花火の火がすっかり怖く無くなってしまったのか、それからみちるは
両手に線香花火を持って、その輝きを目に焼き付けていた。
黄色や緑や青や、さまざまな色に輝き続ける火は確かに俺にでも綺麗に
見えたし、そもそも花火なんて久々なことで、こんな簡単なことで得れる
感動も忘れていたのかと、少し寂しい気持ちが心にはあった。
「綺麗だね」
「なんだ、やけに素直だな」
「んにぃ〜、むーどを壊すようなことを言うな!国崎往人!」
「へいへい」
しかし、少しでもすきを見せると調子に乗るのが最近のみちるなのだ。
花火の使い方が分かってきたのか、何かのテレビで見たのか知らないが、
彼女は例の花火に火をつけていた。
「くにさきゆきとくぅ〜ん」
「なんだよ気持ち悪い」
「これ、なぁんだ?」
ねずみ花火だった。
「おわあああああああああああああ」
「走れ走れ!国崎往人♪」
バチバチバチと激しい爆音を立てながら、五個だか六個だかの
ねずみ花火が俺の足元で高速で駆け回っていた。
みちるの手元から次々と新しいねずみ花火が放たれ、俺の後を
追うようにそれらは俺を駆けまわしてくる。
「や、やめるんだみちるっ」
「やだよぉっだ!みちるを馬鹿にした罰だからね」
「馬鹿になんかしてないだろうが!」
「みちるの心は『ガラスのようにでりけーと』なんだから」
「適当なこと言うな」
「にょははは」
もはや半分爆弾魔となったみちるを止めれる人間は居ない。
彼女はついに最終兵器とも言える、あの花火を手にしていた。
「これってどうするんだろ」
「み、みちる!それはやめろ!」
ロケット花火だった。