やはりあなたも長森瑞佳が大好きですか!#23

このエントリーをはてなブックマークに追加
205名無しさんだよもん
ザ・ワールド!!
206長森×浩平(;´Д`)ハァハァ:04/02/04 23:36 ID:og4I+dzV
>>205
そして、時は動き出す…!!
207浩平×長森+繭23(1/10):04/02/04 23:37 ID:og4I+dzV

12月25日(金)08時02分
―小坂家・リビング―

「ん…」
 浩平は薄く目を開けた。
 何かの音が、耳に残っている。いや、それは続いている。
「雨、か…」
 ドラマだったらこれが雪で、ホワイトクリスマスになっているのだろうが、気のき
かない現実は、しとしとと冷たい雨を降らせていた。
(…静かだな)
 浩平は、もう一度目を閉じた。雨の音と、呼吸の音しか聞こえない。
 目を開けて天井を見る。部屋の電気は消えている。
「……」
 布団をかけなおす。エアコンがあるとはいえ、冬場に地べたで寝っ転がるのは身に
こたえた。
 布団が固かった。というか、重かった。
「…もうびっくりしてやらないからな」
 浩平は薄く笑って、思っていた事を口に出した。
 上に乗っているのは布団ではなく人間だった。
「長森、人の上ですやすや寝息を立てるな」
 言ってみたが、寝ている人間に聞こえる筈も無い。
 昨日の出来事が、思い返された。
 本当にあのまま寝てしまったらしい。
208浩平×長森+繭23(2/10):04/02/04 23:39 ID:og4I+dzV
(やれやれ)
 瑞佳は暖かかった。
 髪を撫でた。少しウェーブのかかった髪は、やわらかかった。
「サンタが自分をプレゼントにしてどうするよ」
 浩平は苦笑した。
「もらっちゃっていいのか?」
 いや、それはシャレにならない。それより――
(布団でも持ってこないと、長森が風邪ひくな)
 自分は瑞佳が上にいたからいいものの、瑞佳の背中は相当冷える筈だ。
 でも、この状態は良かった。この場から一時でも離れるのはいやな気がした。なん
となく。
 しかし、そんなもやもやした気持ちを振り払って、浩平は立ち上がる。
 瑞佳をそっと横たえた。
 立ち上がってから瑞佳を見ると、ミニスカートから下着が覗いていた。
 浩平の目はしばらくそれに釘付けになったが、何とか目をそらした。
「…紳士、バンザイ」

 電気の付いていない部屋を歩くと、何かを踏んづけた。
「うゆぅ…」
 下から、恨めしそうな声がした。
「あ、椎名」
「う〜」
「起きたか?」
「う〜〜っ」
209浩平×長森+繭23(3/10):04/02/04 23:40 ID:og4I+dzV
 機嫌を損ねたようだ。
 浩平は繭の横にしゃがんで言った。
「メリークリスマス、椎名」
 はっと気付いたような顔で、繭の顔がほころんだ。
「めりーくりすます、こーへー」
 言ってから、自分の腕を確かめた。
 しっかりと、そこには腕時計がはめられていた。
 それを見て繭が嬉しそうな顔をするのを見て、浩平も微笑んだ。
「お気に召した様で、何より」
 浩平は繭の頭をくしゃっとすると、立ち上がってドアのほうに向かった。

 自分の部屋から布団を取って来ると、瑞佳の上にかけてやった。
 それからテーブルを見て、自分がケーキをまだ食べていない事に気付いた。
 というか、誰も食べていない様だった。
(全員起きてから、クリスマス第二ラウンドだな)
 そう思って笑ったときだった。
「みゅー!」
「お、なんだ椎名、まだ寝てていいのに。今日は学校無いぞ」
「知ってるもぅん」
「すごいな、物知りなんだな椎名は」
「う〜」
 さすがにからかっているのだと気付いたのか、繭が不満そうな声を漏らした。
「おなかすいた」
「そうだな。でもケーキは長森が起きてからな」
「…うん」
「何か買いにいくか?」
210浩平×長森+繭23(4/10):04/02/04 23:41 ID:og4I+dzV

「いく!」
「と、思ったが、菓子類は大量に買い込んだのがまだあるな」
「う〜…」
「お菓子じゃダメか?」
「…はんばーがー」
「仕方が無い、行くか。支度しろ椎名」
「うん♪」



12月25日(月)08時35分
―小坂家・リビング―

「ん…」
 瑞佳が少し身体を動かした。
 肩が毛布から出たが、無意識に毛布を掛けなおした。
 窓でも開いているのか、顔に冷たい空気が当たったが、その寒さの分
布団が暖かく感じられた。
 ゆっくり目を開けると、見慣れた、でも自分のものでは無い毛布が目に
映った。
(あ…)
 この色は――浩平のベッドのだ。
 毎日のように浩平から引っぺがしている掛け布団。
 あれ?なんでわたしがこれに包まってるんだろ?

