◆葉鍵アカデミー 第八講 ◆

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667名無しさんだよもん
>>664
ことみ「残念ながら、定量的な考察に欠けているの。反物質は宇宙一強力な爆弾、という思い込みが一人歩きしているようなの」

ことみ「地球破壊に必要なエネルギー(地球を一様密度の球体と仮定して、球のなす自己重力場に抗して球の全素片を無限遠方に引き離すために必要な仕事)は、約2*10^32ジュールなの」
ことみ「E=mc^2に従えば、この2*10^32ジュールのエネルギーに相当する質量は、なんと2.5兆トンにもなるの」
ことみ「比較のために、原油タンカーの中でもとびきり大きいのが50万トンくらいだそうなの。2.5兆トンというのは、巨大タンカー500万隻ぶんの質量なの」
ことみ「地球を破壊しようと思ったら、宇宙でいちばん強力なはずの反物質爆弾でさえ、これほどの量が必要なの。地球という惑星が、いかに大きなものかが窺い知れるの」
ことみ「なまじ宇宙の広さを知っているだけに、私たちは地球を必要以上にちっぽけなものだと考えがちだけど、それはとんでもない思い違いなの」

ことみ「さて、劇中で地球はかいばくだんが実際に使われたことはないけど、もしその名のとおりの機能を持っているとするならば、少なくとも反物質爆弾や、それよりもエネルギー密度の低い核爆弾などではなさそうなの」
ことみ「ネズミへの恐怖に狂っているからといって、パワー手ぶくろやおもかるとうも使わないで、生身のドラえもんが巨大タンカー500万隻を両手で持てるとは考えられないの」
ことみ「ここから言えることはひとつ、地球はかいばくだんは“核でも反物質でもない、現代科学の枠組みを超越した22世紀の未来技術”だろうということなの」
ことみ「亜空間に貯蔵した地球を破壊できるほどの大量の爆薬がテレポートしてくる装置だとか、突然地球が破壊されるという極超低確率の量子状態をムリヤリ実現する装置だとか……空想するしかないけど、とにかく現代科学をはるかに超えていることだけは間違いないの」
668名無しさんだよもん:2005/06/21(火) 16:21:49 ID:9O8arsi70
ことみ「地球破壊に必要なエネルギーの『2*10^32ジュール』の導出過程を示しておくの」
ことみ「地球を壊すと欠片になるけど、これは放っておくと自己重力でまた集まるから、自己重力を振り切るためには、球の全微小素片を無限遠方に引き離す必要があるの」

ことみ「簡単のために、以降、地球を一様密度 ρ、半径 R の球体と仮定するの」
ことみ「系は地球中心に関して球対称なので、球の微小素片の集まりと考える代わりに、微小な厚さ dr の同心球殻が重なったものと考えてもいいの」

ことみ「ここで、半径 r における1枚の球殻について、これを無限遠方に引き離す仕事を考えるの」
ことみ「質量 m1、半径 r の球体表面から、質量 m2 の物体を無限遠方に引き離す仕事は、よく知られているように G m1 m2/r なの」
ことみ「一方、半径 r における1枚の球殻の内部に含まれる部分は質量 ρ・(4/3)πr^3 を持っており、また球殻の質量は ρ・4πr^2 dr なの。したがって、この1枚の球殻を無限遠方に引き離す仕事 dW(r) は
   dW(r) = G・(ρ・(4/3)πr^3)・(ρ・4πr^2 dr) /r = (16/3) π^2 G ρ^2 r^4 dr
なの」

ことみ「この仕事を 0≦r≦R について積分すれば、地球破壊に必要な仕事Wは
   W = (16/3) π^2 G ρ^2 ∫[0, R] r^4 dr = (16/15) π^2 G ρ^2 R^5
となるの。地球を一様密度と仮定したので、地球質量を M とすればρはρ=M/((4/3)πR^3)だから、仕事 W は結局
   W = (3/5) GM^2 / R
と書けるの。面白いことに、これは地球全質量に第2宇宙速度を与えるとして単純計算したエネルギーのちょうど3/5倍になるの」
ことみ「あとは理科年表の数値を代入すれば、2*10^32ジュールが得られるの」
ことみ「ただし、実際は地球の密度は均一ではないから、この値よりは何割か増えるようなの。それでも何桁も計算が狂ってくる心配はないの」