お〜い、誰か久弥の行方を知らんか?28

このエントリーをはてなブックマークに追加
89名無しさんだよもん
『なおくん、そろそろ起きないと、遅刻しちゃうよ』

今日から新学年、新学期。
幼なじみのみきぽんは、「もう子供じゃないんだし」と、何度言っても起こしに来る。
丘の上にある『若草山』で、今年から2年生になる俺たちは、通い慣れた通学路を歩き始めた。

『直樹ーっ、先に行くからねっ』
脇を追い抜いていく従妹のいたる。仕事を失って以来、俺−久弥直樹−は、奈良公園に世話になっている。
当時、同居することに大反対した従妹のいたるも、この春から若草山に入山してきた。
そんなありふれた日々。・・・・・・のはずが。

『どさっっ』
学園の屋上で昼寝を決め込んでいた俺に、空から、女の子が降ってきた。
『・・・・・・麻枝?』
その娘は転校生として、翌日からクラスメートになった。しかも、俺のことを誰かと勘違いしているようだ。
ゆっくりと時は流れ、変わるものと変わらないものが、俺の周りを流れていく。
繰り返されるありふれた日々が、少しずつ、動き始める。