葉鍵鬼ごっこ 第十回

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920名無しさんだよもん:2006/11/27(月) 20:08:05 ID:ea9eyePJ0
ハウエンクアのその後が気になるのはきっと俺だけ。
921名無しさんだよもん:2006/11/27(月) 20:42:32 ID:GHkFJCSY0
そんな気になんないけどな
南さん達とまったりしてたし
922名無しさんだよもん:2006/12/06(水) 02:59:30 ID:lHGD0Q600
12月保守
923名無しさんだよもん:2007/01/01(月) 03:42:43 ID:oaRD2bMB0
あけおめage
924名無しさんだよもん:2007/01/13(土) 15:32:03 ID:LuTt4tMp0
sage
925名無しさんだよもん:2007/01/23(火) 07:32:39 ID:lhpqonrfO
MAGE
926名無しさんだよもん:2007/01/27(土) 23:05:29 ID:0EvI1LZBO
無性にageたくなった
927びp:2007/02/01(木) 13:43:05 ID:BXRzJmgvO
age
928名無しさんだよもん:2007/02/14(水) 22:59:45 ID:zX1PStc80
あがってないよ。
929名無しさんだよもん:2007/03/04(日) 12:18:46 ID:zUvr42i90
sage
930名無しさんだよもん:2007/03/15(木) 07:33:44 ID:F5Qu3uUqO
キープ
931名無しさんだよもん:2007/04/02(月) 18:25:09 ID:rOf6MzVqO
ケプト
932名無しさんだよもん:2007/04/23(月) 21:07:29 ID:8q3s9iNI0
………
933名無しさんだよもん:2007/05/14(月) 22:01:02 ID:uVYhMYg90
sage
934名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 21:57:33 ID:JHlWvwNP0
まこぴ
935名無しさんだよもん:2007/06/18(月) 01:23:58 ID:lHGAZqBRO
まだまだ
936名無しさんだよもん:2007/06/24(日) 15:50:01 ID:gWaDmAis0
1 名前:名無しさんだよもん[sage] 投稿日:04/07/24(土) 12:29 ID:S7b4uzDz

あと一ヶ月で3年。
937名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 09:19:17 ID:GuyyoGwqO
じわりと
938名無しさんだよもん:2007/08/15(水) 00:04:24 ID:eLaso5400
kept
939名無しさんだよもん:2007/08/29(水) 00:12:26 ID:Gr4NFRcm0
ageる
940名無しさんだよもん:2007/09/12(水) 21:45:44 ID:PeTsC+LzO
まだよ
941名無しさんだよもん:2007/10/08(月) 17:29:31 ID:4KbZAkMFO
h
942名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:16:01 ID:oFBifoVH0
「さあ、それでは逃げ手の方々の表彰に戻りましょう。
 続いては第六位、リサ・ヴィクセンさんです」
「Hi!」
 秋子に名を呼ばれ、軽い足取りで壇上にひょいと上がるのは地獄の雌狐、リサ・ヴィクセン。
「入賞おめでとうございます」
「ありがとうございます。ただ、私としてはちょっと不本意な順位ではあるけど、ね」
「大会中、主催側の間でもリサさんは非常に高く評価されていました。
 一般人の身ながら、しかも単独行動でここまで食い込めたのは素晴らしい結果といえるでしょう」
 褒めちぎる秋子さんだが、リサは
「そんなことはありません。私も何人もの人に助けられ、協力してここまで来れたのです。
 けして独りの力ではありません」
 と答えながらかぶりを振った。

「ケッ、よく言うぜあのアマ」
 それを聞いて漏らすのは御堂。コップの中身を一息に飲み干しながら毒づく。
「俺を二度も出し抜いときながら謙遜たぁ、いい度胸だ」
 いっそのこと勝ち誇ってくれれば素直に反感ももてたのだが、ああも優等生な回答をされては反応に困る。
「やるもんだぜ。”この時代”の裏家業の連中もな……」

「……………………」
 一方、”この時代の裏家業”のナンバーワンであるナスティボーイ。
「……なんてーかな……」
 壇上のリサと、少し離れた場所で同じような雰囲気の連中とつるんでいる蝉丸と、
 料理に舌鼓を打っている結花を見比べて…………
「…………はあ」
 少しイヤンな記憶をフラッシュバックし、いくらか鬱になった。
943名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:17:45 ID:oFBifoVH0
「というわけで五位入賞、リサ・ヴィクセンさんでした! それではこちらが賞品です」
 と言いながらさし出すのは熨斗袋。
 受け取りながら、『?』を顔に浮かべるリサ。自分は、賞金は辞退…………
(壇上で何も渡さないというのも格好がつきませんから。粗品です。
 とっておいてください)
 マイクをオフにし、秋子はリサにささやいた。
「……understand」
 ここで受け取らないというのは却って失礼になるだろう。
 苦笑しながら、リサは受け取った。
「Thank you! everyone!」

