葉鍵ロワイアルII 作品投稿スレ! 4

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1名無しさんだよもん
―――そして、かれらは目を覚ました。
孤島に集められた100人の男女達。
理由も状況も分からないまま、彼らは殺し合いを強制される。

生き残れるのは、わずかに二人。
その枠を賭け、ある者は殺し、ある者は殺される。

「では、諸君らの健闘を祈る」

―――ゲームが、始まった。


葉鍵キャラによるバトルロワイヤルのリレーSSスレです。
ルールを守り、楽しんで行きましょう。ルールは >>2-4 あたりに。

まとめサイト  http://nippoudairi.at.infoseek.co.jp/hakarowa2/

前スレ:  葉鍵ロワイアル II 作品投稿スレ! 3
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1085114275/
現行の感想&議論スレ:  【チュドーン】実況★葉鍵ロワイヤルII7【チュドーン】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1085589458/

ログ保管所        http://chara_royale.tripod.com/hr2/
ログ保管所 Pukiwiki  http://f41.aaacafe.ne.jp/~royale/
参加者死亡情報     http://members.lycos.co.uk/hakarowaeurope/
地図            http://nippoudairi.at.infoseek.co.jp/hakarowa2/map02.jpg
2名無しさんだよもん:04/05/29 00:06 ID:LKkSELJR
現行のルールです。

1、結界により、各能力は使用不可、あるいは弱体化してます。
  この結界は当分破壊できません。

2、各キャラはアイテムを一つずつと1日分の食料+水を配布してもらってます。
  アイテム管理のために、例え話の中でアイテムの状態が変わっていなかったとしても、話の最後に、

  【019 柏木千鶴 装備:トカレフ(残り弾数5)】

  のようにアイテムを明記することを強く推奨します。

3、送信する前にかならずリロードをしてください。
  かぶって投下すると読みにくくなり皆凹みます。

4、NG審議の対象となる可能性があるのは、致命的な矛盾、荒らし目的だろうSS、
  あまりにもぞんざいな死、無意味な新キャラの追加、他、大多数が問題ありと表明した作品です。
  なお新キャラについては、どうしても、という方はまず感想スレの方に上げるようにして下さい。

5、書き手の方はできるだけ実況スレをチェックするように心がけてください。
  矛盾点、ルール抵触等の問題発生時に円滑な進行が出来なくなる恐れがあります。
3名無しさんだよもん:04/05/29 00:07 ID:UnON9d+E
djsfdjlkgijhaiejfu;aosj
4名無しさんだよもん:04/05/29 00:09 ID:V54Xs+qK
皆さんには、これからオナニー大会をしてもらいます。
5名無しさんだよもん:04/05/29 00:09 ID:UnON9d+E
6名無しさんだよもん:04/05/29 00:11 ID:JE85J6Oq
あqwせdrftgyふじこlp;@
7名無しさんだよもん:04/05/29 00:11 ID:UnON9d+E
winner 芳野祐介
8あぼーん:あぼーん
あぼーん
9あぼーん:あぼーん
あぼーん
10あぼーん:あぼーん
あぼーん
11あぼーん:あぼーん
あぼーん
12あぼーん:あぼーん
あぼーん
13名無しさんだよもん:04/05/29 00:26 ID:vHQAOwJM
…まだやってたのか。
14あぼーん:あぼーん
あぼーん
15あぼーん:あぼーん
あぼーん
16あぼーん:あぼーん
あぼーん
17あぼーん:あぼーん
あぼーん
18あぼーん:あぼーん
あぼーん
19名無しさんだよもん:04/05/29 01:39 ID:7ut4pYPK
即死回避
20貧乏神の行進:04/05/29 01:53 ID:GY16Y69G
「ふうっ……」
雛山理緒はようやく押入れの中から抜け出した。
理緒の自由を奪っていたジーンズは案外固く結ばれていたようだ。
この民家に押し入ってきたのは昼頃のはずなのに、外はもう夕焼けが出る時間だ。
例の石を除いたら、自分の荷物はもう無かった。
「殺し損ねちゃった……」
ガックリとうつむく理緒。
「ご飯も食べれなかったし……」
ぴょこんと飛び出た二本の前髪もうなだれる。
「何か食べるもの残ってないかな〜」
そう言いながら民家を物色しつづける理緒。
数分後……
「うーん……あたしってば、やっぱり不幸……」
食料は何も無かった。
ただ、食料以外のものはそこそこ役に立ちそうなものは見つかった。
まずは台所の必需品、包丁。
(そういえば、うちの包丁そろそろ研がないと切れ味が悪くなっていたな〜)
なんてことを思いつつ、荷物に加える。
次にジッポライター。
(ライターなんて100円のでいいと思うんだけど……こんな高そうなライターでも100円でも火がつくには変わらないし)
なんてことを思いつつ、荷物に加える。
21貧乏神の行進:04/05/29 01:57 ID:GY16Y69G
そして、どうしても理緒の目をひくものが他に二つあった。
(うわ〜、高そうなお皿……)
それはキッチンで見つけたお皿。二羽のウサギがかかれている。
(これを持って帰って、骨董商に売ったら……)
……こんな状況下でもとことんの貧乏魂だった。
「回る寿司とか!食べ放題の焼肉とか!あはははは」
完全に逝っちゃった目で笑う理緒。不気味です。
笑いながらこれも荷物に加えた。
そして、もう一つ……
「……水風船? こんなとこに?」
じつは敬介のガラクタの忘れ物なのだが、理緒はそれを知らない。
なんとなしに手にとって、水を入れてみる。
(なつかしいな〜、小さい頃近所の友達とぶつけ合って遊んだっけ…
 で、びしょ濡れになって帰ったら、いつもお母さんに叱られて…)
自分の幼少時代を思い出し、そして入院中の母の顔が思い浮かぶ。
(そうだ、早く帰らないと、お母さんにこれ以上心配掛けちゃ駄目。良太もひよこも大人しくしてるかな……)
理緒は覚悟を決める。
一刻も早くこのゲームを終わらせるため。
一刻も早く家族のもとへ帰るために。
さあ、参加者を、神岸あかりを殺しに行こう。

(そして帰ったら焼肉とお寿司……)


【 071 雛山理緒 所持品:枕大の石入りザック、包丁、ジッポライター、姉妹うさぎの絵皿、水風船3コ】
22貧乏神の行進:04/05/29 02:00 ID:GY16Y69G
【時間は6時前です】
23名無しさんだよもん:04/05/29 02:01 ID:RcMQawn4
岡崎朋也が森の中をさまよっていると、
「……!っ」
10m程離れたところに芳野祐介がいた。朋也のことは気付いていない。
そして、それは数秒間での出来事だった。
「芳野ーーーーっ」
「!?」
武器を片手に勢いよくせまってくる朋也。
芳野祐介はその方向へ振り向いたが、反応が遅すぎた。
芳野の頭部を思いっきり強打する。
ズカッ!!
「……くっ」
「…やったか?」
「……」
「…フッ…さすがゴッグだ。何ともないぜ!!」
芳野は顔を上げ、不敵な笑みで朋也を見据えていた。
http://www.geocities.jp/know_ka/gok.asf
【 芳野祐介 所持品:ゴッグ】

24あぼーん:あぼーん
あぼーん
25あぼーん:あぼーん
あぼーん
26あぼーん:あぼーん
あぼーん
27あぼーん:あぼーん
あぼーん
28あぼーん:あぼーん
あぼーん
29あぼーん:あぼーん
あぼーん
30貧乏神の行進訂正:04/05/29 02:22 ID:GY16Y69G
そして、どうしても理緒の目をひくものが他に二つあった。
(うわ〜、高そうなお皿……)
それはキッチンで見つけたお皿。ウサギがかかれている。
(これを持って帰って、骨董商に売ったら……)
……こんな状況下でもとことんの貧乏魂だった。
「回る寿司とか!食べ放題の焼肉とか!あはははは」
完全に逝っちゃった目で笑う理緒。不気味です。
笑いながらこれも荷物に加えた。
そして、もう一つ……
「……水風船? こんなとこに?」
じつは敬介のガラクタの忘れ物なのだが、理緒はそれを知らない。
なんとなしに手にとって、水を入れてみる。
(なつかしいな〜、小さい頃近所の友達とぶつけ合って遊んだっけ…
 で、びしょ濡れになって帰ったら、いつもお母さんに叱られて…)
自分の幼少時代を思い出し、そして入院中の母の顔が思い浮かぶ。
(そうだ、早く帰らないと、お母さんにこれ以上心配掛けちゃ駄目。良太もひよこも大人しくしてるかな……)
理緒は覚悟を決める。
一刻も早くこのゲームを終わらせるため。
一刻も早く家族のもとへ帰るために。
さあ、参加者を、神岸あかりを殺しに行こう。

(そして帰ったら焼肉とお寿司……)


【 071 雛山理緒 所持品:枕大の石入りザック、包丁、ジッポライター、黒うさぎの絵皿、水風船3コ】

すいません、>>21をこれに差し替えてください。
31あぼーん:あぼーん
あぼーん
32あぼーん:あぼーん
あぼーん
33あぼーん:あぼーん
あぼーん
34あぼーん:あぼーん
あぼーん
35あぼーん:あぼーん
あぼーん
36貧乏神の行進 全面改訂版:04/05/29 02:39 ID:GY16Y69G
「ふうっ……」
雛山理緒はようやく押入れの中から抜け出した。
理緒の自由を奪っていたジーンズは案外固く結ばれていたようだ。
この民家に押し入ってきたのは昼頃のはずなのに、外はもう夕焼けが出る時間だ。
例の石を除いたら、自分の荷物はもう無かった。
「殺し損ねちゃった……」
ガックリとうつむく理緒。
「ご飯も食べれなかったし……」
ぴょこんと飛び出た二本の前髪もうなだれる。
「何か食べるもの残ってないかな〜」
そう言いながら民家を物色しつづける理緒。
数分後……
「うーん……あたしってば、やっぱり不幸……」
食料は何も無かった。
ただ、そして、どうしても理緒の目をひくものが他に二つあった。
37貧乏神の行進 全面改訂版:04/05/29 02:39 ID:GY16Y69G
(うわ〜、高そうなお皿……)
それはキッチンで見つけたお皿。二羽のウサギがかかれている。
(これを持って帰って、骨董商に売ったら……)
……こんな状況下でもとことんの貧乏魂だった。
「回る寿司とか!食べ放題の焼肉とか!あはははは」
完全に逝っちゃった目で笑う理緒。不気味です。
笑いながらこれも荷物に加えた。
そして、もう一つ……
「……水風船? こんなとこに?」
じつは敬介のガラクタの忘れ物なのだが、理緒はそれを知らない。
なんとなしに手にとって、水を入れてみる。
(なつかしいな〜、小さい頃近所の友達とぶつけ合って遊んだっけ…
 で、びしょ濡れになって帰ったら、いつもお母さんに叱られて…)
自分の幼少時代を思い出し、そして入院中の母の顔が思い浮かぶ。
(そうだ、早く帰らないと、お母さんにこれ以上心配掛けちゃ駄目。良太もひよこも大人しくしてるかな……)
理緒は覚悟を決める。
一刻も早くこのゲームを終わらせるため。
一刻も早く家族のもとへ帰るために。
さあ、参加者を、神岸あかりを殺しに行こう。

(そして帰ったら焼肉とお寿司……)


【 071 雛山理緒 所持品:枕大の石入りザック、包丁、ジッポライター、姉妹うさぎの絵皿、水風船3コ】
【時間は6時前です】
38あぼーん:あぼーん
あぼーん
39貧乏神の行進 全面改訂版の改定:04/05/29 02:40 ID:GY16Y69G
「ふうっ……」
雛山理緒はようやく押入れの中から抜け出した。
理緒の自由を奪っていたジーンズは案外固く結ばれていたようだ。
この民家に押し入ってきたのは昼頃のはずなのに、外はもう夕焼けが出る時間だ。
例の石を除いたら、自分の荷物はもう無かった。
「殺し損ねちゃった……」
ガックリとうつむく理緒。
「ご飯も食べれなかったし……」
ぴょこんと飛び出た二本の前髪もうなだれる。
「何か食べるもの残ってないかな〜」
そう言いながら民家を物色しつづける理緒。
数分後……
「うーん……あたしってば、やっぱり不幸……」
食料は何も無かった。
ただ、どうしても理緒の目をひくものが他に二つあった。
40貧乏神の行進 全面改訂版の改定:04/05/29 02:41 ID:GY16Y69G
(うわ〜、高そうなお皿……)
それはキッチンで見つけたお皿。ウサギがかかれている。
(これを持って帰って、骨董商に売ったら……)
……こんな状況下でもとことんの貧乏魂だった。
「回る寿司とか!食べ放題の焼肉とか!あはははは」
完全に逝っちゃった目で笑う理緒。不気味です。
笑いながらこれも荷物に加えた。
そして、もう一つ……
「……水風船? こんなとこに?」
じつは敬介のガラクタの忘れ物なのだが、理緒はそれを知らない。
なんとなしに手にとって、水を入れてみる。
(なつかしいな〜、小さい頃近所の友達とぶつけ合って遊んだっけ…
 で、びしょ濡れになって帰ったら、いつもお母さんに叱られて…)
自分の幼少時代を思い出し、そして入院中の母の顔が思い浮かぶ。
(そうだ、早く帰らないと、お母さんにこれ以上心配掛けちゃ駄目。良太もひよこも大人しくしてるかな……)
理緒は覚悟を決める。
一刻も早くこのゲームを終わらせるため。
一刻も早く家族のもとへ帰るために。
さあ、参加者を、神岸あかりを殺しに行こう。

(そして帰ったら焼肉とお寿司……)


【 071 雛山理緒 所持品:枕大の石入りザック、包丁、ジッポライター、黒うさぎの絵皿、水風船3コ】

ホントにごめんなさい……
41あぼーん:あぼーん
あぼーん
42あぼーん:あぼーん
あぼーん
43あぼーん:あぼーん
あぼーん
44あぼーん:あぼーん
あぼーん
45あぼーん:あぼーん
あぼーん
46あぼーん:あぼーん
あぼーん
47あぼーん:あぼーん
あぼーん
48俺はしがない読み専:04/05/29 05:07 ID:jWafo7q1
お前等・・・
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1084768942/l50
たのむからこっちでやってくれ・・・。
49名無しさんだよもん:04/05/29 05:18 ID:fpGd5TF4
基地外に話しかけても喜ぶだけだからやめろ。
IDあぼーんしておけ。
50名無しさんだよもん:04/05/29 09:27 ID:IZhrzPyp
はははッ・・・こいつはいいや!!!
51第3回定時放送:04/05/29 12:04 ID:K4UoahhI
夜のはじまり。
18時は定時放送の時間だった。

『生き残りの諸君、聞こえるか?
 今回も大盛況、3回目の定時放送の時間だ。
 3番、麻生春秋。8番、伊吹風子。13番、大庭詠美。17番、杜若きよみ(黒)。21番、梶原夕菜。
 30番、北川潤。34番、栗原透子。35番、ゲンジマル。46番、少年。48番、春原陽平。
 50番、須磨寺雪緒。52番、セリオ。56番、立田七海。57番、月島瑠璃子。62番、長瀬祐介。
 64番、名倉友里。66番、七瀬彰。68番、葉月真帆。73番、藤井冬弥。74番、藤田浩之。
 83番、牧村南。93番、宮沢有紀寧。
 以上22名、残りは48人となる。
 いよいよ残り半数を切ったが、二枠の優勝目指して更に頑張ってもらいたい』
52名無しさんだよもん:04/05/29 12:08 ID:K4UoahhI
投稿スレ3に、当スレへの誘導後に「歌にあわせて」が上げられました。
読み手各位はお見逃しのないよう。

