなるよ!
そうか、テンプラとかはいらない?
委員長
(あの色…三年か?)
ブルマー少女のブルマーの色からそう判断する委員長。
委員長
(…にしても一体?)
二人は激しく言い争っている。
じょじょにヒートアップしていく二人。
詳細までは聞こえないが会話の節々に「先輩は…」とか「フジタさんは…」などの名前が出てくることから…
委員長
(ははぁーん…恐らくフジタって先輩をめぐる女の死闘…ってところか)
女同士のケンカはたちが悪いからなぁ…など考えつつ更に出歯ガメを続ける委員長。
委員長
(おっ!!)
業を煮やしたブルマー娘がお嬢様に詰め寄る!
身をこわばらせるお嬢様!
そして次の瞬間、突然の耳鳴り!
委員長
(!!!)
キィィィィンという音が鳴り響き…と同時に見えない『何か』により数メートル後方に吹き飛ばされるブルマー娘。
テンプレはキャラごとのSSまとめサイトの
リンク貼ればいいんじゃないかな
SSのまとめサイトってあったっけ?
>>762 素晴らしいペースで素晴らしい作品をありがとうございました。
お疲れ様でした。GJ!!
委員長
(いっ!?)
後方に吹き飛ばされるブルマー娘。しかし空中で器用に回転し無事着地…。
足が地面に着くと同時に怒声一発、猛ダッシュでお嬢様との距離を詰める。
が、しかしお嬢様はどこからか取り出した大量のテニスボールを謎の力で連続照射!
信じられない速さでブルマー娘に襲いかかるテニスボール…。しかし委員長ははまたも我が目を疑った!
ブルマー娘が高速で飛来するテニスボールを右足の蹴りのみで全て迎撃しているではないか!?
全てのボールを迎撃し終わったブルマー娘が間合いを詰め渾身のハイキックをお嬢様に叩き込む!
委員長
(ひぃぃっ!)
あの凄まじい蹴りを受けたら…。
目の前で繰り広げられるであろう大惨事を想像し目をつむる委員長。
しかし、ブルマー娘の蹴りはお嬢様のすぐ横の空間でピタリと止まっているではないか!
委員長
(寸止め?いやちがう!!)
恐らくお嬢様はその不思議な力でブルマー娘の蹴りを防いだのだっ!!
>>789 だいたい作者の人たちがサイトにうpしました
ってリンク貼ってるからそれを集めてテンプレにすれば見やすくていいと思うよ。
貴明
「…で何で委員長が怪我したんだ?二人を止めに入ったの?」
と尋ねる。
正直早く帰りたい。
話を切り上げなければ…。
委員長
「そう。僕は目の前でいがみあってる二人の女性を止めようとしたのさ!」
貴明
「ああ…それで?」
適当に相槌をうつ。
まだ続くのか!?
委員長
「しかし一歩足を踏み出した途端、テニスボールに足をとられて転んでしまってね…。しかも運悪く転んだ拍子に階段から落ちてしまって通学路までまっ逆さまさ。」
貴明
「……」
委員長
「僕としては二人を止めてあげたかったのだが…って河野!聞いてるか!!」
貴明
「委員長…殴っていいか?」
言うより早く、委員長のギブスめがけ拳を叩き込む!
ヤックに響く委員長の悲鳴を後に俺は店を出た。
完
>>794 乙。前作との絡みシリーズやね。
ただメモ帳なりにまとめてから一気に投下をオススメしたい。
…というわけでおっすおら雄二の人です。
瑠璃SSそっちのけで禁断の真委員長SSをうpしてみました。
あなたのファンです
サイト持ってないから書いた挙げられなくて正直スマンカッタ
誰か全部纏めて引き取って乗せてくれたら一番ありがたいんだが……
凄いスレが進んでいるので
白い微笑でも落とされてるのかと思った
んで次スレどうするよ?
テンプレがいるとしたら前スレ、関連スレとのリンクか。ちと作ってみる
って、しまた。ごめん。
一個だけ、h抜き忘れてた orz
ウホッ、GJ!
もう立てていいのかな?