「続いては第4位! トゥスクル皇、ハクオロ氏です!」
「兄者! さすがだ!」
 「お美事です、聖上」
  「いよっ! 総大将日本一!」
   「おとーさん! おとーさん!」
「ハハ…………」
 拍手と、それに混じった聞き覚えのある歓声に追われて壇上に上がったのはハクオロさん。
 さすがに少し恥ずかしい。
「入賞おめでとうございますハクオロさん。それではこちらが入賞賞金になります」
「ああ、ありがとう」
 秋子から熨斗袋を手渡されるハクオロ。
「ハクオロさんは賞金の使い道などは何かお考えですか?」
「ベナウィがああ言ったのだ、もちろん國庫に…………と言いたいところだが」
「?」
 そこでチラリと目をやる。壇下の見知った面々の顔に。
944名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:20:07 ID:oFBifoVH0
「最近お小遣いを切り詰められてだいぶピンチだったのでな。
 たまには家族サービスということでパッと使わせてもらおう。
 今回の大会でいろいろ迷惑もかけてしまったからな」
 ドッと笑いが起こる会場。お小遣いのやりくりに困る王様というのもなかなか見られるものではない。
「はい、それでは是非ご家族に精一杯のサービスをしてあげてください。
 それでは、大会中の何か思い出などはありますか?」
「そうだな…………」
 秋子に促され、今大会であったことに思いをはせる。
 みちるや美凪と出会ったり、サイフをなくしたり、分身と語り合ったり、ウィツっぽいのと追撃戦したり、
 まなみに不覚をとったり、エルルゥたち追いかけっこしたり…………
「…………ある。いくらでもな」
「では、どれが一番?」
「どれも一番、だ。もともと思い出など、順位を付けられるものではないだろう?」
 ちょっぴりしんみりしてしまう会場。

「ふん、我が空蝉ながらいい格好をするものだ」
「D?」
 それを聞いたD。膝の上にまいか、隣にレミィを置きながらぽつりと呟く。
「どしたん?」
「どうしたもこうしたもないさ。気持ちはよくわかる」
 誰とも目はあわせず、しかし薄く微笑みながら言葉を続ける。
「我とてお前たちとの思い出。どれが一番かと言われればこう答えるだろう。
『どれもが一番だ』と。
 しかしそれをあの場で臆面も無くいってのけるとはいやはやまったく。
 あの男も変わったものだ」
 字面とは対照的に、いくらか爽やかな雰囲気でディーは言った。

(あんまり人のこと言えないと思うけどね…………)
 それを小耳に挟んだのはカミュ。もしくはその中の人。
 こちらは本当に誰にも聞こえないように、ぼそりと呟いた。
945名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:22:30 ID:oFBifoVH0
「それもそうですね」
 一方、会場の沈黙を破ったのは、やはり司会者である秋子さん。
 何か思うところがあるのか、一度二度と首を縦に振る。
「それでは、ハクオロさんでした。皆さんもう一度大きな拍手でお送りください」
 再度の拍手の海。
 今度は恥ずかしい歓声も挟まれなかった。


