気楽にSS その3

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613名無しさんだよもん
 アンドロメダ銀河まで残り200万光年。
 そこで立ち尽くす。
          ――岡崎朋也航宙日誌より


      CLANNAD
         ―クラナド―


まだ地球上に、海と陸がそれぞれひとつだったはるかな太古。
その船は、クラナドと名付けられた。

恒星間航行船“CLANNAD”――ゲール語で「家族」を意味する言葉。
地上のあらゆる生けとし生きるものを、ひとつがいずつ収めた巨船。
選ばれたヒトの男女の名は、トモヤと、ナギサ。

 「見つければいいだけだろ」

人々の期待と歓声を背に、船は空へ旅立つ。
あまねく天の星々に、生命の楽園を築くために……。
614名無しさんだよもん:03/09/27 00:27 ID:kaizUMII
楽園への渇望は、ついに叶うことはなかった。

 「朋也くん、変です! 通信が!?」
 *こコハ わタクシどもノ ウチュう フミアらすコと ゆルサぬ*

姿なき来襲者。
光にも敵うばかりの速度、幾世代の生命を収めうる巨躯を誇る船に、異変が起こる。
人類の知恵と技術の粋たるクラナドに、挑みかかる敵。

 *オマえは チキュうかラ キた おトコか?*
 「何だよ、何なんだよ! 知的生命なら礼儀正しくしやがれ!」
 *わタクシは オマえを コろシ シンの おトコとナろウ*

無音の空間を、無数の光が走る。
要する時間は、ほんの一瞬。
船の構造材は無残に引き裂かれ、同乗した生物の過半は焼き殺された。


戦うことを目的とせぬ船。
乏しい武器。ただ破滅を先延ばしにするだけの巨体。

辛くも敵を退ける頃には、船はもはや本来の使命を果たせなかった。
615名無しさんだよもん:03/09/27 00:27 ID:kaizUMII
光の速さへの挑戦。
数年の旅から戻ってきた船を迎えるのは、数億年の時を経た地球。
大陸が五つに分かれ、海洋が七つに隔てられる頃、
時間の大河は、既に人々の記憶を忘却の地層に押しやっていた。

 「……何もかも、変わらずにはいられないです」

それは、人の手が枉げることを許さない、科学の真実。
男は決然と、告げる。

 「次の楽しいこととか、うれしいことを見つければいいだけだろ。
  あんたの楽しいことや、うれしいことはひとつだけなのか? 違うだろ」

そう。
何も知らなかった無垢な頃。
誰にでもある。


          俺たちは登り始める。
          長い、長い坂道を。