葉鍵ロワイアル II 作品投稿スレ!

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416お茶会→お掃除→しばしのお別れ
「──ですから私、もっとお料理とか身の回りのこととかできるようになって、そーいちさんに喜んでもらいたいんです」
「ふふっ。七海ちゃんは本当にそーいちさんの事が大好きなのね」
「はいっ!」

島内の惨劇がまるで別世界の出来事の様に、別荘内では七海の話をBGMに穏やかな時が流れていた。

ティーブレイク開始直後、七海が「お二人の事をいろいろ聞きたいです」と言い、最初はやんわりと断ったベナウィだったが、南が「せめてお茶の間だけでも、逆に七海ちゃんのお話を聞いてあげませんか?」と提案し、それぐらいなら、とベナウィも承諾したのだ。

その後は、ベナウィが別荘を訪れる前に南達が行っていた、『大掃除』と言う名の物資探索を三人で再開する運びとなった。
七海以前にここを訪れた何者かの手により雑然としていた別荘内だったが、男手が加わった事もあり、事はほんの一時間程で完了した。

結果、アイスピックと金槌が一本ずつ発見され、南と七海がそれぞれそれらを。それとは別に、二階の窓から取り外したワイヤータイプのカーテンレールをベナウィが所有する事となった。

食料も既に粗方持ち去られた後だったが、持ちきれなかったのか、冷蔵庫の中には幾分かの野菜や肉類が残っていた。
「これだけあれば丸一日は保ちそうね。お米が無いのが少し残念ですけれど…」
熟れたトマトを手に取りながら、南がそう言った。
417あさひの決意1/2:04/05/17 00:09 ID:ZkgnejgF
「……ん……あ、あれ?」
「おはよう」
目を覚ました桜井あさひ(42)に向かって、少年(46)はほほえみかけた。
「お、おはようございます」
状況が把握できないあさひは、反射的にそう答えることしかできなかった。


すでに日は沈み、辺りはすっかり闇に包まれていた。
「わたし…いつの間に眠って…」
「うん。疲れてるみたいだし」
「ご、ごめんなさい」
「いいよ。気にしなくて」
それっきり、あさひは黙り込んでしまった。


あさひが少年に話しかけたのはそれから十分ほど後のことだった。
「あ、あの、さっきはありがとうございました」
「どういたしまして」
「それでは、わたしはそろそろ行きま…」
「ちょっと待って」
立ち上がろうとしたあさひを征するように、少年はあさひに言った。
「一緒に行かないかい?」
「え………」
「こんな島だし、一人よりも二人の方がいいよ」
「………」
再び黙り込んでしまったあさひの――何かとまどっているかのような態度を感じ取った少年は、彼女がまだ自分を完全に信用しきっていないということに気がついた。
(まあ、心を許した相手に裏切られたんだしね)
418あさひの決意2/2:04/05/17 00:09 ID:ZkgnejgF
あさひも、頭の中では少年がゲームに乗っていないことは十分理解していた。
そうでなければ自殺しようとしていた自分を助けるはずがないし、眠った自分が起きるまで待っていることもないだろう。
そして何より、彼女は彼を信じたかった。
彼に微笑みかけられたとき、彼女は本当に安心し、嬉しかったから。
だからこそ、すべてを話したのだ。
しかし彼女の中には、晴香に裏切られたときの恐怖、そして絶望が根強く残っていて、それを払拭することができなかった。


どれくらい沈黙が続いたであろうか。
少年は、それまでとまどっといたあさひの中で何か決意のようなモノが生まれたような気がした。
それと同時に、あさひはついに口を開いた。
「………信じて、いいですか?」
「…いいよ」
少年は笑って答えた。
そして、ふたりは歩き出した。

【あさひ、少年移動開始】
【時刻は夜8時ごろです】
【少年がカセットウォークマンを発見するのはこの少し後です】
419Crif ◇48.qEur9RA :04/05/17 00:12 ID:DYCR5jZH
見つけた物は?

「結局…見つかった物はこの位か」
小屋の探索を終えたハクオロは居間で見つけた物を整理していた
鍋の蓋、携帯用ガスコンロ(ガスボンベは無し)、ロウソク2本、ロープ5M、雑誌数冊、
空の2Lペットボトル2本、湿った花火、100円ライター…
(やはり武器になるような物は無いか…しかし、何かに使えるかも知れぬ以上幾つかは
持って行って損にはなるまい)
自分のバッグに使えそうな物…鍋の蓋、ロープ、ペットボトル、花火、ライター、ロウソクを
仕舞い込むと小窓を開け外の様子を確認しておいた
(雨は…小雨になっている。今すぐ出発するのも構わないが…二人の体力の事を考えると
出来るだけ休息を取っておく事に越したことはないであろうな)
周辺の安全を確認すると居間に戻り床に座り込んだ
(これからどうするべきであろうか…武器も無しに歩き回るのは危険過ぎる…
とりあえず身を守る程度の装備は必要であろう…)
床に座り考えていると足元に転がっていたユズハのバッグが目に入った
(む、そういえばユズハに支給された武器は何だったのだ?妙に重たかったのだが…)
ユズハのバッグを拾い上げ、中身を探っていると黒い銃身が目に入った
(これは…思わぬところで武器が手に入ったな…これで二人を守り切る事が出来るかもしれん)

バッグの中に入っていたのは当たり武器の一つであるAL47突撃ライフルであった・・・・・・

【ハクオロ 木の棒 小屋で見つけた物所持】
【ことみ 睡眠中】
【ユズハ 睡眠中 AK47突撃ライフル 残弾30発 予備マガジン×3】
【雨が上がり始めました(午前二時辺り)】
420Crif ◇48.qEur9RA :04/05/17 00:15 ID:DYCR5jZH
>>419はひとまずNGでお願いします。
421ひとくい:04/05/17 00:16 ID:9btcNHMO
 ふたりは、この島で出会い、そして仲良くなった。
 少なくとも志保は、そんな気がしていた。
 もう添い遂げた彼氏のこと、まだ向かい合えぬ彼のこと。
 そんな楽しく切ない話題を、繰り返し繰り返し、語り続けた。
 年頃の少女の、いたってありきたりな会話だった。

「あう?」
「どしたの?」
 しかし、夢が覚めるのは、いつだって唐突なものなのかもしれない。
「長岡さん、この影って……?」
「え? ええっ……!?」
 見上げる彼女達の視線の先に、死があった。
 夜闇を遮る、巨大な何かが、そこにあった。
 緩やかな風に乗って、鼻をつく獣臭が流れてくる。
 地響きのような咆哮が、彼女たちの脚を竦ませる。
 そして小刀のような爪と、牙。まさしくそれは、死と恐怖の象徴だった。
「ひ、ひいっ!」
「や、やだやだやだ……!」
 少女が、二人。長岡志保と栗原透子。
 その心が逃げ惑う。
 だが、身体はまるで付いていかなかった。
 ただ無力に腰を抜かしたまま、後へと這いずるのみだ。
422ひとくい:04/05/17 00:18 ID:9btcNHMO
「ヴオオオォォォォ……」
 獣が低く、威嚇するような声を放つ。
「きゃあっ!」
 思わず志保の後に隠れる透子。
 志保は、そんな透子を見て、わずかな勇気を振り絞った。自分が戦うしかないのだ。
 ナイフを抜き、震える腕に勇気を乗せて、獣の前に突きつける。
「く、来るんじゃないわよ! ただで食われると思ったら、大間違いなんだからねっ!」
 
 ざっ

 一瞬、奇妙な間があった……ような、気がした。
 目の前を、爪が一閃していた。
 そう思ったときには既にナイフが消え、彼女の掌は原形をとどめていなかった。
「ぎ……あああぁぁぁあああ!!」
 志保が絶叫する。手が破裂したかのように、砕け千切れていた。
 傍らの透子を逃がそうとして、残った腕を押し出して――掴めなかった。
 もはやそこに、透子の姿はなかったのだ。
 志保を置いて、笑う膝をどうにか御しながら、逃げ出す透子。
「ご……ごめんなさい、長岡さん、ごめんなさいっ!」
 護ろうとした、助けようとした。ほんの少しの後悔が、小さく渦巻いた。
(盾にしてやろうだなんて、思ってた、のに――まるっきり、逆じゃない)
 ただ苦痛だけが、ただ無念だけが、残っていた。
(バカ、みたい)
 自分を、笑うしかなかった。

 ごきっ
 
423ひとくい:04/05/17 00:20 ID:9btcNHMO
再び、爪の一閃。今度は脇腹。
「ひぎ――」
 そして続く絶叫は、瞬時に虚空へ吸い込まれた。
 肩から上が、獣の顎の中へと取り込まれていたからだ。

 ばきん  ごきん

 魂すら消え、あとはただ、食料となるのみだった。
 やがては主と呼ばれた人喰い虎の、糞となるだけである。

「……ん?」
 皐月は、いつの間にか眠ってしまっていた。
 食料を探して動き回ったが、結局付け合せに使う香草がいくつか見つかっただけ。
 ただ疲労だけが残り、満足に空腹を満たすこともできず、倒れるように眠っていた。
「あれ? トンヌラ、どっか行ってたの?」 
「ヴォフ」
 そこには何故か、鞄があった。
 皐月の物ではない。中には食料と水があり、武器はなかった。
「……拾ってきたんだ?」
 奇妙に思えたが、もはや何人も死んでいる以上、拾ってきたのだろうと結論付けた。
 ありがたく、いただこう。
 これで明日も、頑張れる。
 自身を励ましつつ、皐月は空腹を満たした。


【034栗原透子 逃亡 装備不明のまま】
【061長岡志保 死亡 ナイフは死体の残骸にまみれています。鞄は皐月の元へ】
【残り76人】

【095湯浅皐月 志保の食料摂取 皐月はトンヌラの人喰いを知りません】
【ムックル(=主=トンヌラ) 皐月の武器。満腹しないと、他人を喰う場合があります】
424お茶会→お掃除→しばしのお別れ:04/05/17 00:24 ID:mkaI/US3
「それではお二人共、どうか充分にお気をつけて」
「ええ。ベナウィさんも。早くハクオロさんにお会いできると良いですね」
「はい」

