わかりやすいw
736 :
通信回線:04/03/11 20:34 ID:rIVQ7g/U
……犬飼は淡々とここに至る経緯を語りはじめた。
……この島のこと、超先生と呼ばれる研究員の暴走、それを制圧するために非公式に自衛隊とアメリカ軍の合同災害訓練を装って公に出来ない部隊を急遽送り込んだこと、救援の為のヘリと輸送艦のことなどを
「……輸送艦?つまりこの島の近くには大人数を収容できる船があるってこと?私達助かるのね?」
「……残念ながらそれは無理だ……希望を持たせて悪かったがね、私達が飛び立ってしばらくして、交信が途絶えた……最後にクラーケンと言う言葉を残してな、ノイズに混じって爆発するような音も聞こえた。おそらくは撃沈したのだろう」
「……そんな!?」
「あなた達の乗ってきたヘリはどうなったのですか?」
葉子が至極当然の疑問を口に出す…
「それについても絶望しか口からは出んよ……この島の上空に差し掛かった辺りで異常な生物に襲われた……超先生の作品なのだろうな奴の得意分野だ、
いくつかの生き物を合成したような化け物だったよ……そうだなイメージとして近いのはグリフォン辺りか、一機は墜落、岩肌に叩きつけられて爆発炎上、下川もあれでは助かるまい。
私達は追っ払ったもののヘリの後部ローターをやられてこのターミナルに不時着を余儀なくされた。ヘリは大破、全員生きていたことが奇跡と言うべきだろうな」
『…………』
重い沈黙が時間を支配する…口を開いたのは友里だった。
「私は必ず脱出路を確保しなければならないんです!あなたもここの関係者なんでしょう?何かないんですか!!?……妹が、妹が居るんです!!」
(妹…家族か……)
ややヒステリー気味にまくし立てる友里に犬飼は遠い目を……きよみを思う自分と重ねながら……
「このターミナルが外部との連絡口となっているのはわかるな……だが、大型の物資や多くの観光客はフェリーで向かい入れる……」
「えっ、ええ……」
「飛行機の類は先に倉庫を見ているが見当たらなかった……だが、このターミナルにはフェリーの物資搬入や整備ドックとして使われる作業港が地下にあったはずだ……そこになら一隻くらい脱出に使える船があるだろう」
「!?……それじゃあ!」
737 :
通信回線:04/03/11 20:35 ID:rIVQ7g/U
「あまり期待するな……あくまで可能性だ……それにしてもお前達よくも無事だったな」
「えっ、えっと……」
自分達の持つ力…不可視の力の事を話すべきかどうか迷ったが、事態の打開のためにも犬飼の協力は欲しい……友里と葉子は顔を見合わせて頷き、自分たちのことについて犬飼に打ち明けた。
「不可視の力……か、それでアレから逃げのびることが出来たのか……いや、大したものだな、なるほど竹…いや、超先生がこの島へ招いたわけだ……」
「あの程度でしたら、戦闘に支障ありません……すぐにでも向かいましょう」
「アレをあの程度か……つくづく大したものらしいな君達の力は、生き残った兵士…鍛え上げられた猛者達が為すすべもなく殺…いやあれは狩りだな、私はこそこそと隠れ逃げるしかなかったというのに……」
くくくっ、と苦笑いをする犬飼に二人は小さな違和感を感じていた……どうにも話がかみ合っていない気がする。
「あの……アレとはあのゾンビ達のことですよね?話を聞いている限りではおそらくあなたのお仲間さんのなれの果てだと思うのですが……」
「っ!?……なんのこと……ひょっとして……お前達はアレを知らないのか……いや、聞き方が違ったか……あの化け物と出会っていない!?」
「!?!?……えと…何のことだが判らないですけど」
「……そうか、合点がいった。考えてもみたまえ……誰が一体私達の部隊を死人に変えたと思っている??」
「あっ!?」
「そういうことだ……私が隠れているのも奴に見つからないためだ……銃弾を受けてもびくともしないどころか受けた傷から再生するような奴だ……おそらく仙命樹研究の産物だろうが
……鬼と言うものが居るのならアレはまさに鬼そのものだった……腕の一振りで人間を肉塊へと変える力。あまりにも単純で最も凶暴な暴力そのものだった」
