「こらぁ、起きなさいよぉ」
いつか聞いたような言葉を聞いて、浩平は眠りからさめかけた。
その次の瞬間。
ドサッ!
「ぐはっ」
突然、強烈な衝撃と圧迫感を受ける。うめき声を上げた後、目を開くと、
視界は顔がいっぱいに占拠していた。
「もー、かわいいカノジョをほっぽっといて寝てるなんて、相変わらず朴
念仁なんだから〜」
詩子は不機嫌そうな顔で言い、ぴんっ、と浩平にデコピンを入れた。
「てっ」
浩平は小さく声をあげる。
「へっへー、恋人を待たせてる罰だよー」
詩子は妙に嬉しそうに、悪戯っぽくころころと笑った。
「ねー、どっか遊びに行こうよー」
浩平の上に座り込んだ姿勢のまま、詩子がぱたぱたと手を振りながら言
うと、浩平は少し大仰に苦しむようなそぶりをした。
「うーん、詩子に打たれた頭が痛くて出かけらんねぇ」
「あーっ、ひどい言い訳」
詩子はそう言ってむーっ、と膨れた。かと思うと、突然ぎゅっ、と浩平
に抱きついた。
「せっかく……1年間待ってたのに」
膨れたまま、浩平の首元でそう言った。
「詩子……」
「あ」
浩平は詩子を抱き返し、手の平で頭を抱き寄せるようにして唇を重ねた。
「ん……」
口付けて離してから、浩平は詩子の頭を撫でる。