放送直後に坂上智代が死亡しているので、実際の作中では残り47人となります。
書き手各位はご注意を。
53あぼーん:あぼーん
あぼーん
54あぼーん:あぼーん
あぼーん
55名無しさんだよもん:04/05/29 12:22 ID:ovjvX5aH
夜のはじまり。
18時は定時放送の時間だった。

『生き残りの諸君、聞こえるか?
 今回も大盛況、3回目の定時放送の時間だ。
 3番、麻生春秋。8番、伊吹風子。17番、杜若きよみ(黒)。21番、梶原夕菜。
 30番、北川潤。34番、栗原透子。35番、ゲンジマル。46番、少年。
 52番、セリオ。56番、立田七海。57番、月島瑠璃子。
 64番、名倉友里。66番、七瀬彰。73番、藤井冬弥。
 83番、牧村南。93番、宮沢有紀寧。
 以上16名、残りは54人となる。
 いよいよ残り半数を切りそうだが、二枠の優勝目指して更に頑張ってもらいたい』

56あぼーん:あぼーん
あぼーん
57あぼーん:あぼーん
あぼーん
58あぼーん:あぼーん
あぼーん
59あぼーん:あぼーん
あぼーん
60あぼーん:あぼーん
あぼーん
61名無しさんだよもん:04/05/29 12:59 ID:NfZqnD1t
ID:EtpA1lBv、必死だな
62あぼーん:あぼーん
あぼーん
63「雨音の中で」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/29 15:03 ID:1DmQCFUP
 雨の降る音が聞こえていた。
 アスファルトの地面の上で、無数の波紋を作っては打ち消してゆく雨粒の群れ。
 その傍らには、骨がぐしゃぐしゃに折れた傘が転がっていて、
 暗い地面の中で、唯一紅を晒していた染みが、雨に蹴散らされ、薄められてゆく。
 その先に、壊れて動かない肉体があった。
 ちらりと視界の端に覗く、指先を見ただけで誰だか分かる。
 冬弥だ。
 ゆっくりと指先から腕を辿っていくと、その先に冬弥の顔があった。
 血にまみれて動かない、冬弥の顔があった。
 雨の音が、うるさい。
 うるさくてうるさくて、さっき聞いた彰の名前まで掻き消してしまう。
 なのに冬弥の名を呼ぶ冷たい声だけは、頭の中で延々と反響していた。
「冬弥……?」
 これは嘘だ。嘘の世界だ。私はこんな風景、見た憶えがない。
 あの時見たのは、その先に倒れていたのは……私の兄さんだったはずだ。
 兄さんは、もういない。
64「雨音の中で」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/29 15:07 ID:1DmQCFUP
 ――冬弥も。
 え?
 ――冬弥も、もういない。
 自分が嫌になる。
 こんな世界に逃避してしまうほど傷ついているのに、心の中の冷静な部分が、現実を見つめている。
 泣ければいいのに、泣けない。やっぱり兄さんの時と同じ。
 でも、冬弥はいない。
 あの時、私の横にいてくれた、冬弥がいない。
 私と現実をぎりぎりの所で繋いでくれた冬弥の手はそこにはなく、
 代わりに腕の中で、アルちゃんが泣き叫んでいた。
 おとーさんと呼んで藻掻いて、腕の中から抜け出そうとしているのを、無意識に押さえ込んでいた。
 力無く座り込んだ猪名川さんも、アルちゃんのことを気遣う余裕もなく嘆き悲しみ、床の上に染みを作っていた。
 かける言葉が見つからない。でも、どんな言葉をかけても意味がないというのは、自分が当事者だから分かる。
 何を言われても、どうしようもないくらい悲しい時は、確かにあるから。
 なのに私は、二人と同じ事ができない。 
「冬弥……」
 私はやっぱり泣けなかった。
 代わりに空が泣いていた。
 いつまでもいつまでも、私の耳にだけ、雨音を叩き続けていた。

【007 猪名川由宇 所持品:ロッド(三節棍にもなる)、手帳サイズのスケブ】
【027 河島はるか 所持品:懐中電灯、ビニールシート、果物ナイフ、救急セット、缶詰(残り3個)】
【004 アルルゥ 所持品:なし】
【夕刻、定時放送直後】
【食料と水(飲み物)は発見できたが量についてはお好きに】
65あぼーん:あぼーん
あぼーん
66あぼーん:あぼーん
あぼーん
67あぼーん:あぼーん
あぼーん
68あぼーん:あぼーん
あぼーん
69あぼーん:あぼーん
あぼーん
70あぼーん:あぼーん
あぼーん
71あぼーん:あぼーん
あぼーん
72あぼーん:あぼーん
あぼーん
73あぼーん:あぼーん
あぼーん
74「雨音の中で」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/29 16:26 ID:1DmQCFUP
すみません。>>64と差し替えお願いします


 え?
 ――冬弥も、もういない。
 自分が嫌になる。
 こんな世界に逃避してしまうほど傷ついているのに、心の中の冷静な部分が、現実を見つめている。
 泣ければいいのに、泣けない。やっぱり兄さんの時と同じ。
 でも、冬弥はいない。
 あの時、私の横にいてくれた、冬弥がいない。
 私と現実をぎりぎりの所で繋いでくれた冬弥の手はそこにはなく、代わりにアルちゃんが、私のことを揺さぶっていた。
 片方の手で私を、片方の手で猪名川さんを。 
 猪名川さんに釣られて、悲しくもないのに泣いて、私をこっちの世界に繋ぎ止めようとしている。
 彼女は人の悲しみを敏感に感じ取っているのに、私には、自分自身の悲しみさえ上手く感じ取れない。
「冬弥……」
 名前を呼んでみた。雨音がうるさくて、どこか遠くから響いているような感じがする。
 私はやっぱり泣けなかった。
 代わりに空が泣いていた。
 いつまでもいつまでも、私の耳にだけ、雨音を叩き続けていた。

【007 猪名川由宇 所持品:ロッド(三節棍にもなる)、手帳サイズのスケブ】
【027 河島はるか 所持品:懐中電灯、ビニールシート、果物ナイフ、救急セット、缶詰(残り3個)】
【004 アルルゥ 所持品:なし】
【夕刻、定時放送直後 雨は降っていません】
【食料と水(飲み物)は発見できたが量についてはお好きに】
75名無しさんだよもん:04/05/29 16:34 ID:DXFGu6Ng
ブライト「アムロォォォオォ!! 君がッ!ガンダムに乗るまで!!殴るのをやめないッ!!」
アムロ「よくも…この俺様に向かって! 俺はッ!『親父』にもッ!殴られた事はないッ!!! それをこのビチ糞野郎がァァァーッ!!」
ブライト「このまま・・・親指をこいつの目に入れて・・・殴りぬける!!」
アムロ「ウ・・ウゥ・・わ・・わざとだ・・・どうしてこんなにひどいことを・・・」
(カリカリ)
ブライト「こらあきさま!何書きこんでいる!」
・ガンダムに無理やり乗せられた
・暴言吐かれた
・見捨てられかけた
・ぶたれた
・親指を目に入れられた
アムロ「おまえにかしてるツケさ 必ず払ってもらうぜ・・・・・忘れっぽいんでなメモってたんだ」
パン!

・2度もぶたれた
76石原麗子の自負:04/05/29 18:39 ID:LKkSELJR

「……さすがに完全に回復しろってのは無理があるか」
 石原麗子(005)のつぶやきが、薄暗いベッドルームに響いた。

 傷ついた体を癒すために横になる事数時間。そのまどろみを妨げたのは、第3回定時放送だった。
 死者の名前にはあまり興味がない。彼女は誰の友人でもないし、誰も大切とは考えていないから。とは言え、
一応は見知った相手である坂神蝉丸(037)と三井寺月代(085)の名が未だに告げられていない事だけは
記憶の中に残しておく事にした。
 それなりの興味を持って見守っていた相手。今後どうなるか見届けたくもある。
 しかし、今の彼女にとって、それは重要な事ではなかった。何となれば、またとない暇潰しが目の前に
転がっているのだから。

 残り48人。ゲーム開始から1日半で、半分。

 もう一日半ほどすれば、更に半分になるかしら?
 そんな単純な数学的考察をして、麗子は苦笑した。
 そんなはずはないだろう。残った者はそれなりの精鋭だ。それに、これだけの時間が経てば知り合い同士が
巡り会い、集団を構成していてもおかしくないはずだ。
 これ以降、死者の出るペースは多分減る。ただし、それは何も状況に変化がなかったらの話だ。何か違う
要素が絡めば予想は容易に覆される。
 そして、状況の変化は間違いなく起こるはずだった。それに麗子は気づいていた。
 要するに、今後ペースが上がるか下がるかはまるっきり分からない。

(食料と水。これがポイントになるかしらね)

 麗子は、さしあたっての拠点とした屋敷から、向こう数日をしのげる程度の食糧を確保している。
 しかし、例えば森の中を徘徊している連中はそうは行かないはずだ。最初に支給された食料は、どんなに
節約してもそろそろ切れるはずだった。
 特に大集団になるほど食糧問題は深刻になる。そうすると、だ。
77石原麗子の自負:04/05/29 18:41 ID:LKkSELJR

(……あまり面白くないわね)

 麗子の表情が険しさを増す。
 そういう大集団が食料を求めた時、目指すのはどこか。
 知れている。食糧の貯蔵があると期待される場所、要するに民家だ。はっきり言えば、ここだ。
 そして、飢え死にを避けようとするなら、少々の不安や敵対行為があったところであきらめたりしない
だろう。目的がある者は勇敢になる。それは紙一重の差で無謀にも通ずるが、迎撃しなければならない立場の
者にとってはどっちでも同じだった。
 一人二人ならともかく、それ以上を相手にする装備は、ここには無い。

(どうしたものかしら)

 今現在は平穏そのもの、コーヒーを入れてくつろぐ事も余裕だが、この状況は決して予断を許さない。
 あくまでここを拠点とするか、それともあえて放棄して襲撃の危険の小さい場所へ移るか。
 そんな事を考えていた麗子は、
「……くすっ」
 思わず苦笑した。

 こんな事があろうとは。
 人間の姿に身をやつして結構経つが、ここまで人間らしく、身の安全の確保に悩んで、状況を打開する
手段を模索する事があろうとは思わなかった。
 自分は、そんな心配をする必要などありえないはずの存在なのに。
 これでは、まるで人間やら何やらといった、矮小な命たちと変わらないではないか。

「長生きしてると、たまにはこんなのもいいかもね」

 ふう、と麗子は一息つくと、ベッドから半身を起こした。
78石原麗子の自負:04/05/29 18:42 ID:LKkSELJR

 気に入らないと言えば気に入らない。
 自分の力が、篁とかいう人間ごときに封じられている事が。
 人間の分際で、この自分を上回る力を手に入れている事が。
 しかしまあ、たまにはこういう座興も悪くはない。そう麗子は自分を納得させていた。
 言うなればちょうどいい暇潰し。
 奴の用意した舞台の上で踊るのもいいだろう。全て終わった後で、たっぷりツケを払わせれば済む事だ。

(その為には生き残らなきゃならないわけだけど)

 その点に関して、麗子は自信があった。
 それは人間を超え、強化兵をも超えた、自分という存在に対する自信である。
 その自信に根拠があるかどうかは誰にも分からない。何しろ、実際問題として運動能力は一般人レベルに
抑え込まれているし、一度はカミュの持つ機械……人間が作ったあの装置のせいで不覚を取ったのだから。

(まあ油断が過ぎたって事かしら。何にしても、そんな物があると分かってしまえばいくらでも対抗策は
あるわ)

 二度も三度も同じ失態を犯すつもりは麗子にはない。次は負けないつもりだった。
 それに、少なくとも……。

「動かす程度は出来るようね」

 左肩の添え木を外して、少し動かしてみる。
 痛みはあるものの動いた。力を入れるのは無理があるが、固めておかねばならない程でもなさそうだ。
 そう、その左肩は機能を取り戻しつつあった。もう一晩もおけば十分に回復するだろう。焼いた傷跡は
当分残るだろうが。
79石原麗子の自負:04/05/29 18:43 ID:LKkSELJR

 死に匹敵するダメージを一気に食らわなければ、その場をしのいで逃げ切れれば、勝てる。

 強化兵の蝉丸ですら怪我の回復がままならないこの島において、なお常人を遙かに超える回復力を誇る
麗子の、それが勝算であった。
 そう、石原麗子の能力は完全には失われていなかった。
 なぜなら彼女のこの力は、どこから手に入れたわけでもない彼女本来の力だから。故に、どんな結界を
施そうと、そこに彼女という存在がある限り完全に封じる事など不可能なのだ。

(篁とやら。このお遊びにご招待いただいたことには少し感謝するわ。そのお礼に、ご期待に違わぬ活躍を
してみせてあげる。ただし……報酬として、あなたの全てを頂くけどね)

 石原麗子は不敵に笑う。
 彼女はゲームに乗った。しかし、篁に屈したつもりはこれっぽちも無い。

 ベッドから降りると枕の下のベレッタを右手に携え、麗子はバルコニーへ出た。
 夜のとばりが降りてくる。夜は視界が閉ざされる。見晴らしのよいこの環境も、侵入者の事前感知という
点ではあまり有利ではなくなるだろう。
 しかし侵入側も動きづらくなる。照明を付ければ存在がモロバレだし、消したら足下が危険だ。つまり
どっちもどっちであった。

(さて、これからどうしましょうかしら?)

 そよぐ風に髪をなびかせながら。優雅に、しかし油断無く周囲を見つめながら。
 他の参加者とは明らかに異なる目的と感情をもって、麗子は今後の戦略を組み立て始めた。
80石原麗子の自負:04/05/29 18:43 ID:LKkSELJR

【005 石原麗子 状態:左肩は回復途上 所持品:鉄パイプ、ベレッタ(残弾7発)、アイスピックの針】
【南の携帯食料一式を含む支給品+七海の金槌、鋸、その他使えそうなものは全て寝室に移動済み】
【時刻 二日目夕刻・定時放送から少し後】
81名無しさんだよもん:04/05/29 18:48 ID:EtpA1lBv
レタスのつもりだっふんだがや…
_ト ̄ ̄ ̄|================================○ タッチャン、メザセコウシエンッ タコスケ
神  超傑作 傑作 佳作  良作  凡作  惜作  不作  駄作 超駄作  核  超先生作   
┠──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┨キャベツ←レタス
                       ∩___∩      .↓   ▲   麻枝   ↓       ↑ ↓
ワラタ                     | ノ   肉  ヽ    クラナド―――――→東鳩2────┘ 白明日菜
( `шI )           ○   /  ○   ● | ○ クマー!
┏葉┏鼻 もぐぅ〜〜〜ら     /  T (_○_)  ミ  ×   ○
 ○个 @        .| M ヽ   /      |∪|   |                ┏━━━━━┓
! _鸞|Ω〜      |从 リ)〉  まーちゃん<<<山田<まぐろ 〜せみ丸.     ノノソ肉)))
/∩へヘ∩       |゚ ヮ゚ノ|       ´→σA                       ´ー`)
R ^ R ^V        ミ)} i !                                 \=|=/
  V Λ        ○ωつ´°゜・ ピュッ!!                          ミ(i)ミ    λ
∩∩
( ・-・ )

             ,,,:::::::::::::::::::,,,
    〜" ̄ ̄"-─-っ:::::::,,,,,、::っ-─-゛ ̄ ̄゛〜    
       ヽ- ゝニニニつ、、とニニニゝ -ヽ       
    """ ̄ヾ、 ゝニニニ肉ニニニゝ 、ッ ̄゛゛゛    
   ヽ、_ 〃⌒)イ ____,,, 、 ,,,____ イ(⌒゙ッ _、ヽ   
      `""~~ |::; ´,ニ。=,  ,=。ニ、ヾ;/. .|
          |;|. ´ ̄´ノ  i ` ̄`  |)丿
             ||  ´ /  .)    |ソ
             `|   ノ. ^,,^ ヽ    |
 .          |   ,-三-、    イ
           ノヽ   ""    / ゝ
            `ヾ、____,,,,,, イ

感 感 俺 俺
82石原麗子の自負・79改訂版:04/05/29 19:01 ID:LKkSELJR

 死に匹敵するダメージを一気に食らわなければ、その場をしのいで逃げ切れれば、勝てる。

 能力のほとんどを封じられるこの島において、なお常人を遙かに超える回復力を誇る麗子の、それが
勝算であった。
 そう、石原麗子の能力は完全には失われていなかった。
 なぜなら彼女のこの力は、どこから手に入れたわけでもない彼女本来の力だから。故に、どんな結界を
施そうと、そこに彼女という存在がある限り完全に封じる事など不可能なのだ。

(昨日はなかなか回復しなかったけど、場所によって結界の強さが違うのかしら? それとも、栄養と
休息がよかったのかしら……まあとにかく、これぐらいの力は残ってるわけね)

 麗子は一応、そこにあったタオルを三角巾代わりにして左腕を吊った。添え木はもう必要ないが、
念のためである。

(篁とやら。このお遊びにご招待いただいたことには少し感謝するわ。そのお礼に、ご期待に違わぬ活躍を
してみせてあげる。ただし……報酬として、あなたの全てを頂くけどね)

 石原麗子は不敵に笑う。
 彼女はゲームに乗った。しかし、篁に屈したつもりはこれっぽちも無い。

 ベッドから降りると枕の下のベレッタを右手に携え、麗子はバルコニーへ出た。
 夜のとばりが降りてくる。夜は視界が閉ざされる。見晴らしのよいこの環境も、侵入者の事前感知という
点ではあまり有利ではなくなるだろう。
 しかし侵入側も動きづらくなる。照明を付ければ存在がモロバレだし、消したら足下が危険だ。つまり
どっちもどっちであった。

(さて、これからどうしましょうかしら?)

