952 :
甘かった:04/05/27 18:36 ID:oYwcGHhK
突如銃声が響く――。二つの銃声が重なり合って、一つの巨大な爆発音のようにそこに響いた。
秋生の顔が険しくなった。
「あなたのお仲間の、ですの?」
「いや……」
恐らくは違う、と思う。一度考えてしまえば、それまでだった。
「くそっ!」
今までずっとおちゃらけて、考えまい考えまいとしていた、向こうの構図。
最悪な光景が頭に思い浮かぶ。耕一の、クーヤの、あの新たに現れた3人の無念と横たわる血まみれの亡骸が。
バッと立ち上がる。
「秋生さん!」
早苗が叫ぶ。
「ああ。分かってる。こんな時こそ落ち着かなければ……」
どうする?このまま信じて待つのか、それとも救援に向かうのか。
今ここは自分一人ではない。早苗がいる、カルラがいる、何よりも気を失ったベナウィがいる。
ほんのわずかな逡巡が幾重にも繰り返される永遠の静けさ。
沈黙を破ったのはカルラだった。
「行くのなら手伝いますわよ?」
「……馬鹿を言え」
「ふう……。まだ信用ありませんのね」
「……」
それもある。それもあるが。
「危ないぞ」
カルラは一瞬きょとんとして。
「プッ。この後に及んで私の方の心配ですの?本当にあなた方、お人好しですわね」
大爆笑。
953 :
甘かった:04/05/27 18:37 ID:oYwcGHhK
「多分私、あなた方より全然強いですわ」
少なくとも、ここにある獲物達を利用した接近戦で負ける気はしない。
「それに、あの時死んだはずだった私の命、助けてもらったお礼もしてませんから。
信用を得るのもいいですけど、まずは借りを返しておこうと思いまして」
それは本心だ。自分を偽る必要もない。カルラは言い放った。
今、襲撃者――ゲームに乗った者――を彼らと共に排除、撃退するのも普通にいい選択だ。
そして、できうる限りの最後の最後までは、彼らと共に行動するのも悪くはないとも思っていた。
もしもベナウィが目を覚まさないのであれば、の話だが。
「私は、あなた方のような方、嫌いじゃありませんわよ」
いずれは――彼らをも殺すことになるかもしれない。
だが、それでも――
「それに早苗とベナウィのことだってある」
秋生が苦しむように、銃声の響いた方角と、早苗とベナウィを交互に見つめる。
「秋生さん。私のことは気にしないで。自分の身くらい自分で守ります」
そっと、昏睡状態のベナウィの額に手を乗せる。
「ベナウィさんの事は私に任せてください」
「……」
954 :
甘かった:04/05/27 18:38 ID:oYwcGHhK
「今は私を信用していただけませんこと?」
秋生は、カルラの瞳を真っ直ぐに見つめる。迷っていた。そして――
「早苗。カッター」
早苗の持っていたカッターで、カルラの手足の拘束を解いた。
「……」
カルラが二人を見つめる。
「あなた方、ほんっとーうにお人好しですわね。……あきれるほど」
溜息をつきながら、長時間拘束されていた手足をさする。
「もしもお前が裏切ったら、今度は俺が全力で止める」
「条件一つ。しばらくは俺以外の他の者に近づかないこと。
条件一つ。しばらくは俺の傍に必ずいること」
「奥さんの前で口説いてますの?ロクな死に方しませんわよ?」
「バカを言え」
「今から戦闘になるかもしれませんのに、そんな条件のめませんわ」
「……緊急時のみ、臨機応変に、で手を打とう」
秋生がポリポリと頭を掻く。
「甘いよな、俺も」
完全に拘束を解かれたカルラに金属バットを手渡す。
「そうですわね。甘すぎですわ」
ま、いきなりカルラの太刀――刃物を渡されるほど甘くはないが。
さて。カルラは大きく息を吐いた。
「行くのでしょう?」
「あ、ああ」
「秋生さん、カルラさん!……気をつけて」
「お前も。……上手く隠れていろよ」
後ろ髪ひかれるような思いで、なんとかそれだけを口にした。
955 :
甘かった:04/05/27 18:38 ID:oYwcGHhK
「最優先事項はなんですの?」
「自分達と、仲間の無事の確保が最優先。次いで、敵の撃退」
「私の知らない仲間もいるんではなくて?」
「その場で即教える。それでいいな?」
「了解しましたわ」
窮地に陥ってるかもしれない仲間を救う。
まずは、助けてもらった借りを返す。
そんな思いを胸に、二人は駆け出そうとして――
「ベナウィさん!」
その早苗の言葉に、二人は足を止める。
「う……あ……。私は?聖上は?――みんなは?」
