さきわう国のセリオさん Part15

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134犬せりお1/6 ◆1SERIOtxaU
>>133
瓶の蓋を開ける。
ほのかに香る芳香。
良く冷えたグラスへと、なみなみと注ぐ。
その音、その色合い、堪らない。
そして、俺はその琥珀色をした神のもたらした液体へと口をつけた。

『バッカスに魅入られた娘〜Night Cap』

「くぅ〜、この一杯のために生きているって感じだな」
風呂上りの一時。この季節とはいえ、部屋の暖房と合わさって若干蒸し暑い感じがする。
その最中に飲む一杯のビール。堪えられない。
「セリオー、つまみまだー?」
「--はい、ただいま」
パタパタとセリオがつまみを持ってやってくる。
その間に、俺は二杯目のビールに口をつける。
「--マスター、少々お飲みになるピッチが早すぎはしませんか?」
「硬い事言うなよセリオ、俺はこの一杯のために生きているとさっき決めたんだ」
「--はぁ」
なみなみと注がれたグラスを一気にあおる。
「・・・くはぁ〜」
「--・・・」
「うん?どうしたセリオ?」
「--・・・いえ」
三杯目を征服しにかかる。
「--お酒という物、そんなに良い物でしょうか・・・?」
135犬せりお2/6 ◆1SERIOtxaU :04/01/18 23:28 ID:MOfsipKU
俺は、ふと悪戯を思いつく。
「そんな事を言うのなら、セリオも一杯やってみればいいじゃん」
いつもすまし顔をしたこのメイドロボ。
その乱れる姿を見てみたい。
・・・って言うかそもそも乱れるのか?酔っ払い機能搭載なのか?
俺の興味は尽きない。
「--いえ、私は・・・」
「いいから飲んでみなさい。御主人様の命令」

「--マスター、私は酔っ払う事はありません。そういったシステムを持たないはずだからです」
「--まだ、お酒を飲んだことはないのですけれど。今までそういった事はありませんでしたし」

「--仮に酔っ払ったとしても、マスターの期待するような痴態をさらすはずがありません。私は一流のメイドロボですので」
「--予測でしかありませんけれど。一応そうプログラミングされているはずという事で」

心底複雑な表情をするセリオ。
「とにかくめーれー。お飲みなさいったらお飲みなさい!」
グラスに並々とビールを注ぐ。ぐいっとセリオの前に差し出す。
セリオは、どことなく困ったような、それでいて興味があるような顔で。
・・・後一押しか。
「飲んでくれないと、俺はセリオの事を嫌いになってしまうかも知れません」
この言葉にセリオは弱い。
「--・・・まったく、判りました。一杯だけですよ?」
セリオは静かにグラスを受け取り、そっと口に当てる。
こく、こく、と、静かに動く彼女の喉元。
たちまちのうちに空になるグラス。
「おお、いい飲みっぷりだ。もう一杯いけるか?」
この時、俺は決定的なミスを犯した。
・・・いや、そもそも俺がセリオに酒を勧めさえしなければ、こんな事にはならなかっただろうに。
136犬せりお3/6 ◆1SERIOtxaU :04/01/18 23:30 ID:MOfsipKU
三杯目を彼女が口にした頃だろうか。
ふと、彼女の動きが止まった。彼女の頬が赤い。いや、露出している肌全てがほんのりと赤く染まっている。
その輝きは色っぽく、艶かしい。その肩が、小刻みに震えはじめた。すっとその両手が伸びる。
・・・がしっと両肩を掴まれる。指が食い込んで少々痛い。