 そよぐ風に髪をなびかせながら。優雅に、しかし油断無く周囲を見つめながら。
 他の参加者とは明らかに異なる目的と感情をもって、麗子は今後の戦略を組み立て始めた。
83石原麗子の自負 の作者:04/05/29 19:02 ID:LKkSELJR
済みません。ちょっと説明不足の所があったので79を改訂させて頂きます
84出立:04/05/29 19:24 ID:/dfQ7yOf
「ところで、気になることがあるんだけど」
 出立前に、確かめておかねばならないこともある。
 みんな――主にカミュとウルトリィの方を中心に見渡しながら宗一が呟く。
「どうしたの?」

 翼の生えた人間。宗一は聞いたことがなかった。
 神話や伝承とかでは、天使だとか翼人だとか、そういった話も耳にしたこともある。
 だが、実際に現存してる話など聞いたこともない。仕事柄、そんなことがあるならどこかで耳にしてるだろう。

 とはいえ、やぶからぼうに
「あなたは天使ですか?」
 なんて聞くのもなんだか間抜けであるし、場合によってはかなり失礼な質問になる。
 カミュのすぐ横に座っているオボロにしたって、
(えっと、猫耳?狐耳?)
 ときたもんだ。男の猫耳はあんま可愛くない――が、オボロにはとても似合ってるから不思議だ。
(みたいなこと思ってるとボコボコにされそうだな)
 問題はそこではなく、どう見ても作り物には見えないってことで。
(そんな部族も、種族も聞いたことがない)
 ということだ。エディにしたってリサにしたって知らないだろう。

「みんなは、出身地――どこからきたんだ?」
 とりあえずそう切り出してみる。
「宗一君。さっき私に出身地はいいといいました」
 即座にゆかりに小声で突っ込まれる。聞こえてたのか。
「気にするな」
 漫才やるのもいいが、これは大事なことだ。
 ゆかりも一目、宗一を見、そしてその光を感じ取ったのか、あとは黙っていてくれた。
85出立:04/05/29 19:25 ID:/dfQ7yOf

 主に目を向けられていた三人の内、ウルトリィが、最初に口を開く。
「私達姉妹は、オンカミヤムカイという國からきました。
 ……いえ、正確にはトゥスクルという新興國家に身を寄せてましたので、そこからですね」
「俺の國。そして兄者が皇……だった國だ」
 オボロが続けてそう繋げる。
「宗一さん。聞きたいこと、あるのでしょう?」
 ウルトリィが逆に質問してくる。やっぱり分かるか。
「ごめん。露骨すぎたかもな」
「いえ、私も疑問に思っていましたから。あなた方のような方、私は知りませんし。
 あなた方がどこから来て、私達はどこへ連れてこられたのか」
 その言葉を聞きながら、宗一は遥かなる海、水平線の向こうを目を細めて眺める。
 日は落ち、夜の帳がゆっくりと辺りに降りてきていた。


 大いなる大神、ウィツァルネテミアが見守る、多数の國家で成り立った大陸――。
 それは宗一、そして宗一と親交のあった世界のエージェントやナビ達が知る限り、この世界のどこにもない。
(この世界?――いや、もしかしたら、俺達の世界と言い直した方が正しいか?)
 ここが、宗一らの知らぬ、そして彼女らの知る世界の離島、という可能性もある。

 篁は言いきった。逃げることは不可能、と。
(爆弾があるからということか。それとも、逃げることが可能とは思えないほどこの島の周りは
 篁の監視下に入っているのか)
 それらならば少なからず逃げられる可能性――糸口くらいはあるものだ。宗一らにとっては。
 少なくともそれらは”不可能 ”ではない。

 或いはどこへ行っても逃げ場――帰る場所などない、ということか。
 もしもそうであるとするならば――
86出立:04/05/29 19:26 ID:/dfQ7yOf

 篁自身が別の世界から何かを呼び寄せる術を持っていて、ウルトリィらを呼び出した……
 などと考えもしたが。
「あと、俺達はいつここに来たのか、とか」
 気がつけば口に出ていた。
「いつの間にか、ここに居ましたの」
 すばるが不思議そうにそう答えてくれる。手間が省ける。
「ああ、その通りだ」
 その間の記憶はまったくの曖昧だ。誰も彼もが全員覚えていない。
 あのホールで集められた時の、周囲から聞こえた混乱の情景が思い出される。
 ウルトリィらが別世界から呼び出されたとするならば――。
 恐らくは自分達も同じように何かしらの手段で呼び出された。正直、そうは考えたくはないが。
(その辺の事情は、今んところは篁の奴に直接聞くか、篁の懐に飛び込んで裏を取るしかないだろうな)


 ――要は、単に篁を倒す、又は逃げるだけでは、ここから日常には帰れない。


 だが、帰れる方法はどこかに必ずあるはずだ。
 篁は優勝すれば帰れるとまでは断言しなかった。もしかしたら、優勝したとしても帰れないのかもしれない。
 だが、篁や篁の部下達だってここに来ているのだ。帰る方法は少なくとも篁は握っているはずだ。

 爆弾を押さえ篁を倒すだけでなく、なんとしても元の世界――少なくとも、宗一達か、ウルトリィ達の
 どちらかにとっては、ここは別世界だろう――に帰る為の手段を知る必要がある。
 船なんかじゃ、駄目だったのだ。
87出立:04/05/29 19:26 ID:/dfQ7yOf

 今はその考えに絶対の確信までは持てない。余計な混乱を生むだけだ。宗一はそこで話を切り上げた。
「悪い。すばる、紙とベンを」
「えっと、はい」
「一枚もらうよ」
 スケブから一枚、何も書かれていない白紙を引きちぎって、サラサラと今の考えを纏めておく。
 万が一、自分の身に何かあった時の為、自分の考えを控えておくのもいいだろう。


 ――爆弾のこと。篁のこと。この世界のこと。帰るために必要なこと。


「何を書いているのだ?」
「そうだな。あんたには見せておく方がいいか」
 蝉丸に、その書きとめた内容を見せる。
「……そうか」
 蝉丸は何も言わない。事態の重さと、それを書きとめた意図を知ったのだろう。

 簡潔に自分の考えを纏めあげた文を流し書きして。最後に自分のサインを入れて。
 なんか遺言みたいで嫌な感じだった。
「悪いな」
 すばるにスケブとペンを返す。手に残ったメモは自分のポケットに四つ折りにして仕舞っておく。
 正直、このメモが無駄になることを祈る。どっちの意味でも。

 ブツと、島に淡々と声が響き渡った。
(もうそんな時間か――)
 唇を噛みしめて、その放送に全員が耳を傾ける。
 定時放送の時間だった。
88出立:04/05/29 19:28 ID:/dfQ7yOf

 島に響き渡る定時放送。辺りはその余韻を残したままに静寂が訪れた。
 スピーカーの向こうから淡々と事実だけが告げられた。
 耳障りなあの無機質な定時放送の声が、耳から離れない。
(姉さん、七海……)
 ピンとこなかった。何もかも。感情が頭から切り離される。身体が震える。
 

(きよみが、逝ったのか)
 蝉丸が、無念さを噛み殺すように、天を仰ぐ。
 ホールで集められた時に見た、杜若きよみの複製身のきよみのことが思い出される。
 そして、今もなお生きているであろう、殺人鬼と化した石原麗子のことも。
 そしてどこかで、生きている月代のこと。
(このままで、いいのか……)
 傷ついた自身の身体を見やる。仙命樹の力が働かない自分がふがいなく今は憎らしい。

 カミュも、ウルトリィも、オボロも。
 あの勇猛果敢なる生ける武人、ゲンジマルの死に、ただただ顔を伏せた。
 特に、一度はゲームに乗っていたオボロの胸中はいかなるものか。

(春原……あんた、本当にバカだったよね)
 寮で、あれだけ手を焼かせた憎らしい春原のことを思い浮かべていた。
 本当は、嫌いなんかじゃなかった。あの寮にいたコ達のこと、みんな好きだったのだ。
 知らずの内に、美佐枝の頬を涙が伝う。
 悲しいというより、何かがもう取り戻せないような、そんな喪失感。

 静まり返るアビスボート。嗚咽が広がっていく。
「詠美さん、南さ……んっ!」
 泣き崩れそうになるすばるをウルトリィが抱きとめる。
 ウルトリィの胸でしゃくりあげるすばるを、宗一はどこか遠い目で見ていた。
 ここにきて、何が現実で、何が正しいのか。宗一にはすべて分からなくなってしまってた。
89出立:04/05/29 19:29 ID:/dfQ7yOf



 ――胸に去来するのは、もう、遠い。遠い日の思い出だ。
 姉さんを守りたかった為にエージェントになったあの日のこと。
 七海と出会い、もしも、ありえたかもしれない自分の平穏な日常を一緒に綴った幸せな日々を。

(もう、いいか……)

 篁を、殺す。

 もうそれで、それだけでいいんじゃないのか?
 守りきれなかった。
(俺が、篁を地獄に道連れにしてゆく)
 そんな処に、姉さんと七海はいないかもしれないけれど。
 自分にはもう、七海達と一緒にいる。そんな資格もない。
 もう、帰れない。

 ――何が、NASTY BOYだ……

 こんな力、結局、何の役にも立たなかった。
 結局、何の役にも立たなかったんだ。
 本当に守りたいものなんて、何一つ――


「宗一君!」
 放送はすでに終わり、悲しみだけが支配していたその場に伝わる声。
 透き通るような、凛とした声。誰もが、それに目を奪われる。
 蝉丸も、カミュも、ウルトリィも、オボロも、美佐枝も、そしてすばるも。
 ――俺も。
90出立:04/05/29 19:30 ID:/dfQ7yOf

「宗一君はここにいます。皐月ちゃんもいます」

 その声が、俺をここへと呼び戻してくれる。

「リサさんも、エディさんもいます。……みんな……ここにいます。
 私も――ここにいます。だから――」

 両の手で頬を、強く優しく包み込まれていた。それはとても暖かくて。

「――泣かないで」

 目の前の人は、泣いていたけど。

「泣いてなんか、ないさ」

 目の前の人の顔は。映る景色は。ぐちゃぐちゃに歪んでいたけど。

 それでも、二人して笑った。

「――ああ。絶対。生きて帰ろう」

 俺は一人じゃ、やっぱり何もできない。
 いつまで経っても、ただの小僧だ。
 だけど、みんなが支えてくれるから、無茶ができる。
 もう迷わない。
 姉さん、七海、見守っていてほしい。
91出立:04/05/29 19:30 ID:/dfQ7yOf


 そして――


「必ず戻ってきてくれ。俺も、ここに居る者は命に代えても守り抜く。
 それと、光岡悟という者に会ったらよろしく頼む。
 俺と同等以上の軍人で、絶対に信頼できる男だ。坂神蝉丸の名にかけて、それは保証する」
「分かった」
 蝉丸が宗一と固く握手を交した。
 それから密約。瞳だけでの会話。
(そして、もしも、お互いに何かがあったとしても――)
 何も言わずとも分かっていた。この島ではどこにいても。どんなに頑張っても。どんなに命を賭けても。
 どんなに願っても。無事だといえる保証はない。
 だからこそ、お互い誰かが傷つき倒れても。これがもし最後の別れになるとしても。
 絶対に最後まであきらめない。そういうことだ。

「すまん、カミュ。俺がふがいないばかりに」
「大丈夫!絶対に死なないよ。宗一さん達もいるし、これもあるしね」
 蝉丸に、『気配を消す装置』をかざす。
「きっと、大勢の仲間を連れ帰ってくるから!」
 カミュが満面の笑顔で蝉丸の腕に絡みつく
「ぐっおっ……!」
「あ、ごめんおじ様、痛かった?」
「カミュ、お前、鬼だな……」
 オボロが自分の身を庇うようにたじたじと少し下がる。
92出立:04/05/29 19:31 ID:/dfQ7yOf

 結局、宗一、美佐枝が爆弾を解除の為に行動。
 そしてカミュのきっての願いで、彼女は敵意のない参加者――同志を求めて。ゆかりもそれに同行という形。
 といっても、二人では危険かつ、宗一達の行く当てがはっきり決まってないので4人で、という形になった。
 出立は4人。

「お姉さま、ミコトをお願い」
 ユズハの服と、ハクオロの仮面、そしてミコトを、そっとウルトリィに預ける。
「お姉さまなら、ミコトを上手にあやせると思うから」
「カミュ……」
 ミコトを預かるのは、ウルトリィが適任、とカミュが強く意見した結果、こうなった。
 ミコトを守り抜くと誓ったオボロと蝉丸だったが――。
 子育ての方は、やっぱり苦手だ。申し訳なさそうにその様をただ見つめている。
「ゆかりさん、これをひとつ持ってくですの!」
 ゆかりには、すばるからグレネードを一つ手渡される。
「すばるちゃん、ありがとうございます」
 これから成すことは、遠く離れていても共同作業なのだ。
 ゆかりも特に断るでもなくそれを受け取る。満面の笑顔と感謝で。

 皮肉にも、あの定時放送が彼らの決意を新たに固くして、その背中を押した。
 いろいろあったけど。
 この島で起こったことは、辛く悲しいことだらけだったけど。
 それを乗り越えて、この島を出よう。
 全員、それだけは同じ気持ちだった。

(フフ、まぁ、なるようになるさね)
 そんな美佐枝もまた、彼らに乗る気は満々、そしてそれでいいと思った。

「じゃ、行くか。――またここで」
「ああ」
93出立:04/05/29 19:32 ID:/dfQ7yOf
 一つは旅の道。
 一つは護るべき者を守る為。
 目指すは同じゴール。


【出立組 目標:まずは爆弾解除、次いで帰る方法の模索。それと並行して敵意のない参加者との接触。行く先は任せます】
【065 那須宗一  所持品:長弓、矢30隻 宗一の手記】
【025 カミュ   所持品:気配を消す装置】
【040 相良美佐枝 所持品:ゾリオン(使用回数4回)、電池一個】
【078 伏見ゆかり 所持品:グレネード1個(殺傷力は無いがスタン効果とチャフ効果を合わせ持つ)】
【宗一の手記には、宗一の考えややろうとしてることが簡潔に分かり易く書かれてあります】

