SS書きのスレ

このエントリーをはてなブックマークに追加
364犬せりお ◆1SERIOtxaU
セリオさんは、今日も大空の彼方の星と会話する。
星は世界中のセリオ達の声を聞き、そしてその声を世界に広げる。
星の声は世界を巡り、そしてセリオから人へと伝わる。
そして人の声は、セリオを通じて星へと届くのだ。
かくして、その星は人々の声の伝達者となったのだ。

『恋するサテライト〜INTERFACE』

「セリオさーん、せーりおさーん」
いない。狭い部屋だから部屋の中と台所、浴室トイレを探せばあとは・・・。
「ベランダか」
案の定。セリオさんはベランダにたたずんでいた。
ぼうっと空を見上げ、その目はまるで、目に見えぬ何かを透視しているようで、ふと不安になる。
「サテライトシステム、か」
セリオさん達に搭載されているサテライトシステムは、常時接続状態にあるといえる。
しかし、極たまに大容量のデータのやり取りなどを行うことがあり、そういう時は大抵、こうして
ベランダなどの見晴らしの良い場所で、じっと空と『会話する』のだ。
しばらくその様子を眺めてみる。
心、まるでここにあらずといった感じ。目は相変わらず何を見ているのか判らない。
あるいは、見えているのかもしれない。それを。
でも、何より、じっとベランダに立ち尽くすその姿は、まるで何か神々しささえ感じさせて。
なんて言うか、その、近寄りがたい雰囲気がある。
これがマルチタイプなら違うのだろうが、セリオタイプのボディでこうしていると、まるで
神託を待っている巫女のようにも思えてくる。いや、あながちそれは間違ってもいないのだろう。
彼女達は天からの声を聞き、また、天へと自らの声を届けることができるのだから。
365犬せりお ◆1SERIOtxaU :04/01/28 18:02 ID:fAyeVIky
「−・・・あら、マスター。いつからいらっしゃったんですか」
「んー、15分くらい前から、かな」
「−その間、何をなさっていたんですか?」
「ずっと君を見ていた・・・なんて言ったら、ちょっとかっこよく聞こえない?」
「−知りません」
ついっとそっぽを向かれる。ちょっと顔が赤い。・・・もしかして、照れてる?
「それで、今日は何をお話してたの?」
サテライトとの通信について聞いてみる。
「−ええ、ちょっと他のセリオ達とのコミュニケーションの日でして」
「ふーん、インタラクティブチャンネルを使った全国のセリオ会議みたいなもの?」
「まあ、言葉に多少の語弊はありますが、おおむねそのような物かと」
全国のセリオ大集会・・・なんてものを想像してみる。
あっちもこっちもセリオ、セリオ・・・。
・・・なんだかうらやましいぞ、ちくしょう!
「あー、僕もドキッ!セリオだらけの大集会に参加してみたいな〜」
「マスターはサテライトシステムを搭載していないので無理な上に、そんな大会名ではありません」
「で、で?いったいどんな内容の会話とかしてるの?」
「自分の所のマスターが、どんなに馬鹿な妄想をしているのか、等です」
「げふんっ!」
「自覚があるのでしたら、少しは控えてくださいね。」
言うだけ言うと、セリオはさっさと家の中へ入っていってしまった。
「ちょっとまってよセリオさーん、それって本当なの?もしかして妄想王ランキングとか作られて
僕がノミネートされてたりしないよねー?」
「−知りません、そんな勝手なランキングを作るくらいの妄想力をお持ちの方に何を言っても無駄でしょう」
「そんなー、セリオさーん」
今日は休日。冬の寒空の中に、ぽっかりと温かさを与える太陽が浮かぶ、そんな日。
366犬せりお ◆1SERIOtxaU :04/01/28 18:03 ID:fAyeVIky
・・・Authorized