「さあ、ここからはTOP3の発表です!
 葉鍵鬼ごっこ、第三位! 柏木、楓さんです!」
「楓ーっ!」
「楓おねーちゃーん!」
 秋子の呼び声と、姉妹の歓声と、割れんばかりの拍手。
 促され、俯きながら壇上に上がるのは柏木家三女の柏木楓。
「おめでとうございます楓さん。三位入賞です」
(あ、ありがとうございます…………)
「……?」
 しかしその声は、マイクで拾ってようやく聞こえるか聞こえないか程度のものだった。
「楓さんもリサさんと同じように、長い時間を一人で戦い抜き、見事この成績を収めました。
 特に終盤の大追撃戦は長かった大会の中でも有数の名勝負だったといえるでしょう」
 大人数を前にして恥ずかしがっていると判断した秋子は、自分主導で話を進めていく。
 もっとも、その予想は半分正解で、半分ハズレであったのだが。
「それでは、楓さん、こちらが賞金になります。そして―――――」
 促されるまま熨斗袋を受け取る楓。
 しかし、三位以上はこれだけでは終わらない。つまり……
946名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:23:35 ID:8ECO6xyj0
おせーよ
947名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:24:22 ID:oFBifoVH0
「何かお願い事があれば……一つだけ。私どもで協力できる範囲ならかなえてさしあげますが……
 もしすぐには思い浮かばなければ、後ででも」
「い、いえ」
 と、そこで初めて楓は前を向いた。
 相変わらず緊張のせいか頬は赤いが、瞳は確かにキッと前方を見据えている。
 楓の様子を見て、正式な賞品の受け渡しは後にしようと考えていた秋子だが、楓のその様子を認めると
 微笑みながらマイクを手渡した。
「みみ、みなさんありがとうございます。柏木…………楓です」
 ごくりとつばを飲み込む。その音はいくらかマイクに拾えたほどだった。
(楓ちゃん……)
 そんな従姉妹の様子をみて心配げなのは柏木耕一。もちろん、他の姉妹もだが。
「…………」
 唯一、いくらか不機嫌そうな千鶴は除いて。
「そ、それでは僭越ですが…………わ、私の願いを発表させていただきます」
 緊張のせいか、どもり気味ながらもいつもより饒舌な楓。
「わた、私の願いは…………願いは…………」
「……………………」
 ざわついていた会場も沈黙に包まれる。
 なにせ、初めての本格的な賞品発表なのだ。

 すぅと息を吸い込み、吐いて、吸い込み、吐いて…………
 ふんぎりがつかないのか、そんなことを何度か繰り返す。楓。
 そんな中、ふとステージの足下まで来ていたリサと目があった。
 パチリと、片目をウィンクする。
「…………!」
 それに促されたのか、楓はいよいよ大きく息を吸い込むと…………

『耕一さん私とデートしてください!』

 こちらもまた一息に、一気に言い切った。
948名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:25:11 ID:8ECO6xyj0
今更な感
949名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:25:39 ID:oFBifoVH0
「いいぃっ!!?」
 次の瞬間、どっと沸く会場。そして三百近い瞳が一気に耕一に向けられる。
「…………!」
 壇上の楓はいたたまれなくなったのか、瞬間湯沸かし器のように顔を紅潮させるとまたしてもうつむいてしまった。
(は、初音っ……!)
(う、うん!)
 一方会場の一角。こちらも別の意味で一触即発の状態であった。
 楓の願い。姉妹だけあって大方の予想はつけていた梓と初音。
 発表の瞬間、千鶴の利き腕と利き足の動きを封じることができる位置に飛び退いたが…………
「……どうしたんですか2人とも。突然に」
 千鶴は不機嫌な顔を隠そうともしなかったが、閉会式の進行表に目を落としたままその場を動こうともしなかった。
「ち、づる、ねえ…………?」
「一応私も主催側の一人ですよ。個人の感情でせっかくのフィナーレを壊すような真似はしません。
 楓の賞品は楓のものです。そして私の気持ちは私のものです。もちろん耕一さんの気持ちも、それらとは全くの別物です」
(…………ふう)
 その言葉を聞いて、安堵のため息をついたのは梓でも初音ちゃんでもあるが、もちろん。
(よかった…………)
 足立さん。苦労人である。


 ざわざわと会場がざわめく。もちろん、その中心にいるのは耕一だ。
「あ、いうえ…………お?」
「Hi! Mr.Koichi!」
「あ、リサ…………さん!」
 そんな耕一にひょいとマイクを投げ渡したのはリサ。そのまま言葉を続ける。
「ladyがあれだけ勇気を振り絞って、この4日間のすべてをそそいで、あなたにproposeしたのよ?
 さあて、あなたはそれにどう答えるのかしら?」
「あ、あう、あ…………」