場所は別荘の玄関先。下足箱上の置き時計は午後8時を指し示している。

物資の分配が済んだ後、再度お互いの行動指針を確認しあってから、ベナウィは別荘を離れる事にした。
正直、非力な女性を二人残して発つのは彼にとって後ろ髪を引かれる思いだったが、一刻も早く、そんな危惧さえも抱かぬよういられる状況を手繰り寄せる為にもと、ベナウィは当初の目的通り、ハクオロの捜索を優先させる事にした。
時は既に夜。多くの参加者が徘徊するであろう昼日中より、この時間帯の方が探し人を見つけ易いと践んでの事でもあった。

すっと、七海が水筒をベナウィに差し出す。
「ベナウィさん。これ、さっきのお茶を入れておきましたから、持って行ってください」
「ありがとうございます。もしそーいちさんに出会えたら、七海さんがここに居る事をお伝えしておきます」
「はい!よろしくお願いします」
ほんのりと温もりの伝わる水筒を七海から受け取り、ベナウィはにこやかに微笑んで言った。

「…それでは、また」
「はい。またお会いできると良いですね」
「またお会いしましょうね!」

三人で手を握り合い再会の約束を交わすと、ベナウィは静かに宵闇の中へと消えて行った。

【82番 ベナウィ 所持品:槍(自分の物)、ワイヤータイプのカーテンレール(3m×2)、紅茶入り水筒】
【83番 牧村南 所持品:携帯食料一式、アイスピック】
【56番 立田七海 所持品:鋸、金槌】
【時刻:午後8時】
【残り77人】
425お茶会→お掃除→しばしのお別れ:04/05/17 00:27 ID:mkaI/US3
修正;
【残り77人→残り76人】
426紅いソレ:04/05/17 00:37 ID:T1ozaB0U
「ふむ、ペースが落ちてきたな…」
目には底の見えない闇を宿し、そしてあくまで冷静に篁は呟く。
「そろそろ頃合いだ。アレを出せ」

暗闇のなかをトラックが走っていた。トラックには大きな特殊容器が一つ積まれ、運転している兵士は、それを森のなかに放置することが任務であった。
だが、気付かなかった。何しろ森のなかの道だ。揺れで破損した容器からゲル状の赤い物質がすべて出ると、ソレは生物ではないはずなのに明確な殺意を兵士にむけた。

「うわぁぁぁぁぁぁ……!!」

気付いたときは遅すぎた。兵士は溶けるようにあくまで紅いソレの一部と化し、ソレは絶望とも怨念ともとれる声を出しながら怠慢な動作で森の闇へと消えた。兵士の声を以て…。

【スライム?森のなかへ、トラック放置】
427無尽君 ◆JmtStMCL6c :04/05/17 00:47 ID:DYCR5jZH
>>426の作者さま。
お手数ですが、感想スレまでお越しください。
428名無しさんだよもん:04/05/17 01:03 ID:fALxTcpp
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429名無しさんだよもん:04/05/17 01:10 ID:T1ozaB0U
>>426、NGでお願いします。
430幻想幻夢:04/05/17 01:16 ID:fJ69kxOT

世界には私しかいなかった

丘にあるたった一つの小屋

この世界で「人」は私一人だった

それは悠久に続くものと思っていた

しかしその時は唐突におとずれる

変わってしまったのは世界の方だろうか

それとも私だろうか

どちらかはわからない

しかし確実に「変わって」しまったのだ
431名無しさんだよもん:04/05/17 01:31 ID:7kOBmx6W
私はいつも空を見ていた。
それなのに、あなたは違う人を見ている。
私はそれが悲しくて寂しくて哀しくて、
けれども、あなたの前では心を殺して振舞った。
あなたの痛む表情は見たくなかったから。
そのあなたはもういない。
あなたを殺したのは私の姉。
あなたが見つめていたのは私の姉。
だから、私は姉を殺す。そしてあなたの後を追います。
432名無しさんだよもん:04/05/17 01:45 ID:7K0M4g+m

落葉と奇術師の形見

 身動きの取れない状態で一晩休み、暁闇の中橘敬介(055)は森へと踏み込んだ。
 まだ足取りはおぼつかず、体を引きずるようにゆっくり歩くことしかできなかったが、かまわず進む。
 手が動かせるようになったとき、身につけていた分だけで簡単な食事をした。かなりぬるくなっていた
水を喉に流し込んだあと空の容器に沢の水を詰めた。通り雨があったらしく起きたときにはずぶぬれになっていたが、
一応絞れる分の服は絞った。いい気分ではないがこの際仕方がない。
 観鈴と晴子を探す。三人生き残って最後にはあの二人を町に送り届ける。どのような願いも、とあの老人は言って
いたが、「人を生き返らせる」という発想はこの時点の敬介の中には無かった。
 ゆっくりと、確実に、暁闇の中を、敬介は歩く。

 そして夜が明けるころ見知ったものと遭遇する。放送の時ひっかかった51という数字に。

 無言で再会したカラス色の髪の少年は何も映さない目で天を睨んでいた。
 それは明らかに刺殺体だったがどうしても目に付くのは欠けた両手首。うち片方は胸の上に置かれている。
 …気味が悪い。少年には失礼だろうがそう思わざるを得ない。
 目を閉ざしてやる。引きつった顔はそのままだが睨まれるよりだいぶましである。
 そして…左の袖口を裏返した。やはり気になるのだ。スタート地点でのあの笑みが。
433落葉と奇術師の形見2:04/05/17 01:47 ID:7K0M4g+m
 シャツの袖口にとめつけてあるのは安全ピンやらゼムピンやらクリップ式のヘアピンその他もろもろ。
 そしてそれに押さえられる形で袖の裏にとめつけられていたものを引っ張り出す。
 手にしたそれはなんとも緊張感に欠ける代物だった。
 たこ糸を数本よりあわせた紐に、ごく小さな布切れがいくつもいくつもくっついてくる。
「…万国旗?」
 色とりどりであったであろう旗はすでに血がついてまだらになっている。しかしその場違いかつ滑稽な代物に、
いつしか敬介の口元は緩んでいた。死せる奇術師が最後に笑わせたのは見知らぬ男。
「確かに、それもありかもしれない」
 少年の笑みの理由がわかった気がした。

 ポケットや右袖からおそらく支給品だっただろう肥後ノ守、ポケットからも使えそうなものを失敬して、敬介は
少年のそばに穴を掘りはじめた。恩人をそのままにしておくのは気が引けたからである。残された左手首は袖の中に
押し込んだ。血はある程度雨で流されているため、違和感はない…右手に目を向けなければ。
穴に少年を下ろし、やわらかい土をかぶせていく。その中に落ち葉が多少混じる。
434落葉と奇術師の形見3:04/05/17 01:48 ID:7K0M4g+m
 敬介は唖然とした。
「落ち葉、だって――!」
 今でこそスーツを着ているがこの島に連れ込まれる前はワイシャツでの生活が続いていたはずだ。
それがここではこうだ。確かに沢で身動きが取れなかったときに見たのは緑の木である。しかしここには
量こそそう多いわけではないが確かに枯葉が積もっている。そういえば今埋めているこの少年の制服は
カーディガン…おそらく冬服だろう。この不整合はどういうことか。
 敬介は眩暈を覚えた。まるで季節感がない。メモを取ろうとしたときにシャーペンと手帳がないことは気づいていた。
あの手帳には確かにカレンダーがあり、7月23日の項にはメモを――
 なぜあの何の変哲もない手帳が取り上げられたのだろう。敬介は訝った。シャーペンについては心当たりがある。
あれはいささか特殊な形状で、ペーパーナイフとして使うこともできる。武器としては最弱の部類だろうが
はずれの支給品よりは役に立つだろう――この状況下では。しかし手帳はどうしても納得がいかなかった。
 とはいえ、ここで主催者側に直談判などできようはずもない。しかも自分は孤立しているのだ。

 目の前で、最初に殺された学生が目に浮かぶ。目の前の、半ば土に埋もれた少年が目に焼きつく。
 …現実。
 体に埋め込まれている爆弾。
 生きて護るために殺さなければならないということ。
 自分はいつも、そういつも甘いのだ。
 行動が取れなかったことで失念していたのかもしれない。流されていたのかもしれない。
435落葉と奇術師の形見4:04/05/17 01:49 ID:7K0M4g+m
「僕というやつは、いつもこうだ」

 ふと、手元を見やる。両手を開ける必要性から手首に巻いておいた万国旗が視界に入る。
 なぜだか笑えた。笑いながら、泣けた。
 感情の起伏が激しくなっているのかもしれない。しかし、それも悪くない。
 観鈴を笑わせてやりたい。晴子を笑わせてやりたい。
 この島の状況では困難なことかもしれない、でもそれが願い。
 彼女たちを笑わせてやること。
 
 …近くに咲いていた花を手向けると、敬介は死体の下にひかれていたバッグを持ってその場をあとにした。
ポケットは文字通りガラクタだらけで、どこかで整理する必要がある。もう一度振り返ると、

「ありがとう」

 敬介は走り出した。手首に巻かれた紐がそのあとを追った。

【055橘敬介:行動開始、住井の死体から肥後ノ守その他ガラクタたくさん(要整理)、万国旗をせしめる
       釣り糸、釣り針、ハンカチ、水入り容器を所持】
【夜明け前から朝にかけての出来事です】
436無尽君 ◆JmtStMCL6c :04/05/17 02:50 ID:1Z8Bj9sp
ある日 パパと 2人で  語り合ったさ

高倉みどり(53)は、またもや歩いていた。
最も先程までのような闇雲な歩き方ではない。今のみどりには明確な目的がある。
この島のどこかにある「絵皿」を探し出し、自分の持つ白うさぎの絵皿と引き合わせる事。
骨董好きの自分にとってこれほどピッタリな仕事も無い。それに・・・
「早くお友達に会わせてあげないと、お皿が可愛そうですものね。」
曰く、『骨董には魂が宿る』。それは父、宗純に繰り返し言われてきた事であり、今では持論でもある。みどりには、皿に描かれたうさぎが悲しんでいるように思えた。

