新作乙〜。
久瀬があの孤児院の出とは。浩平ともそこそこ仲良かったみたいだし良い感じですね久瀬。
あと、、瑞佳の現状がようやく判明しましたね。まあ、半分以上予測通りですけど。
がんばれー
保守
73 :
Uスレの1:03/06/29 21:20 ID:S0hgvZGE
すみません、ちと無意味に忙しい。
親会社が一部上場したら、連結決算の子会社まで四半期ごとの決算になるんやね……
例のリンク申請含め、来週中には事を動かしますのでご容赦を。
新作も……
干す
75 :
勢揃い:03/07/01 01:46 ID:NvED/76v
(海を止める、か。発想はともかく……ん?)
「……あの、ところで」
おずおずと何か言い出そうとする彩を見て、源之助は開き掛けた口をまた閉じた。
「……さっきの海を止めるって……何の話ですか?」
彩に尋ねられて、蝉丸は落ち込んでいた気分を無け無しの気力で追い払うと、事の次第を説明した。
突如現われた島に、小型の船で荒れた海を渡り上陸せねばならない、と。
しかしそれを聞いた彩の答えは素っ気無かった。
「……そんな、無理です」
「な、何故?」
折角の案をきっぱりと否定されて、蝉丸は動揺が抑えられない。
「海を止めるなんて……わたしには、無理です」
と言って彩はチラリと源之助を見るので、蝉丸もその視線を追い、源之助に問う。
「ならば」
「私だって無理ですよ」
これまた呆気なく否定される。
「ふみゅ〜ん、だからわかるように言いなさいよ!」
「もう少し詳しく説明してくれる?」
さすがに詠美でなくともこれでは分らない。彼女を軽くなだめ、梓も説明を求める。
「別に難しい理屈ではありません。コップの水を飲み干せても、樽ではそうもいかないだけです」
「なるほど、程度の問題なんだ」
76 :
勢揃い:03/07/01 01:47 ID:NvED/76v
「別に海全体でなくとも、例えば海の上に船が通るくらいの、一本の道くらいなら何とかならないか?」
諦めきれないのか蝉丸は食い下がる。
源之助は少し考えた。
「それくらいなら可能かもしれません、しかし問題が一つあります」
「どんな問題だ?」
「波です。船の底は凪いでいても、周りから被さってくる大波で船が浸水してしまうでしょう」
「ならば波が届かない程度に広げてはどうだ」
「それでは島に辿り着くまでに、彩が倒れてしまいますよ」
「名案だと思えたのだが……」
ついに蝉丸はがっくりとうな垂れた。
その一方で、例によって梓からやり取りの解説を受けた詠美が口を開く。
「じゃあ、屋根つけちゃえば?」
その一言に全員が詠美の方を向く。
「水が入ってこなければ良いんでしょ?だったら船に屋根つければ良いじゃない」
一瞬の間を置いて、その改良案に飛びつく。
「なるほど、その方法なら何とかなりそうです」
「うん、それくらいなら簡単な工事で済みそうだし」
「流石は女王陛下」
「あ、あったりまえでしょう。なんたってあたしは、ちょお偉いくいーんなんだから」
一斉に感心されて、詠美は今や有頂天である。
解決策も出たので会議はここで一旦区切り、詠美と源之助が退出した。
後の細かい指示は梓がすることになる。
77 :
勢揃い:03/07/01 01:47 ID:NvED/76v
「そうなると船を改造するとして、出発は明朝。それまで特務部隊は待機するとして……そう言えば
新城が見当らないけど何処?河島も何時の間にかいなくなってるし……」
そう言って梓はぐるりと室内を見まわす。
「あ……はるかさんは、つまらないからやっぱり部屋に戻る、と……」
申し訳無さそうに彩が答える。
梓は苦笑したが、彩とはるかは会議に出席していたわけでは無いし、内容は隊長の蝉丸から通達するだけだ。
そもそもお茶汲みは給仕がいるし、二人が勝手に会議に入ってくるのがおかしいのだが。
「で、新城は?」
「それが先日から姿が見えなくて……」
やれやれと梓は頭を振る。
「監督不行届きだぞ、坂神」
「申し訳ありません、閣下」
神妙な面持ちで蝉丸は頭を垂れた。
