散々遊んで疲れ果てたのか、みちるは「すー」と寝息を立てて
美凪の背中に掴まっていた。
彼女の振りまわした花火の燃えカスを集めるのには相当苦労したし、
それで本人はこんなに気持ち良さそうにしているのを見ると、どうにも
理不尽な感じもしてくるのだが、それもまぁ、いいかと思う。
「国崎さん、お疲れ様です」
「…あいよ」
「ちょっと、…というより、やっぱりきつかったですか」
「全然、と言いたいところではあるけれども、かなり」
「ふふふ…でも」
美凪は後ろを振り向き、幸せそうなみちるの寝顔を見ていた。
「みちる、とっても嬉しそうでした」
俺も、彼女につられてみちるの寝顔を見る。
「そうだな…なぁ、美凪」
「なんですか」
「みちる、俺が背負ってやってもいいか?」
「いえ、それは構わないですが…国崎さん、疲れてるんじゃ」
「これでも体力はあるほうだからな、平気だよ」
「そうですね…」
俺達はみちるが起きないように、ゆっくりとみちるを背負いなおした。
華奢なみちるの体は驚くほど軽い。
「それじゃぁ、また明日な、美凪」
「はい、それでは…」
「あ、それと」
「はい?」
「美凪も、今日はありがとうな。俺もなんだかんだで楽しかったよ」
「…はい」
彼女はとても、嬉しそうだった。
「流石に俺は疲れたぞ、みちる」
「…くー」
「そういや、俺はお前の家がどこにあるのか知らないんだけれど」
「…すーすー」
「まぁいい。たまにはこうやってふらふら歩くのだって悪くないだろ」
「……くー」
「さてと…たまに夜空ってのも見上げると、綺麗なもんだな」
「……」
「あんな遠くに星があるってのが嘘みたいだ。誰かが天井に張り紙してるみたいに
俺には思える」
「…」
「なぁ、みちる」
「なに?」
「なんだ、起きてたのか」
「うん…」
「じゃぁさ」
「うん」
「楽しかったか?」
「うん!」
「そうか」
「うん」
「俺も楽しかったよ」
みちるは俺の背中から離れた。