俺はチンピラのバンを隣町で乗り捨て、そこの駅で東京へと向った。
電車に乗っている間なぜあの時俺は香里のことを「美坂」と呼んでいたのかを考えていた。
もしかしたらあの時俺は何かが壊れ始めていたのかもしれない、だから香里の事を他人呼ばわりしていたのかもしれない・・・
そして、それはチンピラどもを撃ち殺したことに対して何の感情も起こらないことにも似ていた。
東京に着くとまず俺は秋子さんのPCに乗っていた密輸集団に武器の密輸出を依頼した
密輸団はその道のプロらしく、あの部屋にあった木札がなければ取り合っていなかっただろう・・・
あれはどうやら割符らしく密輸団が別の木札を出して割れ目同士を押し当てて確認を取っていた。
俺は武器一式をそいつ等にマンハッタン沖に輸出するように依頼し、そしてそのまま羽田空港に向った・・・
羽田空港は一見すると国内便専用というイメージがあるかもしれないが、実際には
国際便もありそこから海外に行くことも可能であった。
俺は敵の盲点になりかつ最も迅速にN・Yに向えるであろう羽田空港の国際便の
ファーストクラスの席を取っていた。
ファーストクラスはその時間は俺以外誰も利用者がいなかった、静かにくつろげる貴重な時間だ
俺は何気なしに機内テレビのニュースを見ていた、ニュースでは華音駅の事件が報道されていた。
「本日、華音駅で暴力団グループにより襲撃事件が発生し57名の尊い命が失われました
死亡者の中には犯人グループと見られる人物もおり、現在警察は犯人グループが標的にしていたといわれる
少年A(17)が事件に何らかの関わりがあると見て捜査を進めております・・・」
AIZAWA YUUITI、すなわち「少年A」とは俺のことだ。
夢、夢を見ている、漆黒の闇の中一人彷徨っている夢。
闇は次第に晴れ、そして荒れ果てた玄関へと変貌していった。
「やめて祐一君! どうしてどうしてなの?」
何処からか少女の声がする、俺は迷宮の中その声に従って進む。
声がするほうに行き着く先は応接間だった。
「そんな、なぜ?」
そこには二人の女性の死体がある、そして声はすぐ近くの階段から聞こえた。
声のする部屋に手をかけた途端、部屋のドアは見えない何かによって木の板を打ち付けられ
隣の部屋に入る、その部屋はカエルの人形が立てかけてあるかわいらしい部屋だ。
部屋に入ると入ってきた方角のドアは木の板で打ち付けられ、雪が降る外の部屋の窓が開いた。
窓の外の景色は積雪しているところ以外は完全な闇の世界だ、俺は雪道の上をただただ歩み続ける。
雪道の果ては別の窓であった。
「お願い許して祐一君、ボクそんなつもりじゃ!」
俺は窓に手をかけ、窓を開けた。
「あゆ! あゆー!!」
部屋には俺を非難する目で見つめるあゆの死体があった・・・
「まもなく着陸します・・・」
夢から覚めた俺の耳に入ってきたのは着陸するアナウンスであった、俺はシートベルト
をかけた。
そして俺はN・Yについたのであった、しばらくは丸腰だ敵についての情報を現地調査する必要もあったため。
俺は武器が到着するまでの間それに専念する事にしたのであった・・・
そう、これからの戦いに備えて・・・