「伝説の迷宮らしいから、万全を期したかったんだけどなあ。仕方ないから五人で行ってもらうよ」
「五人?と言う事は!」
跳ねるように顔を上げる蝉丸。
それを見て梓は大きく頷く。
「光岡と松原の二人が、今日中には戻ってくることになってる」
「おお!それは心強い」
「……あの、どう言う人達なんですか」
梓の言葉から一緒に探索に赴く二人が気になったのか、彩が質問する。
「何だ、まだ教えてなかったんだ」
「何分慌しかったので」
確かにその通りだと梓は納得した。
「少し説明してやりなよ。自分の所属に誰がいるのか分らないんじゃ、困るだろうし」
全くだ。蝉丸はつい後回しにしてしまったことを恥じ入る。
78 :
勢揃い:03/07/01 01:47 ID:NvED/76v
「特務部隊は隊長の俺、副長の光岡、はるか、沙織、葵、そして彩、お前を入れて六人からなる」
蝉丸は彩に簡単な説明を始めた。
「光岡は俺の同期で、頼りになる男だ。葵は未熟な面もあるが、真面目で一本気な娘だ。はるかはまあ、
あの通り捕え所が無い。沙織もまあ、察してくれ……皆腕は悪く無いんだがな」
その言葉は段々と尻窄になっていった。
彩は何と無く、蝉丸がそれぞれの隊員をどう見ているかが理解できた。
二人のやり取りを見るに、光岡と葵と言う二人はその信頼も篤いのだろう。
「坂神の言う通り、腕は立つし気の良い連中だよ。ただちょっと何人かマイペース過ぎるってだけで」
苦笑しながら梓がフォローする。
多分、国風なのだろう。何しろ女王からして、ああなのだから。
「と言うことで、今回は新城以外の五人で任務に当ってもらう。基本装備以外に何か必要な物があれば、
今夜の内に申請しておくように。何か他に質問は?」
しばし蝉丸と彩の返答を待つ。
「無ければ解散」
特に質問が無いのを確認し、梓は解散を宣言した。
「それじゃ明日も早いんだから、しっかり休みなよ。お疲れさん」
梓は軽く手を挙げて、そう言い残すと退室した。
その背に一礼し、蝉丸と彩も部屋を後にする。
* * *
79 :
勢揃い:03/07/01 01:48 ID:NvED/76v
――会議から数時間後――
二人の人影が靴音を反響させ、特務部隊に宛がわれた部屋への通路を行く。
「やれやれ、とんだ無駄足だったな」
「仕方ありませんよ。次に期待しましょう」
溜息まじりに言う男に、隣の少女が明るく答える。
男は少女の前向きさに軽く笑みを浮かべる。
「そうだな。また次があるな」
そう言って扉を開けた。
部屋には三人の男女が居て、彼らは来訪者の訪れに顔をこちらに向ける。
「光岡悟、ただ今帰還」
「松原葵、戻りました。お久しぶりです皆さん」
直立の姿勢で二人はそう告げた。
中に居た蝉丸、はるか、彩が、それを聞いて三者三様に迎える。
「光岡!葵!」
「ん。お帰り二人とも」
「……あ、この人達が……」
「うむ、任務御苦労。とにかく中へ入って座ってくれ」
蝉丸は二人を労い席に招く。
光岡は軽く頷き、葵は元気良くはい、と返事をしてから椅子に腰掛けた。
「疲れているところ済まないが、早速報告を頼む」
二人が座るのを待って、蝉丸は切り出す。
「残念ながら、秘宝は発見できなかった。どうやらガセだったようだ」
「そうか……」
そう簡単にはいかないと分っていても、やはり落胆してしまう。
「すみません」
「無いものは取ってきようが無い。別にお前達のせいではない。気にするな」
その必要は無いと蝉丸は、謝る葵に言い聞かせる。
80 :
勢揃い:03/07/01 01:53 ID:NvED/76v
「んーそうだね。見つけたのに取られちゃったのよりは、ましだよね」
別に責めている訳では無いのだろうが、はるかのその発言に蝉丸はぎょっとする。
「どう言うことですか、隊長?」
これまた邪気の無い質問を浴びせる葵。
「う、それは、つまり……」
詳細は抜きにして、蝉丸は見つけた秘宝を帝国兵に奪われた事を告げる。
「レフキー特務部隊隊長がその場に居て、むざむざ秘宝を奪われるとは……」
「む。面目ない……」
重い空気を何とか払おうと、葵は何か言おうとするが言葉が見つからない。