「随分と日が傾いてきましたねえ。そろそろ寝る所を探さないと。」
結局、日没までに皿を見つけることは出来なかった。森の中をうろうろしていただけなのだから、当然といえば当然である。
「やっぱり一人で探すより人に手伝ってもらった方が良いかしら。」
実は、先程から気になっていた場所がある。森の中で一箇所、僅かにだが煙の上がっている場所があるのだ。火の無い所に煙は立たぬ。火があるということは、そこに人が居ると言う事である。
ここまで出来るだけ人に会わないように来たみどりだが、人を探すならあの場所に行くのが一番だろう。
「悩んでいても仕方ありませんね。行きましょう。」

こうしてみどりは歩きつづける。今度は少年と少女の待つ洞窟へと。

【53 高倉みどり 目的:絵皿を探す 現在は浩之と理緒の居る洞窟へ向かっている】
【残り 76人】
437現実を見つめて1:04/05/17 02:57 ID:mgUWo3nd
古河渚が目を覚ます、どれくらい時間がたったのだろうか。太陽を確認するとだいぶ傾いていて、夕方前といったところだろうか。
何か夢をみていたような気がする。とても大事な事だったと思うが内容までは思い出せなかった。
目だけを使ってまわりを見渡す
(そうか、知らない島に来てるんだった。やっぱり夢じゃない…)
やはり目が覚めたら何もかも夢だったという願望は捨てきれないでいた
(もう、昨日までの日常には戻れないのかな…)
「渚さん、起きられましたか?」
考えを巡らせていると隣に座っていた少女、エルルゥに声をかけられる。
「はい、おはようございます」
「調子はいかがですか?」
体の方を気にしてみる。微熱程度は残っているが活動するには問題ないと思う。
「だいぶよくなったみたいです」
「それは良かったです」
エルルゥがさも自分のことのように喜び笑いかけてくる
「起き上がれますか?」
上体だけ起こしたところで額に手を当てられる
「…………ん、まだ少し熱が残っているみたいですが大分下がりましたね。あとは何か食べた方がいいですね、食べられそうですか?」
熱があった時はそんな空腹感など無かったが熱が下がり朝から何も食べていない状況では愚問であった。
「はい、お腹空きました。えへへ」
渚が笑顔で返すとエルルゥはとても嬉しそうだった。そして二人でバッグをあさる
「こっちの紙状の入れ物に入っている物は食べられる物とわかったのですがこっちの硬い筒は何でしょうか?」
エルルゥが栄養固形食と缶詰を手にし、尋ねてくる。
「これは食べ物を保存しておくための容器でですね…」
と言って自分の缶詰を手に取る。缶切の必要ないタイプだったのでプルタブを起こし引っ張って開封する
「こうやって開けてください。中身は…乾パンのようですね」
そんなこんなで二人で食事を進めていった。
438現実を見つめて2:04/05/17 02:58 ID:mgUWo3nd
後の事を考えると全部食べてしまうわけにもいかないので、その辺は考えてとる事にした。水はエルルゥは全て使ってしまったので渚の水を二人で少しづつ飲んだ。
「…水を探さないと駄目ですね」
エルルゥが呟くようにそう言った。食料はまだ若干の余裕があるが水はそうはいかない。
「夜になる前にちゃんと休める場所も探したいですし…渚さん、少し辛いかと思いますが歩けますか?」
と、申し訳なさそうに聞いてくる。それを渚は笑顔で返す。
「私なら大丈夫です。この程度なら日常茶飯事…って言うのも変ですけど、慣れていますから」
と言ったらエルルゥが、え?といった様な表情で固まってる。
「えっとですね、私体が弱くていつも熱出しちゃうんですよ、それで…」
「そうだったんですか…でも無理だけはしないでくださいね」
「わかってます、これ以上迷惑かけたら両親に叱られます」
「私は迷惑だなんて少しも思ってません。辛いのに辛いと言ってもらえないほうが困りますから」
「はい、では日が落ちる前に行きましょう」
と言って二人は立ち上がりそれぞれの荷物を持つ。
439現実を見つめて3:04/05/17 02:59 ID:mgUWo3nd
「肩、お貸ししましょうか?」
「あ、いえ、大丈夫ですので」
「そうですか」
「ただ…」
「はい、何でしょう?」
「…手を…繋いでもらえないでしょうか」
と聞くとエルルゥは何も言わずに微笑むと、手を差し出してきた。
渚も笑顔でその手に自分の手を乗せ、しっかりと繋ぎ歩き出した。
(もう、これは夢じゃない…これは現実…)
渚が眠る前に夢である事を切望することはこの時から無くなった

突然終わってしまった日常。昨日までの日常にはもう戻れないかもしれない。
しかし、渚は終わってしまった日常に、すがる事はもう無い。

次の楽しいこととか、うれしいことを見つければいいだけだろ。
あんたの楽しいことや、うれしいことは一つだけなのか?ちがうだろ

いつか少年から聞いた言葉を胸に、少女は前に歩き続ける


※補足
固形栄養食=いわゆるカロリーメイトっぽいの
【二人の持ち物:渚の支給品は後の書き手に依存 食糧を消費、水はあと少し
 薬草類(描写はされていませんが渚が寝ている間にある程度採取) 
 乳鉢セット(「当たり」により自分の持ち物より支給された物)     】
「この島にも、こんなものがあったのだな」

 夜空を見上げると、黒い雲が薄くかかっていた。
 恐らく一雨来る。そう考えた智代は、できるだけ大きい建物を探した。
 どうせ雨宿りするなら、人が多い方が『仲間を集める』という目的を叶え易いと思ったからである。
 逆に考えれば人が多い分危ないのであるが、智代はその危険性をあまり深く考えなかった。
 飛び道具にはまずいが、ナイフレベルなら素手でもどうにかなる。
 そして飛び道具は、障害物の多い建物内では不利に働く筈だった。
 そう判断して歩くこと数分。智代は意外と早く、目当ての『大きい建物』を見つけたのである。
 しかし――大きい建物と言っても、これは予想外だった。
「学校…か」
 制服、定時放送――それらのことを一瞬思い出した智代は、期待と不安、喜びと悲しみが入り交じった微妙な表情で呟いた。

 ざっ、ざっ、ざっ……
 グラウンドの、一度も踏まれていないであろう砂の感触を踏みしめながら歩く。
 桜が咲いていないことを残念に思いながら、智世は校舎へと向かった。
 校門の正面の校舎にかかっていた時計――暗くて見えにくかったが、どうやら現在時刻は十時過ぎらしい。
 寝る時間としては、早くもないし遅くもない。
(今晩はここで夜を明かすか…)
 そんなことを考えながら、正面玄関へと近付く。
 距離は、それほどのものではなかった。
 玄関の扉に手をかけ――開ける前に、ガラスを通して中を覗く。
 薄い雲に覆われて弱くなった月明かりが、校舎の中に智代の影を作る。
 真っ先に目に入ったのは、予想通り下駄箱だった。
 その向こうには、下駄箱と垂直になる向きに廊下と、上に続く階段がある。
 智代は慎重に、人の気配を探った。
「ふむ…」
 とりあえず、玄関付近に人の気配はない。
「――行くか」
 智代は自分自身に発破をかけるように呟いて、扉を開いた。
 キィ…
 耳障りな音が鼓膜に響く。
 その音に眉をひそめつつ、智代は校舎内へ侵入していった。

 下駄箱を素通りし、土足で廊下に足を踏み入れる。
 生徒会長としてあるまじき行為だが、気にしないことにしておいた。
 ――が。
(ふむ…)
 智代は不意に振りかえる。
 まず最初に感じた違和感は、下駄箱だった。
(上履きが…入っている…?)
 素通りした下駄箱――その半分に、上履きがしっかりと入っていた。
 しかし、智代はグラウンドに足を踏み入れた時の感触を覚えている。
 あれは間違いなく、誰にも使われていなかった。
 そしてこの廊下も――というより学校全体から、使われているような雰囲気が全く感じ取れない。
 ということは。
(全て…全て、演出ということか?)
 智代は再び前を向いた。
 そこにあるのは、掲示板。
 何も貼られていない、ぴかぴかの掲示板。
 なのに、何故かその脇には画鋲ケースが置いてある。
「手間のかかることを…」
 智代は、思わずそうぼやいた。
 そして、画鋲ケースを手に持ち、二階へと続く階段に一歩踏み出した。

【智代 画鋲ケース(画鋲30個入り)を入手。誰も居ない学校に侵入】
【時刻は十時過ぎ】
【学校は三つの校舎からできています】
442無尽君 ◆JmtStMCL6c :04/05/17 03:21 ID:1Z8Bj9sp
>>436の補足

時刻は終了時点で20:00ごろ。途中何事も無ければ>>237の直後ぐらいに洞窟に着きます。
443One Arms:04/05/17 04:18 ID:1/b5G8Fd
 森外れの民家の監視を始めてから二時間ぐらいが過ぎただろうか。
 麗子の望む変化が、監視先付近で早くも起きていた。
 大型の銃器を持った二人組みが現れたのだ。
 二人組みの少年の方は、迷うことも無く大型の銃器―いや火炎放射器だ―で、民家に火を放ち始めた。
(……まあ、あれなら警戒も必要ないわよね)
 いささか無用心なようだが、確かに家ごと燃やしてしまえば大抵の術や策など踏み潰してしまえるだろう。
 そのうち中の人間が飛び出してくるだろうが、この有利な状況とあの武器ならそう負けはしないと踏むのも間違った判断ではないかもしれない。
 声を上げて笑う少年と、クスクスと笑う少女を見ながら、麗子はそう考えた。
 まあ、それでもどんでん返しがあるかもしれぬ、と最後まで顛末を見届けようとしているうちにふと笑い続ける二人を、隙だらけ、と思った。
 なるほど、確かに完全に攻め手に回った気になっている二人は周囲への警戒を怠っていた。
 そして、後のことを考えてみれば、あの火炎放射器はとても魅力的な武器に思えた。
 多少の危険は冒してでも手に入れたい、それに家が燃えてしまう以上はこのまま座しても得るものは無い。
 麗子はそう考え決断を下す。
 そうなれば襲撃の準備だが、左腕がまるで当てにならない以上、鉄パイプでは決定打にかけるだろう。
 ならばと、麗子は器用に右手一本で月宮あゆの支給品を取り出す。
 出来れば使いたくはなかった、何しろ隠密性が0に等しい上に近接用の武器だ。
 攻撃力自体に不満は無いが、飛び道具を相手にするに相性は最悪ともいえた。
 が、贅沢を言っていられるような状況ではないこともまた事実。
(ある程度は賭けることも必要……か)
 自嘲するよう笑って、麗子は無骨なそれを右腕に半ば括り付けるように持ち、スターターロープを口にくわえた。
444One Arms:04/05/17 04:19 ID:1/b5G8Fd

