柏木四姉妹の生まれてくる順番が逆だったら

このエントリーをはてなブックマークに追加
590347
夢を見ていた。
 なぜか、俺はそれが夢だとわかった……。

 目の前に、一人の女が立っていた。
 服が里の物ではない。
 異形の者の服、エディフェルと同じ衣を纏っていた。
「ウヌ、ジロウエモン………カ?」
「拙者が次郎衛門だが、如何に?」
 女は俺を見据えた後、フムと頷いた。
 次の瞬間だった。
 恐るべき速度で、女の手套が喉元へと突き出された。
 シャッ!!
 皮、一枚でかわす。
 シュッ!
 ヒュバッ!!
 次から次へと繰り出される攻撃に、俺は身を反らすのが精一杯だった。
 とても、刀を抜く暇などない。
 しかも女は巧みに俺の死角を攻めてくる。
 まずい!
 一瞬、石に足をとられた。
 体が僅かに、宙を泳ぐ。
 女はそれを見て笑った。自分の勝利を確信するかのように。
 死ぬな。
 戦の勘が、俺に告げた。
 避けようのない一撃が、俺めがけて繰り出された。
「くっ!」
 覚悟を決める他、なかった。
 バシュゥ!!
 なんだ?
591347:03/12/20 05:14 ID:y2QAbR3V
 目の前で、一瞬何かが起こった。
 俺は女共々、その場から吹き飛ばされ、地面に転がった。
「ジロウエモンッ!!」
 愛する女の声が聞こえた。
 起きあがると同時に俺は抜刀した。
 相手の女も、こちらに向かって跳躍する腹らしい。
 だが、俺とそいつとの間にエディフェルが割って入った。
「レダムッ! アズエルッ!」
 俺の知らない異形の言葉で、エディフェルは叫んだ。
「ジェデス、エディフェルッ!! リディアッ!」
 やはり、相手の女も同族の異形らしい。
 しばらく、二人は何か口論した後、その女は俺をにらみ、去っていった。
「ジロウエモン、ケガ、大丈夫?」
 エディフェルは俺の方に来ると、首に出来た掠り傷をそっと、愛でるように撫でた。
 治癒の能力を、俺の為に解放する。
「エディフェル、彼は何者ぞ」
「アズエル、エ…ト……」
 エディフェルは何か、言葉を探しているようだった。
 そういえば、あの女はどこかエディフェルに似ていたような気がする。
「もしや、姉妹か?」
 俺がそう言うと、エディフェルはニコッと微笑み、両手をポンと合わせるように叩いた。
「そう、アズエル、エディフェルと姉妹」
「なぜ、あやつは俺を?」
「多分、私のせい……」
 責任を感じるのか、シュンとした顔で下を向いた。
「そうか」
「本当はアズエル、とても優しい………」
 俺を殺せば、エディフェルが帰ってくるとでも思ったのだろうか。
 なんとなく、想像がついた。
592347:03/12/20 05:16 ID:y2QAbR3V
「なあ、エディフェル。おまえは一体、何人兄弟がいるのだ」
 すると、エディフェルは親指を折り、残りの指を立てて、俺に示した。
「四人いる」
 笑いながらそう答えた。
「全部、女。みんな、とても仲が良いの」
「そうか………」
 俺は少なくとも、後、二人の女に襲われるのだろうか。
 そう思うと、何となく憂鬱な気分になった。
 俺の気持ちを察したのか、エディフェルは俺にしがみつき、しなだれた。
「私が、守ってあげるから。きっと、話せば、みんな判ってくれるから……」
 手を握る指が小刻みに震えていた。
 俺は頷くと、その赤い唇を、そっと吸いあげた。