夢、夢を見ている
どこかの学校の中をさまよう夢。
その学校の廊下はラビリンスと化しており、教室の扉を開けてもまた同じ廊下の繰り返しであった。
そうやってさまよっているとふと何処からか子供がすすり泣く声が聞こえた。
俺はその泣き声に吸い寄せられた、そしてその果てにあったのは小さな女の子とその女の子をなだめる男の子であった。
「あゆあゆじゃないもん」
女の子がその言葉を発したとき、これが俺とあゆの出会いの場面である事がわかった。
そして「俺」とあゆは消滅し、また元の光景に戻った。
再び廊下をさまよう歩くと今度は女の子のはしゃぎ声が聞こえてくる。
俺は再びその声に吸い寄せられる。
そしてたどり着いた先は大きな木と「俺」とあゆであった
「いいかこの学校では好きなときに好きなだけ出席もしていいし・・・」
ずいぶん懐かしい会話だ、俺たちはこの木を学校としてあの日までの遊び場としていたんだな・・・
そうあの日までは・・・
そして再び元の光景に戻っていった。
廊下をさまよい歩くと今度は繁華街特有の雑音が聞こえてくる。
俺はその音に吸い寄せられる。
そしてたどり着いた先はクレーンゲームをしている「俺」とあゆであった。
「この人形はお前の願いを3つだけかなえてくれる・・・」
「俺」が手にしている天使の人形はクレーンゲームの景品だ、だが俺たちにとっては特別な人形だった
あの人形は俺があゆの願いを3つかなえるというものだった、そしてあゆの願いは
「俺があゆのことを忘れない事」と「またおれたちは再会する事」、そして・・・
再びもとの殺風景な廊下へと景色は変貌していった。
廊下をさまよい歩くと再び子供のはしゃぎ声がする
俺はその声に吸い寄せられた、そして再び「学校」が俺の前で繰り広げられた
あゆは木の上で引越しでその日離れ離れになる「俺」に微笑みかけていた。
だがそのとき事件は起こった!
強風であゆは木の枝から転落したのだ!
「ボク木登りは・・・」
あゆは頭から血を流しながら「俺」に語りかける、「俺」はただただ慟哭した・・・
そして「俺」の慟哭とともに景色は崩れ去り再びもとの光景へと戻っていった。
廊下をさまよい歩くと何処からか泣き声が聞こえる
俺はその声に吸い寄せられる。
その果てにはあゆを失った悲しみに打ちくれる「俺」とそんな「俺」の前に雪うさぎを差し出す名雪がいた
「これ祐一のために作ったんだよ」
「俺」は雪うさぎを払いのけた・・・
景色は再び元に戻った
廊下をさまよい歩くとどこかで叫び声が聞こえる
俺はその声に吸い寄せられる
その果てにはタイヤキを盗んで店主に追いかけられるあゆの姿があった
「うぐう、どいてええ・・・」
そういえばこのときが俺とあゆの7年ぶりの仮再会だったな・・・
あゆたちが通り過ぎると景色は再び元に戻った
廊下をさまよい歩いているとどこかで何かを掘っている音がした。
俺はその音に吸い寄せられる、そこには地面を掘っているあゆがいた。
「探さないと・・・」
あゆは7年前に俺が渡したあの人形を必死に探していた・・・
そして景色は再び静寂な廊下に変貌した
まるで地平線のように彼方まで続く廊下を歩いていると今度はシャベル出で地面を掘り起こしている音が聞こえた。
俺はその音に引かれていく・・・
その先には俺の頼みでやってきた名雪と香里と北川が「俺」と共にあのときの人形を一緒に探している光景だった・・・
「相沢、これのことか」
あの人形を掘り当てたのは北川だったな・・・
そして再び元の廊下に変貌していた
無限の彼方に等しい廊下をさまよい歩くと今度は女の声がする。
俺はその声に引かれた・・・
そこには「俺」に抱きつくあゆの姿があった
「ボクのことを忘れてください!」
そう、それはあゆがいった最後の願い、そしてそれは俺のことを本当に愛していたからこその偽りの願いだった・・・
そしてあゆは天使の羽を生やして空へと羽ばたいていった・・・
その前に「ボクのことを忘れないで」といってから・・・
そして景色は再び廊下に逆戻りだった・・・
生気のない廊下をさまよい歩くと雑踏が聞こえた
俺はその音に吸い寄せられる・・・
「笑わない?」
そこには7年前のあの日からずっと意識不明だったあゆが退院して俺とあゆが
初めて会った場所で待ち合わせをしていた光景だった、そしてこのときが俺とあゆの本当の意味での再会だった・・・
そして俺の目の前の光景は下駄箱になった・・・
上履きを脱いで靴に履き替えて校舎から出るとそこは一面雪景色であった。
何気に後ろを振り返るとそこには雪が積もっている切り株が一つあるだけであった
俺はそのまま家路に向っていた
「しっかし、おめえがあの罠を抜けて出てきたときはこっちもビビッたぜ。
まあいい、ボスの命令でお前を煮ようが焼こうが頭を勝ち割ろうがかまわねえことになっている
ゆっくりと楽しませてもらうぞ」
どこかで聞いたことのない英語が聞こえる、俺はその声を無視して自宅に戻った。
「ああそんな・・・」
帰宅した俺を待っていたのは名雪と秋子さんの死体であった
「助けて祐一君! どこなの!」
上からあゆの声がする、俺が階段に足をかけた途端階段は崩れ去り浮浪者に犯されながら
首を絞められているあゆの姿をただただ見ていた
「さあ、ショーの時間だぞ」
そして俺は裸電球のある小さな部屋で木製のイスに縛られていた