738 :
通信回線:04/03/11 20:36 ID:rIVQ7g/U
「………」
「どうやら君達はかなりの幸運の持ち主だったようだな……あるいは既に獲物はいないと踏んで立ち去った後だったか……何にせよ運が良かった事に変わりは無い」
言葉が止まる…背中に冷たい物を感じながら話を聞く……
「……ふぅ、ここで論議をしても始まるまい、動くか……君達なら死人相手なら油断しなければ問題ないのだろう、私は研究員でね…戦闘になると死人相手でも厳しいのでね」
「協力してくれるのですか!?」
「やむをえん……私一人ではどうにも出来んしな…だがお前達にも協力してもらうぞ」
「ええ、ではまずこの施設の電気を復旧させましょう」
そういって腰を上げ、部屋の外を伺いながら外に出ようとする友里と葉子を犬飼は制する。
「ああ、待つんだ……まずはこのワクチンだけでも打っておけ」
「……なんですか!?それ…」
不安げに聞いてくる二人。
「私とてただ隠れていたわけでは無いのでね……死体が動いたのには驚いたがその正体は掴んだ、この島には超先生が撒き散らしたか研究所から漏れたのか知らんが、あるウイルスが蔓延している。
これに感染していると体力差にもよるがいずれ死人の仲間になるぞ。感染力が低いので直接接触でもない限りは感染しないと思うが……死んでまで仲間に迷惑をかけたくないのなら大人しく意見を聞いておけ」
流石にそんなものになるのは嫌で黙って腕を出す二人、犬飼はアタッシュケースから無針圧力式注射器を取り出しワクチンをセットして二人に投与する。
「それにしてもよく作れますね……」
「私も超先生とは同じ畑でね……小型遠心分離機など必要な機材はあらかた持ってきている……ワクチンは元々自分の為に作ったのだが余りがあっただけだ」
犬飼は無造作に機材をアタッシュケースに詰め込んでいく……今度はバインダーを取り出してページをめくっていく。
739 :
通信回線:04/03/11 20:37 ID:rIVQ7g/U
「……そのバインダーは?」
「お前達、発電室も知らないで何処へいくつもりだ……私とて観光に来たわけでは無いのでな、判る限りの地図や見取り図くらいは持ってきている……
あった、この東棟の地下一階か近いな、ここを起動したら中央管理室へ向かうぞ……通信や施設のコントロールはすべてそこで行っている」
再びバインダーをしまい今度は小さな銃のようなものを取り出す。
「それは?」
「武器だ……いちいち聞くな、無数の針を圧力で飛ばすニードルガンと言うヤツだ。針には毒が……仙命樹には致命的なものが塗ってある」
答えてるじゃん、しかも聞いてないことまで……友里は内心突っ込む、葉子の質問にいちいち答えるのは研究者の悪い癖だろうか…
部屋を出て発電室へ向かい犬飼の指示のもと再起動を行う……程なくして発電機が動き出し返す刀で中央管理室へと向かう……途中で数体の死人を犬飼の部下だった者達を打ち倒しながら……
「ここが……」
パチッ……薄暗い部屋に明かりが灯る。電気は問題なく供給されているようだった。犬飼は無造作にパネルに触れ次々と設備を起動させていく、やがて沢山のモニターに映像が映し出される……
監視カメラの映像だろうその中に整備ドックの映像もあった。
「あっ!あれ船じゃない!?」
映し出された映像の中にそれらしき一つの影が見える。
「ふむ、拡大してみるか……どうやら整備中か……故障しているようだが他には見当たらないな」
「でっ、でも直せば動くんでしょあれ……やった!やったあ!」
「直せればな……先に言っておくが私は畑違いだぞ、私は技術屋ではない」
「そっ、そんな……でっ、でもやってみなくちゃ……」
740 :
通信回線:04/03/11 20:38 ID:rIVQ7g/U
「外に救援を頼めませんか?」
諦めきれない友里、そしてもう一つの可能性を示唆する葉子
「今やっている……が、やはり妨害電波か……予想はしていたが、くそっ!……ん?」
望みが次々と絶たれていく……そんな中、犬飼は通信回線の一つに目が止まる。
「……これは直通の専用回線か……通信先はホテル?ああ、客がセスナの空きや予約の確認などサービス用途に使う予定のものか……」