810 :
368:05/01/23 20:26:20 ID:sdW7/GDK
もうちっと待ってからの方がいいと思いますよ〜
テンプレ案、もうチョットあるかもしれないですし
ラジャッ
812 :
368:05/01/23 20:41:22 ID:sdW7/GDK
いいとおもいまつ
>>812 それでそろそろヨロ。
新スレ立った直後に投下予定の人はお互いの割り込みに注意w
どうでもいいことだけど
こういう『容量は残り少ないけどレス数はまだ余裕のあるスレ』って
980越えみたいなのと同じカンジですぐ落ちるのかな?
どーでもいいことだが完全無欠なくらいスルーされているな、るーこ。
本編でわりと満足しちゃったからね>るーこ
むりろネタにも出てこないかもりんはどうなる。
かもりん、スレの最初のほうにあるよ
るーこは割と好きなんだが、どうにも書きにくい
あえて書くとしたら後日談だろうか
>>259のるーこの続きを今でも待っているのは俺だけでいい
しかしなんだかかんだでSSスレじゃメイドロボ大人気だな。
サブキャラ系スレでもブッチ切りの伸びだし。
そこでだ、そろそろよっちの大作が投下されるんじゃないかと俺は践んでるんだが?
いや、いよいよ郁乃アフターの登場では?
るーこはコンペスレにあるね 一応
なんかスレ2の方に既にSS上がってるぞ。
こっちまだ使い切ってないのに
>>827 後7KBでdat落ちしちゃうので、SSあげられないのですよ。
俺は郁乃アフター断念しました。
いやね?本編での登場期間があまりに短かったせいで、こいつに嫉妬させるってのがどういうことか分からんのですよ。
ちょっと気を抜くと愛佳についてある事ない事貴明に吹き込んでたときのようなかなり性格の悪いキャラになるし、
あんまツンデレさせて「お姉ちゃん大好き!」にすると瑠璃化するんですよ。それはそれでいいかもしれないけど
落ちるかな。
☆*****☆*****☆☆*****☆*****☆ч
あんまり早く容量いっぱいにすると落とされるかもしれない。
このスレは最小限のカキコのみで維持することを
おすすめする。
GJ
>832
THX
1919(イクイク)5454(ゴシゴシ)ジンギスカぁ〜んっ♪ あぁあん♪
たかくんすごいであります!!
5454(ゴシゴシ)ってあんたw
4545だと柔らかく優しい感じだが
5454だと力強く荒っぽい感じだな
840 :
836:05/01/26 21:59:44 ID:TJqV0rsU
1919年5月4日に起きた54運動のこと。
厨房時代の社会化のセンセが教えてくれた。
ちなみに社会のセンセの後輩数学のセンセは球体積の公式を
(4/3)πr3
みよちゃんのおっぱいれろれろれろ
と覚えると良いよと教えてくれた。忘れられない。
まだ書き込める?
あと5〜6k
4月の終わり、河野貴明と向坂環は恋人同士となった。
しかしそれは一つの物語の終わりではなく、むしろ始まりであった。
5月に入り修学旅行まであと少しという頃、早朝2人の姉弟が河野家を訪れた。
「ほら! タカ坊、早くたべて支度なさい。 時間ないわよ!」
よく通る澄んだ声で環がせかす。 制服にエプロン姿が眩しい。
「大丈夫だよ少し急げば、いままでもこの時間ぐらいで・・・いたたた!!」
頬をつねられて最後まで言葉がつげない、つねってる本人はにこやかに言う。
「いままではね、でもこれからはそうはいかないわよ!」
ここ数日、環は朝から河野家に通っている。 貴明の生活を改善するためと
意気込んでのことだ。
なんせ5時に起きてそれから10Km走る人だ、朝は強い。 その後、雄二を
起こし河野家に来るのだから貴明でなくても恐れ入る。
「お前はまだいいぜ、俺より30分余計に寝られるんだからな。6時に叩き
起こされる俺の身にもなれよ! とんだとばっちりだぜ・・・」
となりで食事している雄二がぼやく。 環が河野家に朝から通うようになり
食事を作る手間を省くためココに連れて来られたのだ。
貴明も以前より早く起きているのだが、環はそれからご丁寧に手の込んだ
朝食と弁当(昨晩にほとんど仕込みは終わっているが)を作るので結局
いつもと同じ時間になってしまうのだ。
3人での朝食はここ最近のお決まりとなっていた。