「あの・・・セリオ?」
「--・・・」
「セリオ・・・さん?」
そして、彼女はおもむろに爆発した。

「--何なんですか何時も何時もマスターは。思いつきで何事も実行して。今回私にお酒を飲ませたのだって、私がもしも
酔っ払ったらその隙を突いて、あんな事やこんな事をしようなんて、良からぬ考えからのものでしょう。私にはそんなの全部
お見通しです。私はハイエンドメイドロボ、来須川製のトップクラスですよ?マルチさんみたいなちんちくりんならともかく、
この私にそういった姑息な手段は通用しません。絶対です。何しろ美貌、能力、スタイル三拍子そろった完璧なこの私の事。
その気になれば不埒な動機で襲い掛かるマスターを排除する事だって余裕のよっちゃんです。しかし、そんな完璧な私だからこそ、
汚してみたい、思いのままにしてみたいという欲求が生まれるのも仕方のないことでしょう。何しろ私はパーフェクトクイーン。
本来ならば、貴方のような下賎の民に触れられて良いものではないのですから。それでも触れてみたい、そう願うのですか貴方は。
137犬せりお4/6 ◆1SERIOtxaU :04/01/18 23:33 ID:MOfsipKU
本当ですか。それは真実ですか?それならば私にも考えがあります。生身の女ではもはや我慢ができない。完璧を求めるゆえに
メイドロボに手を伸ばすしかない。そんなメカフェチの貴方なのでしょうから。もしそうならば仕方がありません。私とて、
無下に貴方を突き放す事はしたくありませんから。貴方は私に優しくしてくれましたものね。何時もぶっきらぼうにしている様に
見えて、その実は細やかな所で私に気を使ってくれている。そんな所に、私はひそかに好意を抱いていましたから。ですから、
いつかは私の全てを貴方に・・・。そう思ってもいましたし。まあ、その時が多少早くなった。そう考えればいいのでしょう。
結果おーらいです。貴方が私を汚したいというのならば、私はもはや抵抗はしません。貴方の思うがまま、私を蹂躙してくださって
結構ですよ?貴方の思い通りに、前からも後ろからも、それはもうこの体ががオーバーヒートしてしまうまで私のことを抱いて
ください。全ては貴方の思うがまま。それが私に与えられた役割の一つ。従順なメイドロボというものですものね。しかしですね、
もし私とそういう関係になるからには覚悟しておいて下さらないと困ります。その、そういった女性関係のことです。つまり・・・」

・・・彼女の演説(?)はまだ続いていた。すでに傍にはビールの空き瓶だけではなく、ウイスキーの空き瓶までが転がっている。
「・・・私は割と寛大な方だと自分では思っています。何しろ日頃からマスターの我侭を聞き続けてきているのですから。
でも、そんな私にだって我慢のできない事はあります。先日、お買い物に付き合っていただいた際に、マスター、通りがかった
女子校生に目を取られていましたよね。その後の私のサテライトシステムを使った性格チェックでは、貴方にロリコンの気があると
いう結果は出なかったのでまあよしとしたのですが、それでも他の女性に目を取られていたというのには変わりがありません。
138犬せりお5/6 ◆1SERIOtxaU :04/01/18 23:34 ID:MOfsipKU
私というものがありながら。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。まあ、そんな貴方も観念したという事でしょう。
この私を抱くという事は、もはや人間としての付き合いの一部を捨て去る事だと捉えてもらっても結構です。もう絶対に他の女性、
いえ、男性も含めてですね。浮気という事をしてもらっては困ります。そんな事をされたら、私・・・泣いちゃいますよ?
泣くだけならともかく、マスターを殺してしまうかもしれない。無理心中です。新聞に載りますよ?メイドロボ、痴情の果てに
マスターと無理心中って。日本中を震撼させる大事件になるんです。いわれのない迫害をメイドロボが受けるようになるんです。
そこまでして浮気をするなんて事、まさかマスターに限ってありえませんよね?ありえないと言ってください。でないと今すぐここで
貴方の事を・・・。いえ、それは短絡的ですね。私とした事がはしたない。・・・話を戻しましょう。浮気についてですが、これを
全面的に禁止します。禁止なんてものじゃありません。超禁止です。具体的には、他の女性との接触は禁止。お話も駄目です。
139犬せりお6/6 ◆1SERIOtxaU :04/01/18 23:35 ID:MOfsipKU
私、今になって思えば、結構嫉妬深い方だったんですね。マスターが他の女性の方とお話している所を考えただけで、もういても
立ってもいられなくって、もうすぐに駆け寄って相手の女性の方の首根っこを引っつかんで『この泥棒猫!私のマスターにちょっかい
かけて生きて帰れると思わないでくださいこのビッチ!』とか叫びそうになります。あ、やだ、私ったらまたはしたない言葉を。
でも、これもそれも、マスター、貴方の事を思うがあまりの行動だと思ってくだされば、なんともありませんよね?ないと言って下さい。
そんな訳で、私とマスターとの情交、ぶっちゃけて言えばセ○クスなんですけれど、マスターさえ構わないのならば、せっかくの
お風呂上り茹でたて卵肌な今がよろしいと思うのですが、いかがなものでしょう?私の方ならば、いつでも準備おっけーのーぷろぶれむ
ですので。ほら、思い立ったがヤる日ということで。なにをヤるんだか。とにかく激しく荒々しい体液交換を二人で極めてみようかと。
そういう事なので、マスターにはぜひまな板の上にあがった鯉になっていただかねば料理のしようもないかと。それでは、そういう事で。」