錯乱したかのように、ベナウィがガバッと起き上がる。
「ここは……。早苗さん!私は一体!?」
「ベナウィ!目覚めたか!良かった」
秋生が後方のベナウィへ声をかける。こんな状況で、一つの希望が輝く。
「――だがすまん、今は詳しい話は後だ!それより――」
横の秋生を無視して、カルラの瞳がベナウィを射抜く。
ベナウィもまた、それに吸い付かれるようにカルラを凝視した。
「何故あなたがここに?」
「……。――多分、あなたが考える通りですわ」
適当に、そう言葉を返す。
956 :
甘かった:04/05/27 18:39 ID:oYwcGHhK
今まさに、ここで目覚めるなんて。なんという皮肉なのか。
カルラの心だけが天を仰いだ。
(私、思ってたよりはずっと、この方たちのこと気に入ってましたのね。
本当に甘かったのは彼らではなく――私ですわ)
少しだけ心地よかった談笑も。
もう少しだけ、このままでもいいと思っていたそのどこか寂しい気持ちも。
ベナウィが考え、出した結論次第ではもうそれでお終い――
カルラは、ベナウィを見つめたままじっとその答えを待った。
【79番 古河秋生 所持品:カルラの太刀、硬式ボール8球、かんしゃく玉1袋(20個入り)】
【80番 古河早苗 所持品:早苗のバッグ、古河早苗特性パン3個、トゥスクル製解毒剤、カッター】
【82番 ベナウィ 所持品:無し。遂に目覚める】
【26番 カルラ 所持品:金属バット 右手首負傷。握力半分以下】
【『まよいばし』とほぼ同時間帯 響いた銃声は晴香としのぶが少年を撃ったもの】
※アナザーです。
こんな事言ったらなんだけど。
沙耶は純粋だよ。
というか、彼女のエゴがその象徴になってる。
ただ無愛想なだけ。自分に正直。
かなりそっけない。
でも純粋。
単純な無邪気だけが純粋ではないと俺は思う。
無粋なやつだ
誰かハカロワ1について教えてくれまいか?
祐一が秋子を殺したとか聞いたが・・・?
誰かハカロワ1について教えてくれまいか?
祐一が秋子を殺したとか聞いたが・・・?
962 :
放物線:04/05/28 22:02 ID:tOuRYoUG
ガシャン
コロコロ
あ「なにコレ?」
亮「・・・手榴弾」
芽「マジで?」
亮「マジ」
あ「これが有名な手榴・・」
ドカン
爆炎は窓を割り、轟音に唸り、全てを焼き尽くした。
地上でキリキリを動くロボピッチャが赤色に染まった。
【松浦以下三人、生死不明】
よく分からんがワロタ。本スレだったら荒らしだがアナザーならネタだな
無言の縁側にて(アナザー・アルペジオーネ)
小刀と木片相手に多大な消耗を強いられた橘敬介(055)は、一旦休戦することにした。改めて自分の姿を
眺めてみる。泥がかなり広範囲にわたって付着している上に死体の下敷きになっていた血だらけのバッグを
抱えていたせいで布地が赤く染まっている。替えのシャツなどは工作の材料を物色したときに見つけてはいたが、
彼はその時点ではあえて着替えなかった。倒れていた少女が目覚める前に、どうしてもやっておきたいことが
あったからである。
少女を寝かせてある畳の間から縁側に、そして庭に出る。雨でややぬかるんだそこに、新しく掘られた穴と
完全に埋まりきってはいない半身があった。部屋で倒れていた少女の明らかに夏向けの服も現在の自分と同じく
泥まみれで、手にはスコップを握ったままだったことを考え合わせれば、納得のいくことではある。その少女の
死体に比して、穴は狭すぎた。他人の墓を掘り返すまねはあまり気が向かないがこのままにしておくほうがよほど
酷である。敬介は少女の持っていたスコップで周りを掘り返し始めた。
目を覚ました三井寺月代(085)の目に飛び込んできたのは、現実感が微塵もない光景だった。庭に立つ土色に
塗装された見知らぬ男が同じく土色の少女を抱えている。その少女のことを、月代は知っている。外が明るいうちに
出会い、夕方には一緒にこの家にもぐりこんだはずの、あの子。
外がすでに明るいことに気づく。ならばどうしてこの子は眠ってるのだろう。
手近な民家に忍び込んで、何か使えるものを探して、のどが渇いて、紅茶を…
紅茶を…飲み干してあの子は倒れた。
「…い…やだぁ…」
裸足なのにもかまわず、月代は庭におりたつ。銅像のように固まっている男に詰め寄る。ぬかるみに足をとられつつ、
一歩一歩近づいていく。近づけば近づくほど、沈殿していた長い夜の記憶が浮かび上がってくる。
なぜ?