 この状況で、断れる男がいたら、それは際限なしの大物か大馬鹿である。
 そして、幸いなことに耕一は、そのどちらでもなかった。
950名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:26:43 ID:oFBifoVH0
「えと、あの、その…………まあ」
 マイク越しのやりとり。当然そのすべては会場に筒抜け。
 すなわち今ここにいる全員が、その証人である。
「あ、ありがとう楓ちゃん…………その」
 突然のご指名。緊張しながらも言葉を探す耕一。
「……………………」
 楓はもはや前を見ていられない。
「…………お、俺なんかでよければ…………その、いいよ」
 タメも雰囲気もクソもないが、耕一は肯定でもって楓の願いに応えた。
「今度の三連休ぐらいに帰省するから…………それでいい、かな?」
(……………………………………………………)
 沈黙し続ける楓だが…………
(…………はい)
 小さい、しかし確かな答え。
 マイクはしっかりと、その言葉を拾った。
「Congratulations pretty girl!! Ms.Kaede, over!!」
 最後の台詞を奪ったのはリサ・ヴィクセン。
 千鶴や秋子が何か言う前に、すべては大きな拍手の中にかき消えた。


「…………なあ初音」
「なあに梓お姉ちゃん」
「なーんかあたしたちって、陰薄いよな」
「しょうがないよ。今の主役は楓お姉ちゃんなんだから」
「ま、な…………」

【閉会式(授賞式) 続行中】
【鶴来屋別館パーティーホール】
【北川、住井、サラ、ティリア、リアン、エリア、ニウェ、源之助以外全員】

 ※ 残りは観鈴、みちる、【浩平】です。
951名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 20:14:45 ID:PROUgY0s0
おお…! 続きキタ!
952名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 20:48:41 ID:ufg59a6T0
乙〜
信じて見守ってきた甲斐があった。

残りレスで完結できるかがちっと心配。
953名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 20:56:44 ID:8ECO6xyj0
埋め
954名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 21:24:39 ID:PROUgY0s0
>953
まだ40以上もレスが使えるんだから、埋め立てはまだ早いよ。
955名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 21:40:28 ID:7xSNpcyc0
作品そのものに懐かしさを覚え、8ECO6xyj0にも懐かしさを覚えた。
ああ、葉鍵板。
956名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 22:08:40 ID:IXxBFGnFO
ベジータ「鬼の奴らが迫ってるんださっさと逃げやがれ!」
あゆ「うぐぅ……」
957名無しさんだよもん:2007/11/05(月) 00:44:04 ID:+PkE5TTm0
埋め
958名無しさんだよもん:2007/11/11(日) 01:53:28 ID:d0Vh8UDk0
>942、乙
なつかしさすら感じるわw
959名無しさんだよもん:2007/11/11(日) 16:33:45 ID:51Ch9PKv0
「さーて、それでは…………第二位の発表です!」
 楓の受賞が終わり、司会も再度の交代。マイクを持った千鶴が壇上に上がる。
 スポットライトを浴びながら、先ほどまでの不機嫌な表情を微塵も見せない明るい態度で高らかに宣言した。
「葉鍵鬼ごっこ、第二位! 神尾…………観鈴さん! ステージへどうぞっ!」
 ライトが絞られ、ステージ上の一点に絞られる。そこにはカーテンと、そこに浮かび上がる人型のシルエット。
 楓の受賞の間に既に準備は進められていた。観鈴のスタンバイは終えている。
 収束したサーチライトを浴びながらカーテンが左右に開かれ、拍手に迎えられながら姿を現したのは…………


「いやあ、退屈な授賞式だったな。さてと、お次は俺様の」


 ※ 国崎くんがとても凄惨な目に遭っているのでしばらくお待ちください ※


「皆さま、大変見苦しいものをお見せしたことをお詫びいたします。
 改めてどうぞ! 葉鍵鬼ごっこ、第二位! 神尾観鈴さんです!
 皆さん大きな拍手でお迎えください!」
 仕切り直して、千鶴の再度の口上。観客も何事もなかったかのように再度の拍手。
「が、がお……往人さんかわいそう」
 改めてカーテンが開かれ、その中から人影が現れる。先ほどまでと同じ光景だ。
 唯一違うのは、現れるのが観鈴であるということと、ズタボロになった国崎がウルトリィと千紗に支えられ、
 ステージ脇からこっそり退場させられているのみであった。
「はにゃあ、お兄さん無茶しすぎです。もうちょっと空気読んでください」
 哀れ、千紗にKY扱い。
「何故あんな無茶を……」
 さすがのウルトもあきれ顔だ。
「いや……俺の人形使いとしての本能が……
 美凪はおろか、観鈴までもがスポットライトを浴びることを考えると、こう、ムラムラと…………」
 さすが国崎最高。ほとんど病気である。
960名無しさんだよもん:2007/11/11(日) 16:35:16 ID:51Ch9PKv0