「……あの、わたしもその場に居たんですが、力になれなくて……その、すみません」
彩のその台詞に蝉丸はきっぱりと答える。
「そんなことはない。彩、お前は良くやった。任務の失敗は俺の責任だ」
「でも、隊長さんも命懸けで……」
そこまで気にされるとは、光岡も思っていなかったので話を少々ずらす。
「女王陛下はこのことを?」
「無論、既に報告してある」
「ならば俺が言うべきことはない。むしろ隊長の行動に対して、批判めいたことを言って申し訳ない」
「いや、責められて当然のことだ」
何処までも生真面目な男である。
81 :
勢揃い:03/07/01 01:55 ID:NvED/76v
これ以上長引かせないように、光岡はそこで話を区切り彩を見る。
「ところで彼女は誰なのか、そろそろ紹介してくれると有り難いのだが」
「む。そうだったな。彩」
そう言って蝉丸は彩に自己紹介を促す。
「あ……長谷部彩です。この度、特務部隊に配属されました。どうぞよろしく……」
「光岡悟だ。ここの副長をしている」
「松原葵です。よろしくお願いします!」
「ん。河島はるか、よろしく」
「いや、お前は知ってるし……」
一緒になって名乗るはるかに光岡は突っ込む。
「差別だ」
突っ込むだけ無駄だと思い今度は無視した。
「彩は自然術と言う術を使う魔術師だ」
蝉丸の説明を聞き、光岡と葵は感心する。今まで特務部隊には、専門の魔術師はいなかったからである。
「光岡は俺と同じで剣術を使う。葵は無手格闘術が得意なんだが……」
そこで蝉丸は葵を見る。
「そう言えば葵。新調した武器の具合はどうだ?」
「はい、良いですよ。金属製なのにそれほど重くなくて、扱いやすいです」
葵は革のベルトに留めてあった棒を、机の上にゴトリと置く。
それは鋼鉄で補強されたトンファーであった。
「普段はこれを使ってます。素手の格闘術はいざと言う時の武器です」
「凄いんですね……はるかさんはどんなことが?」
「ん。私はあまり大した事は出来ないよ」
彩に話を振られてはるかは言った。
「はるかは色々とやれるんだが、飽きっぽいのか何なのか、持っている技術に脈絡が無くてな」
82 :
勢揃い:03/07/01 01:56 ID:NvED/76v
「んー。じゃ、一つ見せてあげる。隊長さん協力して」
少し考えて、はるかは蝉丸を呼んだ。
「何をすれば良いんだ?」
「ちょっとこれの刃の部分を握って」
そう言ってナイフを取り出す。
「こうか?」
手渡されたナイフを素直に持つ蝉丸。
「で、引く」
「ふむ。ぬお!?」「なっ」「わわ」「あ……」
刃を握ったままでナイフを引けば、手が切れる。当然だ。
蝉丸の手の平から血が滴る。
しかしはるかが何事か唱えると、蝉丸の傷はすぐにふさがった。
「凄い……治癒術、ですね。でも、魔術師はいなかった筈じゃ?」
「魔術師って程じゃないよ。かすり傷を治すくらいがせいぜいだったりする」
はるかはそう言ったが、今の怪我はかすり傷には見えなかった。
「実は隊長と副長はちょっと特殊な体の人で、怪我が治り易かったりする。だから私程度の治癒術でも
併用すれば結構治せる。でも他の人はそうもいかないから、なるべく怪我しないようにね」
正確にはその二人以外にも、初期の特務部隊隊員は同様に身体能力や治癒力が高かった。
彼らの体には仙命樹なるものが移植されており、それがその特殊な力の源泉であった。
「何も実演しなくても良いだろうに」
「まったくだ」
何故か蝉丸と光岡は、仲良くテーブルの血を拭取りながら抗議した。
「実際やってみせたほうが分り易いかな、と思って。ごめんね隊長、痛かった?」
もう蝉丸は何も言う気になれなかった。
83 :
勢揃い:03/07/01 01:56 ID:NvED/76v
「あ、そうだ隊長」
まだ何かあるのかと少々うんざりぎみにはるかを見る蝉丸。
「沙織ちゃんから手紙がきてた」
はるかは懐から手紙を取り出すとヒラヒラと揺らした。
「そう言う物は早く見せてくれ」
「ん。ごめん、忘れてた」
受けとって内容を確認する。
『隊長さん元気〜?