「アハハハハハ! やる気の無い奴らはさっさと死んでしまえばいいんだよ!」
 一方で長瀬祐介は狂ったように笑っていた。
 玄関に窓と戸と、一通りの出入り口に火を付け終わり、満足そうに笑っている。
 声の大きさではなく、その質が深い狂気を感じさせた。
 あるいは、日常からはみ出たという意味では彼は既に狂ってしまっているのかもしれない。
 そしてその狂気が伝染したように、もしくはこちらが発生源なのか、月島瑠璃子も隣でドロリとした微笑を浮かべている。
 しかし、その燃え始める家屋を半ば恍惚と見上げる二人をさえぎるように ブルン! とすぐ後ろから轟音が聞こえた。
「アハハハハ……ハ?」
 聴いた瞬間はバイクか車のエンジン音かと思った。
 しかし、ぼんやりと振り返ってみれば目に入るのは、チェーンソーを上段に持ち上げ、咥えたロープを首で引き絞りながら突っ込んでくる白衣の女性。
 あまりにシュールな光景に目を奪われ祐介の反応が遅れた。
 更には、知らぬ間にかなり近くまで接近されていたことも災いし、手元の火炎放射器では対処できない状況にまで追い込まれていた。
 対する麗子は、容赦なく動作を始めたチェーンソーを目の前の少年に振り下ろす。
「うわあっ!?」
 しかし、祐介もかろうじて火炎放射器の砲身を盾のようにして振り下ろされる刃を凌いだ。
 だが、走ってきた相手の勢いは殺しきれず体勢を崩してしまう。
 麗子はそこに全体重をかけてチェーンソーを押し込んでいく。
 自然と麗子を上にする鍔競り合いのような形となった。
 一般的なそれと違うのは、片方の武器が一方的に切断されようとしていることだろうか。
 加えて何ともいえない金属同士が擦れ合う高音と、火花が辺りに散る。
445One Arms:04/05/17 04:20 ID:1/b5G8Fd
「な、な、何なんだよ、お前は!?」
 先ほどまでの狂気から一気に覚めて祐介が叫んだ。
 見る間にチェーンソーが砲身に食い込んでいく。
(……どこまでもツイてないわね!)
 優勢を自覚しながらも、麗子が内心で己の運勢を罵る。
 本来、性差の上に片腕のハンデまで加わっては、いかに祐介が小柄な少年といえど、力でもって麗子に勝ち目は無かった。
 しかし、機先を制したことで互角以上の体勢に持ち込めた。
 その上、武器の特質が味方をし、負傷による体力の減少が問題になる前に、砲身を切断して勝てるといった状況にまで持ち込めた。
 だが、このままでは火炎放射器を破壊してしまい、当初の武装の増強という目的を達せられるかどうかは怪しい。
 麗子の表情は厳しいものへと変わっていった。

 パンッ
 
 そこで傾きかけた天秤を止めるかのごとく、火薬の弾ける音がした。
「……長瀬ちゃん!」
「瑠璃子さん!」
 少し遅れて我に返った瑠璃子のベレッタが発砲されたのだ。
 火炎放射器のみを武器と思い、予想以上に高い二人組の火力を読みきれなかった麗子のらしくないミスだった。
 負傷や詰まっていく状況が、本人にも気付かない焦りを呼んだのだろう。
 しかし今の射撃自体は、弾丸が麗子の少し後ろを通り過ぎたのみだ。
 二人が肉薄するほど接近しているため、瑠璃子には思い切った射撃が出来ないのだ。
 そこに付け込み、麗子が更に状況を展開させる。
446One Arms:04/05/17 04:21 ID:1/b5G8Fd
 まずは自分と同じく瑠璃子に視線を向ける祐介の鳩尾を蹴り飛ばし、その反動でチェーンソーを砲身から引き抜く。
「……ぐっ!?」
 虚を突かれた形になる祐介が体勢を崩し切って倒れた。
 麗子はそれには構わず、返す刃で瑠璃子に向かって疾走する。
「こ、来ないでっ!」
「……つっ……」
 怯みながらの瑠璃子の三射目が麗子の左肩を穿った。
 しかし、顔をしかめながらも麗子は止まらない。
(どう……せ、使えない左腕なら、他に当たるよりは!)
 自らを鼓舞するように、一連の流れを肯定的に捉える。
 ついで四射目、しかし外れ。

 前回こそ当たったが、今回は素人が撃ってもそうそう当たるものではないとの賭け通りだ。
 こうして、ついには瑠璃子の前にたどり着き、そのままチェーンソーを一閃した。
「えっ……? あ、あ、あああああああああ!?」
 バッと血の花が咲き、ベレッタを握ったままの右肘から下が地に落ちた。
 鮮血が噴き出す右腕を抱え込み、瑠璃子は呻きながら地面にぺたりと蹲った。
 一方、麗子は今度は無防備な瑠璃子には目もくれず、いまだ回転を続けるチェーンソーを祐介に向けて力の限り投擲する。
 起き上がり、こちらに狙いを向けかけていた祐介が、慌てて転がりこれを避ける。
 その間に麗子は地面に落ちた右腕――否、正確にはそれに付随するベレッタを自由になった右手で拾い上げた。
(オーケー。あとは中の連中とでも潰しあってて頂戴!)
 そして、一杯の右手で左肩を抑えながら、そのままの勢いで一目散に走り去っていく。
 想像以上に大変な綱渡りになってしまったが、銃が手に入ったのは十分な収穫だった。
447One Arms:04/05/17 04:22 ID:1/b5G8Fd
「クソ、待てよっ!!」
 再び立ち上がり、叫びながら銃口を向けるが、祐介は火炎放射器を撃てない。
 それほど射程距離の長い武器でもないし、今しがたの損傷による誤作動も不安だ。
 そして、何より蹲る瑠璃子が目に入ってしまった。
 一目見ただけで出血が尋常な速度ではないとわかった。
 そのため、祐介は森へと消えていった麗子を見届けることも無く、本人以上に顔を青くして瑠璃子に駆け寄る。
 自らがつけた炎の音とガタガタと主無く暴れ続けるチェーンソーが煩く、わずかな間にささくれ立った気に障った。

――そしてまた一方で、はるかとアルルゥの休む家にも本格的に炎が回り始めていた。

【005石原麗子 鉄パイプ, ベレッタ(残弾11with 瑠璃子の右腕): 左肩に被弾、更に鎖骨にかけて打撲・骨折】
【057月島瑠璃子 折畳式カサ: 右肘切断 出血多量】
【062長瀬祐介 火炎放射器(砲身に損傷・燃料は8割強), ジグ・ザウエルショート9mm(残弾1発), 果物ナイフ】
【027河島はるか&004アルルゥ ハーバーサンプル一袋:入浴後だろうか。火事への対応は不明】

【チェーンソーは地面に放置】

【午後10時ぐらい】
448災難:04/05/17 04:40 ID:xoK+Hkct
森の中に立つ小屋の一つに入り、エディはふうとため息を付いた。
 辺りはすっかり闇に沈んでおり、これから深夜にかけて再び探索を行う為に、少しここで休息を取ろう、とエディは考えていた。
表情の見え難い顔に、疲労の色が濃く浮かんでいる。

叢から叢へ、神経を研ぎ澄ましつつ森の中を探索していたのだから、流石にナスティボーイのナビといえど、身に溜まった疲労は相当のものであった。
 森での探索では、幸か不幸か、参加者とは出会う事が無かったが、無残に打ち捨てられた死骸がいくつもあった。
一際眼を引いたのが、手首から先を切断された死骸であった。
凶人――
 そう呼ばれる人間と、わりとバラエティに富んだ半生の中で遭遇したこともあるが、ろくな武器も持てないこの状況で、そんな人間と同じ場所にいるなどということは流石にぞっとしない。

ふう、ともう一度深いため息をつきながら、エディは適当な場所に腰掛けた。
そして頭の中で状況を整理する。
 自分と同じ場所からスタートした24名は、2、6、13、18、21、22、27、32、34、36、41、44、47、48、49、51、61、66、67、73、78、90、95、99番。
まずあの時点で死亡していた32、41、44、51番を除外して残り20名。

 次に集団での行動が確認できた者の中から、ゲームに乗った一組、2番麻生明日菜、22番神尾晴子を抜粋。
35番上月澪と加えて集中的に盗聴。

 78番伏見ゆかり、というかゆかりは車、95番の皐月は何か音からしてかなり巨大な生物を引いたらしい。
得物の中ではどちらも大当たりに属するだろう、というか事実でかい。
やはりソーイチは女に恵まれてるな、とエディは思った。
449災難:04/05/17 04:41 ID:xoK+Hkct
ともかく、今現在得ている情報はこの程度。
 放送で挙げられた死者の数を考えると、まだまだ数多くのゲームに乗った参加者はいるだろうし、心細いことこの上ない。
かといって、今この段階で妄りにはもう盗聴器は使えない。
「(つっても定期的にマーダーは盗聴する必要があるよナ)」

