隔離されるべきSSスレ

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278名無しさんだよもん
祐一の部屋へ遊びに来ていた佐祐理。
他愛の無い雑談やカードゲームなどをして楽しい時を過ごしていたのだが、
夜の十時を過ぎても佐祐理はいっこうに帰る気配が無い。
遠まわしに時刻を指摘すると、佐祐理は突然頭を下げて謝った。
とても申し訳なさそうな表情で、ぽつりぽつりと事情を話し出す。

明後日、佐祐理はお見合いの予定が入っていた。
本人は拒否したが、父の勝手な判断で話が進められていたのだ。
事情を知ったときには既に日程まで決定しており、困った末に佐祐理が出した結論は当日まで逃げ切る事だった。
「沢山の人に迷惑掛けてしまうのはわかってます。でも、いつもは人格者なお父様が今回の事に関して凄く強引で…。多分、佐祐理の一人暮らしに反対しているんだと思います」
「逃げ切るって、家に帰らないつもりなのか? 」
「もう帰る家なんて無いです…」
佐祐理はすがるように祐一を見つめる。
「舞に相談したら大事になりそうですし、祐一さんにしか頼れなくて…」
「…え」
「お願いします! 佐祐理を祐一さんの部屋に泊めて下さいっ」
279名無しさんだよもん:04/07/10 02:57 ID:iXMQeFQJ
年頃の少女がそう安々としてはいけない発言に、祐一の思考が一瞬停止する。
「駄目、ですか?」
「いや駄目とかじゃなくてさ…同じ部屋で寝るってのは夫婦かカップルくらいのもんだし」
「恋人同士じゃないと駄目なんですか…」
「いやなんつーか……何も無くてもやっぱり周りからはそう思われる訳だし…」
返答に困る祐一を見かねたのか、佐祐理は荷物を取ると軽く頭を下げ、部屋のドアノブに手を掛けた。
「…やっぱり迷惑ですよね」
顔を見せないよう下を向いたまま、
「いきなり変な事頼んでしまってすみませんでしたっ」
祐一の言葉を待たずに廊下を出てしまう。
「なっ――! 言ってないだろ迷惑なんて」
すぐさま追いかけ、階段を下りる前のところで佐祐理の腕を掴んだ。
「大体今から出てってどうするんだよっ」
「どこか寒さを凌げるところを探しますから」
「あるわけ無いだろ。凍え死ぬぞ」
祐一に腕を掴まれても全く抵抗しない。
彼女が頼るべきものは始めから一つしかないのだ。
「…わかったよ。協力する」
「え……」
「ただし、秋子さんには言うからな。それで秋子さんが家の了解取らなきゃ駄目って言ったら、素直に帰る」
佐祐理の顔から緊張が解ける。
「すみません……」
「別に謝らなくてもいいって」
佐祐理が祐一の腕を掴み返す。
迷子の子供が、やっと親を見つけられたような笑顔。
「ありがとう御座います」