あたしは今フィルムーンにいるんだけど、
これからちょっと島に行って来ます。
何でそんな所に行くのかって言うと、
その島って突然現われてどうも秘宝がありそうなの。
そんなわけで期待してて。
と言っても今日か明日一杯は、
足止めされて動けないんだけどね。』
――沙織――
「……この手紙は、どう言う風に送られてきたんだ?」
「城の特務部隊宛てに、普通の手紙と一緒に」
「仮にも機密文書扱いになる書類を、普通の手紙で……」
蝉丸は眩暈を感じた。
「でも大したことは書いてないみたいだし、一応気を使って鳥で送ったみたい」
ちなみにレフキーでは、通常手紙は民間のキャラバンか、伝書鳥によって運ばれる。
鳥の方が遥かに早いが料金は割高で、さらにある程度大きな都市間でしか扱っていない。
84 :
勢揃い:03/07/01 01:57 ID:NvED/76v
「でもこれで上手く行けば、現地で合流できるかもね」
「何の事だ?」
帰って来たばかりの光岡と葵は、島に行くことをまだ知らされていない。
何故かそのことを、蝉丸が何も言わないので、仕方なくはるかが島にある迷宮を探索する旨を伝える。
せめて一日くらいはゆっくり出来る、と考えていた光岡はさすがに疲労を隠せなかったが、これも宮仕え
の悲しさと諦めた。葵の方はそんなことを微塵も感じさせないのは、やはり性格の差か。
「と言うわけだから、出発する時は五人だけど、上手く合流出切れば六人だね」
「そうですね。何があるかわかりませんから、沙織さんもいてくれると心強いですよね」
「くっくくく、ははははっ!」
突然笑い出す蝉丸。
「何を言ってるんだ、はるか?我々は以前も今も五人ではないか」
「……隊長?」
何だか様子がおかしい蝉丸を葵や彩が見つめる。
「我々五人は必ずや秘宝を入手するのだ」
言って蝉丸は高笑いをし始める。
「壊れちゃったのかな」
「精神的疾患の一種だろう。大丈夫だ、一晩ぐっすり休めば元に戻る」
その会話も蝉丸の耳には届いていないようだ。
「葵。一発ガツンとやってくれ」
「え、でも」
高笑いはまだ続いている。
「それが隊長の為だ。それとこのままでは、我々も休めない」
「わ、わかりました……ごめんなさい、隊長!」
葵はトンファーを握りしめ――ガツン、ドササッ
おやすみなさーい。
85 :
勢揃い:03/07/01 01:58 ID:NvED/76v
【光岡悟 特務部隊副長 剣術】
【松原葵 特務部隊隊員 格闘術 トンファー】
【河島はるか 色々出来るが中途半端】
【坂神蝉丸 たんこぶ】
【初期の特務部隊隊員は、仙命樹が移植されていて、身体能力、治癒力が高い】
前スレ915 代償の大きかった発想 からのリレーです
※『代償の大きかった発想』で日付が変わったとありますが、これはちょっとあり得ないと思います。
※蝉丸は志保達と一緒に帰ってきて、その後志保は昼食をとっています。
※となると城に着いたのは午前中で、吉井をおもちゃにした後の食事は昼食でしょう。
※その後会議がすぐ始まっているので、いくら何でもそこまで長引くとは思えません。
※せいぜい延びても夕食時ではないかと。
※この後朝まで何もなければあまり関係ないのですが、念の為。
なんだ、普通に仙命樹採用したのか。
エルクゥが動物に化けるこのご時世に芸のない話だ。
しかし仙命樹は猫も杓子も使い始める人気アイテム。
油断してると帝国謹製仙命樹モンスター(兵)大登場なんてどこかで見た展開もありえるな(w