(浩平がかけてくれたのかな…?)
211浩平×長森+繭23(5/10):04/02/04 23:42 ID:og4I+dzV
 そこまで考えて、昨日の事を思い出そうとした。
 確かケーキ切って、浩平が酔っちゃって、それから――…
 考えようとしたが、それ以上は睡魔が許してくれなかった。ここ数日、
プレゼントの人形を作るためにちゃんと寝てなかったのが響いた。
 再び眠りに落ちる前に、毛布を顔までかぶり、ぎゅっと抱きしめた。

(…浩平の匂いがする)

 どことなく平和で、幸せな感じがした。
 瑞佳は再び眠りについた。

212浩平×長森+繭23(6/10):04/02/04 23:43 ID:og4I+dzV

12月25日(金)09時57分
―小坂家・リビング―

 気持ちよく眠っていた瑞佳は、キッチンからの『うわあ!』だとか『みゅー!』
だとかの悲鳴じみた声によって起こされた。
 ぼんやりと上半身を起こして、声のする方向に顔を向けた。
 ドタバタとキッチンを右往左往する足が、4本見えた。
(…なにやってるんだろ)
 しばらく様子を見ていようかな、と思った矢先、浩平がこちらに向かってきた。
「お、長森、起きてたのか」
「ううん、今起きたところ」
「そうか。何か飲むか?」
「ええと、うん」
 喉がからからだった。
「ほい」
 浩平からコップを受け取りつつ、聞いた。
「ね、朝から何やってるの?」
「お、よくぞ聞いてくれた。スペシャルな朝食を今作ってるんだ」
「スペシャルな…朝食?」
 瑞佳は実に嫌な予感がした。
 直感が言っている――これはロクな事が無い。
「すぐ持ってきてやるからな」
 浩平がニヤッと笑ってキッチンに戻って行った。
213浩平×長森+繭23(7/10):04/02/04 23:45 ID:og4I+dzV
「へいお待ち!」
「みゅー!」
 並べられた『スペシャルな朝食』を見て、瑞佳はクラクラした。
 案の定というか何というか…一応、それは『ハンバーガー』らしかった。
 あくまで「らしい」であって、もはや元・ハンバーガーという呼称の方が
正しかった。何しろ、高さは20センチは優にある。おまけに傾いている。
 瑞佳が呆気にとられているのを見て取って、浩平がコホンと咳払いを
してから言った。
「市販のハンバーガーに、レトルト食品のハンバーグ、エビフライ、軟骨の
から揚げ、魚肉ソーセージ、コンビーフなどをミックスした、NASAも採用した
宇宙食だ」
「…浩平」
「ん?」
 とびっきりの笑顔を浩平に向かって投げかけた。
「バカでしょ?」
「うん、途中でオレもヤバイと思った」
 浩平があっさりと認めたので、瑞佳はふき出した。
 浩平も一緒に笑った。
214浩平×長森+繭23(8/10):04/02/04 23:46 ID:og4I+dzV

12月26日(土)10時28分
―小坂家・リビング―

「じゃ、繭こっち持ってくれる?」
「うん」
「よいしょっと。はい取れたよ」
「みゅ〜!」
「あはは、取っとく?それ」

 明けて26日。
 瑞佳と繭は部屋の飾りつけの片付けをしていた。
 派手にクリスマスの飾り付けをした分、結構な作業になった。

「はぁ、ここの主様はまだ起きてこないねぇ」
 あるじさま、というのはもちろん浩平だ。
「休みだし、起こさないでおいて上げようと思ったら、いつまで寝てるんだか…」
「…起こす?」
「わたしが起こしてくるよ。繭は片付け続けてて」


「浩平〜、朝だよ〜」
「ん…」
「ほらぁ!早く起きないとお昼になっちゃうよ?」
「う……今、何時だ?」
「もう10時半だよ」
「昼までくらい寝かせてくれ…」
215浩平×長森+繭23(9/10):04/02/04 23:47 ID:og4I+dzV
「どっかのサラリーマンみたいなこと言わないの!」
「おまえも、どっかの主婦みたいなこと言うな」
 寝返りを打ってそっぽを向いた。
「ねぇ起きてよう!高い所の飾り付け、わたしじゃ届かないんだから!」
「うるせぇなぁ…わかったよ」
 渋々、浩平が起き上がった。
「朝ごはん、一応出来てるから」
「ん、サンキュ」


 結局、朝食も早々に、浩平も片付けに参戦する事になった。
「我ながら、見事にやったもんだ」
 ツリーを見つめながら言う。七夕の提灯や短冊までついている。
 ちなみに、頂上の星の横にいた彦星と織姫は、外した瞬間繭が持ち去った。
「サンタもケチだなぁ」
 浩平はサンタクロースへのお願いに(短冊に書いて、だが)、キャッシュ
でのプレゼントを所望していたのだが、洗濯中の靴下を見ても、一銭たり
とも見出す事は出来無かった。
 ついでに、繭のハンバーガーやら何やらの願い事も、結果は芳しくなかった。
 やはり、短冊では願い事は聞いてくれないのであろうか?

(…あれ?)
 ツリーの裏の方、見慣れない短冊があった。
 この字は――
216浩平×長森+繭23(10/10):04/02/04 23:49 ID:og4I+dzV

(長森のだな)
 なんだよ、なんだかんだ言って自分も願い事書いてるじゃないか。
 つい、何を書いてあるか見てしまった。
 そこには、こう書いてあった。


『好きな人と両思いになれますように』


「……」

 好きな人。
 長森の好きな人とは誰の事だろうか?
 まさか。

(いや)
 見なかったことにした。
 浩平はその内容よりも、他の事――長森が誰かを好きで、それが自分でないとした
ら、かなりのショックを受ける事――に驚いた。
 視線をずらすと、瑞佳が見えた。
 浩平の視線に気づいて、楽しそうに「なぁに?」という顔になった。

 浩平も、「なんでもねーよ」、と目で言った。


(まだ、つづく)