「はあ…………」
 それを聞いて大きくため息をつくウルト。
「傀儡の技なら後で私がいくらでも拝見させていただきますから…………
 ですから今は、受賞者の方々を素直に祝ってください。お願いします」
「いや、祝いたくないわけじゃないんだがな」
 なんだかんだでこちらも、ツーカーな雰囲気を作れるようにもなっていた。

「いよっ! 日本一の娘やで! みすずー!」
「観鈴ちゃーん! カッコいいわよー!」
 ステージ下で同時に声を張り上げるのは晴子詩子の師弟(?)コンビ。
 観鈴の中では彼岸に旅立たれた2人だが、万事無事に蘇生を果たした。
「ぶいっ!」
 壇上の観鈴も両手でピースピース。さすがにその表情にはいくらか疲れも残っているが、それ以上に張り切って皆に手を振っている。
(観鈴…………)
 一応、その近くには忘れ去られたお人、橘敬介もいたりする。

「さあそれでは観鈴さん、こちらが賞金になります」
 観衆に手を振る観鈴の横から、一つの熨斗袋が手渡される。お礼を言いながらそれを受け取る観鈴。
「観鈴中身や! はよ中身確認し!」
「う、うん!」
 現金がかかったせいか、いくらか身を乗り出した晴子がせかす。
 本来なら受賞が終わったあとでもよいのだが、その場で袋の口を切る観鈴。
 中に入っていた小切手。その額に目を走らせるが…………
「えっと、0が…いち、に、さん、し、ご、ろく…………………………」
「…………」
「がおっ」
 その場でふらりと後ろに崩れる観鈴ちん。
 さすがにこの規模の大会で第二位の賞金は半端なかったようだ。
「おっとと……どうぞお気を確かに観鈴さん」
961名無しさんだよもん:2007/11/11(日) 16:36:44 ID:51Ch9PKv0
「で、観鈴! なんぼや! なんぼやったんや!?」
「には、は…………た、たくさん…………」
「よっしゃあ! でかしたで観鈴! 明日はホームランや!」
「さて、それはともかく観鈴さん」
 家族の絆はKeyのテーマだが、さすがにそればかりにも構っていられない。
 千鶴は無理矢理晴子の話題を打ち切ると、マイクを観鈴に向けた。
「賞品の受け渡しになりますが、何かお望みのものはありますか?
 私どもでできる範囲なら、できうる限り対応いたしますよ」
「が、がおっ!?」
 そういえばそうだった。
 この大会の賞品は”もの”ではなく”こと”――――――
 すなわち観鈴ちんが一つだけながら、この会場にいる人間(一部非人間)に命令を下せるということ。
 めいれい……
(そ、そんなこといわれてもなぁ……)
 命令されるならともかく、命令することなど慣れていない観鈴ちん。その場に少し固まってしまう。
(すぐ思いつくのはお友だちだけど、お友だちならちゃんとできたし、お友だちになれなんていうのは変だよね…………
 お母さんにならお金とかお酒とかすごく喜びそうだけど、それならさっきの賞金で充分だし…………
 詩子さんにお礼にバイクとかプレゼントしたいけど……それもたぶん賞金で充分だよね…………
 命令…………めいれい…………)
 困ったように視線をうろうろさせる観鈴。
「願いや願い! 観鈴っ! とりあえず『願いを100個にしろー!』ぐらいいきっ!」
 晴子が叫ぶが、幸いなことにそんな裏技的な指示は観鈴ちんの耳には届かなかったようだ。
 もっとも、聞こえたとて千鶴に一秒で却下されることは間違いないのだが。
「ううん…………」
 相も変わらず迷った様子の観鈴。ふとそんな彼女の目の端にとまったのは、先ほどステージ上で無謀な行為に臨み、
 あえなく叩き出された国崎の姿。
 膝の上に相棒を乗せながら、その両脇の女性と少女に慰められつつ、不機嫌そうに料理をむさぼっている。
962名無しさんだよもん:2007/11/11(日) 16:38:28 ID:51Ch9PKv0
「それで休憩時間の間…………ゆ、往人さんに人形劇、ステージの上でやってほしいな……なんて」
「……………………」
 合点がいった。
 要するに観鈴は、国崎に大観衆の前での人形劇披露の機会を与えようというのだ。
「それが願いなら構いませんが…………せっかくですし」
「ふ、ははははははは! よくぞ言った観鈴! トウッ!」
 千鶴の翻意を勧める言葉を遮り、物理的に不可解なほどに高々と跳躍。
 先ほどまでのダメージを微塵も感じさせずステージの上に降り立つのは、国崎+1。
「さあて退屈な授賞式だったな。お次は俺様の人形劇だ。
 特別出血大サービスで今日はお代はタダだ。どいつもこいつも刮目してみるがいい! はァッ!」
 気合一括高らかに、国崎の相棒が壇上でトコトコと動き回る。
「…………はあ」
 それを見ながら、千鶴はため息をつく。
 正直自分らが時間と金と手間暇をかけた成果がこれとは、いささか不本意な部分もあるが、観鈴がそれでいいというのならかまわないだろう。
 改めてマイクを構え、言った。
「それでは、授賞式はここでいったん区切らせていただきます。
 逃げ手と鬼の第一位の方は閉会式の最後に発表いたします。
 それまでの時間ステージは空いておりますので、どうぞ皆様ご自由にお使いください。
 では皆様、残りの時間。祝勝会、残念会、思い出話をどうぞお楽しみください」
 ぺこりと、千鶴となぜかセットで観鈴も頭を下げ、ステージを後にする。
「さあそれでは皆さんご一緒に!」
 ステージの上に残ったのは、この世の春を謳歌せんとばかりに得意の人形劇を披露し続ける国崎。
 見ている人間がいるのかは果てしなく微妙だが、これはこれで確かに幸せなのだろう。