「あ〜あ、貴明に姉貴をあてがえば俺は開放されると思っていたのによ・・・
とんだ見当ちがいだぜ! 貴明! お前のせいだぞ」
「お前の仕込みが足らないからだ! とっとと姉貴を女に・・・あだだだ!!」
いわずもがなのアイアンクローが炸裂する。
「そ!そんなことアンタに関係ないでしょ!!」 顔を真っ赤にして環が叫ぶ。
「あだだだだだ! 割れる! マジ割れる〜!!」 いつも以上の圧力に雄二
が絶叫する。
「ははは・・・」 貴明がちからなく笑う。 雄二をようやくその豪腕から
開放した環もなにか言いたげに貴明をちらと見た後、黙ってしまった。
4月の終わり、互いに告白し幼馴染から恋人同士となった後も2人はまだ完全
に結ばれたわけではなかった。 そのような機会はいくらでも在ったし、また
環もそうなる事を望んでいるのはいくら貴明といえど気がついていた。
ただ貴明はまだその一線を越えることに対して踏み切れないでいた。 なんの
障害もないはずなのに。
「おはよう、タカ君、ユウ君も」 すぐ隣、柚原邸の前でこのみと合流する。
「おっす!ちびっこ」 「おはよう、このみ」挨拶をかえす雄二と貴明。
「おはようタマお姉ちゃん」 「・・・おはよう、このみ」
雄二と貴明とは別に挨拶するこのみ、暫しの沈黙ののちにそれを返す環。
二人の間にある微妙な空気。 貴明と環の関係を知った時、このみの受けた
衝撃は小さなものでは無く、こうして再び一緒に登校できるようになるの
には数日を要した。
環とこのみは一晩語り合ったという。 そのとき何を話したのか、貴明も雄二も
一生教えてもらえないだろう。
二人はそれから表面上はいつもどうりの関係に戻ったように見えるが、とき
おりギクシャクする時もある。 もっともそれは、貴明や雄二、春夏などの
ごく身近な人物にしか解りえない程度のものであった。
人はいつまでも同じままではいられない、しかし少なくともこの時の4人は
幼いときと変わらないように見えた。
845 :
名無しさんだよもん:05/01/27 20:45:42 ID:P1nlp3K5
>843-844
イイ!!
続き待ってます
(・∀・)イイ!!
続き期待してます。
4時限目の授業が終わり、昼休みとなった。 学食に行く者、弁当を広げる者
みな其々であった。 環は弁当をもっていつもの屋上に向かおうとしていた。
「お〜いタマちゃん、彼氏といつものランチタイムですかな?」
クラスメートの少女が呼び止める、環は慌てるふうもなくさらりと答えた。
「最愛の妹と弟2人よ」 「2人の弟君の内の一人が彼氏なんでしょ?」
こんどはさらりというわけにはいかなかった。 「・・・うん、最近ね」
「まあ、いつもあの2人と一緒にいるタマちゃんに告白しようなんて奴はいない
もんね」 「え?」環はちょっと理解しかねた。
「解んない?実の弟君もかっこいいし、貴明君はかわいいし今彼氏なんでしょ?」
「ちょっとまった!雄二は知らないのにタカ坊の名前がでてくるのは何故!?」
たしかにあの2人はもう少しおバカをなんとかすれば女の子にキャーキャー
言われても不思議なことはないが、関係の無い3年生から突然その名がでてくる
のは看過できない。「あら?知らないの、以前から貴明君、上級生のお姉さま方に
結構人気だったんだよ」 「そこらへん、詳しく」 3匹の雛鳥が腹をすかせる
だろうが、今はこっちの方が重要だ。
「詳しくも何も彼、年上殺しだよ。 タマちゃんがいい例でしょ?」
反論のしようが無い、昔から環自身タカ坊がかわいくてどうしようもないのだから。
「おせえよ!姉貴 突然生理でもはじまったのかよ。 こっちは待ちくたび・・」
雄二を得意のアイアンクローで黙らせ、環はこのみと貴明に謝った。
「ごめんなさい、ちょっと用事ができちゃって。 おなかすいた?」
「いや平気だよ」 「うん大丈夫」 「あだだだだだ! いい加減・・離せ・・」
雛鳥たちは三者三様に返事する。
「それじゃ、始めましょうか」 シートの上に色とりどりのお弁当を広げていく。
「ほんといつもすごいね・・タマお姉ちゃんのお弁当」
自分の弁当と見比べながらこのみが言う。
「そんなこと無いわよ、この位このみだって・・・あら?」
環はこのみの弁当箱に目をとめる。