●●要求、魁（Kai）はライターを辞めろ●●

当然そうなると、元々本命だった杏の方に気持ちがいっちゃいますよねえ！
体は椋とつきあって腕組んだりキスしたりしても、心はもう杏のものなんですよ」
「･･････それで？それでどうなるんだ!?」
「それで主人公は椋を捨てて杏を恋人にするんです。男らしく、きっぱり椋に別れを告げるんですよ」
「それで･･･主人公は杏とうまくいくのか？」
「そりゃあハッピーエンドです。色々あったけど、最後は一番好きな子と恋人になるんです」

ボグウ（殴打の音）　　グワッシャァァ

「･･･さ、麻枝さん？」
「起承転結が問題じゃない！それ以前の人間レベルの問題だ！オマエ、そのラストでいいと思ってるのか？
椋はどうなる？椋はどうするんだ、椋は？」
「だって･･････」
「オマエの世界では妹をから彼氏を略奪する姉が幸せになるのか？えっ？
この主人公は幸せにはなれない!!いつまでも椋のことが尾を引いて、
杏と一緒にいたって楽しくなんかなれない!!　違うか？」

「そ･･･その通りです、麻枝さん。いつも俺は姉の方とつき合っていても、
早く妹の方に良い男ができてくれないか、そんなことばかり考えてるんです」
「オ、オマエ、･･････まさか今の話、実話なのか？　･･････魁･･････」
「俺もう疲れました。いっそ姉の方と別れて、妹の方とやりなおそうか、とも･･････
俺、どうしたらいいんですか？　麻枝さん!!」
「･･････俺はただのシナリオライターだ。起承転結は教えることができても、男女関係のもつれを解くことなんてできん」
「･･････ﾋｯｸ、ﾋｯｸ、ｸﾞｽ･･････」
「ただ･･････一言だけ言わせろ」

グシャアッ（殴打）　　ズダダダダダ･･･

「自分がどうしていいか分からないものを、作品の中でいい加減な結末をつけるなーっ!!
しかもハッピーエンドと？　かたはら痛いわ!!」

※　　※　　※　　※　　※

一週間後
「麻枝さーん。あの話の結末、変えました！」
「そうか、見せてみろ。（コイツ、色々考えて、成長したのかな･･････）」
「実は、この椋を影で見つめていた謎の青年がいて、この青年がまた、結構な美男子で･･････」
　　勝平『ねぇ。椋さん・・・柊椋。木偏がそろってイケてるよね』
「過去の男のことは忘れて、椋は新しい人生の一歩を踏み出すんです」
「････････････」
「新しい男と!!」
「････････････（プチン）」

バキィッ（殴）グワッシャアアアうぎゃあああああ

その後、ＶＡ社で、魁の姿を見たものはいない。

了