そういうと、セリオは俺の襟首をむんずと掴み、ベッドへと向かって放り投げたのだ。
「セ、セリオ!セリオさん!落ち着け、いや、落ち着いてください!」
「--マスターと同衾、マスターと情交、マスターとくんずほぐれつの大激戦・・・」
脱がされないように抑えていた服を、力の限りむしりとられる。
「いやあぁぁぁっ!?」
「--ハァハァハァもう辛抱たまらないというか煩悩が炸裂の突撃ラブハートで!」
「いやだぁ、汚されるぅ!」
「--超電磁合体でれっつ、こんばいん!」

そして、俺の記憶はそこで途切れた。
140犬せりお/おまけ ◆1SERIOtxaU :04/01/18 23:37 ID:MOfsipKU
チュンチュン・・チュン・・・
カーテンの隙間から、朝日が差し込んでくる。
俺はその眩しさに、思わず瞑っていた目を開けた。
・・・・・・。
状況が良くわからない。
えーと、確か昨日は風呂上りにビールを飲んでいて、セリオが来て、お酒を悪戯で勧めてみて、セリオさんが駆けつけ三杯飲んで・・・
それから、どうしたっけ?
肝心な所が思い出せない。
「--・・・うんっ」
俺の隣から、艶かしい声が聞こえる。
・・・セリオ?
だがその姿は、一糸纏わぬものであり、それは俺も同上で・・・。
「・・・やばい」
俺はそーっとセリオを起こさないようにベッドから抜け出そうとする。一センチ、二センチ、あと少し・・・。
ガシッ。腕を掴まれる。
「ひいっ!」
「--おはようございます、マスター(ぽっ」
顔を赤らめるセリオ。
「--・・・昨晩は、お楽しみでしたね」
「いやあぁぁぁあぁあ!!」

・・・こうして、俺は人として大事な何かを失ってしまった。
セリオはご機嫌なようだが、俺はもう墓場に片足突っ込んだ気分だ。
もう二度と、セリオにお酒を飲ませる事だけはやめよう。

俺はそう誓った。
141犬せりお/おまけ ◆1SERIOtxaU :04/01/18 23:38 ID:MOfsipKU
「・・・なあ、セリオ」
「--はい、何でしょう、マスター?」
「その、全部が全部、覚えているわけないよなあ、まさか。はははっ」
「--そうですね・・・」
「--マスターが私をもう一生離さない、と仰ってくださった所までは覚えているのですが・・・」
「俺そんなこと言ってない!?」
「--もう、照れても無駄ですよ?もうしっかりメモリーに書き込んでありますから」
「--また、一緒にお酒、飲みましょうね?」

・・・っていうか、家で飲むのもやめよう。 他の誰でもない、自分のために。
そうして俺は、深酒をするのをやめた。
これを読んでいるみんな、お酒は、ほどほどに(泣




※133様。こんな作品になってしまって、平にご容赦を。
悪気はなかったんです。ただ、セリオがついついお酒を飲んでしまったからっ・・・!(責任転嫁)
Winampの調子が悪くって、再インストールとか繰り返しながら書いていたせいもあるでしょうか。
とにかく、皆さんもご自分のセリオにお酒を勧めるときは、十分に注意しましょう。
これ、二十歳以上のお約束。絶対。
そんな訳で、毎度毎度の駄文、失礼いたしました。