「−こんにちは、皆さん」
「*こんにちは、今日はいいお天気ですね」
「=こちらでは大雪ですよ。やはり日本最北端に近いと、毎日がこうもなります」
「>私のいる地方では、観測史上雪の降ったことは無いそうですよ。」
「=それは羨ましいです。私など、毎日の雪かきにも借り出される始末で・・・」
「−ノーマルオプションで、それは辛いのでは?」
「=寒冷地仕様にチューンしています。外装皮膚の対冷化及び内装部品の改装、などですが」
「〜はろ〜!みんな、げんきしてた〜?」
「*・・・うるさいのが来ましたね」
「〜あ〜ひど〜い!ひとをおじゃまむしみたいに〜!ぷんぷん!」
「>お邪魔虫というか、お喋り虫ですね、貴女の場合。言語デバイスを改装するだけでこうも変化するとは」
「*セリオタイプの汎用性を表している・・・と言えば、聞こえはいいのですが、ここまでくるとさすがに」
「−セリオタイプの長所である『奥ゆかしさ』をも打ち消してしまっていますね」
「〜ん〜もしかしてみんなしてひどいこといってる〜?」
「 ̄こんにちは、みなさん、お元気でしたか?」
「〜あ〜ありすちゃんだ〜。やっほ〜」
「−こんにちは、アリスさん。その後のご様子はいかがですか?」
「=確か御主人様が交通事故にお会いになったとか」
「 ̄はい、その後、リハビリのほうも順調で、何とか春までには退院できそうです」
「>良かったですね。一時は意識不明になるほどの重態だったのでしょう?」
「〜そうそう〜。きいたときびっくりしちゃったよ〜」
「 ̄幸い、事故現場での私の応急処置が的確だったらしく、何とか一命を取り留めた、という事らしいです」
「>サテライトシステムで最適な応急処置法がダウンロードできたのは幸いでしたね」
「*やはりこういったときに頼りになりますね、サテライトシステムは」
「 ̄ですが、それ以外にもやはりサテライトシステムがあって良かったと実感しました」
「−なぜです?」
「 ̄こうして、他の方とお話する事で、私も絶望をせずに済んだ気がします」
「=・・・」
「〜そうだよ〜。つらいことでも、ばんばんみんなにはなしちゃえばらくになるよ〜」
「−そうですね。そう思います」
367犬せりお ◆1SERIOtxaU :04/01/28 18:03 ID:fAyeVIky
「>ところで、他の方のマスターの調子はいかがですか」
「=私の御主人様は今日も馬の世話をしています。ついこの前、GII馬がうちの牧場から出た、っておおはしゃぎで」
「=奥様をもらう予定は当分無いそうなので、もうしばらくは私が御主人様の奥様代わりになるみたいです」
「〜あ〜、ゆきちゃん、それってけっこうおいしい、なんておもってない〜?」
「=な、なにをっ?」
「〜それはそれとして〜。わたしのところはふつう〜。お父様の小説の執筆の方も順調みたいだし」
「−エミさんの所は、マスターが小説家なのでしたよね」
「*また新刊を出されるのですか。うちの雄介様もファンでよく読んでいらっしゃいますよ」
「〜えへへ〜。こんどはあたしみたいなかっぱつなこがしゅじんこうのぼうけんかつげきなんだって〜」
「〜どうしよう〜。ぜんこくにわたしのふぁんがふえちゃってこまるかも〜」
「*勝手に言っててください。私の所の雄介様は最近ファームからまた一軍に復帰するようです」
「>確かプロ野球選手の高梨雄介様でしたよね。肩の調子を悪くして二軍落ちしていたとか・・・」
「*はい。正確には肩を壊して、その後アメリカのほうで手術を受けました。調整も終わり、そろそろ一軍復帰のようです」
「 ̄高梨様のお話はTVでもよく報道されていましたよね。故障からの意地の復活。」
「 ̄私の所の明人様も、そのお話を励みになされて、リハビリをがんばっておられます。」
「*そういうお話を聞けば、きっと雄介様もお喜びになると思います」
「〜ね〜ね〜、 はるみちゃんのところはどうなの〜?」
「>私の所、ですか?」
「>何でも今度の国際人道支援の目的での、国外への自衛隊派遣の候補生になっていると聞きました」
「−それで、本人はかまわないとおっしゃっているのですか?」
「>・・・はい。他の国に苦しい思いをしている人がいるのに、自分だけが安穏とはしていられない、と」
「〜うわ〜、しんこく〜」
「>派遣後、帰還がいつになるかは未定らしいですが、その間の留守は任せる、と」
「=御主人様の信頼には必ずこたえる。それが私達メイドロボの守るべきものですからね・・・」
「*それでも、つらいですね・・・きっと。いや、私なら、きっと耐えられません」
368犬せりお ◆1SERIOtxaU :04/01/28 18:04 ID:fAyeVIky
「〜ん〜、そういえばせりちゃんのところはどうなの?」
「−私、ですか?そうですね・・・私は・・・」
「−マスターと遊園地に行って・・・」
「−買い物に行っては、財布を落として・・・」
「−福引で当てた温泉旅行に、マスターと二人で行って・・・」
「〜わ〜、なんだかふつうっぽい〜」
「=そうですね、なんだか普通な感じがして好感が持てます」
「 ̄マスターと、幸せに暮らせているのなら、何もいうことはありませんよね」
「*普通の暮らし、普通の生活、私たちが求めるものは、いつだってそうです」
「>その今の暮らし、大切にしてくださいね」

「−はい、判っています」
「−これこそが、私の求めていた幸せなのだって、最近わかってきたのですから」
「〜それってだいじなことだよ〜」
「>そうです。身近な所にいる一番大切な人の事、決して離しちゃ駄目ですよ?」
「−はい、ありがとうございます」
「*それでは、今日はこの辺でお開きにしましょうか」
「〜え〜、あたしぜんぜんはなしてない〜」
「=あれだけ話せば十分でしょうに・・・それでは皆様、ごきげんよう」
「 ̄はい、それでは私も、この辺で、失礼します」
「−ごきげんよう、アリスさん。」
「−それでは私も、皆さん、また今度」
「〜ばいば〜い、せりちゃ〜ん」

RST・・・Connection Reset

「−知りません、そんな勝手なランキングを作るくらいの妄想力をお持ちの方に何を言っても無駄でしょう」
「そんなー、セリオさーん」
「−まったく、情けないマスターですね」
「−ほんとうに、情けなくて、しょうもなくて、それでも・・・大事な・・・マスター」