『いつだって舞サンタ!』舞スレ#10

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460名無しさんだよもん
上がっているこのスレを頭から見て、牛丼を釣ろうとしている舞を発見した。
なんて無謀な、と思わないでもないが、昔はるかスレで
あゆにたい焼きを釣らせた前科を持つ俺に、そんなことを言う権利はなかった。
というわけで、釣らせてみよう。

 その日、舞は波止場で釣り糸を垂れていた。
 もちろん狙うは牛丼だ。が、何時間待っても一向に牛丼は針に掛からない。
 それでも舞は、ひたすらに牛丼が釣れるのを待ち続ける。
 そんな彼女に話しかける影があった。
「釣れる?」
 通りすがりの河島はるかだった。
 舞は振り返りもせず、「釣れない……」と答えようとした瞬間、手応えがあった。
 きりきりきり、とリールを巻く。無表情の下に興奮を隠し、ひたすらに。きりきりきり。
 最後にそれは抵抗を見せたが、舞は容赦しない。
 勢いよく竿を上げ、ざぱあっ、と引き抜いたそれは、確かに牛丼だった。
 レトルトの。あの、ボンカレーみたいな箱に入った奴。十分お湯で暖めてください。
「釣れた」
「おめでとう」
 ぱちぱちぱち。得意げに胸を張る舞。
「魚拓取る?」
「いらない」
 今から食べるものに墨は塗らない。だけど食べようとして、舞は困った。
 これでは牛丼ではなく、牛皿だ。いや、皿すらないからただの牛だ。
「お米……」
 ここにいるのが美凪だったら良かったのに……と言いたいところだが。
「はい」
 なぜか炊飯器が出てきた。舞の目が輝く。もちろんその中にはキラリと輝く白米がつまっていた。
 炊きたてほやほやふっくらつやつやで、見るからにおいしそうだった。電源は? とか聞くな。
 舞はレトルトの袋を破り、牛丼をかけた。
「いただきます」
461名無しさんだよもん:04/03/23 08:38 ID:63uGmdXH
 炊飯器いっぱいの飯に、レトルト一袋は明らかに少なすぎた。しかも、
「……具が冷たい」
「海の中にいたからね」
 それでも舞は食べた。五合はあったかと思われる飯を、一袋の具材で。米粒一つ残さずに。
「ごちそうさまでした」
「おいしかった?」
「おいしかった。……でも、佐祐理の牛丼は、もっとおいしい」
「そうなの?」
「食べる?」
 舞はお弁当に、と佐祐理が持たせてくれた包みを差し出した。
 中にはやっぱりほかほかの牛丼が入っている。
「いいの?」
 舞はふるふると首を振る。
「はんぶんこ」
「ん」
 あれだけ食ってもやはり佐祐理の牛丼は別腹らしい。
 舞はちょっと苦しそうにしながらも、はるかと仲良く半分ずつ食べた。
「ごちそうさまでした」
「……おいしかった?」
「ん、おいしかった」
 舞は満足そうに頷いた。
「それじゃあ私は帰るね」
 舞は炊飯器を持った後ろ姿に手を振って、再び釣り糸をたらす。 
 釣れないままに日が暮れて、舞は釣り竿を肩に、バケツを手に、立ち上がる。
 今日の釣果はお腹の中に入ってしまったが、ぱんぱんに膨れたお腹がなによりの証拠。
 佐祐理と祐一に大物が釣れたと自慢しよう。それと、親切な炊飯器の人に出会ったことも。
 そこで舞ははたと気がついた。
「……誰?」
 聞いては見たが、とっくのとうにその人の姿は消えていた。