……そして、彼らは目覚めた。
それから一番始めに気が付いたことは、今まで自分の寝床で寝ていたわけではないこと。そして、目の前には多くの人間がいること……。
意識がはっきりとしてきた時、彼らは驚愕した。目の前の人間達は見知った人間からまったくの赤の他人まで、総勢100人以上はいようかと思われる程の大人数であったこと。
そして、ここがどこだか見当も付かない場所であったことである。
それから首輪……。目の前の人間達は全員金属製の首輪が付いていた。
彼らは徐々にパニック状態となっていた。一体ここはどこなのか? どうしてこんな所にいるのか?
そもそも、自分は今まで何も代わり映えのない日常を過ごしていたのに、一体いつこんな場所に来て、どうして首輪など付けられているのか。……そして、見知らぬ人間達は何者なのか?
騒々しくなる彼らの中には落ち着いて状況を観察できる人間もいた。ここは中規模のドーム型の建物で人間は総勢100人以上。
……中には犬、猫、挙げ句の果てには訳の分からぬ猛獣らしきものまでいた。よく眺めてみると壁にアナログ式の時計があった。時刻は8時32分といったところか。
照明がついていながらも薄暗さを覚えるのを考えると午後であると思われた。そして壁には文字が書かれた大きな板らしきものがあった。
よく見ると知らない学校の校歌が書かれた歌詞と作詞作曲者が書かれていた。するとここはどこかの学校の体育館なのだろう。
しかし、まったく見知らぬ体育館に何故自分達がいるのかまではわからなかった。
彼らの中には既に行動を起こしている者もいた。即ち、この狭い空間からの脱出を考えた者達である。だが、外へ通じる扉はまったく開くことがなかった。
体当たりを試みる者もいたが無駄であった。それでは、ひとまず閉められたカーテンを開けようと数人が動き出した時だった。
どこからか、『ザッ……』とラジオのノイズのような物が一瞬聞こえた。一部の人間はそれがスピーカーから聞こえた物であると直感でわかった。
続いてスピーカーから『動くな』という男の声が聞こえた。