そう思い、エディはリュックに手を伸ばそうとして、それから眉を顰めた。
木材が焦げる匂いがした。
だけでなく、窓から見える外の景色は既に赤く、煙が立ちこめている。
 「Shit!」
 短く吐き捨てつつも荷物を手繰り寄せ、すぐに窓の近くに伏せ、外の様子を窺いながら頭脳を動かす。
焼き殺す気か?と思ったが疲れはしても、ここに至るまでの痕跡は消してきたし、入った瞬間にも人目は無かった。
そして、この島に来ている人間の割合を思い出す。
大半はこの非日常に耐えられそうに無い学生、ならば――
 「(狂ったか!?)」
狂気に侵された無差別の放火行為、そう判断し、エディは窓の外に誰もいないことを確認してから、助走をつけて跳躍した。
ガシャ―ン!!
ガラスの割れる音と共に、エディは窓から外に飛び出し、そのまま前転しつつ、森の方に全力で逃走した。


 「あれ、逃げられらたみたいだね長瀬ちゃん」
 「うん、そうみたいだね。残念だね瑠璃子さん。今度はもっと人の多い場所にいこうか?」
 「そうだね、じゃあ民家のほうにいこう」
歪な笑みを浮かべて、二人は燃え盛る小屋を後にした。

【エディ 逃亡中 小屋→森の中 所持品盗聴器 先の尖った木の枝数本】
【午後9時前後】
450感感俺俺:04/05/17 05:17 ID:6UaX7MIu
蝉丸はカミュの元に駆け寄り、様子を伺った。
脈はある、返り血は浴びているが、彼女自身の傷は無いようだ。
次にディーを見た、喉の深い傷は彼が事切れていることを能弁に語っている。
何故か死に顔はとても安らかだった。
そして、麗子の方を見る―――彼女は、既にその場にはいなかった。

(逃げたか……)
しかし、蝉丸には追跡するという選択はなかった。
気絶したカミュを置いて行くなどということはできない。
蝉丸はカミュの手から短刀を取り、丸太を加工することにした。
このままではあまりにも大きすぎる。
一撃の破壊力こそはあるものの、あまりにも小回りがきかなすぎることは
先程の麗子との対戦で痛いほど痛感した。
そのまま持ち運ぶのは得策ではないと判断し、丸太の一部を短刀で切り削り、木刀にした。
これで威力は落ちるものの持ち運びに不便なく、扱いやすくなった。

「さてと……」

蝉丸はまだ目覚めないカミュと3人分の支給品を抱え、多量の水のあるところへ歩き出した。
2人とも身体は血で汚れすぎている。『気配を消す装置』があるとはいえ
今のままでは血の香で発見されてしまう可能性は低くない。洗い流さなければならない。
ディーの死体はそのままにしておいた。
あんな男だったとはいえ、カミュの知り合いだ。
地に埋め墓を作り、手厚く埋葬しておきたいところだったが
いまはそんな作業で余分な体力を消耗している場合ではない。
本来ならば、強化兵である蝉丸なら、常人の数十倍の回復力を持つ。
先程の戦闘で負った傷はもう完全に治り、地を掘ることなどなんでもないことだろう。
だがこの島では仙命樹の力は抑制されている。
傷が癒え、万全の状態になるにはまだ時間が掛かりそうだ。
451感感俺俺:04/05/17 05:17 ID:6UaX7MIu
蝉丸は程なくして、海岸に辿り着き、そこで、『アビス・ボート』と書かれている船を見つけた。
外から中の様子を伺う……気配は無い。
タラップを上り、船内に入る。やはり人はいないようだ。

これで島から脱出できるか? と一瞬考えたが、主催者は「離島ゆえ、逃げることも不可能だ」と言っていた。
おそらく、燃料はないのであろう。
もし燃料があったとしても、蝉丸は陸軍所属だったために、船や飛行機の操作経験はない。
車ならば運転したことがあるが、現代の船など計器類やボタンの数々を見ても、どうすれば動かせるのか全くわからない。
万一動かせて島から離れたとして、体内の爆弾とやらが爆破しない保証も無い。
そして直感だが、何より名前からして沈みそうな予感がする。

しかし、船内には簡単なシャワー・トイレ・寝室などが付いており、ただ過ごすとしても便利に思えた。
目立つため、長くいられないだろうが今夜はここで過ごすことにしよう。

蝉丸はカミュを起こすことにした。身体を揺する。
「起きろ」
「う〜ん、姉さま……あと5分だけ……」
「俺は姉さまではない、起きろ」
目をこすりながら、しぶしぶ起きるカミュ。
「あれ? ここってどこ……? おじ様は誰……?」
まだ寝ぼけているらしい。
「俺は坂神蝉丸。森から移動して、いまは島の海岸の船の中だ」
「あ……そうだ! ディー……ディーは!?」
「女……麗子の行方はわからない、男は……死んだ」
「………………」
452感感俺俺:04/05/17 05:18 ID:6UaX7MIu
カミュは自分の先程の出来事を思い出すと、顔が暗くり黙ってしまった。
無理も無い、知り合いの男に刃物を突きつけられて
そして正当防衛とは言え、それで刺し返してしまったのだ。
肉体的よりも精神的負担が大きかったのだろう。
蝉丸にはどのような言葉を掛けていいのか、わからなかった。

「…………お前は、そこの部屋で服と身体の血を洗え
 俺は見張りを兼ねて、外で洗う、何かあったら呼びに来い」
蝉丸はシャワー室の方を指差しながらそう言い、外へ向かった。

船外に出ると、蝉丸は服を脱ぎ、褌姿で海に入った。
海水が傷に染みるが、身体と服の血を洗う。
仙命樹の力が弱いせいか、水に対する苦手意識も普段よりも和らいでいるようだ。
海から出て船上へ戻る。
服を乾かしている間、褌一枚でしばらく見張りを続けていたが、人影はないようだ。

後ろのドアが開き、カミュが話しかけてきた。
「どうした?」
「ねぇ、蝉丸おじ様……喉がかわいちゃった……」
「そうか……水と食料はバッグにある、お前が全て飲み食いしても構わ―――む……!?」
後ろを振り返りながら言うと、蝉丸は驚いた。
カミュの身体は、褌姿一枚の自分よりも布が少ない姿……つまり全裸だったからだ。
453感感俺俺:04/05/17 05:19 ID:6UaX7MIu
「ど、どうした? 服がまだ乾いてないのだろうが
 若い女子がそんな格好で人前に……」
しかしカミュは気にするそぶりも無く、蝉丸に近付く。目の色が今までとは別の光を放っていた。
「違うの……おじ様の……飲みたい……」
そう言うと、カミュは蝉丸の胸に顔を近付け、傷跡を舐め始めた。
「な……」
「うふふ……おいし……」
満足そうに笑うカミュ。
「ねぇ、蝉丸おじ様……身体が……熱いの……」

こ、これは……蝉丸は頭が熱くなりながらも、冷静に考え始めようとした。。
(カミュに付いた返り血は、ディーのだけではない、抱き上げたりしている時に、俺の血も―――)
(そして、今も血を舐めた)
(弱まっているのだろうが仙命樹の血には催淫効果がある)
(この事態を解決するには、異性の気をやるしかない、ならば……)
実際にはカミュの症状は蝉丸の血ではなく
彼女自身に流れている血の影響が大きかったのだろうが、蝉丸はそのことを知らなかった。

「ねぇ……おじさまぁ……いいでしょ……」
頬を紅潮させ、上目使いでせがむカミュに、蝉丸は覚悟を決めた。

「カミュ、よく聞け……
 お前がいま感じている感情は精神的疾患の一種だ
 しずめる方法は俺が知っている、俺に任せろ」

【蝉丸 カミュ 夜中にアビスボート】
【所持品 丸太→木刀 気配を消す装置 短刀】
454あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:35 ID:f5fVG3xI
太陽が沈んで随分と経ち、辺りは闇の帳に包まれていた。
森を抜け、ひたすら東の方へと向かっていたのだが…
(雨が降ってきたの〜)
(雨宿りできる場所を探すの〜)
スケッチブックを持った少女は雨宿り出来そうな場所へと向かって駆け出した。
(こんな事ならロッジに潜伏してたほうが良かったの…)

数十分は走り続けただろうか、幸いな事に一つの小屋があった。だが…
(先客がいるの…)
困った事に小屋の中には少なくとも二人以上いる気配がする。
悟られぬように窓から中の様子をこっそりと伺う。
仮面をつけた男の人が一人、肩を寄せ合う女の人が二人。
真っ向から戦うには分が悪い。 なぜなら相手の武装も判らないのだ。
ほんの少し考えた後、ちょっとした下準備を済ませると意を決して扉の前へと立った。



455あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:36 ID:f5fVG3xI
コンコン。

扉をノックする音で夢うつつだった私は現実の世界に引き戻される。
目をこすり横を見る。 真横にはユズハちゃんの顔がある。
先ほどのキスを思い出し、自然と顔が赤くなった。
コンコン。
再びドアをノックする音が部屋に響く。
ハクオロさんは手に木の棒を握り、険しい顔で扉の前に立っていた。
手を動かし、奥に隠れる事を指図する。
私は指示に従いユズハちゃんの手をとって二人で奥へと隠れた。


456あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:38 ID:f5fVG3xI
「こんな夜分に何用かな?」
私は夜更けの来訪者にそう声を掛けた。
だが、返事はない。
その様子に不信感を強める。
すると、扉の下から一枚の紙が差し出された。
紙を手に取るとそこには【雨宿りさせてほしいの】と書かれている。
警戒を解かずに扉を開けるとそこには雨に濡れた小さな少女が一人立っていた。
私は少女を小屋に招き入れ、扉に鍵をする。
「ことみ、奥にタオルがあった筈だ。 持ってきてくれないか?」
奥から出てきたことみからタオルを受け取り、目の前の少女に手渡すと少女はスケッチブックとバッグを置き、頭を拭き始めた。


ほんの少しだけ間を置き、私は少女に問い掛けた。
「私の名前はハクオロ。君の名前は?」
少女は床に置いたスケッチブックを手にとりペンを走らせた。
【上月澪なの】
【さっきはすぐにお返事できなくてゴメンなの】


457あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:39 ID:f5fVG3xI
澪はバッグを開けると中に入っていた大きなナイフを私に差し出した。
【それが支給品だったの】
【あげるの】
「いいのかい?」
【構わないの】
【どのみち私には使えないの】
武器のない現状、素直に澪の好意を受け取りナイフを手に取る。
ずっしりと重い。 確かにこのナイフは澪の手におさまるには無骨すぎる気がした。
ちらりとバッグを覗く。 だが、澪のバッグの中にはパンと水以外何も見当たらなかった。

「ことみ、ユズハを連れてこっちに来てくれ。」
私がそう呼びかけるとことみがユズハをつれて奥から出てきた。
【上月澪なの】
「私は一ノ瀬ことみ、彼女はユズハ。 澪ちゃんよろしくね。」
ことみから紹介をうけたユズハは軽く会釈する。 だが、澪はユズハをまじまじと見ていた。
なるほど、目を閉じたままのユズハを不思議に思ったのだろう。
私は澪にユズハの目の事を教えると澪はスケッチブックに更に書き足した。
【みさき先輩と一緒なの】
【みさき先輩もこの島にいるの】
【会いたいの】
私は思う。
澪を先輩に会わせてやりたいと。
そして、決心を固める。
彼女達を島を徘徊する殺戮者達から護りきると…


458あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:39 ID:f5fVG3xI
自己紹介を終えた後はちょっと雑談しておやすみ。
【眠いの】と書き残して一番最初に眠りについたのは澪ちゃん。
ユズハちゃんに寄り添ってすやすや寝息をたててる澪ちゃんにちょっとジェラシー。
澪ちゃんの頭を撫でながら柔和な笑みを浮かべているのはユズハちゃん。
二人を見てると母性ってこういう感じなのかなって思ってしまう。
澪ちゃんが寝ている反対側、私も澪ちゃんに負けじとユズハちゃんに寄り添う。
ユズハちゃんが私の頭を撫でてくれているのを感じる。
昼間の疲れからか意識が闇に落ちるのにたいして時間はかからなかった。


夢。
夢を見ていた。
家族の夢。
ハクオロさんがお父さんでユズハちゃんがお母さん。
澪ちゃんは可愛い私の妹。
笑顔の絶えない家庭でみんな幸せに暮らしていた。
それは非日常が見せたうたかたの夢。
幸せな日常の夢…


459あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:40 ID:f5fVG3xI
「夜が、明けるな。」
私はそう呟くと寄り添って眠る3人を見た。
ハンデを背負いながらも心の強さと優しさを胸に生きているユズハ。
可憐で心優しく気の効くユズハの同行者ことみ。
アルルゥとは似ている訳ではないが、それでもどこかアルルゥを彷彿とさせる澪。


「澪、もし良ければ私達と一緒に仲間を探そう」
そう、それが私の出した答え。
【うれしいの】
そう書かれたスケッチブックが差し出され、私は安堵する。が。
パン!パン!
音が二回響き、同時に左胸に激痛が走る。
手で抑える、手が赤く染まる。
体から熱が奪われていく。何故?
どうしてこうなったのかが理解できない。
視界が歪む。
澪の右手に…黒い、か…げ……


460あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:51 ID:f5fVG3xI
「え、なに…」
音が二回響いたと思ったら私の目の前でハクオロさんが倒れた。
目の前にいるのは澪ちゃん。
いま聞こえた音はなに?
澪ちゃんの手からスケッチブックが消えている。
黒く光る物。
銃声?
銃声。
なんで?
なんで澪ちゃんが?
パン!
痛い。
お腹を見る。
赤、血の赤。
痛い、いたいいたい。
パン!
え・・・
ユズハちゃん?
ユズハちゃん!
赤い。
赤い胸元。
なぜ、こんなの。
こんなの、嘘。
嘘だよね…澪ちゃん…

口から血が零れる。
視界が歪む。
いしき、が…


461あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:53 ID:f5fVG3xI
デリンジャーの弾を詰め込み、ポケットにしまう。
小屋の影に隠したバッグをとりに外に出る。
夜中から降り出した雨はすっかりあがっている。
澄んだ空気が体に気持ちいい。
バッグを回収し小屋に戻る。
雨のせいで予想通りバッグや毛布、タオルはびしょびしょ。パンも食べれないだろう。
でもクレイモアとスタンロッドはなんとか水浸しになるのを防げた。
水も確保できている。
無事な道具をハクオロのバッグに移し替える。
奥の部屋からわずかばかりの食料を。 これもバッグに詰め込んだ。
ハクオロに譲ったナイフとユズハのバッグを手に取る。
(あのね)
(うれしかったのはホントなの。)
(でもね、一緒に行くわけにはいかなかったの。)

寄り添って事切れている二人を見やる。
二人の手を重ね合わせて、
(サヨナラなの…)
わたしは小屋を後にした。


462あまやどり ◆PcA2YRpN02 :04/05/17 05:55 ID:f5fVG3xI
【所持武器:クレイモア 残り2個 イーグルナイフ・レミントン・デリンジャー(装弾数2発・予備弾18個)・スタンロッド】
【ユズハの支給品を入手。 中身はまだ不明。】
【パンは駄目になりましたが小屋から代わりの食料を入手しています。】
【時系列的には一番進んでいます。 朝の定期報告の少し前として下さい。】

【6番 一ノ瀬ことみ 死亡】
【67番 ハクオロ 死亡】
【97番 ユズハ 死亡】

【残り73人】
463名無しさんだよもん:04/05/17 05:56 ID:1XW1gVhb
洞窟の中は暗くジメジメとしていた。
真琴の耳には喘ぎ声が聞こえている。
だが、性行為の知識がない真琴はそれを察することができず、途絶えることなく発せられる得体の知れない声は真琴の心を恐怖で苛んでいく。
『何? いったいなんなのよぉ…」
この先に誰かがいるのかは分かる。だが、いったい何をしているのだろうか?
真琴は推理をしてみるが、無論、知識がなければ真相に辿り着きようもない。
声は聞きようによっては喜んでいるようにも、苦しんでいるようにも聞こえる。
その相反する感情の源を調べるため、真琴は少しずつ近づいていく。
「!」
洞窟の奥、岩の裂け目から月の光が降り注いだところには二人の男女がいた。
そしてその女が着ていたのは…
『ま、またあの服!』
真琴の中にあの時の恐怖がよみがえった。
後ろから突然、紐で首を絞められたので顔はよく見えなかった。だが、真琴を襲ったのは間違いなくあの制服の女だった。
そして真琴には…その女が男を襲っているように見えた。
『ひっっ!!』
制服の女が上から男の首を絞めている。そして、男は苦しみの、女は嬉びの声をあげている。真琴にはそう聞こえた。
真琴はその場から動けず、ただ制服の女の行為に目が離せなくなっていた。
やがて、男はそのうめき声を止めた。
『こ…ころされた?』
そして、制服の女が立ち上がり、
『ま、まさか…』
真琴の方を見た。
『!!』
次は、自分が殺されると思い、真琴は逃げ出した。


「どーした? 杏」
「んー。誰かいたのかと思ったけど、気のせいかな?」
464名無しさんだよもん:04/05/17 05:57 ID:1XW1gVhb
暗闇の中を真琴は走った。
『なんで、なんで、なんでよー! どうして、行く先々にあの制服の女がいるのよぉ』
暗い山道を何度も転びそうになりながら走り続けた。
だが、走っても走っても。あの制服の女が自分を追いかけている気がする。
暗闇は恐怖心をかき立て、風の音は殺人者の荒い息を思い起こさせた。
後ろは振り向かなかった。振り向いたらすぐそこにあの女がいると思ったから。
やがて、走り続けた真琴の前に一件のロッジが見えた。
『あそこに入れば!』
家に入って鍵をかければあの女も追って来れない。そう思って真琴は思いきってロッジの扉を開けた。
「やった! 助かった!!」
その瞬間。
軽い爆発音が聞こえ、扉越しの散弾が真琴を貫通した。
真琴は状況も理解できず絶命した。
だが、ただ一つの幸いは。
その死に顔が恐怖から逃れ、喜びに満ちていた顔だったことだ。

【43沢渡真琴 死亡(所持はすべてクレイモアで破壊)】
【14岡崎朋也 75藤林杏 第一ラウンド終了】
465タチムカウ:04/05/17 06:21 ID:O/79psq4
ゆっくりと呼吸を整えて深く目を閉じ、自分の中に眠る「それ」に呼びかける。
熱くほとばしる、ドロドロとしたエネルギーを想像する。
身体を駆け巡る、暴力的な命の奔流のイメージ。
細胞が活性化し、神経が加速する。
もう一人の自分自身を、「狩猟者」を呼び覚ます。
鍵は開けた。檻は開け放たれたのだ。
出て来い、そして、そして―――。