外への専用回線かと思ったが違うと判って失望する犬飼……そんなもの超先生がほっとくわけ無いなと一人苦笑いする……そこへ友里と葉子が声をかける。
「ちょっと……ホテルになら連絡出来るの?」
「ん?ああ……それがどうかしたのか?」
「私達の仲間が居るかもしれないんです……もし出来るのなら、お願いしたいのですが」
「……しても構わんが、だが相手が気づいてくれなければ意味が無いぞ……生存者が居るとは限らないしな」
とは言うものの自分にもひょっとしてという気持ちがあった。ホテルに生存者が居て、きよみもそこに居るかもしれないという希望が……意を決して回線を開き相手を呼び出す。
長いコールを続けるが一向に相手は出てくれない。やはりなと諦めた矢先、ピッと回線が開いた音に全員が目を見開く。
『はわわわ……主任〜すみませ〜ん、勝手にスイッチ触っちゃいましたぁ、これが電脳戦ですか!?わたし失敗しちゃいましたか!?すびばせ〜〜ん!!』
「…………」
なんというか、なんとも言えない反応に………なんとも言いようも無い重たい沈黙が犬飼たちを押しつぶした。
【二日目 2時頃? ターミナル中央管理室】
【犬飼・友里・葉子】
【目的 脱出経路の確保?】
【所持品 特製ニードルガン・自動小銃・機材の詰まったアタッシュケース・食料・飲み物】
('A`)
乙かれ、乙かれ
ま、いいんでないかね…難しい流れの中ガンガったんだ、乙かれ
話が変わるが鬼ごっこスレって……ある意味どこまで逝くのか
いや、いい感じだと思いますよ。
書き手の方、乙です。
しかしマルチ…w
オチワロタ
電脳戦w
メンテしておこうか。
メンテ。
明日には書き上げたい…
ほしゅう
アクセス規制がひどいんだがどうか。
>>749 たしかに激しいな>アクセス規制
人大杉は専用ブラウザ使えば済むが、こればかりはなあ。
「……それで、もうこのあたりに藤田さんとあかりさんはいないみたいなんです……」
申し訳なさそうにしおれながら話すエリアの言葉に、ティリアとウィルは思わず天を向いた。
聞けば、エリアはさしたる時間差も無く先に博物館を脱出した浩之たちを追ったらしいのだが、
まるで神隠しにでもあったかのように、ぷっつりとその姿はなくなっていたのだという。
「普通に考えれば、まあ、逃げ切ってくれたんだろうが……連れ去られた可能性もあるか……」
うむ、と呟いてウィルは口をつぐむ。
「どのみち、今は探しに行ったりは出来ないわね……」
今は、二人の生存を願うしかない。さしあたって―――意識を失っている二人にちゃんとした手当てが必要だ。
「ホテルに誰かいるかもと思ったが、駄目だな。近いところで……そうだな、ここなんかどうだ」
ウィルが地図を指差す。
「診療所ね……それしかないか」
「たいした距離でもないさ。こんだけ日が昇ってるんじゃ激烈に体力を奪われるだろうが
それは化け物どもも同じだろ」
「はあ……そう信じたいものですね」
ウィルは思考する。
巡るのは、つい数分前の光景。
剣の切っ先を、こちらの眼前に向けるティリアの姿。
―――先に言っとくわ、ウィル。
剣の切っ先は動かない。震えるのは、彼女の視線か、それとも声か。
―――サラを埋めるの……手伝ってくれてありがとう。でもね。
視界の端でエリアがおろおろしているのが見える。
―――あんたの……ユンナっていったかしら? その女が……
俺は何も答えない。答えられないといったところか。
―――この島のことに……さっきの連中のことに……ちょっとでも絡んでいるんなら……
―――あたしは、そいつを許さない。それだけは、覚えといて。
俺は、答えた。
そのときは、その通りにする。それを確かめるためにも、あいつを探すのを手伝ってほしい。
さっきの連中が俺ではなく、ユンナに関連して来ていたというのなら……俺があいつを裁いてやる、と。
時は正午を回る頃。診療所へ歩く影がみっつ……
おい、なんでこんな中途半端に終わらせるんだ。
sambaに引っかかりすぎて一時規制でも喰らったのではないか。
漏れ
>>659-663に続けるつもりで弥生組の話し書いてたんだけど