【残留組 目標:現状では来たる決戦の時までアビスボート又はその近辺にて陣を構える予定】
【037 坂神蝉丸  所持品:木刀  切り傷 打撲が二十数箇所】
【009 ウルトリィ 所持品:ハクオロの仮面 ユズハの服 ハクオロ?の似顔絵 ミコト】
【016 オボロ   所持品:果物ナイフ 短刀  右足に負傷 左脇腹打撲、及び肋骨数本骨折】
【086 御影すばる 所持品:トンファー グレネード1個(殺傷力は無いがスタン効果とチャフ効果を合わせ持つ)小さなスケブ ペン いくつかの似顔絵(うたわれキャラのもの)】

【第三回定時放送直後】
94名無しさんたよもん:04/05/29 21:11 ID:Re3XH9zX
「風に抱かれて」

 榊しのぶは森の中を歩いていた。

 酷く、体が疲れていた。あまりに眠くて、時折倒れそうになってしまう。
 海を流されて、休む間もなく人を殺し、そしてほんの数時間前まで、文字通り生死を賭けた殺し合いをしていた。
 あれから随分と歩いた。敵が追ってくる気配はない。濡れていた服も大分乾いていた。
 少し休もうか。
 そう思って、私は地面に腰掛けた。
「ふう……」
 背中を木の幹に預ける。
 座っていると、頭がボーッとしてくる。
 良くない徴候だ。集中力の低下は死に直結する。
 少し休んだら、もっと安全に休める場所を探そう。
 そうは思っても、一度地面に座ってしまうと、中々立ち上がる気力が湧いてこない。

 ぼんやりとした頭で、私はただ透子の事を考えた。

「透子……」
 私の幼馴染。私達はどんな時でも一緒だった。
 いつだって、私は透子の為に頑張ってきた。
 今までも、そしてそれはこれからも変わらない。
 海に流されて、それでもまたこの島に戻れた時、私は自分の幸運に感謝した。
 きっと、私がこの島に戻されたのは透子を助ける為。
 そう考えると、不思議と力が湧いてきた。
95名無しさんたよもん:04/05/29 21:12 ID:Re3XH9zX
 大丈夫。
 私は大丈夫。酷く疲れて、とても眠くて、でも私はまだ大丈夫。
 前へ進める。戦う事ができる。
 そうだ、戦わないと。透子を守れるのは私しかいないのだから。
 立ち上がって、前へ進んで、障害をなぎ倒して、透子を助けないと。
 さあ行こう、立ち上がろう、私はまだ戦える。
 そう思って、足に力を込めた。

 その時。
『3回目の定時放送の時間だ――』
 定時放送が始まった。

 心臓が一つ、大きく跳ねた。

『3番、麻生春秋。8番、伊吹風子。13番、大庭詠美。17番、杜若きよみ(黒)――』

 殺された者達の名前が、無感情に呼ばれていく。

『――21番、梶原夕菜、30番、北川潤』

 神様、どうかお願いします。透子の名前だけは呼ばないで。
 両手をきつく握り、ただ透子の無事だけを祈る。
 だが。

「――34番、栗原透子」

96名無しさんたよもん:04/05/29 21:13 ID:Re3XH9zX
「あ、ああ……」
 その瞬間、全身の力が抜けた。

 ストンと、地面に尻餅を突く。 
 ああ、透子、死んじゃったんだ……。
 仕方ないわね。
 透子の心はとても綺麗だから。純粋で、無垢で、とても優しいから。
 だから、この島で生き延びられるはずがない。
 生き延びられるはずがなかったんだ……。
 だから、私が側にいなくちゃいけなかったのに……。
「透子ぉ……」
 それなのに私がした事は見ず知らずの人を殺しただけ……。
「透子っ、透子ぉ……」
 目の前の景色がぐにゃぐにゃと歪む。
「透子ぉ、ごめんなさい、ごめんな……う……うう……ひっく……」
 透子を守れなかった。
「……ううっ……」
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ねえ透子、つらかった? 苦しかった? 痛かった?
 ごめんね、ごめんね、守ってあげられなくて、助けてあげられなくて、側にいてあげられなくて。
「う、うう……ひっく……透子ぉ」


97名無しさんたよもん:04/05/29 21:14 ID:Re3XH9zX
 木の幹に背中を預けて、私はぼんやりと空を見上げた。 
 どこからか、風の音が聞えてくる。それはまるで子守唄のように私の耳に優しく響いた。
 海に落ちて、またこの島に戻れた時、私は自分の幸運に感謝した。
 信じてもいない神様が、透子を助けるために私をこの島に戻したんだと、そう思った。
 
 馬鹿な私。
 
 透子はもう生きていなかったのに。
 それならどうして私はこの島に戻ってきてしまったのだろう。
 あのまま海の藻屑になれればよかったのに。
 泡になってこの世界から消えてしまえればよかったのに。


 風が吹いた。
 愛でるように私の肌を撫でる。
 風はとても暖かくて、ずっと包まれていたいと思った。
 ああ、そうだ。この暖かさは透子のようだ。まるで透子に抱かれているように、暖かい。

 このまま風に抱かれていれば、朽ちていく事ができるだろうか。
 風が私を攫って、連れていってくれるだろうか。
 
 透子のいるあの場所に。



 ああ、誰か私を殺して。


98名無しさんたよもん:04/05/29 21:15 ID:Re3XH9zX
【039 榊しのぶ ブローニングM1910(残弾1)、ナイフ、缶切3つ、12本綴りの紙マッチ3つ、護身用スタンガン(まだ少し湿っている)】  
99名無しさんだよもん:04/05/29 23:10 ID:GY16Y69G
ごめんなさい、>>40の最後
【 071 雛山理緒 所持品:枕大の石入りザック、黒うさぎの絵皿、水風船3コ】
に変更しておいてください
100チュパカブラ:04/05/29 23:20 ID:9Mls7mkc
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
101名無しさんだよもん:04/05/29 23:48 ID:LKkSELJR
>>76-83 「石原麗子の自負」は、
今後の戦力インフレを招きかねない描写があるのでNGとさせて下さい。
ご迷惑をおかけしました
102名無しさんだよもん:04/05/30 00:24 ID:wG4dkWxj
  /                /      ゙i,  ヽ  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    j                ,ィ/        |  | <私はムスカ大佐だ。1がくそスレを立てた
    lィ'             ,ィ/j/          | iリ  |緊急事態につき私が指揮を執る!
   |         /l /          '"` | j   |
   リ!      /,ノ           _,、-''''` /リ   |>>1事を急ぐと、元も子もなくしますよ。
     |   _.._ l/   ,.--;==ミ 、 ___,.ノ /{.○-゙‐rV   |>>2これは、私の機関の仕事です。
    ヽ,/`ヽヽト、 ´  {,.○-`‐‐ 、,.-ト|    ,ノ   |>>3バカどもには、ちょうどいい目くらましだ。
     ∧  ゙i,   `ヽ,r'´      ノ.  ゙、--‐''´|   |>>4・・・言葉をつつしみたまえ。
   ,,.く  ヽ   ゙i     ヽ、 __,,、-'"     〉   /   |    君はラピュタ王の前にいるのだ。
ハ'´  |  ゙i   |           ' '     iヽ'" ̄|>>6君のアホ面には、心底うんざりさせられる・・・。
゙、゙i,_r'シニZ`ー┬ト'i       _____ ,  |  \ |>>7ひざまづけ!
   _゙V  ヽ,.レ''ヽヽ     `ー─''''"´   /    |>>8命ごいをしろ!!
 /./ ヽ/     ,」ヽ     __,,、-─‐-、j     |>>9 3分間待ってやる。
  / r'´  --‐‐'''"´ ヽ \   (.r‐'''""゙゙`ヽ,`)    |
  l .|     __,,、--`ヽ \ ___ヽ     /´|     |
 j |           ,⊥`ー 、 ゙!    レ' |     |
 |  |        -‐''"´   ヽ、⊥ヽ|    |彡'|     |
103名無しさんだよもん:04/05/30 00:26 ID:wG4dkWxj
>>102
     ∧  ゙i,   `ヽ,r'´      ノ.  ゙、--‐''´|   |>>4・・・言葉をつつしみたまえ。
   ,,.く  ヽ   ゙i     ヽ、 __,,、-'"     〉   /   |    君はラピュタ王の前にいるのだ。

ここにワロタ
104名無しさんだよもん:04/05/30 00:28 ID:wG4dkWxj
>>102=103
自演乙
105名無しさんだよもん:04/05/30 00:34 ID:e2eFACZV
>>102-104
自演晒しage
106名無しさんだよもん:04/05/30 01:25 ID:SHG3CEXp
いやぁ実際みると痛いね。

てかここ荒れすぎなんだけど、なにあった?
107名無しさんだよもん:04/05/30 01:50 ID:/9Cs8y6W
各方面から恨みでも買ったんじゃない?
108名無しさんだよもん:04/05/30 01:50 ID:nXX3Lr6N
どうせ好きなキャラがあっさり殺されたのが気に入らないとかそんな理由だろ。
嫌なら見なければいいのにね。
109名無しさんだよもん:04/05/30 02:01 ID:wdOavrRQ
殺したから気に入らないんだったら、もっと早くやってたんじゃないかな?
110名無しさんだよもん:04/05/30 02:05 ID:A/slpIZp
最近ハカロワ2の存在を知って、読んでみたらお気に入りのキャラが死んでて、
むかついたので荒らし、とか。
111名無しさんだよもん:04/05/30 02:09 ID:7VLghKSf
お前らそんな理由で荒らすのか。
幼稚過ぎて呆れるぞ。
112名無しさんだよもん:04/05/30 02:10 ID:mLAgFf07
かもね。
それにUに限らず、この手の企画は嫌われやすいからな。
113 名無しさんだよもん:04/05/30 02:29 ID:d/NWOo+5
書き手の一人が自分の思うような展開にならなくなったから暴れていると予想
114名無しさんだよもん:04/05/30 02:31 ID:D9YzGgXz
万が一この企画が終了したとしても、「成功した」「前作を超えた」「またやろ
う」なんて戯言言って欲しくないわな。



この程度の出来で。
115名無しさんだよもん:04/05/30 02:39 ID:pDvGfUx/
このスレに書き込むのも何だけど、ハカロワの何処が面白いの?
支持されてる理由がさっぱり分からないんですけど。
116名無しさんだよもん:04/05/30 03:12 ID:uDHZM58q
葉鍵キャラの死と狂気と絶望が見れるから。
作家として参加すると、それが書けるから。
117名無しさんだよもん:04/05/30 03:22 ID:s1Fm4+aa
ロワ関係の雑談はこっちで。
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1085589458/l50
118名無しさんだよもん:04/05/30 03:31 ID:puhhAYkm
                     ,..-''"``ヽ、
   ,..-'""``ヽ、 ,...---――‐-..,/  ,.ヘ   ヽ
  /   ,..、   `´            ' ,/´`i   l
  ! ,.....! ヽ                  ノ   !
  l \ `ヽ                     l
  ヽ     -,..-‐-、         ,..:=::ヽ彡  /
   \,  `7:◯::::::ヽ        /::○:::::::l_,,._l゙゙i_
    」゙i_ `''!::. o :::゙i       !:::. o :::! L 」
   ヾ_Z  l:::... ..:::::ノ   ___   ヾ:::.. ..::::ノ  Ll
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      /ー- `二''――┬┬─_''二ニ-‐‐|
      /     ,. ̄二‐+-+-二__     |
     /    ,.'´ ,..-、、``´´,..-、 `ヽ   |
     /     i  i    ※   !  i    |
http://www.runarudo.flnet.org/newpage21.htm

119もうだめぽ:04/05/30 09:54 ID:wG4dkWxj
>>1-1000
                        __,,,,.....,,__
                  _,. :- :' ":´: : : : :` ': 、、
               _,.r ':´: : : : : : : : : : : : ヽ、
            _,.-'´: : : : : : : : : .人: : : : : : \
            ,.ィ'´: : : : : : : : : : / ヾ、: : : : : :ヽ
         /: : : : : : : : : : : ノ    ヾ、: : : : : ゙i、
         'イ: : : : : : : : /: //      ヽ : : : : : 'i
ラ        /: : : : : ノ'_,. 彡',.ィ'/"        'i | : : : : 'i ち
        '7: : : : /ム" '''''^~''"゙          !:|: : : : : |
ピ        レi: : : :i'              ,...:;;.、 ゙'! : : : : | ょ
         .!∧ : : ! =-x、.,_ .;' :  _,,.、=:''""'ー  | : : : : 丿
ュ         ゙ \ r'l,_r'""゙゙゙゙~~Y_,,....,,i'"゙゙~~ ̄`゙ト、.,_ i':r‐、: :/ っ
            `1 i !,    _,!.|  '''!、    _j!  ゙''レ'ri ! ;/
タ            ヽl| ゙゙"""~~ . |     ゙゙"~~ ̄   .:jシ' ノ /   と
                '、!       └-ー         '~/ :ノ
ま              ゙'、               ,/-',,.:-'゙
                ゙、  :: _,,. -―- 、..,,_ ::  ,/ |'゙
で               ゙i、    '""''      .ノ .|
                 | '、         /  .|_
来               ,.┤.ヽ、____,,./   _,|..)
              _,..-|`゙"'''ー-、 ::  ,.-― '''''""゙   ト-.、、
い       __,,,,,...、- ''";;;;;ト 、、 く,ヽ、 /j      _,.-'゙|;;;;;;;;;;゙;;';ー;,,、..,,,_
、--―;'';;;"゙;;;;;;;;;;::''';;;;;;;;;;;;;;;|: : : ゙,.>≫V.∠..、__-‐_'',,"  ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;''-、.,;;;;;;;;;;;゙;;;;;;'';;;;

120名無しさんだよもん:04/05/30 10:06 ID:XuHh8nQT
案外早く終わったなこの企画
121強く、なりたい:04/05/30 10:49 ID:+uU3NTcZ

 岡崎朋也が機動戦士と化してから、数時間が過ぎようとしていた。
「見つからないね……芽衣ちゃん」
 同行者の水瀬名雪の言葉に、「ああ」とうなずく。
 春原の、最後の頼み。
 なんとしても、かなえてやりたかった。
 焦りが心を支配する。
 もうじき、定時放送の時間のはずだ。
 もしそこで、春原の名前とともに芽衣の名前が流れるようなことがあったら。
(俺はあいつに、なんて詫びたらいいんだ……)
 唇を噛む朋也の手を、そっと柔らかい感触が包む。
「ふぁいとっ、だよっ」
 小さく、しかししっかりとした声で笑顔を向ける名雪。
「ああ……、わかってる」
 杏、智代、春原、名雪……。
 いつも自分は、誰かに支えられてばかりだと思った。
 強く、なりたいと思った。
 誰かを支えられるくらい、強く。
 ……ぶつん、と耳障りなノイズが茜色の空に響く。
 定時放送の始まりだった。
122強く、なりたい:04/05/30 10:50 ID:+uU3NTcZ

『……以上22名、残りは48人となる。
 いよいよ残り半数を切ったが、二枠の優勝目指して更に頑張ってもらいたい』
 芽衣の名は、呼ばれなかった。
 だが、
(風子……、宮沢……)
 ぎりっ、と朋也の拳が軋む。
 できるなら、この拳を手近な壁か木にでもぶつけてしまいたかった。
 体の痛みが心の痛みを忘れさせてくれるなら、そうしてしまいたかった。
 だが、できない。
 足を止めた名雪の横顔が、泣きそうだったから。
「…………北川、くん…………」
 自分が取り乱したら、名雪には友の死を悲しむことさえ許されない。
 きっと必死で自分を止めてくれるはずだ。
 あのときの、あいつのように……。
(またか……、これは、いつの記憶なんだ……?)
 頭痛。
 記憶の混乱は、まだおさまっていないようだった。
123強く、なりたい:04/05/30 10:51 ID:+uU3NTcZ