「………やっぱり駄目か」
今日何度目かの試行が失敗に終わり、耕一は浅く溜息をついた。
すでに真夜中を過ぎただろうか。
あの後も探索を続けたが、結局尋ね人は見つからずじまい。
必要以上に警戒しなが探したせいか、大した距離を歩いたわけではないのに精神的な疲労が大きく、
クーヤの体力も限界に思えた。
耕一はとりあえず、森の中心から少し外れた所にある大木の根元に野営することを提案した。
ここならば、大きく張り出した根の陰になり、見つかる可能性も低いだろうと考えたのだ。
466タチムカウ:04/05/17 06:25 ID:O/79psq4
「クソッ」
再度の試行も、やはり失敗に終わった。
駄目だ。自分のなかにある「鬼」の力は確実に感じることが出来るのに、
それが一向に発現しない。
自分の体に何か異常があるのではないかと思い、色々と考えてみたが、
思い当たるような不調は一向に見つからない。
一つ、いつもと違うところがあるとするならば、心に感じる妙な重圧感だ。
まるで、何か獰猛な獣に見据えられたような冷たい圧力。
危機感やプレッシャーとは、普段あまり関わりのない人間である耕一にとって
それは不快感や恐怖よりも、不気味さを感じる類のものだった。
(そういえば、連中おかしなこと言ってたな。不可視の力とか、プロクシとか、法術とか)
ホールで聞いた筧の言葉を思い出す。
『君らの能力は封じられている。特殊な結界を張らせてもらっていてね』
得意気に話すあの男の顔を思い出すと吐き気がしたが、その言葉の意味をもう一度考え直す。
(俺達の鬼の力や、他の連中の持ってる諸々の能力の力をまとめて押さえつけられるもの…)
他の能力者達の力が、具体的にどんなものか分からないが、少なくとも連中がわざわざ封印するってことは
それだけ殺傷能力の高い強力なものなのだろう。
それをまとめて封印出来るような強大な力。
想像を絶するような圧倒的な何か。
とても思いつかない。
初めて鬼へと変わったあの日、耕一は一時的にだが確実に、
あらゆる命の上位に位置する狩猟者、最強の生物になったことを肌で感じた。
柳川と戦った時でさえ、全く負ける気がしなかった。
自惚れではなく、実際にそう感じていたのだ。これで、誰も悲しませないで済む。そう思った。
あの人の悲しみを、止めることが出来る。それが嬉しかった。
なのに―。
「鬼の力がないと…俺は大切な人を守ることも出来ないのかよ…」
親父や伯父さんを死に追いやって、俺達の家族を苦しめてきたものが、肝心な時に役に立たないなんて。


いや、違うな。
役立たずはお前さ。この期に及んでまだ俺に頼ろうとしているお前自身だ。
467タチムカウ:04/05/17 06:27 ID:O/79psq4
檻の中から、アイツの囁きが聞こえた気がした。

まだ初音ちゃんだって見つかっていっていうのに!
こんなところでグズグズしてられないってのいうのに!
気持ちは焦るばかりで、妙案なんて浮かんでこない。
どうすればいい、どうすれば。
俺も他の連中と同じように、誰かを殺すのか? 殺して殺して、最後の二人になるまで殺しまくるのか?
嫌だ。そんなこと出来るもんか。俺は殺さない、』絶対に!
だがもうこんなに殺されている。連中は狡猾だ。あの千鶴さんだって殺された。
だからって殺すのか? 柳川のようになれっていうのか?
こんな状況だ。殺したって、誰が責められる? 助けたいんだろう? もう失いたくないんだろう?
違う、違う違う!
「きっとなにか他にいい解決策があるはずだ…きっとなにか…」


「いえ…」

「ないんです…」

あの時と同じように。
千鶴さんが、選択を迫る。俺は―――。
468タチムカウ:04/05/17 06:32 ID:O/79psq4
「…ん…」
「!」
横からした声に、耕一は思わず我に返る。
隣では、膝を抱くようにしてクーヤが眠っていた。
思い出した。ここで野営するのを決めた後、確か交代に眠ることに決めたんだった。
その後、どっちが先に寝るかちょっとした言い争いになったんだっけ。
「体力が持たないだろ、いいから先に寝ろって!」
「余を子ども扱いする気かコウイチ!」
何であんなことで喧嘩したんだろう。思い返すとちょっと可笑しくなる。
だがあの時、クーヤの表情を見てほっとしたのを覚えている。よかった、と。
身体を動かさないよう首だけ回し、クーヤの顔を覗き込む。
決して穏やかな寝顔とはいえないが、うなされてはいないようだった。
そうだ、俺は何を考えていたのだろう。
この子に言ったのは俺じゃないか。焼けっぱちになるな。まだやれることはあるはずだ、と。
例えこの子を落ち着かせる為の言葉だったとしても、俺はあの時確かにそう思ったはずだ。
それが何だ、一人になった途端怖気づきやがって。
ここに梓でもいたらブン殴られてるところだ。
そうだ、梓、楓ちゃん、初音ちゃん。
他人を殺して、踏みにじったその手で、みんなに再会することなんて出来るか?
そんな弱い心で、千鶴さんに顔向けできるか?
俺は、みんなともう一度会うんだ。その為に、このゲームを生き抜く。
狡猾に、抜け目なく残酷に。絶対に死んでやるもんか。頼まれたって殺してやるもんか!
俺は生き抜く、守り抜く、生かし抜いてやる!

暗い夜空に、従姉妹達のことを想う。
初音ちゃんは、いま何処に居るのか。あの性格だ、きっと怯えているに違いない。
梓、楓ちゃん。彼女達はどうしているのだろう。この「ゲーム」には参加していないようだが、隆山で無事でいるのだろうか。
そして、クーヤ。
考えてみればおかしな出会いだった。見たこともないような服。聞いたこともないような國。
そしてその耳。
やっぱり、人間じゃないんだろうな。今更ながら、耕一は自分がとんでもないところに放り込まれたことを実感する。
もっとも、鬼の血を引く自分だって十分ファンタジーな存在であるのだが。
469タチムカウ:04/05/17 06:37 ID:O/79psq4
彼女と一緒で無かったら、自分も千鶴さんの死を聞いた時、おかしくなっていただろう。
殺戮者に、あの男のようになっていたかも知れない。
あの後気丈に振舞っていたが、サクヤという子の死は、彼女の心に消えない深い傷を残す。
残った知り合い、ゲンジマルとハクオロと言ったか。
会わせてやりたい。それが、今の耕一の出来る唯一の恩返しに思えた。
「しかしこうして見ると、可愛いけどやっぱりまだ子供だな。初音ちゃんより少し下位かな」
子供をあやす様な気持ちで、耕一はクーヤの栗色の髪を撫でようとした。だが―。
ピョコッ。
「うぉっ!」
耕一の手を察知したのだろうか、クーヤの長い耳が突然動いた。思わず手を引っ込める。
「…ウサギみたいだなとは思ってたけど、まさかこんなに動くもんだったとはなぁ…」
失礼かなとは思いつつも、まじまじと見てしまう。
全体を覆う、髪の毛とはまた違った細く柔らかそうな毛。薄く弾力のありそうなフォルム。

………触りたい…

先程までの悲しみと決意は、どうやら頭の片隅に弾き飛ばされたらしい。
心に流れる鬼神楽のビートにのせられて、耕一は中年親父の表情でゆっくり手を伸ばす。
ふに
「うぉぉ!」
ふにふに
「うぉぉぉぉ!」
信じられない。程よい弾力と暖かさ。手触り、そして愛らしさ!
この世のものとは思えない…まさにアルティメット・シイング!
「これに比べりゃ梓の胸なんてゴム風船だ!」
思わず天を仰ぎ、素晴らしき神の御技に感謝する。視線をクーヤに戻すと
「あ」
紅くなってこっちを睨み付ける翠の双眸。
「〜〜〜〜〜っ!」


神は耕一に代価を要求した。もみじ一枚。
470タチムカウ:04/05/17 06:39 ID:O/79psq4
「信じられん! 礼儀知らずにも程があるぞこのうつけ! クンネカムンなら打首にしているところだ!」
「だから謝ってるじゃないか! なんで耳触ったぐらいでそんなに青筋立てるんだ!」
「耳触った位!? 耳触った位と言ったか!」

あれから10分。耕一とクーヤの、小声のまま全力で言い争うという世にも器用な口喧嘩は未だ続いていた。
時々耕一には意味の分からない単語が飛び出したのだが、悪口に国境は無い、多分バカとかアホとか
そういう罵詈雑言の類だろうと解釈した(「ウォプタルにも劣る」という言葉の意味を理解できなかったのは幸いだったが)



耕一は、まだ知らない。
千鶴が耕一と初音を生かすために「ゲーム」に乗り、そして殺されたことも。
初音が姉の死に心を揺らされ、「ゲーム」に乗りかけて今死の淵を彷徨っていることも。
今の耕一には、知る由も無い。

【耕一、クーヤ 森の中心部で野営】
471現実はこんなもの  ◆COFFEEsuS. :04/05/17 07:07 ID:ZFlLpTSH
「なんだかなあ……」
 目を覚ました河島はるかはやれやれ、という感じで首を振った。
 襲撃の予想をしなかったわけじゃない。けど、食料の奪取や自分たちの殺害というゲームの展開を有利にする
為の襲撃ではなく、単純に破壊だけを目的とする連中が来るのはちょっと予想外だった。
 相手は身を隠そうとすらしていない。そりゃまあ火炎放射器なんか持っていれば気が大きくなるのも仕方ない
けど、不用心だなあと思う。

 なんだかんだ言ってもこんな状況である。
 暖かい布団の中で寝ていても、状況を把握している人間の眠りが深くなることはそうそう無いのだ。
 奇声と言ってもいい大声と共に自分たちの休む家に向けて火が放たれた瞬間に、一気に覚醒した。
 把握してない隣の少女は何もかも安心しきってぐっすり寝ているけど。
『アハハハハハ! やる気の無い奴らはさっさと死んでしまえばいいんだよ!』
 そんな声が聞こえた。正気とは思えなかった。
「話し合いが通じる相手じゃないね」
 ならば結論、逃げる。
「アルちゃん、アルちゃん」
「……ん……ん〜」
 アルルゥは夢の中からなかなか戻ってこなかったが、この状態ではのんびりしていられない。
 家の中には煙が充満し始めていた。

『うわあっ!? な、な、何なんだよ、お前は!?』

 そんな声が聞こえた。
 敵の敵が来たのかな、とはるかは判断した。明らかに狼狽したその調子は、自分たちが攻撃されることを
想定していなかったと見える。
472現実はこんなもの  ◆COFFEEsuS. :04/05/17 07:08 ID:ZFlLpTSH
 炎が燃え上がる音がだんだん大きくなってきたが、それでも色々な音が聞こえる。
 エンジンの音、金属質の何かを切断するような音、タイヤのパンクするような……否、これは多分銃の音。
 つぶし合いが始まったようだ。それは当然かも知れない。複数がここを見つけることは十分予想できたから。
その複数が、どうやら全部殺人許容派っぽいのがちょっとはるかは悲しいが。
『本当に、みんなやる気満々なんだなあ』
 そんな争乱を避けるように、はるかは裏口へ回った。
 その背中にはアルルゥがぴったり張り付いている。
「おね〜ちゃん……」
「ん、火が怖い?」
(こくこくこくっ)
 それはそうだ。一階はもはやほとんど火の海。熱気が今にも髪を焦がしそうだし、煙も凄まじい。
 そんな中ではるかは普段通り。アルルゥが辛うじて理性を保っていられるのはそのおかげだった。
「アルちゃん、今からしばらく走るよ。頑張って付いてきてね」
 明日以降のために見繕っておいた荷物を背負うと、はるかは状況打開の切り札を手に取った。