これを組み込もうとするとどうしても次の話に矛盾が出てきちゃうんだな。
みさきの足の怪我だったり「風呂に入れなかった」という描写だったりするわけだが。
貼る直前になって気づいた(´・ω・`)
ほしゅうしておく
A Sad & Strong待ちめんて
何があるかわからんからな、一応だ。
759 :
最下層民:04/03/28 23:37 ID:vPMoBysV
最下層
760 :
みゅー♪:04/03/28 23:38 ID:gvcRQHGL
みゅー♪
761 :
名無しさんだよもん:04/03/28 23:38 ID:fJTNZBJ7
test
規制解除確認件保守
エイプリルフールは過ぎた。
ふと思いついて、俺は祐介の服のポケットからあるものを取り出した。
そしてそれを、ティリアのほうに投げてよこす。
沙織をエリアに任せていたため丁度手が開いていたティリアは、それを見ていぶかしむ。
「昨日ちょこっと言ったな? その中に俺が追われる原因になったヤバいもんすべてが入ってる」
ティリアに投げたのは、きのう祐介に渡していたあのディスクだ。
「そいつがなければ、ユンナに会えても俺は"おしまい"だ。ユンナは俺が裁くが、俺の裁きはティリアにまかす。
俺が許せなければ、そいつを煮るなり焼くなり砕くなり……」
「いい」
「好きなように……何? おいちょっと」
ぽい、とティリアはディスクを投げ返す。祐介を背負っている俺はあわてて口でキャッチした。
「……少なくともあんたは、あたし達やサラを殺そうとして近づいてきたわけじゃないんでしょ?
だったら……いい。あたしは、いっしょにあいつらを追っ払って助けてくれたあんたを、信じる」
「……」
すまん、と呟くのが精一杯だった。
「そのかわり、話して」
「うん?」
「あんたが言う"やばいこと"あんたが展開ってところから逃げてきて、あまつさえ殺し屋まがいの連中にまで追われてる理由。」
「……そうだな。確かに俺にはそれを話す義務がある、が」
俺は、視線でティリアに訴える。俺の様子に気づいたティリアは視線の先を探り、気づく。
そこの茂みのカゲになにかいる。
ティリアが剣を構える。俺も羽を広げ、奇襲の体制を整える。
がさがさと、音は少しずつ大きくなる。茂みから飛び出してくるのは、例によって化け物か、それとも……?
【ティリア一行 「なにか」に遭遇 正午過ぎ】
上のやつを張った後でどうしても出かけなくてはならなくなってしまい、
帰宅したら規制喰らってました。ご迷惑をおかけしました。
乙&保守。
俺からも乙。
まだまだ鯖は終わらぬ!
さて、規制解除……逝きます。
「絶対それで吸血鬼は倒せる! うちら人間の秘策や!!」
智子の叫びと共に銀色の液体の入った注射器を受け取りシュベストに向かって疾駆する蝉丸。その白髪の兵士を見据えてシュベストは警戒しながらも次の手を考えていた……
(さてどうするか……得体の知れないものをこの高貴な身に受けるわけにはいかないが、ただ避けるのでは些か無粋、ならば奴の打ち込みに対してその部分だけを霧へと変えるか……)
相手が如何に恐怖に怯えさせられるのか、ただそれだけを考える。余裕の笑みがこぼれそうになった。
(むっ!?)
シュベストに向かい疾駆する蝉丸……だが戦ってみて奴の能力を見た以上正攻法では通じまい、ましてあの余裕……こちらを見下すほどの余裕を見せている。
(その身を霧に変えるつもりか?)
奴の間合いに飛び込むべきか迷いが生じた……だが、その背中を押すように智子から更なる叫びが響く。
「かまへん!いったれ、白髪の兄ちゃん!中身は水銀や!!その単細胞生物にがつんと言わせたれ!!」
(ふっ、迷うとはまだまだ俺も未熟だな……ならば答えよう!奴が霧に変える一瞬も与えず叩き込むまで!!)
蝉丸はその一声で迷いを断ち、最速、渾身の一撃をたたき込まんと一気に踏み込んだ。
一方、シュベストの耳にもその一言は届いた。あまりの幼稚な秘策に呆れとも嘲りともつかぬ思いがこみ上げる。
(くくく……もっと賢いお嬢さんだと思っていたが水銀とは……吸血鬼のことを何も知らぬのか?それとももう気が触れていることに自分でも気がついていないのか?)