 無理矢理に頭を振って、記憶の奔流を振り払う。
 名雪に気づかれないように、大きく息を吐いた。
 まだ、大丈夫だ。
 自分にそう言い聞かせて、もう一度だけ放送を思い返す。
 たったの12時間で、22人。
 きっと、主催者の思惑どおりの展開なのだろう。
 これだけの人が死んでいる以上、ゲームに乗った人間はひとりやふたりじゃない。
 芳野や、椋を撃った髪の長い女以外にも、かなりの数の殺人者が島をうろついていると思っていい。
 そいつらは、参加者を倒すたび武装も強力になっているのだろう。
 それに対して、自分の武器ときたらあやしげなビーム兵器に包丁くらいだ。
 泣きたくなる。
 とにかく、欲しいのは情報だ。
 芽衣の行方につながる情報でも、殺人者の情報でもいい。
 行動して、情報を集める。
 それが一番の近道になるはずだ。
 行動方針をまとめると、頭の中はすっきりとしていた。
124強く、なりたい:04/05/30 10:52 ID:+uU3NTcZ

「……行こう、水瀬。芽衣ちゃんはまだ無事みたいだ」
 努めて平静な声で、呼びかける。
「う、うんっ」
 目の端をそっとこすりながら、名雪がうなずく。
「…………っ、」
 また歩き出したところで、行く手からなにか聞こえた。
 ……泣き声、だった。
 きっと大切な誰かを失った誰かの、悲痛な声。
 胸の、締め付けられるような…………そんな声。
「水瀬……」
「うんっ」
 顔を見合わせて、うなずき合う。
 あんなふうに泣ける誰かが、殺戮者だなんて信じたくない。
 きっと、ゲームに乗っていない誰かだ。
 ひょっとしたらそこに芽衣がいるかもしれないし、そうでなくとも情報交換はできる。
 そう思って、ふたりは声の聞こえるほうへ急いだ。
 名雪は案外足が速く、息を切らしながら追いついたときには足を止めていた。
 彼女が見上げているのは、一軒のアパートだった。
125強く、なりたい:04/05/30 10:54 ID:+uU3NTcZ
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2、シールド(ダンボール製)】
【090 水瀬名雪 所持品なし】
【時間経過しているため、ビームサーベルは充電器に収納ずみ】
【ふたりが聞いた声は由宇のものと思われる】
126名無しさんだよもん:04/05/30 11:12 ID:GaADUX5T
岡崎朋也が森の中をさまよっていると、
「……!っ」
10m程離れたところに芳野祐介がいた。朋也のことは気付いていない。
そして、それは数秒間での出来事だった。
「芳野ーーーーっ」
「!?」
武器を片手に勢いよくせまってくる朋也。
芳野祐介はその方向へ振り向いたが、反応が遅すぎた。
芳野の頭部を思いっきり強打する。
ズカッ!!
「……くっ」
「…やったか?」
「……」
「…フッ…さすがゴッグだ。何ともないぜ!!」
芳野は顔を上げ、不敵な笑みで朋也を見据えていた。
http://www.geocities.jp/know_ka/gok.asf
【 芳野祐介 所持品:ゴッグ】
127強く、なりたい(訂正):04/05/30 11:18 ID:+uU3NTcZ
実況スレで親切な方からご指摘がありましたので、
>>125より、
>【ふたりが聞いた声は由宇のものと思われる】

の一文は削除してください。
失礼しました。
128UnON9d+E:04/05/30 14:12 ID:GaADUX5T
嵐は成功したか
129戦士:04/05/30 19:25 ID:QyQiOuLZ

桜井あさひは揺らがない。
泣いたり笑ったり、そういうことをするためにたいせつな色々なものはぜんぶ、
胸の奥の虚ろな洞に棄ててしまった。
そうして空いたがらんどうの心に、少年の遺した冷たい銃と鉛の玉を一杯に詰め込んで、
ただひとつの命を消し去るために歩いているあさひは、もう揺らがない。
だから、

『46番、少年』

その声も、その笑顔も、その最期も。
もはや霞むことなく。
老人の声の如きに絶望できる少女の欠片は、きっとずっと、彼に抱かれて泣いている。

桜井あさひは揺らがない。


【042 桜井あさひ キーホルダー 双眼鏡 十徳ナイフ ノートとペン 食料六日分 眼鏡 ハンカチ
   S&W M36(残り弾数5)予備弾19発 腕時計 カセットウォークマン 二人分の毛布 『短髪』】
130名無しさんだよもん:04/05/30 19:26 ID:QyQiOuLZ
【時刻は第3回定時放送直後】
131いつか、また:04/05/30 21:03 ID:8vxHP5WE
 夜。あの忌まわしい定時放送が終って数時間後。
 木田時紀は神尾観鈴、宮路沙耶とともに住宅街の中のとある十字路に立っていた。

「ここでお別れだな」
 時紀は二人にそう告た。
 今までバラバラだった三人がこの時ばかりは円を囲んで向かい合っている。それがどことなく滑稽でもあり、微笑ましくもあった。
「時紀さん、どうしても別れなくちゃいけないの?」
 観鈴が気弱な表情を浮かべた。
「ああ」
 木田は観鈴の迷いを断ち切るようにはっきりと頷いた。
「どうしてなのかな……、せっかく仲良くなれたのに……」
「神尾」
 言い聞かせるように、観鈴の名を呼んだ。
「この島に来てから俺達は何をした?」
「え? えっと……」
 観鈴は言葉に詰まる。
「俺達はこの島に来てから何もしてこなかった。何もせず、ただ状況に流されていただけだ」
 そしてそのせいで、麻生春秋は死んだ。それだけではなかった。功も、真帆も、須磨寺も、栗原も殺された。
 そして……。
(エミ公……)
 妹の恵美梨まで殺された。
「俺達はずっと立ち止まっていた。けどな、俺達が立ち止まっている間にも、この島では誰かが誰かに殺されているんだ」
 時折、思ってしまう。
 もし自分が積極的に行動していたら、恵美梨は死なずに済んだのではないのかと。
 あんな風に立ち止まっていなかったなら、あいつらを助ける事ができたのではないのかと。
 その考えは、まるで重い鎖のように時紀に絡みつく。
132いつか、また:04/05/30 21:04 ID:8vxHP5WE
「だから――」
 それを断ち切るように、時紀は観鈴と、そして相変らず無表情な沙耶をはっきりと見た。
「だから、俺達は歩き出さなくちゃいけない。前へ進まないといけないんだ」
「でも……、みんなで歩く事はできないのかな?」
「神尾、俺達は道が違う。無理して三人で歩いても、望む場所には辿り着けない」
 あいつらを殺した奴ら、このゲームに乗った連中、あいつらの死に関わったありとあらゆる者達に償いを。
 それこそが、時紀の選んだ道。
「俺は俺の道を行く。お前達はお前達の道を行くんだ」
 観鈴は俯いた。
 しばらくして。
「うん……」
 と言った。そして顔を上げる。その顔はもう迷っていない。
「神尾、母親を見つけろよ」 
「うん。時紀さんも頑張って」
「宮路、無茶はするなよ」
「あんたもね」
 時紀は一つ、息を吸った。 
「じゃあ、ここでさよならだ」
「違うよ」
 観鈴がはっきりとした口調で否定した。
「さよならじゃなくて、またね。別れても、また会えるから。また、会おうよ」
 観鈴は、にははと笑った。
133名無しさんたよもん:04/05/30 21:05 ID:8vxHP5WE
「ああ……」
 こいつは、こんな時でもこんな風に笑えるのか。
「そうだな。じゃあ、また三人で会おう」
 それは約束。かつての時紀なら馬鹿にしてしまいそうなそれを、今ははっきりと言うことができた。
「うん。またね」
「……また」
「またな」
 そこで時紀は二人に背を向けた。
 振り返る事はしない。二人もきっとそうだから。
 ただ二人の無事を静かに祈る。
(二人とも、死ぬな)
 そしてまた、生きて会おう。

 
 そして時紀は、暗い道を一人歩いていくのだった。


【031木田時紀 鎌 朋也・宗一・芳野の写真】
【094宮路沙耶 南部十四年式(残弾9)】
【023神尾観鈴 けろぴーのぬいぐるみ ボウガン(残弾5)】
【三人は別れ、それぞれの目的の為に行動する】
134驚愕:04/05/30 22:09 ID:7tHLUFCp
 そいつとはたった数時間のつき合いだった。

「邦博!」

 さん付けで呼ばなくていいと言ったら、遠慮なく年上の俺を呼び捨てで呼びやがった。

「お兄ぃかと思った…」

 全く、俺と間違えるとは相当なごろつきなんだろうよ。一度そのツラを拝んでみたいぜ。

「ばいばい…お兄ぃ」

 さんざん引っかき回しておいて、勝手に死にやがった。たった、数時間だぜ?

「風子…参上」

 アイツはいかれてた。殺したと思ったら死体を切り刻み初めて……体が動かなかった。どうかしてるぜ…。
135驚愕:04/05/30 22:13 ID:7tHLUFCp
「結局、そのままアイツはどっかへ行っちまった…」
 つらつらと、今まであったことを話す。あれから、休憩がてらお互いのことを話し合っている。大分、日が暮れてきた。
「今考えれば迷惑な話だぜ…勝手に付いてきて、引っかき回して」
 さっき呟いたセリフをもう一度反復する。すると、しばらく黙って話を聞いていたリサが口を開いた。
「フーン。…そのエミリって子はどうでもいい子だったわけ?」
「あぁ、勝手に付いてきただけの厄介者だ。それで勝手に死んだだけだ」
 リサはそのセリフをかみしめた後、
「ソウ…だったら何で」
 一拍間をおく。
「そんな、悲しい顔をしているの?」
 感情のこもった、妙に流暢な日本語でリサが邦博の顔を見つめる。
「………さぁな」
 思わずリサから顔を逸らした。
「クニヒロ、貴方は…」
 返事はない。
「自分が思っているほど、冷酷な人間じゃない。もちろん、この島に来る前のことはわからない。だけど、今の貴方は…」
「なっ…!」
 何か反論しようと言葉を模索する。だが、何も出てこない。
(……俺は、変わっちまったのか?)
 妙な沈黙が流れる。すると、耳障りな声が二人の耳に入ってきた。

『生き残りの諸君、聞こえるか?』

 思わず、たたずまいを直す二人。

『今回も大盛況、3回目の定時放送の時間だ。3番、麻生春秋。8番、伊吹風子…』

 その二人の名は邦博を驚愕させるには十分な名前だった。

【001 浅見邦博 身体能力増強剤(効果30秒 激しいリバウンド 2回使うと死ぬらしい) レーダー(25mまで)】
【100 リサ・ヴィクセン パソコン、草薙の剣】
【定時放送中】
136忘却:04/05/30 23:04 ID:hyXRlcJN
 第3回定時放送が流れた時点で息をしている者に限った場合、「伊吹風子」(もしくは「風子」)という『意識が正常な』人間の顔と名前が一致するのは、浅見邦博、岡崎朋也、榊しのぶ、古河渚、以上の四名である。
 伊吹風子との関係を挙げるなら、『連れを殺された敵』『キスをしたことがある相手』『殺した相手』『恩師の妹』ということになる。
 問題。
 前述の四名のうち、もっとも伊吹風子に対する印象が薄く、もっとも伊吹風子と最後に出会った時間が早く、もっとも伊吹風子との『直接的な』関わりが薄いのは、誰か。


 ――知り合いの名前があった。
 第1回、第2回の両方を聞き逃した自分が初めて聞いた放送で、北川潤以外にも知り合いの名前があった。
 見上げた空に、その人の笑顔が浮かぶ。
 直接その人とどうこうということはなかったけれど、岡崎朋也を通して知り合った人だった。
 本人達は決して口に出さなくても、多分凄く良いコンビだった。
 とても陽気で、いつも笑ってる人だった。
 時々目を見開いて朋也にツッコミをいれる顔が印象的だった。
 いい人だった。
 とてもいい人だった。


 放送で流れた、古河渚という人間の知り合いの名前は。

 48番、春原陽平。

 ただ一人。

【072 広瀬真希 所持品:『超』『魁』ライター 便座カバー バッグ 食料と水多めに所持】
【011 エルルゥ 所持品:乳鉢セット 薬草類 バッグ 食料と水多めに所持】
【081 古河渚 所持品:バッグ 食料と水多めに (ワッフルとジャムは海の家に置き去り) 少し熱っぽい】
【087 美坂香里 所持品:なし 気絶中】
【第三回定時放送直後】
137名無しさんだよもん:04/05/30 23:18 ID:wG4dkWxj
岡崎朋也が森の中をさまよっていると、
「……!っ」
10m程離れたところに芳野祐介がいた。朋也のことは気付いていない。
そして、それは数秒間での出来事だった。
「芳野ーーーーっ」
「!?」
武器を片手に勢いよくせまってくる朋也。
芳野祐介はその方向へ振り向いたが、反応が遅すぎた。
芳野の頭部を思いっきり強打する。
ズカッ!!
「……くっ」
「…やったか?」
「……」
「…フッ…さすがゴッグだ。何ともないぜ!!」
芳野は顔を上げ、不敵な笑みで朋也を見据えていた。
http://www.geocities.jp/know_ka/gok.asf
【 芳野祐介 所持品:ゴッグ】

138かたきうた:04/05/31 02:07 ID:wE0/nmvZ

木にもたれ、膝を抱えて、ずっと空を眺めていた。
空を染め上げた朱がやがて闇に追われ、駆逐されていく。
木々の間から見える小さな空は、そうして夜を謳い上げる。
ただそうやって時間が過ぎるまま、このまま朽ちていければいいと、
そんなことを考えていた。

わたしはもはや生というものに、唯の一片すら価値を見出せなかった。
枝で首をくくれば、銃でこめかみを打ち抜けば、ナイフで喉を突けば、私は死ぬ。
だけど透子は、私の見ていないところで、私の知らない死に方をした。
だから死ねなかった。
私がどんな死に方をすれば、透子と同じ痛みを、苦しみを、恐怖を絶望を後悔を、
味わえるのだろう。それがわからなかった。
139かたきうた:04/05/31 02:08 ID:wE0/nmvZ

首筋に冷たい感触。
ぼんやりと目を向ける。
大きな刀。
ぽつりぽつりと、闇に溶け込んでいる色を纏ってなお鈍色の、人を殺すという、
ただそのためだけに作られたもの。
目線を、やはりぼんやりと空へと戻す。
言葉が自然と口をついた。

「―――早く、殺してよ」

それは自分でも驚くほどに、昏い声だった。
応えるように、真横に立つ人物が呟いた。

「……つくづく、運がありませんわね」

それを聞いて、わたしは笑おうと努めたらしい。
口の端が、ゆらりと持ち上がる。
だけど、それが限界。
今のわたしはさぞかし奇妙な顔をしていることだろう。
中途半端に歪んだ表情をそのままに、

「違うわね。運が、良かったのよ」

わたしに刀を突きつけている誰かは、戸惑っているに違いない。
或いは狂人を相手にしていると思われたか。
いずれ大差は無いが。
140かたきうた:04/05/31 02:10 ID:wE0/nmvZ
「こんなに早く死ねるとは思わなかったわ、ありがとう。
 ……さぁ、早くわたしを殺して」

それを聞くと影は大きく溜息をつき、意外な言葉を口にした。

「……本当に運がありませんわ、私は。
 始めに出会った誰かが命のやり取りをする覚悟を持った方であれば、ベナウィとの
約束など反故にして、存分に狩りを楽しもうと思ってましたのに」

