スカートの中もシンプルです@栞スレ9

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700名無しさんだよもん
今、私は怒っています。
今日は1月の31日。
明日が何の日なのか、あの人は知っているはずなのに。
それなのに、なーんにも連絡もありはしない。
「・・・許しません」
申し遅れました。私、美坂栞。
ただいま、とってもご機嫌斜めです。

「栞ー、電話よー」
お姉ちゃんの声。
あの日、祐一さんが私を『助けてくれた』あの日。
その時以来、お姉ちゃんはまた、私を一人の妹として見てくれるようになりました。
あの出来事がなかったら、きっと今も私達は離れ離れのまま。
ううん、きっと、私自身もこの世界には居なかった事でしょう。
「栞ー、相沢君から電話よー」
だっ!
思わず部屋から飛び出て一階へと駆け下り、電話へと飛びつきます。
「きゃっ!」
悲鳴を上げて後ずさるお姉ちゃん。
ごめんなさい、でも、今はそんなこと気にしている余裕はないんです。
「祐一さん、祐一さんですか!?」
電話に向かって問いかける。
「おう、祐一さんだぞ」
701名無しさんだよもん:04/02/01 00:15 ID:RG02I+50
「祐一さん、今一体どこに居るんですか!?」
私は疑問を素直にぶつける。
ここ数日、祐一さんは私の元に姿をみせなかった。
ほとんど毎日のように顔を合わせていた二人。
・・・恋人、なのですから、当たり前なのでしょうけれど。
そうやってただ会っているだけでも楽しかった。
そして、たまに体を重ね・・・。
こほん、それは余計でしたね。
とにかく、顔を合わせなかったことがなかった二人。
それが、ここ数日は離れ離れになっていました。

私は祐一さんを探しました。
お姉ちゃんにも聞いてみた。
名雪さんにも聞いてみた。
・・・ついでに妖怪アンテナ付き猫口さんにも聞いてみた。
でも、誰もその行方を知らないという。
・・・おかしい。
こんな事って、今までに一度もなかったから。

「祐一さん、今どこに居るんです!?」
「んー」
「祐一さん!」
「言っても怒らないか?」
「怒らないから言ってください!」
「・・・札幌」
「・・・はい?」
「だから、札幌」
702名無しさんだよもん:04/02/01 00:16 ID:RG02I+50
「・・・札幌?」
さっぱり理解ができません。
あの人は、札幌なんかで何をしているのでしょう。
・・・遊びに行ってる?
まさか、それこそナンセンスです。
だって、明日は私の・・・なんですよ?
それなのに、それを放っておいて、一人で遊びに出かけるなんて。
そんな事、天が許しても、私が許しません。
「祐一さん」
「何だ、栞ー?」
「・・・私、今とっても怒っているんです」
「ほう」
「祐一さんがどこに行こうと、それは祐一さんの自由です。私には止める権利なんてありません」
「けれど、私達恋人同士のはずじゃないですか!?それなのに、一言も無しで!」
「私、今とっても怒っているんです。自分でも何をしでかすか判らないほど」
「・・・聞いていますか、祐一さん?」
電話の向こうからは無言の肯定。
私は一区切りおいてから話し出す。
「・・・明日、何の日だかご存知ですよね?」
「テレビ放送記念日だっけ?」
「・・・祐一さんのばかっ!」
私は電話を叩きつけるように切った。
「・・・栞」
お姉ちゃんが心配そうに私を見ている。
けれど、私はそれを気にかける余裕もなく、自分の部屋に戻った。
・・・そして、しばらくの間泣いて過ごした。
本当に、祐一さんの馬鹿。
703名無しさんだよもん:04/02/01 00:17 ID:RG02I+50
そして朝が来て、今日は2月1日。
嬉しいはずの日なのに。
前には、こんなに待ち望んだ日はなかったというのに。
私はベッドから身を起こす。
・・・一晩中泣きはらしていたせいか、今日はちょっと寝坊です。
身支度を整え、下へと降りる。
すると、聞こえるにこやかな談笑の声。
この声は、お姉ちゃんと・・・祐一さん!?
私は駆け出すように居間へ飛び込みました。
「あら、やっと起きたのね、栞」
「よう、おはよう栞。お邪魔してるぞ」
祐一さん。・・・どうしてここに?
「ごめんね栞、どうしても当日まで秘密にしておいてくれって相沢君に頼まれてて」
お姉ちゃんの声も耳に入らない。
「ゆう・・・いちさん、今日は・・・」
「おう、栞の大事な日だからな。大急ぎで戻ってきたぞ」
そう言いながら大きな箱をドンッとテーブルの上に置く。
「朝早くから、なんだが・・・」