あの娘は嘘を言ってはいない……ならばと相手を恐怖に怯えさせることを考えていたシュベストに一つの案が生まれる。
(そうだな、ここは一つこの身に受けてみるか……そして自分たちの最後の希望が無駄であることを悟らせる……くくく、ハハハ……)
水銀は吸血鬼の弱点に当てはまらない、それを希望とする秘策をあえて受けて、打ち砕かれ絶望に歪んだ顔ををゆっくりと鑑賞しながらその血で喉を潤す……
あまりの愉悦に笑みがこぼれそうとなり相手を見やる……すでに男は目の前……シュベストは霧に変えずにその一撃を受け入れた。
「はあっ!!」
認識できぬほどの神速の一撃がシュベストの心臓に突き刺ささる……自身でもこの上ない渾身の一撃、確かな手ごたえを感じ、中の液体が全て相手の体に送り込まれる……だが、相手のこの余裕は何だ?
(……まさか、あえて受けただと!?)
不安が生じ、一足飛びに間合いを開ける……そしてシュベストの嘲笑が響き渡った。
「ハハハハハ、残念だったなお嬢さん……どこで間違った知識を手にしたのやら、たしかに水銀は全ての生き物には毒なのだろう、だが吸血鬼にはまるで意味がない……残念だったかね?」
「なっ?くっ!?」
シュベストの告白に何も知らない蝉丸は驚愕し、それでも次の手を考えるが、不死身の相手に打つべき手がない。
(せめて俺の刀があれば……こうなれば火をつけるか……俺も無事ではすまんが、奴をこのままにはしておけん……)
「どけ、男……私はな、そこのお嬢さんの顔が見たいのだよ……どのように絶望した顔を見せてくれるのか楽しみでならんのだ」
「くっ!?」
身構える蝉丸……なんとかこの娘だけでも逃さなければ……逃げろと声をかけようとしたその時大きな笑い声が響いた。
「あはっ、あははははっ……くくくっははぁっ、あはははははっっ!!」
『!?』
シュベストと蝉丸が同時に笑い声の方を見やる。大声で笑っていたのは智子だった……
「やれやれ、少しやりすぎたか……まさか気が触れてしまうとはな、興がそげた……まぁいい、見れば美しい娘……我が花嫁に加えようと思っていたが、血を吸った後は犬どもの餌にしてやろう」
「そんなことはさせん!貴様はここで仕留める!!」
「ふん、まだやろうというのか……愚かな、ならばその首を我が屋敷にて飾り付けてやろう!」
そう言いながら蝉丸を引き裂こうと踏み込み……そしてシュベストはその場で転げ倒れた……
『!?』
なにが起こったのか蝉丸には理解できなかったが相手が転んだ理由はわかった……シュベストの踏み込んだ足が根元からもげ落ちていたのだ。
「なっ!?なにが起こった!貴様何をした!!?」
自身でも理解できないのかありったけの呪詛をのせて蝉丸を睨み付ける……その答えは笑い声と共に智子から聞こえてきた……
「あはははっ!こんにうまくいくとは思てへんかったわ。せやけど思った以上に早よ効いたな、さすが心臓、回りが速い、やったな白髪の兄ちゃんあんたの勝ちやで」
「きっ貴様!!」
そう叫んで智子の方を睨もうと起き上がろうとして、腕がもげてさらに這い蹲る……考えられるとすれば先ほど中身が水銀というのは嘘で、中身は別の何か……嘘は言っていなかったはずだがそうとしか考えられない……
「まさか、先ほどの……貴様、水銀というのは出鱈目か!まさか……法儀式済みの銀と聖水の混合物!?」
「あははっ、ちゃうちゃう、失礼やなあれの中身はほんまもんの水銀やで、嘘なんか言ってへん、嘘やないってわかってるから、あんたはわざわざ受けてくれたんやろ?うちの予想通りに……まったく油断スキルAってとこやな」
「なっ!?馬鹿な……吸血鬼に水銀など……」
「下手に中身がわからんかったら逃げられると思って、中身をばらして正解やったわ、せやな、ほんまもんの吸血鬼には水銀なんて効かへん、でもあんた自分で言うてるやん全ての生き物には毒やて」
「すまないが、俺にも分かるように言ってくれないか?」
どうやら本当に勝敗が決したらしい……蝉丸は警戒を解かず成り行きを見守る。