 ……消化器。普通の家ならまず備えているであろう物が、この家にもあった。
 時代も場所もわからないこの島だが、自分がよく知っているデザインになっているのは運がいい。

 もうこの家を救うことは出来ないが、人二人が通る空間を空ける程度は出来るはず。
 はるかはそう信じ、火の回った勝手口へノズルを向けた。
 勢いよく吹き出した泡は、全て使い尽くすことで期待した程度の消化力を発揮してくれた。

 祐介と瑠璃子、それに麗子は。
 自分たちの戦いに精一杯で、はるかとアルルゥの動きに気づく余裕はなかった。
 両者の間に存在した燃え上がる家も、逃亡のための目隠しになってくれた。


【027河島はるか&004アルルゥ 燃え上がる家から脱出】
【家の中からいくつかの物品を調達、内容はお任せだけど量は多くない】
【午後10時ぐらい、雨が降り出す少し前】
473名無しさんだよもん:04/05/17 07:27 ID:30PIb3Q2
ただ今、このスレの容量が474Kです。
まだ投稿はできますが、頃合いを見計らって
次の投稿スレへ移動願います。

葉鍵ロワイアル II 作品投稿スレ!2
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1084745335/
 ああ――
 薄れていく意識の中で、ハクオロは嘆いた。
 ――どうして、こんなことになったのだろうか?

 いつものように――いつもと同じように、ベナウィに仕事を積まれ、遊んでやることができずにアルルゥに拗ねられ、オボロとクロウとカミュに飯をとられ、カルラに酒に付き合わされ、トウカの生真面目っぷりに悩まされ――
 いつもと同じように、ウルトリィとエルルゥと三人で苦笑を浮かべつつ、その日は床についたはずだった。
「おやすみなさい、ハクオロさん…」
 そんな優しい声を聞きながら。
 
 なのに。
 気付けば、それはなくなっていた。
 それは、あまりにも唐突で。
 あまりにも非現実的で。

 信じることができなかったのだと思う。
 頭では理解していても、結局この『ゲーム』の存在を心の奥底で否定していたのだ。
 そうでなければ。
 もっと早く――最初から、エルルゥやアルルゥ、その他の仲間達を探しに走れば。
 ことみのことも、無視して進めば良かった。
 そうすれば、こんなことにはならなかった。
 もしかしたら、この二人も澪に会うことがなかったのかもしれない。

 ――澪。
 突然訪れた、言葉をしゃべることができない少女。
 【うれしいの】
 そう書かれたスケッチブック。
 今でも信じられない。
 黒い影。
 激痛。
 思い出す。
 黒い影は、確かに見た。
 でも――信じられない。
 あのか弱そうな少女が、人を殺すなんて。
 もしかしたら、違うのかもしれない。
 たまたまそのタイミングで、別の襲撃者が来たのかもしれない。
 ――そうだ。
 きっとそうだ。
 そのはずだ。

 違う。
 違う。
 違う、違う。
 違う、違う、違う!
 ――違う!!

 頭の中で必死にそれを否定する。
 別の襲撃者。
 本当にそんな者が居たのか?
 目を覚ませ。
 現実を見据えろ。
 これは『ゲーム』だ。
 どんな人間が殺し合いに走っても、おかしくない。
 …はは。
 そうだ。
 これは『ゲーム』。
 参加者百人、うち生き残るのは、たったの二人。
 そうだ。
 それに早く気付いていれば良かったんだ。

 ――違う!

 違わない。
 違いやしない。
 事実、自分は今こうして死のうとしている。

 ――違う!

 否定するな。
 その否定の生み出した結果が、これだ。
 自分はもう、助からない。
 それに――サクヤが、既に死んでいる。
 サクヤ…
 サクヤは、どうして死んだのだろうか?
 クーヤのことを何よりも大事に思っている彼女は、最期にクーヤの傍にいることができたのだろうか?
 ――クーヤはどうか?
 主としてではなく友として、サクヤの死を看取ることができたのだろうか?
 放送でサクヤの名前が呼ばれた時、それを受け入れただろうか?
 …いや、あいつのことだ。
 取り乱したに違いない。
 あいつはそうだ。
 傍にいる者がなだめてやらなければ、すぐにあいつは暴走する。
 ――でも、『傍にいる者』は、もうこの世に居ない。
 誰か、クーヤの傍にいてやってくれているだろうか?
 誰かが――

 ――ああ、もう長くないな。
 ことみとユズハはどうしたのだろう。
 澪に殺されたのだろうか?
 そうだとしたら、すごく残念だ。
 結局自分は、何一つ護れずに死んだのか。
 エルルゥやアルルゥを探しにいく事もせず。
 なのに、出会った仲間さえ護れない。
 何一つ護れずに――

 ――エルルゥ。
 ――アルルゥ。
 ――オボロ、ベナウィ。
 ――カルラ、トウカ。
 ――ウルトリィ、カミュ。
 ――クーヤ、ゲンジマル。

 済まない――先に眠らせてもらう。
 お前達は、生き残れ。
 護るべきものを、護ってやれ。

 愚か故に何もできずに死ぬのは、私だけで十分だ。
 ユズハも道連れにしてしまったことが心残りだが。
 オボロ――許してくれ。


 …みんな――

 死ぬな――


「…ハクオロさん?」



【残り72人】
479名無しさんだよもん:04/05/17 09:04 ID:alKWx8wW
断ち切られた妹、断ち切られた姉を、書いたものだが。
すまん、寝ていた。しばらく寝不足が続いてたもんで。

流れた無視したもの書いてしまって、ごめんなさい。
本人としては、没にして下さい。

こんなもの書いてしまってこの罪、万死に(ry
480479:04/05/17 09:08 ID:alKWx8wW
あと、遅くなってすまなかった。
481名無しさんだよもん:04/05/17 09:10 ID:alKWx8wW
わかった、このまま没にしてくれ。

あと、遅くなってすまなかった。
482480,481:04/05/17 09:16 ID:alKWx8wW
今度は、ageちまった。

おまけに481の書き込みは感想の方に書き込もうしたのに、失敗した。

重ね重ねごめんなさい。

この罪、万死に(ry**3

読み手に徹しようかな。

483名無しさんだよもん:04/05/17 11:42 ID:iY+UpL0j
静かな夜に聞こえる叫び声。
声に驚き身を起こすが、声は自分の口から出ているものだった。
海に潜ったかのように全身は汗をかき、
対して、喉は渇いていた。
悪夢か。それとも予知夢か…。
夢の内容すら覚えていない。
だが、恐怖感だけははっきりと手に取るように残っている。
もう時間は残されていないのかもしれない。
ベッドをおり、鏡の前に立つと、
古傷がいやでも目に付く。
次に夢を見るときには傷は増えているのだろう。
いや、夢を見ることができるかどうかもあやしいものだ。
次に夢が見ることができれば、それはそのまま一日を生き延びたと言うことだ。
死んだほうがましかもしれないほどの悪夢の一日を…。
いや、それでも生きたい。死んだら終わりだ。その先には何もない。
どれほど苦しくても生きていれば先はある。
「死んだほうがまし」と言うのは弱者の詭弁にすぎない。
隣の部屋で自分があげた叫び声を同じような声が響いた。
どうやら同伴者も同じ苦しみを感じているようである。
互いに互いを信用せず、互いに互いを疑わず、
不思議だ。会ったばかりだと言うのに。
だが、それも限界に近いのかもしれない。
愛し守り抜くか、殺すか、どちらかに針が揺れなければ、
二人とも死んでしまう。そんな気がする。
だからと言って、簡単に愛するとか殺すとかできる気がしない。

まあ、良い。もういちど眠ろう。次、起きるときには答えが出ているだろうから。
それとも、次に目がさめるときが来なければ答えを出さなくても良いのかな…。

誰かの足音が近づいてくるのを知りながら、自ら眠りに落ちる直前、そう思った。
484名無しさんだよもん:04/05/17 13:30 ID:StpO3izd
水瀬名雪(90) 睡眠中に寝首をかかれる
【残り71人】
485名無しさんだよもん:04/05/17 13:45 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
486名無しさんだよもん:04/05/17 13:46 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
487名無しさんだよもん:04/05/17 13:48 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
488名無しさんだよもん:04/05/17 13:49 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
489名無しさんだよもん:04/05/17 13:49 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
490名無しさんだよもん:04/05/17 13:50 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
491名無しさんだよもん:04/05/17 13:50 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
492名無しさんだよもん:04/05/17 13:51 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
493名無しさんだよもん:04/05/17 13:52 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
494名無しさんだよもん:04/05/17 13:52 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
495名無しさんだよもん:04/05/17 13:53 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
496名無しさんだよもん:04/05/17 13:53 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
497名無しさんだよもん:04/05/17 13:54 ID:KNyq2fAf
(*^-^*)
498名無しさんだよもん:04/05/17 14:58 ID:L9c8FkGT
499運命 ◆vkSUbcHrtA :04/05/17 16:05 ID:dnbvET6h
いつも補足してばっかりですけど、今回も…
>>478
エルルゥがハクオロを見つけたわけではありません。
嫌な予感がした――みたいなのもついでに書くつもりだったんですが、時間軸揃えなければいけないので書きませんでした。
紛らわしい表現ですいません。
500無尽君 ◆JmtStMCL6c :04/05/17 20:52 ID:/5qyTA3F
念の為もう一回出しとくか。

次スレ
葉鍵ロワイアル II 作品投稿スレ!2
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1084745335/
501名無しさんだよもん
そこへ核爆弾が飛んできた。
ギャー。
全員死亡した。

END