「ハッピーバースデー、栞!」
「祐一・・・さん・・・」
私は思わず祐一さんの胸に飛び込んでいました。
お姉ちゃんが呆れ顔で見ています。
でもそんなの気にしない。
だって、この人は私の大切な人だから。
704名無しさんだよもん:04/02/01 00:18 ID:RG02I+50
「・・・ところで、この大きな箱は何ですか?」
直径50センチはありそうな箱。
「ん、開けてみていいぞ。俺からのささやかなプレゼントだ」
箱を開けてみる。むわっとしたドライアイスの煙が箱からあふれ出る。
「アイスの・・・雪だるま・・・?」
「おう、おっきなアイスの雪だるまちゃんだぞ」
「なんたって札幌産新鮮ミルクの雪だるまちゃんだ。ほっぺが落ちるほど美味いぞー」
そんな事のために、わざわざこの人は札幌まで。馬鹿みたい。
箱から取り出してみる。・・・確かに大きい。
ご丁寧にチョコレートで目や鼻や口、お菓子でできた両手にはちっちゃな手袋まで。
キラリ。その手袋の左手に光る小さなもの。
そっと手袋から外してみる。
「・・・指輪?」
それは、飾り気のないシンプルな銀色の指輪。
「祐一さん、これ・・・」
祐一さんは、少し照れたような感じで。
「当たり付きアイスなんだ。良かったな、栞。大当たりだぞ」
「祐一さん!」
ぎゅっとその胸に祐一さんを抱きしめる。
ちょっと苦しそう。
でも、これは罰だから、仕方ないです。
私をドキドキさせた罰。
私を悲しませた罰。
私をびっくりさせた罰。
・・・そして、こんなにも。
「ありがとうございます、祐一さん」
そっとその指輪を左手の薬指にはめる。ぴったり。
こんなにも、私をうれし泣きさせた罰、ですから。
705名無しさんだよもん:04/02/01 00:19 ID:RG02I+50
「まったく、見ているこっちが胸焼けしちゃうわ」
お姉ちゃんが愚痴をこぼす。
「大丈夫です、こんなに大きくても、私全部食べられます!」
「違うわよ。そっちも胸焼けするけれど、あなた達の甘甘っぷりによ」
アイスを征服しつつある私を見ながら、お姉ちゃんはため息一つ。
「まったく、相沢君から栞の指のサイズ教えてくれって聞かれたときは、どうしようかと思ったわ」
「すまん香里、他に頼めるやついなかったし」
「まあ、いいけれど」
そして祐一さんの肩に手をかける。
「当然、私の誕生日も、期待してもいいのよね?」
「か、香里!?」
「お、お姉ちゃん!?」
ライバルは、意外な所に潜んでいる。
アイスのスプーンを片手に持ったまま、私は実感しました。
けれども、私は絶対に負けません。たとえ、相手がお姉ちゃんでも。
この指輪と、おっきな雪だるまに賭けて。
私は祐一さんを守り抜きます。ディフェンディングチャンピオンになるのはこの私なんです。
私の未来の幸せのために。私の将来の旦那様のために。
絶対に負けませんよ、お姉ちゃん!


栞ちゃん誕生日記念SSです。
些細なすれ違いと、ちょっとした日常。
うまく書けているかどうかは判りませんが、こんなSSでよければどうか受け取ってやってください。

それでは、美坂栞ちゃん。Happy Birthday!!