「ん?かまへんよ……っても答えは簡単、こいつは吸血鬼なんかやあらへんだけや……吸血鬼によく似た特性を持つ生き物ってとこなんやろな……」
「ふざけるな!!我を侮辱するつもりかっ!!」
すでに虫の息を上げながらもありったけの呪詛を口に出す、だが目らしきものは赤く腫上り、顔の穴という穴からはゴポゴポと血がたれ落ちる……
「ふん、なら一つ訊くけどなあんたのその様はなにや、そもそもおかしいと思わへんかったんか?うちら薬で吸血鬼化を抑えたんやで、もっとも確証を得たんは茜のお陰やけどな」
「なんだと……」
「すまんが、まだ解せんのだが……こいつの霧化などの変身能力や吸血鬼化をどう説明するのだ?あれはいくらなんでも妖の類でなければ説明がつかん」
「それも想像やけども説明できると思う……確かに普通の生物には無理やな、せやけど白髪の兄ちゃん、あっと……蝉丸さんか、群体生物ってしっとる?」
「なんだそれは……っ!?」
どこかで聞いたことがある言葉……何処でだろうか、そして唐突に思い出す。
(仙命樹……たしか犬養もそのようなことを言っていたな……)
「つまりや、さっきも言ったけど単細胞生物……あれの集合体、例えばアメーバとか……それがそいつの正体なんやろ、こいつもここの研究所で生まれた化け物には違いないわ」
そう言えば確かにあの時、『単細胞生物にがつんと言わせたれ』と言っていたなと思い出す。
「認めぬっ、そのような戯言!!我はシュベスト……夜の貴族なり」
「吠えとれ、多分吸血鬼の特性と弱点を遺伝子レベルでプログラムされた単細胞生物の集合体、元にどんなん使こたんか知らんけど……
普段は外見どころか骨格や血管までも擬態し必要に応じ姿形を変える。吸血行為と一緒に相手の体内に入り中から相手を侵食し増殖する……
それがあんたの正体や、知らへんかったやろ、自分でも……なにせその自我ですら吸血鬼になりきるための擬態なんやから」
智子は自分の推理をすでに全身が崩れ落ちているシュベストに止めの一言として言い放った。
「ば…馬鹿…な……では自分は……一体…」
「まっ、そう言うことや、薬で吸血鬼化を止めれたのもその入り込んだ細胞から侵食を防ぐ特効薬、
水銀がここまで効いたのはあんたが自分自身で自分の存在を認めてへんかったから、全身隅々まで水銀が行渡って死滅し既に形態を維持できへんくなったからや
……もっともうちらじゃあんたにこの注射を打ち込むことなんて無理やったしな……蝉丸さんが助けに来てくれなかったらアウトやったわ、確かにあんたは恐ろしかった。それだけは認めたる」
「認…めぬ……私は………シュベ……ス…ト……」
そう言ってシュベストは崩れ落ちた……後に残ったのはシュベストの着ていた衣服と姿形を失ったゲル状のなにか……だがその何かも蒸発していく、確かにその最後は吸血鬼の伝説の様であった……。
【シュベストVS蝉丸・智子決着……シュベスト消滅】
【矢島、郁美、きよみ、茜、別の部屋】
【時間 1:30頃】
乙。
今だから言うけど、吸血鬼は何げに火に弱いんだよな。
斬新な発想で決着がついたな
乙
>>775 火に弱いんじゃなくて、診療所を燃やして天井に穴あけて
太陽の光に当てるってことだと思う。
いやそうじゃなくて、実際の吸血鬼の弱点として炎は存在するんだが……。
つっても、実際には吸血鬼なんていないわけだが。
乙、出来れば芳晴の伏線の消化も期待したかったけど
水銀うんぬんの問題からよくぞここまでまとめ上げたと思うとカンドー新鮮だった
にしてもシュベスト……最初はぽっと出のやられ役かと思たのに長かったよな〜
ひょっとして鯖の中では一番長い対決だったのか…
なにはともあれオツカレサマです。
だれか各グループの時間軸のまとめやってくれないかなぁ 書くときの参考にしたい
まとめサイトが事実上停止状態だかんね……なんかHDがおかしくなっちゃたらしいし
なんにせよパーティの見落としや時間軸での矛盾などなど油断すると出てくる…実際もう出てるし
マンドクセ