何を言っているのか、わけがわからない。
とりあえず、わたしが無抵抗のまま死ぬ気なのが気に入らないらしい。

「貴女は覇気に欠け過ぎですわ。かといって逃げるそぶりも見せない。命乞いもしない」

とつとつと、実に面白くなさそうに続けている。

「これでは興も失せるというもの。ベナウィの言うとおりにするのも癪ですけど……
見逃してさしあげますわ。命冥加なこと」

首筋に当たっていた、冷たい金属の感触が消える。

「―――そう」

よくわからないが、どうやら殺してはくれないらしい。
ならばもう、興味は無かった。
結局一度も顔を見ることのなかった誰かの気配が、次第に薄くなる。

「ご期待に添えなくて残念でしたわね。生き延びなさいな、お嬢さん。
 ―――キダクンだか、シーチャンだかは知らないけれど」

時が、凍りついた。
141かたきうた:04/05/31 02:12 ID:wE0/nmvZ

ともすれば鳴り出しそうになる歯を噛み締め、やっとのことで言葉を搾り出す。

「その名前を、どこで聞いたの……?」

声が、揺れている。

「―――?」

一度は消えかけた気配が、再び輪郭をあらわにしだす。

「……答えなさい。 木田君と、……しーちゃんと、そういう言葉を耳にしたのね……?」

「あら、やはりお知り合いでしたのね。同じ誂えの服を着ていたから、そうだと思いましたわ」

輪郭が、徐々にはっきりとしたかたちを結ぶ。
わたしはゆらりと立ち上がる。

「―――透子を……その子を、どうしたの」

眼を、向けた。

「……あら貴女、良い顔もできるんですわね。
 始めからその顔でいてくだされば、また違いましたのに」

月光届かぬ夜の森。
暗がりに姿を見せたのは、異様な風体の女。
闇を吸ったような黒髪を編み下ろしたその頭に生えるのは、獣の如き耳。
首には無骨な拘束具。
左手に大太刀を下げ、隙無く立つその女は―――嗤っていた。
142かたきうた:04/05/31 02:14 ID:wE0/nmvZ

笑みを浮かべたその顔のまま、女はゆっくりと口を開く。

「教えてさしあげますわ、命冥加なお嬢さん。
 貴女のお友達のトウコさんは―――」

ああ、と理解する。
あの大刀が纏う闇色の正体。
違う、そんなことではない。
そうだ、わたしは本当に運が良かったのだ。
わたしは、わたしがこの世界で果たすべき唯一の目的を、存在意義を見失うところだった。

「―――このカルラが、狩ってさしあげました」

右手を差し入れたポケットから、ブローニングを抜き放つ。
正面に構え、引き金に指をかけた時には、既にその姿は夜の森に溶けていた。
どこからともなく、声が響く。

「私たちはほんとうに似ていますわ、お嬢さん!
 たいせつな方を喪って、なお生き恥を晒している……!」

木々に響く声。
それはわたしをいざなう唄。

「私を追ってきなさい、お嬢さん。その手を誰かの血で染めながら」

どこか愉快げなその声が、遠ざかっていく。

「もう一度会えたら、そのときには―――楽しく、踊りましょう」
143かたきうた:04/05/31 02:15 ID:wE0/nmvZ

暗い森の闇に包まれて立ち尽くしていた。
手の中で冷たい感触と重みを放つ拳銃、ブローニングをじっと眺める。

この、最後の弾があの女を撃ち貫いたら―――透子、そのときにはわたしを、迎え入れてね。
それまで、ほんの少しの辛抱だから。
泣かないで、待っていて。

制服はもう、乾いていた。


【039 榊しのぶ ブローニングM1910(残弾1)、ナイフ、缶切3つ、12本綴りの紙マッチ3つ、護身用スタンガン】
【026 カルラ 自分の大刀、右手首負傷、握力半分以下】
【時刻は19時】
144名無しさんだよもん:04/05/31 03:20 ID:JEVvEFN5
 
145PK(プレイヤーキラー):04/05/31 17:44 ID:i14Y4UZ5
 あれから一時間。
 春原芽衣はまだ決断を下していなかった。
 あれ以来、神岸あかりも亮に一言も話しかけてこない。
 それでいいと思う。
 悩めるのは今の内だけだ。
 少なくとも、悩む時間すら与えられなかった者達に比べればそれだけでも恵まれている。
 亮自身もこれからどうするのかを考える時間が欲しかった。
(……修二、俺はどうすればいい?)
 しかしその玩具から答えが返ってくるはずもなく。

『最後はお前が決めるんだ』

 修二の言葉。
 後悔しない為に、後悔させない為に、芽衣にはかつて友の言った言葉をそのまま投げかけた。

 修二ならこの状況ではどうしただろうか?
 修二なら───彼なら戦う力のない人間を守る事を選ぶだろう。

 ならば自分は?
 今の亮はエゴが使えない只の一般人でしかない。
 そんな亮に出来ることと言えば……

『生き残りの諸君、聞こえるか? 』
 忌まわしい声。
 いつの間にか定時放送の時間が訪れていた。

『3番、麻生春秋……』
 一番最初に聞こえてきたのは亮の知った名。
 いかなる時でも冷静に状況を見極める春秋の判断力を持ってしても生き残る事は出来なかったらしい。
146PK(プレイヤーキラー):04/05/31 17:46 ID:i14Y4UZ5
(………)
 ますますどうしていいか分からなくなる。

『48番、春原陽平……』
 その名を聞いた芽衣は泣いてはいなかった。
 だがその目にあったのは涙ではなく強い決意。

 そして。

『74番、藤田浩之……』
「えっ……?」
『……以上22名、残りは48人となる。
 いよいよ残り半数を切ったが、二枠の優勝目指して更に頑張ってもらいたい』
 あかりの呟きを無視して無情にも放送は終わりを告げる。
「嘘…だよね……浩之ちゃんが…勝手にいなくなる訳ないもんね……
 そうだよね……松浦さん、芽衣ちゃん、浩之ちゃんを探しに行こう?」
「神岸」
「浩之ちゃんは……どっかに行ったり…な……んか……」
 あかりの目には亮の姿も芽衣の姿も映っていない。
 虚空だけが映っていた。
(……駄目か)
 こうなってしまってはあかりは足手纏いでしかない。
 今の状態のあかりを連れて行くことは亮達の死を意味している。
(これ以上苦しむ前にいっその事───)
 今の亮があかりに唯一出来る事。
 高速で修二のエゴのギアが回転を始める。

 射線上に何かが立ち塞がった。

「……春原……分かってるんだろう? このままだとどの道神岸は」
「松浦さん、私決めました」
 亮の言葉を途中で遮ると芽衣はあかりに向き直る。
147PK(プレイヤーキラー):04/05/31 17:47 ID:i14Y4UZ5
「お兄ちゃんが言ってた事。これ以上誰も死なせない為に、主催者との戦い……やろうと思います」

(……そうか)

 この少女は

「手伝って欲しいんです。松浦さんにも、神岸さんにも」

 亮から逃げるのでもなく

「神岸さん……つらいのは分かるつもりです。でも……」

 亮に守られるでもなく

「立ち上がらないと、生き延びないと藤田さんの命が無駄になっちゃう気がするんです」

 自分自身で道を決めた。


「芽衣ちゃんは……強いね」
「……お兄ちゃんとの約束ですから」
 悲しそうに、しかし誇らしげに芽衣は笑った。
「わたしも……強くなれるかな? 浩之ちゃんにもう一度会った時に怒られないくらい強く」
148PK(プレイヤーキラー):04/05/31 17:48 ID:i14Y4UZ5
 芽衣は絶対なれますよと言って微笑んだ。

 手の中にある友の心の形をしたもの。
 亮はそれをじっと見つめる。
(修二、俺も自分で決める。別に俺がやる必要はないのかもしれない。
 でも俺がやるんだ。俺がこの子達を守る。俺は今から───)

(このゲームに乗った参加者──プレイヤーからこの2人を守る、PKだ)


【024 神岸あかり 木彫りの熊 きよみの銃の予備弾丸6発】
【047 春原芽衣 筆記用具】
【084 松浦亮 修二のエゴのレプリカ 予備食料の缶詰が残り5つ】
149笑いは百薬の長:04/05/31 20:07 ID:/NSUtV6M

 足音が二つ。アパートのそばまでかけてきて、止まった。
「…………」
 河島はるか(027)は顔を上げた。こんな時まで冷静な自分が少しだけ嫌になるが、今はそれどころじゃない。
 あの時に思い知っている。世間は人の悲しみなど知った事じゃない。誰が死のうと誰が悲しもうと
問答無用に時を流し、人の生活を進めていくって事を。
 悲しんでいるだけの者は取り残されるのだ。そして、この島では「取り残される」とは死を意味する。
 それを知っている自分が、この場は何とかすべきだろう。
 猪名川由宇(007)とアルルゥ(004)はまだ泣いていた。外の足音は、その泣き声を聞きつけたに違いない。
「ごめん、ちょっと外の風を浴びてくる」
 そう言ってはるかはアルルゥの手を優しくほどき、立ち上がる。
「……ひ……っく……おね〜ちゃん……」
「大丈夫だよ」
 涙でぐしゃぐしゃの顔にそう言葉をかけると、はるかは扉へ向かった。
 由宇は何も言わなかった。多分気づいているとは思うけど。

 さて、どうやって接触したものか。
 岡崎朋也(014)は、泣き声の聞こえる窓を見上げながら思案していた。
 自分たちに敵意がない事をはっきりさせておかねばならない。しかし、今のあちらは冷静な会話ができる
状況とは思えないし、何より泣いている女の子にどうやって話しかければいいのかなんて、普段の生活でも
難題中の難題だ。
 下手な誤解やすれ違いは取り返しがつかない結果も招きかねない。隣にいる水瀬名雪(090)を一度は
殺しかけてしまった朋也としては、二度と同じ失敗を繰り返したくなかった。
 その名雪は、窓を見据えて涙を浮かべている。両手は胸の前で堅く握られていた。
 それはそうだ、彼女だとて友人を失ったばかりなのだから。顔も名も知らないが同じ悲しみを抱く者
同士、共感するのはある意味必然だろう。
「ん?」
 その時、アパートの扉がゆっくり開いた。
 とっさに朋也は名雪の前に出て、包丁を構える。それは、この島の現状から見てきわめて正常な反応。
しかし、彼らの目的から考えると間違いかもしれない反応でもあった。
 名雪が我に返って、半ば条件反射的に朋也の後ろに隠れた。
150笑いは百薬の長:04/05/31 20:08 ID:/NSUtV6M

 距離にして10メートルぐらい離れていただろうか。
 そこにいたのは高校生ぐらいと思われる男女の二人組だった。
 女の子をかばうように男の子が立っていて、包丁を胸の前に構えていた。
 一方のはるかは丸腰。何の武器も防具も無い。理由は簡単。足音を消さなかった事から、初めから
殺すつもりはあまりないだろうと考えたのと……いきなり殺されるならそれもいいか、と思ったから。
その時には悲鳴の一つでもあげれば、由宇への警告になるだろう。それができれば十分だ。
 冬弥と彰が死んだ今、はるかが生きている理由は前にも増して希薄になっていた。それ故になし得る
のは、無謀とも言えるほどの無防備と、死に直面してもなお冷静さを失わぬ余裕。そして、自分の命を
平然とチップに差し出す事で手に入れられる、警戒心に囚われた相手に対する精神的優位である。
 意識した結果かはともかく、今のはるかは己の無力、己の無防備を最大の武器にしていた。
 現に、二人はまるで無防備なはるかを目にして一瞬呆気に取られたようだった。
「お、岡崎君……」
 後ろの女の子の何かを訴えるような声に、前の男の子ははっとした顔をして、そして包丁をおろす。
 意志の強そうな男の子と、優しそうな女の子。なぜか段ボールを持っているのが気にかかるけど、
それはとりあえず後回し。
 どうやら、やる気まんまんというわけでは無いみたい。だけど、ちょっと分からない。
 もし彼らがその気だったら、今の由宇やアルルゥは逃げられないだろう。かといって、はるかに
二人を止める力はない。
 だから、多少強引にでも、由宇に現実に戻ってきてもらわなければならなかった。
 ちょっと卑怯かも知れないけど、やってみるかな。
 はるかは3歩ほど二人の方に出ると、少し大きめの……二階に十分届くぐらいの声で、言った。

「わたし達を殺しに来たの?」

 二階で、がたん! という音がした。泣き声が一瞬で止まった。
 ん、どうやら成功。
151笑いは百薬の長:04/05/31 20:09 ID:/NSUtV6M

「なっ……」
 近づいてきたショートカットの女がいきなり放った一言は、朋也の意表を突いた。と同時に、殺戮者では
ないだろうと判断して接触を試みた相手からそう言われたのが、妙にカチンと来た。だから、
「ふざけるな! 俺を殺人鬼と一緒にするな!」
 半分条件反射でそう叫んでいた。
 と、女は一瞬「お」という感じの顔をして、すぐにくすっと笑った。
「だって包丁持ってるし」
「うっ」
 確かにその通りだった。名雪につつかれて構えを解いたとは言え、これでは警戒されても無理はない。
けど仕方ないじゃないか、こっちだって油断したら殺されるかも知れないんだから。
「す、すまない。けどな……」
「冗談」
「……は?」
「ごめんね。ま、とりあえず上がって」
 あっさり言って背を向ける女に、朋也の思考回路はかなり混乱した。
「あの……?」
「包丁あるなら夕食作るの手伝ってね」
「おい」

 ついて行けない。何がなんだか分からないが、どうも振り回されてるっぽい。
 生命の危険に対する警戒はとりあえず解けたものの、朋也は違う意味で警戒態勢に入ってしまった。
 このノリは……あの一ノ瀬ことみに通じるものがあるかも知れない。しかし、この島でなおこれとは
とんでもないボケ役なのか、相当な大物なのか? いずれにしろ、これはペースを握られたら負ける。
何がどう負けるのか分からないがとにかく負ける気がする。耐えろ、俺。自分を見失うな。
「よかったね」
 背後では名雪が無邪気に喜んでいた。まだ目尻に涙が少し残っているが、元気さは取り戻したようだ。
 こいつ……あのペースに疑問も抱かずついて行けるのか?
 今までがシリアスだらけだったから気づかなかったが、名雪も警戒に値するかも知れなかった。
152笑いは百薬の長:04/05/31 20:09 ID:/NSUtV6M

 と。
 がたがたがた。アパートの中からなにやら物音が聞こえてきた。そして、

 ばたん! ごすっ! 「ぶっ」どしゃ。

「あ!?」
 もの凄い勢いでロッドを持った由宇が飛び出してきた……のだが、その際にもの凄い勢いで
開けられた扉にはるかがモロにぶつかって、もの凄い勢いで地面に吹っ飛んだ。
「か、河島さん! 生きとるか!」
「……ん……なんとか」

「……俺は吉本新喜劇でも見てるのか?」
「さ、さあ……」
 それを見ていた朋也と名雪は、当然ながら唖然呆然。
「っとすまん、介抱は後や! そこな二人! 何しに来た!」
 それでも由宇ははるかをかばうように前へ出て、びしい! とロッドを二人に向け構えをとった。
目が泣きはらして赤いが、まだ涙が残ってもいるが、真剣そのものだ。
 殺してやる、ではなく、これ以上死なせてたまるか、という覚悟に満ちた表情をしていた。なまじ
涙の跡があるだけに、その姿はある種の悲壮感すら漂わせている。
 ああ、この人達は『乗って』いない。朋也はそう思い、安心した。
 ただ……その姿は既に、ここではとっても場違いっぽいのが微妙といえば微妙である。
「そうだな……何しに来たかと言えば……」
 あごに手を当てて少し朋也は考えると、にやりと笑って言った。
 このシチュエーションには乗ってやるのが筋というものだろう。
「そこで死んでる河島さんとやらに夕食に呼ばれたから、ご相伴にあずかろうかと」
「…………は?」
 気合い満載だった由宇の目が点になり、頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。
153笑いは百薬の長:04/05/31 20:10 ID:/NSUtV6M