仙命樹は仕方ないと思うが……
でもまぁ今までそんな素振りや能力すら表現されてないから今更付け足しても、って感は多少。
もうちょい劇的な場面でアピールした方が効果的だったかも。
そんなことより、かなり長いんだけど、もっと短めにできないのかな。
>仙命樹は仕方ないと思うが……
>でもまぁ今までそんな素振りや能力すら表現されてないから今更付け足しても、って感は多少。
今更だからこそ、極端に強くならなくて良いかも。
他の連中に植え付けたりしなけりゃいいんじゃない。
確かにあえてここで書くほどのことじゃないけど。
しかし傷を付けて血とか浴びたらはるかはどうする気だったのか。
どうせなら、はるかにはもっと役に立たない技能が欲しかったと思ったりもする。
かすり傷程度を治せても役に立たないと思うぞw
分類は白魔法ってことでいいんだろうか。
いや、効果が弱いんじゃなくて、効果はあるんだけど役に立たない技能w
蝉丸の頭に花を咲かせたり。
「ぬおっ、なんだこれはっ!」
「意外と目立つね」
「目立ちすぎだっ」
「ひまわりの方が良かった?」
「余計目立つ……って、そういう問題ではないっ!」
「頑張れば五輪くらいまでは咲かせられるけど」
「なぜに増やす」
「んー、見せ物にしてお金を稼」
「お前は俺をなんだと思ってるんだ!」
93 :
名無しさんだよもん:03/07/03 21:58 ID:b7rjox7z
(さすがにあいつをこのまま、志保の家まで連れて行く訳にはいかないわよね)
尾行者の存在を微かに感じながら、七瀬は思案する。
龍二の尾行が特に下手という事は無いのだが、やはり始めからそれを警戒している者を相手に、
気配を完全に隠し通すと言うのは、中々に厳しい。
(かと言って、そこらの店じゃ誘っても仕掛けて来ないわよね……)
どうしたものかと七瀬が頭を悩ませながら歩いていると、その前方に見覚えの有る後姿が見えた。
「志保!」
七瀬は前を行く人物を呼止ると、小走りに駆け寄る。
呼び掛けられた志保は、足を止めて振り返った。
「あら七瀬じゃない」
近づく七瀬が一人でいるのを見て、志保は軽く疑問を口にする。
「一人みたいね、みんなは?」
「藤田とはさっきまで一緒。医者にあいつの怪我を診せにいって、今は疲れが出たみたいで宿で寝てるわ」
だから他の皆は知らないわ、と七瀬は付け加える。
「そっちも一人ってことは、一仕事終って帰るところみたいね」
「そう言うこと」
一仕事終えたどころか、その後響子の家で茶を啜りつつ、取り留めのない話を延々と続けていたのだが。
「七瀬も来るんでしょ?」
「そのつもりよ」
そこで少し声を落とすと、七瀬は先程よりもやや顔を寄せて囁く。
「実は今、佐祐理さんを連れ戻そうとしてる奴が、あたしを尾行しているのよ」
それを聞いた志保は、きょろきょろと周囲を見回したい衝動を、ぐっと押さえて続きを聞く。
「あたしは適当にうろついてから行くから、志保は先に帰って佐祐理さんを匿っておいて」
「良いけど、それでどうするつもり?」
「相手は一人。だから返り討ちにして、捕えてやろうと思って」
あまり気乗りしない様子だったが、結局承諾すると、志保は一人先に家路をたどった。
一方、七瀬は新しい武器が必要だったこともあり、適当な武器屋を選ぶと、時間稼ぎも兼ねて物色する。
しばらくして店から出てきたが、新しい武器は持っていない。
「乙女に相応しくて良い武器って、案外無いものね〜」
どうやらこの店では、七瀬の眼鏡に叶う掘り出し物は、見つからなかったようだ。