 思いのほか長くなった授賞式も区切りがつき、各々の参加者は縁のあったものたちとの歓談を再開する。
963名無しさんだよもん:2007/11/11(日) 16:40:06 ID:51Ch9PKv0

 終わらない祭りはなく、覚めない夢もない。

 本当の終幕は間近に近づいていた。


【閉会式(授賞式) 続行中】
【鶴来屋別館パーティーホール】
【北川、住井、サラ、ティリア、リアン、エリア、ニウェ、源之助以外全員】
【国崎 ステージ上で人形劇】
【授賞式 一区切り。残りの浩平とみちるの受賞は閉会式の最後】
964名無しさんだよもん:2007/11/11(日) 17:06:01 ID:BiGXVlt50
おつだ〜。
着々と終幕に動いてるなー。
965抜けてた。961-962に以下を挿入:2007/11/11(日) 17:14:50 ID:51Ch9PKv0
(かわいそうだな往人さん…………往人さん…………そうだっ!)
 やおら観鈴は何かを決心したように、マイクをつかむと
『往人さんっ!』
「おお、おあっ!?」
 突然マイク越しの大音量で自分の名前を呼ばれた国崎。思わず飲みかけていた炭酸飲料を吹き出す。
「な、なんだ観鈴!?」
 瞬間、会場全ての視線が国崎に集まる。さながら、先ほどの耕一と同じように。
 そしてまた、”何か”を期待するように静まりかえる。

 静寂――――――

「う゛っ…………」
 さすがにその雰囲気に国崎も飲まれた。会場の興味は観鈴の次の一言と、そして国崎の反応に注がれている。
 デートか、告白か、あるいは…………
 楓の流れを受ければそのあたりが適当であろう。
 しかし、観鈴の第一声は…………
『人形劇っ!』
 …………は?

「あ、あのっ、柏木さんっ」
「ち、づるで結構ですよ観鈴さん」
 予想だにしなかった観鈴の一言。さらに予想だにしなかった突然の話題振り。
 さしもの千鶴も、レスポンスが一拍遅れた。
「あ、あの千鶴さん、わたしの後の受賞者の方は…………鬼と、逃げ手の優勝者の方、一人ずつですよね」
「は、はいその通りです」
「あの、わたし、ここでちょっと休憩したらどうかな、って思うんです」
「はあ、なるほど…………」
 今ひとつ観鈴の真意がつかめない千鶴。
966名無しさんだよもん:2007/11/12(月) 21:06:43 ID:6rcAGFB50
埋め
967名無しさんだよもん:2007/11/12(月) 21:07:46 ID:6rcAGFB50
埋め
968名無しさんだよもん:2007/11/22(木) 23:54:49 ID:L0F2dEuy0
そういえば最初鬼には特典があったんだよな
あゆは捕まえた人数分のタイヤキ(もう貰ってるけど)
国崎は捕まえた人数分の千鶴さんの手料理・・・


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 | M ヽ
 |从 リ)〉
 |゚ ヮ゚ノ| <………
+ミ⊂)} i !
 |_/ヽ|」
 |'  

ハ!
969名無しさんだよもん
年末ほ