「ん。つまりそういう事」
 むくりと上半身を起こすはるか。智代に蹴られた春原にも負けない勢いで吹っ飛んだように
見えたが、彼女は無傷だった。案外タフな人だ、と場違いな感慨を抱く朋也であった。
「わたしは河島はるか。で、こっちの暴走機関車は猪名川由宇さん」
「誰が暴走機関車や。ってかいきなり自己紹介かい」
「まずはお互いを知る事」
「……正しい事のはずなのに、アンタがやると何かずれてるような気がするのはうちだけか?」
「で、あとアルルゥって女の子がいるから」
「また無視かっ!」
 直前まで泣き崩れていても、関西人はやっぱり関西人。
 はるかのボケめいた応対に思わずツッコミを入れざるを得ない由宇であった。
 この島で出会って以来、二人の間で何度繰り返されたか分からない漫才。即席コンビの割には
絶妙な掛け合いに、朋也と名雪は思わず吹き出した。と同時に、この人達は信用できる、と
理屈ではない何かで確信した。
「うー……なんでアンタと話すとこうなるねんな……」
 笑う二人を見て、由宇はポリポリと鼻をかく。こちらもまた、朋也と名雪に対する警戒感は
雲散霧消していた。
「それが猪名川さんの定め」
「……いつかアンタとは決着つけたらなあかんな」

「で、そっちは?」
 はるかが視線を向けてくる。それはこの島に似合わぬ、普通の日々に普通に交わされる
言葉と視線。忘れかけていた日常が、ここにはあった。
「俺は岡崎朋也だ。で……」
「わたしは水瀬名雪だよ」
 とにもかくにも、二人の目的である情報収集は前向きに進みそうだった。

 そんな一行を見守るかのように、暗さを増す空には一番星が光を放ち始めていた。
154笑いは百薬の長:04/05/31 20:11 ID:/NSUtV6M

【007 猪名川由宇 所持品:ロッド(三節棍にもなる)、手帳サイズのスケブ】
【027 河島はるか 所持品:懐中電灯、ビニールシート、果物ナイフ、救急セット】
【004 アルルゥ 所持品:なし】
【014 岡崎朋也 包丁 英和辞典 ビームサーベル×2(充電器に収納)、シールド(ダンボール製)】
【090 水瀬名雪 所持品なし】
【食料と水(飲み物)はアパート内に確保済み、量はお好きに】
【定時放送後、黄昏時】
155「決裂の序曲」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/31 23:16 ID:iGzZwuZW
 クーヤ、耕一、晴子、明日菜の四人が戻り、ベナウィが無事に目覚めたことを喜んだのもつかの間。
 七人の上に篁の声が届き、そして、22の名前が呼ばれた。
 古河夫妻は、空を見上げていた。
「なぁ、早苗――」
「……はい」
 秋生は乱れた思考を振り払うように、乱暴に頭を掻いた。
「今の放送。俺は見知った名前をいくつか聞いたことよりも、
 その中に渚の名前がないことに、ほっとしちまっている。……ひでぇ話だよな」
「そんなこと……当たり前じゃないですか」
 早苗は笑っていた。
「この空の下で、渚が生きている。それが分かっただけで、わたしは嬉しいです。
 だって、親ですから……実の子の無事を願うのなんて、当たり前じゃないですか。
 渚が、無事って聞いて、わたし、どんなに……」
 笑顔の端から、涙がこぼれ、崩れてゆく。
「わたし、嬉しいです。でも……でも、やっぱり……やっぱり、わたし……」
 ついには両手で顔を覆った。
「早苗」
「ごめんなさい……、春原さん、風子ちゃん……ごめんなさい、ごめんなさい……」
 罪悪感に震える肩を、秋生が抱き寄せる。
「いいんだ。いいんだ、早苗。どうしようもなかったんだ、俺たちには……」
 秋生は空の果てを見上げた。夕陽がやけに赤かった。にじんで見えるほどに、赤く、巨大だった。
156「決裂の序曲」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/31 23:18 ID:iGzZwuZW

 透子に雪緒、それに真帆。ついでといってはなんだが、詠美とゲンジマル。
(ずいぶんたくさん逝っちゃったもんね……あの二人もせっかく見のがしてあげたのに)
 明日菜が手を下すまでもなく、ライバルが大量に脱落した。
 それはそれでよいことかも知れないが、やはり幾ばくかの寂寥感は拭えない。
 雪緒はバイト先での後輩でもある。少し変なところはあるが、有能だったし、嫌いではなかった。
(帰ったら、てんてこ舞いだろうなぁ……おじさま、怒ってないかしら?
 まぁそれより、あたしも、みんなみたいにならないようにしないと。
 時紀君も今のとこ無事みたいなのはいいけど……やっと半分かぁ。結構ハードな展開ね)
 聞かれてはならない呟きを、胸の内で響かせる。
 そういえば、神尾観鈴の名前もなかった。
 晴子もほっとしているだろうと思いきや、表情は暗い。というか、苛ついている。
 先ほど、あさひにあしらわれたのが、それほど気に入らなかったのか、それ以外の理由か。
(ま、ここの人達も、放送メモったりしてないんだもんねー。なんのために合流したのやら。
 時紀君も、観鈴さんも、無事は確定していない……まだまだ楽観はできないか)
 そして明日菜は、生じた僅かな動揺を瞬く間に鎮め、次はいかに立ち回るべきかを考えていた。
157「決裂の序曲」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/31 23:20 ID:iGzZwuZW
 
 クーヤは大地に立っていた。ぐっと力を入れて踏ん張り、僅かなりとも揺るがないように。
 その背中を、耕一とベナウィが見つめている。
「ゲンジマルは……余には過ぎた忠臣であった」
 握った拳が細かく震えている。
「ゲンジマルが、今ここにいたら……ふふっ、怒鳴りつけていたであろうな。
 立ち止まっている暇など、ありはしませぬ、と。
 あの者は、余の家臣であるのに、時に余よりえらそうであった。
 それはそれで腹が立ったが、また頼もしくもあった。未熟な余を叱咤激励し、導いてくれていたのだ。
 だが、ゲンジマルなき今、余は自分で考え、行動しなくてはならぬ……」
「……クーヤ皇。私は死の淵にいたとき、聖上と出会いました。それは夢であったかも知れませぬ。
 ですが私には、それが聖上の、最後のご意志であったと思えるのです。
 聖上は、私にクーヤ皇を頼むとおっしゃいました。
 ゲンジマル殿には及ばないでしょうが、私も、クーヤ皇のための力になります」
「そうか……ハクオロが」
 死してなお、自分を気遣ってくれるハクオロを思うと、涙が出そうになる。
 この世界に来て、近しい者は全員去ってしまった。
 新しく知り合った者はいても、それは彼らの代わりにはならない。
「う……」
 またほろりと来そうになり、背けた顔を、拳でぐしぐしと拭うクーヤ。
 一生懸命、皇であろうと背伸びするクーヤが、耕一には微笑ましく――いじらしく思えた。
158「決裂の序曲」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/31 23:21 ID:iGzZwuZW
「クーヤ、無理しなくていいから」 
「無理などしておらぬっ」
「分かった分かった。ほら、落ち着いて。これでも飲んで」
「子供扱いするなというのに……」
 が、言い返す声は弱い。クーヤが肩に掛けていた水筒から、紅茶を注いで手渡す。
 手にしたカップから、湯気が立った。
「……なんだ? まだ暖かいとは奇妙な……どのようなからくりだ?」
「そうか、クーヤは魔法瓶も知らないのか」
「まほうびんとは何だ?」
 そして、またレクチャーが始まった。まずは魔法=術法みたいなものであるところから。
 あまり本質的なところとは関係ないが。
「……まあよい。とにかく便利な道具であることは分かった。暖かいな。暖かくて、旨い。胸に染み渡るようだ」
「クーヤ皇、それは……」
 ベナウィが、水筒を見咎める。
「む? ああ、これはそなたの荷物だったな。
 あの時、そなたが倒れたごたごたで、いつの間にか余が預かっていたようだ。
 勝手に飲んですまぬな、許せ。が……もしも責めるなら、勝手に開けたコウイチの方にせよ」
「え、俺!?」
「冗談だ」
 ともかくも、冗談を言える程度には、クーヤは回復したようだ。
「甘いお茶というのも珍しいが、なかなか美味だ。これは何というお茶だ? ベナウィが入れたのか?」
「いえ……そこの所も含めて、クーヤ皇、それから他の方々にも、
 相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「む?」
159「決裂の序曲」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/31 23:24 ID:iGzZwuZW
 ベナウィの呼びかけに応え、皆が集まった。
 議題は、陽が落ちてきたが、これからどうするべきかというもの。
 このまま森の中で野宿という手もあるが、根本的に食料が乏しい。
 ここぞとばかりに、秋生がクーヤと耕一にもパンを勧め、二人で半分ずつ囓り、会議は十分中断した。
 明日菜と晴子は危険を察知したか、遠慮していたのはさすがである。
 なお、体も大きく、この手の料理には慣れている耕一の方が、復帰は早かった。
 古河ベーカリー・クンネカムン支店の夢が断たれたのはさておき、
 どこか泊まれそうな場所を知っているか、各々に聞く。
「あー、あたしたちは昨日スタート地点のホールに泊まったんですけど、あそこはちょっとやばそうですねぇ」
 明日菜はホールの辺りで爆発が起こったことを告げ、
 主催者の膝元でもあるし、あまりいい気持ちはしないと告げる。
「俺とクーヤは、野宿だったしなぁ」
「贅沢は言ってはおれぬが、せめて屋根のあるところで寝たいものだ。湯浴みもしたいぞ」
「いやそりゃ贅沢だろ……と言いたいが、俺たちもそろそろ文明の香りが恋しいぜ」
「ハイキングみたいで、ちょっと楽しいですけど」
「で、あんたは?」
 聞き手に回っていたベナウィに、晴子が問う。
「一つ、心当たりがあるにはありますが」
「なんや、せやったらはよいわんかい」
「北北西の海岸に、二階建ての館があります。
 私は昨日、そこで牧村南殿と、立田七海殿の二人と会い、僅かの間、歓談しました。
 ですが――先ほど、お二人の名前が呼ばれたのです」
 その言葉の意味を察し、一同が押し黙る。
 かなりの確率で、そこには、あるいはその近くには、殺人者がいるということだ。
160「決裂の序曲」 ◆U2dbpJmxQs :04/05/31 23:26 ID:iGzZwuZW
「ベナウィ。もしかして、この紅茶とやらも……」
「は、七海殿からいただいた物です」
「そうか……」
 く、とカップの底に残っていた紅茶を飲み干す。
「暖かく、優しい味がするな。きっと入れた者の心がこもっておるのだろう」
「……は」
「して、そなたはどうしたいのだ?」
「私は、クーヤ皇のご指示に従います。それがハクオロ皇のご意志でありますれば」
「ゲンジマルの後を継ぐというのであれば、余が間違っているときには正さねばならぬ。
 余の命令を、ただ聞くだけの者ではダメなのだ。だから、そなたがどうしたいのか、それが聞きたい」
 再度問われ、目を伏せて、考えた。ほんの一時ではあったが、この島で得られた、数少ない安らいだ時間だった。
 ただ平和な時を願っていた二人が、無惨な目に遭わされたかと思うと、静かな怒りが胸の内に湧き上がる。
「私は、今、その館に犯人がいるかどうかは分かりませぬが、できれば仇を討ち、弔ってあげたいと思います」
「そうだな。それに、余らの一晩の宿を手に入れたいという願いとも一致する。
 余も、七海殿にこの茶の礼をせねばならぬしな……」
「あえて、危険な橋を渡ることになりますが……」
「確かに危険ではあるが、この島で今さら危険に怯えていても始まらぬ。その館、落としに行くぞ!」
「御意!」
 と、意気上がりかけた刹那――。
「冗談やないわ」
 神尾晴子が冷たい声で遮った。

【33番 クーヤ 所持品:ハクオロの鉄扇、サランラップ25m 短刀】
【18番 柏木耕一 所持品:ショートソード(明日菜より返還)『左腕負傷中』】
【79番 古河秋生 所持品:金属バット、硬式ボール8球、かんしゃく玉1袋(20個入り)】
【80番 古河早苗 所持品:早苗のバッグ、古河早苗特製パン2個、トゥスクル製解毒剤、カッター】
【82番 ベナウィ 所持品:ベナウィの槍、水筒(紅茶入り)(双方とも、返還)、ワイヤータイプのカーテンレール】
【02番 麻生明日菜 所持品:ナイフ、ケーキ】
【22番 神尾晴子 所持品:千枚通し、歪んだマイクロUZI(残弾20発)20発入り予備マガジン×1】
【時刻:二日目午後六時すぎ】
161長い夜の始まり1:04/05/31 23:59 ID:yanvP+rJ
 その放送を、橘敬介(055)と三井寺月代(085)は学校の中で聞いていた。
 有紀寧の埋葬から幾分時間がたっている。その間、二人で学校外部――中庭やプール――の様子を調べた。
結果、水が張ってあるプールはやはり消毒薬のにおいがしたこと、孤島であるにもかかわらずガスはプロパンを
使用していないことがわかった。他にもいくつか、使えそうなものが見つかった。
「はい、これ、橘さんには必需品でしょ」
 と月代に渡されたのは革製の手袋だった。空の車庫で見つけたものらしい。改めて自らの手の惨状をかえりみると
敬介には何も言い返せない。ほかにも納屋から懐中電灯と高枝切り用のはさみをせしめて校舎に入ったころには暗く
なりかけていた。そんなときに、あの不快な老人の声が流れてきたのだった。

「橘さん」
「…」
「やっぱり平気でいられないよ…きよみさん、あんなむごい殺されかたしていいような人じゃなかった」
 やはり目の当たりにした光景は現実なのだと、その淡々とした放送は告げていた。
「月代ちゃん…」
「ううん、分かってる、分かってるけど…でも…だから…」
「…」
「確かに憎い。それは変わりないよ。でもね」
 罪を償わせること――それが月代の決意だった。
「あたし、復讐は考えない。あの女を捕まえて、きよみさんに謝らせる」

162長い夜の始まり2:04/06/01 00:00 ID:237f10sj
 もし、あの場で撃たれたのが観鈴や晴子だったら自分は見境なく飛び出していただろう。そう敬介は思う。
同行者の制止も、死にゆくものの言葉にも耳を貸さず、復讐という言葉を盾に狂気に身を委ねていたかもしれない。
そのほうがはるかに楽なのだ、何も考えず、何も思わずにいたほうが。
 今回の放送では未だに合流を果たせない彼女らの名前は確かになかった。だが次の放送でその名がないと、
そしてそれを聞いた自分がそうならないとは敬介には断言できなかった。
 月代は違う。娘と同じ年かさのこの少女は、敬介の目の前で、より難しい道を選んでみせた。
 それは武器の威力とも、自分の持つ、人を殺せない甘さとも別のもの。
「もう――あたし決めたよ」
 強さを持つ眼に迷いはなかった。

 最上階の、屋上に通じる階段に最も近い音楽室を拠点にして、敬介たちはちょっとした作戦会議を開いた。
 学校にいるうちにやっておきたいことはたくさんある。しかし、例えば屋上から島の全景を見て森を通らずに
移動するルートを見つけるなど、明るくなってからでないとできないこともあった。放送直前に森のほうから
聞こえた、獣の吼え声。戦力が揃っていない段階では、あの「森の主」(偶然にも、二人がそう呼んだ白い獣は
元の世界でもそう呼ばれていた)との遭遇は避けたかった。