もっともそんな剛と柔を兼ね備えたような物は、そう有るものでは無い。
志保の家に向かおうとして、七瀬はふと気付く。
自分を追っていた気配が、無くなっていることに。
その意味する事に気付いた七瀬は、志保の家に急行するべく走り出す。
迂闊だった。あの男は尾行の対象を、自分から志保に切り替えたのだ。
少なくとも舞は一緒にいるだろうし、先に戻った志保もいるから、そう簡単に佐祐理が捕まる事も
ないだろうが、仲間を呼ばれでもしたら面倒だ。
時間の損失は十分弱か? それだけの時間、あの黒騎士がもたもたしているとは思えない。
実際にはこの時、志保の家はもぬけの殻であったが、そんなこととは露知らず、七瀬はひた走った。
* * *
伯斗龍二は迷っていた。
内容は聞き取れなかったが、七瀬と志保が何やら話した後、二人が別れたからだ。
どちらを追うべきか。
(俺の勘は、あっちのショートボブの嬢ちゃんに、乗り換えろって言ってるんだが……)
今のところ、これはただの山勘である。
単独行は身軽だが、こんな時にはやはり人手が欲しい。
(勘を信じるか、それとも当初の予定通り、おさげの嬢ちゃんを付けるか)
どちらとも追える距離で、しばし決めかねる。
仕方なく七瀬を追おうとした龍二は、そこで彼女が一軒の店に入るのを見た。
この時、龍二の脳裏に単なる山勘とは違う、経験から導き出される瞬間的な思考が閃いた。
(入る前に不自然な間があった。傭兵が武器屋に一々考えてから入ったりするか?
何か他の理由でもあるんじゃないか? ならそれは一体何だ? 時間稼ぎか何かか?
そう言えばさっきの会話、最後の方で何故か体を寄せていたな。もしかしてあれは、
俺の存在に気付いていたのか? となると……)
龍二は結論を出した。
七瀬に見切りをつけ、志保を尾行し始める。
志保はそれに気付いていない。
* * *
「ただいま〜志保ちゃんのお帰りよ。みんな、寂しい思いさせてごめんね〜」
志保は勢い良く扉を開けて、それ以上に勢い良く言った。
「って、セリオも健太郎もいないじゃない」
そのまま客間に足を運ぶ。
しかしそこにいる筈の舞と佐祐理もいなかった。
自室なども見たが、やはり誰もいないようだ。
「結構時間経ってるし、佐祐理さんと舞も起きて四人で食事かしらね?」
「違うな」
突然後ろから声をかけられて志保はギョッとする。
「俺は倉田家の私設騎士団の者だ。失礼だとは思ったが、勝手に上がらせてもらった」
「ほんと失礼よ」
最初の驚きから立ち直ると、志保は強気に言った。
「で、どう言うこと?」
そう前置きすると、龍二は窓に近づいた。
「玄関も窓も開きっぱなしで、窓の側の置物やらが倒れている。それに」
志保にも窓の周りを、見るように促す。
「窓の下に複数の足跡が残っている。おそらく何かに追われて、慌てて逃げた」
「追われるって一体誰に? 佐祐理さんを追っていたのは、あんた達じゃないの」
「そいつを聞きたいのは俺の方だ。どうやら何か厄介事に巻込まれた、ってことだけは確かなようだが」
さらに龍二は続けて言う。
「それに俺は、確かに佐祐理お嬢さんを捜してはいたが、無理やり連れ戻す必要は無いと言われている」
胡散臭い男ではあったが、推理には納得がいくものがあったし、嘘を言っているとも思えなかった。
とにかく今気掛りなのは、佐祐理達の行方だ。舞やセリオは一緒なのだろうか。
しかし足跡を追うのは無理だ。
通りに出たところで、すぐに他と判別がつかなくなる。