なんで?
なんであのとき…
「なんで来てくれなかったのぉ…」
彼女を知るものであれば、日ごろの快活さが失せたそのあまりの頼りなさに目を疑っただろう。
遅すぎた来訪者は少女の弱々しい詰問に何も答えない。亡骸を抱えたままただ目を瞑ってそれを一身に受けていた。
言葉少なに、敬介と月代は初音を弔った。そしてそのまま、月代は風呂場に向かう。敬介は縁側に戻って小刀を
手にした。黙々とタンスの取っ手だった木片を削っていく。切り傷を増やしながらようやく手のひら大の円盤を二枚
削りだすことができた。
さらに木片を手にとって考える。そしてなにやら彫りはじめ…また手を切る羽目になった。その木片には
アルファベットらしきものが並んでいるが読めそうにない。と、後ろから声をかけられた。
「貸して、その小刀。危なっかしくて見ていられないから」
もし刃物を渡したら彼女は自分を殺すだろうか?あの死んだ少女が誰かに毒を盛られたとするなら、背後に立つ
その少女がそれをやった可能性は非常に高い。しかし敬介にはもう一人、あの少女を殺した人物に心当たりがあった。
自分が看取った少女――宮沢有紀寧である。
(…猫も、あの女の人も何もしてなかった。だけど…私は殺してしまった)
死体の、小学生くらいの少女が「女の人」というのは確かに違和感があるが、無視できないのは彼女が猫を殺した
と言ったことだった。無駄に弾を使ったり返り血を浴びるリスクを冒してまで猫を撃ち殺したり刺し殺したりする
だろうか?とすると残るは絞殺もしくは…毒殺。
重苦しい無言の中、敬介はひとつため息をついた。肥後ノ守の刃をたたみ、立ち上がる。少女の手をとって
それを握らせ、彼女が縁側に立つとそれに背を向けたまま座り込んだ。言葉ではなく行動で自分のスタンスを
伝えるための、ある種の賭けである。
かちり、と小刀を開く音がした。それに続くのは――木を削る音だった。
背中越しに見えたのは敬介がやるより格段に上手に木片に掘り出されたアルファベットの列。
KASHIWAGI HATSUNE…先ほど埋めなおした少女の名を敬介はここではじめて知った。そして改めて、自分たちが
お互いの名を知らないことに気づく。
「…月代、三井寺月代」
同じことを思ったのか、少女は名乗った。弱い声で。
「橘敬介。よろしく、月代ちゃん…でいいのかな」
背中越しの無言、しかし先ほどまでの重苦しさは幾分か和らいでいた。
【055橘敬介:釣り糸3巻と釣り針の束,スコップ,手品道具,ピン類各種,小型のレンチ,針金の束,その他小物,
大量の木片, 手首に万国旗, 住井のバッグ(食料入/血まみれ),大振りのハンカチ,水入り容器 】
【085三井寺月代:支給品不明、肥後ノ守・青酸カリ・初音のリボン】
【昼前の出来事。両者、ほとんど無言状態。敬介の工作はまだ終わっていない】
投下予告しておいてすっかり忘れてたorz、和式家屋の雰囲気が描きたかったものです
単語っていうより文体と色調が和風っぽいな。
しっとり。
1000 :
名無しさんだよもん:04/05/29 16:44 ID:yc3DUaa4
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。