163長い夜の始まり3:04/06/01 00:00 ID:237f10sj
「これは…月代ちゃんが持っていてくれないかな」
 荷物整理を始めた敬介が差し出したのは青酸カリの小ビン。
「こうも手が切り傷だらけだと取り返しのつかないことになりかねない」
 手袋をつけてはいるが毒を触るのはなるべく控えたい、という理由に月代はしぶしぶながら了承した。
「対処法も調べといたほうがいいだろうね」
「…うん」
 短く答えた月代の目は曇っている。すでに一つの命を奪った毒物。あれからまだ一日しかたっていないのだ。
「となると図書室…かな」
 同じ階の逆のつきあたりにそれはあった。この音楽室の鍵を開けた手際をもう一度月代に期待するとしよう。
「橘さんがいくらがんばっても開かなかったからね」
「…ピッキングは特殊技能じゃないのかな」
「でもそれらしい道具もってて開けられないっていうのは…」
「いや、これは…」
 あの少年のことが頭をよぎった。やはりこういうことは得意だったのだろうか。

 手持ちの荷物のうち毒のビンと高枝バサミ、ここで調達したケースに入れたヴィオラ、ピッキング用の針金や
レンチ、そして注射器の類を月代が、ここで失敬したピアノ線を含めた残りを敬介が持つことになった。
化繊で作ったらしい下着は月代の万一のときの着替えになった。少し大きいが、さすがに敬介には小さすぎる。
164長い夜の始まり4:04/06/01 00:01 ID:237f10sj
 一通り持ち物を分け終えると、敬介と月代は校舎内を調べることにした。懐中電灯だけでは頼りないのだが
今電気をつけて人を呼び寄せる大博打に出るほどの余裕はこの二人にはない。殺人者を迎えうつのは、できれば
あの音楽室や屋上から様子がしっかりと見える昼間にしたかった。
「…こっちから動くのは朝になってから、ってこと?」
「そうだね、夜の間は打てる手を打って、後は休憩。どうだろう?」
「おなかも減ったしね。えーと、探すのは食料と…他には?」
「うーん、武器になりそうなものと…あとはカーテンかな」
 大きな布は使い道が多い。調べもの中の図書室などでの光の漏れを防ぐためにも、暗幕は役に立つだろう。
 別に全てを荷物にする必要はない。学校にいる間はせいぜいあるものを利用させてもらおうではないか。
「了解っ」
 復調した月代が元気に答える。彼らの夜はまだ始まったばかりだった。

【055 橘敬介 所持品:ヨーヨーもどき、釣り針、ピアノ線、太めの釣り糸、肥後ノ守、手品道具、ピン類他小物、
大判ハンカチ、メモと鉛筆、裁縫道具、クレジットカード、小銭入り長紐巾着、クッション、食料、腕に万国旗、
手袋着用】
【085 三井寺月代 所持品:ヴィオラ(ケース入り)、青酸カリ、筋弛緩剤と注射器一式(3セット)、スコップ、
高枝バサミ、懐中電灯、針金、小型レンチ、食料、手作り下着、初音のリボン】
【校内パトロール中、物資およびカーテン調達目的。夜八時ごろ】
165ネクタールを飲みたい?:04/06/01 00:32 ID:ijbi/kRE
「アーヒャヒャヒャヒャ」
突然松浦亮が狂ったように叫び出した。
銀色のギアを振り回して、しきりに「ええい、連邦軍はいい、ガン○ムを映せ!」と叫んでいる。
それを見た神岸あかりは、不可思議な殺意に駆られ、傍らにいた春原芽衣に向かって吶喊する。
「そうだ、くるくるだ。くるくるで行こう。総員クルクル吶喊だ!」
「ぐは、い、痛っ!?な、何を言ってるんですかあかりさんまで!!」
「ハァハァ、アム朗、これをつければガン○ムの性能は今の数倍に・・・」
「松浦さん、それはギアの玩具ですよ!」
「うぬぅぅ!!」
ぎゅおおおおお。爆音を立てて高速回転を開始したのはギアではないあかりである。
「松田さん!今行きます!!」
回転のエネルギーを得たあかりの胸元に十字の傷が表れる。黒い天使!!
「が、ガン○ムが・・・私のガン○ムがぁぁぁぁ!!」
そしてついに、亮の理性がドラム缶の彼方へと吹き飛んだ。ガンガン音を立てて唸る。
ギュル!ギュルギュル! ギュルルルルルルルルルルル!!
「な、なんですとー!?」
芽衣の目は既に点である。あらゆる意味で空間は円に支配されつつあった。
「いざ、仕らん。参られい!(レッツ・メイク・ラブ。カム・オン!)」
亮がギアを手裏剣のように構えて叫ぶ。それが合図となった。
<<<お父さんは幸せです。カズミ、ミノル、そしてお母さん。お元気で>>>
それは激しい意地のぶつかり合いであった。
ガラス窓は砕け、壁のポスターはビリビリ破け、仕舞いには芽衣のスカートがめくれた。
白のパンティーが見える。というか、少しズレて中身が露になったかもしれぬ。
「や、ヤプー如きが!家畜の分際で、程を知れ!」
激突の衝撃に、完全にプキー、プクーターと化した両者を眼前に置いて、
春原芽衣に潜在していたイース国の貴婦人の血が高らかな目覚めをあらわしていた・・・。

【松浦亮 人間としての全尊厳を失いプクーターとなる】
【神岸あかり 人間としての全尊厳を失いプキーとなる】
【春原芽衣 イース貴族:松浦亮と神岸あかりを蓄従させる】
【シュガー佐藤 生死不明】
【時刻 二日目午後7時過ぎ】
166READY LADY:04/06/01 02:08 ID:/R5GHGGP

定時放送が終わる。
重苦しい沈黙。

「……ある意味、幸せだったんだよね、この子はさ」

広瀬真希が、ぽつりと呟く。

「あんな放送、聴かなくて済んだんだからさ」

涙ぐんでいる渚を、俯いて地面を見つめるエルルゥを、そして傍らに横たわる
美坂香里の静かな顔を見ながら。

『30番、北川潤』

何もかもを忘れて涙に溺れることができるほど、親しかったわけではなかった。
それでも、あのバカ面と過ごした時間を思い出せば、こうして心の何処かが
じくじくと融け出していくような気にもなる。
167READY LADY:04/06/01 02:09 ID:/R5GHGGP

暮れゆく空を、ぼんやりと眺める。
今この時にも、この島のどこかでは殺し合いをしているのだろうか。
その流れ弾が、何もかもを砕いていくかもしれないのか。

「これからどうなっちゃうのかな、私たち」

言葉が自然とこぼれた。
どこか、諦めにも似た呟きだった。

よく見ればほら、その木の上から、あの路地の影から、狂気の殺人鬼が狙っているぞ。
鋭い武器も鋼の意志も、拠る大樹すら持たないお前たちを殺して殺して殺し尽くそうと、
いつだってぎらぎらとした眼で見張っているぞ。

それは楽しい妄想だった。
だから、

「―――ハッ」

とりあえず、笑い飛ばしておく。
いきなり声を上げた広瀬を、渚とエルルゥが驚いたように見ていた。
誤魔化すように苦笑し、話題を逸らした。

「……それにしても遅いわねぇ、エディさん。
 可憐なレディばっかり残して、何やってるのかしら。
 まったく、外人の風上にも置けないわね」
168READY LADY:04/06/01 02:10 ID:/R5GHGGP

「……これはこれは、可憐なLadyダ」

エディは軽口を叩いてみせる。
両手を上げながら。
相手は当然の如く無言。

「ソイツは、できれば下ろしてホシイもんだがネ」

眼前には、冷たく光る古式ゆかしい拳銃。

(確か日本の……ナンブってタイプか。オイオイ、戦前の骨董品カヨ)

時代錯誤なその銃を持つのは、鋭い眼光を持つ少女。

(しっかシ……俺っちは腐ってもNASTY BOYのナビだゼ?
 その気配をこうもヤスヤスと……このお嬢チャン、一体ナニモンだ?)

それとも、とエディは心中で溜息をつく。

(俺っちもすっかりヤキが回ったッテことかネ……)

少女の眼に狂気の翳はなく、と言って怯えの色もなく、ただ淡々と己の責務を果たす、
冷淡な光だけが見て取れた。

(ラインを踏み越えチマッタ、ってカンジは無いケドな……さて、どうしたモンか)
169READY LADY:04/06/01 02:11 ID:/R5GHGGP
【072 広瀬真希 『超』『魁』ライター 便座カバー 食料と水多めに所持】
【011 エルルゥ 乳鉢セット 薬草類 食料と水多めに所持】
【081 古河渚 食料と水多めに所持 [少し熱っぽい]】
【087 美坂香里 所持品ナシ [気絶中]】

【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発)、出刃包丁、タオルケット×2、
   ビスケット1箱、ペットボトルのジュース×3、婦人用下着1セット、トートバッグ、果物ナイフ】
【094 宮路沙耶 南部十四年式(残弾9)】

【広瀬以下、四人は住宅街の側で休憩】
【時刻は18時過ぎ】
170READY LADY(後半部改訂):04/06/01 12:42 ID:/R5GHGGP

(……これはこれは、可憐なLadyダ)

エディは心中で呟く。
角の向こう、路地の彼方に少女が一人。
ひょろりと伸びた手足はか細く、血色もあまり良くない。
見ようによっては可憐な少女に見えなくはない。
血の滲んだザックを振り回しながらにやにや笑ったりしていなければ。

カレーだ黄身だひよこだのと、意味の判らない単語が切れ切れに聴こえてくる。
それだけならば腹を減らして苛立っているのかとも、相当無理をすれば思えなくは
なかったが、問題は彼女の大音量な独り言の中で、もっとも高い比率で現れるのが
神岸さん、と藤田くん、そして、殺す殺さなきゃ殺して殺せば殺そう。
どうもあの少女の頭の中は殺戮のオンパレードらしい。

(あリャア、どう見てもイッちまってラア)

放置するのは危険に過ぎる。
と言ってこの位置から銃撃して始末する、というのもできれば避けたかった。

(昼間の嬢ちゃんも、アンな感じだったしナ……)

頭をよぎるのは、郊外に置いてきた美坂香里のこと。
性根から歪んだ殺人鬼なら、待っている広瀬たちのためにも排除しなくてはならない。
だが、過ちに気付ける余地があるなら、悪夢から覚めることができるなら。

(参ったねドーモ……俺っち、ヒーロー役には向いてネェんだガネ……)
171READY LADY(後半部改訂):04/06/01 12:43 ID:/R5GHGGP

【072 広瀬真希 『超』『魁』ライター 便座カバー 食料と水多めに所持】
【011 エルルゥ 乳鉢セット 薬草類 食料と水多めに所持】
【081 古河渚 食料と水多めに所持 [少し熱っぽい]】
【087 美坂香里 所持品ナシ [気絶中]】

【010 エディ 盗聴器 尖った木の枝数本 ワルサーPP/PPK(残弾4発)、出刃包丁、タオルケット×2、
   ビスケット1箱、ペットボトルのジュース×3、婦人用下着1セット、トートバッグ、果物ナイフ】
【071 雛山理緒 枕大の石入りザック、黒うさぎの絵皿、水風船3コ】

【広瀬以下、四人は住宅街の側で休憩】
【時刻は18時過ぎ】
172名無しさんだよもん:04/06/01 12:44 ID:/R5GHGGP
沙耶の時間軸に矛盾が生じているため、168-169は170-171に差し替えでお願いします。
申し訳ありませんでした。
173眠れる女豹:04/06/01 15:35 ID:iWo1YdWP
 睡眠中の私の神経を刺激するような音は聞こえなかった。
外に張り出した罠が作動する事もなかった。
 目が覚めたとき、眠る時と変わった事は何一つなかった。
周りの気配も、自分の服装も、自分の体勢も。
窓から見える景色も何一つ変わらないように見えたが、
ただ一つ、空の色だけが全く違っていた。
「もう、日没が近いのね」
 何かしらの気配があれば、すぐにでも起きられるよう、
深く眠る事はなかったが、それでもこれだけの長い時間
無防備に睡眠を取っていた自分に軽い驚きを感じずには
いられなかった。
「まさか、日が暮れてしまうまで寝てしまうとはね」
 そんな自分が信じられないというように軽く首を捻る。
しかし次の瞬間には、今置かれている自分の状況を冷静に
考えられるくらいに落ち着きを取り戻していた。
174眠れる女豹:04/06/01 15:36 ID:iWo1YdWP
(もっとすぐに回復するものだと思っていたけれど、
思っていたよりもずっと体力を消耗していたって事ね)
 今だ無傷な部分を軽く動かすが、どうも反応が鈍い。
と言うよりも、これまで過ごしてきた時にはなかった
重さを感じる。
 そして傷ついた部分に神経を集中させ、軽く腕を
動かしてみる。
「ぐっ」
 傷を受けた時よりもほんの少しだけ腕を上げることが出来たが、
戦闘に耐えうる状態でないというのはすぐにわかった。傷を
受けた時よりも痛みは多少治まっているように思えたが、
それはただ、麗子の肉体が怪我の痛みに慣れたと言うだけの事で
しかなかった。
 試しに、鉄パイプを右手に持ち振り下ろしてみる。
 しかし、大して力を込めたわけでもないのに、左肩に痛みが走り
振り下ろした後にバランスを崩してしまう。
「このままでは戦闘なんてとても望めないわね」
 そう言って持っていた鉄パイプを部屋の隅に投げ捨てる。
他の者ならいざ知らず、今の麗子にとって鉄パイプは
武器になり得なかった。 
175眠れる女豹:04/06/01 15:36 ID:iWo1YdWP
「……」
 まともに動かせない自分の体に舌打ちをする。 
 自分が本来持っている回復力は望めないにしても、
ある程度は残されているものと思っていたが、どうやら
その認識を改めなければならない事になった。

(さて、これからどうしましょうか)
 本来ならば一眠りした後、すぐにでも狩りを再開しようと
考えていたが、その考えは自分を死に至らしめるだけである
事を嫌と言うほど認識させられた。
 少しでも早くこのゲームを終わらせると言う事と、このまま
狩りを再開してもいずれ自分が狩られると言う事の相反する
思考が繰り返し麗子の頭の中を駆け巡る。
 その時間がどれくらい経ったのかはわからない。ただ
全く無音であった麗子の世界に無粋な声が入りこんできた。
176眠れる女豹:04/06/01 15:37 ID:iWo1YdWP

――以上22名。残りは48名となる――。

 
 それは6時間ごとに鳴り響く放送であった。自分の思考を
中断させたその異音に、いかにも億劫そうに耳を傾ける。
 誰が死のうと全く関係がない。自分はただこのゲームに勝つだけ。
そんな麗子にとっては長々と続けられる名前の羅列は
何一つ意味を持たない。しかし、一向に終わる気配の見せない
放送に、麗子は次第に興味を見せ始める。そしてその言葉を
聞いた瞬間、麗子の思考は再開される。

(たった6時間の間に22人も死んでるの。私が動かなくても
これだけの人が死んでるの)
 
 これで方針は決まった。6時間の内に22人も死ぬような
状況であるならば、わざわざ手負いの自分が出て行く理由など
何一つなかった。あと6時間は静観が出来る。ここで死者の
ペースが減ってから動いても遅くはない。
177眠れる女豹
麗子がこの部屋に来た時と何一つ変わりない景色。変わったのは
空の色と動いている人の数。そして今また変わることなく休息を
取ろうとしている。

「もうちょっとだけ殺し合いしててね。すぐに私も参加するから」

 そういって目を閉じる。今まであれだけ寝ていたにもかかわらず、
すぐに意識は闇の中へと消えていった。


【005 石原麗子 あと6時間静観の構え
    所持品:ベレッタ(残弾7発)、アイスピックの針、鉄パイプは部屋の隅へ】