何か手掛りになりそうなものを、二人が探していると、そこへ七瀬が飛び込んできた。
「七瀬」
「よう、嬢ちゃん。遅かったな」
鎧姿ではなかったが、その声には聞き覚えがあった。
間に合わなかった。
いや、まだこの男がいるという事は、まだ間に合う。
七瀬はそう判断した。
幸い相手は油断している。
「はぁっ!!」
気合を乗せた七瀬の拳が、鈍い音と共に龍二の腹にめり込んだ。
「ぐっ……今日の俺には、女難の相でも、出てるのかよ……」
うずくまって龍二はそう言った。
「七瀬、言っておくけどこの人、佐祐理さんさらってないわよ」
「え? そうなの?」
呻く龍二に、七瀬はもう一撃加えようとしたが、志保の声に何とか拳を止めた。
【七瀬留美 早とちり】
【伯斗龍二 不幸】
【長岡志保 来なくて良いのに千客万来】
編集サイト290 合縁奇縁
308 期待外れ からのリレーです。
乙〜
100ゲット保守
101 :
名無しさんだよもん:03/07/06 22:54 ID:HyNaRmYs
102 :
名無しさんだよもん:03/07/07 22:24 ID:QYg6vZm6
103 :
ええええ?!:03/07/07 23:09 ID:tYdwr4Hx
ワラタ。>胡散臭い男 確かにそうだ。
しかし、伯斗、何気に美味しいところ持ってくなぁ。
別に美味しくはなかろう>伯斗
>105
いや、関西人的には美味しいところかと思って。 >悶絶ネタとか
黒騎士伯斗の実力は七瀬と同程度って感じ?
頭で勝負するのが本領という感じではあるけど。
>恐らく、七瀬や浩之が襲いかかったとしても、龍二は一瞬でねじ伏せていただろう。
こんな描写が過去にでているが……まぁ今回はギャグだからな……
ああ、そう言えばあったな。確か。
う〜む。ますます食えん奴。
> 「七瀬、言っておくけどこの人、佐祐理さんさらってないわよ」
一応七瀬は部屋の様子から佐祐理達の変事を察したってことでいいのかな?
111 :
名無しさんだよもん:03/07/12 00:00 ID:R44AOImR
112 :
名無しさんだよもん:03/07/12 03:50 ID:R44AOImR
……すみません。
なんか、家庭環境が立て込んでていろいろと……(ごにょごにょ:汗)
え、ええと保守代わりに一つお伺いしたいのですが。
前スレの最後の投稿は何番でしたっけ?
すぐに過去ログ化されると思ったら、未だにその兆候なく……(汗
新しいPCにもかちゅ入れとくべきだったか……
>113
楓、散る (318番)
↓
Time of Arcane Things
↓
代償の大きかった発想
↓
事情聴取
↓
語り部瑠璃子 (本スレ)
という流れ。まあ、御無理なさらず。
ほっしゅ
Д゜)ホシュ
この不均一なペースはいかにもファンらしい。
ハッキリ言ってアメリカなどの多民族国家では黒人の方がアジア人よりもずっと立場は上だよ。
貧弱で弱弱しく、アグレッシブさに欠け、醜いアジア人は黒人のストレス解消のいい的。
黒人は有名スポーツ選手、ミュージシャンを多数輩出してるし、アジア人はかなり彼らに見下されている。
(黒人は白人には頭があがらないため日系料理天などの日本人店員相手に威張り散らしてストレス解消する。
また、日本女はすぐヤラせてくれる肉便器としてとおっている。
「○ドルでどうだ?(俺を買え)」と逆売春を持ちかける黒人男性も多い。)
彼らの見ていないところでこそこそ陰口しか叩けない日本人は滑稽。
保守